法制審議会 戸籍法部会 第10回会議 議事録 第1 日 時  令和4年11月17日(木) 自 午後1時30分                       至 午後3時46分 第2 場 所  法務省地下1階 大会議室 第3 議 題  戸籍法等の改正に関する要綱案のたたき台 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○窪田部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会戸籍法部会の第10回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   それでは、事務当局から本日を含めたこの部会の開催方法等についての御説明をしていただきます。 ○櫻庭幹事 今回もウェブ参加併用の形で行わせていただいておりますので、前回までと同様、御注意いただきたい点として2点申し上げます。   まず、御発言中に音声に大きな乱れが生じた場合につきましては、こちらの方で指摘させていただきますので、それを踏まえて適宜御対応いただければと存じます。また、発言をされる委員、幹事の皆様におかれましては、冒頭に必ずお名前を名のってから御発言を頂きますよう、よろしくお願いいたします。 ○窪田部会長 本日ですが、小幡委員、古瀬委員、武藤委員、村林委員、それから衣斐幹事、鷲崎幹事が御欠席の予定と伺っております。   それでは、本日の審議に入ります前に、配布資料等の確認をさせていただきたいと思います。事務当局からお願いいたします。 ○櫻庭幹事 お手元に配布資料目録、議事次第を配布しております。また、事前に部会資料10「戸籍法等の改正に関する要綱案のたたき台」をお送りさせていただいております。また、取扱注意の参考資料として、氏名の読み仮名に関するアンケート調査結果をメールでお送りしております。   配布資料の御説明は以上でございます。 ○窪田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、審議に入りたいと思います。   本日は、部会資料10「戸籍法等の改正に関する要綱案のたたき台」について御議論をしていただきます。   それでは、部会資料「第1 氏名の振り仮名(仮称)の戸籍の記載事項化に関する事項」の「1 戸籍の記載事項への追加」に関して、事務当局から御説明をお願いいたします。 ○櫻庭幹事 まず、部会資料10の1ページ、表題の下に記載しております(前注)について御説明申し上げます。   皆様には、引き続き要綱案の取りまとめに向けて御議論を頂きますので、今回の部会資料では、要綱案のたたき台を太字で示し、部会資料8又は9における提案からの変更点に下線を付して、変更点が明確になるようにしております。また、変更点に関し、必要な範囲で補足説明を記載しております。   では、部会資料10の1ページ、第1の「1 戸籍の記載事項への追加」を御覧ください。   本文①の用語につきましては、部会資料8において氏名の振り仮名という用語を御提案したところ、振り仮名については、漢字の脇に添える、ルビ、附随的というニュアンスを含むのではないかといった御指摘や、読み仮名又は読み方の方が適切ではないかといった御意見を頂きました。頂いた御意見や御指摘を踏まえて、事務局において改めて検討いたしましたが、やはり振り仮名という用語が適切ではないかと考え、改めて御提案させていただいております。   理由としましては、部会資料8に記載しておりましたが、振り仮名という用語は、民事執行規則やその他の省令において既に用いられている用語でありまして、あえてこれと異なる用語を用いる必要はないものと考えております。   また、2ページの補足説明1(3)に記載しておりますが、広く国民に利用されていると思われる行政手続の届書、申請書等を確認したところ、平仮名又は片仮名の振り仮名が使用されている例が非常に多いという状況でございました。なお、第8回会議において御指摘いただいたとおり、振り仮名には、そばにつける、脇につけるというニュアンスが含まれるところ、届書、申請書等の様式には、氏名の欄のすぐ上に平仮名又は片仮名の振り仮名欄が設けられていることが多いことから、振り仮名の利用場面を考えると、実情と整合すると言えるのではないかと考えております。   そして、本文①の下線部分のとおり、氏名の振り仮名の定義として、「氏名に用いられる文字の読み方を示す文字をいうものとする」ことを御提案しております。これは、各種国語辞典において、振り仮名は漢字の読み方を示すものとされているところ、氏名の全部又は一部が平仮名又は片仮名で表記される方もいらっしゃることから、そのような氏名の読み方も含むものであることを明らかにする趣旨でございます。定義を置くという観点からすると、読み方に代わる適切な表現を見付けることが難しいこともあって、読み方を定義の中で使用するという形での提案になっております。   なお、ここでいう読み方は文字の読み方ですので、各種国語辞典に掲載された①の意味であることが明らかであると考えております。   次に、本文②につきまして、これまでの検討を踏まえ、戸籍に記載する文字としては片仮名を想定していることから、これを明確にするため、文字に代えて「仮名」とする御提案をしております。また、戸籍法第50条第2項の規定を参考に、種類に代えて「範囲」とすることを御提案しております。   また、(注)として法務省令で定める内容を記載しております。   第1の1の説明は以上です。 ○窪田部会長 ただいま櫻庭幹事から御説明を頂いた点について、御質問や御意見がありましたらお伺いしたいと思います。どなたからでも結構ですので、御自由に御発言ください。 ○藤原委員 藤原です。おととい事務局の方から御説明を頂きました。それで、この点も、前々回私の方で指摘させていただいたのですが、第1の1の①の法文化については、戸籍法の第13条の1号が氏名で、2号に氏名の振り仮名を入れて、その後に、括弧書きで、「氏名の振り仮名は氏名に用いられる文字の読み方を示す文字をいうものとする」という記載を入れるということをお聞きしました。それで、そうであるならば、やはり、2号としては、「氏名の読み方」、あるいは「氏名に用いられる文字の読み方」の方が、むしろよいのではないかと今、思っています。   そもそも本部会では、改正の趣旨としては、氏名の読み方を法文化することが行政効率に資するという面と、自分の氏名を他人から正確に呼称される権利、利益の保護という点もあったかと思うのです。そして、この部会では、氏名の読み方について議論してきましたので、やはり氏名の「振り仮名」というのは、附随的な感じを受けます。   先ほど担当の方から御説明いただいた2ページの多くの行政手続で、「フリガナ」とか「ふりがな」が使用されているということがあり、それが、全て整合性を保たなければならないという御指摘があったのですけれども、これは、今回、新しく氏名の読み方について規定するので、それほど整合性に留意する必要があるのかという疑問があります。正に3ページにあるのですが、戸籍の届書には、平仮名ですけれども、「よみかた」と記載されています。そうだとしますと、やはり、今までの戸籍実務の関係から言いますと、「読み方」の方が整合性があるのではないかなと、今は考えております。 ○窪田部会長 ありがとうございました。第8回で提案してもらって、その後、更に御検討いただいたということで、今回また改めて振り仮名というのを提案していただいたのですが、戸籍法第13条に書き込む形の中で、読み方の方がよろしいのではないかという御意見であったかと思います。   この点に関して、もう少し複数の方からの御意見を伺ってから、事務当局にも答えてもらうということにしたいと思いますが、笹原委員、いかがでしょうか。 ○笹原委員 ありがとうございます。もし今のまま法文になるとしたらということで気になったことです。現状では①で、氏名の振り仮名は、氏名に用いられる文字の読み方を示す文字となっている一方、②では氏名の振り仮名に用いることができる仮名及び記号の範囲となっていて、①と②で少し用語がそろっていないかなという印象がありました。仮に②にそろえるならば、文字の読み方を示す仮名及び記号をいうものとするなどとなれば①と②が整合はするかと感じました。   私の方からは以上です。 ○窪田部会長 ありがとうございました。今の点は、①、②の関係もありますので、事務当局から一旦御説明していただくことにしましょうか。 ○櫻庭幹事 分かりました。藤原委員と笹原委員から御意見いただきましたので、順を追って御説明したいと思います。   まず、今回、改めて振り仮名ということを御提案させていただいた理由でございますけれども、先ほどの説明に加えまして、昔、戸籍にも、傍訓ということで今回の振り仮名のようなものを記載していた時代がございまして、先例でもこうした戸籍に記載する傍訓について振り仮名というような表現をしておりますので、戸籍の世界から見ても、この振り仮名というのがふさわしいのではないかといったことが、今回振り仮名を提案した理由になってございます。   また、法令という観点からいいますと、繰り返しになりますけれども、民事執行規則ですとか、そういったところで振り仮名という言葉を使っておりますので、整合性を考えますと、あえて読み方というようなことで後発的に変えて、先行の法令に影響を及ぼすというのを、少し避けた方がいいのではないかなと考えたところでもございます。   また、定義を置きたいということで、笹原委員からの御質問、御意見にも関係するんですけれども、氏名の振り仮名に用いることができる仮名とか記号、こういったものを省令で定めるという別段の規定を設けることに伴いまして、その振り仮名、あるいは読み仮名でもよろしいわけですけれども、そうした定義されるものについて、それを定義する中で、読み方という表現を使いたいと考えております。読み方という言葉を先に定義されるものの中で使ってしまうと、この読み方に代わる適切な表現が難しいということもありまして、読み方は法文上、定義の中で残すということとして、これまでの戸籍の取扱い、また戸籍以外の民事執行規則とかほかの取扱いを踏まえまして、振り仮名というのが妥当ではないかと考えて提案したということでございます。   笹原委員からの御指摘につきましては、そのとおり、文字の読み方を示す「文字」をいうものとするといった場合に、この読み方を示す文字と記号との関係を考えますと、文字に記号が包摂されるのかどうかというのは少し微妙なところがあるという気もしますので、御提案を含めてちょっと検討させていただきたいと思います。 ○窪田部会長 ありがとうございます。笹原委員からの御指摘の部分というのは、①の方で読み方を示す文字としつつ、②の方で振り仮名に用いることができる仮名という形になっていますので、何かうまく文字と仮名、あるいは記号を接合することが必要ではないかという御指摘であったと思いますが、その点については御検討いただくということでお願いしたいと思います。 ○笹原委員 ありがとうございます。私も、文字という場合に、記号までは含まないという用法の方が一般的なので、今おっしゃっていただいた用法の方がよいかとは思っておりました。 ○窪田部会長 ありがとうございます。御指摘の点、厳密に言うと、そのとおりではないかなと思いますので、是非御検討いただければと思います。   藤原委員からは、むしろ御意見ということでしたので、その他の方からももう少し御意見を伺ってからと思いますが、ほかの方、いかがでしょうか。   特に積極的に御発言はございませんでしょうか。 ○冨田委員 ありがとうございます。私も、先ほどの藤原委員の御意見に全く同感でございまして、今回新たに氏名に対して、正しく呼称される読み方を規定をしようということですので、様々いろいろなこれまでの法規との関係もあるかと思いますけれども、今回の趣旨にのっとれば…… ○窪田部会長 音声が途絶えてしまいましたでしょうか。   冨田委員の音声が届いていないようですが、正しく呼称される権利というところまでのご発言を頂き、多分その後が届いておりません。   では、うまく音声がつながるようになってから、改めて伺うこととして、ちょっとその間にほかの方からも御意見を伺ってよろしいでしょうか。 ○舩木委員 ありがとうございます。私も、藤原委員、冨田委員と同じ意見です。   まず、今回の補足説明の1の(1)で、第8回のときに振り仮名という付け方に対して指摘がいろいろされていたということが書いてあります。ここの(1)に書いてある指摘は、今回の資料(2)のところに書いてある内容から全くそのとおりだということを確認しているだけで、この振り仮名という言葉はルビとか附随的なニュアンスという性質で、そのとおりだということの説明があっただけです。   それぞれの手続における届出についてですけれども、先ほど藤原委員からありましたように、戸籍の届出についても、いろいろな届出があります。これは、昭和59年の民事局長通達で、各種届出の標準様式として氏名の読み方を氏名の欄の上に付するという内容の局長通達がなされて、その戸籍の届出がずっと30年以上続けられてきているわけです。むしろこの戸籍の届出について、今回氏名の読み方を記載事項として行おうとしているわけですから、どちらかというと、今の戸籍の届出の様式を踏襲するという方が、自然だろうと思います。   ただ、その氏名の読み方が平仮名になっているので、今回片仮名にするかという問題はあるとは思いますけれども、この制度趣旨とか氏名の読み方というものの本来の意義とかという点から考えても、読み方の方がよろしいのではないか、振り仮名よりはせめて読み仮名の方がよろしいのではないかという意見です。 ○窪田部会長 ありがとうございました。ちょっとその点で、今までこの点について御意見を伺った藤原委員、冨田委員、舩木委員にも確認したいのですが、御提案の方向は、今まで使ってきた読み仮名という言葉ではなく、むしろ読み方という御発言であったかと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。 ○藤原委員 藤原です。はい、結構でございます。 ○舩木委員 舩木も結構です。 ○冨田委員 冨田も結構でございます。 ○窪田部会長 冨田委員、マイクが復活しましたが、先ほどの御発言の続きをお願いできればと思いますが、お願いできますでしょうか。 ○冨田委員 申し訳ありません。どこまで発言していましたでしょうか。 ○窪田部会長 読み方の方がよろしいだろうということで、これは正しく呼称される権利をというところで、多分終わったんではないかなと思います。 ○冨田委員 大変失礼しました。そうしますと、舩木委員と全く同じでございまして、(1)にこれまでの議論、そして(2)に改めて国語辞典の記載の中では、振り仮名は飽くまでも多くそばに寄せる、脇に添えるであるとか、書き添えるといったような形で、「自己の呼称を正しく読む」ということからすると、読み方の方がふさわしいのではないかと思いましたので、意見として申し上げました。ありがとうございました。 ○窪田部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見ございますでしょうか。   ちょっと今、基本的には、やはり読み方という形にすべきではないかという御意見が複数出ておりますが、事務当局から何かございますでしようか。 ○櫻庭幹事 そうですね。先ほども申し上げましたとおり、読み方に代わる、定義の中で使える言葉を見つけるのが非常に難しいという現状がございまして、事務当局としては、読み方というものはいかしつつ、定義の中にいかして使いたいというのが御提案でありました。御意見を頂きましたので、それは御意見として受け止めて、どういうやり方があるのかというのは検討したいと思いますし、検討の結果、もし適切な言葉がなければ、また次回もこの提案になるかもしれませんけれども、一旦受け止めさせていただきたいと思います。 ○窪田部会長 恐らく、この問題に関しては、部会の中では、やはり読み方、読み仮名ということの方が本来性質上適切ではないかという御意見があった一方、恐らく最終的には、法文化するというときには、法制審議会の内容というのは、基本的な枠組みを決めるだけであって、最終的には内閣法制局において法文化がされるという形になりますので、その時点でまで、読み方、読み仮名というのが貫徹できるかどうかは分からないということにならざるを得ないだろうと思います。   ただ、そうした検討に際しても、やはり法制審議会における考え方としては、読み方、読み仮名の方が今回、特に御指摘あったように正しく呼称される権利を反映させるという意味でも、また、読み方というのは単にルビではなくて、音としての名前としての側面を持つんだということも、今まで検討の前提となってきたと思いますので、そうした点も踏まえて、さらに事務当局の方で検討いただくということにさせていただきたいと思います。   それでは、その他の点について、第1の1に関して御発言ございますでしょうか。御質問でも御意見でも、いずれでも結構です。   よろしいでしょうか。   それでは、続きまして、部会資料第1の2の「氏名の振り仮名の許容性及び氏名との関連性」につきまして、事務当局から御説明お願いいたします。 ○櫻庭幹事 部会資料の4ページ、第1の「2 氏名の振り仮名の許容性及び氏名との関連性」を御覧ください。   補足説明の1に、アンケート結果について記載しております。アンケートについては、民間事業者によるウェブアンケートという形で、令和4年10月31日から11月4日までの間に実施いたしました。サンプル数は、男性2,483人、女性2,517人となっておりまして、合計5,000人を対象としています。年代や地域も偏らないよう、それぞれの人口分布を意識して、あらかじめ枠を用意し、その数に満つるよう収集したもので、性別、年齢、地域について満遍なく回答いただいたものと認識しております。   まず、(1)の概要としましては、いわゆる名のり訓を利用する読み方や、本来的な音訓又は熟字訓の一部を利用する読み方については、どちらかといえば認めた方がよいという意見を含めて、認めた方がよいとの意見が比較的多いという結果でございました。他方で、漢字の意味と外来語、外国語の意味や発音とを関連付ける読み方、漢字の意味や読み方から連想されるイメージに基づく読み方については、一部を除き、どちらかといえば認めない方がよいという意見を含めて、認めない方がよいとの意見が比較的多いという結果でございました。   なお、漢字の持つ意味とは反対の意味による読み方、読み違い、書き違いかどうか判然としない読み方、漢字の意味や読み方からは連想することができない読み方、人の名前としてふさわしくないもの、キャラクターの名前を読み方として記載するものについては、いずれも、どちらかといえば認めない方がよいという意見を含めて、認めない方がよいとの意見が多いという結果でございました。   次に、(2)の四つの案と支持率につきましては、4ページから5ページに記載しております。アンケートとしては、四つの案からどれか一つを選択してもらうということではなく、四つの案それぞれについてどう思うかという質問になっておりまして、仮にその案が採用された場合に、賛成するか、反対するかということで、案の当否を示すものとなっております。   案として見た場合、ウの慣用によるものを含め、氏名に用いられる文字に通常用いられる音訓によるもの(名のり訓や熟字訓等を含め、辞書に記載されている読み方などが該当)であれば認める案が、どちらかといえば賛成という意見を含め、賛成の意見が最も多く、かつ反対の意見が少ないという結果でございました。   次に、(3)の規制の対象とすべきものにつきましては、5ページに記載しておりますが、反社会的な名前を読み方にするなど、人の名前としてふさわしくないもの、差別的であったり、卑わいであったりするなど、音で表した場合に一般的に著しい不快感を引き起こすもの、人の名前としては違和感のあるキャラクターの名前を読み方として記載するもの、漢字の持つ意味とは反対の意味による読み方、別人と誤解されるおそれのある読み方が、比較的多いという結果でございました。   このように、アンケート結果においては、漢字の意味と外来語、外国語の意味や発音とを関連付ける読み方や、漢字の意味や読み方から連想されるイメージに基づく読み方について、一部を除き、どちらかといえば認めない方がよいという意見を含めて、認めない方がよいとの意見が比較的多かったところ、こうした読み方についてどのように考えるか、皆様の御意見を伺いたいと存じます。   また、部会資料5ページの補足説明3に記載のとおり、乙案につきましては、従前、氏名の振り仮名は、氏名に用いられる文字に通常用いられる音訓によらなければならないという規律を提案していたところですが、音訓が多義性のある概念である上、熟字訓の一部を利用する読み方が含まれにくく、通常という表現も狭過ぎる印象を与えることから、氏名として用いられる文字の読み方として、一般に認められているものでなければならないものとすることを御提案しております。   なお、乙案につきましては、今後法制的な観点から更なる検討が必要であると考えておりますが、氏名の振り仮名の許容性及び氏名との関連性に関する規律として、より適切な表現がございましたら、御意見を頂戴したいと考えております。   そして、6ページの補足説明4に記載のとおり、アンケート結果のほか、氏名の振り仮名として認められる範囲、乙案の表現ぶり等を踏まえて、甲案又は乙案のいずれが妥当かという点につきましても、皆様の御意見をお伺いしたいと存じます。   第1の2に関する説明は以上です。 ○窪田部会長 ありがとうございました。   ただいま櫻庭幹事から御説明を頂いた点につきまして、御質問や御意見がありましたらお伺いしたいと思います。どうぞ御発言ください。   いかがでしょうか。 ○笹原委員 ありがとうございます。まず、アンケートで5,000人もの方々の人名に対する意識の実態というものを解明してくださったことに、敬意を表します。   今回の結果を拝見すると、いろいろなことが読み取れます。今御指摘いただいたことのほかにも、世代による意識の差がこれだけきれいに現れるとは、少しは想像していたのですが、驚いております。これを見ると、世代、年代が若い方々、つまり、これから名付けをすると思われる中心的な層をなす世代の方々の意見というものが、いわゆる許容性を比較的高く持っているということが、各項目から伺えました。   こうした若年層、10代、20代あるいは30代ぐらいまでの人たちの意見というものが、今後の名付けにかなり直結するわけですので、無視などすることなく、むしろ優先的に考えた方がよいのではないかと、この数字とグラフを拝見して思いました。   まずは以上です。ありがとうございました。 ○窪田部会長 ありがとうございました。笹原委員からは、アンケート結果の読み方についても御指摘を頂きました。ほかの方もそうだろうと思いますが、私自身も年齢による違いというのがかなり顕著に出ているというのは感じましたし、その上で、特にこれから名付けをしていくという世代の考え方、理解というのが大事ではないかという感じは、同じような印象は持ちました。   ほかにございますでしょうか。 ○大谷委員 ありがとうございます。同じような意見になってしまいますけれども、アンケートの結果を拝見して、世代間のギャップ、特に命名文化といったものが、世代によって大きく異なっていることについて、大変印象深く感じた次第です。   結論としましては、これまでに笹原委員などから頂いた御意見と全く同じではあるんですけれども、恐らく若い年代の方々というのは、既に友人や知人などの中に、外来語や外国語の発音や、あるいは言葉の意味というのを積極的に取り入れて、読みづらいというか、読み方を教えていただかないとならないようなお名前を持っている方が、周囲にたくさんいらっしゃるのだと思います。そういう意味では、私よりも先輩たちに当たる年代の方々とは異なる命名文化の中で過ごしていらっしゃるということで、そういう方の持っている命名文化というのを尊重していきたいと、改めて感じさせられた次第でございます。特にそういう方々の、どんな次の世代に名前を付けようかと考えたときに、古い世代の考え方でいたずらに制約されることがないようにしていかなければいけないというつもりで、このアンケートの結果を見させていただきました。   また、その関係で、権利の濫用や公序良俗といったことと一般的な読み方、甲、乙案をまとめていただいておりますけれども、この甲、乙の違いというのは、実際のところ、名付けをされる方にとっては、余り大きな意味は持たないのではないかとも考えておりまして、その意味では、やはり引き続き甲案を支持したいと思わされました。 ○窪田部会長 ありがとうございました。大谷委員からは、命名文化の世代による違いということについて、若い世代の文化を古い世代の側で制約すべきではないという点、この点は笹原委員と重なる御指摘だったかと思います。   それと、甲と乙に関して、実質的な違いは余りないのではないかという御認識を示していただいて、その上で、そうだとすると、むしろ従来採ってきた甲案というのを維持すべきではないかという御意見、これを賜ったかと思います。   ほかの方からももう少し御意見を伺った上でと思いますが、舩木委員、どうぞ。 ○舩木委員 ありがとうございます。まず、今回のアンケートについてですけれども、国民の感覚調査という形で、今回のアンケートが採られており、感覚を確認するという意味では参考になると思います。   ただ、問題点は、このような名前を付けたいという人に対して、それを拒否すべきなのか、受付を拒否すべき読み方というのはどのようなものか、というところが一番肝心なところです。そうなると、反対というのと、どちらかといえば反対というのを一緒に考えるというよりも、反対という数字に一番意味があると思います。どちらかといえば反対という程度であれば、受付を拒否するべきというところまでは言えないと考えられるので、そのような感覚をちょっと持ちますので、一緒にやるというよりも、反対の数字に一番意味があるかなという気がしました。  そして、もう一つは、元々この甲案、乙案を含む、そのような基準の内容で届出の受付業務における審査ができるのか、できないとかいうところが現実的には大きな問題になると思います。今回のアンケートは、その視点は入っていないということです。受付業務が実際に機能できるのかというのは、この制度を考える上においては重要なことであり、別個のアンケートとして、市区町村の職員を対象とするアンケートを採ってもらうことは意味があるのではないかと思います。実際に戸籍の受付業務を行ったことのある職員の感覚とか、その人たちがどういう基準なら受付業務が実施できるというような、そういう生の意見というのを聞くことも、必要なのではないかと思っています。今回のこのメンバーにも全国連合戸籍住民基本台帳事務協議会の委員も参加されているわけですから、むしろその現場の意見というのはどういうものなのかについて、是非お聞ききしたいと思っております。   そして、甲案、乙案の今回の案ですけれども、乙案の「一般に認められている」という内容で、本当にこれで基準になっているのでしょうか。やはりそこが一番難しいし、そういう受付業務の審査が、乙案ということで本当にできるのかというところの意見を、是非聞かせていただきたいという思いがあります。 ○窪田部会長 ありがとうございました。複数のことを御発言いただいたかと思います。一つは、アンケートの中で、特にこの名前はやはり受け入れられないという意味での、反対という形で明確に出ている数字、これがやはり特別な意味を持っているんではないかという御指摘であったかと思います。それとまた、これは当然、甲案、乙案に関して問題になる点なのですが、受付の業務が実際にできるかどうかということで、アンケートも考えられるということではありましたけれども、特に市区町村でこの受付の作業に当たる方の印象というのを、聞いてみたいということであったかと思います。それから、その点を踏まえた上で、乙案の一般に認められているものというのは、基準として十分に機能しないのではないかという御発言が、最後にあったかと思います。   もう少しほかの方からの御意見も伺ってから、進めていきたいと思います。   笹原委員、新谷委員の順番でお願いいたします。 ○笹原委員 度々すみません、笹原です。今、大谷委員と舩木委員の御発言を納得しながら伺ったところでございます。   今回、乙案の文言が、氏名に用いられる文字に通常用いられる音訓というものから、氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものへと大きく変わったわけで、これによって、想定される問題が少し減ったかなという印象を受けております。その一方で、一般に認められているという、既存のある状態、要するに認められているという事実がある読み方として読みうるものになっております。もしそうだとすると、こういうことが懸念されるということを申し上げたいと思います。   未来を背負う世代ということが先ほどの御指摘にもありましたが、少子化とはいえ、例年、年間80万件、90万件ほどの出生届があると聞いております。そうしますと、そこには、新生児への名付けというものが必ず付随するわけですが、その役場、役所での場面を考えてみます。親御さん、名付け親が漢字についての知的な生産として新しい読み方を考えたり思い浮かべたりすることもあります。実際にすでにある例でお話しすると、木へんに花と書いて「もみじ」と読む字があるのですが、それを「いろは」と読ませる名前が、近年急に現れてきているように見えます。2004年に人名用漢字になった字なので、20年もたっていないもので、その中で「いろは」が現れてきました。どうして「いろは」なのか、すぐに分からなかったのですが、モミジの品種として、イロハモミジというものがあって、そこから「椛」で「いろは」と読むようになったようです。それは、ある種の教養がなければ分からないことです。そういう知的な営みに基づく新規の読み仮名、読み方までを誰が否定することができるのだろうかということは、改めて発言しておきたいと思います。   一般に認められている読み方という法文をそのまま理解すると、こういうものは、受理できないのではないのかと、思ってしまいました。また、舩木委員がおっしゃったように、役場の方にいちいちその判断が可能なのかどうかという懸念もあります。   こういうものは特殊な例かと思われるといけないので、もう一つだけ例を挙げます。「彩」という字があります。色彩の「彩」という字で、これを「あや」さんと読む方が、今普通においでですが、実は名には昭和の、戦後のある時期に突然現れた読み方であるようなのです。前からどこかにあるにはあったのでしょうが、恐らく芸能人の芸名辺りから人気が出たもののようで、辞書などにあっても名前においては新規のものであった可能性が高いのです。そうすると、氏名において一般に認められていないものであったわけで、これを役所で不受理としていたならば、今の彩さんは一人もいなかったのです。   こういう循環を考える必要があります。どういうものが人々の共感や賛同を得るのかはわかりません。また、直ちに窓口の方などが可否を判断するということは不可能であろうと思います。もちろん研究者にとっても難しいわけです。この、一般に認められているものという文言が、もし仮に、一般に認められるものぐらいであれば、時制が限定されなくなるので、解釈の余地があるかと思うのですが、現状の乙案ですと、こういう問題が残るだろうと思われます。つまり、親御さんの思いの込められた知的な営みなどによる命名として、こういうものが出てきた場合、受け入れる余地があるような文言というものができないものかなということを感じております。 ○窪田部会長 ありがとうございました。笹原委員からは、乙案について、特に現在の一般に認められているものという言葉を使った場合に、創造的な命名ということで新しい読み方を考えて、それを実現しようとした場合に障害となるのではないか、また、実際にそれを判断することもできないのではないかという御指摘が、特に重要な点だったかと思います。   笹原委員からは、仮に一般に認められているものではなくて、一般に認められると言えば、この点は問題として対応できるかもしれないという御示唆も頂いたかと思います。   続きまして、新谷委員、それから常岡委員の順番で御発言を頂きます。 ○新谷委員 ありがとうございます、新谷です。私は、甲案を支持ということでの立場でお話しさせていただくのと、もう一つは、自治体の方といろいろお話しする機会もありますので、先ほど舩木委員から、窓口で受理をするときの問題というようなお話もありましたけれども、例えば、これは振り仮名の問題ですが、子の名に用いる文字のように、戸籍法50条で常用平易な文字は法務省令で定めるというようなことになっております。法務省令で具体的に、規則の60条で常用漢字表に掲げる漢字とか、別表第2に掲げる漢字、片仮名又は平仮名と、こういうふうに明らかになっていれば、窓口で、子の名にこの文字を用いることはできませんよということが明確になるんですけれども、先ほど笹原委員もおっしゃりましたように、一般に認められているものというようなことの漠然的な形で法案を作ってしまうと、一般に認められているというのはどの範囲なのかというところが問題になるので、やはりそこは、甲案のように、戸籍法には規定を設けないという、この考え方でやっていただいた方が、自治体の窓口とすれば、審査もなかなか難しいところもあるかも分かりませんけれども、そのような形の方が、戸籍事務としては回るんではないかと考えています。 ○窪田部会長 ありがとうございました。甲案を支持するということで、乙案が非常に漠然としていて、窓口での難しさもあるという点を御指摘いただいたかと思います。 ○常岡委員 常岡です。今、各委員の御意見いろいろ伺っていまして、私もなるほどと思いました。   そこで、甲案と乙案ですが、基本的には、今回の改正において、戸籍法上、許容性について何かの規定を置くのか、それとも置かないのかというところが出発点になっておりますけれども、実際の運用においては、先ほど大谷委員もおっしゃられたように、結論としては余り変わらないことになるのかもしれません。ただ、戸籍法上、氏名に関して、許容性について全く条文を置かないとした場合に、アンケートで5,000人の多様な人数採っていただきまして、非常に傾向等いろいろ勉強になるところがあったんですけれども、それが絶対ではないと、1億人超える人口の中の5,000人ですので、それは決して全てではないということも踏まえつつも、敢えて申し上げるとすれば、読み方、あるいは振り仮名かもしれませんが、読み方の記載を戸籍法上のルールとするのであれば、許容性についても何らかの規定があることが望ましいという意見があるのであれば、法律の一般原則である公序良俗とか権利濫用に任せずに、戸籍法に一定の規定を置くということも考えられるのかなと思います。その上で、先ほどから一般に認められるという文言が議論になっていて、この点の懸念ももっともと思います。そこで、例えば、社会通念上認められるものといった書き方もあるのかなという気がしていました。   結論としましては、社会通念上とは何かということは、結局は、それ自体、かなり抽象的な問題になるところなのでしょうけれども、ただ、この読み、特に名前の読みについては、今、笹原委員を始めいろいろと御意見出ましたように、社会に応じてもどんどん変わっていくし、新たな読み方が出るもので、その都度の社会において、通念上許されるものであれば、それは許容されるんだという、そのような含みが、その場合に入るのではないかと、個人的な意見ですけれども、社会通念上としておくことによって、社会の変化によって対応可能ですという、そういうふうな意味合いが示せるような気がしておりました。   戸籍の窓口で受理されるときには、その都度社会通念が何なのかといった判断の負担を、担当者の方に課さないことが望ましいと思われますが、基本的には、恐らくよほど問題のある、今回のアンケートで、反対の意味であるとか非常に卑わいな読みであるとか、そういったものはよろしくないという御意見が出てきましたけれども、そういうものははねるとしても、そうではないものは、現在でも通常は戸籍の出生届等を受け入れて、受理されていると思います。恐らく、最終的に判断を任されるのは家庭裁判所で、裁判になったときだと思うのですけれども、そのときの裁判規範として、社会通念上、今受け入れられているものとしたのであれ、あるいは、公序良俗や権利濫用としたのであれ、最終判断をする場になったときに、裁判所がどういう基準によって、審判をしていけばよいのかというための議論は、別途尽くす必要があると思いますし、そのために、戸籍法の中ではなく、省令とか通達とか、そういった形で何らかの個別の指針を示していくという方向で対応することも、考えられるのかなと思いました。 ○窪田部会長 ありがとうございました。常岡委員からは、多分アンケートの結果の中で、幾つか案がありますけれども、全く制限することなく認めるというのに対しては反対なのか、どちらかといえば反対まで含むのかということがありますけれども、それなりに高い比率での反対というのが出ていて、そうした場合に、戸籍法の中に、許容性についてやはり全く規定を置かないのではなくて、置くということを考えた場合には、どういうものが考えられるのかということを踏まえて、乙案についてであれば、一般に認められているもの、あるいは一般に認められるもの以外に、社会通念上認められるものというような文言の修正があり得るんではないかという御指摘を頂いたかと思います。   この乙案に関しては、今回、乙案の文言の全部に下線が付いていますように、今回初めて出てきたものですので、先ほどの笹原委員からの御指摘も踏まえて、これから文言を詰めていくというものなのだろうと思います。また、常岡委員からは、社会通念上認められるものという基準でいった場合、これは多分、一般に認められるものという基準でも言えるのかもしれませんが、社会通念なりがどんどんどんどん変わっていくのであり、命名文化が変わっていけば、それに対応して変わっていくという側面もあるのではないかという御指摘も含まれていたかと思います。 ○西幹事 ありがとうございます、西でございます。2点申し上げます。   1点目は、先ほどから先生方のお話の中で出ていますように、世代による違いというのは、やはりアンケート結果の中で非常に重視すべきことだと思いました。外来語、外国語の意味や発音等を関連付ける読み方については、認めない方がよいというまとめ方に、4ページの方でも5ページの方でもなっていますけれども、例えば、3の6の「まりん」とか、3の8の「るな」とか、3の10の「あかり」の辺りは、15歳から19歳では、どちらかといえば賛成まで含めますと、認めた方がいいという意見の方が多くなっていますので、正に反対の結果になっています。それも考えますと、やはりこれからのことを考えるのであれば、そのような若い世代の考え方を重視した方がよいのではないかと感じました。   2点目は、私は甲案を以前から支持しておりますが、今回のアンケート結果を見る限り、4ページから5ページにかけて、(2)のところで書かれていますように、ア、イ、ウ、エの中では、恐らくイが甲案に対応して、ウが乙案に近いものと思われますので、甲案より乙案の方が支持している人が多いように読めます。少し気になるところではありますけれども、非常に細かいことで恐縮ですが、ウの方では、語尾が読み方「などであれば認める」案となっていまして、エの方では、「ものに限って認める」案という表現ぶりになっております。そのため、ウについては、「であれば」という表現は、限ってという御意図で書かれたと思いますけれども、そうではなくて、これならいいよというぐらいの気持ちで賛成という人が多かったのかなという気もしますので、これをもって、イとウの間でウの方が支持者が多かった、つまり、乙の方が支持者が多かったというのは、やや早計な読み方ではないでしょうか。   さらに、常岡先生から御指摘がありましたように、アのように制限することなく認める案については反対の方が多いという結果が出ていますが、この中には、必ずしも規定を設けるということではなく、何となく卑わいなものとかは駄目だよねということで、必ずしも規定をおく必要がないという趣旨ではない人まで含まれているという読み方もできます。つまり、このア、イ、ウ、エの結果をもって、甲案がそれほど支持者がいないということはできないのではないかと感じました。 ○窪田部会長 ありがとうございました。世代による違いに関して、外来語の点も含めて、比較的若い世代の感覚を重視すべきではないかということと、アンケート結果、ア、イ、ウ、エがありますけれども、聞き方による部分もあるのではないかということで、機械的にこの割合で多数決的に決まるものではないという旨の御指摘だったと思います。   最後の点はそのとおりで、これは多分、どういう趣旨なのかということまで含めて言ったときには、いろいろな可能性がありますので、これが絶対的正しいという分析はできないと思うのですが、ただ、むしろここから出てきていることでは、この考え方はあり得ないというのではなくて、それぞれについて一定の割合である以上は、この後は、このアンケート結果を尊重しつつも、この部会において適当だと思うことを検討していくという形で進めていけばよいのではないかと理解しております。 ○戸苅幹事 ありがとうございます、最高裁家庭局の戸苅でございます。先ほど、最終的には裁判所の判断の話になると、裁判所において支障なく判断できるような規律の在り方という、そういう趣旨のお話もございました。   裁判所が判断する際に、適切に判断ができるような規律にすべきというのは、正にそのとおりかとは思っているのですが、基本的には、却下をして、初めて裁判所にまで来ますので、そういう意味では、やはり一番重要なのは、最初の受付の段階で、困難なく判断ができるような規律の在り方にすべきという点が、より中心的に考えなければいけない部分なのかなと感じておりますので、ちょっと一言申し上げました。 ○窪田部会長 ありがとうございました。最終的には裁判所で判断することになるのだからということではございましたけれども、そうはいっても、当然に最初から裁判所に行くわけではなく、書類を受け付けない、却下するということがあって、初めて裁判所の仕事になりますので、一番最初の段階での受付で適切に対応できるかどうかということを含めて、十分に検討するべきだという御意見であったと認識いたしました。   ここまでのところで、ちょっと一つ一つというのではなくて、今回特に乙案を新しく出していただいたということについて、なお事務当局の方から何か補足的に御説明いただくことがあったら、それをお願いできますでしょうか。 ○櫻庭幹事 それでは、乙案について少し補足的に御説明させていただきたいと思います。   冒頭申し上げましたとおり、今回、アンケートで四つの案を聞いたわけですけれども、この四つの案、どれを支持しますかとか、そういう多数決で決めたわけではなくて、そこの四つの案、それぞれの案を採った場合の賛否、当否、そういったものをお聞きしたいといったところで質問に答えていただいたわけでございます。   そういった意味で、特に何か、イとウで賛成が多いからどっちがいいとか、そういったものではなくて、それぞれの案が支持を受けるかどうかというところで聞いたというところでございますが、今回分かったのは、ウの通常用いられる音訓によるものであれば認める案というのが、賛成が51.2と、反対が8.4と案として安定した支持を受けたということですので、この案単体で見た場合の評価として、読み方については何らかの形で規律が要るのではないかという点です。つまり、読み仮名というものを付けるのであれば、何らかの形で規律を、姿勢の問題かもしれませんけれども、そういったものが必要だというふうな意見が多かったのではないかと考えられましたので、これまで部会の方で提案されてきていただいた甲案のほかに、ある程度の意見が多かったウを、少し表現を変えておりますけれども、乙案として記載させていただいたというところでございます。   また、実際運用していく上では、一般に認められているものというのがやや抽象的なものになりますので、それは、法律で姿勢を示した上でも、これをやや具体化する必要もあると思いますし、多くの委員の先生方からも言われたとおり、実際運用していく上で、甲案も乙案もそれほど変わらない運用になるのではないかなと考えているところでございます。 ○窪田部会長 ありがとうございました。恐らく、今まで出てきている御指摘の中で共通のものとしては、市区町村の窓口できちんと対応できるようにするということが重要だという点、この点については、多分どなたからも異論がないだろうと思います。ただ、恐らくそれについては、乙案に限っての問題ではなくて、甲案において、戸籍法には規定を設けず、更に何にもしないのであれば、これは非常に簡単なんですが、戸籍法には規定を設けないけれども、飽くまで権利濫用の法理や公序良俗の法理等の一般原則による制約は入るんだよということになりますと、では、この名前はどうなのという問題は多分出てくると思いますので、私自身も、大谷委員から御指摘があった甲案、乙案、運用の仕方によって、多分ほとんど変わらないことになるのではないかというのは、そういう気がしております。したがって、甲案にしても乙案にしても、多分いずれにしても、こういう扱いはどうするのか、一個一個全部やるということはできないでしょうけれども、外来語のこういったものについてはどうするのか等々の運用の細則みたいなものは示した上でやらないとならないだろうと思います。ある市区町村では、全部フリーで受け付ける、ある市区町村では、何か分かんないけれども全部法務局に問合せが行って、場合によっては裁判所に全部行くというような形での、バランスの悪い形にはならないようにする必要があるのだろうなと考えております。 ○笹原委員 ありがとうございます。すみません、4時から校務があるために退席しなければいけないので、少しまとめてお話し申し上げたいと思います。   今、委員の先生方からお話があったことに絡めながら、お話ししていきたいのですが、まず、乙案の、認められているものという文言であっても、運用で何とかなるのではないかということについて、私もそう信じたいところであります。その一方で、認められているものという現状について述べる法文ができた場合には、認められているものと思えないような命名ですね、創造的な読ませ方をする、しかし、そこに知性や感性による裏付けや典拠、根拠がご本人なりにあるという場合に、法律に逸脱した行為をしているのではないかというような後ろめたさがもし生まれるのであれば、これは気の毒なことだと思います。この命名行為が違法だなどと思ってしまうならば、それは不幸なことだと思います。ただ、法文の読み方がおかしいのかもしれないので、専門家の皆さんに御指摘いただきたく思います。   私も甲案を支持するものでありますが、常岡委員の社会通念上という御案を伺って、先ほど来の懸念が、もしかしたらかなり薄まるかなという気もしております。時代時代で社会通念というのは変わるということが、法律の世界で既定のこととなっているのでしょうし、命名習慣というものも、時代によって内実が相当変わっています。創造的な読み方というものは、命名習慣の一角を常になしてきましたから、今後も保障されるものであるはずで、それが名のり訓の源泉となりうるものであるという位置付けを踏まえたならば、社会通念上という文言で、齟齬が生じるか否かということを考えてみたいと思っております。   社会が全体として多様性を認めるようになってきた、あるいは個性を尊重する時代になってきたと、よく言われております。人名用漢字も裁判を経て追加されることがありますし、常用漢字が表外字になったばかりに、人名に使える漢字から消えるかと思いきや、継続性を維持するということで、人名用漢字に拾われるということが起こっております。そうやって、名付けの漢字というものが広がる一方で、使える読み方が制約されていくということが、多様性や個性ということとどのように整合するのかということも、考えていかなければいけないと思っております。   また、日本の多様性には、地域による多様性というものも相当あり、北海道から沖縄まで、あるいは国外に暮らす方々もおいでです。例えば、愛情の「愛」と書いて「かなさ」さんという方が複数おいでなのですけれども、東京にいるとなかなか実感できません。しかし、先日沖縄の子供たちに模擬講義をして、その読みを示してみたところ、分かる、いる、ということでした。要するに、琉球方言で、愛とか慈しみといった意味で「かなさ」と言うのだそうです。そういうことから、「愛」と書いて「かなさ」ちゃんという子は沖縄にたくさんいます。こういう読み方が東京で審査されて、そんなの聞いたことがない、一般性を感じない、社会通念上どうだなんてことが生じないだろうかということが、また心配になります。   あるいは、教えている学生にも、人格の「格」と書いて「○○○」と読む人がいて、聞いてみますと、朱子学の思想に基づく読ませ方だそうです。こういう教養に準拠した、一般性を感じにくいものについて、不受理とされることが起こらないのだろうか、そもそも今回の基準からすると、認めないものとなるのではないかという懸念もございます。   宗教、信仰に絡むようなものももろもろあるのですが、実例は省略いたします。   最後に、国際化ということも各方面で進展していて、国際結婚による出産ということも多々あると聞いております。西幹事から、「まりん」さん、「るな」さんなどの例を挙げていただきましたが、これらは国際結婚と関係しているケースばかりではないのですけれども、漏れ聞くところによると、例えば、奥様がハワイのご出身なので、「月」と書いて月のハワイ語の発音を読みとして命名されたというようなケースもあるそうです。今のところ、そういうものも受理されているわけです。そういうものは片仮名にすればよいではないかという意見もありますが、国際化が進展する中で、やはり漢字で表現したいんだという強い意思をお持ちの方がいらっしゃる以上、こういう要望を本当に否定できるのだろうかと思います。そして、外国語、外来語ということで、拒否反応が一部にあることを十分理解しておりますが、漢字というものの読み方は、そもそも音読みしかなかったものであって、そこに大和言葉を訓読みとしてあてがうという方法を採った時点で、日本では何とでも読みうるようになってしまったというのが実状です。   大貝、漢数字の「一」を書いて片仮名の「ノ」を書いて「貝」、ページと読む字と言った方が早いですね、「頁」。こういうものは、外来語の訓読みとしてもう定着しているわけです。金偏に口、「釦」と書いてボタンですね。そういうものも、あちこちで使われている現状があります。外来語の訓読みという方法はよくないというのであれば、そういうものからして根絶すべきなのかといった難しい議論になっていきかねません。愛情の「愛」と書いて「さらん」ちゃんという方も、もう随分たくさんおられるのですが、韓国語の愛という意味で、「サランヘ」の「さらん」のようです。そういうものを不受理とした場合、どういうことがこの先窓口で頻発していくのかということも懸念しております。また、それを誰かが審判する、裁判所がこういうことを判断するということも、基準が出来上がっていくまで相当大変だろうということを感じております。   ことばや漢字の専門家として、こういうものに線引きが難しいということは前から申し上げておりますし、仲間の研究者たちにも、間接的にいろいろなことを聞いているのですが、そういうものに基準を設けてラインを引くということは難しく不可能だという回答ばかりが返ってきております。研究をしていると、そういうふうにしか言えなくなるということなので、そこは無念が深まる点でもあります。それは、広く言えば、日本語自体が完成品になっていない、いつの時代にも完成品になったことなどないわけで、そういう状況の中で日々名付けが、あるいは漢字の運用が行われているということであり、この問題はその表れであるとも言えると思います。   命名習慣とか命名文化ということをしきりに言っておりますが、日本語や漢字そのものも常に草の根から新しいものが生まれてくる、たった一人が新しいことを、新しい運用を始めて、あるいは新しい字を作って、そして人々に共感を得たものが社会に広まっていくというサイクルを経て、今に至っています。このサイクルは、恐らく日本語にかかわる文化が続く限り、永久に残ると思います。もしそういうサイクルがなくなったならば、花が根を失うときのように、日本語自体が枯れていくということを、ここで申し上げておきたいと思います。   この後、結論が決まっていくかと思いますが、決まったことが、5年後、10年後の命名文化というものに、どのような影響を与えるかという想像力を持つということは、なかなか難しいのですが、この審議会しか考えるところがない現状にあるので、私もできるだけのことを考え続けていきたいと思います。残りの回数も少ないと思いますが、また皆様にいろいろ教えていただきたく願っております。   すみません、長くなってしまいました。ありがとうございました。 ○窪田部会長 ありがとうございました。笹原委員からは、大きく分けて2点あったのかなと思います。最初の乙案について、認められているという今の文言だと、現在あるものを前提としたという形の判断になるので、新しいものが認められなくなるんではないか、これは、先ほど頂いた御指摘とも重なる部分だろうと思います。ただ、笹原委員からも御指摘あったように、認められる、あるいは、笹原委員から今回、常岡委員から御提案があった、社会通念上とした場合に、そうした問題は少し対応できるかもしれないという形での見通しも示していただきました。   ただ、2点目になりますが、そうだとしても、社会の多様性とか個性とかというふうなことを言っている場合に、これがやはり適切ではない制約になっていく可能性があるんではないか。多様性の中には、地域の多様性ということも御指摘いただきました。笹原先生の御本の中に、方言漢字に関しての御著書があったと思いますが、その中でも論じられていることかと思いました。また、国際化に対応するという中で、外来語に対する拒絶反応があるとしても、元々漢字自体が外来のものであって、また漢字を訓読みにするといったことは、漢字と日本文化を接合するといった、これも笹原先生の御著書の中で触れられていたことでもあったかと思います。   以上の御指摘を頂きましたが、ほかの方から御意見ありますでしょうか。   それから、きちんと確認しようと思って忘れていましたが、笹原先生からの御指摘は、単純に甲案、乙案ということよりも、恐らくこういうふうな規制を何らかの形で設けるとした場合に、それが今すぐではなくて、10年後とか20年後、少し先の方でどういうふうな状況をもたらすのかということについて、十分想像性を持った上で、想像力を持った上で対応することが必要であるという御指摘があり、大変に重い御指摘なのかなと伺っておりました。   ほかの方、いかがでしょうか。 ○舩木委員 ありがとうございます。この甲案と乙案が、余り差異はないのではないかという意見もございましたけれども、やはりこの文言の規定の仕方というのは大分違うなという印象を受けております。   まず、甲案の権利濫用の法理・公序良俗の法理等という一般原則によるというのは、原則はほとんど有効であって、無効となるのはよほどの場合に限るということになると思います。無効になるという意味で、権利濫用あるいは公序良俗という例示を挙げている甲に対して、乙案は、「一般に認められている」とか「社会通念上認められる」という言い方になると、今度は認められるという範囲が限定されるという話になる、そういう表現になると、これはかなり制約されてしまうという印象を受けることにならざるを得ないと思います。   今までは、慣用によって認められるものということで、そういう例も、甲案、乙案の中にも元々出てきたわけですけれども、前々回からこの乙案のところで慣用という言葉がなくなり、今回も6ページの1行目のところで慣用されている読み方という表現は一応残っています。今まで使っている読み仮名について、今回読み仮名を届け出るときにも、やはりこの規定が適用があるということであれば、今まで使っていても、これは一般的に認められているとまではいえないから駄目ですよという場合は、十分あり得るということだと思います。   甲案だったら、基本的には今まで使っている読み方は、原則全部認めることになると思っています。これに対して、乙案の場合には、必ずしも認めないという場合が十分あり得るということになると理解しております。そうなると、かなり混乱も生じるし、反発も出てくるのではないかなということで、やはり私も、甲案でしかここはやりようがないのではないかというのが意見です。 ○窪田部会長 ありがとうございました。ちょっと私の方から、舩木先生に御質問させていただきたいのですが、甲案と乙案、やはりかなり違うのではないかということであったんですが、アンケートの中でも出ている高いという感じで「ひくし」と読ませる、太郎と書いて「じろう」と読ませる、太郎と書いて「ジョージ」と読ませる、これは、甲案ではオーケーになりそうな気もするのですが。 ○舩木委員 いや、違います。私は、それは甲案でもそれは駄目だと思っています。今回の改正は、氏名の読み方は個人を特定する要素の一つとして位置づけようとしているのですから、甲案の権利濫用、公序良俗の法理の趣旨から読み方を無効とすべきなのは、社会的な混乱を生じさせたり、間違った読み方に錯覚させるというものも認めるべきではないと考えているので、甲案でもそれは駄目だということになると思っています。 ○窪田部会長 はい、分かりました。   ほかに御発言なければ、ちょっとまず、今までのところで何かコメントがあればということで結構ですが、特になければ、もちろん構いませんが、事務当局から何かございますでしょうか。 ○櫻庭幹事 甲案にしろ、乙案にしろ、今までの中で御議論いただいたように、一定の規律といいますか、先ほど出ました「太郎」を「ジョージ」や「じろう」と読ませるとか「高い」を「ひくし」と読ませるとか、そういったものについては、一定の規律が必要だろうと考えています。今回、アンケートの方でいろいろ規制の対象とすべきものとして支持が多かったものがありまして、具体的には5ページの(3)でございますけれども、反社会的な名前を読み方にするとか、差別的だったり卑わいだったりする読み方にするとか、こういったものについては、通達とか何らかの形で、分かるような形で基準を示したいなと考えております。 ○窪田部会長 ありがとうございました。   ほかに、この点に関して何か御意見ありますでしょうか。今ちょっと、意見が完全に一つの方向でまとまったという形ではございませんので、今日出た御意見も踏まえた上で、事務当局に、特に乙案に関しては、もう少し言葉自体も検討し直してもらう必要があると思いますので、その点も含めて、次回の課題にさせていただきたいと思います。 ○笹原委員 何度もすみません。補足的なことを、少し申し上げます。   先ほど、訓読みの話で、例えば「山」とか「川」とかいう字を、和語で訓読みとし、その後、ページとかボタンとか、そういうものも出てきたというようなことをお話ししました。その間にあることとして、もう1,500年ぐらい前から、お寺の「寺」とか動物の「熊」とか、こういう語は朝鮮語由来とも言われているので、実際は外来語だったものが訓読みになったのではと言われています。そういうシステムを日本語自体が持っているという宿命ともいえる性質を、どこまで共有できるか、認識できるかというところもあろうかと思います。   あと、今回の政策が実行されることで、まずは戸籍からですけれども、漢字表記と読み仮名、振り仮名とが一体運用されるという、史上初めてのことが起こるわけです。一体運用される以上、実際はもう読み方に関する不便はなくなるのではないかということも、少し極端な言い方だと思いますが、指摘しておきたいと思います。何のために振り仮名、読み仮名を付けるのかといえば、漢字が読みにくいから付けるのであるわけです。近頃の若者の名前が読めないと、私も60歳近くなって、だんだんと言うようになってきているのですけれども、100歳以上の方々が今9万人もおいでだそうで、そういう方々のお名前の一端を拝見すると、特に男性の名前は読めないものが多く、最近子の名が読めなくなったという言説には幻想の面もあると思います。   そういう中で、変わりつつある名前というものに、この部会で規律を設けるのだという、それは一つの見識ではあると思うのですが、新しいものも出てくる命名文化の息の根を止めることがないような、バッファというのでしょうか、何かそういう緩い部分を残しておく必要があります。そういうふうにしなければ、ことわざに角を矯めて牛を何とかというのがありますが、そういうように本当に制約したいものを制約するばかりでなく、むしろこれから生まれてくるよいものまで潰してしまう。そういうものにならないようにしていかなければいけないということを、自戒を込めて感じているところであります。 ○窪田部会長 ありがとうございました。命名文化を踏まえた上で、角を矯めて牛を殺すようなことがないようにという御指摘を頂きました。 ○大谷委員 ありがとうございます。先ほど発言させていただいたときに、甲案と乙案、運用においては大きな差がないのではないかとちょっと申し上げたところ、少し誤解を与えてしまったかと思いますが、運用において同じであっても、なぜ甲案を支持するのかといったことを申し上げておきたいと思っております。   まず、甲案と乙案的なものについて、アンケートの結果なんですけれども、甲案が余り支持されていないかのように見える結果になっておりますけれども、恐らくこれは、その設問の作り方の影響が考えられます。先ほども御指摘のあったところですけれども、権利の濫用や公序良俗違反でなければ、幅広く認めて差し支えないかどうかという質問になりますと、ほかにも何か考慮要素があるのではないかと思われるような気がします。特に社会への混乱ということがかなり括弧書きで大きく表示されていますので、それ以外にもということですと、例えば、子供がかわいそうなのではないかとか、子供が差別されたり、いじめられたりということは、恐らくこれは権利濫用の中に入ってくるものですけれども、それがなかなか伝わりにくいというところもあって、何となくどちらとも言えない、あるいはほかにも見るべきところがあるだろうという意味で、反対の立場を選択された方がいらっしゃったのではないかと推察されるところでもあります。このアンケートのイとウの結果に事務局もとらわれていないということは重々承知の上ですけれども、できるだけこれが、この資料は公開される資料ですけれども、誤解を与えない形で受け止めていただけるようにしていただきたいと思います。乙案は恐らく、これからの命名文化に対する不当な縛りというのが行われていても、その結果というのは、笹原委員がおっしゃったように、すぐに社会で発見することができず、是正が難しいということを考えますと、やはり甲案しかないのではないかと思っている次第でございます。   一言補足させていただきました。ありがとうございます。 ○窪田部会長 ありがとうございます。先ほど大谷委員からは、運用においては、甲案、乙案で大きな違いはないかもしれないということでありましたけれども、やはりそうであったとしても、甲案とすべきである、乙案は、特にこれからの命名文化の制約になる可能性があるのではないかという点の御指摘を頂いたものだと思います。   それでは、ここで一旦休憩を入れさせていただきまして、残りの部分について、10分後ですから、3時5分から審議を再開するということにさせていただければと思います。   それでは、10分間休憩を頂きます。           (休     憩) ○窪田部会長 それでは、時間になりましたので、審議を再開いたします。   先ほど扱っていただきました第1の2の部分については、非常にたくさんの御意見を頂きましたので、それを踏まえて、事務当局の方で引き取っていただいて、次回改めてその検討したものを示していただくという形にしたいと思います。   後半では、部会資料「第2 氏名の振り仮名の収集に関する事項」につきまして、事務当局から御説明をお願いいたします。 ○櫻庭幹事 部会資料の6ページ、第2の「1 氏又は名が初めて戸籍に記載される者に係る収集等について」を御覧ください。   こちらは、本文につきまして、部会資料9からの変更点はございません。   同じく部会資料の6ページ、第2の「2 既に戸籍に記載されている者に係る収集について」を御覧ください。   本文について、部会資料9からの主な変更点としましては、本文②について、戸籍の筆頭者が除籍されているときの届出人の順位を明記した点、本文③として、施行日後に戸籍の筆頭者以外の者について、新戸籍が編製され、その者が新戸籍の筆頭者として戸籍に記載される場合には、既に氏の振り仮名の届出がされた場合を除き、氏の振り仮名の届出をすることができる旨の規律を追加した点、本文⑤の規律に関し、職権という文言を記載しないこととした点、本文⑥のとおり、職権記載された氏の振り仮名の変更に関し、戸籍の筆頭者が除籍されているときの届出人に係る規律を追加した点でございます。   7ページの補足説明1(1)に記載しておりますが、氏の振り仮名について、戸籍の筆頭者と同籍者の認識が異なる場合の対応としましては、まずは、国民への周知に当たり、同籍者と調整した上で、氏の振り仮名を届け出ることが望ましい旨周知することが考えられるところです。その上で、筆頭者が単独で届け出た氏の振り仮名が戸籍に記載された後の対応としましては、戸籍法第113条に基づく戸籍訂正又は第3の1、本文①の氏の振り仮名の変更によることが考えられます。   なお、錯誤とは、戸籍の記載が事実に合致しないことをいうとされておりますので、例えば、届出に係る氏の振り仮名が、筆頭者が実際に使用していたものと異なるような場合には、錯誤に該当すると判断される可能性があるものと考えられます。他方で、届出に係る氏の振り仮名が、筆頭者が実際に使用していたものである場合には、その氏の振り仮名が、同籍者が使用するものと異なる場合であったとしても、錯誤に該当しないと判断される可能性があるものと考えられます。   次に、補足説明1(2)の記載のとおり、前回会議において、戸籍の筆頭者が除籍されていない場合であっても、筆頭者による届出が期待できない場合があるのではないかとの御指摘を頂きました。これにつきましては、まず、戸籍の届出に関する一般的な取扱いとして、届出人が署名した届書であれば、使者が市区町村に持参して届出をしたり、郵送により届出をしたりすることが可能です。また、届人が疾病、その他の事故によって出頭することができないときに該当する場合には、戸籍法第37条第3項に基づき、代理人による口頭の届出をすることが可能ですが、この場合には、委任者である届出人本人の委任状が必要となります。   なお、戸籍法上、代理人による書面の届出は認められておりません。そして、これについては、戸籍法第100条の分籍等により、新戸籍が編製される場合には、既に氏の振り仮名の届出がされた場合を除き、本文③の規律により、氏の振り仮名の届出をすることが可能となります。また、職権記載された氏の振り仮名の変更については、戸籍法第107条第1項の氏の変更と同様に、筆頭者又は配偶者の一方が、その意思を表示することができないときは、他の一方だけで届出をすることができると考えられます。   次に、8ページの補足説明2に記載のとおり、本文④の規律に関し、戸籍の筆頭者と同籍者との間で、住民票に記載された振り仮名が異なる場合も想定されるところですが、そのような場合には、戸籍の筆頭者に係る氏の振り仮名を戸籍に記載することとなると考えられます。   次に、9ページの補足説明4に記載しておりますが、戸籍法第137条の適用除外の規定を設けることにつきましては、本文①の規律において、届出義務を課さないこととしており、届出義務者でなければ、戸籍法第137条の適用により過料を科されることはありませんので、そのような規定を設ける必要はないものと考えられます。   第2の2に関する説明は以上です。 ○窪田部会長 ありがとうございました。   ただいま櫻庭幹事から御説明を頂いたところにつきまして、御質問や御意見がありましたら、お伺いしたいと思います。御発言をください。 ○西幹事 ありがとうございます、西でございます。細かいことを1点確認させてください。   6ページの第2の2の②のところで、除籍者がいる場合の届出の順位として、第2順位が配偶者、第3順位が子供と書かれております。この点、前回はこのような細かい記載はなく、前回資料では2ページの2の②になりますけれども、「その順序に従って」という表現になっておりました。これは、戸籍の記載順序のように読めるのですが、今回は、第3順位として子という書き方になっていますので、子の中では順序の差はないと申しますか、誰でもいいという理解でよろしいのでしょうか。もしそうであるとすれば、いわゆる早い者勝ちということになるのかなと思いましたので、確認させていただければと思います。 ○窪田部会長 ただいまの点、子の順位に関しては、事務当局から御説明お願いいたします。 ○櫻庭幹事 ここでは、順位を明記するという意味で、第2順位として配偶者、第3順位として子とさせていただきました。いわゆる氏を届け出ていただくということですけれども、子供につきましては特に順位を設けておりませんので、言い方が早い者勝ちとなると負の評価があるかもしれませんけれども、届け出ていただくというのは、正しいものを届けていただくというふうな認識ですので、それは誰からでもよいと考えております。 ○窪田部会長 ただいまのお答えがありましたが、西幹事、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。 ○西幹事 はい、ありがとうございました。分かりました。 ○窪田部会長 それ以外に何かございますでしょうか。   舩木委員、冨田委員の順番で御発言を頂きたいと思います。 ○舩木委員 ありがとうございます。前回の審議会戸籍法部会において、私は、今回の届出について、創設的な届出という意味があるのではないかという趣旨の発言をしました。若干その点について、訂正も含めてちょっと発言をさせてください。今回の提案というのは、やはり飽くまでも報告的な届出、要するに、従前使用していた氏名の読み方をきちんと届け出てください、家族でよく相談して届け出てくださいというもので、こういう考え方は、私も賛成です。ただ、今回の従前から使っている氏名の読み方を届け出る制度は、届出によって初めて法的効果が生じるという性質だと思っています。つまり、届出をしない段階で、従前使用していたという段階では、まだ何も法的な効果は生じていないということになると思います。   今までの戸籍法における報告的届出という制度は、既に発生している事実とか、既に発生している法律関係を、戸籍にきちんと合致させるために届出を義務づける必要があるものという理解をしています。そういう性質であるから,届出を行わない場合には罰則を科すことも必要となり、きちんとこの一定の期間内に届け出てくださいという制度が必要となります。また、その一定の届出期間が経過した場合でも、実際に使用されている読み方と戸籍の不一致が継続しているのであれば、届出義務も残っており、届出期間経過後の届出にも受付するという制度になっていると思います。   今回の届出制度は、届出をしていない段階では、まだ従前使用していたというものだけでは効果が生じていないわけですから、戸籍に記載がないというだけであって、戸籍と実際との不一致があるとは言えない、そこが今までの報告的な届出とは違うところだと思います。だから、そういう性質であれば、罰則を設けて届出を強制するという性質のものではない。だから、今回は罰則の必要はないということになると思います。   むしろ、届出期間内に届出をしなかった国民に対して、今回の制度としては、戸籍に記載がないまま放置して良いかといったら、今回の氏名の読み仮名の法制化を行う制度趣旨からすれば、届け出ないままの国民をそのまま放置するというわけにはいきません。そういう意味で、職権記載というものが必要になるというような理解をした方がすっきりすると思い直しました。むしろ職権記載という言葉は、私は必要だろうと思っています。届出をしなかった国民については、職権記載をすることによって、従前使用していた氏名の読み方と戸籍の記載が初めて一致することになり、そういう一致をさせるために職権記載を行うというのが、職権記載の正当性の根拠になると思います。   そうなってくると、職権記載は従前使用していたものと合致させる必要があるという制度になると思います。職権記載の内容である従前の読み方の情報がどこにあるのかというと、住民基本台帳の記載が今我が国の制度としては一番正確だと思いますので、それを使って実施することになると思います。また、職権記載をすればその記載内容に法的効果が生じるため、届出期間経過後に受け付ける必要は全然ありませんから、もちろん罰則の適用もなければ、届出期間を経過して受付を行う理由もなくなると思います。   そういう具合に考えてくると、前回私の言いました、職権記載として予定している内容を国民が従前から使用している実際の読み方と合致させるためには、やはり事前に今の住民基本台帳の記載内容を通知して、少なくとも異議の届出がなかったということを根拠として確認する必要があると思います。つまり、国民に対する通知という制度は、今回の職権記載の正当性を確保するために絶対に必要であると思います。その通知を行わないという制度とするならば、今回私は賛成できない、それだけ重要な問題だと思っています。 ○窪田部会長 ありがとうございました。舩木委員からは、私の理解では、2種類のことがあったのかなと思いますが、一つは、ここでの報告的届出ということを前提としての制度理解ということについて、こういう理解ができるのではないかという舩木委員の御自身の理解を示していただいたものと思います。その上で、そうだとすると、④のところで職権記載という言葉が取られたけれども、むしろ職権記載という言葉があった方がいいのではないかという御指摘であったと思います。   ちょっとその点について確認させていただきたいんですが、職権記載という言葉がないと、やはり今のような理解はできないということになりますでしょうか。 ○舩木委員 いや、必ずしも職権記載という言葉でなければならないとは思いません。その言葉が重要だというよりも、届出をしない人に対して、職権で記載するということが、今の実際の現象、今の従前の読み方というものと戸籍の記載を一致させるということの正当性の根拠になると思います。その表現を、どういう言い方が一番良いかという問題だと思っています。 ○窪田部会長 分かりました。第2点は、そういうふうな制度趣旨の理解からすると、やはり住民票に記載されたものを、読み方をきちんと通知しないと、この制度は成り立たないという御意見であったかと思います。 ○冨田委員 ありがとうございます。まず、技術的な点で2点御質問させていただいて、その回答をお伺いして、意見を言わせていただけたらと思います。   まず、7ページの⑤ですが、「④により記載」とありますので、職権かどうかは別にしても、1年経過した後に、届け出られた氏に対して異論がある場合には、戸籍の筆頭者は氏について、戸籍に記載された方は名の振り仮名について、それぞれ一度に限り届出変更できるとするとありますが、それに続けて、氏の振り仮名の変更の届出については、筆頭者に配偶者があるときは、配偶者とともに当該届出をしなければならないと書いてあります。このことと、①の最初は「現に戸籍の筆頭にされている者」しか氏の読み仮名は届出ができないこと、なぜこのように帰結が違うのかということを教えてくださいというのが1点です。   それから、6ページ目の③ですが、新法施行の際に、戸籍に記載されている者であって、施行日以降に新しい戸籍の筆頭に記載される者については、1年間に限り仮名の届出をできるということになっていますが、事前の御説明のときに、例えば、離婚や離縁によって新しい戸籍を作る場合には、その新しい戸籍の筆頭者が新しい氏を決められるのかと伺ったところ、そうではないという御回答を頂きました。一方、以前の部会資料を確認しますと、部会資料3に、離婚又は離縁によって復氏し、新しい戸籍を編製する場合には、新しい読み方を付すという御説明を頂いており、この記載とどちらが正しいのかを教えていただけたらと思います。 ○窪田部会長 ありがとうございました。7ページの⑤について、配偶者とともにするということで、①のルールと異なるということについての理由、それから③、離婚や離縁による場合を含まないということなのか、これまでの説明との関係も含めて御説明いただきたいという点でしたが、この二つについて、まず事務当局からお願いいたします。 ○櫻庭幹事 まず、前段でございます。今回、どういうふうな仕組みになっているかといいますと、婚姻した場合ですと、婚姻届書に夫になる人、妻になる人の読み方を書いていただいておりまして、それで、その際に婚姻後の氏として夫又は妻の氏をチェックするというふうな欄がございますので、婚姻されている方につきましては、もう既に氏について、夫か妻かどちらかの氏を決めて、その読み方も決まっているというふうな前提でございます。ですので、そういう方が届け出ていただくという場合には、もう決まったそういった読み方を筆頭者が届け出ていただくという、これが基本ルールとなっております。報告的届出と、そういった整理も先ほどあったわけですけれども、そういった届出をしていただくことになります。   他方、既にそういった届出がされた後の変更、そういったものにつきましては、創設的な届出といいますか、効力が発生した後の新しい変更となりますので、例えば、戸籍法の107条の場合は、氏の変更届出について、現行法の規律でございますけれども、氏の変更をする場合には、筆頭者と配偶者がともに届け出るというふうな規律になっておりまして、読み仮名の場合も、一旦決まったものを変更するということになりますと、創設的な届出というふうな扱いになりまして、両者共同で氏の読み仮名の変更の届出をしていただくと、そういったことを示したものでございます。   あと、後からの話ですけれども、今回の2の③の趣旨をもう一度御説明させていただきますと、一つのルールとしては、この戸籍法が改正法になりまして、改正法が施行になったときに、現に戸籍に記載されているという方がいらっしゃいます。その場合に、筆頭者に届け出ていただくという、これを基本ルールにしているわけですけれども、現に戸籍に記載されている方の中でも、お子さんとか、例で言うと、分籍が分かりやすいので分籍について御説明したいと思います。現に戸籍に記載されていて、お子さんの立場でいると、その戸籍の中では筆頭者ではないものですから、届出人にはまずは原則としてならないわけですけれども、例えば、分籍した場合になりますと、現に戸籍に記載されている方ではありますが、その後、新しい戸籍を作って、新戸籍を作って筆頭者になるという方ですので、その方につきましては、元々子供で、前の戸籍に入っていた段階では、届出資格がなかったわけですけれども、今度新しく届出資格、筆頭者としての届出資格ができるものですから、その方については、改めてその方も届け出ることができると。こういったものを示すために規定したのが、この③番ということになります。   第3回のときに、離縁とか離婚のときに、どういうふうに御説明したかというのは、存じ上げてはいませんけれども、経過措置の期間の間の話として、その期間内に既に前に入る従前の戸籍で読み仮名が届け出られていた場合には、その従前の戸籍の読み仮名になるでしょうし、届け出られていない場合には、今回、新しい経過措置の規律の中で読み仮名を届け出ていただくということになりますので、そこで改めて読み仮名を届け出ていただくということになるのかなと考えております。   ちょっと回答になっておりますか分からないですけれども、そういったところでございます。 ○窪田部会長 ③の方の多分説明については、離縁をしたり離婚をして、新しい形での戸籍を作るという場合には、施行日から1年以内に限ってとか、そういう制約はなくて、そもそも新しい戸籍を作るときに、そのときに婚氏続称しても全く同じなんだろうと思うのですが、その氏とか名前に対しての読み方を付けるというだけなんではないかなと思います。したがって、経過措置の問題ではないんではないかと。   他方で、③の話が子供の分籍で出てきたのは、子供の場合には、分籍をしたとしても元々の氏を使う形になりますので、その場合の氏が、読み方まで含めて一切対応、元のものを変更することができないかというと、施行日から1年以内に限っては、そういう対応をするということだったのかなとは思うんですが、そういう理解でよろしいんでしょうか。 ○櫻庭幹事 はい。 ○窪田部会長 冨田委員、質問とその回答については、以上でよろしいでしょうか。不明な点があれば、どうぞ御発言ください。 ○冨田委員 ありがとうございます。最後の方からいきますと、今の御説明を聞いていますと、施行日から1年に限りというところの規律とかは、本当に必要なのかなというのが疑問に残りました。お子さんの分籍の話をされたんですが、離縁や離婚のときも同様のことだということを考えると、この規律が要るのか改めて御検討もしくは御回答をいただけると有り難いと思います。   それから、最初の質問に対しては、御説明いただいた内容が、私はここで議論を聞いていたので、説明としては理解ができますけれども、これを国民の皆さんに説明をするということを考えたときに、恐らくは、報告的届出と創設的届出の違いを御理解いだくことは、相当困難ではないかと考えます。報告の届出は筆頭者ですが、一度決められたものを変えるのは両者というのは、理解が得られにくいんではないかと思いましたので、それぞれにもう少し丁寧な説明や補足が要るのではないかと思います。   さらに、筆頭者が配偶者に相談なく勝手に届けてしまった場合に、配偶者がそこに齟齬がある場合には、今度は家庭裁判所に申し出なければいけないというような制度になっているわけですので、ますますよく分からないということになろうかと思います。   それから、最後に意見ですが、前回も申し上げましたが、この読み方を付すという、個人のアイデンティティーに沿って名前を付すという趣旨の観点から、やはり戸籍の筆頭に記載されている者しか届出ができないという形にするのではなくて、戸籍に記載されている、先ほどもありましたが、届出を変えるときには配偶者と一緒ということになるのであれば、筆頭者若しくは配偶者、どちらかが届出をすることができるというように、少なくとも戸籍をどちらにするかということを、婚姻の際に二人で話し合って決めたとおりに、どちらかが届け出られるとしておく方が、より話合いも進むと思います。そのことによって、この読み方をどうするのかということ、自己の権利を担保するというところも含め、理解が得やすいんではないかと思います。いずれにしても、新しい規律を作るのであれば、この辺りもう少し御検討いただけると有り難いと思います。 ○窪田部会長 ありがとうございました。質問を受けての御意見としては、まず、③に関しては、特に施行日から1年以内に限りという要件が本当に必要なのかどうかなのか、ここはちょっと検討していただく必要があるのかなと思いました。もう一つは、①の方で報告的届出、⑤の方で創設的届出と言っても、多分一般にそれほど普通に理解、当然理解されるわけではないだろうから、もう少し丁寧に説明する必要があるんではないかという御意見でした。さらに、それを踏まえた上で、①に関して、筆頭者に限ってできるというふうな形のルールというのは、必ずしも適切ではないのではないか、具体的には、筆頭者又はその配偶者といったような言葉が提案されていたかと思いますが、そうした方向を含めて、もう少し検討してもらう必要があるのではないかという御意見であったかと思います。 ○藤原委員 藤原です。意見が一つと、質問が二つあります。   まず意見ですけれども、先ほど舩木委員からも御指摘ありましたように、通知に関して、前回、前々回か、複数の方から、通知をした方がいいという意見がありました。けれども、今回の資料には、その辺に対しての言及がないので、恐らく事務局としても書きづらかったのかと思うのですが、やはり、2の①から⑥までの規律のみですと、自分が実際に使っている読み方と、結局、届出に消極的な方は、市区町村長が記載した読み方とが齟齬するという事例が出てくる可能性はゼロではない。とするならば、そういう方が実際に知らないまま、戸籍には別の読み方が記されている、しかし、自分が、例えば、公的な書類に、今使っている氏名の読み方を書いた場合に、それは、戸籍法上の読み方と齟齬する、言わば違法状態を作り出すということにもなりかねない。そして、今使っている戸籍法上に記載された読み方ではない読み方を記載して何かを届け出る、あるいは申請するという場合、その申請がはじかれる可能性があるのではないかということを危惧しています。また、相続が始まった場合には、戸籍謄本とかを付けて預貯金とかの解約をするのですが、そうした場合に、戸籍に記載されている氏名の読み方と、元々、通帳に記載されている氏名の読み方が齟齬するということで、一定の混乱が生じる可能性があります。そのような混乱とか不利益を、このままその当事者あるいは相続人に帰して相当であるかということを考えたときに、私としては、どこかの時点で通知なり、事後的に市区町村長が付けた読み方は通知するのが、やはり相当ではないかと思っています。それが意見です。   質問の1ですが、氏名の読み方の届出時に、担当者のご説明では、住民基本台帳上に記載されている氏名の読み方と、照合するということでした。そこが齟齬していた場合、その戸籍係の方はどういう対応を採られるのでしょうかということです。例えば、住民基本台帳で、こうなっている読み方なので、あなたの読み方の届出は駄目ですというのか、その届出人が、いや、今使っているのはこの読み方なのですと言えば受理するのか、その点で統一的な取扱いをしないと、各地域で差異が出てくる可能性があるということで、それはどうですかという質問です。   2点目の質問としては、2の④ですね、「市区町村長は、施行日から1年を経過した日に」という記載について、「日」となっているので、この日に、届け出ていない人の戸籍に、市区町村があらかじめ確認していた氏名の読み方が記されるという形になるのでしょうか。それが2点目です。 ○窪田部会長 質問の方から、まず事務当局にお答えいただければと思います。   最初の質問は、住民基本台帳とそごがある場合の扱い、それから、2番目として、④の1年を経過した日にということで、この日に記載がなされるということでよろしいのかという御質問でしたが、いかがでしょうか。 ○櫻庭幹事 まず、1番目の質問についての住民基本台帳に登録しているものとのそごの関係ですけれども、これにつきましては、住民基本台帳に載っているお名前というのは、相当程度正しいだろうと推測されます。というのは、実際の出生の届出をされるときに、これは住民票で使うということを前提に、戸籍の届書である出生届に読み方を記載していただいて、それを住基の方で登録していただくということになります。住基の方もコンピューター化していれば、当然読み方情報を出生のときから保持しているということになりますが、仮に、そのコンピューター登録時に、本人に確認しないで振り仮名情報を登録したといったケースであっても、転出届の機会とか、あるいは選挙の機会とかを捉えて、相当程度クレンジングして、かなりの正確性を持っているのではないかと考えられます。そういったことからすると、基本、本人の届出、あるいは本人のそういった届出に基づいて、住基の方でいろいろ管理しているということであるとすれば、その管理されているものと違うといったものが出てきた場合には、どうして違うのかというふうなことは確認するでしょうし、確認したときに違うということが、現に違う使い方をしているのだと説明を受ければ、それは許容されるというところがあるのかなとは思います。基本は、住基で管理しているものと、どれだけ大きく違いがあるのかなというところが、判断の分かれ目かなとは思いますけれども、全く駄目というわけではなく、そこで少し判断が入るのではないかなと考えられます。   2番目の質問ですけれども、1年を経過したときに、職権で記載するということに関するものです。令和元年の戸籍法改正のときに、各市町村が持っている戸籍のシステムである「戸籍情報システム」と法務大臣が管理する「戸籍情報連携システム」とを連携させるというような法律改正をしたものですから、地方の自治体、1,900ぐらいある自治体が、一斉に登録して、その情報を戸籍情報連携システムに上げると、いろいろシステム運用上、支障が出る可能性もありますので、基本は、1年を経過した段階でやるんですけれども、集中しないようなやり方にしたいなと思っております。場合によっては、1年たって速やかにというような、そういう運用になるのかなと考えております。 ○窪田部会長 ありがとうございました。ただいまの回答で、藤原委員、よろしいでしょうか。 ○藤原委員 はい、了解しました。 ○窪田部会長 恐らく最初の御質問の方に関しては、住民基本台帳のデータが一定の信頼性があるとしても、飽くまでこの仕組みからすると、報告的届出があったら、よほどのことがない限り、そちらを受け付けざるを得ないというのが、この制度の立て付けなのかなとは、私自身は理解しておりました。   それから、一番目の御意見の部分で、通知に関してですが、私の方から発言するのが適当かどうかは分からないですけれども、通知の重要性も、恐らく通知をしなかった場合の問題というのも、法務省の方で非常によく認識していると思います。その上で今、他の省庁等も含めて、非常に難しい折衝をずっと続けていただいている状況ではないかと認識しております。それを踏まえて、今回は何も出ていないのですが、一定の成果が見られることを期待したいなと考えております。   それでは、続きまして、新谷委員、それから総務省からということで御発言お願いします。 ○新谷委員 新谷です。先ほどの補足説明の中で、ちょっと聞き逃したのかも分かりませんけれども、2の④のところで、職権でという、市町村長は職権で氏名の振り仮名を戸籍に記載するものとするという、職権でということを落としたという理由のところが、よく分からない部分なんですが、そうすると、現行法でいうと、根拠規定は、戸籍法のどこで市町村長は戸籍に記載する、補足説明の中では、職権で記載するという、職権記載ということが出てくるわけですけれども、そこのところの意味と、それから通常の規則47条の2ですと、戸籍法24条2項、3項の規定というのが出てきますけれども、基本的には職権記載は44条3項のところで市町村の職権記載という言葉が出てくるものですから、ちょっとその兼ね合いを教えていただきたいなと思って、手を挙げました。 ○窪田部会長 ありがとうございます。職権でという言葉が外れた、前回の議論の確認も含めて、事務当局から御説明お願いいたします。 ○櫻庭幹事 前回の会議で、小幡委員の方から、職権で記載するという言葉について、余り職権というのを使わない方がいいのではないかというふうな御指摘がありました。議事録を見てみますと、その前にもそういった御発言もありましたので、全体を通じて、職権という言葉は余り使わない方がいいのではないかというようなことで、今回修正させていただいたわけですけれども、実質は職権ということになります。 ○窪田部会長 新谷委員、よろしいでしょうか。 ○新谷委員 職権ということになると、44条3項の職権なのか、それとも戸籍法24条2項の、3項との兼ね合いとする、いわゆる管轄法務局長の包括的な許可を得た戸籍記載許可という、そのところの包括許可を受けているから、許可は入らないという職権記載なのかと、その辺のところが煮詰まっているかどうか、教えていただきたいと思います。 ○窪田部会長 その点について、お願いします。 ○国分幹事 幹事の国分でございます。今回この規定を経過措置に設けることにしておりますので、この経過措置の規定に基づく記載ということになりますので、戸籍法本体の方には当たらないということになります。 ○新谷委員 やはり経過措置ということで、設けたということですね。 ○国分幹事 そのとおりでございます。 ○新谷委員 分かりました、ありがとうございます。 ○窪田部会長 それでは、続きまして、総務省住民制度課という形になっていますが、御発言お願いできますか。 ○寺田幹事 総務省住民制度課長の寺田でございます。先ほど、櫻庭課長の方から、住民基本台帳の取扱いについて御説明があったところですけれども、資料の8ページの2のところに書いていただいているように、飽くまで住民票に記載されているふりがな情報というのは、参考とすることを想定しているということで、ある程度正確性が高いのではないかという期待があるということを、櫻庭課長は説明されたと思います。ここは、実務上はそういう形を採ってきているということですが、公に証明する公証をしているものではないので、そういったものを参考にしながら、戸籍の制度の中で判断をするということが必要であると、総務省としては考えておるところでございます。   補足をさせていただきました。ありがとうございます。 ○窪田部会長 ありがとうございます。先ほどの点について、適切に補足していただいたものと思います。ありがとうございました。   ほかに、第2の点について御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでしたら、次に、「第3 氏名の振り仮名の変更に関する事項」について、御説明お願いしたいと思います。 ○櫻庭幹事 それでは、部会資料9ページ、第3の「1 氏又は名の変更に伴わない場合の規律」につきましては、本文に変更はございません。   同じく9ページ、第2の「2 氏又は名の変更に伴う場合の規律」を御覧ください。こちらは、本文につきまして、従前、変更後の氏又は名及びその振り仮名を届け出るものとしていたところ、氏又は名及びその振り仮名の変更の効力は、届出により生じるものであるとから、表現を改めております。   戸籍法第107条第3項の規定、具体的には、外国人と婚姻した者が、配偶者の称している氏に変更していたときに、後で離婚等により氏を変更前の従前の氏に戻す旨の規定の改正の要否についても、一言説明いたします。   第107条第3項の規定は、本則の規定となりますが、従前の氏に変更することから、経過措置の期間を除き、従前の戸籍に当該氏の振り仮名が記載されており、変更しようとする氏の振り仮名を届け出てもらう必要はございません。考え方として、この経過措置の期間の規律として、従前の戸籍に記載されるべき氏の振り仮名を届け出るものとする旨の規定を附則に置くということも考えられますが、施行後1年を経過した時点で、従前の戸籍に職権で振り仮名が記載されること、変更の際に称していた従前の氏に変更する届出の時点で、現に振り仮名が記載されていない場合には、運用により、その届出に合わせ、振り仮名も届け出ていただくということも考えられることから、改正の必要はないと整理したところです。   第3の1、2に関する説明は以上です。 ○窪田部会長 ただいまの御説明につきまして、御質問や御意見がありましたら、お伺いしたいと思います。御発言をください。   特に御発言はございませんでしょうか。   第3の部分を含めて、今まで何度も練ってきたところではありますので、今回は、特に第3についてはなかったということで、終了させていただきたいと思います。   本日の審議は以上となりますが、今後のスケジュール等につきまして、事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○櫻庭幹事 次回、第11回会議の日程ですが、本年12月5日月曜日の午後1時半から、場所は法務省7階共用会議室6・7を予定しております。 ○窪田部会長 ありがとうございました。   残りかなり少なくなってきて、まだいろいろな点で意見が完全には集約できていない点も残っておりますけれども、あと少しで何とか最後までたどり着けるようにしたいと思います。是非とも御協力お願いしたいと思います。   それでは、法制審議会戸籍法部会の第10回会議を閉会させていただきます。   本日は大変に熱心な御審議を賜りまして、ありがとうございました。 -了- - 22 -