法制審議会 担保法制部会 第14回会議 議事録 第1 日 時  令和4年3月22日(火) 自 午後1時28分                      至 午後5時39分 第2 場 所  法務省地下一階・大会議室 第3 議 題  担保法制の見直しに関する中間試案のとりまとめに向けた検討(3) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 予定した時刻にはまだあと1、2分あるのですけれども、全員が既に御出席で、マイクのテストも済みましたので、法制審議会担保法制部会の第14回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は衣斐幹事が御欠席と伺っております。   また、前回の部会後に委員等の交代がございましたので、報告致します。中村委員が退任され、新たに小田委員が就任されましたので、小田委員におかれましては簡単な自己紹介をお願いいたします。 (委員の自己紹介につき省略) ○道垣内部会長 よろしくお願いいたします。   まず、配布資料の説明をしていただきますけれども、最後まで修正をいろいろしていただき、御努力を頂きましたために、どれが一番新しいバージョンかを見極めるのが、ちょっと難しくなっています。ポイントは、目次のところに第1、新たな規定に係る、括弧内ではないのですね、括弧の外に「新たな規定に係る」と書いてあるものが最新バージョンでございます。最新バージョンを基本にして議事を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。   それでは、資料の説明をお願いします。 ○笹井幹事 本日もよろしくお願いいたします。新たにお送りしたものが部会資料14「担保法制の見直しに関する中間試案の取りまとめに向けた検討(3)」です。これにつきましては、後ほど審議の中で事務当局から御説明いたします。また、本日の審議では、前回お配りした部会資料13も使用いたします。事務当局から御準備いたしましたのが以上ですけれども、このほかに委員等提出資料14-1として、伊見委員から御提供いただきました「担保ファイリング制度の導入及び動産債権譲渡登記の在り方について」を配布しております。   資料については以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、審議に入りたいと思います。   まず、前回からの積み残しとなっておりました部会資料13「担保法制の見直しに関する中間試案の取りまとめに向けた検討(2)」について議論を行いたいと思います。このうちの、部会資料13の第2の「4 担保価値維持義務・補充義務」について説明をお願いします。 ○淺野関係官 それでは、部会資料13「第2 集合動産・集合債権の担保化」の「4 担保価値維持義務・補充義務」について御説明いたします。   集合動産や集合債権が担保権の目的財産である場合には、設定者に処分等の権限が与えられる一方で、抽象的には、設定者は担保権者に対し新たな動産や債権を補充するなどにより担保価値を維持する義務を負うと考えられます。本部会での御審議では、この担保価値維持義務・補充義務について何らかの規定を設けるべきだという御意見がございました。担保価値維持義務について規定を設けるとすると、通常の事業の範囲内で処分等が行われた場合に、設定者に代替物の補充義務を課すという方向性もあり得ますが、処分したものと同種同量の補充として単純化することは適切ではないという御批判があり得るところかと思います。   そこで、本文では【案13.2.4.1】として、設定者に、通常の事業が継続されれば当該集合動産又は集合債権が有すると認められる価値を維持する義務を負わせる案を提案しております。【案13.2.4.2】は、これに対して、担保価値維持義務や補充義務に関する規定を設けないことを提案するものです。これは、規定を設けるとしても、【案13.2.4.1】のように評価的な要素を含む要件とせざるを得ず、法律関係の明確化には限界があるという点や、担保価値維持義務や補充義務については当事者間の合意によるべきであり、それに委ねれば足りるという考え方に基づくものです。   【案13.2.4.1】の考え方は、集合動産や集合債権が担保権の目的財産である場合には、設定者に一定の処分権限が規定されることを踏まえ、それに対応する義務として担保価値維持義務が課されるというものです。そうだとすれば、この案を採る場合においては、担保価値維持義務に関する平成18年判例を踏まえますと、設定者に倒産手続が開始した場合であっても、担保権の効力に基づく義務として、管財人や再生債務者に承継されると考えることが可能であるように思われます。このように考えると、倒産手続開始後に義務違反が認められた場合に、その損害賠償請求権が財団債権又は共益債権として取り扱われることになり、規定する実益もあると考えられます。   また、説明では、担保権者と設定者が処分権限や担保価値維持義務についてデフォルト・ルールと異なる合意をしていた場合において、設定者に倒産手続が開始したときの当該合意の効力についても検討しております。   以上について御意見を賜れればと存じます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂きたいと思います。よろしくお願いします。 ○松下委員 松下です。部会資料13の20ページの6のところです。担保価値維持義務について設定者と担保権者がデフォルト・ルールと異なる合意をしていた場合という話について、意見を申し上げたいと思います。   この6の第2段落では、質権者の担保価値維持請求権は質権に当然伴う権利で、破産手続の影響を受けないけれども、設定契約上のコベナンツ条項に基づく請求権は破産債権にとどまるという考え方を示しています。ここについて気を付けなければいけないと思うのは、質権に伴う当然の権利を確認的に契約に書き込むと、それは契約に伴うものだから破産債権になるというのはやはり変なので、請求権の発生原因というよりは、その内容で決まると考えるべきなのだろうと思います。   それとの関係で、6の最初の段落で、500万円を下回ってはならない、500万円まで補充するという約定がある場合に、どう考えるかなのですけれども、500万円丸々が破産債権になるというのはやはりおかしいのではないかと。観念的には、500万円のうち担保権に当然に伴う権利、デフォルト・ルールは財団債権なり共益債権になると、それを超える部分のみが破産債権、再生債権になるということになるのではないかと思います。もっとも、担保権に当然に伴う権利の範囲がどこまでかというのが具体的に決まるかというのは、なかなか実際には難しい問題かと思います。   なお、これは規定を設けても、設けなくても、つまり【案13.2.4.1】でも【案13.2.4.2】でも出てくる問題なので、どちらか一方を支持するというつもりでこの意見を申し上げたわけではございません。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○井上委員 ありがとうございます。井上です。担保価値維持義務は、担保権の内容として基本的に備わっているものではないかと思いますけれども、現在、質権なども含めて、一般的に民法に規定があるわけではないところからすると、担保目的物を積極的に毀損するようなことは駄目だということについて、特段明文が必要だというわけではないと思います。ただ、集合動産あるいは集合債権のように、入れ替わりが想定されていて、今回の担保法改正によって、通常の事業の範囲で持ち出し、処分する設定者の権限について規定される、つまり、担保権者のために担保を設定したにもかかわらず、その後、処分できる旨を定めるのであれば、それとちょうどパラレルといいますか、対応する形で、そういう特殊性がある担保目的物については、通常の事業の変動の範囲内で価値を維持すべき義務がある旨を明文化することには意義があるのではないかと思います。その意味で、現在提案されている【案13.2.4.1】は、集合動産、集合債権についての担保価値維持義務の内容を示そうということであって、非常に共感できます。むしろ、今申し上げたような観点から、ここで確認したいのは、例えば動産については、設定者は、集合動産の構成部分を通常の事業の範囲で変動させる権限を有し、維持する義務を負うという趣旨で、この御提案を解すべきだということです。   そして、これは同じく説明がありましたように、第三者、典型的には管財人にも主張できるということだと考えておりまして、その中身は幅のあるものではありますけれども、その時々の通常の事業として想定される幅には収めなければいけないということで、それとは別のコベナンツが定められている場合の効果についても、今、松下先生が御発言したことに全く同感で、超過的な合意は、確かに債権的な合意にすぎないけれども、コアとなる部分については物権的に、あるいは倒産手続後にも効力が残ると考えるべきではないかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   更に横山さん、片山さんからお手が挙がっているのですけれども、少しその前に確認をしておきたいことがあります。この部会資料の前提を形成しているところの維持義務とか補充義務というものなのですが、これは、言葉はともかくとして、通常の営業の範囲の処分を超える処分がされたという違反があるので、補充義務が課されるという構成なのか、およそ500を切ったら補充義務がありますということで、例えばバーゲンセールだとか、すごく評判が良くて、注文があって、それで500を切るという事態、つまり義務違反なく、そのような状態が生じたときにも、500に戻すという義務が物権的に存在していて、管財人にも対抗できると、財団債権になると、そういう立場なのでしょうか。義務違反の効果としての補充義務という形なのか、そうではない補充義務という形なのかと、これはどちらなのですか。 ○笹井幹事 これは義務違反があったときに限らず、一般的に一定の価値を維持しないといけないということを想定したものです。 ○道垣内部会長 それを管財人に対抗できて、財団債権になるということになると、500あるというふうに言ったら、売れたときだって、第三者が壊したときだって、500だけは必ず財団債権になるという、もう物権理論とは相容れない何か特殊な権利が発生しているような感じがするのだけれども、そんなことはないのかしら。 ○笹井幹事 ですので、500という合意があったときに、500まで必ず戻さないといけないのかというと、そこはそうではなくて、やや幅がある概念だと思いますけれども、その状況の下で通常の事業を行った場合にどれぐらいの価値があるのかということを想定して、そこまでは補充してくださいという趣旨で書いたものです。 ○道垣内部会長 だから500という数字に意味があるのではなくて、営業の流れの中で合理的に行動すると、この程度に現在は補充してあるはずだよねというのを前提に考えて、そこまでは財団債権なら財団債権としての効力を認め得るかもしれないと、そういうことなのですか。 ○笹井幹事 はい、そういうことです。 ○道垣内部会長 すみません、これから議論するのに当たって前提がぶれますと変わってくるという気がいたしましたので、介入いたしました。どちらがいいと言っているわけではございませんので、横山さん、片山さん、井上さん、手が挙がっておりますけれども、どのような担保価値維持義務、補充義務であるかということを、すみませんが、明らかにしながら、御発言いただければと思います。 ○横山委員 ありがとうございます。横山です。私自身は今、笹井さんがおっしゃったように、通常の営業をしているならばこのくらいはあったはずだということを前提にしまして、担保価値維持義務を課すことには少し慎重になってもいいのではないかという意見を持っております。先ほど出ましたように、通常の営業の範囲を超えるような形で義務違反をしたときには、もちろん、平成18年の判決が示しているように、担保物ないしその価値を毀損あるいは減少してはいけないという義務は、これは当然でございますので、集合物の譲渡担保にも当てはまるのではないかと。その限度では、規定を置かなくてもそれは当然なのだろうと思います。   それでは、担保価値維持義務を規定するのがいいのかというと、将来における担保物の増減とか、あるいは価値の増減について、設定者と担保権者のどちらがどの程度のリスクを負担するのかは、それぞれの譲渡担保によって異なる場合があるのではないか、つまり、その合理的な範囲というものもそれぞれの契約によって異なってくるのではないかと考えております。ですので、別段の定めによってそれを外すのは、別段の定めをすること自体、なかなか担保設定契約の当事者の関係に照らして難しいこともあると思いますので、むしろ何も規定を設けない方がよいのではないか、慎重に考えた方がいいのではないかと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○片山委員 どうもありがとうございます。慶応義塾大学の片山でございます。私は、むしろ積極的に規定を置くべきではないかということを考えております。そのときに、担保価値維持義務とか補充義務とかという形で何らかの規定を置くべきだということなのですけれども、ここではむしろ補充義務ということが的確なのではないかと思っております。それはどういうことかと申しますと、井上委員からも御発言がありましたとおり、やはり集合動産譲渡担保の場合には、出るのに対して、また入ってくるということで、むしろ重要なのは出の管理ではなくて入りの管理だということはよく言われているところではあります。ですから、デフォルトの法定義務として補充義務を認めるべきで、設定者に処分権限が付与されているのはなぜかというと、むしろ補充義務を負うことが引換えになっているのだというぐらいの趣旨があるのかと思っております。ですから、その他のところで言われている担保価値維持義務とは若干違う性質のものではないかと考えているわけです。   そのような趣旨から、補充義務なのか担保価値維持義務なのかという意味では、補充義務にすべきだということなのですけれども、担保価値維持義務という規定の仕方をしますと、また別な意味も出てくるのかと思っています。特に、在庫の場合に在庫が減って、その分を補充するということ以上に、在庫自体の市場価値がありますから、それが下落した場合には一定の担保価値の補塡をしなければいけないというようなニュアンスまで含まれることになりますので、担保価値維持義務という規定をするのは少しリスクがあるのかなと思っています。もちろん金融資産を担保に取る場合であるとか、あるいはボロイングベースのABLなどでは、一定の価値を確保するということが義務とされる場合がありますが、これもあくまでもコベナンツ条項としての債権的な義務と解するべきであって、それを集合動産譲渡担保の一般に法的な義務として高めていくということは難しいのではないかと思っております。   広い意味で担保価値維持義務という言葉が使われることがあります。それは、債権質に関する18年判決もそうですし、それから、抵当権における妨害排除のときに一定の担保価値を維持すべき義務があるのだというような言われ方もするということでありますけれども、そういう意味の広義での担保価値維持義務というのは、これはむしろ学理上の概念として議論や分析がなされるべきだと思いますが、法令上は、それぞれの担保形態においてその表れ方は違うと思いますので、担保価値維持義務の総則規定を置くというようなことではなくして、むしろ担保の形態に応じた個別規定を置くということが実際的なのではないかと思っているわけです。たとえば、18年判決のような債権担保の場合には、その債権を放棄したり免除したりすることを禁止するとか、あるいは放棄や免除を対抗不能にするというような規定が担保価値維持義務の規定として置かれるべきでありますし、集合動産譲渡担保では、補充義務をダイレクトに規定するということがより実際的ではないのかと考えているところです。   ちなみに、部会資料の18ページの(注5)のところで、私の論文も引用してくださっておりまして、その中で、フランスの商法典上の在庫担保、在庫質に関して担保価値維持義務の規定があると、それは単に補充義務ということではなくして、商品とか同種同量の品質の補充として単純化できない、そういう場合があるためだということも書いてはいるわけでありますけれども、実はこのフランスの商法典上の在庫質に関しましては2021年、昨年の担保法改正の中で廃止をされておりまして、民法典上の動産質に一本化されております。民法上の動産質に関して言いますと、担保価値維持義務という規定の仕方ではなくて、やはり補充義務という形で収れんをしておりまして、在庫の市場価値の維持という問題は、やはりコベナンツのレベルの問題だと明確にされているところでございます。   以上、むしろ補充義務という形で規定すべきだというのが私の考えでございます。よろしく御検討をお願い申し上げます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○井上委員 井上です。先ほど座長からのクラリフィケーションがあった点について、私の先ほどの発言の前提を念のため補足させていただきます。   先ほどの例で言えば、非常に売上げが伸びて、その理由が、例えばテレビで取り上げられたからとか、雑誌で取り上げられたからとか、何であれ商売が非常にうまく行って在庫が大きく減ってしまったことについては、何ら担保価値維持義務違反になるとは考えておりませんで、通常の事業の範囲、と呼ぶかどうかは別として、そういった定性的な要件で想定しておりましたのは、サステナブルな事業の継続過程で生ずる変動は、それは大きな減少であっても何ら問題はなくて、その後、相応の、これまた通常の事業で想定される程度のタイムラグで補充されていけば、何ら問題はないという前提です。   ただ、そうではなくて、およそ事業継続が可能とは思えないような態様で叩き売りをするとなると、それは破綻間際ということが多いのかもしれませんが、もはや事業の通常の、オーディナリー・コース・オブ・ビジネスの過程では想定し得ない減少行為であって、これは、毀滅行為でなくて単なる販売行為であっても、やはり担保価値維持義務に反すると、そういう趣旨で申し上げました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。その担保価値、叩き売りをしたことによって破産前に価値が減少したと、その部分は財団債権になるのですか、補充義務は。 ○井上委員 そういう行為をした直後に倒産申立てがなされた場合、これは担保価値維持義務違反行為をしたのが倒産前の債務者になりますので、それから生ずる損害賠償請求権自体は、破産手続であれば、ただの破産債権、あるいは民事再生手続であれば、ただの再生債権になるにすぎないと思います。倒産手続開始時点で、例えば、元々300から500ぐらいの在庫が通常の事業過程で動いていたときに、担保価値維持義務違反行為をして100ぐらいまで在庫が減ってしまった時点で倒産手続が開始した場合に、それ以降、もうそんな状況では事業の再建は無理だといってほかの事業に注力することにして、その事業をやめてしまえば、倒産前の担保価値維持義務違反に基づく損害賠償請求権として破産債権が残り、残された100個だけの在庫を対象とする担保権になるということで、そこはしようがないのだろうと考えております。   ただ、その後、そうではなくて、その事業をやはり何とかやり直そうということで再建の対象にした上で、在庫がその後、通常の事業過程で増えていき、通常のオーディナリー・コース・オブ・ビジネスの状況に戻ったという場合に、担保権者がその増えた分について権利を持つかどうか、これは担保価値維持義務とは別の問題であって、別の問題といいますか、担保権が及ぶかどうかという話は、それは開始時で対象物が固定化するのか、あるいは、価値固定と表現される方もいらっしゃいますが、物としては固定化しないのだけれども、倒産手続開始時のバリューで担保権者の取り分が決まるという立場を採るのか、そうではなくて、その時点では何ら固定化せず、その後の変動がそのまま担保権者の取り分になるというような、実行時まで固定化しないと考えるのかによって変わってくる問題なのかなと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。藤澤です。今、井上先生が御発言されていたことと同じようなテーマなのですけれども、片山先生がお話しくださったとおり、担保価値維持義務について少し分析的に考えていくべきだという考え方に賛成しております。   その上で、資料に挙がっている平成18年の最高裁の判例の位置付けについてなのですけれども、この判例は、倒産手続開始の時点で存在していた債権の額をその後の管財人の行為によって減らしていってはいけないということを判断した判例であったと理解しておりまして、射程もその限りで考えるべきではないかと思っております。つまり、集合動産のようなものが倒産手続開始の時点で当初想定されている量よりも減っていたときに、それを補充しなくてはいけないという義務まで管財人が負っているかどうかは、平成18年判例の射程外なのではないでしょうか。井上先生がおっしゃったように、再生計画との関係で補充する合理性がないにもかかわらず、補充しなくてはいけないというような義務を負っているかどうかということについては、少し慎重に考えるべきではないかと考えております。   他方で、これも井上先生がおっしゃったことの繰り返しなのですけれども、事業の必要があって補充されてきたものについて担保権の効力が及ぶかどうかというのはまた別の問題で、手続開始後の目的物に効力が及ぶかという論点もありますし、また、手続開始後の費用を担保権者に負担させるかというような論点もありますし、そういったところで処理していくことかなと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   井上さん、藤澤さんのおっしゃったことは非常によく分かるのですが、そのためにはかなり丁寧な規定が必要になってくるわけであって、およそ担保価値を維持する義務があるとか、補充する義務があるとか、そういうふうなことを書いて、お二人のおっしゃったようなことにつながるというか近付くのかというと、そうでもなく、別に何も書かなくたって同じなのではないかという感じもしないではないのです。それに対して、片山さんの方がより理念的な面があるのかなという気がいたしまして、処分が認められるということの反対として、補充もしなければいけないのだということはきちんと書いた方がいいよねという御意見ですね。そう書いたからといって井上さんや藤澤さんがおっしゃったことが排除されるかというと、排除されないのですけれども、少し理念的な面があるのかなと思って伺いましたが、ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○大澤委員 大澤でございます。私は、元々横山委員がおっしゃられたような形での、法律にそもそも書くのは慎重で在るべきだというようなところから出発をしているところでもあるのですが、今、部会長からおっしゃられたとおり、補充義務について片山先生のような形できちんと書いていくとなると、補充義務は物権的な効力を持つものなのかと、それは倒産に至っても効力として持つものなのかというような疑問がやはり出てきておりまして、そうしますと、倒産時には別の手当てを書くのかとも感じております。   実務上そういった再生なり破産等をやっている身といたしますと、やはり開始決定時の、先ほど井上先生から少しお話がありましたが、開始決定時における価値の維持というような形での割り振りになるのかなと。固定的な担保というよりは、確かに出と入りがあるものではありますけれども、それはビジネスによってもどんどん変化をしていくものでして、それが最初から最後まで一気通貫で確実に補充されねばならないというのは、事業のそういった柔軟性から見てもやはり、すみません、物権的なそういった理念的な面もそうですが、ビジネスのそういった面からしても、かなりの違和感を感じているというところでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○片山委員 片山でございます。倒産時に管財人が、平時に予定されている担保価値維持義務なのか補充義務なのかは別として、それをどこまで負うのかという問題は、非常に難しい問題ではありまして、必ずしもここでいう担保価値維持義務、補充義務だけの問題ではないかとは思いますが、基本的には物権的な義務だということであるならば、管財人も承継されるということでいいのかとは思ってはおります。特に、倒産手続でも再建型の手続の中でということになりますと、事業を継続しつつ在庫を処分していくというわけですから、破産して固定化しない限りにおいて、再建型手続の中でやはり担保価値維持義務は負い続けるべきではないかとは思っています。それが1,000のところが700になるとか、そういう話ではなくして、通常の営業の範囲でやはり処分をし続けるのであれば、倒産開始後であっても当然補充はしていかなければいけないということですので、その限りにおける補充義務は管財人にもやはり負っていただくということになるのかなと思っている次第でございます。いかがでしょうか。 ○道垣内部会長 片山さんの御発言の中の物権的義務という言葉と、管財人に承継されるという言葉の意味を、もう少し確定したいのですけれども、補充義務というのを書いていなければ、それは債権的に補充義務があるというだけなのだから、倒産して管財人に承継されていかない可能性があるけれども、それは、とりわけ再生型のときに、管財人がそれに拘束されて、使ったのなら補充しなくてはいけないというふうなことになるということをもって、物権的義務というふうな言い方をされているのですか。 ○片山委員 物権的か債権的かということに関しては、いろいろな理解の仕方があるのかとは思いますけれども、管財人がどこまでの義務を承継するのかという意味では、単なるコベナンツレベルであれば、必ずしも承継はしないということだけれども、法定されている物権的な義務であるということであれば、承継されるということを前提に議論をしているつもりでおりました。もちろん、その点についてもいろいろ当然、議論は分かれるところだとは思います。 ○道垣内部会長 大西さんからも手が挙がっているのですが、大澤さんの方からは、例えば倒産手続開始時点というものを一つの基準にして、そのときに80あったとするならば、それをどんどん少なくさせていくというのは、それは管財人の行動としておかしかろうと、しかし、通常の営業の範囲で回っているならば、倒産開始の時点では100あるはずだった、20足りないと、そのときに管財人が20を補充しなければいけないのかというと、それはそうではなかろうというのが多分、大澤さんがおっしゃったことではないかと思うのですけれども、片山さんがおっしゃった、承継されるというのは、そのときに20を管財人は補充しなければならない、そして、補充をしたからといって別に他の債権者の関係で問題があるわけではないと、そういう分析ですか。 ○片山委員 100か80かという問題と、物権的かどうかという問題とは必ずしもリンクしないように思っています。補充義務というのは必ず100あったのならば100返せという、そういう補充義務ではなくして、処分権が与えられているのも、通常の事業の範囲で処分権が与えられているわけですから、補充も通常の事業の範囲で補充せよというだけのことでありまして、それを100、常に維持せよというのが平時であれば、倒産時も100という話は、それは別途のコベナンツによる担保価値維持義務であって、その部分については承継されないと、むしろ逆に思っております。という抽象的な話ですけれども、いかがでしょうか。 ○道垣内部会長 いえいえ、構いませんで、ただ、物権的な義務とか、承継されるという言葉が独り歩きいたしますと、義務違反の状態でも物権的義務として承継されて、設定者イコール債務者が義務違反している状態で倒産手続が起こって、管財人に承継されるといったときに、管財人がその義務を履行しなければならないと考えますと、先ほどと異なった結果が出てくるわけです。そこで、言葉を独り歩きさせてはいけないと思いまして、少し確認をさせていただきました。失礼いたしました。 ○大西委員 私は、担保価値維持義務、補充義務についての規定を【案13.2.4.1】のように入れた方がいいという意見です。先ほど片山先生からお話があったとおり、補充義務に加えて、保存義務も担保価値維持義務の一内容としてあると思います。例えば冷凍しなくてはいけない在庫商品を冷凍庫に保管せずに放置しておくというのは、担保価値維持義務に違反する行為だと思います。そういう意味で、通常の管理者としての注意義務は尽くすということまで含めるべきであり、担保価値維持義務には、補充義務と、対象物の価値を保存する保存義務も含まれるものと思っております。   それから、もう一つなのですが、今回の規定が、会社更生や民事再生等の場合に財団債権又は共益債権になるかどうかにおいて存在する意味があるとすると、通常の事業の範囲で管理を継続すれば良いという考え方は現実にそぐわないのかなと思います。会社更生等の場合ですと、その後の資金繰りが厳しいことが予想される場合には、仕入れを一旦減らして資金確保に努めなければならない等の判断が合理的です。そのような行為も通常の事業の範囲内での業務の継続といえるのだったらいいのですが、必ずしもそのように解釈できるかどうかは分かりません。これは、例外としての正当な理由がある場合ということになるのかもしれません。いずれにせよ、通常の会社であれば経営者としての善管注意義務、管財人であれば管財人としての善管注意義務を果たす範囲で、担保設定者には、担保対象動産の担保価値維持義務としての補充及び保存義務がある旨の文言を織り込めればいいのではないかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○山本委員 先ほどの部会長の説例との関係ですけれども、私自身は、開始時に仮に80だったとして、本来この担保価値維持義務の観点からすれば100積んである必要があるという状態で倒産手続が開始したのであれば、やはりそれは再生債務者であれ管財人であれ100積む必要があるのであって、その時点で80しか積んでいなければ20積み増す必要がある、それは財団債権ないし共益債権になるという理解を採っていました。そういう趣旨だろうと私自身はこの原案を理解していました。   ただ、今、大西さんからも御指摘がありましたように、その正当な理由の理解が倒産手続開始前と開始後では変わってくる可能性があって、倒産手続開始前であれば100積む必要があったものが、倒産手続開始後の事業の再生の様々な都合に鑑みて、それは80まで積めば正当な理由は十分あるのだと解されるとすれば、既に80積んであるのであれば、それ以上、積み増さなくてもいいということになるだろうと思いますが、倒産手続開始後の事情も含めて正当な理由も考えた上で、なお100積まなければいけないというのであれば、それは私は20積み増す必要はあるというふうにこの原案を理解し、そして、それに賛成していたということを申し上げたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。大西さんのお立場に立たれても、それが事業継続のときに合理的な行動であるという話ならば、そうなるということになるのかもしれませんので、大きな差があるのかどうか分かりませんが、山本さんに確認だけしたいのですが、破産手続の場合には、それは優先権は80なのですよね、別に100になるわけではないのですよね。 ○山本委員 破産の場合には、恐らく正当な理由というのが非常に、そもそも通常の事業が維持されればというところが、通常の事業が維持されることというのは余りというか、ほとんどないということになるのかもしれませんし、さらに、この正当な理由というのは非常に広くなるということになると思いますので、積み増さなければならない事態というのは現実にはほとんど想定されないのではないかと考えていますが。 ○道垣内部会長 いや、私が言っているのは、破産手続開始時に既に20積み増さなければならないという状態で破産債務者が義務を負っていた、その時点で破産手続が開始された。事業はもう継続されないわけだけれども、通常の事業が継続されればそれが有すると認められる価値というのを破産手続開始前の段階で決めてしまえば、20積み増さねばならないという状況にあったわけですよね。その分は破産手続にも生きてくるのですか。 ○山本委員 それはそうだと、それは破産債権になるではないですか、もしそういう判断をすれば。 ○道垣内部会長 だから、義務はあるけれども、破産債権になるということですね。分かりました。どうもすみません。   ほかにございませんでしょうか。 ○大塚関係官 ありがとうございます。調査員の大塚です。今の御議論を少し整理させていただきますと、補充義務というものにはある種、2種類といいますか、次元の異なるものがあって、一つは、一定の処分をしたら補充しなければいけないという、ある程度抽象的な義務があると。それに加えて、具体的な時点において、例えば100から80に減らしたので20補充しなければいけないという具体的な義務があると。その具体的な義務については、倒産手続開始前に20補充する義務が発生したとすれば、この20を補充する義務というのは倒産手続開始後には破産債権あるいは再生債権になる。しかし、より抽象的な補充義務については、こちらは、物権的というかどうかはいずれにせよですが、管財人に承継されると。もしこの補充義務ですね、事業を継続していく場合には、そういった補充義務が効いてきますので、もし100として事業を継続する場合には、倒産手続開始時に80になっていたとしても、これは20戻すということが、これは財団債権になるかどうか分かりませんけれども、優先権が与えられると、こういう整理になるのかなとは思いましたが、いかがでしょうか。 ○道垣内部会長 そうだろうと思いますが、その整理を前提といたしまして、1点、横山さんの御意見を確認したいのですが、今、大塚さんもおっしゃったような形、つまり、再生手続ですと、そのままの状態で、通常の事業が継続されれば、その状態で補充をしていかなければいけない。通常の場合も、もちろん平時の場合もそうですし、大西さんがおっしゃったように、再生手続が開始したときはもちろん、開始しなくても事業形態というのは変えていくことがあるわけですから、必ずしも元と同じにしなければいけないということにはもちろんならないかもしれないですけれども、そういうふうになる。これに対して、破産のときには、事業がそこで切れるわけでして、足りなければ足りない部分について補充請求を破産債権として請求していけるというのはともかくとして、管財人が破産手続の中でも補充しなければならないわけではない。そういうふうな前提に立ったときに、横山さんが最初におっしゃった物権的違和感といいますか、そういうふうな違和感というのがございますでしょうか。それとも、そこまで内容が整理されたならば、それはそのようなものではないかというふうな御感覚ですか。 ○横山委員 ありがとうございます。横山です。物権的違和感という言葉は私自身は申し上げてはいないわけですけれども、そのように整理をされた場合に、まあそんなものではないのかと言われれば、そんなものではないのかというお返事になろうかと思います。私自身、片山先生の理念はすごく分かるのですけれども、その理念が集合動産譲渡担保だからといって一般的に当てはまるのかについて慎重に考えています。出したものは入れなければならない、それが集合動産譲渡担保なのだと、一定程度はそうだと思うのですけれども、しかし、契約によって、あるいは、先ほど大澤さんからありましたけれども、事業の流れによっていろいろ変わってくるのではないか、そこを本当に条文に入れられるのかというのが疑問の大きなところでした。補充義務をともかく入れるべきではないという意見ではございませんので、きちんと整理した立法ができるのであれば、それでよいのだろうと思います。不十分で申し訳ございません。 ○道垣内部会長 いえ、物権的違和感という言葉が横山さんの根本にあるのかと思って言ったら、必ずしもそれに乗ってくださらなかったので、少し寂しい気はいたしましたが、まあそれは。分かりました。   ほかに何かありますでしょうか。大体それほどは実は内容的には意見は分かれていなかったということが明らかになったかなと思います。片山さんの、原則を書くときにも注意して書かないと、完全に承継されてしまうということにもなってしまいますので、そこら辺は気を付けながら整理をしなければいけないという点はありますが、いかがでしょうか。   それでは、今日の議論を踏まえまして、更に精緻化して、また御意見を伺うという機会を持ちたいと思います。   そこで、先に進んで恐縮ですが、続きまして、第2の「5 集合動産・集合債権を目的とする担保権における物上代位等」について議論を行いたいと思います。   事務当局におかれまして、部会資料の説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 法務省の淺野でございます。それでは、「5 集合動産・集合債権を目的とする担保権における物上代位等」について御説明いたします。   本文(1)は、集合動産が担保権の目的物である場合において、設定者が通常の事業を継続している間は、原則として担保権者が物上代位権を行使することができないとすることを提案するもので、基本的に部会資料3の御提案と同内容です。差し当たり、本文では集合動産に関する規定の御提案としておりますが、この点については、集合債権が担保権の目的財産である場合にも、債権譲渡が行われた場合における売買代金債権、第三者から債権侵害があった場合における損害賠償請求権などへの物上代位が問題になるようにも思われたため、説明において問題提起をしております。   本文(2)は、第三者が特定範囲に含まれる個別動産を滅失等させた場合における担保権者独自の損害賠償請求権について、特段の規定を置かないことを御提案するものであり、部会資料3の御提案と同内容です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、どなたからでも結構でございますので、御意見を伺えればと思います。 ○本多委員 ありがとうございます。三井住友銀行の本多でございます。今ほど事務局の御説明にもありましたとおり、5のゴシックのところにおいては集合債権について特段触れられていないのですけれども、そもそも集合債権についての物上代位について集合動産の考え方と同じでよいかどうかについては、そうではないという考え方もあるかもしれませんので、申し上げられればと思います。   前回も発言させていただきましたとおり、第2の3(1)の規律に関しまして、集合債権の権限範囲、すなわち通常の事業の範囲内における処分についての御議論をさせていただいたかと思いますが、かねて申し上げておりますとおり、例えばプロジェクト・ファイナンスのような長期的な分割返済約定付きのファイナンスの取組に際しまして、将来発生する債権について累積的に担保権の効力が及びますという場合に、直ちに当てはまるものではなくて、どちらかというとボロイングベース管理型のABLのように、所定の基準時点における担保目的債権の残高を管理するケースを念頭において、その残高が所定の水準以上に維持されている、あるいは上回っている場合に限って、設定者が取立権限を有し、その場合に取立代わり金をもって事業の遂行のために充当することが認められる、そういう利用権限が与えられますということを前提とする規律と理解しておりまして、この物上代位等に関する考え方も、そういう類型の集合債権譲渡担保、すなわち集合債権を目的とする新たな規定に係る担保権についての規律と理解しております。   それを前提としてなのですが、そもそも集合債権に関して債権譲渡をするというのが通常の事業の範囲、すなわち権限範囲なのかということについては、集合動産の場合と異なり得ると考えられまして、前回申し上げましたとおり、例えば適正な債権管理の範囲というような、かなり狭い範囲に限定されるのではないかと考えております。そうだとしますと、物上代位に関しましても権限範囲というのは狭く解され得ることになりまして、債権売却に関する売買代金債権が物上代位の対象になってくる、すなわちただし書で物上代位の対象になってくるという範囲は、集合動産の場合対比、多くなってくるのかなと考えております。   一方で、債権侵害があった場合における損害賠償請求権なのですけれども、これは権限範囲、すなわち通常の事業の範囲とは直接関わらない、その問題ではないというふうな言い方ができそうでして、あわせて、賠償金を通常の事業の遂行に充てていくということが妨げられるわけではなさそうということもありまして、確かに債権侵害における賠償金請求権は代替的な変形物と評価されるのだと思うのですけれども、通常の事業が継続している間においては物上代位の対象にはならないという平成22年最決の考え方が当てはまるのかなと考えました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。集合債権の方についても完全にパラレルに考えるわけではなくて、丁寧に一個一個分析していかなければならないということで、それはそのとおりだろうと思います。その点はまた補充をしなければいけないかと思います。 ○佐久間委員 一読のときと全く提案が一緒だと伺って、一読のときに全然言わなかったので、ここでどうでしょうかと申し上げるのも少し申し訳ないと思うのですが、(1)のただし書というのは本当にこれでいいのかと少し疑問に思っております。今、本多さんから、債権譲渡のときには特にこの権限範囲を超える処分というのが、場合によっては広く認められることがあるのではないかという御発言があったと思うのですけれども、それも含めて、本文の通常の事業が継続しているということが意味を持っている状況において、権限を超える処分がされたというだけで物上代位を認めなければいけないのだろうかということを少し、特に動産の方でイメージしていたのですけれども、思っております。   と申しますのは、墨付きの当事者が別段の合意をした場合に関しましては、そもそも単なる合意を第三者に対抗することはどうなのかという意見があるということが説明に書かれておりますけれども、権限の範囲の方も、それは客観的に決まるのかもしれませんけれども、通常の営業の範囲というのはやはり当事者関係に依存するものではないかとも思われまして、その観点からすると、この二つの区別ってそれほど大きな差はないと思える場合があるのではないかというのが一つです。   それから、いずれにせよこのただし書というのは、言わば担保権に対する侵害があったような場合の処理だと思うのですけれども、そうであったとしても、通常の事業が継続している間は補充を求めることがあり得るはずであり、かつ、補充でもって処理できる状況であるからこそ通常の事業が継続しているということになるのではないかと思うのです。そうだといたしますと、当事者間での侵害行為については当事者間で処理するのが筋なのではないかと、余り自信はないですけれども、私はそういうふうに思っております。   そうだといたしますと、繰り返しますが、通常の事業を継続している間ということが効いている、実際上意味を持っているという状況に限ってなのですけれども、権限範囲を超えるということだけを取り出す必要はないのではないかと。しかし、権限範囲を超えるという認定の場合は、どちらが先かはよく分かりませんが、通常の事業はすでに継続していないという状況になっているのではないかと思うので、通常の事業を継続している間はという本文の文言でもって、物上代位はできませんということにしておけば、裏返せば、通常の事業がすでに継続していないのであればできますということになるはずですから、それだけで十分なのではないかと、全然自信はないのですけれども、思っております。   一読のときに申し上げるべきだったのですけれども、多分ここで言っておかないと、今後はいっそう何だ今頃となるかもしれないので、自信はないけれども申し上げました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。権限の範囲を超える処分がされたときに物上代位をすると、もうその部分は補充しなくていいのですかね。補充しなければいけないとすると、二重取りですよね。それは不動産の建物の一部が第三者の手によって損傷された場合にも同じか。それで、第三者に対する損害賠償請求権に物上代位できるけれども、補修がされても、それは当該不動産に付合することによって、担保権者の優先弁済権行使の対象となり得るということかな。少し自信がなくなってきたけれども。   すみません。今のは独り言でございまして、ほかに御意見はございませんでしょうか。   佐久間さんの御発言の中で、権限範囲を超える処分のときに、それは客観的にも考え得るけれどもという話なのですが、それというのは、実は権限範囲についての約定があるときというのは、これは今度は全く客観的に決まるという問題ではなくなってしまって、当事者の別段の合意というところにほぼ吸収されるということになりますよね。だから、そういうのも考えなければいけないのかもしれませんが。   ほかに御意見はございませんでしょうか。   まず、判例も踏まえて、通常の事業が継続されている限りにおいては物上代位というのは働かないということは、皆さん、よろしいのでしょうかね。そうすると、ただし書の問題ですか。(2)に関連しては、やはり多分、他の抵当権その他との関係というのがありますので、仮に不法行為は一般的な救済法であって、担保権者独自に損害賠償請求が故意又は過失と権利侵害を立証していけば、できるのだとしても、この部分だけを置くのは少し全体としてのバランスが崩れてしまうので、置かないということなのかなと思います。そうなると、ただし書、佐久間さんがおっしゃるように、これは少しおかしいのではないかと考えるのか、やはりこの程度は認めた方がいいのではないかと考えるのかということなのですが、何かその点は御意見ございませんでしょうか。 ○片山委員 片山でございます。どうもありがとうございます。確かに権限を超えるかどうかという判定が、これまた難しいところですし、それから、権限を超えても補充で対応できるということは、確かにそのとおりかとは思うのですけれども、私は、できればこのただし書はあった方がいいのではないかとは考えておりまして、このただし書がないということになりますと、物上代位は事業が継続している限りは一切できませんという規定になってしまいますので、それは余りに問題かなということを感じておりまして、権限を超える場合に、補充も対応はできますが、例えば、権限を超えている場合には売買代金について物上代位ができるというような余地はやはり認めるべきかなとは思います。墨括弧の別段の合意をした場合というのは、非常に難しい問題かとは思いますけれども、1、動産譲渡担保の中で、売買代金債権に対しても併せて担保目的にするという場合に、債権譲渡担保を併せて取るという方法と、それから、動産譲渡担保としつつ、この物上代位に関する別段の合意をすることによって同様の機能を持たせるという余地もあってもいいのかなという趣旨で、やはりただし書は残した方がいいのかなと私自身は感じているところでございます。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。片山さんにお伺いしたいのですが、両方あっていいのではないかということで、片方はもう債権譲渡の対抗要件は不要であるということになりますよね。物上代位効力を別段の合意によって及ぼす。 ○片山委員 はい。 ○道垣内部会長 それは構わないと。同じ方法なのだけれども、片方は債権譲渡の対抗要件が必要で、片方は不要であるということで構わないということなのでしょうか。 ○片山委員 少し踏み込みすぎたかも知れません。そういう余地もあってもいいのかなと思ってはおりますが、それは難しいかと。 ○道垣内部会長 もちろん、それは払渡し又は引渡し前に差し押さえなければならないとして、債権譲渡にも負けると考えますと、そういうふうなことまでやったときには、他の一般債権者に対する優先権は認めていいのではないかという考え方はあり得るのかもしれないですね。それに対して債権譲渡担保の場合には、そういうふうな払渡し又は引渡し前の差押えという要件なしに認められるということになりますから、対抗要件の部分だけでアンバランスだとはいえないのですけれども、その辺りも考える必要があるかなと思います。 ○片山委員 はい、おっしゃるとおりかと思います。 ○道垣内部会長 ほかに御意見はございますでしょうか。 ○阿部幹事 阿部です。ありがとうございます。部会資料3には、被担保債権の弁済期が来て不履行になっているときは、担保権者は実行通知によって設定者の処分権限を失わせた上で、ただし書を適用して物上代位できる、という説明が書かれていたのですけれども、改めて見ると、ただし書は部会資料13と同様に「権限範囲を超える処分がされた場合には、この限りでない」となっていましたので、単に処分権限を失わせただけでは物上代位できず、権限を失わせた上で更に権限喪失にもかかわらず処分がされたときでなければ物上代位できない、という読み方ができるような気がして、そのような限定をすべきなのだろうかと、疑問に思いました。つまり、被担保債権の弁済期が到来して債務不履行になっていたら、設定者の処分権限を失わせるということが必要かどうかはともかくとして、仮に権限を失わせることは必要だとしても、権限喪失にもかかわらず処分がされた場合における処分されたものについてしか物上代位できないという限定をする必要が本当にあるのか、私には疑問だと思いました。 ○道垣内部会長 少し確認したいのですが、阿部さんがおっしゃったのは、5の(1)のただし書の問題ではなくて、5の(1)で「通常の事業を継続している間は」となっているけれども、そういうふうな状況か否か、通常の事業の継続というのが失われているかどうかというのは直接的に判断しなくても、当該、例えば集合動産譲渡担保の被担保債権について不履行があるという事態になると物上代位を認めていいのではないかと、こういう話でしょうか。 ○阿部幹事 結論として、最終的にはそういうふうに考えた方がいいのではないか、つまり、通常の事業を継続しているとしても、結局、被担保債権は不履行になって弁済できていないということになったら、物上代位は何らかの形でできていいのではないかと思っております。そのときの手続として、設定者の処分権限を失わせた上で物上代位することを必要とするか、それとも一足飛びに物上代位できるとすべきかは、また議論の余地があるかもしれませんが、いずれにせよ、被担保債権の弁済期が到来していて、それが弁済されないのに物上代位できないとまでする必要はないのではないか、というのが私の考え方のベースにありました。この考え方は、部会資料3の説明にも共有されていそうな気がしていたのですけれども、ゴシック体部分のただし書の書きぶりからは、そのことが明らかでないというか、むしろ、権限を失わせた上で、更にそれを超える処分がされないといけないかのような書きぶりになっているので、そのように物上代位を限定する必要は本当にあるのだろうかと思った次第です。 ○道垣内部会長 実際的に違いが出てくるのは、処分が被担保債権の債務不履行以前になされて、しかし、債務不履行時点でまだそれが弁済されていないというときに、当該売掛代金債権に対して物上代位権が行使できるかどうかということなのですかね。 ○阿部幹事 そうですね、私もそういう場面を念頭に置いていました。 ○道垣内部会長 分かりました。どうもありがとうございます。   ほかに御意見はございますでしょうか。   佐久間さんがおっしゃるところもごもっともだと思いますし、阿部さんがおっしゃるところもよく分かるところでございますので、それをどういうふうにするか、一定の、最終的にはだんだんとそういうことについて判断をしていかなければいけないわけですけれども、というところですかね。   差し当たってほかに御質問、御意見がないようでしたらば、今のような議論状況であるということを踏まえて、次に移りたいと思いますが、よろしいでしょうか。   それでは、前回の積み残しの部会資料13というのをこれで終わりまして、終わったというか、残された課題は多いのですが、終わりということにいたしまして、部会資料14について御議論いただきたいと思います。   ただ、その前に、伊見さんから提出されました、担保ファイリング制度の導入及び動産債権譲渡登記の在り方という資料が委員提出資料としてございます。これが部会資料14の全体とも関連してまいりますので、まず、伊見さんからこの資料について御説明をお願いできればと思います。よろしくお願いします。 ○伊見委員 日本司法書士会連合会の伊見でございます。意見について資料として取り上げていただき、また、報告の時間を頂きましたことに感謝を申し上げます。   資料としまして、担保ファイリング制度の導入及び動産債権譲渡登記の在り方についてというものをお出ししております。まず、この意見についてでございますけれども、内容の大半につきましては、一読の資料や一読での議論を受けて、考えるところをまとめさせていただいたものであります。したがいまして、本日この後御説明があります部会資料14の提案内容を受けたものではほとんどありませんで、この意見の中で示させていただいたものの幾つかは、この部会資料14の中で、更に進んだ、更に精緻な検討を経て御提案を頂いている事項もあるということで、資料14とは必ずしもかみ合わない部分もあるというところはお許しを頂けたらと思います。   この意見につきまして、大きく二つに分かれております。第1、担保ファイリング制度の導入についてと、第2、動産債権譲渡登記の在り方についてということになっております。第1の1から始まっておりますが、13ページにわたる資料でございますので、基本的には記載のとおりというところでございますが、幾つか補足も含めて、駆け足になりますけれども、説明をさせていただければと思います。   まず、始めにということで、制度導入の可否というところでございますが、引渡しや登記という対抗要件の制度とは別に、非占有担保の優先順位確保のために別途、ファイリング制度を設けるというところの意義については理解をさせていただいているところでありますけれども、この後の議論にも関わります、対抗要件の一元化や登記優先ルールとの関係で、担保ファイリング制度による優劣の決定が最も優れているものだというところまでの定見は現時点として持ち合わせておりません。したがいまして、本意見におきましても、仮に担保ファイリング制度を設けるとすればこういった点に留意をしていただきたいであるとか、設けるとすればこういった制度設計になるのではないかというような御提案の趣旨での意見となっております。   第1の2で、検討に当たっての留意点ということで(1)から(7)までお示しをさせていただいております。(1)の動産譲渡登記との関係というところでございますが、登記と担保ファイリングの二重の手続負担を回避しなければならないという点、それから、同一担保権、これは4行目の「権」の字が誤っておりますが、登記登録事項の間に相互にそごが生じないようにするために、動産登記の申請をもって担保ファイリング制度に基づく登録を完了できるような制度設計が望ましいのではないかと考えております。   そして、(2)といたしまして、他の特別法に基づく動産の担保権の登記や登録制度との調整や整理が必要となってくる場面が出てくるというところの指摘でございます。   (3)といたしましては、担保ファイリング制度に基づく登録を行った担保権者が対抗要件の具備を行わなかったという場合の扱いについて、あらかじめ定めておく必要がないかという点の問題提起であります。そのような担保権者の出現を一切許さないという考え方もあるかと思いますが、それを許容した上で、倒産や実行の局面において何らかの制限をするというような整理の仕方も、どちらも考え得ると思っております。   (4)としまして、担保ファイリングの制度を債権の譲渡担保まで拡張するのかどうかという点についても更に検討が必要であるということで、お示しをしております。   (5)、(6)につきましては、それぞれ包括的な担保権や所有権留保にこのファイリングの制度が適応するのかどうかという点の検討が必要であるということをお示ししております。   そして、(7)でございますけれども、対抗要件の一元化及び登記優先ルールとの関係ということで、冒頭でもお話をさせていただいたとおりでありますが、現在の私の整理といたしまして、対抗要件の一元化や登記優先ルールというものが敷かれた際には、ファイリング制度による優劣の決定というのは基本的に不要であると理解をしているところではあるのですが、ただ、特に事業担保等、目的物が広範にわたるような場合に簡易迅速に優先弁済権を公示するという利点を考えますと、これら対抗要件の一元化や登記優先ルールが敷かれた場合でもなお、別途ファイリング制度を導入するメリットがないかという点については、重ねて検討が必要だと考えております。   3の担保ファイリングの制度設計についてでありますけれども、若干細かい点もありますので、飛ばしながらですが、説明をさせていただきます。(1)の登録の扱いというところで、意見の趣旨の2のところ、担保権者の選択に基づき、登記とファイリング制度を連動させるべきというのは先ほど述べた意見と同様でございます。   次のページに参りまして、3の登録の申請人についてでありますけれども、担保ファイリングの登録の申請人は、担保権者の申請とするという考え方が、求められている簡易迅速な手続に資するのではないかと思います。一方で、登記においては現行どおりの共同申請構造を採るというところは維持をしていくべきだと考えております。   ただ、担保ファイリングが担保権者のみの申請とするといったところで、設定者側の関与が全くないという制度は望ましくないと考えますので、(2)の①から③までのいずれかで担保権設定者の関与をする手続がいいのではないかと考えております。   (4)の登録ファイルに記載される事項で、①から⑩までありますが、この中で⑩で、対抗要件について、その対抗要件を特定するための事項というのをファイリングの登録事項にしたらどうかということを御提案申し上げております。   それから、(5)の添付情報については飛ばさせていただきまして、(6)登録ファイルに登録される事項の変更ということで、これはこの後、第2で述べさせていただきます登記に関しての改善事項とも一部重なるところでありますが、一度登録した記録について変更等を認めることが必要な場面が出てくるというところの指摘であります。特に、4及び5の設定者、担保権者について、合併とか会社分割によってファイリング上の地位を移転する登録ができるかについての検討も必要であると考えておりますし、担保権の順位譲渡や順位の変更の登録について、このファイリングでの変更が可能なのかどうかということも検討が必要かというふうに思います。   (7)登録の抹消ということで、登録の申請の場面がどうしても議論の中心にはなりますけれども、登録の必要がなくなったファイリングについて、確実に抹消がなされるという出口の部分の手続の設計もしっかりしていくべきではないかと思うところでございます。   (8)の証明書の発行というところでございますが、誤記がありますので、すみません、訂正をお願いできたらと思います。意見の趣旨の1の(2)の1行目、2行目に、第1の2の(4)というのが2か所出てきますが、これは第1の3の(4)、先ほどの登録事項を①から⑩まで並べさせていただいた部分でありますので、そこの訂正をお願いいたします。   以上が担保ファイリングに関する意見ということでありまして、第2といたしまして、動産債権譲渡登記の在り方についてということで意見を述べさせていただきます。こちらにつきましては、一読での部会資料5、第4の説明に対応する形で意見を述べております。   こちらも幾つかかいつまんで御説明を申し上げますと、2の、まず自然人がする動産債権の譲渡についてというところでありますが、登記優先ルールを採用する場合や、登記と担保ファイリングを連動させることを検討するのであれば、法人と個人とで手続に差が出るということは好ましくないと考えられることから、自然人についてもこの対象とするということを検討するべきではないかと考えております。   ただ、一方で、④で指摘をさせていただいておりますとおり、自然人の利用を無条件に広げるということにおける弊害も考えられるところでありますので、一定の歯止めが必要ではないかと思います。   3の動産譲渡登記の記載内容の柔軟化についてでありますが、在庫一切というような特定方法を許容するのかどうかというのがずっと議論になっているところでありますけれども、仮にこれを認めるということであれば、登記事項としても許容がされるべきであると思いますし、また、在庫一切ということを認めないとしても、動産の所在場所をもって特定するということを必須としないような柔軟化が求められるのではないかと思います。   4の登記事項の変更、更正について、現在では認められておりません変更登記について、実質としての再設定になるようなものは認められないと思いますけれども、そうでないものについては一定の範囲で変更を認めていくべきでないかということで書かせていただいております。4の③、④は、先ほどのファイリングのところで述べさせていただいたのと同趣旨でありまして、譲受人、譲渡人について会社分割、合併等のものがあった場合に変更ができるシステムが望ましいということと、順位譲渡や順位変更についても、それが反映される登記の仕組みで在るべきであると考えております。   5についてなのですが、これは実務上、非常に要請の高い部分だと認識をしております。リアルタイムに登記事項証明書の登記の内容が確認できるというのは与信、決済、融資実行において非常に重要でございますので、これは是非とも実現をしていただきたいと思っております。   6のオンライン申請の利便性向上についてということで、不動産登記に比べまして動産債権譲渡登記においては必要となる添付情報が少ないという点もありますし、現行法の下では譲渡人が法人に限られているということもありますので、オンライン申請になじみやすいと考えています。仮に動産債権譲渡登記のオンライン申請において、添付情報の中で紙ベースのものを用いなければいけない場合であっても、PDFの提供を求めるなどによって、完全オンラインの申請に近付ける形での運用を目指すべきであると思います。   最後、7のシステム上の制約についてというところなのですが、現在、登記の存続期間に制限が設けられていますけれども、システムの負荷軽減ということが理由として言われてはおりますが、昨今の技術の発展を考えますと、この制限というのが果たして妥当であるのかどうか、見直しが必要ではないかと考えております。一方で、④に記載をさせていただきましたが、休眠担保の登記が残ってしまうという問題点もありますので、存続期間満了後に抹消する制度については、これまでどおり存続をさせていくのがよいのではないかと考えるところでございます。   以上、大変駆け足になりましたけれども、現時点で考える担保ファイリング制度及び動産債権譲渡登記の件について意見を申し上げさせていただきました。余り練れた意見ではないと認識をしておりますが、今後の検討の参考になれば幸いでございます。ありがとうございました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。今、伊見さんからお話を頂きました資料につきましては、今後の議事の中で適宜言及して、皆さんの方でも言及していただいて、検討に付していただきたいと思いますけれども、何か特に今の段階で質問等がございますか。 ○鈴木委員 千葉銀行の鈴木でございます、ありがとうございます。司法書士の先生方の御意見というのは金融界と非常に密接だと思っておりまして、今回の御意見は、実務上の課題を非常に網羅的に捉えられて、更に踏み込んだ改善の御提案をされているもので、大変貴重な御提言だと思いながら拝聴しておりました。   特に、第2のところでございますけれども、実務のところで我々と非常に課題を共有しておると思っておりまして、前提となるのは、やはりオンラインでの手続を一層活用して低廉で簡便な制度を作っていくことだと思っております。今回、技術的に解決できる不便が指摘されておりまして、一つの例としては、現行の実務では登記事項証明書がタイムリーに確認できないため、司法書士の先生が朝一番で先順位の登記がないことを確認してから登記申請するという実務フローが定着しておりますけれども、これですと融資実行までに一日余分なタイムラグが発生しているというのが実態でございます。   また、御説明があったものの中では、当事者の名称変更や住所変更について、住民基本台帳や商業登記システムと連携して職権で変更登記がされるというものがありましたけれども、こういったものはユーザー目線で、是非聖域なく踏み込んで取り組んでいただきたいと思います。若干実体法の議論と離れる部分もあるかと思いますけれども、オンラインでできることを可能な限り実現していくのが、この機会に、よいものだと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   まだ御意見はあろうかと思いますが、これは今後の議論の中で適宜言及していただいて、御発言いただくということにさせていただきまして、この議事は、部会資料第1の「1 特定動産を目的とする担保権の対抗要件」、「2 集合動産を目的とする担保権の対抗要件」、「3 動産所有権留保の対抗要件」についての議論ということに移らせていただければと思います。どうも、伊見さん、ありがとうございました。   事務当局におきまして、まず部会資料の説明からお願いいたします。 ○寺畑関係官 それでは、まず第1の「1 特定動産を目的とする担保権の対抗要件」について御説明いたします。   本文では、特定の動産を目的とする担保権について、引渡しをその対抗要件にすることを提案しております。これは、現行法の譲渡担保に関するルールを踏襲するものです。部会資料4では、本文と異なり、対抗要件を登記に一元化する案もお示ししておりましたが、占有改定と比べたコストの大きさや、真正譲渡と異なる取扱いとすることに伴う不利益が大きいことから、今回、本文では提案しておりません。   なお、現行法では登記を行えば引渡しをしたものとみなされますが、引渡しを経由せず、登記自体を独立の対抗要件とすることも考えられますので、その点については後ほど第1の4のところで御議論いただけたらと思います。   次に、「2 集合動産を目的とする担保権の対抗要件」についてです。本文では、一読と同じく、集合動産を目的とする担保権について、集合物論によって、その構成部分として現存する物の引渡しを対抗要件とすることを提案しております。一読では、将来動産について集合物という概念を介さずに正面から考えていくという御意見もありましたので、資料ではそれに関連する論点の関係を整理しております。ただし、将来動産についての物権変動を肯定することは、担保取引だけでなく物権変動一般についての考え方に影響を与えるため、慎重な検討を要することや、集合物論が実務上も定着していることを踏まえて、結論としては集合物論を含めて判例を踏襲する立場を提案しております。   最後に、「3 動産所有権留保の対抗要件」についてです。本文では所有権留保について、第三者との関係では特段の要件なく対抗することができるとする案【案14.1.3.1】と、対抗要件を必要とする【案14.1.3.2】の二つの考え方を、一読のときと同じく、両論併記の形でお示ししております。一読では、この二つの考え方は二者択一の関係ではなく、狭義の所有権留保は対抗要件を不要とし、広義の所有権留保は対抗要件を必要とすることとすべきという御意見がありましたが、占有改定によって対抗要件が具備できるのであれば、狭義の所有権留保の場合であっても、ほぼ常に占有改定による引渡しを伴っていると考えられ、違いを設ける意味は必ずしも大きくないことから、本文では狭義、広義の所有権留保を区別する案をお示ししておりません。   以上について御議論いただけますと幸いです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。いきなり2番のところからなのですけれども、大丈夫でしょうか。2番の資料を拝見して、次の3番に行く直前のパラグラフについて質問させていただきたいことがあります。「なお」から始まるパラグラフなのですが、集合物の構成部分となるものが現存していない場合であっても、観念的には集合物が存在していると考えられる場合には、対抗要件を具備することができるとしてよいと書かれていて、このうち、観念的には集合物が存在していると考えられる場合というのが具体的にどういうものを指すのかということを伺ってみたいと思いました。   例えば、集合債権譲渡に関する初期の考え方などですと、発生の蓋然性を要求するといった議論があったかと思うのですけれども、そういったものが必要なのでしょうか。また、集合物の基礎となる具体的な事実関係、例えば、工場があって在庫を生産することが既に分かっている状態であるとか、取引の相手方が決まっていて商品を買うことが決まっている状態とか、そういう具体的な事実関係が必要なのかどうかということを教えていただければ幸いです。   なぜこの点が気になるかといいますと、もしそこが非常に緩やかに認められるとすれば、あらかじめ様々な種類の集合物を措定して、それについて引渡しを受けておくことで、結局、将来物に対する担保権設定が広く可能になります。最初の入口のところですごく慎重に、将来物に対する担保権設定は認めず、集合物論によるとおっしゃっていたところ、結局、将来の財産に対する担保権設定を広く認めることでよいという価値判断があるのかどうか確認させていただきたく、このようなことを質問させていただきました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。それで、質問に答えていただきましょうということになるのですが、そういうことは私はしないのでありまして、藤澤さんはそもそも、ゼロのときには設定できていいとお考えですか。それで、もしゼロのときに設定できてよいとお考えになったときには、どのような要件があるということが必要だとお考えですか。 ○藤澤幹事 私は、そもそも個別物についても、将来動産に担保権を設定できてよいと考えてしまっているので、その立場からすると、集合物論はいらいないのですが、仮に集合物論をとるとしても、何もない場面で担保権を設定できていいと考えております。しかし、資料の中では、そのような考え方を採ることが現在の物権法の考え方と余り整合しないのではないかという御意見だったかと思いますので、そうであるとすれば、ここについても何らかの絞りを掛けるというお立場なのかということを確認させていただきました。 ○道垣内部会長 藤澤さんに更に伺いますが、藤澤さんのようなお考えは現在の物権法の考え方には反していないというのが藤澤さんの考え方なのですか、それとも、現在は反しているかもしれないけれども、そこを突破しようというのが藤澤さんの考え方なのでしょうか。 ○藤澤幹事 現在は、現存しないもの、現存しない動産についての物権変動を観念することはできないという考え方が採られていると思うのですけれども、担保権の設定に限ってはそのような制限を取り払うべきだと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。それでは、もし事務局の方で藤澤さんの最初の、藤澤さんは質問したつもりなのに質問されてかわいそうだったのですが、藤澤さんの質問に対して、もしお考えがあれば、お願いいたします。 ○笹井幹事 御質問については、それは現在でもある問題でありまして、集合物論が現在、判例上、採られているわけですけれども、これは前回の部会でもあったかと思いますけれども、たまたま倉庫が空になったときに、集合物として消えてしまうのかとか、あるいは、その時点で対抗要件具備ができないのかといいますと、それはそういうふうには考えられていないのではないかと思います。   一方で、では、非常に遠い将来に考えられる集合物に現時点で担保を設定して対抗要件具備までできるかというと、そこもそういうふうには考えられていないのではないかと思いまして、そういう意味では、冒頭申し上げたように、現在でもある問題であって、現在における解釈論を踏襲するというのがこの資料の立場というつもりでございました。   ただ、では、そこがどういうふうに区別されるのかというのは、なかなか実際に記述してみようとするととても難しい問題で、ここはもう個人的な考え方になるかもしれませんけれども、やはり、例えば場所で範囲を特定しているとすると、もう賃貸借契約も締結されていて、いつでも物を運び込める状態になっているとか、あるいは実際、何らかの仕入れとかが想定されているのだと思いますけれども、その仕入れをして販売を行う、そういう事業がどこまで現実化しているのかとか、そういったことが総合的に考慮されるのではないかと考えておりました。 ○道垣内部会長 私からも一言申しますと、藤澤さんはそれでいいとお考えのようですが、別に可能性も何も全然分からないと、この倉庫に物が入ってくるかどうか分からないという倉庫を指定したとしたときも、倉庫に物が入った時点で初めて、現に存在する物が引き渡されたという条件が成就したと考えて、そこから実体的な効力及び対抗要件具備というのが生じると考えることはできそうで、それができるとすると、契約自体は別段どういうふうな特定の仕方でもできると多分言わざるを得ないのでしょうね。ただ、その契約と観念的な占有改定の時点で対抗要件が具備されたと考えるのか、それとも、現に物が存在して、それの引渡しがあったと観念されるときになって初めて実体的な効力及び対抗要件の具備というものが生じると考えるのかという違いなのかもしれないという気はします。後者はいずれにせよ可能ですからね、物が現実に入った後に効力を発生させると考えるならば、恐らく。   すみません、ほかに御意見はございませんでしょうか。2とは限りませんで、1でも3でもよろしゅうございますが。 ○片山委員 今の藤澤幹事の問題意識と共通するところはあるのかもしれません。私は藤澤先生と違って、集合物概念は必要だという立場ではありますけれども、他方、それゆえに将来物に関しての担保権設定について議論が不要だとは思っておりませんで、個別動産についても、例えば製作途上の高額な機械であるとか医療機器のようなものについて、仮に担保権設定の実務上のニーズが高いということであるならば、それは一律に、まだ物権が発生していないからといって、その担保権の設定を認めないというのもいかがなものか、もう少し柔軟に考えていいのではないかと思っているところではございます。そういう意味では、集合動産、在庫が空の場合にという問題以前に、個別動産についても、将来物に関する担保権の設定を検討する余地はあるのではないかとも思いますし、比較法的に見るとそういう立法例はかなり多いということでしょうから、その点も併せて検討すべきではないかと思ったところではございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見はございませんでしょうか。   まず、第1の1なのですけれども、ここについて、ここは真正譲渡自体がその引渡しが対抗要件となっている以上、仕方がないだろうということなのだろうと思うのですけれども、例えば、それこそUCC上ですと、真正譲渡はともかく担保目的ならば必ず登録が必要であるというふうな法制度も考えられるのですが、ここはいかがですかね。まあ仕方がないかなということでしょうか。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。度々申し訳ございません、ここは引渡しを対抗要件とするということで、引渡しを対抗要件とするということ自体に反対するつもりはないのですけれども、後の議論として、登記も対抗要件とするということであるならば、引渡しを対抗要件とするいうことよりも、むしろ登記又は引渡しを対抗要件とするという規定の仕方にすべきではないかとは思っております。確かに現行法は、特例法の3条が登記を引渡しとみなすという擬制を行って、178条の引渡しに集約するシステムを採用しておりますから、そういう意味では引渡しを要件とするということは理解できなくはありません。   しかし、新しく立法をすることによって非占有担保の在り方を規律しようというこの段階におきましては、国際的に見ましても、公示の一覧性とか取引の安全の確保という観点から登記とか登録が望ましい、逆に占有改定は余り望ましくないとも言われている、そういう状況の中で、あえて新しい非占有担保の動産担保の対抗要件が引渡しですと規定するというのは、これは飽くまでも印象論ではありますけれども、後ろ向きの立法かなという気はしております。そもそも民法の対抗要件の仕組みは、釈迦に説法ではありますが、不動産は177条で、譲渡に限らず担保の設定も含めて物権の得喪変更の全部を登記で一本化するというシステムですけれども、動産に関しては178条は飽くまでも譲渡の対抗要件で、担保権設定は個別に規定を置くというルールで、例えば動産質は352条で占有の継続となっております。   ですから、そういう意味では、新たに立法を行う際に、担保物権の創設型による場合は登記又は引渡しと規定することは何ら問題ないと思いますし、それから、担保目的規律型による場合であっても、対抗要件を登記又は引渡しと規定した上で、特例法と同じように、譲渡に関しては登記についても引渡しを擬制すると規定をすれば、矛盾はしないとも思いますので、ここでは、引渡しをというよりも、登記又は引渡しをと、もちろん登記一元法という考え方があるのでしたら登記になるでしょうけれども、それは余り強くないということですから、登記又は引渡しという形にすべきではないかは思っております。そもそも譲渡について引渡しを擬制するということと、担保について登記を対抗要件をするということは別レベルの問題ですので、対抗要件を殊更引渡しに限定するという書きぶりをする必要はないかなと感じました。 ○道垣内部会長 そのときにどうして擬制が残るのか、分からないところがあるのですが、それよりも、片山さんの今の御見解は、この担保の話ではなくて、178条一般で、例えば所有権の移転がある場合だって現在、登記を使うことができるわけですよね。だから、それはもう少し正面から書いて、178条のところを登記又は引渡しとすべきである、そこは譲渡というのも変えなければいけないかもしれませんけれども、という話なのか、178条は触らないが、担保のところは少し特別にこう書くのだという話なのか、それはいずれのお考えですか。 ○片山委員 片山でございます。基本的には後者のことを申し上げているのですけれども、この機に178条自体を見直すということは当然可能だと思いますが、恐らく本委員会のミッションを超えているかなという気は若干いたします。基本的には、後者か前者か忘れましたけれども、担保の話ということでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見はございませんでしょうか。1、2、3、いずれでも結構でございますが。 ○阪口幹事 すみません、1、2、3と言われたので。まず、2について、先ほど出ていた、現に存在するの部分で、これは前回私が少し申し上げて、今回こういうふうに書いていただいたところです。その前回のときに部会長から、結局は特定の仕方の問題ではないのか、夏冬物と書くか冬物と書くかではないのかという話もおっしゃっていただいて、確かに今回の立法というか改正のときには、全在庫という特定を許容するという方向で考えるという話になっていて、そうすると、一個も存在しないということはあまり生じない、何かあるだろうということになってしまうのかなと思います。つまり、現行法であれば、場所を特定し、物を一定程度特定する。ところが、改正によって全在庫という特定を許容するという価値判断をした段階で、現に存在するか否かという問題自身が起きなくなってくるのかなと思うようになりましたので、確かに、ワーディングとしてどうするのかは少し考える必要がありますけれども、結論はこのとおりでいいのかなという気はいたします。これが2です。   3の方がもう一つ、続けて申し訳ありません。ここで【案14.1.3.1】と【案14.1.3.2】と二つに分かれていて、これを弁護士会で議論したら、どうしても意見が分かれていて、それはやはり、9ページのところにある、狭義と広義の問題がここに影響しているためです。更に言うと、狭義と広義の問題プラス平時と倒産時の問題、この2掛ける2の問題を考えるときに、どこに着眼するかで【案14.1.3.1】、【案14.1.3.2】に分かれていくように思うのです。ただ、現在検討しているのは中間試案の取りまとめの問題で、かつ、中間試案の段階では多分、ここ、それから後ろに出てくる譲渡担保との優劣、更に倒産時の問題、こういうのを全部当然、一まとめで出るのでしょうから、その段階では、申し訳ないけれども、(注)でも結構ですから、狭義と広義という問題があるよというのをここの欄にも書いていただきたいなと思います。提案としては、最終、落ちるということかも分からないけれども、説明なり(注)なりで、この対抗要件のところで狭義と広義で分かれる考え方はあり得るけれどもどうかという問題提起を中間試案には残していただきたいなというのが、これはお願いです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。2点、申し上げたいのですが、1点目の、全在庫ということを承認するので、という話なのですが、それはまだ承認されていないと私は理解しております。佐久間さんを中心とする強い異論はあるわけでありまして、それを前提にして今後、議論を進めていくということには私は賛成できないということが第1点です。私自身も部会長として、その時点は決まったというふうな判断で今後の議事を運営していくつもりはありません。私がどう考えているかは別ですが。2番目は、仮にそうだとして、全在庫だということがいいとしたときには、めったに全然ないということはないよねというのは、阪口さんのおっしゃるとおりなのですけれども、それは、全在庫と書いたのだけれども、まだ会社を始める前で現実として全然ありませんといったときにも、対抗要件具備時期ないしは効力発生時期は、その約定時及び観念的な占有改定時でよいというのが阪口さんのお考えでしょうか、それとも、それはもっときちんとしてからだよねというお話でしょうか。 ○阪口幹事 理論的ではないですけれども、全く夢物語の場合は駄目ですねという意見です。遠い将来の作ってもいないものを全在庫といったって、それは何ぼ何でも駄目で、会社が現実に設立し物が動き出しているというシチュエーションにおいて許される、それが蓋然性説なのかどうか分かりませんけれども、全在庫と書いたときに本当にあるかないかというレベルではなくて、やはり現実的な可能性というか、そこがベースになるのではないのかなと、私個人はそう思っています。 ○横山委員 ありがとうございます。横山です。今のところ、一つは観念的に集合物が存在している場合か、実際に存在していないのにという、今の話とも関連しますけれども、これについては既に部会長がおっしゃったことなのかもしれませんが、一個の集合物論というのを一応前提として、一個の物の続きとして対抗要件が遡るということを考えますと、引渡し自体は全く物がない段階で観念的にできるかもしれませんけれども、対抗要件が備わり、かつ譲渡担保として成立するのは、1個目といいますか、やはり物が入ったときになるのではないだろうかと、ここは少し、正しく先ほどの物権的違和感といいますか、一つの物、連続したものとして考えて、物が対象だとなるとすると、そこが主発点になるのではないかと考えたということが一つです。   それから、2番目は、今の3番の動産所有権留保の対抗要件についてなのですが、これは対抗要件を必要とするという考え方と、必要としないという考え方があるようですが、所有権留保権者というのは別除権しか持たないということが前提になっているとしますと、目的物はやはり相手方の債権者の責任財産になったという意味で、物権変動があったということを前提とすることになるのではないかと思いました。そうしますと、理論的に担保として所有権設定を受けたと考えるのか、真正の所有権が担保としての所有権に変更するかはともかくとして、所有権の一部が何の物権変動もなく留保権者に残っているわけではないのではないか、そうしますと、やはり所有権留保を主張するためには対抗要件が必要となるのではないかと考えました。そういう意味では、結論として別除権しか行使できませんよねという前提を採るのであれば、やはり対抗要件が必要なのではないか、引渡しがないと対抗できないのではないかと考えました。   ただ、少し気になりますのは、特定物である動産の売買については、厳密には担保目的ではなくて、単に所有権移転時期を代金支払時期とすること、言ってみれば真正所有権留保のようなものもあり得るのだろうと思います。その場合には、売主の所有権が本当に残り続けるので、対抗要件は不要になるのではないかと思います。そうしますと、両者をどういうふうに区別するのかは問題になりそうに思いました。この点は、動産の売買においては代金支払時期まで所有権移転が延ばされている場合は担保目的だと推定するのかもしれませんが、この辺りは最後は少し自信がないところです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。別除権だからというところからそういう論理が構成できるのかどうかは、私もにわかには判断が付かないのですけれども、おっしゃっていることはよく分かります。 ○井上委員 ありがとうございます。井上です。私も3のところについて2点申し上げたいと思います。   1点目が、今の議論にも関わるのですけれども、今回はここの段階では狭義と広義を区別しないことになっているようですけれども、私も阪口先生がおっしゃったのと同じように、対抗要件のレベルにおいても議論としてはやはり狭義、広義を分ける議論が十分有力な考え方として成り立ち得るのではないかと考えております。   一つには、案【案14.1.3.1】を考えたときには、これがもし広義も全て含むということだとして、留保型の所有権留保で広義のものが、例えば根担保のようなものも仮に含むとすると、非常に高額な設備機械の売主は、一旦それを売って所有権留保をした場合には、代金債権のみならず、その後、継続的に発生する買主との間の取引に基づく様々な債権をずっと継続的に担保し続けるような場合であっても、対抗要件なしに対抗できるという結論に文言上はなりそうな印象を受けておりまして、【案14.1.3.1】の提案が仮にそんなことまで含むとすると、やはり同意できないということになってしまうように思われます。  他方で今、横山委員がおっしゃいましたように、所有権移転時期の定めとして代金完済時と定めた場合というのは、これは所有権留保ではないとおっしゃる方も相応にいらっしゃるわけですけれども、ただ、所有権移転の時期を、合意のときではなくて、わざわざ代金完済のときと合意した当事者の真意の中に、幾らかなりとも、代金全額を払ってもらわなければ所有権を移すわけにはいかないという気持ちがおよそないとは言い難いのではないかという気もしまして、そうすると、代金のみを担保する目的での所有権留保合意と所有権移転時期の定めは、その時期が代金完済時だとすると、実際は区別が付かない、あるいは基本的にはむしろ担保目的があると言わざるを得ない場合がほとんどだろうと思います。そういうときに、占有改定は必要だということがどれほど意味を持つのか。資料にあるように、占有改定は簡単に備えられるのだから求めてもいいではないかというよりは、むしろ、理屈の上でも、その場合は対抗要件不要というか、対抗問題とならないと言ってもいいのかもしれませんが、対抗要件なしに主張できるという整理もあり得るのではないかということを、その後の、譲渡担保との優劣の問題ではなく、ここの対抗問題のところで狭義、広義を分けると、分け方は確かに難しいのは承知しておりますけれども、分けるという考え方があり得るということを申し上げたいというのが1点目です。   もう1点が、資料でいうと8ページから9ページのところに最判平成22年の事案が出てきて、8ページの18行目辺りから、この平成22年最判を物権変動がないという立場と整合的に説明しようとする場合うんぬんということが書かれていて、それに関連して9ページに、第三者が関与する所有権留保についてという見出しで記述があるのですけれども、この事案は確かに所有権留保の事案と一般に考えられていると理解しているのですけれども、本当にこれは所有権留保の事案なのだろうかという考え方について一言申し上げたいと思います。   この最高裁の事案では、三者でこれを合意しているわけですけれども、本件三者契約は、販売会社において代金債権を担保するために留保していた所有権が弁済による代位により信販会社に移転することを確認したものではなく、信販会社が本件立替払金等債権を担保するために、販売会社から本件自動車の所有権の移転を受け、これを被担保債権の完済まで留保することを合意したと最高裁は判示しています。そうすると、売主の売買代金債権を被担保債権としているのではなくて、信販会社の買主に対する立替払金等請求権を被担保債権として、所有者である売主が信販会社に所有権を移転する、移転型の担保であって、何ら所有権は留保されていないと思います。確かに、担保権者である信販会社は譲り受けた所有権を留保するわけですが、それはあたかも、譲渡担保契約において「譲渡担保権者は被担保債権の完済まで所有権を留保する」という規定を置くのと同じことで、留保という言葉を使ったから所有権留保になるはずはなくて、飽くまでも売主が所有権を担保目的で物上保証人として信販会社に移転している、移転型の担保であると思います。そのうえで、売主と買主は売買契約を結んでいるわけですから、当然、設定者留保権が売主から買主に移転しますので、そうすると、被担保債権の債務者である買主が債務を完済すればその買主のところに所有権が戻るのは、これは当たり前のことです。このように、これは所有権留保の事案ではなくて譲渡担保の事案なので、対抗要件が必要なのは、これまた当たり前と考えると、この手の事案との整合性はそもそも考える必要がないのではないかと考えております。このタイプの事案と、売主と買主の間で、売主が代金債権を被担保債権として所有権を留保して、第三者が代金債権を支払った場合にこれに代位するという事案とは全く別で、この代位型は正に二者間の留保型の担保が第三者の弁済による代位により移転したのだと思うのですけれども、この平成22年のような事案を所有権留保事案として考えるべきではないし、それを理由に対抗要件必要説にこだわる必要はないと考えているところです。   これについては、資料の9ページの35行目に、当事者の合意内容によると書いてあって、それはそのとおりだと思うのですけれども、ただ、この調査官解説は、9ページの20行目からになりますが、二つの考え方を示していると。一つは、所有権が一旦売主から買主に移転して、買主と信販会社との間の担保設定契約に基づいて、信販会社が譲渡担保権と同様の留保所有権を取得するという考え方とあるのですが、これは譲渡担保そのものです。一旦、売主から買主にきれいな所有権が移転して、所有者となった買主と信販会社との間の担保設定合意で、そこから信販会社に譲渡担保権が設定されるという構成です。もう一つの考え方として挙げられているのは、第三者所有権留保の合意によって売主が有する留保所有権が信販会社に移転するという考え方ですけれども、売主が有する留保所有権の被担保債権は売買代金債権のはずで、この事案においては採れない考え方ではないでしょうか。だから、この二つ目の考え方をどうして採れるのかがよく分からないのですけれども、もう一つ成り立つとすれば、むしろ、先ほど私が申し上げたように、最初に物上保証人としての譲渡担保の設定行為があり、それに続けて設定者留保権が売買契約に基づいて売主から買主に移転するという構成として合意を解釈することも可能だと思うのですけれども、この二つのどちらを採っても、当事者の合意内容によるのはそのとおりなのですが、譲渡担保であって所有権留保ではないと思われるので、そういうものとしてこの最高裁を読むとすれば、余りここでの整合性、あるいは対抗要件必要説の根拠とする必要はないのではないかと思います、というのが2点目です。 ○道垣内部会長 どうもありがとうございました。 ○水津幹事 3の所有権留保について、横山先生と井上先生がおっしゃったことと関連しますが、2点意見を申し上げます。   第1は、物権変動がないという考え方と、別除権としての扱いとの関係についてです。部会資料では、両者は、矛盾するものではないとされています。もっとも、法律上の規定では、別除権は、単に担保権というのではなく、破産財団や再生債務者の財産に属する財産を目的とする担保権であるとされています。したがって、物権変動がないという考え方を採った上で、留保所有権を別除権として扱うことは、この定義には矛盾しそうです。では、定義を改めればよいかどうかというと、定義を改めたとしても、留保売主のもとから動いていないとされる財産を目的とする権利について、別除権に関する諸規律が適用されるのはなぜか、それぞれについてその正当化根拠を示す必要がある気がいたします。譲渡担保については、担保目的財産は、もともと譲渡担保権設定者に帰属していたものであるため、権利の移転が債権担保の目的でされることを手掛かりとして、別除権の定義との矛盾を回避したり、別除権に関する諸規律の適用を正当化したりすることができるかもしれません。これに対し、所有権留保について物権変動がないという考え方を採るときは、さきに述べたような問題が出てくるような気がいたします。   第2は、別除権の行使の要件として、引渡し等がされていることを求めるかどうかについてです。部会資料では、多様な読み方を許すものとされる平成22年最判との整合性が検討されています。井上先生も、御意見を示されていました。もっとも、判例との関係を考えるというのであれば、平成29年最判との整合性を検討する必要がある気がいたします。平成29年最判は、自動車を目的とする所有権留保がされた場合において、法定代位に伴う留保所有権の取得については、代位者は、登録をすることを要しないとするものの、被代位者を所有者とする登録がされていたことを前提としています。一般的な理解によれば、この判決は、その性質が対抗要件であるかどうかは別として、留保売主が別除権を行使するためには登録を備えていなければならないとするものであると考えられているように思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。別除権について一言だけ言うと、担保の範囲で留保されていると考えたときに、それ以外のものが買主に移っているとすると、別除権の定義には当てはまっているのだけれども、担保の範囲で留保されている所有権については、留保されているのだから物権変動はないと、こういう考え方なのではないかと思うのです。もちろん、留保するということも物権変動の一個であるという分析も十分も可能なのですが、別除権となるからといって対抗要件不要ということにすると、そこに矛盾が生じるというわけではないのではないかと思います。横山さんのときに一言申しましたのは、私はそういう趣旨で言ったわけでして、それがいいと言っているわけではないですが、そういう考え方もできるのだろうと思います。 ○大塚関係官 調査員の大塚です。少し戻りますが、集合動産を目的とする担保権の対抗要件についてです。阪口幹事と横山委員が、在庫が一切ない場合の担保権の成立時期、あるいは対抗要件の具備時期について、何らかの在庫が生じたとき、あるいは生じる可能性が現に生じたときを基準にすべきだという見解を示されました。この見解について、引渡しを対抗要件とする場合には、そこまで問題は生じないかと思いますが、登記によって対抗要件を具備する場合には、登記の時点、あるいは登記に記録されている日時の時点と、実際に譲渡担保権が成立し、あるいは対抗要件が具備されるという時期がずれてしまうというところで、登記を見ても実際にいつ対抗要件が具備されているのかが必ずしも分からないという状況が生まれてしまうと思います。なので、少なくとも登記によって対抗要件を具備する場合には、そういった現に在庫が生じた時点ではなく、登記をした時点を対抗要件具備時期とすべきではないかと考えました。   それから、この2の書き方について、非常に些末な問題かもしれませんが、現在、特例法によりますと、登記をした場合には、当該動産について引渡しがあったものとみなすとされております。今回、部会資料の別添資料として添付されたところを見ますと、そこで登記の対象となっているのは、例えば在庫一切のような、その特定範囲をどうするかというところです。そうすると、その登記によっては、そういった在庫一切について引渡しがあったものとみなされるということになりまして、そうすると、この2の、その構成部分として現に存在するものの引渡しとは若干ずれが生じてくるように思います。なので、単に書き方の問題ではあるのですが、一応気を付けた方がよいかなと思います。例えば、登記又はその構成部分として現に存在するものの引渡しがなければ、と書けば問題はクリアされるかなと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。少し大塚さんに伺いたいのですが、登記をした日は分かるけれども在庫商品が現に発生した時期は分からないので、第三者から見ると、どの時点で、第三者ではなくて債権者からもそうだけれども、それを早めて登記時にしてあげることに第三者は利益があるのですか。 ○大塚関係官 そうですね、第三者のメリットはないかもしれませんが、逆に後ろにずらすメリットも何かあるかと言われると、必ずしも。 ○道垣内部会長 早い時期に対抗要件が具備されたと考えた方が、例えば偏頗行為とか、そういう場面で債権者に有利になるということはあり得るわけですが、第三者から分かりにくいということが、登記時に効力を発生させなければいけないという理由にはならないようには思ったのですが。 ○大塚関係官 確かに、そう言われるとそうかもしれませんが、後から見て少し分かりづらいような気はするかなというところはあります。 ○道垣内部会長 証明とかいろいろ面倒くさいことになるというのはおっしゃるとおりだと思いますけれども。ありがとうございました。   ほかに御見解は。   もう一度整理して確認したいのですけれども、第1の1に関して、もう担保目的のものは登記一元化しようという御見解は、いろいろ考えたときに、それはまあ難しいのではないかということでしょうか。そこで、あとは公示の問題、担保ファイリングの問題、今日、伊見さんからも報告がありましたけれども、そういう問題で調整していくという。それはあり得るけれども、基本的な特定動産の対抗要件のところは、まあ引渡しということで、引渡し又は登記でもいいのですが、登記一元化しなくていい、仕方がないかなということでよろしいでしょうか。 ○青木(則)幹事 ありがとうございます。当方のオンラインネットワークの障害で30分ぐらい中座させていただいたものですから、御議論についていけていないかもしれませんけれども、こちらの件につきまして、疑問を持っておりますので、一言発言させていただきます。今おっしゃったように、引渡しを前提としつつ、別途に新たなファイリング登記という制度を設けて優先要件としていくということで、実質上、公示を基準とする担保権の優劣関係を作るということについては、賛成ではございますけれども、現段階で一元化というのを完全に消してしまっていいのかどうかということについては、疑問を持っております。といいますのは、新たなファイリング登記制度を作ってそれによる公示を優先順位の基準とするという制度を作った場合、結果的には公示に関わる制度が引渡しと特例法上の登記と、それから、新たなファイリング登記という3種類のものが出てくるということになります。それを、場合によっては、一つの制度がほかのものを兼ねることができるという形で運用していくということになるのかと思いますけれども、やはり、説明としては複雑になるかなと思うところもございます。   結果的にどういうルールがよいのかという点で、場合によってはすっきり一種類の公示制度による一元化を実現した上で、必要なものについては例外規定を設けるということも、まだ可能性としてはあるのかなと思っていたものですから、この段階で消えてしまうということについて疑問を持っております。この点について、部会資料の御説明では、登記一元化の場合のコストがかさむという点と、それから、事後的な再構成の不利益ということが挙げられております。けれども、この二つだけでしたら、場合によっては一元化でもクリアできなくはないのかなとも思います。というのは、一元化した場合のコストという点については、コストに見合わないような少額の融資については、一種の消費者取引のように考えて、例外規定を作るというようなこともあり得るのかなと思います。実例として、アメリカのUCC第9編では、債権譲渡に限られますけれども、情誼的な少額の債権譲渡については、設定のみによって対抗力を付与するといういわゆるオートマチック・パーフェクションで処理をするという形での例外規定を設けております。そういうふうな類型的な例外として考えていくということもありなのかなと思います。また、再構成との関係については、逆に、後から裁判所で担保と再構成されるような取引については、むしろ登記による公示を求める方が健全な制度ではないかというポリシーもありうるのかと思うところもございまして、そういう意味では、一元化を前提とした議論は、これだけの理由であれば、まだ残しておく余地があるのではないかと思っておりました。   もちろん、一般的な対抗要件の問題といたしますと、差押え債権者とか、あるいは管財人との関係でも同じように扱われてしまうということがございますので、これをどう考えるかは問題になります。飽くまでも今回の立法で扱う優劣規範は、複数の担保権の競合の規範であると考えて、それ以外の、差押え債権者等との優劣の方については、今回の改正では扱わないということにコンセンサスがあるのかどうかは、重要な問題かと思います。   そういうふうなコンセンサスがあるのであれば、確かに登記による公示を一般的な対抗要件とするのはおかしい、引渡しが一般的な対抗要件だということでよろしいのかと思いますけれども、そこのところも議論していいということであるならば、まだ一元化というのを消してしまうのは時期尚早かなと思いましたので、発言させていただきました。ありがとうございます。 ○道垣内部会長 よく分かりました。もちろん別個の公示制度を作るというときに、別個の公示制度についての意見がまとまっていない段階で、それを前提としながら、対抗要件自体をその登記にするというのを切ってしまうというのは、多少乱暴だったかもしれません。したがって、このような可能性というものを踏まえながら、別個の公示の方法でどこまで対応できるかということを検討していくというのが正しいところなのだろうと思います。青木さん、どうもありがとうございました。   では、1はそういうことを注意しながらということになりますが、2に関しては今、そもそも構成部分といいますか、集合体、特定の仕方を自由にしていいのか、それとも、一定の経済的一体性みたいなものをなお求めるのかというのが、まだ分かれているということを前提としつつ、ゼロである場合にどうするのか、また、そのときにどの時点で対抗要件が備えられたと考えるのかということについて議論があり得るということで、いろいろな御意見を伺いましたので、本日どれかに集約するというのは難しいかなと思います。   3の動産所有権留保に関しましては、いろいろある判例等もそれほど気にする必要もないのではないかという見解もあって、私はそのとおりだと思うのですけれども、なお拡大型の場合はどう考えるのか、という問題がある。そして、そのことが中間試案というふうな形でまとめるときには、その中間試案ゴシックの部分からその可能性というものも読み取れるようにしてほしいという阪口さんの御発言がありまして、それはそのとおりだろうと思いますので、そこは注意しなければならないとは思います。ただし、およそ一般にこれを登記しなければならないという形ではなくて、単純所有権留保と呼ばれるものは別に考え得るかもしれない。もちろん、井上さんがおっしゃったように、普通の売買契約において、何で代金が支払われるまでは所有権は移転しませんと約定するのかと、それは担保でしょうと言われれば、それはそのとおりとしか言いようがないところがあるのですけれども、そういうのを踏まえて整理をもう一度するということでしょうか、本日のところは。   以上のようなまとめでよろしゅうございますかね。  開始いたしまして2時間20分ほどたっております。この休み時間の間に、今の道垣内のまとめでは不十分で、更にこういうことを付け加えたいということをお考えになり、終了後に御発言くださっても全く構いませんので、この段階で一旦休憩を取らせていただければと思います。   少し遅れてはいますが、しかし、4時5分まではお休みを取りましょう。4時5分に再開ということとさせていただければと思います。どうもありがとうございました。           (休     憩) ○道垣内部会長 それでは、時間になりましたので、審議を再開したいと思います。   部会資料14の第1の1、2、3というのをやっておりまして、先ほど私が皆さんの御意見を整理させていただいたのですけれども、なおその整理等に問題があったり、是非発言をしておかなければならないということがございましたら、お願いいたします。   よろしいですか。それでは、今後もあると思いますし、いろいろな機会に事務局等にお伝えいただければと思いますので、前半に続きまして、第1の「4 新たな規定に係る動産担保権を登記する制度のイメージ」ということについて議論を行いたいと思います。   事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○寺畑関係官 それでは、第1の「4 新たな規定に係る動産担保権を登記する制度のイメージ」について御説明します。ここでは、新たな規定に係る担保権の対抗要件を登記によって具備することができることとした場合の登記制度の在り方として、二つの方向性をお示ししております。   【案14.1.4.1】は、登記をすれば引渡しがあったものとみなされるという効果や、登記事項の点で、基本的には現在の動産譲渡登記と同様の制度を設けることを提案するものです。これに対して【案14.1.4.2】は、登記そのものを対抗要件とするなど、動産譲渡登記の効果を改めるとともに、担保取引に関する比較的詳細な事項を記録する制度を設けることを提案するものです。これは、第12回の部会で、担保権の順位の変更や転担保等についても明文の規定を設ける実務上のニーズがあるという御意見を頂いたことを踏まえて、そういった情報を公示するという観点から検討したものです。   この部会資料14の末尾に付けた別添「詳細な記録制度のイメージ」というスライドも併せて御覧ください。このイメージでは、御議論いただくに当たっての一つのたたき台として、例えば、スマートフォンでシステムにアクセスすることができるようにすることや、担保権の順位の変更のように、複数の担保取引に係る取引がなされた場合には、その情報を関連する取引の記録に反映していくことなどをお示ししております。実際にどのようなことができるかについては、技術的な問題もございますので、今後詰めていきたいと考えております。   また、一読の議論では、簡易、迅速、廉価な公示制度の整備を求める御意見が多かったことから、二つの案に共通する課題として、申請方法、申請情報の内容、添付情報の内容、人の審査を介するという仕組みをそれぞれ見直す必要はないかといったことも検討課題になり得るかと思います。   以上について御議論いただけますと幸いです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   議論の前提として、もう少し説明を補足していただきたいのですけれども、4のところに書いてあります動産担保権を登記する制度のイメージというところですが、これは現在の動産譲渡登記制度の改正ないしは改善というのが前提になっており、14ページの【案14.2.1.2】に新たに設けるファイリング制度におけるファイリングという言葉が出てくるのですけれども、4のところの【案14.1.4.1】と【案14.1.4.2】というのは動産譲渡登記の制度についての説明というふうに考えていいのでしょうか、それとも、両方を含むということなのでしょうか。 ○笹井幹事 第1の4では、議論の順番としては、ここは動産譲渡登記制度がどういう効果であるかはまた別として存続していくときに、登記事項をそのままにするのか、もう少し詳細にするのかというのを、動産譲渡登記の在り方として議論していただくというつもりでおります。   ただ、この後に今、部会長からも御指摘がございましたように、13ページ以降では、ファイリング制度も検討のそじょうに上っておりますので、もしファイリング制度を作るとすれば、それをどういうものにするのかというイメージもまた考えていく必要があると思います。そのときには、登記との役割分担ということはあると思いますけれども、同じことがファイリング制度の在り方としても問題になってくると思いますので、そういう意味では、最後まで行けば、どちらのイメージでどういう制度を作っていくのかというのをまとめて議論していただく必要があると思いますが、第1の4では、取りあえずは登記の在り方として取り上げたという趣旨でございました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。登記のところを精緻化して、登記に吸収して、引渡しの中でも登記をしているというときには、例えば効力を強めるというふうなことも考えられますし、登記は登記であり、飽くまでそれは引渡しとみなされるという対抗要件の効力なのだけれども、しかし、登記事項を増やすことによって少しは分かるようにしようと、そして、担保ファイリングというのをするかどうかというのはまた別個の問題としてあり得る。3番目には、さらには、登記自体は引渡しとみなすという形の対抗要件制度に純化してしまって、情報は別のところにまとめるというのも、いろいろあり得ると思うのですけれども、いろいろあり得るということを含めまして、ここは登記の話になっていますが、どうしてもこれはほかのところにやるべきだとか、正にこうやるのだったら担保ファイリングは不要だとか、いろいろな御意見があろうかと思います。全体設計ということになろうかと思いますので、御自由に御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。藤澤です。若干マイナーな点に関してで大変申し訳ないのですけれども、【案14.1.4.2】の説明のところで、こういった詳細な登記をすることの一つの目的として、担保権の順位の変更ですとか担保権の処分といったものを記録することができるようになることがあると書かれていますが、このお話の前提として、引渡しによって対抗要件を具備したケースにおいて、例えば被担保債権の譲渡があった場合ですとか、担保権の順位の変更があった場合ですとか、担保権の処分があった場合にどうするのかというルールを少し検討してみる必要はないかなと思いました。例えば、引渡しによって対抗要件を具備した場合にはこういうことはできないのですというルールも一つあり得ると思います。反対に、引渡しによって対抗要件を具備した場合には、例えば被担保債権の譲渡の場面であれば、指図による占有移転で物の引渡しをしなくてはいけないというようなことを定めるとか、担保権の順位の変更等であれば債務者に対する通知が必要であるとか、そういったルールを置いていくということが考えられると思います。   後者のように、引渡しによる対抗要件具備の場面でも担保権の順位の変更や担保権の処分の効力が認められて、第三者にも対抗できるとなるとすれば、対抗要件を備えるに当たって、引渡しと登記の二本立てで対抗要件を備えてしまう人もいると思うのですけれども、そうすると、引渡しの対抗要件に基づいて、そういった目に見えない条件を備えれば、担保権の順位の変更等が可能になります。引渡しによる対抗要件具備が併存する限り、登記があるからといって、それらのものが全部表に出てくるとは限らないということになって、詳細な登記を設けた目的みたいなものの一部が達成されなくなるのではないかというような気もするところです。なので、結局は簡単なままでいいのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 分かりました。私、最後の着陸がそこへ行くとはとても思わなかったのです。つまり、藤澤さんの話の流れの中では、こういう細かな処理というのは登記をした場合にだけできるというふうなことをはっきりさせなければならないという言葉で終わるのだろうと思っていたら、だからこそ結局、簡単でいいではないかとなったのですが、藤澤さんのお考えを私が理解するところは、それでよろしいのですか。 ○藤澤幹事 少し着地点がおかしかったかもしれないのですけれども、結局、引渡しと登記と両方できるという状態だと、登記の方にいろいろ細かく書かないと駄目だよ、みたいなルールを設けても、そうしないでも済んでしまうのではないかと思ったということです。 ○道垣内部会長 分かりました。 ○本多委員 ありがとうございます。三井住友銀行の本多でございます。今ほどの藤澤先生と道垣内先生の御議論に関して、でもあるのですが、藤澤先生の御整理のとおり、引渡しによって対抗要件具備した場合であったとしても、理論上、それから制度設計上、担保権の処分だったり順位の変更だったりというものを十分実現できる余地はあるのかなと改めて感じました。   一方、従前、転譲渡担保だったり順位の変更だったりという実態上の効果を生じさせる際に、登記を組み合わせることによって公示がよりできやすくなりますというようなことを申し上げていたのですが、私の素朴なイメージは、登記により公示をさせる必要がありそうで、登記を必要とすることで少なくともユーザーにとって分かりやすくなるように思われます。そうであるとすると、登記をするということが担保権の処分だったり順位の変更だったりの効力発生要件とするという位置付けをすることもストレートな制度設計なのかなと思われまして、それが道垣内先生のコメントにもつながっているのかなというふうに理解をしております。   それから、それ以外のことについて幾つか触れさせていただければと思うのですが、片山先生が先ほどおっしゃいましたとおり、動産譲渡登記制度を変更しますということに関しまして、元々引渡しとみなすという設計になっているのですが、担保権設定の対抗要件について、登記が対抗要件ですというふうな位置付けに変えた場合に、やはり真正譲渡の場合の事後的な再構成リスクが気になりますので、片山先生もおっしゃったのですが、引渡し又は登記を対抗要件とするという設計になっている必要がありそうなのかなと感じております。   それから、少し細かい点なのですけれども、資料の12ページ目の3行目以降で順位の変更等に関するイメージを載せていただいていまして、大変分かりやすく、イメージが浮かびやすかったというところがありますが、対になる形で登記をする必要がありますという御説明をされているのですけれども、それ以外の方法もあるかもしれなくて、特に、例えばA、B、Cの順番で譲渡担保が設定されているような場合にB、C、Aという順番に変更するということを考えた場合に、AとBとAとCという2段階の手続を経ないといけないとする必然性はなさそうなところがありまして、A、B、Cの三者よりB、C、Aにするという順位の変更も認められてしかるべきなのかなと思われます。その場合に、例えば動産譲渡登記の備考欄等においてA、B、Cの各登記番号をB、C、Aの形に並ぶように入れ替えをする旨を記載するという設計の仕方もあるのかなと考えられまして、この辺りはまだ検討の余地がありそうなのかなと感じております。   それから、もう一つだけ、【案14.1.4.2】の(4)の担保権の実行がされた場合における通知の設計に関してなのですけれども、これは私的実行がされた場合における、他の利害関係人に対する通知に関する工夫の一つなのだろうと理解してはいるのですけれども、この場合に幾つか留意事項がありそうでして、例えば、占有改定によって担保権を設定した後順位の担保権者がいた場合に、直ちに通知できるわけではなさそうというところがありそうですし、それから、誰がこの通知に関する登記手続をするのかという論点はあると思われまして、資料の13ページ目の23行目以降にある、設定者にとって別の種類の担保目的物について担保権が実行されたことを他の担保権者に知られたくないという期待を保護するというところを強調するのだとすると、先順位の担保権者が後順位の担保権者に関する登記事項証明書を必ずしも取れるわけではないということに鑑みますと、設定者しかこの重なり合う担保権者がどの範囲にあるかということを把握できなくて、そうすると、設定者がこの通知のための手続をすることになりそうということは、設計上留意する必要がありそうなのかなと考えております。   差し当たり、以上になります。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。順位の変更に関しましては、実は物的編成主義が採りにくいということとの関係をどう考えるのかという問題もありそうな気もいたしますけれども、いずれにせよそういうふうな手続を考えなければならないというのは、そのとおりだろうと思います。 ○大塚関係官 調査員の大塚です。私からは4点ほどコメントをさせていただきます。   まず、記録事項についてですけれども、一切かどうかというのを最初に選択するということがイメージとして挙げられておりますが、別の方式としては、一切かどうかを最初に記録せずに、所在場所や数量という記載事項の中で一切という記載を許容するという書き方もあり得るかと思います。同じではないかということかもしれませんが、しかし、一切かどうかを最初に選べということにしてしまいますと、在庫一切という選択肢に対するインセンティブが高まってしまうような気がいたしますので、在庫一切という設定の仕方をどう評価するのかによって書き方を変える必要は出てくるかなと思います。また、一切かどうかという記載を許すというマニュアルを作っておくと、後からその取扱いの変更ということが今の提案よりは簡単にできるかなと思いますので、そういった考慮も必要であると思います。   第2点目ですが、これまた記録事項について、根担保の場合に被担保債権の極度額というものを書くということがイメージでは提案されております。これにつきましては前回、極度額を必須とするかどうかという議論があったかと思います。私個人は極度額必須とすべきということですので、これでよろしいかと思うのですが、仮に極度額を必須としない、極度額なしという根担保を許容するとしても、極度額をこの記録事項にするということがよろしいのではないかと思います。すなわち、極度額がない場合には、ここの極度額のところに、なしという記録をするということになります。そうすると、後順位担保を付けようという人は、極度額がなければ付けないようにすればよいということですので、公示として非常に分かりやすくなるかなと思います。また、同様のことを考えますと、根担保でない場合につきましても、利息などについてどの範囲で被担保債権にするのかという点を記録事項にしてもよいかなと思います。もしそれを記録事項にしておくと、後順位担保を付けようという人がもし現れた場合には、こちらを確認して計算できると、そして、安心して計算できるということになろうかと思います。   第3点目は、少し大きな話なのですけれども、こういった登記の仕組みをオンライン上のみで構築するのかどうかということです。オンライン上のシステムは当然、簡易でありますし迅速でもありますので、非常に利便性は高いと思われますが、しかし、システムダウンのリスクであったり、あるいはサイバーセキュリティ上のリスクという一定の脆弱性を持っているかと思います。その場合、つまり、何らかの事情によってこういったオンライン上のシステムが使えなくなったというとき、どう対応するのかということも考えておかなければいけないと思います。   一つ簡単な方法としましては、オンラインでないオフライン上の手続もできるようにしておく、二重のやり方を準備しておくというのがあると思いますが、しかし、そうすると非常にコストがかさんでくるということですので、オンラインのみとした場合のリスクをどこまで許容できるのかということも、議論しておく必要があろうかと思いました。   最後は、ここで議論すべきかどうか少し分からなかったのですが、対抗要件として登記を認めるというときに、登記をすべき義務というものを設定者に認めるべきかという点が出てくるかと思います。民法債権関係の改正では、民法560条が新たに入りまして、売主に対抗要件を備えさせる義務というものが条文上、認められております。そうしますと、ここでも設定者に対抗要件を備えさせる義務というものを条文上、認めるということはあり得るかなと思います。そうした場合に、対抗要件を備えさせる義務としただけでは、引渡し、占有改定でもいいのかというこということになってきますので、仮に占有改定によった場合には優先劣後関係において多少弱くなってしまうとなると、登記をすべき義務というものを認める必要がないかということになってくるでしょう。そういった登記すべき義務を認めると、そういった条文を置くとした場合に、それをどのように強制できるかということになってきまして、裁判で強制できるとした場合には、そういった裁判による強制を前提としたオンライン上のシステムというものを組まなければいけないということになってくるでしょう。法制審で議論すべきところかどうかは分かりませんけれども、そういった、当事者同士でスマホだけで処理するのではなくて、裁判所を介した登記が可能、そういったところができるようなシステムを組むべきなのだろうと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○尾﨑幹事 私の方からは、今回非常に詳細な具体的なイメージを御提示いただいているわけですけれども、基本的な考え方について申し上げたいと思います。非常に重要なのは、実務の改善につながるような公示制度を目指すということだと思っておりまして、これまで何度か繰り返しておりますように、簡易、迅速、安価な実務を可能とする公示制度といったようなものを作っていくべきであると考えています。金融機関、あるいは法務局、そして、何よりも事業者において登記実務をいかに効率的にやっていくのかということです。いかに簡易、迅速、安価にするかということで、これを目的に添えて議論するということが社会経済の発展に資するような公示制度の実現につながるということではないかと考えています。   資料の12ページの28行目以降には、公示制度のイメージとしていろいろなアイデアを挙げていただいております。この点に関連して、選択基準として、業務プロセス全体の効率化ということが重要であると思っておりまして、こうした観点から少々申し上げたいと思っています。システムにいろいろな機能を追加しておくということができれば、当然のことながら情報量は確保できるということになりますけれども、システムは機能を増やすごとに登録や管理に掛かるコストも高まっていくということになると考えられます。登記申請を国がしっかりと審査して管理する制度では安心感が増すのかもしれませんけれども、その分、コストは大きくなってしまうということになります。こうした一つ一つについて、業務プロセス全体から見てコストに見合う改善が見込めるのか、その機能がないとどれほど困るのかなど、実質的な意義を問いただすということが必要になってくるのではないかと思っています。   最後に、資料の10ページ以下で検討されている制度のうち【案14.1.4.2】の詳細な記録制度について、一言だけ申し上げたいと思います。今回のテーマである登記制度ですけれども、国連のモデル法においては、いわゆるノーティス・ファイリングが推奨されていて、新興国などでも導入が進んで、既にほぼグローバル・スタンダードと言っていいような状況になっているのではないかと思います。もちろん国ごとの状況や制度の違いも踏まえて、グローバル・スタンダードとは異なる制度を設けるということもあり得るとは思います。しかし、その場合には、その提案がグローバル・スタンダードよりも優れていると考えられる背景や理由を国際的にもやはり合理的に説明できる必要があるのではないかと考えています。政府としてそうした議論を行うことが、日本の国際社会での地位とか競争力の向上にも資するものだと考えています。   今後、登記制度とか、あるいはこれから議論する担保ファイリングの在り方について議論する際には、なぜノーティス・ファイリングがグローバル・スタンダードになっているのか、異なる制度を選択する場合には、より低コストなシステムと考えられているこのノーティス・ファイリングを上回るベネフィットがどういったところにあるのかといったような点も踏まえて検討していくということが必要ではないかと考えています。   少し長くなりましたけれども、私からは以上です。 ○道垣内部会長 どうもありがとうございました。 ○遠藤幹事 中小企業庁の遠藤でございます。私からも、今の尾﨑さんの御意見と方向は多分同じだと思いますけれども、まず、事務局から今回、詳しい御説明の資料をお出しいただいて、議論のイメージがとても湧くようになったことについて、非常に感謝申し上げます。   その上でなのですけれども、事務局の資料は、後ほど議論する担保ファイリングという担保権の優劣を確定させるための仕組みがあって、それとは別途、登記制度があるという、二本立てのイメージで御提案を頂いていると思うのですけれども、このそもそもの立て付けについて、まず若干、整理する必要があると思いました。というのは、まず、担保制度としては、担保権の優劣を確定させるための、担保ファイリングとして御提案いただいている制度、これは絶対必要だと思うのですが、それと大部分の項目が重なり合う登記制度というものが、どのような立て付けでどこまで必要だろうというのは、これ自体に多分、議論があるのではないかと思います。   この点について、中小企業庁の「取引法制研究会」の報告書では、新しい公示制度を担保ファイリング制度に一元化するという御提案を申し上げております。これは、誤解を恐れずにざっくり言うと、担保ファイリングとして後ほど御提案されているもの以外に、登記制度というものは要らないのではないかということを御提案申し上げているわけです。この御提案のとおりに議論していただきたいということでは必ずしもないのですけれども、議論として、後ほど御提案いただく担保ファイリングという仕組みを作った上で、その外側に、担保権の優劣を確定させる以外のための登記制度というのはどこまで必要なのだろうということは、やはり議論をしてもいいのではないかと思います。   そういう意味で言うと、現在、特例法で動産債権の担保については登記制度が存在していて、それとの関係をどうするかという議論もあると思うのですけれども、実際問題として、動産について、財産的価値が大きく何らかの公示をしておく必要性があるものについては、例えば自動車にせよ、工場における大型の産業機械にせよ、何らか国の制度、あるいは民間の制度で登録なり公示の制度というのは既にある程度ございます。そうした中で、この部会の議論としては、担保権の優劣を確定させること以外の目的で、どういう項目が登記制度として既存の登録や公示とは別に必要で、それをどこまで強いものにするかというのは、そういう観点からの議論は必要だろうと思います。   少なくとも、申し上げておきたいのは、先ほど申し上げたように、登記制度が要らないという立場を別にここで頑強に主張するつもりはないのですけれども、実務にとって、現在、登記制度がない中で動いているところから、新たに登記制度を作ったがために追加的な実務の手間なりが多く発生してしまうというような仕組みにすると、かえってそれは世の中を阻害してしまうことにもなりかねないので、そういう観点から、いかに全体的に効率的なシステムを作っていくかという観点から御議論いただけると、非常に有り難いと思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。最初に申し上げましたように、正に動産譲渡登記制度のところに様々な情報を書き込むこととし、登記制度を精緻化していくという方向を採りますと、担保ファイリングというのは逆に不要なのかもしれません。また、逆に今度は登記制度自体はさほど触らないということになりますと、情報面とか優劣の決定作用というのは担保ファイリングというものに移していくということになろうかと思います。それは制度設計上、いずれも可能なものだろうと思うわけなのですけれども、それをどういうふうに絵を描いていくのかというのは、正に遠藤さんがおっしゃったようにいろいろな考え方があって、それを決めていかなくてはいけないのだろうと思います。ただ、どうやっても今よりは大変になると思うのですけれども、それは仕方がない。公示がされていないということの問題性を認識しながら、それを何とかしようとする限りにおいて、今よりも面倒になるのはいけないと言われますと、これはもうどうしようもないような感じが私にはしますので、面倒になるだけの価値がある制度にしなければならないのだろうと思います。 ○村上委員 ありがとうございます。連合の村上です。具体的な意見ではないのですが、全般的な話として申し上げたいと思います。労働組合の中では日常的な使用者との対話の機会、労使協議の機会なども活用して、登記の確認はもちろん、会社の資産を含む経営状態について把握をし、動産に関する譲渡担保権の有無などについても把握しているという組合もあります。しかし、こういった取組ができている労働組合は多くはなく、また、労働組合がない職場もたくさんございます。そうした中、部会資料の11ページなどにも記載されているように、占有改定は第三者から見て外形上も分かりづらいということがあり、一般債権者である労働者保護の観点からは、新たな規定に係る動産担保権について何らか公示が必要だと考えております。その方法として、ファイリングがよいのか、あるいは登記がよいのかということについては、また議論が必要だと思っております。   また、【案14.1.4.1】又は【案14.1.4.2】のいずれが適当かということについて、現時点ではどちらがよいという考えはまだ持っておりませんが、いずれにしても、一般債権者から見ても分かりやすい制度としていただきたいと考えております。   また、そもそも担保権は別除権として財団債権から排除され、労働者の労働による寄与が考慮されず、労働債権が劣後していますので、担保権と一般債権者保護とのバランスを政策的に検討することも必要ということも改めて申し上げたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それと私、先ほど、遠藤さんの御発言の後に申し上げたことで、1点、言い落としたことがございまして、尾﨑さんがおっしゃったようなノーティス・ファイリングというのを中心にして考えるということになりますと、ファインリングにせよ登記にせよ、そこに載っている情報というもの自体はそれほど多くないというふうな制度設計もあり得るということで御発言いただいております。そこを少し落としておりまして、大変失礼いたしました。   村上さんのおっしゃることも大変よく分かりました。 ○井上委員 ありがとうございます。井上です。この4の二つの案は、いろいろな点で違いがあるので、どちらかに全面的に賛成というのは難しいのですけれども、私は【案14.1.4.2】のように、登記については引渡しとみなすのではなくて、そのものを対抗要件とするという制度設計がよいと思っております。そして、この部会のミッションとしてどこまで議論すべきかはよく分かりませんけれども、ここでいう動産譲渡登記の効果をそういう形に改めるというのは、担保のみならず真正譲渡も含めて、登記そのものを独立の対抗要件とすべきではないかと思います。   そして、そこから先は、【案14.1.4.2】は随分重い制度を目指しているわけですけれども、やはり重くなることには弊害もあるので、私は、ここで挙げられている(1)の①と②ですかね、つまり当事者の特定情報と、それから日付と目的物の特定情報に関する登記は、真正譲渡も担保も共通の基礎登記のようなものとして設計し、それさえあれば対抗力は認められるし、優先権も保持できるという簡素なものとすべきではないかと思います。ただ、それに加えて、担保権については、任意で(1)の③、すなわち被担保債権の金額とか発生原因とか弁済期とか利率などの登記も、これを備考欄と呼ぶのか、不動産登記でいう乙区とか丙区とかとして設計するかはともかく、オプションとしてそういう登記もできることとし、それをした場合には担保権の順位の変更の登記あるいは転担保の登記等ができるとか、以前も確か議論があったと思うのですけれども、民事執行法上の実行ができる、あるいは実行の際に登記事項証明書を提出することによって疎明できるというような、いろいろなメリットが認められるということも考えられるのではないかと思います。そうすることで、例えば、真正譲渡と担保取引の性質決定について争いが生じたような取引についても、少なくとも基礎部分の登記が、真正譲渡という当事者間の理解に従ってなされていれば、仮にその後になって担保と認定されても、そこは対抗要件もあるし優先権も維持できるという結果になるというメリットがあると思います。   あとは、担保権の順位の変更とか、根担保についても、全部譲渡とか、一部譲渡とか、分割譲渡とかをできるようにすべきかどうか自体議論の対象だと思いますし、そこも考え方が分かれるところだと思うのですけれども、その全てをできるようにする必要まであるかどうか分かりませんが、実務上、前々回ですかね、申し上げたように、順位の変更などについては実務上のニーズもあり、ただ、それが動産の場合にどう許されるのかは難しいところで、基本的には利害関係人全員が登記を、オプションとしての担保部分の登記をしていて、そこにそれぞれ付記登記のような形で公示される場合に限って、こういった順位の変更などができるという設計もあり得るように思います。   そうすると、いわゆる担保ファイリングの制度を別途設けるかどうかという議論については、担保ファイリングの方で解決しやすい問題もあるかもしれませんけれども、登記に関して言えば、比較的軽い、対抗力を備え、優先順位を保全するための基礎登記と、それから、幾つかのメリットが与えられるための担保であることを表示する任意の担保登記とを設けるということがあり得るのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。井上さんは実体的な効力の問題として、例えば、登記をしているときだけ順位変更できるというふうなことをおっしゃいました。本多さんはそれに対して、登記を効力発生要件にするというのは、ある種、非常に技術としては研ぎ澄まされた方法になっていて、結論は一緒なのですね。そういうことで、登記制度の中でそういうメリットを与えることによって細かな情報を提供させると、しないことももちろんできて、それは対抗要件として効力があるということなのだろうと思います。 ○青木(則)幹事 まだネットワークの調子が悪いものですから、画面オフで失礼いたします。すみません。   登記を対抗要件とするという考え方は、基本的には一元化の方に行くのかなという感じもいたしますけれども、その考え方はもちろんあり得ると思っております。ただ、取りあえず現状のように引渡しを一般的な対抗要件とすると考えた場合に、引渡しと同じ効力を与えられている特例法上の登記とファイリング制度がどうなるのかということについて、少し発言させていただきたいと思います。   既に委員の先生方がおっしゃっていることとかなりかぶってしまうのですが、やはり特例法上の対抗要件の記載事項と新たなファイリング登記制度とでは、記載事項が違うべきであると思っております。特例法は物権変動の公示を対抗要件とする制度の延長線上にあるべきものだと思いますけれども、一方でファイリング登記の方は担保取引の存在可能性の通知をベースとした御議論であると思います。それを我が国で、どういう形で正当化するかというのはまた、今後検討すべき問題であり、可能性としては、例えば譲渡担保の競合ではうまく機能しない即時取得制度(192条)の代替として捉えるというふうな考え方もあり得るかなと思っておりますが、いずれにしましても性質が違うと思っております。そうしますと、特例法の方はかなり詳しいものになり、ファイリングの方はかなり簡便で安価なものになるはずだという意味で、先ほど委員の先生方がおっしゃったようなノーティス・ファイリングというものがこのファイリングには向いているかと思っております。   ただ、問題は、その二種類の公示制度があり、しかも引渡しが一般的な対抗要件であるというときにどうなるかであって、ほとんどの担保権者は占有改定による引渡しを対抗要件としつつ、簡易なファイリングによって優先を確保するという方向に動くのではないかと思います。それでも、特例法による物権変動の公示に資するような対抗要件が必要だとすると、やはり先ほどからお話が出ているような転担保等の必要性とか、そういったある意味で特殊なニーズ、特殊かどうかは分かりませんが少なくとも一定のニーズ、明確なニーズがあるものに限られるのではないかというイメージを持っております。   ファイリング登記制度を構想していくと同時に、特例法上の対抗要件をその明確なニーズに合った形に変えていくべきだということになるのかと思います。そこのところは両方とも同じだということではなく、飽くまでも二本立てで考えていくべきではないかと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。一元化かどうか分からないですが、というのは、引渡しでも対抗要件が具備されるということになったときに、ただいろいろなことができないということだけなのかもしれないですが、しかし、担保としてはなるべくそちらにしましょうということになって、一元化ということになるのかもしれません。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。どうもありがとうございます。この4のところなのですけれども、二つの案ですね、【案14.1.4.1】と【案14.1.4.2】の対立に関してなのですけれども、二つ対立軸があって、一つは、引渡しとみなすか、それとも登記そのものを対抗要件とするかという対立点と、それから、登記事項を簡易なものとするか、それとも詳細なものとするかという二つの対立軸があって、それを整理されているということで、今の特例法のように引渡しとみなすということと簡易にするというのが親和的であるというのはよく理解できるのですけれども、両者の結び付きがそれぞれ必然的なものなのかどうかというのはよく分からないなという気がいたします。例えば登記事項を簡易なものとしつつ、かつ、登記そのものを対抗要件とするという選択肢も十分あり得るのかなとは思っております。   折衷的な考え方ということになるのかもしれないですけれども、できる限り簡易な対抗要件としたいということなのかと思いますので、特例法のように、要するに権利変動を前提として、担保権者と設定者と登記原因、担保取引の3要素、簡易3要素さえ登記事項とすればいいということになるのかもしれませんが、他方、集合動産譲渡担保といっても様々な形で使われて、特に今回は事業担保も視野に入れて、全資産担保に近いようなものを集合動産担保として規律していくということになるのだとしたならば、やはりその3要素だけではなくして、その担保権がどこまでを支配しているのかという意味での被担保債権の額であるとか、あるいは極度額を公示をする方向に仕向けていくということは必要なのではないかと思っているところではあります。   それをどう切り分けるのかというのは非常に難しい問題で、例えば、個別の動産の場合には簡易3要素でいいけれども、集合動産の場合には被担保債権か極度額が必要だ、というような切り分けがどれぐらい適合的なのかというのはよく分かりませんけれども、何らかの形で切り分けをしていくことは必要かなと思っています。その上で、被担保債権を公示していくことのメリットとしては、ここにも挙がっているような(2)、(3)、(4)のメリットがありますという形で登記を誘引をしていくというようなことになるのかとは思いました。   以上、感想程度でございますけれども、意見を述べさせていただきました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○加藤幹事 ありがとうございます。記載事項を拡充するとした場合に、その御提案の趣旨について確認したい点がございます。現在の動産譲渡登記よりも登記すべき事項を拡大するとした場合に、登記すべきとされた事項については、登記した範囲でしか対抗できないというか主張できないと、そういう制度が御提案されているのかということです。   もう1点、これは用語の使い方なのかもしれませんけれども、13ページの12行目の、IDやパスワードを活用して申請者が本人確認となっていますけれども、これは恐らく認証という言葉を使った方が適切かなという気がいたします。(注20)でも認証システムという言葉を使われておりますので、それに合わせた方がいいかなと思います。 ○道垣内部会長 加藤さんの問題意識を少し伺いたいのですが、つまり、登記ないしは引渡しだけ、登記というのは井上さんがおっしゃったような①、②の日付、目的物と、その当事者だけを明らかにする登記、あるいは引渡しの方法でやったときには、被担保債権額というのは後から、いや、私は1億円ですというふうなのが契約書上きちんと明らかにできれば、1億円行使できるのだけれども、そのときに被担保債権額5,000万円と登記してしまえば、そのときに実体的に第三者に対抗できる範囲というのが5,000万円に縮減するのか、それとも、それというのはプラスの情報にすぎないのだから、1億円の被担保債権額で権利行使ができることになるよねという話なのかということでしょうか。 ○加藤幹事 そうです、はい。 ○道垣内部会長 これは、考えればいいような気もするのだけれども、大変いい問題提起だとは思うのですが、何かお考えはありますか。 ○笹井幹事 記載事項とする以上は、閲覧した人はそれを前提に、それを信頼して行動するのだと思いますので、その範囲で対抗できるということを考えておりました。ただ、引渡しなどの場合と比べて大分制限されるのではないかということがあるかもしれませんので、ただいまの問題提起を受けまして、また検討したいと思います。 ○道垣内部会長 では、宿題というか、今後検討するということにさせていただきます。ありがとうございます。 ○沖野委員 ありがとうございます、沖野です。重複するのですけれども、それを恐れず申し上げたいと思います。   まず、この二つの案の中で既に言われております、登記事項をどのくらいのものにするかということと、それに対してどのような効力を認めるか、引渡し代替なのか、端的に対抗要件なのか、それから、引渡し代替であれ対抗要件であれ、最終的に対抗力を持たせるということなのか、単に情報提供であるのかということも出てくるかと思います。それから、登記をすればメリットがある、場合によっては引渡しではできないことが登記ならできるようになるということもあったりということなのですが、そうしますと恐らく、(1)の③もそうかもしれませんが、(2)以下については更に個別に検討する必要があるのではないかと思います。担保権の処分については、登記があるならばできるということで、逆に言うと登記がないとできないということですが、被担保債権の譲渡が同じようなことでいいのかというのは問題だと思われますので。そうしますと、ここの4に書かれている項目は、かなりいろいろな事項が組み合わさってくるので、その観点から再整理をする必要があるのではないかと思っております。   それから、それに重ねて、一元化というときに今、引渡しとの関係での一元化というのと、担保ファイリングとの関係での一元化というのが両方論じられているような感じがしますけれども、引渡しとの関係は、基本的にはなお留保はあって、最初のところで議論がされていることかと思います。担保ファイリングとの関係では、そもそも担保ファイリングを作るかという問題はありますけれども、作ったときに、これらの事項をどちらに置くのかということはやはり考える必要があって、特に今回追加された、より詳細拡大バージョンにしたときのものについては、むしろやはり担保ファイリングの方に載せてくるべきではないかと私は考えておりまして、先ほど青木先生からは、ノーティスであれば担保ファイリングは最小限という話でしたが、担保ファイリングの方に載せた上で、例えば追加的事項だとか、あるいは情報提供として登記することができると、しなければならないのではなくて、できるというような形にすることが考えられます。しかしながら、担保ファイリングのみであると真正譲渡との関係で事後的な認定のリスクがあるならば、ちょうど本日冒頭のところで伊見委員が御提示くださったような、オートマチックにその範囲では動産登記の方に連動させるとか、そういう仕組みもあるのではないかと思いました。   あと、具体的な設計は今回、別添を作ってくださったので、非常にイメージがしやすくなりました。この別添の中の詳細は、大塚先生がおっしゃったようないろいろな検討の余地があるのだろうとは思います。なお、対抗要件具備義務については、恐らくそれが確保されない限りは資金提供自体がされないと思いますので、また、仮に複数の引渡しと登記、あるいは担保ファイリングというのがあるときに、必ずどちらかにしなければいけないというよりは、当事者が選択できればそれで十分ではないかという感じもしました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○佐久間委員 ありがとうございます。2点ありまして、1点目はうまく自分の考えていることを伝えられるか自信がないのですが、10ページの4のところですね、特に【案14.1.4.2】の、対抗要件制度としての動産譲渡登記をすごく詳しく書き込むということなのですが、現在の動産譲渡登記というのは、引渡しに代わるものというか、引渡しがあったものとみなせるもので、譲渡担保の捉え方はいろいろあると思いますけれども、一旦譲渡担保、所有権が債権者に移り、例えば弁済等があれば戻るということが基本にはなっていると思うのです。最初に所有権が渡るということについて、引渡しによって対抗要件が備わる、それに代わるものとして動産譲渡登記がされるということだと思うのですが、本当は変えるというところも、物権変動があるので、対抗要件が問題となり得るところ、民法の原則では、譲渡担保の一般的な占有を現実には移転しないというものだと、もう占有がそのままあるので、それこそ意思表示によって、当然戻っていますね、対抗要件も備わっていますねということで済むのではないかと思うのですが、動産譲渡登記は、今のところはそこはもうほったらかしにしておいてよろしいのだと思うのですが、【案14.1.4.2】のように、例えば転担保の対抗要件もこれにしますとかというふうなことになってくると、転担保が先なのか、取り戻したのが先なのかということが多分、問題になってくるのではないかと思いまして、そうなるとすると、抹消も登記原因として、要するに抹消登記ですね、対抗要件としての抹消登記も認めるということにしないといけないのではないかというふうな気が私は、間違っているかもしれませんけれども、します。そうすると、結局これは譲渡の登記ではなくて、基本的には動産物権変動の登記ということになって、呼び名自体を変える必要もあるし、もう制度の根本が変わるのではないかというふうな気がするというのが1点目でございます。   2点目は、これはイメージの方は今日余り細かく言ってもしようがないというのは分かっているのですけれども、こういう場合どうなるのかというのを教えていただきたいし、場合によっては考えなければいけないのではないですかということを申し上げたいのですが、別添の1枚目に詳細な記録制度のイメージ①というのがあるのですが、その担保取引のところの例示で、「目的物の種類」が「在庫」となり、「一切?」のところが「一切」となっていて、その下が「「一切」でない場合」で「所在場所」とか「数量」とあるのですね。この所在場所のとき、例えばですけれども、ある法人が第1倉庫と第2倉庫を今持っていて、例えばですけれども、第1倉庫の在庫だけを担保の対象にしようとしたところ、まず、その場合は一切なのだけれども、第1倉庫だけの一切なのだから、今日のこのイメージでは、下のところに「「一切」でない場合」とは書いてあるけれども、第1倉庫と所在場所のところに入れれば、第1倉庫の在庫一切ですと読むことになるのかなと思いました。   それが間違っていたら、ここからの話は続かないのですが、仮にそうだとして、合意では第1倉庫しか担保に設定していないけれども、この登記のところでは第1倉庫という記載をしなかったとすると、その登記の効力はどうなのかということを考えないといけないのではないかと思うのです。というのは、例えばですけれども、まだこの法人には第2倉庫があるのですね。第1倉庫しか設定していないとなると、この所在場所のところに何も書かなかったとしても、そもそも実体的な権利変動が第1倉庫にしかないのだから、第2倉庫についてまで対抗要件が及んでいますということ、これはあり得ないのではないかと思うのです。そうであるところ、そのような事情を例えば当該法人が説明して、別の債権者に対して第2倉庫に関し、その担保を与えましたと、これは、そうすると、本来その第2倉庫分については第1順位になるはずなのですが、しかる後、一切として所在場所の限定をしなかった債権者が第2倉庫についても担保設定を受けました、第2倉庫について第2順位になりましたというので、まず、そこが登記に表れないけれども、こういうことが起こることでもいいのでしょうかということが一つ、申し上げたいことと、もっとややこしくなるのが、次に第3の債権者が、その後、第2倉庫について担保を受けるという事態だって恐らくあり得ないわけではない。もしこのままの制度設計で行くと、このような事態が起こり得るということを考えて、それは調べればいいのだから、そのようなものなのですよということにするのか、でも、結局そういうのだと、今までの対抗要件制度の、特に登録、記録による対抗要件というのと随分イメージが異なるし、実態も違うのではないかという気がするものですから、対抗要件については、全部と言っていいのかどうかよく分かりませんが、引渡しと、それに代わる今までどおりの譲渡登記ぐらいで終わらせておいて、あとは優先順位だけをファイリングで決めるのですとした方が、いや、実務は混乱しないということだったらいいのですけれども、実務への影響が案外少ないのではないかなというような気が、素人ながら、しました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。ただ、それって現在の不動産抵当権でもある問題ですよね。例えば、被担保債権1億円と書いたけれども、実体的には5,000万円であると、あるいは、これだけの範囲が抵当権の目的物だというふうにやったのだけれども、実体的には抵当権の目的物ではなかった。こういったときはその部分は登記が空振りになるというだけではないかと思うのだけれども。面倒で混乱するというのはおっしゃるとおりなのですけれども、現在ない問題かというと、存在する。現在存在するからといって、手当は不要だということではないのだけれども、新たにできる問題かというと、そうでもないような気がする。私の理解が不足していますか。 ○佐久間委員 被担保債権は、それは元々が被担保債権額としてどんと設定されたとしても、弁済されるごとに減っていくことは当然あり得て、とかというふうな話になるのではないかと思うのです。あと、目的物についての方は何とおっしゃったのでしたっけ、余りうまく。 ○道垣内部会長 実体的に目的物になっていないものに登記がされたということと同じかどうかということなのですが。 ○佐久間委員 部分的に目的物になっていない第2倉庫について、全体でという、それはそうなのですけれども。 ○道垣内部会長 ただ、そのことに関連して、少し私、ここまでの皆さんの御発言を踏まえて一言申し上げたいのですけれども、全体の流れの中では、【案14.1.4.2】のような、それは全部かどうか分かりませんけれども、登記の詳細化みたいなものが行われるのならば、別段、担保ファイリングというのを別個に設ける必要はないし、また、しかし、この登記の詳細化が行われたときに、ではこのような登記をしていなかったら対抗要件としては一切機能しないということになるのかといったら、それはそうではなくて、例えば転担保の効力要件を登記にするとか、あるいは実体的に転担保が登記がなくてできないということにしても同じですけれども、ことにすることによって、担保としての機能をより発揮できるようになる、するというためにこういうふうな詳細な登記をすると、それによってそちらの方に誘導するというふうな御見解が一つあったのと、もう一つは、沖野さんも佐久間さんも続けておっしゃったことですけれども、やはり登記自体を重くするのではなくて、担保ファイリングという別の制度を構想した方が結局はうまくスムーズに進むのではないかという話と、両方意見があったような気がいたします。   若干、私が個人的に気になるのは、不動産登記の分野というのは真正性の確保ということにすごく力を注いできたのですよね、明治以来といいますか。実際、現在の動産譲渡登記などにおきましても、こういった目的物の特定の仕方が認められるか、あるいは認められないのかということについて、いろいろな先例が出て、認められる場合、認められない場合というのが出てきて、出てくるというのは、それは逆に言うと、受付に当たって一定の審査が課されるということを意味しているわけなのですけれども、登記についてのそのような、ある種、明治時代以来の考え方を前提としつつ、登記の詳細化ということを図って対応しようとした場合に、簡易、迅速、安価ですか、というふうな制度設計というのが可能なのかというのが若干は気になります。もちろんそれは、動産譲渡登記に関してはそういうものである、取り分け担保権情報部分についてはそうではないのだと考えることができれば、もちろんそれはそれでもいいのですけれども、登記自体の考え方との擦り合わせみたいなものが必要になるのではないかという気が、伺っていて、しました。もちろん担保ファイリングにすれば擦り合わせが不要だということになるとは限らないのですけれども、ハードルが低いのかもしれないと思います。さらには、ノーティス・ファイリングにして、担保であるということだけ基本的には書くということになれば、もちろんそれ以上の審査ってあり得ないわけですので、また別かもしれないと、そういう問題も踏まえて、登記の詳細化で対応するのか、別立てにするのか、あるいは内容を書くことにするのか、ノーティスだけにするのかということを考えていかなければいけないかなというふうな気がいたしました。その中に佐久間さんのおっしゃった問題も位置付けられるのかもしれないと思います。   少し要らないまとめを致しましたけれども、ほかに御意見はございませんでしょうか。大きく、私が今申し上げた二つのような流れ。 ○尾﨑幹事 正に今、道垣内座長に非常に丁寧に、かつすばらしくおまとめいただいたようなことなのだと思います。その上で、一言だけ申し上げたいと思いますけれども、基本的に貸手の方は、融資をする場合には、事業の実態とか将来性とか、そういったものを精査した上で、また、借手の資金調達の状況についても公示されているものだけに限らず、当然のことながら占有改定により設定された譲渡担保や、無担保のものを含めて把握するということだと思います。そうしないとリスクを正確に理解することはできないと思われ、公示には最低限の情報が記されていれば、本来は十分ではないかと考えております。もちろん、今回、詳細な項目について申し上げることはしませんけれども、この点だけは1点、少し申し上げておきたいと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   さて、どちらの方法を、というのはノーティス・ファイリングを含めてですが、三つ、四つの方法の対立があるような気がいたしますけれども、どちらの方法にするかというのがここで今ぽんと決まるとはとても思えませんで、そうなりますと、いろいろな可能性を念頭に置きながら、そこが定まっていないのにその制度の効力をどうするかというのを議論するというのも大変難しゅうございますけれども、今後の議論を続けていくに当たりましても、皆さんの方向感みたいなものをお聴きし、ないしは委員、幹事の中で共有するということが必要かと存じますので、少し急な話になりますけれども、第2の1、2の辺りにつきまして、皆さん、自分がお考えになるような制度の下でどういうふうな効力にするのかということについて、少し御議論いただければと思います。   そこで、まずは部会資料14の第2の1と2につきまして、部会資料の説明を事務当局からお願いをして、それで、時間もそれほど残っておりませんけれども、議論を少し開始したいと思います。 ○寺畑関係官 それでは、まず第2の「1 同一の動産について新たな規定に係る担保権が数個設定されたときの優劣関係」について、御説明いたします。本文では、担保権相互の優劣関係について、一読と同じく二つの案を併記しております。【案14.2.1.1】は、対抗可能になったときの前後で決めるという考え方です。【案14.2.1.2】は、例えば担保ファイリング制度によって優劣関係を決めるという考え方で、隠れた占有改定の問題を解消しつつ、占有改定によって簡易に対抗要件を具備することを両立しようというものだと思い、そういったイメージに沿うものとして、別添に簡易な記録制度のイメージを付けております。記録事項としては、今の譲渡登記制度もそれほど詳しいものを要求しているわけではないため、登記以上に軽くするのは難しいかもしれません。簡易にするという点では、手続的な部分、例えば本人確認や添付書類、デバイスなどの面で使いやすい制度にできないかという問題意識をお示ししております。   次に、「2 引渡しと登記との優劣関係」についてです。本文は、いわゆる登記優先ルールの採否を取り上げるものです。第2の1において担保権相互の優劣関係を対抗可能時の前後によって決める【案14.2.1.1】の立場を採る場合、隠れた占有改定による問題を解消するために占有改定を劣後させるかどうかという問題であり、ファイリングによって優劣を決める【案14.2.1.2】の立場を採った場合には問題になりません。   一読では、登記優先ルールを採用する方向性が強かったと思います。そこで、17ページに、登記優先ルールを導入する場合、どのような場面に適用されるかについて、4つのケースに分けて整理をしております。結論としては、真正譲渡との優劣関係を考える場合には登記優先ルールは適用せず、ケース4の担保取引同士の場合にのみこのルールを適用することを提案しております。   また、18ページの35行目以下では、登記優先ルールや先ほどの第1の4や第2の1において検討した問題は、いずれも隠れた占有改定の問題に対処するためのものであるため、全体として登記やファイリング制度をどのように設計するかについて、大きく三つのパターンを示しております。①は、現状を維持するというもので、この場合には占有改定の問題の解決にはなりません。②は、対抗要件は現状を維持した上で担保権の優劣はファイリングによって決するというものです。この場合、第1の4で検討した被担保債権に関する情報や担保権の処分等の取引を記録するかどうか、記録する場合には登記とファイリングのいずれに記録するかという分岐もあるかと思います。③は、登記優先ルールを採用するというもので、この場合にも②と同様に、登記に詳細な情報を書き込むかどうかという分岐があると思います。ほかにもバリエーションがあるかもしれません。   以上について御議論いただけますと幸いです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   今までも少し話が出たところとは思いますが、少なくとも皆さんの方向感の頭出しは、今日で済むかは分かりませんけれども、少し伺っておきたいと思います。 ○山崎委員 どうもありがとうございます。山崎です。適切な意見かどうか分からないのですけれども、ここでファイリング制度導入という話がまた出てきましたので、企業にいろいろまた、もしファイリング制度が導入された場合のそういった意見を聴いてみました。ヒアリングを行った反応といたしましては、占有改定の短所をカバーするファイリング制度の導入はある程度の御理解が得られました。一方で、こちらもかなりあったのですけれども、取引の実務では占有改定が広く活用されていることから、前回の部会のときにも申し上げたのですけれども、集合動産、特に在庫を担保提供することへの風評、また債権管理コストの増加などを懸念する意見もありました。ということで、今後の検討に当たっては、管理コストはできるだけ安くというのは皆様に先ほどからおっしゃっていただいているので、いいかと思うのですけれども、風評に対する懸念を、特に導入当初に関して、払拭できる仕組みを御考慮いただきたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。気を付けなければならない点かと思います。 ○井上委員 ありがとうございます。井上です。今の御説明でいうと17ページの2の引渡しと登記の優劣関係からコメントをしたいのですけれども、ここでは真正譲渡を除いて登記優先ルールを考えるということなのですが、今回の我々のミッションもそうなのかもしれないですけれども、制度としては、真正譲渡についても登記優先ルールを、占有改定との関係で導入することは本当に無理なのかなということを感じております。まだ考えが私、不十分かもしれないのですけれども、それがもし可能だとすれば、13ページの第2の1に戻ると、先ほど申し上げた登記の設計として、できるだけ簡略な基礎部分だけの登記制度を作り、真正譲渡も含めて、その登記が占有改定に優先するというルールが仮に設計可能だとすれば、【案14.2.1.1】は一つの有力な選択肢になるのかなと思います。なぜ有力かというと、【案14.2.1.2】の担保ファイリングは、結局、占有改定による真正譲渡には負けることが前提になるのかなと思ったのですけれども、その理解がもし間違っていなければ、その点において【案14.2.1.1】で真正譲渡についても登記優先ルールができるのであれば、メリットがあるという感じがしました。それが難しいということであれば、むしろ担保ファイリングを非常に使い勝手の良いものとして設計して、真正譲渡との関係では占有改定で先に譲渡されてしまっていると負けるところは受け入れざるを得ないとしても、それ以外の面では見通しのよい制度設計が、簡易で廉価な設計が可能だという期待もあります。まだ全体が決まらないと、どちらに賛成ということではないのですけれども、そんな印象を今は持っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。担保の場合をどれだけ特別扱いするかということにも関係しているのかもしれませんけれども。 ○遠藤幹事 中小企業庁の遠藤です。先ほどの登記のところで道垣内先生からまとめていただいた論点、すなわち似たような項目があるとして、それを登記に寄せるのか、ファイリングに寄せるのかという議論があったと思うのですけれども、これが呼び名だけの問題であるのだったらどちらでもいいということになりますが、先ほど道垣内先生がおっしゃった、例えば審査というのをどこまで入れるかといった実質が絡んでいるとすると、やはり、なるべくファイリングに寄せて議論をすべきだと思っています。簡易・迅速で安価な仕組みとする観点からは、例えばネット上で登録ができる仕組みにしようとしたときに、添付書類がバサバサと付く仕組みというのは、やはり避けるべきだと思っておりまして、基本的には当事者が登録したことを公示するというのが基本になってくると思います。そのときに、両当事者が関与して登録するのであれば、取引をしている担保権の設定者と担保権者の当事者同士の詐害というのは基本的にはないはずで、あとは第三者に対して、担保権の設定者と担保権者が両者で示し合わせて虚偽の登録をするといった点は、虚偽の登録に対する罰則なりで防いでおけばいいと思います。そうした考え方を基本にして、既存の登記という制度に積み上がっている様々な厳しい審査といった点をどうするかについては、恐らく、登記とは違う仕組みとして整理をするのがいいのだろうと思います。   それから、ファイリングの事項ですけれども、ここは先ほど尾﨑さんがおっしゃったとおりで、基本的にはノーティス・ファイリングにすべきであると。取引を実際にしようと思ったときには当然、相手方について詳しいことを調べる必要がありますので、例えば「一切」と書いてあったら、「一切」が何なのかということは調べないと融資も何もできないと思います。であれば、公示としては、「一切」について担保が設定されているということが分かればいいと思うので、そこについて、ファイリングという作業にコストを掛けるということはなるべく避けるべきであると思っています。それがこの点に関しての立場です。   なお、【案14.2.1.1】と【案14.2.1.2】の選択に関していうと、この点は、せっかくファイリング制度を作るのであれば、当然そのファイリングの先後によって優先順位が決まるという制度にすべきだということを前提としてお話をしております。   その上で、これは昨年の部会でも少し申し上げたと思うのですが、少しお時間を頂くと、新しいファイリング制度については、必ずしも国が、登記所なりが管理をするのではなく、法律上、指定法人なり認定法人なりの制度を設けて、実際の実務を民間の企業に運営してもらうという制度設計というのはあり得ると思っています。   これについてメリットを3点ぐらい申し上げると、1点目は、複数の企業が指定法人なり認定法人なりに手を挙げてくれて、国の登録制度を運用してくれることになった場合には、サービスなり料金なりの部分で一定の競争が発生して、よりふさわしいサービスが進化していくだろうということ。それから2点目として、もし指定法人なり認定法人なりになるのが1法人だったとしても、国がゼロベースでITベンダー等に巨額のお金をかけて発注して、ゼロベースでシステムを作ってもらうよりは、既存の運営ノウハウのある法人に手を挙げてもらってやった方が、より安価でサービスのよいものができるだろうということ。それと3点目として、これは昨年も少し申し上げた登録免許税との関係というのは気にしていただきたいということです。国の機関が登録なりファイリングなりという仕組みを動かそうと思うと、基本的には、登録免許税を避ける理由を作るのは相当テクニカルに難しい議論になっていくと思うのですけれども、民間の企業が国からの指定を受けて国の制度を運用しますという仕組みにしたときには、逆にそこから登録免許税を取っていくという理屈を立てる方が難しくなると思っておりまして、そういう意味で、民間にとってはよりコスト的に望ましい仕組みになると思われます。   ということで、そうした仕組みを御検討いただきたいと思っています。今ここで申し上げているのは、民法の本体に規定する譲渡担保権の議論というよりは、登記であれば「何とか登記法」に当たるもの、譲渡担保権ファイリング法なのか譲渡担保権登録法なのか分かりませんが、そういう法律のイメージをお話しているわけですけれども、イメージとして申し上げると、登録されたデータは、これはいずれにしても国が一元管理することで、まずデータ自体の安全性は確保した上で、それぞれの窓口の部分について、その指定法人なり認定法人がサービスの提供の窓口として、お客さんとのホームページ上の接点の部分を担当する、インターフェースの部分を担当するというイメージを申し上げております。当然ながら、登録事項なりファイリング事項については、国が法令で定めて、そのとおりの登録をきちんと受け付けてくださいという形にする仕組みを想定しております。   少し長くなりましたが、私からは以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。残り時間が少なくなったところで申し訳ございませんが、入口部分の確認というか、お願いということになるのですけれども、ここでファイリングシステムについて議論をするということなのですが、ファイリングシステムのメリットというのは、そもそもUCC等でもそうなのでしょうけれども、動産に限らず、全ての事業資産が対象となるという点、不動産を除いてということかと思います。ここでは当面、動産担保に限って検討しているということになるわけですけれども、仮にファイリングシステムを導入するということになれば、どこまで含めるかは議論の余地はありますが、債権とか有価証券、無体財産、そういった事業資産のあらゆるものを含めたファイリングシステムを念頭に置いて考えていくというのが一つの方向性ではないかと思います。そういう意味で、ここでは動産に限定はしていますけれども、今後は動産以外のものにもファイリングシステムの対象とすることが当然念頭に置かれていると考えて議論をしていっていいのかどうかということを確認できればと思いました。   対抗要件としての登記とは別にファイリングシステムを導入するということになりますと、動産だけに限定しておりますと、手続ばかり加重されてメリットが半減しているというような印象も受けます。そういった意味でインセンティブに欠けるところがあるかとは思いますけれども、恐らく動産だけを対象としたものでない、より広いファイリングシステムが導入できるということであれば、また別の大きなメリットがあるかと思いますので、是非その点も視野に入れて御検討いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。片山さんのおっしゃる話というのは、登記の詳細化で対抗要件、システムの中で詳細なものを作るという話ではなくて、担保ファイリングという別の制度を作るというのが前提になっての話ですよね、多分。どうしてそのことを言うかというと、例えば特許権なら特許権で移転とか担保とかの登録制度みたいなものがあるわけであり、それを動かさないとすると、別個のいろいろなことができるようにするためのファイリングが共通になると、そういう発想ですか、少し確認させていただきたいのですが。 ○片山委員 そうです。一覧性という意味では、そういうシステムは一つ、選択肢としては考えられるのだと思います。ですから、ファイリングシステムの選択肢としてそれがあるという点も念頭に置いて議論をしていく必要があるのかなとは思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。何か今のところ、他の分野への拡大可能性について、笹井さんの方から何かございましたら。 ○笹井幹事 そこはまだオープンになっていて、これから議論することだと考えておりましたが、片山先生がおっしゃいましたように、動産だけに限って作るという必然性は余りないのかなと思っておりまして、債権についてファイリング制度が要るのか、隠れた占有改定のような問題がどこまで、どの分野で一番大きく生じているのかということと、その必要性は考えていく必要があると思いますけれども、動産に限らず、それ以外の財産権を目的とする担保権についても使えるような制度としていくという選択肢は十分あり得るものだと考えておりました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   遠藤さんに1点だけ伺いたいのだけれども、尾﨑さんでもいいのだけれども、ノーティス・ファイリングにすると言ったときに、担保ですよというのとか、非常に大ざっぱなというか、情報しか書いていないとしたときに、それを民間にして登記とは切り離した方がいいということになるのかどうなのかというのが、少し御意見を伺いたいと思います。というのは、それだけ書くだけならば、もう別に審査も何も、尾﨑さんはそうおっしゃったかな、審査も何もあったものではないのだから、担保ですということは登記に書けばいいではないかと、別にそこには審査があろうが、何があったっていいだろうと、そういう考え方にはならないのですか。 ○尾﨑幹事 私が申し上げたのは、具体的な審査は金融機関自身が恐らく行うだろうということです。担保の登記・登録については、例えばチェックボックスのような形式にすることも考えられるだろうということを以前にも申し上げましたけれども、具体的なその担保の内容は、それぞれ融資をする金融機関、あるいは貸手の方が調べるだろうということを前提に申し上げました。 ○遠藤幹事 私も基本的に同じイメージでお話ししていたわけですけれども、まず、担保権の所在・存在、あるいはその優先順位さえ明らかになっていれば、具体的にその担保の内容がどういうものであるかということは、当然その取引をする相手方としては調べることになるので、そこをあらかじめ詳しく公示する等のためにコストを掛ける必要はないだろうというのが私の申し上げたことで、尾﨑さんがおっしゃったのと同じだと思います。   その上で、先ほどの片山先生の御意見に関して、私も賛同でありまして、当然、動産だけでなくて債権についてもこれは含められるべきだし、それから、私どもの提案している包括的な事業担保に関しても、当然このファイリングで処理をするということを想定しながら議論をしているつもりでございます。 ○道垣内部会長 いや、私が伺ったのは、ファイリングに何を載せるのですか、遠藤さんの構想では。だって、担保であるということが動産譲渡登記なら登記に書かれたら、それ以上、何も書くことは、あとは直接債権者に聴いてくださいねという話だとするならば、別段、ユーザーインターフェースがどうしたとか、そういうふうな細かな議論をしなくても、ノーティスだけが書かれるという制度にすれば足りるではないか、だから別段、新たな制度設計は不要ではないかということにつながっていくのかなという気もするのですが、そうではないのですか。 ○遠藤幹事 いえ、そういうことではなくて、今の公示制度がない段階では、そもそも担保になっているかどうか、どの範囲でなっているかということ自体がほかの取引の関係者から分からない状態になっているので、その状態を解消するというのが一番の目的だと思っています。そういう意味から言うと、今回、事務局が御用意してくださった簡易な記録制度のイメージというのは、私どものイメージからしても非常に、こういう感じだと思っているところでございまして、それに関して特段の異論があるわけではございません。 ○道垣内部会長 分かりました。   これはどういうふうなファイリングないしは登記のシステムにするか、その関係をどう考えるかということも含めて、決まっていませんし、まだ相互の優劣関係についてどういうふうにするのかについて十分な御意見を皆さんから伺っておりませんけれども、時間が参りました。少し中途半端なところで恐縮ですけれども、次回に議論を続けさせていただくということにさせていただくことにいたしまして、本日の審議はこの程度にさせていただければと思います。   それでは、次回の議事日程等につきまして事務当局から説明をしていただきます。 ○笹井幹事 次回は、令和4年4月19日火曜日、午後1時30分から午後5時30分までです。 ○道垣内部会長 どうもありがとうございました。   それでは、次回またよろしくお願いいたします。本日はどうも熱心な御審議をありがとうございました。 -了-