法制審議会 担保法制部会 第26回会議 議事録 第1 日 時  令和4年10月11日(火) 自 午後1時30分                       至 午後4時42分 第2 場 所  法務省地下1階・大会議室 第3 議 題  担保法制の見直しに関する中間試案のたたき台(2) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第26回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。   本日は衣斐さんが御欠席、松下さん、青山さん、鮫島さんが途中離席されると伺っております。   まず、資料の説明をしていだきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 本日もよろしくお願いいたします。   今回、新しくお送りしたものとして、部会資料22「担保法制の見直しに関する中間試案のたたき台(2)」と22-2がございます。22-2は、部会資料22で扱った担保権の実行がどういう流れで動いていき、各論点がそのどこに位置づけられるのかを、少しでも御理解いただきやすいようにと作成したものです。 ○道垣内部会長 私が何回か、時系列に整理しないと、何にも分からないという発言を部会で何回か申し上げておりまして、それによって、事務局には御負担をお掛けすることになったんですが、もしこれによって議論がスムーズに進むということになれば、ずっと不満を述べていた意味もあるかと思いますので、十分に御利用の上、御発言いただければと思います。   それでは、審議に入りたいと思います。   部会資料22の「担保法制の見直しに関する中間試案のたたき台(2)」でございますけれども、「第8 新たな規定に係る担保権の実行方法」、「第9 新たな規定に係る担保権の目的物の評価・処分又は引渡しのための担保権者の権限及び手続」について、まずは議論を行いたいと思います。事務当局から、その部分につきまして部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、「第8 新たな規定に係る担保権の実行方法」について御説明いたします。   「1 新たな規定に係る担保権の各種の実行方法」と「2 新たな規定に係る担保権の私的実行における担保権者の処分権限及び実行通知の要否」については、二読の資料から特に変更はありません。   「3 帰属清算方式による新たな規定に係る担保権の実行手続等」については、二読の資料では、担保権者が誠実に評価した目的物の価額に基づく暫定的な清算金の支払請求権と目的物の引渡請求権とが同時履行関係に立つこととして、これを前提に実行手続を進行させる案と、目的物の客観的な価額に基づく清算金の支払請求権と目的物の引渡請求権とが同時履行関係に立つこととした上で、被担保債務の不履行によって実体法上の目的物の引渡請求権が発生するものとする案をお示ししておりました。しかし、後者の案については、第9の3のとおり、帰属清算の通知等に先立って活用することができる目的物の引渡しのための手続を設けるのであれば、あえて実体法上の目的物の引渡請求権を認める必要はないと考えられます。そして、このように考えると、二読の資料でお示しした二つの案の違いは、結局のところ、担保権者が評価した価額と目的物の客観的な価額のいずれによって清算金の支払請求権を算定するかという点に収れんするように思われます。そこで、本文では、案を一本化した上で、この点の違いについては、本文(4)の墨付き括弧でお示しすることとしています。   本文(5)は、どのような場合に帰属清算の通知等が無効となるかという現行法においても存在する問題について、これを明確化する見地から、今回の資料で新たにお示しする項目です。この点については、「担保権者が誠実に評価した目的物の価額」といった概念は曖昧であるなどの御意見も踏まえ、(1)に基づいて担保権者が通知した目的物の価額が、目的物の種類、性質等を考慮して担保権者が通常把握すべき当該目的物に係る事情に照らして著しく合理性を欠くものであるときは、帰属清算の通知等の効力は生じないものとしています。   (注1)及び(注2)は、いずれも設定者の受戻しの機会等を確保するために、帰属清算の通知等がされた時点以降も目的物を受け戻すことができるものとする考え方ですが、(注1)は、被担保債権の消滅等の効果が発生する時点自体を後ろ倒しにする考え方であり、(注2)は、被担保債権の消滅等の効果は既に発生していることを前提として、目的物を受け戻すことができる期間のみを延長する考え方です。   「4 処分清算方式による新たな規定に係る担保権の実行手続等」については、帰属清算方式による実行手続と同様に、担保権者が評価した価額と目的物の客観的な価額のいずれによって清算金の支払請求権を算定するかによって、考え方が分かれることとなりますが、ここでは、担保権者による評価額を問題とするためにはその通知が別途必要となり、項目が一つ増えることとなるため、案自体を二つに分けてお示ししています。(注)では、先ほどの(注1)と同様に、設定者の受戻しの機会等を確保するために、被担保債権の消滅等の効果が発生する時点自体を後ろ倒しにする考え方を記載しています。   次に、「第9 新たな規定に係る担保権の目的物の評価・処分又は引渡しのための担保権者の権限及び手続」について御説明いたします。   「1 評価・処分に必要な行為の受忍義務」については、本文には実質的な変更はありませんが、受忍義務に加えて目的物の評価のために必要な情報を提供する義務を負うとの考え方を(注)に記載しています。   「2 実行完了前の保全処分」については、二読の資料では、価格減少行為等のおそれ又は目的物の価格の低落のおそれがあるときは、担保権者への目的物の引渡しを含む保全処分を命ずることができるものとする案をお示ししていましたが、二読の審議での御意見を踏まえ、価格減少行為等のおそれを要件として、債務者保管型又は執行官保管型の保全処分を命ずることができるにとどめるものとする案をお示ししています。   「3 簡易迅速な目的物の引渡しを実現する方法」については、部会資料16の第1の3において御提案した手続を具体化し、担保権者は、被担保債務の不履行があったときは、相手方の審尋を経て、清算金の見積額を供託することにより、目的物の引渡しを受けられるものとする手続を設ける案をお示ししています。この案は、帰属清算方式及び処分清算方式による実行手続について、目的物の客観的な価額に基づく清算金の支払請求権と目的物の引渡請求権とが同時履行関係に立つものとする案と、より結び付きやすいものと考えられます。   「4 実行終了後に目的物の引渡しを実現する方法」については、本文(3)のただし書において、一定の場合には無審尋での発令が認められるものとしていますが、そのほかには二読の資料から変更はありません。この案は、帰属清算方式及び処分清算方式による実行手続について、担保権者が評価した目的物の価額に基づく清算金の支払請求権と目的物の引渡請求権とが同時履行関係に立つものとする案とのみ結び付くものと考えられます。   以上について御議論いただければと思います。   私からの説明は以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、これらの点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○村上委員 ありがとうございます。第8に直接関わるということではないのですが、部会資料15の第2において検討されました一般先取特権と新たな規定に係る担保権との優劣関係に関する記載があったんですけれども、部会資料22ではその点について記載がありません。この点については、今後部会資料23のたたき台において記載されるという認識でよろしいかという確認をしたいと思います。   担保制度の法制化においては、一般債権者、とりわけ労働債権者とのバランスを取ることが大前提と考えておりますので、是非中間試案には記載いただきたいと思っております。   この点に関連しまして、部会資料21についてですが、前回の部会の冒頭に、たたき台の議論を行うに当たっての御説明において、笹井幹事より、一般債権者保護とのバランスに留意すべき等の意見については、中間試案の補足説明において記載していくという旨の御説明を頂いたと思っております。この点、部会当初より、現行の譲渡担保を法制化することについては、一般先取特権といっても、労働債権の順位は担保権に劣後し、労働債権の回収は困難であるケースもある中で、更に状況が厳しくなる懸念があること、また労働債権とほかの債権との関係について、2003年の衆参両院の附帯決議に基づく見直しが最優先ではないかと申し上げてきました。そのため、一般債権者保護とのバランスを考慮すべきという意見については、中間試案の部会資料の21に該当する部分においても、このような意見があったということを、注書きなどで記載を頂きたいということをお願いしたいと思います。場所がどこになるのかということはあるかと思いますが、是非御検討をお願いしたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   今の点につきましては、何か事務局からございますでしょうか。 ○笹井幹事 一般先取特権と新しい担保権との優劣関係については、前回、二読のときも、他の担保権との優劣関係という箇所で記載したかと思います。そこが、本当にそれでいいのかというのは、最終的に並べたときには、別のところに並べ替える可能性もありますけれども、差し当たりは、その二読における扱いを踏襲しまして、次の23の方でお示ししたいと思います。   それから、一般債権者保護について、今の御発言は、本文というか、そういう部分に記載してほしいということだったかと思います。本文は、より具体的な提案を示す箇所ではありますけれども、より総論的な記載として何か考えられないかは、少し検討したいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   私から一言申しますと、一般債権者との優劣というときに、例えば、先取特権を持っている債権者との優劣というのは、他の担保物権との優劣関係のところで書かれることになりますし、また、例えば、倒産において、一定の範囲に優先権を制約しようということですと、それは倒産のところで書かれるということになろうかと思います。それ以外に、通奏低音として一般債権者とか給与債権者とか、そういった債権者をどこまで保護するかという問題は、また別個あろうと思うんですが、その最後の問題につきましては、なかなかゴシックのところに書けるような性質のものではなく、それぞれの説明において、そういうことを考慮するということについて言及をしていくということになるのかなと思っております。   村上さんの御指摘もございますので、そういう点を忘れないように記載をしていくということにするよう、私からも事務局にお願いしたいと思います。 ○阪口幹事 阪口です。細かいことも含めてですけれども、中間試案としての作り方という関係で、7点ほど申し上げたいと思います。   まず、3ページの2のところで、猶予期間は設けないけれども通知を求めるという案は挙げていませんと、3ページから4ページにかけて書かれています。ただ、今回配布された部会資料22の2を見ていただいても、実行開始通知がない手続は、債務者がきちんと被担保債権額等を認識しないうちに、どんどん手続が進んで、はい、終わりという感じになるイメージもしますので、ほかの論点とも関係しますけれども、実行開始通知を要求する案が、(注)ぐらいにはあってもいいのではないかというのが、まず1点目です。特に、簡易な引渡し手続の関係で、清算金見積額という概念を考えるときには、基準時が問題になりますので、基準時を決める関係でも、実行開始通知があってもいいのではないかと思っています。   2点目は文言だけですけれども、清算金について「支払」と書いてあるだけで、「支払又は提供」の「提供」が抜けている箇所が3か所ぐらいあるように思います。例えば4ページのゴシックの(4)の「差額の支払と引換えに」という部分は、「差額の支払又は提供」となるのではないか。処分清算でも同じような記載があり、「提供」という文言が要るのかなというのを思っています。   3点目は、3の帰属清算のところで、客観説か担保権者の評価額説かというのが、墨付き括弧の中の選択肢になっているんですけれども、ここは非常に重要なところなので、処分清算と同様に、案を分けていただいた方が分かりやすいのではないか。部会資料15では分かれていました。ここは非常に重要な箇所ですので、案を分けていただいた方が、パブリックコメント等で検討するときに、分かりやすくていいのではないかと思っています。   4点目が、処分清算の方の【案8.4.2】の方でも何らかの通知を設けることは考えられるのではないのかなということです。先ほどの実行開始通知とも関係しますが、処分清算は、下手したら何の通知もなく処分したよと言われて、第三者から引渡しを求められるだけという、そんな流れもあり得ますが、それは望ましくない。【案8.4.2】でも通知という手続を入れてもいいのではないか。これも(注)か何かで記載していただけたらなと思っています。   5点目が、9ページの簡易迅速な引渡しのところです。ここで清算金の見積額を供託させてとあるんですけれども、当然のことかもしれませんが、違法執行の損害を防ぐというか、担保するための供託金というのが、別にあるんだろうと思うんです。そこが、はっきりしないので、保全処分としての手続ということであれば、そういう一般的な担保の供託のことも書いた方がいいのではないかなと思っています。   6点目は、この簡易迅速な引渡しを実現する方法のところで、部会資料15のときには、引渡しを受けたけれども、その後、担保権者がほったらかしにする場合の問題があり得て、そうすると、一定期間内に何らかの手続をしなければいけないのではないかという論点が挙げられていました。二読ではそれほど議論されていなかったのかも分かりませんが、その問題の記載は消えてしまっています。その論点も、例えば、この手続を採った場合には、一定期間内に何らかの手続をすべきかどうか、という問題提起が(注)に載ってもいいのかなと思っています。   7点目、最後ですけれども、実行終了後の引渡しを実現する方法に関して、部会資料11ページの15行目以降には、先ほどの帰属清算、処分清算における担保権者評価額の方に紐づいているということが書かれています。しかし、客観説を採った場合でも、あり得ないわけではないと思うんです。実務的に言うと、評価額よりも債権額が明らかに大きいというケースの方が多いと思います。そうすると、そういうときであっても、引渡しを求めるのは本訴でやらなければいけないというのは、手続的に負担が重いかなとも思います。したがって、実行終了後の引渡しを実現する方法は評価額説を採った場合だけだと決め打ちしなくてもいいのかなという点を、御検討いただけたらなと思っています。   たくさん申し上げて申し訳ありません。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○笹井幹事 1番目はちょっと迷ったのですけれども、やはり何のためにその実行通知をやるのかがよく分からなくて、実行が開始されれば、例えば、引渡しをせよなど何らかの通知が来るわけで、設定者は、その実行が開始されたということは分かるのだと思います。確かに、被担保債権の額をいつどこで知るのかという問題はあるのかもしれませんが、そうだとすると、求めに応じて情報提供を義務づけるというような規定を置いておくことはあり得ると思うんですけれども、そのために全部の実行開始通知というのが要るのか。例えば、引渡しを請求するというのと同じ書面で一緒に送っても足りるというイメージなのだとすると、それほど負担ではないのかもしれませんが、どこまで単に実行を開始しますよというだけで猶予期間がないということに、どれだけ意味があるのかというのが、疑問に思ったというところです。 ○道垣内部会長 すみません。今、阿部さん、井上さん、山本さん、日比野さんの4人から手が挙がっているということは、私の方で認識をしております。したがって、この4人の方に順番に御発言いただくというのはもちろんなんですけれども、最初に、阪口さんから提示された問題が多岐にわたっておりますので、この7つを同時に並行してやっていくというのは難しいと思うんですね。したがって、誠に申し訳ございませんが、阿部さん、井上さん、山本さん、日比野さん、一旦お手を下げていただけませんか。確認はしておりますので、一旦ちょっと手を下げていただけませんか。   ありがとうございます。それで、まず、今出ました第1の問題で、実行開始通知というのが、今日のフローチャートが分かりやすいかもしれませんけれども、あったりなかったりということで位置付けがはっきりしないんだけれども、いつもあるということが必要なのではないかという話なんですが、恐らく、阪口さんがおっしゃった話は二つありまして、一つは、例えば、帰属清算方式、引渡し先行ですね、いずれにせよ、そういうふうに書いてあるところの清算金見積額というのが、いわゆる帰属清算の通知等における清算金の通知と違って、まだ評価しにくいけれども、通知するんだよと、見積りはこれだけだよと出すような額になっていて、それの、例えば基準時なり何なりを定めるためにも、実行開始通知というのがないと、何かよく分からないのではないかというのと、もう一つは、処分清算で実行開始通知も何もないうちに、あなた、債務不履行したよね、処分しました、ということでとなってしまうのは、ちょっと不意打ちすぎるのではないかということですね。そこで、簡易な引渡しとか清算金見積額の供託とか、そういったことをしないときにも、なお実行開始通知というのをさせた方が分かりやすいというか、債務者、設定者に分かりやすいという手続になるのではないかということですね。恐らく、この二つは異なる問題かなという気がしているんですけれども、その理解も正しいかどうか分かりませんけれども、まず、その点につきまして、ほかの委員、幹事の方から御意見がありましたら、お願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。 ○大澤委員 大澤でございます。今、部会長が整理されたうちの後半の方、処分清算について、何もないと不意打ちではないかというところは、実務的には非常に違和感のないところでございまして、その処分清算自体が割と多くなされていると理解をしておりますところで、一気に手続が進んでしまって、開始も何もない中で、はい、終わりましたというのが後で来るような印象というものについては、それまでに債務者がいろいろな手段を講じることができたような機会を奪うことにもなりかねないというのもございますので、今おっしゃられた後半の方の不意打ちではないかというところにつきましては、実務感覚からいたしましても、なるほどと思う次第でございます。   簡単ですが、以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。しかし、それに対して考えられる反論としては、そこで猶予期間というのを設けるならば、それは意味があるけれども、通知した瞬間に処分するんだったらば、通知させてもあまり意味ないのではないのかというのが、恐らく笹井さんの方からの説明ではなかったかと思うんですが、その点はいかがでしょうか、大澤さん。 ○大澤委員 通知したから処分と、確かにそうなんで、私の、少なくともそういった実行通知が来ることによって、その準備というか、その後の深刻度合もまた違ってきているかなと、実務的には思ってはおります。債務不履行があって、通知が来て、はい、処分清算で、そこで一瞬で終了よというのは、私は余りその説は採らずに、さらにその後ろに受戻しの猶予期間を下さいというのが、しっかりバランスとして立ってしかるべきと考えてもおるんですけれども、少なくともそういった通知そのものがないと、債務者としての考え、どういう対処してもいいのかというところが、完全に後付けになっていくようにも思いますので、なお通知というものはあってしかるべきかなとは思っているんですが。 ○道垣内部会長 分かりました。仮に猶予期間を設ける場合ももちろんのこと、猶予期間がないとしても、一応はそれを通知させて、何かのきっかけにするということですかね。 ○大澤委員 その基準、いろいろな形での基準等にもなるという、阪口先生が先ほどおっしゃっておられましたけれども、何をどこでいつどう処分するのかというところについての基準としても、なお意味があるとは思ってはいるんですけれども。 ○道垣内部会長 分かりました、ありがとうございました。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。私のイメージとしましては、実行手続に入る入口のところで通知をするということが、大原則なのかなとずっと思ってはおりまして、この3の簡易迅速な目的物の引渡しを実現する方法というものの要件として、通知をするまでの間ということになっておりますが、この要件が必然的なものとしてどこから必然的に出てきのかという点です。要するに、この図では、実行開始通知が括弧書きになって、どこでなされるのかが全く分からないまま、要件となっているという点が気になりました。むしろ、まず実行通知をさせてから、この簡易迅速な引渡しの申立てをするということになるべきではないかとイメージしておりますが、実行通知は要件だけれども、いつでも実行通知をしていい、その前に、その申立てができるということになった経緯というのを御説明いただければ分かりやすいのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。私は、今日申し上げようと思っていたのが、「帰属清算の通知等」という言葉は、やはりよくないように思うんですね。というのは、「通知等」という概念に、様々なものが含まれているんですよ。定義があるのは、第8の3の(1)ですか、算定通知の根拠も通知して、それで差額の支払又はその提供までしなければならないわけであって、そういうふうなことが行われるまでは、まだ、例えば清算金が発生するときには、支払、提供が行われるまでは、実行は終了していないのだから、支払、提供を行う前提として、評価のために引渡しを求めるということで、ある種通知等まではできるという、こういうことになっているという理解かなと思っているんですが、それは違うのかな。 ○笹井幹事 おっしゃるとおりです。ここで言う通知等というのは、最初の通知だけではなくて、帰属清算の場合には、清算金の支払とか提供までを含むので、そこまでいくと、もう実行としては終わってしまう。終わってしまうかどうかというのは、異なる理解もあるかもしれませんが、実行が終了するまでという趣旨でした。 ○片山委員 すみません、片山です。そうしますと、特に帰属清算の場合は、実行開始通知は括弧書きになっていますけれども、これは、場合によっては、帰属清算の通知等の中に含まれるという理解で、それ以前に、別途実行開始通知をする必要はないということで、括弧書きになっているということですかね。 ○笹井幹事 そうですね。私の理解としては、実行開始通知は最初にやって、そこから一定の猶予期間を置かないと、帰属清算の通知とか清算金の支払とかができないという立場を採るのであれば、担保の目的物を自己に帰属させるという通知とは別に、最初の実行開始通知を置かないといけないというつもりでしたが、今議論になっておりますように、もし猶予期間を置かないのであれば、単に実行開始しますよという通知自体は、余り意味がないのではないかと思っておりましたので、別立てにして、しかも、その要否について、今検討されているということで括弧にしてあると、そういう趣旨でございます。 ○道垣内部会長 よろしゅうございますでしようか。 ○片山委員 すみません、片山です。そうしますと、処分清算の場合も、やはり実行開始通知をどこかで行わなければならないということになろうかと思います。括弧付きというよりは、どの立場でも実行通知を必ず行わなければならないという理解でよろしいのでしょうか。 ○笹井幹事 私どもの理解としては、現行の判例法理を前提とする限りは、処分清算において実行通知とかが必要とされているわけではありませんので、そこもなお、要否について立場があり得るのではないかと思っております。 ○片山委員 分かりました、どうもありがとうございました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○井上委員 ありがとうございます。事務局の御説明は、元々私の理解と同じで、その意味では、3ページの通知というのはなくてもいいんではないかと思っていたのですけれども、先ほど来の阪口委員、あるいは大澤委員の御懸念というか問題意識からすると、不意打ちになってしまうというか、突然いきなり終わりましたとなってしまう部分は、この事前の1週間というよりは、事後の猶予期間といいますか、4ページでいうと(注1)になるんですかね、あるいは7ページの(注)にもあったかと思うんですが、事後の一定期間でカバーできる面が、相応にあるのかなと思いました。   ただ、処分清算については、目的物が処分されたときから一定期間となっていて、目的物が処分されたこと自体に気付かないことが問題だとすると、処分清算についても、処分の際に、処分価格その他の通知を一拍置いて、その後一定期間の間、受戻しができるという期間を置くというのがあり得るのかなと。逆に言うと、そういう制度が必要かどうかという議論をするとすれば、事前に1週間というのはなくてもいいのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○日比野委員 ありがとうございます。従前、金融機関の立場から申し上げておりますのは、債務不履行になったら、何の交渉もなく、即実行だということは、例えば、債務者が行方不明であるということでもなければ、ほとんど想定されておらず、かなりの交渉ないしコミュニケーションを取った上で、最終的に実行の判断をするということになります。したがって、今御懸念があったような不意打ち的なものというのは、少なくとも金融機関の実務を考えれば、ほとんどないということだろうと考えております。   もちろん、いろいろな債権者があるということで、お立場もいろいろあるかと思いますけれども、金融機関の立場としては、そのような考え方かと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。御意見は両様あるということでございまして、結局第8の2のところをどういうふうに書くのか、そして、またその説明をどういうふうに書いてパブリックコメントに付するのかということで、そこら辺りの問題意識、あるいは猶予期間との関係を丁寧に書いて分かりやすくすることが必要かなと思います。今ここで、必ず通知が必要であるという見解に一本化するとか、あるいは通知は不要であるという見解に一本化するというのではなくて、そういうふうなこと両方あり得て、意味はこういうことがあり得るということを書くのかなという感じがいたしますが、そういう形でよろしゅうございますでしょうか。   まとめにかかっているのに、私がもう一個だけ発言して申し訳ないんですけれども、第9の3の清算金の見積額、いやいや、前も議論があったのかもしれないですが、これって、どうやって算定するんでしたっけ。つまり、簡易な引渡しの手続って、評価できないから清算金が分からないよといって、簡易な引渡しを求めて評価しようとしているときに、清算金の見積額を供託するというのは、これはどういう論理的な関係になっているのでしたっけ。 ○笹井幹事 そこは、事実上の話になってくるんですけれども、担保権者側だけではなかなか評価しづらいという場合であっても、こういう手続を設けますと、審尋も必要になりますので、その審尋の中で、相手方から何らかの反応があるのではないかと思います。   また、もしそこで審尋に出てこないということになると、審尋に出てこないという態度自体も一つの考慮要素になるのではないかと思います。何も手続がないところで担保権者が1人で判断しないといけないのではなく、裁判所の手続を通じると、材料もそろってくるのではないかということです。 ○道垣内部会長 しかし、それでも裁判所の手続を借りて、少しは分かるようにしたんだけれども、しかし、引渡しを求めて評価をするという枠組みになるわけですよね。つまり、二段階評価的な意味を持つわけなんだけれども、そうすると、前者の清算金見積額の供託という第9の3のところが、算定根拠がある程度曖昧でいいということなのかなという気がするんですが、何かそうすると、いわゆる通知等というときの通知は、それなりの調査が必要とされるという解釈を生むような、そことの違いにおいてするんだけれども、そういうのはそもそも、大体無理だよねという意見がこれまでも強かったわけですよね。手元に来ない段階で厳密な評価をするのは無理で、できる限りのことをやればそれでいいでしょうと、よっぽど不合理でない限りはオーケーですよというのが、今回も出ているわけなんですけれども、2段階つけて、後者の通知等というときに含まれる通知については、清算金の見積額の供託というときの見積りよりもきちんとしているということにすると、やはり通知等のときの通知について、評価の厳格さが求められるという方向になりはしないかというのが、若干私は心配なんですけれども。 ○笹井幹事 2段階評価とおっしゃいましたが、それは通知等に当たって価格を付けないといけないということで、この図にも目的物の評価という欄を一つ置きましたが、しかし、実際には、ここで既に裁判所の判断が出ているということもありますので、改めて鑑定しないといけないとかではなくて、裁判所が判断したものをそのまま前提にしてもよい場合もあるのではないかと思っています。   ただ、目的物の評価額が高ければ高いほど、提供しなければならない清算金の額も高くなっていく可能性がありますので、担保権者の方で裁判所の判断に異論がある場合には、独自の目的物の評価をしていただいて、そこに一定の合理性という枠内は入ってくるわけですけれども、それで進めていくということは可能ではないかと思います。   それとは別に、必ずこの引渡しの保全処分を採らないといけないかというと、そうではありません。モニタリングを定期的にやっているとか、あるいは目的物に一定の相場がある場合には、この保全処分を採らないといけないわけではありませんので、採るか採らないかも含めて、合理的な判断がされているかどうかというのが、最後の帰属清算の通知等における評価額の合理性の判断になってくるのではないかと思っております。 ○道垣内部会長 分かりました。 ○工藤関係官 先ほどの清算金の見積額の供託のところで、ここでは、それほど厳密には清算金の見積額というのは算定されないこともあるのではないかと思っておりまして、基本的にここで供託した額というのは後で返ってくるということが前提になりますが、ここで余りがちがち清算金の見積額を主張立証しても、なかなか審理に時間が掛かってしまうということがございますので、その点も踏まえて、担保権者としては、ある程度設定者側の主張立証も踏まえて譲歩をした金額を評価額として主張して、それによって審理の長期化を避けて、迅速な発令を目指していくと。恐らく担保権者側としても、そういう態度を取ることも多いのではないかとも思いますので、そういう意味でも余り厳密な見積額の算定というのはされないこともあるのかなとは思っているところです。 ○道垣内部会長 分かりました。適宜説明をしていただければと思います。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。今の清算金の見積額を先に供託させるという点は、私も気に掛かっているところではございます。   阪口幹事の最初の御発言にもありましたけれども、ここでいう清算金の意味を、どう考えるのかという点とも関わってくるのかもしれません。確かに帰属清算を前提としますと、ここでやはり清算金の見積額を供託しないと、引渡しが受けられないということは、それなりに納得できるのかもしれませんが、処分清算の場合ということになりますと、まず引渡しを受けて、それを売って、初めて幾らになるのかということが分かるのでしょうから、その前の段階で、清算金を供託しないと、そもそも引渡しが受けられないということでいいのかどうか、債権者側ですから、余裕があるのだからそれで支障はないというでいいのかも知れませんが、理屈の上で、事前にこの清算金を供託しなければならないという実体法上の根拠といいますか、その点がやはり、処分清算の場合にはかなり曖昧なまま、とにかく設定者に清算金を確保させるために、まずは一定の額の保証金を積み上げて、それで初めて引渡しが得られるというような形の規定になっているように思われます。実体法上の権限としての引渡請求権を規定するわけではないという点と関連するのかもしれませんが、清算金の見積額の供託ということの根拠が分かりかねるという点を、意見として述べさせていただきました。 ○道垣内部会長 何かありますか。特に。 ○笹井幹事 そうですね。御意見としては承りましたが、その場合は、そもそもどういう形で清算金の支払請求権を確保するのかというところが、また問題になってくるのかと思います。   ただ、先生のお考えはよく分かりました。その場合、こういう保全処分のようなものは作らないということもあり得ると思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   片山さんがおっしゃったことがよく分からなかったんですけれども。というのは、引渡しを受けたときに、処分の相手方がはっきりしていないといけないわけではないですよね。そうすると、引渡しを受けた段階で、処分清算をしますなんていうことは決まっていないんですよ。その次に何にもしないとすると、清算金も払わない、何も払わないままに、債務不履行ということがあっただけで、当該物件の占有を担保権者が取得をすることになるのはやはりおかしいんで、何らかの担保、供託みたいなものが必要ではないのかなと思います。しなくてよいということになったら、そこで止まっちゃったら、もう自由に取れますという法制度になるような気がするんで、ちょっと私は理解できなかったんですが。   そこら辺もいろいろな意見があろうかと思いますので、また適宜説明に譲りたいと思いますが。   そろそろ、2番目というので、何か回答されようとされていたよね。 ○工藤関係官 二つ目の阪口先生からの御指摘については、支払又は提供と書いているところと、支払とだけ書いているところがあり、一貫していないのではないかという御指摘だったかと思いますけれども、一応ここは意識して使い分けをしているつもりではございまして、例えば、4ページの3(1)のところでは、支払又はその提供と書いておりますけれども、これは、現行の判例法理でも、ここでいう帰属清算の通知等の効果が発生するためには、支払又はその提供が必要であるとされておりますので、それを踏襲しまして、支払又は提供と書いているということになります。   それに対して、同じページの3の(4)のところでは、支払とだけ書いておりますけれども、これは、引換給付関係を問題としている局面ということがございまして、その場合に、支払と書くのか提供と書くのかという問題は恐らくあるのかなとは思っておりまして、民法533条とかは提供としているのですけれども、ただ、恐らく存在効果ではなくて、引換給付関係のみを問題とする局面では、支払とだけ書く方が多いのではないかと。例えば、引換給付判決の主文でも、支払を受けるのと引換えにと書くと思いますし、譲渡担保の各判例も、引換給付関係における場面では支払とのみ書いているものが多いのかなと思っておりますので、その関係で、引換給付関係を問題とするところでは、支払とのみ記載しているというのが、一応の使い分けということになります。 ○道垣内部会長 その点はよろしいでしょうか、阪口さん。 ○阪口幹事 はい。きちんとそう御検討の上で書かれたんだったら、異存ありません。 ○道垣内部会長 分かりました。   3番目は何でしたっけ。3の4で…… ○笹井幹事 8の3のところで、案を分けた方がいいのではないかということです。   確かに、二読のときは分けていたのですけれども、どこが違っているのかを明確にするため、今回はこういうふうな書き方をしたということです。   【案8.3.1】と【案8.3.2】のように案を分けた方が分かりやすいということであれば、ちょっとその示し方については考えたみたいと思います。 ○道垣内部会長 これまでの、私が関与したものだけですが、中間試案とかで括弧内に二つ、スラッシュで書いてあるのというのは、ちょっと今の段階では分かりませんといった感じのところが多くて、余りそこに意見を求めるという感じがないときに多く使われていたような気がするんですよね。それに対して、意見を求めるというのであるならば、もっと意見を求めるぞと明確にすべきである。この違いにということをはっきりさせるべきだというのが、阪口さんの御発言であろうと思います。   それはもっともなところがございますので、どうやったら分かりやすく提示できるかというのを考えて、事務局にちょっと整理をしていただきたいと思います。内容にわたるものではございませんので、これはその程度にさせていただければと思いますが、今のが三つ目で、四つ目は何だっけ。 ○笹井幹事 四つ目は、【案8.4.2】にも何らかの通知を設けることが考えられるのではないかという指摘です。【案8.4.2】といいますのは、処分清算についてですが、これは、部会長が最初に整理してくださった不意打ち問題とかなり重複しているのではないでしょうか。 ○道垣内部会長 そうですね。それは今までの議論で足りているのではないかと思います。   5番目は何だっけ。 ○笹井幹事 5番目は、清算金の見積額を供託しなければならないとされている箇所について、見積額だけではなくて、一般的な担保も含まれるのではないかという指摘です。そこは御指摘のとおりかなとも思うのですが、例えば、仮差押えなどにおける担保、目的物の使用収益が制約されることによって生ずる損害の賠償のための担保ということだろうと思います。それが、使用収益権限を失った局面でも必要なのかどうなのかというのがちょっと分からなかったのですが、そもそもおよそ担保権がないような、そういう場合だってあり得るではないかという、そういう御趣旨でしょうか。 ○阪口幹事 よろしいでしょうか、阪口ですけれども。   すみません、今、笹井さんがおっしゃったとおり、例えば、被担保債権が弁済されていたような場合だってあり得るので、違法執行が絶対ないということはないはずです。なので、一般的な担保という表現がいいか分かりませんけれども、保全のための担保というのが必要ではないか。もちろん法文としては、担保を立てさせ、又は立てさせないでということでいいと思いますけれども、何かそこがあるよというのは、ゴシック体か、補足説明かは分かりませんけれども、書いていただきたい。そうしないと、違法執行問題、違法保全処分問題が全部捨象されているように読めるので、そこが気になったということです。 ○工藤関係官 そこは、正直ちょっと私どもの方も余り自信がないところではあるのですけれども、もしかしたら9ページの説明の2で書いている制度の位置付けのところが、少し関わってくるのかなとも思っておりまして、担保権の実行手続として位置付けるとすると、一般的には余りその場合に担保を積むということは要求されないと思いますので、そういった違法執行のための担保というのは、その場合は不要になると。   これに対して、執行法上の保全処分と位置付ける場合には、やはり保全処分である以上は、一般的には担保が要求されることが多いかと思いますので、担保を積まなくてはいけないという方向につながってきやすいのかなとは思っておりました。 ○道垣内部会長 本日恐らく決めるべきことは、そういうふうな可能性があるということを、ゴシックないしは説明に書くか否かという問題で、結論を出そうということではないと思うんですけれども、その点、何かほかの方に御意見がありますでしょうか。 ○山本委員 私が先ほど発言しようとしていた点は、正にそこで、阪口さんの次の話ですね。要するに、この保全処分というか、この処分を採ってほっぽっといたらどうなるんだみたいな話も同じことなんですけれども、第9の2、3、4のそれぞれの手続的な部分を、どこまでゴシックで書いて、どこまで補足説明等に委ねるのかということを、ある程度統一的に決めていただいた方が、事務局でですね、いいんではないかということでした。   今の担保の問題も、これ、第9の2も恐らくその担保の問題はあるんだと思うんですね、一種の不当保全処分の場合の担保の話というのはあるんだろうと思いますし、ほっぽっといた問題というのは、やはり3とともに2にもあって、やはりこの保全処分だけ採って、1年も2年も何もしないということは、一体どうなるんだみたいなこと。その場合に、債権者、担保権者側に、何か月以内に実行処置を採ったということを証明させる、その証明がない場合には取り消すとか、逆に、債務者側に何らかの執行異議みたいなもので取り消す手段を認めるとか、いろいろな選択肢は、手続法的にはあるんだろうと思いますけれども、何らかの措置は必要ではないかというのは、私も思います。   ただ、問題はゴシック部分に書くかどうかで、私は、この2、3、4はややアンバランスになっているという感じがしていて、審尋の話、それから執行抗告の話というのは、3、4は書かれているんですが、2は書かれていないんですね。2にもやはり審尋の問題、それから執行抗告の問題、不服申立ての問題あるんだろうという気がするんですけれども。だから、ちょっと全体的に、手続的な部分はもう、細かい話なんでゴシックには書かないで、補足説明でこういう問題がありますみたいなことだけ書くんだというのも一つの方針だと思うし、書くんなら書き切る、手続的な点もですね。書くんなら書き切るということにしないと、阪口さんみたいな疑問が当然出てきて、ここはもう問題はなくなったという整理でしょうかという、当然質問が出てくるような気がするので、パブリックコメント、意見の聞き方としては、そこは何か統一した方が混乱を生じないかなと。どちらに統一するかというのは、私は定見はありませんので、それは基本的に事務当局に任せたいと思いますが、そういうような意見は持っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。事務局から何かございますでしょうか。 ○笹井幹事 山本先生の今の御指摘を踏まえて、また事務局内でも考えてみたいと思いますけれども、手続的な問題は、結局作るか作らないかを決めてから、作るとすれば、どういう手続を設けていくかを考えることになると思いますので、どちらかというと、補足説明に書くべきかと思います。   ただ、倒産法上の問題については、若干手続にも触れておりますので、その辺も含めまして、統一感を出すように、もう少し何か一貫した説明ができるように整理をしたいと思います。 ○道垣内部会長 その点はよろしくお願いいたします。   次は何でしたっけ。 ○笹井幹事 今のほったらかしにした場合どうなるのか問題で、それは、今お答えをしたとおりです。   最後は、第9、4の「目的物の引渡しを実行終了後に実現する方法」における提案は、【案8.4.1】とのみ結び付くものだと説明には書いてあるけれども、【案8.4.2】、すなわち、目的物の客観的な価額を前提とする清算金の支払と引渡しが同時履行関係に立つという考え方を採る場合でも、必要になるのではないかという御指摘だったかと思います。   こういう簡易の引渡命令みたいな制度を作るのであれば、別に客観説を採る場合でもあっていいではないかという御指摘ももっともと思いつつ、ここで書きましたのは、要するに、この手続に対して、どういう抗弁といいますか、設定者側が何を言えるかという問題で、そのときに、設定者側が担保権者による評価の一定の合理性、それが一定の合理性を持っているということを争うだけではなくて、価格そのものを細かく争うことができるということになりますと、あんまり簡易なものを作った意味が乏しくなってしまい、この手続の中で徹底的に争われるということになると、結局引渡しを実現することができなくなってしまうではないかと、簡易にできなくなってしまうではないかと。それだったら訴訟でも一緒ではないかというのが、ここでの説明の内容なのですが、それでもやはり、何かこういう手続を作った方がよいということであれば、それは考慮したいと思います。 ○道垣内部会長 阪口さんに限らず、まずは阪口さんに伺いたいですが、今の笹井さんの説明については、どのようにお考えでしょうか。 ○阪口幹事 阪口です。先ほど申し上げたとおり、実務的には、債務者が清算金を争っても、ないことは明らかというケースがかなりあると理解していますので、そのかなりあるケースについて、全部本訴が必要といったら、ちょっともったいないなというのが、正直な意見です。 ○道垣内部会長 まあ、しかし、決めなければいけないときだけ本訴というわけにも、なかなか、手続としては組みにくいかもしれないですが。 ○阪口幹事 もちろん、制度としてはそうなんですけれども、例えば、清算金がないことが明らかなときとか、何か工夫できないでしょうか。そうしないと、余りにももったいないというのが、正直なところです。だから、制度として無理だと言われたらそうかもしれませんけれども、清算金がないことが明らかなときでも全部本訴になるのかという意見です。 ○道垣内部会長 分かりました。この点につきまして、ほかの方の御意見とか、中間試案の出し方についてのお話とかございますでしょうか。   それでは、その辺りのこともきちんと説明に、今の阪口さんの御懸念についても書かせていただくということで、中間試案としてはまとめさせていただければと思います。どうもありがとうございました。   それで、いろいろな方からお手が挙がっていて、山本さんについては、言いたかったことはこれだというふうなことで御発言が既にあったのかもしれないですが、阿部さん、もう1時間近く前の話なので、忘れたとおっしゃるかもしれませんが、よろしくお願いします。 ○阿部幹事 ありがとうございます、阿部です。資料4ページの3の(4)のところなんですけれども、担保権者は、帰属清算の通知等をしたときは、墨括弧と被担保債権額の差額の支払と引換えに、設定者に対して目的物の引渡しを請求することができるというところです。説明にも書かれていますけれども、債務不履行によって実体法上の目的物の引渡請求権が生ずるという案を示していないということですので、恐らくこの帰属清算の通知等をしたということが、目的物引渡請求権の請求原因事実になるという、そういう御理解なのではないかと思います。   ただ、私としては、そちらで統一してしまっていいのか、ちょっと時期尚早なのではないかというような感じもしています。というのは、例えば、清算の前に、設定者が仮に担保権者に任意に引き渡したというようなことを考えますと、そういったときに、もし目的物引渡請求権の請求原因事実を満たしていないのだとすると、それは本来法律上の原因を欠いているのではないかという話になったりして、仮に、設定者がその後に破産したりして管財人が出てきたときに、本当は請求権がないのに勝手に返したんだから、もう一回返しなさいというような返還請求が起こったりとか、そういうこともあり得るのではないかと思いました。   そういうわけで、帰属清算の通知等と書かれているような手続に関しては、それを実現したことを請求原因事実にするというだけではなくて、それが実現されていないことを、設定者における抗弁、あるいは、更に言えば権利抗弁とするというような考え方も、なおあり得るのではないかというような気もいたしまして、そういうふうに考えていくと、説明の5ページのところで書かれているように、執行法上の手続を設けるのであれば実体法上の引渡請求権は必要ない、というふうな割り切りはちょっと早いのではないかというような、そういうふうな気もいたしました。   以上が主な話なのですけれども、それに加えて、表現の点でもう一つ付け加えておきます。帰属清算の通知等という言葉が問題があるというのは、部会長も既に指摘されていましたけれども、3の(4)の書き方であると、通知等の中に差額の支払又はその提供が入っていますので、それが目的物引渡請求の請求原因事実になるということになると、引換給付ではなくて、それが満たされていないときには請求棄却になってしまうのではないかというような気もしました。これは表現上の問題で、多分そういうふうな御趣旨で書かれたのではないと思いますけれども、仮に(1)に基づいて担保権者が通知した目的物の評価額の支払と引換えに、目的物の引渡しを請求することができるということであれば、そのときには、帰属清算の通知等の中に、その評価額との差額の支払又はその提供という部分は除くような感じで、請求権の成立要件を組んだ方がいいのではないかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。今の点、いかがでしょうか。 ○笹井幹事 書き方は、もう一度精査いたします。 ○道垣内部会長 後者はもっともで、私も実は言おうかと思っていたんですけれども、客観的な価額のときには、まだ意味があるのかもしれないんですよね。その通知等というところが、合理的なというか、非合理的ではない評価額との差額の支払又は提供になりますので、意味があるんですが、もし仮に通知した目的物の評価額ということになると、それは重なっているのではないのという感じはするわけなので、問題があろうかと思います。   ちょっとその辺りの、何を主張していくのかということにつきましては、表現も含めてもう少し考えていただきたいと思います。 ○井上委員 ありがとうございます、井上です。先ほど言おうとしていたのは、この4ページの3の(注1)あるいは(注2)に、受戻しの機会を確保するために、帰属清算の通知等の後一定の期間、あるいは引き渡すまでの間、受戻権の消滅を後ろ倒しにするという案が(注)になっていて、同じように、処分清算についても、7ページの(注)のところに、一定期間、ここでは目的物の処分がされたときからとされていますが、先ほどの議論からすると、何かの通知を求めるのであれば、その通知からということだと思うんですけれども、後ろ倒しにすることについての注があります。   その趣旨については、説明のところに、受戻しの機会を与えるとされています。それはそうなんだろうと思うのですが、ただ、実際には、元々期限に弁済できなかった債務者が、一定期間が1週間なのか2週間なのかはともかく、そういった短い時間で急に未払額の資金を調達するのは、それほどよくあることではないと思うので、受戻しの機会という点ももちろんあるとは思いますし、それがここでの説明のメインだと思うんですけれども、しかし、現実にはというか、実際上は、その期間というのは、倒産手続の開始の申立てをして、中止命令を取るための期間という意味合いが大きいのだろうと思います。それは、当然ここに含意されているということかもしれないんですけれども、説明のところには、そういう意味もあるということを書いた方が、この考え方の評価に際しては有用ではないかと思います。   その上で、そういう手続の開始申立て及び中止命令の取得のための期間としてどのくらいの期間があれば十分なのか、あるいは適切なのかという点について、事前に元々準備できたのだから、あるいは事前に先行して一定の交渉ないし準備をすべきであったのだからという理由で、それほどの期間はなくてもよいという議論ももちろんあり得ると思うんですが、そういう形での議論あるいは検討を求めてもいいのではないかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。生じ得る疑問については、あらかじめきちんと答えて、何が問題なのかをきちんと書きましょうということなんですが、その点はよろしいですかね、特に。特に、事務局にも異論のないところだと思いますので、説明を明確にしたいと思います。 ○日比野委員 ありがとうございます。9ページの第9の3の説明の29行目から30行目の辺り、処分清算において、これに対応する【案8.4.1】を採る場合には、この第9の3の制度自体設ける必要はないとも考えられるという記載があります。このゴシック体の内容自体に特に異論はございませんが、ただ、処分清算の場合であっても、目的物の引渡しが受けられるかが不案内な状態では、そもそも買い受けてくれる第三者が現われないという可能性もあるかと思いますので、【案8.4.1】を採ったとしても、このような制度を設ける意味はあるのではないのかなという気もいたしました。なので、これは説明の書き方の問題かと思いますけれども、何かしら御検討いただければと思います。   それで1点目と、あとは、10ページの4のところの(2)で、処分を受けた日から3月を経過したときは、(1)の申立てをすることができないというところ、非常に細かくて恐縮なんですけれども、この3月の起算点になる処分というのが、一連の処分の手続の中で、何、どこを起算にすることになるのかというところ、可能であれば、もう少し補足説明などで補記いただけると有り難いなと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。何かその点でございますでしょうか。 ○工藤関係官 補足説明で対応いたします。 ○道垣内部会長 最初の【案8.4.1】を採るときという場合には、このような制度を設ける必要はないとも考えられるという点は、いかがなんでしょうか。というのは、第三者が自己への引渡しを請求するという形なんですが、それ、所有者として請求するわけですよね、処分のというか、売買契約の相手方として、買主として。新たな規定に係る担保権の喪失のときの処分清算の処分の相手方だけ、そういうふうな簡易な引渡しを実現する方法を有するというのが、正当なのかどうなのかというのが、なお考える必要があると思いますので、当然にそうだよねという場合には、ちょっと書きにくいかなと思うんですが、いかがですかね。 ○笹井幹事 日比野委員がおっしゃったのは、処分する前に、処分の相手方を見つけるためには、引渡しを取得しておく必要があるので、仮に【案8.4.1】を採って、合理性の範囲内で引渡しを請求することができるとしても、それは、評価のためには不要かもしれないけれども、処分のために必要になるので、【案8.4.1】を採った場合でも、この制度を設ける意味があるのではないかという御趣旨ではないかと思います。 ○道垣内部会長 なるほど。【案8.4.1】でも【案8.4.2】でも一緒なわけですね。日比野さん、そういうことですね。 ○日比野委員 はい、そうです。 ○道垣内部会長 どうもすみません、ありがとうございました。 ○大西委員 もしかしたら、従前御説明いただいたことを聞き飛ばしたかもしれないですが、【案8.4.1】の処分清算の場合に、(3)で、担保権者が評価した目的物の価額が被担保債権を超える場合には、その差額を清算金として支払う旨の記載があります。実際は、既に処分をしている場合なので、処分価額が既に決まっているはずです。その場合に、処分価額ではなく担保権者が評価した目的物の価額という概念を別に用いる理由が何なのかが疑問だと思います。実際、担保権者が評価した目的物価額より処分価額が大きい場合に、その差額部分を清算金として設定者に支払うのではなく、担保権者が留保しておけるというのはおかしいように思います。ここは、どういうふうに理解したらよろしいでしょうか。 ○笹井幹事 担保権者が合理的に行動する限りでは、その処分価額というのが目的物をこういう状況の下で売却することができる価額を意味していることが多いんだろうと思います。   ただ、今まで指摘されてきましたように、不合理な形で担保権者が売ってしまったというように、その目的物が客観的な価値とは違う安い値段で処分されてしまうということもあるようです。こういった場合には、清算金の金額というのは、処分価額そのものが基準になるんではなくて、客観的にどういう金額が合理的な、客観的な価額なのかということを基準にして、清算金が決められると言われていたと思いますので、その見解を踏襲したというものです。 ○大西委員 今の御説明にあるような安い値段で処分されてしまった場合には、客観的な価額の範囲で消滅しという部分の規定で足りるし、逆に高い値段で処分された場合には、【案8.4.1】の(4)にある客観的な価額を超えるときの支払義務の規定で足りると思います。問題は、(2)とか(3)で、担保権者が評価した目的物の価額という概念を用いていて、処分価額の概念を用いていない点です。 ○笹井幹事 ここは、この見解を採るのか採らないのかというのが、正に【案8.4.1】なのか、【案8.4.2】を採るのかということに関わってくるのだと思いますけれども、ここは、処分清算のときにも、担保権者の評価額を基準にして実行手続を進めていくという考え方と、客観的な価額を実行手続においても設定者側が主張できるという考え方との、二つの考え方の対立軸がありましたので、それを処分清算にも一応パラレルに、その対立点が処分清算についても考えられるのではないかということで、二つの案を準備したということになります。 ○道垣内部会長 まず、根本として、担保権者は、目的物を第三者に贈与できないのかという問題点が、実は抽象的には存在しているんですね。今までの譲渡担保の考え方というのは、贈与してもいいという考え方だったと思うんですよ。贈与してもいいけれども、被担保債権が消滅する範囲は、贈与だからゼロですよということではなくて、それ、見積額というか客観的な価額というかはともかくとして、その額で決まると。清算金額もそれで決まる。つまり、処分のときが幾らであったのか、処分のときに幾らで処分できたのかということと、清算金額とか被担保債権の消滅する範囲というのは、一応は独立の話であるという考え方に立っていたんだろうと思うんですね。それが、実務的に見て、そんなの尋常ではないよというのは、もうおっしゃるとおりでありまして、おっしゃるとおりなんですが、抽象的に考えた場合にどうなるのかという問題が、まずそちらの方ではある。   もう1点、しかし、大西さんおっしゃった重要な問題は、動産だから1,000万円と評価額を出したんだけれども、うまい具合に1,200万円で売れたといったときに、どうなるんですかという問題は、実は今の贈与の話とは逆の話として出てくるわけですけれども、そのときに、1,200万円ですよねっていうのは十分にあり得る考え方で、しかしそれは、本当は1,000万円なんだけれども、うまい具合にルートを探してやったんだから、200万円は手の内に入れたっていいのではないのという考え方も、もちろんあるんだろうと思います。準事務管理的な話ですけれども、そこは、ここの今の、今回ゴシックで出ている話というのは、たまたまうまく売れたといったときの価額というのを、客観的な価値とは見ないということが前提にはなっているんだろうと思います。それが適切かどうかという問題は、なおあるんだろうと思うんですけれども、説明としては、そういうことなんだろうと思います。   いかがでしょうか、大西さんのお考えとして。 ○大西委員 担保権者が贈与するというのは、余りにイレギュラーなので、想定はしていなかったのですが、私が純粋に考えれば、(2)のところは、担保権者が評価した目的物の価額という概念を用いるのではなく、処分価額及びその価額の合理性を根拠付ける根拠を通知するというような規定でもいいのかなと思った次第です。 ○道垣内部会長 その処分価額の合理性が不合理であったという場合には、事前の評価額になるわけですね。 ○大西委員 その場合は、最終的には客観的な価額になるわけですよね。 ○道垣内部会長 そうすると、大西さんのお話としては、処分のときに客観的な価額は幾らであるかということを主張するのに当たって、処分をしましたと。その処分は、こういうふうな合理的なプロセスを使って処分をしたんで、それが、客観的な価額を表しているはずですと言えば、それが素直に認められるというふうな文章になっている必要があるのではないかということになりますでしょうか。 ○大西委員 私は、この判例に従って、被担保債権が客観的な価額の範囲で消滅するというような考え方自体は、これでよろしいのではないかと思っています。私が指摘しているのは、その途中のプロセスで、(2)の通知及び(3)の差額の支払のところで、担保権者が評価した目的物の価額との通知、価額との差額という概念を用いることです。既に判明している処分価額がある以上、それを用いるべきではないかと思った次第です。   また、先ほど部会長がおっしゃられた、評価額が1,000万円の場合に1,200万円で売れたときに、その200万を担保権者が清算金として支払わなくていいという合理性はないのではないかと思います。 ○道垣内部会長 その点は十分に分かりますが、贈与という例を出したのは、分かりやすくするためのつもりで、逆に、余りに突飛なので分かりにくくなってしまったかもしれませんが、関連会社に1,000万円のものを500万円で移転をするとしても、そこに商売上でなるべく高く売るというふうな義務を、担保権者に課するとは考えないというのが、多分、恐らくは、今までの譲渡担保法の判例法理だっただろうと思うんですね。   諸外国においては、そのときに、他人のために売却をする立場にいるんだから、なるべく高く売らなければならないという考え方というのが十分に実はありまして、そのような考え方もあるんですが、日本の譲渡担保判例というのは、多分そういう考え方を採っていなかったんだろうと思います。したがって、贈与というのは言い過ぎかもしれませんが、安く処分してしまう、安く知り合いに処分してしまうのは勝手であるが、そのときでも、清算金の額や被担保債権の消滅範囲については客観的な価額を基準にするということなんだろうと思いますが。   もう一つは、超えたときどうするかという問題点につきましては、評価の問題だからとごまかすしかないのかもしれませんが。何かその点について、ほかの方、御意見はございますでしょうか。もうちょっと、ここはこういうふうに書くべきだと。 ○尾﨑幹事 大西さんがおっしゃっていることに全く同意なんですけれども、確かに贈与の話があるから、話が分かりにくくなるかもしれないんですが、ほとんどの場合、処分価額というのは、客観的な評価はともかくとして、少なくとも債権者の評価額に比べれば、実態に近いはずだと思うんです。処分価額がもう分かっているのに、債権者があえて自分の評価額を使うというのは、おかしいのではないのというのが、大西さんがおっしゃっていることかなと思っています。処分価額が、あるいは債権者の評価額が客観価格と違っている場合に、客観的な価額を使いましょうというのは、大西さんは、全くそれでいいと思っているのではないかと思います。   座長がおっしゃっているように、贈与のようなケースで、処分価額が不当におかしいような場合については、別途規定を設ければいい話ではないかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○井上委員 井上です。ほとんどの場合、特に第三者に譲渡する場合に、その譲渡価額、処分価額が債権者の主観的な評価額よりも妥当な数字だというのは、御指摘のとおりだと思うんですけれども、ただ、ルールとしては、やはりここは、実際の処分価額自体とは限らないというか、そうではない場合もたまにはあるという前提で、ルールを作る必要があるのではないかなと思っていまして、そういう意味で、「なんちゃって処分清算」というんですか、関係会社あるいはお友達に安く売却して、それで清算金なしよといって引渡しを求めることができ、それで引渡しを拒むことができなくなるというのも、問題なんだろうと思います。   その意味では、どう表現するのかは難しいんですけれども、第三者への「処分価額」という言葉を、(2)あるいは(3)の「担保権者が評価した目的物の価額」という言葉と入れ替えれば、それでよいということではないのだろうという気がしました。   その関係で、4ページの帰属清算のところの(5)に、とんでもない不合理な場合には、帰属清算の通知が効力を持たなくなるというルールが書いてあるんですけれども、それと同じようなルールを、ここに持ち込めないのかという感じがしました。すなわち、普通に見れば真っ当な、第三者への処分価額があるにも関わらず、それよりも低い評価額を「担保権者が評価した目的物の価額」として通知しても、(2)の通知とはみなさないといいますか、そういう効果が与えられないというルールがあれば、事実上、第三者に対する真っ当な処分価額より低い価額を通知することが行われなくなり、他方で、内輪で安く処分してしまったような場合には、そういう処分価額は参照せずに、もう少し真っ当な担保権者の評価を通知しなければいけないということになるのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○阿部幹事 ありがとうございます、阿部です。実務的な観点からの御疑問に、純粋、理論的に答えることにどのくらい意味があるか分かりませんけれども、経済学的な見地から、清算義務に関しては、それが経済的に合理的ではないのではないかというような疑問も呈されていまして、その疑問は、正に処分価額が清算額の基準になることを前提として、そうだとすると、被担保債権額を上回るような形の処分をするのがインセンティブがそがれるのではないか、被担保債権の額を超えれば、後は幾らで売っても別に担保権者には利益がないということで、最適な買主に対して処分をするインセンティブがそがれるのではないか、というような批判もあるところです。   それは、先ほど言いましたように、処分価額が清算の金額の基準になるという前提の議論でありまして、客観的な価額というのが清算の額を決めるということになれば、それよりも高く売れれば、もしかすると部会長が示唆されていたように、担保権者の手元に入るかもしれないし、それがインセンティブになって、経済的に合理的な処分がなされる可能性もあるように思います。ですので、そういった理論的な見地から見ても、清算の価額というのは、理論的には客観的な価額を基準とした上で、実際の処分価額がそれを上回った場合どうなるのかというのは、理論的には固めずに置いておくのがよいかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。結論といいますか、実際に行われるような事柄について、皆さんに大きな差があるわけでは恐らくなくて、処分が通常になされて、その処分価額は普通、正当な市場価額を反映しているよねというところから始まって、それがスムーズに認められるというふうな制度設計が必要である。それはそのとおりであって、あとは、例外事象を含めて、しかし、簡潔かつ一義的なルールとして定めるのは、どういうふうなことにすればいいのかということなんだろうと思います。余りに三つも四つもルートを書いて、そのルールを作りますと、それも大変だろうと思います。   そうなりますと、皆さんの心持ちは一致しているということで、あとは日本語としてどうするかということについては、これはもう、事務局の日本語能力の問題であると考えて、事務局に頑張っていただくというのが、正しい収め方かなという気がいたしております。皆さんの問題意識とかは十分に理解できておりますので、そういうことで、ちょっと考えながらやっていただければと。   分かりましたというお返事を頂きましたので、それでお願いしたいと思います。   それでは、8、9のところにほかにございませんでしょうか。   本日頂いたような意見を踏まえまして、日本語の問題とか説明の問題とかで、分かりやすく中間試案を提示して、何が分かれ道になって、みんなの議論を今後していかなければいけないところなのかということを、なるべく明確に提示できるような形でするとさせていただければと思います。   そこで、先を急ぐようで恐縮でございますけれども、第10の「同一の動産に複数の新たな規定に係る担保権が設定された場合の取扱い」、第11の「集合動産を目的とする担保権の実行について」について、議論を行いたいと思います。事務当局において、部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、「第10 同一の動産に複数の新たな規定に係る担保権が設定された場合の取扱い」について御説明いたします。   「1 劣後担保権者による私的実行の可否及び要件」については、二読の資料から特に変更はありません。   「2 前記1の同意なくされた劣後担保権者による私的実行の効果」については、二読の資料では説明部分で取り上げていましたが、ここでは本文で取り上げることとし、意見が分かれていることから、両案を併記しております。   「3 新たな規定に係る担保権の私的実行に当たっての他の担保権者への通知」の【案10.3.1】について、二読の資料では、当該設定者に対して登記等を備えている全ての担保権者に対して一律に通知する案をお示ししていましたが、前回の部会で御提案した登記に関する考え方を踏まえ、関連担保目録上において関連付けられている担保権の担保権者に対してのみ通知すれば足りるものとする案をお示ししています。   ここでは、通知の相手方を更に限定し、関連担保目録上において私的実行をしようとする担保権に後れる担保権者に対してのみ通知すれば足りるものとする考え方についても、墨付き括弧でお示ししているほか、占有改定のみによって対抗要件を具備している担保権者に対して通知を義務付けるか否かについても、墨付き括弧で両案をお示ししています。   そのほかに、仮登記担保法の規律も参考として、通知の宛先については、登記簿上の住所又は事務所に宛てて発すれば足りるものとするとともに、通知の時期については、私的実行に着手したときは、遅滞なく通知しなければならないものとしています。   「4 担保権者間の分配方法についての合意内容の通知」については、二読での御指摘を踏まえ、債権者による充当指定の考え方も参考として、劣後担保権者が優先担保権者の同意を得て私的実行をした場合には、原則として優先順位に従って法定充当がされるものとし、各担保権者間にこれと異なる合意が成立し、劣後担保権者が設定者に対して充当指定の意思表示としてその合意の内容を通知した場合には、その合意の内容のとおり、各被担保債権に対する充当の効果が発生するものとしています。   次に、「第11 集合動産を目的とする担保権の実行について」について御説明いたします。   「1 集合動産を目的とする担保権の実行の手続」については、本文(1)から(3)までについては二読の資料から特に変更はありませんが、本文(4)及び(5)については、二読の資料では説明部分に記載していた考え方を本文で取り上げることとした上で、その法律構成としては、撤回に遡及効を持たせるとともに、第三者保護規定を置く形としております。   「2 実行後に特定範囲に加入した動産に対する再度実行の可否」については、本文については二読の資料から変更はありませんが、再度実行を禁止することによってプロジェクト・ファイナンス等の現在の実務に影響が生じることを懸念する御意見があることを踏まえ、事業担保等の他の制度との関係にも留意しつつ、引き続き検討する必要がある旨を(注)に記載しております。   「3 集合動産の一部について実行がされた場合に前記1(2)及び(3)の効果が生じる範囲」については、二読の資料では一部実行がされた場合に残部に1(2)及び(3)の効果が生じるか否かを問題としていましたが、ここでは、実行通知の到達による1(2)及び(3)の効果は、原則として集合動産全体について生じるものとした上で、実行通知において集合動産の一部を実行の対象として指定した場合には、例外的に当該一部について1(2)及び(3)の効果が生じるものとしております。   また、二読の資料では、所在場所によって区別することができる一部を実行の対象とした場合に限って、当該一部に1(2)及び(3)の効果が生じるものとしていましたが、墨付き括弧の後半部分においては、これを広げて、集合動産の特定の要件と同様に、種類、所在場所、量的範囲の指定その他の方法により特定された範囲を指定した場合には、当該一部に1(2)及び(3)の効果が生じるものとする案を併記しています。   以上について御議論いただければと思います。   私からの説明は以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見を頂きたいと思うのですけれども、ただ、ちょっと第10と第11の内容とはかなり性質が、問題となるところが異なると思いますので、まず、なるべく第10の方から話をして、だんだん第11に移っていきたいと思います。まず、第10の辺りで御意見、御質問等いただければと思います。   第10は、大体こういうところでよろしゅうございますか。 ○日比野委員 ありがとうございます。第10のところで述べる話なのかがちょっと分からなかったということなのですけれども、複数の担保権が設定されている場合において、第1順位の担保権者が私的実行をしたときに、第2順位以降の担保権者がどうなるのかと。つまり、当然に、担保権も消滅するという理解でよいのか、そうであるから書いていないということなのであれば、それでよいかなと思いますし、もしそこに何か異論があるのであれば、第12では強制執行又は担保権実行の動産競売手続について、消除か引受けかという説明があるので、この私的実行についてどうなるのかということについて、もし立法のルールとして、それは明確なので記載する必要がそもそもないということであれば別ですが、そうでもないということであれば、説明でも構わないので書いていただきたい、というお願いとなります。 ○道垣内部会長 事務局からちょっと補足をお願いいたします。 ○工藤関係官 その点は、お話しいただいたとおり、基本的に第1順位の担保権者が私的実行をしたというときには、第2順位以下の担保権というのは、当然に消滅するものだろうと思っております。それが当然のことなので、法律に書かなくてよいということになるのか、それとも、何かしらの規定が必要なのかというところについては、十分に検討しているわけではありませんけれども、御指摘もございましたので、説明のところで触れるという点も含めて、少し検討させていただければと思います。 ○道垣内部会長 日比野さん、よろしゅうございますか。 ○日比野委員 はい、それで結構です。ありがとうございます。 ○道垣内部会長 ほかに第10の辺りで。 ○鈴木委員 ありがとうございます、千葉銀行の鈴木でございます。第10の1、2、3のところで、事務局の方に確認なんですが、1では、劣後担保権者による私的実行の可否及び要件として、優先する全ての担保権者の同意を得た場合に限りということなんですが、この優先する担保権者を知る方法については、どういう形を想定しているのかお伺いしたいなと思いました。3のところで目録も表記されているんですけれども、必ずしも目録に載せなくてもいい場合もあると承知しておりますので、この優先する担保権者を知る方法をどうするのかというのを、教えていただければと思います。 ○工藤関係官 まず、登記優先ルールを前提としますと、優先する担保権者というのは、登記を備えている担保権者に基本的に限られるということになろうかと思います。その上で、今、御指摘いただいたとおり、関連担保目録に必ずしも載っていない優先担保権者というのも、存在する可能性はやはりあるというところになりますので、その場合には、その当該設定者について存在する他の登記をいろいろ確認した上で、目的物が重なり合っているかどうかという点も調査して、優先する担保権者がいるかいないかというのを確認していくと、恐らくそういうことになろうかとは思います。 ○道垣内部会長 鈴木さん、いかがですか。 ○鈴木委員 分かりました、ありがとうございます。 ○道垣内部会長 分かんないかもしれないんだけれども、優先する担保権者がいた場合には、第10の2のものが適用されて、残るんですかね、先順位の担保権がそのまま残るという、【案10.2.2】がそうですけれども、そうなるのかなということですかね。 ○工藤関係官 今御指摘いただいたとおり、優先する担保権者が実はいましたということになりますと、その同意なく私的実行がされているということになりますので、第10の2でどちらの案を採るかによって、結論が分かれてくるということになるかと思います。 ○道垣内部会長 ほかにございませんでしょうか。 ○沖野委員 ありがとうございます。内容に関わる点ではないのですけれども、説明のところの記載についてです。ちょうど今、お話が出た点ですけれども、12ページの最終行ですとか、13ページの25行のところで、優先担保権者の同意を得ずにされた私的実行は無効となるという、【案10.2.1】が前提になった記載になっているのですけれども、これは恐らく、【案10.2.2】を前提としたとしても、当てはまり得るのではないかとも思いました。そういう理解でいいかというのと、もしそうだとすると、ちょっと記載について注意していただく必要があるだろうということと、それから、そもそも無効であることからすればというところが両案併記になっているので、いずれにしても、少し書き方については注意していただく必要があるかと思いました。 ○道垣内部会長 それはそのとおりかと思いますので、よろしくお願いいたします。   ほかに何かございますでしょうか。   10の3というところも、いろいろな意見があるところで、これ、差し当たって関連担保権者又は劣後担保権者に通知をするというところで、登記を備えている、分かるというか、同一目的物に担保権を持っていると思われる人に対して通知をするということになっているわけであって、およそ設定者の財産に対して担保権を有している者全てに対して通知をするという、以前そういう考え方も出されていたんですが、そういう考え方は採られていないということです。それはちょっと大げさといいますか、多すぎるだろうという意見が前回強かったことを踏まえているわけですが、その点も別によろしゅうございますね。   それでは、もちろん10に戻っていただいても結構でございます。後でこんなこと言い忘れたということですと、第10の問題を言っていただいても結構なんですが、既に第11まで説明を受けておりますので、第11も含めて御議論をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○阪口幹事 阪口です。第11に関して、確認だけなんですけれども、ここに書かれた1、2、3のルールは、別段の定めは許さない、強行法規という表現がいいのか分かりませんけれども、担保権の実行というものはそういうものなんだと決めるものでしょうか。当事者間で別段の定め、例えば、15ページの(2)の担保権の効力が及ぶ範囲とか、(3)の処分権限を失うタイミングなどをずらす合意は基本的に想定していないという前提で理解すればいいでしょうかという、確認です。 ○道垣内部会長 いかがでしょうか。 ○工藤関係官 ここの第11の1の(1)、(2)、(3)に書かれている内容自体については、基本的に強行法規になるのではないかというのが、従前の資料の立場でして、ただ、例えば、(2)、(3)の効力が生じる時期をもうちょっと前倒しにすると、通知以外の事由によっても(2)、(3)の効力が発生するという別段の定めを設けること自体はあり得るのではないかというふうなことを、従前の資料では記載していたかと思います。ただ、通知の到達によって(2)、(3)の効力が生じるということ自体は、合意によって動かすことはできないと、そういった考え方が従前の資料の立場となっていたかと思います。 ○道垣内部会長 その前提でいかがでしょうか、阪口さん。 ○阪口幹事 従前の議論との兼ね合いで、どこまでのことを考えているのか、ちょっと確認したかっただけなんで、今の御説明で理解しました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。しかし、あえて反論をするならば、担保権の設定契約において、処分権限に合意による制約を付けることはできるわけですよね。その合意による制約について、ある一定の事由が発生したときに、制約が強まったり、あるいは弱まったりするというのは、元々の合意がある種債権的といいますか、権限範囲というのが正に合意によって決まるものですので、物権の内容だから強行法規になるということとはちょっと違う可能性があるような気もするのですが。私が今まで言っていたことと違うような気もするけれども、それはどうなんですか。 ○笹井幹事 正しくその点が、従来の資料において、集合物への加入が止まる時点と、設定者が構成部分の処分権限を失う時点が異なることがあり得るかという問題として議論されていたところで、設定者の処分権限は担保権者から設定者に対して合意によって付与されているのだとすると、合意によって法律とは異なるタイミングで処分権限を失わせることもできるのではないかということを、議論していたのだと思います。   ただ、その設計の形によっては、言わば再度実行と同じようなことができるのではないかとか、ずっと累積的に取れるのではないかとか、いろいろな議論がありまして、そこはちょっと悩ましいなと思っておりますが、まだなお解決しているわけではないのかなということかなと思います。 ○道垣内部会長 分かりました、申し訳ありません。 ○井上委員 井上です。今の点に関わるんですけれども、この資料でいうと、17ページの2とか3とかとの関係なのですが、以前、部会資料の21で、集合動産の定義として、「設定後に新規加入の予定されているもの」とした上で、逸出については、設定者の権限として、「通常の事業の範囲内で処分又は逸出させる権限を有する」としつつ、そこについては、ただし書で、設定行為における別段の定めを許しているということでしたので、資料21は、新規加入物には及ぶのだけれども、設定行為に別段の定めをすると、逸出を許さないか、あるいは逸出された後、処分したときの代金を全額担保権者への弁済に充てることが、担保の中身として認められる、そういう担保権の設計ができるという前提に立っていると理解しておりました。   すなわち、どこかの一時点で存在する在庫を、優先的、排他的に把握するのにとどまらず、継続的に入ってき続ける在庫の価値を、ずっと継続して担保権者が排他的に把握することも、資料21は合意をすれば認めるという立場なのかなと理解していたのですけれども、仮にそういう設計が可能だとすると、その場合に、今回の資料の17ページにあるように、再度実行を例外なく強行的にできないとする立場とはどのような関係に立つのでしょうか。先ほど資料21で前提としていたというか、許容していたアレンジメントは、一体どういう意味を持つのだろうということです。   すなわち、実行の場面では輪切りの形で、そのときに存在していたものにしか実行の効果が及ばず、それについては特約による例外を認めないとすると、そこには一定のそごがあるのではないかなという感じがして、それが、もしかするとこの(注)に幾らか出ているということかもしれないんですけれども、そもそものゴシックのところの立場のずれといいますか、資料21は、選択肢は設けずに先ほどのような御提案になっていたので、そうだとすると、この再度実行は例外なくできないとか、あるいは一部について実行されたら、残部について一定の条件でできるとかいうことではなく、先ほどのような特別のアレンジをしたというか、別段の定めをしたときには、再度実行も、実行した一部ももう一度更に実行するということも含めて、特段制約を受けないということもあり得るのかと思いまして、それがいいかどうかということについて、私がどちらでなければいけないのではないかと申し上げるわけではないのですが、ちょっと中間試案の作り方としては、その辺の整合性がどうなっているのかなというのが気になりました。 ○道垣内部会長 何かございましたら、お願いします。 ○笹井幹事 そうですね。部会資料21での提案は、今、井上先生御指摘のとおりだったのですが、ここで念頭に置かれておりましたのは、出ていったものについても追いかけていけるということではなく、積み重なっていく一方のもの、あんまり適切な例が挙げられるかどうか分からないんですけれども、何かのコレクションみたいなもので、どんどん内容が増えていくことは予定されているのだけれども、設定者が自由に売ってしまうということが想定されていないような、そういうものも集合物としての規律に含ませようというのが、部会資料21の趣旨でございます。   そういう意味では、今回の実行との間でも、特に第11の2とも何かそごがあるという認識はあんまりございませんで、一定のある瞬間に存在していたものが実行の対象になるんだけれども、ただ、それが実行されない限りはどんどん付け加わっていくというものが想定されているけれども、それが一旦実行されると、そこまでですよという意味で、そごしているわけではないと理解をしていたところです。 ○道垣内部会長 井上さん、何か続けてございますか。 ○井上委員 ありがとうございます。そうすると、資料21の御提案についての私の理解が、もしかするとずれていたということかもしれないんですけれども、資料21の御提案の文言自体は、先ほどのような、何か美術品のコレクションのようにどんどん増えていく、でも、処分できないというようなものを対象として、現時点で担保を設定するということに、必ずしも限定されず、ここでいう逸出権限あるいは処分権限に対する制限には、別段の定めによって、処分行為としての売却はできるけれども、その代金を設定者が自らの事業に利用することはできないというタイプの制限も、当然に含まれるものと思っておりました。すなわち、一切集合動産の外に出さずにずんずん増えていく物のみならず、入る物もあれば出る物もあるんだけれども、出た物の代金は、設定者の事業に用いることができないという特約、それを裏返せば、担保権者が受け取ることができるという特約をも許容するように読めるのではないかという感じがします。もし、そこは排除するということで、いわゆるコレクションのように一方的に増えていくものを対象にすることを、資料21では意味するのだとすると、むしろそれを分かりやすく書くか、あるいは選択肢を設けるかが、必要になるのかなと、今お話を伺っていて思いました。 ○道垣内部会長 よろしいですか。 ○笹井幹事 はい。御指摘を踏まえて検討します。 ○道垣内部会長 多分そのときに気を付けなければいけないのが、私は先ほど権限を拡大することもできれば、縮小することもできるんだから、ある一定の合意でなくすこともできるという話をしましたけれども、それが物権的な意味を持つのか、債権的な合意にとどまるのかというのがあって、先ほどの、売ることはできませんというのを、合意するのはもちろんできるし、売ったときの金銭は担保権者の物になりますと合意することはもちろんできるんで、担保権者に引き渡しなさいということはできるんですけれども、それを第三者との関係で、そのものは担保権者に優先的に、物権的に帰属していると主張できるのかというのは、また別問題です。どこまでの合意を、ただ単なる契約というか、債権的な契約の問題として捉えるのか、どこまでの合意を、物権内容に関する合意として捉えるのかという問題が多分あって、そこをまた仕分けていかなければいけないのは結構、難しいのは難しいんですが、やらなければいけないところかもしれません。   すみません、要らないことを申し上げました。   ほかに、この集合動産の第11のところ、ございますでしょうか。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。立教大学の藤澤です。このようなルールができたとして、あり得る実務上の工夫みたいなものを、二つぐらい思い付いたので、それについてお伺いできればと思います。   一つ目は、集合動産の特定方法についてなんですけれども、種類、所在場所、量的範囲その他を指定するといった形で特定方法が規定されるかと思うんですけれども、その解釈として、時間的な特定が認められるかお伺いしてもよろしいでしょうか。例えば、「倉庫の中に10月に搬入される動産」という集合物と、「11月に搬入される動産」という集合物といった指定は、特定していると認められるでしょうか。あと、食品等ですと、消費期限や賞味期限があると思うんですが、例えば、「賞味期限が2023年10月までの動産」、「賞味期限が2023年11月までの動産」といった感じで、時間的に動産を指定して区切ると、その一つについて実行したとしても、それ以外については実行されていませんよというようなことも言えそうで、連続的な実行というのが、事実上可能になるのではないかとも考えました。また、以上のような場合に特定性が認められないとすれば、それは何でなのかなとか、そういうことをちょっと伺ってみたいと思いました。   二つ目なんですけれども、実行するときに、一部だということを通知しておけばオーケーで、その他の部分については流動性を維持することができるという御提案についてですけれども、集合動産を倉庫の甲という区画に寄せておいて、そこについて実行通知をした上で、その後は乙という区画に搬入してもらうとか、そういうふうに倉庫の区画を分けて実行することで、残部実行みたいなものは可能になったりするんでしょうか。   以上の二点につきまして、よろしくお願いいたします。 ○笹井幹事 一つ目の10月搬入分と11月搬入分ですとか、時間的なもので特定するというのは、個別に検討したわけではありませんけれども、特定されている限りは十分あり得るのではないかと思います。ただ、10月に搬入されたものと11月に搬入されたものが一緒にごっちゃになってしまって、もう見分けもつかないということになると、実行しようとしても、どこまで担保権が及んでいるのかというのが分からないということになりますので、そういう意味では、実体法的には、神様の目から見れば、何が10月に搬入されたのかというのが分かるんだということであれば、それは特定されているということだと思いますけれども、実際に執行官なりが判断できるように、実際に実効性を持った担保にしようとすれば、執行官なりが判断できる形に、何かラベルを貼るとか、特定しておく必要があるのではないかと思います。 ○藤澤幹事 二つ目は、実行するときに、ちょっと倉庫の片方に寄せておいてみたいなことがあり得るのかということです。 ○工藤関係官 それについても、倉庫のこの部分ということが、誰の目から見てもしっかり特定されているのであれば、第11の3の墨付き括弧のいずれの考え方を採ったとしても、一応残部の流動性が維持される形で一部実行することはできるということにはなろうかと思います。 ○道垣内部会長 それで、藤澤さん、いかがですか。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。お伺いした趣旨というのは、単にこういう場合どうだろうかという興味があったというのと同時に、契約コストを掛ければ回避可能なルールを設けたとしても、みんなその契約コストを掛けて回避するだけで、全体的な契約のコストだけが上がってしまって、それが達成しようとした何らかの目的は、簡単に潜脱されてしまうだろうと思うので、そもそもこうした規制を掛ける意味があるのかというようなことが、少し疑問に感じました。 ○道垣内部会長 こうした規制というのは具体的にどういう意味ですか。 ○藤澤幹事 恐らく、御提案のルールは、一度実行をしたら残りの部分に担保権の効力が及ぶというのは何かおかしい、それによって害される後順位担保権者や一般債権者がいるのでそれを保護するとか、何らかの目的があって、実行回数を一回に制限するのだろうと思いますが、それが契約を時的に分解したりすることによって潜脱可能なのだとすれば、そもそもそういうルールを置いてもしようがないのではないかなというようなことを思ったということです。 ○道垣内部会長 なるほど。それ、契約を時的に分割しているわけではなくて、ただ単に目的物の特定の仕方に、賞味期限あるいは搬入時期とかおっしゃいましたけれども、そういうのを入れてきたというだけの話で、契約を時的に分割するという言葉とは、ちょっと私は内容が違うのではないかと思うんですが、その上で、本来的に効力が及んでいるものについて、ある種の基準を作ることによって、一部についてだけ実行するということを仮に認めて、そうしたときに、残りの部分の流動性が失われないとしても、元の場所、つまり実行された場所に後から入ってきたものは、もう駄目なんですよね、多分。   だから、完全に潜脱になるのかはよく分からないのと、だから、もっと言えば、どのような特定をして一部を切っても、全部が特定するんだというふうな見解ももちろんあり得たわけです。しかし、それに対しては、札幌倉庫と福岡倉庫という話が出たときに、福岡倉庫を実行したときに、札幌も止まるんですかというふうな話をしますと、またそこに問題性があるということで、こうなっているわけですが、かといって、一部実行しても全然、特定して実行した部分についても、後入ってきたものに全部及びますというふうなルールを作っても、同じではないかということには、私はならないのではないかなという気はしますが、どこでバランスを取るかという問題ですが、それもいろいろな御意見があろうと思います。   ほかにいかがでしょうか。   なかなか難しい問題あるんですが、中間試案はこの程度の、この程度と言ってはあれですけれども、内容で、もうちょっと後で、中間試案終わってから議論しようということでよろしゅうございますか。   それでは、大分時間が、2時間以上経過しておりますので、ここで一旦切らせていただいて、15分、55分まで休憩を取りたいと思います。   一応、12から次開始する予定でございますけれども、なお、その休み時間の間に、第11について、これだけは言っておかなければならないというようなことが生じましたら、休憩後の冒頭にまた御発言いただければと思います。   それでは、15時55分まで休憩を取りたいと思います。よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○道垣内部会長 予定していた時刻になりましたので、会議を再開したいと思います。   一応、「第12 新たな規定に係る担保権の競売手続による実行等について」から「第15 債権を目的とする担保権の実行」までについて議論をしたいと思うのですが、なお、第10、第11で、この点は、中間試案に当たって確認ないし発言をしておきたいというふうなことがございましたら、お願いいたします。   よろしゅうございますか。もちろん、後でも構いませんし、後で何らかの形でお伝えくださっても構いませんので、よろしくお願いいたします。   それでは、先ほど申し上げましたような、第12から第15につきまして、事務局から説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、「第12 新たな規定に係る担保権の競売手続による実行等について」について御説明いたします。   本文1から3までについては、二読の資料から特に変更はありません。   本文4については、通知の主体を執行官とする案のみをお示ししていましたが、システムを通じた通知を実現することができるか否かが現時点では明らかではないことから、通知の主体を担保権者又は差押債権者とする案を墨付き括弧で併記しているほか、通知の宛先及び時期については、第10の3と同様の修正を加えています。   本文5においては、消除主義と引受主義のいずれを採用するかについて、二読の資料では説明部分で取り上げていましたが、ここでは本文で取り上げることとし、意見が分かれていることから両案を併記しております。   「第13 質権の実行方法に関する見直しの要否」については、二読の審議では意見が分かれたことから、両論併記とした上で、【案13.1】については、二読での御指摘を踏まえ、民法第349条を削除するのではなく改正する案をお示ししています。   「第14 所有権留保売買による留保所有権の実行」については、二読の資料から特に変更はありません。   「第15 債権を目的とする担保権の実行」のうち、「1 債権譲渡担保権者による債権の取立て」、「3 担保の目的財産が金銭債権である場合に担保権者が取り立てることができる範囲」、「5 担保の目的財産が非金銭債権である場合の実行方法」、「7 集合債権を目的とする担保の実行」については、二読の資料から特に変更はありません。   「2 債権質権者及び債権譲渡担保権者の取立権限及び実行通知の要否」については、本文(1)は二読の資料から特に変更はありませんが、本文(2)においては、債権譲渡担保について猶予期間を設ける場合には債権質についても同様とする案と、債権譲渡担保についていずれの案を採用するかに関わらず債権質については現在の規律を維持する案を併記しています。   「4 担保の目的である金銭債権の弁済期が被担保債権の弁済期前に到来した場合に、担保権者が請求することができる内容」については、本文(1)において、二読の審議での御指摘を踏まえ、担保権の実効性を確保するための弁済された金銭の処理方法については、両案に対する(注)として付記し、引き続き検討するものとしているほか、本文(2)においては、債権質についても債権譲渡担保と同様の規律に改める案をお示ししています。   「6 直接の取立て以外の実行方法」については、本文(1)は二読の資料から特に変更はありませんが、本文(2)においては、債権譲渡担保について債権執行手続による実行を認めるか否かについて、二読の資料では説明部分に記載していましたが、本文で取り上げた上、引き続き検討するものとしています。   以上について御議論いただければと思います。   私からの説明は以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○阪口幹事 第15でもよろしいですか。先ほどみたいに前の方からでなくてもいいですか。 ○道垣内部会長 今回はよろしいかと思います。では第15、お願いいたします。 ○阪口幹事 第15に関して、部会資料16では、債権譲渡担保を後順位で設定できるかという論点が書かれていたので、これはできるということが、補足説明に書かれるという前提での中間試案になるのかということの確認だけさせてください。よろしくお願いします。 ○道垣内部会長 すみません、前回の資料の所在が、ちょっと今、ここでいろいろやっておりまして、ちょっとお待ちください。 ○笹井幹事 その点については、部会資料21の中で、後順位の債権譲渡担保権といいますか、債権の譲渡担保権についても、設定できることを前提にして規律を設けておりまして、それを踏まえたものということでございます。 ○阪口幹事 ちょっとすみません。僕も今、すぐ見付からないんですけれども、大変失礼しました。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます、ありがとうございます。個別債権と集合債権との関係で、集合債権を目的とする担保の実行は、特に規定を設けないということで、これは二読から質的に変更がないということなんですけれども、改めて考え直してみますと、今回、債権者との関係もあるんですけれども、個別債権で金銭債権の場合には、被担保債権の弁済期到来前にも取立てができるという形で、選択肢の一つとして与えられていることになりますが、これ、集合債権で同じ規律になっていいのかというのが、若干気にはなるところではございます。   個別債権に関しましては、基本的に前回の部会資料もそうですけれども、取立権限が質権と同じように担保権者のところにあるというのが前提となっていますので、この選択肢が成り立ち得るんだと思うんですけれども、集合債権の場合は、前回の部会資料もそうですけれども、取立権限が基本的に設定者のところにあるということが前提となっていますので、それを前提とした上で、なお、弁済期到来前に担保権者の方で取り立てることができるということになりますと、何かやはりちょっと矛盾をしているような気もいたしますので、集合債権について、特別な規定は設けないということで、基本的にこれ、いいのかもしれないんですけれども、個別債権と集合債権で異なる取扱いがあり得るということを、その可能性があるということですかね、選択肢の一つとしてどこかに書いていただいた方がいいのかなという気はいたしました。よろしく御検討いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。もちろん、集合債権のときに、取立権限が設定者にある間に、弁済期が到来したからといって、担保権者が取れるという前提には恐らくなっていないわけなんでしょうが、それが、集合債権に関する取立権限がどちらにあるかというルールの適用によってそうなるとしても、ここにある実行的なところの条文との間の優劣関係といいますか、論理関係がよく分からなくなるので、きちんと書いて説明をするというのが必要だろうということだろうと思います。   それはそのとおりかと思いますので、説明に当たっては、そこを気を付けていただくようにしたいと思います。ありがとうございます。 ○山本委員 大変細かい点ですけれども、第12の4のところで、前回までは自動的なメールアドレスに対する通知のシステムの構築ということを前提にして議論をなされていたところ、それが難しいこともあるんではないかというようなことで、そういうことで、こういう規定になるのは仕方がない部分はあるとは思うんですけれども、ただ、自動的に通知するシステムが構築できないというところから、直ちに郵送にする必要があるのかというのが、ちょっと私の疑問です。   例えば、メールアドレス等を登録、登記ですかね、登録させておいて、そこに、自動では無理かもしれないけれども、手作業で通知をするというようなことも考えられると思いますし、その方が郵送よりは負担は軽いような気も、この執行官にするにせよ、差押債権者にするにせよ、負担は軽いような気がするので、そういう可能性は何か留保してもいいのではないかと思います。   その意味では、ゴシック4の後段が、通知を受ける者の登記簿上の住所、事務所に宛てて発すれば足りるというのが、当然に郵送を含意しているのであるとすると、もう少し何か中立的な書き方でもいいのかなと。これだけいろいろなところでIT化というのが進められている中で、郵送に限るのはどうかという感じがするので、例えば、民事訴訟法などでは、今回のIT化の改正では、連絡先みたいな、もう少し抽象的な言葉が使われているようにも思えまして、そこは何か工夫は頂けないかということです。ゴシックのところが無理であれば、あるいは、補足説明でも別に構いませんけれども、ということを思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。重要な御指摘かと思います。何らかの形で書きたいと思いますが、メールをよく見失う私としては、若干不安のあるところでもありますけれども、それは要らない話で、申し訳ない。   ほかに何かございませんでしょうか。   これは、第12の5において、【案12.5.2】を採ったときに、そうか、担保権は消滅するということは一緒なんですね。買受人が弁済する責めに任ずるかどうかが違うの、【案12.5.1】と【案12.5.2】は。 ○笹井幹事 【案12.5.2】は、劣後する者だけが消えるということでしょう。 ○工藤関係官 そうです。【案12.5.1】は、いわゆる消除主義を採ったものでして、【案12.5.2】は、いわゆる引受主義で、優先する担保権はそのまま残ってしまうので、買受人はその被担保債権を弁済しなければいけないということを規定したものになります。 ○道垣内部会長 けれども、そのまま残るというときに、買受人はなぜ弁済義務があるのでしょうか。つまり、債務者ではないんでしょう。担保権がそのまま残るというのは分かるんです、まだ分かる。けれども、弁済する責めに任ずるというのが、本当なのかなという感じ。 ○笹井幹事 ここは、趣旨としては、債務者になるわけではなくて、担保権の負担だけがあるということですので、そこをちょっと的確に表現できるようにしたいと思います。 ○工藤関係官 一応、表現としましては、民事執行法59条の4項からそのまま引っ張ってきたものではありますけれども、そのままそれを持ってくるのが適切かどうかも含めて、検討したいと思います。 ○道垣内部会長 それと、もう一個は、先取特権には占有と結び付いたものがあるわけで、それが、設定者といいますか、債務者の下から占有が移転したときに、その移転自体の力によって、先取特権が消滅する場合もあるような気がするのですね。典型的には売却によって消滅するというわけで、それが333条か何かの規定なんだけれども、そうではなくても、留置権にせよ何にせよ、占有がなくなればなくなるわけですよね。留置権の被担保債権を払わなければいけないというのは、その占有を消滅させるときに払わなければいけないと言っているわけです。留置権が、まあそうですね、引渡しを受けるために払わなければいけないということなので、ですから、日本語としてうまく言えなくなってしまいましたが、担保権の実行としての効力として消滅しなくても、引渡しがされることによって、その効力によって消滅するということもあり得るんで、その辺りの論理も、論理といいますか、理屈の関係も、何かもうちょっと詰めなければいけないのかなという気がしますが。   すみません、うまく言えませんで。イメージだけを御理解いただければと思うんですけれども、すみません。   ここは両論併記ということで、だから、おっしゃったように、全部消滅するという大前提でやるのと、消滅しないという大前提でやるのということを、両論併記にしましょうということなんですが、これはよろしゅうございますね。   ほかには何かございませんでしょうか。   債権質についても若干触ることによって…… ○井上委員 すみません、すごく細かいことで申し訳ないんですけれども、今のところの19ページの4ですが、4とか5とかの辺りで、強制執行手続又は担保権実行としての動産競売手続という表現が並んでいるんですけれども、4の冒頭の隅付き括弧のところだけ、担保権の方が先になっているので、差押債権者又は担保権者という順番にするべきかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます、そのとおりだと思います。   ほかに何かございませんでしょうか。   先ほどちょっと言いかけたのは、債権質の規定も若干触るというふうなことも考えられているわけですけれども、それも、この程度のことは触っていいだろうということでよろしゅうございますかね。   それでは、もし後で御意見ございましたら、順番というか、次に移っていても、御発言いただいても全然構いませんので、議論の対象としては、第16の「別除権としての取扱い」というところから、第22の「担保権消滅許可制度の適用」というところまでの議論に移りたいと思います。事務当局において、部会資料の説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 それでは、「第16 別除権としての取扱い」から「第22 担保権消滅許可制度の適用」までについて御説明いたします。   24ページの第16及び25ページの第17の1については、二読の資料から実質的な変更はございません。   第17の2についても、二読の資料から実質的な変更はございませんが、(4)において、更生手続、特別清算手続及び承認援助手続における中止命令及び禁止命令の要件を、現行のそれぞれの中止命令と同様とする点を明記しております。また、二読での御議論を踏まえ、(注)を二つ付しております。   3については、本文は二読の資料から実質的な変更はございません。具体的にいつ被担保債権に係る債務が消滅するかは、実行に関する規定によることになり、例えば、帰属清算方式の私的実行がされて、清算金が生じない旨の通知がされても、その後、一定期間被担保債権に係る債務が消滅しないという考え方が採られた場合には、その一定期間経過時が中止命令の発令の終期となります。   また、本文の考え方に対しては、二読での御議論において、新たな規定に係る動産担保権については、被担保債権が消滅しても、担保目的動産の現実の引渡しがされるまでは、発令することができることとすべきであるという御意見を頂きましたので、その考え方を注記しております。   4については、二読の資料において、規律の対象をいわゆる集合動産、集合債権に限定する案と、限定を設けない案の両案併記としておりましたけれども、御議論を踏まえまして、後者に一本化しております。   次に、5について、二読の資料においては、新たな規定に係る担保権の指摘実行に対する中止命令等を対象とすることとしておりましたが、二読での御意見を踏まえ、新たな規定に係る担保権の実行手続一般に対する中止命令等を対象にする案との両案併記としております。また、このように、新たな規定に係る担保権の実行手続一般を対象とする場合、同様に債権質や動産質の実行手続を対象とする必要がないかを検討する必要があると思われることから、その点を注記しております。   6については、まず、二読の資料において、債権譲渡担保権の実行の場合を主に想定しつつ、債権質の実行の場合をも規律の対象に含めておりましたが、今回、債権譲渡担保権の実行の場合に限定しております。これは、債権質権の場合に、そもそも担保権者から設定者に対する取立権限の付与は可能かという点について議論の余地があり、また、可能だとしても、取立権限の付与に関する法的構成について債権譲渡担保権の場合とは異なると理解する余地があり、債権譲渡担保権の実行を念頭に置く本項の対象に含めるべきではないと考えたためです。   また、二読の資料においては、中止命令等が発令された場合には、第三債務者の主観を問わず、担保権者に対する債務消滅行為の効力を設定者に対抗することができないものとするという案も示しておりましたが、この案を支持する御意見が見られなかったことから、それ以外の2案を併記する形にしております。   7については、取消命令の要件について、中止命令と同様とすべきという御意見があった一方で、民事再生法第26条第3項を参考にすることが考えられるという御意見があったことから、(注1)としてその点を注記しております。   また、二読での御議論において、取消命令についても前記4と同様に担保権者に不当な損害を及ぼさないために、必要な条件を付して発することができるのかという問題提起がございましたが、取消命令については、その性質上、中止命令や禁止命令とは異なり、事後的に命令の取消しや変更を行うことが困難ではないかとも考えられますので、ここは中止命令や禁止命令と同様としてよいか、条件違反があった場合の効果なども踏まえて、引き続き検討が必要であると考えられます。   続きまして、第18ですが、本文1では、再生手続開始の申立てや更生手続開始の申立て以外をトリガーとする条項についても無効であると解釈できるような規律とすることを求める御意見がございましたので、その点を注記しております。   また、本文2については、まず、1と合わせて設定者についての再生手続開始の申立て又は更生手続開始の申立てを理由とする条項を対象とする形にしております。また、倒産手続の開始申立てを失期事由とする条項については、有効と考えられていることとの関係で、処分権限や取立権限を喪失させる権利を担保権者に与える条項は対象から除外しまして、残余の部分について、引き続き検討することとしております。   第19の1について、本文の4案は二読の資料から実質的な変更はございません。取立権限や利用権限の所在によって場合分けをする考え方については、注記する形としております。   また、第19の2については、二読の資料から実質的な変更はございません。   第20については、二読での御議論での御指摘を踏まえまして、見出しを修正しております。こちら、本文にも記載をしておりますとおり、第19の1において、【案19.1.1】を採用した場合の試案でして、それ以外の案を採用した場合を対象とすることを想定しているものではございません。   第21については、二読での御議論を踏まえ、複数の修正を行っております。まず、偏頗行為否認として規律をするのではなく、担保権の効力の問題として規律すべきという御意見があったことから、(注1)として記載をしております。   また、偏頗行為否認の対象とする場合に、一般の偏頗行為否認と異なり、設定者の支払不能等に関する担保権者の主観的要件を不要とすべきという御意見がございましたので、これを(注2)として記載しております。   さらに、加入後に個別動産や個別債権の処分等が行われた場合に、それを否認の成否において勘案すべきかどうかという問題があります。否認の対象行為の時点で、否認該当性の判断をする必要があるとすれば、加入行為後の事情を否認の成否に関して考慮するのに適切でないと思われる一方で、否認時において担保目的財産全体としては異常な水準にないという場合には、否認を成立させるべきではないという考え方もあり得ます。また、否認の対象が個別動産や個別債権に対する担保権の成立だとしますと、その後の処分等による入れ替わりを踏まえ、否認の効果として担保権の効力が及ばなくなる動産や債権をどのように特定するのかという問題もあり、以上の点について(注3)として記載をしております。最後に、本文(2)について、設定者の主観的要件のみならず、担保権者の主観的事情をも要件とするべきではないかという御意見があったことから、(注4)として記載をしております。   第22ですが、1については、本文に二読資料からの実質的な変更はございません。   本文(2)の【案22.1.2.2】については、清算金の発生や被担保債権の消滅の効果は、担保目的物の客観的な価額を基準として生じますので、帰属清算方式における評価額や処分清算方式における処分価額を基準とすることでよいのかという問題があり、これを(注1)として記載しております。   また、【案22.1.2.3】については、別案として帰属清算方式における評価額や処分清算方式における処分価額を基準としつつ、それらを売得金の額に5%加えた額以上とする必要があるという考え方があり得ることから、これを(注2)として記載しております。   第22の2については、二読の資料から実質的な変更はございません。   私からの御説明は以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○阪口幹事 何度も発言、申し訳ございません。まず、21の否認のところの(注2)のところが、実務的にはかなり大きな話です。補足説明ででも結構ですので、主観的要件を不要とすべき意見があるということに関して、さらに、例えば、立証責任の所在なども触れていただいたらなと思っています。   それから、第22の1の方の破産の方の消滅許可制度についてです。一読のときに十分発言できていなかったんですけれども、少し申し上げた、担保権者が対抗措置として私的実行を開始した後、ほったらかしになったらどうなるかという問題があります。先ほど執行のところでもほったらかし問題がありましたけれども、ここでもほったらかし問題があって、それは、破産法184条2項で対応すればいいというようなことが部会資料に書かれていたんですけれども、実務的には破産法184条2項は全然使われていません。今までは、不動産が問題になっていましたが、不動産は、財団からの放棄で処理することがほとんどだったと思うんです。他方、動産の場合、倉庫にあるものを財団から放棄しておしまいということが言えるかというと問題がある。   しかし、184条2項の手続は、実際に、費用が掛かり、かつ、その費用が手続費用に満たなかった場合には、結局管財人は担保権者のために財団からお金を使ったことになってしまいます。また、この私的実行の申立てがされた後、ほったらかしなので184条2項を使おうと思っても、最後、換価直前に、やはり私的実行と言われたら手続費用か出たっきりになってしまって、ここでも財団の費用が担保権者のために使われたことになってしまうので、184条2項での対処は望ましくないのではないかと思っていて、(注)でも結構ですから、この担保権実行で対抗してきた場合の期間制限、期間制限というか一定期間に何かする必要があるとか、そういうことを規定すべきかどうかということを、少し触れていただけないかなと思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。最後のお話はいかがですかね。触れましょうと言うことでしょうか。 ○笹井幹事 ちょっと検討して、少なくとも補足説明には、何かの形で今の御指摘を反映させたいと思います。 ○山本委員 ありがとうございます。いずれも細かい点で、債権質に関わるところなんですけれども、まず、第17の1についてなんですけれども、2の禁止命令のところで、(5)で債権質のことが書かれているんですけれども、これ、当然このペーパーは、中止命令の対象に債権質権がなるということが前提になっているように思うんですけれども、私の理解では、学説等、必ずしもそこは自明ではないのではないかと思っておりまして、それは、民事再生法の31条に競売申立人というような用語が用いられたりしていることとの関係もあって、いわゆる指摘実行が当然に中止命令の対象になるということでは、従来必ずしも、もちろんそういう説はあったと思いますが、なかったようにも思うので。ただ、この点は当然中止命令の対象にもなるという趣旨だと思いますので、そこは何か明確にした方がいいのかなと思います。今の17の1の(1)は、新たな規定に係る担保権の私的実行は含むということになっているわけですけれども、それ以外の私的実行も含むような形で、明確にした方がよいのではないかということが一つです。   それとの関係で、第17の6のところですね。資料27ページのところで、従来は債権質の実行の場合も書いていたけれども、今回前提が異なる可能性があるために書いていないという御説明があります。前提が違うというのはそのとおりのような気がするんですけれども、ただ、債権質の場合に、担保権者が当然に取立権限を持っているとして、それに対する中止命令ないし禁止命令が発令した場合の問題状況というのは、これもやはり【案17.6.1】と【案17.6.2】と同じような問題状況があるような気はしています。【案17.6.2】を採った場合には、やはり第三債務者が弁済すべき相手方がなくなってしまうんではないかというところは同じで、これは、従来から先ほどの中止命令、債権質が中止命令の対象になるという解釈論を採れば、同じ問題はあったわけなんだと思うんですが、今回立法でその点を明確にするのであれば、何らかの規律ですね。会社更生法には113条ですかね、更生手続開始した後の債権質について、第三債務者が供託することができるという規定がありますけれども、何か類似の規定が必要なような気もするので、今回これ、わざわざ債権者外しているので、もう一回入れろということまでは申し上げませんけれども、例えば、補足説明で債権質について問題があるというようなことを指摘するとか、ちょっと何か問題が、私のひょっとしたら誤解かもしれませんけれども、問題がひょっとしてあるとすれば、メンションした方がいいかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。後半の問題は、笹井さんとか事務局から答えていただくのですが、前半の問題について、1点ちょっと伺いたいのです。債権質について、民事再生法、債権質の私的実行について、担保権実行手続の中止命令が行われないと。それは、民事再生法32条にも、競売申立人と書いてあるという話でしたが、そういう言葉になっているということ以外に、実質的にやはり債権質の私的な取立てについては、32条は適用しない方がいいよねという、そういう議論というのはあるんですか。 ○山本委員 私の理解している限りでは、実質論は余りないのではないかと思うんですが、ただ、従来は、そういう私的実行というか、直接取立てのようなものについては、一体どこからどこまでが実行の手続なのかなどということを、必ずしもよく分からない部分もあって、一体どこなら止められるのか、止めたときに、一体その効果としてどうなるのかとか、そういう何かはっきりしないような部分が残って、これはだから、今の譲渡担保の実行でも同じことですけれども、そういう議論があって、少なくとも直接適用ではないんで、類推適用みたいなふうに説明する見解もあったと思いますけれども、ただ、実質論として、それはやはり担保なので、それは止める必要があれば止めるべきであるというところに、それほど意見があったわけではないと、私は理解していますが。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   後半のお話も、忘れちゃったけれども、何だっけ。 ○笹井幹事 第17の6について、債権質についても外されたけれども、同じ問題状況があるのではないかという御指摘で、これは補足説明に書くというのはもちろん対応可能ですので、そういう方向で考えたいと思います。 ○道垣内部会長 補足説明に書くというときに、流れとして、今、山本さんがおっしゃったように、二読資料では債権質の実行を含めていたところ、ここでは落としたということになると、補足説明で同じ問題があるかもしれないよねと書いても、何か落としたことにはそれなりの意味があるわけだから、何かちょっとそこら辺の。 ○笹井幹事 そうですね。前半に山本先生から御指摘いただいたところと重なるところがあるのかもしれませんが、質権についても若干扱いの統一感が足りていないところがあるようなところもありまして、最終的に改正の条文にしていくに当たっては、検討しなければならないのですが、債権質というよりは、債権譲渡担保について、実質的にどういうルールが妥当なのかを検討した上で、それに合わせて、言わば整備のような形で債権質についても同様のルールを導入していくかという扱いのところと、債権質について正面から問題にしているところと、両方ありまして、そこの統一感は、その問題の重要性とか独自性とかということにも少し関わってくるのですけれども、この問題については、落としたといっても対応しないということを明確にしたということではないと思っていますので、6についての譲渡担保についての規律を踏まえて、質権についてどうするかという問題がまだ残っているということを補足説明には書いておこうと思います。 ○道垣内部会長 分かりました、よろしくお願いいたします。 ○日比野委員 ありがとうございます。30ページ、第19の2、倒産手続の開始後に取得した動産に対する担保権の効力のところで、この内容は、二読資料から実質的な変更がないということはそのとおりと理解しておりますが、【案19.1.1】に対応する案がないことについては、そのような考え方がないということで、見解が統一されたというよりは、この部分は部会資料の18の事業担保制度のところで、この問題については、事業担保制度の問題として取り扱うのであると、整理されたということだと理解しておりますので、補足説明などで、その旨を、説明をしていただければと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。それは、事業担保で倒産、事業担保の債務者について、倒産が生じた場合も同様なんですかね。実行との関係で、継続的な事業体として実行していくという話になるというのは、分からないではないんですが、ここは、倒産手続開始後の話をしているわけですが、事業担保の場合には、その後にも及ぶということはそうなったんだっけ。 ○日比野委員 部会資料の38ページにそういう記載があったと理解しておりまして。 ○道垣内部会長 そうですか、ごめんなさい。 ○日比野委員 将来搬入される動産に対する効力については、問題意識はあるものの、このたたき台、あるいは中間試案としては、事業担保の問題として整理をするのだということと理解をしておりましたので、その点説明していただきたいというのが趣旨です。 ○道垣内部会長 分かりました。事業担保のときにはどうするかということを決定しているというわけではなくて、事業担保の問題として、そのところは考えるという、そういうふうな話でございますね。 ○日比野委員 はい、おっしゃるとおりです。将来にわたって無制限に対象になるという考え方自体が、ここでないものであるとされたのではないということを、何からの形で残しておいていただきたいということです。 ○道垣内部会長 よろしゅうございますか。 ○笹井幹事 事業担保においては、将来にわたって担保の件が及ぶというのを前回、前回というか、部会資料18において記載していますので、そういう対応策はありますよというような記載をするということだと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。 ○日比野委員 はい、よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見、御質問等がございますでしょうか。   もちろん、案が並列しているところもございますし、先ほどの日比野さんのお話ではございませんけれども、なおこういう点を検討しなければならないという問題が残っているというのを、ゴシックではない部分で書くべき点というのも残っているわけではございますけれども、ほかにございますでしょうか。   中間試案としては、こういうところでまた一段落つけて、検討を更に進めていくということでよろしゅうございますかね。   それでは、差し当たって御意見がないようでございますので、本日の審議はこの程度にさせていただきますが、もちろん、中間試案を確定するまでの間に、そうさほど何回も部会を開催することができませんので、その他お気付きの点とか、御発言の漏れとかがございましたら、積極的に事務局等に御意見をお寄せいただければと思います。御遠慮なく、よろしくお願いいたします。   そうなりますと、本日の審議はこの程度とさせていただきまして、次回の議事日程等につきまして、事務当局から説明をしていただきます。 ○笹井幹事 次回は、10月27日木曜日午後1時30分から午後5時30分まで、場所は中央合同庁舎第6号館B棟4階、東京地検の公判部会議室でございます。 ○道垣内部会長 27日木曜日、お間違いのないようよろしくお願いいたします。   それでは、法制審議会担保法制部会の第26回会議を閉会させていただきます。   本日は熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。 -了-