法制審議会 商法(船荷証券等関係)部会 第7回会議 議事録 第1 日 時  令和5年1月25日(水)自 午後1時28分                     至 午後5時33分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  船荷証券に関する規定等の見直しに関する中間試案のたたき台 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○藤田部会長 まだ開始時刻には若干早いですけれども、全員おそろいのようですので始めさせていただきます。法制審議会商法(船荷証券等関係)部会第7回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は上田委員、衣斐幹事、竹林幹事、松井幹事は御欠席と伺っております。また、金子委員、北澤委員、洲崎委員、松井委員、池本幹事はウェブで参加されると伺っております。   それでは開始いたします。   まず、前回に引き続き、本日もウェブ会議の方法を併用して議事を進めたいと思いますので、ウェブ会議に関する注意事項を事務当局に御説明お願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。前回の部会と同様のお願いになりますが、念のため改めて御案内をさせていただきたいと存じます。   まず、ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては、御発言される際を除き、マイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願い申し上げます。御質問がある場合や審議において御発言される場合は、画面に表示されている手を挙げる機能をお使いください。   なお、会議室での御参加、ウェブ会議での御参加を問わず、御発言の際はお名前をおっしゃってから御発言いただきますようお願い申し上げます。ウェブ会議の方法で御出席されている方々にはこちらの会議室の様子が伝わりにくいため、会議室にお集まりの方々には特に御留意を頂ければと存じます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   次に、本日の審議に入ります前に配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。配布資料について御説明いたします。   今回配布した資料は、部会資料7「船荷証券に関する規定等の見直しに関する中間試案のたたき台」の1点になります。これは事務当局が作成したものでございますので、後ほどの審議の中で事務当局から御説明をさせていただきます。   配布資料の御説明は以上でございます。 ○藤田部会長 それでは、本日の審議に入りたいと思います。   本日は、事務当局が作成した部会資料7「船荷証券に関する規定等の見直しに関する中間試案のたたき台」について検討し、今回と次回の部会において、中間試案として公表する内容を確定したいと思います。   それでは、事務当局においては部会資料7の第1部の第1から第4の御説明をお願いいたします。 ○生出関係官 それでは、事務当局の生出から、部会資料用7の第1部の第1から第4まで御説明いたします。   今回の部会資料7は、第1部と第2部の構成となっており、第1部は「船荷証券に関する規定の見直し」、第2部は「その他の商法上の既定の見直し」として、具体的には海上運送状、複合運送証券、倉荷証券に関する規定の見直しという構成になっております。時間との関係もございますので、第1部については、従前からの変更点を中心に、簡潔で恐縮ですが、御説明したいと思います。   まず、3ページの第1部の第1の「電子化された船荷証券の名称」は、電子船荷証券記録とするもので、従前の資料からの大きな変更はございません。   船荷証券又はそれに類する用語を含めることが相当であるものの、証券という用語を末尾に付すと、紙面の存在が前提となっているかのような誤解を生じさせるおそれがあることや、国際的な動向を踏まえると、電磁的といった用語は避けた方がよいと思われることなどが根拠となっております。   次に、4ページ以降の第1部の「第2 電子船荷証券記録を発行する場面の規律等」の「1 電子船荷証券記録を発行する場面の規律」についてですが、この箇所については、(1)から(7)まで項目がありますが、(4)以外は大きな変更点というものはございません。   従前までの資料に追加した点が多い箇所として、(4)の受取船荷証券及び船積船荷証券に相当する電子船荷証券記録の受取電子船荷証券記録について、受取電子船荷証券記録が既に発行されている場合における船積船荷証券又は船積電子船荷証券記録の発行に係る規律については、7ページ以降の補足説明のイのところに詳しく記載しておりますが、(a)荷送人又は傭船者に船積電子船荷証券記録の発行を請求する権利まで認めるか否か、(b)荷送人又は傭船者に商法第757条1項に基づく紙の船積船荷証券の交付を請求する権利を維持するか否か、(c)商法758条2項に相当する規律を設け、運送人又は船長がすでに発行されている受取電子船荷証券記録への追加記録をすることによって対応することを認めるか否かといった、(a)から(c)の三つの論点をどう考えるかによって、理論的にはいろいろなパターンが考えられるところではありますが、今回の試案のたたき台では、受取船荷証券及び受取電子船荷証券記録と船積船荷証券及び船積電子船荷証券記録とは別のものであることを重視すべきことや、電子船荷証券記録の発行義務を否定することとの整合性といった点などから、(a)を否定し、(b)と(c)を肯定する考え方というものを示しております。   補足説明の箇所には、今までの部会における議論の状況を記載しており、ほかのパターンの場合の規律案は、8ページ以降の(注)の箇所に記載しておりますので、適宜御参照いただければと思います。   次に、11ページ以降の第1の「2 電子船荷証券記録の記録事項」という箇所についてですが、従前の資料に記載がなかった内容としては、13ページの(4)その他の事項の箇所になります。電子船荷証券記録について、指図式の電子船荷証券記録などの各類型が観念されるのであれば、どの類型に属するかについても、法定記録事項とすべきではないか、船荷証券の交付に代えて、電子船荷証券記録を発行する旨、これを記録事項とすることも考えられるのではないかといった、今までの部会における指摘事項などを追加して記載しておりますが、法定記録事項を増やすことによって、これらの記録を欠くとほかの要件を例え満たしていたとしても、電子船荷証券記録とは認められないこととなることといった弊害を考慮したことなどから、試案においては、これらの内容は法定記録事項とはしておりません。   次に、15ページ以降の第1の「3 「支配」概念の創設及び関連概念の定義について」の箇所ですが、この箇所については、従前の資料からな大きな変更点というものはありません。16ページの2段落目辺りで、イギリス提出法案において、電磁的記録たる電子取引文書についても、動産と同様に占有や担保設定の対象となる旨を規定しているように見受けられることなどを追記している程度になっております。   第2については以上になります。   次に、19ページ以降の「第3 電子船荷証券記録の技術的要件」についてですが、まず、第3の1、電子船荷証券記録の技術的要件については、大きな変更点はございません。   20ページ以降の第3の「2 技術的要件としての信頼性の要件」については、電子船荷証券記録に関して、一般的な信頼性の要件を明示的に定めることはしない、といった甲案のほかに、電子船荷証券記録の技術的要件として、一般的な信頼性の要件をその有効要件として明示的に定める、とする乙案、有効要件とまではしないものの、信頼性のある手法を用いるよう関係者に要求する、という丙案、この三つの案を試案の内容とするものです。試案の甲、乙、丙、それぞれの案についての説明や検討は、補足説明の25ページ以降の箇所に記載しております。   ほかに、従前の資料からの変更点としましては、少し戻りますが、13ページの補足説明(3)国の認証を受けた機関による関与の要否の論点のところですが、24ページの下の方のエの箇所に、国の認証を受けた機関による関与以外の方法で、電子船荷証券記録の技術的要件に関して、何らかのセーフティーネットとしての規定、例えば、電子船荷証券記録の利用に係る当事者が、運送契約や規約の中で一定の合意をした場合には、当該当事者間の関係では、技術的要件の充足を推認する旨の規定を設けるといった提案も追加して記載しており、この点については、今後も検討の余地があると考えられるところです。   次に、27ページ以降の第3の3、電子船荷証券記録の発行の技術的要件の箇所についてですが、試案においては、電子船荷証券記録の発行場面においては電子署名を必要としております。この電子署名に関してですが、28ページの(4)の箇所に、試案においては、電子船荷証券記録に記録された情報について行われる措置であって、当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものと規定しておりますが、これは、必ずしも物理的に当該措置の情報の記録を行った者が自ら行うことまでは必要とはしていない旨の説明を追記しております。   第3については以上になります。   続いて、29ページ以降の「第4 電子船荷証券記録と船荷証券の転換」の箇所ですが、まず、第4の1、船荷証券から電子船荷証券記録への転換について、試案の案文に(注1)から(注3)を付して説明を記載しておりますが、この①項の「当該船荷証券の所持人」という文言の後に括弧書きを設けて、所持人について一定の限定を付すことを検討しております。どのような限定を加えるかについては、資料の30ページの上の方にA案、B案と記載しておりますが、まずA案は、船荷証券上の権利を適法に有する者に限る、B案は、裏書の連続によってその権利を証明した者に限るといった内容の、2案を試案としております。   次に、同じ①項の転換後の電子船荷証券記録の記録事項として、「一定の事項」という文言がありますが、これについても、A案とB案といった2つの案提案しており、30ページに記載してございますが、(注2)に記載の①から④の全部又は一部とする、という案と、B案、単に当該船荷証券と同一の内容とする、という、2案を提案しております。   次に、試案の②項ですが、後に御説明する部会資料第1部の第6の2(10)に関する裏書の連続による権利推定に関する規定についてですが、転換後の電子船荷証券記録を支配する者は、当該電子船荷証券記録の発行を受けた者が電子裏書の連続によってその権利を有したことを証明したものとみなすといった内容としております。   次の32ページ以降の第4の2、電子船荷証券記録から船荷証券への転換については、従前どおり転換請求権を否定する甲案、肯定する乙案の2案を試案の内容としていますが、両方の案について、船荷証券から電子船荷証券記録への転換の場合と同様に、支配する者にどのような限定を加えるか、転換後の船荷証券の記載事項をどのように定めるかについて、それぞれA案とB案を提案し、試案の内容としております。   33ページ以降に詳しく記載しておりますとおり、A案の①から④の事項を必要とする場合ですが、①については、新たに発行される電子船荷証券記録や船荷証券は、転換前のものを実質的に引き継ぐものであることから、そのことを明確にするために、商法758条1項各号に掲げる事項についても、転換前のものと同一の内容を記録又は記載、これを求めることとしています。もっとも、同一の内容、と説明しましたが、これについては、一言一句同一でなくとも、実質的に同一であるということができれば足りるものと考えております。   ②について、MLETRやイギリス提出法案のいずれにおいても、転換後の媒体においては、転換の事実が記録又は記載事項とされていることを踏まえたものですが、部会においても、転換文言の必要性に対する疑問や法定記録事項を増やすことは、転換の効力を否定することにつながるのではないかといった指摘もあったところです。   次に、③については、転換の事実を記載、記録したとしても、結局誰が支配、あるいは所持していた時点で転換が行われたのかが明らかにならない限りは、善意取得の要件としての裏書の連続性を立証することが難しいのではないかといった、部会における意見を踏まえたものです。もっとも、法定記載事項を増やすことは、転換の効力を否定する原因をむやみに増やすことにもつながる可能性もありますし、MLETRやイギリス法案においては、この③の事項は想定されていないため、国際的な調和の点でも懸念が見られるところです。   ④については、船荷証券、電子船荷証券記録について、記名式で裏書を禁止する旨の記載や記録があるその他の記名証券、いわゆる裏書禁止型に該当する場合は、転換をした場合であっても、類型自体の変更はないと考えるため、商法758条1項各号に含まれてはいませんが、これを記載又は記録事項とすることが考えられるというものです。   次にB案ですが、これは、転換後の記録、記載事項について、船荷証券の記載と同一のものと規定するもので、同一の内容については解釈に委ねることになりますが、そうだとしても、先ほどの①と④の事項については同一の内容として記載、記録が求められることになると考えられるところです。   簡潔でございますが、第1から第4については以上のとおりとなります。   ここで、一旦事務当局からの説明は終了したいと思います。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   それでは、今説明のあった内容について、どなたからでも結構ですので、御意見等を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○池山委員 池山でございます。発言の機会を頂きましてありがとうございます。   今回からは、中間試案の取りまとめへ向けた検討ですので、甲案、乙案といった複数案の併記があるものについては、そのどれがいいかということよりは、むしろ単一の案しか出ていないものについて、やはりほかの案も書いてくださいというようなことを言うかどうか、あるいは、補足説明については、私は、これは最終的には中間試案の公表時には、事務当局の責任において公表されるものと承知しておりますけれども、しかし、我々にもこういう形でせっかく拝見する機会が与えられておりますし、かつ、それは部会における審議状況として事務当局が理解するものを記載されると思いますので、この補足説明の中で特に意見を申し上げたいところと、それらの点を中心に申し上げたいと思います。   その上ででございますが、第1については特段ございません。   第2についてですけれども、先ほど、色々なパターンがあり得るとの話があり、受取電子船荷証券記録が既に発行されている場合における船積電子船荷証券記録ないしは船積船荷証券に切り替えるという場合の規律について、四つの案があるという前提で、案①を前提とした記載をされていて、案②から案④については補足説明の中での説明となっております。中身としては、私どもとしては、前回申し上げたとおり案④の方がいいのではないかと。一旦電子でいった以上は、電子で統一するという方がいいのではないかと思っており、かつ、私の理解では、前回それに対する支持というのも結構あったと思いますので、ここは、可能であれば、案①だけで残りは全部補足説明に落とすのではなくて、案④についても本文の中に、試案そのものの中に繰り上げていただくというのを御検討いただければなと思っております。それが1点目です。   それから、支配概念については、ここは、乙案に賛成といえば賛成なんですけれども、ここは先ほど申し上げた趣旨で、これ以上は申しません。   第3に移りまして、技術的要件の甲、乙、丙についても同様でございます。実質的に申し上げる点があるとすると、補足説明でいうと24ページになるんですかね、先ほど新たな指摘とおっしゃった、国の認証が要らないとしても、やはりなお検討すべきところがあるのではないかという、24ページ下のエのところですね。ここについては、正直申し上げると、何らかの規定を設けることが必要だとは、私どもとしては考えていないので、積極的に引き続き検討する必要があるとまでは、私としては思っておりませんということだけ申し上げさせていただきます。   それから、電子署名の点がもう一つございます。電子署名を要求するかどうかという点について、私どもは従前から、実際の電子B/Lがこの要件を満たすかどうか自信がないと申し上げておりました。幾つか実際に使われている事業者に質問した結果としても、変な言い方ですが、多分大丈夫かなぐらいのコメントはあるんですけれども、それで問題ありませんとは、確たる形では頂いておりません。それに、より重要なことは、電子船荷証券のシステムというのは、私どもが調査させていただいている三つ、四つ以外にも、実はたくさんあるわけでして、それらについて、全ての調査をすることはできないと。さらに、これから新しいものが出てくるかもしれないと。そういう中で、果たして、やはりそもそもこの電子署名の要件が要るのだろうかということについての懐疑的な意見が、私の推薦母体の中ではちょっと大きくなりつつあるかなと感じております。   逆に、積極的にこの署名が要るという要件、理由というか根拠というのが、なりすまし等を防止するためということが、一つ実質論としてはありました。ただ、実態としては、もっと大きいのは、やはり紙で要求されてきたからということのアナロジーというのが一番大きいのだろうと思っております。そういう中で、これから調査未済の、あるいは調査不可能なものもあるし、これからいろいろなものが出てくる中で、その二つの理由から法的に要求するということについては、やはり自信がないということを改めて申し上げたいなと思っております。   今回追加された法務省の解釈として、そうは言ったって、電子署名の要件というのはかなり緩やかなものなので、多分大丈夫ではないのという御指摘の趣旨は非常によく分かります。正に、大丈夫なのかなとは個人的には思うのですけれども、やはり自信を持って大丈夫と実務の側として言えない中で、にもかかわらず、やりなさいと、実務の側で絶対それを合わせなさいと言われると、少し困るなという感覚であります。そういう意味で、多分結論から言うと、ここでどうこうというよりは、対案として、不要という意見もあるというのを、この中間試案の対案の1つとして入れていただくことを御検討いただければなと思っております。   最後、第4についてですけれども、第4では、新たに記載事項についてのA案、B案というものが、29ページから30ページ辺りについて出てまいりました。ここは正に、こういう形で対案として出てきているので、余り立ち入るべきではないのかもしれませんけれども、一個だけ申し上げると、(注2)のA案とB案の中で、A案で①から④までの事項の全部又は一部とするという部分は、実際どれを入れるかによって、その意味というのは違うので、若干AとBと2種類という表現自体がミスリーディングなのかなという気はいたします。   やはりその中で、A案の中で特に気になるのは、今回新たに入れてくださった③ですかね。当該船荷証券に代えて、当該電子船荷証券記録の発行を受けた者の氏名又は名称ということです。これは、正に補足説明にありましたけれども、いつ転換されたかということが分からないと結局善意取得の前提である裏書の連続について明確にできないんではないかという指摘で、この指摘自体は、実は、従前私も少なくとも申し上げたような気がするんですけれども、少なくとも私が指摘した趣旨としては、だから、この③を積極的に入れるべきだという趣旨で申し上げたわけでは決してありません。従来あるようなもの、この②の「代えて発行されたもの」、これはMLETRに即したものではありますけれども、本当に必要なんですかということを申し上げる中で、そもそも②だけだと中途半端ですよねという趣旨で、入れるんだったら、論理的には②プラス③になるということを、論理的な関係として申し上げだけで、私の趣旨としてはむしろ、だから③も要るということではなくて要らないと、そういうことだと思っております。   その観点から、より一般化して申し上げると、やはり今回の立法の難しさというのは、日本国内にとどまらないということだと思うんです。これが、会社法とか会社法施行規則の改正であれば、論理的に、内容的にリーズナブルな規律と皆が一致すれば、それを新たに法制の要求として入れて、実務の側もそれに合わせてくださいと、だってこれ合理的でしょうというのは、極めて分かりやすいんですけれども、今回の立法というのは、やはり実際は外国で作成される、少なくとも発行の段階では外国法準拠によって発行するB/Lというのも、実際上規律の対象になり得るわけです。   外国法準拠のB/Lだったら、これ関係ないのではないのと言われそうですけれども、決してそうではなくて、前回でしたか、準拠法についての質問が部会長から北澤委員にあったかと思いますけれども、外国法準拠のB/Lであっても、転換のときには、転換国での準拠法ということで、突然ここで日本法が出てくる可能性というのはやはりあると。やはり外国の事業者にとっては、日本法でこういう、少なくとも③のような、ほかに例がないような規律が入ると、非常に困るんではないかなと思っております。   すみません、ちょっとこれは中身に入ることになってしまいましたけれども、中身についても、今申し上げたとおり、そのことを踏まえて、A案、B案の提示の在り方というんでしょうかね、これも、全部又は一部という部分を、もう少し工夫していただく余地もあるのかなと思っております。   それから、転換請求の、昔からずっと議論されている甲案、乙案についてです。これはもう、ここで繰り返すような話ではないのですけれども、補足説明の中で、仮に乙案による場合にはうんぬんという説明が、38ページですかね。失礼…… ○渡辺幹事 36ページの最後の行ですかね。 ○池山委員 すみません、ああ、そうです。ここの部分なんですけれども、ここは、二つ書いてあって、費用負担は原則として運送人の負担になるし、それから、交付も運送人が持参しなければいけないうんぬんと書いてあります。これ、実は甲案、乙案の選択とは別に、仮に乙案になったとしても、必ずしもそうとはいえないのではないかいう議論があります。というのは、やはり転換請求権があるとしても、それは当然に無償だとは、無償請求権とは決まっていないだろうというのが一つ。   それから、発行ないし交付について持参債務性というのは、これは実務の人が見ると、実はびっくりしていて、紙のB/Lの場合も、実は誰もそうは思っていないんですよね。理論的には、確かに交付する義務はあると。何も書いていないんだから持参債務で、運送人が荷主のところに持っていかなければいけないと、民法の原則を適用すればと。それをここに引いてきていると思うんですけれども、実務は違うと。それはやはり、あえて言えば商慣習あるいは商慣習法というのがここにはあるのかもしれないと思うんですよね。慣習法上、やはりそれは取立債務なのではないかと、発行義務についてですよ。そういう議論を、みんな暗黙のうちに思っているんですよ。   電子B/Lの場合は、確かに商慣習も何もないわけですけれども、そこで持参債務だと言われると、非常に違和感があると。所詮は、ここは補足説明の書き方の問題ではあるんですけれども、こういう違和感のある表現があることで、甲案、乙案の選択の議論が混乱することを恐れるというのが、正直なところであります。甲案、乙案は、最終的には決めなければいけないですけれども、そのときに、あえてここのなお書が、そういう混乱を生じさせるようななお書は要らないのではないかなと思っております。   すみません、るる申し述べましたが、取りあえず以上です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、差し当たり、今頂いた意見について、事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。幾つか御指摘を頂きましたので、順番に回答できる範囲で回答させていただきたいと思います。落ちている部分がひょっとしてあるかもしれませんので、何かありましたら御指摘いただければと思っております。   まず最初のところですけれども、第2の1のところですかね、船積船荷証券と受取船荷証券の電子版の関係について、4パターンぐらいあるけれども、試案の方には一つしか挙がっていないというところについての御疑問、御指摘を頂いたかと思っております。こちらにつきましては、今、この提案部分に掲げさせていただいているものが一番有力候補で、それ以外は余り有力ではないとか、そういうことを言うつもりは全くございませんで、最も単純なものを例示として掲げさせていただいているという限りでございます。   これを、例えば、4案全部ここに掲げてしまうと、非常に分量が多くなってしまい、なおかつ、ここは恐らく考え方が分かれるところではあるんですけれども、それほど切実に対立がある部分ではなく、極端な話、どのような案を採っても、そう大きな問題にはならない、とはいえ、どこかで決めなければいけないと、こういう論点であるというところが、これまでの御議論でもあったかなと思っております。そういった意味では、余り重要性としては高くない論点ではないかと、このように考えている次第でありまして、そういったものに対して、非常に長々と分量を割いて記載してしまっていいんだろうかと、あたかもものすごく重要な論点で、たくさん対立点があって大変な問題だというような印象を与えかねないのかなというところで、少し控えめな書き方をさせていただいたというところでありまして、それ以上の意味はないというところでございます。とはいえ、今頂いたような御指摘もありますので、どういう工夫ができるかというところは、また考えさせていただきたいなと思っているところでございます。   続きまして、今回の部会資料で申しますと24ページのところでしょうか。付け加えて書かせていただきましたエの部分のところにつきまして、このような記載は不要ではないかという御指摘を頂いたところかと思っております。ここは、書いた場所がやや誤解を与えるような場所に書いてしまったかもしれないところですが、ここで我々として問題提起したかったところとしては、認証機関うんぬんというところとは関係なく、一般的な信頼性でありましたり、技術的要件ですね、こういったものを積極的な要件にしてしまいますと、もし争いがあれば請求する側で立証していかなければいけないと、そういったことになりかねないわけですけれども、例えば、規約とかで合意した当事者間においては、そういったものは推定されると、争う方でやってくださいと、そのような形にした方が、むしろ実務的にはワークするのではないかと、こういうような考え方というのがあり得るわけですので、こういった問題提起がしたかったというところでございます。   次が、署名の部分でございましょうか。電子署名のところですけれども、事務当局といたしましては、先ほど池山委員の方で御整理いただいたとおり、まず、誰が作ったのかということをしっかり明らかにする必要もありますし、紙において署名が求められているというところからして、なかなか電子署名不要というのは、正直なところ難しいのではないかと考えていることに加えて、問題になるそういった措置についても、必ずしも本人でやらなくてもいいんではないかという解釈論があり得るということを踏まえると、なおさらここは何とかできるのかなという思いはあるところではございます。他方で、今言ったような御指摘もございますので、それでもなお不要という御意見があるというところについて、何らかの形で、頂いた御意見でございますので、反映できるような形で検討させていただきたいと思っております。   それから、次が、転換のところだったかと思います。今回新たに書かせていただきました、記載又は記録事項に関する整理として、A案、B案という形で書き方をこのような形で変えさせていただいたところですけれども、そもそもこういったA案、B案という挙げ方がいいのかどうかというところからの御指摘を頂いたかと思っております。おっしゃるとおり、このA案的な考え方だった場合、全部又は一部というところの全部なのか一部なのか、一部だとしたらどれなのかというところが、一番重要な問題になるというのは、それは全くおっしゃるとおりかと思います。   ここで一応A案とB案、二つに分けさせていただいた趣旨といたしましては、ここも補足説明に十分書き切れなかったところかもしれませんが、これまでの御議論で、様々な御指摘を頂きまして、頂いた御指摘を全て記載・記録事項にするかどうかはともかくとして、全て挙げさせていただくと、この四つぐらいあるわけでございまして、こうした四つを個別に選別して記載・記録事項としっかりと決めていくというのが、A案的なアプローチ。他方で、B案は、様々なそういった考え方があるので、あまり細かく選別したりしないで、もう少しざくっという規律をして、解釈に委ねるという立場を採った方が、むしろいいのかもしれないなというところが、これまでの議論を踏まえて、事務当局として考えたところでございます。A案が、ある意味非常に細かく見て全て書き切ると、こういったアプローチであるのに対し、B案は、ざくっと定めて、あとは解釈に委ねると、むしろこちらの方がうまくいくかもしれないという考え方もあり得るのではないかということで、こういった二つのアプローチを提案をさせていただいたというところでございます。   A案的に考えた場合に、それぞれどう取捨選択していくのかというのは、もちろん問題になりますし、御指摘いただいた③の部分ですね、これを積極的に入れた方がいいのではないかという趣旨で、事務当局として書いているわけではございませんで、御指摘があったところを全部問題提起として掲げさせていただくと、これも一つの選択肢にはなり得るというところで挙げさせていただいたところでありまして、池山委員御指摘のとおり、こういったものを全て記載・記録事項という形にすると、転換の要件というのはどんどん厳しくなってくるので、決して望ましい方法ではないという御意見が当然あり得るとは思っていますので、そういった中で、どのような取捨選別をしていくかというところの御感触を頂きたいと思っておりますし、そういった議論をしていく中で、そもそも余り細かく決めなくて、B案的な発想でもいいのではないかという考え方も、場合によってはあり得るとは思いますので、そういったところも含めたお考えを広く伺いたいという趣旨で、このような形で書かせていただいたというところでございます。   最後が、これまた転換のところで、甲案、乙案のところの乙案を採用する場合にはうんぬんというところでございますが、36ページの最後の行からのなお書については要らないのではないかという御指摘を頂いたところでございますが、一応私どもとしては、やはりこういったところも含めて、最終的に甲、乙決めるべきなのかなとは思っておりまして、御指摘いただいたとおり、乙案を採ったからといって、必ずしも運送人負担にはならない、そうならないようにするということは、全然私どもとしてもあり得るとは思っておるのですが、恐らく何も書かないで転換請求権を認めると、それだけ定めると、やはり原則としては、運送人側の負担と解釈される可能性が非常に高いのかなと思っておりますので、ただ、もちろんそれは、個別に手当てをして修正していくということは当然あり得るところではありますけれども、そういったところをいろいろ議論をして、例えば、個別に修正していくと、そういう作業をしてまでも、なお乙案を採用するべきなのでしょうかというところも含めた問題提起でございまして、ここの議論を全くしないで、甲案、乙案だけで議論をして商慣習に委ねるというのは、ちょっと危険ではないかなという気がしておりますので、むしろ運送人サイドのことを考えれば、ここは正面から議論をして、その内容を決めていくべきではないかと思いますし、そういったところも含めて、最終的に甲、乙というものを判断していくべきなのかなと、今のところ事務当局としては思っているところでございます。   取りあえずの回答は以上でございます。 ○藤田部会長 池山委員、何か更にございませんか。 ○池山委員 ありがとうございます。取りあえず、御趣旨は理解いたしました。二つあります、その上で。   最後の点なんですけれども、恐らくこれは、中身というよりは、補足説明の文章の主語が何かということにもよるんだろうと、私は思っています。日本語のこれこれと考えられるという言い方は、非常に曖昧な物言いで、事務当局の御見解が、やはり法原則はそうでしょう、考えられるでしょうとおっしゃるんであれば、それをそこでいやいやと言ったって始まらないので、その意味では異議はないんです。ただ、結局この補足説明の文案に相当するものをこうやって頂いてしまって、これに対して何も異議を申し立てないと、変な言い方だけど、私もそう考えるということに賛成したということになると、正直困るなと。それは、やはり商慣習法というものの位置付けといったものに関わってくるのかなと思っております。これはちょっと感想的なものです。   それを申し上げた上で、すみません、もう一つというのは、先ほどちょっと申し上げそびれた点についても、2点ほど追加させていただいてよろしいでしょうか。それほど大きな問題ではございません。いずれも、第4の転換に関するところです。   先ほど、A案、B案というときに、(注2)のA案、B案について御質問させていただきましたけれども、(注1)のA案、B案についてでございます。ここは確かに、A案、B案、それと、そもそもこういう限定は要らないというのが論理的にあり得るということを書いていらっしゃるので、それはそれで結構なのですが、私の理解だと、積極的にA案を賛成とされる方というのはいらっしゃるんでしょうかというのを、ちょっと疑問に思っております。   というのは、実は、前々回の議論のときに、私は最初A案的なことを申し上げたのは事実としてございます。ただ、その後、御指摘があって、私は最終的にはB案の方がより論理的だと、要するに、本当に適法に有するということを法的な要件として考えてしまうと、それが立証されているかどうかということを、運送人としては考えなければいけない、だから困るというので、要は、権利推定が及んでいる人だという趣旨で申し上げたと。B案だと、裏書によってうんぬんということがあるので、裏書のない場合どうするんだという発言をして、それに対して、裏書ない場合は、所持自体で推定されるんだから結局同じことで、B案の趣旨というのは、実際は権利推定をされる人だということなんだということだったので、少なくとも私は、今はA案ではなくてB案なんですね。   もちろん、それで、ほかの選択として、ここのB案の次には書いていないですけれども、およそもう所持していれば、権利推定が及ぶ人であれ何であれ、単なる媒体の変更だから誰でもできるという、もう一個の案が出てくるということになって、多分そっちの案もあんまり賛同する、積極的に賛同する人がいなかったような記憶があります。そうすると、よくよく考えると、これ、A案、B案と掲げるまでもなく、B案一本でいいのではないかなという気が、実は個人的にはしております。これは、中身そのものもそうですけれども、従前の議論の理解に関わることです。   それから、最後もう一つは、これ、むしろ純然たる質問なんですけれども、正に転換後の裏書の連続の推定を補助するための規定として、第4の1の②の規定がございます。逆の転換としても同様の規定がございますが、これ、文章の順番が前回と違っていて、ちょっと読ませていただくと、2行目からですね、「当該電子船荷証券記録を支配する者は、」の後です、今回は、「記録の発行を受けた者が電子裏書の連続によりその権利を有したことを証明したものとみなす。」ってあるんですけれども、前回は、「電子裏書の連続により」という部分が、確か「記録の発行を受けた者が」より先に来る文章になっているのです。私は、ここは実質的な趣旨を変更される趣旨ではなくて、むしろ趣旨を明確にするために、あるいは、別の言い方をすると、「電子裏書の連続により」という言葉の掛かり受け、修飾の対象を明確化するために順番を変えられているにすぎないと理解をしているんですけれども、それでよろしいでしょうかということです。   追加をしてすみません。 ○藤田部会長 事務当局から御返答をよろしくお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。まず、最後の御質問に対する回答からですけれども、これはおっしゃるとおりでございます。分かりやすさという観点から書き直したということで、特段内容を変えるという趣旨ではございません。   それから、その一つ前に御指摘いただきました、部会資料の30ページで申しますと、(注1)のA案、B案の関係で、これはもはや対立は解消されているのではないかという御趣旨で、B案的な発想でもういいんではないかということでの御指摘を頂いたかと思っております。もちろんそういうことであれば、それはそれで構わないかなと思っているところである反面、例えばですけれども、B案のような規律を採用する場合も、実は考え方としては二通りあって、先ほど池山委員が言われた考え方というのは、基本的にはこの転換をする主体というのは、権利者であり、こういった裏書があれば、権利者であることが推定される、だから、このB案でいいと、こういう考え方なのかなと思われます。他方で、別のアプローチとしては、とにかく所持していればいい、電磁的な記録な場合であれば、支配していれば、それで転換の資格はあるんだと。ただ、先ほど御指摘いただいた②の規定がある関係で、こういった限定をしないと駄目ですねと、こういう考え方もあろうかと思います。このように、基本的な考え方としては多分2パターンあって、どちらからもB案という考え方に行き着くのかもしれませんが、そういった基本的なアプローチも含めて、全ての方々で認識が共有できているかというと、事務当局としては、必ずしもそう言い切る自信はございませんので、少なくてもこの中間試案の段階では、こういった形で両案書かせていただいてもいいのかなとは思っているところでございます。もちろん、そうではないということで、今日ここでお決めいただけるのであれば、それはそれで何か異論があるわけではありませんが、最終的にB案的な発想というのが非常に多数を占めたとしても、その理由付けなり様々なところを考えていくと、中間試案の段階では、様々な見解の一つとして載せて、最終的に決めるときに集約していくということでも、事務当局としてはいいのかなと思っているところでございます。   あと、先ほどの一番最初に御指摘いただきました、転換のところの甲案、乙案の関係ですね、部会資料でいいますと、36ページの終わりから37ページにかけての部分でございます。こちらも、我々としても一応原則としてという言葉を入れておりますので、必ずそうなると思っているわけではないんですが、ただ、何も手当てをしないと、基本は恐らくそうなってしまうだろうというところと併せて、まだ恐らくこの転換に関しては、商慣習があるからこうなるというふうなことを、この段階で言い切るのは難しいかなとは思っておりますで、こういった定めをした場合の基本的な考え方、プラス、何か商慣習として確たるものもないと、こういう状況を踏まえると、何にも定めをしないと運送人負担ということになりかねないのではないかと、こういうところでございますが、少しその辺のところは、書き方をもう少し工夫をするなりは考えさせていただければとは思っておりますけれども、事務当局の整理としては、今申し上げたとおりでございます。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。 ○池山委員 ありがとうございます。 ○藤田部会長 池山委員から指摘があった37ページの費用の問題の書き方ですが、現在のような書き方ではなくて、乙案を採用する場合には、転換に掛かる費用を誰が負担するかとか、あるいは遠隔地で全く運送人と関係ないようなところから請求された場合には、どんな形で提供するのかといった問題を生じる可能性があるため、場合によっては何らかの手当てをする必要があるかもしれないというような形での指摘であれば、池山委員としても異論はないということですかね。 ○池山委員 それであれば、全く違和感ございません。ありがとうございます。 ○藤田部会長 費用の問題があるから取れないというふうな、誘導にならないような書き方に注意していただければいいということだと思いますので、例えば、今申し上げたような形で工夫をお願いします。 ○笹岡幹事 36ページ以降のところです。これに関しては、転換請求権をどう位置付けるのかによって、原則として誰が負担すべきかというのは変わってくるのではないかと思います。   まず一つは、運送人は、いずれにしても必ず紙の船荷証券を発行しなければならないのだと考えると、電子というのは例外ですので、紙に戻せと荷主が言ってきたら戻さなければいけないため、その費用は運送人が負担すべきだというロジックになるわけですね。もう一方で、一度電子で発行すると合意をした場合には、運送契約はその内容で確定しておりますので、途中で修正したいというのは、荷主側の要望に従って行うということになります。商法580条に従って荷主は運送人処分権を行使して契約の内容を修正しているということとなり、その費用は荷主側が負担すべきだという解釈になります。このように、運送人は必ず紙の船荷証券を発行しなければならないという前提を採るか採らないかによって、どちらが費用を負担すべきかというのは変わってくるのではないかと思います。   少なくとも、データの非差別や機能的同等性からすると、必ず紙を発行しなければいけないというルールをどこまで押し切るかという点は、なかなかこの部会の性質からしても厳しいのではないかと思います。仮に、後者の構成で転換請求権を位置付けていくということになると、さきほど商慣習とおっしゃいましたけれども、原則としては商法580条どおりに荷主負担という解釈になるのではないかなと思います。 ○藤田部会長 ありがとうございました。本日は、いろいろ議論して、今何か決めるという話ではなく、飽くまで中間試案として、その中間試案の補足説明として何を書くかということですので、今言ったようにいろいろな解釈があり得る、考え方によっては、自然と荷主負担という説になるかもしれないということですので、先ほど申し上げましたように、そういう問題があって、それを考えなければいけなくなる場合によっては手当てする必要があろうという書き方であれば、笹岡幹事としても、書き方としては大丈夫なわけですね。 ○笹岡幹事 はい、もちろん。 ○藤田部会長 ただ、その上で、仮にその線で、この中間試案でパブリックコメントにかけた後に、中身で詰めて、乙案でいく方向でいく場合には、今言った点を考えて、解決策を最終的に決めましょう、そういうふうな御発言と理解してよろしいですか。 ○笹岡幹事 はい。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   事務当局からよろしいですか。 ○渡辺幹事 特にありません。御指摘ありがとうございました。 ○藤田部会長 先ほど池山委員が最初に言ってくださったことですが、念のために確認させて頂きます。多くの委員は共有されていると思いますが、今回と次回を経て、無事に中間試案が決まれば、その中間試案がパブリックコメントに付されることになります。したがって、今回と次回は、池山委員が正に冒頭に言われたように、並列している選択肢のどちらを支持するかということを伺いたいわけではなくて、中間試案としてパブリックコメントに付すものとして、適切な案の提示の仕方になっているかという観点からコメントを、できれば頂ければと思います。たとえば、2案だけではなくて、ほかにも案はあったのではないかとか、あるいは、先ほど池山委員が言われたように、そもそも誰も支持していないからこのような案は聞くまでもないのではないかとか、あるいは聞き方が紛らわしいのではないか、案の中身が表現としておかしいのではないかといったことなどを、できるだけ重点的に意見いただければと思います。   もちろん、自分はどちらを支持するということを、この場で言ってはいけないというわけではなくて、もちろん適宜そういう点も触れていただいても結構ですが、今日決めなくてはいけないのは、飽くまでパブリックコメントに付す形態として、どういう聞き方をするのが適切かという観点での決定ということになると思います。   また、補足説明は、事務当局の責任において公表するものではありますが、中間試案に対するコメントの重要な前提となる、回答する上での重要な前提となるものですので、そこで紛らわしい表現があったり、おかしい表現があったり、あるいは分かりにくいところがあったりというこことがあるのは、もちろん望ましいことではありませんので、もしお気付きの点があれば、是非御指摘いただければと思います。   言わずもがなかもしれませんけれども、念のために確認させていただきました。   それでは、そのほか、どの点でも御意見をお願いします。 ○雨宮委員 雨宮です。部会資料の第4の1の転換の(注1)のB案についてです、資料30ページです。ここでは、「当該船荷証券が、裏書によって、譲渡し、又は質権の目的とすることができるものである場合にあっては、裏書の連続によりその権利を証明した者に限る」と記述されています。ということは、例えば、記名式で裏書禁止の場合には裏書がないので、このような場合は除かれると理解しております。また、指図式で裏書の連続が必要となると、指図式であっても、荷送人が支配する場合は連続がありませんので、そういうものもここでは想定しないということで理解しておりますが、まずその確認と、もしそうであるならば、32ページの(2)のところの②が、いかにも裏書の連続によりその権利を証明した者に限定するという考え方のように書かれるので、今、藤田部会長がおっしゃられたように紛らわしい記述であるかなと思い、発言させていただきました。 ○藤田部会長 事務当局から御返答お願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘はそのとおりだと思っておりまして、飽くまでも、これは指図式の場合に限定しているわけですので、考え方としては雨宮委員のおっしゃるとおりでございまして、そこの辺が補足説明で紛らわしくなっているというところでございますので、それは改めて検討させていただきたいと思っております。御指摘ありがとうございました。 ○藤田部会長 よろしいですか。 ○雨宮委員 はい、承知しました。 ○小出幹事 ありがとうございます、小出でございます。全体的な構成といいますか、作り方というか、その点についてコメントさせていただいて、あともう1点、ちょっと各論についてもお話をさせていただきます。   まず1点目が、今回お出しいただいた中間試案たたき台なんですけれども、もちろん今後様々な御意見を頂いた上で、MLETRに準拠するということが、まだ決定されたわけでも何でもありませんけれども、一方で、MLETRに準拠するということが一つの有力な提案であるということは事実だと思いますので、そのことを踏まえたときに、この中間試案というものが、MLETRに準拠した案となっていることが、本当に明確になっているかどうかが、ちょっとわかりにくいように思いました。   と申しますのは、MLETRはいろいろな条文があるわけですが、それぞれの条文について中間試案ではどこに記載がなされているのか、その対応が遺漏なくできているか、やや疑問がある部分がありまして、すごく細かい点なんですけれども、例えば、MLETR8条には書面性についての規定があります。読み上げますと、情報が書面化されることを法が要求している場合には、電子的移転可能記録については、そこに含まれる情報が後の参照に利用できるようにアクセス可能であれば、その要求を満たされると。これは要するに、書面であるということの機能的意義は、情報が事後的に容易に見られることに意味があると、MLETRは考えているんだと思います。   そのことを踏まえて今回の中間試案を見させていただきますと、例えば、技術的要件である19ページから20ページのところには、MLETR10条に書いてある要件は全て書いてあるんですけれども、MLETR8条が言うアクセス可能性とか可読性とか、その辺のことというのは書いていないわけです。記録を保存できることというのは確かに書いてあるんですけれども、保存できるということだけなので、それが容易にアクセス可能であるということまでは書かれていないということになります。もちろん、それは当然の前提になっているということなのかもしれませんけれども、今のは一つの例ではありますが、MLETRの各条にそれぞれどの程度、この中間試案が準拠しているのかというのが、もう少し明確になるような記載を載せていただくと、望ましいのかなと思いました。   それとも関係するもう一つの各論的な点で、先ほど池山委員からも御指摘のあった、電子署名の部分なんですけれども、私もこれ、前回まで議論がいろいろあって、その後ちょっと考えてみたんですけれども、今回電子署名というものの定義を法務省令で作るということで、それを、わが国の電子署名法の定義を参照して作るということを想定されているように思います。しかし、MLETRが考えている紙における署名、たとえば手形とか船荷証券のような証券上の署名というものの機能と、電子署名法が想定している、いわゆる電子契約における署名の機能というのが、本当に同じなのかどうかというのは、私はちょっと疑問に思っている部分があります。   日本の電子署名法というのは、元々契約成立には署名というのは必須要件ではないということを前提に、飽くまでも訴訟における、裁判上の証拠としての真正な文書の成立の推定効を与えるものとして、電子署名を位置付けているので、そう考えていきますと、今の電子署名法の規定にあるように、一つは、作成者が誰であるかということの情報と、もう一つは改変が行われていないことの情報が必要になってくるのですけれども、MLETRの署名に関する9条で求めているのは、作成者のアイデンティティーを識別することと、それから情報についての作成者の意思を示す、つまりその情報を作成者がその意思を持って作成したのだということを示すということのみが要件であり、改変が行われていないということは要件ではありません。それは、別途、いわゆる完全性、インテグリティーというところの要件として定められているので、署名の機能ではない。もちろん、全体としての紙の船荷証券の機能ではあるかもしれませんけれども、署名の機能ではないと考えているのではないかと思います。   後ほど出てくる裏書の方にも関わってきますけれども、署名は、作成時だけではなく裏書の場面でも出てくるわけですが、裏書の署名について、この電子署名の定義を使うと、作成者が誰であるかという情報は必要かもしれませんが、改変がないことというのは、本当に要件として必要なのかどうかというのは、やや疑問のように思っています。その意味では、MLETR9条は確かに署名という言葉を使っているんで、日本だと電子署名法とどうしてもかぶってしまうんですけれども、そこで求められていることとを実現するために、日本法でどのように「電子的な署名」を規定するのかということを検討する必要があり、単純に電子署名法上の電子署名を持ってくるのは、ミスリーディングなのではないかと考えています。   これは、もちろん一つの意見にすぎませんので、日本では電子署名法上の電子署名の定義をそのまま使うという方法もあり得ると思いますが、それは恐らく、MLETRの考えとはちょっと違った考え方になるようにも思われますので、一つはMLETR9条についての検討も、もし加えていただければありがたいと思います。同時に、今の例でもありますように、MLETRの各条文で規定されていることというのが、この中間試案の中でどのように読めるのかということに、少し意識をしていただけると有り難いかなと思った次第です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます、御指摘ありがとうございました。   まず、MLETRに準拠しているかどうかというところをしっかりチェックするというところは、非常に大切な作業だと思っておりますので、我々もどうしても、何といいましょうか、日本の法制を考えたときに、検討しなければいけない事項ということで順番にこうやって書いていくというところになってしまうわけですけれども、そうやって作り上げた試案というものが、翻って考えてみて、MLETRにしっかりと準拠しているかどうかというのを、改めて検討してみるということは、大変重要な作業だと思っておりますので、そういったことをさせていただきながら、MLETRに準拠しているというところをアピールしていくという意味でも、そういった注釈を補足説明等で加えていくというところは、意識して改訂をしていきたいと思っております。   電子署名についても、そのような流れの中で、一度検討はさせていただきたいと思っております。   以上でございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   小出幹事の最初の点について、ちょっと趣旨の確認なんですが、例えば、MLETRの条文が幾つかありますが、その何条が、この中間試案ではここで対応していますという、言わば対応の一覧表のようなものを、補足説明などの比較的最初の方に入れてもらいたいという趣旨なのか、それとも、内容的に対応していることが示される記述がどこかにあれば、それでいいという趣旨なのか、いずれでしょうか。つまり、中間試案として問うときに、その対応関係が一般に分かるように問うてほしいという御趣旨なのか、そうでないのかというのが1点目の確認です.2点目は、電子署名のところは、小出幹事の意見を突き詰めると、電子署名について、池山委員の言われたことも含めると、電子署名が要ると要らないという選択肢の他に、要るという場合にも、電子署名法に沿った電子署名とする案と、独自の定義の電子署名を採用するという案の2案があるという形で中間試案で問うてほしいということになるんでしょうか。 ○小出幹事 ありがとうございます、小出でございます。まず1点目に関して申し上げますと、これは、この中間試案を実際に読まれる方のターゲットをどこに置くかということとも、多分関係すると思うのですけれども、ただ、これは一般に公表されるということで、実際に外国の人が読むかどうかはわかりませんが、日本がMLETRに沿ってやるという方向性を検討しているのだということを広く、これは日本国内の人も含めて、アピールするためには、可能であれば対応表のようなものがあると、読んでいて分かりやすいし、何が論点なのかということも分かりやすいのではないかとは思います。   ただ、それが現実的にこれから可能な作業かどうかという問題はあるかと思いますので、もしそれが難しいとすると、大きな構造までは変えないまでも、個々の論点の中で、ここの部分というのは、MLETR何条のどこに対応するものであるということが、一言入っている程度でも、もちろん今も相当部分記載していただいておりますけれども、そこをもう少し意識的にしていただくと、よりリファレンスには資するかなとは考えております。ただ、どちらかを必ずしてほしいというまでの、強い要望ではございません。   それから、2点目につきましては藤田先生の整理されたとおりで、私は、今の段階では、電子署名法における電子署名というものと、電子船荷証券記録における、いわゆる電子的な署名というものは、ちょっと違うものでもあり得るのではないかと。すなわち、逆に言うと、電子署名法の電子署名ではなくても、電子船荷証券記録における電子署名に求められる機能を果たすような技術的な方法というのは、あり得るのではないかと思っております。もちろん、電子署名法の電子署名がそのまま使えることもあるとは思うのですけれども。したがって、藤田先生のおっしゃるとおり、まずは電子署名の規定がそもそも要るか要らないか、要るとした場合に、それを電子署名法に準拠するものとするべきか、そうではない別のものとするべきかという、三つのパターンで聞いていただけるといいかなとは思いました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そのほか、どの点でも御意見はございますでしょうか。 ○吉田委員 「電子船荷証券記録の支配」の定義につきまして資料17ページから甲案、18ページから乙案の説明がありますところ、乙案についての2段落目の最後の方で、「その具体的な内容についての定義規定を置いていない例も少なくない(「子会社」の定義を定める会社法第2条第3号とその委任を受けた会社法施行規則第3条第3項2号)」という記載があります。この点につきまして、以前の審議会では乙案ではなくて、甲案の例として挙げる意図でした。説明に不足がありまして、以前の審議会では、法律ではなくて会計基準に支配という言葉の定義と解釈基準があるというお話をいたしました。   確かに、会計基準は法令そのものではありませんが、会社法第435条第2項の計算のところで、計算書類の作成は法務省令の定めるところによるという規定があります。この法務省令に当たる会社計算規則の第2条第1項に、この省令において、子会社とは法第2条に規定する子会社をいうという規定があり、第3条に、この省令の用語の解釈及び規定の適用に関しては、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行を斟酌しなければならないという規定があります。よって、子会社の定義は、法律の文言解釈だけから導くのではなくて、会社法上の計算においても、会社会計を斟酌する必要があります。   ただ、ここには斟酌するとしか書いていないので、適用する必要がないのではないかという疑問も湧いてくると思います。これについては、大蔵省令である連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の第1条1項に、この規則において定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする、と企業会計の基準に従うことが義務になります。この規則の第2条第3項に子会社の定義がありまして、ここで引用されている財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に書いてある子会社の定義に、資料18ページで引用されている会社法施行規則第3条と同様の文言の定義があります。   この会計基準が指すものについては、企業会計基準第22号の連結財務諸表に関する会計基準というものがありまして、その中の49の4という項目に、支配の定義についてまとめた「連結財務諸表における特別目的会社の取扱い等に関する論点の整理」というものがあるという記載があります。この論点整理における論点1が、支配の定義に関する論点で、ここで、例えば、IFRSですとか、日本の国内会計基準以外の会計基準も含めた会計基準ごとの支配の定義に関する記載があります。   法律の条文の文言のほかには、外航海運の実務との関係では、多くの場合、船舶の法律上の所有者、運航者は、船主本体ではなくて、その子会社である船舶の保有、運航のみを目的とするSPC、つまり、船主に連結している特別目的会社です。このような仕組みを利用するのは、主に会計・税務上の理由によるものです。ですので、外航海運に携わる人は、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の適用がある、金融商品取引法の規定に基づいて財務諸表の作成や提出の義務を負う上場会社であるか否かにかかわらず、子会社に該当するかの判断基準としての会計基準を事業戦略上非常に重視をしているというのが実情です。   ですので、支配の意義という文脈で子会社の定義に例として言及するのであれば、乙案ではなくて甲案の方に挙げていただきたいと考えております。 ○藤田部会長 事務当局からコメントございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。まず、今回、乙案のところで、この会社法の規定を例示として挙げさせていただいた趣旨といたしましては、法制上、支配という言葉を裸で使っていいのかどうかという観点からの例示でしかなくて、それ以上の意味もないというところでございます。今御指摘いただいたところとしては、例えば、会社法とかの世界ですと、支配という言葉は、それはそれで裸では使っているものの、会社法の親会社、子会社の中の関係では、この支配、具体的にどういう場合を支配というんでしょうかというところが、恐らく問題になるというところで、いろいろ詳細な規定がその後に並んでいると、こういう関係なんだろうと思われます。   ここで問題になっているのは、恐らく支配という言葉を、何ら定義付けずに使っていいか、いけないかという意味では、恐らく定義付けずに使っていいということの一例としては、恐らく挙げられるとは思いますので、そのレベルでこう書かせていただいたというところでございます。   他方で、それを超えて、今回の支配というものについて、仮に法制上裸で、要は、定義を付けずに書くことが許されるにしても、どういう場合というものを、その支配に当たるかというのを考えていかなければいけないんだということであれば、それはそれで、甲案的な発想に至って、その中身を検討していくべきなんだろうと思いますけれども、むしろそこは、定義しない方がいいのではないかという御意見も多数頂いているのかなとは思っておりますので、そこは最終的に決めの問題だろうとは思っております。   いずれにしても、先ほど御指摘いただいたところは、言葉として支配というのを定義なく使っていいかどうかというところの例示として挙げただけでございますので、そういった意味では、乙案において、会社法のこの規定が例示として挙がっていることとしては、特段、事務当局としては問題ないかなと思っているところでございます。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。   ちなみに、この括弧書きに入っている会社法の子会社の言及ですけれども、これ、絶対必須かどうかはともかく、会社法の子会社概念は、会計基準や会計関係の規律で…… ○吉田委員 法務省令である会社会計規則です。 ○藤田部会長 法務省令、会社計算規則などで書かれていることは、確かにそのとおりなのですが、会社法上の子会社概念は、計算の規定だけで使われるわけではなくて、その他の実体規定にも、子会社概念を使った規定はあって、そちら側の適用では、会計計算規則や会計基準とは全く無関係に、子会社の概念を解釈しなければいけなくて、その際には裸で定義のない子会社概念で解釈して運用適用することになります。その限りでは、ここの言及そのものは、厳密に、間違いではないようには思います。   ただ、どうしてもこれ、残さないといけないというわけでもないのは確かですが。 ○吉田委員 そう。会社法の改正の議論をしているわけではないので、記載を読んで違和感を持つ人が現れる可能性があるのであれば、子会社の定義を、数ある法律の文言の中から、あえてこれを例として挙げることも必要はないだろうと考えております。 ○藤田部会長 了解いたしました。それでしたら、事務当局の方で、会社法以外で、支配という概念を無定義で用いている法令がもしあれば、差し替える方がいいということだと思いますので、探していただけますか。 ○吉田委員 部分的にでも解約基準をたどれるものがあるものよりも、そちらの方がよいと思います。 ○藤田部会長 ありがとうございました。では、もし適切なものが見付かるようでしたら、差し替えるということにしてください。多々あると断言した上で、何の例も引かないというわけには多分いかないと思いますので。 ○笹岡幹事 すみません、参考にしていただければ。会社法上の支配人とか、総則の支配人も定義がありませんので、そちらの方がすんなり入ってくるのかな。 ○藤田部会長 「支配人」は、支配するという単語ではなくて、支配人で一つの単語ではないんでしょうか。 ○笹岡幹事 支配人はちょっと違いますかね。 ○箱井委員 講学上、支配権ではないですか、支配人の場合は。 ○笹岡幹事 支配権を持つ人が支配人。 ○渡辺幹事 渡辺でございますが、いずれにしても検討させていただきたいと思います。御指摘ありがとうございました。 ○藤田部会長 現行法上、例がないわけではないというだけですので、別に民事法に限らなくても、とにかく支配するという文言が具体的な定義なく用いられている法令が何か見付かるようでしたら探すということをお願いします。その際には、「支配する」という形のものがよくて、支配人のように一つの名詞になってしまわない方が、恐らくいいと思います。何か事務当局の方でやっていただければ、作業していただければと思います。   その他、どの点でも御意見、御質問ございますでしょうか。 ○山口委員 山口でございます。一番最初に池山先生が御指摘になった点なのですが、一番最初の船荷証券記録を発行する場合の規律について、案①のみを本文の試案で挙げられて、あと三つの案は補足説明で説明をされているという形になっております。それで、先ほど池山先生がおっしゃったように、ほかのところでは、甲案、乙案という対峙の形を作られているので、先ほど池山先生がおっしゃった案④ですね、これを対峙の形の乙案というようなのでなくてもいいのですけれども、作られて、中間試案に仕上げられた方が、対峙関係がはっきりして分かりやすいのではないかと思います。   と言いますのは、この試案について、私はちょっと疑問があって、既に電子的船荷証券を、受取船荷証券を出されているときに、原則が船積になったときに紙の船荷証券なのだという前提で、この試案は作られているのですけれども、やはり1回電子で出されれば、受取船荷証券記録が電子で出される場合は、船積船荷証券についても電子が原則の形の方がいいのかなとも思ったのです。そういう意味では案④の方が、対峙するものとしては、案④が何か適切かなと考えましたので、その点、御考慮願えればと思います。別に案④にこだわることはないのですけれども、試案、その他というよりは、甲案、乙案の対峙関係の方がよろしいのではないかという提案でございます。 ○藤田部会長 事務当局からありますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。私どもといたしましても、この問題を試案で突き進みたいということでは当然なくて、案④でも全然構わないとは思っているんですけれども、ただ、いずれにしても、先ほど申し上げたとおり、論点の重大さからすると、あまりここで大々的に展開してしまうと、さも重大論点かのような印象を与えてしまい、分量の割には中身を見るとそうではなかったというようなところを、何とか避けたいなという思いでしかないので、書き方は工夫させていただきたいと思うんですけれども、今御指摘いただいたのが、現在試案として挙がっている案①と案④ですかね、これを対峙するような形にして、ほかの案については補足説明で少し述べるぐらいというようなところかなという御提案と伺いましたけれども、そのような形であれば、それほど冒頭から重厚にはならないというところは、うまくいけるかなという感触は持っているところではありますが、他方で、案②とか案③とか、そういったところも是非試案に載せてほしいという御意見とかがあれば、今言ったようなやり方というのは、余り適切ではないかということもあり得るわけですけれども、そこら辺の御感触を伺った上で、今の試案と案④の対比ということで、特段御異論がなければ、そのような形で修正作業をさせていただきたいと思っておりますが、この点についていかがでございましょうか。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。 ○池山委員 池山でございます。一応発言させていただきます。異論ございません。 ○藤田部会長 4案全部書くのがよろしいのでしょうか。全部論理的なパターンを全部書いてしまうと、誰も支持しなかったものまで入ってしまうという、先ほどの池山委員の別の指摘にも触れるような気もしないでもないのですけれども。 ○山口委員 確かにそれ、難しいなと。一つ一つはブロック自体が大きいものですから、確かにそれが、おっしゃるとおりに我々の意図、あるいは事務当局の意図がそのまま通じるかどうかというのは、ちょっと疑問なところがあるのですけれども、今の試案で案①が大きく書かれておりますと、むしろこれが、印象としてはですよ、第1案のように採られることが非常に多いものと考えられるので、ちょっと記載の工夫はあるにしても、何か対案を付けておいて説明というのが、落ち着きどころとしてはよさそうな気がするなという、そういう感じでございます。   ただ、藤田先生がおっしゃるように、余りにも長過ぎるという、そういう感じもせんでもないとは思います。 ○藤田部会長 山口委員の最初の御指摘だと、むしろ全部のパターンを書き尽くしたのがいいというよりは、電子の世界で出すと決めた以上は、一応それで完結した方がいいのではないかという選択肢が少なくとも対案としては載るというイメージでしょうか。そして、そのほかは、さらに論理的にはいろいろなのがあるという、そういうイメージでしょうかね。 ○山口委員 元々試案は、紙の船荷証券が原則であると。しかも、受取船荷証券と船積船荷証券が違うものだという前提で、だから、受取電子船荷証券記録が出たとしても、やはり船積のときは紙に戻るのだという原則が出ておるんですけれども、それはやや違和感があるので、私はやはり、一度電子が出た以上はずっと電子でいくという、そういう考え方があるよということを、分かりやすく書いていただくと有り難いなと思ったわけでございます。 ○藤田部会長 分かりました。今の山口委員の御意見を踏まえて、電子でいった以上は電子のままが続くような案を、少なくとももう少し大きく取り上げられるような形での修正という形でよろしいですかね。 ○山口委員 はい、結構でございます。 ○藤田部会長 それができるかどうかというところで。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。御指摘を踏まえて修正する方向で検討させていただきたいと存じます。ありがとうございました。 ○藤田部会長 いろいろありがとうございます。   そのほか、どの点でも御意見いただければと思います。今の話も、見え方という点では、大切な御指摘だったと思いますので、よろしくお願いいたします。我々は、つい忘れがちなのですが、中間試案はこれまでの議論を聞いたことなく、この問題について考えたことない人が読むという前提ですので、そういう人にも分かるような書き方になっているかという視点が必要だと思います。洲崎委員お願いいたします。 ○洲崎委員 洲崎でございます。部会資料第4の転換のところについて、発言をさせていただきたいと思います。ただ、これからする発言が、先ほど部会長が言われた、本日の我々のミッションに沿うものかどうか、ちょっと心許ないのですが。   まず、私が知りたいのは、転換が行われたときに、裏書欄の記載はどうなるのかということですが、恐らくは、裏書欄はコピーされず、表面の記載事項だけが、転換後の証券、船荷証券から電子船荷証券記録に転換されるという場合を考えますと、電子船荷証券記録にコピーされる、裏面にどんな裏書があったのかはコピーされないということになるのだろうと思います。だからこそ、部会資料第4の1の②のように、転換後の電子船荷証券記録の発行を受けた者が権利者だと推定されるという規定が置かれていると思うのです。そのことを前提として考えると、実務上多くなされている発行形態は、荷受人のところが「to order」とか、「to order of shipper」という形になっていて、shipperが裏面に裏書をする、それも、白地式裏書をするという形が多いのかなと思うのですが、つまり、指図式で発行されて、荷送人が白地式裏書をする形態です。そして、一旦白地式裏書がされると、証券は交付だけで転々譲渡できるし、所持人が権利者として推定されることになると思います。例えば、shipper、荷送人が白地式裏書をして、それがAに交付されて、さらにAがBに交付した。Bが現在の所持人で、そこで転換がされたというケースを考えますと、そのときに電子船荷証券記録にどういうふうに表示されるかというと、荷送人の記載や荷受人欄の記載があり、つまり、指図式であるということは分かるんだけれども、裏側になされた荷送人の白地式裏書は完全に消えてしまうわけですね。でも、指図証券であるという性格は変わらないので、転換後の電子船荷証券記録を譲渡しようとすると、多分所持人のBが、裏書をしないといけなくなるのではないか。裏書をしないことには譲渡できなくなるのではないかと思うのですが、そういう理解でよいのかということを伺いたいと思います。   つまり、紙の証券の時代には、荷送人が白地式裏書をしているので、それ以降の所持人は交付するだけで譲渡できたのだけれども、一旦電子船荷証券記録になってしまうと、そこまでの裏書の記載は全くなくなってしまうので、そもそも裏書が全くない証券記録になってしまう。それ以降に譲渡しようとすると、例えば、電子船荷証券記録の発行を受けたBが裏書をする、電子裏書ですね、今度は。Bが電子裏書をしないことには、指図証券の譲渡ができなくなるのではないかと思ったのですが、まず、そういう理解でいいのかということです。   これが第1の質問というか、まず伺いたいことなのですが、仮にそうだとすると、つまり、転換があった後は必ず誰かが裏書をしなければならないのだけれども、裏書をするのがBではないと、裏書の連続がないことになってしまうのではないか。転換後に記録の発行を受けたBから支配の移転だけを受けたCが裏書をしてしまうと、BとCの間の裏書の連続はないということになってしまうのではないか。このことに関連して、部会資料34ページの一番下の段落の③では、発行を受けたBの名前を書くべきかどうかという議論がされているのですが、そこでBの名前、つまり転換された記録の発行を受けた人の名前を書かないと、結局Bとその後の誰か、例えばBから支配の移転を受けたCが転換後の最初の裏書をしたとして、そのBとCの間の裏書の連続があるかどうか分からないから、やはりBの名前はあった方がよいのではないかという趣旨で書かれたのかと思うのです。ただ、ここの書きぶりは、Bの名前を書かないと問題が生ずるかもしれませんね、程度の多少の疑問を提示するというような形になっていると思うのですが、私はむしろ、裏書の連続があるかどうかは、外から見てぱっと分かるものでなければ、裏書の連続のルールとはいえないのではないかと思っています。誰が転換後の証券記録の発行を受けた者かが分からないと、結局裏書の連続の判断をしようがないのではないか。BからCまでの間に裏書の連続があるかどうかは外観だけでは判断のしようがないのではないか。そうすると、ここの③の指摘は、かなり重いものとして受け止めた方がいいのではないか。単に裏書の連続性を立証することが容易ではないのではないかといった立証の問題というよりも、裏書の連続に関する規律からすると、Bの名前、転換の発行を受けたBの名前が書かれていないと、裏書の連続のルールとして、不備があるということにまでなってしまうのではないかという気がしたということでございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   事務当局から、差し当たりの御返答をお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。大変難しい御指摘を頂いたと思っておりまして、とてもこの場で即答で返すことは難しいなと思っておりますが、まず、御指摘いただいた、ずっと白地式裏書で来た場合に、転換を受けた者、Bということかと思いますけれども、Bは、そのまま白地式裏書で転換後の媒体を譲り渡すということができなくなってしまうのではないかと、改めて正式な裏書をしないといけないのではないかというところにつきましては、確かにおっしゃるとおりかもしれないとは思いますので、果たしてそれがいいのかどうかというところ、よくないということになりましたら、どういう手当てができるのかというところも、改めて考えなければいけないのかなとは思っておりますが、極めて難問だなというのが現時点での感触でございまして、このようにしたらうまくできますということが、ちょっと申し上げられない状況ではございますが、一度持ち帰って検討はしたいと思っております。   それから、二つ目に御指摘いただいた、結局転換を受けた人が誰だというところについては、これはもう極めて重要な情報ではないかという御指摘かと思います。その後の裏書の連続を判断していくに当たっても、これは必須な情報ではないかと、こういう御指摘だとは思っております。それは非常に理解できるところではあるところである半面、他方で、先ほど来御指摘いただいたように、これを転換の要件としてしまうとなかなか、非常に要件が厳しくなってしまって、国際的な調和という観点からもどうなのかというところで、非常に悩ましい問題かなとは思っております。いずれにしても、ここはどこかできちんと整理をした上で、検討を進めていかなければいけない問題だと思っておりますので、非常に難しい問題ではございますけれども、問題提起を頂いたところを含めて、最終的にどうするかというのは、改めて検討させていただきたいと思っております。御指摘ありがとうございました。 ○藤田部会長 次回までにどこまで対処できるかはともかく、問題点、とにかくはっきり分かりましたので、何らかの対処をお願いします。 ○洲崎委員 ちょっとよろしいですか。   先ほどの第1の問題については、つまり、紙の船荷証券を持っているBが、今のまま自分の名前は出さずに証券を交付するだけで譲渡したい、そういう地位を維持したいというのであれば、転換に同意しなければいいのですね。転換するかどうかについては、Bがうんと言わなければ転換にはならない。一方、転換してしまうと、そこからさらに譲渡するときには、必ず裏書しないといけませんよ、指図証券だから裏書しなければ譲渡できなくなるんだよということを分かった上で、Bが転換に同意するのであれば、それで問題はないと割り切るというやり方もあり得るのではないかと思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○池山委員 池山でございます。今の洲崎委員の指摘に関連してです。   まず、事実として指摘を申し上げますと、先ほど洲崎委員から、今のようなshipper、A、Bときて、Bで転換された場合に、転換後の証券にはどういう記載がされるのかと。全部消えてしまうのではないかというお話がありましたけれども、私の理解では、正に消してしまうものもあれば、実は消さないで、裏書の内容に相当する記載を、データ的に、正に再現しているというパターンのものもあると理解をしております。   ただ、もちろん後者の場合も、本来的な意味での裏書というのは、正に裏書人が、紙であれば署名をする、もし電子であれば電子署名なわけですけれども、転換の場合は、後になって、かつて電子裏書をした人に対して、電子署名してくださいみたいな話にはならないので、言ってみれば、データとして裏書情報がくっついていくというものでしかありません。プラス、今申し上げなければいけないのは、そういう例もありますよというだけなので、当然そうでない例もあるはずだし、そうでない例、完全に消えてしまうという例も想定しないといけないと。そこは、洲崎委員のおっしゃるとおりだと思います。   その上で、洲崎委員のおっしゃった問題状況というのは、確かに存在すると私も思います。ですが、もう一つやはり考えていかなければいけないのは、先ほど事務当局からも御説明があったとおり、なるほどと、だから、この③の情報も、誰の段階で裏書がされたという情報も、論理的には必要であるといって入れてしまうと。でも、やはり実務はそれについてこない中で、結局残った問題は、逆に記載がないと、法的な効力に疑義が生じるかもしれないという、そっちのリパーカッションというんでしょうか、そっちのハレーションの方が大きいのかなと思っております。   これは、元々転換がされた場合は、転換されて発行された旨を書かなければいけないという規制についてすら、そうなわけです。それについては、元々MLETRにもそれに類する規定があると言いながら、現実には書いていないものがあると。そういう意味で、幾ら、そこはMLETRから離れるんだけれども、あえて必須とまでしなくていいのではないのかという、一つの意見として申し上げているわけで、MLETRにすらない、でも論理的には必要だということで、日本独自の規制を加えるというのは、やはりかなり慎重であるべきなんだろうと思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   事務当局からございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。正に、洲崎委員の問題提起と、それに対する対応としてどうあるべきかというところで、何でもかんでも記載・記録事項としてしまうと、やはり問題であろうという池山委員の御指摘もあり、そういったところで、最終的にどういう判断をしていかなければいけないのかという、非常に難しい問題だろうと思っております。   そういったところもいろいろ考えつつ、今回A案とB案という二つ出させていただきました。B案というのは、単純に同一の内容ということだけ書くというものですけれども、今言ったような点も含めて、解釈に委ねる、あるいは緩やかな様式性みたいなところで運用していただくというような考え方です。この①から④、いろいろ考えていくと、突き詰めていくと非常に難しいところがあって、実は細かくいろいろ規律しない方がいいのではないか、むしろざっくりしたB案ということにして、柔軟な制度にした方がいいのかなという思いも実はあって、このB案というのも入れさせていただいたわけですけれども、そういったところの採用可能性も含めて、どういうふうにしていったらいいのかというところを、今後検討していきたいと思っております。御指摘ありがとうございました。 ○池山委員 くどくてすみません、再度池山でございます。洲崎委員の御指摘というのは、確かに理論的には非常に重い、極めてごもっともな指摘だと、私も思います。ですが、結局それは、比喩的に言うと、実際に、私はたまたま弁護士でもありますけれども、弁護士が実際に一規約型B/L事業者の規約を作るときであれば、ああ、なるほどと、そこまで考えなければいけないねという指摘としては、非常に有益なんだろうと思います。私が現在までに見た規約では、今の点まできちんと答えられるような規約が作ってあるものには接してはおりません。ですが、全くおっしゃるとおりで、今後新たに規約を作るんであれば、そうではないといけないなというのは、比喩的には思うわけです。   でも、やはり、もう同じことを考えていらっしゃるかと思いますけれども、そのことと法定記載事項として入れるべきかというのは、全く違う次元のことなんだろうと、改めて思います。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   考えると、いろいろ面白い問題は出てくるわけですけれども、抽象的に言うと、中間試案として、記載事項としてどこまで書くかという形でしか書かれていない背後に、いろいろな問題が本当はあるということが指摘されたということになるのだと思います。   洲崎委員の問題は、確かによく考えると難しくて、余り明示的に議論してこなかったです。一言で言うと、指図式のものとして出した後に白地式裏書がされてしまうと、言わば証券の性格が、そこで持参人払式に変わったかのような状態になっている。そこで転換すると再びリセットされて、元々の指図証券に戻ってしまうということが起きていいのかということです。起きても問題ないんだという割り切りもあり得るという御指摘もあり、洲崎委員もそう御指摘されましたけれども、実質的に問題があることはあるかもしれません。考え過ぎかもしれませんけれども、そんな辺り、将来的には多少何らかの実質議論もしなければいけないのかもしれませんが、差し当たり中間試案の書き方としては、多少問題点は明確にした上で、聞き方としては、記載事項という形で聞くという方針でよろしいでしょうか。 ○笹岡幹事 すみません。まず、実務を教えていただきたいのですけれども、白地式で裏書された場合の権利行使段階でも、何らかの補充は必要なく、そのまま所持人払式として権利行使できるという理解でよろしいんでしょうか。手形の場合は、あ、すみません、発行ではなくて裏書の場面でしたね。 ○藤田部会長 白地式裏書は権利行使のために被裏書人欄を埋める必要はないですよ。 ○笹岡幹事 そうですね、今のは白地手形の場合ですね、失礼しました。白地式の場合であったら、所持人払式としてよろしいということですね。分かりました。   もう1点なんですけれども、指図式で振り出した手形を電子に転換するときに、そのシステムは、所持人払式しか認めないという場合もあると思うのですけれども、その転換自体は問題ないということでよろしいでしょうか。先ほどの白地式が認められるなら、その方式も余り矛盾はないように思うのですけれども。要するに、指図式の船荷証券に関して、電子的な転換先も、裏書によって移転できるシステムにしなければならないというような制約は、特に考えなくてもいいということでよろしいですか。 ○藤田部会長 どなたに答えていただけるか分かりません。差し当たり、事務当局からお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。基本は、性質はそのまま維持していただくということになろうと思いますので、指図式で、例えば、紙の指図式の船荷証券が発行されて、それを電子に転換した場合の電子船荷証券記録というのも、恐らく指図式ということになろうかと思います。   ただ、実際問題として、そこで指図式の電子船荷証券記録に転換された、その先のシステムが、実は裏書ができないような仕組みだったときに、それはどうなるかというところなんですけれども、それをもって直ちに、例えば、技術的要件を欠いて無効になるのかというと、そうでもないような気もしておりまして、ただ、事実上裏書ができないというだけの話なのかなと思いますので、その事実上のデメリットを甘受していただくのみということなのかなという気が、今のところしております。十分整理できておりませんが、取りあえずの回答でございます。 ○笹岡幹事 そこに制限がかかるというのは、ちょっとおかしいと思いますので、それでよろしいと思います。 ○藤田部会長 紙の船荷証券を転換するときに、それと同じ選択肢が保障されたシステムでしか転換できないというふうな実態的な制約がかかるかという御質問ですね。 ○小出幹事 すみません、小出でございます。ちょっと今の点で、少し分からないんですが、MLETRだと、媒体の変更によって当事者の権利義務には影響を与えないということが、明確に規定されているんですが、移転方法などが変更するということは、例えば、白地式が記名式に変わるとか指図式が記名式に変わるとか、そういうことというのは、当事者の権利義務に変更を加えているとも読めるような気がしてしまうのですけれども、そこはしかし、やはりそれを認めないと実務上、妥当ではないということになりますでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。我々の方で先ほど回答させていただいたのは、媒体が変わることによって性質が変わってしまうのは、これはもちろん問題だとは思っているんですけれども、だからといって、即無効にはならず、事実上できないだけ。ただ、法的には恐らくできるだろうと思います。法的にはできる、法的には裏書をする権利は多分ある。ただ、事実上それができない、それだけのお話ということで、非常に困った状態ではあるんですけれども、法的にはそのように整理されるのかなということで、そういった事態を避けるために、転換そのものを無効にしてしまったりすることまでは必要ないのかなと、こういう整理を申し上げさせていただいたというところでございます。 ○小出幹事 ありがとうございます。ちょっと考えてみますけれども、権利義務に影響を与えないというMLETRの規定との抵触は問題ないのかなとちょっと思ったことと、その場合、本当に転換という方向にする必要があるのか、一旦回収して再発行でもいいような感じもしなくもないです。ちょっともう少し検討をしてみたいと思います。   今は中間試案ですので、一つの案としてはあり得るのかなと思いました。 ○池山委員 池山でございます。今の点に関して、参考になるかどうか分かりませんが、1点申し上げますと、転換、媒体の変更といっても、紙から電子と電子から紙と両方、論理的にはあるわけです。ただ、私の理解だと、紙で発行されたものを途中で電子に変えるということは、規約上は想定されていないし、運送人も同意するということは普通はないんだろうと思います。電子で再発行するうんぬんは別ですけれども。   今、笹岡幹事のおっしゃったような問題点があるのであれば、なおさら紙から電子への転換というのは、いや、駄目ですと言って終わってしまうんだろうと。むしろ問題なのは、やはり電子から紙の問題で、これは、例の甲案、乙案の問題ありますけれども、どちらの案であっても、実際上同意をすると、現に転換されるという例はあるわけです。電子から紙に変わった後は、それはもうシステムの問題ではなくて、紙の方式によって、しかるべく権利移転がされると。ただ、そのときに、先ほど来出ている例であれば、やはり転換を受けたBは裏書が必要なのか、それとも、従前も白地式の状態を引き継いでいるので、交付だけで実はできてしまうのか。でも、できてしまうとすると、裏書の連続が見えないよねみたいな、そういう話になると。それは、少なくとも転換後は紙ですから、システムの問題ではなくなるのかなと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   事務当局、よろしいでしょうか。 ○渡辺幹事 ええ、大丈夫です。 ○藤田部会長 ひょっとすると、同意を要求するべきか否かという論点が、こういうところにまで影響してくるかもしれないという御指摘ですね。なかなか考え出すと難しいです。そもそも同じというのは、何を同じというか、権利に影響を及ぼさないというのは、具体的にその権利というのは何を指しているのかという辺りが、考え出すとなかなか難しいです。余り厳密なことを言い出すと身動き取れなくなって、それこそ同意は絶対必須というふうなことにもなりかねないですけれども、この辺りは、どこまで書けるかはともかく、重要な御指摘だったので、何らかの形で中間試案に反映するようにはしていただければと思います。   そのほか、どの点でも御指摘、御意見ございますでしょうか。   よろしいでしょうか。   かなり時間を取りましたので、もう2時間近くたっておりますので、一旦休憩を挟ませていただいてよろしいでしょうか。それでは、15時30分に再開したいと思います。           (休     憩) ○藤田部会長 よろしいでしょうか。そろそろ再開したいと思いますので、お席に戻っていただければと思います。   それでは、部会資料7、第1部の第1から第4まで御説明いただいたところですので、続けて第5、第6の説明をお願いいたします。 ○中村(謙)関係官 それでは、法務省の中村の方から、今回の部会資料の第1部の第5及び第6について説明をさせていただきます。   まず、部会資料の38ページに行っていただきまして、「第5 電子船荷証券記録の類型及び譲渡等の方式」になります。   こちらについては、前回の部会時から大きくは変更しておらず、電子船荷証券記録の類型についての考え方といたしまして、紙の船荷証券に関する民法上の有価証券に係る4類型をできる限りそのまま維持する形で類型に関する規律を設けるという考え方を採用しつつ、記名式所持人払証券型及び無記名証券型につきましては、法文上は分けて規律することはせずに、この本文の第2項においてまとめて規定することとしております。   また、具体的な譲渡等の方式につきましても、従前同様、指図型については支配の移転と電子裏書を必要とし、電子裏書禁止型については債権譲渡の方式に従うこととし、その他のものについては支配の移転のみを効力要件としております。   また、船荷証券の裏書等の方式に関して適用される手形法の規定を前提に、細かな規律を従前同様設けているところでございます。   なお、第6回の部会資料におきましては、ここでの直接の譲渡等の対象といたしまして「電子船荷証券記録に係る権利」という用語を用いておりましたが、今回これを「電子船荷証券記録上の権利」という表現に改めております。その理由につきましては、42ページから43ページにかけて補足説明をさせていただいているところでございます。第6回の部会資料では、電子船荷証券記録の支配の移転による譲渡の直接の対象をどう捉まえるかという点につきまして、電子船荷証券記録に表章されている運送品引渡請求権等が直接の譲渡の対象になると考えるb案と、それとは別に、電子船荷証券記録を使用、収益又は処分する権利という新たな権利を観念し、それを直接の譲渡の対象として捉える考え方としてa案を提示させていただいていたところでございます。この点につきまして、前回の部会におきまして、紙の船荷証券についてもそこに表章されている運送品引渡請求権等が現実的には直接の譲渡の対象として捉えられており、あえて船荷証券という有体物である紙の所有権を直接の譲渡の対象として捉えるようなことはされていないのではないかといった御趣旨の御指摘も頂戴したところでございまして、事務当局の方で再考の結果として、今回、電子船荷証券記録に表章されている権利である運送品引渡請求権等が直接の譲渡の対象になるという考え方、つまり従前のb案を採用するに至っております。そしてこのような考え方を採るのであれば、法文上の表現も電子船荷証券記録に係る権利よりも電子船荷証券記録上の権利とすることが望ましいであろうと考え、このように修文させていただいているところでございます。   その他、補足説明の47ページのところで、これまでの部会での議論を踏まえまして、電子裏書禁止型の電子船荷証券記録の譲渡の方式についての記述を補足しておりますが、ここはこれまでと実態を変更したものではございませんので、ここでは説明を割愛させていただきます。   次に、このまま48ページ以下の「第6 電子船荷証券記録の効力等に関する規律の内容」の説明に移らせていただきます。   まず、1番、規律の在り方の方向性についてですが、本文の中では従前と同様に、まず甲案として、電子船荷証券記録は船荷証券と同一の効力を有する旨の同一効力規定に加えて一定のみなし規定を置くという考え方、そして、乙案として、紙の船荷証券に適用される商法及び民法の主要な規定についての包括的な準用規定を設けつつ、読替規定を置くという考え方、そして、最後に丙案といたしまして、紙の船荷証券に適用される規定のうち、電子船荷証券記録に適用すべきものについては商法内で個別に書き下すという考え方の合計三つの考え方を提示しております。   細かなところといたしまして、甲案につきまして、従前の部会での議論を踏まえまして、第3項にみなし規定としての電子裏書に関する規定を加えているところでございます。また、乙案につきましては、従前、読替規定が多くなる結果、分かりにくい条文になる可能性がある旨の危惧を述べさせていただいたところでございますが、具体的なイメージをつかんでいただく趣旨で、今回、準用規定の条文イメージについても併せて記載させていただいております。   また、これまでの部会の中で、甲案の中でお示ししている同一効力規定については、仮に乙案や丙案を採る場合であっても、電子船荷証券記録が有価証券そのものではない以上、有価証券であることから、船荷証券に当然に認められる法律上の効果の全てを拾い切れていない可能性もあるのではないか、そう考えると、こういった同一効力規定についてはいずれの案においても設けた方がよろしいのではないかといった御意見でしたり、このような同一効力規定の存在自体がMLETRの考え方に親和的である旨のメッセージの一つになるのではないかといった御意見もございましたため、今回、乙案又は丙案を採る場合であってもこの同一効力規定を入れることを想定しております。   その他、本文の中では規律しておりませんが、52ページの一番下の(5)、その他の箇所で、今回、乙案と丙案のハイブリッド的な考え方についても一つの案をお示しさせていただいております。この案は、紙の船荷証券に適用される商法の規定のうち、電子船荷証券記録に適用すべきものについては既存の商法の規定の中に組み込むこととしつつ、紙の船荷証券に適用される民法の規定については、乙案に準じるような形で包括的な準用規定を設ける形で対応するというものになります。このような折衷的な考え方を採用いたしまして、商法757条以下の既存の紙の船荷証券に関する規定の中に、それと並べる形で電子船荷証券記録に関する規律を盛り込みつつ、転換の規定など電子船荷証券記録について固有の規定と、あと有価証券に関する民法の規定の包括的な準用規定を別途設けるという方針を取る場合には、全体の規定ぶりといたしましては、紙の船荷証券と並列的に電子船荷証券記録の規律が置かれるため、その意味でMLETRと親和的であるという評価も可能ではないかという思いも持っております。   また、電子船荷証券記録について、商法上の規律と間接的に準用される民法上の規律という、言わば階層的な規律の形を採ることによって、紙の船荷証券における民法と商法の規定の適用関係、すなわち民法の規定が一般法であり商法の規定が特別法であるという関係を可能な限り維持するということもできるという利点もあるのではないかと思われるところでございます。ただ、このハイブリッド案でも、民法の規定の包括準用を行う関係で、乙案の条文イメージほどではございませんが、分量の多い読替規定を設けることになること自体は避けられないのかなという思いを持っております。   次に、53ページ以下の2番の効力等に関する規律案となりますが、こちらは丙案を採った場合に商法内に書き下す条文案のイメージということになりますが、乙案や先ほど申しましたハイブリッド案を採った場合においても、その読替規定等の前提となるところでございます。内容につきましては、基本的にはこれまでの部会の議論等を踏まえて細かなアップデートをしたということにとどまりますが、59ページの(15)の民法520条の9に相当する規定に関しては、補足説明の中をちょっと従前から大きく変更しておりますので、少しここで説明をさせていただきます。   まず、この民法520条の9につきましては、従前の部会の中で、この紙の船荷証券との関係では、商法764条の規定がこの規定の言わば特別規定としての位置付けとなり、民法520条の9というのは、実は紙の船荷証券にも適用されてはいないのではないかといった御指摘があったところでございます。この点、確かに受戻証券性を定める商法764条の規定によって生じる同時履行の抗弁権を消滅させるための履行の提供があるにもかかわらず、この民法520条の9の規定でいうところの提示がないといったような状況というのは、現実的には余り想定し難いところかなという思いも持っているところでございます。しかしながら、民法520条の9は、言わば遅滞の責任を生じさせるためには証券の提示が必要であるという有価証券の性質の一つを定めるものでございますし、受戻証券性を定める商法764条と全く同じ趣旨の規定であるとは必ずしも言い難いのかなと、そして、船荷証券の引渡し、またその履行の提供と民法520条の9の提示とは本来的には異なる法律上の概念でございまして、一方が認められれば論理必然的に他方も常に認められるとまで完全に言い切ることは難しいのかなと考えられるところでございます。そのため、今回の試案では、電子船荷証券記録についてもこの民法520条の9に相当する規律を設けることとさせていただいております。   以上、第5及び第6の事務当局からの説明となります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、今説明のあった内容について、どなたからでも結構ですので御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いします。 ○池山委員 池山でございます。いつも冒頭に発言の機会を頂戴して改めて御礼申し上げます。   まず、第5についてですが、若干補足説明の関係で質問を1点させていただきます。   補足説明だと、45ページ辺りにあるのでしょうか。「また」以下の裏書禁止裏書等は、あえてそこを切り出して適用を認める必要はないのではないかというところが、この45ページの下から46ページにかけてあります。この点、それ自体としては異論はないのですけれども、私の理解だと、英国法上は裏書の記載の仕方としてto order of Bというふうに書く場合と、単にto B、B宛と書く場合というのを区別していて、to order of Bと書いてあればBは更に裏書はできるけれども、単にto Bと書いてあればそこから先の裏書はできないんだとされているようです。英国法の文献にそういうことが書いてあります。それは別の言い方をすると、その日本の枠組みでいえば、船荷証券の場合もto Bと書くことによって裏書禁止裏書的なものができるということだと理解をします。それは外国法がそういう法制なのかもしれない、それはそれでいいのですけれども、もしも外国語、例えば今のでいうと、英国法準拠の規約型のB/Lが現に出たときに、実際に裏書行為そのものは日本で行われているとすると、そこではやはり準拠法の問題というのが出てきて、規約型B/Lのその規約の準拠法は英国だけれども、譲渡のときの準拠法は別段の考え方があり、場合によって日本法が適用されるかもしれないと、そのときにはこの記載の効力が問題になるんだと、ただ、実際はそのことを避けようと思えば、規約型B/Lの規約の中で、発行時だけではなくて裏書行為についても、たとえ裏書行為地が比喩的にいうと日本であっても、全部その規約発行時の準拠法と同じ準拠法によって定めると、解釈すると、そういう規定を入れなければいけないし、逆に入れれば当事者間では問題がなくなると、あとは第三者に対する効力、第三者の関係では、やはり第三者は裏書の効力を否定したいがために日本法が準拠法だということを言い出して、日本法だとこんなことはできないということは出てくるということはひょっとしたらあるかもしれないと、ただ、これは今るる申し上げましたけれども、観念的な問題でしかなくて、事実上、何というのでしょう、どの程度問題になるかどうか正直分からないと思っております。ただ、問題の状況としては、日本法でこういう定め方をすると、外国法は裏書禁止裏書を認めるのであれば、そこで今申し上げたような問題が生じるかもしれないと、そういう理解はしているんです。それはそれでよろしいのでしょうかという、ちょっと持って回った質問かもしれませんけれども、そこだけございます。   それから、次、第6の方が実質的な点が幾つかございますが、第6の1の甲案、乙案、丙案のどれかという点については、正に今日の趣旨からしてどうこうと余り申し上げるべきではないと思うのですけれども、このうちの甲案について、一つ質問、一つ意見があります。質問というのは、ある種、突拍子もないことなんですけれども、甲案の②で、今までの同一効力規定に加えてこのみなし発行規定のようなものがございます。これは飽くまでも私法的な権利義務関係において発行したものとみなすということであって、それ以上でもないというのが私どもの理解で、それでよろしいでしょうかと、何でこんなことを言うかというと、印紙税とかを気にする人もいたりするわけだけれども、印紙税法なんていうのは正にこちらの所管でも何でもないですけれども、例えば、発行し、交付したものとみなすとされたからといって、そこで文書課税であるはずの印紙税が突然発動されるとは私も正直到底思えないんですけれども、そういう趣旨は到底含意にされていないですよねというのを、これは一応発言だけはさせていただきたいなと思っております。   それから、意見というのは、この⑥についてです。⑥のこの提示をみなし提示とみなすという点は、これは後の方に出てくる(15)の520条の19の論点と直結をしていて、この次に申し上げますけれども、私どもとしては、やはり520条の9の準用というか、読替条文というのは要らないのではないかという意見を持っております。もしもそれが採用されるのであれば、それが案の一つとして入るのであれば、この6もなくなると、この6は、飽くまでも520条の9も入るという論的な前提の下に書かれているということです。これもそれ自体としては、意見というより質問かもしれません。   だんだん本題に入ってきますと、まだ余り本質的ではないところですけれども、頭からいくと、2の(1)の759条に関する補足説明のところです。この759条の電子記録についての言及も入れるという点については、もとより異論はないのですけれども、例えば、ここの補足説明の中で、理論的には第1項に係る通知の方法を電磁的方法に限ることも考えられるものの、書面によって通知を行う実務が残る可能性も否定できないと書いてあるんですけれども、これは正直に言うと、否定できないどころか元々全く別次元の話であって、書面でする人は書面でするし、電磁的方法で通知する人は通知すると、これは元々違う話なんだと思います。その意味で、そういう可能性も否定できないということ自体が書き方として違和感がありますという話です。中身に異論があるわけではありません。   むしろこの論点に関連して実質的に関係するかもしれないのは、これはそうは言ってもやはり補足説明の書き方の問題ですけれども、一番最後の(18)、61ページから62ページ、国際海上物品運送法の改正の条文のところなんですけれども、こちらでは、この62ページの真ん中の辺りで、電子船荷証券記録が発行されている場合には、運送人と記録を支配する者の間の連絡は当該記録に係るシステム上で行われることになる可能性が高いと思われると、これも正直言って違って、むしろ可能性は低いんだと思います。電子B/Lのシステムは電子B/Lのシステムで、特にこっちなんかはカーゴクレームの通知ですから、カーゴクレームの通知をどうやってやるかというのは全く違う話で、多分システムの中でやらないだろうと、かつこれがもう一つ実質的に先ほどよりは関係するのは、既に今だって書面だけでなくてメールでやっております。それは無効だとは誰も考えていません。それはここで言う書面性というのは有価証券の書面性とは全然違う話なので、書面の解釈の中にもうメールとかも入るとみんな思っているからなんです。そうだとすると、ここの改正というのは単に確認的な趣旨で入れるのであって、この法制によってこれから書面だけではなくて電磁的方法についても認めるというのは、ちょっとニュアンスとしても違ってくるのかなと思います。今申し上げたところは、いずれもその条文そのものは私も異論はないし、誰にも異論はないと思うんですけれども、補足説明の書き方として、やはり申し上げるべき違和感なのかなと思った次第です。   すみません、まだ本題に到達していないですね。次が、あと二つ三つほどありますが、次は(11)です。全取得の関係の520条の5及び520条の15に相当する規定という部分です。ここは実質論としては異論はないんですけれども、二つございます。11の①に括弧が二つ付いています。その括弧一つ一つについてです。   一つ目の括弧で、記名式であって電子裏書を禁止する旨の記録がされているものを除くと書いてあります。ここを除かれている趣旨は、そこについては善意取得は問題にならないから除くんだということなんだと思うんですけれども、一方で、この①の規定自体は、支配を失った者は支配をする者に対して支配の移転を求めることができると、そのことを書いているにすぎないんですよね。元々書いているのは、その法的な根拠が何なのかはっきりしないところがあるから、その返還請求権的なものの根拠がはっきりしないものがあるから書いているんだということなんですけれども、非常に素朴に言うと、記名式であって電子裏書を禁止する旨の記録がされているものの支配が言ってみれば不当に奪われた場合は、何らかの詐欺的な方法とかでね、あるいはなりすましと認められた場合は、当然不当に、あるいは違法に支配を奪った人に対して、奪われた人は返還請求権が、支配の移転請求権は当然あるんだと思っております。恐らく補足説明として書くならば、ここの括弧の趣旨は、②の善意取得の前提条件としてそれは書いているのであって、今申し上げたような例で、何というのでしょう、支配を違法不当に奪われた場合の支配の移転請求権を解釈上認めることを否定する趣旨ではないということはあってもいいのかなと思います。逆にもしそういう趣旨ではないとすると、それはそれで問題なんだろうと思います。   それから、括弧の二つ目の権利を適法に有する者に限るということなんですけれども、この権利を適法に有するという表現は、よく考えてみると、確かに会社法の株券のところとかにもあって慣例的な表現ではあるんですけれども、権利は有するか有しないかであって、権利を適法に有するというのはどういう意味かというのがよくよく考えると分からないなという疑問を、確か前回申し上げたと記憶をしております。そのときに申し上げたのは、これは権利を適法に有するというよりは、やはり支配を適法に有すると、支配を失った者は支配の移転を求めなければいけないんだけれども、誰でもいいというわけではないから、それはその支配が適法でなければいけないと、その適法性というのが結局は解釈の問題になってくると、そういう整理なのかなという疑念を個人的には持っております。ただ、これは理論的な疑念なので、かつ私の個人的な疑問なので、御意見を教えていただければと思います。   それから、あと二つです。すみません、長くなって。次の(12)なんですけれども、これも表現の問題ですけれども、これはすみません、従前から気付くべきだったかもしれませんけれども、この末尾の表現が、その支配をする善意の者に対抗することができないという表現になっております。この趣旨は、飽くまでも紙の船荷証券のときに善意の譲受人としか書いていなくて、善意がいつの時点での善意でなければいけないかというのが紙の場合にはっきり明文で書いていない、だからこのように支配をする善意の者と書いている。だけれども、恐らく解釈上は、やはり善意は支配を受けた段階で決まるんだろうと、だから本来的にはその支配をする善意の者というよりは、善意でその支配を受けた者というふうに書くのが本当は論理的だという理解で私はいて、あえてそう書かなかったのは、紙の方でも善意の譲受人という曖昧な書き方をしているからあえて曖昧に書いているんだと、そういう理解でおりますが、正しいでしょうかと。このタイミングについて、補足説明のところで、この善意の説明、善意の譲受人に相当する者として定めており、判定のタイミングについて民法の解釈と異なる規律を定めることは意図していないと書いてあり、正に今私が申し上げた辺りを含意しており、あえて立法上は明確にしないということにしていると、そういう理解でおります。   すみません、やっと最後ですけれども、(15)の520条の9なんですけれども、今正に事務当局の方から、前回の私の意見を踏まえつつもやはりこれは維持すべきではないかという御説明を頂きましたが、これは私自身だけではなくて、私の推薦母体の中でもいろいろ議論をする中で、やはりこの520条の9というのを準用するというのはおかしいのではないかという意見が非常に強いです。端的に申し上げると、やはり提示と、それから受け戻しのための履行の提供は理論的には違うかもしれないというのは、言葉の上ではそうなんですけれども、やはり実務からすると、提示して履行を請求されれば遅滞の責任は負うと一方で言われることと、でも引渡し又はその提供がないならば履行遅滞に基づく責任は負わないというのが、やはり常識的には理解できないなというのは皆さんおっしゃるところで、やはりこれは単純に矛盾するのではないかと、これはやはり紙のB/Lの議論がここで出てくるわけですけれども、紙のB/Lの受戻証券性に対する今の764条、これは旧法から引き継いでいますけれども、この規定はこの民法の規定、これはあえて言えば提示によって遅滞に陥るということですから、民法の教科書によっては呈示証券性という言い方をしているのもあると思いますけれども、そういう呈示証券ということと受戻証券性というのがはっきりうたわれている商法とはやはり違って、特則だと言えるのではないかなと思っています。すみません、これは確かにこの段階で余り言ってもしようがないんですけれども、結論から言うと、やはりこの部分はその対案の一つとして取り上げていただけないでしょうかということにはなります。結論がどうこうというよりは、今ここはもう完全に1案になってしまっているので。   すみません、長くなりましたが、以上です。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   それでは、事務当局からお答えお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。多数御指摘を頂きまして、順次回答させていただきたいと思いますが、また漏れ等があれば御指摘いただければと思います。   まず、1点目といたしましては、裏書禁止裏書のところで、イギリス法なりと少し違うような記述になってしまうかもしれないけれどもそれでいいのかというような御趣旨かなとは思っておりますけれども、それはそれで正直なところやむを得ないかなと思っておりまして、当然、国際的な動向も見ながら今回の取組を進めていかなければいけないところでありますが、それよりも何よりも紙と同じ実質を作るというところでございますので、紙のレベルにおいて各国法が様々なものであるのであれば、それはそれでやむを得ないと思います。個別具体的な事案においてどうなるかというのは本当に難しい問題であろうかと思いますけれども、今回の立法の検討としてはこのようなスタンスで臨まざるを得ないのかなと思っております。   それから、2点目はみなし規定のところでございますが、船荷証券を作成及び交付したものとみなすというところの意味ですが、これは御指摘いただいたとおりで、飽くまでも私法上の問題、商法なり民法なり、そういったところの世界において作成したものとみなす、交付したものとみなすというところを意図しておりますので、それ以上の意味合いは、少なくとも今回の取組においてはないと思っていただいていいのかなと思っております。   それから、48ページでいいますところの⑥ですね、これは御指摘のとおり、先ほど問題提起いただきました民法520条の19のところとリンクしている話でございますので、これを入れないということになると、ここは恐らく落ちるだろうなとは思っております。ちょっとほかにも提示という言葉を使っているところがあるかないかというのは精査する必要がありますけれども、今私が記憶している限りにおいては、520条の19のところだけだと思いますので、ここが落ちれば必然的にこちらも落ちるということにはなるんだろうとは思っております。   続きまして、各論的な53ページ以降のところで、商法759条の関係でありましたり、あるいは部会資料でいいますと62ページのところでしょうか、61ページから62ページのところ、国際海上物品運送法第7条の関係で、ちょっと書きぶりとしてやや違和感があるという御指摘を頂きましたので、こちらの方は、今の御意見を踏まえまして、少し修正させていただく方向で検討してまいりたいと思っております。   それから、次が、部会資料でいいますと57ページかと存じますが、(11)のところでございます。①の規律の一つ目の括弧、ここの御指摘は今伺っていてなるほどなと思ったところでございまして、実際のところは意図しているところは②のところですので、②のところの関係だけを表せばいいのではないかと思っていたところではありますが、確かに②の前提になる部分ではありますけれども、一般的な返還請求権に相当するものということを考えた場合には、ひょっとしたらこの一つ目の括弧はむしろ入れない方がいいのかもしれないなというのは、ちょっと今伺っていて、思い付きではありますけれども、思ったところでございますので、仮にそうではなくても、ここでこう書いてあるからといって、およそこの記名式であって電子裏書を禁止したものについては何らの請求権もないと言い切ってしまっていいのかという問題もありますので、改めて検討させていただきたいと思います。   それから、①の二つ目の括弧でございますが、権利を適法に有する者に限るというところの書き方を支配という形に置き換えてもいいのではないかと、こういう御指摘かと思います。確かにここのところは何といいましょうか、所有権に基づく返還請求権的に考えるのか、占有訴権的に考えるのかという考え方もありまして、後者のように考えた場合には支配でもいいということは十分あり得るとは思いますので、そこはそういった考え方はあり得るような気はしておりますので、そこは何らかの形で検討させていただいて、場合によっては補足説明等なりに補充させていただくかもしれないということで、検討していきたいと思います。   それから、次が、58ページの(12)のところでございますが、この是非の書き方というところをあえて時期を曖昧にしたのではないかという御趣旨、頂きましたけれども、それはおっしゃるとおりでありまして、少しちょっと書き方として、普通に考えると善意というのが支配の前に出てきて書くのが多分普通なのかなと思いますけれども、そうすると、ちょっと時期的な問題を明確にしなければいけないというところもあり、若干不自然な書き方にはなっているかもしれませんが、これは民法の規定をできるだけそのまま引き写したいという発想でやっているというところでございます。   それから、最後でしょうか、(15)、59ページのところでございますが、ここはいろいろな考え方があり得るとは思っております。私どもの今の整理としては、提示と受戻しというところは事実上ほとんど一緒なんだろうとは思いますけれども、法律上必ずしも一致するとも限らない以上はやはり入れておくというところがいいのかなとは思っておりますけれども、他方で今言ったようなお考えがあるということも踏まえて、520条の9については、これはもう適用されないのではないかという考え方があるということは、この案の中に、補足説明にとどまるのか試案の中に対案で入れるのかというのはまた考えさせていただきたいと思いますけれども、そういった御意見があるということがはっきり分かるように書かせていただくということの修正についてはおっしゃるとおりかと思いますので、そういう方向で検討させていただきたいと思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   池山委員、よろしいでしょうか。 ○池山委員 取りあえずは結構でございます。その上でですけれども、やはり今るる申し上げた中で、一番実質的なのはこの520条の9の話になってくるわけで、これを今の御指摘を踏まえて補足説明でもいいですと申し上げるか、いや是非対案として入れてくださいとどうしてもお願いするかというのは、ちょっと私一人でもうお任せしますというのはここでは申し上げかねるので、こちらでも更に検討して、場合によっては意見を言わせていただくかもしれません。ですが、少なくとも御検討いただけることには感謝いたします。ありがとうございます。 ○藤田部会長 御指摘のあった交付したとみなすという規定が、印紙税だとかの局面を考えていないという話は、補足説明にも記載は要らず、今の返答で十分ということでしょうか。それとも念のために何か書いた方がいいでしょうか。 ○池山委員 どうでしょう、少なくとも印紙税うんぬんの明記はする必要ないし、逆にするのは不適切なんだとは思うんですけれども、飽くまでもこれは私法関係の規律に関するものであるぐらいは入れていただくと有り難いかもしれないというぐらいですかね。 ○藤田部会長 私法関係、取り分け船荷証券交付義務との関係で置かれているんだということは、補足説明で明記した方がいいというところでしょうか。 ○池山委員 そこは必須とまでは申しません。 ○箱井委員 箱井です。民法520条の9の関係で、私がお休みさせていただいたときに議論があったのだと思いますが、今のお話を伺っていますと、商法764条が特則で船荷証券が紙の場合には民法520条の9の適用がないというような議論があるやの説明が先ほどありましたが、そうした議論は私は寡聞にして知りません。元々この民法規定は商行為の総則規定で510条台にあったものが民法に行ったものです。元々船荷証券に関する今の764条と商法に併存しておりました。この商法764条ですけれども、これは物品証券とか船荷証券に特有のことを定めた特別規定ではないんですね。これは元々は為替手形に関する規定、この支払に関する規定でした。これは明治32年の商法制定のときに手形編がまだ入っておりましたので、そこの規定を元々は準用していたわけなんです。正確に申しますと、当時の商法483条が「支払ハ為替手形ト引換ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ要セス」ということでありまして、これは有価証券の言ってみれば基本規定だと認識をしております。ですから、59ページの説明は、荷受人たる証券所持人が証券を引き渡すというのが双務契約の反対債務の給付なのかという点で同時履行の抗弁というには若干違和感がありますけれども、むしろそういう趣旨をこの条文に書いたんだろうというように理解しておりまして、今一方が民法に行って、他方が商法に残って、といったところでその関係が分かりにくくなっていますけれども、いずれもこれらは有価証券に関する、あるいは指図債権に関する基本規定があって、何ら矛盾するものではないというのが恐らく一般的な商法学界の理解ではないかと思っておりますので、念のため発言させていただきました。 ○藤田部会長 箱井先生、どうもありがとうございました。   事務当局からございますでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。ありがとうございました。一つちょっとお伺いさせていただきたいなと思っているのが、民法520条の8、こちらについては、今我々の整理ですと、これは弁済の場所に関する規定で、紙の船荷証券についてはもう適用はないのではないかということで、適用排除しているということを試案に書かせていただいているんですが、そこは大丈夫でしょうか。もし何か御意見等があればこの機会に承っておきたいなと思っておりますが、いかがでございましょうか。 ○箱井委員 この場合も持参債務ではなく取立債務になるので、その意味では適用がないわけではありませんし、別にあって困ることはないんですけれども、あえて船荷証券に固有の規定として書くかというと、「債務者の住所」と書くかというと、なかなか困る規定ですよね。でも、原則はこうですよね。原則はこういうように取立債務になっていて、ただ、それが実際は債務者の代理店などになっているんだと思います。ですから、船荷証券規定としてそのままの文言で書くというのは違和感がありますが、形式的に民法規定をまとめて準用する中で520条の8も入ってくるということであれば、それはそれでも構わないんだと思います。けれども、当然なのでわざわざ入れる意味がないというのであれば、それはそれでよろしいかと思います。 ○池山委員 ありがとうございます。私も少なくとも従来の民商法の学説で、520条の9、あるいはその前身の法律である商法517条、あるいは更にその前の条項もおっしゃったかと思いますけれども、その旧商法以来のその規定で今520条の9になっているものが船荷証券には適用がないと、明示的に論じた学説があると、そういう趣旨で申し上げているわけではないです。一生懸命調べましたけれども、誰もそれは発見できなかったというのは、それは正直に言うとそのとおりでございます。その上で、正に今箱井委員の使ってくださった表現を借りれば、明示的にこの520条の9も適用があるということを立法で入れられてしまうと、実務としては困るという以上でも以下でもないわけで、ちょっと待ってください、困るという趣旨は、やはり表現からすると、その提示だけで履行の遅滞の責任を負うということと、船荷証券の引渡しの提供がないと履行遅滞の責任を負わないと、この二つが実務家からすれば矛盾するとしか思えないわけで、この場合の実務家というのは弁護士ですらないです。本当に現場にいる人ですからすると、どう違うんですかと言われたときに説明ができないからです。必ずしも違うかもしれない、それは理論的にはそうなんですけれども、例えばどういう場合にどういうふうに違うんだと、だからこの条文は意味があるんだと言えないと実務としては困ってしまうと、今までは、正直学説は何も書いていなかったということは、誰も意識していなかったということなんだと正直思います。520条の9、その前の商法517条という規定はあるにはあったんだけれども、意識していなくて、その764条、今回で言えば、つい最近の改正前でいえば776条で準用されたのが584条、受戻証券性の規定、言ってみればそこしか見ていなかった。そこしか見ていない中で、今回の電子B/Lの立法を契機に、いや実はこの520条の9もあるんですと、これも理論的には適用があり得るんですということを強調するというのは、果たしていいのかどうかということなんですね。もちろん法務省の御趣旨としてはそれを強調するという趣旨ではなくて、逆に私がかつても意見を申し上げたのに対し確かコメントがされておりましたように、学説上は別にそういう適用がないというのが通説だったりするわけではない以上は、単純にロジアメとしては入れざるを得ないよねという以上ではないと、そこはそう書いてくださったので非常にそれは分かるんだけれども、でもやはり結果として出てくるものは、そこを電子船荷証券については明文でやはり、甲案ならともかくとして、先ほどのみなし規定だけならともかくとして、乙案、丙案なら出てきますと、それで甲案でも⑥が入るかどうかで結局はっきりさせられると、そこについては理論の問題というよりはやはり実務の問題として非常に違和感があると、これは正直、内輪話的に申し上げますと、最初、この私の推薦母体の中でも私が問題提起をして、最初はふうんそんなものかなみたいなことをおっしゃっている方がいたんですけれども、だんだんみんな意見が分かってくると、やはりそれは困るよねという意見がちょっと強くなっているというのが正直なところです。 ○箱井委員 ちょっと誤解があるのか、私が誤解しているのか、実務の方がお困りというところが私理解できないんです。要するに、これは債権者が証券を提示しなければ履行遅滞になりませんよという、正にもう債務者側にとって恩恵的な規定ですよね。引渡しをせずに運送品をずっと渡さない場合、一体いつから遅滞なのかと言われたら、やはり証券提示の時からだと思うので、そういったことを考えると商法764条でカバーできない部分を民法520条の9が定めているという部分があるのではないのかなとは思います。   それから、証券を提示した瞬間から遅滞になるかといえば、論理的にはそうかもしれませんけれども、それは別にこの船荷証券に限らず手形でも何でも、それは実際渡すまでに当然準備期間が必要だったりしますね。1時間掛かったり、半日掛かったり、1日掛かったりしても、それが合理的期間内なら全然これは問題ないわけですよね。実際いつまでたっても渡さないといった場合に、いつから遅滞になるかというときに、これは提示の時でしょうと。逆に言えば、提示がなければ弁済期が到来しているとか荷物が着いているとかいっても全然これは引渡しの遅滞になりませんよと、そういうことを言っているだけだと思うので、何も債権者が損することはないと。下世話な言い方をすれば、船会社にとっては得にこそなれ、全然損はない規定ではないかと思われるんです。特にいつから遅滞になるかということですよね。これは提示の時からというのはこの規定からかなり明白になってくるのではないかと思われますけれども、いかがなものでしょうか。 ○池山委員 理論的な点からの今の箱井先生の御指摘というのは、それは我々の方でもまた考えてみたいと思っております。その上でなんですけれども、一方で私も520条の9、旧商法517条の趣旨というのは、おっしゃるとおりだというのは理解はしているつもりで、規定の趣旨としては、条文の趣旨は、指図証券の場合、債権者が確知できないから提示があって初めて遅滞に陥るんだと、逆に提示がない限りは仮に履行期の定めがあっても遅滞に陥らないと、提示を遅滞の要件とするんだ、その限りでは債務者である運送人を保護する規定でもあるんだと、それはおっしゃるとおりなんだと思います。ただ、やはり何で違和感があるかというと、提示だけだと困るんですけれどもということなんだと思うんです。受戻証券性があるという意味は、やはり提示そのものではなくて、履行、正に条文の言い方では、引換えでないと履行をしなくてよいと、引換えでないと履行しなくてよいという意味は、それは履行の提供、あえて言えばそうなんだろうと。   ここから先はちょっと申し上げていいのかどうか、適切かどうか分かりませんけれども、この引換給付というのは、実態としては若干先履行になっている、提出が先履行になっているのは確かにあるんですよね。文字どおり現場で、その船側、船の横で船荷証券を出してサインをもらうと、そんなことはしないわけなので、船荷証券を実際は先にオフィスで提出をしてもらって、それによって昔であればデリバリーオーダーという書類がなされて、今デリバリーオーダーはないことが多いですけれども、少なくとも引取りが可能な状態になると。所定の身分証明か何か、あるいはD/O番号があればD/O番号、ないといったら身分証明を持っていけば引取り可能な状態になると、それで引き取ると。そういう意味で、その引換え、法的には引換給付なんですけれども、実務の発想としては、とにかく受戻証券性があるということは、まずB/Lを出してくださいと、そこから全てが始まりますという前提でやはり事は動いているんですよね。ここで提示だけでいいんだとなると、実務の感覚としてはやはりそこが違ってくるんだと思います。もちろんこれは実務はそうかもしれないけれども、法律的には引換給付ということは同時履行なんだから、その同時履行であるところの履行の提供と提示というのは余り違わないのではないのと言われると、すみません、元の議論に確かに戻ってまいります。でも、そうだとすると、なおさらどう申し上げたらいいのでしょう、やはりもう事柄は764条で足りているとしか思えないんですよね。先ほど箱井先生が520条の8も本当はあってもいいんだけれども困るでしょうと、実態にそぐわないでしょうという趣旨でおっしゃってくださったと思うんですけれども、それは同じようなことはやはりこの520条の8についても困るでしょうとおっしゃったというのは、実態とそぐわないのではないのという趣旨でおっしゃってくださったと思うんですけれども、同じことはやはり520条の9についても言えるのではないかという気は、やはりそこは思っております。 ○箱井委員 今の場合で、B/Lは渡したけれども運送品を受け取れない場合というのは、当然B/Lは返してもらえると思うんです。この場合、いつから遅滞になり、まずその根拠は何になりますか。やはり520条の9ではないでしょうか。要するに、証券と引換えで物品を受け取れない場合ですね。物品を受け取れないので、当然に証券は返してもらえますよね、B/Lを。それでいつから遅滞かといったら、これは764条は関係ないですよね、これは引き換えないわけですから。この場合、やはり520条の9で最初の提示の時から遅滞になっているんだと思うんですけれども、違いましょうか。 ○池山委員 そこは正に、逆に質問、あるいは私の解釈になるんでしょうけれども、764条から、その引換給付の規定から正にその遅滞の時期というのは読み込むことはできないんですか。逆に、遅滞の時期を読み込むためだけに520条の9を読み込むということになるんですか。 ○箱井委員 御趣旨は分かりました。また勉強させていただきます。 ○藤田部会長 今日は、箱井先生と池山先生の意見のどちらが正しいかを決める場ではないですけれども、差し当たり、民法の規定と商法の規定の関係について二つの意見が対立していることはよく分かりました。   池山先生、1点だけ確認させてください。53ページに新しい案が出ていまして、甲案、乙案、丙案に加えて折衷案というのがここで新しく提案されています。この提案によると、商法764条に対応する規定は商法の中に電子船荷証券について置かれます。それに加えて、520条の9については準用規定という形で、最後の方にまとめて民法の準用という形で置かれることになります。そういう形で、商法に電子船荷証券記録の引換給付の規定が置かれ、民法の方は、あとは民法が一連の規定として準用されるという形で、現在の船荷証券の民法、商法の規定の構造がそのまま維持されることになります。こういう形で置くことも反対なのかということが御質問です。この折衷案を採れば池山先生の意見は解消され受入れ可能になるのか、それとも520条の9は準用であれ許せない、適用がないことを明示する形の立法を求められるのか、実務の困ると言われているのはどちらなのでしょうか。この辺りは将来の中間試案以降の議論との関係でも気になりますので、念のためにどのぐらい強い要請かということをお伺いできればと思います。 ○池山委員 池山でございます。先ほどあえてその点は私は触れなかったんですけれども、正にこの案というのは、その反対意見等を踏まえて考えてくださっているんだろうなという推測はしておりました。その上でなんですけれども、やはり少なくとも、現時点における私の意見としては同じではないかなと思っています。なぜならば、結局、民法の準用規定であるにしても、同じ商法という同一の法典の中に置かれるということは同じですし、準用規定という形で520条の9が電子船荷証券についても準用されるというのは明確になるわけですから、本質的な解決ではないのかなと思っております。これは最終的にはもうオール・オア・ナッシングでというと語弊はありますけれども、そういう折衷的なものよりは、実務としてはこの二つというのが両立するというのはやはり非常に困るから、この際、正に今まで商法学説では言われていないことだけれども、この764条の中に箱井先生のおっしゃるその遅滞の開始時期の解釈も言ってみれば読み込むと、新解釈ですよね、言ってみれば、そういうのも読み込んだ上でもう適用されないという、それはそれで新たな立法になるんだろうと私は思いますけれども、そうするか、いや、もう今おっしゃった箱井先生のお考え、さらに、その前提となる実際はほとんど変わらないのではないかというこの法務省の補足説明の御説明を受け入れるかと、そこはもう最後は二者択一になってくるのかなという気は個人的にはしております。今の段階で分かりましたというのは、ちょっと私の立場ではとてもできないなと思っております。 ○藤田部会長 池山委員の意見はよく分かりました。改正法が中立的な状況を維持するという選択肢自体、受け入れることはできないという前提での御意見だったと理解をしてよろしいですね。 ○池山委員 多分、そうですね、本当の意味で中立的なことができるのであれば甲案を採って、当然戻りますけれども、⑥をもう抜いてしまって、でも⑥は抜くんだけれども、⑥的な読替えもされるかどうかは解釈に委ねるというのが一つのやり方なんでしょうけれども、それはそれでやはりなかなか採れないんだろうなと思っております。 ○藤田部会長 非常に一番強い意味での甲案を採れば、完全に中立になるということですね。趣旨は、よく分かりましたので、この点を、中間試案以降考えることにしたいと思います。ただ中間試案の書き方としては、両案併記か、少なくとも補足説明で反対があったことを明示するということでよろしいですか。 ○池山委員 もちろん、ええ。 ○藤田部会長 分かりました。 ○箱井委員 1点確認なんですけれども、実務でお困りというのは、提示された瞬間に遅滞になるというところが実質的に何か実害があるという、そういう御認識なんでしょうか。要するに、今まで全部それでやってきて、合理的な対応をされれば別にそういう遅滞で責任を負うということはないですし、それは先ほどお話ありましたような実務があって、みんなそのように理解しているところですよね。瞬間的に「せーの」で証券提示と運送品引渡しをするわけではありません。証券を提示して、「はい、あなた遅滞です」なんていうようなことはこれまで100年以上やってきてない。そういうことが前提になったルールなんですけれども、そこを気にされているのかどうかというのを一応確認させてください。それでしたら余り御懸念には及ばないのではないのかなと思っているものですから。 ○池山委員 池山でございます。確かに、実際にこの規定があることによって提示の瞬間に遅滞に陥ると、そのことが非常に困るということが従来、あるいは今回実質的な論点として指摘されている、問題視されているわけではないと私も理解をしております。やはり私の理解は、単純に結局520条の9と、それから764条のこの規律が、端的に言うと矛盾するとしか思えないと、実務の場面を思ってみると、確かにそれ以上でもそれ以下でもないんでしょうね。それで、いやいや理論的には矛盾しないよと、それとこれとは別なんだよということを、実務の側が、皆さんが納得できればそれは済んでしまうのかもしれません。なかなか実際どう違うのというのがやはり納得できないなというか、理解できないなという、そういう問題です。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。現時点で私どもの整理といたしましては、59ページのところの(注)に書かせていただいておりまして、実際のところ、提示と引換えの提供というものが異なることがあり得るかと言われると、事実上ほとんどないのだろうと思いますが、ただ、法律上の概念としては異なるものを使っておりますので、完全にかぶるということを言い切るのは恐らく難しいのではないか、少なくとも立法を考えるに当たっては、ということで考えているわけですけれども、では仮にですけれども、提示はあるけれども引換えの提供はないというような状態があり得るとした場合、どうなるかということを考えたときに、一応やはりこれは遅滞責任は負わないという整理でいいのではないかと我々としては今考えておりまして、これはやはり同時履行の抗弁みたいなものがある以上は、恐らく違法性がないという整理で遅滞責任を負わないと、こういう整理でいいのではないかと思っております。もしこういう解釈が今の紙の船荷証券においても可能というか、むしろ一般的だということであれば、池山委員の御懸念は恐らくなくなるのではないかなとは思っているところです。果たしてそういう理解でいいのかどうかというところなんですけれども、ちょっと例として余り適切ではないかもしれませんけれども、民法には412条3項という規定がございまして、ちょっと読み上げさせていただきますと、「債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けたときから遅滞の責任を負う」と、こういう条文があります。では、これが同時履行の抗弁が付着している債務だったときに、請求を受けたら直ちに遅滞責任を負うんですかというと、恐らく負わないという結論になるのではないかと思いまして、結局これと同じような解釈になって、この520条の9というのは、正にこの提示をしないとそもそも遅滞責任を負わないんですよというところに意味がある規定であって、書きぶりとしては提示したら直ちに遅滞責任を負うかのようにはなっていますけれども、それは飽くまでも一般則であって、それとはまた別のところに同時履行の抗弁みたいなものが認められて、それが存在するのであれば、やはりそれを消さないことには遅滞責任は最終的には発生しないと、こういう整理で恐らくいいのではないかと我々としては思っているところであります。そのことに加えて、提示と引換えの提供というのがほとんど一緒なんだろうと思いますけれども、万が一違うようなケースがあった場合を想定しますと、やはり規定として置いておかなければいけないのではないかと、こう考えているわけでありますが、このような整理というのがもし間違っていたりとか一般的ではないということであれば、幅広く御指摘を頂ければ有り難いなと思っているところでございます。補足的な説明でございますが、以上です。 ○池山委員 池山です。今の御説明は、すみません、私から質問させていただいて恐縮ですけれども、箱井先生も同じ理解であるという理解でよろしいですか。 ○箱井委員 はい、そうです。為替手形についても、為替手形の場合には引換えだけではなくて、受取文句を書かせられるというのもセットであったわけですけれども、それがない限りはこれは遅滞責任というのは負いようがないですよね、払わなくていいわけですから。ですから、それが物品に置き換えれば、物品を渡す必要がないわけですので、今の御説明のとおりだと考えます。ただ、先ほど言いましたように、本当にもらえない場合いつから遅滞になるのかというのは、やはり最初の提示の時からだと思うので、そういう点でも520条の9は必要かなと思っています。 ○藤田部会長 今箱井委員が「本当にもらえない場合」と言われたのは、たとえば提示があったにもかかわらず、物品の提供がおよそできないような場合という意味でしょうか。 ○箱井委員 そういうことです。 ○藤田部会長 その場合は、船荷証券を引き渡さなくても履行遅滞になるでしょうね。 ○池山委員 ありがとうございます。検討させていただきます。 ○藤田部会長 いずれにしても、中間試案の書き方自体については池山委員も反対されているわけではなく、実質的内容については、今日この場で決着を付ける問題ではありませんので、今の事務当局からの説明を踏まえ、また、先ほど申し上げた民法、商法の構造を維持するような折衷案の可能性も踏まえ、今後検討して決めていきたいと思います。   それでは、そのほか、どの点でも御意見、御質問ございますでしょうか。 ○小出幹事 小出でございます。ありがとうございます。裏書といいますか、権利の譲渡のところについて、二つほどコメントをさせていただきます。   1点目は、電子裏書のための要件というので、今ですと38ページの第5の①に書いてありますけれども、具体的には支配の移転をする者の氏名と受ける者の氏名を記録するということをもって電子裏書と定義し、それをもって譲渡すると書いてあるんですが、紙の場合、裏書をすると、その裏書が複数なされた場合、その時系列というものが券面上明らかになると思うんですが、電子裏書の場合は、紙とは違って、データとしてその順番が、つまり複数の電子裏書がどういう順番でなされたのかということが必ずしも明らかではなくなるような可能性があります。こういったことは、実はMLETRの方でも検討はされていまして、ただ、MLETRは非常に技術中立的なので、裏書の時系列を示すことについての特定の方法を求めているわけではないんですけれども、例えばタイムスタンプのようなものを付すということが考えられるということがMLETR13条の解説に書かれています。MLETR13条自体は、一般的にその時間と場所を表示することを要件とする規定なんですけれども、そこの解説の中に、紙とは違って電子の場合については、その方法としてタイムスタンプを利用することは考えられるということが書かれているということです。我が国でもタイムスタンプを使えとまでは言うべきではないと私も思っているんですけれども、少なくともその時系列が明らかになるような形で電子裏書を付すということは必要になるのではないかと少し考えました。もう少し前に申し上げるべきだったことかもしれませんけれども、場合によっては中間試案後でもいいかもしれませんが、今後検討していただければというのが1点目でございます。   もう1点は、ちょっと既にもしかしたらもう議論されたことで、私が忘れただけかもしれないんですけれども、42ページのところに、電子船荷証券記録上の権利という用語を使うということが書かれています。これはいろいろ議論があって、その議論の経緯については全部ここに丁寧に書いていただいていますので、誤解はないとは思うんですけれども、議論があったかちょっと記憶がないんですが、一般的に、例えば手形の有価証券上の権利は、裏書以外の方法として一般の指名債権譲渡の方法によって権利移転することは可能であるというのが多分判例だと思うんですけれども、ここでその電子船荷証券記録上の権利の移転方法という、こういう書き方をしてしまうと、あたかもそういう判例とは反して、指名債権譲渡の方法による移転は認めないという立法なのかと読まれてしまわれないかというのを、少し懸念はしています。すでに議論があったら大変申し訳ありませんけれども、以上が二つ目の点ということになります。 ○藤田部会長 事務当局から、今の2点お願いいたします。 ○渡辺幹事 御指摘ありがとうございます。電子裏書の関係で時系列を明らかにした方がいいかというところですけれども、そこは基本的には多分明らかにするべきなんだろうとは思うんですけれども、それをあえて何か要件的なものに付け加えるかどうかというところかとは思います。裏書の場合も厳密に言うと何と言いましょうか、そこが法律上明確なルールになっているかというと恐らくなっていなくて、そこは見れば分かるでしょうというところだとは思いますけれども、電子にしたからといってそこをあえて要件にしなければいけないかというところの検討なのかなというふうには思っておりますけれども、ただ、実際すみません、ちょっと私の方で必ずしも実務を正確に把握しているわけではないんですけれども、紙の船荷証券の裏書というのがきっちり順番がしっかりされているかどうかというところも含めて、いろいろ考えて最終的に決めなければいけないかなとは思っております。場合によってはそこのところはそういうものでしょうということで、あえて要件にはしないという形もあり得るかなとは思っておりますが、今頂いた御指摘も踏まえて考えていきたいなと思っております。   それから、二つ目のところでございます。記録上の権利というところを譲渡の対象にしていくというところで取りあえず今のところ考えておりますけれども、それと通常の債権譲渡との関係をどう整理していくかというところは、実はまだ問題が幾つか残っているかなというところは認識はしているところでございますので、また引き続き検討させていただきたいと思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。よろしいですか。 ○小出幹事 確かに1点目の方については、私も何となく約束手形を前提に考えていましたけれども、確かに今は船荷証券ですので、その実務とも併せて検討していただければよいかと思います。ありがとうございます。 ○山口委員 紙の船荷証券の裏書についてなんですけれども、手形のようにきれいな裏書欄がないものですから、結構ばらばらに書いてありまして、はっきり分かるかというと、逆によく分からないのです。ただ、書いてある名前からいって多分この順番だろうということが想定できるという程度で、その意味では、正確な時系列が分かる形には船荷証券は必ずしもなっていないということになろうかと思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。そのほかどの点でも御意見があればお願いいたします。 ○山口委員 全然別の件ですけれども、質入裏書のところでございます。裏書のところで、質権の設定についての裏書の仕方が第5の1、それから2、3、これは38ページに書いてありまして、その質入裏書の形が書いてありまして、なおかつ商法762条、質入れについての規定でございますが、これも特別に書き下ろす形になっておるのですが、要するに、裏書でもって質入れということを書いて渡すと、それで電子船荷証券記録を移転するということになったことで質入れができるということになっておるのですが、後で民法570条の7及び520条の7、58ページの13のところの記載方法なんですが、試案では、電子船荷証券記録そのものは固有の「財産権」には当たらないことを前提としているため、電子船荷証券記録そのものを質権の目的とすることはできないものとしているという説明になっているのです。これは質問なんですけれども、民法の570条の2というのはこの証券の権利ではなくて、その証券そのものを質入れする規定だという理解なんでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。一応そのような理解をしておりまして、民法520条の7につきましては、証券を質入れするということを規定しているのではないかという理解の下、そうであれば、電磁的記録についてはそのもの自体の質入れではなく、飽くまでも記録上の権利、運送品引渡請求権ですね、それの債権ということになろうかなということで、そういう前提で整理はさせていただいているところでございます。この点について、誤り等があれば御指摘いただいて。 ○山口委員 ちょっと私の理解は、520条の2ですかね、520の7で520条の2が準用されておりますので、裏書によって質入れをするということが前提になっておって、それの特別規定として商法の762条でしたかがあるという考えだと思っていたのです。要するに、その権利を離れて紙そのものを質入れするというのの規定ではなくて、それはやはり証券上の権利の質入れではないかと思うのです。その特則が商法にある以上は、私の考えだと、58ページの13の説明は、商法に特別規定があるから別途規定を設けないというのが正しいのではないかと、こう考えた次第なのですけれども、これも全く私の誤解なのかもしれないのですが、一見して前の説明と合っていないような気がして、もしそういう物だけの、証券、物だけ、権利を離れた証券としての紙の質入れだということであれば、そういう説明の方はもう少ししていただかないと、前後の関係で矛盾しているように読めてしまうように思ったのですけれども、そういう思いを持ったというところでございます。 ○藤田部会長 それでは、事務当局の方で520条の17が質入裏書の可能性について書いている条文ではないかどうかということについて改めて精査した上で、その点の解釈を明示して中間試案のドラフトとしていただくという形でよろしいでしょうか。 ○山口委員 すみません、お願いします。 ○渡辺幹事 承知しました。 ○藤田部会長 それでは、ほかに何かありますでしょうか。 ○箱井委員 私が休んだときの関係かもしれないので、ちょっと質問です。確認みたいなものなんですが、第5の譲渡のところの①の「指図式の電子船荷証券記録上の権利」とあるところ、この指図式というところですね、これは記名式であって電子裏書を禁止する旨の記録がされていないものをここに含めるという、そういう了解というか、前提が確認されているのかどうか、それはどこに入ると思えばよいのかという質問です。 ○藤田部会長 記名式でみなし規定によって指図式と扱われる場合を含むかということですね。 ○箱井委員 紙でいえばそうですね、紙でいうと、それが本則といったら言い過ぎかもしれませんけれども、要するに商法は荷受人の名称を書きなさいと言っていながら、他方で記名式の場合でも指図証券ですということを言っているわけです。記名式ですが、記名証券ではなく指図証券になると。これをぱっと見たときに分かりにくいのと、あと、商法で「指図式」という言葉を船荷証券に使っていないと思いますので、中間試案のときにこれは説明がないと、もしかしたら読む人がいわゆる指図証券なのか指図式なのかといった辺りで迷うのではないかと気になります。例えば手形法でも為替手形は指図式でなくても裏書ができるとされており、あそこは指図式という言葉を使っておりますよね、そういったところとの関係で若干説明された方がよいのかなと思いまして、質問をさせていただきました。 ○藤田部会長 実質と記載と両方にわたる御質問だと思いますが、事務当局からお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御質問ありがとうございました。正にそこの辺を、何といいましょうか、いわゆる4類型を維持した場合にどう定義して書いていったらいいのかというのは、非常に難しい問題でございまして、まず、御質問に端的にお答えするならば、38ページの第5の①の指図式は本当に文字どおり指図式のものを想定しておりまして、記名式であって裏書禁止がないものというものを直接の対象にはしていないということでございます。それがどういう形で譲渡されることになるかというと、今度は54ページの方を見ていただきまして、商法762条に相当する規定というものを置いてございますので、ここで今御指摘いただいた記名式であって裏書禁止がないものが拾われてくるということになるわけでございます。なかなかそこのところを全部ひっくるめて書こうと思うと非常に難しいところがあって、今こういう表現をしているところでございますが、ここはまた引き続き、実際に案文を考えていくときにいろいろな問題が多分出てくるだろうとは思っておりますので、今後、修正の可能性というのはあり得るとは思いますが、今のところの整理としてはそんなところでございます。 ○箱井委員 ありがとうございました。紙でも問題になるということですので、ここはもうやむを得ないといえばやむを得ないと思うんですが、ただ、紙の場合には指図式という言葉をあえて使っていないというところがございますので、これが入ってくるとちょっと紙の方との関係のもどうなのかなとか、あれこれ考えてしまいました。やはり船荷証券の記載事項を変えないという前提に立てば、これはやむを得ないと思うんです。荷受人の名称を書きなさいと商法が言ってしまっていますから。そこが指図証券の第1の権利者の記載になるんだという理解と組み合わさっているのは、記載事項を改正しなければもうどうにもならないと思いますので。失礼いたしました。 ○藤田部会長 しかし箱井委員のような疑問は、このドラフトを初めて読む方は感じても不思議ではないと思われますので、できる限り補足説明等に手掛かりがある形で記載できるでしょうか。 ○箱井委員 権利者の指定方法(記名式)だというところと、譲渡方法を含む証券の性質(記名証券ではなく指図証券)のところがちょっと分かりにくいのではないのかなと。 ○藤田部会長 御指摘を踏まえて、事務当局の方で書き方の工夫をお願いいたします。   そのほか、どの点でも御意見、御質問ございますでしょうか。   今御指摘のあったような、初めて読むと誤解しかねないような部分の指摘も中間試案との関係では大切だと思いますので、是非頂ければと思います。   よろしいでしょうか。もしないようでしたら、次に移らせていただきたいと思います。   残りの部分ですね、部会資料7、第1部の第7と、第2部、第1から第3についての御説明をお願いいたします。 ○中村(謙)関係官 法務省の中村の方から、今回の部会資料の残りの部分について説明をさせていただきます。   まず、63ページの「第7 電子船荷証券記録の支配を有する者に対する強制執行に関する規律の内容」となりますが、こちらの内容につきましては、基本的には第5回の部会資料の中でお示しした四つの案を維持する形で提示させていただいております。   若干アップデートしたところといたしまして、今回の乙-1案につきまして、従前の部会資料では、単に電子船荷証券記録を支配する者の債権者は電子船荷証券記録を支配する者の運送人に対する船荷証券への転換請求権を代位行使することができるという規律としておりましたが、転換の箇所で、電子船荷証券記録の支配を有する者に紙の船荷証券への転換請求権を認めるという考え方を採る場合であっても、転換のためには転換請求者が電子船荷証券記録の支配の移転又は消去、その他当該電子船荷証券記録の利用及び支配の移転をすることができないようにする措置と引換えにする必要があることを想定しておりまして、そうなると、代位行使者がそのような措置を採ることは現実的には不可能でございますため、今回の案では乙-1の第2項の後半で、代位行使の場合にはそういった措置が不要であることを規定することとしております。   また、乙-2案につきましては、第5回の部会資料で乙’案として御紹介させていただいたものとなりますが、この案につきましては、元々電子船荷証券記録を使用、収益又は処分する権利という独立した権利の存在を認め、それが民事執行法上のその他の財産権として強制執行の対象になるということを前提としていたものでございます。先ほど第1部の第5の箇所で御説明申し上げましたとおり、今回、直接の譲渡の対象として電子船荷証券記録を使用、収益又は処分する権利のようなものをあえて観念することはしないという方針を採っていることとの関係では、若干不整合に見えるところもあるかと思われますが、強制執行の場面に限ってこのような権利を観念すること自体は必ずしも理論的に否定されるものではないとも思われますため、一応今回この案も残したままとしております。この強制執行の規律に関しましては、理論的には重要な論点ではございますが、なかなかこれだという明快な方向性もなく、難しい問題として残っているところでございますが、今回改めて皆様の御意見を伺えればと思っております。   最後に、71ページ以下の第2部となります。   まず、71ページの「第1 海上運送状に関する規定の見直し」ですが、こちらは従前も御説明申し上げましたとおり、電子船荷証券記録の発行の場面の相手方の承諾について特段の方式を求めないとするのであれば、海上運送状を電磁的方法で提供する場合の相手方の承諾についても現行法を改正し、同様の形に、すなわち相手方の承諾について特段の方式を求めないという形に変更してもよいのではないかという提案となります。   続きまして、72ページの第2の複合運送証券につきましても、船荷証券について電子化を認めるのであれば、同様に複合運送証券についても電子化を認めるべきと考えられますため、その方向での提言を示しております。   最後に、「第3 倉荷証券に関する規定の見直し」につきましては、前回の部会の最後で初期的な御議論を頂いたところでございますが、倉荷証券についてもその電子化のための法整備の要否及びその内容をこの部会の中で調査審議していくということが考えられまして、また、その電子化のための法整備を行うこととする場合には、基本的には電子船荷証券記録と同様の整理の下で法制化を検討していくことが考えられる旨の提案をさせていただいているところでございます。   以上、今回の部会の資料に係る事務当局からの説明となります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、今説明のあった内容について、どなたからでも結構ですので、御意見いただければと思います。 ○池山委員 池山でございます。すみません、せっかく機会を頂きましたので発言をさせていただきます。   この案をそのまま全部出すということ、それ自体について、強制執行についてです。異存があるわけではありませんが、そのことを前提に幾つか質問、あるいはコメントをさせていただきたいと思っております。   この強制執行の局面においては、想定する対象となる権利というのが運送品の引渡しに係る債権と原則としては想定されていて、乙-2案では、言わばその例外として、それは強制執行の対象にはならないんだけれども、この使用、収益、処分権の強制執行というのはやはり想定をすると。それは書いてあることは分かります。ただ一方で、やはり強制執行の対象としては本来実体法上の権利を想定するわけで、実体法上の権利としては、今回電子船荷証券記録上の権利というものを想定すると、a案、b案というのを一つにして、それを想定してその譲渡方法等が規定されているのに、強制執行のところだけその船荷証券上の権利の差押えではなくて運送品の引渡しに係る債権の強制執行を想定するというのは、やはり何でその違いがあるのかというのが書いてあるようにも思うんですけれども、よく分からないなと。もう少し解説を頂ければと、関連して特にこの乙にだけ例外的にこれを想定するということの是非、この使用、収益、処分権というのを、一旦やめたはずのものをここだけでは想定するということの意味というのも、改めて教えていただければなと思っております。それが一つです。   それから、この四つの案を、五つですね、五つの案を通覧して思うのは、従来から法律上の、法律関係が不明確になるとおっしゃっていた点は、私の理解が間違っていれば、実は不明確というよりはもうにっちもさっちもいかない状態になると、そこを想定しているんだと、つまり運送品の引渡しに対する債権の債権執行という形であれ、前回出た財産権の執行という形であれ、結局その差押え命令が出れば、一方では第三債務者の運送人に対する弁済禁止効というのが発生するので、運送人は引き渡すことができなくなると、でも他方で、では差押え債権者が引渡しを受けられるかというと、受戻証券性、先ほども問題になっている受戻証券性があるから引渡し請求もできないと、だからその二つが矛盾する状態でずっと続いてしまうと、そのことに対する解消のロジックがないことが困るんだと、不明確というよりはもう矛盾する状態がずっと続くと、それをどう解消するかという問題意識だと理解をしております。   その方法として、一つには、思い切ってもう全部電子船荷証券記録の効力を失わせてしまうと、それによって受戻証券性なるものも全部飛ばしてしまうというのが一つの考え方で、もう一つは、それはさすがに乱暴だというならば、単純に差押え債権者に対して債務者すなわち元々のその支配者に対する支配移転請求権というものを実体法的に認めるということによって権利者を確定させると、権利を行使できる者をはっきりさせると、それが一つのやり方だと、そういう方向性の整理、そこはそこで理論的な状況としては、全部並べることによって、それを何度も読み返すことによって分かりやすくはなっているのかなとは思います。ただ、そうはいってもではどれがいいとなかなか言えない部分というのは、従前から申し上げている国際的なものの中で、送達の時期あるいは送達が事実上不能だということもあったりして、あるいは差押え命令の国際的な効力の問題もあって、非常に問題もあるというような話が一つあります。   それともう1個、これを見ていて気付いた、今回ここからがやっと新たなことかもしれませんけれども、仮差押えの場合のことも少し書いてあります。仮差押えの場合は、むしろそのままで固定してしまって、特にこれは乙案、乙-2案や丙案を前提にするわけですけれども、単純に固定してしまって、弁済禁止効はありますと、だけれども、支配移転請求権までは、まだそれは仮差押えの段階だから認めなくていいでしょうと、これは非常に論理的です。だけれども、そうするとかなり長い間どっちつかずの状態が続いてしまうと、そこで、実は運送人側からして思うのは、そういう状態の中でずっと運送品を持っておきなさいというときに、持っておくだけで逆に競売等ができるのかできないのかと、そちらの議論が実はあるのかなと思っています。これこそ素直に考えれば、商法の規定に定められている競売の規定というのは、単純に債権者が受取をしない、あるいは確知できないときには競売できるという以上でも以下でもないと、今回の場合はそういう事態には当てはまらなくて、裁判所から弁済を禁止される、引渡しが禁止されるという効力があり、他方ででは引渡請求権がある人は来ないわけですよね、B/Lを持ってくる人がいないんだから、その状態の中で、でも競売の規定もない、適用がされないから、本当にただ持っておくとなると非常に困ったことになると、そうすると、これはまだ思い付きの段階ではあるんですけれども、何らかの規定を、先ほど来申し上げている国際的な問題を一旦度外視して入れるんだとすると、逆にどっちつかずの状態が続いているときの運送人側の競売の可否というのは、新たな論点として実はあるのかもしれないと思います。それは仮差押えの場合なんかは特にそうです。それと、よく考えてみると今の乙-2案や丙案もそうで、これは私が勘違いしていなければ幸いなんですけれども、実はこれは論理的なんだけれども中途半端で、支配移転請求権を認めると強制執行の方法として書いてあるんだけれども、あるいは国税徴収法については取り上げたものとみなすと書いてあるんだけれども、失礼、どういう書き方でしたか、国税徴収法の場合は取り上げることができると書いてあるんだけれども、実際それをどうやってやるのかというのは、実はこれは分からないんですよね。ここの部分は強制執行法制の中で実体法的な権利が創設されているだけで、それをどう強制するかが分からない。そうすると、乙-2案とか丙案でいっても結局スタックしてしまう可能性があると、そうすると、先ほどの仮差押えでずっと止まっている状態と似たような問題がやはり起きると、そうすると、結局はやはり運送人がその間何ができるのかと、そのままいくんだったらではもう競売するから、実際腐るものもあったりするわけですしね、競売する、あるいは供託もあるかもしれませんね、すみません。だから何とかあとはよろしくお願いしますという方法が、何か作るんだったら作らなければいけないのかなという気はしております。ここは変な話、今の案に対する批判というよりは、今の案を見て感じた感想でしかないんですけれども、御検討いただければなと思っております。   それに関連してもう1個申し上げると、実際は、今多くの運送は船荷証券を発行されていないんですよね。国際輸送でも大半は海上運送状による運送です。だから受戻証券性うんぬんというものではないわけですけれども、だけれども、寡聞にして強制執行の例というのは聞かないと、それはやはり実際上その実行方法が難しいというのはある。ここで論理的な方法を考えていって、それを強制執行は可能なんですよということを立法の方向性として明示するということの利害得失というのも考える必要があるかなと思っています。すみません、最後の点はちょっと別ですね、ちょっと別の次元の話で、やはりいろいろ考えながらも丁案の特段の規定は新設しないと、一見無責任なように思える規定に感覚としては傾くというのは従前から申し上げていましたけれども、それの理由の言ってみれば一つとして、今だってあり得るのに問題が顕在化していないというのが、一つ追加の論としてあるのかなと思っております。すみません。最後の方はちょっと次元の違う話になりましたけれども、以上です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   事務当局から何かございますでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。   幾つか御回答を申し上げるといたしましたら、まず最初に御指摘いただいているところとして、電子船荷証券記録を使用、収益又は処分する権利というのをまたあえてここで持ち出す意味はどこにあるのでしょうかという御指摘があったかと思います。こちらについては、確かに権利移転の場面では実体法上の権利を移転していくということで整理はできるとしても、強制執行の場面になると、やはり何を物として押さえられるのかという見地から問題にせざるを得ないと思われますので、実際に今の民事執行法上も、では船荷証券が発行されているときに債権を差し押さえますかというとそうではなくて、それは動産として証券を押さえてくださいと、債権は債権執行の対象になりませんと、こういう整理を執行の世界ではしているわけですので、商法とか民法の実体法上の権利移転関係とはまた別の次元の世界なんだろうと思いますから、この強制執行の局面において、証券に相当するものとして電子船荷証券記録の使用、収益又は処分する権利というものを持ち出してくること自体は、実体法と手続法、執行法との違いを考えてみても決しておかしな話ではないとは思っております。ただ、最終的にそれを採用するかどうかというのはまた別の話ですし、今申し上げたような権利を観念して、これをその他財産権として強制執行していくことができますよというのもかなり思い切った提案だろうとは思っていますので、この提案自体が相当かどうかというのはまた全然別の議論だろうとは思いますけれども、あえてこういうものを執行の場面にのみ持ち出すこと自体はそんなにおかしくない話なのかなとは思っているところでございます。   それから、競売の規定なりを作ってみてはどうかというところでございますが、これはもちろん検討に値する御指摘だろうとは思っておりますけれども、なかなかどう作り上げていくかということまで考えてみると、難しいところは幾つか出てくるかもしれないなとは思っております。   あとは、その支配の移転を請求する権利というところですね、そういった権利を付与するにしても、実際にどうやったら実行できるんですかという御指摘を頂いたかと思いますけれども、それは正におっしゃるとおりだと思います。これを強制的に実行するというのは非常に難しいと思います。結局のところ、相手方の任意の協力がなければ実現することは難しい権利なんだろうなというところは、これはもう我々としても基本的にそういう前提で考えております。   それと同時に、強制執行を可能にするような方向で議論するのが果たしていいのだろうかというような御指摘も併せて頂いたかと思いますが、全くそれと我々も同じ発想でございまして、今我々が考えているのは、紙の船荷証券とできるだけ同じ状態を作るということが目標なわけでありますので、紙の船荷証券が発行されている場合、基本的に紙の船荷証券を動産として執行してくださいということになるんですが、これがなかなか非常に難しくて、実効性が必ずしも十分でないとするのであれば、それを更に利便性を上回るようなものを電子の場合作るというのも少しおかしな話かと思いますので、同等のものを用意するというのが相当だろうと考えますので、そういう目線で見たときに、動産としての証券の執行というのと支配の移転を戻してくださいということ、いずれにしても相手方からの任意の協力がないとなかなか実現しにくいという意味では同じような性質があるのかなと思いますので、そこのところが必ずしも実効性に乏しいのではないかというところは、それはそのとおりかもしれませんが、逆にそれが紙の船荷証券の場合とかなり近い状態を作れるということにもなると思いますので、そういったところで検討する価値はあるのではないかとは思っているところでございます。   すみません、ちょっと回答に漏れがあるかもしれませんが、取りあえず以上でございます。 ○藤田部会長 池山委員、更にございましたらお願いいたします。 ○池山委員 1個だけ、漏れというわけではありませんけれども、一番最初にお聞きしたことの中に、実体法のところでは電子船荷証券記録上の権利としての譲渡うんぬんという構成があるのに、そもそもここで運送品の引渡しに係る債権という目的が出てくる。そこの違いの理由というのはあるんですか。ここを逆に電子船荷証券記録上の権利に関する強制執行と書いてはやはりいけないのですか。質問ですけれども。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。すみません、そこは厳密にちょっと意識はしていなかったところかもしれませんので、電子船荷証券記録上の権利というような形で書くことはあり得るだろうとは思いますので、何かそこを意図的に変えているというつもりはございませんので、飽くまでも要は原債権の強制執行の話をここで書いているというところですので、ちょっとそこは最終的な表現ぶりの話かなとは思っております。 ○池山委員 すみません、池山です。飽くまで確認ですけれども、そうすると、ここで運送品の引渡しに係る債権に対する強制執行がずらずらと書いてあるのは、要するに電子船荷証券記録上の権利に関する強制執行と書き換えても別にそこに理論的な差はなくて、むしろ実質的な議論があり得るとすると、この乙-2案の②’でこの使用、収益、処分する権利というのをもっと広いものを、あるいは違う次元のものを想定する、ここだけは別個、少なくとも論点として考えなければいけない問題で、そこにむしろポイントがあるということなんですかね。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。そのとおりです。 ○池山委員 ありがとうございます。 ○藤田部会長 よろしいですか。   池山委員が運送人の対応が困るという話は、何か対応するとすれば、582条1項を広げるという方向性を念頭に置かれているのでしょうか。確知することができない場合に供託することができると規定されていて、その後一連の規定がありますけれども、ここを広げるというイメージなんですかね。 ○池山委員 池山でございます。詰めては考えていませんが、そうです。それが解釈論で対応できるのであればそれでいいですけれども、そこは分からないですし、分からないのかなと。 ○藤田部会長 電子船荷証券記録固有の話というよりは、仮差押えを前提にすればそれ以外の場合も含めて起きる問題かなと思ったので、商法の規定そのものを変更するということにつながると思ったものですから質問させていただいたんですけれども。 ○池山委員 ありがとうございます。その意味では、実はこれは今もある問題なんですよね。今仮差押えがされてずっと止まってしまったときに、運送人が何ができるのかというときに、無理やり582条、無理やりかどうかは分かりませんね、582条、583条の解釈で何とかするかどうかという議論は確かにあるんだと思います。 ○藤田部会長 ありがとうございます。そのほか、どの点でも御意見ございますでしょうか。 ○山口委員 一応仮差押えも想定されているということでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。各案によって様々温度感はあるとは思いますけれども、仮差押えも想定はされるところですけれども、他方で、やはり仮差押えの場合は外した方がいい場合も多いのではないかというような感触は持っておりますので、そこは全部ひっくるめて甲、乙、丙を考えていく案もあり得るところ、甲案については、一応両方は想定しつつも、仮差押えは外した方がいいのではないかみたいな形で書いているところでありますが、乙案については、乙案は基本的には強制執行の対象にはならないと言っていますので、ここは問題にならず、丙案については、一応試案の本文といたしましては強制執行ということにしておりますので、仮差押えは想定していませんが、広げることはできるかもしれませんが、果たしてそれが相当かという問題はあるのかなと思います。 ○池山委員 今の点のこれは理解の問題ですけれども、丙案だけではなくて、乙-2案の場合も想定はするのではないですか、この電子船荷証券記録を使用、収益、処分する権利に対する仮差押えというのは。本差押えはできる、強制執行はできるけれども、仮差押えができないとはっきり書いていない限りは、そもそも何というのでしょう、執行の類型としてこういうものを想定する限りは、権利の疎明と、それから保全の必要性の疎明があれば論理的にはできるということはむしろ前提になっていて、条文の読み方として、ただ、仮差押えの場合はこの支配移転請求権は明文がないからないと、逆に懸念している問題であるところの支配移転請求権はないけれども弁済禁止効は生じてしまうと、かといって受戻証券性がある以上は仮差押え債権者はただ仮差押えするだけでは何もできないと、その状況はやはり起き得るのではないですか、いい悪いは別として。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今のは乙案のことでおっしゃられて…… ○池山委員 乙-2案です。 ○渡辺幹事 乙-2案ですよね。乙-2案の多分②’のところかと思いますけれども、ここで想定しているのは使用、収益、処分する権利に対する強制執行でございますけれども、それに対する仮差押えということでおっしゃられたのかということだとすると、それ自体を仮差押えをしても、おっしゃるとおり、支配の移転請求権というのは出てこないわけですけれども、使用、収益、処分する権利を差し押さえたとしても、別に弁済禁止効は発生しませんので、何といいましょうか、無意味な仮差押えということになります。そもそも保全の必要性すら怪しいという形で却下されるかもしれないというものになるのかなとは思います。 ○池山委員 分かりました。そこは、では乙-2の②’と丙の①の場合は全然違うということですね。 ○渡辺幹事 そうですね、少し毛色の違う話かとは思います。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。その他、どの点でも御意見があればお願いいたします。   第2部などはほとんど今まで検討しておりませんけれども、これで中間試案にしてしまってよろしいでしょうか。 ○山口委員 仮差押えのことではなくて申し訳ないのですけれども、この電子船荷証券記録というのは物ではないので、仮差押えを認める場合に物の所在地というのが認識できないと思うのですけれども、管轄については何か特別の規定を置く感じになるんですか、あるいは何かのみなし規定みたいな。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今の御質問は、恐らく乙-2の②’を採用する場合の電子船荷証券記録を使用、収益、処分する権利に対する強制執行を観念する場合に、この強制執行手続についての何か特別の規律、管轄なりを置かないかというところかと思います。そこのところは両方考えられるかなとは思います。何と申しましょうか、もしこの乙-2を採るとした場合には、そういったところの手当てをする必要があるかどうかも含めて検討することにはなると思いますが、他方で、その他の財産権というところで解釈に委ねてしまうということもあり得るかと思います。というのも、恐らくこの乙-2を採った場合の考え方としては、強制執行として非常に実を結ぶ手続というものを作るというよりかは、むしろ紙の船荷証券が発行されている場合と同様に運送品引渡請求権についての債権執行はできませんと、なので矛盾は生じませんというところに主たる意味があって、それでは債権者にとってあんまりだというところで、こういう使用、収益、処分する権利というものに対して、強制執行したら一応支配の移転請求権というものはありますという形にして一応の手当てはするものの、先ほど池山委員おっしゃられたとおり、それが非常に実効的なものかというと、恐らくそうではないというところでありますので、余り実効的なものというよりかは、むしろ紙の船荷証券と同じような同等の手段ですね、実効的とは思われないけれども同等の手段というものを一応用意しておきましょうという趣旨の規定になりますので、そういったときに、いろいろと細かいところを整理していくのがいいのかどうかというところなりも含めて検討することになるのかなとは思っております。 ○山口委員 分かりました。どうもありがとうございました。 ○笹岡幹事 第三者がぱっと見たときに疑問に思いそうなところで、少し根本的なことになるかもしれないのですが、この局面で強制執行が観念されるということは、何か財産的価値があるものがあるわけですけれども、それは運送品引渡請求権ではなくて、やはり運送品という動産であろうかと思います。運送品という動産について強制執行を行うためにどうすればいいかという問題として、船荷証券という有価証券が発行されている場合は、143条を介して動産執行の対象になると。その一方で、商事留置権のところでは、目的物として列挙されている有価証券の範囲から船荷証券は除くこととしたと思うのですが、同様に、民事執行法143条等の有価証券から船荷証券を除くという解釈はあり得ないのかなと思いました。手形や上場されている有価証券とはやはりこの運送品引渡請求権を表章している船荷証券は性質が異なるのではないかと。少なくとも、商事留置権のところの説明とこの部分の説明というものは一貫させていただいた方が、もしかしたら第三者からの見え方はすっきりするのかなとは思いましたので、御検討いただければと思います。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。すみません、ちょっと十分に理解できなかったところかもしれませんが、今民事執行法143条の関係で船荷証券が発行されていると、運送品引渡請求権の債権執行ができなくなってしまうというような整理をしているんですが、そもそもそれが違う解釈があり得るのではないかというような御指摘だったのでしょうか。 ○笹岡幹事 動産執行の目的となる有価証券と整理されているため、そのルートに記録の方もいけるかいけないかという議論になっていると思うのですけれども、そもそも紙の船荷証券自体も、動産執行の対象となる有価証券なのかというところを少し検討していただけないかと。この解釈はもう揺るぎないというのでしたら、少なくとも有価証券自体に財産的価値のある手形などとは性質が異なるので、先ほど運送品がなくなったらどうなるのかという話をしましたけれども、運送品がなくなったら運送品引渡請求権は全く意味がないので、結局、有価証券自体には運送品がない以上は価値がないという性質が船荷証券の特徴だと思います。そうすると、有価証券だけを例えば証券市場で流通させるとかそういうことはできないわけですので、この違いが民事執行法の解釈論にも影響するのではないかというところをちょっと整理していただきたいと思いました。一般的な見え方からすると、少なくとも商事留置権における整理とこの部分とが一貫しないのはちょっと違和感があるなというところです。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。すみません、御指摘を踏まえて検討してみたいと思います。 ○藤田部会長 その他、どの点でも、御意見、御質問ございますでしょうか。 ○池山委員 すみません、どなたも質問なさらないので、全然別の話です。これは第2部の方です。第2部の倉荷証券についても今後検討していくということなんですけれども、別にそれに私がどうこう申し上げる立場ではないのですが、具体的にどういうイメージでいらっしゃるのでしょうか。結局、誰も関係者の参加がないまま中間試案になってしまうのですが、後半で分科会か何かを作って別途キャッチアップされたりするのか、あるいは後半だけでやってしまうのかとか、その辺のイメージ、もし分かれば教えてください。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。倉荷証券につきまして本格的に検討する際には、当然その関係者の方々に追加で入っていただくことを想定しておりまして、できるだけ早い段階で入っていただきたいなとは思っておりまして、今事務当局で鋭意準備中という状況でございます。   取りあえず以上でよろしいでしょうか。 ○藤田部会長 倉荷証券について含めて検討するということになれば、当然そういう形で必要な人を手当てして、来ていただいてということになると思います。 ○池山委員 それはこの中間試案やパブリックコメントとのタイミングの関係でお聞きしたかったんですけれども、やはりその方々が入られるのは、この中間試案でパブリックコメントに付して、その後の段階でということになるんですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。事務当局としては、できれば中間試案を固める段階で御加入いただければ有り難いなという方向で準備はしているところでございますが、ただ、そこのところが必ずしも間に合わないということはひょっとしたらあるかもしれませんので、もしそうなると、パブリックコメント後から本格的に議論に参加していただくということにはなってしまうかもしれません。 ○池山委員 そうなんですか。すみません、くどくて。逆に、この中間試案自体は、今日の議論を踏まえて、もう一回、次回はあるんだけれども、早ければもう次回で取りまとめということですよね。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。中間試案自体は次回で一応取りまとめを考えておりまして、その段階で倉荷証券に関する方々にも御加入いただけると大変有り難いなとは思ってはいるところですが、何分スケジュール的に相当タイトでありますので、倉荷証券の関係ではこの程度というか、同じように検討してはどうかという形でとどめさせていただいて、本格的な検討はパブリックコメント以降ということもあり得るかなとは思っております。 ○池山委員 分かりました。 ○藤田部会長 その他、どの点でも、御意見、御質問ございますでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今の点、一つ補足をさせていただきますと、倉荷証券の関係では、電子化の御要望はあると我々としては把握はしているところではあるんですけれども、恐らく船荷証券ほど技術的に難しい問題というのが余り出てこないのではないかという推測をしておりまして、船荷証券の場合ですと、非常に国際的な問題であるとか、MLETRとの整合性とかすごく難しい問題が多々ありますので、船荷証券の検討をするに当たってそれらの諸課題をクリアして一定の方向性が見えたとするならば、それを流用するという形で倉荷証券の電子バージョンを入れていくということで恐らく大きな問題はないのかなという、今のところの見込みでしかありませんけれども、そんなようなことを考えておりまして、ただ、本当にそれでいいのかどうかというのはしっかりと検討はしなければいけないところですので、むしろこれまで御検討いただいて、船荷証券については一からいろいろ作り上げるという形で御検討いただいているところでありますけれども、倉荷証券の検討については、船荷証券でさんざん議論をしてきた到達点というのが一つの参考資料にはなると、そこが出発点になるという意味で、全く一からの検討ではないのであろうということを考えておりまして、そのようなスケジューリングでちょっと考えさせていただいているというところでございます。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。そのほか、どの点でも、ございますでしょうか。   もしないようでしたら、本日の審議はこの程度にさせていただきます。   次回の審議日程等について、事務当局から御説明をお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。本日も非常に様々な御意見を頂きましてありがとうございました。   次回の日程は、令和5年3月8日水曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省7階の共用会議室6、7を予定しております。   次回は、本日の御議論を踏まえて修正した中間試案の案を提示させていただきまして、パブリックコメントに掛ける案というものを確定することを予定しております。その後、中間試案をパブリックコメントに付していくというところを考えております。   本日、御議論いただいて多数の御意見を頂きましたけれども、部会資料7の中間試案のたたき台につきまして、そのほかにお気付きの点等がございましたら、事務当局まで様式は問いませんのでお寄せいただければ大変有り難いと存じます。   なお、本年4月以降の部会の日程につきましては、現在、法務省内で調整中でございます。決まり次第アナウンスをさせていただきたいと思いますので、今しばらくお待ちいただければと思っております。   事務当局からの説明は以上でございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会、第7回会議を閉会させていただきます。   本日は熱心な御審議を賜りまして、ありがとうございました。 -了-