法制審議会 第195回会議 議事録 第1 日 時  令和4年6月27日(月)   自 午後1時58分                        至 午後2時22分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題   情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備に関する諮問第122号について   犯罪収益等の没収に関する諮問第123号について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○加藤司法法制課長 ただいまから法制審議会第195回会議を開催いたします。   本日は、委員20名のうち、会議場における出席委員8名、ウェブ会議システムによる出席委員7名、計15名に御出席いただいておりますので、法制審議会令第7条に定められた定足数を満たしていることを御報告申し上げます。   本日は、古川法務大臣が公務のため本審議会に出席できませんので、大臣から託されております挨拶を加田法務大臣政務官が代読いたします。 ○加田法務大臣政務官 法務大臣政務官の加田裕之でございます。法務大臣の挨拶を代読させていただきます。座って失礼いたします。   会議の開催に当たり、一言御挨拶を申し上げます。  委員及び幹事の皆様方におかれましては、御多用中のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。   さて、本日は、御審議をお願いする事項が二つございます。  まず、議題の第1は、「情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備に関する諮問第122号」についてでございます。   近年、情報通信技術が進展するとともに、社会に広く普及し、様々な場面で利用されるに至っています。  刑事手続においても、こうした情報通信技術を活用することにより、手続に関与する国民の負担軽減や円滑・迅速な手続の実現を図ることが必要です。  そして、こうした情報通信技術の活用を妨げる行為のほか、情報通信技術の進展等に伴って生じる事象に対処できるようにする必要があります。  そこで、これらの観点から、情報通信技術の進展等に対応するために必要となる刑事法の整備の在り方について、御審議をお願いするものでございます。   議題の第2は、「犯罪収益等の没収に関する諮問第123号」についてでございます。   近年の情報通信技術の進展等に伴い、犯罪による利益が、暗号資産をはじめとする新たな形態の財産として保有・移転される事例が生じていますが、そうした財産が、現行法上は没収の対象とならない場合があります。  そこで、犯罪収益を確実に剝奪できるようにするため、没収可能な財産の範囲を早急に改める必要があると思われることから、御審議をお願いするものでございます。   これらの諮問については、速やかに審議に着手していただきたいことから、本日は臨時の会議を開催することとしたものです。御審議・御議論をよろしくお願い申し上げます。 ○加藤司法法制課長 法務大臣政務官は公務のため、ここで退席させていただきます。           (法務大臣政務官退室) ○加藤司法法制課長 ここで、報道関係者が退出しますので、しばらくお待ちください。           (報道関係者退室) ○加藤司法法制課長 まず、事務局から会議に当たっての留意事項を御案内いたします。   ウェブ会議システムにより御出席の委員におかれましては、御出席されていることを確認させていただくため、会議中は常にカメラをオンにしていただきますようお願いいたします。   また、本日の会議はペーパーレス化によりタブレット端末による資料配布となっております。操作方法等について御不明な点がある場合には、事務局に適宜お知らせください。   では、井田会長、よろしくお願いいたします。 ○井田会長 井田でございます。本日はよろしくお願いいたします。   まず、前回の会議以降、本日までの間における委員の異動につき御紹介いたします。詳細はお手元にお配りしております異動表のとおりですが、新たに就任された委員が本日出席されていますので、御紹介いたします。   同志社大学教授の髙杉直氏が御就任されました。髙杉委員、一言御挨拶をお願いいたします。 ○髙杉委員 同志社大学、髙杉でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○井田会長 ありがとうございます。   読売新聞東京本社論説副委員長の富所浩介氏が御就任されました。富所委員、一言御挨拶をお願いいたします。 ○富所委員 読売新聞社の富所と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○井田会長 ありがとうございます。   京都大学大学院教授の毛利透氏が御就任されました。毛利委員、一言御挨拶をお願いいたします。 ○毛利委員 京都大学の毛利透でございます。よろしくお願いいたします。本日は大変失礼ながら、大学の授業があるために14時30分頃に退席させていただきます。大変失礼いたしますが、お許しください。よろしくお願いいたします。 ○井田会長 こちらこそよろしくお願いいたします。   慶應義塾大学教授の横田絵理氏が御就任されました。横田委員、一言御挨拶をお願いいたします。 ○横田委員 ありがとうございます。慶應義塾大学の横田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○井田会長 ありがとうございます。こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。   先ほどの法務大臣挨拶にもございましたように、本日は議題が二つございます。まず、「情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備に関する諮問第122号」について、御審議をお願いいたしたいと存じます。   初めに、事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ○鷦鷯参事官 刑事局参事官の鷦鷯でございます。諮問事項を朗読させていただきます。   諮問第122号   近年における情報通信技術の進展及び普及の状況等に鑑み、左記の事項に関して刑事法の見直しをする必要があると思われるので、その法整備の在り方について、御意見を承りたい。      記   一、刑事手続において取り扱う書類について、電子的方法により作成・管理・利用するとともに、オンラインにより発受すること。   二、刑事手続において対面で行われる捜査・公判等の手続について、映像・音声の送受信により行うこと。   三、一及び二の実施を妨げる行為その他情報通信技術の進展等に伴って生じる事象に対処できるようにすること。   以上です。 ○井田会長 続きまして、この諮問の内容、諮問に至る経緯及びその理由につきまして、事務当局から説明をお願いいたします。 ○川原幹事 法務省刑事局長の川原でございます。  諮問第122号につきまして、諮問に至りました経緯及びその諮問の趣旨等について御説明申し上げます。   近年、情報通信技術が進展するとともに、社会に広く普及し、様々な場面で利用されるに至っており、刑事手続においても、こうした情報通信技術を活用することにより、手続に関与する国民の負担軽減や円滑・迅速な手続の実現に資するものとすることが、政府を挙げて早急に取り組むべき課題となっています。  また、こうした情報通信技術の活用の実施を妨げる行為や、その他情報通信技術の進展等に伴って生じる事象についても、刑事法として対処できるようにする必要があります。  そこで、これらの事項に関し、刑事法の見直しをする必要があると思われることから、この諮問に至ったものです。   次に、諮問の趣旨等について御説明申し上げます。  配布資料刑1を御覧ください。   今回の諮問においては、刑事法の見直しをする必要があると考えられる事項を「一」から「三」までに掲げ、それらの法整備の在り方について御意見を承りたいとしています。   「一」に関しては、現在の刑事訴訟法の下で行われる捜査・公判の手続においては、証拠書類や訴訟記録は、紙媒体で作成・管理されるとともに、それらの書類や記録が、関係機関に送致され、閲覧・開示の対象となり、公判廷での証拠調べの対象となるなど、紙媒体として利用・発受されています。   また、「二」に関しては、現在の刑事訴訟法の下で、捜査段階においては、検察官や弁護人、裁判官が、被疑者などと対面して手続が行われ、また、公判段階においても、裁判官、検察官、弁護人及び被告人の公判廷への出席・出頭や、被害者参加人の参加は、法廷という場所に臨場して対面で手続が行われており、証人尋問について、例外的にビデオリンク方式を行うことができるにとどまっています。   このような現状にある刑事手続において、どのように情報通信技術を活用するかという方策について、法務省では、令和3年3月から、「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」を開催し、令和4年3月、同検討会により、その検討結果が報告書に取りまとめられました。  諮問事項の「一」及び「二」は、この検討会の検討結果も踏まえつつ、法整備の在り方について、御意見を承りたいとするものです。   そして、「三」は、「一及び二の実施を妨げる行為その他情報通信技術の進展等に伴って生じる事象に対処できるようにすること」についてです。  情報通信技術を活用した「一」や「二」の施策を制度化するに当たっては、書類が電子的方法により作成・管理・利用・発受され、手続が映像・音声の送受信により行われることとなった場合にも、刑法等の規定について、それらを妨げる行為に対し、同様に対処できるようにしておくことが、その適正な実施に必要であると考えられるほか、それ以外にも、情報通信技術が犯罪に悪用されるなどの事象に、刑事法として対処できるようにする必要があります。  「三」は、そうした観点からの法整備の在り方について御意見を承りたいとするものです。   御説明は以上です。  十分御審議の上、できる限り速やかに御意見を賜りますよう、お願いいたします。 ○井田会長 ありがとうございました。   続きまして、配布資料につきまして、事務当局から説明をお願いします。 ○鷦鷯参事官 配布資料の説明をさせていただきます。   まず、番号刑1は、先ほど朗読いたしました諮問第122号です。  番号刑2は、事務当局からの説明の中で触れました「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」の取りまとめ報告書です。   配布資料の説明は以上です。 ○井田会長 ありがとうございました。   それでは、ただいま説明のありました諮問第122号につきまして、御質問と御意見を分けまして、まず、御質問がございましたら承りたいと思います。いかがでしょうか。   特に御質問はございませんか。   それでしたら、続いて御意見がございましたら承りたいと思います。 ○大迫委員 大迫でございます。ありがとうございます。   この手続における情報通信技術の導入を検討する場合には、手続の迅速化や省人化の方向での効果が目に付きやすくなります。刑事手続についても、捜査手続や裁判手続の迅速化は、身体拘束がある場合など、期間の短縮など被疑者・被告人の人権保障に資する点もあります。   しかしながら、憲法が刑事手続の適正手続について詳細な規定を定めているように、刑罰権の行使には刑事手続の適正が確保されていることが大前提であることは言うまでもなく、刑事手続ではこの適正手続の確保が裁判の迅速化よりも重要な利益であることも明らかです。   それゆえ、今回の「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」の取りまとめにおいても、検討に当たっての重要な視点の1番目に、刑事手続における情報通信技術の活用は、被疑者・被告人、被害者をはじめとする国民の権利利益(憲法上保障されたものを含む。)の保護・実現に資するために活用されるべきと指摘されているところです。   今回の刑事手続の情報通信技術の活用は、検討会の議論経過でも明らかなように、捜査や公判での実務の運用にいかに情報通信技術を活かすかという観点と、この情報通信技術の導入によって現在運用されている実務がどのように変わり、その変容が被疑者・被告人、被害者の権利利益にどのような影響を及ぼすかについて、これら関係者の立場に立って、実際の実務・運用面での不利益に働くことがないかを検証することが不可欠となります。   それゆえ、この諮問を検討される分科会を設置される場合には、情報通信技術の活用が捜査及び公判における実務に及ぼす影響を分析し、かつ、その影響が特に被疑者・被告人の権利利益にとって不利益な活用とならないことを検証するために、被疑者・被告人の立場や視点を理解する者からの意見が十分反映できるような委員構成とすることや、会議の運用においても、参考人の意見聴取などの手続を活用して現場の意見を広く聴取する等の配慮が重要と考えます。   諮問については賛成ですけれども、これらの点に配慮していただきたく、意見を述べさせていただきます。ありがとうございました。 ○井田会長 ありがとうございます。大変貴重な御意見、御示唆を頂いたと思います。   ほかに御意見はございますか。もちろん御質問に戻っても構いませんが、ほかに御質問、御意見はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、ないようですので、続きまして、「犯罪収益等の没収に関する諮問第123号」について、御審議をお願いしたいと存じます。   初めに、事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ○加藤刑事法制企画官 刑事局刑事法制企画官の加藤でございます。諮問事項を朗読させていただきます。   諮問第123号   近年における犯罪収益等の実情等に鑑み、犯罪収益等として没収することができる財産の範囲を早急に改める必要があると思われるので、別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい。   別紙、要綱(骨子)   組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第13条第1項各号に掲げる財産は、不動産若しくは動産又は金銭債権でないときも、これを没収することができるものとすること。   以上です。 ○井田会長 続きまして、この諮問の内容、諮問に至る経緯及びその理由につきまして、事務当局から説明をお願いいたします。 ○川原幹事 刑事局長の川原でございます。  諮問第123号につきまして、諮問に至りました経緯及び諮問の趣旨等について御説明申し上げます。   近年、情報通信技術の進展や普及に伴い、財産の取得・保有・移転が、暗号資産をはじめとする新たな形態で行われるようになる一方で、取得・移転の容易性や匿名性の高さといった特性から、これが犯罪に悪用され、犯罪による利益が新たな形態の財産として取得・保有・移転されることがあります。   組織的犯罪処罰法第13条第1項は、犯罪収益などの一定の不法な財産の没収について規定していますが、当該財産が「不動産若しくは動産又は金銭債権」であることを没収の要件としているため、こうした新たな形態の財産は、「不動産」や「動産」に当たらないことはもとより、「金銭債権」にも当たらないとして、没収の対象にならない場合があります。しかしながら、そのような犯罪収益等についても、犯人から確実に剝奪する必要があります。  加えて、マネー・ローンダリング対策等に関する国際的枠組みであるFATF(金融活動作業部会)は、各国に対し、犯罪収益の没収に関し、リスク・アセスメントを踏まえた制度の整備やその効果的な運用を求めており、新たな形態の財産として保有される犯罪収益等の没収を可能とすることは、国際的な要請にも合致するものと考えられます。   以上を踏まえ、犯罪収益等として没収可能な財産の範囲を早急に改める必要があると思われることから、今回の諮問に至ったものです。   次に、諮問の趣旨等について御説明申し上げます。  配布資料刑3を御覧ください。   今回の諮問に際しましては、事務当局において検討した案を要綱(骨子)としてお示ししてありますので、この案を基に、具体的な御審議をお願いいたします。   要綱(骨子)の概要は、先ほど御説明した、没収の要件を定める組織的犯罪処罰法第13条第1項を改め、同項各号に掲げる財産は、不動産若しくは動産又は金銭債権でないときも、これを没収することができるものとすることです。   御説明は以上です。  十分御審議の上、できる限り速やかに御意見を賜りますよう、お願いいたします。 ○井田会長 ありがとうございました。   続きまして、配布資料につきまして事務当局から説明をお願いします。 ○加藤刑事法制企画官 配布資料の説明をさせていただきます。   番号刑3は、先ほど朗読いたしました諮問第123号でございます。   配布資料の説明は以上です。 ○井田会長 ありがとうございました。   それでは、ただいま説明のありました諮問第123号につきまして、まず御質問がございましたら承りたいと思います。   特に御質問はよろしいでしょうか。   それでしたら、御意見がございましたら承りたいと思います。   特にございませんか。   ないようですので、ここで諮問第122号及び第123号の審議の進め方について、御意見があれば承りたいと思います。 ○佐伯委員 諮問第122号及び第123号につきましては、専門的、技術的な事項が相当含まれていますので、通例に倣いまして新たに部会を設置して調査審議し、その結果の報告を受けて、更に総会で審議することにしてはいかがでしょうか。 ○井田会長 ありがとうございます。ただいま佐伯委員から部会設置等の御提案がございました。これにつきまして、御意見はいかがでしょうか。   特にございませんか。   特に御異議もないようですので、諮問第122号及び123号につきましては、新たに部会を設置し、そこで調査審議することといたしたいと思います。   次に、新たに設置する部会に属すべき総会委員、臨時委員及び幹事に関してですが、これらにつきましては会長に御一任いただきたいと思いますが、御異議ございませんでしょうか。   ありがとうございます。それでは、この点は会長に御一任願うことといたします。   次に、部会の名称でございますが、諮問事項との関連から、諮問第122号につきましては、「刑事法(情報通信技術関係)部会」、諮問第123号につきましては、「刑事法(犯罪収益等の没収関係)部会」という名称にいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   特に御異議もないようですので、そのように取り計らわせていただきます。   ほかに、部会における審議の進め方を含め、御意見はございますでしょうか。   それでは、諮問第122号につきましては、先ほど申し上げましたように「刑事法(情報通信技術関係)部会」、諮問第123号につきましては、「刑事法(犯罪収益等の没収関係)部会」で御審議いただくこととし、部会の御審議に基づいて、この総会において更に御審議願うことといたしたいと存じます。   これで、本日の予定は終了となりますが、ほかにこの機会に御発言いただけることがございましたら、是非お願いいたします。   特に御発言もないようでございますので、本日はこれで終了といたします。   本日の会議における議事録の公開方法につきましては、審議の内容等に鑑みて、会長の私といたしましては、議事録の発言者名を全て明らかにした上で、公開することとしたいと思いますが、いかがでしょうか。   ありがとうございます。それでは、本日の会議における議事録につきましては、議事録の発言者名を全て明らかにして公開することといたします。   なお、本日の会議の内容につきましては、後日、御発言いただいた委員等の皆様に、議事録案をメールにて送付させていただき、御発言の内容を確認していただいた上で、法務省のウェブサイトに公開いたしたいと思います。   最後に、事務局から何か事務連絡がございましたら、お願いいたします。 ○竹内関係官 事務局から、次回の会議の開催予定につきまして御案内申し上げます。   法制審議会は、2月及び9月に開催するのが通例となっております。次回の開催につきましても、現在のところは本年9月に御審議をお願いする予定でございますが、具体的な日程につきましては、後日改めて御相談をさせていただきたいと存じます。委員・幹事の皆様方におかれましては、御多忙とは存じますが、今後の御予定につき、御配意いただきますようお願い申し上げます。 ○井田会長 ありがとうございました。   本日は皆様のお陰で大変スムーズに迅速に会議を進めることができました。本日はお忙しいところをお集まりいただき、また御議論いただきまして、誠にありがとうございました。 -了-