法制審議会 商法(船荷証券等関係)部会 第2回会議 議事録 第1 日 時  令和4年6月15日(水)自 午後1時30分                     至 午後4時55分 第2 場 所  法務省地下1階 大会議室 第3 議 題  船荷証券に関する規定等の見直しに関する論点の検討(1) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○藤田部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会の第2回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただき誠にありがとうございます。   本日は箱井委員、衣斐幹事は御欠席と伺っております。また、上田委員、洲崎委員、金子委員、堂薗委員、池本幹事、内野幹事、松井幹事はウェブで参加されると伺っております。   まず、前回に引き続き本日はウェブ会議の方法を併用して議事を進めたいと思いますので、ウェブ会議に関する注意事項を事務当局に説明してもらいます。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。前回の部会と同様のお願いになりますが、念のため改めて御案内をさせていただければと存じます。まず、ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては、御発言される場合を除きマイク機能をオフにしていただきますよう御協力お願い申し上げます。御質問がある場合や、審議において御発言をされる場合には、画面に表示されている手を挙げる機能をお使いいただければと存じます。なお、会議室での御参加、ウェブ会議での御参加に限らず、御発言の際にはお名前をおっしゃっていただいてから御発言いただきますようお願い申し上げます。ウェブ会議の方法で御出席されている方にとりましてはこちらの会議室の様子が伝わりにくいということもございますので、会議室にお集まりの方々には御留意をいただければと存じます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   次に、本日の審議に入ります前に、配布資料の説明をしていただきたく思います。事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。配布資料について御説明させていただきます。まず、部会資料2「船荷証券に関する規定等の見直しに関する論点の検討(1)」、それから、参考資料2-1「論点の全体像」がございます。これらはいずれも事務当局において作成したものでございますので、後ほどの審議の中で事務当局の方から内容について御説明させていただきます。   また、参考資料2-2「イギリス法における電子船荷証券に係る論点とLaw Comissionの立場」がございます。こちらにつきましては、日本大学法学部教授であられる南先生におまとめいただいたものでございますが、民事局調査員でもあられる南先生におかれましては関係官としてこの部会に御参加いただいているということもあり、本日の資料として御提供を頂きました。内容につきましては、後ほど南先生から御説明をいただく予定でございます。   配布資料の説明は以上でございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。本日は主に、船荷証券に関する規定の見直しに関する論点の全体像を確認した上で、法改正の必要性、法改正による電子化の可否、電子化された船荷証券を物、有価証券、船荷証券とすることの可否、海外法制の最新動向などについて検討したいと思います。   それでは、事務当局において、まずは部会資料2の第1から第3までの説明をお願いいたします。 ○中村関係官 それでは、法務省の中村の方から今回の部会資料の第1から第3について説明をさせていただきます。   まず、部会資料の第1につきましては、本部会で検討することが考えられる論点の全体像についてです。前回の会議において出席委員からも御発言がありましたとおり、船荷証券の電子化を実現する法改正を検討するに当たっては、検討すべき論点が非常に多く、また、それらの論点の一部が相互に密接に関連していることもございますため、まずは論点相互の関係性を含む論点の全体像について整理を行った上で、その後に各論点について検討を始めることが有益であると考えております。もちろん今後、審議を続ける中で新たに明らかとなってくる論点等もあるかと存じますので、現時点で検討事項を確定させる意図まではございませんが、現時点で明らかとなっている主要な論点及びそれらの関係性について、我々の方で簡易的に整理させていただいたものが今回お配りいたしました参考資料2-1となります。   本日は、この参考資料2-1を一つのたたき台として、論点の全体像及び今後の審議の進め方について議論をいただければと考えております。論点の全体像につきましては、今回の部会資料の第1の補足説明1及び参考資料2-1に記載のとおりでございますが、口頭でも簡単に御説明させていただきます。   船荷証券に関する規定等の見直しを検討するに当たっては、まず、そもそもどのような点に法改正の必要性があるのかという点を改めて確認、整理する必要があるかと考えています。こちらは本日の部会資料の第2として取り上げる内容となります。その上で、法改正の必要性があると認められる場合には、次に、我が国が批准している条約等との関係で、船荷証券の電子化を実現する法改正をすることが制限を受けないかといった点を確認する必要が出てくることになります。こちらは本日の部会の第3として取り上げる内容となります。   さらに、船荷証券の電子化を実現する法改正をすることができると考えられる場合には、法改正の内容を具体的に検討する際の最初の論点として、電子化された船荷証券、つまり船荷証券に記載される情報と同等の情報を記録した電磁的記録について、有価証券である船荷証券そのものとすることができるのかといった点を検討することになるかと考えられます。こちらは本日の部会資料の第4として取り上げる内容となります。   なお、電子化された船荷証券について、法律上の呼称をどうするかといった点についても本部会での検討事項の一つとなりますが、この呼称が決まるまでの間、便宜的に電磁的船荷証券記録という呼び方をしたいと思います。そして、電磁的船荷証券記録について、有価証券である船荷証券そのものとすることが難しいと考える場合には、船荷証券の発行の方法として単に電磁的方法を認めるということだけでは足りず、電磁的船荷証券記録についての規律を別途設けることが必要になるという帰結になると考えられ、その場合には派生的に多くの論点が出てくることとなります。   まず、電磁的船荷証券記録についての規律の在り方に係る基本的な考え方といたしましては、UNCITRALのMLETRのように、既存の船荷証券の規定を前提として、それと同様の規定を設けようとする考え方もございますし、他方で手形と電子記録債権法との関係のように、新たに別個の法制度を創設しようとする考え方もあり得るところかと存じます。   また、それと派生して、参考資料2-1の中で①から⑧のナンバリングを付けているところでございまして、まず①として、電磁的船荷証券記録を発行する場面の規律の内容、②として、その技術的要件に関する規律の内容、③として、電磁的船荷証券記録と紙の船荷証券の転換に関する規律の内容、④として、民法の有価証券に係る類型との関係で電磁的船荷証券記録の類型をどのように考えるか、⑤として、電磁的船荷証券記録に関する権利を譲渡する場面の規律の内容、⑥として、効力に関する規律の内容などを検討する必要が出てくるかと考えられます。また、⑦のその他の論点として、電磁的船荷証券記録の法律上の呼称でしたり、電磁的船荷証券記録の支配を有する者に対する強制執行に関する規律の内容、また、電磁的船荷証券記録に関して複数通発行を認めるか否か、喪失の手続を特別に設けるか否か、複合運送証券や海上運送状に関する規律の整理等についても併せて検討する必要があるかと思われますし、⑧として、その他整理すべき事項として、電磁的船荷証券記録についての規律には直接関係しない可能性はございますが、Bolero等の規約型の電子式船荷証券における規約との関係や、電磁的船荷証券記録について消失等の不具合が生じた場合の法律関係についても併せて整理しておくことが望ましいと考えております。   以上が論点の全体像についての御説明となります。ただいま申し上げましたとおり、電磁的船荷証券記録について、有価証券である船荷証券そのものとするというのではなく、電磁的船荷証券記録について規律を別途設けるとする場合には、それに派生して多くの論点、具体的には、今申しました参考資料2-1の中で①から⑧のナンバリングを付けている論点の検討が必要となってくると考えられます。この点、数多くある論点の中でも、④の電磁的船荷証券記録の類型をどのように考えるか、そして、⑤の権利を譲渡する場面の規律の内容、そして⑥の効力に関する規律の内容に関しましては、特に密接な関連性が認められますため、これらの論点については同一の機会に検討することが望ましいかと考えられます。   また、特に⑥、効力に関する規律の在り方の論点について、具体的にどのような表現でしたりどのような順番で規律を設けるのが適切かということを検討するに際しては、①、②、③、⑦といった他の論点の帰結の影響を受けるところが少なくないところかと存じます。そのため、第3回会議以降の進行につきましては、まず、この①から⑧までの論点及び整理事項を、部会資料の3ページに記載させていただきましたとおり、前半パートと後半パートに分けた上で順に検討していくということが効率的なのではないかと考えております。本日は、このような今後の進め方についても併せて御審議をお願いできればと考えております。   このまま続けて「第2 法改正の必要性」について説明させていただきます。先ほど述べましたとおり、この部会の議論の出発点といたしまして、そもそもどのような点に法改正の必要性があるのかといった点を改めて確認、整理することが望ましいと考えております。船荷証券の電子化については、一つの事象ではなく複数の事象がその対応を求めているところかと存じますが、差し当たり我々の方で考えられる事項を今回の部会資料の中に列挙させていただきました。   まず、御案内のとおり、船荷証券を利用した海上運送においては、運送された貨物の引渡しを受けるためには、それと引換えに運送人に対して船荷証券を引き渡すことが求められているところでございますが、船舶の高速化などを背景として輸送時間が大幅に短縮されたことに伴って、特にアジア圏内などの航海期間が短い区間において船荷証券を用いようとすると、貨物が輸入地に到着しても船荷証券が未着であり、船荷証券に基づく貨物の引渡しを適時に行うことができないという事態も生じ得るところでございます。このような状況に対応するために、これまでも実務上、サレンダーBLや保証渡しといった様々な工夫がされてきたところでございますが、これらの方法は必ずしも船荷証券の機能を完全に代替するものではございませんし、一部の法律関係が不明確、不安定になる面も否めないように考えられるところかと存じます。その点で、船荷証券の電子化を実現することは、船荷証券が紙であるがゆえに生じる不都合を回避しつつ、貿易実務において船荷証券に期待される機能を実現するという意義もあるのではないかと考えております。   また、民間のサービス・プロバイダーによる規約型の電子式船荷証券の登場とその普及状況といった点も一つの理由になるのではないかと考えております。すなわち、御案内のとおり民間のサービス・プロバイダーによる規約型の電子式船荷証券というものが存在し、ブロックチェーン技術の普及等もあいまって、近時一層の注目を集めていると考えられますが、他方で電子式船荷証券についての法整備が十分に追い付いていないということもあって、その利用が十分に進んでいるとまでは言い難いのが現状であると考えております。このことからいたしますと、日本法で船荷証券の電子化に関する法改正を実現することにより、規約型の電子式船荷証券の利用を含む船荷証券の電子化が一層促進されることが想定されるという面もあるように思われます。   さらに、我が国においてはデジタル社会形成基本法が制定され、デジタル社会に対応した法整備の必要性が強く求められている中、船荷証券の電子化につきましても政府として重点的に検討すべき課題の一つとされております。そのような中、船荷証券の電子化についてはMLETRといった参考となるものがあり、諸外国の中にはこれらを参考にして国際的な調和がとれる内容の国内法を整備し、又はその検討を進めている国が多くあるところかと存じます。このような状況を踏まえますと、MLETRなどを参考にして国際的な調和がとれる内容の国内法を整備するというのが現時点における一つの国際動向ということもできるように思われます。   これらをまとめますと、国際海上運送における電子化の促進や、船荷証券の電子化に関する国際動向に歩調を合わせるという観点から、日本法で船荷証券の電子化に関する法改正を実現することが今正に求められているということがいえるのではないかと考えております。   今、今回の法改正の必要性に関して、MLETRなどを参考に国内法を整備するというのが現時点における国際動向であるということを申し上げさせていただきましたが、この点に関連して、そもそも今回の改正作業の対象を船荷証券に限定すべきかという話が出てくるかと存じます。こちらを説明したのが今回の部会資料第2の補足説明の2番となります。御案内のとおり、MLETRというのは船荷証券に特化したものではございませんでして、電子的移転可能記録全てに関するモデル法となります。すなわち移転可能な証書又は文書を対象として、その電子的な機能的同等物を実現すること、既に紙の証書等に実体法上のルールがあることを前提として、電磁的記録によってその機能的同等性を実現することを目的としているものでございます。   このようなMLETRの在り方を踏まえますと、今回、船荷証券の電子化の法改正を考えるに当たっても、商法改正の枠内でMLETRを参考に船荷証券に関する規定を整備していくという方法も考えられる一方で、船荷証券に限定しないで移転可能な証書又は文書、すなわち我が国の有価証券一般の電子化に関する新たな一般法のような法律を制定することも考えられなくはないところでございます。   もっとも我が国の代表的な有価証券である手形・小切手については、御存じのとおり既に電子記録債権法の制定によって実質的には電子化が進んでいるという評価も可能かと思われますし、そうしますと、電子化のニーズがある有価証券のうち実際にまだ残っている主要なものというのは、やはり船荷証券であり、あとは検討するとしても、同じく商法上の倉荷証券ぐらいのように思われます。そうであれば、我が国の有価証券一般の電子化に関する新たな一般法を制定することまではせずに、商法改正によって船荷証券又は船荷証券と倉荷証券の電子化を実現するということも考えられ、また、そのこと自体がMLETRの考え方に矛盾、抵触するものでもないと考えているところでございます。この点についてどのように考えるかという点も、本日御審議をお願いできればと存じます。   長くなってしまい恐縮ですが、このまま「第3 法改正による船荷証券の電子化の可否」について説明させていただきます。御案内のとおり、我が国は国際条約であるいわゆるハーグ・ヴィスビー・ルールといったものを批准しており、商法及び国際海上物品運送法の各規定もこれに沿ったものとなっているところでございます。   ところで、手形法はジュネーブ統一手形法条約に基づいて制定されたものであるところ、手形の無券面化は同条約を破棄しない限り困難との整理に基づき、従前の手形とは区別される新たな制度として電子記録債権法が制定されたという経緯がございます。具体的に、手形法及び小切手法はジュネーブ統一手形法条約及びジュネーブ統一小切手法条約の翻訳でなければならず、このような理解の下、電子記録債権法の立案が検討された際には、手形そのものの電子化はこれらの条約を破棄しない限り困難であるという整理がされてきたところでございます。   そこで、船荷証券の電子化を検討するに当たっても、ハーグ・ヴィスビー・ルールとの関係で、そもそも船荷証券の電子化に関する法改正を実現することが制限されないのかといった点についても考える必要があるのではないかというのがこの論点の趣旨となります。   この点に関しまして、ハーグ・ヴィスビー・ルールは船荷証券又はこれに類似する海上物品運送に関する証券により発生する運送契約における運送人と船荷証券の所持人との利害を調整することに主眼を置いたものでございまして、船荷証券の方式等を完全に統一することまで目的とするものではございません。また、ハーグ・ヴィスビー・ルールにおいては船荷証券の意義自体が特に規定されておらず、解釈に委ねられている上、ジュネーブ統一手形条約とは異なり、国内法が条約の翻訳でなければならないといった規定もないところでございます。   そのことからすれば、船荷証券については手形及び小切手とは異なり、条約上、電子化が否定されているものではないと考えられるところかと存じますし、本日、部会資料の第4の論点に関して、電磁的船荷証券記録につき有価証券である船荷証券そのものではないという帰結を採る場合には、なおさら条約との関係で問題となることはないと考えられるところでございます。これらの点につきましても、今のように考えることに違和感がないか、異論がないかといった点につきまして、本日御審議をお願いできればと考えております。   長くなり恐縮でございますが、以上が部会資料の第1から第3の説明となります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、今説明のあった内容について、どなたからでも結構ですので、御意見等を頂きたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。 ○吉田委員 日本弁護士連合会の吉田と申します。よろしくお願いいたします。私は本審議会から参加しております。    部会資料第2の法改正の必要性という項目について、こちらの記載内容に異存ございません。ただ、一つ補足といいますか、このような記載があるとよりよいのではないかということで述べさせていただきますと、研究会での議論は、ミクロとマクロのうちミクロに関する議論の割合が比較的高かったという印象ですが、マクロ、つまり、方向あるいは方針についての記載があった方がよいのではないかと考えております。まずは、このMLETRとの調和というのはあると思いますが、もう一つ、第4段落目に、そうしたところ、我が国においてはデジタル社会形成基本法が制定され、デジタル社会に対応した法整備の必要性が指摘されている中、船荷証券の電子化について政府として重点的に検討すべき課題とされている、と書かれております。研究会資料の中に、電子船荷証券の法的問題点と想定事例という資料があり、その中に、海運のコロナ禍での現象ということで、船会社、保険会社、荷主、銀行ということで、コロナの中で出社して証券を印刷したり、裏書したり、買取りの手続をしないと手続が進まないという問題点があったということが書かれていました。私は、海運の中でもクロスボーダーのトランザクションを中心に取り扱っているのですけれども、物理的に離れたところでどのように法的な有効性、適法性を確保していくかということは従来からの課題でした。さらには、出社ができないということになり、その中でどのように同じような適法性、有効性を確保していくかということで、当事者間で非常に頭を悩ませて、その課程で得た知見がたくさんあります。この知見は、ウィズコロナと、アフターコロナの時代でも活かすべきであろうと考えております。   このデジタル社会形成基本法は、研究会の途中の令和3年9月1日に施行がされたもので、第1条、目的には、この法律はデジタル社会の形成が我が国の国際競争力の強化及び国民の利便性の向上に資するとともにとありまして、途中を飛ばして、もって我が国経済の持続的かつ健全な発展と国民の幸福な生活の実現に寄与することを目的とするとあります。この、我が国の国際的競争力の強化、国民の利便性の向上、という大きな枠組みあるいは方向性は、本件の法案の審議の中でも考慮に入れた方がいいと考えております。   具体的には、このデジタル社会形成基本法の中に、第二章基本理念というのがあります。具体的な記載、個別の論点は今日のテーマではないので言及は避けますけれども、第3条に全ての国民が情報通信技術の恵沢を享受できる社会の実現とあります。研究会報告書にも、船荷証券が発行される国際物品運送については、その実態や実務は、運送人の能力、船種、貨物、航路、契約形態、用船契約か個品輸送等々により様々であるとありますが、こういったいろいろな能力、立場、あるいは取引形態の人もあまねく利用できるような船荷証券の法制化をするとよいだろうということです。あとは、例えば、第9条に、国、地方、公共団体と民間との役割分担とあります。民間との役割分担については、今私たちが検討している規約型というのは民間の役割だと思うので、それと国が作る法律とがどういうふうに協働していくかというのがあると思います。そのほかには、第10条の個人及び法人の権利利益の保護等とあって、高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用により、ここですね、個人及び法人の権利利益、国の安全等が害されることのないようにするとともに、ということで、この安全性とか信頼性とかというのも考えていきましょうということが既に制定されている法律にあるので、その視点があった方がいいだろうと考えております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何かございますか。 ○渡辺幹事 吉田委員の御発言はそのとおりかと思っておりまして、そういった意味合いも込めて、このデジタル社会形成基本法というものの言及もさせていただいたつもりでございまして、その背景には今おっしゃっていただいたようなところ、こういったところも考えて検討していきましょうと、こういうつもりで書かせていただいたものでございますので、頂いた御意見を踏まえて、今後、各論を検討するに当たっても考えていければと思っております。ありがとうございました。 ○藤田部会長 いずれにせよ、各論を議論する際に今言ったような視点が効いてきそうなところがあれば、その都度、是非御指摘いただければと思います。   それでは、そのほか、どなたでも御意見、御質問等はございますでしょうか。 ○池山委員 池山でございます。幾つかございますが、せっかくなので、今、吉田委員がおっしゃった点は、お聞きしていてはっと思うところがございますので、それを先に申し上げます。デジタル社会形成基本法というのを見ますと、やはりそこのキーワードというのは、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じたやり取りができる社会だと、それは恐らく論点の一つとして提示されている電磁的船荷証券記録の電磁的という呼称で、それは実は呼称だけではなくて、研究会の段階で作られ報告されている試案の中にも、磁気ディスクといったデジタル社会形成基本法の発想とは少し違う面もあるので、具体的な作り込みをするときに、今の視点というのが生きてくる点というのは確かにあるだろうと思って拝聴いたしました。   その上で、本来の第1ないし第3の御説明に対する私の意見ないしコメントですけれども、まず結論的に、第1において提案を前半、後半、ここに書いたような形で分けて議論するということ、法改正の必要性についての叙述、それから、法改正による船荷証券の電子化の可否についての叙述については、いずれも異論はございません。   その上で幾つか申し上げますと、一つは、論点について、今の御説明とこの論点の表を見ると、実際は第4のところと関わるのですけれども、もしも仮称の電磁的船荷証券記録を電子船荷証券とみなすことができれば、もうその後の論点は一切検討する必要がなくなると、そういう前提で作られているように見えます。そして、事前に少し検討させていただく限りにおいては、第4の中でそのものとみなすのは無理だろうという事務当局の意向が示されています。その理由は、飽くまで法制的な、法体系的な問題であって、それはそれで一つの論点です。他方で、それとは別の、論点間の関係という観点からすると、仮にそのものとみなすということが可能である、日本の法体系上の重要な例外としてそれを作るのだとしたとしても、それで終わりということにはならないのではないか、一応次元の違う問題なのではないかという印象を持ちました。それが一つです。   それから、論点一般については、ここに書いてあることに異議はございませんと申しましたが、やはり本件の場合は先立つ研究会の議論の蓄積がありますので、それを踏まえて述べさせていただくと、議論をする中で既存の船荷証券に関する法制そのものについての曖昧さあるいは問題点のようなものが議論されたという経緯があったと思います。その意味では、この立法をするに当たっても、既存の船荷証券の今の民商法の規定が金科玉条ではないと、場合によってはそれも検討の俎上にのり得るということはあるのかなと思っています。実際、この論点の中に、少なくとも関連論点である海上運送状についての規定については一部見直しみたいなことが載っていますし、それも一つの例ですが、ほかにもあるかもしれないと思っております。それが大きな二つ目です。   それから、三つ目ですが、これは先ほどの吉田委員の御発言とも関連しますが、やはりMLETRとの調和ということがいわれていて、そのこと自体に異論がある向きは少ない、又はないのだろうと思っています。ただ、一方で、実際に出てくる要綱案の姿というのは、恐らくはMLETRの翻訳的なものとは全然違うものになるか、少なくとも、そうかもしれないと。そのときには、それはそれ自体でノーということはないのでしょうけれども、仮にそういう形になったとしたら、本当にMLETRと調和がとれているのかについて意識的に検討していく必要があると考えております。ある機会を取って、正式の会議の席である必要はないと思いますけれども、是非事務当局においても意識的に分析をされて、本当に調和しているといえるのか、調和していない部分があるとしたら、それはどの部分で、それはなお全体とすれば許容範囲であるといえるのかというような自覚的な分析が必要となるかなと思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何かコメントがございますか。 ○渡辺幹事 幾つか御意見いただいたところかと思っておりまして、まず一つ目の、仮称でございますけれども電磁的船荷証券記録、それを船荷証券そのものとした場合には、あたかもそれで議論が終わりであるかのような書きぶりになっているけれども、そうではないのではないかという御指摘だったかと思いますけれども、それはおっしゃるとおりかと思っております。今のところ我々としては、既存の法体系からするとなかなかそういう考え方を採るのは難しいかとは思っておりますけれども、仮にそういう方向を採るとした場合にも、既存の船荷証券に係る民法、商法の規定について、やはりどうしても電磁的記録には適用し難い部分について除いていくとか、そういった個別の対応をしていくということはあり得るかと思います。その意味で、電磁的船荷証券記録を有価証券たる「船荷証券」そのものとしたらそれで終わりではないというのはおっしゃるとおりかとは思っております。   それから、既存の民法、商法の規定というのも必ずしも所与の前提にはならないということもあり得るのではないかという部分だったかと思いますけれども、これもどこまでの問題を俎上にのっけるかというところにも係ってくるかと思いますけれども、御指摘いただいた海上運送状の規定ですね、あれは電磁的な方法で提供する場合の承諾の方式みたいなところだったかと思いますけれども、少なくともそういった部分に関してはこの機会に改めるということは十分に考えられる部分かと思います。ただ、それ以外の実質に係る部分についてどうするかというところは、また、どういった問題がそもそもあり得るのかというところがまだ現時点では見えていないというところもありますし、仮に何かあった場合、それを果たしてここで検討できるのだろうかという問題はあるかもしれませんので、それはその都度、個別に考えていくことができればと思っております。   最後の点でございます。MLETRとの調和についてでございますが、御指摘いただいたとおり、いろいろ個別に書き込んでいくとか、そういった方向を採ると、要綱案としてはかなり異なったものになり得る可能性があるのではないかというところは、我々も想像レベルでは考えているところでございます。そういったところについては、どういった点でMLETRに準拠していて、どうしてこういう書きぶりになっているのかというのはしっかりと我々の方も意識して説明できるようにしておく必要があるというのは、正におっしゃるとおりかと思いますので、そこのところは常に意識して進めていきたいと思っております。御指摘ありがとうございました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○池山委員 池山でございます。今おっしゃった、特に2点目の既存の民商法規定の改定がどこまで許されるかうんぬんという点は、そもそものこの部会の存立基盤であるところの諮問事項との関係もあるであろうと、そこは私も理解をしております。ただ、諮問事項には「等」という言葉が入っておりますので、その解釈もあるのかなと思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。確かに現在の民商法の規定が実際に使われている船荷証券を前提とすると相当特殊な書き方になっており、若干違和感があるというのは御指摘のとおりで、それをそのまま電子化の規定としてコピーしたりするとますますその違和感が強調されるという問題意識は、恐らく研究会のメンバーの多くの方が共有されるのでしょう。それをどういうふうにどこまでこの部会で直すか、船荷証券の紙の規定まで全部実務の感覚に沿ったものに直すとなると、さすがにそれは諮問事項の範囲を越えていると思うのですけれども、どこまでやれるかということについて、できるだけ現在の実務の感覚に反しないような形で電子化の規定が設けられるようにということに留意せよという御趣旨の御発言と受け止めました。できるだけ努力するということで、その都度できるだけ実務の方からの御意見を頂ければと思います。どうかよろしくお願いいたします。最後のMLETRとの整合性は、考えるとなかなか難しい問題で、我々だけで議論しているだけでいいのか、できることならUNCITRALとも連絡を取ったりできないかということも含めて、少し丁寧に考えて、少なくとも国際的に発信する段階では、勝手に独自の法制を作っていると言われないようにする配慮はできる限りできればとは思ってはおります。関係する方におかれましては、是非よろしくお願いいたします。 ○小出幹事 学習院大学の小出でございます。御説明大変ありがとうございました。少し全般的にコメントをさせていただければと思います。   まず、全体の進め方ということですけれども、前回も少し発言させていただきましたけれども、いろいろな考え方に基づく立法の在り方があると思いますので、それを考えますと、初めにどういう方向性でやっていくのか基本的な考え方を整理して、それに従って個別の論点に移っていくという方法は、私も望ましいのではないかと思っています。   その上で、少し確認なのですけれども、今日の部会資料2の2ページ辺りを見ますと、最後の方に、第3回会議以降の進行については、①から⑧の論点をこういう順番で検討していくと書かれておりますけれども、これは今日の部会の場において、参考資料2-1でいいますと2段目の左側の基本的な考え方というところまではある程度方向性を決めるという御趣旨なのでしょうか。それはそれで非常に私は効率的だと思いますけれども、その点をまず確認させていただければということです。   その上で、私の個人的な見解を申し上げますと、私は現段階でこの基本的な考え方について、ある程度方向性を決めてもいいように思っておりまして、個人的な意見を申しますと、上の、船荷証券の規定と同様の規定を設けるとする考え方の方が立法の効率からすれば望ましいのではないかと思っております。電子記録債権法のような別個の法制度を構成するという考え方については、電子記録債権法については、既に御説明にあったように、元々手形・小切手をそのまま電子化することが難しいということがあったことが一つと、それから、電子記録債権法は飽くまでも手形・小切手以外のものにも用途があるということが前提にあって、初めから新しいものを作ると、電子的に新しい債権を作るという目的があって作られたものですので、今回のように船荷証券のいわゆる電子化ということを想定しているのであれば、上の方法によって立法することが最も素直であり、かつMLETRなどとの整合性を考えても望ましいのではないかと個人的には思っております。したがいまして、この方向で次回以降、①から⑧を検討していくというのは個人的には賛成だということを申し上げたいと思います。   それから、各論の部分についてです。法改正の必要性については、これも御説明いただいたところはそのとおりだと思っておりますし、私の前回の発言等も含め、いろいろ取り入れていただいておりまして、大変ありがとうございます。全く文句はないのですけれども、元々、特にこういう貿易などの側面では、電子化というものがコストの低減あるいは迅速化という観点で一般的に望ましいということがそもそも論としてあると思いますので、船荷証券の危機とか、そういう個別の話だけではなく、一般的に電子化は望ましいのだということは打ち出してもよいのかなと思いました。しかし、それは法制の前提だと思いますので、もちろんこちらの方向性で異論があるわけではございません。   6ページのところで、船荷証券以外に対して適用することはどうかということで、ここは私も考えていませんでしたので、確かに言われてみますとMLETRというのは元々、いわゆる有価証券一般の電子化ということを想定したものですから、船荷証券以外のものを電子化するということも当然想定できると思います。ただ、これも御指摘のとおり、手形・小切手に関しては我が国ではこれはなかなか難しいと思いますので、そうしますと残るは倉荷証券というのもそのとおりで、確かに倉荷証券は電子化してもよいような感じもし、また次の機会にニーズが出てからやるというよりは、先にやっておくということはあり得るような気もいたします。   ただ、私は実務が分からなくて、倉荷証券というのが私は商品先物取引で使われている以外にあまり使われている例をよく知らないので、もしこれを電子化するのであれば、商品先物取引の業界か何かから、もしニーズがあるのであれば、あるいは、今後そういうことができればこのような使い道があるというような御要望があるのであれば、それは積極的に議論してよいことかなと個人的には思いました。   それから、6ページ、7ページからのハーグ・ヴィスビー・ルールとの抵触の有無については、私はこの分野に余り詳しいわけではありませんけれども、それで全く問題ないのではないかと思います。   実は手形・小切手に関しても、我が国はジュネーブ統一手形法条約、小切手条約というのは紙を前提にしていると考えていますし、それはその一つの考え方であり得ると思いますが、諸外国においては必ずしもそうとも考えられていないような状況もありまして、UNCITRALの部会などの場でも、別にこのジュネーブ条約を結んでいるからといって手形・小切手が電子化できないわけではないのではないかという意見は実はありました。ハーグ・ヴィスビー・ルールについては、今日の御整理のとおり、一層そういえると思いますので、私としてはこの整理に何ら異存はございません。   それから、全体的な方向性といたしまして、MLETRという採用をしていくのが望ましいのではないかというような話については、私もそのような見解を前回述べさせていただきましたので、それについては賛成ということです。ただ、先ほど池山委員がおっしゃったように、具体的に何をもってそれを採用したといえるのかという点については注意が必要だということは全く私も同感でございますので、今後慎重な検討が必要かと考えてございます。   現段階では以上でございます。どうもありがとうございました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。ただいまの御指摘について、事務当局から何かございますでしょうか。 ○渡辺幹事 では、補足させていただければと思います。まず、1点目で御指摘いただきました、今日どこまで決めたらいいのかという御指摘があったかと思います。我々といたしましては、この参考資料2-1で書かせていただいた論点の全体像のうちの、正に御指摘いただいた左側の基本的な考え方の部分についてまである程度の共通認識をいただけますと、大変有り難いというふうに思っているところでございます。ただ、1点だけ御留意いただきたいのが、この基本的な考え方として書かせていただいている、船荷証券の規定と同様の規定を設けようとする考え方というところと、あと、論点の全体像の青色で囲ってある部分の下側に①案、②案と書かせていただいているところがあろうかと思います。この基本的な考え方において船荷証券の規定と同様の規定を設けようとする考え方を仮に採ったとしても、青色でくくってあるところの②案ですね、効力について債権譲渡のように考えていくということは依然として一応あり得るのではないかという前提で考えておりまして、本日そこまでの態度決定まで求めるつもりは全くございません。   今日の段階で御審議いただきたいと思っているところとしては、基本的に仮称であるところの電磁的船荷証券記録ですね、これは有価証券であるとか物そのものとは見られないとした場合には、恐らく何らかの規定が必要になってきて、何か規定を書いていくという方向になろうかと思いますが、その際の基本的な考え方として、船荷証券に限りなく合わせていくという方向でやっていくのか、それとも、もう全く別のものを考えていくという方向なのかというところのうち、恐らく前者の考え方の方が一般的なのかなとは思いつつ、そういった方向でよろしいでしょうかというところをお諮りできると有り難いと思っていたところでございます。   もう一つ、先ほど倉荷証券についてのコメントも頂いたかと思いますが、本日の段階で御議論いただければと思っているところとしては、商法の改正ということでこのテーマを扱っていくという方向性でいいのかどうかというところについて御意見を頂けると有り難いと思っておりまして、我々は今、その方向で考えていくことができればいいのかなとは思っているところですが、もしそういう方向で進めることができるということであれば、倉荷証券につきましては御指摘いただいたようなところも含めて追加で検討するということもあり得るかなと思っているところですので、そういった御感触なりを頂けますと、大変有り難いと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   以上の説明を踏まえて、更に御意見、御質問があればと思います。 ○新谷幹事 今の、船荷証券に限定するのか、あるいは移転可能な証書又は文書に関する新たな法律にするのかという論点について、1点言及させてください。   私はトレードワルツと日本損害保険協会の両方の立場で参加しているわけなのですけれども、貨物保険証券について言及させていただければと思っております。貨物保険証券というのは、正に移転可能な証書又は文書ではあるのです。商法上の有価証券ではないということにはなっていますけれども、移転可能な文書ではあるわけです。現実に船荷証券と常にセットで裏書譲渡されて国際的に流通し、常にその軌を一にしているということが実際にあるわけです。   結論からまず申し上げると、私は貨物保険証券というのは別に対象とする必要は、ここではないのだろうとは思っております。一方で、こういった場で一応検討をすることは必要かなと思っていまして、それはなぜかというと、今回のイギリスの検討を見ておりますと、コンサルテーション・ペーパーでも移転可能な文書ということで、貨物保険承認状だったり海上保険証券というものが挙がっており、さらに3月に出たLaw Comissionの法律案を見ますと、具体的に対象文書として明示がされています。貨物保険承認状と海上保険証券を具体的に明示して法律の対象にしていると。確かMLETRかシンガポール法か、どちらか忘れたのですけれども、その解説書なんかを見ていると、そちらでも貨物保険の証券というのは対象文書として挙がっていた記憶があります。   更に言いますと、実は我が国でも戦前から結構長い期間を掛けて、貨物保険証券は実は有価証券性があるのではないかという論争があった経緯がございます。確かに、例えば火災保険証券なんかとは異なって、今申し上げたように、証券が裏書譲渡されて、海外の被保険者がその証券をもって保険金請求を行う、権利の行使を行うということが実際にあるわけなのです。このように、有価証券性があるのではないかという有力な説もあったのですが、ただ、結論は、今現在においては、証券をもって権利の行使あるいは権利の移転をしなくてはいけないということではないので、有価証券ではないだろうというのが定説というか通説であると認識しています。   では、何でイギリスがこれを対象としたのかということを考えると、恐らく私は二つあるのではないかと推測していまして、皆さん御理解のとおり、イギリスの法律では日本の有価証券法制とはまた違う法理があるわけなのですけれども、その一つとして、ネゴシアブル・インストルメント、いわゆる流通証券ですね、という考え方があって、実は船荷証券も保険証券も正にその流通証券に該当するというくくりになっているわけなのです。したがって、彼らの世界でいうところのいわば有価証券みたいなものの中にはその両者が入っている、というのが1点と、あともう1点は、イギリスの法律案だとそもそも題名がトレードドキュメントに対する法律ということになっていますので、トレードドキュメントということでいくと、確かに貨物保険証券も入ってくるのだろうということなのだと思っています。   有価証券性の有無が争われた貨物保険証券であっても、結論は、最初に申し上げたとおり、今回の立法の対象にする必要はないということだと思っているのですけれども、それは、実際、実務でどうなのかということで考えた場合に、例えば今、日本において法律のバックアップがないと貨物保険証券の電子化に困っているかというと、困ってはいないと思っています。それはなぜかというと、貨物保険証券の場合には、船荷証券のように第三者に対抗しなくてはいけないというような公示力のようなものが求められているわけではなく、飽くまでも保険給付請求権と保険填補責任が被保険者と保険者の間で約定されればいいだけですので、当事者間で約定合意できればいいわけです。運送品に関する権利譲渡にともない、被保険利益が荷主間で移転することもあらかじめ合意されています。実を申し上げると、イギリスにおいてもそれは多分同じなので、別にイギリスも何か実務的な必要性があって貨物保険証券を加えたということではないのだろうと、ただ、加えるということに別にマイナスがあるわけでもないので、加えているだけだろうと、見ていて思いました。   すみません、長くなりました。以上であります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から発言はございますか。 ○渡辺幹事 ただいまの御指摘ですけれども、一応私どもの整理といたしましては、やはり法律上有価証券として定められていて、かつこの効力というのも同じように法律で定められていて、なおかつこれが紙でなければいけないという整理がされているものについて、電子化をしていかなければいけないというのが今の我々の課せられている検討課題かなと思っておりまして、そのような観点から整理をいたしますと、保険証券というのは恐らく対象外ということになろうかと思っておりまして、正に新谷幹事がおっしゃられたとおり、そういった規定でしっかりと定められているわけではないので、逆に電子化しても何か障害になるわけではないとおっしゃっていただいたのは、正にそのとおりかなと思っておりまして、そういうふうに考えていくと、我が国の法体系上はなかなか対象にするということは難しいかなというのが事務当局の感触ではございますが、ほかの先生方の御意見等があれば、また検討はさせていただきたいと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。今、事務当局の説明にもありましたけれども、ここで取り上げないとしているのは、電子化してはいけないという含みはなくて、法律に規定するまでもなく電子化できるものについては今回の法改正をあえてする必要もないだろうという整理です。保険証券がそういえるかどうかは、明示的に議論する必要はあるのかもしれませんけれども、決して保険証券あるいはその他の貿易書類について、電子化するなという立法ではありません。ただ、そこを誤解されないように、法律の趣旨がどういうものかということは丁寧に説明の必要はあるでしょう。新谷幹事も、別に規定を置かなくても差し当たり困るわけではないけれども、そういう電子化の対象外だというような話ではないということさえ確認できればいいという感触でしょうか。 ○新谷幹事 そうですね、特に今回、イギリスの実際の法案なども出て、それを見たときに、保険証券というのが明示されておりましたので、部会資料に書いてあるように法律の対象を移転可能な証書とする選択肢を考えた場合には、貨物保険証券は確かに移転可能な証書でもあるわけです。しかし、実務上は、立法においてどうしても加えていただかないと困りますということではなくて、ただ、この場でやはり保険証券というのも検討というか、見ずにいたわけではないということはきちんと記録に残しておいた方がいいのだろうというふうなことでございます。 ○藤田部会長 ありがとうございます。 ○後藤幹事 今のところと、ほかのところを1点、コメントしたいと思います。   今の新谷幹事の御指摘は非常に重要な点かと思います。冒頭で池山委員からも、これが出来上がった後の外国への見え方というのは十分に気を付ける必要があるという御指摘がありましたが、日本は船荷証券の話しかしていないように見えるけれども、それは、ほかのは立法がなくても電子化できるので、あえて書いていないだけですということは、この部会の中で確認をしておくということに加えて、はっきりと外国へ向けて発信しておく必要があるかと思います。特に今回の立法が成立した場合にBoleroのようなシステムに日本法を準拠法としてもらうことを考えるのであれば、そのシステムの中では保険証券なども併せて電子化されることになるでしょうから、どうしても必要な部分だけ規定を置くというのが日本のスタンスですということは、はっきりしておく必要があると思います。   なお、ほかの貿易関係書類としては、例えば信用状や荷為替手形などがあるのかと思います。為替手形はどうするのだろうというのが、実はよく分からずにいるのですけれども、それは為替手形というフォーマットをとらなくても別に目的は果たせるから、為替手形を電子化しないでも別にいいということなのかなと勝手に理解しているのですけれども、そういった辺りも、実務での使われ方とも合うように、実務への発信と外国への発信に十分留意する必要があるかなと感じたというところでございます。   あと、検討順序のところについて、基本的に前半と後半に分けて、基本的な論点や考え方を今日、ある程度決めて、その後で各論を取り上げるということについては、これでよろしいのではないかと感じております。   その上でなのですけれども、前半部分として①、②、③、⑦、⑧を挙げておられるのですけれども、①、②、③は確かにと思ったのですが、強制執行とか喪失の場合の細かい話を、いきなりするのでしょうか。後半の話が前半の話を受けるということはあるのですけれども、逆の関係もある程度はあるような気もします。例えば、執行とかはきっと譲渡の話とかとも多分関連してくるので、後半の話をやった後の方が議論しやすいようにも思われます。何も①、②、③、⑦、⑧の全部を一度にやらなくてもという気もしたというところでございます。恐らく実際は、前半の論点も最初のラウンドでは合理的な範囲に収められて、細かい話は後の方で出てきたりするのかなと思いましたが、少し気になったところでございます。   あと、これは単に頭の整理の話なのですけれども、⑦と⑧で分けておられるのは、⑦は電磁的船荷証券記録の仕組みそのものについての論点であり、他方、⑧というのは、この電磁的船荷証券記録を使ってやられるであろうBoleroのようなシステムの中の話なので、これを切り分けているという理解でよろしいでしょうか。規約との関係というのは、正にそうなのかなと思うのですけれども、消失してしまった場合の不具合というのは、確かに運営主体が誰なのかということにもよるのかと思うのですが、これが純粋に⑧の方だけになるのかというのがよく分からなかったので、⑦と⑧の仕切り方を伺わせていただければと思いました。 ○渡辺幹事 御指摘いただきました、前半パートで①、②、③、⑦、⑧、全部やるのですかという御趣旨かと思いますが、これは前半、後半という形で分けた場合には一応前半に属した方がいいのかなというぐらいの腹積もりでございまして、実際のところ、かなりボリュームとしても大きくなりますし、特に⑦、⑧も含めて全部やれるかというと厳しいのかなというのは正直、理解はしているつもりでございます。実際の進め方としては、我々としては、例えば次回の資料においては①、②、③、⑦、⑧、御用意はさせていただきますけれども、実際のところは⑦、⑧については全ては扱い切れずに、その次に回すということは十分あり得るところかと思っておりまして、便宜上2分割するならこうかというぐらいでありまして、⑦、⑧については臨機応変に考え得るところだなとは思っていたところでございまして、そういった意味では御懸念については我々の頭の中にもあるというお答えになるかなと思っております。   それから、⑦と⑧の仕切りでございます。基本的にこちらのイメージといたしましては、規律案にダイレクトに係ってくる部分が⑦で、恐らくそうではないだろうという部分が⑧、そのようなイメージでございまして、⑦につきましては何らかの形で案文化するときにその在り方に直接関わってきそうな部分、⑧はそうではないのだけれども論点として整理しておくべき事項、こんなようなイメージでございます。もちろん議論の内容によってはそうではない部分というのも出てくるかと思いますけれども、現状の整理としては恐らく規律案に係ってくるだろうというものが⑦、そうではないだろうと思われる部分が⑧、一応そういう整理でございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。⑧は、この規律案の適用の在り方に関する話ということでしょうか。つまり、規約と規律案が両方カバーされて両方の適用がありそうに見えるときにどういう関係になっているのですかという話だとか、仮に法律案が適用できないような不具合が生じた場合、そんな場合に規約なんかの方は適用されるのですかという話だとか、③は正に準拠法で、この規律案がどういう場合に適用されるかという話なので、少し外在的な話が⑧で書かれていて、内在的なものが⑦という整理でしょうか。 ○渡辺幹事 そうですね、我々的な発想で見ますと、⑧については論点提示した後に具体的な規律がのっかりにくいようなもの、すみません、少し形式的な話になってしまいますけれども、そんなようなイメージかなと思っております。 ○藤田部会長 特定の論点がどちらに入るかも含めて、いずれ検討することになると思いますけれども、差し当たりのお答えはそういうことだそうです。よろしいでしょうか。 ○後藤幹事 どうもありがとうございました。検討の順序については、今の御説明で十分理解いたしました。1点だけ気になったのですが、私も現実に使われるのはきっと規約型だろうと思っているのですが、規約型ではない電子船荷証券というのが将来発生し得るのかどうか。船荷証券の電子化と言った場合に、現在のBoleroのような規約型とは違うものを作るのだと思っておられる方も世の中にいるのかもしれません。そうではなくて、むしろ規約型を使いやすくするということにこそ今回の改正の意義があると思っておりまして、だからこそこの⑧の一つ目の問題が挙げられているのだと思いますが、規約型ではない電子船荷証券を想定するのかどうか次第でいろいろ変わってくるところもあるのかなという気もいたしました。最後の点は、お答えいただかなくても大丈夫です。ありがとうございました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。ちなみに規約型という言葉は厳密にはどういう意味で使っておられるのでしょうか。法律と無関係に契約で自己完結的に作っているという意味合いで使っておられるのでしょうか。 ○渡辺幹事 そうですね、我々の方で今、規約といっているのは、このシステムを作るに当たって何らかの規約というものがあって、それに同意した当事者が使っていく、こういうもので、恐らく今あるものとしては規約だけで完結しているものなのだろうと思われますが、仮に法制化した後、規約型というものが出てきた場合には、規約型だけでは完結しないようなもの、効力については法律にのっかると、こういうものも出てくるだろうと思われますけれども、いずれにしても何らかの規約があって、当事者が同意をして、それで動いていくもの、というものを規約型として想定しているというところでございます。 ○藤田部会長 規約型ではない電磁的船荷証券記録というものがある、従って、規約型とそうでないものがあるという意味でこの言葉を使っておられるわけではないのでしょうか。つまりおよそいかなる契約の定めもなしに電子式船荷証券を使うということは、あり得ないように思えるのですけれども。 ○渡辺幹事 そうですね、現実問題としては恐らくないのだろうとは思いますが、ただ、法的にいうと、もちろん発行の段階で同意があるはあるのですけれども、今私の方で申し上げた規約型というのは、恐らくそれ以外に何かシステムベンダーみたいな者がいて、そういったところの規約が構成されていくのかなというふうなイメージをしていたところでございますので、全く規約がないものというものも、法律を作るに当たってはある程度視野には入れておかなければいけないのかなと、ただ、現実には恐らく余りないだろうと、こんなようなところでございます。 ○藤田部会長 了解いたしました。 ○松井幹事 それぞれ御整理をいただきましてありがとうございます。まず、第1の説明の順序につきまして、前回の議論も踏まえ、相互に関連のあるものを御整理いただいたということと、実際にはそれぞれの論点を行ったり来たりして複数回やるということを想定されているかと思いますので、基本的な方向性としては賛成しております。また、順序は前後しますけれども、第3の船荷証券の電子化の可否の部分についても問題ないのではないかと思っております。   少し確認をさせていただきたいのが、第2の法改正の必要性のところでございます。イタリックで書いておられる説明の部分については、私自身は非常に説得的だと思っております。船荷証券の危機といわれるような船舶の高速化の話、この問題が船荷証券の電子化によって回避される点でありますとか、あるいは規約型の電子船荷証券が登場しているという実務を前提として、これに法的なサポートを与えていくということの意味といった内容は、ある種の内発的な説明が付いていると理解できます。以上の説明の後は、外在的な説明として、船荷証券固有の話というよりは電子化に対する全般的な要求などが出ており、レベル感を分けて丁寧に説明してくださっていると思いました。   このことを踏まえまして、先ほど少し議論のあった倉荷証券の話に触れたいと思います。MLETRを入れるのであれば、倉荷証券も検討の対象になり得るかという問題提起があるわけですけれども、倉荷証券の場合、現在、船荷証券が置かれているような状況とは前提が違っているだろうと思います。船荷証券の危機のような状況があるわけでもないし、あるいは実際に倉荷証券を電子化している先行例があって、これを公的にサポートしなければいけないという状況にあるわけでもないのです。そうしますと、倉荷証券も同じように議論できそうな気はするけれども、我々が直面している前提は違うし、ひょっとしたら船荷証券と同じように規律を置けばいいという話にはならないのかもしれない、という気はしております。だからといって検討しなくていいというわけではなく、検討してみたら船荷証券とは違ったね、ということが分かってもいいのだとは思います。ただ、そこまでのエフォートを割くかどうかということは、少し価値判断が要るところです。私自身は、今回、そこまでする必要が本当にあるのかについてはやや懐疑的であるということを一言申し添えたいと思います。   というのももう一点、今のこととも関係するのですけれども、倉荷証券をもし本格的に検討するとなると、今回の法改正の必要性についても、おそらく重点の置き方が全く変わってくるのだと思うのです。船荷証券に関しては、繰り返しになりますけれども、ある程度実務的な蓄積や議論の蓄積があって内発的に出てきている議論になるのですけれども、倉荷証券に関しては、紙の有価証券を電子化するということが、今、外在的に求められています、というところから議論が出発することになるかと思います。そうしますと、実務的な要請もある船荷証券にはその要請に従って制度をこうします、倉荷証券に関してはまず形式的に制度を考えます、といった議論になって、やや議論の仕方が変わってくるのかなという感じがいたしました。その意味でも、倉荷証券をあえて議論の対象に入れる必要があるのかどうかについては、少し疑問があるところではあります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何かコメントがございますか。 ○渡辺幹事 御指摘ありがとうございました。倉荷証券についてどのように扱っていけばいいのかというところは非常に難しい問題があろうかと思っております。御指摘も踏まえて、今後どうしていったらいいのかというところは事務当局としても考えてまいりたいと思います。ありがとうございました。 ○松井幹事 ありがとうございます。 ○雨宮委員 日弁連の雨宮です。事前の日弁連の検討会議におきましても、今、検討に挙がっている第1の検討の順序、第3の法改正の必要性、そして第3の法改正における船荷証券の電子化の可否について、特に参加されている方から異論はございませんでした。私も個人的に異論はありません。また、検討の順序につきましては、前回の審議会において、検討に時間とエネルギーを割くべきだろうという理論的な論点を一つにまとめて、後半パートとされていると理解しております。ただ、日弁連の事前の検討会では、確か吉田委員の御発言だったと思いますが、②の技術的要件に関して、法文化、明文化しないという結論で研究会の報告書が出されましたが、MLETRでも明文化されており、また、英国の法案においても言及がありますところ、再度本当にその結論で良いかのか、きちんと議論すべきであろうという発言がありました。それから、本審議会において検討するのは船荷証券に限るのかという点ですが、ただ今、保険証券や倉荷証券についての御発言が委員、幹事からありました。が、個人的に電子化する必要があると考えているわけではないですが、この審議会で検討したという観点では、デリバリーオーダー、荷渡し指図書についても一応、検討の課題に挙がったということを記録に残しても良いと思っています。イギリスの法案には荷渡し指図書も定められているようであり、また、法文に定めがないですが、講学上は有価証券と考えられているものですので、一応ここで指摘させていただければと思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何かございますでしょうか。 ○渡辺幹事 特に、大丈夫です。 ○笹岡幹事 笹岡です。今の雨宮先生の御指摘とも関係するのですが、まずMLETRの性格について1点、補足をさせていただきたいと思います。MLETRは2階建ての2階部分であって、その1階は2005年の電子コミュニケーションに関する条約となります。こちらが一般的な書面を電子化する際のルール、MLETRは、移転可能な書面を電子化する際のルールです。これらの条約やモデルローが規律するのは、実質法が書面を要求しているときに、電子的な記録であってもその要件を満たすのだということです。ですので、まずは実質的な法ルールがあることが前提で、実質法において書面を要求しているものについて、電子的な記録がそれに相当するかどうかを判断するためのルールがMLETRですし、2005年の電子コミュニケーションに関する条約だということになります。そうすると、MLETRだけを導入しても意味はなくて、その前段階のあらゆる書面について、それと同じ情報を含んだ電子的記録を同じものとみなすべきかどうかという判断が必要になってきます。日本は、個別に条文を置くことで、電子的な代替物が書面と同等であるという規定になっています。例えば、株主名簿や海上運送状については、これらに相当する電子的な記録が株主名簿や海上運送状といえるかどうかを判断し、個別に条文を置いています。つまり、包括的な第1段階目がないため、有価証券にかかわらず、あらゆる書面について、これを電子化した記録が一体どのように扱われるのかという問題が、書面ごとに出てきます。   さらに、保険証券とデリバリーオーダーに関しては、また別の問題があります。これらについては、実質法はこれを書面で発行することを要求していないので、法が要求しているという要件を満たさないということになります。先ほど座長が商法の改正は対象ではないとおっしゃっていたのですが、現行法では、デリバリーオーダーを紙で作成すべきという規律はありません。そのため、少なくともMLETRに沿って電子化を実現しようとすると、これらの証券については、そもそも電磁的記録が書面性の要件を満たしている、満たしていないかを判断するプロセスに乗ってこないのではないかと思います。   MLETRを導入するといった場合にも、MLETR本体以外のところにもやはりいろいろ考えなければいけないことがあるのだというところをまずは指摘させていただきたいと思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○池山委員 再々すみません、池山でございます。2点ございます。   一つは、先ほどの前半、後半に分けることについてでございますが、先ほど異論なしと申し上げましたけれども、細かく言うと、前半のテーマになっているものについても後半の議論の結果が反映されざるを得ないと、そういう論点は当然あるだろうと思います。行ったり来たりするという中にはそこも含むであろうと。   せっかくなので具体的に申しますと、例えば前半の中に支配の概念という言葉がありますが、前提として、それは支配の概念それ自体とは別に、そもそも紙の船荷証券のときに、物理的な占有者という意味での所持人と、それから、裏書の連続ある適法な所持人と推定される者という区別が紙の場合にはあると、それを電磁的船荷証券記録についてもどのように反映させるか、させないかという議論は当然、後半の議論に影響してくると。それから、転換請求権の可否うんぬんのところも、請求権の存否というだけではなくて、転換された紙ないし電磁的記録の効力の問題、形式的には裏書の連続的なものが途切れるので、そこの効力をつなぐためにどういう書き方をするかという点も、やはり後半の議論とつながってくると思います。でも、それを言い出したら切りがないので、恐らく前半の議論をするときには、ここは後半の議論によって更に論理的には変わってきますよということを明示したうえで議論をする、意識するということが重要ではないかと感じております。それが1点目です。   それから、私が最初に手を挙げた後に出てきた議論の中で、デリバリーオーダーの話がございました。私、弁護士ではございますけれども、日本船主協会の推薦を受けて出ている立場として申し上げますと、恐らく状況は倉荷証券とも更に違うのかもしれないと理解しております。少なくとも私が理解する限りは、船荷証券が回収されてデリバリーオーダーが発行されて、それから更にそれが譲渡されるというのは、私個人は見聞したことはありません。ただ、厳密に言うと、日本の運送人が発行したものであっても荷渡しは世界中で行われるわけですから、たまたま日本にいる弁護士である私が見聞したことはないといっても、実際は海外ではそれはあるのかもしれないと、そのときに運送契約の準拠法が仮に日本法であったとしたら、その回収後発行されるデリバリーオーダーの準拠法というのは別個考えられるのかどうかというようなやっかいな問題があります。それを議論するつもりはないのですけれども、いずれにしろ、私は取りあえずデリバリーオーダーは、保険証券とも違って、あるいは倉荷証券とも違って、そもそも譲渡ということが実務上実際に想定されるのかどうかということが、そこ自体も問題になります。もっというと、そもそも今、デリバリーオーダーがどの程度使われているのかという問題もあります。  私の理解では、実際は結局、デリバリーオーダーは譲渡うんぬんというより、船荷証券の回収後、提出した最終的な権利者に間違いなく現場で貨物を引き渡すための連絡票的な機能というのがかなり大きいと思います。そうすると、どういうことが行われるかというと、別にデリバリーオーダーの代わりにデリバリーオーダー番号みたいな、要するに暗証番号的なものを渡して、それをピッと現場で入力すれば、そうするともうデリバリーオーダーを持ってきた人と同じようになると。当然それだと譲渡は想定しないけれども、最終的な提出した所持人、権利者がその番号を別の人に言えば、別の人に事実上渡すこともできてしまうというのもあります。   くどくど申しましたけれども、趣旨としては、デリバリーオーダーについても議論の対象とするというのであれば、そもそも今、デリバリーオーダーがどの程度使われていて、かつその機能はどういうふうに用いられているかというものの分析なしに、これをここで取り上げるかどうか議論するというのは少し、砂上の楼閣になりかねないという気がします。今日この話が出たということは是非持ち帰って、こういう話が出たけれどもどうなのかというのは、業界の方にもフィードバックして意見を聴く必要があると感じました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。先ほど笹岡幹事から頂いたMLETRとの関係の説明と今の池山委員の御発言は、少し関連しているところがありますので、もし両者について事務当局から何かコメントがあれば、お願いします。 ○渡辺幹事 ただいまの御議論を拝聴させていただきまして、まず最初に笹岡幹事の方から御指摘いただいたところというのは、我々も同じような考えを持っておりまして、今回の議論の対象とするためには、やはり紙を前提とする何らかの実質法というものがあるものがやはり対象なのかなという気がしております。もちろんデリバリーオーダーというものを議論の対象から一切省くというつもりはございませんけれども、もし対象とするのであれば、その実質をやはり固めるところからスタートしなければいけないというのが正に今の池山委員からの御指摘だったかと思いますけれども、そういうところから始めて、更に電子化できますかと、こういう議論なのだろうと理解したところでございますが、果たしてそういった議論ができるのだろうかという問題があるのと、そのニーズというのが本当にあるのかどうか、それが必要なのか、今、特に恐らく紙でなければ駄目だというルールはないだろうと思っているところでございますけれども、それを電子的なもので使うために、改めて実質法からの規定ぶりをどうするのかというところまで遡って議論をしなければいけないのかどうかというところが問われているのかなと思ったところでございまして、そういったところの皆様の御感触を頂ければと思っております。   もう一つ別のお話なのですけれども、前半パートと後半パートのお話をいただきまして、関連するところがあるのではないかというのは、正におっしゃるとおりでございまして、一応前半パート、後半パートと申し上げましたけれども、少し我々、説明が不足しておりましたけれども、これは1回やってそれで終わりというつもりは全くございませんで、事務当局の今のところの腹積もりとしては、前半パート、後半パートをやって、それを恐らくもう一巡やるだろうというぐらいの腹積もりでおりますので、恐らく前半パートに関係する議論が後半パートで出てきたときも、その後の前半パートの2巡目でそういった議論を反映した形で御議論いただけるような形で準備はさせていただくつもりでございますので、少しその点について説明が不足しておりましたので、補足させていただきました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○山口委員 弁護士の山口でございます。一つは、MLETRを今回の立法において考慮するという、当然にそのとおりだと思います。そのほかに、これは後で御説明があるかと思うのですが、Law Comissionのリコメンデーションが出ましたので、イギリスがその方向で正に立法化するかどうか、まだ不明のところはありますけれども、イギリスという国は船荷証券においてはかなり世界的に力を有している国でありますし、もしこの国の法制が仮に固まったとすれば、多くの国がこれをフォローする可能性が高いものですので、当然それも考慮に入れた上で御議論されるべきものだと思っております。これはこの後で指摘がございますので、多分そのときに御指摘があるだろうと思いましたが、この法制化に当たり考慮すべきものとしては、このLaw Comissionのリコメンデーションもここでは入れていただきたいということをここでお話ししたいというのが一つ。   それから、二つ目なのですけれども、条約の改正のヘーグ・ヴィスビー・ルールとの兼ね合いについての理解なのですが、これは私もわざわざ改正の必要がないというのは同じ議論なのですが、私の理解が間違っているかどうかだけ少し確認をさせてください。ヘーグ・ヴィスビー・ルール上の運送契約というのは、船荷証券又は船荷証券類似の有価証券、これに基づく運送契約となっております。ここに書いてあるとおりに、本件法制審において、電磁的船荷証券が船荷証券でもなければ有価証券でもないということであれば、そもそもヘーグ・ヴィスビー・ルールの適用はないと、こういう前提で、だから別に改正とかそういうことは必要ないと、御理解としてはこういう結論なのですよね。   イギリス法の議論はひょっとしたら違っているかもしれなくて、電磁的船荷証券の保有、占有を認め、なおかつ電磁的船荷証券記録を電磁的トレード・ドキュメンツでしたかね、エレクトロニック・トレード・ドキュメンツとしてヘーグ・ヴィスビー・ルールの条件に寄せようとしているような議論がございますのですが、全般の議論としては、この電磁的船荷証券がヘーグ・ヴィスビー・ルール上のタイトル・ドキュメンツに当たらない、あるいはその当たることがディスクリアであるということで、誰もこれが適用になるというふうな議論はしていない、されている方も当然いらっしゃいます、議論はありますけれども、多くの場合は適用されないという前提ですので、だから改正の必要があると、こういう結論でよろしいのですよね。 ○渡辺幹事 ただいま我々の方で考えているところとしては、まず、電子化というものが条約に反するということは少なくとも、ないだろうというところをまず確認したいというところで、そこは大丈夫かなと思っているところです。ただ、では、我々の方で今考えている、仮称ですけれども、電磁的船荷証券記録、これが発行された運送契約について、この条約が常に適用されないかどうかというところまで明確に検討したわけではございませんので、少しそこの点は留保させていただければと思っております。 ○山口委員 分かりました、結構でございます。理解は同じでございますので、少し確認だけのものでした。すみません。 ○藤田部会長 いずれにせよ、日本の国際海上物品運送法はヘーグ・ヴィスビー・ルールと違って、証券に適用するという立場をとらずに、証券の発行の有無に関わらず運送契約に適用するとしております。ヘーグ・ヴィスビー・ルールは運送契約の定義の中に、証券に表象されているという要素が入っているので、それが電子船荷証券に含まれようが含まれまいが、日本法の実質的な運送契約の規律が変わるわけではないという点が非常に大きな違いであり、それが大前提だと思います。 ○山口委員 それはよく理解しております。英法の場合はそこに手を入れなければいけないかもしれないということがLaw Comissionのコンサルテーション・ペーパーに書いてあるのですが、日本の国際海上物品はどちらかというと、先取りして全ての国際海上運送に適用されるような網掛けをしておりますので、電磁的船荷証券が非常に受け入れられやすい法制だということをよく理解しております。どうもありがとうございます。 ○池山委員 今の点ですけれども、正に部会長が補足くださったとおりだと思います。だとすると、少なくとも日本国の立場としては、締約国でありますけれども、実務家はなぜかヘーグ、学者の方はハーグというという不思議な伝統がございますが、私も実務家なのでヘーグと申しますと、ヘーグ・ヴィスビー・ルールという条約の解釈として、電子船荷証券がこれの対象になるのかという論点については、日本としては態度表明をする必要はないし、すべきでもないという理解でいるのですが。 ○藤田部会長 事務当局はどうお考えでしょうか。私も、事務当局自身どちらかというとそういう態度かなとも思ったのですが、どうでしょうか。 ○渡辺幹事 そうですね、少なくとも、手形のように、条約によって電子化が制限されているわけではないというところが確認できれば、それでいいのではないか、それ以上の部分についてはある意味、態度決定しないということもあり得るのかなというふうなところは今のところ思っておりますが、すみません、若干私自身未整理なところが多分にございますので、その点、御容赦いただければと思っております。 ○藤田部会長 現在の説明は、条約上の船荷証券が電子的なものを含むかという点については、含むにしても含まないにしても、こういうふうな国内法を作ることは問題ないですというふうな説明なのですが、それ以上踏み込むかどうかは、池山委員は必要ないのではないかと言われたけれども、その御意見も踏まえて更に検討するということになるのでしょうね。 ○洲崎委員 洲崎でございます。主にどの点についてということではなくて、今回の部会資料で書かれていることについて基本的に妥当であると思っておりますが、一つコメントさせていただこうかと思ったのが、論点の検討順序、第1の2で、参考資料2-1で分かりやすく書いてございますけれども、①、②、③、⑦、⑧は論点としてある程度独立しているので個別に取り出して検討する、④、⑤、⑥は密接に関連する問題なので別々に取り出して検討することは適切ではないとされている点は全くそのとおりであろうと思っているということでございます。   紙の有価証券には裏書という行為に特別の法律効果が結び付けられますし、特に手形の場合だと遡求義務を負うという非常に大きな効果が発生するわけですけれども、一方、船荷証券、特に電磁的船荷証券記録の場合に、裏書に相当する行為をしたときにどういう法的効果を持たせることができるのか、あるいは持たせるべきなのかというのが必ずしもはっきりしていないところがあって、これは現在の規約型の電子船荷証券でも裏書らしき行為というのは確かに行われているようだけれども、現実に具体的にどういう形で行われているのか、それから、当事者がそれに対してどういう法的意味があると思ってやっておられるのかというのは必ずしも分からないところがあって、研究会でもここは確かに議論はしたのですけれども、裏書に相当する行為をしたときにどういうことになるのかということについて、必ずしもはっきりしないところがあったということではないかと思っております。   私の理解では、そのことが④の類型論のところで、3案併記というやや中途半端にも思える形につながってしまったのではないかと思っておりまして、今回⑤の権利譲渡場面の規律として、裏書に相当する行為の要否、内容等について検討すること、すなわち⑤の問題を独立した重要論点として位置付けられているという点に特に注目をいたしました。恐らく、ここを検討して一定の結果が得られれば、これが④の類型論に大きな影響を与えることになるのではないかと思いますし、また、⑥の効力論にもそれが影響してくると思います。そういう意味で、この④、⑤、⑥、相互に関連させる形で検討を行ってはどうかという事務当局案、特にこの⑤の裏書の問題を独立した重要論点として位置付けられているという点に賛成したいと思います。どうもありがとうございました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。事務当局から何かございますでしょうか。 ○渡辺幹事 特にございません。ありがとうございました。 ○藤田部会長 ④、⑤、⑥の中で、⑤が特に中核的な問題として考えられそうだという辺りは重要な御指摘だったかとは思います。   それでは、ほかに御意見等ございますでしょうか。基本的には最初の前提の問題はおおむね合意があったと考えてよろしいでしょうか。例えば、法改正の必要性を否定した人は一人もいなかったと思います。法改正による電子化が可能かについても、否定する意見は全くなかったと思います。対象としてどこまで含んだ扱いにするかについては、倉荷証券、船荷証券、商法上に規定されている有価証券以上に広げるべきだという意見は強くなかったですが、ただ、保険証券、デリバリーオーダーなど若干言及された書類がございまして、そういったものについて、積極的に扱えという御意見ではなかったにせよ、どういうふうな整理でそれを扱わないというふうにするかということと、それを扱わないことがいかなる意味合いを持つかということについて誤解ないように説明すべきだといった意見があったかと思います。商法上の有価証券のうち倉荷証券については、扱ってもいいのではないかという意見も相当ありましたが、性格が違う、コンテクストが違うのではないかという重要な御注意がございましたので、この辺りは更に今後、検討していくということになるのだと思います。   基本的な考え方として、電子データを船荷証券そのものとするというのはやや難しいということを前提に、しかし船荷証券の規定と同様な規定を設けるような考え方で、電子記録債権法のような別建てにするのではないという方向もおおむね異論なかったと理解しておりますけれども、私が今まとめたようなことでおおむね合意があったと理解させていただいてよろしいでしょうか。もしこの辺り、御異存がないようでしたら、今日の会議の目的の重要な部分が達せられたことになり、今後の進捗にも非常に積極的な影響があると思います。そのようにまとめさせていただいてよろしいでしょうか。   どうもありがとうございました。それでは、若干早いといえば早いのですが、少し休憩を挟んで後半のアジェンダに入らせていただくということでよろしいでしょうか。   では、15分ほど休憩して、15時20分から再開することにさせていただければと思います。それでは、一旦休憩とさせていただきます。           (休     憩) ○藤田部会長 それでは、時間ですので、再開いたします。   次に、部会資料2の第4と第5について、議論に入りたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○生出関係官 それでは、事務当局の関係官の生出から、部会資料2の第4、第5の部分を説明いたします。   まず、「第4 電子化された船荷証券を「物」、「有価証券」、「船荷証券」とすることの可否等」です。電磁的船荷証券記録の法的位置付けを考えるに当たっては、まず、電磁的船荷証券記録を有価証券である船荷証券そのものとすることができるか否かを検討する必要があります。仮に、電磁的船荷証券記録を船荷証券そのものとすることができると整理する場合には、船荷証券の方式として電磁的記録を媒体とすることを認める方向で検討することになり、また、民法や商法等の適用において船荷証券、有価証券、物に該当するものとして、それらに関する規定が直接適用されることとなります。   しかしながら、詳細については補足説明2の箇所に記載しておりますが、民法や民事執行法の規定を見ると、我が国の法体系は電磁的記録を物、有価証券、船荷証券そのものとすることは想定していないように考えられます。また、MLETRも電子的移転可能記録に移転可能な証書又は文書との機能的同等性を持たせるという枠組みの中で占有に代わる支配という概念を創出していることに鑑みても、電磁的記録を物、証書、文書そのものとすることは想定していないように考えられるところですので、電磁的船荷証券記録を有価証券である船荷証券そのものとすることができないと整理したとしても、MLETRとの関係で齟齬又は矛盾が生じるものではないと考えられます。   なお、補足説明4の箇所にも記載しておりますが、電磁的船荷証券記録を有価証券である船荷証券そのものとはせずに、有体物であることを前提とする民法上の物や有価証券の概念との整合性を図ろうとする立法の在り方は、我が国における電子記録債権法などの有価証券のペーパーレス化に関する近年の法改正の在り方とも整合的なものといえるのではないかと思われます。   船荷証券の電子化を実現する法改正を検討するに当たって、有体物ではない電磁的船荷証券記録について、物、有価証券、船荷証券そのものではないと考える場合には、電磁的船荷証券記録に関する規定を別途設ける必要があるものと考えられます。   なお、電磁的船荷証券記録を物、有価証券、船荷証券そのものではないとする場合には、今お話ししたように、電磁的船荷証券記録に関する規定を別途設けることになるため、その中で、電子化されることに伴う適切な配慮、例えば複数通発行を認めないとすることなどが考えられますが、このような配慮をすることができるという利点も認められますが、他方で、電磁的船荷証券記録が物ではないことになる結果、担保物権の客体にはならず、紙の船荷証券とは異なり、それ自体が留置権や質権の対象とはならないことともなります。これらの点について御検討いただければと思います。   部会資料2の第4の説明は以上になります。   続けて、部会資料2の第5についても説明いたします。「第5 海外法制の最新動向」です。御存じのことかと思いますが、船荷証券は現状、国内海上運送では利用されておらず、国際海上運送において利用されているため、我が国の商法等の適用を受ける船荷証券に関しても、その利用の当事者は我が国の関係者にとどまらず、外国の企業等が含まれることが多くなっており、日本法で船荷証券の電子化に関する法改正を実現し、貿易実務の中で日本法がその準拠法として選択される、又は排斥されないためには、その内容が国際的な調和がとれるものにすることが重要であるといえます。   また、最近の話でございますが、我が国が参加するG7において2022年5月に公表された共同大臣声明の附属書においても、電子的移転可能記録の利用を促進するために、国内の法制度を見直す際のガイダンスとして、全ての当事者にとって法的枠組みが明確であることを求める法的明確性や、国際貿易の促進のために外国で作成等されたことを唯一の理由として電子的移転可能記録の有効性を否定することを禁じるグローバル受容性が主要原則の一部として挙げられているほか、MLETRと整合性のある法枠組みの採用を支持することが表明されています。   現時点で確認できている船荷証券の電子化に係る主要海運国の国内法の整備の概要については、部会資料2の10ページにある表に整理しました。アメリカ、韓国、シンガポール、イギリス、ドイツについて記載しておりますので、御確認いただければと思います。   これらの主要海運国の状況を前提とすると、UNCITRALのMLETRを参考にして国際的な調和がとれる内容の国内法を整備するというのが現時点における国際動向であるとも考えられ、またMLETRと整合性のある法枠組みの採用を支持する旨のG7の協同大臣表明の存在に鑑みても、UNCITRALのMLETRを重要な指針として法改正の在り方を検討していくことが望ましいと考えるところでございますが、このような方向性について御検討いただければと思います。また、海外法制に関して今後追加で調査するべき事項があるか、ある場合はどのような事項が考えられるかについても御検討いただければと思います。   そして、補足説明2の箇所にも記載しておりますが、イギリスにおいてはLaw ComissionがMLETRを参考に立案した改正草案に対するパブリック・コンサルテーション手続を行い、2022年3月に最終レポートを公表しております。その概要について南関係官におまとめいただき、それが今回の参考資料2-2になります。イギリスにおける船荷証券の電子化に向けた改正の動きをどのように評価し、我が国において船荷証券の電子化を実現する法改正を検討するに当たってどのように考えるかを御検討いただきたく、まずは参考資料2-2を御作成いただいた南関係官から内容について御説明いただきたいと思います。   それでは、南関係官、どうぞよろしくお願いいたします。 ○南関係官 南の方から、イギリス法における電子船荷証券に係る論点とLaw Comissionの立場について御紹介をさせていただきます。報告に当たりましては、既に公表されておりますLaw Comissionの報告書及び立法の草案をベースにお話をさせていただきます。なお、草案の条文についても記載しておりますが、あくまで試訳であり、修正しなければならない点も今後あるかと思います。その点については御海容いただければ幸いです。   そこで、初めにですが、現在、イギリスにおいても電子船荷証券を含む電子貿易文書に係る立法が進められ、Law Comissionより報告書が公表されております。報告書によりますと、業界において現在行われている貿易実務をそのまま実行できるようにしつつ、電子貿易文書の利用という選択肢を増やすこと、電子的形態の貿易文書を占有することを認めること、技術的中立性を確保すること、そして国際的な互換性の確保、すなわちMLETRの目的及び政策に沿いつつもイギリス法に合わせた形を目指したということがサマリーの中で述べられております。   今回の御報告では、Law Comissionにより提案された草案等を素材に、従来イギリス法の文脈において議論されてきた電子船荷証券に関する法的論点について紹介いたします。特に、(1)電子船荷証券の意義や機能に関する要件、(2)電子船荷証券の譲渡の可否、(3)電子船荷証券の譲渡とその法的効果、(4)電子船荷証券と紙の船荷証券の転換、そして(5)その他の各論を紹介いたします。   そこで、まず電子船荷証券の意義や要件について見ていきたいと思います。電子船荷証券とは、従来、紙の船荷証券に記載されているものと同じ内容のデジタル情報を含むものであり、誰が発行者に対して契約上の権利を行使し、運送品に対する占有権を行使し、それらの権利を移転することを確認し得る電子システムであると説明されてきました。より抽象的には、電子船荷証券は紙の船荷証券と同等の機能を有し、電子的な方法によりなされる船荷証券であるともいわれています。そのため、どのような要件を満たせば紙の船荷証券と同等の機能を有する電子船荷証券といえるのかということが問題となります。   Law Comissionの草案の内容においては、電子貿易文書について以下のように述べられております。すなわち、第1条として、紙の貿易文書の意義と適格電子文書の意義という条項が設けられています。これらの条項を見ますと、Law Comissionによる草案によれば、電子船荷証券を含む電子貿易文書とは何かについて明確な定義規定が置かれていることが分かります。すなわち、紙の貿易文書と同様の情報が電子方式による情報に含まれる場合、当該電子方式による情報を含めて適格電子文書として位置付けられます。そして、第2条において定められているいわゆるシステム要件が用いられているものについて、適格電子文書を電子貿易文書であるとして当該法律上の電子貿易文書とし、各規定の適用を認めることとしています。換言すれば、電子システムを利用している文書であれば当然に本法が定める電子貿易文書に当たるのではなく、一定の要件を満たした電子貿易文書のみが法の適用対象となることを示しています。   それでは、その前提となる適格電子貿易文書として認められる要件とは何かについて見ていきたいと思います。草案第2条第1項各号において定められている信頼し得るシステムによって運用されているものであるかどうかということが示されています。   本草案規定によれば、電子貿易文書と位置付けられるための要件として、①対象となる電子文書が特定され、コピーが作成されないこと、②ハッキング等による無権限による改ざん等が行われることから保護されているものであること、③当該電子文書が複数の者によって支配されないこと、④支配者が当該電子文書に係る権限を証明可能であること、そして、⑤当該電子文書が譲渡された場合に、譲受人の当該電子文書に対する支配する権能を剝奪できるものになっていることが挙げられています。さらに、これらの点が信頼に足るためには以下の事項が含まれるものとし、第2条第4項でそれぞれの信頼に足るものであるかどうかの要件が示されています。   従来イギリス法では、主として電子船荷証券の実体法的な側面というものが議論されてきていますけれども、この点についてはその前提として、あるシステムが信頼に立つものであるかどうかをその要件として定めているということがいえます。これらの要件は基本的にMLETRの要件と平仄を合わせているものと考えられます。すなわち、MLETR第10条の移転可能な証書又は文書の1(b)において示されている、その電子的記録が電子的移転可能記録であると識別すること、その電子的記録が創出されたときから全ての効果又は有効性を有さなくなるまでの間、当該電子的記録を支配することができるようにすること及び、その電子的記録の完全性を保つことという要件と平仄が合うものであると考えられます。   もっともイギリスにおける草案では、当該システムが有する情報の完全性を確保するための方法の具体的内容については定めが置かれていません。この点、MLETR第10条第2項では、完全性を評価する基準は、その電子的移転可能記録が創出されたときから全ての効果又は有効性を有さなくなるまでの間に生じた全ての認められた変更を含む、その電子的移転可能記録に含まれる情報が通信、保存及び表示の通常の過程において生ずる全ての変更を除いて全てそろったまま、かつ不変のものであるかどうかによるものとすると定めていることとやや対照的です。この点、Law Comissionからは、どのようなシステムが完全性を有するものであるかについては業界に委ねるのが最善であるとの意見が出され、具体的な要件を明示してしまうと不要な複雑さを生じさせかねないことが危惧されたからだと説明されています。   次に、排他的支配という要件についても、MLETR第11条の支配に関する規定である、ある者によるその電子的移転可能記録への排他的な支配が確立されていることと、その者が支配を有している者と識別することとも合致します。もっともこの排他的支配については、コンサルテーション・ペーパーの見解として、電子船荷証券の基準としての支配の要件はあくまで事実に係るものであり、占有から区別された法的な権利の意味で用いるものではないと説明されています。したがって、ここでいう支配とは当該文書を利用等することができる能力として定義付けられていると説明されています。   また、MLETR第12条が定める信頼性の基準として挙げられる信頼性の評価に関する全ての業務規定、データの完全性の保証、システムへの無権限のアクセス及び利用を防ぐ能力、ハードウエア及びソフトウエアのセキュリティー、独立組織体による監査の定期性及び範囲、その手法の信頼性に関する監督機関、認定機関又は自主的スキームによる宣言の存在及び、全ての適用され得る業界の標準と、ほぼ同様の規定が置かれていることが分かります。   次に、電子船荷証券の譲渡の可否及びその前提となる占有の問題について御紹介をしていきたいと思います。従来、譲渡とは通常、あるものの占有を譲渡人から譲受人に対して移転させることを意味するとされてきました。そのため船荷証券の譲渡とは、当該船荷証券の占有を譲渡人から譲受人に移転させるということを意味します。紙の船荷証券の場合には、紙という有体物の占有が譲渡人から譲受人に移転し、結果として譲渡人の当該船荷証券に対する占有が失われることから、この点においてはほとんど問題にはなりませんでした。   ところが、イギリス法においては有体物ではない電子データ等については従来、占有することはできないとされていたことから、電子船荷証券のような電子データによる船荷証券を占有することは法的概念として考えることはできず、さらに占有の移転という意味で用いられる譲渡も、その概念の問題として実際に問題が生じ得るとされています。イギリス法において占有とは、大別して事実上の物理的支配と占有の意思という要素から構成されると指摘されています。具体的には、物に対する事実上の支配の行使と、それに付随する支配の行使から他人を排除しようとする意思であるとされています。しかしながら、先ほど述べたように、占有は有体物に対して成立し得るものであり、無体物について占有が認められるかが問題とされてきました。実際、Law Comissionによる当初のコンサルテーション・ペーパーにおいても、無体物に対する占有が認められるかについては、解釈により乗り越えられるとも考えている節があったものの、やはり無体物に対しては占有を認められないということは確立した判例法理ともいうべき状況でもありました。   そこで、Law Comissionは解釈により、電子船荷証券を含む電子貿易文書という無体物について占有を認められるかが不明確であることに鑑みて、以下のような草案を提案しました。すなわち、人は電子取引文書を占有し、裏書し、及び占有を喪失し得るという規定です。無体物である電子船荷証券を含む電子貿易文書を占有し得ることを明示することを提案したものの、Law Comissionによる報告書では、何をもってこれら電子船荷証券を占有するというのかについては条文化しないといっています。元々占有とはコモン・ロー上の概念であり、占有が認められるか否かは事案に応じて判断がなされるため、実際にそれを条文化することは困難であると指摘されています。   ところで、前述しましたように、イギリスにおいてはコモン・ロー上の占有の要素として事実上の支配と意思が必要であるとされていました。そのため電子貿易文書との関係では、特に②の意思との関係をどうするのかということも論点となっています。報告書の立場としては、電子貿易文書と紙の貿易文書は同じ法的機能を有するものであり、人と電子貿易文書との関係は人と紙の貿易文書との関係のアナロジーとして捉えられると指摘しています。したがって、本草案では電子貿易文書について、当該文書を支配している者が当該文書に対する占有者となるとしつつ、他方で、あくまで本法の目的を達する範囲で定めたにすぎず、占有概念の拡張等までを意図したものではないと考えられています。本草案では占有を認める旨が規定されているというわけですが、この第3条の規定では、占有の意思まで必要かどうかは明らかにはなっていません。   次に、電子貿易文書に対する占有を認めるにせよ、支配の要素だけではなく意思の要素も必要であることを報告書は明らかにしています。条文上は、支配している者が当該電子貿易文書を占有している者と位置付け、占有の意思については要件として要求されてはいませんが、他の法令においては占有の意思を明確にしていないものもあると指摘します。すなわち1889年問屋法がそれに当たるとしています。報告書では問屋法における条文と関連し、あくまで新たな資産に対して占有概念を拡張したものであるとの立場を表明しています。報告書では電子貿易文書に対する占有について、意思を要素から外し、支配のみしていれば電子貿易文書を占有し得るとしたものではないと結論付けています。その意味において占有の要素に必要な意思の要素を排除したものではないと考えられます。   もっとも、どのような場合に誰が占有しているとみなすのか、個別的な要件については、その困難性から明文の規定を置くことはしておりません。この点につき、あくまで裁判所の役割であるといっています。現在のコモン・ローを電子貿易文書の占有についてどのように適用すべきかを決めることが裁判所の役割であると述べています。したがって、どのような場合に誰が電子貿易文書を占有していると見るかはあくまで解釈に委ねているともいえます。   ただ、事実の問題として占有が認められる場合としては、どのように電子貿易文書を所持しているのかが問われます。この点、電子貿易文書を使用するか否かを決定する者を定めることはできるとし、実務においてもプライベートキーの所持やパスワードによる方法で、誰が電子貿易文書を支配し占有していると考えることはできるのだとしています。少なくともLaw Comissionによる草案は、電子データ等の無体物全体について占有概念を拡張するという意図はなく、あくまで電子貿易文書との関係に限定して法律上占有を認めるという方向であることが示されています。   さらに、電子船荷証券の譲渡の許容について御説明をさせていただきます。そもそも譲渡とは、譲渡人からその物の占有を剝奪し、譲受人が新たにその占有を開始するということを意味しています。譲受人は排他的に当該物に対して占有することが前提となり、逆に譲渡人はその占有を失わなければなりません。本草案では、当該文書の譲渡が譲渡直前まで当該文書の支配を行使し得る者から当該権能を剝奪することを確保するものであることが機能要件として求められています。電子船荷証券の譲渡人が当該電子船荷証券を譲渡すると、当該電子船荷証券に対する支配行使権能が剝奪され、他方で当該電子船荷証券の譲受人が前者である譲渡人の当該権能の範囲内において新たな権能を有することを示しているということになります。   それでは、電子船荷証券が譲渡ないしは移転した場合、その譲渡ないしは移転によってもたらされる効力がどうなるかが問題となります。紙の船荷証券の譲渡については、契約上の権利の移転と擬制占有の移転という効果がもたらされます。そこで、電子船荷証券の場合についても同様に考えることができるのかということが従来、イギリス法においても議論がされてきました。   まず、電子船荷証券の譲渡により契約上の権利の移転が生じるのかということについては、そもそも電子船荷証券がその効力の根拠となる1992年海上物品運送法における船荷証券には、電子船荷証券は含まれないと解されていたところです。そのため、電子船荷証券が譲渡されたとしても、証券の譲渡人から譲受人への契約上の権利の移転に関する根拠はなく、紙の船荷証券と同様の効果を生じさせることは難しいと指摘され、この点、Boleroなどではルールブック上、電子船荷証券の譲渡人と運送人との間の旧契約の終了、そして新たな証券所持人との間で同じ条件の契約を締結するという、いわゆる更改と呼ばれる法形式を採用しています。他方で、電子船荷証券の譲渡による擬制占有の効果についてはコモン・ローに基づくものであって、コモン・ロー上、船荷証券に電子船荷証券は該当しないと解されていることから、電子船荷証券を譲渡しても擬制占有の移転の効果を生じさせることはできないと考えられてきました。したがって、実務においてはBoleroなどにおいて、受寄者である運送人の承認を介在させることによってこれらの効果をもたらしたとされています。   それでは、Law Comissionによる草案はどのようにこの点について考えているのでしょうか。第3条に、電子貿易文書は紙の貿易文書と同様の効果を有するという規定を設け、また、電子貿易文書と同等の紙の貿易文書に関連して行われるものと対応して、電子貿易文書に関連して行われるものは紙の貿易文書に関連して生じる効果と同様の効果を有するという規定が設けられました。これは、草案では電子船荷証券について占有を認めることにより、法律問題として、当該文書に関連する債務の履行を請求し得る権限を有する者を決定することができるようになったとし、それと同様、もし紙の貿易文書に記録された債務履行請求権が移転した場合、それと同様の効果を電子貿易文書の移転によってなし得るようにしたものであると説明されています。従来、Bolero等の規約型の電子船荷証券においてなされた更改という方法によって、契約上の権利の移転がもたらされると考えられてきたわけですが、そのような構成は不要とし、また、同様に擬制占有の効果についても移転についても運送人の承認によるものとする構成も不要とすることにしました。したがって、従来、更改や運送人の承認という構成によって認められてきた権利の移転や擬制占有の移転という効果を立法により解決を試みたということになります。   しかしながら、ここで注意すべき点は、電子船荷証券を法的に船荷証券であるとか権原証券であるということを明示するのでなく、あくまで電子船荷証券を紙の船荷証券と同様の効果があるということを規定したにすぎないということになります。電子船荷証券を他の法令における船荷証券とか権原証券であると位置付けるのではなく、効果が同じであるということを示したわけです。したがって、例えば1889年問屋法や1979年動産売買法で規定されている権原証券に電子貿易文書が当然に含まれるということまでを意図したものではないと思われます。   次に、本草案では、日本においても論点として提示されている電子船荷証券と紙の船荷証券の転換について、第4条で条文を設けることを提案しています。イギリス法における電子船荷証券と紙の船荷証券の転換について、要件としては、新しい方式に転換された旨を記載することと、転換に関する契約等の要件が満たされているということが挙げられています。そして、効果として、旧様式による文書の効力が失われ、また、旧様式に表象されていた権利義務につき新様式の文書にその効力が移転するということが定められています。なお、この紙の船荷証券と電子船荷証券との転換については、イギリス以外の国において電子貿易文書が貿易文書として認められるか不明であり、そのようなニーズに応じて認めたものであると説明されているところです。   最後に、その他の論点として、まずは数通発行の電子船荷証券を認めるかどうかということにつき、草案では、電子船荷証券につき数通発行すべきか否かに関する規定は設けられていません。この点、Law Comissionによる説明によれば、電子船荷証券について、もし実務が数通発行を求めるのであれば、それ自体を禁止するものではないし、Law Comissionとしてはあくまでマーケットでの実務の問題に委ね、法案には記載しないということが示されています。   次に、電子貿易文書の文書該当性、署名、裏書との文言との関係についてです。これらの点については、従前よりイギリス法においては解釈により乗り越えることができるとし、特段の明文の規定を設ける必要はないと考えられています。また、電子署名についても既に柔軟な電子署名が認められているとし、本法において特段の規定を設けることはしませんでした。   裏書という行為との関係についてですが、Law Comissionでは、電子船荷証券について文字どおりの裏書はできないことから、たとえ電子文書の裏面に裏書することができなかったとしても、裏書することができるものとして電子船荷証券を扱うことを明示する規定を設けました。すなわち、先ほども紹介した、人は電子取引文書を占有し、裏書し、というところに当てはまります。したがって、本条では電子貿易文書の裏書を許容し、3項で電子貿易文書と同等の紙の取引文書に関連して行われるもの、すなわちここでは裏書について、それと同等の行為が行われれば紙の取引文書に対して行われる裏書と同様の効果を認めるものとなっています。   イギリス法において若干、私の方から幾つか特徴的なところをお話しさせていただきますと、まずは占有概念を拡張することによって電子貿易文書、すなわち電子船荷証券についても占有し得るという規定を設けています。確かに、イギリス法では、限定的ではありますけれども、占有の拡張ということを本法では目的としているということになります。他方で日本法の文脈において同様に考えることができるのか、民法上の占有概念や電子的な記録、電磁的記録を物として占有することというのが問題となるところかと思われます。   次に、効力との関係についてですが、イギリスでは、ごく簡単に電子貿易文書につき紙のものと同一の効力、効果を有するとし、その譲渡の効力についても同様であると述べているにすぎません。さらには、具体的な適用等については主として裁判所の判断に委ねるとしています。日本法においても、商法や民法の規定と同様のものを具体的に規定せず解釈に委ねるという方式も考えられますが、他方でイギリス法とは異なり、判例に委ねるということができたとしても、適用関係について予測可能性を害する可能性も否定できず、どこまで具体的に規定を設けるかどうかは今後の検討が必要になってくるのではないかというような印象を持っています。   さらに、全体的に見てイギリス法はかなりシンプルな条文構成を想定されており、必要最低限の草案になっている印象であるといえます。   以上、私の方から御報告は以上とさせていただきます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、今説明のあった内容について、どなたからでも結構ですので、御意見を頂きたいと思います。第4及び第5の前半、MLETRを重要な指針として法改正の在り方を検討していくことが望ましいかといった点については、既に休憩前にも御意見頂いておりますけれども、もし更にあるようでしたら、さらに御意見を頂くとともに、イギリス法の紹介についても御意見、御質問いただければと思います。どなたからでも、よろしくお願いいたします。 ○小出幹事 小出でございます。どうもありがとうございます。まず、前半部分につきましては、私は冒頭に申し上げましたとおり、MLETRというものを参考にして議論していくのが望ましいということについては賛成でございます。その上で、南先生のイギリス法の御紹介について、少し御質問をさせていただければと思います。   1点、まず質問させていただきたいのは、今回のLaw Comissionの議論の中で、MLETRというものに対する明示的な言及というのはあるのでしょうかという点です。つまり、Law ComissionはMLETRを採用するというつもりでこの条文を書いたのか、それとも、そこまで明示しているわけではないのかという点についての確認をさせていただければというのがまず1点目です。   2点目は、それとも少し関係するのかもしれませんけれども、大変MLETRと親和的な条文が多いように思う反面、細かいところを見るとやはり若干違うようなところもあるような気がして、もちろん占有の部分は一番その典型的か、それはある意味細かくなくて重要な点かもしれませんが、そこは置いておきまして、例えばなのですけれども、第2条に挙がっているような様々な要件というものは、既に南先生からも御説明があったように、必ずしもMLETRと全く同じものではないということが示されているわけですが、一つ、例えば、先生の資料の4ページにあるものの第2条の(4)のところなのですけれども、これを見ますと、ここに挙がっている要素というのは確かにMLETRの12条に挙がっている信頼性の基準の要素と非常に同じものが挙がっているのですが、MLETRの12条の方では、これらの要素というものは別に要件ではなくて、これらのことを踏まえて判断をするという一種の例示であると書かれているのですけれども、こちらの第2条の(4)を見ますと、むしろ、これらのものはある意味、要件であると、これらのものはそろっていなければならないのだというように見えまして、ある意味ではかなり技術的に特定のものを要求しているようにも見えます。そういったことも含め、冒頭の質問と共通するのですけれども、イギリス法のLaw Comissionの整理というものがMLETRをどのように理解しているのか、あるいはそれに準拠しようと考えているのかどうかというところについて、教えていただければと思います。 ○南関係官 まず第1点目ですが、イギリス法がMLETRに沿っているかどうかということですが、Law Comissionのペーパーの中では、基本的にMLETRから外れるものではないというようなことが前提として指摘されています。すなわち、国際的な互換性の確保ということをかなり意識しておりまして、MLETRの目的及び政策には基本的には沿うものであるということはLaw Comissionの中で意識的に述べられています。ただし、これは二つ目の御質問と関わってくるかもしれませんが、MLETRの目的やその趣旨、政策には沿うとはいうものの、やはりイギリス法として合うところと合わないところというのが出てくる可能性があるだろうということで、イギリス法において取り入れる場合には、やはり一部イギリス法としての独自性というのが出てくる可能性は示されておりました。   そうしたことを考えますと、私自身少しリサーチが足りなかったところではあるかもしれませんけれども、確かにMLETRでは技術的な部分については要素として例示しているところではあるのですが、少なくともLaw Comissionの草案を見る限りは、これらを一種、システムが信頼に足るかどうかについて条文上述べているところからすると、要件的なものとして示しているのではないかとは考えております。もっとも、実際に要件なのか要素なのかというのは、もう少しこちらの方で検討させていただければと思います。 ○藤田部会長 ありがとうございました。小出幹事、よろしいでしょうか。 ○小出幹事 ありがとうございます。正にイギリスもG7の一国で、去年のデジタル大臣会合って正にイギリスでのG7で、イギリスはかなり主導的に始めたものですので、英国としてはやはりMLETRを採用するという方向性は多分、国としてはあるのだと思います。もちろんLaw Comissionとは少し別かもしれませんけれども。ですので、我々として非常に興味深いのは、先ほど前半部の議論でもありましたけれども、どこまでMLETRにそのまま準拠すればそれを採用したと見てもらえるのかという点として、非常にイギリスの前例というものは参考になるのではないかと思いますし、UNCITRALがLaw Comissionのこのペーパーというのをどのように見ているのかということも、今後もし機会があれば調査できればと思いました。ありがとうございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そのほか、どの点でも御意見、御質問がございましたらお願いいたします。 ○吉田委員 日弁連の吉田です。よろしくお願いいたします。既に御指摘のとおり、海運の世界ではイギリス法が支配的といいますか、特に外航海運では、いずれもイギリスに関係する当事者の間の取引の場合にも、第三国法、いわゆる中立的な法律としてイギリス法が選ばれることが多くあるという実態があります。そのほかには、既に南先生が書かれたように歴史が古く、イギリス法が伝統的に強いということもあります。   私もこのサマリーとレポート本体を読んだのですけれども、Law Comissionのレポートとサマリーの中で、自分たちはイギリス法がプレエミネント・ステータス、いわゆる国際商取引の中で支配的な地位を占めてきたということが何度か述べられており、このテクノロジーの分野においてまだ法制化がされていないので、このプレエミネンスを失うリスクがあるということがサマリーの1ページのイントロダクションに書いてあって、ここのところが強く意識されているという印象を持ちました。   そして、例えば、この法案の1条の2にトレード・ドキュメンツの範囲があり、保険証券、デリバリーオーダーなど、割と広く法案の中に入っております。あくまでも推測にしかすぎないのですけれども、このプレエミネンスの地位を維持できるように広く法案の中に含めておこうという動きがあったかもしれません。一方で、日本の場合には、日本が世界を制覇するとか、そういうのもありませんので、これを全部日本法に含める必要はなく、日本で必要な範囲だけを見て、必要なものだけを法制度していけば必要かつ十分と考えております。   ただ、一方で、イギリス法はグローバル・コマースで使われているということの自覚と矜持を持っていることが感じられ、このレポート自体はよくまとめられていて、自分のように大陸法あるいは制定法をベースとした弁護士でもすごく理論的にすっと入ってくる内容でした。参考にした方がいいと思われたものは、私たちの今日の資料でいうところの①から⑧というナンバリングをした視点というのがあると思いますけれども、Law Comissionの方でもファイブ・ゲートウェイズという重要な五つの視点というのが書いてあります。その中では、例えば、南先生が御説明いただいた信頼性の要件ですとか、そういったところが一つのゲートウェイズに挙がっています。この五つのゲートウェイズに挙がっているものは、日本法と、今後作っていくに当たって、遜色のない内容になっているのかを検討していくと、よりよい法律になるであろうと思いました。   もう一つ、会議の最初に申し上げましたデジタル社会形成法の関連で、英国法が採用されると、実際に問題が起きたときの法的救済が英国裁判所の裁判管轄かロンドン海事仲裁機関の仲裁になることが多く、どうしても敷居が高い。全てコミュニケーションは英語で、イギリスの先生の御教示をいただかなければならない。船荷証券自体は英語であるということはやむを得ないと思いますが、やはり私たち、日本で教育を受けた人たちは、日本法で、日本の裁判所管轄で、日本語で理論的に難しいことを協議し、日本でリーガル・コンサルテーションを受けられる方が使いやすい。先ほど申し上げたように、様々な能力、契約形態の人がいる。日本の人があまねく使える法律という点において日本法がいいと思います。しかし、イギリス法の方がいいと、と選ばれてしまうかもしれない。イギリスの法案は7条で非常にシンプルなものなので、判例法のイギリスと異なり、日本は制定法の国なので、さすがに7条というわけにはいかないのですけれども、今後私たちが法案を作っていくときには、既存の船荷証券の法律との兼ね合いなどは大前提で、なるべく分かりやすく、簡明なものを作っていくということはイギリスの法案を参考にできることだろうと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。南関係官あるいは事務当局からは何かございますか。 ○渡辺幹事 では、事務当局から一言だけ。やはり分かりやすいものにしていくというのは一つのテーマだろうと思っておりまして、それと、国際的な平仄をどう合わせていくかというところで、正にこれからどのような形で案文のようなものをお示ししていくのかというところで、次回、次々回辺りの課題だろうと思っておりますけれども、そこのところは非常に重要なポイントかなと思っております。御指摘ありがとうございました。 ○藤田部会長 それでは、そのほか、どの点でもよろしくお願いします。 ○池山委員 ありがとうございます。先ほど来、英国法の実務への影響力の大きさという点の御指摘がありました。もちろんこの部会は日本法を審議する部会であって、にもかかわらず英国法についてわざわざこうやって紹介していただいたというのは、それ自体としても大変意義のあることであろうと思っています。その上でなのですけれども、もちろんこれは研究会ではないわけですから、この成果、この英国法の内容から、我々が日本法を立法するに当たってどういう示唆を受けなければいけないかということになるわけです。   私なりの理解は、正にこれは第4の論点とも関係しますけれども、論理的には実は英国法が占有できるということだけで済ませたように、やはり我々も、電磁的船荷証券も船荷証券とみなすというふうにするということは論理的にはあり得るのだと、ではイギリスのように何でしないのかということの説明が求められていて、そこの理由として私が理解しているのは、一つはまず、日本の法制的というよりは法体系的な事情ということで、正に手形の例、それから株券の例が挙がっています。それらのときにもあえてそのようなことをしていないのに、この船荷証券についてだけあえて特別立法をすると、有体物ではないけれども占有できると、そういう立法をする、そういう立法技術をとること自体の必然性がない、あるいは別個のハレーションを起こすであろうという点が一つと、もう一つは、そのような立法をしてしまうと当然、にもかかわらず実際適用できないではないかという論点が起きると、それは典型的に誰しも思い付くのは、やはり強制執行をどうするのか、喪失の手続をどうするのかという点、それから、細かなことのようですけれども、通数の論点もあります。結局イギリスには、私は不勉強なのですけれども、多分、法定記載事項として通数を書けと制定法がないから、解釈に委ねるということができるのだと思うのですけれども、日本法は幸か不幸か書いてあると、だから当然そこを考えなければいけないということになるのだと思います。   そこから派生した一つの質問は、英国法の場合はそういうことは、先ほど解釈によって委ねるという、乗り越えることが想定されているということだったのですけれども、実際、先ほど申し上げた通数だ、強制執行だ、喪失手続、特に強制執行は論理的には英国法でもあり得るので、そこについて問題があるから、そこだけは特則をイギリス側でも設けなければいけないと、そういう議論がされている形跡が見えないのですけれども、実際にそこは、日本人だったらそこは正に考えるわけですけれども、英国法の発想は余り考えなかったのでしょうか、どうなのですかというのが質問でございます。 ○南関係官 池山委員からの御質問は、正にそのとおりだと思っていまして、強制執行などについてイギリスではどういうふうに考えられているのだろうかと。少なくとも、電子貿易文書に関するLaw Comissionの法案の中には強制執行等に関する規定は設けられていないというような状況であるのと、もう一つは、Law Comissionにおける議論でも強制執行に関する部分については余り議論がなされていないという印象を持っています。少なくともこのLaw Comissionが公表している法案には強制執行に関する規定が全く設けられていないということは、実際に具体的に強制執行するという場面になった場合には、少なくとも現行法ないし別の法案等の規定を用いる可能性も示唆されます。その点については、まだ完全に見えていない状況になっています。 ○池山委員 ありがとうございます。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。池山委員の御指摘のうち、新しく作ろうとする、仮称ですが電磁的船荷証券記録、これを物として扱えるかどうかという部分につきまして、あるいは占有できるかどうかというところだったかと思いますけれども、そちらについて事務当局として難しいのではないかと考えている最も根本的な理由というところにつきましては、有体物ではないというところが一番大きいと思っております。他方で、では、イギリス法ができるのに、なぜ日本法はできないのかというところについては新たな視点かと思いますけれども、ここについては様々な考え方があり得るかと思いますし、皆様の御知見も頂ければと思っておりますけれども、私個人として感じているところとしては、やはり法体系の違いというのが非常に大きいのかなと思っております。   といいますのも、やはり日本の場合ですと、有体物であるということになってしまうと様々なところで影響がある、これは民事執行法のところにも少し規律があったりして、そういったところにどうしても影響してしまう。他方で、イギリス法につきましては我々も十分調査できているわけではありませんけれども、多くの部分を解釈に委ねることができる、こういうような法体系になっているところが大きいかなと思っております。また、コモン・ローというところも大きいと思います。やはりそういった全体的な法体系の枠組みということを考えますと、船荷証券だけ例外的に占有を認めるとかという話というのはかなり技術的にハードルが高い、我が国の法体系を考えると非常に難しいのではないかというのが私個人が今考えている感触というところでございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○池山委員 再度、関連して、池山でございます。その御指摘自体に少なくとも私個人としては違和感はございません。逆に、これもまた一つの理解の整理なのですけれども、英国法は単に、とにかく英国法だって有体物でなければ占有できないという前提なのだけれども、それを無理やり占有できると認めると立法をしてしまった、それで全てを処理しようとする、そうすると、我々が後の論点で議論しているような、電磁的船荷証券についてどのような類型があり得るのか、具体的な規定ぶりをどうするのか、すみません、特に前段ですね、どのような類型があり得るのかといった議論は、紙の船荷証券についての英国法の議論、具体的には詳細は存じませんけれども、それは当然そのまま引き継がれるのだという前提だと。我々は法体系的な理由で同じアプローチを採らないがために、逆にある意味、自由度が増して、そこを全く同じようにすることもできるし、この際、一部絞り込んだり、あるいは新しい考え方で類型化をするという、少なくとも考え方としてはいろいろな選択肢が出てくる、そこで選択をしていくのだと、そういう整理になるということですよね。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。そういう考え方は十分あり得るかと思っておりまして、元々のきっかけといたしましては、おっしゃるとおり法体系的な理由というものが非常に大きなウエートを占めて、我々として一から規律を考えていかないとなかなか難しいのではないかと、こういうスタートラインに立つのだろうと思います。そういうスタートラインで議論をしていくということになると、ある意味、いろいろと細かいところも電子化した場合に、紙と全く一緒でなくても、複数通発行を否定したりとか、そういったアレンジができるというところもあろうかと思います。もちろんこれは余りやりすぎるとMLETRと大分外れてくるというところもあるでしょうから、そこはどの範囲でやるのかというところはしっかりと取捨選択しなければいけないとは思いますけれども、基本的な今の議論の整理というのは正におっしゃるとおりかなと思っているところでございます。 ○池山委員 何回もすみません。これで最後にしますけれども、少し違う話ですけれども、英国法から受ける示唆に関して吉田委員がおっしゃったことに関連して、彼らはやはり非常にシンプルな条文を作っていると、非常に分かりやすいと、そこは日本法はなかなかそうはならないのはどうなのだろうという御指摘というか、コメント的なものがあったと私は理解をしています。   翻って議論の状況を見ますと、今回は、再々繰り返して恐縮ですけれども、前段階の研究会報告書なるものが公表されていて、正式に参考資料としても出てきていますので、それを参照することは許されると思っております。その上で見ると、研究会報告書の試案だと、やはり条文の中で大変大きなウエートを占めるのは、八つの①から⑧の論点の中でいうと、⑥の効力に関する規律の在り方ということで、①案、②案という前提で条文がたくさん並んでおります。しかも、それは④のA、B、C3案に応じた書き分けもあって、非常にたくさん並んでおります。ただ、これらの条文は、恐らく多くは船荷証券に関する条文のロジカルアメンドメント的な条項なので、ここで議論をするときには実際に書き下す形で一個一個議論を詳細に詰める必要があると思うのですけれども、最終的に立法をする場合には、とても長い準用・読み替え条文1項を置くということもあり得るのではないかと。これは本来ここで議論することではない純然たる立法技術の問題ですけれども、それはあり得るのかもしれないと。民事執行法などは後ろのほうにあったりしますけれども、それと同じようなことが実はあり得るのかもしれないと。実務家的な分かりやすさという点からすれば、そういうロジカルアメンドメント的なものは全部そこに入れてしまって、それ以外の規律すべきところを規律していけば、分かりやすさという意味でもそれほど遜色はないのかなと勝手に推測をしております。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今の御指摘につきましては、正に次々回辺りで御議論いただければと思っているところでございますけれども、確かにいろいろなやり方があり得ると思います。実際ここで議論するに当たっては、全て書き下すような形で洗い出すという作業、これは必要なのだろうと思われます。ただ、実際それをそのまま法文としてするのがいいのかどうかというところは、また別途議論になるだろうと思っておりまして、それをそのまま案文にするというやり方も一つあるでしょうし、あるいは準用して複雑な読み替え規定を置くというやり方もあるかもしれません。また、違うやり方、同一の効力という形の規定を置いて、それで読み込めるものは省いていくというやり方、いろいろあろうかと思います。そういった中で、分かりやすいものがどういうものなのかというところにつきましては、専ら法制執務的なことでありますので、事務当局が中心になって考えるべき話だろうとは思っておりますけれども、他方でこの今回の取組というのは、分かりやすさというものも重要ですし、国際的にどう見えるかというところもある部分だと思っておりますので、やはり我々だけで勝手に決めるべき話でもないだろうと思っておりますので、どういったやり方がいいのかも含めて御議論を頂ければと思っているところでございます。 ○池山委員 ありがとうございます。 ○藤田部会長 ほかの部会であれば事務当局にお任せするような条文の書き方についても、たとえばMLETRに準拠しているように見えるような形にいかにしてするかといった判断に関わる限りにおいては、是非明示的な御意見を部会でも頂ければということだと思います。どうもありがとうございました。   そのほか、どの点でも。 ○笹岡幹事 南先生に2点お伺いしたいと思います。   1点目は、もしかして読み落としているのかもしれないのですが、MLETRにおける当事者自治のルールについて、Law Comissionではどのように考えられているのかというのをお伺いしたいと思います。   もう1点は、これは確認なのですが、イギリスのLaw Comissionでは、MLETRにおけるコントロールという概念を、データに対する占有に読み替えていると理解してよろしいのでしょうか、という質問です。よろしくお願いいたします。 ○南関係官 まず、後者の部分については、少なくとも私がLaw Comissionにおける議論を見る限りは、やはり占有概念という形で処理をしているのではないかとは思っております。したがいまして、MLETRでは支配というところもあるのですけれども、基本的にイギリス法は占有というところで今回、乗り越えようとしているのではないかと考えられます。   次に、前者の当事者自治の部分についてですが、立法自体がかなりシンプルであるということもあって、ある程度当事者の自治に任されている部分というのはあるのかと思われます。実際には、当事者の自治というのは全くないというようなことは考えられていないのではないかとは思っています。もっとも、どの部分について当事者の自治が認められるのか、またどこまで考えられているのかについては、更にリサーチを進めさせていただきたいと思います。 ○笹岡幹事 ありがとうございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○松井幹事 ありがとうございます。1点御質問と、1点コメントをさせていただければと思います。   まず、御質問は南関係官に対してですけれども、既に池山委員とのやり取りでもかなり尽くされているところはあるのですが、イギリスでそもそも電子取引文書については、やはり有体物ではないし、占有できませんという議論があったとされています。そのときには、まさに占有という概念は有体物に使うものだからという説明がされているわけです。そうなりますと、今回、Law Comissionが電子取引文書を占有できるといっているのは、私には分かったようで分からないのです。占有は有体物でないとできないのに、電子文書は法律に書けば占有できるというのはどういうことなのだろう、と。イギリスでは、どういう考え方でこういう案を出してきたのかという辺り、もしお調べになっていて、何か合理的な説明があったら教えていただきたいと思います。もし、よく分からないということであれば、よく分からないということでもよいかと思っています。   もう1点はコメントなのですけれども、第4の、我が国で電子化された船荷証券を物、有価証券を船荷証券とできるかどうかという点でありますけれども、もちろんこれは解釈としては機能的な解釈をするというのは十分あるのだと思います。要は、物である船荷証券と機能的な同等物であれば、これは解釈上、船荷証券とするものとする。あるいは、法律の条文上、それとみなす。これは、イギリス的ですけれども、あり得るのだと思います。   ただ、他方で、これは皆様の御意見の繰り返しになりますけれども、まさに渡辺様がおっしゃったような、ある概念は、その概念を使ったほかの概念との関係で法体系として全体としてバランスをとっているところがあるわけです。例えば古い判例で、電気は有体物かという判例があったわけですが、あれは裁判所が電気窃盗を認めて猛烈な批判を受けて、立法につながるわけです。やはりわが国の法体系は、そういったところで、例えば有体物とは何か、物とは何かという概念をきちんと確定している。あるいは、強制執行の場面でも、有体物たるものとそうでないものはやはり厳格に分かれていて、安易に機能的にそこを読み替えてしまうと、ほかのところに全部波及してきてしまうということがあります。法体系というのは、全体として他の法律の概念を使いながらバランスをとっているというところがあるので、やはり軽々に機能的に読み替えるということはできない場合があるという気がしています。   ですので、コメントとしては、第4の部分については、やはり電子化された船荷証券的なものについては、物ではないし、有価証券ではないし、船荷証券ではないという解釈をするのが恐らく我々の態度としては自然なのだろうと思っています。そこから翻っていうと、先ほどの南関係官への質問になるのですが、イギリスは、そこで電子的な取引文書を占有できるといっているのは何なのだろうという素朴な疑問があるので、お伺いする次第です。 ○南関係官 御質問ありがとうございます。Law Comissionのペーパーの中身から、その部分については、明示的に検討されているかどうか分かりませんでした。無体物については占有概念が認められない、したがって、法律によってそれを占有することができるという規定を設けたと書かれているように見えます。本来であれば、イギリスの判例法理は無体物について占有を認めてこなかったわけですが、今回は立法によってそれを乗り越えることができるのだということを前提に、議論がされているのではないかと思います。 ○松井幹事 大変にありがとうございます。私もざっとペーパー等を見て、この点の説明はないし、論理的にも整合性がとれるような話にはならないのではないかと思いましたので、南先生の御説明で、私が持っていた感触と同じだと分かりまして、少し安心をしたところでございます。ありがとうございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そのほか、御意見、御質問はございますでしょうか。 ○洲崎委員 洲崎でございます。かなり技術的な些細な問題になるのかもしれないですけれども、今の電磁的船荷証券記録が物や有価証券になるのかという話とも関係しますので、お伺いしたいと思います。   部会資料第4の7の最後4行で、他方で電磁的船荷証券記録は物ではないことになる結果、担保物権の客体にはならず、紙の船荷証券とは異なり、それ自体が留置権や質権の対象とはならないこことなるとあり、日本の法システムの中ではそうなるのかなという気はするのですが、この問題について研究会の報告書を見ますと、⑦のその他の論点の中、71ページから72ページにかけて、電磁的船荷証券記録そのものは留置権や質権等の担保物権の客体とすることはできないと書いてあるのですが、それに続いて、72ページの5行目から、「この点について、電磁的船荷証券記録に関する権利又は運送品の引渡しに係る債権を譲渡担保に供したり質権の目的としたりすることは可能であり」、と書いてあり、本当にそのようなことが可能なのかが気になりまして、確かに電磁的船荷証券記録は有価証券そのものではないのですけれども、証券記録の支配と権利はやはり結合していて証券記録の支配を有しない者は権利を取得したり行使することはやはりできないと考えられているのではないかと。支配はAさんが持っているが、そこに乗っている運送品引渡請求権という債権はBさんに譲渡しますよということは、理論的にできるとしても、それをすると、債権譲渡や債権質の公示機能というものがほとんどないと思うので、単に債務者に通知する、あるいは第三債務者に通知すれば対抗要件具備してしまうので、例えば画面上で電磁的船荷証券記録の支配を誰が持っているかを見ても、その上にのっかっている債権は別の人のところに行っていますとかいうことは出てこないと思います。だから、有価証券ではないにしても、やはり記録の支配と権利は結合している、支配をしていない人が権利を持つような状態というのは、やはり在るべきではないと思うのです。   ひょっとしたら⑦のその他の論点のところでこの問題が取り上げられるのかもしれませんけれども、ただ、今回この留置権、質権の対象外になるということでまとまってしまうと、でも権利は別ですよというこの研究会報告書の記述だけが残ってしまうような気がして、ここのところはもう一度検討した方がいいのかなと。権利と支配が万一別の運命をたどるということになると非常に困難な状態を引き起こすのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今御指摘いただいた部分につきましては、元になっている運送品引渡し請求権ですね、それ自体を質権の対象にしたり譲渡担保にすることはできて、そういったことをする場合には、恐らく電磁的船荷証券記録の支配も移転していくだろうということを想定しているところでありまして、ここでいっているのは、記録そのものの質権設定みたいなものはできなくなる、それはそれで仕方がないのではないか、ただ、目的となっている債権それ自体を譲渡担保とか質権の対象にすることはできて、そういったことがされる場合には支配が移転されていくだろうということを想定しているところでございますので、ばらばらになるということは余り我々としても想定はしていないところですが、ただ、ここは有体物かどうかというところとは少し違った議論かもしれませんので、そこは少しまた、どういった形で我々の方で御説明できるかというのは改めて検討させていただきたいと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○洲崎委員 権利が譲渡されたり債権質が設定されると支配も移転するというのは、当然にはそういうルールにはならないかもしれないので、そういうルールにしようとすれば、やはり明文の規定が必要になるのかなと思いました。 ○藤田部会長 御説明は、電磁的船荷証券記録を有体物と扱わない結果、直ちにそれが質権の対象となったりすることはないのだけれども、電磁的船荷証券記録が出ているときに、運送品引渡請求権について、それを電磁的船荷証券記録と切り離して自由に質権の対象としたり譲渡担保の対象としたりできるかということには直ちにはならない、その次の次元の議論として、そういうことができるか否か、できないとすれば、何か明文の規定が必要なのであればできないと書くかどうか検討する、紙が出ている場合は必ずしも明文の規定と有価証券法理の当然の帰結という形で解釈でやっていると思うのですけれども、その辺りを別途、実質検討するという御趣旨ですね。 ○渡辺幹事 基本的には運送品引渡請求権を譲渡担保に入れたり質権に入れたりする場合に、支配がてんでばらばらになったりすることは想定していないのですけれども、それをどういった観点から説明するのか、今、明文の規定が必要ではないかという御指摘を頂きましたけれども、それがどうしてそうなるのかというと、これはまた多分、個別のところで適宜説明させていただくということになろうかと思っておりますので、またそのとき御議論させていただければと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そのほか、どの点でも、御意見、御質問があれば、お願いいたします。 ○池山委員 せっかくなので、今の洲崎委員の発言に触発されて若干、頭出し的な、あるいは注意喚起的な指摘ないしコメントをさせていただきたいと思います。   先ほどの話の中で冒頭に、電磁的船荷証券記録の場合も、その記録の支配と権利の結合というのはやはりあってしかるべきではないかという御意見があったかと思います。この結合というものの意味がどういうものなのかというのは、私は正直申し上げると、分かっているようで分かっておりません。他方で、何でこんな話を今するかというと、実際に各論に入ったときに、研究会報告書で事務当局が作られた案を見ますと、紙の船荷証券の場合は船荷証券「上の」権利と、それから、電磁的船荷証券記録の場合は電磁的船荷証券「に関する」権利と、非常に厳密な書き分けがされていて、しかし、その書き分けが必須なものなのかどうかというのは私はよく分かっておりません。今後の論点の中で、そもそも電磁的船荷証券記録というのは仮称だと、その名称も大問題だというお話がありましたけれども、船荷証券の場合は船荷証券「上の」権利といい、電磁的船荷証券の場合は電磁的船荷証券記録「に関する」権利と、こういう書き分けをすることが必要か、適切なのかということも是非御議論いただきたいと思います。この辺りは、正直申し上げますと、実務家は余り分かっていない話ですけれども、正に理論に関わることなので、是非学者の先生方に理論的にそこを詰めていただければ有り難いと思っております。 ○藤田部会長 事務当局から差し当たり、その言葉の使い分け辺りは御説明いただければと思います。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。恐らく今、洲崎先生からの御指摘も、池山先生からの御指摘も、次々回辺りで集中的に議論することなのかなと思っておりまして、私自身も全ての議論が頭に入っていなくて、少し説明として不十分になるところがあるかもしれませんが、基本的には電磁的船荷証券記録というのはもちろん物でもないし、なかなかそれ自体を財物と見るのは難しいのかなということで、それを譲渡するとかいう形はなかなか難しくて、ただ、事実行為としての支配の移転というのはあり得るだろうと。そういうふうに考えたときに、何か権利を譲渡すると、そういうような規律を設けようとすると、電磁的船荷証券記録に関する権利の譲渡みたいな書きぶりにしていかないと、法文としてはなかなか難しいのかなと、こんなようなところで書き分けを考えてきたところでございますが、ただ、それは、すみません、研究会の報告書ではそういうつもりでやっておりましたというところでありまして、そういったところも踏まえて、また恐らく次々回ぐらいにそういった表現ぶりも含めて御提示することになるかと思いますので、そこでいろいろと御議論をさせていただければと思っております。御指摘ありがとうございました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そのほか、どの点でも御意見、御質問、ございますでしょうか。 ○笹岡幹事 笹岡です。次々回ということなのですが、今の論点は、いわゆる処分証券性の中に債権的処分が含まれるかという既存の論点が、電子的な記録にも適用されるのかという話なのではないかと感じました。そうすると、我々にとっては特に新しいものではなく、これまでの分析で対応することができそうな気がします。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   そのほか、どの点でも御意見、御質問がございますか。先ほどからの議論と、テクニカルに見えて――特定の立法の仕方を採った場合にはという前提付きですけれども――かなり本質的な問題でもありますので、もし何かあれば是非御意見いただければと思いますが、それだけではなく、イギリス法についての質問でも結構ですので、是非御意見御質問いただければと思いますが。 ○笹岡幹事 何度も申し訳ありません、笹岡です。先ほど南先生に、イギリスは、MLETRにおける支配概念をデータに対する占有と読み替えているという点を確認させていただきました。私が危惧しているのは、この支配をデータの占有と読み替える理解が、MLETRに準拠した立法というもののモデルになってしまうのではないかという点です。MLETRに従っているということの意味が、そのような国内法化における法律構成まで含んで理解されてしまうのではないかと。そうすると、日本法がそれとは違う支配概念を持ち出したとして、どのくらい世界的に受け入れていただけるかというのが、正直不安なところがあります。先ほどの部会資料に戻るのですけれども、有体物でないものについて占有は考えられないという点は、やはりもう少し広い視野で再考する必要があるのではないかと思います。   有体物が物権の対象になるのは、要するに外界から切り離されていて権利の範囲が明確であるからだと思われます。そういう理由だとすると、権利の範囲が明確な電磁的記録について、その考え方を適用することができないのはなぜなのかという逆の問いが立つと思います。あまり独自の法律構成とすると、世界的には、MLETRに従った立法だと見られない可能性が出てきますので、そこは気を付けていただきたいというのが先ほどから派生したコメントになります。よろしくお願いいたします。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。南関係官から何かありますか。 ○南関係官 特にございません。 ○藤田部会長 イギリスは有体物でないものへの一種のみなし占有を認めるような形でMLETRと実質的に整合的であると称する立法をしている。イギリスと違った前提で有体物でないものに対する占有はないという立法をすれば、MLETRに反すると国際的に扱われるようになるかどうかは、なかなかよく分からないところではあるかと思いますが、今の点も含めて御意見を頂ければと思います。イギリスの立法の仕方が諸外国のMLETRの理解にどういう影響があるかというのも、なかなか難しいところではあるかとは思いますけれども。 ○雨宮委員 雨宮です。今の問題で、南関係官に少しお尋ねしたいのです。イギリス法のコモン・ロー上は伝統的には無体物に対する占有は認められないので、今回新たな法律によってみなし占有を定めると理解しました。ただし、第2条では、電子取引文書となる要件の中で支配という言葉が使われていて、そうすると、やはり占有の前提に支配があり、支配しているからこそ占有と考えられ、法律上の言葉は占有、ポゼッションであるにしても、その要素としては支配であるならば、言葉の用い方は違ったとしてもMLETRと実態は同じと思うのでが、その辺りについて御意見を頂ければと思います。 ○南関係官 確かに今、雨宮委員がおっしゃっているように、従来イギリスにおいてコモン・ロー上の占有の概念というのは大きく分けて支配、事実上の支配と意思が必要であるというふうなことを考えているのであれば、この点はMLETRにおける支配概念とどういうふうに関係しているのかは、私自身、少し分からないところもあるのですけれども、確かに雨宮委員がおっしゃっているように、占有というものが支配と意思という二つの要素から成り立っていて、MLETRにおいては支配という概念が用いられているときに、コモン・ロー上の占有を認めるということは、その前提として、当該記録に対して電子船荷証券に対する支配というのがあるのだと読むことは、もしかしたら可能かもしれません。ただ、今私がコメントしたことについては、Law Comissionのペーパーには、これを明確に述べているわけではなく、あくまで私の推測にしかすぎませんので、これが正しい理解ですとは自信を持って言えるものではございませんが、一つの、ある種、ハレーションを避けるという点では、そういった占有という概念の前提として支配があるから、そこで既にMLETRの発想とは似通ってくると考えることは、もしかしたらできるかもしれないと思います。 ○雨宮委員 ありがとうございました。 ○後藤幹事 今のところについて一つだけお伺いしたかったのですけれども、南先生が翻訳してくださったLaw Comissionの資料でいうと4ページに2条の(1)というのがあるのですけれども、そこで(c)と(d)に支配という語が出てきていて、これはMLETRとほとんど一緒というお話だったかと思うのですが、ここでいわれている支配と、後の方で出てくる、イギリスの判例法理上の占有というのは支配とその意思だという今のお話のときの、二つの支配というのは、同じものと理解して良いのでしょうか。イギリスは同じものと読んでいるということだとすると、雨宮先生がおっしゃられたように、要はMLETRがいっている支配というのはイギリスで占有の内容として出てくる支配のことだということになり、そうすると、先ほどの笹岡幹事が指摘された懸念も、占有という言葉で捉えようとくくるのか、支配の方に着目するのかの違いにすぎないということになるのかなという気もしたのですけれども、そういう読み方でいいのでしょうかということです。   あと、アメリカについてですが、これはひょっとしたら研究会のときに議論があったかもしれず、私が忘れてしまっているだけなのかもしれないのですが、アメリカのUCC上の電子船荷証券に関する規定は、MLETRに準拠しているものとして導入されたものなのでしょうか。アメリカの話は、研究会の資料でいうと後の方の152ページに載っているのですが、こちらではコントロールにポゼッションと同等の位置付けを与えるのではなく、コントロールを持っていればポゼッションがある以上の効果を与えていると書いてあって、イギリスとは違うようにも思えるところです。国際海運だとやはりイギリス法なのかもしれませんが、アメリカの影響力も否定できなかろうと思いますので、この辺りをどういうふうに理解できるのでしょうか、統一的な理解ができない可能性ももちろんあるのですが、その辺りを少し教えていただければと思いました。よろしくお願いします。 ○藤田部会長 前半について、南関係官からお願いします。 ○南関係官 そこでいうコントロールの意味が、前半部分、すなわち第2条の文脈においていわれているコントロールという概念と、後半部分でポゼッションの第1要素として出てくるコントロールという概念が同じ意味で用いられているかというとわからないところがあります。そこの部分については明確に区別して議論しているのか現段階では読み取れていません。ただ、占有の第一要素としての支配というところについては、基本的には従来は物理的な支配ということが想定されていたけれども、そうではなく、今回は電子データに対する支配というようなところを一応書かれてはいますので、そういったところでは少し共通する場面はあるのかもしれません。もっとも、この回答は私の推測にすぎず、このLaw Comissionのレポート上はそこを明確に区別して、第2条の支配というのと、それ以外の後半部分で出てくる占有概念の要素としての支配というのが同じように考えられているかという点は改めて確認したいと思います。ただ、先ほど笹岡幹事からお話がありましたように、では、そうするとMLETRと違うではないかという話が出てくると思うのですけれども、恐らく一つの説明の仕方としては、雨宮委員がおっしゃったような説明はあり得るのかなと思います。 ○藤田部会長 後半について、事務当局からお願いします。 ○渡辺幹事 アメリカとの関係でございますけれども、私どもの方で理解している限りでは、何かMLETRみたいなものができて、それに準拠してという形ではなかったのではないかという理解でございます。ただ、内容を見てみますと、コントロールとかそういった概念が出てくるところでありますので、非常に参考になるというところでございますが、ただ、ほかのイギリス法の調査などに比べると、やや力の入れ具合という意味では十分ではない部分が多分にございますので、十分に調査し切れていない部分はひょっとしたらあるかもしれないというところでございます。 ○藤田部会長 アメリカは建て付けは少し違いそうですね。記録というのがあって、記録は占有することとコントロールすることがあり得る、そしてそれらを持っているものがホルダー――ホルダーというのは、これは紙の場合と電磁的な場合と両方含む概念ですが――となり、ホルダーの権利としてどういうものがあるという形で規定が組み立てられている。したがって、概念整理はどうも我々が想定しているのとも違いそうだし、イギリスとも違いそうだし、しかし、そもそもMLETRの国内法化という形で作られたものでもなさそうだですので、参考にはなるのですけれども、恐らく無理に合わせるということでもないのかもしれません。また、ここの記録とか言葉遣いまで合わせることがアメリカ法と合わせていることになるかという辺りも要検討かもしれませんけれども、これまで余り勉強していない点は確かにそうですので、もし可能でしたら、この辺りも更に検討していただければと思います。   ほかに、どの点でも、御意見、御質問はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。後半の報告については、何か決定するという話では、その性質上、余りございませんけれども、ただ、外国からどういう示唆が得られるかという点について、更に整理した上で、今後の議論に反映していただければと思います。   それでは、本日の議論は、内容としてはこの辺りまでにさせていただければと思います。   そこで、次回の議事日程等について事務当局から御説明いただければと思います。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。次回の日程は、令和4年7月27日水曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省20階の第1会議室を予定してございます。   次回は、先ほどの御議論を踏まえまして、前半パート、電磁的船荷証券記録の発行、技術的要件、転換、あるいはその呼称であるとか強制執行とか、様々な論点について扱いたいと思っておりますので、その旨の資料を準備させていただければと思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会の第2回会議を閉会させていただきます。   本日は熱心な御審議を賜りまして、ありがとうございました。 -了-