法制審議会 商法(船荷証券等関係)部会 第5回会議 議事録 第1 日 時  令和4年10月12日(水)自 午後1時30分                      至 午後5時47分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  船荷証券に関する規定等の見直しに関する論点の検討(4) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○藤田部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会の第5回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は熱田委員、衣斐幹事、竹林幹事は御欠席と伺っております。また、上田委員、金子委員、北澤委員、洲崎委員、松井委員、池本幹事、小出幹事、笹岡幹事、松井幹事はウェブで参加されると伺っております。   なお、本日は日本貿易会から参考人として高橋様にウェブで参加いただいております。   それでは、開始いたします。   まず、前回に引き続き、本日はウェブ会議の方法を併用して議事を進めたいと思いますので、ウェブ会議に関する注意事項を事務当局に説明してもらいます。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。前回の部会と同様のお願いになりますが、念のため改めて御案内をさせていただければと存じます。   まず、ウェブ会議を通じて参加されている皆様におかれましては、御発言される際を除き、マイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願い申し上げます。御質問がある場合や審議において御発言される場合には、画面に表示されている手を挙げる機能をお使いください。   なお、会議室での御参加、ウェブ会議での御参加を問わず、御発言の際はお名前をおっしゃってから発言されるようお願い申し上げます。ウェブ会議の方法で出席されている方々にはこちらの会議室の様子が伝わりにくいため、会議室にお集まりの方々には特に御留意を頂ければと存じます。 ○藤田部会長 次に、本日の審議に入ります前に配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。配布資料につきまして御説明いたします。   今回配布した資料は、部会資料5「船荷証券に関する規定等の見直しに関する論点の検討(4)」の1点になります。これは事務当局が作成したものでございますので、後ほどの審議の中で事務当局から御説明をさせていただきます。   配布資料の御説明は以上でございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。   本日は、第3回会議でも審議いたしました、電子船荷証券記録を発行する場面の規律の内容、電子船荷証券記録の技術的要件、電子船荷証券記録と船荷証券の転換、電子船荷証券記録を支配する者に対する強制執行に関する規律の内容等について、二読目の検討をする予定です。   それでは、事務当局において、まずは部会資料5の第1の説明をお願いいたします。 ○中村(謙)関係官 それでは、法務省の中村の方から今回の部会資料の第1について説明をさせていただきます。第1は、第3回会議でも御議論いただきました、電子船荷証券記録を発行する場面の規律の内容についての二読目の御審議をお願いするものでございまして、細目といたしましても部会資料3と同様に、1番目として電子船荷証券記録の発行に係る実質的な規律内容、2番目といたしまして電子船荷証券記録の記録事項、そして3番目といたしまして、支配概念の創設及び関連概念の定義についてとなっております。部会資料3から実質的に変更、更新した箇所を中心にポイントをかいつまんで説明させていただきます。   まず、部会資料の1ページ目の1番、電子船荷証券記録の発行に係る実質的な規律内容については、基本的には部会資料3の内容と大きく異なっている点はございませんが、(4)イの受取電子船荷証券記録が既に発行されている場合における船積船荷証券又は船積電子船荷証券記録の発行に係る規律について、改めて事務当局の整理をお示しさせていただいております。   部会資料の3ページの中盤辺りに記載のとおり、この受取電子が既に発行されている場合における船積船荷証券又は船積電子の発行に係る規律についてどのように考えるかについては、主に三つのメルクマールが考えられます。(a)荷送人に船積電子船荷証券記録の発行を請求する権利を認めるか否か、(b)荷送人に紙の船積船荷証券の交付を請求する権利を維持するか否か、そして(c)商法758条第2項に相当する規律を設け、運送人が既に発行されている受取電子船荷証券記録への追加記録をすることによって対応することを認めるか否か、といったメルクマールであり、この三つの組合せによって理論的には様々なパターンが考えられるところでございます。   この点につきまして、差し当たり事務当局といたしましては、受取電子船荷証券記録と船積電子船荷証券記録は別のものである以上、荷送人は船積電子船荷証券記録の発行を請求する権利まではなく、他方で、紙の船積証券の交付を請求する権利は維持するということが、これまでの議論との整合性もあるように思われましたし、また、紙の船荷証券記録に関する規律をできる限りそのまま維持するという考え方からいたしましても、運送人に既発行の媒体の流用を認めるという商法758条第2項の規律は、受取電子船荷証券記録が発行されている場合であっても維持することが自然かと考え、前回同様の規律案をお示しさせていただいております。もっとも、先ほど述べましたとおり、この点につきましては様々な考え方があり得るところかと存じますし、事務当局といたしましてもこの案に固執するつもりはございませんので、他の案も含め、忌憚のない御意見を頂ければと考えております。   続きまして、部会資料の5ページの2番、電子船荷証券記録の記録事項ですが、こちらは第3回会議の議論を踏まえて部会資料の若干の更新はしておりますが、基本的な内容は部会資料3から大きな変更はございませんため、ここでは説明を割愛させていただきます。   続きまして、7ページの下の方の3番、支配概念の創設及び関連概念の定義についてです。ここは、特に「支配」の定義につきまして第3回会議で様々な御意見も頂きましたので、その議論を踏まえて内容を変更しておりますため、少し詳しく説明させていただきます。   まず、部会資料3においては、事務当局から「支配」の定義として、「その電子船荷証券記録の使用、収益及び処分をすることができる状態」とする案を提示させていただいておりましたが、この案につきましては、部会資料の9ページの(2)アで記載しているような様々な御意見を頂戴したところでございます。そこで、改めて今回、事務当局の方から二つの案をお示しさせていただいております。   まず、案1につきましては、支配について、「当該電子船荷証券記録を排他的に利用することができる状態」と定義することを提案するものとなります。第3回会議での御指摘を踏まえまして、支配概念について、一定の権限を有することを前提とするものではなく、単なる事実状態であることを明確にする趣旨で、従前使用しておりました「使用収益及び処分」といったような一定の権限の存在を前提とする行為であるかのように読める用語の使用を避け、「利用」という事実上の行為であることとより親和的な用語を用いることとしております。   また、第3回会議において、規律全体として支配の排他性といったものが十分に含意されていないのではないかといった御指摘を頂いた点につきましては、この支配の定義の中で、「排他的に利用することができる状態」といった表現を用いることも考えられますし、他方でこの排他性については、支配という概念そのものの中に組み込むのではなくて、例えばこの8ページの(3)、(4)の中にブラケット付きで記載しておりますとおり、「電子船荷証券記録の発行」でしたり「電子船荷証券記録の支配の移転」といった他の概念の中に組み込むことも考えられるところかと存じます。   他方、案2につきましては、一般用語として電磁的記録に対する支配という状態を観念することもできるのではないかという考えを前提といたしまして、「支配」について特段の定義を設けないとする案になります。いずれの案も、最終的には法制執務上の問題をクリアする必要はございますが、本部会としてどのように考えるかという点につきまして御審議をお願いできればと考えております。   以上、第1の説明となります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、今御説明のあった内容について、どなたからでも結構ですので、御意見等を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○池山委員 すみません、池山でございます。いつも冒頭、発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。まず、第1の1についてでございます。一方で規律案を示されつつも、パターン①、②、③と、こういう選択肢があるという点についてでございます。この点については前提として、一方で元々一旦、受取B/Lが出てから船積B/Lに差し替えるという事態自体が余り想定されないので、かなり理論的な話であるということを申し上げた上で、ただ、制度としてはあるし、したがって実務的にもあり得るという前提でどう考えるかということだと思っております。   その点については、前回の御意見で指摘された人もいましたけれども、やはり一旦電子B/Lの形で受取B/Lが出た以上は、むしろ原則はそのままで通すべきではないかと。所持人側は、最初の段階で双方の合意で電子で行きますと決めた以上は、例外的にそれを船積B/Lに差し替える場合も、そのときはもう電子という前提であるというのが筋ではないかと私個人としては考えておりまして、私の推薦母体の中で話を聞いたときにもそれに賛同する意見がございました。逆に、法律上の原則に戻って紙であるべきだという意見はありませんでした。この法務省の補足説明からすると、確かにパターン③になると規律の書き方は複雑になるということは事実で、立法技術上工夫を要するところにはなるというのは理解しますけれども、それが理由でパターン③が採れないというほどの困難な問題ではないのだろうと思っております。   それから、パターン①、②、③とは関係ないことですけれども、紙のB/Lの場合の引換えにという部分を、電子の場合にどういうふうに書き換えるかという点です。ここは実は前回から変更がなくて、支配の移転又は消去その他、記録の利用及び支配の移転をすることができないようにする措置と書き換えられております。この部分自体については特段の異存はございません。ただし、これは前回の一読の後半部分で申し上げたところですけれども、規定の書き方として、提示という概念を全く別のものとして整理されていて、ただ、実務の理解としてはそこが違うので、引換えという概念は取りあえずこれでよいと、むしろ支配の移転が本来的にはイコールであって、それよりも広いものを含み得るというのはいいのだけれども、併せて提示という概念をどう整理するかということで多分問題になってくるということだけ、留保として申し上げさせていただきたいと。ただ、ここで今回議論することではないと思っております。   1については以上です。2と3も申し上げた方がよろしいでしょうか。 ○藤田部会長 そうですね、併せて、せっかくですから、お願いします。 ○池山委員 2の部分については、特段の異議、異論というのはございません。   3のこの支配概念についてですけれども、結論を申し上げると、定義をしないという案2の方に賛成をしたいと思っております。これまた実務がどうこうというよりは、理論的な問題であるので、最終的にどうしても案1になるということであれば、それはそれで実務の方で、本当に支障があるかというのは考える必要があるとは思います。   ただ、実務家の側から見ても、支配という新たな言葉を使うから、それには定義が必要だからといって利用と言い換えても、今度は利用とは何かという問題が結局出てきてしまうと。むしろ、利用と支配というのを普通の語感として考えたときに、その広狭というのは逆に曖昧になってくるのかなと、つまり、必ずしもイコールとは限らないのではないかという気がします。実務的な感覚あるいは規約型B/Lにおける利用法から見れば、まずはその規約に参加する人がユーザーなので、言ってみれば、紙のB/Lの所持人以外の人も入れて全員が、まず、利用者なのですよね、そのうち正に支配者とされる人が支配なので、そう考えると実は利用と支配とは必ずしもイコールではなくて、支配の方が狭くなるという考え方もできるかもしれないと。   結局、事柄の本質は、新概念を入れる以上は定義が必要だという観念にどこまで縛られるかということなのだろうと理解をしています。今回、補足説明の中で、法令における利用例として支配という概念をそのまま使っていると、そういう例もあるよという御指摘を頂きまして、そうであればそれで十分ではないかというのが実務側の、これは感覚の問題です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何かございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。特段事務当局から何か補足するということではないのですけれども、あえて申し上げさせていただきますと、1点目で御指摘いただきました、受取電子船荷証券記録が発行されている場合における船積船荷証券あるいは船積電子船荷証券記録をどうするかということで、基本的にはパターン3がいいのではないかという御指摘を頂いたものと承知しておりますけれども、事務当局といたしましても、先ほど中村から説明させていただきましたとおり、当初の規律にこだわる趣旨では全くなくて、パターン3でも全然構わないかなとは思っているところです。   御指摘を頂きました複雑化の関係ですけれども、これも恐らくそれほど大変になるというものでもないだろうと思っておりまして、事務当局といたしましては元々、実務的にはこの規定が適用されることは恐らく余り多くはないだろうというところで、どのような立て付けにしても大きな問題は恐らく生じないだろうと、多分に理論的な問題にすぎないだろうというところからすると、現在提案させていただいているような流れでも十分説明は付くかなというぐらいの思いでしかありませんで、御指摘いただいたとおり、一度電子を選んだからには電子で行くべきだというのが皆様の御意見なのであれば、それに従った規律案を考えていくということでも全然構わないと思っておりますし、規律はやや複雑化するところではあって、それがMLETRとの関係で少しごちゃごちゃとしてしまうと、見栄えがどうかなというのは少し心配なところではあるのですが、さしたる問題ではなければ、それはそれでいいのかなと思っております。この点について、また皆様からの御感触も頂ければ、またこのパターン③を前提にした規律案作りというところも考えていきたいと思ってございます。   それから、最後に御指摘いただきました支配の定義の関係ですが、こちらの方も事務当局として何が何でも支配の定義を入れなければいけないと思っているわけではありませんで、実際のところ解釈に委ねた方がうまくいくということであれば、それはそれでいいのかなと思っております。ただ、若干気になっているところとしては、法制執務的にそれでもつかどうかというところですので、もし可能でありましたら、皆様の意見の多数が定義しないという方向だったとしても、仮に定義するとした場合にはこんな感じがいいのではないか、みたいな御指摘も併せて頂けますと、事務当局としては有り難いと思っているところでございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。今、事務当局から説明いただいたとおり、1については専ら実質として、どれがいいかということを議論していただければと思います。条文として書きにくいだろうからというふうなそん度は抜きに、実質としてどのパターンがいいかを議論していただければと思います。3番目については、確かに定義しないといった上で、しかし法制的に受け入れられなかったときに、こちらから白紙で委任するということも問題かもしれませんので、例えば、池山委員の御指摘では、利用という言葉が用語として定義としてうまく機能するのかといった疑問も含まれたかと思いますけれども、仮に何らかの形で定義しなければいけないという場合に適切なものは何かも含めて議論いただければと思います。その中には、この排他的というのを外出しにするか、支配の概念に含めるかといった、最初に御説明のあった論点も含まれていると思います。どなたでも御意見を頂ければと思います。 ○雨宮委員 今の支配の点ですが、日弁連の事前の会議では、仮に支配を定義するのであれば、利用という文言を用いることはあり得るとの意見がありました。というのは、先行している法律として、刑事訴訟法99条の2では、電磁的記録に関する所持という意味で、利用する権限を有する者と規定されていて、今般の民事訴訟法の改正において、まだ施行されていないと思いますが、231条の3でも、文書の所持者とあるのを電磁的記録を利用する権限を有する者というように規定しています。先行する法令でも所持に関して利用する権限という文言を使っていて、日弁連の事前会議に参加されている方で、民事訴訟法の改正の法制審議会に日弁連の推薦で参加していた方から、その民事訴訟法改正の法制審議会でも、この利用という文言は、池山委員が言われたように、正当な権限があるとか、それを推定させるとか、ユーザーには何か特別な意味があるのかというような議論があったと聞いております。また、結局、利用には適法やその推定という意味は含まず、事実状態としてこの文言を用いるということで法案が作られたとの説明を受けています。もし定義をするのであれば、利用という文言によるのも一案であると考えています。 ○藤田部会長 質問して申し訳ないですが、もし定義をするとすればと繰り返して言われたのは、定義することを余り強く求めるわけではないというニュアンスでしょうか。 ○雨宮委員 個人的には定義は要らないと事前の会議では申し上げています。しかし、日弁連の事前会議に参加されている方々の意見を聞いて、現状では個人的には意見を決めかねています。先ほど申し上げたのは、日弁連の正式な見解ではなく、日弁連の事前会議でこういう指摘がありましたということで御紹介させていただいているということです。 ○藤田部会長 ニュアンスはよく分かりました。ついでにもう一つ聞いてよろしいですか。排他性は外出しの方がいいのか、中に定義に含めた方がいいかの論点は、どうでしょうか。 ○雨宮委員 その点につきましては吉田委員から発言いただいた方がよろしいかと思います。 ○吉田委員 吉田でございます。支配という言葉について、資料に記載されている会社法第2条第3号と会社法施行規則第3条第3項第2号は子会社の判定に関するもので、子会社とは、ある会社に総株主の議決権の過半数を保有されている会社のほか、当該会社に経営を支配されている会社を指すと定義されています。この支配の意味については、企業会計基準適用指針第22号の連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針というのがあり、その中に他の企業の議決権の過半数を自己の計算において所有していないものの、例えば50%から40%の議決権を自己の計算で保有している会社が他の会社の意思決定機関を支配していることに該当する事項のいずれかを満たしている場合にはその会社は子会社とされるとされています。どのような場合に支配されていると認定されるのかについてはこの会計基準の方に細かく基準が記載されています。その点において、支配という言葉はフリーハンドで必ずしも使われていないと思います。会社法のほかには、例えば銀行法上の銀行の持株比率規制があり、その中でも規制対象となる子会社に該当するかの判定基準として支配という言葉が出てきます。私は会計士ではありませんが、この支配という言葉の意味解釈を調査する際に、参照することがあります。   その他には、法令でいうと会社法施行規則の67条に、会社法第308条第1項に規定されている会社の経営を実質的に支配することが可能となる関係として、総株主の議決権の4分の1を保有する場合が規定されています。実質的な支配者ですのでここでいう支配とは違うとは思いますが、実質的支配者については、犯罪収益移転防止法の関連で法務省も実質的支配者リスト制度の対象者に関するQ&Aを公表しています。よって、法令では支配という言葉をフリーハンドで使用していないと思います。また、議決権の場合は半数かどうかが基本的な基準になり、物への保有割合が51%であり49%をほかの人が持っていても支配していると認定されうるので、100%それを持っているということと必ずしもイコールではなく、支配という言葉の中に排他的という概念が当然に含まれているものではないと考えます。 ○藤田部会長 そうすると、御意見としては、支配の概念の中に排他性の要素を取り込むのではなくて、MLETRはエクスクルーシブコントロールという言葉を使っているのですけれども、同様に排他性というのは支配の外に出されるような概念として用語法は整理した方が望ましいという御意見でしょうか。 ○吉田委員 おっしゃるとおりです。 ○藤田部会長 今の雨宮委員と吉田委員の意見について、事務当局から何かございますでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。基本的に特にございませんけれども、今の支配の概念の中に排他性を取り込むか、取り込まないかというところで、吉田委員の方から、支配というのは、例えば51%でも含まれるというような用例もあるわけですので、当然に排他性というものを含んでいるものではないかもしれないという御指摘を頂いたかと思いますけれども、仮に定義をするとした場合には、排他的な状態をもってここでいう支配とするのだという決めをするということは、それはそれでできるような気もしているところではありますので、最終的にはそのような態度決定をするかどうかというところに掛かってくるかなという気がしておりますので、その点も含めて御意見を賜れれば有り難いと思ってございます。 ○小出幹事 小出でございます。どうもありがとうございます。まず、支配のところなのですけれども、私の意見といたしましては、案2というか、定義は設けない方がよかろうというのがまず出発点ではあります。   理由ですけれども、少し学説的なことかもしれませんし、それが民法の通説かどうかわからないのですけれども、占有と支配との関係については、森田宏樹教授が有価証券のペーパーレス化の文脈で、占有概念というものが、元々紙の有価証券に対する物理的な支配というものから口座の記録を基礎とした有価証券上の権利に対する事実上支配権限へと機能的に拡張したのだというような整理をされておられます。これは何が言いたいかというと、占有というもののそもそもの意味というのが物理的な支配だったのだということが前提にあって、それが紙がない世界では事実的支配も含むようになった、つまり、元々支配というのは占有に含まれている要素であると考えていたのだと思います。そう考えますと、元々紙に対する物理的支配が占有だったわけですから、それが紙のない世界で事実的支配というもので代替されたからといって、必ずしも支配について新たに定義を置くということにはならないのではないかというのが私の感触です。   ただ、私法一般においてこのような見解が共有されうるのかという点については、私も自信を持てませんけれども、森田教授のこの御見解というのは、私としては説得的というか、あり得る整理のように思っております。そういった難しい問題があるということも含めて、ここで法制上、あまりしっかりとした支配についての定義を置くことは、かえって望ましくないのではないかというのが私の出発点でございます。   ただ、法制実務上、どうしても定義しろということになれば、御提案の利用という言葉は一つの可能性としてはあり得るとは思いますが、しかし、利用という言葉もまた何を意味するのか、それで全てを包含できているのかという問題はあるように思います。つまり、利用という言葉ですと、例えば管理しているだけでは駄目なのかとか、いろいろなことを言われそうな感じもありますので、私としては余分な解釈論が出てくるよりは、支配というもの自体を解釈に委ねた方が望ましいのではないかと考えております。   それから、ついでですので、排他性の話なのですけれども、結局これは支配というものをどういうふうに捉えるのかということ次第だと思うのですけれども、支配というものが事実上の状態を示すものとして、解釈に委ねられるという立場を採るのであればなおさらのこと、排他性については外出しで考えた方がよいと思われるので、私としては排他的な支配という言葉を使った方がよいのではないかと考えております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。事務当局、何かございますか。 ○渡辺幹事 ありがとうございました。貴重な御指摘を頂いた後に、少し質問をさせていただくような形になってしまって恐縮なのですが、排他性というものを外出しした場合なのですけれども、今回の資料でも、発行でありましたり、あるいは支配の移転の定義の中に排他的にという言葉を入れるということが一つ考えられるかなと思っております。   他方で、支配する者はこういう権限を持っているとか、権利が推定されるとか、そういった規定というのがいろいろなところで出てくることになろうかと思いますけれども、そういったところでも排他的に支配する者は、というような形で個別に入れていかないといけないものなのかどうかというところが少し気にはなったところで、そうすると規律の中で排他的に支配という言葉がすごく一杯出てきて、少し目立ってしまうかなという気がしているところではあるのですが、今のところの我々の整理といたしましては、発行とか移転のところで排他的なものが一方から他方に移るのですよというのをきちんと書いておけば、それぞれ効力の規定とかそこら辺までにいちいち排他的に支配する者は、などということはあえて言わなくても、そこは自明なのかなという感じはしているところなのですが、今の小出幹事のお話からいたしますと、やはり個別にいちいち書いていった方がいいという形になるのか、あるいはそうではないのかというところの、もし御感触を現時点でお持ちであれば、頂けますと有り難いと思ってございます。 ○小出幹事 よろしいでしょうか、小出でございます。おっしゃるとおりだなと今、伺っていて思いました。私はやはり考え方の出発点にMLETRがあるものですから、MLETRというのはそもそも占有の機能的同等の条文というものを置いているわけです、11条ですけれども、その占有の機能的同等の条文の中に排他的な支配という要素が書いてあります。つまり、事実上の概念である支配に対して、外出しで排他性が加わって、それが占有と機能的同等なのだという整理をしているところです。   ただ、我々が今、考えているのは、占有の機能的同等のような条文を置くわけではないので、そこに排他性というものを入れ込んでおくことができなくなっています。確かにそのように考えると、いちいち全てについて排他的な支配と書くというのは、見栄えという点からは、ややきれいな条文でないというのもあります。そう考えますと、占有の機能的代替の要素としての排他的支配というものを、我が国では支配の定義の中に入れ込んで考えるという考え方は、確かにその方がむしろMLETRに近いのかなと、今伺っていては思いました。結局これは条文の作り方といいますか、占有の機能的同等の条文を置くかどうかというところに帰着する問題であると受け止めました。   というわけで、排他的というものを外に出すかどうかは、確かにおっしゃるとおりの問題はあると思いますので、もう少し考えてみる必要があると思います。ありがとうございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○後藤幹事 後藤です。もういろいろと議論が出ているかと思いますけれども、結論から申し上げると、私は、排他的利用という定義を入れた方がいいかなと思っております。今、小出幹事が後半で言われたこととかぶるかと思うのですけれども、やはり、排他的支配という表現を繰り返すよりはシンプルになるかなというところがありますし、また、そもそも定義を設けるか否かというところについては、書きすぎることによって何かかえって解釈論を拘束してしまうおそれがある反面で、何を移転しているかがはっきりするという効果はあろうかと思います。   そのときに、やはり新しいものを作っていくわけですので、定義があった方が意図していることが伝わるので、いいのではないかということなのですけれども、他方で利用という言葉をそれだけで使ってしまいますと、冒頭で池山委員がおっしゃられたように、広すぎるというか、利用の方が支配よりも広いのではないのかという疑念を招いてしまうと思います。ただ、池山委員の御発言は、排他的利用という言葉を定義に使うのであれば問題は生じないように感じたので、その点、後で御意見を伺えればと思います。定義を置くなら、「排他的利用」と「排他的」を付けた方がいいかと思いますが、「利用」という定義をしてしまうぐらいなら定義はない方がいいという気がしております。   また、その他の用例との関係なのですけれども、支配という言葉が出てきたとしても、目的が違う法律を、そのままストレートに寄ってくるわけにはいかないだろうと思います。特に、「会社の経営を支配する」ですとか、「子会社を支配する」というのは、ほかの法人格の行動に影響を与えられるかどうかという話をしているので、やはり少し違う話なのかなという気はいたします。ですので、そことそろえなければいけないというわけではないでしょうし、また、吉田委員から御指摘のあったところなのですけれども、子会社の経営を支配するときに、51%を持っていれば残りの49%が別にいたとしても支配はしているわけなのですが、そのときの49%の人は支配を共有しているわけではなくて、単に利益を共有しているにすぎないと、やはり支配は排他的に51%の人がコントロールできるという話ですので、そこは別に矛盾でも何でもないのかなという気はいたします。ただ、そのときに排他的という語句をどこに付けるかは、それは書きぶりの問題ですので、それは今の話と何か連動するものではないのかなという気がしております。   雨宮委員から御指摘のあった民訴と刑訴の話は、不勉強ですぐコメントができないのですけれども、ただ、現実的な記録とかの話をしているのであれば、感覚的にはそちらの方が語感としては近いのかなという気もいたしました。会社法とかよりは、そちらの方との整合性とかを気にした方がいいのかなという気はしております。ただ、目的として、民訴や刑訴の方で支配を問題にしている局面と、ここで本当にその人だけが持っているかどうかということを問題にしている場合というので、やはりそこは文脈が違ってくるかと思いますので、繰り返しになりますけれども、法律ごとの目的に応じた言葉を使えばいいということなのかなという気がしております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何かございますか。 ○渡辺幹事 特にございません。 ○池山委員 池山でございます。支配という概念を定義なしでそのまま使うか、それとも、それを利用という言葉で言い換える形で定義をするかどうかという問題と、それから、排他性という言葉を入れるかどうかというのは、分けて考えた方がいいのだろうと思っています。前者の問題については、私は要らないのではないかと申し上げましたけれども、今日の御指摘を踏まえて、更に持ち帰って考える必要はあるのかなとは思っています。   ただ、排他的という言葉を排他的支配というふうに外出しして文言に書くとなると、今度は、単なる支配と排他的支配とはどう違うのだという問題がやはり生じるのだと思っております。小出幹事の御指摘は飽くまで、占有が物理的な排他的支配だからというので、支配を言ってみれば排他的な支配だと、あるいは、正に後藤幹事のように排他的利用だと言い換えるということであって、法令の用語法として、やはり外出しをするとなると、それは少し次元が違う話で、両者の区別、排他的である支配と排他的でない支配がどう違うのだという議論が出てきてしまうと。かつ、それは恐らく誰も意図していないことなのだろうと思います。単なる感想ですけれども、以上です。 ○藤田部会長 ありがとうございました。後藤幹事の質問の中に、排他的利用という表現はいいのかというのも含まれていたような気もしますが、その点はどうでしょうか。 ○池山委員 それは多分、この席上で感覚的に、いいのではないですかとか、どうですかねと、そう簡単に言える問題ではないのかなという気はします。その上で申し上げるとすると、仮に元々の前提は、法制上どうしてもそれがやむを得ないと、そうするしかないとなったという前提のときの案だということだとすると、どういうふうに言い換えるにしろ、ではその利用の概念を解釈上どういうものとして捉えているのかと、そこに揺れがないように、この部会の議事録の中で、あるいは補足説明等できっちり整理して、混乱がないようにするということが重要なのかなと思って聞いておりました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そのほか、どなたでも御意見ございますでしょうか。 ○山口委員 山口でございます。今ちょうど議論になっている支配の定義のところですけれども、これは私、前回のときに申し上げたかと思うのですけれども、元々占有の定義のところに、ここでも引いてありますけれども、我妻先生の本に、占有の定義の中に支配という言葉が出てきて、物を支配していることを、そういう状態のことを占有というと書いてあるわけで、そういう意味では、支配という言葉はある意味、法律概念である占有を基礎付ける言葉であるわけで、そうなってくると、やはり基本的には余り、定義規定ではないのではないか、置く必要はないのではないかというのが元々の私の考えであります。   しかしながら、先ほど渡辺幹事がおっしゃったように、どうしても必要であれば、何らかの形で捻出しないといけないということになると、雨宮委員がおっしゃったように、他の法律との整合性をとりながら、既に訴訟法にそういうものがあるのであれば、それと整合するような規定を置かれるのがよろしいのではないかと感じております。   それから、一番最初に池山委員がおっしゃった、受取電子船荷証券記録が出ているときに、通常の紙の船積船荷証券を出す権利を認めるか否かについてですが、今まで議論してきたところは、既に出された船荷証券について、誰か転々譲渡された後、違う人が、どうしても必要だということで紙の船荷証券を要求するという場面を想定したかと思うのですが、受取船荷証券と船積船荷証券は基本的には同一人物が、しかも期間としてはかなり短い間に意思を変えるということを想定しているかと思うのですが、実情としては少ないと思いますし、また、あえてそこまで認める必要もないのではないかと感じておる次第でおります。そういう意味では池山委員がおっしゃった考え方に賛成する次第ですが、これもまた理論上の問題ですので、絶対そんなことを認めるべきでないというほど強い意思があるわけではございませんので、認めなくてもよいかなという程度の話で、もし条文の策定上、非常に形が悪いであるとか、あるいはMLETRとの整合性の問題があるということであれば、置かれること自体はそれほど強く反対するものではありませんが、感覚的には必要ないのではないかと思っています。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から、何かございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。今の受取船荷証券と船積船荷証券の関係は、正に御指摘いただいたとおりかと事務当局としても思っておりまして、率直なところ、どちらもありだろうと思っておりまして、とはいえ、現時点では事務当局において考えているパターンで規律案を書かせていただいておりまして、それだと比較的、今回お示ししたような形で、すっきりしている状況だろうと思います。これをパターン3にした場合、どれぐらい見栄えが悪くなるのかというところについては、また次の機会にでも改めてお示しをさせていただいた上で、どうしたらいいのかというところを決めさせていただければと思っております。   それと、もう一つ、支配の定義のところ、かなり皆様から御意見を賜った状況かと思っておりまして、我々の方としては法制執務上、そもそも定義というものが必要になってしまうのではないかというところを出発点としていろいろ考えさせていただいたところではありますけれども、これまでの本日の御議論を拝聴しておりますと、占有と機能的同等性があるというところの条文を、あえてそこを置かないということにいたしますと、そこの部分について、この定義規定を使って排他的な利用という形で書いておくというところも、また一つのメリットになり得るところなのかなというふうに拝聴しておりましたので、そういったところも含めて、どのような方向性で行くべきなのかというところの御意見を更に賜れると有り難いと思っているところでございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○箱井委員 今の受取電子船荷証券記録と船積船荷証券のところの議論については、私は御提案の規律案を拝見したときは、非常にすとんと来て、なるほどということで、すっきり行くなと思いました。ただ、理由は恐らく池山委員が冒頭おっしゃられたように、そもそも現行の規律自体が実務と原則が逆になっているからで、それに慣れているからだろうと思いました。今、受取船荷証券から船積船荷証券に紙で代えて発行していないということだと思うのです。結局、新たな証券の交付に代えて船積確認でオーケーというところが実務なのだろうと。ですから、今の原則と親和的なので、私はすとんと行ったのだなと思っておりますので、実務に合わせるということで、その議論の上でということであれば、私もどちらでもよいかなと思ったところです。   もう一つは、これは思い付きなので、ここで言うのもどうかと思ったのですが、今まで議論になっていないところで、1の④、1ページ目ですね。第3項の規定は、運送品について現に海上運送状が交付されたときは適用しないとありますが、確認だけさせていただきたいのですけれども。現行のルールですと、船荷証券についても、海上運送状についても、「交付しなければならない」というのが757条1項と770条1項にあって、それぞれ後ろの項で、片方が交付されていれば片方が要らないと規定している、そういう立て付けですよね。今度は、これは①にありますように、船荷証券とも海上運送状とも異なる三つ目ができるというよりは、「船積船荷証券又は受取船荷証券の交付に代えて」発行されるということですから、むしろ757条の中のバリエーションとしてこちらが入ってきたと思うのですが、これに「海上運送状が交付されたときに適用しない」と入れる必要があるのかどうかということです。言わずもがなというか、少なくとも757条3項や770条4項がそれぞれの1項と対応しているとみますと、若干違うかと思うのですけれども。ここにこれが必要だという、そういった御判断でございますか。 ○藤田部会長 事務当局から御返答お願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今回、1ページ目の第1の1④でこのような規定を書かせていただいているのは、商法757条の3項を倣ってこのまま書いてあるというところですけれども、今御指摘を拝聴しておりまして、厳密に言うと本当にここまで要るのかと、実はなくてもカバーできているのではないかという考え方も、場合によってはあるかもしれなくて、そこのところは最終的に法案を作るときに詰めていきたいと思っておりますけれども、基本的に言いたいこととしては、船荷証券、電子船荷証券記録も含みますけれども、それが利用されている場合は海上運送状は請求できませんよと、その逆もしかりと、言いたいことはそこだけというところですので、そこを示すためにどこまで対象にするかというところは少し検討させていただきたいと存じます。 ○箱井委員 規律案ということですと、そこまで厳密に検討が必要なのかと思って申し上げたのですが、そういうことであれば全然。 ○渡辺幹事 ただ、御指摘としては大変有り難いと思いますので、引き続き検討させていただければと存じます。 ○藤田部会長 現在書かれているのは、実質としてこういうことにするということで、リマインダー的に取りあえずは実質を書いてあるというふうに御理解いただければと思います。 ○箱井委員 承知しました。久しぶりに委員会に出てきましたら、かなり条文のような形にまでなっていましたので。 ○藤田部会長 恐らく、突き詰めると箱井委員の言われていることは一理あって、ひょっとしたら論理的には要らないのかもしれません。ただ、忘れないように、また、初めてこれを見る人が誤解しないように、差し当たりは入れておくということで、当面進めさせていただければと思います。   そのほか、どの点でも御意見がございますでしょうか。1については今のところ、パターン③への親近感を示す意見がどちらかというと多かったようにも思うのですが、どうでしょうか。決め打ちではなくて、次回以降はむしろその案も並列的に作るという形の方向で、差し当たりよろしいですかね。 ○笹岡幹事 笹岡です。また支配に戻ってもいいですか。   支配のところで、民訴法と刑訴法に電磁的記録を利用する権限という文言があるということなのです。MLETRやECCの考え方から出発しますと、単なる電磁的記録と有価証券的な記録は違いますが、民訴法等で想定されているのは、複数人がアクセスできるようなデータもおそらく含まれているのではないかと思います。一方で、ここでいう支配の対象となるデータというのは、完全に特定人一人を権利者として指定するデータですので、あえてここは書き分けないと同じように解釈されてしまうという危険性が、むしろ民訴法等があるからこそ、あり得るのかなと思います。そこで、やはり排他性に相当する文言は加えないといけないのではないかと感じております。私個人の感触としては、大勢の方と同じで、特に定義を設ける必要はないのではないかというところですが、設けるのであれば、民訴法等とは書き分けないと、他のデータと同じものと解釈されてしまうというところがあるかと思います。意見は以上です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局、ございますか。 ○渡辺幹事 特にございません。 ○後藤幹事 後藤です。先ほど一つ申し上げ忘れてしまったのですが、1の船積と受取のところなのですけれども、私自身の強い意見はないのですが、以前、どなたかの御指摘で、電子から紙への切替えの話との整合性というか、そちらに回すのかどうかというお話もあったかと思いますので、また次のときにこの③のバージョンというのも見せていただけるというお話でしたけれども、そのときにそちらとの接合にも御留意いただければと思いました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   そのほかに御意見はございますでしょうか。 ○洲崎委員 洲崎でございます。これまで議論されていないことでもよろしいでしょうか。具体的には5ページの2の電子船荷証券記録の記録事項というところなのですけれども。 ○藤田部会長 是非お願いします。 ○洲崎委員 基本的に現行商法758条1項の記載事項を踏襲するということなのですけれども、現行商法では譲渡の方式は記載事項とされていないのです。恐らく現行商法は、762条本文で法律上当然の指図証券性を定めているので、裏書による譲渡を原則として考えているということなのでしょう。裏書禁止にするのであれば、762条ただし書で、証券上にその旨を記載しなければいけないとなっているので、758条1項で譲渡方式を記載事項の一つとして挙げなくても、多分大きな不都合はないということなのだろうと思います。   一方で、今回の改正案の検討では、譲渡方式について明文で規定を設けること、これは前回の部会でやったテーマですけれども、明文規定を設けるという案が有力になっているのかなと思います。特に、B案だと四つの方式が明記されることになるわけで、このような法制の下では、電子船荷証券記録に、この証券記録はどういう方式で譲渡するのかという譲渡の方式を明記させる方がいいのではないかという気がしているのです。もちろん現行商法758条1項5号では荷受人の氏名又は名称を記載するということになっているので、荷受人の記載の仕方次第で、譲渡方式が推測できるのではないか、無記名証券方式か指図証券方式かは推測できるのだろうとは思うのですけれども、ただ、現行商法とは違って法律で譲渡の類型を定めるのであれば、問題となっている証券記録がどの類型で譲渡されるのかというのを書かせる方が自然かなという気がいたしました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何かございますでしょうか。 ○渡辺幹事 御指摘ありがとうございました。渡辺でございます。事務当局といたしましては、基本的には記載事項については紙と電子、同じという形で、そこで実際に記載又は記録された内容によって、恐らく、前回でいうところのB案を採るとすれば、その4類型が決まっていくと、こういう整理になるのかなと思っておりまして、そういたしますと、電子船荷証券記録の場合だけその譲渡の方式というのを特に書かなければいけないということにしてしまうと、それが明示的に書かれていなかった場合にどうなのだというようなところでありましたり、新たな問題が出てきてしまいますし、また、MLETRとの関係でも、紙と電子でやはり違う規律になってしまうというところがありますので、そこら辺は記載事項あるいは記録事項というものを同じに合わせることによって対応できるのではないかと考えているところではあるのですが、何か問題がありましたら御指摘いただければと思っております。 ○藤田部会長 洲崎委員、今のコメントでよろしいでしょうか。 ○洲崎委員 私もどうしても記載しなければいけないと考えているわけではなくて、4類型を明文として挙げているのに、証券記録上にこれがどの方式で譲渡されるのか分からないのは何か不自然かなという気がしたということなのです。それと、記載事項を商法758条1項の事項に限ってしまうと、電子と紙の転換の場合に問題が生じるような気もしたのですが、これはもう一度考えてから発言させていただきます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○箱井委員 今頃出てきて言うのも何ですが、紙と電子は基本的に一緒という御発言がありまして、それはそれでよく分かるのですけれども、実は前回の商法の運送海商関係の改正のときに、国際海上物品運送法については基本的にいじらないといった理解があったと思うのです。そして国際海上物品運送法の定める記載事項が商法の船荷証券の記載事項の方にそのまま移動していきました。ここでは、言わば21世紀的な検討は経ていないのです。今の商法上の記載事項も、荷送人、荷受人とありますけれども、これは実際の船荷証券ではシッパーの記載、コンサイニーの記載とかであって、明らかにずれているわけですよね。日本商法上、荷送人というのは運送契約の当事者でありますし、荷受人というのは荷物を受け取る者であると、改正で加えられた冒頭規定でも明確になっています。今、洲崎先生がおっしゃられたように、荷受人の記載があることによって証券の譲渡方法が明らかになってくるとしますと、結構、これはだましのような形になっております。というのは、荷受人を書かせておいて、書いてしまえばこの者が指図権者だということになる。船荷証券は法律上当然の指図証券ということで、荷受人が指図権者だと、荷送人が浮いてしまうというようなことになってしまいます。ところが、ここに御参加の先生方が翻訳をされているので御存じだと思いますが、ドイツなどは既に指図証券の指図権者を書くようにというような法制になっていて、必ずしも荷送人を書けとはなっていないですよね。今回、国内の船荷証券は使われておらず、国際船荷証券が前提だということで進めてきたと思います。そういった中で、実務で使われているシッパー、コンサイニーという概念と、日本法で書かせている荷送人、荷受人というのは、これは全然違うものだと私は思っておるのですけれども、そういった議論をここでして、そのうえで紙と電子の記載事項を一緒にするというような余地というのがあるのでしょうか。もうこの規定、758条は、これはもうここでは触らないということにするのでしょうか。それにより私の方の今後の発言等も変わってくるように思いますので、一応確認させていただければと思っております。 ○藤田部会長 事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。758条1項の今の記載事項ですね、これが実情と合っていないのではないかという御指摘で、併せて紙の船荷証券についてのこの規定ぶりもここで検討する余地はないかという御指摘だろうと認識しておりますが、私どもといたしましては、皆様の御要望というか、そのような意見が強ければ、そのこと自体を否定するつもりはございません。ただ、元々の今回の我々の目標というのは、電子船荷証券というものをどう作っていくかというところで、紙の規律について、その実質を変えるようなところは当初は想定はしていなかったと。ただ、この電子版を検討するに当たって、紙の規律についても変えた方がいいだろうと、変えるべきだというお話があれば、それはそれで当然、議論の俎上には上ってくるだろうと思いますけれども、ただ、これまでの議論をいろいろと拝聴している限り、なかなか今の紙の船荷証券の規律の実質はいじりたくないという御意見もそれなりにあるのかなという感じはしているところでございますので、ここのところは皆様の御意見を幅広く聞いた上で、最終的には決めていければいいのかなと思っているところでございます。 ○箱井委員 といいますのは、今の洲崎先生の御発言も何割かは結局、紙でも問題になることの御指摘だと思うのです。今後はやはり電子についての議論をしていくときに、よく考えればそれは紙でも問題ですよねというのは出てくるのではないかと思われましたので、一応確認をさせていただきました。恐らく処分権なども、側聞しているところによると、私は同じような話ではないかと思っているところです。 ○池山委員 池山でございます。先ほどの洲崎委員の御指摘というのは、仮にこれからスクラッチで白紙から法制と実際の制度を作っていくという前提であれば、傾聴に値するのではないかと私は思います、なるほどと思います。ただ、現実はもう規約型B/L、規約型電子船荷証券といわれるものが世に流布されているわけで、それらが法制上の電子船荷証券記録として認められるであろうということをやはり実務は想定していると思うのです。そのときに、やはり今、記載事項になっていないものを新たに記載事項として書けというのは、実務としては非常に抵抗が強いし、逆に、これは私個人というよりは、かなり強硬な反対があるのだと想像します。   その前提は、繰り返しますけれども、今我々がやろうとしていることは、全く新たな法制を作って、それに基づいて新たな制度ができるという話ではなくて、今あるものが既にあって、それを促進するための立法は何であるかと、そういう話だと。今あるものの記載事項は、今の法制に従って皆さん書いていますので、それを変えるというのはやはりよろしくないのではないかというのが私の意見です。 ○箱井委員 確認させていただきたいのですけれども、規定に従って書いておられるという認識ですか。例えば、FOBサプライヤーのような契約当事者でない者がシッパーに記載される船荷証券というのは多々あると私、認識しているのですけれども、そうすると、ここに書いてある荷送人を書けというのとは違うわけですよね。それはお困りではないということですか。 ○藤田部会長 池山委員が言われているのは、既存のプラットフォームに証券の種類について明示するような欄がないのではないかということですね。 ○箱井委員 そういうレベルの話ですか。すみません、失礼しました。 ○池山委員 正に今、部会長が答えてくださいましたけれども、今、箱井委員がおっしゃったような解釈論上の問題点は紙でもあるし、電子化されたとしても、それはあるかもしれないと。私が申し上げているのは実際の、特に実務で使われているものは、紙の船荷証券の記載事項に準じた記載事項を考えて、それを書いてもらうと、そういう前提で規約型の電子B/Lはもう現に作られていると、そこで日本法が突然こういうことを書きなさいと、それが理論的だからと言われても困るのではないかということです。 ○藤田部会長 少し洲崎委員の最初の御質問に戻ってよろしいでしょうか。洲崎委員に確認させていただきたい点があるのですが、御発言の中で、記載事項として証券の種類、譲渡方法を記載させるべきだと言われました。記載事項あるいは記録事項として要求するというのは、システム上どういう形で譲渡できるかということが明らかであるということでは足りなくて、それとは別に何型だと表示されなければいけないということなのか、それとも、システム上どういう形で譲渡できるかは使う側としては分かるようにはなっていれば、それをもって、紙の場合の記載に相当するものがあるように考えていいと解する余地はあるということでしょうか。念のために確認させていただければと思います。記載というのがシステムの場合、分かりにくい面もありますので、お願いいたします。 ○洲崎委員 システム上分かるのであれば、記載事項として確かに書かなければいけないということにはならないような気はします。先ほど言い掛けた転換のときの話ですが、現行商法の758条1項では裏書禁止は記載事項とされていないですよね。758条1項の別のところ、762条ただし書で記載せよとなっていて、もし転換のときに記載しなければいけないのが758条1項各号の事項だけだと、裏書禁止という重要な情報が、転換したときに出てこなくなってしまうので、転換時には裏書禁止も記載事項をする必要がある。ただし、それは、転換のときにその情報は別途書きなさいという規律を置けば、それで済むのかもしれません。記載事項として一般的に譲渡方式を入れなければいけないかというと、必ずしもそうではないかもしれない、当事者が迷うことがないようになっていれば、それで十分かなという気もしております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○池山委員 まず、そう言っていただけると有り難いのですが、加えて部会長が質問の中でおっしゃった、システムの規約上分かればいいのではないかという点についても、恐らくそれですら、ないのだろうと思って。 ○藤田部会長 規約に書かれているということではなくて、使用するときの画面等から分かるという意味で申し上げました。 ○池山委員 使うときの画面上ですか。 ○藤田部会長 システムの画面が恐らく券面に相当するようなイメージでしょうから、利用するシステム上、どういう種類の電子船荷証券かわかるならよいと解する余地はあるかという趣旨の質問でした。 ○池山委員 分かりました。私が申し上げたかったのは、これから導入されようというシステムによっては、この譲渡方法等について規約でオーダーメードで明示するのではなくて、正に日本法準拠で日本法に従ったものであるという前提で、譲渡方法は規約上は一切出てこないというシステムはあり得ると思ったものですから、一応指摘させていただいたのです。ただ、そうであるとしても確かに、あるシステムである以上は、そのシステムの操作画面上、そこは明らかでなければいけないと、そこはそうだと確かに思いますので、了解いたしました。 ○藤田部会長 そのほか、どの点でも御質問はございますか。今の2の点も、これもかなり重要な点ではありますので、また、2についてはその他の事項もいろいろございますが、御意見等はございますでしょうか。   それでは、第1についてはこの辺りでよろしいでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今回の部会資料で申しますと6ページのところに、作成地について少し記載をさせていただいておりまして、事務当局といたしましては基本、紙と同じ規律ぶりを維持した方がいいのではないかなど、いろいろ考えまして、維持させていただいているところでございますが、こちらについては前回いろいろな御指摘を頂いたところでございますので、これでいいでしょうかというところを少しお諮りさせていただけますと有り難く存じます。 ○藤田部会長 追加的に事務当局から御質問がありましたが、よろしいでしょうか。作成地について記載事項として加えて、また、その作成地の意義について、ここで書かれているような理解に問題はないかという御質問だと思います。   一番極端な意見としては、電子的なものに物理的な意味での作成地というのは関係ないのではないかということも考えられなくはないわけですけれども、前回は、電子的な世界でも作成地は観念できるという発想が多かったわけですね。ただ、観念できるとしても、物理的に紙の場合の作成地とは少し捉え方や意義が違うのではないかといったこともあり、その場合に、作成地という同じ言葉で表現していいかとかという関連した問題が出てくるということなのですが、この辺りで何かもし御意見がありましたら、よろしくお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。度々申し訳ございません。1点補足させていただきますと、ここの問題というのは、先ほど箱井委員が御指摘いただいたようなところがひょっとしたら根源的な問題なのかもしれないと思っているところでございまして、突き詰めて考えてみますと、この電子船荷証券記録に作成地というのは本当に要るのだろうかという問題はやはり出てきてしまうような気がしておりますし、そういったところを考え始めると、紙の船荷証券の規律も本当にどうなのかというところにまで議論が波及してくる問題なのかもしれないとは思いつつも、今回のこのような維持するという方向で書かせていただいた趣旨といたしましては、基本的には現状、紙の船荷証券に関する規律で回っている実務というものにできるだけ余り横やりを入れないような形で電子版を作っていくことがいいのではないかというのが、この部会でのこれまでの御議論で度々御指摘を頂いている部分かなと思っているところでございまして、そういったところも考えますと、いろいろな解釈上の問題は残ってしまうかもしれないのですが、あえて外したりとか、違う言葉を使ったりとか、そういったことはしないで、もうそのままいっそのこと輸入をする形というのが、一つの解決方法なのかなという思いで書かせていただいたところでございますので、そういった考え方でいいかどうかというところも含めて、お考えを頂けますと有り難く存じます。 ○藤田部会長 どうでしょうか。 ○池山委員 何も言わないのも逆に私の責務に反するかと思いますので、少し申し上げます。ただ、実質は前回申し上げたとおりで、実務の側としては、電子B/Lの場合に作成地を観念することができない、あるいは特殊な解釈をすべきだということで、それを有害的な記載事項であると、つまり書いてはいけないとか言われたら困るし、それから、作成地をどこと考えるかについて法令で一定の解釈を強制されるということであれば困りますけれども、そうでなければ、現実は電子B/Lの場合も、ここが作成地であるということを運送人なりの考え方で想定をして出しているということだと思いますので、それはそれでよろしいのではないかと思います。   他方で前回、山口委員が確かおっしゃった、日本の国際海上物品運送法では問題にならないけれども、ヘーグ・ルール、ヘーグ・ウイズビー・ルールなどだと、適用範囲の規定として作成地概念というのが一応あると、電子B/Lの場合も、考えてみたら電子B/Lの場合は一義的な適用範囲ではないですけれども、契約上、適用範囲に含めた場合に、含めた上での適用範囲の規定の適用の取っ掛かりとしてあった方がいいというのは、本質的な理由ではないかもしれないですけれども、一つ、残してもいいかなという理由になるのではないかと思っています。   ということは、逆に言うと、やはり電子の場合におかしいということで、必要的記載事項からは外すと、任意的記載事項として運送人が作成地だと思うところを書く、そのこと自体は妨げないという前提であれば、確かに削ることにも異論はないというのが論理的な答えなのかなと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。規定されていること以外を書いてはいけないという意味での記載事項の定めではないことは、恐らく共通の前提だと思います。ただ、その上で記載事項として要求するかどうかが今、問題となっているのですね。 ○池山委員 そうだとすると、ヘーグ・ウイズビー・ルールにおける適用範囲の問題を別にすれば、実は削ってもいいのでしょうね。つまり、実務は多分今までと同じとおり、今の電子B/Lだと書いてありますよと、今後はどうか分かりませんけれども、という以上でも以下でもないので、場合によっては、全部調べているわけではないので、書いていないものも実はあるかもしれないですよね。そこまで言い出すと、確かに自由度を広げるという意味では、ない方がいいという意見も逆に出てくるのかもしれません。ただ、余りこれをこれ以上言い出すと、私の個人的な感触でしかないので、これ以上この場で言うのはどうかと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。強いて感触を求めたようなところもありますので、余り突き詰めた答えを要求する趣旨ではもちろんないのですけれども、どなたでも、もし感触でもありましたらお願いします。 ○山口委員 私も、これはあった方がいいというのは、これがなければ無効になるというようなものでなければ、現在、電子船荷証券も、現在存在する船荷証券の様式がそのまま画面上出てくるようなものが多いものですから、あえて外す必要はないだろうと思っております。   それから、この英語の表現は確かプレース・オブ・イシューか何か、そういう表現になっていますので、それを作成地と日本語に訳しているわけで、この作成地という書き方自体は電子船荷証券になったとしてもそれほど違和感はないと私は思っておりますので、それはそれでよろしいかなと思っています。   池上委員の御指摘のように、書いたら無効になると言われると困るという程度の問題であろうかと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。感触としては十分頂けたというふうな印象ですが、もしほかに御意見がございましたら、お願いします。 ○池山委員 池山でございます。今の山口委員の言い方を逆に裏返して言うと、これを残したとしても、もし将来、これがない電子B/Lが出たとしても、直ちに電子B/Lとして無効になると、そういう解釈でもないのだと私は理解をしていて、それは暗黙裏の前提にはなっているのだと思います。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘のとおりかと思っておりまして、元々紙の船荷証券につきましてもここは緩やかに解されているのだという部分があるのだろうと思いますので、そこの紙の船荷証券における解釈というのはそのまま電子になっても引き継がれるということを想定しますので、文字どおり読みますと、記録しなければならないという形になっていますので、無効になるというような考え方というのは一方ではあり得る、ただ他方では、ここの要式証券性というものは緩やかに解されているという今の紙の船荷証券に対する考え方、これがそのまま維持されていくと考えております。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。   それでは、第1については十分御意見を頂きましたので、次のところに進みたいと思います。   事務当局から部会資料5の第2の御説明をお願いいたします。 ○生出関係官 それでは、事務当局の生出から、部会資料5の「第2 電子船荷証券記録の技術的要件」について説明いたします。構成は「1 電子船荷証券記録の定義及び信頼性の要件以外の技術的要件について」、「2 技術的要件としての信頼性の要件について」、「3 電子船荷証券記録の発行の技術的要件について」、「4 電子船荷証券記録の支配の移転の技術的要件について」という構成になっておりますが、先ほどと同様に、部会資料3からの変更点を中心に説明していきたいと思います。   まず、資料の13ページの補足説明の箇所以降にも記載しておりますが、「1 電子船荷証券記録の定義及び信頼性の要件以外の技術的要件について」は、基本的な考え方として、部会資料3では、その要件の一部を法務省令に委任した上で、法務省令において記録媒体を規定することを提案していたのですが、技術的中立性の観点からは必要以上に技術的要件を定めることは相当ではなく、あえてこのような形で記録媒体まで特定しなくても通常は問題は生じ難いと考えられますため、この省令委任については置かないこととし、部会資料5では、電子船荷証券記録の基本的な技術的要件として、資料に記載したとおり、基本的な技術的要件を規定するといった内容にしております。   次の変更点ですが、すぐ下に記載している第1号について、部会資料3では、「電磁的船荷証券記録に関する権利を有することを称する記録として特定されたもの」としていましたが、これだけでは十分にSingularityの意義が反映されていないのではないか、といった第3回会議での指摘を踏まえて、本文記載のとおり「唯一の記録」という文言に改めました。   次のページに記載してあります第4号について、電子的記録の完全性に関する規律となっておりますが、部会資料3では、「適法に改変されたものを除き、記録された情報を保存することができるもの」との規律案を示しておりましたが、第3回会議での指摘を踏まえて、部会資料5記載のとおりに修正することといたしました。   また、国の認証を受けた機関による関与の要否については、第3回会議において、日本法が広く使われるようにするといった戦略的な視点から国による認証制度の要否を検討すべきであるといった御指摘を頂いたことを踏まえ、15ページの(3)の注意書の箇所にその検討結果を追加して記載しておりますが、国の認証を受けた機関による関与について規律しないことが相当である、という結論は部会資料第3と同様となっております。   次に、15ページの下の方に記載をしております、2(1)技術的要件として信頼性の要件についての箇所ですが、MLETRやLaw Commission草案においては、電子的移転可能記録の発行やそのシステムに関して信頼できる手法が用いられていることが求められており、一般的な信頼性の基準についても明文の規定が設けられているところです。我が国においても同様に、電子船荷証券記録の技術的要件として、信頼性の要件の定め方について案1から案3までを提案しております。   詳しくは16ページ以降に記載しておりますが、案1は、電子船荷証券記録に関して、一般的な信頼性の要件を明示的に定めることはしないというものです。信頼性を独立した電子船荷証券記録の有効要件とすると、システム上の些細な問題点をめぐって後に争いが生じるおそれがあります。そもそも一般的な信頼性の要件が電子船荷証券記録の有効要件として独立して問題となるといった事態は想定し難いようにも思われ、ほかの技術的要件が満たされている限りは、通常は一般的な信頼性の要件も満たしている蓋然性が高いと考えられますので、一般的な信頼性の要件については、電子船荷証券記録の有効要件として規律する必要はないものとも考えられます。ただし、この案1については、MLETRやLaw Commission草案において信頼性の要件が明示的に求められていることとの関係で、国際的な調和に欠けるのではないかとの懸念が示されているところではあります。   次に、案2ですが、電子船荷証券記録の技術的要件の一つとして、一般的な信頼性をその有効要件として明示的に定めるものとするものですが、更に、MLETRのような判断要素を例示することや、結果として電子船荷証券記録がその役目を終えるまでの間に問題なくその機能を果たした場合は信頼性の要件の充足を認める、又は推認するような規律を置くことも考えられるところです。しかし、仮にこのような判断基準や推認規定のような規定を設けたとしても、これを独立した電子船荷証券記録の有効要件とすることで、システム上の些細な問題点をめぐって後に争いが生じるおそれがあることは否定できませんし、電子船荷証券記録のシステムを提供しようとする事業者に一定の困難を強いるのではないかという懸念もあるところです。   案3ですが、これは電子船荷証券記録について、一般的な信頼性をその有効要件として定めることまではせずに、訓示規定として電子船荷証券記録を発行する者、電子船荷証券記録に記録する者、電子船荷証券記録の支配を移転する者などに対して、信頼性のある手法を用いるように努めなければならない旨を規定し、その判断基準の例示としてMLETRと同様の事項を定めることとするものです。この案は案2とは異なり、一般的な信頼性の要件を有効要件として定めることまではしない一方で、法令の中に信頼性のある手法を用いる旨を規律することでMLETRなどとの親和性にも配慮を払ったものなのですが、商法のような民事基本法制において訓示規定を定めることについては慎重な検討が必要であると考えられます。   次に、17ページ以降に記載しておりますが、電子船荷証券記録の発行の場面について、技術的要件として、部会資料5でも、電子署名を求めることとしております。より多くのシステムを容認するという観点からは、発行の場面の技術的要件として電子署名を求めることまではしないという考え方もあり得ますが、この電子署名の要件はそこまで厳格なものではなく、電磁的記録が暗号化され完全性が保たれていれば電子署名の要件を満たすと考えるもので、最低限、なりすましなどを防止する観点からも、電子船荷証券記録の発行時に署名又は記名押印に代わるものを設けた方がよいのではないかと考えております。   また、18ページ以降の(4)にも記載しておりますが、電子署名について第3回会議においては、紙の船荷証券に係る署名について法律上の定義がないこととの平仄の観点から、電子船荷証券記録に関して署名又は記名押印に代わる措置を求めるとしても、法律上の定義までは定めないことも考えられるのではないかといった意見も頂戴いたしました。しかし、これまでに長い歴史の中で用いられてきた署名又は記名押印という概念とは異なり、電磁的記録について署名又は記名押印に代わる措置については比較的新しい概念であるため、法律上の定義なくその内容を観念することは困難であることや、既にある我が国のほかの法律においても、署名又は記名押印と機能的同等性を持つものとして電子署名が用いられていることなどから、電子船荷証券記録に関して、署名又は記名押印に代わる措置を求めるものとしつつ法律上の定義を置かないということは、相当ではないように考えられるところです。なお、電子裏書を認める場合において、発行時と同様に、その要件として電子署名を求めるか否かについては、第4回会議での議論を踏まえて、改めて検討する予定です。   簡潔で恐縮ですが、第2の部分の説明は以上になります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、今説明のあった内容について、どなたからでも結構ですので、御意見を頂ければと思います。どうかよろしくお願いいたします。 ○新谷幹事 12ページの技術的要件としての信頼性の要件についてですが、拝見して思ったのは、やはりMLETRに準拠していることが外国から見てもわかり易いという意味では、案2か案3のように信頼性の要件を何らかの形で示すというのはいいのではないかと思いました。一方で、MLETRの12条が15ページの下の方にありますけれども、MLETRの12条は一言で言うと結構厳しい書き方をしているわけなのです。例えば、16ページの冒頭で「データの完全性の保証」というような書き方をしているわけですけれども、システム事業者は完全性を保証するようなことは実際にはしないわけですし、もしそこで完全性が保証されていないということで、電子船荷証券としての要件を満たさないということになってしまうのであれば、これはこれで少し厳しいのではないかと思ったわけなのです。   そう考えると、その下にあるLaw Commissionの規定の仕方というのは非常に分かりやすいし、かつ、これは解釈の幅を結構設けているのですよね。特に、例えば柱書のところで行きますと、第1項の規定の目的のため、あるシステムが信頼に足るものであるかどうかを決定する場合には、以下に掲げる事項を考慮することができる、というふうに、要は例示的な規定なのです。私も海上保険をやっている関係でイギリス法に接することが多いわけなのですが、イギリス法はよく成文法の中で例示的な書き方をするのです。これは判例法がもとになっているから、それを成文法化すると、具体例も入ってしまうということもあるのですが、ただ、読む側にすると、こういう例示の規定というのは非常に分かりやすい。かつ、この例示の規定というのは、実はこの上にあるMLETRの内容をもう少しかみ砕くというか、解釈の幅を設けるような格好で書き直しているだけなので、例えば、先ほどの案3でいうように、訓示規定という言い方がいいのかどうか分からないのですけれども、判断基準の例示として示すのであると、Law Commissionがやっているような、MLETRに少し解釈の幅を設けるような、こういうやり方が適当なのかなという感想を持ちました。   一方で、案2のように信頼性の要件として明確に定めてしまうと、先ほど申し上げたように、ちょっとしたことで要件を満たさないということになるなど、トラブルになりかねないので、私の結論としましては、案3であって、訓示規定のようなものを商法に設けるというのが適当なのかという点は残りますが、一方で読む側にとっての分かりやすさ、かつ外国から見てMLETRにフォローしているということがぱっと見てすぐ分かるという観点からは、何とかこの案3のようなものが実現できるといいのではないかと思った次第です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何かございますでしょうか。 ○渡辺幹事 特にございません。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、ほかにどなたでも御意見はございますでしょうか。 ○池山委員 池山でございます。すみません、私は実は今の新谷幹事の意見と正反対なのですが、事務当局が考えておられる案1でよろしいのではないかと思っております。もうその理由は補足説明に書いてあるとおりです。   MLETRとの整合性という、あるいは整合性を示すという観念的、理論的な理由付けというのは分からないわけではないのですけれども、やはり実際に電子B/Lを利用する立場から見ますと、この電子B/Lのシステムを採用しましょうということで関係者が同意をして、それに従って電子B/Lが回っていくと、かつ、その電子B/Lのシステムというのは、実務的にはそれほどいいかげんなシステムがぽんぽん出てくるわけではなくて、この部会の席上でも指摘があったとおり、国際P&Iグループが承認したものということで実務的な縛りもあると、そういう中で事実上、信頼性があるものを関係者が合意をして使っている、あるいは使うであろうという前提があるわけです。その中で、MLETRとの整合性ということだけのためにわざわざ新たな明文規制を入れるというのは、実務にとっては、俗な言い方ですけれども、余計な規制を加えられてしまうかなという感覚があります。   案3についてはなおさらそうで、実際そう訓示されて、では何をするのかという問いに対する答えがないのです。事務当局の案は、恐らくそういうところまで考えてくださって、実質的には案1でもいいのではないかという構成を示していただいているので、それに単純に賛成をしたいと思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局からはございますでしょうか。 ○渡辺幹事 特にございません。 ○小出幹事 小出でございます。ありがとうございます。まず、今の新谷幹事の御発言、池山委員の御発言に対してのコメントを含めて申し上げたいと思うのですけれども、まず1点目の新谷幹事の御発言の趣旨というか、方向性については全く同意でございます。ただ、MLETRの理解として、これは載せていただいている資料は私の翻訳だと思いますので、私の翻訳も問題なのかもしれないのですけれども、これは飽くまで例示規定でありまして、完全性が保証されていなければいけないということを規定している趣旨ではありません。12条の柱書のところに、以下を含む全ての関連する状況に照らしてと書いてあるのは、これは例示の意味であるということが明確にされております。したがって理解としては、Law Commissionと同じように、これも例示的な規定であり、何か特別な固有の要件というものを明示しているものではないということについては確認をしておきたいと思います。その意味で、新谷幹事が先ほど案3とおっしゃいましたけれども、それはMLETRも正に案3の考え方であるということをまず申し上げたいと思います。   それから、2点目の池山委員の御発言についてなのですけれども、非常にそれも理解できるのですが、私としましては、当事者がこれで信頼できると決めたから、それで信頼性があるというのでいいでしょうというのは、やはり少し抵抗がありまして、これは第三者的な効果があるということが前提なので、契約当事者でない者との関係のことを考えると、客観的な信頼性の一定の要件というものをきちんと満たしていなければいけなくて、それは当事者でどう合意しようが、それを満たしていなければやはり駄目なのだということなのではないだろうかと思います。もちろん現実的にはそんないいかげんなものが出るわけがないというのは、それはそのとおりだと思うのですけれども、ただ、やはり法のあり方としては一定の信頼性の要件というのは課す必要があるように思います。   その上で、しかし、そうはいっても、案1にもきちんと信頼性ということを書いてありますから、それでいいではないかというのは、そのとおりかとも思うのですけれども、他方で案1の場合ですと、何をもって日本は信頼性を判断してくるのであろうかということが対外的にも分かりにくくなるのではないかと思います。つまり、日本の裁判所が勝手に信頼性を判断して、それはグローバルな基準とは違うのだと思われてしまうと、かえって日本法に対する不信感というか、使いたくないという思いになってしまうかもしれないということを考えますと、私は個人的には案3のように、我が国の信頼性というのは、これはもちろん訓示的とか例示的ではありますが、ここに挙がっているような要素を鑑みて、すなわちグローバルで考えられているような信頼性と同じものを考えているのですよということを示す意味で、これらのことを要素として出すということには一定の合理性があるのではないかと考えております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○池山委員 再度、池山でございます。小出幹事の発言されているところは、それはそれでもっともだと思うのですけれども、一方で、第三者との関係もあるからというのは理解をするにしても、そもそも論として技術的要件として第2の1の一から四までの要件が満たされることは前提なわけで、ここでの問題は、それに加えて更に信頼性なるものを抽象的に絶対に入れなければいけないかということが問題なのだと思っております。やはり一から四の要件は満たされるのであれば、それは第三者との関係でも、電子船荷証券記録と認められるべきものとそうでないものを識別するのに十分なのではないかという実質的な価値判断が背景にはあるのだろうと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。事務当局はよろしいですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。これまでの御議論を拝聴いたしまして、確かに事務当局の整理といたしましては、ここの信頼性という要件が本当に必要なのかということを考えますと、先ほど池山委員がおっしゃられたとおり、基本的な性質というものを備えていれば、あえてプラスアルファ、信頼性というものを求めなければどうしても駄目なのかと言われると、そうでもないのかなという感じがしておりまして、そういうふうに考えますと、案1というものも十分あり得るのかなと思っているところでございますが、やはり他方で、今回やろうとしていることは、MLETRに準拠して電子化を認める立法を考えるということでありますので、やはりMLETRで言われているところの信頼性というものについて何ら言及しない、案1を採ってしまうと、法律上はどこにも出てこないということになってしまいますので、やはり国際的な調和ということを考えますと、こういったものを入れた方がいいのではないかというところも十分考えられるところでありまして、ただ、他方で余り効力論に大きく跳ねてしまったりすると、少し実務的に混乱を招くかもしれないというところで、訓示規定という案3というものを出させていただいているところでありまして、正直なところ、事務当局としても相当悩ましい論点だと思っております。案1、案2、案3と書いているから、案1が事務当局としてメインで考えているとか、そういったことではございませんで、全てについて中立的なというか、現時点で何か事務当局としての立ち位置が定まっているわけではない、我々も非常に悩んでいる問題であるということを申し上げさせていただきまして、また引き続き皆様の御議論を賜れればと思っているところでございます。 ○吉田委員 吉田でございます。質問がございまして、信頼性の要件は、これを独立した有効要件とすることで、システム上の些細な問題点をめぐって後に争いが生じるおそれがあるというのが、問題点として指摘をされてきたと思います。資料の17ページの(3)の2パラグラフ目にも、信頼性の要件の充足を認める又は推認するような規律を置くことも考えられる、しかしながら、システム上の些細な問題点をめぐって後に争いを生じるおそれがあることは否定できないと書いてありますが、実際に争いが生じる、例えば訴訟を提起するようなことは自由と思いますが、勝ち目がないものに対してはお金も時間も掛かるので訴訟をしないというのが合理的な考え方だと思います。例えば、これは実際上どのくらいのレベルで懸念されているものなのでしょうか。例えば電子署名のように、要件では書いておいても実際はクリアするのは難しくないのであれば、別に置いておいてもいいではないかというような考えもあるのかもしれないと思いました。 ○藤田部会長 事務当局からお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。率直なところ、具体的にどれぐらいこういう争いが起きるかというところは予測は不可能というところでございまして、何か具体的な危機感を持っているわけではないというのが正直なところですけれども、やはり案2のような形で制度を作り込んでしまうと、余り問題なく支配の移転が進んでいって取引が無事に終わっているのだけれども、信頼性に疑義があるということでいろいろ難癖を付けられる余地というのがどうしても残ってしまうと、それに付け込むということが場合によってあり得るかもしれない、これは本当に抽象的な危機感でしかないわけですけれども、ただ、そうはいっても、わざわざそういった隙を与えるような制度にしてしまうというのは、やはりどうかなというところがありまして、この問題は紙ではおよそ生じない問題なわけですので、あえてこういう信頼性の要件というものを有効要件として規定してしまったがゆえに、そういった隙を作るようなことになってしまっては、それはどうなのかなというところで問題提起をさせていただいているところでありますので、正直なところ、具体的にどうこうというところはなかなか数字をもって言うなどということは不可能なわけですけれども、やはりこういった制度を作る場合に、付け込まれるような仕組みにしてはいけないのではないかと、こういった問題意識でございます。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。 ○吉田委員 了解しました。先ほど電子署名という要件を出しましたが、電子署名の場合には、実際要件を満たすのは難しくないから要件があっても別に問題ない、電子署名がない、あるいは様式を満たせていないということをもって否定されることはないのではないというような流れだと理解しておりますところ、様々な有効性の要件の中でシステムの信頼性のところだけクローズアップしたのはなぜなのでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。この信頼性の要件がクローズアップされるだろうということを我々として申し上げているわけではなくて、この信頼性の要件というものは、突き詰めて考えると、これを有効要件としてそもそも入れる必要はないのではないかというところが出発点としてあるわけで、にもかかわらず、これを有効要件として入れたことによって余計な紛争を招くといったことは、これはやはりあってはいけないのではないか、こういう問題意識でございます。   逆に、電子署名なるものは、やはりこれは紙の船荷証券でも署名というものが必要とされている関係で、これはあった方がいい、在るべきではないかということで今回、提示はさせていただいているところですので、これは本質的に求められるものだろうと思いますので、これをめぐってもし争われたとしても、それはそれでやむを得ないことだろうと思っておりますが、他方で一般的な信頼性の話になりますと、ほかの基本的な性質なりが認められれば、それをあえて独立の有効要件として入れる必要がそもそもないかもしれないもの、これを入れることによって争われるというのは、これは少し仕組みとしてどうなのかという問題意識でございます。 ○吉田委員 吉田ございます。そうすると、新たに要件を作ることによって、その新たに作った要件で否定されるということがないようにというのが全体的な考え方、そういうような理解ですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。そういうことでございます。元々それほど必要でないかもしれないものをあえて要件とすることによって、それがないことで効力が否定される、これは本当にそれでいいのでしょうかと、こういう問題です。 ○吉田委員 吉田でございます。もう一つ教えていただきたいことがございまして、インターナショナルP&Iグループが認証する電子商取引システム以外のステムの使用から生じた責任のうち紙の船荷証券を使用していれば生じなかった損害はてん補対象外のため、そのような電子船荷証券は流通しないというような前提で、実際の実務はそうかもしれませんが、国の認証機関は設けず、一方でインターナショナルP&Iクラブに事実上依拠する、P&Iグループに信頼性の認定を依拠するという、そこのところというのは国家としてといいますか、国の政府としてどういうふうに御整理されていますでしょうか。 ○藤田部会長 今言われた国際P&Iグループによる実務的縛りに言及されたのは池山委員であって、事務当局ではないと思うのですが、さしあたり事務当局から御返答があればお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。一応補足させていただきますと、事務当局としてはP&Iグループが承認したものだけが使われることを想定しているわけではなくて、ただ、恐らくそうなるだろうということは事実上の問題として、そうなのかなというのは頭の片隅には当然置いておりますけれども、それのみが利用されるということを想定しているわけでもなければ、それがあるから信頼性の要件が要らないということも申し上げているわけではございません。 ○吉田委員 了解いたしました。ありがとうございます。 ○後藤幹事 後藤です。もう議論は出尽くしているのかもしれないのですけれども、結局、MLETRがあって、世界中がそれをベースに進んで行くであろうという前提で、条約ではないわけですけれども、そういうモデルローにどれだけ寄せていくかという場合に、確かに厳密に日本法的な考え方で行ったら要らないかもしれないのだけれども、できるだけ外から見て分かりやすい方がいいよねという考えをよしとするかどうかという話なのかと感じております。また、国内の整理でやったというときに、それを外からどれだけ理解してもらえるかという問題だとすると、ここだけで議論していてもしようがないのかなという気がしなくもないところでもあります。   翻って考えますと、確かに要らないという、事務当局が最初おっしゃられていた考え方も分からなくもないのですが、であれば、なぜMLETRでこれを要求したのかというところがやはり一番の問題となるように思います。私はその議論に参加しておりませんので分かりませんけれども、恐らく1の一から四では何となく足りないと思う人がいるかもしれないので、念のために要求しておくと、そうすれば国際的にも大丈夫でしょうという合意を作ったのだとすると、それを我々としては要らないような気がすると言ったとしても、ほかではやはり要るのだという人がいるかもしれないというときに、その人たちへの見え方というのはやはり意識しておく必要があるのではないのかと思います。もちろん、日本では不要だとして独自の方針をとっても、他の国を説得できるかもしれませんが、あえてその道を選びますかというところなのかなという気はします。   ただ、要件としてしまうと、やはりいろいろと弊害があるかもしれないので、努力義務にすぎなければ、それで後で紛争にしようがありませんので、そういう形にして、ただ、日本としてはこれを十分意識していますよということを示すのは、一つの工夫として十分あるように思います。また、信頼性のある手法といったところで、当事者が何で判断すればいいか分からないではないかというときに、これは池山委員が最初におっしゃられていたことと一緒で、IGPIが認めたものは恐らく信頼性があると受け止められて進んでいくであろうと思います。それは、案3だろうが1だろうが多分同じことになるわけで、ただ、そこの不明確性がもし残るのであれば、これは先ほどの吉田委員の御発言の方向と少し違ってしまうかもしれませんけれども、例えば立案担当者の解説などで、例えばIGPIが認めたものは一般的には恐らく信頼性があると評価できることが多いとか、そういうことを書いておけば、多分それで進んでいくということなのかなという気はしております。   結局、最終的にこの議論の決め手になるのは、MLETRでこれを入れたのは何故かというところに尽きるようにも思われますので、今更その話かという気がしなくもないのですけれども、御議論に参加されておられた小出幹事に御確認を頂ければと思いますし、また、もし必要があればUNCITRALに問い合わせるということもあり得るのかなと思いました。いずれにせよ、ここだけで議論していても、なかなか結論が出ないのかなという気がしております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○小出幹事 小出でございます。私がUNCITRALの立場を代弁できる立場ではないのですけれども、私の理解ですと、元々確かに12条、私も草案として出てきたときには、一見要件のように見えますので、実は先生方と同じように初めは少し抵抗感があった、つまり、こんな細かいことまで決めて、これに該当しなかったらそもそも信頼性がないと言われるのかと私も思ってしまったのは事実でして、しかし、その後議論にいろいろ参加していますと、恐らくこれはテクノロジカルニュートラリティー、つまり技術的中立性という考え方を採用したからこそ入れなければならない条文だったのではないかとは理解をしています。技術的中立性、つまり、今回のMLETRでは特定の方式を要求していないということが前提にあるわけで、もう信頼性というところだけになるのですが、そうなりますと、やはり実務的には何をもって信頼性と判断できるのかのガイダンスが欲しいということは、やはりかなり強い要望としてあったということが背景にあったように思います。したがって、技術的中立性ということと、それから、それに対する解釈指針ということがこの条文の趣旨だと思います。  一方で、そのときにやはり、これはMLETRのコメンタリーの方にも書いてあるのですけれども、当事者の合意というものは、これは明確にこの信頼性には影響しない、させてはならないということが書いてあります。つまり、当事者がどんなに信頼性があると言っても、それでは駄目なのだと。ただ、それは一方で実務慣行を否定する趣旨では全くございませんで、12条でいうと(a)項の最後の7号ですかね、全ての適用され得る業界の標準というところが結局、実務慣行のことをいっているので、P&Iクラブの慣行などはここで全て読み込まれて、もちろん現実的にはそこで信頼性あるものとして通用しているものについて、それを否定する趣旨ではないのですが、当事者同士でそれをある意味、変更していくというようなことを想定しているものではないということだと思います。要するに技術的中立性という考えの一つの表れであると私は理解しているところです。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○雨宮委員 今の皆様の御議論を拝聴して思ったのですが、MLETRは解釈指針として、またガイダンスとして、それを示しているということであれば、特に有効要件として取り入れるのではなくて、1に示されている一号や四号など、また電子裏書といった技術的要件の信頼性について争いが起きた場合に、MLETRやLaw Commissionで挙げられているような要素を考慮して信頼性があるかどうかについて判断するというような、例えば、商法793条は救助料について争いがあるときには裁判所は海難救助条約で挙げられたような事項により判断するといったような規定があるので、同様に率直に解釈指針として条文化することも考えられるのでないのかと考えていました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何かございますか。 ○渡辺幹事 今のは大変貴重な御指摘として、引き続き検討させていただきたいと存じます。 ○池山委員 池山でございます。案1は非常に分が悪いなと感じながら拝聴しておりますけれども、後藤幹事がおっしゃった、MLETRにどこまで寄せるのかと、寄せているということをどう見せるのかという問題だという御指摘は、一方でそれはそうなのだろうと思います。ただ、そこで、では案1が駄目だというときに、案2と案3を採用するとしたら、その見え方の問題というのは、やはりあるのだろうと思っております。これは私の個人的な感覚ですけれども、案3のように、やはり当事者、これは利用をする者といっていいのでしょうか、発行する者、記録する者、その他、関する行為をするものを分節、分けて挙げた上で、それぞれにそういう努力義務を課すというのは、論理的ではあるかもしれませんけれども、実際名宛て人とされた人からすると、それぞれが努力せよと言われても困るということになって、単純にこの規定があることが電子B/Lの導入の阻害要件になるということを恐れますということだけは申し上げた方がいいかなとは思いました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   よろしいでしょうか。決め手は結局、有効要件として定めたときのおそれ、これは抽象的なものなのですけれども、これをどのぐらい深刻に捉えるかということで、繰り返しかもしれませんけれども、電子船荷証券の複製が出ているわけでもなく、無権限のアクセスとか、偽造とかが問題となっているわけでもないのだけれども、システムが一般論として信頼性を欠くから電子船荷証券記録の所持人の権利はないのだといったことを誰かが言い出すということをどのぐらいシリアスなシチュエーションとして考えるかということと、他方、こういうのを要求することが本当に法律的に意味があるかどうかという辺りはよく考える必要はあるのだと思います。特に、信頼性の要件の一つである無権限のアクセスについて適切に防止されていることがほかの技術的要件のところで本当にうまくカバーされているのかというのは、よく分からないといえばよく分からないし、外国人が日本の法律を見たときに、それはカバーされていないと解釈されてしまうおそれはもちろんないわけではないのかもしれません。いずれにせよ、意見の分布はある程度参照させていただいた上で、今後検討させていただきたいと思います。 ○笹岡幹事 まとめに入ったところで、申し訳ありません。一つ、MLETR準拠といわれるためには、19条の外国ETRの非差別のルールも重要であるかと思います。今回は、日本法にもとづいて信頼性を判断するということを想定されていると思うのですが、逆に、例えばシンガポール等で認証を受けたETRについて日本法でどう扱うのかというところについて議論をしておかないといけないのではないかと思います。むしろそのケースの方が圧倒的に多いように思われますので、議論の射程に含めていただければと思います。お願いします。 ○藤田部会長 今の点も注意していただければと思うのですが、小出幹事、感触を伺えますでしょうか。MLETRだと12条(a)項6号ですね。これが考慮要素の一つになるという形で取り込まれるということなのでしょうか、仮にこれに即したような形で信頼性を置くとすれば。それによって、別に外国の差別ということにはならない、外国であってもきちんとその当局の、のっとっていればそれなりに配慮されますよという限りで、中立的に扱っているということですが。 ○小出幹事 小出でございます。(a)項の6号は、どちらかというと国内の機関によって宣言されているというものを想定していたような感じはありますけれども、ただ、例示ですので、御指摘のとおり、そこから読むこともできるとは思います。いずれにせよ、これは結局、どの国もMLETRを採用してくれるというハッピーな世界を想定しており、したがって、ある国で信頼性があると判断されていれば、当然ほかの国でもこの12条の(a)の各号のどれかには該当して、実質的には信頼性があると判断できるという世界を想定して規定したと理解をしておりますので、(a)項の中でどれかが国外のものを想定しているということは多分ないのではないかと思いますが、全体としてはもちろん認める方向性だということなのだと思います。 ○藤田部会長 日本の特定の機関だけが特権的に何か権限を持ってしまうと、そういう懸念が出てくるのかもしれませんが、それは日本で機関を置かなければ、その問題は起きないのかもしれません。ただ一般論として、外国ETRの非差別に関する笹岡幹事の意見はよく留意するということで検討したいと思います。   ほかに御意見はございますでしょうか。 ○池山委員 すみません、電子署名の点について、よろしいでしょうか。電子署名がどうしても必要だという前提に立つならば、定義をこの程度の概括的なものにしていただくということはよろしいのではないかと思いますけれども、そもそも必要かどうかという点については、正直申し上げると、今の段階ではまだ否定的な意見を申し上げざるを得ないかなと思っております。   その理由というのを少し整理してみますと、これは作成なる概念の範囲にも関わりますけれども、元々発行というものは、その記録を作成して、それから交付にかわる支配に属する措置を執るということなのですけれども、一方でこの法文を見ると、作成及び支配に属する措置の方法として電子署名という措置を要求しているとも読めるのですけれども、他方では実務的な感覚としては、やはり作成行為があって、作成行為としてデータを記入するといいますか、正にデータを作成するという行為があって、それから、その作成されたデータを最初の荷送人の支配に属させるための措置があって、それとは独立した何らかの措置が要ると理解されがちなのかなと思いますし、感覚としてそうだと。   そうすると、それを紙になぞらえて言いますと、紙の場合は正に紙の証券を作成して、それから交付をすると、それだけだと正に真正性が担保されないから、真正性を担保するために署名という措置が独立したものとして要ると。だけれども、電子の場合というのは独立したものとしての署名なる措置は要らなくて、元々この電子船荷証券のシステム自体が正に先ほどの技術的要件を満たすもの、もしも信頼性という要件が結局入るのであれば、入るものの中で行われるということが前提なので、そこでも真正性は担保されるのだろうと。それに加えて、伝統的な真正性の担保手段としての署名という措置が本当に要るのかなと、実際本当にやっているのかなという感覚を持っております。   今申し上げたことを別の観点から言うと、実際に今使われている電子B/Lの中で作成者がやっていることを見ますと、データをぽんぽんと入力をして、あるいは元々の元データは荷送人から送ってくるでしょうけれども、それを承認をして、運送人の電子船荷証券記録のデータとして確定をさせて、運送人内部で、それを発行するというボタンを押して、荷送人の支配に属させると、そこをやっているだけで、その中で別個、署名という措置をやっているようには思えないのです。恐らく、いや、やっているのだという考え方があるとすると、そこでぽんと交付に相当する支配を荷送人に属させる措置であるところのボタンを押すと、そこが常に電子署名の要件を満たしているのだということが暗黙裏の前提になっているのだと思いますが、そこは正直、確信を持てないと思っております。   最後に念のため申し上げますと、この署名というのは私の理解ではMLETRの要求ではないのだと思っております。MLETRは飽くまでも、法が署名を要求する場合には電子的な署名はこういうふうにしろと、こういうものでなければならないと言っているだけで、電子的書類の場合に電子署名をしろということにはなっていないのだと思っています。その上で、国際条約でも、少なくとも今のヘーグ・ルール、ヘーグ・ウイズビー・ルールでは、署名をしろという要件は実はないと、専ら日本の伝統的な国内法が署名を要求しているにすぎないと、そういう整理なので、なくてもいいのではないかなと、あると、逆にそういう、実はしていないかもしれないという不都合の懸念を払拭できないのではないかと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございます。事務当局から御返答いただけますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございます。まず、今回、電子署名というものを必要とした経緯といたしましては、池山委員御指摘のとおり、何かMLETRで独自にこの電子署名みたいなものを求められているからやっていますとか、そういったものではなく、基本的には紙の船荷証券において求められている署名というものがありますので、それを電子化した場合、それと同等のものとしてどのようなものを用意するかと考えたときに、ここでいうところの電子署名というものがそれに当たるのではないか、こういう発想でやっているわけでございます。   電子署名については、電子署名という言葉だけ捉えると、あたかもサインが可視的に表れることを想定してしまいがちなのですが、ここで我々が申し上げているものというのは、要は暗号化されて、先ほどの基本的な性質でいうところの完全性、こういったものが保たれていれば基本的には満たすだろうと、こういう整理が可能だろうと考えておりますので、大きな障害にはならない、恐らく今、規約で出回っているものもこの要件を満たしていくのではないかという整理の下で、こういう考え方を提示させていただいているということでございまして、先ほど池山委員からも御指摘いただいた、要は、最後にぽちっと押すところで電子署名という形になるのかというところなのだろうと、それが暗号化されたシステムを使ってですね、それは何とかカバーできるのではないかと我々としては現時点では一応の整理をさせていただいているところで、そういった整理を前提とするのであれば、こういった電子署名というものを求めてもいいのではないか、逆に何も求めないと、結局これは誰が作ったのかという、誰が発行したものかというのが分からないまま流通してしまうということになりかねないのではないかというところがありますので、やはり何らかのものは必要なのではないかというふうに現時点では考えているところでございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。解説だと18ページのところに丁寧に書かれていて、独立の電子署名行為とか、署名のような外観そのものが表示されたものである必要はないとか、そういったことは明示されているのですが、それでもなお若干不安が残るというのが池山委員の感触なのだとは思います。 ○池山委員 ありがとうございます。一方で今の渡辺幹事の御指摘は、私個人は理解したつもりですし、部会長の御指摘も分かるつもりではあるのですけれども、1個申し上げなければいけない部分があるとすると、私の申し上げた中の理由の一つにある、そもそも署名が必要な理由がよく分からないということなのだと思います。署名がないと、正に誰が作ったものか分からないということが起きかねないという言い方をされました。それは、やはり電子署名という要件を満たすことが真正性を確認する、担保するための要件だという考え方が前提にあって、それは紙の場合は正にそうです、どんな紙にだってB/Lは書けるのですから、紙質に要件はないので。ところが、比喩的に言えば電子の場合は紙質に要件がある、その意味は、やはり技術的な要件が定まっているので、技術的要件を満たすものの中で作成される限りは、その中で支配をするものを特定することがもうできるわけですから、それ以上、電子署名を求める実質的な理由がそもそもないのではないかという理由というのは一つの理屈として成り立つのかなと思っております。 ○藤田部会長 池山委員の言われている実質については、恐らく多くの方は賛成で、それを表現するために電子的船荷証券の場合は署名が要らないのだというのか、いや、安全な形で発行されているのは署名があるとみなしてしまっていいのだと事務当局のように言うか、そのどちらかということですが、その表現の違いのような印象もないわけではないですね。 ○池山委員 一方で、そうかもしれません。その捉え方というのは、信頼性の要件を、この技術的要件一から四と別個に求める必要があるのかどうかというのと感覚としては似たものかもしれません。ただ、私が今の段階で留保せざるを得ないとくどくど申し上げているのは、実際に出回っているものが本当にこれを満たせているのかどうかということについて、やはりどうしても確証が取れないだろうと思います。その意味では、これは私の個人の意見というよりは、もしこれを本当に残すのであれば、やはりきちんとパブリック・コメントの中で、英語でもしかるべく情報発信をして、実際に規約型の電子B/Lを提供している事業者から本質的な意味での反対がないかということをよくよく確認する必要があるのだろうと思っております。多分、逆にそこは事務当局もお分かりだと思うので、ここで私個人の感覚をこれ以上言ってもしようがないのかなという限りでは、終わりにしたいと思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○箱井委員 今更の質問でしたら、無視してください。今、誰が発行したか分からないというお話がありましたが、誰が発行したかというのは、紙の場合、我々が長く見ていますと、やはり署名欄は非常に重要です。なぜかというと、法律の規定には運送人の氏名又は名称を書くようになっていますが、証券にはキャリアの名称欄がないわけでありまして、ですから、署名欄をもって運送人を示すということになります。長い間様々な問題を生じさせる実務があったのですけれども、電子船荷証券記録の場合には、これは前提として、証券上の債務者というか運送人が誰であるかというのは、特に署名欄がなくても明らかだという前提で皆さん、議論されているのか、そこのところを一応、確認させていただければと思います。 ○藤田部会長 これは事務当局からお答えいただけますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。十分理解が及んでいないところかもしれませんが、運送人が誰であるかというのが分かることが当然の前提になっているかどうかという御質問だろうと思っているところなのですが、そこのところをはっきりさせるという意味でも、電子署名というのはあった方がいいのかなというのは少し個人的には考えていたところではあるのですが。 ○藤田部会長 恐らくその話は署名の話というよりは、箱井委員が言われているのは、記載事項としての運送人の氏名の方ではないのでしょうか。 ○箱井委員 今の書式にはないのですね。ですから、署名欄にアズ・キャリアと書いてある場合には運送人が誰かは分かっているのですけれども、そうではないものもあるのです。キャリアという欄が別にあれば、はっきりするのですが、今行われている電子船荷証券などを知らないものですから。そこではキャリアというのが紙で行われているような曖昧な形、要するに、フォーザマスターとかデマイズクローズを使った形というのが相変わらず行われているのか、もしや進化してそういうものがなくなっているのかというところです。今の議論ですね。だとすれば署名は「ポチ」でも何でもいいかなと思ったのですが、そのような理解でよいのか少しお尋ねをしたいということです。 ○藤田部会長 池山委員、もし実務的に何か答えがあるようでしたら。 ○池山委員 池山でございます。飽くまで私の理解として申し上げますと、まず、箱井委員の御指摘される前提は、紙の船荷証券の場合は運送人の氏名又は名称というのが法定記載事項であって、運送人が明らかであるということは法文上は明らかであるかのように読めるにもかかわらず、実際の実務ではフォーザマスターB/Lなるものがあって、そもそも運送人が誰かと、この証券上の債務者が誰かということ自体が一大係争になると、最高裁判例まで出ると、そういうことになっているという実務がありますよねという事実認識が前提になり、その上で、電子船荷証券の場合にそこがどうなるのでしょうかと、あるいはどうなっているのでしょうかという問いだと理解をしております。   そこは実際の電子船荷証券のシステムがどういう形で作られるかに論理的には依存していて、ひょっとしたら紙におけるような運送人が実は曖昧な電子船荷証券なるものが出回るかもしれません。しかし、私の個人的な理解は、ほぼ間違いなくそうはならないであろうと。というのは、やはりユーザー登録という、正に利用者ですね、利用者登録をして、運送人はこの人になります、運送人になり得るべき人がまずユーザー登録をした上で、その上で運送人として発行というボタンを押すはずなので、そうすると、その人が運送人だということはおのずと明らかなのですよね。今私が知る電子船荷証券の規約だと、それは必ずそうなっていると思います。ユーザーの中にキャリアであるユーザーという人がいて、その人が発行するとなっているので。   逆に、そうであれば、それはある種、電子式船荷証券なるものを導入することによる副次的効果で、システム上、運送人を明示した形でしか発行できないシステムに普通はなるから、今、紙のB/Lで生じていたような問題は起きなくなると、それはそれだけのことであって、逆にそのことと署名を要するかどうかというのはリンクはしない話だろうと思っています。 ○藤田部会長 今のような御回答ですが、よろしいですか。 ○箱井委員 リンクはすると思ったのです。要するに、今と同じことが行われているならば、電子署名はどうなのか分かりませんけれども、署名がどのように書かれているのかとか、ヘディングがどうなっているのかなど、要するに証券の外観・記載から様々に考えていく中の一つの大きな要素にはなっている。それがはっきりしない状態が続くのであれば、署名はなお重要な一要素かというふうに、それはリンクすると思ったのです。池山委員がおっしゃられたように、今後、電子船荷証券になるとキャリアはもう明瞭だということであれば、それはいちいち署名から苦労して判断する必要はないので、私は何も申し上げることはございません。ありがとうございました。 ○藤田部会長 事務当局からございますでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。我々の方も実務のところがよく分からなくて、今、池山委員から補足をしていただいて、非常によく理解することができた部分でございますけれども、基本的には恐らく何らかのシステムというものが組まれて、それが利用されていくということになるのだろうと思いますので、池山委員が言われたような形で恐らく使われていくのだろうということは想定されるわけですが、ただ、今回我々が考えている制度というのは、一定のシステムというものがなければ駄目かというと、必ずしもそうではなくて、正に技術的中立性というところで、いろいろなものが要件を満たせば使えるのだということを想定しているわけですので、必ずしも池山委員が言われたとおりの動きだけではないこともある程度視野には入れた方がいいかなという感じがしております。だからどうしたらいいのかというところまで、すみません、考えはまとまっておりませんけれども、制度を考えるに当たっては、典型的な場面とそうではない場面もいろいろ考えながら検討を進めなければいけないかなと思ったところでございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○池山委員 すみません、今の点に関して。これはシステムという言葉の定義かもしれませんけれども、いろいろなシステムがあり得るし、いろいろな技術が用いられる可能性はあると思うのですけれども、やはり何らかのシステムはやはり要るのだと私は理解しております。一方で、確かに今、そういうのはないはずだと申し上げましたけれども、冒頭で、それはひょっとしたら電子B/Lのシステムの中でも相変わらず紙と同じように、キャリアがよく分からないような形で出せるシステムが出てこない保証はないよと言われたら、それは逆に、そうなのかもしれません。私の今の現状認識として、そういうものは知らないし、そうならないのではないかと、そんなものだと受け入れられないのではないかと私は思っていますけれども、ひょっとしたらそういうシステムを、正にシステムという言葉を使いますと、誰かが作って、荷主の側がそんなシステムでも受け入れたら、それはそれで出回るかもしれないと思います。ただ、そうだとしても、それはそういうシステムがけしからんと思うかどうかという問題であって、やはり元々の問題である電子署名が要るかどうかという問題とは、それはつながらないのだろうと私は理解をしています。 ○藤田部会長 箱井委員は何らかの形で曖昧なB/Lが出ると、何らかの考慮要素として署名というものは意味があるというご趣旨ですね。 ○箱井委員 おっしゃることは分かります。記載事項としては運送人を書けということですし、片方は署名しろということですから、それは違うのです。ただ、それが今の実務では正にキャリアの記載欄はないと、これは誰でも知っているわけでありまして、様々なところ、要するに、一部裁判例では裏面約款まで読んで、運送人が誰かを知ろうというようなことを今までやってきたということなのです。これは私もなくなってほしいと思っておりますので、署名うんぬんで別の話だというのであれば、むしろ大歓迎でございます。キャリアを明らかにした実務をやっていただければと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○山口委員 山口でございます。今まで私は電子署名の件については緩やかな形にしてほしいということをずっと述べてまいりました。これは、電子署名自体、あるいは署名らしきもの、あるいは発行者を特定するもの、そういうものは必要ではないかと思っていまして、元々の日本法によりますと署名が要件になっており、モデル法においても、署名が要求される場合にはそれに代わる電子署名について記載をするということがMLETRにも書いてあるということであれば、日本法においては何らかの署名らしきもの、それは必要ではないかと私は思っていまして、ただ、それは余り強い要件にしてもらっては困るというのが考えでございます。池山先生がおっしゃるような形で、ぽんとボタンを押したら出るということで、それが何らかの形である人の意思で発行されたということが分かるシステム、分かるものであれば、それで十分だろうと思うので、ただ、要件から外すことについては若干、抵抗感があるというイメージでございます。 ○藤田部会長 山口委員のレベル感というのは、正に18ページで書かれているぐらいのものだと大丈夫で、これぐらいの要件で足りるということでしょうか。 ○山口委員 これで足りるかどうか分からないですけれども、かなり緩くしていただいたので、これぐらいで回るのかなという気はしているのですけれども、今、電子署名法にあるような、印鑑証明みたいな、あんなものは要求されてはまずいなというのが非常に最初に思ったことでありまして、電子署名というと、どうしても日本法における電子署名を意味するというふうになりがちなものですから、そこについては特別規定を置いていただいて、緩くしていただくということが必要だろうとは思っておりました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   よろしいでしょうか。かなり時間超過してしまいましたけれども、それでは、一旦ここで休憩して、16時5分から再開するということにさせていただければと思います。10分ほど休憩させていただければと思います。           (休     憩) ○藤田部会長 そろそろ時間ですので、再開させていただければと思います。よろしいでしょうか。   それでは、部会資料5の第3について、議論に入りたいと思います。事務当局において説明をお願いいたします。 ○生出関係官 それでは、事務当局の生出の方から「第3 電子船荷証券記録と船荷証券の転換」の箇所について、先ほどと同様に、部会資料3からの変更点を中心に説明いたします。   まず、19ページ以降に記載してあります、船荷証券から電子船荷証券記録への転換の箇所ですが、船荷証券から電子船荷証券記録への転換については、運送人などにその転換に応じる義務を課すか否かが問題となり得ますが、電子船荷証券記録への転換に応じる義務までは認めないこととするという方向性について、第3回会議では特段の異論は見られませんでした。   部会資料5においては、21ページに記載しておりますように、転換するに当たっての承諾主体となる船荷証券の所持人について論点として提示し、検討しております。転換に当たっての承諾主体となる船荷証券の所持人については、①船荷証券に関する権利を適法に有する者に限定するという考え方、②裏書の連続によりその権利を証明した者に限定するという考え方、③船荷証券の所持人であればよく、限定しないという考え方があり得るところです。   ①の考え方は、船荷証券に関する権利を適法に有する者のみが転換を受ける地位にあり、単に船荷証券の所持人というだけでそのような地位にはないとするというものです。転換を受ける地位は船荷証券に関する権利から導かれるというものになっております。   これに対して、②の考え方及び③の考え方は、転換が媒体の変更にすぎないという点に着目しており、船荷証券の所持人であれば転換を受ける地位を有するのが相当であるというものです。その中でも②の考え方は、第2項において、当該電子船荷証券記録を支配する者は、電子裏書の連続により当該電子船荷証券記録の発行を受けた者がその権利を有したことを証明したものとみなすとされ、転換後には転換前の船荷証券の裏書の連続が問題とされなくなることから、裏書の連続によりその権利を証明した者でなければ転換を受けることができないとするものです。③の考え方は、今御説明した第2項の裏書の連続による権利証明との関係で問題が残るものとも考えられますが、①の考え方と②の考え方は、いずれも採用することもできるように思われます。   この点についてどのように考えるか、電子船荷証券記録から船荷証券への転換の場合の際も同様に問題になりますので、御検討いただければと思います。   次に、部会資料の23ページ以降にある電子船荷証券記録から船荷証券への転換についての箇所を御説明いたします。電子船荷証券記録から紙の船荷証券記録への転換の場面については、電子船荷証券記録を支配する者に運送人に対する転換請求権を認めるかどうかについて、考え方が分かれております。従前どおり、このような転換請求権までは認めずに、原則として電子船荷証券記録を支配する者と運送人の双方の合意がある場合に、紙の船荷証券記録への転換を行うことができるとするという考え方としてX案を、電子船荷証券記録を支配する者に対して運送人に対する転換請求権を認める考え方としてY案を、提示しております。   24ページの中ほどに記載しておりますとおり、X案とY案のいずれを採用するかを検討する上で、第3回会議においては、転換に係る費用や転換後の船荷証券を交付するまでのリスクをどのように考えるのかについても検討すべきであるとの指摘がございました。仮にY案を採用する場合には、運送人などは船荷証券の交付をする義務を負うことになりますので、原則として転換に係る費用を負担しなければならなくなりますし、船荷証券を実際に交付するまでのリスクを負担することになるものと考えられます。特に転換の場面を想定すると、電子船荷証券記録を支配する者が運送人などの近くにいないこともあり得るところで、そのような場合に、原則として運送人などが電子船荷証券記録を支配する者の所在地まで船荷証券を持参しなければならないことになるものと考えられます。もちろんこれらの帰結は、運送人などが船荷証券を交付する義務を負う場合の原則的なものにすぎず、個別に修正する規定を置くことも不可能ではないように思われますが、どのような規定を置くべきかについてはなお検討を要すると考えられます。いずれにしても規定の複雑化は避けられないところではあるのかと考えられております。以上を踏まえ、この点についてどのように考えるか、御検討いただければと存じます。   簡潔で恐縮でございますが、第3の説明は以上になります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、今説明のあった内容について議論したいと思いますが、冒頭にアナウンスさせていただきましたように、本日は参考人として御参加いただいている日本貿易会の高橋様から御意見を頂き、その後で他の皆様から御意見を頂きたいと思います。 ○高橋参考人 高橋でございます。発言の機会を頂戴いたしまして、ありがとうございます。荷主団体であります日本貿易会としまして、電子船荷証券記録から紙の船荷証券記録への転換の場面において、その支配を有する者に対して転換請求権を認めるかどうかにつきまして、これを肯定する考え方を支持する旨を表明したいと思います。   部会資料におきましても、Y案を支持するものとして、国際海上物品運送の実務において紙の船荷証券が求められる可能性について言及しておりますが、日本貿易会の会員企業に諮りましたところ、実務上の要請により電子から紙への転換を必要とする場面は今後も引き続き想定し得るということでございました。それがどのような場面かと申しますと、いわゆる洋上転売と呼ばれる形態を想定いたします。洋上転売では、船積の時点で最終的な荷受人が必ずしも確定しているわけではなく、通常は指図式の船荷証券の使用が想定されております。そこで、当初は電子船荷証券記録のある特定のプラットフォーム上で運送人の引渡しを完了させようとして、荷送人として電子での発行を受けたのですけれども、商売上の都合によって最終的な転売先、荷受人が変更となって、そして、この者が当該プラットフォームに参加していない、あるいは何らかの事情によって紙の船荷証券を希望するというような場合には、電子から紙への転換が生じることとなります。もちろん船荷証券の発行を求める時点で、荷送人としては、紙なのか、それとも電子なのかについて注意深く検討すべきことではあると考えておりますが、しかし、こうした商売の形態では必ずしも荷送人にその決定権がないということもございますし、また、電子船荷証券記録は普及の途上にありまして、プラットフォームが次々と立ち上げられつつある中、全ての荷主がその全てのプラットフォームに参加しているわけではないという状況であります。   また、この洋上転売の話とは別に、国あるいは港によって、現地の法律や税関当局の要求によりまして紙の船荷証券が求められるということも考えられます。荷揚げ港は船積の時点で既に決まっておりますので、あらかじめ荷主側で調査した上で紙と電子、どちらにするか決めることになるのですけれども、貿易の実務におきましては現地のルールや運用が突然変更されるということも珍しくはございません。   このように、一旦電子船荷証券記録の発行を受けた後で、やはり紙の船荷証券を発行してもらいたいという商売上のニーズが生じることは一定、予想されますため、紙の船荷証券への転換請求権を明文で認めていただきたいというのが日本貿易会の意見でございます。   これに対して部会資料では、X案を支持するものとして、運送人が紙の船荷証券への転換を不合理に拒むという可能性は低く、不合理に転換を拒むのであれば、商習慣や信義則等によって運送人に債務不履行責任や不法行為責任が認められることもあるという指摘がございます。しかし、明文で転換請求権が規定されていない、逆に言えば、転換の要求に応じる運送人の義務が規定されていないとした場合に、転換の要求を拒んだことを理由に運送人が損害賠償責任を負うということになるのか、これは疑問があるところでございます。   また、紙の船荷証券への転換につきましては、システムの利用規約の中で別途規律が設けられて、規約に沿った運用が行われる可能性が高いのではないかという指摘も挙げられております。これは、結局この問題をシステムの利用規約に委ねるということかと思いますが、プラットフォームが次々と立ち上がって、今後これらがどのように集約されていくのか、あるいは、これらの中でどのような利用規約が設けられていくのか、先が見通せない状況でもございます。したがって、転換の可否を法律ではなくシステムの利用規約に委ねてしまうというのは、日本貿易会として不安が残るというところでございます。   以上が日本貿易会としての転換請求権に関する意見となります。どうもありがとうございました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。第3の2について、Y案を支持するという御発言でしたけれども、それでは、今の点に限らず、第3について、全般についてどなたでも御意見を頂ければと思います。 ○池山委員 池山でございます。補足説明の記載に沿いまして、X案、Y案うんぬんとは少し違うところから始めたいと思います。   まず、前提としてX案、Y案というのは電子から紙への転換のことを考えておりますけれども、規定上は先に、紙から電子への転換と、そこは任意的なものだという前提で規定があります。この紙から電子への転換についての規定を置くこと自体については、恐らく体系的な必要性ということから出てくるのだと思いますし、任意的なものであるという限りでは異論は、少なくとも今の段階で私としては、ありません。   ただ、一方で若干危惧するのは、紙から電子への途中での転換というのは、私の理解するどのシステムも対応しているシステムというのは全くないので、およそ実務のシステムが対応していないことをわざわざ法で書いてあるということで、非現実的だということで反対する意見がひょっとしたら出てくるのではないかと思っております。それは一応、留保的な指摘です。   その上で、中身に入っていきますと、2の補足説明(2)の転換に当たっての承諾主体となる船荷証券の所持人について、①、②、③のどれと考えるべきかという点については、結論から言うと①に賛成であって、それが非常に論理的なのだと思います。   まず、②の裏書の連続によりこの権利を証明した者に限定するというのは、譲渡方法として裏書を有するタイプ、裏書を必要とするタイプの船荷証券が前提になっていて、所持人払式船荷証券などの場合は元々裏書の概念はないので、かといって、そのときに所持人払式でどんどん流通している途中で転換ということはあり得るので、そこで裏書の連続というふうに要求するというのは、単純に論理的におかしいのではないかと思います。   それから、逆に③の、所持人でありさえすればよいのだと、実質的な権利を持っているかどうかは関係しないという規律の作り方は、これは規律の作り方としては論理的ではあるかと思うのですけれども、権利者の側からすると、紙の船荷証券を所持する者なのか、それとも電子のB/Lを支配する者になるのかというのは、実質的には大きな違いなわけです。だから、ある段階で証券が、あるいは電子記録が事実上、盗まれて、その盗まれてという意味は、例えば電子の場合、紙であれば文字どおり盗まれたというわけですけれども、電子の場合であっても、うっかりIDとかパスワードを漏らしてしまえば、それを使って支配者を変えてしまうと、そのことによって紙を盗むのと同じ状態を作れるわけですよね、その場合は悪意の犯罪行為ですから、善意取得などということはないわけで、当然そこで戻してくれということは言えると。ただ、その悪意の犯罪者が、自分が支配者、あるいは自分が所持人の間に媒体を変えられてしまうと、真の権利者としては、自分が感知しない間に媒体が変わると、そこは実質的に大きな不利益です。そうだとすると、やはり論理的に単に所持している者であればいいというのは少し行きすぎなのではないかと思います。その結果として、やはり①案が論理的な選択なのだろうと思っております。   それから、(5)の記録事項について、より端的にいうと、どこかで使ってありましたが、転換文言なるものを入れることを必須とするかどうかという論点についてです。ここは、確かにLaw Commissionの草案とか、あるいはMLETRにも、転換文言を必須という形の規制になっているから、国際的な調和という観点から、やはり必須とすべきだという指摘は非常に重いとは思いますが、これは実は前回の繰り返しとして申し上げると、実際に載っていない電子B/Lというのが現実に出回っている中で、法制上それを強制することによって、それが無効になるというのは非常に混乱を来すおそれがあるというのは、一つございます。   それと、もう一つは、転換文言を求めなければいけない理論的な理由がどこにあるかという点でも若干、疑義がありまして、その点は、補足説明だと結局、転換文言がないと転換後に証券又は記録を譲り受けようとする者が権利移転の連続性を確認しにくくなるというデメリットがあると、そういう御指摘があると思います。ただ、これはよく考えると、転換文言があるだけで譲り受けようとする者が譲受けしやすくなるということにはならなくて、若干中途半端な対応なのだろうと思っています。   というのは、例えばA、B、C、D、Eと順次流通するものを想定します、これは裏書が要るタイプのものが特に問題になりますけれども、そうでないものもありますけれども、元々所持人払式のように裏書がない形でどんどん移転していくものであれば、裏書の連続などというのは問題にならないわけですから、今の所持人、今の支配者が常に権利者として推定されるわけで、別に転換文言があろうがなかろうが、取得はできると。他方で、今度は裏書を有するタイプ、又は記名式B/Lに相当する電子B/Lの場合、仮に転換文言があったとしても、問題は誰の段階で転換をされたかということまで立証されないと、支配者としては不安なのですね。A、B、Cの段階、例えばCの段階で転換請求をしたら、確かにシッパーA、コンサイニーにトゥーオーダーと書いてあるものが、最初は裏書連続で来たのだけれども、Cで転換されてしまうと、ぽこっと今のB/LをCが持っていると、ここは連続していないわけですよね。CからD、Eと来るときには、そこから先の裏書若しくは電子裏書で推定はできるのだけれども、問題は転換がCで行われたということまでも立証がされないと、D、Eという後の人にとっては安んじて権利推定の効力が働くから大丈夫だといえないと。そうだとすると、元々転換後の流通を容易にするために転換文言を入れるというのは若干、論理的な手法として中途半端なのだと思います。   逆に、実務の工夫としては、そういう転換文言はない代わりに、単純に紙の時代、あるいは電子の時代ですね、転換前の裏書状況を、飽くまで運送人が複製する形ではあるけれども、複製して、その複製したものを転換すると、運送人の作成ではあるけれども、それを信頼すれば、裏書の連続があるなと、そういう形で取得できるようにすると、現実に出回っているものはそういうものがあります。   そうだとすると、るる申し上げましたけれども、結局転換文言を入れなければいけない論理的な必然性、あるいはそれが有する効果というのは若干、中途半端な面があるということになって、元に戻って、それもあって、実際にないものがたくさん出回っている中で、これを入れるというのは、一方でそういうLaw Commissionだうんぬんというのは分かるのだけれども、まだ、よろしいのではないですかというのは、なかなか実務の側としては抵抗があるなというところであります。   最後の最後のX案かY案かということについてなのですけれども、ここは今、貿易会の方からY案であるべきだという結論と、その理由というのが極めて論理的に示されたということは、我々としても重く考えなければいけないとは思っておりますけれども、現時点ではやはり、ロッテルダム・ルール等でも任意ということになっておりますし、規制というのは最小限であってほしいという観点から、X案の支持ということで申し上げておきたいと思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何かありますでしょうか。 ○渡辺幹事 小出幹事が手を挙げておられますので、1点だけ補足させてください。渡辺でございます。先ほど承諾主体のところで、②の考え方につきまして、裏書で見るというのは、指図式ではない場合を想定すると、おかしいのではないかというような御指摘を頂いたかと思っておりますけれども、今回の我々の方の提案といたしましては、指図証券型の場合だけ裏書で見ますということを申し上げておりまして、そうでない、所持だけで権利推定されるようなものであれば、それはもう所持だけでいいという整理をしておりまして、すみません、補足説明にはそこまで書いていなかったのですけれども、19ページのところを御覧いただきまして、第3の1①のところの3行目でございましょうか、「当該船荷証券が、裏書によって、譲渡し、又は質権の目的とすることができるものである場合にあっては」、要は指図証券である場合にあっては、という意味なのですが、裏書の連続によりその権利を証明したものに限るという形にさせていただいておりますので、ほかの類型のものについては別に裏書について、見たりということではないというところだけ、すみません、補足させてください。 ○池山委員 ありがとうございます。テクニックの部分について、そうすると、正にこのスラッシュの読み方なのですけれども、19ページの下から4行目のスラッシュは、どちらか択一的だというものではなくて、両方入るということなのですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。スラッシュはどちらかを選ぶということで、そのスラッシュより前の、当該船荷証券上の権利を適法に有する者に限るというのが①の考え方で、スラッシュの後は②の考え方で、何も入れないというのが③の考え方ということになります。 ○池山委員 すみません、理解の確認のためなのですけれども、スラッシュの後の②案でこういうふうに書いているのは、逆に、このようなタイプの船荷証券でない場合は所持人は権利者と推定されるから、ということなのですね。 ○渡辺幹事 そういう理解もできますし、③の考え方というのは、そもそも権利者というのではなくて、もう所持人という立場からこういった転換の主体にしていいのではないかというのを一応、考え方の出発点にはしておりますので。 ○池山委員 ③はそうなのですけれども、②案がこのスラッシュの後なのですよね。 ○渡辺幹事 そうです。 ○池山委員 ②案に立った場合で、裏書によって譲渡するタイプの船荷証券でない場合は、本文の、所持人の承諾を得て、となるのだけれども、ここでいう所持人は、②案の場合は実際は権利推定がされる人になるからということであって、③の括弧が何もない場合の所持人とは実は意味が違ってくるということですよね。 ○渡辺幹事 そうですね、一応そういうふうな考え方もできるとは思いますが、一応、補足説明で整理させていただいている②の考え方というのは、出発点として、そもそも権利者である必要はなくて、所持だけでいいと、そういう考え方を。 ○池山委員 それは③ですよね。 ○渡辺幹事 ②も基本はそれをベースにしています。 ○池山委員 そうなのですか。 ○渡辺幹事 ただ、この②というのがなぜ出てきたかといいますと、所持だけで決着を付けると、後の第3の1②の規定ですね、20ページを御覧いただければと思うのですが、結局、転換前の媒体についての裏書の連続というのは、これはあるものとみなしますよという規定を置いて、橋を架けなければいけない、そうなってきますので、橋を架けた部分についてはきちんとそれは備えてもらわないと、転換主体として認めてはいけないのではないかと、こういう発想で②の考え方というのを作っておりますので、この②の考え方というのは出発点としては、基本は所持だけでいいですと、ただ、2項の規定で橋を架けられてしまう関係がありますから、この裏書の連続というのはその時点で持っていてもらわないと困りますよという考え方でございまして、少し分かりにくかったかもしれませんが、一応そういう整理でございます。 ○池山委員 ありがとうございます。更に検討させていただきます。こちらも理解に勘違いがあったかもしれませんので、大変失礼いたしました。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。 ○小出幹事 小出でございます。ありがとうございます。転換文言についてなのですけれども、元々MLETRの方で転換文言というものが入っている趣旨というのは、それだけということではないかもしれませんが、恐らく一つの目的は、旧媒体が流通し続けてしまって、権利者に見える人が二重に出てこないようにすることというのが元々は多分あったはずで、その場合の一つの方法としてあり得るのが、例えば紙から電子に転換する場合であったら、電子の方が有効であって、その場合は紙の方は効力がないものとして扱われるのだということが明確になるようにするというのがあったのではないかと思います。   ただ、今回の御提案だと、そもそも転換のときの手続として旧媒体の方は回収しろということが要件にはなっていますので、そのような、旧媒体も流通し続けてしまって、どちらが本当の権利を表章しているか分からなくなるということは生じないということが想定されているのだとすると、確かに機能的には転換文言というのはなくてもいいのかもしれないですが、しかし、完全に新規に発行されたものではなくて、元々発行されていた旧媒体と同じ内容のものなのだということを示すぐらいの意味ですかね、それはあるかもしれません。ただ、元々想定していたような、旧媒体の流通を防ぐという意味合いは確かに、今の想定だと少し薄れているのかなと思います。   一方で、これは逆に言うと、MLETRとは少し異なる規律になるという気がいたしますが、しかし、感触ではありますけれども、これはそれほど機能的同等との関係から大きくMLETRの考え方に反しているというわけではないような気はいたしますので、直感でしかありませんが、受入れ可能なような気もいたします。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○雨宮委員 転換を請求することのできる承諾主体となる船荷証券の所持人という論点ですが、今、渡辺幹事から御説明いただきまして、私の理解が深まりました。   それを前提にしますと、①は適法な所持人ですが、今度は立場を変えて、転換請求を受ける運送人側からすると、所持人に適法であることの証明を求めることになり、証明しない限りは転換請求を認めないことになり、もし証明を求めないで安易に転換し、適法でない人に証券を渡してしまうとなると、善意弁済のようなもので保護されなくて、運送人の責任が生じてしまう可能性があると考えました。   ②と③の場合には所持なので、この場合、紙でも運送品の引渡請求の場面で、もし無記名証券であれば所持だけで権利者として推定されるので、その所持人に渡せば、運送人としては、仮に真の権利者ではなくても債務を弁済したことになるのではないかと理解しています。そう考えると、単に所持しているだけの人でも、運送人の免責というか、運送人側の立場からすると、この方がよりいいのではないかと、適法だということになると、証明まで求めるとかいう話になりかねないかという懸念があるのかなと思って拝聴しておりました。   次に、電子から紙への転換についてですが、第3回の会議では、私は、法律上転換義務を認める必要はないと発言させていただいておりまして、個人的には今でもそのように考えています。ただし、例えば、紙の船荷証券が発行された後、荷受人側の事情で陸揚港の変更が必要となり、処分権行使で陸揚港を変えることは荷受人側の、船荷証券所持人の権利だと思いますが、陸揚港が変わったことによって、元々の船荷証券だと、例えば通関が通らないから、発行されている3通全部返して、新しい船荷証券の再発行を求めることがあります。これは船荷証券の再発行なので、法律上は義務としては明文化されていないと思います。ただし、実務上は、通関が通らないと困るので、そういう要求にも運送人側は対応しているのだろうと思います。   また他方、陸揚港の変更は処分権行使と申し上げましたけれども、解釈としても処分権行使として再発行を求めるということも十分考えられると思います。そうすると、法律上明文として再発行義務がなくても、解釈で義務化というのが考えられるのであれば、荷主側の事情で電子から紙に変える要望があれば、運送人は多くの場合は事実上対応すると思いますが、解釈上、処分権行使に対する義務として考えることもできるので、法律で義務まで定めなくてもいいのかなと考えております。   私からは2点、以上です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局からは何かありますか。 ○渡辺幹事 特にありません。 ○笹岡幹事 笹岡です。2点あります。1点目は、雨宮委員が先ほどおっしゃっていたことと同じで、権利者側から書くというよりは、通常は、義務者の免責の問題として書くのが一般的なのではないかと思いました。運送人が、本来の権利者ではない人の要求に応じてしまった場合に、免責されるのかどうかという書き方になるのではないかと思います。   2点目は、これは事務当局というより池山委員に少し聞きたいのですけれども、今のところシステム上、電子から紙への転換は認められていないというお話がありました。単純に考えると、運送人は紙の船荷証券のフォーマットを持っていますので、電子の方をストップして紙の方を発行すれば、これは転換をしたのと同じ状況が発生すると思います。これができないというのは、そこの接続がうまくいっていないということなのか、それとも、電子で発行した以上は、そんな面倒くさいことはやりたくないという事実上のコスト等の問題でできないということなのか、この辺りの実際の状況を教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○藤田部会長 後者の方について、池山委員からお願いします。 ○池山委員 池山でございます。私の発言は、少なくとも意図としては、電子から紙ではなくて、紙から電子への途中での転換は誰も対応していないということを申し上げたつもりです。電子から紙への転換は規約上、対応をしているものがむしろ多いであろうと。他方で、その転換をした紙のB/Lを出すという行為について、電子B/Lのシステムがシステム内で対応できる、つまり、当該電子B/Lのシステムを導入すれば、その中でスイッチとかコンバートというボタンを押せば、ぱっと出てくるというふうなシステムになっているか、規約上はそういうことを想定するけれども、システムはそれは関知しませんと、運送人が適宜やってくださいと、そうすると運送人について意外と大変だなということになるかもしれないと、そこは両方あり得るのだと思っています。いずれにしろ、私は紙から電子の話を申し上げたつもりです。   それから、すみません、せっかくなので、先ほど承諾主体の件について、適法な権利を有する者だと逆に運送人が困るのではないかという御指摘がありましたけれども、私の前提は、より厳密に言うと、①案は権利を有すると推定される者という前提でおります。なので、そういう前提であれば、結局は電子B/Lであれば電子裏書が連続した支配者からの要求にしか応じませんよということを言っているだけなので、それほど不都合はないなとは、私の整理としては今のところは思っております。しかしながら、雨宮委員の御指摘も、それから笹岡幹事の第1点目の御指摘、免責という観点からの検討も必要だという御指摘自体は極めて正当というか、むしろ運送人にとって大変有り難いと思っておりますので、更に検討させていただきます。 ○藤田部会長 ありがとうございます。 ○笹岡幹事 紙で出ていたものを電子に転換することができないということですが、そちらの方が逆によく分からなくて、紙の船荷証券が発行されてからの履歴を、システム上で記録するような仕様にはなっていないという理解でよろしいですか。紙から電子への転換は、電子船荷証券の発行の場面と余り変わらないのではないかと思っているのですが、そうではないということでしょうか。 ○池山委員 私が対応していないという意味は、より正確に言うと、私が理解する限り、電子B/Lの規約でそういう場合を想定した規約を置いているものはないということです。ここでやはり、流通の途中かつ裏書がされているB/Lでなければ、それは余り問題にはならないのだと思います。最初の所持人、荷送人が転換を、紙でなくて、やはり電子にしてくれというのであれ、それが所持人払式で占有移転だけで移って、そこで要求されるものであれ、要は同じものを出せばいいだけですから、大した問題はないと。問題は、やはり指図式B/L、最初は紙ですから指図式B/Lですね、指図式B/Lで裏書が連続したものがあって、裏書の連続ある指図式B/Lの所持人から、この途中で紙に転換してくれと言われたときに、一体どうするのだと、電子B/Lに替えることはできますけれども、それだと、先ほどのシッパーA、コンサイニーにトゥーオーダーと書いてある電子B/Lが突然Cに出されると、A、B、Cという裏書を電子的にきちんと取り込むと、そういう制度には恐らくなっていないと、そのことをもって対応していないと申し上げているのです。 ○笹岡幹事 分かりました。履歴を正確に反映することができていないということですね。 ○池山委員 その結果として、裏書がない電子B/Lが登場してしまうと、そのことに対する対策がないと。 ○笹岡幹事 分かりました。ありがとうございます。 ○洲崎委員 権利推定と転換に関して定めている1②、それから2②について質問したいのですけれども、どちらでも実質的に同じことが問題になるので、取りあえず1②、紙から電子への転換の場合の権利推定について伺いたいと思います。   具体例を挙げて質問をしたいのですが、仮に最初に紙の発行を受けた者をAとして、そこから幾つか裏書があって、BのところでBが承諾主体となって電子に転換されたとし、さらにBからCまでは電子裏書があるとします。つまり、AからBの間は紙による裏書の連続があり、BからCの間は電子裏書の連続があるというケースを考えてみたいと思います。20ページの6行目から始まっている②のルールの2行目にある「当該電子船荷証券記録を支配する者」、これは現在の所持人であるCを指しているのですよね。そして、電子裏書の連続というのはBからCまでの裏書の連続ですね。その次にある「当該電子船荷証券記録の発行を受けた者」というのはBになると思うのですが、BからCへの裏書の連続によって、Bの権利推定がどうにかなるということには普通はならないはずで、BからCの間に電子裏書の連続があるのであれば、その効果はCの権利推定が生ずることになると思うのです。つまり、Bが権利者であるか又は権利者として推定される地位にあって、そこから電子裏書の連続があれば、一つ一つの裏書について権利移転の推定がなされるので、結果として現在の所持人であるCが権利者と推定されると、そういう効果が生ずると思うのです。ところが、ここではBからCへの電子裏書の連続によって、Bが権利者と推定されるかのようなことになっているように思われ、裏書の連続に関するルールからすると、そこは違うのではないかと。もし仮にBが権利者として推定されるという効果を生じさせたいのだとすると、権利者として推定される者のみを承諾主体とするという考え方、つまり21頁の補足説明2(2)にある②の考え方を採ればよいのではないか。運送人がAからBまでの裏書の連続を確認した上で電子を発行するというルールになっていれば、Bを権利者として推定してもよいと思うのです。つまり、BからCへの電子裏書によってBが権利者として推定されるのではなく、承諾主体を権利者として推定される者に限ってしまえば、それによってBが権利者と推定されることになるのではないか。これが質問の第1点です。   質問の第2点は、同じく1②の最後のところの「その権利を有したことを証明したものとみなす」という表現についてなのですが、これは手形法16条1項1文や、それに依拠したとみられる民法520条の4の表現をここで使われていると思うのですが、確かに手形法や民法の規定では、権利を証明するときは、となっているのですけれども、本来の意味で権利が証明できてしまうと、権利推定なんかする必要はなくて、権利者になるはずなので、手形法16条1項の文言も、民法520条の4の文言も、権利を証明するとはなっているけれども、実際には裏書の連続があること、そして、自分が裏書の連続のある証券の最終の所持人であることを示すというのが、そこでいう権利を証明するということの実質的な意味だと思うのです。「その権利を有したことを証明したものとみなす」という表現を②の最後のところに持ってきてしまうと、権利者であったことを本当に証明したかのように読めてしまうのではないか。ここでは、権利推定のことしか考えておられないはずで、そうだとすると、権利を有したことを証明したものとみなすという表現は、誤解を招くおそれがあるのではないかと思いますので、何かほかによい表現があれば、それを探していただく方がいいのではないかと思った次第です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。2点質問、事務当局からお答えください。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。頂いた御指摘、そのとおりかと思っておりまして、基本的な考え方は今、洲崎委員が言われたことは全て我々において考えていたことと一致するものでございます。   御指摘いただいた②の規定の2行目の終わりの方、電子裏書の連続によりというところは、改めて今、読み返してみますと、確かにどうかと思うところもあるようなところでございまして、実際のところ、ここで言いたいことというのは、洲崎委員の例で申し上げますと、結局、Bが権利推定を受けていたのだということを、そういう状態だったとみなすと、こういうふうにそこを確定させることによってBからCへの電子裏書だけでCは権利推定を受けることができると、こういう実質を書きたいというところでございますので、その点につきましては洲崎委員のおっしゃるとおりだと思っております。ですので、ここの書き方がいまいちだった面は正直、あるかなと思っておりますし、最後のところの証明したものとみなすというところが、どういう表現ぶりがあるのかどうかというところも含めて、また検討していきたいと思っております。考えておられることはそのとおりだと思っておりますので、あとはここの表現ぶりの問題かなというところでございます。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。 ○池山委員 今の点で、正に質問の形で今度は申し上げさせていただきますが、私も洲崎委員と同じ問題意識を持っていたつもりでおります。今の洲崎委員の例からすると、Cは一方でBからの裏書が連続したものを所持することになると、一方で転換文言はありますとしたときに、Bのときに転換がされたということはどうやって立証される、若しくは立証の有無を運送人は確認したらいいのかというのがよく分からないというところがあります。   今、A、B、Cという例を示されていますけれども、当然BとCの間に何人か挟まるということは想定されるわけで、やはりB/LにはシッパーA、コンサイニーにトゥーオーダーとしか書いていないと、電子であれ、紙であれ、Bからの裏書だけが連続している、転換文言があると。そうすると、起点であるBのところで転換されたということが立証される、あるいは推定されるような制度的な手当てがないと、Cとしても受け取りにくいし、運送人としても、これが最終的に裏書が連続したB/L若しくは電子B/Lなのかというのを確認するのに、ひょっとしたら混乱を生じるかもしれないと。すみません、今のは少し訂正で、運送人の方は誰のところで転換したかというのは分かるはずですね、確かにBのところで転換したなというのは運送人は分かるわけですけれども、所持人側からすると、転換文言が抽象的にあるだけだと、それが分からないから、結局、機能しないのではないかという危惧を持っているのですが。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今、御指摘を拝聴しておりまして、確かにそういう面はあるのかなと思っているところでありまして、具体的なところで言いますと、先ほどの洲崎委員の例で言いますと、AからB、ここにA、Bと単純に2人だけではなくて何人かいるとした場合に、Bのところで転換が起きたというところがはっきり分からないと、AからBの間の途中のところでひょっとしたら転換が起きていたりするかもしれないわけで、そこが分からないと、結局どの時点で裏書の連続があったものとみなされるのかどうかというのが分からないということなのだろうと思いますが、そこのところについては確かに今の規律案だけではひょっとしたら十分にカバーし切れていないところがあるかもしれませんので、そこの辺をどうするかというところですね、また少しそこは、本日頂いた御指摘も含めて、引き続き検討できればと思っております。 ○藤田部会長 ほかは、どなたでも御意見、御質問はございますでしょうか。   時間がないところ、少し恐縮なのですけれども、もし可能でしたら北澤委員に1点伺いたい点があるのですが、Y案を支持するということとの関連で、貿易会の高橋様から詳細な御意見を頂きました。どういう状況でニーズがあるかということも非常に詳しく御説明していただいたのですが、日本の商法の規定を変えることでどのぐらいそれが解決されるのかということについて、念のために確認させていただければと思いました。   例えば、外国の当局で書類を要求されたときに対応できないという問題は、日本の商法に規定することで、そういう局面に対して救済になるのだろうかということとか、あるいは洋上売買の場合、そもそも何法で転換の要件というのは判断されるのだろうかというのが、私には少し分からないところがあり、混乱しています。転換、取り分け電子から紙への転換の要件の準拠法はどうやって選択されるものなのでしょうか。もしお分かりでしたら、お教えいただければと思うのですけれども。 ○北澤委員 北澤でございます。転換の準拠法についてですが、今回のような電子船荷証券から紙の船荷証券への転換とか、紙から電子への転換ということ自体が、これまで国際私法上余り議論されてこなかったという認識でおります。これまでは紙の船荷証券の準拠法について議論していて、今回、電子船荷証券の導入により、電子船荷証券の準拠法上の問題はどうなるのかという話があって、更に電子船荷証券から紙の船荷証券への転換とか、紙の船荷証券から電子船荷証券への転換という話になりますと、相当の応用問題になりますので、準拠法上の議論が余りなかったのは当然のことかと思います。   それで、こういった転換の規定が実質法の中に入ってきたときに、今後どうなるかということです。先ほど池山委員がおっしゃっていましたが、これまでは規約上で、対応していることが多かったということでした。かりに、今後実質法に転換の規定が設けられますと、国際私法上の法律関係の性質決定との関係で、転換の準拠法が何か、すなわち、転換が認められるのか、認められないのかという、準拠法上の問題を考えざるを得なくなるのではないかというところがございます。先ほど笹岡幹事が触れておられましたけれども、紙から電子への転換となると船荷証券の発行に関わる問題のように思われなくもなく、そうすると、基本関係の準拠法たる運送契約の準拠法によることになるわけです。   例えば、外国の運送人が外国の業者が外国法を準拠法とするプラットフォームに基づいて発行した電子船荷証券を日本で紙の船荷証券に転換する場合の準拠法は何かという問題が出てきたときに、運送契約の準拠法が日本法になる場合には、日本で転換の規定を整備すれば、この転換の規定が正に生きてくるわけですが、運送契約の準拠法が外国法である場合には、日本法は使われないことになりますから、運送契約の準拠法を決める段階で、どれくらい日本法が準拠法になるのかということも日本で法制備をする実益があるかということに影響してくるのではないかと思われます。   転換の準拠法上、電子から紙へ、また紙から電子への転換が認められるか、すなわち、ここで電子船荷証券と扱われるか、紙の船荷証券と扱われるかは、その後の船荷証券の物権的効力の準拠法について考える際の証券所在地の議論にも影響してくるため、今回の転換の議論を伺っていて、今後は準拠法の点まで含めて、もう少し丁寧に考える必要があるのではないかと思いました。   国際私法上の転換の問題について、船荷証券の発行以外の単位法律関係を今この段階ですぐに想定できず申し訳ないのですが、転換については、運送人の承諾を得て行う場合と、そうでない、媒体の転換の場合とが考えられるかと思います。運送人の承諾を得て行う転換の場合には、船荷証券の発行の問題と性質決定しても、割とすんなり行きそうに思うのですが、そうでない媒体の転換の場合については、船荷証券の発行の問題であると性質決定することができるのか、今後さらに検討が必要になろうかと存じます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。そもそも日本法で解決できる問題なのかどうか自身がかならずしもはっきりしないということだけはよく分かったと思います。さはさりながら、もちろん日本法で若干転換権を用意しておくことが所持人にとって害になるわけではないので、もちろんY案の方が所持人にとっては有り難い面があることは確かだろうとは思いますが、状況はよく分かりました。どうもありがとうございました。   第3について、そのほかにどの点でも御意見、御質問はございますでしょうか。 ○箱井委員 今のところの関連ですけれども、結局、この転換というのを処分権の中だと考えれば、今の法律の中でもこれは処分権行使は可能ということですね。そうしますと、実質的には義務、要するに、拒んだら債務不履行になるという点では同じでしょうか。義務として書き込むことで明瞭になるのかなとは思っているのですが、その点、そういう理解でよいのかということを。それから、もう一つ、先ほどの承諾のところを私は完全に理解しているわけではないのですが、雨宮委員が船会社の調査の件、会社の負担ということでおっしゃっていましたけれども、今も証券所持人が処分権を行使できるわけですが、これは単に証券を持っていればいいわけではないというのが通常の理解でありまして、これは正当な所持人として、証券上の権利者であることが必要ということなので、そこと局面は同じなのかなと思いました。その2点、思い付きで申し訳ありませんが、コメントさせていただきました。 ○藤田部会長 差し当たり事務当局からお答えいただけますでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今御指摘いただいた二つ目の点ですね、承諾の主体に関わるお話だろうと思っておりますけれども、今回の部会資料の整理で申しますと、基本的には正当な権利、適法な権利を有する者に限った場合には、やはりそうでない人に対して転換してしまうということはまずいということにはなろうかと思いますので、その点を慮って何か免責なりを考えるというようなお話も今回、頂いたと思っておりますので、そういったやり方もあるかもしれませんし、そういったところもあるので、基本的には②の考え方、あるいは③の考え方というのを考えるということも場合によってはあり得るのかなとは思っているところでございまして、そういったところを含めて、最終的にどうしていくのがいいのかというお話かなと思っております。 ○箱井委員 今の点ですけれども、③というのは処分権行使としては今、日本法ではない、新たな枠組みということになるのですか、持っていればいいということに。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。そうですね、③の考え方は基本的に持っていればいいということでありまして、基本的にここはもう、ただ媒体の変更という、状態を変えるだけですので、であれば、もう所持人ということだけで。 ○箱井委員 それは記名式の場合、船荷証券は記名証券ではなく指図証券なのですが、この記名式の場合にシッパーが取得したとき、これはどうなるのですか。普通、このシッパーは権利行使できないですよね。 ○渡辺幹事 ええ。 ○箱井委員 だから、処分権行使もできないという理解ですけれども、この場合、どうなってしまうのかなと。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今回提案で書かせていただいている③の考え方というのは、もうそれも認めてしまうと、処分権行使とはまた別で、要は持っていれば基本的に、媒体の変更だけですので、持っていればいいと、紙を持っている人が電子を持っている人に替わるだけなので、そこは。 ○箱井委員 媒体変更すると権利取得みたいになる、先ほどの話、それは違うのですか。 ○渡辺幹事 そこまでは認めない、権利取得とかという話ではなくて、ただ単に今、仮に私が紙を持っていますと、ただそれを、電子を持っていますという状態に替えるだけなので、そこに実質的な権利というのは求めなくていいのではないかという考え方が一方であり得るかもしれないという、対立軸として御提案させていただいているということで、それがよろしくないということであれば、事務当局としてそれがいいのではないかということを申し上げているわけではなくて、そういう考え方も一方である反面、権利者であるというところから考えていかなければいけないという考え方もあるのではないか、要は両極端な考え方を示して、どちらから考えていったらいいでしょうかと。 ○箱井委員 事務当局は、媒体の変更だからという軽いお気持ちで、ただ、池山先生は紙か電子かは重大な問題だと先ほどおっしゃっていましたので、例えばFOBのセラー、サプライヤーみたいな者が勝手に変えてよいのかという辺りも少し考えていかないといけないかなと思いました。ありがとうございました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。事務当局の想定では、処分権の行使とは恐らく考えておられなかったとは思います。メディアが替わるだけで、それによって権利者でなかった人が権利者になったりするわけでもない、つまり実体的権利は変化を受けないので処分というものではないというふうにお考えなのだと思います。ただそう考えるとしても、それでも権利者ではない人が媒体を替えていいのかという議論はもちろんあり得るのかもしれません。   恐らく、既存の法律関係でこの問題に対応するものがあるとすると、手形法で引受けのための呈示という条文がありまして、単なる占有者でもできると明文で書いてあるのですね。なぜそうなっているかというと、引受けのために呈示されて、引受け署名されてしまった場合に、適法な権利者であることを要件にしてしまうと、その署名が無効になってしまうのが問題ではないかということで、引受けの効果がひっくり返らないようにするために、盗んだ人が呈示して、それに対して引受署名がなされても効果がひっくり返らないようにする条文が置かれているのですが、例えば電子に替わった場合に、仮にその後、電子的な船荷証券を譲り受けた人がいる場合に、元々の媒体を変更した人が権利者ではなかったから電子船荷証券は無効ですとなると困るのではないか、というのが恐らく実質なのではないかと思います。媒体が替わるだけで権利者でなくなるわけではなく、ただその後の善意取得とかそういったものは続くということですね。 ○箱井委員 通常は、雨宮先生がおっしゃったように、船荷証券の書換えというと、我々は処分権の行使だと思ってしまうので、媒体の変更というのは今までなかったことなもので、勉強になりました。 ○藤田部会長 わざわざこんなものを設けるという話も、従来なかったような種類の法律行為だから置かれるのではないかという印象は持っております。私はどちらの意見でもなく、状況の説明を申し上げただけですけれども、現在の提案の前提を想像すると、そういうふうな発想で作られた条文案ではないかと想像しております。   第3について、この辺りでよろしいでしょうか。 ○池山委員 今の、権利者であることを要するかどうかという論点について、同じことを繰り返すのは避けますけれども、仮に権利者であること、あるいは権利者であることを推定される者であることを要するとした場合に、先ほど少しおっしゃった、記名式船荷証券において、それが譲渡禁止文言が付いているにしろ、付いていないにしろ、記名式船荷証券で最初に荷送人の段階に船荷証券がまだ保持されている、支配されているとき、その人が権利者なのか、権利者でないのかということも、恐らく付随した論点として出てくるのだと思います。今までの議論の前提は、そのような船荷証券の場合は、権利者はやはり最初から荷受人であって、荷送人は支配はするけれども権利者ではないと、ただ、支配をすることによって事実上、引渡しをコントロールすることができるという立場だという下級審裁判例の整理を暗黙裏に前提としたと思うのですけれども、もしそういう整理を採用するのであれば、では、その人の場合に権利者でないという理由で転換請求ができないということでよいのかどうかというのは要検討ということになる、これはお気付きかもしれませんが、一応指摘だけさせていただきます。すみません。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   第3について、以上でよろしいでしょうか。随分多く課題が残りましたので、それを踏まえて次の案を作成させていただければと思います。   時間がだんだん押してまいりましたけれども、続けて第4について、事務当局から御説明いただければと思います。よろしくお願いします。 ○中村(謙)関係官 それでは、法務省の中村の方から、今回の部会資料の25ページ以下の第4について、説明させていただきたいと思います。第4は、第3回会議でも御議論いただきました強制執行の部分につきましての二読目の御審議をお願いするものとなっております。この強制執行に関する規律につきましては、第3回会議においても特定の方向までは定まらなかったと認識しておりまして、事務当局といたしましても非常に悩ましく思っている論点でございますが、今回の部会資料では、従前提案させていただいておりました甲案及び乙案につきまして、そこから派生する若干の考え方をお示ししさせていただくとともに、今回新たに丁案を追加させていただいております。   まず、甲案でございますが、25ページの下の方に記載がございますが、こちらも第2項の冒頭のブラケット部分をどうするかによって、二つの考え方に分かれております。まず、両者に共通する第1項において、強制執行等の場面で取引の安全が害されることを可能な限り防ぐために、差押え命令等の送達を受けるなどしてその旨を知った運送人や支配を有する者に対して、電子船荷証券記録やその附随記録へのその旨の記録を求めることとしております。その上で、部会資料3においては、この記録がされたか否かに関わらず、運送品の引渡しに係る債権に対して強制執行等がされた場合には、電子船荷証券記録の効力が失われるものとしておりましたが、今回そのような考え方と併せて、飽くまで第1項の記録がされた場合に限って電子船荷証券記録の効力が失われるという考え方も提示させていただいております。もっともこの考え方による場合には、第1項の記録がされないときは、運送品の引渡しに係る債権に対する強制執行がされつつ、電子船荷証券記録の効力も失われないということになりますため、結局、システム次第で運送品の引渡しに関する法律関係に不明確な部分が残る可能性があるという点は否めないところでございます。   続きまして、26ページから始まります乙案につきまして、前回の部会資料3では、電子船荷証券記録が発行されている場合には、その裏側にある運送品引渡請求権という債権が強制執行の対象とならないということにしつつ、支配を有する者に紙の船荷証券への転換請求権を認めること、つまり、先ほど議論しておりました転換の箇所でY案を採ることを前提に、債権者がその転換請求権を代位行使することを通じて、紙の船荷証券が発行されているという状態を作り出して、それを前提に強制執行手続を進めるという案を提示しておりましたが、今回、それと併せて新たに乙’案として若干異なる考え方をお示ししております。   具体的に、まず、元々の乙案の第1項と同じように、電子船荷証券記録が発行されている場合には、その裏側にある運送品引渡請求権という債権が強制執行の対象とならないということにしております。その上で、第2項において、②’の部分ですね、電子船荷証券記録そのものに強制執行がされた場合には、差押債権者が差押債務者、つまり支配を有する者に、自分に対して支配を移転せよということを請求する権利を認めることとしております。   若干補足いたしますと、従前の部会資料でしたり、我々事務当局の説明の中で、電子船荷証券記録自体は有体物ではなく、それ自体が独立した財産権でもないといったような御説明を何度か申し上げたかと思いますが、この点につきまして改めて考えますと、電子船荷証券記録そのものについて、物や債権ではないとしても、その他の財産権として構成することも必ずしも不可能ではないのではないかという思いもございまして、この乙’案においては、電子船荷証券記録そのものについて、民事執行法でいうところのその他の財産権としての強制執行を認め、その強制執行等がされた場合には、その派生的効果として、差押債権者が差押債務者に対して、自分に対して支配を移転せよという請求を認めることとしております。   もちろん法律上このような支配の移転請求権といったものを認めたといたしましても、差押債務者の協力なく支配の移転をすることができないという場合も多分に想定されますので、強制執行手続の実効性に脆弱性が残るという点が乙’案の難点ということもできるかと存じます。もっともこの点についても、翻って考えますと、紙の船荷証券についても、紙の船荷証券が発行されて、その紙の船荷証券に動産執行が認められる場合であっても、究極的には船荷証券の所在が明らかでない場合には強制執行が奏功しないケースが多いことが容易に想定されるところでございまして、そうであれば、乙’案の先ほど述べたような難点というのも必ずしも致命的なものではないと考えることもできるのではないかと思っているところでございます。   続きまして、丙案については、何も規定しないという案でございまして、若干補足説明の内容を更新しておりますが、この点については部会資料3から大きな変更はございませんため、ここでは割愛させていただきます。   最後に、今回新しく追加させていただきました丁案でございますが、こちらは、まず、乙’案とは異なり、電子船荷証券記録が発行されている場合であっても、その裏側にある運送品引渡請求権に債権執行の方法での強制執行を認めた上で、その債権執行に付随する効果として、乙’案と同様に、差押債権者が差押債務者に対して、自分に対して支配を移転せよという請求をする権利を認めるものとなります。先ほど述べた乙’案は、債権執行ではなく、その他の財産権としての電子船荷証券記録自体に対する強制執行としてプロセスが進むのに対して、この丁案は飽くまで運送品引渡請求権という債権への債権執行の形をとる点に違いはございますが、両者ともに差押債権者に執行手続の中で電子船荷証券記録の支配の移転請求権を認めるという点では共通しておりますので、この丁案についても、先ほど述べたように、差押債務者が支配の移転に協力しなかった場合に、必ずしも強制執行手続の中で電子船荷証券記録の受戻証券性による支障が完全に取り払えるわけではないという点は、同様に考えられるところかと存じます。   このように、強制執行をめぐる規律の内容につきましては、何の問題もないきれいな考え方というのがなかなか出てこないところでございまして、非常に悩ましく思っているところでございますが、今回お示しさせていただいた案や、それ以外の考え方も含めて、忌憚のない御審議をお願いできればと考えております。   以上、事務当局からの説明となります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、ただいまの御説明につきまして、どなたでも御意見、御質問を頂ければと思います。いかがでしょうか。 ○池山委員 毎度、池山でございます。冒頭に発言させていただく機会を頂き、ありがとうございます。このような非常に難しい問題について、事務当局の方で更に検討を重ねられて、新たな案を出してくださったことには非常に御苦労があったと思いますので、まず、その点については厚く感謝を申し上げます。   その上でなのですけれども、やはりまだ残念ながら、ここで示されたうちのこの案ならいいということには至っていないというのが率直な感想であります。まず、その前提として、やはり事務当局の発想は、丙案のように何も書かないと、万が一強制執行がされた場合に法律関係が不明確になると、その法律関係を明確にしなければいけないと、その前提があるのだと思います。さらに、実はこの案だと、何も書かないときに、今までは運送品に引渡しに係る債権の債権執行というものが想定されていて、単純にそれを行った場合に、実際に実効性が担保できないかもしれないことに対する立法的な手当てをどうするかという発想でしたと。   今回はそれに加えて、場合によっては、その他の財産権である電子船荷証券記録に対する強制執行もあり得るという前提に立って対処を論じられているものもあると。そうすると、問題は実は更に複雑になってきて、仮に何らかの方法を考えるのであれば、まず解釈論として、どちらを認めるのか、両方とも認めるのか、どちらかしか認めないのかということを恐らく明らかにする必要があるのかなと。これは実は今既にある問題で、電子B/Lは法制化こそされておりませんけれども、規約型電子B/Lという形で現にあるわけで、実は今そこにある問題なわけですよね。それのどちらを認めるのかという解釈論の決定があって、その上でそこの出てくる不都合を、この際だから除去する立法をしてみようと、それがトゥーマッチかどうかと、そういう発想で考えるのだと思います。その上で、余りこの並び方が論理的でないなという気はいたします。   更に翻って考えると、運送品引渡しに係る債権であれ、その他財産権である電子船荷証券記録であれ、強制執行が解釈上できるという前提自体が、実は実務からすると違和感があるのです。それは確かに観念的には債権であり財産権だから、できるはずだと思えるのですけれども、実際にやろうとする側、あるいはされた運送人の側からすると、差押債権は、債権者が債務者に対してこういう差押債権があるからということで差押え申立てをするわけですけれども、債務者の第三債務者、運送人に対する債権というのは、債権執行の場合は、あるかないか分からない、空振り覚悟でやるわけですよね。それで、第三債務者に陳述催告が行って、第三債務者から、その債権あります、ありませんということをもらって、空振りかどうか分かると。   実際これは運送人の側からすると、仮にその命令が来たとしても、実は今の所持人、今の支配者って誰か分からないのですよね、原則は。だから、陳述催告をされても、この差押決定上債務者とされている人が所持人かどうかははっきりしませんから、支配者であるかどうかはっきりしませんから、分かりませんと、そういう回答しか多くの場合はできないと。そうだとすると、やはりそういうものしか期待されない債権執行、あるいはその他財産権の執行というのを果たしてするのだろうかという気がするのです。恐らく、これは現実に規約型電子B/Lが既にあるのに、実際その強制執行をされている例というのを、少なくとも私は寡聞にして聞かないという前提は、やはり今、解釈論上、それができると言ってみたところで、所期の目的を達成できる可能性が少ないから、皆さんやらないのだろうと。それはもちろん勝手な予想であって、現にする人がいるかもしれない、現にされたときのために、たまたま運送人が第三債務者と知っていて、被差押債権はありますと、あるいは被差押えに係るその他財産権はありますということを言うことを期待してやる、そのときに不明瞭になるから規定を整備しておくというのは、実務上考えられないことのために一生懸命規定を整備しようとしているという意味で、正直言って、少し徒労感があるのかなという気がいたします。   その上で、いや、徒労かもしれないけれども、現にやると、それが運送人にとってやはり納得できるものであれば、むしろそういう制度を作っていただいて大変有り難いということにはなるのですけれども、一つは、甲案のおよそ効力をなくしてしまうというのは、これは前々回申し上げたように、やはり乱暴だという気がしますし、実際、前々回の後に気付いたことは、国際的に流通をするということは、国内裁判所に管轄があっても、第三債務者である運送人は海外にいると、日本発着航路であっても日本に営業所があるとは限らないのですよね、代理店を置いていれば日本発着航路は運営するので。そうすると国際送達になって、第三債務者に対して弁済禁止、引渡禁止の効力が生じるまで半年、1年掛かるということが容易にあるわけで、その間にやはり債務者であるところの所持人から引き渡せと言われたときに非常に困ってしまうと。それも結局、今のままでも混乱は生じますよというだけの問題でしかないのですけれども、効力をなくすことによって混乱がすぱっとなくなるというものではなくて、元々無理やりされたら混乱は生じてしまうのだということの証左が、送達のタイミングがものすごく掛かるという形で出てくるのかもしれないです。このことは逆に、第三債務者が国内にいる、つまり国内運送人で、債務者が海外であると、そういう場合も、引渡しの目的物が日本にあればできるのかな、ということで、逆の形で問題点があることもあるかもしれません。   それから、少し長くなるのでやめますけれども、今回の規定の中で滞納処分のときだけを別建てにされていますけれども、まず、そこの論理的な意味がよく分からないのと、仮にそれは滞納処分側の要請としてそうだとしても、正にこの支配する債務者に対して、船荷証券記録を取り上げることができると、一体これを何を意味するのか全く分からないというのはあります。   るる申し上げましたけれども、一つは、やはり丙案は、確かにそのままだと法律関係は不明瞭になる、そこは全くそのとおりなのですけれども、元々完全に明瞭にすることができるのだろうかという問題意識はある中で、丙案を簡単に切り捨てないでいただきたいと言ったらいいのでしょうか、ある程度やむを得ないという選択肢もあるかもしれないと。それから、やはり正しい、丙案を避けたいという前提であれば、前提として、引渡請求権という債権の方と、その他財産権たる記録のどちらを強制執行の対象として認めるのか、そこを、今は解釈論ですけれども、やはり制度設計として決められて、その上で、その不都合をなくすための措置というのを論理的に作っていただいて、それによる混乱と丙案による曖昧さを最終的に取捨選択をして態度決定すると、そういう方向性なのかなと思っております。   すみません、言いたいことだけ言って申し訳ありませんが、私どもなりに整理してみました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から、ありますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。今、池山委員から御指摘いただいたことといたしまして、法律関係を完全に明瞭にすることが果たしてできるだろうかと、一部でも不明瞭な部分が残るのであれば、丙案というのは不明瞭な部分がある意味、一番大きくはなるかもしれませんけれども、完全にうまくやることができないのであれば、丙案ということも十分考えられるのではないかと、こういう御趣旨も含まれているのかなと拝聴していたところでございます。   実際、今回補足説明でいろいろ書かせていただいておりますけれども、甲案を採っても、幾つかオプションを付けることによって不明確になる部分が残るというところもございます。丁案も不明確な部分が残るというところがございます。そういったところからすると、丙案と比較しても不明確な部分が残るという意味では、ある意味、五十歩百歩のようなところがありますので、であれば、無理して規定を設けなくても、丙案というのも一つあり得るのではないかというのは一つの考え方としてあり得るのではないかと思っております。   あと、何に対して強制執行を認めて、何に対して認めないというのははっきりした方がいいのではないかと、こういう御指摘を頂いたかと思っておりますけれども、一応我々の方としてはある程度整理はしているつもりでありまして、例えば甲案などは、これは債権執行を認めますという前提です。債権執行をやってくださいという前提で、そこから生じるいろいろな問題を、記録が効力を失うという形で整理をしているというところです。ただ、甲案につきましては、おっしゃるとおり、電磁的記録に対する差押えうんぬんというところは何も書いていませんので、そこのところは整理されていないといえば、そういうことになるかなと思います。   乙案につきましては、これはもう債権執行を認めないという前提です。債権執行は認めなくて、できるかどうかというところは正直よく分からないところではあるのですが、電子船荷証券記録の執行というものでやったらどうですかというのが今回の乙’案ですので、そういったところでいいのかどうかというところを御検討いただければと思っております。   あと1点、すみません、滞納処分を特出しされているのはなぜかというような御指摘も頂いたかと思います。余り本質的なところではないのかもしれませんが、これはもうただ単に、執行のやり方として、民事執行の場合ですと証書を請求できる、滞納処分の場合はそれを取り上げることができると、それぞれ別々の規定があるので、その別々の規定に応じた書き方をしているだけで、実質同じだと思っておりますので、何か特出ししたつもりはなくて、基本的に強制執行と並びで考えております。法律の案文にしようと思うとこういう感じになるのかなということで、少し別項目になってしまってはいますけれども、考えていることは同じで、何か実質を変えようとしているものではございません。補足としては以上でございます。 ○池山委員 こういう整理でいいですか、まず、丙案の位置付けについては、私もそういう整理です。問題は、今のこの案について、運送品の引渡しに係る債権と、それから電子船荷証券記録のどちらを強制執行できるのかということについては、それぞれに明確に書いてあるという点、そこはおっしゃるとおりです、そこは分かっているつもりなのですけれども、多分マトリックス的に、表的に整理する必要があって、立法の在り方として、どちらについて債権執行できるかという執行の対象の債権若しくは財産権の在り方と、現にそれがされたときの不都合を回避するための措置として、その効果として特別に書かなければいけないものは何かということについて、二つの案があって、そこはおよそ効力をなくしてしまうと、裁判所の決定に従いなさいというだけにする、それが分かりやすいのではないかというのが1案と、それから、もう一つは、効力はなくならないのだけれども、債務者に対して支配移転請求権という実体法的な請求権を執行手続の中で入れることによって解決すると、そういう2通りがありますと。   そうすると、本来は2掛ける2の4通りがあると、それが4通りの形で出ていないということと、それから、乙’案の前の乙案というのがある種、亜種というか別次元の案として出てきていて、それは転換請求権を認めることによって、転換をして、あとは紙の形でやりなさいという形で一つ整理すると。ただ、この元の乙案というのは、では、実体法的に債権者代位権を明提すると、この場合に適用があるということをはっきり書くと、解釈論でなくて、そこはそこで分かりやすいのですけれども、転換請求権がある代わりに、およそ強制執行はそのままではできないということを明示するという案ですよね。そうすると、ここでは債権は強制執行できないと書いてあるのだけれども、本当は論理的には、併せて、財産権としての電子船荷証券記録も強制執行できないと、だから、そのままでは一切強制執行できないのだということを明記した上で、その代わり転換請求権の行使で対応をしなさいと、それが先ほどの2掛ける2の4通りとは別の5番目の案として出てくると、そういう整理でよろしいですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。単純な掛け合わせで何パターンかできるかというと、今すぐ即答はできないのですけれども、幾つかの考慮要素はあるという意味ではおっしゃるとおりだろうとは思います。そこら辺がどう分かりやすくお示しできるかというところは、また引き続き検討はしたいとは思っておりますが、なかなか今すぐ、こういう整理でやれますということを申し上げることができないところですので、引き続きの検討課題とさせていただければと思っております。 ○池山委員 少しまた次元の違うことで、よろしいですか。これはむしろ前回、部会長から御指摘があった話で、仮差押え、保全処分の場合も同じ扱いでいいのかという御指摘があったと思っておりまして、結論的には今回は、やはり保全処分も含むという前提は維持されているのですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。これは案によって少し違っておりまして、例えば甲案を見ていただきますと、基本的にはその他処分の制限と書いてありますので、仮差押えも一応含めるような形になっております。ただ、補足説明のところで、保全処分の場合はこれは落とすということはあり得ますよねということは書かせていただいておりますので、別に甲案を採用しつつ仮処分を落とすということはあり得ます。   他方で乙案の乙’案と申しましょうか、乙’案あるいは丁案については、これは保全は対象にしておりません。これは元々は民事執行法上、あるいは国税徴収法上の証書の請求という規定があって、これは民事執行法上はもう本差押えの場合に限られているところがありますので、それを持ってくるという意味では保全処分はどうしても外れてしまうということです。 ○池山委員 まず、御指摘の趣旨は分かりました、確かにそう書いてあるので。そうすると、甲案だけが前提となるわけですけれども、保全処分についても特別な規定を作るかどうかというのは、今、私なりに暫定的に整理させていただいた問題意識とは別の問題があり得るのであろうと思っております。というのは、送達に時間が掛かるとか、海外にということを別にしても、保全処分は要するに弁済禁止、引渡禁止の効力が生じるだけで、フリーズされるわけですよね。そうすると、運送人としては貨物を正に保管し続けることを強制させられることになるのではないかという問題点があるのだろうと思っています。もちろん、これも解釈論としては別の解釈論はあり得て、今だって所持人が長期間現れなければ、約款上の特約に基づいて任意処分をしたり、でも、それだと所有権者に対して対抗できないと思えば、商法規定に基づいて競売をしたりということはできると。仮差押えがされた貨物についても、そういう任意処分は妨げない、これは少し確かに変ですけれども、裁判所に申し立てて形式的競売をすることができるという解釈論を採るのであれば、別に変わりはないのだと思うのですけれども、逆にそれをすると、仮差押えをされた運送人としては皆、それをやることになってしまって、ひょっとしたら骨抜きになるのかもしれないと、代金に対して仮差押えの効力が移行すればいいとか、そういう話になるのかもしれませんけれども、いずれにしろ、仮差押えの場合はフリーズすることが長期間に及ぶことが想定されるということに鑑みて、さらに、残すのであれば特別な手当てをしてくださらないと、国内で完結する場合であっても、まずかろうと思います。これは少し別の次元の指摘です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   そのほか、どの点でも、あるいはいずれかの案についての賛否でも、御意見はございますでしょうか。特に、新しく入ってきた案、すなわち丁案とか乙’案、つまり支配の移転請求権なるもので解決しようというアイデアに感触を頂ければと思いますが。 ○山口委員 山口でございます。この場合、支配の移転を求めることができるということなのですが、裏書譲渡禁止の、そもそも譲渡禁止の電子船荷証券記録においてもその支配の移転を求めるということになるわけですか。それは法的移転であるからと、そういう仕分になるのでしょうか。 ○藤田部会長 事務当局からお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。特に裏書禁止の場合を排除するというものではなくて、それも認めると、それはやはり受戻証券性とか、そこら辺をきちんとクリアすることを一応目標にはしているというところでございます。 ○山口委員 分かりました。 ○藤田部会長 いかがでしょうか。 ○池山委員 感触をということなので、申し上げるとすると、分からないというのが答えです。何で分からないかと申し上げますと、理論的には効力をなくすという最初のやり方と同じように、非常にすっきりしているとは思えるのですけれども、やはり先ほど申し上げた、実は送達に結構時間差があり得る、あるいは、それは海外ほどではなくても、国内でもある程度時間差があり得る中で、一方で証券は常に転々流通をするのですよね。だから、発令をしたときと債務者に送達されたとき、第三債務者に送達したとき、されたときが全部違ってくると。そのときに、まだきちんと場合分けをして詰めて考えられてはいないのですけれども、時間差がある中できちんと対応するのだろうか、あるいは、最初の方で申し上げた、実際陳述催告をされたときにどういう答えを書くのがモデルとしてあり得るのかというのをきちんと書ける自信がないので、分からないということだと思います。理想的な世界で、発令のタイミングと送達がぴしっとそろっていて、ほぼ同時期であって、それから、転々流通ということを想定されなくて、運送人も発令若しくは自分への送達時点における支配者が誰か分かっていると、だから、この差押えが空振りかどうかきちんと分かるという整理であれば、それはある意味、すっきりしたものなのだろうとは思うのですけれども、そうではないかもしれないなと、だから分からないと、そういう整理です。 ○藤田部会長 ありがとうございました。事務当局からお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今、池山委員のおっしゃられたことは、正にそのとおりだと思っておりまして、むしろ、だからこそ何か規定を設けた方がいいのではないかというところは正直、あるわけで、仮に何も規律を設けないということになりますと、債権執行の対象になることは、これは否定することができないということになりますので、実際にどれぐらい奏功するという見込みでされるかというのは、確かに池山委員のおっしゃるとおり、いろいろな問題があって、それほど実務上されないということがあり得るのかなという気はしている反面、もしされてしまった場合にどうなるのですかというと、これは非常に難しい問題があろうかと思っています。   正にこれは池山委員のおっしゃられたとおり、転々流通、しかも、この転々流通というのは債務者がすることになるわけですので、債権者側は何もコントロールできないところで差押命令の発令を申し立てる、審理がされ、発令される、第三債務者に送達される、その間に債務者が支配をどんどん移転してしまったりすると、空振りになるということが考えられるわけですが、実際に空振りになったのか奏功したのかというところは第三債務者たる運送人もよく分からないというのは、本当にそのとおりだろうと思います。   ですので、そういった中で実際どれほどの意味があるのだろうかというところは一方でいえるものの、他方で運送人からいたしますと、奏功しているかどうかも分からないし、しているかもしれない、していないかもしれない、そういった中で何らかの対応を迫られるということになってしまうわけですので、そのようなことがないように何らかの整理をすること、法整備をするということもまた、事務当局としては、非常に難しい課題ではあるものの、そう簡単に諦めてはいけないのではないかと思っております。   いずれにしても、甲案にしても丙案にしても不明確な部分が一部残ると、一部残るのだったら全部不明確な丙案と五十歩百歩なのだから、丙案でもいいではないかと、こういう結論を仮にお許しいただけるのであれば、我々としても正直、余り苦労はしないというところでありまして、それでよければ、まあそれはそういうものかということかとは思いますけれども、先ほど申し上げたような問題がありますので、できるだけ何とかならないかというところで考えているところであります。   そういった意味で、一番穴がないという意味では、乙’案というのはある意味、穴はないのかなという気はしております。ただ、この電子船荷証券記録に対する強制執行がされた場合に、その支配の移転が求められるというところが、本当にこれでいいのかという問題は非常にあるところでありますので、事務当局としてこの案をお勧めしたいとか、これで行きたいとかいうつもりは現時点で全くないわけですけれども、そういった穴のあるなしという意味では、この乙’案というのは穴という意味では恐らく一番少ない、あるいはほとんどないのではないかという感じはしているところでありまして、そういった観点から、なかなか現時点で、これがいい案だというのは、どの案に対しても我々は言うつもりは全くないわけですけれども、ないなりに、どういったところが考えられるかというところの御見解を賜れると有り難いと思っております。 ○池山委員 ありがとうございましたということだけ、すみません。 ○藤田部会長 どなたでも、御意見ございますでしょうか。   どれも難点がある、曖昧さが残ることに加えて、例えば乙’案なんかを採りますと、その他の財産権と認識することは、ほかの問題にも波及してきかねないインプリケーションもあるかもしれません。例えば、留置権は成立しないというふうに非常に早い段階で我々は決め打ちしましたけれども、そこに響いてこないとも限らないという懸念もないわけではないのかもしれません。いずれにせよ、いずれかの案を採れば完全に解決するというわけではないのですが、選択肢として可能性が相対的に高いのがあるとすれば何かといった点も含めて、御検討いただければと思うのですが、今日のところは難しいでしょうか。   いろいろな選択肢が出たところで、今後慎重にいろいろな可能性を検討していただくということで、今日は止めることにしたいと思いますが、先ほど最後に池山委員が言われたマトリックスとの関係で言いますと、別に落ちているものがあるわけではないように思います。池山委員の区別は、引渡請求権を差し押さえるか電子船荷証券記録を差し押さえるかで二つ、その効果が電子船荷証券記録が無効になるか、それとも引渡請求権で解決するかで二つ、これらを組み合わせると四つできるという話なのですが、そのうち、電子船荷証券記録を差し押さえさせつつ、記録を差し押さえたら記録が無効となるというのは考えにくいので、三つしか意味のある選択肢はなく、それらは全部書かれていますから、一応マトリックス上は落ちていない。ただし、紙に転換というような少し特殊な解決の仕方の効果が特定の場合についてバリエーションを認められているという意味では、少し次元の違う要素も入っているということはありますが、パターンを網羅するということでは、一応論理的には書き尽くされているような印象を持っております。 ○池山委員 ありがとうございます。 ○藤田部会長 そのほか、どの点でも御意見、御質問はございますでしょうか。もしないようでしたら、今日も時間を大幅に超過して申し訳ございませんでしたけれども、本日の審議はこの程度にさせていただきたいと思います。   もし次回の審議日程等について事務当局からあれば、御説明いただければと思います。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。次回の日程は、令和4年11月30日水曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省20階の第一会議室を予定しております。次回は、部会資料4に記載していた各論点に対する二読目の審議を行いたいと思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会の第5回会議を閉会にさせていただきます。   本日は熱心な御審議を賜りまして、ありがとうございました。 -了-