法制審議会 区分所有法制部会 第1回会議 議事録 第1 日 時  令和4年10月28日(金) 自 午後1時30分                       至 午後3時23分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題  1 部会長等の選出について         2 区分所有法制の見直しに当たっての検討課題について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大谷幹事 それでは、定刻となりましたので、法制審議会区分所有法制部会の第1回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   私は、法務省大臣官房参事官の大谷と申します。本日はこの部会の第1回会議ですので、後ほど部会長の選出がされるまでの間、私が議事の進行役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。   会議に先立ちまして、ウェブ会議に関する説明等をさせていただきます。   法制審議会においては、十分な感染症対策を施した上で部会を開催し、希望される方にはウェブ会議システムを利用する方法により御出席を頂いてまいりました。ウェブ参加されている皆様につきましては、ハウリングや雑音の混入を防ぐため、御発言される際を除き、マイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願い申し上げます。御発言を希望される場合には、システム上の手を挙げる機能をお使いください。手を挙げる機能は、画面の下側に表示されるコントロールバーの中にある手のひらマークをクリックすることにより、使用することができます。それを見て適宜御指名をさせていただきますので、指名されましたらマイクをオンにして御発言ください。御発言が終わりましたら、再びマイクをオフにし、同じように手のひらマークをクリックして手を下げるようにしてください。また、会場の皆様につきましては、このマイクオン、オフというものは特にございません。マイクに向かってお話しいただけましたら音を拾いますので、そのまま御発言いただければと思います。   次に、お手元の資料について御確認を頂きたいと思います。   本日の配布資料といたしましては、まず、部会資料1「区分所有法制の見直しに当たっての検討課題」と題するものがあります。また、参考資料として、参考資料1「区分所有法制に関する研究報告書」と題するもの、参考資料2「マンションに関する法体系」と題するもの、参考資料3「多数決割合等の比較表」がございます。お手元に行き渡っていないものがある場合には、事務局の方にお知らせください。   続きまして、この部会で審議される諮問事項とこの部会の設置の経緯につきまして、簡単に御報告をいたします。   本年9月12日に開催されました法制審議会第196回会議におきまして、法務大臣から区分所有法制の見直しに関する諮問がされました。お手元の資料のうち、右肩に諮問第124号と記載されたものがありますけれども、ここに記載されておりますように、「老朽化した区分所有建物の増加等の近年の社会情勢に鑑み、区分所有建物の管理の円滑化及び建替えの実施を始めとする区分所有建物の再生の円滑化を図るとともに、今後想定される大規模な災害に備え、大規模災害により重大な被害を受けた区分所有建物の再生の円滑化を図る等の観点から、区分所有法制の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」というものです。この諮問を受けまして、法制審議会総会では、専門の部会を設置して調査、審議を行うのが適当であるとして、この区分所有法制部会を設置することが決定されました。以上が御報告です。   続きまして、審議に先立って、民事局長である金子より挨拶がございます。 ○金子委員 民事局長の金子でございます。カメラの関係もあるので、着座したままで御挨拶を申し上げます。   事務当局を代表いたしまして、一言御挨拶申し上げます。   皆様には、御多忙の中、法制審議会区分所有法制部会の委員、幹事に御就任いただきまして、誠にありがとうございます。   区分所有建物は、現代社会の社会経済活動において、極めて重要な役割を果たしています。しかし、建物の老朽化と区分所有者の高齢化という、いわゆる「二つの老い」を背景に、区分所有者の相続等を契機として、区分所有建物の所有者不明化や区分所有者の非居住化が進行しています。  現行区分所有法では、建物の管理・再生は集会の決議で意思決定されますが、不明区分所有者や無関心な区分所有者は、決議において反対者と扱われるため、決議が成立しにくいという問題が指摘されています。特に、建替え等による区分所有建物の再生については、決議要件が厳格であるため、意思決定がさらに難しくなります。   また、我が国では災害が多発していますが、被災して大きなダメージを受けた区分所有建物の再生についても、決議要件が厳しすぎるといった指摘があり、区分所有法制の見直しは喫緊の課題となっております。   そこで、こうした区分所有建物をめぐる近年の社会情勢に鑑み、区分所有建物の「管理の円滑化」、「再生の円滑化」及び「被災した区分所有建物の再生の円滑化」を図る等の観点から、区分所有法制の見直しを行うことについて、法制審議会の御審議を賜りたく、今回の諮問がされたものでございます。   私ども事務当局といたしましては、区分所有法制の見直しに向けた調査、審議が充実したものとなるよう、最大限の努力をしてまいる所存でございます。委員、幹事の皆様方におかれましては、より適切な規律の整備のため、御協力賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。   以上です。 ○大谷幹事 続きまして、委員、幹事の方々に、簡単に自己紹介をお願いいたします。 ○浅見委員 東京大学の浅見です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大桐委員 弁護士の大桐と申します。よろしくお願いいたします。 ○沖野委員 東京大学の沖野でございます。民法を専攻しております。どうかよろしくお願いいたします。 ○寒竹委員 三井住友信託銀行法務部の寒竹と申します。よろしくお願いいたします。 ○小林委員 公益財団法人マンション管理センターで専務理事をしております、小林と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○紺野委員 NPO法人全国マンション管理組合連合会の副会長を仰せつかっております、紺野智博と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○佐久間委員 同志社大学の佐久間でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○能登委員 一般社団法人不動産協会並びに三井不動産レジデンシャルにてマンション建替えの担当をしております、能登と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○細谷委員 主婦連合会の細谷と申します。よろしくお願いいたします。 ○増田委員 日本郵政株式会社におります増田でございます。よろしくお願いいたします。 ○村上委員 労働団体の連合の村上と申します。よろしくお願いいたします。 ○森本委員 日本司法書士会連合会の理事の森本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○吉原委員 東京財団政策研究所の吉原と申します。よろしくお願いいたします。 ○矢吹幹事 国土交通省住宅局でマンション・賃貸住宅担当の参事官をしております、矢吹といいます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○吉政幹事 京都大学の吉政と申します。何とぞよろしくお願いいたします。 ○大谷幹事 では、オンラインで出席されている鎌野委員、お願いいたします。 ○鎌野委員 早稲田大学の鎌野でございます。よろしくお願いいたします。 ○齊藤委員 横浜市立大学の齊藤広子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○武部委員 東京地裁の武部でございます。よろしくお願いいたします。 ○青木幹事 神戸大学の青木哲と申します。民事手続法を専門にしております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○棈松幹事 最高裁民事局で第一課長をしております、棈松でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○加毛幹事 東京大学の加毛と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○水津幹事 東京大学の水津太郎と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○髙山幹事 国土交通省土地政策課の髙山です。土地対策等を担当しております。よろしくお願いいたします。 ○中野幹事 日本弁護士連合会の災害復興支援委員会に所属しております、弁護士の中野明安と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○武藤幹事 国交省住宅局の住宅経済・法制課長をしております武藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大谷幹事 どうもありがとうございました。   本日、衣斐幹事は御欠席です。次に、法務省側の委員、幹事等の自己紹介をさせていただきます。 ○金子委員 改めまして、民事局長の金子です。委員として参加させていただきます。よろしくお願いいたします。 ○竹林幹事 民事法制管理官の竹林と申します。幹事として参加させていただきます。よろしくお願いいたします。 ○藤田幹事 民事局の民事第二課長、藤田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○山根関係官 法務省民事局付の山根でございます。よろしくお願いいたします。 ○畑関係官 法務省民事局付の畑でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○谷矢関係官 同じく法務省民事局付の谷矢でございます。よろしくお願いいたします。 ○大谷幹事 改めまして、大臣官房参事官の大谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○寺田関係官 特別顧問の寺田です。よろしくお願いいたします。 ○大谷幹事 この機会に、関係官につきまして、補足して説明をいたします。   法制審議会議事規則によりますと、部会がその調査、審議に関係があると認めた者は、会議に出席し、意見等を述べることができ、また部会長が必要と認めたときは、委員でない者の出席を求め、その説明等を聞くことができるとされております。今回、既に複数の省庁等から関係官が出席されていますが、今後も御出席を頂くとともに、必要に応じ、関係省庁等に対して審議への出席を求めていくことがあると考えております。   本日は、関係官の方々にオンラインで参加をしていただいています。簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。 ○池本関係官 最高裁民事局付の池本でございます。よろしくお願いいたします。 ○德竹関係官 国土交通省住宅局参事官(マンション・賃貸住宅担当)付の德竹と申します。よろしくお願いいたします。 ○大谷幹事 皆様ありがとうございました。   続きまして、部会長の選任を行っていただきます。   法制審議会令によりますと、部会長は、当該部会に属する委員及び臨時委員の互選に基づき、会長が指名することとされております。   この部会は本日が第1回会議ですので、まず初めの手続として部会長を互選していただく必要がございます。   それでは、ただいまから部会長の互選をしていただきますが、自薦又は他薦の御意見などはございますでしょうか。 ○大桐委員 これまで区分所有法制の研究会をまとめてこられました、佐久間先生が適任かと存じます。 ○大谷幹事 ほかに御発言は。 ○鎌野委員 今、大桐委員から推薦がありました佐久間先生に、私もお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○大谷幹事 ありがとうございました。ほかに御発言はありますでしょうか。   ただいま、大桐委員、それから鎌野委員から、部会長として佐久間委員を推薦するとの御発言がありました。ほかに御意見がないようでしたら、部会長には佐久間委員が互選されたということになろうかと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、互選の結果、佐久間委員が部会長に選ばれたものと認めます。   その上で、部会長は法制審議会会長が指名することとされていますが、本日は井田法制審議会会長に御出席を頂いております。井田会長におかれましては、いかがでございましょうか。 ○井田会長 井田でございます。   ただいまの皆様方の互選の結果に基づきまして、佐久間委員を部会長に指名させていただきます。佐久間先生、どうぞよろしくお願いいたします。 ○大谷幹事 ありがとうございます。ただいま井田会長から佐久間委員を部会長に御指名いただきました。これをもちまして、佐久間委員が部会長に選任されました。   佐久間委員には部会長席に移動していただき、以降の進行役をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。   なお、井田会長はここで御退席されます。どうもありがとうございました。 ○佐久間部会長 ただいま部会長に選任されました佐久間でございます。一言御挨拶を申し上げます。   区分所有建物で暮らし、事業を営んでいる方は、極めて多数に上ります。したがいまして、区分所有法制を時代に合わせたものとすることは、社会の基盤を整備することに当たると存じます。それだけに、この部会において、現在の区分所有法制の問題点を明らかにし、今後、我が国にとってあるべき見直しの案が提示されることを強く希望しております。   そのために、これから委員、幹事の皆様方にしていただく調査、審議につきまして、大変微力ではございますけれども、進行役を務めさせていただきます。何とぞよろしくお願いを申し上げます。   それから、今後、私が出席できない場合に備えまして、部会長代理を指名させていただきたく存じます。   部会長代理には、沖野委員にお願いをしたいと存じます。沖野委員におかれましては、お引き受けいただけますでしょうか。 ○沖野委員 私、一層微力でございますが、務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。できる限り御迷惑をお掛けしないようにしたく存じます。よろしくお願いをいたします。   では、審議に入ります前に、当部会における議事録の作成方法につきまして、特に発言者名の取扱いにつきお諮りしたいと思います。   まず、現在の法制審議会での議事録の作成方法につきまして、事務局から御説明を頂きます。 ○大谷幹事 御説明いたします。   法制審議会の部会の議事録における発言者名の取扱いにつきましては、かつては発言者名を明らかにしない形で、逐語的な議事録を作成していた時期もありましたけれども、平成20年3月に開催された法制審議会の総会におきまして、それぞれの諮問に係る審議事項ごとに、部会長において部会委員の意見を聞いた上で、発言者名を明らかにした議事録を作成することができるという取扱いに改められております。   御参考までに申し上げますと、この総会の決定後に設置された民事法関係の部会では、いずれも発言者名を明らかにする議事録を作成するものとされております。したがいまして、この部会の議事録につきましても、発言者名を明らかにしたものとするかどうかを御検討いただく必要があるのではないかと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの大谷幹事からの説明につきまして、御意見、御質問がございましたら、お願いをいたしたく存じます。いかがでしょうか。   特によろしゅうございますでしょうか。   では、当部会でも、審議事項の内容に鑑みまして、発言者名を明らかにした議事録を作成することとしたいと存じます。   では、ただいまから、本日の審議に入ります。   まず、事務当局から今回の諮問の発出の経緯、今回の検討の対象範囲、当部会の開催スケジュール等について説明を頂きます。 ○大谷幹事 まず、諮問発出の経緯について御説明をいたします。   部会資料1の第1を御覧ください。   近年、高経年の区分所有建物の増加、それから区分所有者の高齢化という、いわゆる「二つの老い」が進行しており、区分所有者の相続等を契機として、区分所有建物の所有者不明化や区分所有者の非居住化、無関心化が進行しています。部会資料1の1ページでは、所有者不明化、非居住化、集会への参加率の低下について統計を紹介しております。   また、2ページにございますとおり、地震や豪雨、竜巻などの災害が多発しており、今後大規模な災害の発生可能性が高まっていると言われております。こうした背景の下で、区分所有法制の見直しを検討すべき必要性が高まっていることから、論点を整理するため、令和3年3月以降、法務省も参加した区分所有法制研究会において検討が進められました。その結果、本年9月30日付けで、参考資料1のとおり論点整理が行われたところです。   この報告書において整理された問題状況のエッセンスは、2ページの2でまとめているとおりですが、2の最終段落にありますとおり、区分所有建物の管理の円滑化、区分所有建物の再生の円滑化、そして被災した区分所有建物の再生の円滑化を図る観点から、区分所有法制の見直しに向けた検討を行う必要があるとされたところであり、先ほど御紹介した諮問文においても、この整理が踏襲されているところでございます。   次に、検討の対象範囲について御説明します。   後ほど御説明がありますとおり、区分所有建物をめぐっては、法務省の所管する民事基本法として、区分所有法と被災区分所有法があるほか、国土交通省の所管する行政事業法として、マンション建替え円滑化法やマンション管理適正化法が存在しますが、この部会における見直しの主なターゲットは、区分所有法と被災区分所有法になると考えています。   区分所有法等の改正に伴いまして、マンション建替え円滑化法等の見直しを行うかどうかにつきましては、マンション政策の観点から別途検討が必要であると考えられますけれども、法務省としては、国土交通省としっかりと連携を図っていきたいと考えております。   次に、スケジュールについて御説明いたします。   この部会は、当面月1回程度のペースで開催する予定です。課題の重大さに鑑みまして、通例に従って中間試案を取りまとめて、パブリックコメントの手続を採った上で、答申に向けた検討を行うという流れを想定しております。いつまでに何をするということについては、現時点では未定でございますけれども、この問題は喫緊の課題でございますので、可能な限り早期に検討が進むよう、事務当局としても努めてまいりたいと考えております。   当面の進行につきましては、本日の御議論を含めて、今後の議論の状況にもちろんよるわけですけれども、事務当局としては、来年の夏頃から秋頃を一つの目途として、中間試案の取りまとめをしていただけるように、作業を進めていきたいと考えております。   以上でございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。ただいまの大谷幹事からの説明につきまして、御質問や御意見がありましたらお願いしたく存じます。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか、この点は。   ありがとうございます。   続きまして、事務当局から、考えられる主要な検討項目につき、部会資料1の第2と参考資料3の説明を頂きたいと存じます。お願いいたします。 ○山根関係官 それでは、部会資料1の第2及び参考資料3について御説明申し上げます。   まず、部会資料1についてですが、先ほど大谷幹事からの説明にもございましたとおり、区分所有法制の見直しに向けた検討の視点としては、まず、区分所有建物管理の円滑化、次に区分所有建物再生の円滑化、そして、被災した区分所有建物の再生の円滑化という、三つの視点があるものと考えております。そのため、部会資料1における考えられる主要な検討項目におきましても、この三つの観点に分けて記載をしております。   最初に、部会資料1の2ページ目の一番下でございますけれども、区分所有建物の管理の円滑化について記載をしております。   まず、(1)では、集会の決議を円滑化するための仕組みについて記載をしておりますが、現行法では、所在等が不明である者や集会に参加しない者は、反対者と同様に扱われることから、区分所有建物の円滑な管理が阻害されるおそれがあると指摘がされています。そのため、所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する仕組みや、出席者の多数決により決議を可能とする仕組みを設けることが考えられます。   次に(2)ですけれども、現行法において、所有者不明の専有部分に特化した財産管理制度や管理不全状態にある専有部分に対応するための財産管理制度はございませんので、所有者不明専有部分に係る財産管理制度や管理不全状態にある専有部分の管理制度を設けることが考えられ、その際には、令和3年の民法改正で新たに設けられた所有者不明建物管理制度などを参考にすることなどが考えられます。   (3)では、共用部分の変更のためには、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成が必要とされていますが、この要件が厳格であるために、必要な工事を行うことができないとの指摘がされています。そこで、この決議要件を緩和するということが考えられますが、一方で、緩和により権利を制約されることになる少数反対者の利益にも、留意する必要があるのではないかと考えられます。   (4)では、共用部分等について損害賠償請求権等が発生した後に、区分所有権が譲渡された場合に、管理者が、区分所有者でなくなった者を代理することはできず、当事者となって訴訟追行することが基本的にできなくなるといった解釈もあることから、損害賠償請求権等の管理に支障を来しているとの指摘がされています。そのため、損害賠償請求権等の発生後に区分所有権が譲渡された場合でも、管理者が代理をして行使をし、当事者となって訴訟追行することができる仕組みを設けることが考えられます。   そのほか、(5)、(6)に記載をしておりますが、区分所有者の責務に関する規定を新たに創設することや、情報通信技術の発展に伴う各種事務の合理化を行うことも考えられるところです。   次に、2では、区分所有建物の再生の円滑化を図る方策について記載をしております。   まず(1)では、建替えを円滑化するための仕組みについて取り上げております。現行法では、建替え決議を行うためには、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成が必要とされ、建替え決議の要件が厳格であるとして、必要な建替えを行うことが難しいとの指摘がされております。そのため、建替え決議の要件を緩和することが考えられますけれども、この検討に当たっては、緩和により権利を制約されることになる少数反対者もございますので、そのような方の利益にも留意をする必要があると考えられます。   次の(2)の建替え決議時の賃借権等の消滅につきましては、今申し上げた建替えを円滑化する仕組みと関連するところがございますが、現行法では、建替え決議が成立しても、専有部分について設定された賃借権等については特に影響がなく、建替え工事の円滑な実施が阻害されているとの指摘がされています。そこで、一定の手続の下で賃借権等を消滅させ、建替えを円滑にできるようにするという仕組みを設けることが考えられますが、その際には、やはり賃借人の居住の利益等についても留意をする必要があると考えられます。   (3)では、区分所有関係の解消等について記載をしております。現行の区分所有法では、区分所有建物と敷地の一括売却や建物の取壊しを行うためには、全員同意が必要と考えられていますが、これを一定の多数決でできるようにすることが考えられます。また、現在では、建替えのように建物を取り壊さずとも、全ての専有部分と共用部分について工事を行い、実質的に建物の建替えと同様の工事を行うことも技術的には可能とされていますけれども、建替えとは異なることから、区分所有者全員の同意がなければ、そういった工事を行うことができないと考えられております。そのため、こういった工事についても、一定の多数決でできるようにすることが考えられます。これらの場合にも、やはり少数反対者の利益に留意する必要が考えられますし、また同様に、区分所有権の処分を伴う建替え決議要件の在り方との関係も踏まえる必要があると考えられます。   (4)と(5)では、団地関係にある建物の建替えの円滑化や、再生のための新たな仕組みについて記載をしています。   まず、団地内建物の一括建替えや、団地内の特定建物の建替えについては、決議要件がやはり厳格であるために、必要な建替えを迅速に実施できないといった指摘がされていることから、これらの決議要件を緩和することが考えられます。また、現行法では、基本的に団地内建物の一括売却や団地の敷地の分割を行うためには、これも全員同意が必要であると考えられていますので、マンション建替え円滑化法に定められている場合以外でも、多数決によりこれらを行うことを可能にすることも考えられます。いずれの検討におきましても、単棟の区分所有建物の建替え決議と同様に、少数反対者の利益等に留意をし、ほかの決議要件との関係も踏まえる必要があると考えられます。   最後に3でございますけれども、被災した区分所有建物の再生の円滑化を図る方策について記載をしております。   (1)では、被災した区分所有建物の再建等に関する多数決要件の緩和を取り上げております。被災区分所有法に設けられている各種決議は、基本的に各母数の5分の4以上の賛成多数が必要など、基本的に建替え決議と同様の決議要件とされていることから、決議要件が厳格であり、必要な再建などの迅速な実施が阻害されているとの指摘がされております。そのため、これらの決議要件を緩和することが考えられますけれども、平時の区分所有建物、単棟の区分所有建物と同様に、少数反対者の利益に留意する必要があるのではないかといった点や、区分所有法における建替え決議要件との関係にも留意する必要があると考えられます。   また、大規模一部滅失をした区分所有建物に関する被災区分所有法に基づく決議は、災害を指定する政令の施行の日から1年以内にする必要があるとされていますが、被災した区分所有者にとって、1年間の期間制限は短すぎるのではないかといった指摘がされています。そこで、期間を限定することによって被災地の迅速な復興を図るという決議可能期間の趣旨を踏まえつつも、決議可能期間を一定程度延長するということが考えられます。   次に、参考資料3について御説明申し上げます。   参考資料3は、各種多数決割合等について、表形式でお示しをしております。まず、1枚目は、単棟の区分所有建物に係る多数決要件の比較表です。2枚目は、団地関係にある区分所有建物に関する多数決要件を比較しています。いずれにつきましても、マンション以外の区分所有建物、マンションである区分所有建物、そして被災した区分所有建物に分けて記載をしております。ほかの決議要件との並びやマンションかどうかによって決議要件が変わるかを検討する際に、参考としていただければと思います。   そして、3枚目ですけれども、単棟の区分所有建物と団地関係にある区分所有建物のそれぞれについて、マンション建替え円滑化法に基づく事業があるかどうかを記載しております。事業の有無や事業の要否を検討する際に、参考としていただければと思っております。   簡単ではございますが、部会資料1及び参考資料3の説明は以上でございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。区分所有法制に関連するものといたしまして、国土交通省の所管するマンション法制があります。そこで、矢吹幹事から、マンションに関する法体系につき、参考資料2の説明を頂きます。よろしくお願いいたします。 ○矢吹幹事 国土交通省の矢吹と申します。どうぞよろしくお願いいたします。   先ほど御紹介もありましたとおり、私どもでマンション管理適正化法並びにマンション建替え円滑化法を所管しております。今般の区分所有法制の見直しは、私どもが担当しております、いわゆるマンション政策に大きな意味を持つものだと考えてございます。この法制審議会での議論も踏まえながら、また、法務省ともよく連携をしながら、マンション政策ですね、よいマンションの管理の水準を上げていくとか、そういうマンション政策についても、検討をしっかりと、国土交通省としても進めていきたいなと考えてございます。   資料を簡単に用意してまいりました。参考資料の2でございます。   大きくマンションに関する法体系ということで御案内のところですけれども、真ん中、緑のところです、区分所有法がまずございますと。区分所有法については、区分所有建物に係る権利義務関係、例えば、共用部分、専有部分の概念を置いているということでございます。その下、区分所有者の団体の基本ルールということで、管理規約でしたり決議のことが書いてあるということです。   私どもとしては、その下段でございます。マンション管理適正化法という法律を所管しておりまして、マンションの管理の水準を上げていくという政策課題に対応するための各種制度を持ってございます。例えば、上から二つ目のポツですけれども、適切な管理計画を有しているマンション、例えば、長期修繕計画がしっかりあるとか、修繕積立金がきちんと設定されているとか、管理計画がしっかりとしたマンションを、地方公共団体が認定をする管理計画認定制度というものを創設して、この4月から施行してございます。   その下のポツです。地方公共団体が、これは余り管理の状態がよろしくないマンションに対してということですけれども、地方公共団体が管理組合に対して助言、指導ないしは勧告をすると、この制度もこの4月から施行したところでございます。   法律以外の部分でも、例えば、マンションの管理組合の規約を定めるときに、標準的なモデルとしてマンション標準管理規約というものをお示ししていたり、あとは、マンションの長期修繕計画を作るに当たっての、その参考にするための各種ガイドラインなどを用意しておりまして、全体を通じて、そのマンションの管理の適正化を図るという政策を持ってございます。これが管理の話でございます。   右側、そのピンクのところですけれども、マンションの建替えについての法律でございます。マンションの建替え決議自体は、区分所有法の中にございます。この建替えの決議を、事業法たるマンション建替え円滑化法で受け止めるという形になっております。   右側でございます。建替え決議が行われた後に、マンション建替え事業という、事業法をこの法律の中で入れております。例えば、マンションの建替えをするときに、建替組合を作れますとか、建替えをするに当たって、権利変換の手法を使うというようなことが、この建替え事業の中に法律として入れてございます。   もう一つ、この建替え決議をよりしやすくするという観点で、一定の措置を講じております。要除却認定という言葉を記載しておりますけれども、耐震性不足のマンションですとか一定の類型のマンションについて、行政庁が、このマンションは除却をした方がよいという認定を行った効果として、容積率の特例をもたらすという効果をこの中に入れております。また、この要除却認定を受けたマンションについては、敷地ごと売却をする敷地売却事業ですとか、団地については、その団地の敷地を分割して、分割した土地の中でマンションの建替え事業などを行うというような、敷地分割事業を用意してございます。全体を通じて、そのマンションの管理ないしは建替えが適正に、かつ、円滑になるような法体系にしてございます。   各論を、少し次のページにもってまいりました。   先ほど申し上げましたけれども、マンション管理適正化法の概要ということで、平成12年にできた法律でございます。真ん中にマンションの管理の主体である管理組合というものを位置付けまして、例えば、公共団体が管理計画の認定ですとか助言、指導をしていって、その管理の適正化を図るですとか、左下にございます、マンションの管理業者というものもありますので、この管理業者の登録制度ですとか、その業者さんには管理業務主任者という有資格者を置いてくださいというような設計にしてございます。関係する方々として、専門家であるマンション管理士さん、あとはマンション管理適正化推進センター、これは大臣が指定することになっておりますけれども、マンション管理センターが様々なサポートをするというような関係性になってございます。   次のページ、お願いいたします。   マンション建替え円滑化法です。これは、平成14年にできた法律でございます。主な概要のところに記載しておりますけれども、マンション建替え事業というものを用意しておりまして、組合を作って、行政認可の下で安定的にマンションの建替えができるという設計にしてございます。   もう一つ、除却の必要性があるマンションの特例ということで、これも先ほど申し上げましたけれども、要除却認定制度というものを用意しておりまして、一定の条件を満たすマンションについては、除却が必要なマンションということで行政庁が認定をいたしまして、そのマンションについて、建替えをするに当たり、建替え後のマンションの容積率を緩和するという制度を設けております。また、そのうち、さらにということで、特定要除却認定という形にしておりますけれども、耐震性が不足している、火災の安全性が欠けている、外壁の剥落など、危険性を有するようなマンションについては、その認定を行うと、マンションの敷地ごとディベロッパーなどに売却できる敷地売却事業ですとか、団地の敷地の分割ができるというような、マンションの再生をより行いやすくするような措置を、この中で入れてございます。   簡単でしたけれども、以上でございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。本日は1回目の会議でございますので、ここから次回以降の本格的な審議、調査に向けて、フリーディスカッションをまずは行いたいと考えております。   今回の諮問におきましては、区分所有建物の管理の円滑化、区分所有建物の再生の円滑化、そして被災区分所有建物の再生の円滑化という、三つの観点を中心として検討が求められております。先ほど山根関係官から説明を差し上げました資料1におきましても、この三つを分けて問題が提起されております。そこで、ここからのフリーディスカッションにおきましても、厳密ではありませんけれども、この三つを区分して議論を進めていきたいと存じます。内容的には相互に関連するものもありますので、先ほど申しましたが、厳密に余り受け取っていただく必要はないのですけれども、まずは、総括的な意見として三つの部分に分けて御意見を賜り、また議論をしたいと思っております。   最初は、部会資料1の2ページ、第2の「1 区分所有建物の管理の円滑化を図る方策」について御意見を賜れればと存じます。どなたからでも結構ですので、御順に御発言いただければと存じます。いかがでしょうか。 ○増田委員 部会長、ありがとうございます。今日、第1回目ということでもございますし、フリーディスカッションということで、今、部会長の方からも、この三つについて、余り厳密に考えなくてもよろしいというお話がございましたので、少し全体に係る総括的なことでお話申し上げさせていただきたいと思います。   私、以前、大分前ですけれども、岩手県の知事をしていたことがございまして、その後、東日本大震災が起きて、実は、所有者不明土地が相当広範に広がっているなということを、復興の際に目の当たりにしたことがございます。ちょうど私は知事を降りておりましたけれども、大分現地で苦労していたということで、土地の所有者不明化とか管理不全化というのは、やはりこれから大きな社会問題になってくるなと、そういう意識がございましたので、全体の賦存量などについて、全国調査をするようなことも行ったことがございます。   これにつきましては、法務省の方でも随分積極的にお取組をなされて、民事法制を改正して、それから、あわせて、国土交通省の方でも土地法制を改正されて、実際に予算、税制措置を行うということ、総合的な対策を採られたんで、こちらの観点は随分成果が出てきたのではないかと思います。   特にその際感じましたのは、所有者不明、それから管理不全の土地、建物の管理制度に代表されるように、まず民事法制を改正して、それで、民民の関係で採り得る手段というのを強化をして、その上で、行政法の方を改正して、行政主体にその手段に関するいわゆる権限というんですかね、特別の権限を与えると、こういうやり方で、その際に行われたと、こう見ておりまして、実は私も、法務省で今日と同じような形で所有者不明土地について検討されたときに、委員に加えていただいて、その中に参加させていただいたことがございます。   今も、先ほど申し上げましたように、日本郵政という会社におりますんで、何で日本郵政の人間がここに入っているんだろうとお思いになる方もいらっしゃるかもしれませんが、そんな経過もございましたので、今回またこちらの方に参加するということになったかと思いますが、要は、局長様からのお話にもございましたとおり、今回のこの区分所有建物の問題というのは、正に「都会の所有者不明土地問題」だと思いますので、これから講じる対策も、所有者不明土地のあの成果というのを踏まえて、あの枠組みというのを十分参考にしてやっていく必要があるのではないかと、こんなふうに思います。要は、行政庁で言えば、やはり法務省さんと国土交通省さんがちょうど車の両輪のような形で、片や民事、それから片や行政の総合的なアプローチで道筋を付けていくと、これが有効ではないかと思っております。   したがいまして、区分所有建物の管理や再生、それから今、部会長のお話にございましたとおり、被災区分所有建物の再生と、ここで三つ、これから検討を進めていくわけですが、その円滑化に当たっては、やはり同じように民民の関係で採り得る手段を増やすという方向で、区分所有法制の見直しの議論を行っていくという必要があるのではないかと、こんなふうに思います。そうした検討の成果を踏まえた上で、今度は国土交通省さんの方で、今御説明ございましたんですが、現在のマンション法制の見直しですとか、やはり実施していく上で予算とか税制上の措置も必要になってくると思います。そちらの方について、また行政側でしっかりと検討していくと、こういうことでやっていきますと、これから随分、先ほどのあれによりましても、区分所有建物の老朽化したもの、それから居住者の高年齢化というのが進んでおりますので、そうした問題の解決に資するのではないかと、こんなふうに思っているところでございます。   そういったことで、各論については次回以降ということでございますが、今日はフリーディスカッションということで、初めに私の問題意識を述べさせていただいたところでございますけれども、これから実質審議が始まっていく上で、是非国民に対しての有効な解決策となるような、この場のような検討を進められればと、こんなふうに思っている次第でございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。マンション法制について、総合的な対策の必要性を御教示いただきました。法務省、国交省始めとして、関連省庁におかれましても御留意いただければと存じます。   また、「都会の所有者不明土地問題である。」という印象的なお言葉を頂きました。既に先般の所有者不明土地問題についての見直し、民事法制、あるいは総合的なほかの法制の見直しの成果を十分踏まえて、こちらも所有者不明土地の問題と同じように、立法が終わった後、一定の成果が出たなというふうな評価が受けられるよう、努めてまいりたいと存じます。ありがとうございます。 ○鎌野委員 どうもありがとうございました。今の点も非常に大事な御指摘だと思います。   それで、ちょっと私、本日2時半から授業がございますので、途中退席させていただきますので、ちょっとここで一言だけ、私の意見というか、簡単に申し上げさせていただきたいと思います。   お話にあったように、この資料1の2ページの下のところに、管理の円滑化、それから再生の円滑化、それから被災区分所有建物の円滑化、どれも大事で、部会長がおっしゃったように、一応切り離して考えるということは、非常に大事なことだろうと思います。ただ、特に1と2は非常に密接に関連をしていて、2番の再生の円滑化、これについては、これまでのそういった再生の、建替えなどの実績、それから今後それを、法改正をして実現するであろう、そういった実現可能性といいますか、そういったことをにらみながら行い、それとの関係で、①の管理の円滑化ということで、1、2、それぞれ別に検討するということは、その方がよろしいと思いますけれども、とはいっても、①と②というのは、非常に密接に関連するんだと、だから、再生ということが、今後どれだけ法改正によって可能かというようなことで、①のやはり管理の円滑化という方も、変わってくるのだろうと思います。   それで、その観点で、ちょっと参考資料の3について、一言申し上げたいと思います。別に訂正の要はないし、特に注記を加える必要はないと思いますけれども、3の管理と変更のところに、管理のところは過半数、それから変更のところは4分の3ということですけれども、これについては、委員の皆様に言うまでもないことですけれども、やはりこの過半数というのは、実際には、区分所有法上も、規約によって別段の定めを認めているということで、実態としては、国交省さん作成のマンション標準管理規約などでもそういう定めをしておりますけれども、実際は、議決権の書面による行使者とか、それから代理人の指定とかというものも含めて、そういう定足数を集会に設けて、そして集会出席者の過半数ということですので。そして、多くの管理組合などは、そういったことで運用しておりますので、過半数という意味合いが、変更の場合の4分の3というものと大きく違うというようなことで、先ほど申し上げた管理の円滑化をいうときに、例えば、変更についての決議要件の中で、そういうことも含めて考えることが必要かなということで、ちょっと先ほど申し上げましたように、間もなく退席させていただきますけれども、ちょっと一言申し上げておきました。   どうも失礼しました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。再生の円滑化と管理の円滑化、これは、項目としては議論の進め方の観点から分けておりますけれども、御注意いただきましたとおり、密接に関連するものといいますか、目指しているところは、区分所有建物があるべき状態で、そこに住んでいる人、あるいは事業を営んでいる人にとっても使いやすく、社会にも迷惑が掛からない、そのような状態が実現されるということでありまして、管理の充実を当然図るとともに、どうしても仕方がないというときに再生を、これもまたその円滑を図ると、全て一連の流れのものとして捉えるべきだということであろうと思います。御指摘ありがとうございました。   ほかにいかがでございましょうか。 ○小林委員 ありがとうございます。資料1でございますけれども、ここに記載されている検討課題、私もいずれも大変重要な論点だと思っております。いずれも検討する必要があると認識しておりますけれども、まず、①のところで、管理の円滑化という表題が付けられておりますけれども、管理不全を起こさないためにも、管理組合の意思決定を円滑に行えるようにするということが、非常に重要だろうと思っております。中でも、それを阻んでいる大きな要因が、先ほど来お話がございますけれども、所有者の不明化、あるいは非居住化という問題状況ではないかと考えております。   この資料1のところに、30年度の調査結果で、所有者不明等の空室があるマンションの割合が3.9%、そのうち総住戸に対する割合が20%超のマンションが全体の2.2%と書かれておりますけれども、この数字は、正に恐ろしいほどの数字だろうと思っております。マンション全体の状態を安全かつ快適に保つためには、日頃の維持管理が重要でありますし、そのための費用は、管理組合が区分所有者から集める管理費で賄うわけですけれども、所有者不明等の空室があると十分な額が集められなくなりまして、満足な管理ができなくなるおそれがあります。   管理費以外にも、修繕積立金というものがございまして、十数年に一度の割合で行う必要がある大規模修繕に充てられるわけですけれども、これが不足しますと、必要箇所の修繕を見送るとか、あるいは、修繕の間隔を延ばしたりするということが起きてきまして、そういうおそれのあるマンションがこれだけの数あるということになります。荒廃したり、あるいは老朽化のスピードが上がって、マンションの住人だけでなくて、周辺地域にも迷惑を掛ける可能性があるということになります。   私どもマンション管理センターでは、管理組合の役員の方、あるいは区分所有者の方などを対象として、無料の相談というのを行っておりまして、年間に1万件ほど相談がございます。いろいろな相談がありますけれども、最も悩ましい問題の一つが、この所有者不明の問題であります。相続が発生して、登記もされないで、誰が所有者か分からない、どうすればいいだろうかというのが、最も典型的な相談ですけれども、中には、区分所有者が死亡して、相続人が確定しないで長期間たって、ようやく探し出して意思を確認したけれども、相続はしませんと、あとの始末は管理組合でやってくださいというようなことを言われてしまったというケースも中にはございます。管理組合の役員というのは、ほとんど素人の方、なおかつボランティアのようなものでありますけれども、こういう困難な状況に直面して、非常に困り果てている人が多いというのが、現実の姿であります。   また、この所有者不明については、建替えとの関係でも5分の4の要件の確保が難しいという切実な問題があります。このような場合に、この検討課題の中にも書かれているわけですけれども、一定の要件、手続の下で、分母から除くことはできないかという意見は、組合の関係者からよく聞くところでございます。   なお、区分所有者の非居住化に関しましては、この資料の3ページの検討課題の1の(2)に書かれているような問題のほかに、例えば、区分所有者が外国に居住しているような場合に、円滑な管理費、修繕積立金の徴収のための制度的な対応が必要でないかというような問題もございまして、これは、研究会の報告書の方の32ページにも記載されているところでありまして、検討が必要かなと感じております。例えば、国税通則法の117条にあります納税管理人のような制度、あるいは令和3年度の不動産登記法の改正における国内の連絡先の登記の制度、こういうような先行制度が参考になると考えております。   もう1点、管理組合による区分所有権の取得という問題がございます。これも研究会報告書の39ページ以下に記述があるわけでございますけれども、例えば、専有部分が競売に付されたような場合、管理組合が区分所有権を取得することができるかというのは、必ずしも明確ではないとされているようでありまして、しかしながら、現実には取得して、集会室等に利用したり、あるいは転売するというケースが一定数あると言われています。この点についても、検討が必要かと考えております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。先般の所有者不明土地問題に関する民事基本法制の見直しにおきましても、区分所有建物においても所有者不明の問題は深刻であるということは認識されておりました。しかし、区分所有建物に関しては、一般の土地建物とは違う考慮が必要であるということで、その時点では特段の手当てをしなかったというか、先送りになったところでございます。今、小林委員がおっしゃったとおり、区分所有建物の特性に照らして、この問題にきちんと対応するということは、極めて重要であろうと存じます。御指摘ありがとうございます。   また、本日は概要の説明ということでありますので、この資料には、必ずしも個別の項目について書き込んではおりませんけれども、ここに掲げたものに限られているわけではない、重要な問題はほかにもいろいろあるという御指摘も頂戴いたしました。誠にありがとうございます。   ほかにいかがでございましょうか。 ○浅見委員 どうもありがとうございます。まず、一般論として、この区分所有法制をどう考えるかというとき、ガイドラインとして私が考えておりますのは、一つは、区分所有者が適切な判断ができるということ、そして、その判断に基づいて適切な措置ができるということだと思います。適切な判断をするためにどういうことが必要かと考えると、恐らく適切な情報というか、例えば、自分が住んでいるマンションの状況はどうなのかということを適切に把握するだとか、あるいは、今後どういったことが起き得るのかということを、適切に理解するだとか、あるいは住んでおられるほかの方々の事情がどういう状況なのか、例えば、すごく困っている方がいた場合に、そういうのも配慮しなければいけないわけですけれども、そういったこと、そして、先ほど小林委員もおっしゃっていましたけれども、やはり素人の方が多いということを考えると、専門的な知見を適切に得られるということもあると思うんですね。この部分については、今回は必ずしも区分所有法制ではないのかもしれないですけれども、重要な論点ではあるので、それもきちんと考えておいた方がいいと思いました。   適切な措置、ここは、更にいろいろな手続に関連するわけで、議決の問題と、それから議決したことに基づいた実施の問題ということで、これがそれぞれ適切に行えることが必要だと思います。例えば、適切な措置ということで言いますと、一例を挙げると、余りいい例ではないかもしれませんが、例えば、過半数が建て替えるべきだと思っていれば建て替えるべきだし、過半数が建て替えるべきではないと思っているんなら建て替えるべきではないと思うんですが、実はそのグレーゾーンが、特別多数決を導入しているために結構広いわけですね。そこの部分は今、全て措置ができないというか、実施ができないという状態にしているわけですけれども、そこの部分にいろいろ問題があるというのが現状だと思いますので、そこのところを、もう少し厳密な形で考える必要があるのかなと思っています。   例えばなんですけれども、他者に迷惑を掛けている場合とそうでない場合、もし迷惑を掛けているんであれば、より早く実施する必要があるので、それは一定の緩和が必要だということは、より強い緩和が必要だとは考えます。これが、一般論としての私の考え方です。   それから、もう一つは、財産の適正な管理というのが実際に必要ですけれども、これは、必ずしも現状維持ということではなくて、よりよくしていくということも、当然あり得ると思うんですね。若干そこの部分は、やや消極的な感じで現在考えられているのではないかと思うんですけれども、そこの辺りは、もう少し積極的に考えることができるような、つまり、財産の優化というんですかね、そういうこともできるようにしていくのがいいのかなと思いました。   それから、個の問題と集団の問題をなるべく分離するというのも重要かなと思っていまして、典型的には、借家の問題だとかだと思うのですけれども、個の問題が集団の問題を大きく阻害してしまうというのが、現状あるわけですけれども、その個の問題は個の問題として解決できるような仕組みを作っていく必要があると思います。   前の研究会では、マンションに住んでいるということが、もう既にそういうような、不動産を使っているということなので、普通の借家法の適用とは違うのではないかというような御議論もあったようなのですが、そういったこともあるのかもしれないし、あるいは、別の形で個の問題として解決できるような、集団の問題には影響しないような方法というのを考えるということもあり得るのかなと思いました。   それから、今後のことを考えると、建替えよりも解消が、実は極めて重要だと思っていまして、より解消の可能な方法とか、あるいは減築みたいなことが可能な方向だとか、そういったことができるといいと思いました。   それから、もう一つ、一番最初に「二つの老い」というのがあったのですけれども、判断ができない区分所有者と、判断が必ずしも適切にできない、できることはできるんだけれども、必ずしも対応が適切ではないかという意味での区分所有者というのがあり得ると思うんですね。例えば、意思表示をしないというのは、できないわけではないんだけれども、実際には適切ではないのだろうと思います。こういった方々を、同じカウントにしていくということが、本当に適切なのかというのは、私自身問題意識を持っていまして、例えばなんですけれども、あんまり関心がない場合に、それに時間を掛けることが損だと思う人って、結構実はいるんですよね。そういうところを、全く同列に扱うことが本当に適切かという疑問があるので、そういったことを少し考えつつ、今後の改正議論を考えていいと思いました。   それから、最後になんですけれども、少数者の保護という言葉が時々出てきます。これは、少数者の保護というのは極めて重要なのですけれども、他方で、多数者のある種の保護というのもやらなければいけなくて、したがって、少数者がより悪い状況にならないようなことを担保した上で、多数者の利益を追及していけるような仕組み、例えば適正な給付だとか清算だとかという、そういうのをより適正化していくという、あるいは厳密化していく、これによって、全体として、少数者も保護されるし、全体としても進むと、こういった仕組みにできればいいのかなと思っております。 ○佐久間部会長 多岐にわたる御指摘、ありがとうございます。伺っておりまして、伝統的な法観念、法的思考というのには理由があり、それを守ることには、社会の安定も含めて非常に重要な意味があると思っておりますけれども、それだけでは足りないのではないかという、場合によっては大胆な見直しも必要になるんではないかという御指摘と受け止めました。ありがとうございます。 ○齊藤委員 どうもありがとうございます。横浜市大の齊藤でございます。まず、貴重な機会を頂きましてありがとうございます。また、丁寧な御説明、どうもありがとうございました。この議論が、国民の皆さんが安心してマンションに暮らせるということに、確実につながっていけるように努力してまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。   私が危惧しておりますのは、非常にマンションが多様化してきているこの現在において、マンションの全体像を見ながら、どういうふうに議論していくのかというのが、大変重要だと思っています。私は、約40年間マンションの実態、それを把握して、どういうふうに管理や再生をしていけばよいかを考える研究をしてきていますが、その中で、先ほどから話題になっている、非常に解決が難しい所有者の不明問題、想像もしていなかった管理不全マンションの問題、外国の方が所有するような問題など、様々な問題が起こり、解決が難しくなっています。これらの問題は、決して法律だけでは解決できない問題です。ですので、この場は法律を議論する場ですが、それと一緒に制度や政策なども考えていかないと、現実の問題に対処できないのではないかと考えております。そういう意味では、マンションに関しては区分所有法の議論だけではなく、国土交通省の中でも議論できる体制が既にあると聞いておりますので、是非こういった形で総合的に考えて、マンションをより安心して暮らせる場にしていく必要があると思っております。   マンションが多様化している中で、私たちはどう判断すればよいかという、難しい側面があると思います。例えば、人によって見ているマンションが違うと、どのマンションを見ているか、どの地域の、どんなマンションを見ているかによって、かなり状況が違い、意見も異なってくると思いますので、是非お願い事として、今後議論をしていく中で、できるだけバックアップになるようなデータがあれば御用意いただきたい、あるいは、この中でお持ちの方、関係者がお持ちの方がおられたら、有意義な議論が前に進んでいけるような情報を共有していきながら進めていくということが、重要ではないかなと思っています。そうしませんと、なかなか議論が集約していかない。おっしゃられたように、限られた時間の中で成果をしっかり上げていくためには、バックアップのデータが重要ではないかなと思っています。   今回、区分所有建物を対象にするということで、私は主にマンションを想定していますが、区分所有法ですから当然、先ほど資料3にもありましたような区分所有建物、いわゆるビル、区分所有ビルも対象になってくることになります。区分所有の建物、ビルは、割と少ない人数で所有されているケースが多いとか聞きます。そうなりますと、4分の3、3分の2という議論、それがどういう影響を与えるのかということもありますので、もちろんマンションを中心に考えるとしましても、それらの法律の改正が全体的にどのような影響を及ぼすのかということも、総合的に考える必要があると思います。その中で、私も区分所有のビルがどのぐらいあるのだろうって調べて探してみたのですけれども、今日までにデータが探し出せませんでした。一体どんな状態で、どこにあり、古いのはどのぐらいあって、どのような所有の状態になっており、管理や再生にどんな課題があるのかが分からない状態での議論は、難しいのかなと思います。そこで、あらためて、是非議論を確実に前に進めて、意見を集約していけるように、そして現実の社会に合ったものに改正していくという意味からも、お願い事になりますが、裏付けをするようなバックアップのデータを共有していただければと思っています。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。バックアップのデータはよろしくお願いいたします。また、総合的対策の必要性は、最初の増田委員の御指摘と重なるものと受け止めました。さらに、きめ細やかな検討の必要性も頂戴いたしまして、留意してまいりたいと存じます。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○大桐委員 先ほど、データという話が出ましたけれども、日弁連でも同じような問題意識が出ました。管理に関する、共用部分の変更は、区分所有法では、現行法4分の3で、耐震改修促進法では過半数です。この過半数というのが、実際にどのような効果があるのか、この過半数にしたことによって、耐震改修工事が進んでいるのかどうかですね。例えば、否決の場合には、その否決の理由ですね、そうしたアンケート等を広く実施していただいて、国交省さん中心にデータなどを公表していただければと思います。また、それ以外の部分、建替えにつきましては法務省さんになるかと思います。どのような理由で現行法の5分の4ではうまくいかないのか、その辺りのデータなどを参考に、こちらとしても検討していく大きな材料になるかと思いますので、御提供いただければと思っております。それが1点目。   また、その共用部分の変更につきましては、耐震改修という大掛かりなものから、エレベーターを新規設置するとか、集会室を収益物件にするだとかという、効用の著しい変更につきましても変更ということで、概念として幅の広い概念であります。ですので、要件を緩和するにしましても、必要性が高いもの、低いものがあるということを念頭に置きつつ、慎重に検討をすると。一方で、要件が複雑化することによるデメリットもありますので、そちらも踏まえながら検討を進めていきたいと思っております。   それから、議題にはないのですけれども、3点目としましては、管理に関するものとしては、戸建て団地というのがありまして、問題点としては、区分所有法の65条の要件とも関係してくるのではございますが、戸建てを建てるということで土地を購入したものの、建物を建てずに更地状態で、しかし、共用通路ですとか管理室などにおいては共用持分を持っているというケースにおいては、その建物所有者のみが構成員になりという条文上の構成になっておりますので、建物所有者ではない土地の所有者は構成員にならないと読めるという問題点が一部で指摘されておりまして、そうなりますと、集会の効力ですとか規約の効力も及ばないのではないかと。そうなりますと、戸建て団地の通路ですとか庭の管理ですとか、そういった管理費の支払義務の有無の問題点も出てくることもございますので、そういった検討課題もあるという話が出てまいりましたので、御紹介いたします。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。最後の点は、先ほど齊藤委員から、マンションあるいは区分所有建物といっても様々であるとおっしゃっていただいたのと同じことが、団地にもあるということで、様々な形態、あるいは実情にあるものについて、最終的にはある種の考え方をまとめて出さなければいけないんですが、きめ細かく見て検討を進めていきたいと存じます。ありがとうございます。 ○紺野委員 発言の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。我々住む側の立場として、現実の問題として出てきているのが、要件の緩和といいますか、一番やはり管理組合として困ってしまう、例えば、議決権がこのように緩やかになって、再生というか、立て直しとか、そう言っていますけれども、リノベーションができたり、今の世の中、SDGsって叫ばれているように、何とか今の財産を生かしていく方法も、一つの方法ではないかと。殊に最近は、少子高齢化、それから孤独死、それから判断能力がにぶって、俗に言う認知症ですね、そういう人たちがいて、実は後見人を付けていたよと、その間、実態には施設に入っていたけれども、なかなかというのが出てきております。   例えば、ここで出てきていますけれども、総会に出ないから、具体的に言いますと、出られないからって、基礎数から除いてしまう、そういう条件が管理組合として実態把握ができるかどうかなんです。実は、具体的には、認知症の方が施設に入っていると。ところが、そこには後見人が付いていたんだという場合ですよね。だから、ずっと2年も3年も入っているから、実態として管理組合はその状況を、本当に管理会社の方が情報を知っているというのが、そこが見逃している場合とかあるわけですよ。区分所有法というのは、元々財産管理の法律と捉えているわけです、管理組合は。ところが、それは侵害してしまうのではないかと、権利をです。そこら辺の議決権の行使の場合でも、いろいろな条件を付けないと、厳しく条件を付けておかないと、ただ、出てこないからとか、総会なんかも出てこないから、基礎数から外して、多数決原理でもって判断してしまうよとか、そういう議決権を奪うのかというような形でも出てくるのではないかと、それの責任は誰が負うのかということで、現場実態として、それが逆に管理に影響してくるのではないかというような、私もちょっと心配しております。ただ、議決権数という、多数決原理だけで、本当にその条件を満たしていくためには、どのような条件を付けていくか。   ただ、5分の4とかいろいろありますけれども、そこら辺の人格権も含めて、財産管理という点も見ていかないと、殊に後見人制度との絡みもいろいろ出てくると思うんですが、そこら辺の民法との関係も、特別法との関係も見ていかないと、ちょっと運用的にはいろいろトラブルの元になっていくのではないかという懸念もしております。これは一部ですけれども。   以上です、ちょっと心配しているのは。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。現場の実情をきちんと踏まえて、ワークするような要件設定を心掛けるということで、御注意いただきましてありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。皆様方の意見と重なるところがございますけれども、老朽化マンションが急増していることですとか、所有者の皆さん方の高齢化が進むということ、また、今後大規模災害というものも起こり得るということで、その対応として、建替えですとか修繕などを促す今回の区分所有法制の見直しの目的や必要性については、理解ができるところです。   先日、こういった問題を特集した報道も拝見いたしまして、大変重要で喫緊の課題だとも思いましたし、ただ一方で難しさも感じたところです。建替えの合意形成を図るために、数年単位の時間を掛けて話し合いを重ねても、合意に至らないケースがあるなど、区分所有者の皆さん、お一人お一人の考えや、抱えている事情というのは様々でありまして、そういった中で、今後誰もが少数反対者になる可能性もあると考えております。   浅見委員のおっしゃることの裏側から申し上げるようなことになりますけれども、管理、再生の円滑化を検討するに当たりましては、少数反対者の利益の保護や生活実態にも目を向けた丁寧な議論が必要と思います。特に、身寄りのない高齢者、単身高齢者の方やひとり親家庭、障害者の方など、いわゆる住宅弱者の方への配慮の視点というものは、欠かせないと思います。   また、そういった観点で申し上げますと、本部会のミッションは、あくまでも法制の見直しですけれども、先ほど齊藤委員がおっしゃっていたように、多数決要件の緩和など、法的な見直しを行えば解決するものではないと考えますので、例えば、住宅弱者の受入れ先として期待される公営住宅ですとか、UR住宅の増設といった、環境整備を併せて行っていくという認識に立って議論していくことが必要ではないかと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。マンションは、言うまでもなく生活の場でございますので、その生活に著しい影響を与えることになるということ、なり得るということをよく意識しながら、議論を進めてまいりたいと存じます。 ○吉原委員 ありがとうございます。私も、これまでの委員の先生方の御発言と重なるところがあるのですけれども、区分所有者の不明化、非居住化が進む中で、管理組合が担う役割というものが、従来よりもはるかに大きく、また難しくなってきていると感じます。特に合意形成におきまして、日頃から住民の生活状況や居住状況を把握したり、名簿の作成、維持というものも、大きな役割になってきますし、そうした積み重ねの中で、合意形成の母数を確定するという、個人の権利に関わる極めて重要な要素が、管理組合の業務の中に入ってきているのだと思います。   そうした中で、先ほど素人の集団という言葉も出ましたように、法律の知識も持っていない住民の方々が、実際に使える制度を作っていくことが必要であろうと思います。この区分所有法で規定をするだけではなくて、先ほど齊藤委員の御指摘にもありましたように、それをしっかり実際の課題解決につなげていくための周辺の仕組みなども念頭に置きながら議論をしていく、大きな視点で捉えていくということが大事だと思っております。   例えば、今回、所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する仕組みや、新たな財産管理制度などが検討項目に上がっているところですが、これらの仕組みにつきましても、所有者不明土地問題の方で見えてきている相続人調査や所有者探索の難しさというものをよく踏まえた上で、制度を作っていくことが大事かと思います。専門的な知識を持たない管理組合の人たちが、過重な手続負担を負うことなく、また、ある程度のスピード感を持って制度を使っていけるようにしていくこと、同時に、所有者の権利保護を図っていくという、そのバランスを見極めていくことが肝要かと考えております。   所有者不明土地問題については、国土交通省の方で既に政策が進んでおりまして、実際に所有者不明土地に使用権を設定して一定の期間利用できる仕組みもできているのですが、実際に制度を運用してみると、改めて所有者探索の負担、それから判明した相続人との権利関係の調整の難しさ、それを素人の自治会や住民が担うことの大変さというものが見えてきております。せっかく仕組みができても、そうした手続負担の問題までセットで考えないと、制度はできても運用に至らないという結果になりかねません。   そこで、今回のこの所在等不明区分所有者に関わる新たな規律を設けるに当たっては、手続の重さが原因で制度の利用がなかなか進まないということにならないよう、所有者探索に関わる手続の在り方なども検討しながら、管理組合が実際に使いこなせる仕組みを作っていくことが肝要かと考えております。ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。極めて重要な御指摘で、所有者不明の土地や建物に関する民法の改正に関しましては、あれは、使われる場面というのはかなり大掛かりな取引を前提としておりますので、探索の負担が多少重くてもやむを得ない、あるいはまた、そもそもが不明の所有者にとってはほぼ権利の剥奪というか喪失につながるようなものでしたので、かなり慎重にというのは当然だったと思うのです。それに対して、今般のこの検討、これから開始しようとしている区分所有建物に関する所有者不明の問題というのは、日常の議決等にも関わるものでありまして、同じ負担でいいのか、同じく所有者不明といっても、同じ考え方でいいのかというのは、これはやはりよく考えなければいけない問題だろうと存じます。大変貴重な御指摘ありがとうございます。 ○中野幹事 ありがとうございます。被災区分所有法の関係なんですけれども、今回、区分所有法制の中で二つの法律を特に考えていくと。そのうちの一つなんですけれども、検討の割合からすると、やややはり低めというか、少ない方になるのかなと思います。その中での改正についての議論ということですので、やはり、前回研究会でも申し上げましたけれども、その立法事実ですね。なぜこの被災区分所有法について改正しなければならないのかということについて、やはりしっかりとした議論をしないといけないかなと思っています。   私は常々、この立法事実があるのかということについてお尋ねしていたんですけれども、よくよく考えると、立法事実があるということは、結局被災地で困ったことがあったという、そういうことですので、困ったことがあったことを、何度も作らなければいけないというのも、やはりそれは忍びないことですから、立法事実がないとしても、やはりここは改正が必要なんだろうというようなことを、我々が真摯に検討すると。その検討の仕方が、非常に工夫が要るのかなという気がしております。通常であれば、立法事実がたくさんあって、これは改正の必要があるよねというところで立法改正されるんでしょうけれども、今回の場合は、たとえ立法事実がなくても、やはりこれは改正しておかないと、いざというときに大変なことになるよというふうなことを、我々がしっかりと検討し、理解をしてもらうというような手続、ないし、この改正の議論が必要なのかなと思っていますので、かえって時間掛かることかもしれませんけれども、是非その点を含めて議論をしていただきたいなと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。先ほども御指摘ありましたけれども、データ、客観的な事実を踏まえて議論をすることの重要さが、当然一方でございます。他方で、客観的事実のみで、今ある問題だけを解決するということでは、今後また10年、20年たつと、もう一回深刻な問題が発生してから議論をし、立法のまた見直しをしなければいけないということになってしまいます。しかし、常に後追いでいいというわけにはいかない。   そこで、先のことを予見して何か手当てをするということになりますと、これは相当の覚悟が要ります。委員、幹事の皆様方の英知を結集していただき、いい見直しができればと存じます。ありがとうございます。   ちょっとここで、途中ではあるんですけれども、松井審議官がお越しになりましたので、一言御挨拶を頂きます。お願いいたします。 ○松井委員 法務省民事局で官房審議官をしております松井と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。時間急いでいるわけではないんですけれども、すでにわりあい自由にテーマをまたいで御発言を頂いておりますので、差し当たりとして二つ目のテーマである区分所有建物の再生の円滑化を図る方策も含めて、なお自由に御意見を賜れればと存じます。いかがでしょうか。繰り返しますが、区分についてはさほど気にしていただく必要はありませんので、もしここまで、管理に関することがメインテーマなんだなということで御発言を控えてられる場合などは、再生についても御自由に御発言いただければと存じます。 ○能登委員 まず、初めに、今回民間事業者の業界団体であります不動産協会にお声掛けいただき、こうした発言をさせていただける場を設けていただきまして、誠にありがとうございます。私自身は、三井不動産レジデンシャルという会社で、マンションの建替えの推進を現場で行っている者でございます。日々管理組合や一人一人の権利者様に、修繕か、建替えのいずれかを希望するのかをお聞きしたり、あるいは、まだまだ建替え自体の御理解が進まず、どのように考えればよいのかという御質問をお受けしたり、そうしたやり取りを日々行っております。本部会では、事業者としての意見を申し上げることはもちろんですが、管理組合・権利者の御意見やお考え等、数値的、統計的には示すことが難しい情報を、御提供させていただくのが大事な役回りかと思っております。そういった立場でこれから頑張らせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。   なお、建替え全般に関してですが、区分所有法の改正が実現をすれば、権利者の方々の生活環境の改善に大いに寄与するものと考えておりますが、やはり他の阻害要因もまだまだありますので、その対策も必要だと認識しております。管理、修繕、建替え、どの面でも費用確保が問題になりますが、建替えについては、先ほど矢吹幹事からの御説明にもありましたとおりマンション建替え円滑化法に容積率緩和という制度が設けられています。この制度がうまく活用できれば建替え後の建物の一部を事業者に売却して事業費に充てることで、区分所有者の方々の負担軽減も可能になります。しかし、高さ制限などの既存の形態規制が障害になる場面があり、なかなか制度活用が進まないという実態がございます。こういった本部会での区分所有法改正以外の課題についても、並行して検討を進めていければと、事業者として考えている次第です。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。データの提供については、よろしくお願いいたします。また、もう何人もの委員の方がおっしゃっておられることですけれども、法律を変えるだけでは、なかなかうまくいかない、それを支える実態が必要であると。そこは肝に銘じて進めてまいりたいと存じます。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○小林委員 すみません。先ほどマンションの再生の円滑化の方については言及しませんでしたので、その関係について発言をさせていただきたいと思います。   建替えが代表例だと思いますけれども、これは、そもそも大変な難事業だと思っております。計画作りには相当の専門知識が必要でありますし、今、能登委員からもお話ありましたように、容積率をアップして余剰分を売却しないと、現在の区分所有者の金銭負担が大きくなってしまうと、こういう問題があるんですけれども、容積アップがどれほど可能かという問題があります。仮にそれが可能であっても、駅から遠いなどの理由によって、売れる見込みがなければ絵に描いた餅になってしまうという問題もございます。   したがいまして、多数決の要件を改正したからといって、どんどん事業が進むというものではないとも思いますけれども、しかしながら、所有者不明の住戸があるとか、連絡がつかないとかいう事情も絡みますけれども、5分の4の要件、あるいは団地型の場合の棟ごとの各棟要件の3分の2、これを満たすことが現実には非常に厳しくて、最終的に合意に至ったとしても、時間が非常に掛かってしまうと、こういう問題もありまして、進捗を阻む大きな原因になっているというのが、事実だと思います。   全戸合意を目指して円満な事業推進を図るというのは、これは当然のことであるんですけれども、しかし、現実には5分の4などの要件というのは非常に高いハードルになっているというのが、私の現状の認識であります。また、明確な反対票以外に、棄権とか白票とか無効票が混じることがあります。これらの票は、結果的に反対票として扱われるということがありまして、これが合意形成を一層難しくしている面があります。団地型の場合の3分の2以上の賛成という各棟要件につきまして、例えば、3分の1とか過半数とかの反対がないという形にすることも、この研究会の報告書にも書かれているとおり、検討課題であると思っております。   私が調べた事例でも、1回目、2回目は団地全体で83.9%など、5分の4要件を満たしているものの、棄権票等が混じったことで、棟別の3分の2要件が未達成となった棟があって、それでも62.5%まではいっているんですけれども、それで二度、決議不成立となった事例がございまして、その事例では3回目でようやく成立をしました。建替えが、議論を始めてから完成するまでに、実に30年近く掛かったというような事例でございます。その間、エレベーターもなくて、あるいは天井も、今の標準よりも非常に低い、特に梁の下だと1.7メートルぐらいしかなくて、当時の子供世代の人にとっては、頭がぶつかってしまうというような中で、その間生活せざるを得なかったと、こういうような不便を託ってきたという面がございました。1棟の戸数が少ない場合には特に、少数者の反対でも棟別の3分の2の要件を満たすことができないというのが、一つ大きな問題としてあるのかなと思っております。   以上、総じて、マンションには多数の区分所有者が住んでおりますので、多様な意見が出るというのは、言わば当然のこととも言えるわけですけれども、何も決められなくて、身動きが取れなくなるというのが、一番困るわけです。こういう問題が起きて、中でいろいろごちゃごちゃし始めますと、いがみ合ったり、多数派工作をしたりというようなことも起きたりしまして、賛成派にとっても反対派にとっても不幸な状況が続くことになります。反対する区分所有者の権利保護に配慮しつつ、スムーズに意思決定を行えるような仕組みづくりをしていくことが、非常に重要であろうと。高経年のマンションは今後激増していくわけでありますので、そういう中で、決めるべきことが決められずに漂流するマンションが、できるだけ出ないようにしていくということが、大変重要であろうと考えております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。個別にわたる御意見で、またこの各論のところでも十分御意見を賜りたいと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○齊藤委員 ありがとうございます、齊藤でございます。マンションの再生、非常に重要で、大きな課題だと認識しております。しっかり皆さんと議論していって、スムーズな再生というのを考えていく必要があるというのは、本当に思っているところでございます。   5分の4か、それ以下の決議の要件にするのかというのは、建替えに与える影響は大きく非常に重要なことだと思います。この決議要件を考える際に重要なことは、マンションの建替え決議というのは、決してゴールではなく、事業が始まるスタートだということです。建替え決議が成立したから「終わった」のではなく、そこからがスタートですので、どういう状態にしておいたら、その後の事業がトラブルなく円滑に進むのかということも、一緒に考えていくことが非常に重要かと思います。決議は取れたけれども、そこから後は、もうもめにもめましたではいけませんので、そこの辺りを一緒に考えていくということが重要ではないかなと思っています。   それから、今までの建替えと今後の建替えは大きく変わってくるのではないかと考えております。今までのマンション建替えは、多くは事業者の方が入り、実質的にリスクを背負い、事業を進めてきています。しかし、これからの建替えは、事業者の方が入っていただけないような建替えが増える、増えざるを得ない状態になってくるのではないかと考えます。事業者の方は、収益性の高いところに入っていく。そうすると、今も既にこれだけマンションがあるのに、「建替えができたよ」というマンションは多くはない。今後、ますます事業性から見ると、事業者が入っていけない物件が多くなっていくのではないでしょうか。そのため、事業者が入らない形での建替え、いわゆる自主建替えが増えるとしたら、それを前提とした決議のあり方、そして自主建替えが成立する体制、サポート体制も必要です。もう既に皆さんが議論されてきたように、建替えが進まないのは、決して決議要件だけではないということです。ゆえに、決議要件のみ議論するのではなく、建替えが円滑に進むための体制づくりも一緒に、あわせて議論していく必要があるんではないかと思います。   そして、なかなか建替えできないなとなりますと、その議論としては、建物を解体し、敷地を売却するという道が選ばれていくことが増えていくと思います。初めから、建物を解体し、敷地を売却し、解散しよう。区分所有関係・共有関係を解消しようという道を選ぶケースは少ないかもしれませんが、建替えの検討を進めていくなかで、結果そうなっていくということもあると思いますので、再生の重要な選択肢として用意していくべきであると考えております。   そして、建替えがうまくいかない、だからといって敷地を売却し解消してしまうのでは寂しいなというマンションでは、改めてしっかり耐震補強をして長持ちさせていこうよという機運も高まっていく可能性があります。そこで、再生の一つの選択肢ということでございますので、耐震補強、耐震改修工事の実施も進めていく必要があります。大分できてきたと言われましても、旧耐震基準のマンションで耐震改修工事はまだまだでございますので、マンションで安心して暮らせるためには、こちらに対してもしっかりと対策を採っていくということも、併せて重要であると思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。これまでの区分所有法の改正、過去の改正では、ここは必ず、多分項目は区分所有建物の建替えとなっていたと思います。それが、今回は「再生」の円滑化でございまして、ここがもう時代の違いを反映して、極めて大きな点だと思います。今、齊藤委員が御指摘くださったのも、そのことであろうと思います。中には、一棟リノベーションという、建替えとは全く関係ない、これについてどうするかという問題も含まれておりますので、この点はしっかり議論して、どのようにすればマンションが、区分所有建物が、そのときそのときに合った状態を保てるのか、中にはもう、ここは取り壊すしかないというのもあろうかと思いますが、そういったものをいろいろメニューを用意して、区分所有者の皆さんに適切な判断をしていただける、そのサポートができる法制になればいいなと思っております。ありがとうございます。 ○齊藤委員 よろしくお願いいたします。 ○佐久間部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○大桐委員 建替えの円滑化とも関係する事柄ですけれども、昭和58年の改正、分離処分禁止の改正がなされる前に建てられたマンションにつきましては、土地の敷地利用権者と区分所有権者が食い違っている場合、具体的には、区分所有権者以外の者が土地の敷地利用権を持っているような場合、この場合には、その者の土地の利用権者の同意が別途必要になるということでございまして、そこが原因で建替えが進まないケースも出てくるはずです。これに関しまして検討が必要なのかどうか、事案がどれぐらいあるのかといったことも踏まえつつ、また、その解決策があるのかどうか。解決策の一つとしましては、令和3年の新しい財産管理制度の利用などが可能なのかどうか、それで本当に解決ができるのかといったことも、皆様方からも情報提供いただきながら、検討していきたいと思っていますし、また、検討をお願いしたいと思っております。   これに関して、法務省さんの方で何かコメント、解決策としてございましたら、お教え願えればと思います。 ○大谷幹事 ありがとうございます。これはまた、各論のところでの議論をさせていただければと思いますけれども、今御指摘のあったとおり、建物の所有者と、それから敷地の所有者がずれているというときに、どういう問題があるのか。少なくとも、土地の所有者が不明だということであれば、令和3年民法改正による所有者不明土地管理制度が使えるのではないかとは、今のところ思っておりますけれども、どの辺りが問題かということも、各論のところで検討していきたいと思います。 ○大桐委員 ありがとうございます。それから、あと2点ほど。   私どもが重要な論点だと思っておりますのが、建替え決議がなされた場合の賃借権等の消滅に関する論点でございます。こちらに関しましては、危険度が高く建替えの必要性が高い事案においては、前向きに検討すべきですが、民民で建替え決議がなされた場合に、賃借人が出ていかなければならない状況が、果たして合理性があるのかどうかについては、慎重に検討をしなければいけない事項と思っております。ですので、この(2)につきましては、大きな論点だと思っております。   そして、1の(4)、共用部分に係る損害賠償請求権等の行使の円滑化につきましては、建物を建築する際に、何らかの欠陥があって傾いたままですとか、有害物質を放出しているようなマンションですとか、途中で車が突っ込んでというような事案など、様々あるかと思いますけれども、不法行為の構成及び契約不適合の構成などが考えられる中で、旧区分所有者と新区分所有者の売買において、売主と買主がその欠陥を意識をしながら売買しているケースとか、気付かないまま意識しないまま売買しているケースの二通りが大きく分けられると思っておりまして、意識しているケースにおいても、ざっくりとディスカウントして代金に反映させて売っているケースと、共用部分の瑕疵なのだから、そこはもうディスカウントせずにそのまま売っているケースと、いろいろなケースがあるかと思いますけれども、そういったものを整理しながら検討していく必要があると思います。最終的には、修繕をしてきちんとした建物にしていくという必要性が高いと思っておりますので、(4)につきましては、是非とも法文化までいくことを目指したいと思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。各論のところで、また詳しくは検討させていただくことになろうと思いますが、現時点において重視されている項目について承りました。   ほかにいかがでございましょうか。 ○森本委員 司法書士の森本でございます。発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。我々司法書士の職能の説明を含み、発言させていただきます。またちょっと総括的なことで戻るかもしれませんが、御容赦ください。   我々司法書士は、登記、供託、訴訟、その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与するという使命に基づいて、その業務を行っております。大桐委員が触れられました改正民法・不動産登記法や相続土地国庫帰属制度の制定においても、相続登記の義務化による所有者不明土地の問題の解消や、新たな管理制度施策の担い手として、専門的知見の積極的活用を求められておりまして、使命として、施策の実施に取り組んでいるところです。   先ほど吉原委員から御指摘ありました、所有者探索の負担軽減や権利関係の手続に関しては、有用な提案が可能かと思われます。紺野委員より言及のありました成年後見を始めとして、日頃より国民の財産管理業務を手掛けておるところでございますけれども、今回の管理の円滑化や再生の円滑化の検討における所有者不明の専有部分の管理や管理不全の区分所有建物の管理について、財産管理人としての職能を発揮して、新たな財産管理制度について積極的に議論を進めていければと考えております。   一方で、登記を業とし、日々不動産売買に立ち会っている司法書士からしますと、所有権の得喪というのは、意思に基づくということが原則であるという基本的な考えから、所在等不明の区分所有者を決議の母数から除外する仕組みや、出席者の多数決による決議を可能とする仕組みを検討する中で、財産権の処分における少数反対者や所在不明者の利益にも十分配慮して、慎重な議論を重ね、まだ余り議論出ていなかったんですけれども、区分所有者の責務について、こちらの方を慎重に検討して進めていきたいと考えております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。様々な点で御意見をこれから賜れれば、幸いに存じます。よろしくお願いいたします。   ほかにいかがでしょうか。   差し支えなければ、最後の被災した区分所有建物の再生の円滑化も含めまして、またややテーマを広げまして御意見を頂ければと存じます。いかがでしょうか。前二つのところでも、全然結構でございますので。 ○吉政幹事 ありがとうございます。吉政でございます。1点目、2点目にも関わることですけれども、発言させていただければと思います。   本日、参考資料3において、決議の多数決割合について一覧表を作成していただきました。次回以降、各論的な検討が始まるものと承知をしております。そして、先ほど来、委員の皆様が御指摘のとおり、マンションが多様であり、それを取り巻く状況も非常に多様であることを踏まえますと、個々のマンションの規約によって、どこまで自治を認めていくのかという点も、一つ重要な論点になってくるかと思います。実際にどれほど機能し得るかという点については、慎重な検討が必要かもしれませんけれども、規約による自治を法律においてどこまで認めるかという点は、重要ではないかと感じます。   一覧表にあります決議内容のところで申しますと、管理と変更につきましては、区分所有法17条、18条において規約による別段の定めが明文で認められているところです。それ以下の事項については、現行法の下では、規約による別段の定めは認められないと、こういう作りになっております。この線引きの一つの説明は、共用部分にのみ影響を及ぼすのか、専有部分にも影響を及ぼすのかということではないかと思います。そして今後、各論的な検討に入り、建替えとか、敷地売却とかについても規約による自治を認めるということになるのであれば、強行規定の意義がどこにあるのか、その限界はどこにあるのか、管理、変更という、従来から規約による別段の定めが認められてきた事項との関係について、御検討いただく必要があるかと思いました。今後各論で検討される事柄かと思いますが、本日、一覧表をお示しいただきましたので、発言させていただきました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。今までに頂いた御意見をかなり含む、同じところを含むものがあったかと存じます。規約による自治の重要性も、全くおっしゃるとおりでありまして、浅見委員が本日のかなり早い段階で、区分所有者の適切な判断を引き出すことが重要であるとおっしゃいましたが、それは正に、環境整備をした上で、規約による自治をかなり広めに認めてはどうかということであったかと存じます。そのような観点からも検討の必要性があると思いますので、今後留意をしていきたいと存じます。 ○武藤幹事 ありがとうございます。国土交通省の住宅法制課長の武藤と申します。既にもう出た話でございました、吉原委員から、所在等不明区分所有者の取扱いについて、貴重なコメントを頂いたと我々も思っておりまして、我々も現場に近い部署の立場からということですけれども、御発言を我々なりにちょっと敷えんさせていただくと、やはり区分所有に関しては、言わずもがなですけれども、共用部分を共有する区分所有者がいるという中で、やはり所在等不明の認定というか、ここをどうするかというのは、非常に大きな現場での課題があると思って、具体的には、相続、あと戸籍、この辺りが、区分所有でない物件の所有者不明の探索に非常に課題になっております。あと、もう1点は、やはり外国ということでございます。こういったことに関して、こういうことを踏まえて、この審議会の中で御議論いただければと願っております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。吉原委員と同じ趣旨の御発言で、よく受け止めさせていただきたく存じます。 ○齊藤委員 ありがとうございます。被災マンションについて、コメントさせていただきたいと思います。   初めに、冒頭ございましたように、今後想定される大規模な災害に備えるというのは、非常に重要なことだと思います。その中で、東日本大震災後に改正された被災マンション法、それから熊本大地震、そこで復興に御尽力された方に聞き取り調査をいたしましたところ、やはり大規模一部滅失をした区分所有の建物で、この建物の敷地売却決議を行うというふうな、これを1年以内にするのは大変厳しいということがございまして、もう既に議論のポイントになっておりますが、この1年間では短すぎるということでございますので、是非こちらを長くしていくということは重要なポイントではないかと思っています。   さらに、決議をした後の事業法がないということもございますので、この辺りも一緒に、必要性というのは再認識していく必要があるのではないかと思っております。ありがとうございます。 ○佐久間部会長 1年間の期間制限に関しては、この部会の正に所管事項ですけれども、その後の事業法については、国土交通省と法務省で御相談いただいてということになろうかと思います。ここまで多くの方がおっしゃっているように、総合的な対策を採ることの必要性をもう一度御指摘いただいたと存じます。ありがとうございます。 ○齊藤委員 ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ほかにいかがでしょうか。   では、今日のところはこの程度でよろしゅうございますでしょうか。   それでは、本日の審議はこの程度とさせていただきます。   続きまして、次回の議事日程等について、事務当局から説明を頂きます。 ○大谷幹事 本日は、御審議いただきましてありがとうございました。   次回の日程ですけれども、11月25日の金曜日になります。午後1時半から5時半までということで、この建物の地下1階の大会議室の方で、第2回の会議を開催させていただきます。テーマは、現時点におきまして、建替え決議を円滑化する仕組みを中心として議題に上げさせていただきたいと思っております。事前に資料をお送りして、御議論を頂きたいと考えております。   以上でございます。 ○佐久間部会長 本日は熱心な御審議を賜りまして、誠にありがとうございました。   それでは、これをもちまして法制審議会区分所有法制部会の第1回会議を閉会にいたします。ありがとうございました。 -了-