法制審議会 家族法制部会 第13回会議 議事録 第1 日 時  令和4年3月29日(火) 自 午後1時30分                      至 午後5時29分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  1 親子関係、離婚後の子の監護について必要な事項の定めに関する検討(二読)         2 養育費、面会交流等に関する手続的な規律及び父母の離婚後等における子に関する事項の決定に係る規律の検討(二読) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会家族法制部会の第13回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席を頂きまして、誠にありがとうございます。本日も前回までと同様、ウェブ会議の方法を併用した開催になりますけれども、よろしくお願いを申し上げます。   それでは、まず本日の会議の配布資料を確認させていただきます。事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。お手元の資料について御確認いただきたいと思います。   部会資料13は、「離婚後の子の監護について必要な事項の定めに関する手続的な規律及び離婚後等における子に関する事項の決定に係る規律の検討」のために、事務局において論点を整理したものでございます。   資料の説明は以上になります。今回もウェブ会議を併用してございますので、御発言に当たっては冒頭でお名前をお述べになって発言いただきますようお願いいたします。   私からは以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。それでは、本日の審議に入りたいと思います。   本日は、まず前回会議の積み残しになっております部会資料12に基づきまして御議論を頂きたいと考えております。   前回、部会資料12の第4の1まで進んだと認識しておりますけれども、第4の1につきましては、やや時間が不足しておりまして、まだ御意見がおありの方もあろうかと思いますので、本日は部会資料12について4の1を含めた形で、その後の部分につき御議論を頂き、その後、時間の許す範囲で部会資料の13に基づいて御議論を頂くということを予定しております。   前回、最後に原田委員から御発言のお申出がありましたけれども、それを先送りにいたしましたので、原田委員の方から御発言を頂きまして、それから皆様に御意見を頂きたいと思っております。 ○原田委員 すみません、私、前回途中で切れてしまって御迷惑をお掛けしました。第4の「1 離婚時の情報提供に関する規律」のところについて述べさせていただきます。   まず、養育講座を設けること自体については賛成いたします。ただし、受講は任意として、離婚の要件としないということを、意見を述べたいと思います。   現在の養育費とか面会交流の取決めは協議離婚届に、したか、しないかのチェックをするような形になっておりますけれども、そのような程度でよろしいのではないかと思います。   そもそも離婚後の養育講座の受講方法について、この資料の中でも「通常、父母が揃って受講することは困難」とされていますけれども、私はカップルによっては、そうでもない方もいらっしゃるのではないかと思います。逆にそれができない方たちには何らかの葛藤があって、それは様々、その程度があると思いますけれども、それが1回の受講で葛藤が下がるということを期待するのは疑問だと思います。   現在、家庭裁判所で行われているビデオを、皆さん見てくださいというふうに言われて、私も依頼者と一緒に見ることがあるのですけれども、家裁に来るような、結構葛藤の高い方たちにとっては、これは葛藤を下げる効果はないのではないかと思っています。   ただ、内容としては、ひとり親支援の内容は重要だと思います。仮にこれを義務付けるとか、促進するというふうにした場合に、2のところで、親権者となる者は最低でも受けるというような案になっていますけれども、これはひとり親支援の内容であれば理解しますけれども、案@、Aの内容であれば、監護親や親権者だけに子の配慮を求めている気がして、これはどうかなと思いました。   「未成年時に親の別居や離婚を経験した子どもに対するアンケート」の中で、「面会交流したくない」という理由の中には、監護親や自分に別居親がひどいことをしたという人とか、非監護親が面会を望まないというものもあって、子の配慮の在り方というのは双方の親が努力すべきものであると思います。   もちろん、双方が受けなければ離婚できないということを避けるという意味もあると思いますけれども、例えば不貞で子どもや片方の親を置いて家を出たという場合、その親が離婚を望む場合は子との面会も望まないというケースもたくさんあって、そういうことを考えると、非監護親が離婚を望まないというケースだけではないということもあるので、「父母のうち「親権者」となる者及び監護者となる者」というふうに案Aになっているのは、その前提になっているケースに偏りがあるのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。離婚時の講座について基本的には賛成であるけれども、離婚の要件としない方がよいという御意見と、それから第4の1の(1)で対象を絞るのには問題があるのではないかという御意見を頂きました。   少し戻る形になりますけれども、第3についても御意見があると伺っていたように思いますが、そちらもおっしゃっていただいて結構ですが。 ○原田委員 第3の親権者の権限と監護者の権限を分けるということについて、部会長のおまとめがおおよそこの方向で……ちょっと正確ではないですけれども、そういうふうにおまとめいただいたところについて、私はそうではなかったし、必ずしもおおむねそうだというふうに言えるのかということにはちょっと疑問がありまして、このおまとめについてはいかがなものかと思ったというところです。失礼しました。 ○大村部会長 分けるということについて必ずしも賛成でないという御意見をお持ちだということを伺ったということで、先に進めさせていただきたいと思います。   それでは、ほかの委員、幹事から御意見を頂きたいと思います。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。ありがとうございます。   私も資料第12の15ページ、「離婚時の情報提供に関する規律」のところで意見を述べさせていただきます。   まず、「離婚時における講座の受講」は、目的と達成目標みたいなのが書いていないので、一体どの程度の目的を持ってこれをやるのかということがちょっと明らかでないなと思いました。ちょっと不足して。やることが書いてあるだけなので想像しているわけなのですけれども、例えば養育費の支払を確保するためとか、子どもの心理を聞くことによって親の態様を知るとか、そういうことなのか。ちょっと目標値がないと、何をするのかということも決められないのではないか。私ども事業をしていると、そのように思っております。   それを一応考えた上で、離婚後養育講座とか離婚時の情報提供、いつというのがちょっと明確でないので、離婚前後とされるのか、その辺りも気になったところでございます。多分、前の方は情報が欲しい方が多いだろうとは思います。   その上で努力義務にすることが私としては望ましいのではないかと思います。   こういった離婚前後になるのか、その養育講座の内容なのですけれども、まず多様な家族があることが前提の講座であることが望ましいと思います。やはり家族というのは変容していきますので、離婚ということを何か悪いことのように、親に罪責感を与えるような、そのようなものでないことが望ましいかなと思います。   また、子の心理に関しては心理学の先生にいろいろお聞きしているのですけれども、父母の離婚というものが、別れというのが子どもへ影響する。これは、もう確かかと思うのですけれども、その後に子どもがレジリエンスというか、回復をしていく。それにはどんな条件が必要なのか。その辺りをきちんとお伝えできると、不要な罪悪感よりも、今後の対処ということを学べるのかなと思っております。   私どもは離婚前後の親の支援講座というのを幾つかやっておりますけれども、こういったところの知見があると皆さん非常によいのかなと思っております。   また、お父さんとお母さんと両方が参加されることが望ましいとは思うのですが、監護親と非監護親、両方が同席することに恐怖心を持つ方もいらっしゃるということを前提として、安全を確保するということがいいのではないかと思います。今までにあったプログラムを受講した方からお聞きしたら、非常に恐怖であったと。そこに別居の親さんで、もしかしたらDV加害者がいるかもしれないと思ったときに、自由に意見を言うということはとてもできなかったので、きつかったというふうな御意見を頂いておりますので、私どもがオンラインでやるときはウェビナー形式で、皆さんの参加が、ほかのお名前が分からないようにして安全を確保したりしております。   また、「案B ひとり親に関する支援制度に関する事項」というのがあった方がよいかと思います。そういった情報に接しられない。この頃は、例えば養育費の支援制度も自治体によってかなり異なって進歩しておりますので、こういった情報がきちんと入ることによって、皆さんが活用できる、その情報源になるというのもいいと思いますし、あと児童扶養手当などひとり親に対する手当の情報も、今制度改正が少しずつ行われておりまして、別居中の方への適用も少し進んでいったりするので、そういったことがきちんと、その時々において変わりますので、情報提供があると望ましいと思います。   先日、議事録とか拝見しましたら、DVのスクリーニングができるのではないかというような、棚村先生がおっしゃっていたのですが、それをここで負わせるというのはかなり厳しいのかなと思ったところでございます。   最後に、目的は何かというのにまた戻るのですけれども、親の行動変容をこの数時間の講座でもたらしたいとするのであれば、それは人間の行動変容というのは数時間の講座受講、あるいはそこでワークショップ型にするとはしても、それを期待するのはかなり無理ではないかなと思っておりますので、過剰な期待とか、そういう責務を負わせるのは、私は違うのではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員からは、大きく分けると、内容に関わる話と、それ以外のお話があったかと思います。  内容については最後にもおっしゃっておられましたけれども、これが何を目的とするのかということをはっきりさせる必要があるのではないか、それから、時期の問題もはっきりさせていく必要がある、早い時期に情報提供するということが重要ではないかといった御指摘を頂きました。それから、DVへの対応、スクリーニングといったことまで期待するのはいかがかといった御発言も頂いたところです。   それ以外の問題としては、今の、余り多くのことを期待すべきではないというご指摘と関わるのでしょうが、努力義務にすべきだということと、当事者の安全を確保するための方策をきちんと講ずる必要があるという御意見を頂いたと理解をいたしました。ありがとうございます。 ○武田委員 すみません、親子ネットの武田でございます。   意見ではなくて、今赤石委員がおっしゃっていただいたことに対して、逆に質問です。   この親講座、先ほどの事例で夫婦同席での講座受講とご説明いただいたと思いますが、この講座は同じ場所に夫婦が同席してやるという理解でよろしいのでしょうか。私不勉強で知らなくて、そんな講座もある。そういうことを主催している団体さんなのかどうか分からないですけれども、そういうやり方もあるということですか。 ○赤石委員 そうですね。同居親と別居親と、それは夫婦ではなくて。 ○武田委員 まあ、元夫婦でも何でもいいのですけれども。 ○赤石委員 違う違う、ごめんなさい。ある人は同居親、ある人は別居親、そういう方。 ○武田委員 そういう理解ですね。分かりました。 ○赤石委員 それであっても、その方がどういう方なのかというのが気になりますということです。 ○武田委員 分かりました。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○棚村委員 ただ今の親への支援講座というのですか、そういうこととの関係もあるわけですけれども、前回の発言の内容を踏まえて、ちょっと補充したいと思います。   「親講座」とか「親ガイダンス」というふうに言っていますけれども、実は海外ではすでに30年とか40年ぐらいの歴史があるのです。これも最初は集団型、対面型、あるいはカウンセリング型ということで、個別型も含めて、いろいろな取組がなされてきたわけですけれども、夫婦の葛藤とか、抱えている問題がいろいろ複雑になったり困難になってくればくるほど、集団型の講座ではなく、当然個別型、専門型のきめ細やかな対応ということになるわけです。葛藤が高くなる前の早期あるいは初期の段階で、親の離婚や別居が子どもに与える影響、大人の問題と子どもの問題の分離、子どもの成長発達、怒りの鎮め方、DV・暴力の特質・対策、子の監護・子育ての留意点、子どものためのルール作り、調停・話し合いのコツ、身近な相談機関など必要とされるいろいろな基礎知識とか意識改革のための教育的な働き掛けが必要であり、紛争解決だけでなく、紛争予防や子どもたちのためにも効果があるという共通認識が生まれて、欧米諸国では、裁判離婚が原則でしたから、裁判所が中心になって、親教育や親ガイダンスに力を入れようという基本的な流れになったわけです。ですから、今回の提案でも、必ずしも対面で講座みたいなことで親が一方的に講義や話を聞くという集団型・講座型だけをイメージするべきではないと前回申し上げたつもりです。そういうことで、内容も含めてですけれども、集団型でやる場合にはオンデマンドとかオンライン、ウェブ型というのが、今はコロナの問題もあるのですけれども、海外での親ガイダンスではそれがかなり広まっております。繰り返すことになりますが、必ずしも、講座ということなので名称から、対面で集合して常に何か一方的にお話を聞くというイメージではないという方がいいのかなというのが、前回お話しした趣旨であります。   それから先ほど、内容とかコンテンツ面については、法的な問題や心理的な対応のほかに、ひとり親の支援など、生活面での対応も含めまして正にいろいろな総合的なものがいいだろうと考えています。したがいまして、親が抱えている現在の状況とか、そういうものを踏まえた上で、法的にも、社会的にも、心理的にも様々な支援が必要であろうかと思いますので、そういうことを前提として、基礎知識としてどういうものを与えるか検討が必要だと考えています。それから、次の大きな柱はお子さんが親の離婚とか争いとかいろいろなことで、どういうふうに傷付いて、どんな思いでおられるかとか、そういうことへの配慮というのですか、それを双方で考える機会にするというのが親支援講座の大きい目的です。   このような目的や趣旨のプログラムを限られた時間で行うことになりました。当初は3時間、一定の場所(たとえば、裁判所やコミュニティ・センターなど)で講座を受講しながらグループでの話合いをするとか、専門の方の意見を聞くというところから出発をしたのですけれども、結局、DVとか暴力とかそういう問題がいろいろ出てきて、そのスクリーニングや情報収集の機会にも活用されはじめました。また、講座の義務化についても、登録をして受講してもらった方がいいのかどうかというので、当初は任意のプログラムで効果をみながら、実施しました。アメリカなんかも1970年代後半で、ちょうど共同親権と共同監護みたいなことを言われたときに、こういうプログラムを受けて、基本的な意識とか自覚とか、そういうものをきちんと持ってもらったりしようということでやったのですけれども、結局、暴力があるから一緒に顔を合わせると怖いとか、そういう情報が集まって、むしろ、そういうリスクがある、安全・安心が確保されないようなケースについては時期をずらすとか、それから場所ももちろん異なった所にするとか、そういうような配慮をしているうちに、DVの問題とかで、かなりの事前の対策や保護につながったり、受講した親からは、とても評価が高く、8割9割の人が「よかった」ということで、相当の効果が上がり、裁判所の調停や判決の手続をする前に必ず受けることが義務化されました。   ですから、そういう意味で、葛藤がかなり低かったり、それから大きな問題がない人たちでこういうことを考え始めている人にとっては、お子さんの問題について考え直す非常にいい機会になったという諸外国の経験や日本の自治体等の取組からも、私自身は親子ガイダンスや親支援講座の受講には賛成したいと思います。   ですから、イメージとして、多分原田先生とか赤石先生は集まって講座をやった上で、何か話を一方的に聞くというイメージだと思うのですけれども、実はこういう「教育プログラム」とか「親ガイダンス」とかいろいろな名称で言われているものについては、所要時間も3時間集めてやっていたのが、今だと、アメリカなんかでもそうですけれども、50分ぐらいのオンデマンドとかウェブでの講座を受講していただいて、しかもそういう、先ほどもちょっと言いましたように、DVだとか、いろいろな情報みたいなものは、「やはり怖いんだ」とか「こういうことなのだ」とかということの情報を取る機会にもなっていて、また、内容面でも、DVの問題への相談機関や基礎知識も与えられ、義務化もされて、最低限こういうものを受講していただいて、簡単なテストをしたり何かしてもらうことによって、スクリーニングをして、この人たちは話合いができそうなのか、できそうではないのかとか、いろいろな情報を得る機会にもなっているという説明をしたわけです。   つまり、言いたかったことは、義務化するか、しないかの前には、おっしゃるように、どういう目的でもってこういう講座をどんな形で内容が実施されているかというのは、実はいろいろな段階があって、「親講座」とか「親ガイダンス」とかと一言で言っても、その葛藤が高かったり危険なものについては、こういうものを受けたからといって余り意味がないわけです。そういうことの知見も経験も蓄積されて整理され、制度化されていって、最終的には、やはりこういうものを最低限受けてもらわないと、次のステップで話合いをするとか、いろいろなことをやるということについてふさわしくないということが明らかになってきました。   このような全体の流れの中で、この講座とかプログラムとか、そういうものをどういう人たちにどういう形で受けていただくのがよいのか。そして、そのプログラムを受けることで、どれくらいの効果があるのだろうか。それから、場合によっては、個別の専門相談、継続相談みたいなものにつなげたり、その内容を充実させていかないといけないということは、もうはっきりしているわけです。単にこういう集団のプログラムで、定型的なものを用意して、義務化したから何かうまくいっているというよりは、初期段階で、かなり悩んだり考えたりしている人たちに、こういうような情報提供とか、ガイダンスみたいなのを受けてもらうことによって、次のステップとか、自分たちにどんな問題があって、どんなことを考えなければいけないかということを、個別の状況にあって考えるための一つの手段といえます。ですから、協議離婚というので当事者に今丸投げされていて、自分たちで全部やってくださいと言っているものを、もう少し組織的、体系的、段階的にどんな支援が必要か、自分たちでどんなことができて、それからは誰に相談すべきか、どんな形で頼れるかということを考えていくために制度として設けられています。この親ガイダンスとか親教育プログラムとかというのは、市区町村なんかでやるのか、あるいは広域自治体の都道府県とかを中心に、身近な自治体がどんなことを子どもたちや当事者のために用意できるかと、そういうぐらいのイメージで考えていただくと、義務化が最終的に必要なのか、それから努力義務とか任意でいいのか、そして最終的に制度化していくためには、どういう支援を当事者が必要としていて、子どもたちについてもどのような支援が必要であるかということに応じて、また段階的に考えていくということが必要だと思います。つまり、協議離婚という日本の今の仕組みというものは、もちろん早く離婚できるとかメリットもあると思いますけれども、そうでなくて、十分な話合いができるにもかかわらずしていないケースやそもそも話し合い自体も困難なケースもあると思いますから、その辺りを区分けしながらやるために、親教育とか親ガイダンスというものを検討するということについてはかなり意味があるのではないかということです。   すみません、長くなりましたが、補足説明ということで発言させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。前回の御発言の補足ということで、外国の例を踏まえて、方法、目的、安全確保等について幅広く御意見ないし情報を頂きました。様々なものが考えられるだろうという御趣旨かと思いますけれども、民法上の離婚制度との関係で何をどう組み込むのかという形で最終的には集約していく必要があるのかと思って伺っておりました。   前回少し御議論を頂いた、講座に関する御発言が続いておりますけれども、17ページの「2 協議離婚に関する規律」、そして20ページの「3 法定額養育費に関する規律」、これらについても御意見を頂戴したいと思いますので、全体につきまして何かございましたらお願いいたします。 ○井上委員 ありがとうございます。1と2の両方について発言させていただきます。   まず「離婚後養育講座」の方ですが、理念はよいと思っているのですけれども、ただ、離婚当事者は総じて高葛藤の状態で離婚する場合が多く、その前後にこのような講座を受講できるような環境にあるものなのかと思っていましたが、今の棚村委員のお話を伺うと、そういうところが整備されれば、この講座自体を持つのはいいのかと思ったところです。   15ページ、(注2)のところに「離婚後養育講座の制度化に当たっては、実施主体を検討する必要がある」という記載があります。こちらも今棚村委員から、自治体でという話もありましたけれども、一巡目の議論のときに明石市の泉市長から、福祉職や心理職の正規雇用への登用についてという話がありました。最近自治体では、こういう専門職が非正規で働いている職員が大変多いのですけれども、仮にこうした講座を非正規雇用の公務員に担わせるというのはどうなのかと思っています。高葛藤の状態にある離婚当事者が講座の実施者に対して攻撃的な態度を取る場合なども想定できると思います。仮にこれを制度化して、自治体なり、あるいはどこかに委託するという場合でも、十分な財源や人材の確保が不可欠だと思いますので、そこも含めて検討する必要があるのではないかと思っています。   それから、「2 未成年の子の父母の協議離婚に関する規律」の、「(1)子の監護について必要な事項の取決めを確保する方策」のところですが、全て強制執行を伴う非常に重い規定になっていますけれども、離婚を届け出る際に申述すれば、法律家の確認や債務名義がなくても法定額の養育費で決まるということであれば、多くの人はどうもそちらを選択してしまうのではないかというのが一般的な国民、市民だとそういうふうに流れてしまうのではないかと思います。   その場合、法定額の養育費が、これは3にありますけれども、案@の方で「最低限度を保障する観点から定める額」とあります。これでは金額がかなり低く抑えられて、結果的に十分な養育費が支払われない構造を生じさせる懸念があると思っています。   そもそもこの最低限度額という定義をどのような解釈にするのか。憲法の「健康で文化的な最低限度の生活」を意味するにしても、それをいかに具体的な金額に結び付けるのかということが不明確では、賛否の議論もなかなか難しいのではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。井上委員から1と、2ないし3について御意見を頂きました。   1の養育講座については環境の整理が必要であろうということで、財源及び人材の点について考える必要があるだろうという御趣旨だったかと思います。   それから、2、3につきましては、全体として法定額の養育費の方に人々が流れるとすると、その金額が十分かどうかということを考えていく必要があるだろうという御指摘だったかと思います。どうもありがとうございました。 ○佐野幹事 まず15ページの講座の内容ですが、感想になってしまいますけれども、裁判所の方でガイダンスという形で行っているものについて、葛藤が高い事案ということもあり、当事者の方の様子を見ると、内容が入っていっていないケースもままあるなとは思いつつ、印象としては御本人たちや子どもさんたちの心理の知見が入った方が、子どもさんの方に目を向けるという意味では多少入っていきやすいのではないかと感じているところです。どういったところにどういうニーズがあるかというのを把握するには、実際にガイダンス事業をやっていらっしゃる支援機関に伺うのが、一番よいのではないかと思っております。   それから17ページ、18ページの協議離婚時の確認について、18ページの方に「法律家による確認」というのがあるのですけれども、方向性としてはあり得るかと思っているのですが、悩ましいのはゼロ合意を持ってこられたとき、養育費につき当事者双方なしということで合意しているというものを持ってこられたときとかにどういうふうに考えるのか。それによって、その後の法定の養育費額の発生といった議論にも関わってくるのかと思っております。   というのは、例えば主たる監護者であったとしても収入がない場合、他方が、養育費は要らないから親権は渡せというようなケースもあるかと思います。そういったときに、それはゼロ合意ということで認めるのか、それとも子の利益に反するから認めないとするのか。その場合には協議ができないということで調停に流すのか、結果、法定額の養育費が発生するということになってしまうのか。その考え方によって、その後の議論も前提が変わってくるような気もしております。 ○大村部会長 ありがとうございます。佐野幹事からは、1の部分については講座の内容について、心理的なものを含めた方がよいのではないかという御意見と、それから2につきましては、法律家が関与するという場合に養育費なしといったような合意が来たときにどのように対応するのかということで、制度のイメージないし運用等も左右されるだろうという御指摘を頂きました。 ○池田委員 弁護士の池田でございます。   私からは17ページ、18ページの縦2のところですが、ここでは子どもの監護について必要な事項の定めについて、弁護士等の法律家が一定の確認を行うという提案がされています。ここで「弁護士等の法律家」となっていまして、特に弁護士に言及がされているというところで、弁護士に対する期待と受け止めておりまして、何としてもお応えをしなければいけないと思っています。日弁連としても前向きに検討していく方針と聞いております。   そのことを申し上げた上で、ここでの制度設計について4点ほど意見を申し上げたいと思います。   まず1点目ですが、この提案では、協議離婚の届出要件として、アからウのいずれか、選択的にいずれかに該当する場合ということになっていますが、高葛藤状態にある夫婦ということで、わざわざ煩わしい協議などをして弁護士の確認まで受けるということをしなくても、「協議できない事情があるのだ」と申述して、ウの場合で済ませようとする流れができてしまわないかという懸念があります。先ほど井上委員のおっしゃったところと同じかと思いますけれども。   一巡目の議論では、確かにDVなどで協議ができない事情がある場合を例外とするという検討がされていましたけれども、その事情を誰がどのように審査するかという問題が指摘されていましたので、それを回避するという意味で、こういったウの選択肢というのも理解はできるところではあります。   ただ、協議離婚に関するこれまでの議論を振り返りますと、離婚時に養育費や面会交流の合意をすることがやはり子どもの利益にかなうのではないかということで、合意を促進しようという方向性で進んできたわけですから、アやイが設けられているのも正にその趣旨だと思いますけれども、そういうことからしますと、ウというのはやはり例外だという位置付けが必要なのではないかと思います。もちろん、協議ができないかどうかを審査するのが困難だという問題はありますので、結果的にその申述でいいとするにしても、法律として、それが飽くまで例外なのだという位置付けを明確にするということはあり得るのではないかなと思います。   2点目ですが、この提案は子どもの監護について必要な定めを促進する方策として協議離婚の届出要件としていくかどうかという議論をしているわけですけれども、そういった子どもに関する定めがなくても離婚できるという例外を作った場合に、離婚届が無事受け付けられたとすると、その後、合意の契機というのがなくなってしまうことになります。子どものために合意した方がいいと言っておきながら、離婚のサインを受け付けられてしまえば、後は何もしなくていいとなると、やはりまずいのではないかと思います。   としますと、「引き続き合意に努めていくべきだ」というような努力規定のようなものでも設けた方がいいのではないかと思っています。   それから3点目ですが、弁護士が確認する対象として、18ページの(2)のアのところで、括弧書きで「できる限り子の意見又は心情を把握するように努めた上で、子の意見又は心情に配慮されていることを含む。」と書いていただいているというのは、これはよいと思います。元々、一巡目の議論で、「子どもの意見の尊重」という文脈で弁護士確認というのが挙がってきていたかと思いますし、それから協議離婚では子ども本人が誰からも話を聞いてもらっていないというところの問題がかねて指摘されていたところでしたので、その点からも担当する者が子どもと会って話を聞くというプロセスというのは、やはり不可欠ではないかなと思っています。   その意味では、括弧書きで控え目に記述をしていただいていますけれども、この括弧は外して、正面から書いていただくといいのではないかと思っています。   長くなっていますが、最後4点目です。ここで、その確認をする主体が「弁護士等の法律家」となっていますけれども、手前みそになりますけれども、弁護士が最も適任ではないかと考えています。これは弁護士が子どもの手続代理人や人身保護請求における子どもの国選代理人、それから少年事件の付添人といった活動をしてきて、子どもとダイレクトに関わるという仕事を豊富に経験として持っているというところが大きいかなと思います。   それから、面会交流案件というのは、これは非常にコミットしてやっていかないといけないというところで、これに深く関与してきたのは専ら弁護士だというところで、弁護士が担い手としてふさわしいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員から4点ということでしたけれども、大きく分けると、17ページの2の(1)に関わる点と、それから18ページの(2)に関わる点ということで、二つずつ御指摘を頂いたかと思います。   前者の17ページにつきましては、ウの選択肢に流れるということの問題性、先ほど御発言もありましたけれども、この点についての御指摘がありました。合意を促進するという観点から考えた場合に、ウが大勢を占めるというのは問題ではないか。仮にウのルートで離婚がなされたという場合には、その後に合意ができるような方向付けも必要ではないか。こういった御指摘だったかと思います。   18ページの(2)につきましては、確認の対象が何かということ、子どもの意見を聞くことを重視していただきたいということと、確認する主体としては弁護士が適切なのではないか、そうした役割を担うことを弁護士会としては考えている。こういった御発言を頂きました。 ○武田委員 親子ネットの武田でございます。   第1、前回発言したことに私もちょっと補足させていただきたいのと、2に関してということで発言させていただければと思います。   恐らく親講座、当事者としてそういう講座に参加したことがあるのは多分私だけかなと思っています。私が参加したのは、前回も少し申し上げましたけれども、6年前ぐらいです。今は息子と暮らしておりますけれども、当時は正に皆さんがおっしゃるような高葛藤、そういう時期でございました。   私が受講したのは二つです。   一つが当初、参考人でもお越しなっていただきましたFPICさん、かるがも勉強会です。こちらは1時間ぐらいの座学です。内容は最初から最後まで子どものことばかりです。当時、私は「今、子どもがどんな気持ちでいるのか、きちんと分かってみようよ。」と弊会の会員も誘い、受講しました。参加する意思がある方−−まあ、当事者が全員そうだとは当然言いませんけれども、離れて暮らして全く会えないけれども、子どもたちはこんなつらいんだと。その意識はなかった、考えるきっかけになったという感想が多数だったことを今でも覚えています。4月の部会でかるがものハンドブックコピーが配られたと思いますので、改めて皆さんにも御覧なっていただければなと思います。   二つ目は、東京国際大の小田切先生たちが主催されているFAITプログラムというものです。これは座学ではなくて、グループディスカッション形式でした。そのとき、これも私は気付きを得たのですけれども、よく赤石委員とかに「連れ去りではない」とかという御発言を頂くではないですか。私もこの観点はFAITプログラムをお聞きしたときに、やはりそう思ったのです。私も当初、いつの間にか連れ去られたとか、無断で連れ去られたとか、子どもに会えないとか、預貯金を全部持っていかれたとか、要は別居の後のことばかり意識するのです。それで怒りが出てしまうことがあったかなと思います。   その講座の中で、相手側はどんなことを思っていたのか、どんなふうに感じているのか。同居親のみなさんとのディスカッションを通じて、そういう話になりまして、これも現時点の怒りではなく、相手の心情をおもんぱかるというか、理解しようという気持ちにさせられた。これも五、六年前の話でしたが鮮明に記憶しています。   私は弊会の会員の皆さんによく言います。なかなか難しいことですけれども、相手を変えることはできない。要は紛争状態になっている、相手方を論破したからといって状況は変わらない。変わるのは、まず僕たちが変わろう、私たちが変わろう。私は会で、よくそういう発言をしているつもりです。   このような講座に参加した当時の当事者として、私としては非常に気付きがあったということだけ、第1に関して、まずは意見を申し述べたいと思います。これが1に関してです。   4の「2 未成年の子の父母の協議離婚に関する規律」に関してです。   もう皆さんおっしゃっておりますとおり、取決めの確保を促進するという観点、これは非常によろしいかと思います。ただ、今懸念点もいろいろ出てきておりますので、私としてもどんな懸念点があるのかということを今日のタイミングでは、ほかの委員、幹事の先生方の意見をお聞きしたいなと思っています。   この資料12の2に関して、例えばこれは養育費の債務名義化にフォーカスしているというふうに読み取れるわけですけれども、面会交流の債務名義化は難しいというくだりもあったり、そもそも家裁関与というのは、そもそも家裁関与とか協議離婚の是非というのは、もう最初から検討のテーブルに上がらない、何かそんなふうに感じました。一定の時間の制限があることは当然分かっておりますが、協議離婚をそのまま、今のまま温存していくのかと。この部会資料12にその辺りの表記がないのはどういうことなのかというところを、可能な範囲で事務局の方からお答えいただきたいなというのが4の2に関してでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   1につきましては、講座の受講の御経験に基づいた御意見を頂戴したかと思います。   2についてですけれども、大枠の問題として協議離婚について家裁の関与を求めるということについては、この資料ではどのような扱いになっているのかということを質問したいという御趣旨だったかと思います。 ○北村幹事 まず一読の議論において、離婚の際の取決めが重要だという、この部会においての議論があったということを受けてのこの提案ということになります。協議離婚そのものを大幅に変える、あるいは全て家裁関与にすべきかということについては非常に大きな転換になるものと理解しておりまして、そこまでこの部会で今回やるのかどうかについては部会の委員の皆様の御意見を踏まえつつ今後検討していくことになるのかなと思います。 ○大石委員 千葉大学の大石です。ありがとうございます。   20ページの「3 法定額養育費に関する規律」について意見を申し述べたいと思います。   この新設する提案というのは大変革新的で、かつ、非常に重要なもので、私個人としては是非実現させたいと考えております。その場合に、「最低限度の保障」にするのか、「標準的な父母の生活実態を参考」にするのかといったところはかなり難しい問題がありますし、案@の方にすると低い方に流れるのではないかという御懸念が幾つか出ている状況と拝察しております。ただ、現状で、養育費受給率が25%程度にすぎないということがありまして、子どもの貧困という観点から考えますと、少しでも養育費を受け取れる根拠というものができるという、その一歩になる御提案であると思っておりますので、その意味では是非実現させたいですし、また子ども1人の養育に関わる最低限度の水準の計算というか、どのぐらいに設定するのかというのは、例えば様々な分析手法を用いて、子ども1人の養育に関わる費用というのをある程度試算することも可能であろうと思います。そういう意味では@の方でもよいのかなと思っています。   あともう一つ、こちらに書かれている御提案でやや画期的かなと思っているのは、「子ども一人当たりについて」というところで、つまり子どもが複数人いるからといって割安になるということは、事務局様としては想像していなかったのであろうというところなのですけれども、それでもいいのではないかと私は思っています。つまり、子どもにとってのベーシックインカムのようなものになるのかもしれませんが、そういうことが重要かなと思うのです。   児童手当や児童扶養手当は、2人目以降は金額が減ります。事務局様としては一人一人について定額を考えておられたのでしょうか。まずその点をお伺いしたいです。また、是非この部会で力を入れて、実現に向けて進めていただければと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   大石委員からは、20ページの法定額養育費制度について是非実現をすべきだということで、それを前提に、現実的な考え方として案@のようなものでもよいのではないか、そのときに最低限度の定め方、あるいは「子ども一人当たり」というのを貫徹するかしないか、その辺りが問題になるのではないかという御意見をいただきました。子ども一人当たりという点については、それがよいのではないかという御意見を頂きましたけれども、これは事務当局に対する質問も含んでいたでしょうか。事務局から何かあればお願いいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。   若干の補足ですけれども、法定額養育費についてということで今回提案をさせていただいた趣旨ですけれども、この部会においては、やはり取決めをできるだけ促進したい。ただ、取決めができない場合がある。そういった方への一定の配慮というものを念頭に置いて考えているものでございますので、まず基本としては合意ができる方は合意を促進していただきたい。そうできない方への何らかの保障−−保障というわけではないですけれども、そういったものを考えられないかということで検討しておるものです。   先ほどの御質問のものについては、今回の御提案としては「子ども一人当たり」という形での提案をさせていただいております。いろいろな計算方法があろうかと思いますし、2人、3人と増えた場合にその額が漸減していくような計算方法も当然あるのかなとは思いつつ、先ほどの法定額養育費という趣旨から、今回の御提案としては一人当たりということで、一人当たり幾らという形での御提案ということになります。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○戒能委員 ありがとうございます。戒能です。   17ページの2の「(1)事項の取決めを確保する方策」というところなのですが、ここでは3点申し上げたいと思います。   一つは、協議離婚そのものの問題になるのかもしれませんが、高葛藤の場合は当然なのですけれども、合意形成はかなり難しいということを前提に考えなければいけないと思っております。   これは、この部会が始まった割と早い段階で幾つかの調査結果を資料として頂きましたが、その中の厚生労働省のひとり親調査というのがございますが、その中でも別れたいというお気持ちがやはり優先して、真意でなくても合意してしまうということもあるのだというようなデータが、大変印象的でした。ですから、そこで合意形成という形になって最後は押し切られてしまうという力関係の問題というのは、どうしても出てくるのではないかということです。   それで、そういう意味でいえば、先ほどのア、イ、ウのウの記述、「協議をすることができない事情がある」というところをどう読むかということなのですけれども、必ずしもこれは例外であるというふうに位置付けてよいのかどうかというのは、私個人としては疑問に思っております。   それから2番目なのですが、「法律家による確認」ということで、先ほど弁護士が適格であるというお話がありました。子どもの代理人や面会交流事件も扱って、そういうお仕事をしていらっしゃるということから適格ではないかということ。それから日弁連としても積極的に取り組むというようなこともお話しいただきましたが、そうであると私も思うのですけれども、かなり難しい確認という仕事になるのではないか。   そうしますと、これは弁護士が中心になるとしても、いわゆる専門職というのでしょうか。そういう方との連携の中で、そういう専門家の力を借りながらやるとか、それから子どもの代理人等でどういうふうにトレーニングがされているのかということが、私は情報として知らないのですが、そういうことも前段階として準備をしていかなければいけない点ではないかと思っております。   それから、特に親と子の交流というところです。子の意向とか、それから心情ということがずっと出てきておりますが、その辺りどういうふうに的確に確認していくのかということです。そこは結構難しいことではないのかと思いました。   それから、後で、「子の代理人」というのも出てきますけれども、法律家の力を借りるときに費用負担はどういうふうになるのでしょうか。これは実情をよく御存じの方も多いかもしれませんけれども、結構離婚するとき、そのときに余裕があるという人は余りいないのではないか。特に女性の場合は経済的に余り余裕がない中で、公的に負担していただくということだったら別なのですけれども、そういう制度設計なのかどうか、個人負担なのか、どういう負担になるのか、誰が負担するのかということも実際には大きいと思っております。   20ページの3の「(1)法定額養育費制度の新設」というところなのですが、これは私も最初読んだときに、子どものベーシックインカムに代わるようなものなのかなとも一旦は思ったのですけれども、しかし、金額というのはどのくらいの想定なのかということです。ベーシックインカムに代わるような金額なのかどうかということが一つ気になります。私的な負担ですから、それほど多くはないだろうということが想定されます。   それから、ちょっと考えておいた方がいいのかなと思うのは、先ほど申し上げましたように、やっと別れられたというふうにお感じになる方も結構いるのではないかと。女性、男性関わらず。余り子どもに関わりたくないという方もいるかもしれない。   そういう中で、これは定期的に支払がされていくものだというふうに理解しておりますが、そうするとお金の問題、養育費を通して関係性といいましょうか、関係がまた出てきて、そこで葛藤が生まれなければいいのですけれども、そういうことも考えておく、検討する問題としてはあるのではないかと感じました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   戒能委員からは、まず一つ、合意形成は難しいということを前提に考えるべきであって、17ページのウというのを例外扱いするということにはならないのではないかという御意見をいただきました。   それから2番目に、法律家による確認はかなり難しくて、他の専門職の協力も必要ではないか、費用の問題はどう考えるか。3番目に、法定額養育費については先ほどから出ていますけれども、どのぐらいの金額になるのかということと、定期金になるとするとそこで相手方との関係が生じてしまうので、その点についても考える必要があろう。こうした御指摘を頂いたかと思います。 ○窪田委員 窪田でございます。   私の方からは、17ページの2の(1)の後、次のページの(2)に関して2点発言させていただきたいと思います。   先ほど弁護士の立場から池田先生、佐野先生の御発言を聞きながら幾つか考えていたのですが、18ページの(2)で法律家による確認が求められるということの意味については、それが真意に基づくものだということを確認するということもありますが、もう一つは、法律家の目から見て一定の妥当性を有しているものかどうか、公平なものであるかという実体的な判断をするという部分が求められているのではないかと思います。   先ほど池田先生から御発言がありましたが、括弧の中の「できる限り子の意見又は心情を把握する」というのは、ひょっとするとBという感じなのかなとも思うのですが、子の気持ちを尊重するというのとは別に、子の利益に適合しているかどうかを判断するということが、法律家として関与する場合の非常に重要な役割なのだろうと思います。   仮に私のそのような理解が正しいとすればということを前提としてなのですが、佐野先生から問題提起があった部分、ゼロ回答のときどうするのだ、子どもを引き取らせてくれるのだったらもう養育費は要らない、離婚してくれるのだったらもう養育費は要らないとかというのは、多分実体法上は非常に問題があると思うのですが、これに関しては弁護士さんによって判断が異なるというようなものではなくて、一定の規範的な判断が必要になるのだろうと思います。   これについて今、例えば事務局から答えてくれということではないのですが、その判断の目安が示されないと、これは非常に危なっかしいものになってしまうのではないかと思います。   第2点目は、それにも関わるのですが、17ページの(1)のアで、今お話ししたような形で弁護士さんの方から、やはりこれは適当ではない。実体的に子どもの利益に適合しないからということで確認をしなかった場合、その後どうなるのだろうかという問題です。これについては、その協議をすることができないというウにも該当しないと思います。その後一体どうなるのかというのは、少し考えておいた方がいいのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。窪田委員からは、法律家による確認という問題について2点御指摘を頂きました。   まず1点目の確認の内容についてですが、真意であることはもちろん確認する必要があるけれども、内容の妥当性についても確認すべきであって、そのためには判断基準を示しておくことが必要なのではないかという御指摘がありました。それからもう1点は、内容に問題があるということで、確認をしなかった場合にはどうなるのかという点についての対応も必要であろうという御指摘だったかと思います。ありがとうございます。 ○水野委員 水野でございます。ありがとうございます。   手を挙げるときに言おうと思った内容のご発言がすでにありましたので、ちょっと重なってしまうところはあるのですけれども、申し上げます。先ほど池田委員が17ページのウのところで、合意形成が例外だという位置付けはいかがなものか、むしろ「合意の促進を」とおっしゃいましたけれども、これに対して戒能委員の方から反対という御意見がありました。私もやはり合意促進という位置付けは、問題があるように思っております。   本来、西欧法では、離婚は全て裁判離婚によるのが長い間の大原則でしたし、フランス法などでも、ほかの民事裁判は和解による解決が許されますけれども、離婚裁判は和解による解決そのものが禁じられております。それは離婚という事件において合意で解決することのリスクが非常に大きいと考えるからなのだろうと思います。合意による解決は当事者のバーゲニングパワーに依存しますから、離婚を強く望む当事者は交渉力を持たず,譲ってはいけない条件まで譲ってしまいます。   そして、武田委員は全て家裁の関与という御提案をなさいましたけれども、これもそういう形が理想なのかもしれないのですが、残念ながら現在の日本では、西欧社会とは裁判官の数も全然違って少ないですし、現実的ではないだろうと思います。やはり現実の制度を改善して、実現可能性のある改善を考えるとしますと、今回御提案の養育費を確実に取り立てる改革は非常に重要な点を押さえてくださっていて、少なくともこの改革は必須だと考えております。   そして、養育費についてですが、現状でも債務名義を獲得しますと、例えば給与の差押えなども相応の執行力が定められていますし、まず満遍なく、できるだけ簡単な方法で債務名義を確保できるように考えていくのが現実的な改善かと考えております。   そういう意味で、事務局は本当によく御提案をお考えいただいたように思います。   ただ、私も佐野幹事がおっしゃいましたようにゼロ合意の問題、18ページの「父母の真意」とあるのですけれども、離婚を非常に強く望んで、もう養育費を諦めても、接触もしたくないという思い、その思いがたとえ仮に養育親本人の真意だったとしても、それは、制度設計として許されていいことなのかと思います。   それからもう一つの点ですが、池田委員が18ページの子どもの意見を聞くということを評価したいとおっしゃった点なのですけれども、この意味内容が大きな問題だと思います。私自身も子の様子はきちんとチェックをする必要はあると思います。   これも御存じのことだと思いますが、児童虐待対応という点では、フランスだと年間10万件近いような親権制限判決が出て、ケースワーカーと判事が親の育児の仕方と子どもたちを見守っているわけですけれども、この領域では、日本は非常に遅れております。   そして、高葛藤の離婚のケースなどでは、子どもの養育環境として非常に望ましくない養育環境だった可能性もありますので、子の様子を見ることは非常に重要で、どちらの親の養育環境の方が子にとっていいかは決定的で、それを見極める必要があると思うのですが、子の意見を聞くことが「両親のどちらと一緒に住みたいか」というようなことを聞いてしまうことになることを、私は危惧しております。これまでも何度も発言しておりますけれども、本来選べないものを選ばせること、両親のどちらかを選ばせることは、子どもに対する精神的な拷問になりかねない質問だと思いますので。そういうことの推進という意味ですと、それには私は反対したいと思います。   それから、養育費の点につきましては、これは本当にかなり機械的にやれることで、司法ではなく行政レベルでやってしまっている先進国も多い問題ですので、確実に債務名義が取りやすくする手段というのは、できるだけ重くせずに設計していただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。水野委員からは、大きく分けて二つだったのだろうと思いますが、一つは最後にもおっしゃいましたけれども、確実に簡便に養育費についての債務名義を取得できるという方向は現実的ではないかという御意見を頂きました。   それからもう一つは、それと関連すると思いますが、当事者間の合意を執行する、あるいは子どもの意見を聴取するということに余り重点を置くというのは現実的ではないという御趣旨だったかと思います。 ○杉山幹事 幹事の杉山です。   まず17ページの2についてでありますけれども、(1)のアからウのうち、ウが例外−−例外といいますか、ウの占める位置付けについてはいろいろ意見の対立がありましたけれども、基本的に全体的な方向性としては協議離婚の際に合意とかの債務名義の作成を促進するものであり、そのような方向性自体、私は賛成しております。そして、基本的にこの提案は、アのような新しいタイプのものも含めて、債務名義を取得していることが協議離婚の際に必要となるというものだと理解しております。   このような制度にするかどうかは別としまして、簡易迅速に養育費についての債務名義が取得できるようにすることは必要不可欠であろうと思っていますが、離婚の際の要件とするのであれば、なおさら債務名義取得に係るコスト、費用とか時間の面で当事者に負担にならないのか。そして、簡易な手続にするのであれば、相手方の手続保障が十分かという点なども含めて慎重な議論は必要であろうかと思っております。   このアですけれども、弁護士等の法律家の確認によって債務名義になるという新しい制度でありまして、簡易に債務名義を得られるようにする必要性は理解できますが、新しいタイプの債務名義になりますので、一方で慎重な議論も必要と思っています。   例えば、費用がどれぐらい掛かるのかという問題もありますし、この「弁護士等」の「等」でどこまで含まれるのか。反面、弁護士さんであれば誰でもよいのかという点も検討した方がよいと思っています。   確認する事項として、真意に基づいて定めがされたことだけならともかく、子の利益に反するものでないかとか、子の意見とか心情の把握、それ等を考慮して額が適正であるのかを判断することができるような者でなければならないと思います。   例えば認証ADR機関なども考えられますが、子の利益が関わるとなると、全ての機関が適切に判断できるかどうかは分かりませんが、ただ、何らかの認証に近い制度があってもいいとは思っています。   もう一つ、20ページの「3 法定額養育費」でありますが、こちらも協議ができない場合の救済措置として、基本的には案@のような最低限度の額の養育費を認めることは有益であると思いますが、この提案ですと、法定額は当然に債務名義となるので、これも決めの問題でいいのか、それとも、債務名義とすることについて、ほかの債務名義と比較して慎重に検討した方がいいと思っています。   私自身は20ページの(注)にあるような一般先取特権説に若干魅力を感じておりまして、それは、優先権を付与するということ以外にも、債務名義はがなくても実行することができるからです。もちろん、先取特権としての性質決定は難しいとは思いますし、また、全ての期間、全ての額について先取特権とすることも難しいかと思いますが、離婚と近接する一定期間ないしは一定額については、債務名義を取得するのに必要な期間に相当する部分については、債務名義を取得するまでの暫定的な措置として、一般先取特権とするということもあり得るのではないかと考えています。   そうしますと、取決めがあった場合とのバランスの問題が出てきますので、例えば取決めがあった場合であっても、一定期間だけは先取特権化するということもあり得ると思います。   ただ、当然に債務名義とすること自体は少し慎重に議論した方がいいと思っていますので、そのような形で検討していただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。杉山幹事からは基本的には、2や3の方向で考えるということを前提に、しかし慎重な検討が必要なのではないかという御指摘を頂きました。   2については弁護士が関与するというだけでよいのだろうかということで、ある種の認証制度みたいなものが必要ではないかという御指摘がありました。   それから3については、債務名義とするということについて、他の債務名義とのバランスも考える必要がある。別の制度を考える余地もあり、一定期間、一定額について先取特権を認めるといったことも選択肢に加えて検討すべきではないかという御指摘だったかと思います。   御意見を伺ってきましたが、3時を過ぎる頃に少し休憩を入れたいと思いますので、皆様の発言の状況によっては、休みを先に入れさせていただくかもしれません。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。ありがとうございます。   まず、17ページの「協議離婚に関する規律」なのですけれども、いろいろ悩むのですけれども、協議離婚でよく聞く順番というのは、突然、例えば夫の方が家を出ていったと、理由も分からないと。何かのときにちょっと戻ってきたというようなときに離婚届が書いてあって、置いて行ったと。あるいは、こちらから書いて、もう仕方ないのだからといって渡したというようなことで、協議をするというような感じなのか、あるいは個々に書いて、それで結局どちらかが出すみたいな感じなのではないかなと思うのです。そのときに相手方が書いてくれたから、その条件でも何しろ、弁護士さんに承認を受けに行って、それで片方が出すみたいな順番なのか。何しろ2人で行って、2人で合意してというようなイメージはどうも現実にはないのかなと思っております。   そのときに、どうしてもいろいろな事情で早く離婚した方がいいというような思いを持っていらっしゃる方にとって、ウがあった方が私は安心すると思っておりますので。確かに、いろいろな条件をきちんと整えた方がいいということは思いますけれども、今のところは例外というほどではない扱いをしておいた方がいいのかなと思っております。   弁護士さんなのですけれども、法律家の承認ということはあるのですけれども、今の弁護士さんではいろいろ不向きな方もいらっしゃるような感じがするので、法律相談に行ったときに。やはり何か認証なり研修なり何かしていただけると大変有り難く……ごめんなさい、誰かを傷付けていたら申し訳ございません。すごく専門的に、すごく知見をお持ちの方と、余りない方がいらっしゃるというのが現実でございます。   それから、武田委員に質問させていただきたいのですけれども、お父さん側のことをよく知っておられるかなと思ってお聞きするのですけれども、無関心のお父さんというのは一定数というか、協議離婚の場合、かなり多いわけで、ここにどうやって働き掛けたらいいのかというのはすごく大問題なのです。実は家族法改正では。その手段が何かあるのか。多くの方は余り関心を持たずに次の配偶者を持ってやっていく、子どもには余り無関心という方がかなりの数いらっしゃるというのが現実かなと思っております。ここについて皆さん、すごく悔しい思いをされているのも事実です。   それと、法定額です。養育費の最低限度であるかどうかということなのですけれども、実際のところはゼロしかもらえない方というのは結構いらっしゃるわけでございます。そうすると、私が何かお聞きしたときは、一人当たり1、2万円のイメージというふうにお聞きしたのですけれども、正しいでしょうか。であるとすれば非常に悩むところなのですけれども、それすらも、今生活が非常に苦しい方にとってはある種の有り難いことかもしれないと思います。   最後に、厚生労働省が5年ごとに全国ひとり親家庭等調査をやっておられると思うのですけれども、その中で養育費の取り決めなかった理由ということで、「相手と関わりたくなかった」とか一番高い、メインのところだけ集計されて結果発表されていて、それについて複数回答なので、「複数回答にしてください」と申し上げたら「既にやっている」という御回答だったので、是非2016年、2021年の調査結果をそのように発表していただきたいと厚労省さんにはお願いしたいと思います。ちょっと圧を掛けてみました。 ○大村部会長 ありがとうございます。御質問や御要望もありましたけれども、御意見としては、17ページはウについて例外というのではない扱いが必要なのではないか、ウがあることが安心につながるということだったかと思います。   それから弁護士の関与については、これは先ほど御意見が出ましたが、研修とか認証とか何かのコントロールが必要であろう。それから3番目に、20ページの最低額ということについては、悩ましくはあるけれども、しかし少額であっても得られるということは望ましいといった御意見だったかと思います。   武田委員にという質問がありましたけれども、なかなか難しい質問だったかと思いますが、いかがでしょうか。 ○武田委員 今お答えしてよければ。 ○大村部会長 短くお願いします。 ○武田委員 分かりました。   赤石さん、ありがとうございます。離婚後、子どものことに無関心の別居親の存在、非常に悩ましいと私自身思っています。   確か、第3回会議の際の参考資料として提出した資料に当事者像をイメージいただくものとして三角形の絵柄で示したことがあります。これは厚労省のひとり親調査の結果を見て、恐らく赤石さんが御指摘のような、離婚して子どもと関係ないんだ、会いたくもないし、養育費も払わない、おそらくこういった層が半分ぐらいいるだろうと思っています。   残念ながら、我々親子ネットの会員ではそういう方はいらっしゃらないので、直接の知見はありません。ただ、正に時代は変わっていると思います。価値観も多分5年前と、ここ数年では変わっていると思います。それが5割が1割になったという、そんなことはないと思いますが、私、以前、官僚の皆さんに「皆さんは、我が国の将来を担うお子さんたち、たまたま残念ながら両親の離婚を経験してしまった、そういう子どもたちに対してどうしてあげるべきだと思いますか」という質問をしたことがあります。   何が言いたいかといいますと、前回の部会資料でもありましたように親は、やはり親なのですと。お金も払わなければいけないし、愛情も注がなければいけない。そういう規律をどこまで作れるかという話かと思います。また、国民の皆さんがどこまで理解いただけるかという問題はあろうかと思いますが、私は個人的には離婚後も子の養育に対して一定以上の責任を持つということを原則にしていくしかないのかな、と思います。きれいごとにしか聞こえないかもしれませんけれども。簡単で申し訳ありません。すみません、まとまっていなくて。 ○大村部会長 ありがとうございました。それでは、また改めて何かの機会に御意見を伺うことにして、先に進みたいと思います。 ○菅原委員 ありがとうございます。白百合女子大学の菅原でございます。では、短く意見を述べさせていただきます。   ちょっと戻りますが、15ページの「1 情報提供に関する規律」ですが、いろいろな御意見がありまして、なるほどと思うことも多かったのですけれども、今の池田委員のご発言にもあったように、まだまだ多くの方々が、離婚に巻き込まれた子どもたちのこととか、赤石委員のおっしゃったような、離婚後どうやって建設的に、前向きにお互いの人生や新しい家族関係を作っていくのかという基礎的なリテラシーというのもまだまだ普及していないと思われますので、1の、まず案@のところは、やはり父母双方が受けるべきだと思いますし、私個人としては努力義務ではなくて、どなたにも受講していただきたいと考えます。内容はコンパクトなものとし、基礎編のようなものは例えば各自治体などが責任を持って実施していただき、協議離婚の方々も受講していただきたいと強く思います。   棚村先生がおっしゃったように、基礎編を受講した後、必要な方々に対してはより詳しい専門型とか、個別支援につながっていくような仕掛けを作っておくほうが望ましいと思います。また、オンラインなどで1人で安全に見られるとよいと思われますし、あるいは1人で市町村の窓口のパソコンなどで見られるような安全な受講方式を設計して、全員が受講できるような工夫が必要です。今まだ必要な情報が十分に行き届いていないからこそ高葛藤もなかなか解消できないところもあって、鶏が先か卵が先かみたいなところがありますので、やはりここのところは基礎的な内容の講座については是非、ここに書いてあるとおりに、「ならねばならないものとする」というところに集約できると望ましいと思っております。   それと関係するのですけれども、17ページのところも、ここもたくさん議論がございましたが、弁護士等の法律家の方々が関わっていくときに、赤石委員もおっしゃっていらっしゃいましたが、司法の専門家の方々自体も離婚をめぐる家族の心理や子どもへの接し方などの基礎的な知識や技術が必要になると思いますので、ある程度の認証制度というのは望ましいのではないかと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。菅原委員からは、養育講座の内容について父母双方について、例えばオンラインでもいいので最低限のことを伝えるということを考えていくべきであり、それ以上のことは個別に考えればよいという御意見と、弁護士の関与については、これまでも皆様から意見が出ておりますけれども、何か専門的なトレーニングのようなものが必要なのではないかという御意見を頂きました。 ○柿本委員 柿本でございます。ありがとうございます。私からは2点でございます。   18ページの(2)のところ、もう既にいろいろ出ておりますが、私も認証制度など、専門職の方々が関わる、連携が必要なのではないかと考えております。法律家の方だけではない運用がされていくべきであると思います。   2点目、20ページの「法定額養育費制度の新設」というところでございますが、養育費の受給率が25%という現状は何としても変えていかなくてはいけないと思いますので、養育費受け取りのための強力なバックアップということで、賛成でございます。   そして、水野先生がおっしゃっておりました、満遍なく、簡便な方法でというのは非常に重要なポイントだと考えます。   また、「法律家による確認及び民事執行法の特則」というところで費用負担についての記述がありますが、戒能先生と同じく私も今の3番ですとか、それから18ページの(2)のところなど、おおよそのところの法的手段の無償化というのが必要であると感じております。 ○大村部会長 ありがとうございます。柿本委員からは法律家関与について、やはり認証や連携が必要であろうということと、法定額養育費については賛成であるけれども、費用負担の問題についての対応が必要だという御意見を頂戴しました。 ○棚村委員 ありがとうございます。私も手短にしますけれども。   まず17ページのところで、協議離婚に関して必要な事項について弁護士等の法律家の確認ということで、先ほど来、ほかの委員とか杉山幹事からも言われているように、一体何を確認するかということと、それから確認した結果、債務名義にするとか、何にまたそれを使うかによって必要な専門性とか知見とか、そういうものは異なってくると思うのです。ですから、この辺りは何を確認するのか、それに対してどういう効果を具体的に与えるのかに応じて、関与すべき専門家、それから皆さんから出ている経験とか知見とか、そういうものも、一般的に資格があるからいいというだけではなくて、それなりの相応の専門性や経験や知見が求められてくると思いますので、その辺りは区別をして議論すべきだろうと思います。   特に債務名義化のところでは、ほかの国では確かに行政機関みたいなものが、ある意味では債務名義に近いものを取得できるようにしているところもあるし、そういう法律を改正してやっているところもあるわけですけれども、それは取立て機関とか、情報の収集だとか、いろいろなものについて割と専門機関みたいなのを置いた上で、単なる行政機関というよりは、かなり養育費に特化した体制を整えているところが関与することによって代替できるということですので、その辺りも非常に慎重に考えた方がいいと思うのです。   それで、私は森まさこ法務大臣のときの勉強会でもお話をしたのですけれども、今弁護士会と家庭裁判所の方で連携して、ほとんど合意ができているものを債務名義化するために調停を申し立てて、1か月ぐらい掛かったりする期間をもうちょっと短縮できないかというのもあるのですが、即決和解とか即決調停的なもの、取組はもう始まっていますので、そういうようなものもうまく使いながら即日審判とか、今の氏の変更とか相続放棄については、そういう意味では裁判所が関与しているわけですけれども、かなり定型的な情報や資料を用意してもらって、そして債務名義を簡易迅速に行うという取組も実際にはあるわけですから、法律家といったときに弁護士さんに活躍していただくのはいいのですけれども、例えば家庭裁判所で非常勤の調停官みたいな形でもっともっと増員をされて、こういうようなニーズに対して対応できるようにするとか、少し協議離婚の合意みたいなものを促進して、弁護士さんを中心とした法律家が確認して債務名義化するということなのですが、杉山幹事がおっしゃっていたように、一体どういう効果を、効力を与えるかということで、債務名義ということになりますと、やはり執行ということにつながっていったりしますから、僕ももう少し慎重に、手続法の先生方もそうだと思いますけれども、どういう方がどういう形で専門職として関与するかということについて、方向性としては、検討事項としては賛成したいと思うのですが、慎重にする必要があるだろうと。   特に20ページのところで、法定額養育費制度、これは水野先生や皆さんがおっしゃるように、是非こういうものを設けた方がいいというのは、自民党の方の女性活躍推進本部の提言でも、それから勉強会でもそうですし、検討会でも、ある意味では日弁連の意見書でも自動計算ツールと、それから簡易な、迅速な決定をすべきだろうと。その中身についてはいろいろあると思うのですが、これについては賛成なのですけれども、先ほど言いましたように、私的な債権というものと、それから公的な債権の中間になったり、あるいは養育費債権のほかの債権に対する優先性みたいなものが打ち出されるということになると思いますから、その辺りもきちんと、なぜ優先するのか、ほかの債権、というような説明も必要ですし、それから養育費債権の、請求権の法的性質ということについては、どういう事情で、考慮事項で、どういう性質のもので、どういうふうに決められるのかということについて、制度全体の中できちんとコンセンサスを得ながらやっていくと。私自身は決して、法定額養育費制度とか、セーフティ養育費額とか、自動計算養育費制度みたいなものを排除するつもりはなくて、ほかの国でもそういう形で取り組んでおります、ドイツとかフランスとかでも。算定表なんかも、むしろ裁判所が独自に作っていくというよりは、国全体でもって最低生活とか生活実態みたいなものを、3年とか4年に一遍ずつ、そういうものを改定しながら、みんなで妥当な養育費額みたいなものを考えていくと。そういう意味でも、法定額養育費制度というのは非常に支持できると思うのですが、ただ、それをどういうふうに位置付けて具体的に動かしていくかということについては、先ほど言いましたように、誰がどういうふうに関与するとか、どういう条件だったらそういうものを認めるかということについて一定程度慎重な制度設計とか具体化していく場合には必要だろうということで、私自身は先ほど言いましたが、法律家の関与とか、それから法定額養育費制度を作っていくということについて前向きに検討していただくことについては賛成です。   ただ、それを実現するために、いろいろなほかの周辺の制度とか、そういうことについて少し検討を慎重にしていくということも必要かなという意見です。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。棚村委員からは、全体としての検討の方向性には賛成であるけれども、慎重な制度設計が必要ではないかという御意見を頂きました。法律家の確認ということに関しては、何を確認するのか、効果がどうなるのかということとの関連で、どういうことが必要なのかといったことを考えていく必要があるという御指摘を頂いたかと思います。   それから、先ほど杉山幹事の御発言の中で「手続保障」という言葉が出てまいりましたけれども、全体の執行手続の中でバランスが取れたものになっているかどうかということについて慎重な検討が必要であるということも棚村委員の御発言の中には含まれていたのではないかと了解いたしました。ありがとうございます。   この点について、ほかに何かありますか。 ○原田委員 まず、池田委員が言われたように、弁護士に期待していただくというのはとても有り難いので、できるだけこたえたいという気持ちはあるのですけれども、ただ、ここに書いてあるような当事者の真意に基づくものかとか、かつ適正であるかという判断をするとなると、持ってきた人に1回面談するだけではとても無理ではないかと思いますし、双方の確認が必要だとか、子どもさんについて考えなければいけないということになると、とても重たい手続になるのではないかと思いまして、協議離婚の制度が今までのようなものではなくなると思います。これは本来、裁判所がすることではないかと思います。   なので、協議離婚をなくす方向につながるというのは賛成はしないのですが、協議離婚を残してこのような制度を導入するとすると、ちょっと重たすぎる内容になるのではないかと思います。実は弁護士の中で、これは弁護士が確認したと言って、本当ではなかったと、弁護士に対して損害賠償請求が起こるのではないかというような懸念をした人もありまして、この期待に私どももこたえたいと思う気持ちは十分にあるのですけれども、そういう懸念がございます。   ただ、一応養育費については算定表もありますし、双方の収入が分かれば、ある程度機械的に決まるということもありますので、養育費についてであれば可能であるかもしれないと思いました。最後の債務名義につながる件は、手続的に慎重にというお話もありましたが、実際は、今、認証ADRについては債務名義化することを認める答申がなされています。弁護士会の中では、認証を受けているところと、認証を受けていないところがあるのですが、弁護士会の中でADRをやっているところでは、その問題に特化して、きちんと教育をさせるというような制度の下でやっておりますので、そういう意味では認証に限らず弁護士会のADRを使っていただくというような形で合意を取り、債務名義化するというようなことも考えていただければと思います。   それから法定額については、確かにゼロ回答をどう見るのかということがありまして、ゼロ回答だけではなく例えば合意で、法定額よりも多いけれども、算定表を使ったら少ないというような人は、では改めてまた養育費の調停を申し立てることができるのか。それは事情変更ではないので、一旦合意したでしょうと言われるのではないかとかというような懸念がいろいろありました。先ほどの大石先生のお話が、子どもの生活費を計算するというのは、あれは収入に基づかないで単純に子どもの生活費を計算するという方法で考えるのかということについて、そうなると今の実務とかなり変わってきますので、払えない人が出てくるのではないかという問題もちょっと疑問に思ったのですが、本当はそれが理想ですよね。けれども簡単には決められないので、やはりきちんとADRみたいなところで協議をして決めるべきではないかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。原田委員からは、法律家による確認というのはなかなか難しくて、手続が重くなってしまうのではないか、額の問題も含めて、ADRによって解決するといったことも考えるべきではないかという御指摘を頂きました。   それでは、ちょっと長くなっていますので、今津幹事と池田委員については後に回させていただいて、10分ほど休憩して、それから再開後に、今津幹事、池田委員に御意見を頂くということにしたいと思います。   今15時10分ですので、10分間休憩して、15時20分に再開をいたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開したいと思います。 ○今津幹事 幹事の今津です。   休憩前に御発言のありました執行手続との関係で少し意見を述べさせていただきたいと思います。   昔、19の最後の(注)のところにありますけれども、法制審では、仲裁法制部会の議論の中で、認証ADR機関が行った調停合意、和解合意について、裁判所の執行決定を経て債務名義とするという形の答申が既になされているところかと思います。   ただ、この議論の中でも養育費に関して、こうした制度の対象とすることには、委員の方の中からも抵抗を覚えるという意見も少なからず出ていたと記憶しております。それとのバランスといいますか、そういった議論もあることを踏まえますと、この部会では委員の先生方のバックグラウンドから、養育費のお支払というのがかなり社会的な問題となっていて、必要性が高いということは認識されているのですけれども、ただ、一般にそうした認識が浸透しているかというところはもう少し気を付けないといけないなと。仮にこういう制度を設けるのであれば、養育費について、特に執行手続を強化するということについてのより丁寧な説明が求められるのではないかと思っていますので、その点を指摘させていただきたいと思います。   それから、法律家の確認という意味内容なのですけれども、部会資料では「弁護士等」という書きぶりになっておりまして、これは恐らく弁護士以外の、いわゆる隣接法律専門職と言われるような方の関与も想定した、それも含めた書きぶりなのかなと思っているのですけれども、先ほど来、弁護士の中でも例えば研修等を踏まえた上でないと、あらゆる人に任せるというのに不安があるというような御発言もあったところで、それに加えて、弁護士ではない方の関与というところまで含めてしまいますと、更に債務名義とすることの正当性というところにかなりの説明の工夫が必要になろうかと思われますので、その点、既存の執行制度とのバランスというところも配慮して議論を進めていかないといけないなという意見を持っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。今津幹事からは、これまで手続法の委員の方々からの御指摘もあったところですけれども、養育費の取扱いについて特別な扱いをするのであれば、十分な説明というのが必要になってくるという御指摘を頂きました。   それから、法律家の確認について「等」というものをどうするのか。ここも十分な対応あるいは慎重な検討が必要ではないかという方向の御意見を頂いたもの理解をいたしました。 ○池田委員 弁護士の池田でございます。   弁護士等の法律家による確認という点につきましては、委員の皆様からいろいろと、研修ですとか認証制度とかという御意見を頂いておりますけれども、その点について、これからまた日弁連の方でも議論を深めていきたいと思っております。   一つ、事務局に質問なのですが、弁護士等の法律家による確認というときの費用負担の在り方なのですけれども、その点、現段階で何かお考えがあれば教えていただきたいのですが。 ○大村部会長 ありがとうございます。費用の問題について御質問がありましたので、事務当局の方で何かあれば。 ○北村幹事 費用の点は非常にいろいろ難しい問題がありまして、どういう形で誰がどう負担していくのかというのは、まずは制度がある程度固まって、その後どうしていくのかというのを決めたいと思っていまして、現時点で何か固まったものがあるわけではございません。 ○池田委員 それを前提に意見を申し上げたいと思いますけれども、これは公的に負担をしていただくのが望ましいと思っております。どこかの法律事務所に行って、確認を得ておいでということで私費で負担ということになると、やはり非常によろしくないと思いますので、そこは公的負担でお願いできればと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。費用負担についての御意見を頂きました。 ○武田委員 最後、「3 法定額養育費に関する規律」というところに関して意見を述べさせていただければと思います。   基本的にはこの法定額養育費、まあ、養育費を決めなければいけないというインセンティブになり得るということかなと思いますので、前向きに検討していくべきではなかろうかと考えています。   1点、すみません、我々こういう事例が多いものですから申し上げるのですけれども、一方的に同意を得ず連れ去られたケース、これはもう基本的に届出時点では子の監護について必要な事項の協議をすることができないということになるであろうと、そんなふうに思っています。   これを踏まえて、この額をどうするかと。当然、別居から時間もたたずにこういう話になろうかと思いますので、納得感を持てていないというケースも多数、このようなケースでは多いと思っています。したがいまして、この金額の設定の仕方、昨今、養育費、平均額は大体4万から5万の間ぐらいだと理解しています。最低限度というのは幾らかという話は、いろいろな先生方から意見が出ましたけれども、まずは最低限度を保障するという形にするのがよいのではなかろうかと思います。   ただ、暫定で決めても、今後合意しなくていいよというたなざらしになるようなことは避けるべきと。引き続き早期にきちんとした金額で合意を目指すということが相当なのではなかろうかと、そんなふうに考えています。   あともう1点だけ、細かな点は申し上げませんけれども、この法定額養育費を新設するに当たっては、親子の交流に関しても暫定養育命令でありますとか暫定的な面会交流を早期に実施する。このような制度の検討も必要ではないか、これは従前から申し述べたとおりです。   今日たまたま、資料13で子の暫定的面会交流という議題が上がっておりますので、詳細はここでは割愛させていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員からは、協議ができない状況で支払うべき養育費の額として最低限度を保障するという考え方がよろしいのではないか、その上で、協議を促すような方策を考えるべきだという御意見をいただきました。   それから、暫定的な対応ということでは、交流の方についても問題があるけれども、これは後の議題ですので、そちらで御意見を述べられるということだったかと思います。 ○畑委員 畑でございます。   債務名義の点について、既に多々出ている御意見とおおむね重なりますが、執行力の付与ということについては、ある程度慎重な検討は必要であろうかとは思っております。   現在、裁判所が関わらない債務名義である執行証書というのがありますけれども、それは公務員である公証人が作成するということとともに、そこでは意思確認、真意の確認という話が今日も出ておりますけれども、意思確認についての手続のようなことが法令上定められておりますし、また、いわゆる執行受諾文言のようなことも要求されております。   今日も話に出ております認証ADRの話でも、執行の合意というのが要求されるという答申になっていたかと思いますので、その辺りも含めて検討する必要があるだろう。   それから今の認証ADRの話は、先ほども言及されておりますけれども、執行決定を挟むという形で、これはある意味ではかなり慎重な仕組みになっているということもありますので、その辺りのバランスも考える必要はあるだろうとは思います。   そういうことを言っていると、どんどん手続が重くなってどうかということは確かにあるのですが、検討は必要だろうということです。   それから、法定額養育費の債務名義化についても、やはり同じようなことが妥当とするだろうと。債務名義として執行力を付与するに当たっては、それなりの検討が必要だろうということです。   それから手続プロパーの話でないので私が申し上げるのがいいかどうか分からないのですが、法定額養育費制度についてはいろいろな状況がある。私は実態は知らないのですが、いろいろな状況があるということをどう考えるかという問題があるような気がしております。この原案というのは、恐らく法律的な親権者、あるいは法律的な監護権者が自動的に一定額の債権を取得するという建付けだろうと思うのですが、法律的な親権とか監護権という者と、実際に監護している人が別になっているとか、あるいは子どもがある程度の年齢だと自分で移動して、別になるというふうなことも、いろいろあるだろうと思います。それから、監護している側は経済力が十分にあるけれども、監護していない側は経済力が全くないというふうな状況もあるでしょうし、その辺りを、この資料では一定の考え方は示されていると思うのですが、その辺りどう調整するのか、あるいはしないのかといった辺りを詰めて考える必要があるのかなと思いました。   後半は手続の話ではなくなっておりますけれども、感想だけということで述べさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。畑委員からは2点御指摘を頂きました。   法定額の養育費も含めて、債務名義化については他の場面、他の制度との関係でやはり慎重な検討が必要であろうという御指摘を頂いたかと思います。   それから、法定額養育費の実態に関わる問題ですけれども、状況の多様性が現在の提案ではどのように酌み取られることになるのかという点についても検討が必要ではないかという御指摘を頂いたと思います。   様々な御指摘を頂いておりますけれども、今日のところは、もしほかに御発言がなければ先に進みたいと思いますが、よろしいでしょうか。   第4の特に2、3につきましては様々な御意見を頂きました。大枠については、おおむね皆さんの賛同を得られたとまとめたいところですけれども、武田委員は、枠組み自体がこれでいいのかという御意見だったかと思います。そういう方もいらしたけれども、全体としては、この枠組みで皆さんお考えいただいているということだったかと思います。   ただ中身につきましては、17ページのウの部分をどのように捉えるかということについて、意見は両極に分かれていたと思います。それから、法律家の関与ということについても様々な御意見を頂戴いたしました。債務名義化につきましても賛否両論があるということで、個別の問題について更に議論することになると思いますが、かなり議論すべき事柄があるということを確認して、先に進ませていただくことにしたいと思います。   資料12につきましては以上にさせていただきまして、資料13に入りたいと思います。   資料13なのですけれども、大きく申しますと、第1と第2の二つのパートに分かれますけれども、今日は時間の関係で、第2に進むことは困難だと思います。そこで、18ページから後が第2になりますけれども、その前の第1の部分につきまして、まず御説明を頂いて、その上で御意見を頂戴したいと思います。   では、まず事務当局の方から第1の部分についての御説明をお願いいたします。 ○北村幹事 それでは、部会資料13の「第1 養育費、面会交流等に関する手続的な規律」について簡単に御説明いたします。   まず、養育費、面会交流等に関する裁判手続について、「1 相手方の住民票上の住所地の把握」について、このような規律を設けることについてはどう考えるかということについて御議論を頂くものです。   こちらは、子の監護に関する家事審判手続又は調停手続において、申立人が相手方の住所を調査することが困難な場合には、申立てに基づく家庭裁判所からの調査の嘱託を受けた行政庁が、相手方の住民票上の住所地を調査するという規律でございます。   ただ、この場合、判明した住所については、相手方が閲覧できないようにするということも提案させていただいております。   こちらにつきましては、相手方の住所につきましては、本来的には住民票であるとか戸籍の附票によって把握することは可能でございます。ただ、どうしても今までの御議論の中で、複数回住所を移しているような場合、あるいは戸籍も複数回転籍しているような場合には追うことが非常に難しくなるといった御指摘があり、なかなかその負担が大きいということで、そもそもの養育費の調停の申立てを断念してしまう人がいるのではないかという御指摘があったところで御提案させていただいていたものでございます。   3ページの(注3)のところに記載してございますけれども、従来、家庭裁判所が自ら調査するという規律も提案をさせていただいていたところですけれども、今申し上げましたように、権利の実現を求める者が、通常相手方の住所を調べて申立てをするという一般的な役割分担、当事者と裁判所との役割分担、そして、この部会でも家庭裁判所がそもそも住民基本台帳ネットワークシステムを利用することへの懸念も示されていたということもありまして、今回の御提案としては、住所を調査することが困難な場合に家庭裁判所から調査嘱託をする。この枠組み自体は現行法でもあろうかと思いますが、行政庁の方で相手方の住民票の住所地を調査する。この行政庁がどこになるかということ自体については、今回、現時点で何か特定の行政庁を想定しているわけではないけれども、住所を管理している住民票上の市区町村以外を想定するとなれば、その行政庁の権限というものも当然規律する必要がある、それが家事事件手続法になるのか、それぞれの組織法上、その権限を付与するということになるのかは検討する必要があるということも記載してございます。   2ページのところになりますけれども、この民事基本法の外で行政的な支援で住所の調査ということも当然考え得るところではありますけれども、そのような支援自体が可能なのかどうかも含めて御議論いただくところでございます。   2については「養育費に関する裁判における送達の特例」ということで御提案させていただいております。この養育費に関するもの、審判及び民事執行手続については現在特別の規定があるわけではなく、他の裁判手続と同様の送達に関する規律が及ぶこととなってございますけれども、養育費に関するものについては、住民票上の住所地において送達することができず、かつ申立人が他に相手方の送達すべき場所を知らない場合には、直ちに住民票上の住所地に対する民事訴訟法第107条第1項の送達、これは書留に付す送達になりますけれども、及び公示送達を併せてすることができるという形で御提案をさせていただいております。   送達につきましての現行法上の規律につきましては5ページ以下で規律して、お示ししているところではございますけれども、なぜこのような御提案をさせていただいているかということですけれども、なかなか、まず相手方の住所が分からない。そして、住所地に送ったけれども、相手方のところにきちんと届かない場合に、公示送達という手続が存在しますけれども、実際に公示送達するには、送って届かず、そして相手方の住所が知れないということに規定がなっております。「知れない」というのは「知らない」とはやはり違うということで、実際にそこに相手がいないということを通常の方法で調査をしてもらうということを踏まえた上で、相手方が知れないということを裁判所が認定しているものですけれども、その調査自体、かなり難しいといった御指摘もあるところでございますので、その辺りも踏まえての御提案になります。   なお、公示送達自体は一般的には相手方は書類を手にする可能性はない。現時点では裁判所の掲示板の方に掲示をするということで、送達があったというふうに扱いますので、相手方がそれを手にする可能性はほとんどないまま手続が進められるということで、公示送達そのもの全体としては、手続保障の観点から、そこは非常に慎重に運用されているものとは承知しておりますけれども、養育費に関するものについては相手方が誰か、義務者というものについては当事者が間違えるものではないということも含めて、特別の規律を設けられるのかどうかについて、改めて御意見を伺いたいというものになります。   続きまして、8ページの「3 養育費の裁判手続における所得等に関する情報の開示」ということで、なかなか養育費、裁判所において、裁判所の調停において定める場合においても、それぞれの収入を前提に判断するということになります。ただ、その収入が分からない、そしてまた相手方の方が収入等を明らかにする書類をなかなか出してこないという実情もあるやに聞いておりまして、それに対応する規定が何か必要なのではないかという御意見があったところでございます。   この点につきましては現在、裁判所の方で、場合によってはその審理の中で必要と裁判官が判断した場合には、調査嘱託という形で行政庁に対して行われることもあり、それに対しては公法上の義務があるとは言われておりますけれども、一部行政庁の方が応じていないという現状もあって、より行政庁の方が返しやすいという形での規律根拠となるものを置くことができないかというふうには考えてございます。   この辺りも含めて、現在、調査研究であるとか実務上の対応も可能なのかも含めて検討してございますが、どのように考えるのかの御意見を頂きたいというものになります。   4ですけれども、こちらは「暫定的な面会交流命令」というものになります。やや複雑な規律ではございますけれども、現行法においても、審判事件を本案とする保全処分が家事事件手続法157条1項に規定してありまして、必要な場合には使えるのですけれども、要件としては厳しいものとなっております。   具体的には9ページの下の方に記載しておりますけれども、「「子その他の利害関係人の急迫の危険を防止するため必要があるとき」との要件を満たす必要がある」ということで、通常は面会交流の場合にはなかなか使われないのかなと思っておりますが、この部会の中でも従前から暫定的面会交流命令といったものについて、早い段階で1度面会交流をする必要性なども一部の委員から出されてきたところですので、その辺り保全の要件を少し、面会交流については変えるという形で対応できないかという御提案になります。その場合には、子の利益を確保する観点から、家庭裁判所が「子の代理人」を指定した上で、その協力を得ることを条件とすることができるという形でできないかということを今回御提案するものになります。   10ページの5番につきましては、「預貯金債権等に係る情報の取得手続における養育費債権に関する特則」ということで、なかなか財産が分からない、そして預貯金口座もどこにあるのか分からないという現状において、現行の方法によりますと、一つ一つ金融機関を特定した上で手続を行わないといけないという状況がございます。この中で、今回、預金保険機構を通じる方法、あるいは民間事業者の提供するサービスを利用する方法というものを利用して、複数の金融機関に対して預貯金口座を、その存在について確認していただくという方法というものは考えられないかという御提案になります。   具体的に預金保険機構を介して複数の金融機関に対して、その情報提供というものをする場合にどういう形になるのか、現行法上の今の規律については、12ページ、13ページに記載してございます。   なお、元々この法改正をし、預金保険機構が、そのシステム改正をしているのは、養育費のためとは全く違うものでありますので、預金保険機構が今後、法改正に基づいて整備していこうとするものを利用させていただくということを前提としておるものになります。   民間機関につきましては14ページの(注1)にも記載しておりますけれども、「pipitLINQ」また「DAIS」というものがございまして、現行も使われているやに聞いております。行政庁からの照会に応じて返しているという形になります。   こちらは現行法でできる、法律上できることを前提に今対応されているものについて、更に簡便な形で利用することも想定してはどうかというものになります。   いずれにせよ、案@、案Aにつきましても、こちら案Aの方は恐らくそう大きなシステム上の改修の負担は余りないやに聞いていますけれども、いずれにせよ、システムの改修等が必要になってきて、それをどこまでやっていくのかという判断は別途あろうかなとは思います。   14ページ以降ですけれども、こちらは「監護の費用の分担に係る民事執行の申立てに係る特則」ということで、特に養育費の関係の執行手続については、本来、財産が分からなければ財産開示、そして分かったところに執行をかけていく。それも一つ一つの財産に対して強制執行をしていくという手続になりますけれども、それを簡易な1回の申立てにすることができないかということで記載させていただいているものになります。   ここには先ほど御説明しました住所の把握であるとか、複数の預貯金債権等に関する情報の取得といったもの、ございますけれども、それらはそれらのところの論点で、できるとなれば、ここに入ってくるというものになります。   具体的な手続の流れ自体は一番最後、34ページの方に書かせていただいているところでございます。   18ページについては、「7 面会交流の直接的な強制」ということで、面会交流についても直接強制ができないかという御提案になります。   ただ、この点につきましては(注)で書かせていただいておりますように、執行官において、どのような行為を行うことを想定するのかといったところについても検討を行う必要があって、また実際にこれが機能するのかというところについても慎重に検討する必要があろうと思います。   ただ、他方、最後のですか、最終的な伝家の宝刀のような形でこのような規律を設けることについても、この部会の中でいろいろな御意見がありました。そういった点から、改めてこの点について今回御議論いただきたいと考えて御提案させていただいたものになります。   長くなりましたが、事務局からは以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ただいま「第1 養育費、面会交流等に関する手続的な規律」の部分について説明をしていただきました。1から7までいろいろなものが入っておりますけれども、後で二つに分けて皆さんの御意見を頂きたいと思っております。   この問題との関連で、これまでの会議において委員、幹事の皆様の方から、家庭裁判所におけるDVの認定や評価、あるいはその扱いについて実情を知りたいという御意見が何度か出されてきたところであると承知しております。   そこで本日は、事務当局の方から事前にお願いをしていただきまして、細矢委員に、この点に関する実情の御報告を準備いただいていると伺っております。   まず、細矢委員からこの点についてのお話を伺い、その上で、個別の問題についての御意見を伺いたいと考えております。 ○細矢委員 東京家裁の細矢でございます。それでは、私から御説明させていただきます。   まず、裁判所においてDVを受けたという主張がされる典型的な事件類型としましては、地方裁判所が取り扱う配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(いわゆるDV防止法)に基づく保護命令申立事件がございます。ここではDVの有無等や生命・身体に対する重大な危害のおそれ等が直接の審理対象となっております。   他方で、家庭裁判所が取り扱う家事事件や人訴事件におきましては、例えば、離婚事件や子の監護に関する事件等においてDVに関する主張がされることがございます。なお、家事事件、人訴事件でいうDVには、身体的なDVだけではなく、心理的・精神的DVも含まれます。  DVは当事者や子の安全や安心等に密接に関わる事情ですので、DVに関する主張がされた場合のほか、DVの主張が明確にされていないものの、当事者の振る舞いや言動、資料等からDVが疑われる場合には、手続のどの段階においても優先的かつ慎重な検討等がされていると思います。なお、事件類型に応じて、当該事件の主要な論点との関係におきまして、DVの評価、位置付けの在り方は異なり得ると思います。  例えば、面会交流事件におきましては、既に本部会においても御説明差し上げたとおり、家庭裁判所におきましては、子の利益を最も優先して考慮しており、その際に、特に安全については、どの段階においても最優先に考慮するようにしております。DVの主張がされた場合でなく、先ほど申し上げたようにDVの主張が明確にされていなくても、当事者の振る舞いや言動、資料等からDVが疑われる場合には、同居親及び子の安全を最優先に考慮するとの観点から、お子さん自身への暴力も含め、同居親に対するDVの有無、態様や頻度、けがや精神的ダメージの有無、程度、通院の状況、日常生活や職場での影響の有無、紛争の背景及び実情、父母の関係性や子との関係性、DVが子の面前で行われたかどうか、子のDVについての認識の程度、DVの子への影響の有無、程度等の具体的な事情、さらには飲酒や薬物服用の有無、精神疾患の有無等といった周辺事情をきめ細かに確認し、DVによる同居親及び子への具体的影響を検討し、DVの再発リスクについてアセスメントすることになります。   このようなアセスメントを行うに当たって必要がある場合には、家庭裁判所調査官において、子の利益を最優先に考慮するとの観点から、子を含む当事者の意向や心情、子の生活状況、子の心身の状況を調査したり、児童相談所や学校等の関係機関への調査などを行ったりすることもございます。また、身体的暴力以外には目を向けないということはなく、心理的・情緒的虐待についても考慮すべきであると考えられています。そして、その際には、虐待者から被虐待者への心理的支配の有無や程度等について慎重に判断し、子への具体的影響について検討することになると考えられます。なお、裁判所は、家庭裁判所調査官による調査結果を検討する際は、家庭裁判所調査官と同一の立場ではなく別個の立場において、調査の経緯、方法、内容等についても慎重に吟味した上で、他の主張や資料等を総合考慮することが求められていると考えています。   一般論として申し上げますと、子の健全な成長という観点からは、いずれの親との間でも適切な形で交流が継続することが望ましいと考えられるところですけれども、今述べたようなDVのアセスメントの結果次第では、面会交流を認めることがかえって子の利益に反する事案もあり得ると思います。家庭裁判所におきましては、ニュートラル・フラットな立場に立った上で、面会交流を行わないことも含め、親子間の面会交流の在り方について適切に判断するようにしています。なお、この点に係る判断は、当事者主義的アプローチによってされるものではございませんので、同居親がDVの存在について主張立証に成功しない限り面会交流を実施しなければならないという方向で調停運営や審理を進めることはございません。   以上が面会交流事件においてDVの主張があった場合の一般的な考え方となりますが、他にも、例えば子の引渡し事件においては、子を連れて行った親が他方の親からDVを受けていたと主張している場合などに、子を連れて別居を開始したことがやむを得ないものであったと評価できるのかといった観点から検討されることや、子を連れて行った親がDVをしていたということを他方の親が主張している場合などに、そのような親を監護者と指定するのが適切かどうかといった観点から検討されることがあると思います。   また、夫婦関係調整事件、いわゆる離婚調停事件においては、DVは離婚原因や慰謝料に関係するものとして検討されることがあると思います。   いずれの手続におきましても、家庭裁判所においては、被害を受けたと主張する者の主張のみに基づいてDVの有無や程度を認定することはなく、証拠資料を精査するとともに、相手方にも十分な反論や反証の機会を設けた上で、適切に認定、判断するようにしております。もっとも、DVという事柄の性質上、密室内での出来事である場合が多く、的確な証拠がない場合も少なくないことから、最終的には、諸事情を総合的に考慮した上で、それぞれの事案における判断に必要な限度において適切な認定、評価等をすることになると思います。   なお、これらの検討の結果、DVがあったとまでは積極的に認められないという場合におきましても、その疑いが残るというような場合には、例えば面会交流事件におきましては、直ちに何らの制限なく直接交流を認めるのではなく、お子さんや同居親の安心・安全や面会交流の円滑かつ安定的な実施という観点から、第三者機関の立会いを必要としたり、リモートによる間接交流から開始するなど、一定の条件を付した上での面会交流を認めるなどの配慮をする例も多いと思います。   それでは、次に審理運営上の配慮についても御説明させていただきます。   DVが主張されている事案におきましては、手続における当事者及び関係者の安全・安心の確保にも細心の注意を払うようにしております。具体的には、DVの被害を受けたと主張する側から、住所等の秘匿の上申が出された事案におきましては、調停委員会を含む裁判所全体において、相手方にその方の住所が知られることのないように慎重に配慮しております。このような配慮は、審理運営上の配慮として行われるものであって、DVの事実の存在を認めるかどうかについての結論とは必ずしもリンクしていないということに御留意いただければと思います。   また、調停・審判・訴訟期日におきましても、DV被害を主張する方の心情や安全を守るため、期日の呼出時刻や待合室、退庁時の順番、経路などについても慎重に配慮しております。さらに、DV事案について、電話会議の利用を促進することも実践しておりまして、今後はウェブ会議を活用した調停進行も考えられると思っております。   裁判所における配慮には手続の適正との関係や、物理的な制約等の限界もございますけれども、事前に配慮を求める事項を御連絡いただければ、家庭裁判所におきましても事前に体制を検討し、対応したいと思いますので、是非御遠慮なくお申し出いただきたいと思います。   最後に、裁判官等の研さんについても御説明させていただきます。   今述べました審理運営上の配慮のほか、裁判所では、例えば司法研修所や、裁判所の職員総合研修所の集合研修として、犯罪被害者に関する研究者かつ臨床医である外部講師をお招きし、DV被害を受けた方の心理状態や、DV被害の訴えが医学的にどのようにアセスメントされているか等を内容とする講演を実施いただくなど、広く裁判官や家庭裁判所調査官等の関係職員がDV被害について必要な知見を身に付けられるよう、必要な研修等を実施しております。この他にも、各家庭裁判所独自の取組としまして、同様の講演会や勉強会等を実施しているという例もあると承知しております。   家裁がDVの問題をどのように扱っているのかに関する私からの説明は、以上とさせていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございました。DVについての一般的な考え方、それから事件類型に応じた対応、証拠や事実認定についての特殊性、そして審理運営上の配慮、最後に研修についてのお話を頂いたかと思います。   これから個別の問題を議論する際に、今のお話を前提にして御意見、ないし裁判所に対する御質問なども出てくるかと思いますけれども、その際にはまたどうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。   お話を伺ったということで、部会資料の13の第1の部分について御意見を頂いてまいりますけれども、あと1時間半ぐらいですので、大体二つに分けて、まず第1の1から3まで、ページで申しますと8ページまで、「住民票上の住所地の把握」、それから「送達の特例」、そして「所得等に関する情報の開示」という項目ですが、この部分について御意見を頂き、できれば少し休んで、残りの部分について御意見を頂戴したいと思います。   1から3まで、どうぞ御意見を頂ければと思います。 ○原田委員 すみません、今のお話で。   細矢さんのお話は、議事録にそのまま残るのでしょうか。 ○大村部会長 残るという理解でよろしいかと思います。 ○原田委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 では、改めまして、第1の1から3までの部分について御意見を頂戴したいと思います。 ○原田委員 意見というほどではないのですが、いろいろな議論したときに疑問が出た一番大きなところは、これで判明した住所は、最終的な審判とか調停調書に記載されるのだろうかというのが一番心配だというふうに言われたのですが、その辺りはどのように考えたらよいでしょうか。 ○大村部会長 御質問ということですね。 ○原田委員 はい。 ○北村幹事 判明した住所はそもそも閲覧することができないようにするというふうにしていますので、相手方が明らかにしていない住所については、この記録上も明らかにしないことを想定して、この規律を作っております。 ○原田委員 では、審判などにも載らないということですね。 ○北村幹事 どういう形で記載するかということについては、別途いろいろ検討する必要がありましょうが、ここで把握した住所を相手方には閲覧できないようにすべきではないかという御提案でございます。 ○武田委員 では、第1の「1 手続的な規律」、この点に関して意見ではないのですけれども、気付いた点を申し述べさせていただきたいと思います。   1点目、相手方の住所が分からないという事実に関してです。これは実態はいろいろなケースがあるのだろうなと思っています。そもそも両親双方が相手がどこに住んでいるのか、全く関心がないケースもあると思いますし、意図的に秘匿しているケースもあると思います。意図的に秘匿しているケースの中には、安全を守るため秘匿しなければいけないというケースもあろうかと思いますし、また一方、本来であれば秘匿する必要がなくて、両親の葛藤や、場合によっては自身の訴訟を有利に進行するために秘匿をしているケース。具体的にいいますと、例えば自身の不貞を隠すためであるとか、最近よく報告に上がってくるのですが、連れ去り事案で、当初から転居を繰り返す。これは訴訟手続の移送を目的にしているのではなかろうかというふうに捉えざるを得ない。こんなケースもよく報告が上がってくるところでございます。   今回のこのテーマは「養育費、面会交流」となっておりますので言及がないのかもしれませんけれども、特にこういう早期のタイミングで保全が必要な場合、保全処分などでは正にこういう一日でも早く申し立てること、これが必要なのではなかろうかと思っています。   手続に関しては、この方向性で進めることでよいとは思うのですけれども、手続に関しての規律ではないのですけれども、こういった必ずしも住所を秘匿する必要性のないケースの非開示の取扱いをどうするかというところについても今後検討の一つとして考えていく必要があるのではなかろうかと、こんなふうに感じております。   2点目です。これは逆に質問です。資料13の2ページ、(注2)です。現行実務でも調査嘱託が可能という記載がございます。これは私どもの経験では、どちらかというと東京家裁であるとか首都圏では当たり前のように調査嘱託を実施してくれる裁判所がある一方、何か地方の家裁などでは、この調査嘱託に関してそもそも知られていない。こんな意見も上がってくることがございます。   件数などは難しいかと思いますけれども、可能であれば、今の家裁運用でこういった調査嘱託がどの程度利用されているのか。この住所地の把握の規律変更の検討に際して是非知っておきたいなと、こんなふうに思います。もし可能であれば、裁判所の方になるのですか、可能な範囲でお答えいただけると有り難く思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。第1の1について、基本的な方向はこれでよいだろうけれども、非開示にしているのに理由がない場合もあるだろうから、それに対する対応も必要ではないかという御意見をいただきました。   それから、調査嘱託の実情について分かれば御説明を頂きたいということだったと思いますけれども、最高裁の方でいま何かお答えいただけることがあればと思いますが、もし後でということであれば、事務当局と最高裁とで後ほど打合せをしていただいて、何か適切なデータがあるか探していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。 ○木村幹事 ありがとうございます。最高裁の木村でございます。   ただいまの武田委員から御指摘あったところでございますけれども、住所について嘱託を行うといった案件ですか、統計的なことというようなお話だったかと思うのですけれども、申し訳ございません、そのような統計はございませんで、何かお示しすることが、できることがあるかなのですが、少なくとも本日、何らかの統計を持ち合わせているということでもございませんし、統計がそもそもあるというわけでもございませんので、なかなか難しいところではございますが、何か申し上げられることがあるかどうかにつきましては、事務局ともお話をしたいと思いますけれども、本日のところは以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。それでは、後ほど事務当局と最高裁の間で相談していただいて、何か出せるものがあれば出していただくということにさせていただきたいと思います。 ○武田委員 はい、ありがとうございます。 ○大村部会長 そのほかはいかがでしょうか。 ○佐野幹事 1から3につき、まず1番目の質問なのですが、「困難な場合」というのがどの範囲なのか、例えば代理人が付けば入らないということなのか、どういうお考えなのかというところが気になっております。   それから、相手の住所が分かったとしても、申立ての管轄は動かないという前提で考えていいのか。というのは、これは養育費だけではなくて面会交流も入っていますので、支援措置がかかっている案件で管轄が動くとなると、当然に居住地域が分かってしまいます。どういう前提で議論すればいいのかというのも気になっております。   全体的に面会交流とか子の監護も含むとなると、いろいろ考えなければいけないことが出てくるなという気がしていまして、先ほど原田先生がおっしゃったように、債務名義判決が出るところまでの住所は、それは開示されない前提ということなのですが、例えばハーグ条約実施法などは執行段階で必要だと、その段階では住所等の情報が開示されるようになっていますけれども、そういったことも御想定されているのかも議論する前提となってくるかと思っております。   あと、2番目の養育費に関しては、4ページの方にあります指定登録先、「送達すべき場所を明らかにしなければならない。」というのは、現実問題としては、子が小さい場合には大きくなるまで結構時間があるので、その間に転居した場合、登録先を変えていかなくてはいけないのか、あるいは指定された先、例えば弁護士事務所が指定されるということはあり得るかと思うのですけれども、その後その本人に連絡できないという状態になったときに、通知が来たことをどう知らせるのか、それを知らせないことはなにか問題になるのかなど、そういった辺りが気になっております。   あと3番目については、全体としては特に異論を述べるところではないのですが、ただ、前から問題になっているように、税務当局への開示請求ができないのかという辺りは、また改めて御検討いただければと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。第1の1について幾つか質問を頂いたので、それについては、すぐ後で可能な範囲でお答えいただければと思います。   2については、4ページの3行目、「送達すべき場所を明らかにしなければいけない。」というのは実際に使えるだろうかという御指摘、あるいは3の情報開示については、税務当局との関係が問題になるといったお話があったかと思います。   最初の質問について、もし何かお答えがあれば。 ○北村幹事 まず第1の1の「困難な場合」というのをどこまで想定しているかですけれども、通常であれば代理人がお付きになっている場合には、ある程度住所というのは把握できるものと承知しておりますので、通常であればそこは入らない。ここでこの規律を設けようとしているのは、なかなか代理人を付けて、養育費の関係の調停とか申立てができないという人へのアプローチということを念頭に置いているというものになります。   現行法上、職務上請求という形で、士業者の方については住民票であるとか戸籍の附票を取れるという状況ですので、なかなか入りにくいかなとは思っております。   管轄であるとか、その後の移送の話については御指摘の点があるかなとは思いますので、今後その辺りも含めて検討していきたいとは思います。   4ページのところの御指摘があったところなのですけれども、こちらの(注2)で記載したのは、離婚する際にどこかを定めるということを念頭には置いておったものでして、住所を移すたびにどこかを届けるというものを想定していたわけではないのですが、確かにいろいろな場合があって検討しなければならないところはあるかなというふうには今思いました。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○畑委員 3ページの「2 送達の特例」のところです。恐らくこれは、申立てをする側の負担を軽減しようという考え方に基づくもので、もっともなところはあるとは思いますが、ただ、実際に着かない場合が、相手方に着かない場合が増えていくというのは、手続法的には余り面白くはないということがございます。民事訴訟に関する判例も若干ございますけれども、送達として一応適法ではあっても、実際着かなければ、場合によっては再審が認められるというふうな話もありますので、着かない場合が増えていくというのがそれほどいいというふうには、手続的には考えないという面がございます。   (注2)の4ページに書いてあります「送達すべき場所を明らかにする」というふうなこと、先ほど議論になったように、いろいろ難しい問題はあるとは思いますけれども、何かしら連絡が付くような仕組みも同時に工夫していくということが望ましいのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。送達について、実際に届かないということが増えるのは問題であって、連絡が付く仕組みを同時に考えていく必要があるという御指摘を頂きました。 ○久保野幹事 幹事の東北大学の久保野でございます。ありがとうございます。   4ページの(注2)の「送達すべき場所を明らかにしなければならない」という仕組みにつきまして、ここでは手続との関係で一つの案として提示されているところではありますけれども、実体的な面でもこのような案というのは考慮に値するというふうに感じました。   といいますのは、先ほど「連絡が付くような仕組み」というような表現が、これも手続との関係ではありましたけれども、出ましたけれども、子どもが望むときには連絡して相談できるようなものとして、決定権限といったものに限らず、他方の親が関わる仕組みというのを広く考えていったらよいのではないかという議論もされたことなどを考えますと、実効性等、様々検討は必要なのかもしれませんが、方向性としては、他方の親が子どもが望んだときには連絡が取れるような仕組みを確保するというような観点から検討してみてもよいかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   先ほど手続の問題との関連で、送達すべき場所、連絡が付く場所というのが必要だという御意見がありましたけれども、実体法的に考えた場合にも、連絡が取れるということに意味があるのではないかという御指摘を頂きました。   ほかにはいかがでございましょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。連合の井上です。   意見と質問です。   まず「2 送達の特例」なのですけれども、4ページ、下から11行目辺りから、「公示送達は、訴訟を提起された当事者が知らないうちに裁判手続が進行する可能性が高いものであり、かつ相手に気付かれずに自己に有利な裁判を得るため等で悪用される危険性もある」という指摘がされていますが、本規律は、ある意味で公示送達の要件を緩和する性格を持つ提案であり、慎重な検討を要するというのはもちろんなのですけれども、こうした特例的な運用を養育費以外に拡大しない点についても、十分に確認、合意しておく必要があるのではないかと思っております。   それから「3 情報の開示」、これは質問ですが、8ページの補足説明で、一番下のパラグラフ、「もっとも」のところ辺りなのですけれども、ここに「裁判所が行う調査について、それに応じる公法上の義務があるとされており」、あるいはその後、「それぞれの所管法令に照らし、適切に対応がされることによって解決する場面も少なくないものと考えられる」ということで、意味がよく分からないのですが、そもそも公法上の義務は法律で明記をされているのか、あるいは法解釈なのか。もし、義務があるのであれば、守秘義務等を理由に回答を拒否する、例えば行政庁の対応は不適切なものであると思いますし、適切に回答がなされるような法改正や運用を検討すべきではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。2点あったかと思いますが、一つは送達の問題というのが、公示送達のデメリットを言わば引き継ぐような形になるのではないかという御指摘があり、そうすると、その点について配慮する必要があり、その場合には、他の問題に及ばないような配慮が必要ではないかといった御意見を頂きました。   それからもう一つは、8ページについて、調査嘱託でもし義務があるのならば、それが実現されるような対応を図ることを考えるべきではないかという御指摘を頂きましたが、それは質問ということでもありましたね。この質問の部分について事務当局の方でお願いできますか。 ○北村幹事 事務局でございます。   一般的に、解釈で、公法上の義務があるとされております。一般論としてそういう義務があるので、直ちにどんなものでも全ての守秘義務に優先するというわけではなく、それぞれの機関が保有する情報は、それぞれの目的のために集められている情報でございますので、その目的、あるいは守秘義務等に照らして、それが調査嘱託の方が優先するのかどうかというのは、それぞれ比較衡量の中で対応されている。   ただ、先ほども御質問、御意見等もありましたけれども、現状、一定の場合に、調査嘱託に応じているところと応じていないという差もありまして、その辺りも含めて現在調査研究、あるいは個別の行政庁に、その趣旨等も現在確認をしておりまして、そこで解決するということであれば、大きな規律はなくてもよいかもしれないということで、その辺りは法律上の検討のほかに、実務的な対応も可能なのかどうかというのを現在検討しているところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○畑委員 再度すみません。先ほどちょっと質問し忘れたのですが、送達のところで、養育費に関する裁判で、相手方に連絡が付かないまま、送達ができないような場合に審判をするということが実際にある、あるいはよくあるということなのかどうかということをちょっと教えていただければと思います。   それから、関連するのですが、その場合に、相手方に連絡が付かない状態で養育費の算定というのができるのかというのもちょっと気になるので、その辺り少し、もし分かれば、どなたか分かりませんが、御教示いただけることがあれば、お願いできましたら幸いです。 ○原田委員 関連質問です。   一番最初の送達の住所を調べるところは、子の監護に関する家事手続ということで養育費には限っていないわけです。そうすると監護者指定とか、親権者変更とか、そういうようなものも含めて住所を調べて、住所が分かって、送達はできました。でも、出てきませんというような場合に、私の経験では結構相手が出てこなくて取下げを勧告されることが多いのですけれども、実際そこで手続が進むということがあって、相手方が出てこないまま審判に進んだりすることがあるのかどうかというのをちょっと裁判所にお聞きしたいなと思いまして、今の養育費の問題と併せてお聞きできればと思います。 ○大村部会長 これも、木村幹事、もし可能ならばお答えいただく、そうでなければ先ほどと同じように事務当局の方で預からせていただいて、御相談するということにしたいと思いますが、いかがですか。 ○木村幹事 ありがとうございます。大変恐縮なのですけれども、この場でお答えできるものを持ち合わせていないところでございまして、事務局と御相談をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。それでは、また後ほどということにさせていただきたいと思います。   そのほかに、この1から3までで何かございますか。 ○赤石委員 赤石でございます。ありがとうございます。   ちょっとこの送達のことについては技術的なので、私は余り分からないのですが、その前に細矢委員の御発言が、ちょっとまとまって全部メモできなかったのですけれども、私がその御相談を受けているときには、確かにいろいろニュートラル・フラットな対応ということで、いろいろお考えがあって、東京家裁も変わってきているのかもしれないのですけれども、結構御不満を聞くことが多くて、何か下々にいると随分印象が違うのでございます。それについては次回に少しまとめてお伝えできた方がいいかなと思いましたという感想をちょっと述べさせていただきます。ごめんなさい、御努力いただいているのだろうなとは思うのですけれども、随分印象が違っておりました。「アセスメントをしっかりしております」みたいなお話だったかと思うのですけれども、受け止めが違います。ごめんなさい。   それで今のところなのですけれども、一つは小さいことなのですけれども、1ページ目、行政庁というのは一体何なのかなというのがちょっとよく分からなくて、基礎自治体以外のものも考えているのか。ここの種類とかをちょっと聞きたいなというのがありました。   あと把握した住所地の記載された記録を閲覧することができないようにするということなのですが、私が知っている限りでも、自治体が支援措置のかかった住民票を、DV被害で支援措置がかかっていたりするときに、どうしても加害者の関係者に開示してしまったという事件は毎年毎年かなりの数、新聞報道とかでもございますし、私が相談を受けているときでもあります。本当にそれで住所を移さなければいけなくて、損害賠償したということになると、何か報道になりますけれども、全然もう逃げ隠れして何もしてくれないというようなお訴えを聞くこともございます。ですので、どういう記録の形式にして、どういうふうに閲覧できないようにするのかなとかいうのがちょっと気になりました、ということがございます。   取りあえずは、その二つがちょっと気になったのですが、もうちょっと大きな話としては、この資料13で、前と後ろは随分違うのですけれども、今後の方向性として、養育費、面会交流をどうしていくのかの規律の中の送達のところを議論されているのですけれども、一体どういうふうに進むのだろうと。もし、養育費の支払確保をもっと進めていくのであれば、では立替払い的なことを議論するのか、しないのかとか。私は法務省の別の、養育費の確保に関する検討会にも参加していただいて、「立替払いについても検討する」というところまで書いてあったかと思うのですけれども、方向性が分からない中でここだけ議論していると、ちょっと何か隔靴掻痒の気がします、ということをお伝えしておきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。感想等もお述べいただきましたけれども、記録閲覧についての懸念ということを一つおっしゃったかと思います。   それから、第1の1の行政庁というのは何を指しているのかという御質問があったかと思いますけれども、そこのところだけ取りあえずお答えいただけますか。 ○北村幹事 通常であれば、住所を管理しているのは基礎自治体である各市区町村ではありますけれども、それ以外の行政庁も入り得ると考えていまして、支援をする行政庁なのか、どういう形になるのかも含めて、ここは特定、何かを決めているわけではない。そして、各市区町村以外にするということであれば、そのための権限をどこかで付与する必要があろうかなとは考えています、というのがこの部会資料の補足説明でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。あとは大きな問題について、養育費、面会交流が、どういうところに向かうのかといった御質問ないし御感想があったかと思いますけれども、これは二読を経て方向を決めるというお答えになるのかと思いますけれども、そういうことでしょうか。 ○北村幹事 二読の中で御議論いただくということはあります。ただ、立替払いに関しましては、なかなかこの法制審、民事基本法制という中で議論していくことは少し難しいところがあって、それは政府全体で議論していくべき問題だろうということで今考えてございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。最後におっしゃった点についてですけれども、ここで検討するのは民事の法制ということで、民法の実体法と手続法ということになりますので、他の事柄については、それらの制度との関連でどのようなものが望ましいといったことを具体的な提案との関連で補足説明の中に記載することになるのだろうと理解しております。皆様にもそのように受け止めていただけるとよろしいかと思います。   ほかはいかがでしょうか。 ○原田委員 私もこのずっと先の方のいろいろな手続を読んでいて、ここまでするなら立替払いの方が簡単ではないかというふうに私も思いましたので、ちょっと付け加えさせていただきます。   それで、まず先ほど公示送達については養育費だけどうしてこんなに特別扱いするのかということについての十分な検討が必要であるという御意見とか、先ほど井上委員からは、これをするのだったら養育費以外には広げない確認が必要だというお話がありましたが、特別な扱いをすることについて十分な検討ができるとすれば、私は婚姻費用まで広げていただきたいと思います。それは婚姻費用の中には子どもの養育に係る費用が大部分を占めているということがあるので、検討していただいた上で、そこまでは広げていただきたいという希望があります。   それから、先ほど佐野幹事から出ました税務当局の話ですが、私もこれを強く思っておりまして、といいますのは、今裁判所が出しております婚姻費用の算定表は、給与所得者と自営業者の中では基準が少し違っていて、自営業者の基準が低くても、養育費の方は給与所得者のもう少し高い人と一緒になるような仕組みになっております。しかし、これを算定するときには確定申告書の課税所得のところを基準にして考えるのです。でもそれは、例えば基礎控除とか扶養控除とか、青色申告控除とかいろいろな控除を除いて課税所得が決まっていくので、実務では確定申告書を見て、その課税所得に今のような、実際にはお金を出していない控除の額を足した上で計算をするというやり方をやっておりまして、ここに書いてあるような課税証明書的なものでは、それができない可能性があるので、確定申告書が取れるような形というと、税務当局に出していただきたいというところは、適正な額を計算する上で必要ではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。2点御意見を頂いたかと思います。   養育費を特別扱いするということについて考えるということであれば、婚姻費用、婚費の問題についても併せて検討をしていただきたいということ。   それから、先ほどから出ている税務当局の問題で、8ページには課税証明書等の記載事項等ということが書かれているけれども、これでは不十分だという御指摘を頂きました。 ○今津幹事 幹事の今津です。   部会資料3ページ以下の「送達の特例」に関して意見を申し上げたいと思います。   今回の御提案は、恐らく公示送達の特例であると同時に、付郵便送達の特例という意味合いも含んでいるものだと思うのですけれども、この御提案の本文に当たる部分では、申立人が送達すべき場所を知らない場合には直ちにこの特例を利用できるというような形になっております。この「直ちに」というのは、要するに現地調査等を介することなくという、そういう意味合いのものかなと思うのですけれども、このような形の御提案をされたその背景といいますか、こういうことが必要であるという点は非常に理解できるのですけれども、ただ、既に御懸念を示されているように、公示送達をこのような形で認めてよいのかどうかというのは、手続のほかとのバランスという意味ではちょっと検討しないといけないのかなという気もしております。   先ほど井上委員からも御指摘がありましたように、公示送達というのは本人が知らない間に手続が進んでしまうということが当然想定されているという、そういった制度になりますので、余り緩和をし過ぎるというのもよろしくないのかなという気はしております。   その意味では、部会資料の3ページから4ページにかけての(注2)というところに示されている別案というようなものも検討に値するのではないかと。つまり、4ページの方にありますように、あらかじめ送達場所を届けさせた上で、それが使えない場合にはこの特例を利用するというような形でワンクッションを挟む方が公示送達の、ある程度相手方の手続保障という点も加味した上での制度になるのかなという気がしております。   それからもう1点ですけれども、部会資料8ページ以下の「所得等に関する情報の開示」についてですけれども、今回の御提案は親に情報開示すべき義務付けをするというような書きぶりになっているのですけれども、この点、事務局に御確認をしたいのですけれども、この開示すべき義務、あるいは開示を求める権利をそのまま使うということを想定しているわけではなく、これがあることを前提に行政庁に調査嘱託に回答してもらいやすくするという、そのレベルでの使い方を想定したものという理解でよろしいでしょうか。 ○大村部会長 ありがとうございます。2点ありましたが、1点目は、3ページの「送達の特例」に「直ちに」という文言が入っているけれども、このような扱いをするのには慎重な検討が必要ではないか。それと関連しますが、(注2)のようなクッションを一段階挟むといったことも考える必要があるのではないかという御指摘ないし御意見。   もう一つは、8ページの開示義務についてどういう捉え方をしているのか。直接の義務付けをするということなのか、調査嘱託の前提としてこうしたものを置くということなのかという御質問だったかと思います。   すみませんが、御質問の方をお答えいただければと思います。 ○北村幹事 事務局でございます。   こちらは補足説明の下から2段落目のところにも記載しておるように、御指摘のとおり、一般的なこのような義務を置くことによって、裁判所からの調査嘱託に、より応じやすく、回答を促進させる、行政庁の方で回答を促進させるという意味合いを持たせたいということで今回の御提案をさせていただいたというものになります。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○杉山幹事 幹事の杉山です。   これまで出された御意見と重複しているところはありますが、まず第1の1のところですけれども、相手方の住所地を調査する、何の手掛かりもないような場合に、このような制度を使うことができれば非常に望ましいことだと思うのですが、最初の方で御指摘があったように、困難な場合というのをどう考えていくのかは難しい問題であろうかと思います。   後にも同じような問題が出てくると思いますけれども、少し調査をすればできるような場合であっても、裁判所にもたれ掛かって、このような制度を使うことを許容するか、しないかという問題にもなります。基本的には本当に何の手掛かりもない、正に救済の必要性がある人が使うような制度としていくのが望ましいとは思っており、既存の制度で比較的容易に調査ができるような場合には、困難な場合には当たらないのではないかと思っているところです。   また、第2の送達場所に関する特例に関しても、公示送達に関する懸念はほかの委員の方と意見を共有しております。提案では主観的に知らない場合であれば足りるということなのですが、確かに負担であることは承知していますけれども、簡単な調査ができ、簡単に調査さえすれば分かるような場合に、知らないという主観的要件を疎明するだけで、この制度を使っていいかどうかも、やや疑問に感じているところです。   どの程度調査が必要であるのかについて書記官が決めるので、明らかでないところがあるのであれば、どの程度の調査が必要であるのかを明示していくのもあるとは思いますが、ほかの委員の方と同じく、(注2)にあるような届出制度を使っていくのも有益と思います。届け出先は子どもでいいのか、あるいはその他第三者的機関を使っていくことも考えられると思いますけれども、送達場所を事前に届け出ておいて、必要があれば、場所が変わったときにも、子どもや第三者機関などに届けるという方向性もよいと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。杉山委員からは、全体として簡単な調査をすれば分かるという場合を含めるということについては疑問があるのではないかということで、慎重な検討が望まれるという方向の御意見を頂いたと理解をいたしました。 ○武田委員 先ほど意見を申し上げるのを忘れていましたので、2の送達方法に関して、(注2)のところの「あらかじめ子の監護に関する裁判における送達場所を明らかにする」と。これは是非進めていただきたいなと思っています。要はこの公示送達、送達の方法を工夫する方法、ここに関しては今日いろいろな、今後も、これからも意見が出てくると思いますので、専門家の先生のお話も聞きつつ、(注2)の方法を合わせ技にするのか、優先順位をどう取るのか。そんな方向で方向性を見いだしていくのがよいのではなかろうかと感じています。   今の立て付けですと、2ですが、養育費に限ってというふうに私は読めると思っていて、どこまで広げるのかというのは当然議論は分かれるところかと思いますが、少なからず、(注2)の方向性に関しては面会交流も含めるべきであろうと考えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。4ページ、(注2)について、これまで委員、幹事から言及がありましたけれども、これを積極的に考えていくべきではないか、その場合には面会交流も視野に入れて検討すべきであるという御意見を頂戴いたしました。   1から3までこのくらいでしょうか。まだ御発言ありますか。よろしいでしょうか。   それでは、様々な御意見が出されましたので、更に詰めた形で次の段階で議論することになろうかと思います。時間が少し半端なのですが、しかし大分時間がたちましたので、10分休憩して、残った時間で第1の残りの部分につき行けるところまで行って、意見が出尽くさないようであれば、次回に引き続き伺うということにさせていただきたいと思います。   現在16時44分ですので、10分休みまして16時55分に再開したいと思います。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開したいと思います。   残りの時間が30分少々なのですが、9ページの4以下に入りまして、9ページから18ページの「7 面会交流の直接的な強制」というところまで御意見を頂きたいと思います。 ○水野委員 4の前の、休憩時間前に発言すべきことだったのですが、お許しください。公示送達について技術的な議論が随分行われましたけれども、そういう公示送達を使った通常の民事的な取立て手続と違うところの根本的な制度設計というのもあり得るように思います。つまり、行政庁がお手伝いをするということなのですけれども。   フランスのように租税局が強制執行を直接税取り立て手続きに乗せて代行するような制度まで考えましたら、当事者が住所を一生懸命探すのを行政庁がお手伝いしていいか、というより、当事者が一生懸命住所を探す前に、行政庁が最初から手伝うという根本的な形の制度設計まで企画することはあり得るのだと思います。   民事法制のこの部会でどこまでその議論ができるかという問題はあるのかもしれませんが、将来世代のためによりよい制度を構想するときに、そんなことを気にするのも、ちょっとずれているような気がしまして、養育費についてはもっと根本的な制度設計の議論が可能なのではないかと思いながら伺っておりました。 ○大村部会長 ありがとうございます。いろいろな考え方があるだろうと思いますけれども、水野委員がおっしゃったように、民事法制の中で何ができるのか、あるいはその外で何をやっていただくことが望ましいのかということを考えて、その見合いの中でこの部会で民事法制の問題としてどこまでやるのかということを議論していくことになろうかと思います。   それでは、今の9ページ以下ですけれども、赤石委員からお願いいたします。 ○赤石委員 ありがとうございます。9ページ、まず「暫定的面会交流命令」ということ、それから最後に「面会交流の直接的な強制」についても意見を述べたいと思います。   本当にこの暫定的な面会交流命令というものに、とてもとても驚いてしまいましたということがまずございます。   質問なのですけれども、「父母の別居から一定期間内」というのは、どの程度なのかということです。   それから命令の種類、これは月に1回とか、このようになるのか、それとも1回限りの命令が出るのかというようなことはちょっとお聞きしたいと思います。   その上で意見なのですけれども、先ほども細矢委員が、裁判所では双方の意見をきちんと聞いて、ニュートラル・フラット、要するに面会交流ありきという対応から、ニュートラル・フラットな対応をするのだというようなことをおっしゃっていたと思うのですけれども、これはそれをかなり逸脱しているというふうに感じております。   どうしてこのようなことが出てくるのか。私は、もちろん支援団体をしているわけなのですけれども、裁判所というのは、双方の主張があって、面会交流をしましょうという申立てがあり、あるいは今すぐには、ちょっとこういう状況でできませんというような主張があり、それを調停するところだと思います。それを一方の主張だけで−−まあ、「子の安全を害するおそれがあるときを除き」という条件はあるにはあるのですけれども、裁判所が一方の申立てで面会交流の命令を出すというのは、家庭裁判所としてやっていいものなのか。全く秩序が、混乱を招くと思っておりますし、責任放棄的な。この後に「子の代理人」というのが出てくるのですけれども、子の代理人がこんな重大なことをおやりになり、かつ、最後には辞任までできるということになっていて、ちょっともうよく分からないというのが正直なところです。   もうちょっと細かく見させていただきますと、10ページの−−幾つか指摘させていただきますと、「別居から一定の期間内に面会交流の調停又は審判が申し立てられた場合には、暫定的な面会交流を命ずることができる。」で、「「子の連れ去り」が主張されるような事案では」で、この定義が何なのか分からないのですが、一方は主張していて、「子の連れ去り」というのは、もしDVがあれば、DVからの親子の避難であるというふうにも主張されていると思います。そうすると、一方の主張だけで、このようなことをここでかぎ括弧で書いている意味がよく分かりません。これを、「子の連れ去り」ということをこの法制審議会の議論で使うというのからして、一方の主張だけを入れているように思えます。子連れの別居、子連れの別居ですね、それは、子どもと親子の安全のためにやっていることではないのでしょうかということがございます。   その上で、その後、「別居親と子との交流を維持することで父母間の葛藤が緩和することも期待され」。これはどのような論理的な根拠があって、エビデンスがあっておっしゃっているのか全く分からないので、かえって父母間の葛藤が激化することもあり得るのではないかというふうに危惧されます。   それから、「子の連れ去り」に関しては最高裁で、それはやむを得ない事情については認定、認められ得るということが既にあると思います。例えば、お子さんを連れて行かなければ、お子さんの面倒を見る方がいなくなってしまうというような、で食べていけないというか、そういうときには、これは全くやむを得ない事情であるですとか、それからDV被害の事例ですとか書いてあるものがございますので、ここで一方的にこれが何か、この事象をないような状況にしなければいけないということにはなっていないはずでございます。   そういうことで、面会交流を命ずるということが、果たして子の利益になるのか、かえって混乱するということがとても考えられるかなと思います。   子どもの代理人がこういったものを、子どもの心理がお分かりになる方も、もちろん子どもの手続代理人をされている先生たちは、そういうことでは私どもも尊敬しているのですが、全員がそうではないかなと思いますので、どうしてそういう方が指定できるのかなということを思いますし、別居親と子の交流、子の安全を害し得るという根拠、認定はどのように行うのかが明らかでないので、非常に限定的にしか認められないのだとすれば、この命令が出るというのは非常に危機的なことになるのではないかなと思います。   2011年以来、細矢委員の2番目の論文でもありましたけれども、同居親から、面会交流ありきになって非常に困る事態になったというような混乱が更に非常に過酷な形で出てくる可能性があります。絶対にこんな面会交流の暫定命令ということをやってはいけないと思っております。   既にいろいろな形で各国がもう面会交流をありきにしていたことによって不利益が生じているということは分かっておりますので、是非再考していただき、ここについては再考していただきたいと思います。   それから、後の方です。子どもについての面会交流の強制執行についても、直接的な強制についても、ちょっと時間取っておりますが、非常に子どもにとって大変な事態になると思いますので、私は消極的です。 ○大村部会長 ありがとうございました。赤石委員からは、結論としては、4についても、7についても消極的である。4については面会交流に混乱をもたらすことになるであろうという御意見を頂きました。   それで、御発言の中には一定期間ということ、あるいは「子の代理人」の位置付けについての御質問もあったかと思います。   あわせて、手続の構造というのでしょうか、一方の申立てによりという点につきある種の御理解が示されていたと思いますけれども、その辺りも含めて事務当局の方から説明を頂けますか。 ○北村幹事 事務局になります。   冒頭の御説明でも申しましたように、こちらは家事事件手続法157条1項の特則ということを想定してございます。保全処分ということになりますので、当然本案が係属している、本案の面会交流審判申立てが継続していることを前提に、保全処分として申し立てられる。そして、仮地位仮処分ということになりますので、当然相手方の意見も聞くとともに、157条2項に記載してございますけれども、審判を受けるべき者となるべき者の陳述ということで、相手方のほか、15歳以上の者ですけれども、子の陳述を聞かなければならないというような規定にもなっています。したがって、決して一方の言い分だけを聞いて出すということは想定しておらず、双方の意見を聞いて、なお、暫定的ということで、まず1度会わせて、会わすことが適切なのだというような場面において発動するものという整理をしております。   そういう意味で、一定期間内というものについては何か、現時点で今決めているわけではなく、早期に面会交流ができる場合があるのであれば、このような手続を使い、まず1回会い、それがまた本案の審理にもその結果について反映される。実際に会えないということであれば、そこに今後も面会交流、本案の審理をされていく中で、状況等を見て難しいという判断にもなっていくでしょうし、そういった構造になっているというお答えになります。   全てにお答えしたかどうかはあれですけれども。 ○赤石委員 試行面会とどう違うのですか。 ○北村幹事 そうですね。本案の中でされている、試行的な面会交流というものが一つ調査の方法としてあるのですけれども、それは飽くまでも裁判所の方で必要とされる場合に、調査の一環としてされているものと承知していまして、これを保全として当事者が申立てということで、当事者の申立権を認めるというものとして整理をしております。 ○赤石委員 そうはちょっと読めないです。「当事者の申立てにより、実施を命ずる」。では、もう少し書き足されるということですよね。 ○北村幹事 先ほども申し上げましたように、この枠組み自体は家事事件手続法の157条の枠組みとしての保全処分ということで想定をしておるということですので、当事者の申立てによって始まるのだけれども、当然157条2項に記載しておるように、仮の地位を定める仮処分になりますので、相手方の意見は聞くし、子どもの陳述も聞くということを想定しているというものになります。 ○赤石委員 1回限りなのか。命令というのはどういうものなのでしょうか。 ○北村幹事 そこも含めて今後の検討ですけれども、保全ということですので、まず暫定的な保全命令という形での命令が出されて1度会うということが、保全という意味での想定ということになります。   継続してやるということで、そこは当然本案の方で継続していますので、本案の面会交流事件ということで継続しているので、今後のことについてはそちらの方で出されるということですけれども、今回は保全ということですので、保全の中で判断されて、通常であれば、まず1回ということになろうかなとは思います。 ○赤石委員 では、通常の場合、1回なのですね。 ○北村幹事 その辺りも含めて、保全の枠組みの中で何をどこまでやっていくかということも含めての御議論を頂きたいということでの今回の御提案になります。 ○大村部会長 今の点、まだ議論はあるかと思いますけれども、基本的なところは既に存在する手続が前提にされていて、それに乗った形でこのような処分がなされる道が開かれるということなのだろうと思います。   法律家の方々にはこの理屈自体はお分かりになると思うのですけれども、説明を見たときに分かりにくいという方々もいらっしゃるのだろうと思いますので、また後でこれについて扱うときには、一般の方々にもわかりやすい説明をもう少し加えていただくことを御検討いただこうと思います。それでいいですね。 ○青竹幹事 幹事の大阪大学の青竹と申します。   今の赤石委員の御意見とほとんど同じで、事務局から説明があったことですが、やはり少し丁寧に、誤解のないように表現を考える必要があるということを感じました。   ただ、この暫定的面会交流自体については、表現を変えた方がいいとは思っておりますが、子のために必要な場合があって、その場合にこたえる制度であるのではないかと、基本的には賛成したいと考えております。   問題となるのは、(1)の暫定的面会交流を命じる場合についての定めがやや慎重さを欠いているのではないかというところが問題になるのではないかと思っております。   今のままですと、「子の安全を害するおそれがあると認める場合を除き、原則として命じる」というふうにされていますので、それが誤解につながっているかと思います。   先ほどDVが主張される事案での家庭裁判所の在り方、慎重に調査をして、原則として面会交流を命じるということはせず、丁寧に扱っているという在り方を紹介していただきましたけれども、このような慎重な姿勢と、今の(1)のところ、暫定的な面会交流については原則として命じるという規定とは、やはりかなり齟齬があるというふうに感じたところです。   同じ点ですけれども、暫定的な命令ができる場合について「子の安全を害するおそれがないとき」とありますけれども、そのおそれがないときであっても、同居親が不安に感じるということはあり得ますので、このような状況に配慮する必要がないように(1)から読めてしまうということがあるかと思います。やはり家庭裁判所の丁寧な立場と齟齬があるというように今の段階では読めます。   ただ、(2)以降のところで、「子の代理人」が指定されている場合は、安全がかなり確保されるのではないかと期待していますけれども、ただ、代理人の指定というのは必須ではありませんので、(1)のところで少し慎重な要件を設けるというのが望ましいのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。青竹幹事からは、基本的な方向はよいとして、用語や要件についてもう少し慎重な配慮が必要なのではないかという御意見を頂戴いたしました。 ○久保野幹事 ありがとうございます。幹事の東北大学の久保野でございます。   同じ4について、主に事務局に対する今後の説明への要望になります。2点です。   1点は、議論になっているこの要件につきまして、本案が係属していることは前提になるということですけれども、趣旨が「本案において命ぜられ得る面会交流の実効性を確保する」という説明になっておりますところ、本案において面会交流が命ぜられる可能性があるかないかということが要件、あるいは考慮事項に入ってくるのか、入ってこないのか。入るとして、どの程度の、どのようなものとして入るのかということを、157条の現行法の保全処分の場合はどうか、そして、この提案されている命令ではどう考えられるのかというところを教えてほしいというのが1点目です。   もう1点が、その趣旨との関係で、一方で、本案において面会交流が行われるということになったときに実効性を確保しようということが主だけれども、(注2)にありますような暫定的に行った面会交流の結果が、その調査・審議の重要な考慮事項、考慮材料になるということが書かれておりまして、先ほど、もしかするとフロアで、試行的な面会交流とどう違うのかというやり取りがあったのかなと思うのですけれども、調査のために行うということは少なくとも主たる目的ではなくて、調査のために試行的な面会交流を行うということは、この制度による面会交流とは別途あり得るのかという辺りについて整理と御説明をお願いできたら有り難いと思います。   それで、少し意見が入るのですけれども、例えば特別養子の成立の審判での監護状況の調査、民法817条の8ですとか、児童福祉法上で28条審判を行う際に、4項で一定の指導・勧告を行って、その結果の報告を受けて判断していくといった仕組みがあると思うのですけれども、そのような、裁判所での審判手続の中で試行的に行って、その結果を調査に反映していくという考え方もあり得るのだと思いますので、ここで想定されているものとはちょっと違う話なのかもしれませんが、その異同や関係について整理していただけたらというのが2点目です。 ○大村部会長 ありがとうございました。久保野幹事からは、全体としてこれが保全という立て付けになっているのだとすると、保全の要件をどのように考えるのかということを明らかにする必要があるのではないか、それから、保全ではないものも含まれている、少なくとも機能的には含まれ得るように思うので、その辺りを整理する必要があるのではないかという御指摘をいただきました。   保全とは別の道もあるので、それはそれで考えていくことも必要なのではないかという御指摘も頂きましたが、いまこの場でという御質問も含まれていましたか。 ○久保野幹事 この場でという趣旨ではございません。 ○大村部会長 分かりました。ありがとうございます。 ○棚村委員 早稲田大学の棚村です。   私も青竹幹事や久保野幹事と同じように、この暫定的面会交流命令というものの位置付けが明らかではないなという印象をもちました。つまり、本案と保全の説明はよく分かるのですけれども、おっしゃるように本案認容の蓋然性とか、一般的に言われる保全の必要性とかという要件があって、この命令はそれを緩和しようとするのか、それとも要件を加重するような形で厳しくしているのかが分かりにくく、むしろ私には子どもの面会交流の特殊性に沿って、子どもの代理人の協力だとか、こういうようなことを追加で求めているように思われたのです。それから、安全を害するおそれとかというので、DV等への配慮とか、その辺りは子どもの引渡しと監護者の指定との関係で要件を重くしているのか、いないのか辺りも含めてもうちょっと整理していただいた方がいいのだろうと思います。   それから久保野幹事が正におっしゃったように、私も試行的面会交流というのは、家裁で調停とか、あるいは審判で今後の見込みとかを評価したりいろいろと見渡す上で参考にするためにやるわけですけれども、こういう制度との区別みたいなもの、この辺りもちょっと伺いたいなと思っていました。   特に子どもの問題ですから、いろいろと配慮していく必要があるだろうと考えますし、子どもの代理人もそうですけれども、子どもの意向とか、心情のようなことについて保全処分全体で、面会交流だけではなくて、子どもの問題を解決する手続での一般的な要件ということで、もう少し子どもに配慮したような要件立てみたいなものを考えるのであれば賛成なのです。特に、もしこういうような必要性があって、かつ、面会交流も認められるのに正当な理由なく拒否されてしまって、子どもにとっては非常に重大な悪影響があるというようなことであれば、それが実施できない原因というのはいろいろありますから、正に赤石委員が言うように、DVとか暴力とか、どういうケースで具体的にどのような事情があれば該当するかというのをもう少し明確にできるような説明をしないといけないと思います。それからもう一つは、支援団体の関与とか、専門家の関与みたいなものを、「子の代理人」という一般的なものだけではなくて、面会交流の暫定的な命令をする場合にはとりわけ重視すべきだと思うのです。(注)にも少し書いてあるかもしれませんけれども、弁護士等の法律家とか、費用負担とか、そういう問題もありますけれども、お子さんにとって中立に公平に関われるような制度設計みたいなものが、この保全処分制度を設ける場合も検討には値すると思うのです。   基本的には青竹幹事、久保野幹事がおっしゃっていることと、ほぼ重なってしまうかもしれませんが、基本的には、本案の判断とは別に、保全処分というのが必要な場合というのは確かにあると思います。ただ、本案がかなり確実に認められ、面会交流ができないことでの不利益が大きく、緊急的に命ずる必要があるケースだろうと思います。それで面会交流ができないことで、お子さんにとって非常に重大な損害が生ずるという、かなり例外的な場合に認められる制度として基本的には認められて構わないですし、現行の枠組みの中でも認められていいと思うのです。ただし、繰り返すことになりますが、認められる場合の要件や、どういう場合に認めるべきかという要件の具体化、明確化をしないと、赤石委員もおっしゃっていましたけれども、誤解を招きかねないのではないかというので、少し議論を整理して、精緻化していただいた方がいいかなと考えています。   それからもう1点なのですけれども、これは先ほど出ている18ページの面会交流の直接強制とも関わってきます。結局、この命令に違反した場合にどういう効果になるのか、強制執行がどうなるのかということと併せて検討しなければいけないと思うのですが、私が海外の比較法的な調査をした限りでも、子どもの返還とか引渡しのときの直接強制も認めている所がありますけれども、最近相当に工夫をしていますし、それから面会交流も収監するとか、罰金を科すとか、そういう方法を取っている所もかなりあるのですけれども、実際にはそれが実行されるというよりは、伝家の宝刀として置かれているという感じです。ただ、基本的には説得をしたり、いろいろな形でもって働きかけをして、本人というか、当事者の理解を得られるような方向でやるということを考えますと、やはり面会交流の直接強制みたいなことで、養育費とは同じような形で連動させて議論するというよりは、お子さん自身が嫌がったり抵抗したりということもあると思うので、もう少し慎重に考えなければいけないと思います。そういうようなこともあるので、この直接強制のところは、要するに間接強制ができないときに直接強制までということについては、海外の制度や経験もいろいろな所も踏まえた上で、日本の中で妥当なのかということについて、かなり慎重に検討した方がいいのではないかと考えているところです。特に面会交流の強制とか、原則実施とかというので、すごく異論や批判があるわけですけれども、その辺りのところで、子どもがそれをある程度、本当に受け入れられるような環境整備みたいなことをしなければいけないので、ある意味では執行の方法とかやり方も、正に子どもの引渡しとか、そういうもの以上に、細かな配慮が必要になってくるのかなと思います。   その点で暫定的面会交流についても青竹幹事、久保野幹事がおっしゃったこととかぶってくるのですけれども、直接執行とか、直接強制とかということとも関連してきますので、命令を出すということは、それに対するどういう効果が発生してくるのかということにも関わるので、少し慎重にやった方がいいという意見です。 ○大村部会長 ありがとうございました。おおむね3点の御指摘だったかと思います。   まず、この提案は、通常の保全の要件を軽減するものなのか加重するものなのかということを考える必要がある。棚村委員は、子どもの利益や安全という観点から、むしろ加重するものとして捉えるという可能性を示されたのではないかと思います。   それから「子どもの代理人」が出てきますけれども、子どもの代理人だけでサポートシステムとして十全かという問題もあるだろうというのが2番目の指摘だったとか思います。   3番目に、直接強制はやはり慎重に考える必要があるだろうという御指摘を頂いたと受け止めました。   ほかに落合委員、戒能委員、小粥委員、それから池田委員からも手が挙がっております。   まだかなりたくさん御発言があると思います。急いで通り過ぎるというところではないと思いますので、申し訳ありませんが、今日はここまでにして、また次回に改めてこの部分から議論したいと思います。   また4、5、6、7とありますけれども、5や6については御意見を頂いておりませんので、今日一部御意見を頂いた4、7も含めまして、次回はこの資料13の第1の後半部分について改めて御意見を頂くことにさせていただきたいと思いますが、事務当局、それでいいですか。   では、そのようにさせていただきたいと思います。   そうなると次回ですが、当初の予定では、「二巡目の検討の進め方」という資料を前回、参考資料の12−1としてお出しいただいておりましたが、それによると、6の「養子制度」、7の「子の氏の変更に関する規律」、8の「財産分与制度」を御議論いただくということでしたけれども、そこまで次回はいかないのではないかとも思いますが、資料はどうしましょうか。 ○北村幹事 一応準備する方向で。 ○大村部会長 分かりました。では準備はしていただくということで、できれば養子ぐらいには入れればと思いますけれども、先ほども申しましたけれども、まだ少し御意見がありますので、まずは第1の後半について、続いて第2について御議論を頂き、可能ならば新しい資料に入ることにさせていただきたいと思います。   ということで、次回の議事日程等について事務当局の方から御説明を頂ければと思います。 ○北村幹事 次回ですけれども、4月26日の火曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は改めて御連絡をいたします。   次回は、部会長の方から御説明いただいたとおりの形で審議をお願いしたいと思います。 ○大村部会長 途中で終わった感じになりまして恐縮ですけれども、次回引き続き、資料13の第1の後半部分から再開することにさせていただきたいと思います。   ということで、本日の法制審議会家族法制部会第13回会議は、これで閉会ということにさせていただきます。本日も熱心な御審議を賜りまして、ありがとうございました。閉会いたします。 −了−