法制審議会 担保法制部会 第25回会議 議事録 第1 日 時  令和4年9月27日(火) 自 午後1時30分                      至 午後5時33分 第2 場 所  法務省7階・共用会議室6・7 第3 議 題  担保法制の見直しに関する中間試案のとりまとめに向けた検討(9)及び担保法制の見直しに関する中間試案のたたき台(1) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第25回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして、ありがとうございます。   本日は山本委員、衣斐幹事、水津幹事が御欠席で、沖野委員、青山幹事が途中参加、加藤幹事が17時頃御退席と伺っております。   まず、資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 新たにお送りしたものとして、部会資料20「担保法制の見直しに関する中間試案のとりまとめに向けた検討(9)」と、部会資料21「担保法制の見直しに関する中間試案のたたき台(1)」がございます。部会資料20の方は、登記、特に対抗要件について、実質的な、言わば三読的な議論をお願いするものでして、部会資料21の方は、中間試案に向けて、そのたたき台をお示ししたものです。これにつきましては、後ほど審議の中で事務当局から御説明いたします。 ○道垣内部会長 それでは、審議に入りたいと思います。   まず、部会資料20「担保法制の見直しに関する中間試案のとりまとめに向けた検討(9)」について議論を行いたいと思います。そのうちの「第1 動産を目的とする新たな規定に係る担保権の対抗要件等の在り方」について、から議論を開始したいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○森下関係官 関係官の森下でございます。部会資料の説明をさせていただきます。まず、新たな規定に係る担保権の公示の在り方につきましては、既に二読の議論をさせていただいたところなのですけれども、この論点はかなり担保法制全体に大きな影響を及ぼすところでございまして、中間試案の議論に臨む前に大まかな方向性について一定の結論が得られたらと考えまして、ここで三読という形でお時間を頂戴したところでございます。   2ページ目の「第1 動産を目的とする新たな規定に係る担保権の対抗要件等の在り方」というところについて御覧いただければと思います。今回主として議論させていただきたい点につきましては、公示制度の在り方についてでございます。二読におきましては、動産譲渡登記を改善する方向で検討を進めていくのか、動産譲渡登記プラス新たに担保ファイリングという制度を設けていくのかという大きな二つの立場がございまして、それぞれ御意見を頂いていたところでございます。正にその点について今回、どのようにしていくのかというようなところについて中心に御議論いただきたいと考えているところでございます。また、併せて必要最小限度、必要な実体法上の論点につきましてもここに記載させていただいているところでございますので、その点につきましても併せて御議論いただければと考えているところでございます。   1点、補足して説明させていただきたいところなのですけれども、動産所有権留保の問題もございます。この点につきましては部会でもかなり意見が対立しているところでございまして、今回の議論の対象といたしましては、動産所有権留保以外の新たな規定に係る担保権について御議論いただければと考えているところでございます。   では、1から説明させていただきますけれども、まず第1の1でございますけれども、これは占有改定を含めた引渡しを新たな規定に係る担保権の第三者対抗要件とすると、この点につきましては、これまでの部会でおおむね意見の一致があったところなのかなと考えているところでございます。   続きまして、2でございますけれども、新たな規定に係る担保権については、これは登記することができることとしまして、その登記の効果としては、目的動産について引渡しがあったものとみなすという現行の規律を維持してはどうかというような形で提案しております。その理由につきましては、説明文に記載させていただいているとおりでございます。   一番大きな論点でございますけれども、3のところでございまして、同一の動産について数個の新たな規定に係る担保権が設定されたときに、その順位の関係につきましては第三者対抗要件の前後とするとしてはどうかということを提案いたしております。この点が、担保ファイリング制度を導入するのかどうかというようなところで、最も大きな対立点のところなのだろうと考えているところでございます。二読の議論では、それぞれのお立場に沿った形でそれぞれ意見を頂戴していたところですけれども、若干、登記制度を改善していく方向でどうかというようなところが多かったのかなというような印象を持っているところでございます。   この点につきまして、二読の中の意見では、動産譲渡登記制度と担保ファイリング制度という二重の公示制度というものを維持する合理性というのがどれだけあるのか、登記制度を改善することによるメリットと二重の公示制度を維持するということの合理性について、それぞれ検討した上で進めていくべきなのだろうというような御意見があったところでございまして、その点について事務当局の方で検討いたしまして、今回の案では、動産譲渡登記制度を見直していく、ただ、単純に改善していくというようなわけではなくて、これまで担保ファイリング制度で実現しようとしていた趣旨というものを一定程度取り込む形で、動産譲渡登記制度を改善するというような形でどうかということで提案をいたしているところでございます。   具体的には、3ページ以降に書いているところではございますけれども、大きく分けて2点、動産譲渡登記制度を見直してはどうかという形で提案をさせていただいております。まず1点目でございますけれども、登記事項である動産の特定方法の要件を柔軟化してはどうかという提案でございます。この点につきましては、これまでの御議論を頂いていた際にも、現状の動産譲渡登記の特定の要素が非常に厳格で、特定するために非常に大きな手間とコストが掛かっているというような意見があったところでございます。   特に意見があった要件といたしまして、現在、集合動産につきましては、種類プラスアルファで動産の保管場所の所在地というふうなところが登記の要件となっているところでございます。ただ、この点につきましては、必ずしも場所的要素で特定する必要はないのではないかというような意見もあったところでございまして、動産の登記の要件、登記事項である特定の要素というところを柔軟に考える、これはもしかすると登記官の審査の在り方というふうなところにも影響してくるのかもしれませんけれども、この要件を柔軟化してはどうかという提案を1点、させていただいているところでございます。   2点目といたしまして、登記手続の利便性を向上させるというようなところを提案しております。具体的には、やはりオンライン申請というものをできるだけ促進していくべきなのだろうという問題意識を持っております。では、オンライン申請の中で一番障害になっているといいますか、ハードルになっているのはどこかといいますと、やはり電子証明と電子証明書というところが一つの大きなハードルになっているのだろうと思われるところでございます。そこで、今回の提案でございますけれども、例えばですけれども、本人確認の手続の在り方でございますけれども、求められている電子証明書の範囲を緩やかにするですとか、そういったところで手続的な負担というのを一定程度、軽減することができないのかというようなことを提案いたしております。   今の2点、具体的には現状、登記をする上で手間が掛かっている、コストが掛かっていると言われている動産の特定の要件を柔軟化するという点と、あとはオンライン申請を促進するという方策を採ること、この二つを併せて改善するという形、これによって、担保ファイリング制度で実現しようとしていた趣旨、これも基本的には目的物の特定をそれほどぎちぎちやらなくていいのではないかというところですとか、簡易、迅速、廉価なというふうなところがこれまで言われていたところでございますけれども、これを動産譲渡登記の中で改善するような形で実現することはできないのかという形で今回、提案をさせていただいているところでございます。   1点少し補足させていただきたいのは、この2点につきましてメリット・デメリットというのは当然あるところでございます。例えば、動産の特定方法を柔軟化するということは、これは要件の立て方によっては、登記官の審査の在り方にも関わってきますけれども、それほど登記官が物の特定性についてぎちぎち審査しないということにつながり得るところではございます。したがって、後で、登記されたのだけれども引渡しとしての効力がありませんと判断されるリスクが増えるかもしれないというような問題が一つあり得るところかと思います。   もう1点ですけれども、今申し上げたオンライン促進のための方策、具体的には電子証明書、例えば範囲を拡大するというようなところにつきましても、厳格な電子証明書を緩やかにしていくというような方向を仮に採るとすると、当然なりすましによる登記申請のおそれというのは、これは増え得るところではございます。その点も踏まえまして、制度設計としてどうしていくのかというようなところが問題になってくるのだろうと思っています。   以上、動産譲渡登記制度をこのように見直すことによって、担保ファイリング制度で実現しようとしていたところを含めて、ある程度実現できたらなと考えて、このように提案させていただいているところでございます。   以上が2ページ目の第1の3のところの御説明でございました。   続きまして、4でございます。登記制度の改善の方向で進めていくということになる以上、これまでの議論を踏まえますと、いわゆる登記優先ルールというのを採用するということは不可欠かなと考えているところでございます。したがって、4のところで、占有改定による対抗要件を備えた担保権に優先する効力を登記に与えるというふうなことを提案しているところでございます。   これまでは、登記なのかファイリングなのかというところの話でございまして、続きまして5以降では、動産譲渡登記制度でこれまでできなかったところを一定程度、できるようにしていこうというような方向での御提案でございます。   具体的には、動産譲渡登記制度を二層構造として、担保権の処分等に関する公示を可能とする見直しをしてはどうかというところの提案でございます。これは、二読の議論でも幾つかの方から御意見を頂いていたところを参考として作ったところでございますけれども、これまでの議論では、新たな規定に係る担保権につきまして、転担保ですとか、担保権の順位の変更、担保権の譲渡・放棄、担保権の順位の譲渡・放棄等、これを可能としてはどうかという方向ではおおむね意見の一致があったところなのかなと考えているところではございますけれども、これをどうやって適切に公示していくのかというところが問題とされていたわけでございます。補足して説明しますと、担保権の処分等に関する公示の前提として、当然、対抗要件をどうするのかというふうなところが問題になるわけですけれども、この点につきましては抵当権の規律を参考にして、8ページの④において具体的に提案しているところでございますので、またそこは御覧いただければと考えているところでございます。   では、具体的にどうやって公示していくのかというところにつきましては、別添の関連担保目録のイメージというものを御用意しておりますので、この図に沿って御説明させていただきたいと考えております。   まず、関連担保目録というものを新たに作ってはどうかということを提案しておりまして、この関連担保目録の趣旨でございますけれども、これは、同一の動産を目的とする新たな規定に係る担保権の順位関係をできるだけ分かりやすくするような形にしてはどうかというコンセプトで作っているところでございます。   まず、どこが問題なのかというところでございますけれども、現在の動産譲渡登記制度というのは、まず、不動産登記のように物的に編成されてはいないというところがございます。目的物の特定の仕方も、同じ物であってもいろいろな特定の方法、仕方があって、したがって、なかなか物の同一性について、一見して判断することができる場合もあれば、できない場合もあり得るというところでございます。また、集合動産の一部が重なり合うような場合もあるところでございますので、なかなか不動産のように、この物件についてこういう権利があるというところを一覧的に公示するというのが必ずしも簡単ではないという問題が動産譲渡登記にはございます。それをどうやって分かりやすくしていくのかというところの制度設計が正にここで問題になっていると、これがまず、問題の状況でございます。   ここで、関連担保目録の具体的な中身の話ですけれども、まず、次のとおり動産譲渡登記を二層構造化してはどうかというところでございます。このイメージ図の左上のところでございますけれども、前提として事実関係としては、油圧プレス機にAとBが譲渡担保権を設定して、登記1をしました、その後に、同一の油圧プレス機についてAとCが第2順位で担保権を設定し、登記2をしましたと、そういう場合を想定しております。左上が正に1層目の登記でございまして、ここは、先ほど申しましたとおり、この登記をすることによって目的物の引渡しがあったとみなされるというようなところでございまして、従前の登記の効力と基本的には変わらないというところでございます。   では、何が変わるのかといいますと、ここでいうCでございますけれども、Cは先順位担保権の登記、ここでは登記1が先順位担保権の登記でございますけれども、これがあると考えた場合には、後順位担保権の登記、登記2の申請と併せて、関連担保目録の作成と、登記1と登記2関連付けるというような登記申請をすることができることとするというものでございます。これは、左下に書いております関連担保目録の作成というようなところでございますけれども、関連付けられた登記については、関連担保目録の中で一覧的に登記が見られるようになるというような制度設計でございます。   ただ、先ほど申しましたけれども、基本的に先順位、後順位の関係にあるのかどうか、物の同一性の判断ですけれども、この判断については、設定者Aと担保権者Cの判断に委ねるというような制度設計になりますので、登記官は基本的には物の同一性については審査はせず、基本的にその関連付けの登記申請に従って、そのとおり関連担保目録を作るというような制度設計を予定しております。   その上で、関連担保目録を作ったら何がいいことがあるのかというところでございますけれども、右上を御覧いただければと思います。関連担保目録に載った登記につきましては、いろいろ書き込めるようになるというようなメリットがまず、ございます。例えば、担保権の具体的な内容等について登記できるようにするですとか、担保権の順位の変更の合意があった場合に、その順位の変更の合意、その他、担保権の処分等もですけれども、これを登記できるようにしてはどうかというところでございます。まず、この点が一つのメリットとしてあると。   また、これをお聞きになった皆様の中には、関連担保目録を作ることによるインセンティブって何なのだろうというような御疑問を持たれる方もおられるかもしれません。この点が、右下のところの担保権の私的実行の場合の実行通知というふうなところで記載させていただいているところでございまして、ここで提案させていただいておりますのは、先順位の担保権者が私的実行を行いましたという場合に、どの範囲で後順位の人に実行通知を送るのかという問題がございました。その私的実行の範囲を画する基準として関連担保目録を使ってはどうかということを提案しております。具体的には、簡単に言えば、関連担保目録に載っている人に原則として実行通知を送ればいいと、逆に言えば、やっていない人には送らなくてもいいというような制度設計にしてはどうか、そのことによって、後順位の人は先順位の人が実行したときに実行通知を受けたいと考えると思われますので、物の重なり合いですとか先順位の担保権についてきちんと判断して、関連担保目録の登記申請をしてくれるだろうというような制度設計といたしております。このようにすることによって、後順位担保権者にとっては確実に実行通知を受けられると、それが関連付けの登記申請のインセンティブになるだろうと、これをもって、できる限り同一の動産についての担保権が一覧的に関連担保目録に記録されることになるだろうというようなものを想定しているところでございます。   もっとも、この関連付けの登記申請というのは、当事者にやるかやらないかというのは委ねられているところでございますので、実体法上、先行順位関係にある全ての担保権が関連担保目録に記録されることを保障するものでは当然ないという限界がございます。また、順位関係につきましても、そのようなものですので、厳密に公示するものでもないというような限界がございます。   したがって、例えばですけれども、特に問題になるのは、絶対的な効力が生じる担保権の順位変更のようなものでございますけれども、当然、関連担保目録に載っていない新たな規定に係る担保権の担保権者もいる可能性もございますので、その人の合意がなければ、その順位変更の効力がなくなってしまうこともあり得るというようなところもございます。そのような制度的な限界はあるのですけれども、基本的にここで想定しているのは、その判断については登記を見た人の判断に委ねることにならざるを得ない、そこが物的に編成されていない動産譲渡登記の制度的な限界なのだろうと考えているところでございます。   今のが大まかな、この二層構造の登記の説明でございます。このように、なかなか制度上の限界があるところでございますので、分かりやすさの観点からは、例えば、担保権の処分等のうち必要なものに限って認めるというような制度設計もあり得るのかなと考えているところではございます。その点につきましても併せて御議論いただければと考えているところでございます。   第1の5の(4)と(5)は、少し性質が違う話でございます。これは、動産債権譲渡登記制度一般についての改善の御提案でございますけれども、現状、登記をすることができる譲渡人というのは法人に限定されているわけですけれども、これを一定程度拡大してはどうかという御提案が(4)でございます。これも、これまで御提案差し上げたとおりでございますけれども、商号の登記をした商人についても登記をすることができる担保権の設定者の範囲に含めてはどうか、また、もろもろ説明の中に記載させていただいておりますけれども、登記手続の利便性向上のための方策についても引き続き検討してはどうかという形で今般、提案しているところでございます。   少し長くなりましたが、以上の点につきまして御審議いただければと思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。少し議論の範囲を画定したいのですけれども、先ほどの御説明の前半部分で、オンラインの登記とかそういうふうなことを認めるというのが簡易、迅速化するには必要であるところ、どのような制度設計が可能かということについて検討しなければならないという話がございました。ところが、そのこと自体は別にゴシックの内容になっているわけではないですよね。そこで、どのような簡易化をどのような方法ですべきかということをここで議論するのか、それとも、簡易化について技術的な問題とか、登記全体のシステムとの問題で検討していかなければならないという課題を確認するというだけで、具体的な方法は本日の議論の少なくとも中心的な課題ではないと考えるのか。事務局としてはどのようにお考えでしょうか。 ○森下関係官 基本的には、本日議論させていただきたい内容といたしましては、登記制度の改善で行くのか、担保ファイリングを採用するのかというところが一番本質的な問題であって、担保ファイリングで実現しようとしたところの中に、正に簡易、迅速というふうなところが付随的に出てくるのかなと考えていたところでございますので、中心的には、制度としてどちらを採用するのかというふうなそもそも論のところを御議論いただければと考えています。 ○道垣内部会長 そもそも論のところなのか、それとも、関連担保目録みたいな話が出ましたけれども、そういうのをどういうふうに考えるのかというふうな話なのかもしれませんけれども、これらの点につきまして、どなたからでも結構ですので、御意見等を伺えればと思います。よろしくお願いいたします。 ○山崎委員 ありがとうございます。山崎です。第1の4に関して意見いたします。ここで改めて申し上げるのが適切かどうか分からないのですけれども、いろいろと意見がありますので、お許しください。   一読目、二読目の際にも申し上げましたが、企業間取引の実務で占有改定は広く活用されています。そこに提案されているようになると、例えば、占有改定で対抗要件を付した後で登記がされた場合、登記が優先されるということになり、占有改定の意味がなくなってしまい、実務に混乱が生じることを懸念する意見が依然として多くあります。そのようなことを踏まえて、企業の実務への影響を考慮に入れた仕組みの御検討をお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○伊見委員 ありがとうございます。伊見です。今回の対抗要件や公示の在り方につきましては、第14回の部会におきまして、担保ファイリングの導入及び動産債権譲渡登記の在り方についてという資料をお出しさせていただいた上で意見を述べております。そこでは、登記や登録の申請に係る負担の軽減と、公示の信頼性の確保という両方の観点から、仮に担保ファイリングを導入する場合に検討しなくてはいけない点、最低限設けておくべき点は何かということの検討を試みました。それと同時に、担保ファイリングを導入するか否かに関わらず、動産債権譲渡登記の在り方、すなわち現行の制度の改善点についても示すことを試みさせていただきました。また、仮に登記、担保ファイリング両制度を併置するとした場合に、両制度の公示にそごがでないように連動、できればオートマチックな連動がなされることが望ましい旨も述べさせていただいたところです。   これらを更に突き詰めていきますと、担保ファイリング、登記、そのいずれの制度も、その設計上の課題には共通する事項が多くあるということがいえると思います。その上で、登記と担保ファイリングという二つの公示制度を設けることから生じる分かりにくさや、手続の煩雑さということを勘案いたしますと、担保ファイリングの制度の趣旨を登記に取り込む形で既存の登記制度を変更して、占有改定による対抗要件に優先させるという方向での御提案の整理が望ましいと考えます。   一方で、簡易、迅速、廉価といいました要請に対して手続をどこまで緩和することが妥当であるのか、その方法や程度につきましては、制度の安定性とのバランスで非常に悩ましいところであります。とりわけオンライン申請における申請構造や申請人の本人確認の程度の在り方につきましては、技術の進展等を見ながら、その時点で実現可能な方策を時機を見て導入していくという流れが相当であると思われますので、現時点でオンライン申請の利用促進に係る電子証明の在り方等について特定の方向性を出すということについては慎重であっていただきたいと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○青木(則)幹事 これまで、担保ファイリングを対抗要件とは別の優先要件とするという案に賛成してまいりましたので、実務的なお話ではなくて、基礎的なお話で大変失礼でございますけれども、ファイリング案から見た場合に、今回の御提案がどう見えるかということについて少しお話をさせていただければと思います。   結論から言いますと、今回の御提案には登記優先ルール、つまり、登記を対抗要件と捉えつつ、しかし占有改定に優先するというルールになっていますが、これが採用されるのであれば、今回のような案でもいいのではないかと思っております。というのは、このルールが採用されれば、これまでの担保ファイリング案が問題意識としてきた機能の多くをカバーできるということになるかと思うからです。とはいえ、やはりファイリング登記案でなければ獲得できない機能が残されることは確かだと思いますので、登記優先ルールで何ができて、何が残されるのかということを確認しておくことは必要かと思っております。   どういう指標で確認するのかということなのですけれども、恐縮ながらアメリカ法の指標を使った場合にどうなるのかということについて発言させていただければと思います。といいますのは、担保ファイリング案がどういう意味を持っているのかということについても多様な見方があったように思っておりますけれども、一つにはUNCITRALのモデル法などに象徴されるような、国際的な評価対象のモデルとされているアメリカ発のファイリング制度の機能を、我が国の対抗要件制度を大きく変えることなく、取り入れることができるのではないか、こういうふうな側面もあったように思うからです。ですので、私の方からは、登記優先ルールの到達度を見る一つの指標として、アメリカのファイリング制度が歴史的に獲得してきた機能に照らして、お話しできればと思っております。   基本的に四段階に整理できようかと思っております。第1段階は、非占有担保の公示制度が出現した段階です。その最初の公示制度の機能は、「公示のない担保は設定者の一般債権者及び目的物の善意有償取得者に対する詐欺だと推定される」という古い原則を踏まえておりまして、適時の公示があれば詐欺の嫌疑を掛けられずに済むという機能だと説明されており、それ自体、対抗要件を前提としているものではありません。   2段階目は、最初に公示をすれば優先できるという機能です。公示制度があれば当たり前だと思われるかもしれませんけれども、アメリカ法の第1段階では公示がない担保が詐欺である理由を設定者の責任財産の確保に絡めて説明する説がかつて有力でした。ですので、公示だけで一般債権者に勝てるということの正当性については、当初、批判もかなり強かったという事情がございます。公示制度をアメリカで導入したのは1829年とかなのですけれども、それから、先に公示をすれば勝てるのだというルールが入るまで100年ぐらい掛かっています。   第3段階は、2番目以降に設定を受けた担保権者が、先に登記をすれば、善意有償取得者に当たらなくても第1順位の優先を得られるというルールの獲得です。これは、我が国に当てはめて言いますと、登記を即時取得の要件とするようなルールから対抗要件にするというのに近い進化が、この第3段階で起こったと考えることができるかと思います。   このような発展過程に照らすと、実はこの三つの機能の大方は登記優先ルールであっさりクリアできてしまうといえようかと思います。アメリカ法のファイリング登記の発展段階のかなり多くの部分が実はクリアできる。この意味では、国際水準に照らしても、恐らく登記優先ルールの評価というのは高いのではないかと思っております。   ただし、二つの点では、アメリカのファイリング制度の機能を担えないものが残るかと思います。一つは、アメリカの非占有担保の公示制度の理論が、対抗要件と関係のない、「非占有担保は詐欺の証拠なのだ」というようなところから出発していて、公示自体が大きな意味を持つ段階を経て、対抗要件に変わっていったという経緯がありますが、我が国の場合、その第1段階の経緯がないわけです。そこから、登記一元化とか、あるいは所有権留保の公示の必要性というふうな話に結び付くような、公示そのものの意義に関する考え方の違いが出てくるのではないかと思います。順位の優先関係を決めるルールにならなくても、とにかく公示が必要なのだという考え方は、恐らく担保ファイリング案にも登記優先ルールにも入っておらず、アメリカ発の議論とは違うままになるのではないかと思われます。   もう1点でございますが、アメリカのファイリング制度は第4段階として、いわゆるプレファイリングの機能を獲得しております。御承知のように、アメリカの担保ファイリングは、物権変動はもとより担保契約自体がなくても与信公示書のファイリングで先に優先権を確保できるし、逆に終了時も、担保権の放棄の意思表示がなくても終了ファイリングをすれば優先権が消えるという制度になっております。しかし、このような制度設計は、登記によって優先するのも物権変動の公示であるところの対抗要件だというところを出発点にしますと、導入が難しいということになるのではないかと思います。もちろんその代替として、集合動産譲渡担保の議論とか、あるいは事業成長担保権の方でカバーできるということになるのかと思いますので、これはアメリカ法とは考え方が違うのだということであればそれでもいいのかとは思いますけれども、ただ、そういうふうな違いがあるということを踏まえた上で、それでよいのかということを検討する必要があるように思います。その点が問題なければ、全体としては、我が国の現状を踏まえますと、アメリカ法発の国際水準論で説かれている機能のうち、登記優先ルールによってカバーできる部分が大きいということは、注目に値するのかなと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。丁寧な分析をしていただきまして、勉強になりますが、公示の問題に関しては、更に説明すると長くなるので割愛しますけれども、1800年代の動産債権の公示について求められた考え方と、その後の変容みたいなものが世界各国でありますので、その辺にも問題があるのかもしれません。   ほかにいかがでしょうか。 ○横山委員 横山でございます。非常に基礎的なことで申し訳ないのですけれども、7ページに、先ほどの、特定の要件についてファイリングではなくて登記の改善を通じて緩和するとされておりましたので、その意味について教えていただきたいことがございます。   21行目ぐらいから、事後的に目的物の特定が不十分であるとして、訴訟により登記の効力が認められないと判断されるリスクがあるが、それについては申請人や登記を確認した第三者に負わせるということではどうかと書いてあります。この意味について、どんな形でリスクを負うということを事務局がお考えなのかを確認したいというのが第1点です。その上で、私は実務のことは存じませんけれども、実際上、そのようなリスクが発生した場合に、当事者、申請人、特に申請人が、やはり特定を頑張って厳密にやらざるを得ないということにならないのだろうかと少し心配になりました。もしかしたら杞憂かもしれませんけれども、その辺りについて教えていただければと思います。 ○森下関係官 まず、ここで記載させていただいております特定の意味でございますけれども、恐らく特定といわれているところの意味というのは二つあって、そもそも登記がされて、その登記に引渡しとみなすような効力が認められる、その前提としての特定がどの程度なされている必要があるのかという問題と、その前段階として、登記官が審査して登記されるかどうか、登記するかどうかのレベルでの目的物の特定の要件というのは、二つ恐らくその要件というのがあるのだろうと。   現状の問題点といたしまして、恐らく前者の、登記をするかどうかというところの目的物の特定要件がかなり厳格なのだろうと考えております。後ろの、引渡しとみなされるという登記の効果が認められるかどうかというところは、恐らくは実体法上の、譲渡担保権の設定契約の効力が認められる程度の目的物の特定があればいいのだろうと考えているところではございますけれども、今の登記をするかどうかというふうなところの特定を見てみると、それよりもかなり厳しいというような御意見があるのかなと、そこにその問題意識があったというところでございます。   なので、今回はそこの、登記するかどうかというところの目的物の特定の要件をある程度柔軟に考えてはどうかという形で提案しているのですけれども、これは基本的に1番目の特定と2番目の特定、実体的な内容、実質的な内容が同じであるとできればいいのですけれども、登記官の審査の能力といいますか、どこまで登記官が、これはそのまま実体法上特定されているのだろうかというような判断ができるかという、その限界の問題もございまして、そこをどうやってバランスをとっていくのかというのが難しいと考えているところでございます。まず、その登記をするかどうかというふうなところの要件を緩和していけばいくほど、恐らく2番目の実体的な効力が認められる前提としての特定の程度とずれが生じることもあり得るのかなと考えておりまして、その隙間みたいなところで無効となることもあり得るのかなと考えた次第でございます。 ○道垣内部会長 それでは、放送の関係もありますので、ここで5分、休憩を置きたいと思います。現在の予定では14時15分まで、一旦休憩をしたいと思います。たくさん手が挙がっているのですが、少しお待ちくださいませ。           (休     憩) ○道垣内部会長 少し長く休憩になってしまいまして、大変申し訳ございませんでした。   今、森下さんから横山さんに対する御回答を頂いておりましたが、更に何かございましたら。 ○森下関係官 1問目の問題点につきましては、リスクとしては、申請をして登記をしたが、対抗要件が備わらない可能性があるというところでございます。   2点目の、では頑張って特定するのではないかというようなところなのですけれども、それは事実上そういった営みになってしまう可能性というのは否定できないところなのかなとは思います。ただ、そこのところは、これぐらい特定できていればいいだろうというような実務慣行によって改善されていく事項なのかなと考えているところでございます。 ○横山委員 ありがとうございました。 ○道垣内部会長 よろしいでしょうか。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。どうもありがとうございます。2点ほど確認したい点があります。第1点は、担保ファイリングにするか否かという点で、青木幹事から詳細に相違点を御指摘いただいたのですが、それが担保ファイリングだからということではなくて、担保の目的物が広いからということなのだとも思いますが、今回、我が国ではやはり動産と債権は別なものであると、それからまた、事業担保というのを作るとしたら、事業財産とか、あるいは総財産というのは別なものであるということを前提に、それぞれについて登記を作るということになりますと、一覧性という意味では、動産に関する担保設定と債権に関する担保設定という場合に、動産に限っていうと、この登記簿で一覧性があるわけですが、債権に関する担保設定が別個なされているかどうかというのは、また債権の登記ものぞかなければいけない、事業担保について新しい担保権が設定されるとしたら、その登記を見なければいけないということで、人的編成であるにもかかわらず、複数の登記簿があって、それをそれぞれ閲覧しなければいけないことになるということなのか、それとも一種の共同担保のような形で、動産と債権とか、動産と事業担保、そういったものを関連付けるような、それこそ関連担保目録といったものも別途考えられるのかという点が、まず第1点の質問点です。   それから、第2点は、登記優先ルールとの関連ですけれども、あくまでも優先するのは占有改定によって対抗要件を具備した場合だけであるということで、いわゆる占有担保として新たな担保が取られたり、あるいは動産質の取扱いもまた問題になるのかもしれませんけれども、そのような占有担保で新たな担保が設定された場合に関しては、これは登記優先ルールは及ばず、引渡しの方が優先するということでよろしいのでしょうか。占有担保なのか、非占有担保なのかということでルールの適用が違ってくるということになりますと、それはそれで混乱が生じないのかというのが第2点であります。   その2点を確認できればと思います。よろしくお願いいたします。 ○笹井幹事 まず1点目につきましては、動産と債権は、それぞれ動産譲渡登記、債権譲渡登記という二本立ての制度自体は維持するということになりますので、当然に何か一つの担保の方だけを見ることによって両方が見られるということにはならないということです。また、事業担保については、事業担保の登記自体をどこにするのかとか、あるいは事業担保についての登記に加えて、個々の財産についての登記を要求するかどうかによっても変わってきますので、そちらの制度設計をどうするかをまず決めないといけないということになります。ただ、いずれにしても事業担保については別途考えていくことになりますので、当然に一覧性が確保できるということにはならないのかなと思っております。   2点目につきましては、ここは先生がおっしゃったとおりで、登記優先ルールは、今こちらで御提案している内容としては占有改定にだけ優先するというものです。占有改定については当事者間の合意のみによって引渡しがされたことと扱うことになって、占有状況に外部から明らかな態様の変更がなく、公示性が特に低いという観点から登記優先ルールが議論されているという認識ですので、担保権者の方に占有が移っているということであれば、原則に戻って、その引渡しとほかの対抗要件具備との先後関係によるというのが、現在御提案している内容ということでございます。 ○道垣内部会長 片山さん、何か続けてございますか。 ○片山委員 今回、動産担保に関しては、動産の種類の特定の仕方によるのだと思うのですけれども、例えば、先ほどの油圧プレス機の話でも、油圧プレス機が3種類、A、B、Cとあって、その場合に油圧プレス機A、油圧プレス機B、油圧プレス機Cとか、あるいは油圧プレス機一切とかという様々な特定の仕方があるのでしょうが、その特定の工夫によって複数の動産を担保に取るということができ、登記としては一本で行けるという話なのか、それとも、抵当権の共同担保のような形で、複数の種類の動産についても担保目的とすることができて、それは在庫一切であるとか工場機械一切というような形で全部含ませる方法もあれば、油圧プレス機A、油圧プレス機Bが識別できるとしたら、油圧プレス機Aという登記と油圧プレス機Bという登記をして、共同担保ということも想定されるのか、そういう問題とも関連するかとも思います。共同担保というのもあり得るということなのでしょうか。 ○笹井幹事 共同担保という関係になるかどうかは別として、設定者が複数の油圧プレス機を持っているときに、AとBそれぞれに担保権を設定するということは、当然できます。その場合には、AとB、複数あって、そのうちの1個が登記されるわけですので、その登記の対象が何なのかは何らかの形で特定する必要がある。油圧プレス機の場合には、よく分かりませんが、多分型番とか何とかというのがあって個体の番号というのがあるでしょうから、例えばそれを登記することによって特定するということは可能だろうと思います。それとは別に、AもBも、あるいは将来買うかもしれない油圧プレス機も含めて特定するということであれば、どういう形で特定するのかは、またそれぞれの工夫の仕方というのがあると思いますけれども、複数のものをまとめて登記をするということも、それが特定されていれば、そういう形での全体的な担保権の設定というのも可能になるということだろうと思います。 ○片山委員 別々に担保設定ができて、それで登記も別々にできるということを前提に、共同担保目録というのもまた併せて、関連担保目録と別個に作るということなのですか、それとも共同担保目録というのは考えておられないのですか。 ○笹井幹事 そこまでは考えておりません。 ○片山委員 それは考えておられない。いや、それが可能であるのだとしたら、動産と債権に関しても、それぞれで共同担保目録のようなものが作れれば一覧性が確保できるのではないか、あるいは事業担保とも相互に共同担保目録といったものができるのであるならば、また一覧性が確保できるのかなとは思った次第です。共同担保目録はないという前提で、特定性の工夫で担保対象を広げていくという基本的な発想なのですね。分かりました、どうもありがとうございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。片山さんがおっしゃっている共同担保目録というのは、一般に言われているものと少し違うかもしれないのは、複数のものを一気に載せることによって一覧性を高めるというつもりで片山さんはおっしゃっていますが、それによって割り付けなどが生じるという話でおっしゃっているわけではないですね。 ○片山委員 そうですね、例えば在庫一切という担保と、それから什器一切という担保と、それが同一の登記でできないとしたら、共同担保でできれば便利は便利かなと思った次第です。その先の割り付けの問題までは考えておりませんでした。 ○道垣内部会長 共同担保というのは、二つの担保権を共同担保にしているということですから、何が便利だとおっしゃっているのか、私には実はよく分かっていないのですけれども。 ○片山委員 その後、関連担保目録で後順位の担保権者が付くわけですよね。そうすると、先順位の担保がどの範囲なのかということが確定できなければいけなくて、共同担保ということで登記簿上つながっていないと不便なのかなと思った次第です。 ○道垣内部会長 分かりました。たくさん手が挙がっておりますので、次に移りたいと思います。 ○鈴木委員 ありがとうございます。千葉銀行の鈴木でございます。私の方は、第1の本文5に係る記載で、7ページになりますが、(2)で申請と審査の体制について記載があるところについて意見を述べさせていただきます。   現在の譲渡担保登記においては、非常に実務によく慣れた、比較的数の少ない司法書士事務所が関与している中で、目的物がきっちり特定できるようにやっておられると認識しておりまして、銀行としては非常に安心感をもってそれを受け止めております。一方で、これは事務局さんの方で見ますと、非常に煩雑でコストが掛かっているやり方だという御認識と捉えております。これをオンライン申請も含めて全国区に拡大しまして、更に審査を比較的緩和するということで、担保目的物の記載のバリエーションが非常に増えてしまうことを銀行としては懸念しております。その上で、後日、登記の効力が認められないという可能性があると、安心して使えなくなる可能性があるといったところでございます。一番よくないパターンというのは、悪意をもって曖昧な表現を使うような担保権者が出てくると全体に悪影響ではないかと思っております。オンライン申請とか利便性を向上させる取組自体は賛成しつつ、金融機関からは、誤解を招く表現を回避するような一定の要件、ガイドラインのようなものがあってもよいのではないかという意見が多いところをお伝えしておきたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。ガイドラインというのは、なるほどと伺いました。 ○村上委員 ありがとうございます。連合の村上です。1については、第三者対抗要件を引渡し(占有改定を含む)とすることについておおむね意見が一致と記載されています。この点については一読の議論から発言しているとおり、外形的に所有権が異なることが分からないということや、当事者しか知り得ない観念的な引渡しであり、当事者間で通謀したとしても、一般債権者にはそれを証明するすべがないことなどを踏まえれば、占有改定に対抗要件具備を認めることは一般債権者の保護に欠けると考えておりますので、改めて発言をしておきたいと思います。   その上で、本文4の登記優先ルールについて、こうしたルールを設けることは、今申し上げたような懸念の解消に一定、つながるものと思います。また、先ほど来、目的物の特定の程度に関して御議論がありますけれども、特定の程度の柔軟化に関しましては、柔軟化と、それによって影響を受ける一般債権者保護とのバランスということも考慮いただきたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。全体の効力の問題にも関わってくる重要な発言だろうと思います。 ○井上委員 井上です。ありがとうございます。今回、担保ファイリングという制度も検討の対象としつつも、現時点では登記制度の改善という形で今回の資料の御提案がなされていると理解しているのですけれども、その方向性を前提とすると、今回の御提案には賛成するところが多いと考えています。基本的に二層構造をとって、一層目は真正な譲渡と同じように引渡しという形で対抗力を認め、その部分については、記載事項の中で、1つには、現時点で最も問題とされている目的物の特定をできるだけ簡略化していこうという観点、もう一つは、本人の特定、本人確認のところの手続をどこまで問題のない範囲で簡略化できるかという観点で、手続を簡便にしていく、廉価にしていくという方向性に賛成いたします。   まず、目的物の特定について、既に御説明がありましたけれども、担保権の設定契約の中で、目的物を特定すること自体は、これはもちろん必要で、それがなければ担保権設定の効力が生じないという意味では、当事者はそこでリスクを現時点でも取っているわけだと思うのです。すなわち、無効にならないように、当事者はきちんと特定が認められる範囲で合意しているということだと思いますが、それと同様に、登記についても、もちろん特定がなければいけないのはそのとおりで、その意味において当事者がリスクを取ることになるという点については、私自身はそれほど大きな問題ではないのではないかと思っておりまして、むしろ現時点で、登記官あるいは登記制度自体が非常にがちがちの決められた特定方法しか許さないことになっている点を改善し、簡略な制度にしていく、軽いものにしていくというのが重要なのだろうと思います。   もう1点の本人確認、本人特定の部分ですけれども、資料の5ページに、例えばということで、登記をすることにより不利益を受ける者の本人確認については従来の方法を維持しつつ、登記することにより利益を受ける者の本人確認については一定程度緩和するという方向が示されています。これについても基本的に賛成するところなのですけれども、検討対象としてもう一歩進めて、登記をすることにより不利益を受ける者のみの単独申請で登記をするということもあり得るのではないでしょうか。登記をすることによって不利益を受ける側の本人性はしっかり確認する必要があると思うのですけれども、そうでない側が知らない間に他人に申請されて、自分に権利があるかのように表示されること自体、問題だという考え方もあると思いますけれども、そういう場合には抹消請求ができる制度、すなわち、抹消は権利者として表示されている人にとって不利益な登記なので、その人の単独申請で抹消できるという制度があった場合に、果たしてどのくらい不実の登記の問題が出てくるのかということも検討としてはあり得るのかなと思っておりまして、単独申請とすることによってどのくらい制度を簡略化できるかも含めて、一応検討していただければと思っております。   以上が1層目のところなのですけれども、2層目の部分については、担保権の処分を物権的に対抗できるようにするために、公示制度として整備するという方向性で、二読のときにも発言したのですけれども、こういう2層目の登記を準備するというのは、これは重要なことではないかと思います。シンジケートローンなどにおいて、シニアレンダーとメザニンレンダーの間で順位付けが行われることがあり得ますが、その後、シニアがリファイナンスをする段階になって、メザニンに劣後してしまうことにならないように順位の変更をするということはあり得ると思いますので、そういったことにも耐え得る制度になったらいいのではないかと思います。   他方で、先ほどの御説明の中に、これをフルメニューで全部設けなければいけないのかということがございまして、正しくそれはそのとおりで、コストあるいは制度の複雑さという問題があるようでしたら、実務上必要なものに限ってもよいと思います。私自身が実務を全般的に把握できているわけではないのですが、先ほど申し上げたようなニーズからすると、順位の変更は必要ではないかと思いますが、逆にこういった人的編成主義しかとれない公示制度の中で、物的編成主義をとっている不動産と同じような制度をすべて設けるのは、かなり難しいのではないかと想像します。そういう意味では、担保権の処分を是非とも制度的に保護すべきだといっても、閉じた世界、つまりシニアとメザニンのレンダーがみんな相互に分かっていて、その全員で合意して変更することをきちんと認めることが少なくとも必要なのかなとは思いますが、逆に言えば、そのような順位の変更ができれば、かなりの程度、現状よりよくなるのかなという感じを持っております。   あともう1点、登記優先ルールについても、正にここは今申し上げたことを支える重要なルールだと思いますので、是非とも導入すべきである、逆に言えば、登記優先ルールが導入できないとすると、金融機関がビジネスとして融資をするときの担保としてはほとんど添え担保以上のものになり得ないと思いますので、登記優先ルールがないということは、我々が今検討している動産担保制度が金融機関によって利用されない結果に終わるのではないかと思いますので、その点を一言申し上げたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   なお何人かの方がいらっしゃいますので、まずは伺いたいと思います。 ○尾﨑幹事 担保ファイリング制度ではなくて、動産譲渡登記制度を見直すという方向性については、簡易、迅速、廉価な公示を実現するということができるのであれば、問題ないのではないかと考えています。ただ、関連担保目録については、制度について、まだもちろん詳細は決まっていないのかもしれませんけれども、説明していただいたものを拝見する限りでは、動産譲渡登記という、後順位がそれほど頻繁に現れるわけではないような担保について、わざわざこれだけの制度を整備するということが本当にコストに見合ったものなのかは更に検証をする必要があるのかなと思いました。   別途議論している事業担保権については、これは先ほど事務局の方からお話もありましたけれども、法人の事業全体に担保を設定するということになりますので、その性格上、例えば商業登記を活用して対抗要件を具備するといったようなことが考えられますけれども、仮にそうであるとすれば、動産についても同じく商業登記を活用して、事業全体の代わりに、例えば動産、場合によっては債権等についても登記をできるといったような形で一覧性を確保するといったような方策も考えられるのではないかと思いました。   この際、当然、個人についてはどこまでできるのかということはありますけれども、個人についてそこまで登記制度をしっかりと整備する必要があるのかという疑問もありますし、事業者については別途、事業者だけ対応するという方法もあるかなと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○日比野委員 ありがとうございます。特定のところについて既にいろいろと出ているお話に付け足すということになりますが、特定の仕方について柔軟化する結果として、民事実体法上実際に担保権が成立しているのかというところのリスクが生じるという点については、金融機関としては少し気になるところがございます。井上先生のおっしゃっていたような方向性というのは、私も基本的には賛成というところではあるのですけれども、恐らく現状の実務を前提としますと、登記ができるということを前提として、その内容で契約内容としての特定をしているということだと思いますので、その登記がかなり自由にできるとなったときに、どこまでの特定性が許されるのかというところは、ここを失敗してしまうと担保権自体が無効になってしまうという局面になりますので、どうしても慎重に考えていくということになると思います。なので、緩やかにしたのだけれども、実際の実務は今と変わらないみたいなことになってしまうといけないと思いますので、そこの点で、鈴木委員の方が申し上げたような、ガイドラインという言葉が適切なのか、あるいは何かしらの指針のようなものというのが併せてありますと、ここで考えていたような実務の促進というのに資するのではないかと思った次第でございます。 ○道垣内部会長 まだもう一人、お手が挙がっているのですが、少し鈴木さんと日比野さんの話に関連して伺いたいと思います。先ほど、緩和したものの実務は変わらなかった、なぜならば、銀行は実体法上効力が是認されるだろうと思われる確実な方法しかやらない。それはよくわかるのですが、それで、どこがいけないのですか。つまり、全体としては緩和している、だけれども銀行は今と同じような形の厳格な特定の仕方をしている登記をしています、なので、銀行が担保権者になっているものについて実体的な効力が否定されることはほぼありませんということで、何か実務的に銀行が困った事態が生じるのですか。ほかの人は頑張ってねというだけで、金融機関が今、困る事態がそれで生じるとは思えないのですけれども。 ○日比野委員 今、登記ができるかどうかというところに制約があるので、もう少し柔軟な登記の仕方ができないかというニーズというのは、これはあるのだと理解をしております。しかし、他方で、その制約が外れると、今度はどこかの段階で実体法上無効になるというリスクが出てくるということだとすると、そこの見極めをするというところで、慎重になってくる可能性が出てくるのではないかというのが私が申し上げたこと。 ○道垣内部会長 慎重になられて、それでよろしいのではないでしょうかというのが私の質問なのですが。 ○日比野委員 銀行としては、現在の登記制度の枠組みというのが緩和されるのであれば、そこを活用したいというニーズは当然出てくるということです。ただ、その無効のリスクがあるということになってしまうのであれば、やはり、そこは改善したいと思っておりますので、そこがニーズだということなのですけれども。 ○道垣内部会長 必ずしも納得はできませんが、結構です。すみません。 ○阪口幹事 阪口です。質問と意見、一つずつありますので、まず先に質問の方から。関連担保目録に関して、イメージ図を見ると、二つ目の担保が出てきて初めて関連担保目録が作成されるようにも読めるのですけれども、例えば、債権額の登記なども2層構造にするのであれば、別に2人目が出てこなくても関連担保目録はできるという前提でしょうか。 ○森下関係官 関係官の森下でございます。御指摘のとおり、必ずしも二つ登記がなくても、登記1の段階でも関連担保目録は作れるというふうな想定で作っておりまして、担保権の具体的な内容について関連担保目録で登記することができるというようなことを想定しておりました。 ○阪口幹事 了解しました。   もう一つ、意見の方です。担保ファイリング制度をやめて登記ということが前提で、それ自身は十分ある話だと思うのですけれども、そのときの登記優先ルールを適用する範囲について意見を述べたいと思います。既に一読、二読で申し上げていますけれども、個別動産の取扱いの問題です。部会資料の(注10)には、個別動産と集合動産で規律を異にする法的理由はないということ、また、コストに関しては、登記申請制度の合理化を図ることで一定程度の対応が可能であるということから、集合動産についてのみ登記優先ルールを導入するということは記載していないとなっています。   ただ、一つ目の理由は、同じ部会資料6ページの7行目から13行目に書いていることと整合しないのではないでしょうか。ここには、まず、対抗要件具備の先後が優先決定ルールの原則であるとした上で、政策的な理由で例外を設けるということが書かれています。そうであれば個別動産と集合動産の利益状況に応じて規律を異にすることは十分にあり得るだろうと考えます。   二つ目の理由は、コストの問題です。今回、担保ファイリング制度を諦めたことによって、大分影響を受けるのではないかと思います。私自身は担保ファイリング制度に関して、オーストラリアのPPSRというのでしょうか、ウェブ上で完結するような、何となくそういうイメージを勝手に抱いていたものですから、ローコストなのかなと思っていました。登記制度となりますと、幾ら手続を緩和しても、司法書士の先生に御依頼するなど、相応のコストは避けられないと思います。そうすると、現在実務で存在する数百万円ぐらいの個別動産担保というものに関して対応できないのではないのかと思います。   また、以前から本多委員から輸入ファイナンスについての御指摘があって、これに関しては16回のときに、別の形、部会資料15の動産購入資金の融資に係る債権に関する別途の規律という提案があったのですけれども、結論は輸入ファイナンスについて優先性を確保すべきということは異論がなかったけれども、部会資料15で提案されているような規律は難しいというのが多数意見だったように思われます。そうすると、この点でも個別動産担保に関しては何らか対処しないと不都合が生じることになります。   ここから先は中間試案の作り方という問題になってきます。最終的に結論がどうなるかは、いろいろな議論をした上で決めることですけれども、中間試案を作るときには、集合動産についてのみ登記優先ルールの対象とする案も何らかの形で中間試案に残していただくべきではないかと思います。というのは、個別動産担保のユーザーは誰かと考えたときに、もちろん金融機関、ノンバンクも使っておられると思いますけれども、先ほども申し上げたとおり、数百万円程度の担保というのは世の中に実はたくさんあって、それは相談を受けるのは弁護士だろうと思うのです。そうすると、その集合体としての弁護士がある意味、大口ユーザーです。この問題について、日弁連にせよ、大阪弁護士会にせよ、個別動産担保に登記優先ルールを導入するのは反対というのが多数意見ではないかと私は認識しています。そうすると、別に大口ユーザーだから聞いてくれということまで言えませんけれども、少なくとも中間試案には、やはりそういう案が載る、少なくとも(注)で載るということは、是非お願いしたいと思います。もちろん個別と集合を分けることによる不利益、問題点は当然ありますので、最終的な政策決定は決断の問題だと思いますけれども、中間試案としては載せていただきたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   今のうちに何か、ありますか。 ○笹井幹事 御意見は承りました。 ○道垣内部会長 最初におっしゃった、関連担保目録というのは一つの担保でもできるのですかという、その話は本日の部会資料の8ページの(注13)というのと結構密接に関係しています。関連担保目録のイメージという別添資料の右上のところに債権額と利息だけ書いているものがありますけれども、これにどういう意味があるのかということなのです。意味はないと、意味はないけれども書けるのだというだけの話というのもありますし、意味があるのだとすると、何かほかの人が関与しないと余り関係ないのかもしれないと思います。ここのピンクの文字で書いてある記載の効力というものをどういうふうに考えるのかという(注13)の問題を踏まえて、検討する必要があるのかなと思いました。   ほかに何かございますでしょうか。 ○伊見委員 伊見でございます。今、部会長が御指摘された点、第1層と第2層の登記事項の整理が必要になってくるのではないかと私も考えておりました。別添のイメージ図のところで、関連担保目録のところに債権額、利息等の記載がされるということをお示しいただいておりますけれども、これらの事項が関連担保目録を設けなければ記載できないことなのかどうかという点について、この機会に整理が必要だと思っております。   そのほかの点で3点ほど、コメントをさせていただければと思いますが、これはこの後の債権譲渡担保登記とも共通する事項かと思われますけれども、担保権の処分の登記の前提として、関連付けの登記を必要とするという制度の提案かと思いますが、この関連付けの登記については、設定者と担保権者がその申請人であるということを前提としますと、設定者の協力が得られない際には実体上、可能な担保権の処分であったとしても、それが登記ができないという結論になるという点です。さらに、対抗要件ではなくて効力要件とするというような場合には、担保権の処分そのものができないという結論になるという点が妥当であるかどうか気になりました。   それから、先ほど来、皆様方から御発言がありました、集合動産の特定に関する部分でありますが、確かに実務上、非常に頭を悩ませているところでありまして、少なくとも現行の登記の運用におけます保管場所の所在地、つまり地番や住居表示による特定というようなものは改められた方が、より使い勝手がよくなるのではないかと思っております。それ以外の要素によっても特定が十分なされるという事例はあるように思います。   それから、関連担保目録記載の担保権者に対して私的実行通知を行うという点についてなのですけれども、先ほどの御説明の中では、この関連担保目録に記載するインセンティブというような話もあり、非常に魅力的な提案かなとも思うところではありますが、関連担保目録記載の登記においては、実体的にそれが後順位かどうかということは基本的には審査はされないのだろうと思っております。他方で、関連担保目録に反映されない後順位者がいるということも制度上の前提となるかと思います。ですので、目録の記載を基準に通知をするというよりも、端的に概要記録ファイルに記載された譲受人全員に通知をするという整理の方が、むしろ分かりやすいのではないかとも感じているところであります。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。重要な御指摘だろうと思います。 ○日比野委員 先ほど実は述べようかと思って、あえて述べるまでもないと思っておったのですけれども、阪口先生の方から輸入ファイナンスのところについての御指摘がございましたので、一応、念のためということです。   阪口先生御指摘のとおり、輸入ファイナンスについての論点というのは、登記優先ルールだけで処理してしまうと、輸入ファイナンスの方が負けることになってしまうのですけれども、この部分は、正に御指摘のあった、部会資料15の第1のところで個別の項目として検討事項として挙がってございますので、輸入ファイナンスに関連する、動産購入資金の融資に係る債権を被担保債権とする担保権と、他の担保権との優劣関係というのは、ここのところで議論になるということだと理解しておりました。一応念のため、そのことを申し上げさせていただきます。 ○道垣内部会長 分かりました。ありがとうございました。   ほかに、この動産に関連して、ございますか。   1点少し私の方で、議論になっていないところを申し上げますと、これは井上さんから先ほど御発言があったところなのですけれども、現在の部会資料におきましては、担保権の順位の変更というものを関連担保目録、しかし、これが1個だけで認められるのだったら、担保関連目録といった方がいいような気もしますけれども。関連担保というと、必ず関連したものを一遍にやらなければいけないように思うのだけれども、ごめんなさい、要らない話を間に挟んでしまいましたが、関連担保目録を使って、順位の変更だけではなくて、順位の譲渡とか転抵当ですか、転担保とかいろいろできると、こういう形に担保権の処分というのが広い範囲でできるとなっているわけです。それに対して井上さんから、実務上絶対に必要だと感じられるのは順位の変更であるという話をされていたところであります。   実は動産質の現在の解釈論において、順位の譲渡とか順位の放棄というのは認められないというのが一般の解釈論なのです。当事者間の約束としては認められるのだけれども、それによって物権的な効果が生じて担保権の内容が変わったりするわけではないというのが一般的な考え方であります。また、債権質に関しては、そういうのも全部、債権的な合意にすぎなくて、物権的な効果は生じないと。さらには、電子記録債権というものに関しては、実は電子記録債権質の処分については、転質と順位の変更というのは認められていますけれども、ほかのものは認められていないのです。そうすると、日本実定法のバランスの問題として考えたときに、今回の動産担保にせよ債権担保にせよ、において、全ての担保権処分を認めるのか、それともせいぜい転担保と順位の変更に限るのかというのは、これはやはり大きな問題にはなり得るのだろうと思うのですけれども、何かその点につきまして御意見がありましたら、確認をさせていただければと思います。いかがでしょうか。 ○井上委員 私は先ほど申し上げたように、順位の変更については登記を効力要件にするなどして、公示力のある物権的な制度があるといいなと思っています。ただ、先ほど申し上げたのは個別担保についての意見ということで、根担保の処分の問題と、それから公示の問題は、後で議論するということでよろしいでしょうか、それとも、ここで議論した方がよろしいでしょうか。 ○道垣内部会長 一応この中で、御意見がございましたら今、お聞かせいただければと思います。 ○井上委員 分かりました。根担保については、確定させることなく同順位者を作るという処分が実務上はよくなされております。典型的には、シンジケートローンをリードレンダーがまとめて実行し、それに対する担保として、抵当権でいえば普通抵当ではなくて根抵当権を設定するという場合です。というのは、ローン契約上の元本、利息債務だけではなくて、契約によって生ずる様々な費用償還請求その他を担保の対象として捕まえるために、根抵当を使う例が多いのですけれども、そういう形でまず最初にリードレンダーが全額を実行して根抵当を付けた上で、根抵当権の分割譲渡という形で債権を参加レンダーに渡していくことも実務上あると理解しておりますので、そういう意味では、これは二読のときに申し上げたのですけれども、極度額を設けないとすると分割譲渡というのが言葉としてよくないのかもしれませんが、同順位者を増やすといいますか、同順位者を招き入れる形で担保権の処分がなされることは、根担保について制度としてあった方がよいし、それについて登記ができた方がいいのではないかと考えております。 ○道垣内部会長 今の、登記ができた方がいいという最後のお言葉ですが、それはどうしてですか。つまり、債権者間の合意でそういうのができるのは当然ですよね、やろうと思えば。それを、物権的な効力が認められて、担保権の内容自体がその合意プラス登記によって変わるというふうな法制度にしなければならないという必然性があるのですか。 ○井上委員 実際上は、プロジェクトファイナンスにおいて、現時点では、抵当権以外はといいますか、動産その他の担保については、おっしゃるように物権としてではなく、債権者間合意でやっているのだと思うのですけれども、可能であればレンダー間で信用リスクを取り合うことにならないようにしたいということだと思います。ですので、現在、債権的にやっているのではないかと言われれば、確かに債権者合意でもできる範囲ではできるということだと思います。 ○道垣内部会長 分かりました。どうもありがとうございました。   ほかに何か動産のことについて御意見はございませんでしょうか。   この部分は中間試案の案として提示されたものではなくて、中間試案のたたき台を出す前の全体的議論として、取りまとめに向けた検討です。したがって、これを踏まえまして、更に中間試案のたたき台というのをこの分野について作っていくということになりますので、もちろん今日が最後ではございません。また、時間も限られておりますので、この場ということに限りません。御意見等がございましたら法務省なり私なりにお伝えいただければ、中間試案のたたき台をこのところについて作成するに当たって十分に参考にさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。   それでは、先を急ぐようで恐縮ではございますが、もし動産についての御意見が大体出そろったといたしますと、「第2 債権を目的とする新たな規定に係る担保権の対抗要件等の在り方」について議論を行いたいと思います。事務当局におきまして、部会資料の説明をお願いいたします。 ○森下関係官 関係官の森下でございます。それでは、12ページ目の「第2 債権を目的とする新たな規定に係る担保権の対抗要件等の在り方」について御説明いたします。   まず、1から3まででございますけれども、この点につきましては動産を目的とする新たな規定に係る担保権の対抗要件等の在り方と基本的に同様の考え方に基づいて記載させていただいているところでございます。   異なるところといたしまして、4の点でございますけれども、動産を目的とする新たな規定に係る担保権とは異なり、債権を目的とする担保権については、いわゆる登記優先ルールを採用せず、通知承諾と登記との優劣関係について規定を設けないということを提案いたしております。これは、債権を担保として融資しようとする者は、第三債務者に対して問い合わせることによって先行する担保権の存否を確認することができるため、動産を目的とする新たな規定に係る担保権のように占有改定のようなものは想定する必要はないと考えられるところでございます。また、二読では、債権の真正譲渡に係る登記と担保目的譲渡に係る登記との間で効力に差を設けると、第三債務者が真正譲渡なのか担保目的譲渡なのかというところにつきまして難しい判断を迫られるというところもございますので、適当ではないのではないかという意見もあったところでございます。これらの点を踏まえまして、債権につきましては登記優先ルールについては採用しないという形で提案をいたしているところでございます。   5の点でございます。この点につきましても、動産を目的とする担保権と同様に、債権についても二層構造としてはどうかという提案をいたしているところでございます。動産と異なる点につきまして補足して説明させていただきますと、債権を目的とする担保権の場合は、第三債務者がいるところでございますので、この第三債務者の負担軽減というふうなところについて考える必要があるのではないかというところを記載させていただいているところでございます。例えば、債権を目的とする処分等の対抗要件等の規律については、13ページ目の24行目以降に記載させていただいているところでございますけれども、法律関係の明確性を図る観点から、登記がされた場合に限って対抗要件、効力要件を備えることができるということでどうかということを提案しているところでございます。   また、債権を目的とする担保権の処分等を認めた場合、実体法上の順位関係についての細かい判断を第三債務者に強いることにもなりかねないものですから、第三債務者の負担が重くなるというふうな場面も想定されるのだろうと考えているところでございます。そこで、債権を目的とする担保権の処分等を認めた場合には、併せて第三債務者保護のための方策を検討する必要があるのではないかというところも記載させていただいているところでございます。   以上の点につきまして御審議いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、これらの点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。どうもありがとうございます。基本的に動産と同じように、関連付けの登記、関連担保目録ですか、それを行うという場合には、登記優先のルールを前提としないとそれが成り立たないような気がしております。通知承諾で優先権が確保されているということになりますと、登記簿上は一切表れないですから、先行する通知承諾について関連付けられなくなってしまうという問題が出てくるように思います。その点で、この関連担保目録、関連付けの登記が事実上できなくなってしまうのではないかという懸念がありますが、それは杞憂なのでしょうか。その点を確認できればと思いました。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 先に私からお答えいたしますと、片山さんがおっしゃった事実上というところは結構ポイントであって、事実上はそうなのかもしれないと思われます。しかるに、法的にはどうなのかというふうなことを考えてみますと、実は動産についての登記というものが複数あって、それを関連担保目録でひも付けるといったときに、実はそれ以外にも当該目的物について先行する担保権があるかもしれないのですね。この関連担保目録のイメージのところは、動産の種類のところに油圧プレス機、油圧プレス機と両方書いてありますが、登記2の方はハイドロプレッシャープレス機という名前にしてもいいわけでありまして、そうしたら、これは同じなの、どうなのという話がやってきて、ハイドロプレッシャープレス機というのが先行して存在していても、俺のは油圧式なのだよといって、油圧とハイドロプレッシャーは違うだろうなんていって、ところが、実はこれは一緒ですという話になりますと、それが先行していたという話になるわけです。つまり、動産に関しての関連担保目録というのも、例えば、これとこれについては順位を変更しますということを書くということをやっても、実は本当は目的物に重なりもないかもしれないですね、でも、物的編成主義をとっていない限りにおいては、そういうふうな関連付けを誰かが付けていって、それで、これをチェンジしますと言わざるを得ないので、こういうふうな制度を構想しているわけであって、非常にそこはつらいといいますか、微妙な制度設計になっているわけです。そうなってきたときに、債権については実は登記優先ルールをやらないので、先行する確定日付ある証書による通知又は承諾というのがあるかもしれないということなのですが、それはそのとおりで、それは実は動産についてもあるのですね。ただ、動産について、やはり先ほどのガイドラインではありませんけれども、動産の種類の規定の仕方についてだんだんと実務が安定してきますと、それについての、同じ動産を目的とする担保権の存在というのが探しやすくなってくるかもしれない、それに対して、債権についてはいつまでたっても探すことは理論的に難しいということになって、事実上余り機能しなくなるのではないですかと言われますと、その事実上というのはそのとおりかもしれないと思います。ただ、理論的には実は動産でも存在している問題であるということをまず、私の方から指摘をしておきたいと思います。そうだからといって問題が解決したわけではなくて、まずいではないかと言われれば、まずいのですけれども、森下さんの方から何かありますか。 ○森下関係官 正しく債権についてはそのような問題があるということは、私も認識しておりました。恐らく一番問題になるのは、順位の変更のような絶対的効力があって、全員の担保権者の合意を取らないといけないというような場合かと思います。他方で、例えば1番と3番の相対的な効力しか生じないような、担保権の順位の譲渡ですとか順位の放棄みたいなところであれば、順位の変更ほど大きな問題は生じないともいえるのかなと考えておりました。その意味で、それぞれの登記において合意をどこの範囲まで登記できるようにするのかというふうなところと、そこはかなり関連してくるところなのかなと考えているところでございます。 ○道垣内部会長 片山さん、何かございますか。 ○片山委員 そうしますと、むしろ、債権に関してはここまで二層構造の重たい制度を作っても、それほど活用される見込みがないということであるならば、単層構造の単純な制度で割り切ってしまうというのも一つの方向性ということになるのかなという印象も持ちました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。先ほど私は動産質について、順位の放棄とかの制度が存在しないと考えられていると申しましたけれども、債権質においてもそういうのは全て、債権的な効力しかないというのが現在の考え方であって、物権的効力のあるそういう処分というのは認められないということに一応は考えられている。そうであるとするならば、特に関連担保目録を作るほどのこともないだろうということもあるのかもしれません。ただ、それはまた実務的なニーズとしてどこまで必要なのかということもあるのかもしれませんが。すみません、少ししゃべりすぎていますが、お願いいたします。   ほかに御意見、御質問等はございませんでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。債権を目的とする担保権の登記に関し、集合債権を登記する際の特定性について質問です。集合動産の登記に関しては、目的物の特定の程度を柔軟化する検討が必要であるとして、規則第8条の要件に係る記載がございます。一方で、債権に関しては特段記載がないのですが、これは、特別の必要性がないということなのでしょうか。集合債権の特定に関しては、現状でも特定が十分になされていないことによって、広く将来債権まで含めて担保にされるという事案もあるように聴いており、この点をどのように考えればよいのかということについて教えていただければと思います。 ○笹井幹事 動産につきましては、今の規則上求められているのが、所在場所あるいは特質ということで、特に所在場所によって特定するのが厳格すぎるのではないかというような御指摘がいろいろなところからございますけれども、債権についてはそういった問題がそこまで強く指摘されていないということで、必要性がないというのはおっしゃるとおりなのかもしれませんが、特段今、そこを何か変えようとしている提案はしておりません。 ○道垣内部会長 よろしくはないかもしれませんが、一応、回答としてはそういうことです。   ほかに御意見、御質問等はございませんでしょうか。   片山さんから最初、登記優先ルールみたいな話をしないのかという話で、しないというときに二つの選択肢というのがあり得ると。一つは、それではもう順位の譲渡とかいろいろうまくできないのだから、そういうふうなことはできないということにして、それで関連担保目録みたいなものはもう作らないとして単純化してしまうというのが一つの選択肢で、片山さんはそういうふうなことを示唆されましたが、もう一つの選択肢としては、登記を優先させてしまうというのもないではないかもしれません。ただ、それに対しては、真正譲渡等の区別とか、第三債務者がいるので、どちらが勝つかというのを実体的に判断させるというのはなかなか困難であるという話で、駄目だろうということになったのですが、そのことについては、登記優先ルールにするという選択肢はやはり採れないよねというところについては、皆さんの御納得といいますか、意見の一致というのがあると考えてよろしゅうございますか。 ○沖野委員 ありがとうございます。意見の一致があるかと聞かれたら、個人的には登記優先で行き、それを前提にして動産並びの登記のシステムを作るという方がよろしいのではないかと思っております。以前にこの問題が出されたときには、個人的には真正譲渡もそちらで行くべきだという考え方を持っておりますけれども、それを申し上げましたところ、債権法改正が既になされている中で、その点はもはや変更不可能というお話だったと思います。本当にそうなのかなという気もしますけれども、しかし、それは今回は担保という限りでしか構成はできないということですので、真正譲渡の場合はもう手を入れないということになると、真正譲渡と担保譲渡というか、担保設定というか、との間で変わってき得るということがあり、そうすると、第三債務者の保護というのをどう考えていくか、最終的には478条ですとか、それから供託ということで図っていくという手法はあるのではないかと思っておりますけれども、それでは不十分だということであれば、現在提案されているような案ということになるのかなと思っております。もっとも理由付けとして、第三債務者に問い合わせることによって存否を確認することができるのだから問題ないという理由というのは、元々債務者には照会に対応する義務もないですし、更には債務者に非常な負担を課すということもありまして、これを正面から打ち出すということはどうなのかなとは思っております。全く異論がないのかというお問合せなので、個人的にはそういうふうに考えているということを申し上げました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。先ほどの問合せのことにつきましては、古典的な説明ではありますが、余り説得力はないだろうというのが最近の多くの考え方だろうと思いますので、説明の際には気を付けるようにしたいと思います。かつ、沖野さんの御意見の根本にあるところの登記一元化ということについても意見を承りましたので、検討の中に入れていきたいと思います。 ○大塚関係官 ありがとうございます。調査員の大塚です。私個人として、部会資料の御提案に反対というわけでは必ずしもないのですが、登記優先ルールを設けないことの理由付けとして第三債務者保護が必要であるということを挙げるのは、必ずしも説得的ではないかなと思いますので、コメントさせていただきます。   登記優先ルールを作った上で、この登記優先ルールは担保権者間の優先関係を決めるものでして、それと第三債務者が誰に弁済すべきかというルールは別途決めることは可能だと思います。沖野先生がおっしゃったとおり、478条による処理ということも可能ではありますが、そうではなく、第三債務者は、例えば先に通知があれば、通知があった債権者というか担保権者に支払えばよいというふうに別途ルールを作ることも可能ではあると思います。そういったルールを作った上で、支払われた担保権者に優先する担保権者がもしいるとすれば、その間で清算すればよいということになろうかと思いますので、説明の仕方ということですけれども、第三債務者保護ということを前面に押し出して、登記優先ルールを採用しないということの理由とするのは余り望ましくないのかなと思っております。ただ、もちろん制度自体が複雑になりますし、優先すべき担保権者が第三債務者から直接支払ってもらえないという事態は避けるべきともいえるとは思いますので、結論として登記優先ルールを設けないということには必ずしも反対ではないのですが、繰り返しで申し訳ありませんが、理由付けはもう少し検討した方がいいかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。債務者対抗要件と第三者対抗要件を区別するというのが、そもそも債権譲渡の対抗要件に係る特例法の考え方ですから、大塚さんのおっしゃっているところも十分に分かるところであります。   ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。すみません、何度も。先ほど片山先生から、登記優先ルールを設けないのであれば、担保権の処分に関する公示制度を設ける意味は余りないのではないかという御発言があって、部会長からはそれとの関係で、債権担保についても登記優先ルールを設けることは考えられないのかという問い掛けがあったことに対して、少し別の方向になってしまうのですけれども、仮に登記優先ルールを設けずに、登記を通知承諾と同等だとすると、こういった担保権の処分の公示が意味をなさなくなるのかというと、そうでもないのだろうと思っておりまして、もちろん意味が少なくなる面はあるかもしれませんから、登記制度を整備する際のコスト、あるいはこういった制度を維持するコストがどのぐらいなのかは、よく分からないので、検討してはどうかというにとどまるわけですけれども、先ほどから申し上げているような担保権の順位の変更については、予期しない別の担保権者が通知承諾をしてくるという状況で使われることはあまりなくて、基本的には閉じた世界でプロジェクトファイナンスとかLBOとかをやっているときに使われるというのが中心的な利用形態ですので、そうだとすると、通知承諾をもって対抗要件を備えようとする譲渡担保権者が出てくる可能性はゼロではないかもしれませんが、その場合にまで使える制度にしなくても、基本的にトランザクションのときに閉じた世界の中で、借入人に対して一定の約束をさせるほか、部外者が入ってくることを禁ずるといった約束の下で行われるファイナンスにおいて順位の譲渡ができれば、意味が十分あり得るので、その点で、制度の設計コスト、あるいは維持コストとの関係で問題ないのであれば、なお順位の変更は制度としてあってもいいのかなと思いました。   先ほどの部会長の御説明によれば、電子記録債権については転質と順位の変更についてのみ記録が可能だということのようですから、ここでいう債権担保についてもそういった範囲でニーズにこたえるという考え方はあるのかなと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。ただ、電子記録債権の場合には、質権なのですが、質権の目的となっている債権の同一性、特定性というのが明確なのですよね。それに対して、一般的な債権担保、第2で書いてあるような債権を目的とする担保権というときには、先ほどの動産と同じように、通知又は承諾ないしは登記において、自発的にその特定を行うということにならざるを得ない、何月何日付の売掛代金債権でもいいのですが、とにもかくにもそれは自発的な特定の仕方であって、電子記録債権という制度において特定されているのではないわけですよね。そうなると、ある債権についての担保権を関連担保目録でくっつけて順位の変更をしました、転質をしましたといいましても、第三債務者ははっきり言って、分からないですよね、見ても。そもそも同一の債権についての話なのかということが制度上、確保されているわけではないわけなので、その辺りについてはどういうふうに考えるべきなのでしょうか。 ○井上委員 すみません、その辺りについて考えを深めないまま先ほどの発言をしたのですけれども、私がイメージしておりましたのは、基本的に閉じたプロジェクトファイナンス、あるいはLBOなどにおいて、皆が同じドキュメンテーションの下で対象目的物を捉えている前提で関連担保目録が作られることを想定しておりましたので、対象となる債権自体の契約上の表現あるいは関連登記目録上の表現については完全に一致している状況で順位の変更が行われるというイメージでおりました。それが第三債務者から見てもどのように分かりやすくなるのかは、また別途の配慮が必要になるかも分かりませんが、そこも恐らく一義的に分かるような工夫を、やはり実務上はせざるを得ないのだろうと思います。第三債務者との関係でどんなことが可能なのかについて、余り検討をしないまま先ほどの発言をいたしました。 ○道垣内部会長 すみません、私が分からないままに、アイデアがある方に伺ってみようと思っただけで、申し訳ございませんでした。   ほかに何か御発言はございますか。   今、井上さんから、閉じた世界においては、少なくとも順位の変更みたいなものについては債権担保についても必要ないのではないか、ニーズがあるのではないかという話が出ましたけれども、それ以外の様々な、いわゆる担保権の処分といわれる類型に関しまして、やはりそれはあった方が、あった方がいいというのは、あると便利だよねというのではなくて、いろいろなコストとか複雑性みたいなもののマイナスを凌駕するようなニーズというものがあるとお考えでしょうか。それとも、それはなくても、なくてもというのは、もちろん当事者間の約定としてはあり得るのですよ、担保権者間の約定としてはあり得るのですが、第三者に対抗してという形でそういうふうな処分というものまで設ける必要はないとお考えなのか、その点を少し、もし、とりわけ実務家の先生方から御意見がありましたら、お教えいただければと思いますが。   プロジェクトファイナンスその他の、やはり、一定のきゅっとまとまった感じのところでということですかね。 ○井上委員 何度もすみません。もう一つ挙げるとしますと、DIPファイナンスも挙げられるのかもしれないです。倒産手続においてつなぎ資金を出すときに、最優先順位の担保でなければとてもお金が出せないという場合、既存のレンダーが担保を既に付けているという状況で、順位の変更を、担保権者が全員合意の上で行うことは、DIPファイナンスにおいては行われ得ると思うのですけれども、その場合に売掛債権、その他債権担保も対象にすることが恐らく必要になってくると思うので、そういったニーズがあるのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。それも、だけど、担保権の順位の変更ですよね。 ○井上委員 順位の変更を、私は基本的に想定しています。 ○道垣内部会長 分かりました。ありがとうございます。   ほかに何かございませんでしょうか。   先ほども申し上げましたけれども、これが最後なわけではありませんけれども、だんだん中間試案を出さなければならない日々が近付いておりますので、今日の会合ということに限りませんで、いろいろ御意見とかニーズとかについての御発言等がございましたら、部会の外でも結構でございますので、是非とも事務局とか私とかにお伝えいただければと思います。   始まりまして大体、途中休憩が入ったのですが、2時間を経過しておりますので、少しここで休憩を取らせていただければと思います。14分休憩で、3時50分に再開したいと思いますので、またよろしくお願いいたします。           (休     憩) ○道垣内部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、会議を再開いたします。  今まで部会資料20でやってまいりましたのは、中間試案の取りまとめに向けた検討ということでございまして、ここから、一応それは終わったと考えまして、具体的にどのような形で中間試案としてパブリック・コメントに掛けて意見を問うていくかということで、中間試案のたたき台というものの議論に入りたいと思います。部会資料21というのを本日は使いますけれども、まずは第3の前までの部分を行います。その説明からお願いいたします。 ○笹井幹事 それでは、冒頭、少し中間試案のたたき台につきまして御説明をさせていただきます。   中間試案のたたき台をこれから何分割かしてお示ししていこうと思いますけれども、御覧いただきましてお分かりになりますように、資料としては比較的簡単な形でお示しをしております。基本的にはゴシック部分を中心に御議論いただきたいということと、法制審の部会のメンバーの皆様方は既にいろいろな経緯をお分かりになっているということを前提にして、少し簡単なものにしているということでございます。補足説明の細かいことを御議論いただくというよりは、どういう形で中間試案として世に問うていくのかということを中心に御議論いただきたいということです。細かい案についての改善点は、もちろん御議論があれば承りたいと思いますが、ここではどちらかというと、この案がいいか、悪いかということよりは、中間試案としてどういう案を示していくのか、例えば、事務当局では一つの案に絞っているけれども、別の案も(注)なり別案として記載するなりすべきではないかというような御意見を頂ければと思っております。   なぜ今こういう担保法制についての議論をしているのかという背景とか、あるいは、もう少し巨視的な視点といいますか、一般債権とのバランスも大事だというようなことについては、また別途、補足説明の中で、パブリック・コメントを実施するときには言及していきたいと思っておりますが、今回、今申し上げたような意図でゴシック部分を中心に御議論いただきたいと思っているものですから、そういった部分については今回の資料上には具体的には表れておりませんけれども、そういったところにつきまして、また補足説明は別途作成する予定ですので、パブリック・コメントに付すときにはそういった補足説明付きで御意見を賜りたいと思っております。   補足説明については、少なくともこういうことを補足説明に書くべきではないかというような御意見がありましたら、幅広く取り上げていきたいと思っておりますので、御発言いただければと思っております。   それでは、中身につきましては近江の方から御説明させていただきます。 ○近江関係官 それでは、部会資料21について御説明いたします。先ほど部会長、それから笹井幹事から話がありましたとおり、これからは中間試案に向けて、具体的に中間試案としてどのような案を世に問うべきかという観点から御議論を賜れればと思います。   まず(前注)ですが、(前注)の1では規定の形式について記載をしています。規定の形式としては、新たな種類の担保権を創設する方法で規律をしていくいわゆる「担保物権創設型」と、それから、担保目的で所有権を移転したり、又は留保するという契約を結んだときは、具体的にこういった規律が適用されますよとした上で、その具体的な規律の内容を担保権であることを前提とした規律としていく、いわゆる「担保目的取引規律型」という、この二つの方法があり得ます。   もっとも、担保物権を新たに創設するとしても、非典型担保がそのまま残るということがないようにするためには、担保目的でされた取引を担保権の設定とみなすなどの規定が必要になると考えられます。そして、このような規定を設けるのであれば、先ほど言った両者というのは、形式は異なっていても実質的にはそれほど大きな差はないと考えられます。そこで、この規定の形式については最終的には法制的な観点から整理がされるものとして、中間試案では飽くまで実質を中心に御意見を伺いたい、ということを記載しております。   次に、(前注)の2ですが、これについては基本的には譲渡担保と所有権留保とを区別せずに、まとめて「新たな規定に係る担保権」などと呼んだ上で、譲渡担保と所有権留保とでは有意に差があるという場合のみ、「譲渡担保」、「所有権留保」などと呼ぶということを記載しております。   次に、第1になります。「1 担保権の効力の及ぶ範囲」についてです。二読の部会資料では、一読での御議論を踏まえて、付加一体物といったような概念を用いた上で、設定後の従物に当然に担保権の効力が及ぶかなどについては解釈に委ねるという案を記載しておりました。しかし、二読の御議論の中では、もう少し実質について議論をすべきではないかという趣旨の御指摘がありましたので、本文、それから説明の1から3までにはこれらの実質についての議論を記載しております。   もっとも、この実質について広くコンセンサスが得られるかどうかというのは分からないところでして、そうすると、最終的にはやはり付加一体物、又はそれに代わる何らかの抽象的な概念を用いて、解釈論に委ねざるを得ないこともあるかもしれないとも考えております。本文の(注)、それから説明の4には、この点を記載しております。   設定行為における留保についてですが、部会でも御指摘があったとおり確かに公示の手段に欠ける部分というのはあるわけですが、説明の5のところに記載しましたとおり、それでもなお規律を設けることに意味があると思われましたため、これを残すということにしております。   「2 果実に対する担保権の効力」についてですが、本文は二読の資料から実質的な変更はしておりません。二読では、規定を設けることについて、物上代位あるいは収益執行制度との関係での御議論がありましたが、説明中に記載しましたとおり、ひとまず実質自体については、全体としてはこの提案に賛成する御意見が多かったものと認識をしております。   「3 被担保債権の範囲」についても、二読の資料から実質的な変更はございません。   「4 担保の目的物の使用収益権限」についても、二読と実質的に同様の内容になっております。説明の中では、当事者間の合意で使用収益権を担保権者に付与する場合、その合意については債権的効力であるということを記載しております。   「5 設定者の権限」です。本文の(1)、(3)は、二読の資料から実質的な変更はありません。(2)については、二読で御意見がそれなりに分かれた部分であると認識しておりますので、両案併記とすることにしております。   「6 担保権者の権限」ですが、(1)については実質的に変更はありません。ただし、被担保債権の移転に伴って随伴性により移転する場合にはこの限りではないということを補足的に(注)で明らかにしています。担保権の順位の変更ですとか担保権の処分、転担保については、二読の資料よりも少し積極的な方向で記載をしております。ただ、これらの点については公示制度とも関係しますところ、本日の前半の御議論も踏まえて、御意見等がございましたら賜れればと存じます。   「7 物上代位」ですが、(1)、(2)は二読の資料から実質的な変更はございません。(3)も本文には変更はございませんが、説明中に記載しましたとおり、二読では規定を設けること及びその実質の双方に御議論があったところと認識をしております。この点につきましてはひとまず、規定を設けるとすればどういった規定がよいかということで、二つの案を提案することにしております。   【案1.7.2】の方は、抵当権に基づく物上代位と債権譲渡との優劣に関する最高裁の判例を参考にして、新たな規定に係る担保権の対抗要件具備と、競合する担保権の対抗要件具備との先後を問題にするという提案になっております。   他方、【案1.7.1】は、新たな規定に係る担保権においては、登記制度が完備されている抵当権とは異なって、公示制度が必ずしも十分でない側面があるということを考慮して、公示方法のない先取特権に関する最高裁判例を参考にして、新たな規定に係る担保権の対抗要件具備時ではなく、物上代位による差押え時と、競合する担保権の対抗要件具備との先後を問題にするという提案になっています。   このような形で国民の皆様の御意見を伺うこと、中間試案としてパブリック・コメントに掛けるということについて、部会の皆様の御意見がおありでしたら、御教示を賜れればと思います。   「8 その他」については、特に変更はございません。   「9 根担保権」ですが、(1)については、説明にも書きましたように、「一定の範囲に属する」という部分について墨付き括弧に入れたということになります。この点については、公序良俗に反しない限りは包括根担保のようなものも認めるべきではないかという御意見があったことを踏まえたものになります。   (2)の極度額の設定の要否ですが、これについては二読で一定の御議論があったと認識をしておりますため、引き続き検討するということで中間試案としたいと考えております。   (3)、(5)、(6)については、二読の資料と実質的に大きな変更はしておりませんが、(5)のうち分割譲渡につきましては、極度額等との関係もございますので、(注)として記載をしております。   (4)については、二読の部会資料では抽象的に書いていた部分でしたが、ここでは具体的な規律として記載をして、提案をさせていただいているということになります。   次に、第2、個別債権を目的財産とする譲渡担保についてです。ここについては、1の中に「8(その他)」という部分を加えた以外は実質的な変更は行っておりません。   少し長くなりましたが、第1、第2について委員、幹事の先生方の御議論を賜れればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   以上の点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと存じます。 ○阿部幹事 ありがとうございます。阿部です。第1の5(2)のところで両案併記になっているところなのですけれども、【案1.5.1】が担保権者の同意なく目的物を真正に譲渡することができるものとするとなっていて、【案1.5.2】の方は、目的物を真正に譲渡することができないものとするという形になっていました。私自身は【案1.5.2】の方をどちらかというと支持してきたのですけれども、その場合でも、担保権者の同意があれば、目的物の真正譲渡はできるのではないかと思っていまして、それが恐らく多くの方の前提なのではないかと思いました。そうだとすると、形をパラレルにして、【案1.5.2】の方も、担保権者の同意なく目的物を真正に譲渡することはできない、あるいは、目的物を真正に譲渡するためには担保権者の同意が必要とするとか、そういうような形にすべきかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。5の(2)のところに、担保権者の合意なくと、そこにも書いてあるので、いずれにしても少し言葉のところを整理しないといけないかもしれません。ありがとうございます。   ほかに、どこの部分でも結構でございます。 ○阪口幹事 阪口です。細かいことですけれども、7の物上代位の(3)の(注)の表現がおかしくないかと思います。恐らく【案1.7.1】と【案1.7.2】の中間案として、登記があるときには2案、登記がないときには1案ということを書こうとしているのではないかと推測しますが、「目的債権を目的財産とする担保権については、譲渡登記の時点を基準とする」というのが少し日本語としておかしい。目的債権を目的財産とする担保権についてではなくて、物上代位の元となる方の財産に登記があるかどうかではないかと思います。また「引渡しのみの場合には物上代位が優先する」というのも、引渡しのみだったら差押えとの先後で決めるということを書こうとしているのではないか。意味の確認と表現の確認をしたいのですけれども、よろしいでしょうか。 ○笹井幹事 二読の際にあった御意見を反映させたつもりだったのですけれども、整理をして、また御説明したいと思います。 ○道垣内部会長 括弧が引渡しではないのではないかな。 ○笹井幹事 そうですね、多分、引渡しが変ですね。 ○道垣内部会長 引渡しではなくて、確定日付ある証書による通知又は承諾なのですかね。 ○笹井幹事 物上代位の目的となった債権について、それ自体を目的とする担保権について譲渡登記がされていれば、その譲渡登記を基準時として優劣が決まる、したがって、譲渡登記がなく、通知承諾という方法だけがされている場合にはそちらは負けてしまうと、そういう考え方だったと思いますが、少し整理をさせてください。 ○阪口幹事 阪口ですけれども、今のお話だと、債権の方の登記があるかないかを書こうとしているということですか。私の理解では、最判が二つあって、抵当権のように、物上代位の元となるものに登記があるものと、動産売買先取特権のように、元となるものに登記がないものによって規律が分かれているから、それに従って分けるのかなと思っていたのですけれども、今おっしゃったのは、そちらの元となる方ではなくて、債権の方の対抗要件が登記か通知承諾かとおっしゃったので。もちろん理屈でいうと4パターンあるので、どんな案でも結構ですけれども、明確にされた方がよいと思います。 ○道垣内部会長 おっしゃるとおりで、若干混乱があるかもしれません。 ○笹井幹事 これは【案1.7.1】、【案1.7.2】と並ぶ別の案ということではなくて、【案1.7.1】、【案1.7.2】はいずれも、目的債権については対抗要件具備時にしているのだけれども、この対抗要件というのを限定した方がいいのではないかと、そういう御提案が二読にあったのだったと記憶しています。 ○道垣内部会長 少し整理をした方がいいと思います。   実は1人手が挙がっていらっしゃるのですが、少し発言させてください。同じ【案1.7.2】の元物という言葉というのは、教科書的にいえば果実に対応する言葉であって、物上代位の目的物は必ずしも果実の定義に該当するわけではないから、その元となるのを元物というのは講学上は適切ではないような気がするのだけれども。 ○笹井幹事 そうですね。はい、そこも。 ○道垣内部会長 細かい話ですが、確認をして。   青木則幸さん、すみません、私が勝手に割り込みまして、申し訳ございません。 ○青木(則)幹事 ありがとうございます。【案1.7.2】に関する細かい話で恐縮なのですけれども、【案1.7.2】の場合は、元物かどうかはともかくといたしまして、元の動産の対抗要件制度を使うと、それと発生する債権の対抗要件の先後ということになるかと思います。そうしますと、登記優先ルールの御提案を前提とする場合、動産には登記優先ルールがあるが、債権の方にはないということなのかと思いますけれども、これはどちらによることになるのでしょうか。登記優先ルールの作り方にもよるのでしょうが、場合によっては、元の動産の方の対抗要件制度が及んでいると考えて、その場合には債権上の物上代位権についても登記優先ルールが及ぶということになり得るのでしょうか。この点についてお伺いできればと思います。 ○笹井幹事 そこは余り考えていなかったのですけれども、今までの一読、二読でも議論になっていなかったと思いますし、私どもも余り考えていなかったのですが、登記優先ルールは飽くまで同じ動産を目的とするもの同士の優先劣後関係なので、ここでは元々対抗要件さえ具備していれば、つまり占有改定でも、一番最初に占有改定の対抗要件が具備されていれば、それが基準になっているというのを前提にしていたかと思いますが、少しそこも検討してみたいと思います。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。どうもありがとうございます。これは二読のときにも申し上げたかもしれませんが、新たな担保権の名称の問題です。第1の個別動産に関しては、個別動産を目的財産とする担保、あるいは新たな規定に係る動産担保権という名称なのですけれども、10ページの債権に関しては、譲渡担保という法的性質決定になっていて、個別債権を目的財産とする譲渡担保権の実体的効力とか、債権譲渡担保権が設定され、という形で、一歩踏み込んだ記述になっています。あえて区別している意図というのがどこにあるのかという点が、まず第1にお伺いしたい点です。   それと関係する点かもしれませんが、(前注)のところとも関連するのですけれども、①なのか②なのかという、その問題とも関わる点です。いわゆる既存の担保である、例えば動産質とか債権質との関係を今回の中間試案の中でどのように取り扱うことを前提としているのかという点を確認したいと思います。新たな規定に係る動産担保権というのは、あくまでもいわゆる非占有担保を念頭に置いているということが大前提、既存の動産質とはまた別個な担保として新しく作るということが大前提ということでよいのかどうか、それと、同じ質問になりますけれども、債権担保に関しては、債権譲渡担保権という言い方をしているので、既存の質権と区別することが明確なのか、それとも、議論の中では既存の質権も含んだ形で改正を提案することも検討してよいというような議論もあったかと思うのですけれども、その既存の動産質、債権質との関係をどのように考えて中間試案を御提案されるのかという点も併せて確認できればと思います。よろしくお願いいたします。 ○笹井幹事 まず、第1で新たな規定に係る担保権としているのは、どういう方式で作るにしても、動産質とは全く違うものとして、非占有型の担保権として規定を設けるということになりますので、少なくとも動産質に包含され得ないものとして規定を設けるということになるのだろうと思います。そこで、どちらの方式も包括する名称として、「新たな規定に係る動産担保権」とか、「新たな規定に係る担保権」とか、そういう表現をしておりますが、債権は権利質の対象となり得ますので、債権について新しい担保物権を作るという選択肢は基本的には考えられないのだろうと思います。新しく債権を目的として何か新たな規定を設けていくということになるとすると、それは規定の設け方として、譲渡担保権という形で設けるしかないのではないかと思いますので、それでこちらは譲渡担保という書き方をしているということです。   他方で、債権質の規定を改めるのか、どのように改めるのかは、別途検討の対象になり得て、ここは二読でも議論が分かれていたところだと思いますけれども、債権質も内容的にはいろいろ必要に応じて合理化していくということはあり得ると思っています。ただ、譲渡担保を権利質に一本化してしまうという方向性は、この部会では採られていないと思いますので、そうだとすると、新しく何か規定を設けるとすると、譲渡担保という形で考えていく、質権は質権として別途考えていくにしても、新しく作るものとしては譲渡担保権として考えていくということになるのではないかと思います。   それから、あとは動産譲渡担保と動産質との関係でしたでしょうか。動産質と動産譲渡担保については、冒頭に少し申し上げましたように、非占有型と占有型ということで、これは別物として考えていくのかなと思っていますが、他方で、特に流質などのように、動産譲渡担保について私的実行を認めることとのバランスとか整合性とか、そういったところから動産質を見直していく可能性というのはあり得るのかなと思っています。   ただ、今回の資料が扱っている分野においては、動産質について合理化していく、改正を提案していくというものが、今のところはこの分野では特にないのかなと思っておりまして、あり得るとすると、また実行のところで流質の契約の有効性についてどう考えるかとか、必要があれば触れていきたいと思っているところです。 ○片山委員 どうもありがとうございました。5ページの4のところで、非占有担保なので、基本的に目的物の使用収益権は設定者にはあるというのがデフォルトルールであるという点なのですけれども、先ほどの御説明では、合意によって使用収益権限を担保権者に設定することは十分あり得るのだということだったかと思います。その場合には動産質とかなり似た側面が出てくることになり、動産に関して占有担保か非占有担保かという点が決定的な違いだとして担保権の制度設計を仕切れるのかどうかというのは、若干気になっているところではございます。   両方の担保が違うものだということは重々理解できますし、違うものとして規定を設けることに大賛成ではありますが、先ほどの対抗要件の登記のところでもそうでしたが、引渡しを対抗要件とするという点では共通になっておりまして、その点からしますと、入口のところで、動産質とは全く別のものとして新たな動産担保権を創設する、しかし、債権に関していうと、債権質は占有担保とかどうかという点は余り明確ではないので、重なりが生じることから、既に既存の債権質があるので、譲渡担保権として法的性質決定をしなければならないということになりますと、この両方の説明が必ずしも整合していないような気がしなくはありません。単に言葉の問題だけということであれば、それほど重視すべき点でないのかもしれませんが、必ずしも統一的な説明ができていないような気がいたしました。 ○笹井幹事 そうですね、もう一回よく考えてみたいと思いますが、確かに非占有型の担保といいましても、合意によって担保権者が占有している場合もあり得ますし、引渡しが対抗要件になっているということもありますので、そこだけ見ると質権と外形的には似ているという場面が出てくるということは、御指摘のとおりだと思います。とはいえ、動産質については占有を継続しているということ自体が必要になってきて、占有を失った場合に質権がなくなってしまうということもありますけれども、譲渡担保権に相当する担保権というのは、そうではなくて、別に占有の継続というものが必要になってくるわけではありませんので、やはりそういったところで、違うものとして観念できるのではないかとは思っております。   それで十分なお答えになっているかどうか分かりませんけれども、説明ぶりについては、またよく考えてみたいと思います。 ○片山委員 どうもありがとうございました。 ○道垣内部会長 片山さんの御発言は多分、二つに分かれていて、動産の担保をめぐる法律関係において、譲渡担保という形の契約をしているのだけれども、占有を移しているという場合に、質権と本当に区別ができるのですかという、そのような問題と、債権質における占有、非占有の問題とがあって、後者はずっと片山さんが一貫した、占有タイプと非占有タイプの担保権とを分けるというので、片山さんの心の中ではそれは一体なんだけれども、前半だけ本当は切り離せるわけですね。動産に関して、占有が移っていたって質権でない場合があるといったり、占有が移っているから占有だといったりする場合とか、そういうのがあって、その辺の概念関係が本当ははっきりしなくて、今、笹井さんがおっしゃった説明は一つの説明なのですが、そうであるならばそういうことをきちんと説明に書くということになるのかもしれないと思います。単なる感想ですみません。 ○大塚関係官 ありがとうございます。調査員の大塚です。前にも申し上げた点、かつ細かい点で恐縮なのですけれども、第1の6についてです。第1の6、担保権者の権限のうち(1)です。担保権者が目的物を第三者に譲渡することができないという規律、かつ、(注)で被担保債権を譲渡することに伴う場合には可能であるという点ですけれども、この規律自体はこれでよろしいかと思うのですが、この規律がセキュリティートラストの場合に担保権者と被担保債権の債権者がずれることを禁止する趣旨ではないという点は、補足説明辺りに書いていただければいいかなと思いました。   ただ、今、言おうとしてよく分からなくなった点がありまして、目的物の譲渡と担保権の譲渡の関係がよく分からなくて、(1)は目的物の譲渡と書いてありまして、これは、債務不履行後は実行として処分清算ができるのだということを恐らく裏から書いているということだと思うのですけれども、それと担保権自体を担保権のままとして移転するということは、概念として違うということなのでしょうか。そうすると、私の最初の指摘は意味のない指摘ということになろうかと思いますが、この辺りをどのように概念整理されているのかをお聞きしたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。6の1の(注)は、僕はまずいとはっきりと思います。今の大塚さんがおっしゃったとおりなのですけれども、全体として多分、法的な性質決定というのは隠れているはずなのです。つまり、所有権がどこにあるのか、それは所有権は設定者にあって、担保権者といわれる人にはいわゆる制限物権としての担保権だけがあるのか、そういうことは一応、いろいろな条文から帰納して結論が出てくるのだろうけれども、最初の段階で担保権の設定ですと書くのか、所有権が担保の範囲で移っているのですと書くのかというふうな大上段の規律を置いていないのですよね。ところが、6の1の(注)は、実は担保の範囲で所有権が移るという前提の(注)になってしまっているので、全体との間でそごといいますか、必ずしも落ち着きがよくない(注)になってしまっているのだと思います。それが大塚さんのおっしゃった、目的物というのと担保権というのはどういう関係ですかという話と実は結び付いていて、ここら辺はもう少し概念を整理してやった方がいい、大塚さんのおっしゃるとおりだと思いますので、整理させていただければと思います。 ○大西委員 大西です。第1の6のところですが、こういう中間試案に何をどこまで書くかという点がよく分からないものですから、もしかしたら的外れの指摘かもしれないと思いつつ御質問をさせて頂きます。第1の5(3)のところで設定者が妨害排除請求することができると記載されているものの、第1の6の担保権者の権限の箇所では、担保権設定者が妨害排除請求ができるとは規定されていません。新たな規定にかかる動産担保権は、非占有型担保権なので、不動産担保としての抵当権と同様に考えるべきことになりますが、抵当権の場合は、設定者についても担保権者についても妨害排除請求ができるとの規定はなく、妨害排除請求権は、物権的請求権として解釈上認められている権利と理解しています。しかしながら、新たな規定にかかる動産担保権においては、5に設定者の妨害排除請求権についての定めがあるものの、6に担保権者の権限の箇所で妨害排除請求権の記載がないとすると、反対解釈により、新たな規定にかかる動産担保権では担保権者の妨害排除請求権を認めていないような解釈になる懸念はないでしょうか。この点について、御質問させていただきます。 ○笹井幹事 ここは確かに二つの形式が混乱しているかもしれません。一応、意図としては今、大西委員がおっしゃったように、例えば抵当権とのバランスを見ましても、抵当権も例の判例で妨害排除なんかができる場合もあるわけですけれども、そこは解釈に委ねられているということもありまして、動産の部分だけを書くというのも少しバランス的にはおかしいのかなということで、ここには書いておりません。ただ、中間試案は必ずしも条文そのものではないということもありますし、そこはゴシックで書くのか、あるいは、少なくとも補足説明ではその部分について触れるようにしたいと思っております。 ○大西委員 分かりました。ありがとうございます。 ○道垣内部会長 今の笹井さんの説明は、本当かなという気が私にはするのですが、どちらかといえば、これは所有権が担保の目的の範囲で移転しているということがどこかの頭の中に残っていて、だから設定者はできないかもしれない、物権帰属していないかもしれない、では書かなければいけない、それに対して担保権者の方は、そういう意味で物権が帰属しているのは明らかだから書かなくていいと、こういうので出来上がっているのではないかと思うので、これは恐らく何かの法律構成が黙示にというか、何となく前提とされてしまっていて、そこら辺を心を静めてニュートラルにという気持ちになって書かないと、いろいろなところでそごが生じてくるのかなという気がいたします。すみません。 ○井上委員 ありがとうございます。井上です。第1の1のところなのですけれども、「新たな規定に係る動産担保権は、目的物に従として付合した物及び設定との先後を問わず設定者が目的物に附属させた従物に及ぶ」というところの意味なのですが、元々この従物についてのルールは多義的かもしれず、中間試案の段階であればこのままでいいのかもしれないのですけれども、(注2)が付されているところからすると、設定後に附属させられた従物に及ぶことの意味としては、主物に対する担保権が及ぶということであって、主物に対する担保権と異なる担保権が従物に新たに設定されるということではないと読んだのですけれども、そうだとすると、従物になったときに既にその従物自体に担保権が先行して設定されていて、対抗要件も備えられていたところ、その従物となった物に対する担保権の対抗要件の具備よりも、主物となった物に対して設定された担保権の対抗要件の具備が先だった場合に、元の担保権が及ぶということだとすると、従物に元々担保権を設定して対抗要件を備えていた担保権者は、設定時に優先する担保権がないことをきちんと確認して、対抗要件まで備えたにもかかわらず、劣後してしまうということまで意味するものなのでしょうか。この点について、4ページの説明のところにさらりとというか、「対抗要件の先後などの一般的な決定基準に従う」と書いてあるのですけれども、その一般的な決定基準に従うとどうなるのかと思いました。   結論としては、従物となる前に担保の設定を受けて、対抗要件まで備えていた人が、その物が設定者によって何かほかの物を主物とする従物にされた途端に、担保権を言わば実質的に失ってしまうことは、余り適切ではないように思われたものですから、ここのゴシックの部分の意味をお尋ねしたいと思います。 ○笹井幹事 結論的には、主物の担保権が及ぶ前に従物について担保権が設定されていて、対抗要件が具備されていたという場合ですと、主物についての対抗要件と従物についての対抗要件の先後を問わず、従物に対する担保権が優先することにならないとおかしいと思います。そのことは、ゴシックに書くには少し細かい話かなと思いますけれども、ただ、そこの説明について、一般的な決定基準に従うというだけでは不十分だろうと思いますので、理屈の部分ももう一度含めて、補足説明には工夫をして書きたいと思います。 ○道垣内部会長 そうですね、井上さんの御発言ではっきりしていると思いますが、効力が及ぶというときの効力の及ぶ時期というか、メカニズムというか、やはり時期は従物になったときですよね。そういうことをどこかに書かなくてはいけないということだと思います。 ○大西委員 第1の5で、少し気付いたのですが、第1の5(2)のところで、いわゆる新たな規定に係る担保権の設定者が真正譲渡できるかという点につき、【案1.5.1】が同意なく譲渡できる案、【案1.5.2】が一切できないという案が記載されています。動産の場合、執行局面のことを考えると、担保権者からみて勝手に所有権を譲渡して担保対象物の場所を移動してもらっても困るという事情はありますが、この両案の中間として、担保権者の同意を得た場合に限り譲渡ができるという案もあっては良いのではないか、と思いました。この辺の論点については、今まで、もしかして私が欠席した回かもしれませんが、どのように議論されていたのかにつき教えていただければと思います。 ○笹井幹事 担保権者の同意があった場合には譲渡できるということの前提として、担保権の負担付きでということでしょうか。 ○大西委員 そういうことになると思います。 ○笹井幹事 明示的には議論されてはいなかったのではないかと思うのですけれども、担保権者が同意していれば、一旦、担保から解放して、担保権の負担のないものとして譲渡するということも可能だし、担保権の負担付きで、言わば物上保証人のような形で譲渡をするということも当然可能であるということが前提として議論をされてきたのではないかと理解をしています。それをわざわざ書く必要があるかというと、恐らく担保権者の同意がある場合にそういう譲渡ができるということ自体は、ある意味、当然のことのようにも思われまして、そこはあえて書く必要もないのではないかと思います。 ○大西委員 ただ、これは【案1.5.1】と【案1.5.2】のいずれかと書くと、その間が当然ないように読めるのですけれども、そうはならないのでしょうか。 ○笹井幹事 そうですね、【案1.5.2】について、およそ全くどんな場合でも譲渡することができないということではなくて、担保権者の同意がない場面だということを明示すべきだという御意見がありましたので、そこはそういうふうに修正をしたいと思います。そうすると、同意があった場合について何も書かれていないようですけれども、その同意がない場合に譲渡ができるということ自体は、わざわざ提案というか、ゴシック部分に書く必要もないのかなと思いますので、必要があれば補足説明なんかで触れるという形にしてはどうかと思います。 ○大西委員 分かりました。そうすると、【案1.5.2】の案の中に、担保権者の同意なく譲渡することはできないと、「同意なく」という文言が入るという御趣旨だったということなのでしょうか。 ○笹井幹事 おっしゃるとおりです。 ○大西委員 分かりました。 ○道垣内部会長 いや、それはゴシックに書かなければ駄目でしょう。というのは、先ほども申し上げた、物権的な帰属関係がどうなっているのかというのを一応、最初は黙っておく、つまり決め打ちしないということになると、仮に所有権が担保権者に移っており、担保権者イコール所有者だと考えると、設定者は譲渡すべき権利がないのですよね。そうではなくて、設定者にも何らかの物権が残っていて、それの譲渡ができますよというのは、一つの法律論ですので、書かなくてもそれは当然だろうというのは、やはりある一定の法律関係の理解を前提にしていると思います。それが正しいと思いますけれども、前提としているという感じはします。だから、気を付けないと、結構いろいろなところで前提をとってしまうような気がします。 ○沖野委員 ありがとうございます。今の点なのですけれども、書き方として、最初に阿部先生がおっしゃった、【案1.5.1】のところにも担保権者の同意なく、を入れるべきではないかという御指摘があったかと思うのですけれども、一方、(2)は柱書で、そもそも設定者が担保権者の同意なく目的物を真正に譲渡することができるかどうかについては、いずれかの案によると書かれていることを考えると、【案1.5.1】、【案1.5.2】に担保権者の同意なくというのを全くどちらも入れないということも考えられるように思いましたけれども、それではいけないのかということと、それから、今、部会長がおっしゃった、これを入れておかないと、譲渡構成を採ったときに、完全に譲渡がされていて、設定者には何らの物権も残っていないという可能性もあるのでとおっしゃったのですけれども、その可能性があることを前提にこの後、全部考えていかなければいけないのかどうか、むしろ、所有権なりの移転ということは想定したとしてもなお、飽くまで担保目的なので、担保目的でない部分については設定者には残っているということは当然の前提としていいのか、むしろ、そこは当然の前提とした上で考えていくのかと思っていたものですから、そこにはなお幾つかの可能性があるということだと、結構いろいろ書いていかなければいけないことがあるので、どうなのだろうかと思ったということです。   それから、関連して、ここの真正に譲渡するという話で、担保権者の同意を得て真正に譲渡する、あるいは同意なくしても真正に譲渡するということの意味がどういう意味かということで、後の集合的な動産については、処分しという文言が出てきますけれども、処分の一番の典型はやはり譲渡だと思うのですけれども、後で出てくる譲渡は、担保権の負担を消した譲渡というか、通常の事業の範囲内で特段の設定行為に別段の定めもないというときに譲渡したというときには、なお担保の制約や拘束が及んでくる譲渡だとは考えていないのだと思うのです。そちらは拘束が及ばないものを集合動産だからできると、同じ譲渡という概念を使って、ではそれを消せるのかというと、消すと担保がなくなってしまいますので、個別動産の場合は全然意味が違って、ここは担保の拘束付きで、設定者が今持っているものを譲渡するという意味で、更に即時取得があるかとかはまた別の話だということなので、譲渡するということの意味を明らかにしておく必要があるのではないか、それは、ゴシックではなくて補足説明のところでかもしれませんが、語っていることが少し違うのだということを説明しておく必要があるのではないかと思いました。   これが5の(2)関連なのですけれども、大変細かいことで恐縮ですが、言葉遣いだけ、第1の1の途中ですが…… ○道垣内部会長 それは少し後で。5の(2)のところで今、何も残っていないというところを前提にすることもあり得ると、ざっと全部書いていくのかという沖野さんの御指摘がありましたけれども、私がどちらかといえば引っ掛かったのは、真正に譲渡するという言葉なのです。だから、沖野さんのおっしゃった、2と3はかなり密接に関係していて、つまり、例えば所有権は担保権者に移っています、設定者には設定者留保権と呼ばれる物権がありますということになったら、それは設定者留保権の譲渡であって、ここにいう真正に譲渡するというのとは若干意味が違うような気がして、やはり所有権の譲渡みたいなものが前提にどこかにある言葉になっているのではないか、そこら辺を少し、言葉の概念とか、それを注意して整理しないと混乱するというか、ある一定のものにコミットしているという感じになるという感じだったのですけれども。すみません。 ○沖野委員 ありがとうございます。表現について注意する必要があるというのはよく分かりましたし、真正に譲渡するというのが完全な所有権を移転する、何らの拘束もないものを移転できるのだ、設定者留保権といわれる、あるいはそこで捉えられる内実のものを移転するだけではなくて、それができるのだということだとすると、【案1.5.1】というのが成り立つのかというのが、即時取得とか、そういう要件なくして、同意なくして、幾らでも譲渡して、完全な所有権を移転できるというような案があり得るのかというのは、少し疑問に思いまして、その点からも、真正に譲渡するという表現の使い方はそれを含意し得るということであれば、表現を見直すか、説明のところできちんと説明するか、いずれかが必要ではないかと思いました。 ○道垣内部会長 全く反対ではないのですが、抵当権設定者は真正に譲渡することができるのですよ。真正に譲渡するといったからといって、何の制約もないというのを必ずしも意味するわけではないのだけれども、しかし所有権を移転するのだよね、抵当権設定者は。 ○沖野委員 抵当権付きの負担の付いた所有権と移転するということですよね。それを真正に譲渡すると呼んでいる。 ○道垣内部会長 そう、それに対して、設定者留保権を譲渡するというのとは根本的に違うよね。 ○沖野委員 所有権という概念をとらないということですね。 ○道垣内部会長 そうそう。 ○沖野委員 しかし、そうだとすると、抵当権並びの所有権を移転するということを【案1.5.1】は含意しているのかというと、そうではないということで、最初の部会長の御指摘に戻って、表現をしっかり考えましょうということですね。 ○道垣内部会長 おっしゃるとおり。途中で妨げまして申し訳ございません。1の1についても何かおっしゃろうとされていて、申し訳ございません。 ○沖野委員 これは余り細かすぎて恐縮ですが、ここだけ424条に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合が、債務者の行為になっているのですけれども、ここは設定者でよろしいですかね。 ○笹井幹事 なるほど、そこは統一を図りたいと思います。 ○沖野委員 すみません、それと、これももう一つ、今頃こんなことを聞くのもどうかという気はするのですけれども、第2の個別債権を目的財産とする譲渡担保の実体的効力というところで、前記第1の2、果実に対する担保権の効力はそのまま適用されるということなのですけれども、債権についての果実というのが何を想定したらいいのかということです。 ○笹井幹事 私も実は少し、果実と呼んでよいのかやや迷ったのですが、念頭に置いていたのは利息などです。 ○沖野委員 そうすると、元本と利息があるときには、利息は設定者がそのまま通常取れるけれども、元本だけを押さえているのがこの個別債権の譲渡担保のデフォルトというか、そのような理解だということですか。それでいいのかどうかというのもよく分からなかったものですから。   もう一つは、物上代位の基礎となるかということも論じられているので、あるいはそこに関連するのかもしれないですが、第1の2が及ぶというのは、何に及び、及ばないのかというのが、改めて考えると分からなくて、前の資料にも説明が書かれていなくて、そのまま考えないまま来ていたものですから、改めてどういう意味か確認しておいた方がいいかと思いまして。すみません。   消費貸借の貸金債権を取ったら、利息はどんどんやはり設定者が普通は取れて、被担保債権の不履行があって初めて利息債権の方にも及んでいくというのが一般的な考え方ということでいいのでしょうか。利息まで取りたければ、利息債権も支分権と基本権と両方、譲渡担保になりますということをしておかなければいけないと、そういう場面を考えればいいということでしょうか。それでいいのかどうかというのがよく分かっていなくて。そういうことを想定していて、それでいいのだということであれば、そういう場面の話ですという説明になるのだと思いますので、それ以上は異論があるわけではないのですけれども。 ○笹井幹事 そうですね、少しもう一度検討します。債務不履行がない時点では、念頭に置いていたのは、被担保債権の弁済期までは元本も利息も何も担保権者側は取り立てることができなくて、仮に担保権者が継続的に発生している利息を取れるとすれば、それは被担保債権の弁済期経過後であると思っていたのです。しかし、どの弁済期がいつ来るのか、被担保債権の弁済期との先後関係などもいろいろなパターンがあり得るのかもしれないので、そこはもう一度考えてみたいと思います。 ○道垣内部会長 沖野さんがおっしゃった2点について申しますと、1点目の424条のというところが、債務者ではなくて設定者だよねという話に関しては、民法370条の文言に合わせてこれは書いてしまっているのですね。したがって、設定者と書いた方が中間試案としては分かりやすいということならば、設定者と書くべきだと思うのですが、民法370条は解釈として、それは債務者以外の設定者も含んでいるのだとやはり説明を書くということになろうかと思います。   2番目の果実問題なのですが、これは債権質に関しては、やはり利息付き債権が債権質の目的になったときの利息、徐々に発生する利息については、やはり果実であると考えられていて、その果実は、しかし、物上代位として取るのではなくて、民法350条で流質権の規定が準用されて、民法297条によってその果実が取れる、利息を収受することができるという話になると。そして、そのときに被担保債権の弁済期が到来していることが必要かどうかというのは、実は質権に関しては議論がありまして、我妻先生などは被担保債権の弁済期が到来している必要がないという説を採っていらっしゃるのですけれども、100%の方がそういうふうにおっしゃっているわけではないというところがありますので、質権で大幅に解釈論に委ねられているところについて、どこまで書けるのかという問題があるのかもしれないと思います。   ほかにございませんでしょうか。今の話でもあれですけれども、それなりに丁寧に説明しないと、いろいろなことが細かな前提になっているので、なかなか難しいですよね。   ほかにございますか。よろしゅうございますか。もう一回は最後にまた見る機会があると思いますし、ここの文言はまずいよと、細かい点だけれどもまずいよ、みたいなことがございましたら、今後是非お教えいただきたいと思いますし、説明にこれはきちんと書いた方がいいというふうなことがございましても、どんどん御意見をお寄せいただければと思いますけれども、本日のところは先に進んでよろしゅうございますか。   それでは、これで第3に入りますけれども、第2のところで言い残した問題があるということにお気付きになられましたら、御遠慮なく御発言いただければと思います。そこで、全体のテーマとしては「第3 集合動産・集合債権の担保化」の方に移りたいと思います。事務局の方から説明をお願いいたします。 ○近江関係官 「第3 集合動産・集合債権の担保化」です。まず、1です。説明に記載しましたとおり、(注)で集合物としての適格性に関する要件の要否、内容について議論があることを記載しました。部会の中では、例えば「在庫一切」といった特定方法が許容されるのかという議論がありました。「在庫一切」でも狭い意味での特定というのはできているのではないかという御見解と、それから、そのようなことでは、極端に言ってしまえば「債務者の所有物一切」というような方法でもよいことになってしまうということで、消極的な御見解とがあったと認識をしています。もっともこの問題については、いわゆる契約における目的物の特定という一般的な問題の一環でもあって、結局は具体的な事情を踏まえて判断されるべき問題で、抽象的におよそ「在庫一切」という特定方法が許されるかといってみても、一律にできるとも一律にできないともいえないのではないかと考えられます。また、このような点については法律で書くことができるような性質のものでもないのではないかと考えられます。説明の中ではその旨を記載しております。   「2 設定者の権限」については、形式修正のみになります。   「3 構成部分の処分」ですが、説明で記載しましたとおり、通常の事業の範囲というものと、それから権限範囲というもの、この二つを軸に整理をした上で提案をしているということになります。通常の事業の範囲については客観的に定まるものであり、他方、権限範囲は当事者の合意により判断されることを想定しています。   (1)については、通常の事業の範囲内ではあるものの、当事者が合意によってそれよりも狭く処分権限を制限したという事例で、通常の事業の範囲内ではあるものの、合意の範囲を超えてしまったという事例を想定しています。(2)は、通常の事業の範囲も当事者の合意の範囲も、どちらも越えてしまったという場合を想定しています。なお、権限範囲内での処分については、先ほど申しました2の中で、通常の事業の範囲内であってもなくても、権限範囲内の処分であれば当然に有効になることを前提としています。その上で(1)、(2)とも、部会の中ではいろいろな御議論がありましたので、いずれも複数の案を提案するという案を提案しています。ここで、ただ、善意無過失の対象が何かであるとか、あるいは立証責任をどうするかといった点についても、部会で御議論があったということは認識をしておりますので、中間試案としてどのような案で世に問うことが望ましいのかということについて、御意見があれば賜れればと存じます。   「4 設定者の権限」も大きな変更はしていませんが、債権の取立て、それから、取り立てた金銭の使用という部分以外のものについては、これは通常の事業の範囲内といえないのではないかという御指摘があったことを踏まえて、その部分を墨付き括弧に入れたということになります。   担保価値維持義務、補充義務については、従前と実質的な変更はございません。   物上代位ですが、説明に記載しましたとおり、(2)の部分、特に(2)イの部分について部会で御議論があったと認識しておりまして、この点を引き続き検討するものとしております。   第3については以上になります。御議論のほど、よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、これらの点につきまして御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○阪口幹事 阪口です。特定範囲という言葉の使い方というか、中間試案としてそういう用語法がいいのかどうか、確認したいと思います。   10ページの動産のところで特定範囲の定義が出ていて、ここで「種類、所在、場所、量的範囲の指定その他の方法により特定された範囲(以下、特定範囲という。)」と書いてあります。他方、12ページに債権があって、ここでは、「譲渡担保の目的債権が特定範囲によって特定され」ということで、特定範囲という言葉をそのまま使っている。これは、10ページの方の特定範囲を引用していると思うのですけれども、動産でいうところの特定範囲と債権でいうところの特定範囲が一緒なのでしょうか。同じ言葉を使うことで、イメージが分かりにくいところがあって、例えば、債権の特定は、現在であれば、始期、終期とか、金額もあるかも分かりませんし、若しくは、第三債務者の特定が一番多いのでしょうけれども、仮にこの物を売った債権というような第三債務者不特定型もある。このように動産と債権は大分違うように思うので、そのまま10ページの方と12ページの方を特定範囲という形でくくっていくのが中間試案の書き方としていいのかどうか、よく分かりません。もしここのまま行くのだったら、補足説明か何かで詳細を書かなければいけないだろうし、そうでないのだったら、表現を分けるのか何かされた方がいいのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。何か御見解がありますか。 ○笹井幹事 今すぐによい修正案が浮かばないのですけれども、御意見として承りましたので、何らかの対応をしたいと思います。 ○道垣内部会長 おっしゃるとおり、第3の1についてもファクターの下手な例示を書かない方がいいというのもあり得て、そうなると、いずれにせよ特定範囲ということになるのだけれども、中間試案の段階だと、やはり分かりやすさというのが前面に出てきて、集合動産に関しては、これまで判例等で言われてきた書き方を踏襲してイメージを喚起してもらうということが必要だろうし、そうなると、債権についても同じくイメージを喚起するようなファクターの例示というのが必要なのではないかということになろうと思います。おっしゃるとおりではないかと思いますので、検討をしていきたいと思います。   ほかにございますか。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。用語法ですが、私は基本的には賛成で、恐らく動産の集合体という概念と、それから集合動産という二つの概念の関係ですが、恐らく集合体の方が上位概念で、いわゆる財団のような形での固定資産の集まりも、それから、集合動産として流動していく流動資産の集合動産、これは既存の概念ですけれども、その両方を含むものとして、集合体という概念を立てられているのではないかと思いました。そのことに大賛成なのです、実は集合動産という言葉は既に判例等の中で定着はしているのですけれども、集合体という言葉自体が全く定着はしていない概念なので、ここで集合体といきなりいってしまって、果たしてうまく通じるのかどうかというのが若干心配になっているところです。   第3の1の(注)のところでも、何らかの要件というところで、経済的若しくは取引上の一体性ということが一つで、もう一つがかぎ括弧でいわゆる集合動産の定義ということになっていますので、そうしますと、経済的若しくは取引上の一体性というのは、集合動産以外の集合体の要件の例示として書かれていて、後者の方が集合動産の例示として挙げられていると読めなくもないのですが、必ずしもそういう趣旨で書いておられるのではないとは思いますので、その辺りの整理ももう少し明確にされた方がいいのではないかと思いました。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。何か、感想というのもあれだけれども。 ○笹井幹事 ここは非常に悩ましいところで、元々二読のときの構成を維持してはいるのですが、集合物論の必要性がどういう場面で出てくるかというと、集合動産、内容が流動するものについて、あらかじめ対抗要件を具備しておくと、そういう必要性から出てくるのだと、だから集合体というのはむしろ必要ないのではないかという御意見もあったところです。そういう意味では、片山先生がおっしゃったように、集合体という概念が一般的ではないということもあって、ここで維持するのかどうかというところも悩ましいところではあったのですけれども、二読のときに片山先生が強く支持してくださったこともありまして、今はこういう状態になっています。そこの概念整理というのを更にどういうふうにしていくのかというところは、悩ましいのですけれども、今日御指摘もありましたので、書き方とか説明ぶりにつきましては考えてみたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。立教大学の藤澤です。私の方からは、第3の2番と、それから3番と、平成18年のブリ、ハマチが出てくる集合動産譲渡担保の判例との関係について、少し質問させていただきたいと思います。   2番によりますと、設定者は通常の事業の範囲内で、集合動産の構成部分である動産を処分し、又は集合動産から逸失させる権限を有するということですので、反対からいうと、通常の事業の範囲外であれば、集合動産の保管場所として、例えば倉庫が設定されているとすれば、そこから勝手に逸失させる権限は有しないということだろうと思います。そうすると、そこから設定者が逸失させてしまった動産についても担保権の効力が及んでいると考えるのかなというような気もいたします。他方で、平成18年の最高裁判例は、傍論ではありますけれども、集合物から逸失した動産については、第三者がそれを担保権の負担のない状態で承継取得する余地があるというようなことを言っていました。ところが、3番の方を見ると、集合物の構成部分である状態で動産を処分した場合については書かれているのですけれども、構成部分から逸失させられてしまった状態で、そこで設定者が動産を処分したということについては書かれていなくて、これについて、平成18年最判の傍論のような考え方を採るのか、それとも3と同じような結論にするのか、というところを少し明確にしてはいかがかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。どうですかね。 ○笹井幹事 そこは一読でも二読でも大分議論になったところで、部会資料もかなり細かい場合分けをして、非常に分かりにくいことを書いていたところかと思うのですけれども、構成部分が搬出されたときに、担保権自体がなくなってしまうという考え方もなくはないと思いますし、対抗力がなくなるという考え方もあると思いますし、対抗力も維持されているという考え方もあるかと思います。それとまた、担保権が負担付きで譲渡することができるのか、どういう効果が発生するのかも未確定になっており、組合せによってかなり多くのパターンがあり得るのかと思いますので、改めて、補足説明の中ではそこは書く必要があると思います。その内容的にも、恐らく部会でも議論しておいた方がよいかと思いますので、早めに何らかの形でお示しして、御意見を頂いた上で補足説明として確定するというような扱いにさせていただければと思います。 ○道垣内部会長 よろしくお願いします。結局、藤澤さんがおっしゃるのは、事実としての搬出行為というものが行われたときの法律状態をどういうふうに考えるのかというのが大前提としてあるということなのだろうと思います。3(1)の【案3.3.1.1】みたいなものを採れば、いずれにせよ処分を受けたら権利は取得するのだからいいや、となるかもしれませんが、なお、けれども、例えばその状態で倒産したときどうなるのかというふうな問題が残ってくるので、集合体から外れた状態に、通常の営業の範囲外でそういう状態が生じたときにどういうふうなことになるのかというのは、あるいは3の話ではなく、必要なのかもしれないですね。 ○井上委員 井上です。ありがとうございます。12ページの4のところの集合債権を目的とする担保を設定した場合の設定者の権限についてです。墨括弧に入れていないところですね、原則として、取立てをする権限を有するものとするということになっているわけで、ここに当然含意されているのだろうと思いますけれども、ここでいう取立権限とは、取り立てた金銭を自らのために利用する権限を含むということだと思っていまして、それはここのゴシックに書けるのであれば書いた方がいいように思うのですが、これを書かないにしても、その説明のところに明記していただければと思います。というのは、このただし書の「設定行為に別段の定めがあるときは」という、別段の定めの対象として、取立てができる、できないというときに意味しているのは、回収した上で資金を別途プールさせることも含めて、別段の定めが可能であるということだと理解しておりますので、この取立権限と言われることの中身をこの中間試案の段階で明らかにできれば、そうしていただければと思いました。   集合動産についても同じようなことが恐らくいえると思います。書き方がこちらはよく分かりませんが、処分し、あるいは逸失させ、といったときに、その上で処分した代金を自らのために利用できるということも当然に含まれる、逆に言えば、先ほど沖野先生がおっしゃったかと思いますが、担保権の負担を外した形で処分できると言い換えてもいいかもしれませんが、ここでいう処分は正にそういう意味なのだということを明らかにしていただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○日比野委員 ありがとうございます。12ページの第3の4のところなのですけれども、4(1)の、設定者は、通常の事業の範囲内で、その特定範囲に含まれる債権の取立てをする権限を有するものとする、というのは、集合動産の考え方とパラレルに規定していただいていると思います。ただ、これは確か以前にも関連することを述べたことがあったかと記憶するのですけれども、債権譲渡担保を取得した担保権者の側からしますと、10ページの第2の2で記載いただいた個別債権を譲渡担保で取得した場合と、集合債権を譲渡担保で取得した場合とで、担保権者としての位置付けは変わらないという考え方もあるものと理解をしておりまして、注記のような形でも構わないので、このような考え方とは異なり、集合債権の譲渡担保が設定されて、かつ債務者対抗要件も具備されたのであれば、第2の2の個別債権の譲渡担保と同じになるという考え方もあるということを記載いただけると有り難いと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。4(2)に関して、原則と例外を逆転させるということも十分にあり得るということですよね、多分。もちろん設定者が取り立てることができるという別段の定めをすることができるけれども、基本は担保権者が取り立てるということになって、最高裁の判例法理自体が取立権限の授与みたいなことをいっておりますので、そういうふうな形の法律関係であると考えるということもあり得るよねという話かなと思いましたが、そういう感じでしょうか。 ○日比野委員 はい、おっしゃるとおりでございます。 ○道垣内部会長 分かりました、どうも。判例をどう読むかにもよりますが、そういうふうに一般的に読まれている判例でございますので、少なくともそういう判例があって、そういう考え方があり得るということは、何らかの形で言及した方がいいのではないかと私も思います。 ○大塚関係官 ありがとうございます。調査員の大塚です。私からは、阪口先生が御指摘されました特定範囲という言葉の使い方について、同じく、動産と債権とで共通なものとして使うべきかということを少し考えてみたいと思います。   両者でどのようにこの特定範囲という言葉が使われているかを分析いたしますと、まず動産については第3の1の要件になっているのかなと思います。第3の1の規定がなぜ必要かというと、特に集合動産の設定後に新たに加入する場合については、将来動産の譲渡あるいは担保権設定ができないという考え方を前提とすると、こういった集合体について担保権を設定できるということを規定として明確にすべきだという趣旨かなと思います。したがって、この特定範囲、何らかの範囲によって特定されているということが、説明にもあるとおり、集合体として扱われるための要件であるということになろうかと思います。   これに対して、債権については第3の1のような規定はなく、これは将来債権の譲渡できるからであるというふうなことだと思います。そういたしますと、債権についてはこの特定範囲という言葉は、その将来債権譲渡を可能にするための要件ではないということになるはずです。もちろん最高裁によって、将来債権の譲渡がどういう場合にできるかという要件が立てられておりますので、そちらで判断されるとは思いますが、それと特定範囲というものは必ずしも一致はしないだろうと思います。   そういたしますと、両者、もちろん集合債権譲渡の場合においても、何らかの範囲で特定するということはあり得ますが、そこで使われている特定範囲と、集合体として扱われるための要件を示す特定範囲とは、何か違うのではないかと思えてきます。そうすると、同じ言葉を使ってしまうことによって、解釈が少し歪んでしまう可能性はなきにしもあらずなのかなと考えまして、この点、同じ言葉を使うべきかどうかは慎重に検討すべきかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。日比野さんがおっしゃったことにも関係しているのかなと思います。つまり、集合債権の譲渡担保といいますか、そういうことをしたときに、個別のものが増えているだけと考えると、別に新陳代謝みたいなものを念頭に置きながら定義をしていく必要は必ずしもないということになりまして、集合物というのとはかなり性格の違う規定の仕方になるかもしれないということなのかもしれません。 ○阿部幹事 阿部です。先ほどの藤澤幹事の御発言とも少し関係するのかもしれないですけれども、第3の3に関して、(1)については【案3.1.1.1】から【案3.1.1.3】があって、(2)に関しては【案3.3.2.1】と【案3.3.2.2】が対置されていて、基本的にほとんどが処分を受けた者の主観によって保護の有無を区別するというか、権利取得の有無を区別するという形になっていて、【案3.3.2.2】だけが、即時取得が成立するときに限りと書かれているので、ここでは引渡しが必要だということになっているのではないかと思います。   ただ、確かに主観の部分にかなり議論が集中していたような気はするのですけれども、本当に引渡しなしに処分を受けた者が権利取得していいのかということについては、引渡しなしに権利取得できるのだとコンセンサスが本当にできていたのかというのが私はよく分からなくて、あるいは私が単に皆さんの議論に付いて行けていなかっただけなのかもしれないですけれども、ただ単に主観要件の方に議論が集中していて、引渡しの要否というところに余り成熟した議論がなされていなかっただけなのではないかというような気もいたしました。ですので、主観要件とは別に、引渡しの要否というのも軸として、縦軸、横軸みたいな感じで、いろいろな案があり得るという状態にしておいた方がよいのではないかと思いました。   以前の議論の中で、集合動産について、処分の相手方が権利を取得するために保管場所からの搬出が必要かどうかという議論があったと思うのですが、そのときは、保管場所による特定が集合動産の特定の際に不要になったら、保管場所からの搬出というようなことも観念し得なくなるのではないかというような議論があったような気がするのですけれども、仮にそうだとしても、保管場所からの搬出の有無とは別に、処分を受けた者への引渡しがあったかどうかというのは、また議論の余地があるような気がしまして、引渡しをなしに権利を取得できるのかということは、改めてもう少し議論する必要があるのではないかと思いました。   最低限、処分がいわゆる権限範囲に入っている場合だったら、引渡しの前であっても、その権利を取得するというところは多分、コンセンサスができるのではないかと思うのですけれども、権限範囲を超えたときに、引渡しもないのに、主観だけで権利取得できていいのかというところは、少しまだ完全にコンセンサスができていたのかというのは、私にはやや心もとないように思ったのですけれども、もし私の誤解であれば、御指摘いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。別に誤解ではないと思いますが、ただ、搬出論に関しては、藤澤さんがそうおっしゃったわけではないかもしれませんが、搬出というからそんな感じがするので、第3の1に書いている集合体というものからの離脱という物理的な状況というのは、どのような集合体の定め方をしても、あり得るわけで、ない場合ももちろんあるのですが、あり得るわけであって、それと、阿部さんのおっしゃった引渡しの問題と、幾つか局面があると、局面ごとに状況が違うというのが、やはり藤澤さんのおっしゃった、離脱したときの法状態というのをどういうふうに観念するのかということと密接に結び付いているということがあるのだろうと思います。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。度々どうもありがとうございます。日比野委員と大塚関係官の御発言とも関連しますが、12ページの4の集合債権という概念です。また怒られるかもしれませんが、循環型と累積型という類型があるとしましたら、ここで想定されているのはいわゆる循環型で、取立権限が設定者にあることが想定されていて、それが集合債権という形で呼ばれていると私としては勝手に解釈をしております。他方、日比野委員もおっしゃられていたように、複数の将来の債権を担保に取るのだけれども、集合債権ではなくして、取立権限を担保権者に与えるのが典型だとされるような累積型については、個別債権の集合と、個別債権をまとめて取るという意味で、第2の方法で将来債権を担保化できるというように、勝手に私の都合のいいように読み込むことができるというところがあると思うのです。   そうしますと、他方の立場からしますと、恐らく多くの民法学者は、債権に関しては集合債権という概念は不要だとされているにもかかわらず、ここでなぜ集合債権という概念を用いるのだというような批判も当然出てくるかと思いまして、そういう意味で、先ほどの集合体もそうですが、ここでいう集合債権という概念も、いろいろな意味で勝手に読み込んで議論がなされるおそれがあります。その意味で、言葉の使い方といいますか用語法に、注記が必要かなと改めて感じた次第でございます。   印象でございますけれども、よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。言葉は誤解を招かないようにしなければいけないと、そのとおりだと思います。   ほかに何か第3のところについて、ございますか。   3のところでは、いろいろな整理の仕方が出て、笹井さんが、どこまでそれをまた書くのかというので、極端に精緻に書くことによって余りに分かりにくくなっては困るとおっしゃいましたが、それと、搬出とか引渡しとかというふうな概念と、時的整理の話と、どういうふうに結び付けて、シチュエーションごとの法律関係というのを整理できるようにするのかという課題があるという御指摘だったろうと思います。   4につきましては、原則形態というのをどちらに置くのか、いずれにせよ両方の形態があるのだろうと思われるわけですが、どちらの形態に置くのかということがあるのだろうと思います。そういうことを踏まえて、意見を聴くというのが中間試案の重要な目的でございますので、様々な意見が出やすい形で出していくという必要があろうかと思いますが、そういうふうなことを考えながら、もう一回整理をするということにさせていただければと思います。   ほかによろしゅうございますか。   実は完全な2周というのは時間的になかなか難しいので、4のところは比較的簡単かもしれませんが、3のところとかでどういうふうな修文をすべきなのかというのをまたここの部会に出して、また丁寧に時間を掛けて議論をして一語一語詰めていくというのも、なかなか時間的に厳しいところがございます。いろいろな御意見が出ましたので、とりわけ3のところ等につきましては、こういうふうにすると分かりやすいのではないかというふうな御意見を積極的にお寄せいただければと思います。よろしくお願いいたします。   ほかに御意見、御質問はございませんでしょうか。   それでは、若干時間が過ぎておりますが、本日は途中で変則的な休憩も入りましたので、仕方がないかなと思います。どうもいろいろありがとうございます。   次回の議事日程等につきまして、事務当局から説明をしていただきます。 ○笹井幹事 本日もありがとうございました。次回日程は、令和4年10月11日火曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省地下1階、大会議室でございます。 ○道垣内部会長 よろしゅうございますか。   それでは、法制審議会担保法制部会の第25回会議を閉会にさせていただきます。   本日は熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。 -了- - 41 -