法制審議会 区分所有法制部会 第2回会議 議事録 第1 日 時  令和4年11月25日(金) 自 午後1時30分                       至 午後4時01分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  区分所有建物の再生の円滑化に係る方策(1) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○佐久間部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会区分所有法制部会の第2回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。   本日は増田委員、衣斐幹事、加毛幹事、吉政幹事が御欠席です。   では、初めに配布資料の確認をさせていただきます。事務局からお願いします。 ○山根関係官 お手元の資料について御確認を頂きたいと思います。事前送付資料としまして、部会資料2「区分所有建物の再生の円滑化に係る方策(1)」がございます。また、参考資料として、国土交通省作成のパワーポイント資料「マンションを取り巻く現状について(1)」をお送りしております。お手元にないものがある場合には、途中でも結構ですので、事務局の方にお知らせください。 ○佐久間部会長 それでは、本日の審議に入ります。   本日は、区分所有建物の再生の円滑化に係る方策について御審議いただきます。長い時間が掛かりますので、途中で適宜休憩を入れながら審議を進めたいと存じます。   まず、事務当局から部会資料2の「第1 建替えを円滑化するための仕組み」のうち「1 建替え決議の多数決の割合の緩和」について説明を頂きます。お願いいたします。 ○山根関係官 部会資料2では、区分所有建物の再生の円滑化に係る方策を取り上げており、1ページ目から、建替えを円滑化するための仕組みを取り上げております。参考資料として国土交通省から資料を提出いただいておりますが、こちらについては部会資料の補足説明部分で引用している各種数値のソースとして御覧を頂ければと思っております。   まず、1ページ目のゴシック部分ですけれども、建替えを円滑化するための仕組みとして、建替え決議の多数決割合の緩和を取り上げております。今後二つの老いが進行していくことを考えれば、老朽化区分所有建物の再生の円滑化は喫緊の課題であり、その観点からは、再生のメニューとして区分所有法に設けられている建替え決議を円滑化することが考えられるところです。他方で、建替え決議が成立した場合には、建替えに参加しない者の区分所有権が建替えに参加する区分所有者に移転することになるため、各検討においては少数反対者の利益にも留意する必要があるものと考えられます。  1ページ目のゴシック部分においては、多数決割合を緩和する場合の案としましてA案からC案を記載しています。   まず、A案は、現在5分の4とされている多数決割合を単純に引き下げるものです。この案による場合には、要件を充足していることの判断は容易であると思われますけれども、他方で、老朽化をしていないような建物についても建替えを円滑化する必要性がどの程度あるのかといった点や、建替えに反対する者にとっては区分所有権を制約される度合いが現在よりも強化されることになるため、これをどのように正当化するかといった点を検討する必要があると考えられます。   次に、B案ですが、これは建替えを行う必要性が高いと考えられる一定の客観的事由がある場合に多数決割合を引き下げるものです。  まず、B-1案は、建築時から相当年数が経過した場合には類型的に老朽化している区分所有建物が多いと考えられるとして、一定の年数が経過した場合に多数決割合を引き下げるものです。この案についても、先ほどのA案と同様に、要件充足を明確に判断することができると考えられますが、年数をどのように定めるかについて検討する必要があると考えられます。   次に、B-2案ですけれども、区分所有建物が安全性を欠いている場合には、建替えによって区分所有建物の内外の住民の危険を除去する観点から、建替えを行う必要性が高いのではないかということで、安全性を欠いていることを示す一定の事由がある場合には多数決割合を引き下げるというものです。事由については、マンション建替え円滑化法の特定要除却認定基準と同様のものを記載していますが、これを規定するとしてもどのような手続とするのかといった点などについて検討する必要があると考えられます。   次に、B-3案ですが、被災区分所有法において、災害により大きなダメージを受けた区分所有建物についての建替えの特則規定は現在存在しませんので、そのような建物に関する特則を設けてはどうかということで記載をしております。   そして、C案ですが、全員同意がある場合に多数決割合を引き下げることを可能とするものです。区分所有者全員の同意を得ることは実際上難しい側面もございますので、基本的には今後新たに建築される区分所有建物の原始規約で定められることが想定されます。区分所有者間で実態に沿った多数決割合を定めやすくなる可能性もある一方で、多数決割合が引き下げられた区分所有建物を取得するニーズというものがどの程度あるのかなどについて検討する必要があると考えられます。   また、(注1)及び(注2)などに記載をしておりますけれども、例えば、A案を採って多数決割合を単純に引き下げつつ、加えてB案に記載するような一定の事由がある場合や全員同意がある場合には更に多数決割合を引き下げることも考えられると思われます。また、B案の各事由についても、B-1案からB-3案の全てを採用して規定するということも考えられると思われます。   簡単ではございますが、建替え決議の多数決割合の緩和に関する説明は以上でございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   それでは、ただいま説明がありました「1 建替え決議の多数決の割合の緩和」、部会資料では13ページまでの部分について御意見を伺いたく存じます。どの点でも結構です。 ○鎌野委員 途中で退出しますので、今の案について私の現時点での考え方というのをお示しをして、一つのたたき台ということで議論していただければと思います。   順番に、今の御説明のところですけれども、やはりこの点については要件引下げということで、正当化の事由が必要であると、それはおっしゃったとおりで、私の考えるところは、建物については効用とか維持に要する費用などをもちろん考慮したとしても、永久不滅のものではない、建物は物理的あるいは社会的な寿命というのがあるので、その場合に区分所有建物の場合にはどういうふうに考えるかというと、やはりそういう区分所有建物という本質から、相当多数の区分所有者の判断によって決定されるべきものであろうということで、これは現行法の5分の4というのもそのとおりでございます。   そうすると、ここで相当の多数というのが問題になる。案に示されているのは4分の3、3分の2に引き下げるなどの案がございますけれども、結論から申し上げますと、私はA案としては4分の3まで、もちろん現行の5分の4でB案を4分の3という考え方もあり、それについても特に反対ではございませんけれども、やはりA案の4分の3というのを採りつつ、B-2案の、そういう安全性などに欠けるようなものについては3分の2にまで引き下げてよろしいのかなと。ただ、ここのところはいろいろな検討が必要かと思います。   それで、B-3案ですけれども、ここでは4分の3ではなくて3分の2ということですけれども、やはりこういった指定災害の場合には復旧ということが非常に大きく関わりますし、それから現行の制度が、多くの自治体などでとられている制度を鑑みますと、公費解体という制度がもし維持されるのであれば、やはり復興の重要性ということから、3分の2ぐらいまで引き下げたらいかがなものかと考えております。   B-1案については、これも以前の研究会の方で申し上げたように、やはり何か一定の年数というのを設けるのは、それぞれの区分所有建物によって異なるので、なかなか難しいだろうと。何年にするかという問題もありますけれども、B-1案についてはそのように考えております。   当面少し駆け足で私の意見を申し上げさせていただきました。どうもありがとうございました。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。早めに退出されるということなので、1点確認をさせていただきたいのですけれども、多数決要件の割合を引き下げるに当たっては、いろいろな事情を考慮しなければいけない、正当化事由が必要だとおっしゃったわけですが、A案において4分の3に引き下げるというお考えの、そこでおっしゃる正当化事由というのはどういうところにあると鎌野さんはお考えでしょうか。 ○鎌野委員 先ほど申し上げたように、現行は5分の4なのですけれども、これは最高裁も言っていますように、やはり過半数を相当超える者の多数が必要であると。そうすると、まあ数字から行けば、恐らく区切りのいい数字でしょうけれども、4分の3ということであれば、A案の場合ですね、相当な多数と考えることができるのではないかと、そういうふうに考えております。これはある意味では政策的な判断というか、そして、現実に5分の4はなかなか難しいけれども、4分の3の区分所有者が賛成すれば、A案のように、特にB案のような客観的な要件がなくても可能であると考えていいのではないかということで、飽くまでも先ほど申し上げたように相当の多数の区分所有者が自分たちの区分所有建物の運命をどう考えるかというようなことで、そういうことで私は正当化できるのではないかと、そもそも区分所有建物の本質的な事由ということでございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。御自由に。 ○浅見委員 ありがとうございます。私はむしろA案は3分の2にして、B-2案で場合によっては過半数というようなこともあり得るのではないかと考えております。そもそも今回の改正論議をなぜ始めたかというと、やはり建替えを円滑化しなければいけないという社会的なニーズが非常に高いということだと思います。今、鎌野先生が言われたのは、相当のというふうにおっしゃったのですけれども、3分の2でも反対者の権利を賛成者の権利の2倍に見ているという見方もできると思いますので、3分の2でもそれなりにかなり大きな配慮をしているのではないかと考えます。   B-2案で過半数というのは、少しドラスティックと思われるかもしれないのですが、これについては場合によっては所有者が訴訟のリスクだとか、そういうものを抱えるということになると思うのです。万が一剝落して誰かを傷つけてしまったという場合にそれなりの責任が生じるというふうになります。そういったようなときに、ハードルを高くして何もできないというような状態にするというのは、まずいのではないかと考えます。   ただ、この議論はここだけでできることではなくて、母数に何をどこまで含むかという議論と密接に関わってくると思います。これまで白票ですとか、ないしは不明の人たちを全部反対と同等に扱うということではあったのですけれども、そうでなくすれば、場合によっては今、鎌野先生が言われたような割合でもいいのかなと思うのですが、いずれにせよ今回の研究会ないしは改正論議がなぜ起きたのかということを少し鑑みると、ここですごく小幅の緩和をするというよりは、ある程度思い切った、ただし矛盾しないような緩和というのが必要かなと思いまして、今のように考える次第です。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○小林委員 ありがとうございます。私は前回も述べました理由によりまして、団地の場合の全体要件を含みます5分の4、それから、団地の場合の各棟要件の3分の2等につきまして、やはりまず引き下げる必要があるだろうと考えております。5分の4の要件の緩和でございますけれども、まず結論としましては、鎌野先生の意見と一致しておりますけれども、A案とB-2案、B-3案を組み合わせるということが適切ではないかと思っております。これは、先生の御意見を否定するものではございません。   A案で5分の4を4分の3まで引き下げるという点でございますけれども、5分の4というのは80%ですね、これを4分の3まで引き下げたとしても、なお75%の賛成ということになりまして、これも極めて高い比率だと思います。どちらも最高裁判決のいいます過半数を相当超える議決要件に十分該当するだろうと考えます。   また、B-2案の3分の2でありますけれども、これも過半数は十分超えているということに加えまして、危険性があると認定される場合でありますので、要件を引き下げることには十分合理性があると考えます。   それから、B-3案でございます。これについては大規模一部滅失しておりますので、より促進する必要性が高いと考えるのであれば3分の2、場合によっては更に過半数まで引き下げるということもあり得るのかなと思っております。   なお、B-1案につきましては、A案を採って5分の4を4分の3まで引き下げて、なおかつB-2案というものが措置されるという前提では、これに加えてB-1案を措置する必要性は余りないのではないかと考えるところです。   それから、C案でありますけれども、これも反対ではなくて、あってもよいとは思いますけれども、二つほど理由がありまして、新たに設ける意味がどれだけあるかというのはやや疑問を持っております。一つの理由は、このような合意を有効とするためには区分所有者全員の合意が必要だと思いますけれども、であるとすると、新築分譲時の原始規約の中で位置付けないことには実際問題として合意は難しいだろうと思います。しかしながら、新築購入時にはローンの金額その他にどうしても目を奪われがちになりまして、新たに購入される方の中にはマンション管理の基本的な仕組みすら正確に理解されていないという方も少なくないという実態があります。そういう中で、新たに購入するマンションのいわゆる終活にまでどこまで深く考えて適切な判断を下せるのか、そういう問題があるだろうというのが一つの理由です。   もう1点は、同じようなことかもしれませんけれども、マンションの終活というものが問題になる20年、30年、40年先の建物の状況あるいは他の区分所有者をめぐる状況、さらには自分自身が経済状況を含めてどういう状態になっているのか、そういうところについてどこまで具体的に想像できるのかという問題があると思います。そういう点についてよく理解しないままに1票を投ずることになるのではないかという危惧があると考えております。   あと、細かい点を幾つか申し上げてもよろしいでしょうか。資料についての細かい点について幾つか申し上げたいと思うのですけれども、一つは、3ページの15行目の(3)のところですかね、少数反対者の利益に留意しというところなのですけれども、まず、この指摘は全くそのとおりだと思うのですけれども、反対者の権利保障としては売渡し請求の制度がありますので、一応財産権については保障されていると考えていいのではないかと思います。あと、実質的に重要なのは、立ち退きを余儀なくされました元の区分所有者の居住をどう確保するかということだと思います。これはやはり区分所有法制の枠内だけでは解決困難ですので、第1回目の会議でも大分出ておりましたけれども、もう少し幅広い行政の中で政策的観点の中から考えていくべき事柄だろうと思っております。   それから、次の4ページですけれども、10行目から12行目です。ここに、要件の該当性に関する紛争を生じさせないという記述がありますけれども、これは非常に重要な点だと考えております。後の5ページの冒頭辺りに平成14年改正以前の費用の過分性要件のことに触れられておりますけれども、この要件が改正で削除されたのは、客観的な判断が非常に難しくて、異論が出て裁判に持ち込まれたりしまして、結論が確定するまでに非常に長期間を要するという事例が幾つも出たことへの反省から廃止されたものと承知しております。これは非常に重い事実ではないかと思っております。追加的な要件を付加することで、円滑化という大目的のために改正しておきながら、かえって時間が掛かってしまいかねないというかつての実態に十分な考慮を払う必要があると考えます。   それから、4ページに戻っていただきまして、14行目のA案の㋐のところです。ここに、新築で何ら不具合のないものも含めて全ての区分所有建物の建替えを促進する必要があるのかという記述がありますけれども、新築で何も不具合のないものであれば、そもそも建て替えようという議論が起きてくることはありませんし、仮に出てきたとしても過半数の賛成すら得ることは難しいと考えられますので、実質的に問題はないのではないかと考えます。それから、同じ箇所の㋑のところですけれども、区分所有権の制約が強化されること、これについては補償を適切に行うということによって正当化がなされるのではないかと考えます。   それから、5番目でございますけれども、5ページの6行目、先ほどの費用の過分性要件の関係でございますけれども、これはここの記述についてなのですけれども、その該当性の判断が困難と書いてありますけれども、判断が困難と書きますと、判断を下すことが困難という意味にも取れなくはないように思いますので、より正確には、例えば、その該当性の有無には微妙な判断が求められるとか、客観的な判断が困難だとか、そういう表現上の工夫が必要かなと思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。1点、非常に細かいことですが、区分所有権の制約が強化されるという記述に対して、これは補償を適切にすることが重要だとおっしゃいましたけれども、その補償というのは、売渡し請求に対してきちんと金銭が支払われるということ以上のものでしょうか。 ○小林委員 広い意味ではそういうことなのですけれども、以前、鎌野先生がおっしゃっていたこともあると思いますけれども、価格の評価に際して、例えば引っ越しの費用を加えるとかそういうことも一つ、これは検討課題、そうすべきというところまでは申し上げませんけれども、一つの検討課題ではないかと思っておりまして、そういうものも含めてということと考えております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   では、ほかに。まず今日は一通りいろいろな意見を伺います。 ○齊藤委員 どうもありがとうございます。まず、この建替えの多数決の要件にということでございますけれども、この問題はマンションの最後をどう考えるのかということで、バランスとしては、建替え、それから敷地売却、そして耐震改修をしながら長く利用していくという再生、この三つの中で総合的に考えていく必要があると考えております。よって、本来は、建替えの要件だけを議論するのは難しいのではないかということを、まず思っておりますことをお伝えいたします。   と申しますのは、既に過去の研究会でも、建替えができるマンションは非常に限定的で、非常に条件が恵まれたマンションということで、仙台市のご報告でも、それから東京都の御報告でもございました。その報告の趣旨を踏まえますと、今後建替えができるマンションは非常に限定的であるということです。そして、今建て替えたいと思って困っているマンションの多くは旧旧耐震のマンションあるいは旧耐震のマンションで、これから増えていく新耐震基準のマンションも同じように考えていっていいのだろうかということがあります。   ということで、私、現段階ではかなり慎重かもしれませんが、過去の研究会の議事録を読ませていただきましても、後の建替えの事業の障害を減らしていくには、また円滑に事業の推進をしていくには、区分所有者および議決権の8割ぐらいをクリアしておかないと、という発言もあったことも踏まえまして、現在の考え方としては非常に慎重派かもしれませんが、5分の4以上という大原則でもよいのではないかと考えております。ただし、やはり耐震性が低いもの、あるいは、ここに議題になっていないのですが、エレベーターがないなどのバリアフリー対応が十分にないマンションの場合に、建て替え需要が高いという現実を踏まえますと、今後、負の遺産を次世代に残さないという意味では、しっかりとそういうものは建替えを促進していく必要があるのではないかと思っています。今問題になっている目の前の旧耐震のマンションと、これから築年数がたっていく新耐震のマンションを同じように考えてよいのかなということ、そして、区分所有法を改正しますと、ずっとその流れで行きますので、現段階で、あくまで現段階の意見でございますが、皆様の御指導を得て、またどんどん考えが変わっていくかもしれませんが、先ほど言いましたようなB-2案の考え方、その中で4分の3が決議要件というのがあり得るのかなと思っています。   そうしますと、基本的には建替え決議要件は5分の4以上、ただしやはり次世代に負の遺産を回さないという視点では4分の3に下げるということでしたら、区分所有法の改正ではなくマンション建替え円滑化法の対応でもできるのではないかと、これは私が考えることではないかもしれませんが、そうした方法があり得るのかなと思っているところです。   どちらにしましてもこの議論は、先ほど小林委員の方からもございましたように、居住の安定性の確保をどうしていくのかということを同時に議論しないと、国民の皆さんの不安をあおってしまうのではないかということを危惧しているところでございます。2014年の改正前までの円滑化法には、居住の安定の計画を立てましょうという考え方もございましたので、今一度やはり建替えに参加できない方をどういうふうに居住の安定を確保していくのか、リバースモーゲージやリースバックというのも一定、普及してきております。そういったものとも併せて考えていく必要があるのではないかと思っています。   少し慎重な考え方かもしれませんが、いろいろな方の御意見を聞き、そして現状を見ながら、今の考えを示しております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。何点か確認をさせていただきたいと思うのですけれども、冒頭で建替えだけを切り取って考えるのはどうか、建物敷地売却なども考慮に入れながら、とおっしゃいました。それは、例えば、建替えの場合と建物敷地売却の場合とで要件が異なることがあってもいいのではないかという御趣旨であるのか、今まずは建替えについて考えているけれども、メニューとして増やすということを考慮しながらですよねという御確認なのか、御趣旨をお願いいたします。 ○齊藤委員 分かりにくい発言で、大変失礼いたしました。マンションの最後に、建替えではなく、いわゆる敷地売却による解消というのも一つのメニューにしっかり位置付けていくということです。研究会での議論や皆さんの御意見を聞いておりますと、そちらの方がメインになっていくのではないかという御意見もありますので、その道をしっかり用意した中で、建替えはある程度恵まれているマンション、限定的なマンションというふうに皆様の御発表からも読み取れましたので、まず、そのメインの方をしっかり整備していく、そして、その中でということと、それから、今ではなくこれから先のことも考えてという、新耐震基準のマンションへの対応ということを考えてということです。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。大谷さんに御確認を頂ければと思いますけれども、飽くまで今日は議論の整理の段階で建替えをまずは切り取ったということでありまして、この建替えについての考え方を基に、今後別の日にいろいろなほかの再生手法について導入する、導入しない、要件は異なることもひょっとしたらあり得るのかもしれませんが、それはそれで考えるということを予定していると、それでよろしいですね。 ○大谷幹事 そうです。 ○佐久間部会長 齊藤さんの御意見についての2点目ですが、例えばB-2案は円滑化法で考えることがあり得るのではないかと、それは正しくおっしゃるとおりだと思いますけれども、どの法で考えるかということは最終的には法務省と国交省において御相談いただくということですので、ある段階までは、どの法かということは余りこだわっていただく必要はなく、実質的にこういう場面でこの割合でということをお考えいただければと存じます。   それから、また少し伺いたいことが、3点目で、バリアフリーも含めて、要するに建物の状態によっていろいろ考えるべきではないか、それはB-2案に含めるべきではないかということで、そういう御趣旨だと思いますが、B-2案の㋐、㋑、㋒は今のところバリアフリー対応のようなものについては受けているところがないので、バリアフリーに限らないでしょうけれども、そういったものも広く考えていってはどうかという趣旨ですね。 ○齊藤委員 そうですね、多分B-2案での考え方としては、外部不経済的な側面が強くなっているのですが、建替えの要求の実態としては、耐震性が一番多い、生命に危険があって不安だと、それと、エレベーターがないことというのはすごく強くあると思いますので、その辺りをどう考慮していくのかという、これも考え方の整理が必要かと思いますが、こうした点も考慮したらいかがかということです。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。最後にもう1点ですが、居住の安定性を図ることは非常に重要だとおっしゃいまして、小林さんのお名前も出たのですけれども、これは小林さんがおっしゃったことと同じ趣旨で、区分所有法制でということには限らず、総合的な対策の中でと理解してよろしいですか。 ○齊藤委員 はい、例えばということで円滑化法を申しましたので、そういう意味でございます。 ○佐久間部会長 分かりました。ありがとうございます。   では、ほかにいかがでしょうか。 ○大桐委員 ありがとうございます。昨日の日弁連のバックアップ会議においての、どのような意見配分であったかについて、少し御報告させていただきたいと思います。   まず、A案につきましては、権利の制限が大きくなるということで、安全性の問題がないにもかかわらず、この割合で行くということについては躊躇を感じると。例えば、全く安全性に問題がない場合に建替え決議ということが持ち上がらないだろうというのは、もちろんそのとおりだとは思うのですけれども、例えばリノベーションで行くべきだという反対派もあり得るわけでして、そうなった場合に建替えを積極的に推進するということが、4分の3であれ、3分の2であれ、そういうことを積極的に推し進める正当化できる理由がないと現時点では感じているということでございます。もしB-2案などが難しそうになった場合において、A案で行くのであれば、そこの場面においてはデータなどの立法事実を正確なところを確立しておく必要があるのかなと思っております。   C案につきましては、全員の合意によって多数決割合を下げるということですけれども、こういった状況になるのは分譲時しか現実的にはないということで、このC案を採ったからといって実質的な解決にはならないであろうと、また、商品ニーズというか、建替えの決議要件が緩和されているマンションだから買おうというような現実的なニーズが実際あるかどうかというのは、不明であると思います。融資を組んで買われる方の場合には、長期的な返済計画を立てて買っている方もいらっしゃるので、そういう観点からすると購入を妨げる事情にもなり得るのかなと思います。   B-1案についてですけれども、こちらについては賛否両論ございまして、建物自体の老朽化があるとともに、管理をする人間側の、例えば関心が低くなったりですとか、所在不明の方が増えたりですとか、そういう管理側の劣化ですね、そういったものもあるので、一定の年数というのを考慮するということは一つのやり方かなという意見もございました。しかしながら大勢は、年数で区切るということにつきましては、先ほど鎌野先生からもお話がありましたけれども、多様なマンションにおいて年数を区切るのは大変難しいであろうということがあります。   また、今回、築40年以上のマンションについてはいろいろな不具合が出ているとデータを頂きましたけれども、こういったデータというのは旧耐震とか旧旧耐震のところであることが前提と思われるところでありますけれども、新耐震で行けばもう少し年数がもつであろうというところで、現時点で年数を考えるということが可能なのかどうか、また、このデータ自体が独り歩きしないように留意すべきだといった意見もございました。むしろ札幌などでは大正時代に建てられたような建物でも長寿命で、生き生きと建物が建っているというものがあると聞いておりまして、そういった観点から、政策的によい建物を建てさせるという方策も必要なのではないかと思います。   そういうわけで、日弁連としましては、現時点においてB-2案という、安全性が保たれていないマンションにおいては建替え決議の要件を4分の3に引き下げるという案が多数でございました。しかも、商業ビルについても同様の危険性のあるビルというのがございますので、こちらに関しても解決をすべき状況は同じでありますので、対象に含めていただきたいということもお願いしたいと思います。ここで、区分所有法で行くのか円滑化法で行くのかということなのですけれども、ビルも対象にというと区分所有法でとなりがちかとは思うのですが、解決法としてはそれだけではなく、円滑化法の方にビルも含めるというような、そういう拡大、定義自体を拡張させるような解決策もあるのかなとは考えております。   そして、B-3案につきましては、地域安全のために3分の2までに引き下げるということの意見でございます。   ここで1点、質問といいますか、確認なのですけれども、B-2案で行ったときの詳細な要件ですね、この要件の該当性についての不服申立てといいますか、争う手段としてはどのような構成になるのかというところを確認させていただきたいと思っております。37ページの35行目にありますように、一つの方法としては民事訴訟において決議の無効確認の訴え等によるものが考えられると思うのですけれども、それ以外に行政処分としての取消訴訟とかというような方法というのもあるということになりますでしょうか、あるいは、ならないということでしょうか。 ○大谷幹事 B-2案を採るということが、もし区分所有法の中で民民のルールとして入れるのだということになるとすれば、それは民事訴訟で争っていただくということになるのだと思います。一方で行政法の世界で、マンション建替え円滑化法の中で措置をしていくということであれば、それは行政的な争訟の方になっていくのかなと思いますけれども、矢吹幹事におかれては何かございますでしょうか。 ○矢吹幹事 おっしゃるとおりで、行政庁がこの客観的な基準を認定するという方式に仮になるとすれば、それはすなわち今のマンション建替円滑化法の仕組みと同じですけれども、行政処分と解しておりますので、そこに争いがあれば、行政事件とかそういう形で処理されていくのかなと思っています。 ○大桐委員 そうしますと、円滑化法で整理された場合には行政処分で争うもののみなのか、それともそれ以外に訴訟、更に不服申立てということで訴訟でという、要するに紛争が長期化するのかどうかというところとも関連するところなのですけれども。 ○大谷幹事 そこは作り方によるような気がいたしますけれども、行政処分としての有効性を争うのだということになるとすれば、それは行政訴訟の排他的管轄ということになるはずで、行政上の争訟をしなければいけないということになると思いますし、一方で民事上の救済を求めるのであれば、損害賠償とか、また別の民事訴訟ということがあるのかもしれません。 ○大桐委員 ありがとうございました。 ○佐久間部会長 その点は今後、B-2案を採るということになりましたら、どういう事由かということが一つ問題になります。また、その事由を設けたときに、繰り返し出ていますけれども、その要件該当性をめぐって当事者の間で、どういう紛争形態であっても争いになることがあっては意味がありませんので、その点を考慮した上で、どのような事由を設けて誰がどういうふうに判断するかということも御意見を承りながら、この部会としての意見を明らかにしていくというふうになろうかと思います。  現時点で、弁護士会のお考えとして、ならばこういう判断の在り方が望ましいというのがあれば、大桐さんから御披露いただければと存じます。 ○大桐委員 ございません。 ○佐久間部会長 今後そういう点は、B-2案を煮詰めていくに当たりましては必要となりますので、弁護士会に限らず、皆様方にお考えを披露していただければと存じます。 ○村上委員 ありがとうございます。意見と質問を申し上げたいと思います。   意見の方なのですが、補足説明で今回、それぞれの提案の趣旨ですとか課題となる点などをコンパクトにまとめていただき、論点についての理解が深まりました。そうした中で1点、これは本当にそういえるのだろうかと疑問を抱いた点がございました。B案に関しては、いずれも建替えを促す必要性が高くなり、建替えに反対する区分所有者の利益保護の要請は相対的に低下すると書かれている点です。   理屈の上では相対的に低下するということなのかもしれません。しかし、反対する区分所有者の利益として考えられるのは、その建物に住み続けるという利益です。建替えを反対する理由は様々でしょうが、お金がないので建替え後の建物に再入居できないという理由も一定程度あると思います。再入居する経済的余裕のない人は、時価で売却して住むところを失い、その売却代金でほかの物件を購入するか、賃貸物件に住むのかの選択を迫られることになります。売却代金が十分な場合はよいですが、それが不十分な場合には、反対者は困った状況になります。また、ひとり暮らしの高齢者は賃貸物件を貸してもらいづらいという課題もございます。このような状況は建替えの必要性が高いからといって変わるものではなく、利益保護の要請は相対的に低下すると言い切ってしまうことには違和感を覚えたところです。   その上で、建替え決議の多数決割合をどうするのかという点ですが、反対する区分所有者の利益を超えるような公益が認められるか、よく吟味する必要があるのではないかと思います。こうした視点に立ちますと、少数反対者の利益保護の観点から、現行の5分の4以上という多数決割合を緩和するのは、B-2案やB-3案など、建て替えなければ建物の安全性に問題が生じる場合などに限定することが妥当なのではないかと現時点では考えるところです。   次に、質問です。まず、B-2案ですが、建物が㋐から㋒の基準に適合していないという判断を誰がどのようにするのかという問題が生じるかと思います。今ほど議論があったところでございますが、一級建築士などの専門家の方が判断するかと思いますけれども、そういったものをどの一級建築士の方でも判断できるのか、判断する方によって判断に違いが出ないのかというところについてお尋ねしたいと思います。この点は、本日だけではなくて、今後の議論の中でも明らかにしていくことが必要なのではないかと思います。   B-3案についてですけれども、これは質問ではなくて意見ですけれども、既に大規模一部滅失をしており、建替えをする必要性が非常に高い場合ですから、まだ危険性が表れていない建物よりも多数決割合を緩和することはやむを得ないのではないかと、妥当なのではないかと考えるところです。   また、C案についてですけれども、これは結果としてA案と同様になるのかなという感じもいたしますが、資料の9ページに、C案を採る場合には多数決割合が緩和された物件であることを買主に知らせる仕組みについても検討する必要があるとの指摘があるとございます。その後の紛争防止のためにも分譲の際に話しておくべき事項であると考えますが、このC案が妥当かどうかとは別として、具体策としてどのような仕組みを想定されているのか、もし何かあればお聞かせいただければと思います。ただ、そうはいっても、20年後、30年後のことをよく分かった上で契約する人は一体どれほどいるのかといったことや、のちのち聞いていなかったというトラブルになったりしないのか、適切に説明していなかったという場合にどうなるのかという点も気になるところでございます。   以上です。よろしくお願いいたします。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。まず、B-2案について判断の安定性が担保されるかどうかに関して、現状を大谷さん、お願いします。 ○大谷幹事 B-2案の判断の基準ですけれども、これは国土交通省の方でもマンション建替え円滑化法のガイドラインのようなものをお作りになって、専門家が判断できるような形は作られています。ここで挙げておりますのは、そういった今までにある蓄積を踏まえて判断の安定化を図るということをイメージしています。   C案の方の、買主にどのような形で知らせるかということは、いろいろな方法があるのだと思います。例えば、重要事項説明みたいなことの中に入れていくのかとか、そういったことがあろうかと思います。この辺りもどのようなものが考えられるかについて、それを含めて検討していきたいと思っているところでございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。村上さんに1点、私の方からお考えを伺いたいことがございます。  要件を引き下げる、多数決割合を引き下げるということになった場合に、住み続ける利益というものへの配慮は欠かせないだろうと。それは正にそのとおりだと思っておりますけれども、建替えに反対する方には住み続ける利益があると思うのですが、その住み続ける利益というのは、区分所有建物ではほかの区分所有者の負担によって成り立つものだという側面があると思うのです。建物を建て替えないということになりますと、当然その後も管理は続くわけでありまして、管理費も要るし、修繕積立金も要る、また管理の実労といいますか、それも必要であると。こういったことについて、多数者にはそのような負担を免れる利益があるのではないかというのが1点と、もう1点、B-2案の場合にですね、相対的に低下するという表現がいいのかどうかは分かりませんが、B-2案のような状況では他の区分所有者の負担が高まることは明らかでありまして、その意味では他の区分所有者との関係で、少数者になるのでしょうか、住み続けたい利益を保護する必要性は相対的に低下するという考え方ではないかと私は思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。補足説明でかなり書かれてはいると思うのですけれども、ただ、相対的に低下するということだけ強調されてしまうと、そういった方々への配慮というものがされていないのではないか、考えられないのではないかという誤解を生むというところもございますので、違和感を感じたというところでございます。また、B-2案については、やはりこういった状況の中で住み続けるというのは大変であるというところは承知をしているところですので、そこについては一定程度、配慮は必要だと思っているところです。さらに、住み続けられない人、また経済的な困難がある人に関する対策としては、初回にも申し上げましたけれども、区分所有法制だけではなくて、総合的に住宅政策というものから様々検討していく必要があるのではないかという意見を持っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。反対する区分所有者の利益保護の要請が相対的に低下するというのは、私が申し上げたようなことをまとめればそのような表現になるのではないかと思うのですけれども、いろいろな要素を考慮した上でのそういう表現ぶりだということがいろいろな方にすっと受け入れていただけるように、今後注意をして文書などを作っていくことにいたしたいと思います。ありがとうございました。 ○中野幹事 中野です。ありがとうございます。私は、先ほど日弁連の意見というお話が出ましたけれども、特別にそこと一緒に打合せをしたわけではありませんが、私もB-2案が今回の改正としては柱となって考えられるべきところかなと思っております。それは、今回の文書にもありますけれども、問題の所在などを見ると、やはり長年、長期間の経過、高経年マンションの問題意識があって、だけれども要件が厳しくて、危ないマンションというか、そういう老朽化して問題が発生する、ないし問題が発生し得る状況になっているにもかかわらず建替え等ができないというところに問題があるのだというところがありますので、そうであれば、正に改正されるべきところというのは、今回㋐、㋑、㋒というような状況にもありながら、要件が厳しくて建替えすべきところができないというようなものを改めていけばいいのかなと思っています。   先ほどエレベーターの話もありましたけれども、技術上、エレベーターがないので建替えという話になるのもどうかと思っています。身近で見ていると、都営住宅なんかでもエレベーターのない5階建てのところも、エレベーターだけを敷設するというようなことも現実的にはやっておるわけでしょうから、要件をどんどん広げると、やはりなかなか、㋐、㋑、㋒のような要件がないにもかかわらず建て替えるというような方向性がどんどん広がっていってしまうというような気がして、今回の改正に関する協議からはやはり外れていくのかなと思うので、その点は御留意いただきたいと思っているところです。   現実に私、旧耐震のマンションが多かったのですけれども、東京都の耐震アドバイザーとか、そういうところでいろいろなマンションのお話を聞いていると、問題があるのだと、耐震基準を満たしていなくて非常に危ないですよというマンションについては、大方理解をしていただいているのです。それでもやはり1戸、2戸が残っていて困っているのです、みたいな相談を私は多く受けてきたので、正に㋐、㋑、㋒であれば、ある意味要件を緩和してでも、やはり建替えというような方向に進められるような法改正をするというところが正しいのかなと思っております。ですので、こういうような基準がないにもかかわらず、例えば、もう少しグレードアップしたいからとか、価値を高めたいからといって建替えをするというのであれば、やはり原則どおり今の5分の4というようなところできちんと皆さんで議論されたらどうかと思っています。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。現に危ないものに限って緩和するのが適切であり、やや先取り的というのですかね、危なくなる前のものは現行どおりという、今、お考えだということですね。 ○中野幹事 そうですね。 ○佐久間部会長 分かりました。ありがとうございます。 ○沖野委員 ありがとうございます。B-1案ですとかC案に対する賛成意見が余りないようですので、それらについても少しサポートするようなことを考えておりますものですから、意見が分散する方向で申し訳ないですけれども、申し上げたいと思います。   まず、引下げについてなのですけれども、実際に非常に問題が起こっているという現象があることは、これは共通の理解になっていると思います。でなければこの問題を取り上げる必要もないわけですので、問題はその現象に対してどういう方法を採るかということで、一律引下げということにするのかどうかという点がA案とそれ以外になっているのだと思います。その際に、私は(注4)というのは非常に重要だと考えておりまして、所在等不明であるために多数決が得られないという問題が一定数あるのではないかと思いますし、そのようなデータも出していただいていると思います。これはやはり入れるべきだと考えられますので、これを入れたときに、更におよそ一律に引き下げるということを十分正当化できるものだろうかということが、やや自信がないといいますか、十分理由があるのだろうかという懸念はあります。   そうしますと、何らかのプラスアルファの要因というのが考えられるのではないかと思っておりまして、その際にB-2案の考え方というのは、考え方自体は非常に説得的に思われます。建物自体の安全性が非常に問題になっている、それも客観的なというか、公定の基準に照らして危なくなっているということですし、それから、他への加害にもなりかねないというようなことですから、これはやはり必要性が高いので、多数決要件を緩和してもそちらの方に向けるべきだと考えられます。   ただ、これも既に指摘されておりますように、B-2案で一番問題ではないかと思われますのは、これが結局、基準は明確であっても該当性が非常に争われ得るということです。今御紹介のあった中でも、1戸、2戸が反対しているというときで、1戸、2戸で4分の3は満たすという場合であればいいですけれども、そうではないというような場合ですと結局、1戸、2戸の方は最高裁まで行って争うというようなことだってあり得るわけですので、結局非常に該当性をめぐって長期にわたる問題が出てくるということがやはり気になります。それに対しては、例えば簡易な認定制度ができないかとか、専門家の意見を聴取するだけでは、恐らくいろいろな意見が出得ると思われますので、あるいは民間でもいいのですけれども、簡易認定機関だとかそういうのを設けて、最後はそれでも争われるでしょうけれども、少しはそれを減ずるようなことが組み合わされてしかるべきではないかと思っております。   もう一つは、㋐、㋑、㋒のような場合、B-3案も事情としてはそういった事情の一つだとは思いますけれども、というような場合は問題なかろうということなのですが、これで十分なのかということも気になる点ではございます。現時点で見たときは㋐、㋑、㋒だけれども、新しい問題が出たときには、それは同じようなことであっても入らないということだとすると、事由の網羅性といいますか、そういうことにも配慮する必要があるだろうと思われます。そうだとしますと、事由自体について状況を見ながら適切に加えるとか変更をしていく、そういう仕組みも設けておく必要があるのではないかと思いまして、その他何々として政令で定める事項とか、B-2案についてはそういうようなものも一つ設ける必要があるのではないか、該当するような新たな事由がなければそのままですし、あれば適宜に追加していけるようにという仕組みを考える必要があるのではないかと思っております。そうしたときに、それでも紛争の長期化という懸念がなかなか拭えないということだとしますと、基準への該当性をより一律に明確に判断できるものを客観的事由としてプラスアルファするということが考えられるわけで、その方向としてB-1案、そして、合意ではありますけれども、C案もそのような考え方といえるかと思います。   B-1案に対しましては、これも既に資料にも、また今回の御発言にも、問題点として書かれておるわけですけれども、建物の状況は非常に区々である中で、それでこのような引下げを正当とするような客観的な事象が備わっていることを推認させる事由として、一定期間でいいのかと、期間を指標とすることにどの建物でも問題ないというようなことであれば、非常に長期の話に書かざるを得なくて、余り意味がないというようなことにもなりかねないということなのですけれども、確かにそれはそうなのですけれども、しかし客観的事由として、個別具体的な該当性を問題にすると結局、紛争になって長期化しかねないということをいかにして多少なりとも緩和できるかということですから、現在あるデータに照らして一定年数を設けるということは十分考えられるものですし、それで一律、建て替えるという決定をするわけではなくて、それを目安とした上で一定の多数決ということですので、建物の状況は区々であるということは必ずしも決定的な理由にはならないのではないかと思いますし、それから、もしそれにもう少し考慮を入れるならば、何段階かに分けるということも考えられると思います。例えば、建物の安全性に対する基準が変わっているようならば、何年基準より前のものについては何年とか、そういう類型化をするようなことはある程度考えられるのではないかと思いますし、ここでも状況の変化に応じて変更というか、基準をアップデートしていくためのメカニズムというのは設けることが考えられるのではないかと思っております。   それから、C案なのですけれども、C案は全員合意であるとすると、既存のものに対しては対応できないではないかということで、それはそうかもしれません、これからのものだけですということなのですが、ではそれで意味がないのかということです。私が一番よく分からないのはA案との関係で、A案によって、例えば4分の3とか、あるいは3分の2まで引き下げるということが正当であるならば、そもそも一律そうではなくて、少なくとも全員合意があるようなものについては4分の3にするとか、3分の2にするということは十分正当化できるのではないかと、言わばC案というのはA案にプラス全員合意というのを付けるという案ともいえるわけで、それでは実効性がないというのは分かるわけなのですけれども、それが駄目だということがよくは分からないのです。これからのものだけでもC案によって、それがやはり望ましい在り方ではないかと考えるならば、そういうものを選択することができてしかるべきだと、それが非常に問題な規律であるならば、A案だって問題な規律になりかねないと思います。   それから、そういうある程度機動的にといいますか、そのような選択肢が用意されているということが市場でどう評価されるのかは、その先の問題ですので、そういうものが入っている方がマンションとしてより望ましい、あるいはこのタイプのものには望ましいという評価があるなら選ばれるし、そうでなければ選ばれないということで、特に、買いますかということに対しては、むしろ売手が買主の現れないものは作らないということだと思います。また買主、購入者に対する情報提供というのは、それは重要事項説明などの言及がありましたけれども、その方法というのは十分考えられるのではないかと思っているところでございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   私の考えることを少し申し上げたいと思うのですが、まずA案、B案、C案について、私はこう在るべきだと申し上げるべき立場にはないので、それは申し上げないのですけれども、一つ強い希望を持っております。それは、20年ごとぐらいに区分所有法の改正をして、建替えとか再生手法について結局そのときにある問題だけを解決する、そういうことはそろそろやめる方がいいと、強く思っております。もう未来永劫改正しなくていいということにはできないでしょうけれども、20年後に起こるかもしれない問題は今予測しておいて、その20年後に今しているのと同じような議論をする必要がなくなることを強く願っております。何で20年後と申し上げるかといいますと、区分所有建物の建替え関係の改正の法制審議会というのは20年ごとぐらいに開かれておりますので、もうこれが最後というぐらいの改正をしていただきたいと、あるいはそういう案ができたらいいなと思っております。   その点で、沖野さんがおっしゃったことで申しますと、B-2案について㋐、㋑、㋒で十分なのか、現状では十分だけれども今後もそうなのか、必要な事由を適宜追加していけるのであればよろしいですけれども、現実問題としてこんな基本法について事由を簡単に追加することができるとは思えない。現状㋐、㋑、㋒は必要だろうということは、場合によっては共通認識があるのかもしれませんけれども、それ以外の事由がいま必要ではないかということもよくお考えいただければと存じます。また、今のところ㋐、㋑、㋒で十分そうだとしても、ほかの事由があったほうがよいと考えられることになる場合への対応策になるものがあってもいいと思うのです。沖野さんがそのようにおっしゃったのだろうと思いますが、B-1案が、陳腐化への対応とか、危険ではないけれども負担が増えるということは、多分新耐震のマンションでも同じことが40年、50年、何年か分かりませんが、いずれ起こるはずなので、そういう観点ではB-1案というのも見るべきところがあるのではないか、という御意見だと承りました。   考え方はいろいろあるわけでして、その直前に御発言いただきました中野さんのご意見につきましては、私の方から確認させていただいたように、現在危険なものについての手当てで現状十分であるというお考えで、それはもちろんあり得ることですけれども、そこにとどまるか、もう一歩踏み出すかということが、皆様に御審議いただくことですけれども、かなり重要になるのかなと思いながら伺っておりました。 ○能登委員 ありがとうございます。まず初めに、私ども事業者の立場の前提条件は、建替え決議可決までの関係ではなく、その後の建物の計画をより具体化していったり、新築後再入居され事業が完遂するまで権利者皆様のサポートをさせていただいたりという立場でございます。ですので、今議論されているような要件の比率がどう定められたとしても、限りなく多くの権利者の方に賛成をいただけるように推進していくのが建替え事業の、まず根幹といいますか、全体感と考えております。そうした動きに対して、建替え決議に反対をされた方も、決議可決後催告に応じて建替え事業に参加されるケースも多くございますので、やはり決議に向けて出来るだけ多くの賛意を求めていくということが事業完遂には不可欠なことと感じております。その前提で、緩和要件に関しどのような考えか発言させていただきます。   不動産業界に参加しております各社のメンバーからも確認をした意見として、やはり推進上、いかにシンプルであるかが意思決定基準として大事であり、A案が一番望ましいのではないかと感じております。以前の改正時にもございましたが、やはり建替え自体の判断ではない点で皆さんの検討の時間を消費してしまうという問題を生じさせることは、再生を推進する上では余り望ましくないと感じております。   少し現場の事情もお話しさせていただきます。大半の権利者の皆様が、建替え事業を行う上で、例えば費用の合理性も、金銭負担も無理のない範囲であることを御理解されている、もう実態としては決議要件が5分の4をクリアするというような機運がある時でも、やはり一部、非常に声の大きい権利者の方の行動で決議がクリアできないという事象がございます。例えば、建替え自体には賛成だけれども、検討の進め方や、少し個人的なタイミングをずらしたいということで異論を唱えるために、意思表示として白票を投じるようなケース、また、周りの皆さんに同じような投票行動を誘導することにより、周囲の人間関係から、賛成の意思はあるけれどもどうしても賛成票を投じられないというような動きをとられるケースがございます。そのほか、非賛成の5分の1の議決権を確保するために、少し金銭的な余裕のある方が、早期転出希望者等、建替えが決定した後マンションから出られるという判断を既に決めていらっしゃる方の議決権を取得されるという行動で、権利者数上5分の4をクリアする機運でも、やはり議決権数で否決になるよう反対活動をされるというようなケースがございます。   こうした実態からも、建替え推進のためには単純な引下げが一番分かりやすく、訴訟リスクのような反対活動が起こりにくいというところがあると感じています。もちろんながら、多数決割合を減らしたところで、こうした反対行動がなくなるわけではございません。ただ、やはり4分の3や3分の2と緩和の割合が大きくなれば、区分所有者の人数の機運と議決権の数値のずれというところが縮まり、実際、権利者各々の人数的観点での機運通りに決議がなされるのではないかと思っております。   また、多数決割合を緩和すること自体については、これまで建替えという選択肢を議論に上げにくかった管理組合の皆様においても、修繕やリノベーション、再生の全ての手段を同時に横並びに考えるということにおいて、非常に後押しになるのではないかと考えております。   B-1案に関しては、冒頭、他先生方もおっしゃっておられましたが、やはり実態問題、管理の状態というものは年数で規定できないところがあると思いますので、築年数の基準で建替えの必然性を要件とするのはなかなか難しいと考えております。築年数が定められてしまうと、その築年数に到来する前の建物と、到来した建物ということに対して不動産上の評価が異なってきてしまうということも起こり得てしまうことによって、やはりその基準前後の相対評価に混乱を生じさせてしまうことも考えられるのではと考えます。そういった意味で、やはり築年数基準を設けるというところは非常に問題があるのではないかと思っております。   シンプルにA案がいいと考えてはおるのですけれども、皆様の議論の中でB-2案というところについては、安全な生活を脅かす状態が客観的にそろっているという状況でもございますので、A案に加えてB-2案について成立をさせていくというところも一つの考え方としてあるとは感じております。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。少し確認ですけれども、A案で多数決割合を引き下げることが重要であるというお考えですが、4分の3、3分の2については現時点において特に、こちらというお考えはおありですか。 ○能登委員 特にこちらとしてはございません。基準を定めるということに対しては、非常にシンプルに決めていただくことが現場の進め方としてよろしいと考えております。 ○佐久間部会長 分かりました。ありがとうございます。 ○寒竹委員 三井住友信託銀行の寒竹です。これは会社としての意見というよりは個人の意見であるのですけれども、私も、シンプルに決めておかないと実際の実行の段になって非常に実施がやりにくくなるとか、あるいは争訟が将来起こるとかということが起こり得ますので、やはりシンプルが一番いいという考えを持っております。そして、先ほど沖野先生がおっしゃっていたみたいに、20年後、30年後、どうなるか分からないという問題もありまして、例えば30年前だったらエレベーターのないマンションが普通だったけれども、今は普通にエレベーターがあるとか、いろいろ変わってくると思うのですけれども、20年後、30年後の決定は、できるだけそのときの人たちがフリーハンドで裁量で決められるように、ある程度しておいた方がいいのかなと思っています。今から想像しても分からないですし、足かせをしてしまったからこそ今こういった問題になっているところもあるように思っていますので、そこはある程度裁量を持たせてシンプルな規制にしておくというのが一番いいのかなと思っておりますので、私も実はいろいろつらつら考えていた中、A案とB-2案、これの組合せが一番シンプルで、いろいろな方に分かりやすい。それから、B-1案について、年限を決めるというのも、先ほどの能登様のおっしゃったように、その年限によって不動産の価額ががたっと変わったりするのも非常に、合理性がないといいますか、今でも、例えば住宅ローンの10年で、その前後で少し値段が変わるとかということもあったりするというのもありますので、そういったところで価値に差異が発生してしまうというのもどうなのかという気もしますので、A案とB-2案というのがいいのかなと思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○森本委員 森本でございます。冒頭の方に浅見委員から、今回、思い切った改正議論が必要だということをまずおっしゃっていただいて、確かにそのとおりだなと思いながら、先ほどの部会長の発言も、それも確かにそうだなといろいろ思ったのですけれども、取りあえず現時点において考えてきた意見を述べさせていただきたいと思います。   現行法の規律を軽減するということは、A案に対する意見になりますけれども、区分所有建物建築後そう年月も経っていない状況で、建物の安全性にも問題ない建替えについては、社会的及び経済的な建替えの要請が低いにもかかわらず、共有持分を含む専有区分建物の所有権の在り方を大きく変更させる行為であり、冒頭の説明あるいは資料にありますように、適切ではないと考えております。そして、現行法の建替え決議の要件を信じていた少数反対者に対して後発的に不測の状況を作り出すこととなりまして、少数反対者の保護に欠けるものとなると考えております。民法における共有物の変更、251条なのですが、こちらの方が令和3年改正において所在不明共有者を除く全員の同意を要するとしていることを踏まえますと、A案については慎重に検討する必要があると考えます。   もう一つ、B案に対する意見なのですけれども、B-1案につきまして一定年数の経過要件を設けることは不要ではないかと考えます。建物の老朽化の程度は経年の間の管理の方法により建物ごとに様々で、一律の処理は困難であり、また年数経過により管理意欲や市場価値の低下を招きかねないからです。しかしながら、高経年の区分所有建物においては管理不全の傾向が高まることは想像に易く、また管理の一環として行う耐震診断が結果によっては区分所有建物の資産価値の下落につながりかねないと、なかなか進んでいかない傾向にあることなどを考慮すると、一定年数経過の特則を検討する必要性はあると考えます。仮に年数経過要件を設けるとするならば、区分所有建物の長寿命化に資する修繕工法等も大きく進展していることや、長期修繕計画の改定ガイドラインが30年以上の計画を5年程度ごとに見直しを行うなど、管理の適正化が図られていることを踏まえますと、50年以上の築年数が経過したものとすることが望ましいとも考えます。   そして、C案に対する意見を最後に述べさせていただきますと、既存の区分所有建物におきましては区分所有者全員の合意を取り付けることは現実的ではないと考えております。そこで、C案は新築の区分所有建物に対して、将来より柔軟な対応ができるようにするための趣旨であると考えるならば、区分所有者全員の合意があることから、既存の区分所有者にも不測の状況を作り出すことはないため、規律を設けることについては賛成です。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。おっしゃっていただいたことはよく理解したつもりなのですが、B-2案についてのお考えは特段、現状ではないということでよろしいでしょうか。 ○森本委員 はい。 ○佐久間部会長 分かりました。ありがとうございます。 ○細谷委員 B-2案についてのことなのですが、国交省さんから頂いているこちらの資料を拝見すると、こちらの40年以上の経過したマンションでは、例えば漏水の雨漏り、それから配管、排水管の老朽化による漏水というのが非常に大きな数字を含んでいます。それに対して、B案の中の㋐、㋑、㋒、どちらにも該当していないと。では、こういった雨漏りが発生したときに、鉄筋の腐食とかそういうことに全く影響がないのだろうかと、そういう観点から、何か問題が起こっている事項がこの中に入るような観点があったらいいのではないかとは思いました。やはりB-1案、長期間経過したもの、こちらに関しては確かに難しい点というのは、評価の基準というのが確かに難しく、今、マンション円滑化の方のガイドラインにないようなもの、そういったものをどうするかというのは、例えば本当に第三の評価機関みたいなものを別途設けるのかとか、それは議論の余地はあるのではないかとは思います。ただ、本当に市場の今おっしゃられた、急遽市場価値がその築年数が近付いてくるに従って下がるようなことがあれば、それはやはり消費者として、資産の減になるわけなので、大変な問題になると思いますので、経過した年数に対してそれを手当てしているということが何か評価される、評価して何かメリットがあるような方策がとれないのかなと、そうすれば市場価値が下がるようなこともないのではないかと、少し夢のような話で申し訳ないのですが、そのように感じた次第です。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。それはそのとおりですよね。B-1案を採った場合ですけれども、手当てをしてメリットがなくて、年数がたっているから建替えが容易である、市場価格が下がるというのでは、「やってられんわ。」ということになりますわね。その点も含めて考えていくことになろうと思います。ありがとうございます。   それでは、吉原さん、矢吹さんの順に御意見を伺いまして、少し長時間になっておりますので、そこで議論を終わるわけではないですが、一旦休憩ということにさせていただきます。ゆっくりお話しいただければと思います。 ○吉原委員 ありがとうございます。私も、既にほかの委員の先生方からの御意見と重複するところもあるのですが、現時点ではA案の4分の3以上に単純に引き下げるという案がいいのではないかと考えております。B案のように、原則は5分の4を維持し、要件を満たした場合に割合を引き下げるということももちろん考えられますが、まずB-1案については、既に御意見が出ているように、マンションの構造や状況が建物ごとに様々であることを考えますと、一律の年数を要件とすることは難しいと考えます。   また、B-2案の客観的危険性を要件とした場合、これも既に御意見が出ておりますが、多数決割合の緩和を適用できる範囲が限定的になることが懸念されます。また、社会の変化や技術革新のスピードの速さを考えますと、5年後、10年後にどのような要件が適切かを現時点で十分に予見することは難しいことから、区分所有法上のルールは原則としてはシンプルにとどめておくことが望ましいのではと私も考えております。先ほど佐久間部会長から、20年後にもしっかりとした法律の土台として役に立つようなものにする必要があるという趣旨の御意見があったかと思います。本当にそうなるように、シンプルにとどめておくか、あるいは、先ほど沖野委員からございました、基準のアップデートを適切に図れるようなメカニズムが構築されるのであれば、B-2案もあるのかなと、お話を伺っていて思ったところです。   他方、A案の課題としましては、既に御議論に出ていますように、新築で何ら不具合のないものまで含めて全ての建替えを促進する必要があるのかという指摘が考えられるところですが、建替えが進みづらい要因には、決議要件だけではなく資金面や事業の採算性の問題が大きいことを考えますと、多数決の割合を単純に引き下げたからといって、それだけで必要性の低い建替えまで促進されることにはならないと考えます。   それから、先ほど沖野委員から、(注4)の所在等不明所有者の扱いが重要な論点であるという御指摘がございました。今回、所在等不明区分所有者については建替え決議の母数から除外する仕組みがこれから検討されていくところですが、所有者探索を尽くした結果、それでも区分所有者の所在やその相続人が一人も判明しないケースというのはごく限定的になると思います。所有者不明土地問題の場合、不動産登記簿では所有者等の所在が確認できない土地の割合は20.1%という数字がございますが、そのうち戸籍や住民票など探索を尽くした結果、実際に相続人が一人も見付からなかったケースというのは僅か0.4%です。ほとんどのケースでは、探索をすれば相続人が誰かしら見付かり、その見付かった相続人との協議や合意形成が大変になります。マンションの場合、土地のように2代、3代、相続登記が放置されているということは少ないと思いますので、そうすると、相続人が誰かしら見付かる確率というのは更に高くなると思います。   資料2の3ページ13行目に、所在不明者を母数から除外する仕組みを設ければ、この所在不明者の問題は多数決割合を引き下げることの理由にはならなくなることに留意が必要との記述がございますが、実際には母数から除外できるケースはごく限定的であり、多数決割合を引き下げるのと同じくらいの効果を期待することは難しいと思います。今後、所在不明者や決議への不参加者が増えていくと考えられる中で、そうした所在不明者や不参加者、こういった人たちが反対者とカウントされるということによって明示的に賛成の意思を表明した人たちの声が打ち消されないようにすることが大切であり、その意味で、原則的な多数決割合を引き下げる必要性は高いと考えております。   他方で、では、明示的に反対をした少数反対者の利益保護をどうするかという点ですが、少数反対者への配慮は、決議の割合以上に、決議に諮る前の段階でどれだけ住民の間で丁寧に話し合い、反対者への配慮を含めた事業計画を策定できているかが重要だと考えます。そこで、例えば区分所有法の62条の5項で、集会開催の通知を出す際には建替えを必要とする理由などを通知することが定められていますが、こうした通知において、身寄りのない高齢者など個別の事情を抱えた住民に対する対応の計画などを併せて通知をすることをルール化するなどが、反対少数者の利益を保護するための仕組みの一つとしては考えられるのではないかと考えております。   以上です。ありがとうございます。 ○佐久間部会長 大変貴重な御意見ありがとうございました。少し伺いたいことがございまして、A案で4分の3以上ということが望ましいということは伺いました。そのうえで、B-2案について、それを前提といたしますとB-2案の場合は3分の2ということも排除されているわけではないのですが、それも好ましくないというお考えでしょうか。 ○吉原委員 ありがとうございます。いいえ、排除するものではございません。当初、自分で考えていたときには、A案のみかなと思っていたのですけれども、今日、委員の皆様のお話を伺っておりまして、そうした組合せをすることで、より安定的な仕組み、適用範囲の広い仕組みにできるのではないかと思っているところです。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。では、A案における4分の3への引下げ、これがとにかく望ましいのに加えて、プラスアルファはあってもよいというお考えであると承りました。ありがとうございます。あとは、決議不参加者をどうするかということを考える必要があるという御指摘で、所在不明といいましても探索すれば分かってしまう、けれども関心は示さないという人についてどうするかということと、第1回にもおっしゃった、所在不明ということへのハードルが高すぎるということをどうするかということも、併せて検討すべき事柄と承りました。ありがとうございます。 ○矢吹幹事 関係する制度を所管しているものですから、今のマンション建替円滑化法の制度の考え方について、少し補足申し上げられればと思います。   議論にあるB-2案で㋐、㋑、㋒とありますけれども、マンション建替円滑化法で要除却認定制度という手続を入れているのですけれども、この要除却認定制度の手続の類型には実はもう少しありまして、バリアフリー制度の不適合というのが一つあるのと、もう一つが給排水管から漏水が出たような場合というものも、除却して建替えを進めていくカテゴリーとして入れていて、その法的な効果が少し違うので差別化、グラデーションが掛かっているということです。   その考え方は、㋐、㋑、㋒というのは生命身体ないしは外部不経済性に着目した類型だと思っているのですけれども、先ほども少し議論がありましたけれども、社会的な陳腐化が進むということも当然あり得ると思っていて、修繕ではカバーできないようなリカバーをしていかなくてはいけないものもあると、それがすなわち、例えばエレベーターとかバリアフリーの設置とか、あとは、過去に多く作られたスラブ下の配管で漏水が出たような場合に、もちろん金銭的な余裕がかなりあれば、修繕ないしは改修でそういうものを措置することもできるのですけれども、一般的には建替えをした方が経済的な合理性があるであろうという考え方の下に、バリアフリーとか漏水が出たような場合というものも要除却認定の対象にしているというのが今のマンション建替円滑化法の大きな考え方の一つであるということをお伝えしておきますというのと、もう一つが、先ほど、基準への該当性というところが議論になっていまして、当然その制度を着地させるときにはそこは留意しないといけないともちろん思っております。我々、この㋐、㋑、㋒を含めた、㋐は耐震性なので前からありましたけれども、㋑と㋒ないしは先ほど申し上げたバリアフリーとか漏水の基準を考える、これは最終的には大臣告示とかガイドラインとかで書いていったわけですけれども、できるだけ客観的に定めるということをもって、観察する人の主観をできるだけ排除するような設計として立て付けてということは強く留意をしましたので、紛争をかえって増やしてしまっては元も子もありませんので、そういうところに留意をして、制度を運用しているということをお伝えしておきたいと思いました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。今の矢吹さんの御説明に対する御質問もがあるかもしれませんが、先ほども申しましたように、少し時間が長くなっておりますので、一旦、ここで休憩とさせていただきます。           (休     憩) ○佐久間部会長 再開いたします。   先ほどまでと話題は変わりませんので、なお御意見を頂ければと存じます。いかがでしょうか。別に1回発言された方は2回目してはいけないという制約があるわけではありませんので、誰々はこう言ったけれども、私の趣旨はそうではないとか、佐久間はこう言ったけれども、というので全然構わないのですが、いかがでしょうか。  大体想像はしていたのですが、一旦休み時間を取るとこうなるだろうと。それでも別によろしいのですが、ばか話をしておりますが、いかがでしょうか。御発言くださいということではありません。ただ、御発言があれば遠慮していただく必要はなく、ということですが、いかがですか。 ○大谷幹事 少し資料作成の趣旨についてご説明いたします。B-1案について、先ほどから、年数がたってしまうと価値が下がるなどといった御意見、これは平成14年の改正時にも同じ議論がございました。それをあえて書かなかった趣旨につきましては、当時は30年、40年という数字を出していまして、それほど年数が経っていないものが念頭に置かれていたわけですけれども、今お出ししているのは50年、60年、70年といったものでございます。ここまで経ったときは、既に価値が下がっているため、建物の価値に影響がないのではないかということがやや疑問に思われましたので、あえて書きませんでした。しかしやはりそこはかなり影響があるのではないかといったことについて、もし御意見があればお伺いしたいと思います。 また、お聞きしていますと、建替えできる多数決割合が下がると、建て替えやすくなるので価値が下がるのだとすると、A案を採ると全ての区分所有建物は価値が下がることになりますけれども、それは問題ないのかといった点についても御意見を頂ければと思います。 ○佐久間部会長 別にどなたという御指名ではないのですが、お考えがあれば。 ○浅見委員 ありがとうございます。不動産の価額の研究をしている者として、少しお話しさせていただきます。   まず、年数が経過することによって状況が変わる場合に、状況が変わったことによって財産価値がどうなるかということを予測するというのが一番簡単だと思うのです。建替えによって自分の財産の価値が上がるのであれば、むしろ価額は上がると思います。逆に下がるのであれば、もちろん下がると思います。ただ、下がる場合は、そもそも区分所有者が建て替えたいと思わない可能性は十分あるのだろうとは思うのですけれども、ですので、必ず下がるというものではないのではないかというのが私の判断です。むしろ、ドラスティックに何か負担が増えるということで、下がるということはあるかもしれません。例えば、これまでの建替えをするためのいろいろな積立金みたいなものが非常に少ないだとか、そういったものの場合は、そこで顕在化することによる、ということはあると思うのですけれども、そうでない場合に、両方あり得ると思いますので、一概に必ず下がるというものではないとは考えます。それから、もう一つは、50年もたっていると、かなり、申し訳ないのだけれども、財産価値としては下がっている部分があるので、そこの差異というのはそれほど大きいわけではないというのは現状としてはあると思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。大谷さんがお考えになっているとおりの方向のこともあり得る、という御発言であったろうと思います。 ○寒竹委員 貴重な御意見ありがとうございます。質問というか、価値が下がる場合もあれば上がる場合もあると、個別ケースだと思うのですけれども、予測可能性が下がることによって、同じ物件が市場に出なくなるとか、売りにくくなるとか、そういうことが起きるのではないかという漠然とした、先ほど大谷さんがおっしゃった、全体が下がれば、それは全体が下がるのかもしれないのだけれども、同じマンションで30年、40年、50年という基準のときにがたっと、下がるか上がるか分からないのだけれども、どちらか分からないから市場に出にくいという、市場の混乱ということが起きるのかなというのが、素人からすると懸念かなというのが一つと、それから、すみません、先ほどおっしゃったように、確かに50年、60年たっていれば、もう十分下がっているというのも確かにそうで、ここのB-1案の一定の年数が10年とか20年ということもあり得るのかと思ったものですから、そういうふうに感じたのですけれども、そうではなくて50年、60年、70年ということであれば、影響は小さいのかなとは思いました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。B-1案についての年数はこれからの話であるわけですけれども、現状は、6ページの1行目にありますとおり、相当程度長い期間を念頭に置いての提案と理解していただければと存じます。もちろん今後の御意見によって、30年、40年とすべきであるということが排除されているわけではありませんけれども、この案の趣旨といたしましては、先ほど沖野さんがおっしゃったことに恐らく近いことなのだと思いますが、B-2案というもののように具体的に対処すべき問題があるときはあるときとして案をお出しし、問題が具体的に生じる状況には至ってはいないかもしれないけれども、そのような問題が起こりやすくなる場合を考えて、ということです。もっとも、B-2案のような不具合が一般的に、例えば40年で生ずるとしたら、それに合わせて40年という話ではなくて、もう少し長い時間にする、それと、これからの建物は全体的にしっかりしてくるだろうということも想定した上での期間にする。こういうことを、まだ案とまではないのですけれども、一応の考え方ということで、そのような期間を例示しているということでございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○紺野委員 発言の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。今回の議論といいますか討論というのは、再生の円滑化ということで絞らせていただいて、建替えというキーワードが中心かと思うのですが、我々住む立場といたしましては、逆に言いますと、多数決原理で、それでA案、B案、C案と立っているのですが、先ほど齊藤委員の方からも御意見がありましたけれども、いろいろな条件が伴っていると。   例えば、建替えという現実を見てみますと、実際にここのところで該当するのは、B-2案とか何とかありますけれども、災害時においても建替えが伴ったのは大体神戸で110棟、それから東日本で3から4、熊本で2なのです。実態としては今までの、我々、住む立場から申し上げます。それで、先日の東京鑑定のお話から行きますと、全国でしかも282件しかないのです、現在において。こういう場合において、どれで賛成多数決でやっていくか、じっくり考えなくてはいけないのではないかと、枠組みを、建替え優先で行くのか、それとも、それこそ再生という話であれば、ほかの方法もあるのではないかという、我々、全国マンション管理組合連合会で住んでいる仲間と意見調整するのですけれども、やはりこの中でも建替えという、全国調査の280件しかないと、そのうち174件が東京都管轄なのですよ、我々の調べによりますと。   そうしますと、どちらかというと、今後話が進んでいくのでしょうけれども、リノベーションというか、そこら辺の形でやって、それで、全体、いろいろな業界の方がいらっしゃっているかもしれませんけれども、今マンションにおいては、適正化法がおかげさまで改正されまして、それに向けて、いかに今の資産を長もち、SDGsでもないですけれども、いかに財産を守っていくかというところで取り組んでいる最中でございます。やっと適正化法改正で、各自治体も戸建てから共同住宅、マンションに向けて、いかに行政的な支援をしていこうかとか、俗にいう管理不全をなくしていこうということになっているのです。それで、全体として100年マンションに向けてというのが大きな、皆さんもいろいろテレビとかマスコミで言われています。その手法とか何とかありまして、ここを建替えだけで今すぐ結論、いろいろなケースを見ていかないと、それこそ先ほど部会長からお話がございましたけれども、5年や10年で基本法的な財産管理のための区分所有法をこうやって改正していかなくてはならないのだというところの大事なキーワードが出てくるのではないかと、そこら辺で私が全国の仲間と話しているときに出てくるキーワードです、いかに今の財産を大事に。   それで、先ほど資産価値といいますけれども、価値の範囲というのは金額ばかりではないのです。この場所において継続して住み続けるという住まい方の話ですね。昔ですとよく集合住宅というのは仮住まいだとか何とかおっしゃっていましたけれども、今は俗に終の棲家なのです。そこでコミュニケーションをとりながら、地域との関わりとか、それで、はっきり言うと、我々が一番困っているのが、公社公団、公的な機関が建てた集合住宅の場合は、敷地も何も、俗にいう団地型とか何とかというのがあるわけです。そのときには容積率の緩和とか何とかということで対応しているわけですけれども、民間業者が建てたものというのは、殊に新耐震、はっきり申しますと、急にあれしたバブルのときの昭和の時代と平成のときの変わり目というのが大きく市場状況が変わっているわけです。   我々が心配しているのは、建替えをすると区分所有者は必ず金銭的な負担が伴っているのです、今までの二百何十件あれしているのも1,000万円から2,000万円ぐらい平均すると掛かっているのです、幅は少し広いですけれども。そういうときに、高経年マンション、建物、中でも住んでいる人も区分所有者もそれだけの年齢の方、それでこれだけの負担が本当に実際にできるのかと、そういうことも含んで、事業法でもないですけれども、建替えするときには計画してから長いところでは10年以上掛かってやっているケースもあるわけです、二、三年でできる話ではありませんので。それで、今まであれしていると、ディベロッパーさんといいますか、大手さんでもないですけれども、そこが開発、こういう手助けをしてくれないと、成功している例って少ないのです、非常に。ですから、そこら辺も見据えた形でいかにやると。ですから、我々、適正化法改正になって、よりよい、地域と共にあるということで、いかにしていこうかということで頑張っている実態でございます。   ですから、ただ多数決で、確かに旧耐震のものは、ですから、事業法でそれをいかに建替えさせる、条件をカバーしていかないと、非常に、ただ多数決で緩和されたよと。緩和したところでどれだけの効果があるかというところの見極めも非常に、この機会ですから、各専門家の方がいらっしゃるので、その知恵を借りながら対応していかなければいけないのではないかと思っております。地域の安全も含めて、それから災害の件も含めてです。そこら辺を少し観点、住む立場から私は申し上げました。細かい法律的なことは法律的で、あるかもしれませんけれども、そのことで少し意見をさせていただくといいますか、御参考になればと思っております。   私の方は以上です。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。建替えについては、どなたかもおっしゃいましたが、建物はいずれ寿命が来るという観点から、考えざるを得ないということで、今、話題としておりますし、最後まで話題となるとおもいます。ただ、御注意いただきましたとおり、建替えを全部しやすくしましょうという、それだけのことを今、考えているわけではございませんで、今日後半でリノベーションの話も出てまいりますし、今後の回におきまして管理の充実の話も当然出てくるというか、取り上げることになりますので、その辺りは全体として皆様方にどこをどうすればいいかということをお考えいただくということにしております。ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。差し当たり、今日のところはよろしいでしょうか。まとめる必要もないと思うのですが、とにかく様々な御意見を頂いたということで、かつ、ゴシックにあります1ページのところのA案からC案の全てに賛否両論あり、この案は不要だということでまとまったところはないということと承りました。今日が1回目でございますので、今日の意見を踏まえて、今後、皆様方も更にお考えいただき、事務局でも当然考えて、次回以降とさせていただきたいと存じます。   では、1の話題はこの程度にさせていただきまして、部会資料2の「第1 建替えを円滑化するための仕組み」のうちの「2 専有部分を含めた区分所有建物の刷新を可能とする仕組み」について、まず事務局から説明をお願いいたします。 ○山根関係官 部会資料2の13ページから、「2 専有部分を含めた区分所有建物の刷新を可能とする仕組み」として、一棟リノベーション工事及び配管の全面工事を取り上げています。   まず、一棟リノベーション工事についてですけれども、この工事手法は老朽化した区分所有建物の再生の方法の一つと考えられています。区分所有建物の構造にもよりますが、この方法は、共用部分に加えて専有部分も対象として、スケルトン状態にした上で必要な工事を行うことで、建替えと同様の効果を得ることができるものとされています。このような工事手法による場合には、一般に建替え工事よりも工事費用を抑えることができ、廃棄物の発生も抑えることができるといったメリットがあると指摘されています。   このような工事手法は、現状の区分所有法では、建物を取り壊さない工事手法であるために建替えには該当せず、そのため、全ての専有部分に手を入れる以上、区分所有者全員の同意が必要と考えられています。しかし、建替えと同様の効果を得ることができる、加えて費用も一定程度抑えることができるにもかかわらず、建替え決議よりも決議要件が重いことにもなりますので、こういった一棟リノベーション工事についても再生の手法として建替え決議と同様の多数決によって行うことを可能としてはどうかということで取り上げております。  こういった決議を設ける場合には、まず、どのような工事を対象とするのかというところを検討する必要があると思われますし、加えて、どの範囲の工事をする場合を決議の対象とするのかといった点についても検討する必要があると考えられます。   資料の14ページ目から15ページ目に掛けて記載をしているところでございますが、例えば、10戸ある建物において、全ての専有部分を対象とする工事を行う場合には、現行の建替え決議要件を前提とすると、10戸中8戸の決議でできることになるかと思われますけれども、他方で、10戸中9戸だけを対象とする工事を行う場合には、全部を対象としないので、9戸全部の同意が必要となり、そういった意味で決議要件のアンバランスな状態が生じてしまう可能性があるとも思われるところです。   また、先ほど具体的な決議要件については建替え決議と同様とすることが考えられると申し上げましたけれども、現在、建替え決議要件についても御議論いただいたところであり、変数が多い状態ではありますけれども、例えば年数要件を建替え決議に設けるとした場合には、一棟リノベーション工事が行われた場合に、躯体自体を取り壊さないことから、年数のカウントをリセットしてしまってよいのかといったことも考える必要があると考えられます。また、建替え決議と同様に反対者の取扱いについても検討する必要があると考えられます。   次に、部会資料の16ページからですけれども、配管の全面更新について取り上げています。こちらについては、集会の普通決議で行うことができることを規定するといったことを想定しています。区分所有建物の中の配管については、共用部分に属するものと専有部分に属するものが存在すると考えられていますが、給排水管が全体として老朽化している場合には、費用等の観点から、これらを一括して取り替えることが適当なケースがあるとされています。しかし、現行法の下では専有部分に属する給排水管の交換は各区分所有者が行うべきものとされているため、一括交換工事への同意が得られない区分所有者の専有部分に属する給排水管については工事を行うことが難しいと考えられてもいます。   そこで、このような給排水管の工事を一定の多数決により行うことができるとしてはどうかということで取り上げています。ただ、現在の標準管理規約や、そのコメントにおいても記載をされているところですが、現行法の下でも規約に定めを設けることでそういった工事ができるといった指摘もありますので、こういった決議を法律の中に規定をすることの必要性についても検討する必要があるのではないかと思われます。   簡単ではございますが、説明は以上でございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   次は、先ほど申しましたように、「2 専有部分を含めた区分所有建物の刷新を可能とする仕組み」について御審議を頂きますけれども、ここには(1)と(2)という二つのやや性質の異なる事柄が含まれておりますので、まずは(1)多数決による一棟リノベーション工事について御意見を伺いたく存じます。いかがでしょうか。 ○大桐委員 ありがとうございます。まず、一棟リノベーション工事に関しては賛成なのですけれども、懸念事項としましては、まず第1点目としまして、既存不適格状態の延長が生じるという点についてでございます。周辺住民から見れば、もうすぐで隣のマンションは建替え時期であるから、現在の建築基準法に合致したような建物になるだろうというふうな期待をしていたところ、この一棟リノベーション工事ができやすくなることによって、それが期待外れになってしまうと。違法ではないとしても、それが良いものとして割り切れるのかどうかという点が1点目としてあると思います。   2点目としましては、部会資料の13ページの35行目にありますように、一棟リノベーションの工事と一言でいいましても、建築基準法の申請が必要でない場合ばかりではなく、一定の工事内容の範囲内で限られるということで、類型的にどういった工事であれば確認申請が必要なのかということを御教示いただきながら、今後検討していかなければいけないとは思っております。今回の資料の中では一定の工事内容という文言しか出ておりませんでしたので、その中身の更に詳しい検討まではできていないのですけれども、詳しい資料などがございましたら御提供願えればと思っております。   次が、通常であれば一棟リノベーション工事をするからには耐震性を向上させてくれるだろうと期待するところではあるのですけれども、仮に耐震性を向上させないようなリノベーション工事をされてしまった場合に、それはいいのかどうかという、そこはもう民民に任せることになるのかというところが少し懸念しているところであります。   更に付け加え、これは問題点ではないのですけれども、反対者側からの買取り請求という、離脱する仕組みとしまして、例えば区分所有法の61条の復旧の制度を参考にしながら、買取り請求といった離脱の制度を設けてはどうかという意見も出ましたので、御紹介させていただきます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。既存不適格状態が延びるのではないかを始めとする3点は、多分同じ問題というか、全体として関連していると思うのですが、建築基準法上の確認申請が必要な場合とそうでない場合、耐震性が向上しない工事が実際上、一棟リノベーション工事としてあり得るか、できるかといった点について、大谷さんお願いします。 ○大谷幹事 今の資料の作りとしては、確かに書いておりませんで、一棟リノベーションというのは建築基準法上は恐らく模様替えということになるのですかね。一定の場合には既存不適格状態であったものを現在の基準に合わせて建て直さないといけないという形になるはずで、どのような場合に現在の基準に合わせないといけないかどうか、これは正に工事の内容次第ということになってくるのだと思います。その意味で、一棟リノベーション工事、現在行われているものを聞いておりましても、既存不適格のまま維持されるようなものというのは、かなり現在の建築基準法の規制の下でぎりぎり許されるところでやっているとされておりまして、全てのものについて既存不適格の状態が維持できるようなことではなさそうだとは思っております。いずれにしても、これは建築基準法自体の適用の話でありますので、どういうものがお出しできるかを含めて、国交省とも御相談をして検討していきたいと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。そういうことで、建替えとフリーハンドで選択肢として加えられますというようなものではないということは前提で、より詳しくは今後、資料等を御提供いただけるということなのですけれども、規制も含めてクリアして一棟リノベーション工事をできるという状況があったらという前提で、御議論をしていただければと存じます。それがどれぐらいのボリュームになるかというのは必ずしも明らかではないというか、案外それほど大したボリュームにならないこともあり得るのかもしれませんが、しかし、使えるところでは使いましょうということにしても意義のある制度だとは思いますので、そのようなことで御議論いただければと存じます。   ほかにいかがでしょうか。 ○齊藤委員 どうもありがとうございます。一棟リノベーションについて、私も余り前例を見たことないので想像ができないのですが、多分この一棟リノベーションというのは、まず耐震改修工事をするということ、そして共用部分の変更をすること、さらに専有部分を変更するというような事例かと思います。前例があるかなと私も調べてみたのですけれども、一つはリファイン建築といわれる改修工事の事例で、これが区分所有型のマンションで2例あると理解しております。ただ、この2例では耐震補強、耐震改修工事はされているのですが、それを共用部分のみで対応されています。やはり専有部分を触ると大変なので、共用部分のみで対応されています。さらに、住みながらの工事で対応されています。工事の間、仮住まいが必要となると大変なので、住みながらの工事で対応されています。そのほかに専有部分を触った事例があるかといったら、少し昔、1980年代から90年代、マンションの専有面積が狭いので皆で増築しましょうと2部屋増築をした事例がございました。この事例では、所有権を触らずに、増築部分に専用使用権を設定するという対応であったかと思います。対象は、団地型のマンションでしたので、希望する棟とか階段室を整理して、住戸の交換などをし、できる棟・階段室を整えていきながらやったという、現行法の中での対応の事例があります。しかし、事例は少ないです。では、何が最もこれを考える、参考になるかを考えてみましたところ、耐震改修工事ではないかと思いました。1棟リノベーションは、少なくとも耐震改修工事をするという前提になっていると思いますので。耐震改修工事も私が把握している中では、全事例で住みながらの工事であるということと、できるだけ専有部分を触らないということ、それから、実はここが大きいのですが、私が調べた事例では一時金を集められている事例がありませんでした。つまり、追加の費用を集めるとなかなか合意が取れないからです。ではお金がないときはどうするのかについては、皆で借金をするという形で進められています。   この耐震改修工事が、私もいろいろ調査して、建替えと違うなと思ったのは、賛成しなかった人もそこに住んで費用負担をしなければいけない、そういう方々がいるということで、例えば売渡し請求とか買取り請求もないという制度の中では、原則ここに住み続けなければいけないというのが大きな課題かと思います。今回、一棟リノベーションは、耐震改修工事だけではなく、それにプラスアルファを更にやっていくということですので、現実にはどれだけあるのか、そして、仮住まいをしてまでやるのかという課題があるかもしれませんが、建替えが難しいとなったら、こういった道を多数決で開けていくということが必要かと思いますので、少なくとも建替えと同じ要件でできるということは絶対必要ではないかと思っております。   と同時に、先ほど御案内がありましたように、こちらの方法を選びたいと思うマンションの多くは、既にリファイン建築を選ばれているところも、既存不適格、容積率オーバーということで、とても建替えができないということでの選択ですので、今後そういう意味で近隣に迷惑を掛けるマンションがそのまま残るということで、こうしたマンションの長寿命化を促進するのですから、都市計画的な視点からの関係を整理していく必要があるのかなと思っています。   また、さきほど耐震改修工事の事例でお話ししましたように、賛成しなかった人たちをどうフォローしていくのかも重要かと思います。賛成しなかった人にとっては、売渡し請求ではなく買取り請求をしたいのではないかと思いますので、そういった点を御考慮いただけたらと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。御注意いただいた点、気を付けてまいりたいと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○紺野委員 私はこれは非常に大切なお話だと思っております。今、耐震改修とかそこら辺の話が出ましたけれども、これだけ高経年マンションが出てきますと、マンションというよりも、その用途変更が出てくるのではないか。地域によっては、それでなくても高齢化社会になってきて、養護施設でもないですけれども、そういうものに利活用できないか、用途変更という、マンションからですね、そういう方式がとれないかなという。実験的には厚労省の方で補助金を出して、モデル事業で全国で何か所か、サービスという面から、デイサービスを設けるような形とか、そういう形のものにも、高経年マンション、新しいマンションでも、新築マンションに近いというか築10年ぐらいのマンションでも、そういう捉え方で、法的に衛生器具とか何とかも替えまして、そういう形でこういう建物ができれば、それこそSDGsでもないですけれども、用途が広まっていくのではないかと思っております。空き家対策にもなっていくでしょうし、組合の法人化して資産を持っていくとか、そういう面でも御検討いただければと思っております。刷新を可能とする仕組みの中にですね。   私の方からは以上です。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。用途変更というのは、区分所有建物を。 ○紺野委員 住居ばかりではなくて、複合施設としての、要介護とか、住み替えがたやすくできるとか、そういう方向ができていかないかなと思っているんですけれども。 ○佐久間部会長 分かりました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○矢吹幹事 一棟リノベーションは政策的にも非常に意味があると思っていまして、建替えではない再生の手法をきちんと類型を作るという意味が大きいと思っています。今、確たる自信はないので申し上げるのですけれども、例えばマンションの建替えだと区分所有法で議決権が定まっていて、マンション建替え事業というのをマン建法の中で措置をしていて、マンション建替えが円滑に進むような手当てをしているという関係性にありますので、精査しないといけないと思っているのですけれども、リノベーションも何か事業法のようなものがあって、そこに政策的な色付けをしていく必要があるということであれば、そういう立法の形式はあり得て、先ほど大桐先生がおっしゃって、気付いたのですけれども、余りないかもしれませんが、耐震工事をしないような場合などが政策的によろしくないという判断がもしあるのだとすれば、何らかの事業計画のようなものを行政庁に出して、それを認可するというような形で、任意の事業としてもできるし法定の事業としてもできるという立て付けにするということは議論できるのかなとも少し思いましたので、そこは少し考えて、この場での議論も踏まえながら、どうやったらそれが世の中で進んでいくかというようなことも考えていく必要があるのかなと少し思いました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。是非ともお願いをいたします。   ほかにいかがでしょうか。 ○浅見委員 ありがとうございます。まず、皆様も御指摘のとおりなのですけれども、やはり一棟リノベーション工事というものは非常に重要な一つの選択肢に今後なると思いますので、それをしやすくするというのが重要かと思いますので、今回も、建替え決議程度の規律として、多数決による一棟リノベーション工事を可能にするというのは私も賛同いたします。   先ほど既存不適格の話がありましたけれども、実際に既存不適格以外に違反建築というのがあるのです。違反建築の場合にこれを認めるかどうかというのは、少し微妙なところかと思います。ただ、一方で既存不適格の場合は、例えば戸建て住宅などでも建替えそっくりさんみたいな事業がございまして、実際にはほぼ新しくなるようなこともできてしまっているという状況があります。なぜマンションだけ認めないかというのも若干、公平性という面から問題があるかもしれなくて、もちろん正した方がいいということはあるかもしれないですけれども、一方で既存不適格というのは建てた当時には合法な建築だったということもあるので、ある程度は認めざるを得ない部分があるのかなというような感覚を持ちます。もちろん、私は都市計画が専門なので、本当はきちんと現行の都市計画制度に沿っているのがいいということはよく分かっているのですが、なかなかそれだけで事が動かないのが現実ですので、そういうことなのかなと思うのがございます。   あと、先ほどどのくらいの場合に一棟リノベーションと定義するかというお話がございました。ここに記載されているとおりかなと思いますので、例えば、仮に今後4分の3ということで決まるとすれば、4分の3以上の専用部分についても手を付けるという場合には一棟リノベーションと考えるとか、そういうのが合理的な判断かなとは思いました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。一棟リノベーションについては、よろしいでしょうか、今日のところですが。   では、また後で戻っていただいても結構ですので、差し当たり先に進みまして、16ページ以下の(2)配管の全面更新について、次は御意見を賜りたく存じます。こちらはいかがですか。そもそも法の手当てを要するかということも問題としては問われていますが、そこは最後の整理かなとは思うのですけれども。 ○森本委員 配管の全面更新に関して意見を述べさせていただきます。配管は区分所有建物にとって非常に重要な部分であり、かつ老朽化等の影響を受けやすい部分でもあるので、不要な争いを避けて円滑に修繕を進めることができるようにするために、明確に規定することについて、賛成いたします。ただし、規定においては、マンション標準管理規約単棟型コメント第21条関係7に指摘されているように、先行して工事を行った区分所有者への補償等について十分に留意することが必要だと考えております。そのため、規定における補償等の明文化が最善ではないのかと考えております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。補償について規定で明文化することの必要性を承りました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○齊藤委員 ありがとうございます。標準管理規約に明記されたので、特段必要はないかなと思っております。ということで、むしろこの規定の運用に非常に重要なのは、コメントにもありますように、長期修繕計画での位置付けとか、規約での位置付けとか、あと費用負担の在り方とか、現実にはこれを運用する中で丁寧な指導が要るという意味では、むしろ法律を変えるよりも、これを実際に行う際にどういうふうな手続をするかということを丁寧に普及していくという方が現実的ではないかという印象を持っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。区分所有法で規定するかどうかについては、先ほども申しましたとおり、必要ないという考え方ももちろんあり得るとは思いますけれども、そうであったとして、マンション標準管理規約についての現行規定を前提に、こういう問題があるのではないかということを議論しておいていただければと思います。国交省において場合によっては引き取って、更にお考えいただけることもあるかもしれませんので。当面の間は、これも先ほどの別の問題と同じですけれども、どこの法でどう手当てするかは置いておいて、実質の問題としてお考えを承れればと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○大桐委員 まず、標準管理規約にはあるにせよ、規約でこうした定めを設けることができるということについて明文化していただくということに関して、賛成です。   なお、費用負担について、専有部分についても含まれてきますので、専有部分の給排水管工事の費用についてどこから出すのかという、積立金の方から支出するのか、あるいは各区分所有者の方から回収するのかといったことについても、なるべく明文化していただけると有り難いと思っております。修繕積立金から出せるというような裁判例もあるやに聞いておりますが、その辺が確立したものではないということからも、立法化していただけると有り難いということがございます。   それから、こうした区分所有法に設ける設け方にもよるかと思われるのですけれども、集会の普通決議で行うことができると規定を置いた場合において、専有部分の給排水管についての管理責任がどちらに生じ得るのか、法律の定め方によっては、管理組合の方でやればいいというふうな方向に行く懸念というのが少しございますので、法律を定めることによるアナウンス効果といいますか、その辺を気を付けていただきながら、定め方を、原則論はこうですよと、しかし例外としてこうなりますよというのが分かるような形で規定していただくのがいいのかなとは考えております。   また、配管の更新と書いていただいていますけれども、配管の中をコーティングするようなものも含めての更生工事というのですかね、更生も含めての工事も含まれての規定ということで理解しておりますが、それはよろしかったでしょうか。 ○佐久間部会長 今の最後の点は。 ○大谷幹事 今、更生工事とおっしゃいましたか。 ○佐久間部会長 コーティングなどして、修繕するのではなくて、より機能を高める。 ○浅見幹事 中がだんだんスケーリングやなんかを起こして小さくなったり、腐食したりなんかして、というのを取り除いて、よく通るようにするような工事という意味ですよね。 ○大桐委員 なので、管自体は取り外さない、交換ではなくて。 ○佐久間部会長 それは分かるのですが、案は共用部分にある給排水管として一括してやるということが一応前提となっているのですけれども、更生工事とおっしゃった部分のも大概一緒にやるということなのですか。 ○大桐委員 そうですね、それも共用部分と専有部分に関わる。 ○佐久間部会長 それは、専有部分に立ち入って、やはりやらないといけないのですかね。 ○大桐委員 そうですね。 ○紺野委員 更生工事というのは、今まであったのを、単純にいうと磨き上げるというか、既設のもの、更新というのは取り替えるのですね、全く。 ○佐久間部会長 それは分かります。 ○紺野委員 それで、ここの場合では更新といっているのは。それで、共用部分しかそれは今まで原則はやっていないのです、法律上。ですから、ここのところでは専有部分もという話になっているのでしょう。そういうことです。 ○大谷幹事 ここで提案をしているのは、取り替えることでございまして、配管を言わば掃除するみたいなことだと理解いたしましたけれども、それは今、どういう困っていることがあるということでしょうか。 ○佐久間部会長 私、マンションに住んでいるのですけれども、つい先日、日曜日に業者が来て、うちに入ってきて、排水管の中を洗浄しますとかいって作業をされました。それとは違うのですか。 ○紺野委員 それとは違います。それは高圧洗浄といって、管のところを洗浄する。 ○佐久間部会長 作業としては違うのは分かったのですけれども、それとはまた別格の、取替えと同じぐらいの費用負担とか、各専有部分の負担が大きくて反対者が出てくるとか、そういうおそれがあるのかということです。取替えの場合は、各専有部分の中で一人でも反対と言われたら、漏水の危険も残るとかというのも含めて、後々、大変困るということがあるのだけれども、それと同じようなことがやはり危惧されるというようなものだと考えてよろしいのですかね。 ○大桐委員 同類と理解している。 ○紺野委員 更生工事も同じですね。 ○佐久間部会長 そうですか。では、今後検討を。 ○紺野委員 ですから、それは共用部分しか今はやっていないと思うんです。ただ、管理組合としては専有部分というか、各部屋に入って更生工事もやる場合もありますけれども、それも区分所有法の中で入れてくれというお話だと思います、今のお話は。更新ばかりではなくて更生工事も含んでくれというお話かと思います。 ○佐久間部会長 趣旨が同じようなものであるということになれば、対象に含めることを検討することになろうかと思います。ありがとうございます。   ほかにいかがですか。   ごめんなさい、大桐さんにほかのことで確認しようと思って、忘れていました。  専有部分についての工事の費用負担について明文化が望ましいとおっしゃったのは、方向としては修繕積立金から出せるという規定を置けということなのか、それ以外のことでもいいのではっきりしてくれということなのか、趣旨はどちらですか。 ○佐久間部会長 法律でできるのかな、というか、する意味があるのか。でも、検討いたします。 ○大桐委員 まだ検討中であるが、積立金からも出せるようにする。原則論としては、共用部分と専有部分と分けて考えていただいて、専有部分に関しては各区分所有者が負担すべき問題であろうかとは思います。 ○佐久間部会長 分かりました。検討には加えますけれども、現状この提案は、専有部分の所有者の反対によって、すべき工事が滞るということを何とかしようという話だけれども、それだけでは足りないというお話だったと伺いました。ありがとうございます。専有部分についての給排水管の管理責任までなくなるわけではないというところを誤解されないようにというのが御注意だったと思いますが、それは、規定ではないのかもしれませんが、説明のところでは対処していくことが必要かと思いました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。特にこの問題について、よろしいでしょうか。   では、あればということで結構ですけれども、本日扱いました問題全てにおいて、これが発言として漏れていましたということがあれば、承りたく存じます。いかがですか。 ○齊藤委員 すいません。私の発言の前に、先に聞くべきだったのですが、一番最後の問題の配管のところなのですけれども、本件に関して結構トラブルになって裁判になっているのでしょうか。私はそういう認識がなかったものですから、法に改めて書く必要はないのではないのという発言をいたしましたが、標準管理規約で示されてもさらにトラブルというものを予防しにくいのでしょうか。 ○矢吹幹事 裁判でどこまでかというのは、すみません、今ぱっとないのですけれども、標準管理規約で、わざわざ書いたというほどではないかもしれませんが、明記したということは、現場のニーズがあって、かなりお困りになられていて、それが障害になって必要な工事ができないというのは実はかなり大きなマターだとやはり思っていましたので、そこを第一歩的に標準管理規約で書いたということかと思っています。多分、裁判もあると思います。 ○齊藤委員 ありがとうございます。法律での規定が今ない中でも、現場では一生懸命苦労して、現実的に対応されていることを理解していましたので、特に必要ないかなと思ったものですが、状況を私もしっかり勉強してきたいと思います。ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがですか。よろしいですか。   本日は長時間にわたって大変熱心に御議論いただき、ありがとうございました。今後更に、本日頂いた御意見を踏まえまして、論点の整理、深掘りを進めていきたいと存じます。   では、次回の議事日程等について、事務当局から説明をお願いいたします。 ○大谷幹事 本日も長時間にわたって熱心な御審議を頂き、ありがとうございました。   次回の日程は、来月12月19日月曜日ということになっております。同じく午後1時半から午後5時半までということで時間を取らせていただきました。場所は法務省の共用会議室6・7というところで、7階になります。   テーマにつきましては、集会の決議を円滑化する仕組みということで、不明者を決議から除く仕組みなどの論点について取り上げたいと思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   それでは、これをもちまして法制審議会区分所有法制部会の第2回会議を閉会とさせていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りまして、誠にありがとうございました。 -了-