法制審議会 担保法制部会 第27回会議 議事録 第1 日 時  令和4年10月27日(木) 自 午後1時30分                       至 午後4時38分 第2 場 所  東京地方検察庁公判部会議室A 第3 議 題  担保法制の見直しに関する中間試案のたたき台(3) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 御出席御予定の方でまだいらっしゃっていない方が若干いらっしゃるのですが、予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第27回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。   本日は佐久間委員、門田委員、横山委員、衣斐幹事が御欠席、沖野委員、倉部委員、山本委員、青木則幸幹事、藤澤幹事が遅参と伺っております。また、大西委員と加藤幹事が途中退席の御予定ということで、青木哲幹事は遅参と途中退席ということで伺っております。   今回の会議には経済産業省の山井関係官に参加いただきます。   まず、資料の説明をしていだきますので、事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 新たにお送りしたものとして、部会資料23「担保法制の見直しに関する中間試案のたたき台(3)」がございます。こちらでたたき台としては(1)から(3)までで、今まで一読、二読で御議論いただいたものの全体をカバーするということになっております。また、大澤委員から御提供いただいた全国倒産処理弁護士ネットワークの意見書を委員等提供資料27-1として配布をしております。こちらの提出の御趣旨につきましては、大澤委員から御説明いただければと思います。   それから、少し今後の進め方につきまして、この機会に御説明をさせていただければと思います。本来、今日でたたき台(1)から(3)までで全体を御議論いただくことになりますので、これまでの御議論を踏まえて修正を加えた上で、次回において中間試案を取りまとめるという方向で努力をしてまいりました。   しかし、(1)、(2)について御指摘いただいた点などを踏まえて修正作業をしておりましたところ、もう少し問題点を幾つか具体的に示して御議論いただいた方が、中間試案としてパブコメの手続をとって御意見を伺うのにより適した形になるのではないかと考えるに至りました。そこで、11月8日は一度、中間的な議論を一旦挟んだ上で、12月の部会で中間試案をまとめることを目指したいと思っております。何とぞ御理解を頂ければと思います。 ○道垣内部会長 それでは、大澤さんの方から、委員等提供資料につきまして御趣旨を御説明いただければと思います。 ○大澤委員 委員の大澤でございます。全国倒産処理弁護士ネットワークというところからの意見書という形で、5ページでの意見書を委員提供資料として出させていただいております。こちらは、現時点で中間試案が、書きぶりですとか、世に問うためのどんな書き方がよいのかという観点でのお話でございますので、少し内容にわたるように読める部分もあると思いますけれども、ところの議論を提起するというものではないというふうに全国倒産処理弁護士ネットワークの方からも聞いております。   ちなみに、全国倒産処理弁護士ネットワークというのは、2014年ぐらいからでしたか、始まっております弁護士等、倒産実務家の数千人集まっている団体でございまして、倒産処理に関して活発な活動を行っているところでございます。この意見書に関しては、その論点を絞りまして、現時点で担保法制部会資料の22と23にわたる部分について、中間試案の書きぶりについてコメントをということで、出させていただいております。   中身をざっと見ていただきますと、まず第1、新たな規定に係る担保権の実行手続のところにつきましては、フローチャートについての書きぶりについて、もう少しクラリファイできませんかというようなお話がございます。あと、その下につきましては、2ページに行きますと、猶予期間を設ける考え方について、部会資料22では(注)で書いていただいておりますけれども、そちらについての、更に本文での御検討ということもお考えいただきたいというようなことが書いてございます。第1がそれでございます。   第2、第3、第4と続きますが、こちらはいずれも部会資料22に関するもの、皆様の意見あるいは御検討が終わった部分でございますので、これ以上細かくこれをというような形での提案をさせていただくつもりはございませんけれども、倒産実務家の考え方という観点で、中間試案の書きぶりというところについての意見を頂いておりますので、第2については担保実行中止の命令のところ、それから第3については否認、第4は倒産手続開始申立特約のところについて、それぞれ実務家から見て、こういった形で世に問うていただけないかというようなことを書かせていただいております。なので、是非皆様におかれましても御検討いただきたいということがございます。   続きまして、第5と第6は今日の部会資料に関するファイナンス・リースと事業担保権に係るところですので、その部分でこちらから少しまた追加で説明させていただければと思います。   簡単ですが、以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。先ほど笹井さんからお話がありましたように、中間試案の取りまとめのために、11月も1回、議論を行うということにさせていただければと思っております。その際等におきまして、いろいろ皆さんのこれまでの御議論を踏まえて、たたき台として一旦出したところを修正する案を事務局から示すこともございますし、また、その場で修正をするということももちろん考えられるわけでして、その際には、この意見書等も参考といいますか、これも含めて、事務局の方で少し調整をしていただければと思います。したがって、本日の部分については大澤さんから後で御報告があるということですが、前半部分につきましては、特にこれそのものを今ここで取り上げて議論をするということはいたしません。中間試案の取りまとめに向けまして適宜、考慮に入れていただければと思います。   それでは、審議に入りたいと思います。部会資料23「担保法制の見直しに関する中間試案のたたき台(3)」について議論を行いたいと思います。   まず、「第4 新たな規定に係る動産担保権の対抗要件等」というのと、「第5 新たな規定に係る動産担保権と他の担保物権との優劣関係」について議論を始めたいと思いますので、事務当局におきまして部会資料の説明をお願いいたします。 ○森下関係官 まず、3ページ目の「第4 新たな規定に係る動産担保権の対抗要件等」について御説明差し上げます。   まず、「1 動産譲渡担保権等の対抗要件等」につきましては、部会資料20から大きな変更はございません。(2)イにつきまして、登記優先ルールの適用対象を集合動産譲渡担保権の場合に限定するという意見がございましたので、これを(注)に記載しております。   また、別途、(説明)の部分では、集合動産譲渡担保権が設定された後に集合動産に加入した個別動産について、集合動産譲渡担保権についての対抗要件が具備された時点につきまして、集合動産譲渡担保権の対抗要件具備時には遡らず、集合動産に加入した時点とすることを提案しております。この問題につきましては、いわゆる輸入ファイナンスの問題などにも影響し得るものですので、御意見を頂ければと思います。   続きまして、4ページの「2 留保所有権等の対抗要件等」につきまして、(1)では留保所有権等の対抗要件の要否につきまして、意見の対立がなおございますので、両論併記という形で記載させていただいております。また、(注)のところでは、輸入ファイナンスなどの問題を念頭に置きまして、狭義の留保所有権等と取り扱う範囲等についても記載しております。(2)におきましては、狭義の留保所有権等や牽連性の強い債権を担保する留保所有権等について、競合する新たな規定に係る動産担保権に優先する特別なルールを設けるかどうかについて、これを記載しております。   続きまして、6ページ目の「3 新たな規定に係る動産担保権の処分等の対抗要件等」につきまして、新たな規定に係る動産担保権の処分等の対抗要件等につきまして、抵当権と同様の規定を設けることを提案いたしております。   7ページ目の「第5 新たな規定に係る動産担保権と他の担保物権との優劣関係」につきまして、1と2につきましては部会資料15から大きな変更はございません。   なお、二読の議論では、新たな規定に係る動産担保権者については民法第330条第2項前段の規定を適用しないこととする意見が多かったところでございますので、2(2)にその旨を明記しております。   また、3のところでございますけれども、雇用関係の先取特権を含む一般先取特権に新たな規定に係る動産担保権に対する一定の優先権を認めるかどうか等について記載するものでございます。二読においてはこの点につきまして様々な御意見があったところですので、担保法制全体に与える影響も考慮しつつ、新たな規定に係る動産担保権に優先し得る一般先取特権の範囲、新たな規定に係る動産担保権の範囲、優先権の具体的な内容、優先権を行使するための要件等を引き続き検討する旨を明記することとしております。   以上の点につきまして御審議いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。それでは、前の方も、順番というわけでもございませんけれども、御自由に御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○阿部幹事 ありがとうございます。阿部です。第4の1(1)イのところなのですけれども、まず、表現として、これまでの二読資料などでも「構成部分として現に存在する動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする」という表現になっていましたけれども、これは、より正確に言うならば、「構成部分として現に存在する動産の引渡しがあれば、これをもって第三者に対抗することができるものとする」の方がよいのかなと思いました。というのは、1(1)イの趣旨が、その説明のところにもありますように、現に存在する動産を引き渡せば、新たに構成部分となった動産にも対抗要件具備の効力が及ぶというところにあるのだとすると、現に存在する動産を引き渡せば、その新規加入物についても対抗要件具備の効力が及ぶという、そちらの方を表現すべきのような気がしました。ですので、これをしなければ対抗することができないというよりも、これをすれば新規加入物も含めて対抗できるという方を書くべきではないかと思いました。   それから、もう一つは、説明のところで提起されている、どの時点で新規加入物について対抗要件具備の効力を認めるかというところなのですけれども、結論としては確かに現在の案の下では加入時説を採ってもよいのかもしれないと思いました。ただ、それはそちらが自然だからというよりは、登記優先ルールがあって、仮に新規加入物について加入時に対抗要件を具備するとしても、登記優先ルールによれば、登記した集合物譲渡担保権者は結局のところ登記時を基準とした優先順位を確保することができると考えられますので、それで問題はないと思いました。もちろん、登記しなかった集合物譲渡担保権者は、加入時説を採ることによって、新規加入物についての優先順位が下がるということもあり得ますが、ここに関しては、集合動産譲渡担保権者に関しては特に登記を促すという価値判断の下で、一応是認し得るかなと思いました。ただ、加入時説を採った場合には、特に登記をしていない集合動産譲渡担保権者については、集合動産の中でもどの時点で加入したかによって、優先順位の基準時がばらばらになるという問題がありまして、どれぐらいそれが実務的に耐え得るかというような問題はなお残るかなと思いました。これが自然だからこれが相当だというだけではなく、もう少し議論が必要かなとは思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。大変重要な問題を含んでいまして、前半の阿部さんがおっしゃったところというのは、集合動産譲渡担保みたいなものですが、そのようなものにおいて、将来加入する動産に効力が及ぶというのは特別なことなのか、それとも、自然なことなのかという問題がありまして、例えば、個別動産の所有権の移転とか、個別不動産の所有権の移転ということになりますと、対抗要件とは無関係に、実体的に176条によって権利を移転するよねというのがあって、登記がなければそれを第三者に対抗していけないという話になるわけですが、集合動産譲渡担保で将来の加入物について及ぶというのが非常にある種、特別なことだと考えると、対抗要件を具備して初めてそういった効力が生じるのだというふうなことなのかもしれない、そうなると民法177条とはおのずから書き方が変わってくるかもしれないという話ですね、阿部さんがおっしゃったのは。それはやはり本当は集合動産譲渡担保みたいなものの法律関係とかメカニズムというのをどう捉えるのかということと密接に結び付いているわけでありまして、今回、中間試案に向けて決め打ちができるかというと、大変難しいところがあるかもしれませんが、最終的に整理をするに当たっては重要な問題提起だと思います。   後半につきましては、また皆さんに議論していただきたいのですが、議論に当たりまして私の方から一言だけ申し上げますと、加入時に及ぶという話は、いわゆる否認や詐害行為取消しとの関係において、将来加入した動産について効力が及んでいるのも、実は設定のとき、対抗要件具備時ですけれども、設定のときなのだよという話とは少し話が違いまして、例えば、個別具体的な動産について、個別動産の譲渡担保というのが別の人のために設定されて、そういった目的物が加入したときにどうなりますかという問題で、どちらが勝ちますかという話なのです。ですから、阿部さんはそれを的確に理解した上でおっしゃったわけなのですけれども、いわゆる集合物論と分析論というふうなものの話とは少し違う問題であるということを踏まえて御議論いただければと思います。蛇足だったかもしれませんが、阿部さんの見解を勝手に解説したみたいになって申し訳ありませんが、別に間違いはないですよね。阿部さん、私の今の話は。うん、うんと言ってくださっていますので、よろしいかと思います。 ○井上委員 井上です。ありがとうございます。今の加入時説についてなのですけれども、確かに資料3ページの脚注1にあるように、判例は必ずしもどの立場か明示していないということかもしれないのですが、ただ、今までは加入時説をベースに議論していたというよりは、対抗要件具備時説に立っていろいろ議論していたように理解していて、私の理解が間違っているのかもしれないのですけれども、非常に唐突感を感じたところです。   この加入時説は、輸入ファイナンスなどを念頭に置いて今回、御提案されているのかなとは思ったのですけれども、ただ、基本的に集合動産譲渡担保の設定を受けて、登記を備えて、その時点で先行する登記がないことを確認した担保権者は、その後加入する個別動産について原則優先する前提で今まで議論していたのではないでしょうか。登記優先ルールを採る場合は、占有改定が登記より更に先行してもなお登記が勝てるということで、それを目指していたというのが私のイメージだったのですけれども、もし加入時説を採ると、事後的に、場所的な特定を外して別の特定方法によって集合動産譲渡担保の設定を新たに受けて登記を備えると、ひっくり返しが起こるということなのかなと私は理解したのですが、例えばA倉庫内の在庫に集合動産譲渡担保の設定を受けて、登記を備えていたにもかかわらず、そして、その時点ではほかの担保が設定されていなかったにもかかわらず、その後、例えば在庫のシリアルナンバーなどを特定して、今後おおむね1年分くらいと見込まれるシリアルナンバーの在庫について集合動産譲渡担保の設定を受けて、事後的に登記を備えると、倉庫内に搬入したところで所有権が移転するという特殊な売買であればともかく、そうでない場合は、倉庫に搬入される前に所有権が債務者に移った瞬間に、事後的に設定された集合動産譲渡担保の方が優先してしまうことにならないのかが気になりました。場所的な特定以外の特定方法として、シリアルナンバーの特定以外にも、種類とか品質などによって特定したり、あるいは場所的な範囲をより拡大して特定するというような特定の仕方がなされたりすると、その時点で、先に登記を備えていた集合動産譲渡担保がひっくり返されるということが起きないのだろうかと考えたわけです。   あとは、集合対集合ではなくて、集合対個別という関係であっても、工場内の設備機械について、入れ替えを考えて、非常に長期のファイナンスにおいて集合動産譲渡担保を設定して先行して登記を備えていたときに、その後になって、新たな設備機械を工場に搬入する前に別の債権者が個別に担保を取るということが順次なされていくと、設備機械が入れ替わるごとに先行しているはずの集合動産譲渡担保がどんどん空洞化されていくことになるわけです。これは、太陽光発電所の長期のプロジェクトファイナンスで、パネルの入れ替えが想定されているものを集合的に担保に取っても、事後的な担保設定及び登記の具備によってひっくり返されることになるわけで、それも、やはり想定外ではないかと思います。  今までの想定はむしろ、原則としては、集合動産譲渡担保は、最初の時点で登記を具備すれば勝てて、それだと不都合だという類型について、狭義の留保所有権とか輸入ファイナンスとかをどう捕まえて保護するかという議論をしていたのが、その例外を守ろうとするために、元のところをひっくり返すようなことにならないのかというのが気になったところです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。そういう見解も十分あり得るということを前提に今日、出しているつもりです。少し井上さんにお伺いしたいのですが、A倉庫に入る前に債務者の下に来た動産を第三者に処分したと、第三者に占有改定で引渡しがされたと、その動産が、登記でもいいのですが、その動産がその後、A倉庫に運び込まれた。人の財産ですよね、それでも集合動産譲渡担保権者が勝ちますか。 ○井上委員 今おっしゃったのは、先行するのが真正譲渡の場合ということですよね。 ○道垣内部会長 そうです。 ○井上委員 それは、集合動産譲渡担保が勝つという結論ではないと思いますけれども。 ○道垣内部会長 しかし、対抗要件が具備されたのが全体の集合物について登記がされたときということになると、そちらの方が先に対抗要件具備されていますよね。 ○井上委員 そうですね、その場合をどうするかは考えなければいけないですね。そうすると、もしかすると集合動産譲渡担保が優先するけれども、即時取得で保護されるということなのかもしれないのですが、いずれにしても…… ○道垣内部会長 A倉庫にも入っていないものを購入して、集合動産譲渡担保権者が勝つなんていう理屈があり得るのですか、というのが私の疑問なのだけれども。 ○井上委員 真正譲渡の場合は、確かに考えなければいけないかもしれません。私は先ほど、その点については考えが及んでいなかったのですが、ただ、私が申し上げたのは、今までは加入時説をベースに議論していなかったのではないか、そして、加入時説を採ることによって、今おっしゃったような、真正譲渡された物が集合動産に加入するというのもまた結構レアケースの事案ではないかと思うのですけれども、それよりもむしろ、原則として悪意でひっくり返しを行うことが容易にできてしまうことを容認することにならないのかという懸念を持っているということです。 ○道垣内部会長 御懸念及び御趣旨は十分に分かっておりまして、ほかの方の御意見も伺いたいと思います。 ○青木(則)幹事 ありがとうございます。実は今の井上先生の意見とかなりかぶっているので、どうしようかというところなのですけれども、ただ、加入時の要件というのをどう考えていらっしゃるのかというのが少し分からないところがございまして、場所的な特定については、少なくとも登記との関係では、緩和してもよいというような、前回、この点で御議論があったように思うのですけれども、そうすると、加入というのは何を具体的に意味するのだろうかという、したがって、集合動産譲渡担保が先行していて加入する前なので処分できるという状況というのが、具体的にどういう状況なのだろうかというのが思い浮かばないといいますか、迷ったものですから、それをお尋ねしたいと思いました。 ○道垣内部会長 今の青木さんがおっしゃったことについて、事務局から何かありますか。 ○森下関係官 御指摘のとおり、場所的なところをある程度緩やかに考えていくと、加入みたいな概念みたいなものが事実上なくなってしまうみたいなことは多分あり得ると思っていまして、恐らく1(1)ウの構成部分になるというふうなところが実質的な要件になるのかなとは考えておりまして、確かに場所的要件みたいなところを緩やかに解すると、加入みたいな言葉自体が必ずしもマッチしないといったところがあるのかもしれないと思いました。改めて検討させていただきたいと思います。 ○道垣内部会長 青木さん、何か続けてありますか。 ○青木(則)幹事 その点なのですが、一方で個別動産の方が勝てるメカニズムというのは、例えば、場所的な要件を維持するとすれば、正に搬入前に、例えば債務者が仕入れるものを所有権を取得すれば、現物がどこにあろうとも、個別動産の方はその段階で対抗要件を具備できるということになるのかなと思いますが、そうしますと、うまくやれば個別動産の方が集合動産譲渡担保よりも強い、つまり、勤勉に頻繁に担保を書き換えすれば、そちらの方が勝ってしまうというような、そういう例外事案が出てこないのだろうかと思いました。その点について、いかがでしょうか。 ○道垣内部会長 それを例外事案と考えるかどうかが問題だと思うのですが、井上さんと私の議論というのは、井上さんが担保権の優劣を決めるときの基準をどうするかという議論をされているのに対して、私が疑問として井上さんに提示したのは、対抗要件の先後で物権的な優劣が決まると考えたら、それは真正譲渡にも同じルールが適用されるはずであって、そうしたときには設定時説というのは非常におかしな結論になりはしないかという疑問だったわけです。青木さんが、個別動産が勝つのはおかしいのではないかと、井上さんも、それではなかなか実務がもたないのではないかとおっしゃるときというのは、担保権者の間の優劣を決めるルールという話として設ける、それを対抗要件の具備がいつなされたかというふうな問題の立て方をするのがよくないと、こういう話になるのでしょうか。私は何か見解があって申し上げているわけではなくて、皆さんのお話を伺いながらの感想なのですが、それはどうなのでしょうか、青木さん。 ○青木(則)幹事 ただ、真正売買の場合であっても、集合動産譲渡担保の方が対抗要件は先なのですが、ただ、加入していないので及んでいないと、そういう状況ということでしょうか。 ○道垣内部会長 その後、加入してもいいのですが。他人のものが入ってきたって、集合動産譲渡担保の目的物になるわけはないと思うのですけれども、私は。 ○青木(則)幹事 加入の要件としては、設定者が目的物の所有権を取得するということは入っていないということですか。 ○道垣内部会長 それは当然にあるから、それは抜けるということになるのですか。 ○青木(則)幹事 所有権を取得すれば、加入の要件にそれが入っているとすれば、やはり及ぶのかなと、停止条件付きの譲渡ではありませんが、自動的に及ぶのかなと思っておりましたが、すみません、少し理解不足かもしれません。 ○道垣内部会長 分かりました。ほかの方もたくさんいらっしゃいますので。 ○阿部幹事 再度申し訳ありません。先ほど井上委員のお話を伺っていて、私はもしかすると勝手な思い込みをしていたのかもしれないと思ったところがありますので、そこについて少し事務局に伺いたいと思います。   私は、今回の方針を、基本的に対抗要件具備の時点と担保権相互の優劣を判断する基準とを分離するものだと思っていました。なので、新規加入物については加入時に対抗要件を具備したとしても、集合物譲渡担保について設定時に登記がされていれば、当然、担保権者相互の優劣は登記の時点を基準として決まるので、新規加入物についても登記時を基準とした優先権を主張できるのだと思っていました。そうだとすると多分、井上先生が考えていらっしゃるような問題は生じないのではないかと思ったのですけれども、改めて虚心坦懐に今回の部会資料を読みますと、登記により対抗要件を備えた動産譲渡担保権等は、占有改定により対抗要件を備えた動産譲渡担保等に優先するものとする、としか書かれていないので、私のような理解で合っているのか、それとも私の勝手な誤解だったのかというのを一つ伺いたいと思いました。いかがでしょうか。 ○森下関係官 対抗要件の先後で決まるというような原則論については、その説明の部分では維持しているところなのですけれども、別途、登記優先ルールというふうなところがあって、集合動産の担保権について登記がされている場合は別途、登記優先ルールのところで後から入ってきた個別動産譲渡担保権について優先するというふうな効力を与えるというふうな前提で書いておりました。 ○阿部幹事 私の理解でよいということですか。 ○森下関係官 御指摘のとおりだと思います。 ○阿部幹事 分かりました。ありがとうございました。   そうだとすると多分、先ほどの井上先生のような問題は生じない一方で、資料の説明の最後の方で、加入時説によれば、いわゆる輸入ファイナンスのための個別担保権であるとか、留保所有権との競合場面について、それらの担保権が集合物譲渡担保権等に常に劣後するというような問題は生じないと書かれていますが、しかし、登記優先ルールを採った場合には、やはり集合物譲渡担保権者が登記時を基準とした優先順位を主張できてしまうので、そうすると、例えば登記の後に留保所有権者等が出てきても、彼らは集合動産譲渡担保権に常に劣後するという問題がやはり生じてしまうような気がして、これについては別途対応が必要かなと思いました。 ○道垣内部会長 最後の問題は恐らく、いわゆる購入代金担保権というものの優先権というのをどこまで認めるのかということと関係していまして、阿部さんがおっしゃるように、担保権の優劣問題というのは対抗要件の具備の先後問題と大きく重なるのだけれども、ある程度切り離して考えざるを得ないというところもあって、整理が必要であるということなのだろうと思います。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。既にいろいろと議論も出ておりまして、かなり重複してくるところもあるかもしれませんが、今の加入時説の問題です。第1に、まず集合動産譲渡担保の設定があって、その後、外にある個別動産について個別の譲渡担保が設定されて、その物が倉庫に次に入ったという場合については、担保権の優劣の問題であり、先ほど御議論いただいたように両方あり得るのかと思いますが、そうではなくて、外にある個別動産を真正売買で譲渡、処分してしまったということになりますと、他人物であることがその時点で確定していますので、その後、即時取得を考えない限りは譲渡担保の目的物には入らないということになり、加入時説はその点で問題があるかと思いました。   次に、二重に集合動産譲渡担保が設定されているところに新たに個別動産が入るという場合ですが、二重の譲渡担保の段階では登記時等で優劣関係が決まっているにもかかわらず、その後入った動産が同時に両方の担保権の目的物になって、優劣関係が判断できないという点が問題であるようにも思いました。   それから、集合動産譲渡担保の対抗要件は、引渡しと登記が想定されますが、昭和62年判決は、基本的には、占有改定で集合動産に対抗要件が確保されているケースを念頭に置いた判決ですので、そのケースで仮に加入時説を取り得るとしても、登記で対抗要件が具備された場合に、同じ議論ができるのかどうかという問題もあるかと思いました。   以上、気になった点だけを3点ほど付け加えさせていただきました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○尾﨑幹事 すみません、多分繰り返しになってしまう論点が多いのだと思いますけれども、私も加入時説というのは余りこれまで議論がされていないと考えていて、基本的には集合動産譲渡担保の設定が行われたときの登記で、その後に物が入ってきた場合であっても、当然その登記は優先順位が確保されているという理解だったかと思います。その上で、物の売買に牽連性の強いような債権については別途優先させるといったようなルールを設けるかどうかという議論ですし、あるいは、既に担保の付いたものが入ってきたような場合にどういう調整ルールを設けるかと、そういう話ではなかったのかと思うので、一般的に加入時説を採るというような議論というのは、これまで余り議論されていなかったのではないかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   これまでのお話をまとめますと、個別動産の譲渡担保が設定された目的物がその後、集合物に加入したときの優劣に関しては、集合物譲渡担保が勝つという見解が強いけれども、なお一定、議論もあり得ないではない。所有権が集合物の外で、集合物への加入前に譲渡されてしまい、それで対抗要件が具備された後にそれが倉庫に入ったという場合は、私からすると所有権者が勝つのは当然だろうと思うのですが、なおそれでも議論はあるのかもしれない。そういうふうなことを考えると、対抗要件の具備時が加入時であるということを決めて、その前提の下に(2)アのように対抗要件の先後で優劣を決めるというふうにしてしまうと、多少問題がある。したがって、中間試案の落とし所はこれから探っていくわけですけれども、どちらかというと対抗要件具備時みたいなものはある程度、場合によっては明らかにしないままに出発して、しかし、同一目的物に、例えば個別動産譲渡担保の目的物が集合動産に加わった場合とか、あるいは集合動産に加わった前ないし後に購入代金の融資がなされた場合とか、そういった場合について、優劣関係をもう少し丁寧に、最終的には規定せざるを得ないだろうというところでしょうか。   したがって、今回それを中間試案で規定し切れるかどうかというのは問題かもしれないのですが、少なくとも加入時が対抗要件具備時であり、それが(2)アのルールの適用によって、場合によっては集合動産譲渡担保権者が軒並み負けるという結論を出すというふうなことで中間試案を出すべきではない。これは、こういうまとめでよろしゅうございますかね。井上さん、いかがですか。 ○井上委員 二つの問題を分けて考えるという前提であれば、今みたいにまとめていただいたことでいいのではないかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○阿部幹事 すみません、私が少し分からないのは、登記を備えていない集合物譲渡担保権者であっても、やはり先に設定されて占有改定した以上は優先権を守らなければいけないと井上委員や青木則幸幹事はお考えになるのでしょうか。私は、登記されているものに登記を基準とした優先順位を与えれば、それで十分かなと思ったのですけれども、いかがですか。 ○井上委員 私も登記優先ルールは基本的には前提として議論しておりました。その御質問ということですか。 ○阿部幹事 いえ、登記優先ルールの下では、加入時説を採ったとしても、登記された集合物譲渡担保権者が勝てるという話だったと思うのですけれども、だとすると、加入時説を採るか採らないかという話は、どちらかというと登記された譲渡担保権の話ではなくて、登記されていない集合物譲渡担保が設定されたときに、その人が後から、例えば登記された個別動産譲渡担保の設定などによって逆転されることをどれぐらい許容するかという、そこが問題なのかなと思ったのですけれども。 ○道垣内部会長 阿部さんは最初から、登記優先ルールでほぼ決着が付くので、まあこれでもいいのではないのというふうにおっしゃったときから、そういうお考えなのだけれども、ぎりぎり出していくと、集合物に加入する前に個別動産譲渡担保が設定され、かつそれも登記された、それで集合動産譲渡担保も登記されているといったときに、どちらが勝つのですかという問題というのは多分残りますね。登記優先ルールで個別動産の方が勝つだろうというのは、阿部さんがおっしゃったし、井上さんも、それはそうでしょうとおっしゃるのは、集合物に加入する前、ないしは加入した後でもいいのですが、個別動産について譲渡担保が設定され登記がされ、それが、集合物に加入したのだけれども集合動産譲渡担保については登記がされていないという場合には、登記優先ルールというものの適用によって個別動産譲渡担保権者が勝つということにはなるのではないのというのが、井上さんのおっしゃったところだろうと思います。シチュエーションはいろいろあるので、一般的にあるシチュエーションというのは多分あるのだろうと思うけれども、やはりルールを作るときには、普通はそんなことないよ、みたいなときにも適用されるようなものでございますので、そこは考えながらやらなくてはいけないのですが、井上さん、私がまた人の話を解説してしまったのですが、何か問題ありましたか。 ○井上委員 基本的にそうで、その意味では阿部先生にうまく私の意図が伝わっていなかったように思うのですが、私が問題にしていたのは、集合動産譲渡担保を設定して登記を備えた後に、別の集合動産譲渡担保を設定して登記を備えた場合に、後の方が勝ってしまうという結論がよくないのではないかというのが一つ目です。後の集合動産譲渡担保というのは、倉庫Aにある在庫とは書かずに、例えば倉庫Aが含まれる敷地を特定して、敷地内の在庫として特定して集合動産譲渡担保を事後的に備えて登記を備える、それは、うがった見方をすれば、登記を調べた結果、先行する集合動産譲渡担保の範囲が倉庫A内の在庫と書いてあったので、それをひっくり返す目的で、倉庫Aを含む敷地内の在庫と定めるか、先ほど申し上げたようにシリアルナンバーを定めるかして特定して新たに集合動産譲渡担保を設定したうえで、その登記をしてひっくり返せる結果にならないのかというのが集合対集合の問題意識です。次に、集合対個別の問題意識というのは、個別在庫を売買毎に登記することは考えられないのですが、工場内の設備機械のようなものについては、それを集合的に担保に取って登記を備えていても、その後、設備を入れ替えるときに、別の債権者がその設備を個別に譲渡担保に取って登記をすることがあり得ます。このように、先に登記を備えた集合動産譲渡担保に対し、後から個別にあるいは集合的に担保を設定する人が勝ってしまうのはおかしいのではないかと、そういった登記対登記の話で考えておりました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○青木(則)幹事 先ほどの御質問ですが、これは担保ファイリングの議論をしていたのから、登記制度自体は担保ファイリングではなくなるけれども、優先要件というのが残るという理解でよろしいのでしょうか。そこのところが、要するに同じ登記制度でも、機能としては担保ファイリングのときに議論していたようなものをある程度残すという方向で議論していいのかどうかというのが、少し悩んでおりまして、場合によっては登記優先とは単純に対抗要件がまずあるということを前提に、その対抗要件が競合されるときに優先させるだけということであるならば、これは占有改定による集合動産譲渡担保についても同じように考えなければいけないのかなと思っておりました。そこのところの、阿部先生がおっしゃるような、優先要件を別途考えてよいということを、ある意味では担保ファイリングのときは分かりやすくそういうことが言えたような、登記の種類が違うので、言えたように思うのですが、同じ特例法の改正される登記であったとしても、そういうふうに見ていくことができるということになっていくのでしょうか。であれば、もちろん大賛成ではありますけれども、ある程度そこは明確に、効力という形で規定した方がいいのかなと思いました。 ○森下関係官 登記優先ルールなのですけれども、念頭に置いていたのは、まず原則としては対抗要件を備えているという前提で、その先後で基本的には順位は決めるわけですけれども、その先後が仮に後ろだったとしても、登記を備えている場合は、その順位を変えるというようなものとして想定しておりました。したがって、前提として対抗要件が備わっているというようなことは、まず要件として必要となってくるだろうと考えておりました。 ○道垣内部会長 青木さん、差し当たってよろしいでしょうか。 ○青木(則)幹事 ありがとうございます。 ○道垣内部会長 第4の1のとりわけ1のところに議論が集中しておりましたが、ほかのところにも広げていただいても結構ですが、水津さん、お願いします。 ○水津幹事 登記優先ルールについて、2点質問をいたします。   まず、部会資料20では、登記優先ルールは、対抗要件の問題と担保権の順位の問題とを区別したうえで、後者の問題を扱うものであるとされています。そうすると、登記優先ルールについては、対抗要件に関する規律、つまり善意・悪意は問わないとか、背信的悪意者は別であるといった規律は、適用されないこととなるのでしょうか。登記優先ルールは、担保権の設定について占有改定により対抗要件を備えることができるとしつつも、後で登記を備えた担保権者には、その担保権の設定を対抗することができないとする対抗要件の特則であると理解する余地もありそうです。この理解によれば、登記優先ルールについても、先ほど述べたような対抗要件に関する規律が適用されるものと考えられます。これに対し、部会資料20のように、登記優先ルールは、対抗要件の問題と区別された担保権の順位の問題を扱うものであると理解するのであれば、同じようにはいえません。そこで、先ほど申し上げた質問をする次第です。   次に、現行法では、動産譲渡登記は、法人がする譲渡についてしか用いることができません。そうすると、自然人Aが所有する動産について、BがAから譲渡担保権の設定を受けたときは、Bは、動産譲渡登記によって対抗要件を備えることができないため、占有改定によって対抗要件を備えることとなります。その後、Aが法人Cにその動産を譲渡し、真正譲渡が認められるとして、DがCから譲渡担保権の設定を受け、動産譲渡登記を備えたとします。この場合には、登記優先ルールが適用されるのでしょうか。もし登記優先ルールが適用されるのであれば、自然人がする譲渡についても動産譲渡登記を備えることができるようにしないと、占有改定によって対抗要件を備えた譲渡担保権者Bは、そもそも動産譲渡登記を備えることができなかったにもかかわらず、後れて動産譲渡登記を備えた譲渡担保権者Dに優先されることとなります。この扱いを正当化するのは、難しい気もいたしました。 ○森下関係官 御質問ありがとうございます。まず、前半の問題ですけれども、基本的には先ほど申し上げましたとおり、まず対抗要件が備わっているというふうな前提の下で、その先後で決めるというふうなところのルールを変えるというものだと想定しておりました。したがって、対抗要件に関する善意、悪意ですとか、背信的悪意者みたいなところの問題というのは、登記優先ルールの前にある問題なのだろうと考えておりました。したがって、そこで対抗要件があるというような前提で初めて登記優先ルールが問題になってくるのだと考えておりました。 ○笹井幹事 後者の問題は悩ましい問題で、今の部会資料を前提とすれば、自然人について特別な規定を設けられているわけではありませんので、御指摘のような事例では、登記優先ルールの下で法人が優先することになるのではないかと思います。   動産譲渡登記については、現行法の制度の下では自然人は利用することができませんが、一定の個人事業者が利用できるようにできないかということを検討しているところでありまして、その結果として、ある程度不都合性が是正されるというのはあるかと思います。個人事業者でない個人と法人とが競合する場面は余り考えにくいのかなと思っていますが、理屈の上ではそういう場面があり得て、それはやはり不都合ではないかという御指摘はあり得るのかもしれません。その点につきましては、現時点でこういう解決策があるということを持っているわけではありませんので、引き続きの検討課題とさせていただければと思います。 ○道垣内部会長 第4のところですが、ほかにございませんか。 ○阪口幹事 第4と第5について、細かいことばかりで申し訳ないですけれども、中間試案の作り方及びその補足説明の作り方ということで、5点申し上げたいと思います。   まず、第4の1(1)イの「現に存在する動産の引渡し」という文言に関しては以前、たまたまゼロ個でも、それは別に構わないという話があったと思います。そうだとすると、例えばここを墨付き括弧にするなど、ワーディング上の問題があることを明示した方がよくはないかというのが1点目です。   2点目は、(注2)の引用されている生熊先生の論文の、立命館法学383号は395号ではないかということです。  3点目は、留保所有権の方に行ってしまって申し訳ないのですけれども、第4の2の留保所有権のタイトルは、括弧の中で、又は新たに創設する担保権のうち目的物の売買代金債権のみを被担保債権とするもの、以下併せて「留保所有権等」という、ということで、普通の留保所有権とは別に、譲渡担保なのだけれども売買代金債権を担保とするものまで留保所有権等という概念を入れて議論が始まっているように見えるのですが、今までこういう形で明示的に議論されたことはないと思うので、所与の前提みたいな形で問うことがいいのかと思います。というのは、(注1)のところで、密接な関連性を有する一定の債権を被担保債権とする動産譲渡担保権等が設定された場合には、という問題が書いてあるのだけれども、柱書のところの方は所与の前提みたいな形になってしまっているので、ここは何か書き方を工夫しないとまずくないかなと思います。   4点目として、登記優先ルールの適用対象を集合動産譲渡担保等に限る意見もあったので、(注)に記載するとしていただいて、ありがとうございます。ただ、そこに対しては(注5)で、その場合には、個別と集合がぶつかった場合のルールをどうするかが問題となるとあるのですけれども、これに関しては部会資料4で一応答えが出ていたと思います。あのときの議論で、部会資料4の16ページに反対する意見もなかったように記憶しており、問題となるという形で提起されているだけではないように思うので、補足説明で書かれるのかも分かりませんけれども、少しちぐはぐかなと思いました。   最後に、大分飛んで申し訳ないのですけれども、形式的なことで、7ページの第5のところの1(2)の、狭義の所有権留保は、その目的物の代金債権を担保する限度では、と書かれている部分が、狭義の留保所有権という言葉と代金債権を担保する限度というものが重なっていて、なおかつここでは狭義の留保所有権に「等」が付いておらず、表現が合っているのかどうか、特に第4の2で幾つか案が並んでいるところと整合しているのかどうかが少し気になったので、中間試案の作り方ということで御検討いただけたらと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。立命館法学395号というのはありがとうございます。そういう形式的なミスの部分と内容に関わるものがあると思いますが、内容に関わるものについて事務局から何かございましたら、お願いいたします。 ○笹井幹事 所有権留保を「所有権を担保の目的で留保する」と定義すると、担保目的取引規律型を前提にすることになりますが、新しい担保物権を創設する場合であっても、その担保権の目的物と被担保債権の牽連性が強い場合については特則を設けるという余地もあるのではないかと思います。そこで、担保物権創設型を採る場合でも、実質として、所有権を留保するという取引がされた場面に対応するような場面を抽出しようと考えて、この括弧書きを書いたものです。ですので、譲渡担保のうちの一部分をここに適用するという趣旨で書いたものではありませんが、その辺の趣旨をもう少し明確になるように、書き方は工夫したいと思います。 ○道垣内部会長 今の1点ですが、4ページのところの阪口さんから御指摘いただいた、留保所有権と留保所有権等というのは、区別はされたルールにはなっているのですが、それはなかなか中間試案を読んですっと分かるというものではございませんので、もう少し分かりやすく整理をするというのが必要だろうと思いますし、それを踏まえたときに、7ページの第5の1(2)の狭義の留保所有権というのは、その目的物の代金債権を担保しているだけのはずなのだから、重言になっているのではないかということにつきましては、これはそうですね。だから、その辺は確かに整理をする必要があるかと思います。   実質論に関わるところで、まだ事務局からお話がないのは、現に存在する動産の引渡しがあれば対抗できる、あるいは、ないしはなければ対抗できないという話ですが、たまたまゼロであった場合どうなるのかと、その時点で対抗力を具備するのかという問題なのですが、ゼロであったときに有効に集合動産譲渡担保が成立するというのは確かなのでしょうけれども、対抗要件の具備時というのがその契約時であるといってよいのかということにつきましては、まだ若干の議論というのはあり得るのかなと思います。というのは、そうしますと、可能性が非常に低いタイプの集合物について適当に言葉を作って契約をすれば、それで有効に物権的な意味での担保権が成立するといっていいのかという問題は、なおあろうかと思います。   現在のところは、昭和六十何年でしたっけ、の判決の文言をそのまま引っ張って書いているというところでございますが、なおゼロのときにどうするかという問題がありますので、(注)にするとか、あるいはもう少し、阪口さんがおっしゃったのはかぎ括弧にすべきであるという話でしたが、のところにつきましては、なお事務局に検討していただければと思います。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。どうもありがとうございます。第4の2の留保所有権のところなのですけれども、【案4.2.1.1】、それから【案4.2.1.2】で、対抗要件が必要かどうかという点で分かれるという整理をされているのは分かりやすいと思いますが、その説明のところで、5ページでは、いわゆる担保目的取引規律型と担保物権創設型との対比がなされて、それぞれの立場からこの案がどう説明されるのか、理論的な問題なのか、政策的な問題なのかという御説明をされていますが、そこのところで少し分かりにくいように感じました。と申しますのは、担保目的取引規律型か担保物権創設型かというのは、主として譲渡担保の法律構成を念頭において、その二つの対比がされてきたわけですが、所有権留保について、それもワンセットでこの二つの理念に分けて考えなければいけないのかどうかというのがよく分からないところではあります。譲渡担保について担保目的取引規律型で論じていたのだけれども、所有権留保は全く別だから、また別な考え方があるとして両方を分けて考えることも十分可能ですし、また逆に、譲渡担保については担保物権創設型で行くけれども、所有権留保は別だという考え方も十分できるかと思いますので、担保目的取引規律型か担保物権創設型かで【案4.2.1.1】と【案4.2.1.2】の立場がそれぞれ理論的にいうとどうなのか、政策的にいうとどうなのかという対比の仕方を説明のところでそこまで書き込むことにどれだけの意味があるのか、若干疑問を感じました。その点を再度御確認いただければと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。何か今の段階で、ございますか。参考にさせていただいて、整理をもう一度していただくようにしたいと思います。ありがとうございました。   ほかに、今のところ第5のところまで、つまり9ページの上から3分の1ぐらいのところまで議論の対象となっているわけですので、いろいろなところについて御意見いただければと思うのですが。 ○村上委員 ありがとうございます。第5の3について、記載ぶりについて意見を申し上げます。   一般先取特権との優劣関係について、引き続き検討するということで、この間の部会の議論における議論状況を含めて、説明のところに記載いただいたことには感謝申し上げます。その上で、部会資料の上段の部分にも記載がございますが、一般先取特権との関係は、動産担保だけではなく、実際には債権担保も労働債権確保に大きな影響を及ぼすものです。検討すべき問題点は基本的に共通すると考えられると書いていただいておりますが、中間試案では、第6の債権担保のゴシック部分でも、第5のところと同様の記載を頂きたいと思います。また、一般先取特権との優劣に関しましては、新たな規定に係る担保権だけではなく、労働債権とほかの債権との調整についても議論を尽くすべきと当初より申し上げてまいりました。この点、意見があった旨は、補足説明の部分で是非御記載いただきたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。第6のところは、他の担保権との優劣問題、とりわけ先取特権との関係については、まだ記載が浅いといいますか不十分なところがありまして、一般先取特権だけを書けるかというふうな問題もございますので、その辺も含めてどこまで、債権も大体準じるよと書いて終わりにするか、債権のところにもきちんと書くかということについて、再検討をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。   ほかに何かございますでしょうか。 ○伊見委員 伊見です。部会資料の6ページから7ページに掛けての第4の3、担保権の処分等の対抗要件等のところなのですけれども、7ページの説明の末尾のところに触れていただいていますとおり、まず実体的効力として、転担保や担保権の処分、順位変更を認めることについて、また、認めるとしたらどの範囲でどのような手続で認めるかを含めて、本文の記載に必要ではないかと思いました。今回は7ページの説明の冒頭に、認めることを前提としてという記載になっておりますけれども、先に認めるということについての記載を明確にするべきではないかと思いましたので、御検討をよろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。そのときに、伊見さんのお考えとしては、認めるというのを中間試案にするのか、認めるか否かを考えなければいけませんというのを中間試案にするのかについては、どちらが妥当だとお考えになりますでしょうか。 ○伊見委員 中間試案の示し方としてという御質問ですね。どの範囲で認めるかについては、なお検討が必要かと存じますので、そのような聴き方をしていただくのがよろしいかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。そこら辺も検討していただければと思います。   ほかに何かございますでしょうか。   内容的には反対であるというところもあろうかと思います、私も実はあるのですけれども、聴き方の問題として、ほかに何か、こういうことはきちんとした方がいいというふうなことがございましたら、御指摘いただければと思います。   本日、対抗要件のところを、加入時、設定時の問題についてどういうふうに整理をするのが妥当かということについて皆さんの意見を伺うことが、今日の前半部分の大きな目的であったと思います。そして、そこについて皆さんから活発な御議論を頂いたことによって、どのようなルールを最終的に置くかということが決まったわけではございませんけれども、整理の方向性みたいなものは出てきたのではないかと思います。大変ありがとうございます。   ほかのところにつきまして何か、質問の仕方というか、中間試案の出し方について御議論がないようであれば、次の方に移っていきたいのですが、最初の段階で笹井さんからお話がありましたように、これを踏まえてもう一回やって、次の回には中間試案の取りまとめということにしていきたいと思います。いつまでもやっていると、やっていることも楽しいですけれども、どこかで中間試案にしなければいけませんので、そういうリミットがあります。したがって、是非部会の場に限らず、何かございましたら御指摘を頂くようにお願いを致します。   それでは、場合によっては思い付いた、思い出したということで、後で御発言いただいても構いませんので、議事としては先に進めさせていただいて、「第6 債権譲渡担保権の対抗要件等の在り方」と、「第7 動産・債権譲渡登記制度の見直し」についてというところに入りたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○森下関係官 では、9ページ目の「第6 債権譲渡担保権の対抗要件等の在り方」について御説明いたします。まず、1と2につきましては、部会資料20から大きな変更はございません。3については、動産譲渡担保権の処分等の対抗要件等につきまして、抵当権と同旨の規律を設けることを提案しております。   続きまして、10ページ目の「第7 動産・債権譲渡登記制度の見直し」についてです。1と2は、関連担保目録の導入の要否と新たな規定に係る担保権の処分等の公示方法についての提案になります。部会資料20では、新たな規定に係る担保権の処分等を幅広く登記できるとする方向性を前提に、新たに関連担保目録を設けて、同一の動産や債権を目的とする担保権に関する情報を関連担保目録上に一元的に記録する方法を提案いたしました。これが【案7.1.2】と【案7.2.2】になります。この案に対しては、例えば担保権の順位を変更する登記をしたとしても、登記されていない担保権が存在するために効力が認められないことがあるなど、公示の確実性を担保することができないなどの意見もあったところでございます。   そこで、今回新たに、新たな規定に係る担保権の処分等のうち、物的に編成されていない動産・債権譲渡登記制度を前提としても、登記した場合の効力、これは第三者への対抗力等ですけれども、それが確実に認められるもの、具体的には転担保ですとか、担保権の譲渡・放棄に限って登記できることとする方向性も提案いたしております。具体的な提案内容につきましては、説明のところに記載させていただいているとおりです。この方向性によりますと、【案7.1.1】や【案7.2.1】のように、例えば動産・債権譲渡登記に復帰するなどの方法によって新たな規定に係る担保権の処分等を公示するということも考えられます。この点につきましては、どちらの方向性が望ましいかという点も含めまして、御審議いただければと思います。   3につきましては、部会資料20から変更はございません。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、どの点からでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。2点ほど、意見といいますか、こういう考え方もあったのかなということを申し上げたいと思います。第6の債権譲渡担保の対抗要件ですが、部会の中の御意見では、決して多数ではないのかもしれませんが、登記優先も検討すべきではないかという御意見があったかのように記憶しております。そういう意見もありましたと説明のところで書くということなのか、あるいは(注)で書くということなのか分かりませんが、いずれにせよそのような意見もあったという点を記録に残すことは今後の議論を活発化するためにも必要かなとは思いました。これは単なる感想程度です。   次が、第7の動産・債権譲渡担保制度の登記制度の見直しのところで、動産と債権を同じ項目で論じていますが、やはり動産登記簿と債権登記簿とは、別々な登記簿だということが大前提となっているのかとは思います。ただ、一覧性という意味では、むしろこの後出てくる事業担保制度をどこまで導入するのかということとも関連するのかもしれませんが、事業担保権を認めて、それを登記していくということになりますと、動産にも債権にも関わってきますので、動産担保においても債権担保においても、先に事業担保が設定されているかどうかを確認する必要があるということかと思いますので、そういう意味では、不動産は物的編成で別でしょうけれども、人的な編制主義を採っている担保権に関しては、動産も債権も、事業担保も、できれば一覧できるような登記制度を目指すべきだ御意見もあったというようなことを、記録に残していただければとは思いました。相互の登記制度を何らかの形でつなぐような、そのような制度枠組みであってもいいのかもしれません。いずれにしても一覧性という点を検討する必要があるというのが意見でございます。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。片山さんに2点伺いたいのですが、債権譲渡担保権、譲渡担保かどうか分かりませんが、新たな規定に係る担保権ですが、それについて登記優先ルールというのもあり得るという話ですけれども、そのときには、真正譲渡はそうならないけれども、担保のときにはそうなるという意見として書くべきだということなのでしょうか、それとも、真正譲渡も含めて、登記優先ということを再度検討すべきであると書くべきだというのと、いずれでしょうか。 ○片山委員 私自身が積極的にその点を主張するわけではありませんが、御意見の中では、もし可能であるならば、そもそも債権譲渡の対抗要件のルール自体もこの機に見直してはいかがかという御意見があったと記憶しておりまして、そのことは確かにそのとおりかとは思いますので、真正譲渡と担保とを別々に規律すると、性質決定の問題も残りますから、債権譲渡の方も改めるという御意見であったとは思っております。 ○道垣内部会長 けれども、動産は真正譲渡の場合には別に登記優先なわけではないのですよね。分かりました、可能性としていろいろあると。もう1点、登記の在り方の問題で、一覧性を高めるという話なのですが、登記の工夫なのか、それとも、例えば債務者、設定者で名寄せを簡単にできるようにするという話なのか、いずれの話なのかというのが正確には理解できなかったのですが。 ○片山委員 可能であれば同一の登記制度ということかもしれませんが、相互に他の担保権の設定もなされているという点を公示していくという方法は考えられるかとは思います。 ○道垣内部会長 分かりました。ありがとうございました。   ほかにございませんでしょうか。 ○阪口幹事 阪口です。第7に関して、ここで考えられているものはどこまで公示されるのかという質問です。現在の動産なり債権の登記制度は、概要が一般人に見えて、詳細なものは利害関係人にしか見えないという仕組みになっているのですけれども、ここで問題提起されている、例えば関連担保目録などが、どの範囲で見られることを前提にパブコメに掛けるのかによって、多分受け止める人のイメージも大分違うのかなと思います。部会資料20では、明確には書いていなかったけれども、利害関係人だけが見られるようなイメージの関連担保目録なのかなと思っていて、ここでもそういうことなのか、そうでないのか。利害関係人しか見られないというのが本当に公示なのかという気もしますけれども、それはともかく、パブコメに掛ける際には、どういう前提での質問をしているのかを明確にした方がいいのかなと思って、質問させていただきました。 ○森下関係官 例えば関連担保目録をどこまでの人が見られるようにするかというのは、恐らく関連担保目録の中にどこまでの情報を入れ込むのかというふうなところと密接に関係していまして、その前提があって初めて、誰が閲覧できるのかというような話になってくるのだと思います。確かにどこまで見られるのかというのは非常に大事な問題だと思いますので、利害関係というふうな要件を掛けるのかどうかというふうなところの制度設計につきましては、中間試案でどこまで示せるのかという問題はあるのですけれども、引き続き検討して整理していきたいと思います。 ○道垣内部会長 よろしくお願いいたします。   ほかにございませんでしょうか。御説明で、第7に関しては転担保だけを書くということもあり得るとおっしゃったの。 ○森下関係官 転担保と担保権の譲渡、放棄です。 ○道垣内部会長 では、何は書かないということですか。 ○森下関係官 例えば、順位の譲渡、放棄ですとか順位の変更といった、ほかの担保権の存在を前提とするような規律については、登記しないというような方向性でどうかということの提案でございます。 ○道垣内部会長 その趣旨は、順位の変更というときには、変更される対象の二つの担保権が目的物において同一であるか、少なくとも重なっているということが必要になるというか、そうしないと意味がないわけですが、それが確保できないのでということなのですけれども、他方で当部会において井上さんが何回かおっしゃったと思いますけれども、実務的にニーズが高いのは順位の変更であるというお話でした。そうしたときに、順位の変更については関連担保目録というものを入れてもなかなかできないよねという話で、それで実務的に論じられてきたニーズの問題は解消するのだろうかというのが少し気になるところであり、また、同一目的物の間の順位の変更であるということが確保できないというふうなことは最初から分かっていたところ、前回出したときには、重なっていれば対抗要件として機能するということで、それはある種、順位の変更をやる人のリスクだよねということで出来上がっていたのだと思うのです。それをどう考えるかというのはあるのですが、それを前提としたときに、目的物が同一の他の担保権者というものを想定しなくても大丈夫なものについてだけ公示制度を設ける、そういうふうに変更するということについてはいかがでしょうか。   この問題を何回か御発言されている井上さんですが、何か御意見はございますか。 ○井上委員 ごめんなさい、そこの御提案をきちんと読んでいなかったのかもしれないのですけれども、中間試案の作り方としては、他の担保権の存在を想定しないものに限定するという考えもあれば、それでは狭いという考えもあるという前提で、世に問うていただくことについて異論はないです。私自身は、先ほど正に部会長がおっしゃったとおり、複数の担保権者が対象をぴったり重ねて合意し、登記をする事例を想定しているので、そういう順位の変更が現になされて、実際に目的物がぴったり重なっているときに、制度としてそれを支えてもいいのではないかと、そういう趣旨でございまして、そういう考えもあるし他の考えもあるという前提で、世に問うていただければと思います。 ○道垣内部会長 分かりました。おっしゃるとおりですね。つまり、重なるかどうかが確保できないということは簡単に分かるところ、それだけ出したら重ならないではないか、どうしてそんなことができるのだという話はすぐに出てくるわけなので、両方問うという形で処理をするのが適切なのでしょうね。分かりました。   ほかに、ここまでのところで何かございますでしょうか。   中間試案としては、よろしゅうございますか。   それでは、また気が付いたことがございましたら、お気になさらず、既に終わったところだけれども、ということで御発言を頂ければ結構でございますので、議事自体は次のところに進めていきたいと思います。   それでは、第23というところの、数字としては飛ぶわけですけれども、部会資料としては12ページになりますが、事業担保権の導入に係る総論的な検討課題というところと、第24の事業担保権の効力というところに入りたいと思います。事務当局におかれましては部会資料の説明をお願いいたします。 ○寺畑関係官 それでは、「第23 事業担保制度の導入に関する総論的な検討課題」について御説明いたします。「1 事業担保制度導入の是非」については、二読までの御審議では賛成する意見が多く述べられた一方で、慎重な御意見もございましたため、引き続き検討するとしております。   「2 事業担保権を利用することができる者の範囲」のうち、本文(1)の事業担保権者の範囲については、何らかの制約が必要であるという二読での審議での御意見を踏まえて金融機関などに限定する方向としつつ、その具体的な範囲は更に検討することとしております。本文(2)の設定者の範囲については、二読の審議での御意見を踏まえて個人による事業担保権の設定は否定して法人等に限定する方向としつつ、その具体的な範囲は、公示手段の有無にも留意しながら更に検討することとしております。   「3 事業担保権の対象となる財産の範囲」のうち本文(1)については、二読で御提案した「総財産」という文言が適切かという御指摘を踏まえて、「総財産」という文言は用いずに、その実質を書き下す方向で修正しております。本文(2)は、設定者の財産のうち一部分を担保権の効力の及ぶ範囲から除外する合意の効力を認めるかどうかについて、その旨の公示の要否やその方法も含めて更に検討することとしております。なお、契約上の地位の一つとして、労働契約については何らかの特別な考慮が必要であるとの御意見を、注記しております。   次に、「第24 事業担保権の効力」について御説明いたします。「1 事業担保権の設定」については、事業担保権の設定契約に当たり株主総会決議を必要とするかという点や、労働者保護の観点から労働組合に対する説明等を必要とするかといった点について、更に検討することとしております。   「2 事業担保権の対抗要件及び他の担保権との優劣関係」のうち、本文(1)及び本文(2)については、二読の資料から実質的な変更はございません。本文(3)については、二読の審議での御意見を踏まえて、事業担保権と他の約定担保権との優劣関係を対抗要件具備の先後によって定める旨を明示しました。本文(4)については、二読の審議での御意見を踏まえて、更に検討すべき論点が残されていることから、具体的な提案をせずに、引き続き検討することとしております。   「3 事業担保権の優先弁済権の範囲(一般債権者に対する優先の範囲)」について、二読では、一般債権を一定の範囲で事業担保権に優先させる必要があることについてはおおむね異論がなかった一方で、具体的にどのような範囲の債権を優先させるか、各債権に分配する額をどのように算出するか、優先させる債権への分配額を実行開始後に随時弁済することができるかという問題提起を本文にお示ししつつ、引き続き検討することとしております。   「4 事業担保権設定者の処分権限」については、二読では特段の制約を設けないとすることを提案しておりましたが、二読の審議では、一定の制限を設けるべきであるという御意見が多かったことから、その方向をお示ししつつ、具体的に処分権限をどのような範囲に制約するか、あるいは特定の財産についての処分権限や後順位担保権の設定を制約するかという点についても、引き続き検討することとしております。   「5 一般債権者が差し押さえた場合の担保権者の保護」については、二読の資料から実質的な変更はございません。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、これらの点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を伺えればと思います。よろしくお願いします。 ○大澤委員 大澤でございます。先ほど冒頭で御説明を致しました意見書の方を少し見ていただければと思います。意見書の4ページの終わりから5ページのところになります。これは、第23の1のところに関係する部分がございますので、この意見書の多少の説明と、あと、御検討を頂く部分についてお話をさせていただければと思います。   まず、意見書の4ページの方で中間試案への提案と書いてあるところについて、一つ、別のフォーラムで議論すべきであるというような提言をしておりますけれども、その理由として、総論的な疑問ということで5ページ以下にその理由が書いてございます。元に戻っていただいて、担保法制部会資料12ページから13ページの方を拝見すると、労働者保護の観点等から懸念があるとして慎重な態度を示す意見も述べられたとございますが、一方で、もちろん労働者保護という観点での懸念というのも当然ですけれども、そもそもこういった事業担保制度が必要なのかどうかというところについて、中小企業に関して、むしろ金融機関等に事実上拘束されてしまわないかというような懸念等も出されているということを踏まえて、こういった説明をする補足説明のところで少し、この意見書の御検討をしていただければと思っております。また、その際に、別のフォーラムで議論すべきであるというようなことについても、そのような意見もあったということを、御検討いただくかどうかも含めて、そういった補足資料の方に書いていただければというふうにも考えております。それがこの23の1についてでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに何かございませんでしょうか。 ○青山幹事 厚労省の青山でございます。第23の3、14ページについて発言いたしますが、よろしいでしょうか。   事業担保権の対象となる財産の範囲ということで、契約上の地位などを含む全ての財産に及ぶということを前提として、いろいろ書いていただいていますが、(2)の※で労働契約について特別な考慮というのを書いていただいています。これは、説明の31行目以降ぐらいに書いてあります、後ほど実行で出てくる個別換価に引き付けて、特定の労働者のみが選別されないような場合の制約を想定した記述かと思います。そういう議論がありましたし、そういうふうに考慮が必要という注記を頂くことは、もちろん異論はないのですけれども、整理だけの問題なのですけれども、そうしますと、これは場面としては実行のときに問題となる場面なので、こういう注意喚起はこの財産の範囲でするのか、実行の場面でするのかという場所の問題として気になりましたので、御検討いただければと思います。   もう1点、今の14ページの31行目以降の説明で、今私が話しましたが、後ほど実行で出てくる個別換価を裁判所の許可に係らしめることの一環で、労働者の恣意的な選別ということを論じていただいていますけれども、特に契約上の地位、中でも労働契約を換価などという概念で一緒にくくってまとめて議論していいのかというところは、違うのではないかと、労働契約に値段を付けて売るというのは、労働者保護の観点とか、我々の労働基準法でも、法律で定められた場合のほかは業として他人の就業に介入して利益を得てはいけないと書いてありますので、契約上の地位の個別な選別という話は個別換価とは別概念にするのか、個別換価という表現を考えるのか、分かりませんけれども、取り上げ方の整理が必要かなと思います。いずれにしても整理の問題ですので、中間試案の表記の仕方等、検討が必要かと思い、発言しました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。確かに14ページのところに付けるのかというのは、本当にここが妥当なのかというのはよく分かりませんし、では実行のところに付けるとしても、先ほど青山さんから御指摘がありましたように、言葉遣いという問題があります。少し検討していただければと思います。 ○村上委員 ありがとうございます。まず、23の1の事業担保制度導入の是非の部分です。今回、様々議論があった中で、引き続き検討とされているのは妥当と考えます。先ほど大澤委員が提出された意見書にございますように、私もこのような制度を作ることに対しては、これまでも述べてまいりましたが、否定的な立場でございます。ただ、大澤委員の意見書には別のフォーラムで議論すべきとありますが、別のフォーラムであれば導入を前提に議論すべきとも考えてはおりません。事業の資金需要を満たす仕組みとか、そういったニーズがあるということは理解をしておりますけれども、事業活動に関わる皆さんの一部にしわ寄せが行くような制度であってはならないと考えます。いずれの場であっても、拙速ではなく、慎重かつ丁寧に議論を尽くすべきと考えております。   また、先ほど青山幹事からの御指摘がありました、第23の3の事業担保権の対象となる財産の範囲についても、私も同様の意見を持っておりますので、私が述べてきたようなことを補足説明として書いていただいたことは感謝申し上げますけれども、この場所が適当なのかどうかということは、是非整理を頂ければと思っております。   第24についてもよろしいでしょうか。 ○道垣内部会長 お願いいたします。 ○村上委員 ありがとうございます。1の事業担保権の設定につきまして、その手続に関しては更に検討と記載をされておりまして、ただ、説明のところでは株主総会決議や、労働者への情報提供、説明などについて記載をされたところです。ゴシックのところで必要な手続的要件というだけですと、何のことだかよく分からないという部分がありますので、例示として株主や労働者との関係などというような文言を入れていただくと、何が手続的要件なのかということがイメージできると思いますので、その点も是非お願いしたいと思います。   最後に、4の事業担保権設定者の処分権限についてでございます。今回、ゴシックの部分を拝見すると、事業担保設定者の財産処分権限に何らかの制約を設けるという流れになっております。二読の際には特段の意見を申し上げませんでしたけれども、①、②、③だけが検討の選択肢なのかという点は疑問がございまして、制約を設けないという選択肢、つまり制約を設けることの要否も検討の対象ではないかと思います。   ゴシック部分を前提にいたしますと、例えば、賃上げをしてはならないといったような制約も可能になるのではないかというふうなことを懸念いたします。事業担保権を設定すると、労働契約の内容にまで及ぶような処分権限の制約が課されるということなのか、処分権限への制約というのは法的にどのような効果を持つのかなど、疑問や懸念もございまして、制約を設けないという選択肢も加えていただきたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○大西委員 13ページの第23の2(1)のところですが、この事業担保権者となり得る者の範囲については、金融機関に限定するという趣旨で、従来私も意見を述べてきました。ただ、よく考えてみると、金融機関から担保権付きで債権譲渡をするケースというのも多分にあります。その場合に、担保権者の要件を満たさないので随伴しないという結論というのもなかなか採りにくいのかなと思うので、サービサーだったり保証協会だったりファンド、通常、金融機関が譲渡をするような先も対象にすべきと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。そこをどういうふうにコントロールするのか、なかなか難しいところもあるかもしれませんが、おっしゃられたことはごもっともかと思います。   ほかに御意見、御発言はございませんでしょうか。 ○片山委員 慶應義塾大学の片山でございます。どうもありがとうございます。第23の1の事業担保制度の導入の是非というところの書きぶりなのですけれども、いわゆる包括担保か事業担保なのかという議論もございまして、包括担保で全部丸取りしてしまうのではないですよという点が正しく中間試案の際にも伝わる必要があるように思います。確かに14ページの3のところでは、全ての財産に及ぶというのがこの担保の特徴ということになりますが、同時に、優先弁済権の全てを確保できるわけではなく、例えば17ページの3のところでは、事業担保権の優先弁済権の範囲ということで、必ずしも常に優先弁済権が認められるわけではない点が示されてはいます。その点では、すべての財産を目的とする担保ではあるが、同時におのずと制約が内在している担保であるということをきちんと1のところでも伝える必要があるのかなとは思いました。今の書きぶりですと、事業のために一体として活用される財産全体を包括的に担保目的とする制度だということで、その包括性だけが強調される形になっているのですが、例えば事業継続価値の確保に必要な範囲でいうような形で、制約がありますよということを示すということも、事業担保権の議論を正しく誘導していくという上においても重要かと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。包括的というときの包括的というのは、目的物の範囲を示していますよね。片山さんのおっしゃった話というのは、目的物は包括的なのだけれども、しかし、優先権を有している債権全てがそういうふうになるわけではなくて、いろいろな調整が行われるよという話で、包括性が否定されているわけではないような気もするのですが。 ○片山委員 そのとおりだと思います。包括性の問題と、ただ、包括担保として取った財産権の全てに優先弁済権が常に確保されているわけではなくして、いわゆるカーブアウトという形で必ず優先弁済権の範囲に制約が課されているということをきちんと示す必要があるということなので、目的の包括性の問題と、それから優先弁済権の範囲の制約の問題と、両面が事業担保の制度設計の中で重要な問題なのですということを示すということになるのでしょうか。 ○道垣内部会長 分かりました。どうもありがとうございます。 ○尾﨑幹事 ありがとうございます。今、道垣内先生がおっしゃったことと全く同感でありまして、今の記述で、片山先生がおっしゃっていることはほぼ書かれているのかなと考えております。   それから、大澤さんがおっしゃった点についてなのですけれども、基本的にはこの事業担保権の意義とかそういったものについては、これまでも議論がされてきたところで、もちろんそれに対する懸念とか、そういったようなことも十分に議論されてきたことだと思っています。そういうものを踏まえて現在の記述がされていると思いますので、比較的バランスのとれた形で書かれていると思います。最後の最後で少しまた加えて、バランスを崩すような形になると、これまでの議論を十分に反映しているという形にはならないのかなと思います。基本的には、これまでの担保、保証に依存したような融資に対して、借手の事業のキャッシュフローを見て融資をするという目的の下でこの担保を導入するということが望ましいと我々は考えておりますし、その旨をこれまでも申し上げてきました。そういったようなことを踏まえて、ただ、その点が全てもちろん反映されているわけではありませんけれども、これまでの議論を踏まえてこういった記述になっていると思いますので、余りそのバランスを崩すような形で特定の記述を加えるということは適切ではないのではないかと思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○青山幹事 厚労省の青山です。再び恐縮でございます。第24の4の処分権限のところで申し上げます。   村上委員のおっしゃったように、少し労働契約との関係では気になっております。元々処分権限は、二読の資料まで、割と自由にできるということになっていたのですけれども、二読で制約を課すべきではないかという御意見もあって、今回、制約をするかというふうな中間試案案になっているかと理解しています。そうなりますと、労働契約上の地位に関し設定者が行う扱いについても制約を掛けられ得るのかどうかというところは、我々も気になってきておりまして、そこは村上委員と課題の認識は同様ですが、ただ、元々の表現では、先ほどの個別換価と同じなのですけれども、換価性のある財産の売却みたいなものだけで想定していると思うので、観念的には契約上の地位も財産には入るのだと思うのですけれども、契約上の地位も念頭に議論すべきだということが、例えば補足説明とかで注意喚起というか、テークノートしてもいいのかなと思いました。ここは議論が熟していないのはそのとおりだと思うので、本文にどこまで書くかというのはあるのですけれども、少し追加で申し上げました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。私は特に強い意見があるわけではないのですが、例えば、設定者があるタイプの契約をしてはならないと書くとか、あるいはあるタイプの契約をしなさいと書くというのは、ここでは全く念頭に置かれていないのだろうと思うのです。したがって、説明で書くということ自体も私は非常に違和感があるというか、担保の目的物でもないものについて、そんなことが担保権者に当然の権利としてあるわけはないではないかという感じがするのです。それはどちらが分かりやすいかという問題がありますので、検討する必要があるのだと思いますし、内容は全くもって私には異論はないところなのですけれども。   ほかに何かございますでしょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。井上です。24の2のところですけれども、ゴシックの(2)に、個別財産について事業担保権の効力が及ぶことを第三者に対抗するためには、商業登記簿への登記だけで足りるのか、それに加えて登記登録を必要とするのかと、こういう形で尋ねていただくことはよいと思います。   本来的にはといいますか、将来的には、私は、商業登記簿に登記すれば、法人のマイナンバーなどを通じて、その法人の名義でなされた不動産登記、特許登録その他の登記登録の中の当該法人名称にアスタリスクが自動的に付されるみたいな形で、その法人が事業担保設定済法人であることの公示が自動的に広くなされる制度ができればいいなとは思っていますけれども、そうではなく、ここで選択肢が与えられているように、当該当事者が自ら各個別財産について事業担保の登記登録をしなければ事業担保権の効力が及ぶことを対抗することができなくなるということであれば、登記登録制度がある全ての財産についてそういった公示を求めるのは行きすぎではないかと思っております。具体的には、動産とか債権とかをもしここで想定されているのだとすると、それは含まなくていいのではないかと思います。むしろ、人的編成主義に従って編成されていて、それ以外の形でも対抗要件が備えられるような財産はここには含めずに、基本的には物的編成主義で、それを見れば権利関係が分かるようになっているというタイプの登記登録財産については、それを見て何も担保が付いていないと判断した人を保護するために、事業担保権の効力を主張するのであれば、そういった登記あるいは登録に事業担保が設定済である旨の付記をしなければいけないという考え方と、それから、商業登記簿だけで足りるという考え方の二つを対比するような方向で中間試案を作成するのがよいのではないかと思います。そうすると、表現としてどう書けばいいのかは要検討ですが、「登記登録制度がある個別財産」というよりは、「登記登録がなければ処分の効力を第三者に対抗できない個別財産」というような形で書く方がよいのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。信託法14条では、私も思い付きで言うので、急に出てきませんけれども。 ○井上委員 イメージとしては正にそうです。 ○道垣内部会長 そうですよね。信託法自体が、登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産については、信託の登記又は登録をしなければ当該財産が信託財産に属することを第三者に対抗することができないということで、債権などはこれは含まれていないと解されているわけで、そういうふうなことを上限といいますか、個別的な登記登録が必要だとしてもせいぜいその範囲ですね。だから、そこまでの制約として書くべきではないかということなのですが、ここを三つ並べるのか、何でも必要だというのと、先ほど言った信託法14条の範囲なのか、全然要らないのかを三つ書くのか、あるいは検討をしなければいけませんねということで説明のところに書くのかということについては、なお事務局で検討をしていただければと思います。   ほかにございませんでしょうか。   中間試案に至りましてもなかなか、検討をするというところが多々残っているわけでございますので、皆さんの御意見を伺うということにしかなっていませんので、あれなのですけれども、差し当たって24のところまで、よろしゅうございますか。   ありがとうございました。それでは、また後でのことがございましたら、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、部会の外でも結構でございますので、是非御指示を頂ければと思います。   さて、始まりまして2時間が経過しておりまして、少しここら辺で休憩を取らせていただければと思います。現在3時30分でございますので、3時50分まで、20分休憩をさせていただければと思います。では、3時50分にお戻りくださいませ。           (休     憩) ○道垣内部会長 それでは、15時50分になりましたので、会議を再開したいと思います。   「第25 事業担保権の実行」というところから、「第26 事業担保権の倒産法上の取扱い」までについて、事務当局から説明をお願いします。 ○工藤関係官 それでは、「第25 事業担保権の実行」について御説明いたします。  「1 実行開始決定の効果」のうち、本文(1)については、二読の資料から特に変更はありませんが、本文(2)及び(3)については、二読の審議での御意見を踏まえ、管財人が善管注意義務及び公平誠実義務を負うことを明確化する考え方をお示ししています。本文(4)については、開始決定によって設定者の個別財産に対する強制執行等が失効することとしている点は、二読の資料から変更はありませんが、二読の審議での御意見を踏まえ、事業担保権に優先する担保権については、開始決定によって失効せず、手続外で行使することができることとした上で、事業担保権の被担保債権に優先する債権に基づく強制執行等は失効しないとの考え方を注記しています。   「2 事業担保権の目的財産の一部に対する実行及び個別資産の換価の可否」のうち、本文(1)については、二読の資料から特に変更はなく、本文(2)については、二読の審議での御意見を踏まえ、管財人による通常の事業の範囲を超えた個別資産の換価については、裁判所の許可を要するものとしています。   「3 裁判上の実行による事業譲渡における債務の承継の可否」については、管財人が事業譲渡によって設定者の負う債務を買受人に承継させることができることを明確化した上で、買受人に承継させることが認められる債務の範囲については、二読の審議での御指摘を踏まえ、事業担保権の被担保債務に先立って弁済を受けることができる債務その他のその債務の承継によって債権者間の衡平を害しないと認められる債務とする考え方をお示ししています。   「4 他の債権者及び株主の保護」については、二読の審議では、裁判上の実行による事業譲渡について、裁判所の許可を要するものとする一方で、実行時の株主総会決議を要しないものとすることについては、おおむね意見が一致しておりましたので、その旨を本文で明示した上で、実行時の株主総会決議に代替する手続の要否及び内容については、引き続き検討する必要がある旨を注記しています。   「5 換価の効果」のうち、本文(1)については、二読の資料から特に変更はありません。本文(2)については、二読の資料では、企業担保法と同様に、他の法令に禁止又は制限の定めがあるときを除き、許認可等が承継されるとする案をお示ししていましたが、「禁止又は制限の定め」の有無についての個別法の解釈は必ずしも明確ではないことを踏まえ、事業譲渡による許認可等の承継について規定を設けない案をここでは併記しています。本文(3)では、包括承継などの構成によって契約上の地位を相手方の承諾なく移転させることができる制度を設けるか否かについて、二読では様々な御意見がありましたので、引き続き検討するものとしています。   「6 被担保債権以外の債権の扱い」のうち、本文(1)については、二読の資料から特に変更はありませんが、共益債権とする債権の具体的な内容については、引き続き検討する必要がある旨を注記しています。本文(2)では、実行手続開始前の原因に基づいて生じた債権の扱いについて、三つの案をお示ししています。【案25.6.2.1】は、二読の資料でお示ししたとおり、事業担保権の被担保債権に優先する債権か劣後する債権かを問わず、実行手続開始後は弁済等をすることはできないこととし、債権調査及び配当をする手続を設けた上で、民事再生法第85条第5項を参考として、一定の債権については裁判所の許可によって弁済することができるものとする考え方ですが、事業継続のために弁済を許可すべき債権のうちには必ずしも少額とはいえない債権も含まれ得ると考えられるため、同項の「少額の」の要件は外しています。【案25.6.2.2】は、二読の審議での御意見を踏まえ、事業担保権の被担保債権に優先する債権については随時弁済を受けられる一方で、劣後する債権については【案25.6.2.1】と同様の取扱いとする考え方です。【案25.6.2.3】は、二読の審議での御意見を踏まえ、実行手続が開始された段階では、事業担保権の被担保債権に優先する債権か劣後する債権かを問わず随時弁済を受けられるものとしつつ、倒産手続開始原因が認められる場合には、裁判所の決定により、【案25.6.2.1】又は【案25.6.2.2】と同様の取扱いに移行させる考え方です。   「7 事業継続による収益の中間的な配当」については、二読の審議では、事業担保権の実行方法としての収益執行手続は、必要性も実現可能性も乏しいため不要であり、事業譲渡を目的とする実行手続の中で収益を中間的に配当することができるものとすれば足りるとの御意見があったことから、本文ではそのような考え方をお示ししています。   「8 事業担保権の裁判外の実行」については、そもそも何をもって裁判外の実行と呼ぶかという問題はありますが、本文では、事業担保権者が設定者の同意なくその事業を譲渡することができるという意味での裁判外の実行手続は設けないこととした上で、事業担保権の設定者による事業譲渡について裁判上の実行手続と同様の規律を及ぼすか否かについては、引き続き検討する必要がある旨を注記しています。 ○淺野関係官 続きまして、私の方から「第26 事業担保権の倒産法上の取扱い」について御説明いたします。25ページの「1 別除権及び更生担保権としての取扱い」については、本文につき二読の資料から実質的な変更はございません。二読での御議論を踏まえまして、再生手続との関係で別除権として扱わないこととすべきという考え方を(注)に記載しております。   「2 担保権実行手続中止命令の適用の有無」については、本文につき二読の資料から実質的な変更はございません。二読での御議論において、中止命令が発令された場合の実行手続に関する管財人の管理処分権の喪失の有無については両様の考え方があるのではないかという御意見があったことを踏まえまして、(注)を記載しております。   「3 倒産手続開始後に生じ、又は取得した財産に対する事業担保権の効力」につきましても、本文につき二読の資料から実質的な変更はございません。二読での御議論において、担保権者が優先権を行使することができるのは倒産手続開始時の評価額を限度とすべきという御意見がありましたので、(注)に記載しております。   26ページの最後ですが、「4 破産法上の担保権消滅許可制度の適用」については、二読の資料から実質的な変更はございません。   次のページ、「5 民事再生法及び会社更生法上の担保権消滅許可制度の適用」については、二読の資料において、民事再生法及び会社更生法上の担保権消滅許可制度を事業担保権に適用することについて否定的な御見解があるということを踏まえ、問題提起の形としておりましたが、二読の御議論において、民事再生法上の担保権消滅許可制度に関して、事業担保権が実行される場合と、民事再生手続において従前の経営陣が再建を図る場合とでは再建の手法が異なる可能性があり、担保権消滅許可の適用の余地を認めておくことが考えられるという御意見、そして、会社更生法上の担保権消滅許可制度に関して、担保権実行を優先させるということは、更生担保権としての取扱いを否定することになるが、そのような取扱いを否定するべきではないという御意見がございまして、このほかに御意見はなかったことから、適用対象とするという方向で提案しております。   「6 DIPファイナンスに係る債権を優先させる制度」については、二読での御議論において、いわゆるプライミングリーエンとして事業担保権に優先する担保権を設定させる方法ではなく、債権それ自体に何らかの形で優先性を付与し、事業担保権の被担保債権に優先させることが考えられるのではないかという御意見がございましたので、そのような可能性も踏まえ、書きぶりを修正しております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   26ページの第26の1の2行目の「事業担保権者」の被担保債権を有する者、これは「事業担保権の」ですよね。あと、(注)の事業担保権を別除権として扱わないというのは、別除権という言葉の意味からして、日本語として正しいのかというのは若干、検討していただければと思います。   以上は細かな修文の問題でございますので、置きまして、以上の点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○松下委員 松下です。資料の21ページ、第25の2(2)についてです。中間試案の本文としては、この形でもちろん結構だと思うのですが、補足説明に書き加えることを検討していただきたいことがございます。それは、裁判所の許可についての実体的な要件についてなお検討する、というようなことを含めていただけないかということです。21ページの28行目では、個別資産の換価を認めるべき場合を全て列挙することは容易ではないとありますが、例えば、事業の継続のために必要であるとかいう抽象的な要件を置くことは考えられますので、そのようなことも検討が必要なのではないかという指摘をしていただけると、中間試案としてはよいのかなと思います。   なお、裁判所の許可は、次の22ページ、4(1)にもあります。こちらは特に実体的要件を書かなくても分かるといえば分かるような気もするのですが、平仄を合わせるのがいいのかということも含めて御検討いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。確かにどういう評価基準なのかという、全然あれがなければ分かりにくいのかもしれませんので、少し検討していただければと思います。 ○阿部幹事 ありがとうございます。21ページの第25の3の債務の承継についてなのですけれども、もしかすると私は二読のときに欠席してしまったかもしれず、それで、少し的外れなことを申し上げるかもしれませんが、契約上の地位が、先ほどの議論で事業担保権の担保の範囲に含まれると考えたときに、契約上の地位と分離することができない債務というのがあるのではないかと思います。例えば、受寄者の地位から分離して寄託物返還義務を残すとかいうことができるかというと、それはできないような気もいたしまして、そうすると、この25の3で問題になっているのは、契約上の地位から分離し得る債務について、なお管財人がそれを買受人に承継させることができるかという問題であって、この制度によって承継させることができる債務のほかに、契約上の地位から分離することができないことによって当然、買受人が承継する債務というのもあり得るのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。これもある種、基準の問題かもしれませんが、少し先ほどの裁判所の許可の基準とは違って、性質上あるふうにならざるを得ないみたいなものがあるのではないかということだろうと思います。それが本文なのか、説明なのかということもありますが、そこも含めて少し御検討いただければと思います。 ○大澤委員 大澤でございます。何度も申し訳ないですが、先ほどの意見書の一番最後のところについて御覧いただきまして、コメントをさせていただければと思います。   5ページの(2)倒産手続との関係のところでございます。ここは、20ページの第25の実行開始決定の効果のところで、管財人との権限にも関連するかと思いますけれども、この意見書の提言としては、倒産手続とのバランスを、規律をどう捉えるのかというところについて、大きく問題を出していると思います。そこは前から元々問題になっていたとは思いますので、それをどう提案するのかというのは、なかなか難しい問題であるとは思いますけれども、こういった事業担保権の実行に当たって、実行された場合に、倒産手続とのバランスというか、例えば事業担保権が実行されて、その後、対抗的に再生、破産手続でもいいですが、申し立てられた場合に、どのような権限分配になるのかというようなところも含めて、中間試案で議論ができるようなことを少しお書きいただけないかと考えているところがございます。   ただ、一部、恐らく今、意見書で少し書いているようなところ、倒産原因の開始のありなしによってというのは、多分、【案25.6.2.3】辺りのところがそれに関連することではないかと思ってはおりますので、そういったところも含めてですが、倒産手続との取り合いというか、実行手続と倒産手続の関係について、中間試案で意見を述べられるような形でうまくどこかにはめ込んでいただけないかなと考えている次第です。 ○道垣内部会長 この点につきましては、事務局から何かございますか。こういうことが考えられるとか、あるいは難しいとか。 ○笹井幹事 対応は少し考えさせていただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。少し検討していただければと思います。 ○山本委員 2点、コメントですけれども、20ページの第25の1(3)の規律の要否についてですけれども、これは正に説明に書かれてあるようなことだと思うのですけれども、現状、当然、破産管財人とか更生管財人にもこういう公平かつ誠実に手続を遂行する義務というのは負わされているということは恐らく自明であって、一般的には、私もよく分かりませんが、(2)の広い意味での善管注意義務みたいなものの中に包含されているというような説明がされているのではないかという気がして、そういう意味で、規律の要否にかかわらず、実質としてこれを書くということに反対するものではないのですけれども、少し本当にこういうものが要るのかなという疑問は持っています。補足説明で書けば十分という気もしないではないところですけれども、ただ、ここはそれほどこだわるものではありませんので、お任せをします。   もう1点は、25ページの第26の1の(注)のところで、これは先ほど部会長が言及された、別除権として扱わないということの意味なのですけれども、つまり、別除権として扱わないということになると何として扱うのかということがよく分からないということです。普通に考えれば、今、企業担保権が多分そうであるように、一般優先債権として扱うという、普通に何も書かなければ、そうなりそうな気もするのですけれども、多分、御提案の趣旨はそういうことではないのではないかという気もいたします。そういう意味ではここは、仮に(注)として書くのであれば、もう少し中身を書かないと伝わらないのではないか、もちろん補足説明で書かれるという趣旨であろうかとは思いますけれども、(注)として書く以上はもう少し、別除権として扱わずにどういうふうに扱うのかということをある程度、中身を書くのが適当なような気がいたします。   以上、コメントです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。前半に関しては、説明のところにありますように、破産管財人とかとは違って、事業担保権の実行のために現れる人なので、誰に対する義務を負うのかというのがはっきりしないところがあると。事業担保権者の利益を図るというふうに頑張るというふうなところも考えられるところ、一般債権者等の利害関係人に対する関係でも公正中立義務を負うということを明確化しようということで書かれたのだろうと思います。そういう意味も余り、自分で言いながら、そうだとするならば善良な管理者の注意は誰に対する関係なのだということになるので、同じ問題が生じそうなのですが、そういうことかしら、山本さん。 ○山本委員 そういうことだと思います。破産管財人が善管注意義務を負う相手方も、誰に対するのかということは随分議論があるところだと思いますので、ただ、先ほど申し上げましたように、もちろん実質に反対ということではありませんし、この点、確かに従来の経緯からして議論があるところなので、確認的なものとして中間試案として書くというところにまで反対するつもりはありません。最終的な条文にするときには相当に慎重な検討を要するだろうということを念のために申し上げたという趣旨でした。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。第26の1の(注)については、事務局はいかがでございましょうか。 ○淺野関係官 ここは大変難しい問題で、別除権として扱わないこととする場合に具体的にどういう扱いとするのかというのは、もう少し考えなければいけない問題だろうと考えています。その一方で、二読の御議論の中でこういった御趣旨の御意見を頂きまして、根本的な問題として、他の論点にも関わる大きな分岐点であり、少なくとも(注)としては書くべきであろうということで、取りあえず資料のような形で記載していたというところです。御指摘を踏まえて検討させていただきますが、よろしければ、どういう取扱いが考えられるのかというところについて、もし御意見をお持ちの方がいらっしゃれば、御指摘いただければ幸いです。 ○道垣内部会長 山本さん、何かありますか。 ○山本委員 いえ、私はどちらかといえば別除権として扱うべきだと考えていますので、その具体的なあれは特にありません。 ○道垣内部会長 分かりました。どなたかございましたら、後でお願いいたします。 ○日比野委員 ありがとうございます。今正に山本先生と部会長がお話しいただいていた、20ページの第25の1、管財人について、二読でも少しお話ししましたが、善管注意義務というのは誰に対して負っているのかと、担保権者との利益の関係が確認したいところでした。   私は何となくこの書きぶりからして、善良なる管理者の注意というのは総債権者に対して負っているという前提で書かれたのかなと理解をしておりましたので、もしそうなのだとすると、結局のところ管財人は、その置かれた状況の中で事業又は個別の財産の売却の極大化を図るという義務を負うということになる結果として、事業担保権者の価値の極大化にも寄与するというコンセプトで整理されたのかと思いまして、もしそうなのであれば、そのようなコンセプトの下で設計されているということを補足説明などでしっかりと書いていただきたいということが申し上げたいことでした。ただ、先ほどの山本先生と部会長の議論を聞いていて、誰に対する注意義務なのかというところもまだ不明確なところがあるのかなと思ったのですが、私が申し上げたかったことは以上でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。中間試案の段階で、そこを若干ニュアンスのある形にしておくのか、ある種、決め打ちをするのかというのは、なかなか難しいところだと思いますので、少しそれを踏まえて補足説明で、いろいろな意見があり得るというふうなことは書いていただくというふうにしてはどうかと思います。   ほかに何かございませんでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。第25の事業担保権の実行で、二読の際には、事業担保権の実行時における労働組合の説明や協議などが必要だということを申し上げ、同様の指摘は私だけではなく複数あったと記憶しております。ただ、この実行の場面で述べたというよりは、設定の辺りで総論的に述べていたところでありまして、今回その実行のところで記載を頂けなかったのではないかと思っております。今回、資料では4のほかの債権者の保護の部分では、株主については記載がございまして、このようなところでも良いとは思いますが、労働組合などについての協議、説明などについても是非、記載を頂きたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。問題点としては存在すると思いますので、何らかの形での説明をお願いしたいと思います。   ほかにございますでしょうか。   中間試案、方向性だけで、細かいところはほとんどまだ書けていないわけですけれども、そもそもこういう制度に反対であるという意見も根強く存在しているわけであり、それらを踏まえて中間試案にしてパブコメをお願いするということでよろしゅうございますか。   誰か今の段階で御発言はございませんでしょうか。 ○尾﨑幹事 中身というよりは、事業担保の最後のところだと思いますので、少し皆さん方に御報告いたします。   金融庁においては本年9月30日に金融審議会の総会で、事業性に着目した融資を促進するための制度や実務の在り方に関する検討をするとの諮問がなされまして、11月2日にワーキンググループの第1回を開催することとしております。このワーキンググループにおきましては、現在法制審で議論されている事業担保権についての内容も踏まえて、事業成長担保権について御議論いただくことを予定しております。このワーキンググループでは、これまでにされていた法制審での議論内容や問題意識を反映した議論をすることとする予定でありまして、法務省とも十分に連携して開催していくこととしたいと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。金融庁の方でも御検討いただくということでございまして、よろしくお願いいたします。   ほかにございませんでしょうか。   それでは、こういう形でいろいろな方の意見を伺うということにさせていただければと思います。   そこで、次に「第27 動産及び債権以外の財産権を目的とする担保」というところから、「第30 証券口座を目的とする担保」までについて議論を行いたいと思います。部会資料の説明を事務当局においてお願いいたします。 ○淺野関係官 27ページの「第27 動産及び債権以外の財産権を目的とする担保」について御説明いたします。二読の御議論において、不動産を規定の対象外とする場合に、個別の登記登録制度がある財産権を対象とする規定を設けることが適切かという問題がある、また、とりわけ担保物権創設型を採る場合に、他の財産権に関する規律を検討するには異質な作業が必要になる、あるいは、動産や債権について議論してきた規律を逐一一般的な担保に通用するのかを検討するのは困難ではないか、などの御指摘を頂きました。本文では、これらの御指摘を踏まえまして、動産及び債権以外の財産権を目的とする新たな規定に係る担保権について、規定を設けるかどうか、そして動産や債権を目的とする新たな規定に係る担保権と共通する規定としてどのようなものがあるか、また、どのような範囲で独自の規定を設けるかということについて、個々の財産権の性質等も考慮しつつ引き続き検討することとしております。 ○笹井幹事 「第28 ファイナンス・リース」についてですけれども、まず1の冒頭の書き方のところで、二読の資料においては、譲渡担保とは異なる、別の独自の制度というものを念頭に起きながら、そういった規定を設けるかどうか、規定を設けるとして、その要件といいますか、どういったものをファイナンス・リースとして定義付けていくかということを提案していたところでございます。   そこで前提とされていたのは、ファイナンス・リースというのは飽くまで利用権を目的とした担保権であることを踏まえて規定を設けていくということだったのですけれども、そうであるとすれば、譲渡担保や所有権留保と並ぶ独立の担保制度ではなく、権利を目的とする担保の一態様として規定をすることで足りるのではないか、仮に規定を設けるとすると、こういう特徴がある場合には、それを利用権を目的とした担保権と推定するとか擬制するとか、そういった形での規定の仕方が考えられるのではないかという指摘があり、仮に規定を設けるとしても、どのような規定をどのようなスタイルで設けるのかという問題が提起されたところです。   確かにごもっともな点もあるのですけれども、一方で、ファイナンス・リースが利用権の譲渡担保かというと、譲渡されているわけではないので、譲渡担保として性質決定するのは難しいであろうと思います。他方で、それが質権かといいますと、それも当事者の認識ともずれているのではないかと思います。そうすると、やはり譲渡担保や所有権留保のいずれにも該当しない別個の制度として規定を設けるという方向性はなおあるのではないかと思っております。ただ、利用権の担保権として性質決定をしていくという方向性もあり得ますので、この部会資料のゴシック部分に「要件や方式について」と書きましたのは、条文を作るに当たっての規定の方式についてもなお引き続き検討ということにしたというものでございます。   あとは、どういった特徴があるものをファイナンス・リースとして定義付けていくのかということについて、①から③までは二読の資料から変わっておりません。これで足りるのか、あるいは過不足があるのかということについては、また引き続き検討していきたいと思っております。   それから、対抗要件実行方法、倒産法上の扱いといった2以下につきましては、基本的には大きく変わっておりませんけれども、実行方法については担保権の実行としての性質を持つ実行という制度を考える必要はなくて、利用権の設定契約の解除さえ与えておけばいいのではないかという考え方もありましたので、これを注記しております。 ○淺野関係官 続きまして、31ページの「第29 普通預金を目的とする担保」ですが、こちらにつきましては、1から3のいずれも二読の資料から実質的な変更はございません。   最後に、32ページの「第30 証券口座を目的とする担保」につきましては、二読の御議論におきまして、社債、株式等の振替に関する法律の適用対象とされている有価証券の担保化に関して、改正の必要性を示唆する御意見を複数頂きましたが、そのような有価証券の担保化に関する改正に加えて、なお証券口座の担保化について法制化が必要であるという強い御意見は見られなかったこと、そして、証券口座の担保化については議論が熟しているとは必ずしも言えないということに鑑みて、証券口座を目的とする担保については、二読に引き続き特段の規定を設けないということを御提案しております。 ○道垣内部会長 以上でございますが、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御議論、御意見を頂ければと思います。 ○大澤委員 大澤でございます。先ほどの意見書、最後のところでございます。意見書の方の4ページを御覧ください。ファイナンス・リースについて二つコメントをさせていただければというのがこの意見書の趣旨でございます。   一つ目は、ファイナンス・リースの定義について、残価リース等、いわゆるフルペイアウトとは違うタイプのものを含めるかどうかというところではございますが、ただ、ここは二読でフルペイアウトを前提として議論をしていたということもございますので、どこまでがどのファイナンス・リースとして、担保として規律すべきかという根本的な問題に関わるようにも思っております。そういった意味で、こういう意見があるということを委員の皆様にお示しをさせていただければと考えております。   もう一つは、部会資料の30ページの実行のところです。債務不履行解除という実行方法を認めるかというところにつきまして、説明のところで、実行と債務不履行解除の二つの制度の併存を認めるかどうかは引き続き検討すると説明でお書きいただいております。ここに関しての意見ということでございますので、何らかその内容を配慮していただいて中間試案をお作りいただければとも考えております。御検討をお願いできればと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。それを踏まえて更に御検討いただければと思いますが、先にいろいろ御意見を伺いたいと思います。 ○山井関係官 経済産業省の山井でございます。   いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リースについては、特に資金力の乏しい中小やスタートアップ企業等にとって設備投資の重要な手段となっている上、昨今政府において推進しているGX、グリーントランスフォーメーションにおいてもリースが利用されることが見込まれるため、リースの重要性というのは更に増している局面にあると認識しております。そのため、弊省においてもファイナンス・リースをより利用しやすい制度にしていく必要があると考えております。   現行、倒産時のファイナンス・リースの取扱いは、全てが御指摘のあった判例のとおり扱われているわけではなく、共益債権的に扱われる事例もままあると業界からは聞いているところでございます。しかし、ファイナンス・リースを利用権を担保権と設定する契約と一律に規定すると、リース料債権を共益債権的に取り扱われることを前提としてリース料を設定しているリース事業者というのがそれなりに多い中、倒産時のリース料債権の回収可能性が下がり、その分をリース料に転嫁せざるを得なくなり、ひいては中小企業のリースを通した設備投資が縮小してしまうことが懸念されます。資金力が十分でない中小企業も今後GXなどに向けた投資を進めなければならない中、ファイナンス・リースが担保権とされてしまうとGX等の推進を阻害することになることが懸念されております。   民法の議論とは必ずしも適さない政策的な意見であることは重々承知しているところではあるのですけれども、社会に与える影響の大きさに鑑みて、ファイナンス・リースを利用権を担保権として設定する契約として取り扱う旨を設けるか否かについては慎重に検討すべきであると考えております。そこで、中間試案の時点では、そもそもこのような規定を法律上設けるべきか否かについても問う両論併記の記述としていただきたいと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。別に民法の議論であっても、政策上の議論とまったく別個になるわけではございませんので、いろいろ御発言いただけるのは大変有り難いことだと思います。この中に、規定の要否ということが書いてあるわけですが、規定を設ける方向でと書いているところをもう少し、規定も設けないというのもあり得るということを踏まえてということだろうと思います。またその点は御検討いただければと思います。   ほかにございませんでしょうか。   中間試案としては、まあ。今回、二読から大幅に変わっているわけではございませんし、修正点につきましても二読の議論を踏まえているわけでございますが、中間試案としてこのような形にするということについては特に御異論、御意見はございませんでしょうか。   それでは、意地でも5時半までやらなくてはいけないわけではございませんので、ほかに御質問、御意見がないようでしたらば、本日の審議はこの程度にさせていただきますが、最初に笹井さんの方からお話がありましたように、もう一度御検討を踏まえた後に、中間試案の全体像というものを12月にお示しするという形で進めていきたいと思います。本日につきましても、例えば最初のところの対抗要件と優劣関係のところについては再整理というのが必要であることは、その辺は明らかになって、今まで大きな問題が生じたといいますか、再整理をした方がいいような問題につきましては、次回までになるべく提出をするということにさせていただきたいと思いますけれども、ほかにこういうところもこういう観点からの再整理が必要である、した方がいいということがございましたら、なるべく早い段階で、いろいろ御意見をお寄せいただければと思います。この部会の場とは限りませんので、何らかの形で事務当局に、私でも結構でございますが、お伝えいただければと思います。   それでは、そういうことで皆さんにもよろしくお願いすることといたしまして、次回の議事日程等につきまして事務当局から。阪口さん、お願いいたします。 ○阪口幹事 すみません、阪口です。今の点に関して、元々11月8日に一応、中間試案が決まるという前提で物事が動いていて、1か月ずれることで、いろいろな影響が起きてしまうものですから、少し確認させてください。   次回が11月8日にありますので、その1週間ぐらい前までには、一番最初に笹井さんがおっしゃった、幾つかの大きな論点に関して議論したいところを資料で頂けるという理解でよろしいですか。 ○笹井幹事 次回の資料なのですけれども、まず、既にたたき台の(1)、(2)について御議論いただいておりまして、その反映版が準備できている部分については、1週間前をめどにお送りしたいと思っております。   そのほか、たたき台の(1)、(2)について、こういうところについてもう少し議論する必要があるのではないかという問題意識を記載したものを準備しようと思います。 ○道垣内部会長 次回は11月8日、場所は法務省地下1階、大会議室です。お願いいたします。   それでは、法制審議会の担保法制部会、第27回会議を閉会にさせていただきます。   本日は熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします。 -了-