法制審議会 商法(船荷証券等関係)部会 第3回会議 議事録 第1 日 時  令和4年7月27日(水)自 午後1時29分                     至 午後5時48分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題  船荷証券に関する規定等の見直しに関する論点の検討(2) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○藤田部会長 予定の時刻までまだ1分ほどあるのですけれども、もう皆さんおそろいのようですので、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会第3回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は箱井委員、衣斐幹事は御欠席と伺っております。また、上田委員、金子委員、北澤委員、洲崎委員、池本幹事、内野幹事、松井幹事はウェブで参加と伺っております。   また、前回の部会後に委員等の交代等がありましたので、報告させていただきます。   横山委員が退任され、新たに熱田委員が就任されました。また、山下庸介関係官が退任され、三宅関係官が就任されました。   なお、堂薗委員は7月25日付けで御異動となり、後任として松井信憲委員に就任いただく予定ですが、事務手続の都合等も踏まえ、次回から当部会での調査審議に加わっていただく予定です。   それでは、本日出席されている熱田委員には、簡単な自己紹介をお願いいたします。その場でお名前と御所属の御紹介をお願いいたします。 (委員の自己紹介につき省略) ○藤田部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   それでは、審議を開始いたします。   まず、前回に引き続き、本日はウェブ会議の方法を併用して議事を進めたいと思いますので、ウェブ会議に関する注意事項を事務当局に説明していただきます。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。前回の部会と同様のお願いとなりますが、念のため改めて御案内させていただきます。   まず、ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては、御発言される場合を除き、マイク機能をオフにしていただきますよう御協力お願い申し上げます。   御質問がある場合や、審議において御発言される場合は、画面に表示されている手を挙げる機能をお使いください。   なお、会議室での御参加、ウェブ会議での御参加を問わず、御発言の際にはお名前をおっしゃってから御発言いただきますよう御協力いただければ幸いに存じます。   ウェブ会議の方法で出席されている方には、こちらの会議室の様子が伝わりにくいということがございますので、会議室にお集まりの方々には特に御留意を頂ければと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。   以上です。 ○藤田部会長 次に、本日の審議に入ります前に、配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。配布資料について御説明いたします。   今回の配布資料は、部会資料3「船荷証券に関する規定等の見直しに関する論点の検討(2)」の1点になります。これは、事務当局が作成したものでございますので、後ほどの審議の中で事務当局から説明をさせていただきます。   配布資料の説明は以上になります。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。本日は、論点全体の前半パートである電磁的船荷証券記録を発行する場合の規律の内容、技術的要件に関する規律の内容、電磁的船荷証券記録と紙の船荷証券の転換に関する規律の内容、その他の論点、その他整理すべき事項などについて検討する予定です。   それでは、事務当局において、まずは部会資料3の第1の説明をお願いいたします。 ○中村関係官 それでは、法務省の中村の方から、今回の部会資料の第1について説明をさせていただきます。   第1は「電磁的船荷証券記録を発行する場面の規律の内容」についての御審議をお願いするものでございまして、細目といたしまして、まず1番といたしまして「電磁的船荷証券記録の発行に係る実質的な規律内容」、2番といたしまして「電磁的船荷証券記録の記録事項」、3番としまして「『支配』概念の創設及び関連概念の定義について」となっております。資料の分量も多いため、それぞれ、論点を中心に、ポイントを絞って説明させていただきます。   まず、1番「電磁的船荷証券記録の発行に係る実質的な規律内容について」は、発行の場面で誰の同意・承諾がどのような方式で必要とすることにするかといった事項を決めていただく必要がございまして、具体的には、運送人に電磁的船荷証券記録の発行義務までは課さないということでよいか。また、発行時に荷送人の承諾は必要としつつも、その承諾に特段の方式までは求めないとすることでよいか、荷受人についての承諾までは法律上の要件とはしないことでよいか、紙の船荷証券については受取船荷証券と船積船荷証券が存在するところ、電磁的船荷証券記録についても同様に、それぞれのタイプの船荷証券に相当する電磁的船荷証券記録を用意することでよいかといった辺りが中心的な論点として想定されております。   特に、運送人に電磁的船荷証券記録の発行義務までは課さないでよいかということとの関係で、受取船荷証券に相当する電磁的船荷証券記録が既に発行されている場合であっても、運送人に船積船荷証券に相当する電磁的船荷証券記録の発行義務までは課さないということでよいかといった辺りは、考え方が分かれるところかと考えております。   次に、部会資料の6ページ以下の「電磁的船荷証券記録の記録事項」です。   「電磁的船荷証券記録の記録事項」としましても、基本的には紙の船荷証券の記載事項と同様のものが想定されるかと思われますが、紙と電子データの性質の違いに鑑みて、異なる規律ぶりにする必要がないかといった点が議論の中心になるかと存じます。そして、具体的には、紙の船荷証券で認められる、いわゆる複数通発行について、電磁的船荷証券記録については認めないとする考え方でよいか。また、紙の船荷証券においては、法定記載事項の一つとされております「作成地」について、電磁的船荷証券記録の法定記録事項として残すか否か。そのほか、原則的な記録事項以外の事項の記録でしたり、発行後の記録の追加といった、いわゆる「追加記録」に関しまして、総則的にその要件や効果を定める規定までは設けない方向でよいかといった辺りが中心的な論点として想定されております。   最後に、部会資料の11ページ以下に移っていただきまして、「『支配』概念の創設及び関連概念の定義について」です。   前回の部会において、電磁的船荷証券記録については、いわゆる「物」、「有価証券」、「船荷証券」そのものではないという考え方を確認させていただいたところかと存じます。そうしますと、その結果として、電子データたる電磁的船荷証券記録については、占有や所持といった有体物を前提とした既存の法概念をそのまま用いることができないということとなります。   そこで、MLETR等も参考とした上で、排他的に電磁的船荷証券記録をコントロールできるような事実状態を捉まえたものといたしまして、電磁的船荷証券記録の「支配」という新たな概念を創設することを提案させていただいております。   この「支配」という概念の定義については、MLETRの中でも明確な規定が置かれているわけではないため、これをどのように定義するかについては、非常に難しい問題のように思われますが、この「支配」という概念については、民法上の占有権や所有権といった権利を取得するための要件とは異なりまして、言わば電磁的記録についての事実状態を示す概念であることを考慮しまして、「自己のためにする意思を持って」といったような主観的な要素等は含めないこととしつつ、表現ぶりとしては所有権に関する民法206条の規定ぶりなどを参考といたしまして、今回の部会資料では、「その電磁的船荷証券記録の使用、収益及び処分をすることができる状態」とすることを差し当たり提案させていただいております。   また、そのような「支配」の定義の考え方を前提といたしまして、併せて「電磁的船荷証券記録の発行」や「支配の移転」といった関連概念についても、実質的な要件の整理を試みております。「支配」の定義を含め、様々な考え方があり得るかと思っておりますので、是非忌憚のない御意見、御審議をお願いできればと考えております。   第1のパートの事務当局からの説明は以上となります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、今、説明のあった内容について、どなたからでも結構ですので、御意見等を頂ければと思います。どうかよろしくお願いいたします。 ○池山委員 池山でございます。   第1の中でも1、2、3とございまして、この3の支配概念のところが一番議論になるかと思いますが、まずその前に、第1の1と2について幾つかコメントをさせていただきたいと思います。   順を追っていきますと、この中では、まず第1の1の②でございます。受取船荷証券の発行に代えて要は受取電磁的船荷証券記録的なものが発行された場合は、その支配の移転と引換えでなければ、船積船荷証券、こちらは紙ですね、この交付を請求することができないという規定です。これは、字面を見ますと、研究会報告書での書きぶりと変わっているのですが、まず、この記載の意味について確認をさせていただきたいと思います。   私の理解では、研究会報告書の段階では、こういう書き方ではなかったんですけれども、実質的には恐らく変更する趣旨ではなくて、すみません、言いにくいので、受取電子B/Lとあえて言わせていただきます。受取電子B/Lが最初出たときであっても、結局それに代えて船積B/Lというのは、飽くまでも電子船積B/Lを出すことができるとしか書いていないと、そういう書き方だったと。そうすると、まず、受取電子B/Lが出たときには、荷送人側の権利としては、船積電子B/Lを出せという権利はないと。ただ、運送人側が出そうと思えば出せると、そういう整理だったと。   ただ、考えてみると、受取に代えて船積みのB/Lを出せということ自体は権利なんだから、そのことの裏腹として、紙のB/L、受取のときは電子だけれども、船積みのときには紙。そこの権利はあってしかるべきだと。それを書かないと、両方の請求権がないということになってしまうと。電子船積みの権利がないのであれば、逆に紙船積みの権利は認めなければいけないと。それは、実は研究会報告書でもそういう趣旨は解釈上読み取れて、今回はその旨はむしろ明確化したものだと、そう受け取っております。   では、正にこの点についてどう考えるかという御指摘があったかと思います。この点については、実はこれを頂いてから、私の推薦母体である船主協会の内部で少し話をしたんですが、正直意見は割れております。確かに、元々受取に代えて船積みというものを求めるというのは権利である以上は、どちらかの権利は認めなくてはいけないと。電子が常に義務化されないのであれば、では紙を認めなければいけないだろうと、ここに書いてあるやり方。それは一方で論理的ではないかと、認めざるを得ないのではないかという考え方が一つあります。   ただ、一方で、ここは言ってみれば、一種の電子から紙への転換の議論ともつながってくるのではないかという指摘がございました。やはり一旦もう電子で受取段階で出た以上は、やはりもうそれを船積みに変えるときであっても、もう電子で在るべきだと。逆にその転換請求権を認めないということを背景に、この場合は逆に荷送人側は、電子の船積みを求める権利があって、今更紙の船積みをくださいというのはおかしいのではないかという、正に正反対と、両方ありました。   私としては、それは両方とも一理があると思っているので、少しここは結論は留保させていただきたいと。ただ、元々これは研究会の段階では、私の理解では、明示的に余り意識されていなかったところであるので、この点を論点として取り上げていただいたこと自体は、大変感謝しております。   逆に、一旦受取が出たら、受取が電子の形で出たら、船積みへの変換は電子であれ紙であれ両方認められないとなると、そこは、確かに荷送人の立場としてはなかなか難しいんだろうというのは理解をしております。   すみません、事実関係の理解と、この規定の趣旨の理解と、それから、ではそう理解した上でどうするのという点は、結局は意見が分かれていて留保というだけですけれども、まずその点を申し上げたいと思っております。   余り長くなるとあれなので、まずこの点で終えます。   これに関連して、1個、一応念のために申し上げておくべきは、ここで「支配の移転と引換えに」ということが書いてあります。ここは、実は前から申し上げている点ですけれども、権利者である所持人あるいは支配者から、義務者である運送人に対して、紙であれば提出に相当する行為をすることを、支配の移転という共通概念で捉えていいのかというのは、一つの論点としてあるんだと思っています。ただ、ここはちょっと一旦横に置いてと、指摘だけをさせていただきます。   一旦ここで切った方がいいですかね。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   それでは、今の点につきまして、もし事務当局から何か御返答があればお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   御質問ありがとうございました。今回の部会資料の本文のところの第1の1、(3)の②の規律について御指摘を頂いたと思っておりますけれども、基本的な整理につきましては、池山委員がおっしゃられたとおりの趣旨でございまして、元々は研究会報告書の段階では、引換えに電磁的船荷証券記録を発行することができるという書き方になっていたかと思いますけれども、引換え給付というものをイメージした場合には、やはり請求できるかできないかという形で書かないと、十分書き切れないのではないかというようなところに思い至るのとともに、先ほど池山委員がおっしゃられたような整理が、必ずしも十分できていなかったのかなというところもあって、今回このような書き方をさせていただいたというところでございます。   実際に受取船荷証券と船積船荷証券、2種類あって、それが紙と電子それぞれ出てくると、結局4パターン出てきて、その4パターンについてどういう適用関係になるのかというのを改めて整理させていただきましたのが、今回の部会資料の5ページにあります(注)のところでございます。この(注)のところに4パターンの適用関係というのを改めて整理をさせていただいて、今回の規律案で整理をすると、一応こういう形になるのかなという整理をさせていただいたところでございます。こういった整理というのが、これまで十分されていなかったなというところがございましたので、改めて今回このような形で、たたき台として提案をさせていただいたところです。   他方で、いろいろな問題としては、では、電子版の受取船荷証券が出ている場合に、そうしたら、その次はもう船積船荷証券は紙は認めなくて、電子だけでいいではないかというのは、必ず御意見というか、考え方として出てくるだろうと思っておりますので、そこの点については皆様で御議論を頂いて、もしそういうことであれば、規律案の方は更に修正をしていくというようなことで考えていければいいのではないかと思っておりますので、この点を少し論点とし、クローズアップする趣旨というところもございますので、今、正に御指摘いただいたところにつきまして、皆様の御見解を賜れればと思っております。   それから、2点目で御指摘いただきました支配の移転と引換えという部分は、正に御指摘いただいたとおりでして、ここは受戻証券性の規定とも絡む部分でございますので、今回は取りあえず横に置いておいて、次回、本格的に議論できればなと思っております。   以上でございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。かなり重要なポリシーに関わる問題提起がありましたので、もし可能であれば、この論点について他の委員からさらに御意見を頂ければ幸いです。   ちょっと池山委員に御確認させていただきたいのですが、船主協会様で議論されたときの感触として、こういう意見もあったという理解でよろしいでしょうか。つまり、受取電磁船荷証券記録が発行された場合に、その後船積みがあった場合は、電子的な船積B/Lを発行するか、あるいは2の(3)に書かれている、船積みの追加記録をするか、いずれにせよ全部電子のところで完結し、紙のものに変えたいのであれば転換の規定でやってくれという整理もそれなりに支持があったという理解でよろしいでしょうか。 ○池山委員 そこでどっちに支持が大きいというほどの、多数の意見が聞かれているわけではありません。   正直言って、これはかなりテクニカルな問題ですので、この議論を自主的に船主協会内で議論をさせていただいたときに、させていただいたメンバーというのは少数でして、そこの中で、今、申し上げた両方の意見があったという程度です。   最終的には委員としてここに出させていただいているのは私なので、私自身の意見はどうかという点であれすると、よく分からないなと思っています。よく分からないなと申し上げるのは、もう一個、先ほど申し上げなかった点を補足するとすると、一方で、これは理論的には大変重要なんだけれども、実務的な感覚としてはほとんどないシチュエーションだというのが実はあるんです。法律上は、まず紙を前提に、今の実務で、法律上はレシーブドが出て、場合によってはシップドに切り替えるということもあると。場合によってはレシーブドの上に、いわゆるオン・ボード・ノーテーションと言われるものを付けて、シップドの発行に代えることもできると、そういう規定に現にはなっているんですけれども、そういう事例自体が基本ないと。   というのは、まず、レシーブドが問題になる場合というのは、コンテナ船なわけで、その意味ではターミナルに搬入された段階で、すなわちレシーブドの段階で、レシーブドB/Lは出し得るわけですけれども、多くの場合はレシーブされて、ターミナルに搬入されて、更にそのあと船積みが現にされてから、オン・ボード・ノーテーションの付いたレシーブドB/Lを出すと。だから、発行のタイミングとしては船積みより後なんですよね。だけれども、記載上は、言ってみれば責任はレシーブドから遡って負っていますよというB/Lが出るか、それだと発行のタイミングが遅過ぎるというのであれば、もうターミナルに搬入された段階でレシーブドB/L、オン・ボード・ノーテーションの付いていないレシーブドB/Lを出して、もうそれで流通に回ってしまうと。それで終わりだと。   だから、一旦レシーブドでもらって切り替えるとか、一旦レシーブドでもらってからオン・ボード・ノーテーションを付けるという事例自体が、ほとんど聞いたことがないと、まずその前提があるんです。   その上で、ただ、法制度上はこういう権利が認められていると。切替えであれ、オン・ボード・ノーテーションであれ、その権利が認められているし、それは場合によっては荷主さん側の事情が変わって、所持人側の事情があってそういうこともあるかもしれないと。それを認めないというわけにはいかないと。紙ではそうだと。電子B/Lでもそうだと。そのときに、途中で気が変わったときに、ではそこで紙にするのか、最初電子で出たときに、切り替えるときには紙にするというのを認めるのか、電子で認めるのかというのは、ほとんどないシチュエーション、でも理論的にはあるシチュエーションについてどう考えるかという問題なので、余り実務上負担が大きいとか大きくないとかいうのを、感覚でもって言うことができないんですよね。   そこで出てきたのは、やはり元々電子で出てしまったんだから、レシーブドの段階で。そうしたら、もうこれは、後で紙というのは切替えと同じなんだから、少なくともそっちの議論と関係するのではないのみたいな。それで、切替えというのを認めない発想であれば、転換というものを認めない発想であれば、認めないというのが一つの考え方としては出てくるし、一方で、もう一つは、元々紙のB/Lについては義務なんですから、一旦レシーブドのときは電子で出てしまったんだけれども、やはりシップドに戻しますと、出し直してくださいと。出し直してくださいというときに、そのときは元に戻って紙と言われたら、ノーとは言えないのではないのと。どっちも一理あるよねという話になると。そこはもう本当に頭の体操的な話で、なかなか今の段階でどちらとは言えないと、そういうことでございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   どちらかというと、実務的な負担というよりは、概念的な整理、自然なのはどちらかという、そういう性格の議論ではないかという指摘の上で、結論はよく分からないということのようですが、ただいまの点について、実務的な感覚も含めて、どちらの方が自然かという感触でも頂ければと思うんですが、いかがでしょうか。 ○後藤幹事 後藤です。池山委員、どうもありがとうございました。   実務感覚は全くないのですけれども、今のお話については、一度電子的船荷証券として発行したものを後で紙に切替えることを認めるかどうかという論点とリンクさせた方がいいのかなと思います。リンクさせた上で、紙も出せる方がいいだろうと私は思っているんですけれども、そことはつながっているべきかなと思っております。   今の池山委員の御発言の前提として、この部会資料の補足説明の4ページの下3分の1くらいに書いてある話なんですけれども、一度電子で受取船荷証券を出した場合には、それを船積船荷証券に変えるときは、当然に電子で出してくれというのは、それは運送人側としては電子で出す義務があってもおかしくないということになるという理解でよろしいですか。その話が抜けていたような気がしたので、そこだけ確認をさせていただければと思いました。 ○藤田部会長 どなたでも結構ですがお答え頂けますか。 ○後藤幹事 いや、船主協会さんがどう思われたのかなということで。 ○池山委員 そこは、分かりません。何というか、論理的にはそれは一つの考え方なんだろうと思うんですよねという以上は。その発想からすると、やはり最初電子で、受取で出て、それをやはり船積みに変えたいと。そのこと自体は認めざるを得ないのであれば、元々電子だったら電子を義務として認めるべきではないかというのは、暗黙での論理的な前提にはなるんだろうと個人的には思います。そこを嫌だというんだったら、紙を認めなければいけないだろうと。 ○藤田部会長 受取船荷証券を電子B/Lを出した以上は、電子船積みB/Lの発行を義務にされても、システム対応ができないから駄目だといった議論はもう当てはまらないという理解ではいいわけですね。後藤幹事の質問はそういうことだと思いますが。 ○後藤幹事 はい。私がお伺いしたかったのが、部会資料の4ページで、運送人側の選択の話と、荷送人側の選択の話が、何かつながるように書かれているんですけれども、別にそこは切り離せるのではないかという気がするということです。電子で一度出した以上は、運送人としてはもう電子を拒むことはできないけれども、荷送人側は事情が変わったので紙でくださいという可能性というのはあり得ると思いますので、4ページ「さらに進んで」という形で、論理的につながっているように書いてあるのは、ちょっと違うかなという気がしたんですけれども、そういう理解で、船主協会さんとしては違和感ないでしょうかという御質問です。分かりにくい聞き方になってしまい、すみません。 ○池山委員 すみません、ちょっと私の頭が混乱しているのですが、それはそうかもしれないとしか言いようがないです。   そうかもしれないという、言いようがないと申し上げているのは、やはりこれは、どこまでいっても頭の体操でしかないので、実際それで大丈夫ですと言い切って本当にいいのかどうかよく分からないというのは正直なところですよね。 ○藤田部会長 いや、今は概念、観念的な話というよりは、船会社の方として電子の船積み、電子B/Lの発行を強制されても、受取の方を電子で出している場合は、当該荷送人なり所持人であれば、もう全くその点は新たな負担だと考えなくてもいいですかという、事実上の負担の問題、御質問だと思うんですけれども。 ○池山委員 論理的にはそのはずですよねと。私は言われてみれば思いますと。 ○藤田部会長 受取船荷証券しか対応していないシステムという、ちょっと考えられないようなものが使われていない限り、そういうことになりますね。 ○池山委員 そうなるはずですよね。元々受取を電子で出すということについて、システム的な対応も含めて一旦オーケーをしたんだから、それが、一旦それは戻しますと。それで、シップドの形にしますと言われて、そこは嫌だとは、なかなか言えないんでしょうね。 ○藤田部会長 分かりました。   後藤幹事の質問は、以上でよろしいでしょうか。 ○後藤幹事 はい。 ○池山委員 ただ、念のため確認なんですけれども、例えばコンテナ船の場合に、これは紙を例にとると、実際コンテナ船の場合は受取船荷証券が出て、切替えに紙の船荷証券が出るということもあり得るとは書いてあるんですけれども、コンテナの船会社のフォームとしては、船積船荷証券のフォームなんて準備していないのではないんですかね、元々。   申し上げていることは分かりますか。コンテナ船であれば、もうレシーブドB/Lはフォームがありますと。これはうちのB/Lフォームですと。それを、フォームを準備しているだけで、それに対して、先ほどの例から言うと、オン・ボード・ノーテーションを付けて出すということは想定しているけれども、ここにあるような、文字どおりの船積証券のフォームは、紙であっても元々準備していないんですよ。そういうリクエストはないと。多分あったとしても、正に法文に従って船積船荷証券に変えて、シップド・オン・ボード・ノーテーションを付けて出すと。だから、フォームはレシーブドB/L一本ですと、そういう整理なんだと思うんです。   だとすると、今の議論も、電子B/Lになったからといって、それ用のフォームを新たに作るわけではないとすると、今のものもレシーブドを前提に電子のフォームを作っておりますと。それで、対応することになりました。今のシップドへの切替えは、では電子だったら対応できるはずだろうと言われたときに、フォームとしてはないとすると、今度は電子の上でオン・ボード・ノーテーションを付けるということで対応することができるはずだ。逆にそれはできなければいけないだろうと、そういう整理でよろしいんですか。 ○藤田部会長 それは2(5)ですね。これがあれば対応できるということですね。 ○池山委員 そういう前提であれば、確かに後藤幹事のおっしゃったとおり、もう一旦電子のレシーブドB/Lが出ていれば、それをシップドに変えたいというときには、電子には対応できなければいけない。ただ、その対応の仕方が、文字どおりのシップドの電子B/Lではなくて、実務的にはオン・ボードの電子B/Lを出すんだと、オン・ボード・ノーテーションについては電子B/Lを出すんだと、そういう整理だということですよね。 ○藤田部会長 分かりました。 ○池山委員 そうしたら、ノーと言えないはずだと、何か言われてしまったような気がしますが。 ○藤田部会長 後藤幹事どうぞ。 ○後藤幹事 すみません、後藤です。   まとまったようなところでまた混乱させてしまうかもしれないんですが、そのオン・ボード・ノーティスの付いたレシーブドB/Lというのは、船積船荷証券ではないんですか。オン・ボードと書いてある以上。 ○池山委員 そういう整理をもし概念的にできるのであれば、なおさらそうですね。 ○後藤幹事 それであれば、今の話で終わりなのかなという気はするんですけれども。 ○池山委員 すみません、概念の混乱が私の方にあるかもしれませんが、通常、実務者がレシーブドB/L、シップドB/Lという言い方をするのは、B/Lの表面約款に、最初にまず貨物はレシーブドということが書いてあって、責任区間としても貨物を受け取った、レシーブしたとき、具体的にはターミナルに船会社が手配するために搬入したときから始まると、そういうB/Lをいい、それから、シップドB/Lとは、最初にシップドと書いてあって、要するに船積みをしましたということを確認するB/Lで、責任区間も船積みから開始するB/Lだと。元々そういうフォームに応じたそういう名称があるんですよね。だから、オン・ボード・ノーテーションが付いた後のB/Lも、私の先ほどの言い方だとオン・ボード・ノーテーションの付いたレシーブドB/L、オン・ボード・ノーテーションの付いた受取船荷証券若しくはその電子版だという言い方になってしまったんだと思います。   ただ、それは法的には変えてそうするんだから、それは法的には船積船荷証券と解釈すべきだよ、あるいはその電子版と解釈するんだよということであれば、それはそれでよろしいかなと思います。 ○後藤幹事 分かりました。ありがとうございました。 ○藤田部会長 現行法ですと758条2項です。表現としては、船積船荷証券の作成に「代えて」、受取船荷証券にオン・ボード・ノーテーションを付けることでもよろしいという規定の仕方をしていて、これを船積船荷証券の一種なんだと呼ぶかどうかは、まあ概念的な講学上の議論なのかもしれませんけれども、今、池山委員の言われたような整理だと思います。   そういう意味で、実質的な負担になるかというと、2(5)まで踏まえてこの選択肢がある以上は、電子を強制されたら困るということでは、どうやらなさそうだというところで落ち着いたということのようですが、次に、山口委員、よろしくお願いいたします。 ○山口委員 山口でございます。   我々フレイトフォワーダーの立場からしますと、ほとんど全てがレシーブドB/Lでして、実際に使われているものとしては、レシーブドB/Lの下に、先ほど池山委員がおっしゃったオン・ボード・ノーテーションの項があって、オン・ボードB/Lが必要な場合は、そのオン・ボード・ノーテーションを入れたものを発行するというやり方を採っております。だから、JIFFAの場合は、シップドB/L、つまり船会社でないために、船積船荷証券自体が存在しないということになりまして、だから、正に今、池山先生がおっしゃったように、そもそもB/LのものとしてシップドB/Lがないものですから、やり方としてオン・ボード・ノーテーションがあるものは船積みを記載した船荷証券ということで、どちらかというとこの規定ではなくて、次のところに出てくる形で出されているというのが一般的であると思われます。   そうなってくると、受取の段階で電子B/Lを要求されているのであれば、船積みも基本は電子型で在るべきだろうとは思うんですけれども、どちらかといったらそれが本筋ではいないかなと感じているというイメージでございます。 ○藤田部会長 その上で、紙が欲しいのであれば、転換の規定で紙に変えることを考えればよろしいと、そういうことですかね。 ○山口委員 そうですね。むしろそれは極めて例外的ではないかと思われます。というのは、受取から船積みまでというのは、それほど何か月もあるというわけではなくて、ほんの数日か極めてある程度短い期間の中で行われますので、最初に電子B/Lを要求されている、多くの場合は荷送人側から要求されることが多いわけですけれども、要求されている以上は、当然船積みまでも含んだ船荷証券は電子版であるということが多いのではないかと思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   ほかに意見はございますでしょうか。 ○雨宮委員 雨宮です。まず確認なのですが、仮に電子受取B/Lが発行されている場合、電子船積B/Lの発行を荷送人または傭船者の請求に応じて、運送人が発行しなければならないと法に定めときには、荷主側は紙の船積船荷証券の発行を請求することはできないのでしょうか。荷主側は電子も紙も両方の請求が可能で、運送人は両方とも発行義務があって、荷主側は電子と紙の選択が可能であるということを想定して、どちらかを選択したら、もう一方は選択できないと理解でよろしいのでしょうか。 ○藤田部会長 事務当局からお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   ただいまの規律、今、提案させている規律ですと、基本的にはおっしゃるとおりで、元々の請求というのはもう紙しかできないと、こういう立て付けにしておりますので、受取船荷の電子版が出ている場合には、紙の船積船荷証券、これしかそもそも請求権としてはないと。   ただ、そういう請求があった場合には、承諾を得て電子版にすることもできるし、商法の758条2項に相当する規定を置くことを考えておりますので、運送人側としては船積船荷証券の発行に代えて、船積みがあった旨の記録を電子版にしてやるということができて、これは、必ずしも受取人の承諾は要らないということになろうかと思いますので、運送人としては電子版に船積みと書いて、それで義務を履行したと、こういうことができると、こういう立て付けを想定しているということでございます。 ○雨宮委員 よろしいでしょうか。そうすると、部会資料の4ページの下の方には、電子船積B/Lの発行義務がある場合には、荷主は、法律上の条文として紙のB/Lの発行を請求できないという記述があります。法律上、電子船積B/Lの発行義務を認めるなら、荷主側は電子船積B/Lの発行しか請求できない。紙のB/Lの請求権はないということ、そういうことですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   ちょっと十分ついていけなかったのかもしれませんけれども、基本、荷送人側は、紙の請求権はどこまでも一応形の上ではある。紙の請求権はどこまでいってもある。ただ、それを承諾を得て、電子版の船積船荷証券ということもできるし、商法758条2項に相当する規定で船積みがあった旨の記録を追加的にするということもできるということで、すみません、ちょっと同じことを繰り返していて。 ○雨宮委員 承諾なのですが、運送人に義務を認める場合には運送人の承諾は要らないということになります。運送人は電子船積B/Lを請求されたら電子船積B/Lを発行しなければいけないということになります。   電子船積B/Lの発行義務が認められない場合、渡辺幹事から御説明いただいたように、運送人の承諾を得て電子船積B/Lが発行されることは可能ですが、ただ、運送人が電子船積B/Lを発行しないならば、紙の船積B/Lを発行しなければならないということになると思います。電子船積B/Lを発行する義務があるならば、電子船積B/Lを発行しなければならないということになりますが、紙の船積B/Lの発行義務も消えないということは、荷主側が電子と紙のいずれかを選択できるということになるでしょうか。 ○渡辺幹事 そうですね。まずそういう状態になり得ると思います。   少しちょっと後で補足させていただこうかと思っておりましたけれども、先ほど後藤幹事からも御指摘を頂いたかなと思っておりまして、4ページの下のところが少し分かりにくかったかもしれませんけれども、論点としては二つあるかと思っておりまして、運送人側に電子版の船積船荷証券の発行義務を認めるかという論点と、荷送人側が紙の請求権を依然として持つかどうか。この論点は、すみません、ごちゃっと書いてしまいましたが、これは独立した論点かと思っておりまして、それぞれについて違った考え方を採ることができると思いますので、今、雨宮委員がおっしゃっていただいたのは、その二つの論点の組合せの中の一類型の御指摘を頂いたのかなと思っております。 ○雨宮委員 承知いたしました。運送人側の発行義務を認める場合に、荷主側の紙船積B/Lの発行を請求する権利が消えるか消えないかは、また別の論点として議論すべきだということを理解しました。 ○渡辺幹事 という一応整理と考えておりますが、もう1点補足をさせていただきますと、ここのところが非常に今、議論をしていても、私も全然どこからかついていけなくなってしまって、非常に理論的で、分かりにくくて、複雑なところが多分にあるのかなと思っておりまして、そこは、この資料を作っている段階でも、内部的にいろいろ考えたときに、本当に頭がこんがらかってしまいそうな話だなと思っております。   今回提案をさせていただいたのは、ある意味一番単純な形として提案をさせていただいていると思っておりまして、飽くまでも船積船荷証券、受取船荷証券、これはもう別の船荷証券だと。転換は同じものを転換するという立て付けだと思うんですけれども、これはもう取りあえず別個のものだという形で整理をして、基本的な考え方としては紙の請求権はあるけれども、電子の請求権はないんだと、こういう考え方を採った場合に、一番単純化した規律を設けるとするならば、今回のような形になるのかなと。   ただ、実際のところは、山口委員もおっしゃられたとおり、電子が発行されている場合に紙に切り替わるということは、恐らく実務的な流れとしてはないんだろうと思われますので、規律の単純化というところと実際の動きというのが必ずしもマッチしないという部分が出てきてしまうところはあるのかなと思いますが、ただ、実際にそのような不都合も多くはないのかなと思いますので、ある意味単純化した規律でもいいのかなという思いがあって、このような提案を今回させていただきましたけれども、先ほど申し上げたような付随的な論点も多々ございますので、そういったところの皆様の御意見を伺った上で、また改めて考えたいなと思っているところでございます。   すみません、長くなりましたが、以上でございます。 ○雨宮委員 最後に、そういう前提であれば、単純な方が分かりやすく、しかも基本的には電子B/Lの発行義務はないことをベースにすべきで、電子船積B/Lの発行義務はなくても、実務上は恐らく差し支えなくて、荷主から運送人に対し電子船積B/Lの発行をお願いすれば、運送人側は電子船積B/L発行するので、法律で発行義務まで定めなくても、恐らく実務に影響はないと思います。法律上で義務を定めるよりは、シンプルにしておき、実務に任せた方がいいと個人的には考えております。 ○藤田部会長 要するに、今の提案でいいのではないかということですね。 ○雨宮委員 そうですね。実務も恐らく、法律上で義務を定めなくても、規約上で手当てされる場合もあるでしょうし、電子の方が、わざわざ紙を発行するよりも負担が少ないのであろうと想像しており、運送人側としては荷主の依頼に対応するであろうと思うと、また、MLETRもLaw Commission、そのような義務までは規定していないと理解していますが、法律で義務までは定めなくてもいいと個人的には思っています。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   事務当局から一番シンプルと説明された発想ですが、確かに2段階目、つまり受取船荷証券が出た後で船積みがあって、その後に出される証券が、最初のものと切り離された全く新しいものであると考えると、概念的にはある意味シンプルになるわけです。他方、その発想がやはり気持ち悪いというのが、恐らく先ほどの山口委員の感覚なのではないかと思います。 ○山口委員 そうですね、山口でございます。   先ほど申し上げましたけれども、やはりこの第2のところの(5)です。この形がごく一般的な形で出されていて、このことを前提にするとすれば、そもそも電磁的船荷証券の要求自体に、受取であろうと船積みであろうと、電子でお願いしますというその意思が入っていて、受取だけは電子だけれども、その段階で1回切れて、船積みの段階でもう一度電子の承諾を取り付けるということは、事実上多分あり得ないだろうと思われるので、僕はどちらかというと、電子でいった以上は船積みも電子でいくというのを原則した方がよいのではないかなと、感覚的には思っておる次第であります。 ○藤田部会長 何がシンプルで受け入れやすいかという感覚も、実務家によって違うようですけれども、そのほかどなたでも御意見ございますでしょうか。 ○小出幹事 ありがとうございます。   いろいろと論点が多いので、まずは1ページの第1の1のところについて、3点コメント、あるいは質問というか確認をさせていただきたいたいと思います。   まず1点目なんですけれども、全体的な方向性については異論がないのですけれども、荷受人の承諾までは必要としないということについて、これは、飽くまで発行の段階で承諾が必要ないということにすぎないのであって、その後、自分は電子のものは受け取りたくないということを否定する趣旨ではないということについて、確認させていただければと思います。   2点目ですが、荷送人等の承諾については、特定の方式を要求しないということなんですけれども、一方で、文言案では、承諾を得てと明記するということとされています。この承諾というのは、これも当然かと思いますけれども、いわゆる黙示の承諾というようなものも含まれ得るということでよろしいでしょうか。つまり解釈によって、例えばですが、個別に承諾を得ていなくても、例えばあるシステムに加入していれば、通常はそのシステムによる電磁的船荷証券記録の利用について承諾があるものとして、本人が特段文句を言わなければそれでよいということでよろしいのでしょうかというのが2点目です。   3点目は、文言の問題なのかもしれませんが、最後の③のところで、第1項の規定により電磁的船荷証券記録を発行したときは、船荷証券を交付したものとみなすと、こういう条文案が示されているわけですが、ちょっとこの趣旨がよく分からないところがありまして、これは、757条の1項の交付義務との関係では交付したものとみなすという趣旨であって、ほかの条文との関係で、電子的な船荷証券を全て船荷証券とみなすという趣旨ではないということだと理解しているのですけれども、それでよろしいのでしょうか。他方で、もしそういう意味だとするならば、この条文は本当に要るのだろうかというのがちょっと分からなくて、①の方で紙の船荷証券に代えて電子的な証券を発行できると書いてある以上、別途このみなす規定というのが、果たして本当に必要なのかどうか、あるいは何か特段の意味があるのかについて教えていただければと思います。   以上3点でございます。 ○藤田部会長 3点御質問がありましたが、事務当局からお答えください。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御質問ありがとうございます。   まず、一つ目の荷受人の承諾の話につきましては、発行段階では必要ないということにさせていただいておりまして、では、実際に荷送人、荷受人が登場する段階ではどうかというところにつきましては、基本的には小出幹事御指摘のとおりの整理を我々としては考えております。   その点につきましては、部会資料の2ページから3ページにわたるところの(注)というところで少し補足をさせていただいておりまして、荷受人というのも何らかの法律関係、恐らく売買とかそういったことが想定されるのかなと思いますけれども、そういった法律関係において、何か電磁的な記録の受け取りを義務になるのかというと、恐らくならないという整理ができるのではないか。それを送られてきたからといって、当然に弁済の提供とはならないと、こういう整理ができるのではないかと思っておりますので、これを裏を返して言えば、荷送人の方には契約の段階で何らかの承諾というものをしていただかなければ、この電磁的船荷証券記録を利用することができないと、こういうことになろうかと思っておりますので、その点につきましては、おっしゃるとおりかと思っております。   2点目の承諾の方式の関係ですけれども、それも御指摘のとおりかと思っておりまして、今の商法の規定をそのまま持っていきますと、なかなか黙示の承諾みたいなものが難しくなってしまうのかなというところがありますので、あえてそういった縛りは掛けないのがMLETRとの趣旨とも合致するのかなということで、ここはもうそういったものを設けずに、黙示の承諾も含めると、こういうことでございます。   最後の交付したものとみなすの規定の趣旨ですけれども、基本的にはこの交付義務を履行したというところに掛けたいというところでございまして、それ以上の意図は、少なくともここの規定としては考えていないということで、ただ、①の規定とかそういったところがあれば、あえて書かなくてもいいのではないかと、こういう御指摘も頂いたところでありますので、最終的に交付義務の履行をしたというところを表現するために、こういった規律が要るか要らないかというところは、また考える必要があるかと思いますけれども、趣旨としてはおっしゃるとおりでございます。   以上です。 ○小出幹事 ありがとうございます。最後のところは、もしかすると、例えば電子的なものを発行したんだけれども、後になって受け取った側が紙をよこせと言い出したとしても、それに応ずる必要はないと、そういうことを言いたいのかと思いましたが、でもそうだとしても、電磁的船荷証券記録を発行「できる」という条文だけでも十分かなという感じもしますけれども、おっしゃる趣旨は理解しました。最終的な条文のところでまた整理していただければと思います。どうもありがとうございました。 ○藤田部会長 山口委員、お願いします。 ○山口委員 先ほどの承諾の方式のところで、この電磁B/L、電磁的船荷証券記録の話ですが、承諾について様式を問わないという、もし整理をされるのであれば、現在の海上運送状についての形式も緩めていただきたいと、同等の形にしていただきたいなと考えています。   現在、海上運送状を発行するときに、どの程度厳格にやられているのかというのについては、全ての我々フォワーダーの会社について調査したわけではないんですが、かなり厳格にやられているところもございます。しかしながら、全てが全てそうであるとも言い切れない部分もありまして、そういう意味では、ここまで今の厳格なものが、法制度上、やはり海上運送状についても緩めていただくというのがよろしいのではないかと考えております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。こちら側で方式を工夫しなければ、恐らく海上運送状の方の規定を直すということを暗黙のうちに前提にした提案かなと思いますが、事務当局としては、それでよろしいでしょうか。 ○渡辺幹事 十分可能な提案かと思ってございます。 ○山口委員 お願いします。 ○藤田部会長 そのほか、どの点でも。 ○笹岡幹事 笹岡です。   この論点は、次の効力のところで問題になることかと思いますが、先ほどの荷受人の承諾のところになります。   仮にこの電子的な船荷証券にも物権的効力があるとする場合は、売主から買主への物の引渡しというのは、物それ自体で行う場合、物権的効力のある紙の船荷証券で行う場合、更にそれを越えて、電子的なB/Lを移転することによって行う場合という3パターンが想定されているかと思います。最後の段階は、荷受人の承諾がないと引渡しにはならないという整理になってしまうことになるのですが、それで本当にいいのかというところを、効力のところでも結構ですけれども、もう一度議論をした方がいいのではないかと思います。よろしくお願いいたします。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   事務当局から何か返答はありますか。 ○渡辺幹事 御指摘ありがとうございます。   今、部会資料の2ページあるいは3ページの(注)のところで書かせていただいたところへの問題提起かと思いますけれども、ここは我々としてもこういう整理ができるのかなと思って一応書かせていただきましたが、本当にそうなのかというところについては御議論いただければと思っておりますし、逆にこういう整理ができないということになりますと、先ほど小出幹事からも御指摘いただきましたけれども、荷受人の承諾というところが大丈夫なのかという問題がまた出てくるかなというところがありますので、この点につきまして、皆様の御意見を頂ければと思っているところでございます。 ○藤田部会長 そのほか、第1全体についてでも結構ですので、もし御意見、御質問ございましたらお願いいたします。 ○池山委員 池山でございます。   今、笹岡幹事から御指摘のあった点については、理論的には難しい面はあるのかもしれないんですけれども、実務の感覚としては、荷受人が決まっていない場合というのは多々あるわけですから、荷受人の合意を、承諾が要るというのは無理ではないかという感覚で、逆に言うとそれ以上でもそれ以下でもないです。   そういう荷受人が決まっていない、つまりto orderであれば決まっていないわけです。決まっていないときには、要は電子B/Lが、逆に導入できなくなると。承諾が取れないから導入できないということになると、それは逆に困るのだろうなと思っております。一応これはその指摘だけです。   それから、今の部会長の話からすると、第1全体ということなので、第1の方にまずは一旦移ってコメントをさせていただくと、2については、大きな異議は、あるいは異存はございませんが、念のためのコメントということだけさせていただきます。   まず、(3)の作成地の問題なんですけれども、実際に聞いてみると、規約型の電子B/Lであっても、あるいは規約がない形で可能な電子海上運送状であっても、現実問題としては作成地は書かれております。より正確にいうと、作成地ではなくてプレス・オブ・イシュー、発行地という形で書かれております。   では、そういう電子で出されるもの、規約型のB/Lにしろ、海上運送状にしろ、発行地、あるいは法的にいう作成地というのはどことして捉えているのかということなんですけれども、感覚としては、正に発行事務、作成事務を担当する部門だと聞いております。運送人側で。   だから、一旦発行された後、当然電子であっても修正の依頼とかがあったりすると、その修正の依頼を受ける窓口という意味で、その作成地、発行地というのを書くし、そこをどこにするかというのは、むしろ荷送人、最初の所持人側の要望で決まると。紙であれば、東京で出してくれ、あるいは名古屋で出してくれ、あるいはシンガポールで出してくれ、どこだっていいわけです。東京積みの貨物だから、東京で出すとは決まっていないと。言われたところで出す。ただ、もちろん出せる場所でなければいけないから、運送人のオフィスがある場所で出さなければいけないと、紙であれば。そこは今後、修正をしたときの、修正依頼があったりしたときの担当窓口になると。そのことは、電子であっても変わりませんよという話を聞きました。   その観点からすると、理論的にはそういう場合も、そういう担当窓口的なところを作成地、発行地と呼んでいいのかという問題はあるかもしれませんが、実務的には今後も掛かり得るだろうと。   ただ、ここで問題になっているのは、法定記載事項で書くべきかどうかという問題だと思うんです。そこについては、今の観点からすると、法定記載事項にされたとしても、そこはそういう担当窓口という趣旨で書くので、別に構わないと思うと。むしろ困るのは、その発行地概念が、論理的にはあり得ないから、記載してはならない、有害的記載事項とかそうなるとちょっと困ると。ただ、そういう話には今のところはなっていなさそうだと、そういうお話が、私が事前に聞いた中でございました。   それから、(4)の船荷証券の交付に代えて電磁的船荷証券記録を発行する旨についてという部分なんですけれども、ここは、どう申し上げたらいいんでしょうか。あえて言えば、実務上は当然書かれるんだと思います。ただ、書かれる内容は、このようなことが書かれるのではなくて、単に船荷証券と書かれるんだと思います。   この(4)の問題が出てきた背景として、補足説明に書いてあるのは、元々船荷証券である旨というのが法定記載事項になっていないということから出発して、でも、それだと船荷証券なのかそうでないのか分からないこともあり得るという問題意識があり、それを前提にこれを書いた方がいいのではないかと、あるいは書くべきかどうかというのが論点になるのではないかという御指摘であると思います。   ただ、実務上は、法定記載事項に、今、紙でなっていなくても、船荷証券ということは例外なく書かれますと。同じことは、電子版の場合でも書かれるはずなのであろうと思います。ただ、飽くまでも書かれるのは、単に船荷証券と、電子的に読み取れる形でどこかに書いてあると、それだけなので、こういう交付に代えてうんぬんと、こういう書き方にはならないし、是非そこは御勘弁願いたいという辺りだと思います。   まず、この2については以上です。   3のその支配のところからは、ちょっとまた別の議論ですけれども。 ○藤田部会長 では、また2について、今の点で議論したいと思いますけれども、まず事務当局から何か御返答ございますか。取り分け(4)について。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御質問、御指摘ありがとうございました。   (4)につきましては、確かに電磁的な記録というのが、これが船荷証券として作られたものかどうかというのは、必ずしも分からないのでというところがあるので、何らかの手当てをする必要があるのかどうなのかというところの観点から検討しているものでございますけれども、実際に多分書かれるだろうと、それが分かるような記載はされるだろうということは、従前からも御指摘いただいていたところかなと思いますし、他方で、「代えて」みたいな形が入ると、まあ本当にそのとおり書かれるかどうかよく分からんというところもありますので、相当かどうかというような問題があるというところは御指摘のとおりかと思います。   事務当局といたしましては、基本的に実務的に大きな問題がなければ、MLETRとの関係もありますので、なかなか電子版特有の記載事項であったり、電子版の場合にはこの記載事項はしない方がいいのではないかみたいな特別な規定はできるだけ設けない方がいいのかなというニュアンスを感じておりますので、今のような作成地の御指摘も頂きましたけれども、今、御指摘いただいたようなところであるとするならば、作成地の方も特に除外するということも必要ないのではないかと思われるところですし、(4)の船荷証券に代えてうんぬんというところも、特に電子版の記載事項として設けるということはしないで、もう紙と平仄を合わせるというような形ができるのではないかなというのを、個人的な感触として抱いたところでございます。   以上でございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、北澤委員、お願いいたします。 ○北澤委員 慶應義塾大学の北澤でございます。   私からは、部会資料の第1の2の、今お話にありました(3)です。電磁的船荷証券記録の作成地についてどのように考えるかというお話が、国際私法の準拠法決定の話に関連して部会資料の方に御説明がございますので、この点についてコメントをさせていただきたいと思います。   部会資料の8ページの電磁的船荷証券記録の法定の記録事項との関係で、作成地をどのように考えるかという部分がございますけれども、仮に作成地を記録事項から落とした場合に、国際私法の準拠法決定の考え方との関係で問題が生じるのかどうかということで、先生方に少しコメントをさせていただきます。   結論的には、生じないとは言い切れないといいますか、生じるんだろうということでございます。   まず申し上げたいのは、紙の船荷証券を前提にしますと、その方式の準拠法につきましては、法の適用に関する通則法の10条の1項、2項に従いまして、選択的に運送契約の準拠法と証券の発行地法によるということになりますけれども、ここで事務当局の御指摘どおり、発行地が連結点とされているわけでございます。   この電子記録の発行地です。これをどのように考えるかというのは、国際私法の分野でも固まった整理がきちっとあるわけではないと申しますか、そもそもこの問題に限らず、電磁的な船荷証券記録に関する抵触規則の在り方をめぐりましては、これまで学会ではやはり紙の船荷証券を前提に議論をしてきたということがございますので、国内の実質法でこういった電磁的船荷証券記録の立法がなかったということが、やはり最大の理由かと思います。そのため、電子船荷証券に関する議論で、この方式の準拠についてどのように考えるかという部分については、議論が収斂しているとはちょっと言い難いのが現状かと思います。   仮に、今回のような電磁的船荷証券記録の方式の準拠法につきまして、発行地を連結点としてしまった場合に、実際にどこで発行されたかがやはり問題になるんだと思いますが、この発行地を確定する際に、船荷証券上の作成地がどこであるかということは、やはり無視できないような部分が実際にあるかと思いますので、先ほどの委員の御発言を聞いていても、もし電磁的船荷証券の記載事項について、作成地を書くことで非常に実務上困るというようなことがあればともかく、準拠法決定における発行地という連結点を考える際に、この作成地というものが現在船荷証券の記録事項にあることによって、それなりに、それを決める際に役立っている部分もあるかと思いますので、やはりこれを落としてしまうと、国際私法上にも影響があるということは、ここで申し上げておきたいと思います。   もしこの発行地と作成地をリンクさせるような、完全にリンクするのかどうかはともかくとしまして、こういう要素として見ているというような考え方を前提としますと、今回の事務当局の資料の8ページの一番下の行からありますように、作成地というのを船荷証券記録の記録事項として残すというような方向性も、一つあり得るのではなかろうかということは、私自身は考えている次第でございます。   すみません、いろいろ申しましたけれども、以上とさせていただきます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   作成地についてもいろいろ議論がありましたけれども、その他の点でも結構ですので御意見いただければと思います。 ○小出幹事 作成地について、私もちょっとコメントをさせていただければと思います。   今、北澤委員からいろいろ御教授いただきましたけれども、まず作成地について、もし書く必要性があるのであれば、もちろん残した方がいいと思うんですが、そうでないんだとすると、逆に紙の方の船荷証券の作成地の規定を、この際削るという方向性もあり得るだろうとは思いました。   ただ、今、北澤委員の御発言を聞いていると、作成地には、特に準拠法の決定上、やはり何らかの意味が備わっているとも思いますので、強く削るべきだと主張するわけではなくて、どちらかに合わせる必要があるだろうということなんだろうと思います。この辺りはやはりMLETRが考えている機能的同等性という観点からも、なるべく合わせた方がいいのではないかと個人的には思っております。   もう1点、この作成地に関してなんですけれども、作成地という表現は、恐らく元々紙だったので、作成という言葉を使ったんだと思うんですけれども、電子的な記録については、ちょっと作成という言葉は使いにくい部分があるような気がいたしますので、もしこの作成地を電磁的船荷証券記録についても残すんだとしますと、それに代わる表現というのを考える必要があるだろうと思います。   厳密には、作成と発行というのは違う可能性もありまして、やはり作成というのは物理的にその紙を作った場所だと思うんですけれども、発行というのは、その情報を発したところという話になってきて、必ずしもイコールではないかもしれません。   それとの関係で、UNCITRALでは、電子商取引モデル法というのを、1996年に作っているのですけれども、そこではデータの発出地という概念についての規定がありまして、紙でなくてデータを発出する場合には、その発出地は、別途定めがない限りは、発出者のプレース・オブ・ビジネスをもって発出地とすると、そういう規定があります。   プレース・オブ・ビジネスというのは、要するに営業所ですとか、その営業の場所ということだと思いますので、厳密には作成地とはちょっと違う概念を使っているということなので、仮に発行地なり作成地なりという概念を残すんだとすると、それがどこなのかということについては、少し検討する必要があるのかなと思いました。以上です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   事務当局からは何かございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   特にございませんが、最後、御指摘いただいた作成地という表現が、残すとした場合にも、そのまま維持できるのかという点は、大変貴重な御指摘を頂いたと思っておりますので、引き続き検討したいと思います。ありがとうございました。 ○藤田部会長 小出幹事の言われた最初の紙の方についても作成地を削ったらどうかという意見は、実は、いわゆるロッテルダム・ルールズで正にされたことですね。電子化が正面から認めるような条約について、条約の適用範囲などとの関係で、作成地というのを殊更強調するのはおかしいということで、紙か電子か問わず、作成地というのは運送書類の記載事項から落とすという選択肢をしたのです。従来の日本の国内法制まで直すのですかという疑問はあるかもしれませんが、選択肢としてはもちろん考えられることですね。 ○小出幹事 すみません、ちょっと追加で、そのことに関してなんですけれども、私、船荷証券について必ずしも十分知らないのかもしれませんが、私の理解ですと、船荷証券のこの758条の記載事項というのは、厳密な意味での絶対的な記載事項みたいなものではなく、これらのうち本質的な記載事項は、もちろんそれが書いていなければ無効となるんだけれども、そうではないものについては、それは省略されていても船荷証券としては無効とはならないというのは、古い判例にもあったように思います。   それを考えると、作成地については、正に本質的な事項ではないようにも思われますので、元々条文として置いていたことにどれほど意義があったのかということは、根本的に議論するべきことなのかもしれないと思いました。   すみません、以上です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   法律上の記載事項として規定すると、作成地あるいは発行地といったものが法的に何か一定の意味のある概念として法が認知しているかのような印象を与えかねないという問題もあるのかもしれませんね。   池山委員の言われたような意味での、適当に選んで言われたとおり書いているような発行地・作成地なのだとしたら、何らかの意味を法的に持ってくるようなものとして、法が言及しない方がいいのではないかというような考え方もあるのかもしれませんね。   この辺り、感触を頂けますでしょうか。記載を要求されたら実務的に対応できない記載事項でないのは分かったと思うのですが、そういうものを書くことを法が要求することの是非です。 ○池山委員 まず、法定記載事項から削ると言われることについては、別に実務の側では異存はございません。今、聞いた、私が聞いている限りにおいては、従前書いてきたし、当然紙の場合は法定記載事項ですから、それから電子になっても、そういう担当部署というような意味合いで書いておりますという以上でもないので、必須にしないと言われれば、それはそれでいいのかなと思っています。   逆に、私、実は小出幹事の御発言でちょっと気になった部分は、もしこれを法定記載事項として残す場合に、電子の場合の作成地、発行地がどこで在るべきかということについて、何しろ基準みたいなもの、あるいは考え方みたいなものは要るのではないかという御指摘が、趣旨としては含まれていたように思うんです。   私は、それは理論的には確かにそうかもしれないんですけれども、やはり実務の側からすると、発行地はこういうところを発行地にしなさいと言われると、やはり困るのかなという気はします。というのは、最終的な担当部署はどこだとしても、現実にその作成をする実務というのは、当然データ上の作業ですから、いろいろなデータセンターでやって、例えば別に東京が発行地になっているからとしても、そのデータセンター自体は全然別のところにあって、それで、荷送人へのデータの送付自体は必ずしも東京のオフィスのメールというか、PCから発送するわけでは全然ないわけですよね。飽くまでもその地方にある、あるいは海外にあるデータセンターからピッと送ると。ただ、それの、言ってみれば責任を持っている、運送人の中で責任を持っている窓口が東京だと。それ以上でもそれ以外でもないので、それはいろいろなバリエーションがあると思いますので、残すのは結構ですし、削るのも結構ですけれども、残すとして、変な基準みたいなものを作られると、逆にそれは実務にとっては制約は大きいのかなと思います。 ○藤田部会長 ありがとうございました。余り実体のない概念としてなら、残してくれても適宜記入できるから実務的に害はないけれども、それ以上の実質を求められることにつながると、困ったことになるかもしれないという御指摘ですね。 ○池山委員 ですし、一方で運送人側が全く便宜に、適当に書いているかというと、決してそうではなくて、そこに書くということは、正に運送人の世界中のオフィスの中で、そこのオフィスが正に発行ないし作成した部署として、所持人に対して責任を持つ部署だという意味では意味があるので、完全に便宜的にというわけでもないと思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○山口委員 山口でございます。   作成地の問題で、もし消すという方向になったときに、紙の船荷証券については、この作成地というのは意味がございまして、藤田先生がおっしゃったように、ヘーグ・ルール上、この強制適用との兼ね合いがございまして、日本法については、この国際海上物品輸送法について、ヘーグ・ルールの直接適用というあの条文が適用になるかどうかにちょっと議論があるんですが、条約そのものは作成地が連結点となって、強制適用の要件になっていますので、これは、紙の船荷証券では消せないものだろうと思っているんです。   あるいはハンブルグ・ルールも同じような形で、作成地が残っているかと思いますが、そういう意味では紙の船荷証券については、消すことについてやや抵抗感が強いなと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そのほかどの点でも、御意見、御質問ございますでしょうか。   第1の3に移っても結構ですが、何かございますでしょうか。 ○池山委員 すみません、いつも口火を切らせていただきまして、では、せっかくなので、今日、3についてなんですけれども、もとより支配概念を創設するという3の(1)、11ページです。このこと自体については賛成でございますが、2の支配の定義については、やはり若干の疑問を持っております。   この説明にあるとおり、支配という概念は、占有という事実状態に類する概念だと。占有に相当するものだと。それを、電子の場合にどう表現するかということなんですけれども、一方で、その定義について、所有権の概念を参考にするというのは、やはりこれは決定的な矛盾なのではないかなという気がするんです。   占有という事実状態に類する概念であると、そのこと自体には異議はございません。そうだとすると、参考にすべきは実は占有の条文であって、所有権の条文ではないんだろうという気はします。そうすると、占有の条文のキーワードは所持だと。その所持というものに相当するものをどう表現するかということだろうと思っています。   その上で、ここから先は、ある種、私案でしかないんですけれども、実際の規約型電子B/Lではどういう規定をされているかなというのを見ますと、一方でコントロールは占有的なものなんですけれども、すごい大ざっぱな言い方をすると、支配者とされた者、ポゼッサー、あるいはホルダーとされた者がホルダーなんだと。だから、電子の場合は必ずシステムがあるわけだから、そこでもうこの人がホルダーだと決めた人がホルダーであって、そのホルダーが何ができるか。ホルダーは支配を有する人でそれは占有に相当するだけのものだから、必ずしも実体的な権利がそこに結び付くわけではないと。実体的権利は、ホルダー、ポゼッサーとしての立場プラス規約上の実体的な権利に相当する概念と結び付くことによって、実体的な権利が出てくるし、何かできると。   占有それ自体は、ホルダーシップ、ポゼッサーシップみたいなものは、それ自体はもうそう指定された人であって、むしろそこは、今度は排他性の議論になるかもしれないけれども、システムとしてはとにかく1人でなければいけないと。移ったらそれで終わりだと。そういう形の定義ではないかなという感覚を持っています。   なので、そうすると、無理をして支配なる概念を更に言い換える必要というのは必ずしもなくて、当然その電子B/Lのシステムというコンセプトがここにはないんですけれども、電子B/Lの、電磁的船荷証券記録が記録されている媒体の中で、この人が支配者だともう指定されている人だと。そういう発想でうまく定義が作れないか。   あるいはもっと言うと、別の言い方をすると、あえて作る必要はないと。電子的船荷証券の場合は、とにかく支配者というのが決まっていなければいけないと。それだけでも実はいいのではないかなという気がしております。   以上です。だから、二つありますね。まずは、所有権の概念を借りてくるということには、ちょっとおかしいのではないかと思いますということと、ではどうするのというときに、無理して作らなくても実はいいかもしれないということと、二つです。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何か御回答はございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。いろいろと御指摘を頂きまして、本当にありがとうございます。   我々も、本当にここは非常に悩ましいなと思っておりまして、正におっしゃられたとおり、この支配というのは、民法上の概念でいうと占有というものでありますので、にもかかわらず、所有権の規定を使って表現するということのある種の矛盾というのは、当然感じているところでございます。   ただ、今回強調させていただきましたのは、事実状態であろうと。ここがやはりポイントになるのではないかと思っておりまして、これまでの検討では、余り事実状態に特化した検討というのが、必ずしも十分できていなかったのかなというところがありましたので、何らかの意思的な要素を入れ込んだりとか、いろいろなことをあれやこれやと考えていたところでございます。   ただ、ここを純粋な事実状態とした場合には、そういった主観的なものというのは本来必要ないはずですし、では、客観的な状態としてどう表現したらいいのかということを考えますと、ここは所有権で書かれているような用例を使っても、必ずしも矛盾ではないのではないかと思って、このような表現をさせていただいたところでございます。ここにつきましては、皆様の御意見をいろいろ頂きたいところではあります。   一方で、定義というものをあえてしなくてもいいのではないかという御指摘も頂いたところでございまして、もしそういうことが可能であれば、それはそれであり得るのかなと我々としても思ってはいるんですが、なかなか支配という言葉と電磁的記録というのが、多分ストレートに一般用語としては結び付かないのではないかと思われますので、そう考えると、やはり何らかの定義を置くというのが、基本的な立法の在り方なのかなと思っていて、何かしら考えないとやはりいけないのではないかということで、こういった提案をさせていただいているところでございます。   この点につきましては、皆様の御意見を十分に頂けることができれば有り難いなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○藤田部会長 はい。では、池山委員お願いします。 ○池山委員 余り私ばかりですみませんが、もう1点だけ補足をさせてください。   今、正に渡辺幹事のおっしゃった御苦労というのは、私も拝察をしておりますし、そのこと自体は大変感謝をしております。   その上でなんですけれども、やはりこの定義だとまずいのではないかという理由の一つは、仮に事実状態だとしても、実際その電磁的船荷証券記録の使用、収益、処分というのが、具体的に何なのかというのが、やはりぴんとこないんですよね。確かにここに例示はされているんですけれども、どういったらいいんでしょうかね。単純に支配をしているだけの人は、この全体の規定ぶりから見ると、この電磁的船荷証券記録上の権利を持っているとは限らないわけですよね。文字どおり物理的な紙の所持人に相当する存在でしかないと。そういう人だとしたときに、この支配をする者が、本当に運送品の引渡しを求める際に記録を提示することや、記録によって行う運送品に関する処分行為をすることが、法的な意味でできると言えるのかどうか。実体的な権利は持っていない。ただB/Lを、紙のB/Lを拾って持っている人に相当する人であれば、引渡しを求める提示なんていうのはやはりできないんだと思うんですよね。適法な所持人であるからこそそれはできるんだと。ここでやはり使用ができると言ってしまうと、それはやはり実体的な権利がそこで観念されていて、それはやはり適法な所持人に相当する適法な支配者という概念が、やはりそこで入ってしまうと。   でも、一方で、ここでは概念は正に占有とは事実状態だと、そう順化させようとされているわけです。私はそれは賛成です。   そうであれば、この定義の、使用ができる、収益、処分もそうです。それができるとは逆に言えなくなってしまうと。そこはなかなか乗り越えられないのかなという気はしております。 ○藤田部会長 事務当局からご返答お願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   今の御指摘を伺っておりまして、なるほどなと思って拝聴させていただいたところでございますが、我々の方として意図しているところとしては、必ずしも権利行使の適法性まで考えているわけではなくて、こういったことを外形的にできると、こういったものを表現したかったというところでございますが、ただ、確かに改めて読んでみますと、適法な権利行使としてできると含意されているとしか読めないと言われれば、それはそのとおりかなという感じもしておりまして、そこのところの工夫というのを、また更にしていかなければいけないかなと思ったところでございます。御指摘ありがとうございました。 ○藤田部会長 恐らく今の原案だと、処分できる「状態」と書いてあることで、事実的にできれば足りるということをインプライしようとしているようですが、池山委員は「できる」という言葉自身に、適法にできるというニュアンスがあるので、幾ら状態という言葉を付けても駄目ですよという感想かもしれません。   この整理だと横流しする権限があることが処分できる状態だということになると思うのですけれども、表現として自然かどうかということと、そもそもリファインできるのかという両方が、池山委員の根本的な疑問ですね。 ○池山委員 まあそうですね。そもそもやはり占有に相当するものだということは、ここでも強調されているし、MLETRとかにも書いてあるわけですから、それで、占有の条文を見たら、意思を持って所持するとしか書いていないわけです。主観的要件を外すという部分はいいんですけれども、やはり言い換えるとすると、日本の民法を使ってくるなら所持をどう言い換えるのかというか、本来は言いようがないはずではないかという気はするんですよ。 ○藤田部会長 次に洲崎委員、お願いいたします。 ○洲崎委員 私も今の池山委員の御指摘と全く同じ感想を持っておりまして、この資料でいうと、12ページの下から二つ目の段落、「その上で、「支配」の定義については、」というところで、「主観的な要素等は含めないこととし、所有権に関する民法第206条の規定」うんぬんとあるのですが、単なる支配と書いて、その支配の中身について何も定義しないと、逆に主観的な要素等が入ってしまいかねないので、民法206条を援用したという、そういう御趣旨だったのかなという気もしたのですが、しかし、池山委員が御指摘になったように、「その使用、収益及び処分をすることができる状態」と書いてしまうと、逆にそこでの支配は正当なものを意味するかのような印象がどうしてもしてしまう、そういう感じを私も受けました。   占有と並べるものとして位置付けるものとしては、支配だけでもいいのかなという感じがしておりまして、特に民法206条と合わせるとなると、資料でも書いてありますが、「収益」という概念となかなかうまく合わないということがありますし、それから、「使用」についても、12ページの下から4行目では、「引渡しを求める際」の使用、これはあるかもしれないですが、「運送品に関する処分行為」は、「使用、収益及び処分」の最後にある処分とも重なってしまいますので、説明しようとすればするほど、何か無理が生じてしまうような気もいたしまして、単なる支配だけでも悪くはないのかなという、そういう印象を持っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○松井幹事 池山委員、洲崎委員の御発言に重ねるだけのことになり恐縮なのですけれども、ここに所有権の内容を持ってくることは、私も非常に違和感を持っております。ここは、先ほど渡辺幹事がおっしゃった外形的な状況を表したいというところがポイントだと思っております。占有というのは事実状態であり、その外形を保護するための一つの媒介概念ですから、正にこの自由に処分ができるようなことを認めるだけの外形があるかどうかというところを、この支配の概念で捉えていけばいいのだろうと思います。   ですので、もしどうしても支配ということが書き下されなければならないのだとしたら、外形的に所有権を認めるに足る状態があるかどうかというところを書き下していくことになるのだと思います。そうしますと、実は先ほど池山委員がおっしゃっていた、この電子的な記録のホルダーであると書かれているという事実が正に外形なのだと思います。そのことが、実際に処分や移転等ができる権利につながっていくということだと思いますので、その意味で申しますと、ここに所有権の内容を書いてしまうというのは、先の事実状態から推定していくような内容が、逆に先に書かれてしまうことになり、理論的に問題があるような気がします。飽くまでも外形的な状態を捉えるような表現としてここは書いていくことが必要かと思いました。 ○藤田部会長 続きまして、山口委員、お願いします。 ○山口委員 山口でございます。   実は占有の概念というのは一体何かという、正におっしゃったとおりで、自己のためにする意思を持って所持するということなんですが、これは主観的要素と客観的要素が絡まったもので、今のお話だと主観的要素を外すということですから、所持だけが問題になるんですが、所持の定義については、我妻民法を見ますと、所持とは、物が社会的観念上、その人の事実的支配に属すると認められる客観的関係と書いてありまして、占有の定義の中に支配が入っていると。正に建物の場合も、やはり管理、支配関係があると。正に所持という、動産だと本当に所持というのが言えるんだけれども、不動産なんていうのは所持できないんだけれども、それでもやはり占有を、持っているというのを観念化したものとしては、やはり管理関係と支配関係があるという説明をされているので、トートロジーのようなもので、その占有というのは何で定義付けられているかというと、支配で、これは学説上の話ですけれども、ほとんどの民法の学者さんはそう書いているんですね。支配という概念が占有を基礎付けていると書いてあるので、その支配を今度定義付けるというのはかなり難しいです。なぜなら、それが事実状態であるからだろうと思うんですね。   それを、今度、所有の概念から持ってきて、定義し直すというのは、かなり無理があるだろうと、一方においては思うわけで、先ほど池山先生がおっしゃったように、支配というものは、やはり定義付け、法的にはしているんですけれども、かなり難しいのではないかなと思っております。   もし池山先生がサジェストされたように、その当該システム上、保有者なり所持人とされている者、ポゼッサーあるいはホルダーとされている者が、この保有、コントロールを持っているという、どちらかというとそういう方法がやりやすいのかもしれませんし、正にMLETRも、それからちょっとLaw Commissionが違いますけれども、MLETRはこういう場合にポゼストされるものが同等であるというような表現になっていますし、今度はLaw Commissionの方は、どちらかというとポゼストを正面から認めていて、所持に近いものがあり、なおかつそれに沿う意思があれば、ポゼストを認めていいんだという考え方に持ってきていると。だから、両方とも大変苦労されているように思います。   そういう意味では、支配を新たに作って定義付けするのはかなり難しいし、やはり若干無理があるのかなというか、思ったりしております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。吉田委員、お願いします。 ○吉田委員 吉田です。よろしくお願いいたします。   質問がありまして、MLETRではエクスクルーシブあるいは排他的という言葉を用いているんですけれども、この排他的というような文言あるいは概念が、日本法の場合の法案から、そういう考え方ではなくなった経緯といいますか、理由のようなものがあれば教えていただけますでしょうか。 ○藤田部会長 事務当局からお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   排他性のところにつきましては、第2のところで御検討いただければと思っていたところなんですけれども、部会資料で申しますと、16ページのところに記載をさせていただいております。   排他性というのは、そのものを特に書かなくても、いろいろな、これから技術的な要件とか、基本的な性質というところで御議論いただければと思っておりますけれども、そういったところで十分既にもう表現し切れているのではないかというところで、あえて排他性という言葉を定義の中に入れなくても、そこのところは十分満たされていると理解できるのかなというところで、特出しはしないで、ただ補足説明のところで、そのような検討でよろしいでしょうかというところの御提案をさせていただいているところでございます。 ○藤田部会長 今の説明ですが、MLETRなどはエクスクルーシブ・コントロールという表現を使っていて、コントロールにエクスクルーシブという修飾を付けているんですね。   それに対して現在の部会資料の方は、支配の概念の中に排他性も含まれているので、結論的には違った意味にならない、修飾語として排他的支配という表現を使わなくていいということでしょうか。 ○渡辺幹事 はい、おっしゃるとおりです。 ○藤田部会長 分かりました。ということだそうですが、よろしいでしょうか。 ○後藤幹事 後藤でございます。   今のところですけれども、私は現在の部会資料の書き方で排他性を表現し尽くせているとは言えないように感じております。部会資料では、処分をするというのは、電磁的船荷証券記録の「支配」を移転するということであり、これによって移転元の人は「支配」を失うので、「支配」を持つ人は移転先の1人しかいないんですという説明をされようとしているのだと思うのですけれども、排他性が問題となるのは移転する場合だけではないと思うんですよね。電磁的船荷証券記録は有体物ではなく情報ですが、情報については占有を観念できないと一般的に言われているのは、情報はコピーできるというのが大前提で、コピーされると誰からでもアクセスできるものとなってしまうので、排他的とはいえないからだと思います。そうすると、そこから否定をしておかないと、やはり情報は排他的ではないというのがその本質ですから、この書き方ではやはり尽くし切れていないのではないかなと思うんです。排他性があると言えるためには、意図的に移転した場合以外にも、複数の人が出てくる場合というのが排除できていなければいけないわけですが、現状ではそれができていないので、排他性という言葉を出さなくてもいいとは、私はとても言えないと思うんです。   排他性という言葉を使うとしても、有体物の所持に該当するのはどういう場合かを考えることには結局なるかもしれませんが、いきなり所有権の概念を持ち出すのではなくて、情報を排他的に支配している人ですと言ってしまえば、ただの支配よりは、有体物の占有の所持という概念を置き換えたんですという意図はもう少しはっきりと伝わるのかなと思います。   この排他性の中身を定義できるのかというと、なかなか難しいかもしれませんが、飽くまでポイントはその排他性にあるんですよということを強調しても良いのではないか、排他性という言葉一つ入れるだけで、大分変わるのではないかなという気がしています。支配という言葉だけで分かってくださいというよりは、まだ排他的な支配と書いた方がいいかなというのが一つです。  もう一つ、MLETRとかも、先ほど藤田先生がおっしゃられたように、排他的な支配と言っているわけですから、同じですと言ってしまった方がよっぽど外から見て分かりやすいと、これは前回議論したポイントだと思うんですけれども、そこがあるかなという気がいたしました。   あと、池山委員が最後におっしゃっていた話で、中身は余り書かなくても、要はシステム的に決まるのではないかということですが、例えば電子記録債権法は、記録機関のシステムがもうできているので、その中で決まった人がポゼッサーですと決めることができるわけですが、今回はその仕組みのところを何も手当てをせずに、枠だけ作ろうとしているので、仕組みでこうですということが言えないというのが、多分一番悩まれている元のところにあるのだと思います。池山先生の御提案は、例えばBoleroなり何なりの仕組みで決めるだろうから、それをそのまま使って、各プラットフォームで決めた人が排他的な支配を持っているんですと言えばいいではないかということだと思いますが、そうすると、規約を大前提としたものとして作るのか、規約ではない何かがあることを想定するのかどうかという話もありましたけれども、そこに引っ掛かってくるのかなという気がします。何らかの規約があることを前提にすると割り切ってしまうのであれば、池山先生が最後におっしゃられたように、そっちに全部投げるということもあろうかとは思うんですけれども、その場合でも、この支配という概念を所有権の概念を使って定義することには、日本の中でもこれだけ違和感があるということは、外国から見たら更に違和感がある可能性があり、そうすると、ちょっと元々のコンセプトから大分外れたものとして受け止められてしまう可能性があるのではないかなという気がしております。すみません。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   MLETRとかロッテルダム・ルールズは、リライアビリティーといいますか、システムの要件として排他的支配をエスタブリッシュするものであり、また、誰が支配を持っているかということを特定できるものでなくてはならないという形で、システムの要件としてそういうものを書き込んでいるんですね。   システムで決まった人が支配を有するという書き方ではなく、恐らくそういう要件と組み合わせて規定するというのが、池山委員の意見の線、つまりコントロールを定義しないで済ませる場合の方向性ということになるんだとは思うのですけれども、日本の実体法としては難しかろうというのが、元々は事務当局の提案でした。しかし、ここまで抵抗が強いとなると、そういう方向性もあるいは検討する必要があるのかもしれません。仮に支配について定義しないとして、どんな形で、システムで特定された人がコントロールを有すると書けるかということを、別途検討する必要があるのですが、多分MLETRなんかの方式に近いものになるのかなとは思います。それが日本の法制上耐え得るかというのは、別途検討することになるのでしょう。 ○小出幹事 今の後藤幹事の発言ともしかすると関係しているのかもしれませんけれども、この支配という概念について、元々、紙の船荷証券対して占有をしているということは、有価証券を物理的におさえていて、そうすると、その人が事実上、有価証券上の権利を行使できる状態にあるというところに、占有の機能的な意義があるんだろうと思います。   やはりここの事実上権利を行使できるというところがポイントで、今度は電子的なデータにしようとしているわけですけれども、その電子的なものについて占有の機能的同等な概念を考えるときには、結局そのデータ上に化体されている権利というものを事実上行使できる状態にあると。それはどういうことかというと、システム上、例えば帳簿でも何でもいいんですが、システム上このデータを持っているとされている人が、その権利を行使できるという状態に事実上あるということなんだと思います。   その意味では、私も使用、収益、処分のような所有権の言葉を使うのはどうかと思いますけれども、この支配概念の定義のところは、事実上、電磁的船荷証券記録上の権利を行使することができる状態というのが、もしかしたらあり得る表現なのかなと思います。   ただ、他方でそうした定義を本当に条文で書く必要があるかどうかはまた別問題だと思いますし、解釈に委ねてもいいのではないかなとは思います。   一方で、この支配という概念は、もしかしたら今後の我が国で、この電磁的船荷証券記録の範囲を超えて、私法一般において非常に重要な概念になる可能性があるように思っています。恐らく、学界でもいろいろな議論があるところだと思いますので、場合によっては民法の先生方にもきちんと議論に参加していただくべき問題のような気もいたしますので、引き続き慎重な検討は必要だろうということを申し上げたいと思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○池山委員 池山です。   今の小出幹事の御発言に関連して、電子船荷証券記録の支配をしていれば、事実上権利が行使できる状態になるのかということ自体も、実は必ずしもそうではないのかなと私は思っているんです。これは混ぜ返す議論で恐縮ですけれども。   なぜかというと、紙のB/Lを占有している人でも、事実上権利が常に行使できるか。そのようなことはやはりないと運送人側は考えるからです。というのは、指図式証券であれば、裏書の連続のある証券の所持人でないと、事実上も権利行使できないと。白地式裏書がされたり、あるいは所持人払式の証券であれば、正に事実上、その人が盗んだ人であったとしても、事実上行使はできてしまいますけれども、裏書が現にあると、それで裏書が連続していないと、やはり事実上も行使できないんですよね。そういう紙における区別というのは、ここでも区別を確かされていて、転換の規定などを、ちょっと先のところですけれども、転換のところなどを見ると、やはり支配者の中で更に適法に権利を行使できる人というのは、やはり区別していると。やはりそこにいる支配者は本当に占有だけであって、裏書的なものは全く考慮に入れないものだと。そうだとすると、やはり紙さえ持っていれば、電子的記録の支配さえ持っていれば、事実上できてしまうかといえば、事実上もやはりストップされてしまうのではないかなと、運送人側としては。裏書記録を見てということを思っております。   これは混ぜっ返しだけの議論なんですけれども、若干気になっております。すみません。 ○藤田部会長 小出幹事、お願いします。 ○小出幹事 今の点につきまして、私なりの考えを申し上げますと、裏書の話というのはまた別の話のような気がしていて、裏書によって平穏に占有を得た人が、その権利を行使できるということだと思いますので、そこは正に占有の移転の方法としての裏書なので、裏書が連続していないものを持っていても権利を行使できないという話は、占有により事実上権利行使できるという話とは別の問題なのかなと私は理解をしていました。   要するに、きちんと裏書が連続しているものを持っている人は、その実体法的な話は別として、事実上権利を行使できる状態にあるということですね。   すみません、私が、十分理解していないのかもしれませんけれども。 ○池山委員 池山です。   多分ひょっとすると、事実上の権利行使できると言い換えたときに、事実上ということ自体にも、やはり人によって受け取り方の差があるということかなと思って、今、お聞きしました。 ○藤田部会長 雨宮委員、お願いします。 ○雨宮委員 これまでの議論で尽きていると思いますが、私の個人的な意見は、今の議論の主流と同じでありまして、紙のB/Lにおける所持と機能的同等なのものが、いわゆる支配だと考えますと、支配の定義を設けるのはかなり困難であると考えております。   今の議論を聞いていて思いましたのは、この支配の移転で、多分次回で議論されると思っておりますが、電子B/Lの類型について、A案なのか、B案なのか、C案なのかという議論と、支配の定義というのは関連してくるのか。それとも、例えば裏書がなくても移転が認められるような場合には、支配の定義が変わるのか。裏書を前提にした場合に、支配の定義が変わり得るのか。類型の議論と関連し得るのかと考えながら聞いておりました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局からは何かございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   今、雨宮委員から御指摘いただいた点なんですけれども、基本的には次回議論させていただく類型の話の中で、特定の類型に至った場合には支配の概念が変わるというようなことは、想定はしていないで検討はしているという状況でございます。ただ、もちろん御議論の中で、この案を採ったら支配の意義が変わってくるのではないかという御指摘を頂くことは十分あり得るかと思いますけれども、我々の想定としては、現時点では支配の概念が変わるということは考えていないという状況でございます。 ○藤田部会長 そのほか、第1の点について、どの点でも御意見、御質問ございますでしょうか。 ○山口委員 ちょっと話を戻してすみません。   船荷証券という記載のところなんですけれども、先ほど池山委員の方が御指摘になったように、船荷証券に代わって発行されたものであるという記載は、かなり無理があるだろうと思いますけれども、電磁的船荷証券の様式を見ますと、やはり単に船荷証券と記載されているので、記載の方法としては船荷証券あるいは船荷証券類似の記載みたいな感じの弱い規制の方がいいんだろうかなと、議論を聞いていて最後思ったところでございます。   最後、それだけでございます。 ○藤田部会長 事務当局としても、このような文言が載っていないといけないという趣旨ではなくて、紙の船荷証券に代わる存在であることが分かるようなことがどこかに書かれていればいいという御趣旨ですね。 ○渡辺幹事 書く、必要とする場合にはそういったものでいいのではないかということでございます。 ○藤田部会長 分かりました。   池山委員、お願いします。 ○池山委員 今の渡辺幹事の御発言に関連してですけれども、私の理解は、事務当局は、こういう問題提起をされていますけれども、基本的には必要ないと書かれていて、そこは賛成です。   それから、仮に書くとしたときに、これはまた余談になるかもしれませんが、少なくとも電磁的船荷証券記録、あるいは英語でいうとエレクトリック・ビル・オブ・レーディングとは誰も書かないと思います。本当に、電子の上で、ビル・オブ・レーディング、船荷証券と書くんですよね。そうだとすると、一方で概念的には、船荷証券とこの電磁的船荷証券記録は別だということにはなっているわけです。だけれども、実際に書くのは、やはり船荷証券と書くと。そうすると、規制を何らかの形で加えるとすると、一方で電磁的船荷証券記録と書けというのは無理があるし、一方で違うと言いながら、船荷証券と書きなさいというのも、それは理論的に変ですよね。そうすると、残った選択肢は、やはり特段規制を置かないと。書く、書かないは自由だと。それで、ほっておいたら、電子の上に船荷証券と書いてあって、それを電磁的船荷証券記録と人は受け取るであろうと。それで十分だと私は思いますが。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   よろしいでしょうか。第1については相当議論が出ましたけれども、この辺りでよろしいでしょうか。   それでは、続きまして第2について、事務当局から御説明いただければと思います。 ○中村関係官 それでは、法務省の中村の方から、今回の部会資料の第2、13ページ以下について説明をさせていただきます。   第2は「電磁的船荷証券記録の定義及び技術的要件」等についての御審議をお願いするものでございます。   電磁的船荷証券記録の定義については、今回の部会資料の13ページから14ページに掛けて記載させていただいている内容を提案させていただいております。ここでは電磁的船荷証券記録について、まず、電磁的記録であること、すなわち電子的方式、磁気的方式、その他、人の知覚によって認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報の処理に供されるもので、法務省令で定めるものとした上で、その他の技術的要件といたしまして、MLETRを参考に、漢数字で一から四まで記載させていただいておりますが、一番目として、電磁的船荷証券記録に関する権利を有することを証する記録として特定されたものであること。二つ目として、支配をすることができるものであって、その支配を有する者を特定することができるもの。三つ目として、支配の移転をすることができるもの。四つ目として、適法に改変されたものを除き、記録された情報を保存することができるものという要件を求めることとしております。   今、述べた4点につきましては、法務省令に委任するということも考えられますが、いずれも電磁的船荷証券記録の要件として中核をなすもののように理解できますし、これらの点については、今後技術発展等の可能性を見据えても、変化のないもののように考えられるため、法務省令ではなく法律本体の方で規律することを想定しております。   他方、電磁的記録についての具体的な記録の方法につきましては、今後の技術発展による変容がございますため、法務省令に委任することとし、既存の法令上の用例等も参考とした上で、法務省令として「磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができるものをもって調製するファイルに情報を記録したもの」という、極めてシンプルな内容を規律することを想定しております。   なお、この技術的要件との関係では、MLETRやイギリスのLaw Commissionの草案の中で、いわゆる「一般的な信頼性の基準」として明記されている部分の取扱いが一つの論点になり得るかなと考えております。   具体的には、今回の部会資料の17ページにおいて、四角で囲った部分のような規律が、MLETRやLaw Commission草案の中では置かれているところでございまして、このような規律を今回設けるかどうかという点になります。すなわちMLETRやイギリスのLaw Commission草案におきましては、我々の理解といたしましては、電子船荷証券の発行や権利譲渡について、黙示的な要件といたしまして、それらが信頼できる手法によって実現されていることを求めていると考えております。そして、それを前提として、その信頼性を判断するための指標、基準として、これらの一般的な信頼性の基準といったものが明記されていると理解しております。   そのような理解を前提といたしますと、これらについては、電磁的船荷証券記録についての法律上の要件そのものではなくて、要は信頼性という要件を満たすかどうかの判断基準を示すものにすぎないと考えられますため、今回の電磁的船荷証券記録の法制化においても、これを明文の規律として設ける必要性というのは、必ずしも高くはないのかなという思いを持っております。   もっとも、その一方で、一般的な信頼性の要件の基準について、言わば訓示規定的に定めることなどは別途検討する余地もあるように思われるところでございます。ただ、御案内のとおり、我が国の私法法制上、このような訓示規定を設ける例というのは余り多くはないところでございますため、この辺りについてどのように考えるかという点についても御審議をお願いしたく存じます。   また、技術的要件との関係では、国の認証を受けた機関による関与の要否という点についても大きな論点になり得るかと考えております。幾ら法律で技術的要件を明確に定めたとしても、やはりそのシステムの内部の話といった点につきましては、利用者からは必ずしも明らかではないと思われますため、制度そのものの信頼性を高めるという観点からいたしますと、例えば国の認証する機関に限って電磁的船荷証券記録の発行を認めるといったような制度を設計することも、理論的には考えられるところかと存じます。   もっとも、電磁的船荷証券記録というのは国際海上運送において利用されることが期待されているところでございますので、そのような観点からいたしますと、このような言わば中央管理機関的なものを設けてしまうことは、電磁的船荷証券記録が実際に普及され、利用される余地というのを大幅に制限してしまうような危険性というのもあり得るのかなと思っているところでございます。その点も含めて、そのような大きな制度設計についての議論もお願いできればと考えております。   そのほか、電磁的船荷証券記録の発行の場面の技術的要件の一部として、電子署名を求めることや、その要件等についても提案させていただいておりますため、この辺りについても併せて御審議をお願いできればと考えております。   第2のパートの事務当局からの説明は以上となります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、第2のパートについて御意見等を頂ければと思います。どうかよろしくお願いいたします。 ○新谷幹事 新谷でございます。   この技術的要件の、資料の14ページの漢数字の一から四のところです。MLETRを基にして作っていただいている規定ですけれども、これについて拝見していて思ったことを申し述べさせていただきます。   まず、漢数字の一番なんですけれども、「電磁的船荷証券記録に関する権利を有することを証する記録として特定されたもの」と書いていただいているのが、この「特定されたもの」というのを拝見していて、これが規定の方法として、分かりやすさの点でどうだろうと思った次第なんです。   これは、MLETRのシンギュラリティー、つまり単一性の要件だと思うんですけれども、要は「特定されたもの」とだけ書かれている条文だと、ぱっと見た人が、誰がどのように特定するのかというのが、分からないのではないかと思ったんです。   実は、研究会の際の資料を拝見していると、こちらは、「唯一の記録として特定されたもの」という書き方をされておられて、このときは、私は読んだ者の感覚として、例えばブロックチェーンだったり、あるいはBoleroの中央登録機関のようなもの、「唯一の記録として」という表現によってそういったものが想起されたので、余り違和感はなかったんですが、今回それは多分、余分または不要だというので、削除されたということだと思います。それはそれで確かに不要かなと思いつつも、一方で、これがなくなって、単に「特定されたもの」となると、今申し上げたように、誰がどのように特定するのかということが、読んだ人には分かりにくいのではないかということを思ったんです。   なぜなら、実際に画面上で、例えば運送人、あるいは荷主、銀行、誰でもいいんですが、その情報を見たときに、それが正しいデータなのか、コピーされたデータなのか、昔のデータなのか、あるいははたまた偽造されたデータなのかと、ぱっと見では、誰も分からない、識別はできない、つまり特定はできないというのが現実だと思うんです。   では、MLETRはどうしているのかというと、先ほど藤田部会長もちょっとおっしゃっておられましたけれども、「特定できる方法が用いられていること」とか、「支配できる方法が用いられていること」とか、あるいは「完全性を維持できる方法が用いられていること」という具合に、システムの要件として定めています。要はそういった方法とか技術が使用されているということが要件になっているので、そうすると、誰かがそれを「特定できる」必要はなくて、客観的に、例えばブロックチェーンを使っているプラットフォームですとか、Boleroのような中央登録機関のあるプラットフォームですということで、システムを要件とするのでよいのではないかなと思った次第です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   事務当局からは御返答ございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。   特定という言葉を使うかどうかもさることながら、特定することができる方法が用いられたものみたいな、そのような書き方にするということも十分あり得るのではないかと、こういうような御指摘と理解させていただきましたので、今の御指摘も踏まえて、ほかの部分も併せてですけれども、検討させていただければと思います。御指摘ありがとうございました。 ○藤田部会長 恐らく想定していることは、事務当局も新谷幹事も、恐らくほかの委員も同じようなことなんでしょうけれども、表現として誤解のないようにどうすればいいかということは、更に検討してもらえればと思います。   そのほか、どの点でも御意見御質問をお願いします。 ○池山委員 池山でございます。   今、新谷幹事がおっしゃったところと重なる部分と、重ならない部分がございます。   まず、重なる部分として、この一ないし四号について、これは全般についてなんですけれども、今の御指摘で図らずしもありましたけれども、これというのは、実は記録の定義ではなくて、システムの定義なのではないかという気がして、抵抗感がございました。   元々ここは、飽くまで電磁的船荷証券記録という個別の記録の定義のはずなんです。ところが、実際に読んでいくと、まず柱書きの方からいくと、冒頭の法で決めてあるところ、13ページの一番下のところは、これはこれで作られる記録だと。飽くまで記録の定義だと。その後、法務省令に委ねられている部分、これが必ず必要かどうかという議論はあるかもしれませんが、こういうもの、ここで物(ぶつ)という言葉が使ってありますが、物をもって調整するファイルに情報を記録したものとすると、これは実はシステムの媒体の定義のように思えると。   かつこの一、二、三、四のうち、一は場合によっては記録の定義と取れるかもしれないですけれども、今の新谷幹事の御発言からすると、やはりシステムの定義としか思えなくて、二、三、四は定義の対象は飽くまでシステムの定義なのではないかと。そのことが、これは日本語の場合、これこれができる「もの」という言葉を使っているので、分かりにくくなるんですけれども、これを試しに英訳をしてみようとすると、すごくよく分かるんですけれども、この「もの」というのは、実はシステムのことを指しているのではないかとしか思えないんです。そうすると、3次元に分かれていると。   ここまでならば、単なる疑義なんですけれども、その上で、実質的なところでどういう問題があり得るかというと、まず、一旦その柱書きと法務省令に戻らせていただきます。   この柱書きと法務省令の部分は、実は船荷証券に限らず電磁的記録一般の定義をそのまま引っ張ってきているので、一見それは、電磁的船荷証券記録も日本法の体系の中では電磁的記録の一種なんだから、これをそのまま引っ張ればいいのではないかとは思えますが、特にその後段の法務省令に定めるものをあえて付け加えてしまうと、ここの磁気ディスクその他の物をもって調整するファイルに情報を記録したものと、こういう書き方をしたときに、ブロックチェーン技術を使った中央の登録機関がない電子B/Lのシステムが、本当にこれでカバーされるのかどうかというのは、正直分からないと思います。   この規定は、日本法の電磁的記録の一般的な定義そのものを使っているので、変えるのはなかなか難しいかもしれないですけれども、単純な懸念としてブロックチェーン技術を持ったものが本当にこれでカバーされるのかは、よくよく検証する必要があるだろうという事実上の懸念があります。   それから、柱書きではなくて、この本文の各号に戻っていくと、先ほどこのシステムの定義と読めるのではないかと申しました。ここは、いや、実質上そうですよというのであれば、そう適宜書き換えていただければいいんですけれども、今のままだと飽くまでも記録の定義だと。そうすると、指摘があったのは、三号の支配の移転を記録することができるものということになっていると。電磁的船荷証券記録の種類によっては、ストレートB/Lで、かつその禁止文言が入っている文言については、実は支配の移転もできないのではないかという議論もあり得て、決してそこを外す趣旨ではないだろうと。そうすると、この定義が電磁的船荷証券記録の定義である限りにおいては、そことの関係もうまく整理を付けないといけないのかなと思います。   まず、1については以上です。   恐らく2の方は、これはむしろ日本法でいうところの電子的記録なので、電子的方法の概念を借りてきた定義で、その適否の問題はあると思いますが、まずは1の方が重要ですので、1について是非コメントを頂ければと思うんですが。 ○藤田部会長 差し当たり事務当局から御返答をお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   まず、全般的なところとして、これは記録の定義なのか、システムの定義なのか、はっきりしないのではないかという御指摘を頂いた部分があろうかと思いますけれども、ここは先ほど新谷幹事から御指摘いただいた部分とも共通する部分かと思いますので、また事務当局としても検討していきたいなと思っているところでございます。   それから、法務省令で委ねた部分の、その法務省令の書き方の部分です。部会資料でいいますと14ページの上の方の(注)というところで書いてある部分でございますが、ここはこれまでの我が国の法制上、一般的に使われているものをそのまま入れていた部分でございまして、なかなか立法化するときには、これと違う表現というのも正直なところ難しい部分はあるかなと思っておりますが、他方でブロックチェーンとか、そういう新たな技術に対応できているのかどうかというところは検証しなければいけないのはおっしゃるとおりかと思いますが、今のところの私どもの整理としては、ブロックチェーンを用いたものであっても、何らかのサーバー等に保存はされているだろうということは言えるだろうと思いますので、そこら辺は大丈夫ではないかと一応考えてはいるところでございます。   あともう一つ、3号の三のところです。そこの関係で、ストレートB/Lとの関係での御指摘も頂いたかと思っておりますけれども、そこのところは、少し16ページの補足説明のところで書かせていただいたところでありまして、裏書あるいは譲渡、そういったものが禁止されるものについてはどうかというところなんですが、16ページの2段落目ですかね、なおというところなんですが、基本的にはやはり支配の移転ができるというのは、要件にしていいのではないかというのが今のところの事務当局の整理でございます。仮にそれすらできないようなものであれば、あえてここでいうところの電磁的船荷証券記録に当たるという整理をしなくても、特段問題ないのではないかと思いますし、逆にそれすらできないものに、ここでいろいろと考えていこうと思っている立法の適用を認める必要もないのではないかと、今のところは整理しているところでございますが、いろいろな御意見はあり得るところかなと思っているところでございます。   取りあえずの回答としては以上でございます。 ○池山委員 そうすると、最後の点ですけれども、逆にこの16ページに書いてあるとおり、ストレートB/Lの場合に、荷送人から荷受人に紙で船荷証券が渡る場合も、支配の移転はあると。だけれども、権利の移転はそこにはないという整理にやはりなるんでしょうね。ストレートB/Lの場合は、荷受人が最初の権利者なんだから、別に荷送人は、最初確かに発行を受けて支配はするけれども、実は権利者ではないと。そういう整理だということになってくるということでよろしいんですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   今の点については、恐らくその後の効力論で、どういった定めをするのかというところになろうかと思いますが、今、ここで議論をしているのは、支配の移転すら、支配の移転ができないようなシステムあるいは記録を排除するかしないかという議論だと思います。   ストレートB/Lのような形で発行された電磁的船荷証券記録が、これは支配の移転という行為がそもそもできないようなシステムを使った場合どうなのかというところで考えますと、今、我々の整理としては、残念ながらこの法律の規定は適用されませんねという整理になるのかなということを申し上げておりまして、ただ、荷送人から荷受人に対して支配の移転ができるようなものであれば、この技術的要件は満たすということになりますので、そういったストレートB/Lの電子版であっても、ここでいうところの電磁的船荷証券には当たるという整理になろうかと思います。   その場合に、ストレートB/L的なものがどういう効力を持ってくるのかというところは、次回検討させていただく話かなと思っております。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。 ○池山委員 そうすると、いや、すみません。確かに二つの議論がごっちゃになっているかもしませんけれども、ストレートB/Lの場合には、最初の権利者は荷受人だと仮定をして、だから、荷受人に最初発行をして、運送契約の当事者としての荷送人は別個書いてあるんだけれども、荷受人に先に発行して、それでおしまいと、それしかできないようなシステムは入らないと。そういう整理でいいのかな。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   荷送人だけに発行して、荷受人に対して支配の移転というものが、そもそももう物理的にできないような記録であったとするならば、技術的要件を欠くということになりますので、ここでの電磁的船荷証券記録とは扱われないと、こういうことになるのかなという整理でございます。 ○池山委員 分かりました。 ○藤田部会長 今、言われたような局面に限らず、受戻しの局面では、やはり支配の移転を行うことになりますし、差し替えの場合も同じようなことがありますので、ストレートB/Lに相当する電子版であっても、そういうことができないと要件は満たさないということですね。3号は、誤解されるかもしれませんが、自由に誰にでも譲渡できるようなシステムでなければいけないということを言っているのでなくて、最低限支配を移さなければいけないということは、ストレートB/Lに対応するものでもあり得るということから、このような書き方をしているということです。ここはうまく説明しないと誤解しやすいかもしれません。 ○池山委員 一方で、すみません、補足説明ありがとうございます。   部会長の御指摘の趣旨は分かるんですけれども、他方で、先ほど正に受渡しの局面も、支配の移転という形でいいのかどうかというのは、一応それは次回別の論点としては出てくるのかなとは思っております。その意味では、支配概念の捉え方ともやはり関係してくるであろうと思います。   それと、関連して、すみません、1点、私が何点か申し上げた中の、関連して補足なんですけれども、補足的な質問なんですけれども、そもそも法でこうやって規定した上で、法の柱書きについてです。法で概括的な定義を置いた上で、法務省令で更に限定するような定義が本当に必要なのかというのは、一応疑問としては申し上げてもいいのかなと思います。   確かに電子的記録の定義の仕方として、例外なく書いてあるので、それと平仄を合わせればこうなってしまうんですけれども、あえてスクラッチで考えれば、法の定義で十分で、柔軟性というんだったら、何で法務省令が要るんですかと言われたときに、私は答えがないんです。なまじ法務省令でこういう書き方をすると、先ほど渡辺幹事は、ブロックチェーン技術も大丈夫ではないかと思っているとおっしゃいましたけれども、そういう懸念が出てくると。そのような懸念が出てくるんだったら、そもそも法務省令は要らないのではないのというコメントがありました。そう言われたらそうかもしれない。ちょっとその法体系的にはかなり大胆かもしれませんが、いかがでしょうか。 ○藤田部会長 事務当局から御返答よろしくお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。   おっしゃるとおり、電磁的な記録について、どこまで詳しく書いていくかというところは、正に悩みどころかなと思っておりまして、ただ、何も書かないというのが、我が国の法体系上許されるのかどうかというところが一つあろうかと思います。   ですので、我々、今、事務当局としては、14ページの上の方に書いてある(注)ぐらいのことまでは入れないと、なかなか電磁的記録として特定されていないのではないかというような思いで、ここまでは必要ではないかということで、一応の整理はさせていただいているところですが、他方でほかの部分、例えば商法だといろいろ細かくメールで送るような場合であったりファックスでどうのこうのみたいな、そういうような規律がある部分もあるんですが、そこまでは要らないのではないかというような整理も今回しているところでありまして、結局のところ、どこまでが必要で、どこからが要らない、任意的なもので、こういったものは入れない方がいいのではないかと整理できるかというようなところの問題かなと思っておりまして、今、言ったようなところは意識しながら、一応の今回の整理はさせていただいておりますが、最終的に案文に落とし込んでいくときには、御指摘のところも含めて、どこまでが必要でどこからが要らないのかというところも考えながら、また検討していきたいなと思っております。 ○池山委員 正に今、御指摘のあったところで、いろいろやるという、正に漢数字の二の電磁的方法に関する定義でして、電磁的方法に関する定義は、今では会社法と、それから商法と、それぞれ定義があって、省令の中身が微妙に違うということがあります。   今回は、ある種2号の方では、正に大胆に施行規則、法務省令に当たる部分がなくて、その他の情報通信技術を利用する方法であること、そこで終わっているわけですよね。電子署名のことを別にすれば。   だから、電磁的方法について、そういうことができるんだったら、実は電磁的記録の方も、実はできるのではないかというのが、素朴な感想ですけれども、思ったということでございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そのほか、第2について何かございますでしょうか。 ○後藤幹事 細かな話で恐縮なんですが、読み方を教えていただきたいところがあります。第2の1の漢数字の四の「適法に改変されたものを除き、記録された情報を保存することができるもの」というところなんですけれども、補足説明の16ページでは、これは、MLETRの10条1項(b)(iii)のインテグリティーの話と説明されているんですが、MLETRの10条2項を見ると、全ての変更を含む情報が全部保存されていることと読めるように思います。MLETRでは、完全性を評価する基準は、電子的移転可能記録が創出されたときから効力がなくなるまでの間に生じた全ての認められた変更を含む情報が全てそろって、かつ不変のままですよという話で書かれているのに対して、4号の方は適法に改変されたものは除くとなってしまっていて、どうこの4号を読んだら、このインテグリティーの定義と同じになるのかが、ちょっとよく分からずにおります。多分読み方を間違っているんだろうなという気がするんですが、この4号のこれは、何か過去の法令の用例を使っているのかどうなのかも分からないんですけれども、どういう意味なのかちょっと教えていただければと思いました。よろしくお願いします。 ○藤田部会長 事務当局からお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   まず、やろうとしていることは、正に後藤幹事がおっしゃるとおりでございまして、何か実質を変えようというようなことではなくて、このインテグリティーのところをそのまま何とか表現したいなと思っているところでございます。   具体的な、何かそのものずばりという用例があって、こうしているものではなくて、使えそうな文言を何とか引っ張ってきてこう書いているところでございます。   御指摘のとおり、MLETRの規定の理解が十分できずに、不十分になっている部分というのがある可能性はあるかなとは思っているところなんですけれども、具体的な御指摘といたしましては、変更の過程が全部残るという部分が抜けているのではないかというようなところなのかなと思いますが、それは、すみません、おっしゃるところはそのとおりなのかなという気もちょっとしているところでもあり、他方で、通常の過程において生ずる全ての変更を除いてというようなところが、16ページのところにも書いておりますので、ちょっとそこら辺の読み方が、我々十分よく理解できていないところでこういったことになってしまっているなというところを、ちょっとすみません、御意見を伺いながら思ったところでございます。   そこのところを改めて整理をした上で、必要に応じて変更等を考えていきたいと思っております。 ○後藤幹事 後藤です。御説明ありがとうございました。   この「適法に改変されたもの」というのが、何を意味しているか次第だと思いますが、権限がある人による修正を含むように読めてしまい、それは記録していないと駄目なやつだと思いますので、そこは直す必要があるように思います。他方で、通信するときに何かのデータが付け加えられたりするとしても、それはフォローしなくてもいいよということは、技術的なことが全く分からないものの、あり得るとは思いますが、そこが区別できるようにしていただければと思いました。よろしくお願いします。ありがとうございます。 ○藤田部会長 小出幹事、お願いします。 ○小出幹事 小出でございます。   今の後藤幹事の御発言はそのとおりだと思います。   元々MLETRの10条2項というのも、オーソライズドチェンジがあればきちんと記載しろと書いてあると思います。適法に改変されたということの意味なんですけれども、例えば支配権者の移転だとか、そういうことは当然ながらそれが変更されたということも含めて記載する必要があると思います。   多分10条2項で、それ以外に元のデータを変更していいと言っていることは、私も技術はよく分かりませんけれども、例えばデータのディスプレイ上への表示だとか、あるいは記録のときに、何かの技術的な要素を付け加えるだとか、そういったものはいいですよということを言っているだけなので、適法にと書いてしまうと、少しちょっとここは確かに誤解を招くかなと私も思いました。 ○藤田部会長 MLETR10条1項(b)(iii)の通信保存及び表示の通常の過程において生じる変更を指している文言だけれども、この表現だと違ったように解釈されるという議論で、適切に表現を改めるということでよろしいですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。おっしゃるとおりかと思います。御指摘ありがとうございました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○山口委員 山口でございます。   先ほどの要件の中の一、二、三、四の中で、先ほど来議論になっているところかと思うんですが、二のところ、電磁的船荷証券記録の支配をすることができるものであって、その支配を有する者を特定することができるものというところなんですけれども、ここでエクスクルーシブという、排他的という言葉が、元のMLETRに入っていますのですが、これが落ちているんですが、やはり入れるべきではないかなという感じがしておりまして、要件の中の一つですので、入れた方がいいのかなというのが一つ。   それから、二つ目が、法務省令の内容の中で、法務省令で定めるものは、磁気ディスクその他これに準ずる方法と書いてあるんですけれども、この電磁的というところが非常に世界的には余りなじみがない感じがしますので、例として挙げているものを電磁的ディスクというのが、ちょっと違和感がございまして、むしろ電子的情報処理システムとか、何かもうちょっと汎用性のある表現にした方がよいのかなというのが考えでございます。 ○藤田部会長 御指摘ありがとうございました。   前者は先ほど後藤幹事からも御指摘があって、後者は半分は言葉の問題ですけれども、重要な御指摘です。   何か事務当局からございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   御指摘はおっしゃるとおりかと思っております。ここの辺は、我が国の法制全般に関わる部分かなと思いますので、いろいろな用例を見ながら考えていきたいと思っております。 ○藤田部会長 笹岡幹事、お願いします。 ○笹岡幹事 1号部分ですけれども、先ほど来、シンギュラリティーの話があったのですが、シンギュラリティーの原義は、要するに単数形という意味です。ですので、様々な記録、似たような記録がある中で、この一まとまりの記録だけが電磁的船荷証券記録ですよと特定しているというのがコアとなる部分かと思います。それが文言として表れているかというと、やや心もとないところがあります。様々な記録の中でこの記録を電磁的船荷証券記録とするのだという状態があるということが要件になっているというのを、言葉で表していただけるといいかなと思います。 ○藤田部会長 先ほどの唯一という言葉が抜けているのがという御指摘がありましたが、それに対応する御指摘ですね。 ○笹岡幹事 そうですね。データですので、いろいろなところに似たようなデータがたくさんある中で、この一セットの記録だけが対象となる記録だということを、言葉として表現しなければいけないというところですね。よろしくお願いいたします。 ○藤田部会長 事務当局、よろしいですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   御指摘ありがとうございます。いろいろ書き方として悩ましいところがあって、元々唯一というのは入れていた記憶でございますけれども、必ずしも要らないのではないかといって落としたところでもあり、他方でやはり単一性というところで必要かもしれないなというところでございますので、引き続き検討させていただければと思っております。ありがとうございました。 ○藤田部会長 ほかに御意見ございますでしょうか。第2全般についてでも結構です。 ○池山委員 全然違う点で、算用数字の4の追加記録のところについてよろしゅうございますか。   追加記録については、特段の規定を設けない前提で、ただし、法が予定している追加記録についてのみ、個別の規定を設けることとする場合は、同じように前記2と同様の規定の仕方をすることが考えられるうんぬんとあります。   この補足説明を見ると、ここで想定しているのは、最初に議論があったオン・ボード・ノーテーション、あるいは裏書に相当するものについては、やはり規制を加えて、そこで電子署名を要求するということが一番大きな点であると思っています。   確かに紙の場合は、オン・ボード・ノーテーションについても、それから裏書についても、署名若しくは記名押印が要求されるので、それとパラレルということであれば、電子署名を要求するというのは論理的ではあると思います。   しかしながら、結論的には、これは本当に必要なのであろうかと。別にこれはなくてもいいのではないかなと思っています。その心は、やはりシステムによって裏書や事後のオン・ボード・ノーテーションについても、電子署名を必ず付けるという、そういうシステムになっているという保証はないのではないかという気がするからです。   特にオン・ボード・ノーテーションの方が分かりやすくて、先ほど申し上げたとおり、実際は最初にレシーブドB/Lを出して、後からオン・ボード・ノーテーションをというのではなくて、最初にもうオン・ボード・ノーテーション付きの、ワーディングの上ではレシーブドのB/Lが出ますということになると。紙の場合は、確かにそれで署名欄が二つあるんですよね。本来の船荷証券としての署名欄と、それからオン・ボード・ノーテーションについての署名欄と二つあって、さらに、確かに両方にサインがあるかのような書き方になっていると。   だけれども、電子になってそういう書き方をしたときに、電子署名を2か所にするかどうかというのは、私は分からないのではないかという気がするんです。少なくともそういう規制、それを2か所要求するということまでの必然性もないと。   そう考えてみると、ここは確かに紙の船荷証券に関する規定とパラレルではなくなるんですけれども、電子でやる場合に、電子署名を設けなければいけないとあえて規制しないと、所持人側の利益を反するとかということにもならないのではないかなと思っておりますが、いかがでしょうか。 ○藤田部会長 事務当局、いかがでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございます。   もちろんそういった御意見はあり得るかとは思っておりますけれども、取りあえずの事務当局の提案といたしましては、紙と合わせるというところですので、そうなるのであれば電子署名は必要だという整理、これが一応基本形ということになろうかと思います。   他方で、御指摘いただいたように、一定の場合には電子署名は要らない、電子の場合は要らないという場合がひょっとしたらあるかもしれませんので、そういったところが合理的だということであれば、そこのところの要件については、電子版については変えるということはあり得るかと思いますが、ただ、MLETRとの関係でいうと、できるだけ一緒の方が望ましいというのは他方であるような気がしているのと、電子署名というのも、ある程度秘密鍵で暗号化とかされていれば、満たされるということであれば、それほど実は大変ではないということは、場合によってはあり得るかもしれませんので、そこの辺はそういったところも見極めながら、皆様の御意見を頂ければと思っております。 ○藤田部会長 この辺り、実際のシステムについて調査していただくことは可能でしょうかね。新たに電子署名をするのか、それともシステムの要求する身元確認方法でそのまま一定の追加記載ができるようになっているのが通常かという辺りは、調べてもらうことは可能ですかね。 ○渡辺幹事 そうですね。これまで幾つか見させていただいたところもありますので、そういったところでどう整理できるのかというところは検討してみたいと思います。 ○藤田部会長 典型的な規約型がこの要件を満たさないからということになってしまうと、ちょっと大きな問題になるような気もしますので検討をお願いします。   そのほか。 ○後藤幹事 後藤でございます。   補足説明の17ページ以下の信頼性のところなのですけれども、大上段に信頼性を要件としては要求しないとされていて、その理由としては、これを要求すると、システム上のささいな問題点があったときに、それを奇貨として、これが有効か、無効かという争いが起きるのは望ましくないということが挙げられています。その御懸念はなるほどなと思いつつ、やはりMLETRが信頼性が大事なんですということを言っているときに、日本の商法を見て、英訳してみてもリライアビリティーとどこにも書いていないというのは、やはり見てくれの問題としてどうかということはやはりあろうかと思いますので、この(注)に書いていただいているような、それは当然重視していますよということが伝わるような工夫を、何らかの形でしていただけると非常にいいのではないかなと感じておりますので、是非御検討いただければと思います。よろしくお願いします。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   今の点について事務当局から何かありますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございます。   今、後藤幹事がおっしゃっていただいたことは、正に我々も同じように考えていて、訓示規定という、ちょっと変わった考え方と自分で言うのも何なのですが、それも持ち出してみたところなんですが、これがどうなんでしょうかというところは、是非皆様の御意見を、御感触を伺えると有り難いなとは思っているところでもございます。 ○藤田部会長 民事法における訓示規定というのは確かになかなか珍しいんですね。 ○後藤幹事 後藤です。   先ほど池山先生からも、記録の話とシステムの話と2段階あるという御指摘がありましたが、電磁的船荷証券記録については、そのためのシステムを提供する事業者がやはり存在するということを考えると、そこへの要請という意味でも、やはりあった方がいいのかなと思います。法制上、訓示規定っぽい書き方がというのでは、努めなければならないという文末以外の表現でも良いのかもしれないんですけれども、何らかの形でこうやって織り込んでいけると良いのかなとは思いました。それほど珍しいものでもないような気も、今すぐにぱっといろいろ思い浮かぶわけではないんですが、金融商品取引法とか何かありそうだなという気がしなくもないです。規制絡みであるような。 ○藤田部会長 規制法ではよくあるのですけれども、訓示規定を設けるということですね。 ○後藤幹事 業者を想定していることということで、あり得るのかなとは思いましたということでございます。よろしくお願いします。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○小出幹事 今の後藤幹事の御指摘で、私も確かに我が国の実体法上、信頼できるという要素はなくてもいいのでしょうが、やはりあった方がいいだろうと思います。ただ、そのときにはやはり訓示規定ではなくて、正面から条文の方に、信頼できる、リライアブルという要素を、例えば電磁的船荷証券記録の定義の中に入れた方が望ましいだろうと私は思います。その方がMLETRの元々の条文にも近いですし。信頼できるという表現が我が国の法制上、ちょっと異例であるというのはよく分かるんですけれども、今回のこの立法というのは、多分我が国で初めてこういうグローバルなモデル法に従って行う立法だと思うんです。   我が国でも、例えば手形・小切手法、あれは条約に基づいていますけれども、やはり我が国では使っていない言葉を一杯使っていると思うんです。今後のことも考えると、我が国でもそうやってモデル法の採用みたいな形でグローバルな法統一をやっていくという中では、それに準拠しているということをあえて示すために、こういった表現を入れていくということはあり得る考え方かなと個人的には思いました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   事務当局からよろしいですか。 ○渡辺幹事 ありがとうございます。渡辺でございます。御指摘ありがとうございます。   信頼性の要件につきましては、何らかの形でやはり入れた方がいいのではないかという御感触かなと理解いたしました。ただ、他方でやはり、これが効力要件ということになってしまうというのも、余りよくないのかなというところもあろうかと思いますので、そういったところも踏まえて、どういう形で信頼性の要件を入れていくことができるかというところです。改めて我々の方でも考えていきたいなと思いますし、他方で皆様の中で、何か今、妙案等があれば教えていただけると有り難いなと思います。 ○藤田部会長 小出幹事お願いします。 ○小出幹事 今の点で申し上げますと、MLETRの信頼性要件というのは、キャッチオール条項というか、事実としてその機能を果たしていれば信頼性があるものとみなすという条項が入っていたと思うんですけれども、要するに信頼性というものについては、結果的にきちんと機能を果たしているかどうかというところがポイントなのだと思います。したがって、信頼性には一定の水準みたいなものがあって、それを満たさなかったらその法的効果は認められないのだというところまでは、確かに書き込むべきではないように思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○新谷幹事 私からも、もしこの信頼性の要件というものを入れるんだとすると、MLETRの書きぶりは、例えばこのLaw Commissionと比較した場合でも、ちょっと強めに規定しているところがあるかと思われるんです。例えばこのデータの完全性の保障とか、こういったものというのは、例えば将来においてブロックチェーンを超えるような技術が出てきて、簡単にブロックチェーンの技術が破られるとかということが、もし仮に出てくるとすると、ここが正に効力要件としては足りないというような問題が出かねないとも思いますので、先ほど渡辺幹事がおっしゃっておられたように、書きぶりとしては、余りこれが縛りにはならないような感じにしていただくのがいいのかなと思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   そのほか、第2について、御意見ございますでしょうか。 ○山口委員 山口でございます。   電子署名の要件についてですけれども、これは、電子署名及び認証業務に関する法律のところから引いてこられているんですけれども、これはもう正に確認ですけれども、この認証業務をやっている、認証されているところの署名でないといけないというわけではないということですよね。単純にこの要件さえあればよい。すなわちシステム上に出てくる電子署名であったり、あるいは各個別にいろいろなところで、無料でいろいろなところで使えるような電子署名がありますけれども、そういうものでもよいというぐらいのイメージですか。 ○藤田部会長 事務当局からお願いします。 ○渡辺幹事 基本的にはそのような理解でおります。 ○山口委員 もう今、船荷証券の署名というのが、非常に、裏書もそうですけれども、あるいは発行のときの署名も、非常にラフに行われているのが現実でございますので、余りここを厳しくしておくと困るなというのが正直なところでございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○池山委員 池山でございます。   先ほど言い漏らしてしまいましたが、山口委員が電子署名についておっしゃってくださいました。   電子署名の要否というのは、先ほどは追加で記録について議論がありましたけれども、前提として発行時に電子署名が要るということが前提になっていると思います。本当は、果たしてそれは要るんでしょうかということも、実は問題になるのかなと思っております。これも紙の船荷証券であれば、日本法であれば当然要るのですが、私の理解では、少なくとも今、日本が入っているヘーグ・ウイズビー・ルールとかでは、要件にはなっていないと。もちろんそうは言いながら、ハンブルグ・ルールとかロッテルダム・ルールズにはしかるべき規定はありますけれども、別に国際条約等で、今、実際に多くの国が批准している条約の中で、船荷証券は署名が要るということが国際的な共通理解だということには必ずしもなっていないと。紙の場合に要るというのは、飽くまで日本法の要求だと。   そうだとすると、電子の場合に、では電子署名というのは果たしてきちんと要求を満たすんだろうかという疑義があるんだとすると、実は本当はここも外していいのかもしれないなというルールだけ、一応、絶対そう在るべきだとまでの強い意志ではありませんが、問題提起としては申し上げておいた方がいいかなと思っております。   その上で、いや、そうは言ったって、やはり今まで署名を要求してきたんだから、紙では。電子でも要るという場合に、この電子署名の要件について、これは質問ですけれども、電子署名法の書きぶりとMLETRの書きぶりというのは、微妙に違っているような気がしているのですが、MLETR側は9条に書いてあるんですかね。そこの整合性というのは、正直私の方では分からないかなと思っています。   国際的には、多分先ほど部会長がおっしゃったような調査をするとした場合に、恐らく規約を、システムを運営する側からすると、MLETRにのっとった署名を確保せよと言われるのであれば、分かりましたと言いやすいんだろうけれども、日本の法令の電子署名の要件を満たすような署名を作れと言われると、中身以前の問題として、若干拒絶反応があるかもしれないなということを危惧したりしております。   これもまた、実は体系的な問題があって、先ほどの電磁的記録、あるいは電磁的方式と同じように、やはり日本法の用語法というのがあるわけなので、ここでだけ電子署名の要件を変えると、あるいは書きぶりを変えるというのは、是か非かという問題はあるのですけれども、実務に要求する場合は、MLETRにのっとったものにしてくれという方が、実は受け入れられやすいのかなと想像しております。それが一つです。   それと、すみません、もう一個、実は言い漏らしたことがございます。それは、先ほどの、この中でいえば算用数字の2に関係する電子的方法の定義に関連するところですけれども、研究会の議論を参照すると、研究会のある段階では、この電磁的方法を発行や支配の移転では要求するので、電子データをUSBなどの記録媒体に保存して、それを物理的に交付すると、そういう形は排除されることになるという指摘がある反面、最終的な研究会の報告書の中では、この電磁的方法の定義をこのまま持ってくると、実はそういうUSBのような有体物たる記録媒体を物理的に交付する方法や、ファクシミリによる方法も含まれることになると。その是非や具体的な規律は何かは、引き続き検討を要するものと考えられるという指摘があるんです。   それを踏まえて、実際にこれを見ると、今回の試案を見ると、法務省令による、どこまで含まれるかという部分はなくなっています。会社法とか商法の施行規則にあるような個別の例示はなくなっているんですけれども、一方で、大きな法律として、電子情報処理組織を使うものという限定は残っているわけですよね。その上で、ここでは限定はないけれども、商法施行規則や会社法施行規則の該当条文では、場合によってはこの法の定義の中に、ファックスやそういうUSBなど渡すものも、その電子情報処理組織一類型としてもう出てきてしまっているわけですから、そうすると、この条文のままでは、実はファックスやUSBなんかを渡しても、やはり含まれることになってしまうと。それがいいのかどうかというのは、一応要検討なんだろうと思います。   個人的には、私は実はそれはそれでいいのかもしれない。だって、そのようなもの誰もやらないよというだけのことであって、法文上、日本法の法体系全部を見たら、この電子情報処理組織にはそれも入ってしまうと言ったって、別にそれはそれだけのことであって、本当にそういうものが出てきて、本当に関係者がそれを使っていいというのだったら、いいのかもしれないです。だけれども、これは私の個人的な感覚であって、やはり明示的に、やはりそういうものは排除する。そこが分かるような立法にすべきだという意見もあるかもしれないなと思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   事務当局からは何かありますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   今の池山委員の御指摘の最後の部分につきましては、正に部会資料でいきますと、20ページとか、あるいは21ページ辺りで書かせていただいたところでありまして、商法施行規則のような縛りを設けるか設けないかというようなところに係ってくるところかなと思います。   現時点での事務当局の整理としては、こういった縛りについては、特に置かない方がむしろいいのではないかというような形で考えておりますけれども、他方で、少なくてもファックスみたいなものは制限した方がいいのではないかというような考え方もあり得るかとは思います。   ただ、ファックスなどは、仮にここでは縛らなくても、恐らく支配の移転とか、そういったところで要件を満たさないということに、恐らくなるのかなという感じはしておりますので、全体としてみればこういった形でもいいのかななどということは、今のところ考えてはおりますけれども、そういったところも含めて皆様の御意見を頂ければと思っております。以上です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○吉田委員 その人が本当に本人なのか、あとはその当該船荷証券なり何なりの書面に署名をする意思があるのかと、本人確認とか意思確認という機能があると思いますが、山口委員に質問がございまして、実務では、割とラフな方法で署名が行われているということですが、この本人確認あるいは意思確認というのは、現実の紙の世界の実務では、どういうレベルでされているものなのでしょうか。 ○山口委員 山口です。   非常に難しい質問でして、その意思確認が問題になったようなことというのは、正に偽造船荷証券のとき以外余りなくて、正に偽造だと、これが私どもの会社が発行したものでないというのは、その発行会社が言わない限り分からないということになっているのかなと。   署名が果たして全てあるかというと、スタンプみたいな署名みたいなものも結構ございまして、実際に自筆で署名していないものもかなりございます。そうなってくると、この条文上の署名要件にはありますけれども、実際に署名している人が誰か特定できるかというと、特定できない署名も結構存在しているのではないかと認識しておりまして、特に裏書欄の署名というのは、誰が署名したのか後から読み取れないということも結構ある。だから、形式上存在しているだけにすぎないという部分も結構あるのではないかなと。むしろスタンプが当該会社のオリジナルのスタンプかどうか、それがどこかでアイデンティファイされているというのが現状ではないかなと思いますが、池山委員はいかがでしょうか。 ○池山委員 大体似たような感覚を持っております。   実際、これは紙の例ですけれども、結局先ほどおっしゃったスタンプの中で、正にいわゆる英文の署名的なものをスタンプ化して、それを署名欄に押すと、運送人が。そういうことはあるんだと思います。そうすると、見た目はペンで書いた署名のように見えるんですけれども、実はそれはスタンプを押していて、それは実は記名だろうという意見もありうるかもしれない。そこで会社さんによっては、署名又は記名押印だからといって、英文の署名のようなスタンプの横に、さらに、いわゆる印鑑的なものも作って、その二つを両方一体となってゴム印をぽんと押すと。それなら記名押印だよねと。そういう整理をしていると。   その円い印鑑的な部分がなければ、ラフにとおっしゃっている部分は、実態としては署名ではなくて記名で終わっている例が、それを署名のような形態だから署名だと考えていることが結構多いのではないかなという、そういう御指摘だと思います。それがいいかどうかという議論はありますけれども、少なくともそれによって真正性が問題になったりした例は、余りというか、少なくとも私は聞いたことがないですということだと思います。 ○山口委員 山口です。正にそのとおりですが、本当にたまにですけれども、偽造船荷証券が出てきまして、そのときに初めて船会社あるいは発行会社が、これは偽造ですといって初めて争いになって、これはうちの印鑑ではありませんとか、うちの署名ではないとかいうことが争いになるということはあり得るのかもしれないとは思いますけれども、多くの実務ではそれがほとんどないというか、余り経験したことがないというのが現状かなと思います。 ○池山委員 補足すると、偽造船荷証券の事案というのは、私も経験はしたことがあります。ただ、それは、今の形が本当の、本来的に見ての署名の場合であれ、そういう署名に似せた形の記名押印であるからと、そこによって別に優位な差が生じるわけではなくて、どちらの形態をしたところで、実際に出てきたものが、あれ、明らかにこれは真正ではないなというものが出てくるところは出てくるということだと思います。 ○藤田部会長 以上のような実務のようですが、御質問はどういう御趣旨ですか。署名を見たところで、権限だとかどんな意図であったかとか、能力があったとか、そのようなことは一切分からないわけで、署名を要求したからといって、そういったところが争いにならないとは言えない。そもそも、そのようなことを解決するための署名ではないのですけれども、御質問はどういう点にあるのでしょうか。 ○吉田委員 厳しい要件になったときに、電子になって何か面倒なことになったなと感じる、元のレベルを知らないので、その基準点を知りたかったというのが質問の意図です。 ○藤田部会長 小出幹事、お願いします。 ○小出幹事 電子署名というか、そもそも署名と押印の我が国における法的な効果というのは、民訴法の228条の4項にある、署名押印があれば真正に成立したものと推定するというもので、それによって本人の意思というものが訴訟法上推定されると、そういう機能だと思います。   電子署名法の方も同じことを規定しているので、民訴法228条の4項と同じような効果というものを、本人のみが管理できる電子署名については与えているということですので、そういう電子署名がなされていれば、それによって本人の意思というものまでも、これは推定ですから、もし訴訟になれば主張できるんだと思うんですよね。   今回電子署名とお書きになるということは、結局我が国の法制に従えば、民訴法228条における、私文書における署名押印というものと同じ機能を与えるような電子署名ということだと理解されますので、MLETRが考えているような、作成者とその意思を表すという機能は十分にそれで果たせると思いますので、私は特段これによって、特段これまでの実務が大きく変わるようなことはないのではないかとは思っています。 ○藤田部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。   池山委員、お願いします。 ○池山委員 そうだとすると、仮にある電子B/Lのシステムがあって、そこに、確かにこれが原本に相当するものであるということの何らかの刻印的なものはされると思うんですよね。だけれども、それがこの法による電子署名の要件を満たさないものであったとしても、それは、今おっしゃったような推定が働かないだけで、そもそもの電子B/L、電磁的船荷証券記録が無効になるというわけではないと。そういう解釈論ができるのであれば、それほど電子署名の要件について神経質にならなくてもよくなるのかなと思って聞いたんですが。 ○藤田部会長 事務当局、どうでしょうか。単に署名があると見てもらえない場合は、署名のない紙の船荷証券と同じ扱いなのかとも思うんですけれども、そうなるのでしょうか。 ○渡辺幹事 そうですね、御指摘いただいたものは、紙の船荷証券と同じ扱い、正に部会長が言われたとおり、署名がない船荷証券、記名押印がない船荷証券、紙の船荷証券ですね。これがどのように扱われるのかということと同じ問題になるかとは思いますが、署名や記名押印がない船荷証券については、要件を欠くものとして、船荷証券ではないという考え方もあり得るかなという感触は持っておりますが、そこの辺は実務でどう理解されているかにもよるところかもしれません。 ○池山委員 そこは正に解釈論に関わるところですけれども、紙の例でいうと、今、私が先ほど例に出したようなスタンプ、署名に偽せられたスタンプが押してあると。だから、一種記名だけがあるような船荷証券でも、実務は、それはやはり船荷証券でないとは思っていないと思うんですよね。   解釈論の導き方はいろいろあるかとは思いますけれども、正にラフな署名と図らずもおっしゃいましたけれども、山口委員が。ラフな署名ではあるけれども、それは、署名的なものはあるのであって、船荷証券ではあるんだと。およそ船荷証券として無効だということは所持人側も考えないし、運送人側も考えないと。やはり単なるコピーとは区別されて考えていると思うんです。   そうだとすると、これは解釈論としての私の意見なんでしょうけれども、電子署名の要件が一定でも決まっていて、実際に電子署名的なものをシステム上したけれども、これは万が一法の定める電子署名の要件を満たしていなかったとしても、それは直ちに無効を来すものでは、電子B/Lとしての効力がなくなるというものではないという解釈ができるのではないかなと、意見としては思います。 ○藤田部会長 分かりました。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   今、御指摘いただいたところを私なりに考えてみますと、紙の船荷証券において考えられている解釈というのが、電子化された場合にも恐らく引き継がれるという形になるんだろうかなと思っておりまして、例えば紙の船荷証券において、ラフな署名というものがあって、これが厳密な意味での法の求める署名でなくても、慣習上、これが有効な船荷証券として解釈されているんだというものが、もし認められているということであるとするならば、電子化した場合においても同じように考えることができる。こういった解釈論は十分あり得るのかなと思っております。 ○藤田部会長 おそらく池山委員の御質問の趣旨は、紙の場合だと署名が全く定義されていないものですから、署名の解釈を思い切り緩くすることで、無効な船荷証券になってしまうという事態を極力防止することができるのに対して、電子署名については、なまじ法律に定義があって、それをそのまま取り込む形で電子船荷証券の定義を書いてしまうと、紙の場合の署名のような融通無碍な解釈はできないので、電子署名はないけれども電子船荷証券は有効となる余地があるという、紙とは違った法律構成が必要となるのではないかという御趣旨かと思うのですけれども、この点については、さらに今後、事務当局も含めて検討していただければと思います。 ○池山委員 御整理ありがとうございます。 ○藤田部会長 第2について、御意見ございますでしょうか。   笹岡幹事、お願いします。 ○笹岡幹事 認証機関のところです。   認証制度は、御指摘のとおり、事業者にとってハードルになることもある一方で、一定の認証を受けているということが、ビジネス上有利になる可能性もあるので、法的な問題というよりは、戦略的に日本における認証制度というものを作っていくという方向性はありうるのかなと思います。   もう一つ、外国で認証を受けているということが、日本法上は全く効果がないということの意味をどのように捉えるかという点です。先ほどの信頼性の要件を導入するとすれば、認証を経ているということが信頼性の判断に影響してくるのだと思います。信頼性の要件を仮に導入しなかったとしても、外国で認証を受けているということが訴訟において有利になるなど、ある程度の効果があるようにしておかないと、なかなか日本法を使ってもらうというのは難しいのではないかなと思います。法的な問題というよりは戦略的に考えていただければと思います。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そのほか、第2についてどの点でも御意見、御質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   もうかなり議論しましたので、大幅に遅れてはいるのですけれども、10分ぐらい休憩したいと思います。16時40分ぐらいから再開したいと思います。どうかよろしくお願いします。           (休     憩) ○藤田部会長 それでは時間になりましたので、再開したいと思います。   「第3 電磁的船荷証券記録と船荷証券の転換」からですので、第3について事務当局から御説明お願いいたします。 ○中村関係官 それでは、法務省の中村の方から、今回の部会資料の第3について説明をさせていただきます。   ページ数で言いますと、23ページ以下となります。   第3は、MLETR等に倣って紙の船荷証券から電磁的船荷証券記録への転換、又はその反対に電磁的船荷証券記録から紙の船荷証券への転換に係る規律をそれぞれ設けることについての御審議をお願いするものとなります。   紙から電子、電子から紙へと転換をそれぞれ認めることを提案させていただくとともに、それぞれの転換時における要件でしたり、転換後の媒体に係る記載・記録事項についての規律を提案させていただいております。   ここで最も大きな論点となりますのは、電磁的船荷証券記録が発行されている場面において、その支配を有する者に運送人に対する転換請求権、すなわち電磁的船荷証券記録に換えて紙の船荷証券の発行を請求する権利まで認めるかどうか、それともそのような権利までは認めず、飽くまで支配を有する者と運送人の合意があった場合に、そのような転換を認めるという規律にとどめるのかどうか、ここは最も大きな論点かというふうに考えております。   部会資料では両論併記とさせていただいておりまして、支配を有する者に、そのような転換請求権を認める考え方をY案、他方、そのような転換請求権までは認めない考え方をX案として示しております。   まずY案をサポートする考え方といたしましては、国際海上運送の実務において、最終的に税関等で紙の船荷証券が求められる可能性があるということは否定できず、そのような場合に電磁的船荷証券記録の支配を有する者に紙の船荷証券への転換請求権が認められないということとなれば、かえってそのような状況を危惧して、電磁的船荷証券記録の利用が妨げられる面もあるのではないかといったものがございます。   他方で、X案を支持する考え方といたしましては、デジタルファーストを志向する考え方のほか、荷送人の意向によって電磁的船荷証券記録が一度発行されたにもかかわらず、荷送人側の都合によって一方的に紙の船荷証券への転換が認められるというのは、運送人にとって酷であるような場面もあるのではないかといった考え方でしたり、当初の想定とは異なって、紙の船荷証券がどうしても必要となったような場合においては、通常、運送人が紙の船荷証券への転換を不合理に拒絶するという可能性は低いように思われますし、仮に本当に紙が必要なやむを得ない事情があるにもかかわらず、運送人が合理的な理由なく紙の船荷証券の発行を拒絶するような場合には、商慣習や信義則等により、運送人に債務不履行責任や不法行為責任が認められるところもあり得るところであり、そうであれば、法律上、転換請求権まで認める必要性は乏しいのではないかといった考え方があるところかと存じます。   この辺りにつきましては、様々な考え方があり得るかと思っておりますので、是非きたんのない御意見、御審議をお願いできればと考えております。   第3のパートの事務当局からの説明は以上となります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、ただいま御説明がありました箇所につきまして、御意見等を頂ければと思います。特に選択肢として案が二つ掲げられておりますので、できればどちらがよいかといったこともお伺いできればと思います。 ○雨宮委員 電子の船荷証券から紙の船荷証券に対する転換請求権の論点ですが、個人的には請求権を認める必要ない、X案に賛成したいと思っております。理由としては、部会資料17ページに挙げていただき、また、御説明があったとおりと考えておりますが、特に、先ほど電子船積船荷証券の議論の際に申し上げましたけれども、まず基本的には、電子についての発行義務は認めないというベースがあり、実務において、御指摘いただいていますように、どうしても紙の船荷証券が必要であれば、運送人側としてそれに対応するのが通常であろうと考えられることから、法律上で義務まで認める必要はないと考えております。理由としては、ここに挙げていただいたものがそのとおりと考えております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。後藤幹事お願いします。 ○後藤幹事 ありがとうございます。後藤でございます。   このX案とY案のところなのですけれども、今の雨宮先生の考え方は、運送人側が任意で応じてくれるだろうから、請求権、逆に言うと運送人側の義務までは認めなくてもよいのではないかという御趣旨というふうに理解しました。言い換えると、紙を出すということはあり得て、別によいということかと思います。この点、例えば27ページに書かれているX案を支持するものとして、①というのでデジタルファーストがどうこうという話が書いてあるのですが、これは以前、別のところで聞いたときには、紙を出すことはもう認めるべきではないというようなニュアンスにも私は受け取ったんですが、そういうことではなくて、運送人側が嫌だという場合にまでは応じなくてよいが、応じられるのであれば応じてもよいという話であれば、それはそれで一つ合理的だなと思います。どうしても紙が必要な人はいるでしょうから、それに対応できる道は残すということは確保できるのかと思います。   この後は書き方の問題であって、義務にしなくても応じるだろうから、別に義務にしなくてもいいじゃないかということですが、どうせ応じるんだったら義務だと言ってもいいじゃないかということもあり得ようかと思いますので、そこはもう何か、好みの問題とまでは申し上げませんけれども、何とも言えないなという気はします。  また、これは多分同じ方がおっしゃられた理由ではないとは思うんですが、②のところで、運送人にとって酷である場面もあるということを言いながら、いや、運送人は応じるだろうから問題ないですよというのは、何か逆のことを言っているような気もして、ちょっとどれをメインに考えているのかということは、もしX案を採るのであれば、はっきりさせた方がいいのかなという気はしております。   その上でなんですけれども、ほかのところは各国に委ねますよということにしているので、そこはいいのかもしれないんですけれども、もしこういうデジタル化というか、この電子船荷証券を進めていきたいという場合に、少しでも受け入れやすくして、いろんな主体が受け入れやすくしようとするのであるとすると、もし必要があったらいつでも紙に換えられますよという保証が付いていた方が、いざとなったら紙をもらえるからいいやということで受け入れやすくなるという側面が、もし実務的にあり得るのだとしたら、それは請求権ですというふうにはっきりとさせておいたほうが、コミットメントとしては意味があるのかなという気がしております。そういう意味では、個人的にはまだY案の方がいいかなとは思っているんですけれども、ただ、そこにそれほど強い信念はございません。   28ページで、強制執行の在り方にも関係すると書かれている点について、なるほどと思って、それで思ったところで止まってしまっているんですけれども、ひょっとしたらそっちの方が決め手になったりするのかもしれないというところもあろうかと思いますので、まだちょっと結論を出せずにいるのですが、取りあえず現時点での意見を申し上げさせていただきました。 ○藤田部会長 そのほか、御意見ございますでしょうか。 ○笹岡幹事 この件で少し気になっているのは、転換に際して掛かる費用はどちらが負担すべきなのかというところを明確にすべきではないかという点です。先ほど後藤幹事がおっしゃったように、転換まで運送人の義務だということになると、これは弁済に係る費用だということになり、運送人がその費用を負担しなければいけないという解釈につながりそうな気がします。   一方で、荷主側の要求に応じてやってあげているのだということになると、これは指図に従っているだけだということで、追加費用として荷主側に転嫁できるという解釈につながりそうな気がします。つまり、転換に関する義務の負担が、転換に掛かる費用をどちらに転嫁すべきなのかという点にも影響してくるかと。電子的な船荷証券を導入する背景には、紙の船荷証券にものすごくコストが掛かるからだということがありましたので、この問題についても検討していただきたいと思います。 ○藤田部会長 事務当局としては、この点はどう考えておられるのでしょう。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   今、笹岡幹事から御指摘いただいた費用の関係につきましては、率直なところ、特にそこまで検討はしていなかったというのが正直なところですが、整理としては、おっしゃっていただいたとおりになるのかなというのが、直感としては思っておりまして、やはり権利という形になると、運送人側の負担ということになりそうな感じがする反面、そうではないということであれば、反対の方向になり得るというのが一応の方向性なのかなというのは、聞いていてなるほどなと思ったところでございます。 ○山口委員 山口でございます。   私がこれを運送人の義務とすべきでなく、やはり運送人が同意したときに初めて紙の船荷証券の転換権を認めるべきだと、これは研究会のときに申し上げたんですが、それはいわゆる費用の問題が一番大きな問題でして、先ほど雨宮委員がおっしゃったように、まず、応じることは応じるだろうと思うんですが、費用的にこれは結構手間なことでして、電子的な船荷証券をまずサレンダーしてもらって、その上で、紙をどこで発行するかというと、やはりどこかの営業所で発行をして、それを荷受人がいるところ、世界中どこか分かりませんけれども、そこへ送る。それで、確実に到達するかどうかはちょっと分からないわけなんですけれども、国によっては非常に紙が到達するのが難しいところもあるかもしれない。そういうリスクを全て運送人が負うというのは、一度電子的船荷証券を出した以上、そこのリスクまで負うのはいかがなものかと思っている次第なんです。もし義務としてされるのであれば、費用負担はそれは荷受人が要求しているものであるものですから、費用負担は荷受人が負担するという規定が一方において必要ではないかなというふうに考えているわけでございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○後藤幹事 ありがとうございます。後藤でございます。   先ほど、私が変に義務と権利とか言い換えたので混乱を招いたかもしれないんですが、当然これは一度出したものをもう一回換えてくださいということを荷受人側が要求してくるんだとすると、当然コストは荷受人が全部持つという前提で、先ほど申し上げておりました。そのときに、紙を出すことのコストや送付することのコストに加えて、それが着かなかったときのいろいろとした派生損害とかまで言い出すと、ちょっとよく分かりませんけれども、少なくとも再発行に掛かる費用とかは、それは当然荷受人側が持つので、それは権利と書こうと義務と書こうが、費用は荷受人側が負いますということは書けるはずですので、そこで明確にしておけば済む話なのかなという気もしております。 ○山口委員 補足いたしますと、正に先ほど後藤幹事がおっしゃったように、費用の面は運送人の処分権の問題とよく似ていて、中止だとか、あるいは送り戻し等々を要求した場合に、それについての費用というのは、その要求した側、荷主側の負担になりますから、それと同じような規定になるのかもしれないなと思います。ただ、もう一つは、船荷証券の場合、その送達する、どこかに送るという、そのときの危険負担といいますか、届かないことの危険の負担というのがもう一つ出てくるので、なかなか義務化に対しては抵抗感が強いなと思っているところであります。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   事務当局からは何かございますか。 ○渡辺幹事 特にございません。 ○藤田部会長 義務化した場合には、費用についての何らかの規定、たとえば必要な費用を請求することができるといった規定になるのかもしれませんけれども、これを併せて考慮してほしいということですね。   逆に、費用について手当てすれば、義務化しても大丈夫だという感覚でしょうか。 ○山口委員 大きなところは大丈夫だと思います。何かそこに船荷証券が届くかどうかのリスクというのが非常に心もとないところがあるんですけれども、そこに債務不履行をとられるのであれば、やはり義務化はどうかなという気はしますんですけれども。 ○藤田部会長 分かりました。   そのほかどの点でも、第3について。 ○池山委員 池山でございます。   この点については、私の推薦の母体である日本船主協会の中でも複数議論がありまして、その意味で、今私としてどちらかということはちょっと申し上げられないなとは思っているんです。ただ、義務化に反対する意見の一つの中で、やはり規制は最小限にしてほしいと、これが必須の規制、電子B/L電子を導入し、更にそれを促進するために必須の規制なのであれば入れてほしい、入れざるを得ないかもしれないけれども、そうでないならば必ずしも要らないのではないかと、そういう意見があって、私は若干それに影響を受けている面はあります。   これは議事録に出ているので、やはり正直に白状すると、研究会段階で、私は荷受人の立場を考えると、義務化されてもしようがないのではないかという意見を実は申し上げたことがございます、それは消すことはできないので。それはある意味、論理的なのではないかなとも思うんですが、個人的には。他方で、その反論して、今のようなことを言われて、多分その中に、最初の雨宮委員の言われた、義務化はしなくても、多くの場合は応じるんだからそれでいいのではないのと、それ以上に何で積極的に義務化を求める必要があるんだと言われると、それはそうかなと思って非常に個人としても悩ましいし、船主協会としての意見集約もなかなかできないなと思っているところでございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   大体応じるにしても、常に応じるとされると、応じたくないような状況もあり得ないわけではないので困るということでしょうか。 ○山口委員 そういうことがあるのではないかというおそれがあり得ますね。 ○池山委員 池山でございます。   その意味では、補足すると、恐らく実際に使う電子B/Lのシステムが、転換にスムーズに応じられるようなシステムになっているか、なっていないかでも、多分違うんだと思います。あるシステムだと、リクエストがあれば、それに応じて運送人側がぽんとスイッチを押せば、びいっともう出てくると、あとはそれを渡すだけだと。それで確かに渡す、到達地の負担があるかもしれないんだけれども、そこについては規約上、取りに来てくださいと、そういうふうに言えばいいじゃないかと、そういうシステムを前提とすればいいのかもしれないですけれども、システムによっては、転換があれば転換をしますと書いてあるんだけれども、やり方は運送人任せと、そういう契約になっているシステムがあって、そうすると、実際これはどうするんだ、大変じゃないかと、なかなかそれは応じたくないねというシステムもあり得るのかなと思っております。 ○後藤幹事 ありがとうございます。後藤でございます。   いろいろ御意見を伺って大変参考になりました。もしこれが荷受人側の結局便宜の話に尽きるのだとすると、複数のプラットフォームができていくであろうことを考えると、各プラットフォームの選択に委ねるということもあり得ると思うんですよね。例えば、うちのプラットフォームはコストを下げる代わりに、もう紙には一切換えませんよと、それで大丈夫な人だけが使ってくださいというのは、それはそれで問題ないようにも思えます。ですので、必ず紙対応をするシステムを組まなければいけないとまでは、私は申し上げるつもりはないんですけれども、ただ、やはり紙が必要な場所に送る可能性もある荷主とかにとっては、そこの選択ができるような仕組みを用意しておいた方がいいのかなという気はします。それが具体的にどうなのかというのはなかなか難しいかもしれないんですけれども、そういう意味では、紙に転換する請求権が任意規定としてはあるけれども、運送人、若しくはその運送人が入っているプラットフォームの規定、規約か何かによって外れるという形も一つ考えてもいいのかなという気がいたしました。ありがとうございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   お願いします。 ○池山委員 そうであるとすると、逆にやはりデフォルトルールがどっちにあるかという議論になって、既存のシステムの中には、実際、スイッチトゥペーパーと称して権利を認めるシステムになっているのが、むしろ多いんだと思います。そこを前提として、じゃ、その権利を認めるのをデフォルトルールにするのか、それともやはり必要最小限度の規制という意味では義務化しなくて、ただ、システムによってはそういうシステムがあっても当然よくて、それはむしろシステム間の利便性の競争ということで委ねてもいいのではないかなという考え方もあり得ると。そうだとすると、デフォルトルールにするとすると、やはり元に戻って、じゃ、どっちをデフォルトルールにするのという話にやはりなってしまうかなと思って、今拝聴しました。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。そのほか何か御意見、御質問ございますか。 ○池山委員 違う点についてよろしいですか。何回もすみません、池山でございます。   同じこの点について、違う点なんですけれども、X案、Y案うんぬんとは別に、転換されたときには、紙から電子であれ、電子から紙であれ、元々のものに換えて発行されたものを記録されなければならないという条項がございます。これは確かに既存の、確かMLETR等にも書いてあるので、それに従うならやむを得ないように一見思えますけれども、実はやはり反対論がございまして、要は現に使われているシステムの中に、そういうのは書いていないものもあると。実際、突き詰めて言うと、何のためにこれが必要なのかがよく分からないという部分もあるんです。   今回の規定案では、あえて後で論じるということで落とされましたけれども、実際、換えて発行すると、一見そこで裏書の連続的なものが欠けてしまうと、そこに対する対処は場合によっては必要だと。その対処の一部として、実はこれは途中で換わったものですよというのを書くというのは、場合によっては有益かもしれないですけれども、これもまた絶対それを必須とする必要がどこまであるんだろうかという気もいたします。最初の段階で、白地式裏書的なものがされていたとすれば、あるいは最初から持参人払い式、所持人式の証券だったとすれば、裏書の連続的なものは元々起きないのだから、単純に転換したものが出てきたって、別にそれはそれで構わないじゃないかと。そこで、あえてこの記載が常に絶対必要かと言われると疑問があると。そうすると、先ほどの必要最小限度の規制ということがより一層力を持っていて、実はなくてもいいのかなというのは私も影響を受けつつあります。   くどくど言ってすみませんが、現にもう実務に出ているものでないものが現にあると言われると、それでそれを変えろと言われると、かなり抵抗があるのかなと思います。これは今のところは問題提起ということなんですけれども。 ○藤田部会長 事務当局から御返答をお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   この換えて発行したというものがなぜ必要なのかという点については、正に今池山委員が整理されたとおりでございまして、基本はMLETRに書いてあるということ、それと並びにするのであれば要るのではないか。実質的な理由をもし探るとするのであれば、裏書の連続みたいなものが一見遮断はされているんだけれども、その後のものだけで見ていきますよという規定を恐らく入れることになると思いますので、そういった規定の適用がされていく、こういう類型のものですよということが分かるようにすると、そういうところに求められるのかなというふうには思いますので、そういったものであっても、やはり要らないということであれば、それを外すという選択肢はあり得るかと思いますが、ただその場合、MLETRとの並びでどうなのかということも、また考えなければいけないと思います。   もう一つ、池山委員の方から御指摘いただいたような、全部白地で行われているような場合などを考えますと、例えば換えて発行というところが記載が抜けたことによって、転換ではありませんという見方にひょっとしたらなるかもしれませんが、ただその場合は、新たな電磁的船荷証券記録の発行と見る余地もあるような気が、ちょっと今の話を聞いていて思いまして、その場合は全部白地で来ているので、裏書の連続みたいなものを別に残しておく、そもそも残っているものではなかったので、新たな発行として見れば、それで足りるという見方がひょっとしたらあるかもしれないなというのをちょっと今思いつきではありますけれども、思ったところでございます。 ○池山委員 ありがとうございます。 ○藤田部会長 そのほか、どの点でも。 ○洲崎委員 この転換のルールについては、船荷証券の所持人が、適法に権利を有する者である場合に限っているということなのですが、仮に権利者ではなかったのに転換を運送人の方が認めてしまった場合で、かつその権利者であるという判断に悪意・重過失があった場合には、運送人が転換前の権利者に対して損害賠償責任を負うというような、そういう効果を持つという理解でよいのでしょうか、そうではないということなのでしょうか。 ○藤田部会長 事務当局にお答えいただきたいと思いますが、つまり、この要件を満たせないときは、新たに発行された紙だとか、電子的記録が無効になるのか、それとも、そうじゃなくて損害賠償で片を付けるという話なのかと、そういう御質問ですかね。 ○渡辺幹事 御質問ありがとうございます。   非常に難しい御指摘かと思っておりまして、まず、この「権利を適法に有する者に限る。」というふうに書いてある趣旨としては、後で裏書の連続等を見ていく場合には、その後のものだけでいいですよという規定を入れることが想定されますので、そういったことを想定した場合には、この段階できちんと裏書の連続とかがしっかりある適法な権利者であるということが前提になるだろうということで、こういった規定を設けているところでございます。   ただ他方で、判断を間違ってしまった場合とか、どうなるんだろうかということを考えますと、それで無効にしてしまっていいんだろうか、あるいは損害賠償とか認めてしまっていいんだろうかということを考えますと、果たしてこういう形でいいのだろうかというところは改めて考えなければいけないなというふうには思ったところでありまして、支配を有する者だけにその転換をするということもあり得ないわけではありませんので、そういったところも含めて改めて考えていかなければいけないなと思った次第でございます。 ○洲崎委員 研究会の時点でも、多分この辺りの議論は余りしていなくて、今、部会資料を読んでみて、これはどういうことだったのかなと思って気になったのですが、もし悪意・重過失があって、権利者でない者からの請求だったのに転換を認めてしまった。その結果、転換後の証券が流通して善意取得等が生じて、転換前の権利者が権利を失ったという場合に、その運送人が責任を仮に負わされるということになった場合に、X案とY案でひょっとしたら重過失判断が違ってくるかもしれない。つまり所持人側に転換請求権がある、したがって運送人には転換義務があるという場合と、そうじゃなく任意に応じるという場合で、ひょっとしたら、これは手形法でも議論があると思うのですが、重過失の判断基準が違ってくる可能性があるのかなという気がしたというところです。ただ、これは為にするような議論のような気もしますので、ちょっと気になったということだけを申し上げておきたいと思います。 ○藤田部会長 雨宮委員が手を上げられていますが、今の点についてですか。よろしくお願いします。 ○雨宮委員 今、渡辺幹事から、この権利を適法に有する者というのは、裏書の連続等についての問題を対処するためと御説明いただきましたが、そうであれば、適法ではなくて、適法が推定される者に限るでもいいのではないかと思います。それは、適法が推定されるかは外形から分かりますが、その者が真の権利者かどうかは、運送人が請求するときに判断するのは実際上難しいのではないかなと思います。そうであれば、適法が推定される者でいいのかと思いました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そうだとすると、むしろ所持人でいいんですかね。あるいは裏書の連続した電磁的船荷証券記録を有している所持人。 ○雨宮委員 はい、そうだと思います。そうであれば、一応、適法が推定されるので権利行使は正当と推定されると思います。 ○藤田部会長 なかなかいろいろな論点が尽きませんけれども、事務当局から現段階でございますか。 ○渡辺幹事 今、部会長にまとめていただいたとおりかと思っておりまして、ただの支配を有する者でもいいかもしれませんし、そこに裏書の連続があるというものを入れるということでもいいかなと思っております。いずれにしても、後の裏書の連続、全体として裏書の連続をどう見ていくかという部分にも関わってくる部分で、ただ、ここはちょっと類型論の話とかもあって、ちょっと今日御議論いただくのは重いかなということでちょっとはしょらせてしまっている部分ではありますけれども、そういったところと総合的に見て考えていきたいと思います。ありがとうございました。 ○山口委員 今の点ですけれども、この新たな転換の件ですが、正に最後の受戻証券性と同じ、権利義務と同じような形にならないかなと。すなわち受戻証券で、運送人はその船荷証券、あるいは電磁的船荷証券の所持に対して、それがサレンダーすることを引き換えに物を渡す。それによって免責を、正に故意又は除外しない限り免責を受けるわけなんですけれども、それと同じレベル感でないと困るなと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   本当に適法な権利者であるかどうかという、実質の問題ではなくて、雨宮委員がおっしゃられましたけれども、形式的資格を有する人の承諾を得て行った場合には適法な転換になり、損害賠償も原則としては生じない。実質としてはそういう規律ですね。それを裏書概念だとか、所持人概念、あるいは支配を有する者の概念との関係でどう整理するかは、次回以降、要検討であるということで、実質は恐らく皆さん同じようなところを意図しているということかと思います。   よろしいでしょうか。 ○青戸幹事 事務当局に質問させてください。青戸でございます。   紙に転換する際に、電磁的船荷証券の記録と同一の内容を記載するということですけれども、元々電磁的船荷証券の場合、通数を書く必要がなかったところでございますけれども、紙に書くとき、紙に転換するときは、もうそれは運送人が任意で書くだろうという、そういう整理でよろしいのでしょうか。 ○藤田部会長 事務当局、御返答をお願いします。 ○渡辺幹事 御質問ありがとうございます。   通数の関係ですけれども、ここは個別にあえて整理はしていないところですので、適宜書いてたたければそれでいいかなと思っております。ここの同一の内容というのは、本当に一言一句同じでなくても、要するに同一の運送品に関する運送契約上の権利が分かるものであればいいということでございますので、そういった意味での同一性が確保できるような程度の記載であれば、それでいいということですので、紙から電子にした場合に通数というのは、複数通発行の関係で要らないということになると、本来的には書く必要がないのかもしれませんけれども、そういったところはもう適宜御対応いただければいいのかなと、そういった意味で、少しもやっとした形で受け入れられるような規律を目指して書かせていただいたというところでございます。 ○青戸幹事 ありがとうございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   よろしいでしょうか。第3についてはこの辺りでよろしいでしょうか。   それでは、第4に移りたいと思いますので、事務当局から御説明をお願いします。 ○生出関係官 それでは、事務当局の生出から、部会資料3の第4について説明いたします。   第4は、電子化された船荷証券の名称についてです。   これまで「電磁的船荷証券記録」と仮に名前を付けて呼んできた電子化された船荷証券の法律上の名称をどのようなものとするか、どのように考えるか御検討いただきたいと思います。   電子化された船荷証券を「船荷証券」そのものではないとする場合には、電子化された船荷証券を独自の法概念として観念することとなり、この概念に法律上の名称を付すことが求められることとなります。   この点、部会資料3第2の箇所に既に記載してありますとおり、電子化された船荷証券はその技術的要件として、「電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録」であることを求めることが想定されているところですが、我が国の法制においては、一般的にこのような記録を「電磁的記録」と称しており、「電磁的」という用語は一般的に「電子的方式」と「磁気的方式」を包括するものとして使用されております。   また、今回の改正で創設しようとするものが、「船荷証券」と機能的同等性を持つ電磁的記録であることに鑑みれば、分かりやすさという観点から、その名称の中には「船荷証券」、又はそれに準ずるような用語を含めることが相当とも考えられます。   他方、例外はありますが、我が国の法制においては一般的に「証券」という用語は動産としての紙面の存在を前提として用いられることが少なくなく、名称の末尾が「証券」で終わることとなると、紙面の存在が前提となっているかのような誤解を生じさせるおそれも否定できません。   そこで、これらの点を踏まえると、電子化された船荷証券の法律上の名称としては、「電磁的船荷証券記録」という名称が考えられます。   一方で、電子化された船荷証券については、国際海上運送に用いられるものであり、我が国の法律に基づく電子化された船荷証券が国際的に受け入れられることが極めて肝要であると考えられますので、法律上の名称についても国際的な調和を斟酌することが望ましいと言えます。   そして、「電磁的」という用語を英語に翻訳すると、一般的には“electronic or magnetic”という表記が用いられる可能性が高いところ、海外法制の動向を見ると、MLETRやシンガポール法では“electro transferable record”、イギリスのLaw Commission草案では“electronic trade document”といった用語が用いられており、いずれも“magnetic”という単語は用いられておりません。MLETR、シンガポール法、Law Commission草案がその記録の方法として磁気的方式が採られることを禁止している、又は想定していないのか否かは定かではないものの、このような国際的動向を踏まえれば、我が国における電子化された船荷証券の名称としても無用な誤解を避ける趣旨で、「電子船荷証券記録」といった用語を選択することも考えられます。   なお、実際に電子化された船荷証券の作成方法として、磁気的方式が用いられることがあるかは定かではないものの、観念的にその存在を認めるのであれば、「電磁的」という用語を用いることの方が正確性は勝るようには思われるものの、我が国の法制においても、磁気的方式を認めつつ法概念の名称として「電子・・・」という文言を用いている例は少なからず存在するため、「電子船荷証券記録」というという名称とすることも禁じられるものではないと考えられます。   第4についての説明は以上となります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   前々から話題にはなっている、我々が議論している対象の呼び方についての議論ですけれども、今日決めなければいけない話ではもちろんありませんが、現段階での御感触頂ければと思います。 ○笹岡幹事 笹岡です。   ずっと電磁的船荷証券記録という用語を使ってきたので愛着はあるのですけれども、やはりここは電子にしていただきたいと思います。また、証券で終わってしまうと紙という誤解が生まれるというご指摘がありました。先ほど署名の話がありましたが、署名という言葉もやはり手書きのイメージがあると思いますが、それでも電子署名は署名で終わっているので、御指摘の点はそれほど問題ではないような気もします。その辺りは事務当局で整理していただければと思います。電子的船荷証券という用語が、おそらく皆さんには一番しっくりくるのではないかと思いますが、これが法令用語としては使えないというのであれば、電子船荷証券記録ということで、私は賛成したいと思います。よろしくお願い申し上げます。 ○藤田部会長 事務当局からありますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   御意見ありがとうございました。   一般的には紙でない場合に「証券」で終わるということは余りないんではないかということを指摘はさせていただいておりますが、いずれにしても、定義を入れるわけですので、やってやれないことはないのではないかと個人的には思っておりますので、最終的にできませんでしたといっておわびを申し上げることがひょっとしたらあるかもしれませんが、この時点での皆様の御議論におきましては、そこについて余り窮屈に考えずに御意見を頂いて、あとは我々でチャレンジをすると、こういうことになろうかと思っております。 ○池山委員 池山でございます。   今の点に関連して、正に最後は証券「記録」の言葉を残すかどうかなんですけれども、正に、これはむしろ誤解うんぬんというよりは法体系、あるいは法律用語として、紙でない以上は「証券」で終わることはまかりならんということかどうかだと思っております。それで、この観点からこの30ページの辺りを見ると、「例外はあるものの」と書いてあるんですよね。例外はあるものの、我が国の法制では一般的には証券は紙になると。じゃ、例外というのは何なのかというのを私興味があって、ちょっと探そうとしたんですが探せなかったんです。30ページの上から5行目ですね。これによると、例外的には紙でないものでも「証券」で終わるというのがあるように見えるんです。あるなら是非と思っているんですけれども、具体的にこれは何なんでしよう。もし分かれば。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   ちょっと不正確な話になってしまうかもしれませんが、確か金商法か何かにみなし有価証券みたいなものがあったかと思いますので、そういったところが許容されている一例にはなるかなというふうには思っております。 ○藤田部会長 そのほか御意見ございますか。 ○後藤幹事 後藤でございます。   個人的には私も「証券」で終わってほしいと思っている前提でなんですが、やはりみなし有価証券って、有価証券を発行していないけれども、有価証券とみなしているので、やはり紙が出ていないと有価証券を発行していないというふうに整理はしているということになってしまうのではないかなという気はします。 ○吉田委員 吉田です。金融の業務に携わっておりまして、皆さん二項有価証券と言っています。ですので、そこは特に大丈夫だと思います。 ○後藤幹事 もちろんそれはそのとおりなんですが、二項有価証券というのは飽くまで通称なので、通称としては電子船荷証券というのも、これもみんな記録を付けずにきっと言うことになろうとは思うんですが、法制局は多分二項有価証券ってみんな呼んでいますと言っても許してくれないとは思いますので、そこは、多分これが例外なので金商法2条2項かというと、多分例外と言えるかなというのはちょっと、そこも含めて変えていっていただければ大変いいことだとは思うんですけれども、なので期待はしつつ、無理はできないかもしれませんがというふうには思っておりますということだけ申し上げておきます。 ○小出幹事 第二項有価証券は、一応、金商法上出てきている表現ではあります、第二項有価証券という定義はありますので。ただ、これは私法の世界でもあり、私はそれほど船荷証券記録という言葉に余り違和感がないんですけれども、元々は多分、電子的移転可能記録という言葉を使っているからかもしれません。こちらは他の委員の御議論に任せたいと思います。   あと、電子的か電磁的かに関しては、私もこれはやはり電子的で在るべきだと思っておりますし、元々、ちょっと先ほどは申し上げませんでしたけれども、技術的要件のところも電子的方式、磁気的方式って、本当に入れる必要があるのだろうかとやや疑問には思っていまして、一方で、これもまた金商法で申し訳ないんですけれども、金商法なんかでは、電子記録移転権利なんかは、電子情報処理組織を用いて、という言葉を使ったりしています。磁気的方式だって結局は本当に何か磁石だけを使って読んでいるわけじゃなくて、やはり電子情報処理組織を使って読んでいるわけなので、この際、電子情報処理組織を用いてみたいな表現に変えても、当然磁気テープに記録されたものも含まれるのは当然じゃないかと個人的には思います。いずれにせよ、ここについては「電子的」という表現を推したいと思います。 ○松井幹事 感想めいた話だけで恐縮ですけれども、私自身はちょっと皆さんと感触が違っていて、やはり「証券」という言葉の券面に対する結び付きの強さみたいなものを感じております。今までも御指摘をしてきたところなのですけれども、事務局が船荷証券という概念の分かりやすさを考えつつ、最後に記録という形を入れて、先の点を克服しようとされているのだろうと思い、この「船荷証券記録」という表現はよいのかなと思いました。   電磁的か電子かというのは、今、小出先生がおっしゃったのと同じような感想を持っているところです。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   御意見に対して質問して申し訳ないんですけれども、「証券」の語が紙であるインプリケーションが強いとしたら、その直後に、それと矛盾する「記録」を付けて「証券記録」と呼ぶことには抵抗はないと理解してよろしいですか。 ○松井幹事 正直申し上げますと、私は「電子船荷記録」でいいのではないかと思っております。ただ、この表現には、皆さんにある種の気持ち悪さがあるのではないかとも思っているところです。 ○藤田部会長 船荷記録というとぎょっとする人は多いかもしれませんが、運送書類という言葉がよく使われていて、それに対応する電子的な媒体について運送記録とか電子的運送記録という言葉を使う用語法は余り違和感はありません。問題は船荷で止まるような用語がなく、あまりにも船荷と来ると証券と結び付けるのに我々がなじみすぎているので、船荷記録は抵抗があるかもしれません。そうすると、証券と記録が併存するという何か気持ち悪い用語になります。結局、どの案を採っても何らかの違和感が残る苦しい状況にはなっているんですけれども、多くの方の御意見、御感触は、現段階の感触はよく分かりました。ほぼ共通しているのは、「電子」の方が「電磁」よりいいという点だったと思いますが、証券と記録のあたりをどうするかはなかなかいろんな意見がありそうかという印象です。   この件については、本日のところはこの辺りでよろしいでしょうか。 ○池山委員 単なるこれは質問です。同じ議論は海上運送状にもあるのかなと思っていて、海上運送状は電子的に発行された場合は、法的には電子海上運送状記録ということを想定されているということでよろしいのでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   海上運送状については特に定義がないんだろうというふうに理解しておりまして、商法の770条だと思いますけれども、海上運送状に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができると書いてあるだけでありまして、このこと自体を何か電磁的海上運送状とかというような用語を充てたりとかということは、商法上は少なくてもしていないのではないかと思います。   他方で、今、我々が検討しようとしている船荷証券の電子版につきましては、やはり何らかの効力とか、そういったところをしっかりと書いていかなければいけない、海上運送状とは違う一定の効力があるものですので、何らかの定義をしていかないと、法文自体を書いていくとこができないと、こういうことかと思いますので、海上運送状とは違って、このような形でネーミングを募集させていただいていると、こういう状況でございます。 ○池山委員 分かりました。ありがとうございます。 ○藤田部会長 有価証券ではない書類が要求されているときに、それを電子的に提供することができるという規定は一杯あるのですが、そのときに改めてその書類のことを電子何とか書面とかいうふうには呼ばないのが普通だと思うのですね。有価証券だから固有のネーミングも含めた議論が必要になってきているという、そういうふうに理解しているところです。   取りあえず、感覚的な議論以上のことができる話ではありませんので、本日のところはこの辺りでよろしいでしょうか。   あと3分ほどしか残っていないですが、若干延長してよろしければ、簡単に御意見伺うことは可能でしょうか。第5について、よろしいですか。   時間との関係でありますので、第5については書いてある以上の説明もないようですので、直接これらの案についての賛否の感触だけでも伺えればと思います。時間の関係で十分議論は尽くせないようでしたら、次回もここから取り上げるということで、取り急ぎ感触だけでもお教えいただけますでしょうか。強制執行に関する規律の内容です。   何か御意見ございますか。 ○池山委員 毎度口火を切らせていただいてすみません、池山でございます。   結論から言うと、すみません、相変わらず結論は留保ということにはなるんですが、他方で、船主協会の関係者と議論をしたときには、甲案への抵抗というのはかなりございましたし、私もございます。それはやはり目的と手段が合致していないといいますか、差押命令があったときに、その電子的船荷証券がおよそ無効になるというのはやはりちょっと乱暴ではないかと。その結果、じゃ、どうやって荷渡しをした方がいいのかというのは分からなくなるというのがございます。紙の場合の強制執行の在り方についてここに解説があって、ここは譲渡性がある場合とない場合とで実は違うんだという御指摘があって、なるほどとは思いましたが、いずれの場合であっても、紙である場合は運送人側からすると、はやり船荷証券と引換えに基本渡すんだと、そこの部分は変わらないわけですよね。それで、電子になって突然およそそれが効力がなくなっちゃうと言われるのは非常に抵抗感があると。じゃ、そうすると、丙案なのかと言われると、逆にそこもなかなか言い切れないところがあって、確かにここでおっしゃっている法律関係が不明瞭になると。だから、やはり何らかの方法が必要なのではないかという御指摘は、それはそれで非常に傾聴すべき点があると思われて、今、甲案が駄目だからもう丙案でいいというのには、なかなか言いづらいのかなと思っております。   それから、もう一個指摘があったのは、これからどう言ったらいいんですかね、電子船荷証券と、あるいは電子B/Lと言ってしまいますが、それらについての強制執行の方法を絶対考えなければいけないのか、これは丙案的思考かもしれませんが、そこに対する疑義というのもあって、これって暗号資産のような電子的な記録で価値があるものに対する強制執行一般の問題として考えてもらうべきで、電子船荷証券における強制執行だけを先行して考えるということに対する抵抗感というのもございました。だから、この後段の点は別の言い方をすると、これはむしろここで考えるというよりは、電子的な価値ある財産についての執行法制全体の問題として、別途の機会で考えてもらうというのでもいいかもしれないと。そうすると、これは実は丙案になってしまうんですけれども、丙案との違いは、本当の丙案はおおよそ何も規定しないということで確定させちゃうわけですけれども、今の後段で申し上げたのは、ここでは取りあえず考えないけれども、執行法制全体の問題として考えていただいて、場合によっては何らかの適切な法制というのは考え得るかもしれないと、そういうアプローチという意味ではちょっとは違うのかなと思っております。   それから、乙案に関しては、やはりこのX案、Y案が前提になるということもありますけれども、加えてやはり代位構成ということになると、実体的な代位権の存在を運送人が判断しなければいけないということに対する抵抗感がやはり結構ございました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   事務当局からはございますか。 ○渡辺幹事 御指摘ありがとうございます。   なかなか非常に難しいところで、我々も一番頭を悩ませている論点は、正にここだなと思っています。   先ほど暗号資産のようなものに対する強制執行と同じような考え方ができないかというような御指摘も頂いたかと思いますが、電子船荷証券記録といいましょうか、例えば支配の移転を移せとか、そういったレベルであるとするならば、今ある暗号資産に対する強制執行と同じような考え方というのは場合によってはあり得るのかもしれませんが、ただやはりここで問題になってしまっているのは、片や運送品引渡請求権という電子化とは関係ない債権というものがあるわけでして、その強制執行というのがどうにも止まらないということになってしまうというところが問題の出発点なんだろうと思っていますので、そこがやはり何か権利というものを表章している有価証券の電子版が発行されている場合の強制執行の特有の難しさがあるだろうと思っていますので、電子的なものに対する強制執行手続うんぬんだけではちょっと語り尽くせない部分があるのかなと思っていて、それを何とかするために、どうしようというふうに考えていたところ、実際のところ実効的な案としては甲案ぐらいしかないかなと、乙案についてはY案が採用できればあり得るかもしれませんが、そういった条件を付けるものになってしまっていると、そういうところが、すみません、事務当局の悩みでございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○池山委員 その点から若干補足させていただくと、やはり運送人側からすると、受戻証券性というのがなくなるというのはやはり勘弁してほしいというところなんだと思います。この紙の船荷証券が出た場合の説明を見ると、実際はこれもどこまで機能するかどうか分からないというのは、最終的に運送人側からすると、やはり紙と引換えじゃなければ渡せませんというところ、その実体法的な規律は生きていて、裁判所の命令ですからといったって、当然に渡さなければいけないことにはならないですよね。まずは強制執行の過程の中で、譲渡可能なものであれば執行官が動産執行として取り上げなければいけないし、譲渡不能なものであっても、証券として一旦、やはり最終的には動産執行と同じ形で取り上げて、それを使って引渡しを求めるということになっています。運送人側からすると、やはり結局はB/Lに基づくんだと、紙に基づくんだと。そこがいきなり外れてしまうというのは、かなり抵抗感が強いかなと思います。だからといって、じゃ、なしでいいか、丙案でいいかともなかなか言い切れないというのが確かにやっかいなところなので、丙案ですとまではまだ言わないんですけれども、甲案のままだとなかなか皆さんが納得するのは難しいのかなと思っています。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○山口委員 すみません、山口でございます。   甲案の一つの問題点を申し上げると、これは我が国において無効になるというだけであって、船荷証券というのは転々流通するわけでございますのと、それから裏面約款がどの程度存在するか分かりませんが、別の裁判管轄で行われたときに、果たして日本の裁判所が無効だと言っているからその権利は認めないというふうに、他の裁判所で認めてもらえるかどうかというのはまた別の問題でして、そういう意味では、日本で無効となったから、他の国でその権利が行使されたときに運送人が勝てるか、負けるかというのはやはり想定できないわけで、そういうことがやはり今池山委員がおっしゃった抵抗感が強いというのは、そこにもあるのではないかと。すなわち、執行というのはある意味非常に属地的なもので、国際的に流通する電子的船荷証券記録のようなものにはなかなか対応できていない、できないのではないかという、そういうおそれがあるのではないかと思うんですけれども。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   ちなみに、ちょっと1点御確認というか、明示的にした方がいいかもしれない論点として、第5の表題は「強制執行に関する規律の内容」と書かれているのですが、これを見ると、「強制執行、滞納処分その他の処分の制限」と書かれていますので、保全処分、仮差押えも含むわけですね。35ページ辺りにも仮差押えがちょっと出ていたりしますけれども、保全処分で記録が無効になってしまうというのは、これは実務的には仕方ないということになるのでしょうか。それとも、そういうことになると、先ほどからの違和感というは増幅されるということでしょうか。 ○山口委員 そうですね。仮処分だと、まだ仮の処分ですからね。執行停止、つまり引渡し停止みたいなレベルであればまだしもというところかと思うんですけれども。 ○藤田部会長 分かりました。感触は、とにかく無効になるというところが甲案について抵抗のある点だということはよく分かりました。   池山委員が言った丙案というのは、何もしないというのは、商法のこの改正では何も規定しないだけで、未来永劫、ほかの執行法の規定で何か対処されることを否定するという趣旨ではもちろんないということで、そういう意味では池山委員の趣旨とは反しないものだとは思っております。 ○池山委員 ありがとうございます。失礼しました。 ○藤田部会長 そのほか、今日のところはこの辺りでよろしいでしょうか。 ○池本幹事 最高裁民事局の池本でございます。   丙案を採用した場合に、最終的に商法582条及び583条を通じた解決を図るという点については、これらの規定が適用できるか明らかでないと、後の競売手続が不安定になる可能性がある点には留意していただく必要があると思っております。そういった意味で、甲案なのか、丙案なのか、あるいはこういった場合に競売ができるという規定を置くなどがあるかもしれませんが、いずれにしろ何らか手続が明確となるような規定を設けることを検討すべきかと考えているところでございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   何か具体的なワークしそうな規定の提案はございますか。 ○池本幹事 なかなか難しいところかとは思いますが、例えば商法582条及び583条の適用ができるかどうかというのが明らかでないという点については、こういった場合にはできるというような規定などは考えられるかもしれないところです。ただ、この場合、資料にあるような運送人の負担に関する指摘は当てはまってしまうところかとは思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   よろしいでしょうか。 ○吉田委員 吉田です。   規約型の電子船荷証券では、昔からあるものは、中央管理型もありますけれども、特に新しくできたシステムではブロックチェーン技術を用いているものが多く、今後それよりも更に発達した技術が導入される機能性もあると理解をしております。   資料の33ページに、「システムプロバイダーの存在を前提とした強制執行の仕組みを構築することは極めて困難であり、かつ、そのような法制は国際的な調和からも外れるものと考えられる。」と記載されていますが、強制執行に関する制度を作るのは、今の法制度的には難しいのでしょうか。電子船荷証券に限らず、ブロックチェーン技術ですとか、今の技術がそのレベルであるという現実を踏まえると、難しいという感じになるんでしょうか。 ○藤田部会長 事務当局からお答えいただきたいと思います。技術の段階から来る問題なのか、運送品引渡請求権と記録が併存するようなところから来る問題なのかというあたりがポイントかと思いますけれども、お答えいただければと思います。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   ちょっと十分に御趣旨がつかみ切れなかったところがあるかもしれませんけれども、ここで書かせていただいているのは、システムプロバイダーの存在というのが必ずしも必須ではないというところがあるので、それを前提にした執行の枠組みというのはちょっと考えられないというところでありまして、そういった状況においてどういったことが考えられるのかというところについては、やはり電子的なものの強制執行だけではなくて、やはり原因債権たる運送品引渡請求権という別の債権執行の対象になるものもある中で、どういったことが考えられるのかということを検討していかなればならないという非常な難しさがあるのかなというところでございます。すみません、ちょっと十分な回答になっていないかもしれませんが、そんなようなところでございます。 ○吉田委員 ありがとうございます。   趣旨としては、「強制執行できません。」というのでは、アセットとして少し不安というのがあるので、どうしたよいのだろうかという、悩みがあります。 ○池山委員 今の観点からすると、逆の価値判断かもしれませんけれども、多分実務の頭の中には元々紙の船荷証券の場合であっても、制度上はここに書いてあるように、紙の船荷証券の強制執行はきちんとできるようになっているけれども、実際上はほとんど機能しないし、させられないだろうと、だからほとんど無理だという頭が実はあります。というのは、先ほど暗号資産と同じようなと申しましたけれども、今回のやはり特殊性は、金銭債権ではなくて引渡請求権で、証券を強制執行するためには紙をとにかく入手しなければいけないと、紙の場合ですよね。それは執行官が取り上げるとか書いてあるんだけれども、実際どうやって取り上げるんですかと、隠匿されて任意に出てこなければと。そこはなかなか難しいだろうという頭があるんです。そうだとすると、紙ですら、法制度上はともかく実際上は機能していないときに、電子の場合に、一生懸命枠組みを作って、その機能するようなものをどこまで作らなければいけないかというのの懐疑的な感覚が、多分運送人の本音ベースでは恐らくあるんだと思います。それを作るためにいきなり無効というのは乱暴だという話になってくると。   そうすると、がらっと立場を変えて、じゃ、運送人側からするとそうかもしれないけれども、所持人側として、強制執行の制度をきちんと作ってもらうニーズがどこまであるんだろうかというのは、実はあるんだと思うんです。紙の場合は、制度はきちんと作られていますと。ただ、執行官を通じて取り上げるのは場合によっては難しいと、でも、場合によってはできるかもしれないから、それはそれでいいんだと。電子の場合も、絶対に強制執行ができるシステムを所持人側が本当に思っているんですかというのは、本音の価値判断としてはあるのかなと思っています。そのことと、じゃ、でも、法体系的になくていいかというのは別に考えなければいけないかもしれないとは思いますが。 ○藤田部会長 解決があるのかないのかよく分からない状態ですけれども、差し当たり何が懸念としてあるかということはいろんな立場から伺えたと思いますので、差し当たりはこの辺りで本日のところはよろしいでしょうか。もし議論が足りないようでしたら、また次回この辺りから始めてもいいと思いますが、本日のところは差し当たりここまでということにさせていただければと思います。   司会の不手際で、時間が15分も超過してしまって申し訳ございません。   本日の審議はこの程度で終わらせていただければと思います。   次の議事日程等について、事務当局から御説明いただければと思います。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。   本日は、充実した御議論いただきまして誠にありがとうございました。   次回の日程は、令和4年8月31日水曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は今回と同じ法務省の20階第1会議室を予定しております。   次回は、論点の全体のうちの後半パートである有価証券の類型の問題でありましたり、電子船荷証券記録に関する権利の譲渡をする場面の規律の内容、あるいは効力に関する規律の内容、こういったところの資料を準備させていただくとともに、本日の積み残しについての御議論を頂ければと思っております。 ○藤田部会長 それでは、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会の第3回会議を閉会にさせていただきます。   本日は熱心な審議を賜りまして、どうもありがとうございました。 -了-