法制審議会 担保法制部会 第28回会議 議事録 第1 日 時  令和4年11月8日(火) 自 午後1時30分                      至 午後5時25分 第2 場 所  法務省地下1階・大会議室 第3 議 題  担保法制の見直しに関する中間試案のたたき台第2案(1)及び担保法制の見直しに関する中間試案のための検討メモ 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第28回会議を開会したいと思います。   本日も御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございます。   本日は金子さん、衣斐さんが御欠席、あと松下さん、山崎さん、青山さんが途中退席と伺っております。   まず、資料の説明をしていだきますので、事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 本日もよろしくお願いいたします。新たにお送りした資料として、部会資料24「担保法制の見直しに関する中間試案のたたき台第2案(1)」、部会資料25「担保法制の見直しに関する中間試案のための検討メモ」がございます。また、尾﨑幹事から御提供いただいた、金融審議会事業性に着目した融資実務を支える制度の在り方等に関するワーキング・グループの資料を委員等提出資料28-1、28-2として配布しております。 ○道垣内部会長 それでは、まず、尾﨑さんから、委員等提供資料につきまして御趣旨を御説明いただければと思います。よろしくお願いします。 ○尾﨑幹事 ありがとうございます。先日の部会でも御報告いたしましたように、11月2日に金融審議会に「事業性に着目した融資実務を支える制度の在り方等に関するワーキング・グループ」を設置し、事業成長担保権の法制化に向けた議論を開始いたしました。本日は担保法制部会の参考資料として、ワーキング・グループ第1回で事務局から提示した「事務局説明資料」及び「本日討議いただきたい事項」を御提出しておりますので、お時間があるときに御覧いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。まず、部会資料24「担保法制の見直しに関する中間試案のたたき台第2案(1)」について議論を行いたいと思います。   そのうちの「第8 新たな規定に係る担保権の実行方法」から「第15 債権を目的とする担保権の実行」まで議論を行いたいと思いますので、事務当局におかれましては部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、「第8 新たな規定に係る担保権の実行方法」から「第15 債権を目的とする担保権の実行」までについて、部会資料22からの変更点を中心に御説明いたします。   第8の2の【案8.2.1】では、第26回会議での御意見を踏まえ、1週間の猶予期間を設けず、担保権者は実行通知が到達した時に目的物の処分権限を取得するものとする考え方を注記しています。   第8の3では、第26回会議での御意見を踏まえ、墨付き括弧で両案を示すのではなく、【案8.3.1】と【案8.3.2】の2案に分けているほか、略称について、従前使用していた「帰属清算の通知等」を使わず、通知を「帰属清算の通知」と呼び、担保権者が評価した目的物の価額が被担保債権額を超える場合のその差額の支払又は提供を「清算金の提供等」と呼ぶこととしています。   また、7ページの(説明)3においては、第三取得者が現れた場合に、帰属清算の通知及び清算金の提供等の相手方を設定者と第三取得者のどちらとすべきか、また、設定者と第三取得者のどちらが清算金請求権を取得するのかという論点を取り上げています。この点は、本文の内容に影響し得る論点ですが、これまで議論がされていなかったことから、ここで取り上げているものですので、論点の内容についても本日御議論いただければと思います。   第8の4では、第26回会議での御意見を踏まえ、【案8.4.2】においても、担保権者は処分時に設定者に対して通知を送付しなければならないものとする考え方を(注2)として追記しています。   第9の3及び4については、第26回会議において、手続的な部分を本文に記載するか否かが統一されていないとの御指摘があったことから、本文には手続の骨格のみを記載する形に変更しています。   第10の3については、関連担保目録制度を導入するか否かが現時点では確定していないことから、関連担保目録制度を導入しないことを前提として、当該設定者に対して担保権を有する旨の動産譲渡登記を備えている全ての者に対して通知をしなければならないものとする考え方を【案10.3.1】とした上で、関連担保目録制度を導入することを前提として、部会資料22の【案10.3.1】と同様の案を【案10.3.2】とする修正を加えています。また、通知の方法については、第26回会議において、郵送に限定しない書きぶりとした方がよいとの御指摘があったことから、従前の考え方に加えて、あらかじめ登記所に届け出た連絡先を通知の宛先とする考え方がある旨を墨付き括弧により表しています。   第12では、通知の方法について同様の修正を加えているほか、【案12.5.2】について、買受人が売却により消滅しない担保権の被担保債権の支払義務を承継するものではないことを明確化するために、書きぶりを修正しています。   第15の2では、【案15.2.1.1】について、【案8.2.1】と同様に、1週間の猶予期間を設けず、担保権者は実行通知が到達した時に目的債権の取立権限を取得するものとする考え方を注記しています。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、これらの点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○阪口幹事 阪口です。どなたも手を挙げないので、少し軽いところから、申し訳ないです。   前回までの部会で出ていたところの反映の内容を確認しておきたいのですけれども、まず1点目が、差額の支払又は提供という言葉は使い分けておられるという話があって、今回7ページに説明がありますが、以前御説明されたのはこの趣旨で説明されたのですか。伺った中身より、もう少し突っ込んだことが書かれているように思うので、同じ趣旨のことが書かれているのか、それとも若干ニュアンスが違うのかを確認したいというのが1点です。   それから、以前に出ていた話で、簡易迅速な目的物の引渡しを実現する方法を使った後、ほったらかしになったらどうなるのかという問題提起があって、そこは手続的な部分として補足説明に書かれるのだと思うのですけれども、一定の期間制限みたいなものを考えるのであれば、重たい問題になり、補足説明に全部委ねてよいのかと思っているので、そこをどんなふうにお考えなのかを確認したいというのが2点です。   以上です。お願いします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。では、事務局からお願いいたします。 ○工藤関係官 まず1点目に御指摘いただいた点は、6ページの(説明)2に関することだと思いますけれども、この説明の部分というのは阪口先生が前回おっしゃられた支払と提供の使い分けの御指摘に対して書いたというよりは、それとは別の、確かこれをおっしゃっていたのは阿部先生だったかと思いますけれども、そちらの御指摘に関して記載したものになります。支払と提供の使い分けについては、前回お話ししたとおりでして、特に考え方を変えているわけではございません。   それから、二つ目の御質問として、ほったらかしになった場合にどうなるかという点ですけれども、ここもおっしゃられたとおり、第9の3の簡易迅速な目的物の引渡しを実現する手続に関連して何かを書くかどうかという問題なのかなと思っておりまして、例えば内容としては、手続がとられた後に一定の期間を経過したときは決定を取り消すというような手続が恐らくあり得るかと思うのですけれども、やはりそれは手続的な事項であるように思っておりまして、ここでは手続の骨格のみを記載するという前提で今回作りましたので、その意味で、特にその点は本文では取り上げていないという形になります。ただ、今御指摘がありましたので、またどうするかは少し考えさせていただければと思います。 ○道垣内部会長 阪口さん、よろしいでしょうか。 ○阪口幹事 今の点に関しては結構です。 ○大西委員 大西です。よろしくお願いします。2点ございまして、8ページの新たに議論すべき論点ということで、第三取得者が現れた場合に設定者に通知するのか、第三取得者なのかという論点なのですが、私は設定者でいいのではないかと思っています。その理由は、この中段にも書かれているとおり、特に同意なく譲渡された場合というのを想定すると、第三取得者が誰か担保権者は分からないので、そういう場合を想定した場合に、やはり設定者にしておくべきだということがあります。そしてもう一つの理由は、実際上も担保権者の同意ある場合は、その際に設定者の地位を第三者に移すような契約を担保権者を含めてすればいいですし、同意がない場合には、恐らく設定者と第三取得者の中で対価設定がどうなるかによって両者間の清算条項等の取決めがあるかと思います。仮に被担保債権を超える余剰部分を第三取得者が払って設定者から対象物を譲り受ける場合には、当然ながら、その設定者に清算金が来たら、それは第三取得者に対して返還するというような合意がなされることが想定されるので、いずれにせよ、設定者に通知する取り決めで支障はないのではないかと思います。   それから、次に、10ページの4の2のところで、処分価格について通知がうんぬんという記載についてです。これは、これまで私が申し上げた意見に関連した話ですが、これについて私も強くこだわるわけではないものの、実際上処分清算がなされた場合に、設定者からすると、客観的価値が何かを後々議論するためにも、担保権者が妥当と思われる評価額だけでなく、処分価格がどうだったかということを普通は聞きたいと思います。今回の処分清算方式のプロセスでは、その処分価格を設定者が知る機会がない手続となっているため、これについては妥当かどうかにつき疑問を持っています。これは前も申し上げたとおり、担保権者が妥当と思われる額よりも高く売れた場合は、今のルールだと、最初の段階では、担保権者が妥当と思われる額の範囲内で清算金を払えばいいということになり、処分価格と妥当と思われる額の差額は担保権者が留保できることになっています。しかしながら、被担保債権の回収を終えたのに、担保権者がその差額分を更に留保するというプロセスは妥当ではないと思います。ただ、少しまだここの記載のような方針については疑問はあるのですが、皆様方がこれで進むのであれば、私としてそれほど強く議論するものではございません。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。事務局から何かございますでしょうか。 ○工藤関係官 今、大西先生がおっしゃられたような点については、10頁の(説明)2の「なお」から始まる段落で少し記載したのですけれども、やはり基本的には処分価格と、担保権者の評価した価額と、客観的な価額の三つともイコールになる事例というのが実際には一番多いのかなという気はしております。動産の価値というのは結局、処分しなければ分からないではないかというところがあるとは思いますので、結局、処分価格イコール客観的な価額になる例というのが一番多いのかなと。そのときに、先ほどおっしゃられた、高く売れた場合にどうするかというところは、まだ十分に詰めて検討しているわけではありませんけれども、処分価格が結局客観的な価額になる可能性が高いのであれば、規律としては担保権者の評価した価額を通知するという形でよいのかなと。逆に安く処分されてしまった場合に、その場合も処分価格だけを通知すればよいという形にしてしまうと、少しそこは、清算金の有無や額を設定者にしっかり認識させるという趣旨からは、ずれてきてしまうのかなとも思っておりますので、その観点で担保権者の評価した価額を通知させることとしているということになります。今御指摘がありました、処分価格を通知させればよいのではないかという考え方についても、補足説明の方では触れたいと考えております。 ○大西委員 ありがとうございます。処分価格が安い場合に、処分価格だけを通知すればいいということになるのではないか、ということお話があったのですが、私は処分価格を通知する場合は、その処分額が妥当となる根拠も付して通知をするということになるとは思っており、単純に価格だけを通知するのではないものと理解しています。また、先ほど申し上げましたとおり、今の手続だと設定者は処分価格の通知を受ける権利というのは全くないのですが、そのことはこれでいいのかなという疑問があります。結果的に処分価格に統一されるだろうという御指摘はおっしゃるとおりなのですが、プロセスとしてこれでいいのかなというところに少し疑問を持っているということでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。処分価格をとにもかくにも設定者に知らせなければならないのではないかという点につきましては、場合によっては可能性の問題として説明のところに書いていただくというふうなことで、何とか処理をお願いできればと思いますが、もちろん、なお本文の方に(注)等で書いた方がいいという意見がほかの方からもありましたら、またそれはそれで考えますが、後で御議論いただければと思います。 ○井上委員 井上です。ありがとうございます。私からは2点、コメントしたいと思います。   9ページの4の(注1)に、受戻しの機会等を確保するためにとされているところは、前回コメントしたように、受戻しのほかにも倒産手続の申立てプラス中止命令等の申請の機会も含めて確保するということだと思いますけれども、そういった目的のために、被担保債権の消滅時期や受け戻すことができなくなる時期を後ろ倒しにする提案が書かれています。1点目は、前回あわせてコメントすべきだったかもしれないのですが、その起算点についてです。その起算点は、ここでは目的物が処分された時となっているのですが、それがよいのかということで、【案8.4.1】の案でいえば(2)の通知を起算点にすることも考えられるのではないか、むしろその方が適切ではないかと思いました。   現在の御提案は、処分された後、通知をすることになっているわけですけれども、処分して、例えば一定期間が2週間だとした場合に、2週間ぐらいたったところで通知をすると、設定者に知られずに処分することは多くはないのかもしれませんけれども、処分されてしまった後、その期間が経過して、通知を受けてからでは対応がとても間に合わないということでは、この(注1)の趣旨が達成できないような気もしますので、その意味では、通知から起算する方がよいのではないか、【案8.4.1】の場合は(2)の通知時点、【案8.4.2】を採る場合は、(注2)で通知をすることを前提として、その後一定期間という形で試案を提示する方がよいのではないかという印象を受けました。これが1点目です。   2点目は、11ページの第9の3のところですけれども、簡易迅速な目的物の引渡しを実現する方法で、これは同ページの4との関係でいうと、実行完了前といいますか、被担保債権が消滅し、受戻しができなくなるまでの間の引渡しの方法が3で、被担保債権が消滅したり、受戻しができなくなったりした後、すなわち実行終了後に引渡しを実現する方法が4だと理解しておりますけれども、その理解が正しいのだとすると、3の墨括弧の前半部分は、墨括弧に入れる必要があるのだろうかと思いました。私の前提の理解が間違っていれば別なのですけれども、先ほどの前提が正しいとすると、ここの墨括弧の前半は、意見が分かれるような問題ではなくて、この「通知あるいは清算金の提供又は第三者に対する目的物の処分までの間」までは墨括弧から出して、債務不履行以外に「目的物の評価又は処分のために必要がある」ことを更に要件とするかどうかが選択肢になる、という試案の方がよいのではないかと思いました。その上で、墨括弧から出すべき現時点の墨括弧内の前半部分については、先ほどの【案8.3.1】の(注1)あるいは【案8.4.1】の(注1)の立場を採る場合は、その一定期間経過時までがこの3に基づく引渡し方法の問題であり、その時点以降が4に基づく引渡し方法の問題であるという(注)が、3と4それぞれに付くという形でまとめてはどうかというのが二つ目のコメントです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。若干修正の提案が含まれておりましたので、事務局の方で何かございましたら、お願いします。 ○工藤関係官 今御指摘いただいた点につきまして、補足説明で記載する形にするか、それとも本文を何かしら修正する形にするかは、少し検討させていただければと思います。 ○道垣内部会長 例えば、9ページの(注1)に関して、通知時ではなくて処分時にするということの理由は何なのだろうか。井上さんは、それが通知時ではないかとおっしゃったわけだけれども、現在のところにおいて処分時となっている、そういうふうなことになった理由は何かあるのでしょうか、特にないのでしょうか。 ○笹井幹事 本案は、処分清算型の場合は処分のときに第三者が現れ、そこで受戻権がなくなるという考え方で作っていますので、それを前提に、処分時という本案を時的に後にずらすという修正をするものとしてお示ししたということです。ただ、確かに一定の機会を与えるということであるとすれば、処分の事実をそもそも知らなければ、何らかの対応もとりようがありませんので、御指摘を受けて考えますと、通知時がよいのかなという感じもいたしました。少し考えてみたいと思います。 ○道垣内部会長 ただ、判例法理で、不動産に関するものだけれども、処分の段階で受戻権がなくなるというのがあって、そこを出発点にして少し受戻権が認められる範囲を拡大するということになっているので、処分時というのが出てきているということで、両方とも十分な理由がある見解だろうと思いますので、説明なり(注)のところにもう少し書くなりして、処理をしたいと思います。よろしくお願いいたします。   7ページの第三取得者が現れた場合の通知の相手方とか、あるいは清算金の請求権者ですとか、そういう話につきまして、大西さんの方から、出現が分からないときもあるのだし、権限を持って移転するのだったらば、それはそれなりの処理、設定者たる地位を移転するといった合意をきちんとすればいいのだから、基本は設定者なのではないかと、第三取得者が出てきても、という御発言を頂いたのですが、この点は今回、新しく出たところでございますので、少し議論をさせていただければと思うのですが、何かほかに御意見はございませんでしょうか。その点につきまして、賛成でもいいし、反対でもいいのですけれども。   ごめんなさい、その論点に絞るというつもりはありません。その点もお願いねということでございますので、ほかの点がございましたら、今の問題となっている範囲で、適宜御発言をよろしくお願いいたします。   特によろしゅうございますか。第三取得者のところにつきましては。 ○阿部幹事 第三取得者絡みではないところでもいいですよね。すみません。   資料の6ページのところで、差額の支払又はその提供などが目的物引渡請求の請求原因となる、そうすべきかという議論で、私が確か以前、問題提起したところだと思うのですけれども、資料の中では、こういうことがあって実行手続が終了するので、その考え方に基づいて、確定的に取得した目的物の所有権に基づく引渡請求権が発生するという立場だと書かれていますが、帰属清算の途中で行使する担保権者の目的物引渡請求権は、確定的に取得した所有権に基づく物権的請求権ではなくて、譲渡担保権の実行としての目的物引渡請求権みたいなものを観念する考え方があり得るのではないかと思いました。例えば、不動産譲渡担保ですけれども、最高裁平成18年2月7日判決は、譲渡担保権の実行としての引渡請求と真正な所有権に基づく引渡請求とが訴訟物を異にするという前提で、真正な所有権に基づく請求を担保目的を理由に棄却していたりとか、そういうものもあったりするので、確定的に所有権を取得して、その所有権に基づく引渡請求権を行使するというふうな形が必ず貫徹されているかというと、そうでもないのかなと思ったのが私の第26回での発言の趣旨でした。 ○道垣内部会長 ここの文章そのものは、意思表示によって確定的に所有権が譲渡担保権者に移ると必ずしも書いているわけではないのではないかと私は思っているのです。というのは、例えば、15行目からですが、担保権者が目的物を自己の所有に帰属させる意思表示をするとともに清算金の支払をすると、そうすると確定的に取得をするというわけなので、引渡請求権の前提として、清算金の支払又は提供が行われているということになったら、それはその時点で実行は終了して、取得した確定的な所有権に基づく引渡請求権になる。そういうことで多分、書いてあるのだろうと思います。ただ、それが飽くまで担保権の実行手続であるという性質を有していると考えているというのも一つの考え方としてあり得ると思いますので、なお少し文章について、阿部さんの御発言も踏まえながら修文をするというふうにしたいと思います。ありがとうございました。   ほかにございませんでしょうか。 ○伊見委員 伊見でございます。資料の12ページから13ページに掛けて、第10の3です。私的実行に当たっての他の担保権者への通知というところで、あらかじめ登記所に届け出た連絡先というのを追加して、中間試案として提示をしたいという御説明がありました。先ほどの御説明と、それから資料の中の御説明においても、連絡先ということで、住所や事務所といった郵送を前提としない広い書きぶりにするという趣旨については理解をしております。ただ、【案10.3.1】、【案10.3.2】、いずれも墨付き括弧の中で、事務所又は住所と連絡先を両方今、二つ並べて書いておりますけれども、これはどちらかがいいかということを中間試案でお尋ねするという趣旨なのかどうかというところの確認でありました。というのは、住所や事務所に追加的に希望する連絡先を届け出るという方法というのも考えられると思いましたので、そのようなことも含んでの御提案かどうかというところの確認でありました。   それと、この連絡先の扱いなのですけれども、これは事後的に変更等をされるということを想定しておられるかどうかということです。これは、更に言いますと、譲受人の商号とか本店が事後的に変更した場合に、現状では譲渡登記に変更というのが許容されておりませんので、そういったことも今後許容していくということを想定しての御提案かどうかというところも気になりましたので、現時点でもし想定があれば、御説明いただきたいと思いました。   また、この連絡先ですね、どのような通知の方法を設けるかについては引き続き検討というところでありますが、念頭に置かれているものとして、例えばメールアドレスといったものがあろうかと思いますけれども、これは公示されるものであるかどうかというところも大変気に掛かりますので、現時点で何かお考えがあれば教えていただければと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。何かございましたら、お願いいたします。 ○笹井幹事 新しく出てきた考え方ですので、余り確定的な想定を今持っているわけではありません。登記のシステムの負荷とか、そういったことも考慮が必要だと思いますので、そういったところを踏まえながら、登記システムについて考えていく中で、更に詰めていきたいと思っています。   確かに1点目で御指摘いただきましたように、これが選択的なものなのかという点につきましては、今の書き方は、住所又は事務所にするのか、あるいは届け出た連絡先にするのか、二者択一的な書き方になっておりまして、ただ、それは必ずしも択一的なものではなくて、もしそういう届出先があれば、そういったものを付加するということもあり得るかもしれませんので、表現は少し検討してみたいと思います。 ○道垣内部会長 付加すると、担保権者は2か所に通知をやらなければいけなくなるのですか。 ○笹井幹事 原則を住所又は事務所にしておくのだけれども、もし届け出た連絡先がある場合にはそちらにやってください、という方法もあるのではないかという御指摘かと思いました。 ○道垣内部会長 それはもちろんそれで構わないのでしょうけれども、あらかじめ連絡先をこれにしてくれと届け出ておいて、登記簿上の住所にも来ていないと駄目だよというのは勝手な感じがしますね。   そこは少し考えなくてはいけない。あとは、変更等をどういうふうな手続でやるのかとか、あるいは可能なのかという話につきましては、正に笹井さんが今おっしゃったように、登記制度というのをどういうふうに仕組むのかという問題に関わってきておりますので、伊見さんの御知見、御助力も頂きながら検討をしていきたいと思います。ありがとうございます。   ほかにございませんでしょうか。   それでは、第三取得者のところは、大西さんからお話を頂きましたことも踏まえながら、説明のところに中心的には書くというふうな形で処理をしていきたいと思います。もちろん次回、そんなことを言っていたのに本文のところに出てきたというふうなことが起こるかもしれませんけれども、皆さんの確定的な見解が二つに分かれたとか、そういうふうなことがまだございませんので、多分そういうことになるのではないかと思います。なお、中間試案の後にもきちんと議論をしていかなければならないと思いますので、よろしくお願いいたします。   それでは、もしよろしければ、次の「第16 別除権としての取扱い」から「第22 担保権消滅許可制度の適用」までについて議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 それでは、「第16 別除権としての取扱い」から「第22 担保権消滅許可制度の適用」について御説明いたします。   まず、19ページの「第16 別除権としての取扱い」については、部会資料22から変更はございません。   「第17 担保権実行手続中止命令に関する規律」の「1 担保権実行手続中止命令の適用の有無」については、第26回会議での御意見を踏まえ、(3)を追記しております。「2 担保権実行手続禁止命令」から「5 審尋の要否」までについては、部会資料22から変更はございません。「6 担保権実行手続中止命令等が発令された場合の弁済の効力」については、第26回会議での御意見を踏まえ、(注)を追記しております。「7 担保権実行手続取消命令」につきましては、部会資料22から実質的な変更はございません。   22ページの「第18 倒産手続開始申立特約の効力」から、24ページの「第22 担保権消滅許可制度の適用までについては部会資料22からいずれも変更はございません。 ○道垣内部会長 それでは、これらの点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いします。   よろしゅうございますか。前回から幾つか御意見を頂いたところは、少なくとも説明の中には書き込むようにしてあるはずなのですが、なお不十分であるというふうなことがございましたら御指摘いただければと思います。   もちろん、どんどん先に進みまして、あそこであれを言うべきだったということがあるかもしれませんので、適宜遡っていただいても構いはしませんので、議論の対象を少し先に進めて拡大をしたいと思います。   「第23 事業担保権の導入に関する総論的な検討課題」というところから、「第26 事業担保権の倒産法上の取扱い」までについて、そこも含めて議論をしたいと思います。まずは事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○寺畑関係官 「第23 事業担保権の導入に関する総論的な検討課題」については、部会資料23から変更はありません。   「第24 事業担保権の効力」の「1 事業担保権の設定」については、第27回会議での御意見を踏まえ、書きぶりを修正しております。「2 事業担保権の対抗要件及び他の担保権との優劣関係」の本文(1)、(3)、(4)については、部会資料23から変更はありません。本文(2)については、第27回会議での御意見を踏まえて書きぶりを修正しております。「3 事業担保権の優先弁済権の範囲」から「5 一般債権者が差し押さえた場合の担保権者の保護」までは、部会資料23から変更はありません。   「第25 事業担保権の実行」については、8について表現ぶりを修正した以外には部会資料23から変更はありません。 ○淺野関係官 続きまして、「第26 事業担保権の倒産法上の取扱い」について御説明いたします。30ページの「1 別除権及び更生担保権としての取扱い」については、本文の誤記を修正するとともに、第27回会議で頂いた御意見を踏まえまして、(注)の書きぶりを修正しております。「2 担保権実行手続中止命令の適用の有無」から「6 DIPファイナンスに係る債権を優先させる制度」については、部会資料23から変更はございません。 ○道垣内部会長 それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。たたき台からそれほど大きな修正点はないですし、引き続き検討となっているところが多いものですから、発言しにくいところかもしれませんけれども、こういうふうにした方がいいということで御発言いただければと思います。 ○大西委員 30ページの第25の8のところです。事業担保権の裁判外の実行ですが、前回の委員会のときに途中で退出しまして、ここのところで意見を述べられなかったものですので、本日申し上げます。基本的に私的実行は、会社の経営者が協力する関係にないとなかなかうまくいかないというのは、そのとおりだと思います。ただ、一方で、これは前も申し上げたのですが、例えば経営者が2代目、3代目となっているような中小企業の場合には、株が結構相続により親族内に分散されているケースもあり、事業承継等で経営者と株主が完全に分かれているケースもあるため、そのような場合に円滑に事業担保権の実行をしたいと思っても、通常の手続である株主総会特別決議がなかなか取れないようなケースもあります。   それから、換価の効果のところでも案として記載されているのですが、事業担保権の実行手続きにおける行政上の許認可の承継上のメリットを使いたいケースもあります。  このような状況に対応すべく、8の(注)に書かれているように、株主総会の特別決議や許認可の承継におけるメリットを、この事業譲渡担保権の設定されている場合における事業譲渡によって得られるのであれば、この方法でも良いですし、場合によっては事業設定者の同意を得た前提で、私的実行という手続きを設けることがなされれば、実務上は大変助かると思いますので、そのような検討をしていただきたいと考えます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。その点も含めまして、他の方の御意見も伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。   まずは、先ほどの大西さんの御発言についてですが、それを少し書くとしたらどういう感じになるのかな。 ○笹井幹事 設定者が同意していない場合に、裁判外で譲渡するというのはなかなか難しいのではないかと思われますが、事業担保権の設定者がある程度担保権者に協力的であるときには、任意売却のような形でその実行をすることが考えられて、そういった場合には今、大西委員がおっしゃったようなメリットがあるのではないかという考えに基づいて、この(注)で実行手続の規律と同様の規律を及ぼすか否かについて引き続きの検討課題としているという認識でした。そういう意味では、この(注)が今、大西委員がおっしゃったことを受け止めているというのが私どもの認識でした。 ○大西委員 ありがとうございます。前記4の(2)のみならず、前記5の(2)の、ここの効果も入れていただけると有り難いと思います。 ○笹井幹事 その修正については、そういう方向で検討します。 ○道垣内部会長 それは、裁判上の手続ではない私的な移転で、しかし許認可は承継するとか、決められるのですか。単なる合意による移転ですよね。その合意による移転で許認可のものが移るなんていうことを、認可権者の関与もなく、というのは変ですけれども、書けるのかというと。 ○笹井幹事 そうですね、確かに。ただ、それは4の(2)も本当は同じ問題があるのかもしれなくて、ですので、正しく8の(注)の、引き続き検討の中身なのかもしれませんけれども、とにかく何でも、設定者が事業譲渡した場合には常にこれが適用されると考えるのか、あるいはその中で一定の要件を設けるという方向も、検討課題としてはあり得るのかなと思います。 ○道垣内部会長 承継するというのは契約の解釈問題というか、当該契約によって何が移転するというふうに当該契約を解釈するのかという問題なので、それのデフォルトルールを入れるということは可能である。そのときに、承継に関し他の法令に禁止又は制限の定めがあるというときには行かないのだから、別段それは問題なくて、契約の定めの問題であるということですね。ならば書いてもいいのでしょうね、私の前言は撤回すべきなのだと思います。では、(注)にそういう形で書いていくということにしたいと思いますが、ほかに事業担保権、あるいはその前の部分について、ございませんでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。第24の1の事業担保権の設定について、この点につきましては、株主や労働者など、「事業担保権の設定による影響を受け得る者の利害にも配慮しつつ」とゴシックに記載いただきまして、ありがとうございました。   次に、第25の4の、他の債権者及び株主の保護の部分でございます。この点は部会資料23から変更はないということですが、事業譲渡は個々の労働者の労働契約に大きな影響を及ぼすものでありまして、従前から申し上げていますが、事業の重要なステークホルダーであるということを踏まえれば、その労働者の保護のための手続として、労働組合への説明や協議に係る記載については、補足説明においては是非記載を頂きたいと思います。   それから、本日のメインの議論のテーマではないかもしれませんが、2点御質問させていただければと思います。先ほど尾﨑幹事からの提出資料について御紹介がございました。私も金融審議会のワーキングでの議論に参加させていただくことになりまして、先週、第1回の会議にも出席をしたところでございます。そこで2点、伺いたいのですが、本日この資料をこのタイミングで提出された目的はどこにあるのかということでございまして、中間試案との何か関係性があるということなのか、あるいは議論をスタートしたということの御紹介という意図なのかについて、お伺いしたいと思います。   もう1点目ですが、担保法制部会の事業担保権と金融審ワーキングで議論している事業成長担保権は、その対象や規律の仕方などが異なっている部分もあろうかと思いますが、この点は今後どのようにされていくのか、何かお考えがあれば教えていただければと思います。 ○道垣内部会長 まず第1点目の、労働組合に対する説明というのは補足説明のところにはきちんと書いた方がいいのではないかというお話なのですが、それは恐らく事業譲渡全般とのバランスを考えながら書くということになると思いますので、事務局でその点は検討していただくということにしたいと思います。   後半の2点は、またそれも2点が二つに分かれて、まず、尾﨑さんの趣旨を聞きたいというのが前半でございまして、これはこちらの事務局が答えるべき事柄ではないと思いますので、尾﨑さんの方から。今お配りになった趣旨は何ぞやということでございますので、よろしくお願いします。 ○尾﨑幹事 村上さんがおっしゃっていただいたことの後者の方で、情報提供ということでございます。法制審における中間整理に向かっての取りまとめは、これまで法制審の中で議論された内容を反映した形でなされるものだと考えております。そのため、この段階で金融審のワーキング・グループの資料を提出したことで、何かそれに影響があるというものではないと考えております。金融審の方でもこういった議論が行われておりますので、御参考までに提出したという次第でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。後者の、金融審で行われている事業成長担保権の議論と、法制審のこの中間試案における事業担保権との関係というのは、最終的にどういうふうな整理をするというおつもりかということにつきましては、何か事務局の方から現時点でのお考えがあれば、お願いいたします。 ○笹井幹事 事業用財産の全体を目的とする担保権については、法制審と金融審とが並行して検討しているという状況になっております。そこでは、金融庁さんには金融庁さんのより政策的な目的があるでしょうし、私どもは基本法を所管する立場からということで、大体同じようなことを議論しつつ、その対象とか、あるいは切り口が違っているように見えているかもしれません。ただ、最終的には、整合的な法制度になるように整理していくことが必要になりますので、だからこそ今日、尾﨑幹事の方から金融審と法制審との調整をしっかり図っていきましょうという趣旨で、議論の御紹介ですとか資料の御提供があったものと理解をしております。私どもも金融審の議論状況を見ながら、法律的に矛盾がないように、一般法と特別法の関係になるのか、その辺はまだ分かりませんけれども、しっかり調整を図っていきたいと思っております。 ○道垣内部会長 もちろん法制審議会において、金融庁が行っているものよりも、より一般的な事業担保権というものを作るべきだというのが皆さんの御判断だということならば、そういうふうに最終的な要綱はなるわけですし、あるいは、一般法として作ったって、本来は金融機関のこういうふうな場合に使われるものとして観念するのであり、そうならば金融庁の所管の法律に任せておくべきであり、一般法としては不要なのではないかというのが皆さんのお考えであるということになりましたら、それは要綱からはこの部分はごっそり落とすということになろうかと思います。今のところは、こういうふうに事業担保権についての検討というのを我々も開始しておりますので、中間試案としては出していて、そのような簡単も含めて、パブリック・コメント等が頂ければ、今後の議論にも参考になるのではないかと思いますので、場合によっては説明のところでそういうふうなことも書くということも考えていきたいと思います。どうもありがとうございました。   ほかに何かございませんでしょうか。 ○加藤幹事 ありがとうございます。第25の8の事業担保権の裁判外の実行の(注)の意味について1点確認したいのですが、前記4(2)などの裁判上の実行手続の規律と同様の規律を及ぼすか否かというのは、これは株主総会の決議は不要であることを前提とした上で、何らかのそれに代わる規律を及ぼすという趣旨なのかという点です。もしそういう趣旨であれば、それは補足説明などで明記した方が望ましいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。何か趣旨について、ありますか。 ○笹井幹事 先ほど申し上げたとおり、裁判上の実行において株主総会の決議は要らないということは、4(2)の方にもなお(注)が付いておりまして、承認に代替する何か手続がそもそも要るのか、あるいは内容についてどうするのかというのが引き続きの検討になっておりますけれども、そういう裁判上の手続における議論をそのまま8、裁判外の、これを実行と呼ぶのかどうか分かりませんけれども、そういった任意売却のようなものにも適用してはどうかということを検討するということです。   ただ、それが全く同じでよいのか、それとも、全ての事業譲渡ではなくて一定の条件付けを図っていくのかなどについては、一定の方向性を確たるものを持っているわけではありませんので、正しく引き続き検討する中で考えていくということではないかと思います。そういう意味では、一応の可能性としては、4(2)において、そもそも株主総会の決議に代わる手続は特段、代替の手続は要らないということになり、8においても全く同じように、株主総会の代替の手段も要らないという可能性も、ここでは全く否定しているわけではないのですが、その当否についてはまた引き続きの検討課題になっているという認識です。 ○加藤幹事 ありがとうございました。事業担保権の裁判外の実行について、私も全ての審議に参加できてはいないのですが、どのような趣旨で株主総会の決議も不要だという意見があったのかどうか、私も記憶が曖昧で、むしろこの文脈では、確か部会長が裁判外の実行手続においても、例えば事業担保権に優先する債権者の保護であるとか、そういった債権者を保護するような手続を用意する必要があるのではないかという趣旨で、事業担保権の裁判外の実行についての何らかの特別な手続が必要ではないかと、そういう趣旨の発言が部会長からあったことは記憶しております。一方、事業担保権の裁判外の実行についてまで株主総会の決議を不要とすることは、裁判外の実行の前提となる設定者の同意は経営者の同意で足りるのか、株主の同意まで必要ではないかという会社内部の権限分配に関する問題であり、会社法の観点からも検討が必要な事項であるように思います。この点は補足説明などで丁寧に説明する必要があると思います。あと、事業担保権の裁判外の実行の前提となる設定者の同意に株主総会決議を不要とすることにより、事業担保権の設定の意味合いが相当変わってくる気もしますので、慎重な説明が必要であると思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。最後の点は極めて重要で、事業担保権を設定する意味という問題に関わってきますので、丁寧な説明が必要かと思います。   ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○井上委員 井上です。意見ということでもないのですけれども、26ページの第23の3で、事業担保権の対象となる財産の範囲として、のれん、契約上の地位、事実上の利益などを含む全ての財産という書き方になっていて、ここでいう全ての財産というのは、事実上の利益などを含むということなので、物権の目的物として帰属が法律上問題になるような意味合いではなく、ここでは、個別の財産の清算価値の積み上げとは異なる超過収益力などもまとめて事業として把握し、そのときに生ずる余剰価値も含めて担保権が把握することを述べたものだと考えますので、その点では全くそのとおりで、異論はありません。ただ、それを担保権の目的物という意味合いで表現するとすれば、結局同じことをいうことになるのかもしれませんが、集合動産などと同じような書き方として、「将来の加入物を含む全ての財産」が対象になると、つまり、事業が継続して行われていく間に将来入ってくるものも含めてつかまえるという意味で、将来加入物を含む設定者の総財産という書きぶりもあり得るのかなと思いました。   もちろん、それとともに、設定者の処分権限という、27ページの4に書いてあるような形で、事業活動を通じて次々と処分したり売却したりしていくことによって、どんどん担保権の対象から外れていくこととセットで、担保権の対象物として把握しているわけなので、その意味するところは結局のところ、経済的には、財産の入りと出がずっと継続して行われていく事業そのものを把握しながら、その余剰キャッシュフローを将来にわたってつかまえていくという結論になります。これは別にここを書き換えてほしいという意味ではなくて、そういう趣旨であることが何らかの形で説明の中に出てくるとよいと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。企業担保法とか他の法律の書き方とのバランスというのもあるのかもしれませんけれども、そういうものも含めまして、少なくとも説明では、ただ単に及ぶというのではなくて、もう少し分かりやすく、今、井上さんがおっしゃった継続的な企業価値というか、そういうフローをしているものを把握しているということを明確に書くというふうにしたいと思います。 ○尾﨑幹事 加藤先生がおっしゃっていた話で、裁判外の実行について株主総会の決議を不要とすべきかや何らかの代替的な手続を設けるかについて、(注)とかで、あるいは説明のところで御議論いただきたいということについては、そのとおりだと思うんですけれども、経緯としては、任意売却と裁判外の実行というのはほとんど変わらないではないかというような話があって、それに対して裁判外の実行であっても担保権の実行なので、株主総会の決議というのが必要ないのではないかという話を申し上げたと思います。その過程で恐らく任意売却の場合も、こういう株主総会を不要とするような措置があり得るのではないかといったような議論があって、前回の資料にも株主総会を不要とするとの意見がある旨が説明されておりました。それを踏襲して、こういうような記載になっているのではないかと思いました。加藤先生のおっしゃっていることに異を唱えるわけではなくて、経緯としてはそういうことだったかなと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。ありがとうございます。26ページの第24の2の、事業担保権の対抗要件と他の担保権との優劣関係という点に関してでございます。   何度か申し上げている点ではございますが、事業担保権と他の約定担保との優劣関係が対抗要件の先後で決まるということに異論はないわけですけれども、事業担保権の場合は、そうしますと、集合動産譲渡担保とか集合債権譲渡担保との競合が常にシビアな問題になってくるということになろうかと思います。しかし、登記先が商業登記簿と動産登記、債権登記ということで常に三つが異なるということになりますと、融資における担保権設定に際しては必ず三つの登記簿を見なければいけないということになるのかと思います。それはそれで大した手間ではないということであれば、問題ないのかもしれませんが、やはり同じような流動資産担保について一覧性のある公示制度、登記制度が目指されるべきではないかと私自身は思っているところではございます。そういう意見もあったということをどこかに書いていただければ有り難いとは思った次第でございます。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。どこかに書いてもらうということにしたいと思いますが、どこになるか、説明になるのでしょうかね。   ほかに何かございますでしょうか。事業担保権のところはまだ十分に決めた形で書けておりませんので、まだ開かれておりますが、中間試案といたしましてはこの程度にして、更に先に検討するということにさせていただければと思います。   そこで、次に入りたいと思うのですけれども、「第27 動産及び債権以外の財産権を目的とする担保」というところから、「第30 証券口座を目的とする担保」までについて議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 31ページの「第27 動産及び債権以外の財産権を目的とする担保」、そして、一つ飛びますが、33ページの「第29 普通預金を目的とする担保」及び34ページの「第30 証券口座を目的とする担保」については部会資料23から変更はございません。   32ページの「第28 ファイナンス・リース」については、前回の御審議で規定を設けることに慎重な御意見も頂きましたので、規定を設けることの要否についても引き続き検討する旨を記載しております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、これらの点につきまして、30まででございますけれども、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○阪口幹事 阪口です。前回申し上げるべきことを今頃申し上げて、申し訳ないのですけれども、32ページのファイナンス・リースの3、実行方法のところの、特に(注)に関係する部分について確認したいと思います。ここの実行と解除の関係に関しては、現在の部会資料24は23と同じ記載です。その前が部会資料19に記載がありますが、19の書き方は少しニュアンスが違うものでした。部会資料19を審議したのは第24回で、この問題について発言したのは、私だと思います。ほかの先生方からもお話があったかもしれませんが、私の発言については言ったことの逆になっているところもあって、それで確認をしたいのです。   まず、本文は実行と解除というのは二本立てだということを含意しているのかということと、それから、現在の部会資料に出ている(注)というのは、解除のみを認めるというのは実行がなく、二本立てではなくて一本立てで、かつ、解除のみとなると、それは担保権中止命令の適用対象外という意味を含意しているのかという、この2点について確認をしたいのですけれども、いかがですか。 ○笹井幹事 前半はおっしゃったとおりで、元々部会資料19では、実行と解除を二本立てにしようというふうに書いていたところ、阪口幹事から、やはりファイナンス・リースはほかの担保権と違って、解除だけ認めるという考え方があり得るのではないかという御指摘があったと記憶をしております。それを受けて、実行方法の本文といいますか、本案といいますか、そちらの方では実行と解除の二本立てだという前提で、しかし(注)の中で解除だけを認めるという考え方があるということを注記したという経緯になっています。   したがって、(注)の場合には、実行方法というものは設けずに解除に委ねるということになるのですけれども、これが中止命令の対象になるのかどうかというのは、ここだけの問題ではなくて、所有権留保などにおける担保権中止命令の範囲をどこまで考えるのかという問題の一場面なのかなと思いまして、その結論をどうするのかについては、今のところ部会資料においては、解除は対象にならないという方向で書いているということになっていたかと思います。 ○阪口幹事 阪口ですけれども、第24回で私が述べたことは、私の発言の仕方が悪かったのだと思いますけれども、一本立てにしますということはそのとおりですけれども、解除イコール実行である、したがって中止命令の対象になるという趣旨で発言したのです。だから、仮にこの注が私の発言を受けた部分であるとすると、逆の意味ではないかと今頃気が付いて、本当は前回申し上げるべきことだったのですけれども、まずいのではないかということで今回、発言しました。   部会資料19に書かれていた、まず、ゴシック体では二本立てではないかとしつつ、ただ、説明の中で、解除イコール実行という意見もありますという、その意見の方を僕は推したつもりで発言したので、実行が消えて解除のみということは全く考えていない。仮にそういうことをすれば、中止命令の問題もそうですし、例えば管財実務などに直ちに影響し得ることでいうと、引き揚げが取戻権行使になってしまい、リース物件を引き揚げる途中の遅延損害金につき、財団債権として払わなければいけないのかという問題が生じてしまって、管財実務としては考えられない結果になりかねない。それは飽くまで取戻権ではなく別除権行使としての引揚げだという位置付けでないと、狂ってくるのだと思うのです。   だから、私の24回の発言の仕方が悪くて、申し訳なかったのですけれども、趣旨としてはむしろ逆で、利用権設定の解除というのはもちろんしてもいいのだけれども、それはイコール実行だ、こういう位置付けとして一本立てにしてほしいというのが私の発言でした。そんな見解はけしからんということであれば、もちろんそれは仕方がないのですけれども、趣旨としてはそういうものでした。 ○道垣内部会長 少しお待ちください。私は笹井さんの説明が本当にそうなのだろうかというのが分からなくて、というのは、3の1が二本立てだと二人でおっしゃっている意味がよく分からないのですが、3の1というのは正に一本立てなのではないのですか。つまり、実行をすると、その時には利用権を消滅させる旨の意思表示をして実行するのだと書いてあるだけであって、これがファイナンス・リースの実行であると書いてある。それに対して、ファイナンス・リースというものの実行というものを観念しないで、これはただ単に利用権の設定契約なのだから、それを解除するということはできるはずであって、そういう方法もあるよねというのが(注)に書いてある、そういう方法ですべきであって、特に担保に類するものとして実行を観念しない方がいいのではないのという案として(注)が存在していると私は理解していたのです。したがって、阪口さんのおっしゃった話が(1)そのものであると私は思っていたのですが、それは違うのですか。 ○笹井幹事 (1)は、ファイナンス・リースについても担保権の実行というものを観念しましょうと、しかし、ファイナンス・リース自体も双務契約は双務契約なので、その解除は、債務不履行が生じた場合に解除をするということを観念することはできますよねと、それは一般的な契約に関する法理として、解除に関する541条などの適用はあります、それもできませんということではありませんという意味で、二本立てだと申し上げましたけれども、正しく担保権としての実行方法としては(1)だけが存在しているということです。 ○道垣内部会長 それでは、阪口さんと事務局の前提の違いというのは、解除自体は双務契約なのだから避けられないよねという前提を採ってしまうと、別にこれは実行ではありません、解除ですと言って、債務不履行があったので解除しますと言って処理をしてしまうと、現在の管財実務とおっしゃいましたが、それとか、あるいは様々な判例法理とか、そういうものと根本的に違った結果になってしまっておかしいのではないか、解除と題名を付けたって、それは実行なのではないですかというのが阪口さんのおっしゃったことで、それは私はそうなのではないかと思っていたのだけれども。 ○笹井幹事 私は、そうすると、阪口先生の御発言を誤解していたのだと思うのですけれども、実行方法というものを観念せずに、解除という制度だけを用意しておくということをおっしゃったのかなと思っておりました。それはそうではないということのようだったのですが、解除は実行だということの趣旨が今一つよく分からないのですけれども、それは実行というものを観念しておき、仮に「解除します」という表示行為がされたとしても、それは実行であると、その意思表示を解釈というか性質決定すべきだと、そういう御趣旨だったでしょうか。 ○阪口幹事 阪口です。正に今、笹井さんがおっしゃったとおりです。まず前提として、所有権留保に関して、今まで解除と実行が渾然一体となっていたという実務があり、今回、でも、それって二つの手続によって法律上の効果が変わりますよねということを考えると、法律効果が違うものが一本ということはあり得ないので、それは二本立てですねというのがまず、前提の議論にあります。次に、ファイナンス・リースは所有権留保と近いから、同じような考え方で、ここでも二本立ての議論が出てくるのだけれども、ただ、ファイナンス・リースはそうではないのではないですかということです。判例法理もそうですし、改めて考えても一本立てにすべきものだと思います。ですから、ここに関しては解除という名前を付け、意思表示にそう書いたとしても、それは担保権実行という法的性格を帯びたものであるということです。例えば部会資料19には確か、みなすという規定を設けてはどうか、みたいな意見も出たと書いてあったと思います。みなす規定が必要かどうかは分かりませんけれども、そういうものとして性格決定するということをお願いしたのが第24回の私の発言だったのです。すみません。 ○道垣内部会長 そうしたときに、今の阪口さんのお考えに従って(注)を外すことができるかというのは、なお、解除は認めると、二本立てで認めるという説もあるのだとするならば、解除のみを認めるというのかどうかはともかく、解除も認めるという意見は多分あるのだろうと思いますので、やはりそれは書かざるを得ないと思うのですが、私は阪口さんの御発言の中で、所有権留保はともかくとおっしゃったのが気になって、私の感覚だと所有権留保も解除というのは担保権の実行行為であり、ファイナンス・リースと変わるところはないと思うのですけれども、所有権留保に関してはすっと引かれるというか、そうされるのが私には少し、えっ、みたいな感じなのですけれども。 ○阪口幹事 元々現行実務だと、もうそこは一体となっていて、所有権留保も実行通知というのは解除通知を送っていると思うのですけれども、ただ、問題をもう一遍整理していくと、実行だったら清算義務がある、解除だったら値上がりの清算義務がないと、所有権留保に関しては、ここは違うのだと思うのです。そこは法律上の効果が違うはずなので、それは二本だろう。実務上はそんな値上がりはめったにないので、一本と考えても余り問題は起きないけれども、観念的に考えたら、やはり二本なのだろうと思っていて、他方こちらのファイナンス・リースは別に効果の違いなんか何もないはずなので、一本であるべきだと思っているということです。 ○道垣内部会長 分かりました。今、所有権留保のところにどういうふうに書くのかということで議論になっているわけではございませんで、3の(注)というのをどうするのかということなのですが、1の文章、本文のところが当然に二本立てであるとは私は読めないと思いますので、可能性として解除というものを並行して認めざるを得ないと考えるのか、やはり解除ではなくて実行に統一しようということがあり得るのかというような説明をきちんとやはり補足説明のところでして、気持ちを明らかにするといいますか、誤解のないようにするということが必要かなと思います。そうなったら別に、阪口さんの考え方でなくても(注)の考え方というのは存在し得るとしましても、それは説明の中で二つの実行と解除との関係を説明することによって、こういう可能性についても言及していくというふうなことでやれば、誤解は生じにくいのかなと思いますので、それでよろしいですか、阪口さん。 ○阪口幹事 結構です、異存ありません。 ○道垣内部会長 特に御異論がございませんでしたら、そういうふうにまとめさせていただければと思います。もちろん御異論を後でおっしゃっていただいても構わないですが、ほかに30までの間で何かございませんでしょうか。   もちろん最終的な要綱がこのままでよいというふうなことで皆さんに御納得いただいたとは考えていないのですが、こういった形でパブコメに付すような中間試案を出していくということについては大体御了解は得られたかと思います。ありがとうございました。   時間が少しまだ早いのですけれども、資料が24から25にちょうど変わるところでございますので、3時10分までの間、14分間でございますけれども、少し休憩をここで挟みたいと思います。10分から開始しますので、よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○道垣内部会長 それでは、予定しておりました時刻になりましたので、会議を再開したいと思います。   部会資料25「担保法制の見直しに関する中間試案のための検討メモ」について議論を行いたいと思います。まず、部会資料25の「1 新たな規定に係る担保権の処分等について」から始めたいと思いますけれども、事務当局から説明をお願いいたします。 ○寺畑関係官 1ページ目の「1 新たな規定に係る担保権の処分等について」の御説明をいたします。   部会資料21の第1の6(2)及び(3)では、新たな規定に係る担保権の実体的効力の面において、転担保、順位の変更、担保権の譲渡・放棄、順位の譲渡・放棄については、全面的にできるものとするとの記載をしておりました。もっとも部会資料23では、これらの担保権の処分等について、実務上のニーズや適切な公示の観点から、一部に限って登記することができるとする案も提示していたところです。そこで、実体的効力の面でも、これらの担保権の処分等について、一部に限ってすることができることとする案を設けることが相当と考えられますので、これを併記することを提案するものです。   以上の点について御審議いただければと思います。 ○道垣内部会長 それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。今この段階で、処分の範囲を限定するというふうにしようということではなくて、他の電子記録債権法とか、あるいは現行の民法の質権に関する条文等を踏まえましたときに、一部だけ認めるということも法制度全体のバランスとしてはあり得ると考えられますし、実際にこの部会においても、順位の変更とか転担保については実務上のニーズという発言があったのですけれども、実は他についてはそれほど今のところ発言を頂いておりませんので、併記をしようということなのですが、いかがでしょうか。   御異論はございませんでしょうか。それでは、こういう案を併記させていただくということにしたいと思います。   次に、部会資料25の2のところでございますが、「根担保権の元本の確定前に根担保権者又は債務者について相続があった場合について」ということでございます。ここについて事務局からの説明をお願いいたします。 ○寺畑関係官 「2 根担保権の元本の確定前に根担保権者又は債務者について相続があった場合について」の御説明をいたします。部会資料21の第1の9(4)アでは、根担保権の根担保権者や債務者について相続が開始した時は、設定者との間で合意をし、その合意を登記したときは、合意により定めた相続人が相続開始後に取得する債権債務を担保するとの案を提示しておりました。もっとも自然人については、根担保権者や債務者の相続人が引き続いて取引関係を継続する場面は必ずしも多くないと考えられますし、動産債権譲渡登記に合意の登記を設けることで公示が分かりにくくなるなどの懸念もあります。そこで、根担保権者や債務者について相続が開始したことを元本確定事由とする案を併記することを提案するものです。   以上の点について御審議いただければと思います。 ○道垣内部会長 この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見を頂ければと思います。これも実務上のニーズがあれば、こういうのを置いておくということは考えられるのですが、不動産登記制度と違いまして、なかなかいろいろな情報を書き込むような動産債権の登記制度というのを構築し、かつ、すっきりしているというものを作っていくというのがなかなか難しいというところもありますので、ニーズが低いということでしたらば登記制度を単純化するというのもあり得ると思われます。そこで、差し当たって併記なのですけれども、御意見を頂ければと存じます。 ○阿部幹事 ありがとうございます。実務的なニーズのことは私にはよく分からないのですけれども、もし動産債権担保を中小の事業者への信用供与にとって使いやすくするということを考えるのでしたら、中小の事業者の中には法人成りしていない事業者もあると思いますし、そうした事業者について今、事業承継をどうやって円滑化するかというのが結構課題になっているような気がしまして、そういったときに、そういう事業者への融資を事業承継後も継続したとしても、事業承継後の融資が元本確定によって言わば劣後化されてしまうということになると、円滑な事業承継の妨げにならないのだろうかというのがやや気になりました。   相続の場合に限らず、そもそも生前に事業承継するときにどうなるのかとか、あるいは相続人以外が承継するときにどうするのかとか、そういうことを考えていくと、そもそも被担保債権の範囲を特定するときに、特定の債務者の債権という形ではなくて、この事業から生じた債権というような感じで特定することを許容するとか、そんな方向の検討すらあり得るのかなと思ったりしたのですけれども、ということで、相続開始による元本確定が中小事業者の事業承継の足かせにならないかどうかというのが少し気になったということです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかにございますでしょうか。阿部さんの今の御発言は、説明などに生かすことは十分に可能であり、かつ適切な内容であろうと思います。つまり、そんなニーズがないのではないかというのに対して、いや、しかし事業承継というのを考えると、そこがもう確定してしまって、その後に劣後するということになると困るのではないのというふうなことを書くということでございますので、大変的確に説明の中に組み込める話だろうと思いますが、いかがでしょうか。   もっとも、それでも複数について順位が一杯錯綜しているというときに初めて、やり直すと劣後化するというものが出てくるわけであって、1個付いているというだけだったら別にやり直したって大した話ではないのですが、しかし、そういう場合もあるということだろうと思います。ほかに御意見はございませんでしょうか。   それではこの点も、併記でございますので、併記をさせていただくとともに、今、阿部さんがおっしゃった懸念というものも併せて書かせていただくということで、パブコメ等でいろいろな御意見を今後伺っていくようにしたいと思います。それでよろしゅうございますか。   それでは、どんどん先に進んで大変申し訳ございませんけれども、「3 集合動産を構成する動産の「逸出・加入」及び「処分」の概念等について」という議論を行いたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。 ○寺畑関係官 「3 集合動産を構成する動産の「逸出・加入」及び「処分」の概念等について」の御説明をいたします。部会資料21の第3の1から3までの「逸出・加入」及び「処分」の概念の意味内容について、共通認識を得るために記載したものです。特に「逸出」とは、事実として個別動産が集合体の特定範囲から出ることをいい、集合物を目的とする担保権が及ばなくなるという法的な効果をいうものではないこと、「処分」については「集合動産の構成部分である個別動産の所有権を、新たな規定に係る担保権の負担がないものとして第三者に移転させること」を言い、分かりやすさの観点から、「担保権の負担のないものとしての処分」に名称を改めることとしておりますので、これらの点を中心に、認識に誤りがないかについて御意見を頂ければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。とりわけ加入とか搬出とかというのを、この部会で議論しているときも、事実行為として、事実の問題として、当該倉庫なら倉庫から出されたというのを念頭に置いて話すというふうにいっているときと、集合動産譲渡担保なら集合動産譲渡担保の効力から外れるという意味で搬出というふうなことをいっている場合があり、それらを今後、議論において混乱させないためには、きちんと一回、言葉を定義して、今後の議論に資するようにしたいということでございます。いかがでございましょうか。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。ありがとうございます。法的な効力の問題ではなくて、事実の問題として統一するということに全く異論はないのですが、今、部会長もおっしゃったように、加入なのか搬入なのかというのがよく分からないところがございまして、恐らく逸出というのは物が主語で、自動詞的な使い方をされていたのかと思いますが、搬出というと人が主体になるので、他動詞的なのでしょうが、加入というのは両方多義的に使えるのかなとは思いました。他方、処分は人が主体となる概念ですので、逸出だけが物が自動詞的で、少し違和感があるなと思いました。いずれにしましても、これを事実としての意味で用いるということについては、特には異論はございません。 ○道垣内部会長 すみません、私のミスでございまして、搬入とか搬出というと、正に片山さんがおっしゃっているように、人がえっちらおっちら持って行くという、もちろんフォークリフトでもいいのですが、という感じがしまして、おむすびころりんで転がって倉庫の中に入っていった場合にどうなるのかというと、やはりそれは倉庫の中に入ったではないかという話になりますので、それらも踏まえて表す方がよい、事実として問題を表す方がいいだろうということで、搬入ではなくて加入、搬出ではなくて逸出という言葉を用いようとしたわけです。そういうふうに頑張ったにもかかわらず言い間違えてしまうというところに私のうかつさがあるのですけれども、そういうことでございます。 ○青木(則)幹事 ありがとうございます。1点確認だけでございますけれども、説明の中にお書きいただいていますように、場所的要件を不要とするような柔軟な考え方もあり得るというところからいたしますと、場合によっては、例えば設定者が一定の種類の一定量の動産の所有権を取得するだけで加入ということもあり得ると、そういう理解でよろしいでしょうか。 ○道垣内部会長 加入という言葉がそれを排除するわけではないのだろうと思います。正にそれは、そのような担保権の集合物の特定の仕方を認めるか、認めないかというところの判断に関わっているわけであって、ここで加入という言葉を事実行為としてどう定義するかによって効力が決まってくるというふうには、この事務局案は考えていないということだろうと思いますが。青木さん、よろしいですか。 ○青木(則)幹事 ありがとうございます。 ○阪口幹事 阪口です。質問というか、お願いになるのかな。逸出という言葉を使ったときに、先ほど主体の問題があるからということで、搬出という言葉を使わずに逸出という言葉がワーディングとして選ばれたという御説明がありました。他方、言葉だけ見ると、搬出というのは物理的な概念に近いのかなと、逸出というのはどちらかというと評価的というのか、規範的な概念というのか、そんな感じがします。補足説明で、ここでいっている逸出というのがどういうものなのか、つまり、例えば場所的範囲から出る場合、出ない場合、それが人為的に行われる場合、行われない場合、そういうのも全部含んで逸出ですよというのが、出ない場合は逸出ではないですけれども、出たものは逸出ですよと、御説明いただければと思います。   他方、場所的なものでないときで、特定範囲からぽろっと出るというのが、一体どんな場合があるのかが少しまだイメージしにくいので、そういうことも補足説明に書いていただいた方がいいのかなと思います。場所的範囲以外でころんと飛び出る場合というのが一体どんな場合なのかと考えると、例えば、担保の対象が材木でした、材木を加工したら、例えば机になりました、そうすると、担保対象が材木から机に変わったときに、それは特定範囲から外れているのだけれども、それは同時に担保権の効力も及ばなくなっているのではないのかなと思うので、ここでいっている逸出という言葉でもないのかなとも思います。したがって、場所的なもの以外のことも含めて、補足説明の中で、こんな場合ですよということを書いていただきたいというお願いです。よろしくお願いします。 ○道垣内部会長 場所的な範囲から外れるという以外で、ここの逸出とか加入という言葉は使っていないと思うのですが。 ○阪口幹事 部会資料の特定範囲というのは場所的範囲に限らないものではないのですか。 ○笹井幹事 今の資料の書き方自体は、例としては所在場所で限定するものが分かりやすいし、恐らくそれが一番多いと思いますので、特定された所在場所から出ていくというような意味で理解できるし、それ以外のものが余り予定されていないものとして読んでいただいても文意がつながるような使い方をしていると思います。   しかし、今、阪口幹事からも御指摘がありましたように、必ずしも場所的な概念、場所的な要素というのが集合物の特定のために必ずしも必要ではないということになるとすると、別の方法による特定も可能になってきます。そのような例として誰にとってもわかりやすい具体例がすぐには思いつかないので、イメージしにくいところがあるというのは御指摘のとおりですけれども、そういう別の特定方法ができるとすると、その特定範囲から出ていくのも逸出として表現しようというのがここでの趣旨です。 ○道垣内部会長 失礼いたしました。確かにそうで、種類、所在場所、量的範囲の指定その他の方法により特定された集合体ということでございますので、阪口さんがおっしゃった、材木と書いてあるのに机になったら種類が変わったのではないかといったら、場所自体はその倉庫にあったって種類が変わったので、ここの概念だと逸出するということに当たるのではないかというのは、それはおっしゃるとおりでございます。私が場所的ではないものが含まれていないと申し上げたのは間違いです。申し訳ございません。その辺りのところを丁寧に書かないと、道垣内のような誤解が生じるので、きちんとしましょうというのはよく分かるわけでありまして、それはまた説明のところできちんとしていただくというふうにしたいと思います。ありがとうございました。 ○阿部幹事 ありがとうございます。私は、逸出・加入ではなくて処分の方なのですけれども、こちらについて「担保権の負担のないものとしての処分」に改め、それは集合動産の構成部分である個別動産の所有権を新たな規定に係る担保権の負担がないものとして第三者に移転させることをいうと考えてよいかという点については、それでよいと思うのですけれども、特に部会資料21、第3の3ですかね、次の部会資料25の4で修正の対象になっている部分ですけれども、これについて、分かりにくさの原因になっているのは、「処分」の概念が不明確であるだけではなくて、最後の、「その動産について権利を取得する」とか、あるいは「権利を取得しないとき」とかいうときの、「動産について権利を取得する」という言葉もまた分かりにくいような気がします。「取得する」というのは、要するに担保権の負担のない権利を取得するという意味だと思うのですけれども、処分についてこうやって書き下すのであれば、「権利を取得する」の方も丁寧に説明された方がよいかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。多分、192条の文言なんかの影響もあるのだろうと思いますけれども、分かりやすくすることは大切だろうと思います。   ほかに何かございませんでしょうか。 ○井上委員 井上です。今の点ですけれども、これはただの確認になるかもしれないし、場合によっては補足説明で言及すると分かりやすくなるのかもしれないのですけれども、ここの処分というのは、担保権の負担のないものとして処分するという意味であって、部会資料21の第3の3のところでいうと、処分した場合に、処分を受けた者は、その動産について権利を取得するとか、しないとかといった効果が生じる処分というのは、対象物が特定している場合を当然の前提にしていると理解しています。   どういうことかというと、集合動産の特定範囲として「A倉庫の中の在庫」といったときに、その在庫が1,000箱ある状況で、売買行為としては100箱を取引先との間で売却することは当然あるわけですが、その段階では、ここでいう処分には当たらないと理解しています。というのは、どの100箱か分からない以上、どの100箱を担保権の負担のないものとして相手方に渡すかがまだ特定されていないので、その動産について担保権の負担のない所有権を取得することもないはずだからです。これに対し、1,000箱倉庫の中にあるうち、例えば箱に番号が付いているとすると、1番箱から100番箱までを譲渡する旨の契約を結べば、そこで、物理的には逸出していなくても、処分したことになると思います。ですので、物理的には倉庫の中にあるままで、そういう特定をせずに、ただ100箱の売買契約を結んだだけでは、ここにいう処分には当たらないし、部会資料21の3が示す効果も生じないという理解でおります。それは特別書くまでもないということであれば、よろしいのですが、そこは、書けば分かりやすくなるのではないかかと思いました。 ○道垣内部会長 井上さん、それはどこに書くということですか、4のところ。 ○井上委員 今の資料の御提案のように、「処分」が単に「担保権の負担のないものとして処分する」という意味だと書くだけで十分かなとは思いますけれども、それが一体何を意味するか、どういう効果をもたらすかを誰にも分かりやすくということになると、第3の3の補足説明の中で、「処分した場合」に「処分を受けた者は、その動産について権利を取得するものとする」という【案3.3.1.1】の効果については、担保権の負担のないものとして100箱売りますと合意しただけでは足らず、特定範囲の中にあるもののうちどれを処分するかが特定されることと併せて、そういった効果が生ずるということまで、丁寧にというかしつこくというか、書くということかなと思いました。   それは、一般的な売買における所有権の移転のメカニズムをいっているだけなのだから、ここでの特有の問題ではないという判断で、別に書くまでもないということであれば構わないのですが、「処分」の意味内容をここで丁寧に明らかにした結果、どういうことにつながるのかという場合に、逸出前であっても処分すればこういうことが起こる、といったときの「処分」とはこういう意味であり、かつ、その対象としてこういう特定までなされる必要がある、というところまで書いてはどうかと、そういう趣旨で申し上げました。 ○道垣内部会長 井上さんが正におっしゃったように、物権法の基礎的なルールでございますので、ゴシックのところの案として書くというのはどうなのかなという気はいたしますけれども、説明のときに挙げる例とかで注意をしながら、誤解が生じないようにということは大切かと思いますので、少しその辺は工夫をしていただくよう、事務局に私からもお願いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。   ほかに何かございませんでしょうか。   3のところは定義の問題でございますので、あれなのですけれども、4とか5のところになりますと、6もそうですが、具体的な実体的な効力の問題になりまして、若干複雑になってまいります。事務局からの説明の前に私がしゃべるのもあれなのですが、4のところの設定者のそれこそ処分における第三者の立場というところは、場合分けをしていくと切りがなくなって、非常にまた分かりにくくなるというところもありますし、場合分けしなかったら不正確になりますので、その辺も問題がありまして、どう書いて説明するのが一番分かりやすく、皆さんの意見を聴くことになるのかという工夫だと思いますので、まずは事務局の方から4のところを御説明いただきまして、皆さんの御意見を伺えればと思います。では、よろしくお願いいたします。 ○寺畑関係官 「4 集合動産の構成部分である動産を設定者が処分した場合における第三者保護」について御説明をいたします。ここでは、集合動産の構成部分である動産を、設定者が権限範囲を超えて、担保権の負担のないものとしての処分を行った場合の第三者保護の規律の在り方を問題としています。   まず、処分権限を制約する別段の定めがある場合において、通常の事業の範囲内で、かつ権限範囲を超えた処分がされた場合には、(1)のとおり、制約された権限範囲を超えていることについて、善意であった場合には保護されるという規律としております。これに対し、通常の事業の範囲及び権限範囲を超えて処分をした場合には、処分を受けた者が信じた内容によって規律を変えることとしております。処分を受けた者が、当該処分が通常の事業の範囲であると信じていた場合には、無過失を要求しないこととするのが(2)です。これに対し、通常の事業の範囲を超えているが、拡大された権限範囲内であると信じていたときや、そもそも集合動産譲渡担保権等が設定されていたことを知らなかったときなどは、即時取得の規律によって保護されるかを決することを(注2)として記載しております。そもそも上記のような区分けが相当といえるか、また、それぞれの区分けを前提とした第三者保護の在り方が適当かについて、御議論いただければと思います。 ○道垣内部会長 それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○阿部幹事 ありがとうございます。特に(2)から、まず始めたいと思うのですけれども、第25回会議で、なぜ処分の相手方による占有開始の有無に着目しないのかがよく分からないというような疑問を確か提起したと思います。藤澤幹事も確か、それとは別に最高裁平成18年7月20日判決における集合物からの離脱のようなものは要らないのかというようなことも議論されていたかと思います。けれども、改めて今回考えてみまして、果たして(2)のようなルールを設けなかった場合に、現行法のルールで、本当に即時取得が成立するときに限り保護されることになるのかというと、そうでもないのではないかという気がしてきました。というのは、設定者は一定の処分権限を持っていて、その処分権限を超えて処分が行われたということなわけなので、そうすると、民法110条の権限踰越の表見代理に近いというか、それの処分授権バージョンみたいなものが観念できるのではないかと思いました。   そうだとすると、即時取得のように処分の相手方が占有を開始しているということは必要なく、その代わり、110条のように権限の範囲であると信じたことと正当な理由が必要になるのが原則で、その正当な理由の要件を外すことができるかとか、何について信じていればよいかとか、そういったことを定めていくものとして(2)を理解していった方がよいのかなと、つまり、即時取得の特則とか即時取得のルールの変更ではなくて、むしろ110条類推適用を前提とした、そのルールの精密化、あるいは変更といったふうに位置付けるべきかなと思いました。   そういうふうに考えると、(1)の方も、どういう議論をされているのかというと、これまで処分権限が特別に制限された場合に、それが物権的な効力なのか、債権的な効力なのかというような議論がされていましたけれども、要するに、法人の代表者の代表権限に定款等で制限を加えた場合と同じような議論をしているのかなと思いました。4(1)は、制約された権限範囲を超えていることを知らなかったときに限り、その動産について権利を取得すると書かれていまして、そういう制約がされていることを知らなかった場合ということかなと思いまして、それは結局、本来通常の事業の範囲内で処分権限があるところ、それに特別な制限を加えている場合に、それを法人代表者の代表権限に対する定款での代表権の制限と同じように扱っているものと見ることができるのかなと思いました。 ○道垣内部会長 そうなったときに、どうなりますか。中間試案でこういう形でいいか、それとも、今の阿部さんの趣旨を踏まえて、ゴシックを変えなければいけないのか、それとも説明のときに、即時取得の話が当然であるという話ではなくて、権限範囲を信じたという話だということをきちんと書くということで対処するという話なのか、その辺りはいかがですか。 ○阿部幹事 変える、変えないという話に関していうと、4(1)に関しては、先ほどのように考えれば、必ずしも変える必要はないかなと思います。それとは別に、やはりそれでも処分権限が制限されているということに重きを置いて、やはりこれは処分権限が制限されているということについての無過失も必要だという考え方も成り立つかもしれませんが、そこはどちらでもいいのではないかと思います。   (2)に関しても、ゴシックそのものについては今のように考えれば正当化できるかなと思いました。どちらかというと直すべきだと思ったのは、(注2)のところで即時取得が成立するときに限りと書かれているところが、本当にそうなのかということで、むしろ特別なルールを設けなかった場合の一般原則から見ると、110条の類推なのではないかというのが私の疑問というか、意見でした。 ○道垣内部会長 例えばの括弧内を考えたときには、それがあると信じていたときには、即時取得の問題ではなくて権限踰越の問題として捉えて、110条の方で。 ○阿部幹事 正当事由がある場合により保護すると考えるか、その正当事由立証は不要だと考えるかということで、本文は正当事由立証は不要という立場で、(注2)は原則どおり正当事由立証が必要だという立場、そういうふうに考えるということになるかなと思います。 ○道垣内部会長 最終的に整理をしなければいけないので、少し阿部さんと議論をさせていただければと思うのですけれども、抵当権の効力の及ぶ範囲という議論のときに、抵当権の目的不動産上にある材木が搬出されたというふうな話がありまして、そのときに、公示の衣が及んでいる限りにおいて及ぶという我妻説に対して、星野先生とか、高木多喜男先生は、第三者が即時取得するまでは抵当権の効力が及ぶとおっしゃるわけだけれども、今の阿部さんの分析からすると、それも本来は即時取得の問題ではなくて、抵当権設定者の権限の問題であると、だから、192条の適用、類推適用の問題ではなくて、110条の法理の問題として、それも考えるべきであるということになるのかしら。 ○阿部幹事 そこまで行けるかどうか、私には分かりません。抵当権が設定されたときにも、設定者は目的不動産上の動産の処分権限を一旦全面的に奪われた上で、それを抵当権者から再度付与されているのだと考えると、今の議論と近くなってくるかなと思いますが、抵当権者の動産処分権限がどういうものなのかということ次第かなと思います。もちろん元々設定者が持っている処分権限が、抵当権設定によって言わば縮小するような感じのイメージだとしても、その範囲を超えているというのは、処分権の逸脱ということで、110条の方に近いと考えられるのかもしれませんが、ただ、担保権者が設定者に処分を授権しているといえるかどうかというところが、抵当権設定者の動産処分の場合と少し違うのかなという感じがして、やはり私はどこかしら、集合動産の構成部分である動産の処分は、担保権者から設定者に授権されているというような発想があったので、110条に近いと考えたのかもしれません。 ○道垣内部会長 抵当権の場合には無権限であるというところから発想するから、192条に近付いてくるということなのですね。なぜそんな議論をしているのかというと、(注2)のところに書くときに、民法の中のほかの部分の一般理論との齟齬がないように書く必要があるので、ほかの部分の法理を確認しようとしたのですが、阿部さんのおっしゃることは非常によく分かります。(注2)の書き方について、もう少し検討していただくようにしたいと思います。ありがとうございました。 ○片山委員 ありがとうございます。慶應大学の片山でございます。私も基本的には今、阿部幹事がおっしゃられた内容と同じということになるのかもしれませんが、基本的には設定者の権限の側から規定を書くということでいいのかとは思います。(2)については権限踰越の問題ということなので、表見代理のような規定が置かれるべきだということで、それは110条の類推適用ということではなくして、その規定をここで書き込むということになるので、この書き方でいいのかとは思います。   そのときに、即時取得の関係ですけれども、即時取得に関しましては、仮にこの規定がどう書かれようと、192条で即時取得の主張ができることは、もう動かせないのかとは思いますので、ここで110条的な書き方をしても、なお即時取得の成否の主張が妨げられることはないとは思っております。   それから、(1)の方ですけれども、こちらは制限がデフォルトルールとしての通常の営業の範囲というのがあって、それを当事者が一種、内部制限的に制約するということですので、結論としては、知らなかったときに限りということでいいのかもしれませんが、むしろ書きぶりとしては、ただし書の方に転換して、93条のような書き方で、悪意の場合には取得できないというようなところまで踏み込んで書いた方が、より整合性がとれるのではないか思った次第でございますが、基本的な方向性としてはこの書きぶりでよろしいのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○井上委員 井上です。私も阿部先生の先ほどの御指摘に共感するものです。ただ、その場合に(2)のゴシック部分がそのままでいいのかということについてなのですけれども、私の読み方が不正確なのかもしれませんが、現在、(2)のところは、「当該処分を受けた者は、設定者による当該処分が通常の事業の範囲であると信じていた場合には、権利を取得する」ことになっていますが、「信じており、かつ、権限範囲を超えていることを知らなかった場合には」と定めるべきではないでしょうか、というのが1点、疑問点です。   もう1点は、今回、善意か悪意かでルールを区別して、(1)に関する(注1)のところに過失で切るという考え方があるという注記をしていただいていますけれども、それらの考え方の間に、重過失の有無で区別するという考え方も十分あり得て、場合によってはそれがむしろ実質に即しているかもしれないと思うので、どれがいいというよりは、選択肢として、重過失の有無で区別するという立場もあることをここに書くか、あるいは少なくとも補足説明のところで言及していただけるといいのかなと思いました。 ○道垣内部会長 後者は、重過失というのがほかの法律との関係でもあり得る選択肢だと思いますので、書くという形にした方がいいのかなと思うのですが、前者について何かございますか。 ○笹井幹事 そうですね、実態としては、おっしゃったように、権限範囲を超えていることを知らなかった場合というか、権限範囲を超えていると思っていた場合には保護の必要性はないのかなと思います。ただ、ここも少しややこしくなりすぎるので、余り書かなかったのですけれども、第三者の主観的な事情にも様々なレベルがあり得て、そもそも通常の事業の範囲に入っているという認識を前提として、それに更に制約したりする方向での特段の合意自体を知らなかったという場合と、そういうものがあると知っていたのだけれども合意された権限の範囲内に入っていると信じていた場合とか、様々なものがありまして、私としては前者のように、特別な制約自体を知らずに、単純に通常の事業の範囲内であると思っていたという場面でも保護されてもよいのかなと思ったものですから、その辺が全部含まれるような形に書いたということです。実態としてはおっしゃったとおりだと思いますので、表現はもう少し考えてみたいと思います。 ○道垣内部会長 よろしいですか、井上さん。 ○井上委員 もしかすると狙っているところは違わないのかもしれないのですけれども、今おっしゃった、通常の事業の範囲であると信じていた場合を広く救うという基本的なスタンスはそれでいいと思うのですけれども、ただ、そこから、具体的な権限範囲を超えていることを知っていた人を外してもいいのではないかという趣旨で、先ほどは申し上げました。通常の事業の範囲が、例えば在庫のレベル感でいうと、80から120ぐらいで動いている、そうすると、ミニマムでいえば80ぐらいを何とか維持していれば通常の事業の範囲といえるでしょう、というときに、ミニマム100以上にキープしなさいという特約を課されていたという状況を仮に前提とすると、(2)は、通常の範囲であるミニマムの80を更に超えて70まで割り込んだときのことをイメージすればいいと思うのですけれども、その場合に、70になってしまうような処分行為をすることを知っている譲受人が、通常の事業の範囲を50ぐらいまではオーケーだと誤信しているために、通常の事業の範囲内かどうかという意味では、範囲内だと信じていますという事例です。実際は80から120ぐらいが通常の事業の範囲という状況で、70まで下がるような売却をしても、買主が50でも通常の範囲だと思って買ったのだから、そこは救ってもいいではないかという一般論は、そのとおりだと思うのですが、たまたまその買主が、売主と担保権者との特約で100以上をキープしなければいけないことまで知っている場合は、保護する必要がないのではないかという趣旨で申し上げたのですけれども、今のゴシック部分だと、そういう場合も救われてしまうのかなと思いました。 ○道垣内部会長 井上さんがおっしゃっているのは(1)ではないのですか。 ○井上委員 (2)です。両方とも超えている場合です。通常の範囲も超えているし、特約も超えている。通常の範囲が80から120で、特約はそれよりも厳しい制約で、100以上という特約を課している場合で、実際には70まで下げてしまったというときに、でも、買った人は50ぐらいでも通常だと思っている、そう信じてはいるのだけれども、たまたま特約は知っていて、担保権者から100以上キープしろよと売主が言われていることは、これは知っているというときに、それに違反して70まで割り込むような売却を受けた人を救ってもいいのかと、そういう話です。 ○笹井幹事 実態として、今おっしゃったような、100以上超えていないといけないということを知っていて、かつ、今自分がやろうとしている取引がそこから外れているということを認識していた人は保護されないというところは共通していると思います。少し表現はもう一度考えてみたいと思います。 ○井上委員 分かりました。ありがとうございます。 ○沖野委員 ありがとうございます。1点目は今、井上先生がおっしゃった点なのですけれども、(2)については、通常の事業の範囲であるかどうかというのと、権限範囲がどうかというのがあって、どちらも範囲内ではないという客観的な場合について、主観がどうなるかということですので、3行目の、信じていた場合で、かつ、信じていたならば知っていたときを除くと、知らなかったときに限りにするのか、知っていたときを除くのかということがありますけれども、知っていたときを除くぐらいでいいのかなと考えるならば、信じていた場合にはの後に、権限範囲を超えることを知っていたときを除き、というような文言がやはり入るべきではないかと思いました。   もう一つは、通常の事業の範囲であると信じていた場合には、という点なのですけれども、信じるというのが、知っているか知らないかという、知らないだけではなくて、より積極的に信じたということが必要だというのは分かるのですけれども、軽信してもいいのかということで、ここが正当に信じたとか過失なく信じたということが本来やはり必要ではないのかと思われます。ここの部分は権限の話として、最終的には約定の権限が決めていくのだけれども、客観的な通常の事業の範囲という枠を掛けて、客観的な範囲であって、一種内部的な合意による制約をしているというときには、内部的な制約を知らなければそれで保護されるというのは(1)ですけれども、(2)は客観的にも超えているということなので、ただ信じただけでいいのかというのが気になっているところなのですけれども、むしろ信じていた方にも、過失なく信じたとか、正当に信じたとか、それが必要ではないでしょうか。 ○道垣内部会長 それはそうですね。(1)も、知らなかったときに限りでは若干甘くて、正当性みたいなものも(1)についても必要。 ○沖野委員 いや、(1)は行為自体がそもそも客観的な範囲内なので、あとは主観的な内部的な約定によって、そこから制約を掛けているということだから、そういう制約は知りませんでしたということで、ただ、過失まで要求するか、あるいは井上先生がおっしゃったような重過失にするかというところは(注1)で考えてあるので、それ以上には要らないということかと思います。 ○道垣内部会長 分かりました。シンプルにしようと頑張ったために、(注1)に対応するようなことがなくなってしまったということかな。 ○笹井幹事 (2)は、通常の事業の範囲内ということに、やはり原則的な法律上の処分権が与えられていることから、それについて何か特別の保護を与えようという発想があったのだと思います。もしここで正当な理由なり無過失なりが必要になってくるということになると、こういう特別なルールがなかった場合に原則どうなるのかという、最初の阿部幹事の問題提起とも関わってきますが、即時取得なり、110条でも無過失と同じようなものだと考えると、結局、原則に委ねられ、特に保護を厚くする必要はなくて、原則ルールに委ねれば足りるということになるでしょうか。 ○沖野委員 ここは最終的に、それをどう位置付けるかはともかく、権限があるかどうかは権限範囲によって決まるわけですよね、約定によって。だけれども、それを外から見て信じていいかというようなところで、客観的にはこうだというところを一つ要件立てというか、をした上で、その客観的な範囲に入っているのであれば、それを更に実は制約していたというときには善意だけでいいとか、あるいは、さらには過失とか重過失を要求するのかという話があって、(2)の場合も、ポイントは権限範囲を超えているかどうかというところで処分として有効かどうかが決まっていくところ、その意味から、通常の事業の範囲というのは最後は利いてこないのですけれども、第三者を保護するかというところで、通常の範囲だというところを信じていれば、それで一定の保護を与えると。保護を与えるといっても、しかし権限がないことが分かっているならばその必要はないと、そういう2段階区切りになっているので、その権限に着目するならば、もう普通の一般の話で、そこに無過失とかを要求すれば同じ話でしょうと、もし即時取得で行くならば先ほどの占有の話とかはあると思いますけれども。そうではなくて、判断枠組みを2段に分けた上で、通常の事業の範囲という一応客観的な枠というのを一つ基準にして、第三者保護というのに要件を立てるというところに意味があるので、(2)において通常の事業の範囲と信じたことについて無過失を要求したとしても、それはもう一般規定で行くのと同じですねということにはならないのではないでしょうか。指摘を取り違えているのかもしれません。 ○道垣内部会長 お話を踏まえて、いろいろな場合に分けて、何を信じたのかというのを、最終的には単純なルールになるかもしれませんが、検討していただいて、なるべく単純化していくということが必要だと思いますので、御指摘を踏まえて、更に事務局に考えていただくようにしたいと思います。 ○佐久間委員 今と同じ点なのですけれども、(2)のところは通常の事業の範囲のほかに、制約された権限範囲に関しても、まとめて言いますけれども、善意であるということが必要ではないかという井上さんの御指摘は、そのとおりだと思っておりました。   その上で、沖野さんがおっしゃった、通常の事業の範囲の方は信じていたことだけでいいのか、無過失まで場合によっては要るのではないかというお話なのですけれども、そこでおっしゃったのは、通常の事業の範囲というのは客観的なものなのだからと、要するに第三者から見て分かりやすいのだからということだと思います。それは内部的な権限の個別の制約に比べれば分かりやすいのかもしれませんけれども、ここでいう通常の事業の範囲というのは必ずしも一律に決まっているものではなくて、当該事業者の事業の在り方などによっても変わってくるものだと思います。そうだとすると、ここでも余り強い制約を掛けるのはよくないのかなと私は思っています。第三者保護のためにですね。   そういう目から見ますと、今の原案は、(2)に制約された権限範囲についても知らなかったということは加えなければいけないと思いますけれども、通常の事業の範囲の方は、信じていたという表現をすることによって、疑いを持っていた場合は駄目だということになるわけですよね、教科書的な説明ですけれども。それに対して権限範囲の内部的制約のほうは、疑いを持っていても知らなかったらオーケーだという意味で、通常の事業の範囲の方が、やや信頼保護の点では第三者に厳しいことになっているので、これはこれでいいのではないかと私は思いました。   その上で、制約された権限範囲についての主観的態様に関してなのですが、知っていたときは別だというふうにするのでも、別に構わないと思うのですけれども、そうだとすると、それは(1)も同じようにしないといけないのではないかと。(1)とそこは平仄を合わせないといけないのではないかと思いました。というのは、通常の事業の範囲であることについて信じていた人は、その通常の事業の範囲内であるということに関しては、もう保護しましょうというふうにしているわけですから、そうだとすると、通常の事業の範囲内にあったのと同じように扱うということから、(1)と同じ、制約された権限範囲に関して知らなかったのであれば保護されるというときだったら、こちらも知らなかったということを求める必要があるし、こちらに関して知っていたときは別だというふうにするのだったら、(1)の方も、知っていたときは別だというようにすることが必要なのではないかと思いました。どのルールでもいいのだけれども、中間試案で問うときにはそこは明確にしておかないと、意見をなかなかうまく求められないことになるのではないかと感じました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○大西委員 今の御意見と似ているのですが、4(2)のところで、通常の事業の範囲が客観的に分かるという意味で、(1)とは違うのではないかということに対してコメントしますと、(1)と(2)はレベルの差はあると思います。ただ、この通常の事業の範囲というのは、融資をしている担保権者と設定者の間では比較的明確だと思うのですが、そうではない外の第三者からすると、やはり情報量の問題があるのでなかなかそう簡単には分からないと思います。よって、ここは無過失まで求めるのは少し酷ではないかと実務的には感じましたので、コメントをさせていただきます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○阪口幹事 阪口です。4のところは少し難しくて、分からないのですけれども、何点か申し上げたいと思います。   まず一つ目はお願いで、補足説明の際に、通常の事業の範囲の問題と権限範囲の二つの問題を書く前に、まず一つだけの問題を御説明された方が分かりやすいのではないのかなと思います。つまり、通常の事業の範囲だけがあって、別に何の特約もしていません、客観的に通常の事業の範囲という制約があるだけですと、そういう人が物を売る場合、もちろん通常の事業の範囲内だったら当然普通に売れるわけですけれども、その通常の事業の範囲を超えたときで、ただ、購入した第三者の主観的要件が関わってくる、こういう場合一体どうなるのですかという、この説明をまず最初に書いた方が多分、読んだ人は分かりやすいのかなということです。いきなりここで二つの権限が、超えている超えていないとか、購入者の主観が入ってくるものだから、多分ぱっと読んだときに分かりにくいのではないのかなと思っているので、中間試案自身はいいのですけれども、補足説明の方では、順を追って説明された方が分かりやすいのではないかというのが、お願いです。   二つ目ですけれども、ここでいっている処分というのは、先ほど3のところで出てきたと思いますけれども、占有の移転を伴わない、単に処分行為があればいい、集合物だったら特定までは必要ですけれども、処分行為があればよくて、占有の移転、善意取得でいうところの現実の引渡しであったりするものは多分含めない概念なのだろうと思うのです。そうすると、アンバランスが生じていないのかなというのが少し気になるところです。   例えば、善意、悪意について、処分だけで引渡し前の時点であれば、御提案での立証責任がどちらにあるか分かりませんけれども、占有による善意無過失の推定は働かない状態というのが原則でしょう。他方、即時取得の方で行くと、占有を受けているときには善意無過失の推定が働く。立証責任の問題なのかも分からんけれども、こちらが有利、こちらが不利、みたいなことが起きないかというのがあるのが一つです。もう一つ、アンバランスなのかなと思ったのは、(注2)の中で、そもそも集合動産譲渡担保権等が設定されていたことを知らなかったときというのがあって、これを知らない人は、およそ処分権限の問題なんか意識しないわけですけれども、その人は即時取得のときだけしか保護されないのか。担保権設定を知っている人の方が権限について善意だったら早い段階で保護されることがある、みたいなことにならないのか、少しアンバランスが一部生じていないのかなという気がして、先ほど言った、善意悪意の時点がずれたりするので、必ずしもアンバランスとは言い切れないのかも分かりませんけれども、少しずれていないのかなと思った部分があります。   あと、最後、これはほとんど少数説なのか分かりませんけれども、(1)のところで、善意、悪意にかかわらず負担のない権利を取得するという考え方もあり得るのではないのかなと思います。皆さんはどうしても、権限的アプローチをしておられるから、何か制約があるという立場をとられていますけれども、いやいや、設定者の処分権限は集合物から出てくる本質であって、処分権限の制約はいわゆる債権的合意にすぎなくて、債権的合意は公示する手段がないのだから、そんなものは知っていたって知らなくたって第三者は関係ないよという割り切った考え方も十分あるのかなと思っているのです。生熊先生は立命館法学にそういう説を書かれていたと思いますので、ゴシック体に載せたり、(注)に載せたりしなくても、説明の中では触れていただいた方がいいのかなと思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。まず、設定行為に別段の定めがないときに、通常の事業の範囲を超えた場合というのを第一ルールとして、そこから書けというのは、非常に私はよく分かる、実は、今、メモを作っていたのですが、ちょうど同じ、そこから始めようというのを作っておりまして、我が意を得たりという感じがしたのですけれども、そこはそうだと思います。後をどういうふうにしてそれを整理していくかというのは、更にもう少し検討してもらうようにしたいと思います。 ○沖野委員 ありがとうございます。度々申し訳ありません。考え方はいろいろあるのだろうと思いますけれども、少しだけ申し上げておきますと、信じていたということについて疑いを持っていなかったというのが、当然疑いを持つべきであったということであっても、それは疑っていませんでしたと一言言えば、それでクリアできるということでいいのかというのは最後、気になりまして、それで構わないということであれば、そのような考え方でいいのかなとは思いました。   それから、きれいに整理ができれば、もちろんまた併記に戻してもいいのかと思いますけれども、比較的分かりやすい形で書いた上で、別の考え方がいろいろあるというのは補足説明で説明していただくということでも結構かと思いますので、先ほどゴシックに、過失なく信じたとか、正当に信じたとかいうのを書くべきではないかとかいうことを申し上げましたけれども、そうでない考え方を出した上で、説明の方で書いていただくということでも十分かなと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   もちろん悪意とか重過失とか、いろいろあり得るのですが、具体的な結論については多分それほど大きな違いはないのだろうと思うのですけれども、それをどういうふうにして分かりやすく整理をするのかと、何を信頼した人をどういうふうにして保護するのかというのを、もう少し分かりやすいルールの提示にしなければならないということが、やはり皆さんの根本にあるのだろうと思いますので、更に検討していただくようにしたいと思います。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。立教大学の藤澤です。すみません、声が出ていないのですけれども、なるべくシンプルに整理しなくてはいけないとおっしゃっていて、それに反するようなコメントで大変申し訳ないのですけれども、阪口先生がおっしゃったように、担保権について知っているか、いないかということで場合分けをする必要はないかなと思いました。というのも、民法でも、Aさんが所有するものをBさんが勝手にCさんに売ったという場面で、CさんがBさんが権利者だと信じていた場合と、Aさんの所有物だけれども代理権があると信じていた場合は、やはり違う条文で整理しますので、担保権がないと信じていた場合と、担保権はあるのだけれども処分権があると信じていた場合は違うのではないかということがあります。   もう一つは、先ほど逸出という定義をされたのですけれども、逸出後の処分か、そうではないのかというところで判例は区別する立場を示していましたので、逸出後の処分の場合と、そうでない場合を区別して検討する必要はないかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。前者の問題は恐らく、全く当該倒産が担保権の目的物であることを知らなかったという場合については、一般的な即時取得の話としてやるのであり、一応は第三者に対抗できるというところから始まるのだというのが多分ここの前提になっているのだと思うのです。ただ、仮にそうであるとしても、ではこんな場合はどうなるのという疑問というのはどんどん出てまいりますので、不当に煩雑にならない限りにおいて、そこは腕の見せ所なのだろうと思うのですけれども、分かりやすいような形で整理をしていくということが必要だろうと思います。   逸出後の処分の問題について、判例法理が、外に出たものを売却した場合には主観的な要件というのを課さないで認めているのではないかということにつきまして、それをどう書くのかというのは、先ほどのところで逸出とかを定義したときには、効力が及んでいるか及んでいないかは別問題ですと整理をしたわけなのですけれども、そもそもそこをどういうふうにルールとするのかという問題と関わっておりますので、全体としてもう少し考えなければいけないだろうと思いますが、少なくともそういった問題が判例法理との関係ではあるということを何らかの形で明記しておくというのは重要なことだろうと思いますので、事務局に考えていただくようにしたいと思います。どうもありがとうございました。   ほかによろしゅうございますか。ただ、ここはあれですよね、きちんともう一回ルールを出して、それでもいろいろな意見が出てきそうだけれども、これで分かりやすいかというところを皆さんに一回見ていただくというのが、中間試案を確定する前に必要だろうと思いますので、この部分は急いで新案を作るように事務局にお願いをするということになろうかと思います。それでまた御議論いただければと思います。   それでは、次に、5でございますが、「動産譲渡担保権等相互の優劣について」ということで、ここを議論したいと思います。事務当局から説明をお願いいたします。 ○寺畑関係官 「5 動産譲渡担保権等相互の優劣について」の御説明をいたします。前回の御審議では、集合動産譲渡担保権等の設定後に個別動産譲渡担保権等が設定された個別動産が加入した場合に、その個別動産についての集合動産譲渡担保権等と個別動産譲渡担保権等との優劣を決する基準について、いわゆる加入時説を採用すべきかどうかが議論されました。今回改めて、加入時説を採用すべきかが問題となる場面設定をより明確にした上で、再度御審議をお願いするものです。   まず、本文(1)と(2)では、同一の個別動産又は集合動産に複数の譲渡担保権等が設定されている場合について、その順位は、その譲渡担保権等について対抗要件を備えたときの前後によることとしております。特に留意すべき点として、本文(2)の2段落目に記載しておりますが、集合動産譲渡担保権等の設定後に集合動産に加入した個別動産がある場合であっても、集合動産譲渡担保権等同士の競合が問題となる場合には、その順位は個別動産の加入時ではなく、原則として集合動産譲渡担保権等について対抗要件を備えたときの前後によることになります。   これに対し、今回問題となるのは、本文(3)のように、集合動産に1個の集合動産譲渡担保権等が設定されており、その設定後に個別動産譲渡担保権等が設定された個別動産が加入したときに、集合動産譲渡担保権等と個別動産譲渡担保権等との順位を決する場面です。この場合に、集合動産譲渡担保権等についての優劣関係の基準時を、集合動産譲渡担保権等について対抗要件を備えたときとする設定時説によるべきか、個別動産が集合動産に加入したときとする加入時説によるべきかが問題となります。   これらの前提に、改めて、設定時説と加入時説のいずれかが相当かについて御意見を頂ければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。これは前回かなり議論があったところですけれども、もう一度整理をし直して提出をさせていただいております。御自由に御意見等をお願いいたします。 ○青木(則)幹事 前回も少し申し上げたので、重なるようなところで申し訳ございませんが、(3)についてです。甲案、乙案という形で御意見を伺うという形にしていただいて、それは非常に賛成でございますが、やはり具体的な想定事案がまだ分かりにくいのかなと思っているところもございますので、少し確認させていただきます。これは結局、対抗要件を具備した集合動産譲渡担保があって、その設定者が設定後に構成部分となるはずの動産の所有権を取得したけれども、しかしまだ引渡しを受ける前、つまり特定された場所に納品される前に、ほかの債権者のために個別動産譲渡担保を設定すると、そちらの対抗要件が具備されると、こういうふうな状況を想定されているということでよろしいのでしょうか。   あるいは、さらに、個別動産譲渡担保でも将来取得するべきものについての個別動産譲渡担保の設定ができ、個別の場合には加入という概念がないから、設定者が所有権を取得した瞬間に個別動産譲渡担保の方の対抗要件は及ぶけれども、集合の方は加入がないから駄目ということで切られてしまう、こういうふうなところまで含意されているのでしょうか。その辺りの想定例がどういうものなのか気になります。   また、いずれにしましても、その後に集合動産譲渡担保の特定の場所に搬入しても、対抗力がある集合動産譲渡担保の効力が及ばないということになるのかと思いますので、本当にそれでよいのかどうかということを、これは明確に皆さんの御意見を伺えるような形で示していただければ有り難いと思います。   あともう1点ですが、下の方に、いわゆる登記優先ルールの適用があると書かれていますけれども、これがどこまで適用されるのか、機能するのかという中身についても具体的に示していただけないかなと思っております。つまり、加入時説の場合でも逆転できる、そこまでの効力が登記優先ルールになるものにあるのかどうかということについて、そうではないような気もいたしますので、その辺りのところも示していただければなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。幾つかの問題に分かれているのだろうと思いますけれども、事務局からまず、お答えを頂ければと思います。 ○笹井幹事 十分に理解できたかどうか分からないですけれども、一つ目の個別動産について、将来個別動産について担保権が設定できて、みたいなことを考えているわけでは全くありません。そういう意味では、今御指摘があった中でいうと前者の方に当たるのではないかと思いますけれども、設定者が持っている個別の動産について、まず、それが集合物に加入する以前に別の個別の譲渡担保権が設定されていて、その時点では担保権者は何も担保権の負担のないものについて譲渡担保権を取得していたと。ただ、それがその後に倉庫に入れられることになって、集合物の構成部分になるに至った場合に、集合動産譲渡担保と元々設定されていた個別の譲渡担保権のどちらが優先するかという問題、そういう場面を念頭に置いているということです。   それから、登記優先ルールについては、ここはもしかすると理解が分かれるところなのかもしれませんけれども、例えば、先ほど申し上げたような事例で、乙案を採ると、集合動産譲渡担保については大分前に対抗要件が具備されていたけれども、その後に個別の動産譲渡担保権が設定され、それが更にその後に集合物に加入することになった場合、個別の譲渡担保権が優先するということになりますけれども、例えば、ここで登記優先ルールが適用されることになって、集合動産譲渡担保権についてのみ登記がされていたということになると、加入した当該個別動産については、登記がされた集合動産譲渡担保権が及ぶとともに、個別の譲渡担保権の対象になっており、その優劣関係については登記優先ルールが適用されるので、そこで逆転するのではないかと思っておりました。ここはもし、そうではないというお考えがありましたら、御議論いただければと思っております。 ○道垣内部会長 青木さん、いかがですか。 ○青木(則)幹事 ありがとうございます。基本的には前回とほぼ同じ話でございます。要するに、後発の個別動産譲渡担保がどういうふうに設定されるのかというところがあまり明確でない気がいたしまして。恐らく想定されているのは所有権留保とか、それに準ずるような購入代金担保権のようなものを想定されているのかとも思いますけれども、そうでない形で、全くほかの債権者のために集合動産譲渡担保を設定しておきながら、その目的物となりそうなものを、所有権を取得した瞬間に、ほかの債権者に差し出してしまう、こういうふうな行為にもこのルールが使われてしまわないかというふうな不安を感じたものですから、その辺りのところも踏まえて明確化していただければと思います。集合動産譲渡担保の効力が不必要に弱くならないようにという懸念を持っているという次第でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。青木さんの御懸念があるので甲案、乙案の二つがあるのであって、一方の立場からすると、まず典型例として前提としているのは、第1倉庫というのがあって、そこに搬入されたら集合動産譲渡担保の目的物となるというもので、その第1倉庫以外に、設定者の不動産というか土地はないのかというと、あるというのが多分、典型例としては前提になっているのです。そこに、売主からでも何でもいいのですが、引き渡されたという状態においては、まず、倉庫の外に一旦はあるというのが前提になって、その段階で個別動産の譲渡担保というものが設定されたときに、青木さんはそれで個別動産譲渡担保を勝たせると、集合動産譲渡担保が弱くなりすぎるという懸念があるとおっしゃったのですが、それは全くおっしゃるとおりで、甲案はそれに対応しようとしているのです。しかし、それに対しては、倉庫に加入してないまっさらなというか、何の負担も付いていないものについて個別動産譲渡担保の設定を受けながら、それで後から搬入されたら負けますと、それはおかしいだろうというわけで、青木さんは設定者がそんなことをするのはよくないよねとおっしゃるのだけれども、設定者がそうするのはよくないのですよ。だけれども、個別動産譲渡担保を取得した人から見ると、まっさらな何も付いていないものについて取得をしたのだったら、自分が後になってひっくり返されるというのはおかしいだろうというのも考えられるよねと。したがって、そういうふうなときのために乙案というのがあるということなのです。   それと(2)がどう違うのかというと、(2)は前回、井上さんがおっしゃったところですが、倉庫に入ったら集合動産譲渡担保の目的物になるとなっているのだけれども、では倉庫の周りに、通路でもいいのだけれども、倉庫に3メートル以外に近付いたら集合動産譲渡担保の目的となるという後発的な集合動産譲渡担保を設定してしまったら、倉庫に行く前に、まず3メートル内に近付くわけですから、その段階で後発的な集合動産譲渡担保の目的物になってしまって、そちらが必ず、先になったのだから、勝つということになったら、そんなのは少し大きめ、前が第1倉庫だとなっているのなら、第1倉庫の2メートル以内に近付くというふうに書けば、すぐに後発が勝つということになると、それはおかしいのではないのというのが前回の井上さんがおっしゃったお話で、集合動産譲渡担保との間の優劣については、(2)でそういうふうにやはり設定時というもので考えるというのを筋にして考えるというわけなのです。   長いですが、(3)に戻りまして、二つの考え方があり得るということなのですが、そこで出された青木さんの、では、将来の個別動産について設定者が所有権を取得したらオートマチックに個別動産譲渡担保が設定されるという約定を締結していたら、必ず個別動産譲渡担保が勝つことになることになりませんかという話は、これはまだ残っているのです。笹井さんは今、将来の個別動産譲渡担保がオートマチックに設定されるというふうな約定の有効性というのは前提にしていないとおっしゃったのですが、もちろん前提にしていないのですが、では、我々の現在やっている中間試案において、どこかでそういう約定の効力が否定されているのかというと、否定されていないのです。ただ、将来の占有改定というのが認められるかとか、そういう問題が背後にあるのですけれども、ですから、その将来個別動産譲渡担保の設定の約定についての効力の問題というのは、まだ考える余地は多分あるのだろうと思います。   笹井さんと私の立場がひょっとして違うのかもしれませんが、私の理解としてはそういうふうな形でこの案は出来上がっているのだろうと思います。すみません、少し長くなってしまって。青木さんのお考え、御心配も十分に分かるので、(3)の甲案というのがあるとお考えいただければと思います。 ○阿部幹事 ありがとうございます。乙案に登記優先ルールを適用した場合にどうなるのかということについてなのですけれども、先ほど笹井幹事がその例として、まず集合動産譲渡担保が設定されて、登記がされて、その後、個別の動産について、そこに加入する前に個別の動産譲渡担保権が設定されて、占有改定で対抗要件を備えて、その後、その個別動産が集合動産に加入したというシチュエーションで、このとき登記優先ルールが適用されるので、その逆転、加入時説からすると劣後するはずの集合動産譲渡担保権が登記の時点での順位を主張できるようになって逆転が生ずると、そういう御説明だったと思うのですけれども、仮に今の時系列で、個別動産の譲渡担保権の方も占有改定ではなくて登記だったけれども、登記の時点では集合動産譲渡担保権の登記の方が先だったという場合であれば、どうなるのでしょうか。 ○笹井幹事 乙案によれば、集合動産譲渡担保については加入時で、個別動産譲渡担保についても登記時を比較することになって、個別の方が勝つのではないかと思います。 ○阿部幹事 そうなのですか。前回、両方が登記されたときには、登記の時点をもって順位を決めるというような考え方もあるというような話だったと思うのですけれども、そこでどうして登記の順番にならないのかというのがよく分からなかったのですけれども、それはなぜなのでしょうか。 ○道垣内部会長 甲案を採ればそうなります、阿部さんのおっしゃるように。 ○阿部幹事 いや、乙案の下でどうして。 ○道垣内部会長 乙案のものは、搬入されないと当該動産については当該集合動産譲渡担保の目的物になっていないと考えるので、少なくともそのことを基準時にするので、当該動産に着目したときに、対抗要件がどちらが先になるのということになると、個別動産になるという話ですね。 ○阿部幹事 私は、登記優先ルールが適用される場面においては、対抗要件を具備した時点がどちらが先かという話はもう問題でなくなると考えたのですけれども、そういうふうに登記優先ルールを適用することはできないということなのでしょうか。 ○道垣内部会長 できないというか、そういう案でもよろしゅうございますよ、丙案という。ただ甲案、乙案ではないというだけです。 ○阿部幹事 とにかく、私は、設定時説だと論理必然的にこうなって、加入時説だと論理必然的にこうなるというようなものではなくて、設定時説、加入時説を採ったとしても、いわゆる登記優先ルールの内実がどういうものかによって、結局いろいろな帰結を導き得るのではないかと思います。だから、前回、加入時説でも妥当な帰結を導けるのではないかと申し上げたのは、登記優先ルールにいろいろ読み込んだ結果だったのかもしれませんが、ここでいう登記優先ルールの中身をどうするかということによって、結果として加入時に対抗要件は備えるけれども、順位については登記の時点を基準として、個別動産との関係でも順位を主張できるという考え方もあり得るのかなと思いました。 ○道垣内部会長 分かりました。そして、かつそれは、個別動産譲渡担保の設定を受ける人が、当該設定者の、商業登記簿か何か分かりませんけれども、人で検索してみると、集合動産譲渡担保というものが設定されており、かつ、今現在、自分の個別動産譲渡担保の目的物となろうとしている物が当該倉庫に搬入されるのは性質上、非常に確率が高いということが判断できるということがありますので、正当化できるのかもしれませんね。 ○阿部幹事 はい、私もそういうふうに考えていました。 ○道垣内部会長 可能性として非常によく分かる御見解だと思います。 ○井上委員 井上です。前回コメントを差し上げたとおり、集合対集合で両方が登記している場合に、先に集合動産譲渡担保を設定して登記を備えた方が勝つのであって、加入時説がそこで利いてきて後に設定され登記を備えた集合動産譲渡担保によってひっくり返ることにはならない、という先ほどの御説明に沿った形で今回、(2)のようなくくり出しをしていただいたことは、よかったと思っております。ありがとうございます。   残る3のところですけれども、これは今回、甲案、乙案という形で書いてあるのは、中間試案に両案併記して世に問うということではなくて、ここでどちらがいいか議論するということなのですか。 ○道垣内部会長 それも、今の阿部さんを含めますと3案併記するということもあり得るわけであり、もし仮にここで何とか案だけに中間試案としてはすべきだということでみんながまとまるのであれば、もちろんそういうことになりますけれども。 ○井上委員 ありがとうございます。私も、登記優先ルールの中身については、先ほど事務局あるいは部会長から御説明いただいたように理解していましたので、今、阿部先生がおっしゃった丙案に該当するものは想定していなくて、甲か乙かと考えておりました。この両案を提示して中間試案としてまとめることもあり得るとは思っておりますけれども、どちらがよいのかという点に関しては、私自身は、ここについても甲案ではないかと思っています。   結局、ここで登記優先ルールを採用するとすれば、個別の在庫のようなもの、例えば部品一箱について個別動産譲渡担保を設定して、更に登記をすることは、実際には非常に考えにくいので、個別の在庫であれば、多くの場合、集合動産譲渡担保について先行する登記があれば、その後、個別動産について加入前に個別動産譲渡担保を設定し、占有改定により対抗要件を備えたとしても、集合動産譲渡担保が登記優先ルールによって勝つことになると思います。その意味で、加入時説の問題はそこでも生じないことになるので、甲案と乙案の違いが生ずるとすれば、結局のところ、個別動産が大きな設備機械、例えば太陽光パネルとかで、集合動産譲渡担保の目的物にもなり得る、例えば「工場内の設備機械」や「太陽光発電所の地域内におけるパネル」のように、入替えがたまに起こる、更新がたまに起こるために、将来新たに加入する可能性があるものとして、集合動産譲渡担保を事前に設定して登記を備えた後に、そういったかなり価値の高い個別動産を集合動産の範囲に加入する直前に、設定者が他のレンダーに個別の譲渡担保を設定して登記を備えるようなことをしたときに、それでもなお先行する集合動産譲渡担保を勝たせるのか、その場合は個別譲渡担保を勝たせるべきなのか、この問題に掛かってくるのかなと思います。   ここで在庫を取り上げるとすると、例えば、「コンテナ内の在庫一切」というような形で、入替えはないけれども、非常にたくさんの個別動産の譲渡担保を集合体として設定し登記した後に、それらを、集合動産譲渡担保が設定されている倉庫に搬入する場合も、もしかするとあるかもしれませんが、いずれにしても、登記を個別に備えるだけの価値があるものを想定するのがいいと思うのですが、その場合は、私はやはり、個別動産の譲渡担保を取る人は、まだ集合動産の範囲内に搬入する前かもしれませんが、それだけの価値のある個別動産を担保に取るときは、動産登記制度が整備されることを前提とすると、設定者の行った動産譲渡登記を御覧になって、同種の設備機械を集合的に担保に取っていることを確認できるのではないか、あるいは太陽光パネルを担保に取ろうかなと思ったレンダーは、既にその人が一定地域で太陽光発電の事業を営んでおり、その中のパネルを取り替えることが十分に予測できる形で、既に集合動産譲渡担保が設定されていることは認識できるのではないかという感じがして、そうだとすれば、個別動産の譲渡担保を取るときに、それをそこに搬入するのかどうかを確認できますし、搬入されたら負けてしまうのであれば、別の場所で保管することを約束させるとか、この太陽光パネルは別の場所で使うのですかと確認することもできるのではないかと思いまして、そういったいろいろな手立てをなし得る側が、その約定に違反して設定者が集合動産の範囲内に持ち込んでしまった場合に、そのリスクを取ることは一定程度、受忍すべきではないかと思う反面、先行して、まだそういった個別動産譲渡担保を取ろうとしている人が出てきていない段階で、集合動産を、一定地域の中にある太陽光パネルとか、一定の工場の中にある設備機械を評価して、お金を貸していたにもかかわらず、その後、集合動産の構成物の入替えのときに、次々と先行する担保を他人に取得されてしまうことになると、それはやはり予想外の結果になりますし、それを事前に止める手立ては、約定で止めるしかないということになって、いずれも約定に反する設定者の行為をどう評価するかになるかもしれませんけれども、将来的な不安定性というリスクを負わなければいけないことを考えると、やはりその場合は集合動産譲渡担保権者を保護すべきではないかという価値判断に立って、私はこの場合も甲案でいいのではないかと思っています。ただ、ここは両論あり得る問題かもしれないので、両説を世に問うことでも構わないとは思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。あとお二人まだあるのですが、私、先ほど阿部さんの見解を丙案と言ってしまったのですが、考えてみると、甲案そのものですかね。 ○阿部幹事 いえ、若干違うのは、甲案だとそもそも登記優先ルールの適用がない場面、つまり両方とも占有改定だった場合も、集合動産譲渡担保の設定が早ければ、そちらが勝つということになると思うのですけれども、私は、登記された集合動産譲渡担保権者だけ保護すればいいかなと思っていましたので、両方とも登記を備えていない場面においては乙案のような結果でもいいかなと思っていました。 ○道垣内部会長 なるほど、分かりました。どうもすみません、確認です。 ○沖野委員 ありがとうございます。今の青木先生や井上先生の御説明で大分分かってきたのですけれども、私も加入時説が保護しようとしている局面がどういう場合なのかというのがよく分からないのです。一般的、抽象的には、部会長が御説明くださったような形ですけれども、在庫であると、わざわざ第2倉庫に一旦入った在庫を、そこで更に第1倉庫の方に入れ替えてくるというような場合というのは、余り一般的には考えられなくて、非常に事故的なというのでしょうか、本来は第1倉庫には運び込まないようなものを運び込んだような場合に、加入時説で救おうということになって、非常にイレギュラーなタイプのときという気がいたします。   一方、購入代金を融資供与するという場合については、これは購入代金の担保としての留保所有権ですとか、そちらの方の優先関係の方で決められるということがありますので、そのためにここに加入時説を持ってくる必要はないと思います。かえって、これは青木先生がおっしゃった将来の個別動産になるのかもしれませんけれども、拡大された所有権留保のようなものも加入時説で優先するということにもなりかねなくて、つまり、そこに入れる前にもう所有権留保で拡大した部分まで取っていると、しかもそれをそれぞれの取引のときに契約条項として1項、ほかも担保しますというようなことを入れておけば、将来ではなく個々の取引の際に、これでも担保されるとできるのかと思ったりもしまして、どのくらい加入時前に全部できるのかという問題はあるのですけれども、何か余計なというか、必要のない保護を非常に与えてしまう面もあるように思います。あるいは、必要な保護がほかで図られるものについて与えることになるように思います。   そうすると、在庫のようなものは違って、あり得るとすれば結局それなりの価額があって個別の登記にもなじむ設備ではないかと思うのですけれども、設備について、しかも代金融資であれば、それは代金融資のための担保として優先権を確保するような形で保護すればいいので、代金を融資しているわけではないと。もうそれは全部払い終わっていて、誰のお金で払い終わっているかというと、一般の融資者のお金で払い終わっているのではないかと思うのですけれども、それを、しかも加入というのが前提ですから、第1倉庫なりに備え付けて使うということが普通は想定されているものを、入替えのときに一歩先んじて、入れる前に設定をしておいて、そこからおもむろに入れるというようなとき、そういう場合を保護しようとしているのだろうか。一般的、抽象的には、先に付けていたものがほかに加入させられることによって劣後するのは問題ではないかというようなことはいえるのですが、一体どういうような財産についてどこを保護しようとしているのだろうかというのがよく分からないのです。最後は、設備で、しかし代金は払い済みで、中古で前からあるというものですかねというあたりかと思うのですが、そうすると入替えでもないわけですので、どういう局面をこれで保護しようとしているのかがよく分からないということが一つあります。   一方で、登記優先ルールについては私も、部会長の御説明がそうだったと思いますし、笹井さんや井上先生もそうだったと思いまして、阿部先生のようには考えていませんでした。飽くまで占有ないし占有改定との関係で、対抗要件として登記が優先するというだけなので、ともに登記だと、加入時と、一方で個別の登記との先後で決めるというルールになるので、そうだとすると、とにかく最初に登記さえ取っておけば、後から加入するものについては、個々の動産について個別に逐一登記をして保護を掛けるようなものでない限りは、基本的には大丈夫ということになるので、そう入替えということもないのであれば、それほど問題でもなくなるのかもしれません。余りまとまりがなくて申し訳ないのですけれども、結論から言えば、私は設定時説がいいと思ってはいるのですけれども、加入時説で保護しようという具体的な局面がどういう場合で、それが他の局面に対して、逆に保護する必要がないものまで保護してしまうことにならないかというのが気になっておりまして、抽象的にこうだというよりは、こういう場合が想定されるのでこういうところを押さえようとしているのだという御説明を頂いた方が判断をしやすいのではないかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○片山委員 ありがとうございます。慶應大学の片山です。私としては、やはり甲案、丙案の両案お書きいただいた方がいいのではないかと思い始めております。   今お伺いした限りではかなり設定時説が有力であるので、設定時説のみを書くという方向でも致し方ないかも感じましたが、基本的に、少なくとも理論的に考えますと、集合動産譲渡担保の方は集合の中に入って初めて担保の目的物になるというのが大前提で、外にある限りにおいてはまだ担保の目的に入っていないということになります。その段階で個別の譲渡担保権が設定されたということになると、そこで一応、個別の譲渡担保権の発生という権利関係としては確定しているということなのだと思うのです。それが、後、加入という事実行為によって集合の中に入ってしまうと、元の集合動産譲渡担保の設定行為の時点が基準になるということになりますと、そこで事実行為が介在していることが評価されなくなってしまうのではないかという気がしております。やはり理論的に対抗関係になるのは、法律行為としての設定行為が競合している場合であって、たとえば、そもそも倉庫の中に入っている動産について二重に担保権設定の場合についてであれば、それは法律行為が先になされている方が優先するということで問題ないのですが、(3)の事例というのは、その間に事実行為が介入しているということになるので、理論的には加入時説というのも十分にあり得るのではないかとは思います。   そういう意味でも、やはり甲案、乙案両方を書いて、利益状況の相違点や、理論的な問題点の両面から、いま一度この問題を世に問うという方がよろしいかなと思った次第でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○日比野委員 ありがとうございます。(3)の加入時説について、先ほどの井上先生と沖野先生の議論で大分よく理解できたのですけれども、最初にこの説明を見たときに、輸入ファイナンスの場面では、加入時説というのは観念的には対象になり得るのかなと思っておりました。ただ、沖野先生がおっしゃったような整理というのは非常に合理的で、そのような整理ができる、すなわち輸入ファイナンスの担保の方は別の論理で整理をするというのは非常に分かりやすくて、それであれば特に異論はないと思いました。ただ、これは次の6のところの対象だと思うのですけれども、この部分は中間試案ではかなりいろいろな可能性を示す形になっておりますので、5の方でも6の方でも、どちらの方でも購入代金ファイナンスみたいなものを保護できないというような帰結になるのは避けたいと思いました。   なので、この部分は補足説明などによるというところなのかもしれませんけれども、もし6の方で輸入ファイナンスの保護が余り支持を得られないといったことになるのであれば、ここの乙案という選択肢もあり得るのかなと思いましたので、一応その旨申し上げておきたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかによろしゅうございましょうか。   私はどちらの立場というのはないのですけれども、井上さん、沖野さんがおっしゃったいろいろな事例というのは、非常に説得的ではあるのですが、それは実は現在の集合動産譲渡担保に対応する新しい担保制度を作ったときの、目的物の特定の仕方とかについての一定の制約の方向に行くのではないかなという気が若干するのです。つまり、そこを余り自由にすると、典型例として考えることができにくくなるのではないかと、先ほどの、これが倉庫に運び入れられるとか、原材料、在庫商品なのだからとかというふうなことですね、そこら辺は若干気になるところではあるのですけれども、それは全体のバランスの問題ですから、それがダメだというわけでもないし、それでもなお典型例はそういうものだろうと、しかし、より一般的な特定の仕方というのを認めることは、認めても差し支えなかろうという考え方も十分にありますから、私が申し上げていることはまったく必然的ではありませんけれども、全体のバランスで考えなければいけないところはあるのかなという気はいたしました。   なお乙案、両案併記等を支持される方もいらっしゃいますので、今日の段階で甲案だけで行くのだと決めることはできないと思いますけれども、その辺りも含めまして、検討をもう一度、事務局にしていただきたいと思います。なお、そのときにはやはり沖野さん、井上さんがおっしゃったような、あるいは青木さんもおっしゃったような、典型的な場面に乙案を適用したときに、おかしいのではないのという意見があるということは説明等に十分に書くべきだろうと思いますので、もし仮に両案併記しても、あるいは併記しなくたってそうだよね、乙案というのがあり得るけれども、こういうふうな問題点もあると、しかし、なお可能性としてはあり得ないではないというのを説明に書くということになると思いますけれども、そこら辺を踏まえた説明をしていただくということかなと思いますが、本日のところはそういうところでよろしゅうございますでしょうか。   沖野さんが悩んだ末に、こうしてくださったので、もう一個やらなければいけないことがあり、次回に送るというのがなかなか難しい状況になっておりますので、5のところは御議論を踏まえて更に検討していただくということにいたしまして、「6 留保所有権の対抗要件等」というところに入らせていただければと思います。それでは、事務局から説明をお願いいたします。 ○寺畑関係官 「6 留保所有権の対抗要件等」について御説明をいたします。この点は、部会資料23の記載ぶりがやや分かりにくかったところもございましたので、記載ぶりを修正しております。   実質的に変更があった部分といたしまして、(注2)において、代位弁済等により目的物の売主以外の者が狭義の留保所有権を有する場合に、対抗要件の要否について異なる規律をとる考え方があることを記載しています。また、本文(2)イにおいて、留保所有権について、目的物の代金債権を担保する限度では当然に優先するとの案のみを記載することとし、(注6)において、優先するための要件として、一定期間内に登記を備えることを求める考え方があることを追記しております。   以上の点につきまして御意見を頂ければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。   実は前回の部会が終わった後に、ある幹事の方から、債権譲渡があった場合とかをどういうふうに考えるのかという問題がなお残っているのではないかという話を頂きました。随伴性みたいなものですね、随伴性によって性質が変わるのかという話なのですが、それを全てここで書き切るかどうかは分からないのですが、立替え払いの求償権もそうですが、代位弁済にせよ、債権譲渡にせよ、どうするのかと、それも売買代金担保権の一種になって優先性が認められるべきではないかという話は(注2)のところに若干書いております。しかし、売主ではない第三者がその権利を取得をしたというときには、一般的には取り立てて対抗要件は不要だけれども、そのときには物権変動が生じているわけですから、対抗要件が必要であるということもあり得るということが(注2)に書かれているというふうに御理解いただければと思います。 ○青木(則)幹事 ありがとうございます。資料でいいますと(注3)の位置付けになるのかもしれませんけれども、狭義の所有権留保についても、引渡しではなくて登記だという観点もあるのではないかと思っておりまして、それを問うていただくことはできないものかと思っております。   といいますのは、所有権留保はかなり強力な担保権であるということは確かだと思うのですが、それが公示なくして効力を持つということについて、譲渡担保の場合の状況との平仄の問題があるように思っております。譲渡担保の方について、登記優先ルールという形で、ある程度、登記に優先効を持たせる、公示があるものについて優先効を持たせるという判断をする場合には、やはり所有権留保についても、物権変動の構成がどうなるのかという話とはまた別に、公示自体の要請というものが同じように平仄の合う形であった方がいいのではないかと思っているところもございます。少し変わった意見かもしれませんので、【案4.2.1.3】になるわけではないのかもしれませんが、(注3)のような形ではお示しいただければ有り難いと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。青木さんの(注3)の話なのですが、それは登記をしなければ第三者に対抗できないということを意味して、そういう案としておっしゃっているのか、それとも、登記ができるようにしようという話としておっしゃっているのか、それはいずれでしょうか。 ○青木(則)幹事 基本的に所有権留保の場合は、対抗要件の具備の順序にかかわらず優先するという効力があると思いますので、そういう意味では、その優先の部分で登記優先という形にするのが難しいと思います。ですので、公示がなければ優先効がないという形にした方がいいのではないかと個人的には思っております。 ○道垣内部会長 だから、できることとすることが考えられるというよりは、しなければいけないのだと、登記がなければ効力が主張できないという見解もあり得るということなのですか。 ○青木(則)幹事 欲を言うと、【案4.2.1.3】のような形で、登記がなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとするというふうな提案を頂くことを考えておりましたが、そこまで御検討いただくことは難しいかと存じますので、所有権留保の公示の必要性の点についても御意見をいただきたいという趣旨で、(注3)のようなものを付けていただければと思った次第でございます。 ○道垣内部会長 分かりました。ありがとうございました。 ○井上委員 井上です。度々すみません。(注3)についてなのですが、別の観点ですけれども、拡大された留保所有権についての(注3)として、留保所有権についても登記できるとすることが考えられるということなのですが、ここでいう登記のイメージについてです。ここで想定しているのは、個別の動産についての拡大された留保所有権について登記できるようにするということなのでしょうか。そうすると、設備機械など大きなものが基本的にはベースになるということなのかもしれないのですけれども、そうではなくて、集合動産に似たような形で、継続的売買契約などを特定して、一定の取引範囲における将来の売買目的物をまとめて一括して登記できるようなことを想定して、ここで登記できると書いてあるのか、これはどういう趣旨なのでしょうか。 ○笹井幹事 ここでは集合動産所有権留保というのも、一度議論になったことがあったと記憶しており、もちろんそれを頭から否定するということもないのですけれども、それを前提にして、(注3)において集合動産の所有権留保を可能にしようというところまで考えて書いたわけではなく、(注3)において、拡大された所有権留保においては対抗要件が必要になってくるものですから、その場合に、単なる引渡しだけではなくて、登記も可能にするということを検討しようということで書いたものです。そういう意味では、個別の所有権留保というのを、むしろ典型的なものとしては想定していたということでございます。 ○井上委員 ありがとうございました。ただ、拡大された留保所有権が使われる典型的な場面は、同一当事者間で何度も売買が行われて、特定の1回だけの売買と違って、目的物と売買代金債権が多数生じ得る関係がある場合だと思いますので、そこで利用できる登記としては、典型的には、一個一個の結び付き毎に個別に登記をするというのではなくて、何度も行われる継続的取引という形で特定して、それによって、「私があなたに今後売る売買目的物」を一括して登記できるようにしないと、登記としての利用価値がないのかなと思います。いろいろな場合があるので、個別の登記だけで使える場合ももちろんあると思うのですが、ここで想定している場面を想定すると、むしろ、集合動産所有権留保と呼ぶかどうかは別として、そういった形で登記ができることを想定しないといけないのかなという感じもいたしました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。登記の仕組みをどういうふうにするかということがまだ十分に考えられていないところですので、どういうふうに(注)とかで書くべきなのかというのは微妙な問題があると思いますが、継続的な売買のときにそうなることが多いのではないのというのは井上さんのおっしゃるとおりだと思いますので、多少検討していただくようにしたいと思います。   ほかに何かございませんでしょうか。 ○沖野委員 これも青木先生、井上先生が御指摘になった登記のところなのですけれども、拡大された所有権留保の点について、動産の引渡しがなければ第三者に対抗することができないという、その引渡しをどのように行うのかという問題もあるかとは思いますけれども、恐らく意思表示一本だけなのだろうとは思いますが、ともあれ、ここに(注3)で登記できると書くという点なのですけれども、青木先生は【案4.2.1.3】として、登記がないと対抗できないという考え方として、狭義の留保所有権についてという話をされたのですけれども、今の狭義の【案4.2.1.2】も、動産の引渡しがなければ対抗することができないという規律になっていて、これが何をすれば引渡しになるのかという問題はもちろんあるわけなのですけれども、引渡しを基本とすると、ここも登記をするということができてよいようにも思うのですが、それはこの案の中では排除されていないという理解でよろしいでしょうか、イの方にだけ付いているようなので、さらにはこの後、それをとるのかどうかということですが、優先関係のところで、登記があれば優先すると、ただ、それも一定のグレイスピリオドのようなものを設けて、その期間内に登記すれば優先するというふうにするというときには、【案4.2.1.1】の場合も登記はできると、対抗は当然備えるのだけれどもと、そういうことも結び付くのかどうかということです。現在の案は飽くまで、拡大された所有権のところにだけ登記を、それは井上先生がおっしゃったように、結局、将来の留保所有権付きでの売買と、それから、それぞれの財産からすれば、更に将来の被担保債権という両方に掛かってくると思うのですけれども、そういうものでないと余り意味がないかもしれないということにはなるかと思いますけれども、すみません、(注3)の射程といったらいいのでしょうか、それについて何か、これが前提になっているのだろうかということです。私は少なくとも【案4.2.1.2】には同じように登記があっていいのではないかとも思うものですから、伺った次第です。 ○笹井幹事 おっしゃるように、(注3)は、今の記載だとイだけに係っているようですけれども、確かに【案4.2.1.2】の場面でも、登記も可能にすべきではないかと思いますし、元々それを排除するという趣旨でいたわけではありませんので、これを【案4.2.1.1】も含めて全体として対象にするという可能性はあるかと思います。(注)の場所とか書き方については修正を考えたいと思います。 ○道垣内部会長 よろしくお願いいたします。   ほかにいかがでしょうか。 ○大西委員 大西です。狭義の留保所有権のところでは、例えば設定者である事業者が中小企業だと考えると、やはり取引する相手方である大企業に対して、登記しなければ対抗ができないような制度に留保所有権がなるのであれば、金融機関等に対する譲渡担保権の設定を逆に取引先から制約されるようなことにもなりかねません。そういうことにならないように、狭義の留保所有権については、取引先である留保所有権者が優遇される方向で制度を作らないと結局、設定者が困ることになると思います。   一方、イの拡大された所有権留保の場合は、これはまた少し違う趣旨の利害状況なので、アとイの取り扱いは別で良いと思います。アの狭義の所有権留保の場合は、【案4.2.1.1】、若しくは、【案4.2.1.2】も引渡しというのが簡易に意思表示できるとも読めますので、【案4.2.1.2】のいずれかで考えるべきと思います。ここで登記まで必要なる場面が生じるような制度というのは妥当でないと感じた次第です。   以上、コメントさせていただきます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。大西さんに少し伺いたいのですが、イの拡大された所有権留保の場合にはまた別だけれども、とおっしゃったわけですけれども、例えば、継続的な販売がされると、販売されて、買主の側はそれを適宜使ってもよいのだけれども、一定程度でも売買代金債権の未払い分がある限りにおいては、引き渡された目的物の所有権は一切買主には移りませんと、ただ単に処分はできますと、そういうときには、被担保債権と目的物が一対一対応ではなくなります。そこで、それは、ここでいう拡大された留保所有権というものの一例に当たるだろうというのが井上さんの分析だったわけで、それはそのとおりだろうと思うわけです。しかし、そのようなときも、ある種の、それこそ中小企業が大企業に対してする継続的売買かもしれませんが、一対一対応ではなくなっているからという理由で、そのときには登記が必要だよねという話になると、やはりきついのではないのというのが大西さんの今のお話から出てくるような気がするのです。その点はいかがお考えでしょうか。 ○大西委員 そこはおっしゃるとおりだと思います。私はどちらかというと、通常の取引に全く牽連性がないような債権があって、それについて、これを担保させるような場合はという意味で申し上げたので、今の御指摘された例だと確かにきついのかなと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。だから、つまり、拡大された所有権留保というのも、目的物の代金債権以外の債権というのだけれども、やはりそれは個別的に見るのですよね、だからやはり継続的売買のときにもこの定義に当たってしまうわけですが、確かにかなり話が違いますよね。いろいろな債権を被担保債権にして、売却した目的物の被担保債権として負わせてしまうというのと、一対一対応にはないけれども売買代金債権を被担保債権にしているというのは大分性格が違いますので、そこら辺をまたどう整理するのかという問題もあるのかもしれません。   ほかにいかがでしょうか。   若干、登記の問題とか、幾つか修正意見というものが出ておりますけれども、それ以外のところは、中間試案でございますけれども、こういう形でよろしゅうございますでしょうか。   それでは、御議論を頂いたということで、宿題が幾つか出ておりますので、取りまとめに向けてもう一度、事務局には作業していただくということになりますが、本日の審議はこの辺りにさせていただければと思います。   次回の議事日程等につきまして、事務当局から説明をしていただきます。 ○笹井幹事 本日もありがとうございました。次回日程は令和4年12月6日火曜日午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省7階共用会議室6・7でございます。   次回まで4週間空きますので、今日、特に前半の24について幾つか御指摘いただいたところについて、必要な修正を加えたいと思います。と同時に、部会資料25で取り扱った部分を中心に、第1から第7までについては、まだ中間試案の第2案をお示しできておりませんので、そちらを次回に向けて準備いたします。 ○道垣内部会長 最後に笹井さんがおっしゃったように、1か月空くのとともに、次回でなるべく取りまとめを行いたいと思いますので、この1か月の間に法務省等から皆さんに対して問い掛けが幾つかなされる可能性があります。お忙しいこととは存じますけれども、御協力いただければと思います。よろしくお願いいたします。   それでは、法制審議会担保法制部会の第28回会議を閉会にさせていただきます。   熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。また来月、よろしくお願いいたします。 -了-