法制審議会 第194回会議 議事録 第1 日 時  令和4年2月14日(月)   自 午後2時03分                        至 午後4時12分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題   民法(親子法制)の見直しに関する諮問第108号について   民事訴訟法等(IT化関係)の改正に関する諮問第111号について   仲裁法制の見直しに関する諮問第112号について   マネー・ローンダリング罪の法定刑に関する諮問第119号について   家事事件手続法・民事保全法・民事執行法・倒産法等(IT化関係)の改正に関する諮問第120号について   船荷証券等の電子化に関する諮問第121号について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○加藤司法法制課長 ただいまから法制審議会第194回会議を開催いたします。   本日は、委員20名及び議事に関係のある臨時委員2名の合計22名のうち、会議場における出席委員13名、ウェブ会議システムによる出席委員6名、計19名に御出席いただいておりますので、法制審議会令第7条に定められた定足数を満たしていることを御報告申し上げます。   初めに、法務大臣挨拶がございます。 ○古川法務大臣 会議の開催に当たり、一言御挨拶を申し上げます。   委員及び幹事の皆様方におかれましては、御多用中のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。   さて、本日は、御審議をお願いする事項が六つございます。   まず、議題の第1は、令和元年6月に諮問いたしました、「民法(親子法制)の見直しに関する諮問第108号」の答申についてでございます。   この諮問につきましては、令和元年7月以降、調査審議が行われ、本日、その結果が報告されるものと承知しております。  民法の懲戒権の規定は、児童虐待を正当化する口実に利用されているとの指摘があり、その在り方の検討が求められております。また、いわゆる無戸籍者問題は、国民でありながら、社会生活上の不利益を受ける方が存在するという重大な問題であり、その一因とされる嫡出推定制度に関して、規定の見直しが求められております。  部会におきましては、こうした点について、精力的に調査審議を行っていただいたものと承知しております。   議題の第2は、令和2年2月に諮問いたしました、「民事訴訟法等(IT化関係)の改正に関する諮問第111号」の答申についてでございます。   この諮問につきましては、令和2年6月以降、調査審議が行われ、本日、その結果が報告されるものと承知しております。  民事裁判手続のIT化は、国民の司法アクセスを向上させ、ひいては国民に身近で頼りがいのある司法を実現するために必要不可欠です。昨年12月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」におきましても、民事訴訟手続のデジタル化に向け、本年の通常国会に必要な法案を提出することとされております。   議題の第3は、令和2年9月に諮問いたしました、「仲裁法制の見直しに関する諮問第112号」の答申についてでございます。   この諮問につきましては、令和2年10月以降、調査審議が行われ、本日、その結果が報告されるものと承知しております。  近年、商事紛争を解決する手段として国際調停が世界的に注目を集めており、国際的な枠組みとして、平成30年12月に、国際連合総会において、いわゆる「シンガポール条約」が採択されました。  部会におきましては、このような経緯を踏まえ、調停による和解合意に執行力を付与する制度の創設等について、精力的に調査審議を行っていただいたと承知しております。   議題の第4は、本年1月に諮問いたしました、「マネー・ローンダリング罪の法定刑に関する諮問第119号」の答申についてでございます。   この諮問につきましては、本年1月以降、調査審議が行われ、本日、その結果が報告されるものと承知しております。  近年におけるマネー・ローンダリング対策に関する国際的動向等に鑑み、マネー・ローンダリング罪の法定刑を引き上げる改正を早急に行う必要があると考えております。   委員の皆様には、議題1ないし4のいずれにつきましても、御審議の上、できる限り速やかに答申を頂けますよう、お願い申し上げます。   次に、議題の第5は、「家事事件手続法・民事保全法・民事執行法・倒産法等(IT化関係)の改正に関する諮問第120号」についてでございます。   国民に身近で頼りがいのある司法を実現するためには、民事訴訟以外の民事・家事関係の裁判手続についても、IT化を進めることが必要となります。「デジタル社会の実現に向けた重点計画」においても、これらの手続のデジタル化に関し、令和5年の通常国会に必要な法案を提出することとされています。  これらの手続のIT化に向け、先行する民事訴訟のIT化に関する検討を踏まえつつ、各手続の特性を十分に考慮した検討が必要であり、法制審議会の御意見を賜る必要があると考えられますので、御審議をお願いするものでございます。   議題の第6は、「船荷証券等の電子化に関する諮問第121号」についてでございます。   近年、商取引において電子的な手段の利用が拡大しているところ、船荷証券の電子化のため、関連する法制の整備をすることは喫緊の課題であると考えております。昨年6月に閣議決定された「規制改革実施計画」におきましても、国際的な動向等も踏まえ、調査審議を進めることが盛り込まれております。  そこで、この課題に対処するため、法制審議会での御審議をお願いするものであります。   それでは、これらの議題についての御審議・御議論をよろしくお願い申し上げます。 ○加藤司法法制課長 法務大臣は、公務のためここで退席させていただきます。           (法務大臣退室) ○加藤司法法制課長 ここで、報道関係者が退出しますので、しばらくお待ちください。           (報道関係者退室) ○加藤司法法制課長 まず、事務局から会議に当たっての留意事項を御案内いたします。   ウェブ会議システムにより御出席の委員におかれましては、御出席されていることを確認させていただくため、会議中は常にカメラをオンにしていただきますようお願いいたします。   また、本日の会議は、ペーパーレス化によりタブレット端末による資料配布となっております。操作方法等について御不明な点がある場合は、事務局に適宜お知らせください。   では、井田会長、お願いいたします。 ○井田会長 井田でございます。本日もよろしくお願いいたします。   審議に先立ちまして、お諮りしたいことがございます。本日はたくさんの議題がございますけれども、今回の議題の内容に鑑みまして、佐藤参事官、福田参事官、脇村参事官、渡辺参事官に関係官として審議に参加していただきたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでは、佐藤参事官、福田参事官、脇村参事官、渡辺参事官に関係官として審議に参加していただくことにいたします。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。   先ほどの法務大臣挨拶にもございましたように、本日は議題が六つございます。   なお、そのうちの諮問第108号及び第111号につきましては、事務当局からの配布資料のほか、本日御欠席の芳野委員から意見書の送付がありましたので、併せて配布させていただいております。   まず、「民法(親子法制)の見直しに関する諮問第108号」について、御審議をお願いいたしたいと存じます。   初めに、民法(親子法制)部会における審議の経過及び結果につきまして、同部会の部会長を務められました大村敦志委員から御報告を頂きたいと存じます。   それでは、大村部会長、よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 民法(親子法制)部会の部会長の大村でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。   本部会では、法務大臣から令和元年6月に受けた諮問第108号について、約2年8か月にわたり調査審議を重ねてまいりましたが、本年2月1日に開催された第25回会議において民法(親子法制)等の改正に関する要綱案を決定いたしましたので、本日はその概要等について御報告をさせていただきます。   民法(親子法制)の見直しに関する諮問第108号は、児童虐待が社会問題になっている現状を踏まえて、民法の懲戒権に関する規定等を見直すとともに、いわゆる無戸籍者問題を解消する観点から、民法の嫡出推定制度に関する規定等を見直す必要があると考えられるので、その要綱を示されたいというものでございます。   この諮問を受けて、民法(親子法制)部会では、親子法制に関する二つの課題について検討を行ってまいりました。令和元年7月の第1回会議から令和3年2月の第14回会議までの間、議論を重ねまして中間試案を取りまとめ、同年2月25日から4月26日までの2か月間、パブリックコメントの募集手続を行いました。   また、本部会では中間試案の取りまとめ前にもヒアリングを実施しておりましたけれども、パブリックコメントの募集手続の期間中に開催された第15回会議においては、合計7名の方の参考人ヒアリングを実施いたしました。懲戒権に関する規定の見直しの関係では、横浜いずみ学園井上真園長、日本子ども虐待防止学会奥山眞紀子理事長、社会福祉法人麦の子会北川聡子総合施設長のお三方、嫡出推定制度に関する規定の見直しの関係では、無戸籍者問題の当事者の方で、いずれも裁判手続によりお子さんの無戸籍を解消することができた方、お三方、さらに、無戸籍者の支援をされている長谷川京子弁護士からそれぞれお話を伺いました。   その後、部会におきましては、パブリックコメント及びヒアリングの結果を踏まえて更に調査審議を行い、最終的な意見の調整を進めました。このような審議経過を経て、本年2月1日の第25回会議において、全会一致で要綱案を決定するに至ったものでございます。   それでは、要綱案の概要を説明させていただきます。   まず、「第1 懲戒権に関する規定の見直し」についてでございます。   現行の民法第822条の親権者の懲戒権に関する規定については、平成23年の民法改正の際にその規定を見直し、懲戒権は子の利益のために行使されるべきものであり、子の監護及び教育に必要な範囲を超える行為は懲戒権の行使に当たらないことを明確にする改正を行ったところでございますが、この規定はその後も児童虐待を正当化する口実に利用されているとの指摘がされております。   また、令和元年に成立した児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律の附則において、この規定の在り方について検討を加える旨のいわゆる検討条項が設けられました。   そこで、部会では、懲戒権の規定の見直しについて検討をいたしました。その結果、要綱案では、第822条を削除した上で、新たに、親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、子の年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならないとの規律を設けることとしております。   この点に関して、パブリックコメント等では、懲戒権の規定を削除した場合には、親権者による正当なしつけもできないこととなるのではないかといった懸念も寄せられたところでございますけれども、部会においては、懲戒権の規定を削除したといたしましても、親権者による正当なしつけは第820条の規定による監護教育として当然に行うことができるということを前提に、子の利益のために行われる監護及び教育とはどのようなものかということにつきまして、その範囲を更に明確化するという観点から、先ほどの新たな規律を設けることとしたものでございます。   次に、要綱案「第2 嫡出の推定の見直し及び女性に係る再婚禁止期間の廃止」についてでございます。   嫡出推定制度につきましては、いわゆる無戸籍者問題を解消する観点からの見直しということから出発しておりますけれども、明治以来の規定であるこの制度について、社会経済情勢の変化等を踏まえ、子供の利益を保護する観点から幾つかの見直しを行っております。見直しの契機となった無戸籍者問題は、国民でありながら戸籍という社会的な基盤が与えられておらず、社会生活上の不利益を受ける方々が存在するという重大な問題でありますけれども、夫以外の者との間の子を出産した女性が、嫡出推定制度により、その子が夫の子として戸籍に記載されることを避けるために出生の届出をしないことが、無戸籍者の生ずる一因となっているとの指摘がされてまいりました。   そこで、部会では、この問題を将来にわたって解消していくという観点から、嫡出推定制度に関する規定等の見直しの検討を行いました。嫡出推定制度は、婚姻している女性が産んだ子について、誰が父であると推定されるかを定める狭義の嫡出推定制度と、これにより推定された父子関係を否認する手続である嫡出否認制度から成っておりますけれども、要綱案ではこの両面について見直しをしております。   まず、狭義の嫡出推定制度について、現行法では、妻が婚姻中に懐胎した子を夫の子と推定するということにしつつ、婚姻の成立の日から200日経過後に生まれた子は婚姻中に懐胎されたものと推定すると定めておりますところから、婚姻成立の日から200日以内に生まれた子は民法上は夫の子と推定されないということになります。この点に関し、戸籍実務上はそのような子も夫の嫡出子として届け出ることができることとされておりますけれども、民法上の推定が及んでいないことからいつまでも父子関係を争い得ることとなり、子の身分関係が不安定になっているという指摘がございます。また、法務省が行った調査では、実態としても、この期間内に生まれた子は圧倒的多数が嫡出子として届出がなされているとの結果が出ております。要綱案では、これらの事情を考慮して、婚姻の成立後に生まれた子は、婚姻前に懐胎した子であっても一律に夫の子と推定するものとしております。   また、婚姻の解消又は取消しの日から300日以内に生まれた子について、現行法では婚姻中に懐胎したものと推定されると定められておりますところから、前夫の子と推定されるということになりますが、先ほど申し上げましたとおり、無戸籍者問題との関係でこの規律を見直すべきではないかとの指摘がございます。もっとも我が国の制度上、離婚に先立つ一定期間、別居など子の懐胎につながる夫婦関係が失われているといった事情が存在するということは離婚の要件とはされておらず、婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子についての現行法の規律の基礎となる考え方は今日においても通用するものであること、また、現行法の規律には子の法律上の父を確保するという重要な意義があることなどを踏まえて、要綱案ではこの規律は原則として維持することとしております。   他方で、母が子の出生前に前夫以外の男性と再婚したという場合には、その子は前夫の子ではなく、再婚後の夫の子である蓋然性が高いと考えられることなどから、母が前夫以外の男性と再婚した後に子が生まれたときは、その子を再婚後の夫の子とする推定が前夫の子であるとの推定に優先するものとしております。これにより、離婚後300日以内に生まれた子であっても再婚後の夫の子として出生の届出ができるため、無戸籍者問題の解消につながるものと考えております。   さらに、要綱案では、嫡出推定制度の見直しに伴い、女性の再婚禁止期間を廃止することとしております。現行法では、女性が再婚した直後に子が生まれた場合には、その子が前婚の離婚後300日以内に出生した子であれば前夫の子と推定される一方で、再婚後200日が経過した後に出生した子であれば再婚後の夫の子と推定されることから、再婚の時期によっては嫡出推定の重複が生じ得ます。この重複を回避するために、女性について婚姻の解消又は取消しの日から100日間の再婚禁止期間が定められております。嫡出推定制度を先ほどのように見直した場合には嫡出推定の重複がなくなることから、この再婚禁止期間を廃止することとしたものでございます。   次に、要綱案の「第3 嫡出否認制度に関する規律の見直し」についてでございます。   現行法上、夫の子と推定される子については、夫が子の出生を知った時から1年以内に提起する嫡出否認の訴えによってのみ父子関係を否認することができるとされております。これに対しては、子や母のイニシアチブで父子関係を否定することができず、1年という期間は訴え提起のための期間としても短かすぎるとの指摘がありました。   そこで、要綱案では、子及び母にも否認権を認めた上で、その出訴期間を3年に延ばすことにしております。子は出生の時から3年以内の間に自ら訴えを提起することは事実上できませんので、親権を行う母又は未成年後見人が子のために訴えを提起することができるものとしております。無戸籍者問題を解消する観点からは、子や母の側から嫡出否認の訴えを提起することが可能となる点に取り分け大きな意義があり、先ほどの狭義の嫡出推定制度の見直しとあいまって、問題解消の促進につながる法制上の見直しとなると考えております。   さらに、子については、社会的な実体としての父子関係がない場合には、原則としての3年の出訴期間が経過した後であっても嫡出否認の訴えを提起することができるとする特則を設けることとしております。具体的な要件については、部会でも様々議論がございましたけれども、子は父と継続して同居した期間が3年を下回るときは、21歳に達するまでの間、嫡出否認の訴えを提起することができるものとし、ただし、子の否認権の行使が父による養育の状況に照らして父の利益を著しく害するときは、この限りでないものとしております。   なお、21歳に達するまでというのは、令和4年4月施行後の民法の成年年齢である18歳の時点から、少なくとも3年間は熟慮するための期間を与えることを意図したものでございます。   次に、要綱案の「第4 第三者の提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた子の親子関係に関する民法の特例に関する規律の見直し」についてでございます。   この点につきましては、令和2年12月に成立した生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律において、夫の否認権を制限する規律が置かれております。すなわち、妻が夫の同意を得て夫以外の男性の精子を用いた生殖補助医療により懐胎した子については、夫はその子が嫡出であることを否認することができないとされております。   要綱案では、民法上、否認権者の範囲を子及び母にも広げる関係で、第三者の提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた子について、夫が当該生殖補助医療に同意をしていたときは、夫のみならず、子及び母も父子関係を否認することができないものとしております。   最後に、要綱案の「第5 認知制度の見直し等」についてでございます。   この点は、無戸籍者問題と直接関係するわけではございませんが、実親子法制について、子の身分関係の安定を図り、子の利益を保護する観点から見直しをしております。認知無効の訴えについて、現行法では、子その他の利害関係人は、父がした認知に対して反対の事実、すなわち血縁関係がない旨の事実を主張することができるとされており、認知による父子関係と生物学上の父子関係とが一致しない場合には、広く利害関係人からいつまでも父子関係を争われるおそれがあることから、嫡出でない子の地位が不安定であるとの指摘がございます。また、嫡出子については否認権者が限定され、出訴期間も3年と制限されているのに対して、嫡出でない子についてはそのような制限もないことから、均衡を欠いているのではないかとの指摘もございます。   そこで、要綱案では、認知無効の訴えの提訴権者を認知者、子及び母に限定した上で、その出訴期間を認知等のときから7年以内として、その期間が経過した場合には認知の効力を争うことができないものとしております。   また、これに伴いまして、国籍法上の認知による国籍取得に関する規律の手当てをしております。現行法上、日本国籍を有していない未成年の子については、日本人男性から認知を受けたときは届出により日本国籍を取得できることとされております。もっとも当該認知が虚偽のものであるとき、すなわち認知者と子との間に生物学上の父子関係がないにもかかわらず認知がされたときには、国籍の取得も無効となるものとされております。先ほどの認知無効の訴えの規律の見直しにより、認知無効の訴えの出訴期間が経過したときは民法上親子関係が確定することとなりますが、届出による国籍取得との関係では、引き続き生物学上の父子関係がない認知がされたときは国籍の取得は認められないとの扱いを維持するため、国籍法第3条に規定する認知された子の国籍の取得に関する規定は、認知について反対の事実があるときは適用しないとの規律を置くこととしております。   民法(親子法制)等の改正に関する要綱案の概要は、以上のとおりでございます。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。 ○井田会長 御報告ありがとうございました。   それでは、ただいまの御報告及び要綱案の全般的な点につきまして、御質問及び御意見を承りたいと思います。   御質問と御意見を分けまして、まず、御質問がございましたら承りたいと思います。どうぞ。   ○大迫委員 今回の親子法制に関する民法改正の目的の一つは、先ほど御説明がありましたように、無戸籍者の子供の救済をすることにあったわけですけれども、今回、多くの改正が提案されたことは、部会の熱心な検討の成果と考えます。これによって多くの子供たちが無戸籍とならないことを期待しているところです。しかしながら、社会において戸籍の届出をしたくないと考える理由やそれを生み出す親子の関係は多様であり、今回の改正によって無戸籍者の子供の救済がどの範囲で図られるかは、今後の検証を待たざるを得ないと思っています。   また、部会の議事録によれば、継続の検討となった論点も見受けられます。そのため、無戸籍者の救済のために今回の改正の成果の検証や今後の継続となった論点等の検討の継続が不可欠と考えますけれども、その点についてのお考えがあれば教えていただきたいと思います。 ○井田会長 御質問ありがとうございました。   これは民事局の担当の方、お願いします。 ○金子幹事 幹事の金子でございます。   御質問ありがとうございます。御指摘のとおり、無戸籍者が今後どの程度救済されていくのか、あるいはこの問題が解消されていくのかという点につきましては、改正後の運用を見ながら、統計等も取りながら見ていかないといけないと思います。御指摘のとおり、解消策として更に突っ込んだ案も検討されましたが、いろいろな難しい点があるとの御指摘もあり、今回見送ったものもございます。今後の検討課題として残されたところもあるというふうに承知しておりますので、その点も念頭に置きながら今後の運用を見守っていきたいと、まずは今後の法改正を踏まえた運用を検証していきたいと考えているところでございます。 ○井田会長 大迫委員、それでよろしいでしょうか。 ○大迫委員 はい。ありがとうございました。 ○井田会長 小杉委員もお手が挙がったと思いますけれども、どうでしょうか、小杉委員。 ○小杉委員 ありがとうございます。   大迫委員と同じ趣旨の質問でしたので、取下げさせていただきます。ありがとうございます。 ○井田会長 ありがとうございます。   ほかに御質問はございますでしょうか。よろしいですか。 ○白田委員 よろしいでしょうか。非常に基本的な質問をさせていただきます。   訴えを伸長する方策の中の③番、子がその父と継続して同居した期間のところの下の方に、父の利益を著しく害するときはこの限りではないという一文が記載されてございます。さらに、認知制度の方の見直しの方の②番にも、無効の主張が認知をした者による養育の状況に照らして認知をした者の利益を著しく害するときと同じような文章が書かれており、子の父の利益を著しく害するというのはどのようなことを示していらっしゃるのか、教えていただければと思います。質問です。よろしくお願いします。 ○井田会長 ありがとうございます。   部会長、お願いします。 ○大村部会長 それでは、今の点については、私の方からお答えをさせていただきます。   要綱案の3ページの③の方を取り上げさせて、お答えをさせていただきたいと思います。   まず、前提といたしまして、ここで定められている否認権というのは、原則として認められている3年間の期間制限に服する否認権との関係で申しますと、例外的な否認権ということになります。嫡出否認の訴えについての提訴期間は、現行法では1年でございますけれども、この期間が短かすぎるのではないかということで、原則としての提訴期間を3年に延ばすというのが今回の基本的な提案でございます。それは2ページの(4)の①に記載されているところでございます。あわせて、これも先ほどの御説明でも申し上げましたけれども、子ないし母から否認の訴えを提起するということもできるとしております。ただ、子が小さいときには子からの訴えと申しましても、事実上はその法定代理人ないしは後見人が訴えを起こすということになりまして、子自身が訴えを起こすことができません。そこで、訴えを起こされることがなく3年が過ぎてしまったという場合に、子が期間が過ぎたのにもかかわらず例外的に訴えを起こすことができる、そうした場合を認めようというのが、委員御指摘の③の規律ということになります。  そこで、一定の要件をかけた上で、例外的にその子は21歳に達するまでの間、訴えを提起できるということにしたわけですけれども、21歳までの間ということでありますので、その間の一定期間は養育をしたといった事実があるような場合に子の否認の訴えによって父子関係が覆るということは、養育を行ってきた父の利益や期待を損なうだろうという趣旨で、この規定を設けているということでございます。 ○白田委員 はい。何となく分かりました。   要するに、父親がそれだけの期間、費用と時間を掛けて養育をしてきたのであるから費やした養育費等についての対価という意味なんですね。それが父の利益を著しく害するという表現になるのかどうか、ちょっとそこがよく分からなかったものですから。分かりました。ありがとうございます。 ○井田会長 ほかに御質問はございますか。   それでは、御意見を承りたいと思います。御意見はございますか。特にございませんか。   それでしたら、原案につきまして採決に移りたいと考えますけれども、御異議ございますでしょうか。   特に御異議もないようでございますので、そのように取り計らわせていただきたいと思います。   諮問第108号につきまして、民法(親子法制)部会から報告されました要綱案のとおり、答申することに賛成の方は挙手をお願いします。ウェブ会議システムにより出席されている委員につきましては、画面上で見えるように挙手していただくか、あるいは挙手機能ボタンを押していただくようにお願いいたしたいと思います。どうぞ。           (賛成者挙手) ○井田会長 それでは、事務局において票読みをお願いします。   では、手を下ろして結構でございます。ありがとうございます。   反対の方、挙手をお願いしたいと思います。           (反対者挙手) ○井田会長 手を下ろして結構でございます。いらっしゃらないですね。 ○大石委員 すみません、大石でございますけれども、委員である部会長の票は入るのか入らないのか、当然、部会長ですから多分賛成の立場だと思うんですが、委員であられるのでその票を入れるのではないかと思いますが、いかがでしょう。 ○井田会長 報告者として総会に出席の部会長につきましては、表決権は棄権するという扱いをしてきたようでございます。 ○大石委員 従来そうですか。分かりました。承知しました。 ○井田会長 棄権者は表決者に含めないということで、よろしいですか。 ○大石委員 はい、結構です。 ○加藤司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は16名でございますところ、全ての委員が御賛成ということでございました。 ○井田会長 ありがとうございます。   採決の結果、全員賛成でございましたので、民法(親子法制)部会から報告されました要綱案は、原案のとおり議決されたものと認めたいと思います。   議決された要綱案につきましては、会議終了後、法務大臣に対して答申することといたしたいと思います。   大村部会長におかれましては、2年8か月という長期にわたり、非常に解決が難しい多くの論点を含むこの問題について調査審議していただき、ありがとうございました。   では、次に、「民事訴訟法等(IT化関係)の改正に関する諮問第111号」について、御審議をお願いしたいと思います。   初めに、民事訴訟法(IT化関係)部会における審議の経過及び結果につきまして、同部会の部会長を務められました山本和彦臨時委員から御報告いただきたいと存じます。   それでは、お願いします。 ○山本部会長 民事訴訟法(IT化関係)部会の部会長を務めました山本でございます。   当部会では、令和2年2月の諮問第111号について、約2年にわたり調査審議を重ねてまいりましたが、本年1月28日に開催された第23回会議におきまして、民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する要綱案を決定いたしましたので、本日はその概要等について御報告をいたします。   諮問第111号は、近年における情報通信技術の進展等の社会経済情勢の変化への対応を図るとともに、時代に即して民事訴訟制度をより一層適正かつ迅速なものとし、国民に利用しやすくするという観点から、訴状等のオンライン提出、訴訟記録の電子化、情報通信技術を活用した口頭弁論期日の実現など、民事訴訟制度の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたいというものであります。これを受けて民事訴訟法(IT化関係)部会が設置され、これまで審議を行ってまいりました。   なお、この部会における審議の途中経過につきましては、令和3年5月の第190回法制審議会総会において中間報告をさせていただきましたが、本日は改めて要綱案の決定に至るまでの審議経過を簡単に御説明した上、最終的に取りまとめました要綱案の概要について御報告をさせていただきます。   民事訴訟法(IT化関係)部会では、第1回会議を開催しました令和2年6月から各論点について調査審議を重ね、令和3年2月、民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案を取りまとめ、同年5月までの間、パブリックコメントの手続を行いました。また、令和3年8月には、後で御紹介する被害者の氏名等を相手方に秘匿する制度について追加試案を取りまとめまして、この追加試案につきましても、同年10月までの間、パブリックコメントの手続を行いました。その後、パブリックコメントに寄せられた意見も踏まえて更に調査審議を行い、本年1月28日の会議において賛成多数で要綱案を決定するに至ったものであります。   そこで、要綱案の概要について御説明をいたします。   かなり多岐にわたりますが、時間の関係がありますので、重要な項目を中心に適宜ポイントを絞って御説明をしてまいりたいと思います。   まず、要綱案、第1部から第3部までに分かれておりますが、第1部、4ページになりますけれども、民事訴訟法の見直しについてであります。   「第1 インターネットを用いてする申立て等(訴え提起、準備書面の提出)等」を御覧いただければと思います。   平成16年の民事訴訟法改正によって、インターネットを用いた申立て等を可能とする現行法132条の10の規定が既に設けられておりますが、その利用できる場面はかなり限定的であり、また、訴訟記録は書面で作成、保管するものとされ、インターネットを用いて申立て等がされた場合もその電子データの内容を裁判所において書面に出力し、その書面をもって閲覧等や送達をすることとされており、従来余り利用されておりませんでした。そこで、この第1の1及び2において、全ての裁判所においてインターネット申立て等を可能とするとともに、書面で申立て等がされた場合であっても、それを裁判所で電子化し、電子データを訴訟記録として保管するということとするものであります。   加えて、6ページの3のところで、訴訟代理人のうち委任を受けたもの等については、インターネットを用いてする申立て等によらなければならない、いわゆるインターネット申立ての義務化が図られております。   さらに、第1の4では、訴えの提起の手数料の納付命令を裁判所書記官の権限とするとともに、原告が手数料を納付しない場合の裁判長による訴状の却下命令及び当該命令に対する即時抗告を現裁判所において却下できる場合についての規律を設け、濫用的な訴えの提起を防止しようとしているものであります。   次に、7ページの「第2 送達」の部分でありますが、第2の1は、電子データの送達について、インターネットを用いた方法による送達を可能とするものであります。インターネットを用いた方法による送達は、送達を受ける者がこの方法による送達を受ける旨の届出をした場合に限られるものとしておりますが、先ほどの6ページの第1の3の(2)の部分で、委任を受けた訴訟代理人等は必ずこの届出をしなければならないものとしております。そういう意味で、弁護士等が訴訟代理人になる場合には、このインターネットを用いた方法によって送達がなされるということになります。   それから、8ページの第2の2では、現行法では裁判所の掲示場に掲示してすることとされている公示送達の方法について、ホームページの利用等を含む最高裁判所規則で定める方法を加えることとするものであります。   次に、要綱案9ページ、「第3 口頭弁論等」についてであります。   第3の1においては、現行法では、当事者の現実の出頭を要する口頭弁論期日について、ウェブ会議等による方法で手続を行うことができることとしております。   また、第3の2は、相手方がインターネットを通じて準備書面の閲覧等をした場合には、相手方が出頭していない口頭弁論においてもその準備書面に記載した事実を主張できるという規律を設けるものであり、また、第3の3は、裁判長が定めた準備書面の提出等の期間の経過後に提出をする当事者は、定められた期間を遵守できなかった理由を説明しなければならないとするものであります。   次に、要綱案10ページ、「第4 当事者の申出による期間が法定されている審理の手続の特則」について御説明をいたします。   現行の民事訴訟法においては、裁判の審理期間や審理開始から判決言渡しまでの期間について明確に定めた規定はなく、判決までの期間の見通しが立たないことが紛争解決のために民事訴訟手続を利用することをちゅうちょする一要因であるという指摘があります。   そこで、要綱案第4は、消費者契約に関する訴えなど一定の事件を除き、当事者双方の申出又はその同意があることを要件として、この手続が開始してから6か月以内に審理を終結し、審理の終結から1か月以内に判決言渡しをしなければならないとするものであります。もっとも第4の11にありますとおり、当事者の一方の申立てがあったときなどには通常の手続に移行することとしておりますし、また、16及び18にありますように、この手続の終局判決に対しては異議を申し立てることができ、異議によって通常の手続による審理、裁判がなされるということとしております。   なお、民事訴訟法(IT化関係)部会において要綱案を取りまとめるに際しては、この第4の規律を設けることには慎重な立場から、これに対して反対する意見が出されましたが、賛成する意見が多数であり、最終的にはこの要綱案のとおり取りまとめられたものであります。   次に、要綱案11ページ、「第5 争点整理手続等」は、弁論準備手続の期日において、当事者双方につき電話会議等の利用を可能とすること、書面による準備手続について、裁判長が行うこととされている現行法の規律を改め、受命裁判官に行わせることを可能とすること、3の審尋で、審尋期日においても電話会議等の利用を認めること、4の専門委員についても、電話会議等による手続関与を認めることなどの規律を設けるものであります。   要綱案13ページの「第6 電磁的記録についての書証に準ずる証拠調べ」は、いわゆる電子データの証拠調べの規律などを設けることとするものであり、14ページの「第7 証人尋問等」は、証人尋問においても当事者に意義がなければウェブ会議等の利用を認めること等とするものであり、15ページ、「第8 その他の証拠調べ手続」は、鑑定人が意見を述べるに際しウェブ会議の利用を認めること、また、検証等の手続においてもウェブ会議等の利用を認めることなどの規律を設けるものであり、16ページ、「第9 訴訟の終了」は、電子データによる判決の作成や和解期日における電話会議等の利用に関する規律等を設けるものであります。   次に、要綱案18ページ、「第10 訴訟記録の閲覧等」であります。   現行の民事訴訟法上は、何人も訴訟記録の閲覧等の請求が可能でありますが、既に御説明したとおり、訴訟記録は書面で作成保管されており、その閲覧等をするためには現実に裁判所に行く必要があります。しかし、訴訟記録の電子化が実現した場合には、インターネットを利用して裁判所が電子データで保管している訴訟記録の閲覧等をすることも可能となります。   第10の1は、これを踏まえて電子データの訴訟記録の閲覧等についての規律を設けるものであります。具体的な内容は最高裁判所規則で定めることとなりますが、要綱案では、19ページの(注)で記載しておりますとおり、当事者及び利害関係を疎明した第三者は裁判所外の端末からインターネットを利用して閲覧等の請求ができ、当事者については、事件の係属中はいつでも裁判所外の端末から閲覧等をできるという内容の規律を設ける一方、利害関係のない第三者については、引き続き裁判所での閲覧に限定するということとしております。   第10の2は、和解の内容が知られることを懸念して和解をちゅうちょすることがあるという指摘があることを踏まえて、非公開の手続でされた和解に関する訴訟記録については、当事者及び利害関係を疎明した第三者のみ閲覧等の請求をすることができることとしております。   第10の3は、訴訟に関する事項の証明を電子データで可能とすること、4は、補助参加人に係る訴訟記録の閲覧等の制限について、5は、営業秘密の保護のための閲覧等の制限がある事件について訴訟記録の電子化の例外を認める規律を設けるものであります。   要綱案21ページ、「第11 再審、手形訴訟」は、電子データの証拠調べの規律を設けることに伴い、再審事由及び手形訴訟における証拠調べに関する規律を整備するもの、「第12 簡易裁判所の訴訟手続に関する特則」は、簡易裁判所における証人尋問について、裁判所が相当と認めるときはその要件を緩和しウェブ会議等を利用することができることとするもの、「第13 費用額確定処分の申立ての期限」は、費用額確定処分の申立てについて、その負担の裁判の確定から10年以内という期限を設けるものであります。   要綱案22ページ、「第14 書記官事務の見直し」は、担保権利者が権利行使催告期間内に権利を行使しない場合の担保取消決定の前提となる催告を裁判所書記官の権限とすることや、口頭弁論の記録を電子データで作成すること等に関する規律を設けるとともに、その電子調書の更正に関する規律を整備するものであります。   続きまして、要綱案22ページ、「第15 被害者の氏名等を相手方に秘匿する制度」について御説明をいたします。   性犯罪やDV等の被害者がその加害者を訴えるケースにおいて、被害者が自らの氏名や現住所等を相手方に知られてしまうことを危惧して、当該被害者が訴えの提起等をちゅうちょする場合があるとの指摘があります。   そこで、第15の1及び2では、他の当事者に知られることによって社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあるときには、裁判所の決定により当事者や法定代理人の住所や氏名等を訴状等に記載しないことができることとし、さらに、当事者の住所や氏名等、又はそれを推知させる事項が記載された部分の閲覧制限の規律を設けることとしております。   第15の3は、送達場所に関する調査嘱託の結果についての裁判所の職権による閲覧等制限、4は、秘匿決定の取消し等、5は、秘匿決定の申立てがあった場合に第三者の訴訟参加があった場合の規律、6は、民事訴訟手続がIT化された後に秘匿決定の申立てをする場合の訴訟記録の電子化の例外等に関する規定を整備するものであります。   以上が、要綱案第1部の民事訴訟法の見直しでありますが、続きまして、26ページ、「第2部 民事訴訟費用等に関する法律の見直し」であります。   第2部は、民事訴訟に関する手続のIT化に伴い民事訴訟の費用に関する制度について所要の見直しを行うものであり、第16の1は、従来の印紙の貼付等に代えて手数料の電子納付の制度を導入するもの、第16の2は、郵便費用の予納の制度を廃止し、新たに郵便費用に相当する所要の金額を手数料として徴収する規律を設けるもの、第16の3は、手数料の還付等について、裁判所の権限とする現行の規律を改め、裁判所書記官の権限とするものであります。   続きまして、最後、27ページ、「第3部 その他」であります。   このその他のうち、「第1 被害者の氏名等を相手方に秘匿する制度に対応する改正」は、先ほど御説明いたしました被害者の氏名等を相手方に秘匿する制度の民事訴訟における規律が民事執行手続、人事訴訟手続、家事事件手続にも準用されることを前提にして所要の整備をすることとするものであります。   そして、28ページ、要綱案「第2 その他」におきまして、その他所要の規定を整備するものとしております。   なお、最後に、部会において要綱案の取りまとめの議論の際に出された御意見などにつき、若干の御紹介をしたいと思います。   同部会では、要綱案に上げられているほかに、障害者に対する手続上の配慮に関する規律を設けることについても御議論がありました。最終的には要綱案への記載は見送られましたが、民事訴訟の手続に関与する障害者に対して手続上の配慮をすべきことは重要な課題であり、引き続き検討していくべきものであることについては部会でおおむね御異論がなかったものと思います。どういった内容とすべきかについてはなお様々な御意見があるところと思いますが、今後検討されていくべき重要な課題であると考えられます。   また、同部会において取りまとめの議論の際に、要綱案に基づく法律案の施行状況等を踏まえ、ITの技術が日進月歩であること、あるいは先ほど紹介した第1部第4の当事者の申出による期間が法定されている審理の手続の特則といった全く新たな手続があることといった今回の内容に鑑み、必要な見直しをすべく法律案の作成に際しては適宜の検討条項を設けるべきであるという御意見が出され、それに賛同する御意見が多数ありました。今後、この総会において要綱が取りまとめられ、その要綱に基づく法律案を作成するに際しては、当局においてこのような検討条項を設けることについても御検討いただきたいと考えております。   民事訴訟法(IT化関係)等に関する要綱案の概要は、以上のとおりでございます。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。 ○井田会長 御報告ありがとうございました。   それでは、ただいまの御報告及び要綱案の全般的な点につきまして、御質問及び御意見を承りたいと思います。   御質問と御意見を分けまして、まず、御質問がございましたら承りたいと思います。どうぞ。   大迫委員、挙手ボタンを押していらっしゃいますか。お願いします。 ○大迫委員 よろしいでしょうか。大迫です。ありがとうございます。   本件民事訴訟のIT化につきましては、市民の利用しやすい裁判を目指して部会で熱心に検討された成果と考えています。その成果を踏まえて、私のようにITに疎い弁護士を含め、訴訟に関与する全ての法曹が、この制度が市民に利用しやすい制度として活用されるように今後研さんに努めていかなければならないと思っております。それに加えて、制度を動かすインフラが市民の信頼の置けるものであることが不可欠と考えます。このように、今後のインフラの整備や裁判所や訴訟代理人となる者の熟練のための準備、あるいは市民に対する広報などの周知が重要であり、かつそれを実施するための期間が必要と思います。この点についての御検討があれば、その御説明をお願いしたいと思います。 ○井田会長 いかがでしょうか。これは民事局にお願いできますか。 ○金子幹事 御指摘ありがとうございます。幹事の金子です。   今御指摘ありましたとおり、今後、関係者の方々の運用がスムーズにいきますように、また、裁判手続を利用される一般市民の方々に信頼していただけますように、広報周知に努めるとともに、前提となりますシステムの構築等につきましても、直接的には裁判所の方がされますけれども、我々としてもきちんと対応するようにしていきたいと思っております。 ○井田会長 大迫委員、それでよろしいでしょうか。 ○大迫委員 はい、ありがとうございました。 ○井田会長 ほかに御質問はございますか。   もしなければ、御意見を承りたいと思います。 ○白田委員 こういった電子化された官庁等の書式の申請について、アメリカなどは大分進んでいるということは御存じのとおりだと思います。やはりどうしてもPDF化されたようなファイルを使うようなことが多いので、先ほどおっしゃったような障害者対応という意味で、多分一番問題になるのが音声対応だと思います。一方で、アメリカの方では、PDFですが直接入力して、しかもそれを読み上げることができるようなシステムもIRS国税庁などでは一般化しておりますので、そういう意味では10年ぐらい前と比べるとかなり対応が可能なのではないかなとは思っております。国内でも、最近経験したことですが、企業を転職するときに行います社会保険の手続の中で、やはり視覚障害者が自分で入力して音声化に対応できるシステムを、既に導入しているところがあることを確認しました。そういう意味では御配慮いただけることと思いますので、その辺は研究いただければ十分に今のシステムで対応できるのではないかなとは思っております。   一方で、もう釈迦に説法で当たり前のことなんですが、やはりセキュリティーの問題というのはどこでも問題にされるかと思います。今どうしてもアクセスのセキュリティーの点ばかりが問題視されますが、一方で、やはりミラー化とかバックアップとか、昔は例えば東京だったら大阪にバックアップデータ用のサーバを置くとかそういうようなことがありました。今はクラウド化されているのでどこにでも置けるような状態ではあります。やはりこれだけ重要なデータを保管するとなりますと、例えばインターネットが使えなくなるといったようなトラブルが起こったときに、しっかりとデータ自体をほかのところにミラー化して置いておくというのは、必要なのではないかな思います。クラウドが一般化しても同様ですね。システムトラブルが起こったりする可能性はまだまだあろうと思いますので、もう十分検討されているとは思いますが、データのミラー化等、その辺のところを是非御配慮いただければと思います。個人的な意見です。 ○井田会長 御意見として承りたいと思います。 ○大内委員 大内でございます。よろしいですか。 ○井田会長 お願いします。 ○大内委員 今回取りまとめていただきました民事訴訟法改正の要綱案は、私どもも含む利用者にとって利便性を高めるものでありまして、経済界の立場から大いに期待させていただいております。その上で、2点お願いをさせていただきます。   1点目は、要綱案6ページの第1の「3 インターネットを用いてする申立て等によらなければならない場合」についてでございますけれども、これにつきましては、本人訴訟の場合には引き続き書面も認められるということになっておりますけれども、実際の利用状況を踏まえながら段階的に完全なIT化を実現する方向で、運用状況を確認し、必要な見直しを御検討いただければと思っております。   それから、2点目は、要綱案10ページの「第4 当事者の申出による期間が法定されている審理の手続の特則」についてでございます。迅速な訴訟のために新たな特則を設けることにつきまして、経済界としても賛同いたしております。法務省におかれましては、具体的適用についてふさわしい場面で広く使われるように取り組んでいただきたいと思いますし、私どもも検討してまいりたいと思っております。   以上、2点申し上げました。 ○井田会長 大内委員、ありがとうございました。御意見として承りたいと思います。   続きまして、山崎委員、お願いします。 ○山崎委員 ありがとうございます。   第1部の「第4 当事者の申出による期間が法定されている審理の手続の特則」についてですが、検討部会の委員の皆様には、長期にわたり深く御審議いただきましたことを感謝申し上げたいと思います。消費者契約に関する訴えを適用から外していただいたことや、一方の申出で通常手続に移行できることなどは、市民にとっては大変安心できる特則になったと思っております。ただ、IT化の試みがまだ緒に就いたところでありますし、裁判そのものにも不慣れな上にIT化についていけない市民が多くいることを鑑みて、施行後も部会で懸念された不都合がもし起こった場合、山本部会長の方から最後に御説明がありましたとおり、必要な見直しとか適宜な見直しをしていただくということについては、強くお願い申し上げたいと思います。 ○井田会長 御意見ありがとうございました。   大迫委員もお手を挙げていらっしゃいますか。大迫委員、お願いします。 ○大迫委員 ありがとうございます。   先ほど質問をさせていただきましたように、民事訴訟のIT化については賛成ではありますけれども、当事者の申出による期間が法定されている審理の手続の特則の導入については、反対の意見を述べさせていただきます。   この手続は、当事者双方の申立てや相手当事者の同意によって開始され、手続が開始した後もいつでも通常の訴訟手続に戻れる手続とされており、その範囲では当事者の利益が保護されていると考えます。しかしながら、これらの手続的保障は、当事者が紛争の内容や訴訟の進行などを適正に理解した上で進行が予測できていることや、これに加えて訴訟という日常ではない場で的確に自分の意見を表明できることが前提となっています。訴訟代理人が選任された訴訟においてはそれも可能と考えますけれども、訴訟本人の場合には困難な場合が予想されます。この点は、事前の説明のときに訴訟代理人が選任されていない場合には、適正な審理の実現を妨げるときに該当するという解釈だということの御説明を頂きましたけれども、むしろこれは解釈に委ねるのではなくて、訴訟代理人の選任のある事件に限ることを明文化されるべきと思います。   また、先ほど山崎委員からもありましたが、消費者契約に関する訴訟自体は除外されていますけれども、消費者契約が前提となるため、製品事故の事案であるとか契約のない消費者の事案などが対象となっているなど、適用範囲の問題も懸念されるところであります。   他方、民事裁判の迅速化は、裁判所において2年ごとに検証されるなど、迅速化に向けた不断の努力が続けられています。最近の検証結果では、事件の受理から終局日までの平均審理時間の長期化の傾向が認められますけれども、それでも平均は9.9か月であり、半数の50.8%の事件は6か月以内に終了しています。したがって、訴訟の迅速さの観点からすれば、本制度を制度化する必要性は低いものと思っております。また、訴訟期間の予測の観点からしましても、検証結果では7割以上の事件が1年以内に終了しており、争点や事案の複雑性などを考慮して訴訟期間を予測することはそれほど困難なことではないと考えます。さらに、検証結果では、この長期化の要因は準備手続や訴訟受理後、第1回口頭弁論までの期間が延びているということであり、この点は正にこの度のIT化が活用できる場面でもあり、IT化によって一層の迅速化が図られ、また、それに伴い訴訟の予測可能性も高まるものと思っています。   このような理由から、この特則の導入には反対をしたいと思います。 ○井田会長 ありがとうございました。御意見として承りました。   ほかに御意見はございますか。   もしよろしければ、原案につきまして採決に移りたいと存じますけれども、御異議ございますでしょうか。   特に御異議もないようでございますので、そのように取り計らわせていただきます。   諮問第111号につきまして、民事訴訟法(IT化関係)部会から報告されました要綱案のとおり、答申することに賛成の方は挙手をお願いします。ウェブ会議システムにより出席されている委員につきましては、賛成の方は画面上で見えるように挙手していただくか、あるいは挙手機能ボタンを押していただくようにお願いします。お願いします。それでは、どうぞ。           (賛成者挙手) ○井田会長 では、事務局において票読みをお願いします。   では、手を下ろしてくださって結構でございます。   反対の方、挙手をお願いいたします。           (反対者挙手) ○加藤司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は17名でございますところ、原案に賛成の委員は16名、反対の委員は0名でございました。 ○井田会長 採決の結果、賛成者多数でございましたので、民事訴訟法(IT化関係)部会から報告されました要綱案は、原案のとおり議決されたものと認めたいと思います。   議決されました要綱案につきましては、会議終了後、法務大臣に対して答申することといたします。   山本部会長におかれましては、多岐にわたる先端的な論点につきまして調査審議をしていただきまして、ありがとうございました。   次に、「仲裁法制の見直しに関する諮問第112号」について、御審議をお願いしたいと存じます。   初めに、仲裁法制部会における審議の経過及び報告につきまして、同部会につきましても部会長をお務めになりました山本和彦臨時委員から御報告いただきたいと存じます。お願いします。 ○山本部会長 同じ山本ですけれども、仲裁法制部会の部会長として御報告を差し上げます。   この部会では、令和2年9月の諮問第112号について、約1年半にわたり調査審議を重ねてまいりましたが、本年2月4日に開催された第18回会議において、調停による和解合意に執行力を付与し得る制度の創設等に関する要綱案を決定いたしましたので、本日はその概要について御報告をいたします。   諮問第112号は、経済取引の国際化の進展等の仲裁をめぐる諸情勢に鑑み、仲裁手続における暫定措置又は保全措置に基づく強制執行のための規律を整備するなど、仲裁法等の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたいというものであります。これを受けて仲裁法制部会が設置され、これまで審議を行ってまいりました。   部会においては、国際仲裁の活性化の観点から、我が国の仲裁法を最新の国際水準に見合ったものとする必要があるとして、仲裁法の見直しについて審議を行い、要綱案を取りまとめ、昨年10月の法制審議会第192回会議において仲裁法の改正に関する要綱を御決定いただきました。加えて、仲裁法部会においては、近時国際仲裁と国際調停の相互利用が図られており、先ほど大臣から御紹介もありましたけれども、令和2年9月に調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約、いわゆるシンガポール条約というものが発効したことなども踏まえ、裁判外の調停による和解合意に執行力を付与し得る制度の創設等についても審議を行いました。その途中経過につきましては、昨年5月の法制審議会第190回会議において中間報告をさせていただきましたが、本日改めてその要綱案の決定に至るまでの審議経過を簡単に御説明した上、最終的に取りまとめました要綱案の概要について御報告をいたします。   仲裁法制部会では、国際調停の実効性を確保し、その活性化を図ることが国際仲裁の活性化にも資すると考えられることから、調停による和解合意について仲裁判断と同様、裁判所における決定手続により執行力を付与する制度を創設することが相当であるという方向性が示されるとともに、将来的に我が国が先ほどのシンガポール条約を締結する可能性も見据え、同条約の規律との整合性にも配慮して国内法制を整備する必要があるとの方向性が示され、これらの方向性に沿って各論点について調査審議を重ねてまいりました。さらに、国際調停について和解合意に執行力を付与し得る制度を創設するのであれば、国内の調停についても同様の制度を創設することを検討すべきであるとの意見が示され、国内調停に関しても併せて調査審議を行ってまいりました。この国内調停の執行力の問題は、司法制度改革以来議論されてきた問題でありますが、長らく言わば積み残しの課題になっておりましたところ、この際、国際的な調停と併せて解決を図ることが望ましいとされたものであります。そして、昨年3月、これらの調停に関する論点も盛り込んだ仲裁法等の改正に関する中間試案を取りまとめ、パブリックコメントの手続を行いました。その後、パブリックコメントに寄せられた意見のほか、部会におけるヒアリングの結果等も踏まえて更に調査審議を行い、本年2月4日の会議において、全会一致で調停による和解合意に執行力を付与し得る制度の創設等に関する要綱案を決定するに至ったものであります。   それでは、次に、要綱案の概要を御説明いたします。   配布資料、民3を御覧いただければと思いますが、この要綱案では、調停による和解合意に執行力を付与し得る制度の創設に関し、第1の新法の制定による整備と第2の裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律、いわゆるADR法の改正による整備の二つが盛り込まれております。ここでは、「国際性」を有する和解合意については、シンガポール条約の国内担保法としての性格を持つ新法を制定し、そのような「国際性」を有しない和解合意については、ADR法を改正することにより、認証紛争解決手続において成立した和解合意に限り執行力を付与し得ることとする法制を想定しているものであります。このほか、第3として、裁判所における民事調停事件の管轄に関する規律の見直しも盛り込まれております。   以下、順次御説明いたします。   まず、第1の新法の制定により設けることを想定している規律であります。   要綱案1ページ、第1の1では、まず、「調停」及び「調停人」の定義についての規律を設けることとしております。調停とは、当事者に対して紛争の解決を強制する権限を有しない第三者が和解の仲介を図る手続であり、その手続を実施する第三者を調停人ということとしております。このような定義を設けることによって、第三者が関与しない単なる当事者間の和解契約がこの対象から除外されることになります。   第1の2では、新法の適用範囲について規律を設けることとしております。(1)では、調停において当事者間に成立した合意のうち、国際的な性質を有する類型としてこのアからウまでの規律を設け、これらに該当するものを「国際和解合意」と呼ぶこととしております。(2)では、その国際和解合意の当事者が、その合意と併せてシンガポール条約又は条約実施法令に基づき民事執行をすることができる旨の合意をした場合に、この新法の規律に基づき執行力が付与され得るものとしております。   他方、第1の3では、シンガポール条約の規律に倣い、適用除外について規律を設けることとしております。(1)から(3)までは、一定の紛争類型に関する国際和解合意を適用除外とするものであります。(1)では、当事者の一方又は双方が消費者である紛争についての国際和解合意を適用除外としており、その結果として事業者間の紛争、いわゆるBtoBの紛争についての国際和解合意のみがこの適用対象となります。また、(2)では、解雇無効や賃金未払等の個別労働関係の紛争に関する国際和解合意を、また、(3)では、家事紛争に関する国際和解合意をそれぞれ適用除外としております。さらに、(4)及び(5)は、仲裁判断に関するニューヨーク条約等、他の条約との重複や抵触を避ける観点から、裁判所の手続において成立したものや仲裁判断としての効力を有するものなど、他の枠組みで執行力が付与されるものを新法の適用から除外しております。   続いて、第1の4では、国際和解合意の執行決定に関する規律を設けることとしております。まず、(1)では、国際和解合意に基づいて民事執行をしようとする当事者は、裁判所に執行決定を求める申立てをしなければならないものとしております。この執行決定の手続は、我が国の裁判所が後でお話しする執行拒否事由の有無を審理判断するための手続であり、不当な民事執行がされることを防ぐため、和解合意の内容が日本の公序良俗に反しないか等を審査する手続となります。執行決定の申立てをするときは、(2)のア及びイのとおり、国際和解合意の内容が記録された書面などを提出しなければならないものとしておりますが、将来的にはオンラインによる調停手続、いわゆるODRというものが普及することを見据えて、(3)のとおり、書面に代えて電磁的記録に係る記録媒体を提出することもできるものとしております。また、(4)では、これらの書面等が外国語で作成されている場合には、原則として日本語の翻訳文を提出しなければなりませんが、裁判所が相当と認めるときは翻訳文の提出を省略できるものとしております。   第1の5、3ページでは、国際和解合意の執行拒否事由に関する規律を設けることとしております。執行決定の申立てを受けた裁判所は、この(1)から(8)までの事由がある場合には申立てを却下できるものとしております。これらの執行拒否事由は、基本的にシンガポール条約が定める事由と同様のものとしております。   第1の6では、その他所要の規定を整備するものとしており、執行決定の手続につき、民事訴訟法の規定を準用することなどの規定を設けることを想定しております。   続いて、第2、ADR法の改正により設けることを想定している規律の具体的内容について御説明をいたします。   まず、第2の1では、認証紛争解決手続において当事者間に成立した和解であって、当該和解に基づいて民事執行することができる旨の合意がされたものを「特定和解」と定義する旨の規律を設けることとし、この特定和解に該当するものについては、第2の3において執行決定の対象となることを想定しております。   第2の2では、執行決定の規律の適用除外に関する規律を設けております。(1)及び(2)では、当事者間の交渉力や情報格差が類型的に大きいことが想定されるところから、消費者と事業者の間における契約に関する紛争についての特定和解や個別労働関係紛争に関する特定和解を除外とすることとしております。(3)では、家事紛争に関する特定和解を原則として適用除外としておりますが、養育費の履行確保が我が国の喫緊の課題とされていることなどを踏まえ、扶養義務等に係る金銭債権については例外的にこの適用対象とすることとしております。(4)では、先ほど説明した第1の新法の適用対象となるものについては適用除外とすることを規定しております。つまり、認証紛争解決手続において国際和解合意が成立した場合には、新法の方が優先して適用されることを想定しております。   第2の3では、特定和解の執行決定に関する規律を、第2の4では、特定和解の執行拒否事由に関する規律を設けることとしております。これらは新法の規律と基本的に同様のものとなっております。もっとも新法は国際的性質を有するものであり、ADR法は国内の認証ADR機関の手続で成立したものを想定していることから、翻訳文の添付の省略に関する規律等について若干の差異があります。   第2の5は、その他所要の規定の整備ということで、新法におけるその他の規定と同様の内容となることを想定しております。   最後に、要綱案7ページ、第3の民事調停手続に関する規律の見直しであります。   仲裁法制部会では、裁判外で行われる調停だけではなく、裁判所で行われる調停に関しても調査審議を行い、いわゆる知財調停の更なる活用の観点から要綱案の第3の規律を取りまとめました。知財調停は、東京地方裁判所及び大阪地方裁判所の知的財産権部において令和元年10月から運用が開始されたものであり、知的財産権をめぐる紛争を迅速、柔軟、専門的かつ非公開の手続で解決する紛争解決ツールとして注目を集めているものであります。もっとも、現行の民事調停法では簡易裁判所が原則的な管轄裁判所とされており、地方裁判所に調停事件を申し立てるためには当事者間の管轄合意が必要となります。そのため、現状では東京地裁及び大阪地裁の知財調停も当事者間の管轄合意に基づいて行われておりますが、知財調停のより一層の活用を図るためには、当事者間の管轄合意がなくても東京地裁又は大阪地裁に調停申立てを可能とすることは望ましいとの指摘がされておりました。そこで、この第3では、知的財産の紛争に関する調停事件について、現行法の管轄規律に加え、新たに東京地方裁判所又は大阪地方裁判所に競合管轄を設けることとしております。   調停による和解合意に執行力を付与し得る制度の創設等に関する要綱案の概要は、以上のとおりでございます。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○井田会長 御報告ありがとうございました。   それでは、ただいまの御報告及び要綱案の全般的な点につきまして、御質問及び御意見を承りたいと思います。   御質問と御意見を分けまして、まず、御質問がございましたら承りたいと思います。どうぞ。   大迫委員、手が挙がっていらっしゃいますか。大迫委員、お願いします。 ○大迫委員 ありがとうございます。大迫です。   この制度の創設によって認証ADRでの和解合意に執行力が付与されることは、市民にとって紛争解決の手段が一層広がることにつながって望ましい方向だと考えています。その上で御質問ですけれども、今後はこのADR機関における手続実施者の能力の向上が一層求められると思います。特に家事調停においては、先ほどの御説明のとおり、養育費、婚姻費用などの扶養義務費用が家事事件の例外として対象とされています。これは先ほどの御説明のとおり、早期の解決が望ましい問題だということを考慮されてのことだと理解をしておりますけれども、これらの費用は単なる金銭債権ではなく、合意に至るためには他の家事事件と同様に、当事者の要保護性の対立や調整などの専門的知識や手続を進める上での配慮や熟練が必要になるということは、経験上実感をしているところです。それゆえ、この点を含めた今後のADRの手続実施者の研修等について、何か御計画があれば御説明を頂きたいというのが1点です。   あわせて、これらを考えると、認証のない弁護士会が実施するADRでの和解合意にも執行力を付与することも考えられるところであり、市民の利便性の観点からも求められるところだと思いますが、部会では継続検討とされたことでもあり、今後どのような検討をされるのか御説明を頂きたいと思います。 ○井田会長 二つの御質問、ありがとうございました。   では、山本部会長、お願いします。 ○山本部会長 それでは、私の方から説明をしたいと思います。   大迫委員御指摘のいずれの点についても、部会でも委員、幹事から御指摘があったところであります。   まず、第1点のADRの手続実施者の専門性の確保、あるいはその研修ということについてであります。現行のADR法でもそれぞれのADR機関は和解仲介を行うことができる紛争の範囲というものを定めており、そしてその紛争の範囲に対応して和解仲介を行うのにふさわしい者を手続実施者として選任すべきことというのが認証の要件になっております。認証をするに際しては、認証審査参与員という専門家の審理も経ることになっており、私も参与員を経験したことがありますけれども、その認証審査をするに際しては、本当にそういう専門的な者が手続実施者となることができるような体制が定められているかどうか、それは研修も含めて現在でも審査をしているところと思います。ただ、今回やはりこの執行力というものが付与されることになり、委員御指摘のような懸念というか、指摘というのもあるところであり、今後、引き続きその運用において、今のような手続実施者の専門性が確保できるような研修の実施、あるいはガイドラインというものがありますけれども、そのガイドラインの見直しの要否も含めた運用面での検討というものが必要になってくると思われるところであります。   それから、第2点の弁護士会ADRについてどのように考えるかというところでありますけれども、これも審議の中においては、弁護士会のADRは実績を見れば何というかしっかりしたADRであって、執行力を付与するということについて、多数の委員、幹事はそれを認めてもよいのではないかというような御意見がございました。ただ、やはり制度的に見ると、認証ADRというのは法律に基づいて、先ほど申し上げたように、要件について一定の審査がされて制度的にその要件を満たしていることが担保されているのに対して、弁護士会のADRは、事実上その水準は確保できているにしても制度的な担保という面においてはそれが存在しないということで、そういうことを考えると、今回の改正において直ちに対応する、執行力を認めるということは難しいのではないかというのが最終的な結論になったということであります。ただ、今後、弁護士会ADRの運用の状況であるとか、この執行力の付与の状況、運用の状況等に鑑みて、引き続き検討すべき課題であるということで整理がされたというのが審議における状況でありました。   私からは以上です。 ○井田会長 民事局、どうぞ。 ○金子幹事 幹事の金子でございます。   今回、認証ADR機関における和解に執行力が付与されるということにつきましては、これも当事者が執行することができるということの合意をした場合に限ってということになりまして、常に執行力が付与されるというわけではないので、その辺りはきちんと誤解のないように周知に努めてまいりたいと思いますし、それから、今後この認証ADR機関がどの程度活用されていくのか、それから執行力を付与する合意がどの程度されていくことになるのかという辺りも、実際の運用を見ながら検証していく必要があると思っております。   また、弁護士会のADRにつきましては、今後認証を取る方向になっていくのかどうかという点も含めて検証に努めてまいりたいと思っております。 ○井田会長 大迫委員、それでよろしいでしょうか。 ○大迫委員 はい。御丁寧にありがとうございました。 ○井田会長 ほかに御質問ございますか。   もしございませんでしたら、続いて、御意見を承りたいと思います。どうぞ。   特に御意見もなければ、原案につきまして採決に移りたいと考えますけれども、御異議ございませんでしょうか。   ありがとうございます。特に御異議もないようでございますので、そのように取り計らわせていただきます。   諮問第112号につきまして、仲裁法制部会から報告されました要綱案のとおり、答申することに賛成の方は挙手をお願いします。ウェブ会議システムにより出席されている委員につきましては、賛成の方は画面上に見えるように挙手していただくか、あるいは挙手機能ボタンを押していただくようお願いいたします。どうぞお願いします。           (賛成者挙手) ○井田会長 票読みお願いします。   では、手を下ろしていただいて結構でございます。   反対の方、挙手をお願いできますでしょうか。           (反対者挙手) ○井田会長 ありがとうございます。 ○加藤司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は17名でございますところ、全ての委員が御賛成ということでございました。 ○井田会長 採決の結果、全員賛成ということでございましたので、仲裁法制部会から報告されました要綱案は、原案のとおり議決されたものと認めます。   議決されました要綱案につきましては、会議終了後、法務大臣に対して答申することといたします。   山本部会長には、民事訴訟法(IT化関係)部会は23回、仲裁法制部会は18回、いずれも大変長期にわたる二つの部会で、数多くの論点の調査審議に当たりかじ取りをしていただきました。重ねて御礼申し上げます。ありがとうございました。   次に、「マネー・ローンダリング罪の法定刑に関する諮問第119号」について、御審議をお願いしたいと存じます。   初めに、刑事法(マネー・ローンダリング罪の法定刑関係)部会における審議の経過及び結果につきまして、同部会の部会長を務められました今井猛嘉臨時委員から御報告いただきたいと思います。   今井部会長、よろしくお願いいたします。 ○今井部会長 今井でございます。刑事法(マネー・ローンダリング罪の法定刑関係)の部会長を務めさせていただきました。   私から、同部会における審議の経過及び結果を御報告いたします。   諮問第119号は、近年におけるマネー・ローンダリング対策に関する国際的動向等に鑑み、早急にマネー・ローンダリング罪の法定刑を改正する必要があると思われるので、要綱(骨子)についての意見を求めるというものでした。   去る1月17日に開催されました法制審議会第193回会議において、この諮問については、まず、部会において検討をさせる旨の決定がなされ、この決定を受けて、刑事法(マネー・ローンダリング罪の法定刑関係)部会が設けられました。同部会においては、2回にわたり、諮問に付された要綱(骨子)について集中的に議論した結果、賛成多数により、配布資料の刑1として本日お配りしております要綱(骨子)のとおり法整備を行うことが相当であるとの結論に達しました。   それでは、部会における審議の概要について御報告いたします。   まず、マネー・ローンダリング罪の法定刑に関する議論の前提として、FATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査結果、マネー・ローンダリング罪についての我が国における科刑の状況や諸外国における法定刑の状況を共有するとともに、前回の総会において2名の委員の方から出された御意見の内容も紹介しました。  その上で、法定刑を引き上げる必要性に関して議論を行ったところ、近年、グローバル化、デジタル化の進展に伴い、電子マネーや暗号資産といった新しい資金決済手段が登場し、マネー・ローンダリングの誘因や発覚の困難性が高まっており、国際的にその害悪が強く認識される状況にあることを踏まえ、マネー・ローンダリングをより強力に抑止・防止するために法定刑を引き上げる必要があるとの御意見、平成11年の組織的犯罪処罰法制定時と比較すると、特殊詐欺の犯人グループによるマネー・ローンダリングが数多く行われるようになっている上、被害回復給付金支給制度の導入などにより、犯罪収益剥奪の重要性が増しており、これを免れるためのマネー・ローンダリングの当罰性が一層高まっていることから、法定刑を引き上げる必要があるとの御意見、マネー・ローンダリングは、没収・追徴を妨げる点で刑事司法に対する攻撃の要素を含む犯罪であり、これに厳正に対処することは、刑事司法に対する攻撃に厳格に対応するという近年の我が国の刑事司法の文脈にも合致するとの御意見がありました。   また、総会で出された御意見にも関連したものとして、立法事実は、現状の量刑が法定刑の上限に張り付いていることに対処するということではなく、マネー・ローンダリング罪について、より厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示すという点に求めるべきである。そのような法的評価が示されれば、マネー・ローンダリング罪の捜査・訴追がより積極的に行われたり、法改正の趣旨を踏まえたより厳正な処罰がなされることにつながるといった御意見が述べられ、法定刑を引き上げる必要性があることに異論は見られませんでした。   そして、法定刑を引き上げることの相当性に関しては、国際社会と協調しながらマネー・ローンダリングに厳正に対処する方策として法定刑の引上げを行う必要があることは理解するが、実務上、犯罪収益等である可能性の認識といった未必的認識により故意が認定される場合があるなど、現行のマネー・ローンダリング罪の処罰範囲は不明確であり、また、前提犯罪が組織犯罪に限定されておらず、「犯罪収益等」の定義には「犯罪収益に由来する財産」や「混和財産」が含まれるなど、処罰範囲が広範に過ぎるという問題があり、このまま法定刑だけを引き上げるのは相当ではないといった御意見が述べられました。   これに対しては、マネー・ローンダリング罪に限らず、例えば、特殊詐欺の故意の認定においても、詐欺の可能性の認識を理由に故意が認定されることがあるが、そのために処罰範囲が不明確と考えられているものではないとの御意見、個々の事件において構成要件や故意の認定が適切に行われるべきことは確かであるが、立法の在り方として、我が国のマネー・ローンダリング罪の要件が不明確であり、処罰範囲が過剰であるというのは言い過ぎではないかといった御意見が述べられ、現行のマネー・ローンダリング罪の要件のまま法定刑を引き上げるべきであるとする御意見が大勢を占めました。   次に、法定刑を引き上げるとして、具体的にどのような法定刑とするべきかについては、犯罪収益等隠匿罪の法定刑が詐欺罪や窃盗罪との比較において低いとするFATFの指摘の内容、刑法の盗品等に関する罪の法定刑との比較といった観点や諸外国のマネー・ローンダリング罪の法定刑の状況などを踏まえると、要綱(骨子)のとおりの法定刑とすることは妥当であるとの御意見、我が国の組織犯罪の実態として、犯罪収益を生じさせる前提犯罪と、当該犯罪収益を確保するマネー・ローンダリング行為は、犯罪組織の車の両輪になっていると思われ、これらが一般的に見て同等の違法評価を持つと考えれば、マネー・ローンダリング罪が前提犯罪に劣らない違法性を帯びる犯罪であることを示すべく、代表的な前提犯罪である詐欺罪や窃盗罪と同じく、長期を懲役10年とすることには理由があるとの御意見がありました。   また、総会で出された御意見にも関連したものとして、犯罪組織などが活動を継続・拡大する上では、マネー・ローンダリングによる犯罪収益の取得や利用が主で、詐欺や窃盗といった前提犯罪はその手段であると見得る場合があるから、マネー・ローンダリング罪の法定刑の長期について、窃盗罪や詐欺罪と同じものとしておくことには合理性があるなどと、マネー・ローンダリング罪自体の犯情を適切に評価できる法定刑とすべき旨の御意見が述べられました。   結論として、要綱(骨子)のとおり法定刑を引き上げるべきとの御意見が大勢を占め、その上で、要綱(骨子)のとおり法定刑が引き上げられる改正がされた場合には、その趣旨を踏まえ、裁判における量刑の水準も上方に引き上げられることが相当である旨の意見が多く述べられました。   諮問に付された要項(骨子)について、採決に付したところ、部会長である私を除く出席委員8名のうち、賛成7名、反対1名の賛成多数により、要綱(骨子)のとおりの法整備を行うべきであるとの結論に至りました。   以上のような審議に基づき、諮問第119号については、お手元の要綱(骨子)のとおり法整備を行うことが相当である旨の決定がなされたものです。   以上で、当部会における審議の経過及び結果の御報告を終わります。よろしく御審議ください。 ○井田会長 ありがとうございました。   それでは、ただいまの御報告及び要綱の全般的な点につきまして、御質問及び御意見を承りたいと思います。   御質問と御意見を分けまして、まず、御質問がございましたら承りたいと存じます。どうぞ。   特にございませんか。   それでしたら、御意見を承りたいと思います。いかがでしょうか。 ○大迫委員 今回の法定刑の引上げにつきましては、先ほど御説明もありましたように、決済のデジタル化に伴い、電子マネーや暗号資産といった新たな資金決済が国際的な広がりを見せる中で、今後において日本におけるマネー・ローンダリングもそのリスクが変容することが予想され、また、マネー・ローンダリング罪は国際的な協力の下で国境を越えて防止する体制がより一層必要となることが予想されるために、一定の必要性は認められると思っています。しかしながら、他方で、マネー・ローンダリング罪の各規定は、制定時より危険の発生が明文上要求されていないことから処罰根拠が明確になりにくいこと、前提犯罪が刑法犯や特別犯の双方を含む広範囲にわたることなどを理由に処罰範囲が広範囲になるとの懸念が指摘されています。そのため、立法に際しての法制審議会においても、前提犯罪について組織性の要件を加えるべきとの意見もあったところ、組織犯罪やその周辺で利益獲得のために行われる犯罪には実行形態として単独犯である場合も少なからずあることや、各国においても前提犯罪を組織的な犯罪に限定している例はないなどの理由から、この考えは見送られたとの経緯があります。その上で、処罰範囲を合理的な範囲に限定するためには、解釈として合法的な経済活動に対する実質的な危険の存在が必要であるとする考えや、例えば、組織犯罪処罰法第10条の事実の仮装や隠匿の要件の実行行為性の判断において、捜査機関の追及を困難にする性質を有することや犯罪収益が利用される可能性を高めるといった観点を加味することが必要であるという解釈が唱えられているところです。   このようなマネー・ローンダリング罪の本来の問題点に加え、現時点までに裁判対象となった事案での処罰状況からは現行の法定刑が低すぎると評価すべき事情は見られず、また、日本におけるマネー・ローンダリングはセルフ・ローンダリングが多いという事実を考慮した場合、この法定刑の引上げについては、必要性を認めるとしても、量刑の相当性を確保するために組織犯罪が前提となっていない場合、あるいは単発的なセルフ・ローンダリングの場合などの量刑をどのように考えるかなど、少なくとも量刑の基準を明確にすべきと考えます。したがって、法定刑の引き上げのためには、今後マネー・ローンダリング罪の適用範囲や量刑事実等、量刑基準の明確化について更なる議論が積み重ねられて、適正な量刑判断に生かされるようになることが必要だと考えます。そのため、表決については棄権をしたいと思っております。 ○井田会長 ありがとうございました。御意見として承りたいと思います。   ほかに御意見ございますか。よろしいですか。   それでは、原案につきまして採決に移りたいと存じますけれども、御異議ございますでしょうか。   特に御異議もないようでございますので、そのように取り計らわせていただきます。   諮問第119号につきまして、刑事法(マネー・ローンダリング罪の法定刑関係)部会から報告されました要綱のとおり、答申することに賛成の方は挙手をお願いします。ウェブ会議システムにより出席されている委員につきましては、賛成の方は画面上に見えるように挙手していただくか、あるいはボタンを押していただくようにお願いします。           (賛成者挙手) ○井田会長 票読みお願いします。   よろしいですか。手を下ろしてくださって結構でございます。   では、反対の方は挙手をお願いいたします。           (反対者挙手) ○井田会長 それでは、結果をお願いします。 ○加藤司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長並びに棄権した委員を除くただいまの出席委員数は16名でございますところ、全ての委員が御賛成ということでございました。 ○井田会長 採決の結果、賛成者多数ということでございましたので、刑事法(マネー・ローンダリング罪の法定刑関係)部会から報告されました要綱は、原案のとおり議決されたものと認めます。   議決されました要綱につきましては、会議終了後、法務大臣に対して答申することといたします。   今井部会長におかれましては、短期間で充実した調査審議をしていただきましてありがとうございました。   次に、「家事事件手続法・民事保全法・民事執行法・倒産法等(IT化関係)の改正に関する諮問第120号」についての御審議をお願いしたいと存じます。   初めに、事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ○脇村参事官 民事局参事官の脇村でございます。   諮問事項を朗読させていただきます。   近年における情報通信技術の進展等の社会経済情勢の変化への対応を図るとともに、時代に即して、民事執行手続、民事保全手続、倒産手続、家事事件手続といった民事・家事関係の裁判手続をより一層、適正かつ迅速なものとし、国民に利用しやすくするという観点から、これらの手続に係る申立書等のオンライン提出、事件記録の電子化、情報通信技術を活用した各種期日の実現など法制度の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。 ○井田会長 続きまして、この諮問の内容、諮問に至る経緯及びその理由につきまして、事務当局から説明をお願いいたしたいと思います。 ○金子幹事 民事局長の金子でございます。   諮問第120号について、提案に至りました経緯及び諮問の趣旨等を御説明申し上げます。   先ほど民事訴訟手続のIT化につきましては、要綱の取りまとめをしていただきましたが、民事訴訟以外の民事家事関係の裁判手続、すなわち民事執行、民事保全、倒産及び家事事件等に関する手続につきましても、近年の情報通信技術の飛躍的な進展等を踏まえますと、そのIT化を実現することが国民の司法アクセスを向上させ、ひいては国民に身近で頼りがいのある司法を実現するために必要であり、重要かつ喫緊の課題であると考えております。令和3年6月に閣議決定された成長戦略フォローアップ工程表及び規制改革実施計画におきましても、家事事件手続及び民事保全、執行、倒産手続等のIT化に関する検討につきまして、令和4年度中に一定の結論を得ることとされております。   また、同年12月に閣議決定されたデジタル社会の実現に向けた重点計画におきましては、これらの手続のデジタル化に向け、令和5年の通常国会に必要な法案を提出した上で、申立て、書面提出、記録の閲覧、口頭弁論といった個別の手続ごとに区分した上で、国民にとってデジタル化のメリットが大きく、かつ早期に実現可能なものから、令和5年度以降、試行や先行運用を開始し、令和7年度以降、民事訴訟手続のデジタル化に大きく遅れることのないよう、本格的な運用を開始できるように環境整備に取り組むこととされました。そして、今般の民事訴訟手続のIT化に関する検討の進捗状況を踏まえますと、民事執行、民事保全、倒産及び家事事件等に関する手続につきましても、そのIT化の在り方を具体的に検討するのに正に機が熟したものと考え、今回の諮問に至ったものでございます。   これらの手続のIT化の実現に向けては、それぞれの手続の特性を踏まえた検討が必要になるものと考えておりますが、これらの手続をより一層適正かつ迅速なものとし、国民の司法アクセスを向上させる観点から、これらの手続のIT化を実現すべく、各手続の根拠法の見直しにつきまして法制審議会の御意見を頂きたく存じます。   諮問第120号につきましての御説明は以上のとおりです。よろしくお願いいたします。 ○井田会長 ありがとうございました。   それでは、今、御説明がありました諮問第120号につきまして、まず、御質問がございましたら承りたいと思います。いかがでしょうか。 ○白田委員 まず、質問をさせていただきます。   今、各手続の特性を踏まえたというお言葉で御説明がありました。ここにあります民事執行手続、民事保全手続、家事事件手続、そこに倒産手続というのが入っているので、非常にこの点が気になります。これらの特性を踏まえたとは言っているけれども、一応これらを一括で検討しているという理解でよろしいんでしょうか。 ○井田会長 お願いします。 ○金子幹事 もちろん個別性が非常に強いので、一つ一つ細かく検討していく必要がありますけれども、非訟事件手続につきましても共通する部分もございます。もちろん一括りにできない部分もたくさんございます。共通する部分については、どういう規律が考えられるのか、あるいは共通しない部分についてはそれぞれの特性に応じてそれぞれどういう規律がふさわしいのかということについて、きめ細かく検討していきますが、検討の場としては一つの場で検討させていただければと考えております。 ○井田会長 よろしいですか。 ○白田委員 後で意見のときに。 ○井田会長 ほかに御質問はございますか。   それでしたら、御意見をお願いします。 ○白田委員 よろしいでしょうか。では、引き続き、全く個人的な意見ですが述べさせて頂きます。今並べられた四つの手続の中でも、先ほど言いましたように、倒産の手続というのは、基本的に利用しやすくという、つまり倒産申請をする人に利用しやすくする、という考えもあるかと思います。一方、御存じのとおり、現在、企業が倒産を申請するのは圧倒的にやはり土曜日とか日曜日が多いわけですね。債権者に知られないうちに申請したい、銀行が休日の日に申請をしてしまおう、ということです。無論、大きな企業であれば、そういう危険な企業へは銀行の方が役員等で社内に入ってモニタリングをすることで状況を把握することも多いかと思います。一方、どちらかというと倒産申請は中小企業が多いですので、中小企業の場合は、やはりなるべく周囲に知られないようにさっと申請を出すことが多いようです。週末に企業が倒産を申請しますと、まず月曜日最初に帝国データバンクに電話が掛かってくるのは倒産した会社の社員が多いそうです。「うちの会社は本当に倒産したんでしょうか」という問い合わせだそうです。企業を取り巻く利害関係者は、もちろん中小企業の場合、一番重要なのは、やはり取引先であったりとか社員であったり情報弱者である人たちが多数を占めることとなります。ですので、オンラインで経営者がさっと倒産手続を出してしまったということになりますと、これらの利害関係者はその事実を後々知ることになるというような状況が起こるのではないかと非常に懸念されます。やはり倒産申請については、手続に手間が掛かったりいろいろ準備をすることによって、周りがやはり経営が危ないのではないかと懸念する時間が生まれる。それによって社員や取引先との交渉が始まったりするわけです。オンライン申請は申請者にとっては手続きが簡素化され、結果非常に申請自体が簡単になると思います。しかし、申請者に利用しやすいものである一方、申請者である企業を取り巻く多くの利害関係者の便益に資する手続方法となるのかどうかというところについては、是非とも再度深く御検討いただきたいと考えております。意見でございます。 ○井田会長 ありがとうございます。   今後の検討のために大変貴重な御意見を頂いたと思います。   ほかに御質問、御意見ございますか。   特にないようですので、続きまして、「船荷証券等の電子化に関する諮問第121号」について、御審議お願いしたいと存じます。   初めに、事務当局に諮問事項の朗読をお願いします。 ○渡辺参事官 民事局参事官の渡辺でございます。諮問事項を朗読させていただきます。   商取引において電子的な手段の利用が拡大するなどの社会経済情勢の変化への対応等の観点から、商法の船荷証券に関する規定等の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。 ○井田会長 ありがとうございます。   続きまして、この諮問の内容、諮問に至る経緯及びその理由につきまして、事務当局から説明をお願いします。 ○金子幹事 民事局長の金子です。   船荷証券等の電子化に関する諮問第121号につきまして、提案に至りました経緯及び諮問の趣旨等を御説明申し上げます。   近年、デジタルトランスフォーメーションの重要性が指摘され、デジタル社会に対応した制度の見直しが進められております。民事局におきましても、これまで株主総会資料の電子提供制度の創設など、このような観点からの見直しを進めてきたところでございますけれども、船荷証券については現行法上書面によって作成されております。しかし、商取引において電子的な手段の利用が拡大しており、また、現在諸外国においても国連の国際商取引法委員会(UNCITRAL)の策定した電子的移転可能記録モデル法を参考として法整備の検討に着手する動きがあることなどに鑑みますと、我が国においても船荷証券の電子化等に関する法制の整備をすることが喫緊の課題であると考えられます。令和3年6月18日に閣議決定された規制改革実施計画においても、国際的な動向等も踏まえ、船荷証券の電子化に向けた制度設計を含めた調査審議を進め、令和3年度中に一定の結論を得、速やかに法制審議会への諮問などの具体的措置を講ずることが定められるなど、我が国としても重点的に検討すべき課題とされております。そこで、法制審議会におきまして船荷証券の電子化等に向けた調査審議を頂きたく存じます。   諮問第121号についての御説明は以上のとおりでございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○井田会長 ありがとうございました。   それでは、ただいま説明のありました諮問第121号につきまして、まず、御質問がございましたら承りたいと思います。どうぞ。 ○白田委員 すみません、頂きました資料の表書き、船荷証券等の電子化についてと書かれておりまして、諮問の内容の方は船荷証券等が書かれていなくて、船荷証券に関する規定等の見直しと書かれております。これは、船荷証券というのは、御存じのとおり、納品内容の明細書でお金をもらうための受取書でございますので、基本的にはインボイスとか、その先に荷渡し指図書とセットになっているものかと思います。そこで、質問としまして、船荷証券等を電子化するのであるのか、船荷証券に関する規定の方の見直しを行うのか、どちらかお教えください。 ○井田会長 お願いします。 ○金子幹事 御審議をお願いしたいのは、中心的には船荷証券になりますが、それに限定されるという趣旨ではなく、関係するものについての見直しの可能性を排除しないものと考えてお願いする次第です。諮問との関係では、「商法の船荷証券に関する規定等」の「等」の方に含めて御理解いただければと思います。 ○白田委員 すみません、そうしますと、追加なんですけれども、UNCITRALの話が出てきましたが、当然にこれはお金の支払に関する書類でございますので、海外との合意というか、データの共有性がないと、日本だけがやっても使えないものではないかと思いますが、その辺のところはもう十分に検討に加わっているということでよろしいんですね。 ○金子幹事 御指摘のとおり、主として国際商取引の場面で使われることになろうかと思いますので、我が国で電子化されたものが国際的に承認されるという仕組みができるということが前提になってくると思います。先ほど御説明しましたが、それぞれの国で電子化の動きもあるようですので、各国の法制も同時に併せて調査をしつつ、そのような調査結果も御提供させていただきながら調査審議をお願いできればと思っているところでございます。 ○白田委員 分かりました。ありがとうございます。 ○井田会長 ほかに御質問ございますか。   では、御意見ございますか。 ○大野委員 本日IT化の案件が幾つかあって、事業者としては非常に歓迎をするところでございまして、本件についても電子化を御検討いただけるということで非常にありがたく思っております。そういう意味で、これはしっかり改正、電子化がなされて利用されるという観点からは、いろんな事業者の意見を是非聞いていただきたいと考えておりますが、その一つとして、既存の紙媒体の船荷証券との関係というところについて非常に関心を持っておりまして、これが紙媒体が電子媒体の船荷証券に対して優先するというようなことになりますと、非常に利用がしづらいということになると考えておりまして、そういう意味で、紙とデジタル化されたもの、これが同一の位置付けになるというようなことが好ましい姿なのではないかなと考えておりまして、そういう点も含めて是非いろんな意見を聞いていただければと思っておりますので、よろしくお願いします。 ○井田会長 ありがとうございました。御意見として承りたいと思います。   ほかに御質問、御意見はございますか。   よろしいでしょうか。   それでしたら、ここで諮問第120号及び121号の審議の進め方について、御意見がございましたら承りたいと思います。 ○高田委員 ただいま会長の方からお諮りのあった審議の進め方についてですけれども、今回の2件の諮問、諮問第120号、121号、いずれにつきましても専門的、技術的な事項が相当含まれていると思いますので、通例に倣いまして、それぞれについて新たな部会を設けて調査審議していただき、その結果報告を受けて本総会で改めて審議をするという手順を踏むことが適切ではないかと思いますので、その旨御提案申し上げます。 ○井田会長 ありがとうございます。   ただいま高田委員から部会設置との御提案がございました。これにつきまして御意見はございますでしょうか。   特に御異議があるわけではないと理解してよろしいでしょうか。そうでしたら、諮問第120号及び121号につきましては、新たにそれぞれ部会を設けて調査審議することにしたいと思います。   新たに設置する部会に属すべき総会委員、臨時委員及び幹事に関してですが、これらにつきましては会長に御一任いただきたいと思いますが、御異議ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでしたら、その点は会長に御一任願うことといたしたいと思います。   次に、部会の名称でございますけれども、諮問事項との関連から、諮問第120号につきましては、「民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)部会」、そして諮問第121号につきましては、「商法(船荷証券等関係)部会」という名称にしたいと思いますが、いかがでございますでしょうか。よろしいでしょうか。   ありがとうございます。では、そのように取り計らわせていただきたいと思います。   ほかに部会における審議の進め方を含め、御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでしたら、諮問第120号につきましては「民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)部会」、121号につきましては「商法(船荷証券等関係)部会」で御審議いただくこととし、部会の御審議に基づいて、総会において更に御審議願うことにいたしたいと存じます。   これで本日の予定は終了となりますが、この機会に御発言いただけることがございましたら、是非お願いいたしたいと思います。何かございますか。特にございませんか。   それでは、特に御発言はないようでございますので、本日はこれで終了といたします。   本日の会議における議事録の公開方法につきましては、審議の内容等に鑑みて、私としましては、議事録の発言者名を全て明らかにして公開することとしたいと思いますが、いかがでございますか。よろしいですか。   それでは、本日の会議における議事録につきましては、議事録の発言者名を全て明らかにして公開することといたします。   なお、本日の会議の内容につきましては、後日、御発言いただいた委員等の皆様に議事録案をメール等にて送付させていただき、御発言の内容を確認していただいた上で、法務省のウェブサイトに公開したいと思います。   最後に、事務局から何か事務連絡がございましたら、お願いしたいと思います。 ○加藤司法法制課長 次回の会議の開催予定について御案内申し上げます。   法制審議会は2月と9月に開催するのが通例となっております。次回の開催につきましても、現在のところは本年9月に御審議をお願いする予定でございますが、具体的な日程につきましては、後日改めて御相談させていただきたいと存じます。委員、幹事の皆様方におかれましては、御多忙とは存じますが、今後の御予定につき御配意いただきますようお願い申し上げます。 ○井田会長 それでは、これで本日の会議を終了いたします。   本日はお忙しいところお集まりくださり、熱心に御議論をしていただき、誠にありがとうございました。 -了-