改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会 (第3回) 第1 日 時  令和4年11月25日(金)      自 午前 9時57分                            至 午前11時43分 第2 場 所  東京高等検察庁第二会議室 第3 議 題  第2回会議の議事録の公表の在り方について         捜査段階における警察の取調べの録音・録画の実施状況 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○栗木参事官 ただ今から、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会の第3回会議を開催いたします。   本日は、皆様御多用中のところ、御出席くださり、誠にありがとうございます。   本日の会議から、松田構成員に御出席いただいておりますので、自己紹介をお願いいたします。 ○松田構成員 警察庁刑事企画課長として着任しまして、この会議に参加させていただくことになりました、松田でございます。よろしくお願いします。 ○栗木参事官 よろしくお願いいたします。   なお、本日、鈴木構成員は、御都合により御欠席と伺っております。   それでは、まず、事務当局から、本日の配布資料について確認をさせていただきます。資料1及び2は、警察庁において作成していただいたもので、捜査段階における警察の取調べの録音・録画の実施状況に関するものです。   内容については、後ほど、この点について御協議いただく際に、松田構成員から御説明いただきたいと思います。   それでは、議事に入りたいと思います。   前回会議を踏まえて、本日の第3回会議の進行については、まず、捜査段階における警察の取調べの録音・録画の実施状況についての情報共有と意見交換を行い、次に、前回会議で構成員の方から御要望のあった資料につき、事務当局で検討の上、お示しできるものがあればお示しし、更に時間に余裕があれば、公判段階における取調べの録音・録画記録媒体による立証状況についての情報共有と意見交換を行うということとしていました。   また、前回会議においては、河津構成員から、個別事件の証拠の内容を引用する御発言がございましたので、その議事録の取扱いについては、事務当局と御発言者である河津構成員との間で調整することとしていました。   しかし、その後、事務当局と河津構成員との間でこの点に関する調整が付かなかったため、法務省が所管するホームページへの掲載の当否を事務当局として判断するための参考とするため、構成員の皆様の御意見をお伺いすることが適当であると判断いたしました。   そこで、本日の会議では、まず、第2回会議の議事録の公表の在り方についての御意見を伺い、その後、捜査段階における警察の取調べの録音・録画の実施状況についての情報共有と意見交換を行いたいと思います。   まず、第2回会議の議事録の公表の在り方についての意見交換を行う前提といたしまして、事務当局としての基本的な考えを御説明いたします。   本協議会は、第1回会議でも御説明したとおり、刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第9条により、法務省が行う検討に資するため、同法による改正後の規定の施行状況をはじめとする実務の運用状況を共有しながら、意見交換を行い、制度・運用における検討すべき課題を整理するために開催するものです。   こうした趣旨に鑑みますと、本協議会においては、個別事案への言及自体が一切否定されるわけではありませんが、その程度については、その趣旨との関係で一定の限度があると考えられます。   今回、議事録上で公開するかどうかが問題となっている河津構成員の御発言は、個別事案の取調べにおける具体的なやり取りであって、開示された証拠の内容と思われるものを逐語で摘示する形で再現するものであり、そのような御発言に際しては、その内容が刑事裁判手続の中で裁判所の判断によって確定している場合を除き、発言内容に係る事実関係や評価について、構成員の間で意見の対立が生じ、それ自体が本協議会で議論を行う上での争点となり、その点の議論に多くの時間が費やされることとなるおそれがあること、また、そのような議論の結果として、構成員間において、当該個別事案の事実関係やその評価についての共通の認識が得られるとは限らないこと、いずれにしても、そのような特定の一事案のみに関する具体的かつ詳細な情報は、制度・運用全体の評価を行う上で必要となるとは言い難いことなどから、本協議会の趣旨である制度・運用における検討課題の整理に資するものとはいえず、先ほど申し上げた一定の限度を越えたものであると考えられたため、当該取調べにおける具体的なやり取りを中心とした御発言を非公開とさせていただきたい旨御提案しましたが、残念ながら、河津構成員からの御了解が得られなかったところでございます。   河津構成員から、もし、この点に関する御意見があれば、頂きたいと思います。 ○河津構成員 今の御説明では、当該事件の取調べにおける具体的やり取りの部分を非公開とする旨の御提案を頂いたというお話でしたが、実際には、この事件に関する外形的な事実を含めた全体について非公開とするという御提案であったと記憶しておりますが、そのような理解でよろしいでしょうか。 ○栗木参事官 そのような理解で結構です。 ○河津構成員 それを前提に意見を述べさせていただきます。第1回協議会では、プライバシーに関わる内容のものなど、公表することが適切でない議事内容について、例外的に非公開の扱いとすることが確認されました。事務当局からお送りいただいた議事録案を確認させていただきましたが、プライバシーに関わる内容は含まれておりませんでした。第1回協議会でも御紹介のあった、公文書管理法の施行に伴い定められた行政文書の管理に関するガイドラインでは、発言内容を記載した議事の記録を作成することが求められています。そして、公文書管理法第1条には、公文書等が健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであるとの考え方が示されています。   私が御報告した内容は、公務員である検察官の公務の執行中の言動であり、それは、プライバシーや捜査上の秘密に具体的に該当しない限り、主権者である国民に共有されるべき情報です。法務省あるいは検察庁の立場から、それを非公開の扱いとすることを求めることは、それ自体が適切さを欠くものと申し上げざるを得ません。   改正刑訴法附則9条1項は、取調べの録音・録画が取調べの適正な実施に資することを踏まえて、制度の在り方について検討することを求めていますから、捜査段階についていえば、取調べの録音・録画制度の導入により取調べの適正な実施という目的がどの程度達成されているのかが、検討の基準となるべきです。   第2回会議において、事務当局から、公表資料を中心とした統計数値の御説明を頂きましたが、そのような数値をどれだけ見ても、取調べの適正な実施がどの程度達成されているのかは全く分かりません。取調べの適正な実施がどの程度達成されているのかを認識するためには、取調べの録音・録画がされている場合及び取調べの録音・録画されていない場合の双方の取調べの実態を共有する必要があります。供述証拠の収集が適正な手続の下で行われるべきことは言うまでもないということは、法制審議会特別部会の基本構想の段階で共通認識として確認されているのですから、事務当局はもちろん、検察や警察で把握されている不適正取調べの事案についても、むしろ積極的に明らかにしていただいた上で、取調べの適正な実施を実現するためにどのような見直しが必要かを議論すべきであると考えます。 ○栗木参事官 それでは、構成員の皆様から御意見や御質問等を頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○成瀬構成員 先ほど、事務当局の基本的な考え方として、前回の河津構成員の御発言のうち、個別事案の取調べにおける具体的なやり取りに関する部分は非公開にしたいという御意向が示されましたが、その場合、前回の河津構成員の御発言のうち取調べに係る部分は、議事録上どのような記載とされるのでしょうか。 ○栗木参事官 構成員の御発言の全部又は一部を議事録上非公表とする場合に、当該御発言を議事録上どのように示すかについては、個々の御発言ごとに判断することになりますが、これまでに法務省で開催した法制審議会や検討会等の議事録の中には、個別事案の内容にわたる発言部分について、括弧を付して、「事件の概要について説明がなされた」、「具体的事例を紹介」などと記載しているものがございましたので、本協議会の議事録についても、同様の記載とすることが考えられるかと思います。 ○小林構成員 まず、河津構成員の発言についてですけれども、今回の発言はそのまま議事録に載せることが適当だと考えます。隠されると、逆に、どんなひどいことが書かれているのかと、読んでいる側の妄想が膨らんでしまうのではないかということも懸念いたします。   その前段として、この協議会で個別の事案を共有することの必要性についてですが、個別の事案を検討の俎上に上げること自体の必要性については、この場にいる構成員の皆様が共有していると考えています。ただ、今回明らかになったように、この協議会の目的に照らして「必要かつ相当な限度」がどの程度なのかについては、人によってかなり考え方が違うと感じています。私は、「必要かつ相当な限度」の程度は、録音・録画を導入した制度の趣旨から判断すべきではないかと考えます。   録音・録画を導入した目的は、捜査段階での取調べの適正化と公判段階での公判の任意性立証に資することの二つだと理解しています。公判での任意性の立証に役立っているかどうかは、今後、公判段階での検討において、統計や争いになった具体例を基に議論すればいいと思いますが、取調べが適正に行われているかどうかを検証するためには、裁判所の判断を経ていないものであっても、その実態を知ることは不可欠ではないかと考えます。なぜなら、裁判所の判断を経ていない取調べも多いからです。また、同時に、録音・録画の導入により捜査側にどのような不利益が生じているのかも、事例に基づいて具体的に知りたいと考えているところです。   先ほど、事務当局から、いわゆる水掛け論といいますか、評価が異なる事案を取り上げることについて危惧する旨の説明がありましたけれども、例えば、弁護人側がこのようなひどい取調べがあったと言った場合、捜査側が反論したいことがあれば、反論していただければいいですし、それはむしろ国民の判断に役立つのではないかと思います。更に言うと、そもそも、この協議会で、取調べが適正であったかどうかを裁判所のように判断する必要はないのではないかと思っています。   新たな刑事司法制度の基本構想には、「刑事司法は、被疑者・被告人、被害者をはじめとする事件関係者、国民一般が、それぞれの立場から納得し得る国民の健全な社会常識に立脚したものでなければならない」と書かれています。裁判所の判断が示されているかどうかに関わらず、議事録を読んだ国民が、取調べが適正に行われているかどうか、このような取調べがあることについてどのように思うかを考える材料を示すという整理をすればいいのではないでしょうか。そこには、裁判所や専門家が考える「違法だ」又は「違法ではない」という法的な判断とは別の、一般常識に基づく尺度や考え方の基準があると思うからです。   今回の河津構成員の発言について、事務当局からは先ほど、取調べの状況を逐語的に紹介したことが問題だという御説明がありました。ただ、私は、河津構成員が検察官の発言を詳細に紹介された理由は、むしろ、フェアに正確を期そうとしたからではないかと思っています。例えば、捜査官が「黙秘は損だ」というようなことを言った前後には、「黙秘をするのは自由である」とか、「黙秘に不利益は本来ないが今更の黙秘だから」といった発言もあって、ある程度の長さで紹介しないと、逆に、一部を切り取っていると言われかねません。   今回、御紹介されたやり取りの中には、黙秘権を行使したら不利に取り扱われるという発言や、黙っているなら家族を取り調べざるを得ないというような脅しにも取れるような発言があったこと、大声でどなりつけるような場面もあったことなどが紹介されました。議事録には、このような具体的な発言が分かる形で残してもらう必要があると思います。削除されたり、「具体的な事例を紹介」という抽象的なまとめられ方をされたりしては、どのような発言が問題だったのかが分からなくなってしまいます。誰のために、何のために議事録を公開するのかということを考えれば、黒塗りは極力避けるべきだと思います。 ○栗木参事官 私の説明を補足させていただきますと、この協議会において、個別事案への言及が一切否定されるわけではないということは、重ねて申し上げておきたいと思います。この協議会の趣旨は、第1回会議から説明しているとおりであり、制度・運用における検討課題の整理に資する限度で個別事案を御紹介いただくことは、許容されるところです。そうしますと、取調べにおけるやり取りを逐語で紹介することが許されるかどうかの判断は、個々の御発言ごとに行うほかないわけですが、制度・運用における検討課題の整理に資する限度で個別事案を御紹介いただくという観点からは、逐語で取調べのやり取りを紹介しなければならない事態は考えにくいのではないかと思っておりますし、その分量についても、おのずと限度があるのではないかと思っています。 ○藤井構成員 第2回会議における河津構成員の御発言は、取調べの適正化に対してまだまだ課題があるという問題意識を披れきされるための端緒としてお話しになられたものであり、個別事件の取調べの当否等について意見をおっしゃる趣旨ではないと理解しており、恐らく、構成員の皆様もそのような御認識だと思いますので、先ほど分量というお話も栗木参事官の方からありましたけれども、第2回会議で河津構成員が御発言された程度の分量でこのような発言があったということを公開することは、可及的に広く国民の皆様に公開するという意味でも良いのではないかというのが私の意見です。むしろ、議事録のことより、中身の議論にもっと入っていきたいと、率直なところとして感じております。 ○佐藤構成員 前回の会議で具体的な事例の紹介がございましたが、そのこと自体は、私のように実務に携わっていない構成員もおりますことから、取調べの実情を知って構成員の間の認識をできる限り共通にするという意味で、有益な側面があると思います。   ただ、既にいろいろな御指摘がされておりますが、一定の程度を超えた詳細さで個別事案を紹介することについては、本協議会の趣旨との関係で、制度・運用全体の評価を行う上で必要かつ相当とされる限界を超えないか、という問題はやはり残ると思われます。具体的な事例を紹介していこうとすれば、その数や範囲に関しては際限がないということにもなりかねませんので、本協議会の趣旨との関係では、その事例が、特定の事案に対する評価にとどまらない、制度や実務の運用における一般的な課題を整理するのに資するものであることが必要だと考えます。   紹介された事例の事実関係や捜査手段としての適否、得られた証拠の証拠能力の有無についての評価に関する、構成員の間の意見の相違から、その点をめぐって本協議会の趣旨から外れた議論に多くの時間が費やされる事態は回避したいところです。   また、その具体的事例の共有に際して、一般論としては、関係者の名誉やプライバシーを侵害するなどの弊害も考えられますので、相応の配慮も要請されるものと思います。   そして、そうした点に関わる前提として、刑事訴訟法による規律について意識しておく必要があると考えます。例えば、刑事訴訟法47条は、訴訟に関する書類は公判で公にされる前は非公開であることが原則であることを定めたものですが、これは、一般に、訴訟に関する書類が公開されることによって、被告人・被疑者その他の訴訟関係人の名誉その他の利益を不当に害したり、裁判に不当な影響を及ぼしたりすることがあるということから、これを防止することを目的としていると解されています。刑事訴訟法47条の適用を受けるものとして、例えば、不起訴処分がなされた事件における書類など公判で公にされていない訴訟書類がありますが、今申し上げた同条の趣旨に照らしますと、このような書類に記載された内容を口頭で公にすることについても、それが許されるか否かは、個別に、公益上の必要のほか、関係者の名誉やプライバシーへの影響、将来のものを含めた捜査・公判への影響の有無等も考慮して判断されるべきだと思われます。   構成員において、公判で公にされていない訴訟に関する書類に記載された取調べにおけるやり取り等を逐語で一定程度以上に明らかにすることは、本協議会の趣旨との関係で、それがどこまで一般的な課題の整理に資するか、明らかではなく、公益上の必要との関係で難があるのではないかと思われます。こうした刑事訴訟法による規律の趣旨についても考えた上で結論を出す必要があるものと考えております。 ○河津構成員 佐藤構成員から頂いた御指摘について、一言だけコメントさせていただきます。私どもも、刑事訴訟法47条については、弁護活動を行う上で留意する必要のある条文であることは理解しております。ただ、今回私が報告した内容は、訴訟に関する書類の内容という以前に、私が担当した事件の被疑者が直接体験した事実です。公務員である検察官から公務の執行中に不適正な言動を受けた場合、当該被疑者やその弁護人がこれを公に批判することができるのは当然であって、刑事訴訟法47条はそれを妨げるものではないと理解しております。 ○佐藤構成員 ただ、そうした批判をこの場で行うことが適切かという話になりますので、結局、本協議会の趣旨との関係で、公益に資するものといえるか、といった形で整理すべき問題であろうと考えます。  ○吉田構成員 今、佐藤構成員がおっしゃったことと重複する気もいたしますが、ここで今議論しているのは、議事録に掲載して法務省の行政文書として公開するかどうかということです。個々の弁護人がそれぞれ取り扱われた事件の情報を個人の責任で公にされる場合とはやはり性質が異なっており、行政文書として作成し、一定期間保存し、国民一般に向けて公表するということになりますので、行政文書としての適否の問題が当然入ってくると思いますし、刑事訴訟法47条の趣旨と抵触しないかどうかを考える上でも、政府としての基本的な考え方と整合する対応を取る必要があると考えております。 ○成瀬構成員 先ほど、藤井構成員からも御指摘がありましたが、協議会の時間が限られている中で、議事録の公表の在り方について長々と議論を続けることが、本協議会の趣旨・目的にかなうとは思えません。よって、この問題についてはなるべく早く結論を出して、本日の本題である警察の取調べの録音・録画の実施状況に関する議論に移るべきであると考えます。そのことを前提に、河津構成員の御発言の議事録上の取扱いについて、私の意見を申し上げます。   事務当局がおっしゃる理由及び佐藤構成員と吉田構成員の御意見に鑑みますと、私も、河津構成員の御発言を逐語のまま議事録に掲載することは適切ではないと考えます。ただ、冒頭で私が確認させていただいたところによりますと、事務当局の御提案は、「具体的事例を紹介」の一言で済ませるというものですが、そのような取扱いとすることにもやや躊躇を覚えます。その理由は2点あります。   第1に、前回の会議におきまして、河津構成員は、在宅の被疑者の取調べの実態について、個別事例を取り上げて、取調べの期間や回数、時間を明示して、簡潔に説明されましたが、その発言内容を議事録に掲載することに異論を差し挟む構成員はいなかったと認識しています。そうだとすれば、今回問題となっている個別事例についても、その概要を議事録に掲載することは否定されないと思います。   第2に、前回の議論の後半部分は、河津構成員の御発言をきっかけとして展開されたわけですが、議事録において、その御発言を「具体的事例を紹介」の一言で済ませてしまった場合、議事録を読む国民が、本協議会で問題となった事項を正しく理解することができなくなるように思います。先ほど、小林構成員から、発言を隠すと、かえって国民の疑念を招くおそれがあるという趣旨の御発言がございましたが、そのような観点も意識する必要があると思います。よって、発言内容を要約することは必要ですが、もう少し河津構成員の発言内容が明らかになった方が、国民への説明責任の実現という観点からは望ましいと思われます。   以上の理由により、私は、河津構成員の発言内容を簡潔に要約する形で議事録に掲載するのが良いのではないかと考えております。必要であれば、次の協議会までの間に、構成員全員に議事録案を回覧して、異議がないかを確認する手続を踏んでも良いと思います。このような方針で議事録を作成することについて、河津構成員及び事務当局は、どのようにお考えでしょうか。 ○河津構成員 構成員の皆様の御意見を伺っても、冒頭で申し上げたとおり、プライバシーにわたる内容ではなく、公務員である検察官の公務執行中の言動についてできる限り正確に国民に共有することが妨げられるべきではないと思います。ただ、不適正な取調べによる深刻な人権侵害は日々生じている問題であり、制度の見直しは喫緊の課題ですから、このようなやり取りに審議の時間を余り費やすべきでないという点については、藤井構成員及び成瀬構成員の御指摘のとおりかと思います。行政権に属する事務当局が主体となって発言の内容を審査し、不適当と認めるものを不開示とするということは、検閲の禁止の趣旨にも抵触すると思われることから、私の方で発言を要約する方向で検討しますので、本来の協議事項に移っていただきたいと思います。  ○栗木参事官 事務当局の意見を申し上げますと、先ほども申し上げたとおり、本協議会において、個別事件の内容やその関連証拠の内容を触れること自体がおよそ不適切だと言っているわけではなく、開示証拠の内容自体を口頭で明らかにすること自体が刑事訴訟法281条の4に違反するわけではないと考えておりますが、今問題としておりますのは、開示証拠の複製等の内容が口頭で明らかにされるにとどまらず、それが議事録に掲載されて公表された場合は、開示証拠の複製等を第三者に提示することと実質的に同じであると評価できるのではないかということであり、そうしますと、刑事訴訟法281条の4第1項の趣旨にも反すると考えられるのではないかなと感じるところでございます。議事録を法務省のホームページで公表するとなりますと、行政文書になり、文書作成者の責任もございますので、公表に当たっては、先ほど申し上げた観点からの検討も必要ではないかと考えているところです。  ○小林構成員 その方向でまとめていただいて結構だと思いますが、その際に御留意いただきたいのは、具体的な発言をきちんと残してほしいということです。逐語的に全てを議事録に残すのが難しいことは理解しましたけれども、黙秘権を行使したら不利に取り扱われるような発言というのは、何を言ったからそう受け取られるのかという具体的な発言を残していただかないと、議事録を読んだ人は分からないと思います。該当部分を全て削除するのは非常に乱暴なやり方ですし、まとめていただくにしても、具体的な発言のどこが問題なのかが分かるような形で残していただきたいと思います。 ○宮崎構成員 特定の事件の取調べの話をつぶさに取り上げることが適切でないということは、前回私の方で申し上げたとおりです。今回問題になっている箇所は、結局のところ、録音・録画の記録媒体を閲覧して知り得た内容、要するに、開示された証拠の内容そのものなのだろうと思うところです。そのようなかぎ括弧付きの発言、つまり、抜き書きされた発言を基に、皆様は、それぞれ、取調べが適正だと思うかそうでないかの印象を持っておられるのだと思いますが、そのような断片的に取り上げたもので評価が分かれ得るような話を前提に議論をするのは適切でないということを、前回申し上げたかった次第です。具体的な発言を残すべきかどうかについても、そのような観点から御検討いただいた方がいいと思います。かぎ括弧付きの発言が本当に必要なのかどうかは、慎重に考えていただきたいと思います。 ○河津構成員 先ほども申し上げたとおり、私が報告した内容は、第一次的には、私が担当した事件の被疑者が直接体験した事実であるということは、重ねて申し上げたいと思います。取調べの録音・録画の趣旨は、取調べを事後的に検証可能なものとすることによって取調べの適正な実施を確保するものであるのに、録音・録画されていることをもって、被疑者が体験した取調官の不適正な言動を公にすることが妨げられるというのは、本末転倒であると申し上げざるを得ません。   ただ、先ほども申し上げましたとおり、このテーマに協議の時間を費やすことは合理的ではないと思いますので、今回頂いた各構成員の御意見も踏まえて、発言内容を記載すべきものとしている公文書管理法に基づくガイドラインの趣旨に沿って対応することとしたいと思います。 ○栗木参事官 それでは、第2回会議の議事録の公表の在り方についての意見交換は、この程度とさせていただきます。  第2回会議における河津構成員の御発言部分を、法務省のホームページに掲載する議事録上、どのように取り扱うかについては、本日の御議論も参考としつつ、事務当局において、最終判断したいと思います。   それでは、続いて、捜査段階における警察の取調べの録音・録画の実施状況についての協議に移りたいと思います。   まず、松田構成員から、資料の内容について御説明を頂きたいと思います。   松田構成員、よろしくお願いいたします。 ○松田構成員 資料を2点お配りしております。資料1は、平成31年4月26日付けの「取調べの録音・録画について」と題する警察庁刑事局長通達であり、資料2は、「警察における取調べの録音・録画実施状況」と題する警察庁作成の統計資料です。   それでは、順を追って説明をさせていただきます。   まず、資料1の刑事局長通達を御覧ください。この通達は、改正刑事訴訟法が令和元年6月1日に施行されることを踏まえ、警察庁から各都道府県警察に対して、録音・録画制度の概要、努力義務として行う録音・録画制度の概要、運用上の留意事項等を示したものでございまして、現在でも、警察においては、この通達に基づいて取調べの録音・録画を実施しています。資料2の統計資料の前提となる内容を含んでおりますので、通達の内容についてまずは簡単に説明をさせていただきます。   まず、1ページの「1(1) 録音・録画制度の概要」を御覧ください。ここでは、刑事訴訟法301条の2の規定のうち、警察において録音・録画が義務付けられている事件を「ア 制度対象事件」として示しています。具体的には、皆様御承知のとおり、裁判員裁判対象事件等になります。1ページの「イ 録音・録画義務」では、制度対象事件について、逮捕若しくは勾留されている被疑者の取調べ又は被疑者に対し弁解の機会を与えるときは、例外事由に該当するときを除き、取調べの録音・録画をしなければならないことを、その下の「ウ」の例外事由については、刑事訴訟法301条の2第4項に示された例外事由、具体的には、「(ア)」の機器の故障等の場合、「(イ)」の録音・録画の拒否等の場合、「(ウ)」の指定暴力団に係る事件の場合、「(エ)」の加害等のおそれがある場合を記載しています。「エ」では、検察官の証拠調べ請求義務について記載しております。   3ページ目の「(2) 録音・録画制度上の留意事項」を御覧ください。「ア 録音・録画すべき取調べの範囲」についてですが、録音・録画制度は、どのような罪で逮捕・勾留されているかに関係なく、逮捕・勾留されている被疑者の取調べが制度対象事件についてのものである場合は、録音・録画の義務が課されることから、警察では、制度対象事件以外の事件で逮捕・勾留されている被疑者を取り調べるとき等であっても、取調べが制度対象事件に及ぶ見込みがある場合については録音・録画を行うことを示しております。このような制度対象事件以外の事件で逮捕・勾留されている被疑者の取調べが制度対象に及ぶ見込みがある場合のケースを、警察では見込み事件と呼んでいます。この見込み事件に当たるか否かの判断は各都道府県警察が行っておりますが、制度対象事件に話が及ぶ蓋然性が一定程度考えられる場合には、広く、録音・録画を行っております。このため、録音・録画を行ったものの、結果として制度対象事件に取調べが及ばなかった事例も含まれております。「イ 例外事由の適用」では、例外事由に該当するか否かは、第一次的には、捜査機関が、その取調べ等の時点を基準として、それまでに収集した証拠や把握した事実関係、当該取調べ等における被疑者の供述等に基づいて判断することを記載しております。   続きまして、3ページの「2 精神に障害を有する被疑者に係る取調べ等の録音・録画」についてです。「(1) 録音・録画の努力義務」におきましては、国家公安委員会規則である犯罪捜査規範182条の3第2項に規定された努力義務、具体的には、逮捕・勾留されている被疑者が精神に障害を有する場合であって、その被疑者の取調べ等を行うときは、必要に応じ、取調べ等の録音・録画をするよう努めなければならないことを記載しております。   「(2) 実施判断」では、精神に障害を有する被疑者について、知的障害、発達障害、精神障害等、広く精神に障害を有する被疑者である旨を示した上で、これらの障害を有する被疑者であって、言語によるコミュニケーション能力に問題があり、又は取調官に対する迎合性や被誘導性が高いと認められる者については、事件における証拠関係、被疑者に与える精神的負担や供述への影響等を総合的に勘案した上で、可能な限り広く録音・録画するよう記載しております。さらに、3ページの最後から4ページの冒頭にかけて記載しておりますが、障害の有無に関する判断を早期に行うことが困難な場合には、専門家による判断を殊更待つ必要はなく、一定程度その可能性が疑われると判断できた段階で、対象として取り扱って差し支えない旨を示しております。   また、4ページの「(3) 特性への十分な配慮」では、被疑者の特性を十分に理解し、適切な方法により取調べを行うこと、具体的には、取調べ時間や取調官の発問方法、態度に配意するとともに、供述の任意性、信用性等に疑念を抱かれないよう、供述調書の作成方法等を工夫することを示しております。   「3 1及び2に該当しない場合の録音・録画」では、これまで説明した制度対象事件や「2」の精神に障害を有する被疑者以外の取調べの録音・録画について、個別の事案ごとに、被疑者の供述状況、供述以外の証拠関係等を総合的に勘案しつつ、録音・録画を実施する必要性がそのことに伴う弊害を上回ると判断されるときに実施することができる旨を示しております。   次に、「4 録音・録画を実施する際の留意事項」では、担当検察官との緊密な連携、被疑者への録音・録画の告知、録音・録画実施状況報告書の作成について示しております。   「5 録音・録画記録媒体の取扱い」では、取調べを録音・録画したブルーレイディスク等の記録媒体の保管・管理について別に定めることとしており、具体的には、保管・管理体制を確立すること、施錠設備がある保管庫を保管設備とすること、録音・録画記録媒体の保管期間、廃棄時の留意事項等について、別途通達で定めております。   最後に、「6 警察庁への報告」において、録音・録画の実施状況についての警察庁への報告について示しております。   資料1の説明は以上でございます。   続きまして、資料2「警察における取調べの録音・録画実施状況」について説明いたします。まず、1ページを御覧ください。グラフが上下段に分かれておりますが、グラフの上段は、過去5年間に警察で実施した取調べの録音・録画実施の総件数となります。令和元年6月以降は、改正刑事訴訟法等に基づく実施でございまして、黄色で示した「刑訴法上の義務対象」という部分は、義務化された制度対象事件の取調べ等を録音・録画した件数になります。グラフに灰色で示した「その他」の部分は、義務対象以外の事件を録音・録画した件数になります。具体的に言いますと、資料1で先ほど説明させていただいたいわゆる見込み事件の取調べ、精神に障害を有する被疑者の取調べ及びそれら以外の場合になります。具体的な数字につきましては、令和3年度について申し上げますと、録音・録画を実施した総件数は1万1874件です。そのうち、義務対象が2316件、その他が9558件であり、割合でいうと、義務対象が2割で、それ以外の実施件数が8割となっております。   続きまして、グラフの下段は、上段に示した取調べの録音・録画実施件数に対する録音・録画の総時間になります。令和3年度について申し上げますと、録音・録画を実施した総時間が16万1440時間36分で、そのうち義務対象が5万7696時間6分、その他が10万3744時間30分です。義務対象及びその他の定義については上段と同じであり、割合でいうと、義務対象が4割であるのに対して、それ以外が6割となっております。   2ページを御覧ください。今の総論の話を、もう少し詳細に、数値を基に説明していきたいと思っております。まず、「(1) 警察が録音・録画すべき取調べの範囲における実施状況」についてです。表中の令和元年度の数値は、改正刑事訴訟法が施行された6月以降のものを記載しております。また、「制度対象事件等」と記載しておりますが、これは、義務対象事件に、先ほど御説明した見込み事件、つまり、制度対象事件以外の事件で逮捕・勾留されている被疑者を取り調べる場合で、取調べが制度対象事件に及ぶ見込みがある場合の件数を加えたものとなります。この見込み事件の件数は、内数として別枠に示しております。「録音・録画実施件数」という欄が左から3段目にございますが、例えば、令和3年度で申し上げますと、これが3181件であり、うち見込み事件は865件です。   「@ 制度対象事件等の録音・録画実施件数等」についてですが、「対象事件等検挙件数」とは、制度対象事件及びその見込み事件を検挙した件数でございます。そのうち、取調べ等の一部でも録音・録画を実施した件数が、先ほど御説明した「録音・録画実施件数」です。実施率の3年間の平均は97.3%となっておりまして、実施率が100%となっていないのは、例外事由に該当する等の理由により録音・録画を実施しなかったものが281件あるためです。この例外事由の内訳等につきましては、後ほど説明を差し上げます。次に、「全過程実施件数」及び「実施率」については、表に記載されているとおりであり、実施率の3年間の平均は94.9%となっております。先ほどと同様に、例外事由に該当する等の理由により取調べ過程の一部について録音・録画を実施していないものが241件ございます。   次に、「A 録音・録画実施回数及び1件当たりの回数」についてです。「録音・録画実施回数」は、逮捕・勾留中の被疑者を留置場から出場させて取調べを行うごとに1回として計上したものであり、1件当たりの実施回数の3年間の平均は12.2回となっております。   次に、「B 1件当たりの録音・録画時間」についてです。これは、逮捕・勾留中の被疑者に対して録音・録画を実施した時間を計上したものであり、1件当たりの実施時間の3年間の平均は24時間3分となっております。   次に、3ページを御覧ください。「C 取調べ1回当たりの録音・録画時間」についてですが、逮捕・勾留中の被疑者に対する取調べ1回当たりの実施時間の3年間の平均は1時間58分となっております。   次に、「D 罪種別実施事件数」についてです。これは、3年間で取調べの録音・録画の実施事件数が多い順に並べております。最も多い罪種が強盗致傷等であり、次いで殺人となっておりまして、合計18の罪種で取調べの録音・録画を実施しているところです。   次に、「E 全部・一部不実施件数・理由」についてです。全部不実施とは、対象事件検挙件数のうち全ての取調べ等の録音・録画を実施しなかったものであり、令和元年度は6月以降で83件、令和2年度は82件、令和3年度は116件です。一部不実施とは、対象事件検挙件数のうち取調べ等の録音・録画を行ったものの、その一部について録音・録画を実施しなかったものであり、令和元年度は6月以降で98件、令和2年度は74件、令和3年度は69件です。   不実施の理由は、大きく二つに分けられます。一つは、刑事訴訟法に規定された例外事由に該当する場合であり、表の中に、「@」から「C」の「例外事由別件数」の欄で示しています。見ていただくと分かりますが、特に多いものが「B」指定暴力団員による犯罪でございまして、全部不実施の大部分が当該除外理由によるものとなっています。もう一つが、表の中に「その他」と記載した部分であり、これは、例外事由に該当しないが、装置の操作ミス等により不実施になってしまったものです。具体的には、開始ボタンの押し忘れ、ブルーレイディスクの容量超過、対象外事件と誤認した等の事例がございます。   続きまして、4ページを御覧ください。「(2) 制度対象以外の取調べの録音・録画実施状況」についてです。これは、冒頭の1ページのグラフにおいて「その他」と記載した灰色の部分になります。大きく「ア」、「イ」、「ウ」に分かれておりまして、「ア 取調べが制度対象事件に及ぶ見込みがある場合の録音・録画実施状況」、「イ 精神に障害を有する被疑者に係る取調べ」、「ウ その他」に分けて御説明いたします。   まず、「ア 取調べが制度対象事件に及ぶ見込みがある場合の録音・録画実施状況」についてです。これは、先ほど少し説明しましたが、制度対象以外の事件で逮捕した被疑者の取調べを、制度対象事件の取調べに及ぶ見込みがあるとして、録音・録画を行ったものです。罪種別の件数について見ますと、3年間で合計86罪種について録音・録画を実施しており、上位10種の罪種は表に記載されているとおりです。イメージを持ってもらうために具体的に申し上げますと、傷害が表の一番上に来ておりますが、傷害については、制度対象の傷害致死等を見込んでの取調べ等が、覚醒剤等の薬物事犯については、例えば、覚醒剤譲渡事犯について、制度対象である麻薬特例法違反を見込んでの取調べが、死体遺棄については制度対象である殺人や保護責任者遺棄致死等を見込んでの取調べが、窃盗については制度対象である強盗致傷を見込んでの取調べ等があるものと承知しております。   続きまして、大きな類型の二つ目である「イ 精神に障害を有する被疑者に係る取調べ」についてです。警察では、令和元年6月の改正刑事訴訟法の施行に合わせ、犯罪捜査規範に、逮捕・勾留されている被疑者が精神に障害を有する場合で、その被疑者の取調べを行うときの録音・録画の努力義務を規定しており、公的認定等で判明している知的障害、発達障害、精神障害等の病名にとらわれることなく、被疑者の言動や家族からの聴取結果等も考慮し、言語によるコミュニケーション能力に問題がある又は取調官に対する迎合性や被誘導性が高いと認められる者については、可能な限り広く録音・録画を実施することについては、先ほど資料1で説明いたしました。   「イ」の「@ 対象事件等検挙件数、録音・録画実施件数等」の表を御覧ください。3か年の実施件数は表に記載されているとおりであり、毎年増加しています。全過程「実施率」を御覧ください。全過程の実施率は約82%と、制度対象事件に比べて低くなっていますが、これは、逮捕当初は、精神障害等に該当するかが判然とせず、録音・録画を実施しなかったが、その後、精神障害等が判明したり、コミュニケーション能力に問題があると判断したりして、途中から録音・録画を実施したケースについては、一部不実施に計上しているためです。なお、「※」で記載したとおり、実施件数には制度対象事件等の被疑者が精神に障害を有する者であった1324件が重複して計上されていますが、1ページのグラフではこの重複部分は除いています。   次に、「A 録音・録画実施回数及び1件当たりの回数」についてです。「録音・録画実施回数」とは、制度対象事件と同様でございまして、逮捕・勾留中の被疑者を留置場から取調室に出場させて取調べを行うごとに1回として計上したものです。1件当たりの実施回数の3年間の平均は5.7回となっています。1件当たりの実施回数が制度対象事件と比べて少なくなっているのは、制度対象事件と異なり、軽微な犯罪も含まれているからであると思われます。   続きまして、5ページを御覧ください。「B 1件当たりの録音・録画時間」についてですが、これは、逮捕・勾留中の被疑者に対して取調べの録音・録画を実施した時間を計上したものになります。1件当たりの実施時間の3年間の平均は10時間32分となっています。   次に、「C 取調べ1回当たりの録音・録画時間」についてですが、逮捕・勾留中の被疑者に対する取調べ1回当たりの実施時間の3年間の平均は1時間50分となっています。   次に、「D 罪種別実施件数」についてです。上段の表は、先ほども説明しましたが、制度対象事件と重複して実施した1324件の内訳を、下段の表は、制度対象以外の事件で実施した2万2905件の内訳を、それぞれ、上位10罪種とその他に分けて、3年間で多い順に並べたものです。   最後に、6ページを御覧ください。義務対象以外の大きな類型の3番目である「ウ その他」の取調べの場合について説明します。先ほど、資料1で説明したとおりですが、刑事訴訟法上の義務対象ではなく、また、法律上の義務対象外ではあるものの通達上実施することとしている見込み事件や、精神障害を有する被疑者に係る事件にも該当しない場合でも、個別の事案ごとに、被疑者の供述状況、供述以外の証拠関係等を総合的に判断しつつ、録音・録画を実施する必要性がそのことに伴う弊害を上回ると判断されるときには、取調べの録音・録画を実施しております。   録音・録画の実施件数については、表に記載されているとおりです。この表は、第2回会議における親家構成員提出資料に掲載していたものに一部修正を加えたものであり、河津構成員から御要望のあった、身柄不拘束の被疑者の取調べの録音・録画実施件数を、内数として記載しております。「その他」の実施件数には、制度対象事件で逮捕した後、これと関連する制度対象事件以外の事件について逮捕・勾留されている被疑者を取り調べる場合や、起訴勾留中の被告人を制度対象事件について取り調べる場合等が含まれておりますが、内数として記載した「身柄不拘束」は、いわゆる起訴勾留中でも何でもない、逮捕・勾留されていない被疑者を制度対象事件について取り調べる場合を意味しています。   資料2の説明は以上ですが、最後に、資料はございませんが、警察が取調べの録音・録画制度を適切に運用するために必要不可欠な装備である取調べの録音・録画装置について説明させていただきます。   現在、警察では、全国に約4000台の録音・録画装置を整備して運用しております。この装置には、大きく分けて2種類ありまして、設置型と可搬型に分かれております。まず、設置型から説明しますと、設置型というのは、例えば、刑事課等にモニターや記録部分の本体部分を設置し、取調室に固定カメラやマイクを設置している装置でございます。既に設置されているものですので、設置準備が不要であり、例えば、現行犯人逮捕をした事案等、即座に取調べをしなければならない事案への対応に不可欠な装置でございます。   もう一つの可搬型ですれども、可搬型は、文字どおり持ち運びができるため、録音・録画装置が設置されていない施設での取調べや、機器が故障又は台数が不足した場合の転用等、柔軟な運用が可能です。その反面、セッティングに一定の時間を要するため、現行犯人逮捕をした事案等、すぐに取調べを開始する必要がある場合の使用には不向きであるというデメリットもございます。   これらの装置の整備に関する基本的な考え方は、取調べを行うこととなる全国の警察施設に、少なくとも設置型と可搬型を各1台ずつ整備しておりまして、その上で、犯罪の発生状況を踏まえて、必要な式数を追加で整備するというものでございます。この考え方に基づいて、令和元年度までに約4000台を整備し、現在は、この台数を維持するために、古くなった機器の更新・整備をしているところです。御参考までに申し上げますと、現在、全国の警察施設には取調室が約1万2000室ございますので、4000台となりますと、約3分の1の取調室への配備ができているということになります。   なお、装置の不足による録音・録画の不実施件数が、改正刑事訴訟法の施行前の平成30年度までは多数発生していましたが、令和元年度に約4000台まで整備が進んで以降は、ゼロとなっています。このような理由から、現在の録音・録画の実施件数を維持するためには、現状の約4000台の装置が必要だと考えております。   最後に、装置の単価でございますけれども、令和4年度の予算単価で、設置型が1台約170万円、可搬型が1台約70万円となっています。少し高いと思われるかもしれませんが、高額になっている理由として、高度な改ざん防止機能等を付加していることが挙げられます。各都道府県警察では、装置の耐用年数である7年ごとに更新・整備を行う必要がありまして、警察庁が補助金を交付しているものの、財政的な負担が多いのは実情であります。   以上が、録音・録画の実施に当たっての装置の整備状況ですが、今のところ、4000台を適切と考えているところですが、更新費用が高額になるなど、現状としては、課題も多くなっています。   以上で、私からの説明を終わらせていただきます。 ○栗木参事官 ありがとうございました。ただ今の御説明について、御質問などはございますでしょうか。 ○吉田構成員 今御説明のあった可搬型の録音・録画機器を使う場合、取調室のどのぐらいの範囲が録画されるものなのでしょうか。検察庁の場合、それなりの範囲をカバーするように機械を設置していると承知しておりますけれども、可搬型を用いたときに映る映像の範囲について、教えていただけますか。 ○松田構成員 可搬型につきましても、基本的には、取調室全体が映る形になっており、被疑者のほか、取調官の姿が映るものと承知しています。 ○河津構成員 今回の資料で、身柄不拘束事件における録音・録画の実施件数を追加していただき、御対応に感謝申し上げます。   衆参両院法務委員会の附帯決議において、録音・録画が義務付けられる場合以外の場合についても、できる限り録音・録画を行うよう努めるべきことが求められておりましたが、弁護人としての経験に基づいて申し上げると、警察については、制度対象以外の取調べの録音・録画はほとんど行われていないという印象を持っておりました。   令和4年の警察白書によりますと、令和3年の刑法犯の検挙件数は全国で26万4485件ということですから、これと比較しても、いわゆる見込み事件の865件、精神に障害を有する被疑者に係る9112件、それ以外の取調べ26件というのは、非常に少ないように思われます。   令和3年でいうと、26件のそれ以外の取調べについて、先ほど、対象事件逮捕後に別件の取調べを行う場合、起訴後勾留中に取調べを行う場合、身柄不拘束で対象事件の取調べを行う場合があるという御説明を頂きましたが、実際、それ以外の取調べで録音・録画をしているのは、これらの場合に限られているのでしょうか、それとも、個別の判断で行うこともあるということなのでしょうか。もしお分かりでしたら、教えていただければ幸いです。 ○松田構成員 それ以外の場合としてどのようなケースが想定されるか分かりません。逮捕前に行った任意段階の取調べや、逮捕後に処分保留等で釈放になった後の任意の取調べもございますし、更に言えば、逮捕することなく行った任意の取調べも、この3年間の数値には含まれています。 ○河津構成員 それは、被疑事件やもともとの捜査の対象になっていた事件が対象事件であった場合ということでしょうか。 ○松田構成員 身柄不拘束の合計36件の対象事件は、いわゆる制度対象事件のもの以外のものはありません。 ○小林構成員 ハード面についても教えていただきありがとうございます。先ほど、4000台について適切だという御説明でしたが、これは、対象事件と精神に障害を有する被疑者に対する取調べ以外にも録音・録画の対象を広げようと思った場合には足りないという御認識ですか、それとも、もう少し広げる余地はあるという感じですか。 ○松田構成員 先ほど、資料1で示したとおり、その点については、現在、個別事案ごとに必要性を判断した上で行っている状況であり、現状では、4000台で賄えている状況です。ただ、録音・録画の対象を広げるという検討といいますか、録音・録画を実施するかどうかの判断は、個別の事件ごとに行っているものであり、録音・録画の対象が増える、増えないは、個別の判断の積み重ねです。今のところ、個別事件における判断の積み重ねの結果としては、4000台で賄えていると判断しているところでございます。 ○小林構成員 なぜお聞きしたかというと、この数字を拝見して、精神に障害がある人の取調べもありますが、対象事件以外はほとんど録音・録画が実施されていないという印象を受けました。検察庁が、身柄事件でみると、対象事件以外でも90%以上は録音・録画しているのに比べても、やはり、余りに消極的ではないかと感じているところです。   先ほど、河津構成員もおっしゃいましたが、法律で求められている事件以外でもできる限り録音・録画を行うように努めるべきという、国会からの要請に応えられていないのではないかと感じているのですが、それは機器が足りないからなのか、それとも、法律で求められているところをやるというところで止まってしまっているのか、その辺りをお聞きしたいと思います。 ○松田構成員 止まっているということではありませんが、結論から言うと、装置不足によって録音・録画ができていないということではございません。飽くまでも、資料1で示した個別事件の判断の積み重ねにより行った件数です。 ○成瀬構成員 河津構成員と小林構成員が質問された点に関連して、資料1の4ページの「3」にある個別の事案ごとの判断について、もう少し詳しくお考えを伺いたいと思います。この警察庁刑事局長通達によりますと、録音・録画を実施する必要性と、そのことに伴う弊害を比較衡量して、録音・録画を実施するか否かを判断することになっていますが、警察においては、録音・録画を実施する必要性とそのことに伴う弊害のそれぞれの中身について、どのようにお考えでしょうか。   前回の会議において、宮崎構成員は、検察の立場から、録音・録画を実施する必要性として、公判段階における供述の任意性や信用性の立証に備える必要性に言及され、また、録音・録画に伴う弊害として、被疑者の口が重くなることや関係者の名誉、プライバシーが害されるおそれがあることを挙げておられましたが、警察においても、同様の事情を考慮しておられるのでしょうか。もし、これら以外の事情も考慮しておられるのであれば、併せてお聞かせいただければ幸いです。 ○松田構成員 基本的には、公判を見据えた犯罪立証のために必要がある場合ということなので、同じなのだと思います。弊害につきましても、やはり、供述を得られにくくなるというのが一番でございまして、その他に、プライバシーの問題もありますので、基本的に同じと考えていただいて結構です。   ただ、一言付言させていただければ、警察と検察の取調べの違いはやはりございまして、それは、警察は、第一次捜査機関として、事案の最初に対応するということです。かなり早期の段階から事案の真相を幅広く解明しなければいけないということであり、このように事案の真相を解明することが強く国民からも期待されていると認識しております。このような理由から、警察としては、特に、録音・録画によって被疑者が供述を躊躇しかねないという弊害について、より慎重に判断を行っていく必要があると考えておりまして、そのような個別の判断の積み重ねが、資料2の6ページの「ウ その他」の件数だと考えております。 ○佐藤構成員 ただいまの御説明の中に、供述を躊躇しかねないという言葉がございましたが、録音・録画されると被疑者が供述を躊躇するというのは、どのような心理からだと理解すればよいでしょうか。 ○松田構成員 一般的に、録音・録画下で自分の犯行を認めたくないという部分もございますし、私の経験した具体的事例で申し上げても、遺族のことを悪く言う部分を録音・録画されたくないという気持ちもありますし、実際、自白していた被疑者が録音・録画下で否認をする状況等もございますので、心理に関する適切な言葉は分かりませんが、自分をよく見せたいという気持ちは誰しもあるのではないのかと思います。 ○藤井構成員 前回の会議で配布された配布資料7には、被害者・参考人の取調べの録音・録画を行った件数が記載されていましたけれども、警察ではそのような統計数値は特に取っていないのでしょうか。 ○松田構成員 今、手元にある数字で申し上げますと、被害者・参考人の聴取、特に児童虐待等において、検察や児童相談所と共に行う代表者聴取については、警察でも録音・録画をしております。代表者聴取は、検察官が行う場合、警察官が行う場合、児童相談所が行う場合がございますけれども、例えば、令和2年度で申し上げますと、児童に対する代表者聴取の実施件数が2124件のところ、うち警察官が聴取したものが405件になります。 ○佐藤構成員 資料2の2ページの「A 録音・録画実施回数及び1件当たりの回数」の表の下の「※」に、「回数」の数え方について、「留置場からの出場ごとに1回で計上」と書かれていますが、これは、例えば、午前と午後、続けて取調べを行う場合、その間に一回留置場に戻ったときは、2回として計上しているという理解でよろしいですか。 ○松田構成員 基本的にはそのとおりでございまして、例えば、午前と午後に取調べを実施する場合に、午前中の取調べ終了後、昼食のために被疑者に留置場に戻ってもらい、その後、午後に出場させて取調べを実施する場合や、面会や弁護人との接見のために留置場に戻る場合などについては、その度に回数を計上しています。 ○成瀬構成員 資料2の2ページの「B 1件当たりの録音・録画時間」によれば、録音・録画制度対象事件等の1件当たりの総録音・録画実施時間は約24時間とされています。同じページの「@ 制度対象事件等の録音・録画実施件数等」の表によれば、制度対象事件等の約95%は全過程で録音・録画が実施されていますから、約24時間という数字は、制度対象事件の1件当たりの取調べ時間の総量の近似値ということができると思います。   そのような理解を前提に、私がお伺いしたいのは、取調べの録音・録画を行うようになる前と後で比べた場合に、事件1件当たりの取調べ時間の総量に変化はあったのかという点です。平成23年10月に警察庁が公表した「警察における取調べの実情について」と題する文書では、録音・録画制度対象事件の典型といえる殺人事件と傷害致死等事件の1件当たりの平均取調べ時間がそれぞれ約65時間30分、約61時間30分とされており、今回お示しいただいた約24時間という数字と大きな差があるように感じました。そこで、この点について、松田構成員の捜査官としての実感を教えていただければ幸いに存じます。 ○松田構成員 なかなか難しい質問で、結局、個別事件でどの程度取調べを行うかの積み重ねになってしまうので、一概には、録音・録画を行っているから取調べ時間が減少したといえるものではないと認識しています。その他のいろいろな要因があってのことだと思いますので、申し訳ございませんが、お答えがなかなか難しい部分でございます。いろいろな要因があると思いますので、我々としても更にいろいろ分析を進めたいと思いますけれども、繰り返しになりますが、個別事件の積み重ねの結果でございますので、確定的なことを申し上げるのは難しいと思います。 ○成瀬構成員 様々な要因の中の一つとして、取調べにおいて黙秘をする被疑者が増えたという事情は、影響していないのでしょうか。 ○松田構成員 これは、本当に、私の感覚になりますけれども、被疑者が黙秘をしている事件だからといって取調べを行わないかというと、そうでもないので、一因としてなくはないかもしれませんけれども、必ずしもそれが要因になっているとも思えないところです。 ○河津構成員 日本弁護士連合会では、全国の弁護士から不適正な取調べの報告を受けておりますが、ここでは、国家賠償訴訟が提起されており、かつ録音・録画又は録音によって取調べの状況が客観的に記録されている津地方裁判所、奈良地方裁判所及び和歌山地方裁判所の事案について御報告いたします。   まず、津地方裁判所の事案では、令和4年3月10日に、三重県に対して賠償を命じる判決が言い渡されています。判決では、三重県警察の取調官が、窃盗被疑事件の被疑者に対して、黙秘権の告知を一切しなかったばかりか、否認していた被疑者に対して、泥棒に黙秘権があるかという趣旨の発言をしたほか、同じ内容の問答を執拗に繰り返し行い、被害者に対する謝罪を求め、繰り返し犯人であると断定し、被疑者のこれまでの人生を否定する趣旨の発言をし、逮捕する、刑務所に入れるなどといった恫喝的な発言を繰り返したと認定されています。この事件では、被疑者が取調べの状況を録音しており、取調官が、被疑者に対し、泥棒に泥棒扱いして何が悪いのか、泥棒が何を言っているのか、人に迷惑かけてどれだけ根性が腐っているのかという趣旨のことを申し向けて取調べをする状況が記録されています。   次に、奈良地方裁判所の事案では、奈良県警察における実弾の紛失事件について、これは、後に紛失していなかったことが明らかになったものですが、窃盗を疑われた被疑者が鬱病を発症し、令和4年8月5日に国家賠償請求訴訟が提起されたものです。この事案でも、被疑者が取調べの状況を録音しており、取調官が、どちらにしてもあなたのせいになる、犯人はあなたしかいない、うそを言うな、いろいろな罪を掘り下げて何度でも逮捕するという趣旨のことを申し向けて取調べをする状況が記録されています。   そして、和歌山地方裁判所の事案は、令和4年10月7日に和解が成立しています。この事件では、和歌山県警の取調官が、暴力行為等処罰に関する法律違反被疑事件の被疑者に対し、馬鹿なのか、犯罪者のくせに、うそつきだな、泣かす、どつき回すという趣旨のことを申し向けて取調べをする状況が記録されています。   この和歌山地方裁判所の事案は、録音・録画が実施されていたとのことであり、津地方裁判所及び奈良地方裁判所の事案については、代理人が録音データを当協議会に提供することができるとのことです。このような取調べが被疑者に対しどの程度の精神的苦痛を与えるものであるのかは、実際の音声を視聴していただかなければ正しく評価することはできないと思われます。前回、実際の取調べの記録を視聴することについて消極的な意見が述べられましたが、実態を共有するために、視聴することを重ねて求めたいと思います。 ○吉田構成員 以前申し上げたことと同趣旨ですけれども、具体的な案件についての証拠の内容にわたるものをこの場で視聴することは適切ではないと考えています。 ○栗木参事官 それでは、本日予定していた議事についてはこれで終了いたしました。本日は捜査段階における警察の取調べの録音・録画の実施状況について、警察庁作成の資料に基づいて情報共有、意見交換を行いました。その中でも、更に共有が必要と思われる情報等についての御意見を頂戴しましたが、ほかに御意見、御質問はございますか。 ○小林構成員 ちょっと戻ってしまって申し訳ありません。松田構成員にお聞きしたいのですが、先ほど、成瀬構成員から、一件当たりの取調べ時間が61時間、65時間から随分短くなっているが何がどう変わったのかという御質問がありました。個人的な感覚で結構なのですけれども、実際に短くなっているという感覚はありますか。 ○松田構成員 私も、つぶさに全ての事件を見ているわけではないので、その点については申し上げることはできません。飽くまでも、現場で私が取り扱った事件では、取調べ時間がそこまで短くなってきたという感覚はなかったものですから。繰り返しになりますように、個別事件の積み重ねになりますので、その点についての評価を申し上げることは避けたいと思います。 ○小林構成員 もちろん、個別事件の積み重ねだということは分かるのですが、半分以下だとすると、かなり短くなったという感じを受けます。そういう実感はありますかという質問でも、難しいですか。 ○宮崎構成員 先ほど成瀬構成員が挙げていただいた数字の母数と、資料2の2ページの「B 1件当たりの録音・録画時間」の表の内訳が一致しているのかという問題があると思います。恐らく、同じ対象犯罪についての取調べ時間を言っているわけではないのではないかと思いますけれども。 ○成瀬構成員 その点は、宮崎構成員の御指摘のとおりでして、私が言及した平成23年10月の警察庁資料の対象犯罪と、今回の資料2の2ページにある「B 1件当たりの録音・録画時間」の表の対象犯罪が一致しているわけではありません。  先ほどの私の質問は、そのような限界があることを重々承知の上で、現時点で入手可能な録音・録画制度開始前の取調べ時間に関するデータを一つの手掛かりとして、録音・録画制度が取調べ時間の総量を変化させたかという点について、松田構成員に対し、捜査官としての実感をお尋ねする趣旨のものでした。 ○松田構成員 私は、前任が大分県警の本部長であり、その前には、殺人事件を担当する警察庁の捜査一課長をしておりました。殺人事件の認知件数自体は、ここ数年、横ばいでございますが、いわゆる捜査本部事件といわれる難しい事件の件数は減っております。そういった動機や犯行態様の解明に時間を要する事件が減っている可能性は、肌感覚としてなくはないと思います。そのようないわゆる社会的反響の大きな事件は、現在もなくはないですが、昔に比べれば減っているという感覚は、その事件を見てきた者の立場としていえるのではないかと思います。ただ、それが要因であるとは申しておりません。 ○栗木参事官 そのほかの御意見や御質問は、よろしいでしょうか。   第4回会議におきましては、これまで御要望があった資料について、事務当局からお示しできるものをお示ししたいと思います。監察関係のものについても、このような場で公表することを前提として作成されているものではございませんので、おのずと限界はございますが、どのようなものをお示しできるかは、事務当局で検討したいと思います。第4回会議においては、そのような御要望があったものをお示しした上で、捜査段階における取調べの録音・録画の実施状況についての追加の情報共有、意見交換を行い、その後、公判段階における取調べの録音・録画記録媒体による立証の状況についての情報共有と意見交換に入りたいと思いますが、そのような進め方とすることでよろしいでしょうか。 ○小林構成員 先ほど河津構成員が紹介された三つの事件についての扱いがどうなるのか、また、日弁連さんの方で収集した、問題がある取調べの事例集を記者会見で紹介されていますが、どこかのタイミングで出していただけるのか教えて頂けますでしょうか。他にも、録音・録画をしていない段階の取調べが問題になり、新聞記事になっている事案もあると思いますが、そういう事案を協議会で取り扱うことは可能なのか、どうなのか。 ○栗木参事官 一つ目の、三つの事件の取扱いというのは、先ほど河津構成員がおっしゃっていた裁判になっている事件に関する取扱いという御趣旨でしょうか。 ○小林構成員 はい。 ○栗木参事官 それについての何をお求めなのでしょうか。 ○小林構成員 三つの事件については、河津構成員の方から資料を出していただけるのでしょうか。 ○河津構成員 お求めがあれば提供可能であると、代理人に確認しております。 ○栗木参事官 第4回会議で資料を提出することを希望される場合には、前回と同じように、締切日を設定させていただきますので、事前に事務当局に送付いただければと思いますが、もっとも、個別の事案についてどこまで共有するのかについては、おのずとその限度があることは、これまでの議論でも出てきたところかと思います。ですので、そのような観点からの検討も必要かと思いますが、事前に御送付いただいた資料については、事務当局において確認させていただいて、必要に応じて、どのような形で御提出いただくかについて、御相談させていただきたいと思っております。   あと、新聞で取り上げられた事案についておっしゃっていたかと思いますが、御質問はどのような趣旨でしょうか。 ○小林構成員 これも個別具体的な事案になってしまうのですが、例えば、3人が逮捕されて、2人はしゃべったのにお前だけがしゃべってないというような、いわゆる切り違え尋問があったとか、「有罪になっても罰金刑で執行猶予付きで終わるんだから認めろと言われた」というようなことをお話しされている元被疑者・被告人の方のインタビュー記事が掲載されています。そういう事案があるということを、記事の御紹介だけでなく、実際にお話を伺えるのであれば有り難いと思ったのですが、可能なのかどうかということです。 ○栗木参事官 御本人から直接お話を伺うということでしょうか。 ○小林構成員 そうですね。もし、それが難しいのであれば、弁護人の方から資料を出していただくとか。 ○栗木参事官 これまでの議論では、個別の事件に関する当事者からのヒアリングについては、協議会の趣旨との関係で問題があるのではないかという意見が強かったのではないかと理解しているところです。いずれにしましても、資料という形で提出を希望されるということであれば、先ほど御案内したとおり、事務当局の方にお送りいただくことは差し支えございませんが、協議会の趣旨との関係で、やはり、直接お話をお伺いすることは、いろいろな問題があるのではないかと思ったところでございます。 ○吉田構成員 どのような資料を出されるかによるかとは思うのですけれども、例えば、新聞報道の切り抜きのようなものを考えたときに、そこからいえることは、そのような報道があったということまでではないかと思います。インタビューに対して特定の人が答えた内容が本当にそのとおりなのかどうかは、この場にいる我々では判断のしようがないと思いますので、そのような資料をこの場に提出することについては、慎重な検討が必要ではないかと思います。 ○栗木参事官 ほかに何か御質問はございますか。よろしいでしょうか。   第4回会議は、平成4年12月23日午前10時から開催することを予定しておりますが、詳細については、追ってお知らせいたします。   それから、第4回会議で資料を提出することを希望される場合には、準備の都合上、事務当局に事前に御送付いただきますよう、お願いいたします。提出期限については、追って御連絡いたします。   それから、本日の会議における御発言で、具体的な事件に関する御発言などもございましたので、御発言なさった方の御意向を改めて確認の上、非公開とすべき部分がある場合には、該当部分を非公開としたいと思います。   それらの具体的な範囲や議事録上の記載方法等については、その方との調整もございますので、事務当局に御一任いただきたいと思います。   そのような取扱いとさせていただくことで、よろしいでしょうか。              (一同異議なし)   それでは、そのようにさせていただきます。   本日はこれにて閉会いたします。どうもありがとうございました。 −了−