改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会 (第1回) 第1 日 時  令和4年7月28日(木)      自 午前 9時59分                           至 午前11時06分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  事務当局による開催趣旨や配布資料の説明         協議の進め方についての議論 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○栗木参事官 予定の時刻となりましたので、ただ今から改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会の第1回会議を開催いたします。   本日は、皆様御多用中のところ、御出席くださり、誠にありがとうございます。   本協議会においては、私、法務省刑事局参事官の栗木が進行役を務めさせていただきます。   まず、刑事局長の川原から御挨拶申し上げます。 ○川原刑事局長 法務省刑事局長の川原でございます。着座のまま失礼させていただきます。   改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会の開催に当たり、一言御挨拶を申し上げます。   構成員の皆様方におかれましては、御多用中のところ、本協議会に御参加くださり、誠にありがとうございます。   本協議会は、私ども刑事局が、刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第9条に基づく検討を行うに当たり、実務の運用状況を共有しながら意見交換を重ねていただき、制度・運用における検討すべき課題を整理するため、開催することとしたものです。刑事手続の在り方は、国民の皆様の生活の基盤となるものであり、様々なお立場からの御意見を伺うことは、私どもの検討に大きく資するものと考えております。構成員の皆様方からは、その専門性をいかし、多様な観点から、忌憚のない御意見を頂ければと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○栗木参事官 刑事局長は、所用のため、ここで退席させていただきます。              (川原刑事局長退室)   続きまして、本協議会の開催趣旨等を説明します。   刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第9条第1項及び第2項においては、政府が、同法の施行から3年経過後に、取調べの録音・録画等に関する制度の在り方、同法による改正後の刑事訴訟法等の規定の施行の状況について検討を加えた上、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされています。また、同条第3項においては、政府が、同法の公布後、必要に応じ、速やかに、再審請求審における証拠の開示、起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置、証人等の刑事手続外における保護に係る措置等について検討を行うものとされており、既に法制審議会から答申がなされている起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置を除き、同項に基づく検討を行う必要があります。   そこで、先ほど刑事局長が申し上げたとおり、刑事法研究者等の有識者、法曹三者、警察庁及び法務省が、改正規定の施行状況を始めとする実務の運用の状況を共有しながら、刑事手続の在り方について、意見交換を行い、制度・運用における検討すべき課題を整理するため、本協議会を開催することとしたものです。   私どもといたしましては、本協議会における御議論の内容を真摯に受け止め、検討作業にいかしてまいりたいと考えておりますので、忌憚のない御意見を賜りますよう、御協力をお願い申し上げます。   続きまして、構成員の皆様から、簡単で結構ですので、自己紹介を頂きたいと思います。順番としましては、会場に御出席の構成員の皆様、続きまして、オンラインで御出席の構成員の皆様の順にお願いしたいと思います。   そこで、まず会場ですが、五十音順に御着席いただいておりますので、河津構成員から時計回りにお願いします。 ○河津構成員 弁護士の河津でございます。日本弁護士連合会で刑事調査室の室長を務めております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○小林構成員 読売新聞の小林篤子と申します。昨年6月まで約3年間、司法担当の論説委員を務めておりまして、その前は、社会部の記者として、法務・検察、裁判所を取材してまいりました。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○親家構成員 警察庁刑事局刑事企画課長の親家でございます。どうかよろしくお願いいたします。 ○鈴木構成員 東京地裁の部総括判事をしております鈴木巧と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○成瀬構成員 東京大学で刑事訴訟法を担当しております成瀬剛と申します。よろしくお願いいたします。 ○宮崎構成員 東京地方検察庁交通部副部長の宮崎と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○横山構成員 最高裁刑事局の第一課長をしております横山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○吉田構成員 法務省刑事局刑事法制管理官の吉田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○栗木参事官 引き続き、オンラインで御出席の佐藤構成員から、よろしくお願いします。 ○佐藤構成員 慶應義塾大学で刑事訴訟法を担当しております佐藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○藤井構成員 弁護士の藤井と申します。日弁連で犯罪被害者支援に関する委員会に所属しております。よろしくお願いいたします。 ○栗木参事官 ありがとうございました。   続きまして、本協議会の議事録の取扱い等について、皆様にお諮りしたいと思います。   平成23年4月1日に公文書管理法が施行されたことに伴い、内閣総理大臣決定として、「行政文書の管理に関するガイドライン」が定められ、審議会等や懇談会等の議事録については、発言者の名を記載した議事録を作成する必要があるとされていますので、本協議会においては、発言者の氏名を明らかにする形で議事録を作成した上で、会議で用いた資料とともに、法務省のホームページに掲載して公表するのが適当であると考えています。その上で、プライバシーに関わる内容のものなど、公表することが適切でない議事内容や資料がございましたら、その都度、皆様にお諮りさせていただいた上で、例外的に非公表の扱いとしたいと考えています。このような方針とすることでいかがでしょうか。 ○河津構成員 議事録の取扱いについて、発言者名を明らかにして公表することについて異存ございません。それに加えまして、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会においては、広く国民の声を反映するため開かれた審議を行うという観点から、原則として、会議を公表するものとされ、具体的には、報道機関の方々を対象としてモニターを通じて会議の模様を同時進行で傍聴できるようにする方法で会議が公開されていたものと記憶しております。広く国民の声を反映するため開かれた審議を行うべきことは今回の協議会にも妥当すると考えられますから、報道機関から公開の要請があったときは、公開に適さないような内容にわたる審議を行う場合は別として、積極的な対応をすべきであると考えます。 ○栗木参事官 ただ今、会議の公開の在り方について御意見を頂いたところですが、この関係で何か御意見がある方はいらっしゃいますか。 ○吉田構成員 今回の協議会の趣旨を踏まえますと、特に、刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第9条第1項・第2項による検討については、現に動いている制度の運用状況を子細に把握しながら、そこに課題があるかどうかを検討していくものだと思いますので、個別の事件に関することも含めて、実際に刑事手続の中で行われていることに言及しながら議論することが不可避であり、また不可欠であろうと思われます。  そうだとしますと、忌憚のない意見交換をするという観点からは、この会議場にいらっしゃる方を越えて、マスコミの方がその議論の内容を全て把握し得る状況にするということになりますと、捜査上の秘密にわたることには言及できないとか、関係者のプライバシーにわたる事項に言及することを避けざるを得ないといったことが生じて、忌憚のない意見交換を行うという所期の目的が達成し難くなるのではないかということを強く懸念しています。その意味で、マスコミの方にこの会議の内容を公開するということについては慎重であるべきではないかと考えております。 ○栗木参事官 ただ今、議事の内容や意見交換の趣旨を踏まえた御意見がありましたけれども、この関係で更に御意見のある方はおられますか。 ○小林構成員 リアルタイムでなくても、基本的には議事は速やかに公開されるという理解でよろしいでしょうか。 ○栗木参事官 皆様の御発言などを議事録にまとめ、それを皆様に御確認していただいた上で公表し、資料についても併せて速やかに公表するという考えです。 ○小林構成員 ありがとうございます。 ○河津構成員 先ほどの吉田構成員からの御発言の中で、個別の事例に言及して忌憚のない意見交換をする必要があるという御指摘がありました。その点について私も全く同意見でございますが、その回によっては、必ずしもそういった公開に適さない内容の審議を行わないこともあり得るのではないかと思います。したがいまして、報道機関から公開の要請があったときは、その回の審議が公開に適するものなのかを個別に検討し、判断をすべきではないかと考えます。 ○栗木参事官 そうしますと、その回でどういった議題を取り扱うかということと、どなたがどういった趣旨の発言をされるかということをあらかじめ予測するというか、把握した上でないと、なかなか公開に適するかどうかの判断が難しいこともあるかと思うのですが、そのあたりはどのように考えればよろしいでしょうか。 ○河津構成員 それは今後の議論の進め方にもよると思いますが、回によっては必ずしも事件の内容に触れない審議が想定される場合もあるのではないかと推察されますので、そのような場合において、報道機関から公開の要請があったときには、積極的な対応をすべきではないか、というのが私の意見です。 ○吉田構成員 本協議会においては、個別の事件に関すること、あるいは、それを抽象化した形であれ、捜査機関においては外部に公表していない情報などに言及することもあり得るのだろうと思っています。その上で、会議を開く前の段階で、実際にその回の会議に臨んだときに果たしてどこまで言及することになるのかを的確に予測して、あらかじめ判断しておくというのは、非常に難しいのではないかと感じております。場合によっては、会議の場で思い付いて、とっさに、公にできない情報に言及しようと考えることもあり得るだろうと思うのですけれども、そのときに、マスコミの方に全て聞かれるということになると、やはり発言を控えておこうという判断にならざるを得ないことも出てきてしまうのではないかという気がしまして、事前の予測的判断にはやはり限界があるのではないかという気がしております。その意味で、公開するのは適切ではないと考えております。 ○成瀬構成員 私も、河津構成員がおっしゃるように、広く国民に開かれた形で協議会の議論を進めていくことが重要であると考えております。しかしながら、先ほど吉田構成員が指摘されたとおり、今回の協議会の目的は、改正刑訴法に関する実務の運用状況を共有しながら、構成員の間で率直な意見交換を行うことにあると理解しておりますので、会議の場で思い付いて、とっさに発言しようとする場合を含め、構成員の皆様が発言をためらうようなことは一切ない方が良いと思います。また、研究者である私は、実務の運用状況を十分に把握できておりませんので、構成員の皆様が、個別の事件に関することや外部に公表されていないことも含めて、率直に発言してくださることによってはじめて、自らの意見を述べることができるという面もございます。このように考えますと、協議会において充実した議論を行うという観点からは、会議の公開という方法は適切ではなく、先ほど小林構成員が示唆されたように、会議終了後、構成員が議事録を確認した上で速やかに公表することによって、協議会の議論内容を広く国民の皆様に知っていただくのが適切であると考えます。 ○栗木参事官 ただ今、協議会の趣旨や、実務の運用面を共有して行う忌憚のない意見交換の観点から御意見を頂いたところですが、河津構成員の方から補足して御説明されることはございますか。 ○河津構成員 公表に適さない内容の発言をする可能性がないということについて構成員全員が一致できる場合であれば、公開に差し支えはないものと理解しますが、現在の構成員の御発言を聞きますと、あらかじめそれを表明することは困難であると理解しました。そうしますと、代替措置としては、議事録を早く公開することが重要と考えますので、議事録の確認、公表が速やかに行なわれるよう御留意いただきたいと思います。 ○小林構成員 これまで、議事録の公表が、会議の2か月後とか3か月後ということがよくあって、お忙しいのはよく分かるのですけれども、次の会議まで間がないぐらいの時期の公表になるようではよろしくないと思いますので、本当に速やかにお願いしたいと思います。また、先ほどお話がありましたけれども、実務の共有ということで言うと、個別の事件も含めて検討の俎上にあげていただけるということですので、そちらの方を期待しつつ、議事録の速やかな公表をお願いしたいと思います。 ○栗木参事官 皆様方の御意見を踏まえまして、議事録の取扱い、公表の在り方は、先ほど事務当局から御提案した内容どおりということで進めさせていただくとともに、議事録の公表については速やかに行うように努めるということで、皆様、よろしいでしょうか。              (一同了承)   それでは、そのようにさせていただきます。   続きまして、配布資料の説明をさせていただきます。皆様、お手元に配布資料1から3までをお配りしていますので、こちらを御覧いただければと存じます。   配布資料1は、平成28年の刑事訴訟法等の一部を改正する法律の附則第9条を抜粋したものです。配布資料2及び3は、同法による改正の概要に関する資料ですが、配布資料2はこれを簡潔にまとめたもので、配布資料3はより詳細にしたものです。私からは、配布資料2を用いて御説明いたします。   改正項目は9点あります。項目順に御説明いたします。   1点目は、取調べの録音・録画制度の導入であり、刑事訴訟法第301条の2が新設されました。録音・録画制度は、被疑者の供述の任意性等の的確な立証を担保するとともに、その取調べ等の適正な実施に資することを通じて、より適正、円滑かつ迅速な刑事裁判の実現に資するために導入されたものであり、裁判員制度対象事件及びいわゆる検察官独自捜査事件を対象として、公判において、逮捕又は勾留されている被疑者の取調べ等の際に作成された供述調書又は供述書の任意性が争われたときは、検察官は、その取調べ等を録音・録画した記録媒体の証拠調べ請求をしなければならず、この義務に違反したときは、当該供述調書又は供述書の証拠調べ請求が却下されることとした上で、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、逮捕又は勾留されている被疑者の取調べ等を行うときは、一定の例外事由に該当する場合を除き、その全過程を録音・録画しておかなければならないこととするものです。   2点目は、合意制度等の導入です。この項目は、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の導入、刑事免責制度の導入の二つがあります。   一つ目の証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の導入については、刑事訴訟法第350条の2等が新設されました。合意制度は、組織的な犯罪等において、手続の適正を担保しつつ事案の解明に資する供述等を得ることを可能にする取調べ以外の方法を導入し、証拠収集に占める取調べの比重を低下させるための手法として導入されたものであり、特定の財政経済犯罪及び薬物銃器犯罪を対象として、検察官と被疑者・被告人が、弁護人の同意がある場合に、被疑者・被告人が、他人の刑事事件について、供述をしたり、証拠物を提出するなどの協力行為をすること、検察官が、被疑者・被告人の事件について、不起訴にしたり、軽い訴因で起訴したり、軽い求刑をするなどの有利な取扱いをすることを内容とする合意をすることができるものです。   二つ目の刑事免責制度の導入については、刑訴法第157条の2等が新設されました。組織的な犯罪等において、犯罪の実行者等を証人として尋問し、首謀者の関与状況等に関する証言を得ようとする場合には、同時に、証人自身の関与状況等についても証言を求めなければならないこととなるのが一般的ですが、証人は、一般に証言義務を負うものの、自己が刑事訴追を受け又は有罪判決を受けるおそれのある事項については、証言を拒むことができることとされており、改正前は、仮に証人がその証言拒絶権を正当に行使した場合には、それ以上、証人から証言を得る手段はなく、その結果、首謀者の関与状況等に関する証言も得られず、事案の解明に支障を来しかねない状況にあったことから、刑事免責制度は、このような事態等に対処するため、検察官の請求に基づく裁判により、証人に対し、尋問に応じてした供述及びこれに基づいて得られた証拠は証人の刑事事件において証人に不利益な証拠とすることができない旨の免責を付与し、その証言が自己負罪拒否特権の対象とならないようにすることによって、証言を義務付けることを可能としたものです。   3点目は、通信傍受の合理化・効率化です。そのうち、対象犯罪の拡大については、通信傍受法第3条等が改正され、新たに通信傍受の対象犯罪として、組織的な事案に限定するための要件を付加しつつ、殺傷犯関係の罪、逮捕・監禁、略取・誘拐関係の罪、窃盗・強盗、詐欺・恐喝関係の罪、児童ポルノ関係の罪が追加されました。また、傍受手続の合理化・効率化については、通信傍受法第20条等が新設されました。改正前の通信傍受法においては、傍受の実施について、通信手段の傍受の実施をする部分を管理する者等を常時立ち会わせなければならないこととされており、そのために、通信傍受は、通信事業者の施設において実施する運用となっていましたが、通信傍受の実施の適正を十分に担保しつつ、通信事業者等の負担を軽減するとともに通信傍受の実施の機動性を確保して、より効果的・効率的な通信傍受を可能とするため、証拠の収集方法の適正化・多様化の観点から、従来の通信傍受の実施方法に加えて、一時的保存を命じて行う通信傍受の実施の手続、特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続が導入されたものです。   4点目は、裁量保釈の判断に当たっての考慮事情の明確化であり、刑事訴訟法第90条が改正されました。改正前の同条は、裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができると規定していましたが、裁量保釈の判断に当たっての考慮事情について、実務上の解釈として確立しているところを確認的に明記することにより、法文の内容をできる限り明確化し、国民に分かりやすいものとする趣旨で、その判断に当たっての考慮事情として、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情が明記されたものです。   5点目は、弁護人による援助の充実化です。この項目は、被疑者国選弁護制度の対象事件の拡大、弁護人の選任に係る事項の教示の拡充の二つがあります。   一つ目の被疑者国選弁護制度の対象事件の拡大については、刑事訴訟法第37条の2等が改正されました。改正前においては、被疑者国選弁護制度の対象事件は、死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件に限定されていましたが、被疑者国選弁護制度の趣旨をより一層実現し、証拠の収集方法の適正化及び公判審理の充実化を図るため、勾留状が発せられている全ての被疑者を被疑者国選弁護制度の対象とすることとされ、併せて、被疑者に対する国選弁護人の選任手続が整備されたものです。   二つ目の弁護人の選任に係る事項の教示の拡充については、刑事訴訟法第76条等が改正されました。身体を拘束された被疑者・被告人は、裁判所、司法警察員、検察官、刑事施設の長等に弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができ、その申出を受けた裁判所、司法警察員、検察官、刑事施設の長等は、直ちに被疑者・被告人の指定した弁護士等にその旨を通知しなければならないこととされていますが、この方法により弁護人の選任を申し出ることができることの教示に関する規定は置かれていませんでした。   そこで、身体を拘束された被疑者・被告人の弁護人選任権に関する手続保障をより十分なものにするという観点から、裁判所、司法警察員、検察官等は、これらの者に対して弁護人選任権を告知する際に、弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨及びその申出先を教示しなければならないこととされたものです。   6点目は、証拠開示制度の拡充です。この項目は、証拠の一覧表の交付手続の導入、公判前整理手続の請求権の付与、証拠開示の対象の拡大の三つがあります。   一つ目の証拠の一覧表の交付手続の導入については、刑事訴訟法第316条の14が改正されました。公判前整理手続の下で、被告人側は、検察官に対し、類型証拠及び主張関連証拠の開示を請求することが可能であり、その請求をするに当たっては、所定の事項を明らかにしなければならず、かつ、それをもって足りることとされていますが、被告人側において、その請求に先立ち、その手掛かりとして、検察官の保管する証拠の一覧表の交付を受けることができれば、円滑・迅速な証拠開示請求に資することとなり、ひいては公判前整理手続の進行がより円滑・迅速なものとなり得ることから、検察官は、公判前整理手続において、検察官請求証拠の開示後、被告人側から請求があったときは、検察官の保管する証拠の一覧表を交付しなければならないこととされたものです。   二つ目の公判前整理手続の請求権の付与については、刑事訴訟法第316条の2等が改正されました。改正前においては、事件を公判前整理手続に付するか否かは、裁判所が職権で判断することとされていたため、訴訟当事者である検察官・被告人・弁護人は、裁判所に対して、その職権発動を促すことができるにとどまっていました。しかし、事件が公判前整理手続に付されるか否かは、訴訟当事者の公判準備に大きな影響を与えることに鑑み、訴訟当事者が裁判所に対して事件を公判前整理手続に付するよう求めることができることを制度上明確にするとともに、訴訟当事者の請求があったときは裁判所がその判断を「決定」という方式で合理的期間内に行わなければならないこととする観点から、訴訟当事者に公判前整理手続の請求権が付与されたものです。   三つ目の証拠開示の対象の拡大については、刑事訴訟法第316条の15が改正されました。これにより、被告人の共犯として身体を拘束され若しくは公訴を提起された者であって、検察官が証人として尋問を請求した者又は証人として尋問を請求することを予定しているものに係る取調べ状況記録書面、検察官請求証拠である証拠物の押収手続記録書面、類型証拠として開示すべき証拠物の押収手続記録書面が、類型証拠として開示対象に追加されたものです。   7点目は、犯罪被害者等・証人を保護するための措置です。この項目は、ビデオリンク方式による証人尋問の拡充、証人の氏名・住居の開示に係る措置の導入、公開の法廷における証人の氏名等の秘匿措置の導入の三つがあります。   一つ目のビデオリンク方式による証人尋問の拡充については、刑事訴訟法第157条の6が改正されました。改正前においても、ビデオリンク方式による証人尋問を行うことは可能でしたが、その対象は、性犯罪等の被害者その他裁判官等の在席場所において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる者に限られており、また、その具体的な方法についても、証人を同一構内に出頭させた上で、裁判官等の在席場所と証人が在席するその同一構内の別室との間を回線でつなぐ方法しか認められていませんでした。しかし、証人としては、同一構内に出頭すること自体により、精神の平穏を著しく害されたり、あるいは、その身体・財産に対する加害行為等がなされるおそれがある場合等もあり得るところであり、より充実した公判審理を実現するためには、そのような場合においても、証人の負担を適切に軽減しつつ証人尋問を行うことができるようにして、十分な証言を確保し得るようにすることが必要であることから、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、証人が同一構内に出頭するときは精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認めるときなどの場合であって、相当と認めるときは、同一構内以外にある場所であって裁判所の規則で定めるものに証人を在席させ、映像と音声の受送信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって尋問することができることとされたものです。   二つ目の証人の氏名・住居の開示に係る措置の導入については、刑事訴訟法第299条の4等が新設されました。改正前においても、検察官は、証人等に加害行為がなされるおそれがある場合には、弁護人に証人等の氏名及び住居を知る機会を与えるなどした上、一定の事項が被告人その他の者に知られないようにすることを求めることができましたが、暴力団による組織的な犯罪等においては、証人など刑事手続に関与する者の安全の確保や、その負担の軽減を図るための方策として必ずしも十分ではない場合があり、その結果、これらの者から十分な協力を得ることが困難となるおそれがあったことから、このような加害行為等を防止するとともに、証人など刑事手続に関与する者の負担の軽減を図ることにより、十分な協力を確保し得るようにし、より充実した公判審理の実現に資するようにするとの観点から、より実効性のある方策として、証人等の氏名及び住居の開示に係る措置を導入することとされました。   具体的には、検察官は、被告人側に対し、証人等の氏名及び住居を知る機会を与えるべき場合において、その者若しくはその親族に対して加害行為等がなされるおそれがあると認めるときなどの場合には、弁護人に対し証人等の氏名及び住所を知る機会を与えた上で、被告人に知らせてはならない旨の条件を付すなどすることができ、さらに、これによっては加害行為等を防止できないおそれがあると認めるときは、被告人及び弁護人に対し、証人等の氏名又は住所を知る機会を与えないこととした上で、氏名にあってはこれに代わる呼称を、住居にあってはこれに代わる連絡先を知る機会を与えることができることとされました。   三つ目の公開の法廷における証人の氏名等の秘匿措置の導入については、刑事訴訟法第290条の3等が新設されました。改正前においても、性犯罪に係る事件等の被害者については、その氏名等の被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしないで訴訟手続を行うことが可能でしたが、被害者以外の証人等はその対象とされていませんでした。しかし、証人等の氏名等についても、被害者特定事項の秘匿と同様に、法律上の制度として、公開の法廷で秘匿し得ることとすることが必要であると考えられたことから、証人等に対する加害行為等を防止するとともに、その負担の軽減を図ることにより十分な協力を確保し得るようにし、より充実した公判審理の実現に資するようにするとの観点から、証人等に対する加害行為等のおそれがある場合には、裁判所が、証人等の氏名等を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができ、この決定があった場合には、起訴状の朗読、証拠書類の朗読等の訴訟手続を証人等の氏名等を明らかにしない方法で行うこととされたものです。   8点目は、証拠隠滅等の罪などの法定刑の引上げであり、刑事訴訟法第151条等が改正されました。証人の出頭及び証言の確保を図るとともに、客観的な証拠や関係者の供述が損なわれたりゆがめられることなく公判廷に顕出されるようにすることなどにより、公判審理の充実化を図る観点から、刑事訴訟法第151条の証人不出頭の罪、刑法第103条の犯人蔵匿等の罪等につき、法定刑が引き上げられたものです。   最後、9点目は、自白事件の簡易迅速な処理のための措置であり、刑事訴訟法第350条の12が新設されました。これは、即決裁判手続の申立てがなされた後、被告人が否認に転じるなどしたために即決裁判手続によらないこととなった場合において、証拠調べが行われることなく公訴が取り消されたときは、公訴取消し後の同一事件についての再起訴の制限の例外として、同一事件について再起訴することができることとするものです。   簡易な自白事件について、即決裁判手続の申立てがなされた後、被告人が否認に転じるなどしたため即決裁判手続によらないこととなった場合につき、検察官が公訴を取り消して、言わば捜査に戻ることができる途を設けることにより、念のための捜査を遂げることなく早期に起訴し、即決裁判手続を活用することに向けた動機付けを検察官に与え、これにより、起訴前の捜査や公判手続の合理化・迅速化を図り、ひいては重大・複雑な事件に人員等の資源をより重点的に投入することを可能にしようとするものです。   資料2の説明は以上です。ただ今の説明について、御質問はございますでしょうか。 ○河津構成員 配布資料3については、改めて御説明があるということでしょうか。今、配布資料2と配布資料3を併せて御説明いただいたという理解でよろしいですか。 ○栗木参事官 配布資料2と配布資料3は、この九つの制度についての説明資料であり、配布資料2が簡潔な内容で、配布資料3が詳しめの内容です。ただ今、配布資料2を御覧いただきながら御説明したのですが、配布資料3の内容にも言及しながらというところでして、配布資料2と配布資料3を併せた説明ということで御理解いただければと存じます。 ○河津構成員 承知いたしました。この配布資料に関して、コメントさせていただきます。配布資料の中で、法制審議会における審議の経過や改正の意義が記載されていますけれども、最も重要な視点が欠落しているように思われます。平成28年改正刑事訴訟法は、衆参両院法務委員会の附帯決議の冒頭で述べられているように、度重なるえん罪事件への反省を踏まえて重ねられた議論に基づくものであったはずです。取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査公判の在り方の見直しが法制審議会に諮問されたのは、従来の刑事司法が取調べ及び供述調書に過度に依存したものであった結果、えん罪事件を作り出してきたという認識に基づくものであり、えん罪事件の再発を防止するために取調べ及び供述調書への依存を見直すことが改正刑訴法の目的であったはずです。本協議会において改正法の運用状況を検証し、更なる法改正を検討するに当たっては、この点に留意する必要があると考えますので、あえて申し上げます。 ○小林構成員 河津先生の御指摘と重なる部分もあるのですが、資料を読ませていただいた印象を申し上げたいと思います。   この法改正の契機となったのは、大阪地検の特捜部における、いわゆる村木さんの事件での不祥事とか、あとは、えん罪事件が相次いで発覚して捜査当局に対する国民の信頼が揺らいだということがあって、その流れでの法制審への諮問であり、特別部会での議論があったと私は理解をしてします。この点が資料に明確に書かれていなくて、ただ単に「時代に即した新たな刑事司法が必要だから取り入れられた」という記述になっているのは、これは概要という意味でまとめられたから入っていないのかもしれませんし、意図的ではないのかもしれませんけれども、フェアではないと感じました。   資料は公開されるものです。法改正の経緯についてはプロの皆さんにとっては言わずもがなで、当然のことかもしれませんが、詳しい経緯を知らずに初めてこの資料を見る国民もいるわけですから、そこはきちんと書いていただいた方がよいと思います。間違ってはいないけれども、正しくないという印象を受けましたので、よろしくお願いいたします。 ○栗木参事官 ほかに何か御発言はございますか。よろしいでしょうか。   続きまして、本協議会の協議の進め方について御説明します。   先ほど御説明したとおり、本協議会は、平成28年改正に係る規定の施行状況をはじめとする実務の運用の状況を共有しながら、刑事手続の在り方について意見交換を行い、制度・運用における検討すべき課題を整理することを目的とするものです。   そういった観点からは、まず、第1段階として、平成28年改正に係る先ほど申し上げた9項目の制度について、項目ごとに、事務当局や構成員の皆様から実務の運用の状況に関する資料を提出することにより、幅広く情報を共有することが適切であると考えております。   その上で、第2段階として、第1段階における実務の運用の状況に関する情報共有を前提に、9項目の制度について、項目ごとに、制度・運用における検討すべき課題につき意見交換を行い、これらを整理することが適切であると考えています。   そして、そのように9項目の制度について第2段階としての意見交換を終えた後に、続けて、附則第9条第3項において検討が求められている項目のうち「再審請求審における証拠の開示」及び「証人等の刑事手続外における保護に係る措置」に関して、制度・運用における検討すべき課題の有無・内容について意見交換を行い、これらを整理することとしてはいかがかと考えています。   なお、協議を行うに当たっては、本協議会の趣旨に照らし、個別の事案における制度の運用の当否等についての議論は行わないこととしたいと考えています。   第1段階・第2段階のそれぞれにおいて、9項目の制度のうちいずれから順に取り上げるかについては、配布資料2に記載された番号順に協議を行うこととし、まずは、取調べの録音・録画制度を取り上げることとしてはいかがかと考えております。   そして、取調べの録音・録画制度について協議を行うに当たっては、協議の対象を明確にし、よりかみ合った協議を行う観点から、捜査段階における検察及び警察の取調べの録音・録画の実施状況と、公判段階における取調べの録音・録画記録媒体による立証の状況の2段階に分け、まずは、第2回会議において、捜査段階における検察及び警察の取調べの録音・録画の実施状況について情報共有及び意見交換をしてはいかがかと考えています。   ただ今申し上げたような進め方について、何か御質問はございますか。 ○河津構成員 協議の進め方について意見を申し上げます。   御承知のとおり、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会においては、刑事手続の専門家以外の一般有識者委員が複数参加し、国民の声を反映するために大きな役割を果たされました。取調べの録音・録画制度については、5人の一般有識者委員が連名で、将来的な全事件の可視化の方向性が明確になることや、一定期間経過後に運用状況の検証を行い、それに基づく見直しを行う手続を具体的に盛り込むことを内容とする意見書を提出しており、これを受けて、見直し規定を設けることを内容に含む要綱骨子が全会一致で取りまとめられたものです。   さらに、令和2年12月に取りまとめられた法務検察行政刷新会議の報告書においても、この3年後検証の場を含む適切な場において、弁護人立会いの是非を含めた刑事司法制度全体の在り方について、社会の変化に留意しつつ、刑事手続の専門家以外の多様な視点も含めた幅広い観点からの検討がなされるよう適切に対応することが求められています。   本協議会においては、改正刑事訴訟法が、取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査公判の在り方の見直し、ひいてはえん罪事件の再発の防止という目的を十分に達成しているかどうかを検証することが求められていますが、その検証に当たっては、改正刑訴法の運用に当たってきた我々刑事手続の専門家よりも、むしろ刑事手続の専門家ではない国民からその評価を受けることが重要なのではないでしょうか。この協議会の構成を見ますと、刑事手続の専門家以外の構成員は小林構成員お一人ですが、特別部会の委員を務めた方を含む一般有識者の追加選任や、運用状況についてその評価を受けるための意見聴取の機会を設けることも必要と考えます。   また、運用状況の検証に当たっては、単に統計的な数値を確認するだけではなく、先ほどもお話がありましたが、具体的な事例を検証して、取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査公判の在り方の見直し、ひいてはえん罪事件の再発の防止という目的を十分に達成しているかどうかを検証することが必要です。   そのためには、例えば、検察改革の一環として最高検察庁に設置された監察指導部には、不適正な取調べ等について提供された具体的な情報が蓄積されているはずであり、その情報は、改正刑事訴訟法の運用状況の検証に極めて有用なものですから、この協議会に資料として御提供いただきたいと思います。   また、取調べの実態を客観的に記録した資料である記録媒体の視聴や、取調べを受けた市民からのヒアリングなども、取調べへの依存の見直しが達成されているかどうかを検証する上で、実施する必要があると考えます。日本弁護士連合会においても、改正刑訴法の施行状況に関する事例の収集などを実施しており、第1段階の運用状況の共有、第2段階の、それを踏まえた法改正の検討のそれぞれの場面で、資料の提供をしたいと考えています。   最後に、検討項目については、改正刑事訴訟法の9項目、附則第9条第3項に掲げられている事項のほか、先ほど述べた法務検察行政刷新会議の報告書でも言及されている、取調べへの弁護人の立会いも、取調べに依存した捜査公判の見直しとの関係で、検討対象になるものと理解しています。 ○栗木参事官 構成員の選定の御指摘などがありましたので、その選定について事務当局から補足で御説明申し上げますと、今回の協議会は、私からも、また、冒頭の刑事局長の挨拶でも申し上げたとおり、今回、刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第9条によって法務省が行う検討に資するため、同法による改正後の規定の施行状況をはじめとする実務の運用状況を共有しながら意見交換を行って、制度・運用における検討すべき課題を整理するためというものでして、その趣旨に鑑みて、多角的な視点を踏まえた協議を行うため、様々な専門的立場に応じた御経験・御知見に基づく御意見を頂くことが必要ということで、皆様に御参加いただいたという経緯がございます。   今申し上げた協議会の趣旨に鑑み、本協議会には、刑事法の運用状況や解釈、理論的分析等に関する優れた御知見をお持ちの構成員の皆様に御参加いただいているところでして、まずは、構成員の皆様に、様々な観点から御意見を頂くことで、充実した御議論を頂くことができるものと考えております。   その上で、構成員以外の方からのヒアリングといった提案につきましては、構成員の皆様の御意見を伺いながら事務当局として判断したいと思いますが、その要否に関しては、具体的に、どの検討項目のいかなる点について、どういった御知見をお持ちの方からの御意見を頂くことが必要なのか、他の方法によって対処することは考えられないかなどの観点からの検討が必要と考えているところです。   それから、検討項目についても御指摘を頂きました。事務当局としましては、本協議会において、刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第9条第1項から第3項までに明示されている事項を取り上げることとしており、それらの項目の検討を進める中で、御指摘の弁護人の立会いの制度についても関連するということになれば、それは協議の対象となり得ると考えています。   また、資料につきましては、検討項目との関係を踏まえ、構成員の皆様の御意見を伺いながら検討していくことになるものの、構成員の皆様から御提出いただくことは可能と考えています。   事務当局から補足で御説明差し上げましたが、この関係で、何か御意見、御発言がありましたら、よろしくお願いいたします。 ○吉田構成員 先ほどの河津構成員の御意見について、幾つか気になる点がありましたので、申し上げておきたいと思います。   まず、この協議会の位置付けを考えますと、平成28年改正で導入されたものも含めて、刑事手続の実情を把握して、その中に改めるべき点があるのかどうか、また、あるとするとどういうものなのかを精査していくのが第一次的にやるべきことなのではないかと考えております。   そうであるとすると、刑事手続の実情を把握している、その実務に携わっている方や、小林構成員のようにマスコミの視点から刑事手続をよく御覧になってきた方が、それぞれの知見をいかして刑事手続の現在の姿を正しく把握し、それを評価することがまずもって大事なのではないかと考えております。   専門家以外の方の御意見というのももちろん重要ではあるのですが、まずは、実際に刑事手続を見ている立場から、その問題点をあぶり出していくとことが適切ではないかと考えておりまして、専門家以外の方の意見を聴くことをもちろん否定するわけではないのですが、実際にこの場でそれを行うのかどうか、あるいはどう行うのかということは、よく考えた方がいいのかなと考えております。   それから、資料として、統計以外のもの、具体的な個別の事例に関するものをこの場に提示して議論するということは、あってしかるべきだと考えております。ただ、個別の事例の扱い方については、少し考えながら進めていった方がいいと思っておりまして、例えば、裁判所の訴訟指揮に関わることそのものの当否を議論するということになりますと、そもそも、個別の事案は、細かな事実関係の上に成り立っていますので、その当否自体を正しく判断できるのかという問題もありますし、また、個別の裁判体の判断の当否に行政サイドから評価を加えることになりますので、個別の事例の扱い方については、慎重に考えていく必要があると思います。   それから、先ほど録音・録画記録媒体の視聴という話も出てまいりましたが、どれを選ぶのかというようなことも含めて考え出すと、いろいろと難しい問題があるように思いますので、協議会の場で、構成員の皆さんと共に議論しながら決めていくべきではないかと考えています。   最後に、検討項目について、弁護人の取調べへの立会いの制度が先ほど指摘に挙がりましたが、平成28年改正で既に取調べの録音・録画制度が導入されているわけで、もしそれで足りないということが確認されるのであれば、更なる手段としてそのようなことを議論することもあり得るのかもしれませんが、逆に、録音・録画制度によって、弁護人の立会い制度の目的とするところが既に相当程度達成されているということがもし確認されるのであれば、制度の必要性自体に疑問が生じ、その前提部分が成り立つのかということにもなってきますので、まずは附則の第9条第1項・第2項に基づく検討を先に行い、現在の刑事手続の実情を把握した上で、なお立会い制度について議論する必要があるのかを考えるのが適切なのではないかと考えています。 ○栗木参事官 進め方について、御意見などはほかにございますか。 ○小林構成員 質問なのですが、附則第9条第3項の9項目のこととは少し離れてしまうのですけれども、再審の証拠開示のあたりは、順番としてはどのように議論をされるお考えでしょうか。 ○栗木参事官 まずは、平成28年の刑事訴訟法の改正で導入された9項目について、これを一体のものとして、それぞれ順番に運用状況を把握し、その上で、第2段階として、制度運用上の課題を整理するために協議いただき、その後で、附則第9条第3項の再審請求審における証拠の開示についても協議いただくという形でいかがかなと考えています。 ○小林構成員 ありがとうございます。そうすると、二巡した後、最後にということだと思うのですが、この問題については、国民の関心が非常に高いと思っております。当事者の方が高齢化していることもありますし、検討のスピードアップと併せて、最後にちょっとやりましたという形ではなくて、9項目について一巡目の協議が終わった後、二巡目に入る前に入れていただいて、このテーマについてもきちんと二回議論するということはできないのかなと思いますが、いかがでしょうか。 ○栗木参事官 第1段階で運用の状況の共有と申し上げたのは、第2段階では、これを前提として意見交換を行うことを考えていることが理由なのですが、9項目は一体として整備されたものということもありますので、第1段階に続けて第2段階の検討を行い、そして、それを終えた後に再審請求審における証拠の開示について協議するという流れの方が、協議の進め方として合理的、効率的かなと考えています。9項目の制度について第1段階の協議を行うだけでも相応の時間が掛かることが予想されるのですけれども、第1段階の運用状況の共有の後に、再審請求審における証拠の開示について協議するということになると、9項目についての第1段階の協議と、第2段階の協議との間にまた時間が経過してしまい、運用状況の共有を前提とした第2段階の協議という観点からしますと、時間が開いてしまうのもどうなのかというところがあるものですから、まずは、一体として整備された9項目について検討を進めてはいかがかなということで、御提案したものです。   何かこの関係で、御質問、御意見はございますか。第2回会議以降は、9項目の運用状況の把握から入らせていただくということで、よろしいでしょうか。順番につきましても、配布資料2の順番どおり、具体的には、取調べの録音・録画制度からと考えているのですが、そちらについてもよろしいでしょうか。 ○河津構成員 先ほどの吉田構成員の御発言について、この協議会においては運用の実情をまず把握し、改める点があるか精査するという点を含めて、大きな異論はございません。ただ、この改正刑事訴訟法の運用の実情を把握するに当たって、被疑者・被告人も、この改正法の運用を体験した当事者であり、被疑者・被告人でなければ語ることのできない体験もあるのだろうと思います。そういう意味で、改正法の運用の実情を把握するに当たって、被疑者・被告人という立場でこの制度に関わった国民の声を何らかの形で把握する工夫をする必要があるのではないかと考えております。さらに、それを前提として改める点があるかどうかを精査するに当たっても、刑事手続の専門家だけではなく、国民の声を聴いて、その意見を反映することが極めて重要と考えられますので、この点を改めて強調させていただきます。 ○小林構成員 改めるべき点があるかどうかの検証という意味で言うと、やはりその組織の中にいる人や、プロの先生たちは、実態をよく御存じであるが故に、「分かる、分かる」「そういうものだよね、やむを得ないよね」というふうに流れがちかなとも思います。どの段階で誰にというのは、また皆さんと御相談しながらということになると思いますが、先ほど刑事局長がおっしゃった、様々な立場の方の意見をというのは、可能な限り、プロ以外の方が刑事司法をどういうふうに見ているのかという視点を取り入れるべきではないかと思っています。   検討に当たっては、個別の事件に入るのはなかなか難しいという御意見もあって、それもまた一理あるとは思うのですけれども、やはりデータや数字だけでは見えない実態もあろうかと思いますし、0.何%の中に何か大きな問題があるかもしれないということを考えると、当事者のヒアリングは是非お願いしたいです。あと、法制審議会の特別部会の中でも本当に激論が交わされて、録音・録画によって真相解明機能が低下するという捜査当局の方の御懸念もあったと思います。そういうものは、数字ではすごく測りづらいのだろうと思うのですけれども、この3年間やってみてどうだったのか、データだけでは見えない実情をどういうふうに把握し、検証できるのかということは、考えなくてはいけないと思っています。一回データを示していただいて、皆さんどうですかと言われて議論しただけで、それで実情把握が終わりました、では次、というのでは不十分ではないかなと思っているところです。 ○吉田構成員 今、小林構成員がおっしゃったように、データだけで測れないものがあるというのは、そのとおりだろうと思っております。正にそういう観点から、この場には現場で実際に捜査・公判を見ている構成員の方も複数名参加されていますので、そういう方の知見をこの場で披瀝していただくというのが検討には非常に有益なのではないかと考えています。   他方で、一般の方の意見を聴くか、あるいはどのような形で聴くかというのは、今この場で決め切らなくてもいいのかなと思っていまして、今後の議論の推移を見ながら、またそれぞれ御意見があろうかと思いますので、皆さんの意見を踏まえながら決めていくという形でよろしいのではないかと私自身は考えています。 ○栗木参事官 ほかに御意見はよろしいでしょうか。それでは、今後まだ決めていくこともあるかとは存じますが、ひとまず9項目について、第1段階として運用の状況を共有するということで、第2回会議以降は皆様方に資料を御提示して意見交換を行うこととさせていただきたいと思います。   先ほど申し上げたとおり、第2回会議におきましては、捜査段階における検察及び警察の取調べの録音・録画の実施状況についての情報共有と意見交換ということにさせていただきたいと存じますが、その点はよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきたいと思います。   本日予定しておりました議事については、これで終了いたしました。   本日の会議の議事につきましては、特に公開に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので、発言者名を明らかにした議事録を作成して公開することとさせていただきたいと思います。また、配布資料についても公開することとしたいと思いますが、そのような取扱いでよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。   第2回会議の予定については、おってお知らせすることとさせていただきます。   それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。 −了−