法制審議会 家族法制部会 第16回会議 議事録 第1 日 時  令和4年6月21日(火)  自 午後1時30分                       至 午後5時32分 第2 場 所  法務省共用会議室6・7 第3 議 題  家族法制の見直しに関する中間試案の取りまとめに向けた議論 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会家族法制部会の第16回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。本日も前回までと同様、ウェブ会議の方法を併用した開催となりますけれども、よろしくお願いを申し上げます。   それでは、まず、本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局の方から説明をお願いいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。今回は、事務当局から3種類の資料をお配りさせていただきました。このうちの部会資料16−1が、今後の部会における御議論の対象となる中間試案のたたき台でございます。第1から第9までの項目を挙げておりますけれども、このうちの第6から第8までの部分については、次回会議に間に合うように御準備させていただきたいと考えております。   部会資料16−2は、部会資料用16−1の内容についての補足説明を、事務当局において作成したものです。この資料のうち、明朝体で記載されている部分は、部会における取りまとめの対象となるものではなく、飽くまでも部会資料16−1について御議論いただくための参考としていただく趣旨で作成した補足説明でございます。   また、参考資料として1枚ものの中間試案の取りまとめに向けた補足的な説明資料をお配りさせていただきました。今回の会議から、中間試案の取りまとめに向けた御議論をお願いすることになりますが、その際に、改めて中間試案の位置付けや記載ぶり等を補足的に御説明するものです。ここに書いておりますとおり、中間試案の取りまとめの際には、そこに示された規律や考え方、それ自体についての当否を取りまとめるのではございません。そのため、中間試案に特定の改正提案が掲げられることになったとしても、部会の中でのコンセンサスとされたとか、多数派の意見であるということを意味するものでもありません。また、ある論点について複数の考え方が併記されているものについても、本文と(注)の関係や甲案と乙案の関係に一定の優劣があるわけでもありません。こういった点に御留意いただきつつ、国民一般の方々の御意見をお聞きするのに適した中間試案をおまとめいただきたいと考えております。   資料の説明は以上になります。   今回もウェブ会議を併用していることから、御発言に当たっては、冒頭でお名乗りいただきますようお願いいたします。   以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。資料の方、御確認いただきたいと思います。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。ただいま事務当局から御説明がありましたように、本日から中間試案の取りまとめに向けた議論に入ることになります。そこで、まず最初に、事務当局の方から、部会資料の内容につきまして簡単に説明をお願いいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。この部会における取りまとめの対象となるのは、先ほど御説明させていただきましたように、部会資料のうち、ゴシック体で記載された部分ということになりますので、部会資料16−1に沿って御説明いたします。少し長くなりますけれども、全体を御説明させていただければと思います。   まず、部会資料用16−1には、第1の前に(前注)を付けております。この部会では、これまで現行民法の「親権」という用語の見直しについても御議論いただいておりましたが、今回の資料のゴシック体では、差し当たり現行の民法の表現を用いることとしました。その上で、親権等の用語について、より適切な表現があれば、その用語の見直しも含めて検討すべきではないかとの御指摘があろうかと思いますので、パブリックコメントの手続において、この点の意見も集約することができるように、(前注)という形で触れさせていただきました。   続きまして、部会資料16−1の第1では、親子関係そのものから生じる基本的な権利義務関係についての規律を取り上げております。第1の1では、親が親権その他の権利義務を行う場合や子の監護をする場合には、子の最善の利益を考慮すべきであるとの考え方を明確化する観点から、一定の規律を設けることを提示しております。なお、このような親子関係そのものから生じる権利義務や法的地位を表す適切な用語を検討すべきであるとの考え方を(注1)に記載しておりまして、また、(注2)には、子の最善の利益を考慮するに当たって、子の意見等を把握しなければならないことなどの考え方を示しています。   次に、第1の2では、未成年の子に対する親の扶養義務を取り上げており、(1)の本文では、未成年の子に対する親の扶養義務の程度が、いわゆる生活保持義務であるとする現行の解釈を明確化するなどの観点から、一定の規律を設けるものとするものを提示しております。(2)では、これまでの部会で意見が分かれた成年に達した子に対する親の扶養義務の程度について取り上げており、甲案では、一定の場合に親が子に対して相当の期間は引き続き生活保持義務を負うとする考え方を、乙案では、成年に達した子に対する扶養義務の程度を、一律に生活補助義務とする考え方をそれぞれ提示しております。また、このような扶養義務の程度については、特段の規律を設けるのではなく、引き続き解釈に委ねるものとする考え方もあろうかと思いますので、この点を(注2)で記載しております。なお、甲案を採用する場合には、親が生活保持義務を負うための要件や、その期間などを更に検討する必要があろうかと思いますので、この点を(注3)や(注4)に記載しております。   今回の資料では、差し当たり、これらも一応ゴシック体の部分に記載しておりますが、このような今後の検討課題の説明は、本来補足説明に書くべきなのかもしれません。本日の御議論を踏まえて、このような要件や期間についての考え方をより具体化することができるようであれば、今後の資料に反映していきたいと思います。また、このような(注)書きをゴシック部分に維持するかどうかも含め、本日の御議論を踏まえて、引き続き検討させていただきたいと考えております。   続きまして、部会資料第2、第3でございます。部会資料第2の1では、子の監護をすべき者が定められた場合の親権者と監護者の権利義務の内容を取り上げております。親権や監護権の概念について、この部会のこれまでの会議において、現行の民法の解釈を分析しつつ、様々な角度からの御議論を頂きました。その内容は、今回部会資料16−2の6ページから8ページで改めて整理させていただいたところでして、例えば、民法820条から823条までに規定された身上監護に関する権利義務は監護者に帰属する一方で、民法824条に規定された財産管理権や法定代理権等については親権者に帰属するとの整理をすることができ、伝統的にはこのような解釈がされてきたところかと理解しております。また、こういった整理に対しては、解釈として、又は立法論として、例えば、身上監護に関する事項であっても、一定の事項が親権者に留保されると考えるべきではないかとの指摘や、財産管理に関する事項であっても、日常のささいなものについては監護者に帰属させるべきではないかなどの御意見もあったかと思います。   その上で、今後の検討の方針としては、これまでの部会で分析したところに基づき、現行の民法の解釈を明確化する趣旨の規律を設けるという選択肢のほか、現行の民法の規定を改め、現行の民法の解釈とは異なる内容の規律を設けるという選択肢や、この問題に関する現行の民法第766条第4項の規律を維持した上で、親権者と監護者の権利義務の内容については、引き続き解釈に委ねるという選択肢があり得るかと思います。このうち、明文の規定を設けるという方針は、規律の内容が一定程度明確となるというメリットはありますけれども、他方で、部会のこれまでの議論や意見の対立状況を踏まえますと、果たして本当にこの問題について、十分に明確で具体性のある規律を提示することができるのかといった悩みもございます。   そこで、今回の会議で事務当局からお示しすることができる中間試案のたたき台としては、差し当たり、現行の民法第766条第4項等の規律を維持した上で、親権者と監護者の権利義務の内容については、現行の民法と同様に、引き続き、原則として解釈に委ねるという方向を提示しております。今、原則としてと申し上げましたのは、この問題に関する規律の明確化の道を完全に閉ざすわけではないという趣旨でして、例えば、現行の民法の規律が不明確であるために、実務上支障が生じているといった事情があり、かつ、この部会における御議論を踏まえて、一定の具体性のある規律が提示できるようであれば、そういった個別的な問題に対応するための規律の整備の余地を排除しないという趣旨でございます。   部会資料第2の2では、現に子を監護する者の権利義務を取り上げておりますが、この点についても、第2の1と同様に明文の規律を設けた方がよいのか、それとも、解釈に委ねた方が個別具体的な事案に即して柔軟に対応することができるのか、様々な御意見があろうかと思います。   続いて、第3では、父母の離婚後等の親権者に関する規律の見直しを取り上げており、その1では、離婚後の父母の双方が親権者となることを許容していない現行の民法第819条の見直しの要否を取り上げております。その上で、2では、父母の双方を親権者とすることを原則とする甲の@案と、その一方のみを親権者とすることを原則とする甲のA案を挙げており、3では、離婚後の父母双方が親権者となった場合の親権等の行使方法や意見対立の調整方法を取り上げています。   父母の離婚後の親権者の定めについては、この部会の中でもこれまで様々な御意見の対立がございました。その議論の対立は、ごく大ざっぱに申し上げれば、一方では、父母の離婚後もその双方が子の養育に責任を負うべきであり、親権を行使するに当たっては、父母双方が熟慮の上でその決定をした方が、子の最善の利益につながるといった価値観、甲案の根拠となる価値観と、他方では、離婚後の父母双方が親権者となると、親権行使に関する意思決定を適時に行うことができないという弊害を踏まえ、父母の一方に親権を独占させた方が子の監護、養育は安定的に行われ、子の最善の利益につながるという価値観、乙案の根拠となる価値観が対立しているように思います。また、父母の離婚時にDVや虐待が継続するのではないかといった懸念を示す御意見もあったかと思います。   しかし、これまでの部会の御議論でも明らかになりましたように、この問題を論じるに当たっては、父母の双方が親権者となった方がよいか、一方のみが親権者となった方がよいかといったことを、単純な二者択一で議論するのではなく、離婚等をめぐる事情がそれぞれの家庭によって多種多様であることを踏まえ、様々な角度からこの問題にアプローチしていく必要があろうかと思います。   また、第3の1、2、3はそれぞれ関連し合う論点ですので、相互に関連付けで御議論いただくことが有益かと思います。そういった考えから、今回お示しした部会資料のゴシック体の部分では、各論点について様々な選択肢を提示するとともに、その補足説明の中で各選択肢の根拠となり得る考え方の一例を整理してみたつもりです。本日の会議で御意見を頂く際には、各個別の論点項目についての各論的な御意見に加えて、各個別の論点項目でお示しした選択肢、甲@、甲A、A、B、C、α、β、γ、X、Yなどをどのように組み合わせていくべきかなどについても、御意見を頂けると有益であろうかと思います。   ところで、離婚後の父母の双方が親権を有する場面での親権行使の方法は、その一方が監護者に定められている場合とそうでない場面で異なろうかと考えます。第3の3(2)は、このうちの監護者の指定がある場合を想定しておりまして、この場合は、監護権は監護者が単独で行使する一方で、監護権以外の親権、例えば、重要な財産についての財産管理権や法定代理権といったものを行使する場面では、父母双方が関与することになろうかと思います。今回お示しした資料では、監護者でない親権者の関与の度合いに応じて、幾つかの選択肢を整理し、言わば弱い規律であるα案、中間的な規律であるβ案、強い規律であるγ案を提示しております。このほか、(注3)や(注4)に父母間の意見対立を調整する仕組みなどについて、あり得る選択肢の一例を示しているところでございます。   また、監護者の定めがない場面では、親権を有する父母双方が婚姻中と同様に身上監護権及び財産管理権の双方を共同して行うことが考えられます。このような場面でも、父母間の意見対立が生じた場合の調整の仕組みについて検討する必要があろうかと思います。さらに、第3の3(4)では、子の居所指定に関する規律を取り上げています。子の居所指定に関する事項は、身上監護権に含まれると整理する考え方を前提とすれば、X案に記載したとおり、監護者が単独で居所の指定又は変更をするという考え方に結び付きそうですが、この部会のこれまでの御議論の中でも、居所指定については、これと別の検討も必要ではないかとの御指摘がありました。そこで、Y案として、父母双方が子の居所指定に関与する仕組みを提示しております。   なお、離婚後の父母双方が親権者となる規律は、いわゆる離婚後共同親権などと呼ばれて議論されることがあると承知しておりますが、父母双方が親権者となる場合の規律の在り方は、様々な選択肢があり得るところです。例えば、甲の@案を採用した上で、B案とγ案を組み合わせた規律を構想すると、離婚後の父母による親権行使は、婚姻中とほとんど変わらないような形にもなり得ますし、他方で、甲のA案を採用した上で、A案とα案を組み合わせますと、乙案にかなり近い形にもなり得る可能性があります。これらの幅広い選択肢の中で、共同親権という用語がどのようなものを指すのかが、一概に明らかでない場合がありますので、議論の混乱を避けるためにも、事務当局がお示ししている資料には、共同親権や単独親権といった言葉は極力使用しないようにしております。   また、従前の部会での検討のアプローチと異なるという御意見もあるかもしれませんが、先ほどの第2のところでも触れましたように、これまで個々の論点に分解して、この部会において分析的に検討いただいた内容を踏まえて、中間試案としてお示しするに当たり、どのように整理したらよいかという観点から、今回の形でお示しをさせていただいているものと御理解いただければと思います。   続きまして、第4、第5について御説明いたします。   部会資料の第4では、父母の離婚後の子の監護に関する事項の定め等に関する規律の見直しを取り上げております。1では、いわゆる離婚後養育講座の受講を義務付けることや、それを離婚の要件とする考え方を提示しております。ここにも(注)で、引き続き検討すべき事項の例を記載しておりますが、こういった事項を(注)に書くか、それとも補足説明で触れるかについては、ここで具体的な規律を提示することができるかなどの観点から検討する必要があろうかと思います。   2では、子の監護について必要な事項の定めを取り上げており、(1)ではその取決めを促進するための規律、(2)では、その取決めの実効性を向上させるための規律を取り上げています。甲案は、裁判手続によらずに債務名義を作成することの可否を念頭に置いた提案でして、乙案は先取特権の付与による実効性向上を提示するものです。従前、甲案に関して、法律家の関与による債務名義の作成という点についても、様々な御意見をいただいておりましたけれども、この部会でも御議論いただきましたが、新たな債務名義の類型を作るということはなかなか難しいのではないかということも踏まえて、具体的な内容は(注)に記載させていただくとともに、以前の部会でも御意見が出されました先取特権を付与する案も、乙案として提示させていただきました。   なお、合意の重要性については別の項目でも御議論いただいておりますとおりでして、そこに弁護士等の法律家が関与し、適切に紛争解決をしていただくことの重要性は、この部会でも否定されていないと思います。そのため、まず、実務上の取組として、こちらの部会資料には記載してございませんが、法務省の行ったモデル事業に係る調査研究を踏まえ、厚労省で行っておられる各種事業への協力依頼を、法務省と厚生労働省の連名で日弁連に対してさせていただいたところでございます。   なお、部会のこれまでの議論では、養育費等に関する裁判手続をより利用しやすくするための方策についても触れてきましたが、このような裁判手続に関する規律は、今回の資料ではPとしています第6の中で取り上げたいと考えております。   また、様々な事情により父母間の協議により養育費の取決めをすることができない事案に対応するため、2の(3)では、法定養育費制度を新設することを提示しております。第4の2の部分は、いまだ検討すべき課題も多いかと思いますし、実質的な要件などが(注)で記載されている部分もございます。本日の御議論を踏まえ、本文に記載することができる程度に具体的な規律を検討することができそうであれば、これらの(注)に記載されたものを本文に記載することもあり得ようかと思います。   第4の3は、民法第766条が婚姻中の父母が別居した場面でも類推適用される場合があるという現在の解釈や、裁判実務を明確化することを提示しています。なお、ここでも更に検討すべき抽象的な課題を(注)で記載しております。   第4の4は、家庭裁判所が監護者や面会交流の定めをする際の考慮要素について取り上げております。家庭裁判所がこれらの定めをする場合に、子の利益を考慮しなければならないことは、現行の民法第766条においても規律されているところですが、この試案は、その考慮要素を明確化することを提示するものです。その上で、考慮要素の例を(注)に記載してございます。   部会資料の第5は、父母以外の第三者が監護者となることの可否や、第三者と子との面会交流の定めの可否について取り上げております。その上で、(注)では、そのような第三者が家庭裁判所に対して監護者指定や面会交流の審判の申立てをすることができるかどうかなどの論点について取り上げております。   長くなりましたが、以上になります。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ただいま、事務当局から部会資料16−1などにつきまして説明がありましたけれども、本日は部会資料16−1を二つに分けまして、すなわち、まず第1から第3まで、そして第4と第5という順で、御議論を頂きたいと思っております。   まず、第1から第3の方の意見交換に入りたいと思いますけれども、それに先立ちまして、皆様にお願いかたがた、事務局の説明を聞いた私の所感を、簡単に述べさせていただきたいと思います。   一つは、議論の進め方についてでございます。従前、中間試案の取りまとめに向けて、これまでなお十分に意見を表明することができなかった点についての御発言を伺うこともあるべしと申し上げてきました。そのような心づもりには変わりありませんが、中間試案をまとめるという観点から、具体的な項目についてどのようにするのがよいのかという形で御発言を頂けますと、大変幸いに存じます。   もう一つは、資料の作り方についてでございます。先ほど事務当局の方から御説明がありましたけれども、特に資料の第3の部分が、様々なものを含んでかなりの分量になっております。この部分の資料の作り方ですが、最初は、離婚等の場合において、父母双方を親権者とすることの可否という点から入りまして、だんだんと細かい問題に進むという形になっております。この部会での議論は、従来は個別の問題についての議論を積み重ねるということでやってまいりましたけれども、法改正に向けて案を取りまとめるということになりますと、書き方としてはこのような書き方になってまいります。中身については、先ほども御説明がありましたけれども、様々な案があり得るところです。それを法改正に向けて整理したために、このような形になっていると受け止めていただき、御議論をお願いできますと幸いでございます。   それでは、議論に入りたいと思いますが、繰り返しになりますけれども、パブリックコメントで国民の意見を聞く中間試案として、どのようなものがよいかということで取りまとめてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。   4時ぐらいまで第1から第3までについての意見交換を行いまして、その後、残りの時間で第4、第5に進むということを、一応想定しております。休憩は、4時頃を予定していますが、できればその前にもう一度ぐらい入れたいと思っております。   前置きが長くなりましたけれども、資料のうちのまず第1から第3までにつきまして、御意見を頂きたいと思います。御発言のある方は、どうぞ。 ○池田委員 弁護士の池田でございます。それでは、第1の1から意見申し上げたいと思います。   ここで、私、(注2)に書いてある子の意見又は心情の尊重というところは重要と考えております。確かに、親子の間の実体的規律の中で、意見聴取するといった手続的な規律を入れ込むということについての違和感というのはあるところです。ですから、例えば、意思や心情の把握や聴取といった点は親子のやり取りに任せるとして、表明された意思があれば尊重しなければならないという規律を設けることはできるのではないかと思います。具体的な書き方としましては、第1の1の子の最善の利益を考慮という前に、例えば、「子の意見又は心情を、その年齢や発達の程度に応じて尊重しつつ」などと入れてはどうかと思います。以上が、第1の1についての意見です。   それから、第2の1についてです。この点は、補足説明を拝見しますと、二つほど考え方が具体例として示されていましたが、親権のうち、身上監護権が全て監護者に帰属し、残った財産管理権は親権者に残るという伝統的な考え方と、それから、重要事項は親権者に決定権があり、日常的な事項は監護者に決定権があるという、二読で提案された考え方があると思います。あるいは、補足説明にはありませんでしたが、監護者が身上監護権を有するけれども、日常的事項については財産管理権まで有するという考え方も、理論的にはあるかなと思います。仮に、監護者が身上監護権全部を持ちますという伝統的考え方によりますと、親権者に残るのは財産管理権となります。そうすると、この第3の論点に関係してきますけれども、双方関与といったときのその対象は、財産管理になってくるだろうと思うんですね。つまり、財産管理について双方関与するということになってくるのかなと思います。ただ、これまで双方関与について議論をしてきましたのは、主として身上監護についてであったと理解していますので、これまでの議論と方向性がかなり変わってくるのではないかと思います。   こういうふうに親権者と監護者の権利義務関係の整理の仕方によっては、この後の議論の中身が随分異なってくるのではないかと思います。そういうことを、国民が理解した上で議論を進められるというのが望ましいのではないかと思いますので、親権者と監護者の権利義務関係については、幾つかの考え方を本文中で示して、いずれがよいのかという提案をすることも考えられるのではないかと思います。仮に、今挙げられている解釈に任せるという案も、もちろん選択肢の一つとして挙げていくというのもよいかと思っています。以上が第2の1についてです。   ちょっと長くなって申し訳ありません、第3の1、2の辺りについて申し上げたいと思います。第3の1の具体的規律は、第3の2で双方親権を原則とするか、単独親権を原則とするかによって変わってくるのではないかと思います。例えば、現在の第3の1の(3)では、親権は何もなければ母が行うとなっていますし、(4)は、やはり母が原則として行うというように読むのが素直かなと思います。そうすると、第3の2の議論を先取りしているのではないかとも思われますので、そこの整合性をちょっと保ったような書き方も必要かなと思いました。例えば、第3の2の甲@、甲A案のところの認知の場合というのは、もう既に1の(4)で結論が示されているとすれば、2の甲@、甲Aのところから認知の場合というのは除いてもいいのではないかと思います。   次に、第3の3について申し上げます。第3の3の(1)についてですけれども、ここで、監護者指定の要否の論点が挙げられています。確かに資料12における双方が親権を持つ場合に、必ず一方を監護者に指定するという提案に対しては、双方が監護者となる選択肢を排除すべきでないという御意見があったことは承知しています。ただ、従来、離婚後双方関与の議論をしていたのは、現実の監護を共にするかどうかというのではなくて、飽くまで決定の場面の双方関与であり、そのことが、資料でも明示的に示されてきたように思います。そのような経緯を考えますと、中間試案で現実の監護を共同するという考え方を組み込んで、3の(1)でA、B、Cと書かれていますけれども、ちょっと唐突な印象を受けました。ここは、監護権を双方が持ち得るということは、外出しの案として、例えば、双方が親権を有する場合に、必ず一方を監護者と定めなければならないとするのか、それとも、監護者を定めることを必要としないとするのか、二つの考え方があるけれども、どうかという趣旨の問いの立て方ということが考えられるのではないかと思います。   ちょっと長くなりましたが、以上でございます。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは4点、具体的な御提案を頂いたと理解をいたしました。   第1の1、子の最善の利益の前に、子の意見や心情に関する文言を織り込んだ方がいいのではないかという御提案、それから、第2の1について、整理の仕方によってはその後の部分に影響も生ずるので、考え方を本文に列挙した方がいいのではないかという御意見、3番目に、第3の1と2の説明が整合しているかどうか、チェックをする必要があるのではないかという御指摘、最後に4番目が、第3の3で、共同監護がこのような形で本文に出てくるのはやや唐突なので、その扱いを変えるということも検討すべきではないかという御意見、この4点だったかと思います。ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○窪田委員 今の池田委員の御発言とも重なる部分があるかと思うのですが、第2の部分について、私自身はちょっと居心地が悪いなと感じております。というのは、第2の1のところで、親権者と監護者の関係について、現行民法の766条4項等の規律を維持すると、ここで言ってしまっているのですが、この問題は、基本的に離婚した場合にどういうふうな関係になるのかということに関して、現行では単独親権であり、単独親権者以外に監護者を定めるということを前提となっている規定なのですが、第3の議論を踏まえた上で、それが本当に維持されるのか、つまり、2人ともが、双方が親権を有するとした上で、監護者を定めた場合はどうなるのかということを規定するという可能性があるときに、766条をそのまま、取りあえず維持しましょうとなるのかというと、それ自体も見直しの可能性があるのではないかと思います。今のことと同じことになると思うのですが、共に親権を持つという場合の監護権者との関係というのも、多分、一方を親権者と定めて、他方を監護者と定めるという場合にも、関係してこざるを得ないのだろうと思います。その点では、少なくとも第3の議論を踏まえた上で、それと平仄が合うような形で、第2の1の部分を規定しないといけないのだろうと思います。その点で、ここで766条4項は取りあえず維持しましょうというのは避けた方がいいだろうなと感じております。   もう一つは、やはり第2の2の部分なのですが、現に子を監護する者についても、これは多分、親権者、監護者の定めをするような場合、あるいは、一方のみが親権者の場合であったとしても、離婚後、補足説明の方では面会交流のような場面を想定しながらということがあったのですが、これらの問題も、恐らく第3の枠組みの中で扱わざるを得ないのではないかなという気がしています。したがって、中に書いてあることがどうかということよりは、少なくとも扱う部分について、もう少し整理していただく方がいいのではないかと感じております。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほど池田委員から、第2の部分は、第3以降に影響を与えるのではないかという御指摘ありましたが、窪田委員からは、第3を議論した結果として、逆に第2の方が変わるということがあるのではないか、そのようになり得るということを織り込んだ形で書いておく必要があるのではないかという御指摘を頂いたと理解をいたしました。ありがとうございます。   そのほか、いかがでございましょうか。 ○原田委員 私も今、池田委員や窪田委員がおっしゃったようなことと近いんですが、やはり第2の解釈に委ねるとした場合、これは、法律家だけではなくて一般の方が意見を出すとしたら、先ほど事務局で御説明がありましたように、伝統的な考え方になったらどうなるのかということと、それとの不都合でこうした方がいいという意見があるということを、きちんと明示した方がいいのではないかと思います。   それから、そういう意味では、従来、前から意見が出ましたけれども、単に親権というのではなく、例えば、ここで説明されたように、監護権と財産管理権と、監護権というのは身上監護ですね、と法定代理権というような形で明確にした方が分かりやすいのではないかと思います。   それから、16−1の3ページの(注1)とか5ページの(注1)のところで、親権や監護権の内容を当事者が決められるような規定、考え方が示されているように思うんですが、これはどういう場面を想定しているのでしょうか。現実に仲の良い元夫婦が何かを決める場合に、共同してできますよという事実上の問題であれば問題ないんですけれども、法律に定めるということになると、協議できない場合にどちらに決定権を与えるのかという場面の問題になりますので、親権や監護権の内容を当事者が勝手に決めていいということになると、公示の問題とか、特に財産権の行使や医療同意、最近ちょっと聞いたんですけれども、コロナワクチンを接種するのに親の同意書が取られるということがありますけれども、それに権限があるかとかいうふうに、相手は調べなければならないということになるので、このような意見があるとしても、これを選択肢として示すことはいかがなものかと思います。ここはもう混乱を招くだけではないかと思いまして、(注)からも外していいのではないかと、私は思います。   それと関係で、先ほど言いましたけれども、こうなった場合に、公示といいますか、共同となった場合にほかの人はどうやって知ることができるのかについては、全く触れられていないので、そうなった場合に、現実にはどうなるのかという疑問が起こるのではないか、それについても示した方がいいのではないかと思います。   それから、16−1の3ページで、第3の2の親権者の選択の要件なんですけれども、これは、先ほど池田委員がおっしゃったとおり。   それから、4ページの父母双方が親権を有する際の親権、監護権の行使というところで、ここでは、甲@、共同で親権を行使する場合ということが前提として書かれていますけれども、理論的には、単独の親権でも、監護権は共同して行うということもあり得るので、ここで、共同で行う場合と限定する必要はないのではないかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。原田委員からは3点御意見を頂きましたけれども、最初は、直前の2人の方々から御指摘があった点で、第2について、現在どういうことになっているのか、ある考え方を採るとどうなるのかということを示した上で、国民の意見を聞いた方がいいのではないかという御指摘。あわせて、親権という言葉を分解して使った方がいいのではないかという御指摘もありましたけれども、それは、(前注)に係ることでしょうか。具体的な御提案としては、親権という用語について、これを一括したものとして扱うのではないという考え方を書き込んだ方がいいという御意見でしょうか。 ○原田委員 説明のところで結構です。 ○大村部会長 分かりました。説明に当たって、中身を分けて書いた方が分かりやすいだろうという御指摘と受け止めます。   それから、二つ目は親権、監護権の内容を当事者が決められるといったことが出てくるけれども、これについては公示の問題もあるので、(注)からも外した方がいいという御意見だと伺いました。それとの関係で、公示の問題について説明が必要ではないかと御指摘もいただきました。   最後に、4ページの3の規律は、親権者が一方になる場合についても問題として出てくることがあるのではないか、そのことも含めた書き方にする必要があるのではないかという御指摘だったかと思います。   ありがとうございます。まだ皆さんからたくさん御意見があると思いますけれども、今まで伺った御意見で感じたことは、資料は、それぞれのところが、あるまとまりを持った形で書かれていて、別のところと有機的に連動した形には必ずしもなっていません。それぞれのところで様々な選択肢を示しているために、そのようにならざるを得ないところがあるのだろうと思います。その結果として、具体的にどこか決めていくときに、他の部分も併せて直さなければならないということが出てくることになるだろうと思います。今の段階で、それについて全部を手当てするとなると、資料はかなり煩雑なものになるのではないかと思います。そこで、連携が図れるところは図るけれども、十分に図れないところについては、今後そうしたところについては必要な調整をしていくことが想定されていることを、説明の中で書いていただくということが、全体としての対応として必要ではないかと思って伺っておりました。そういう方向で、この先考えていきたいと思います。   皆さんの発言を遮りましたが、続けて御発言をいただきます。   小粥委員、それから武田委員の順番でお願いします。 ○小粥委員 委員の小粥でございます。1点目は、ちょっと総論的なぼう漠としたことでございますけれども、部会の審議の過程で、私は、個別具体にどのような解決すべき課題があるかにフォーカスして、どのようなルールを設けるべきか、あるいは改正すべきかということを、もっと集中してやるべきだということを申しておりましたが、その議論が恐らく不十分であったのではないかと認識しておりまして、今回の中間試案の事務局の苦労を全く分からない立場からすると、茫漠としている部分がありまして、なかなかどのように中間試案に対して、提示される側の立場に立ってみると、どう答えていいか分かりにくいというところがあると思いますので、中間試案後については、より個別ルールについての議論にフォーカスする必要があると思います。それが1番目でございます。   2番目ですけれども、第2の1に関わることで、既に出たところでもございますけれども、解釈に委ねるということでございますけれども、親権と監護権が分属する場合について、通説的な見解と思しきものはございますけれども、やはり通説的な見解にとどまり、解釈、議論が分かれ得ることは、先ほど池田委員もおっしゃったとおりでして、少なくともこのような書き方ではなくて、ルールを明確化するだけでもなくて、妥当なルールを提案するという可能性も含めて、中間試案には書くべきではないかという気がいたします。   それから、最後でございますけれども、離婚後の共同親権になる場合があると、あるいは、監護と親権が競合する場合が、この提案を、16−1を見ますと、抽象的にはそのような権限が競合する場合が明らかに増えるわけですね。この場合に、これらの競合する権限を調整するという可能性について、昨年度の部会では、こういう場合はどうする、単独でできる、こういう場合は共同決定だというような、様々な各論的個別の規律を設ける可能性が検討されたわけであります。今回の16−1では、個別具体の項目ごとにどのように権限分配を調整していくのかに関する御提案は、ごっそり抜け落ちたと理解しておりますけれども、これがよいことなのかどうかと。つまり、これから共同して事柄に対処する離婚後の元夫婦がどうすればいいのかと、あるいは、それでどうすればいいかも分からないまま、もめた場合にどうするのかといった規律を全く欠くことになっているようにも、全くとは申しませんけれども、非常に手当てが弱いと。   一つは、やはり個別事項について、権限調整に関する規律を設ける可能性というのも、なお探りたいところではないかと思います。それが一つ。それから、二つ目は紛争、離婚後の父母の間に紛争が生じた場合、特に子の監護、教育、あるいは財産管理について紛争が生じた場合に、家庭裁判所が出てこないとどうしようもない場面というのが必ずあると思います。これを基本的に協議に委ねるというのでは、家庭内の弱者が泣き寝入りするというような問題につながりかねない。そこで、やはり離婚後夫婦の間で紛争が生じた場合に、子の監護、教育に関しての紛争が生じた場合の家庭裁判所の権限あるいは仕事というもの、現在では第3の3の(注3)、(注4)辺りでしょうか、僅かに(注)のところで触れられているにとどまりますけれども、家庭裁判所がここで表に出てこないでどうするのかという気がいたします。より積極的に家裁の関与というものに関して、本文に格上げして御提案を、少なくとも意見をお聞きするというようなことを考えてはいかがかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。小粥委員から3点御発言がありましたが、第1点は、今後の議論についての所感として受け止めさせていただきました。   あとの2点ですが、2番目は第2について、今までの御議論に出ておりますけれども、もっと書くべきである、明確化するというのではなくて、よいルールを求めるという方向で書くべきだということであったかと思いますが、そうすると、書き方としては、今までの委員がおっしゃっているように、選択肢を示してどれがよいか、どの方向で考えるべきかといったことを書くべきだということになりましょうか。   それから、3番目は、親権にしても監護にしても、あるいは親権と監護の間でということもあろうかと思いますけれども、権限が競合したときの調整方法がはっきりしないので、個別の事項について書き込んでいくべきだということと、紛争の際の家裁の関与について、包括して書くべきだということ、この二つのことをおっしゃったかと思います。後の方は、独立の項目としてどこかに書くということが考えやすいのかと思いますが、前の方は、各項について、それを書き加えるべきだという御意見でしょうか。 ○小粥委員 そこまでは申しませんが、なお昨年度の部会で検討した方向性について、引き続き検討する可能性を残してはどうかということです。 ○大村部会長 ありがとうございました。では、そのように受け止めさせていただきます。   武田委員、その後に石綿幹事ということでお願いします。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。第1と第2に関して、第2は若干ですが発言をさせていただければと思います。   まず、第1に関してです。2巡目議論、私としては、2巡目議論では、養育の義務の定義、内容に関して、金銭以外のことも含めて、具体的には監護の義務、子どもが情愛を持って養育されること含めて考えるべきと、こういうふうに申し上げたと記憶しています。資料16、第1の記載を見る限り、部会資料が公開されましたら、子どもと離れて暮らす当事者は恐らく、また扶養義務だけ果たせばよいのかという指摘が来るだろうなということは、容易に想像できます。少し、もう一度立ち返って考えてみました。恐らく父母の婚姻状態にかかわらず、父母の合意により、例えば、就労と家事育児の完全分離、昨今はこんなケース非常に少ないと思いますけれども、そういう完全分業がなされている場合、一方が生活費だけを渡していれば、子の監護に関しては何もしなくてよいということになるんだろうかと。   ここ何回かこの議論になっておりますけれども、協議離婚が8割を超えるという現状下において、養育費の支払と面会交流の実施、半分以上なされていないことは、もうこれは明らかかと思います。この数値面から考えると、裁判所の手続、調停や審判に移行する、いわゆる葛藤が高いと言われる会いたい親と会わせたくない親、その他事情はあるかと思いますが、そういった親の数以上に、会わなくていいという親、会わせなくてよいと考えている親、これがより多く存在するであろうということを、こういった数値からは見て取れると感じております。今回の部会では正に、こういう言い方をすると何なんですけれども、無責任な親に対する社会制度設計、これが求められているというのが、まず私の今の現状理解でございます。   皆様に私が今更申し上げるまでもなく、現行法で考えれば、親権を行う者というのは、子の利益のために、子の監護及び教育をする権利を有し義務を負う、こういうことだと思っています。逆に言うと、そうであれば、親権を行わない者は、子の利益のために子の監護及び養育する権利を有さず義務を負わないということでしょうか。多分違うと思います。扶養義務を明示化しようという現在の議論の方向性を否定するものでは当然ありません。婚姻状態にかかわらず、養育費支払、当然親の義務だと思っています。しかしながら、子の利益のために監護、養育の権限を持ち、その責任を果たすこと、これもまた義務なのではなかろうかと、こんなふうに思っています。親が子を監護する権利、これは、子の立場から見ると、親が子を監護する義務、これは当然片方の親というわけではなく、双方の親からだと思っています。   今回議論で、親権概念、監護の概念含めて、再度、検討しようということで、親権概念を重要事項への関与という方向性へ、日常的監護の再定義へかじを切ろうとしているという、この辺りを考慮すると、今回のこの一番冒頭の親責任、この用語になるかどうか分かりませんけれども、基本的には記載のとおりの子の最善の利益の確保をし、未成年の子に対する親の扶養義務に加えて、並列で子に対する監護をする権限、当然これは、衣食住の物理的な提供にとどまらない、心理的な愛情を与えることも含めてこれを追求すること、ここを御提案差し上げたい、こんなふうに考えています。子への監護義務を加えれば、2ページの(注3)にあります、何か私、これを見て最初違和感を感じまして、(注2)に書いてある別居以降の親子の状況を想定して記載されている、子と同居していない親が、子の意見又は子の心情を把握するための方策、何かここだけ唐突に出てきて、そもそも親の位置付けが明確ではなくて、そもそもどうやって子の意向を把握するんだっていうふうに、私はそのように感じまして、やはり今回、親責任を考慮するに当たっては、親権、監護権、現に子を監護する者に対して理解がしやすくなるんではなかろうかと、そんなふうに思っています。   今回、この第2、第3も含めて、いろいろなケース、パターンが出てくると思っておりまして、パブリックコメント実施に際しては、一般の方からすると非常に分かりづらいというか、理解しづらい。私も素人ですけれども、この部会の中で勉強しながら一生懸命ついていこうとしているわけですけれども、ここからは、今ここにいらっしゃる法学者の先生方を中心とする議論ではなくて、一般の国民の皆さんから御意見を求めるということになりますので、もう少しパブコメを意識して、例えば、そもそも親、父母とは何ぞや、親権とは何ぞや、監護とは何ぞや、現行法でどういう規律があって、どのように整理しようとしている、何かこのような概念図のようなものを併せて付け加えていただくと、より理解も進み、議論が進むのかなと感じております。第1に関しては以上でございます。   第2に関しては、正直、申し訳ありません、これでどうコメントしていいのか分からない、いわゆるパブリックコメントを出す立場からすると、これに対して、裁判所の解釈に任せると言われて、これで何て言やいいの、というのが率直な感想です。意見が対立する、おそらく、いろいろなところで対立はあるんだと思います。しかしながら、このまま中間試案として出して、パブリックコメントという形で求められた場合、これはどう意見として出てくるんだろうというのがイメージがつかない。中身については余り申し上げるつもりはないんですけれども、第2に関しては、これは印象でございます。そのように考えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員からは第1と第2について、2点ないし3点御発言があったかと思います。第1の方ですけれども、次のように整理してよろしいでしょうか。現在の第1の2は、親の義務を扶養義務に限った形で規定することを想定しているけれども、より広い範囲で親一般の義務を規定するべきではないか。こういう整理でよろしいですか。 ○武田委員 そうですね。私からすると、これが条文に要したときのイメージが湧いていませんので、この表記だけだと、またこのお金だけ取られますので、部会長の御認識のとおりで結構でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。それからもう一つ、第1に関しては特に、なかなか資料を理解するのが難しいところがあるので、用語の説明や前提についての説明を少し丁寧にする必要があるのではないかということ。これは、補足説明についての御要望と受け止めさせていただきます。   第2の方については、今までの各委員の御発言と、結論として同じ方向になるのかと思いますけれども、これではイメージがつかめないので意見が言えないということで、具体的な形で項目を立ててほしいという方向の御意見だと受け止めさせていただきますが、それでよろしいでしょうか。 ○武田委員 はい、結構です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   それでは、石綿幹事、それから赤石委員という順番でお願いします。戒能委員は、その後で。 ○石綿幹事 石綿でございます。4点発言させていただきたいと思います。   まず、第2については、既に様々な方々から意見が出ていますように、もう少し具体的な提案をした方がよいのではないかと考えます。そして、仮に、もしこのままいくのだとすれば、例えば、補足説明の2の(2)で@からBに分けて分析し、@の重要な事項の権利義務を親権者に帰属させると記載されていることは、必ずしも現行法の解釈論から出てくるのではなくて、立法論としての側面も大きいのではないかとも理解していますので、どこからが解釈論で、どこからが立法論なのかという、もう少し分かりやすい記述にしていただいた方がよいのではないかと思います。また、解釈論としまして、伝統的な見解のほかにも、補足資料説明の2の(2)には出ている、親権者は一定の範囲については権利、義務が留保されているという見解以外にも、例えば、近時の学説では、監護者指定がなされた際に、親権者は身上監護権を失うわけではない、ただ、監護権者が優先的に行使をして、親権者も監護者による監護権を妨げない限度で身上監護を行うことができるという見解も示されています。解釈論の中でも親権者に帰属する身上監護権の範囲、また親権者に帰属する権利の行使の態様について、幾つかバリエーションがあるかと思いますので、可能であれば、現行の解釈論として出ているようなものも幾つか念頭に置いた上で、親権者に帰属する身上監護権の範囲や行使の仕方について、あり得る選択肢を踏まえて具体的な規律を提案していただけるとよいのかなと思いました。これが1点目です。   2点目は、資料の中での親権という言葉の用い方です。池田委員の発言とも関連するかと思います。特に第3の3の(2)の親権という語が、資料をよく読めば、ここでいう親権というのは、監護者指定がされた場合の残りの親権ということなので、財産管理権が中心になるかと思いますが、資料のゴシックの部分だけを卒然と読むと、そういうものだということが分かりにくいのではないかと感じました。資料の中で親権という言葉が様々な場所で使われていますが、比喩的な言い方ですけれども、親権の広さがそれぞれ違うように思いますので、パブリックコメントを念頭に置くと、もう少し言葉の使い方を丁寧にした方がよいのではないかと思う次第です。   3点目は、第3の3の(4)の居所指定についての意見ということになります。現状、居所指定に関しては、父母双方が親権者である場合について、X案、Y案が提案されていますが、私の質問と申しますか意見としては、仮に居所指定権について特別な規律を検討するのであれば、一方を親権者、他方を監護者とする場合には、このような規定を置くことを検討する必要がないのかということになります。   4点目は原田委員の御発言とも関連するかと思いますが、このように多様な親権、監護権の在り方ということを提案していて、これが実際に動いていくということになってくると、第三者との関係で、公示の必要性がないのかということは問題として出てくるのだと思います。可能であれば、公示のことについても触れていただけると、より充実したパブリックコメントになるのではないかと思う次第です。 ○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事から4点頂きましたけれども、最初の点は、これまで意見が続いておりました第2について、やはりもっと具体的な形で案を示した方がよいという御意見だったかと思います。それと併せて、第2についての説明の中で、現在の考え方が述べられているけれども、その中で、解釈論上言われていることがどれであり、立法論上言われていることがどれであるのか、あるいは、解釈論についても様々な考え方があるので、その辺りをもう少し整理する必要があるのではないかという御指摘を頂きました。   残りの3点は、いずれも原田委員の御指摘と関わるものかと思いますが、まず、親権という用語について、第3の中、特に第3の3で、何を指しているかが明らかになっていないところがあるのではないか、その中身を明らかにする必要があるのではないかという御指摘。それから、第3の3の(4)の居所指定について、ここは、双方が親権を有する場合を前提にしているけれども、そうでない場合も問題になるので、それも含めて考える必要があるという御指摘。4番目は、公示について触れる必要があるという御指摘だったかと思います。ありがとうございます。   赤石委員、戒能委員という順番でいきます。 ○赤石委員 ありがとうございます、赤石でございます。私も、ちょっと前の委員の方たちと重なる部分があるんですけれども、まず、親権という用語を、(前注)で便宜的に使うというようなことがあるんですけれども、できれば何か選択肢というのが示されていた方がいいなとは思います。   その上で、第2の方にいきます。本当にちょっとびっくりしてしまいまして、パブリックコメントというのは、意見を出せるように具体的なものが示されると信じていたので、このような解釈に委ねるとなると、解釈ってどうだったっけというようなことで、補足資料は示されるということだと思うんですけれども、ちょっと、本当に私どもがこれを、多分これから離婚されようとする方、あるいはシングルマザーの方にこれを説明するとき、どうしたらいいのか本当にちょっと分からない状況で、例えば、高校進学とかそういうときに、どういうふうに親権と監護権が決められていくのかとか、そういったことのイメージがつかないと、塾に行くときは身上監護で、日常監護で、高校の志願をするときは親権が重要決定なんで関わるのかとか、いやいや、でも、その前からもう既に親権者が、A案、B案を見ると、日常監護にも関わると書いてあると、そうすると、塾の辺りから関わるのかとか、ちょっともう、本当に分からなくて、どう説明したらいいのかなということがあります。多分、考え方の幅というのがあるということを、ある程度は整理してお示しいただけないと、当事者の方が、いいよね、悪いよねということもできないのかなとは思いました。   それから、第3のところですが、まず、甲案の1、協議上の離婚のところで、双方親権者と定めるということがございますが、協議離婚というのは日本だけの制度なので、裁判所経由しないで決められるとすれば、ここに何か家庭裁判所とか関与しないということであれば、ちょっと怖いなという気がいたしますので、協議離婚をどうするのかというのは、これからちょっと大きな問題だろうと思っておりますので、何らかの形で家裁の関与を書き込めるようなものがいいんではないかと思ったりいたします。   それから、私、何かもういろいろ分からなかったので、その後、認知のところなんですけれども、これも何かすごく、またこれもよく分からなくて、第3の1、甲案の(4)に当たりますね。父が認知した子に対する親権は、別段の定めがないときは母が行い、そして、父母の協議で父を親権者と定めたときは父が行い、父母双方親権者と定めたときは父母双方が行うということなんですが、これ、後の養育費とか共同親権のいろいろなものにも関わるんですけれども、私が嫡出でない子、いわゆる婚外子の権利も、同じようにお父さんとの関係とか、いろいろありますよねというのを発言したのは事実なんですが、それは、養育費とかの面では大変大事だと思っておるんですけれども、認知というのは、まず一方的にお父さんからできるとなっております。お母さんは出産した事実があって、お父さんが。なので、認知は断ることは基本的にできないんですよね。それで、お父さんが確定したときに、どういう手続で協議して双方親権者となるのか分からないというのが一つで、認知届と一緒にそういう手続が進んでしまうのかどうなのかということが一つあります。   あと、私が未婚のお母さんのひとり親の寡婦控除税制を適用するときに、未婚のお母さん100人にアンケートを取ったところ、20%から30%の方は、お父さんには妻がいらした場合だったわけですね。そうすると、この場合、法律婚をしている妻がいる家族の夫が、共同親権者としてなるというような想定をされていることになるのかなと思っていまして、この話ってものすごい革命的な話で、妻が知らないうちに、自分の夫がほかの女性との間のお子さんの共同親権者になっているというようなことを、覚悟してやるのはいいんですけれども、日本社会で許容するのかどうか全然分からなくて、非常に家族を崩壊させるみたいなことはずっと言われ続けながら、一つずつ嫡出でない子の権利というのは進んでまいりましたので、一体どのくらいの覚悟をもってこのことが書かれているのか、ちょっとよく分からなくなっております。   それから、認知は一方的にできるわけですので、それをしてほしくない方たちがいらっしゃる。その権利というのを、お声を頂いたんですね。すごくお父さんとの関係を望んでいる方もいらっしゃいます、婚外子の親で。望んでいない方もいらっしゃいます。性暴力を受けて産んだ方もいらっしゃいます。そのときにも、お父さんが一方的に認知はできます。どうやって退けたらいいのかというのは、本当に工夫されていて、お声を頂いた方は、裁判で複数の男性と付き合っていたということを論拠にして、何とか退けたというようなお話を伺ったんですね。ですので、ここのところを、事実婚の夫婦の親子関係に、どこかで論がすり替わっているのかもしれないので、もう一回きちんと整理しないと、また、婚外子、嫡出でない子の親子関係についての調査も全くされていないと思いますので、どのようにされたのかということが全く分からないところで書き込んでいいのだろうか。別に私、反対はしていないんですけれども、突然ラディカルに書かれているので、恐ろしくびっくりしてしまったということでございます。ですので、ここにさらっと書いていることは、ものすごい、結構何十年もやはり反対されてきたことが書かれているのではないのかなと見てしまいました。そうではないんだったら結構でございますが、すごくされて、少なくとも実態調査というものと一緒になっていないと、ここが話題になったら、とても大変なことになってしまうかと思います。   それから、このたたき台の中に、DV被害という言葉が一切出てきておりません。言葉として、多分検索したと思うんですけれども、一個も出てきませんでした。ですので、親権者を決めるときに、あるいは監護権を決めるときに、留保するところとして、DV被害をどのように、関わらせるのか、これをアセスメントするのか、そのときには、親権は認めないとするのか、この辺りの議論がすっぽり抜けていると思います。今までは、どこかで必ずDV被害の場合にはというのがあったかと思うんです。保護命令が出ていない場合についても、きちんと除くということと、そのときの証明を何にするのかということが書かれるべきだと思います。   関連で思いましたのは、このたたき台の中を検索すると、子の連れ去りという言葉が3回出てきました。すみません、数えました。資料としては、これまでいろいろな資料で、全然出てこないときもあったと思います。いつからか、子の連れ去りというのは書かれるようになっているんですが、子どもの不当な連れ去り、あるいは子の連れ去りというのは、武田委員よく御存じだと思うんですけれども、お父さんから見るとそういうふうに見える、これはもう、そういうことを主張される方はいらっしゃるのを存じ上げております。しかし、お母さん側から見たらこれがどう見えるのか、全く違うふうに見えている可能性があるというのも事実でございます。としたら、ここに一方の見え方だけで書くというのが果たしていいのか。となりますと、連れ去りと書いたときには、もしかしたら、それはDVからの避難である可能性があるというような(注)でなければ、両論として見えていないということになってしまうのではないか。とても軽く、だんだんDVのことが扱われる文書になってきているということを感じました。   ちょっと忘れたところもあると思うんですが、以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員からは4点の指摘を頂いたと受け止めました。   まず第1に、最初の(前注)のところですが、親権という用語については見直しも含めて検討すべきだということが書かれているけれども、その見直しの選択肢も示しておいた方がいいのではないかという御意見。これは、(前注)そのものに示すという御意見でしょうか、あるいは、説明の中にもっと詳しく書けとかという御意見でしょうか。 ○赤石委員 どちらでも結構です。 ○大村部会長 分かりました。   それから2番目は、第2についてで、やはりこれでは回答に困るということで、もっと具体的なものを出す方がよいのではないかという御意見を頂きました。これは、先ほどから皆さんの御意見も出ているところですけれども、第3について議論することによって、第2についても決まってくるところがあるだろうと思います。決まってくるところがあって、残る問題として何があるのかといった形で議論していくことになるのではないか、これは窪田委員が最初に御指摘になったことかと思いますけれども、そうしたことも少し示した方がよいかと思いながら、赤石委員の御発言を聞いておりました。   それから、3点目は第3の中の具体的な点についての御指摘だったかと思います。協議又は家庭裁判所の審判によりということが出てきますが、その協議について、家裁の関与ということを書き込んでおく必要があるのではないかという御指摘だったかと思います。これは、協議離婚一般の問題として、そこで書くのか、あるいは協議が出てくるところで書くのかといった問題もあると思いますけれども、いずれにしても、その点をどこかに書いておいてほしいという御要望として承りました。   それから、3ページの甲案の(4)については、後で、事務当局の方からお答えを頂こうと思います。ここも書き方の問題があって、甲案というのは、現在の819条という規定を直して、夫婦双方が親権者になるという選択肢を入れたらどうなるかという形で書いております。そう書いたらこのようになるのだけれども、これで支障がある場合が出てこないかということは議論すべき事柄なんだろうと思いますが、(4)は、今申し上げたように現在のルールを基準にして書いておりまして、どこまでが現在起こることであって、何を変えようとしているのかということについて、少し整理が必要かと思います。そこは事務当局の方からお答えというか、整理をしていただけるとよいかと思います。   4点目が、言葉あるいは概念の取扱いについてということで、DVについての扱いが出てこないではないか、それを取り上げるべきではないかということだったかと思いますが、例えば、第3の4だったでしょうか、家裁の判断要素に関する項目があると思いますけれども、そうしたところでDVについてもっと明確に取り上げるべきだといった形で受け止めさせていただいてよろしいでしょうか。   DVについて取り上げるべきだという御希望だったと理解しましたが、具体的にはどのような形で、どこに書くという御提案なのかという御質問なのですが。 ○赤石委員 ありがとうございます。全てのときに、甲案を、そうですね、甲@、甲Aのときに、原則でないときの取扱いとか、そういうところに必ず書いていないといけないと思います。あと、監護を決めるときにも、多分必要になると思います。ちょっと全て指摘できないので、また後でお伝えできればと思いますけれども、その扱いのときに全てないと、多分、当事者からすると、すごく乱暴に見えてしまうのではないかなと思います。 ○大村部会長 分かりました、ありがとうございます。それから、併せて子の連れ去りということが3か所出てくるという御指摘がありましたが、その3か所は、部会資料16−1に3か所出てくるという御趣旨ですか。 ○赤石委員 今ちょっと、データがなくて、もう一度あれなんですけれども、はい。 ○大村部会長 つまり、補足説明ではなくてということですか。 ○赤石委員 補足説明の方ですかね、はい。すみません。 ○大村部会長 補足説明の方で子の連れ去りということが出てくるが、その言葉を使うに当たっては十分な注意をしていただきたいという御要望として承りました。ありがとうございます。   次が戒能委員。それから青竹幹事にお願いします。 ○戒能委員 ありがとうございます、戒能です。大きく2点申し上げたいと思います。   皆さん御指摘のとおりなんですが、一般の方々にパブリックコメントをして、それをまとめて参考にしながら、更に審議を深めていって、最終的な答申に向かっていくという順序だと思うんですが、そのときに、どんな方がお答えになるのかというのは全く、これはターゲットを決めるわけではないですから、分からないわけなんですが、当然赤石委員がおっしゃったように、当事者の方がコメントすることもあるだろうと。だけども、もう一方、あんまり自分のこととして考えることもないというままに過ごしている人の方が多いかもしれない。そういう方々にパブコメで意見を聞くというのは、大変難しいことであるなと感じております。本当にそこで聞いて、回答ができるのかどうかというのは、赤石委員や武田委員もおっしゃったとおりだと思うんですね。   それで、実効性のあるパブリックコメントにするためには、どういうふうにしたらいいんだろうか、もう少し検討するべきだと考えます。そうすると、一つは、現行制度が今こうなっているということもなかなか、やはり当事者にならないと調べたりなんかしません。ですから、現行制度のどこが一体不都合が生じているのかということ、そして、それを現代社会の意識の変化とか、そういうものも関係してくると思うんですが、その解決策は選択肢が複数ありますよと提示しても、この16−1を説明も頂いても、特に第3のところなどは、これは座長が先ほどおっしゃったように、それぞれの選択肢があって、しかも、それが前のところと関係するとか、後ろのところがこう変わるとか、そういうのを一般的には分かりづらいことなんですね。   そういうところも少し御考慮いただいて、大変御苦労だとは思うんですけれども、これは飽くまでもパブコメ向けの中間試案と理解しておりますので、実効性のある意見を集めるという視点から、もう一度考えていただきたいというのが、第一の要望です。現在の民法の規定も分からないかもしれないと。どうして今、こういう提案が出てくるかということも分からないかもしれないというところまで考えないと、パブコメ数もどうなのかなとは思います。それで、もちろん概念についてもきちんと説明をするということは、していただきたいと思うんですね。   それで、赤石委員が認知のところをおっしゃっていただいたんですが、部会資料16−2の補足説明に、いろいろなことを書いていただいて、例えば、補足説明の20ページに、A案、B案で、B案の概要という説明があるわけなんですが、下の方、(2)のところなんですけれども、婚姻関係にない父母が共に子と同居して、共同でその監護教育をする場合も想定される。これは、事実婚を指すと考えられる、御説明もそうだったんですけれども。そうすると、その事実婚のケースと、離婚後に別れた夫と妻が共同決定をするという仕組みと同じレベルで考えていいのかどうかということも、より検討が必要で、混乱してしまうのではないか。認知の一方性ということ、それから事実婚の場合は合意で、これから一緒にやりましょうという人たちですが、婚姻制度の中では認められない、法的な位置付けがないカップルに対して離婚後の夫婦の問題を当てはめるのは、当事者にとっては、非常に違和感があると感じるわけですね。   これは赤石委員御指摘いただいたんですが、子の連れ去りというところも、全く説明なしに出てくるし、現象としてあるかもしれないけれども、それを一方の側から見るとそうかもしれないけれども、他方の側から見れば違うということも配慮して、こういうものは書かなければ不十分ではないか、時々これを読んでいて感じることなんですね。ですから、とても大変な作業だとは思うんですけれども、関心をともかく社会の方々に持っていただいて、今、こういう問題が起きていますよと、それを解決するためには、一緒に考えていきましょうということであるならば、そういう配慮をきちんとしていただきたいと、強く感じております。   それから、これももう既に赤石委員が御指摘いただいたんですが、私は全体として、DVだけではなくて、児童虐待ですよね、家族の中の暴力の問題というのが、やはり紛争のかなりの部分を占めると思います。家裁にどれだけ出ているかとか、調停離婚の離婚の動機でデータを見るしかありません。でも、それを見ると、かなりの部分が、いわゆる身体的暴力だけではなくて、精神的暴力を含めてみますと、かなりの割合を占めていると。そうすると、実態に即して考えるべきだと思うわけですね。何もイデオロギーとか、そういうことでは全然ないわけです。   DVや虐待などについては、部分的には出てくるんですが、例えば、どうやって確認するのかとか、その事実が、どこが判断する、認定するのかとか、そういうレベルの話も出ていますが、親権喪失とか親権停止の基準で、要件を参考にするのであれば、かなり厳しいのではないかということなんです。それから、17ページには、協議だけでは駄目なんだと、関与が必要だという考え方は、本当にそのとおりだとは思うんですが、そこに公的機関や法律家等の第三者による確認、この確認というのは何なのかとか、公的機関の確認というのは、DVセンターなどありますけれども、あそこは判断するところではないわけですね。では、どこがするのかとか、一体保護命令なのかとか、そういう議論が当然出てくるわけで、そして、そういうことがごく少数の例外的な問題ではなくて、紛争においてはかなりの割合を占めるんだという認識で、実際的に考えていく必要があると思うんですね。   それで、そのことを、先ほども座長からもありましたけれども、どこに書くのかということなんですよね。必ずしも家裁の基準の問題だけではないと。少なくとも、慎重な配慮とか、どういうふうに書くかというのは、また次の課題としてあると思うんですが、全体をカバーする位置といっても、では、どこなのかというのが、今の構成の中で、そういう総論的なものが必ずしもないですよね。何に、どういうことに注意すべきかとか、どういうことは配慮すべきかとか、そういうことを書いてあるところが、今のところない。DVだけではなくて、総論もあるといいのかなとは思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員から2点御指摘ありましたが、まず、1点目のパブコメについてですが、前提を確認させていただきますけれども、パブリックコメントは、無作為抽出等の方法によって特定の方にお願いするというものではなくて、意見がおありの方が意見を述べるということですので、全く関心のない方は何もお答えにならないということになるんだろうと思います。さはさりながら、多くの方々に関心を持ってもらうためには、分かりやすい資料を作ることが必要ではないかという御指摘は、そのとおりだと思いますので、先ほどから出ている点も含めて、もう少し分かりやすい説明をした方がよいという御意見として受け止めさせていただきたいと思います。   それから、先ほどから、選択肢が多くて分かりにくいという御意見が続いているかと思います。確かにそうなっておりますが、今の段階でこれを絞り込むということがなかなか難しいという状況でございますので、このような形にせざるを得ないところがあります。部会の審議がさらに進みますと、当事者の間に選択肢を残すことにはなるかもしれませんが、制度としての選択肢は絞り込まれた形になりますので、最後の出来上がりの制度の説明は、現在の中間試案の説明よりは大分分かりやすいものになると認識しております。さはさりながら、途中段階で意見を聞くのに、分からないということでは困りますので、ここもやはり可能な範囲でもう少し頑張るということなのかと思います。   DVと子の連れ去りについて、補足説明に関する御要望は承りましたが、どこに書くかという点につきましては、先ほど私が申し上げたのは、家裁が定める場合の考慮要素として書くというのが一案かと思ったのですが、何かより総括的なものとして書くこともあり得るという気もいたします。戒能委員の今の御発言は、家裁の判断に際してだけではなくて、より広い形で考慮されるべき事柄として書けないかといった御提案として受け止めさせていただきたいと思います。   次は青竹幹事ということだったんですが、3時になりましたので休憩したいと思います。青竹幹事、すみませんが、休憩後にお願いできればと思います。   ただ休憩前に、赤石委員、戒能委員から御指摘があった、認知の場合の現在の取扱いがどうであり、そのうちの何を改良等しているのかということについて、事務当局の方から補足の説明をお願いできますか。 ○北村幹事 御指摘いただきました、こちら第3の1の甲案の(4)のところになりますけれども、こちら、現行の民法の第819条を参考に記載したものということになります。現在、819条の4項は、父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り父が行うという形で記載されております。御指摘のとおり、認知というものは、父が行うもの、それによって父子関係が発生するものであります。ただ、嫡出でない子の場合、親権者は原則として現在は母ではありますけれども、認知した場合、協議で父とすることができると、現行法はなっている。そこが甲案で、離婚後も共同で行使するということがあり得るのであれば、民法第819条の規律を参考にこのような規律というのは考えられるのではないかという御提案でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。現在の規律は、父が婚姻外で子どもをもうけて、その子を認知したという場合に、生まれた子どもの母との協議によって、父が単独親権者になるということが可能であるという規律です。ですから、婚姻家族の中で、共同で妻と共にその子どもを監護しつつ、婚外の子どもについては、父が単独で親権を行使するという状況があり得るわけですが、この最後の場面で、婚外の子の母と共に共同で親権を行使するという選択肢を付け加えることになるのではないかということだろうと思います。   赤石委員の御発言の中で、これはかなり大きなことではないかという御指摘がありましたけれども、婚外で生まれた子どもについて、父親が単独親権者になること自体は、現行法の下でできることになっておりますが、確かにそれは婚姻家族の中にあつれきを生じさせることもあり得るわけです。現在このような規律になっていることを踏まえて、何が変わることになるのかを御理解いただき、そのことの当否につきまして御意見を頂くとよいのかと思って、補足の説明を頂いたというわけでございます。   以上、補足の説明でしたが、ここで休憩いたします。現在15時4分ですので、15時15分から再開し、青竹幹事にまず御発言いただきまして、その後、他の委員、幹事の御意見を頂戴したいと思います。   休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開したいと思います。   先ほど、青竹幹事から、挙手をいただいたんですが、休憩後に回させていただきましたので、まず青竹幹事からお願いをしたいと思います。 ○青竹幹事 第3だけです。4ページの3の離婚後等の父母双方が親権を有する場合の親権及び監護権の行使のところで、分かりやすくまとめる必要があるという責任を痛感しておりますけれども、分かりやすくするのに、原田委員おっしゃったように、これは、単独親権の場合でも共同監護だったりすることもあるわけですので、そのことも(注)で何か説明しておいた方が整理されて分かりやすいかと思いました。   それで、双方親権の場合に、監護者はどうなるかについての選択肢が、恐らく三つにまとめると分かりやすいかと理解いたしました。一つは、共同親権の場合は必ず一方を監護者にすること。二つ目に、原則として一方を監護者にするけれども、例外ありとすること。三つ目に原則を設けず、監護者についても、共同にしたり、単独にしたりできること。このような三つの選択肢があるようにまとめると、少しは分かりやすいかと思われます。   それから、第3の1に戻りまして、3ページの乙案なのですけれども、現行民法819条の規律を維持しとなっていますので、現行法そのままにするのであれば提案する必要がないようにも思われました。案が採用されないということになったら、結局819条、現行法そのままということになります。ですから、乙案をもし出されるのでしたら、現行民法819条を維持しながら、多少修正する形で御提案するのはいかがでしょうか。   例えば、819条の規律どおりに、離婚又は認知の際には父母の一方のみを親権者と定めなければならないとするとしながら、ただし、例えば、当事者の申立てと審判により特別の場合に共同とできるとかですね。それも、批判されて採用されないということになれば、現行法に戻るということになりますが、乙案を設けるのでしたら、少し提案を加えていった方がいいのかと印象を受けております。   それから、再三議論されていて、北村幹事からも説明ありましたけれども、甲案の(4)の認知の問題で、赤石委員が、戒能委員がおっしゃっていたとおりに、配偶者がいながら別の女性との間に子をもうける婚外子という場合の影響は大きいということはあると理解いたします。ですけれども、部会長、北村幹事からも御説明ありましたように、現行法では、認知のときに単独親権にしなければならないとなっていたものを、共同にできる選択肢を開くという趣旨ですので、事実婚の場合もあったり、それから配偶者がいながら別の女性という場合もあったりするかと思うんですけれども、多様な婚外子が生じる可能性に対応できる可能性を開くという形で、(4)のように提案するのはいいのではないかと、それに賛否両論を受け付けるという形でよいかと考えました。   ただし、整合性については、部会長からも御説明ありましたように、必ずしも、整合性の問題について、今の段階で全部配慮することができないということで、(注)も必要と思います。1点だけ明らかに問題と思いましたのは、(4)の父が認知した子に対する親権は、別段の定めがないときは母が行い、となっているので、原則母ということについてです。同じ3ページの2の親権者の選択の要件の甲案@、Aどちらにも定められていないようですので、整合性が取れないようで、単独の場合、母が原則であるという原則が、下の甲@、A案ではそのようになっていませんので、配慮した方がよいように思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。青竹幹事から御指摘を頂いたことを、御発言の順序と少し違いますが、三つにまとめさせていただきたいと思います。   まず、第3の3について、最初と最後におっしゃったことですが、一方が親権を行使するという場合についても、第3の3の規律が問題になるのではないかという御指摘と、第3の1の(4)のところで、それが後の2と整合性が取れないではないかという御指摘いただきましたが、ここのところについては、多くの委員、幹事から御指摘いただいているところですので、全体としてこの整理でよいのかということも含めて検討させていただくという形で受け止めさせていただければと思います。   それから、2番目に、三つの選択肢というお話をしていただいたのですが、その御提案は、具体的には4ページの3の(1)に代わる案ということですか。 ○青竹幹事 そうです、3の(1)。 ○大村部会長 分かりました。(1)に代わる案として御提案を頂いたと受け止めました。   3番目ですけれども、青竹幹事が中間におっしゃったことですが、乙案の位置付けという問題があるだろうと思います。青竹幹事がおっしゃったように、変えないのであれば提案する必要はないというのは、立法をするときの普通の考え方だろうと思います。ただ、ここで乙案が出ているというのは、甲案でいろいろ変えるという提案、変える幅はいろいろあるんですけれども、そうした提案がされているわけですが、変えないということも検討されているのだということを、選択肢として明示した方がよいのではないかということで、乙案が出ているということだろうと思います。 ○窪田委員 ただ今、部会長から御指摘があったところなのですが、現行法の規定を維持するというのは、過去にも法制審で幾つもあったと思います。特別養子についても、12歳にするのか、15歳にするのか、あるいは現行のままでいくのかというのがあったと思います。   私は、乙案はやはり残さないといけないだろうと思います。乙案しかない場面であれば、それは要らないのだろうなと思いますが、甲案を出した上での乙案というのは、あくまで現行制度を積極的に維持するものとしての乙案ということになります。これをきちんと示しておかないと、法制審では甲案だけで意思統一されたのだという形で外に伝わる形になります。実際にそこまで一致しているのだったらいいのですが、それについて現時点ではまだ必ずしも一致していないのであれば、正しくパブリックコメントに付そうというときには、乙案をむしろこのままの形で出していただくことが不可欠だろうと思います。 ○大村部会長 ここは、いろいろな考え方があり得るところですけれども、私自身は、今窪田委員がおっしゃったのと同じく、乙はこのままの形で残しておいた方がいいのではないかと思います。青竹幹事、そこはそういうことでよろしいでしょうか。 ○青竹幹事 はい、分かりました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   次は、沖野委員、それから久保野幹事から手が挙がっていますので、沖野委員、久保野幹事の順番でお願いいたします。 ○沖野委員 ありがとうございます。すみません、私、途中から入ったため、今までの議論を十分聞かないまま、それを無視した形になったら申し訳ございません。   二つ申し上げようと思っていたのですが、一つは今の乙案のところで、部会長や窪田委員がおっしゃったような形で残すというのが適切だろうと思っております。   もう1点申し上げたかったことは、第3の1の書き方についてです。ここだけではないかと思うんですけれども、条文を、819条をこういうような形にするという書き方になっておりまして、そのために、基本的には現行法と変わらない部分も含めて、819条の全体像がどうなるのかが示されております。法律の条文に慣れた人は、非常に分かりやすいかもしれないのですが、結局、どこを変えるのかよく分からないという形になっているように思われます。そうだとしますと、例えば、甲案の方は、次の場合に父母の双方を親権者と定めることができるものとするというような形にしまして、次の場合というのがどこまで含むのか、協議離婚の場合、裁判離婚の場合、それから出生前に父母が離婚した場合だとか、あるいは認知の場合とか、そういうものを挙げ、具体的にこの結果、819条がどういうような規律内容となるか、あるいは具体的な条文としてはこういうようなイメージになるというのは、補足説明の方で、この考え方によれば、819条というのはこういう形になるものと想定しているというような書き方の方が、分かりやすいのではないだろうかと思いました。   乙案は維持していただいて、(注1)、(注2)なんですけれども、(注1)は微妙かもしれませんが、(注2)などは、819条の場合の変更の際の申立権者をどうするかという問題であり、これについて具体的に提案をするということでなければ、かつ、今申し上げましたように条文をそのまま挙げるということでなければ、補足説明の中で、この点もどうするかということが問題になるけれども、ここの部分については変えないということでどうかと考えているというか、あるいは、何か意見があるなら出してほしいといったことを書くという方がよろしいのではないか。そうすると、もう少し第3の1は分かりやすくなるのではないかなと思ったところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。第3の1の甲案、乙案につきまして、先ほどの乙案も書いておいた方がいいのではないかという考え方について、御支持を頂きました。   第3の1の甲案の書き方について、先ほど申し上げましたし、今も御指摘いただいたのですが、819条のどこが変わってくるのかという書き方になっていて、法律家には分かりやすいかもしれないのですけれども、少し一般の方々に分かりにくいということと、後ろの説明との整合性が保ちにくいということがありますので、少しその点の書きぶりを考える必要があるのではないか。ここに必ずしも条文を書かなくてもいいのではないかという沖野委員からの御発言もありました。条文を書くとすれば、補足説明に書くという形で処理することも含めて、少し見通しのよい形にできるのではないかと思って伺いました。そうすると、(注)にも要らなくなるものも出てくるという御指摘もあったかと思います。ありがとうございます。 ○久保野幹事 久保野でございます。恐れ入ります、私も青竹幹事の御発言の途中から参加しましたので、これまでの議論を踏まえずに、重なったことなどお話しさせていただくかもしれませんことを、お許しください。   それで、3点ございまして、1点が質問で、2点が指摘になります。   質問の1点は、5ページの(注3)なのですけれども、5ページの(注3)で、β案を採用した場合の差止め等の検討の可能性について述べられているんですけれども、これは、α案の場合には考えないでよいということになるかどうかということをお尋ねしたいと思いました。恐らく、α案は、一方監護者が単独で行使できて、事後に他方の親に通知するだけなので、事前に問題を察知して差止めといったようなことを想定しないような設計になっているというつながりで、ここにはβ案だけ書かれているのかとも思ったのではありますが、可能性としましては、α案のような体制の下で、他方の親が一定の子どもの利益を守るための最低限の、最終手段としての強い行動を取ることができる可能性について、考えてみる可能性があり得るのではと思った次第です。以上が、1点目の質問です。   2点目ですけれども、細かいことになりますが、(注)をどこに置くかということの関係でして、5ページ目の(注2)と6ページ目の(注6)が、どちらも婚姻中に父母の一方を監護者と指定した場合についての記述となっているのですけれども、これらにつきましては、例えば、2ページ、第2の議論ですとか、あるいは後で出てきます8ページの別居の際の監護者を定めた場合の場面などと比べた方が、分かりやすいのではないかと、個人的には感じたところでありまして、置き場所について、あるいはこれらの問題がばらばらにこのように(注)に出てくることを、まとめてもよいのではないかというのが、まず第一にあり、まとめてほかのところと関連付けるということもあり得るのではないかというのが2点目です。   続きまして、すみません、3点目なのですけれども、3点目は、資料の記述との関係で申しますと、6ページの(注4)と(注5)に書かれております、共同して親権を行使する場合において、意見が対立したときについて書かれている点にかかわります。これらの、複数の者が子どもの養育に親権者として関わっていくときに、複数であるがゆえに生じ得る問題ですとか、先ほど話題になった乙案の説明のところで、複数の者が関わることで生じ得る弊害があり得ることを懸念する指摘があるといったような指摘もあるのですけれども、ごめんなさい、話があちこちいっていますが、申し上げたいのは、2人が関わるということには、それによって、より慎重でよい決定ができるというプラスの側面と、他方で、複数であるがゆえに、どのような関係であろうと、良好な関係であっても、迅速に判断ができないとか、まとまらずに動かないですとか、複数であるがゆえの問題があり得るのだと思います。そのような、複数の親権者が子に関わっている場合の調整規定につきまして、現行法で婚姻中にそれがないことについて、既に立法論的な指摘がありますけれども、今回のこの改正の議論は、離婚後という協力が必ずしも期待できない場面において、複数の者の関与を認めようとしているので、その場面についての対応をどうするかということは、大きな問題なのではないかと思います。   この点、私自身は、離婚後の共同親権の可能性がどのぐらい広くなるかということが見通せない中で、重要な問題だと思いつつも、今までそれほど強くは発言することができていなかったのですけれども、今回の案を拝見しまして、調整と申しますか、複数の者が関わっていることでうまくいかないことについて、どのように誰が関わるのかといったような問題について、もっと正面から、つまり、(注)に触れるよりは、もう少し正面から扱われてもよいのではないかと思った次第です。   以上3点になります。 ○大村部会長 ありがとうございます。1点目、5ページの(注3)について、御質問という形で御発言ありましたけれども、御意見としては、αの場合も含めて考えた方がいいのではないかという御意見だと受け止めていいですか。 ○久保野幹事 はい、そうです。 ○大村部会長 そのような意見を頂いたとさせていただきたいと思います。   それから、5ページの(注2)、6ページの(注6)をまとめた方がよいのではないか、その上で、他に関連するものがあれば関連付ける方がよいのではないかといった御指摘がありましたが、それぞれについて(注)が付いていますので、相互の関係までまだ整理が行き届いていないところもあろうかと思います。整理ができれば、整理をしていただきたいと思います。   最後の点ですけれども、複数の人が関わることを調整する必要があるので、そのための規定を正面から置くべきだということだったかと思いますが、具体的にはどこに置くのがよろしいということについて、何かお考えがあれば伺いたいと思います。 ○久保野幹事 今の立て付けの中で、どこにというのはなかなか、そうですね、直接お答えにならないんですけれども、第3の1と3が相互に密接な関係があって、3でうまく設計できるかどうかということが、1を考えるときに重要だという構成になっていると理解しておりまして、説明もそのようにされていると思うんですけれども、そのような関係に関わる問題だと思っておりますので、精査できていませんが、3の中で、3の冒頭か、3で少しそもそも論というか、問題意識に関わるような形で、3の中でどこかで正面から触れられるといいのかなと思います。すみません、はっきりしておりませんが。 ○大村部会長 そのときには、現在は婚姻中についても、調整のための規定はないわけですが、婚姻継続中についても含めて考えるべきだということも書くべきだという御意見でしょうか。 ○久保野幹事 離婚後の今回の問題との関係で取り分け重要なので、そちらをというつもりでは発言いたしました。 ○大村部会長 分かりました、ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。   それでは、井上委員、武田委員、佐野幹事。 ○井上委員 ありがとうございます、連合の井上です。3点意見を述べさせていただきます。   まず1点目は、直接この中間試案のたたき台に関する内容ではないのですが、昨日、一部報道で、この中間試案のたたき台の方向性が、何かいかにもこちらの方向に決まったかのような報道がありました。これについては、中立的な立場でこの会議に出席していますので、中間試案のたたき台が出る前にああいう記事が出ること自体、やはり看過できない問題だと思います。情報の取扱いにつきましては、是非、十分慎重な対応をお願いしたいと思います。   次に、1の子の最善の利益の確保のところです。この間の議論の中で、やはり子の意見聴取や意向確認など、子の心情を大切にするべきではないかという御意見がたくさん出ていたと思いますので、冒頭池田委員から追記の御提案がありましたが、私もその追記の提案に賛同するところであります。   それから、第3の2、親権者の選択の要件の5ページ、(4)です。子の居所指定に関する親権者の関与のところのX案とY案ですが、これは、いずれも監護者の居所指定に関する権限が指定されるように読めるのですけれども、先ほど出ているDVや児童虐待がある事案への対応が、この記載からは読み取れないと思います。ですので、DVや児童虐待がある事案においても、父母双方が子の居所の指定及び変更に関与する前提に立ってよいものなのかと考えております。また、先ほど赤石委員からもありましたが、様々なところにDV事案の特別扱いについての記載を入れていかないと、実際に被害を受けている方たちが困ることになると思いますので、やはりDVが発生している事案に一律に当てはまるものではないという点を明確に書き込んだ形にしていただきたいし、それは、この(4)ではなく、全体を網羅した形で追記した方がいいのではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。1点目は新聞報道について、関連して情報の取扱いについての御要望を頂きました。   御意見としては、第1の1について、冒頭に池田委員から御発言があった子の意見等について書き込むということに賛成の御意見を頂戴いたしました。   それから、先ほど赤石委員や戒能委員から御指摘があったDVの件について、第3の2の(4)という具体的な場所を示されて、DV対応が必要ではないかということをおっしゃった上で、しかし、書く場合には、全体に通じる形で書くということが望ましいという御意見を頂戴いたしました。 ○北村幹事 事務当局でございます。今、御指摘いただきました新聞報道について、若干の付言をさせていただきたいと思います。   法務省が何かの方向性を固めたかのような報道がされてございますけれども、御案内のようにこの部会、皆様から様々な御意見いただいた上で、事務当局として、その御議論を整理して部会にお示しし、更にこの部会で御議論いただいているものでして、現在何か法務省の方で一定の方向性を固めたと、そういう形で、この部会、運営されているものではない、飽くまでも、この部会において議論され、お決めいただくものであるということを、改めて御説明させていただきます。   なお、私どももそうですけれども、より一層情報の取扱いについて、関心が高いということが今回明らかになってございますので、私ども、より一層情報の取扱いに留意するとともに、委員、幹事の皆様にもよろしく、そこの点をお願いしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。そのようにお願いをできればと思います。 ○武田委員 武田でございます。第3のところ、先ほど発言割愛させていただきましたので、第3の部分、コメントを申し述べたいと思います。   この資料全般分かりづらいという御指摘が多々あったかと思います。私、2が分からないと申し上げただけであって、全部分からないと申し上げたわけではありませんので、そこはまず申し上げたいなと思います。   第3に関してですが、まず、1でございます。こういう甲案、乙案、第2における甲@案、A案、あるいは、極端に振れた選択肢の中で広く意見を求めて、意見を踏まえて最終的に要件化をどうしていけるのかという方向なのかなと思っておりますので、整理としてはよろしいかなと思っています。   1に関してはちょっと、細かい話で恐縮なんですけれども、12ページの3行目、補足説明のところです。国連子どもの委員会が勧告した離婚後の親子関係について定めた法令を改正という言及があります。この子どもの権利委員会が求めているのは、私が言うことではありませんが、要はシェアードカストディだと思っています。法的監護にとどまらず、身体的監護の分担、非同居親との接触が維持されることを含めてと理解しております。これも、一般的に読まれる一般の方は分からないと思いますので、ここはちょっと明確に書いていただければ、細かいことですが、第1に関しては以上でございます。   第3の3のところ、ここはすみません、私の理解力がないのかもしれないんですけれども、(1)で監護者等の定めの要否及び監護権の行使に関して、AからCの3案、これが併記されております。その中でちょっと、C案というのがどうもいまいち理解し難いと思っております。このC案が折衷案で作っているのか、C案の双方が親権を持ち、監護者の定めをしない前提での、その上でまた主たる監護者という位置付けって何なんだろうかというところが、これを読んだだけだと私としては理解できなかったということでございます。私が素人だからかもしれませんけれども、ちょっとこの位置付けを明確にできないという話なんであれば、先ほどの1、2同様に、極端な両論併記という形で、A案、B案だけに絞った方が分かりよいんではなかろうかと、そんなふうに感じました。   あと、(4)に関してでございます。27ページ、Y案、協議が整わなかった場合、裁判所が関与する場合において、従来から議論に出ております、裁判所が決定する、又は決定者をいずれかに決めるということが書かれていると思っています。これが、19ページの(注4)かと思っています。この(注4)の記載に加えて、何か一定の例示が補足説明の中で触れることできないだろうかというのが、こういった指針を示すことで、こういう指針があれば、父母の協議も円滑に進む可能性が高まるし、かつ、裁判所はこういう考えにのっとって決めていくんだと、そんなことを例示できないかなということを、少しこれを読んで考えました。   これは飽くまで私が考えた例ですが、例えば、教育や医療に関しては、行政方針であるとか何らかの推薦を原則にする、例えば、学校は公立、地元の学校、これは何でそうなったかといいますと、今のこの養育費算定上も、基本、公立学校前提で計算されているのかなと理解しています。あと、赤石委員からも出ていましたが、塾はどっちとか、習い事どっちと、これは、例えばの例、考え方で言いますと、基本的には公教育ではないということを前提に、行かないのが原則で、とは言いながら、子どもの年齢に応じて、その意向を実現する必要も当然あるステージもあろうかと思いますので、そのような調整方法。あと医療に関しては、例えば、かかりつけのお医者さんがいます、その場合には、セカンドオピニオンを例えば求める、これが同一であれば、何らかの厚生労働省などの考え方を考慮するとか、何かこのような考え方の例、これは私の思い付きですので、私が言っていることが正しいとは全然思っていません。ただ、裁判所が判断する際にも、特殊事情の主張があって、それをもって認めていくという、こういう考え方が示せれば、対立も減る、混乱も防げるのではなかろうかと、こんなふうに考えています。パブリックコメントを示すに際しても、例えば、こういう考え方がある、できるできないは別です、パブコメの回答者の立場から見ても、意見を出しやすくなるのではなかろうかと第3に関しては考えました。 ○大村部会長 ありがとうございます。第3について御意見を頂きました。第3の全体と、それから第3の3の個別の点について御意見を頂きました。   第3の全体については、これを出してパブコメの意見を踏まえて要件化していくということでよいのではないかという御意見を頂きました。その上で、補足説明の中で、もう少し立ち入ってほしいという御要望を頂いております。   それから、第3の3については、(1)でA、B、Cと3案あるのだけれども、C案というのが分かりにくいということですが、先ほど青竹幹事からも御意見を頂いておりますので、武田委員がおっしゃるように二つにするということも含めて、少し選択肢を整理してもらうということかと思って伺っておりました。   それからもう一つ、第3の3の(4)で、Y案について(注)がついているけれども、これについて、更に補足説明で、おっしゃったような具体的なことに少し触れた方がいいのではないかという御指摘だったと受け止めてよろしいですか。 ○武田委員 はい。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○佐野幹事 幹事の佐野です。3点申し上げます。   一つは、第3の2のところですけれども、こちらの選択肢が極端なので、できれば(注)を選択肢としてきちんと挙げていただいた方が、様々な意見が出やすいのではないかと思いました。   2点目として、第3の同じ3の(2)ですが、おそらく第2との関連で、一番(2)のところが具体的に、監護権、親権の関係が問題になってくるのかと思います。私も含め、分かりやすく提示してもらうためには、従来の解釈だと、この通知とか事後通知とか協議しなければいけない内容はこうなりますと、重要決定という場合には、こういうものが通知、協議の対象になるという形で、具体的に挙げていただくと分かりやすいかと思います。   それから、もう1点は補足説明の方なのですが、5ページの一番下のところで、いわゆる養育費の支払期間と額のところですが、一般に、いわゆる養育費の「取決めがされる際には」とあるので、ここの主語、主体は、当事者、父母で、個別の事情を踏まえて判断されることになるとあるところは、両親が判断することになるということになるのかと思います。その場合に、成年の子に対する親の扶養義務の程度を生活扶助義務と理解する立場の乙案を前提としても支払義務の有無や程度は個別の事情を踏まえて判断されることは同様であるとなるのかもしれませんが、事実としては、養育費の算定表を見て、皆さん額を決めていらっしゃっており、養育費の方は、生活保持義務を前提としていますので、この文章はちょっとミスリーディングなんではないかという気がしております。 ○大村部会長 ありがとうございます。佐野幹事から3点御指摘いただきましたけれども、第3の2で挙がっている(注)を、選択肢として本文に加えた方がいいのではないかという御意見。それから、第3の3の(2)については、これはもう少し中身を具体化した説明が必要ではないかという御指摘として承りました。これは、補足説明でよろしいということでしたね。 ○佐野幹事 そうですね、はい。 ○大村部会長 それから、3番目も補足説明についてですけれども、5ページの最後から次のところにかけての説明が、これで紛れがないかどうかというのを確認してもらいたいということだと理解をいたしました。   棚村委員、そして原田委員からも手が挙がっていますし、それからオンラインの方もいらっしゃるし、柿本委員もいらっしゃるので、まず棚村委員だけ伺って、また休憩を挟んで、その後再開ということにさせていただきたいと思います。 ○棚村委員 早稲田大学の棚村です。窪田委員からも部会長からも整理があったかと思いますけれども、この第2のところは、親権者と監護者との権利義務の内容、特に親権と監護とか、現実に子を監護する者という辺りは、総論になってくるので後回しにして、各論の方をむしろ先に議論し、そこで、この具体的な内容等を確定したり、改めて、親権・監護権の概念や定義等を検討する必要が出てくると思われます。したがって、特に現に子を監護する者という考え方は、実際には重要だとは思うのですけれども、ここで法的な監護というのと事実上の監護ということで混乱や誤解が生じやすいのではないか、概念として区別が非常に難しいのではないかという問題が出てくる可能性があるので、後回しにされた方がいいだろうなというのが第1点です。   それから、もう一つ、既に御指摘があったように、今回の事務局からの御提案や御説明は、一般の方には分かりにくい整理になっていないかとか、非常に複雑な議論になっているために、法律の専門家以外の人にはなかなか理解が困難だということがあります。多分武田委員とか小粥委員からも既に出ているように、個別のケースについての対応で、具体的にどうなっていくのかというのを、例えば、進学とか医療とか、あるいは転居とか、そういうようなことを、典型的に何か問題になるようなケースで、この案やこの立場を採ると、こういう問題があるとか、こういうメリットがあるとか、デメリットがあるみたいなことを簡単に示していただくと分かりやすいのではないかと思います。かなり具体例をいくつか出していただいて、これは多分補足説明の書き方ということになると思います。   補足説明というのは、これまで割合と法律家を中心とした議論をしたときは、運用の指針を示してもらうみたいな役割もあったと思うのですが、今回の補足説明は、提案そのものの具体的な効果や影響、波及効果などについて、この立場を採ったりすれば、こういうことが起こるとか、こういうメリットやいい点があるとか、そういうことについて一般の人にも十分に理解をしてもらうための解説や説明みたいな部分としての役割が大きくなると思います。ですから、是非典型的に問題となる進学とか、あるいは医療、これもいろいろな細かいことを議論し始めるとたくさんいろいろなものがあるんですけれども、ただ、できれば典型的なものについて、頻繁によく問題になりそうなことで、こういうようなことが特に重要な事項とか、あるいは緊急的な判断を要するようなことで、それを当事者の協議に任せるだけでよいのかとか、慎重な手続を採って家裁の関与を求めるかということも、随分変わってくると思います。それから、DVとか虐待とか、かなりいろいろな問題について出てくる可能性があることについても、そこでこういうような立場を採るとチェックができるとか、当事者に任せるとなかなかこれは難しいとか、少し具体例をあげて違いや効果を説明していただけると、もっと議論すべきことが分かりやすくなるのではないか。もっとも、あんまり細かい議論やケースを入れるとかえって分かりにくくなってしまいますけれども、典型的なものを入れた方がいいんではないかなと思います。   それから、3番目なのですけれども、やはり親権とか監護権とかといったときも、親権者、監護者もそうなんですけれども、それぞれの持っている権利というのを、現行の解釈とかいろいろなものを前提としながらというんですけれども、実はもう指摘あるように、その内容とか、どこまでできるかといことについても、かなり争いとか解釈も分かれているところだと思います。ですから、その辺りのところも、一応こういうものを前提として議論は進めるけれども、最終的には一番、(前注)のところにあるように、用語それ自体の、あるいは概念それ自体が適切かどうかも含めて、最終的には検討するけれども、今は、取りあえずは、これまでの用語法に倣って、議論をある程度せざるを得ないと断りを入れた上で行うようにしてはどうでしょうか。   そのときにやはりポイントになってくるのは、親権ということを共同にするとか、監護を共同にすることで、プラスの面では、先ほどから言うように、慎重に物事を子どものために話し合ったり決めるということで、熟慮のメリットがあるわけです。ただ、他方で、そういういろいろな人が入ってきたり、意見を聞かないといけないとなると、また権限を細かく分配したりすると、早く決まらないとか、それから、場合によっては話合いができなかったり、決めることができなかった場合にどうするのかというジレンマが生じてきます。その場合には、海外、特にアメリカですと、それを全部家庭裁判所に持っていくというよりは、行き詰まったり意見の対立が生じたら、この人が決めていいんだという、インパスオーソリティー(Impasse Authority)という、行き詰まった場合の権限みたいなものを話し合って決めていく場合が結構多く使われています。ですから、そういうようなことも含めて、要するに、慎重に決めるということだと、双方関与させた方がいいということになるでしょうし、他方、迅速に物事をシンプルに早く決めたいということになると、できるだけ余り多くの人の意見を聞くことは、かえって支障になるという、その二項対立みたいなことで議論をするのではなくて、具体的にどういう場面で、どんな問題については、どんなふうな仕組みにしていったり、あるいは話合いができそうな人とできそうではない人もいると思いますから、その場合に紛争が生じたらどういう解決というので、調整や決着のためのルールについても、久保野幹事からも小粥委員からも言われていたとおり、そのときの家裁の関与ということになるのか、家裁はやはり決める人を決めればいいということだけなのか議論する必要があると思います。   それから通知も、先ほど佐野幹事が言っていたように、細かいことをたくさんということになれば、その手間暇も随分掛かるわけです。通知だと、簡単で事後報告で済みそうですけれども、そういうようなことも、少し具体的なイメージとか例示みたいなものを念頭にしながら、補足説明に書いていただくと、とても助かります。すみません、たくさん申し上げたのですけれども、以上のようなことを意見として感じました。 ○大村部会長 ありがとうございます。3点御指摘いただいたかと思います。   最初に、先ほどから議論が出ておりますが、第2については、各論を先行させて検討した後で、この問題を検討するという順序がよいという御指摘を頂いております。それは、資料の書き方等とも関わってくるかもしれません。   それから、2番目に、具体例を挙げて補足説明を分かりやすくした方がいいのではないか、今最後に通知のことをおっしゃいましたけれども、全てというわけにはなかなかいかないのでしょうが、御要望があるところを中心に、具体例を挙げていくということが考えられるだろうと思います。   最後、調整についての御意見も先ほどありましたが、決定者を決定するという選択肢も含めて考えていく必要があるといった御指摘を頂きました。   先ほど申し上げたように、まだ発言を希望されている方、私の手元のメモで、原田委員、落合委員、菅原委員、柿本委員といらっしゃいますけれども、いったん中断して休憩しまして、それらの方々の御意見を聞き、その後、第4、第5も含めて、御意見を頂戴したいと思います。その後も、第1から第3についての御発言があれば伺いたいと思っています。さらに、最高裁、大石委員、水野委員からも手が挙がっているというメモが今回ってきましたので、皆さんの御意見を聞いた後、第1から第5まで全体を含めて御意見を伺いたいと思います。取りあえず、また10分ほど休憩させていただきます。16時1分ですが、16時10分に再開いたします。   休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開したいと思います。   残りの時間で、まず先ほど挙手のあった委員、幹事の御発言を聞きまして、その後、議論の対象を資料の第5までに広げて、皆さんの御意見を頂きたいと思っております。 ○原田委員 弁護士の原田です、ありがとうございます。先ほど棚村委員から、16−1の2ページの現に子を監護する者などについて、後でいいのではないかというお話があったんですが、説明でも面会交流のときの権限に絞られているような感じですし、要らないのではないかと思っております。重要なことではあるとおっしゃいましたが、補足説明の中でもあるように、協議でも十分行えるようなもので、わざわざ決めなくても、法文に入れなくてもいいのではないかという、それは意見として言えばいいということかもしれませんが、今このパブコメで聞くことが非常に多くて分かりにくいといろいろ言われている中で、この中に入れなくてもいいのではないかと考えております。   もう一つ、第3の(4)の、ページ数でいけば16−1の3、補足説明の25ページのところで、事実婚の場合にいいのではないかというようなことがちょっと、事実婚という言葉は使われていませんが、多分そのことを指しているのだろうと思いますが、実際に事実婚の方、数名のカップルにお伺いしたんですけれども、やはり別れる場合と円満の場合を一緒にできないのではないかと。つまり、別れる場合の規律ができたから、円満な私たちにもそれは適用させていいでしょうというような議論は、余り愉快ではないと。やはりそれは、事実婚と法律婚の関係をどうするかという議論の中で、正面からするべきものであって、ここで事実婚にも適用できるからいいのではないかというような補足説明は、適当ではないのではないかと思います。   それから、親権者の選択の要件として、先ほど佐野幹事から言われましたように、甲@案、甲A案、それに甲B案として選択できるというような案があった方がいいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。3点御指摘いただきましたけれども、最初の点は、16−1の部会資料で言いますと、2ページの第2の2というところですね。 ○原田委員 そうです、はい。 ○大村部会長 ここのところについては、先ほど後でという御発言がありましたけれども、むしろ、要らないのではないかという御意見であると承りました。   それから、第3の補足説明の中で出てくる事実婚の取扱いについて、少し検討する必要があるのではないかということと、佐野幹事が先ほどおっしゃっていた、(注)を一つ繰り上げて本文にするという提案に賛成であるということ、この三つの点を御指摘いただきました。 ○落合委員 落合です。今までの御発言と重なるところがあると思うんですけれども、簡単に述べていきます。   まず、第1なんですが、いろいろな方が読むので、やはり親の義務ですとか、それと親権と監護権という区別が分からないと、やはり最初から読めないと思うんですね。それで、簡単な形でいいので、それは違うことなんだというような何かを書く必要があるんではないかなと思っています。補足説明の最初に、親権を有するかどうかにかかわらずというようなことがあるんですけれども、その辺りを、この第2と関係させて書くということです。第2を見れば分かるのかなと思うと、第2の方が具体的に書かれていませんので、分からないまま放っておかれてしまうと思うんですね。先ほど御意見が出ていましたように、この辺を詰めるのは後でいいという、それも合理的であると思うんですけれども、パブリックコメントをもらうときに、まず、やはりつまずいてしまうというのを防がねばならないんでないかと考えました。   それから、第1の2なんですけれども、成年に達した子に対するという。この(注1)をもう少し詳しくして、他の直系親族間の扶養義務よりも重いといったときの、他の直系親族間の扶養義務ってどういうものかという、法律関係の方にはもう当たり前なんでしょうけれども、生活扶助義務と保持義務は違うとか、何かその辺りもこの(注1)、ゴシックの方に書いてしまった方がいいのではないかと思います。   それで、第2については、先ほども言いましたように、ちょっと簡単すぎるのではないかということです。   それから、9ページの2の現に子を監護する者というのは、やはりこれは誤解を招きやすいと思います。直感的には、監護権なしに見ている人とか、それから祖父母とかのことかなと思って読むのですが、面会交流中のことだけを書いてありますので。確かになくしてしまった方がすっきりするような気もします。そうでなければ、誤解を防ぐのに、もう少し書かないといけないと思いました。   それから、第3ですけれども、協議離婚のときに、一方又は双方を親権者と定めねばならないというのですけれども、これがやはり、協議離婚というのはかなり自由にできますので、そこで何が決められてしまうのかがやはり心配でして、ここで家裁の関与が必要なのではないかという御意見が出ていましたけれども、私もそう考えます。それは、15ページの親権者の選択の要件のところにも関わってきますけれども、これは、家裁が関わるのは本当に一部のことだけですよね。家裁か、あるいは、例えば届出をする役所に専門の方がいるなどのもうちょっと簡便な方法があるかもしれませんが、ただ、紙に書いて出せばいいというのでいいのだろうかと考えさせられます。   それから、17ページの3というところのC案が分かりにくいというのは、私もそう思います。この辺りについては、先ほども御意見が出ましたけれども、複数の人が関わると、いいことと悪いことがあって、悪いことはすぐ決まらないことだというのがありましたが、そうならないために、何重にも親権者のほかに監護者を置いているわけですよね。監護者を定めない場合も、主たるなどというのを置いているんだと思うんですけれども。諸外国はどのように解決しているのかを参考にと思っていたら、先ほどインパスオーソリティーというのを教えていただきまして、それは、2人のうちのどちらかでないといけないんでしょうか、それとも、ほかの方に判断してもらうこともあるんでしょうか。   それから、子どもの心情や意見を聞くというのが第1の最初にありましたけれども、その後全く出てこないんですね。こういう親が対立したようなときに、まず、子どもの意見を聞いてとか、そういうことを入れるわけにはいかないんでしょうか。双方が親権を持つというのを前提に今まで話をしてきませんでしたので、そのときに起きてくる難しさをどう解決するかということについて、やはり今まで議論が余り十分ではなかったんではないかと思います。ですから、外国でやっているよい知恵とか、それから子どもの意見をここでどう扱うのかとかいうことを書き込めるなら書き込んでいただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。落合委員からは幾つかの指摘を頂きましたけれども、四つに分けてまとめさせていただきたいと思います。   まず最初におっしゃったのは、全体として、やはり説明のための用語解説が必要ではないかということで、親権者とか監護とかということについてもそうですし、扶養義務の程度についてもそうだといった御指摘があったかと思います。   それから、第2について、これでは簡単すぎて何だか分からないというのは、皆さんの御意見と一緒だということで、第2の2が要らないかもしれないという意見や、第3の3のC案が分かりにくいという指摘に賛同されるということだったかと思います。   3番目に、これも、他の委員から意見出ておりますけれども、協議への公的な組織の関与について考える必要があるということと、それから、子どもの意見を各論的に反映させていくという規定を置く必要があるのではないかということ。また後の手続のところで具体的に出てくるのかもしれませんが、そのような御意見を頂戴いたしました。   それから、外国法制などについてのお話もありましたけれども、以前に御紹介いただいたものもありますので、また具体的なことを後で決めていくときに、必要に応じて参照するあるいは補足をしていただくということが必要かと思って伺いました。   赤石委員からも手が挙がりましたが、水野委員の後でお願いします。すみませんがお待ちください。次は菅原委員、どうぞ。 ○菅原委員 ありがとうございます。白百合女子大学の菅原でございます。3点について簡単に述べさせていただきます。   1点目は中身についてで、ほかの委員の方々もおっしゃっていらっしゃったように、1ページの第1の1のところに、子どもによって表明された意見でもよいのですが、子どもの意見や心情と子どもの発達という用語は是非入れていただきたいと思います。これに対応して、9ページの4の家裁の考慮要素のところの(注1)のところにも、一応子の発達状況及び心情をAで入れていただいているんですけれども、以前にもディスカッションがあったかと思いますが、ここにも子の表明された意見を入れていただくことが必要かなと思います。全体として、一般の方が読まれたときに、ここにはこう書いてあったけれども、こちらでは表現が異なる、といったそごがないように整えておくことは必要かなと思います。   2点目は、3ページの2の親権者の選択要件のところですが、今までお二人の委員からありましたが、私も甲B案として(注)を本文に入れることに賛成です。   そして、3点目ですが、皆さんと同じ意見なのですが、やはり全体に少し難解で、一般の皆さんが高い関心を持って読んでみてもよく理解できない部分もあると思いますので、特に16−2についてビジュアル化というんでしょうか、図表で表現したり、修正対応表という形で、今までこうだったがここがこう変わるということが一目で分かるようにするとか、棚村先生がおっしゃった典型的なケースについて、こういうふうに判断が変わってくる、新しくなった点はここです、といったように、要点が分かるような親切なガイドがあったほうがよいのではないかと思います。過度に簡略化することは危険ですけれども、ビジュアル化された表を含むような分かりやすい16−2の要点版を作っていただけたら、というお願いです。よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。菅原委員からは、中身について、第1に、冒頭に出てくる第1の1に、子の意見ないし心情というのを付け加える、何人かの委員から出ている案に賛成されるということ。   それから、2番目に、3ページから4ページにかけての甲@、甲Aに、(注)を甲Bとして付け加えるのにも賛成されるという御意見がございました。   3番目は、やはり少し分かりにくいので、資料の工夫が必要ではないかということで、幾つかの御提案を頂きました。要約版というのを今まで作ったことがあるかというと、そうしたものを見た記憶は余りないのですが、しかし、この資料の中のどこかに、例えば、それぞれの項目の冒頭、補足説明の冒頭などに、要約のようなものを付けるといったことも含めて、少し御検討を頂くということになろうかと思います。ありがとうございます。 ○柿本委員 ありがとうございます、柿本でございます。今まで出た御意見とほとんど重なりますが、意見を申し述べます。3点ございます。   まず、第1のところ、子の最善の利益のところでございますが、私も、子の意見又は心情を考慮するというところで賛成でございます。   それから、書きぶりについてでございますが、例えば第3、これ、甲案と乙案と、乙案を残していただくということで進んでいるかと思いますけれども、4でいくと、2のところは、甲案の中の、甲案において出てくる、そして、3も甲案を採用した場合の試案ということで、なかなかこれ、私たち一般市民が読み進めていったときに、頭の中で、甲@案、甲A案という表現できて、次は甲案を採用した場合の試案だけれども、今度はA案、B案、C案となってきて、それから、αにβとなっておりますが、なかなかきちんと整理をして、つなげて読むことができませんでしたので、もう少し何か分かりやすく工夫していただけると助かります。   それから、第3のところですね。やはり家庭裁判所や、専門家の関与・公的な組織の関与など、やはり触れておいた方がいいのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。柿本委員からも3点御指摘いただいたかと思います。   最初の点と、それから最後の点、子の意見ないし心情を書き込むという点と、協議についてのコントロールという点は、これまでの委員、幹事の御発言にもあったところかと思います。   中間でおっしゃった、説明の工夫についてですけれども、用語について一般にも分かりやすくという御要望がありました。それから、甲@、甲Aというのが出てきて、そのあとにA、B、Cとかα、βとかいうのが出てきますと、なかなか分かりにくいという御指摘もありました。少し検討してもらおうとは思うのですが、難しいところもございます。通常は、こういうときには、どれも選択肢は甲案、乙案とするのが普通のやり方なのですけれども、問題が独立しているときにはそれでいいのですが、今回のように、問題が連動しているときに、この甲案はどこの甲案かというのが分からなくなりますので、それを避けるという趣旨で、異なる記号を使っているということだろうと思います。それにしても、やはり読むのにつらいところがあるというのは確かですので、何かもう一工夫ないかというのを、事務当局にはお考えいただきたいと思うところでございます。 ○木村幹事 ありがとうございます、最高裁の幹事の木村でございます。第3の(注4)などのところでしょうか、父母双方が親権を有する場合に、父母間の意見対立のときに、裁判所が一定の判断をするといった考え方に関してなのですけれども、補足説明においては、子の養育方針については様々な価値観があり得るところであり、裁判所が価値観の対立に立ち入った判断を適時適切に行うことの可否や方法も含めて検討する必要があるといった言及がされているところでありまして、裁判所がそういった養育方針の選択・判断をするといったときに、どういった基準、どういった考慮要素、どういうところを検討して判断するのかと、困難さを感じるところでありますけれども、さらに、裁判所が決定権者を決める、判断するといった場合でも、結局、個別の事項についてのその方々たちの価値判断の当否を判断することにならないかといった懸念も感じるところであります。ただいまのは内容面ですけれども、また、手続としましても、相応の審理を要することになろうと思います。主張、立証を双方からしていただくということになりまして、適時の決定が必要な場合に対応できるのかというところ、また、不服申立てといったことも想定しますと、さらに、暫定的に一審の判断に従った後になって上級審で判断が覆るといったときに、困難な問題が生じやしないかといった、実務的な観点からの懸念もあるということも含めて、御議論、御検討をしていただければと思います。 ○大村部会長 木村幹事、ありがとうございました。第3の3の(注4)、6ページについて関連付けて御意見を頂いたと理解をいたしましたが、今のような御懸念を、補足説明の中に書き込んでほしいという御要望だと受け止めてよろしいでしょうか。 ○木村幹事 補足説明に御記載いただければと思います。よろしくお願いします。 ○大村部会長 分かりました、ありがとうございます。 ○大石委員 ありがとうございます、千葉大学の大石です。まず、最初のところですが、親子の法律関係についての概要図といったものが、第11回の部会資料にあったように思います。そのようなものを最初に付けていただけるとよいかと思います。新聞報道などでは必ずしも正確ではないものが出てしまう可能性もありますので、法制審側から正しい理解の概要図といったものを提供すれば、誤解を招かずに済むと考えます。   第11回の部会資料の概要図でも、親権や監護権とはまた別に、子の扶養義務が、必ず親子関係に付随して発生していることが示されています。したがって、この案の最初のところにありますような、未成年の子の扶養義務というものは、その後の親権や監護権に関する議論とは別にきちんとあるものだというところを、もう少し強調していただけるとよいのかなと思います。また、子の最善の利益についても同様です。とかくここ以降の親権関係の部分が注目されがちですが、その前段の部分が非常に大きくあるんだというところを強調していただく書きぶりにしていただきたいです。それから、他の委員も御指摘になっていますが、部会資料16−1のツリー図のようなもの、例えばどこに何が書いてあって、それについての補足説明は、16−2の何ページが該当するというような参照図があると、もう少しよいのかなと。また、法律家の方々は余りなさらないとは思いますが、よく審議会資料にあるポンチ絵みたいなものとかがあると、更によいかと思います。   最後に、さきほど家裁のお立場から、非常に苦しい心情を話されていたように思いますが、そういう現実があるとなりますと、紛争があった場合に父母で協議できないことは、多々生じていると思われます。そうした場合の保障の仕方がどうなのかと。恐らくそういうことで悩んでいる方がたくさん、パブリックコメントのためにこのたたき台をお読みになって、どこに行き場があるのかと思われるのではないかと思いますので、そこについても、もう少し深めていただければなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。大石委員からは、幾つかの御意見を頂きましたけれども、全体として、パブリックコメントに向けての資料の出し方につき、読まれる方により分かりやすく受け止めていただけるような工夫が必要だろうということで、具体的には、冒頭に用語の関係を示す概念図を置くということや、各部分の関係を示すような図を置くとか、何か全体の見取図のようなものが必要ではないかといった御指摘、それから、第1のところに出てくる子の最善の利益あるいは扶養義務が、他の問題と並んで重要な問題であるということが意識されるような書きぶりにする必要があるのではないかといった御指摘を頂きました。   また、なかなか当事者間で決定ができないというときに、最終的にどうなるのかというようなことにいても、より明確に示すことができたらよいのではないかといった御意見もいただきました。 ○水野委員 水野でございます、ありがとうございます。場所については、第1と第2で2か所なのですが、申し上げたいことは、基本的に同じことでございます。   まず、最初の第1のところで、子どもの意見を聞くことを書き込むという御意見が、最初池田委員から出て、井上委員が賛同され、落合委員や柿本委員もそういう御発言をなさったと思いますけれども、私は、これまでもこの部会で何度か発言してまいりましたように、非常に危惧をしております。児童虐待対応とか、DV対策とか、要するに子どもの養育環境について、ヨーロッパで行われている対策と、日本で行われている対策とでは、前提が大きく違うことが、この問題の背景にあるように思います。   子どもの様子を見るのは当然のことであり、子どもが何を考えているかを把握するのも当然のことですが、それは、お父さんとお母さんのどちらがいいかと尋ねることではないのです。むしろそれは決して尋ねてはいけません。例えば、フランスでは年間10万件近い親権制限判決が下りていて、判決がおりると子どもたちはその間ずっと判事さんとケースワーカーに見守られながら生活をしていて、子どもたちは、固有名詞で担当判事さんを把握していて、たとえばマクロン判事さんが僕のことを決めて見張っていてくれているんだと認識しているという状況があります。そのような中では、子どもにあえて質問をするまでもなく、子どもが何を考えているかは当然把握されているわけですが、そういう背景が全然ない日本では、ただ子どもの意見をストレートに聞くことになります。見知らぬ家裁の調査官や裁判官が、怯える子どもにいきなり、お父さんとお母さんのどちらかを選ばせる質問をすることになりかねません。子どもにトラウマの残る、残酷な選択を迫ってしまうことになると思います。私は、それは、やはりしてはいけないと思います。   それから、この第2の監護者等の権利義務の内容についても、同じように背景の違いが影響しています。この書きぶりは非常に分からないと御批判があるわけですけれども、これにも、やはり日本の構造、つまり家庭内暴力の被害者には逃げる自由しかなく、きめ細かな救済対策がないことが背景にあるために、こういうことにならざるを得ないのだと思います。もしヨーロッパのように裁判所が非常に強い権限を持って、刑事罰を行使してでも親子を引き離したり再統合したりしつつ、DVに対しても児童虐待に対しても当事者間に日常的にまんべんなく介入するという前提の下であれば、両親の権限行使についてもきめ細かくできると思うのです。重要な行為と日常的な行為について分類し、手元で育てて日常的な監督をしている親の方で単独でここまで決められるが、重要なことは両親そろって決定すると決めても、不当な決定拒絶には直ちに裁判所が許可を与えるという保障があれば、細かくきれいに分けていくことはできるでしょう。でも、日本の場合にはそういう条件がございません。そういう条件がないところで、細かくきれいに定義するとどうなるでしょうか。以前、池田委員の御発言だったと思いますが、夫婦が別居中に監護をしている親が何もかも一人で決められないということだと、非常に困ってしまうという実務の感覚を発言されたと記憶しております。どちらかに決めてしまうと非常に困るという事態は、解説の方の、例えば、9ページの(注3)や(注5)にも少し出てきていますが、これも、即座に有効に行われる公的介入がまったく期待できないという背景があるので、どちらかに決めてしまうと、どちらの側でも困ることが生じてしまいます。   したがって、こういう非常に広く、何かよく分からない書きぶりになっているのは、やむを得ないところがあります。もちろん将来も、この現状がいいということではありません。本来はきれいに整理した方がいいけれども、その場合には、裁判所がそういうことについて即座にきちんと介入することが必要で、それができるだけのキャパシティーが裁判所にないために、それが難しいという、構造的な問題に絡めて少し説明をされた方が、我々が苦しんでいることの問題がはっきりするように思います。立場的に書きにくいということはあるのかもしれませんけれども、諸外国と比較して、そういう構造的な弱体さがあるので、本来的な書きぶりによる設計がなかなかできないのだということは、書いてもいいように思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。水野委員からは2点、しかし、合わせて1点だという御発言もありましたけれども、現在の制度的な前提を考えると、子どもの意見を重視するというのには慎重にならざるを得ないという御意見。あるいは、第2のところで、ルールを明確化するのが困難だというのもやむを得ないことなのではないか、そのことを書いてもよいのではないかといった御指摘を頂きました。 ○赤石委員 赤石でございます、よろしくお願いします。ちょっと原田委員のおっしゃったことに賛成の意見と、それから、幾つか補足のことを言いたいと思います。   補足資料の25ページの、認知後に父母の双方を親権者と定めた場面という言及について、これはやはり、婚姻関係にないけれども、事実婚的なこと、父母が共に子と同居して、共同で生活している場合と書かれていて、事実婚の御夫婦の親権の在り方について議論されているということですので、これはやはり、婚姻というものの概念をどうするのかということを、やはり正面から議論すべき。フランスではPACSとか、スウェーデンではユニオンリーブルとかあると聞いていますが、ちょっとここに書かれるのは、私もちょっと違和感がありましたというのは同意見です。   それから、意見の対立の調整の問題というのが、久保野幹事、それから先ほど裁判所の木村幹事でしたか、お話があり、ここはすごく大事なところだと思いますので、やはり共同で親権を定めるときに、どうやって調整するのかということが明示的に書かれていることによって、その安心感なり判断ができると思いますので、そのように思いました。   あと、後段の第4以降のところなんですが、ちょっとお願いがあるので、今言ってしまうんですが、別居中のところの話が後ろで出てくるんですよね。今言うだけなんですけれども、例えば、ひとり親の手当ですとか児童手当ですとか、別居中の親子の扱いについては、例えば厚労省、内閣府の扱いが、ここで書かれているものとちょっと、何か整合性が取れるのかという危惧がありますので、今も厚労省の方お入りになっていらっしゃるのだと思うんですが、やはりちょっと、次回でいいので、どういう扱いになっているのかということを、例えば、すごく児童扶養手当、ひとり親の場合には、面会交流をたくさんすると事実婚に当たるから手当が停止になるですとか、そういうのはもう当たり前の運用としてあるわけですので、どうなっているのか、ここではこういうふうに定めたら、こっちではこんなふうに困ってしまうということになりますと、ちょっと困りますので、私、もちろん御相談で聞いているんですが、厚労省としてどう考えている、内閣府としてはどう考えているという、内閣府は多分ここに入っておられないところの御担当なんだと思うんですが、ちょっと教えていただく機会を予告したいと思います。お願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員からは、補足説明中の事実婚の取扱いについて注意が必要であるということと、意見対立の場合の調整問題については、それをどうするのかということを、もう少し明確に書いた方がいいということ、これらにつき今まで出ている意見に賛成されるということを言っていただきました。   それから、第4以降ということで、別居中の取扱いについて御要望があったかと思いますが、この御要望については、この後の審議のどこかで、御意見を伺えればよろしいということでしょうか、それとも、この資料のどこかに何かを書き込むということを御意見としておっしゃっていたのでしょうか。 ○赤石委員 多分、整合性取れないと、ここで書いても意味がなくなってしまうことがあるかと思うので、一度御意見を伺った方がいいという意見なんですが、ちょっと時間がないでしょうか。 ○大村部会長 整合性が取れなくならないように配慮していただきたいといったことを取りあえず書いていただいて、具体的にどうなっているということについては、どこかで御説明を頂くということでよろしいですか。 ○赤石委員 そうです、はい。 ○大村部会長 ありがとうございます。では、ちょっとそのように、今の点については取り扱わせていただきたいと思います。 ○窪田委員 第3の2のところについて、発言させてください。先ほどから甲@案、甲A案のところに続けて、(注)を甲B案として挙げるという御意見が複数ありましたが、その点については、ちょっと慎重に扱った方がいいのかなという感じがしております。というのは、(注)に書かれていることは多分、ポイントを示すと、様々な事情を考慮して、子の最善の利益のために適切な定めをするということだけなのだろうと思いますが、これが、甲@案、甲A案、甲B案という形で並びますと、それなりに甲B案というのは支持が多くなるのだろうと思います。   しかし、例えば、甲@案や甲A案の中で、「一定の要件を満たす場合に限り」という部分を、「様々な事情を考慮して、子の最善の利益のために適切である場合には、一方のみを親権者とすることができる」とか、あるいは、その逆を規定することもできるだろうと思います。そうすると、結局、甲@案と甲A案、甲B案の違いとして重要なのは、甲@案、甲A案というのは、やはり原則を定めているという点であり、デフォルトが用意されているという点だろうと思います。それに対して、甲B案は全くデフォルトを定めていないというものだということになります。私自身は、その様々な事情を考慮して、子の最善の利益のために適切な定めをするという基本的な考え方については、反対では全くありません。多分、これに反対する人は誰もいないと思うのですが、これだけで、具体的な紛争解決の場面で結論を出すことができるかどうかという点を考えると、なお検討すべき必要性があるのではないかと思います。少なくとも案を並べるのだとすると、甲@案、甲A案はセットにした上で、原則を定める考え方、もう一つの(注)を挙げたのは、原則を定めない考え方ということで、その点は明確にしておかないと、何かパブリックコメントであんまり適切な形での回答を得られなくなるかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。先ほどから出ている3ページから4ページにかけての(注)の取扱いについてですが、(注)に書かれていることの性質についての御理解を示した上で、(注)をもう少し大きく扱うということであれば、甲@、甲Aと(注)の違いが明らかになるような記載にしないといけないのではないかという御意見を頂戴いたしました。ありがとうございます。   取りあえずこれで、挙手されていた方に御意見を頂いたということになろうかと思います。赤石委員から、既に第4のところについて御発言がございましたけれども、他の委員、幹事からも、時間限られておりますが、第4、第5につきまして御意見を頂戴できればと思います。 ○杉山幹事 幹事の杉山です。第4についてコメントがあります。   ほかの箇所でもそうですけれども、特に第4では、(注)が多くて、しかも、太字の(注)になっていますが、重要なもので本文に入れるべきものと、本来の説明としての(注)が混ざっているような感じがいたしますので、少し整理をされた方がいいのかなというのが、全体的な印象です。例えば、第4の2の(1)で、(注1)と(注3)に書かれているようなことについては、本文に入れて、協議上の離婚の要件にするか、あるいはしないか、正面から問う形で書いてもいいのではないかと思います。   また、第4の2の(2)でありますけれども、こちらも、甲案、乙案とありますけれども、甲案に書かれていること、つまり、債務名義を容易に作成することができる仕組みを作るということ自体は、方向性としては異存がないように思われまして、逆に、このように抽象的に聞かれると、賛成という答えが多くなるのではないかと思います。他方で、債務名義としてどのようなものを想定するかによっては、反応が異なることになるとも思われますので、新しいものを想定しているのか、あるいは既存のものをより容易に作成できるように何かサポートの体質を整えるのかというところも、明記した方がいいのではないかと思います。   先ほどの事務局からの説明ですと、部会で審議がされた弁護士による確認は除く趣旨であるようですし、他方で、この(注5)に書かれているような認証ADR機関で成立した調停等に執行力を付与するというものも、また補足説明の中であるような公正証書を作りやすくするということであると、新しいものではなく、どのような新しい仕組みを設けていくのかよく分からないので、より具体的に書いた方がいいのではないかと思います。   先ほどの御説明ですと、ここで言う債務名義というのは、裁判手続外のものを想定されているということのようですが、部会資料13のところで、そして今後の中間試案でもこの後で付け足されていくと思いますが、裁判手続を通じて容易に債務名義を作っていくという制度も考えられるので、そのような箇所も参照できるようにしていくことも必要と思います。   乙案につきましては、部会資料の中では(注)として書かれていたものでありますが、個人的には、このような制度を作ることが可能であるのか関心がありますので、入れること自体は賛成です。 ○大村部会長 ありがとうございます。杉山幹事からは、基本的に(注)が多いのではないかと御指摘をいただきました。本文に置くものと説明の方に回すものを分ける必要があるのではないかということで、幾つか御指摘ありましたけれども、例えば、7ページの(注1)や(注3)は本文にした方がいいのではないかといった御意見を頂きました。   それから、第4の2の(2)の方向性として、甲案の債務名義の問題と乙案の先取特権の問題とが出ておりますが、先取特権については以前はもう少し小さな扱いになっていたけれども、これをこのように乙案にして意見を問うということについて賛成であるという御意見を頂戴いたしました。ありがとうございます。 ○畑委員 畑でございます。今も杉山幹事からのお話に出ていた、第4の2の(2)、養育費に関する定めの実効性向上のところについて、まず申し上げます。   甲案、乙案と、この内容を中間試案として問うということ自体はよろしいかと思いますが、これ、(注4)にもありますように、甲案と乙案というのは別問題で、両立する話ですので、甲案、乙案と書くのがいいかどうかというのは、少し検討していただいてもよいかなという気がいたしました。   それから、(注4)なのですが、乙案、一般先取特権の方について、強制執行手続と担保権実行手続の差異うんぬんということが書いてあり、恐らくは、手続開始のために債務名義が必要なのか、先取特権を証明する文書が必要なのかといったようなことを考えておられるのだろうと思うのですが、この書き方では意味が伝わりにくいという感じがするので、ちょっとこの辺りは、書き方も含めて御検討いただく方がよいかなと思いました。   それから、甲案について、ゴシック体の話ではないとは思うのですが、債務名義を容易に作成することができる仕組みについて、事務局からの御説明にもあったのではないかと思うのですが、今までの議論ですと、容易に作成することができる仕組みが望ましいという意見が多かったと思いますが、他方で、どこまで容易にするかということについては、余り安易なものになるとどうかというような意見もあったかと思います。あるいは、そうなってくると、余計な紛争を生じるというようなこともあり得るかという気もいたします。補足説明の話だと思いますが、そういったことについても少し言及していただく方がよいかなという気もいたします。   もう1点、前にも申し上げたと思うのですが、家庭裁判所への濫用的な申立てを簡易に却下する仕組みの話が、3か所ほど出てきております。部会資料16−1で言いますと、9ページの一番上のところの(注)、それから10ページに(注3)が二つあります。前にも申し上げたのですが、家事審判なので、濫用的なものは元々かなり簡易に却下できるのではないかという気がしております。中間試案にこういうふうに書いて、駄目ということもないと思うのですが、必要性がそれほどあるのかなという気はちょっとしております。濫用的な申立てというのは、ほかの場面でもいろいろあり得て、これらの場面だけという問題でもないような気もしております。強い意見ということではないですが、一応申し上げておきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。3点だったかと思いますが、第4の2の(2)で甲、乙、両案が併記になっているが、この二つの案を検討の対象にするということについては結構であるけれども、しかし、これらは両立しないものではないので、甲、乙という書き方は少し考えてみる必要があるのではないかという御指摘。また、(注4)にこれに関する説明が付いているのですけれども、説明が読みにくいところがあるので、それも検討する必要があるのではないかという御指摘が一つだったかと思います。   それからもう一つは、債務名義の取得を容易にするという考え方が部会では出されているけれども、どこまで容易にするのかということについては慎重論もあったので、補足説明の中でそれに触れた方がよいのではないかという御意見でした。   3番目に、濫用的な申立てに対する簡易な却下というのが、3か所の(注)で出てくるけれども、これは当然そうなると考えれば、注記する必要はないとも考えられるのではないかという御意見を頂戴いたしました。ありがとうございます。 ○久保野幹事 幹事の久保野です、ありがとうございます。第4につきまして、2点指摘させていただきます。   まずその前に、杉山幹事がおっしゃった7ページの(注1)や(注3)は、本文で正面から尋ねる方がよいというのは、同じ感触を持っておりました。その上で、1点目が、第4の1につきましては、協議上の離婚が本文に入っており、(注)で裁判離婚について付記されていますけれども、本文で協議上の離婚だけに絞る理由が、補足説明でどのくらい積極的にされているのかということがちょっと分からないような気もしていまして、一つの方向としては、協議上の離婚と裁判離婚、両方、意見募集という意味では尋ねるということがあり得るのではないかと思いますのと、他方で、もし分けるのであれば、分ける理由について、もう少し補足説明をしてもよいのではないかと思いました。これが1点目です。   もう1点が、9ページの4の面会交流の考慮事項についての(注2)で、細かい言葉の問題で恐縮なんですけれども、ここで交流を求める者というのがB、Cの要素に入っているんですが、求めている人が誰かということは、同居親が別居親に対して子との交流を求めているなど、求める者と交流する者が異なる場面もあり得るような気もしまして、端的に交流の相手になるべき親、表現はともかくとしましても、交流を求めているかどうかということとは結び付けない表現ぶりの方がよいのではないかという感想を持ちました。 ○大村部会長 ありがとうございます。久保野幹事からは3点ありましたが、第1点目は、杉山幹事の(注)に関する最初の御指摘に賛同するということ、それから、2点目が、第4の1が協議上の離婚だけになっているけれども、裁判離婚と双方を本文に挙げた方がいいのではないか、そうでないのであれば、理由をもう少し書いた方がいいということ。3点目が9ページの(注2)のB、Cの表現を改めた方がいいのではないかという御意見を頂戴いたしました。 ○今津幹事 幹事の今津です。第4に関して、2点御意見述べさせていただきます。   1点目は、第4の2の(2)の養育費に関する定めの実効性向上のところですけれども、先ほど畑委員、それから杉山幹事からお話がありましたように、この表現ぶりを少し検討していただければと。甲、乙という書き方が、両立し得るものであれば、この甲、乙という書き方、直前の第3の書き方と並べると、いかにもどちらか一方にという印象を受けますので、その点、工夫していただければと思います。   それから、甲案の方の債務名義を容易に作成することができる仕組みという書きぶりも、杉山幹事がおっしゃったように、この意味合いが少し分かりにくいと。新たなタイプの債務名義を作るということなのか、既存のものを利用しやすくするということなのか、もう少し方向性を示していただくと、意見が出しやすいかなという印象を持っております。   それから、第4の3の、部会資料の16−1でいうと8ページ目のところで、離婚等以外の場面における監護者等の定めというところなんですけれども、表現ぶりとしては、婚姻中の父母が別居したときという形になっておりまして、広く婚姻中の別居状態にあるところ、全て把握するような感じになっているんですけれども、補足説明を読むと、今の766条の類推の場面を明文化するというような趣旨が書かれております。この766条の類推ということであれば、事実上、破綻をしているような状況で類推の基礎が見いだせると理解しておりますので、そういう状況のことを明文化するという趣旨なのかなとも読めるんですが、他方で、補足説明のところでは、婚姻中の父母の一方が無断で子どもと一緒に転居したような場面というようなことにも言及されていまして、必ずしも事実上破綻しているとは評価できないような場面も含まれるように思われますので、この規定を新設するとしても、別居したときというのは、少し表現として広すぎるのかなという気もしますので、もう少し場面を限定するなり、あるいは、あえてしないなりという方向を示していただくと、分かりやすいのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。今津幹事からは、第4の(2)について、先ほどの甲、乙という表現が適切かという指摘に賛同されるということ、それから、甲の方向性を、より明確にすべきではないかという、先ほどの杉山幹事の指摘に賛成されるということ。   それとは別に、第4の3で婚姻中の父母が別居したときとなっているけれども、この別居が、従来の766条の類推の場面よりも広いのではないか、絞り込みが必要なのではないかという御意見を頂きました。   原田委員、石綿幹事、武田委員という順番でお願いします。 ○原田委員 原田です、よろしくお願いします。6ページから8ページにかけて、子の監護に関する事項という言葉が出てくるんですけれども、例えば、父母の協議離婚の際の定めとして、これが協議離婚の要件になるという前提で書かれていて、子の監護について必要な事項となっているんですが、どこまで決めないといけないのかというのが出てこないんですね。8ページのところで、第4の3では、当該親と子の面会、その他の方法による交流、その他子の監護について必要な事項ということで、ここは面会交流が入っていて、養育費は入っていないし、ここは別居なので、婚姻費用はどうなるのだということ、それから、9ページの家庭裁判所が定める事項の考慮要素というところでも、面会交流だけが取り上げられているという形で、子の監護に関する事項を協議離婚の要件にするのであれば、ここは何を言っているのかということを明確にするべきではないかと思います。部会資料12では、子の監護をすべき者、親と子の交流、未成年子扶養義務と三つ挙げられているんですけれども、最低限何を決めないといけないかということを含めて、それを要件にすることはどうかということを明確にした方がいいと思います。   その協議離婚の要件の関係では、元々の部会資料の12では、法律家の関与というのが入っていました。これは、我が国の離婚の中で高い割合を占める協議離婚において、養育費とか面会交流が決められていないと、それから内容が適切かというような問題があって、それでも全部裁判離婚にするのは大幅な制度改革なので、協議離婚の制度は残しながらも、手続と内容面での正当性を担保するということを目的として提案されていたと思います。ところが、この法律家の関与がなくなったままで要件にするということになると、協議離婚のハードルを上げるだけになるのではないかと思いますし、不適切な内容の合意をどのように排除するかということが、何ら担保されないことになるのではないかと。弁護士ができるのかという御意見があったことは承知しておりますけれども、部会資料12のように、元のように本文に戻してはいかがかと。その方法について、最初の説明で、厚労省との協議というようなお話も出てきましたけれども、それはそれとして、本文に戻してはいかがと思います。   それから、第4の3のところでは、今の別居のときの子の監護をすべき者、その他というところは、いつ定めるのかというところが、ここは議論したときも意見があったと思いますけれども、速やかにとか、あるいはそれを要件にするとか、どっちかが申立てがあった場合はとか、何か時期をどう考えるかということも入れるべきではないかと思います。   それから、9ページから10ページにかけて、第5の1、2なんですけれども、ここでは、親以外の第三者による子の監護とか交流に関する事項を、親権者が決めると、協議して決めるとなっているんですけれども、これは、親権者と監護権者が分属している場合も親権者にするという趣旨なのか、分属していない今の状況を前提として書かれたものなのかということに疑問があって、監護を誰がするかを決めるのは、やはり監護者との協議が必要でしょうし、面会交流も監護の一環ではあるかと思います。それを、親権者の協議のみで行えるとするのは、ちょっと問題ではないかと思いますので、もちろん不適切な監護を是正するという意味で親権者と書かれているのかもしれませんが、ここは、監護者の関与を入れた案も提示すべきではないかと思いますし、親権者の変更について、裁判所が決めるとしていることからの、均衡から見てもそのように考えるべきではないかと、そういう案も入れるべきではないかと思います。 ○大村部会長 原田委員から4点だったかと思いますが、1点目として、6ページから8ページにかけて出てくる一定の事項、これを要件とするのはどこまでなのかということを、はっきり示す必要があるのではないかという御指摘がありました。それから2点目が、法律家の関与について、今は落ちてしまっているのですけれども、これを本文に戻して検討に付すべきではないか。3点目が、第4の3の別居の場合についてですけれども、時期についても入れて問う必要があるのではないか。4点目が第5の親以外の第三者の監護ですが、親権者との協議ということになっているけれども、監護者を含める必要があるのではないか。こうした御指摘だったかと思います。   次が石綿幹事ですね。石綿幹事、武田委員、最高裁、菅原委員、井上委員と、たくさんのお名前が書かれたメモを頂いたんですが、残りの時間があと20分ということで、皆さんの意見をすべて伺うのは難しいかもしれないですね。池田委員も挙手されたでしょうか。いずれにしても、時間まで伺って、もし無理だったら次回に送りたいと思います。 ○石綿幹事 幹事の石綿です。3点指摘させていただきます。   まず、第4の2の(1)ですが、一定の例外的な事情について、補足説明で挙がっているような事情を書き込んだ方がよいのではないか、どのような場合に例外になるのかということも含めて、意見が伺えた方がいいのではないかと思います。   2点目は第4の3の別居についてです。これはもう既に、今津幹事、原田委員から出ていることですが、別居の概念・協議をする時期を明確にしていただいた方が、有意義なものになるのではないかと思います。   3点目が第4の4の(1)の(注1)、監護者の指定の際の考慮要素として、(注)の部分で、父母の一方が子を不当に連れ去った場合ということが記載されています。この不当に連れ去ったというものがどういうものを意味するのか、現状の家裁実務の判断しているような不当な連れ去りなのか、あるいは、補足説明を読むと、一方が無断で子どもを連れ去ったという事案も含まれ得るようにも思われます。前半でも問題になりましたけれども、主たる監護者が子どもを連れて別居したような場合を含むのか、含まないのかといったようなことが、問題になってくる可能性が高いかと思いますので、もう少し想定している場面を明らかにしていただくとよいかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。3点御意見を頂きましたけれども、第1点が、第4の2の(1)で、一定の例外的な事情というのが6ページの下から3行目に出てまいりますが、これを示した方がいいのではないか。それから、2点目は、第3について、別居に関して別居の概念と、それから時期の問題、これらについては既に出ている意見に賛成ということだったかと思います。3点目、第4の4の(1)に出てくる、先ほどから話題になっております連れ去りについてですけれども、不当にという文言の意味をもう少しはっきりさせるべきではないかという御指摘を頂きました。   すみませんが、皆さん、少しずつ短めにお願いします。 ○武田委員 では、御要望に応じまして、一つ削ります。4の2に関してのみ申し述べたいと思います。   すみません、私は補足資料付きのもので見ていたので、29ページ、ゴシック体の本文、ここは、子の監護に必要な事項ということだけではなく、具体的に養育費、面会交流、親子交流、このような具体的な表現で記載いただきたいということが、要望の1点目です。   従来の議論から私は(注1)が元々考え方のベースであったと思っていまして、それを前提に頭の中が固まっていたので、やはり御意見出ているとおり、もう一度この(注1)の考え方をきちんと本文に挙げられないかと思っています。これは、勝手に私が想像していることなんですけれども、これを規律化するためには、恐らくこの(注1)に書いてある弁護士、あと養育費の債務名義化で公正証書を作るという話がありますが、この費用、誰が負担するんだという、これがおそらく最も高いハードルになるんだろうなと思っています。なので、正面からきちんと(注1)案も本文で示して、その上で、この課題として、おそらく、国民に負担を求めるっていう方向性というのは、なかなか理解を得るのは難しいかなと思いまして、それをきちんと議論の対象に挙げるために、ゴシックで書くということが必要なのではないかと、そんなふうに考えています。   あと29ページ、(注1)の要件の中で、要は、父母の協議ができない場合と、(注1)の考え方を前提とする考え方なんですけれども、この際に、弁護士という方法もあり得ると思いますし、元々私、父母の離婚に関しては全件家裁関与であるべきという考えなんですけれども、なかなか困難であるということなので、父母が協議をすることができない場合、これは当然DV事案なんかも含むと思います、家裁関与の方策を示して、必要な事項の要件化、法廷行きの実現方法の検討、このようなところができないかなと思いました。   あとは、ちょっと先取特権に関しては、現時点では冷静に受け止め切れていないので、次回以降にさせていただきたいと思います。   最後1点だけ、今回の部会資料16を見る限り、面会交流、例えば、面会交流の早期実現であるとか、これは多分手続の部分なんで、第6で出てくると思うんですけれども、あと履行確保、その辺りが今抜けているなと思っていまして、これは、事務当局にお伺いしたいんですが、これは次回以降出てくると、そういう理解でよいかということを確認したいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。1点御意見と、それから御質問を頂きましたが、御意見の方は、第4の2の(1)をより具体的に書く必要があるのではないかということ。具体的な御主張としては、(注1)を本文にして、どういうことになるのか、何が必要になるのか、お金はどうなのかといった問題についても、意識を喚起する必要があるのではないかという御意見だったかと思います。   それから、もう一つ御質問で、面会交流や履行確保の話は、この後の資料で扱うことになるのかという御質問だったと思いますが、これについては、事務当局からお願いします。 ○北村幹事 御質問ありましたところにつきましては、御指摘のとおり、第6の子の監護に関する事項についての手続に関する規律の見直しの中で、今まで部会の中で出た議論について整理をした上で、お示しできればと思っております。次回お送りする、次回御検討いただく資料の中に含まれているという認識でおります。 ○武田委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○木村幹事 幹事の木村でございます、ありがとうございます。第4の2の(2)、(3)辺りに関してなのですけれども、(2)の乙案、一般先取特権の話が出ているところですけれども、一般先取特権に基づく担保権実行、これを行うためには、執行手続上、養育費等の具体的な金額が定まっている必要があろうかと思います。したがいまして、この乙案が採用された場合でも、当事者間に養育費に関して何ら具体的な合意が存在しないという場合には、具体的に養育費の額が法令によって自動的に定められるといったような、例えばそういったような仕組みがなければ、担保権実行の申立てをすることはできないということになるようにも思われるところですが、(3)で法定養育費制度というものが提案されておりまして、例えば、法定養育費請求権を一般先取特権と位置付けるということが、一つ簡便な考え方としてあろうかと思われ、この点は、(注10)で触れられているとは思うのですけれども、ややそのつながりについて分かりにくさもありまして、本文の方に記載するとか、もう少し分かりやすい記載の仕方もあるのではないかと考えたところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。7ページ第4の2の(2)の乙案で、一般先取特権が出ておりますけれども、金額が定まっているということが必要ではないかということ。それとの関係で、法定養育費の制度を関連付けて理解することが必要であるということ。(注10)があるけれども、それではやや不十分ではないかという御指摘を頂いたかと思います。 ○菅原委員 ありがとうございます。では、手短に、16−2の27ページの第4の講座の件なんですけれども、先ほど久保野幹事からも御発言ありましたけれども、私も裁判離婚についても本文に挙げていただきたいなと思います。補足説明のところで大変丁寧に書いていただいておりまして、とてもよいと思うんですけれども、文章のニュアンスとして一般国民からすると義務が増えるという感じがしてしまうかもしれず、飽くまでも離婚後のよりよい養育やよりよい生活に資するというか、それらを構築していっていただくための支援という文脈で離婚時講座について議論してきたかと思いますので、何かそういう支援であるという前向きなニュアンスが伝わるような補足説明になるとよいのかなと、少し思いました。法律の文書にそぐわないのかもしれませんが、補足説明の方で、よりよい離婚後養育や生活を構築するためのものであるという少し積極的に捉えられるような書きぶりがいいかなと思いました。   裁判離婚に関しては、諸外国ではプログラムを受けなければいけないというのもあったりもしますし、裁判離婚の方が高葛藤であってこうした講座を受ける必要性がより高いと思われるのですが、現状では協議離婚よりも何か弱めた感じの印象が作られてしまうように感じますので、本文の方に挙げていただけるといいのでは、と思いました。よろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほど久保野幹事から御指摘があった点について、賛同されるという御意見でありましたけれども、そのときに、講座の意義について説明することも必要ではないかという御意見を頂戴いたしました。 ○井上委員 ありがとうございます、連合の井上です。1点です。   第4の2の7ページ、(3)法定養育費制度の新設です。子に対する親の養育費負担につきましては、私たち連合も政策的に制度化を求めてきておりますので、こちらには賛同いたします。その上で、養育費の問題につきましては、政府の第5次男女共同参画基本計画において、困難を抱える女性の支援の中に、この養育費の課題が入っています。それから、女性活躍・男女共同参画の重点方針2022(女性版骨太方針)の中でも同様に記載されていますので、可能であれば補足説明で、この部会のみならず他の審議会でも取り上げられていて、そういう背景の下に、この課題が議論されているという見える化もしていただけるといいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。第4の2の(3)の法定養育費制度の新設に賛成であるという御意見と、これについて補足説明で、現在の大きな政策的な流れについての言及が必要ではないかという御指摘を頂きました。 ○池田委員 ありがとうございます、弁護士の池田でございます。私から、第4の2の(1)について申し上げたいと思います。   先ほど来、複数の委員、幹事の方から、(注1)、(注3)を本文にという点、御意見ございまして、私、賛成です。特に、(注1)の@の弁護士等の法律家による確認ということの意義について、若干補足申し上げたいと思います。   原田委員からは、真意に基づかない合意を除外していくという機能があるということが挙げられました。武田委員からは、それによる一定の債務名義化につながるという意義の御説明があったかと思います。それに加えまして、元々この仕組みというのは、部会資料7で、父母が協議離婚に際して養育に関する合意をするときに、子の意思をきちんと尊重した内容になっているかどうかということを確認するという点に、主眼があって出てきた経緯があったかと思います。この点も非常に重要なところでして、子どもに直接話を聞くかどうかは別として、それを踏まえたものかどうかを父母に確認をするという中で、父母にその点をしっかりと認識してもらうという意義もあるかと思いますけれども、そういう価値もあるということを申し上げて、これ是非、本文の中に入れて、国民のパブリックコメントに付するということにしていただければ有り難いなと思います。   更に補足しますと、弁護士確認としてどんなことをやるのかという具体的な形が、まだ私たちもなかなか提示できていないようなところもあるかと思いますので、少しその点、イメージとして申し上げたいと思います。  私たち、法律相談で、これから離婚しますと、それで共同親権というのは今、ないんですよねと、だけど、何かいい方法ないですか、あるいは、親権と監護権の分属したいんだけれども、そこに何か問題点はないですかというような相談を受けることはあります。何度か、私も個人的に受けたことあります。それが、シミュレーションとしてここで使えるかどうか分かりませんが、ちょっと御紹介しますと、やはりそういう御相談を受けたときには、それがどういうことを意味するのかということをきちんと御説明して、情報を提供するということをやります。それから、この方法を選択した場合には、こういうメリットがありますねと。だけど、こういうデメリットもあるけれども、そういうデメリットも了解をされた上で選択されていますかということを尋ね、情報を提供しつつ、真意の確認もするというふうなことをしていくということになると思います。法律相談を受けた場合には、そういうことをしています。   それから、子どもに関する事項については、例えば、養育費であれば算定表というものがあって、こういうことでやられていることが多いですよという情報を提供して、それに基づいているかどうかということを確認してもらう。それから、子どもの面会交流に関して言えば、それにはこういう価値があると言われていますよ、他方でこういう懸念もあって、こういうところをクリアしていかないといけないですよ、子どもさんはこういうときにこういう対応、反応を示すことがありますよっていうようなことも説明をして、合意の内容について一定の示唆をしていくというようなことをしています。恐らく、この弁護士確認ということを取り入れる場合には、そのようなものが一つ参考になっていくのかなと考えています。   長くなってすみません。最後、第5のところですけれども、第三者による子の監護のところで、基本的には当事者の協議に任せるということが本文に書かれていて、ただ、(注)(3)で家裁が決めるということ、そういう考え方もあると指摘をされているところです。この点、典型的には、ある事情があって、例えば、祖父母がずっと子どもを監護してきたんだけれども、突然親権者が出てきて、養育環境も整えていないのに子どもの引渡しを求めてくるというような場合が考えられるんですけれども、やや紛争性の高いような状況で、必ずしも協議だけでは解決できないということは、まま想定されるケースだと思います。そのため協議が整わない場合には家裁が決めるというふうな規律を、本文の中に書いてしまうというのが一つの案かなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは、第4の2の(1)に関して、(注1)、それから(注3)もとおっしゃいましたか。 ○池田委員 はい、3も。 ○大村部会長 それらを本文にといった御意見を頂きました。(注1)については、先ほどから同様の御意見も頂いておりますけれども、(注3)は多少(注1)と性質が違って、本文に織り込むときにどこまで織り込むのかといった問題がありそうですけれども、それも含めて検討をしていただくということにしたいと思います。   それから、第5については、10ページの(注3)を本文に挙げた方がいいのではないかという御意見だと承りました。ありがとうございます。   ほかに、まだ御発言ありますか。あるようでしたら、次回回しにします。もし、原田委員だけでしたら伺います。   棚村委員もですね。では、次回にしましょう。すみません、原田委員、棚村委員から御発言をある旨を記録しておいていただくことにして、まだほかにも御発言の希望があれば、手を挙げてください。次回のためにノートしておきます。赤石委員ですね。あとはいらっしゃいませんか。青竹幹事。   それでは、今の方々につきましては、次回の冒頭で御発言を頂くということにして、その留保の下に、今日の意見交換は終了させていただきたいと思います。   次回の会議ですけれども、次回の会議では、残りの部分について御意見を伺った上で、部会資料16−1のペンディングになっているところ、16−1で申しますと、10ページの第6、第7、第8がペンディングになっておりますので、その部分について御議論を頂きたいと思っております。事務当局の方では、その部分についての資料の準備をお願いしたいと思います。   本日は中途半端になりましたけれども、ここまでとさせていただきたいと思います。次回の議事日程等につきまして、事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○北村幹事 次回の日程ですけれども、2週間後、令和4年7月5日火曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は、改めて御連絡いたします。   先ほど部会長から御指示ありましたように、次回は、部会資料16−1でPとさせていただいている第6以降について御議論をしていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今御案内ありましたが、次回が2週間後の7月5日ということになっておりまして、その次が、更にその2週間後の7月19日ということになります。日程がややタイトで、皆様、資料等を御覧になるのも御負担になるかと思いますけれども、どうぞよろしくお願いを申し上げます。   それでは、これで法制審議会家族法制部会第16回会議を閉会させていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りまして、ありがとうございました。閉会いたします。 −了−