法制審議会 家族法制部会 第14回会議 議事録 第1 日 時  令和4年4月26日(火) 自 午後1時30分                      至 午後5時41分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  1 養育費、面会交流等に関する手続的な規律及び父母の離婚後等における子に関する事項の決定に係る規律の検討(二読)         2 養子制度、財産分与制度に関する規律の検討(二読) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会家族法制部会の第14回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席を頂きまして、誠にありがとうございます。本日も前回までと同様、ウェブ会議の方法を併用した開催になりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。   それから、年度初めでございますので、人事に伴う関係官の変動について御紹介をさせていただきたいと思います。最高裁の佐野局付、それから厚生労働省の斎藤室長、外務省の河原国際法局検事、法務省国際課の金ア課付、法務省民事局の松波局付、同じく安部局付が関係官に任命されております。簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。今お名前を御紹介した、佐野関係官、斎藤関係官、河原関係官、そして金ア関係官、松波関係官、安部関係官という順番でお願いをいたします。   まず、佐野関係官、お願いいたします。 ○佐野関係官 最高裁事務総局家庭局の佐野と申します。よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 よろしくお願いいたします。 ○斎藤関係官 厚生労働省家庭福祉課母子家庭等支援室の斎藤と申します。よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 よろしくお願いいたします。   河原関係官、お願いします。 ○河原関係官 外務省国際法局国際法課の検事の河原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   そして、金ア関係官。 ○金ア関係官 法務省大臣官房国際課の金アと申します。どうかよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 よろしくお願い申し上げます。   それから、民事局のお二人、松波関係官、安部関係官の順番でお願いいたします。 ○松波関係官 この4月に法務省民事局に参りました松波と申します。よろしくお願いします。 ○安部関係官 同じく参りました安部と申します。よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 よろしくお願いいたします。   皆様、どうぞよろしくお願いを申し上げます。   続きまして本日の会議の配布資料の確認をさせていただきたいと思います。事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○北村幹事 資料についてですけれども、今回用いますものは、前回お配りいたしまして、途中までになっております部会資料13、そして、今回お送りいたしました部会資料14になります。また、事務局作成の参考資料といたしまして、参考資料14−1のモデル事業に関する調査研究報告書の概要というものと参考資料14−2の養育費算定に関する調査研究報告書の概要というもの、そして、武田委員から離婚後面会交流及び養育費に係る法制度という論文を提出いただいておりますので、配布させていただきました。   部会資料14につきましては、養子制度及び財産分与制度に関する規律の検討のために事務局において論点を整理したもので、資料の内容については後ほど御説明させていただきます。   参考資料14−1は、令和3年度の養育費の不払い解消のための取組として、自治体と連携して、オンラインによる弁護士の法律相談など様々な施策を実施した調査研究に関する報告書の概要を取りまとめた資料でございます。参考資料14−2は、自営業者を中心とした養育費額の算定の在り方に関する調査研究の報告書の概要を取りまとめた資料になります。こちら参考資料14−1、14−2のいずれにつきましても、報告書の詳細版のURLを記載してございますので、御興味のある方は適宜御覧いただければと思います。   資料の説明は以上になります。   今回もウェブ会議を併用していることから、御発言に当たっては冒頭でお名のりいただきますようお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。資料を御確認いただければと思います。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。本日はまず、前回会議の積み残しになっております部会資料13に基づきまして、御議論を頂きたいと考えております。前回は、部会資料13の第1の4から7について御意見を頂いている途中で時間になりましたので、本日は、まず部会資料13の第1の4から7につきまして引き続き御議論を頂きたいと考えております。その後、時間の許す範囲で、部会資料13の第2を終えて、部会資料14へ進みたいと考えております。   それでは、部会資料13の第1の4から7につきまして引き続き意見交換を行いたいと思いますけれども、まず、それに先立ちまして、前回の会議で御質問がありました、相手方の住所地に関する調査嘱託の実情、それから、相手方が不出頭の場合の裁判所の対応という点につきまして、最高裁の木村幹事の方から御説明を頂けると伺っております。また、前回会議の最後に複数の委員から挙手を頂いておりましたけれども、時間の関係で御意見をお聴きすることができず、本日持ち越しということにさせていただいております。落合委員、戒能委員、小粥委員、池田委員、原田委員の各委員でございます。そこで、本日はまず最高裁から御説明を頂いた後に、5人の委員から順番で御発言を頂き、その後、ほかの皆様の御意見を頂くという段取りで進めさせていただきたいと思います。   木村幹事、では、まず最初によろしくお願いを申し上げます。 ○木村幹事 最高裁の幹事の木村でございます。まず、相手方の住所地に係る調査嘱託の実情につきましてでございます。相手方の住所地に係る調査嘱託が行われた件数についての統計は取っておりませんため、家庭裁判所で調停を担当している者から実務経験上の認識を聴取したというものでございますけれども、一般的に、相手方についていわゆるDV支援措置が執られている場合には、申立人本人やその代理人による調査が困難なことから、調査嘱託を行っているものと承知しております。その他、一般的に、申立人に手続代理人弁護士が付いている場合は、代理人において必要な資料を取得できるものと承知しておりますけれども、申立人が本人であり、調査等が困難な事情がある場合には、個々の事案における具体的な事情にもよりますけれども、調査嘱託を行うことがあると承知しております。なお、調査嘱託を行うかどうかにつきましては、繰り返しで恐縮ですが、個別の事案における事情を踏まえた判断でございますので、一律の基準のようなものがあるものとは承知しておりませんし、東京家裁とその他の家裁によって有意な差異があるといったことも承知していないところでございます。   続きまして、子の監護に関する事件で、相手方不出頭、相手方に連絡が付かないまま進む例というのがどの程度あるかというような御質問であったと承知しておりますが、相手方に連絡が付かない場合といいますのは、住所等が分かっているので調停期日に呼出しを行ったけれども、期日に出頭せず、電話等も含め一切相手方から連絡がないという場合のほか、住所が分からないという場合も考えられます。住所等が分かっている場合に、調停期日に呼出しを行ったが電話等も含め一切相手方から連絡がないという場合につきましては、そういった事案についての件数について統計は取っていないものですから、どの程度あるのかについては確たることは申し上げられないのですけれども、こちらも家庭裁判所で調停を担当している者から実務経験上の認識を聴取しましたところ、電話等も含め一切相手方から連絡がないという場合はそれほど多くはないと承知しているところでございます。そして、当事者が欠席して調停に応じないという場合でありましても、例えば養育費事件でありましたら、相手方の収入について賃金センサスや申立人提出の資料等に基づいて認定をした上で養育費を算定し、調停に代わる審判を活用したり、審判手続に移行するなど、相手方に支払を命じる審判を行うことがあると承知しているところでございます。なお、子の監護に関する事件につきまして、公示送達で進める場合というのは現状ではほとんどないと承知しております。いずれにしましても、手続をどのように進行させるかにつきましては、個別の事案における事情を踏まえた判断でございますので、一律の基準のようなものがあるとは承知しておりません。   頂いた質問につきまして、回答は以上となります。ありがとうございます。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。前回にもお答えを頂きましたけれども、それについて補充のお答えを頂いたものと受け止めました。何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。   では、先に進ませていただきたいと思います。先ほど申し上げましたように、前回御発言のお申出があった委員の御発言から始めさせていただきたいと思いますが、最初が、落合委員になろうかと思いますが、落合委員、よろしいでしょうか。お願いいたします。 ○落合委員 私はほかの方が発言された論点と重なっておりましたので、今日は発言は特に必要ございません。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。それでは、落合委員の発言はなしということで、次に戒能委員、お願いいたします。 ○戒能委員 ありがとうございます。戒能です。資料13の4から7ということで、4の暫定的面会交流命令と7の面会交流の直接的な強制、その2点について発言したいと思います。   4の方から行きますが、補足説明を読みますと、10ページの真ん中より少し上の方なのですけれども、特に子の連れ去りが主張されるような事案では、というところがあります。それで、別居親と子との交流を維持することで父母間の葛藤が緩和することも期待され、というようなところなのですけれども、そこから少し考えまして、なぜこういう暫定的面会交流命令という考え方が出てくるのか、そして、その暫定的面会交流命令、確かに安全を考えて、安全を害する場合は出さないのだとは書いてあるわけなのですが、本当にこういう命令が必要な理由を少し考えた方がいいと思っております。実効性、それからもう一つ、9ページの補足説明の3行目から4行目ぐらいに書いてありますけれども、長期間絶たれたという場合には子において別居親を受け入れにくくなるなど、実効性のあるものに本案がならないのではないかという理由が書いてあるのですが、私はこういう制度を考える前に必要なことがあると考えております。   それは、なぜ面会交流が行われないのかという、その要因の分析をきちんとして、むしろその要因を緩和する手段の方が大事ではないかと考えております。なぜ面会交流が行われないかというときに、これは個々のケースでということになりますが、幾つか要因が考えられる。夫と妻の間の葛藤が非常に高いとか、それから子どもの側の問題として、子どもが拒否するとか、虐待があったり、DVの影響が子どもに及んでいるとか、それから、同居親の側にDVへの恐怖が、再燃するのではないかというような恐怖、そういう関係性がまた再現されて、そこでDVが振るわれるのではないか、そのような要因を考えた上で、その要因を緩和して、そして面会交流ができるような条件、環境を整備する方が先ではないかと思っております。   それで、その背景なのですけれども、二つの問題を指摘したいと考えております。一つは大きな問題かもしれません。面会交流は子の利益になるという大前提になっているが、その大前提自体を問う必要があるのではないかということです。前に資料が配布されましたイギリス司法省の報告書を読みますと、プロコンタクトカルチャーということが書かれておりまして、面会交流が子の利益になるという信念があるのではないかということです。したがって、ほとんど常に子どもの利益にかなうということが大前提となって事が進められていってはならないのではないかということです。   もう一つは、言うまでもなく個別具体的に、本当にそうなのか、どういうことが子どもの利益になるのかという検討がまず必要だということです。それからもう一つは、面会交流をすることが優先されてしまいますと、英国司法省の報告書によりますと、子の利益を広く評価する、そして、その広く評価した子の利益を守るということから裁判所の判断を遠ざけるのではないかという、コンタクト優先文化に対する批判が書かれております。最も分かりやすいといいましょうか、最も多いと私は考えるのですが、やはり子の虐待などですね、それから、子の意思が本当に考慮されているのかというような点が英国司法省の検討では問題となって、そして、それを問い直すということが行われたわけです。ですから、その面会交流優先主義というのをきちんと議論した上での改革であってほしいと思っております。   それから、2番目に、そのことによって、先ほども申し上げましたけれども、DVとか児童虐待の、軽視までとは行かないかもしれませんけれども、十分な理解がされないままになるのではないかという危惧です。それで、東京都の女性相談センター、法律的には婦人相談所の嘱託医を長年、20年以上続けてきた精神科のお医者さんがいらっしゃいます。今は開業医をしている加茂登志子さんなのですけれども、これは彼女だけではなくて、ようやく最近になって、DVというのは身体的暴力だけではなくて実は複合体なのだと、複合的な性格を持っているのだという認識がされるようになり、そこで重視されるのは精神的な暴力である。非常に幅広い概念ではありますけれども、DVの影響として無力化があるわけなのですが、精神的暴力が無力化の根本にあるのだということを強調していらっしゃいます。   面会交流の手続において、これは「ケース研究」に加茂さんが家裁の実務に当たる方を対象として書かれたものですが、やはり離別の理由にDV被害が介在している場合は、加害親と母子の交流の再開は被害母子の精神健康障害の悪化のリスクがあるのだと、ですから、そういうことを司法は常に考えなければいけないという警鐘を発していらっしゃいます。3点そこで考慮すべきは、子どものメンタルケアが十分かどうか、それから母親の、同じくDV被害であった場合のメンタルケアと精神的な安定ということが大事だし、また、日本で決定的に欠けているのは加害者プログラムがないということです。そのまま再開した場合に、DVの関係が再燃するという恐怖というのも、これは非常に重要なDVそのものだと私は考えております。そういう意味でいえば、課題は司法の判断、家庭裁判所の実務においても本当に十分なのかということが、重要な課題としてあるのだということを書かれております。   前回、東京家裁の細矢委員のお話を聞きました。そのときに、こういう暫定的な面会交流命令を出すという新たな制度の提案がある背景として、やはりうまくいかなかった事例というのはどのくらい、どういう事例があって、それから、何が要因だったのかとか、それに対してどういう対応をしていったのかということを本当はお聞きしたかったわけです。民法改正から10年、11年たっているわけですから、裁判所としてもその辺りをきちんと分析する必要があると考えております。   それで、7の直接強制というのは先回、棚村委員を始め御指摘があったとおりだと考えておりますが、これも債務名義を画餅に帰することになるのだという御説明がこの資料13には書かれておりますけれども、これも同じことなのです。守られない理由は何なのかと、これをすっ飛ばして、すぐ直接強制という、動産のやり取りではありませんので、大事な子どもの福祉、子どもの利益をいかに守るか、そのために大人に何ができるかという大事な問題でありますから、すぐにそういう制度設計に行くのではなく、背景を考え、その環境をきちんとする、葛藤があるのだったら、その葛藤のハードルを下げる、それから、子どもへの影響があるのだったら、その子どもへの影響を少しでも少なくして、会えるような環境を整備するという方向で議論をする必要があるのではないかと思っております。   DVとか虐待というのは決して例外で終わればそれでいいというわけではなくて、一つは、例外であるとしたら、先ほどの家裁のうまくいかなかった事例とも重なりますけれども、その例外にどのように対応しているのか、残念ながら細かいところまで私などは分からないわけですが、そういう対応や検討が必要ですし、環境整備や背景の検討が必要です。すぐに、では緊急、直接強制して会わせればいいというような問題ではないのではないかと考えておりまして、この4と7については慎重にといいましょうか、もっとはっきり言えば、賛成はできないという考え方をお話ししたいと思いました。どうもありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員からは、結論としては4と7について消極的な意見を持っているという御発言がありました。御意見の中では、大きく分けて二つあったかと思いますが、一つは、実情を踏まえた上で環境整備を図っていくということが先なのではないかということ、それからもう一つは、面会交流は子どもの利益になるという前提に立っているけれども、果たしてそのように考えてよいのかどうかということから考え直す必要があるのではないか、この2点が主たる御主張だったと理解をいたしました。ありがとうございます。 ○小粥委員 委員の小粥でございます。私が申し上げたいことは2点ございます。   第1点目は、部会資料13の第1の4、暫定的な面会交流命令に関することであります。この暫定的面会交流命令につきましては、大変厳しい意見が続いていると受け止めております。確かにおっしゃるとおり問題があるケース、特にDVなどがあるケースについて、このような制度が仮にうまくいかないような形で利用されると大変問題があるというような懸念は、私も理解できるつもりでございます。他方で、そうではない、問題がない元夫婦というのもあるはずで、あるいはヒアリングで登場してくださった、女性の側から面会交流を求めるというようなケース、幾つか、やはり問題がないけれども会えないのだというようなケースというのもあるのだろうと理解しております。それにもかかわらず、監護事件の家裁での審理期間ということについては数か月掛かると、もし間違っていたら木村幹事に訂正していただきたいのですけれども、決まったものではないとは思いますけれども、数か月は掛かると、そうすると、その間全く子の消息が分からないというような事態が生じるわけです。そこで、問題がある事案についてということではなくて、問題がない事案について、そういう方面の手当てを少なくとも部会として考えるということは、事務局御提案の趣旨というのは一方で重要なところを突いているのだろうと思います。   そこで、子どもの安全が問題になるというようなこと、あるいは子どもの利益確保、あるいは子の利益の先、あるいは前提としての安全確保ということにつきましても、形はなかなか何と評価すればいいか分かりませんが、4(2)で、単に命令を出しっ放しにするのではないと、少なくともそのような御提案がなされているわけで、これ自体がよいかどうかということはともかくとして、問題がない親から面会交流を早期にという意見自体はもっともな面があると思いますので、子の安全の確保、あるいは子の利益に配慮した上で、この方向で、この段階で見捨てるというのは時期尚早にすぎるように思いますので、この暫定的面会交流命令ということは引き続き検討のそじょうにのせていくべきではないかと考えます。もちろんDVがあるようなケースは問題ですので、これにつきましてはそのような問題が生じないような形での手当てを考えていくべきですけれども、暫定的面会交流命令自体をそじょうから外すということは、少しどうかなと思います。以上が第1点です。   それから、二つ目ですけれども、これは少し抽象的な理屈みたいな話になるわけですけれども、部会資料13から共同親権という言葉がまた出てきたのであります。この部会の当初、数回の議論の際には、共同親権あるいは親権という言葉はできるだけ使わないで、実質的にどのような利益を実現するのかというような観点から議論しようというようなことを話し合ってきたのではないかと承知しております。なので、ここで急に共同親権という言葉が出てきたということ自体については私はやや疑問を持つ部分もあるのですけれども、それはともかくとして、共同親権を必要とするという意見の実質的な中身の大きなところは子どもとの面会ではないかとも想像されるわけです。なので、親権として論じるのか、それとも面会の問題として論じるのかというのを、引き続き親権概念の使い方に注意しながら論じるべきではないかと。   もう一つ、親権周りで申しますと、今、共同親権が必要だというようなお考えに基づいてまいりますと、そこで欲しいのは現行法でいう親権そのものかどうかということについても私はやや疑問を持っておるところでして、例えば、自分で実際に監護はしないけれども、いつでも我が子の相談に乗るとか、困ったことがあれば助けるというような責務を負っているのだと、それを言語化して何らかの形で現在の親権のサブカテゴリみたいなものを考えて、そこを議論していくということももしかしたら必要なのではないかという気がしております。   少しごちゃっとしてしまいましたけれども、以上2点でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。小粥委員からは2点に分けて御指摘がありましたけれども、いずれの点も、面会交流というものに一定の意義を認めるべきではないかという御主張だったかと思います。第1点は、確かに問題があるケースもあるけれども、問題のないケースもあるので、引き続き暫定的な面会交流というものについても検討する必要があるだろうという御指摘。それから、第2点は、括弧付きで共同親権といわれているものの根幹にある要請は、面会交流なのではないかという御指摘があったと受け止めました。ありがとうございます。   オンラインで赤石委員と落合委員から手が挙がっておりますけれども、前回発言を先送りにさせていただきました池田委員、原田委員が残っておりますので、池田委員、原田委員の御意見を伺ってから、赤石委員、落合委員、それから武田委員も挙手されているので、武田委員という順番で御意見を伺いたいと思います。 ○池田委員 ありがとうございます。池田でございます。私からも4番と7番について意見を申し上げたいと思います。   まず、4ですが、今ほど小粥委員がおっしゃった、引き続き議論のそじょうにのせるべきだということについて賛成しております。これまで非常に懸念を示す御意見が相次いでいましたけれども、私としても、やはり別居後、長期間会えずに、なかなか親子の関係が難しくなってしまうというケースを実際に担当することもございます。これがもっと早期の段階で、その関係が途絶せずに面会が維持されるということがあるとよかったなと感じたこともあります。ただ、他方で、面会に立ち会ってみますと、別居親がやはり同居親に対する執着が動機になって、子どもとの面会を利用していると見て取れるケースもあって、そのような適切でない面会交流というのも排除していくという要請もあるという、なかなか難しいところではありますけれども、引き続き議論をしていきたいと思っています。   それから、4番のところでは「子の代理人制度」というのが提案されていますので、主としてその担い手について意見を申し上げたいと思います。ここで鍵括弧付きで子の代理人と記載されておりますとおり、恐らくそういう趣旨だと思うのですが、ここでの活動というのは通常の私たちがやる代理人活動とはやや違う活動ではないかと思っています。代理人というのは依頼者の意思に従って、その正当な利益の実現のために活動するというところに本質があるわけですが、ここでの「子の代理人」というのは、面会交流命令がされた後に、子どもの意思に関わらず面会交流を円滑に行うために指定されるというもののようですので、代理人というより命令の実施補助者といえるような役割を担っているのかなという印象を持ちました。その部分だけに着目しますと、そういった役割というのは面会交流支援団体がよくするところなのかなと思います。   ただ、他方でここでの提案は、本案のまず面会交流調停や審判という手続が係属している、その中での暫定的面会交流命令で、その結果をその後も続く本案の中でいかしていくということが想定されているように思います。引き続き行われる手続という点に着目をしますと、子どもの手続代理人制度を積極的に活用していくという方向性もあるのではないかと思っています。面会交流調停における子どもの手続代理人は、実現可能な実施条件を子どもと相談しながら裁判所に提案していくですとか、試行的に行われる面会に立ち会うこととか、実施状況を報告したりということも平素行っているわけでして、暫定的命令制度が本案の手続の一局面だという位置付けなのであれば、本案において子どもの手続代理人を積極的に選任して、暫定的命令の際にも活用していくという形がよいのではないかと思っています。   以上が4に関する意見です。   7についてですが、これは直接的な強制方法を面会交流について認めていくという提案と受け止めていますが、私はこれには反対です。やはり子の引渡しの案件で現行法上、直接強制がされていることがあるわけですけれども、その1回きりのものでも非常に子どもにとっては負担が大きいというところは感じておりまして、これが面会交流となりますと、複数回にわたってその引渡しというものが発生してくるということを考えますと、余りにも子どもに対する負担が大きいのではないかと考えるからです。   先ほど戒能委員の御指摘もありましたように、そういった子どもに負担の大きい制度を導入するのであれば、それ以前にもっとやることがあるのではないかと思います。一つは、面会交流支援団体が今、非常に数も少なくて、なかなか支援が行き届いていないという現状がありますので、認証制度というお話も1巡目の議論で確かあったように思いますけれども、そういったところの手当てをして、支援を充実させていくということがまず一つ重要だろうと思いますし、それから、全体的な底上げということで、面会についての広報ですね、例えば、それは頻度等も含めてモデルを示していくとか、そんなことを厚労省を始め関係省庁の方でやっていただくというふうなことも含めて考えていくといいのではないかと思っています。   以上です、ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは、4については引き続き検討するということがよいのではないか、7についてはむしろ反対であるという御意見を頂戴いたしました。4の子どもの代理人の位置付け方はいろいろあるだろうと思われますけれども、手続との関係で捉えていくことも必要ではないかという御指摘を頂きました。ありがとうございます。 ○原田委員 ありがとうございます。弁護士の原田です。私は主に面会交流の直接強制について、今まで消極的な意見も結構出ましたので、重なるとは思いますが、理屈の問題もありますけれども、私はやはり自分が担当している実務の中でどのように感じているかということをお話しさせていただきたいと思います。   強制ということを考えると、その対象となる子どもはどうなるのかというのがまず一番の懸念です。今私が担当しているケースで、もうすぐ6歳になる女の子なのですけれども、お母さんがゼロ歳の子どもを連れて別居しました。お母さんはDVを主張し、お父さんは連れ去り、誘拐を主張して、4年間、監護者指定の保全、本案、面会交流の調停、審判、抗告審、離婚の調停、訴訟、控訴審の争いをして、その争いの中で支援機関を利用しての面会交流の命令が出た事件です。お子さんは知らない支援機関に連れていかれて、お母さんと引き離され、支援員とお父さんと過ごすことを強制され、大泣きして中止せざるを得なくなりました。2回目も同じです。3回目はお母さんも同席しましたが、両親は会っても挨拶もしないような間柄で、お子さんはお母さんにしがみついたままで、面会交流とは全くいえないような状況でした。コロナのために支援機関が活動を停止したことや、契約した1年の期間が徒過して支援機関が更新を拒絶したので、支援機関が使えなくなり、お父さんからまた調停の申立てがなされて、今、係属中です。この間、1回目の審判が残っていますので、やむなく私が2時間、面会交流に立ち会っていたのですけれども、相変わらずお子さんはお母さんにしがみついて、お父さんが近寄るとさっと顔を背ける、お父さんが離れるとお母さんと遊ぶ、その様子をお父さんが離れて見守るという状態です。   もう一つは、過去の事案ですけれども、最近まで財産分与に関する裁判が続いていました。この事案は、別居当時6年生の女の子と4年生の男の子で、DVのためにお母さんが子どもを連れて実家に帰った事案です。離婚訴訟の途中、面会交流審判が出て、面会交流が命じられました。行くたびにお母さんのことを聴かれる、面会交流の方法について全てお父さんが決めて、子どもたちの希望が入れられないということで、お姉ちゃんの方が拒絶し始め、弟は、お姉ちゃんが行かないなら自分も行かないというふうになりました。すると、面会交流を妨害しているとしてお母さんと代理に対して損害賠償請求が起こされ、代理人へは弁護士会に懲戒請求が行われました。当事者が今振り返って、お母さんですけれども、うちの下の子は、面会交流を無理やりやらされたせいで、更に元夫との関係が悪化して、一言も元夫の話を聞きたくないということで、私がいまだに裁判で争っていることは知りません、上の子も、それについて話はできますが、同様に悪化したのがうちのケースです、そもそもDVがあって、必死にこちらは仕事も友達も家も全部捨てて逃げてきたのに、その暴力する相手に大人たちが戻したいというのは子どもたちに対して何のメリットがあるのでしょうかと怒りが込み上がってきますと、この話をしてもいいかと言ったら、本人がそう言ってきました。   正しくりむすびのしばはしさんが懸念されたとおり、しばはしさんは共同養育を勧められていますが、共同養育をしていくためには親同士の葛藤を下げることが一番大事、仲よくなくてもいいけれども葛藤を下げることが大事だと、別居親が連れ去りは誘拐だみたいなことを言うと当然、同居親はもう怖くて関わりたくないと思ってしまうし、同居親がDVだと言うと葛藤が高まってしまうと、同居親がなぜ家を出たのかというところをもう少し振り返ってみると、関係がよくなっているというケースがたくさんあるのですが、社会が悪い、法律が悪い、弁護士が悪いなど、外向きにパワーがそがれていくという傾向がある、第三者機関につなぐ前に持続可能な合意形成が必要で、こんなに悪い関係性の中でこのとおりできないよねというような書面が送られてきます、それ以降は第三者機関の指示に従うみたいな丸投げでは困ると言われていました。しばはしさんは、支援団体の支援も必要だけれども、単に支援団体がやっていけるように支援というだけではなくて、その決める前の親の葛藤を下げるということについてもっと工夫してほしいとおっしゃっていました。   私は今、4件の面会交流事件を抱えています。四つのうち二つは、初めの取決めがうまくいかないで再調停になった事案です。もう一つは、離婚のとき面会を非監護親が求めなかったのですけれども、7年たって求めてきたケースで、もう1件は今、離婚の紛争中ということです。私は以前に、武田委員と私では見ている世界が違うと申し上げたことがありましたけれども、今、子どもに会えない、連れ去り、誘拐と主張している方の声が大きくて、その声がとても強く会議に届いているような気がして、今のような事例を紹介させていただきました。   皆様の中には、お子さんは特に嫌がっていないのに監護親が合理的理由なく拒否していると、面会交流が子の福祉にかなうという裁判所の判断の下に面会交流の審判が出ているという発想があるのではないかと懸念しますけれども、審判があってもできないというのは審判に問題があるという発想も必要なのではないでしょうか。少し言い方が失礼かもしれませんが、先ほど問題がない元夫婦もあるのではないかというお話があったのですけれども、裁判所に来ているケースで、その問題があるなしの問題の発想なのですけれども、私も面会できないお母さんの代理人を何度かしたことがありますけれども、お母さんは問題ないと思っていても、お父さんは問題があるとおっしゃるのです。例えば、お母さんが不貞をしたとか、お母さんに精神的な、例えば鬱の病状があるとか、そういう人に会わせられないという、その問題があるなしについてもお互いの意見が違うというところが、やはり面会交流を実現するのに難しいところなのではないかと思います。   諸外国では強制執行を入れているとの資料も出ていますけれども、そこに至るまでの手続がどのくらい手厚くされているのか、また、強制執行された子どもはどのようになっているのか分からなければ、一概に見習うべきとはいえないと思います。結局、池田委員や戒能委員もその前にやることがあるのではないかとおっしゃったように、私も父母間の葛藤をどう下げるのかと、その必要性については皆さん認めておられるのではないかと思うのです。ここでヒアリングに答えられた当事者3人の方も、面会交流そのものについての評価はニュアンスに差がありましたけれども、強制が子どもにとってストレスになるとか、親の紛争を激化させるような制度はよくないという点では一致していたのではないかと思います。面会交流を直接強制しても子どもの幸せにはつながらないということを強調したいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。原田委員からは実務上の御経験、具体例を挙げられて、7について否定的な御意見を頂戴いたしました。ありがとうございます。   先ほど赤石委員、落合委員、それから武田委員のお3方から挙手がありましたので、3人の方に順次お願いをしたいと思います。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。発言の機会をありがとうございます。この間、細矢委員の家裁でのDVに関するアセスメントの御発言があったので、そのときにも少し御報告差し上げたいということを申し上げたことなのですけれども、私どもが御相談から聞いていることについて御説明し、家裁の現状というのを、私どもが見えているものというのを御報告したいと思います。また、その後に少し7で、強制されてしまいそうになっているお子さんたちの声も御紹介したいと思います。よろしいでしょうか。   まず、3月の前回の細矢委員のDVに関する家裁でのアセスメントでございます。家裁では、DVの主張が明確にされていないものの、当事者の振る舞いや言動、資料等からDVが疑われる場合には、手続のどの段階においても優先的かつ慎重な検討がされているというような御発言、それから、お子さん自身への暴力を始め同居親に対するDVの有無、態様や頻度、けがや精神的ダメージの有無、程度、通院の状況、日常生活や職場での影響の有無、紛争の背景及び実情、父母の関係性や子との関係性、DVが子の面前で行われたかどうか、子のDVについての認識の程度、DVの子への影響の有無、程度などの具体的な事情、さらには飲酒や薬物服用の有無、精神疾患の有無などといった周辺事情、それらをきめ細かに確認し、DVによる同居親族及び子への具体的影響を検討し、DVの再発リスクについてアセスメントするというようなお話がありました。また、家裁調査官が子の利益優先の観点から調査をするというようなこともお話がありました。お話を聞いて、素晴らしいアセスメントを行っているという印象を受けたのですけれども、では実際にこのようなことが行われているのか、何件かヒアリングをさせていただきました。   まず、最近調停、審判を受けた方に御説明させていただいたのですが、もちろん概要をですが、そうしたところ何とおっしゃったかというと、同じ国の出来事とは到底思えないという御発言でした。彼女はDV被害を受け、面前DVがあった直後、御自分が訴えたのではなく、子どもの異変に気が付いた子どもに関わる公的機関、ここは本人特定されないように少しぼやかしておきますが、児相に通報され、御自身も自覚をして避難して、その後、離婚調停と婚姻用の申立てをしたという方でございます。当然、調停の申立書にはDVのことが書かれておりました。調停は何か月か行われているわけですけれども、DVに関して調停委員からの質問は一切なかった、やり取りもなかった、夫側からの反論書みたいなものに関して事実認定がずっと行われた、しかも、遠隔の面会交流もした方がいいと言われ、したけれども、結局はそういう、結果も特定されないようにしておきます。   細矢委員の御説明、このアセスメントがあるという今御紹介した前段の内容がとても素晴らしくて、私は是非このようにやっていただきたいと思うのですが、実際のところは随分違うということを、まず皆さんにきちんと認識していただきたいと思います。多分、方針としては示されているのかもしれないのですが、実情としてはやはり違う状況が起こってしまっているのではないでしょうか。それは、早く調停を取りまとめなければいけないと思う調停委員さんの御事情、あるいは調査官の方が調査をするというのは、何件も抱えていらっしゃるとそれほど丁寧な調査ができない、1時間程度で終わってしまうというようなこともあるのかもしれません。こういったことで、この3月にこのようなアセスメントをして、問題があるかないか、面会交流できるのかどうか、そういうことだと思うのですが、リスクのアセスメントをしているというお話が絵に描いた餅、画餅になっているのではないかということをまずお伝えしたいと思います。   細矢委員が後半で、そうはいっても相手方の方の意見も聴くし、その証拠をきちんと精査するのだというようなことをおっしゃっていたかと思います。これがやはりもう一つのネックになっているのかなと思っております。被害を受けた、多くは女性なのですけれども、もちろん男性の場合もあるでしょう、この方たちが被害を受けているときに適切な証拠を出す準備をできるのかというと、なかなかできないわけで、特に身体的な暴力で、傷ですとかあざですとか、こういったものがお医者さんに行って診断書が出るとか、写真が日付付きで出るとか、そういうことがなければなかなか証拠が出せない、特に精神的な暴力の場合には証拠を出すのは難しい、お子さんへの影響も、もちろんお子さんが怖がっていたり、そういうことは分かるわけですけれども、お母さんとしてはなかなか出せない、そこで臨床心理士さんとか児童精神科医さんの意見書などを出しても、割と調停では、ああ、またDVね、そんなように言われてしまって、DVは皆が主張するのだから、みたいな扱われ方をされているとお聞きしております。   ですので、私は細矢委員がおっしゃったこういった方針というのは貴重なものだと思います。であれば、家庭裁判所が現場の調停でこれができるような条件整備を、先ほど池田委員や戒能委員、原田委員が言ったことと似ているのですけれども、その前の調整ができる、そういう体力を付けた家庭裁判所であってほしい、今はそうではないということが、同じ国のこととは思えませんとおっしゃっていた、この言葉をきちんと受け止めていただきたいと思います。   調停員の皆様、あるいは調査官の皆様、もちろん御努力くださっていると思うのです。ですので、細矢委員がおっしゃったような方針が全国で実現する、その体制を作っていかなければならないということを申し上げたいと思います。もしこれが単なる方針として示されただけであれば、そしてまた、子どもの生命や身体に危害が及ばない限りはいいのだというようなことも少しあったのですけれども、そうではなくて、子どもが最低限死なないということではなくて、子どもの利益につながるという保障をどうやって作っていくのかということではないかと思っております。まず、そのことをお伝えしました。   それから、7番に関わるところなのですけれども、お伝えしたいと思います。私どもが最近受けた相談で、お母さんに許可を得て御紹介したいのですけれども、この方は面会交流が決まってしまったがためにお子さんにどんな影響があったかということを御相談してこられました。3人のお子さんがいて、上のお子さんは10歳前後で、月に1回の面会をしてきたのだけれども、離婚してから2年なのですけれども、子どもたちが大きくなるにしたがって面会交流に対する拒否感が強くなってきてしまった、待ち合わせ場所に行って短時間の会話のみで終わっていたりした、ところが、もう意思に反しても連れていかなければならなくて、子どもの拒否で行けないときがあったら、また再度日程調整を元夫さんの方から言われてしまった、特に長女さんの拒否が強くて、面会交流のストレスから適応障害の診断が下りましたということでした。それでも何と、協議しようとすると、もう一度面会交流の義務の履行ばかり求められ、とうとう間接強制、お金を支払えという、それもかなりの高額ですね、養育費より非常に高額な金額を1回ごとに不履行のたびに請求されているというような状況だそうです。お子さんの意見を聴いてほしい、もうお母さんの切なる願いを私は受けて、今日お伝えしております。多分、強制しなければ親子関係はもう少し落ち着いていくのです。わざわざ強制したり、それを請求されることによって、このように適応障害にまでなってしまうお子さんが出てくる。これは決して1人ではない、たくさんの方、お子さんにそういう影響が出ているということでございます。   それから、もう一人、お子さんのことで御相談になっている方を御紹介します。この方も面会交流をしていて、まだ調停はしていないという方です。お子さんは5歳で、一回の面会交流のときに、お子さんの前で母親に暴言を書いたり、子どもの発言が気に入らないので、子どもに帰れとお父さんが言ってしまったがために、その後、お子さんが面会交流を嫌がっているということなのです。それで、弁護士さんに相談したところ、裁判所はほとんど決定を出すから、面会交流ということで話は決まってしまうよと、話が決まってしまったら、そのお母さんが受け止めたことは、拒否すると罰金が取られるよと、嫌がっている子どもに面会交流を強いることがどうしても苦しくて調停に踏み切れないでいます、写真を送るなど間接的な交流を提案してみようかなと思うが、相手がすんなり受け入れるか分かりませんということで、とても悩んでいる、実は養育費は欲しい、だけれども、会わないと払わないと言われているから、もう調停は諦めた方がいいのでしょうか、こんなような御相談を受けております。   今の家庭裁判所でのこの運用というのが下々の、末端のお母さんたち、親たちにどう受け止められているのかということがこの委員会できちんと把握されないと、本当に恐ろしいことが起こってしまう。ですので、もう一度言いますけれども、家裁ではDVのアセスメントが丁寧に行われているという実情とは程遠い、そこには、調停委員さん、調査官さんがたくさん抱えていて、それほど案件の処理できない、一体何件抱えていらっしゃるのでしょうかといった問題、あるいは、この7番のように直接強制をしてしまうことによって、もしかしたら何万人のお子さんに精神疾患に近い状況、あるいは大人への不信というのを植え付けてしまうといったことが起こるのではないか、これを私は強く危惧して、お伝えしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。赤石委員からは、一つは、DVに対する家裁の対応について御自身の見聞を基にした御意見を頂戴いたしました。それからもう一つ、7の直接的強制については、これも様々な見聞に基づいて、強制の悪影響が大きいという御指摘を頂いたと理解いたしました。 ○落合委員 落合恵美子です。今、赤石委員からとても重いケースを幾つかお話しいただきまして、そういうことはあるだろうなと思って伺いました。いろいろ言いたいことがうまく整理できるかどうか分からないのですけれども、一つ思っていたことは、DVというのがよく焦点になりますけれども、そのDVの受け止め方が、男性と女性とか、あるいは社会のいろいろな人でずれている、そこが調整されていないというところがまずあるのだろうと思いました。上から下への物の言い方をしたり、相手を恐ろしがらせたりするような態度を日常的にとる人というのがいますけれども、でも、そのぐらいはDVではないのだろう、ぐらいに思っているのではないかと思うのです。普通の夫婦とか、離婚に至る前も、研修のようなということができないのだろうかと思いました。カップルの間の葛藤を下げるという話がありましたけれども、それは元から絶たないと、ということなのではないかと思うのです。今、職場でハラスメント研修というのは、もうしつこいぐらい何度もやっていまして、だんだん耳たこになっていっているのですけれども、夫婦間のハラスメントについては今、全く研修がない状態なのだと思うのです。それを何とかしないとなという感じを少し持ちました。これは今回のテーマからすると、その前段階のことなのかもしれませんけれども、離婚の調停の過程とかそういうところでそういう研修とかがあると、何が悪かったのか、面会交流のときにも何をしてはいけないのかというようなことの理解ができるようになるのではないかということで、そういう対応が必要だと思いました。   それから、子どもが嫌がっているのに強制するというのは、やはりこれはやってはいけないことだと思うのです。子どもが嫌がっているかどうかというのを判定するのが子の代理人という人だと思うのですけれども、その人はどのような教育を受けた人でなければいけないか、どういうスキルがないといけないかというようなことをもう少し丁寧に書き込んだ方がよいであろうと思っています。臨床心理士の資格があるとか、そういう専門技能というようなことからも。ただ法律の知識のある弁護士さんが急に幼い子どもの相手をして、その子が本当に何を思っているかを分かるというのは、そう簡単なことではないと思うのです。必要なのは法律知識だけではないと思うのです。ですから、どういう人がその代理人になれるというようなことをもう少ししっかり規定することが必要だろうと思います。その上で、子どもが会いたくないと言っているというのは、強制させないための決定的な理由になるべきだと思います。   ただ、子どもが会いたくないという背景もまた問題だと思いまして、原田委員が出していた例のゼロ歳のときに離婚した話ですか、その後、子どもは父親に会う機会がなかったわけですよね、面会交流のたびにお母さんの方にしがみついている状態ということでしたけれども、これは全然具体的なそのお2人のことを分からないので何とも言えないのですけれども、もしかすると夫の方からすると、早い時期に引き離されてしまって自分への愛着が育つ時間もなかったと、それが非常に残念だと思っているかもしれないと思うのです。そういう意味では、長い間引き離していると、もうその関係を築くことが難しくなってしまうので、ある段階で面会交流を促すというようなことも必要なのではないかと考えました。   原則をどうするかということが重要だと思うのですけれども、親子はどちら側もいつでも会えるというのがやはり原則であるべきではないでしょうか。面会交流は本当に子どもにとっていいのかとかいう議論をされていますけれども、それなら離婚する前でも親両方が子どもに関わることが本当に子どもにいいのかと、そういう議論をしなければいけないでしょう。離婚前でも実はよくないこともあるかもしれません。人間関係を作るのが下手な大人というのはいますから、子どもが迷惑していることもあるでしょう。そうなのですけれども、原則としては子どもと多くの大人が関わる、親だけではなくて多くの大人が関わる、誰かが関わる機会を切ってしまうのは原則としてよくないと私は思っています。なぜかというと、子ども中心に考えるべきだからです。子どもが選択権を持つべきだと。子どもがいろいろな考え方をもち、決定をしたいときに、それをサポートしてくれる大人というのはどこにいるか分からないわけです。ですから、幾つかのチャンネルを子どもが持ち続けられるようにするということが大事だろうと思います。ですから、原則としては面会交流も続け、両方の親との関係を持って行くのがいいでしょうけれども、しかし問題のあるケースもあるので、そこは手厚くケアをするということが筋なのではないかと考えます。   その手厚くケアをするというところなのですが、そこがやはり非常に心配で、面会交流センターを家裁に附属して設置するとか、そういうことにしたらどうなのでしょうか。今いろいろな団体が面会交流の支援をしていますけれども、最初から民間に投げて、そこが潰れていったり、全国でその数が増えなかったりしたら、国は何もしないのかが問われるのではないしょうか。民法で、強制という言葉が入らないにしても、面会交流をなるべく実施するようにと規定するなら、それを実施する場所や、十分なその環境を整えるのは国の責任だということになるでしょう。民間のそういう団体を紹介するということでは足りないと思うのです。韓国の例を最近勉強しましたけれども、家裁に当たるところの附属のセンターというものが全国にできていると伺いました。ここで面会交流が大事だと書き込むためには、そういう覚悟が必要だと思うのです。だから、原則、家裁附属の公的な面会交流支援センターというものを全国にどのぐらい作るとか、そういうことも提案として一緒に書き込めないと、実現のときに大きな問題が起きてしまうと思います。   それと並んで、子の代理人についても、家裁がそういう子の代理人をできるような人を確保しているとか、どのような資格がある人で経験がある人という、その条件に合う人をこのぐらい確保していますというような条件を整えていただきたいと思います。赤石委員がおっしゃっていたように、家裁の方でなさるつもりのこと、あるいはなさっているつもりのことというのは非常にレベルが高いのですが、それが本当にできるように制度的な支えが必要であると、この委員会からもそれをサポートするような、後押しするような意見を是非付けて出したいと思います。長くなって失礼しました。 ○大村部会長 ありがとうございます。落合委員からは、具体的な問題についての御発言と、それから原則論についての御発言を頂きました。具体的な問題については、DVの受け止め方にずれがある、子どもが嫌がっているということの内実を明らかにする必要がある、そのための方策を講じていく必要があるいった方向の御指摘だったかと思います。原則については、子どもは親にいつでも会えるというところから出発しつつ、手厚いケアをする、公的な介入制度を整える必要があるのではないかという御意見だったと理解をいたしました。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。今日もよろしくお願いいたします。まず、私の方からは、4の暫定的面会交流という点と、5、6と続けて発言をさせていただきたいと思います。7に関しては、少し刻ませていただければと思っています。   まず、4記載の暫定面会交流制度、いろいろ御指摘、反対意見等々あるかと思います。しかしながら、私は基本的に賛同する立場でございます。とはいいながら、いろいろな先生方が御指摘のとおり、この部会資料13のみでは意図している方向とかイメージが湧きにくいということは、それはそのとおりかと思いますので、そこは私も同感でございます。   この資料13の記載のイメージと合っているかというのは判断できかねるのですが、今日御参加の委員、幹事の皆さまに少し暫定面会交流のイメージを理解いただくため、米国のカリフォルニア州がどんなふうに運用しているのかということを聞いてまいりましたので、まずは御紹介をさせていただきたいと思います。   カリフォルニア州は御承知のとおり離婚事案は基本的には裁判所関与、面会交流に関しては裁判所がほぼ即決すると聞いております。日本と異なりまして、司法手続、調停等を含めて原則同席です。その審理の中で面会交流に対して、懸念のあるDVであるとかそうした問題があった場合には、その場で意見を述べる、併せて客観的な証拠も求められます。部会資料13の9ページ、補足説明の3行目以降記載のとおり、面会交流調停、審判手続が相当の時間を要し、認容された場合も親子の交流が長期間絶たれているようなケース、交流を実現するのは容易ではない、このような事態を回避するために決定までの迅速性を重視しているものと理解をしています。非常に興味深かったのは、いいか悪いかは別です、カリフォルニア州の判断要素は、同居時の親子関係が良好だったか否か、この1点に尽きるといわれていることです。DV等の問題を指摘された場合、当然、主張する者の立証に加えて、初期タイミングで一回、暫定面会交流をやってみてちょうだいという命令が出て、USは基本的に民間のメディエーターが同席するケースが多いと聞いておりますが、メディエーターのような立場の方がこの暫定面会交流に立ち会います。更に面白いなと思いましたのは、面会交流に立ち会ったメディエーターは、日本の家庭裁判所の子どもの意向調査は、面会交流をなかなか合意できないときは、調査官がお母さんに話を聴いて、お父さんに話を聴いて、子どもに話を聴いて、面会交流を進めるか否かという調査官の意見というものを書きます。日本ではそういうやり方をしています。一方、カリフォルニア州では日本の家裁調査官のような報告書を書きません。基本的にはその暫定的面会交流の様子を動画で撮る、メディエーターの判断は書かずに、その動画を裁判官に対して提出すると、裁判官は良好な親子関係か否かで判断して、次の期日で決定を出すか、それとも引き続き確認しなければいけないのかという判断を下すと聞いております。翻って、この資料13では、子の安全等について慎重な検討を要する、子の安全確保、これはもう重要なことは当然なのですけれども、余りに慎重さが強い傾向が出ているのかなと、そんなふうに思っています。   これは何度も申し上げた話なのですが、面会交流調停の平均審理期間は12か月です。1年以上離れざるを得なかった状況から、離れて暮らす親との早期再会によるお子さんに対する精神的負担の軽減、あと、皆さんからも葛藤を何とか下げようという御意見も幾つか出ましたが、父母間の葛藤低下にも寄与することもあるのも当然かと思います。葛藤の低下に関して、たまたまある当事者から私に連絡が来まして、自分は葛藤が低下しましたというケースの報告がありました。そのまま読みます。「これは正にうちです、娘に会えて、相手の不貞は飲み込もうと思いました、元妻には不貞に関わる損害賠償権も放棄すると伝えましたし、要らないと言われていた養育費、これまで積立てしていたけれども、支払うようになって、これは妻も受け取るように意思表示をして、受け取るようになりました、もし娘と会えていなかったら、なかなかこうは割り切れなかったと思います」と、こんなメールを頂きましたので、こういう葛藤を低下させる事例もあるということで、併せてご紹介させていただきました。   また、資料13では、この暫定的面会交流は一体どこでやるのかという場所に関しての言及はありませんけれども、私は基本的に現行の試行面会同様、裁判所で実施する、そのことによって安全をまず確保する。当然、暫定で面会交流、今、試行面会であれば調査官がマジックミラー越しに見ていますよね、今回このケースでは子の代理人になる可能性もあるのでしょうか、こういう安全を確保した上で早期に暫定的面会交流を実施することで、要は離れて1か月、2か月辺りで、親子の関係がどうなのかということをきちんと把握することで、裁判所の判断もより実態に即した判断がされると、このようなことが期待できるのではなかろうかと思います。したがいまして、資料13の中段で子の安全を害し得る場合ということがありますが、ここは、例えば家庭裁判所で調査官や子の代理人立ち会いの下でも安全を害し得る、そんなケースが該当する、このような考え方がこの暫定的な面会交流に対する私のイメージでございます。   今後の検討の方向なのですけれども、先だって、従来の期日で最高裁より、現状の試行面会に関しては飽くまで監護親の同意に基づく調停委員会の決定が必要という要件があると説明いただいたと記憶しております。この試行面会という運用を変更するのか、はたまた、この資料13にある保全処分の中で検討を進めるのか、また、この子どもの代理人の活用が最善なのかも含めて、是非この議論のそじょうにはのせていただいて、その辺りの専門的なところは、民法の先生、手続法の先生が多数いらっしゃいますので、そういった専門家の皆さんからも御意見を頂きつつ、どうやるのがよいのかということを考えていただきたいと、そんなふうに考えます。4に関しては以上でございます。   あと、皆さんが4と7ばかりの御発言だったので、少し5と6に関して意見を述べさせていただきたいと思います。この5、6、基本的には手続の迅速化、申立人の負担軽減という観点からは、非常によいと思っています。何も養育費に関する負担軽減というテーマに限った話ではないのですけれども、今の方向性だけを見ておりますと、手続に関しては飽くまで当事者の手続が前提、資料中に、今の財産開示のためには1金融機関当たり2,000円の負担が重いとか、そういうふうに読めるのですけれども、こういった養育費、先ほど面会交流支援機関の御意見も出ましたけれども、こういった手続に関して国が負担をするという方向はないのかというのが私の問題意識でございます。   養育費が一番分かりやすいので、例に取りますと、大体今、支払われている養育費の平均額は月額4、5万円ぐらいの間かなと思っております。便宜的に仮に5万円としますと、年間で60万円、10年間で600万円という金額になるかと思います。その開示のために、預金情報を取得するために、この2,000円という金額、これが御負担だと感じられる方も当然いらっしゃると思いますし、重要だとは思うのですけれども、当然これを代理人として弁護士先生にお願いしてといった場合は、2,000円とかという金額ではないと思っています。少し確認しましたら、これは一般的な水準とイコールかどうか分かりません、飽くまで例ですが、養育費に関して着手金30万円、成功報酬が2年分の10%、これが高いか安いかというのは分かりません、合計42万円。また、高額な例ですと、5年分の成功報酬30%、そうするとこのケースで成功報酬90万円、このような設定もあるようでございます。別に弁護士の先生方はボランティアでありませんので、費用が掛かることは当然という前提ではございますが、子どもの養育に関わる大事なお金、ここに関して、この部会の検討会範囲ではなかなか限界があるのかもしれませんが、こういった国費負担についても踏み込んで少し何か検討を模索できないかというのが、この5、6に関しての私の意見でございます。   取りあえずここまでとさせていただきます。ありがとうございます。 ○大村部会長 7はよろしいですか。併せて御発言いただいた方がいいかと思います。 ○武田委員 分かりました。では、続けて7に関しても申し上げます。7に関しては、私は1巡目での検討のタイミングで、その際も消極的であると申し上げました。いろいろ御意見も出ておりますので、簡単なケースというか、少し実例、いわゆるどのぐらいの時間軸で進んでいくかという話を少し御紹介を申し上げたいと思います。   いろいろなケースがあって別居しました、面会交流を申し立てました、別居親と子どもの関係に問題がないと判断されて親子の交流が認容された後、それがまた実現しないというケースで7の直接強制の対象にするか否かという議論かなと思っています。資料13にあるとおり、間接強制という手続、現在はこの方法しかないと認識しております。間違えていたら補足いただきたいのですが、間接強制というものは面会交流が不履行になったケース、この全件が間接強制を求められるものではない、そのように理解をしております。そもそも間接強制ができる要件を満たした決定が必要であって、不履行の事実をもって改めて間接強制を申し立てる、このような手続であると思っております。なので、面会交流の決定まで約1年、間接強制の決定まで仮に半年とすると、別居から通算すると2年程度、いろいろ葛藤が連続して、その間の離れて暮らす親御さんとお子さんとの接点はない、あっても試行面会1回ぐらいというのが実情かなと思っております。   これはほかの委員の先生の意見とも重複いたしますが、子の引渡しは1回で終わりますよね。この面会交流は毎月やるのかという話が当然あるのですけれども、それよりも、泣いて嫌がって、無理やり連れ出すこと、そこからしても私はあり得ないと思うのですけれども、その数時間後にまた同居親の元に帰るのですよね。もしそういう直接強制をやって、一旦2年ぶりに会った別居親と関係が修復できるケースもあると思います。でも、数時間後にまた同居親の元に戻る、子どもにとってこんな負担なことはない。どういう光景になるのか、是非委員の先生方も想像力を働かせていただきたいと思います。これは1巡目の発言の繰り返しになりますが、面会交流の履行のためにはいろいろな前提があることは当然ながら、別居後、他方親の悪口を子どもに言わない、これは両親ともにだと思っています、先ほど出た暫定面会交流のような親子の引き離し期間、これが長期に及ばない、このような仕組みを作ること、最終的に合理的な理由なく面会交流を拒絶し続けた場合、この場合には抑止力としての何らかのペナルティを設けることの方が優先度が高いというのが私の意見でございます。   罰則に関しては、海外事例では罰金や法廷侮辱罪を取り入れている国が結構あるようですけれども、これも先ほどと同じ話になりますが、この部会の性格上、民事法制の中でという検討の方がなじむと思いますので、こういったケースでは親権者、監護者変更の事由となり得る、これが一番ひもときやすく、抑止力が働くのではないか、そんなふうに考えています。棚村先生も前回おっしゃっていた記憶がございます。この直接強制を規定化するにしても、資料にもありますとおり、飽くまで伝家の宝刀なものであるべきというのが私の考えでございます。   海外がどうやっているかとかという点に関しては本日、国立国会図書館発行の資料を提出させていただきました。この資料はアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国、合計5か国を対象に、親権、面会交流の意義、子の養育に関する合意、両親が合意に至らない場合、合意実施の強制手段に関して簡潔にまとめられています。不履行になった場合の各国の対応に関しては一番最後の14ページにサマリーがありますので、改めて御覧になっていただければと思います。もし私の間接強制の説明に何か間違いがあれば、裁判所の方から御説明、補足を頂ければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員からは、4については基本的には賛成であるけれども、イメージの擦り合わせが必要であろうということで、御自身のイメージについて御披露を頂きました。それから、5、6についても御発言いただきましたが、それは後にしまして、7については結論としては直接強制によるということには消極的である、これとは別に、より実効的な抑止力のある手段を講ずるべきだという御意見であったと理解いたしました。5、6については、申立人の負担を軽減する方策として考えられるけれども、公的な負担をするという方向を考えることが必要なのではないかという御意見だったと受け止めました。ありがとうございます。   窪田委員と裁判所から手が挙がっていますので、お聞きしたいと思いますが、佐野幹事も挙手されていますね。ほかにいらっしゃいますか。発言の御希望を確認して休憩時間をどこでとるかを考えたいと思いますが、そこまででよろしいですか。では、このテーマについては窪田委員、裁判所、それから佐野幹事に御意見を伺うということにさせていただきたいと思います。 ○窪田委員 窪田でございます。4について発言をさせてください。2点、事務当局に対する確認、あるいは質問と、1点、意見ということになろうかと思います。   今まで非常に大きな観点からの議論があった中で、非常に小さなことを質問するようで申し訳ありません。1点は確認ということになりますが、ここで暫定的面会交流命令という形で書かれているのは、本文の中にも書かれていますが、面会交流に関する調停事件と審判事件、この本案がある中で、本案の判断前に暫定的に一時的なものとして出すものだと理解しているのですが、それでよいかということの確認です。   もう1点は、面会交流を認めるかどうかの判断基準自体については、今までもいろいろなところで細かくばらばらで議論は出てきたと思うのですが、正面から面会交流の実施についての判断基準が議論されてきたわけではないようにも思います。典型的に、すごくステレオタイプな説明をすると、一方で面会交流を認めるのが原則であって、子の安全等に関しての特段の事情がない限り面会交流は認めるのだという考え方と、いや、もっとたくさんの衡量要素があって、それを踏まえた上で判断するのだというような基本的な考え方の対立というのは、従来も実務の中でもあったと認識しています。   そのことを確認するのは、3番目、意見ということになるのですが、仮に私の認識が正しくて、本案に関して面会交流の是非についての判断基準が明確に議論されていない状況を前提にすると、本案の保全処分なり仮処分なりという暫定的面会交流の基準を議論するということは実はできないのではないかという気がします。先ほど伺っていた多くの委員の方の御意見というのも、実は暫定的面会交流についての是非の話ではなくて、面会交流そのものについての判断基準の御意見だったのではないかと思います。そうだとすると、今の4の中には多分うまく反映できない。反映する場所があるかというと、今この資料の中では、暫定的面会交流命令についての項目は挙がっているのですが、面会交流そのものについての項目は挙がっていませんので、そうだとすると、少し議論の立て方を整理しないように思います。恐らく事務当局の方から見ると、ここは飽くまで暫定的面会交流命令の話なのに、違うところの意見が出ているということかもしれません。でも、違う意見の人はやはりそこが大事だと思ってお話をされているわけですから、少しそこの点は整理していただく方が生産的な議論になるのではないかという気がして伺っておりました。 ○大村部会長 ありがとうございます。幾つか御指摘を頂きましたけれども、全体として同じ方向の重要な御指摘を頂いたと思っております。最初に、暫定的面会交流命令の位置付けについて確認をしたいというお話がありましたが、これが本案前の処分に関する話なのであれば、本案の方の基準から議論をしていくのが筋ではないかという御意見だったかと思います。この確認については、事務局についてお答えいただく必要がありますか、窪田委員いかがでしょうか。 ○窪田委員 いや、特に、もう今、大村部会長がまとめていただいたので、それで結構ですし、ただ、本案の部分については事務当局の認識はどうだというのは少し伺えればとは思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。それでは、事務当局の方からお願いします。 ○北村幹事 この暫定的面会交流、前回も御説明いたしましたように、本案事件が係属している中での保全処分の申立てということを想定しておりますので、当然、本案での審理の在り方、そのときの基準というのは重要なメルクマールになってくるであろう、そこについても十分な議論がされていないために議論が混乱しているというのは、そのとおりかなと事務当局として受け止めさせていただいて、資料の作成についても留意して、次回以降お示しできればと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。 ○木村幹事 幹事の木村でございます。ありがとうございます。5と6につきまして、観点の指摘といいますか、発言させていただきたいと思います。   まず、5につきまして、案@、案Aとございます。案@の方につきましてですけれども、具体的にどのような制度を設けるかにつきましては、今後の議論に委ねたいと思いますけれども、この案@につきましては、部会資料13ページに記載のとおり、現時点では預貯金口座に任意での付番を促進するにとどまり、付番が義務付けられているわけではないことから、実務的な感覚としては、差押えの実効性向上に直ちにつながるのかという点に疑問も残るということを、案@について指摘させていただきます。案Aについてでございますけれども、部会資料11ページ、(注1)の2に記載の点以外にも、預貯金照会サービスは飽くまでも民間企業によって行われているものでありまして、企業の経営判断等によって当該サービスが中断されてしまう可能性もあることについても検討が必要ではないかという点を指摘させていただきます。   続きまして、6でございますけれども、今後、議論ないし資料でお示ししていただければと思うのですけれども、財産開示の手続でございますが、これは、債権者において、民事執行法197条1項の財産開示の実施要件を明らかにする必要があるということを想定されているのか、また、財産開示の実施決定に対する不服申立ての可否についてはどのように考えているのか、こういったところを、今後、御議論ないし資料でお示しをお願いできればということを指摘させていただきます。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。裁判所からは5、6について御指摘を頂きました。5については実効性、安定性の点でどうかという御指摘だったかと理解をいたしました。6については御疑問を提示された上で、今後検討していただきたいという御要望を頂いたと理解をいたしました。 ○佐野幹事 幹事の佐野の方から、皆さんがおっしゃったことと重なるのですが、少しコメントさせていただきます。今回は4から議論しているのですが、3に戻り,発言させていただきます。3のところで所得等に関する情報の開示が「家庭裁判所に対し」なっているのですが、今回,ご紹介いただいた「養育費の支払義務者が自営業者等である場合における養育費額の算定の在り方に関する調査研究報告書」を見ていて改めて、誰に対する所得情報の開示義務とするのかを考える必要はあると思いました。というのも、裁判所に行かないケース、協議離婚のときでも、互いに収入が分からないと、適正な教育費を判断できないため、裁判所に行く前の段階で開示義務というのを認めなくてはいけないのではないか。本来は、ここではコメントすべきことではないのかもありませんが、忘れないうちに申し述べておきます。   5、6の養育費の関係ですけれども、これは手続がこういう形でできるというのは当事者の方にとっては非常によろしいことだと思います。裁判所の方でホームページをかなり改善されたと思いますけれども、やはり御本人に対して執行を一人でできますかと聞かれたときに、「できます」と言い切るのはなかなか難しいと感じております。また、費用につき、武田委員の方からもお話がありましたけれども、私も預金情報取得を銀行5行に対してかけて少なくとも3万円は掛かったのです。預金情報取得の部分だけでもそれだけの費用がかかりますので、養育費回収全体として、どれぐらいの費用がかかるのか、それをどこが負担するのかというのは、実際にその手続きができるかできないかに、重要に関わってくるものと思います。   4と7ですけれども、皆さんがおっしゃったことの繰り返しになってしまうのですが、面会交流の直接強制の前に他にやることがあるというのは、正にそのとおりだと思っています。支援につなぐということが、履行を実現するために必要なことであると思っています。   暫定的面会交流の性質について前回、きちんと整理すべきではないかというお話がありましたので、少し参考になればということでお話しさせていただきます。まず、この性質を保全とすると、今、窪田先生の方からどういう認容要件にするのかという話がありましたけれども、全く安全上の懸念が主張されておらず、直ちに実施できるという事案を考えてみると、具体的には、会わせたら非監護親が連れ去ってしまうかもしれない事案、もっともこれは安全上の懸念かもしれませんが、あるいは乳幼児で監護親が同席しないと面会できないけれども監護親は同席したくないと言っている事案、離婚成立するまで会わせたくないと監護親が言っているような事案などが想定できるかと思うのですが、例えば最後の離婚成立まで会わせないという事案などは、よほど監護親が頑なになっているのでなければ、子どもにとって大事なことですという話をすれば、命令までしなくても実現できるケースも相当あるという印象ですので、保全命令という形で実現できる事案が具体的に実際どれだけあるのか、と考えてしまいます。もっとも、この制度があることで、頑強に離婚できるまで会わせたくないと主張する方に対しては、最後は命令をされてしまうかもしれませんということで、早めに任意の実施を促すことができるという効果はあるかもしれないと思います。   他方、面会交流の状況等についての報告というところを捉えると、もう一つの機能というか、おそらくアセスメントや、支援につないでその様子を見る、それを合意成立後の実現への橋渡しにするという機能もあり得るのではないかと思います。アセスメントという点でいうと、客観的な証拠がないが、外からは見えにくい安全性の問題が主張されている事案などは、一定期間様子を見ていて、その関係性を把握した上で、必要な支援につなぐ前提として必要になると思いました。その場合、前回久保野先生から御指摘いただいたように、児童福祉法の28条の4項、ここでは児童相談所が勧告を受けて、ある程度必要な手当てをして、その様子を報告する、意見を求める、そういう機能が条文であるわけですが、同じような枠組みができないのかと思いたします。   それからもう一つ、ここではやはり支援につなぐということが非常に重要で、本来、家裁の調査官が調整活動という形で、家事事件手続法59条の3項で、社会福祉機関につなぐことができるはずなのですが、正直、私は調査官が調整機関につなぐという活動を行った事案を経験したことはありません。実際に枠組みとしてはあるにもかかわらず、これがなされていないのであれば、それはどういう理由に基づくのか、もしそれに障害があるようでしたら、それが実際に実施できるような形に改正すべきなのではないかと思います。なお、つなぐ先の社会福祉機関には、本来、児童相談所なども入るべきではないかと考えています。民間の支援機関が、面会交流の状況についての報告や意見を出すことを、対立が激しい関係者の間で行っていくというのは困難です。親の葛藤の中にいる子どもも、その利益が害されているという観点で、公的な機関が関与することが必要であり、そのためには、児童福祉法の改正なども必要になるのかもしれませんが、検討すべきではないかと思います。また、大きい子どもさんの場合は、子どもの手続代理人につないで意見をきちんと表明できるようにする、それにより親に子どもの方を向いてもらう、そういう支援も必要かと思います。そのような支援につなぐ役割を家庭裁判所の調査官がすることができる枠組みが法律上あるのですから、これをきちんと活用できるような何らかの手当てが必要ではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。佐野幹事からは3に戻ったところから御発言がありましたけれども、3について、家庭裁判所に対しという部分についての御意見を頂きました。それから、5、6については、考え方はよいけれども、やはり費用の問題が重要だという御指摘を頂きました。そして、暫定的面会交流命令については、先ほど保全という位置付けが確認されましたけれども、機能の点から考えていくということも必要だという御指摘を頂いたということかと思います。   以上で挙手されていた方々の御発言を承ったと思いますので、差し当たりここでこの第1の部分については御意見を頂戴したということにさせていただいて、休憩を取りたいと思います。今、15時17分ですので、15時30分に再開ということにさせていただきたいと思います。   休憩をいたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開させていただきたいと思います。   本日は、部会資料13の第1の4から7まで、前半で御意見を頂いてまいりました。4、7について特に多数の御意見が寄せられました。7については否定的な御意見が多かったかと思いますけれども、4、7を含めて、更に検討した方がよいのではないかというのが全体の御意見であると理解をしております。本日頂きました御意見、御指摘を踏まえて、更に事務当局の方で御検討を頂くということにさせていただきたいと思います。   そこで、残った時間で部会資料13の第2と、それから、14にも少しだけでも入りたいと思っているところでございます。その残りの13の第2につきまして、まず事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○北村幹事 事務当局でございます。部会資料13の第2について御説明いたします。第2につきましては、「父母の離婚後等における子に関する事項の決定に係る規律」ということで、離婚後も父母双方が、こちらは部会資料12における整理に基づくという形で、先ほど小粥委員の方から御指摘も頂いたところでありますけれども、暫定的にその整理に基づいて、親権を有しと書かせていただいておりますけれども、父母双方が親権を有し、子に関する一部の事項について父母双方が決定に関与することを選択できることとする規律を設けることについて、どのように考えるかということでの御意見を賜りたいというものになります。   部会資料6におきまして、子に関する重要な事項であるとか日常生活に関する事項について、親権者と監護者で決定する権限や義務を分担することなどを内容とするという整理をし、1巡目の議論において、離婚後の子の養育への保護の関与の在り方に関して、重要な事項について父母間でどのように決定するのかという観点から検討を行っていただいたものでございます。そして、子の親権者や監護者の権限や義務というふうに、こちらについては部会資料12において事務当局の方で一応の整理をさせていただいて、御議論を頂いたところであります。そこの部会資料6と12の関係については、20ページの中段の方に少し書かせていただいてございまして、これらの理解を踏まえつつ、23ページのところでございます、離婚後も父母が双方親権を有するための要件に関する規律ということで、協議上の離婚の場合については、父母の一方を監護者と定めるとともに、父母双方が親権を有することについて双方の合意がある場合については、離婚後も父母双方が子の親権を有するという規律についての考え、そして、裁判上の離婚の場合については、裁判所が子の利益のために必要があると認めるときは父母の一方を監護者と定めるとともに、今後も父母双方を子の親権者として定めることができるものとする。この場合、(注2)に記載してございますけれども、(1)と異なり、父母の合意というものを要件とするかどうかについては御意見が様々あろうかと思ってございまして、(注2)の方に記載しております。この辺りについても御意見を賜ればと思ってございます。(3)は、子の親権者又は監護者の変更についての規律についてでございます。   続きまして、27ページの2のところでございます。父母双方がここでいう親権を有して、その一方が監護者に指定された場合に、双方の関与の対象事項についてはどう考えるかということで、この場合には、父母は婚姻中か離婚後かを問わず父母双方が親権を有し、その一方が監護者に指定された場合でございますけれども、父母が婚姻中か離婚かを問わず双方関与の対象事項は、ここでいうところの親権の対象事項、子の監護、教育、財産管理に関する重要な事項について、とすることでどうかということの提案でございます。そして、双方関与の態様に関する規律、こちらは部会資料6におきましても記載しておりましたけれども、強い規律、弱い規律ということでお示しをしていたところでございますけれども、その双方関与の態様に関する規律としてはどのように考えるかということで、(1)で決定の態様に関する規律ということで、案@、案A、案Bというものをお示しさせていただいております。そして、決定の態様に関する規律に違反した場合の効果としても、ア、イ、ウという形での規律をお示しさせていただいております。この辺りについて御議論を賜ればと思っております。   簡単ではございますけれども、事務局からは以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。今御説明を頂きましたが、最初に少し説明があって、その後、23ページの1、27ページの2、29ページの3と、大きく3項目に分かれておりますが、一括して御意見を頂戴したいと思います。   それから、冒頭で事務当局の方からお話があり、その中で先ほどの小粥委員の御発言についての言及もありましたが、19ページの冒頭部分に、親権という用語がここでは暫定的に使われています、この用語を維持するかどうかということ、あるいはその内容として何を盛り込むかということについては今後の議論の対象になっているということですので、その前提で御議論を頂ければと思います。どなたからでも結構ですので、御発言を頂ければと思います。 ○池田委員 弁護士の池田です。第2全部についてということで。 ○大村部会長 どこからでも結構ですけれども。 ○池田委員 分かりました。では、まず第2の柱書、18ページのところから申し上げたいと思います。   離婚後も父母双方が親権を持って一方が監護者になるという選択肢を設けるかどうかというところについては、日弁連の中でも様々な意見がございまして、私自身もまだ判断が付きかねているというところです。そこで、今申し上げるのは、今後の議論に資するために、仮にそのような制度を導入した場合に現在の実務にどのような影響があるかということについてです。2点、申し上げたいと思います。   まず、双方が親権を持って一方が監護者に指定されるという状態は、現行法の下では別居中の父母の一方が監護者に指定されるという状態と同様ではないかと思いますので、それとの対比において実務への影響を考えることができると思います。現在の別居中の監護者というのは監護に関するおおむね全ての事項を単独で決定していると思います。高校への進学や大学への進学も含めてですね。それは本来、共同親権なので共同で行使すべきなのを事実上一人でしてしまっているだけということかもしれませんけれども、それが現実に問題視されることはほとんどないと認識しています。そうしますと、この双方関与の制度が導入されますと、現行法下での別居中の監護親の責任と権限が確実に今より一定程度制約されるという変化が生じるのだろうと思います。これが現在の実務への影響の一つ目と思っています。それが実態としてよいのかどうかということを、関与の程度をどのように設定するかということも含めて検討していくことになるのかなと考えています。   それから、次に影響の二つ目ですが、父母双方が離婚しても共に法的な責任と権限を有しながら子の養育に当たりたいと考えたときに、現行法の下でとり得る手段というのは、別居親を親権者とする、同居親を監護者とするという方法です。いわゆる親権、監護権の分属ですね。しかし、この方法は監護者が子の養育の主要な部分を担っているにもかかわらず、親権を有していないので、親権者によるべき対外的行為に関与できないという不都合があると思います、一緒にやろうと言っているのにですね。そこで、仮に監護者も別居親と同じく親権を持つという今回の提案の制度を導入するとすれば、そういった不都合は回避できるのかなと、監護親も親権者として対外的に行為ができるようになるというメリットもあるのかなと思います。   以上のような実務への影響を踏まえて、この制度の是非を今後も検討していきたいと考えています。   続いて、親権者の変更、監護者の変更ということが指摘されています。23ページから4ページのところですけれども、ここは変更という大なただけではなくて、その重要事項のうちの特定の事項についてのみ決定権を委譲するというような柔軟な形も考えられないかなと思っています。実務では、同居親はおおむね問題なく養育しているのだけれども、ある特定の事項、例えば進学などについての判断だけが子どもの意思にも反するし客観的利益にも反するという事案は見聞きします。そのような場合に、現行法では親権者変更とか監護者変更というふうに大きな手続しか用意されていないのですけれども、少し柔軟性に欠けると感じることがあるからです。   それが1点と、あとは24ページの(注1)の最後のところで、この双方関与を認めるということについても子どもの意向をきちんと把握するべきだというような指摘がありますけれども、それは賛成です。賛同いたします。   それから、少し飛んで、第2の3、関与の態様に関する規律のところですけれども、恐らくほかの方からは御指摘がないだろうと思いますので、私の方から少し絞って申し上げますと、この通知義務を仮に課すという方策を採ったとき、案Aのアでもイでも、事後又は事前に通知しなければならないと、通知義務を課すというところについてなのですけれども、これが子どもの意向に反する場合にどうするのかということを考えなければいけないだろうと思います。実務では、子ども自身がどこの学校、例えばどこの高校に行ったのかということを別居親に言ってほしくないということはままあります。例えば、高校を中退して別の高校に編入学するとかという場合に、子ども自身もそれをなかなか受け入れられていなくて、別居親から詮索を受けたくないというようなことを感じている場合などはそうなのですね。そのような子どもの意思というのは尊重されるべきものですので、そういう場合の父母間の通知義務は免除されるべきではないかと思います。こうしたことを考えますと、通知義務を設けるとしても、その一定の免除事由というのは考えなければいけないのではないかと思いますので、その点は更に検討する必要があると思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは実務の実情をベースにして御意見を頂きましたが、後半では、具体的な問題について御指摘を頂いたと思います。変更よりもより柔軟な対応ができるようにとか、あるいは、子どもの意向を把握するということは重要であるけれども、通知義務との関係でこれを反映させる必要があるのではないかといった御指摘を頂きました。他方で前半で、これは全体としての議論の仕方に関わるところもあるかと思いますが、離婚前別居の状態というのがどのような影響を受けるのか、それから、離婚後に双方で養育をしたいという場合にどのような影響が生ずるのか、こうした観点から見ていく必要があるのではないかという御指摘を頂いたと思います。ありがとうございます。   今、議論の仕方にかかわる御発言がありましたが、何かその点についてあれば、更に伺っておきたいと思いますけれども、いかがですか。 ○棚村委員 全体の進め方ということなのですけれども、私たちにとって、特に民法の研究者としては、個別事例とか具体的に経験されたこととかは、非常に貴重なお話で、聞かせていただいて参考にさせていただいています。ただ、事務局から毎回提案されているものが割合とテクニカルな意味で法制度をどうするかというようなことですので、今後の議論の仕方とか進行との関係でも、一番気になっているのは、事前に準備していただいた資料を読ませていただいても、だんだん内容についての審議検討が遅れてきて、少しずれが生じてきてしまっている感じがします。せっかく用意したり準備してきても、今日も終わるか分からないというのもあるので、私も長い方なのですけれども、今後少し個別事例や御経験とかにわたるものをできるだけコンパクトにしていただいて、事務局から御提案されている制度、あるいは検討事項に少し特化して議論させていただければと思っています。   そこで、今回も第2のところで取り上げられている主要なテーマというのは、お子さんにとって具体的にどういう点が重要な事項として問題になりやすいかということ、それから、これらの問題や事項に対して両親がどういうような形で、別居中もそうなのですけれども、離婚した後も関わるべきかという問題があります。ここで、当然出てくるのは、お子さんの問題につき双方が関与した方がいいということになると、話合いがある程度促進されるとか、熟慮の機会が与えられるということで、もちろんいい面はあります。他方で、問題としては、双方関与ということが求められると、迅速な決定が阻害されたり、話し合いができずにトラブルになったときに、子どものために物事が決まらないとか、収拾が付かないとか、迅速性とか簡易性という面で、デメリットが出てこないかが懸念されます。その辺りのところをいろいろなケースを想定しながら、個別的な事項ごとに、緊急性とか迅速性が特に要求される場合、重要なものの中でもそういうことはありますし、それから、日常的なことでよく起こっていくことでいちいち意見を聴いたり同意を得ないと進まないということの不都合さや不便さ、とくにお子さんにとって早く決定できないことからどんな悪影響があるのかということをしっかり検討する必要があると思います。   とくに、親権という言葉を使おうが監護という言葉を使おうが、お子さんにとって何が問題になって、どういうことを話し合ったり決めたりしなければいけないのだろうかということを前提にしながら、共同親権が是か非かとか、双方関与が是か非かという両極の議論にしないで、できるだけ細かく具体的な場面ごとにどのようなルールや手続、取り得る手段などが考えられるかということでとりあえず出して検討してみる。釈迦に説法かもしれませんが、そのうえで、そのそれぞれのメリット、デメリット、いろいろあるでしょうが、その辺りのところを冷静に、多様なケースや状況を想定しながら、法的仕組みとして、法的ルールとしてどのようなものを置いておくと、紛争がある程度予防できたり、解決することに資するかという観点から議論や検討を進めていただけるといいなと考えております。   ところで、カナダで2019年6月に連邦の離婚法とそれに関連する法律の大きな改正がありました。この改正の目的とか改正点とかについては、とても参考になるように思います。社会が大きく変わってきて、そして子どもたちをめぐる生活も変わり、大人の生活や家族の在り方も変わってきたときに、やはり法改正が必要になります。カナダの連邦離婚関連法が大きく改正され、2021年3月から施行されたのですけれども、離婚をめぐる法改正の理念や目的で一番大きいのが、第1に子の最善の利益をいかに促進するかという点でした。第2には、DVとか家庭で起こっている暴力をいかに防止したり配慮するかという点でした。それから第3には、お子さんの貧困を撲滅したり、少しでも減らしたいという点です。さらに、4番目は、家庭裁判所を含めて、今日もいろいろと批判が出ていましたけれども、家庭紛争の解決する手続での利便性の向上とか実効性を高めていくという、この4点からの改正が行われました。   そこで、時間の関係もあり、余り細かいことまで立ち入れないのですけれども、この中で私たちが日本で今直面している改正でも考えていかなければいけないなという点だけ抜き出してお話します。まず第1の、子の最善の利益の促進というところでは、一つは子どもにフォーカスした用語の改正というものです。これまで子の「監護」という意味でカスタディ(Custody)と呼んでいました。それからカナダですと、「面会交流」をコンタクト(Contact)というのはイギリスでもいうのですけれども、アクセス(Access)ともいっていました。また、子の監護や面会交流について争いが起こって、裁判所が決定を出すときに、カスタディ・オーダーとか、あるいはアクセス・オーダーではなくて、「養育決定」ペアレンティング・オーダー(Parenting Oder)というように、一般の人々にも身近で分かり易い表現にして、「子どもの養育や子育てについての決定」みたいな形に改めました。ここで、非常に象徴的なのは、身柄を拘束するというカスタディ(Custody)という言葉をやめて、むしろディシジョン・メイキング・レスポンシビリティ(Decision-making Responsibility)という、要するに、「子どもの問題を決定する責任」という言葉に変えました。それから、子との交流を指すアクセス(Access)とかコンタクト(Contact)というのは正に「ペアレンティング・タイム(Parenting Time)」という言葉で、お子さんといかに充実した時間を楽しく過ごすかというようなことになりました。これは言葉だけ変えればそれで済むという話ではなくて、恐らく言葉を変える過程で、ターミノロジー(専門用語)をお子さんにフォーカスするという中で、中身についても、やはり大人目線から子ども目線みたいなことへ大きく転換することが目指されていました。ですから、ただ形式的に言葉を変えるというのではなくて、実質的に理念や根本的な考え方も、この機会に変えなければいけない、そういう発想が非常に強く出てきています。   カナダの改正では、子の最善の利益を促進するところで、子の最善の利益の考慮事項の中で、子の意思や意見の尊重、父母だけでなく、お子さんから見て人生や生活に大事な人は誰かという面から、祖父母とか継親、きょうだいなどを含むそのほかの人たちがかなり入ってきました。要するに、お子さんにとって大事な役割を果たしている人が誰かと、親だから子にとって大事ということではないのだということを再確認したり、そのほかにもいろいろと学ぶべきことがあります。たとえば、養育費についてもいろいろ計算の方法の合理化、効率化、州ごとのバラツキの解消とか、貧困の解消の立場から、税情報、財産情報の開示などについて大胆に改めるなどで、哲学的、理念的な改正の中で、現実的に起こり得る紛争の解決のためのルール化の見直し、DVの定義の精緻化、解決のコストの低減、実効化を改革していました。細かいことでは、養育費の回収、行政サービスと司法サービスの連携とか、ADRの強化、家庭裁判所の仕組みや運用の改善も、戒能先生からイギリスの司法省の話が出ていましたが、実務の運用の在り方などについてもどこの国もきちんと検証しながら、良い点と改めるべき点をしっかり区別しながらやっているということだと思うのです。   少し長くなりましたけれども、今回、当面は、親権とか監護という言葉を使わざるを得ないということで、確かにこれらの慣れた用語を使って議論した方が効率的だと思いますけれども、ただ、私たちとしては、子どもに焦点を当てながら、大人目線から子ども目線に移していく。繰り返すことになりますが、共同親権の是非とか双方関与の是非とかという話ではなく、それから面会交流の是非という形よりは、お子さんと本当に楽しい時間、充実した時間を過ごすということでどんなルールや制度が望ましいか、それから、必要な社会的支援がどういうような形で与えられるべきかどうかというようなことで議論してゆきたいと考えています。先生方も当然お分かりだと思いますけれども、ルールや制度の在り方みたいなことを中心として、提案されているものに対して賛成、反対も含めて、こういうふうにすべきではないかというようなことを議論させていただくと有り難いという思いで、少し時間を取りまして発言させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。間にカナダのお話がありましたけれども、その中で、子どもの利益の促進の観点から用語を見直す必要もあるというお話がありました。用語の話は先ほども触れましたが、また後で考えるべき点かと思います。最初と最後におっしゃったことは、具体的な規律に即した形でコンパクトに議論していく必要があるのではないかということだったかと思います。ありがとうございました。 ○青竹幹事 23ページの1の離婚後も父母双方が親権を有するための要件についてのところなのですけれども、池田委員から、この共同親権の道を開く場合に監護の内容が変わってくるだろうと御指摘いただきました。そのとおりと思いますけれども、ただ、監護の中に現実の世話といったものが結局、現行法と同じように含まれると理解しております。その理解によりますと、離婚後も父母が共同親権を有する道を開く場合に、その一方を必ず監護者と定めなければならないとされている点について、少し御指摘したいことがあります。   確かに共同親権を選択した場合に、一方を監護者と定めるというのは実務の状況には合っているでしょうし、一般的と理解はできます。でも、共同親権とした上で、中には監護についても共同でやろうという、円満な場合などに限られますけれども、そういうこともあるだろうと思います。その場合にそれを一切認めないという規定の仕方はどうなのだろうかと疑問に思いました。   現在でも離婚後は、親権は単独にしなければならないですけれども、子どもに関して協力関係を築いて共同で監護するということはゼロではないかと思います。もちろんこの部会では、父母の力関係に差があるような状況、高葛藤の事例にどう対処すべきか、それを最も重視すべきと考えます。ですけれども、小粥委員も先ほど御指摘されていましたように、いろいろな家庭がありますので、父母が社会的にも対等で責任ある立場を築いていて、離婚後も子育てに共同で公平に分担して、仕事と子育てを両立させたいと考える父母がいますし、共同参画を目指している社会では、むしろそちらに向かっていくだろうとも期待されます。社会に与えるメッセージという面からも、共同親権の道を開く場合に、必ず一方を監護者とする、としない方がいいのではないかという印象を持ちました。   それから、2点目ですが、23ページの1(2)の裁判上の離婚で共同親権とする道を開く場合の話ですけれども、子の利益のために必要があると認めるときは、裁判所は共同親権と定めることができるとされています。このようにすることで、裁判所が共同親権を認めるのは何か特別な場合に限るという厳しい立場を民法が示しているように伝わるのではないかとの印象を受けました。確かに共同親権を原則とするという立法は、現在の裁判所の体制からすると、弱者となっている父母の一方にとって害悪が大きいということについて、これまで委員、幹事、ヒアリングでの報告から理解できました。そうかといって、特別な事情がない限り単独親権にすべきであるという立法の仕方も、やや中立的ではないと感じております。離婚後、子にとって共同親権、単独親権どちらが望ましいかについては個々の家族について異なると思いますので、民法の方で単独親権とすべきであるとか、共同親権とすべきという立場を最初から採らない方が、あるいは中立的で受け入れられやすいのではないかなどと考えております。23ページの親権に対するアンケートを見ましても、単独親権を原則とするといった形の規定だと国民の支持も得られないのではないかと考えました。   3点目ですけれども、少しずれた話になるかもしれませんけれども、離婚後も共同親権の道をもし開くことにするのであればですけれども、これまで多数の委員から指摘されていますけれども、やはり婚外子の共同親権の可能性を開かなければ制度として少し整合性を欠くのではないかとも思われます。本来、離婚後共同親権、婚外子の共同親権を併せて検討すべきではないかと考えます。ただ、この部会でどこまで検討するか、その範囲を区切る必要もあるでしょうから、何でもというわけにいきませんので、少なくとも今後の検討課題とするということを明確にした方がよいのではないかと考えました。   それから、4点目ですけれども、29ページのところですが、双方関与の態様ですが、こちらは、棚村委員からも御指摘があったとおり、共同という、双方という形をとる場合には難しい問題が出てくるので、これに配慮しなければならないということですが、ただ、一方が決定できて事後的に他方に通知するというだけでは、何か離婚後双方関与にする意味が半減してしまうという印象を持っております。双方関与ということをするのでしたら共同行使ということを原則とすべきではないかと、例外に配慮しながらということになるかと思いますけれども、案@を原則、基本とする方がいいのではないかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございました。4点御指摘を頂きました。御発言を聞いていて共同親権、単独親権という言葉が耳に残られた方もあろうかと思いますけれども、最初に繰り返し申し上げたとおりで、この言葉で何か実体的なものが指されているという前提には今のところ立っておりませんので、青竹幹事の御発言もそういう趣旨だと受け止めさせていただきます。その上で、監護についても双方でということを認めるべきではないか、それから、裁判上の離婚の場合の扱いがこの提案でよいのだろうか、それから3番目に、婚外子の問題も考えるべきではないか、4番目に、双方関与の場合に通知だけだと意味が乏しいのではないかという御指摘を頂きました。事務当局の方で何かあればお願いします。 ○北村幹事 1点目の点ですけれども、26ページの(注1)のところに少し触れさせていただいております。通常、法律上は日常的な事項まで父母双方が関与して決定することはなかなか難しいのかなと思って、今回はそのような規律にさせていただいております。ただ、このような法律の定めてあっても、監護を共同でするということは妨げられない、この規律で排除されているというわけではないということだけは指摘させていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○落合委員 まず、先ほど棚村委員からですよね、カナダの例をお話しいただきまして、非常にいいなと思いました。カナダでやったことは、社会学的に見た家族の実態の変化とか、それから家族観の変化ということと非常によく合った制度改正だと思います。それは2点ありまして、子ども中心、子ども目線で見ているということ、それから、より広いネットワークの中に子どもの養育を置き直していることです。祖父母の重要性というようなことを私も今まで時々お話しさせていただきましたけれども、父と母だけが子どもを育てているのではないわけです、本当は親族だけでもないわけですけれども、そういうネットワークの中の子どもの養育と捉え直されていますので、それをよく反映した制度化だと思いました。   それと対比しますと、今回私たちが扱っていることは、やはりまだかなり古いものを引きずっていると思います。親権という言葉はこれから検討するということなのですけれども、そこを検討してからでないと次の話に行けないようなところもあって、非常に難しいところがありますけれども、民法の中で親権というのがどう扱われているかというと、成年に達しない子は父母の親権に服するというような、親責任とか養育責任ということでいっているものとはもっと違う、やはり権力的な、権威的なものだと読ませるような条文になっていると思います。でも、そうではなくて、基本的に子どもは自分で育っていくのであると、助けが必要なときには身近な大人が責任を持って助けると、そういうふうに読める制度にしていきたいと思います。今回、民法のそういう、例えば親権に関するところの改正も伴うのかどうか、どのぐらいの覚悟でやっていることなのかがもう一つ分からないのですけれども、本当はこの親権という言葉も、その書かれ方も、古くなっているというのは指摘しておきたいと思います。   親権を共同か双方かということで、そこでもめてしまうのは、子どもの決定権というのがよく見えないからではないかと思います。子どもの決定権が明確に規定されていない。私はこの双方が親権を持つというか、親権に当たるものを行使するということに賛成です。なぜ賛成かというと、子どもにとって選択権があるからです。一人の大人に決定を全部握られてしまうというのは、子どもにとったら非常に恐ろしいことだと思うのです。親の間にも意見の不一致がある、自分を応援してくれる方の親と一緒に頑張るみたいな、そういうようなことを日常、家庭の中ではしていると思うのですけれども、その機会を離婚後も与え続けたいと私は思います。もちろん原則として、そう思います。実際にそれが難しいようなケースもあるというのは重々承知した上で、しかし、子どものためを考えれば、一人の大人に全部を握られてしまうのは恐ろしいことだという、それははっきり言っておきたいと思うのです。そういうふうに考えると、ブレイクスルーになるのではないでしょうか。親2人が対立していて、にっちもさっちもいかないときに、子どもの意見を優先しましょうと言えば、それで決定できるわけですよね。判断の基準が示されます。ですから、子ども目線で見るということは物事をややこしくするのではなくて、すっきりさせるのではないかと考えます。ですから、子どもの自己決定というか、それを最大限重視するというようなことを、できればどこかに法律の中に書き込みたいと思います。   それに関連して、少しだけ横道にそれるのですけれども、資料12の中で、子の利益を最も優先して考慮しなければならないというところについて、私が意見を言ったことがあるのですが、覚えてらっしゃいますでしょうか。これは、やはり世界でいわれていることの誤訳だと思うのです。先ほどの池田委員の言葉ですと、子どもの最善の利益を考慮してですか、そういうふうにおっしゃっていたと思うのですけれども、世界でいわれているベストの使い方は、最善の利益のことですね。子の利益を最も優先して考慮するというのは、子どもの利益と誰かの利益を対立させているように日本語として読めてしまいますよね。でも、そうではなくて、子どもにとって最善のということをベストという言葉で言いたいのですから、子の利益を最も優先してというのは、私は誤訳だと思います。だから、この表現はもう消していただきたい、子どもの最善の利益を考慮してと書き換えてもらいたいと思います。子ども目線、子ども中心ということと関連して、今のことをお願いしておきたいと思います。   あと二つ言いたいことがあるのですけれども、一つは、親権を一方に限ってしまうこと等は、やはり家制度だということです。いろいろ考えましたが、やはり家制度的なものが残っているから、今もそういう規定なのだろうと、家族社会学者としてはやはり思うに至りました。家制度というのは、家の枠組みの中に個人を入れてしまって、そこを集団として閉じて、そこから出ていった人はもう家の成員ではないという、そういう制度のことです。離婚して出ていった人はもう成員ではないので、子どもに対しても全く権利がない。これは名字のことでもそうだと思うのですけれども、名字はそのグループを示すものとして一つの名字を持つ、だから夫婦別姓は駄目という、それと同じ論理で単独親権というのは保持されてきたのでしょう。単独親権と夫婦同姓のそれぞれをサポートしているグループは、随分違うグループのように思うのですけれども、でも論理は同じ家制度だと思います。   でも、家制度がそのようになったのは実はそれほど昔のことではありませんで、18世紀の後半ぐらいまでは家というのはもっとネットワーク的なものだったのですよね、実家とのつながりもありますし。だから、家のような箱に個人を全部閉じ込めてしまうのが日本の長い伝統だったと思っている人がいますが、それは全く間違いで、歴史人口学的な研究からいいますと、それは18世紀の終わりから19世紀の中ぐらいまで、庶民にとったら意味のないことだったと思います。その後、箱のような制度ができて、それの名残として戸籍制度のような形で戦後も残っているわけですが、単独親権というのはやはりそれと深く関わったものなのだと、だから基本的には時代遅れであるし、もっとネットワーク型に変えなければいけないのだと、それを共通認識にできたらいいと思っています。   世界は、家制度どころか近代家族的な箱ももっと緩めて、もっとネットワーク化した人間関係の中に人は生きている、育つと考える方向になっています。ですから、そういう意味でも、私ははっきり言って、この双方が親権を持つということの何が悪いことがあろうかと思っております。もちろん問題があるケースについてはそうしないということで、そこは丁寧に判別していく、評価していく必要があると思いますが、やはり全体的な方向性としては、養育責任をみんなでシェアしていくというのがよいだろうと考えます。   次の点は、この23ページのところです。先ほどもちょうど御指摘のありました、この父母の監護者の方です。ここは双方の親権ということを書いたところなのですが、監護者は一方というのをさらっと書いてあります。私はここにも少し抵抗感を感じます。この23ページの1(1)の1行目の、父母の一方を監護者と定めるとともにというところは、父母の一方若しくは双方をと修正したらどうでしょうか。青竹幹事がおっしゃっているように、関係がよくて本当に一緒に養育していきたいと思っている人たちもいるのだろうと思います。共同監護は難しいといいますが、50%、50%とかいうのはあまりリアリティがないかもしれませんけれども、例えばヨーロッパの友人たち、たくさん離婚していますが、そのケースなどで見ると、例えば夏休みは別居親の方で過ごすとか、それから、海外出張に別居親が行くときは学校を休んで一緒に付いて行って、例えば日本を見てくるとか、そういうふうにも使えたり、あるいは週末は別居親と過ごすとか、そういう多様な形での養育の分担ということが実践できている例は多くあります。これを今の用語でいうと面会交流になってしまうと思うのですが、面会交流というと随分狭い感じがして、ふだんとは違うことをする感じですけれども、それよりはむしろ、双方が監護責任を持つ、養育責任を果たすというように書いてあれば、本当に週末だけとか、あるいは夕方お迎えに行くのはどちらとか、そういうふうに柔軟に対応できるのではないかと思います。それほど関係がいい人たちばかりでないというのは重々分かっておりますけれども、しかし、それができればそれがいいのだという形の規定にしたらよいのではないかと考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。幾つか御指摘いただいたかと思いますが、まず最初に、棚村委員が御披露になったカナダの立法について共感を抱くという御発言があった上で、用語についての御意見や御提案を頂きました。それから、本日の話題との関係でいうと、双方関与というのに賛成の方向での御意見を頂き、それを子どもの観点と家の観点から理由付けておられたと受け止めました。最後に監護の話が出ました。これは先ほど青竹幹事もおっしゃっていたところですけれども、お話を伺っていて思ったのは、面会交流の話をされたわけですが、監護権の帰属と面会交流との関係をどう整理するのか、これは言葉遣いの問題も含みますけれども、そうしたことを考える必要があるということと、それから、これは別のところで池田委員がおっしゃったことだと思いますけれども、柔軟な対応の道を開く必要があるのではないかということをもう一つの要素としておっしゃっていたのではないかと思いました。ありがとうございます。 ○大石委員 千葉大学の大石です。ありがとうございます。初めに、議論の進め方について先ほど棚村委員から御指摘があったかと思うのですけれども、少なくとも私は赤石委員や原田委員のお話を伺って、ためになりました。前回の細矢委員のお話を伺って、あれだけの丁寧な対応が実際に、公的機関の実務において実現できているのかどうかということについてはかなり疑問を持っておりましたし、また、幾つか見聞きしている例などでも、かなり困難であろうと推察しておりましたので、それについて専門の実務に関わっている方とかサポート団体を運営している方からのお話を伺えたのは大変よかったと思っております。また、この部会の議事録も広く世間に公表されて読まれるわけですし、国民の理解を促すという意味では意義があったと考えています。   それで、今の第2に関わる話のところなのですけれども、やはり私自身は養育費の確保と、それを通じた貧困軽減というところに非常に強い関心を持っておりますので、父母が共同で監護ですとか様々なことに関与する場合も、やはりその裏付けとなるお金がなければケアも教育もできないわけでありまして、金は出さずに口を出すということになりかねないリスクもあると考えております。現在のように養育費の受給率が低い状況にありましては、父母の双方の関与に関する規律と同時、あるいは先に行くぐらいの勢いで、養育費確保に向けた施策の充実というのを進めていくべきであると考えます。特に、規律に違反して、例えば通知しなかった場合に、損害賠償請求権の発生も考えられるような記述が30ページにございますけれども、そういったところで金銭的なものが発生するということであれば、その前提として、まずは養育費の支払がなされているのかどうか、それがなされていなかったら、それこそ初歩の初歩の部分のところでの違反行為がまずあるのではないかという話になるのではないかとも思います。ですので、車の両輪として養育費の確保と強く結び付けてこの議論をお進めいただきたいというのが希望です。 ○大村部会長 ありがとうございます。大石委員の方から、この問題について養育費と併せて議論を進めていくべきだという御意見を頂きました。 ○沖野委員 ありがとうございます。沖野です。29ページの3の双方関与の態様に関する規律について申し上げたいと思います。この(1)で、決定の態様に関する規律として案が出されているのですけれども、この意味についてです。共同行使なのか、単独決定単独行使なのか、そして後者については事前協議機会の付与なのか、事後の決定通知であるのかという三つが示されており、かつ、その線引きをどの場面でどのルールにするかという形で提示がされています。ここでは離婚の場合について、しかも監護者が1名の指定で親権者が双方という指定になっているときにどうかという規律なのですけれども、実際の夫婦なり父母の在り方は非常に多様ではないかと思われます。協力して一緒に決定してやっていこうという人たちもあれば、正にいろいろなものがある中で、そういうときにいずれかに決めるということの意味がどういうことかということです。考えられますものとしては、むしろこの三つの規律の在り方で当事者が選択する、あるいは裁判所が適切なものを決定していくということであるならば決定していく、更にそれを状況に応じた変更も可能にするということが考えられるように思います。3パターンの規律のうちどれかを必ず選ばなければならないとか、あるいはどれかをデフォルトとしつつ、ほかも可能であるというような規律も考えられるように思うのですけれども、ここで一つに決めるということはどういう趣旨になるかということで、例えば、仮に事後通知に決めたという場合に、夫婦によっては、2人で協議してやっていきましょうという場合もありそのときには、恐らくそれ自体を封じることにはならないですけれども、そうしたときに、事後通知というルールがどういう意味を持つのかです。   一つの可能性としては、共同でといっても意見が一致せず、まとまらないということがありますので、そうしたときの最後、まとまらないときに何が最低限になるかというと、一方の単独決定であり、しかも、事前の協議機会も与えなくても、それでも決定されたということで、正当な決定であり、かつ、恐らく対外的に交渉すれば代理ということになりますけれども、適切な代理権の行使になると、そういうものとして考えるということであれば、どれか一つにしておくということはあり得るのかとは思うのですけれども、ここで問われている意味がどういうことになるのかというのが一つです。   もう一つは、このどれか一つに決めるというようなことになった場合、デフォルトでもよろしいのですけれども、そうしたときには、ここでは重要な事項についての決定及び対外的な行使、あるいは財産の管理などについて共同で関与していくという場合にはこうなるという規律を決めたときに、いずれでもない親の地位、かぎ括弧付きの親権者でも監護権者でもない、日常生活についての決定や代理をする責任や権限を持つわけでもなく、重要な事項についての決定や責任を持つとされる地位にない親の地位というのがどうなるのかということで、例えば通知もしてもらえないということなのか、共同で重要事項については関与しますというのを当事者が選択したらこうなるということは、それを選択しなかったらば、もう事後通知もされないというようなことになるのかというと、必ずしもそうではないのかと思われまして、この間、前半に小粥委員のおっしゃった、親の地位というのでしょうか、例えば子どもの状況を把握できて子どもの相談に応じていくといった地位というのは、これとは別に埋められていくということが想定されるのではないかと思います。   それから、直前の議論の中で出てまいりました、養育に関わっていく、その責任を負うというのも、ここでの問題なのかというのがはっきり分からないところがありまして、部会資料12だったかと思いますけれども、層を四つに分けて、日常的な生活に関わる決定、それから財産管理についての法的な権限と責任を持つ者としての監護者、それを越えた重要な事項についての法的な決定権限と責任、それから代理権等を持つ親権という概念、それから、事実として子どもの養育に当たるという事実上の監護という考え方と、それとは別に、親であるからにはこの点が必要とされるというか、責任を負うという養育責任はその部分ではなかったかと思います。特に経済的な負担のところで、養育費あるいは子どもからいえば未成年者扶養請求権というような形でですが、現物の給付というようなこともここで入ってくるとすると、親権者でも監護権者でもないのだけれども、親として当然、子どもの養育に関わっていく責任があるというような話は、その周りにというか、そういうものとして充填されなければならないということは前提になっているのではないかと思います。また、その充填だとか具体的な中身は、あるいはこの3(1)についての決め方などに影響を受ける面があるのではないかと思ったところです。   それからもう一つ、これは言うまでもないことかもしれませんが、前提としてここでの規律が単独決定単独行使を内容としているのは、日常的な決定権者が一番よく分かっているということで、重要な事項についても最後はその人が決めようということですが、ここが双方が日常についても権限を持つということになりますと、恐らくこの前提がかなり変わってくるので、ここの規律の在り方もまた違ってくるのだろうと、今までの話を伺っていて、思ったところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。沖野委員の今の御発言は、29ページに決定の態様に関する規律ということで案が併記されていますが、このことの意味をどのように考えるかということについて、幾つかの観点から御指摘をいただいたものと受け止めました。一つは、これをどれか採らなくてはいけないということなのか、選択的なものとして設定することを考えることはできないだろうかということ。それから、どれか一つ採るのだとすると、そのことの意味がどこにあるのかを明らかにする必要があるのではないかということ。3番目にここの選択肢の外にある問題との関係を整理する必要があるのではないかという御指摘もあったと思います。4点目の御指摘もあったのですが、少し細かいので、要約から外させていただきます。 ○菅原委員 ありがとうございます。白百合女子大学の菅原です。既にたくさん議論があったところなのですけれども、23ページの1について、父母の一方を監護者に定めるというところで、ここの文言については少し違うのではないかと感じています。   子どもにとりましては、やはり養育をされるということが本質的に重要なことになってまいりますので、海外でもペアレンティング・タイムという言葉が使われるようになっておりますけれども、今回の文面ですと一方だけしかケアができないのかということになってしまいますので、先ほど落合委員がおっしゃったように、父母の一方又は双方という表現とし、双方が関わる場合には、どの程度のバランスで監護を分担してくかはそのカップルの合意を基盤として決めていくことになると思います。同様に、23ページや22ページの表も、父母のいずれか一方と記載されていますが、これらについても双方が持てる選択肢があってもよいのではないかと思っているところです。   では、双方が監護できるのか、あるいはどちらか一方しかケアの担当者として指定できないのかというところでは、1のところで盛んに議論がありましたけれども、子どもへの虐待やDV、夫婦の高葛藤の程度、子の拒否などを判断するアセスメントが適切になされることが重要なことになりますので、これまでに議論があったような家裁などでのアセスメント能力を高めたうえで双方が監護者になり得るという道を開かないと、子どもにとっては本質的な解決にならないのかなと思います。   あと、この要件の中に、24ページの(注)のところには子の意向等も踏まえるということが書いてあるのですけれども、子の意向とかそういうものがどういうふうに入り込むのかということも少し気になったところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。菅原委員から2点御指摘がありましたが、双方で監護をするということについて書き込むべきではないか、これは複数の委員、幹事から御指摘が出ているところでございます。それから、子どもの意向というものの位置付け、これも先ほど、池田委員だったか、御発言があったところかと思いますが、それを考えるべきではないかということだったかと思います。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。では、子に関する重要事項に関して父母双方が決定に関与するということに関して、まず冒頭、明確に賛同の立場という意思表示をさせていただきます。   中身についてなのですけれども、19ページぐらいですか、前回も御指摘があったかと思いますが、親権者、監護者の記載の中で、「排他的な権限を有し」という表現がございます。ここに関して、もう部会資料も公開されておりますので、多くの、すみません親視点で、別居親当事者から懸念の声が上がっているということをお伝えさせていただきたいと思います。恐らく誤解しているのは、この記載だけ見ると、親権者にも監護者も指定されなければ離婚後の子の養育からは排除される、このような懸念を持つ方が多数いるということを報告させていただきます。この記載の意図するところはまた異なるかもしれませんので、この後、事務局側から少し補足を頂きたいということと、表現を含めて、もう少し丁寧な書きぶりを御検討いただきたいというのが、まず冒頭でございます。   次に、1点目、要件に関する規律に関してです。ざっと読んで、まず感じたのは、父母の合意、こういった離婚後に双方が重要事項を決めていこうということに対して協力の姿勢がないと、それは何事も進まないだろうと、それはそれでおっしゃるとおりかと思いますが、今の現行法に関しても、多数の委員の先生方、従来から御意見が出ているとおり、この書きぶりを前提にすれば、余りにもまた当事者任せすぎるように感じています。具体的には、24ページの(注2)、父母のどちらかのみが親権者となることも選択できる、であるとか、監護の共同に関しては、多数の委員の先生方が御指摘されておりますが、離婚後であっても子の監護を共同して行うことは妨げられない、この辺りの表現がそう感じた理由でございます。   今日、提出させていただいた資料、ここにやはり親権に関する記載もございます。例えばアメリカでは、子の福祉のために共同監護が最も望ましいとの推定が働くとはっきり記載があります。一方、お隣の韓国などによると、父母の良好な関係を維持することができる場合限定ですね。ここの是非については、今後の議論になっていくかと思うのですけれども、前回、赤石委員から御質問を頂いたと思っています。この離婚イコール親子の別れと認識している御両親、この層に関してどのように考えるかという非常に大きな問題提起だったと思っています。申し上げるまでもなく、平成28年度ひとり親調査、養育費を一回も受けたことがありませんが56%、面会交流を行ったことがありませんという回答が46%、半分です。この約半数の御両親に対してどのようにサポートしていくのか、気づきを持っていただくのかということが個人的に非常に重要なのではないかと思っています。それに対して少し、今の書きぶりですと、合意が条件という規律だけ作っただけにとどまれば、当然、子の養育に関わらないという選択が引き続きなされていく懸念があるということでございます。当然、テクニック的に養育費の徴収はできるかもしれませんが、本当に離婚後も子の養育に一定の責任を持つことが根付くのだろうかということ疑問を持っております。   理念に関しては既に、関係各所で政府答弁が出ていると思っています。例で申し上げますと「父母の別居、離婚後も父母の双方が適切な形で子どもの養育に関わることは子どもの利益の観点から重要」、このような答弁がなされていると認識をしております。したがいまして、飽くまで原則にすぎませんが、離婚後も双方の親が子どもの養育に関わること、これが子どもの最善の利益に資するという立法趣旨、こういうものを入れ込む必要もあるのではなかろうかと考えております。   あと、こういう理念を打ち出すことなしにという話なのですけれども、今回、法制審議会の諮問になった背景ということで、また改めて見直したのですが、やはり女性の社会進出、これをもっと進めていきましょうということ、男性の育児参加を含めた育児の在り方、あわせて、多数の委員の先生方がおっしゃっていただいていますが、国民意識も多様化していると思います。そういったことにどのようにこたえて、子ども視点でどのように制度を変えていくのかという観点が非常に重要なのではないかということを、1に関しての意見とさせていただきます。   2点目、次に、双方関与の対象、2に関してです。今回、部会資料12ですかね。この議論において、居所指定がこの重要事項から外れましたというふうになっております。また改めて御覧になっていただければと思いますけれども、海外諸国がどうしているのかということでございます。以前、法務省が実施した24か国調査が配布されました。具体的には、こう書いてありました。「離婚後に子を監護する親が転居をする場合の制限の有無に関して、転居に裁判所の許可又は他の親の同意を要するという国が多い、イタリア、韓国、ドイツ、アメリカニューヨーク州、オランダ、転居制限のない国はオーストラリア、タイ、中国である」、このように報告がなされています。こういった転居に関して制限がある国々というのは、今でいう主たる監護者ですか、これを1名指定して、更に共同監護としているのではなかろうかと、こんなふうに感じているところです。同じ資料の詳細版がウェブに転がっていますので、それも確認いたしました。非常に共感した例が、その中に書いてあるカナダのブリティッシュコロンビア州の規律でございます。これは先ほど棚村先生がおっしゃった前の規定かもしれませんけれども、このブリティッシュコロンビア州の家族法は、ほかの監護者の同意がないが転居を希望する者が転居の許可を求める手続、三つ書いてあります、当該転居が公正なものであること、2点目、子とほかの監護者の間の関係を維持するための合理的で有効な提案を行ったこと、3、転居が子の最善の利益にかなうことを主張、このように書いてございました。最終的にこの転居をどちら側に入れていくのかという話はこれからの議論かと思いますが、やはり監護者が転居したい、転居するという場合において、今現在であれば1キロ圏内の距離に住んでいると、それが来月から500キロ離れた場所に移るという場合、当然、部会資料にも記載がありますが、やはり面会交流、今日の委員の先生方の発言では、監護に関する計画、ペアレンティング・プランなのでしょうね、そこに関して、やはり再度合意をする手続、協議が調わない場合は裁判所が決定すると、このようなことは入れる必要があるだろうと、そんなふうに思っています。   あと、個人的な見解として、1巡目で、これに関して転職や転勤をどうするのだというような御指摘があったと記憶しております。これもやはり同じだと思っておりまして、転職、転勤、そこは認めるべき事由ということになろうかと思います。代わりに、先ほど申し上げた親子のペアレンティング・プランに関して、当然お子さんの意向も確認した上で再度、取決めを実施するという方向がよいのではと、こんなふうに感じた次第でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員からは、基本的な考え方としては双方関与に賛成であるということで、その御意見との関係で、資料の中に出てくる記述が誤解を招くおそれがあるので、補足等をしてほしいという御要望を頂きました。これは先ほど沖野委員が御指摘になった、親権も監護権も持たないとしても親に残るものがあるということを明らかにする必要があるというお話と関わっているかと思います。そうした一般的な御意見のほかに、個別の問題については主として、要件が当事者の合意に依存しすぎているのではないかという御指摘と、転居の問題は非常に重要な問題であるという認識の下に、考え方としてはここに書かれているもの以外にもあり得るのではないか、さらに検討すべきではないかという御指摘を頂いたと理解いたしました。ありがとうございます。   ほかにはいかがでございましょうか。 ○原田委員 弁護士の原田です。今日の議論の進め方で、先ほど棚村委員からおっしゃったのですけれども、私は今まで共同関与とか共同親権とか、いろいろそういうものは、仮にそうするとしたらどうなるかというような話で来たものが、今何かそれが前提になった話になっているようで、少し違和感を感じております。   重要なのは、やはり子がどんなふうに育てられるかという意味で監護権が重要なのかなと思っていて、先ほど池田委員から御紹介があったように、婚姻中の監護者指定があった場合は、ほとんど法律上、財産管理とか、決まっているのは居所指定と職業許可と懲戒権と法律行為の同意とか取消しだと思うのですけれども、その中でも、例えば居所指定とか職業許可とかいうのは判例や実務上は監護親が持っているのが今の現状で、そうすると今回の整理は、居所指定権は監護者に移すとしても、その他については大幅に親権者に残す、あるいは監護者から親権者に移すという内容になっていて、これで、高葛藤の事例はもちろんですけれども、それを外すとしても、そうでない事案でも安定した監護とか子どもに対することを迅速、適切に判断して決めることができるのかなというのを非常に疑問に思っています。   例えば、学校の進学、高校進学とかいうことを考えてみても、これを通知としても、いつ通知するのか、新学校を目指すから塾に入るときか、三者面談のときか、願書を出すときか、子どもが複数いればそれぞれにやらなければいけないのか。ダブルワーク、トリプルワークをしているような方がいちいち通知してやらなければいけないのかというのは、非常に過酷だと思いました。結局は監護を受ける子どもの側から見て、親がどのように関わるのがよいかという視点で考える必要があると思うのですけれども、共同関与なり親権なりを決める必要性と有用性の観点から検討する必要があるのではないかと思いました。   親権という概念がどうしても親の権利という強権的なイメージがあることで、水野委員からも御教示いただいたように、親権と監護権を分離した歴史的経過を考えると、ここで親権を復活する、監護者を決めても親権者を残すというのは、やはりこの親権の家制度と結び付いたイメージがくっついて復活したように感じられて、離婚の際は監護者を定めるとすることと、そして、その子どもにとって、共同で考えるとすれば、個別にどういう、例えば財産管理権であったり医療の同意権であったりというふうに、監護者がどのように関与するかを個別的、具体的に決めることができるとする範囲で考えるのがいいのではないかと思いますし、合意だけでは当事者任せになるというお話がありましたけれども、こういう合意をする場合、条件を付ける場合には、やはり双方当事者の力関係から対等な議論ができないケースも多いので、裁判所の関与が必要だと、だから合意と裁判所の関与を求めるとするべきではないかと思います。   ただし、私は一番最初、何回目かのときに、ここで制度ができれば必要な制度も整うのかと問題提起してきました。先ほど大石委員から養育費の話が出ましたけれども、ここでは民法を変える議論の場だから、その付近の援助とか福祉的な措置とかいうところまでは及ばないというか、民法の制度を中心で考えるべきだというお話が何度か出ましたけれども、制度ができればその支える仕組みができるのかというところの疑問が強く残っています。   その一つとして、紛争解決のための家庭裁判所の基盤整備ですね、私は1回目から、諸外国は共同養育とか共同責任が原則といわれているけれども、その中で子どもたちがどんな生活をしているのかということと、それを支えるリソースはどうなっているのかということを調べていただきたいとお願いしました。最近、日弁連が出している弁護士白書の中で、諸外国と日本の法曹、つまり裁判官、検察官、弁護士の数を比較したものが出ていることに気づきまして、その中では、2019年の時点なのですけれども、裁判官1人当たりの人口が日本は4万5,581人。ドイツは3,992人。イギリスは1万9,687人、フランスは1万1,562人と、ものすごい差があるのです。しかも、ドイツの家庭裁判所の裁判官は基本的に転勤がなくて、同じ家庭の紛争は同じ裁判官が関与するので、紛争家庭の子どもが小さいときから成長するまで同じ裁判官が関わっているという制度だそうです。日本にはもちろん調査官制度があるので、単純には比較できないという御意見もあるかと思いますけれども、調査官の数は裁判官よりすごく少なくて、しかも本庁と大きな支部にしかいないので、今、支部とか出張所に申立てしたときに、調査官が来るという日を待つだけでも時間が掛かるというような状況です。そういう中で、令和4年度裁判員職員定員法が今国会で成立しましたけれども、内容としては判事補40人が減員となるそうです。ただ、今でも定員に満つるだけの判事補の採用ができていないので、定員を減らしても現状は変わりませんという答弁だったそうですけれども、こういう姿勢で今回議論しているような内容に家庭裁判所が耐えられるのかということも大きな疑問で、やはり何人かの委員が、この制度を変えるときにそれを支える仕組みについても報告書では言及すべきだとおっしゃいましたけれども、私もそれは強く思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。原田委員から幾つかの御指摘があったと思いますが、多少まとめさせていただきますと、一つ目は、池田委員の御指摘があったところに関わりますけれども、現状が変わるとすると、そのことについてどう考えるのかということを検討する必要があるということだったかと思います。それとの関係で二つ目は、一方で迅速性が求められるが、他方、合意だけではなく裁判所の関与が必要な場合があるということで、これは棚村委員もおっしゃっていたのですけれども、早さ、便利さということと、協議をしたり慎重に判断するということがトレードオフになるところがありますが、そうした点をどう考えるのかという御指摘だったかと思います。その際に必要性、有用性ということを原田委員はおっしゃっていて、その観点から整理していくべきだといった御主張だったかと思いました。3番目に、親権という言葉が塊としてあるということに対しての違和感を表明されていて、これは先ほどの落合委員も同旨だったのかと思います。4番目は、皆さんがおっしゃっていることですが、環境整備ということについて、民法や手続法の改正の中でそれを行うことはできないとしても、ここでの提案との関係でどのような環境整備が望まれるかということは議論をして、ある程度示していくことが必要なのではないかということであったと承りました。 ○井上委員 ありがとうございます。連合の井上です。22ページなのですけれども、重要決定事項、日常的決定事項、随時決定事項と、この3分類の表について記載があります。これについては、私はこれでよいのではないかと思っています。その上で、事務当局に質問です。この下に記載があります(注6)の規律の性格で、@の緩やかな規律若しくはAの中間的な規律を採用し、主たる決定責任者が場合によっては一存で決定できるようにした場合、事後に通知を受けた他方の親がそれに納得できない場合、更に何か司法の判断を仰ぐような機会が設けられるのかどうか、あるいは@、Aの場合、主たる決定責任者の決定を覆し得る方策を他方の親は有しない想定なのかどうか、それについて教えていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。22ページの分類の仕方について、基本的によいのではないかということを前提にしつつ、(注6)について御質問いただいたかと思います。事務局の方で何かあれば。 ○北村幹事 その辺りについても含めて御意見いただきたいとは思っています。緩やかな規律、中間的な規律ということで部会資料6で、事後的な通知で足りるということであれば、それに不満があったとしても、取りあえずまず、その時点では終わる、その後はどういう規律にするのか、というのを今回、29ページ以降になりますけれども、その辺りも含めて御意見いただければという資料になってございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○水野委員 水野でございます。ありがとうございます。もう離婚後共同親権という前提で話が進んでいるようでございますけれども、先ほどの原田委員の言われた危惧を私も共有しております。離婚後共同親権が将来的には在るべき姿だということは、私も非常に早くからそう書いていた方だと思います。ただ、現時点でとなりますと、私はまだ踏み切れないという立場です。その判断を「法学教室」にも書いてしまったばかりですので、その観点から危惧をお話ししたいと思います。   やはり日本の協議離婚制度がどれだけ西欧諸国と異質な制度であるのかということを前提にお考えいただかなくてはならなくて、先ほどから諸外国の制度の御紹介もありますけれども、諸外国は協議離婚制度を持っておりません。基本的に全て裁判離婚です。これも厳密なことを言いますと、フランスは2017年から少しだけ外して公証人離婚を認めていますけれども、でも、このような共同親権の比較法として参考に挙げられるような国々は全て裁判離婚です。そして、裁判官が親権の行使の方法などについても、きちんと関与して判断いたします。それからDV対策についても、西欧法は日本法より遙かに機敏に強力な対策をとります。これまでの御意見でも、DVケースは特別扱いをすることは委員の皆様は留保しておられますけれども、どういうふうに特別扱いを確保するかについての具体的提案と同時でないと、共同親権は危ないものになってしまうように思います。   武田委員が当事者に任せすぎるとおっしゃり、私もその当事者任せすぎるという点では同意いたします。ただ、協議離婚の世界で当事者任せになっていることが現状ではどういうふうに機能しているのか、その具体的認識を共有して議論する必要があると思います。例えば、当事者はもうむき出しの力関係の中におりますので、精神的暴力の影響もあるでしょうし、DV被害者がどうしても離婚したいとなりますと、交渉力を失います。もらえるはずの離婚給付も主張せず、自分が実際に育てていられれば、加害者の側に形式的に親権を譲ることさえして、ともかくただ離婚してください、平和に暮らしたいのでと譲ってしまいます。実際にはそんな交渉にすらならず、被害者が事態を打開しようと思うと、恐怖の中で逃げる自由しかない、そういう世界になっているわけです。その前提の上でこのような規範を置いたときに、社会的にどういう副作用が起きるのかということについて、私はやはり強い不安を覚えます。もちろん、DV被害者を支える仕組みの構築と、こういう民法自体の改正というのは車の両輪で、両方とも必要なことなのですけれども、支える仕組みのことを議論せずにここで民法に共同親権を入れることが、実際にその支える仕組みがない我々の社会にとってどのような機能を持つかということについて、私はやはり非常に危惧を覚えております。   養育費に関しましては、これはお金の問題ですので、支える仕組みを比較的構築しやすいと思います。今の日本は、先ほど原田委員がおっしゃったように、圧倒的に裁判官が足りない、言わば法治国家としての資本インフラが貧弱な国ですけれども、行政的な力を借りれば、養育費支払いを支える仕組みは、制度設計として可能だろうと思いますし、せめてそれだけはこの法制審議会の機会に実現したいと思っております。一方、支える仕組みがとても不十分な、子どもやDV被害者の特に身体的な安全性という、この問題について支える仕組みがないときに自動的に共同親権としてしまうことの副作用については、私はいまだに吹っ切れずにおります。一応そういう危惧を持っている委員がここにいたということも発言をしておくべきだと思いましたので、申し上げました。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。水野委員からは、現在の日本の協議離婚制度を考えると、ここで提案されているようなことは危険なのではないか、DV対策は具体的なものを提案しないと十分とはいえないという御指摘があったと思います。その上で、自動的に共同親権になるのには反対だとおっしゃったかと思いますけれども、自動的に共同親権になるという制度が提案されているわけではないと思いますが、いかがしょうか。 ○水野委員 はい、言葉が足りずに申し訳ありません。それは承知しておりますが、きっと両親の意見が対立すれば共同親権ということになりかねず、その意見が対立すれば共同親権ということから、共同親権が事実上デフォルトになっていく方向に流れるだろうと思っております。そのデフォルトの方向に流れることを封じるだけの、当事者を支える仕組みが今の日本にあるのだろうか、というのが私の危惧でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。共同親権という言葉を使いますけれども、意見が対立するときに共同親権がデフォルトになることは避けるべきだという御意見であると承りました。 ○赤石委員 赤石でございます。よろしくお願いします。この第2のところは、私も非常に進むことには違和感がございます。法務省は、この民法の改正についてはエビデンスを設けてやるのだということで、いろいろな調査をしてきたかと思います。その中で、例えば、未成年時に親の別居、離婚を経験した子に対する調査というのが最初の頃に頂いたかと思うのですけれども、どのくらいの頻度で別居親と会いたかったかというようなことがありましたけれども、やはり結構、全く会いたくなかった方が20%、余り会いたいと思わなかったが12.1%、あるいはさらに、気が向いたときに会えればいいと思ったが17.9%、これで半分になります。それから、どういうふうに決めてほしかったかというところもあり、同居親が決めているのでよかったというような方が多くて、そうはいっても半数近くの方が今の法律でも何らかの形では交流をしていたわけです。なので、それを変えるだけのエビデンスというのがあるのかなというのがよく分からないのが現状です。もう少し、そこのエビデンスは何なのか、あるいは加除出版からのあれでも、親との関わりによってかえって成長に余りよくない影響があったというようなデータも出てきたかと思います。だから、ここで親の双方が関与することがどういいのかということがもう少し議論されるべきであって、何か法律的に出てくるというのは私には非常に違和感がございます。   さらに、この親権という中身が一応、仮にということでいろいろ出てきているのですけれども、例えば財産に関してのこと、あるいは教育権、あるいはというふうに書いてあるのですけれども、この一つ一つが非常に大きなテーマでございます。ですので、教育に関して、入学、進学、28ページにその細目があると聞いたのですけれども、教育に関しては進学、転校、退学、就労先に関する選択となっていますけれども、進学一つを取っても今の現代社会はものすごく多様な選択肢があります。しかも、公立の小学校、中学校に行くというのがオーソドックスなものでなくて、だんだん中高一貫校に行くですとか私立に行く選択肢とかが広がってきているときに、その前にどんな塾に行くのかとか、部活に行くのかとか、サッカーの強豪校に行かせたい、非常にたくさんの選択肢があるのです。そういうところから影響してしまうときに、教育というのをどの時点で切るのかというのがよく分からず、ここについてももっと大きな議論がされないと、お前が決めたのに俺は同意しないぞ、みたいな話になってしまうとすごく怖いなという、結局は双方が関与するということは拒否権を持つということなのかなと思いますので、とても熱心な親御さんというのはやはり教育には熱心なので、そこがうまく機能すればいいのですけれども、うまく機能しない場合も出てきてしまうのかなと思ったりしております。高校になればもっと選択肢は増えてきます。不登校の子どもにとってはいろいろな選択肢もありますし、それほど皆が行くわけではないので、そのときに一体何を決めるのかということがとても分からない感じがいたしました。ですので、この教育分野に関してだけでもきちんと一回まとまって議論をした方がいいと思います。   思い起こしていただきたいのですが、最初の2回目ですか、ヒアリングのときに、Bさんとおっしゃったのかな、DVを振るっていて別れざるを得なかったお父さんが、娘さんの高校に退学するとずっと言い続けて、その私立高校も非常に困惑して、それは、娘をそんな私立に行かせるというのはぜいたくだというお父さんの判断というか、嫌がらせに近かったのだと思うのですけれども、そのときに、離婚していたから、つまり親権者はお母さんだけにあったので、何とか娘さんの退学ということは防げたというような話があったのを覚えていらっしゃるでしょうか。そういうふうに、いろいろなところでたくさんの方が関わるのはいいことだと無前提にいえるのかどうか、あるときにはやはり一方だけが選択をする、一方の方に選択の権利がある方が子どもの安定につながるときがあるということは、やはり言わざるを得ないかと思います。   また、何度も言っていて、私もすごくあれなのですけれども、就学支援新制度ですとか大学教育の無償化といったときに、両方の親が関わっていますとなったときに、一体その世帯の所得ってどう見るのかとかそういったときに、何かその社会保障の制度の範ちゅう外になってしまう方が出てきてしまったりするのではないかという危惧もございます。この全体の書きぶりが、やはり双方が関与すると子どもにとっていいことだよねと、そういう前提で書かれているのが、実際の場面でどうなるのかというのをきちんと見ないと、とても合意できないと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員からは慎重論ないし反対論を頂きました。現状を変える必要があるのか、有用性という話が先ほど出ましたけれども、そうしたことを考える必要があるのではないかという御意見だったかと思います。それから、具体的な問題については、決定事項の画し方、どの範囲のことを決定事項とするのか、教育といっただけでは決まらないだろうといった御指摘をいただいたかと思います。そして、決め方について拒否権が生じては困るということだったかと思いますが、先ほどの選択肢の中には拒否権として働くタイプのものもありますし、そうでないタイプのものもあるということで、その辺りは皆さんに御意見を頂くということかと思います。それから非常に重要な社会保障との関係というお話がありまして、これは民法がどう変わったかということによって誤った理解が関係官庁や現場に及ぶことがないような工夫、広報というのが必要だろうと思って、伺っておりました。ありがとうございます。 ○大石委員 千葉大学の大石です。ありがとうございます。今、赤石委員からエビデンスというお話が出たときに思い出したのですけれども、法務省のホームページには富山大学の方で取りまとめた「父母の離婚後の子の養育の在り方に関する心理学及び社会学分野等の先行研究に関する調査研究報告書」が掲載されており、入手可能です。この報告書は各種の先行研究を心理学及び社会学の専門家方が取りまとめたものなのですが、離婚後の親とのかかわりについては、なかなか一致した統計的エビデンスに達していないということが結論かなというふうに読んでおりました。そういう意味でも、現段階で養育の在り方について何かを打ち出すというのは多少危険を感じます。この報告書や、他の研究成果を読む限りでは、やはり慎重論をとるべきであるというのが私のスタンスです。   それからもう一つは、法曹人口のキャパが非常に少ないという話との関連した意見です。子の最善の利益を実現するために必要な運営コストの財源確保などについても、この部会のなかで訴えないことには、おそらく、法務省は財源を確保できないのではないかとかと思います。子ども家庭庁ができるこの機会に、子ども政策の一つとして法曹インフラ整備のためにこれだけの財源が必要なのだと言う根拠を与えることも、有識者会議としてのこの部会の役割であると思います。ですので、それに関連するデータですとか資料なども、事務局様からおいおい御準備いただけるとよいのではないかと思った次第です。 ○大村部会長 ありがとうございました。大石委員からも慎重論の方向での御発言がありましたが、前提となるデータとしてどういうものがあるか、先ほど赤石委員が多少触れられたようなものもありますけれども、それをどのように受け止めるのかといった問題もあるのだろうと思います。それから、財源確保について少しこちらから考え方を打ち出すべきではないかという御指摘も頂きました。 ○柿本委員 柿本でございます。まず、22ページの重要決定事項などについてでございます、子どもにとって何が最善の利益なのかということの視点から考えていくことが非常に重要と思われます。そして、それを導き出すときに、社会的なリソースというところでは、臨床心理士、児童精神科医などの子どもに関わる専門家の方たちの力を頂くことが重要だと思います。これは裁判官の方の人数ですとか家庭裁判所のシステムですとかなどについても充実する必要があるのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。重要決定事項というものについて子どもの視点から捉えていくことが必要ではないかという御指摘と、子どもの視点ということと関わるけれども、子どもの心理に関わる専門家というものについて意見を聴くとともに、それをどうやって充実させていくかという問題があるのではないかという御指摘を頂きました。   この問題につきましても賛否両論を頂いておりますけれども、更に御発言がありますでしょうか。 ○久保野幹事 ありがとうございます。幹事の久保野でございます。23ページにあります要件に関して、父母の合意というものと裁判所での定め、又は第三者が確認するといったことに関して意見を述べさせていただきます。   以前にも同様の趣旨の発言をしたことがあるかもしれませんけれども、子どもへの親権や監護の在り方について父母が合意して定めることができるというのが当然というわけではないということは、よく考えるべきだと思います。ここでも何度も話題になっていますように、親権ですとか親の地位、監護といったものは、子どもの人格や財産について関わっていくということであって、考え方によっては、権限だとしても責務を託されている立場であるといったような見方もあるようなものだということを考えますと、合意ということに任せるというのは慎重であっていいのではないかと思います。   離婚というのは、恐らく高葛藤でなくとも父母にとって、その親密な関係を解消する場面ですので、ある種の危機かと思いますし、子どもにとってもそのような場面で第三者が関わってくれるという制度設計になっているということが持つ意味は大きいのではないかと思います。他面で、父母が合意していることについて裁判所が判断できるのかどうかですとか、第三者が確認するといっても限界があるではないかといったような懸念も表明されていますけれども、子どもの利益を積極的に確保するための決定を評価したりすること自体は難しいかもしれませんが、子どもの利益に明らかに反するですとか、著しく子どもの利益を害するといったようなルールの作り方というのは民法の中に既にありますし、そのような可能性も含めて、第三者や裁判所の関与というものを積極的に考えていくべきだと思います。   それで、資料で説明されていることで申しますと、より具体的には、26ページから27ページの(注3)のところで、この協議離婚の事項というのは資料12で協議離婚に誰が関わるかという議論があった論点と深く関わると注記がありまして、ここの最後の方に子どもの利益に反しないという確認などの可能性も含めて検討すると書かれていることに賛成いたします。   もう1点だけ、関連しまして、24ページの(注2)のところで、裁判離婚の際の父母の合意を要件とするかというところの問いがございますけれども、これは、裁判所が子どもの利益のために必要があると認めるかという中で考慮する重要な事項の一つということにとどめ、要件としないということも十分考えられるのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。久保野幹事からは、23ページの1の規律について具体的な御意見を頂きました。合意だけで認められると考えるべきではないというのが基本的な御主張かと思いますが、合意のコントロールについて、積極的に何がよいかというのではなくて、何が悪いのかという形で判断するということもあり得るであろう、そうした考え方がいいのではないかといった御指摘を頂いたかと思います。あわせて、24ページの(注2)の問題についても御意見があったと受け止めました。 ○佐野幹事 簡単に申し上げます。まず、全体的な方向性としては、個人的には、選択したい人たちが選択できないというのはどうなのかと考えますので、選択肢として両親が親権を持つという方向性はありなのではないかと思っております。   その上で、23ページの要件、双方の合意が協議離婚の方にはかかっておりますけれども、やはり離婚後も双方が協力できるということが前提になるので、双方の合意というのは必須ではないかと思っております。また、裁判上の離婚のときも、子の利益につき、裁判官によって考え方が違うことになる懸念が残りますので、ここも父母が合意をしていることが前提になってくるべきではないかと思っております。   さらに、29ページの双方関与の態様ですが、ここは確認したいところなのですが、「監護者が指定された場合」、これは審判、調停で指定されたという前提でよろしいのでしょうか。といいますのは、事実上どちらかが子を監護しているという状態を含まないとすると、審判で監護者が争われる場合ということになりますが、その場合、通常、高葛藤になるものですから、むしろ1番は一番葛藤が少ない状態で、3番が共同行使につき双方合意を前提とすると、2番目が一番葛藤が高い状態になるかと思います。そうであれば、2では両方で協議をするということは現実的ではないとなるので、案Bが現実的ということになってくると考えます。   その上で、どのように関与するかということなのですが、その関与をどう考えるか、その意味というところを考えると、例えば、決定をしようとしたときに意見を言える、意向を伝えられるという意味で捉えると、事前の通知で足り、協議は不要も選択肢として考えうる。というのも、「協議」というのはかなり曖昧な文言で、どこまでやれば協議をしたといえるのかといった疑義・葛藤も生じうるので、協議を入れずに、事前に通知をすればいいという選択肢もあり得るのではないかと思います。ただ、通知をするにしても、その所在が知れなくなっているといった場合もあるかと思いますので、なにをもって十分といえるのかという点は何らかの形で明確にしておく必要はあるかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。佐野幹事からは、選択できる人が選択できるという考え方がベースではないかという基本的な考え方をお示しいただいた上で、23ページのような制度設計に当たっては、やはり合意が前提になるだろうという御意見を頂きました。29ページについては、先ほどの質問にお答えいただく必要ありますか。 ○佐野幹事 審判、調停という前提でいいということでよろしいでしょうかね。 ○大村部会長 その前提で、どの案がいいかということについて御意見の御披露があったと受け止めさせていただきました。   ほかに発言はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、先ほど申し上げましたけれども、これも両論分かれているところですので、双方の御意見を参酌した上で、更に検討するということにさせていただきたいと思います。   残り時間は少ないのですけれども、せっかく資料を用意していただきましたので、資料14には第1と第2がありますが、「第1 養子制度に関する規律」というところの説明だけ頂いて、それで次回に御意見を頂戴するということにしたいと思います。では、説明だけ簡単にお願いします。 ○北村幹事 それでは、事務局から簡単に御説明いたします。「第1 養子制度に関する規律」ということで、まず1は未成年養子縁組の成立要件、未成年の子を養子にする場合の成立要件ということで、まず(1)は家庭裁判所の許可の要否ということで、現行制度よりも家庭裁判所の許可を広げるべきなのかどうか、あるいは現行法のとおりとするのかについて案を並べさせていただきました。少し御意見をいただきたいということになります。この辺りも一読で様々な御意見があったところですので、その一読の御議論をまとめさせていただいておりますので、それを踏まえての御議論を頂ければと思います。   (2)につきましては、その際、家庭裁判所の許可に係る考慮要素及び許可基準について、具体的な規律を設けるべきかどうかということについての御意見をいただきたい、(3)夫婦共同縁組について、配偶者の未成年子を養子とする場合に、当該配偶者の嫡出であるかどうかについて現行法、違いがございますけれども、この辺りを改正するかどうかについて、改めての御意見をいただきたいということになります。   (4)と(5)につきましてですけれども、一読においてはやや、養子となる子について意見を聴くということについての御意見、その年齢についての御意見を頂いてございましたけれども、窪田委員よりも御指摘がございました、養子の場合、代諾縁組ということで法定代理人が縁組の承諾をできる年齢というものが現在15歳と定められております。その年齢と、意見を聴く年齢、家事事件手続法における必要的聴取の年齢も15歳になっておりますけれども、そこはやや混同して御議論いただいたような形でしたので、少し分けさせていただいて個別に検討いただきたいということで、(4)と(5)を分けさせていただいております。   また、(6)につきましては今度、養親になろうとする者による養子の意見又は心情の確認をすべきかどうかについての御意見をいただきたい、そして、(7)については、未成年を養子とする場合のその父母の関与の在り方について、一読においても様々御意見があったところですけれども、その点について改めて御議論いただきたいということになります。   10ページ以降、未成年養子縁組の効果ということで、親権の在り方について一読においても様々御議論いただいたところですけれども、親権者に関する規律、具体的に、下に補足説明に挙げておる現行法の程度しか記載がございませんけれども、その辺りも含めて、11ページ以降、様々な場合があり得ますが、それらについて親権をどのように規律するのか、あるいは、そこを十分規律するのかしないのかも含めての御意見を伺いたい、そして、扶養義務に関しても、養親と実親がいる場合の扶養義務の在り方についても現行法、明確な規律がないところでございます、この辺りの考え方を改めて整理をしたいというものでございます。   15ページ以降、3番は未成年養子縁組の離縁についてということで、離縁の際に家庭裁判所の許可を要するか否かについて御検討いただきたいというものになります。   なお、16ページのところ、3、特別養子縁組の利用について、一読においても御議論、御指摘いただいたところではございます。令和2年4月1日に特別養子縁組の改正について施行されたばかりであるところから、現時点においては特別な規定は提案はさせていただいておりません。この辺りは一読においても御議論いただいたところでありますので、また改めての御意見があろうかと思いますので、挙げさせていただいております。   簡単ではございますけれども、以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。一応、今の御説明を頂いたということで、次回この点について議論をし、第2の財産分与に関する規律の在り方というところに進みたいと思っております。   赤石委員、御発言あればどうぞ。 ○赤石委員 ありがとうございます。先ほど、親権というか、の双方関与についての多様な議論が出ました。また、その親権の中身についても幾つか、居所指定権についてはほとんど議論はなかった、武田委員からありましたけれども、まだまだ議論すべき点があるかと思います。資料14に進まれるということなのですけれども、資料13の残っている論点も是非議論していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○大村部会長 13について、更に御意見があるという御趣旨でしょうか。 ○赤石委員 はい。ここが一番この審議会の中でも大きな論点でございますので、やはり慎重に議論していくべきかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。今、二読ということで検討しております。資料14が終わると、その後、二読を踏まえて中間試案に向けての御議論を頂くということになろうかと思います。今、赤石委員がおっしゃった点は、その中で御意見を頂くという形で受け止めさせていただければと思います。これまでに扱ってきた論点の幾つかについて、なお意見を言い足りないという方は他にもいらっしゃると思いますので、それらも含めて、中間試案の取りまとめの際に改めて御意見を頂く、そのことを留保した上で先に進ませていただくということにさせていただければと思いますが、赤石委員、それでいかがでしょうか。 ○赤石委員 私としては、やはり少し今の議論だけでは足りなかったと思っておりますので、少し何か拙速な感じがいたします。エビデンスについても、もっと法務省の方で御説明があってしかるべきと思っております。ですので、進め方については若干、少し速度を早めることは非常に危惧を持っております。 ○大村部会長 御懸念はよく分かります。問題はどこで何を議論するかということかと思います。今ここで資料13について一通り御意見を頂いてきました。資料14に進む、あるいは中間試案に向けての取りまとめに入るにあたって、まだ議論が足らないところがあるという御意見は、先ほども申し上げたように、ほかの論点についてもあろうかと思います。それらについてもやはり議論をしていく必要があると思いますけれども、それを次回の後からの回の中で、中間試案に向けての取りまとめという形でさせていただくということでどうかという御提案をしております。拙速についての懸念というのは確かにおありかと思います。今回の議論は非常に論点が多くて、これまでに十分に議論ができていないところも少なくないと思います。棚村委員からこの先少しコンパクトに議論を進めていく必要があるのではないかという御指摘が出たのも、その点に関わっているかと思います。御懸念については事務当局も含めて受け止めさせていただいたということで、この後の段階、しかし中間試案よりも前の段階で更に御意見を頂くということにさせていただくというわけにはいかないでしょうか、赤石委員、いかがでしょう。 ○赤石委員 私としては理解しかねますけれども、それは皆さん、よろしいのでしょうか。今の議論はかなり賛否両論で、しかも多様な議論があったかと思います。 ○棚村委員 ここでこれまで取り上げたのは、例えば養育費、面会交流、それから双方関与の在り方もあったのですけれども、やはり未成年養子の問題とか、それから財産分与ということも大切でして、家族法制についてはかなり広い形でお子さんに関わるものを議論してきたと思うのです。もちろん重要な問題について検討するためにはいくら時間があっても足りませんし、いろいろと子の養育の在り方そのもの、とくに親権・監護については議論しなければいけないこともたくさんあるというのは私も十分理解できます。ただ、私は、今まで法制審とか法改正に関わった経験から、事務当局のほうでも、一読、二読、中間試案に向けた取りまとめ、パブコメなどを踏まえたさらなる審議、三読などを経て要綱案の取りまとめに向けた審議検討という全体的な流れの中で、議論が進められております。しかも、この家族法制部会では、委員・幹事のみなさんに法律以外の様々な分野の方々にお入りいただき、法律の専門家だけの議論でなく、さまざまな立場からの検討がなされていると思います。それから、当初から有識者のヒアリングとか、実態調査とか、それから支援の強化とか、これまでの法制審議会の部会と比べましても、丁寧かつ慎重に進められているという感じをもっております。もちろん、国民の関心も高く重要な論点が盛りだくさんでもあり、限られた時間ながらもいろいろと努力しながら工夫して進められて、今日の議論も、言い足りない方はいらっしゃるかもしれませんが、大切なことはおっしゃられる機会を決して失していなかったのではないかと思っています。   ですから部会長の次回の進め方についての提案について賛成したいと思います。私だけでなく、お子さんのために皆さん何とかしよう、当事者のために何とかしようという気持ちは一緒だと思います。ただ、考えられているところとか、見ている視点が随分違ったり、意見の対立も、見方の対立も当然におありだと思うので、私は先ほど発言したのは、事務局もせっかく事前に用意されて、それなりに進行のことも配慮しながら、慎重かつ丁寧な審議のため、事前説明もされているところです。しかも、できるだけ早く取りまとめを急いで、最終的な結論が見えて、何か一定の方向でもうここに決まったということであれば、拙速だとして、今のように少しブレーキを掛けて考えるということも十分に理解できます。しかしながら、未だに、結論が出たとか、どういう方向で具体的にどういうルール化をするかというのが決まっているわけではないと私は理解しております。したがって、まだ具体的にどういうルールにしていくかということについての御意見を言う十分な機会はあるのではないかと思いますので、提案されているように、未成年養子や財産分与について進めていただきたいと考えます。子の養育の問題で、未成年養子の改正や議論が必要でないかというと、私は特別養子制度の部会でもいろいろ議論をさせていただいて、かなり重要な論点とか問題が残されていますので、その辺りの議論や検討は是非進めていただいて、改正すべきかどうかあたりの議論は是非していただきたいと思います。お子さんの人生・生活・教育などでも、正に婚姻費用とか財産分与も非常に重要な問題だと思います。ですから、先にこれまでのように残りの部分の議論を進めていただいて、それで中間試案というのが気になるのであれば、中間試案の取りまとめの段階で、こういうものは入れるべきでないとか、こういうものは少し拙速であるということを是非発言していただいて、私たちも是非その段階でそれを審議させてもらって参考にさせていただければ幸いです。もし、この段階で、おっしゃるように何か方向が決まっているのであれば、今の御意見のような形で進行ストップとか、継続審議ということも理解できなくはないですが、部会長の御提案のように今まで進めてきたとおりの進め方でやっていただきたいというのが私の考えているところです。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○窪田委員 私も同じ趣旨だったのですけれども、基本的に中間試案というと何か一つ結論を出すというイメージなのかもしれませんが、そうではなくて、ある程度議論の対立状態があるということも含めて、どういうふうな点でどういうふうな観点から対立しているのかというのを整理した上で、パブリック・コメントに付してということで、またそれを踏まえた上で後半の審議が予定されているのだと思います。したがって、今日の議論の対立があったというのはもう私も伺っていて、それはよく分かるのですが、対立があったからそれを決着しないと先に進まないという形ではなく進めていくということでお願いできればいいのではないかと思っております。部会長から今後の進め方についてお話があったのも、そういうことなのかなと思っておりました。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○原田委員 今後の進め方については、私も皆さんがおっしゃったようなことでいいと思うのですが、実は、先ほど水野委員からもありましたように、DVについて特別扱いをするといわれながら、どんなふうに特別扱いするのかという具体的な議論がないので、今まで出た範囲で、この場合はDVがある場合、例えば離婚届に協議できないことをチェックするとかいうような御提案が少し補足説明でありましたけれども、どんなふうな特別扱いをしたらいいのかという点についての、今まで出た意見のまとめなり御提案なりを頂きたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。今の原田委員の御発言は、この先議論するに当たって、DVの点についてこれまでに出たものをまとめていただきたいという御要望として受け止めさせていただきます。   何人かの委員から御発言を頂きましたけれども、次回は、残る資料14を終えたいと思っておりますが、中間試案の取りまとめに向けて御議論を頂く中で、タイムリミットはございますけれども、できるだけ時間を設けて積み残しになっている問題についての御意見を賜りたいということが一つ。それからもう一つは、これは窪田委員から御指摘がありましたし、棚村委員もおっしゃっていたかもしれませんが、中間試案で何か一つの案を出すということでは必ずしもないので、議論の状況に応じて複数の案を併記してパブリック・コメントに付した上で、それを参酌して、更に、その次の段階、つまり三読の際に御議論を頂くということになりますので、まだ議論の機会はあるとお考えいただければと思います。   今回複数の委員から、括弧付きの共同親権の方向に舵を切っているのではないかといった御懸念も示されました。他方、その方向で進むべきだという御意見もあったわけですけれども、そのことについては、今日の段階では、意見が対立しているということを確認させていただきましたので、それを前提にこの先の議論を進めることになると受け止めていただければと思います。赤石委員、皆さんの御意見も踏まえて、今のような進め方をさせていただくということで御了解いただければと思いますが、よろしいでしょうか。 ○赤石委員 私は了解はしませんけれども、皆さんがそれで進めたいということだったら仕方ないと思っております。一つ一つの親権の中身についての議論が非常に粗いと思っておりますので、是非どこかで教育についても居所指定についてもきちんとやるべきであると思っておりますので、お願いしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。少し時間過ぎているのですけれども、一言だけ今の御発言を受けて申し上げさせていただきますが、大変御理解のある発言を頂いたと受け止めました。 ○赤石委員 理解があるわけではございません。 ○大村部会長 私の申し上げることを聞いていただきたいのですけれども、この先、議論をしていく中で、それぞれの問題につき、皆さんの中にはそれには個人的に反対だという方が必ず残るだろうと思います。非常に意見の対立のある問題を含んでいますので、自分はそうならざるをえないと思います。そうした場面で、無理に賛成してくださいと申し上げているわけではありません。部会では皆さんの様々な意見を集約して、一定の案を提案することを目指していますので、最後は、賛成はできないがあえて反対まではしないというスタンスに立っていただいて、皆さんの合意を調達したいと思っております。赤石委員も、賛成ではないけれども受け入れるということをおっしゃってくださったかと思いますが、これは大変有りがたいことだと思っています。ほかの方々にもそのような形で議論のとりまとめに御協力を頂ければと思います。私の差配が十分でなくて、時間を超過しておりますが、そのようなことで進めさせていただきたいと思います。     それでは、少し時間を過ぎましたけれども、法制審議会家族法制部会の第14回会議をこれで閉会させていただきます。本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。閉会をいたします。 −了− - 49 -