法制審議会 刑事法(情報通信技術関係)部会 第4回会議 議事録 第1 日 時  令和4年11月4日(金)   自 午後1時30分                        至 午後4時40分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備について         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○鷦鷯幹事 ただいまから法制審議会刑事法(情報通信技術関係)部会の第4回会議を開催いたします。 ○酒巻部会長 本日も、御多用のところ、お集まりいただき、ありがとうございます。   本日、池田委員、大賀委員、安田委員、吉崎委員、くのぎ幹事、近藤幹事、松田幹事は、オンライン形式により出席されています。   審議に入る前に、前回の会議以降、幹事の異動がありましたので、御紹介させていただきます。   親家和仁氏が幹事を退任され、新たに松田哲也氏が幹事となられました。   初めて会議に御出席いただいた松田幹事に自己紹介をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○松田幹事 警察庁刑事企画課長になりました松田でございます。どうかよろしくお願いいたします。 ○酒巻部会長 どうもありがとうございました。   続いて、事務当局から、配布資料について説明をお願いします。 ○鷦鷯幹事 本日、配布資料8として、「考えられる仕組み・検討課題(諮問事項「二」関係)」をお配りしています。配布資料の内容については、後ほど御説明します。   また、参考資料として、配布資料7「考えられる仕組み・検討課題(諮問事項「一」関係)」を配布しています。 ○酒巻部会長 それでは、審議に入ります。   前回の会議においては、配布資料7の「考えられる仕組み・検討課題(諮問事項「一」関係)」のうち、「3 証拠開示等」まで議論を行いました。   本日は、引き続き、「4 公判廷における証拠調べ」について議論を行い、さらに、配布資料8に記載されたものについて、順次議論を行いたいと思います。   まず、配布資料7の「4 公判廷における証拠調べ」について、議論を行います。   議論に先立ちまして、配布資料7の「4」に記載された「考えられる仕組み」と「検討課題」について、事務当局から説明してもらいます。 ○鷦鷯幹事 配布資料7の8ページを御覧ください。   「考えられる仕組み」として、電子的方法により作成・管理される証拠書類等の取調べを公判廷においてするについては、「ア」から「ウ」までに掲げているとおり、当該証拠の種類や性質に応じて「朗読」、「表示」又は「再生」しなければならないものとすることを記載しています。   続いて、「検討課題」を御覧ください。   「(1)」には、電子的方法により作成・管理される証拠書類等の取調べの方式を記載しています。   この点については、現行法において、証拠書類等の取調べの方式として、「証拠書類」については「朗読」させ、「証拠物」については「示させ」、「証拠物中書面の意義が証拠となるもの」については「朗読」させるとともに「示させ」ることとしている趣旨は何か、電子的方法により作成・管理される証拠書類等であって公判廷における取調べの対象となるものとしてどのようなものがあり、その性質に応じた取調べの方式について、先ほどの趣旨を踏まえ、どのような規定を設けるべきかなどの点が、検討課題となります。   また、「(2)」には、そのような方式により行われる取調べの範囲とその記録化を記載しています。   この点については、電子データの取調べをする場合において、そのプロパティ情報等のいわゆるメタデータが含まれるか、そのようにして行われた取調べの範囲や方式をどのように記録するかなどの点が、検討すべき課題であると考えられます。   御説明は以上です。 ○酒巻部会長 ただいまの説明内容に関して、御質問等はございますか。よろしいですか。   それでは、議論に入ります。   まず、検討課題の「(1)電子的方法により作成・管理される証拠書類等の取調べの方式」について、御意見等のある方は、挙手などした上で、御発言をお願いします。 ○池田委員 「4」について意見を申し上げます。   取調べの方式については、現行法には、検討課題の「(1)」に記載されているとおり、あるいは、今、鷦鷯幹事からもお示しいただいたとおりに規定されているわけですけれども、これらの規定は、検討会の取りまとめ報告書でも指摘されていますように、証拠の種類や性質等に応じて、公判廷において的確な心証を形成するため、一般的に最も適当と考えられる方式を規定したものであって、他により適当な方式がある場合にこれを許さない趣旨ではないとされております。   その上で、電子的方法により作成・管理される証拠書類等であって公判廷における取調べの対象となるものとしては、例えば、電子的方法により作成された供述調書であって、そこに記録された供述を証拠とするものや、電子的方法により記録された映像・音声のデータであって、これをモニターに表示して目で見たり、スピーカーを通して音として耳で聞いたりすることにより、その内容を証拠とするものなどが考えられます。   現行法の規定の趣旨に鑑みれば、これらの証拠を公判廷において取り調べる場合についても、文字として読み上げ、耳で聞いて内容を理解することができるものか、表示されたものを目で見てその性状を観察したり、音として耳で聞いたりして取り調べるべきものかなど、これらの電子データに記録された情報の種類や性質等に応じ、刑事訴訟法の第305条から第307条までの規定に準じて、公判廷において的確な心証を形成するために最も適当と考えられる方式を定めることとするのが適切であると考えられます。   具体的な用語については、既存の用語との整合性にも留意しつつ、法制技術的な観点から検討することが必要となりますが、例えば、取りまとめ報告書にも一例が示されていたように、供述内容を文字として記録したものなど、証拠書類の取調べと同様の方式により取り調べることが適当と考えられるものについては、刑事訴訟法第305条第1項に準じて、その内容を「朗読」させるものとし、画像や図形など、証拠物と同様にこれを見えるように示す方式により取り調べることが適当と考えられるものについては、同法第306条第1項に準じて、これを電子計算機の映像面等に「表示」させるものとし、ビデオリンク方式による証人尋問の際の証人の尋問等を記録した記録媒体と同様に再生して目で見たり音を耳で聞いたりして取り調べることが適当と考えられるものについては、同法第305条第5項に準じて、これを「再生」させるものとすることなどが考えられ、法制技術的な観点から、適切な用語が選択されるべきであると考えております。 ○酒巻部会長 以前も確認しましたが、現行刑事訴訟法には「表示」という法律用語は既にありますか。   刑事訴訟法第306条の「示す」という証拠物の証拠調べの方式については、「展示」と称しています。しかし、「展示」というのは条文上の言葉ではない。この度「表示」という語を使うというのは、新たな条文上の術語を作ることになるのかと思い伺いました。民事訴訟法など他の法律で使っている例があるのかどうか、教えていただけますか。 ○鷦鷯幹事 事務当局からお答えいたします。   御指摘のとおり、民事訴訟法等の法令において、「電子計算機の映像面に表示」するという表現が使われていたりすることがあるようです。それが参考になり得ると考えられます。 ○酒巻部会長 どうもありがとうございました。ほかに、どなたかこの項目について御意見のある方はいらっしゃいますか。 ○佐久間委員 私は、検討課題「(2)」について意見を申し述べます。   この検討課題に関して、前回会議において、久保委員から、様々な情報が含まれる電子データを証拠として取り調べる場合には、そのうち事実認定に用いられる部分が公判廷に適切に現れる方法により行われる必要があり、また、そのような取調べの方法やその結果が公判調書等に適切に記録される必要があるとの御指摘がありました。   その御指摘の趣旨が、供述調書の電子データが証拠調請求され、その供述部分が朗読されて取り調べられた場合に、当事者も裁判所も言及することがなかったそのプロパティ情報等から、裁判所が、争点としていない事実を認定することがあれば、不意打ちになるということを懸念するものであるとすると、裁判所が、プロパティ情報等からそのような事実を認定しようとするのであれば、その証拠の評価に関し、当事者に主張を尽くさせる観点から、訴訟関係人に対して求釈明するなどし、これを立証趣旨として明示させた上で、当該プロパティ情報等を取り調べるべきであることは当然であると思われます。   このことは、電子データを証拠として取り調べる場合に特有の問題ではないのであって、御指摘の観点から、電子データの取調べの方法やその結果を記録する特別のルールを設ける意義は乏しいように思われます。   そもそも、供述調書の電子データのプロパティ情報等は、通常は当該電子データに付随しているものでありますが、プロパティ情報等自体を証拠として取り調べる必要性がない限り、当然に証拠として取り調べなければならないものではありません。御指摘の趣旨を敷衍するならば、供述調書の電子データの証拠調請求をする者において、そのプロパティ情報等自体を証拠調べの対象に含める意思がないなら、これを含まないものを証拠調請求することもできるものであり、そのような場合には、証拠開示の段階でも、そのプロパティ情報等を含まないものを開示するということになるのではないかと思われます。   もとより、証拠調請求をする者において、争点との関係で、供述調書のデータのプロパティ情報等自体が証拠として必要であれば、それが開示され、証拠調べの対象となることは当然であろうと思われます。 ○久保委員 まず、電子データには、通常、閲覧する画面には必ずしも表示されない情報が含まれております。公開の法廷に現れていないときに、それが事実認定に用いられると当事者にとっては不意打ちになることを懸念しております。その点について、今、佐久間委員からも御指摘いただいたことについて、改めて発言をしたいと思います。   当事者の意見を踏まえずに情報の意味を解釈することで、事実認定を誤る危険について懸念をしております。公判廷においてどのような方法で取り調べられたのか、公判調書などに適切に記録されて、取調べを予定されていた範囲でのみ事実認定に用いられるべきということについて、改めて確認できればと思っております。   例えば、電子データをコピーすればプロパティ情報が変わりますが、それを意識していない結果、正に佐久間委員御指摘のとおり、釈明を求められることもなく、反論の機会がないまま事実認定に使うようなことも想定されないわけではありません。これは、争点整理の問題でもあるかもしれませんので、公判前整理手続に付されている事件であれば、手続調書にその議論の過程が記載されることもあると思います。ただ、必ずしも公判前整理手続に付される事件ばかりではありませんので、第1回の公判で証拠意見が述べられ、知らない間に、釈明を求められることもなく、突然判決でそれが認定に使われるということは避けなければならないと思っております。   当たり前のことの確認だとは思っておりますが、今回の刑事手続のIT化に当たり、これまで以上に電子データを電子データのまま証拠調べする機会が増えると、そういう釈明を求められることもなく事実認定に用いられる潜在的な可能性が高まるのではないかということを懸念し、IT化に当たって改めて規律を検討するべきというのが私の考えになります。   例えば、今でも、防犯カメラのような膨大な映像がある場合に、編集作業が大変だからということで、映像をそのまま証拠としつつ、取調べの際に証拠とする部分を限定して流すという方法を検察官において希望されることもあります。そのやり方の是非はともかくとして、そのような場合には、どの部分を証拠とするかということは、当然記録上明らかになります。それと同様に、電子データについては、どの部分が証拠とされているのか区別されるような扱いをするべきですし、それは決して難しいことではないと思います。   また、先ほど佐久間委員の方から、証拠開示の段階でプロパティ情報を含まない形での開示を検討すればよいのではないかという御意見もありましたので、それについては反対の意見を申し上げたいと思います。   現在も、プロパティ情報も含めて物として証拠物を開示されている中で、あらかじめ検察官においてプロパティ情報を削除した上で開示をするということになりますと、現在よりも証拠開示の手続自体が後退することになりますので、それは不適切だと思います。現在も、プロパティ情報をあらかじめ開示された結果、それによって、例えば警察官が写真を撮影した時刻がはっきりとし、法廷で証人として出てきた警察官の尋問の結果、プロパティ情報と証言内容が異なるのではないかということが明らかになったような事例もあります。プロパティ情報を事前に検討して初めて、弁護人においてそのプロパティ情報が争点にならないということが判断できる以上は、証拠開示の対象から検察官の判断においてあらかじめ消去するということについては、弁護活動に支障が生じますので、そういった方法を採るということには反対を申し上げたいと思います。 ○酒巻部会長 今おっしゃっていたプロパティ情報をめぐる問題と、構造的に法的に同じ問題がこれまでありましたか。何ゆえ電子データについてだけその話をするのかが今一つよく分からないのですが、まず、似たような法的問題が今まであったのでしょうか。 ○久保委員 おっしゃるとおりでして、今までも、今申し上げたような、例えば防犯ビデオの問題で、「同意部分に限る編集作業をせずに、証拠として同意部分を再生する形で取り調べてほしい」という検察官の御意見に対しては、事実上全体が証拠になると、不同意部分が事実認定の対象になるおそれがあり、かつ、それが不適切である場合には、必ず弁護人において、「そのまま証拠物として取り調べることには支障があるので、編集作業をして新たな映像を作成し直し、それを証拠物としていただきたい」という意見を述べ、それについてはそのとおりになっていると認識しております。   一方で、電子データの場合は、そういった点がそもそも認識されることなく、原則としてプロパティ情報が付随したまま証拠物として提出されることになります。改正により、原則として電子データにより証拠提出することになれば、今後はこれまで以上に電子データの形のままで証拠となり、そういう危険性が高まる以上は、改めてここで規律をすべきではないかという趣旨になります。その点で、これまでも同様の問題はあったのですけれども、ここで改めてその点について検討するのが適切だと考えるという趣旨になります。 ○保坂幹事 久保委員が後半で述べられた、仮にプロパティ情報部分を外した形で電子データの開示を受けるとなると、現在開示されているよりもその範囲が狭まるという御主張でしたけれども、元々の前段の方の議論というのは、供述調書について、証拠調請求をする側にとって立証したい事柄が文字情報としての供述調書の供述部分だけなのであれば、そこを証拠調請求すればよくて、プラスアルファで別途プロパティ情報まで立証する必要があるというのであれば、それを区分けして、プロパティ情報も証拠調べの対象になるようにしましょうということが前提になっているわけです。そうだとすれば、現在紙の供述調書として開示をしているときに、そこには、多くの場合は供述調書はパソコンで作っているのでしょうから、元になるデータのプロパティ情報というのは、場合によっては検察官が保有している場合もありますが、供述調書の開示のときにセットでそのプロパティ情報を開示するということにはなっていなくて、例えば、何かの主張が出てきたとか、何かの争点になってくれば、もし電子データというものが仮にあれば、その電子データのプロパティ情報が供述調書の供述部分とは別に証拠開示の対象にはなるということであって、現状で、セットでプロパティ情報までまとめて開示の対象になっているわけではないのではないかと思いますが、その点はどうですか。 ○久保委員 今の点は、現在の供述調書の作成方法を前提とした議論なのだと思われます。   今回の法制審議会においては、正に供述調書の作成自体をオンライン化するという話もありまして、その場合、これまで以上に改ざんの可能性が高まるということについては、それ自体はこれまで議論の前提になっていることかと思います。そのため、現在の供述調書の作成方法であれば、間違いなく本人が署名をし、そこに指印などもあったりして、本人が作成したこと自体はその指印などから明らかになるのに比して、そうではない手続になる場合には、その改ざんの可能性を検証するために、これまで以上にプロパティ情報の開示の必要性は高まるという位置付けになるのだと思います。その点で、現在はおっしゃるとおり、争点になった場合にプロパティ情報の開示が問題となるのに比して、今後は新たな制度の下においては潜在的に常に供述調書においてもプロパティ情報というのが問題になるのではないかという点が1点目になります。   それに加えて、私の方で主に申し上げているのは、供述調書のプロパティ情報については、供述調書が改ざんされたのではないかという疑いが生じた場合に主に開示の対象となってくるということは、今後もそのとおりだとは思いますが、主に電子データで、写真ですとか、あるいは映像といったものが証拠として提出された際に必ずプロパティ情報が付随することに伴い、事実認定上そこが利用されることのないように、どこが証拠となっているのか、不意打ちがないような制度であるべきというのが私の考えになります。 ○酒巻部会長 電子データであるがゆえに一般的に改ざんの可能性が高まるというのは少し短絡的ではありませんか。電子データだと供述調書について改ざんの可能性が高まることを前提とする議論には、何か具体的な根拠とか、経験的な根拠があるのですか。 ○久保委員 私が根拠としておりますのは、進関係官の御説明です。この部会の前提となる検討会において、進関係官から電子データの場合の具体的な改ざん防止の必要性について詳しく御説明いただき、私もその議事録を拝見して、大変勉強させていただきました。現在、供述調書については、どのような形で署名をされるのか、最終的にどのような手続で供述調書の作成が確定されるのかといった具体的なシステム設計については、まだ見えてきておらず、むしろ、私の方から、事務当局においてできる限り早くどのようなシステムになるのかお伺いしたいと思っていたところです。   例えば、電子署名を使えるのであれば、改ざんの危険性はかなり低くなるのではないかということを進関係官のお話から私なりに理解したところですが、仮に電子署名が使えないということになると、確定までにタイムラグが生じる関係で、どんどん改ざんの可能性が生じるのではないかということを懸念しております。そこは、正にシステム設計がまだ見えてこない中でのものになりますので、例えば、電子署名を想定した議論をしていたところ、最終的にそうではないということになった場合には、より改ざんの危険性が高まることになりますので、そういった現在のまだ不透明な中での議論を前提とした懸念という趣旨になります。 ○酒巻部会長 これまで「(2)電子的方法により作成・管理される証拠書類等の取調べの範囲とその記録化」について御意見を頂きましたが、先ほど話題になったプロパティ情報に関わることも含めて、ほかに御意見はございますか。よろしいですか。   それでは、これで配布資料7の「4 公判廷における証拠調べ」についての議論はひとまず終えたいと思います。これまでの検討課題に明記されていないことを含め、ほかに御意見等があれば承りたいと思います。 ○久保委員 2点、これは事務当局への質問になりますが、申し上げたいと思います。   まず1点目ですが、証拠開示に関連する部分にはなるのですけれども、少年に関する記録ですとか医療観察の記録についての取扱いも検討するべきですということを、これまで私の方で発言させていただいたことがあったかと思います。少年事件につきましては、捜査段階では区別されませんので、基本的に証拠もオンライン開示を想定した証拠の作成をすることになりますので、同様の形で開示をされるのではないかと想定をしておりますが、この点についてどのようにお考えであるのか、現時点でお考えがあれば明らかにしていただきたいということと、医療観察についても同様の問題がありますので、これについてもどのような状況かについて御教示いただければと思っています。これが1点目になります。 ○鷦鷯幹事 事務当局からお答えいたします。   医療観察法と少年法についてのお尋ねであったと思いますけれども、今回の諮問は、「刑事法」の整備の在り方についての御意見を承りたいとするものであり、法務省組織令において、法制審議会は、「刑事法・・・に関する基本的な事項」を調査審議するものとされているところです。医療観察法については、「刑事法・・・に関する基本的な事項」には該当せず、これまでも法制審議会での調査審議の対象とされたことはありません。   他方、少年法に関しましては、これは内容に応じて、刑事手続と関連して調査審議すべき事項であると判断されるような場合には、取り上げることがあり得ると思われます。 ○久保委員 ありがとうございます。   2点目に申し上げます。確定記録の保存について、これも御質問ということになります。   IT化に伴って確定記録をどこでどのように保存することになるのか、何か既に御検討のことがあれば、御教示いただきたいと思っております。確定記録については、現在、裁判所から検察庁に戻されて、検察庁において管理されているものと承知しております。電子データ化すれば、そのようなことをする必要がなくなるように思いますし、データを検察庁に戻すという概念自体には疑問がありますので、この点についてどのような検討状況か教えていただきたいと思っております。   それに関連して、直近では少年事件の記録の保存について報道がなされておりました。電子データになることで管理の場所が不要になることから、再審請求はもちろん、将来の検証のために適切に保存する仕組みを検討する必要があると思います。最高裁判所は、この点について、有識者委員会の意見を聴くために少年事件記録の廃棄を止めたという報道も拝見しました。後世の検証ですとか研究のためには、確定記録の保管は不可欠であり、刑事司法を発展させるためにも、確定記録の保存についてはIT化に当たって今一度検討されるべきだと考えております。 ○鷦鷯幹事 刑事確定訴訟記録法についてですが、御審議いただいている刑事手続において取り扱う書類の電子的方法による作成、オンラインによる発受との関係で言いますと、確定記録の保存は、その川下になりますので、まずは川上の議論を先行していただくのが適当かと思います。それに対応して、また検討する必要があるとすれば、法務省において、あるいはこの部会において検討することとなるのではないかと思われます。 ○酒巻部会長 それでは、諮問事項「一」に関する考えられる仕組みやその検討課題についての審議は、ひとまずこの程度にさせていただきまして、次に、諮問事項「二」についての議論に入ります。   まず、配布資料8の「1 勾留質問・弁解録取・取調べの手続」について、議論を行います。   議論に先立ちまして、配布資料8の「1」に記載された「考えられる仕組み」と「検討課題」について、事務当局から説明してもらいます。 ○鷦鷯幹事 配布資料8の1ページ・2ページを御覧ください。   「考えられる仕組み」の「①」として、裁判所にいる裁判官が、留置施設等にいる被疑者・被告人に対して、映像・音声の送受信により勾留質問の手続を行うことができるものとすることを、「②」として、検察庁にいる検察官が、留置施設等にいる被疑者に対して、映像・音声の送受信により弁解録取の手続を行うことができるものとすることを記載しています。   また、「③」として、映像・音声の送受信又は対面により行われる取調べにおける供述を録取した調書を電子的方法により作成することができるものとし、その作成方法についての規律を設けることを、「④」として、刑事訴訟法第321条第1項第2号の「検察官の面前」に、映像・音声の送受信による場合を含むことを明示する規律を設けることを記載しています。   続いて、「検討課題」を御覧ください。   まず、「1」には、「考えられる仕組み」の「①」に関係する検討課題として、裁判所と留置施設等との間における映像・音声の送受信による勾留質問の手続に関する規律を記載しています。   この点については、刑事訴訟法第61条等に規定する陳述の聴取は、裁判所において対面で行われることが求められているか、裁判所にいる裁判官が留置施設等にいる被疑者・被告人に対して映像・音声の送受信により行う勾留質問の手続と、裁判所において対面で行う勾留質問の手続との間に、適正手続上の差異はあるか、それらに照らし、裁判所にいる裁判官が留置施設等にいる被疑者・被告人に対して映像・音声の送受信により勾留質問の手続を行うことができるものとするか、できるものとするとして、何らかの要件が必要となるかなどの点が、検討課題となります。   「2」には、「考えられる仕組み」の「②」に関係する検討課題として、検察庁と留置施設等との間における映像・音声の送受信による弁解録取の手続に関する規律を記載しています。   この点については、刑事訴訟法第205条第1項に規定する弁解の機会の付与は、検察庁において対面で行うことが求められているか、同法第203条第1項が「これを検察官に送致する手続をしなければならない」こととし、同法第205条第1項が「被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え」ることとしている趣旨は何か、検察庁にいる検察官が留置施設等にいる被疑者に対して映像・音声の送受信により行う弁解録取の手続と、検察庁において対面で行う弁解録取の手続との間に、適正手続上の差異はあるか、それらに照らし、前者の方法によることについて、何らかの要件が必要となるかなどの点が、検討課題となります。   「3」には、「考えられる仕組み」の「③」及び「④」に関する検討課題として、映像・音声の送受信又は対面による取調べの際の供述調書の電子的方法による作成に関する規律を記載しています。   この点については、刑事訴訟法第198条第4項が、「調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない」こととし、同条第5項が、「被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる」こととしている趣旨は何か、その趣旨に照らし、電子的方法により供述調書を作成する場合について、どのような規律を設けるか、同法第321条第1項第2号の「検察官の面前」に、映像・音声の送受信による場合を含むことを明示するかなどの点が、検討課題となります。   御説明は以上です。 ○酒巻部会長 ただいまの説明内容に関して、御質問等はありますか。よろしいですか。   それでは、議論に入ります。   まず、検討課題の「1 裁判所と留置施設等との間における映像・音声の送受信による勾留質問の手続に関する規律」について、御意見等のある方は、挙手などした上で、御発言をお願いします。 ○池田委員 勾留質問を映像・音声の送受信により行うことについて、検討課題の「1」を踏まえて、考えられるところを述べたいと思います。   刑事訴訟法第61条は、被告人の勾留について、また、同法第207条第1項で被疑者勾留にこの規定が準用されているわけですが、「被告人の勾留は、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができない」と規定しています。   この規定の趣旨は、裁判官が被疑者・被告人を勾留するかどうかを決するに際し、その弁解を直接聴取することにより、勾留の裁判に誤りがないことを期することにあるとされています。そうした手続の趣旨との関係では、裁判官が被疑者・被告人と直接対面せずに映像・音声の送受信によりその陳述を聴くこととするとしても、裁判官と被疑者・被告人が、互いに相手方の状態を認識しながら双方向の意思疎通を即時的に行うことができるのであれば、その目的を達することができますので、必ずしも被疑者・被告人を裁判所に連れて来て裁判官が対面して実施する必要はないとも考えられます。また、刑事訴訟法第61条には勾留質問を実施する方式や実施する場所についての規定は置かれていませんので、そのように解したとしても直ちに違法の問題が生じることにもならないと思われます。   他方で、勾留質問の手続は、勾留という比較的長期の身体拘束の適否を、捜査機関とは独立した裁判官が判断するために行われるものであって、被疑者・被告人がそのために留置施設等を出て裁判官の下に連れて行かれることには、勾留質問の手続が捜査機関の活動とは別個・独立のものとして行われることを、施設の移動という外形を通じて端的に示すという側面もあるように思われます。   この側面に鑑みて、被疑者・被告人が警察署の留置施設にいる状態のまま、移動の外形を伴うことなく勾留質問の手続を映像・音声の送受信により行えば、その適正さに大きな影響があると考えるとすれば、そうすることは原則として許されず、許されるとしても、特に必要が高い場合に限定されるとも考えられないものではないのかもしれません。   そして、確かに、映像・音声の送受信による場合には、被疑者・被告人が移動の外形のないまま画面越しに映し出された人物を見るだけでは、手続を進める裁判官が、自分が現在する警察署の者とは別の立場にある者であることが実感しにくいために、捜査機関の影響が残存したまま質問が実施されて、手続の趣旨を損なうこととなるおそれもあるかもしれません。   しかしながら、そうしたおそれとの関係で言えば、手続を実施する裁判官が、その立場や行われる手続の意味について被疑者・被告人に丁寧に説明し、自らの独立性を理解させることで、手続の趣旨との抵触を回避しつつ質問を実施することによって、対処が可能なものと考えることもできるものと思われます。 ○酒巻部会長 裁判所に質問です。池田委員は、裁判官が丁寧に自身がどういう立場かを説明すれば、被疑者は場所の移動がなくても理解できるだろうということをおっしゃったのですが、これに関連して、勾留質問の際に、裁判官は法服を着るのですか。 ○向井委員 法服は着ません。 ○酒巻部会長 裁判所書記官の方は部屋の中にいるのですか。 ○向井委員 裁判所書記官はおります。 ○酒巻部会長 分かりました。居場所は変わることなく、映像のみで直接対面することもなく、そこで裁判官が十分説明をするといっても、法服も着ていない人が映像に出てくるだけで済むような話なのかという疑問を抱いておりまして、やはり留置施設から裁判所へと場所を移動するというのは極めて大事なことであるように思うのです。これは私の意見です。ほかに御意見はございますか。 ○久保委員 私が申し上げたいことは、酒巻部会長にかなり御指摘いただいたように思いますが、正に被疑者にとって、目の前にいる人が誰なのかということは、現在の制度においても非常に分かりにくいものとなっております。これは、私が依頼者と接見しているときの実感としてもそのように本当に感じるところでして、被疑者の方にとっては警察官も検察官も裁判官も区別が全く付かないということは決して少なくありません。そのような場合に、どこでどのような取調べを受けたのかを私たち弁護人が確認するときは、「この警察署から車で移動したことがあるか」という質問を投げ掛けます。質問を投げ掛けて、それでもやはり、裁判官なのか検察官なのかということも区別できないということは多々あります。そうすると、次の段階として、「何回外に出たか、それが何回目の話なのか」という形で本人に聴くようにしております。その人が裁判官と名のったのか検察官と名のったのかという質問を投げ掛けても、それは分かりませんという答えが出てくることが非常に多く、物理的な移動を伴わないということは大きな支障があるのではないかと考えております。   もし感染症だとか災害のような、本当にやむを得ない場合に限ってオンライン勾留質問を規定する場合には、規定上も一見して明らかに例外的なものだと分かるような規定にするべきであり、多忙だとかそういった理由でオンラインの勾留質問が使われることのないような規定にすることが不可欠だと考えております。   この点、現在の裁判官の間でも、恐らくかなり意識はしていただいているのだと承知しております。私なりに今回調べてまいりまして、例えば、「令状実務詳解」において、今、東京高裁にいらっしゃる駒田秀和裁判官が、必要やむを得ない場合に、例えば警察署へ赴いて勾留質問をすることを許容し得る場合として、弊害を最小限にとどめるために、取調室等の使用は避け、署長室等を使うことが望ましく、勾留質問の冒頭で自分が裁判官である旨を告げ、調書上もそれを告げた旨を記載すべきであり、裁判所内で勾留質問しない理由を説明するなどの慎重な配慮をすることが必要だと指摘されており、現場の裁判官において、裁判所以外で勾留質問を行う場合については細心の注意を払って対応いただいているものと認識しております。   オンラインになれば、先ほど御指摘いただいたとおり、正に画面上に私服の人が現れて聴くということだけでどのぐらい区別できるのかということは、非常に疑問に思っておりまして、これは極めて例外的な場合にのみ適用される形にするべきだと考えます。 ○酒巻部会長 池田委員からはいろいろな考え方の筋道を均等に説明していただきましたが、私の方で気になったのでお聞きしました。もちろん裁判所でない場所で勾留質問を行っても違法ではないという判例があることは承知しております。   もう一つ質問ですが、新型コロナウイルスの流行で大変な時期に実際にビデオリンク方式で勾留質問をやったということはあるのですか。つまり、現時点で明文の法律がなくても運用でやるということは不可能ではないとの考え方もあり得ると思うのですが、そういう実例は今まであったのですか。 ○近藤幹事 最高裁判所で把握している限りでは、そのような例はありません。 ○酒巻部会長 分かりました。 ○保坂幹事 久保委員に質問なのですけれども、場所の移動があることによって、警察署ではないところに行って、そこで誰かと話したということがよく分かるではないかということなのだと思うのですけれども、その前提として、相手が誰なのかということが分かっていた方が良いというのは、常識的にはそう思うのですが、被疑者としての権利など被疑者の立場から見たときに、相手が警察官なのか検察官なのか裁判官なのかというのを分かっていなければいけない実質的な理由はどういうところにありますか。 ○久保委員 これはやはり現在の制度上、警察官、検察官、裁判官という立場の違う方が立場の違う見方で、同じことを質問する場合にも違う聴き方をすることで答え方が全く変わるということが多々あることを実感として感じております。   例えば、接見に行ったときに、「警察官にいろいろ質問されたけれども、うまく自分の言い分が話せなかった」という方はたくさんいらっしゃいます。「検察官に対しては自分の言い分をきちんと話せました、警察官には言えなかったけれども検察官には言えました」という方もたくさんいらっしゃいます。逆に、警察官のところでも検察官の弁解録取でも言えなかったという場合には、「裁判官のところで改めてきちんと言い分を言いましょう」というアドバイスをし、「裁判官には言えました」ということもあります。   それは、警察官や検察官の立場においては、捜査をする上で必要なことを聴かないといけないという意識が先行するのに対し、裁判官は飽くまでも中立的な立場で、この被疑事実についてどういう意見かという質問をすることから、比較的答えやすいという場面もあるのかもしれません。ただ、相手がどういう立場なのかということが最初に曖昧になりますと、この人が裁判官なのだなという意識の下で話せなくなる結果、やはりその点について十分に話ができないということになりかねないのではないかと思っております。もちろん、それは、画面上でも裁判官であることがきちんと認識でき、これが弁護人の言っていた裁判官という立場の人なので、この人にきちんと言い分を言えばいいのだなということが分かれば足りることではありますが、画面上になることで、そういった区別がますます付きにくくなるのではないかということを懸念しております。 ○保坂幹事 被疑者にとって、相手が誰か、その相手が弁護士さんが言っていた裁判官なのだなと思うことと、場所の移動というのがどう関係するのかがよく分からなかったのですが、いかがでしょうか。 ○久保委員 勾留質問の後に弁護人に選任された場合ではなく、勾留質問に行く前に弁護人になったときに、私が依頼者と話していて、裁判官とか検察官とか警察官という区別がなかなか難しそうではないかと思ったときには、「恐らく明日、まず、どこか外に行きます。その次の日には外に、また別のところに行くことになります。」ということを説明して、「その1回目が検察官です。2回目が裁判官です。場合によっては同じ日に検察官と裁判官のところに行きます。最初に行く方が検察官です。その次に行くのが裁判官です。」、そういう形で物理的な移動の回数で具体的にアドバイスをすることで、「2回目が裁判官ですよ」ということを助言することは、日常的によくあることです。 ○酒巻部会長 ほかに、この点に関しての御意見を承りたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○松田幹事 被疑者を警察署に所在させたまま勾留質問等を行うことにつきまして、発言させていただきます。   警察といたしましても、例外的なものとして、被疑者を警察署に所在させたまま、ビデオリンク方式により、勾留質問や、次の議論になりますが、検察官の弁解録取手続を行うことを制度上の選択肢として整理しておくこと自体に異論はありません。   その上で、実施場所を提供する立場から一言申し上げれば、第一線の警察署におきましては、日々刻々と変化する状況の中で、犯罪のみならず様々な治安事象の対応に当たっております。このため、必ずしも常に実施場所の確保等ができるわけではありません。したがいまして、勾留質問や弁解録取以外のものも含めまして、被疑者等を警察署に所在させたままビデオリンク方式により行う手続の運用に当たっては、警察署側の人的・物的制約といった観点も十分に踏まえて対応いただく必要があると考えている次第です。 ○久保委員 別の観点で1点、気になっている点を申し上げたいと思います。   現在、勾留質問のときには、その時点で弁護人が付いていない場合に、被疑者国選の制度を説明するということになります。もし国選を希望する場合にはその場で、資力がどのような状況なのか、国選弁護人を選任できるのかといったことが問題になりますので、その場で書類を書き、署名をしていただくという制度になっているかと思います。もしオンラインで勾留質問をするということになり、その場でオンラインでの国選の選任の手続ができないということになると、現在よりも国選弁護人の選任のタイミングが遅くなるのではないかということを懸念しておりますので、仮にそのような制度を設けるのであれば、オンライン上で勾留質問しながら国選弁護人の選任もできるような仕組みとすることが必要ではないかと思います。 ○酒巻部会長 ほかにございますか。   それでは、次に、検討課題の「2 検察庁と留置施設等との間における映像・音声の送受信による弁解録取の手続に関する規律」について、御意見等のある方は、挙手などした上で、御発言をお願いします。 ○成瀬幹事 検討課題「2」について意見を申し上げます。   刑事訴訟法第203条第1項は、司法警察員が、逮捕状により逮捕した被疑者を引き続き留置する必要があると判断した場合には、被疑者を「検察官に送致する手続をしなければならない」と規定し、同法第205条第1項は、これを受ける形で、検察官が「第203条の規定により送致された被疑者を受け取つたとき」は、弁解の機会を与えなければならないと規定しています。   送致の手続の実質的な意義から考えると、刑事訴訟法第203条第1項及び第205条は、司法警察員が逮捕した被疑者を釈放せずに留置し続ける必要があると判断するときに、被疑者を検察官に送致するものとすることで、被疑者の身柄に関する権限の行使を検察官に委ねるものとする趣旨と解されます。   そうであるとすると、被疑者の身柄が警察署の留置施設等から検察庁に物理的に移動しないとしても、その権限を検察官の下に移すこととすれば、これらの規定の趣旨は満たされると考えられます。   このような理解を前提に、被疑者が検察庁に物理的に移動しないことと、検察官が被疑者と直接対面せず映像・音声の送受信により弁解録取を行うことという二つの観点から、先ほど議論された勾留質問の手続の場合との差異も意識しつつ、更に検討してみたいと思います。   まず、被疑者が検察庁に物理的に移動しないという点について考えてみますと、弁解録取の手続は、捜査機関である検察官が、同じく捜査機関である司法警察員から送致を受けた被疑者について行う手続であり、勾留質問の手続の場合のように、捜査活動とは別個・独立のものであることを外形的に示すことは要請されません。仮に、検察官による弁解録取が司法警察員の活動とは別個・独立のものであることを外形的に示す要請があるとしても、その要請は、裁判官による勾留質問の手続の場合と比較すれば小さいと思われます。   したがって、裁判官による勾留質問の手続の場合とは異なり、被疑者の外形的な移動がないまま弁解録取を行うことは、手続の適正さに与える影響が大きいため、原則として許されないとまではいえないと思われます。   もっとも、被疑者を留置施設等から出して物理的に移動させないという点だけではなく、検察官が映像・音声の送受信によって弁解録取の手続を行うという点も併せて考えてみますと、検察官と被疑者が直接対面しないことから、被疑者の立場から見ると、画面越しに映し出された人物を見ただけでは、自分が現在する警察署の者とは別の立場にある者であることが実感しにくい場合もあるように思われます。よって、映像・音声の送受信により弁解録取の手続を行う場合には、検察官が被疑者に対して自らの立場をきちんと説明し、被疑者に理解させる措置を採ることが必要であると思います。   ただ、翻って考えてみますと、被疑者を検察庁に物理的に移動させて検察官が対面で弁解録取を行う現在の実務においても、先ほど久保委員から御指摘がありましたように、被疑者にとっては対面している者が誰であるのかよく分からない場合もあると思います。そのため、現在の対面で行う弁解録取においても、検察官は、被疑者に対して自らの立場をきちんと説明しているものと思われます。そうであるとすると、検察官が自らの立場をきちんと説明するという要請は、検察官による弁解録取一般に妥当する要請であって、検察庁と留置施設等の間における映像・音声の送受信による弁解録取の手続にのみ妥当する要請とはいえないようにも思われます。よって、このような措置を採ることを法律上の要件として明示するかについては、更に検討する必要があると考えます。 ○久保委員 今の成瀬幹事の御意見に関連して、警察署であることと検察庁であることとによる被疑者の心構えといいますか、その違いについて申し上げたいと思います。   被疑者と日々接見をしている中で感じることは、被疑者の方にとって、それまでの取調べの結果、警察官に非常に恐怖を抱き、警察署で話をすること自体におびえるという状況になっている人は少なくありません。そのような方が接見の際にどのような行動を取るかというと、私たちに対して、「今すぐそこに警察官がいるはずだから話すことができないのです」と言って、場合によっては本当に小さな声で、ひそひそ声で接見をするというようなことが見られます。実際、接見室は必ずしも音が漏れないような環境ではなく、接見室の外にいるときに、接見室の中で接見をしている人の声が丸聞こえになるということもありますし、逆に、私が接見室から出たところ、確かに目の前に取調官が立っていたということもありました。それが聞き耳を立てているとか、そのような悪意をもって見るつもりはないのですけれども、やはり警察署の中で取調べを行う、弁解録取を行うということ自体は、被疑者にとってみれば、すぐそばに今自分が恐怖を抱えている対象である警察官がいるかもしれない、裏側で聞いているかもしれないという状況を遮断することができない中での弁解録取になってしまいます。   もちろん、そのような心配がない事例もあると思いますが、やはり警察署から出て検察庁に移動し、そのような警察官がいないところでの取調べであるということが分かる、そのこと自体が被疑者にとっての安心感につながるという現実は今もありますので、やはり、検察官と警察署との間でも物理的に移動することの意味は小さくないように思っております。 ○酒巻部会長 物理的な移動という観点から言うと、いろいろな事情で検察官の方が留置施設を訪ねて弁解録取をするという実例はありますね。めったにないかどうかは分かりませんけれども、ありますよね。 ○鷦鷯幹事 検察官が出向いて行って警察署で弁解録取を行う事例があるということは承知しています。 ○酒巻部会長 検討課題の「2」について、ほかに御意見等はありますか。よろしいですか。   それでは、次に、検討課題の「3 映像・音声の送受信又は対面による取調べの際の供述調書の電子的方法による作成に関する規律」について、御意見のある方は、挙手などした上、御発言をお願いします。 ○佐久間委員 検討課題「3」について、意見を申し述べます。   検討課題「3」「ア」のとおり、刑事訴訟法第198条第4項及び第5項は、取調べにおける被疑者の供述を録取した調書の作成方法について規定しております。これらの規定は、「記載」や「署名押印」といった文言が用いられていることからも明らかなとおり、紙媒体としての調書を想定したものと考えられますが、映像・音声の送受信による取調べにおいて調書を作成する場合には、取調官と被疑者は同じ場所にいないことになりますから、電子データとして作成された調書をオンラインで閲覧させたり、署名押印に代わる措置を採ることを求めたりすることが想定されます。   また、対面による取調べにおいても、調書を電子データとして作成することが想定されるところでありまして、そのような場合の調書の作成方法に関する規律についても検討する必要があると思います。   まず、調書を電子データとして作成する場合に、署名押印に代わる技術的措置を講じることとすれば、前回の会議で議論があったとおり、刑事訴訟法第321条や第322条が供述録取書に供述者の署名又は押印を必要としている趣旨を満たすと考えられ、そうであるとすれば、同様の措置は、同法第198条第5項の署名押印に代わるものとしても機能することとなると考えられます。   また、刑事訴訟法第198条第4項の趣旨は、調書にいかなる事項が録取されているかを被疑者が知り得る状態にすることで、調書の記載の正確性を供述者である被疑者自身に確認させ、誤りの訂正等を可能にすることにあるとされており、その趣旨を満たす限り、必ずしも形式的に閲覧又は読み聞かせの手続を採る必要はないとされています。   そうであるとすると、調書を電子データとして作成し、また、オンラインでその閲覧等をさせる場合についても、被疑者が、調書の記載の正確性を確認できる程度に、いかなる事項が録取されているかを知り得る状態にする必要があるとともに、それで足りると考えられます。   例えば、電子データとして作成した調書の内容を読み上げてオンラインを通じて被疑者に聞かせ、あるいは、その内容を被疑者の面前にある電子計算機の映像面に表示して読むことができる状態にする措置を講じることとするのであれば、刑事訴訟法第198条第4項の趣旨を満たすことができると考えられます。   次に、検討課題の「3」「ウ」について、意見を申し述べます。   電子データとして調書を作成する場合のうち、検察官が被疑者とは別の場所にいて映像・音声の送受信により取調べを行って作成する場合、その調書は、被疑者が検察官の目の前でした供述を録取したものではないことから、検討会においても、刑事訴訟法第321条第1項第2号により証拠能力が認められるかどうかが一応検討されました。   検討会の議論の繰り返しになりますが、刑事訴訟法第321条第1項第2号に規定する書面が同項第3号に規定する書面と比べて緩やかな要件の下で証拠能力が認められるのは、当該調書に録取された供述が、検察官による取調べを経て得られたものであることに基づくものであり、映像・音声の送受信による検察官の取調べにおいてなされた供述も、検察官による取調べを経て得られたものである以上、その供述を録取した書面についても、同項第2号により証拠能力を認めることに必要な基礎に欠けるところはありません。   したがって、刑事訴訟法第321条第1項第2号の「面前」という文言に映像・音声の送受信による場合も含むことは、現行法の解釈・適用として明らかでありますが、同項第1号においては、「裁判官の面前」との文言に同法第157条の6に規定するビデオリンク方式による場合が含まれる旨が明示的に規定されているところであり、これとの比較において解釈上の疑義をなくす趣旨から、同法第321条第1項第2号の「検察官の面前」についても、映像・音声の送受信による場合が含まれることを規定上明示することが考えられます。 ○久保委員 2点申し上げます。1点目は、まず事務当局への質問といいますか要望ですけれども、やはり、供述調書をオンラインで作成するに際し、どのような形で最終的にその内容を確定させるのかということのイメージがなかなか付かないでおります。リアルで取調べあるいは事情聴取を行いつつ目の前で確定作業をするということであればともかく、オンライン上で取調べや事情聴取を行い、かつ、その調書をオンライン上で完結させるということになった場合に、事後的にそのオンライン上での事情聴取や取調べの内容で読み聞けされた内容と、そこにある供述調書が同じ内容だったのかということを確認するすべはどのようになるのだろうかということを疑問に思っているところです。できる限り早く、どのようなシステム、どのような方法で署名押印がなされ、調書が確定する形になるのかということについて、イメージだけでも早く共有できればと思っておりますので、現時点において既に何か決まっていることがあれば御教示いただきたいと思いますし、まだということであれば、今後できる限り早く事務当局において御説明いただきたいと思っている、というのが1点目になります。   2点目ですが、刑事訴訟法第321条第1項第2号の書面の関係につきましては、当然、被疑者だけではなく、外にいる普通の参考人だとか、そういう方も対象になるのだと思います。これも、これまでも指摘されたところではありますが、成り済ましですとか、他の方が同席しているということが当然にあり得ますので、オンライン上で事情聴取ですとか取調べをするに際しては、どのような環境でその方がいるのか、第三者がいないのか、第三者の影響を及ぼされるような状況にないのかということが画面上から明らかになるような状況で行われるということは、そのような信用できる状況での取調べ、事情聴取であるかということを事後的に検証する上では重要だと思います。   先ほど申し上げたこととも重なりますが、事後的に検証する上でやはり一番有力であるのは、録音・録画をしておくということだと思います。恐らく今後、オンラインでの取調べ、事情聴取が増え、仮にオンライン上での供述調書の作成が行われるようになったとしてもなお、飽くまでも例外的な位置付けになるのではないかとは想定しております。そうすると、飽くまでも例外的である以上、数は限られますし、かつ、オンライン上で行う以上、録音・録画は容易なものとなると思いますので、事後的な検証において争点がむやみに増えないようにするためにも、録音・録画をすることが検討されるべきだと考えます。 ○鷦鷯幹事 1点目について、事務当局からお答えをさせていただきますと、供述調書をオンラインで、あるいは電子的に作成する際の作成の方法として、具体的にどのようなシステムで行うかということの前提として、現行法において、供述調書の内容の確定について、署名とか紙という形で規定されている趣旨を踏まえ、それがオンラインになる、あるいは電子的作成方法になるときに、それに代えてどのような措置が必要となるかといったことについては、諮問事項「一」で議論いただいてきたところだと思われ、そこは正しく、まずは委員・幹事の皆様において御検討いただくべきことと思われます。   2点目の録音・録画のお話について、これは第2回会議において久保委員から御指摘があったところですが、飽くまで事務当局の立場から今回の諮問の趣旨を申し上げると、今回の諮問は、現行の刑事訴訟法・刑事訴訟規則に基づく手続において、紙媒体の書類が用いられ、対面で行われているのに代えて、情報通信技術を活用できるようにするための法整備の在り方について御意見を承りたいというものであり、それについて、現在御議論いただいているところだと承知しています。   久保委員の第2回会議における御発言によりますと、録音・録画をする趣旨としては、第三者がいたりして不当な影響を及ぼしていることはないかということを事後的に検証するということを挙げられましたが、そうした第三者の存在が供述の任意性や信用性に関わり得ることは、対面による取調べでも同様のことかと思いますし、どのような事件でも、また同じことかと思われます。現行の刑事訴訟法第301条の2に規定されている取調べの録音・録画の義務は、第三者の存在等を確認すること自体に対応する形で義務付けられているものではないと承知しており、御提案のような目的で、第三者の存在等がないということを確認する目的での義務付けということを考えますと、映像・音声の送受信による方法に限らず、対面でも同様に考えることになると思います。そうであるとすると、情報通信技術の活用以前の問題として、どのような形の義務付けか、その是非が問題となる事項と考えられ、そうした事項について検討するのは、基本的にはこの諮問の趣旨とは少し異なるところではないかと、事務当局としては考えるところです。 ○久保委員 まず、1点目の署名の件なのですけれども、やはり現在であれば供述調書の各ページに指印を押したり、あるいは第三者の方であれば普通の判子を押したりという形で、各ページにおいてどのような供述調書を作ったかということが事後的にある程度一見して明らかな検証が可能な状況となっております。それに対して、オンライン上で作成した場合には、どのような形でそれが明らかになるかということがイメージできないと、そのシステムを前提とした規律が検討できないのではないかと思っております。   当然、法整備を考えた上で、その後、システムを考えるということは分かるのですけれども、想定していたシステム設計が、恐らくこのメンバーの中でも想定しているものは違っていたりするのではないかと思っております。私は、進関係官の話を前提に電子署名であるべきだと考えておりますが、仮に今後それが難しいということになったときに、事後的に、そのようなシステムであればこういう規定の在り方があったのではないか、などということになることを懸念しております。現在の状況で明らかになる限りでは、できる限りシステムとして具体的にどういう選択肢があり得るのか、例えば、少なくともこの選択肢は難しくなったということがあるのであれば、それは早めに御説明いただき、それを踏まえた制度設計を考えるべきではないかと考えております。   2点目については、今、録音・録画の趣旨について御説明を頂きましたが、この法制審議会の部会については、刑事手続全体のIT化を目指していくべきということを想定し、様々な論点について議論をしているものと承知しております。現在のシステムよりもよりオンライン化が進み、様々な設備が備え付けられるようになれば、録音・録画は容易になるかと思います。元々、取調べの録音・録画を導入するに際しても、全ての録音・録画を一斉に始めることは難しいという中で、一部の事件について法整備を整え、さらには運用において広げるということを実行してきたのは、正に設備の点などにおいて問題がある中で、できる限り早くいろいろな面でやっていこうという面もあったのではないかと思います。これからオンライン化する中で設備が整い、それがより争点を減らし、適正な事情聴取や取調べに資するのであれば、録音・録画という方法もこの部会において検討するべきだと思いますので、私としては是非この点についても議論いただきたいと思っているところです。 ○保坂幹事 録音・録画の関係の前提ですけれども、要はビデオリンク方式だと、直接同じ部屋にいて取調べをしている場合であれば、成り済ましだとか第三者の関与というのは、取り調べている側が見抜いて、出ていってくださいとかという措置が採れるけれども、ビデオリンク方式だと死角が生まれたりとか、それに気付けないというリスクがあるのではないかという前提なのだろうと思います。そうすると、画面越しに検察官なりが見ているものをそのまま録音・録画したところで、その録音・録画をいくら見ても、第三者がいるのかいないのか、どのみち分からないですし、成り済ましているかどうかも分からないのではないかと思うのですが、どういうふうに役に立つという想定でしょうか。 ○久保委員 もちろん画面上で明らかに成り済ましであれば、それは事後的に映像を見れば分かるという面がありますが、それは極端な例だと思います。主に想定しているのは、正に読み聞けをされた供述調書が事後的に、こんな内容だったはずはないのだけれども、などという問題になったときに、本当にその内容どおりに読み聞けをされたものだったのかということを検証するのに最も適切なのは、正にその読み聞けの場面が録画されている映像ではないかと思います。そのようなことになれば、もし読み聞けの場面の映像がなければ、これは改ざんの可能性があるのではないかということが公判において争点となり、無用に争点が増えていくことがあるかもしれませんが、録音・録画によって、読み聞けをされているとおりの供述調書があるということになれば、少なくともその争点は落とせることになりますので、そのような点で、争点を増やさず迅速な裁判にも資するというメリットがあるのではないかと考えているところです。 ○保坂幹事 重ねてですけれども、読み聞かされた調書と出来上がっている調書が同じものかどうかという問題は、対面であっても全く同じように問題になるわけで、オンライン方式で取調べをして取った調書だから問題になるわけではないのだと思うのですが、そうすると、なぜオンライン方式のときだけ録音・録画をすべきことになるのか、というのがよく分からなかったのですが、いかがでしょうか。 ○久保委員 先ほどの繰り返しになり恐縮なのですが、現在であれば、例えば1ページずつに指印が押されていて、被疑者のものであれば指印から一見して明らかに指紋が分かります。これについても、他の方の指紋が出たという例があることは承知しておりますが、少なくとも多くの事件では、その指紋どおりの者が作ったのだろうということが分かる状況です。仮に普通の捺印をする場合であっても、その判子が間違いなく押されているということで分かりますが、これも結局同じことの繰り返しになるのですけれども、システム設計において、各ページがそのとおり作られたような制度であることが担保されるようなシステムになれば、そのような改ざんの余地がないということになりますけれども、そのシステム設計自体がまだよく分からないということもあり、そこが各ページごとにこのとおり作られたものということが担保されないようなシステムになれば、やはり改ざんの可能性を検証する余地がなくなり、それを検証するのに最も簡単なのは録音・録画ではないかという趣旨になります。 ○吉田幹事 御趣旨を確認したいのですが、現在の運用で供述調書のページごとに指印を押すというのは、飽くまで運用上そうしているだけの話でありまして、法律上そのような各ページへの指印がなければ証拠能力が認められないとはなっていませんので、法律上の議論としては、そこを持ち出して証拠能力の要件と位置付けるというのはおかしな感じを受けるわけですけれども、法律上の議論として、各ページへの指印というものがなぜ必要だということになるのでしょうか。 ○久保委員 各ページにおいて指印を押すという運用がされておりますのは、正にその供述調書が改ざんされたものではなく、そのとおり作成したものであるということを警察官や検察官において担保していただき、そのような争点を作らないような配慮をするための制度ではないかと理解しております。   この法制審議会の部会においては、先ほど来、法令上も現在もできるけれども、運用において明確化するために議論をするべきではないかという論点は、この点に限らず行われていることであり、IT化に当たっては、現行法を前提としつつ、現行法の解釈でもできることも含めて、より明確にIT化に当たって検討するべきことは検討するべきという前提で議論がなされているものではないかと思います。現在、改ざんの余地がないように配慮するために各ページにおいて指印をするという配慮は適切な方法だと思いますし、それが、供述調書を作成するのがオンライン化することによって後退するようなことは適切ではないと考えます。 ○酒巻部会長 ほかに、この検討課題の「3」について御意見等はありますか。よろしいですか。   それでは、これで「1 勾留質問・弁解録取・取調べの手続」についての議論はひとまず終えることとしたいと思います。ここに明記されていない、「1」に関わる点で、何か御意見はありますか。よろしいですか。   それでは、ここで休憩を取り、午後3時から再開したいと思います。              (休     憩) ○酒巻部会長 会議を再開いたします。   次に、「2 被疑者・被告人との接見交通」について、議論を行います。   議論に先立ち、配布資料8の「2」に記載された「考えられる仕組み」と「検討課題」について、事務当局から説明してもらいます。 ○鷦鷯幹事 配布資料8の3ページ・4ページを御覧ください。   この検討項目については、案を対比することで議論を整理しやすくするため、便宜上、両案を併記する形としています。   「考えられる仕組み」の「①」には、被疑者・被告人と弁護人・弁護人になろうとする者との接見に関し、まず「ア」として、これを映像・音声の送受信により行うことを、刑事訴訟法第39条第1項の「立会人なくして接見」として行うものと位置付けるA案と、同項によるものとは別の外部交通の方法として行うものと位置付けるB案を記載しています。   また、「イ」として、被疑者等と弁護人等との接見について、映像・音声の送受信により行う場合についての規律を設けるとするA案と、法制上の措置を講じないとするB案を記載しています。   「②」には、被疑者等と弁護人等との書類の授受に関し、まず、「ア」として、これをオンラインにより行うことを、刑事訴訟法第39条第1項の「書類・・・の授受」として行うものと位置付けるA案と、同項によるものとは別の外部交通の方法として行うものと位置付けるB案を記載しています。   また、「イ」として、被疑者等と弁護人等との書類の授受について、オンラインにより行う場合についての規律を設けるとするA案と、法制上の措置を講じないとするB案を記載しています。   続いて、「検討課題」を御覧ください。   まず、「1」には、「考えられる仕組み」の「①」に関係する検討課題を記載しています。   この点については、刑事訴訟法第39条第1項の「立会人なくして接見」する権利として、映像・音声の送受信により行うものとするか、権利としての接見ではなく、それ以外の外部交通の方法として映像・音声の送受信により行うものと位置付けるか、映像・音声の送受信により行う場合に、対面で行う場合と異なるどのような弊害が想定されるか、映像・音声の送受信により行う場合についての規律を設ける必要があるかなどの点が、検討課題となります。   「2」には、「考えられる仕組み」の「②」に関係する検討課題を記載しています。   この点については、刑事訴訟法第39条第1項の「書類・・・の授受」をする権利として、オンラインにより行うものとするか、権利としての書類の授受ではなく、それ以外の外部交通の方法としてオンラインにより行うものと位置付けるか、オンラインにより行う場合に、紙媒体の書類で行う場合と異なるどのような弊害が想定されるか、オンラインにより行う場合についての規律を設ける必要があるかなどの点が、検討課題となります。   「3」には、「その他」の検討課題として、被疑者等と弁護人等以外の者との接見を映像・音声の送受信により行うことができるものとするか、被疑者等と弁護人等以外の者との書類の授受をオンラインにより行うことができるものとするかを記載しています。   御説明は以上です。 ○酒巻部会長 ただいまの説明内容に関して、御質問等はございますか。よろしいですね。   それでは、議論に入ります。   まず、検討課題の「1 被疑者等と弁護人等との接見」について、御意見等のある方は、挙手などをした上で、御発言をお願いします。 ○佐久間委員 検討課題「1」について発言いたします。   第2回会議において、久保委員から、被疑者等と弁護人等との接見を映像・音声の送受信により行うことについて、刑事訴訟法第39条第1項の接見、すなわち、立会人なしの秘密交通権として行うものとすべきである旨の御主張がありました。   御主張が、その際に言及されたアクセスポイント方式や弁護士事務所からのアクセスのほかに、どのような方法で身柄拘束中の被疑者等と接見することまでを求めるものかについては、必ずしも明らかではありませんが、仮に、弁護人自身が通常使用している通信機能のあるタブレット端末などにより、どこからでも行うことができるものとすることまで視野に入れたものであるとするならば、そうした方法では、弁護人等であることの確認ができることを前提としたとしても、その端末から更に別の端末に、刑事施設等に勾留中の被疑者等の状況が転送されていないかどうかや、その端末でのやり取りを接見禁止の対象者などがそばで見聞きしていないかどうかなどを施設側で確認することができず、それらを通じて対面での物理的な接見であれば起きないはずの罪証隠滅等が行われ、勾留の目的を果たし得なくなります。   また、弁護士事務所からアクセスすることとしたとしても、仮に、顔認証技術により成り済ましを防いだり、360度カメラを使って弁護人の周囲に誰もいないことを確認できるようにしたりしたとしても、カメラの死角になる場所や音が聞こえる隣室に第三者がいないことを確認することはできませんし、刑事施設等から送信された映像・音声を録音・録画したり、外部に送信したりするような機器が他に設置されていないかどうかを施設側で確認することも困難であり、そうした弊害を防止する現実的な方策もないと言わざるを得ません。   御主張のように、弁護人等が使用する端末やその所在場所を問わないものとしたり、弁護士事務所からアクセスできるものとしたりすることについては、想定される弊害を防止する現実的な手段が見当たらないことから、検討会においても、現実的な選択肢はアクセスポイント方式に限られるのではないかということが確認されたことは、議論の前提とすべきだろうと思われます。   その上で、アクセスポイント方式についても、実施する場合には、被疑者等が勾留されている施設の側においても、弁護人等が赴くアクセスポイントとなる施設の側においても、設備や対応のための人員の配置等の負担は小さいものではなく、どの刑事施設等でもすぐに利用可能となるものではありません。その点は、決して軽視されるべきではなく、そうであるからこそ、検討会においても、仮にビデオリンク方式による接見を権利として位置付けたとしても、それが対面による接見が行われる場合と同じように、逃亡、罪証隠滅又は戒護に支障のある物の授受が行われないことが確保された状態で行われることを全国の全ての施設で一律に確保することは、少なくとも当面は困難であり、結果として法律に規定された権利が全国一律に実現しない不均衡が生じかねないことが指摘され、そのため、ビデオリンク方式による接見は、権利として位置付けるのではなく、裁量的な外部交通として漸次的に拡大していくことを目指すのが現実的であるとの認識が、大勢を占めたものと認識しております。   アクセスポイント方式に利用できる施設等の急激な拡大は困難であるという現状は、容易に解消され得るものではないとすれば、検討会の取りまとめ報告書において当面の方針が示されたとおり、当部会のスタンスとしても、まずは、関係各機関において、物的設備、人的体制等を考慮しつつ、成り済ましや弁護人等以外の第三者の同席の防止、被疑者・被告人の逃走や自傷等の防止、情報セキュリティの確保等をどのようにして担保するのかなどの課題について、更なる協議を進めることを優先する、というものであるべきと思われます。   また、アクセスポイント方式の拡大が、相応の財政的裏付けを要するものである以上、実際に全国のあらゆる刑事施設等に設備を設けなければならないようなニーズが現実的にあるのかどうかも問われる必要があろうかと思います。   そうしたことは、現在行われている関係機関による実務的な協議の場においてまずは協議されるべきでありまして、その協議が継続している現段階において、考えられる仕組み「①」「ア」について、「A案」を前提とした議論をすること自体、考え難いと思われます。   なお、被疑者等と弁護人等の接見をビデオリンク方式により行うことを刑事訴訟法第39条第1項によるものとは別の外部交通として位置付けた場合においても、検討課題「1」「ウ」にあるようにその具体的な実施方法・範囲などに関して新たに規律を設けることについては、正にその具体的な実施方法や範囲が、関係機関による実務的な協議の場において協議されていると思われることからすると、その在り方が見えていない現時点で、法制上の措置の要否を論じるのは、これもまた時期尚早であると思われます。 ○久保委員 検討会の取りまとめ報告書では、身体の拘束を受けている被疑者・被告人にとって、刑事施設・留置施設が弁護人等の法律事務所から遠く離れている場合なども含め、弁護人等の援助を受けることは重要な権利であるとされておりまして、そのような必要性、ニーズがあるということは、検討会の段階から皆さん、異論がないものと思われます。それを前提に、ビデオリンク方式あるいはオンラインによる接見を、立会人なくして接見をすることができるとしている刑事訴訟法第39条第1項に規定する権利性あるものとして明記するべきだと考えております。   接見は言うまでもなく、犯罪の嫌疑をかけられ拘束された国民や市民が自らを防御する上で、弁護人と即座に連絡を取り、十分に協議するという重要な権利です。すぐに実現できるかどうか、全国一律で実現できるかどうか、そういう障害があるのかどうかということは、それを乗り越える方策を検討する理由にはなったとしても、ここで権利として定めないということの理由にはならないと考えます。   取調べの録音・録画につきましては、裁判員裁判対象事件と検察官独自捜査事件で身体拘束されている事件について、まず刑事訴訟法上に規定しつつ、それ以外にも録音・録画の対象の指針を示しました。それと同様に、一定の事件に限るなど、規定の仕方に工夫の余地はありますが、まずは限定的に法律上の規定とするというような方向で対応するということも考えられます。実務者協議については並行して行われているところですが、権利性を踏まえて、どこから広げていくかということを検討するべき場を実務者協議の場とするべきだと考えます。   どこからアクセスできるようにするかという点について、先ほど佐久間委員もおっしゃったように、法律事務所からのアクセスができるようにすることが最も望ましいということは言うまでもありません。ただ、それを実現するということがすぐには困難であるということは承知しております。例えば、事務所の近隣の警察署から遠隔地の警察署にビデオリンク方式により接続できるだけでも大きく実情というのは変わってまいります。   第2回会議では室蘭拘置支所の例を紹介させていただきましたが、それ以外にも日々、突然、拘置支所が閉鎖されて、その現地の弁護士が困るという実情があります。例えば、この令和4年11月末には、山口の宇部拘置支所が収容業務を終え、下関拘置支所が行うこととしたということが一方的に通知されたと承知しております。宇部管内の弁護士が下関拘置支所まで行くためには片道1時間以上掛かりますが、宇部管内では現在僅か10数名の国選名簿の登録弁護士でその管内の事件を回しているということで、その拘置支所がなくなることによる影響は甚大なものであり、それにより、更に国選弁護人として登録している人数が減るのではないかと現地の弁護士が懸念していると聞いております。   近時の拘置支所や警察署の収容停止が続くと、通常の刑事事件における接見は困難となります。今後も同様に拘置支所や警察署の留置施設が老朽化し、収容人数の低下を理由として閉鎖されるなどといったことは起こるのではないかと考えております。もちろん一番良いのは刑事施設が存続することですが、現在のように一方的に通知をされ、収容ができなくなるという現状を踏まえますと、今回のIT化において広くオンライン接見の運用が認められるべきだと考えます。   弊害についても先ほど御指摘いただきましたが、現在、外部交通については、例えば東京拘置所では、特定の接見室に外部交通のためのテレビ電話が設置され、実質的には立会人のない中で外部交通が行われております。それによって、同じような方法でテレビ電話をタブレット等に差し替えれば同じようなことができますので、弊害については理由がないものと考えます。   一方で、一律に増やしたり、あるいは少なくともアクセスポイントを増やしたりすることによって予算の問題が生じるのではないかという点も御指摘いただきましたが、むしろ刑事訴訟法上、それを権利と定めることによって初めて予算の確保につながるのではないかと思っております。刑事訴訟法の規定もなく予算を確保することは困難ではないかということは、素人なりに考えるところでもありますので、正にこの部会において権利性を認めた上で、それを前提に、限られたところから運用、あるいは他の法律、あるいは何らかの指針によって経過措置を設けたりしながら、少しずつ広げていくということが適切ではないかと思います。   特に、警察署において接見のための施設を整えるのが大変ではないかという御指摘もありますが、この部会においては令状をタブレット呈示するということも検討されているところです。仮に全国の警察署で相当数のタブレットが必要になるということになれば、その一つを各警察署においてオンライン接見用に充てればよいことであり、相当数の令状呈示用のタブレットが準備できるにもかかわらず、オンライン接見のためのタブレットは準備できないということがなぜなのか、私には理解しかねるところです。   今回、第1回の配布資料でも配布していただいたとおり、国が国を挙げて刑事手続のIT化を進めようという動きになっていると承知しております。今回のタイミングでこそオンライン接見を権利として実現し、そのための予算を確保していく、正にそのタイミングではないかと考えているところです。 ○大賀委員 私からも検討課題「1」について、警察の立場から発言をいたします。   検討会においても警察側から繰り返し申し上げていたと承知しておりますけれども、IT化後であっても、被留置者による逃亡及び罪証隠滅の防止、あるいは施設の規律、秩序の維持という観点から、面会者の本人確認でありますとか携帯電話等の通信撮影機能を持つ機器の持込制限等が必要となるということには変わりありません。したがいまして、ビデオリンク方式による接見については、現行の対面による接見の場合と同等の担保措置が講じられなければ、許容はできないと考えております。   この点、アクセスポイントを設定して、必要な本人確認等を行う方法も提案されておりましたけれども、そうした場合であっても、必要な回線や端末の整備を含め、アクセスポイント側・留置施設側の双方で、相応の人的・物的な体制の整備が必要となってきます。警察署がアクセスポイントになると仮定しますと、アクセスポイントに設定された警察署においては、当該警察署の管轄外の事件の被疑者等に対するビデオリンク方式による接見にも多数対応しなければならないということが想定されまして、人的負担の相当な増加が見込まれるところであります。   こうしたことを踏まえますと、現行の刑事訴訟法第39条第1項の規定による権利性のある接見をビデオリンク方式により行うということは難しく、運用上の措置として行うとしても、現実的にどのような方策を採り得るのかを慎重に検討する必要があると考えております。   なお、佐久間委員からの御発言がありましたけれども、IT化後の外部交通の在り方については、現在、関係機関における実務協議が行われているものと承知しておりまして、その協議の場において具体的なニーズを踏まえて検討を進めるべきだと考えております。 ○久保委員 今御指摘いただいた点について申し上げます。   人的負担の問題などを御指摘いただきましたが、それは、現在も刑事訴訟法第39条では接見について抽象的な権利を定めつつ、刑事収容施設法という法律において、いろいろな制限ができるということについては規定をされているところであり、刑事訴訟法上、今回のようなオンライン接見について権利性を認めたとしても、人的・物的な制限の下で、別途法律あるいは経過措置を設けることで対応できるのではないかと考えているところです。人的・物的制限につきましては、やはり、刑事訴訟法第39条と同様の権利性を認めることを否定する理由にはならないのではないかと思っているところです。   また、もう1点、この部会において検討されているものとして、例えば勾留質問ですとか弁解録取についてオンライン化するということは先ほども議論されたとおりです。これについてどのように認めるのか、そもそも認めるのか、どの程度を例外として認めるのかといったところについては、まだ議論をしているところですが、仮に導入をする場合には、警察署で行う場合に警察官の影響力のないところで行うということを想定し、そのような第三者の影響のない部屋にシステムを設置するということを当然想定しているものと思われます。そうすると、既に議論していることで想定している警察署内における設備を利用してオンライン接見をするということは当然可能となるはずであり、システムの面においては予算という点でも支障はないのではないかと考えているところです。 ○酒巻部会長 「権利として定める」、あるいは「権利性」という用語が焦点となっていますが、そのことと全国一律に実現できるということはどう関係するのか。昔のことですが、被疑者国選弁護の範囲をどう定めるか、あれは何段階かに分けて広げていったのですが、そのときも、弁護士の先生は、いきなり全勾留事件とかおっしゃったのですけれども、人的な体制が整わないので、最初は重大事件にする、そうでないと請求があったときに認められない地域があって、全国一律に実現できないのではやはり権利としてはおかしいだろうと、そういう議論をした覚えがあるのです。それで、体制が整う、弁護士の数が増え対応可能になるのに合わせて次第に広げて、ついには全勾留事件を被疑者国選弁護の対象とすることになった。これは最初から権利として、しかし当初は限定された範囲で設定し、それを段階的に拡大していったのだけれども、それとの関係で接見の話はどう位置付けたらいいのか、何かうまい説明があれば教えてほしいと思います。 ○久保委員 私が先ほど申し上げたところも、同じ問題意識によるもので、権利性を定めたところで、突然、全国一律にすぐに実現しないといけないわけではないと思っております。例えば、法律上明確に重大事件、例えば裁判員裁判対象事件、検察官独自捜査事件のように、録音・録画と同様に法律レベルで規定をし、その上で権利性を定めるという方法もあると思います。一方で、そうではなくて、権利性として定めつつ、あとは運用に任せる、あるいは経過措置を採るというような形で別途対応できるものと思っておりまして、全国一律にすぐしなければならないのではないかという御意見については、刑事訴訟法上の権利として定めないことの理由にはならないのではないかと考えているところです。   一方で、刑事訴訟法上の権利として定めることができれば、よりそういった設備の予算を確保しやすいという事情があるのであれば、そうであればこそ権利として定め、少しずつ全国に広げていくという動きをするべきではないかと考えているところです。 ○吉田幹事 今の御意見の趣旨を確認したいのですが、先ほど部会長がおっしゃった被疑者国選弁護制度の対象事件については、当初は、法律上、法定刑で区切る形で規定されており、それが段階的に拡大されて、現在では全ての勾留されている被疑者とされているものであって、制度開始からしばらくは飽くまで対象となる事件が法律で規定されていたわけですけれども、そのようにした理由として、先ほど部会長から、全国一律の実施の必要性ということが指摘されたと御説明がありました。要するに、権利性を認める以上、全国一律に実施できることが必要であり、権利性を認める範囲については、全国一律に実施できるものとなるように法律レベルで規定されていたということだと思いますが、仮にそれと同じように考えるとすると、このオンライン接見についても、法律上、例えば対象事件を限定して規定した上で、オンライン接見の権利があるということを規定するというようなことになりそうな気もするのですけれども、久保委員がおっしゃっているのはそういう御趣旨なのでしょうか。 ○久保委員 両方あり得ると思っています。私としては、法律上は刑事訴訟法上でオンライン接見のようなものも権利性があるものとして定めた上で、あとは別途、規則の定めるところにより、などと規定する形にして、規則で具体的な事件を特定したりですとか、あるいは何年後かに見直しをするという前提で経過措置を採るとか、いろいろと柔軟な対応はできるのではないかと思っております。   ただ、そのような運用ですとか規則ですとか、そのような形に委ねるのではないということであれば、まずは少しずつでもオンライン接見の権利性の道を進めるべく、法律上も事件を限るという形ででも一歩進むのであれば、それは望ましいことだと考えているという趣旨になります。 ○保坂幹事 権利性を認めるか否かの違いというのは、権利性を認めるとすると、接見の方式として対面方式とビデオリンク方式があるとした場合に、ビデオリンク方式での接見を望む方には必ずビデオリンク方式での接見を提供しなければいけないという施設側の義務になるが、そうするのかどうかという違いだろうと思います。久保委員が言われたように、そこまでしなければいけないような事件を、例えば重大事件という形で区切って、そこだけは必ずビデオリンクを選択した方にはビデオリンク方式での接見を提供するということにしたとしても、それを権利として呼ぶことにあまり意味があるような感じはしなくて、恐らく権利である以上は、例えば重大事件という一部事件に区切っているのがおかしいのだと、それは全てに認められなければいけないのだということで、拡大していくためには権利であるべきだということのように聞こえたのですが、例えば事件を限定したとして、仮にその範囲内でずっと、そこだけは権利ですというふうに永続化した場合でも、それでもそれは権利であるべきだということなのでしょうか。 ○久保委員 現在既に行われているテレビ電話による外部交通については、接見という位置付けになっていない関係で、厳密には秘密交通権ということが守られないという建付けになっているかと思います。やはり、既に東京拘置所においては確か平成20年にテレビ電話による外部交通が導入され、もちろん趣旨に鑑みて、拘置所においてそれに介入したりですとか、こっそり聞いたりだとか、そのようなことはしていないのではないかとは思っておりますが、やはり依頼者と弁護人との接見が、テレビ電話という形であったとしても、法律上、秘密交通権が守られていない現状というのは非常に問題があるものと思っております。   権利として定めるに際しては、そういう形で、オンライン接見をするに際し秘密交通権が守られるという重大な権利としての位置付けになりますので、そういった面があると思います。他方で、平成20年に導入されて以来、既に十数年が経っておりますが、それにより弊害が生じたということは聞いておりませんので、同様な形で行ったとしても問題は生じないのではないかと考えているところです。 ○酒巻部会長 接見交通については、既に挙げられている弊害の問題ですとか設備の問題ですとか、いろいろな困難が想定されるのですけれども、他方で接見交通権は、最高裁判所の判例でも言われているとおり、憲法の保障を背景にした極めて重要な刑事訴訟法上の権利ですので、「権利として定める」とか「権利性」という言葉について、単なる議論のためでなくて、その意味内容はきちんと位置付け、正確に理解した上で議論した方がいいと思ったので、一言申し上げた次第です。 ○大賀委員 先ほど久保委員から、一定の犯罪については全てビデオリンク方式の接見を認めるという方法もあるのではないかという御意見があったかと思いますけれども、そうすると結局、そうした事件はどこの警察署管内で発生するか分かりませんので、全ての留置施設にそうした設備等を整えなければならないということになりまして、警察としては、かなり人的・物的な負担が重いということを申し上げておきたいと思います。 ○久保委員 本当にこの制度が実現した場合に、警察署の方において多大な負担を掛けるということ、それ自体は私として否定するつもりはありません。ただ、現状の接見の実情を考えると、本来行うべき接見ができていないという実情こそが問題ではないかと考えております。例えば、北海道においては、あまりに広大な敷地であるがゆえに、真冬の中で4時間ぐらい掛けて接見をするという際には、アイスバーンあるいはホワイトアウト、そういった事故が起こるような状況下で、接見を断念せざるを得ないという実情があります。そのような必要な接見ができないという現状こそが問題であり、警察署において多大な負担を掛けることは承知の上でも、今なお行うべき接見ができていないということを前提に、やはり制度を検討するべきだと考えます。 ○酒巻部会長 検討課題の「1」につきまして、ほかに御意見はございますか。よろしいですか。   それでは、次に、検討課題の「2 被疑者等と弁護人等との書類の授受」について、御意見等のある方は、御発言をお願いします。 ○久保委員 証拠の開示ですとか書類の授受についてオンライン化をするということは、既に議論をしてきたとおりですが、書類の授受がオンラインによりできないとすれば、結局、弁護人において常に全てプリントアウトをし、本人に差入れせざるを得ないことになり、この刑事手続のIT化という趣旨ともそぐわないのではないかと思われます。   まずは、留置施設内で電子データにより証拠を閲覧できるような仕組みとすることが望ましいと思っているところです。証拠書類で電子データとして開示されたものについては、開示された証拠を現在と同じようにプリントアウトできれば、それでも大きな支障には実際上はならないのかもしれませんが、最も支障があるのは、データで開示された証拠、特にプリントアウトできないものをどのように確認するかということではないかと思っております。これを書類の授受という位置付けにするのかどうかというところはありますが、やはり電子データでの記録の開示が行われるようになった際に、電子データ、特に録音・録画の映像ですとか、防犯カメラの映像ですとか、そういったものを映像データとして中で確認できるような仕組みとされるということが重要ではないかと考えているところです。 ○大賀委員 検討課題「2」について、警察の立場から申し上げます。   書類の授受につきましても、先ほど申し上げた接見と同様に、被留置者による逃亡及び証拠隠滅の防止、あるいは施設の規律、秩序の維持という観点から、現行と同等の担保措置が講じられなければならないと考えています。   仮に、書類の授受をオンラインにより行うこととしますと、受信した書類データを端末を用いて被留置者に閲覧させるためにタブレット端末などを貸与するということになると思いますけれども、そうした場合には被留置者が当該端末を破壊するなどして自傷他害行為に用いる可能性があり、そのようなおそれのない特別な閲覧設備・施設を全被留置者用に用意することは困難であると考えています。他方で、受信した書類データを印字して紙媒体で被留置者に交付する、あるいは被留置者が紙媒体で作成したものをスキャンしてデータ化してオンラインで送信するといった方策を採ることとなれば、施設側において新たな業務負担が生じまして、施設の管理運営にも支障が生じるおそれがあるといった弊害があるものと考えております。   以上を踏まえますと、被疑者等と弁護人等とのオンラインによる書類の授受につきましては、法律上又は運用上のいずれの場合であっても、現在実施されています関係機関における実務協議の場において、具体的なニーズを踏まえて検討を進めるべきであろうと考えています。 ○久保委員 今の御指摘について、少し申し上げたいと思います。   タブレット端末を貸し出すことによって自傷他害のおそれがあるという御指摘は、従前あるとおりなのですけれども、例えばタブレット端末について固定化し、動かさないようにするといった物理的な方策もできるのではないかと考えております。その上で、現在、電子データ、特に録音・録画記録媒体などについてどのような運用がなされているかといいますと、例えば東京の三つの弁護士会と東京拘置所における協議の場では、再三にわたって電子データを中で閲覧できるようにしてほしいという申入れをしているものの、東京拘置所側からは、それはできないという回答を頂いていると承知しております。   ただ、その上で、実際の事案においては、取調べの違法性が問題となったケースにおいて、裁判所に弁護人が申入れをし、中で録音・録画記録媒体を本人が確認できないと公判に立ち会えないという問題提起をしたところ、裁判所においてその必要性を認めたケースにおいては、裁判所が東京の拘置所に申入れをし、中で自由に閲覧をできるようにしてほしいという裁判所からの勧告があったという事案などが複数あるものと承知しております。そのようなケースにおいて拘置所側がどのような対応をとったかといいますと、そのような場合には、中でブルーレイの機器を貸し出し、イヤホンも貸出しをし、裁判に至るまで中で自由に録音・録画記録媒体を閲覧できたという事例があります。そうすると、現在においても必要な限りにおいて閲覧ができるという実情がある以上、それを制度化したとしても、適切な管理の下であれば問題は生じないものと思います。例えば、閲覧をするに際し裁判所の許可を要するものとしたり、制度の在り方については様々な選択肢があるのではないかと思いますが、現状においても問題なくできていることについては、是非制度化されるべきではないかと考えているところです。 ○佐久間委員 また繰り返しになるかもしれませんが、検察の立場から意見を申し述べます。   被疑者等と弁護人等との書類の授受をオンラインで行うことについても、第2回会議において、久保委員から、これを権利、すなわち秘密交通権として実現すべきである旨の御主張がありました。   刑事施設等において勾留中の被疑者等に電子データで書類を差し入れることができるものとした場合に想定される弊害については、検討会においても多くの御指摘がありました。   例えば、勾留中の被疑者等にタブレット端末等を使用させることは、その端末が不正な通信に用いられたり、損壊されたり、それ自体やその破片等が自傷他害行為に使用されたりするおそれがあること、そうした行為を防止しつつ、勾留中の被疑者等がキーボード等による入力やモニターによる出力をすることができるような独自の設備を、全国の刑事施設・留置施設にあまねく、かつ、全ての勾留中の被疑者等が平等に利用できるように整備することは、およそ容易なことではないこと、一度に大量のデータが送受信されたり、送受信が短時間のうちに繰り返されたりした場合には、刑事施設等の職員による点検も困難となり、収容されている被疑者等が多数に上る施設であれば、そうした点検作業のために施設の業務全体を圧迫することにもなりかねないこと、といったものであり、解決困難な多くの課題が存在し、そのことは検討会の委員の間で認識が共有されたものと考えております。   このように、勾留中の被疑者等と弁護人等との書類の授受をオンラインで行うことについては、解決することが容易でない弊害が少なからず存在しており、仮に、これを法律上の権利として位置付けたとしても、紙媒体により書類の授受がなされる場合と同じように、逃亡、罪証隠滅又は戒護に支障のある物の授受が行われないことが確保された状態で行われることを、全国の全ての施設で一律に確保することは、困難と言うべきであります。   そして、そうであるとすると、仮に法律上の権利としたとしても、そのように法律に規定された権利が全国一律に実現しない不均衡が生じかねません。   そうしたことを考慮して、検討会においては、これを運用上の外部交通として行い得るかについて更に実務的な観点から検討するため、関係機関において、その課題について、更なる協議を進めることを優先すべきこととされたものと認識しております。   そして、全国の刑事施設等において必要な設備等を整えることは困難であるという状況は、容易に解消され得るものではないのでありますから、この点についても、検討会の取りまとめ報告書において、当面の方針が示されたとおり、当部会のスタンスとしても、まずは関係機関による協議が進められることを優先する、というものであるべきでありまして、それが継続している現段階において、考えられる仕組み「②」の「ア」について、「A案」を前提とした議論をすること自体、考え難いと思っております。   また、考えられる仕組み「②」の「イ」についても同様でありまして、想定される弊害を防止しつつオンラインによる書類の授受を行う具体的な方法や実施可能な書類の範囲などに関しては、まずは実務的な協議の場において協議されるべきであり、それらの事項についての在り方が見えていない現段階では、法制上の措置の要否を論じるのは時期尚早と思っております。 ○久保委員 現在の裁判例においても、刑事訴訟法第39条第1項の接見には、口頭での打合せだけではなく、証拠書類などの提示をしながら打合せをすることも含まれているものと理解しております。そうすると、基本的に接見の際に再生する映像を事前に検査するということは、接見内容を事前に検査することにつながりますので、例外的に許される場合として、未決勾留の目的や収容施設内の秩序維持を阻害するものでないことを確認するために、それを確認する限度で、その全部又は一部を検査することであれば許容されるという位置付けだと理解しております。   そうしますと、タブレット端末によって電子データが送信され、それを中で閲覧するという仕組みを採った場合にも、拘置所あるいは警察署内においてチェックができるのは、飽くまでもそのような秩序維持を阻害するものではないかという形式的なチェックになるのであって、それにより大きく負担が増えるということにはならないのではないかと考えております。それに加えて、仮に内部でタブレット端末を貸与され、そこに直接弁護人から書類を送付できるというようなことが実現すれば、弁護人から送られた書類であるということは一見して明らかですから、今よりも更にそのチェックに要する時間は減るのではないかと考えているところです。   先ほど実務者協議についても言及いただきましたが、正に佐久間委員がおっしゃったように、現在その見通しがどのようになるものかということは見えておりません。実務者協議が行われているからこそ、この部会でどのような制度にするかということを優先して議論をし、それが実務者協議にも反映される形としなければ、結局のところ、例えば人的・物的な資源に限界があるのでそれはできないというような平行線で終わった場合に、実務者協議に期待していたことが実現できず、部会でも議論ができないということになりかねないのではないかと懸念しているところです。実務者協議については、その議論が非公式の場であるからこそ、この公式の場である部会で議論をするということにも意味があると考えているところです。 ○酒巻部会長 ほかに、弁護人・被疑者間の書類の授受等につきまして、御意見はよろしいですか。   それでは、次の「3 その他」の項目に進みたいと思いますが、御意見のある方は、どうぞ御発言をお願いします。 ○成瀬幹事 検討課題「3」の「ア」と「イ」の両方について、意見を申し上げます。   第2回会議において佐久間委員から御指摘がありましたように、弁護人等以外の者は、弁護士の職務として接見や書類・物の授受を行う者ではないため、自由にこれらを許した場合には、勾留中の被疑者等が、その機会に共犯者や関係者と通謀して罪証隠滅を図るなどの行為に及ぶおそれがあることなどから、現行法上、これらの者と被疑者等との接見は、立会人なくして行うものとはされておらず、また、接見も書類・物の授受も、法令の範囲内で認められるものであって、刑事収容施設の運用上の観点からの制限を含めたより広い制限が法令により課され得ることを前提とするものとして規定されており、実際に刑事収容施設法において各種の制限が設けられています。   仮に、被疑者等と弁護人等以外の者との接見をビデオリンク方式により行うこととするとすれば、通謀等の行為を防止するため、刑事施設等の職員がその映像・音声を視聴することになると思われますが、それでもなお、相手方の端末の側に接見禁止決定の対象者が潜んでいたり、接見の状況が秘密裏に録音・録画されたりすることを防ぐことは困難であり、そうした弊害を防止する現実的な手段が想定できない以上、そのような形で行うビデオリンク方式による接見は、実施困難であろうと思われます。   これに対して、先ほどから言及されているアクセスポイント方式は、弁護人等以外の者との接見においても、さきに申し上げた弊害を防止する観点から有力な選択肢になり得ると思いますが、他方で、アクセスポイント方式による接見は、刑事施設等に赴かなければならない現在の接見と比べて利便性が高いため、接見を希望する者の数や接見の回数が相当多数に上ることもあり得ます。そうしますと、それに対応するための設備や人員の配置は、弁護人等のアクセスポイント方式による接見を実現する場合以上に必要となることが想定され、それらを全国の各刑事施設等に整備することは、現時点では困難であるように思われます。   また、弁護人等以外の者との書類の授受をオンラインにより行う場合には、弁護人等が電子データを被疑者等に差し入れる場合と同様の弊害が懸念されるだけではなく、その量が更に大量になり得ますので、点検作業のために施設の業務全体を圧迫する度合いも、より大きなものとならざるを得ません。   弁護人等以外の者との接見をアクセスポイント方式により行ったり、オンラインによる書類の授受を行ったりすることに伴う弊害は、弁護人等とのアクセスポイント方式による接見や、オンラインによる書類の授受について懸念されるものと共通する点が多いように思われます。そこで、まずは、現在、関係機関において行われているアクセスポイント方式による弁護人等との外部交通についての実務的な協議を優先して進めるべきであり、弁護人等以外の者との接見や書類の授受については、その後の課題として考えるべきであるように思われます。 ○久保委員 弁護人等以外の者の中には、当然親族もおりますが、現状大きな問題となっておりますのは、弁護人が依頼する鑑定人等の専門家だと考えております。現在、弁護人が依頼した鑑定人が本人と面会しようとした場合には、親族等の一般面会に比べて、あらかじめ申請をすれば1時間程度の面会は可能ですが、それもアクリル板越しで行っておりますし、十分な面接ができるかというと、例えば結局、判決では、1時間程度の面会であるとかそういう形で、十分ではないことを理由に信用性が否定される場合があるというのが実情です。   専門家の証人に対する尋問については、オンライン化をするべきだというような議論が今後も想定されているところではありますが、その議論の際の文脈の中には、多忙で尋問の日程が取れないというような弊害が強調されるように思っております。弁護人が依頼する鑑定人も、当然専門家であり、依頼をするに際しても、相談には乗るが、東京拘置所や警察署に面会に行くのは困難であり、時間を取れないから引き受けられないといったことは多々あることです。そうしますと、そういった弁護人が依頼する専門家を弁護人等以外の者としてオンライン接見を実現することは、防御権を考える上で非常に大きな問題となっているところです。   そのため、弁護人等以外の者についても、例えば、アクセスポイント方式による接見を増やすというような場合にも、当然設備を増やすことを想定されているわけですから、柔軟な形で専門家に使えるような設備とされ、制度化されるべきではないかと考えているところです。アクセスポイント方式にするかどうかについて、実務者協議で行うべきだという点については、先ほども同様で、それが今後どのようになっていくか分からないからこそ、この部会で検討するべき問題だと考えております。   その上で、専門家以外の親族について、今、受刑者であれば刑務所から電話で面会をしたりするということができるようになっているものと承知しております。その目的が何かと言えば、被告人の更生のために、親族と早めに連絡を取り合えることで、更生に資する環境を整備するということにつながるのではないかという問題意識から、そのように制度化されているのではないかと思われます。事件を認めている被疑者にとってみれば、早急に遠方にいる親族と連絡を取り合えることで更生の環境を整えるということは、今後の更生の上で非常に重要な問題になりますので、親族についてもやはりできる限りオンライン接見が実現できるようにしていくことが望ましいものと考えます。 ○酒巻部会長 弁護人以外の者というと、私は専ら親族等のことを想定していたのですけれども、今、専門家のお話がありましたので、具体的にはどういうタイプの事件でどういう人に接見してほしいのか、もし分かれば教えてください。 ○久保委員 一番多いのは、やはり精神科医だと思います。ですので、起訴前鑑定で精神鑑定が行われており、その内容が納得できないということで弁護人側で新たに相談をするということは多々ある場面ですが、そのようなときに、やはり面会ができないと本人からきちんと聴取ができないという問題があります。   しかし、現状では1回当たり1時間程度だと、1回1時間のために面会にはなかなか行けないのだとおっしゃられるケースが少なくありません。取り分け東京においては、それでも精神科医の方は多いので、まだ選択肢には恵まれている方だと思うのですが、地方においては精神科医の数が非常に限られており、元々専門家の方に接触することが困難だという状況にあります。正に地方でこそ、専門家にアクセスする上で、オンラインでの面会が実現すれば、より防御のために実質的な面会を行い、責任能力を争う上できちんとした活動ができることに資すると考えております。 ○保坂幹事 久保委員に質問ですが、先ほど弁護人との接見について、全国一律にできないとしても、重大事件などについて権利性のある接見を検討してはどうかという御提案があったのですが、今、二つおっしゃったのは、鑑定人等の専門家でなかなか日程が取れない、忙しいと、直接会ってする時間がなかなか取れないような場合というのと、自白していて更生の役に立つであろうという場合の親族とおっしゃったのですが、それは弁護人以外の者との間についてオンラインでの接見とかを認める場合に、全国で一律にやると物的・人的な体制が大変なことになるのであれば、例えば今おっしゃったような、鑑定人等の専門家で時間が取れないという限定的な要件、あるいは自白していて更生の役に立つような親族という形で限定的な要件で、そこはできるようにという御提案という趣旨なのでしょうか。 ○久保委員 それを法律レベルでそこまで定めるのか、あるいは規則にそれを委ねて、規則の定めるところによりというような形にするのか、選択肢はいろいろあるのではないかと思いますが、今おっしゃっていただいたような形で規定されるだけでも大きく弁護活動には資するものと思いますので、そういう形であれば仮に一致した意見を見られるということであれば、それ自体にも大きな意味があるところだと思っているところです。 ○酒巻部会長 ほかに、「その他」に関して御意見はございますか。よろしいですか。   それでは、全体について、接見交通について検討課題として明記されていない点に関するものも含めて、ほかに御意見があれば伺いたいと思います。 ○久保委員 接見交通に関しまして、あとはやはり通訳の問題も重要な問題だと思っております。取り分け少数言語においてはなかなか通訳が見付からず、遠方の方になる関係で、通訳の都合が付かず、接見回数が減ってしまうというようなこともございます。   オンラインの接見を行うに際し、通訳につきましても、できる限りオンライン接見に同行できるようにするという形が望ましいと思います。できれば、遠方にいる通訳の方がオンラインで接見の際に立ち会えるような形にしていただくと、最も選択肢が増えるような形になりますので、そのような制度についても御検討いただきたいと思っているところです。 ○酒巻部会長 具体的なイメージとして、通訳の人は接見室には行かず、弁護士は接見室に行くということですか。 ○久保委員 弁護士が行く場合もあれば、オンライン接見の横に同行する場合もあると思うのですけれども、やはり遠隔地にいる通訳の方が参加できるような方策という趣旨になりますので、方法は両方あり得ると思います。 ○成瀬幹事 今、部会長と久保委員の間で議論された内容も踏まえつつ、ビデオリンク方式による通訳につきまして、私の意見を申し上げます。   そもそも、接見の際の通訳の法的位置付けについては、刑事訴訟法や刑事訴訟規則に規定が見当たりませんので、弁護人等の接見が対面であることに伴って、弁護人等のそばで通訳をしているに過ぎないと思われます。   その上で、被疑者等と弁護人等との接見の際に、ビデオリンク方式により通訳を行う方法としては、第1に、ビデオリンク方式により接見をする弁護人等の傍らに通訳人も同席するという方法、第2に、弁護人等とは別にビデオリンク方式により接続して通訳する方法が考えられます。このうち、第1の方法では、ビデオリンク方式による接見をする弁護人等とそれに同席する通訳人を一体のものとして扱えば足りると考えられる一方で、第2の方法では、通訳人のビデオリンク方式による接続環境についても、弁護人等と同様の弊害があり得ることを想定せざるを得ず、3か所同時に弊害を防止するための対応を行うために、更に多くの物的設備や人的態勢の負担が生じることになると考えられます。   いずれの方法を採るにせよ、弁護人等のビデオリンク方式による接見と同様の弊害への対処が必要となる以上、その対処の方策については、弁護人等のビデオリンク方式による接見に準じて検討されるべき事項であると思われます。 ○酒巻部会長 ほかに、「2 被疑者・被告人との接見交通」に関し、この検討課題に記載のない点について、何か御意見が追加してあれば御発言ください。よろしいですか。   それでは、先に進みまして、「3 裁判所の手続への出席・出頭」についての議論に入ります。   議論に先立ちまして、配布資料8の「3」に記載された「考えられる仕組み」と「検討課題」について、事務当局から説明してもらいます。 ○鷦鷯幹事 配布資料8の5ページから7ページまでを御覧ください。   「考えられる仕組み」の「①」として、裁判所は、検察官・弁護人・裁判長ではない裁判官を、公判前整理手続期日・期日間整理手続期日に、映像・音声の送受信により出頭・出席させることができるものとすることを、「②」として、裁判所は、被告人が公判前整理手続期日・期日間整理手続期日に出頭する場合又は被告人にそれらの期日への出頭を求める場合について、被告人を映像・音声の送受信により出頭させることができるものとすることを記載しています。   また、「③」として、裁判所は、被告人を、公判期日に、映像・音声の送受信により出頭させることができるものとし、この場合において、弁護人についても、映像・音声の送受信により出頭させることができるものとすることを、「④」として、裁判所は、被害者参加人が刑事訴訟法第316条の34第1項の規定により公判期日に出席する場合について、被害者参加人を映像・音声の送受信により出席させることができるものとし、この場合において、被害者参加人の委託を受けた弁護士についても、映像・音声の送受信により出席させることができるものとすることを記載しています。   さらに、「⑤」として、裁判所は、裁判員等選任手続期日に裁判員候補者を呼び出す場合において、他の裁判所の構内その他の適当と認める場所に出頭させ、同期日の手続を映像・音声の送受信によりすることができるものとすることを記載しています。   続いて、「検討課題」を御覧ください。   まず、「1」には、「考えられる仕組み」の「①」及び「②」に関係する検討課題として、映像・音声の送受信による公判前整理手続期日等への出頭等に関する規律を記載しています。   そのうち、「(1)検察官・弁護人・裁判長ではない裁判官の出頭・出席」では、現行法において、公判前整理手続期日等に検察官又は弁護人が出頭しないときは、それらの期日の手続を行うことができないこととされている趣旨や、公判前整理手続期日等が非公開で行われることとされている趣旨は何か、それらの趣旨に照らし、検察官・弁護人・裁判長ではない裁判官について、それぞれ、どのような要件を満たす場合に、どのような場所からであれば、映像・音声の送受信により出頭・出席させることができるものとするかなどの点が、「(2)被告人の出頭」では、現行法において、被告人が、公判前整理手続期日等に出頭することができ、裁判所が必要と認めるときは、被告人に対し、それらの期日に出頭することを求めることができることとされている趣旨や、その趣旨に照らし、どのような要件を満たす場合に、どのような場所からであれば、映像・音声の送受信により出頭させることができるものとするかなどの点が、それぞれ検討課題となります。   「2」には、「考えられる仕組み」の「③」及び「④」に関する検討課題として、映像・音声の送受信による公判期日への出頭等に関する規律を記載しています。   そのうち、「(1)被告人・弁護人の出頭」では、現行法において、軽微事件の場合を除き、被告人が公判期日に出頭しないときは開廷することができず、死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件については、弁護人の出頭・在廷も開廷の要件とされている趣旨や、その趣旨に照らし、被告人・弁護人について、映像・音声の送受信により公判期日に出頭させることが許容されるか、許容されるとすると、それぞれ、どのような要件を満たす場合に、どのような場所からであれば、映像・音声の送受信により出頭させることができるものとするかなどの点が、「(2)被害者参加人・その委託を受けた弁護士の出席」では、現行法において、被害者参加人・その委託を受けた弁護士が公判期日に出席する場合に、映像・音声の送受信によりすることが認められていない趣旨や、その趣旨に照らし、被害者参加人・その委託を受けた弁護士について、それぞれ、どのような要件を満たす場合に、どのような場所からであれば、映像・音声の送受信により出席させることができるものとするかなどの点が、それぞれ検討課題となります。   「3」には、「考えられる仕組み」の「⑤」に関係する検討課題として、映像・音声の送受信による裁判員等選任手続の実施に関する規律を記載しています。   そのうち、「(1)裁判員候補者の出頭」では、現行法において、裁判員等選任手続は、その期日に裁判員候補者を呼び出してすることとされている趣旨や、裁判員等選任手続は公開しないこととされている趣旨は何か、それらの趣旨に照らし、どのような要件を満たす場合に、どのような場所からであれば、映像・音声の送受信により出頭させることができるものとするかなどの点が、「(2)被告人の出席」では、現行法において、裁判所が必要と認めるときは、裁判員等選任手続に被告人を出席させることができることとされている趣旨や、その趣旨に照らし、被告人を映像・音声の送受信により裁判員等選任手続に出席させることができるものとするか、どのような要件を満たす場合に、どのような場所からであれば、映像・音声の送受信により出席させることができるものとするかなどの点が、それぞれ検討課題となります。   御説明は以上です。 ○酒巻部会長 ただいまの説明内容に関して御質問等はございますか。よろしいですか。   それでは、議論に入りますが、検討課題の「1」については、映像・音声の送受信による出頭等の主体が、「(1)」は検察官・弁護人・裁判長ではない裁判官、「(2)」は被告人と異なっていることから、これを二つに分けて議論していくのが、問題の整理にとっても、効率という観点からも良いと思いますので、まず、「(1)検察官・弁護人・裁判長ではない裁判官の出頭・出席」について御意見を伺います。御意見のある方はよろしくお願いします。 ○小木曽委員 検討課題「1」「(1)」の「ア」にありますとおり、刑事訴訟法第316条の7は、「公判前整理手続期日に検察官又は弁護人が出頭しないときは、その期日の手続を行うことができない」と定めております。   これは、公判前整理手続期日が、公訴事実について当事者間で主張を明らかにしたり、証拠調請求やそれらの意見を確かめたりするなど、裁判所と両当事者との間で刑事訴訟法第316条の5に定めるような内容の手続をするために設けられたものですので、当然ながら検察官及び弁護人の双方の出頭が必要とされたものであると思います。要は、意思疎通をすることがその目的であると考えられます。   そうしますと、検察官、弁護人、裁判長以外の裁判官のいずれか又はそのうちの複数名が映像・音声の送受信により出頭・出席することになったとしても、映像や音声を通じて、互いに即時の意思疎通が可能で、争点や証拠に関する意見交換ができるのであれば、刑事訴訟法第316条の7の趣旨には反しないと考えられますし、さらに、やり取りが音声のみでも足りるということであれば、選択肢としてそれを可能としても差し支えないと考えられると思います。   検討課題「1」「(1)」の「イ」にありますとおり、その手続を非公開で行うこととの関係ですけれども、これは、事件の争点及び証拠を整理するという手続の目的を実現するためには、訴訟当事者間の率直な意見交換が求められることから、これを非公開とすることが選択されたと解されます。   そうしますと、公判前整理手続期日に検察官・弁護人・裁判長ではない裁判官が映像・音声の送受信により出頭・出席するとした場合、それらの者の所在場所に、手続に参加すべきでない者が同席し得るとしますと、手続参加者が率直に意見を述べる上での妨げとなりかねませんので、そうした懸念を払拭する必要があると思います。   映像・音声による出頭・出席がそうした懸念のない状態で実現できるかどうかは、当該期日の整理手続の内容や、それをする場所、その場所でどのような措置を講じ得るかといった事情によって異なると思われますので、遠隔の出頭・出席を許すかどうかについては、手続の主宰者である裁判所が、個々の事案ごとに、訴訟関係人の意見を聴いた上で、諸事情を踏まえて、選択することができるものとすることが適当であると考えます。   具体的な規定の在り方については、本年5月に成立した民事訴訟法等の一部を改正する法律において、幾つかの条文が、「裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、手続を行うことができる」旨の定めを置いていることが参考になると思われます。具体的な方法や手順は、今後、民事訴訟規則において定められることになるのだと思いますが、それを含めて参考とすべきではないかと思います。 ○向井委員 まず、検察官・弁護人の出頭というところで、所在場所について意見を言わせていただきたいと思います。   公判前整理手続については、その手続の性質に照らして、今お話がありましたとおり、非公開で行われているところ、当事者が映像・音声の送受信により手続に参加する場合の所在場所などに関しましては、当事者が申し出た場所等が非公開手続への参加にふさわしい場所であるかどうか、非公開手続にふさわしい条件が整っているかなどについても裁判所が検討して判断を行うことが考えられ、映像・音声の送受信による参加を希望する当事者からは、裁判所がそのような判断を行うことが可能となるような情報を疎明してもらうということになるのではないかと考えます。したがいまして、その規定を設けるに当たっては、そのような点も考慮した規定ぶりを検討することになるのではないかと思います。これが所在場所等についてです。   それから、裁判長ではない裁判官の出席というところですが、裁判官・裁判所書記官は、基本的には今後も公判前整理手続期日等の行われる場所に所在するということになるかと思います。もっとも、庁によっては、例えば裁判官の一部につき支部等で執務する必要が生じたために、その日には不在であるといった場合もあり得ます。公判前整理手続は受命裁判官によって行うことも可能でありますが、受命裁判官によっては行えない手続、例えば証拠の採否を決定したり、訴因変更請求に対する判断をしたりといったことを予定している期日もあり、先ほど述べたような裁判官の一部が不在の日にはそうした期日を実施することができないこととなります。そこで、争点整理を目的とする公判前整理手続については、裁判所の裁量により、裁判官等も映像・音声の送受信により手続に出席することを可能としておくことで、より柔軟な期日調整が可能となり、機動的な争点整理手続の実現に資するという面もあるかと思います。 ○酒巻部会長 公判前整理手続期日等における検察官・弁護人・裁判官の出頭・出席の点について、ほかに御意見はありますか。よろしいですか。   それでは、次に、「1」の「(2)被告人の出頭」について、御意見いただければと思います。 ○池田委員 公判前整理手続期日への被告人の出頭について、意見を申し上げます。   刑事訴訟法第316条の9は、第1項で、公判前整理手続期日に被告人が出頭することができるとする一方で、第2項で、裁判所が必要と認めて被告人に出頭を求めた場合に、被告人が出頭することになる旨を規定しております。   他方で、それらの場合に、例えば、被告人が感染力の高い感染症に罹患しているなど、期日が行われる場所に実際に出頭させることが適当でないという事情があるときには、映像・音声の送受信により出頭させることができるようにすることについても、出頭が認められる趣旨との関係で、その許容性を検討する必要があるものと考えます。   まず、それらの趣旨についてですが、刑事訴訟法第316条の9第1項の方は、被告人が当該被告事件において訴追されている当事者本人であり、手続に重大な利害を有していることから、これらの期日における出頭の権利を被告人に保障しているものとされています。   もっとも、公判前整理手続は、公判準備として争点及び証拠の整理をするための手続であって、公判手続のように、証拠の取調べなど心証形成に向けた手続が行われるものではなく、関係人をつぶさに観察する必要もありません。したがって、被告人に期日への出頭の権利が認められているのも、飽くまで、そこで行われているやり取りの内容を被告人が把握できるようにするという趣旨にとどまるものと考えられます。   そうであるとすれば、その手続の内容は、映像・音声の送受信によっても把握することができるため、被告人の出頭がそのような態様となるとしても、刑事訴訟法第316条の9第1項の趣旨には反しないと考えられます。   ただし、その場合に、被告人が所在する場所によっては、これまでに御指摘があったような訴訟関係人間の率直な意見交換が妨げられかねないことは、同様に問題となり得るところかと思います。そこで、被告人の所在場所がその要請を満たすといえるかどうかは、手続の主宰者である裁判所が、個々の事案ごとに、訴訟関係人の意見を聴いた上で、様々な事情を踏まえて選択し得るものとすることが適当であるものと考えます。   そのための具体的な規定の在り方としては、被告人を実際に出頭させる場合と映像・音声の送受信により出頭させる場合のそれぞれにおいて、それが公判前整理手続の適正な実施に及ぼす影響等を裁判所が適切に勘案してその適否を判断するものとする観点からは、例えば、「裁判所は、被告人が公判前整理手続期日への出頭を求める場合において、相当と認めるときは、訴訟関係人の意見を聴き、映像・音声の送受信の方法により出頭させることができる」などといったものとすることが考えられます。   なお、先ほど述べたとおり、公判前整理手続の目的であります争点及び証拠の整理について、その内容を把握することは映像・音声の送受信によっても可能であって、それ以上に、訴訟関係人を被告人が直接観察することが予定されているものではありませんので、映像・音声の送受信によるとしても出頭の権利を認めた趣旨を害することはないと考えられる上、そのような場面というのは、例えば、裁判所が、感染力の高い感染症に罹患しているなどの理由で被告人を現実に出頭させることが相当でないと判断した場合でありますので、被告人がそれを求めたからといって現実の出頭を許さなければならないこととするのは適切ではないように思われます。   したがって、被告人を映像・音声の送受信により出頭させるための要件を、被告人の意思・意向に係らしめるまでの必要はなく、被告人又は弁護人の意見を聴いて判断することとすれば足りるのではないかと考えます。   他方で、刑事訴訟法第316条の9第2項の方ですけれども、出頭することを求めることができる場合というのは、事案によっては、弁護人に陳述を求めるだけではなく、被告人の意思を確認しながら手続を進める必要がある場合があることから、そのような場合に、被告人を出頭させた上で、手続で行われている内容がその意思に反しないことを確認することができるようにしたものとされています。   そうであるとしますと、そのような意思確認をどのような方法で行うのが適当かは、意思確認を必要とする裁判所が適切に判断すべき事柄ですし、映像・音声の送受信により出頭させたとしても、映像や音声を通じて、争点や証拠の整理に関し、被告人に質問して回答を得るなどして意思疎通をすることができるのであれば、先ほど述べた趣旨を満たすことができると思われますので、この場合も、裁判官や弁護人、検察官がいる場所に被告人を物理的に同席させることは、出頭を求める趣旨との関係で必要とされるものではないと考えられます。   したがって、この場合も、先ほどと同様に、裁判所は、被告人の所在場所等を踏まえて、訴訟関係人の意見を聴いた上で、映像・音声の送受信による出頭の適否を適切に選択し得るものとすることが適当であると考えます。   具体的な規定の在り方については、映像・音声の送受信による場合も、出頭を求めることとした趣旨を満たすことができるかを、裁判所が適切に判断して決するという観点から、例えば、「裁判所は、被告人を公判前整理手続期日に出頭させる必要があると認めて出頭させる場合において、相当と認めるときは、訴訟関係人の意見を聴き、映像・音声の送受信の方法により出頭させることができる」などといったものとすることが考えられます。   この場合、被告人を出頭させる目的は、裁判所がその意思を直接確認する必要があると認めたことなどにありますので、被告人を現実に出頭させた方が良いのか、映像・音声の送受信により出頭させるのかは、出頭させる必要性を認めた理由に照らして、裁判所が判断する事柄であるといえますので、先ほど述べた現実の出頭の場合と同様に、被告人の意思・意向に係らしめる要件とする必要はないと考えます。 ○成瀬幹事 私は、池田委員が少し言及された、被告人が映像・音声の送受信により公判前整理手続期日等に出頭する場合の被告人の所在場所について意見を申し上げたいと思いますが、その意見を申し上げる前に、久保委員に1点質問をさせていただきたいと考えています。   第2回会議において、久保委員から、この場合における被告人の所在場所は、捜査機関の影響を受けない場所である必要があるという御意見が示されました。この御意見は、被告人が公判前整理手続期日等において自由に発言できる状況にあることが確保される必要があるところ、場所によっては、そのような状況が確保されない場合があり得るのではないかという問題意識に基づくものと思われます。   そこで、より具体的に考えてみますと、被告人が裁判所に出頭しないとすれば、被告人の所在場所は、勾留中であれば、拘置所か警察署の留置施設ということになると思いますが、久保委員は、被告人が警察署の留置施設から映像・音声の送受信により公判前整理手続期日等に出頭することは認めるべきではないという御意見なのでしょうか。 ○久保委員 今の御質問に対しての私の考えとしましては、警察署からオンラインで公判前整理手続期日に出頭することを一律に排除するべきとまで考えているものではございません。重要になるのは、やはり捜査機関からの影響が排除された環境で行えるようにすることだと考えております。   先ほど、争点について確認をする場面があるのではないかということを池田委員が御指摘になったと思いますが、例えば、本人において争点についての理解が誤っていると感じたときに、捜査機関の影響がある結果、適切に意見が述べられず、適切な争点整理ができないといったことも考えられないではないと思っております。そのため、警察署において公判前整理手続にオンラインで参加するという場合には、やはり捜査機関からの影響が完全に排除された部屋において設備が整えられることが重要になってくると思われます。 ○成瀬幹事 丁寧にお答えいただき、ありがとうございました。   では、被告人の所在場所について、私の意見を申し上げます。   私は、被告人が警察署にいることによって、公判前整理手続期日等に映像・音声の送受信により出頭した際に被告人が自由に発言することを妨げられるという関係が、一般的に認められるとは考えておりません。被告人が警察署に所在する場合であっても、自由に発言できる状況を確保することは可能であると思います。   また、公判前整理手続等の目的に照らし、弁護人は、これらの期日に出頭する前後に、被告人と各期日における対応の方針について入念な打合せをすることが期待されており、実際にも、久保委員をはじめ多くの弁護人は、そのような打合せを行っておられると思います。   そうであるとすると、被告人が警察署内から映像・音声の送受信により公判前整理手続期日等に出頭する場合であっても、期日において被告人が弁護人との打合せと異なる発言をすることはほとんどないと思われ、仮に、被告人が打合せと異なる言動をした場合には、その理由を直ちに確認することも可能であり、必要があれば、その時点で期日を打ち切って次回期日までの間に弁護人自ら打合せをすることもできます。   これらの点に鑑みますと、被告人を捜査機関の影響を受けない場所に所在させることを、映像・音声の送受信により出頭させるための要件とするまでの必要はないように思われます。 ○久保委員 今御指摘のあった弁護人との打合せにつきましては、おっしゃるとおり、公判前整理手続を行うに当たっては、事前に本人とよく打合せをして臨むのは当然のことかと思います。   その上で、やはり公判前整理手続において何が議論になるかということはあらかじめ全て分かるわけではありませんので、本人が公判前整理手続に際し、突然、裁判官から何かを質問された際に、それにどうすればいいかという対応に困難を覚えるという場合も当然に想定されることかと思います。公判前整理手続が導入された当初に、公判前整理手続においてあたかも被告人質問を先取りするかのように詳しい質問をするということが許容されるかといったことが問題になりました。そのような場合に、横に弁護人がいた場合には、その質問には答えなくてよいということを即座にアドバイスできますが、公判前整理手続で突然そのような質問を投げ掛けられた被告人においては、それに対して適切に対応ができず、本来答えるべきでないことまで答えてしまったりするということも想定されます。   先ほど成瀬幹事からは、その場で打ち切り、次回に持ち越せばよいという御趣旨の御発言もありましたが、本来であれば、弁護人が被告人の横にいればその場で、これは後で私から説明するからと本人に説明をし、適切に対応し、予定どおり次回の公判前整理手続を迎えればよかったところを、次回に持ち越すということになれば、かえって迅速な裁判というものを害することになりかねないのではないかと思います。   被告人と弁護人が横にいるということの影響は本当に大きなものがありまして、即座に簡単な打合せができるということは大きな意味があります。その場で公判前整理手続でのやり取りが理解できないという被告人は多数おります。それはなぜかと言うと、公判前整理手続の内容が技巧的なものとなりがちで、証拠意見についてどのような整理をするかといった、特に法的な問題について取り扱うことから、本人がその場で理解ができず不安を覚えるということもあります。そのような場合に、本人が裁判所にいれば、後で裁判所の地下にある接見室において接見をし、これはこういうことなのだよということを説明でき、本人の不安を解消するということにもつながりますが、オンライン接見が直ちにできればともかく、そうでないという場合には、本人が不安を解消できず、そのまま過ごすということになりかねず、本人との関係でも非常に問題があるものと思っております。そのため、被告人が公判前整理手続に参加する際には、必ず横に弁護人がいるということを義務付けるべきだと考えます。 ○保坂幹事 元々成瀬幹事がおっしゃったのは、被告人の居場所が警察署では駄目なのかどうかという問題、すなわち、今おっしゃったような、例えば公判前整理手続で想定外の質問が急にされてしまって被告人が何と答えたらいいのか少し迷ってしまうというようなことというのが、警察署にいることによって影響を受けて、本来だったらきちんと答えられたことが、警察署にいるがゆえに答えられなくなるということがあるのかどうかという問題でして、弁護人が横にいるかどうかではなくて、被告人の居場所が警察署かどうかということでの問題意識の発言だったと思うので、その点についてはどう考えますか。 ○久保委員 むしろ成瀬幹事にお伺いしたいのですけれども、警察署か、あるいは拘置所かによって、先ほどの一旦打ち切って次回に持ち越せばよいのではないかという発言の御趣旨は変わるということなのでしょうか。 ○成瀬幹事 私は、被告人が警察署に所在する場合と拘置所に所在する場合のいずれであっても、自由に発言できる状況を確保することは可能であると考えております。それゆえ、公判前整理手続期日等において被告人が弁護人との打合せと異なる発言をすることはほとんどないであろうと考えていますが、仮に、被告人が打合せと異なる発言をし、その理由を確認することも困難であるという例外的な事態が生じた場合には、期日を打ち切って次回に持ち越す措置も採り得るのではないかと申し上げました。そのような措置を採るか否かの判断は、被告人が警察署に所在する場合と拘置所に所在する場合と変わることはないと思います。 ○久保委員 私としてはそのように理解しましたので、場所がどこであろうと、やはり弁護人が本人のそばにいるということの重要性について指摘させていただいた次第です。 ○成瀬幹事 私の最初の質問は、保坂幹事がおっしゃったとおり、被告人の所在場所が警察署であること自体に何か問題があるのかという点をお尋ねするものでした。この点については、久保委員から、一律に警察署を排除するわけではないという御回答がありましたので、私の意見として、被告人が警察署に所在する場合であっても、自由に発言できる状況を確保して、公判前整理手続期日等に映像・音声の送受信により出頭することは可能であり、被告人を捜査機関の影響を受けない場所に所在させることを法律上の要件とするまでの必要はないと申し上げました。   この被告人の所在場所という問題とは別の新たな論点として、久保委員は、被告人が映像・音声の送受信により公判前整理手続期日等に出頭する場合には、弁護人が被告人のそばにいる必要があるという御意見が述べられたものと理解しました。 ○久保委員 おっしゃるとおりです。 ○向井委員 今まで話されていたこととは少し切り口が違って、先ほどの弁護人と検察官の出頭についてと同様の問題意識になるのですけれども、身柄拘束中というよりは、むしろ在宅中の被告人が念頭に置かれるかと思うのですが、どこからそれに出頭するかというところです。非公開で行われるという公判前整理手続の性質に照らしまして、被告人が映像・音声の送受信により手続に参加する場合の所在場所等についても、被告人等が申し出た場所が非公開手続の参加にふさわしい場所であるかどうかなどを裁判所が検討して判断することが考えられるわけですが、先ほどと同様、裁判所がそのような判断を行うことが可能となるような情報を当事者から疎明していただくことになるのではないかと考えますので、そのようなことを考慮した規定ぶりを検討していただければと思います。 ○酒巻部会長 私の意見といいますか、感想なのですけれども、公判期日ではないですが、公判前整理手続期日には、明文で、刑事手続の最も重要な当事者である被告人に、「出頭することができる」という表現で、出頭の権利が付与されていますね。先ほども「権利」という言葉でこだわったのですけれども、池田委員によれば、この権利は公判期日とは異なる公判前整理手続の性質を勘案し、場合によっては被告人がどうしても出たいと言っていても、裁判所の判断で、もちろん例外的ではありますが、お控えいただくことができるというような法解釈ができるという御意見でした。被告人の権利であると明記されているにもかかわらず「関係者の意見を聴いて裁判所が相当と認めるとき」というのは、よくある要件設定なのですけれども、そのレベルで被告人の出頭の権利を制約できるというのが、私には若干違和感があります。公判期日ですと、もっと違和感があるのですけれども、整理手続期日であっても基本は同じなのではないでしょうか。この点について御意見があれば聞きたいと思ったところです。 ○久保委員 私としては、今の御指摘について全くそのとおりだと思っておりまして、最初、池田委員からも御指摘があったように、被告人は正に訴訟の当事者であって、自ら公判前整理手続に出頭して訴訟行為をするという防御方法を選択する権利があるものと思っております。これがオンラインになったとしても、それに変わるところはありませんので、被告人の出頭の権利、その場できちんと話をしたいという権利は保障されるべきだと考えているところです。 ○酒巻部会長 ほかに、「(2)被告人の出頭」について、御意見はございますか。よろしいですか。   それでは、公判前整理手続のところが終わりまして、いよいよ公判期日なのですけれども、終了予定時間も迫っていますので、これは次回に落ち着いてやった方がいいかと思いますので、本日の議論はここまでにしまして、「3 裁判所の手続への出席・出頭」のうちの検討課題「2 映像・音声の送受信による公判期日への出頭等に関する規律」から、次回に議論したいと思います。   その前に、ほかに検討課題「1」の全体について何か意見がございましたら、承りますけれども、よろしいですか。   それでは、次回は、検討課題の「2」から再開するということで、本日は終了したいと思います。   また、次回、諮問事項「三」についての議論に進める見込みがあれば、「三」についても、事務当局に資料を準備してもらった上で、その資料に沿って議論を進めていくということにしたいと思います。   それでは、次回の予定について、事務当局から説明をお願いします。 ○鷦鷯幹事 次回の第5回会議は、令和4年12月2日午前10時からを予定しております。本日と同様、Teamsによる御参加も可能でございます。詳細につきましては、別途御案内を申し上げます。 ○酒巻部会長 本日の会議の議事につきましては、特に公開に適さない内容に当たるものはなかったと思いますので、発言者名を明らかにした議事録を作成して公開することにさせていただきたいと思います。また、配布資料についても、公開することにしたいと思いますが、そのようにしてよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○酒巻部会長 それでは、そのようにさせていただきます。   本日は、これにて閉会といたします。   それでは、また次回よろしくお願いいたします。 -了-