法制審議会 家族法制部会 第15回会議 議事録 第1 日 時  令和4年6月7日(火)  自 午後1時30分                      至 午後5時32分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  養子制度、財産分与制度に関する規律の検討(二読) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会家族法制部会の第15回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。本日も前回までと同様、ウェブ会議を併用した開催となりますけれども、よろしくお願いを申し上げます。   まず、本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局の方から説明をお願いいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。今回ですけれども、新たに作成した部会資料はございません。本日は、前回会議の際に送付いたしました部会資料14に基づいて御議論いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。   資料の説明は以上になります。   今回もウェブ会議を併用していることから、御発言に当たっては、冒頭でお名前をおなのりいただきますよう、よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。ただいま事務当局から説明がありましたように、本日は前回会議の積み残しになっております部会資料14に基づきまして、御議論を頂きたいと考えております。   具体的な進行の段取りですけれども、前回会議の最後に部会資料14のうちの第1の1、「未成年養子縁組の成立要件」という部分、資料で申しますと1ページから10ページ目までですが、この部分について御説明を頂いておりますので、本日はまず、この部分についてまとめて御議論を頂きたいと思います。その後に、養子に関する後半の部分、第1の2、「未成年養子縁組の効果」、それから第1の「3 未成年養子縁組の離縁」という部分、資料で申しますと10ページから16ページまでということになりますが、この部分をまとめて御議論いただくということを予定しております。最後に、第2の「財産分与制度に関する規律の在り方」これは16ページ以下ということになりますが、これは1から8までをまとめて御議論いただきたいと考えております。以上のように三つに分けて御意見を頂戴したいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。   なお、この部会の審議は2巡目もそろそろ終わりに近づいております。前回も御意見がありましたけれども、これまでに出ている論点について、あるいはその他の論点について、更に議論をしたいという御希望をお持ちの方も多いと認識をしております。基本的には、前回の最後に申し上げましたように、中間試案の取りまとめに向けた議論の中で、御意見を述べていただきたいと考えておりますが、もし本日の会議で、最後に多少時間が残るようであれば、その時間を使って御意見を頂くということも考えております。時間確保のためにも、部会資料14の審議につきまして御協力いただければ幸いに存じます。   まず、部会資料14の第1の1の部分につきまして、意見交換に入りたいと思います。御意見等あります方は、どなたからでも結構ですので、自由に御発言をお願いいたします。挙手をお願いいたします。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。本日もよろしくお願いいたします。   まず、この養子制度全般、第1、養子制度に関する規律の個々の論点ということで、個別の論点七つほど出ていると思いますが、その個別の論点の前に総論的に触れさせていただき、その後、それぞれの各論に関して意見を述べさせていただければと存じます。   1巡目の議論の中で、第9回会議だったと思いますが、私からは、明治学院大学の野沢先生の論文を提出しまして、親とは誰かと、ステップファミリーにおける親とは誰かという問題提起をさせていただいたと記憶しています。   続いて、第12回会議でも、子どもの権利条約の考え方に立って法改正をやってきた欧米、こういった諸外国では、親子関係が夫婦関係に優先して、親の婚姻状態にかかわらず親子関係は継続すると。我が国も、是非この機会に、大人中心の視点から子ども中心の視点への転換が必要と、こんなふうに述べさせていただいたと記憶をしております。   一方、今回部会資料14が配布されました。こちらを拝見する限り、まだまだ婚姻関係が親子関係に優先している、ちょっとこのように読めてしまうなって思っています。親子関係というものは、親が誰と結婚、離婚、その後の再婚と、こういう大人の都合で変化するものと思います。当然ここには、子ども独自の権利を考慮すべきですが、あまり想定されていないように感じています。今更ながらですが、子どもの権利条約が想定しているのは、このように大人の都合で子どもの権利が損なわれている状態、これを変えることではないかと思っています。親の都合で子どもから親が奪われてしまうことがないように制度を変えるべき、そのような勧告が国連の子どもの権利委員会からも出されている、こういった意味が、まだまだ今の議論の中では反映されていないように感じています。   これまで一貫して述べてまいりましたけれども、離婚により両親の葛藤や、一方の親を喪失する体験、これは大きな子どもにとっての苦痛であろうと思います。しかし、再婚というのは、子どもにとっては更に適応が難しい家族変化であろうと思います。ここまでの議論では、面会交流であるとか養育費の支払であるとか、どちらかというと非親権親とのつながりを少しでも継続する方向に、曲がりなりにも検討が向かっているように、私個人的には感じていました。であるなら、この継親子、養子縁組した後の非監護親というのは、子どもにとってどのような存在になることを想定しているのかというところが、まだまだ見えないなと思っています。子どもの利益、権利、これを中心に据えて、現行制度の問題点を検討していくのであれば、再婚で親が入れ替わるということこそ、適応に苦しむ局面なのではないかと思います。離婚後も一定の関わり合いがあるとして、子どもと暮らす親権者が再婚、その後養子縁組した後は、非親権親には関わりを断ってもらうという想定なのでしょうか。本来であれば、この辺りをもう少し方向性を明確にして議論をすべきではなかろうかというのが、私の意見でございます。   諸外国の取組をそのまま持ってくる、これも乱暴な議論ということは当然分かっておりますが、1巡目の議論でも申し上げましたとおり、諸外国がどのように離婚後の親子関係、継親子関係に関して展開してきたのか、これは、いろいろ資料を探しまして、我が国でのステップファミリー支援団体、ステップファミリー・アソシエーション・オブ・ジャパンと、略称SAJさんという団体がございまして、ここに、論文も出させていただいた明治学院大学の野沢先生も協力して、2015年にシンポジウムが開催されています。私も当時出席した記憶がございます。米国に関しましては、ミズーリ大学のローレンス・ギャノン先生、マリリン・コールマン先生、ニュージーランドに関してはビクトリア大学のジャン・ブライヤー先生、それぞれの国でのステップファミリー制度に対して講演を行っています。ちょっと資料の分量が多かったので、本日は配布をお願いしませんでしたけれども、可能であれば、委員、幹事の先生方に、該当箇所を明示した上で、事務局を通じてURLだけでも御案内させていただけないかなと、そんなふうに感じております。   総論が長くなりましたが、それぞれの論点に関して意見を申し述べたいと思います。   まず1点目、家裁の許可の要否に関しては、1巡目の発言同様、案B、家裁許可を必要とする方向かなと思います。理由は、家裁関与にすることで、子どもの意向確認、継親となる者に対して一定の親講座的なもの、こういうものを与える機会を作れないかと、こんな理由から案Bを推させていただきたいなと思います。   順番飛びまして、(4)代諾縁組、これについては廃止すべきと考えております。家裁関与にして、(5)の養子の必要的聴取も、現行の家事事件手続法にのっとり、子の意向確認をしていく方向なのではないかなと、そんなふうに感じています。   戻りまして(2)です。家裁の許可に係る考慮要素及び許可基準に関してです。これは、考慮要素をもう少し明確化いただかないと、現時点でちょっと判断するのが難しいところかなと思っています。1巡目で私の方から紹介させていただきました目黒の結愛ちゃん事件の継父のように、無理やり親になろうとする、こういう意欲を肯定的に捉えるような考慮要素になってしまうようであれば、これはこれでリスクでしかないのかなと考えます。   6点目、養親になろうとする者による養子の意向確認に関して、こちらについては反対です。夫婦関係が親子関係に優先する考え方の下、このような意向確認をして、子の意向が把握できるとは思えません。(1)で述べた再婚前親講座のようなベースがあって初めて検討できるようになるのではないかと、そんなふうに考えています。   最後ですね、7点目の父母の関与に関してです。部会資料14、9ページに親権や監護権を有しない者に代諾や上記同様の関与は慎重に検討すべきとありますが、ちょっと今、まだ判然としない部分、具体的には、こちらの記載によると、監護者を1名に指定する前提のように読めます。仮に主たる監護者ということで1名を指定したとしても、私は、共同監護というものは否定されないのではないかという認識です。共同監護者の定義をどうするかという議論は、今まだなされておりませんが、まずこういった共同監護者という存在を認めた上で、父母の関与を検討することが必要なのではなかろうかと思います。   最後になります。養子縁組後の父母の関与ですね。親権や監護権に基づくというよりは、私は父母固有のものであると思います。特別養子のように、相続権も含めて法的に親子関係が解消されるというわけではありませんが、再婚後、養子縁組後は、実親と子の断絶が行われている事例が多いと思っています。当然拒否的な濫用があってはいけませんが、一定の関与方法を検討していくべきと、このような立場でございます。   長くなりましたが、以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員からは、一般論あるいは総論として、婚姻と親子の関係について、親子優先という方向で考えるべきだという御意見を頂きました。特に、再婚の場合に、非監護親との関係について配慮をする必要があるだろうということだったかと思います。   具体的な問題については、大きく分けて二つあったのかと思って伺っておりました。一つは家裁の関与の仕方についてで、未成年の養子縁組については家裁関与を必要とするという方向で考えたいという御意見。代諾は廃止とおっしゃったと思いますが、それも家裁の判断に委ねるという御趣旨だったでしょうか。他方、関係者の取扱いのうち、子どもの意向の確認については、現在のこの条件の下では反対である、父母の関与については、父母の固有に権利ないし権限として考えるべきだといった御意見だったと伺いました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○佐野幹事 幹事の佐野です。私も総論と各論ということでお話しさせていただければと思います。   まず総論的なところは、これは武田さんと同じような考えになるのかもしれませんけれども、やはり普通養子制度も子どもの利益、福祉のための制度という点で趣旨を一貫すべきではないかと思います。やはり養子縁組というのは人為的に法的な親子関係を創設するという、非常に子どもにとって重大な影響を及ぼすことになりますので、それをきちんと踏まえていくべきかと思います。   その観点から、各論ということで申し上げますと、まず、1番目の家裁の許可ですが、家庭裁判所は、これに関しては全て関わるべきと考えます。せめて代諾縁組の部分については、家裁の許可を必要とするオプションがあってもいいのではと、個人的には思っております。その上で、考慮要素、これを法定することについては肯定的に考えておりますけれども、その中には子の意向、心情の把握というのは必須だと思っております。直前に養子縁組に関する調査報告を頂きましたけれども、それを見ても、子どもに対する説明や意向の確認や聴取というのが、なされていない実情が見えてきているのではないかと感じました。精読させていただければと思いますが、非常に興味深い内容だったと思っております。   それから、(3)の夫婦共同縁組については特に異論がないのですけれども、代諾と必要的聴取の関係については難しいと思っておりまして、特に代諾については、例えば、中学生ぐらいの子が、親の代諾で養子縁組をされてしまうということが、果たしてそれでよいのかという思いもあります。先ほど申し上げたように、せめて代諾の部分については、家裁の許可が入るのであれば、子どもの意向が聴取されればよいのですが、他方で、代諾縁組の年齢を下げるということになると、今度は中学生の子が自分で、単独で養子縁組できてしまうということになりますので、それも若干法的な効果を理解ができているのかという心配がございます。やはり、家裁の許可の中で、子どもの意向を確認していくという手続が必要なのではないかと思います。   それから、父母の関与、実親の関与というところですが、ここも結局事案によるように思います。それまで全く関与してこなかった実親と、継続的に関与してきた実親を同様に考えられるかというと違うのではないか、また、DV加害者だった実親に関与の機会を提供することで監護親と子どもの安全性が害されるということもあります。そういった従前の関係性も踏まえた上で、家裁の許可の中で聴取の必要性なども検討すべきことなのではないかと思います。さらには、ほかに実親以外に、監護親あるいは監護している人がいる場合には、その監護している人に確認をするとか、そういったことも必要になってくるかと思います。   その点に関連して、効果の部分にも関連するのですけれども、当事者の方と接していて思うのですが、離婚後、他方の親が関与したいという理由の一つには、連れ子養子縁組をされてしまうと親権変更ができないという点が大きくあります。監護親に勝手に養子縁組されないように関与したいというニーズがあるものですから、連れ子養子をした後も親権変更ができるという枠組みを残しておくと、実親が養子縁組に関与したいというニーズを少しは軽減できるようにも思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。佐野幹事からも、総論、各論に分けて御発言がありましたが、総論としては、普通養子縁組、ここで言う未成年養子縁組についても、やはり子どもの利益を中心に考えるべきであるという御意見をいただきました。   各論については、大きく分けてやはり二つかと思いますが、一つは家裁の許可について、これをやはり必要とする方向で考えたいが、せめて代諾の場合については必要としたいという御意見とともに、代諾について年齢を下げるという対応には、子ども本人の判断の当否という観点から問題があるのではないかといった御指摘があったかと思います。他方、考慮要素として子の心情を勘案するということは重要だという御指摘もあったかと思います。もう一つは、実親の関与についてですが、こちらは事案によるのではないかというお話と、それから養子縁組後の親権変更の道を開いておくということが問題を軽減するのにつながるという御指摘だったと思います。ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○棚村委員 早稲田大学、棚村です。普通養子の縁組の成立要件のところでの家裁の許可ですけれども、前にもちょっとお話ししましたように、許可基準と考慮事項とはかなり連動してくる問題ではないかと思っています。つまり、具体的に家裁が何をどういうふうにチェックするかということで、子どもの利益とか福祉をどういうふうに守っていくかということにも関連してくるので、私も、基本的には未成年養子に対しては、家裁が何らかの形で関与するということは望ましいと思っています。   ただ、考慮要素とか考慮事項で、一般的に、例えば縁組の動機とか目的、家庭状況とか、親としての適格性とか、具体的なファクターを挙げるということは重要だと思いますし、賛成ですけれども、家裁がどこまで何を見るかということも重要です。そのときに、家裁は積極的に未成年の子の福祉とか利益を増進するという観点からチェックをするのか、それとも消極的に養子縁組に子の利益に反する点がないかどうかを審査するのか。たとえば、特別養子縁組のときの審査や判断というのは、特別養子を認めることが積極的な子の福祉とか子の利益になるかどうかというチェックになると思います。そこで、もし普通未成年養子縁組というのを併存させておくとすると、その利用の実態も目的もかなり多様化しているので、私は、連れ子養子については、何らかのチェックをした方がいいのではないかと思っています。つまり、6万とか7万ある養子縁組で、成年養子が大体3分の2で、3分の1ぐらい未成年養子なんですけれども、未成年養子の3分の2か4分の3近くが、実は連れ子養子になっていると言われています。そういう数のことを考えると、養子縁組が積極的にというよりは、むしろ消極的に、子どもの利益にならないような事態が起こらないかどうかということをチェックするという考え方になると、多少件数は多くても、家裁の負担とかいろいろな形での対応は十分に可能ではないかと考えます。   私が一番気になっているのは、孫養子なんですけれども、これも一定数あって、子の養育を目的としなかったり、節税みたいな場合もあれば、家やお墓を継がせるとか、非常に古い考え方で行われるようなものがあります。その辺りのところをどうやって具体的にチェックするのか、調査官の調査を入れるなどしても、どこまで実態や目的を客観的に把握できるか、家裁の方の対応としても、何をどうチェックするのが難しくないかが懸念されます。確かに、私としては、基本的にはBに賛成なのですけれども、最終的には許可の基準みたいなものを、積極的な子供の利益を増進していくと考えるのか、それとも消極的に子どもの不利益にならないということをチェックするのかで、大分違ってこないかなということで、少し考えているところです。   それから、共同縁組については、夫婦の共同にしていくのか、同意という関わりにしていくのかとか、そういう議論があるとは思いますけれども、実態やニーズの多様性を考えるとある意味では共同縁組という形も取れるし、それから他方の同意みたいな形で個別にもできるとかという選択は残しておいてよいのではないか。言い換えると、実態に応じて、ケースごとに柔軟に対応できるような規律にしてよいのではないか。子どもの養育ということが目的であれば、共同でするということが望ましい場合が多いように思いますが、他方で、子どもの年齢や意向、発達の程度や段階とかいろいろな事情によって、共同性の強さみたいなものが少し変わってくるのではないかとも思われます。   それから、代諾のときの年齢についてですけれども、これも、15歳というものを下げるということについて、私たちの日本家族〈社会と法〉学会では、検討したときに12歳というような案が出ました。これについてもやはり賛否両論があって、かなり大きな効果を持つものなので、12歳という年齢で本当に、子ども自らきちっとした判断ができるのかという問題が出されたり、それから、遺言とか、氏の変更の許可とか、いろいろなことの年齢にも影響が出てくるので、この辺りは少し慎重に検討する必要があるのかなとも思われます。佐野幹事が今おっしゃったように、許可をする際にも、お子さんの意向とか心情というのは非常に重要なキーワードになってくるので、誰がどういうふうな形で子の意向・心情を聞き取ってくるか、確認するかという問題はもちろんあるんですけれども、やはりお子さんのための仕組みということを考えると、武田委員もおっしゃっていましたけれども、お子さんの思いや意思ができる限り尊重され反映されるということはとても大事なことだろうと思っています。   次いで、父母の関与のところですけれども、これも、佐野幹事のご意見と同じでして、実質的な関与をして協力をしている人の意見を尊重したり、あるいはそのような親の関与なしに行われるというのは問題だと思うのですが、無関心であるとか関わりをほとんど持とうとしていない人についてまで、果たして養子縁組に関与させなければならないかは、かなり疑問です。交流もなく関心ももっていない親にも、何らかの形で対応しなければいけないということになると、嫌がらせ、不当な介入とか干渉みたいな可能性が出てくるので、この辺りも、子どもにとってどういう役割を果たしている父母なのかという中身を見る必要があって、特に子どもとの関係性について、一定の要件を求めることが妥当ではないかと思います。たとえば、ほかの国でも、子への関心・継続的な接触交流などを重視していますので、親であれば関与が当たり前だということよりは、親としてどういう関与をしている人について、あるいは親でなくても、第三者の方でも実質的に関与しておられる方については、意向とか御意見を聞くということは当然出てくる可能性あると思います。   以上のように、現状では、特別養子と普通未成年養子という二頭立て、両制度の併存ということの中でいくと、許可というのは、できれば未成年養子についての子どもの利益を確保する上で家裁の関与が必要だと思っています。もっとも、家裁の負担の問題もあるし、考慮事項と許可の基準というものを具体的にどう捉えるかということによって、家裁が何をすべきかということの期待というのも変わってくると思いますので、この辺りは引き続き慎重に検討する必要があると思います。年齢についても、非常に悩ましいところなのですけれども、子どもの意向とか子どもの心情を重視すべきだというところでは基本的に賛成です。しかし、私自身、学界では比較的低い年齢の12歳ぐらいとか10歳でも子どもの意向は尊重すべきだということでは賛成したいのですけれども、ただ、制度として、同意を求めることになるのか、自分で決められるというところまで踏み込んで自己決定権まで認めるとなると、15歳という現行を維持すべきか、それとも、もっと下げるかということについては、子どもに拒否権を与えるみたいな形になる場合には、父母の間の板ばさみや忠誠葛藤にさせないような配慮も必要になるので、少し慎重に考える必要があるのかと思います。内閣府の世論調査なんかを見ましても、15歳ぐらいだと大体4割ぐらいが判断できるのではないかということで、12歳も15%ちょっとあるようです。このようなところや先進諸国での取り組みなどを少し参考にして、考慮すべき子どもの心情とかそういうものは広く取って、子どもが決められるという自己決定の年齢については、やはり少し慎重に考えた方がいいのかなという感じです。 ○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員からは、大きく分けて3点かと思って伺いました。一つは許可の要否について、基準と連動して考える必要があるということを御指摘になり、その場合の基準として、積極的に子の利益を図るという方向と消極的に子の不利益を除くという方向とがあるけれども、後者で考えるべきではないかという御指摘を頂きました。さらにパターンごとに、連れ子養子についてはどうか、孫養子はどうかといった点についての御意見も頂戴いたしました。   それから2番目に、代諾縁組と7の父母の関与につきましては、基本的には佐野幹事と同方向の御意見を頂いたと理解をいたしました。   最後に3番目に、3、4、5についてもそれぞれ留意点を御指摘いただいたと理解いたしました。ありがとうございます。 ○大山委員 経団連の大山でございます。ありがとうございます。今、棚村委員から出された御意見と近い意見を申し述べさせていただきます。   未成年養子縁組の許可の要否につきましては、考慮要素や基準に直結する問題であると思っております。そういった中で、私もやはり、家裁が積極的に関与して判断をするというよりは、子の福祉や利益といったところに反する行為を防ぐ観点から、ネガティブチェックを行う程度の関与に抑えるのが妥当ではないかと思います。そう考えますと、家裁の関与を前提にする場合、家裁側の負担はもちろん、需要者側が手続を行う上での負担も抑えられるのではないかと思います。そのような手続を前提に、案B<何かしら家裁が関与する>が妥当ではないかと考えております。   ただ、その中でも、配偶者の直系の連れ子養子の場合について、例えばDVの形跡があるとか、何か問題があるといったときに家裁の許可が下りなかった場合に、そもそもその新しい再婚が成立するのかといった問題をどう考えるか。また、家裁の許可が出なかったときに、その子どもはどうなってしまうのかなどについても考える必要があり、是非具体的な事例もございましたら、教えていただきたいと思った次第でございます。   それから、孫養子のところについて、先ほど御指摘がございましたが、仮に、例えば家名の存続でしたりとか、それから相続税の問題といったようなことであったとしても、それはそれで、いろいろ家族の在り方に対する考え方も多様化しているということを前提に、仮に相続をして、その子どもの経済的なところの利益があるんであれば、それはいいのではないかと個人的には考えるわけで、そういったところを、何かすごくネガティブに捉える必要はないのではないかと思います。   それから、少し飛びまして、父母の関与のところでございますけれども、やはりこれも、先ほど来お話が出ているとおり、それまで関係をきちんと維持してきたようなケースについては認めるべきとは思いますけれども、そうではない、今まで何のコミュニケーションも関心も示さなかったような場合などについてまで、こちらから積極的に何か通知なりを行うことにより、あえて新たな紛争を招くような可能性、寝た子を起こすようなことをするべきではないのかなと感じております。   さらに、冒頭、武田委員からお話ございましたところについて、例えば、親講座みたいなものといったところですね、これも1巡目の議論のときもちょっとお話しさせていただいたと思いますけれども、そういった親講座的なものは大変重要と思っております。ただ、どのタイミングで行うのか、もちろん1回ではなくて、いろいろなタイミングでやるということでもいいのかもしれないんですが、やはり何か紛争といいますか、離婚なりが現実味を帯びてきた段階だけではなくて、その再婚をする段階とか、再婚届というか結婚届を出す段階とか、そういったときも、いい祝福されるべき局面ではあるものの、やはり冷静に今後想定され得る課題とか、そういったところも含めて、親となる者にはきちんと情報提供していくと、そして、きちんと今後想定される課題について、やはり親としての責任、そういったものを感じていただきながら、きちんと親としての責任を果たしていただくことについて、継続的に発信を行っていくことが重要と思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。大山委員から3点御指摘を頂いたかと思います。判断基準については、棚村委員のお考え方と基本的には同方向であるということを前提にして、連れ子の場合に許可しないとどうなるのかを考えておく必要があるだろう、孫養子は、それ自体は悪いわけではないという御意見を頂きました。   2番目に、父母の関与については、これも佐野幹事や棚村委員と同様に、これまでの経緯に鑑みて、状況に応じて関与を考える必要がある、関与しようとしない人を無理に関与させる必要はないのではないかという御意見を頂きました。   3番目に、冒頭で武田委員がおっしゃったことでもありますけれども、新たに養子縁組によって親になる人についても、いわゆる親講座のようなものが必要ではないかという御意見だったかと思います。 ○落合委員 京都大学の落合です。今まで御意見出たことと、かなり共通する点が多いんですけれども、特にはっきり意見を言いたいところということでは、代諾を許すかどうかということの、子どもの年齢の引下げというような話ですが、私は、基本的には引き下げた方がいいと思っています。12歳ぐらいというのが適当かもしれないと。ただ、本当に判断をさせていい年齢なのかという現実的な問題もあるわけですから、家裁の関与ということで、そこでよく意見を聞くということで、本人の意思を確認する役割を果たすということでもよいとは思います。   先ほど、子どもが拒否権を持つのでよいのかというお話があったんですけれども、私は、子どもには拒否権を与えないといけないと思うんですよね。嫌だと思っている人の子どもにさせられるということは、やはり年齢が低くても嫌なのではないでしょうか。ですから、うまくそれを説明できないにしても、嫌だと思っているんだったら、あえて養子にしないという、そのぐらい尊重してもいいんではないかと思うんですね。親になられてしまうと大きな権限を持たれてしまいますので、子どもが直観ででも嫌だと意思表示をしたときには、しないというのはいかがでしょうか。   ただし、そうすると、養子にしなかった場合に、連れ子というか、新しい配偶者の連れ子に対して何の責任も生じないというのも、またおかしいのではないかと思っていまして、私、前にも何度か言ったんですけれども、養子にしない場合でも、配偶者の連れ子に対して養育責任があるとか、そういうことを別の場所で規定するべきではないかと思うんです。今ですと、養子になったかどうかで、新たに同居する大人との関係が随分と変わってしまいますね。でも、同居している場合はとか、あるいは結婚した相手に連れ子がいる場合は、そこにある程度の養育責任は生じるというようなことを、どこかに書き込むのが自然なのではないかなと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。落合委員から2点、関連する御指摘を頂きました。一つは代諾についてで、年齢を下げるという方向で考えたいけれども、しかし、それに問題があれば、家裁関与の中で処理するということでてもよいという2段構えの御意見。そして、子どもが最終的に養子になるのが嫌だということであれば、それを尊重する方向で考えるべきであって、その場合には、継親子の間の法的な効果を強化するということも考えるべきではないかという御指摘だったかと思います。ありがとうございます。 ○小粥委員 委員の小粥でございます。申し上げたいこと、細かいことですが二つであります。   一つ目は、代諾のことです。民法の先生方には、これは改めて申し上げる必要がないことかもしれませんけれども、代諾については、起草過程で梅謙次郎がこれに消極的な立場であったことから、明治民法の立法の時にも議論があったところで、今の落合先生の提起された問題に関しても、入口の段階で問題を解消するのではなくて、養子が一定の年齢になった後に解約をするというような考え方もあり得るということが、論じられていたかと思います。なので、選択肢を検討するに際しては、明治民法のかつての議論なども振り返ってみるに値するのではないかという気がいたします。それが第1点でございます。   それから、二つ目ですけれども、私も方向性として、家庭裁判所の関与を養子縁組の成立に際しても広げていくというようなことは、必要なことではないかという感じもするわけですが、仮に家裁の関与を広げていくといった場合に、実質的な判断基準の構築が難しいとか、あるいは家裁の負担が増えるというような理由で、家裁の関与について消極的な方向に早めの段階で結論が出てしまうことを若干危惧して、以下のようなことを申し上げたいわけでございます。というのは、実質的に、ネガティブリストを挙げておいてやるとか、あるいは、もっと総合的に家裁が判断するということ、できればそれが望ましいと私も思いますけれども、そうでなくても、例えば養親になる者に対して、親になるというのはどういうことなのかということを、例えば宣誓のような形で手続の中で言ってもらうと。それに一定の法的効果を結び付けることができれば、更によいとは思いますけれども、でも、家裁の手続の中で、何らかの形で親になるというのはどういうことなのかということをしっかり理解してもらった上で、養親になってもらうということも考えられるので、家裁の関与の在り方というのは、いろいろな関与の在り方があり得るということを考慮しつつ、早い段階で選択肢から落とさないということを希望するというのが2点目でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。小粥委員からは2点御指摘を頂きました。1点目は、代諾について、養子縁組が成立した後に、一定の年齢に達した子どもに解約権を認めるといった選択肢もあり得るのではないか、それも含めて検討すべきではないかという御指摘。2点目は、家裁の許可に方向性としては賛成であるけれども、様々な理由で難しいということであれば、養親に情報を与えた上で、親となるということについての一定の意思表示をしてもらうといったことも含めて考える必要があるのではないかという御指摘を頂きました。ありがとうございます。 ○大石委員 千葉大学の大石です。ありがとうございます。私も、小粥委員がおっしゃったことに賛成です。それから、年齢が低いといいましても、子どもに判断力や意見がないというような扱いになってしまうのは、やや納得がいかないところがあります。事務局からお示しいただいた養子に関する調査では、比較的幼い年齢で養子縁組をしたとかいう例も多くあります。そうした子どもにとっても、また養親になる人にとっても、この制度についての必要な情報というのが余りに知られていないのではないかなというのは、事務局からお示しいただいた調査を見ても思います。また、先ほど小粥委員がおっしゃったように、一定の年齢、例えば15歳に達した段階で、意思確認をするような、一種のレビューが行われてもよいのではないかと思います。   また、家裁の関与については、行政負担や家裁の負担の増加を理由に、選択肢からなくなってしまうのは、やはり子どもの立場からは問題であると思いますので、もう少し関与の方法などを議論していただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。大石委員からは、直前の小粥委員の御意見に、基本的な方向として賛成であるという御意見を頂戴いたしました。あわせて、年齢は低くても、子どもが判断できないわけではないという御指摘、あるいは、制度について十分な情報が得られていないので、親だけでなく子どもにも、情報提供して判断の機会を与えるべきではないかという御指摘を頂きました。 ○畑委員 畑でございます。1ページの(5)の養子の必要的聴取というところですが、まず、言葉の問題として、これは、必要的陳述聴取とする方が分かりやすいし、法律用語的にもよいのではないかと思います。それから、その中身、内容ですが、6ページの説明ですとか、9ページの(注1)などに記載がありますが、家事事件手続法を作る際に、一定の考え方に基づいて15歳以上としておりまして、かつ、15歳未満であっても、子の意思の把握はすべしということになっております。現状で余り大きな問題が生じていないということであれば、現状を維持してもよいのかなということを思います。   ただ、代諾縁組の基準となる年齢と陳述聴取の対象というのは、資料の6ページにあるように別問題ではあるのですが、もし代諾縁組の基準となる年齢を引き下げるのであれば、それは実体法的にその一定の年齢の子どもにはそれだけの判断能力があると、それも定型的にあると判断するということだと思いますので、そうすると、必要的陳述聴取の年齢の方も引き下げる方が、整合的ではあるのかなという気はいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。畑委員からは、(5)の養子の必要的聴取と書かれている項目について、まず用語についての御指摘があった上で、内容について、現状に問題がなければ、現状維持でもよいのではないかと思われる一方で、代諾の方について、年齢を下げるのであれば、それと平仄を合わすというのがよいかもしれないという御指摘を頂きました。 ○木村幹事 最高裁木村でございます、ありがとうございます。家裁の許可の関係でございますけれども、連れ子養子や孫養子につきましては、類型的に子の利益が相当程度確保されているということが、現行法の規律の背景にあると考えられますところ、子の利益が害される場合というのはどのような場合であって、そのような事案というのはどの程度あるのか、また、合理的な許可要件というのはどのようなものか、例えば、部会資料の4ページに家裁の許可に係る考慮要素及び許可基準として、現在の家裁実務において考慮されている事情等が幾つか記載されておりますけれども、連れ子養子や孫養子といったことを考えたときに、それぞれ何を裁判所として見るべきなのかということ、あるいは、養子縁組をしようとする側から消極方向の資料の提出が期待できない中、家庭裁判所がどのような審理、判断を行うかなど、様々具体的に検討される必要があろうかと存じます。   部会資料にもありますとおり、本来子の利益を慎重に見極めなければならない事件が埋没し、結果として、子の利益を損なう危険性があるといった懸念もあることも踏まえ、制度を設ける目的と、これにより得られる効果や手続的な負担のバランスが取れたものとなっているのかといった観点からの検討も必要と存じます。得られる効果という観点からは、一読の際にも御指摘ありましたが、裁判所が却下したという場合に、その後どうなるのかといった、同居状態が防げるのかとか、そういったことも御指摘があったと承知しております。   いずれにしましても、現行法制を変更すべき立法事実がどのようなものであるかということを踏まえつつ、具体的な許可要件や考慮事情等にも踏み込んで御議論を頂きたいところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。木村幹事からは、家裁の許可について2点、一つ目は、連れ子や孫養子については、現行法は子の利益を害しないという建て付けになっていると思われるけれども、子の利益を害する場合というのはどういう場合なのか、その場合に、どのような許可要件を定めるのか等を詰めて考える必要があるのではないかという御指摘と、それから、今までの委員、幹事から既に御指摘のあるところですが、負担と効果の見合いということも考える必要があるだろうという御指摘を頂きました。 ○青竹幹事 代諾縁組について少し確認をさせていただきます。代諾縁組の場合は、常に家裁の許可が必要となっているのではないかと思います。そうしますと、未成年者を養子とするには家裁の許可を得なければならないとなっていますが、代諾縁組は15歳未満ということになりますので、家裁の許可が必要ということになります。代諾縁組の年齢を引き下げるという方向ももちろんあるのですけれども、家裁の許可の中で、子どもが拒否している場合には認めないといった、その子どもの意思をやはり尊重するといった方向で、そういう規律の仕方もあり得るかと思います。 ○大村部会長 青竹幹事の今の御意見ですけれども、代諾縁組の場合について、法定代理人が代諾する。それについて、家裁の許可が常に必要であるというのは、どの規定を指していますか。 ○青竹幹事 798条で、未成年者を養子とするにはとありますので、代諾縁組だと15歳未満が養子になりますので、家裁の許可が必要なのではないかと思います。 ○大村部会長 それはそうですが、配偶者の子どもを養子にする場合のことを、皆さん想定されて発言されていると思うのですが。 ○北村幹事 今の御質問について、民法797条では養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人がこれに代わって縁組の承諾をすることができるという規定がございまして、また、民法798条で、未成年者を養子とするには家庭裁判所の許可を得なければならない、ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子する場合はこの限りでないとされており、連れ子養子の場合が一番問題となり得るのかなということで議論させていただきました。 ○青竹幹事 それに限定しているということですね。分かりました。 ○大村部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○久保野幹事 ありがとうございます、幹事の久保野でございます。父母の関与についてでございます。父母の関与につきましては、関係性の実質によるのであって、状況に応じて関与を検討していくのがよいという御意見の方向になっておりまして、その価値判断自体には私も賛成ではございますけれども、ただ、今後に向けての考え方としましては、もう少し、父母である、あるいは親であるということから、原則としては通知だけはするといったような可能性について、一つの考え方としては残して検討していく方がよろしいように思います。   その理由は3点ほどあるのですけれども、一つは、佐野幹事の御発言の中にありましたとおり、親権変更の可能性がなくなるという効果に、今のところ結び付いているわけですので、そのことをどう考えるか、あるいは先ほど佐野幹事から御提案があったように、むしろそこを、関与に問題があるのであれば、そちらを見直すというような可能性についても考えながら見ていくということが、よろしいように思います。   もう1点が、同じような発想から、つまり親権者の変更の可能性が奪われるということと似たような発想から、民法797条の2項の後段で、親権を停止されていても、この場合は同意まで認められており、同意となっているのは、やはり関与がないうちに親権を再び行使する可能性がなくなるということを考慮して、このような条文が入っていると思います。この条文から、直ちに父又は母の同意を必要とすべきだと申し上げるつもりはないですけれども、この条項との関係といったことを考えていく必要があるのかなと思います。   三つ目が、資料の方でも9ページで、部会資料12、13との関係を踏まえての引き続きの検討について触れてありますけれども、それらの議論のときに、何らかの形で共同関与を認めるときの最も軽い関与の在り方としての重要事項について知らせることについては、親である以上は知らせるという考え方がありうるという御指摘が出ていたところでして、そのことを踏まえますと、養子縁組はやはり知らせるだけは知らせるというのが原則だと考えた上で、例外的に長年の無関心といったような事情がある場合には、親としての最低限認められるべきものさえも奪われることがあるとして例外と位置づけるといったような考え方もあり得ると思うところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。久保野幹事からは、父母の関与について、先ほどから場合によるといった御意見出ていますけれども、原則通知という選択肢をベースに置いて考えるというのはどうかということで、先ほどの佐野幹事の意見及び現行法及びここでの議論との整合性という観点から、それが望ましいのではないかという御説明があったと受け止めました。 ○窪田委員 神戸大学の窪田でございます。もう随分議論が出ていた年齢に関してなのですが、現時点で、選択肢を増やすというのは適当ではないのかなと思って、ずっと発言しませんでした。ただ、基本的には、この問題については、自分自身で養子縁組ができる年齢についての問題と代諾の対象となる年齢の問題という二つの問題があり、現在は15歳というのが、15歳までは代諾だし、15歳以降は自分でということなのですが、本当にその二つをリンクさせた上で議論する必要があるのかなというのは、ちょっとよく分からないという気がしております。   例えば、家庭裁判所の関与という条件の下で12歳という年齢に引き下げるというのは、ある意味で十分に合理的な選択肢なのかもしれないという気もするのですが、他方で、一般論として、12歳という年齢が、それほど成熟しているのかというと、私自身はまだちょっと悩んでいる部分があります。その点では、15歳というのは、やはり一定の意味を持った年齢だったのではないかという気がします。ただそれに対して、15歳になるまで、親が言わば専権的に代諾という形で、子どもの意思を介入させずに養子縁組についての判断をするということに対する、多分疑問というのも出ていたのだとすると、もちろん家庭裁判所の許可という要件を重視した上で12歳に下げるというのもありますが、例えば、15歳という年齢を維持した上で、12歳以上については子の同意が要るといったような形での別の組合せというのもあり得るとのかなと思いました。   この二つの問題をセットにして、12歳がいいか、15歳がいいかという議論の仕方とは別のやり方もあるんではないかなということで、ご検討いただければと思って発言させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。窪田委員からは、年齢の問題について、自身が養子縁組を行うときの適齢の問題と、代諾について子が関与する場合の年齢とは分けて考えられるのではないかという御指摘を頂きました。   池田委員、赤石委員の順番でお願いいたします。 ○池田委員 弁護士の池田でございます。2点申し上げたいと思います。まず1点目は、養子縁組した後、元の親権者で、今、親権者でない者が親権者の変更の申立てがもうできなくなってしまうという点についてですが、これは、できるような可能性を開くべきではないかと考えています。佐野幹事がおっしゃったことと理由は同じです。実親の関与をどのように認めるのか、あるいは認めるか認めないのかも含めてという議論がありますが、そことの関連性ということにおいても、重要性を持ってくるのではないかと思いますので、その可能性を検討すべきだと考えています。   それから、2点目ですが、家裁の許可を必要とする場合に、どのような場合に不許可とされ得るのかとか、不許可となった場合でも、養親になろうとした者と子どもとの生活というのが実態として続いていくとすればどうなるのかという御指摘が、最高裁の方からあったかと思いますので、その点について少し述べたいと思います。許可の基準というほどのものではないかもしれませんけれども、不許可の具体例を考えてみます。例えば、養子縁組が何度も繰り返されている場合があると思います。直前に頂きました養子縁組のアンケートを拝見しますと、7回くらい繰り返しているようなケースも複数あったかと思いますけれども、そこの中身を見てみないと分かりませんが、仮にそれが、親権者である親が再婚、離婚を繰り返して、その中で養子縁組も縁組、離縁、縁組、離縁と繰り返しているのだとすれば、恐らく、夫婦関係と子どもとの関係を混同しているのではないかということも考えられますので、そういったチェックを入れることで、これ、本当に必要なことですかというふうな問い掛けができるのではないか、その中で除外されていくというケースもあるのではないかと思っています。   それから、二つ目の例としては、養親となろうとする者が、非常に虐待傾向のある、それを公言してはばからないというようなケースなどがあって、やはりこの親に親権を与えると非常に危険なのではないかというようなケースも、考えられなくはないと思います。そんな具体例があり得るのかなと思いました。   それから、とはいえ、養子縁組を許可しない場合でも、なお同居関係が続くというときにどうなるのかということですけれども、これは、継親子関係ということで、今でも養子縁組を選択しない場合にはそうなるわけですから、そうなるだけの話ということですね。例えば、虐待傾向の非常に強い、虐待を公言してはばからないような親が仮に継親として残ったような場合、それでも不許可に意味があるのかということですけれども、例えば、そんなケースで、親権者の方が継親の虐待を止めないとか、あるいはその虐待に加担をするようなことがあれば、児童相談所が介入することになります。それで、例えば里親委託、あるいは施設入所というときに、誰を親権者として相手にするかとなると、やはり継親は飽くまで継親でしかないので、法的な手続においては、位置付けが非常に低いわけですね。その意味で、親権を持っているか持っていないかというのは、その場面で非常に重要になってきますので、そこで養子縁組を認めないという選択肢というのは、重要な重みがあると考えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは2点御意見があったかと思います。1点目は、佐野幹事もおっしゃっていたことですけれども、親権変更申立ての可能性を開いておく必要があるのではないかということ、2点目は、家裁の許可に係らしめた場合に、不許可とされる場合の例を挙げていただきました。また、不許可とされた後どうなるのかということについては、継親子関係とおっしゃったかと思いますが、姻族1親等の関係が生ずるにすぎないという御発言があったと理解をいたしました。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。発言の機会ありがとうございます。私はまず、5ページの嫡出でない子が、親が婚姻したときの養子縁組、夫婦共同縁組について指摘させていただきたいと思います。書いてあるように、嫡出と嫡出でない子の法定相続分は平等化しております。嫡出でない子の身分を答えさせるというか、合理性乏しいのかなと思っているし、その実子ができたとしたら、そこでの間で養子縁組することにも心理的抵抗感があるというのがあると思うんですけれども、私自身は、嫡出でない子の親ですが、婚姻したことはないのであれなんですが、ひとり親の方たちを見ていると、子どもに嫡出であるという身分を得るために、シングルマザーであったけれども、別の親と婚姻して養子縁組するというような方もいらっしゃったと思います。少しでも子どもの差別をなくしたいというお気持ちは、推し量ることはできるなと思っております。   ここの問題は、親子法制の方で既に議論されたとお聞きしているんですけれども、やはり根本的に嫡出と嫡出でないという概念を置いていることが、矛盾の原因だなと思っておりまして、いろいろ動かせないような要綱が出たということをお聞きしているので残念には思うんですけれども、やはりここで1回は指摘しておきたいなと思いました。嫡出でない子という概念が、母親にとっては嫡出であると捉えられると思うので、親でありますので、何かそこの、母親にとっては実子であり、嫡出である子と定義できないもなのかなと、素人考えでは思うところであります。今は両方の親から嫡出でない子となってしまうということがありますけれども、産んでいる方の親からは、そういう関係性でもいいのではないかなと思います。ちょっと言わずもがなのことを言ってしまっているのかもしれませんが、一言、親子法制の方でもここは動かなかったと聞いており、残念に思っているところでございます。なので、嫡出子と嫡出でない概念というのは、どこかで書いていくべきだなと思います。   それから、その代諾縁組のところなんですけれども、私もちょっと、やはり15歳という年齢を基準にするのは大変違和感がございます。やはり中学生ぐらいになれば、本人の考えとか、自分がどんなところで育ちたいのかとか、そういうことについてはある程度意見が述べられてしかるべきだと思います。ただ、では、責任を負わせるのでいいのかとか、いろいろな議論があるんだなと受け止めているんですが、何らかの保障をした上で、やはり意思を聞くということが保障されるべきではないかなと思いました。   それから、7ページ、父母の関与についてなんですけれども、やはり父母の関与というのは非常に難しいなと、書いてあるとおり私は思っております。今までの議論を聞いておりますと、割と関与の程度によっては、そこに何らかの報告なり通知なりといったものがあってもいいのではないかというような議論もあったかと思います。では、関与の程度というのは、一体どこで誰がどのように判断するのかよく分からなくて、かなり粗い議論になってはいないのでしょうかと思います。では、会っているというのは、どのように証拠を提出するのかとかいうことになりますので、それぞれの主張も違っていたりとかいうこともあるかもしれませんので、すごく難しいところに突入してしまうんだろうなと思います。事前に通知すれば、先ほどから議論になっているように、親権の変更を申し立てることもできるわけで、それが子どもの福祉にとって適当なのかどうかというのは、ちょっと本当によく分からないと思います。ここの辺りで、子どもに無関心な親がどの程度いるのかとか、全く、なかなか分からない数字なわけですけれども、かなりの別れた父親が無関心層になっているような様子がございますので、父母の関与ということを簡単には取り決められないのではないか、また同意とか通知とかいっても重たいものですし、報告義務というのでもかなり大変なのではないかなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員からは3点御指摘があったかと思いますが、一つ目は嫡出の用語について考える余地はないかということでしたけれども、具体的な御意見としては、(3)の夫婦共同縁組について、当該保護者の嫡出子であるか否かにかかわらずという提案に賛成されるという御趣旨のこともおっしゃっていましたか。 ○赤石委員 ここの問題を解決するには、やはり嫡出、嫡出でないという概念をなくしていくのが、一番すっきりすると思いますということでございます。 ○大村部会長 そうですか、分かりました、そのような意見として承りました。 ○赤石委員 すみません、願望的なことを言ってしまって、申し訳ございません。 ○大村部会長 それから、代諾については、制度的なサポートをした上で意見を聞くという方向を示されたと理解しました。3番目に、父母の関与については、従来の関与の程度ということが皆さんから言われているけれども、その判断が難しいので制度化は難しいのではないかという御意見を頂いたと理解をいたしました。   菅原委員、落合委員、それから最高裁の木村幹事の手が挙がっていますので、このお三方から御発言を頂いたところで、休憩を挟ませていただこうと思います。 ○菅原委員 ありがとうございます。白百合女子大学の菅原です。幾つか述べさせていただきます。   まず、第1の案Bですが、家裁の許可については案Bに賛成です。そして、今までの議論にありましたように、養親となろうとする者に養育上の問題となるようなネガティブな要因がないかどうかのチェックが必要であるということと、子どもにとって大事だと思うのは、親講座を受けていただくということで、離婚を経験している子どもたちの心理や行動についての理解を深めていただくために、親講座を必須にしていただけたらよいのではないかと思います。また、養子になることについての子の心情あるいは意見の汲み取りというところも、難しい作業ですけれども、必要な場合にはしっかり家裁に機能していただけたらと思います。   (4)の代諾縁組の対象年齢を現在の15歳未満から引き下げるべきかどうかという箇所ですが、私も非常に悩んでいたところで、1巡目の審議では、もう少し引き下げるべきではないか、子の人生にとって大変大事なことなので子ども本人の関わりをもう少し低年齢から機能させるべきではないか、そういう意見を申し述べたところでございましたが、本日の議論を伺いましたところ、やはり子どもにとってかなり重たいことになるということと、それから、(5)の必要的聴取とも切り離して考えることもなかなか難しいという点で、代諾縁組の対象年齢は15歳未満と現状のままではありますが、12歳以上は子どもの同意が必要となるというような形に加筆修正することもできるのではないかという先ほどの窪田委員の案に賛成したいと思うに至りました。   それから、(6)につきまして、養親になる者に意見や心情を聞かれて答えることは子どもにとって重いことになりやはり相当難しいと思われますので、家裁や手続代理人などの第三者が確認すればよいこととし、私も(6)はなくてもよいのではないかと思います。   それから、最後ですが、(7)の父母の関与ですが、いろいろ難しいとは思いますが、やはり親権を持たない親が自分の子どもの大きな状況変化を知らなかったり居場所などをたどれなくなるというのは親子双方にとって大変なことですし、元の家族がこの変更について事実を知っているということは親子双方の権利にとっても重要なことという気がしておりますので、最低でも事後の通知という線は残していただけるとよいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。菅原委員からは、家裁の関与については基本的には案Bで考えたい、親講座は必要であるし、子の心情についての配慮も必要である、代諾については、本日の窪田案の方向がよいのではないかという御意見を頂きました。また、(6)については不要なのではないか、(7)については通知は必要ではないかという御意見を頂いたかと思います。 ○落合委員 私も、窪田委員の御意見に賛成ですと言っておきたいと思って、手を挙げました。12歳から15歳の間では、代諾は親権者がするにしても、子どもの同意が必要というのがいいだろうなと、いい案だなと思いました。   ただ、同意をどのように確認するかというのが、余り形式的になってしまうといけないわけですよね。例えば、何か名前を署名すればいいとかですと、親の見ている前では署名をさせられてしまいますよね。ですから、子どもの同意を確認するのに、家裁の関与が必要ということになるのではないかなというような気がします。家裁か、とにかく何か公の機関の関与が必要であろうと。そういうことになりますと、今度、12歳よりも下の子どもの場合も、家裁の関与は必要で、その家裁の見るべきところのやはり第一が、子どもの心情や意見だろうと思うんですね。年齢にもよりますけれども、でも、何歳であっても、どんな様子かは、とにかくしっかり確認することが必要だろうと思います。   その確認の仕方についても、やはりある程度詳しく決めていくことは必要だろうと思います。親権者が同席しないところで許可を取るとか、何かそのような配慮が必要だと思います。その場に、そこにいるべき専門家が、法律の専門家だけではなくて、心理の方の専門家ですとか、特に子どもの心理に詳しい方とか、そういう方が確認の場にいるべきであろうと。親権者はいない方がいいだろうと考えます。そのように言いますと、家裁が忙しくなるということになると思うんですけれども、ここの会で出せる意見かどうか分からないんですけれども、十分な人員上の配慮をお願いしたいとか、何か一言書いてもいいのではないかなと思います。   そのようにして、12歳未満の子とか15歳までの子についても判断がされるわけですけれども、やはり先ほど御意見の出ました、例えば15歳より上になったらなど、ある年齢になったら、子ども自身の意見でかつての判断を取り消すことができるというような、それも明記しておいた方がいいだろうと思います。   それと、ちょっとここでは関係ないことですけれども、先ほどの嫡出子で赤石さんがおっしゃいましたので、嫡出子という概念は、世界的には残っているんですか。illegitimateというのは、どのぐらいの国で使っているんでしょうか。産んだ人にとったら、どう考えてもlegitimateなんですよね。それをillegitimateだと言われてしまうというのは、かなり不思議なことですし、家族研究の世界などでも、できたら使わない方がいいような言葉になっていますよね、illegitimacyみたいなのは。世界の流れも確認して、本当に日本ではこの区別を残すのかというのは、考えておくべきことだと思います。個々の責任ではないにしても。 ○大村部会長 ありがとうございます。落合委員からは2点御意見を頂きましたが、1点目は、窪田案をベースにして考えるということだけれども、同意について、これを得るための配慮が必要で、その場合には、やはり家庭裁判所等の関与は必要になるのではないかと御意見、あわせて、同意を要さない年齢の子どもについても、家裁が様子を見るようなことが必要ではないかという御発言もあったように思います。他方で、小粥委員がおっしゃったような、一定の年齢に達した後の解約権のようなものも併せて考えておく必要があり、複合的な制度を考えるべきではないかという御意見だったかと思います。   あともう一つは、先ほどの赤石委員御指摘の嫡出についての御意見等を頂きました。 ○手嶋委員 最高裁家庭局、手嶋でございます。先ほど来、家庭裁判所の関与に対する期待のお声をたくさん頂いておりまして、信頼いただいていることを大変うれしく思うとともに、やはりその要件、それから考慮事情など記載していただいておりますが、どのような考慮事情をどのように判断するのか、できるのかというところは、やはり家裁実務を預かる者としては、非常に関心があり、かつ、心配もするところです。先ほど来の御意見を伺っておりますと、基本的にはネガティブチェックでいいのではないかという御意見を多数頂いているのではないかと思うのですが、その場合のネガティブチェックでいう、子の利益に反することというのが一体どういうことなのかというのも、更に具体的に是非御議論いただきたいと思っておりますし、家裁として、それをきちんと判断できるような手続も、きちっと考えていただきたいと思っております。   先ほど池田委員からせっかく素材を頂いたので、その点について少しコメントをさせていただければと思うのですが、これも、子の利益に反することというのをどういうふうに見るのかというのが、人それぞれ、いろいろな考え方があるのではないかなとも思っているところでございます。一つ目で御指摘いただいた養子縁組が繰り返されるということが、本当に子の利益に反すると、その時々に分かるのだろうか、初めから離婚、再婚を繰り返すことを考えておられるカップルというのは、そうはおられないのではないかとも思いますので、その点はどういうふうに、皆様お考えなのだろうかということがございます。   また、二つ目の方で御指摘を頂きました、虐待傾向があって、それを公言してはばからないといったような事案については、比較的裁判所としても調査、判断は容易かと思われるところなのですが、先ほど木村幹事の方からも申し上げましたように、ネガティブな情報を提供してくださる方がいないという手続の中で、それをどうやって把握できるのか。御本人が公言してはばからないというような事案でない場合に、そこら辺が非常に懸念をされるところです。   もう一つ、子の意思、意向というところについても、御発言が多数出ているところで、その重要性についてはよく認識を共有するところではあるのですけれども、例えば、ほかの条件面では特段問題がないというときに、お子さんが反対をしているという連れ子養子のケースで、それで却下をするのか、はたまた却下しないときには何をどう考慮するのか、これも具体的に考え始めると非常に悩みます。さらに、却下をするという場合については、実態としては、御夫婦プラスお子さんという形の生活が続いてくわけでして、特に、親御さんは真摯に親になりたいという意向をお持ちの場合に、却下という判断がどのように影響するのか、また、子どもさんの意向というのは、何をどこまでどの程度理解をした上での意向であるのかという辺りも非常に気になりまして、家裁の手続だけではなく、事後的なフォローも含めて、何か支えになるような仕組みが考えられるのだろうかといった辺りも、気に掛かるところでございます。   そのようなことも含めまして、家裁としては、少なくとも要件、効果、きちっと判断できるような、更に具体的な場面というのでしょうか、を想定した御議論を、是非お願いをしたいと思っているところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。手嶋委員からは、先ほど池田委員が挙げられた事例に触れつつ、要件や、あるいは考慮事情について、更に検討をしていただきたいという御要望を頂きました。子どもの利益をどう判断するのかということと併せて、子どもの意向をどのように扱うのかということについても、御意見を頂きました。その中で、情報の収集をどうするのかと、あるいはサポートシステムを併せて考えてもらえないとなかなかやりにくいといった御指摘も頂いたかと思います。   手を挙げていただいた方から御意見を頂戴いたしましたが、よろしければ、ここで休憩を挟みまして、10ページの「未成年養子縁組の効果」という部分、それからその後の15ページの「未成年養子縁組の離縁」という部分、休憩後はこれらの部分に入らせていただいて、もし成立要件の部分について、関連して何か御発言があるようでしたら、その中で頂くという形にさせていただきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。   今、14時57分になりましたので、10分少々休憩しまして、15時10分に再開したいと思います。   休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開させていただきたいと思います。   休憩する前に、柿本委員が手を挙げておられたかと思います。落合委員もですね。では、柿本委員、落合委員の順で御発言を頂き、それからその他の方に効果、離縁も併せて御意見を頂戴したいと思います。 ○柿本委員 ありがとうございます、柿本でございます。養子制度に関して、総論的には子どもの福祉、子どもの安全、子どもの利益を中心に考えていくべきだと考えております。養子制度に関する規律の養子縁組の成立要件でございますが、私も案Bに賛成でございます。家裁の関与は必要と考えます。許可基準などについては、丁寧に作っていく必要があると考えております。   そして、4番の代諾縁組についてでございますが、こちらは、私は窪田先生の御意見に同じでございます。ただ、12歳以上という数字、子どもの意見の引き出し方、そして誰がそれを聞き出すのかという、専門家の関与が非常に重要ではないかと考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。柿本委員からは、全体としては子どもの利益を考えて、養子縁組について考えていくべきであるという御意見、家裁許可については、案Bがよいけれども、基準等については丁寧に考えるべきである、代諾については、落合コメントを含めた窪田案に賛成であるという御意見を頂きました。 ○落合委員 ありがとうございます。最高裁の方から、家裁にみんな来たりしているけれども、実際にやるのは大変ですよというコメントを頂いたので、そうだなと思いまして、確かにおっしゃるように、却下すれば、その後、家族の関係がむしろ悪くなりますよね。例えば、保留とかいうことはできないんでしょうか。半年とか1年様子を見るとか、今から急に親子になってくださいと言われても、うまくいくかどうか、本当はやってみないと分かりませんよね。ですから、時間を掛けて判断するみたいな枠も設けて、しかも、それは、特に問題があるケースだからというわけではないというような、理解を得られるようなカテゴリーを作るというようなことです。ちょっと手が掛かるかもしれませんけれども、そんな方法もあるかなと、ちょっと素人ながら考えました。 ○大村部会長 ありがとうございます。落合委員からは、試験養育期間のような制度を考えて、それを挟むといった選択肢もあるのではないかという御指摘を頂きました。   それでは、後ろの部分に進みたいと思いますが、まず、それに先立って、事務当局の方から、効果及び離縁の部分についての説明をしていただきたいと思います。お願いをいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。10ページ以下になります、2の「未成年養子縁組の効果」について、まず(1)については、現行法の解釈を確認させていただいて、このような関係でよいのかについて御議論いただくとともに、更に何か規定を設ける必要があるのかどうかについても含め、御意見を頂ければと思います。なお、前回も御議論いただきましたけれども、共同親権あるいは離婚した父母が何らか子の養育に今後関与する、その法的な根拠を認めるような場合に、養子縁組した場合には、当然関係してきますので、その点も含めて、御意見も頂ければと思っております。   (2)の扶養義務についても、こちら、現行法上の解釈について御説明させていただいておりまして、さらに、そこの点についても何か規定を置かなければならないかどうかというところも含めて、御意見いただければと思います。なお、一読の際には、15ページに記載しておりますけれども、相続権のところについても御提案、御議論いただいたところでありますけれども、なかなかそこは難しいのではないかという御意見いただきましたので、今回は規律から落とさせていただいております。   15ページ、「3 未成年養子縁組の離縁」についてですけれども、こちら、未成年養子縁組の場合、養子が未成年の場合、離縁の場合には、特に家庭裁判所の許可は現行不要でございますが、そこについて、なお検討してはどうかということを提示させていただいております。その点についても御意見いただければと思います。ただ、家庭裁判所の許可を必要とする場合に、許可がないと離縁ができないという問題が当然生じてまいりますので、本当に許可が必要なのかどうかという点について、御意見いただければと思います。   なお、特別養子縁組の離縁についても御意見いただいておりましたけれども、この点、法改正したばかりということもあり、御意見いろいろ頂いていたところでありますけれども、現時点で事務局として何か積極的な御意見、提案ができる状況には今ないということで、御説明だけにさせていただいております。   事務局からは以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。では、未成年養子縁組の効果と離縁につきまして、御意見を頂ければと思います。いかがでございましょうか。 ○小粥委員 すみません、どなたもなければということで、ちょっと細かいことで恐縮なんですけれども、連れ子養子について、つまり配偶者の実子について、新しく結婚した人が養子縁組をした場合に、共同縁組になるということについての現行法の解釈の確認ということなのか、新しく手当てが必要なのかというところについてです。この場合、共同親権になると普通説明されているような気がするんですが、それでよかったのかどうか。仮によかったとすると、元々の連れ子の親子関係が非嫡出子だとすると、養子縁組をすると親子関係は嫡出子となりまして、しかし、共同親権に服するのは嫡出子ということになっているように思われ、よく分からないのです。要するに、嫡出、非嫡出の問題はそういうところにも波及効果があるのではないかと思うんですけれども、そういうところの整理みたいなことまでは考えておられるのかどうかということを、ちょっと事務局にお聞きしてみたかったということでございます。 ○大村部会長 質問ということでよろしいか。 ○小粥委員 はい。 ○大村部会長 分かりました。事務当局の方でお願いします。 ○北村幹事 お答えになっているかどうかあれなんですけれども、解釈としては、通常、連れ子養子をした場合には共同親権だとされていると理解をしております。その上で、後半の質問、嫡出子と嫡出でない子のところに影響が及ぶが、どこまで手当てをするのかというところまでは、正直なところ、今回の諮問の範囲を踏まえると、どこまでそこを念頭に置いているかと言われると、大きなところまでは念頭に置いていないということになります。その点について、いろいろ先ほども御意見いただいているところでありますけれども、諮問の範囲から、この部会でそこまで広く扱うのは難しいかなとは考えてございます。 ○大村部会長 小粥委員の御発言は、嫡出の概念をどうするのかということに関わるとともに、共同親権は、婚姻中、嫡出子について認められているという理解と、再婚後の子どもについて養親と実親の間で共同親権になるという解釈が採られているけれども、その子は実親との関係では非嫡出子の場合があるので、この解釈との間に不整合があるのではないかという御指摘でしたが、この不整合をそのままにして解釈に委ねておいてよいのかという御趣旨も含んでいたように思います。   その趣旨であるとすると、嫡出の概念の方はともかくとして、親権の行使に関する規律をどうするかという点は、この部会での対応はあり得るかと思って伺っておりました。   ○石綿幹事 幹事の石綿でございます。(1)のアのBで、共同して親権を行使した後、養親と実親が離婚した後、819条の1項、2項を参考にするというような形で、養親、実親の一方を親権者と定めるということは、現行法の解釈はそうなっているのではないかというのは、恐らくそうだと思いますし、また、それを明確にするために、規律を入れるということ自体もよいかと思います。これに関連して、先ほどかなり多くの委員、幹事の先生方から、連れ子養子をした場合、親権を有していなかった実親への親権者の変更が封じられていることをどう考えるかという御意見があったかと思いますが、離婚をした後の親権者変更というのは、共同して親権を有していた実親と養親間でしかできないのでしょうか。親権を有していなかった実親、共同親権者だった実親と養親の3者間でできるのかといったことも含めて、親権者変更の規律を置くということを考えた方がよいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほどから親権者変更の機会を確保するという話が出ていますが、これについても、どの時点で確保するのかという問題があって、養子縁組がされる前に親権変更の申立てをする機会を確保して、実親の間で親権変更をするということにするのか、あるいは、養子縁組がなされた後に、従来の理解を覆すことになると思うんですけれども、先ほど話題になった養親と実親が共同で行使している親権について、これを変更するということを考えるのか、この両者でかなりイメージが違ってくると思いますので、その辺りも含めて、もし後者であるのならば、明確な規定を置いて対応する必要があるという御指摘として受け止めてよろしいですか。 ○石綿幹事 はい、結構でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○池田委員 弁護士の池田でございます。(1)のアの@、A、Bに関してですけれども、@とBについては、これは従前よく言われてきたことで、直ちになるほどと思うのですが、Aについては、@やBに比べて広くこのような解釈が定着しているかというところが、私としては分からないところでございます。といいますのも、これは要するに、離婚のときに親権者にならなかった実親に、親権者変更によらずに、もう一度親権者になるという道を開くものになるかと思うんですけれども、それがいいのかどうかというところは、もう少し議論が必要かなと思います。以上が1点目です。   それから、その下のイについてですが、これは、親権者の変更を伴わない養子縁組を認めるかどうかということについては、日弁連の中で議論しまして、やはり慎重の意見が強いところでした。未成年養子縁組の趣旨をどう考えるかというところに深く関わる問題で、やはり養育というものを中心に考えるべきではないかという意見です。   ただ、他方で、孫養子などで見られますように、氏の存続ですとか、あるいは相続の観点から、養育を伴わない縁組が実際になされているということも踏まえますと、15ページの(注2)にありますように、その場合には、親権はやはり養親に行くんだけれども、監護は実際には実親がやりますよということで、監護者指定を使うなどの方法があるのではないかと思いますので、引き続きそこを議論できればと思います。   それから、(2)の扶養義務のところですが、現在、確かに養親が一時的な扶養義務を負い、実親が二次的な扶養義務を負うという解釈が一般的かと思います。ただ、審判例の中には、なお養親と実親の経済的な状況等を比べて、実親に養育費の支払義務を負わせているようなケースもあるようですので、そういった実務が変更されないような形での規定ぶりが必要かなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。池田委員からは、(1)、(2)それぞれについて御意見いただきましたが、(1)の案については、@、Bはそうであろうけれども、Aについては、必ずしも自明ではないのではないかということで、再婚した場合の実親の方が親権者であるという場合を想定すれば、共同親権でよいかもしれないが、そうでない場合については、もう少し考える必要があるのではないかという御指摘をいただきました。未成年者の養子縁組であるとすると、事前に親権者の同意を得て行われているはずですが、いずれにしても整理が必要ではないかという御趣旨と受け止めました。それから、イについては慎重論で、なお検討する必要があるのではないかという御指摘を頂きました。   (2)については、これはこのように考えられているけれども、実務で例外的な取扱いがされている場合もあるので、そのことを勘案して規律を考えていく必要があるということだったかと思います。 ○赤石委員 ありがとうございます、しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。私は質問なんですけれども、(1)のイですね、親権者の変更を伴わない養子縁組というのが書かれております。普通に言えば、孫養子というか、節税目的なのか、そういったものを含むものなのかなと思うんですけれども、教えていただきたいんですが、これから議論される可能性のある、共同親権で子どもを育てています、で、未成年養子縁組をします、そうしたら、もう一人養親と一方の親が結婚するので、そこでまた養子縁組すると、親権者が変更しないんだったら、3人親権者ができるということになるんですかというのが、ちょっとよく分からなかったので、教えていただきたいと思います。   それについては、もしそうなるのであると、若干ちょっと想像し難いんですけれども、どうなるのか非常に慎重に議論すべきかなと思っております。なので、質問です。 ○大村部会長 ありがとうございます。(1)のイについて、仮に離婚後に括弧付きの共同親権を認めたとして、その一方が再婚をしたという場合の取扱いがどうなるのか。これによると、3人の人が親権を持つといったことがあり得るのかという御質問ですね。 ○北村幹事 3人があり得るかと言われると、想定は今していなくて、基本的には、養子とその父母の1組の夫婦ということになるのではないかということで、皆さんに御議論いただきたい。その上で、御質問いただいたような場面というものがもし生ずるようになるのであれば、そこについてどう考えるのかも御意見いただきたいと思っていますけれども、前提として、1組の夫婦ということになると、元々離婚して2人が親権を持っている、その上で、片方が別の方と婚姻されて、別の方と養子縁組をしたときに、非常にその関係というのは複雑になると思っていますので、そこはそうではないかという理解でいいですよねということでの、現行法の解釈も含めての皆さんの御議論いただきたいという趣旨でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。事務当局としては、1組の夫婦がその親権を行使するということをベースに考えているということですね。もし違う扱いが必要ならば、そうした必要性について積極的な御議論を頂いて、制度化が可能であればするということもあり得べしという御趣旨だと承りました。 ○水野委員 親権者につきまして、丁寧にお考えいただいているのですが、その効果のところで一点、発言させていただきます。先ほどの離縁と重なってくる論点かとも思うのですが、養子については、転縁組についての規制が、日本の場合にはまったくございません。結婚ですと、離婚しないと再婚できないのですけれども、養子縁組の場合には、離縁しなくても、幾らでも重なって転縁組ができることになっております。戦前の家制度の下では、同じ家かどうかという要件で扶養義務も相続権も全部カバーされておりましたので、問題にならなかったのですが、現行法の下では、順番にたくさん転縁組しますと、相続人も山のように増え続けますし、扶養義務者も増加し続けるという問題がございます。親権者の重複については丁寧に検討いただいているのですが、相続権などについてはとりあえず対応を考えないということですけれど、次から次へという転縁組について、ここで何も規制を置かなくてもよろしいでしょうか。その点は、私は、いささか危惧しております。 ○大村部会長 ありがとうございます。水野委員がおっしゃるように、現行法の下では養子縁組を解消せずに更に養子縁組をするということで、順次養子縁組をしていくと、実親子関係のほかに、養親子関係がたくさん増えていくことになって、相続権も重畳的に増えていくということになります。相続以外の問題については、ここでの規律を明確化するということで、相当程度カバーできるということになりますけれども、相続も含めて考えたときには、転養子縁組みたいなものについて一定の規律を考えなくてよいのかという問題提起を頂いたと理解をいたしました。ありがとうございます。 ○落合委員 何度もすみません。私は、先ほど事務局の方からお話のあった、親は2人と大体考えているというところにちょっと引っ掛かったものですから、一言申したくて。親、養育に主に関係する人が2人だというのは、この100年ぐらいの常識なのではないですかね。非常に近代的な常識であって、ですから、それは前提に考えない方がいいのではないかということを、言っておきたいと思ったんです。もっと大勢が関わっていた時代もありますし、社会もありますし、現在でもそういうこともあると思います。逆に、本当に1人で育てるということもありますし。ですから、2人が適当なのではないかというのは、ちょっと取っ払っていただきたいと思って、ちょっと発言しました。   かと言って、水野委員がおっしゃったように、どんどんどんどん増えていくというのも、また現実的ではありませんよね。それがいいと言っているわけでは全然ないんですけれども、2人というのも、固執しない方がいいのではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。親は2人だということに固執しない方がいいのではないかという御意見を頂きました。現行法の下でも、親は2人以上になることはあるわけで、まず、実親のほかに養親ができます。それも水野委員がおっしゃったように、たくさんの養親ができることもあるわけです。問題は、親権を行使する人をどのように絞り込むかということで、それをどう制度化するかということではないかと思います。落合委員がおっしゃったように、様々な人が子の養育に関与しているという事態は、近代以前にもあったでしょうし、今もあるでしょうが、親権者以外の人による監護という問題は、ここでも議論の対象になっているかと思います。事実上の監護を誰が行うのかという問題と、親権者としての決定権限を誰が行使するのかという問題は切り分けて考える必要があるのかと思って伺っておりました。しかし、親が2人でなければいけないという前提で考える必要はないという御指摘は、確かにそうだろうと思って伺っておりました。ありがとうございます。 ○大石委員 千葉大学の大石です。私も質問があります。親が幾つもの養子縁組によって増えるかもしれない場合に、子にとっての親の扶養はどのようになるのでしょうか。子どもが独り立ちするまでの期間が20年程度である一方で、高齢化社会になってまいりますと、親の介護が何十年にもわたるという可能性もあるわけです。何人もの親がいる状態となった場合に、成人後の子どもにとって、そういう親の扶養、あるいは介護とかいったものは、どのように現行法では捉えられているのかについて教えていただきたいと思いまして、お伺いしました。 ○大村部会長 ありがとうございます。その問題は考え得る一つの問題だと思いますけれども、事務当局の方でさしあたりのお答えをお願いいたします。 ○北村幹事 親ですので、扶養の義務自体は生ずるとは思っております。ただ、その順位であるとか、そういったものが整わない場合には、家庭裁判所で決めるのが現行法の立て付けにはなっております。   そういったことを踏まえて、水野先生の方から、転縁組についてどう考えるのかなどといった御指摘もあったのかなとは受け止めております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかいかかでしょうか。 ○佐野幹事 幹事の佐野です。これ、離縁のところまでお話ししても大丈夫でしょうか。 ○大村部会長 どうぞ、結構です。 ○佐野幹事 離縁のところ、先ほどくぎを刺されたところではございますけれども、養子縁組のところで家裁の許可が必要であれば、離縁のところでも必要だという意見を述べておきたいと思っております。   例えば、昨日頂いた調査を見ましても、やはり大人の意向で離縁がなされている様子がうかがえました。そういう意味では、一応表面上はいいと言っていたけれども、よくよく子どもの意向を聞いてみると、離縁は嫌だと思っているといったような場合、養親の方と子どもの実質的な関係がある場合には、離縁について、大人によく考えてもらうということも考えられるのではないかと思います。その上で、養親子間の面会交流や養育費などといった問題を調整する機会になるということもあり得るのではないかと思います。ですから、やはり離縁についても家裁の許可は必要と考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。離縁についても、家裁の許可を要するとする点を、なお引き続き検討する必要があるのではないかという御意見として承りました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。あんまり、ここ、御意見が出ないようなので。   これから将来、どんな世の中になるかのということも、やはり考えておかなければいかんだろうなと思っています。具体的に、1巡目でも触れました、再婚後、また離婚すると、統計はないようですけれども、恐らく極めて高い数字で、今後、更にそれは高まっていくのではないかと、そんなふうに感じています。   少し調べましたら、米国では、再婚時の離婚率って六十何%みたいな数字もあると、どうも私はそういう前提で物事を考えてしまっています。これがいい、悪いということを言うつもりはなくて、そういう複数回に及ぶ離婚、再婚、養子縁組、これは、子どもにとって基本的にはよろしくなかろうという発想で、先ほどの養子制度に関する規律のところでも、池田委員がおっしゃったような繰り返しているケースというのは、一定要件になり得るという御意見だったと思いますが、こういう入口で一定歯止めを掛けていくのか、また、この制度の中で、いわゆる親権というものをどうするのか、あと、こういう離再婚が繰り返されている中での養育費、これは、本当に今の運用上でいう、継親が一義的な責任を持つということで成り立ち得るんだろうかということを、私自身は疑問に思っているところでございます。   具体的には、私どもの会員の多くは、元配偶者が再婚、養子縁組しました、その事実は知りませんという方が多いんですけれども、やはり引き続き、金額下げずにそのまま払っているケースというのはかなり、私どもの中では多いです。なので、逆に、養子縁組後も父母として関与していく、一定親権行使の道も残す。あわせて、子の扶養義務については、実親が引き続き一義的な責任を負い続ける、このような考え方も、私はあるのではないかなと、こんなふうに感じています。実際、本当にこういった当事者がそこまで思っているのかというところは、実は、今月からアンケートを始めていますので、またどこまでそういう思いがあるのかというところを少し客観的にしまして、報告できるようになれば、また御報告をさせていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員の今の御意見は、2の(2)の扶養義務について、まとめた形で申し上げると、ここで書かれているのが現行法の建て付けではないかと思われますけれども、このように行われていない例もあるのではないか、もしそうだとすると、その実態を反映した制度設計を考えていく必要もあるのではないかという御指摘として承りました。扶養義務の方がそのような形で明確に養親側に移らないのだとすると、親権の方についても考える必要があるのではないかという御指摘も含めておっしゃっているのではないかと思って伺っておりました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○原田委員 すみません、途中から参加したので、皆さん既に議論されているかもしれませんが、一応意見を述べさせていただきたいと思います。   弁護士委員からあったかもしれませんが、養子制度について、弁護士会の中では、現行法を変えるだけの立法事実がないのではないかという意見もありました。立法理由として、子の福祉に合致しない縁組を阻止するという御意見がありましたが、裁判所の許可とすることによって、逆に福祉に反する例もあるかもしれないということも考える必要がある。既に頂いた調査を見ると、やはり養子縁組してうれしかったとか、縁組しなければ困ったと思うなどの意見も半数あったように思えて、特に連れ子養子の養子縁組を複雑にすることがいいのかどうかという考えもあります。そういう意味では、入口のところも出口のところも同じですし、裁判所が適切に判断できるのかという疑問もあります。裁判所の判断と言う意味では、孫養子の場合は、親権と監護権の分属がデフォルトになる可能性があって、その親権と監護権の分属の問題でもめているところをどのように考えるかと、裁判所の判断基準が難しくなるのではないかと思います。   それから、未成年者の意思の確認や年齢引下げの問題ですが、裁判所の関与を入れるんであれば、引き下げる必要はないのではないかと思います。そこで十分子の意見を聞くことで、不適切な養子縁組は防げるのではないかと思います。逆に、裁判所の関与を入れないで引き下げるということになると、12歳なり10歳なりの子どもが、誰の支援も受けずに意思決定しなければいけなくなるという事態にも考えられるのではないかと思います。それから、親権者でない実親の意見を聞くという点については、これを入れるんであれば、裁判所が関与して、緩やかなフェーズにして、裁判所の裁量によって意見を聞くことができるという程度にした方がいいのではないかと。   皆様の御意見を聞かずに申し上げて、申し訳ありませんけれども、以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。休憩前に議論をしていた要件の方のお話だったかと思いますけれども、要件の加重について、裁判所の関与を求めるという意見が多く出されましたが、それに対する慎重論をお述べになったと受け止めました。そのほかに、年齢引下げと裁判所関与の関係について整理が必要ではないかという御指摘と、父母の関与については、裁判所の裁量に委ねる御意見、この裁量が可能なのかという点について休憩前に議論がありましたけれども、そのような御意見として承りました。   そのほかいかがでございましょうか。 ○久保野幹事 ありがとうございます、幹事の久保野でございます。未成年養子縁組の効果の(1)のアのAにつきまして、この共同して行使するということを、具体的な規律を設けていくという方向で検討するのは、少し難しいのではないかと思いまして、発言をさせていただきます。   私も、この点、特に比較的解釈が明確になっているところは、明文化する方が望ましいと当初は思っていたんですけれども、しかし、今回の資料のまとめ方に即して申しますと、13ページの2のところで、先ほども議論がありましたとおり、離婚後に父母双方が親権をともに有している場合は、別途検討することとして、そうではなく、離婚後に片方の親が親権を持っているときについて、1で検討し、場合によっては明文化と分けているわけですが、1の方で実務上、学説上、解釈運用として定着していると言われているものが、現行法の文言のみでは直ちに導ける結論ではなく、考え方としては、12ページの下から6行目に、818条3項を包摂した規定という、2項よりも3項をより優先的に適用するような考え方になっているのではないかという方向で書かれており、その3項を優先して読むような方向性というのは、養親と実親が婚姻して共同生活を送っているのであれば、共同親権にする方がよいというような考え方を3項が示しているものとして、共同で行使させると考えている可能性があるのではないかと理解しているのですが、現行の実務上の解釈、運用が、仮に今申し上げたような考え方に基づいているのだとしますと、先ほど別途検討となっている2の方で、離婚後の親権の在り方について、共同で行使していくという方向性について、どうなるかは分からないとはいえ、それを検討するということが今、課題になっていることを考えますと、そことの関係を整理しないと進めないという問題を、1の方が含んでいると思います。御提案も明文化しましょうとまでは書いていないので、先回りして心配しすぎかもしれませんけれども、なかなか難しい点を含んでいるのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。(1)のアのAを明文化するのは難しいのではないかという御指摘でした。それは、離婚後に、括弧付きの共同親権というのが認められることによって、従来の前提が崩れてくるので、これを明文化するのは難しいのではないか、少なくとも整理は必要なのではないかというお話だったかと思いますが、従来は安定した考え方でやっていたので、明文の規定はなくても何とかなっていたけれども、離婚後も括弧付きの共同親権が可能ということになると、久保野幹事がおっしゃったように整理が必要になって、整理の結果を明文化しないと、より混乱することになりませんか。 ○久保野幹事 そういう意味では、先ほどの事務局の御説明もそのようなご趣旨であったかと、今伺っていて思いましたけれども、離婚後について、改めて整理をしっかりして、従来の実務上の扱いを明文化したにとどまるものとは違う意味を持つ可能性があることを、しっかり盛り込んでいく必要があると思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。そのような御意見として伺いました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○落合委員 今のところと先ほどの発言との関係なんですけれども、先ほどの発言は、実質に養育に関わる人は何人もいるけれども、それと親権は別でとおまとめいただいたんですけれども、もう少しはっきり主張しますと、親権は3人でもいいと思っているんですね。4人以上というのはまた難しいかもしれませんが、少なくとも3人は同時に親権を持てるという考え方は可能なんではないでしょうか。それは、実親2人と、それから一番最近に養親になった人で、養親がもし交代していくというか増えていくんでしたら、最新の人ですとかくらいに整理しておかないとややこしくなると思いますけれども、実の親との関係というのは続くという形で考える方が、筋が通るのではないかと思うんです。養育料を払う責任などもずっとあるとすれば、その方が筋が通ると思うんですけれども、いろいろなお考えあると思うんですけれども、そのように考えて、実親プラス養親1人と、そうですね、全くの養親にしてしまうというのもありますね、連れ子養子ではなくて。そうすると、4人になるんですかね。その辺りまでは、親権が拡大することもあり得るのではないかという考えを、ちょっと述べておきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。落合委員がおっしゃった御意見は、パターンとしては、1組の、2人の親が持つというところから出発して、そこから拡大してどこまでいけるかということですね。3人はいいのではないか、あるいは4人もいいかもしれない、しかし、余り増えるのはまずいだろうといった御意見だったかと思いますが、どういう制度が仕組めるかということで、皆様の方から強い御要望があって、制度化が可能であれば、その方向で考えていくという形で受け止めさせていただきたいと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。   この問題は、先ほど水野委員がおっしゃった点とも関わっていて、親がたくさん増えていくということになった場合に、今の議論はかなり厄介な問題を引き起こすように思います。養子縁組が解消されないとすると、養親は潜在的な扶養義務を負っていることになりますので、たくさん養親が増えていくときには、その人たちにも親権を認めなければいけないということになりそうで、その辺りをどう整理するのかといったことも出てきそうな気がします。現実的な問題として、どのぐらいまで増やすことが実際の必要としてあって、かつ可能性があるのかという形で考えるということかと思って伺いました。   ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   この部分については、現在の規律はこうではないかということで、事務当局の方から御説明を頂いたのに対して、皆様からほぼ同意を頂いた点もありますけれども、しかし、そうではないのではないか、あるいは不明瞭な点があるのではないか、あるいは、新たに離婚後の親権ないし監護について規律を設けるということになると、それとの関係で調整が必要な問題が出てくるのではないかといった問題を提起していただいたと思いますので、それを引き取った形で、更に事務当局の方で御検討を頂くということにさせていただくということかと思います。   養子の問題はこの程度にさせていただきまして、先に進ませていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。   それでは、先に進みます。   16ページ以下の「財産分与制度に関する規律の在り方」という部分ですが、まず、この部分につきまして、事務当局の方から説明を頂きたいと思います。 ○北村幹事 事務当局でございます。16ページ以下になります。「財産分与制度に関する規律の在り方」として、まず「財産分与の目的・理念の明確化」、そして「財産分与における考慮事情の明示」、そして「当事者の寄与の程度」につきまして、御提案をさせていただいております。一読での御議論を踏まえつつ、大きくは、一読での議論は平成8年の法制審の要綱と考慮事情は大きく変わっていないという御意見だったかなと思っておりますので、そのような形で、この部会としても進めていくことでどうかということでの御提案でございます。特に、考慮事情の明示、あと当事者の寄与の程度というところにつきまして、2分の1なのか2分の1でないのかについて、いろいろ御議論はありつつも、基本的には現在の実務をベースにし、また、当時の法制審での議論の結果も尊重するということでよいのではないかという御議論だったと理解をしてございます。   そのほかですけれども、21ページの4の「夫婦の居住用不動産に関する規律」ということで、幾つか御提案をし、御議論いただいたところではございます。賛同する御意見も頂きつつ、慎重な御意見も頂いていたところではありますけれども、改めて検討しつつ、やはり今回の諮問の範囲を踏まえて考えると、なかなか難しい。さらに、相続のように債務も含めて承継されるような場合と、離婚の場合を全く同じように考える、全くと同じとはなりませんけれども、同様に何か強い規律を設けるというところまでは、なかなか難しいのではないか。また、さらに、特に今回、住宅ローンとかへの影響とかも踏まえると、なかなか結論というのは出しにくいのではないかということも踏まえて、慎重な検討をしてはどうかということで、記載させていただいております。   23ページの5の「財産分与に係る期間制限」ということで、こちら、延ばす方がよいという御議論を一読の方で頂いておりました。いろいろ年数ございますけれども、3年あるいは5年ということで、皆様方の御意見いただきたいということになります。   25ページの6の財産の開示についても、いろいろ御意見いただいていたところでございます。財産分与に限られるわけではなく、養育費の請求の場面でも同様に問題になってくるかと思いますけれども、こちらについて、今回財産分与のところということで挙げさせていただいております。案@とA、それぞれ挙げさせていただいておりますけれども、@の方は、離婚する際に他方に対して自己の名で得た財産について報告するという義務を、実体法上の義務を課すということにしてはどうか。案Aについては、裁判手続において、家庭裁判所に対し財産に関する情報を開示しなければならないと、裁判手続上の義務、こちら、案@、A、どちらか一方ではなく、両方ということもあり得るのかもしれませんし、どのような規定が実体法上置けるのかということも様々ございます。新たな規律をどこまで設けられるのか、そして、その義務に違反した場合にどうなるのかというところまで踏まえて考えると、新たな規定を置けるのかということについても、しっかりと議論しないといけないとは思ってございます。   26ページの7の「共有物分割訴訟との関係」ですけれども、これも、やはり相続、遺産分割の場合と同じように扱うのはなかなか難しいと考えてございまして、そうすると、今回の部会の中でこの点も含めて議論していくというのは、なかなか難しいのかなということで、慎重な検討を要するということでどうかと挙げさせていただいております。   破産手続についても同様でございます。   以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。財産分与につきましては、1から8まで御説明がありましたけれども、一括して、どの部分についてでも結構ですので、御意見を頂ければと思います。どなたからでも結構です。 ○戒能委員 ありがとうございます、戒能です。一読目の資料8で、一度この財産分与については議論があったと思います。そのときにも意見を述べさせていただいたんですが、今日は、16ページ、第2の1の財産分与の目的・理念の明確化というところですね、それと、それを受けて、考慮事情の明示で、今回は@からEまで具体的に考慮事情について御提案があるわけなんですが、それについて意見を申し上げたいと思っております。   それで、1のところなんですが、離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るためということで、財産分与の目的が書かれてあるんですが、結局衡平というのは何かということになると思うんですよね。そうすると、バランスということだけではなく、やはり日本の社会だけではなくて、世界各国共通している面もあると思うんですが、実際に不公平な結果がもたらされていて、財産分与に至るまでの稼得能力とか、それからキャリアの形成、これは前回も申し上げました。その不公平な結果を是正していくという役割を、この財産分与に明確に理念として持たせるべきではないかということを考えております。   それで、当事者間の平等という、平等と衡平とはどう違うかとか、難しいかもしれませんけれども、国際条約など、女性差別撤廃条約とそれに基づく一般的勧告などで、経済的な格差が男女間、夫と妻の間で平等ではないということが、この部会での大きなメインテーマである子の利益に直結するということだと思うんですね。そうすると、二つあって、一つは、非正規が多いとか、そこで収入が少ないとか、そういう経済的な差があるということと、もう一つは、ここで言うと、これは補足説明に書かれているんですが、財産分与の機能を三つに分けて、17ページの1段落目にまとめてありますが、その中の補償というところです。高学歴が進めば進むほど、実はギャップが大きくなってしまう。特に日本の場合、結婚ではなくて、子育てによってギャップが大きくなってしまう。稼得能力やキャリア形成とか、それから能力開発というところに差が出てきて、それが非正規の雇用しかないとか、正規の雇用でも昇進、昇格の差というのが賃金に反映されている。それで、その格差をどうやって財産分与という私的な関係で埋めていけるかというときに、やはりこの@、Aの中の扶養ないし補償、扶養と補償とないしっていうことでまとめられるのかどうかというのも、更に検討する必要があるとは考えているんですが、少なくとも、理念の明確化ということをまとめるんであれば、一つは補足説明ということではなくて、重要なことなので、きちんと三つの要素を理念1の中に書き込むべきであろうというのが、1点です。   それで、先ほど申し上げましたように、経済的な格差の是正という問題と、それからキャリア形成とか能力開発のときの、これは寄与というんでしょうか、非金銭的な寄与の問題があるんだということですね。アンペイドワークっていいましょうか、そこに注目しないと、世界における男女格差がどうしてこんなに大きくなってしまって、それがなかなか解決できないのかと。それを、私的な関係においてという限定なんですが、どういうふうに是正できるのかというときに、きちんと理念として書き込むべきだろうというのが、2点目です。   具体的に申し上げますと、考慮事項なんですが、@からEまで書いていただいたんですが、必ずしも明確ではないところがあります。例えば、Aのところで寄与の程度といったときに、非金銭的な寄与というのはどういうふうに考えられているのかとか、それから、Eに職業及び収入とありますけれども、それだけでいいのか、むしろ問題は、雇用形態という問題があるわけですよね。そういうことまできちんと書き込むべきではないかとか、そういうことも含めて、補償という考え方をもう少し、一歩踏み出して明確に示していただきたいと考えています。   それで、学歴というのもちょっと難しく、学歴があってもという状況がずっとあるわけですね。ですから、そういうことなど、もう少し実態に即して、この@からE、プラス、7でキャリアとか能力開発での状況というのも含めて書くというような工夫も必要だと思っております。   内閣府の、去年の10月の調査で、離婚と子育てに関する世論調査というのを冊子で頂いたんですけれども、離婚後の生活に困窮している原因が、離婚や子育て、それから、仕事を辞めるなどによって収入が低くなっているということが挙げられていまして、どういう場合に相手方が生活費の負担責任を負うべきだと考えるかという設問なんですが、その回答の中でも一番多くて、75%ぐらい占めていて、しかも女性が多いというようなことがあります。そういう調査なども参照しながら、扶養と補償との関係も整理し実態に即して、明確に補償という考え方を打ち出していただきたいと思います。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員から、基本的な考え方としては、財産分与における補償的な要素をもっと強調してほしいという御要望だったかと思います。   具体的には、財産上の衡平と書かれているところを、現在3要素があると言われているので、これを開いた形で書き込むということをおっしゃっていたかと思います。@、A、Bと理解していいかどうかということについては、これまで議論したときに異論もあって、おそらくそれで、これを開いた形にはしないで書かれているということかと思いますけれども、その辺り、再考の余地はないかという御提案かと思います。   それから、要素の方については様々な御指摘がありましたけれども、具体的に考えやすいものとしては、御指摘があったところでいうと、2のAの各当事者の寄与の程度に、どのような寄与が含まれるのかということを書き加えられるか、あるいはEに職業と書いてあるけれども、ここを膨らませて考えることができないか、そうした形で具体的な御提案を頂いたかと思いましたが、そういう御理解でよいでしょうか。 ○戒能委員 はい。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかいかがでしょうか。 ○井上委員 ありがとうございます、連合の井上です。2点、意見です。   まず、先ほど事務局の説明で、4と7と8については、特段の規律を設けないこととしてはどうかという御説明がありました。他の法体系との整合性など、いろいろな問題があって難しいというところは理解するんですけれども、やはりこの部会の中で議論をしたという経過はきちんと残しておいた方がいいと思いますので、何らかの形でそれが残るようにお願いしたいと思います。   それから、25ページの6、相手方の財産の開示のところですが、相手方が財産について虚偽の報告などをする可能性もあるのではないかと思います。26ページの(注2)に、正当な理由なく財産を明らかにしないときは、家裁が過料に処するものとする方向性も考えられるとの記載がありますけれども、やはりここは、そういうことも踏まえて何かしらの強制力あるいは過料を科すことについて、しっかりと入れ込んだ方がいいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。井上委員からは、規定を置かないという形で提案がされている4、7、8について、従来の議論の経緯が残るような形を採ることが必要なのではないかという御指摘を頂きました。それから、6の財産開示については、実効性を確保する手段をもう少し立ち入って考えるべきではないかという御指摘をいただいたものと理解をいたしました。ありがとうございます。   そのほか、財産分与について、何かありますか。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。財産分与に関して、1点目の目的・理念の部分と考慮事項の明示、三つ目の当事者の関与の程度という点に関して、意見を申し述べさせていただきたいと思います。   1巡目議論における部会資料10、もう一度見直しつつ、再度財産分与に関して当事者の意見も聞きつつ考えてみました。やはり、扶養というと非常に理解されづらいというのが、私が実感したところです。全く会えることもなくて、接点は養育費だけという中で、恐らくこの財産分与の話は、離婚成立後に改めて出てきている話で、そんな中で、やはりこの扶養という言葉に過敏に皆さん感じられるなというのが、当事者の皆さんから意見を聞いた、私の持つ感想であります。戒能先生からも、この扶養と補償というところをもう少し明確にという御発言ございましたが、それはそのとおりだろうと、そんなふうに思っています。   再度この3点に関して考えまして、清算的要素に関しては、どなたも異論がなく規律化する方向で検討が進むんだろうなと、それに関して異論はございません。扶養、補償の要素はちょっと飛ばしまして、三つ目の慰謝的要素ですね。これも、もう一度、私、考えたんですけれども、やはり一回的解決により父母の紛争の長期化を防止するという考え方、これは、非常に効果としてよい効果が期待できる、そのように改めて感じました。したがいまして、1巡目からここは意見を変えまして、規律化に向け検討を進める方向でよろしいのかなと思います。ただ、部会資料18ページに少し、この重複しない方向を検討しておくという表現ありました。ここはそのとおりかなと、そんなふうに思います。   やはり、この問題の最後、扶養ないし補償的要素という部分に関してです。ちょっとまだ、消極的と言わざるを得ない部分がございます。冒頭、事務当局の方から、平成8年の答申、これをベースに置いたという御説明がございました。その議論の積み上げそのものは分からないので、それはそれとしてよろしいかと思うんですけれども、やはりその平成8年当時、今から数えると26年前ですか、今これ、女性の社会進出がこれだけ進んでいるというか、進めようとしている中で、女性が結婚を機に離職をしてキャリアが中断する、私、当時、多分婚姻した当時ぐらいだったと思うので記憶にあるんですけれども、当時は、女性が結婚をすると、家庭か仕事かを選択させるような、多分そんな時代だったと記憶しています。   私は、個人的には、ここ20年以上日本の会社で働いたことがないので、一般の日本企業の実態は分からないんですけれども、少なからず、アメリカ系の企業でこのような考え方というのはありません、いいか悪いかは別です。私も、やはりこういう実態が分からなかったので、少し調べてみました。そうしましたら、内閣府の調査で、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2018というレポートがございました。項目といたしましては、第1子出産前後の女性の継続就業率、要は、結婚を機に仕事を辞めたか否かというデータでございます。このデータによりますと、就業する割合、2004年まではずっと4割前後で推移しましたと。2010年から14年にかけては53%となっていると報告されています。これは数字だけ見ると、増えてはいるんだけれども、それほどびっくりするほどの数字ではないなと思いました。もう一歩踏み込んだデータがありまして、就業形態別です。正規職員の場合の離職率、2010年から14年、約3割、30.9%になっています。1995年は54.5%、半分以上の方が辞めていた。今は、2010年から14年なんで最近ではないですけれども、3割程度と。一方、パート、派遣の場合は、95年から99年の調査でも81%、2010年から14年の調査でも74%、それほど変わっていない、そんな数字がやはりあるんだなと思っています。このデータを見て、正規職員の離職率は明らかに減少している。あわせて、育休を普及させ始めているといいましょうか、今は私はそういう時代だと思っておりまして、現時点、2022年現在ではもっと低いのではなかろうかと、これは推察にすぎませんけれども、これから先はどういう方向に行くのかというと、もっと低下していくんだろうと、こんなふうに思っています。   繰り返しになりますが、この26年前、寿退職という言葉が当たり前のようにありました。日本企業には、一般職という職種がありました。ちょっと現在とは隔世の感があるなと思っておりまして、このような、女性にこういう、婚姻というのは離職することが前提と捉えられかねないのではと、そういうところにまず違和感を感じるところでございます。本来、この辺りは、私のような当事者団体でなくて、もう少し専門的な方からコメントを頂くのがいいのかなと思います。   もう1点、これって、補償的要素ってどうやって算出していくんだろうということを、少し、私考えてみました。具体的にはキャリアを中断しましたと、そのような場合にどういう計算をして、1巡目の議論では、月収100万と10万みたいな例も出ておりましたけれども、何かどうもその差分に対してどう算定する、それをどうそれぞれの当事者が納得感を得る、ここは非常に難しいのではないかなということを感じています。昨今、共稼ぎ世帯が当たり前になって、同居時の生活費の支出方法、これも多様化、別会計化が進んでいると思います。今、現時点でのこの部会での議論を見てみますと、基本的には現行の協議離婚制度にのっとって、家裁関与はなく進めていこうという方向で進んでいるものと認識しています。この前提で、当事者間の話合いによってこれを決めるという前提で、この扶養的要素という表現なのか、補償的要素という表現なのかは別にいたしまして、当事者間の混乱、また係争の長期化につながる懸念があるのではなかろうかと、そんなふうに感じています。 ○大村部会長 ありがとうございました。武田委員から冒頭に、17ページの中ほどの従来言われている3要素のうちの、Aの扶養というのはなかなか理解が得られにくいのではないかという御指摘がありました。その上で、@、A、Bを、先ほど戒能委員がおっしゃったように条文化して書き込むかということについて、@、Bはよろしいけれども、Aについては疑問があるということをおっしゃったかと思いますが、それは、@、Bだけを書くという御趣旨ですか、それとも、@からBを書くのをやめた方がいいという御趣旨でしょうか。 ○武田委員 そういう意味で言いますと、@とBは書いてよろしいと思います。 ○大村部会長 わかりました。@とBを書くべきだという御意見として承っておきたいと思います。   もう一つ、Aを書くべきではないということとの関係で、補償というのは計算がしにくいという御指摘も頂いたかと理解をいたしました。   原田委員、窪田委員、それから大山委員、落合委員という順番でお願いをしたいと思います。 ○原田委員 私も、補償的要素のことを入れていただきたいと思っているんですが、まず、その前提として、平成8年の議論をされてこういう結論が出ていると、それでいいのではないかという話は、では、今の実務はこれに沿ってされているという認識なのかどうかというのが、ちょっと私は疑問なんですね。   この財産分与については、清算的要素、扶養的要素、慰謝料的要素があると習ってきましたけれども、現実に実務でやっていることは、清算的要素のみといってもいいのではないかと思っています。慰謝料について若干協議されることはありますが、結局慰謝料を請求する場合は別に請求を立てるので、財産分与の中に入れていないと。そして、財産分与の実務においては、今、夫婦財産一覧表とか財産分与対象一覧表とかいうものを作って、それぞれの名義の財産を挙げて、別居時の財産の価値を考えてそれを合算して半分にするという実務が一般的ではないかと思います。本当に清算的要素だけでやっているのではないかと、私は感じています。なので、これを入れることによって、今の実務が変わるという前提なのか、今の実務はこれに従ってやっているので、それでいいのではないかということによって、かなり違うのではないかと思います。   そういう意味では、私は、補償的な要素というのがきちんと入るような規定にしていただきたいと思いますし、その平成8年のときの答申でも、そういう清算的要素と扶養ないしは補償的要素、そして慰謝料的要素を包摂するものとして定めるとなっていたのではないかと思います。   また衡平ということについて、何が衡平なのかということも、一言申し上げたいと思います。清算的要素ということを考える場合、例えば、住宅ローン付の住宅、これ、プラスマイナスするとゼロになるとすると、財産分与すべき財産はないとされてしまいます。あるいは、借金がある、定期預金がある、これもプラスマイナスするとゼロであれば、分与すべき財産はないとされていますが、稼得能力を失っていない人は、その財産を保持したまま、借金、住宅ローンを少しずつ返していけば、結局その財産を自分のものにしていけるわけですけれども、稼得能力がない人は、何ももらうものがないし、もちろん払うべきものもありませんけれども、例えば、パートで厳しい生活をしないといけないとか、あるいは生活保護を受けなければいけないとかいうような形になって、果たしてこれが衡平なのかという問題があると思います。   それから、もう一つは、後で財産開示の問題が出てきますけれども、開示のところで、婚姻前に取得した財産も開示しろというのがあります。婚姻前に取得した財産、あるいは婚姻後でも相続によって得た財産は、夫婦で共同して得た財産ではないので、財産分与の対象財産ではないとされていますが、では、それがあるから、扶養的な要素、補償的要素を考えないでいいということにつながっていくんでしょうか。元々自分が持っていた財産や、あるいは夫婦が関与せずに得た財産を食いつぶして離婚後の生活を保持していく人と、それを確保しながら新しく得た収入で生活していく人がいるというのは、前者の人は、婚姻中に努力して財産を形成しても、それについて何らの見返りがないということになって、果たしてこれが衡平なのかと思います。清算的な要素を考える場合でも、衡平とは何かということをきちんと考えるべきであるし、それを補うという意味でも、補償的な要素というのが明確になるような規定の仕方をするべきではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。原田委員からは、幾つかの具体的な場面を想定した御意見もありましたが、全体としては、@、A、Bが現在考慮されているかというと、必ずしもそうではないので、Aを改めて強調する必要があるという御意見を頂いたと思います。   繰り返しになりますけれども、前回の議論の際に、ここのところについて皆様の意見が一致しないということで、事務当局としては、従来使われている衡平という言葉を使った平成8年案を掲げている、扶養的あるいは補償的要素は、この言葉に含まれているということで出されていると、私は受け止めておりますけれども、窪田委員からの御発言の前に、この辺りの経緯をご存じなのはもう水野委員だけなので、もし差し支えなければ、平成8年の案のこの部分の言葉遣いについて、少し補足していただけますか。 ○水野委員 水野でございます。平成8年の身分法小委員会の生き残りでございます。私は、補償的要素という要素を基本的に考えなくてはならないと考えておりました。私の意見も取り入れていただいて、こういう形になった記憶がございます。 ○大村部会長 様々な意見の集約の結果が、この衡平という言葉に示されているというのが私の理解なのですけれども、そのように受け止めてよろしいですね。 ○水野委員 はい、私はそのつもりでございます。そのように記憶しております。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○窪田委員 もう手を下ろしたつもりだったのですが、1点だけ、むしろ具体的な意見ではないんですが、進め方について発言させてください。前回棚村先生からも御指摘があったかと思うのですが、かなり限られた状況の中で審議を進めていくという中で、できるだけコンパクトな発言を心掛けていただくというのは、やはり必要なのではないかなという気がいたします。それをお願いしようと思って、先ほど手を挙げました。 ○大村部会長 ありがとうございます。皆様、どうぞよろしくお願いを申し上げます。 ○大山委員 ありがとうございます。今ちょっと議論になっております補償というところにつきまして、正に子育て世代の方の感覚、若しくは、これから子育て期に入っていくような若いカップルを想定しますと、必ずしも女性が経済的に弱い立場にあるという前提は、解決する方向を国も目指しておりますし、実態もそちらの方向に進んでいるということだと思います。もっと欲を言えば、むしろ今後想定されるものとして、女性の方が経済的に自立をしていて、男性の方がむしろ職を辞して家庭に入るという選択肢も、そういったカップルももう出てきております。そういった中で、どこまでどう補償するのが本当にいいのか、足元を見れば、もちろん女性の方がまだまだ置かれている環境は厳しい現実があり、そこを救わなければいけないということは重要ですけれども、もう少し中長期で、これからどうあるのかといったところに重きを置いて考えていただいた方がよろしいのかなと思いました。そう考えますと、どこまで補償といった概念を本当に入れるのかどうかといったところは、慎重な議論が必要かなと感じております。 ○大村部会長 ありがとうございます。大山委員からは、先ほどの武田委員の基本的な発想と共通の方向の御意見を頂いたと理解をいたしました。書くか書かないかというところにつきましては、繰り返しになりますけれども、両方の対立した御意見が出ているということなので、全体として規定を置くということであれば、どこかで折り合いをつけるということになるのかと思いますが、それは先の問題とさせていただいて、引き続き御意見を頂きたいと思います。 ○落合委員 武田委員、大山委員から御発言のありましたことに関連してなんですが、社会学者として、実態を知っているという立場から発言させていただきます。   お二人のおっしゃったことは、世界の流れとしては、世界というかヨーロッパ、北米の流れとしては、かなりそういうことで進んでいるんですが、ヨーロッパといっても、中央、東ヨーロッパは入りません、西ヨーロッパ、北欧と北米の傾向としては、その方向に進んでいます。日本でも女性の経済力が高くなっていて、これからはますますそうであろうという流れで御発言いただきましたが、それは、実態を見ている立場からしますと、やや楽観ですね。その方向に向いていますけれども、それは2010年代からです。ですから、ヨーロッパで90年代ぐらいまでに起きましたことが、日本でなかなか起きなかったというのが、日本の状況です。ですから、2010年までは本当に状況が変わらなかったというのが、日本については強調するべきことです。   武田委員がおっしゃったような、これで男女の稼得能力、平等になっていくだろうからということ、私、1990年代にはたぶんそうだろうと思っておりまして、でも、それが全く楽観だったというのをその後に強く反省しているところです。ですから、今もそれを前提に話をするのは危険であると思います。2010年代から変化してきましたから、その方向も出てきているということは考えていいと思いますけれども、ずっと女性が経済的弱者であるべきだとは思いませんけれども、日本の現状は甘くないということを、前提に話されるべきだと思います。   正社員であっても、女性で離職する人たちがいると、それは減ってきているけれどもというお話ありましたね。育休とかは整いましても、結婚で離職するのというのは、やはり引越しなんですよね。男性の住んでいるところ、仕事をしているところに女性が居を移すということで、どうしても仕事を辞めなければいけないというケースが、それはかなりあります。ですから、そういうことは残っていくでしょう。1回辞めた後に、正社員だった人も非正規になるということが多く起きます。そのことによってどれだけ所得を失うのかについては、試算があります。公的に出された試算もありまして、結婚前まで正社員だった人が、その後非正規になった場合、あるいは無職になった場合、生涯所得のどのぐらいを失うかというと、何千万円になるという試算があります。このようなことは、交通事故のときなどにも試算をされていることですので、補償の計算は難しいということはないと思います。   私もやはり、補償という考え方は必要だと思うんですね、今言ったような意味でですね。結婚や出産によって仕事を辞めるのは、女性の都合ではないんです。夫の都合で辞めていることが結構多いです。夫は居を移したくないなどということですね。ですから、2人で合意であったとしても、補償という考え方を書き込むべきだと思います。ですから、この辺りをきちんと説明を書き込んでほしいと思うんですね。   今のことと、それからもう一つは、寄与ということで、家事、育児、あるいはいろいろな介護、ケアなどによる寄与というものを明示できるように、きちんと書き込むということも、是非したいと思います。これをぱっと読むと、寄与の程度というようなことを見たときに、収入のことかなと、早合点してしまう人がかなりいると思うんですよね、国民の中で。でも、収入が得られるためには、家事をしている人が必要なわけで、それも本当に大きな寄与なわけです。それが明示できるように書き込むべきだと思います。しかし、それをしようが何だろうが、この3によって現実にやっていることは半分にするということなのなら、変わらないのかもしれませんけれども、その意味を書き込むべきだと思います。今のような補償とか、それから家庭での寄与というようなことを考えますと、半分ではなくて、3分の2は女性が取るとか、あるいは仕事を辞めた人が取る、女性とは限りませんね、働けなかった人が取るというのでもいいぐらいだと思いますが、それは、今すぐ理解が得られるともちょっと思えませんので、ただ、そういう考え方もあり得るということを、発言しておきたいと思います。ですから、そのことをとにかく明示するということを、この際しておきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。落合委員からは、まず、女性の離職についての実情についての認識を示していただきました。その上で、具体的な提案としては、基本的には戒能委員の御提案の方向に賛成されていると理解させていただきたいと思います。 ○池田委員 弁護士の池田でございます。総論で一つ、各論で4点ほど申し上げたいと思います。   まず、総論ですが、平成8年答申との関係なのですが、確かにその当時、いろいろな議論があった末に出された答申ですので、尊重すべきだというのは理解しております。しかし、その後のいろいろな実情を踏まえて、今議論しているわけですから、今の議論をきちんとこの資料の中に反映をしていただきたいなと思います。補償という文言を入れるかどうかというところで、両論があるというところは理解ができましたけれども、ですので、その補償というものを入れるという案もあるんだということを、整理の段階で入れていただければ有り難いと思います。もう議論がどちらともつかないので、「財産上の衡平」という文言にしたという平成8年の経緯があったかもしれませんけれども、ここではまだ議論が尽くされていないと考えますので、そのような整理の段階で配慮をしていただきたいなと思います。以上が総論です。   各論についてですが、16ページの2のところの考慮要素の中で、@の末尾、財産の額というところは、額だけではなくて、財産の性質というのも入れていただければ有り難いと思います。実際、実務の中では、対象財産が不動産であるのかとか、あるいは換価がしやすい財産なのかといったところを、考慮して結論を出しているように思いますので、性質というのは入れていただく必要があるかなと思います。特に、私が何度もこれまで申し上げてきましたとおり、学資保険については、財産分与の対象にしないでほしいという、親権者となるであろう親の方からリクエストが多いところでして、そんなところへの対処というのも、性質という文言を入れるところで、一定の配慮ができるのではないかというところがございます。   それから2点目ですが、4の居住用不動産に関する規律というところです。ページ数で言えば21ページ以下ですけれども、配偶者の居住の保護、それから居住用不動産の処分の制限、いずれも特段の規律を設けないという提案がされていますが、これについては、なお議論の俎上にのせていただきたいというのが意見でございます。一つ目の配偶者の居住の保護については、この補足説明の中で、まず、相続の場面、相続の配偶者居住権と違って、基礎付けるものがないということが書かれていますけれども、居住不動産が財産分与の対象となる不動産であれば、そこには一種の実質的な共有状態というものがあるわけですから、そこに何らかの居住継続の利益を見るということは可能ではないかと思っています。それから、ちょっと補足説明の中の細かいことになるんですけれども、22ページの第2段落のこれに対してのところの4行目の末尾、また婚姻解消後に元夫婦間の法律関係を残すことは好ましくないという指摘があるということですけれども、正にこれは、不動産の名義人である配偶者が、居住している他方配偶者を立ち退かせようとするときの論理なんですね。これがあるから、やむなく出ていくという実態があって、それが子の居住環境を奪ってしまうという実態もありますので、この指摘を乗り越えるための議論を今しているんだと思っています。   それから、その後についても、DVや虐待などの場合にも、その関係が続くことについて配慮が必要であるという指摘ですけれども、こういったケースでは、被害を受けている側は居住を継続しないで逃げるというのが、実務では一般かなと思いますので、これらの点というのは、余りマイナス要素に働く議論ではないのではないかと考えています。   それから、次の居住用不動産の処分の制限についてですけれども、これについては、23ページの第2段落、「もっとも」辺りでいろいろな問題点が指摘されていますけれども、これは、この問題を考えるに当たって、いろいろな諸利益に配慮して調整が必要だということを指摘しているのであって、その処分制限の規律自体を設けるべきでないということを、積極的に基礎付ける事情ではないと考えていますので、引き続き議論をしたいと思います。以上が3点目ですね。   それから、4点目は、分割訴訟との関係ですけれども、これは共有名義の不動産で、財産分与の対象になる不動産について、その財産分与の協議をしている途中に、共有物分割訴訟等が起こされてしまうということが問題ではないかということが言われていますが、問題がある場合には権利濫用理論によって制限する場合があるというので、従来どおり解釈に委ねてはどうかということが提案されています。しかし、実務家としましては、権利濫用という一般条項というのは、非常に適用範囲が不明確で使いづらいというところがあります。類型的な問題としてこの問題を指摘できるのであれば、一般条項ではなくて、この際整理をして、引き続き議論をしていくという方向性がよいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは、大きく分けると二つかと思います。一つ目は、なお議論のテーブルに載せ続ける必要があるという点について、幾つかの指摘がありました。先ほどから意見の対立がある補償ということについて、意見の対立はあるのですが、もう少し頑張ってみてはどうかということだったかと思います。それから、4の居住用不動産、7の共有物分割についても、もう少し考えられないかという御指摘だったかと思います。   二つ目に、以上とは別に具体的な問題としては、考慮要素の中の第2の2の@の最後のところの財産の額に、性質という文言も加えていただきたいという御要望だったかと思います。 ○赤石委員 赤石です。時間も少なくなってきたので、手短にしたいと思います。   まず、最初の16、17ページのこの補償的な要素、扶養的な要素というところですが、私としては、やはりこれは加えるべきと思います。それは、今、ひとり親の経済状況というのは、5年ごとに厚労省が統計を取っておりますけれども、OECD各国の中で日本のひとり親の貧困率はワースト1というのがずっと続いているわけでございます。正規の人の就労年収の平均は300ぐらいですが、非正規の方、就労年収の平均が133万円ですね。これで親子で暮らしている、この現実、それで非正規にならざるを得ない状況というのは、先ほどいろいろ落合委員、そして戒能委員が言ってくださいました。日本の仕事と子育ての両立困難というのはそれほど変わっていない、そのために、短時間労働をして収入が低い方、この方たちがコロナで更に仕事を失い、私どもの食利用支援、2,400を超えるパッケージを毎月送っていますが、命をつないでいる方がたくさんいるという事実をお伝えしたいと思います。   また、補償とか扶養とかいうのは、夫婦関係のように見えますけれども、これは子どもの育つ環境を豊かにするという意味でございますので、単に夫婦の中の補償ではないということを、ちょっと皆さん、意識した方がよいのかなと思います。   次に、23ページの夫婦の居住用の不動産ですが、これが特段の規律を設けないと書いてあるんですが、私も池田委員と一緒、同意見で、やはりもう少し検討がされるとよいかと思っております。というのは、やはりお子さんが離婚時に環境の変化というのが激しい場合には、いろいろな影響を受けております。お友達とか通う学校とか、こういったものの環境の変化が大きく、私ども、この間、就労支援で100人の方の面談をさせていただいたんですけれども、ひとり親の方、大変不登校の方が多く、それが就労阻害要因として大きいんだなというのを、改めて思いました。やはり環境の変化というのは非常に大きいなと思っておりますので、例えば、お子さんが3年生だったら、6年生の卒業ぐらいまでこの居住用不動産使用権があるというようなことができないのかというのは、私の支援者として思うところです。   それから、財産分与に係る期間制限で、年金分割等も含めて、ここは3年というのがよいのではないかと思います。年金分割忘れていましたというような御相談、結構来るんですね。ですので、やはりここは、何らかのもうちょっと延長と、それから、今、離婚届に養育費決めましたか、面会交流決めましたかというのがありますけれども、例えば、慰謝料や財産分与、年金決めましたかというようなことが、リマインドとして入ってもいいのかなというのは、ちょっと思ったところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員から大きく分けて二つで、補償の問題、ずっと議論があるところですが、それと、居住用不動産の問題について、直前の池田委員の御指摘と同方向の御指摘を頂きました。池田委員も触れておられましたけれども、子どもの利益に間接的に寄与するということを考えるべきだという御指摘だったかと思います。   それから、今まで余り意見が出ていませんでしたけれども、財産分与の期間制限について、3年という案を支持するという御発言があったかと思います。   大石委員の後、水野委員、青竹幹事、そして杉山幹事、細矢委員という順番で伺いたいと思います。 ○大石委員 千葉大学の大石です、ありがとうございます。私も、離婚後の財産分与までの期間を3年に延ばすというのは賛成です。5年というのは多少長いように思えまして、3年程度の期間が望ましいと思います。   それから、扶養ないし補償のところに関して申し上げたいのですが、やはり婚姻期間中のアンペイドワークを何らかの形で評価した上で、財産分与に臨むということが必要であろうと考えています。例えば、アメリカの労働経済学の教科書などにも書かれているような事例ですが、世界同時多発テロの犠牲者のコンペンセーション(補償)を行うときにアンペイドワークの評価が問題となりました。フルタイム労働者であったお母さんが亡くなったときに、その賃金だけを考慮するのではなく、その人がしていた家事労働の分も考慮したコンペンセーションをしたのです。このように、家事労働、育児、介護などを金銭評価して考慮することは重要であろうと考えます。   あと1点だけコメントさせていただきたいのは、先ほど話題に出た出産前後の継続就業の話です。継続就業率が5割程度と言いましても、それは出産前に仕事を持っていた人を100%とした場合の継続率でありまして、第1子を産んだお母さん全体から見ますと、継続就業率はまだ4割程度にとどまっております。また、就業しているといっても、それは扶養や補償を必要としないということを必ずしも意味するわけではありません。女性については、就業していても賃金が低い、得られる収入が少ないというところが一番の問題です。日本のひとり親の場合、就業率が先進諸国で一番高いにもかかわらず、貧困率も非常に高いという特徴があります。したがって、仕事を持っているかどうかだけで扶養や補償の必要性を判断するのは、問題があると思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。大石委員からも、期間3年を支持するという御意見と、それから、補償をめぐる議論については、家事労働の考慮ということが必要であろうという御指摘を頂きました。これまで財産分与の計算について、無形の労働が考慮されていないかというと、これを考慮して財産分与の制度ができているというところがありますが、そのことをより明確に書くべきではないかというのが、先ほどの戒能委員の御指摘なのだろうと思います。大石委員も、それを支持される御趣旨であると受け止めました。   また、統計についての御指摘もありがとうございました。 ○水野委員 一言だけ、平成8年身分法小委員会のときの議論について申し上げます。先ほど落合委員から、半分くらいではなくて、3分の2が取れてもいいのではないかという御発言がありましたけれども、半分つまり等しいものと推定するのは、寄与の程度だけです。寄与の程度については半分とした上で、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入、その他の要素を考えますので、このときの議論では、たとえば主婦婚の場合は、もっとプラスアルファを妻にたくさん取らせるという議論をしておりました。当時、補償給付、Prestation compensatoireというフランスの補償給付も話題にでました。当時の数字では、フランスの離婚した男性の8割が全財産を渡して、かつ、借金を元女房に負って離婚するという、高額な補償給付で、そういう情報も前提に議論をしておりました。流石にそこまで手厚い離婚給付は日本では難しいだろうという大勢でしたけれども。ともあれ飽くまでも2分の1の推定は、寄与についてだけかかるというのが、この20ページの文章の趣旨でございます。   身分法小委員会の生き残りとしての証言でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。平成8年の提案の内容についての補足説明を頂いたと理解をいたしました。 ○青竹幹事 4点ありますけれども、手短に発言させていただきたいと思います。   1点目ですが、財産分与の期間制限を長くするということについて、賛成いたします。離婚における夫婦の状況が多様であるということを指摘されているんですけれども、何らかの事情ですぐに財産分与請求できないという場合に、一律に離婚時から2年が経過してしまうと、もはや請求できないと切り捨てしまうというのでは、不公平な結果を放置してしまうということになり、妥当ではないと考えております。3年か5年かということがあるのですけれども、不公平な事態が発生するおそれをできるだけ防ぐといった観点から、5年でも私自身は長くないのではないかという印象を持っております。   2点目ですけれども、相手方の財産の開示義務について規定を設けることについても賛成いたします。対象となる財産を隠匿するという状況は、公平性を図る道をふさぐということになりますので、開示義務を明文化するということに意義があると考えます。ただ、井上委員もおっしゃったように、義務があると規定しただけでは、それを守るかどうか、当事者の意思に任されてしまいますので、実効性が少ないようです。そこで、井上委員がおっしゃったように、開示義務を怠る場合に、過料に処するといった義務の履行を促す規定を置くのがよいと思っております。例えば、民法1005条にも遺言書の提出義務を怠った場合の過料の規定がありますので、このような規定を民法に置くことは問題ないと思われます。   3点目ですけれども、これは明文化しないという方向のようですけれども、破産手続において、一方配偶者の債権者に財産分与を優先する、他方配偶者を優先させるという可能性の検討について、基本的に支持できるというように考えております。特に清算的な意義を持つ場合には、債務者である一方配偶者名義の財産に他方配偶者が潜在的持分を持っていて、それを財産分与において取り戻すということであると、その潜在的持分については、他方配偶者の財産権と捉えられる面が大きいと思います。そうしますと、債権者が把握できるのは債務者の財産のみなので、他方配偶者の財産分与請求権を優先していいのではないかと考えられますので、方向性としては、これは支持できるもののように考えております。   4点目ですけれども、離婚後の財産的衡平性に関しましては、財産分与だけではなくて、民法754条の規定に問題があると考えております。夫婦間でした契約は、婚姻中いつでも取り消すことができると規定されています。この規定を適用すれば、一方が他方に清算の意味で婚姻中に贈与したところ、後で取り消すということもできることとなります。清算の意味で贈与されたものは、他方がいわば財産権のようなものを持っていると捉えることも可能ですので、これを一方が取り消すことができる、取り戻すことができるというのは、妥当ではないのではないかと考えています。   その他の点についても、民法754条については批判も多く、平成8年の答申にも削除しますと明示されていますので、実際に適用される例は少ないと理解しております。それをこのまま残しておくのは問題があるというように思いましたので、発言させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。青竹幹事は4点おっしゃいましたが、1点目は期間について、3年に延ばすというのに賛成という意見がありましたけれども、5年でもよいのではないかということ。2点目は開示義務について、先ほどの井上委員の案に賛成するということ。3点目は、これまでに出ておりませんでしたが、8の破産時の取扱いについて、説明の中で触れられているような方向で考えるべきではないかということだったかと思います。4点目、民法754条の話が出ておりましたが、民法754条は、今回財産分与との関係では特に、事務当局の方からは検討対象に加えられていないと理解しておりますけれども、そこは何かお考えありますか。 ○北村幹事 そうですね。元々ここは検討対象に加えていなかったところではございます。ただ、今、青竹幹事が御指摘いただいたように、平成8年の法制審議会の答申の中には削除するという旨が含まれていたということで、明示的に御議論いただいていたわけではありませんが、平成8年の答申の内容に強く御反対ということがなければ、これも検討対象ということに入れさせていただいて、今後の議論の中に入れさせていただくということも検討したいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   水野委員、これに関して何かありますか。どうぞ。 ○水野委員 754条についてです。平成8年答申も、この条文は、削除案にしたのですけれども、この条文自体は、元々はちゃんと意味のあるもので、フランスの贈与取消権から来ていまして、ある種、遺言の撤回権と同じような機能を持っているものです。現在のフランス法では、元の贈与取消権は廃止されていますけれど、今でも忘恩行為とか、あるいは子どもが出生するとか、動機の錯誤の場合には効力を失うという規定などで、内容的には似たものが残っています。ただ、日本の場合には、何しろ協議離婚制度なので、判例に挙がるケースはほとんど事実上の離婚給付として約束され、それを取り消すという形でしか出てこないので、離婚給付以外の場合も含めて、破綻している場合には取り消せないとして、判例上意味のないものにされています。   身分法小委員会でも、そういう判例法を前提に、残すかどうかという議論をいたしました。本来は意味があるものだということも意識したのですが、ただ、それが本来の意味を発揮できるような形で日本で運用できるかといいますと、それはやはり難しい。これは、公証人慣行が背景にある国の制度で、夫婦財産制も、贈与も遺言も、みんな公証人が関与してやるもので、かつ、公証人は法律家として関与しますので、内容についてもいろいろチェックを入れるのですね。そういう国で初めて有効に機能する条文です。日本法においてこれを残すとしたら、これを種のようにしてフランス法的に膨らませて広げると意味はあるのでしょうけれど、現実問題として、やはり公証人の数もフランスの方は日本の数十倍いますし、無理だろうと、結局はこれを機能させる方向は諦めるという判断で、日本では弊害の方が多いので、削ってしまおうということになりました。   ただ、従来、一部では、家庭には法が入るべきではないという根拠で、この754条が置かれたと言われていますが、それは違うと思います。むしろ家庭にはせっせと法が入らなくてはならないという発想でこの条文を理解すべきで、けれども、日本では公的な司法インフラがないために法が入らない、その前提条件下では悪影響しか持たない、したがって、やむを得ず削るというような議論の経緯でございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   久保野幹事からも手が挙がっていますけれども、関連した御発言ですか。では、後で伺うことにして、青竹幹事からの754条に関する御指摘について、水野委員から、平成8年の提案の経緯についての御説明がありました。私自身は、婚姻前に夫婦財産契約をして登記しなければいけないという現行の規律との関係はどうなるのか、それは手当てしなくてよいのかとも思うのですが、答申が出ていて、悪影響があるというのも、水野委員がおっしゃるとおりなので、もし皆さんの方で御異論がなければ、検討のテーブルには載せてもよいかと思いますけれども、いかがでしょうか。 ○棚村委員 私自身は、1996年の答申というのは積み残しということなので、基本的には実現する方向ということでいいと思います。   ただ、財産分与については、それをバージョンアップして、そこでの議論を現代的にやはり修正しなければいけないと思います。例えば、赤石委員が言ったことで、私も、全く賛成でして、ほかの国でも未成年の子及び監護親の居住を確保するというような考慮要素は、非常に重要なものとして使われていますから、そういう住まいをきちんと確保するというのは、お子さんの養育への配慮や保護にもつながると思います。   ただ、私も大村部会長がおっしゃったように、民法754条については、確かに積み残しではあり、あまり異論はないかもしれませんが、若干気にはなっております。つまり、民法754条の規定自体は、適用を制限する方向で弊害も実質的には縮小していて、死文化していることは間違いありません。しかし、私も、夫婦財産契約とかで、むしろ合意でもって、結婚前も婚姻中も含めて、契約でもって多様な経済事情とかいろいろな取決めをして、紛争の予防とか解決のために使うというようなことについても併せて検討しながら、この規定が機能する場面があるのかどうかを検討しながら、夫婦財産契約という制度との関係で、夫婦間の契約の取消しや解消、変更などという規定をどう位置付けるか考えてもよいのかなとも感じました。さらに、今回はそれまで入れてしまうと少し広がってしまうのではないか。それでなくともこの部会での審議内容はいろいろ広がっているので、お子さんの養育に関わるというので、先ほど赤石委員がおっしゃったように、財産分与も経済的なお子さんの養育のための大切な制度であるという趣旨で、いろいろと現代的な目的とか理念とか考慮事情を入れていくということでバージョンアップはできるのでは。もちろん、1996年の積み残しではあるのですけれども、契約取消権の問題は、判例でも最高裁昭和27年判決で離婚給付を決めておいて取り消すことはできない、それは対象外だということになっていて、そういうようなこともあるので、これ以上いろいろなものを広げられるかなと心配しているところです。先ほど居住不動産の処分制限とか、それから共有物分割とかも、実務上非常に大事で、私も取り上げるべきだと思ってはいたのですけれども、どうも限られた時間の中で、非常に重要な論点が結構山積みになっているので、できる範囲でやることには賛成なのですけれども、事務局が御提案を頂いているような形で積み残されて、水野先生は中に入っていた生き残りで、私は、大村先生ももしかすると、外にいながら生き残っているということなので、是非新しい形で、今の社会の現状とかこれからに向かっていろいろなものを修正して、そして、いいものにバージョンアップしながら提案できるのであれば、この機会に提案をして、立法化というか、改正につなげるということでいただくと有り難いと思います。   内閣府の離婚と子の養育に関する世論調査とかでも、分けるときにどういうことを考慮したかというときに、先ほど子育てに必要な同居親の住環境の確保とかはとても多く、それから、夫婦間の公平というのも次に多くて、公平や衡平という言葉は、法務省の別のお子さんのいる協議離婚の実態調査のときも、どういう事情を考慮していますかというときに、一番多いのは、やはり夫婦間の公平、それから子どもの養育とか財産形成の寄与、貢献とか、お互いの資産とか健康などと続いていました。このような一般の人々の意識や認識としても、基本的に、こういうものを総合的に考慮して判断をしているという中で、夫婦の財産的な公平というのは結構重視されているようですから、余り広げないということを言いながら、事務局のご提案に対しては、これまで積み上げてきたものを基礎にして、どこまでできるか、どこまでいいものにできるかという、限界はあると思うのですけれども、賛成させていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。いろいろ御意見を頂きましたが、まず、棚村委員から、先ほど池田委員の御意見もそうだったかと思いますけれども、96年の案をベースにしつつ、現状に合わせて変えられるところがあれば変えていくということで考えるべきであるが、やるべき課題は多いので、優先順位を付けて考えていくべきではないかという御意見をいただいたと理解しました。   直前の話題だった754条についてですけれども、これも96年の立法提案に含まれていましたので、もし大きな支障がないということが確認できるのであれば、それはそれで、今回併せて実現するということもあってよいのではないかと思います。そういうことで、取りあえず少し検討していただいて、何か問題がありそうだったらやめるけれども、そうでなければ検討を進めることにさせていただきたいと思いますが、この点についてそれでよろしいでしょうか。   ありがとうございます。多少これまでの議論の外に出る問題かもしれませんけれども、そういうことで引き取らせていただきます。   杉山幹事、細矢委員、久保野幹事、そして窪田委員、原田委員。以上の順番で伺いたいと思います。 ○杉山幹事 幹事の杉山です。青竹先生のご発言とも重なりますけれども、6と8について簡単にコメントを述べさせていただきます。   6の財産開示の義務ですけれども、これは規定するのがいいと思っております。案@とAがございますが、これらは排他的なものではなく、協議離婚があることを前提に@を規律して、それが案Aの義務を基礎付けるということにもなるとは思います。また、義務の履行を担保するための制裁も考えられまして、実際課すかどうかは別として、過料のほかにも、(注)のところにある手続の全趣旨というのも制裁の一つになるかと思います。   他方で、開示義務には、自分の財産を調査する義務ものも自然に含まれると思いますが、調査が難しいような場合もあると思いますので、制裁を課す場合には、例えば、執行法上の財産開示の制度に対する制裁と同じように、回答を一切しないとか、あるいは虚偽の陳述をした場合に限って制裁を課していくというのが考えられるかと思います。手続の全趣旨で判断することについては、そのような曖昧な形で判断することには、あまり積極的ではないのではありますけれども、ただ、一方当事者の主張にそれなりに理由があるけれども、相手方が何も資料を出さずに非協力的であるというときに、最後は手続の全趣旨で判断するというような一つの制裁手段を認めるというのもいいのではないかと思っています。   8の破産についてでありますけれども、基本的には、この資料の立場は、問題提起だけをして、具体的な提案を設けないものでありますが、補足説明の中の提案に、自由財産の拡張について触れられていますので、その点についてのコメントです。この立場は、財産分与請求権は破産債権であるという判例の立場を前提として、拡張された自由財産から、事実上優先的に任意弁済の途を確保するものと理解しているところです。自由財産として財産分与の対象となる財産を取っておくというのは、現在の考え方を変えないことを前提に、実務上対応可能な方策かと思いますけれども、他方で、これも説明のところにありますように、自由財産としたところで、その財産分与請求権に優先的に分配されるという制度的な保証というものはありませんし、何より破産裁判所に判断できるのかという限界もあるとは思います。したがって、実務に委ねるというのも一つの方法であるかと思いますが、だからといって、現状のままでいいというわけではなく、財産分与請求権を破産債権とする判例そのものの見直しも必要であると思いますし、その一方で、離婚と財産分与、破産との時期的な前後関係を見て、時期によって保護の程度があまり大きく変わらないようにする配慮も必要と思いますので、詳細な検討と議論が求められると思います。この場でするかという問題もありますか、仮にこの会議の場でできないのであれば、今後、その問題について別のところで検討をする必要性があるというメッセージは、残しておいていただきたいと思っているところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。杉山幹事から2点御意見を頂いて、6の財産の開示については案が二つ出ているけれども、二者択一でない考え方もあるということと、それから、制裁について御意見が出ましたけれども、この書き方を少し注意する必要があるという御指摘を頂きました。さらに、8の破産手続については、いろいろなことを考えると、実務に委ねるというのも一つの選択肢だけれども、他方で、きめ細かい規定を置いて調整していくということも考えられる、後者が無理ならば、それをどこかでやるべきだということを示したらどうかという御指摘を頂きました。 ○細矢委員 それでは、東京家裁の細矢でございます。私の方からは、実務の立場から、財産分与における扶養的要素の位置付けのところについて、少し補足させていただこうと思います。   今回の部会資料では、財産分与における考慮事情として、主として扶養的要素に関する事情とされるものも含めて記載されております。同時に、一読目の議論におきまして、財産分与の法的性質の中心的なものが、清算的要素であるということについて異論がなかったということも記載されております。そして、実務上も、そのことを前提としまして、扶養的要素を考慮すべき必要がある事案においては、適切にその点を考慮しようとしている一方、一般的には補充的に考慮されることもあるにとどまっておりまして、扶養的要素については明示的に審理されるということは多くはないと承知しております。仮にこの財産分与の判断過程で、部会資料に今回あります@からEまでの考慮要素、考慮事情を考慮するとした場合ですけれども、清算の観点から@の財産の額とAの寄与の程度で割合に基づく算定を基礎とした上で、その上でBからEまでの事情も考慮して、総合的に考慮して、裁判所に与えられた裁量の範囲の中で、扶養的要素について適切に判断するということであれば、現在の実務上の審理の在り方をイメージ、つながってしやすいと思うのですけれども、先ほども一部の委員から御指摘ありましたように、例えば、稼得能力の喪失を、逸失利益を算定するときのように非常に細かく算定しなければいけないとしますと、これまでの実務の在り方とは非常に乖離が大きいということと、審理が複雑となって、審理期間がやはり相当長期化してしまうのではないかなという懸念をしております。 ○大村部会長 ありがとうございます。財産分与、特にこの扶養的な要素、補償的な要素の取扱いについて、現在の取扱いと、それから今後裁判所として対応がしやすい方向はどのようなものであるかということについて、御意見を頂戴いたしました。   終わりの時間が迫っていますが、久保野幹事と窪田委員と原田委員から手が挙がっていたのですが、窪田委員は手を下げられましたか。 ○窪田委員 はい、結構です。 ○大村部会長 それでは、久保野幹事、原田委員、小粥委員から手が挙がっているということなので、できればそこまででまとめたいと思います。 ○久保野幹事 すみません、幹事の久保野です。補償的な要素について、議論の中で出てきたであろうことを、別の言い方をするだけなのですけれども、これは、労働マーケットの状況が変わったり、ケア、家事労働の男女間での分担の在り方が変わっていけば、問題にならないようなものかといえば、必ずしもそうではないということが指摘されたと理解しています。婚姻をしたら、2人で協力し合って生きていけばいいので、その中で稼働やアンペイドワークやその他の精神的感情的なもの、様々なことを考慮し合って、分担等して生きていくというのが婚姻で、それを解消したときに、リスクがどちらかに生じることがあり得る。そのようなリスクに当事者があらかじめ手当てしておくのが一番かもしれないけれども、なかなかそういうことが期待できないのが婚姻であるので、予想外に解消となったときのリスク、現実化したリスクを補償すると考える。そのことによって、翻って婚姻中の協力、扶助が様々な形で円滑に自由にできることになる、離婚時の補償が婚姻中のそういうものを支えるものだということがあるのではないかと思います。抽象的ですけれども、専業主婦の問題に限らず、より広い視野で見ていくものではないかということを、一言付け加えさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。雇用市場の在り方ということとは別に、婚姻の性格から導かれる補償的要素というのがあるという御指摘だったかと思います。ありがとうございます。 ○原田委員 婚姻中の不動産の処分の制限について、今回は取り上げないというような提案もありましたけれども、非名義人が離婚したくない場合、仮処分ができないんですよね。離婚することを前提に、財産分与請求権を被保全債権としてしか仮処分ができないので、名義人の処分を止めることができないというところがあります。なので、やはり居住用不動産に限っては、何とか保全する方法、処分の制限をする方法を、できれば研究者の皆さんにも考えていただきたいなと思います。  もう一つは、財産の開示の問題と、先ほどちょっと申し上げましたけれども、婚姻前から有する財産をなぜ開示しなければいけないかというところについては、後で制裁に賛成する御意見も出てきたというところもありまして、処分の対象ではない場合も多いわけですので、なぜここで婚姻前から有する財産及びということを入れないといけないのかということについては、議論が必要ではないかと、私は消極的に考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。処分制限の必要性ということと、それから、開示義務の対象についての御意見を頂きました。   小粥委員、落合委員、もう時間になっていますので、すみませんが手短にお願いできればと思います。 ○小粥委員 財産分与に係る期間制限について一つだけ。協議離婚を念頭に置けば、期限の延長というのは何か分かるような気がいたしますけれども、裁判離婚まで念頭に置いての議論になるでしょうか。少なくとも、そのことをはっきりさせた上で、これから議論した方がいいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほど財産分与の期間を延ばすということについて、賛成意見が続きましたけれども、裁判離婚の場合を考えたときにどうかということも考慮する必要があるのではないかという御意見を頂きました。 ○落合委員 手短になんですけれども、今の補償というのを入れると、手続が大変になるということですけれども、一人一人について計算すると大変だと思うんですけれども、正社員を辞めた人はどのぐらい逸失利益があるというようなことを、これは全体的に計算しておいて、そういうケースだったら、それを考慮せずに今まで算定したものの、例えば1.5倍とか1.3倍とかを女性の方に与えるとか、何かそういうようなことを決められたらいいのではないかなと思うんですね。それによって、結婚するときに相手の仕事を辞めさせたら、後でどういうことになるかというのを、きちんと分かった上で辞めさせていただくというような意味です。だから、結構簡便にすることができると思います。何か今も、寄与分が半々ということだと水野先生に教えてもらいましたけれども、実際は何か半分に分けちゃったりしているんですよね、持っているものを合計して。それと同じような感じで、持っているものを半分に分けて、それに、例えば1.5とか1.3とか、何か掛けると、やった仕事を片方辞めさせたときは、何かそういうのを慣例にしていただけるといいなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。補償的要素について、定型化はできないのかという御意見として承りました。   まだ皆さん御意見があると思います。また、部会資料14以外のことについても時間があればと申し上げたんですけれども、残念ながらもう時間がございません。そこで、最初に申し上げましたように、中間試案の取りまとめに向けてのたたき台を、次回以降出していただくということになろうかと思いますが、それについて議論する中で、なお御意見があるところについては御意見を頂ければと考えております。   ということで、今日もまた、皆さんまだ言い足りないとお考えになっていると思いますけれども、部会資料14についてはここまでということにさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。   ありがとうございます。   それでは、次回の議事日程等について、事務当局の方から説明をしていただきたいと思います。 ○北村幹事 次回の日程は、6月21日火曜日の午後1時30分から午後5時30分まで、場所につきましては、共用会議室6・7を予定してございます。   次回は、事務当局から中間試案のたたき台をお示しさせていただいて、それに基づいて御議論していただきたいと思ってございます。ただ、養子、財産分与については、今日様々御意見いただいたところですので、現状のまま全体像を見ていただく形がよいのか、それとも、少し修正すべき部分は切り離した上で、できるところまでをお示しさせていただいた方がよいのかは、部会長とも御相談させていただきながら、御提示させていただきたいと思います。   以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。次回もよろしくお願い申し上げます。それでは、法制審議会の家族法制部会第15回会議、これで閉会をさせていただきます。   本日も熱心な御議論を賜りまして、ありがとうございました。閉会いたします。 −了− - 46 -