改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会 (第4回) 第1 日 時  令和4年12月23日(金)      自 午前 9時59分                            至 午前11時53分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  捜査段階における検察・警察の取調べの録音・録画の実施状況等 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○栗木参事官 ただ今から、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会の第4回会議を開催いたします。   本日は、皆様御多用中のところ、御出席くださり、誠にありがとうございます。   まず、事務当局から、本日の配布資料について確認をさせていただきます。   配布資料9及び10は、捜査段階における検察の取調べの録音・録画の実施状況等に関して、前回までに構成員の方から御要望のあった資料のうち、お示しできるものを検討し、事務当局において作成したものです。配布資料11及び12は、公判段階における取調べの録音・録画記録媒体による立証状況等に関するもので、事務当局において作成したものです。   その他の配布資料として、松田構成員、河津構成員からそれぞれ御提出のあった資料をお配りしています。松田構成員御提出の資料「警察の被疑者取調べに関する苦情等への対応状況について」は、捜査段階における警察の取調べの録音・録画の実施状況等に関する資料であり、警察庁において作成されたものです。河津構成員御提出の資料「取調べに関する問題事例一覧」は、捜査段階における検察・警察の取調べの録音・録画の実施状況等に関する資料であり、河津構成員において作成されたものです。   各配布資料の内容については、後ほど、それぞれの点について御協議いただく際に御説明することといたします。   それでは、議事に入りたいと思います。   本日は、まず、検察の取調べの録音・録画の実施状況等について、配布資料9及び10に基づく協議を行い、次に、警察の取調べの録音・録画の実施状況等について、松田構成員御提出の配布資料に基づく協議を行った後、検察・警察の取調べの録音・録画の実施状況等について、河津構成員御提出の配布資料に基づく協議を行うこととしたいと思います。   そして、これらの協議の後、事務当局から、捜査段階における取調べの録音・録画の実施状況に関連して、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第6条の2が規定する、いわゆるテロ等準備罪についての取調べの録音・録画の実施状況について、若干のお時間を頂いて御説明したいと思います。   その後、公判段階における取調べの録音・録画記録媒体による立証状況等について、配布資料11及び12に基づく協議を行うこととしたいと思います。   それらの協議に当たっては、それぞれ、関係する資料の説明を行った上で、その内容について質疑応答・意見交換を行うこととし、配布資料9から12までについては事務当局から説明し、松田構成員・河津構成員御提出の資料については、それぞれ、御提出者から御説明いただくこととしたいと思います。   そのような進め方とさせていただくことでよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   それでは、まず、事務当局から、配布資料9及び10の内容について御説明いたします。   配布資料9について御説明します。   最高検察庁に設置されている監察指導部は、検察官又は検察事務官の捜査、公判遂行上の違法・不適正行為等を把握し、監察を含む事務監査の実施により、これに適切に対処するほか、検察の組織運営全般に関する情報を集約し、そのための調査を行うなどした上、必要な指導等を行うことを所管事務としています。   配布資料9は、改正刑事訴訟法が施行された令和元年6月1日から本年3月31日までの間に、監察指導部において情報を受け付け、又は監察を実施した件について、情報提供を頂き、当局において、件数を表にまとめたものです。これからの御説明では、この期間を「対象期間」といいます。   まず、1ページ目の「1−1」及び「1−2」は、監察指導部が対象期間内に情報を受け付けた件数です。監察指導部では、メールや電話、書面によって直接情報を得るほか、全国の高等検察庁や地方検察庁を通じて、弁護人からの申入れや投書、告訴・告発等によって情報を得ています。対象期間の端緒別の情報受付件数の内訳は、「1−1 情報受付件数(端緒別)」のとおりです。   また、「1−2 情報受付件数(類型別)」は、監察指導部が対象期間内に情報を受け付けた案件につき、類型別の件数を示したものです。この内訳は、情報を受け付けた案件を、その主たる申立ての内容に基づいて、「取調べに関する不満等」、「捜査・処理及び公判活動への不満」、「被害者等対応への不満」、「証拠の改ざん・隠匿の主張」、「弁護活動に対する妨害の主張」、「職務関連外事項」、「その他」に分類したものです。監察指導部が対象期間内に情報を受け付けた件数は、合計3317件で、そのうち、「取調べに関する不満等」に係るものは、452件でした。   次に、2ページ目を御覧ください。   監察指導部では、情報を受け付けた案件のうち、通報内容が不明確であるもの、そもそも監察対象事案に該当しないもの、情報収集の結果、該当事実がないとされたものを除いたものにつき、監察案件として立件し、監察を実施しています。「2 受付情報処理別件数及び監察立件件数」のとおり、対象期間に監察案件として立件した件数は、対象期間内に受け付けたものが457件、対象期間前に受け付けて未済となっていたものが84件で、合計541件でした。   この監察立件件数の内訳を示したものが、3ページ目の「3−1」及び「3−2」です。「3−1 監察立件件数(端緒別)」は、監察案件として立件したものにつき、情報受付の端緒別の内訳を示したものです。端緒として最も多かったのは、高検・地検等に対して弁護人からなされた申入れでした。また、高検・地検等が得た情報の端緒として次に多かった「その他」には、例えば、決裁官等ほかの職員が、違法又は不適正とされるおそれのあるケースを発見し、上司に報告するなどして原庁による調査につながった例などが含まれます。「3−2 監察立件件数(類型別)」は、監察案件として立件したものを、その申立ての内容に基づいて類型別に分類し、それぞれの件数を示したものです。対象期間において、監察案件として立件された541件のうち、主たる申立て内容が「取調べに関する不満等」であったものは398件でした。   最後に、4ページ目の「4 監察結果別件数」は、監察を実施した結果として、とられた対応ごとにその内訳を示したものです。一点御留意いただきたいのは、表の下の「※」に記載されているとおり、監察案件として立件したものの中には、同一の案件につき、複数回にわたって申入れがされるなどしたものがあることです。そのような場合、「4 監察結果別件数」の表においては、「受付件数」ベースの数値、すなわち、申入れごとに1件と数えた数値を括弧内に記載し、実質的な件数を括弧の左側に記載しています。   この実質的な件数を前提に御説明しますと、まず、対象期間中に監察が実施された件数は、合計538件となります。そのうち、赤色、すなわち、検事総長から検事正又は検事長に対する改善等の指示がなされたものは、1件です。この対応は、検察官等の捜査・公判遂行上の違法又は不適正行為が認定できる場合で、かつ、その問題が当該行為者の注意・指導のみにとどまらず、今後の原庁における組織運営上留意を要すべきであると認める場合に行われるものです。   次に、黄色、すなわち、同種事案の再発防止に向け、一層の注意喚起をしたものは、16件です。この対応は、検察官等の捜査・公判遂行上の違法又は不適正行為が認定できるものの、その行為の内容等からして、検事総長からの改善等の指示をするまでの必要性はないと認める場合、あるいは、不適正行為とまで評価できない一定の配慮に欠けた対応等があり、その問題が当該行為者のみならず他の検察官等においても今後留意を要すべきものと認める場合に行われるものです。   次に、青色、すなわち、原庁等で行われた注意・指導で足りるとしたものは、112件です。この対応は、不適正行為が認定できる場合であっても、行為の内容からしてその程度が低い場合、あるいは、不適正行為とまで評価できないものの検察官等として一定の配慮に欠けた対応等があり、かつ、それが当該行為者の理解不足等個人の属性に基づくものと認められることから、原庁等で行われた注意・指導に加えて、最高検から指導をする必要はないと判断された場合に行われるものです。   以上を合計すると、対象期間に、監察の結果、赤色、黄色又は青色のいずれかの措置がとられたものは、合計129件でした。そして、これら以外のもの、すなわち監察の結果、検察官等の行為に違法又は不適正な点がなく、指摘すべき問題点等がないとされたものは、409件でした。   次に、対象期間に監察が実施された案件で、何らかの問題点があったとされたもののうち、取調べに関して問題があったとされたものについて、御説明します。   対象期間に監察が実施された案件で、何らかの問題点があったとされたもの、つまり、4ページ目の「4 監察結果別件数」の中で赤色・黄色・青色を付した欄に当てはまるもののうち、被疑者の取調べに関して問題があったとされたものは、79件でした。その内訳は、赤色、つまり、原庁に対して改善の指示がなされたものが0件、黄色、つまり、原庁に対して注意喚起をしたものが5件、青色、つまり、原庁における注意・指導で足りるとしたものが74件です。   それぞれの事例の詳細については、今後の監察の実施に支障が生じるおそれがある上、個別事件の捜査の具体的内容に関わる事柄でもありますので、本協議会において明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、問題点の傾向について御説明すると、この79件の中には、順不同ですが、被疑者の手錠が解錠されていないのを見落としたまま取調べを行ったもの、録音・録画されていることの告知をせずに取調べを行ったもの、被疑者に対し、感情的な発言や威圧的な発言をするなどしたもの、被疑者に対し、黙秘権を行使すること、否認すること又は供述調書への署名をしないこと、これらを「黙秘権行使等」といいますが、これによる不利益を示唆するような発言をしたり、黙秘権行使等を非難したり、供述することによる利益を示唆するような発言をするなどしたもの、供述調書を作成する際、記載内容に誤りがないかを被疑者に十分に確認しないまま署名等を求めたり、被疑者からの加除訂正の申立てに適切に対応しないなど、調書の作成方法に問題があったもの、弁護人との秘密交通権に対する配慮を欠く発言をしたもの、昼食についての配慮をせず取調べを行ったものなどがありました。   なお、最高検察庁の監察指導部による監察の対象は、取調べに関するものに限定されておらず、捜査・公判遂行上の行為全般を取り扱っていることから、監察案件につき、罪名、身柄拘束の有無、取調べの録音・録画実施の有無等を網羅的に把握・集計する仕組みとはなっていません。そのため、監察案件として立件されたもの又は監察の結果問題があるとされたもののうち、取調べの録音・録画対象事件の件数及び実際に録音・録画が実施されていた件数については、お示しすることができません。   もっとも、監察結果から把握する限り、監察案件として立件されたもの及び監察の結果問題があるとされたもののいずれについても、取調べに関するものについては、大半の事例において、録音・録画が実施されており、監察実施時にはその記録媒体を視聴するなどして問題点の把握に努めております。   配布資料9の御説明は、以上です。   続きまして、配布資料10について御説明します。   配布資料10は、供述の任意性が争われた事件における検察官の取調べに係る録音・録画実施件数を、身柄事件・在宅事件ごとに整理したものです。   「供述の任意性が争われた事件」とは、この表の下の「※1」に記載したとおり、令和元年6月1日から令和4年8月31日までの間に第一審判決があった事件のうち、被告人の捜査段階における供述の任意性を争う旨の主張がなされた事件で、検察官が証拠調べ請求を撤回し又は裁判所が証拠調べの必要性がないことを理由に証拠調べ請求を却下した事件を除いたものを指しています。事務当局では、在宅事件について取調べの録音・録画を実施した件数そのものは把握していないものの、第一審判決があった事件のうち、被告人の供述の任意性を争う旨の主張がなされたものについて調査していたことから、この調査結果に基づき、供述の任意性が争われた事件における検察官の取調べに係る録音・録画実施件数を、身柄事件・在宅事件ごとに明らかにしたものです。   身柄事件と在宅事件の区別は、公判請求時又は略式命令の請求時を基準としています。なお、「※2」に記載したとおり、ここでいう「勾留」には、被疑者が他の被疑事件・被告事件により勾留されていた場合も含まれますので、例えば、被疑者が、A罪についての勾留中にB罪について取調べを受け、その後、B罪について公判請求又は略式命令の請求がなされた場合において、当該取調べにおける供述の任意性が争われたときは、「身柄事件」に分類されることになります。   この表のうち、「身柄事件」の欄を御覧いただければと思いますが、「供述の任意性が争われた事件のうち、公判請求時又は略式命令の請求時に被疑者が勾留されていたもの」の「件数」と、そのうちの「検察官の取調べに係る録音・録画実施件数」は、令和元年6月1日から同年12月31日までについては、18件中17件、令和2年中については、27件中27件、令和3年中については、50件中49件、令和4年1月1日から同年8月31日までについては、38件中37件であり、合計すると、令和元年6月1日から令和4年8月31日までの間に第一審判決があった事件のうち、被告人の捜査段階における供述の任意性を争う旨の主張がなされた事件は合計133件で、そのうち、検察官の取調べに係る録音・録画実施件数は130件でした。   次に、「在宅事件」の欄を御覧いただければと思いますが、「供述の任意性が争われた事件のうち、公判請求時又は略式命令の請求時に被疑者が勾留されていなかったもの」の「件数」と、そのうちの「検察官の取調べに係る録音・録画実施件数」は、令和元年6月1日から同年12月31日までについては、4件中0件、令和2年中については、15件中4件、令和3年中については、16件中3件、令和4年1月1日から同年8月31日までについては、10件中1件であり、合計すると、令和元年6月1日から令和4年8月31日までの間に第一審判決があった事件のうち、被告人の捜査段階における供述の任意性を争う旨の主張がなされた事件は合計45件で、そのうち、検察官の取調べに係る録音・録画実施件数は、8件でした。   次に、二つある灰色の「参考」の欄について御説明します。   「参考」の欄は、検察統計年報に基づき、各年の検察庁における公判請求及び略式命令の請求の件数を、身柄事件・在宅事件ごとに明らかにしたものであり、「供述の任意性が争われた事件」の欄に記載した件数が、事件数全体に占める割合をおおよそのボリューム感として把握するための目安として記載したものです。   ここで、目安と申し上げたのは、「供述の任意性が争われた事件」の欄と「参考」の欄とでは、事件数の計上方法が異なっているためであり、具体的には、「供述の任意性が争われた事件」の欄には、各年に第一審判決があった事件数を計上しているのに対し、「参考」の欄には、各年に検察庁において公判請求又は略式命令の請求がなされた事件を計上していること、「※2」及び「※5」に記載したとおり、「供述の任意性が争われた事件」の欄の「勾留」には、他の被疑事件・被告事件によるものも含まれているのに対し、「参考」の欄の「勾留」には、他の被疑事件・被告事件によるもの及び勾留中に逃走したものは含まれないこと、「供述の任意性が争われた事件」の欄には、全ての罪名に係る事件の件数を計上しているのに対し、「参考」の欄には、自動車による過失運転致死傷等事件及び道路交通法違反被疑事件の件数は計上していないことが異なっています。   「参考」の欄においても、身柄事件と在宅事件の区別は、公判請求時又は略式命令の請求時を基準としており、公判請求時又は略式命令の請求時に被疑者が勾留されていた事件を「身柄事件」、公判請求時又は略式命令の請求時に被疑者が勾留されていなかった事件を「在宅事件」に分類しています。その上で、「身柄事件」の欄のうち、「参考」の欄を御覧いただければと思いますが、検察庁が公判請求又は略式命令請求をした事件のうち、公判請求時又は略式命令の請求時に被疑者が勾留されていた事件数は、令和元年が4万8675件、令和2年が4万7158件、令和3年が4万4178件でした。   また、「在宅事件」の欄のうち、「参考」の欄を御覧いただければと思いますが、検察庁が公判請求又は略式命令請求をした事件のうち、公判請求時又は略式命令の請求時に被疑者が勾留されていなかった事件数は、令和元年が6万1893件、令和2年が5万9432件、令和3年が5万8591件でした。   配布資料10の御説明は以上です。   ただ今の説明について、御質問はありますか。 ○成瀬構成員 御説明ありがとうございました。配布資料9について質問をさせていただきたいと思います。   ただ今の御説明の中でも言及がございましたが、3ページの「3−1 監察立件件数(端緒別)」の表によれば、監察事案の端緒としては、「高検・地検等が得た情報」のうち、弁護人からの申入れが最も大きな割合を占めています。ここから、監察事案の端緒を得る上で、弁護人からの申入れが重要であることが分かりますが、高検・地検等に対してなされた弁護人の申入れは、全て最高検察庁の監察指導部に報告されるのでしょうか。それとも、各高検・地検で一定の選別作業を行って、重要な申入れのみが最高検察庁の監察指導部に報告されるのでしょうか。 ○栗木参事官 監察の対象になり得るものに関して高検・地検等が受けた弁護人からの申入れについては、いずれも最高検察庁に報告されることとなっております。 ○成瀬構成員 よく分かりました。ありがとうございます。 ○河津構成員 御説明ありがとうございました。   配布資料9の「4 監察結果別件数」について、監察案件として立件された538件中、何らかの注意・指導が行われたのは合計129件、「指摘すべき問題点等がない」とされたのが409件ということですが、この「指摘すべき問題点」があったのか、なかったのかを判断する前提となる事実関係の確認の方法について、質問させていただきます。   特に、「取調べに関する不満等」の類型に該当するもののうち、録音・録画記録媒体で取調べの状況を確認したのが、先ほど大半という御説明を頂きましたけれども、具体的には何件あるのか。また、当該取調べの録音・録画記録媒体がない場合には、どのようにして事実関係を確認しているのか、教えていただけると幸いです。 ○栗木参事官 最高検察庁の監察指導部では、監察案件について、取調べの録音・録画の実施の有無等を網羅的に把握・集計していないので、件数としてお示しすることができないというのは、先ほど申し上げたとおりです。一方で、監察が実施された案件のうち、取調べに関するものの中には、監察実施時に取調べの録音・録画記録媒体が視聴されているものがあって、その監察の結果から、そのことが明らかなものもあるということで、先ほどの御説明の中では、多くの事案で録音・録画が実施されていると申し上げました。 ○河津構成員 その大半というのが何件であるかまでは、事務当局で把握されていないということなのですか。 ○栗木参事官 件数としてお示しできる資料は持っておりません。 ○河津構成員 そうすると、録音・録画記録媒体がない場合には、どのようにして事実関係を確認されているのでしょうか。 ○栗木参事官 一般的な監察案件において、案件の特定や案件の内容の確認に当たっては、監察指導部の担当検事が、その案件の関係職員に直接聴取を行うほか、高等検察庁や地方検察庁に必要な調査を依頼する場合があると承知しています。 ○河津構成員 私の弁護人としての経験上は、そのような場合、被疑者から事情が聴取されることはほとんどないのではないかと思っているのですが、その認識は間違っていないでしょうか。 ○栗木参事官 先ほど申し上げたのは、一般的にこのような調査が行われていると承知しているという限度でのもので、個別の事案においてどのような調査がされているかというのは、監察の手法等に関わるものですから、ここで御説明するのは難しいところです。 ○河津構成員 被疑者からの聴取は、必要的には行っていないと。 ○栗木参事官 必ず行うことになっているということは、承知していません。 ○河津構成員 「指摘すべき問題点」があるかないかの判断の基準について、質問させていただきます。   後ほど御報告させていただきますが、日本弁護士連合会が報告を受けている事案の中では、被疑者が黙秘権を行使したところ、取調官から不当な取扱いを受けた旨、弁護人に申し出たケースが多くを占めております。検察実務では、被疑者が黙秘権を行使したとしても、一定程度取調べを継続することが許されるという解釈をしていることは認識しておりますが、長時間にわたり取調室に留め置いて供述を求めることや、黙秘権行使に対する不利益ないし害悪の告知について、どのような場合に「指摘すべき問題点」となるという基準に基づいて、監察制度は運用されているのでしょうか。 ○栗木参事官 監察指導部において、検察官又は検察事務官による捜査・公判遂行上の違法・不適正行為に該当するかを検討することになりますが、その際、先ほど申し上げたとおり、必要に応じて検察庁職員に対して聴取を行うなどして、内容を把握し、個別に該当性を判断するということに尽きるかと思います。 ○河津構成員 そうすると、黙秘権侵害に関しては、何が「指摘すべき問題点」に当たるか、統一的な基準はないということになるのでしょうか。 ○栗木参事官 今の御指摘を踏まえて、確認いたしますが、私自身は、承知していません。 ○河津構成員 確認をお願いいたします。 ○栗木参事官 ほかに、御質問よろしいでしょうか。 ○河津構成員 そうしましたら、資料10に関して質問させていただいてよろしいでしょうか。   「在宅事件」における検察官の取調べに係る録音・録画実施件数は8件であったと御説明頂きましたが、この中で、在宅段階での取調べの全過程が録音・録画されていたのは、何件あるのでしょうか。 ○栗木参事官 事務当局において調査をした範囲でこの資料をまとめたということは先ほど申し上げたとおりですが、その調査の内容等から分かる範囲では、取調べの全過程で録音・録画が実施されていたかどうかは把握していないため、件数をお答えすることができないということで、御理解いただければと思います。 ○河津構成員 先ほど、在宅被疑者の取調べの録音・録画の実施件数について、全体としては把握していないという御説明があったかと思います。この点について、第2回会議で資料の提供をお願いして、事務当局において対応をお考えいただくことになっていたかと存じますし、警察の方では御対応いただいたと理解しております。   もともと法制審議会特別部会の取りまとめでは、検察等における実務上の運用としての録音・録画の実施状況も検討の対象として、客観的なデータに基づき、幅広い観点から分析・評価を行うことが重要であるとされていました。そして、法制審特別部会だけではなく、衆参両院法務委員会の附帯決議においても、逮捕又は勾留されている被疑者以外の者の取調べについて、できる限り録音・録画を行うことが求められていたかと存じます。   こうした経過からすると、この在宅被疑者の取調べの録音・録画の実施状況について、今から調査をしてでも把握していただけないでしょうか。 ○栗木参事官 御指摘のとおり、在宅事件の取調べの録音・録画の実施件数そのものではないかもしれませんが、配布資料10において、事務当局が把握している情報に基づいて、「公判請求又は略式命令請求時に被疑者が勾留されていなかったもの」と、そのうちの録音・録画の実施件数を御説明して、その傾向はできる限りお示しすることができたかと思います。   本協議会の趣旨の一つである、平成28年の改正刑事訴訟法のうち、取調べの録音・録画制度についての制度・運用上の課題の整理を行うに当たって、今お示ししたもの以外に更に資料が必要かどうかという観点から、構成員の皆様の御意見等も踏まえて、どういったことができるかを検討したいと考えておりますが、ひとまず、事務当局としては、これまでに頂いた御意見を踏まえ、把握している資料に基づいて、お示しできるものはお示ししたと認識しています。 ○河津構成員 起訴されて、供述調書の任意性が争われた事件以外においても、在宅事件で取調べの録音・録画がどの程度実施されているのか、当協議会で共有する必要のある情報だと思いますので、引き続き調査をお願いしたいと存じます。   もう一つ、この配布資料10について、供述の任意性が争われた事件における録音・録画実施件数の御説明を頂きましたが、取調べの録音・録画制度導入のきっかけとなった村木厚子さんの事件で問題となったのは、被告人であった村木さんの供述の任意性ではなく、厚生労働省関係者など、被告人以外の者の取調べにおける供述の特信性だったかと存じます。この特信性が争われた事件における取調べの録音・録画実施件数の資料も、御提供いただけませんでしょうか。 ○栗木参事官 事務当局において現在把握している資料を基に、河津構成員の問題意識に沿うものとしてどういったものをお示しできるかということを検討させていただきたいと思います。その上で、お示しできるものがあれば、お示しすることとしたいと思います。 ○河津構成員 私ばかり発言して恐縮ですが、取調べの適正な実施という制度目的の達成状況を把握する上で、最高検の監察指導部に集められた事案は、大変貴重な情報であるように思われます。この取調べに関する不満等が申し出られた452件の事案について、具体的な申出の内容と監察指導の事実認定の結果を共有いただくことはできないのでしょうか。 ○栗木参事官 冒頭の説明で申し上げたとおり、監察指導部は、検察官又は検察事務官の違法・不適正行為についての調査を行うなどして、対象となる職員等に対して必要な指導等を行うことを所管事務としており、監察の対象となった個別の事例について、結果を公表し、他の目的で使用することは想定していないところです。実際にも、これまで、概括的に監察の端緒別・類型別件数や結果別件数を公表したことはあるのですが、監察案件として個別の内容を公表することはしていません。   そもそも、監察指導部による監察の結果は、司法の判断を経て、事実関係やその評価が確定したものではなく、監察の対象となった事例を本協議会の資料とした場合には、その前提となる事実関係や評価について、構成員の間で意見が対立することも懸念されます。こういったことに鑑みますと、本協議会の趣旨である、取調べの録音・録画制度に係る検討課題を整理する前提として、構成員が共有する資料とするに適したものとはいい難く、本協議会において、そういった事例を資料とすることは適切でないと考えています。 ○小林構成員 ありがとうございます。その点に関係して、先ほど口頭で、取調べに関して問題があったとされる件数と問題点の傾向について御紹介いただきましたが、これについて、口頭ではなくて、79件の内訳を数字としてきちんと資料に書き込んでいただきたいです。また、問題点の傾向として言われたことについても、黄色ではこういう問題があった、青色ではこういう問題があったというふうに分類した上で、可能な限り資料に書き込んでお出しいただけませんでしょうか。 ○栗木参事官 監察指導部による監察の目的等やその位置付けについては、先ほどお話ししたとおりですが、本協議会が、平成28年の改正刑事訴訟法の施行状況をはじめとする運用状況を共有しながら、意見交換を行い、制度・運用における検討すべき課題を整理することを目的として法務省が設けたものであることや、その構成員の方からお求めがあったことを踏まえ、必要やむを得ない限度で、口頭で全体的な傾向を説明することにしたというところですので、配布資料としては、本日お配りした資料9の内容の限度でということで御理解いただければと思っております。 ○小林構成員 議事録を全部読まなければ分からないというのも大変だと思うので、まとめて書き込んでいただいた方がいいと思います。更に言えば、感情的・威圧的発言というのが、具体的にどういうものだったのかなど、その辺りも可能な範囲で書いていただければ有り難いと思いますけれども、今の御説明ではなかなか難しいということでしょうか。 ○栗木参事官 本協議会の趣旨や、小林構成員を含めた構成員の方々の御要望を踏まえ、申し上げられる範囲で御説明をさせていただいたところですので、更に詳細な内容を御説明することや配布資料とすることについては、難しいと考えております。   ほかに何かございますか。   それでは、続いて、松田構成員から、配布資料の内容について御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○松田構成員 資料としては、右上に「警察庁資料」と書いてある1枚ものを御覧ください。これから、これに基づいて、その内容について御説明いたします。   この資料は、警察の被疑者取調べに関する苦情等への対応状況についてのものです。   まず、前提として、「1 被疑者取調べ監督制度」について御説明いたします。   平成20年に、国家公安委員会規則として、被疑者取調べの監督に関し、必要な事項を定める「被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則」が制定されました。これは、平成21年4月1日に施行されています。この規則に基づき、被疑者取調べ監督制度を実施していますが、これは、資料では「捜査部門以外の部門」と書いておりますが、犯罪捜査を担当しない、具体的に言うと、総務又は警務部門に被疑者取調べを監督させることによって、警察内部のチェック機能を発揮させて、不適正な取調べの未然防止を図るものです。 更に具体的に申し上げますと、警察署等に置かれた取調べ監督官が、関係書類の閲覧等により取調べ状況を確認し、必要な場合には、刑事課等の捜査主任官に対して取調べの中止を求めるなどの措置をとることにより、不適正な取調べの未然防止を図っています。また、苦情等を端緒とする事後的な調査や調査結果を踏まえた措置をとることによっても、取調べの適正を確保するという制度です。   続きまして、「2 監督対象行為等の件数等」について御説明いたします。   前提として、どのように監督対象行為として認定するのかという流れを御説明いたします。まず、監督対象行為とは、強制・任意を問わず、全ての被疑者取調べに関して、不適正な取調べにつながるおそれのある行為を、取調官が被疑者に対し行うことと定義されています。取調べに関する苦情申出や警察内部からの連絡等は、警察署等の総務・警務部門の取調べ監督官に全て通知されることとなっています。そして、所属長を通じて、警察本部が把握し、監督対象行為が行われたと疑うに足りる相当な理由があるときは、警察本部の取調べ監督部門、これも総務・警務部門といわれるものですけれども、その部門の警視以上の警察官を取調べ調査官に指定して調査を行うこととなっています。ですので、この調査は、警察本部が行うということです。そして、調査をした上で、監督対象行為として認定された場合には、しかるべき処分や再発防止策を講じるなどの対応を行っており、また、監督対象行為に認定されなかった事案であっても、今後、不適正な取調べが行われないよう、業務指導等を徹底しているところです。   それでは、件数について御説明いたします。   まず、資料の「2」の「(1)監督対象行為等の件数」を御覧ください。   左から、「令和元年」、「令和2年」、「令和3年」とありますが、左から2番目の「苦情申出」は、各都道府県の警察や公安委員会において、被疑者や弁護人等から被疑者の取調べに関する苦情の申出を受理した件数です。苦情の申出は、文書、口頭、手紙、メールなどの手段や方法を問わず、警察の様々な部署で受け付けております。   次に、左から3番目の「調査」については、苦情申出や警察内部からの連絡等を端緒として、警察本部の取調べ調査官が、先ほど申し上げた「被疑者取調べの適正化のための監督に関する規則」に基づいて、調査を実施した件数です。   次に、右から2番目の「監督対象行為」は、調査を行った結果、監督対象行為として認定された件数と事案数です。事案数と件数があり、分かりにくいかもしれませんが、これは、例えば、令和3年ですと、七つの事件の被疑者取調べの中で、8件の監督対象行為が認定されたということであり、端的にいうと、一つの事件において、同じ被疑者に対する2件の監督対象行為が認定されたというものです。令和元年、令和2年の計上方法も同様です。   一番右の「取調べ件数」は、1年間に行われた、任意・強制を問わず、全ての事件における被疑者取調べの件数です。具体的には、被疑者取調べを行う都度作成する「取調べ状況報告書」の作成数を基にしており、通常は、おおむね1日に1枚作成することになっています。   前回の協議会で、録音・録画実施回数について御説明したときには、留置場から出場した回数というのを取調べ回数として定義していると御説明したのですが、それとは異なるものになっていますので、御留意いただければと思います。   続きまして、「(2) 監督対象行為の類型別内訳」を御覧ください。   監督対象行為には、この表に記載した六つの類型があり、調査の結果、認定した類型の内訳の件数・事案数を記載しております。これらの類型は、取調べに係る不適正行為を未然に防止するため、取調べに係る不正行為につながるおそれのある、客観的で外形上明白な行為を類型的に規定したものとされています。   それぞれの類型に該当する典型的な行為について、順に御説明いたします。   一つ目の「やむを得ない場合を除き、身体に接触すること」とは、例えば、暴れる被疑者を制圧するために必要な場合や、急病の被疑者を救護する場合等を除いて、被疑者を殴打したり、被疑者の肩をつかんだりする行為などをいいます。二つ目の「直接又は間接に有形力を行使すること」とは、被疑者の身体に接触する以外の、例えば、被疑者に対してノート類を投げつける行為や誰も座っていない椅子を蹴り上げる行為などをいいます。三つ目の「殊更に不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること」とは、例えば、被疑者に対して、「自白しないと家族を逮捕する。」などと申し向ける行為などをいいます。四つ目の「一定の姿勢又は動作をとるよう不当に要求すること」とは、例えば、被疑者に対して、床に正座するよう要求することなどをいいます。五つ目の「便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること」とは、例えば、接見禁止中の被疑者に携帯電話により外部と連絡させたりする行為などをいいます。六つ目の「人の尊厳を著しく害するような言動をすること」とは、例えば、被疑者やその家族等の身体的特徴をあげつらったり、その信条や思想を侮辱する行為などをいいます。   以上が、監督対象行為の類型別内訳についての御説明であり、その件数については、資料に記載のとおりです。   次に、「(3) 調査(監督対象行為認定事案)の端緒別内訳」を御覧ください。   この表には、監督対象行為として認定された事案について、調査を行った端緒の内訳を記載していますが、端緒としては、警察部内での認知と外部からの苦情等による認知の2種類に大きく分けられます。警察部内での認知の内訳は、総務・警務部門が取調室を視認するなどして取調べ状況を確認して把握した事例や、取調べを行う捜査部門自らが総務・警務部門に連絡した事例、留置部門が把握して連絡した事例などがあります。警察部内の認知のうち、捜査部門からの連絡が最も多くなっておりますが、具体的には、例えば、取調官が監督対象行為を行った後、取調室から退室しまして、自ら上司に報告した事例などがあるということです。次に、苦情等による認知の内訳ですが、弁護人や被疑者から苦情を受けた事例のほか、「その他」に該当するものとして、被疑者が取調官を告訴したり、その他関係者から申出を受けたりした事例等があります。   以上で資料の説明を終わりますが、警察としては、この取調べ監督制度以外にも、国家公安委員会規則である犯罪捜査規範に基づいて、捜査部門、具体的には、捜査主任官において、被疑者取調べの状況を把握し、適正化に努めているところであり、また、適正な取調べについての指導教養を繰り返し行うなど、様々な取組を行っています。そして、不適正な取調べが認められた場合には、まずは、当該事案について是正を図り、再発防止について指導していくことを行っておりますので、こうした取組により、不適切な取調べをなくしていくことが重要だと考えています。   以上でございます。 ○栗木参事官 ただ今の御説明について御質問はありますでしょうか。 ○成瀬構成員 被疑者取調べの監督は、捜査を担当しない総務・警務部門の取調べ監督官が担当するというお話でしたが、その人員はどの程度配置されているのでしょうか。   また、取調べ監督官は、被疑者や弁護人等から苦情の申出を受けて受動的に調査を開始するだけでなく、関係書類を閲覧したり、取調室を視認したりすることにより、不適正な取調べが行われていないかを主体的に確認しているというお話でしたが、関係書類の閲覧や取調室の視認の頻度などの実情について、もしお分かりになることがあれば、教えていただきたいです。 ○松田構成員 取調べ監督官の人数については、手元に正確な資料がないのですが、基本的に、取調室が設置されている警察署ごとに、具体的には例えば総務課長などが多いと思うのですが、取調べ監督官がおりますので、そういった意味では、全国で配置されているのは1200人ぐらいということになります。加えて、警察本部の取調べ監督業務担当課にも指定されていますので、合わせて1300人ぐらいになりますでしょうか。また、その他にも、それを補助する者がおります。   次に、取調べ監督官による確認の頻度についての御質問がありましたが、取調べの監督は、色々なことをしながら監督をしていくわけなので、なかなか難しいのですけれども、一つには、取調べ監督官は、まず、被疑者取調べ状況の確認は、全ての取調べについて行っています。具体的な方法については、先ほど御説明したとおり、取調官が取調べ状況報告書というものを作成しますので、この取調べ状況報告書をチェックすることで、全件チェックしているということになります。より具体的にいうと、取調べ状況報告書は、紙だけではなくシステムにも入力しますので、このシステムを見てチェックして、全件監督していますし、取調べ中の視認については、あらかじめ視認に行くことを伝えた上で行っても余り効果がないので、不定期で行っておりますが、例えば、令和3年中の場合、約61万2000回と聞いています。 ○成瀬構成員 具体的に御説明いただき、ありがとうございました。   資料の「2(3)」によれば、監督対象行為認定事案の端緒として、警察部内での取調べ状況の確認が占める割合、つまり、総務・警務部門が取調べ監督官として主体的に取調べ状況を確認して監督対象行為を見つけた事案が占める割合が小さいので、取調べ監督官による主体的な監督がどの程度の人数・態様・頻度で行われているかを確認する趣旨で質問させていただきました。資料の「2(3)」は、調査の結果、監督対象行為が認定された事案の数を示しているに過ぎませんので、3年間で1事案という結果が、取調べ監督官による主体的な監督の乏しさを意味するわけではないということがよく分かりました。 ○小林構成員 御説明ありがとうございました。   何点か確認をさせてください。「2(1)」の数字の見方ですが、「調査」の件数マイナス左側の「苦情申出」の件数というのは、警察部内で認知したという件数という理解でよろしいでしょうか。 ○松田構成員 調査を行う端緒としては、「苦情申出」のほか、警察部内で認知したもの、苦情以外の弁護人や被疑者からの意見・要望、報道、被疑者からの告訴などがありますので、正確にいうと、「苦情申出」に加えて、警察部内で認知したものが「調査」の件数になるわけではないことになります。 ○小林構成員 分かりました。ありがとうございます。   次に、「2(2)」のところですが、監督の対象となったのは3年間で合計35件ありますが、これらの案件は、結果としてどのように対処されたのでしょうか。厳重注意をしたり、取調べから外したりと、いろいろあるかと思うのですけれども。 ○松田構成員 監督対象行為と認定された後は、取調べ調査官から、必要な部門に通知をし、必要な処分や捜査の適正化を図るための措置、事案が終わっていれば再発防止策といった必要な対応をとってもらっています。 ○小林構成員 分かりました。   先ほど検察のところでも少し話が出ましたが、調査対象から監督対象行為に絞り込むときは、どのように調査をしているのでしょうか。まずはこの35件のうち、録音・録画の有無の別が分かれば教えていただきたいと思います。また、類型別の内訳で先ほど、監督対象になる典型的な言動を幾つか例を挙げて御紹介いただきました。次の河津構成員からの資料を読むと、御説明の前に言及してしまってはいけないのかもしれないのですが、弁護人が苦情を申し立てても「問題ない」と言われたとか、回答がなかったなどと書かれているケースも多かったように見受けられましたので、実際に監督対象になった言動が具体的にどのようなものなのか、もう少し分かりやすく御説明いただけるといいと思います。監督対象行為とされたものは、河津構成員が御紹介くださった事案よりもひどいのかどうかが分からないので、教えていただける範囲でお願いします。 ○松田構成員 幾つか御質問があったと思うのですが、まず、35件のうち、録音・録画がされていた事案数及び件数については、令和元年が1事案1件、令和2年が3事案7件、令和3年0件です。   そして、どのように調査をするのかということについては、先ほど申し上げたような取調べ状況報告書の確認のほか、捜査書類を含む関係書類の閲覧、取調官からの聴取、取調べの外形的状況の確認、視認をしていれば視認時の状況の確認などを実施することによって、監督対象行為の調査を行っております。   次に、実際に監督対象行為として認定された事案については、例えば、「1」の「やむを得ない場合を除き、身体に接触すること」に当たるものとして、被疑者から殴打をされ、反射的に被疑者の頸部付近を平手で殴打した事案を把握しています。「2」の「直接又は間接に有形力を行使すること」に当たるものとしては、机をたたく行為や机を蹴る行為といったものを把握しています。「3」の「殊更に不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること」に当たるものとしては、きちんと話さないと逮捕する旨の発言をした事案を把握しています。「5」の「便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること」に当たるものとしては、コーヒーの提供を約束する行為、逮捕前の被疑者に公費で購入した弁当を提供した行為といったものを把握しています。後者については、逮捕をした場合には公費で弁当を出せるのですが、逮捕前に誤解で出してしまったというものです。「6」の「人の尊厳を著しく害するような言動をすること」に当たるものとしては、動物以下である旨の発言をした事案を把握しています。   表にもあるとおり、「4」は該当する事案がありませんので、実際にあった具体的事案ではないのですが、例えば、先ほど申し上げたとおり、被疑者に対して床に正座するように言うような行為が当たることになります。 ○小林構成員 大変分かりやすい御説明をどうもありがとうございました。   これは感想めいたことではあるのですが、ちょっと意外に思ったのは、「2(3)」の端緒別のところで、苦情があるというケースばかりではないのですね。監督対象になるような事案であっても、必ずしも被疑者が苦情を申し立てるわけではない、つまり、そういう取調べでも仕方がないと受け入れてしまっている人がいるのではないかと若干心配になったのですが、そういう捉え方についてはどうお考えになりますでしょうか。 ○松田構成員 個別の事案となると分かりませんが、苦情になる前に対処しているから苦情になっていないという面もあるかと思います。 ○小林構成員 なるほど、分かりました。ありがとうございます。 ○河津構成員 丁寧な御説明を頂き、ありがとうございます。   先ほど検察についてお尋ねしたのと同様ですが、監督対象行為に該当するか否かの判断の基準について、警察においても、被疑者が黙秘権を行使したとしても、一定程度取調べを継続することが許されるという解釈・運用をされていることは認識しておりますが、長時間にわたり取調室に留め置いて供述を求めることや、黙秘した場合の不利益ないし害悪を告知することについて、どのような場合に監督対象行為になるという基準で、監督制度を運用されているのでしょうか。 ○松田構成員 基準といったものは特にないです。個別事案によって、この類型に当たるかどうかを認定しているとしか申し上げようがないところです。 ○河津構成員 そうすると、不利益の告知が、「殊更に不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動」に当たるかどうか、個別に判断をされているということでしょうか。 ○松田構成員 そのとおりです。 ○河津構成員 黙秘権を行使している被疑者に対して、取調室に留め置いて供述を求める時間的な限界は、警察の方で意識されているのでしょうか。 ○松田構成員 時間的な限界が、特に基準としてあるわけではありません。やはりその点も、個別の事案に応じて判断されるべきものと考えます。 ○河津構成員 ありがとうございます、理解いたしました。 ○栗木参事官 ほかに御質問よろしいでしょうか。 ○河津構成員 もう一点だけ、すみません。やはり取調べの適正な実施という制度目的の達成状況を把握する上で、各都道府県警の監督部門に集められた事案は、大変貴重な情報のように思われるのですが、具体的な事案、苦情等の申出の内容と監督部門の事実認定の結果を御提供いただくことはできないでしょうか。 ○松田構成員 本協議会の趣旨との兼ね合いがございますので、事務当局とも御相談の上で、検討させていただきたいと思います。 ○河津構成員 よろしくお願いいたします。 ○栗木参事官 ほかにはよろしいでしょうか。   それでは続いて、河津構成員から、配布資料の内容について御説明いただきたいと思います。河津構成員、よろしくお願いします。 ○河津構成員 第3回会議で、小林構成員より、日弁連が収集した取調べの問題事案の提供をお求めいただいたことを受けて、資料を用意させていただきました。この資料は、日弁連が会員から取調べの問題事例として報告を受けたもののうち、取調べの録音・録画制度が施行された2019年、令和元年6月以降の事例をまとめたものです。   この一覧表に記載されている取調べにおける取調官の言動は、事件を担当した弁護人が、当該取調べを受けた被疑者から申出を受けた内容として日弁連に報告されたものですが、今回この協議会に提出するに当たり、事務当局の御要望によって、例えば、「お前」、「てめえ」という記載は、「あなた」に変更するなどの修正が加えられております。   30件のうち、警察官の取調べに関するものが25件、検察官の取調べに関するものが5件あるほか、通訳の言動が問題となっているものが1件あります。当該取調べにおいて、録音・録画が行われたか否かが不明なものが、少なからずあります。これは、弁護人が取調べの録音・録画記録媒体を確認することができるのは、公判請求された事件のうち、録音・録画義務のある事件で供述調書が請求された場合や、公判前整理手続に付されて証拠開示される場合に限られることによるものです。   先ほども申し上げましたが、近年、被疑者が黙秘権を行使したところ、侮辱的・威迫的な発言、不利益ないし害悪の告知や、弁護人の解任等を示唆されたと被疑者が申し出る事案が多く、30件中20件がそのようなケースに該当します。   例えば、「1」の事例では、「バカでもわかること」、「幼稚園生なのか」という旨、「2」の事例では、「このまま黙っている姿を被害者が見てどう思うか。」という旨、「4」の事例では、「黙秘する権利などない」、「黙秘することは卑怯だ」という旨、「5」の事例では、「亡くなった赤ちゃんに対する罪の意識はないのか」、「仏壇に手を合わせられるのか」という旨、「12」の事例では、大声で「黙秘など通用しない」という旨、「14」の事例では、「捜査機関をなめているのか」という旨、「28」の事例では、「黙秘をすることは本当に無責任だ。」、「黙秘権というのは与えられた権利であるが、1人の人間としてどうかと思う」という旨の侮辱的・威迫的な発言を受けたとの申出がなされています。   また、「2」の事例では、「そちらがその気なのであれば徹底的にやらせてもらう」という旨、「25」の事例では、「ここまで状況が悪くなったのは、あなたがここまで黙秘を続けたからだ。今後黙秘を続けたらどうなるか分かるだろう」という旨、「29」の事例では、「このような態度であれば徹底的にやる」、「今後別件などで逮捕していく」という旨、「30」の事例では、「私に逆らったら、また逮捕する。これまでにも、そのようにして逮捕した人が何人もいる」旨の不利益ないし害悪の告知を受けたとの申出がなされています。   「12」の事例では、「弁護人と何を話したのか」という旨、「20」の事例では、「友達に相談して弁護士を選んだ方がいいのではないか」という旨、「23」の事例では、「弁護人に言われたのか」、「なんでそんなことをするのか」という旨の発言を受けたとの申出がされており、このほか、「18」の事例では、被疑者の母親に対し、「弁護士がどのようなアドバイスをするかわからないが、犯行を認めるようお母さんから言って欲しい」と働き掛けがあり、「22」の事例では、検察官が関係者に被疑者宛ての手紙を書かせ、「検察官の言うことを聞け」、「黙秘するな」という手紙を書かせたとの報告がなされています。   このように、黙秘権の行使をめぐって被疑者から申出がなされることが多くなっている背景としては、近年、冤罪を防止するためには黙秘権を行使することが最善の防御方法となることが多いという認識が広まっていることがあるのではないかと考えられます。 ○栗木参事官 ただ今の御説明について、御質問ありますでしょうか。 ○宮崎構成員 事例の概要等は弁護人からの報告によるということなのですが、この記載内容に関して、日弁連の方では、事実確認や正確性の確認というのは何かされているのでしょうか。 ○河津構成員 全ての件について追跡調査をしているというわけではありませんが、この一覧表を作成する部署において、事実関係の確認が必要と思われたことについては、当該弁護人に連絡を取って確認をしております。ただ、先ほども御説明しましたけれども、取調べの録音・録画の記録媒体等によって発言の内容を確認することができるのはごく一部であり、少なくとも、日弁連が直接その記録媒体を視聴することは現行法上はできませんので、そのような意味での確認まではできていないというのが実情です。 ○宮崎構成員 内容を拝見すると、例えば「1」だと、「検察官は録画実施」とありますが、右の「検察での録音録画」の欄の方は「不明」となっていたり、あるいは、「19」は、殺人被疑事件で、公判請求もされている事例ですが、それでも、「検察での録音録画」欄は「不明」となっていたりということなので、どういったレベルでの御報告なのかなと思った次第です。   それから、もう一点質問なのですが、今回御紹介いただいた30件は、どういう基準で選別をされているのでしょうか。 ○河津構成員 まず、「1」の事案につきましては、不起訴処分となっておりますので、恐らく、担当弁護人は、録音・録画の記録媒体そのものを確認することができていないのではないかと思います。「19」の事案については、担当弁護人の方に事実関係を確認する必要がございます。   この30件というのは、特別に選別したというわけではなく、会員の方から報告があったものを集めて、そのうち、2019年6月以降のものを一覧表にまとめたものです。 ○宮崎構成員 特に日弁連ないし河津構成員の方で選別しているのではなく、上がってきたものは全部御紹介いただいたという理解でよろしいのでしょうか。 ○河津構成員 はい。 ○松田構成員 私の方からは、先ほどの私からの説明との兼ね合いもありますので、河津構成員からの御説明について、当方の認識を申し上げます。また、本協議会で、個別事案への言及が一切否定されるわけではないというのは当然ですが、その程度については、本協議会の趣旨との関係で一定の限度があると思いますので、個別の事案についてのコメントは差し控えさせていただきますが、この資料を閲覧した方の正確な理解に資するために、資料全般への当方の認識を申し上げたいと思います。   御説明があったとおり、この資料は、被疑者本人や被疑者から伝え聞いた弁護士の方の主張を、弁護士会を通じてまとめたものということで、事案の特定は難しいところですが、記載された中に、警察に苦情を申し出た旨の記載もありますので、当該苦情を受けて、警察において調査が行われたものもあるのではないかと思います。その調査として、先ほど申し上げたような取調官への聴き取りとか関係書類の閲覧等を行った結果、監督対象行為として認定された件数は、先ほど申し上げたとおりであり、その数と比較しても、本資料記載の全てが事実としてこのとおりであったかについては、必ずしもそういうわけではないのではないかと考えます。   ただ、具体的な事例について御紹介されたとしましても、例えば、警察においては監督対象行為として認定されていない事例などで、事実関係について議論になってしまうのではないかと思いますし、個別事案についての詳細な議論は、これまでの協議会でも議論になったとおり、本協議会の趣旨である制度・運用全体の評価を行う上で必要になるとはいい難いと思いますので、飽くまで、御紹介のあった個別事案の取扱いとこの資料全体についての当方の認識を申し上げた次第です。 ○成瀬構成員 私も、この資料の性格については、宮崎構成員や松田構成員が指摘された点に留意する必要があると考えております。この後、事務当局から説明していただく配布資料「12−1」及び「12−2」は、両当事者の主張・立証を経た上で下された判決に基づく事例集であるのに対して、河津構成員が提供してくださった資料は、飽くまでも被疑者の申出及び担当弁護人からの一方的報告に基づく事例集ですので、一定の限界があると思います。   ただ、そのような限界はありながらも、河津構成員の提出資料から、以下のような傾向を読み取ることはできるように思われます。すなわち、弁護人が捜査機関の取調べに問題があると考えて苦情申出をした場合に、取調べの録音・録画がなされている事件においては、捜査機関側が録音・録画の内容を確認した上で、問題事象の存否を確定し、一定の対応をしています。例えば、河津構成員の提出資料のうち、「4」、「13」及び「14」の事件では、そのような対応がなされたという記載があります。そして、このような対応は、先ほど配布資料9に関して、最高検察庁の監察指導部が監察を実施する際に、取調べの録音・録画記録媒体がある場合にはそれも確認しているという御説明があったことと軌を一にするものであると思います。   これに対して、取調べの録音・録画がなされていないと思われる事件の一部においては、被告人側の主張と捜査機関側の主張が対立して、問題事象の存否自体が確定できないまま終わっているように見える事件もあります。例えば、「8」、「9」、「11」及び「30」の事件は、そのような事件であるようにも見えます。これらの事件では、従前、公判段階で問題になっていた被告人側と捜査機関側の水掛け論が、捜査段階に場面を移して、なお一部継続していると評価することもできるかもしれません。   このような現状を踏まえて、取調べの適正化を図る上で、録音・録画制度が有する意義や機能について、河津構成員は、刑事弁護の立場からどのようにお考えになっているのか、具体的に御説明いただければと思います。 ○河津構成員 御質問ありがとうございます。   この資料の性質につきましては、もとより被疑者の申出に基づいて取りまとめているものであることは、御説明したとおりですけれども、であるからこそ、この協議会で取調べの実情を客観的に把握するために、取調べの録音・録画記録媒体の視聴等をすることを求めております。   さて、成瀬構成員御指摘のとおり、録音・録画がなされていない事件においては、不適正な取調べがあったのかどうか、事実関係の確定ができない事案が多く、その意味で、かつて公判段階で問題となっていた水掛け論が、捜査段階では継続していると評することもできると思われます。ただ、同じ水掛け論になるといっても、公判においては、弁護人が関与し、公開の法廷で裁判所が判断をするのに対し、捜査段階での苦情申出手続については、弁護人が関与するのは申出までであり、その後は何の連絡もないまま、捜査機関内部で判断が行われ、その結果も通知されることが約束されておりませんので、被告人側の主張と取調官の主張が対立したときに、被告人側の主張に沿って事実認定がなされる可能性は、極めて小さいように思われます。取調べが録音・録画されていれば、事実関係自体は客観的に確定できますので、少なくとも不適正な言動が行われたときに、その言動自体を否定することは困難になります。そのことにより、取調べの録音・録画が、取調べにおける不適正な言動を予防する効果は非常に大きいのではないかと思います。もちろんこれは、同時に、適正な取調べを実施した取調官が、事実と異なる不当な非難を受けることをも予防するものです。   一方で、録音・録画さえすれば、取調べの適正な実施は確保されるのかといえば、そうではないようです。第2回会議で、私が担当した事件における取調べの状況を御報告しました。私は、取調べの録音・録画制度が創設されれば、あのような取調べが行われることはなくなるであろうと期待しておりましたが、残念ながらそうではありませんでした。当該事案では、7回にわたり苦情申出が行われていますが、捜査中に是正されることはなく、その後も何らかの措置がとられた形跡はありません。以前も申し上げましたが、不適正な取調べが行われた場合のうち、公判で供述調書の証拠能力が争われるという形で顕在化するのはごく一部にすぎません。必ずしも供述調書を証拠とする必要がなければ、あるいは、証拠能力を争われることを避けることができれば、取調べについて司法審査を回避することができるというところに、取調べの適正化を図る上で、現行の録音・録画制度が有する機能の限界があるように思われます。   制度の見直しの在り方についての議論は、第2段階の協議で行われるものと理解しておりますが、参考までに、今年10月28日に国連の自由権規約委員会が日本の第7回定期報告に関する総括所見を採択しており、そこでは、実務上、取調べの実施に関する厳格な規制がないこと、取調べの録画は義務付けられる範囲が限定的であるとの報告について懸念が表明され、取調べは正式な逮捕前を含めて、全て録音・録画され、全ての刑事事件で取調べの録音・録画が適用されるよう十分な配慮をすることや、取調べの際の拷問や虐待の申立てについて、迅速、公平かつ効果的に調査する権限を持つ都道府県公安委員会から独立した申立て審査機関を利用可能とすることが求められておりますので、情報として共有させていただきます。 ○成瀬構成員 丁寧に御説明くださり、ありがとうございました。一定の限界はあるものの、取調べが録音・録画されていれば、取調官の言動自体は事後的に確認できることから不適正な取調べを予防する効果は大きく、また、取調官が事実と異なる不当な非難を受けることをも予防できるという御認識であることがよく分かりました。   次に、捜査機関側がこの点についてどのような御認識であるのかをお尋ねしたいと思います。宮崎構成員と松田構成員は、第2回・第3回会議において、取調べの録音・録画が、公判段階において供述の任意性・信用性を立証する上で役立つと指摘しておられましたが、それに加えて、捜査段階における取調べの適正化にも資するという実感をお持ちでしょうか。 ○松田構成員 取調べの録音・録画自体が、任意性・信用性の立証と適正化を目的としており、そういった機能があることは認識しています。ただ、取調べの適正化は、それだけによって図られているものではなく、先ほど御説明したような取調べ監督制度、また、捜査主任官による捜査指揮、何よりもやはり捜査員、取調官一人一人が指導・教養を受けることによって、適正化が図られるものと認識しています。   また、不適正な取調べをなくすことは、当然、捜査機関においても絶無を期すということは認識しておりますが、一方で、取調べの録音・録画の範囲は、録音・録画による取調べの適正化の機能、任意性・信用性立証の機能と、弊害についての議論を経て、改正刑事訴訟法においては、裁判員裁判対象事件等がその対象事件として規定されたものと承知していすので、今後の議論は、そういった経緯も踏まえて行われるものと認識しています。 ○宮崎構成員 取調べの録音・録画によって、取調べの中で被疑者あるいは取調官がどういう言動をしたかということに関しては、客観的に記録されるわけですので、後から確認が可能になるということは事実であろうと思います。   他方で、苦情申立てに限らないことで、私自身が取調べを行ったり、弁護人と対応させていただいたりした中での実感としては、例えば、弁護人から、被疑者が検察官あるいは警察官にこう言われたと言っているというお話を頂いたとしても、それが実際は事実と全然違うということはよくある話ですし、また、被疑者自身が取調べにおいてこういう供述をしているはずだというところに関しても、全く違うということも実際問題かなり経験のあることです。   録音・録画されている範囲のものについては、後ほど確認できますが、その範囲が広がったとしても、結局はそれ以外の部分で、また同じようなことになるのかなと思います。争うには、やはり目的があって争っているわけですので、今度は、例えば、留置場の中でどうであったとか、逮捕前にどうであったとか、結局のところは、そういった争い、あるいは見解の違いを完全に解消することは難しいと思うところです。   また、先ほど松田構成員の方からお話があったように、客観的に分かるのだから、全部録音・録画すればいいではないかということは、やはり違うのだろうと思います。弊害があるということは、従前から言われてきたことでもありますし、また、そのコストや事務負担といったものも、かなり大きいものです。   事務当局提出の資料にもあるように、争われている事案が、全体の中でどのぐらいかという話になると、圧倒的に多くの事案では問題はなく、苦情申出もないということになるわけです。その中で、取調べの録音・録画の範囲を拡大することについては、本当にどこまで必要なのか、別途の検討をきちんとすべきだと思います。 ○小林構成員 ありがとうございます。ちょっと話が、河津構成員から提出された資料について戻ってしまうのですけれども、よろしいでしょうか。   とても具体的で分かりやすい資料を御用意下さり、感謝しております。取調べの実情がよく分かる、と言うと、「いや、これは実情ではない」とおっしゃる方もいるかもしれませんが、少なくともその一端を知る上で、非常に貴重な資料だと思っております。先ほど来、検察の監察事案や警察の監督事案の対象行為になる基準について御説明いただいておりますが、どこで線を引いているのかが分かりづらいところもあります。こういう具体的な資料、事案を出していただくと、こういう事案が監督対象になるのかなというイメージも湧きますので、非常に分かりやすいと思います。   その上で松田構成員にお聞きしたいのは、例えば2ページの「4」の事案のように「確かに行き過ぎた言動があった」というような回答があった事案は警察の監督対象になり得るのか、ということです。あとは9ページ「28」の事案などは信じられないような暴言だと私は感じますが、こういうケースは、先ほどの松田構成員から御説明いただいた「2(2)」の「6 人の尊厳を著しく害するような言動」という形で、もし把握できていれば、きちんと監督対象になり得るのかどうかということをお聞きしたいと思います。 ○松田構成員 監督対象行為に当たるかどうかは、調査の結果によります。ただ、少なくともこの資料に記載されている範囲で見る限り、恐らく調査はしっかりしているものと思います。その程度でしかお答えはできないかと思います。 ○小林構成員 問題はあるという認識は、共有できているということでよろしいですか。 ○松田構成員 問題があるというのは、どういう御趣旨でしょうか。 ○小林構成員 こういうことがもし事実であれば、問題があるという認識です。 ○松田構成員 仮定の御質問にはなかなかお答えがしづらいですね。 ○小林構成員 私がお聞きしたいのは、これが事実であって、この案件が監督対象として上げられたかどうかということではなくて、もしこれが事実であれば、こういう発言はきちんと監督対象として対応される事案になりますよねという質問なのですけれども。 ○松田構成員 これが事実かどうかというのは、調査によって確定されることが前提ですので、その辺はお答えを差し控えさせていただきます。 ○小林構成員 その話とは別ですけれども、4ページの「11」に、通訳人の問題が1件入っておりました。通訳が入る場合、その後、公判でもきちんと訳されているのかどうかというのが問題になるケースも少なくないと思いますので、法律で録音・録画を義務づける対象にした方がいいのではないかと感じました。あと、これも感想めいたことで恐縮ですが、同じく4ページ「13」の事案は、録音・録画を確認したら問題がある取調べということが分かったので、「調書は証拠請求しない予定」と言われたというケースですが、これなんかは、録音・録画のメリットだなと思う一方で、証拠請求しなければ問題ないというわけではないとも感じました。人によって取調べに対する耐性は異なりますので、きちんと苦情を言える人だけではなく、迎合してしまう人もいるのではないかと思います。   河津構成員の提出資料についての意見は以上です。 ○栗木参事官 ほかに御質問等はございますか。よろしいでしょうか。   冒頭、河津構成員の方から、今回、河津構成員が資料を御提出されるに当たって、事務当局から修正の話があったということに言及されていたかと思います。御指摘のとおり、当該資料に関しては、事務当局から御意見を申し上げたのですが、その趣旨としましては、証拠、すなわち、供述調書あるいは録音・録画記録媒体そのものの内容と思われる発言等については、証拠の内容そのものではないような形で修正していただけないかということを御提案させていただいたところですので、その点を補足させていただきます。   それでは、次に、捜査段階における取調べの録音・録画の実施状況に関連して、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第6条の2が規定する、いわゆるテロ等準備罪についての取調べの録音・録画の実施状況について、御説明したいと思います。   平成29年の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律附則第12条第1項は、政府は、刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第9条第1項の規定により同項に規定する取調べの録音・録画等に関する制度の在り方について検討を行うに当たっては、新組織的犯罪処罰法第6条の2第1項及び第2項の規定の適用状況並びにこれらの規定の罪に係る事件の捜査及び公判の状況等を踏まえ、特に、当該罪に係る事件における証拠の収集の方法として刑事訴訟法第198条第1項の規定による取調べが重要な意義を有するとの指摘があることにも留意して、可及的速やかに、当該罪に係る事件に関する当該制度の在り方について検討を加えるものとすると規定し、平成28年の刑事訴訟法等の一部を改正する法律の施行から3年経過した場合における取調べの録音・録画等に関する制度の在り方についての検討に当たり、テロ等準備罪の適用状況等を踏まえた同罪に係る事件に関する取調べの録音・録画等に関する制度の在り方を検討することとされていますが、現時点において、同罪の適用事例は存在せず、取調べの実績もないことから、同罪についての取調べの録音・録画を実施したことはない状況です。   この点については、以上でございます。   もともと本日の議事としては、公判段階における取調べの録音・録画記録媒体による立証状況等ということで、次に、私の方で配布資料11及び12の御説明をした後、意見交換をすることを予定していたのですが、本日の残り時間ではとても足りないことになりますので、これらについては、次回の協議会において扱わせていただきたいと思います。   その上で、次回会議においては、公判段階の取調べの録音・録画記録媒体による立証状況等について御説明をした後に、意見交換をさせていただくこととし、また、本日、構成員の方々から資料として準備できないかといった御意見を頂いたものについて検討させていただいた上で、お示しできるものはお示しするということにさせていただきたいと思います。 ○小林構成員 一つ質問をよろしいですか。   次回から公判段階に進むということですが、これまで捜査段階の検討については、取調べが適正に行われているかという観点からの議論が非常に多かったように思います。一方で、先ほど松田構成員と宮崎構成員からの御発言もありましたけれども、録音・録画をすることで捜査や取調べにどのような影響があったのかという点については、従前、真相解明機能が下がるのではないかといった懸念も示されていたわけですけれども、この点について、検察、警察の方が具体的に資料をお出しになったり、それに基づいて議論をしたりする時間というのは、どこかで取っていただけるのでしょうか。それともこれでおしまいなのでしょうか。 ○栗木参事官 今の御指摘は、取調べの録音・録画を実施することによる、捜査機関側のデメリットというようなことですか。 ○小林構成員 はい。それについては余りデータに基づいて議論をしたという記憶がないのですけれども。 ○栗木参事官 これまで、施行状況について、事務当局等から資料をお出しして御説明し、そういった議論の中で、検察・警察の実務の観点から、いろいろ御意見を頂いてきたのではと思っているのですが、今までの議論とは別の何かが必要ということなのでしょうか。 ○小林構成員 意見交換の中で、「被疑者が撮られていることを意識して、余りしゃべらないというような実情はあります」といった御紹介はありましたが、その範囲でもうデメリットについての議論はおしまいということでよろしいのでしょうか、という意味です。具体的に御説明いただいたというよりは、何か一般論でお話をされていた感じなので、もう少し具体的に、こういう類型の事件ではこういう難しさがありましたとか、そういうふうに御説明いただいた方が分かりやすいと思ったのですが。 ○吉田構成員 現行の取調べの録音・録画制度に関しては、録音・録画に伴う弊害も考慮して、一定の除外事由・例外事由を設けており、その意味で、現行制度を適正に運用している限りにおいては、取調べの録音・録画を実施したことそのものによる弊害というのは、具体的ケースとして把握されにくい状況にあるのではないかと思います。運用における取調べの録音・録画に関しても、録音・録画することによって、供述が得られないおそれがあるということであれば、その場合には録音・録画しないという選択ができることになっていますので、結局のところ、録音・録画したから供述が得られなかったという結果で終わっているケースがどの程度あるのかというのは、把握されにくい面があるのかなというのが、まず一つございます。   他方で、実務においては、録音・録画をしようとしたものの、供述が得られないかもしれないと思われたケースというのはあるかもしれません。ただ、それは、その場での捜査官の判断が入っていますので、具体的な資料として、数値的なもの、あるいはケースとして出すというのは、難しい側面もあるような気がしまして、そこは正に、経験に基づく御説明ということで、この場に参加しておられる構成員の方から、実体験に基づく話として伺うというのが、むしろ事柄の性質に即した対応ということになるような気もいたします。   いずれにしても、今後、追加で議論する機会が全く失われるということではないと思いますので、公判段階の取調べの録音・録画による立証状況等の議論に進んで、その先、更に別の項目についての議論に進んでいくとしても、小林構成員御指摘の点について、その後に追加で資料を提出したりして議論する機会が否定されるものではないのではないかと思っております。 ○栗木参事官 それでは、次回以降の予定ですが、本日の議事次第「2」として予定していた「公判段階における取調べの録音・録画記録媒体による立証状況等」に入りたいと思います。それから、先ほど申し上げた、構成員の方から御要望があったものについて、お示しできるものがあればお示しするということにしたいと思います。   また、第5回会議の具体的な内容については事務当局で検討いたしますが、第5回会議において構成員の皆様から資料の提出と御説明を頂く時間を設ける場合には、事前に御準備いただいて御送付いただく必要がありますので、早めに御連絡をすることとし、期限についても御連絡いたします。その場合の資料については、事務当局において確認させていただいて、必要に応じて、どのような形で御提出いただくのかなどについて御相談させていただきたいと思っております。 ○河津構成員 資料について、先ほどお願いしたものに加えまして、被告人以外の者の供述の特信性が争われた事件における、供述の特信性に関する裁判所の判断状況についても、資料を御提供いただけないでしょうか。   また、任意性に関しましても、弁護人としての経験に基づいて申し上げると、供述の任意性を争う場合には、信用性も同時に争うのが通常ですし、最初から信用性のみを争う場合もあります。少なくとも従前の実務においては、供述の任意性に疑いがあるとして証拠能力が否定されるケースよりも、証拠能力は認めた上で、信用性が否定されるケースの方が多かったように思われますので、この信用性に関する裁判所の判断状況についても、統計的な資料を御提供いただけないでしょうか。 ○栗木参事官 ただ今の御指摘については、事務当局の方で把握している資料や統計を踏まえて検討した上で、お示しできるものをお示ししたいと思います。   次回会議の進め方については、先ほど申し上げたような形でよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   それでは、そのようにさせていただきます。 ○河津構成員 すみません。第3回会議に前後して、来年1月から3月の日程調整をしていただきましたけれども、第5回が2月21日の1回しか入りませんでした。3段階にわたる協議が予定されていることからしても、このペースですと、協議会としての取りまとめに至るまでに相当時間が掛かるのではないかという懸念がありますので、次々回以降、2023年中の日程調整をあらかじめ行って、会議のペースを上げていただけませんでしょうか。 ○栗木参事官 日程調整につきましては、ほかの構成員の方々の日程もございますし、また扱う議題に当たって、資料の準備等がございます。もっとも、河津構成員の御意見も踏まえまして、事務当局としては、会議を円滑に進めていけるように努めてまいりたいと思います。   本日の会議における御発言や配布資料の中には、職務上取り扱われた事例に関するものもございましたので、御発言なさった方や配布資料の御提出者の御意向を改めて確認の上、非公開とすべき部分がある場合には、該当部分を非公開としたいと思います。それらの具体的な範囲や議事録上の記載方法等については、その方との調整もありますので、事務当局に御一任いただきたいと思いますが、そのような取扱いとさせていただくことでよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   それでは、そのようにさせていただきます。   本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 −了−