法制審議会 担保法制部会 第19回会議 議事録 第1 日 時  令和4年6月28日(火) 自 午後1時30分                      至 午後5時41分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  担保法制の見直しに関する中間試案のとりまとめに向けた検討(5) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 出席を予定されている方でまだお集まりでない方もいらっしゃるのですけれども、予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第19回会議を開会したいと思います。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。   本日は大西さんと衣斐さんが御欠席と伺っております。   まず、資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 本日もよろしくお願いいたします。今回、予備日としての開催になりますので、新たにお送りした事務当局作成の資料はございません。前回お配りしました部会資料16「担保法制の見直しに関する中間試案のとりまとめに向けた検討(5)」を使用いたします。   資料については以上です。 ○道垣内部会長 最初に申し上げなければいけなかったのですが、予備日にもかかわらず皆さん御出席いただきまして、ありがとうございます。   それでは、審議に入りたいと思います。   前回の積み残しとなっておりました部会資料16「担保法制の見直しに関する中間試案のとりまとめに向けた検討(5)」について議論を行います。   このうちの第1、第2は良いとして、第3の「1 集合動産を目的とする担保権の私的実行の手続」、「2 実行後の再度実行の可否」、「3 集合物の一部について実行がされた場合の効果」については、前回は議論の時間が十分に取れておりませんので、再度議論を行いたいと思います。また、前回から少し時間がたちましたので、事務当局において再度、簡単に部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、19ページの「第3 集合動産を目的とする担保権の私的実行について」の「1 集合動産を目的とする担保権の私的実行の手続」について御説明いたします。   ここでは、集合動産を目的とする担保権の私的実行手続について、実行に先立ってその旨の通知をしなければならないものとした上で、その実行通知の到達によって、その後の新規加入物には担保権の効力は及ばず、かつ、設定者はその時点で集合物を構成する動産の処分権限を失うとの効果が発生することを原則的なルールとしつつ、設定者が新規加入物を実行通知の到達時に存在していた動産と分別して管理していないときは、新規加入物にも担保権の効力が及ぶものとすることを提案しています。   また、ここでは担保権者と設定者の合意によって、実行通知の到達以外にも新規加入の停止事由や処分権限の喪失事由を定めることは可能であるとの考え方をお示ししていますが、その合意の内容が設定者に著しい不利益をもたらすような場合には、公序良俗に反するなどとしてその合意の効力が否定されることもあり得るのではないかとの考え方をお示ししています。   次に、22ページの「2 実行後の再度実行の可否」について御説明いたします。   ここでは、集合物を目的財産とする担保権が一旦実行されても、その後に構成部分となった動産を含む集合物に担保権の実体的な効力が更に及ぶという趣旨での累積的な担保権設定の合意の効力が認められるか否かを問題としています。この点については、一読では、これを認めると担保権が強大になりすぎるなどの御指摘や、事業担保やプロジェクト・ファイナンスの局面での再度実行のニーズについてはむしろ包括担保の問題として検討すべきとの御指摘があったことを踏まえ、累積的な担保権設定の合意の効力を認めないこととし、実行後の再度実行をすることはできないものとすることを提案しています。   次に、24ページの「3 集合物の一部について実行がされた場合の効果」について御説明いたします。   集合動産を目的とする担保権においては、担保権者がその一部のみについて実行した場合に、他の部分の流動性にどのような影響が生じるかが問題となります。先ほどお話ししたような累積的な担保権設定の合意の効力が認められないことを前提とすると、既に実行が終了した部分について再度の実行をすることはできないこととなるため、一部実行後の残部実行を可能とするためには、実行が終了した一部と終了していない残部とを明確に区別することができる必要があります。一部と残部とが所在場所以外の要素によって区別されるときには、このような区別は必ずしも容易ではない一方で、一部と残部を所在場所によって区別することができる場合には、実行が終了した一部と終了していない残部とを明確に区別することが可能であると考えられます。また、一読では、担保の目的物が地理的に離れた複数の保管場所に所在している場合に、各保管場所について同時にしか実行できないのは不都合であって、このような場合には一部実行後も残部の流動性が維持されると考えるべきとの御意見がありました。そこで、ここでは、担保権者が集合物の一部について実行した場合において、その一部と残部を所在場所によって区別することができるときには、残部の流動性は維持される一方で、それ以外の場合には、残部の流動性は失われるものとすることを提案しています。   以上について御議論いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   第3につきまして、1、2、3の御説明を頂いたのですけれども、1、2はそれなりに前回も議論がありましたが、3についてはまだまだ不十分であったと思います。もっともそう申し上げたからといって、以下において、1、2についての議論を妨げるという趣旨では全くございませんで、1、2、3のところにつきまして御自由に、どなたからでも御意見等を頂ければと思います。ただ、3について余り議論していないぞというのをどこかで意識をしていただければ大変有り難いと思います。よろしくお願いいたします。 ○本多委員 ありがとうございます。三井住友銀行の本多でございます。それでは、3につきましてコメントさせていただければと思います。   一部実行の可否に関してなのですけれども、例えば在庫一切のように、複数の流動性の単位を包含する形で一括して担保設定するということが認められる場合に、効率的に担保実行する上で、独立して識別可能な流動性の単位ごとに一部実行が認められる必要があるというところは余り異論がないのだと理解しております。一方で、再度実行に及ぶような態様で一部実行が行われてしまうということになるのだとすると、許容できないという価値判断があると理解しておりまして、例えば、部会資料の25ページ目の21行目以下のケースで紹介されておりますとおり、一部実行とはいえるものの、考え方によっては再度実行とも評価し得るような事態が生じ得るということを踏まえまして、一部実行が許容される範囲を、例えば所在場所ごとに区分するという場合には一部実行ができるのだけれども、それ以外の場合には認めないというふうな考え方自体は理解できると考えております。   もっとも、所在場所ごとの一部実行であれば常に問題なしといえるかというと、必ずしもそうではないように思われまして、例えば、倉庫アルファとベータがあって、その在庫の合計量はおおむね一定なのですけれども、アルファとベータの在庫比率が時期によって大きく変動するということが想定される場合には、結局ここで指摘されているのと同様の問題が生じてしまうと考えられます。そうしますと、つまるところこの事象は一部実行を認める限りどうしても生じてしまうものなのかもしれませんで、そうであるとしますと、なおこういう場合だったとしても許容性が認められるのかどうかという判断を行うべきもののように思われます。   こうした判断をするに際しまして、まず所在場所ごと、あるいは流動性の単位としてそれ以外にも認められる独立して識別可能な単位ごとに、それぞれ1回限り実行できるにすぎないということにするのであれば、少なくとも形式上は再度の実行に及ぶわけではないといえると思いますし、前回、藤澤先生が御指摘になっていらっしゃいますが、結果としてより大きな金額で処分することができるという限りで、設定者にとってもその分、被担保債務の消滅の範囲が大きくなるという恩典が得られるという言い方ができると思います。   それから、入口において流動性の単位ごとに個別に担保設定することによって、結局ここでいう一部実行と同じ効果が実現できてしまうということなのであれば、出口において流動性の単位ごとに一部実行を認めるということも認められてしかるべきもののように思われますことを踏まえますと、所在場所以外の流動性の単位ごとに一部実行するということは許容されてよいように思われまして、そうしますと、第3の3の規律として、所在場所ごとの一部実行をデフォルトルールとしつつも、それ以外に独立して識別可能な流動性の単位と認められる単位ごとに一部実行できるという別段の定めを許容するという設計もあるのではないかと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見等はございますでしょうか。 ○阪口幹事 阪口です。一部実行のところではないけれども、よろしいでしょうか。 ○道垣内部会長 はい、結構です。 ○阪口幹事 この一部実行にも若干関係しますけれども、前回、優先担保権が実行によって固定したときに、劣後担保権が当然に固定するのかという問題、しめしめ問題ということになるのか分かりませんけれども、そういう話が少し出たと思うのです。ここでいう固定というのは、その後の新規搬入物が担保対象になるかということですけれども、そこは少し明確に議論した方がいいだろうと思って、意見を述べさせていただきます。   確かに集合物の範囲が全く同じ場合、例えば在庫一切でもいいですし、リンゴならリンゴとか、果物とかいう範囲で決められる場合に、一つの集合物なのだから、優先劣後の関係がある複数の担保権が設定されていたときに優先担保権の実行による固定は当然に劣後担保権の固定を伴うような感じもします。ただ、そのように必ずしも即断できないのではないかと思う点が五つほどあります。   一つ目は、まず、理論的根拠がはっきりしないということです。本来、固定事由はそれぞれ別々に定めることができるはずですので、そうすると、種類としての特定は同じでも、時的要素が異なる結果、実は異なっているのではないかということがあり得るように思います。   二つ目は、仮に優先の固定が当然に劣後の固定を伴うとすれば、劣後担保権者が知らないうちに固定が生じるということになりますし、また、逆に部会資料の22ページにあるように、設定者と担保権者の合意によって固定が覆滅するのであれば、これまた知らないうちに覆滅するということで、いずれも全然対外的に分からないことですので、劣後担保権者にとっては少し不都合な感じがします。   三つ目は、優先担保権者の被担保債権額が少額で、在庫の方がよほど多いという場合を想定してみてください。この場合、劣後担保権者からすれば、どうぞ、優先さん、持って行ってくださいと、でも、私は今後もまだ債務者と取引続けますよと、そういう選択肢があってもよさそうですけれども、当然固定となると、それがなくなるということになります。   四つ目は、後で出てくる法的実行のときの議論との関係です。集合物が同じなのだから、優先担保権の実行は当然に劣後担保権の固定を伴うというのであれば、素直に考えたら、逆の劣後担保権の法的実行も優先担保権の固定を当然に伴うというふうになりそうな感じがします。必然ではありませんけれども、素直に考えたらそんな感じがします。しかし、そうすると、第12回の会議のときに阿部先生が根担保に関して御指摘されたと思いますけれども、他の担保権者の実行に関わらず融資を継続するかどうかを選択できる制度が望ましいのではないかということがここで引っ掛かってくるように思います。ここは、第4のところで、法律効果とか幾つか考えなければいけないことがあるので、本来そちらで議論することかも分かりません。   五つ目は、集合物の範囲が全部でなく一部の重なり合いがあった場合の問題です。この問題は、法制審に先立つ商事法務における研究会の第7回で検討されたと記憶しております。そのときの資料と議事録を読み直してみたのですけれども、協議としては、重なりの判断も難しいし、重なる限度で固定するのかどうかもよく分からないし、もしそうするのだったら特別の規定が要るのではないのかという、そんな論調だったように思うので、そうするとここでも同じことになるのかなと思います。   ただ、当然固定が望ましいという政策的判断はあり得ると思うのです。当然固定と考えなければ、設定者が複数の実行のリスクにさらされるのは間違いない。また、再度実行の不可という部会資料の22ページにあるルールを採るのであれば、優先の実行が劣後の方の固定を伴わないとしたときには、担保権者は常に二つずつ、若しくは三つでもいいのですけれども、複数の担保権設定をすることを選択するのではないのかと。つまり、1個目を実行しても二つ目は固定しない、三つ目は固定しないという論理になるはずですから、そうしたら再度実行がなんぼでもできるという問題になって、先ほどの一部実行の議論に少し近いところがありますけれども、それはそれでまた不都合な感じもします。   ただ、最後に述べた不都合な点に関しては、根抵当権の被担保債権の確定に関する398条の20の第1項第1号のルールが参考になるのかなと思います。こちらの方は、一人の担保権者が複数の抵当権を持っているときに、一つでも実行すればほかのも当然に確定するという規律です。3号の方は知って2週間で確定という規律で、覆滅効もありますけれども、1号の方はもう全部確定ということになります。もし仮にこの規律と同様の規律を採用すれば、先ほど述べた、一人の人が複数持っていても、自分が実行する限りは全部固定する、でも、他人の分の実行では固定しないという考え方は採り得るのかなとも考えられる。そういうふうに、理論的な問題、若しくは政策的な問題のバランスを考えて、優先担保権の実行が劣後担保権の固定を当然にもたらすと考えるべきなのかどうかについては、私自身は若干疑問があるので、御検討いただけたらと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。ポリシーの問題として、両方あり得るというのはよく分かるのですが、第1の理論的な話というのは多分、この部会資料自体は、場所によって区別していない限りにおいては、一部実行であっても効果が生じるというわけですから、その塊については、第2順位、第3順位がいても、もう流動性が喪失すると考えて、仮に第2順位の権利については、その対象がずれているとしますと、その部分を除いた形で、第2順位担保権の一部実行が生じることになりますので、その部分は固定しないということになるというのは、この案の作りだと思います。ですから、理論的にそうなるのかと言われると、理論的になるのだという回答も可能だとは思うのですが、ただ、おっしゃるように、政策判断としてそれでいいのかという問題は、多くの点にわたって分析してくださったように、議論があり得ると思いますので、御自由に御議論いただければと思います。   それでは、ほかに。 ○片山委員 慶應義塾大学の片山でございます。どうもありがとうございます。前回も申し上げた点かもしれませんが、実行による固定化の問題ですけれども、19ページ以下の実行による固定化という話は、実行通知の時点を基準として、通知後に搬入された動産については担保権が及ばないという意味での固定化ということを大前提としているわけですが、実行通知の効果としては、事後搬入物、新規加入物について担保権が及ばないという意味での狭義の固定化として必ずしも考える必要はなく、飽くまでも設定者の通常の営業の範囲の処分権の喪失と、担保権者への換価処分権の付与という点が実行通知の主要な効果なのであって、真の意味の固定化は換価処分が完結した時点と考えることもできる、換言すれば、通知後、換価処分が完結するまでに新規加入した物については、担保権の効力が及んでもいいのではないのかと思っています。   それとの関係で、再度の実行がなぜ禁止されるのかというと、これは理論的には、一度の実行が完結してしまうと、それによって担保権は全て消滅するという大前提があることから、再度の実行はできないということになるのだと思います。ですから、一部の実行が可能かどうかというのは、共同抵当で一方の目的物が実行できるのと同じような形で、その時点で担保権自体は消滅しないと判断ができるということであれば、残り部分の再度の実行は可能であると考えるということになるのでしょうが、集合動産譲渡担保に関しては、そのような議論をしなくても、固定化の意味を再検討することによって、かなりな問題の解決がなされるようにも思われます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。片山さんの政策判断について伺いたいのですけれども、通常の営業の範囲での処分権限を失っても、搬入されてくるものについては担保権の効力が及んでいくと、ただ増えるだけになるわけですが、そういうふうな担保権の設計というのが望ましいと片山さんはお考えなのでしょうか。 ○片山委員 そうですね、そもそも流動的なものを担保に取っているということですので、通知時に固定する必然性はなく、その後の新規加入物についても担保権の効力は及んでいると考えるのは通常の合理的な意思の範囲ではないかと考えてはおります。 ○道垣内部会長 通常の営業の範囲での処分が認められているから、設定後の搬入物についても効力が及ぶのだという、バランス論としては考えないということですね。片方がなくなっても片方が生きるということだから。 ○片山委員 そうですね、出は阻止するが、入りは阻止しないということでしょうか。 ○道垣内部会長 お立場はよく分かりました。   ほかに御意見はございますでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。連合の村上です。分別に関して、場所的な分別だけなのかということについては、前回、第3の3(2)のただし書に関連して意見を申し上げたところです。本日の第3の3の一部実行に関しても同様のことがいえるのではないかと考えております。つまり、実行開始通知が到達した日時が明確であれば、納品書等により、それ以降に流入した動産を日付によって区別することは可能ではないかと考えました。場所以外の要素によって分別できないのであれば、実行開始通知以降に流入する動産についても担保権が及ぶのは合理的ではないか、通常の範囲ではないかというような、先ほど御意見もありましたけれども、一般債権者に対する公平性という観点から考えると、やはり安易には認められないのではないかと考えております。是非そういった観点からの御検討もお願いしたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに。 ○大澤委員 弁護士の大澤でございます。先ほどの片山先生等のお話がございました、担保権の効力、固定化の及ぶ範囲のところでございますけれども、担保権者からすると、いつ通知を出すのか、その前にいろいろな受忍義務のお話もありましたが、担保対象物がどれぐらいあって、それを踏まえて、それでいつ通知を出すのかというところでの裁量を持つことが担保権者においてできる以上、通知をもって固定化というものが発生して、それ以降、分別管理されれば、動産というものに関していえば、バランスがとれる手続になるのではないかと私の方では考えております。その合理的な意思というのがなかなか難しいところだというのは私もよく理解しておりますけれども、そういった担保権者の方での裁量と意思決定がある程度できる状態にございますので、そういった意味では、こちらの部会資料のとおりに、通知が到達した後に加入した動産については効力は及ばないと考える方がむしろ合理的なのではないかと思う次第でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○阿部幹事 ありがとうございます。阿部です。資料そのものの検討ではないのですけれども、先ほど阪口幹事がおっしゃっていた、担保権実行によって劣後担保権が当然に固定化されるのかという話について少し、申し上げる必要があるかどうか分からないのですけれども、念のため、思ったことを申し上げようと思います。前回、阪口先生のお話を聞いたとき、私も藤澤幹事と同じような感覚といいますか、劣後担保権は固定化するのではないかと何となく思っていたのですけれども、それは、普通、担保権が実行されると劣後する担保権も消滅するということが多分前提にあって、それで、消滅するからには固定化して、優先弁済を与えなければいけないのではないかと思っていたのです。しかし、よく考えると、集合物の担保権に関しては、実行したときに当然に劣後する担保権を消滅させる必要があるかというと、必ずしもそうではないかもしれません。通常、何のために劣後担保権が消滅するのかというと、目的物を換価するにあたり、買受人が負担のない状態で買えないと高く売れなくて、高く売れないと優先する担保権者の利益を害するからだと思うのですけれども、集合物の担保権に関しては、もし、劣後担保権は固定化せず、そして、劣後担保権の効力は優先担保権の実行によって売却されたものには及ばず、引き続き元の所在場所に新しく入ってきたものに及び続けるにすぎないのであれば、それはそれで別に担保権を実行した優先担保権者を害することにはなりません。そういうふうに考えていくと、普通の担保権は、実行すると劣後担保権をも消滅させる効果があると思うのですけれども、集合物の担保権に関しては、必ずしもそうしなければならないわけでもないのかもしれないと思いました。   そうだとすると、阪口幹事のおっしゃるように、消滅せずに、そのまま元の保管場所など所在場所に新しく入ってきたものに引き続き劣後する担保権だけが及んでいくというような事態もあり得なくはないかなと思います。ただ、それが実際に望ましいことなのかという議論はその先、また別にあると思いまして、特に再度の実行を認めないというのであれば、「しめしめ問題」を生じさせないという正に政策判断として、劣後担保権も固定化するという考え方はあり得るかと思ったのですけれども、普通の担保権みたいに当然に、実行によって劣後する担保権も消えています、だから固定化させなければいけないというような話にはならないのかということを考えた次第です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。十分にあり得る立法論だと思うのですが、阿部さんのお考えを2点についてお伺いしたいのですが、そのときには、第3の1(2)について、こういうルールは置かないということになるのかしら。つまり、固定化した時点で存在しているものについて、これについて実行されると、あとは既存の状態が存続すると考えると、後から入ってきたものが分別して管理されていないときに、既に固定化したところにひっ付いてしまうと考えることは適切ではないことになりそうでして、ひっ付かないという規律にしないと阿部さんのおっしゃった結論というか効果が導けないような気がしたのです。そこで、そういうふうなことのつながりはあるのかしらというのが第1点です。第2点は、阿部さんのおっしゃった立法論は、後順位担保権者に分け前があった場合もなかった場合も同じなのかしらということなのですが、どういうふうにお考えになられますか。 ○阿部幹事 まず第1点は、第3の1(2)の新規加入物への効力についてどう考えるかということだと思うのですけれども、そこについては普通に第3の1(2)のような規律が妥当しているという前提で話をしていました。だから、この規律は、実行した担保権者に関しては新規加入物には及ばなくなって、劣後する担保権者は固定化しないので新規加入物にも効力が及ぶという可能性があり得ると思ったのですけれども、もしかすると、そもそも第3の1(2)を置くようなこと自体が。 ○道垣内部会長 ごめんなさい、第3の2(2)のただし書。 ○阿部幹事 ただし書ですか。すみません、ただし書を置くべきなのかという御質問の趣旨が、私にはよく分からなかったのですけれども。 ○道垣内部会長 つまり、分別していなかったら前の第1順位にひっ付くわけだよね、ただし書の規律というのは。 ○阿部幹事 はい。 ○道垣内部会長 ところが、阿部さんがおっしゃったのは、第1順位がその時点で固定化して実行されて、その後の入ってきたものとかについては後順位のみの対象になっていると考えるという考え方ですよね。そうすると、少なくとも1(2)のただし書が適用されるような場面というのをなるべく少なくしなければ、何となく絵がうまく描けないような気がするので、少し伺いました。ごめんなさい、ただし書と、最初からきちんと言うべきでした。 ○阿部幹事 理解しました。すみません、御質問の趣旨をきちんと分かっていませんでした。   ただし書みたいなものはない方が、確かに後順位の担保権者の新規加入物への効力を強めるといいますか、保障することになるかなとは思います。ただ、私も最終的にそうしたいと思って言っていたわけでもありませんので、ただし書のようなものを置くことも必ずしも否定はされないかなとは思いました。だから、劣後担保権者の新規加入物への権利を保障するべきだとまでは私は思っていなかったというのが率直なところです。   分け前とおっしゃっていた第2の質問は、どういう御趣旨なのでしょうか。分け前とは何のことなのかと。 ○道垣内部会長 つまり、分け前というのは、実行して、例えば、配当をどう仕組むかというのは問題あるのですけれども、後順位の担保権が全く実行されないでずっと過ぎている場合は、先ほど先順位の担保権が実行されたけれども後順位とは無関係だよねという感じがするわけだけれども、先順位の担保権の実行で清算金が発生して、それが後順位の担保権者に行くということになったら、後順位担保権者も既に優先弁済権を一定程度行使しているわけであって、無関係ですという話とは少し違いますよね。そうすると、無関係ですというふうな制度設計というのが、後順位担保権者に何らかの、これはどういうふうに仕組むかによるのだけれども、少し配当があったような場合にも、そういうふうな制度設計は可能だとお考えになるのかという質問です。 ○阿部幹事 分かりました。やはりそこは二者択一なのではないかと思いました。つまり、清算金から優先弁済を受けるのであれば新規加入物は諦めなければいけないし、新規加入物が欲しいのだったら清算金からの優先弁済は諦めなければいけないと、その選択を劣後担保権者がするように仕組むというのが私の発想の前提としてはありました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。よく分かりました。   ほかに御意見等はございますでしょうか。よろしゅうございますか。   阪口さん、阿部さんがおっしゃった問題というのがあって、なかなか難しい問題が3についてもあるということがよく分かってよかったのですけれども、それではまとめるというのはどういうふうにしますかと言われると、少し困ってしまいます。議論を踏まえまして更に検討したいと思いますけれども、何かこの時点でございますか。   そうしますと、第3の1から3のところはよろしゅうございますでしょうか。それでは、頂いた御意見を踏まえながら、次のクールの際に説得的な着陸点といいますか、を何とか見いだすようにしたいと思います。ありがとうございました。   それでは、先を急いで恐縮でございますけれども、「第4 新たな規定に係る担保権の競売手続による実行等について」について議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、26ページの「第4 新たな規定に係る担保権の競売手続による実行等について」について御説明いたします。   一読では、新たな規定に係る担保権は、民事執行法第190条以下の規定に基づく競売によって実行することができるものとすること、新たな規定に係る担保権の担保権者は、一般債権者による強制執行手続及び他の担保権者による動産競売手続において配当要求をすることができるものとすることを提案しました。これらの点については特に異論は見られなかったため、従前の提案を維持しております。   また、一読では、新たな規定に係る担保権の担保権者は、無剰余である場合には、劣後担保権者による動産競売や一般債権者による強制執行の不許を求めるために、第三者異議の訴えを提起できるものとすることを提案しました。この点については、無剰余か否かについて執行異議に対する執行裁判所の判断と第三者異議の訴えの受訴裁判所の判断とが矛盾するおそれがあるとの御指摘がありましたが、判決手続である第三者異議の訴えにおける判断が事実上尊重されると考えられることなどから、そのおそれは大きい問題ではないとの御意見もありました。そこで、この点についても従前の提案を維持することとしております。   これらに対して、執行官は、差押えをしたときは、その申立てに係る担保権の設定者を設定者として登記等を備えている担保権者に対し、その旨を通知しなければならないとの考え方は、今回新たにお示ししたものです。この通知の在り方については、第2の2における議論と同様に、登記等を備えた担保権者に対して一律に通知するとの考え方のほかに、設定者に対して、実行の対象となる目的物について担保権を有する他の担保権者への通知義務を負わせるとの考え方もあり得るところですが、この局面では、優先担保権者に対して配当を受けるための機会を確保する要請は強いと考えられる一方で、設定者に対して通知義務を負わせる考え方は実効性を欠いていることなどから、登記等を備えた担保権者に一律に通知する義務を執行官に負わせるとの考え方を提案しています。   そのほかに、劣後担保権者の競売による担保権実行に際して優先担保権者が特段の行動をとらなかった場合に、優先担保権を消滅させるべきか否か、また、私的実行手続と動産競売手続が衝突した場合に、その関係をどのように調整すべきかなどを問題提起しております。   以上の点について御議論を頂ければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を伺えればと存じます。   民事執行法の規定によって裁判所の実行手続というものをとるということについて、気になるところはあるのですが、比較的、皆さんには異論がなかったと理解しております。あとは3とか4とかの手続をどういうふうに組むのかという問題かと思いますが。 ○阪口幹事 阪口です。先ほどの御説明では余りはっきりおっしゃらなかったのですけれども、一読の段階では、集合物に関する一般債権者の差押えに対する第三者異議や配当要求は、処分権限を設定者が持っている限りはできないという提案が部会資料3では提案されたと思うのです。それに対して、第4回会議で、そうすべきではないのではないかという意見が結構あったので、今回、集合物を含めて第三者異議なり配当要求できるという提案がされているのだと思うのです。   その結果、法律関係を確認したいのですけれども、まず、一般債権者の差押えがあっただけでは集合物は当然には固定しないと考えて、かつ、担保権者が配当要求するというのは、自分の債権回収だから、これは固定する、他方、第三者異議で飛ばせば、これは固定しなかったと、そういう理解なのかどうかを、部会資料の読み方として確認したいのですけれども、それはそのような理解でよろしいでしょうか。 ○笹井幹事 集合物については、この作成過程で十分な検討ができておりませんでしたので、ここは少し、もう一度検討させていただけますでしょうか。 ○阪口幹事 今回のゴシック体の部分は、個別動産に関する規律というふうに、ということですか。 ○笹井幹事 はい、おっしゃるとおりです。 ○阪口幹事 途中から、30ページぐらいからは固定のことも書いてあるので、集合を含む話かとも思っていたのですけれども、そこはどうすればいいですか。 ○笹井幹事 一般債権者の差押えについては、別途検討させていただけますでしょうか。 ○阪口幹事 はい、分かりました。   では、次に、続いてで申し訳ないですけれども、第3のときに私が少し述べたことに関係しますけれども、劣後担保権者が実行したときに優先担保権者の集合物は固定するかどうかという点はどちらなのでしょうか。 ○笹井幹事 それは固定するという前提で作成しております。 ○阪口幹事 第三者異議で飛ばした場合には、もう一遍また覆滅するという前提ですか。 ○笹井幹事 そうですね、そこはそうなると思います。 ○阪口幹事 そうすると、劣後担保権者がまず実行します、そうすると、一つの集合物なので固定します、これに対して優先担保権者は配当要求する、これは当然、優先担保権者も実行していますから、両方いずれにしても固定。次に、第三者異議で劣後担保権者の差押えを飛ばせば、これは元々差押えがなかったと同様のことになるので、全部、優先も劣後の人も、いずれも固定効が覆滅して流動状態に戻る、こういうことになるのでしょうね、今の話だと。他方、余剰が多くて、別にどうぞ持って行ってくださいという場合も当然固定してしまうということだったら、これは、先ほど第3のときに述べた、優先担保権者が今後も取引継続したいということはできないということになるわけですよね。 ○笹井幹事 それはできないという前提でした。 ○阪口幹事 なるほど。今現在、少し局面が違いますけれども、預金に差押えが入ったときに、金融機関は、債務者の資力等を考えて、今後も取引を続けていくのか、それとも、もう自分も期限の利益を喪失させて相殺を掛けていくのか、選択していると思うのです。それと同じに、劣後担保権者が仮に実行したとしても、優先担保権者の方が今後もその取引を続けるかどうかというのは、そこは本来、選択権があってしかるべきではないかと思います。これは根担保のところの議論で、2週間の間に追い貸しをしてどうこうというような話が元々根抵当にあったと思いますけれども、あれと同様に、やはりそういう仕組みの方がどちらかというと望ましいのではないかとは思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。流動集合動産の場合には、かなり違った問題状況になりますので、なかなか一緒には論じにくいところがありますよね。そもそも差押えというのは集合物についてはできないわけですよね。ということになると、個々の動産についての差押えということになって、それが、ごく一部が差し押さえられたときに、そもそも剰余というのをどういうふうにして判断するのかという問題もあるのかもしれませんし、割り付けの問題ですけれども、なかなか集合物については難しいかもしれません。しかし、もちろん集合物についても話をしていただく必要がありますけれども、よろしくお願いいたします。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。どうもありがとうございます。私自身も全く整理ができていないところもございまして、ちんぷんかんぷんなことを申し上げるのかもしれませんが、第4の1のところで、私的実行と別に法的な競売の手続が認められて、いずれにせよ優先担保権者はそれを選択できるという点は争いがないということでいいのかと思いますが、次の問題として、一旦優先債権者が私的実行に着手したにもかかわらず、途中から法的な競売に切り替えるということが可能なのかという問題がありそうです。ただ読んでおりますと、最初の通知の固定化が一旦解消されて、その後改めて差押えをするというときに目的物の範囲が広がることが問題だという趣旨のことが書かれていたような気がしますが、そういう理解でよいのかどうかということで、その点は、先ほど私が申し上げたことからしますと、十分に許容されるのではないかというのが第1点です。   第2は、先に優先担保権者が私的実行に着手しているにもかかわらず、後順位の劣後担保権者が法的な手続で競売を申し立てることができるのかという点です。これはやはりできては困るようにも思われますが、以上2点、確認をできればと存じます。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 事務局からございましたら、お願いいたします。 ○笹井幹事 二つ目の、優先担保権者が私的実行に着手したのだけれども、後から劣後担保権者が法的な実行をしたという場面については、31ページの18行目、(2)で言及しています。優先担保権者が私的実行をしたからといって直ちに劣後担保権者による動産競売の申立てが当然に排除できるというわけではない、ただ、私的実行の方が通常は早く終わりますので、その結果として、処分清算であれば第三者が完全な所有権を取得することになりますし、帰属清算の場合には優先担保権者自身が所有権を取得することになり、そうなると劣後担保権者の担保権も消えてしまうので、動産競売もできなくなるのではないかと考えております。   一つ目の方は、30ページの5(1)に書かれた論点ではないかと思いますけれども、まず私的実行をしたとすると、そこで固定化が発生することになりますので、実行通知を撤回することによって再度の流動性を付与することができるのかどうかという問題に関わってくるのだと思います。一旦固定化が発生することによって、その間、ほかの第三者との利害関係も発生し得るということからすると、撤回に遡及効があるかどうかにもよるかもしれませんけれども、担保権者が一方的に実行通知を撤回することはできないのではないかとは考えておりますが、その辺も含めて様々な問題があるのではないかという、ここは余り結論的なことが書いてあるわけではございませんで、問題提起のようにとどまっておりますが、(1)でその論点について扱ったということです。 ○道垣内部会長 いろいろ不十分な点を御指摘いただきましてありがとうございます。片山さん、何か続けてありますか。 ○片山委員 どうもありがとうございました。私の申し上げた第2点は、31ページですが、そうしますと、手続的には優先担保権者の私的実行と劣後担保権者の法的な競売手続とが並行し得るということが大前提で、その上で、無剰余の場合には、先順位の優先担保権者は第三者異議で阻止することもできるということになりますでしょうか。しかし、実際には、私的実行の方が先に終わってしまうだろうから、事実上私的実行の方が優先して終わってしまうというまとめ方になるわけですね。 ○笹井幹事 おっしゃるとおりで、無剰余の場合に第三者異議の訴えを提起することができるというのは、これは提起することができるかどうかということ自体も一つの論点ですけれども、現行の判例に従って言えば提起することができるということで、そのこと自体を否定するわけではありませんが、並行してはいけないという調整規定を何か別途設けるということは今ここでは考えていないということです。 ○片山委員 どうもありがとうございます。そうしますと、逆に剰余がある場合には第三者異議は言えないということになりますと、両方が並行して、場合によっては競売手続が先に終わってしまう可能性もあるということになるのでしょうか。仮にそうだとしますと、私的実行同士の場合は先順位担保権者だけしか実行を認めないで、劣後・後順位担保権者には私的実行は禁止するという議論をしていたわけですが、法的手続であれば、後順位担保権者も実行が可能であるということになりますと、いささかバランスを失しているように思われます。仮登記担保と同じには論じられないのかもしれませんが、仮登記担保でも、せっかく仮登記担保を設定しても、後順位担保権者が競売手続をやってしまうと抵当権と同じような取扱いになってしまうということですと、結局私的実行のメリットがなくなってしまい、それが仮登記担保が使われなくなった要因の一つであるといわれています。そうしますと、この動産譲渡担保に関しても、後順位の担保権者が、法的手続という形でかかわってくるということになりますと、担保としてのメリットが半減してしまって、使いにくくなってしまうという面があるのではないかという点が気になるところではあります。   もちろん割り切り方で、剰余が発生しないことが明らかなケース、そのようなケースでは法的手続で後順位担保権者が介入してくる余地はないですから、正面から私的実行で行くけれども、剰余が発生しそうなケースは、後順位が絡んでくるし、面倒だから、もういっそのこと法的手続に任せてしまえというような行動パターンになるのでしょうか。それはそれで一つの在り方ではあるのでしょうが、できれば後順位担保権者のイニシアチブをなるべく押さえておいた方が担保権としてのメリットにつながるのではないかとは思った次第でございます。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。片山さんが発言するたびに私が突っ込みを入れてしまって、申し訳ないのですが、ついつい突っ込みを入れたくなります。先ほど被害に遭った阿部さんも笑っていますけれども。片山さんの目的を達成するための方策なのですが、例えば、第4の1の競売を申し立てる、これは固定化した後でないと駄目だと、そういうルールというのは可能でしょうか。つまり、そうしますと、後順位者というのが先順位のオーケーをとらなければ実行に着手できないとするならば、後順位がイニシアチブをとって固定化をもたらすことはできなくて、もちろん差押えもあるのですが、差押えになりますと集合物自体が差し押さえられないという問題が絡んできますので、少し別なのですけれども、固定化した後でないと1が動かないというふうにすると、片山さんのおっしゃったようなことが達成できるかなと伺っていて思ったのですが、いかがですか。 ○片山委員 片山でございます。どうもありがとうございます。それは一つの方向性で、とにかく私的実行という意味での固定化を優先するということですかね、としますと。 ○道垣内部会長 というか、集合物自体の競売という形が一般には予定されていないわけですよね。そうすると、固定化をどこで起こすかなのだけれども、裁判所の手続によって固定化が起きると考えるのか、固定化が起きて、固定目的物だからこそ裁判所の手続で実行できると考えるのかという、後者の考え方もあり得るのかなと思って、それが片山さんの目的に適合的なのかなと思ったということなのですけれども。これは私にそういう強い意見があるというわけではないのですが。 ○片山委員 そうしますと、まずは私的実行に着手してからでないと競売ができないということになりますが、少なくとも先順位担保権者としては、私的実行によらずに法的手続ができていいのではないかという議論はまた出てくるという気はいたしましたが、一つの方向性かとは思いました。どうもありがとうございました。 ○道垣内部会長 なるほど、逆だということですね。ありがとうございました。   ほかに御意見はございますでしょうか。 ○阪口幹事 すみません、何度も。29ページの4のところにある、担保権が消滅するかどうかという部分に関してです。   理論的にはもちろん両方考えられるのだろうし、最後は政策判断かなということになると思うのですが、その政策判断としては、仮に今回の立法がABLの促進等を考えるのであれば、消滅の方が望ましいのではないのかなと思っています。それは、動産の市場において、安心して買えるということがまず大前提になるだろうというのが一つです。   もう一つは、そうすることによって逆に、登記することでリスクヘッジできるという動機付けになります。30ページの24行目には、必ずしも登記があるからといって大丈夫とは限らないという記載もありますけれども、登記されていれば第4の4のルールで通知が来るわけですから、今後のABLの促進ということで考えるのであれば、買手のことを考えて担保権は消滅、それに対する担保権者のリスクヘッジ策は登記という、これで一つのバランスがとれるのではないのかなと思っていますので、ここは消滅の方が政策として望ましいのではないかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。藤澤です。一般債権者による差押えの保護の観点から、民事執行法のルールに少し手を加えた方がいいのではないかと思う点があって、発言させていただきます。   現行法ですと、動産執行に関して民事執行法128条の超過差押禁止のルールがあって、差押債権者は自分の債権額と費用の範囲でしか差し押さえることができません。他方で無剰余禁止の原則がありますので、剰余がないと差押えが無効になってしまうルールもあります。担保権が付いている場合にどうなるかいまいち私は理解できていないのですけれども、もし執行官を伴って動産の差押えに行ったところ、「これくらいの範囲ですね」ということで差押えが認められたのだけれども、担保権が付いていた場合に無剰余とされてしまうことがありそうです。特に、複数の動産を目的とする担保権が付いているときに、被担保債権全てを差押えの対象となった動産に割り付けて計算すると無剰余とされてしまうというようなことがあり得るかと思いまして、今次の改正に際しては、担保権の存在が明確になっている場合には、一般債権者は、自らの債権額に加えて、自らに優先する被担保債権額の分も、たくさん差し押さえられるルールとする必要があるのではないかと考えました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。それは、差押えのときには担保権の存在が分かっているという前提ですか。 ○藤澤幹事 例えば、登記がある場合のように、担保権の存在が分かっているときは、たくさん差押えさせてあげてもいいのではと考えました。 ○道垣内部会長 分かりました。ありがとうございました。 ○井上委員 井上です。ありがとうございます。先ほど阪口先生と笹井さんのやり取りで出てきていたのかもしれないのですけれども、先ほどのやり取りの中で、第4の3のところですかね、集合動産譲渡担保について、劣後担保権者がいる場合に、その劣後担保権者が法的な実行を掛けたときに優先担保権者による第三者異議の訴えが通ったときは、流動性が失われないことになるということだったかと思うのですけれども、それは2の場合に、第三者異議の訴えではなくて、執行手続が進む過程で無剰余であることが判明して差押えの取消しがなされた場合も同じように、あるいは執行異議で争った結果、無剰余であるということで取り消された場合も同じく、流動性は失われないことになるのでしょうか。その点について確認したいと思いました。 ○笹井幹事 十分に考えていたわけではないのですが、そこは恐らく井上先生がおっしゃったように、無剰余で取り消された場合にも同じで、流動性は失われないということになるのではないかと思います。 ○井上委員 ありがとうございます。そうだとしますと、第三者異議の訴えで行く場合であっても、そうではなく執行手続の過程で無剰余取消しがなされる場合であっても、いずれにしても剰余がない場合であれば、優先担保権者としては流動性を今の時点では失わせたくないと考えて取引を継続したいときは、そこは阪口先生の御懸念は生じないということで、飽くまでも問題となるのは、剰余があるため後順位担保権者が実行でき、その場合はできてしかるべきだと思うのですけれども、それでもなお先順位者として固定化を避けることができる方がよいと考えるかどうか、そういう問題設定と考えればいいのですか。そこについて、今度は阪口先生に伺えればと思います。 ○阪口幹事 そういうことであれば、それは一つの方法だと思うのです。ただ、少し気になっているのは、配当要求というのは債権回収手続ですので、普通に考えたら固定をする。かつ、その結果、無剰余で差押えが消えたとしても、自分が債権回収手続に進んだという事実は覆せないというのが、少なくとも根抵当権はそういう規律なのですよね。先ほど申し上げた398条の20第1項第1号は、その差押えをした後に取り下げたって被担保債権の確定は揺るがないという規律が根抵当権に関してはある。もちろん何も根抵当権全てを持ってこなければいけないわけではなく、確定と固定は違うという議論も当然あり得ますから、必ずしも持ってこなければいけないわけではないのだけれども、ただ、現在の法の仕組みからすると、配当要求というのは債権回収行為なので、結果的に消えたから固定しなかったよというのが少し違和感があるというところです。決め事なので、それはそれでもいいのかも分かりませんけれども、本当にいいのかなということです。 ○井上委員 ありがとうございます。正にその点、第三者異議ではないルートの場合の無剰余取消しの場合にどうなるという趣旨なのかを確認したかったのですけれども、無剰余取消しの場合の効果として、しかし配当要求はしているのだから、そこは優先担保権者の側から固定化に向かっているのだということなのかもしれないのですが、結果的に、ただ、自分からアクションを起こしたわけではない他人による差押えについて「なかったことにしようね」というものだと考えれば、結果としては流動性が戻るという考え方もあり得るし、阪口先生がおっしゃった被担保債権の確定も併せて、むしろ集合動産譲渡担保については「なかったことにする」というのもあり得る選択ではないかという感じを持っています。確か時効の中断については、差押えによる時効中断の効果は無剰余取消しをされても失われないという下級審の判断があると思うのですけれども、これは言ってみれば時効の中断の趣旨から、公的なアクションをとったのだから、ここは無剰余取消しがあっても効果は失われるべきでないという判断だったのであって、それとは区別して、ここでの流動性の問題は、いずれの場合でも復活するとすれば、無剰余の場合が実質的にはかなり多いと思いますので、その問題がかなり解消されるのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。民法398条の20の第1項1号の解釈論として、無剰余だった場合どうなるかですが、これは元本の確定事由なので、無剰余判断が実は元本を確定しないとできないという仕組みになっているところが若干、違いますね。集合動産譲渡担保のような形の新しい担保権の場合にも根担保のことがあり得るとすると、同じ問題が起こるのですけれども、そこで差押えが取り消されたときに元本確定の効果が覆滅しないというのがここにもそのままパラレルに当てはまるのかというと、少し考えてみる必要があるのかもしれないと思います。   ほかに何か御意見はございませんでしょうか。青木哲さん、お願いいたします。 ○青木(哲)幹事 ありがとうございます。神戸大学の青木です。本文の4のところですね、執行官が通知をするということについては、システム上、執行官の負担にならない限りでそれを行うということには賛成でございます。   ただ、関連して、優先担保権がそれで消滅するのかどうかという話が先ほども出たかと思いますが、通知を受けた者についてはそれもあり得るかなと思いますが、通知がなされない者に対しても、すなわち登記がされていない者についても消滅するというのは、とりわけ即時取得の要件を満たさないという場合については、なかなか難しいのかなと思っております。   それから、もう一つですが、説明の方ですね、部会資料の31ページの18行目の(2)のところ、先ほど出てきたところですが、優先担保権者による私的実行が開始された後に、劣後担保権者が動産競売の申立てをした場合ということで、これは恐らく一般債権者が動産執行の申立てをした場合も同じなのかなとは思いますが、この場合については二つ考え方が挙げられておりますが、結論的には優先担保権者の私的実行を優先させる方向で考えてよいのではないかと、手続がどの段階まで進んだのかということで区別するということなのかもしれませんが、私的実行を優先するという方向でよいのではないかと思うのですが、そのための理由付けとしては、そこに掲げられている21行目からの説明で問題ないのではないかと考えております。しかし、政策判断というか、結論として、むしろ法的競売の方を優先すべきということもあり得るかなと思いますので、その辺りの結論次第で、この二つの考え方はどちらも採り得るのではないかと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   いかがですかね。今、青木さんは、通知はいいのではないかとおっしゃいながらも、重要な話をされました。すなわち、登記以外の方法によって対抗要件を備えているときに、通知が来なかったとすると、それは仕方がないと、しかし、その通知が来なかった人の権利を即時取得の要件を満たされていないときに飛ばすというのは難しいのではないかというお話です。その前に阪口さんの方からは、もう売却のときに全部が飛んで、フリーな負担のない動産が取得できるというふうにしないと、なかなか売却とかはうまく進まなくて、ABLがうまくいかないのではないかというふうな御指摘を頂いておりますけれども、その辺りのところも含めて、4はいかがでしょうか。 ○大塚関係官 ありがとうございます。調査員の大塚です。青木幹事のおっしゃることについてですけれども、執行官による通知を制度として組み込むということには賛成です。その上で、通知されなかった人をどう保護するのかという点についてですけれども、登記を備えておらず通知がされなかった担保権者を保護すべきではないかという点は、必ずしも制度設計としてそれでうまくいくのかという疑問があります。つまり、登記を備えていないことによってより保護されるという論点を作ってしまうと、登記をしようというインセンティブがそがれてしまう可能性があるわけです。そうすると、登記を備えることによってこういった通知を受けられて、それゆえ適切に手続に参加できるという仕組みを作っておくことによって保護がされるとすることで登記のインセンティブを上げるという政策判断も可能ではないかと思います。   また、この場合、登記をしていないと、登記優先ルールを採るかどうかにもよると思いますけれども、登記優先ルールを採れば、優先担保権者ではなくなりますので、全員登記をしていないという場合は考えられますが、登記をしている人がいて、しかし登記をしていない人がいて、その登記をしていない人をどこまで保護するのかというのはある種、限界はあるのかなと考えています。   その上で、登記をしていたけれども執行官の何らかのミスによって通知がなされなかったというときに、ではその人は保護すべきかというのは、また問題となりまして、その場合には保護してもいいのかなと思いつつも、しかし、通常の動産譲渡担保権の場合には買受人を保護する必要もありますし、保護できないと担保権の実行のやりやすさが減じられてしまうということもあります。また、集合動産譲渡担保の場合に、固定化しない、あるいは担保権が消滅しないという保護はあり得ると思いますが、そうすると、一度担保権が実行されたにもかかわらず、なお担保権が存続してしまうという設定者の不利益が残る、あるいは一般債権者にとっての不利益が残ってしまうということで、再度実行を可能にするかどうかという論点とも関わってくると思いますけれども、それらのバランスを考えなければいけないのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかにございますでしょうか。   先順位の集合動産譲渡担保権者がいて、しかしその人には通知されないで売却されると、それがまた集合物として残っているというふうなことを考えるのが、なかなか私には想像がしにくいところではあるのですけれども、いろいろな場合があるのかもしれませんが。ただ、青木哲さんがおっしゃったのは、ポリシーの問題として飛ばすべきではないと青木さんがおっしゃったわけではなくて、理屈が成り立ちにくいのではないかという御指摘だったと思います。そういう問題は更に残っているのかもしれませんので、いろいろ御意見を頂ければと思います。   よろしいでしょうか。というのは、集合物と固定のものと、流動するものと固定のものとに分けて、もう少し丁寧に整理をしなければならないというのが、皆さん、さらには阪口さん等がいろいろおっしゃってくださったところの根本にあろうかと思います。それを時系列といいますかプロセスで整理をするということが更に必要だろうとは思います。この時点で御発言がございませんでしたら、また次回以降にお願いをするということになりますけれども、よろしゅうございますか。   それでは、また場合によっては、思い付いたということがありましても、そのときは御自由に御発言いただいても結構でございますので、一応先に進めまして、第5の質権の実行に関する見直しの要否について、御議論をお願いしたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、32ページの「第5 質権の実行方法に関する見直しの要否」について御説明いたします。   質権については、民法第349条によって流質契約が禁止され、私的実行をすることはできないものとされています。しかし、新たな規定に係る担保権について私的実行を認めるのであれば、担保権が占有型か非占有型かの区別のみによって扱いを異にする理由はないと考えられることから、動産質権について流質契約の禁止を見直す必要がないかを検討する必要があるように思われます。   この点については、一つの考え方として、民法第349条を削除し、流質契約の有効性を認めることが考えられます。その場合には、質権の実行について、帰属清算方式や処分清算方式のような具体的な手続を定めるか、清算義務に関する規定を設けるかなどが問題となります。また、これを更に進めた考え方として、動産質権者は流質契約がなくとも私的実行をすることができるものとすることも考えられます。   他方で、質権について私的実行を認めた場合には、既に質権者が目的物を占有していることから、設定者は同時履行の抗弁権又は留置権によって清算金の支払を確保することができず、設定者の保護が弱まってしまうとの問題があります。この点を重視すれば、現行法の考え方を維持するものとすることも考えられます。   以上について御議論いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、よろしくお願いいたしますが、これは別に、349条は質権の総則の規定だから、不動産質にも適用されるわけですよね。動産の話でバランスが崩れるというのだったらば、動産だけ考えれば済むということにはならないのかしら、というのがまず気になりますけれども。ごめんなさい、御自由に御議論いただければと思います。 ○横山委員 京都大学の横山でございます。私はこの流質契約の有効性というのを認めた上で、少なくとも清算金の請求権があるということを明記するという形で立法していただければいいのではないかと考えております。現在の条文でも、弁済期が経過した後は流質契約ができるとなっておりますけれども、私はこの立法趣旨は理解はいたしますけれども、弁済期の前後でそれほど状況は大きく変わらないのではないかと思いましたので、むしろ清算金請求権がきちんとできるということが明記されているのであれば、当事者間で流質契約をすること自体は有効であると認めてもよいのではないかと考えております。それから、更に進んで、流質契約がなくても私的実行ができるとするかどうかという点については、そこまで進まなくても流質契約をしたい人が契約をしておけばよいと考えればよいのではないかと思っております。   最後の、今回の資料の33ページの14行目から15行目で、動産競売以外の方法においては設定者の清算金請求権を確保する手段がないから、現行法と同様にと、これは恐らく弁済期後の流質契約の有効性のみを認めるという趣旨かと思いましたけれども、限定された場面でも現在、清算金請求権は確保されないのは同じですので、この点は特に理由にならないかなと思いました。すなわち、流質契約は有効だとした上で清算金請求権を認めると、そこから先、もちろんこれをどうやって確保するのかということについては大きな問題だと思いますけれども、それだからといって認めないというよりは、認めた上で清算金請求権はあると、将来的にどうやって確保するかということを更に考えることができればと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。私も横山委員と同じように、流質契約の有効性を認めるべきかとは思いますが、そもそもそれ以前の問題として、占有担保か非占有担保かという点がございます。部会資料には、占有担保か非占有担保かという区別のみによって扱いを異にする理由はないと書いていらっしゃいます。それはそのとおりなのでしょうが、実行の局面でいいますと、やはり大きな違いがあるのではないかとは思っておりまして、非占有担保の場合ですと、実行するときに必ず、まず引渡しをしてという手間が入るわけですが、占有担保の場合ですと、弁済期到来と同時に直ちに私的実行ができてしまう、流質ができてしまうということになりますと、そこはかなり違うのかなと思います。もちろん清算金の確保という点はいずれにおいても共通する問題として当然にあるかとは思いますが、それと別に、やはり譲渡担保でいう受戻権、要するに弁済をして取り戻す、そういう機会をほとんど与えられないまま実行されてしまうということが果たして合理的なのかどうかというのは若干気になるところではございます。   そういう意味では、流質契約の有効性を認めて、流質契約があった場合に私的実行を認めるということにするか、それとも、デフォルトルールとして私的実行ができるとするか、そのいずれの場合であっても、新設される譲渡担保の私的実行の規定を準用するような形ででも、実行通知を義務付けて、猶予期間のようなものを設けて、弁済の機会を再度与えるということを考えてもいいのかなとは思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。今の片山さんの御発言には重要なところがありまして、ただ単純に流質を認めるというのではなくて、それはもう、いわゆる今の言葉でいえば譲渡担保の私的実行なのだというふうな形で、その手続に乗せるというふうなことで、その範囲で流質を認めるということなのですね。ただし、それはかなり性格が違う話ですので、それをどうするかということについても御議論いただければと思いますが。 ○村上委員 ありがとうございます。今の片山先生の御意見などと同様のところはあるのですけれども、質権においては既に質権者が目的物を占有しているということがございますので、動産の譲渡担保と同じように考えてよいのかというところは少し慎重にお考えいただければと思っています。どのような形にすればよいのかということについて確たるものがあるわけではないのですけれども、少し違ってくるのではないかと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   藤澤さんから一旦手が挙がったのですが、よろしゅうございますか。お願いします。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。藤澤です。きちんと考えがまとまっているわけではないのですけれども、現在主に349条の流質契約について議論がされていますが、動産質権については、354条に裁判所の許可に基づく鑑定による実行方法が定められています。譲渡担保の私的実行の方で誠実評価であるとかそういった概念を入れてくるのであれば、こちらについてもそれと同じような規律に基づいて実行を認めるというふうに変えていく可能性はないかと思いました。この354条については、清算金との同時履行の規定も現状ない状態ですので、それがそこまでハードルになるのかということも少し疑問に感じております。 ○道垣内部会長 最後が分からなかったのだけれども。 ○藤澤幹事 すみません。清算金との同時履行関係がないことが流質的な実行のハードルになるのかというと、そうではないのではないかということを申し上げました。 ○道垣内部会長 それは、逆に立法論としても別に、清算金の確保のための留置権みたいなものとか、いろいろな手はずを置かなくても、流質を認めるというふうなことで、それだけで済むということもあり得ると、そういうことにつながるのですか。 ○藤澤幹事 はい、評価の正当性が担保されているのであれば、その後、債権的な権利として担保権者に請求していくことができれば、それでよいのではないかと考えました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   これは私も今思い付いたところだけなのですが、例えば片山さんのおっしゃるような、質権を設定しても、実は譲渡担保の実行方法のプロセスが適用されるのだというふうなことを言ったときに、営業質に影響を及ぼさないのかなというのが気になります。質屋営業法を丁寧に見て、民法との関係がどういうふうになっているのかというのをじっくり見ないと分からないですが、営業質屋さん自体が随分減少していますものの、それでも庶民金融としての意味を持っているときに、動産担保法制をいじりましたので質屋さんのやり方を変えざるを得ませんということになると、またそれは問題があるのかなという気もします。そこも更に検討を、民法と質屋営業法との関係というのをどういうふうに考えるのかというのも更に必要かなと思います。すみません、メモ的に話をしてしまいました。 ○加藤幹事 加藤です。今回の部会では、新しい担保権や集合動産譲渡担保などの制度整備が議論されているわけですが、当然、民法にどのような規定を置くべきかについての検討がされていると理解しています。しかし、このような新しい制度は商人というか、事業を行っている人が主たる利用者となることが暗黙の前提となっていると思います。   そして、このような人たちにとっては、民法349条ではなく、商法515条が適用されている場合が多いように思われます。したがって、例えば、新しい譲渡担保権、新しい担保権について私的実行に関する制度整備を行うということから、民法349条の見直しをする必要性が当然に導かれるのか少し気になりました。つまり、実際に民法349条がどのように機能しているかを考える必要があるのではないかということです。質屋営業法は更に商法515条の特則ということになるのかもしれませんけれども、理論的に民法349条と新しい担保物権の関係を整理する意義はあると思いますが、その前提として、現実に民法349条がどういう役割を果たしているかにもう少し配慮が必要であると考えます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。そのとおりだろうと思います。ここを余りいじって、商法の解釈論も大幅に変わりましたという話になったら、様々に有価証券とか使われているものについて、紙自体がなくなってきていますからまた別ですけれども、影響を及ぼすということになりますと、少しそれは問題かなとも思いますので、考える必要があろうかと思います。   ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○横山委員 先ほど片山先生の方から、譲渡担保の実行方法をそこに入れてはどうかというようなお話がありまして、これは今後の話かと思うのですけれども、質権と、それから債権質も含めてですけれども、質権と今度新しくできる譲渡担保権について、どれだけ一緒にしていくのか、それとも質権は質権で別個のものとして残していくのかということにも関わるのかなと思いました。少し感想のようになるかもしれません。   その点で行きますと、商法との関係も、先ほど加藤先生からもありましたけれども、私自身は、これは私人でもって使うということが前提となっているわけで、その限度で、使われる場面がどれだけあるかということは分かりませんけれども、そういう意味で、余り固くといいますか、譲渡担保と同じようにまでしてしまわずに、しかしながら清算金の流質はできると、清算金の返還請求はできると、でも、それについてはどこまで保護するかということについて、譲渡担保のようなものとは少し枠組みが、緩いといいますか、すぐ弁済期が来たら取られてしまうということも含めて、許すような方向性もあり得るのではないかと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○大塚関係官 ありがとうございます。調査員の大塚です。今の横山委員と片山委員の御議論を聞いておりまして思ったのが、たとえ流質契約という形式を残すとしても、その契約内容をどの程度強制的なものにしていくのかというところが問題になるかと思います。横山委員がおっしゃっているように、清算金支払義務というのは当然必要だと思いますけれども、ほかにも、例えば目的物の価格評価をどのようにするのか、担保権は譲渡担保権であれば客観的な評価が必要になってくると思いますけれども、例えば流質契約で、実際に売れた額をそのまま評価額として、それで清算金を計算するとしてしまうと、必ずしも適正ではないかもしれないということになってきます。これをどこまで法的に調整するのかという問題が出てくると思いますが、一つの視点になるのかなと思います。   そのように考えますと、民法が規定するものだけでなく、商法が規律するような、現在でも流質できるようなものにつきましても、再度そういった点から検討し直すということも、この部会でそこまで議論が及ぶかどうか分かりませんけれども、将来的には再検討する必要はもしかしたらあるのかもしれないと考えています。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。ただ、これは占有が質権者に移っていますので、清算金額を誠実評価義務とかといって一旦この額にして、それを同時履行ないしは留置権のところの被担保債権額として使うというふうな構造を考えなくても、それは後に客観的な額を訴訟によって争うという構造を作れば、それで済むのかもしれない。つまり、プロセスとして考える必要は必ずしもないのかもしれないと思いますけれども、もちろん質権者が流質をしても清算金を払うまでは処分してはいけないとかというふうな規律にすれば、またそこで問題が出てくるのですが、そうするとプロセスを考えなくてはいけないですが、すぐに処分できますよということならば別段、譲渡担保ほどのプロセスを考える必要はないのかもしれないとも思いますけれども、いかがでしょうか。 ○大塚関係官 大塚です。今の御議論は、先ほどの私の意見はそういったプロセスを作るという意味ではなく、むしろ部会長がおっしゃっていたように、後に裁判で適正価額を争えるようにしておくと、流質契約で争えないということを契約内容として定めることはできないということを法律上明文化しておく必要はないのかと、そういったような話でした。 ○道垣内部会長 分かりました。どうもありがとうございます。   いろいろな意見が出まして、必ずしもまとまったという感じはしませんけれども、考えなければならないポイントは随分明らかになったような気はいたします。触るほどのことはないだろうという意見はあるにせよ、絶対に流質は認めるべきではないという意見はさほどなかったのかなと思います。梅謙次郎先生は立法時からこの規定が嫌だったわけでして、先生もお喜びではないかと思いますけれども、更に検討したいと思います。差し当たってはよろしいでしょうか。   それでは、どんどん先に行って恐縮なのですけれども、「第6 所有権留保売買による留保所有権の実行」について議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、33ページの「第6 所有権留保売買による留保所有権の実行」について御説明いたします。   ここでは、所有権留保売買による留保所有権の実行方法として、新たな規定に係る担保権と同様に、帰属清算方式と処分清算方式による私的実行を認めるとともに、裁判所の競売手続を利用することができるものとすることを提案しています。一読では、この点について大きな異論は見られなかったことから、従前の提案を維持しております。   次に、留保所有権の実行については、実行と売買契約の解除との関係をどのように考えるかが問題となります。この点については、売主による売買契約の解除は留保所有権の実行と評価すべきとの御意見もありましたが、目的物の所有権を留保していることを理由として売主による債務不履行解除が許されないものとすることを説明することは容易ではないことなどから、留保所有権の実行と売買契約の解除は異なる制度として併存し、留保所有権売主はいずれを選択することもできるとの考え方をお示ししています。   以上について御議論いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、御自由に御議論いただければと思います。 ○松下委員 松下です。ありがとうございます。まず質問から入らせていただきたいのですけれども、資料34ページの8行目の①というところで、倒産手続においては解除権の行使は制約される可能性があるという記述があるのですが、これは倒産解除条項を念頭に置いた記述と理解してよろしいでしょうか。 ○工藤関係官 ここの記載につきましては、倒産解除条項というよりも、むしろ同じページの(注17)に記載したものを念頭に置いておりました。 ○松下委員 そうすると、これは開始前の不履行で催告がまだの場合の話ですかね。つまり、開始決定後の不履行を理由とする解除権の行使ができるという見解もそれなりに有力だと思うので、解除権の行使が制約されると言い切ってしまっていいのかというのがよく分からなかったというところです。しかし、(注17)を念頭に置いた記述だということは分かりました。どうもありがとうございました。 ○道垣内部会長 質問だけでよろしゅうございますか。 ○松下委員 松下です。資料の記載は、解除権の行使と留保所有権の実行がアンバランスではないかという御指摘のようにも見えます。しかし、それは解除権の行使がそれほど広く制約されるわけではないから、バランスは失さないのではないですかということを言おうと思ったということですけれども、事務局の記載の趣旨がよく分かりましたので、意見にわたる部分は特に申し上げる必要がないように思いました。 ○道垣内部会長 すみませんでした。ありがとうございます。 ○大澤委員 大澤でございます。前から出ている議論ではあるのですけれども、所有権留保売買といったときに、取引基本契約等でよくある部品売買等でも、必ずといっていいほど、目的物の所有権の移転は代金の完済によるというような形で条項が入っている例が多うございます。そういったものも全て所有権留保、担保なのかという、何度かこの問題が出てきているのは承知をしておりまして、その間なかなかうまく説明が、あるいは解がないということもよく分かっておりますが、基本的には取引基本契約等でそういった所有権移転時期を後ろ倒しにしているものも全て所有権留保に含まれるのかというところについて、すみません、第6のそもそも論の問題に入ってしまうかもしれませんが、なお本来は検討が必要なのではないかと考えております。   当事者間の意識として、それはもちろん代金確保ですというところはあるのですが、ではそれが担保かと言われると、担保という意識まであるのかなというのは正直なところでございまして、単なる売買契約における所有権移転時期の後ろ倒しというような整理は十分可能というものもたくさんあると考えております。   特に、ごく普通のそういった部品売買なり何なりの取引においては、代金完済時期においてまで利息等を当然、取るわけではありませんので、信用供与というようなことでもないですし、単純な売買契約の一変形というような形での取引という論理も十分にある、その場合にまで所有権留保としてしまうのは、逆に売主を保護しすぎではないかとも思う次第です。保護しすぎというか、解除と帰属清算、それから処分清算、全てのトラックを認めるという、もしそういうふうになると多少、売主側にとっては余り考えていない救済方法までできることになりかねないのかなとも思う次第です。   実際に倒産の場面においても、売買契約というふうにふだんは多分、そういった所有権移転時期が後ろにずれているものについては、単純に売買契約と扱って、双方未履行双務契約なのかどうなのかとかいう形での分析もしているところでございまして、今一度そういった所有権留保売買といわれるものについてのカテゴライズを検討する必要があるのではないかと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。カテゴライズの問題なのか、それとも、所有権留保、担保であると大澤さんがおっしゃるところのことによって、解除以外に何が与えられているのが売主に不当に権利を与えていると評価されるのかというところの具体的なお話というのが重要なのかなと思います。それによって、場合によっては、解除とのバランスを取るために、所有権留保は担保であるというふうにいっても解除と同じ範囲でしか権利行使はできないというふうに権利行使の範囲を狭めるということもあり得るわけですので、もう少し具体的に、こんなときに解除以外の権利行使の方法を認めるのはおかしいのではないかということで御意見いただければ有り難いのですけれども。 ○大澤委員 そうですね、例えば、単純な売買契約でそういった所有権移転時期が後ろ倒しになったような場合ですと、売主の方は所有権移転義務が残っており、他方で買主の方は代金支払義務が残っているという状況だと思いますが、倒産手続においては、そういったものであれば管財人の方に双方未履行双務契約という形で履行か解除かという選択権が与えられる部分があろうかと思います。   一方で、いや、担保であるということになるとすると、それは担保権としての、別除権として権利行使が可能になる、管財人のそういった双方未履行双務契約の概念というものは、かなり使われる余地が減ってきてしまうと、今までの実務と少なくともかなりの変更が生じる可能性があるのではないかとも考えております。そういった意味で、所有権留保がどこまで救済されるべきなのかという意味で、少し考える必要があるのではないかと思いました。   お答えになっていますでしょうか。以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○沖野委員 今の御指摘について、よく分かっていないものですから、明確化のために教えていただければと思うのですけれども、もしこれが単純な売買で、所有権が移転していないだけのことであるということになりますと、かつ、所有権、財産権移転義務と代金支払債務がいずれも双方未履行で残っているということになると、目的物を確保するということになると、代金の方は財団債権として保護されるということになりそうですし、解除だということになりますと、所有権はそもそも移っていないということになりますので、取戻権で所有権自体は確保できるということにもなりそうで、留保売主が所有権留保という一種の担保であるとすることによって、より保護を厚くしすぎないかというお話なのですが、むしろ、所詮担保であるというところに持ってくるという話ではないのかなと思われまして、帰結はむしろ逆になるように考えていたものですから、少しそこを誤解しているのかもしれませんので、御趣旨についてもう少し明確にしていただければ有り難いと思いました。 ○大澤委員 すみません、私の考え方があれなのですかね。所有権留保売買と今までおっしゃっておられるものそのものの中に、そういった管財人から見て単純な双方未履行双務契約ではないかというものが入るのではないかと考えておりました関係で、今のような発言をさせていただいたのですが、破産の場合だと思いますけれども、買主の方に管財人として所有権が移っていないという話になったときに、基本的には、ただ、物によっては双方未履行双務契約で解除できる、あるいは履行選択できるという選択権が管財人にあるべき取引が入ってくるように思っていたのですが、今の私の説明が間違っていますかね。ごめんなさい、私、沖野先生の質問にうまく答えられていないかもしれませんけれども。 ○道垣内部会長 沖野さんは、選択権が管財人にあるとしたときに、まず履行を選択したということになると、それは売買代金が全額財団債権になってしまって、担保だというよりもより保護されるという形になりはしないのかと、解除であるとしたときも、目的物は所有権に基づいて取り戻すことができるということになるので、そこにおいても別に、担保であると言ったときに比べて弱い立場に売主が立つわけではないのではないかというわけですね。私の観点から一つ加えますと、所有権留保について、双方未履行双務契約で売買契約の付款で所有権移転時期について定めているだけですよねという話を、いや所有権留保は担保であると学説が言い出したのは、効力を弱めるための議論です。そうしますと、実は、私も大澤さんがおっしゃっていることはよく分からなかったのです。 ○大澤委員 管財人の立場から申し上げると、履行を選択したときというのはそれなりのメリットが管財人にはございまして、基本的には買主側で今、考えていますけれども、財団債権を払ってもなおメリットがある、つまり、管財人において財団拡張ができるような転売ができるというような場面が多うございます。そういった意味で、履行選択をしても、それが財団債権になってもなお管財人としてオプションがあり得るということは、実務上は十分あり得ると思っております。それはお答えになっていますかね。 ○道垣内部会長 もちろんそういうことはあるのだろうと思うのですが、それは担保だとしても、代金を払えばいいだけなのではないかという感じもしないではないですけれども。違いますか。すみません、少し混乱しているかもしれません。 ○大澤委員 私の認識で申し上げますと、おっしゃるように、担保権者である売主と交渉すればいいではないですかというお話になったときに、担保権者そのものが、いや、別除権ですので自分たちでやりたいようにやりますというふうに言われる、あるいは、これは完全に実務上の話ですが、管財人を飛ばして先に売るという形でもいいではないかとか、いろいろなことを考え始めますので、管財人としては履行を自分でする選択肢というものを確保しておきたいというものはございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○松下委員 松下です。ありがとうございます。皆さん御案内のことでしょうが、所有権留保売買一般については双方未履行双務契約に当たらないのが原則だというのが一般的な認識なのではないでしょうか。売主には確かに所有権移転義務が残ってはいますけれども、それは極めて観念的なもので、双方未履行双務契約性を基礎付ける双方の債務の対価性みたいなものは観念できないという議論が一般的かと思います。   ただ、自動車の所有権留保売買の場合には、登録を移転する義務が残っているので、その場合には双方未履行双務契約に当たるけれども、しかし、更に言えば、中古車で、もうこれで乗り切ってしまって転売の予定がないという場合には、登録が残っていても双方未履行双務契約ではないなんていう議論があるかと思います。   なので、所有権留保売買について破産管財人が履行か解除かの選択権を持つということは余りないのではないかという気がしております。 ○大澤委員 すみません、私、混乱させたかもしれません。私の問題意識は、所有権留保売買というものが広くなりすぎないかということでありましたので、所有権留保売買そのものが、つまり、所有権留保売買にカテゴライズされないような売買契約もありますよねということが申し上げたいというところでございます。そうすれば、今まで狭義であるとか広義であるとかというような議論はなされておりましたし、所有権留保売買とは何かというところについての明確な定義というのが余りよく分からなかったとも正直、思っておりまして、そういった意味で、ありとあらゆる所有権留保に近いようなものまで全て担保に入るというような形で誤解はないようにしておきたいと考えている次第です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。また話を蒸し返して恐縮なのですが、大澤さんのお立場からは誤解のないようにしなければいけないというのだけれども、逆に全部担保なのだということを誤解のないように書くべきだという立場もあり得るので、どちらが誤解というのは立場によって違いますので、片方が誤解であるというわけではないということは確認しておきたいと思います。 ○大澤委員 ありがとうございます。 ○井上委員 ありがとうございます。私も、実務上、継続的な売買契約などに所有権の移転時期が定められている場合が多い状況で、そういったもの全てが当事者によって担保権であるという明確な認識がある場合ばかりではないというか、むしろない場合が多いというのは、大澤先生のおっしゃるとおりかなと思うのですけれども、ただ、これも過去に何度か発言しましたけれども、売買契約に当該一条項、つまり、「代金の完済時に所有権を移転する」という条項、逆に言えば、「代金を弁済しなければ所有権は渡さない」という条項を置くときに、代金の支払を確保する意図が認められないとはいえないように思いまして、区別できるのかというのが私の根本的な疑問です。   その意味で、狭義の所有権留保との区別が難しい、あるいはできないのではないかと思います。ですので、代金完済時に所有権を移転する旨の定めを含めて狭義の所有権留保一般について違った取扱いをする、違った取扱いをするというのは、担保権とは異なるものとして扱うという形で扱いをそろえるということですが、それは一つの考え方なのかもしれないのですけれども、狭義の所有権留保は担保権だけれども、所有権移転時期の定めはそれと異なり担保権でないというのは、私には理解できていません。そこについて、何か区別の基準のようなものがアイデアとしておありであれば、是非議論すべきであり、そこを明確化できればいいのではないかと思います。 ○大澤委員 私はどちらかというと、狭義の所有権留保と、更にそれとは違う、もっと単純な売買契約に近いものと、近いといったら変なのですかね、売買契約類似のものだろう、そこの区別を付けたかったというのは正直、あるのですけれども、狭義の所有権留保といったときに、典型的な先ほど申し上げたような継続的な取引基本契約みたいなものがあるときというのは、それ自体は、私たちがよく見る契約においては、利息等が全く普通、付かないものですよね、売買代金の限度での、でも、それは狭義の所有権留保と広義の所有権留保の違いになってしまうのかもしれませんけれども、利息が全く付かないようなものというのは狭義で、それ以外のものが広義と何となくは整理をしていたところでありますが、今、井上先生がおっしゃられましたのは、私が先に少し言っていろいろな先生方に御迷惑をお掛けした、狭義の所有権留保に全部入ってしまわないですかという心配というものの関係でお話をされているということでしょうか。ごめんなさい、よく分かっていないです、私。 ○井上委員 私がお尋ねしたかったのは、大澤先生のおっしゃる売買契約によくある定めと、狭義の所有権留保の定めはどこが違うのですかということです。 ○大澤委員 そうすると、ますます私が混乱させてしまって申し訳なかったと思います。私が申し上げるような、締め日で1回で締めるような、例えば1か月とか2か月とかで代金所有権移転時期が後ろになっているものというのは、狭義の所有権留保ですらない場合もあるのかなと考えていたところですが、先生がおっしゃられたように、ではどこで線を引きますかと言われたときの線引きとして明確なアイデアがあるわけでは、正直、ないところでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○井上委員 そうだとすれば、呼び方の問題なのかもしれないのですけれども、とりあえず所有権留保と呼ぶとして、例えば3か月以内のものをまとめて別扱いするとか、そういうルールはあり得ると思うのです。つまり、設備機械を狭義の所有権留保で売買して、5年間の分割払いの中でその完済まで所有権を留保する、これは担保でしょうと。他方で、在庫売買で1か月分を翌月末に一括払いみたいなものは、これは所有権留保ではなくて売買契約上の所有権移転時期の定めということなのかもしれませんが、しかし、分割払いかどうかで線を引くというのであれば、それも一つの考え方ですし、期間の長短で線を引くというのであれば、また一つの考え方ですけれども、何かルール化しないで当事者の主観で線を引くのは無理なのではないかと思います。期間が短ければ担保目的がないと認定するのは難しいのではないかというのが私の元々のコメントです。何らかのカテゴリーを作って、そこを他の担保権とは異なる特別な扱いにするということはあり得ると思うのですが、そして、それを狭義の所有権留保と呼ぶのか、所有権留保の外のものと見るのかは意見が分かれるかもしれませんが、そういう問題として議論した方がいいのではないかという感想を持ちました。 ○道垣内部会長 区分問題というのは確かにあるのかもしれないですけれども、それをまず置きまして、もし担保であるということに異存がない類型の所有権留保において、所有権留保という担保の実行と、売買契約の解除という方法と、その二つを併存させるということについては、異論がないと考えてよろしゅうございますでしょうか。そして、そのときに併存させるというときも、解除については解除の効果という、いろいろな民法ないしは倒産法上の解除の効果で規律をするのであって、解除の意思表示というものを留保所有権の実行と捉えるわけではないと、それはそういうことで御異論がないと考えてよろしゅうございますでしょうか。   併存にはほぼ異論はないということでよろしいかと思います。   ほかに何かこの点について御意見はございませんでしょうか。併存させるとしても調整の必要はあるのかもしれないですけれども。 ○井上委員 何度もすみません、井上です。併存させることに異存はないのですけれども、ここでいう解除は、いわゆる倒産解除条項に基づく解除ではなくて、一般的な解除のことを言っているのだと思いますが、この「解除権の行使は制約される可能性がある」という本文の規定について、脚注17のことを想定しているという先ほどの御説明でしたけれども、それ自身、債権法の改正に伴って議論があるところかと思っておりまして、その結論により解除権の行使が制約されるということであれば、それは一つの整理だと思いますが、制約されない、あるいは制約が必ずしも十分でないということになったときに、この解除ルートの場合にも、倒産手続の開始との関係で、中止命令とか禁止命令が適用される余地があるのかどうかは一応、論点にはなるように思っているのですが、事務局の方では、それは別物ということで、実行ではないのだから実行中止命令あるいは禁止命令の対象にはならないと、そういう整理ということでしょうか。そこを確認したいという趣旨です。 ○笹井幹事 その点については、次回にお送りする倒産の資料において検討する必要があると思っております。 ○井上委員 ありがとうございました。 ○道垣内部会長 楽しみにしていただければと思います。   ほかに何かございませんでしょうか。倒産手続における解除の話って、難しくてよく分からないところも結構ありますよね。しかし、それを全部一般的な理解に従って明文化するということは、倒産法改正でも行われていないわけですので、そこに手を付けるというのはなかなか難しいと思います。そこで、ある一定の解釈論を前提としながら、ないしは、解除は解除の問題として中止命令で行くとかというのも、それも解除の問題で、少なくとも留保所有権の実行の問題ではないということとして処理をするということなのだろうと思います。   ほかに何かございませんでしょうか。   それでは、併存自体には御異論がないということで、なお幾つかの御意見を頂きましたので、更に検討をしていただくということにしたいと思います。   開始から2時間10分経過いたしまして、ここで第6までが一応御意見を伺ったということがございますので、少しここで休憩を取らせていただければと思います。55分まで15分間、休憩を取りたいと思います。それでは、3時55分にお戻りいただければと思います。よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○道垣内部会長 それでは、3時55分になりましたので、審議を再開したいと思います。   前半に続きまして、第7の「1 後順位債権譲渡担保の設定の可否」、「2 債権譲渡担保権者による債権の取立て」、「3 債権質権者及び債権譲渡担保権者の取立権限及び実行通知の要否」、「4 担保の目的財産が金銭債権である場合に担保権者が取り立てることができる範囲」について御議論を頂ければと思います。事務当局におかれましては部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、35ページの「第7 債権を目的とする担保権等の実行」の「1 後順位債権譲渡担保の設定の可否」について御説明いたします。   一読では、債権を目的とする担保権等の実行について検討するためには、その前提として後順位の債権譲渡担保を認めるか否かを検討する必要があるとの御指摘がありました。そこで、ここでは、他の論点の検討に先立ち、後順位債権譲渡担保の設定の可否を検討することとしています。   ある債権について後順位債権譲渡担保を設定するに当たっては、第1順位の債権譲渡担保権者となろうとする者と第2順位の債権譲渡担保権者となろうとする者が、順次、設定者との間で譲渡担保契約を締結して、第三者対抗要件を具備するとの方法によることとなると考えられます。このとき、いずれの担保権者も債務者対抗要件を具備した場合には、第三債務者との関係では、先行して第三者対抗要件を具備した第1順位債権譲渡担保権者が債権者として扱われることとなるため、第2順位債権譲渡担保権者が私的実行をすることは原則としてできないこととなると考えられます。このように解するとしても、第2順位債権譲渡担保権者は、第1順位債権譲渡担保権者の被担保債権が消滅してその譲渡担保権が消滅した場合には、当然に順位が上昇して第1順位債権譲渡担保権者となることができると考えられます。また、後に取り扱う第7の4のとおり、第1順位債権譲渡担保権者は、目的債権の全額を取り立てることができ、被担保債権額を超えて回収がされた場合には、設定者に対して清算金支払義務を負うと解するのであれば、第2順位債権譲渡担保権者は、その清算金請求権に対して物上代位権を行使することができるものとすることが考えられます。   以上のように考えると、後順位債権譲渡担保の設定は可能であると考えることもできるように思われますが、その理論的な説明の仕方も含めて御意見を頂ければと思います。   次に、36ページの「2 債権譲渡担保権者による債権の取立て」について御説明いたします。   ここでは、債権譲渡担保権者が目的債権を直接取り立てることができるものとすることを提案しています。一読では、この点について特に異論は見られなかったことから、従前の提案を維持しております。   また、これ以降の全ての論点に共通する問題ですが、債権質の規律と債権譲渡担保の規律とを全体として同一のものとすべきか否かを検討する必要があります。一読では、債権質においては目的債権は設定者に帰属しているのに対し、債権譲渡担保においては目的債権は担保権者に帰属していること、債権質と債権譲渡担保をニーズに応じて使い分けられるようにすることが望ましいことから、債権譲渡担保と債権質を差別化すべきとの御意見があった一方で、債権質の規律と債権譲渡担保の規律は第三債務者保護の観点から同一のものとすることが望ましいとの御意見もありました。そこで、債権質の規律と債権譲渡担保の規律を差別化することについての実務上のニーズの有無も含め、御意見を頂ければと思います。   次に、37ページの「3 債権質権者及び債権譲渡担保権者の取立権限及び実行通知の要否」について御説明いたします。   ここでは、債権質権者及び債権譲渡担保権者が私的実行をするためには実行開始の通知及びその到達から一定期間の経過を要するとする【案16.7.3.1】と、債務者の債務不履行によって直ちに担保権者は私的実行をすることができるとする【案16.7.3.2】の二つの案をお示ししており、その内容は部会資料7で提案したものと変わりありません。   一読の議論では、【案16.7.3.2】に賛成する意見として、担保権者が合理的な期間にわたって待機することは現在の実務でも行われており、また、その待機期間は個別具体的な事情を踏まえて設定されるべきものであるから、画一的な待機期間を設定することは相当でないこと、非協力的な設定者は待機期間中に第三債務者から取り立てた金銭を隠匿、費消するおそれがあること、担保権者が動産と債権を同時に担保として取得している場合もあるため、動産について【案15.5.4.2】を採用して待機期間を設けないこととするのであれば、債権についても【案16.7.3.2】を採用して手続をそろえることが望ましいことなどの御指摘がありました。   他方で、【案16.7.3.1】に賛成する意見として、設定者の立場からは、受戻しの最後の機会を与える期間として一定の期間を置く必要性は高く、債務不履行に至った設定者に対して即時に私的実行を強行するような不誠実な担保権者を想定すると、画一的な待機期間を設ける必要があることなどの御指摘がありました。   【案16.7.3.1】と【案16.7.3.2】のいずれを採用するかについては、これらの御指摘に加え、動産を目的とする担保権について【案15.5.4.1】と【案15.5.4.2】のいずれを採用するかを踏まえつつ、検討する必要があるものと考えられます。   次に、39ページの「4 担保の目的財産が金銭債権である場合に担保権者が取り立てることができる範囲」について御説明いたします。   ここでは、目的債権額が被担保債権額を超える場合において、担保権者の取立権が被担保債権額の範囲に限定されるとしたときには、第三債務者からすれば、被担保債権額を把握することは困難であり、担保権者の取立権が幾らまでかを判断することは難しいこと、担保権者の立場から考えても、目的債権が多数の第三債務者に対する債権であるときは、被担保債権額に限定して請求することは事実上困難であることなどから、債権譲渡担保権者は、目的債権の全額を取り立てることができるものとし、被担保債権額を超えて回収がされた場合には、担保権者が設定者に対して清算する義務を負うものとすることを提案しています。一読では、担保権の不可分性によってこの考え方を正当化することができるなどの御意見もあったことを踏まえて、従前の提案を維持しております。  このような考え方に立つ場合には、後順位債権譲渡担保の設定を認める場合において、後順位債権譲渡担保権者は設定者の先順位債権譲渡担保権者に対する清算金請求権に対して物上代位権を行使することができるものとすべきか否か、また、債権質についても民法第366条第2項を改めて同様の規律を採用すべきか否かが問題となります。   以上について御議論いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、これらの点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いします。 ○阪口幹事 阪口です。1番の後順位債権譲渡担保設定の可否のところの36ページ19行目の記載について、確認をしたいと思います。   第2順位が設定できるとして、第1順位の方の被担保債権が消滅すれば当然、順位が上がると書かれているのですけれども、この括弧の中で、「債務者対抗要件を具備したときに第三債務者との関係で債権者として取り扱われる地位を得る」と書かれていることの具体的な意味を確認したいのです。つまり、まず、復帰的な債権譲渡というか、復帰する部分の債務者対抗要件みたいなものが要るということなのか、また、そこから、原債権者からもう一遍、第2順位債権譲受人への債務者対抗要件具備が、その消滅後に要るという意味なのか、そういう意味ではなくて、もう消滅したら当然に元々第2順位債権譲渡担保権者が以前に得ていた債務者対抗要件の効力がぱっと出て、当然に債権者として扱われるのだとも読めるし、ここで考えている、債務者対抗要件を具備したときには債権者として扱われるという記載の具体的なプロセスをまず、確認したいと思います。お願いできますでしょうか。 ○工藤関係官 ここの債務者対抗要件というのは、純粋に、第2順位の債権譲渡担保権を設定したときの債務者対抗要件のことを意味しておりまして、その意味では、同じ36ページの13行目にも、債務者対抗要件を具備した場合にはと記載しておりますけれども、これと同じ意味になります。 ○阪口幹事 そうしますと、第三債務者はどうやって第1順位債権譲渡担保権者の被担保債権が消滅したことを確知して、以後、第2順位債権譲渡担保権者を債権者として扱うのかのプロセスが少し分かりにくいのですけれども。事実を知ればいいということなのですか、それとも、何か債務者対抗要件的なというか、復帰的変動のようなものを想定するのか、その場合も2回動くのか、1回で飛ぶのかということも聞きたいのですけれども、そこのプロセスが少し分からないのです。というのは、ここの結論として第三債務者の利益が害される可能性は大きくないと書かれているものですから、第三債務者にとってどうなれば、何が来ればというのか、何を知ればなのか分かりませんけれども、安心して弁済ができるのか、第1順位の被担保債権は消えたのだね、だから今後は第2を債権者と扱わないといけないのだなという認識ができるのかという問題なのかなと思うので、伺っている次第です。 ○工藤関係官 ここの点につきましては、その際に法的なプロセスとして法律上要求されるものが何かあるという認識はありませんで、基本的に被担保債権の弁済がされて第1順位の債権譲渡担保権が消滅した場合には、そのまま当然に第2順位の債権譲渡担保権の順位が上昇するということを念頭に置いておりました。その際には、恐らく事実上何かしらの第三債務者への通知がされるのかなとは思っておりましたけれども、確かにおっしゃられるとおり、そういったものがされない可能性もあり得るかとは思いまして、その場合には第三債務者の利益が害されるという可能性も出てくるとは思いますので、その点も踏まえて、後順位債権譲渡担保権というのを作ってよいかどうかというのを検討する必要があるのかなというふうに今、お伺いして思った次第です。 ○阪口幹事 阪口です。よろしいでしょうか。今のように、やはり第1順位債権譲渡担保権者の方から、もう私の債権は消えたので、原債権者なのか第2順位担保権者なのか、そちらに払ってもらっていいですよという連絡、それが債務者対抗要件なのかどうか分かりませんけれども、何か適切な情報発信が第三債務者の方に届かないと、第三債務者は迷ってしまうと思います。例えば、第2担保権者の方からは第1担保権者の被担保債権が消えたから俺に払ってよと言われても、第1担保権者が本当に消えたと言ってくれない限り怖くて払えないということになります。そういう意味では、理論的な問題はよく分かりませんけれども、第1順位が同意しているような第2順位の債権者という限度で設定するのであれば、同意するような関係なので、そこも適切に処理されるだろうということはあり得るのかなと、その辺が一つのバランスなのかなとも思いました。 ○道垣内部会長 おっしゃることはよく分かるのですが、その問題は実は後順位の担保権を設定した場合だけに生ずる問題ではないですね。最初に債権譲渡担保が設定されますよね、その後に被担保債権の弁済がされて既設定の債権譲渡担保が消滅した。しかるに何らかの措置もしないうちに次の譲渡担保が設定されたということになりますと、これは後順位ではないのですけれども、最初に設定されたものが消滅したということを第三債務者が確実に知るということは難しいので、それでどうするかという問題が出てくるのです。したがって、同意があれば何とかなるだろうというふうなことではなくて、それも478条の問題として全部処理をするのか。消滅の対抗要件を具備するということになるとインセンティブの問題が起きますので、なかなか難しいとなりますと、少なくとも一遍に二つあるという状態はもう、なるべくそういう問題を生じさせないために認めないと、そういうこともあり得るのかもしれませんが、いろいろな場面で問題になり得るのですよね。 ○阪口幹事 阪口です。おっしゃることはそのとおりだと思うのですけれども、普通、設定者と担保権者の間では、被担保債権が弁済されれば譲渡担保対象債権を戻すために、戻す通知をするという、これはある意味、担保権の設定契約の一環だと思うのです。つまり、抵当権を設定して登記した場合、弁済したら抹消してくれというのはある意味、当たり前ではないかと、それと同じようなルールだと思うのです。他方、第1担保権者と第2担保権者は、普通は、直接の法律関係はないですよね。そうすると、第1担保権者の被担保債権が消滅したときに、譲渡対象債権を第1から第2に移すような、債権譲渡通知ではなく、何か分かりませんけれども、何らかの通知の義務は当然には出てこないので、それで、何らかの関係があるような場合ぐらいが一つのバランスではないかと申し上げたのです。理論的なことは全部さて置いていますので、不十分な意見で申し訳ありませんけれども、特にそういう関係があるような場合ぐらいかなと思っているということです。 ○道垣内部会長 分かりました。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。今、阪口幹事からも御指摘があった第三債務者の保護の問題も理由の一つではございますが、それ以上に、少なくとも今の判例法理が、債権譲渡担保に関しては動産と違って後順位担保権者の存在を前提としてない、債権の帰属は移転してしまうのだからという点を強調しているかのように思っておりましたので、やはり債権質との差別化を図って、むしろ真正譲渡に近いような形での取扱いをするという方向の改正を検討すべきではないかと一読では申し上げましたが、他方、35ページの30行目辺りから書いてありますとおり、一読では、実務においては、後順位の担保権者を付けるニーズはそれなりにある、特に、余剰があって事後的に新しい資金ニーズが生じるという場合には後順位担保権者を付けられなければいけない、そういうニーズは強い御意見がございましたので、そうなるとそれは認めざるを得ないのかなとも思っておりまして、そちらの方向で立法がなされるべきということになるのかとは思いました。   ただ、そのときに今回の部会資料第7のところの通奏低音的な問題点として、債権質と債権譲渡担保は、同じような債権担保ということで全く同一に取り扱ってしまう方向でいいのか、それとも、何らかの違いがあるものとして別に取り扱うべきかという点ですが、後順位の担保権者も付くのなら同じではないか、一緒に扱ってしまえという論調も感じなくはないのですが、果たしてそれでいいのか、改めて考える必要があるように思っております。   実際に実務上どう使われているのかという点は、実務家の委員の方々にお伺いすべきところですが、かなり違った局面で使われているように思われます。債権質はやはりそもそも要物契約で、証書が必要でしたので、基本的には保険金債権であるとか定期預金債権といったような、証券化された、固定資産としての債権を一本担保に取るという形で使われていて、それは平成15年、それから29年の改正で証券の交付の要件が緩和された後も、少なくとも366条で質権者に取立権限が付与されることを前提とした、いわば占有担保として用いられているのだと思います。これに対して、債権譲渡担保はそのニーズがかなり明確で、恐らく売掛債権等の事業債権、すなわち流動資産を担保化するための手段として用いられているということですので、累積型か循環型かという議論はありますが、少なくとも循環型では、原則として担保権設定者が引き続き事業資金として取り立てていくという、そういう意味では非占有担保としての役割が担わされている担保ではないのかと思っています。   占有、非占有という区分がここではどれぐらい意味があるのかは分かりませんが、債権質というのは占有担保型の担保であり、何らかの支配を担保権者が獲得している担保である、それに対して債権譲渡担保は、いろいろな類型はありますが、少なくとも循環型に関していうと、非占有担保、動産の譲渡担保に近いものとして使われているということになりますと、かなり実態は異なるものであり、それを同一に取り扱っていくということがどこまで有益なのか、疑問は感じております。   例えば、37ページの3の実行通知の要否という点ですが、債権質に関しては、債務者対抗要件も具備して通知がなされているということを前提として、366条は恐らく、実行通知を改めてする必要はなく取立てができるということになっているかと思います。これは、要するに対抗要件としての通知がなされているので、取立てを行うのは担保権者であるということを設定者も理解しているし、第三債務者も理解している、了解済みの前提であるということですので、改めて実行通知は不要ということになっているのだと思います。これに対して、循環型の債権譲渡担保の場合には、登記で第三者対抗要件は具備し、債務者対抗要件は具備していないか、設定者への取立委任へ協力通知をして、いずれにせよ設定者が取立てを行っていますので、改めて実行通知が必要となるという理解なのかとは思います。   そういう意味では、37ページの【案16.7.3.1】と【案16.7.3.2】の対比は、【案16.7.3.2】は従前の債権質の実行のやり方、すなわち実行通知は改めて必要ないという考え方で、これを循環型の債権譲渡担保でそのまま適用していいのかというと、【案16.7.3.1】を適用して、実行通知をさせて、集合動産と同じような規律の仕方をするべきではないかと思われます。そうしますと、【案16.7.3.1】と【案16.7.3.2】の対立は、従前からの債権質のルールと、それから、循環型の集合債権譲渡担保のルールとして、両方対比すべきような気がいたしまして、これを選択肢として、無理やりどちらか一方に統一してしまうという点には疑問を感じているところでございます。よろしく御検討をお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。質権を選ぶか譲渡担保を選ぶかは当事者の自由ということですね、片山さんの。そうすると、別に片山さんが念頭に置かれたような役割分担をするとは全く限らないですね。担保権者が、すぐに実行したいと思う人は質権という名前の契約をして通知をすると、そうではないと思った人は、あるいは債務者側の力がある程度強ければ、譲渡担保という名前にすると、そういうことですか。 ○片山委員 二つの担保形態を用意したときに、どちらを使うのかというのは、恐らく部会長がおっしゃるとおり、当事者が自由に決定し得るということになるのかと思いますが、実際問題として循環型で事業債権を担保化しようというときに、質権は取り得ないのではないかという気はいたします。質権の場合は通知をして、占有担保として支配を確保しているという形態ですので、設定者に取立をさせる限りにおいては、実際にはそれは取り得ないというか、取らないということになるのかなと思いました。 ○道垣内部会長 どうしてそうなるのかが私には分からないのですが。別に債権質にしても、取立権を設定者側に一定程度まで留保するという形をすることは妨げられないでしょう。それはできないことにするのですか。 ○片山委員 そうですね、要するに原則、例外をどちらでどう設けるかと、これは一読でも申し上げたことかと思いますけれども、質権と譲渡担保では、原則をどちらに設定するかという点が違ってくるのだと思います。 ○道垣内部会長 なるほど。それは基本的には選ぶということですね、分かりました。二つの理念系の話は片山さんがずっと御主張のところでありまして、よく分かっているつもりであります。 ○阿部幹事 ありがとうございます。東京大学の阿部です。少し戻ってしまうのですけれども、先ほどの阪口先生の御質問されていた、第1順位が被担保債権が消えたときの処理というのは私も気になっておりまして、順位上昇するといっても、それを第三債務者が前提として、順位上昇した元第2順位に払わなければいけないということになると、それはやはり第三債務者が害されることがあり得るのかなと思いました。   なのですけれども、そこの後の考え方が私は少し違っていて、資料の36ページの21行目以下のところで、被担保債権額が幾らであっても第1順位の債権者が後記4のところで目的債権の全額を取り立てることができるとして、その被担保債権額を超えて回収がされた場合には清算義務があって、そこに第2順位とか劣後担保権者は物上代位することができると書かれていますけれども、これは多分、第1順位が設定後に被担保債権が一部弁済された場合であれば、それだけ清算金が増えるというような感じになって、それを双方に物上代位することが劣後担保権者にできるということになりますので、全部弁済された場合も、これを清算金と呼ぶかどうかはともかく、恐らく第1順位は全部請求できるということにして、しかし、その場合には債務者というか設定者に対して不当利得返還義務を負うということにして、その不当利得返還義務に第2順位は物上代位できるとして、その限りで効力を認めるという方向はあり得るのかなと思いました。そうだとすると、特に先順位の同意とかそういうものがなくても、第2順位の効力を一応認めていいし、そのことによって第三債務者が害されることもないと言い得るのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。どういうふうにして第三債務者が負担にならないようにするかは重要な問題ですので、更に考えていく必要があろうかと思います。 ○大塚関係官 ありがとうございます。調査員の大塚です。私は阿部幹事とほぼ同じことを言おうとしていたのですが、少し補足的に付け加えたいと思います。   阿部幹事がおっしゃっていたとおり、第三債務者を保護するためには、第1順位担保権が消滅した後も第三債務者は第1順位担保権者に弁済することができる、その弁済が有効であるとした上で、第1順位担保権者がその弁済を受領した場合には、清算金支払義務のようなものを観念して、そこに物上代位できるとすれば、全体としても分かりやすい規律になるのかなと思っています。   その上で、しかし、第1順位担保権者としてはそういった面倒に巻き込まれたくないと思うことがあり得ると思います。そのために、第1順位担保権が消滅した場合に、第1順位担保権者が第三債務者にその消滅した旨の通知をすれば、その後は第三債務者は第1順位担保権者に弁済をすることができないと、あるいは逆に、通知があるまでは第三債務者は第1順位担保権者に弁済することができると定めておけば、第1順位担保権者としてそういった通知をするインセンティブが生まれますので、全体としてはきちんと第三債務者に通知がなされ、第三債務者が本来の、現在の第1順位担保権者に弁済をすることが実現できるのではないかと考えています。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○本多委員 ありがとうございます。三井住友銀行の本多でございます。私の方からは、先ほどの片山先生の御議論に関しまして、実務上の考え方についてのお問い掛けも頂いていたのかなと理解いたしましたので、お答えになっているかどうかというところはあるのですが、コメントさせていただければと思います。   まず、債権譲渡担保を前提とした場合の後順位担保権のニーズに関しましては、先生も御指摘のとおり、それから部会資料にも書かれておりますとおり、実務上のニーズは確かにあると考えております。その際に、先順位担保権者の同意を経ないといけないかどうかというところに関しましては、確かに実務の実態として、先順位担保権者と後順位担保権者との間で協定を結ぶ形で優先、劣後の関係に入るということが想定されるところはあると思うのですけれども、だからといって実務上、先順位担保権者の同意がないと困るというわけではないとは思っていまして、特に、動産と債権をセットで担保取得させていただきますという場合に、動産に関しては先順位担保権者の同意がなく担保権を設定できます、一方で債権に関しては同意が必要です、ということにする実務上の必要性は必ずしもないのではないかと考えているところでございます。   それから、債権質と債権譲渡担保の使い分けについてもお問い掛けがあったのかなと理解しておりますが、典型的には、片山先生もおっしゃいましたとおり、預金債権を担保取得する場合には質権を設定させていただいているというパターンが多いのかなと思っています。ただ、普通預金債権の質権設定についても先だって議論させていただきましたとおり、定期預金債権だけが質権の対象になるわけではなくて、普通預金債権についてもやはり質権という形で担保設定をさせていただいているのが多いのかなと思っています。これは感覚的な問題なのかもしれないのですが、譲渡担保としてしまいますと、預金者、すなわち預金債権の帰属者が変わってしまうという、少なくとも形式が生じてしまいまして、預金管理上の問題が生じやすいというところがあるのかなと思っていまして、その観点からの使い分けということなのかなと理解しております。あとは、国税徴収法との関係で、設定が法定納期限等に遅れた場合に全部負けることになるのか、物的納税責任の範囲内で負担することになるのかという辺りでの使い分けというのもあるのかなと思っています。   それから、循環型について債権譲渡担保が専ら用いられることになっているのではないかという御指摘もあったのですけれども、実務の実情としてはおっしゃるとおりなのかなと思っております一方で、そもそも集合債権譲渡担保の属性を考えた場合に、これが個別債権譲渡担保の束であるという説明がされておりまして、集合債権を構成する個別債権に累積的に担保権が及んでいると考えられるのが一般的なのかなという理解を一旦前提とさせていただきますと、集合債権譲渡担保、それが循環型とか累積型とかという類型の別が言われることがあるかもしれないのですが、必ずしも実務上、截然と区別されているわけではないと考えているところではあるのですけれども、いわゆる循環型と呼ばれるものに関しましても、出発点は個別債権に担保権の効力が及んでいるということであって、その結果として、目的債権について、第三債務者に対して弁済制限効が及んでいて、特に債務者対抗要件が具備された場合には、第三債務者も認識できるような形で弁済制限効が及んでいる結果として、設定者に取立権が与えられない形になっているというのが出発点なのかなと思っておりまして、一方で、部会資料の13の第3の2(1)で、片山先生も御指摘のとおり、通常の事業の範囲内であれば設定者に取立権その他の処分権が認められるということをデフォルトルールとするという提案がされているのですけれども、それが実際、本当にそうなのかというのはいろいろな御意見があるのかなと思っていまして、私も、片山先生がおっしゃるような循環型といいますか、ボロイングベースで管理しているようなABLのような場合には、確かに所定のタイミングにおける所定の範囲の残高について担保の目的として管理していますということであり、それ以上の額の債権が発生している場合で、設定者の事業がきちんと回っているという限りにおいては、それを越える範囲内における債権について、設定者が取立てをし、自己の事業のために利用していくということ自体、認められてよいのかなと思ってはいるのですけれども、それ以外の類型について、必ずしも先ほど申し上げた出発点を越えるような取扱いが是とされるべきものではないのではないか、と考えております。そうであるとして、特に、債務者対抗要件を具備した場合に、第三債務者との関係において、この場合には設定者に取立権が認められる、一方でそれ以外の場合にはそうではないというふうな区別が第三債務者からきちんとできるのかということを考えた場合に、必ずしもそういう設計が当然のデフォルトルールになるわけではないのではないかというふうな考え方を持っているところではございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○阪口幹事 阪口です。先ほどの阿部先生と大塚さんのお話の中であった、第1の被担保債権が消滅したときの処理のところで、消滅通知のようなものを送るというのは結局、必要になるのだろうと思っているのです。ただ、二つあって、一つは、第1順位の人は被担保債権が消滅したら第三債務者に請求するモチベーションもないし、また、請求が来なかったら第三債務者の方も払いもしないという中途半端な問題というのが発生し得るので、債権譲渡制限特約のときの民法466条第4項の処理みたいな、何らかの仕組みは要るのかなというのが一つです。   もう一つは、消滅通知だとすると、原債権者に戻るだけなのが原則と思うのです。ところが、今までの二重譲渡の通知のときには2通目はもう無視してよかった。真正譲渡を考えたときに、第1真正譲渡、第2真正譲渡があり、両方確定日付ある通知が来ました、遅い方の債権譲渡通知は全く無視して、その後何があったって知らんということで済んだと思うのです。ところが今のだとすると、実は第2の内容証明をきちんと置いておいて、第1の消滅通知が来たら、では、あの第2が繰り上がったのねというふうに扱わなければいけないという意味で、多分やはり真正譲渡のときとは少し何か違うことがここで考えられているのではないかと思うので、その辺り、やはり第三債務者の目から見たら真正譲渡なのか債権譲渡担保なのか分からないという前提のときに、もう少し何か工夫が要るのかなとも思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。そのとおりかと思うのですが、だから後順位はもう付けない方がいいという結論にはならない、阪口さんも。 ○阪口幹事 すみません、それが簡単であることは認めますけれども、やはり実務のニーズがあるように思うので、そこは認めていただきたい。だから、それのバランスが同意ぐらいかなぐらいのところを思っていたのですけれども、先ほど本多委員から、動産とのセットを考えたら同意がない場合でもありなのかな、みたいな話があって、確かにそういうニーズもあると思うのです。そうすると、ますます第1と第2が関係ない人になるので、仕組みをきちんと作らなければいけないような気がして、どうするのかなと思うという辺りです。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見、御質問等はございますでしょうか。 ○本多委員 ありがとうございます。三井住友銀行の本多でございます。第7の3につきまして、かねて【案16.7.3.2】に相当する見解を支持させていただいており、また、動産についても同じくそういう考え方をとらせていただいていたところなのですけれども、今回も同じくでございまして、一方で【案16.7.3.1】を支持する見解の根拠について、念のためにコメントさせていただければと思います。   38ページ目の23行目以降におきまして、受戻しの最後の機会を与える期間として一定の期間を置く必要性があるという理由が挙げられているのですけれども、確かに企業の事業の再生を期す上で、期限が到来するなり即時的に担保実行されてしまいますと、それにより事業キャッシュフローの源泉である目的債権が取り上げられてしまうのではないかという御懸念はよく理解できるところではあるのですけれども、一方で、かねて申し上げておりますとおり、実際に受戻しが必要ということなのであれば本来、期限が到来する相当前の時点からリファイナンスの準備がなされているのだと思うのですけれども、それが何らかの事情によってうまくいかない、期限に間に合いそうにないということなのであれば、担保権者としても、御相談いただけるのであれば、その合理性をきちんと判断させていただいて、リスケを含めまして必要な対応を行わせていただいて、ハッピーシナリオに至るというのが合理的な均衡になるのではないかと思っているところでございます。一方で、そういう協議を設定者、担保権者間で行ったものの、リファイナンスの可能性について折り合いをつけられなかったという場合には、設定者側においてラストリゾートとして再生手続の開始の申立てと担保権実行中止命令等の発令の申立てを同時に行うという措置はあり得るのかなと思います。   そこまで行かずとも、私的整理手続の申立てと一時停止の要請を行うことによって、やはり担保権の実行を停止させるということ自体はあり得るのかなと思っています。特に近時、中小企業の事業再生等に関するガイドラインが策定されたところでございまして、担保権者が金融機関である場合にはこのガイドライン等にのっとって誠実に協力をさせていただけるということもありますので、こうした制度を活用することによって、民法に一律の猶予期間を法定するということではなくて、個別の事情に応じた柔軟な対応ができるということはあるのではないかと考えているところでございます。   それから、もう一つ、不誠実な担保権者を想定した場合に画一的な待機期間が必要という御意見につきましても、既に動産に関して申し上げたところと同様ではあるのですけれども、特に債権について一言だけ申し添えますと、かねて個性に乏しい金銭債権を前提とした場合に受戻しの必要がどこまであるのかということが議論されておりますけれども、例えば単純な金銭債権であったとしても、その客観的な価額が被担保債権の額よりも大きくて、特に目的債権の期限が未到来であるような場合に、もしかしたら担保権者が私的実行をしてしまうということがあるかもしれない、それを踏まえた受戻しのニーズというのもあるかもしれないとも思われるのですけれども、仮にそういう状況を前提として、不誠実な担保権者が、期限が到来するなり、例えば帰属清算の形で私的実行してしまいましたという場合に、特に目的債権の期限が到来していないということなのであれば、目的債権の客観的な価額から被担保債権を差し引いた金額において清算金の支払義務を負うという資金負担が生じることにはなるのであって、そういう資金負担を生じさせながらも不誠実な担保権者がそういう私的実行を強行することが想定されるのかどうかについて検証が必要であって、そういう事象を念頭に置いて一律に法定の猶予期間を設けるという実益がどこまであるのかというのも、慎重に検討される必要があるのかなと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○阿部幹事 ありがとうございます。阿部です。先ほどの阪口先生からの補足的な御意見に対してなのですが、まず第1点目の、第1順位の債権譲渡担保権者は、そうはいっても被担保債権は消滅しているので積極的に取立てはしないのではないかというのは、そのとおりかなと思ったのですが、他方で第三債務者は目的債権の債務者として遅滞に陥らないために適時に弁済をしなければならなくて、むしろ、第三債務者の方がインセンティブを持って弁済することになるのではないかと思いました。このときに、第1順位債権譲渡担保権者が、しかし、受け取ってしまえば、先ほどのお話になりますし、受け取らなかったら、そのときにはやはり被担保債権が消滅しているのだということを第三債務者に告げるのではないでしょうか。告げもしないけれども受取もしない、みたいなことが果たしてあるのかというのが、実務的なことはよく分かりませんでしたので、それはよく分からなかったというのが一つです。   それから、二つ目に関しては、真正譲渡だった場合であれば第2譲渡は無視できたのではないかという話なのですけれども、真正譲渡が競合した場合でも、例えば、第1譲渡がされて、第2譲渡がされて、その後で第1譲渡が契約解除されるということはあり得たような気がしまして、そういう場合のことを考えると、第2譲渡をおよそ無視できたのかというと、真正譲渡でも本当はできないのではないかというような気がしまして、それほど譲渡担保だからそこが大きく変わるわけでもないのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。前半に関していうと、別に現金持参するわけではないですから、口座さえ分かっていれば債務者は振り込むのだと思いますけれども。別にそれを受け取らないも受け取るも、担保権者、債権者の行為を前提にしない弁済方法になるのではないかと思います。   ほかにいかがでしょうか。意外にと言ったらあれですけれども、対立していて、そもそも1の後順位のものを設定できるのかということについては、ニーズはあるというのが多くの方が御認識で、だから認めるべきであるという御意見は強かったように思いますが、では実際に第三債務者がどういうふうに行動すればいいのかというのをどういうふうに分かりやすく第三債務者に通知するのかという問題がある。とりわけ、阪口さんがおっしゃった中で、譲渡通知が来たといったときに、それが担保目的であるということで、これは新しい担保権の設定かもしれませんが、新しい担保権の設定だとみなされるというようなことが起こった場合には、第三債務者としては真正譲渡か担保権の設定なのかというのは通知の文言上からは分からないという問題もありますので、そこでどうするのかという問題もあるというわけで、第三債務者の保護というのをどういうふうにするのかということかと思います。   2についてはさほど御意見がなくて、直接取立ては可能だということなのだろうけれども、3につきましては意見が分かれていたと思います。【案16.7.3.2】に従って、直接取立てをすぐにできるということでいいではないかという考え方もある一方で、他方で一定の猶予期間はやはり置くべきだという意見もあったかと思います。これは私の疑問なのですが、【案16.7.3.1】を採って、【案16.7.3.1】のルールに従わないで取り立ててしまった場合に、担保権者の負う義務って不当利得の返還債務なのですか、それとも不法行為に基づく損害賠償なんですかね。何を言っているのかというと、相殺できないかというのが何となく気になるので、不当利得だとするならば、事実として取り立ててしまえば相殺できるのではないですかという気もしないではないものですから、その辺、気になるところもあります。   4につきましては、これは御意見がなかったようですが、これはこれまでの部会の流れからしても、全部取立てということでいいということなのでしょうか、ということでありまして、その点について、もし確認的な御発言があれば、お願いしたいと思います。   その前に、片山さんから手が挙がっていますので、片山さん、お願いいたします。 ○片山委員 その前にではなくて、その4なのですけれども、恐らく第三債務者の立場からしますと、真正譲渡も譲渡担保も債権質も、通知が来て、先ほど部会長は、通知は譲渡か債権質かは区別できないということでしたが、それは恐らく。 ○道垣内部会長 そう言ったのではなくて、譲渡が真正譲渡なのか担保権の設定なのかが。担保権の設定と書かなければ担保権の設定にならないというふうな解釈論を採るのだったらいいのですけれども、真正な譲渡ですと書いて通知をしても、担保目的であるならば担保権の設定として、今回いろいろやろうとしているルールが適用されるということになると、通知の文言上からは第三債務者は分からないと、そういうふうに申し上げました。 ○片山委員 ありがとうございます。ということですと、第三債務者からしますと、譲受人あるいは質権者が常に全額取立てられるということで統一して366条も改正をするということで、それで結果だけを見るといいようにも思われますが、やはり何で全額取り立てられるのかということを考えていきますと、真正譲渡にしろ譲渡担保にしろ、帰属がもう移転してしまっているということであれば、譲受人の権利なので、全部取り立てることができるということですんなり説明が付くので、少なくとも譲渡担保に関していうと全額取立てが原則なのだと思うのですが、債権質に関しては、帰属自体がまだ設定者のところにあって、それを前提として366条で質権者に取立権が付与されているにすぎないということになりますと、原則どおり被担保債権の範囲でしか取り立てられないという規定になっている点は、まあ分からなくはないということになりますので、果たして質権の場合にも同じように、帰属は設定者のままだけれども、取立権が与えられているわけだから、全部取立てが原則になるとまで割り切っていいのかという点は、少々心配なところはないわけではありません。そういう意味で、譲渡担保と債権質は必ずしも同一に論じられないところもあるのではないかと思った次第でございます。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。ほかに。 ○沖野委員 片山先生の二つのモデルについてなのですけれども、譲渡担保の方は帰属で、質権の方は帰属は変わっていないということで、そういう説明で違いも説明できるのではないかという点ですが、確かにそうかなとも思いますけれども、いずれもこれは結局担保であって、債権という目的財産を取立てという形で換価しているのだと、換価した上で被担保債権へ充当して、余剰については債務者に清算するというか、返還するというかそういうメカニズムなのだと考えますと、両者で同じということも十分成り立つように思いまして、かつ、そういう取立てだけが非常に特殊なやり方なのかというと、恐らく、機能的なと言いますか、実行の様々な手法の一つで、端的に取り立てる形で財産を現金化しているということのほか、この後出てきます他のやり方というのでしょうか、帰属清算ですとか処分清算ですとか、取立てもそれらと並ぶ一つの手法だという説明も十分あり得るのではないかと思いまして、また、以前から言われていることですけれども、やはり第三債務者にとっては、被担保債権の範囲だとかそういうことを確認しないと、もちろん478条で保護される面はあるのでしょうけれども、そういったことは、しかも質権か譲渡担保かということを十分理解した上でというのは、どのくらいそれが在るべき姿なのだろうかというのは、なお疑問には思っております。   以前からの繰り返しではありますけれども、改めて申し上げたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見はいかがでしょうか。   そういうわけで、4につきましてもある種、今、片山さんがおっしゃったこと、沖野さんがおっしゃったことで、話の対立軸ははっきりしていると思うのですけれども、こちらがいいと思うというふうな御発言があればお願いしたいと思いますけれども。よろしゅうございますでしょうか。   それでは、先に進めるようで申し訳ございませんけれども、第7の5以下に移りたいと思います。   そこで、第7の「5 担保の目的である金銭債権の弁済期が被担保債権の弁済期前に到来した場合に、担保権者が請求することができる内容」、「6 担保の目的財産が非金銭債権である場合の実行方法」、「7 直接の取立て以外の私的実行の方法」、「8 集合債権を目的とする担保の実行」ということについて、残りの部分について議論を行いたいと思います。まずは部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、40ページの「5 担保の目的である金銭債権の弁済期が被担保債権の弁済期前に到来した場合に、担保権者が請求することができる内容」について御説明いたします。   ここでは、目的債権の弁済期が被担保債権の弁済期前に到来した場合において、債権譲渡担保権者は目的債権を直接に取り立てることができるものとする【案16.7.5.1】と、債権譲渡担保権者は第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができるにすぎないとする【案16.7.5.2】を提案しています。その内容は、一部変更点はありますが、部会資料7で提案したものとおおむね同様です。   一読では、被担保債権の弁済期を容易に知り得ない第三債務者の保護の観点から、【案16.7.5.1】に賛成する御意見があった一方で、取り立てた金銭の被担保債権への充当を認めることを担保権の効力の観点から理論的に説明することは困難であるとの御指摘がありました。【案16.7.5.1】を採用する場合には、このような御指摘を踏まえ、取り立てた金銭の処理方法を検討する必要があるものと考えられます。   他方で、【案16.7.5.2】を採用する場合には、第三債務者の保護をいかにして図るかが問題となります。【案16.7.5.2】においては、このような観点から、部会資料7の【案7.4.4.2】に一部変更を加え、第三債務者が債務者対抗要件を具備した譲渡担保権者に対して目的債権の弁済をしたときは、この弁済をもって設定者に対抗することができるものとすることを新たに提案しています。   そのほかに、債権質についても民法第366条第3項を改めて同様の規律を採用すべきか否かについても問題となりますので、この点も含めて御議論いただければと思います。   次に、43ページの「6 担保の目的財産が非金銭債権である場合の実行方法」について御説明いたします。   ここでは、担保の目的財産が非金銭債権である場合に、譲渡担保権者が弁済として受けた物について、新たな規定に係る担保権と質権のいずれを取得するものとすべきかを問題提起しています。  債権質についての民法第366条第4項と同様に、非金銭債権を目的とする債権譲渡担保についても、その弁済として受けた物が目的債権の代償物に当たるものとみて、物上代位としてその代償物に対する担保権を成立させるのであれば、その成立する担保権の種類は、従前の担保権と同一のものとみるのが整合的とも思われます。このように考えると、譲渡担保権者は、弁済として受けた物について、新たな規定に係る担保権を取得するものとすることが考えられます。   他方で、新たな規定に係る担保権においては、原則として設定者に使用収益権限が認められるところ、譲渡担保権者が受領した物を設定者に返還してその使用収益をさせることは、物の引渡請求権を目的として譲渡担保権を設定した当事者の合理的意思に反するようにも思われます。このように考えると、譲渡担保権者が受領した物を引き続き占有することができるようにするため、譲渡担保権者は受領した物について動産質権を取得するものとすることも考えられます。もっとも、この場合には、動産質権者は当然に私的実行をすることができるわけではないため、私的実行をすることができるように規律内容を検討する必要があると思われます。   次に、44ページの「7 直接の取立て以外の私的実行の方法」について御説明いたします。   ここでは、債権譲渡担保権の実行方法として、直接に取り立てる方法のほか、帰属清算方式及び処分清算方式による実行を認めることを提案しています。一読では、この点について特に異論は見られなかったことから、従前の提案を維持しております。   一読では、債権譲渡担保についても、民事執行法上の債権執行手続による実行を認めることが考えられるとの御指摘がありました。後順位債権譲渡担保の設定を認めた上で、劣後担保権者は優先担保権者の同意がなくとも債権執行手続による実行をすることができるものとするのであれば、債権譲渡担保について、債権執行手続による実行を認めるニーズがあるものとも考えられます。  もっとも、債権譲渡担保の法的構成として、目的債権は譲渡担保権者に帰属していると考えるのであれば、債権譲渡担保権者が設定者を執行債務者として目的債権を差し押さえたとしても、いわゆる空振りとなり、執行手続を進行させることはできないようにも思われます。また、第三債務者が真正譲渡と債権譲渡担保を的確に区別することは困難であるとすれば、債権執行手続において真正譲渡と債権譲渡担保で異なる取扱いをすることは、第三債務者の負担を増加させるものとも考えられます。債権譲渡担保について、債権執行手続による実行を認めるか否かについては、このような点も踏まえて検討する必要があるものと思われます。   次に、45ページの「8 集合債権を目的とする担保の実行」について御説明いたします。   ここでは、一読と同様に、現行法のいわゆる集合債権譲渡担保については、一般に、動産における集合物に対応する集合債権という概念は用いられず、個々の債権が直接譲渡の対象になると考えられていることを踏まえ、集合債権が担保目的で譲渡された場合であっても、個々の債権について個別に実行を行えば足りることとし、特段の規定を設けないことを提案しています。   これに対し、一読では、集合債権という概念を用いないとしても、循環型の債権譲渡担保においては、実行通知によって取立権が設定者から譲渡担保権者に移行し、設定者の処分権が制限されることとなるから、私的実行について特別な規定を置くことも考えられるとの御指摘がありました。この点については、債権譲渡担保における取立権の法的構成も含めて検討する必要があるように思われます。   以上について御議論いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、これらの点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○片山委員 片山でございます。度々申し訳ございません。5の【案16.7.5.1】か【案16.7.5.2】かというところでございますけれども、取りあえず債権質の問題は措くとして、債権譲渡担保に関して言いますと、弁済期到来前も取り立てるということは十分、理論的にも説明できると思います。ただ、その場合に、取立金を被担保債権に直ちに充当できるというわけでないのは言うまでもないことですから、その間の、供託までさせる必要はないかと思いますけれども、何か分別管理のような義務を課す必要はあるのではないかと思っております。分別管理した上で、その後、弁済期が到来して初めて充当できるというような規定は必要であるかと思っております。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。前に伺ったかもしれませんが、分別管理の効果は何ですか。 ○片山委員 分別管理をしなかった場合の効果ということですか。 ○道垣内部会長 分別管理をすることによる効果。 ○片山委員 分別管理することによる効果は直ちにないのだと思いますが、分別管理をすると、倒産隔離が図られてるということまで認めるとしたら、効果はあるということになるかとは思います。譲受人の資産にならないというような効果を認めるとしたら、倒産隔離まで認められることになりますが、そこまで認めるべきかどうか、十分に検討できておりません。 ○道垣内部会長 そこまで認めなくてもいいという考え方は十分あると思いますけれども、しかし、すぐに充当してはいけないのだということになると、気持ちの問題みたいな感じになるような感じもしますよね。すみません。   どうぞ、ほかの方も御自由にお願いいたします。 ○阪口幹事 度々の発言、申し訳ございません。まず、5番のところに関しては、日弁連や所属弁護士会でも【案16.7.5.2】の方が優勢でした。供託というのは面倒だということはあるかもしれませんが、ここでは後半の部分も考えられていて、この辺がバランスではないかというのが、理論的にどうかというのは別ですけれども、実務的にはこの辺がバランスではないかと思います。【案16.7.5.1】となると、払われたお金がどうなるのかという辺りをうまく考えないといけないし、また、担保権者が倒産することもあるということも考えているからかも分かりません。   それから、もう一つ、7番のところで、法的実行手続がとれるか、とれないかのところの記載があって、ここで債権譲渡担保、先ほどの後順位の話とよく似た話なのですけれども、法的実行をしても空振りになるのかなというような記載があって、これは45ページの(注29)でも出てきている第3回議事録の16ページから19ページのところで、私が少し混乱した形で発言している部分が引かれていますけれども、この問題は決めなければいけないのだろうと思うのです。債権譲渡担保がなされたときに、一般債権者が当該対象債権の差押えができるのか、できないのかという問題を決めなければいかんのだろうということです。   先ほどの、例えば優先劣後のときに、復帰的な消滅通知みたいなものを観念するということの流れで行くのだったら、それと同様の仕組みを考えて、かすかに当たっているという仕組みを作ることも可能なのだろうと思うのです。つまり、第三債務者は最初の段階では外れという回答をする、つまり、自分のところに裁判所の差押え命令が来ても、もうこの債権は存在しませんという回答をする、するのだけれども、しかし差押えした方は、いや、それは担保目的譲渡なのだから、被担保債権を、例えば自分が第三者弁済するとか何らかの方法で消せば、実は当たっていたと扱われるという、そういう仕組みにするとか、何かの形で決めなければいけない問題だろうと思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○大塚関係官 ありがとうございます。調査員の大塚です。私からは、被担保債権の弁済期到来前に担保権者が請求する場合の5についてです。片山委員、阪口幹事、いずれも取り立ててすぐ充当するのはよくないだろうということを前提とされておりました。私も気持ちとしてはお二人に賛成なのですけれども、ただ、そのことの意味はよく分からないというところがありまして、つまり、例えば、取り立てることができる、供託でもいいですが、取り立てて被担保債権の弁済期が到来してから改めて充当して清算金を支払うとした場合と、取り立ててすぐに充当してすぐに清算金を支払うという場合とで、設定者や他の担保権者としては、すぐに清算金が支払われた方が、むしろ利益があるのではないかと思いました。   つまり、取り立てて分別管理しているものに利息などが付くわけでは多分ないと思いますので、返還される、清算金として支払われる額は変わらないとすると、あえて第1順位担保権者のところに留め置いて、倒産リスクなどが掛かってくるかもしれませんし、あるいは、そもそも留めておくこと自体が、使えるお金を留めてしまうことになりますので、だったら、弁済期到来前だけれども、充当可能にしてしまって、清算金をすぐに支払うという仕組みにすることのデメリットは特にないし、むしろメリットがあるだけなのではないかと考えたのですが、すみません、私が気付いていない点は多くあると思いますので、御意見賜ればと思います。 ○道垣内部会長 将来債権の場合、被担保債権額ってどうやって決めるのですか。 ○大塚関係官 根担保の場合はまず、別といたしまして、通常の場合に限りますと、まず現在あるものを基準に計算すればよく、しかし、後に充当することにより消滅するので、それでよいのではないかと思います。ただ、例えば、後に取消しとか解除とかいう可能性は残っておりますので、もしそれを重く見るのであれば、現在の被担保債権額についてのみ分別管理をしておいてということもあり得るかもしれません。根担保の場合には必ずしも、そうですね、現在、被担保債権額が決まらない可能性もありますので、極度額が設定されている場合には極度額について分別管理ということもあり得るかなと思います。 ○道垣内部会長 阿部さん、手が挙がっていましたけれども、引っ込めたのですが。 ○阿部幹事 阿部です。今の大塚先生の疑問を少し考えたいと思って、一回下げたのですが、私としては元々申し上げようと思っていたのは、資料の42ページの(注26)が付いているところの本文ですね、この処理をするというのであれば、【案16.7.5.1】でもよいような気がしますし、また、【案16.7.5.2】を採ったとしても、ただし書でもって第三債務者が弁済すること自体は有効なのだとした場合には、弁済した場合の弁済金の処理については、やはり【案16.7.5.1】の場合と同じようなことを考えなければいけなくなるのではないかと思ったということを申し上げたかった次第です。   ただ、弁済期まで待つことにどういう意味があるのかというのが先ほどの大塚先生の御指摘だったので、そこはもう少し考えたいと思った次第です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見はございますでしょうか。 ○阪口幹事 阪口です。今の5のところですけれども、担保権者が破産する、倒産するという局面では、やはり差が出るのではないですか。分別管理といっても結局、混入しているという評価になる、若しくは、法律できちんとそこはもう分別管理だということで特別な権利が発生するような仕組みにすればいいかも分かりませんけれども、やはり個別の預金債権をどこかの口座に置いたとしても、それは全体の中に混入してしまっていると評価されるのではないのかと思うので、そうすると、担保権者が倒産したときには供託の場合とは差が出るということかなと思ってはいます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○阿部幹事 阿部です。私も供託を実際にされれば差は出るかなと思ったのですけれども、結局、【案16.7.5.2】だと、譲渡担保権者の方が供託させなくても、第三債務者の方が弁済してしまうということがあり得るので、その場合のことをやはり考えないといけないのかなと思いました。そのときには、やはり【案16.7.5.1】と同じようなことが起こるのかなと思ったというところでした。 ○道垣内部会長 なるほど。つまり、担保権者の権利が【案16.7.5.2】の範囲にとどまっていたとしても、実際上第三債務者から支払われた場合の処理とか、あるいは担保権者の行動規範とか、そういったものを定めなければ、やはり【案16.7.5.2】だけを規律したのでは足りないと、そういう話ですね。それはよく分かりました。 ○阿部幹事 はい、そのとおりです。 ○道垣内部会長 ほかに御意見はございませんでしょうか。  ○井上委員 6についてなのですけれども、今回、提案で示されているのは、弁済として受けたものについて譲渡担保権を有することとするのか、動産質権を有することとするのかという問題の立て方になっているのですが、その問題とは別に、別にといいますか、譲渡担保権を取得するという場合であっても、あるいは質権を取得するという場合であっても、設定者が倒産してしまって、設定者の倒産手続の開始後に弁済として受けた物については、これは倒産手続の関係でどう扱われるのかについて、事務局はどういうお立場なのかということをお尋ねしたいと思います。 ○道垣内部会長 受け取った後に設定者が倒産した場合ですよね。 ○井上委員 受け取る前に。つまり、非金銭債権の譲渡担保の設定と対抗要件の具備は先に行われていて、その状況で設定者が倒産してしまったときは、非金銭債権自体の譲渡担保権は管財人に対抗できるものだと思うのですけれども、手続開始後に受け取った物に対して、例えば譲渡担保権を取得するとしても、その債権譲渡担保権の対抗力が動産譲渡担保権に乗り移るような形で、遡って管財人に対抗できる動産譲渡担保権を取得するのか、そうではなくて、その時点で初めて取得するのだとすると、管財人に対抗できないと評価されるのか、私は最初、その点についてお尋ねしたつもりでした。道垣内先生の先ほどの設定だと、物を受け取った直後に設定者が倒産したときに、受け取った時点で、占有改定が自動的に行われるみたいなことを、違うか、担保権者が受け取ることを想定すると簡易の引渡しなのですかね、よく分かりませんが、対抗要件の問題と倒産手続における対抗力の問題をどう考えるのかをお尋ねしたいということです。 ○道垣内部会長 6番のところは現行民法の366条4項とパラレルに作られているという前提であり、366条4項というのは、質権を取得するではなくて質権を有するとなっていて、そのまま既存の質権がスライドしてくると、それを物上代位というかどうかはともかくとして、そういう考え方でできているのだろうと思います。したがって、6のルールを作ったときも、原案の趣旨としては、最初の担保権の設定で対抗要件取得した時期が、後のものに対する質権の対抗要件の具備時でもあると考えるのではないかと思いますが。 ○笹井幹事 御説明いただいてありがとうございました。今、部会長の方からも御説明がありましたように、それは元々366条4項にもある問題で、その問題については、部会長がおっしゃいましたように、対抗要件の具備時というのは、元々の非金銭債権の対抗要件の具備時を、受け取ったものについての質権の対抗要件の具備時として扱って、第三者との関係を考えていくということになるのだと思います。   ここでも、今のゴシックの表現でそれが表現できるかどうかというのはともかくとして、実際やりたいこととしては、第三者に対する対抗要件の具備時は、最初の非金銭債権の対抗要件の具備時をそのまま持ってくるということが必要になるのではないかと思います。 ○道垣内部会長 それを前提とした上で、井上さん、何かありますか。 ○井上委員 私自身、民法366条4項の場合に倒産手続における扱いがよく理解できていなかったので、今それが気になってお尋ねしたものです。もし当初の債権譲渡担保の対抗要件具備の対抗力を引き継げないとすると、担保権者に酷かなと思った反面、今の御説明のような整理だとすると、動産なのでそういうものかもしれないのですけれども、外形上分かりにくいという問題があるのかなと思ったのですが、ただ、今の御説明の方が実態に合っているのかなと理解しました。ありがとうございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○横山委員 横山でございます。5のところで、直接にこの案に関係するというよりも、先ほど少しお話が出ておりました、債権質と債権譲渡担保と、どれだけその制度を同じにしていくのか、それとも差別化を図るのかというところについて、むしろ確認をお願いしたいと思っております。   と申しますのは、この【案16.7.5.2】で、第三債務者は、対抗要件を具備した担保権者に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって設定者に対抗することができるという形で、第三債務者の保護をここでは図っているのですけれども、少し前に戻りますけれども、先ほどの債権譲渡担保権者による債権の取立てとか、質権者の場合との比較というところで、ここでは第三債務者保護の観点から譲渡担保権者と質権者とを同じに扱いましょうということが書いてあります。   理論的にはということですけれども、私は理論的にはと申しますのは、この債権質についても、例えば第三者保護の観点からということを言うのであれば、その被担保債権について知っている第三債務者が、いや、あなたの被担保債権はこれだけなのだから、これだけ以上払う必要はないよというような抗弁をするということも理論的にはあり得ると思ったわけですけれども、この機会に確認したいのは、制度全体としてはできるだけ債権譲渡担保と債権質というのは同じようなものとして、担保として扱っていこうというのが前提で、うまくいかないところだけは区別するというスタンスで考えればよいのか、それとも、そういうことではなくて個別に考えると、片山先生がおっしゃった点はともかくとしまして、債権質は債権質としてニーズがあるかどうかよく分かりませんけれども、別なものとして残すこともあり得るのだというようなスタンスで考えておられるのか。もし後者だとしますと、例えば先ほど、前のところに戻りますけれども、資料の37ページの辺りで、債権質だということを知っている第三債務者が、全部払ってもいいけれども断ってもいいというような、つまり被担保債権額だけ債権質なのだからという抗弁もあり得るのかなと思いまして、それがいいという趣旨ではないですけれども、どんなふうな選択をお考えなのかということを教えていただければと思います。 ○笹井幹事 正しくその点がこの部会で御議論いただくことなのかなと思いますけれども、事務局というよりも私の個人的な考え方になるのかもしれませんけれども、本来的にはこの債権質と債権譲渡担保という別々のものとして設けて、残していくのであれば、それぞれ別個に考えていくというのが出発点にはなるのではないかと思います。ただ、それぞれの規律の合理的な内容を考えていくときに、例えば理論的な出発点として、債権の帰属が質権においては設定者になお残されているのに対して、債権譲渡担保においては債権の帰属自体が変わっていくのだというような、そういう理論的な出発点から演繹的に違いが出てくるということは、もちろんあり得るかもしれないとは思いますけれども、一方で、やはり第三債務者にとっての分かりやすさとか、債権を担保の目的で取っているという点の共通性ということを考えていくと、私は最終的にはその合理的な内容というのは同じようなものになってくるのではないかと思っておりまして、資料を作成するに当たりましても、そういった共通性という面を意識しながら作っているということでございます。ただ、これは冒頭申し上げましたように、どういう立場を採るのかというのは部会において御議論いただくことなのかなと思っております。 ○横山委員 ありがとうございます。私自身もどちらかという強い思考があるわけではないのですけれども、帰属がどうなるかということについては、理論的には両方担保だということで説明できるのかと思います一方で、債権質という制度を本当に譲渡担保と同一のものに統一していってしまって、ニーズがくみ取れなくなることはないのかという、制度のバリエーションを用意するという意味で、債権質を残すという方法もあるのかなと一方では、感想になりますけれども、考えております。そういう場合に第三債務者をどう保護するかという、債権質かどうか分からないという場合の第三債務者の保護の在り方というのを、先ほど申し上げたような方法で、知っていたら断ってもいいというようなやり方ももしかしたらあるのかもしれない、でも、それも少し効率が悪いのであれば、ここは一緒にしてしまうということも、両方あるのかなと思いました。   すみません、感想みたいになりますけれども、以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。実際、質権に関する366条に関しましても、第三債務者の保護の観点から見ますといろいろ問題がありまして、譲渡担保のタイプのものについてだけ【案16.7.5.2】とかで、対抗要件を具備した担保権者に弁済したら設定者が対抗できるとか書いていますけれども、では、質権のときに、沖野さんもおっしゃったと思いますが、質権者の被担保債権の額が幾らなのかが第三債務者に分かるのかというと、これは本当に分からないですし、弁済期が到来しているかどうかも分からないですよね。そもそもそんなものは分からない、いろいろな約定によって弁済期というのは到来しますから、分からない、そういった理由で、不動産抵当権において弁済期の定めというのが登記事項から外されたわけです。366条は全部478条に過大な負担を掛けて処理をしているのだろうと思うのですけれども、それは本当にそれでいいのかというと、変だといえば変なのですよね。そうすると、譲渡担保について気を使うのならば、この部分の質権の方も気を使って直さなければいけないのではないかというふうになってくるか、まあ質権はいいではないかと考えるか、あるいは質権もいいではないかと、478条にすごく依存しているのだったらば、譲渡担保形式をとったときも478条にすごく依存させていいではないかというふうなこともあり得るのかもしれませんが、そこの判断をどうするかというのは、正に笹井さんがおっしゃったように、部会の議論によって決まっていく事柄だろうと思います。   ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○加藤幹事 幹事の加藤です。6について1点、コメントさせてください。御説明にありますとおり、ここでいう非金銭債権には株式や信託受益権などは含まれないということは承知していますが、この非金銭債権の中には有体物以外の財産権の給付を内容とする非金銭債権は含まれると理解しております。そういった場合、例えば非金銭債権の内容が株式や信託受益権などを給付する場合、若しくは、より広く様々な財産権を給付するものであった場合については、これは解釈に委ねられるということになるのでしょうか。これは366条4項でも既に問題になり得ることだと思いますが、何らかの立法的措置をするのか、それとも解釈に委ねるという前提で御提案されているのかということを確認させてください。 ○笹井幹事 ここは確かに非金銭債権としか書いていませんので、おっしゃったように有体物だけの給付に限らない書き方にはなっておりますけれども、これは366条4項を言わばそのまま引っ張ってきたような形になっておりまして、366条4項は、受け取った物についてと書いてありますので、結果的には有体物の給付請求権が担保に取られた場合に適用場面としては限定されてくるのだろうと思います。そういう意味で、有体物の引渡請求権以外の給付、役務とかそういったものを給付することを目的とする債権が質権の目的になっていた場合には、結局、現行法上も解釈に委ねられているということになっているかと思います。現時点で何か私どもとして具体的なアイデアがあるわけでもありませんので、結果的には現在の立場としては、そこは解釈に委ねるということになろうかと思います。 ○道垣内部会長 なかなか難しいところで、おっしゃったように信託受益権が給付されるとかと考えると、物を財産ないしは財産権というふうにすれば何とかなるのではないかという感じもするのですが、極端な例ですが、笹井さんがおっしゃったように役務給付が行われるというふうなときになりますと、それについての質権というのがなかなか考えにくくなりますので、全ての財産についてこういうふうな処理がされるわけではないはずなので、そこら辺は解釈論の余地が一杯残りますが、本当はせっかくなのだからなるべく分かりやすくした方がいいとは思いますけれども、そこはまた加藤さんも御提案いただければと思います。   ほかにいかがでしょうか。5、6の辺りはお話を頂いたのですけれども、7、8についてさほどまだ御意見を頂いておりませんが、とりわけ、例えば8につきまして。ごめんなさい、本多さん、どうぞ。 ○本多委員 ありがとうございます。三井住友銀行の本多でございます。正に今、8について一言コメントさせていただければと思っていたところでございまして、先ほど片山先生との応答に際しても申し上げたところではあるのですけれども、8の考え方と、部会資料13の第2の3(1)の考え方の関係というのを整理しておく必要がありそうなのかなと思っていまして、部会資料13の第2の3(1)で何が書かれていたかというと、設定者が通常の事業の範囲内で目的債権について取立てその他の処分ができるというのをデフォルトルールにするという考え方なのですけれども、そのとおりなのであれば、この8のところでも、その設定者の取立権限といいますか、処分権限を含めて、実行に際して覆滅させるルールを設けないといけなくなりそうなのかなと思われた一方で、そもそも部会資料13の第2の3(1)のルールというものが元々どうなのかというところはあるかもしれなくて、先ほども少し申し上げたのですが、債務者対抗要件が具備されて、一方で担保権者から設定者に対する取立権限等の授権が明確になされていない場合に、そもそも第三債務者として誰に弁済したらいいのかが分からなくなるというふうな状況も生じそうなのかなというところを考えますと、部会資料13の第2の3(1)のルール自体が適切なのかどうかということも併せて考えないといけないこともあるのかなと思いまして、一言申し上げられればと思っていた次第です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。今、御指摘いただきましたが、8に関して、債権譲渡について将来債権譲渡が認められるということが明文化されたとともに、判例法理においても集合物論に対応する集合債権論というのが用いられているわけではないというのを前提にして、個々的なものとして考えれば足りるのではないかというスタンスでずっとここまでもやってきたのですが、しかしながら、これをきっかけにきちんと集合債権論というものを確立して、内容が変動する集合債権というのを観念するというのも十分あり得る選択肢ではあるのですが、そろそろその辺りのことは確定しなければなりませんので、特に今回御議論がないようでしたら、この方向でまだしばらく進めていきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。 ○片山委員 片山です。今、部会長の御発言が、どちらの方向に行くのかがよく分からなかったもので。今後こちらの方向で行くというのは、集合債権に関しては特別な規定は設けないものとするという方向で行くということなのでしょうか。 ○道垣内部会長 ということでいいかしらというわけで、別にここで決めようというわけでは。 ○片山委員 せっかくの機会ですので、大分時間は超過しておりますけれども、判例法理との距離感ですけれども、必ずしも将来債権譲渡担保に関して今の判例法理がそのまま立法化されるということでもないということのようですので、そうであるとしたならば、立法として、集合債権概念を前提とし、すなわち固定化を前提とした債権担保も選択肢の一つとして提供することにはそれなりの意義があるのではないかとは思っております。今回の実行の部分についてもそうですけれども、次回の倒産の部分でも、固定化を前提としたような集合債権概念を一つの選択肢として提供して、将来の債権全てを一つ一つ個別に担保に取るという従来型の将来債権譲渡担保と別個に、集合債権を目的とする譲渡担保という選択肢を認める方向についても議論の余地はあるのかとは思いますので、クローズにしないで議論は継続していただければ有り難いかなとは思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかによろしいでしょうか。 ○大澤委員 大澤でございます。今の片山先生のお話と大分かぶってしまうのかもしれませんが、集合債権論というところについて、判例等で診療債権とかいろいろなものがありますけれども、今きっといろいろな先生方がお考えになる、あるいはこれから考える、今も行われている集合債権というものは、いろいろなものを雑多に取ることも含めての集合債権論というのが出てくるのが実務だと思っておりますので、両方の規定を今まで以上に、個別論と集合債権論と両方勘案しながらという方向の方がよいのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。集合債権論というのを採らなくても、実行について、ある種の手続をとったときに、実行対象となるものが確定するという考え方は、そういう集合債権論とかというふうなかぎ括弧付きのもので考えなくても、あり得る選択肢なのかもしれないのですが、更に検討する必要があるのかもしれません。   7に関して、帰属清算方式や処分清算方式の私的実行も、これはあり得るということで、これもよろしいでしょうか。 ○大澤委員 すみません、何度も。7のところに関しては、そうしますと、確か一読でも出ていたかと思いますが、動産と同じように、帰属清算、処分清算ということになりますと、誠実評価かどうかという話がまた、同じ議論が出てくると考えてよろしいのでしょうか。少しそこは質問させていただければと思いました。 ○笹井幹事 そうですね、正直申し上げると、帰属清算とか処分清算とかということを債権について行う例というのは余りないのではないかとは思いますけれども、ある種の債権を買い取るという形で実現するということになりますと、動産と同様に、誠実評価とか、あるいはまた別の考え方も主張されておりますので、動産と同じように考えていくということになろうかと思います。 ○大澤委員 ありがとうございます。 ○片山委員 度々申し訳ございません。今の点なのですけれども、そうしますと、私的実行は認めるということでいいのですけれども、本文中に、法的な債権執行手続について認めるかどうかについては議論の余地があるということになっているのですけれども、ここの部分も併せて、余地があるという形で議論を引き続き行うということでよろしいのでしょうか。 ○笹井幹事 そうですね、今日何か御議論があるかなと思いましたけれども、余りなかったようですので、もう少し考えてみたいと思います。 ○道垣内部会長 ほかに、よろしいでしょうか。   では、また全ての論点がもちろん煮詰まったというわけではございませんけれども、時間も少し過ぎておりますので、更に今日の御意見、御議論を踏まえて次のバージョンアップを行いたいと思います。   ほかに御質問、御意見がないようでしたらば、本日の審議はこの程度にさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは、次回の議事日程等につきまして事務当局から説明をしていただきます。 ○笹井幹事 本日もありがとうございました。次回は7月12日の午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省地下1階大会議室でございます。   次は予備日ではなく、本来の開催日ということになりますので、新しい資料を来週お送りさせていただきます。 ○道垣内部会長 それでは、法制審議会担保法制部会の第19回会議を閉会にさせていただきます。   本日も熱心な御議論を賜りましてありがとうございます。また7月12日もよろしくお願いいたします。それでは、皆様お元気で。 -了-