法制審議会 担保法制部会 第24回会議 議事録 第1 日 時  令和4年9月6日(火) 自 午後1時30分                     至 午後5時03分 第2 場 所  法務省7階・共用会議室6・7 第3 議 題  担保法制の見直しに関する中間試案のとりまとめに向けた検討(7)、(8) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第24回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は小田委員、片山委員、横山委員、浅野幹事、阿部幹事、衣斐幹事が御欠席と伺っております。また、大西委員が途中参加と伺っております。   まず、委員等の交代がございましたので御報告いたします。内野幹事が退任され、新たに竹林幹事が就任されました。また、齋藤関係官が退任され、新たに西関係官が就任されました。また、今回の会議には経済産業省の山井関係官に参加していただきます。   そこで、竹林幹事、西関係官及び山井関係官から簡単に自己紹介をお願いいたします。 (幹事・関係官の自己紹介のため省略) ○道垣内部会長 まず、資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 本日もよろしくお願いいたします。新たにお送りしたものとして、部会資料19「担保法制の見直しに関する中間試案のとりまとめに向けた検討(8)」がございます。これにつきましては、後ほど審議の中で事務当局から御説明いたします。また、前々回お配りいたしました部会資料18も、積み残し部分がございますので、使用いたします。   あと、新しく今日お送りいたしました部会資料としまして、部会資料19-2「ファイナンス・リースの定義に関する外国法制の調査報告書」、こちらは調査員の大塚先生に御作成いただいたものでして、こちらも審議の中で後ほど大塚先生から御説明いただく予定としております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、審議に入りたいと思います。前回の積み残しとなっておりました部会資料18「担保法制の見直しに関する中間試案のとりまとめに向けた検討(7)」です。これを使うのが3回目になりますが、これについて議論を行いたいと思います。   第4の1までが済んだと認識しております。1につきましては、若干の意見の対立がございましたが、多くは別除権、更生担保権として扱うという意見が強かったと認識しております。反対意見がなかったわけではございませんので、もちろん決定したというわけではございません。それを踏まえまして、踏まえましてというのは、意見の分かれがあるということも踏まえていただいて全然結構なのですが、第4の2から入りたいと思います。「2 担保権実行手続中止命令の適用」というところから、「6 いわゆるプライミングリーエンについて」まで議論を行いたいと思います。事務当局におきまして部会資料の説明をお願いします。 ○淺野関係官 それでは、まず36ページの「2 担保権実行手続中止命令の適用」について御説明いたします。事業担保権を別除権と位置付けて、再生手続外で行使することができることとし、実際に再生手続外で行使がされると、設定者の下での事業再生は不可能となります。そこで、事業担保権についても、一般の担保権と同様、別除権協定の締結に向けた時間的猶予を設定者に与えるため、中止命令の対象とする必要があると考えられます。部会資料17において、動産や債権を目的とする新たな規定に係る担保権について、中止命令に関して幾つかの論点をお示ししておりますが、事業担保権に担保権実行手続中止命令を適用するならば、それらについて事業担保権の性質に応じてどのように整理するかについても問題になると考えられます。   次に、「3 倒産手続開始後に発生・取得する財産への事業担保権の効力」では、倒産手続開始後に設定者が取得した動産や債権についても事業担保権の効力は及ぶとすることを提案しております。これは、動産や債権を目的とする新たな規定に係る担保権に関する部会資料17の第4と同様の問題でして、そこでは御意見が分かれているところですが、事業担保権について、一部の動産や債権について担保権の効力が及ばないとすると、円滑な事業の承継、継続が困難になると考えられます。また、倒産手続開始後に取得する財産に効力が及ばないこととすると、倒産手続開始により設定者の処分権限も失われるとする必要があると考えられますが、このような規律としますと、設定者が別除権協定を結ばない限り事業を継続できない状態になると思われ、買受人に譲渡がされるまで事業を継続させ、事業を継続した状態で買受人に移転することが想定される事業担保権においては、このような規律は適切でないように思われます。   「4 破産法上の担保権消滅許可制度の適用」では、事業担保権について破産法上の担保権消滅許可制度が利用される場面は必ずしも多くないと考えられるものの、事業担保権をその対象から排除する理由も乏しいように思われることから、事業担保権を適用対象とすることを提案しております。   「5 民事再生法及び会社更生法上の担保権消滅許可制度の適用」では、事業担保権について、民事再生法及び会社更生法上の担保権消滅許可制度を適用するかどうかについて問題提起しております。民事再生法及び会社更生法上の担保権消滅許可制度についても、その趣旨からすれば、事業担保権を適用対象から排除する理由はないようにも思われる一方で、担保権の実行を優先すべきであるなどとして、これらを事業担保権に適用することについて否定的な見解も存在するところです。   最後に、「6 いわゆるプライミングリーエンについて」について御説明いたします。事業担保権が設定された場合、事業を構成する財産全体に事業担保権の効力が及ぶことから、DIPファイナンスなどの供与を受けることが困難になるのではないかという指摘があり得ます。この指摘に対応する場合、DIPファイナンスに関する担保権、債権について特別に優先性を与えることが考えられますが、DIPファイナンスに関する担保権が既存の事業担保権に優先するのみならず、被担保債権が労働債権や租税債権等の共益債権にも優先することとなると、その正当化根拠が問題となりますし、事業担保権が設定されていない場合における取扱いとの整合性も念頭に置いた議論が必要となります。このような点を踏まえますと、事業担保権が設定されている場合には、DIPファイナンスを行う債権者は、当該DIPファイナンスに関する債権を被担保債権として新たな事業担保権を設定することができることとした上で、当該新たな事業担保権と従前設定されていた事業担保権の優先順位に関する特則を設けることが考えられます。   このように考えるとしても、優先させる範囲を適切に切り出すことが可能かという問題がございます。要件該当性を容易に判断することが可能なような具体的要件を定めることが可能であれば、DIPファイナンスの供与の円滑化に資することとなりますが、そのような要件の規定が困難であれば、ある程度抽象的な要件を規定した上で、裁判所がその要件の該当性を判断し、認定等を行うという仕組みも考えられるところです。また、このような仕組みを設ける場合、既存の事業担保権者の保護をどのように図るかという問題も存在します。この観点からは、単に既存の事業担保権者の同意を得て当該事業担保権者に優先する事業担保権を設定することができるという制度とすることも考えられます。この場合、事業担保権の順位の変更に関する規定を設け、当事者間の合意に委ねることとなります。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○山本委員 どなたも発言がないようなので、今お話があったところの全体で3点、コメントです。いずれも必ずしも意見という、こうすべきだということではないのですが、コメントです。   まず、2の担保権実行手続中止命令の適用というところで、もちろん対象にするということはいいのかなと思うのですが、この中止命令の効果をどういうふうに考えるのかというのが一つ、問題としてありそうな感じがしています。つまり、中止命令の発令によって何が中止されるのか、とりわけ管財人の管理処分権が維持されるのか、あるいは、なくなってしまうのかというところが一つ問題のように思います。この資料は、あるいは管財人の管理処分権は残るということが前提になって作られているようにも思われるのですけれども、そこが自明なのかどうかというところです。   例えば、民事再生手続が開始して、破産手続が中止した場合に、これは私の誤解かもしれませんが、普通はやはり破産管財人の管理処分権は中止によって、なくなると考えているのではなかろうかという気がしています。これと類似したものとして、強制管理とかが行われている場合に、倒産手続が開始したり、あるいは強制管理の中止命令が出た場合の管理人の権限というのがどうなるかということも、これは私自身も必ずしもはっきりしないですけれども、それと同じように考える、果たしてそれで管理人の権限が残ると考えられているのかどうかということがあります。   仮に、そういう場合に管財人の権限が中止命令でなくなると考えた場合には、(3)の取消命令が必要かどうかというところの前提が変わってきそうな感じがしますし、つまり、もう中止命令で管財人の権限がなくなるのだったら、あえて取消しというのが必要なのかどうかということですが、それから、禁止命令については、これは今のような考え方を仮にとられたとしても、一旦管財人のところに移ったものが、中止命令などでまた戻ってくるという、行ったり来たりみたいなことが起こるということを防止するためには、やはり禁止命令は必要だということになるのかもしれませんが、いずれにしろそこの前提を少しはっきりさせて議論する必要があるのではないかというのが第1のコメントです。   第2は、40ページの5の民事再生、会社更生の担保権消滅許可制度についてです。これについても必ずしも定見があるわけではないのですけれども、40ページの5の第2段落で、他方でと書かれてある、担保権消滅制度を事業担保権適用することについての否定的な見解についての私の疑問というかコメントを申し上げたいと思いますが、まず、民事再生についてはこの議論は、いずれにしろ事業の継続という共通の目的があるので、別除権を優先するということでいいのではないかという立論かと思いますけれども、事業の再建という非常に大きなところでは確かに共通の目的といえるかもしれませんが、その再建に至る手法というのが恐らく事業担保権の実行と民事再生では変わってくる可能性があるのではないか、つまり、民事再生の場合にはスポンサーから資金を得て、それはエクイティーかもしれませんしリファイナンスかもしれませんけれども、いずれにしろニューマネーを得て担保権消滅を利用するという場合に、自力で今の経営陣が再建しようという発想というのはあり得るように思われて、そうだとすれば、なお担保権消滅、実際に使われることがどれだけあるのかという気はしますが、なおそういう余地を認めておくという議論は成り立つように思います。   また、会社更生の方のこの議論というのは結局、担保権実行を優先させるということですから、更生担保権という構成を否定するということの議論だと思います。これはもう前回、議論済みのところかと思います。私自身は、一定の場合には担保権実行を優先させる、この事業担保権の実行というのは一種の倒産手続だとすれば、それが債権者一般の利益に合致するような場合には、担保権の実行を優先させるという余地もあり得なくはないとは思いますけれども、一般論として、この担保権消滅許可を否定するというか、要するに、更生担保権的な構成をやめるというところまで行く必要はないのではないかという認識を持っております。   最後、いわゆるプライミングリーエン、6ですけれども、これも定見はないのですけれども、この資料に書かれてあるように、事業担保権について剰余が出ないような場合については、いずれにしても、このプライミングリーエンを設定して事業価値を上げるかどうかというのは事業担保権者の判断に委ねていいのだろうと、その意味で、この資料の最後に書かれてあるように、既存の事業担保権者の同意で付けるかどうか等を決めるという制度でいい、そういう意味ではプライミングリーエンという固有の制度は要らないのではないかという議論はそのとおりかなと思うのですけれども、問題は、事業担保権者に弁済しても剰余が出て、劣後債権者にも配当が回るような場合に、その判断を事業担保権者に完全に委ねるということで制度としてよいのかということは問題になりそうな気がします。   そのような劣後債権者まで回るような場合については、事業担保権者は特にプライミングリーエンを設定するインセンティブがないように思われるわけですが、劣後債権者はプライミングリーエンによって事業価値が上がって配当が回ってくる、増えるということであれば、やはり何らかの手当てというのはあってもいい、そういう可能性もあるのではないか、その場合には、やはり裁判所が一定の要件で、その要件が難しいというのは、この資料に書かれてあるとおりなので、私も必ず導入すべきだというつもりはありませんけれども、ただ、なおこの資料の叙述を前提としても、検討する余地はあるのではないかという印象を持っているということであります。   長くなりましたけれども、私からは以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。中止命令が出たときの管財人の権限について、前提としてどういうふうに考えられているのかというのが質問として存在していたと思いますので、事務局の方からお願いいたします。 ○笹井幹事 御指摘いただきましたので、改めて考えてみたいと思いますけれども、作成したときは、倒産のときに御議論いただきましたように、中止命令は、実行手続が進んだことに伴って生じた効果を覆すものではないということを前提に考えておりましたので、管財人が選任されて管理処分権が専属するに至ったという効果を中止命令によっては覆せない。管財人が設定者の財産を譲渡したりすることはできなくなるけれども、管理処分権が移転したということ自体は、中止命令によっては覆せないという考え方でした。ただ、保存処分のようなことはできないといけないのではないかとか、いろいろ問題はあるかと思いますので、その点につきましては、今日の御指摘も踏まえて、また改めて考えたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○山本委員 今の点で、確かに中止命令が出る前に管財人がしたいろいろな行為というのが覆らない、これはもうそのとおりだと思いますし、他方で管財人が事業全体を事業譲渡とかをする行為、これができなくなると、これも当然、中止命令が出れば、それはそうなるだろうと思いますが、問題はその中間にあるような、今、保存行為という言葉が笹井さんから出ましたけれども、結局この管財人というのは管理処分権を掌握して、実際上はその事業を行っていく人なわけなので、それで、日常的に行う行為のどれができて、どれができなくなるのかということが非常に問題になるのではないかという気がします。私の先ほどのコメントは、やはり事業を継続するというために管財人がいろいろ行う行為というのは、やはり中止命令が出れば、もうできなくなってしまうという考え方もあるのではないかということをインプライしていたということです。少しクラリファイさせていただきました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。私も問題を完全には把握し切れていないところもあり、もう少し考えたいと思いますが、ほかにございませんでしょうか。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。立教大学の藤澤です。6のプライミングリーエンについて、一つコメントさせていただきます。   このプライミングリーエンの制度は、アメリカの連邦倒産法にある制度かと思うのですけれども、アメリカの制度と今ここで構想されている事業担保権の制度には、二つ違う点があるのではないかと感じております。一つは、アメリカでは「事業担保権」というような担保があるわけではなくて、個別財産に担保権が付いているという状態で、その個別財産に関する担保権に優先する形で設定されるのがプライミングリーエンです。もう一つは、もちろん様々なパターンがあるのですけれども、アメリカで倒産手続を通して事業再生が目指される場合とは、同じ債務者の下で事業が継続していくということが念頭にあって、それでプライミングリーエンが設定されることになっているかと思います。   しかし、ここで構想されている事業担保権というのは、そういった個別財産についての担保権ではありませんし、つまり、個別財産の処分ということは余り考えられていませんし、しかも、事業譲渡することによって譲渡先で事業が継続していくことが念頭に置かれているかと思います。そうすると、必ずしもプライミングリーエンというような制度を使わなくても、事業について救済融資をした債権者がいた場合には、その債権が譲渡先に引き継がれると考えることでも、事業担保権に事実上優先する形で融資してくれた債権者を保護することができるようにも思われます。   そういった方向ですと、どこまで優先させるのかとか、ラインを引く必要は差し当たりなくなって、事業の継続にとって合理的な範囲でDIP融資が得られるというようなこともあるのかなと感じましたが、こういった制度の方向性はあり得ないでしょうか。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。引き継がれるというふうにするとき、そのメカニズムをもう少し具体的に御発言いただけませんでしょうか。 ○藤澤幹事 事業の譲受人に債務が引き受けられることを想定しております。 ○道垣内部会長 そのときに、他の担保権がどうなっているという前提なのですか。 ○藤澤幹事 事業担保権の実行として事業譲渡がされて、事業担保権は消滅します。その債務は引受先に引き受けられるということになりますので、その分、譲渡金額が下がることになります。 ○道垣内部会長 制度設計は大体分かりました。ありがとうございます。   続けて何人かの方から御意見を伺ってから、まとめたいと思います。 ○阪口幹事 阪口です。私もこのプライミングリーエンのところで、意見を述べたいと思います。   プライミングリーエンという制度自身は考えたらいいと思うのですけれども、藤澤先生からも御指摘があったとおり、事業担保権は個別財産に対する担保ではないので、ここでプライミングリーエンという制度を使わなければいけないのかがよく分からない。11ページ以降にある、いわゆる優先弁済の範囲の問題に吸収され、又は、吸収される部分があるのではないかと思っています。   DIPファイナンスなので、まず共益債権となる。共益債権だけれども、例えば牽連破産の場合など回収できないこともある。その場合に、ただ、事業担保権に優先するというだけであれば、11ページ以降で優先の範囲をどうしましょうかという議論があった中に、一定の要件の下で裁判所の許可を得てDIPファイナンスされたものは更に上に行くのですという制度で足りるような気がするのです。担保権設定しなければいけないわけではないのではないかということです。   なぜそういうことを申し上げるかというと、ここの本文では、新たな事業担保権を設定する人だけがこのDIPファイナンスの貸主になることが想定されていますけれども、前々回の議論で、事業担保権者になれる人の資格を非常に限定するという方向性がありました。そうすると、本文の方ではプライミングリーエンを使える人が非常に限定されてしまうのではないか。なので、そこまでしなくても、優先劣後のところで処理すれば、資格制限は起きないので、同じ結果が得られるのではないかと思います。イメージされているものが少し違うのかも分かりませんけれども、その問題で対処できるのではないかなということです。   あと、DIPファイナンス自身に関していうと、牽連破産時の財団債権化したときの優劣という一つの論点が別にありますので、それはそれでまた解決しなければいけない問題かなとは思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。今の阪口さんのおっしゃった、プライミングリーエンを有することになる債権者がどのような、例えば担保権を有することになることがこの資料の前提になっているのかという点につきましては、事務局はいかがでしょうか。   阪口さんがおっしゃったように、DIPファイナンスのときに事業担保権を新たに取得するということが前提でこの制度設計がなされているのか、それ以外には考えられていないのかということなのですが。 ○淺野関係官 部会資料の趣旨としては阪口先生の御理解のとおりで、新しくDIPファイナンスを供与するファイナンサーについても事業担保権を設定するという前提でした。仮に、事業担保権について担保権者としての資格制限を掛けていくとしますと、DIPファイナンスに当たって事業担保権を設定する場合でも資格制限が掛かってくるということに原則としてなるのかなと思います。御指摘を頂きましたので、少し考えてみたいと思いますが、この資料の前提は今申し上げたとおりでして、それが適切でないとすると、阪口先生の御提案のような方法というのも考えられるのかなと、差し当たり考えたところです。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。事務局の発想としては、DIPファイナンサーが事業担保権を取得しているというのは、結局、譲渡される会社資産全体に対してその優先権を有しているという状態にあるということを想定するために事業担保権を取得しているとおっしゃるのだろうと思うのです。それに対して阪口さんは、ならば、優先的に弁済されるとすればいいだけの話で、そこに事業担保権という概念を介在させる必要はないということなのかなという気がいたしました。また、藤澤さんがおっしゃった譲受人が引き受けるという問題は、これはまた若干違って、譲受人に他に事業があるということが前提になりますと、その中での一般債権者なのかという問題が出てまいります。若干そのメカニズムとして、同じように見えて違う技術を使うということになるのかなと思います。それは、どれが一番適切にバランスをとった考え方になり得るのかというのがポイントになるのかなと思いますけれども。 ○大澤委員 大澤でございます。まず、担保実行手続中止命令の適用のところで、先ほど山本先生がおっしゃられましたが、担保権実行手続中止命令がなされたときの効果として、担保実行の管財人というものの権限はそこで止まって、民事再生なり何なりがあるということであれば、そこで通常の民事再生の方に手続が乗っていくと、そういうものだろうと考えておったのですけれども、今の法務省のお話では、そこは必ずしもそうではないというお考えという理解でよろしいでしょうか。まずそこをお伺いできればと思いました。すみません、確認です。 ○笹井幹事 集合動産や集合債権についても、実行が開始されたことに伴い、それまでは構成部分について処分などの権限が設定者にあったのだけれども、それが担保権者に移るということがあり、それは中止命令によっては回復できないと考えております。ここでも同じように考えて、その事業全体についての実行が開始されるまでは設定者が自由に事業を営むことができたのだけれども、管理処分権が奪われ、管財人に移転した場合、その後に中止命令が発令されることによって、それを覆すだけの効力はないのではないかというのが最初、考えていたところです。   ただ、事業価値を維持するためには、放っておいていいというわけではなく、事業を続けていかないといけないというところには、確かに集合動産や集合債権とは異なる部分がありますので、そういった特殊性を踏まえて、どのように考えるのかということが今日、課題として指摘されたのかなと考えております。 ○大澤委員 ありがとうございます。そうすると、中止命令だけでは確かに、今のお考えに沿って申し上げれば、管財人の権限が止まったものをどうするかという問題が生じますけれども、禁止命令とセットにすることであれば、ごめんなさい、私が分かっていないのですかね、禁止命令の申立てをするということになれば、それはそれで今度、管財人の権限そのもの、今申し上げているのは担保実行の管財人ですけれども、こちらの手続についても止まるということにやはりなるとは思いますけれども、そのときも考え方は同じということですか。 ○笹井幹事 禁止命令が発令されれば、実行そのものが開始されないことになりますので、そのまま事業を設定者が継続することになると思います。再生とかが先行しているということでしょうから、その手続が開始され、別除権の行使としての事業担保権の設定ができない状態になってしまうということだと思います。 ○大澤委員 そこは、それで理解ができました。ありがとうございます。   もう一つ申し上げたいのは、3の倒産手続開始後に発生、取得する財産への事業担保権の効力のところです。こちらは集合債権、集合動産のところでも同じ議論がなされていますので、新たに何度も同じことを申し上げるつもりは全くないのですけれども、39ページの3の担保権の及ぶ範囲のところで、倒産手続開始時における価値に限定する必要はないのではないかと考えておられるようですけれども、こちらは、要は事業担保権に優先する債権の仕組みをどう考えるかによっても、やはり変わってくるところだと思いますし、そもそも事業担保権が何を把握するものかといったら、その事業価値だといったときに、倒産手続開始原因があって倒産手続が開始しているとなると、その事業に対する価値が倒産手続が開始した後にまた復活したとして、それが本当に事業担保権者が把握すべき価値なのかというところにやはり疑念が残るとは思っております。   一方で、そういった意味で、担保権の効力が及ぶというところはある程度考えられるとしても、及ぶ範囲のところについては、実行開始申立時の価値にやはり限定されるべきではないかと、その上でどの債権、労働債権なり何なり、一般取引債権なり、どこをどう優先するのかというところとのセットでここは考えていくべきところかなとも思っております。   それから、すみません、最後に一つだけ、プライミングリーエンについてですが、これは先ほどから皆様、委員の方々からもお話がありましたけれども、何らか事業担保権に優先するという融資の仕組みというものは、倒産手続によって非常に大事なものだと考えております。倒産手続開始原因がそもそももうある以上、窮境にあるのはもう間違いない状態の中で、資金を早急に融通を受けて事業再生を図るという意味では、制度的に担保された優先する債権という形での融資の在り方でないと、なかなかこういった形で事業担保という形で全部の事業が担保に取られているところに対する融資の在り方という意味では、融資する融資先、DIPファイナンサーが二の足を踏むということになろうかと思います。そういった意味での制度的な、プライミングリーエンという言い方をするかどうかは別として、制度的には優先弁済権が最優先としてなされる形での融資というものが必要であるということは、実務的には申し上げておきたいと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。大澤さん、1点だけ、伺いたいのですが、例えば、倒産手続が開始した時点における価値に限定されるとなると、事業担保権者としては企業の運営とか建て直しとかを一生懸命やっても仕方がないということになりますよね、全然自分には回ってこないわけですから。それはそれでいいのですかね。 ○大澤委員 事業担保権の在り方として、そもそも最初の考え方の問題なのかなと思っているのですが、債務不履行に陥った段階で、あるいは倒産手続との併存がなされるといった段階で、もはや設定者と担保権者がけんか状態になってしまっているわけで、そうなる前に事業として本来はきちんとして売るべきであったものではないかと思っております。そうすると、倒産開始原因があるような形での事業担保ということになるとすると、それはもう事業として最初に事業担保権者が把握した価値としては、そもそもほとんどもう残っていないのではないかというところがございまして、であれば、設定者等がむしろきちんと倒産手続の中で事業再生を図っていけるなら図っていくべきではないかとも思っている次第です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○井上委員 井上です。順にコメントしたいのですけれども、手続中止命令については、資料を拝見して、事務局の考え方をベースにすると理解していましたので、事業担保権の実行に際して選任された管財人が、中止命令が出たら、事業譲渡には踏み出せないのだけれども、事業自体の運営は、選任の効果は覆滅されずに、事業担保管財人が続けるという前提で、そういう状態で担保権者と再生債務者、あるいは管理型であれば再生手続の管財人が、別除権協定に向けて交渉すると理解していました。交渉がうまくいけば、それをベースに再生手続が進んでいきますし、協定ができなければ、中止命令の期間が終わって、事業担保の実行に向けて再び事業譲渡に向けて動き出すということかなと思っていたので、仮にそうだとすると、本当に38ページに書いてあるように、管理処分権の移転が繰り返されるとよくないといえるのか、とコメントしようと思っておりました。   というのは、事業担保権の実行が開始された後、債務者側は、一生懸命頑張って、すぐに対抗措置として倒産の申立てをした上で中止命令を取るのではないかと思うので、その段階での事業価値を考えると、中止命令が出たら、むしろ元の状況に戻した方が、事業運営とか経営自体はうまくいくような気もするのです。ですので、中止命令が出たときに、別除権協定の交渉の間、そのまま事業担保管財人が事業を運営し続けることがいいのかについては、少し疑問もあり、そうだとすれば、むしろ取消命令を導入すべきではないかとも思っておりましたが、もし、そうではなくて、先ほど山本先生がおっしゃったように、中止命令でも元の債務者に事業運営権が戻るということだとすれば、むしろそれは事業価値の維持という観点からは、よいのではないかと思いました。これが1点目です。   2点目は、38ページの3で、今、大澤先生がおっしゃった点に関わるのですが、私はむしろ、倒産手続開始後に取得した動産や債権について事業担保権が及ぶところに事業担保権の存在意義があると思っていまして、それが及ばないというのであれば、事業担保権はほとんど議論する意味がないのだろうと思います。ですから、そもそも事業担保権自体を制度として認めるべきでないという考え方であれば分かるのですが、事業担保権を事後取得財産に及ばないとしつつ制度設計するというのは、考えにくいのではないかと思いました。   というのは、集合動産あるいは集合債権の譲渡担保の利用場面をどういうふうに考えていくかにもよりますけれども、現状よりも広く認めていこうという方向にあるわけですので、それとの違いが少なくなってしまうような気がいたします。集合動産とか集合債権の譲渡担保の倒産手続における効力については、まだ意見がいろいろ分かれているところだと思いますけれども、基本的には手続開始時、あるいは実行時の財産のみを対象として、それ以上の効果を制限するべきであるという議論が比較的有力ではないかと理解しているのですが、その代わり、集合動産や集合債権の譲渡担保の場合には、カーブアウトといったような議論は出てこず、その処分対価は、満額担保権者が把握すると、こういうタイプの担保を指向することが考えられます。そうだとするならば、それは事業を継続させながらフリーキャッシュフローを把握するのとは違ったタイプの担保になり得るわけですけれども、そうではなく、むしろフリーキャッシュフローを継続的に把握する、あるいは、逆に言えば継続的なフリーキャッシュフローの現在価値を把握するという形で担保権を設定するとするならば、そこは事業担保の存在意義になり得るので、事業担保を考えるのであれば、私はこの3の提案を受け入れるべきではないかと思っております。   倒産するときには事業価値がなくなってしまっているのではないかという議論が先ほど大澤委員からございましたけれども、あくまでも金融債権などを全部ゼロカウントした場合、つまり、金融債務がない状態で、いわゆるフリーキャッシュフローを見た場合に、それでもなおゼロになるということは相当考えにくくて、そういう場合はほぼ破産だと思いますので、基本的には、再生の見込みがあるという状況であれば、事業価値はなお残っているという前提で、それを伴走しながら担保権者が把握していくというタイプの担保権として考えるべきではないかというのが私の意見です。   最後に、プライミングリーエンですが、プレDIPではなくてDIPファイナンス、すなわち手続開始後のファイナンサーは、恐らく共益債権と扱ってもらうだけでは不足であるという人たちを想定しなければいけないと私は理解しておりまして、その意味では、手続開始後の借入れですので、基本的には共益債権になるという前提で、手続内の優先順位でいえば事業担保権よりも上に行くということなのでしょうけれども、でも、なお牽連破産の場合、あるいは事業譲渡が思ったよりも長引く場合などを考えて、担保権を最優先で取りたいと、こういうニーズにどうこたえるかという問題だと理解しています。   その上で、それを本当に制度として設けるべきかについては、慎重に考えるべきではないかと思っておりまして、確かに米国ではこの制度があると理解しておりますし、そのほか、シンガポールでは同じように導入されたと理解しているのですけれども、むしろその他の国では、検討の上で、導入を見送った国も多いと聞いておりますし、その理由は、基本的には、この資料でいえば42ページ、最後のところに書いてあるように、当事者間の合意に委ねることでおおむねうまくいく場合が多いし、うまくいかない場合というのは機会主義的な行動を取るレンダーがいる場合ですけれども、その場合を想定して、適切な保護の内容を裁判所が判断する条件で最上位に担保が設定されてしまうという制度の存在が、平時のファイナンスにおいて与え得るといいますか、生じ得る悪影響、予測可能性の減少といったものとの比較で、慎重に考える必要があるのかなと思っております。これは今後の検討ということだと思いますけれども、プライミングリーエンについては、今のような印象を持っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○村上委員 ありがとうございます。私からは、3の倒産手続開始後に発生・取得する財産への事業担保権の効力について意見を申し上げます。そもそも事業担保権そのものの導入にそれほど前向きではないという立場ではあるということを申し上げた上で、労働者の立場から留意すべきと考える点について申し上げます。   先ほど大澤委員がおっしゃった御指摘と方向性は同じですが、39ページの担保権の及ぶ範囲について、労働債権などが優先される範囲がどの程度なのかということや、そもそも優先されるかどうかが現時点では検討段階であることも踏まえますと、倒産手続開始後に発生・取得する財産にまで効力が及ぶとする考え方には慎重であるべきと考えているところです。労働者の労働債権確保という観点からは、事業担保権における一般債権者の優先の範囲がどの程度なのかということも併せて検討していくことが重要だと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○鈴木委員 ありがとうございます。千葉銀行の鈴木でございます。私から、プライミングリーエンについて一言コメントさせていただければと思います。   プライミングリーエンについては、メインバンクの支援が手詰まりの場合でも、メインバンク以外が事業継続価値を見いだす場面というのがあり得るかとは思っておりまして、こういったものを検討していくのも必要かとは思っております。ただ、この議論につきましては、事業担保権の議論がスタートした時期に論点が示されたわけですけれども、金融機関の現在の実務から見ますと、後出しじゃんけんが勝ってしまうというところで、最もインパクトのある論点の一つだったと記憶しております。やはり不意打ち的に担保順位が入れ替わるということだと、入口段階からこの担保権を使うことが非常にためらわれるかと思っております。やはり使われる担保にしていくために、担保権者にとっての予測可能性とか保護を念頭に置きつつ検討していくのがよろしいかと思っております。そういった意味で、事業担保権者に経済合理性を検証する機会は与えられてよいかと思っておりまして、42ページに記載のような当事者間の合意というのは必要なのかなと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに、いかがでしょうか。なお若干、やはりどのような場面で実行が開始されて、通常はどういうふうにそれがストップする、あるいはストップしないで、どういうふうな形で営業継続がされるのかということに対しての認識ないしイメージの共有が必ずしもできていないのかもしれないという感じがいたしまして、皆さんの御発言が、それぞれが微妙に違うシチュエーションないしはプロセスを念頭に置いていらっしゃるような気もいたしますけれども、何かこの段階で事務局からございますでしょうか。 ○笹井幹事 今日、様々な点を御指摘いただきましたので、また改めて考えたいと思います。 ○道垣内部会長 ですから、事務局にお願いしたいのは、やはり制度として中止命令とか禁止命令とか、効力が及ぶ範囲という、そういうふうな条文的な整理の仕方というのも大切なのですけれども、どういうふうにしてスタートして、どういうふうな状況で、どういうふうにしてそれが運営されていって、労働者にもお金を払いながら、お金が足りないときにはどうやって借りて、その人には優先というか、きちんと払ってあげないと貸してくれないですから、どういうふうにするのかということの時系列的な流れをもう少し共有できるような形にして議論をしていくことでして、それが必要かなと思います。そういう形で再整理をしていただきたいと思います。ほかに、本日のところはよろしゅうございますでしょうか。   先を急ぐようで恐縮でございますけれども、今日頂いた御意見を踏まえながら再度検討していきたいと思いますので、次のところに移りたいと思います。   それでは、まだまだ煮詰まっていないわけなんですけれども、もう一度やるということを前提にしながら、部会資料19「担保法制の見直しに関する中間試案のとりまとめに向けた検討(8)」の「第1 動産及び債権以外の財産権を目的とする担保」についての議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 それでは、「第1 動産及び債権以外の財産権を目的とする担保」について御説明いたします。   動産や債権を目的とする担保権に関する規定を設ける場合に、動産及び債権以外の財産権を目的とする担保をどのように扱うかが問題となります。現行法の質権については、動産質権及び不動産質権に関する規定に続いて、財産権を目的とする権利質の規定を設けており、権利質の一類型として債権を目的とする質権の規定を設けており、これと同様に位置付けることも考えられます。また、本部会での審議では、新たな規定に係る担保権について総則的な規定を置くことも考えられるという御意見があり、そのような規定とすることも考えられるかと思います。   規定をどのような形式とするかは、新たな規定に係る担保権の法的構成とも関わる問題であり、また、法制的な観点からも検討する必要があることから、本文では規定の実質として、新たな規定に係る担保権の実体的効力に関する規定、私的実行手続に関する規定、倒産手続における取扱いに関する規定を動産や債権以外の財産権に対して適用するべきかどうかについて問題提起をしております。まず、動産、債権以外の財産権を目的とする担保目的譲渡も、財産権の移転という形式をとるため、当該財産権を真正に譲渡するために必要な要件に関する法律上の規定がある場合には、原則としてそれが適用されることになります。譲渡が担保目的でされた場合について、特別な規定を適用することも考えられないではないところですが、担保目的譲渡を新たな規定に係る担保権の一態様として規定する場合において、真正譲渡と異なる扱いをする必要がないのであれば、その成立要件等が真正譲渡の場合で同じであることを改めて規定する必要はないと考えられます。他方で、新たな規定に係る担保権を新たな担保物権として規定するのであれば、真正譲渡の場合と同様の要件を設ける必要があるかが問題となります。   また、部会資料12の第1では、個別動産を目的とする新たな規定に係る担保権の実体的効力に関する規定を取り上げておりますが、このうち動産及び債権以外の財産権を目的とする新たな規定に係る担保権にも適用することが可能なものとして、部会資料12、第1の2、3、5(1)、6、7、8及び9の規定が考えられるのではないかと思われ、それらの適用について問題提起をしております。   さらに、現行法上の取扱いも踏まえまして、動産や債権以外の財産権を目的とする新たな規定に係る担保権についても、私的実行に関する規定を設けることが考えられます。具体的には、帰属清算方式及び処分清算方式に関する規定の対象とすることが考えられますが、動産を目的とする担保権について猶予期間を設ける場合には、猶予期間を設けることが適切か、なども問題となると考えられます。また、動産や債権以外の財産権を目的とする新たな規定に係る担保権についても、民事執行法に基づく競売手続を利用することも可能とすることが考えられます。   最後に、倒産手続における取扱いについては、その担保権者は破産手続及び再生手続においては別除権者、更生手続においては更生担保権者と扱うことや、担保権実行手続中止命令の適用対象とすること、担保権消滅許可制度の適用対象とすることなどが考えられるところです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○加藤幹事 ありがとうございます。幹事の加藤です。3ページの18行目の登記登録制度が存在する財産権の範囲について質問があります。社振法の適用される権利はここに含まれるのでしょうか。例えば社振法の対象である振替株式や振替社債については、現在、質権記録はありますが、譲渡担保については譲渡記録しかありません。もし、動産及び債権以外の財産権についても新たな担保権を設定する際に順位を付けることができるという実体法上の規定が設けられるとしても、社振法の改正はしないということもあり得る、そういう前提での御提案なのでしょうか。 ○淺野関係官 御指摘いただいた3ページの18行目からの部分では、主に知的財産権などを想定して記載をしておりまして、御指摘いただいた社債、株式等の振替に関する法律の適用がある有価証券について主に想定していたわけではございませんでしたが、御指摘のとおり、社振法の適用がある場合には、口座への記載・記録というのが譲渡等の効力要件になっているかと思いますので、恐らく個別の検討が必要になってくるということは、個別の登録制度を有する知的財産権等と同じなのかなと考えております。 ○加藤幹事 御回答ありがとうございました。民法に動産及び債権以外の財産権の担保目的譲渡に関する総則的な規定が設けられるけれども、それに対応する社振法の規定が改正されるかどうかは現時点では分からないと、そういうことでよろしいでしょうか。 ○淺野関係官 そうですね、そこまでこの部会資料において検討の対象としているわけではございません。 ○加藤幹事 ありがとうございます。この点は部会資料19の最後の証券口座の担保化の話とも関連するのですが、証券口座の担保化は、例えば社振法の対象である振替株式に設定可能な担保権の内容が新しい制度によって柔軟化されるということであれば、わざわざ証券口座の担保化について規定を設ける必要性は小さいように考えています。実務のニーズ次第なのかもしれませんが、社振法の改正も可能であれば考えていただけるとよいのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。加藤さんに伺うべきなのか、事務局に伺うべきなのか、よく分からないのですが、社振法にせよ、知的財産に関するものにせよ、これは一種の物的編成なのですよね。つまり、どういうことかというと、動産譲渡登記の場合には、人的編成といいますか、特定を任意に行うという形になっていますので、譲渡登記であっても二重に付けることは不可能ではないのだろうと思うのですけれども、社振法とか特許法とかそういうときに、質権の登記ではなくて譲渡登記は二重に技術的には付けられるのですか。すみません、勉強してから来ればよかったのですが、思い付くのが遅いものですから。 ○加藤幹事 一旦譲渡しますと、口座からは消えるというか、減額記帳されますので、2回譲渡することはできないということになると思います。 ○道垣内部会長 ですよね。そうすると、担保目的の譲渡だというふうにしても、そのときには後順位は付けられないですよね。 ○加藤幹事 そういうことです。 ○道垣内部会長 質権ならともかくとして。 ○加藤幹事 いや、質権も。 ○道垣内部会長 質権もそうか、質権の口座に移ってしまうから。 ○加藤幹事 はい。昔は有価証券がありましたので、占有の順番で順位を付けることができました。しかし、社振法になってからは、もう質権記録により口座名義人の振替口座簿から質権者の口座に振替株式が移ってしまいますので、順位は付けられないということになると思います。 ○道垣内部会長 それは3ページの18行目から24行目とか、そういうところに書いてあるということなのですね。 ○加藤幹事 はい、恐らくそういう趣旨なのかなと思いました。 ○道垣内部会長 分かりました。どうもすみません、確認をさせていただきました。ありがとうございました。   ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。質問なのですが、2の新たな規定に係る担保権の成立要件のところで、契約上の地位に関する記述がございます。こちらの契約上の地位には労働契約も含まれるのかということを伺いたいと思います。もし含まれるとした場合は、担保権者の地位の移転には相手方の同意が必要になるので、実行時だけでよいのではないかという提案だと思います。しかし、設定時にも同意が必要なのではないかということや、同意した場合でも退職の自由が制限されることもないということを含めて、疑問を感じております。また、労働契約だけではなくて、例えばタレントの専属契約なども課題になってくるのではないかと思いまして、発言させていただきました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。事務局から何かございますでしょうか。 ○笹井幹事 ここは契約上の地位一般という形で考えておりましたので、民法539条の2が適用される範囲を念頭に置いておりました。したがって、何か特定の契約類型だからといって直ちに除外するということではありませんけれども、一定の契約類型については適用すべきではないということであれば、個別に対応するということは当然考え得るのではないかと思います。   ただ、民法の539条の2により相手方の同意が要件になっているため、相手方の保護というのは図られております。およそ労働関係だから除外しておくということも、もちろん考え得る一つの方策だと思いますし、いずれにしても同意が必要になるから特段の特則は不要であるという判断も十分あり得るのかなと思っております。   実行時なのか、それとも設定時なのかということについては、形式的に一応、担保目的の譲渡によって、その契約上の地位が移転しているのだと考えれば、それは自然に考えれば、設定時にも同意が必要だということになってくるようにも思われますが、更にどういう法律関係が生じているのかということについては、労働法と整合的な対策が必要になってくるのかなと思いまして、その部分について今、直ちに労働契約固有の問題点について私どもの方で特定の何か考え方を持っているということはございません。   最後に、契約上の地位が移転しているからといって、労働者の場合に退職する自由が制限されるわけではないというのは、これはおっしゃるとおりかと思いまして、仮に担保の目的になっているとしても、それはその法律関係が継続している限りにおいて担保の目的になっているということですので、それを解消することができるという地位があるときに、担保の目的になっているからといって直ちにそれが制限されるわけではないと考えております。 ○道垣内部会長 村上さん、何か続けてございますか。 ○村上委員 ありがとうございます。法律関係について、青山幹事などとも是非一緒に御研究いただければと思いました。退職だけではなくて、元の職場で働くということも併せて整理したいと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。民法539条の2という条文は、譲渡の効力は生じるけれども、譲渡の承諾が契約の相手方から必要であるという条文ではないのですよね。契約の相手方の譲渡承諾があったときに移転が生じるという条文ですので、譲受人と譲渡人との間で契約をしただけのときには譲渡の効力は生じないのですよ、その時点では。そのような条文の作りにおいて、対抗要件として承諾がされているわけではないとすると、元の労働関係のままにあるというのがこの条文の読み方なのではないかという気がいたします。ただ、民法529条の2が、少なくとも相手方の承諾がないと駄目だよねということは契約上の地位の移転について最低限のこととして書きましょうというふうな意味を持っておりますので、今私が申し上げたのも文言に拘泥しすぎている解釈なのかもしれず、さらには、もう少し安定した理解の下に話をしていかなければいけないと思います。村上さんの御指摘を踏まえて丁寧に考えていきたいと思います。ありがとうございました。 ○佐久間委員 ありがとうございます。少し取り留めないことを申し上げることになるのだと思うのですが、2ページの25行目、6行目ぐらいからそのページの終わりぐらいまでに、要するに、動産債権以外の財産権を目的とする新たな担保権に関する総則規定を設けることはどうかということがあります。それ自体については賛成でも反対でもなくて、そういうこともありうるかなという程度なのですが、30行目からの括弧書きに不動産譲渡担保は別だと記されているのです。ここに書いてあることはそのとおりだと思いますし、中間試案の段階で不動産譲渡担保について何か述べられるかというと、そういう状況には全くないとも思うのですけれども、この立法がなった暁に、不動産だけは、これまで相当の判例も譲渡担保についてあるにもかかわらず、何ら手当てをしないままでよいのかがすごく気になりました。当初から動産債権については手当てしましょうという了解があったのは分かっておりますが、それらに比較的近いと思われるような他の財産権についての担保に関しても一定の規定を設けました、しかし不動産譲渡担保については何もありませんと、それでいいのかなというのがすごく気になるという、本当にただそれだけなのですけれども、とにかくそういうふうに思いました。 ○道垣内部会長 非常に重要な指摘で、先ほど私が申し上げたことにも関係しているのですが、物的編成的な登記登録制度にのっている財産権になりますと、占有というものが観念できないとか、いろいろな問題があるのですけれども、観念できないというのは少し言いすぎですが、有体物ではないとかいうふうな問題があるのですけれども、少し不動産に近くなっているところもあるところ、動産及び債権以外の財産権の話は大きく異なるもののその双方を当然扱うけれども、不動産だけ扱わないということで整合性がとれているのかと佐久間さんに言われますと、とれていないかもしれないという気もいたします。 ○青山幹事 幹事で厚労省の青山でございます。話が戻ってしまいますけれども、先ほどの村上委員がお話しになった3ページの26行目以降のパラにある契約上の地位の移転の話、座長がおまとめいただいたとおりかと思うのですけれども、私はここは、契約上の地位が譲渡担保の目的になるということなので、担保として契約上の地位が譲渡されるということなのかなと思います。すると、第539条の2の同意が必要であるし、あと、雇用契約特有のものとして、民法第625条2項で重ねて使用者の地位を譲渡する際の労働者の承諾が要るというのもありますので、それが優先されるということなのかなと思いますけれども、そこはこちらも注意して見ていなかったので、よく考えたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。 ○青木(哲)幹事 ありがとうございます。神戸大学の青木です。4ページの下の方の4(2)、民事執行法に基づく競売手続を利用することについてですが、動産については確かにその点が提案されているのですが、債権譲渡担保については債権担保執行は想定しないということだったかなと思っているので、それとの関係でも考える必要があるのかなと思います。また、登記登録がされる財産権については、譲渡担保権者、つまり担保権者の名義で登記登録がされることになるのかなとも思いますので、差押えをどうするのかというところも考える必要があるのかなと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。佐久間さんがおっしゃった問題にも関わってくるところかと思います。   ほかに何かございませんでしょうか。全体としての皆さんのお考えはどうなのですかね。かなり違うし、個別立法で対抗要件などがあるようなところなので、もう触らないようにしようというふうなお考えが強いのか、やはり動産および債権についてここまで来た以上、これを放っておくというわけにはいかないだろうという、やはりそれは検討してしかるべき、全てのいろいろなシチュエーションについて条文を置くということはできないとしても、あるいは契約上の地位にしても、全ての契約上の地位について分析するのはおよそ不可能であるとしても、全体の方向性みたいなものは置くということで、解釈のよすがと言いますか、方向性を示すというふうな意味はあるのではないかというお考えと、皆さんのお考えはいずれでしょうか。大体の方向性としてどういうふうにお考えかについて、御意見がありましたら、是非お教えいただければと思うのですけれども。   佐久間さん、何かありませんか。 ○佐久間委員 では、思っていたことをただ率直に申し上げますけれども、今回の私の受け止め方は、この立法の作業というのは、やはり実務のニーズをまず第一に酌み取って、そこに可能な限り、もちろん重要だとなったらということでしょうが手当てをしようと、そういう姿勢で進んできているように思うのです。そうだとすると、総則的なものであるにしても、その他の財産権に関する担保について、個別にこういう財産権について、例えば知財とか何だかについて要るのだというふうなことがあったとして、一つ一つ全部手当てはできないのだけれども、それこそ共通の規定を設けることがどうもできそうであり、それが望ましいのだということであれば、やればいいのではないかと思っています。必ずしもそこまででないということになるとしても、資料にも書いてありますけれども、担保目的規律型と担保物権創設型の大本の議論からして、担保物権創設型だと、当初考えていたのは動産と債権についてだし、そこの規律が必ずしも他の財産権に一般的に及ぶわけでもないとなると、かなり異質な作業が必要なのではないかという気が私はしています。   だから、設けてはいけないなんていうことは全然思っていないのですけれども、これから検討にかけられる時間と、そこにおいて考えなければいけないことを考慮すると、繰り返しになりますが、設けてはいけないとは思っていないのですけれども、不動産について、つまり、かっちりした登記制度のあるものについて必ずしも譲渡担保の在り方を検討するわけでもないのに、動産や債権と同じような考え方がここはされるのかなというような財産権については対象となって、総則規定が及ぶというような規定をするのもなかなか大変なので、余り力を入れてやるのはどうかなと。むしろ、後で出てくるファイナンス・リースとか普通預金の担保化とか、そういう、結局個別にはなりますけれども、ここは規定を設けた方がいい、そして、こんな規定を設けることができそうだということについて差し当たり設けておくことで、私はいいのではないかと思っています。   でも、繰り返しますが、指名されたので率直に思っていることを言っただけで、別に発言したかったことではないということを、すみませんが、申し上げておきます。 ○道垣内部会長 なるほど。経緯はともあれ、佐久間発言として残るということかと思いますが、沖野さん、お願いいたします。 ○沖野委員 ありがとうございます。私自身は、個別にそれぞれに特有の規定は、検討の状況からしても、置けないだろうと思っています。しかしながら、今まで検討してきたものは、もちろん動産ゆえの特殊性、債権ゆえの特殊性に着目した規律群というのはありますし、動産と債権で分けて内容も変えているというところはあると思うのですが、その一方で、担保だからということに着目した、より一般性のある規律もあるように思っています。それで、自分としてはこんなことをという、本当にもうそんな感想レベルなのですけれども、そういう汎用性のあるものをすくい取ることはできるのではないか、ただ、どれが汎用性があって一般規定で、どれがそれぞれに特有の規定かということを区別するのは非常に難しい、でも、解釈のための手掛かりというのを必要なら、これらの規定を基に考えればいいのだということを示す規定は一つ、置けるのではないか、あるいは置くことが考えられないのかと思っておりまして、具体的には、性質に反しない限り準用するというような一般的な規定、例えば、売買の規定を有償契約に準用する規定のようなものとかを考えております。その場合、実質的には規定を置いていないのと同じで、ではどれが性質に反しないのかとか、それぞれの財産の特質に従って適用されるのかどうかというのを結局、逐一チェックしなければいけなくなるのですけれども、しかしながら、規律を及ぼしたいときに、単純に類推適用ということではなくて、その規定を持ってこられるという、そういう素地を置くことは考えられるのではないかと思っておりまして、逆にその程度しかできないのではないかと。できないのではないかというのは、先ほど時期的なということも申し上げましたけれども、財産は様々ありますし、今までの規律が一体どういう、一般的な担保に通則する規律であるのか、そうでないのかということを逐一性質決定するというのも難しいと思いますので、やれるとしてもそのぐらいではないかと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   実は契約上の地位の移転というものにつきまして、平成29年の債権法改正のときには最初、契約上の地位の移転について詳しい条文を置くことはできないかという話があったのですが、対抗要件制度とかそういうのも、契約上の地位というものが様々である以上、難しいだろうと考えられました。しかし、一切条文を置かないというのも、やはりこれだけ契約上の地位の移転について論じられてきているときに、まずいだろうという話で、少なくとも1個は置こうではないか、それにより契約上の地位の移転というものがある、ということを示すという感じになったと理解をしています。ある意味、内容がないといえば内容がないのですけれども。   そこから実は二つ、話が出てきて、だから、沖野さんのおっしゃるようにジェネラルな規定を1個置けばいいのではないかというふうな考え方もあり得ますし、しかし、契約上の地位については、その移転についてもきちんと条文を一応は置いたのだと、そうすると担保についても一応はそれについては置くべきではないかと、個別具体的な登記登録制度があるという財産権と違って、それは少なくとも置くべきではないかというふうな考え方もあり得るのかもしれないと思います。ほかに何かありますでしょうか。もちろん、ジェネラルな御発言をお願いしたいというだけではなくて、事務局が出していらっしゃるような、この規定についてはどうかということについての個別的な御発言でも結構なのですけれども、何かございますでしょうか。   よろしゅうございますでしょうか。時期的なという話が出ましたが、これも二つに分けて考えなければならないと思います。中間試案においてどこまでの具体性を持ったものが書けるかという問題と、最終的にどこまでの具体性を持ったことが書けるかという問題があって、前半については確かに、なるべく早い時期に中間試案を出そうということですと、時間がないのかもしれませんが、最終案に関してはまだ、なおいろいろ検討すべき時間はあろうかと思います。中間試案を出すというところの取りまとめには間に合わないかもしれないですが、個々具体的な制度というか財産権につきましても、あるいはジェネラルな方向性につきましても、御意見がございましたら、中間試案を目指してというだけでなくて、御議論を今後も頂きたいと思いますので、事務局にお寄せいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。   それでは、本日のところはこの辺りにさせていただきたいと思います。   そこで、次にファイナンス・リースというところに入るのですけれども、少し早いのですけれども、ここで一旦休憩を挟ませていただいて、その後、ファイナンス・リースに入りたいと思います。16分休憩を入れさせていただくということで、3時15分に再開をしたいと思います。よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○道垣内部会長 それでは、3時15分になりましたので、審議を再開いたします。   続きまして、部会資料19の「第2 ファイナンス・リース」について議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○近江関係官 それでは、ファイナンス・リースの部分に関する部会資料についての説明をいたします。いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約とそれ以外とでは、議論の内容や御意見の分布等も異なり得ると考えられるため、部会資料では、いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約とそれ以外とを分けて、記載をしています。   まず、フルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約についてです。   いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約について、担保に関する規定の適用についての法律上の規律を設けることについてどのように考えるかというゴシックの最初の部分につきましては、これまでと同様です。いわゆるフルペイアウト方式のファイナンス・リース契約について、担保に関する規定の適用についての法律上の規律を設けることについて、一読の審議におきましては、これに賛成する御意見と消極的な御意見とがあったものと認識をしております。部会資料の説明の欄に記載しましたとおり、実体法上担保として取り扱うということを確定させることでよいのかどうかという点や、あるいは会計、税法上の取扱いへの影響が生じ得るのか、この辺りの点が御意見の分かれ目になるのかなと考えておりますので、これらの点を踏まえて御議論いただければと考えております。   次に、いわゆるフルペイアウト方式のファイナンス・リース契約の定義について規定を設けるとした場合、その定義をどうするかという点についてということになります。冒頭のゴシック部分につきましては、前回の案から、リース会社が第三者からリース物件を取得するという要素につきましては、これを削除しています。これは、この要素が本質的なものではないのではないかという趣旨によるものです。また、いわゆるフルペイアウト要件の表現の方法ですとか、あるいはリース物件の利用権に対する担保権がリース料債権を担保するものであることを明確化するなど、表現ぶりの若干の修正を行っております。今述べました変更点のほか、ここでの大きな論点は、説明中にも記載しましたとおり、いわゆるフルペイアウト要件について、会計、税法上の定義との関係をどのように考えるかという点になろうかと思われます。これらの点を中心に御議論を賜れればと思います。   さらに、説明中に担保の目的物を利用権とすること自体には特段の異論はなかったと記載をしましたが、利用権ではなくリース物件そのものが担保の目的物と理解すべきであるという御指摘がおありでしたら、御指摘を賜れればと思います。   また、ファイナンス・リースにつきましても、厳格なフルペイアウトなどを要件とすることによって定義を狭く絞るという方法ではなく、リース料を被担保債権としてリース物件又は利用権に担保権を設定する取引について、実体法上の取扱いや実行、倒産時の規定を設けることで対応すべきという御意見もあり得るかもしれません。要するに、担保権を設定するものについてはこういうふうに取り扱うべきだというふうな方法で対応するという御意見もあり得るかということです。もしこのような御意見がおありでしたら、御指摘を頂ければと思います。   なお、ファイナンス・リースの定義との関係では、諸外国の法制におけるリースの定義につきまして大塚関係官が調査をいたしましたので、後ほど大塚関係官の方から御報告を差し上げようと思います。   次に、実体的効力につきましてですが、これも内容につきましては基本的に前回の部会資料と変更はありません。ただ、記載内容について検討を要する点にお気付きの先生方がおられましたら、御指摘を賜れればと思います。   対抗要件につきましても、ゴシック部分は前回の資料と変更はありません。説明には、あり得る問題点を検討して記載しております。この点も含めて御指摘がありますれば、賜れればと思います。   実行、倒産につきましても、基本的に前回の部会資料と同様になります。部会での御議論を踏まえて説明中に追記をしております。この点では、特に担保権の実行とリース契約の解除との関係をどのように整理するのかというのが御議論があったところであると認識をしています。   最後に、いわゆるフルペイアウト方式のファイナンス・リース以外のファイナンス・リースについてになりますが、この点については前回の部会資料と同様、規律は設けず解釈に委ねることとしてはどうかという提案をしております。   部会資料の内容は以上になります。先生方の御議論を賜れればと思います。よろしくお願いします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、先ほどの説明にもありましたとおり、大塚関係官から諸外国の法制におけるリースの定義について説明をお願いしたいと思います。どこの国も、結構、いろいろな考慮の下に微妙な定義をしておりますので、是非よろしくお願いいたします。 ○大塚関係官 調査員の大塚です。ファイナンス・リースの定義につきまして外国法制の調査を行いましたので、ここに報告いたします。簡単なもので恐縮ですが、部会資料19-2に諸外国におけるファイナンス・リースの定義を幾つか列挙しております。本部会との関係では、フルペイアウト方式かどうかでどのような違いがあるのか、どういった規律が適用されるのかといった点まで検討すべきだったかもしれませんが、今回はそこまで調査、整理はできておりません。この点は御容赦いただけますと幸いです。   では早速、中身に入ってまいりますが、まず1ページ目、アメリカではUCCの第2A編にリースの規定があります。その中においてファイナンス・リースの定義がなされているところです。すなわち、UCCはファイナンス・リースにも原則としてリースの規定、賃貸借の規定が適用されるとしつつ、しかし、ところどころでファイナンス・リースには適用しない、されない規定や、ファイナンス・リースにのみ適用する規定が置かれているということになります。   定義は資料掲載のとおりで、かなり詳細なものになりますけれども、大きく三つの要件があります。(ⅰ)は、リース貸主が物品を選択しないということなどを定めており、(ⅱ)は、リース貸主がリースとの関係で物品を取得するということを定めております。(ⅲ)は(A)、(B)、(C)、(D)ありますが、いずれもリース借主がリース貸主とサプライヤーとの間の合意を知る機会というものが与えられているということを定めております。この三つを全て満たす場合がファイナンス・リースということになります。   また、これらに加えまして、そもそもリースであることもファイナンス・リースであるためには必要であります。リースの定義は、資料の2ページ目冒頭に掲げております。こちらは、リースを売買や担保権と区別するための定義と説明されております。例えば、リースではなく担保権であるとされますと、この第2A編ではなくて第9編の適用がされるということになります。それゆえ、ファイナンス・リースも基本的には担保権ではなく、飽くまでリースとされているということになろうかと思います。   続きまして、イギリスでは法令上、ファイナンス・リースの定義は恐らく存在いたしません。判例は、そこに挙げたものがよく引用されるのですが、会計基準を参照している点に特徴があります。そこで、ここではイギリスの会計基準を掲げておきました。会計基準の考え方、少し長々と引用してはありますが、要するに、リース物件に関するリスクとリターンが誰に帰属するのかということを基準にするものです。リスクとリターンのほぼ全てがリース借主の方に帰属するのであれば、これはファイナンス・リースであって、そうでない場合にはオペレーティング・リースということになります。   続いて、3ページ目、フランスでは通貨金融法典にファイナンス・リースの定義が置かれております。こちらは金融規制の側面も有している規律になります。ここでの定義は、1項から4項までありますが、いずれもリース借主がリース物件の所有権を取得する、所有権といいますか、リース物件を取得する権利を有しているかどうかということが基準となっております。   続いて、ドイツでは、2010年改正前までは民法典中にファイナンス・リース契約という文言が存在いたしました。この文言が初めて採用されたのは消費者金融法典であって、それが民法典にも取り入れられたという経緯がありまして、民法典中に規定があるとはいえ、基本的には事業者、消費者間の資金援助の規定をファイナンス・リース契約にも適用するというものです。したがって、規定の内容は消費者保護規定という側面が強いということになります。この規定は2010年改正によって改正されまして、ファイナンス・リース契約という文言がなくなっております。ただし、その規定自体が削除されたというよりも、ファイナンス・リース契約という文言を使わず、より実質的な内容を要件とする規定になったということです。改正前後でこれが完全に一対一対応しているかまでは調査し切れませんでしたが、参考のために改正後の条文をここでは挙げております。   リース借主によるリース物件の取得を基準としている点はフランスと共通しているように見えますが、フランスがリース借主の方の権利、取得する権利を基準としていたのに対して、ドイツではリース貸主が取得させる権利、すなわち、取得させることによって代金を回収し、それによって投資を回収できると、そういった権限があるかどうかという点を基準としているところにフランスとドイツの違いがあるかなと思います。   続いて、4ページ目、EUについてです。EUではDCFRの中に、ファイナンス・リースの定義はありませんが、リースの規定の適用範囲をめぐってファイナンス・リースの適用の有無が検討されております。条文としては、資料に掲載したもののうち(3)、(4)辺りが関係しそうに見えます。(3)は、リース借主に所有権が移転する場合、リースの規定を適用しないとしておりまして、特にフルペイアウト方式のファイナンス・リースはこれに当たって、リースの規定が適用されないのかとも思われまして、また、日本でもそのような紹介がされることがあるのですが、しかし、この(3)の規定自体は、DCFRを起草した人の見解によりますと、これはリースと売買を区別するための規定として位置付けられておりまして、必ずしもファイナンス・リースを念頭に置いた規定ではないかもしれないということになります。また、別の箇所においては、ファイナンス・リースにも基本的にはリースの規定を適用するのだと説明されておりますので、これがどこまで適用されるのかというのは必ずしも明確ではありません。   続きまして、韓国では2010年改正によって商法の中にファイナンス・リース事業の規定が設けられました。これは日本の商法でいうところの商行為の章において個別の取引類型が定められていますが、そのうちの一つとして位置付けられたということになります。定義においては、リース借主によってリース物件が選択されるという点が基準となっております。   続きまして、5ページ目、中国におきましては、2020年に民法典ができまして、その中にファイナンス・リース契約の規定が置かれております。こちらは契約法、契約各則の中の典型契約の一つとして位置付けられています。中国民法典は日本の民法典と比べて典型契約がかなり多く規定されておりまして、ファイナンス・リース以外にも、例えばファクタリングなどの現代的な契約類型も取り入れられております。定義は韓国法と同じようなもので、リース借主の選択ということが基準になっています。   続きまして、国際的な取決めであるUNIDROITとUNCITRALを紹介いたします。UNIDROITには二つのものがありまして、第1が国際的なファイナンス・リースに関するUNIDROIT条約であります。これはその名のとおり、国際的なファイナンス・リースについて規定するものですが、ファイナンス・リースについても定義されておりますので、ここに掲げております。取りあえず2項だけ見ておきますと、三つの要件があります。(a)は、リース借主がリース物件とサプライヤーを選択するということ、(b)は、リース貸主がリースに関連してリース物件を取得し、かつ、そのことをサプライヤーが知っているということ、(c)は、リース料がリース物件を取得するためのリース貸主の投資額、これを基準に決定される、計算されること、これを定めております。   第2に、リースに関するUNIDROITモデル法というものがあります。こちらは各国の国内法のモデルとなるように作られたものです。ファイナンス・リースの定義は先ほどの条約とほぼ同じものなのですが、(c)に重要な変更点があります。すなわち、リース料を決めるに際してリース貸主の投資額を基準とすることは、ファイナンス・リースの定義にはならないということ、そういった方針転換をしているという点です。なぜこういった方針転換をしたかというのは、(注8)で多少触れておりますけれども、実務の変化があって、それに対応するものだと説明されております。   最後に、UNCITRAL担保取引モデル法の規定を掲げておりまして、こちらはファイナンス・リースの定義規定ではないですが、取得担保権という広い概念を用いることでファイナンス・リースも含めて規律しようというところに特色がありましたので、紹介した次第になります。   雑駁ではありますけれども、私からの調査報告は以上となります。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、ファイナンス・リースにつきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと存じます。よろしくお願いいたします。 ○松下委員 ありがとうございます。松下です。資料の12ページから13ページにある(5)の倒産法上の取扱いについて質問をさせて頂きます。13ページの10行目のエのところで、リース借主の有する担保権を破産、再生、更生の担保権消滅許可制度の対象としてはどうかという本文があり、特に外す理由もないではないかという説明がされているのですが、破産で考えると、どういう場面を想定してこういう提案がされているのか、ぴんと来ませんでした。つまり、破産管財人が破産財団に属しているリース物件の利用権を任意売却する場面というのを考えることになるのかと思いますが、しかし、利用権はリース会社の同意なしに勝手に売れるものなのでしょうか。仮にリース会社の同意がないと利用権を売れないとすると、担保権消滅をなお必要とするのは、リース会社が譲渡には同意するが担保権については何も合意しないという場面を想定しているのでしょうか。更生でも同じで、利用権を任意売却する場面としてどのような場面を想定しているのかについて、教えていただけますでしょうか。よろしくお願いします。 ○笹井幹事 御指摘を受けまして、確かに、売却するために担保権を消滅するという場面は、考えにくいのかなと思いました。ただ、担保権としての扱いをしていくときに、できるだけほかの担保権と合わせて規定をしていく方が、法制度としての統一感が出てくるのかなと思いまして、場面としてなかなか考えづらいということであえてここだけ除くのが適当なのかということもあったものですから、このように記載しました。けれども、御指摘を受けまして、担保権を外して譲渡する、任意売却するという場面は確かに考えにくいかと思います。どういう扱いをするかにつきましては、もう少し考えさせていただければと思います。 ○松下委員 今そういう指摘をしましたけれども、こういう規定を設けて有害ということはないと思うので、並びの方が、統一感があるということであれば、特に、担保権消滅から外すというようなことをわざわざせよということを言っているわけではないので、その点は御理解下さい。   次に、再生については、既に資料にありますとおり、最判の平成20年の補足意見の中で取り上げられていたかと思うのですが、効果はどうなるのかということを今まで考えたことがなかったので、これも確認をさせていただきたいと思います。再生手続でリースについて担保権消滅をすると、利用権価額の納付によってリース貸主の同意なくして担保権が消滅して、再生債務者は残リース期間中、担保権がない、担保権の実行されることのない利用権を取得するということになるのでしょうか。つまり、残リース期間中、フルに目的物件を利用できるという地位を取得するということになるのでしょうか。そういう理解でよろしいのか、事務局の御検討で何かあれば、教えていただきたいと思います。 ○笹井幹事 正しく先生がおっしゃったように、ファイナンス・リースが担保取引であるとして、担保の目的財産は、担保権が消滅したからといって、当然、その所有権が再生債務者の下に発生するというわけではありませんので、利用権だろうと考えられます。そうすると、そこには一定の元々約定されていた期間というものが定められていて、その期間が終わってしまえば返さないといけないのだけれども、その期間が終わるまでは担保権の負担のない形でそれを利用することができるということになるのかなと考えていた次第です。 ○松下委員 ありがとうございました。 ○道垣内部会長 それは、貸主が借主に対して利用権を売り切った状態になるということですね。 ○笹井幹事 正しく売り切ったという感じかなと思います。 ○道垣内部会長 分かりました。 ○阪口幹事 阪口です。まず、5ページの定義のところで、リース借主がリース物件に対して有する利用権を目的として、リース貸主が、リース料債権を被担保債権とする担保権を有することなどを要件とすると書かれていますが、この部分に関しては、日弁連及び大阪弁護士会で議論しても、これは要件ではないのではないかという意見が出ました。結果的にこうなるだけであって、誰もそのように意識していないのに、これを要件とすると、それを外した途端にここでいうリースでなくなって、おかしくないかということです。リースの契約書を見ても、こんなことはどこにも書いていないわけですよね。だから、この要件というのは少し難しいのではないか。そもそもこの利用権に対する担保権設定という法律構成は、消去法で出てきたものだろうと思います。所有権の上にのっけられないから、もうこういうしかないではないか、というぐらいの法律構成なのだろうということです。したがって、この利用権担保ということ自身には、非常に違和感がありつつ、これしかないだろう、ぐらいの感覚なので、上記の部分は要件には入れない方がいいのではないかという意見が強かったというのが1点です。   次に、しかし、そうはいっても対象は利用権しかないと考えたときに、11ページから12ページに掛けての解除と実行のところが問題です。一読でも、解除と実行は二本立てではなく一本で在るべきではないかという意見を述べさせていただいて、そのことは本文にも少し書かれています。一読のときには根拠が自分でも説明できなかったのですけれども、もう一度考えてみると、所有権留保の場合には物権と債権という二つの道がきちんとあるわけですよね、つまり、担保所有権というものを売主は持っているし、契約関係を解除する権利もあります。片方は物権であり、片方は債権である。ところが、ここでいう利用権というものは一体何かというと、それはもうファイナンス・リース契約に基づく利用権としか説明ができないはずです。特殊な物権がここで観念できるといえば別ですけれども、恐らくそうではないでしょうから、ファイナンス・リース契約に基づく利用権としか説明できないのであれば、それはその利用権の担保権を実行するということは、すなわちファイナンス・リース契約に基づく利用権を失わせること、イコール解除となるはずです。そこは利用権担保という説明をする以上は、解除と実行は一本にならざるを得ないのではないのかと思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○井上委員 井上です。コメントするのが難しいところですけれども、ファイナンス・リースを法制化しようとすると非常に難しいのだろうなということはよく分かるのですが、今回の事務局の整理として、仮に法制化するとした場合に、どういうところを目指しているのかがよく分からなかったのです。これは、譲渡担保とも、動産でいえば所有権留保とも異なる別の担保権を創設しようとしているのでしょうか。私は、そういう方向ではなくて、こういう取引によって成立した担保権は、結局のところ、債権担保あるいは債権譲渡担保と同じようなものが発生することを前提として、利用権に対する債権担保が発生する取引としてどんなものを想定するのかと、そういうことかなと思っておりましたので、これも一読のときに申し上げたとおりですし、今、阪口先生がおっしゃったとおりなのですけれども、ここで挙げられている要件のうち、最後の四つ目のファクター、これは要件とすべきではなくて、むしろこれを効果とする取引が何かと、そういうアプローチになるのかなと思っておりました。   それで、今回そう捉えるとすると、債権法の改正のときのように、典型契約の一つとしてファイナンス・リースを捉えるかどうかという話ではないので、ファイナンス・リースという言葉を使う必要があるのか、あるいは、そもそもリースという言葉を使う必要があるのかということ自体にも疑問を感じておりまして、そうすると、担保目的取引規律型のルールとか、あるいは担保物権創設型の譲渡担保のルールとかとは違って、ここで何かルール化を目指すとすると、むしろ一定の取引をした場合には、譲渡担保と呼ぶかどうか分かりませんけれども、債権担保が成立したものとみなすとか、あるいは推定するとかいうルールということで、それを法制化するかどうかを議論するというのであれば、イメージが湧くなと感じているところです。   その上で、あえて少し考えてみますと、先ほど申し上げたように四つ目の要素というのは要件ではないように思いますので、基本的には、一定額を支払う約束、すなわち金銭債務がまずあって、二つ目には、その金銭債務の支払いを条件として、債権者所有の物の使用収益が債務者に許されるという約束があって、三つ目には、ただ、物の使用収益の有無及び可否に関わらず、金銭債務は免れないという約束がある。例えばですけれども、そういう場合には債務者の使用権に債権者が担保を取得したものと推定する、そういったルールを設けるかどうかを検討することが考えられるのではないかと思ったのですが、繰り返しになりますけれども、ファイナンス・リースをここで定義して、そこにほかでの議論とは異なる何か特別な担保権のルールを幾つか設けていくのは、なかなか難しそうだという印象を持ちました。   もし特則を置くとすれば、恐らく対抗要件のところでして、その意味では、先ほど申し上げた三つの要素が仮にあった場合に、利用権に担保を設定したものと推定するなり、みなすなりというルールを設けた場合に、フルペイアウト的な要素は、むしろ対抗要件のところで考えるべきではないかと思いまして、ここの対抗要件のところの資料にも書いてありますけれども、ある意味、所有権留保と同じように、被担保債権の額と利用権の額がバランスしているということで、弊害が余りないといいますか、対抗要件を求めることもなかろうということであれば、フルペイアウトの中身にもよりますけれども、そういった要素は、対抗要件なしで第三者に対抗できるという効果に結び付くのかなとも思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。結局、利用権というものを契約によって作って、それを担保取得するということならば、それが債権なのかどうか分かりませんけれども、少なくとも権利担保の一種であって、その中で規律というか、その中で処理をすればいい問題になるのではないかということなのだろうと思うのですけれども、権利を目的とする担保というものが幾つかあるとして、ファイナンス・リースについてだけ、ある取引が担保目的であるかどうかということの判断のファクターを法律上規定するということの是非というのは、いかがですか。井上さんに伺いたいのです。つまり、権利担保の中で位置付けられるとなったら、それが担保目的かどうかというのはもう一般論だから書けないのだということなのか、やはりファイナンス・リースというのはそれだけの独立性といいますか成熟性というものがあるので、それについてはどういった場合に担保として扱うのかというのは書いていいのだという話になるのか、その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。 ○井上委員 譲渡担保とか所有権留保とかと並び立つ別の担保というイメージではないと申し上げたのは、正にその点で、そうすると、ファイナンス・リースについてなぜ規定を設けなければいけないのかということにはなります。当事者が意識的にというか、意図して担保目的で、リース料を被担保債権として利用権に担保を設定するという合意をすれば、もちろん当然有効なわけなので、それでいいわけなのですけれども、ただ、リース取引の特色は、当事者はそういう文言を契約において使っておりませんし、意識としても、利用権を担保に入れるという意識は恐らくないと思うものですから、ただ、実質を見るとそう扱うのが適切ではないかという取引だと思いますので、それをファイナンス・リースと呼ぶのかどうかは別として、歴史的にといいますか、フルペイアウトのファイナンス・リースと呼ばれてきたようなもののうち、物の利用の対価としてではなく、とにかく確定的に払わなければいけないものとして金銭債務があり、ただ、支払いを怠ると物を利用できなくなるという取引を、利用権への担保設定とみなすのか、推定するのかと先ほど申し上げましたが、そういうルールを置くことが実際上のニーズとしてはあると考えるかどうかの問題で、理屈としては、部会長がおっしゃったような観点から、ここだけについて、なぜルールを置くのかという問題はやはりあるので、その特殊な部分をどこまで考慮して、そういった規定を置くのかという問題として議論すべきではないかというのが先ほどの発言の趣旨です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。実質的には担保であるといういろいろな類型があるといったときに、成熟度に応じて、あるものについては規定を置くというのは十分に考えられる立法態度ではあろうかと思いますけれども、少なくとも位置付けとしてそういうふうに考えていくという御発言だろうと思います。 ○佐久間委員 ありがとうございます。今の井上さんの御発言を伺っていて、どうしようかなと思ったのですけれども、どうしようかなと思ったことまで含めて、少し発言させていただきます。   最初思いましたのは、阪口さんの御発言を聞いて、どうなのかなと思ったところがあったのです。どうなのかなというのは、阪口さんの発言がおかしいという意味ではなくて、ファイナンス・リースの要件、5ページにある1(1)の要件のところの4番目の要素として挙げられている、利用権を目的としてリース料債権を被担保債権として担保権を有することは要件ではないのではないかと、それはそのとおりだなと私も思っていました。ただ、そう思っていたのですけれども、では四つ目の要素を除いて前の三つで、これで当事者の担保設定の意思を客観的に認めるというか、そのような取引であると認められることがきちんと表れているのかな、と思いました。何か足さなければいけないのではないかと感じていたところです。   そうしたところ、阪口さんが実行のところに飛ばれて、私的実行をしたら、それで利用権が消滅し、それがつまり解除なのではないかとおっしゃったのですね。ということは、それは多分、含意として、リース借主の方から解除することは当然許されてはいないし、リース貸主の方からも、その私的実行の形で、それは帰属清算方式の場合ですけれども、処分清算でもきっと同じなのでしょうが、実行の形で利用権を消滅させる以外に、解除というのは元々これは想定されていない取引なのだということが入っているのかなと思いました。そこで、正しいかどうか分からないのですけれども、例えば賃貸借との違いとして、解除が許されていないということを要素として入れるのはどうなのかな、と思っていたところです。   そう発言しようかなと思っていたら、井上さんがおっしゃったことで、なるほどと思ったのですけれども、逆に4番目の要素に挙がっているものが結局、当事者がリース料債権、別にリース料債権でなくてもいいのだと思うのですけれども、利用権を目的として、その利用の対価を被担保債権として担保権を設定したということが、明示の合意はされていなくてもいいのですけれども、それさえ認められたら、これをファイナンス・リースというかどうかはともかくとして、権利担保の一つとして認めればいいではないか、それが債権だったら債権を目的とする担保だし、債権ではない物権の一種なのだとすると、その特殊な物権を目的とする担保だし、どちらにも法性決定できないような、よく分からないというものだとすると、先ほど話題に上った、動産又は債権以外の財産権を目的とする担保だし、というふうにして、フルペイアウト方式に限らず、別に規制を設けるということではなくて、先ほどの議論に戻って、総則的な規定を設け、それの対象になるようなものとしてだけ想定するということもあり得るのかなと思いました。   すみません、最初、阪口さんの意見を聞いてこうかなと思ったところ、手を挙げてしまった後に井上さんの発言を聞きましたので、ああでもないこうでもないということになってしまって、申し訳ないのですけれども、取りあえず感じたことを申し上げました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。私は途中で考え事に入ってしまいまして、何を考えていたかというと、佐久間さんの御発言のポイントというのは、阪口さんがおっしゃった最後の部分、これは井上さんもおっしゃったのですが、その部分は効果だろうということについて、それを逆に表に出した定義にするということなのかなという気がするのです。つまり、ある者が所有する物件について、他の者が当該物件について有する利用権を、前者が取得することが担保目的でなされるときには、権利担保だということ、少し今、うまく言えませんでしたけれども、その意思といいますか、状況といいますか、そういうものをいろいろな要素をもって認定していくということになるということかなというふうなことを思いながら伺っていました。なかなか微妙なところがあるかもしれません。   ほかに何かございますでしょうか。 ○水津幹事 いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リースと、これに関連する所有権留保とについて、意見を申し上げます。部会資料の対抗要件の箇所では、ファイナンス・リースは、所有権留保と類似しているため、これと整合的な規律を設けるべきであるとされています。この観点から、留保売主の権利についてと同じように、リース貸主の権利についても、特段の対抗要件なく第三者に対抗することができるとしたらどうかと提案されています。  ファイナンス・リースについては、リース貸主からリース借主がリースによってリース物件の利用権を取得し、リース借主に属することとなったその利用権について、リース貸主がリース借主から担保権の設定を受けるとされています。そこで、部会資料は、リース貸主の権利については、本来であれば対抗要件の具備が必要であるということから出発しています。他方、狭義の所有権留保については、様々な見解がありました。その中には、目的動産の所有権について物権変動がないから、もともと対抗要件の具備が不要であるということから出発する見解もあったように思います。そうすると、留保売主の権利とリース貸主の権利とについて、特段の対抗要件なく第三者に対抗することができるという同一の規律を設けるとしても、狭義の所有権留保の法的構成の捉え方によっては、その論理の道筋が異なることとなります。ファイナンス・リースは、所有権留保と類似しているため、これと整合的な規律を設けるべきであるとするのであれば、両者の法的構成の捉え方も、整合的なものにする方が望ましい気がいたします。  この方向性をとりつつ、部会資料におけるファイナンス・リースの法的構成を前提とするのであれば、次のような理解をすることとなりそうです。すなわち、ファイナンス・リースについてリース貸主からリース借主がリースによりリース物件の利用権を取得し、リース借主に属することとなったその利用権について、リース貸主がリース借主から担保権の設定を受けるとする一方で、狭義の所有権留保については、留保売主から留保買主が売買によって目的動産の所有権を取得し、留保買主に属することとなったその目的動産について、留保売主が留保買主から担保権の設定を受けるとする。この理解によれば、特段の対抗要件なく第三者に対抗することができるとする規律は、狭義の所有権留保とファイナンス・リースとのいずれについても、本来であれば対抗要件の具備が必要であることについての特則であると位置づけられます。   狭義の所有権留保については、目的動産の所有権が留保買主に属することとなることを認めることについて、疑問もありそうです。しかし、部会資料を全体として見ると、目的動産について担保権の設定が競合することが前提とされていたり、倒産手続において留保売主が別除権者や更生担保権者として扱われたりするなど、目的動産の所有権が留保買主に属することとなることを認めることについて、論理必然かどうかはともかく、法的評価において整合的な規律が設けられている気がいたします。いずれにせよ、ファイナンス・リースと所有権留保との規律を整合的なものにするというのであれば、法的構成の捉え方についても、両者の整合性を意識した方がよいように思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。とすると、5ページの定義のところなのですけれども、2段落目の3行目ですが、リース借主がリース貸主に対して、リース物件の取得の対価、金利その他の経費等相当額をリース料として支払う債務を負うことということが書いてありますが、拡大された所有権留保とかについては対抗要件が必要で、単純に当該目的物についての売買代金のみの完済が所有権移転の条件になっているという場合と、それを区別するということからすると、リースにおいても当該物件に関わる費用だけが被担保債権になっているというのをどこかに書かないといけないということですかね、バランス上は。どうなのですかね、よく分かりませんが。 ○山井関係官 経済産業省の山井でございます。一読の際の発言とおおむね重複してしまうところはありますが、改めて我々が所管するリース業界からヒアリングを行いましたので、発言させていただきます。   ファイナンス・リースは、多額の初期投資を要することなく設備投資を行うことが可能であるため、特に資金力の乏しい中小企業だったり、スタートアップ企業にとって、設備投資の重要な手段となっていると認識しております。しかし、ファイナンス・リースを担保と規定することで、かえってリースを通した設備投資が縮小して、本部会が意図している資金調達の円滑化や多様化に沿わない結果を招くのではないかという点を中小企業庁共々、懸念しているところがございます。   具体的には、ファイナンス・リースを担保権と規定すると、倒産手続、特に再生型の倒産手続などにおいて、共益債権的な役割を果たしているリース料債権の回収可能性が低下してしまい、リース事業者としてはユーザーの企業の与信判断を厳格化せざるを得なくなり、その結果、リース料の増加などにつながってしまい、ひいては中小企業のリースを通した設備投資が縮小してしまうのではないかというような心配の声を聞いているところでございます。   また、これは後ほど議論されるかもしれませんけれども、ファイナンス・リースを担保権と規定すると、会計税制上のファイナンス・リースの取扱いに影響するのではないかという懸念もあり、仮に取扱いが変更されると、特に中小企業が税制上の特例を受けることができなくなり、また、そもそも会計処理に対応できない企業も出てくる可能性があるなど、ファイナンス・リースを利用しづらくなってしまうのではないかというような声もございました。   したがいまして、ファイナンス・リースについて、利用権を担保として設定する契約として法律上の規定を設けることが、真に企業の資金調達の円滑化や多様化という目的に沿うのかという観点、事業者あるいは中小企業の金融の円滑化に資するかという観点なども踏まえ、慎重に検討することが必要ではないかと考えているところでございます。このため、議論を進めるに当たって、こういった影響を受ける中小企業だったりリース業界などが意見を申述するような機会を設けていただくと幸いかなと考えているところでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。その御認識の前提なのですけれども、会社更生においてもリース料債権は共益債権として逐次全額が弁済されるというふうな前提でお話しですか。それは判例法理とは必ずしもイコールではないと思うのですが、判例法理がよくないという考え方は、ひとつの立場として十分あり得るのですけれども、もっとリース貸主の権利を強くしないとうまくいかないのではないかという前提なのでしょうか。 ○山井関係官 特に、民事再生を前提としたケースについて声を聞いているところでございます。判例法理についてどうかという意見があるわけではないのですけれども、判例法理を明文化した場合であっても、リース実務に影響を及ぼして、ユーザー企業の資金調達の円滑化に反する結果を招くおそれが懸念されるという意見を聞いているところでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。ただ、何も置かなくても、井上さんがおっしゃったように、これは権利担保の一つなのだという判例法理といいますか、そういうのが進展するという可能性は、他の担保制度を整備することによって、生じるのだろうと思うのですけれども、とりわけファイナンス・リースについて明文の規律を置くということは避けた方がいい可能性があるということなのだろうと思います。それは一つの見解として十分に尊重に値する御意見だろうと思います。   ほかにございませんでしょうか。 ○大澤委員 大澤でございます。今、経産省の方からお話がありましたが、実務上は民事再生法上もほぼ別除権付再生債権ということでファイナンス・リースが扱われていると理解をしております。このファイナンス・リースそのものをどう規定するのかというところについては、やはり非常に難しいと、先ほど井上先生からもありましたけれども、難しいというお話は十分理解はしておりまして、倒産法の観点から申し上げても、いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース以外のものも、いろいろな形のファイナンス・リースがあると理解しておりまして、それは倒産手続、民事再生等を含めて、ほぼ別除権付再生債権として扱われているのだろうと思っております。   そうすると、部会資料の中にフルペイアウト方式以外のものをどう扱うかと、解釈によるというような形でどうかというような書き方もなされてはおりましたけれども、規定化するのであれば、規定の中にうまく取り込めればと思っております関係で、フルペイアウト以外のものも、本当は担保の性質を有するものについては担保として扱うというような形で、何とか制度化できないかとも思っている次第です。   ただ、すみません、まとまりがなくて恐縮ですが、担保としての性質を有するファイナンス・リースであれば担保として扱うべきという、何かぐるぐる回ったことを言っていますけれども、ただ、一方でそれをきちんと書けるのかと言われたときに、書けないのではないかというジレンマも持っておりまして、ただ、実務上そういった意味で、ファイナンス・リースがフルペイアウト方式以外のものも担保として扱われている機会が多いということだけはお話をさせていただきたいと思って、今、発言をさせていただきました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   いかがでしょうか。仮に条文を一切置かなくても、判例法理を理解するに当たって、利用権の担保化であると考えるならば、それは要件については担保権の設定、取得ということになって、他の財産権を目的とする担保として扱われるということになるという分析は、非常に説得的だろうと思うのですけれども、その際に、仮にですよ、そうであると仮定したときに、なお11ページの対抗要件なのですけれども、少なくとも単純所有権留保、つまり被担保債権が当該リース物件の取得、何とかかんとか、金利とかに限定されるというふうなリースにおいては、利用権の担保化なのだけれども、別に第三者対抗要件は不要であるということについては、いかがでしょうか。こういう例外、そもそも例外だと見るべきなのか、それとも、メカニズム上これは不要だと考えるべきなのか、あるいはやはり必要だと考えるべきなのかというふうないろいろな意見があろうかと思いますけれども、この点、特に(3)について、いかがでしょうか。   利用権というのは債権債務関係かどうか分かりませんが、自己を債務者とする担保、自行預金の質権取得みたいな形になりますので、対抗要件に関して別建てで考えるというのは十分に成り立ち得るのだと思いますけれども、担保として一貫して規律するためには対抗要件を要求すべきであるという御意見はございますか。   それは特にないと考えてよろしゅうございますでしょうか。   それでは、ほかの点について、なお。いろいろなところについてかなり実質的にはお話を頂いたような気もいたしますが。けれども、井上さんの発言に始まりまして、根本的な問題は残ったままなのですが。よろしゅうございますでしょうか。   大塚関係官の方から、いろいろなものを調べてみた上で、調査したある定義を採用するのがよいというふうな、定義に対する、何か、この定義がよいというのはございませんか。 ○大塚関係官 調査員の大塚です。特にこだわりはないのですけれども、調べていたときに思ったのが、ファイナンス・リースというのをどこに規定するのかと、井上先生のお話にもあった話なのですけれども、典型契約としてとか、あるいは商行為の一つとして規定する場合には、やはりファイナンス・リース契約の定義というのが必要だと思うのですが、担保の一つとしてどこまで規定するのかというのは、なお疑問の余地はあるかなと感じました。   その中で、佐久間先生がおっしゃっていた、途中で解除が想定されない、特に借主からの解除というのが想定されないという点は、これは実はUCCなんかではそういったものが具体例として挙げられておりまして、担保とリースとの区別ではなく、担保と売買の区別なのですが、途中で、つまり、リース料を全て支払って、取得の対価分支払うまでは解除できないとか、あるいは解除したらその分、全部支払わなければいけないというような場合には、これはリースではないのだと、売買なのだと説明されていたりしますので、こちらをある種、担保権のメルクマールとすることはあり得るのかなと思います。   それから、水津先生がおっしゃっていたファイナンス・リースと所有権留保の関係につきましては、UNCITRALで同じように扱われておりまして、物の所有権などを取得するための資金が提供された場合、金融債権を被担保債権とする担保の場合には、優先性を与えよう、対抗要件が必要ないという話ではないのですが、そこは同じように優先権を与えればいいのではないかという議論がありましたので、そういった実質面からも少し検討というか、同じようにする必要はあるのかもしれないなと思います。   取り留めもない発言ですが、以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○大西委員 まず総論として、リースを担保権と扱うかについてですが、私は、私的整理での実務がリース債権を金融債権とは異なる扱いで処理しているので、そのような実務への影響がないのであれば、いいのかなと思っております。現実的にはコーポレートの企業価値を対象に与信を行う金融機関と、物の価値をベースにしたリース取引業者とは、少なくとも債権者としての属性は異なると思うので、これまでの再生実務に影響がないのであれば、こういう形でいいと思います。   それから、定義のところですが、この1から4に関して先ほど井上先生がおっしゃったお考えもあるかと思うのですが、やはり定義としては単純にフルペイアウトだけではなく、例えばオートリースのように残価設定があるリースの場合や、リースバックのように途中まで債務者が使用収益した後にファイナンスのためにリースするようなケースも踏まえた定義にすべきと考えます。そうした場合、2番目の定義としてリース借主がリース貸主に対してリース物件の取得の対価、金利とあるのですが、この取得の対価というのは、恐らく全部又は一部のような表記を加えて柔軟な定義にすることが妥当と考えます。また、一般的なリースの実務としてリース期間満了後の再リースというのがありますが、再リースのように残部の利用権を更にファイナンスする場合も射程に置いて広くとらえた定義にすべきと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。全部又は一部といったところの御指摘は、細かいですが、重要な話だろうと思います。   ほかに、差し当たって、いかがでしょうか。   それでは、どういう形でやっていくかということにつきましても含めまして再検討して、次の機会にまた御意見を賜れればと思います。   そこで、先に進んで恐縮ではございますが、部会資料19の「第3 普通預金を目的とする担保」、「第4 証券口座を目的とする担保」について、御議論をお願いしたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 それでは、まず、14ページの「第3 普通預金を目的とする担保」について御説明いたします。普通預金を目的とする担保の法的構成については、預金債権を担保の目的とするという考え方と、契約上の地位である預金口座を担保の目的とするという考え方があるところですが、普通預金口座を担保の目的とする考え方については、マネー・ローンダリング規制との関係や本人確認手続との関係で問題が生じ得るなどの指摘があることから、本文では、預金口座ではなく預金債権を目的とする担保という考え方に従い、普通預金債権を担保の目的財産とすることを前提とした規律を置くかどうかについて問題提起しております。   また、普通預金債権を担保の目的財産とする場合、担保の種類については質権と譲渡担保権の双方があり得ます。この点については本部会での審議において、担保法制の見直しに当たり、そもそも債権、質権をどのように位置付けるかを踏まえて検討するべきであるという御意見などもあったことから、担保権の種類については引き続き検討することとし、本文の提案では単に担保権と記載しております。   現状、普通預金を目的とする担保の設定は可能であり、一旦対抗要件が具備されれば、その後の預金額の増減に関わらず、その全体について担保の効力が及ぶことについては、学説上、大きな異論は見られないところですが、普通預金債権は通常の債権とは異なる特殊性を有しており、また、従前は普通預金債権を担保の目的とすることができるかどうかも明確でない状況にあったことを考えますと、規定を設けることに意義があるという考え方もあり得るところです。   そこで、本文1(1)では、普通預金債権に担保権が設定された場合には、設定後の預金口座の入金部分についても担保権の効力が及ぶ旨の規定を設けるかどうか、そして、普通預金債権の担保権の設定について対抗要件が具備された場合には、対抗要件具備後の預金口座への入金部分についても第三者に対抗することができる旨の規定を設けるかどうかについて、それぞれ問題提起しております。   もっとも、この点については、法制化の必要性について疑問を提起される御意見もあったところであり、また、本文(1)のような規定を設ける場合には、担保権の設定が可能な場合を一定の範囲に限定する必要がないかが問題となりますが、適切な範囲の限定が可能かについては、更に検討の必要がございます。   また、現行法の下で解釈が分かれている論点として、普通預金債権を目的とする担保権設定のために担保権者の支配(コントロール)が必要かという問題があります。これは、担保権者が設定者の預金口座を支配するような取引類型に限って普通預金担保を認めようとする観点から議論をされているものですが、我が国の普通預金担保についてこのような要件を必要とするかどうかについては、必ずしも議論が熟しているわけではなく、現状においては、その要否は解釈に委ねるのが相当であると考えられることから、本文(2)では、支配(コントロール)を普通預金担保の有効要件又は対抗要件とするかについて、特段の規定を置かないことを提案しております。   さらに、本文(1)の規定を設けるとすると、法律上、普通預金債権を目的とする担保設定が可能であることが前提となりますので、担保権の設定が可能な場合を一定の範囲に限定する必要がないかが問題となります。もっとも普通預金担保が必要とされる取引の種類を過不足なく規定することは困難であると考えられることから、本文(3)では、普通預金債権を目的とする担保権を設定することができる場合を設定者が法人である場合に限定することについて、問題提起をしております。これは、普通預金担保の利用場面として挙げられる債権の流動化やファイナンスにおいては、個人が設定者となる場面は想定されにくいと考えられるのに加えまして、個人を設定者として普通預金担保が設定されると設定者の生活に悪影響をもたらす可能性があるためです。   もっとも、このように設定者を限定することについては、特定の債権についての担保権の設定者を限定することの正当化根拠、同様に担保権の設定者を限定すべき財産はないか、個人事業者が事業用に開設した口座の預金債権についても担保権設定の可能性を排除してよいかなど、検討すべき課題もございます。また、そもそも預金担保の設定には預金開設銀行の承諾が必要ですので、銀行に対する規制に委ねれば足りるという考え方もあり得るところです。   次に、18ページの「2 普通預金を目的とする担保権の実行」では、一読に引き続き、預金債権を目的とする担保権の設定に関わらず、預金開設銀行は差押えがあるまで設定者による預金の払戻しに応ずることができる旨の規定を設けるかどうかについて、問題提起しております。この点については、本部会での審議において、現在の実務においては自行預金担保が普通預金担保の活用場面の大部分であることから、本文のような規律を設ける意義は限定的ではないかという御意見があった一方で、自行預金担保以外の場合にも普通預金担保の利用場面を広げていくニーズがあるとすれば、本文のような規定が意味を有することになるという御意見もございました。   19ページの「3 普通預金を目的とする担保権の倒産手続における取扱い」についても、一読に引き続き、預金残高の増加を否認の対象とするかどうか、倒産手続開始後の預金口座への入金部分に対する効力についてどのように考えるかについて問題提起をしております。これらはいずれも、集合動産譲渡担保又は将来債権譲渡担保についてどのような規定を設けるか等に関連いたしますが、普通預金担保について何らかの規定を設ける必要があるかについて御議論いただければと存じます。   最後になりますが、20ページの「第4 証券口座を目的とする担保」については、支配を中心とした方法による間接保有有価証券の担保化の導入可能性を検討すべきという御指摘があること等を踏まえ、一読において問題提起をしたところですけれども、将来証券口座に加入する有価証券を含めて担保化する制度を設ける必要性を主張する御意見が必ずしもこの部会では見られませんでしたので、特段の規定を設けないことを提案しております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御議論、御意見を頂ければと思います。 ○山崎委員 ありがとうございます。山崎です。一読目のときにも申し上げたのですけれども、普通預金への担保設定につきましては、特に中小規模事業者にとっては、万一の際に事業継続や生活の維持、給与支払いなどが困難となることが想定されるため、慎重な対応が必要であると考えています。しかるに、(3)にあるように、少なくとも設定者が法人であるときに限るなど、何らかの制限を設けるように御検討いただきたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに何かございませんでしょうか。 ○日比野委員 どうもありがとうございます。第3の普通預金を目的とする担保について、まず、規定を設けるかどうかという点につきましては、明確化されることによって運用の安定性、確実性が増すということは、一読のときに本多委員からも発言をさせていただいていたと思います。他方で、現状でその利用が比較的限られた場面になっているというのも、そのとおりと理解をしておりまして、銀行が全体として明文化するニーズが非常に強いということになるかというと、各銀行が現状とっているスタンスなどにもよるものと理解をしております。   そうすると、明文化というのは恐らく利用を拡大するという政策的な方針を望ましいと考えるかどうかという点と、また、本文にも書かれており、今、山崎様の御発言もあったとおり、交渉力の弱い主体が、恐らく専ら金融機関以外の取引先から預金の担保提供を求められるというような事態が生じることにならないかといった観点での検討が必要と考えております。そのような意味では、山崎様が御指摘になられた点につきましては、拡大を図るというのであれば営業性個人を含めるという方向性になるだろうと思う一方、より弱者保護的な発想を考慮すると、法人であれば全て認めてよいのかといった論点も出てくるのではないかということで、立法的には結構難しい問題が残るところと思っております。   なお、18ページの13行目辺り、そもそも金融機関が承諾をするのが前提なのだから、これに委ねればいいのではないかという指摘もあろうかと思いますけれども、第三債務者という立場である金融機関において、その担保の設定が担保権者、担保設定者間で適切な力関係の下での交渉によりなされたものであるかどうかを評価、審査して判断するというのは、かなりの困難を伴うと思っておりまして、これで解決できるといえるのかについては、難しいのではないかと考えております。   2の、実行の部分ですけれども、ここについては、規定とすれば、預金取扱金融機関としての立場での安定性を求めるということになろうかと思います。債権者の立場からしたときに、この規定ですと、差押えができるのが1回限りなのか複数回なのかというところが、余りはっきりしないと思いますので、もし仮に制度化をするということであるとすると、その辺りの解釈問題、例えば、担保権者が差し押さえる前に他の債権者から預金差押えがあったときに、その優劣というのがどのように整理されるのかということは、この資料だけでは必ずしも明らかではないようにも思いますので、もし立法化するならば、そのようなことも整理していかないと、明文化はできたのだけれども、実務のところは解釈のままということになると、少し使いづらいという状況が残ってしまうという可能性があるではないかと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。1点だけ申し上げますと、例えば、他の債権者が差し押さえたらどうなるのかというふうな問題について書いていないのは、この部会資料の作り方は、債権を目的とする担保権の一般の問題と同じになるという前提なのだろうと思います。2でわざわざこういうことが書いてあるのは、第三債務者が拘束されない、普通質権ですと、その質権の設定がありましたという通知を第三債務者が受けると任意弁済が制限されるとかの効果が発生するわけですが、この場合には制限されないという特則をここで置こうとしているから、これだけが書いてあるのだろうと思います。全体としてもっとより明確にすべきであるということならば、それはそうかもしれないですが、一応作りとしてはそういう作りであるということでございます。 ○鈴木委員 ありがとうございます。千葉銀行の鈴木でございます。私も、部会の資料、それから日比野委員からも御指摘があったとおり、現状、普通預金担保につきましては限定的な場面で使われているという認識でして、これまでの実務では、この限定的な場面において特段問題なくワークしているように思っております。また、法律で明文化することで、より幅広に活用が広がるかといったところですけれども、金融機関の中ではさほどイメージできるものはなくて、明文規定がどうしても必要かというものでもないかと思っております。ここについては、これまでのいろいろな議論の中で、不明瞭だった部分などを明確化するというところで意義があるのかなと思っております。   仮に事業者間の商取引などに普通預金担保が広く開放されるようなことになりますと、銀行の対応としては恐らくは、担保設定の申出に対して是非を都度、都度、個別に判断して、質入れ制限特約の解除を承諾するというフローになると思われますけれども、これは金融機関にとって新たな負担になるのかなと思っております。一読目の議論では、質入れ制限特約自体をなくしてしまうという御意見もあったかとは思いますけれども、フリーハンドに汎用的に使われることになりますと、設定だけではなくて担保処分の場面もありますし、解除の管理、局面ごとの管理が出てきまして、より社会的に大掛かりな担保制度となるのであれば、民間の金融機関が負うには重い負担になってくるのかなと思っております。あと、担保提供用の口座と通常の決済口座などの細かい使い分けが行われるようになるかとも思っておりまして、不経済な面も出てくるのかなと思います。現状以上のニーズがどんなところにあるかといったところは、よく見ていく必要があるのかなと思います。   一方で、事業担保権の検討に当たって預金も担保に含める前提といたしますと、複数の金融機関にまたがって預金担保を設定するという実務が想定されますので、ここの部分に対応する規定は何か考えておく必要があるのかなと思っております。事業担保権個別での議論になるのかもしれませんが、今まで以上の使われ方が想定される部分として、見ていく必要があるのかなと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○大澤委員 大澤でございます。今、山崎さんあるいは日比野さんからお話がありました、普通預金を目的とする担保の適用範囲のところでございます。法人にというような形での制限を掛けるというようなお話がございましたが、やはり法人と一口に申し上げても、やはり弱者的な中小企業においては、倒産直前に必ずしも適正とはいえないような金融業者から、こういった形で普通預金担保でぎりぎりに借りるというようなことも容易に想定されまして、そういった形での使われ方というような、やや病理現象的なものも想定されますので、この目的の範囲というところについては、より慎重な検討をしていただければと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに何かございませんでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。普通預金を目的とする担保の適用範囲のところでございます。退職金目的あるいは社内預金目的での普通預金口座を有しているところもございますので、その点について問題意識を持っております。退職金についてはこれまでも発言をしてきましたが、労基法18条の強制貯金の禁止の例外としての社内預金がどのようになっていくのかという懸念を持っております。賃確法では、貯蓄金の保全措置が事業主には義務付けられておりまして、金融機関等との保証契約や信託会社との信託契約などの措置が執られている場合は、倒産などの場合でも保全されるということになります。しかし、その他の措置として、質権や抵当権の設定であるとか、あるいは預金保全委員会を設置して貯蓄金管理規程や勘定を設けるような場合も厚生労働省令では認められるということでございます。そうなりますと、本当に実際どの程度そのような後者の措置が利用されているのか、あるいは倒産した場合の保全措置として十分なのかという懸念があるところです。普通預金を担保とすることの是非の判断だけではないところではありますけれども、このような課題があるということを十分踏まえていただければと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○阪口幹事 阪口です。既に、消極的という表現がいいかどうか分かりませんけれども、慎重に検討してもらいたいという意見が幾つか出ていますけれども、私もその補強をしたいと思います。   現状の実務では、既に御紹介があるとおり、限定的にしか使われておらず、その限定的な範囲では特に問題は生じていない。それは閉じた世界の中でお金がぐるぐる回っている状況だろうと思っています。他方、金融実務家向けの本でも、現状は認められるかどうかよく分からないから慎重に、みたいな形に書かれているけれども、仮に明文でできるとなれば、では債権保全の方法として利用しようと考えざるを得なくなるわけです。しかし、例えば、否認のところにも書かれていますけれども、お金がぽんと普通預金口座に入ってくること自身は別に誰の悪意でも何でもないので、常に否認できるわけではなく、危機時期以降か前かは別にして、とにかく添え担保で普通預金を担保に取っておきますという実務が広がってしまうと、これは弊害があるだろうと思っています。   更に言うと、倒産実務への影響があります。破産するにしても民事再生するにしても、当然、予納金とか、申立て代理人の費用とか、いろいろなお金が掛かります。それを、今は、申立て直前に普通預金から、こんなことを言っては何ですけれども、抜けるものは抜いて、その費用に充てるという実務になっていますけれども、仮に広く普通預金担保が一般化してしまうと、預金を引き出していいのかという問題になってしまう。18ページには、第三債務者としては払い出しに応じることができるという規定が検討されていますけれども、これは飽くまで応じても問題ないよという第三債務者である金融機関の問題であって、設定者及びその代理人が引き出すことは、普通預金担保の法的性質が質権だとすると、質権侵害ではないかという議論だって起きかねないわけです。予納金分の引き出しが質権侵害と言われる心配は流石にないと思いますけれども、では弁護士の費用はどうかとか、例えば、今は、破産だったら従業員の解雇予告手当に払うために預金を引き出して、優先的破産債権にすぎない解雇予告手当に対して、開始決定前に払ってしまうという実務があるわけだけれども、そんなことに影響しないか。破産、倒産実務にいろいろ影響する危惧があるので、慎重な検討をお願いしたいということになります。また、もし、そこは、法律ではなかなか難しいということであれば、一読のときに本多委員の御説明もあったと思うけれども、ソフトローというのかな、やはり本当に必要な場面に限定していくソフトロー、運用、監督指針、何らかのものは最低限必要だろうと思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかにございませんでしょうか。   少し昔話をしますと、昭和30年代に1個、金沢地方裁判所か何かの判決があって、普通預金担保、質権設定が認められるというのがあって、その後ずっと議論がなかったわけですが、1988年になって議論が始まった。なぜそのときに始まったかというと、いわゆるサービサーリスクというのがよく言われ始めたからなのだと思うのです。つまり、資産流動化をして、オリジネーターがサービサーとなって回収し、それを引き渡さないうちに倒産してしまったときにどうなるのかという話があって、そのリスク回避を普通預金担保という形ではできないのかという話があり、そういうのが背景にあったと思うのですけれども、だから、特定のお金だけが入ってくる口座で、特定の目的にだけしか支出されない口座というのが最初に念頭に置かれて発生した議論なのだろうと思うのです。   私が伺いたいのは、そのようなサービサーのときとか、ほかに類似する実務が十分に分かっていないかもしれませんが、一定の場面において普通預金担保を使った方がよいというふうな実務ニーズというのは現在あるのかという問題と、もう1個は、もしそれだけに限定するということになったら、先ほど阪口さんはソフトローとおっしゃいましたが、ソフトローでやるぐらいしか方法がなくて、それだけに限定するというのは難しい、そうなると、解禁すると全部解禁してしまうことになるので、結局規定するのが難しいという話になるのかということですけれども、まず前半の、そもそもの議論の発端としてのサービサーリスクみたいな問題は、現在ではどうなっているのですか。誰か教えてくださいませんか。 ○井上委員 井上ですけれども、部会長、よろしいでしょうか。今御説明くださったように、証券化取引等においてサービサーのリスクを回避するために、預金に担保を設定することができるかどうかについては、確かに議論はあって、実際上は、コミングルリスクと呼ばれるサービサーリスクについては、一定限度にとどめる形でのみ込んでやっている取引が多くて、必ずしも預金担保を設定しているわけではなく、むしろ設定しない場合が多いと思うのですけれども、オリジネーターが通常の取引に使っている預金口座の開設銀行と、そういったストラクチャードファイナンスのアレンジャー金融機関が同一、あるいは同一グループである場合には、銀行の同意が得られますから、預金担保が設定できます。ですから、有効に設定できることが明確化されれば、利用するニーズはあるかもしれないとは思います。   ただ、預金担保のニーズがそれに本当に限られるかというと、恐らくそんなこともなくて、まだ数は少ないと思いますけれども、ABLと呼ばれるような、事業会社が一定の事業サイクルを引当てにして担保を設定してお金を借りる場合に、在庫担保、売掛債権担保と並んで、在庫や売掛債権が回収金の形態になったときに、それもシームレスに把握したいということですと、そのABLの対象となっている在庫の売掛金が入金された預金を、専用口座を設定して保管し、それに預金担保を付けるというニーズも、今どのぐらい行われているかは分からないですけれども、あり得ると思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。井上さんを念頭に置いて私は質問していたのですが、ABLの場合も、当該普通預金というのは入ってくるお金というのと出ていく形態というのが比較的特定されているという感じなのでしょうか。 ○井上委員 多分、そこは借主との交渉になるのかもしれませんけれども、一般的に、借主がそれ以外の事業や活動にも使っている口座を丸ごと担保に入れることには通常は抵抗があると考えられますし、レンダー側もABLとして与信判断をしているのだとすると、正にその事業サイクルにおけるキャッシュフローを捕まえられれば、それで足りるはずですので、そういう意味では、実際に預金担保を利用するとすれば、別口座を設けるか、別口座を設けることが仮に事業の性格上、難しいということであれば、金額を限定するか、そういう形で、全ての預金を包括的に取ろうということには、ABLの場合は、ならないのではないかと推測します。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   先ほど日比野さんからお手が挙がっていたと思いますが、よろしゅうございますか。 ○日比野委員 では、せっかくですので、よろしいでしょうか。今の話にそれほど付け加えることはないのですけれども、井上先生がおっしゃるとおり、まずニーズという意味で言えば、部会資料の15ページのところでも例示を頂いておりますとおり、一定の分野でニーズはあろうかと思います。ただ、今正に御指摘があったとおり、入出金をしっかりとコントロールできるものとか、プロジェクトファイナンスのSPCの口座のように、想定しない債権者が現れることが考えづらい借入人の口座というものが対象と思います。   また、口座を1つ新たに開設するということについても、取引口座を変更すること自体を嫌がられたり、お客様との関係で指定口座を別の銀行にするのは困るといったニーズもあるかと思います。やはり一般の事業法人の普通預金を担保とする場合において、専用口座を開設するというのはかなり大掛かりな仕組み、あるいは一定以上の規模感の取引になってくるのではないかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに何か。   規定を置くとしても何らかの制約というものが必要で、それが設定者が法人であるということだけで足りるのかというと、仮にそれでは足りないということになったときには、それをどう文言上起こすのかということになりまして、阪口さんのおっしゃるように、ガイドラインみたいなものしかできないということになると、なかなか難しいということなのでしょうかね。   まだまだ御意見いただいても結構なのですけれども、もう一つ、最後の最後の証券口座を目的とする担保については特段の規定を置かないことにしてはどうかという話があるのですが、これについてはまだ御意見を頂いておりませんが、加藤さんは先ほどの御発言の途中で、これに関連するという話をされていましたけれども、何か御発言はございませんでしょうか。 ○加藤幹事 ありがとうございます。先ほど言いたいことは全て申し上げたつもりですが、基本的に余りニーズがないのであれば、わざわざ作る必要はないという考え方に異存はありません。普通預金口座の担保化については、口座の中に入っている預金債権を担保に取ることが既に可能であるため、口座の担保化という形で制度整備をする必要性は小さいと理解しています。   一方、証券口座の中に入っている、例えば振替株式などについては、民法に新しい制度を作ったとしても、社振法の改正ができないのであれば新しい制度を利用して担保権を設定できないということになります。証券口座の担保化の方法として、学説は、口座管理機関である証券会社と担保権者との間の契約によって、口座名義人による処分権限を制約する形での担保化を想定していたと思います。このような契約による担保化の効力、特に第三者に対する効力というものを認めるというような形での法制化は意味があるのではないか、特に、口座の中に入っているものについて担保に取ることに何らかの制約があるのであれば、口座自体の担保を認めるということにも意義があるように考えておりました。   追加でもう1点、本日の部会資料19では、証券口座の担保化について特段の規定を置かないこととしてはどうかと御提案されているわけですけれども、これは中間試案でもこの文言は残るということなのか、それとも、中間試案の段階から証券口座を目的とする担保という項目自体なくなるのか、お考えをお聞かせいただければと思います。 ○道垣内部会長 加藤さんの考え方としては、特段の規定を置かないというのは分かるけれども、一応議論を喚起するないしは、そういうふうな社振法の改正うんぬんの議論、ここがそれに適した場かどうかはともかくとして、そういうふうな話もあるから、書いた方がいいということですか。 ○加藤幹事 少数意見があったと書いていただくだけでも構いません。ただ、最終的には部会の皆様の御意見と事務局の判断に従いたいと思いますけれども。部会長の御判断に従います。 ○道垣内部会長 いや、お互いに責任を押し付けて。何かありますか。 ○笹井幹事 事務当局といたしましては、今、道垣内部会長がおまとめになったとおりだと思いますけれども、私どもとして残す、残さないという判断をするというよりは、今日こういう形で資料をお示しいたしまして、部会の中でどういう議論が出てくるのかということを踏まえて検討するつもりでした。もし、これはもう余りニーズもないし、やる必要もないのではないかということが総意であれば、中間試案の段階からもうこれ自体を削ってしまうということも考えていたのですけれども、今日、加藤先生の方からいろいろ御指摘もありましたので、それを踏まえ、もちろんほかの先生方からも御意見がありましたら、それを踏まえまして、残すか残さないかというのを判断するということになろうかと思います。 ○道垣内部会長 いかがでしょうか。今の話に限りませんが、普通預金担保及び証券口座を目的とする担保についての御意見を伺いできればと思いますが。両方とも何となく消極的という感じなのかもしれませんが、本日のところはこれでよろしゅうございますでしょうか。 ○井上委員 ごめんなさい、何度も。最後の証券口座のところについては、私は、もし社振法の改正自体も視野に入れられるということであれば、是非検討の対象にすべきではないかと思います。社振法を一切動かさずに、口座管理契約上の地位といいますか、それを担保に入れることにしたときに、今、加藤先生がおっしゃったとおりのアレンジメントをどう担保化するのかについては、社振法をいじらないと、有価証券自体の帰属を動かせないので、限界があるのかなと思っておったのですけれども、社振法自体を改正して、今、使い勝手が悪いと思われているところ、私は余り網羅的には把握できていませんけれども、順位が付けられないとか、担保目的の譲渡をしたときに担保的な効力を得られるような制度になっていないとか、質権記録も必ずしも使い勝手がよくないとかいう辺りが併せて改正の検討対象になるのであれば、それは検討すべき事項かなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。社振法の改正自体は別のフォーラムということかもしれませんが、私どもの検討の中で、社振法上の問題点としてこういうものが指摘されたのだけれども、民法等の改正では不可能だということで、論点整理を行っておくということは、今後のいろいろな社振法等の発展のためにも重要かと思いますので、それは残すのだったら、中はきちんと説明した方がよろしいかと思います。   ほかに、いかがでしょうか。日比野さん、よろしゅうございますか。 ○日比野委員 収束であればもうあえて発言しなくてもいいかと思ったのですが、証券口座を目的とする担保、それ自体の話と少しずれる話なのですが、今、井上先生あるいは加藤先生がお話しされた、社振法の議論に関して、証券口座の中には、社振法の対象ではあるのだけれども、ほふりが取り扱っていないがゆえに、ほふりの機能に乗せられていない金商法上の有価証券が存在すると理解しております。そのような有価証券を担保に取得するニーズは金融機関にはあり得るものと思っているのですが、有効な方法が見当たらないですし、かつ、証券口座を提供している金商業者の協力も得られないという中で、実務的に担保を取ることが難しいものが存在します。なので、証券口座を目的とする担保が設定できることによって、そのようなものを担保に取得できることになるのであれば、金融機関の融資の促進という観点からは一応のメリットはあるのだろうと思った次第です。しかし、これは証券口座を目的とした担保の問題というよりは、金商業者が取り扱っているそのような性質の金融商品に対する担保設定の問題でしたので、この場での発言をどうしようか迷っておりましたが、部会長に助けていただいたので、発言させていただきました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。できなかったこと、将来の課題として存在していることというのを、きちんとまとめておくというのも重要なことでございましょうから、御発言いただいて大変有り難いと思います。   ほかにございませんでしょうか。   それでは、本日の審議はこの程度にさせていただければと思います。   次回の議事日程等につきまして、事務当局から説明をしていただきます。 ○笹井幹事 それでは、前回少し御説明させていただきましたけれども、次回、本来ですと9月27日は予備日ということでお願いしておりましたが、進捗状況その他に鑑みまして、次回開催させていただければと思います。   次回、日時は9月27日火曜日の午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省7階、共用会議室6・7でございます。 ○道垣内部会長 それでは、法制審議会担保法制部会の第24回会議を閉会にさせていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。また9月27日によろしくお願いいたします。では、どうも失礼いたします。 -了-