法制審議会 家族法制部会 第12回会議 議事録 第1 日 時  令和4年2月22日(火) 自 午後1時32分                      至 午後5時36分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  親子関係、離婚後の子の監護について必要な事項の定めに関する検討(二読) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会家族法制部会の第12回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席を頂きまして、誠にありがとうございます。   本日も前回と同様、ウェブ会議の方法を併用した開催になりますけれども、どうぞよろしく御協力のほどお願い申し上げます。   それでは、まず最初に、本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○北村幹事 お手元の資料について御確認いただきたいと思います。   部会資料12は、親子関係、離婚後の子の監護について必要な事項の定めに関する検討として、事務局において論点を整理したものでございます。資料の内容については、後ほど御説明いたします。   参考資料として、二巡目の検討の進め方、離婚と子育てに関する世論調査の冊子を配布しております。離婚と子育てに関する世論調査は、内閣府大臣官房政府広報室により実施されたもので、法務省において検討会議を設置し、検討会議で内容について御議論いただいた上で調査項目作成したものでありまして、先週2月4日にその結果が公表されております。   資料の説明は以上になります。   今回もウェブ会議を併用していることから、御発言に当たりまして、冒頭でお名前をお名のりいただけますようお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。   本日の審議に入ります前に、まず、金子委員の方から一言御発言があるということですので、金子委員にお願いをしたいと思います。 ○金子委員 民事局長の金子でございます。本日から第二読会、いわゆる二読に入ります。そういう節目でございますので、私自身、委員ではございますけれども、事務当局を統括する立場でございますので、一言御挨拶を申し上げたいと思います。   これまで、第一読会において忌憚のない意見交換をしていただきましてありがとうございます。充実した調査審議になっているものと、改めて感謝申し上げたいと思います。   二読は、いよいよ取りまとめを意識したステージに入るということが言えると思います。改めて申し上げるまでもございませんが、この家族法制部会は、離婚及びこれに関連する制度に関する規定等を見直す必要があるという認識の下、法務大臣がその見直しの内容について、要綱として示すよう要請する諮問に応えるべく設置されたものでございます。したがって、想定されている姿というのは、この部会において、まず取りまとめがされ、それが法制審議会の総会で承認され、その内容に沿って、法務省の責任において法案を作成し、その法案が、提出するための閣議決定に係る所定のプロセスを経て国会に提出され、その国会の審議で了承され、見直しの実現に至るというものだと思います。   この部会における検討につきましては、その対象に養育費の確保の問題、それから離婚後の親子の関わりといった中心的な論点を含めまして、早期実現を望む声が多いということを、皆さん認識されていることと思います。私のところにもそのような声が届いております。国民の皆さんが納得することができる案を取りまとめるということは必ずしも容易ではないのですが、しかし、その困難性のゆえに、子の利益の実現という視点で、一歩でも二歩でも前進させることができるよう、この部会における早期の、かつ、実現可能性のある取りまとめが期待されていると、そういう部分が大きいのではないかとも感じているところでございます。   この部会におきましても、国民の方々のいろいろな意見を反映していということでもありましょうが、いろいろな意見が出ておりましたし、それはもとよりあるべき姿であって、第二読会以降も忌憚のない御意見、意見交換をお願いしたいのですけれども、同時に、さほど遠くない時期に実現可能な範囲で取りまとめをするということが、先ほど申し上げたような、この部会の設置の趣旨に照らして期待されているということも言えるわけで、そのことも考慮しながら議論を進めていただければと存じます。もとより取りまとめの内容は、委員、幹事の皆様でお決めいただくものでございますけれども、事務当局としても、その議論のたたき台を示すに当たりましては、こちらの議論の状況を見ながら、また早期の実現可能性という観点からも、調整的な案をお示しするということが今後増えてくると思います。そのような観点から提示させていただくということを御理解いただいた上で、その内容について御検討いただければと存じます。   改めてのことですけれども、今私が述べたようなことは、この部会に限ったことではなく、多くの他の法制審議会の部会においても、取りまとめに向けた通常の営み、一般的な営みとして、私自身も数多く経験してきたところであるというところも、申し添えておきたいと思います。   ありがとうございました。二読の冒頭に当たりまして、一言御挨拶申し上げました。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。金子委員おっしゃったように、この部会のゴールは、要綱案を取りまとめて法制審の総会にお諮りするというところにありますけれども、その要綱案の取りまとめに向けた今後の議論に対して、期待と励ましを頂いたと受け止めさせていただきたいと思います。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。   本日は、部会資料の12に基づきまして、親子関係、離婚後の子の監護について必要な事項の定めに関し、御議論を頂きたいと考えております。   まず、事務当局の方から部会資料の12について、簡単に御説明を頂きたいと思います。 ○北村幹事 それでは、部会資料12について御説明いたします。   先ほど民事局長より説明ございましたように、今回から二読ということで、2巡目の検討に入りたいと思います。本資料では、まず前回会議における検討の結果を踏まえまして、親権の有無にかかわらず、親子間に存在する法律関係を整理した規律を設けることについて、論点の整理を行ってございます。次に、親の法的地位を明らかにすることを前提として、親権者、監護者と、それら以外の親との関係について、論点の整理を行っております。   親権者、監護者の用語については、今後いろいろな検討はされるとは思いますけれども、まずは、内容について御検討をお願いしたいというものになります。   それで、この第2、第3で扱う論点、1巡目では最後の方で検討したものでございますけれども、今後の親子に関する規律の検討の基礎となる事項ということでございますので、今回、2巡目の冒頭に検討を持ってこさせていただきました。次に、父母の離婚後の子の監護について必要な事項の定めに関する規律の在り方について、実体的な規律についての論点整理を、第4の方で行っております。   第2についてです。こちら、「親子関係に関する基礎的な規律の在り方」ということで、親権の有無にかかわらず、親子関係に関する法的概念について、1から3のような規律を設けることについて、どのように考えていただくのがよいのかについて検討をお願いするものでございます。今回から御提案の下に補足説明という形での説明をつけさせていただくスタイルに変えてございます。   こちらに記載しておりますように、親という者の法的地位、現行法上、必ずしも明確に規定されていないところでございます。そこで、第2では、このような親の法的地位に関する規律の在り方について、事務当局の方で整理をさせていただいたというものになります。なお、現行法においても、親という法的地位と親権者という法的地位とは別のものであると考えられるところでありますけれども、今回、この関係というものは維持しながら、親というものについて内容を明示しようとするものでございます。なお、親権概念、その呼称であるとか内容については別途検討の対象となり得ますけれども、今回の資料におきまして、とりあえずそれは維持したものとして、資料の方、作成してございます。   まず、1でございます。「子の利益を最も優先して考慮する義務」という規定を置いてはどうかというものになります。2については、「未成年の子の養育の義務」というものを置いてはどうか、そして、これらについての適切な用語については、中身が固まってから適切な用語を検討していくということでどうかというものでございます。   1の「子の利益を最も優先して考慮する義務」については、3ページ以降の補足説明の方に記載してございます。太字のところ、民法等の法令による親の子についての権限としては、例えば、子の監護について必要な事項の定めを求める審判を申し立てることや、特別養子縁組に同意することなどを指しておりますし、また、現に子の監護をする場合とは、実際に子と同じ場所にいて子の面倒を見ているかという事実状態を問うものだと、今回は記載しております。現行法の下でも、これらの場面では、当然親が子の利益を最も優先して考慮しなければならないということは、当然のことと解されているとは考えられておりますけれども、そのことは、民法の規定上から必ず明らかではないということで、前段の部分については、これを明らかにしようというものでございます。   後段についても、子の利益というものは抽象的な概念であることから、その判断のためには、具体的な基準があることが望ましいということで、子の利益の判断の在り方として、できる限り子の意見又は心情を把握し、尊重しなければならないということを明示してはどうかというものでございます。   2について、「未成年の子の養育の義務」についても、一般に親の未成年の子に対する扶養義務というものは、いわゆる生活保持義務であって、他の直系親族間のものよりも重いと解されておりますけれども、民法上そのことを明示する規定がないということで、子の規律は、親というものは、親権の有無にかかわらず、このような生活保持義務を負っているということを明らかにするとともに、その義務に対応する権利が、未成年者を権利主体とする要保護性の強いものであるということを明らかにしようとするものでございます。   なお、後段につきましては、子が成年に達した後も、親が生活保持義務を負うということを明示することとしつつ、一定の枠をはめようというものでありますが、要件の在り方については、引き続き御検討いただく必要があるものと考えてございます。   3の「親の法的地位に関する呼称」につきましては、先ほど申し上げましたように、前回様々な御意見いただいたところでございます。まずは、内容について御議論いただいて、それから内容が固まって、この部会の中で御議論いただければということで、ここは飽くまでも様々な用語は仮置きだということを御説明させていただいております。   続きまして、第3でございます。「子の養育の観点から見た親権者、監護者及びそれら以外の親の関係の整理」ということで、親権者、監護者及びそれら以外の親の関係については、後記の1及び2のような規律を置くことについて、どう考えるかということについて検討いただくものになります。   1につきましては、「子の養育との関係での親の地位の分析」ということをさせていただいております。今回ちょっと概念的なところがかなり多うございますけれども、事務当局の方で、親というものはどういう場面で出てくるかということを整理させていただきました。その上で、今回この資料では、子の監護をすべき者という概念を更に分類することとして、便宜上、監護者という者、そして現に子を監護する親という言葉、それぞれ使い分けてございます。そういうことを前提に、8ページ以降になりますけれども、親権者、監護者、それら以外の親に関する規律の整理として、まず(1)では、親権者概念の整理等を行っております。親権者概念というものをこう考えることについてどう考えるのか、そして、(2)では、監護者が指定された場合には、監護者についてどのような権限を有して義務を負うものとするのかということを記載してございます。   なお、今回、8ページの(注1)のところに記載しておりますけれども、@の子の監護及び教育に関する重要な事項について決定というものを親権の中心としつつ、A及びBについては監護者の権限及び責任として整理しようとしてございます。   また、9ページの(1)のところにございますように、子の居所に関する決定については、この資料においては、監護者の権限ということにして想定しておりますけれども、ただ、先ほど冒頭に配布いたしました参考資料12−1にありますように、父母の離婚後における子に関する事項の決定についての規律における子の居所の指定の扱いについては、子に関する事項の決定についてを検討する際、次回でございますけれども、改めて検討するということにしてございますので、その点を注記しております。   9ページの(3)現に子を監護する親の権限及び義務ということで、こちら、現に子を監護する親というものについては、子について随時決定すべき事項及び緊急の事項を決定する権限を有して義務を負うということでどうかとしてございます。   11ページになります。2の「子の監護について必要な事項の取決め」について、(1)親間についての定めについて、(2)は親と第三者との間の定めということについて、どういったことを定めなければならないのかということについて記載しております。   まず、11ページの(1)親間の定めですけれども、子に親が複数ある場合において、子と同居していない親がいるときは、親間の協議によって監護者、親と子との交流、未成年子扶養義務の分担、その他子の監護について必要な事項を定めるものとする。この定め、若しくはその変更に係る協議が整わないとき、又は協議をすることができないときは、父母又は子の請求により、家庭裁判所が当該事項を定めるものとすることでどうかというもの。そして、第三者との定めにおいては、子の利益のために必要がある場合には、親以外の第三者も親権者との協議により子の監護者となり、また、子との交流をすることができるものとする。この協議が整わないとき、又は協議をすることができないときは、父母、子又は当該第三者の請求により、家庭裁判所が当該事項を定めるということでどうかというものでございます。   なお、前回御議論いただいたところではございますけれども、この第三者の範囲については、親族に限ることや、過去に子と同居したことがある者に限るということも考えられるところでございます。   (3)は、家庭裁判所が定める場合の考慮要素として、それぞれこれらの事項のような点を考慮事項としてはどうかということを挙げさせていただいているところでございます。   なお、14ページに記載しておりますけれども、親又は第三者と子との交流の部分について、Cについてですけれども、Cは、子の親権者又は監護者に関するものでございますが、DVがあった場合等に不適切な面会交流を実施した場合には、子の養育環境が不安定となり、結果として子の利益を害することとなるとの指摘がありますので、ここでは、そのようなDV等の問題について考慮した上で、面会交流の当否やその方法等について検討されることが想定されているということを記載してございます。   続きまして、15ページの第4でございます。「離婚後の子の監護について必要な事項の定めに関する実体的な規律の検討」というところになります。   まず、離婚後の子の監護について必要な事項の定めに関する実体的な規律について、まず1でございます、離婚時の情報提供に関する規律を設けてはどうかというものになります。こちらは、離婚時における講座の受講、離婚後養育講座と今回用語を置いておりますけれども、未成年の子の父母が協議上の離婚をする場合には、この講座を受講しなければならないとしてはどうかというものでございます。これは、誰が受講するのかにつきましては、案@、案Aと記載しております。こちらは、受講を協議離婚の要件とするという規律でありますけれども、この点については努力義務にとどめるという考え方もあり得るところでございます。   (2)は、離婚後養育講座の内容については、親の法的地位、親権、監護者、養育費、面会交流等の法的な事項といったものを内容とするだけでなく、案A、案Bのような事項も加えるべきかということについての御議論を頂くものでございます。   (3)、この受講方法については、個別あるいは同時に受講するものとしてはどうか、そして、できるだけ負担の掛からない複数の方法を準備するということはどうかというものでございます。   17ページ、「2 未成年の子の父母の協議離婚に関する規律」として、この部会におきましても、子の監護について必要な事項の取決めというもの自体は、やはり必要なものであろうという御意見あったかと思います。できない場合というのは当然あり得ることを前提に、今回、協議離婚に関する規律について、このような規律ではどうかという形で御提案させていただきました。   分かりにくいですけれども、協議離婚する場合には、以下のアからウまでのいずれかに該当することが必要だということとしてはどうかというものでございます。アについては、子を監護すべき者、親と子との交流、未成年子扶養義務の分担、すなわち養育費でございますけれども、その他子の監護について必要な事項を定めて、その定めについて、弁護士等の法律家による確認を受けた上で届け出ること。イについては、子の監護について必要な事項についての定めがされており、養育費の部分について、債務名義となる文書があること、こちらまでが定めができる場合です。定めができる場合には、後ほど御説明しますように、ア、イの場合には、一定の顕示性の高い定めができているという状態になりますけれども、ただ、それができない場合、すなわちウの場合、必要な事項の協議をすることができない事情があるということを陳述した上で、協議離婚の届出をするということにしてはどうかというものでございます。   (2)でございますけれども、先ほどの弁護士等の法律家が確認した、そういった場合には、その弁護士等の法律家が確認する内容については、父母の真意に基づいて定めがされたこと、定めの内容が子の利益に反するものでないことを確認するというものということを想定しております。この17ページのアとイの場合について、特にこのアにつきましては、新しい債務名義といったものが作れないかという御提案で、この部会でも御議論いただいてきたところではあります。ただ、(注)のところに記載してございますように、この定め、夫婦が決めた定めに執行力を付与できないかということで、法律家を関与させようとしたという御提案ではございますけれども、債務名義として従来存在していたものとは少し異なり国家機関等の関わりがないということになりますので、そういう形でも債務名義ができるのか、あるいは、この弁護士について別途特定の地位を与えるといったことによって、執行制度の整合性が取れるのかについて御議論いただきたいという(注)でございます。   なお、19ページの(注)に記載してございますけれども、法制審議会につきまして、仲裁法制の見直しに関する諮問第112号に対して、令和4年2月14日、本年ですけれども、法務大臣が認証したADR機関が行う手続において成立した養育費に関する和解であって、民事執行の合意があるものについて、裁判所による執行決定を経た場合には、その和解に基づく強制執行をすることができるものとすることを含む答申を行ってございます。こちらの答申も参考にしつつ、あるいは、これらの一つの手段としつつ、今後検討もしていく必要があろうかなと思います。   20ページの「3 法定額養育費に関する規律」でございます。   (1)法定額養育費制度の新設ということで、先ほど協議離婚の届出をする際に、届出時点では、子の監護について必要な事項の協議をすることができない事情があるという申述をした場合、養育費などの定めをすることができないということで離婚の届出がされた場合には、一定の金額について、その養育費請求権というものを取得してはどうかという御提案になります。案については、その最低限度とするのか、あるいはもう少し違う金額にするのかということの案@、案Aになります。   (注)にありますように、離婚の届出に際しては、個々の事例に応じた算定を行うということは容易ではないということで、速やかに離婚を成立させることができるという協議離婚制度の利点を維持するという観点から、この法定額養育費請求権というものについては、全ての件について一定額とすることを想定しているものでございます。   こちらにつきましても、どういった場合に債務名義となり得るのか、当然債務名義となり得るとすると、そこは執行制度との整合性ということについての検討が必要だということを、20ページの(注)に記載しております。なお、この点につきましては、養育費についての一般先取特権ということの可能性についても御指摘があったところでございますので、この辺りについても御議論いただければと思います。   21ページの(3)は、後に養育費額が家庭裁判所において定められた場合の取扱いについて記載しておるところでございます。   資料につきましては以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ただいま事務当局から部会資料の12について説明がございました。   議論に入る前に、第1は除くとして、第2から第4まで3項目の関係について、私の方で少しだけ整理をしてみたいと思います。   事務当局の説明にもございましたけれども、第2、第3の部分は、一読では最後に扱った問題でございます。ただ、二読で個別の問題を扱っていくに当たって、まず総論的な問題、第2では親子関係の基本的な部分についての考え方、それから、第3では様々な親の相互の関係についての考え方が挙げられておりますけれども、これについて、一応のコンセンサスを得た上で、第4以下の具体的な問題について進もうという見通しの下でこの資料ができているものと理解をしております。具体的な問題は、第4に限らず次回以降もさらに出てくるわけですけれども、本日は、そのうちの一つを第4で取り上げるということであろうと思っております。   第2、第3につきましては、当然のことながら、第4以下の議論を経て、また元に戻って内容を修正していくということになるものと理解しております。   以上、整理のために申し上げた上で、本日の議論に入らせていただきたいと思います。   本日は、今申し上げたところですけれども、三つに分けて御議論を頂きたいと思っております。第1は第2とあわせまして、まず最初に御議論を頂く。部会資料では1ページから6ページまでということになります。それから、第3の部分、6ページから15ページまでになりますが、そして、最後に第4の部分、15ページ以下について、順に御意見を頂こうと考えております。   そこでまず、部会資料12の「第1 はじめに」の部分と「第2 親子関係に関する基礎的な規律の在り方」、この部分につきまして御意見を頂戴したいと思います。この点につきまして御意見ある方、御自由に御発言を頂ければと思います。挙手を頂ければ幸いです。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。2巡目も、皆様、是非よろしくお願いしたいと思います。第1は飛ばさせていただきまして、第2のところから意見を述べさせていただければと思います。   まず、第2の1、子の利益を最も優先して考慮する義務というところに関してでございます。親であれば、誰もが子の利益を優先して考慮すること、子どもに責任を負わせないと、こういった考え方が明示されたこと、これは非常によろしいかと思います。これを受けまして、2点ほど、第2に関して意見を述べさせていただきます。   1点目は、1巡目の議論でも述べさせていただきましたが、子の意向確認をするための環境に関してです。私たち当事者の多くが経験している、連れ去りに始まり数年にわたってお子さんと会えない、私は長期の引き離しという表現を使わせていただいておりますが、つまり、お子さんが排他的環境にあり、自由な意思表明ができない環境下にある場合、このような場合に注意を払うと、こういった考慮も必要なのではなかろうかというのが1点目でございます。   2点目は、資料12の2ページの(注3)にある、子の養育の状況を確認する機会に関してでございます。(注3)には、子の養育状況を確認する機会がなければ、子の利益も考慮することはできませんと。この(注3)が、同居親からの情報によるものなのか、例えば、学校等からの情報提供によるものなのか、ちょっとこの記載だけでは判断できなかったんですけれども、私は当事者としての経験からも、一緒に暮らす親、同居親が理解してくれない、こういった場合に、離れて暮らす親に相談できるような状態を維持すること、つまり、一定の交流が維持されて、相談したいときにはいつでも連絡できる、こういった関係を子どもに対して担保してあげることが大切なのではないかと、こんなふうに考えております。   個人的な経験で恐縮ですけれども、このことは、私が4年前、長男が不登校になり、私と暮らすようになりました。この際に実感したことです。詳細を申し上げることはできませんが、紆余曲折を経て社会復帰に至るまで、さまざまな困難があり、今、ようやっと元気になっております。こういった経験から、強く感じていることでございます。2の1に対しては以上です。   続けさせていただいてよろしいですか、2の2に関してです。   2の未成年の子の養育の義務についてですけれども、親権の有無にかかわらず、このような生活保持義務を負っているということを明示する方向性に関しては、非常によいかと考えます。   1ページ目の補足説明の3行目、「例えば」以降に記載がございますが、非親権者は何ら責任を負わないなどの理解が根強くあり、養育費不払の一因になっている、これ、正にそのとおりかと思います。このように感じているんですけれども、これに関して2点ほど意見を申し述べさせていただきたいと思います。   1点目は、生活保持義務の考慮要素に関してです。現在も家裁実務で取り入れられていると理解しておりますので、あえて言うでもないかもしれないんですけれども、生活保持義務を持ちつつも、別れた御夫婦それぞれの再婚であったり、再婚後の新たな子どもの誕生であったり、こういった考慮すべき事情が発生すること、この辺りは、考慮に入れた方がよいのではないかということを、述べさせていただきます。   2点目は扶養義務の定義に関してです。未成年の子の養育の義務、部会資料には重い程度の扶養と、これを読むと、お金だけで良いのかと私は感じたわけですけれども、当然お金だけではないと思っております。1巡目でも申し上げましたが、夫婦関係は解消されても、親子関係は続くと、私は考えております。養育費不払に加えて、子どもに会わなくてもよい、こういった理解もあり、面会交流がなされない要因になっているということも非常に多くあると、感じています。   離婚後に限った話になりますが、経済的支援のための養育費支払確保が重要であることは今更申し上げるまでもない、と思っておりますが、子どもの精神的支援のために子どもに愛情を伝えること、親子の交流の確保充実、これも、未成年の子の養育の義務に含むべきではないかと考えます。昨今、正に、婚姻中の男性の育児参加は定着しつつあると思っております。こういった情勢も踏まえて、婚姻中、離婚後問わず、子どもが両親の十分な情愛を持って養育されること、これが子どもの健全な成長、引いては日本の未来を担う子どもの権利であり、こういったものを守ることが必要なのではないかということを考慮いただきたい、こんなふうに考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。今、武田委員からは、第2の1ないし2について、基本的な方向には賛成であるという御意見いただいた上で、個別の問題についても4点御指摘を頂いたかと思います。   1の方については、子どもの意向の確認のための環境整備が重要であるという御指摘、それから、(注3)に関わりますけれども、子の養育の状況を確認する機会を与えるということが、子どもが非監護親に相談できるような環境を整えるという意味で重要だという御指摘、そして、2の方につきましては、ここに養育の義務という言葉が出ておりますけれども、この義務の考慮要素ということと、それから定義ないし内容について、経済あるいは金銭以外のことも含めて考えるべきであるということ、以上のような御指摘を頂いたと理解いたしました。ありがとうございます。 ○落合委員 落合です。では、最初の方から意見を申します。   まず、第2の1なんですが、子の利益を最も優先して考慮する義務というのに、私はあまり賛成できないんです。当たり前のことだと皆さんおっしゃっているんですけれども、最も優先するというのは、何に対してなんでしょうか。最もという、比較を前提とした言葉が入っているときは、何をこのために諦めなければいけないのか、何が犠牲になるのかと考えますよね。例えば、親の利益なのかなと考えると、常に子の利益が優先されるべきだとは言えないと思うんです。子どもの権利が、あるいは利益が優先されるべきなら、親の利益も優先されるべきでして、それらの間での交渉ということになるべきでしょう。実際にはそうしていると思いますが、法律で、子の利益を最も優先と明示してしまいますと、親に犠牲を強いるというようなことも出てくるのではないかと思います。   それで、少々ここの表現を変えた方がいいのではないかと思うんです。何かと比較する形ではなくて。子どもの権利条約はどうなっているのかなと思って見てみますと、ベストインタレストというような言葉ですよね。ですから、子どもにとっての最善を考慮してというようなことで、子どもの利益を何かに対して最も優先するというふうな書き方ではないでしょう。子どもの最善を考慮しなければならないという、そのような表現でしたら全く異論ないんですけれども、今の書き方ですと誤解を招くのでないかと思います。それが、ここについての意見です。   それから、次の、親というのは法的地位であるということなんですが、私が不勉強で全然分かってないんだと思うんですけれども、親というのは、今も法的な地位なんでしょうか。それから、世界的に親ということそのものが、法的地位とみなされているものなんでしょうか。   なぜそういうふうに問うかといいますと、親を定義するというのはすごく難しいですね。社会学的にも人類学的にも、とても難しいです。その親というのを無定義なまま法的な地位にしてしまうと、これは混乱すると。生物学的な親ですとか、それから育ての親ですとか、養子の場合もありますし、それから、今でしたら精子を提供した人はどうなるのかとか、様々な問題が起きますから、親というものを法的な地位として扱っていくことは、問題があるんではないかと考えます。 ○大村部会長 落合委員、今、親の定義について御意見いただいておりますけれども、差し当たり、範囲を第2に限らせていただきたいと思っています。今のお話はむしろ第3に関わるようにも思いますが、第3に関わるようでしたら、後に回していただければと思います。もし第2と関連するのであれば、御発言いただければと思います。 ○落合委員 第2のつもりでおります。 ○大村部会長 では、続けてお願いします。 ○落合委員 では、この第2の2の方について、意見を申します。これについては、成年に達した子がというところからが、私は問題だと思っています。未成年の子に対して、他の直系親族よりも重い扶養義務があるという、これは明記していいと思うんですけれども、成年に達した場合も、教育を受けるためにというようなところですね、ここは、私は大反対です。   なぜかというと、これがあると、大学の奨学金制度などが発達しませんよね。今でも、日本の大学の非常に大きな特徴というのは、奨学金制度が未発達なことです。奨学金があるかどうかで、どこの大学に行くかを決めるというようなことが、国際的には起きているのに、日本ではこれが非常に未整備である。なぜかというと、それは親の義務だと考えられているからなんですよね。奨学金をもらうようなときも、親の収入を聞いたりします。でも、親との関係が悪い子もいますし、そのような場合も、なぜ親の収入が問題になるんでしょうか。子どもは、ある年齢からは自立した人間であるとして扱うということが、やはり基本だと思うんですね。   未成年という、これ、本当に何歳かという問題もありますけれども、未成年の間はやむを得ないというのはしようがないとしまして、成年に達した人間が、常に親に依存していなければいけないというのは、人権の制限だと思います。ですから、これは、私は絶対に書いてはいけないと思います。これは、離婚後の養育費の問題などから発想して、教育を受けるためにというようなことが書かれているのかもしれませんが、それは本末転倒でして、離婚後の子どものことのためだけに、親子の在り方全体をゆがめてしまうことになると思います。それから、社会の責任もゆがめてしまうと思います。ですから、ここは絶対に書くべきではないと思います。   今のところで、大きいことはそれだけです。 ○大村部会長 ありがとうございました。御指摘いただいたうち、親の定義の問題については、事務当局に少しだけお答えいただきまして、また後で、必要に応じて御意見ないし御議論を頂こうと思っております。   それから、ここでの具体的な案につきましては、落合委員からは、1についても2についても反対であるという御意見を頂戴いたしました。ただ、1については、子の利益を最も優先してという表現に関わるところがあって、この表現の仕方によっては、よいのではないかというような御指摘も頂いているところです。そういう理解でよろしいでしょうか。 ○落合委員 はい。 ○大村部会長 この点についても、事務当局の方で少し補足をしていただきたいと思っています。   それから、2の未成年の子の養育の義務については、2段落目の成年に達した子について、このような規定を置くことは望ましくないということで、こちらは明確な反対の御意見を頂いたと理解いたしました。   事務当局の方で、今の2点、まず、ここで想定している親とはどういうものなのかをごく簡単に御説明を頂き、それから、1の書きぶりについても補足の説明を頂ければと思います。 ○北村幹事 事務当局でございます。御指摘ありがとうございます。   今御指摘いただいたように、親とは何かというのは、いろいろな考えあるかとは思いますけれども、民法上の世界ということでございますので、法律上の親というものを前提としているというところでございます。   さらに、1の子の利益を最も優先して考慮する義務というところですけれども、現行法におきましても、子どもの権利条約を踏まえまして、766条に同様の文言、子の利益を最も優先して考慮しなければならないという規定が置かれているところでございます。考えているところは、落合委員のおっしゃったところと基本的には同様かなとは思っておりますという形で、事務当局から説明していただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   沖野委員から手が挙がっていて、それから赤石委員ですね。沖野委員、赤石委員という順番でお願いをいたします。 ○沖野委員 ありがとうございます。1点目はもう事務局から補足していただいたことです。私自身、ここでの親というのは、法的な親子関係を前提とした親であると理解しておりました。法的な親子関係がどのような場合に認められるかというのは、別途規律がされており、落合委員から御指摘のあった、例えば、人工生殖の手法を使ったような場合にどうなるかとか、様々な場面ですとか、考慮を入れた親子関係の設定の規律が別と置かれるものと考えており、それを踏まえた規律の提案だと理解しておりました。   2点目が、子の利益を最も優先して考慮するということなんですけれども、ある者のために行為をするというときに、その者の利益をどのように考慮するかという手法としては、ベストインタレストというのが出ましたけれども、ソウルインタレスト、その者の利益だけを専らにするというものもあって、ソウルインタレストよりもベストインタレストの方がやや緩和されている、つまり、自己の利益ですとか第三者の利益ということも考慮していいんだけれども、最善は何かということで考えていくということになりますので、専一よりも緩和されていることになります。さらに、最善というと、一体何が最善なのかというのが、しばしば分からないところがあるということもありまして、そうすると、様々な利益があり、自己の利益もあるし、第三者の利益もある、また当該その人の利益のために与えられた権限等について、その人の利益というのもある中で、それを最優先にするというそれこそが基本的なところであるということが打ち出されているものと理解しております。   ですから、むしろこの表現を採ることによって、様々な利益の考慮が入ってき得る、それ自体が否定されるものではないけれども、子の利益こそが最も優先だということが、より明確になっているものと理解され、そのようなことでいいのではないかと考えます。さらに、そもそもここでは、一定の法定の権限を行使する場合ですとか、現に子を監護するというような場合に考慮しなければいけないということですから、逆に言えば、当該権限自体が、そういうことのために与えられているんだという点を明らかにする意味もあるのではないかと思っております。   3点目なんですけれども、1のところでは、法令による権限行使の場合、それから、現に子を監護する、これは事実状態に基づくものということですけれども、例えば、今のところの2では、未成年の子の養育の義務というのが出てきます。また、権限行使のところには、言わばセットで義務も入っているということからすると、義務の履行という面についても明示した方がいいのではないかと考えておりまして、そういう趣旨なのか、それとも、あえて義務の履行ということは落としてあるのかというのを、確認をさせていただけないかと思います。私自身は入れた方がいいのではないかと思ったものですから、確認させていただく次第です。   4点目ですけれども、2につきまして、成年に達した後も相当な期間はこの重い扶養義務を負うということなんですが、これが果たして当然なのかどうか、そういうこともあるという状況に応じてのものなのか。相当な期間と言われる、一定で区切られるような、養育の関係では未成年年齢を引き上げるというようなことなのか、果たしてそれでいいのか、元々未成年の子についても、未成熟の子というような、漠とした比喩的な表現かもしれませんけれども、そういう段階性を考えてのものとだとしますと、成年後も一定期間は当然にというのでよろしいのかどうかというのは気になります。状況により負担が求められることがあるのは分かるのですけれども。 ○大村部会長 ありがとうございました。4点御発言のポイントがあったかと思いますが、1点目と2点目はここに書かれていることについて、説明を補足していただいたと理解をいたしました。それから、3点目ですけれども、1が権限を行使する場合等々の書き方になっておりますが、義務の履行を念頭に置いているのかどうか、念頭に置いているならばそのことを書いた方がよいのではないかという御質問を頂きました。4点目は、成年に達した子に対する義務が当然のものだというのは行き過ぎなのではないかという方向の御意見を頂いたと理解をいたしました。   事務当局の方で、今の3点目ないし4点目について、御質問に対するお答えがあれば、頂ければと思います。 ○北村幹事 3点目につきましては、事務当局といたしましては、義務の履行まで入っているという考え方で作成してございますが、そこが読めないということであれば、また今後書きぶりも含めて検討してまいりたいと思います。   4点目のところにつきましては、ここはいろいろ御意見を頂きたい、むしろ御意見いただきたいなと。当然に含んでいるとするものではないですけれども、そこは、幅広に委員の方々の御意見を賜りたいということでの、ある意味問題提起のような形でございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。今のようなお答えを頂きました。   次が、赤石委員、そして大石委員からも手が挙がっておりますので、赤石委員、大石委員の順番でお願いをいたします。   赤石委員、どうぞ。 ○赤石委員 ありがとうございます。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。  まず、二読目ということで、法制審議会がどのようなシステムで運用されていくのかというの、なかなか分からないんですけれども、1巡目の議論の中で、最初からヒアリングで足りないところを補っていくというお話があったかと思っております。ですので、私から見ると、やはりDVの被害者、当事者の方の実態というのが、なかなかまだ御理解いただけていないのかもしれないなと思っておりますで、お急ぎであるというようなお話もあったんですが、やはりここは、禍根を残さないように、そういったものがあった方がいいかなと思いますし、子どもの臨床の方たちというのも、やはり御意見を聞いた方がいいのではないかと思っております。そういう意味で、急いでというようなお話もあったような気がするんですが、でもしっかりとした議論が必要ではないかなと思っております。   その上で、第2のところなんですけれども、まず、子の意見と子の心情なんですけれども、子の心情というところがちょっと何か、かなり曖昧なように受け止められておりまして、後の方でもありましたけれども、子の意見が必ずしも全て実現するわけではなく、子どもの利益に即すると、そうでない決断をすることもあるというようなことがあったので、今、家庭裁判所でも子どもの意見を聞きつつ、結局、その意見が取り入れられていないというようなことを聞いておりますので、もう少し子どもの意見というのを尊重する書きぶりというのはできないのだろうか。そういう大事なところが心情で書かれているところが、後の方でも多かったので、ちょっと気になりました。年齢の議論とかもございましたけれども、是非いろいろな方の御意見を聞きたいところです。   その次に、現に子を監護する親といった表現、その親をどう定義していくかというときに出てきておるんですけれども、それについてちょっと、例えば、実際に監護親でない方が、面会交流時に現に監護している親というふうなことになるというような御説明があるんですけれども、2ページの(注2)ですね、ちょっと混乱を招く概念だなと、私は受け止めております。   今、面会交流のルールというのは、面会交流支援団体が幾つか定めていますけれども、私も面会交流支援をしておりますと、結構窮屈だなと思われるようなルールは設けております。例えば、お子さんの動画撮影についてですとか、写真撮影はアップしないですとか、いろいろな制約を設けて、高額なプレゼントをしないですとか、お子さんと楽しめるようにするというようなことを最優先にするとか、いろいろなルールを設けておりますけれども、それを、やはり面会交流時の親御さんはちょっと御不満に思われることはあると思うんですね。ですが、やはり支援する側としては、その制約があるからこそ、安全に安心して、そして継続的な関係が結べるということを知っているからこそ、お伝えしていると思うんですね。ですので、何か権限があるというようなことを、このように書かれてしまうことに、大変違和感がございましたので、ここの定義というのは果たして必要なのでしょうかということを思っております。   別途、面会交流のルールというのはきちんと決めて実施するということがあれば、ここでわざわざ現に監護する親を定義する必要があるのだろうかというのが、私の思いでございます。本当に、とても善意で、例えば、自分の関心のある分野のことをお子さんに見せたいと思って、例えば、東日本大震災のときには、震災被災地に2歳の子を連れていきたいと言ってくるような親御さんっていらしたんですよね。でも、それが、やはり危険がものすごくあるので、それを必死に止めるのにお母さんがとても苦労するですとか、そういうのを聞いてきましたので、権限というのだけ書かれてしまう、先ほど義務の履行というお話もあったので、そことの兼ね合いもあるのかと思います。   あと、やはり子と交流するために、その情報を提供するというようなお話もありましたけれども、どうしてもやはり主たる監護者が、安心して子どもを育てられるに足るような範囲での情報提供ではないのかなとは思っておりますので、ちょっと書きぶりは気を付けた方がいいと思っております。   あと、落合委員がおっしゃったように、親の責任をどこまでにするのかというの、私もちょっと、やはりいろいろな事件も起こっておりますし、ひきこもりのお子さんをこの親が育てなければいけないって、ずっと思っていらっしゃることによって、責任が重くて、逆に命を絶つような、こんな事件があることから、ちょっと気を付けなければいけないのではないかなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員からは、1の部分の書きぶりに関連する問題を幾つか御指摘いただいたかと思います。2文目の子の意見又は心情の、心情がこれでよいのか、あるいは意見の尊重を、もう少し前面に押し出すべきではないのかという御指摘。そして、一つ上に戻りますけれども、現に子を監護する場合という表現が分かりにくいのではないかといった御指摘も頂きました。(注3)について、先ほどから情報の提供という話が出ておりますけれども、この提供の範囲には、注意する必要があるのではないかという御指摘も頂いたところでございます。   1についていろいろ御意見が出ておりますけれども、私の理解を少しだけ申し上げて、皆様の議論の参考に供したいと思います。先ほども事務当局の方から御説明がありましたけれども、1の最初の文章は、現行法においても使われている表現であろうと思います。例えば、820条で、親権を行う者について、子の利益のために監護、教育を行う権利を有し、義務を負うということで、親権者は子どもの利益という基準によって、権限ないし義務がコントロールされることが明らかにされているわけですけれども、親権を持たない親についても同様の配慮がなされなければいけないということで、従来の考え方を拡張したいというのが、この提案の趣旨だろうと思います。基本的な方向性としてこれでよろしいかという観点から御議論を頂き、あわせて、そのための文言として、これで適切なのかということについても御意見を頂ければと思います。   次、大石委員、それから柿本委員という順番でお願いいたします。 ○大石委員 ありがとうございます、千葉大学の大石です。2ページの2、成年に達した子が成年に達する前からというところですね、私も落合委員と一緒で、この御提案というのには反対をしております。理由は、成年に達した国民が、自助努力をもっても最低生活水準に達しないとか、あるいは経済的な事情で高等教育を受けられないとかいうようなことがある場合には、やはりそれは、社会保障あるいは国の責任で行うべきだと考えているからです。若者への社会保障の拡充が唱えられているところでありますけれども、この条文を入れるのは、結局のところ、そういう国民と社会保障の在り方を見直す動きと、逆行するものになるのではないかと考えておりますので、反対です。 ○大村部会長 ありがとうございました。大石委員からは、先ほどの落合委員御指摘の、成年に達した子の養育義務という点につきまして、社会保障との関係が不明確になるのではないのか、むしろ、そちらを優先的に考えるべきなのではないかという御意見を頂戴いたしました。   柿本委員、原田委員、水野委員という順番でお願いいたします。 ○柿本委員 主婦連合会の柿本でございます。第2の2番、2ページの2段落目、未成年の子の養育の義務のところでございます、落合委員・大石委員と同じ意見でございます。   方向性としては、やはり社会保障の拡充、給付型の奨学金などを進めることが必要であると思っております。ここのところは、私も反対でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。柿本委員からも、2ページの2の第2文について、反対の御意見を頂戴いたしました。   原田委員、水野委員という順で伺いますが、先ほど言及するのを忘れましたが、赤石委員の方から、個別の御意見に先立って、ヒアリングについての御希望がございました。審議を急いでいるようだがというお話ありましたが、もちろんスケジュールもありますでしょうし、それから、要綱案に向けて議論を集約する必要もあります。先ほどの民事局長の御発言も議論を集約していく必要があるという御趣旨であったものと思いますが、それにしても十分な審議が必要であるということも当然のことですので、御要望をいただいたということで、事務当局の方で、そこは考えていただくということにさせていただきたいと思います。   以上を補足させていただきまして、原田委員、水野委員という順番でお願いします。池田委員は、その後でお願いします。 ○原田委員 まず、1のところの(注3)のところで、先ほどから情報提供とか情報共有とかいう言葉が使われておりますが、ここでは状況を確認する機会とされておりまして、現に監護する親を、どういう場合を想定しているのかということで考えたときに、親権者でも監護権者でもないけれども、面会交流しているような場合の親も含むとは書いてありますが、そういう場合であれば、現在でも行われていると思いますが、その時々にこういうものは食べさせないでとか、子どもの健康の状態などを交流すればそれで十分でだと思います。それができない親の間で、別途何か確認をする機会というのは、監護状況をいつも見られているような状況になるのではないかという不安が、弁護士の中の議論では出されました。   私も、確認という言葉は、ちょっと不適切ではないのかと思います。現に監護する場合というのを、どのような範囲を考えるのかということによって、例えば、学校や病院に直接情報公開を求めるようなことも含むのかどうかというのを、もう少し細かく議論をする必要があるのではないかと思いました。   それから、未成年の養育については、社会保障との関係で強い反対御意見がありましたけれども、現在実務では、成年年齢が18になるという前提でも、二十歳までの養育費を決めている例が多くて、基本的には未成熟子と考えて、養育義務を考えていると思います。確かに社会保障が充実するのが重要だと思うんですけれども、どうも私は、それがなかなか期待できないといいますか、そうすぐなるのだろうかという疑問がありまして、どちらかというと、ここで18、成年年齢までで切ってしまうということになれば、ひとり親家庭の子どもは高等教育受けられなくなる、あるいは、先ほど奨学金のお話が出ましたけれども、学校を出てから数百万の借金を持って社会人にならなければいけないという事態が発生するのではないかと、非常に懸念を持ちます。現在でも、民法877条は、生活保護の関係などで公的扶助と私的扶助のせめぎ合いをやっているわけで、強力に自助努力が求められるという実態なわけですので、やはりここは、未成年ではなくて、未成熟子とすべきではないかと考えました。   それから、もう一つは、未成年の間から学校に行っているという場合だけではなく、障害のあるお子さんやひきこもりのお子さんなどをどう考えるかということ、これも社会保障との関係がもちろんあることは十分承知しておりますけれども、現実に同居している親はその子を監護しているわけで、非監護親だけはその責任を免れるというのは、やはりちょっと公平感に欠けるのではないかと考えました。   それから、親責任の呼称のところは、外国法制をいろいろ御紹介いただきました参考資料の5−1によると、監護権と同じようなものとか、親責任とか親の配慮とかというような形で、その後のことにも続きますけれども、前回池田委員が言われたような、親権ではない親責任のようなものに、監護と扶養と財産管理が結び付いたようなものを考えればいいのではないかという御意見の下で、考えたらどうかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございました。3点御意見を頂いたかと思います。一つ目、二つ目は今までに御意見を頂いているところですが、一つ目は(注3)について、子の養育の状況を確認するというのには、やや問題があるのではないかという御指摘を頂いたかと思います。それから、成年の子の方については、これ、成年年齢引下げのときに問題になったことであるわけですけれども、やはり一定の範囲で、引き続き養育の義務を認めていく必要があるのではないか、また、成年に達する前から引き続き教育を受けるためにと書かれているけれども、これだけでよいのかといった御指摘も頂きました。3番目、用語の問題につきまして御意見を頂戴いたしました。   水野委員、池田委員、窪田委員、それから戒能委員ということでお願いします。 ○水野委員 水野でございます、ありがとうございます。先ほど成年子の教育費は外してもいいのではないかという強い御意見が幾つか続きましたので、それは、今の日本ではちょっと理想的すぎるという危惧を抱きました。   原田委員が述べられたように、成年年齢を引き下げるときに、この点は、非常に危惧された点です。成年年齢を18歳にしてしまうと、高等教育の費用をもう請求できなくなってしまって、離婚の条件を議論しなくてはならないのかという危惧でした。そのときに、私も幾つか論文を書いて、その中で、決してそんなことはないと書いた手前もありまして、発言をさせていただきます。そのときの論文にも書いたのですが、フランス法は、2002年に民法371条の2の条文に、親権者が子の生活費や教育費を負担する義務は子が成人したからといって消滅しないという条文をつけ加えています。日本のその後の、家庭裁判所などの実務も、教育途上の子どもがいて、離婚の条件を決めるときに、大学の教育費を考える形で動いてきていると思います。それは、やはり現実にそれだけの必要性があるのだと思います。   もちろん、ずっと将来の制度設計としては、落合委員がいわれたように、国庫からの支援があるべきだと思いますけれども、これだけ教育方面に対する公的支援が足りない現実の日本で、にわかにそれが現実化すると思えません。そうしますと、子どもに高等教育を与えるためにはと思って、つらいDV家庭にとどまり続ける母親が増えてしまう危惧の方が、現状では深刻です。現段階では、やはりまだ、高等教育の費用は、離れて住む親に課す必要があると思います。   取りあえず、その点だけでございます。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。2ページの2の第2文につきましては賛否両論ございますけれども、水野委員からは、大学教育、高等教育の費用を確保するという観点から、現実的に考えた場合には一定の対応が必要なのではないかという御意見を頂戴いたしました。   池田委員、窪田委員、それから戒能委員、石綿幹事という順番でお願いします。 ○池田委員 池田でございます。第2につきましては、親権の有無にかかわらず、こうした1、2のような義務を負うという基本的枠組みに賛成です。   その上で、幾つかちょっと意見を申し上げたいと思います。まず、この1、2と二つ義務が挙がっているんですけれども、これ以外はどうなんだろうと。例えば、親権者も親であるわけですけれども、親権者が負っている監護義務ですとか管理義務というのも、本当はこの枠組みの中で義務として挙げられるべきものなのではないかなと思います。ただ、親権者でない者は、親権者が負うべき義務を負わないという意味では、ここで挙げてしまうと、親であるけれども負わない義務が出てしまうということになってしまうという問題はあるのかもしれませんが、逆に、例えば、監護者指定がされているときの親権者というのは、監護義務を負わなくて財産管理義務だけ負うわけですけれども、ごめんなさい、逆ですね。監護者は、親権者ではないけれども監護義務を負うわけですよね。そうすると、ここにやはり監護義務というのが入ってくる必要があるのではないかというようなことを、一つ思います。ちょっとその辺りの枠組みの整理というのが、必要になってくるのではないかなという意見が一つです。   それからもう一つ、これはちょっと細かい話ですが、1のところで、どのような場合に子の利益を最も優先して考慮しなければならないかというところですけれども、権限を行使する場合と現に子を監護する場合のほかに、子どもの養育に関する体制を決めるときにも、優先して考慮しなければいけないのではないかと思います。例えば、子の親権者を決める場合ですとか監護者を決めるような場面でも、同じようにこういった考慮が必要ではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは、ここに書かれていることには基本的には賛成だという前提に立たれた上で、これで全ての場合を尽くしているのだろうか、ここに漏れているものもあるのではないかという御指摘を頂いたかと思います。   事務当局の方で、ここを補足していただいた方がよいと思います。 ○倉重関係官 ちょっと正しく御指摘を理解できているかというところがあるんですが、仮に親権者の義務の方を親の義務だと整理をしてしまった場合、例えば、未成年後見人なんかは、親権者と同様の権利義務を負うという規定があったり、児童相談所長等は、一定の場合親権を行う者に該当するわけですが、その方々は多分親権者の義務の部分について負っているんだということになると思われます。そうすると、そこの部分については、親であることから説明するよりも、親権の中身、若しくは監護権の場合は監護者としての義務の中身と整理をした方が、そことの整合性はつきやすいかというふうな気はいたします。ただ、池田先生の御指摘を十分理解できていないところあるかもしれませんが、まずその点について御指摘をさせていただきます。   2点目でございますけれども、例えば、親権者を決めるとか、766条の協議申立てをするということは、正にここの親の法令に基づく権限の行使、義務の履行という形で捉えているというつもりでございました。それで、ちょっとそこの重要な部分を(注1)の方、(注)に落としてしまったために、ちょっと誤解を招いていたかもしれませんが、そういったことの場面でも、この義務は効いてくると、そういうような理解をしていたところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。表現が十分かどうかという点は、先ほどから御指摘もありましたので、更に考える必要あるのかもしれませんけれども、考え方としては、1も2も親であることに伴って当然こうなるということを定めていきたいということである、その上で、親権に伴う権限や義務については、また別途規定を置くと整理をされていると理解をしております。   いずれにしても、理解を明確にするということが必要だろうと思いますので、今の質問はそのように受け止めさせていただきたいと思います。 ○窪田委員 ありがとうございます。2点あります。1点は、ただ今、部会長から御説明があったところですけれども、基本的には、私自身はこの1と2について、親であるということ、この場合、親であるというのは、社会学的な意味ではなくて法的な親であるということを前提とするものですが、それに基づく法律関係、法的義務や権限というのは、必ずしも明確にされてきていなかったので、それを明確にしようという意味で、十分にあり得る方向なのだと思っております。   2点目ですが、先ほどからもう出ている話で、2の後段の部分についてです。成年に達した子についての養育の話なのですが、これについては、先ほどもう原田先生、水野先生からも御発言ありましたし、特に原田先生から未成熟子という言葉が出ていたのですが、多分、法律の世界以外では、一般的な表現ではないと思いますので、少しだけ確認をさせていただきます。未成熟子というのは、まだ経済的に独立していない子どもという意味で、過去の議論をずっと、私自身、正確にたどったわけではないのですが、かつては、未成年ではあるけれども未成熟ではないという側面が、比較的強調されたポイントだったんだろうと思います。つまり、未成年ではあるけれども、高校を卒業してすでに就職している。したがって、その子に対しては生活保持義務を負うものではないという文脈で使われたのだろうと思います。ところが、急速に議論状況が変わっておりまして、未成熟子というのは、成年に達していても未成熟だという概念として使われるようになってきたということがあります。したがって、2ページの下の方に出てきていることは、法務省の案として唐突に出てきたというよりは、近時の民法学の議論の中ではよく使われている未成熟子という概念を使ってのものなんだろうと思います。   ただ、その点を確認した上で、もう少し考える必要があるのではないかと思っています。つまり未成年に対する法的な義務というのは、かなり明確に規定することができるのに対して、成年には達しているけれども未成熟だというのをどこまで認めるのか、また、それに対する義務というのが、本当に未成年者に対する義務と同じなのかというのは、必ずしもそれほど自明ではないだろうと思います。恐らく、もちろん原田先生から御指摘があったように、未成熟子という概念を前提として、例えば、離婚の場合にも、子どもの養育費として、子どもが例えば大学を卒業するぐらいの年齢までどうするかというような議論をするということもありますので、その手掛かりとなる規定がどこかにあった方がいいだろうなという感じは、私自身もしています。ただ、それを未成年の子の養育の義務という一般の枠組みの中に並べて落とし込むのがいいのかどうか、これについてはもう少し検討ができるのかなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。2点御指摘を頂きました。1点目は、ここで書かれていることの基本的な方向性についての御説明があった上で、この方向で考えるということでよろしいのではないかということだったかと思います。2点目は、先ほどから御議論がある成年に達した子ですけれども、これについても、従来の議論のいきさつについて御説明を頂いたかと思います。こうした形で出てくるのは、必ずしも唐突ではないという御指摘を頂きましたけれども、しかし、これでよいかどうかということについては、なお検討する余地があるのではないか、これは、大分前に沖野委員からも御指摘を頂いたところでして、成年に達したからといって、直ちに養育を受けることができなくなるということではないとしても、しかし、ではどのような形で線を引くのかといった問題はなお残されているということかと思って伺っておりました。ありがとうございます。   窪田委員まで伺いましたので、戒能委員、石綿幹事、そして、もう一度落合委員ですね。棚村委員は、その後にお願いします。まず、戒能委員どうぞ。 ○戒能委員 ありがとうございます、戒能です。3点申し上げたいと思います。   1点目は、先ほど赤石委員からも出ておりましたが、参考資料の12−1の2枚目に、参考で昨年の審議のプロセスが示されておりますが、その冒頭に、実態ヒアリングを2回実施していただいたわけですが、それで十分かどうか、そして、審議にはタイムリミットがあるというような局長のお話でありましたけれども、座長から十分な審議が必要である、ですから、そこの審議に必要であれば、ヒアリングも要望してもいいと理解いたしましたので、やはりDVだけではなくて、虐待の問題も含めて、もう少し実態について、これは重要なポイントと考えますので、ヒアリングの機会を是非設けていただきたいと、私からも要望したいと思っております。それが1点目です。   それから、2点目は、この資料は読み込むまでに分かりにくいところがあるんですが、2ページの1の、意見又は心情というのが分かりにくいですね。その補足説明には、4ページですけれども、意見は一定程度成熟している子が特定の考えを持っている場合を示し、そして、心情というのは、そういう意見を持つまでまだ成熟していない子、特定の考えを持っていない子の主観的な状況を示すものだと、これが非常に分かりにくいです。年齢なのか、それとも何なのかということで、意見又は心情と表現することの意味が、もう少し分かりやすくというのか、明確にすべきであると思います。やはり中心は意見であると思うんですね。ですから意見の尊重なんですけれども、しかし、小さくてまだ意見も言えない、意見を作れないという子について書いているのか、それとも両方なのかというのは、これでは読み取れないと、率直に申し上げますと、感じました。   それから、3点目なんですが、2ページの(注3)は、やはり補足説明の4ページの(3)と併せて読むべきであると考えております。それで、子の利益を最優先して権限を行使するためには、子の養育状況について把握している必要があるという書き方で、それは別居親との面会交流が具体的には想定されていると理解するんですが、これは、既に原田委員から御指摘があったとおりだと、私も考えております。情報提供ということと、確認というのはまた別の行為であろうと。確認の方が重い意味を持つということなんですね。そこまでの必要性が、どういう場合にあるのかということが、これだけでは難しい。4ページには留意事項として、ここではDV事案と書かれておりますが、かえって子の利益を害する事態が生じることも考えられるのではないか。そういう検討も必要であると書いてありますので、ここは、もう少し慎重に議論をするべきだと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。3点御指摘を頂きましたが、1点目は、先ほど赤石委員もおっしゃっていたヒアリングを御希望であると承りました。どんどんヒアリングしますというお約束をしたわけではありませんが、先を急ぐということであるとしても、慎重な審議は必要であるので、その必要に応じてヒアリングをすることもあろうと申し上げたつもりです。それから、2点目、3点目については、既に出ているところですけれども、子の意見又は心情の心情があやふやで、少しはっきりしないのではないかという御指摘と、それから(注3)について、これも今まで出ていますが、確認するというところにやや問題があるのではないかという御指摘を頂きました。   あと、5人ほど挙手がありますけれども、大分時間たちましたので、少し休憩をしてからと思っております。   休憩をする前に、これまでの議論の中間のまとめのようなことを一言だけ申し上げたいと思います。   3について、用語についても多少御指摘を頂いておりますけれども、主として、2ページの1と2について御意見を頂いております。1、2については、皆様から基本的にはこの方向でよいのではないかという御感触を頂いていると理解しております。その上で、子の意見又は心情という部分、それから(注3)の取扱い、そして、成年に達した子の取扱いという個別の問題について御意見を頂戴したということになっているのではないかと思いますので、再開後は、今のような形で議論が進んでいることを踏まえて御発言いただきますと、大変有り難く存じます。   今、14時59分になりましたので、10分ほど休憩いたしまして、15時10分から再開したいと思います。   休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、15時10分になりましたので、再開をしたいと思います。   先ほど5人の方から手が挙がっていたのですが、その後更にお二人加わりまして、今、7名ということになっております。石綿幹事、落合委員、棚村委員、大石委員、小粥委員、それから佐野幹事、柿本委員という順番で御発言を頂ければと思っております。 ○石綿幹事 石綿でございます。2点発言させていただければと思います。  まず、第2の2ですが、原田委員、水野委員の御意見の方向性に賛成で、未成熟の子について、一定の考慮をした方がよいのではないかと思います。規定の仕方については、窪田委員の御発言があったように、ここにこのような形で書くかどうかということは検討した方がいいかと思いますが、いずれにいたしましても、何らかの文言を入れるなどして、短期的に現在の実務の運用から大きく離れてしまうことで、狭間にある年代の子どもたちに不都合が生じることがないように配慮した方がよいのではないかと思います。   2点目が、何度か問題になっております第2の1の(注3)についてです。子の養育状況の確認の機会というのが、面会交流の場面に適用されるのではないかと御発言なさっている委員の方が多いように見るのですが、ここの記述だけを見ると、民法等の法令によって、子について権限を行使する場合にも、子の利益を考慮する、そして、子の利益の判断に当たっては、(注3)の話が関係するということになると、766条の子の監護について必要な事項に関する協議、あるいは817条の特別養子縁組の件、さらに、恐らく820条以下の親権の地位に基づく権限ということで、親権者と監護親が別の場合の親権者などについても、子の養育状況の確認の機会という話が出てくる可能性があるのではないかと思います。このように、(注3)の問題は、面会交流の場合だけではなくて、適用される場面が広くなる可能性もあるのではないかと思います。   このようにどのような場合に子の養育状況の確認をする機会というのが認められるのかという前提を確認した方がよいのではないかということに加え、確認の機会というのは、一体どのタイミングで与えられるのかということ、特に子についての権限を行使する場合が問題になるかと思いますが、権限を行使する可能性があるから、定期的にできるのか、あるいは権限を行使している子の監護についての必要な事項に関する協議の場面だけ認められるのかといった問題、それから、どこまでの情報・状況が確認されることが想定されているのかということをもう少し詰めて議論をしたほうが良いのではないかと思います。今のままだと玉虫色の書き方になっていて、同居親はこの程度だと思っていたのに、別居親の方はもう少し広いものだと思ってしまって、後々紛争が生じる可能性が高いと思います。また、4ページの(3)の2段落目で書いてあるように、同居親にとっては、子の養育の状況に関する情報を提供させられる、あるいは確認されるとことによって危険が生じる場合もあると思います。(注3)については、もう少し様々な議論、あるいは確認をした方がよいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほどから議論になっている(注3)と、それから2の第2文について御意見を頂きました。   2の第2文については、現在の実務等を前提として考えた場合に、問題が生じないような配慮が必要であるという御指摘。それから、(注3)はどういう場合を想定しているのかということについて、イメージを共有しすり合わせを行う必要があるのではないか。書き方からすると、かなり広いものが想定されていると読めるけれども、詰めて議論する必要があるのではないかという御指摘を頂きました。   先ほど申しましたが、(注3)ないし今の2の第2文につきましては、様々な御意見いただいておりますので、次の段階で、その内容を明らかにするような検討をすることが必要ではないかと思っております。先ほどから申し上げておりますけれども、今日のところは、考え方、大枠としてこれでよろしいのかということと、検討を要する点があるとしたら、どういうところかということを御指摘いただくということで、先に進ませていただきたいと思っております。石綿幹事の御指摘はごもっともだと思いますが、ノートして、次回に忘れずに議論をするということにさせていただければと思います。 ○落合委員 皆様の御意見を伺って、先ほど申したことを再論する形なんですけれども、まず、子の利益を最も優先してですけれども、1のところについては、私は原則賛成しているんです、大村先生にまとめていただきましたように。ただ、子の利益を最も優先してという表現が、適当ではないのではないかなと思っているんです。   この表現が民法の中でどこで出てくるかなと見てみましたら、766条には出てきますが、これは、完全に離婚のときのこととして書かれていますよね。私はただ、ここに違和感を持ったのは、親子関係に関する基礎的な規律の在り方ということで議論している、そこの冒頭部分にこれが出てきているからなんです。離婚ということがあると、そのときに、親たちが自分たちの都合やいろいろなことを考えるだろうから、しかも、ここでは子の監護についての話なんだからということで、子の利益を最も優先してというふうな文章になるのはよく分かるんですけれども、もっと親子関係一般を述べるところで、最も優先してという言葉遣いが使われるのかどうかというのを見てみると、民法を見ても、子どもの利益という言葉は出てくるけれども、それを最も優先してというのは、そうそう出るわけではないのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。   この辺りについては、子どもの権利条約が議論の下敷きになっていると思われるわけなんですけれども、子どもの権利条約というのは、例えば、自己の意見を形成する能力のある児童が、その児童に影響を及ぼす全ての事項について、自由に自己の意見を表明する権利を確保するというようなことが、12条にありますけれども、そのように子どもの自己決定、決定権というようなものが前に出ているものではないでしょうか。ここに書いてある二つの文というのは、2番目のところは、今の子どもの自己決定に関係しているんですけれども、尊重するというような感じで随分控えめですよね。やはり親が主体になった書き方になっていると思います。これを、子どもができる限り決定するようにするんだと、もうちょっと強めに書いて、子どもの利益と子どもの決定を優先してというか、に従って、あるいは、を重視して考慮しなければいけないのような表現に上の方も変えると、一貫するように思います。全体として、パターナリスティックな感じがありまして、子どもの独立した人間としての権利というのがもっとはっきりする書き方をするのが、世界標準なのではないかと思います。今のが、この1についてです。   それから、2の未成年の子の養育の義務のところですけれども、この成年の子どもというところについて、未成熟子というような概念が、違うような意味で今は重要になってきたという、この辺りを教えていただいて、非常に興味深く思いました。面白いことですね。そうなんですけれども、社会保障法の整備を待っているといつになるか分からないので、やはり成年に達した子どもに対しても、親のある程度の義務を課すべきだという御意見に対しては、やはり賛成できません。地獄への道は善意で敷き詰められているんだなと思った次第です。   日本の家族主義というのが、いろいろなことで問題になっているというのは、指摘されているとおりですけれども、それを正に強化しようという発言を、実態をよく御存じの法学者の方たちがなさるのを、とてもつらい気持ちで聞いております。家族主義というのは、家族に責任を負わせる制度ということですね。「家族主義は家族を壊す」と言われているのを御存じでしょうか。エスピン・アンデルセンが言っております。家族にいろいろ任せていく制度というのは、結局家族を壊してしまうのです。世界的に見ると、家族に多くの責任を負わせている国は、出生率が軒並み低いです。これだけの責任を負うと思ったら、子どもなんか簡単に産めません。それから、様々な負担を背負いますから、離婚もします。子どもとの関係も悪くなります。だから、家族に解決させようという仕組みを強化するようなことは、やはり絶対にするべきではないと思います。家族を壊そうとしているんですよ、それは、負担を増やすことによって。社会保障の方がいつ整備されるかというのはありますけれども、例えば、今の内閣は、人への投資ということを言っていますよね。その辺りを、この機会に押していく。見方を転換する。家族に子育て責任を負わせようとずっとしてきた結果、少子化して人が育たず、家族が壊れてきているんですよね、この国は。だから、今それを変えるべきときだと思うんです。だから、そこについて、現状に合わないというような議論は、負担で家族がだんだん壊れてきている今の日本を後押しすることにしかならないと思います。   もちろん現実的に、例えば、離婚した人たちが、子どもの大学教育まで別居親に貢献してもらいたいというのは、それはそれで当然でして、ただ、それは義務ではないと思うんですよね。義務という言い方をしたらいけなくて、だから、そこに十分に配慮するとかいうような言い方を付け加えることには賛成ですけれども、一般論として、親は、未成熟子なら成人していても親の責任なんだというように読めることを、ちょっとでも書き込むことには非常に反対です。危惧します。 ○大村部会長 ありがとうございます。落合委員からは、先ほどの御意見を補足するような御説明を頂いたかと思います。   伺っていて思うことは、落合委員も、1については反対ではないとおっしゃったかと思いますし、2についても、離婚した夫婦が子どもの大学の教育費について協力するということはあってもよいといった御発言だったかと思います。多分、実質的に議論したときに、どのような規律を置くのかということについて、それほど大きな意見の隔たりはないのではないかと伺っておりました。あとは、書きぶりというか、書いたものがどのように受け止められるかということについて、十分考える必要があるのではないかという御指摘を頂いたと理解をしております。   1について、パターナリスティックではないかといった御指摘もありました。この部会と別の部会で、親権の規定を多少直しておりますけれども、その中で、子の人格を尊重するという趣旨の規定を置くことを考えておりますが、そうしたものと併せて、全体を見ていく必要があるのかと思って伺いました。   それから、2については、やはり成年に達した子につき、一般的にこう書かれていると違和感を覚えられる方がかなりいるかと思いました。これは沖野委員が指摘されたところかと思いますけれども、他方で、石綿幹事が直前におっしゃったように、今の実務を変えるということになるのも困るのではないかということも考えて、では、実際にどうするか、考え方を定めた上でそれを適切に表して、マイナスのメッセージが生じないようにするためにはどうするのかという方向で、更に詰めていければと思います。ありがとうございました。 ○棚村委員 早稲田大学の棚村です。今、部会長からも御説明いただきましたように、私は、第2の1、それから2について、基本的には賛成です。それは、今部会長からも御説明があましたように、民法、家事事件手続法、児童福祉法とか、いわゆる実体法で子どもに関連をする法規というものの改正の動向を見ていますと、子の利益を実現しようという潮流が見て取れます。たとえば、民法の親子法制の部会でも、懲戒権を削除しましょうということで、親の権利、支配権から子どもの権利、人格の尊重、子の年齢及び発達への配慮、体罰等子どもの健全な発達を害するような、有害な影響を与えるような行為の禁止とかを明文で規定しようとしています。これらの動きは、正に子どもの権利、利益を守っていこうという大きな流れの中で、どういうふうな表現文にするかということでは、まだ検討の余地はなくはないものの、基本的には、今回の総論部分での規定は、そういう流れに沿った御提案ということで理解をしています。   それから、特に(注3)のところでは、2ページのところにあります、子の養育の状況を確認する機会を与えるべきというのは、私も前々からお話をしていることです。つまり、海外では、親である以上、子どもの生活の様子とか学校での成績、あるいは住まい、健康の状態とか、知る権利、そのような重要な情報にアクセスする権利というのを認めているところがかなり多くみられます。   例えば、アメリカでも、カリフォルニア州家族法典の3024条、3025条とか、これらの規定では、子どもがどこに住んでいるかということへの通知とか、それから医療、歯科診療もそうですけれども、歯科診療とか学校の状況、こういう子どもの重要情報への親のアクセス権が明文で認められております。ただし、生命の危険とかDVとか、もちろん安全が確保されない場合には、子の情報アクセス権の行使は拒否されたり、開示をしないということもできるというような規定も用意されています。例えば、フランス民法、ドイツ民法でも、これは石綿幹事なんか詳しいと思いますけれども、ある意味では、居所を変えるとか、お子さんの人生の重大な選択みたいなものに関わるということについては、一緒に暮らしていない親にも通知をするということが認められています。   もちろん、こういうような親の情報アクセス権や知る権利は、子どものことについて事前事後に知らせることによって、親としての責任をきちっと果たしてもらおうという考え方が、背景にあるということです。ですから、当然に正当な目的に沿って利用するのではなく、それを濫用して他方との関係をつなぎたいとか、あるいはストーカー的な行為をするとか、濫用的なものは許されないのですけれども、親である以上、池田委員が言ったように、私は権限の行使だけではなくて、義務履行についても、養育状況を知る機会を与えられることは親としての適切な責任を果たすことが求められているという意味で賛成をいたします。   海外の法制とかをもう少し挙げると、例えばロシア家族法でも規定がありますし、そういう意味での、お子さんについては、親である以上、権限を行使するというか、責任を果たしていくためには、お子さんがどこに住んで、どんな暮らしをしていて、学校での様子や健康状態もどうなんだろうかということを知るということは、とても重要なことだと思います。繰り返すことになりますが、そこで得た情報を濫用したり、悪用したり、目的外に使うということについては、それをどう抑えるかというのは、海外の法制上、条文でも規律でも、明確な規定を置いています。ですから、その辺りのところは、親であるから当然にそういう情報を得られるという規定をおくにしても、住まいや学校等の情報を得ることによって、親としての適切な権限なり義務なりを果たすための権限と位置付けられています。その結果、フランス民法でも、一緒に暮らしていない親についても、お子さんの様子を監視したり見守るという、大切な責任はあり、それを果たすために一定の重要情報、どこに住んでいるとか、どこでどんなふうに暮らしているという養育の状況について知るということができるんだという規定を有しています。ただ、それが目的外に悪用されたり、濫用されるということは、もちろん許されないと。   海外の法制がなぜそういうものを置いているかという理由は、やはり親というのが、子どものために重要な責任を果たす存在であるということが背景にあるんだと思います。その辺りのところでは、情報アクセス権とか養育の機会を確認する権限とか、いろいろな表現の仕方はあると思いますけれども、そういう位置付けになっているんだろうと思います。石綿幹事がおっしゃったように、どの範囲でどういうような目的で、どういうようなことが情報として提供されるのか、具体的にどのような内容になってくるのか、どういう場合にはそれが認められないのかということを、規律を置くのであれば、きちっと精査して検討するということが必要だと思います。それから、未成年の子の養育の義務というのは、親として養育に関わったり、養育について特に経済的な扶養の義務もそうですけれども、責任があるんだということは、総論の規定で明確にしておく必要があると思います。   ただし、先ほど来議論になっておりますが、この未成熟子の概念を少し拡張して、障害のあるお子さんとか自立ができない、心身にいろいろ問題があって親に頼らざるを得ないという、成年に達してもそのようなお子さんがいらっしゃるので、どういうふうに規定をするかというのは別としても、実務上も認められたかなり重要な権利だと思いますので、こういう規律を置かないことで、実務や理論でせっかく広げたものを後退させてしまわないか心配です。もちろん、私も、成年に達した子の扶養・養育義務をみとめることで、本来の社会保障とかの充実に対する国の責任を放棄するために、家族に重い責任を負わせるということには反対しますけれども、ただ、家族が果たせるのに、あるいは親が果たせるのに果たさないということに対しても、ある程度一定の制約なり規律を設けておく必要性はあると思います。親相互の負担の公平の観点からも、必要であると感じます。   そういう意味で、ここで提案されていることに、基本的に賛成ですが、若干、権限の行使だけではなくて、義務の履行にも広げるとか、それから、親の現に監護する場合というものも、後で具体的にどういう状況に置かれた親が、どんな場面でどう関わっていくのかという、細かい具体的な議論をするときに重要なキーワードになってくるように思います。現に子を監護する者の範囲についても、実は面会交流と監護ということも、監護の中に面会交流が入っているのか入っていないのかという面では、十分な議論も少なく不明確なんですけれども、一時的でもお子さんと関わって時間を過ごすということは、かなり重大な責任を負うものと理解しています。海外の法制でのスペアリングタイム、ペアレンティング・タイムみたいなことを考えると、これは、数日間一緒にいようが、1時間、2時間一緒にいようが、やはりお子さんについてはしっかり安全・安心・充実した時間にする責任を果たしてもらわなければいけないという意味合いもあるので、この概念それ自体の意味や射程範囲については議論する必要はあると思っております。余り表面的に、形式的に面会交流は一時的なことで軽く考えられたり、監護というのはもうちょっと長いスパンだというだけではなくて、お子さんと一緒に楽しい時間、充実した時間を過ごす親に対しても、一定の重要な配慮義務や、逆に言うと責任、重い責任というのは考えてもらった方がいいという意味で、この概念の提案に対しても、中身をどう捉えるかという問題はあると思いますが、細かい議論が必要であると感じています。それから、監護の問題を細分化したり、分担させる可能性を広げることが、紛争が起こった場合の解決が複雑になるとか、トラブルが多く起こるのではないかという懸念もあると思いますが、親の置かれた立場や果たすべき責任の内容を議論するときの一つのキーワードにはなり得るのではないかと思っておりますし、親子関係も多様化しているときの選択肢の提供や法律関係の明確化に資する面もあると考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。全体として大きな方向性については賛成であるという御意見を頂いたと理解をいたしました。個別の問題についても御意見を頂きましたけれども、特に(注3)について、情報へのアクセスということを一方で考えるとともに、濫用や、あるいは安全確保ということを踏まえて、具体化をしていく必要があるのではないかという御指摘を頂いたと受け止めました。ありがとうございます。 ○大石委員 千葉大学の大石です、ありがとうございます。私はやはり依然として、未成熟子が成年に達した後も相当な期間というところについては、落合委員と同じ理由で反対をしております。   もちろん私も、ひとり親世帯について量的調査などを用いた研究を続けてきておりますので、ひとり親世帯の子どもが大学進学することがどれだけ大変なのかということには、データなどからも、あるいは実態調査などからも、十分に承知しております。ただ、こういった条文を入れることは、つまりは、全ての家庭にこれが当てはまるわけであって、離別世帯の場合にだけ当てはまるわけではないわけです。それは、結局のところ、家族の在り方に非常に大きな影響を及ぼし得ることになると思います。   もう一つには、このような規定がないから、ひとり親世帯の子どもの進学が難しいのだろうかという疑問があります。例えば、養育費の受給率が25%にすぎないとか、離別時に財産分与の取決めがほとんどなされていないというような実情があり、それが累積していって、子どもが大学進学しようとしても、家計が苦しくてなかなか行かせることができないということがあるわけですので、この後議論されるかと思いますけれども、その養育費確保とか離別時の財産分与の取決めなどがなされるようになれば、この条文がなくても進学が可能になることもあるかと思います。   未成熟子で相当な期間というのも、非常に曖昧な言葉というところも引っ掛かっておりまして、例えば、障害のあるお子さんのお母さん方の非常に重い気持ちとか、自分の人生はどこにあるのかといったような声とかも、別のところで聞いていたりしますので、そういう意味でも非常に大きな影響を及ぼすものを決めることになりかねないというところを考えていただきたいかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。大石委員からも、落合委員と同様、成年に達した子についてはなお疑問があるという御意見を頂きました。ひとり親世帯を想定しているようだけれども、しかし、このように書くと、全世帯に及ぶということになるのではないか、また、ひとり親世帯については別の対策を講ずることで、その問題は相当程度解消されるのではないかという御指摘を頂きました。 ○小粥委員 小粥でございます。私が申し上げたかったことは、第2の1に関係することでして、この第2の1の前提には、子の人格を尊重するということがあるだろうということを申し上げようとしておりましたが、先ほど部会長御指摘のとおり、親子法制部会で取りまとめられた要綱において、子の人格の尊重という文言というんでしょうか、方針が取り入れられることになったということでありまして、ですから、第2の1の前提にも、子の人格の尊重ということは当然前提となっているので、これだけ読むとパターナリスティックに見えるわけですけれども、そういう別の柱もこれの前提には含まれることになるんだろうということを、確認したかったということでございます。   具体的にどういうことかというと、例えば、今回の議論の対象内でも、子の財産は子の財産であって親の財産ではないとか、あるいは、子は独立の人格者なのだから、奪い合いの対象ではなくて、1人の人間として見なければいけないとか、そういうところにつながってくることなので、最初の部分でそのことを少し確認しておいた方がよかったのではないかと思っておりましたけれども、言わずもがななことでありました。 ○大村部会長 ありがとうございます。今回の検討課題の全体を通じて、子の人格の尊重という考え方が考慮されるべきであるという御意見を頂きましたが、先ほど、私も、あるいは棚村委員も触れましたけれども、そのことは、現在の家族法立法に当たっては考慮されていることであり、かつ、明文の規定も置かれるだろうということにつきまして、改めて確認を頂いたと思います。 ○佐野幹事 まず、最初に、子を監護する親という言葉ですけれども、実は、この文言が、児福法の6条の保護者の定義、「親権を行う者、未成年後見人、その他の者で児童を現に監護する者」というのとかなり似通っているというところもあります。そして、この児童を現に監護する者というのは、もう少し長く監護している人を想定していると重いますので、言葉として紛らわしいと思ったのが1点です。   それから、2の、先ほどから何度も出ていますけれども、2ページの1の(注3)も、親であることのレベルの話なのか、あるいは親権・監護権のレベルの話なのかというのが、話を伺っているなかで混乱していたところです。古い頭から抜け出ることができないのかもしれませんが、親権とか監護権とのレベルで問題になる情報の扱い方なのではないかと感じております。そのレベル感についても、併せて議論いただければと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。佐野幹事からは、これも出ているところですが、現に子を監護する場合という表現が、他の法律用語と紛らわしいところがあるので、やはり検討が必要なのではないかということと、(注3)は、これも議論出ておりますけれども、どの段階で誰について問題にしているのかということも検討すべきだという御指摘を頂きました。   さらに、柿本委員、菅原委員、今津幹事、久保野幹事、原田委員という順番で御意見を頂戴したいと思います。 ○柿本委員 柿本でございます。原田委員、水野委員の御意見、大村部会長の御意見などお聞きして、いろいろ理解がすすんだところがございます。   大枠では賛成の立場という表明をしたいと思います。ただ1点、やはり未成熟子ではない、成人に達した子どもの教育のところについて原田委員に教えていただきたいのですが、この条文があることによって、展開が変わってくるということなのでしょうか。これがないと、なかなかそれから先に進めないというような状況が、実務上はあるのでしょうか。大村部会長もおっしゃいましたけれども、一般論でいうと、非常にこの文章は受け入れ難いものがございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。成年に達した子について、このようなものを置く必要があるのか、これがないとできないこととはどのようなことなのかという御質問だったかと思います。原田委員には後で御発言いただきますので、菅原委員、今津幹事、久保野幹事、原田委員という順番のつもりでしたが、少し順番を変えて、今の点について何かコメントがあればコメントをいただいて、それから原田委員御自身の発言もしていただくということにさせていただきます。菅原委員、すみませんが、少しお待ちください。 ○原田委員 これがないと駄目なのかというのは、逆に言えば、未成年子に対し、他の直系親族間よりも重い程度の扶養義務という条文があると未成年子に限られてしまうので実務がかなり変わるのではないかということで、懸念をしているということです。   ですから、18歳を過ぎても扶養が必要な場合について触れる必要が出てくるのですが、ここでは成年に達する前に就学している状況という前提のみが付いていますので、そういう意味では、障害のあるお子さんとか、そういう方たちが外れることになってしまうというところもあって、今の実務では、一生面倒を見ろとはなっていないけれども、いろいろ困難があるお子さんについては、それなりの負担をしていただくという方向があって、未成熟子のことを考えているので、そこが問題かなと思いました。   ただ、私、大石先生や落合先生のお話を伺っていて、確かに社会保障との関係は問題で、私も思いますけれども、私が主に思うのは、監護している親と監護していない親の不平等感というのを、すごく感じることになるということがあるので、その辺りを調整する何か策があるのであれば、必ずしもこういう形にしなくてもいいのかもしれないとは思いました。   もう一つ、私が言いたかったのは、先ほど窪田先生がおっしゃったように、親子法制の方で、これは親権を行使する場合はということで、人格の尊重とか、あるいは体罰の禁止というようなものが入ってきているわけですけれども、人格の尊重という意味では、親子関係を規律する、こちらが総論であるのであれば、こちらの方にそれが入ってもいいのではないかと思いましたので、そのことをちょっと申し上げたいと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。原田委員から、この種の規定が入らないと、実務に影響が及ぶのではないかという懸念があるというお答えを頂きました。あわせて、先ほど、このような規定が入ると、別居親の間以外にも影響が及ぶのではないかというような御懸念も示されたところですけれども、監護親、非監護親の間の不平等を解消できるということであれば、形にはこだわらないという御発言も頂きました。   他方、子の人格の尊重というのは、別の部会で議論しまして、法案が通れば規定が入るということになるわけですけれども、それをより一般化した形で、親について置くということを考えてもいいのではないかという御指摘を頂きました。   原田委員、急に順番を変えてすみませんでした。ありがとうございました。では、菅原委員。 ○菅原委員 ありがとうございます、白百合女子大学の菅原でございます。1と3について、簡単に意見を述べさせていただきます。   1につきしては、基本的に賛成でございます。ただし、先ほど戒能委員からもご発言があったところですが、4ページの(2)後段についての5行目の「子の意見又は心情」というところについて、該当する解説部分が分かりにくいという御指摘がありました。この(2)の後段についての5行目の「「意見」は、一定程度成熟している子が特定の考えを持っている場合」ということで、ある程度高い年齢を示しております。その後、「「心情」はそのような考えを持つには未成熟である子や、特定の考えを持っていない子」となっていますが、ここの「特定の考えを持っていない子」という表現の前に、「一定程度成熟していても」といった文言を入れていただけると、「「心情」はそのような考えを持つには未成熟である子や、一定程度成熟していても特定の意見を持っていない子の主観的な状況を示そうとするものである」となり、年齢に関する内容が網羅されるのではないかと思います。これは、子どもの発達からいうと、例えば、8歳であっても一定程度の考えを持てる子もいますし、15歳であっても、そのような考えを意見としてまとめることができないけれども、いろいろな心情がある場合というのもありますので、この辺を整理していただけるとよいのではないかというのが一つです。   それから、1の(注3)に関しましても、やはり同居親と子どもの安全を確保できる範囲において、知る機会がある、といったような内容でまとめていっていただけると、有り難いと感じます。   3番に、法律上の呼称というところで、私も別に良案があるわけではないんですが、これまでの議論の中で、やはり親の責任ということと義務ということの両方を生かした責務という用語がよいのではないかと思います。以前、どこかの回で戒能先生が責務が適当であるとおっしゃっていたと記憶していますが、この用語が適切かなと感じております。 ○大村部会長 ありがとうございます。1について、基本的に賛成であるということを言っていただいた上で、心情という用語についてやはり整理が必要であるということで、具体的な提案を頂きました。それから、(注3)については、安全確保が前提になるだろうということ、そして、3について、責任と義務というところは、責務という表現ではどうかといった御意見を頂戴いたしました。ありがとうございます。   菅原委員まで伺いましたので、今津幹事、久保野幹事ですね。 ○今津幹事 幹事の今津です。第2の2の養育の義務の点について、賛否分かれているところですけれども、意見を述べさせていただきます。   まず、前半部分の義務の程度を書くという点については賛成です。これまでも、解釈上は一段重いと理解されてきたところですし、また、現行法上も、手続法の中には、特に養育費を念頭に、要保護性の高いものとして扱われているところもありますので、そういったものを実体法の中でも規定するというのは、非常の意義のあることかと思います。   それから、後半部分ですけれども、成年という線引き以外に、未成熟という表現をするかどうかはともかく、一定の線引きを、具体的な事情に応じて線引きをするという方向性には賛成です。この点、部会資料の5のところ、それから今までの議論でもありますように、社会保障との関係が問題となるという指摘ありましたけれども、確かにその御指摘の趣旨はすごく理解ができるところなんですが、そこを余り協調してしまうと、逆に、今前半部分で申し上げた未成年の子に対して重い義務を負わせるというところとの関係が問題となるのではないか。つまり、未成年の子であれば、社会保障が後退して、むしろ親の義務が前面に出るということで誤解を招くおそれもあるかと思いますので、線引きの仕方がどこになるかというのは、部会のこれからの議論によると思うんですけれども、ただ、社会保障が前面に出るべきで、親の義務が後退するという言い方を成年の場合にしてしまうと、未成年の場合に逆なのかという懸念が出てきますので、その説明の仕方はもう少し工夫をしてもいいのかなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。今津幹事からは、2について余り意見が出ておりませんでしたが、第1文の方について賛成であるという御意見を頂きました。それから、成年子については、一定の線引きをして、このようなものを認めるということでよいだろうということ、あわせて、社会保障との関係について、成年子についてだけ社会保障との関係で義務を負わせないということになると、未成年子の方にも跳ね返ることはないかという点も考えなければいけないだろうという御指摘を頂きました。 ○久保野幹事 2の後段について、一言意見を言わせていただきます。   成年に達した子について扶養ないし養育の義務を考えるときに想定される事情として、これまでの議論で、引き続き教育を受けさせる、高等教育を受けさせるための負担義務という場面と、様々な事情から就業することができず経済的に自立していないという事情のある場面とが両方出ていたと思うんですけれども、一方で、両者は異なるということ、性質付けや根拠付けや考慮すべきことが異なるということが指摘されており、他方で、余り区別しないような御意見も出ていたと思います。そこについて、区別をして考えてみるということが重要だと思うので、今後に向けてそこが重要だと思いますということを、意見として申し述べさせていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。久保野幹事は、2の成年に達した子について、その中に含まれているものが一様なのかどうか、異なるものが含まれているのではないかということで、教育が必要な場合と、自立が難しいといった場合とをどのように考えるのかということについて、御意見を頂きました。分けて考えてみるということが必要だろうという御趣旨だったかと思います。ありがとうございます。   これで、大体皆さんの御意見いただいたかと思います。総論的なところでありますので、多くの方から御意見を頂きましたけれども、先ほど途中でまとめましたように、おおむね大きな流れとしては、この方向で考えていくということ、幾つかの問題についてなお検討を要するということ、さしあたりそのようにまとめさせていただきたいと思います。   先に進みたいと思いますが、第3に入ってすぐに中断というのもどうかと思いますので、ここで10分ほど休みまして、それから第3に入りたいと思います。現在15時54分ですので、16時5分に再開したいと思います。再開後は第3に入らせていただきます。   休憩します。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開したいと思います。   この休憩の前までに、第1及び第2について御意見を頂きましたので、引き続き第3について御意見を頂きたいと思います。   6ページ以下ですが、「子の養育の観点から見た親権者、監護者及びそれら以外の親の関係の整理」ということでございます。中身については、先ほど事務当局の方から御説明を頂きましたけれども、この後、第4以下で具体的な問題を議論していく際の整理の枠組みのようなものについて、その大枠を固めていきたいということで、御意見を頂戴したいと思っております。第2の部分と同じで、細部についてはいろいろ意見が分かれるところがあると思いますけれども、このような方向で考えていくということについてどうかということと、具体的にどのような点を更に詰めていくべきかということについて、双方について御意見を頂戴できればと思います。   どなたでも結構ですので、御発言をお願いいたします。 ○佐野幹事 12ページの親と第三者の間の定めのところにつき、積極意見ということで申し上げさせていただきます。長年、子どもの法律相談担当をしておりますけれども、やはり今、親戚の家で監護をされている子どもが、愛情を注いでくれるところにいたいと切望しているときに、親が引渡しを求めてくると、その希望を果たす手段がない、そこに何らの法的手当てもできないというところに非常にジレンマを感じております。   前回、行政機関が関与すべき等、いろいろ御指摘がありましたので、私も最近の事例を集めてみました。その結果、再婚の事例としては、概ね児童相談所等公的な機関は絡んでいます。ただ、実親の養育能力がないところを親戚の方がフォローしているために、そのフォロー機能している間は公的な機関は関わらない。しかし、なんらかの原因で、その関係が崩れることによって、公的な機関が入ることになります。   そういったとき、児童相談所等は親族等の監護実績があるという前提で、子の意向も斟酌して、監護実績のある親戚が子どもの面倒を見ると実親とも約束をして、子どもを親族方に戻すという調整をします。ただ、そういった事案の中には、やはり児福法28条などの裁判に耐えられるような明確な証拠まではないとか、子どもが絶対に帰りたくないと言っているし、地域の機関なども今まで決定的な事件こそ起きていないけれども、生来的なリスクは高いと感じているような事案であって、なかなか現状では児童福祉法28条で施設入所の承認を取るというのが難しいというような事案もあり、そういう条件の中で、子どもの安全を何とか関係機関で見守りつつ確保するために、今までの監護者のところに戻すということをやるわけです。   ところが、そこに実親の方が、一度は約束したにもかかわらず引取りに行くということがしばしば起こります。それに対して、いまだ親権停止はハードルが高く、その他、法的に手当てをする方法がないとすれば、親族では子どもを守り切れないということで、一時保護等による子どもの引揚げということになってしまう。子ども自身が、祖父母等、今まで監護されてきた場にい続けたい、そこで愛情を注がれ続けたいと望んでいても、その環境から分離されて施設入所ということになってしまうという事態、児童福祉機関からしても、子どもがいやすい環境のなかで子どもを守る手段がないという現実的な課題があります。   では、里親委託、親族里親とかで担保できるのかといいますと、子どもは激しく在宅措置を拒否するものの、虐待は家庭内で起こっているので、児童福祉法28条施設入所承認が確実に採れるほど資料がそろうか微妙な事案もあります。また、多くの自治体は、親族里親に資力要件も付けていて、里親措置費をつけないと養育できないようなところしか親族里親と認めないという場合もあります。あるいは、親族が県外にいるので県外措置をやりにくい、三親等以内といった要件を付けている場合もあり、親族里親ではこういった事案に対処できないという事情がございます。   ですので、この第三者に監護者を指定することを認めるような方策というのを、法律として新設することは極めて重要であると感じております。  ○大村部会長 ありがとうございます。佐野幹事からは、12ページの(2)親と第三者との間の定めについて、是非入れる方向で考えてほしいという御意見を頂きました。児童福祉法上の現在の運用との関係で問題がある場面を御指摘いただいて、それを乗り越えるためにこれが必要であるという御趣旨であったかと思います。 ○原田委員 原田です、ありがとうございます。まず、この監護者と親権者の分類、権限の分類なんですけれども、このように親権者と監護指定されたときの監護者の権限を分類して、監護者は、子の日常生活に関する事項についての決定と事実としての監護、教育となりますと、現在、親権、監護権と分けられた場合の監護者の権限、実際に行えていることですね、それが大幅に制限されるような感想を持っております。   確かに法律上、親権者しかできないこととか、親権者が代理するというようなことがありますけれども、現実には、監護者が指定されている場合、例えば、高校や大学に入学するとか、あるいは、今、私が担当している事件でも盲腸の手術とか、監護者の同意で全てできているというような状況が、これではできなくなると思われます。できなくなることがいい場合と悪い場合とあると思いますが、親権者と監護者の間の関係がよくない場合に、このように分離をして、しかも公示ということになりますと、監護者の権限が公的に大幅に制限をされるということになりますので、決定できなくなる事態が生じると思われます。   特に進学の場合、入試の結果が発表されてから実際に入学手続をするまでの期間って、すごく短いですよね。その間に協議が整わなければどうなるのかというようなこともあって、そういう意味では、逆に親権と監護権の権限を分けるということになれば、重要事項も含めて監護者が決定するという方が、安全・安心の監護、子どもにとって特にトラブルの少ない監護というが望めるのではないか。親子間なり親同士の関係がよければ、当然親権者なり非監護親も意見を言ったり、子どもにアドバイスをしたりすることもできるわけですので、そのように考えていますし、是非そうしてほしいと、実際に監護親の立場でいろいろなことを伺っていると、そのように思います。   それから、もう一つ、非監護者との面会交流を決定する場合の裁判所の基準の問題、考慮すべき事項の問題ですけれども、ここに、やはり子どもと監護親の安全ということを、是非明示していただきたいと思います。この点は、細矢委員の面会交流に関する論文のところでも、まず第一に安全の問題が触れられていると思いますし、この表現ではそれはちょっと読み取りにくいのではないかなと思いました。ただ、施設とか里親とか、委託を受けている監護者の場合と親との関係が、それでよいのかというのについては、ちょっと弁護士同士で議論したときも、それでいいのではないかという意見と、やはり親の意向をもう少し尊重すべきではないかという意見があって、ちょっと意見が割れたんですけれども、基本的に監護者が安心して監護できるというためには、どうしたらいいかというところを重視していただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。原田委員から2点御指摘を頂きましたが、1点目は、親権と監護権の切り分けについてで、ここに書かれているような整理をすると、現在行われている監護権者の権限が制限されることになるのではないか。その制限には、よい面と悪い面とがあるかもしれないというお話を挟んだ上で、決定ができなくなるという事態が生ずると、それは大きな問題である。監護親の権限を拡大する方向でそのような事態を避けるべきであるといった御意見を頂いたと理解をいたしました。   それからもう一つは、12ページ(3)に考慮要素が挙がっていますけれども、ここに安全ということを明示する必要があるのではないかという御意見も頂戴いたしました。ありがとうございます。   次が、久保野幹事、菅原委員という順番で御発言を頂きたいと思います。 ○久保野幹事 幹事の久保野です、ありがとうございます。先ほど佐野幹事から、第三者の監護者指定について御説明いただきましたところにつきまして、こちら、前回でしたでしょうか、私の方から、第三者として、取り分け祖父母や親戚を想定する場合に、むしろ親との関係で難しいことが生じて、子どもを守り切れないという懸念もあるのではないか、児童相談所の措置ですとか親権停止を適切に使うといったようなことと比較しつつ、慎重に考えた方がいいのではないかと申し上げたことについて、それらの手段との対比ということを詳しく教えていただき、まず、大変ありがとうございました。   教えていただいたところを通じまして、児童福祉が関与したとしても、必ずしも円滑に調整できるわけではないという実情を理解できたように思います。その意味では、監護者指定を用いることの可能性を、積極的に考えてみるということに理解を持ったところですが、同時に、話を伺っていて重要だと感じましたのが、監護者に指定すれば、確かに法的な地位としてはある程度守られるかとも思いますけれども、御紹介いただきましたような実際上の難しさについて、どこまで解消していけるかということについては、監護者を指定した上で、親との間で難しい問題が生じたときに、更にどのような手段を確保し、ルールを作っていくことができるかということに懸かっていくのだと思いますので、その点については、今日の会議の検討項目の中には入っていなくて、次回以降の話だとは思いますけれども、その点の重要性について意見させていただくとともに、お礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。久保野幹事からは、先ほどの佐野幹事の御発言へのコメントを頂きました。このような指定の必要性については理解をしたけれども、監護者に指定をすればそれで十分かという問題については、更に考える必要があるのではないかという御指摘を頂きました。 ○菅原委員 ありがとうございます、白百合女子大学の菅原でございます。同じ12ページの(3)の家裁が定める場合の考慮要素について意見を述べさせていただきます。   このように考慮要素を整理していただいて、とてもよいと思っております。ただし、アの、またイもなんですけれども、Aのところで、「子の発達状況及び心情」となっておりますが、先ほどからも議論がありましたが、ここは、やはり「意見」を入れていただきたいということと、あと、Aは、子の発達状況も重要なんですけれども、現在の心身の健康状態も大変重要なことになると思います。例えば抑うつ傾向がみられるなど様々な健康状態になっている可能性もありますので、Aのところを、「子の発達状況及び現在の心身の健康状況」としていただいて、もう一つ、別建てで「B子の意見又は心情」としていただけるとよいかなと感じております。   イの方も同じように、@が子の生活状況ですが、Aが子の発達状況及び現在の心身の健康状況で、Bで子の意見又は心情としていただけたら有り難いと思います。御検討よろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。12ページから13ページにかけての考慮要素について、子の発達状況及び心情というAの項目を、それぞれ拡大して別建てにすべきなのではないか。発達状況及び健康状態、それから意見及び心情といった整理が望ましいという御意見を頂戴いたしました。   武田委員、畑委員という順番でお願いします。 ○武田委員 ありがとうございます、親子ネット、武田でございます。第3、まず1に関してということです。親権者、監護者、それら以外の親に関する規律の整理ということで、特に今回、現行法上必ずしも明らかでないことという部分を整理して進めていただいたということに関しては、非常によいなと思っています。その中で、今回のこの資料12上での監護者ということに関して、意見を申し述べたいと思います。   この資料上では、主たる監護者を1名決めると読めると思っています。今後いろいろな議論になってくるかと思うんですけれども、身体的監護の割合、これが、例えば70対30%の場合、30%の割合の親は、この資料上でいう現に監護をする親としての権限、義務だけとし、本当に議論、検討ってそれだけでよいのかというのが、現時点で疑問に思っているところでございます。   1巡目で海外法制の御説明を頂きました。諸外国での監護の負担割合、フィフティー・フィフティーというところは、まだそれほど多くないと聞いたと思っておりますが、少なくとも七・三とか八・二の割合というのは、問題なく浸透しているという御説明だったと、理解しております。これらを踏まえると、この主たる監護者を1名決めるという選択肢だけで本当によいのかという検討も、必要かなと思っておりまして、この辺りは、次回の子の離婚に関する事項の決定、この辺りの議論と併せて検討を進めると、こんなふうに現時点では理解をしております。これが、3の1に関してです。   次に、2に関してと、子の監護について必要な事項の取決めに関して、それぞれ意見を申し述べたいと思います。   1点目の親間の定め、対象全ての実親、普通養子縁組における父母も含めるということに関しては、賛同するものでございます。基本的に、このアに記載のある定めのその他の子の監護についての必要な事項、これも恐らく次の検討になる離婚後における子に関する事項、また、居所指定が今、監護者側に入っておりますので、その辺りも含めて協議対象になってくるのかなと、私としては理解をしております。   続いて2点目ですね。親以外の第三者にもということで、この取決めができる監護者、交流に関しての取決めができるということに関しましては、基本的に1同様賛同するものでございます。   あと3ですね。家庭裁判所が定める場合の考慮要素ということに関して、基本的には、方向性はよいと思っていますが、ア、イ、それぞれに関して意見を述べさせていただきます。   アの監護者指定の部分に関しましては、14ページ、@で言及いただいておりますとおり、いわゆる継続性の原則、ここに対して一定の言及を頂いたこと、ここに関して賛同するものでございます。   イの交流の方なんですけれども、ちょっと拝見しますと、現行法での考慮要素、何かそれがそのまま出ているような印象を受けております。未成年者の子の養育に関しては、親子の交流が原則として子の利益に資する、こういったことを理念に置いた上で、13ページに記載の親又は第三者と子の交流に関しての考慮要素を確認していくこと、こんな方向の方がよいのではないかと、こんなふうに考えております。既に我が国においても、面会交流は子どもの健やかな成長のために重要なものであるでありますとか、大切なものであるということで、各所で答弁がなされていると認識をしております。是非この親子間の交流が、原則として子どもの利益に資するという理念を、どこに入れるかという議論はまだあるかと思いますが、是非御検討いただきたいと、こんなふうに考えます。 ○大村部会長 ありがとうございました。武田委員からは、全体として、基本的な方向については賛成であるという御意見を頂戴したと理解をいたしましたけれども、1については、監護者が1名でなければならないという前提に問題はないかということで、これを更に考えていく必要があるのではないかという御指摘。それから、2については、これも(1)から(3)まで基本的には賛成されるということでしたけれども、(1)、(2)については、やはり後で検討すべき個別の問題があるのではないかという御指摘を頂き、(3)については、特にイの要素については、交流が原則であることを理念として、要素を考え直す必要があるという御指摘を頂いたと受け止めました。ありがとうございます。   畑委員、水野委員の順番でお願いします。 ○畑委員 畑でございます。11ページからの2の子の監護について必要な事項の取決めにつきまして、やはり手続的な面についてだけですが、少し述べておきたいと思います。   12ページの(2)の第三者を監護者にするという話については、前回も少し言及したと思いますけれども、手続的にも少し考えるべきところが出てくるだろうということがあります。それから、(1)と(2)を通じて、子どもの申立てということも、やはり手続的には考える必要が若干出てくるかなと思っております。今までの家事事件手続法でいいますと、別表第2の事件になりますけれども、協議で決めることができる人たちが、審判事件の当事者になるという立て付けだったのですが、子どもも申立てができるということになると、そこから少し違う形になりますので、若干検討する必要はあるかなという気はいたしました。   それから、これも前から話が出ていたかどうか、ちょっと分からないのですが、子どもの申立てですとか、あるいは第三者を指定するという話について、皆さん恐らく協議離婚を念頭に置いておられると思うのですが、例えば、離婚訴訟の附帯処分でこういうことができるかというような問題も、関連する事項としては出てくるかと思いますので、もしこういう方向でいくのであれば、考えていく必要があるのかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。畑委員からは、11ページの子の監護について必要な事項の取決めという部分につきまして、手続面からのコメントを頂きました。(1)、(2)を通じて、子が申立てをするという場合、あるいは(2)で、第三者が出てくる場合に、考えるべき事柄があるのではないかということ、それから、協議離婚だけではなく裁判離婚を考えたときに、附帯処分で何ができるのかといったことについても、考える必要があるという御指摘を頂戴いたしました。ありがとうございます。   水野委員、赤石委員、沖野委員の順でお願いします。 ○水野委員 水野でございます、ありがとうございます。1点だけでございます。   先ほどの、12ページの考慮要素を列挙したものの御意見で、発達状況に健康状況を加えるのは全然構わないのですけれども、意見を加えて別建てにすることについては、心配をしております。子どもの状況については詳しく調査する必要があり、子どもがどういう心情であるのかも、十二分に配慮しなくてはいけないと思うのですが、意見という形になりますと、お父さんとお母さんとどっちの方がいいかと聞いてしまいかねない気がいたします。それは非常に残酷な質問になってしまいます。児童の権利条約の意見表明権とも結びつけて、そういう意見聴取を安易に考えることは、非常に危険です。その点は非常に危惧しておりますので、できれば心情でとどめておいていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。12ページの考慮要素について、意見を直接問うということが弊害をもたらすのではないかということで、そこを考える必要があるという御指摘を頂いたかと思います。 ○赤石委員 ありがとうございます。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。2点お伝えしたいと思います。   まず、P11の子の監護についての必要な事項の取決めで、親間の定めとなっておりまして、ここには、親が複数いる場合、ここには養子縁組のときの協議も含めて考えるということで御説明を受けたかと思います。ここがかなり複雑な協議になってしまうので、とても危惧しております。前回養子縁組のときの議論をしたときにも、やはり船頭を多くしてどうなるのかというような意見がかなり出たと思うので、それがどのように反映しているのかなというのが、ちょっと危惧されました。また、別居中のときのことも含めて、やはり主たる監護者の監護によい影響を与えるという意味での協議でないと、ちょっとよくないのではないかなと思います。   それから、(3)の監護者の考慮要素のところですけれども、私の考えが足りないのかもしれないので、ちょっと水野委員のお話も聞いてあれなんですが、やはり子の意見というのをどういうふうに反映するのかというの、ちょっと危惧して言おうと思っていたところですが、どちらがいいのという話になってしまうのはいけないというのはあるんですが、心情と言われたときに非常に曖昧な気がしておりまして、そこをどのように考えたらいいのかなというのは、いつもちょっともやもやしているところでございます。   また、アのD他の親と子との交流が子の利益となる場合における監護者となろうとする者の当該交流に対する態度ということで、ここのフレンドリーペアレントルールが、ある種、形を変えて出てきているような気がするんですけれども、それが大きな重みを持ってしまうと、ちょっとまずいのではないかなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。赤石委員からは、11ページ以下、子の監護について必要な事項の取決めについて、まず(1)親間の定めということで、養子縁組の場合の養親、実親が入るのだろうけれども、その場合には、かなり複雑なことが生ずるが、果たしてそれでよいのだろうかという御指摘。そのほかの場合も含めて、このような協議をすることがプラスになることが前提だろうという御指摘を頂きました。また、12ページの考慮要素については、先ほど賛否両論が出た子の意見について、意見を直接問うのは望ましくないとしても、心情だけではやはり曖昧なのではないかといった御指摘、そして、Dについては、これにどういう重みを置くのかということが問題になるのではないかという御指摘を頂きました。ありがとうございます。 ○沖野委員 今の(2)の親と第三者との間の定めについてです。そのアの方なんですけれども、第三者が監護者という地位で、あるいは子との交流ができることを正面から認められるという、そういう地位が付与される形で子の養育に関わっていくというルートが、あっていいのではないかと思っております。それも、ここに書かれたように、子の利益のために必要があって、かつ、適切な場合にはということになると思います。適切な人を選ぶということだと思うんですけれども、問題は、この判断の適切さがどう担保されるのかということです。しばしば関係者全員が同意をするならば、いい方策が選ばれるだろうということで、関係者の同意に依拠するということは考えられます。そのときに、このアが、親権者と当該第三者との協議だと思うんですけれども、それで果たして適正さを確保できる主体として十分なのかということが気になっております。もちろん、要件として、利益のために必要がある場合、そしてそれが相当とか適切である場合というのが入ると思いますけれども、その要件充足について争うことになるのでしょう。そうすると、不適切であるというときはそれが無効であるといった話を、この後していくことになるのかと思われ、適切さの確保と不適切な選任への対応というのが、気になっております。   それから、関係者として、親権者だけが挙がっているというところなんですけれども、他の親とか、それから先ほど監護者は1人なのかという御指摘もあったんですけれども、監護者が指定されている場合はさすがに違うんだろうとは思いましたけれども、他の親の関わり方とかということも考えなくていいんだろうかというのが、気になったところです。   もう1点は、すごく技術的なことなのですが、8ページの1の(1)親権者概念の整理ということで、ここでは、(注2)に書かれたような三分法の下で、ただ、監護者の地位が親権者となる者のところに統合されている場合もあるという前提で書かれていると思います。具体的には、子の財産管理の関係で、日常生活に関する範囲のものが除かれているのですけれども、一方、監護、教育では、別に監護者を定めない限りは、監護者の権限と同じものが入ってくるということですが、恐らく財産管理なども同じような話になってくるように思われます。誤解をしているかもしれませんけれども、きれいに切り分けられているのかというのを、また次のときにでも整理していただければと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。沖野委員からは2点御指摘を頂きましたが、最初の点は12ページの(2)に関わる問題で、第三者の関与はあってもよいと思うけれども、第三者が関与するという判断の適切さを担保するということが必要だろう。その場合に、同意によってそれを担保するということだとすると、一体誰の同意が求められるのかと、親権者と第三者だけでよいのかという問題があるのではないかといった御指摘を頂いたかと思います。2番目、8ページですけれども、親権と監護権との切り分けがされているわけですが、この切り分けが過不足なくできているかどうかを、再度チェックし、議論する必要があるのではないかといった御指摘を頂きました。   事務当局の方で何かあればと思いますが。 ○倉重関係官 沖野先生から頂いた2点目のところでございます。すみません、資料のミスでございまして、書き直す必要があるということ分かりました。8ページの1のイのところ、これにつきましては、監護者の権限又は義務としている、9ページ(2)のもの全てを含む趣旨でございました。したがって、ここ、イの見出しが不適切というか誤っておりまして、親権者による監護及び教育及び、9ページ(2)のイでいうところの財産管理、これらを含むつもりでございました。本文の方につきましても、監護、教育部分に限定されていない趣旨であり、書き方が「後記(2)ア」になっておりますのは、「ア」に限定する趣旨ではありませんでした。表記の誤りということでございます。したがいまして、アとイを足せば、基本的には、親権者プラス監護者の権限、義務ということで、全体をカバーできるということを、意図していたものでございました。大変失礼いたしました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   次が、原田委員にお願いして、その後、最高裁裁判所にお願いしたいと思います。 ○原田委員 言わずもがなのことかもしれませんが、親子の交流は、原則として子の福祉に資するというテーゼをどこかにというようなお話が若干ありましたが、今まで言われていることは、適切な面会交流と必ず限定が付いておりますので、その点を是非、皆さんも気にしていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。面会交流について、適切なものを行うということに留意をしていただきたいという御意見ないし御指摘を頂きました。   裁判所の後に、池田委員。 ○木村幹事 ありがとうございます、最高裁の木村でございます。大きく2点ございまして、1点目は、畑委員の方から既に御指摘がありましたが、2の子の監護について必要な事項の取決め、(1)親間の定め、(2)親と第三者との間の定めというところで、家庭裁判所が定めるという手続の中で、子が請求するという申立ての在り方が御提案されているわけですけれども、子の請求といったときに、その場合には父母両方が相手方になるのかなど、審理のイメージが気になるところでございまして、こういうところも引き続き、御議論、御検討頂きたいと思います。   2点目が、12ページ(3)の考慮要素のところですけれども、実務の実情を踏まえて申し上げますと、監護者の方の考慮要素のBに「当該子の監護者としての適性」とありますが、それ自体が結論に近いもののようにも思われまして、もう少し具体的な要素が挙げられるのではないかとも思われるところです。例えば、監護者となろうとする者と子との関係性ないし親和性といったことは、重要な要素として考慮されておりますし、このほかにも、監護の能力や意欲といったところも考慮しております。   そもそもBでは、「監護者となろうとする者」とされていますけれども、実務では、父母については、自らを監護者に指定するよう申し立てているか否かにかかわらず、それぞれの者の子との関係性ないし親和性や監護の能力等を検討することが多いと思われますので、例えば「監護者となろうとする者」ではなく、「父母及び監護者となろうとする第三者」といった形にするなど、書きぶりはなお検討の余地があるものと思われます。   また、監護者の考慮要素のAについても、子どもについては、例えば、環境への適応状況や適応力、父母との親和性といった要素も考慮されていると承知しておりますので、そうした観点から、この点の表現ぶりもなお検討の余地もあるものと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。木村幹事から大きく分けて2点、一つは、子が請求する場合の審理のイメージを明らかにしていく必要があるのではないかということでした。それからもう一つは、(3)の考慮要素について、その整理が必要であるという御指摘だったかと思います。特にアのBは非常に漠然としていて、これだと結論そのものということになりはしないか、裁判所で実際に考慮しているものはほかにもあるので、そうしたものを勘案して列挙してはどうかといった御指摘と、それから、監護者となろうとする者を、父母及び監護者となろうとする第三者とする方がよいのではないかといった御指摘を頂いたと受け止めました。ありがとうございました。   池田委員、落合委員という順番でお願いします。 ○池田委員 池田でございます。私は、8ページから9ページにかけての(1)、(2)について2点と、12ページのところの考慮要素のところで1点、申し上げたいと思います。   まず、(1)、(2)の形式的なところですけれども、(1)のアのところで、「排他的な」という文言がありまして、(2)のところでも「排他的な」という文言があるんですが、ちょっとややきつい文言ではないかなと思います。趣旨は理解しているんですけれども、例えば、「第一次的な」とか、あと「専属的な」とかというような、もう少し柔らかい言葉があるのではないかなという意見です。   それから、あと二つ目は、実質的な話で、よく分からないというところをお伝えするわけですけれども、子の重要事項について、ここでの整理は、監護者が指定されている場合でも、なお親権者は子の重要事項について決定の権限を留保するということで、子の重要事項について親権者の権限を残すという話になっていると。ただ他方で、その下の(注2)を見ますと、子の重要事項というのは、次回、部会資料13で議論する離婚後の父母双方の関与というところにも影響を与えてくるという記載がされています。その場面で、どんな一巡目の議論があったかと思い返しますと、これら重要事項については、親権者、かつ、監護者がいるんだけれども、親権者でもない監護者でもない親にも一定の関与を認めるべき事項として、子の重要事項というものが想定されていたと。つまり、親権者、かつ、監護者であるにもかかわらず、単独では決められないというふうな規律になり得るという提案だったと思うんですけれども、これというのは、この8ページ、9ページでいう(1)と(2)の規律とちょっと、やや整合しないんではないかなというところがちょっと分からないところです。というのが、(1)のイでは、監護者と親権者が重なる場合には、全き権限を有するというふうなことが書かれてあるんですけれども、離婚後の場面になるとそうでもないというふうなことになるのは、どのように考えればいいのかなというところが、ちょっと分からないなという意見です。   ただ、見方を変えると、継続的に監護している者でも、子の重要事項に限っては単独では決められないよと、親権者がほかにいれば、親権者の意見を聞かないといけないし、ほかに親権者でない親がいる場合でも、何か意見を聞くなり関与を求めなければいけないよということで、監護している者の権限を一定程度、子の重要事項に関しては制約するんだという視点であれば、統一的に考えられるのかなと理解をしましたけれども、そのような理解でいいのかどうかというのを、ちょっと教えていただければと思います。   それから、12ページの考慮要素のところで、先ほど来御意見があった子どもの意見というのを入れるのかどうかというところですけれども、私は入れるといいのではないかと思います。これは、先ほどの第2の1のところの議論にもちょっと関連しますが、子どもの意見又は心情の尊重というところは、恐らく下敷きとしては、子どもの権利条約の第12条があるんだろうと思います。そこでは、子どもの「意見」となっているんですけれども、英語の原文で見ますと「views」となっていて、必ずしも「意見」というのが適切な訳ではないとも言われていて、「見解」と訳している例もあるようです。ただ、法律の文言に落とし込むときに、「見解」ということはなかなか書きにくいだろうと思いますので、そこを分解して、「意見又は心情」とお書きになったのではないかと理解しておりまして、その意味で適切ではないかと思います。   それに関連して、先ほどの第2の1に戻ってしまうんですけれども、「尊重」というところに一つだけコメントさせてください。子どもの権利条約12条1項の政府訳では、子どもの意見は「相応に考慮される」ものとすると書いてあるんですけれども、これも適切な訳ではないのではないかという指摘もあります。原文では、「given due weight」となっておりまして、しかるべく重きを与えられるとなっているところで、相応に考慮されるというのでは弱いのではないかという指摘もあります。ですので、ここを「尊重する」と第2の1で書いた場合には、子どもの権利条約の政府訳について言われているそういった、ちょっと弱いのではないかという指摘に十分応える、重みを持たせるという方向性の書きぶりとして評価できるではないかなと思います。自己決定という観点からは弱いのではないかというご指摘もありましたけれども、子どもの権利条約においては、必ずしも自己決定を前面に押し出しているというところではなくて、子どもの意見表明と参加ということを定めているところですので、十分この内容で、子どもの権利条約の求めている内容に適合するのではないかと考えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは、8ページについて2点御指摘を頂くとともに、12ページの考慮要素について1点御意見を頂きました。   8ページに関わる御指摘の方は、排他的という言葉が出てくるけれども、9ページもそうですが、意味は分かるけれども表現としてどうかということで、別の案も御提案いただきました。それからもう一つは、8ページに出てくる重要事項というのが、後の議論とどういう関係に立つのかという御指摘だったかと思います。後で事務当局の方から補足の説明を頂いた方がいいかなと思います。   3番目は、先ほどから出ている12ページの意見ということについて、入れた方がいいだろうという御意見を頂くとともに、子どもの権利条約で使われている用語を日本語に置き換えたときに、幅を持つような言葉が必要なのではないかという御指摘だったかと思います。あわせて、2ページの尊重ということについての御指摘も頂いたと受け止めました。ありがとうございます。   落合委員、それから今津幹事という順番でお願いします。   その前に、今の池田委員の第2点について、事務当局の方でもし何かあれば。 ○倉重関係官 まず、8ページのうち、1点目の方でございますが、ちょっと排他的という部分につきまして、こちらに書かせていただいている文言というのは、必ずしも最終的に法文に反映させられるというわけではないところかと思います。最終的には、法制的なものや、ほかの法令、若しくは民法内における用語の使い方等の調整が必要になりますので、このものがそのまま法文になるようなイメージで、今やっているわけではないということを、御理解いただければと思います。ここは、飽くまで分かりやすさの観点でちょっと使った言葉というところでございました。   その上で、2点目でございますけれども、基本的には、この親権者と監護者の概念につきましては、1巡目における離婚後の子の養育に関する双方の決定というもので使った三分離、意識してはいるところでございます。これ、正に(注2)に書かせていただいているところであるということになってございます。もっとも、ただ、ちょっとそのとき、特に子の居所の指定の在り方というのがどこに入るべきかというのは、1巡目からも相当議論になっているところだと思いますし、またこれは、次回会議においてまた御議論いただくところかと思ってございます。   我々としては、次回の資料も含めて、少し整合的に整理できるのではないかとは考えているところでございますが、ちょっとそことの整合性が付いているかどうかというのは、また次回、厳しく御批判いただければと思っているところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。また次回の議論を経て、検討をする必要があるかと思います。   落合委員、今津幹事という順番で御発言を頂ければと思います。 ○落合委員 この親権者と監護者と、それから現に子を監護する親という間の関係で、ちょっとまだよく分かっていないところがあるので、確かめるための質問です。   親権者の持っている権限と義務の中の一部が、監護者に当てられるということなんですよね。重要なことだけが親権者に残って、日常に関することは、監護者の方が優越するわけですか。意見が分かれたときに、どっちが優先されるのかということについての質問です。日常については監護者、重要なことについては親権者が優先ということなんですよね。それでも、日常に関することというのが実は重要なんだという考え方もあると思いまして、親権者と監護者が同じことについて意見が分かれるということはあると思うんですけれども、それはどのように処理するのかというのが、一つの質問です。   それから、現に子を監護する親というのは、結構分かりにくいカテゴリーだなと思うんですけれども、こういうカテゴリーの作り方は、ほかの国でもしていることなんですかね。それから、今のところを説明するのに、面会交流中の別居親というような、何かすごく唐突な感じがします。例えば、里親とか養親とかいう言葉を使って、養親に監護権がある場合の実親は、例えば、現に子を監護する親になったりすることがあるのかなとか、何かもう少し、里親とか養親とか、もっと違う大きい種類の親との関係での説明がされているといいと思うんですけれども、その辺りについてちょっと教えてください。 ○大村部会長 ありがとうございます。落合委員からは、親権者、監護者、それから現に子を監護する者の関係について御質問を頂きました。二つありましたが、一つは、重要なことは親権者が決定するということでよいのかということ。意見が分かれるようなもの、共同で考えるべきものはないのかといった御質問だったかと思います。それから、もう一つは、現に子を監護する者というものの広がりというかイメージというものについて、もう少し説明をしていただきたいということだったかと思いますが、お願いをいたします。 ○倉重関係官 2点ございますが、ちょっと2点目の方から先にお答えをさせていただきますと、こちらは、まず親に関する権限及び義務という形で整理をさせていただいているところでございます。したがいまして、冒頭、参事官の方からも述べたとおり、そこで言う親は、法律上の親を観念しているところでございまして、いわゆる里親についてはこちらには含まれないものと考えているところでございます。里親の権限につきましては、ちょっと契約類似で、親から委託されたような場合については、契約類似のものとして考えたり、若しくは、児童相談所経由で行っている場合については、児童福祉法上の規律によって、こういったような権限及び義務を考えていくというようなことを想定しているところでございます。   それから、ちょっと1点目の方に戻らせていただきますと、現行法におきまして、監護者指定をされている場合に、親権者と監護者の意向が分かれたとき、どういうふうに解決されているのかというところが、ちょっとよく分からないところであると。そもそも、監護者指定されているときの監護者の権限が何かということすら、実は現行法上よく分からないのではないかというのが、こちらの資料の問題意識ということになってございます。その上で、例えば、親権者変更の場合でありますと、家庭裁判所の関与が必要であるというのに対して、監護者に関してはそうなっていない。そうすれば、監護者の権限及び義務というのは、おのずから限定されてくるのではないかという問題意識がこちらでございました。   その結果としまして、落合委員から御指摘ありました、親権者と監護者の意見が対立する場面というのが顕在化してくるわけでございますが、そういった場合につきましては、例えば、監護者指定の取消しであるとか、そもそも親権者の変更であるとか、そういったような手段において解決することができないか、若しくは、緊急を要する場合には、その保全等を含めて考えることができないのかなというのが、基本的には現行法と連続性のある解決手段として考えられるところかと思っているところでございます。   ちょっと、十分な回答になっているか分かりませんが、以上、取りあえず御回答させていただきます。 ○大村部会長 重要な事柄については、親権者が決めるということかという御質問があったと思いますけれども。 ○倉重関係官 すみません、監護者指定されている場合については、親権者が重要な事柄を決定し、監護者が日常的な事柄を決定するということになってございます。といいますか、元々の仕切り自体は、親権者というのは重要な決定をする職務、職責を負う人と整理をさせていただいて、監護者が特に指定されていない場合には、親権者がその監護者としての職務を負うというような形の整理をさせていただいているというとこになってございます。 ○大村部会長 現在の状況は、そのような整理になるということかと思います。その上で、先ほど池田委員だったか、御意見が出ましたけれども、重要な事項について、親権者が単独で決定するということについて、違う規律を導入するかということは、この後の問題としてあるということですね。 ○倉重関係官 おっしゃるとおりでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○落合委員 すみません、里親ではなくて、養親の場合はどこに入ってくるんですか。 ○倉重関係官 失礼しました。養親が現に子どもと一緒にいる場合については、正に(3)の規律ということになってございます。ちょっと面会交流中の親というのが唐突だということであれば、ごめんなさい、養親って、養子縁組された場合で、その養親さんというのは親権者でも監護者でもないという前提でございますか。 ○大村部会長 逆ではないですか。 ○倉重関係官 養親さんが、少なくとも、例えば、養親縁組された場合、通常は養親が親権者になるわけでございますので、そういった方が、現に一緒にいるお子さんに対して、日常的な何らかのことを決定するというのは、(3)の規律に正に乗ってくるところかなと思ってございます。 ○大村部会長 養子縁組がなされて、養親が親権を行使しますね。しかし、その養親と実親の間で何か協議がされて、実親が子どもを現実に監護しているというときには、現に子を監護する者に当たるのではないかという御指摘なのではないかと思いましたが。 ○倉重関係官 実親がでございますが。その場合は、実親も含まれるということになります。すみません、親という地位を有していれば、子の条件に当たれば、この(3)の規律に乗ってくると、そういうような理解でございます。 ○大村部会長 そういう御質問でしたよね、おそらく。 ○落合委員 はい、そうです、ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○今津幹事 幹事の今津です。ちょうど今、話題に挙がっていた9ページの(3)のところなんですけれども、今回資料を拝見して、私はこの面会交流中の別居親が例として挙がっていることは、特に違和感を覚えなかったんですけれども、親権者でも監護者でもない、法的にはそういったものを持っていなくても、現実に子どもと一緒にいる人にこういった権限とか義務を任すという、そういう趣旨だと理解しました。   この中に、これは全ての親に適用されるという形になっているんですけれども、ちょっと気になったのが、親権とか監護権を現に持っていなくて、かつ、裁判所の審判等で、本来の親権者や監護者に子を引き渡せという形で命令が出ている状態の方、その命令に違反している状態の方についても、このような権限なり義務なりを認めるのかというのがちょっと気になって、特に権限を認めるという表現が、義務違反の状態にありながら、子に対しては何らかの権限を持つという表現は、少し違和感を覚えるところもありましたので、この点、親権者、監護権者の同意の下で子どもと一緒にいる人と、必ずしもそうでない人というのが、もしかしたらいるのかなと思いましたので、その辺り、特に区別しなくていいのかどうかという点についても、御検討いただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。今問題になっている、現に子を監護する親というものがどういう状態であるかということで、区別して考える必要があるのではないか。監護権者の同意を得ている場合とそうでない場合と同じなのかどうなのかという御指摘を頂いたと理解をいたしました。ありがとうございます。 ○菅原委員 ありがとうございます。先ほどの12ページの(3)の家裁の考慮要素のBですね、水野委員、それから池田委員から御意見いただき、ありがとうございました。   確かに水野委員がおっしゃったように、ここに意見とぽんと出ると、必ず意見を聞かなければ、となるのは、確かに厳しい場合も出てくるかと思いますので、例えば、「子の心情及び子の自発的な意見」というように、自発的に意見が語られた場合には、それが考慮の対象となる、というような書き方ができるとよいのではないかと思いました。法律的な表現として適切かどうか分からないんですけれども、無理に意見を引き出すことがないようなストッパーがあった方がよいかなと感じました。お願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。意見を考慮するということについての危惧に対して、対応策を考えられないだろうか。意見が自発的に述べられたら、それを考慮することができないだろうかという御指摘を頂きました。   そのほか、この第3について御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   第3については、親権者と監護権者の権限の切り分けの仕方については、検討すべき点が残っているところですけれども、このような形で整理をしていくということについては、おおむね皆さんから賛同を頂いたのではないかと思っております。   それから、12ページから13ページにかけての家庭裁判所が定める場合の考慮要素につきましては、直前にあった子の意見をどうするのかという点を含めまして、様々な御指摘がありましたので、これについては、中身を更に検討する必要があるかと思っているところでございます。   一応、そういうことで先に進ませていただきたいと思います。   それから、養子に関わる議論、落合委員とか、あるいはその前に赤石委員から御発言がありましたけれども、これはまた、養子に関する議論の際に具体的な場面を想定して議論をして、それを反映した形でこの一般論の部分を必要ならば修正するということになろうかと思います。   そこで、第4に入らせていただきますが、余り時間は残っておりませんので、今日のところは、15ページの第4の1の離婚時の情報提供に関する規律について、御意見を頂きたいと思います。残りは、すみませんが、次回に回させていただきたいと思います。   15ページ、1の離婚時の情報提供に関する規律につきまして、御意見があれば頂戴したいと思います。 ○棚村委員 早稲田大学の棚村です。第4の1の離婚時における情報提供で、講座の受講というところがあります。離婚前後の講座の受講といったときに、イメージとして、集団型の講義を受けるようなイメージだけではなくて、もう少し幅広い形でのガイダンスという教育的な働き掛けとか、幅広い情報提供や啓発活動という意味合いで考えていただけるといいかなと思います。これは、海外でのいろいろな先進的に取組を見ていますと、どのタイミングでこういうような集合型ガイダンスを、誰を対象に、どのような内容で実施すべきか、あるいは、場合によってはオンラインという、コロナの時期もありますけれども、割と距離が遠かったり、時間や費用の節約のためにも、オンデマンドとか、そういう形の集合型というか、共通カリキュラム型の講座受講の義務付けという傾向もみられます。皆さんが自由に各自でいろいろ見られるというメリットもあります。これに対して、葛藤が高くなったり、個別の問題が顕在化しているケースでの個別の相談支援型、かなり専門家が関わった個別ガイダンスというか個別カウンセリング的なものも併用しているということが一般化しており、その辺りについて、おおむね私は離婚時の情報提供や講座の受講については賛成はしています。しかし、効果的な親ガイダンスの実施の仕方とか内容については、さらなる検討や議論が必要です。   次に、特に実施主体でいうと、海外は大体裁判所が中心になって、できるだけ話合いや合意をうまく作っていきたいということですので、裁判所が中心になるんですけれども、司法の体制にも限りがあるので、様々な形で民間の機関にそれを委託するとか、あるいは社会調査みたいなことを実施するような機関にさせるという方式が一般的です。欧米諸国では、裁判所が起点になるんですが、これは、裁判離婚が中心であるからで、むしろ協議離婚が9割ぐらい占めている日本ですと、市区町村とか都道府県とかそういう身近な行政がどう関与するかということが課題となると思います。そこで、私自身は、もちろん裁判所がやっている親ガイダンスとか、そういう親教育みたいなものもあり得るのですけれども、それは、調停などの紛争の解決の実効性や効率性を高める趣旨で行われるものであって、自治体や行政が提供する親ガイダンスとは異なった目的を持つものと考えます。司法型の親ガイダンスも、先進諸国では、最近はむしろ集合型よりももう少し個別専門化して、きめ細やかなものに代わってきていますので、裁判所の親ガイダンスも、当事者やタイミングみたいなものを個別化柔軟化してうまく使った方がいいのかなという考えを持っています。   ですから、集合型にしても親ガイダンスや講座ということをイメージするときに、市区町村だと、それぞれの体力とか財政規模とかいろいろなことで、実施のばらつきみたいなことが生ずるので、私自身は、広域の自治体である都道府県、こういうところで責任を負っていく。しかし、プログラムの内容と実施方法については、かなり高度で専門的な知見やノウハウというのが必要になってきますので、それを提供するのは、むしろ厚生労働省とか法務省とか、裁判所とか、いろいろなところが連携して、プログラムの内容とかそういうことについては研究開発が必要であったり外部の有識者を入れて専門的に検討していくとか、そういうことがかなり重要になってくると思います。   そして、今度は義務化のところですけれども、これが努力義務みたいな形にするのか、義務として受けないと次のステップに行けないとするかという点です。海外の先進的な動向を見ますと、集団型のものとかオンデマンドみたいな形のものについては、ある意味では、日本での免許の更新のときの講習のように、違反が多い人についてはちょっと長めのものやるとか、少しプログラムの内容を変える、逆に言うと、一般の方で早期にこの程度の情報を受けてほしいという方の場合には、短めの時間で簡単なテストみたいな、振り返りのテストみたいなのを受けていただいて、それを受けた人については次のステップに進むというようなことで、かなり今は簡素化が進んでいる感じがします。30年前に私はアメリカの親教育プログラムの内容につきいろいろ紹介したんですけれども、最近の動きというのは大きく変わりつつあります。そこで、日本でも、海外での取り組みや自治体での取り組み例を参考にしつつ、コロナもありまして、集合型、個別的なガイダンスの仕方、それから、どのタイミングでどういう形でするかというのについては、いろいろ検討した方がいいとは思います。   もちろん、離婚時の情報提供や講座の受講を置いていくということについては賛成です。取りあえず、ガイダンスについては、基本は賛成ですけれども、実施の方法とか、それから実施主体とか、それから義務化するかしないかというのは、海外は、実績や成果を上げていったときに義務化しているところが増えてきています。これは、合意でいろいろ決められればいいんですけれども、合意を作れるような最低限度の土台というか、ある意味で意識を共有してもらうとかという、教育的な働き掛けを任意にしますと、なかなか参加してもらえないというようなことも起こってくるので、割と義務化していく方が主流になってきています。ただ、そのためには、実施主体とか実施する内容、プログラムの中身・コンテンツ、どういうタイミングで受講させるかというようなことがかなり固まってこないと、この義務化というのが直ちに出てくるわけではなくて、そういうものが積み重ねられて、しっかり効果、働き掛けをした効果が上がっているということになれば、義務化もしやすくなるということです。この分野については、長らく研究したり調査してきたものですから、DVとか暴力とか、そういうことへの情報収集を第一段階でやる場合に、この親ガイダンスというものの受講とか登録の際に、暴力やリスクについての情報を取った上で、関係機関が、DVとか暴力対策のために、ここでの受講のときの情報を活用しているのというのもありますので、ある意味では、早期のできるだけ早い段階での、こういう講座を受けるとか受けないということで、次のステップにどういう形で、安全対策とか安心対策ができるかということも掛け合わせながらやっています。それで、調停という制度とか、日本でいうと裁判所の調停とかそういうところとか、専門の相談機関につなぐということも、この講座の受講みたいなことを通しながら、アクセスをさせていって、振り分けをして、スクリーニングをしていくという意味でも、私はこのような大事な試みではないかと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。基本的には、この方向に賛成ということで、その方法、形態には幾つかのものがあり得るだろう、それから、実施主体について、自治体ベースだろうけれども、ばらつきを解消する必要があるという御意見を頂きました。義務化の進め方についても、また御意見を頂戴いたしました。   菅原委員、落合委員、それから最高裁の木村幹事という順番で御意見を頂こうと思います。 ○菅原委員 ありがとうございます。では、手短に申し上げます。今、棚村先生がおっしゃられたように、「講座」の内容については今後練っていくことが必要ですけれども、離婚時の情報提供に関する規律を設定していただいたことは非常に有り難く思います。講座に参加することによって夫婦の高葛藤の解消のきっかけにもなりますし、子どもへのネガティブな影響を予防するという意味で、すごく意味があると考えます。   提示していただいている案ですが、1の(1)につきましては、もちろん圧倒的に案@に賛成します。ただし、難しいケースもあると思いますので、「原則として父母の双方」とすることが望ましいと考えます。   それから、(2)の講座の内容でございますが、やはり案@、案Aの両方をやっていただかないと、子どもに対する影響という根本的なところの解消に進まないかなと思いますので、@に加えてAを基本にして、必要な人にはBの情報を提供するという形式はいかがかと思います。   ただ、(3)の受講方法は、先ほど棚村先生もおっしゃられていましたが、個別に受講が可能なオンラインとかオンデマンドとか、現代的な方法をよく検討していくことが必要だと思いますし、また必要な人にはカウンセリングなどよりディープな支援も供給できるようなシステムが望ましいと考えます。よろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。基本的な方向に賛成ということで、今、その選択肢が出ている部分について御意見を頂戴いたしました。(1)については案@、(2)については@、A、プラス、場合によってはBといった御提案いただきました。 ○落合委員 私も、この最初のところは案@、父母双方でないと意味がないなと思っています。   それから、全体的な構えなんですけれども、親業講座みたいな感じがしてしまうと、あんまりよくないのではないかなと。むしろ離婚後、いろいろ困ったときの養育支援など、そのための情報提供なんだというのが分かるような名前にした方がいいのではないかと思うんですね。今はちょっと、説教くさいかもなというイメージを与えるような気がします。ですから、養育支援講座に例えばするとか、養育支援プログラムとか、養育支援なんだと、親業ではないんだという感じを出したいなと思います。   内容としては、(2)の方は、@からBまで全部必要だろうなと思います、ひとり親になる人が出るわけですしね。それから、方法なんですけれども、簡単な紙を配布するとかいうようなことは、今もしているんでしょうか。地域によって違うんですかね。協議離婚したときに、最低これだけは知っておかないといけませんよみたいなことが紙一枚になっていて、それを必ずもらうとか、協議離婚の提出をするときに、受講を確認するみたいな形にそれがなっていてとか。受講を任意にしてしまうと有名無実になると思いますので、例えば、そういう紙一枚でもいいので、持ち帰ってもらうと、そこからいろいろなオンラインの情報に届くとか、そういうものがまず最低限必要なのではないかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。選択肢になっているところについて御意見を頂くとともに、用語について少し考える必要があるのではないか、養育支援のためであるということが前面に出る方がよい、それから、やり方については、最後は紙一枚でも必ず渡るようなことを考えた方がよいのではないかということだったかと思います。   最高裁の木村幹事、それから武田委員、窪田委員という順で、御意見を伺いたいと思います。 ○木村幹事 ありがとうございます、最高裁木村でございます。まず、事務局の方にお聞きしたかったのが、第4の1の(1)の(注1)で、「なお、本文の規律の下でも、離婚後養育講座を受けなくても、裁判離婚をすることは可能である。」といった記載がありますが、この記載の趣旨はどういった点にあるのかを確認したいと思います。   その上で申し述べたいこととしましては、一部の裁判所では当事者に対する任意のガイダンスを行っているものの、子の養育の問題に目を向けてもらうということが当該紛争の円滑な解決に資するといった観点から一般的に行っているものでございまして、今回議論されている行政による一般的な情報提供とは、その目的や位置付けを異にしています。特に(2)のところの案Bのような福祉的な内容について、裁判所が講座を実施するということは、裁判所の本来業務との関係で想定し難いように思われます。また、こういった離婚後を前提とする講座の受講を、裁判手続の利用者に義務付けるといったことを考えてみますと、当事者間で離婚そのものが激しく争われていることが多いということもありまして、そのときに困難な問題が生じてくることも予想されます。いずれにしましても、裁判離婚の場合との関係で、離婚後養育講座の規律を検討するに当たっては、このような問題にも留意した上で議論していただく必要があるのではないかと考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。裁判所が提供する情報ないしガイダンスと、行政が一般に提供するものとの間に差があるのではないか、これも、先ほど棚村委員も少し触れられたところかと思います。それから、ガイダンスないし講座が、離婚訴訟に困難をもたらすということも考慮すべきだという御指摘を頂きました。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。どういう呼称がいいのか、親プログラムと呼ぶのかという話は置いておきまして、やはり現在の運用が、1巡目の議論でも意見のあったとおり、当事者任せすぎる、落合先生から今も、紙っぺら一枚、何かあるんですかみたいな話もありましたけれども、現在は基本的に何もないというのが大前提だと、私は、経験した立場から申し上げたいなと思っています。したがいまして、やはり協議離婚が90%超える、この我が国で離婚時における講座の受講、要件にし切るというのは、なかなかハードルもあろうかと思いますが、やはり要件化する方向で検討を進めるべきと思います。   この親プログラムって何だろうと、国内でもいろいろな試行がなされています。棚村先生のように、私は研究者の立場で発言することはできないんですけれども、こういう葛藤の中で、自分自身がこういうものを実体験してみてどうだったかという観点で、少し述べたいなと思います。   やはり内容に関しては、他の委員の先生方もおっしゃったとおり、法的情報だけでは十分ではない、そんなふうに思っています。要は、離婚のときに子どもにどんな影響を与えるんだろう、あと、離婚後に父母が子どもの養育に継続して関与すること、こういったことの大切さであるとか、そのためにどういう知識やスキルが必要なんだろうかとか、こういうお話が多かったかな、そんなふうに感じております。なので、ちょっと今回の題に対する意見としましては、やはり基本的には父母双方の参加によって、少なからず@、法的な部分にとどまらず、心理学的知見も取り入れた内容にする、これが、菅原先生からも今、葛藤を下げるような御発言もありましたが、そうすることが必要であろうと、思っています。   こういった親プログラムの効果として、こういう心理学的な見地も含めて受講することによって、我々は当事者からよく聞くんですけれども、子どもに離婚のことを話せるようになったでありますとか、親の対立に子どもを巻き込んではいけない、こんなふうに思えるようになったとか、少し上級になりますと、元々の配偶者と子どものことに関して話せるようになったとか、こんなような話もよく聞くところでございます。私も幾つかプログラム参加させていただきましたけれども、子どもへの配慮、こういったことを体系的に学べること、ここは非常によいものなのかなと、離婚に直面する当事者として、率直にそう思いました。   あと、我々もいろいろなこういった国内で研究されている親プログラムの資料でありますとか、あと、私ども独自でも、例えば、海外の親プログラムの紹介動画、こんなものもありまして、字幕を私どもで付けた、このようなものもございます。ちょっと著作権の関係でこの場にお出しするのは難しいんですけれども、もしよろしければ、どんなものなのかということを御紹介することも可能ですので、もし御要望あればおっしゃっていただければなと思います。   最後、実施主体に関してです。これは、棚村先生もおっしゃったように、基本的には自治体が望ましいと思っています。自治体の中でも、最近東京都内でも、港区でありますとか、いわゆる養育費とかADR的なことに助成する自治体が増えています。規模的に、私どもこういう検討を、各基礎自治体でできないものかというところで、いろいろな自治体に回った経験もあります。しかし、どこでも言われるのは、明石のような中核市は別なんですけれども、人口四、五万程度の自治体で、これを自前でやり切るというのは非常にしんどいという意見が多かったのが実態です。なので、棚村先生のおっしゃったような、やはり広域自治体というのが受皿になるのかなと、そんなふうに思っています。   あと、自治体が望ましいと思っている理由なんですけれども、今、裁判所でも試行的にプログラムやっておられるということは存じ上げております。ただ、私のイメージとしましては、裁判所で実施するとなると、どちらかというと高葛藤、葛藤の高めの父母が対象になり、もっと葛藤を下げていくようなプログラムになるのかなと、そんなふうに思っています。なので、どちらかというと、葛藤の程度を中葛藤とかいう表現が正しいのか分かりませんけれども、葛藤がそれほど高くない御両親に対して、広く身近な自治体で、実施するのがよいのではないかなと、こんなふうに感じております。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員からは、当事者の観点に立って、内容については案Aのように心理学的なものを含んでいる方がよい、それから主体については、高葛藤な場合はともかくとして、そうでなければ自治体が身近でよいのではないか。また、このような講座には、効果があるのではないかといった御感触を頂きました。ありがとうございます。 ○青竹幹事 大阪大学の青竹と申します。2点ございまして、まず、養育講座の実施の仕方ですけれども、全国の家庭裁判所では既に実施しているところがあるということですけれども、例えば、大阪家庭裁判所では、集団ガイダンスを実施し、月に8回ほど、男女に分かれて実施していると伺いました。90分で実施しているということでした。離婚調停を申し立てた人には必ず呼び掛けます。ただ、実施率は高くなく、20%ぐらいと聞きましたが、受けない人でも、QRコードを配って、最高裁判所のホームページでしていますので見てくださいという形で、受講してもらっているということでした。効果的であると伺っております。   次に、義務付けの点で、義務付けることで反発がと御指摘が出たかと思うんですけれども、義務付けないということになると、現在の大阪家庭裁判所での実施率のように、受講率が低いということになりかねないですので、やはり義務付けが必要なのではないかと考えております。ただ、いろいろな事情がありますので、受講しなければ離婚できないという形ではなくて、義務付けながら、それを、例えばですけれども、法文化するのであれば、ただし、受講できない特別の事情がある場合には免除するといったような形で設けるか、あるいは、運用のところで、受講しなくて離婚届を出しても受理して、しかも、それが取消し原因にはならないといったような仕方もあるのではないかと考えております。義務付けということは、少なくともしなければ意味がないのではないかと、私自身は考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。裁判所での具体的な取組や義務付けについての御意見を頂戴いたしました。   第4について、1の離婚時の情報提供に関する規律という部分についてだけ、御意見を頂きました。2以下は次回に回させていただきたいと思いますが、最後に、先ほど落合委員から御発言があったときに、今どうなっているのかということをお尋ねありましたので、事務当局の方からごく短く、お願いできますか。 ○北村幹事 落合委員、それから武田委員の方からも御指摘ありましたけれども、離婚時、何か案内をしているかということ、パンフレット等を離婚届を取りに来た方にお配りするとともに、最近の取組として、厚生労働省、内閣府と協力して、それぞれ必要な情報が届くように、一枚ものの表裏のリーフレットも用意して、戸籍の窓口あるいはひとり親支援の窓口でも配布していただくようにお願いするなど、情報提供を行っている、そういった運用上の改善も行っているところではございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○原田委員 原田です。第4のところについての意見について、今日、もう時間もありませんし、次回の冒頭にでも少し発言させていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。では、原田委員に次回発言していただいて、それから次回の項目に入りたいと思います。   先ほど申し上げたように、本日は第4の1についてまで御意見を頂いたということで、次回は17ページ、2以下について、資料の残りの部分について御意見を頂くということにいたします。   その後、次回の検討項目ですが、本日、参考資料の12−1として配布していただいたものを御覧いただければと思います。4の子の監護について必要な事項の定めに関する手続的な規律、今回の資料は、実体的な規律でしたけれども、これに対して手続的な規律というのが4になります。そして、5として、父母の離婚後における子に関する事項の決定についての規律、本日も多少話題になっておりましたけれども、この部分について、事務当局の方で資料を用意していただきまして、御議論を頂きたいと考えております。   ということで、多少時間過ぎましたけれども、本日の審議はここまでとさせていただきたいと思います。   次回の議事日程等につきまして、事務当局の方から説明をしていただきます。 ○北村幹事 次回の日程は、3月29日火曜日、午後1時30分から午後5時30分まででございます。場所については改めて御連絡いたします。   次回の内容は、今、部会長におまとめいただいたとおりになります。 ○大村部会長 ありがとうございました。今のようなことで、よろしくお願いを申し上げます。   多少積み残しが出てしまいましたけれども、本日はここまでということにさせていただきます。   法制審議会家族法制部会の第12回会議を閉会いたします。   本日も熱心な御審議を賜りまして、ありがとうございました。閉会いたします。 −了−