法制審議会 区分所有法制部会 第4回会議 議事録 第1 日 時  令和5年1月16日(月) 自 午後1時29分                      至 午後4時48分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  区分所有建物の再生の円滑化に係る方策(2) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○佐久間部会長 少し予定した時刻より早いのですけれども、全員おそろいいただきましたので、ただいまから法制審議会区分所有法制部会の第4回会議を開きます。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は浅見委員、武部委員、衣斐幹事が御欠席です。   初めに配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○畑関係官 お手元の資料について御確認いただきたいと思います。事前に送付しました資料としましては、部会資料4「区分所有建物の再生の円滑化に係る方策(2)」がございます。また、参考資料7として「参照条文・資料集」、そして参考資料8として「マンション建替えにおける賃借権に関する事例」をお送りしています。お手元にないものがある場合には、途中でも結構ですので、事務局の方にお知らせください。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   それでは早速、本日の審議に入ります。本日は区分所有建物の再生の円滑化に係る方策について御審議いただきます。長時間にわたることになりますので、途中、適宜休憩を入れることといたします。   まず、事務当局から部会資料4の「第1 建替え決議がされた場合の賃借権等の消滅」について、参考資料7と併せて説明を頂きます。お願いいたします。 ○畑関係官 参考資料7は参照条文・資料集ですので、適宜御参照いただきながらと思います。それでは、部会資料の「第1 建替え決議がされた場合の賃借権等の消滅」について御説明いたします。まず、1の賃借権の取扱いについてですけれども、本文では建替え決議がされた場合の賃借権の取扱いについて三つの案を提示しています。   A案は、建替え決議において建物の取壊しの工事の着手時期の目安及び専有部分の賃借権の終了時期を定め、その終了時期が到来したときに専有部分の賃貸借は終了するものとするもので、賃借人の利益保護のために建替え決議から賃借権の終了時期まで一定期間、例えば6か月を確保しようとするものです。   B案は、建替え決議があったときは、賃借人が補償金の支払を受けられることを前提として、専有部分の賃貸人である区分所有者の請求により、一定期間経過後に賃借権が消滅するとするものです。請求権者については、賃貸人たる区分所有者を想定していますけれども、建替えに参加する賃貸人以外の区分所有者等とすることも考えられることから、(注3)ではこの点を指摘しています。補足説明では、その場合に補償金の最終的な負担の在り方についても問題となり得ることを指摘しています。また、特に補償金額の点について、補足説明では参考になると考えられる現行法上の制度を参照して検討を加えたものです。   C案ですけれども、建替え決議がされた場合に専有部分の賃貸借に関しては借地借家法の更新拒絶や解約申入れについての正当事由の規律を除外し、賃貸借の終了に関する民法の規律に従うことを提案するものです。   本文の(注)についてですけれども、まず(注1)では、A案又はB案とC案が両立し得るものであることを指摘しています。補足説明ではC案とB案を併用する例を紹介しています。また、期間や使用及び収益の目的の定めのある使用貸借についても、賃貸借と同様、建替え決議がされても終了させることができないという問題があることですから、A案、B案と同様の規律を設けることが考えられることを本文の(注2)では指摘しています。   以上が1の賃借権の取扱いについてです。   15ページから、2ですけれども、配偶者居住権の取扱いについて取り上げています。本文で提案しているA案、B案は、賃借権の取扱いにおけるA案、B案とおおむね同様のもので、内容や課題はおおむね同様に整理することが考えられます。ただし、配偶者居住権は、その財産的価値に相当する金額を相続したものとして扱われることから、賃借権と異なって、将来にわたる専有部分の使用について既に相当の対価を支払っているものと評価できるため、A案のように一定期間の使用のみを認めることについてはより慎重な検討があるとの指摘も考えられることは、補足説明で指摘しています。また、配偶者居住権については遺産分割等の場面で価額の算定が必要となるもので、既に示されている鑑定評価の方法があります。B案の補償金額の検討に当たって参考となるものと考えられますので、補足説明で取り上げております。また、相続税法上の評価の考え方についても触れております。   18ページの3では、担保権の取扱いに関する規律を設けることの要否について取り上げています。区分所有権に設定された抵当権その他の担保権についても消滅させない限り建替えを実施することは困難となるという点については、賃借権や配偶者居住権と同様ですので、建替え決議があった場合に担保権を消滅させる仕組みを設けることも考えられます。ただ、担保権は現行法においても債務者である区分所有者や建替えを推進する第三者が担保権者に対して被担保債権を弁済することで消滅させることは可能ですので、新たに担保権を消滅させる仕組みを導入する必要はないとも考えられますので、建替え決議がされた場合の担保権の取扱いに関する規律を設けることの要否について御議論いただければということで取り上げたものです。   部会資料4の第1についての説明は以上です。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。   続きまして、これらの議題に関連するものとして、矢吹幹事から参考資料8の説明を頂きます。お願いいたします。 ○矢吹幹事 国土交通省の矢吹です。今日もどうぞよろしくお願いいたします。1枚の資料、表と裏ですけれども、今日持ってまいりました。今日のテーマの一つであるマンション建替えにおける賃借権の扱いは、マンションの建替えに当たって大変重要なポイントではないかと考えております。なぜかと申しますと、やはりいろいろな事業者の方々、今日は不動協さんがいらっしゃいますけれども、再開発とかをなされるコンサルタントの方々からも、やはり賃借権で随分と苦労ないしは考えて工夫をするということがすごくあるのですというお話を伺っていますので、ここがうまく整理できるかどうかというのがマンション建替えをこれからうまく進めていけるかという点において重要なポイントかなと思っております。今日は資料で事例と、あとは少し、先ほど申し上げましたけれども、再開発コーディネーター協会が私ども国土交通省に置いている検討会で少し御意見を言われたものですから、そこを少し情報を整理するような形で資料化して持ってまいりました。   1ページをお願いします。たくさんの事例を御紹介いただいたので、JとかNになっておりますけれども、少し代表的なものを持ってきています。事例のJで、1970年代の地区で複合用途、商業が入っているマンションの建替えです。建替え決議時点では全員の同意ですということだったですけれども、賃借人が36人いらっしゃる物件ですと、建替え決議の後に明渡しを進めていくことになるわけです。二つ目のポツですけれども、権利変換計画の認可申請という手続になっていくわけですが、この時点で、36人全員ではないとおっしゃっていましたけれども、数名の賃借人の方と明渡しの合意ができないということだったと聞いております。最後まで残ったのが、住居ではなくて営業、事業をなされている借家人の方々で、最終的に賃貸人たる区分所有者が高額な立退料を支払うことによって賃貸借契約を合意に基づいて解約したということです。どうも聞くところによると、最後の1件まで、合意はなされたのですけれども、建物を取り壊すぎりぎりまで事業がしたいということをおっしゃられて、解体工事をしながらでも、上から壊していきますので、その下の階にある事業ができるということだったのだと思っていますが、解体工事中も明渡しを少し猶予してくださいということや、それに伴って電気とか水道とかの工事を少し、ぎりぎりまで使えるようにしておかないといけませんので、それでややイレギュラーな取扱いをすることによって合意が取れたと伺っています。結果的には、これはもちろん建替えができたという評価になるわけですけれども、このケースは賃貸人たる区分所有者の方の資産がある程度余裕があったというケースであったがゆえに支払うことができて、合意が取れたということです。事業のスケジュールも少し遅れたということでありましたけれども、結果的にはできましたが、やはり条件があったのだろうと受け止めをしています。それが事例のJです。   Nです。これも同じぐらいの築年数の物件で、ここは住宅オンリーの物件であります。ここは、本文の中にも少し言及があるかもしれませんけれども、賃貸人の方の意向にやはりどうしても左右されるという事例です。一つ目のポツですけれども、賃貸人の方、すなわち区分所有者の方ですけれども、事業の当初から建替えに賛成の立場ではなかったというケースです。この場合において、この賃貸人さんは建替え決議の後に催告をすることで、建替え自体には参加をされたという形で手続を進めていったわけですけれども、権利変換計画に係る総会の決議において、やはり賛成しませんということになったそうです。そうすると、手続としてはこの非賛成の方に売渡しの請求という手続がありますので、それはそれで進めていくということですけれども、このときになって当該賃貸人の方に対して賃借人が賃借権の主張をされたと伺っています。両者の関係がどうかについては正確には分かりませんけれども、この時点になって賃借人がいるということが言われたということであります。そうすると、この賃借権の主張に伴って賃借人さん、区分所有者が、この賃借人についても権利変換計画を定めるに当たり同意が要るということでありますので、当該賃借人が同意をしていないがゆえに権利変換計画が成立しないのだという主張がなされたということで、争いになったということであります。最終的には、事業者さんなどがいろいろな調整をなされて、事業を進めていこうという判断をして、売渡し請求の代金に一定の補償費を加算して区分所有者の方にお支払をすることで区分所有者の方と合意をして、賃借人についても区分所有者との関係において賃貸借契約を解除して、明渡しがなされたという事例であります。事例の二つほどを御紹介申し上げました。   次のページをお願いします。これも同じ私どもの検討会の中で、再開発コーディネーター協会というところが、こういうふうに考えておりますということについてお示しを頂いたものを、これも情報量を少なくしておりますけれども、少し持ってまいりました。これは、今日お示しのA案、B案、C案という資料そのものではありませんで、昨年9月に区分所有法制研究会の報告書で、その中でも、詳細の記載はまだでしたけれども、A案、B案、C案という形で、おおむね今日示されているものが示されておりましたので、それを見ての意見ということであります。   総論として、左上に記載をしておりますけれども、賃借権の消滅について重要なポイントというのが一つ目のポツです。特にこじれるとか難しくなるケースとして、いろいろな理由があるのだと思いますけれども、賃貸人たる区分所有者の方々の協力が得られない場合に苦労することがあるというふうなお考えでした。後ほどまた少し申し上げます。次のポツですけれども、賃借権について何らかの形で解消していって、明渡しを進めていかないといけないわけですけれども、賃借権があるかどうかの確認というのが事業を進めていく過程において外から、すなわち事業者、ディベロッパーとかコンサルタントとか、そういう方々からのその確認が難しいという点が挙げられております。後になって存在があると言われると、なかなかてこずるということかなと理解をしております。その上で、A案、B案、C案について少しコメントを頂いていますので、代わりに御紹介申し上げます。   A案は建替え決議で賃貸借契約の終了時期を定めるケース、これがやはり一番よいと思いますというお考えでした。なぜかと申しますと、先ほども少し申し上げましたが、賃貸人に何らかのアクションを求める形になっていないので、ここが非常に建替えの円滑化という観点においては優れているというふうな主張でありました。このA案の中で、建替え決議の時点で取壊しの着手時期が明示できるのかというところも言及がありましたけれども、これはできますというお考えでした。建替え決議をする時点で、いつぐらいに工事を着手して、いつで賃借権がなくなるか、すなわちいつ明渡しをするかということは、基本的には目安をお示ししないと、そもそも建替え決議の賛否の意見が集まらないということでしたので、それはできるのですということでありました。なお書で書いておりますけれども、報告書にも確かあったと思いますけれども、工事の着手時期が何らかの事情でこの時点においても工事の着手がなされないケースにあっても、賃借権を復活させるようなことは必要ないのではないでしょうかというお考えでありました。それがA案に対するコメントであります。   右側にいきまして、B案です。補償金による賃借権の消滅ですけれども、ここはB案とC案が共通する点ですけれども、一定の請求、賃貸人からの請求に伴って権利を消滅させるということになりますので、賃貸人のアクションが必要になるという点で少し特徴があるということかなと考えております。それはすなわち、次のポツですけれども、請求人は基本的には賃貸人になるわけですけれども、何らかの事情でその意思ないしは意図のある賃貸人が、建替えには自分としては、区分所有者としては賛成だけれども、この消滅の請求をやっていただけないような場合になると、そこでなかなか詰まってしまうということかなと、当然、代理の行使というものも考え得るのかもしれませんけれども、果たしてそれがどのくらい実現できるかという点が気になりますということでありました。   B案については今日、中身について少しお示しがあって、これから議論だと思いますけれども、補償金の算出方法についても、このB案を採った暁に建替えが進むかという点においては、検討しなくてはいけないですということを言われています。すなわち、現在の建替えの実務よりも高い水準にかえってなってしまうと、結果として建替えが進まないという結論が導き出されることになってしまいまして、やや本末転倒な結論になる可能性があるということです。その点での検討がやはり必要なのではないのかと考えていらっしゃるということでありました。これがB案です。   C案、借地借家法の適用除外ということで、ここも先ほどのB案の一つ目のポツと共通ですけれども、賃貸人の協力、すなわち請求をするというアクションが必要になりますので、そこの点についてB案と同じ評価ということであります。次のポツです。一般に2年を超える契約は少ないですので、事業の支障になるということは余り多くはないのではないでしょうかということの御意見でしたけれども、C案でもそれほどこの年数によって事業の妨げになるということはないのではないのかということを少し御意見がありましたということで、今日も事業サイドの御意見があると思いますけれども、少し私が代わりに紹介を申し上げました。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。   それでは、まず「第1 建替え決議がされた場合の賃借権等の消滅」のうち、「1 建替え決議がされた場合の賃借権の取扱い」、部会資料でいいますと15ページまでについて、御意見を伺えればと存じます。どの点でも結構です。いかがでしょうか。 ○鎌野委員 1点、その前に少し確認ですけれども、今、矢吹さんから御説明いただいた国交省からの御説明で、再開発コーディネーター協会の御意見を基にということで、1点確認ですけれども、この資料のところで、国土交通省が一部修正とありますけれども、これは多分、当然のことでしょうけれども、A案のところで本案がベストというのは、これは国土交通省が何か修正したという部分ではなくて、飽くまでも再開発コーディネーター協会さんの意見ということですよね。 ○矢吹幹事 御指摘のとおりです。 ○鎌野委員 念のためにということで。 ○佐久間部会長 今のところ、それでよろしいですか。 ○鎌野委員 結構でございます。どうもありがとうございます。 ○佐久間部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○小林委員 今いろいろ御説明がありましたけれども、やはり建替え決議が賃借権には影響を及ぼさないという現行法上の扱いは問題が多いと思います。賃借権よりも強い権利であるはずの区分所有権ですら、建替えに参加しない場合には売渡し請求によって強制的に売却されるわけですから、これと比較してバランスが悪いのではないかと思います。何らかの形で賃借権を消滅させることが必要だと思います。したがいまして、この資料にあります1ページから5ページの26行目ぐらいまでの補足説明の1と2については異存ありません。このとおりだと考えております。   それでは、次にA案、B案、C案のどれを採るかということなのですけれども、実は当初はA案について違和感を覚えました。それは、建替え決議で取壊し工事の着手時期を定めたとしても、そのスケジュールどおりに事業が進むという保証はありませんし、賃借権が消滅したのに長い間、結果として建物が残ったり、あるいは経済状況が急変したりして事業が頓挫してしまうという可能性もゼロとはいえないということから、そういう違和感を持ったわけで、建物を取り壊す段階になって賃借権消滅請求をするB案の方が適切ではないかと最初は考えたのです。   B案の方がいいとは思ったのですけれども、やはり賃貸人が建替えに参加表明しないようなケースではどうなるのかとか、あるいは何らかの理由によって賃貸人が賃借権消滅請求をしなかったり、あるいはできなかったりした場合にどうなるのかということも気になりまして、これについては今回の資料にも代位行使するということが記載されているわけです。理屈としてはこのとおりなのでしょうけれども、こういうことが実際に機能するのかという問題もありそうに思われまして、そこのところは引っ掛かりがあったというのが当初の考えです。   ところが、今、国交省から御説明がありました再開発コーディネーター協会のお考えを聞いて、少し考えを変えまして、今回、この追加送付された参考資料も拝見して、賃貸人がそれなりの理由があって協力しないケースというのがあるのだというのを改めて認識をしまして、それまでここまでは考えなかったのですけれども、確かにそういうケースも考えられまして、となりますと、B案の賃貸人の行動というものが前提となる案というのは確かに問題になるケースがあり得ると思いました。再開発コーディネーター協会の皆さん方というのは実際に多くの事例に関わってこられているわけですので、非常に重い意見ではないかと考えております。これを踏まえまして、現時点ではA案かB案かという点では、A案の方が適切だろうと私は考えを改めたところであります。   それから、追加資料の中で一言、補償金の算出方法も課題と記載されていますけれども、どうも具体的には、やはり営業借家において用対連基準で積算すると高額な補償費となって、建替え事業に支障を来す事例が出ているということのようであります。確かに公共事業で買い取られて補償される場合と異なりまして、老朽マンションの建替えですから、それによって借家人の営業ができなくなることの責任を全て賃貸人に負わせるべきなのかということについては、検討が必要なのかなと思っております。   それから、C案ですけれども、C案は今までの述べたこととは独立に考えられますので、これはこれで妥当なものだと思います。ただ、B案とC案が適用されるケースというのは想定しやすいのですけれども、A案とC案が両方とも適用されるケースというのは実際にどういうケースなのか、正直よく分からないところがありまして、そういう意味では、すみません、ここはC案についてはよく分かりませんと申し上げたいと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。御意見が非常に明確でありましたので、まとめる必要もないかと思います。承りました、ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○紺野委員 ありがとうございます。まず、借家権の消滅についてですが、絶対的に反対するものではないということで、ただし、ここで提示されていますA案からC案全てに少し不安があります。どれがいいのかというよりも。   A案の場合、ここで最低6か月の待機期間と設定されておりますけれども、果たして6か月で出て行くことができるのかと。借家人はそれぞれ生活条件が異なります。殊にこれは、成立してから果たして補償金なしに本当に出ていただけるのかという不安は、管理組合側としては当然持っているかと思います。   また、B案に関しても、補償金を管理組合が負担するようになることは、これは絶対この制度上はできないのではないか、飽くまでも賃貸者間での清算が前提になるのではないか、そこが明記されていない、どちらがするのかということが不安になっています。ことにB案については、賃貸人の補償金の負担が大きくなると、建替えに賛成する代わりに管理組合側に補償金を負担してくれれば建替えに賛成するというような、一時的なことで出てくると、その調整に時間が掛かってしまいます。B案にすれば簡単に建替えが進むというわけでもないと思います。特に高経年マンションにおいては、データ上も出ておりますけれども、賃貸率が上がるのは、こういう危惧が大変大きくなってくるということです。   また、C案におきましても、本当に補償金なしでよいのかと、結局、補償金がなければ出て行かないよというような、そういう要求も出てくるのではないかというところで、それぞれ賃借権が建替えについて終了するとなると、専有部分を借りてくれる人が少なくなってしまうのではないかという部分と、それから、こういう状況であると、建替えを検討している状況というのは、先ほどもありましたけれども、2年ぐらいがという話がありましたけれども、その間にそれを予告というか、借りようとしている人にするアナウンスとかが、誰が責任を持ってやるのか、そこら辺が明確でないところで、管理組合がそれに巻き込まれて、その調整等に時間が掛かってしまう、本来やるべき管理組合としての仕事ではないのではないかという部分があります。   私の方から少し危惧を感じたところを述べさせていただきました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。少し確認をさせてください。管理組合にとって幾つか不都合が生ずるということを御心配になっているわけですけれども、そうすると、管理組合に迷惑が掛からないようにするためには、どうすればいいというとおかしいですけれども、まず、賃借権の消滅自体は、それは賛成、反対というと、特に反対ではないということですか。 ○紺野委員 はい、そうしないとできません。 ○佐久間部会長 それで、管理組合に負担が掛からないような形で賃借権の消滅を可能にする制度を考えるべきだと、そういうお考えだと承ってよろしいですか。 ○紺野委員 はい。 ○佐久間部会長 分かりました。ありがとうございます。 ○鎌野委員 私はまず、先ほどの小林さんともある意味では通ずるところがあるのですけれども、私は最初はA案ということで割り切っていいのかなと思いましたけれども、いろいろと考えてみると、やはりB案かなと、まず結論を申し上げておきます。   その上で、そういうことに至ったのは、ちょうど頂いた資料の5ページの24行目ぐらいのところに、こういった民事の基本法である区分所有法において賃借権を消滅させる仕組みを設けるとすると、当該仕組みとマンション建替円滑化法による借地権関連規定との整理が必要となると、そうすると、もう既にマンション建替円滑化法というのが動き出して、多くの建替えというのがこれによってなされていると、そうすると、そこではいわゆる補償という制度、頂いた資料にもありますけれども、そういったことで処理をしているというような中にあって、それとの整合性というか、ここはもちろん区分所有法ですので、マンションを含む区分所有法一般なのですけれども、それとの関連というのが問題になっていって、要するに区分所有法でこのような補償がないという制度があり得るのかと。立法的には可能だと思います、後で若干私の意見を述べたいと思いますけれども。   そうすると、このB案の前提として、これは今回の法務省所管の区分所有法改正の議論ではないのですけれども、やはりそういったマンション建替円滑化法というのも含めて考える必要があるのかなと。そうすると、これはむしろ国交省さんの方の所管かもしれませんけれども、やはり私としては、マンションとマンション以外の区分所有建物、要するに区分所有建物全般に関して、マンションに特化したものではなくて、区分所有建物建替え等円滑化法という形でもう統一したのがいいのではないかと、マンションとそれ以外のものというのを区別する、それだけの実質的な理由があるのかということ、常々少しそういうことは疑問にあったのですけれども、そういうものを含めて考えるべきであると。ですから、ここに御指摘いただいたような5ページの24行目からの記述というのは非常に重要なものであろうかと思います。   ですけれども、やはり仕分は必要なので、民事の基本法としての建替え決議を行うまでは区分所有法なのだろうと、ですけれども、そこではやはり建替え決議を行う際に、賃借人がいるような場合に、それを無視できないので、やはりその規律は設けておく必要があろうということで、そして、その後の建替え事業というのは、やはりマンション以外のものについても円滑に建て替えられることが必要なので、そういった意味では円滑に建替えを進めるためには、やはりこちらの円滑化法の方もそのように整備しておくといいますか、そういう必要があるのかなと。   ですが、もちろん現行の制度でもそうですけれども、結果的にそういう区分所有建物の建替えをするような場合、あるいはマンションの建替えをするような場合に、必ずしも円滑化法に乗る必要はないので、それはそれぞれの建替え参加者の選択というような仕分というようなことで、やはり5ページの先ほど申し上げたところというのは非常に重要なのかなと考えております。可能であれば御検討いただければ、これは法務省さんだけではなくて国交省さんも含めた議論というのが必要になってこようかと思いますけれども、まず、少しそのことを申し上げたいと思いますので、飽くまでも御検討いただければ有り難いということでございます。   B案の理由は、また後でほかの委員の方の御意見を聞いた上で、私の考えも述べさせていただければと思います。一応そういうことを申し上げて。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。少し確認をさせていただきたいのですが、区分所有法とマンション建替円滑化法との調整、あるいは事柄による住み分けが重要だというのは、おっしゃるとおりだと思うのですけれども、賃借権の消滅そのものについては、鎌野さんは、それは区分所有法に設ければいいというお考えですね。 ○鎌野委員 はい。そして、基本的にはそれは賛成です、消滅すること自体は。 ○佐久間部会長 分かりました。あと、マンション以外の区分所有建物を包括した形の事業法を作るというのは、これは国交省の方の問題であろうと思いますが、鎌野さんから国交省に対するそういう御意見があったということを確認した上で、B案の中身は後でということでしたけれども、国交省から御紹介を頂いた事例は、マン建法がある下で、しかし賃借権の消滅に関して現状、問題がないわけではないということであったわけですけれども、それでもB案だということですね。 ○鎌野委員 はい。 ○佐久間部会長 B案の中身についてはまた後でということでしたので、その確認だけさせていただいて、後でまた意見を伺うことにいたします。 ○齊藤委員 どうもありがとうございます。御説明どうもありがとうございました。法務省も国土交通省も、御丁寧な御説明を大変ありがとうございました。実は私はA案、B案、C案、まだ迷っておりまして、全管連さんと同じように、幾つかの危惧がございますので迷っております。私もはじめはA案かなと考えたのですけれども、いろいろ考えたらB案かなと考えました。その考えるプロセスについて少し御説明させていただきたいと思います。   今回、A案もB案もC案も、マンション建替えの決議が賃借権に影響を与えるということを考えてみますと、今までと異なる新たな考え方と思いますので、その点で、まずしっかりと幾つか確認させていただきたいということです。一つ目は、こうしたスキームが必要であるだろうということは私も理解しています。ただ、これはかなり、A案もB案もC案も従来の考え方と違って、少し言い方は悪いかもしれませんが、賃借権、借家の権利が弱くなる、こういう言い方が正しくないかもしれませんが、ということですので、そうしますと、それにどういう理屈、論理を付けて弱めるのかということをしっかりと構築していく必要があって、それを考えるのがこの場であるのかもしれませんので、そうしますと、その理屈がしっかりしない中でA案もB案もC案も選択はできないのかなとは思っております。   私も以前からマンション建替えに興味があり、今回もこういう場への参加の機会を頂いておりますので、建替えに関わっている方々に何人かヒアリングさせていただきましたところ、従来、借家の問題は結構問題になったのだけれども、結構ノウハウが蓄積されてきて、問題を表面化しないようにかなり予防的措置が働いてきていると聞いてきております。ただし、深刻なのは、先ほどありました営業用の、いわゆるテナントさんのような事例だということがありますので、今回これほど借家に関する考え方を再構築するのであれば、その必要性をしっかり社会的に共有していかないと、賃借人の方の権利の保護という面で問題が指摘されてはいけないと考えます。皆さんは十分考えておられるかと思いますが、その必要性というものを明確にしていく必要があるのではないかと思っています。   「建替えを阻害しているから、これはなくしましょう」ということであれば、阻害しているものはほかにも一杯あると思いますので、それでは理屈にはなりません。今回、所有権よりも強い借家権になってしまっている、このアンバランスをどういうふうに是正していくのかということ、これは、区分所有のマンションの建替えというのは、やはり個人の財産の集合体ではなくて、公共性とまではいわないにしても、やはり共同の利益の価値があるというような、マンション建替えに新たな意味付けが要るのではないか、その意味付けの共有が必要であると考えています。よって、先生方の御指導を得ながら、理論をしっかり構築した中で、どれがA案、B案、C案に適用できるのかを考える必要があるのではないかというのが1点目でございます。   2点目、少し気になったことは、今マンション建替えを進める場合、現実には3つの方法があります。1つめは区分所有法で決議を取って区分所有法で進める、言い換えると円滑化法を使わない。2つめは区分所有法で決議を取って円滑化法を使う。3つめはケースによっては再開発法を使うという、3つの方法があります。それぞれの場合に借家人の取扱いが違ってまいります。例えば、1つめの区分所有法のみだと借家人の取扱いは特にないわけですが、2つめの円滑化法の利用となれば、例えば権利変換計画に同意が要るとか、権利変換計画で借家権の継続居住が保障されているとか、また、変換しない場合は申出で補償されるということです。円滑化法というのは事業を進めるためのものです。しかし、現実にはどの方法をとるのかによって借家人の権利が違ってきているという実態があり、そこにはそれなりの根拠があったのだと思いますが、この根拠を今回はどういうふうに整理していくのかということです。私は今回の資料を読ませていただいて、そもそも借家権とは何なのだろうと、一体何を保障すべきなのでしょうかと考えました。財産だけを保障すればいいのではなくて、居住や生活までしっかり保障していくという考え方に立つと、多分この補償金の考え方も大分違ってくるのかなと考えます。従来のマンション建替え円滑化法でやってきたことを区分所有法の中でこういう考え方を位置付けるのか、いや、それは円滑化法にお任せし、一つの案としては、鎌野先生がおっしゃられたような、全てのものが適用できるようにしていくという考え方もあるのかなと思いましたので、是非皆様の御意見、御指導を頂きたいと思っております。   事業を進める中でやりやすいのはA案と思い、私も当初、A案がよいかなと考えたのですが、従来の考え方が、賃貸借契約は賃貸人と賃借人の関係で整理していくという考え方に立つと、B案の方が根本的な物事の考え方のスキームを変えなくていいのかなと考えます。そうなりますと、この補償金という金額の妥当性が非常に重要になってくるし、そこが逆に紛争とかトラブルの元になるのかなと思います。そこで、例えばイギリスのリースホールド、借地の場合のマンションは、イギリスではこの借地権を買い取るということを、借地人たちが買い取りたいと言ったら地主は認めなければいけないという法律なのですが、その認めるためには、買い取り価格の妥当性が重要になりますので、法律の中で鑑定の基準が決まっている。そして、その金額でもめれば速やかにその金額を調停できる体制がありますので、補償金の金額をどのように決め、それをいかにもめないで、そして速やかに解決していく体制も一緒に考える必要があるのではないかと思っています。   いろいろ考えなければいけないことが多く、私自身が整理できていないのですが、もし今の段階でA、B、Cのどれなのだと問われたら、B案がよいのではないかと考えているところでございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。何点かおっしゃいましたけれども、建替えを円滑に進めるためには賃借権を何とかしなければいけないということは、必要性は分かるけれども、どう理屈付けるかということで、従来の賃借権の扱いと、建物賃借権の話ですけれども、これは大きく異なった考え方をとることになるのではないかということが御指摘になったことです。資料でそれに関連して記述されているのは2ページの25行目、26行目辺りだろうと思います。他の専有部分の区分所有者はその賃借権について関知し得ないというところが、一般の賃貸借とは異なるということだと思います。私が申し上げるまでもないと思いますけれども、一軒家あるいは一人の賃貸人が支配する物件についての賃貸借ですと、その賃借権というのは当該の賃貸人が設定をし、自らの責任で建物を維持管理し、賃借権を維持し続けるという、それは契約をしたのだから当然だということがいえるのに対しまして、区分所有建物の場合には、もちろんその専有部分については同じ理屈は当てはまるのですけれども、区分所有建物の他の部分がなければ当該専有部分の賃貸借というのも成り立たないという関係にあるところ、他の区分所有者はその賃貸借に元々関与していないし、その賃貸借から利益も得ていない。そこが一戸建てなどとは根本的に異なるのではないかというのが今のところの指摘です。また、その先には、仮に建替え決議が成り立った後、しかし、ある賃借人の立ち退き拒絶によって建物がずっと存続せざるを得ないということになりますと、賃貸借に関与せず、また利益も得ていない他の区分所有者は、建物維持の負担を負い続けるということになります。逆にいうと、これがなぜ正当化されるのかということは考えなければならないということなのだろうと思います。従来そのようなことが意識されていたのか、されていなかったのか、私にはよく分かりませんけれども、一般の賃借権保護の問題と同じ次元で考えていいのか。区分所有建物には区分所有建物固有の扱いをすべき部分があるのではないか、というところが問題になっているのだろうと思います。委員、幹事の皆様方はいろいろこの点についてお考えもおありだろうと思いますし、今、齊藤委員がおっしゃったとおり、いろいろなことをここは考えなければいけないということだと思いますので、御意見を承ればと存じます。 ○大桐委員 ありがとうございます。齊藤先生がおっしゃったのとダブる部分が多々あるのですけれども、私の意見としましても、この論点は大変難しい問題と考えておりまして、まず、A案からC案を御提案いただきましたけれども、これを考えるに当たりまして、やはり根本的なところを議論していかなければいけないと思っております。   賃借人の立場から考えていきますと、一般の建物を借りれば正当事由で保護されるにもかかわらず、区分所有建物を借りた場合には、なぜ特例で保護されないといいますか、その要保護性が下がるのかというところをどう説明を付けるのかというところにおいて、必要性、合理性について十分に説明を付けておかなければ先には進めないのかなと思っております。   また、賃借権、借家権の意義付けという点についてどのように考えるのかと、純粋な財産権なのか、あるいは人格権や居住権、その環境もともにそこで暮らしていけるというコミュニティーという観点も含めているのかというようなことですとか、それ以外にも、団体の拘束力がそもそも及ばない、意見の陳述権はあるにしましても、議決権までは持っていない賃借権において、賃借人に対して、建替え決議をしたから終了なのだということを言える根拠というのがなかなかないようにも思いますので、その関連において議論を進めていかなければいけないと思っています。   また、このまま賃借権が容易に消滅してしまうシステムを作ってしまいますと、恐らく予測されるのは、憲法訴訟のようなものが多発するであろうということも懸念するところであります。まず、賃借権がなぜ保護されているのかというのは、一つとしては、社会的な政策でもって賃借人は保護されるべきだというものがあるから、現状はそのようになっているのだろうと思うのです。そこの部分を変えてしまっていいのかというところが、区分所有建物であるからといってそれを変えてしまう理屈が本当にあるのか、ないのかというところを考えていく必要があると思います。とはいっても区分所有権よりも保護されるのはおかしいという、その一つの御意見等も理解できなくはないので、この中でどれが近い意見かということになりますと、B案、情報共有を前提として、賃借人に対してもきちんと建替えの議論について付いていってもらうような情報共有を経た上で、しかも行き先を探す十分な検討期間を与えつつ、金銭的な補償ということを与えた上でのB案と、ここで行けばB案が一番近いのかなとは思っております。単にこの終了ということで賃借権の消滅だけが先行して独り歩きさせるのは、やはり適切ではないと思っておりまして、円滑化法の中での補償金のシステムを利用するのであれば、その支払時まではやはり消滅をさせることができないと、補償金を支払う、あるいは供託したときに終了するというようなシステムであるべきかなと思っております。   それから、日弁連というか私の方の考えとしましては、建替え決議の緩和についての論点においては客観的な危険性要件前提での案を述べさせていただいておりましたけれども、ここでもそれを前提として、客観的に危険性の要件である場合においてはそういった賃借権を消滅させるというシステムを設けるというB案ということで、述べさせていただいております。しかも、賃貸人が何も協力してくれないような場合に前に進まないではないかといった懸念につきましては、(注3)において請求権者を補足的に挙げていただいておりますけれども、こちらの方で対応が可能かなと思っております。   取りあえず、以上です。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。少し伺いたいのですが、客観的に危険な建物についてのみ決議要件を緩和するとともに、その場合にだけ補償金の支払と同時に賃借権を終了することができる、消滅させることができる、それが日弁連の御意見だということですか。 ○大桐委員 日弁連の意見といいますか、バックアップチームでの今の意見ということになっております。 ○佐久間部会長 こういう言い方をするとあれかもしれませんが、客観的に危険なのに、賃借人はお金をもらうまで立ち退かなくていいのだ、止められるのだというのが本当にいいですかね。 ○大桐委員 今よりは一歩前進になるのかなと思います。 ○佐久間部会長 あと、賃貸人が非協力である場合に、他の区分所有者が補償金の支払を負担して、出て行ってもらえるようにすると、それは。 ○大桐委員 補償金の負担とはまた別です。請求権者がということですね。 ○佐久間部会長 しかし、賃貸人自身が請求しなかったら、その賃貸人がお金を払うとは思えませんよね。 ○大桐委員 負担者とはまた別として理解をしています。 ○佐久間部会長 最終的にはそうかもしれないけれども、一旦誰が払うかというと、ということで、それは、賃借人というのは、契約関係は賃貸人との間であり、他の区分所有者の関知しないところで得た権利だけれども、賃借権は社会権の一種のようなものだから、他の区分所有者にもそのような負担が事実上及んでも仕方がない、そういうお考えだということで。 ○大桐委員 考え方は少し違うのですけれども、本来は当事者間の問題として賃貸人が請求すべきであり、負担すべきも賃貸人でありますが、賃貸人が非協力的な場合において、請求権者が請求しないということで止まってしまってはいけないのでということで、他の参加者やディベロッパーにおいても請求することができると、ただ、最終的に負担すべきは賃貸人であろうと思っております。といいますのは、賃借人がいることによって今まで賃料で収益を上げてきた人は賃貸人でございますので、それを参加者等に負担させることになりますと、その参加者自体の負担が大きくなってしまって、かえって事業が進まなくなりますし、また不公平感も高まりますので、補償金の負担者は飽くまで賃貸人に負担させると、求償。 ○佐久間部会長 もちろんそのとおりだと思いますけれども、他の区分所有者は賃貸人が動かないときには実質負担を覚悟すべきであるということですよね。 ○大桐委員 立替えですかね、立替えというか、後に求償する。 ○佐久間部会長 もちろん。分かりました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○水津幹事 少し違った観点から、意見を申し上げます。部会資料では、建替え決議がされた抵当権その他の担保権の取扱いについて、担保権については、被担保債権の弁済により担保権を消滅させることが可能であるため、新たな規律を導入する必要はないという考え方が紹介されております。しかし、担保権には不可分性がありますので、被担保債権の額が高額である担保権が多数あるときは、被担保債権の弁済により担保権を全て消滅させることが難しいこともありそうです。この場合には、建替えの円滑な実施が阻害されるおそれがあります。他方で、賃貸借の期間が定められているときであっても、その期間がそれほど長くないときは、借地借家法上の正当事由に関する規律が適用されないのであれば、国土交通省から提出された参考資料8での御意見にもあったように、賃借権が建替えの円滑な実施を阻害するとはいえないこともありそうです。   このように考えますと、担保権について新たな規律を導入する必要がないというのであれば、賃借権についても借地借家法上の正当事由に関する規律が適用されないとするのがせいぜいであって、賃借権消滅請求等に関する規律を設けるのは、バランスがやや悪い気がいたします。反対からいいますと、賃借権について賃借権消滅請求等に関する規律を設けるのであれば、バランス上、担保権についても担保権消滅請求等に関する規律を設けた方がよいものと考えられます。部会資料において参照されているマンション建替円滑化法等は、担保権の取扱いについても規定を設けているかと思います。   以上に述べた意味において、担保権の取扱いは、賃借権の取扱いとしてどのような規律を設けるかについても、影響を及ぼすような気がいたしました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。担保権の消滅についてはまた後で伺いますので、そこでも御意見を頂ければと思いますけれども、今は水津さん御自身のお言葉がありましたとおり、担保権消滅請求、あるいはまた担保権の処遇と賃借権の処遇は全体として平仄が合うようにすべきであるという御意見であったと承りました。だから、例えば担保権消滅請求の方を盛り込むのであれば賃借権についてもA案、B案もあり得るべし、けれども、そうでないのであればC案がせいぜいだろうという御意見、それでよろしいですね。分かりました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。私も確たる意見があったわけではないのですが、A案、B案、C案だったらB案ではないかと思いながらここに参りまして、本日、先生方のお考えを伺いながら、やはりB案かなという感じがしております。   というのは、やはりA案は区分所有者の多数が建替えに賛成していることを借地借家法でいう正当事由として認めることと同視でき、賃借人の利益の保護という趣旨を後退させる懸念があるのではないかということです。   一方、B案は賃借人に補償金を支払うことで、保護に一定の配慮をしたと考えられるのではないかと思います。建替えを多数が希望しているという事由に補償金を加えることで、定型的に正当事由を認めるという評価ができるのではないかと考えます。ただ、皆様方がおっしゃっているように、補償金をどうするかは、資料にもあるように、大変問題になるかと思います。どの程度の額にするのかについては、よく考える必要があり、また、営業補償のことも問題になってくるかと思いますが、それは、算定方法を決めた後でいい知恵が出てくるのではないかというふうに考えました。   C案はA案とほとんど同じではないかと思われまして、そうすると、やはりここで出されている中ではB案ではないかと考えたところです。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。B案につきましては、何人かがおっしゃっているとおり、補償金の額をどうするかということも問題となります。また、大桐さんがはっきり立場はおっしゃいましたけれども、補償金の支払と引き換えに明渡しということになるのか。原案というか、補足説明のところでは先に終了、補償金の支払はその後ということになっておりますが、この点をどうするかを、B案を採る場合には考えなければならないところです。本日はまだ基本的な立場を伺うという段階ですけれども、この点についてももし御意見があれば、この後伺えればと存じます。 ○能登委員 まず先に建替えの現場の実態をお伝えさせていただき、その後に、案に対する御意見を申し上げたいと思います。   区分所有者が建替えの必要性を理解しつつも、反対若しくは無関心になる原因として、精神的、物理的負担に加え、やはり金銭的な負担が大きいと感じています。昨今の建替えに関する金銭面の状況ですが、日影規制等の施行によって再建される建物の余剰面積が減少傾向にあることも影響しており、我々事業者が参画した場合でも区分所有者の負担軽減は著しく難しい状況であり、区分所有者の皆様は建替えに伴って数百万や数千万円といった追加資金が必要になることが一般的になっております。   このような状況下で、賃借権の解消に伴う補償金についての現状は、賃借人が建替えの事情に理解を示し、補償金なしという形で円満に明渡しを頂けるという方も大勢いらっしゃる一方で、参考資料8で示されているとおり、非常に高額な補償金を主張されるという方もいらっしゃいます。そうした千差万別な補償金の要求があるということは、区分所有者にとっては事前に額も予期しにくく、先に申した以上の更なる精神的、金銭的負担を強いられるというのが現状でございます。   また、先ほど鎌野委員の御意見にありましたマンション建替円滑化法での借家権の取扱いですが、建替え後の新しい建物は一般的に賃料が上がる傾向にございますし、仮住まいや二度の引っ越しが必要になることから、その再建マンションに対して借家権を主張し、権利変換を望まれる借家人の方は少なく、実態としては権利変換前に合意解決を図ることが建替えを進行する上で大事な流れとなっております。一人でも賃借人との解決が見込めないと、権利変換計画案も作成できず建替え全体の円滑な推進が滞るという現状を踏まえまして、今回議題に挙げていただいております賃借権の消滅については早期対応が必要な重要な課題と感じております。   そこで、建替えの円滑な推進のために、現場の実情を念頭に置いた上で、お出しいただいている三つの案に対して意見を申しますと、まずはA案を基本に検討いただきたいと考えております。先に申し上げましたとおり、補償金の支払なく円満に借家人に明渡しを頂いているケースが数多くありますので、区分所有者の負担軽減を考えると、B案のような一律で補償金ありきというような制度とすることについては、賃借人と良好な関係を築いていらっしゃる大半の区分所有者の方にとっては、やはり抵抗感が大きいのではないかと感じております。また、B案、C案は、個別の賃貸借契約それぞれの事情を踏まえて対応していくことになりますので、スケジュールの不確定さがありますが、A案については、建替え決議時に御賛同いただいた権利変換、工事等の全体スケジュールについて、賃貸人の方も賃借人の方も理解が進むというシンプルさがございますので、建替え決議時の機運醸成やその後の機運維持にも資する案と考えております。   なお、期限について最低6か月との案を示していただいておりますが、賃借人の負担軽減を勘案いたしまして、借地借家法の建物賃借人の保護規定を準用して、最低6か月という案ではなく、1年以内としても良いのではないかとは現場で考えております。   また、A案の場合は、決議時に示した工事着手が遅れることも想定されますので、その場合の措置として、賃料収入をできるだけ長く得たいという賃貸人や、極力長く住み続けたいという賃借人の両方の観点からも、賃借権消滅時期の延期を可能とする措置の設定も望ましいのではないかと考えております。   一方で、B案については、先に示したとおり、補償金支払を必須条件にする必要はないという考えですが、実際に生じている補償金に関する争いを避けるために、若しくは区分所有者や事業者において予見可能とするためには、一定のルール化が望ましいと考えております。ルール化に当たっては、賃借権評価が区分所有権価格を上回るということは合理的ではないと考えておりますので、区分所有権価格の何割といった上限を定める必要があると考えています。②案で示していただいている用対連基準を基本とした通損補償を行う場合、現在家賃が相場よりかなり安価の場合においては、賃借権の評価が区分所有権価格を大きく上回るということも生じてしまいます。そういったことを回避するためにも、ルールとしましては、③案の区分所有権等の時価の一部とするのがよいのではないかと考えております。   最後に、C案についてですが、賃貸借契約期間中の解約申入れが規定されていない契約の場合、賃貸借期間終了まで賃借人は明渡しをしないこととなります。実務上、定借期間が5年といった例なども少なからずあるということを考えますと、個別の契約内容に事業自体が大きく左右されてしまうという懸念がやはり払拭できないという形になりますので、期間満了前に明渡ししていただくためにあえて補償金を支払うというような解決手段は考えられますが、C案単体では建替えの推進という意味では少し不十分と考えております。   従いまして、繰り返しになりますが、A案を基本としていただきつつも、無償も含めた形で、B案の記載にあるような補償金のルールの制定を御検討いただけたらいいと考えているのが我々の案でございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。細かい点で2点確認をさせてください。一つは、A案を採る場合に、6か月ではなくて1年以内とすることはどうかとおっしゃいましたが、それは明渡しまでに与える期間の最低期間は定めず、単に1年以内とするということですか、それとも、6か月は与えて1年以内ですか。 ○能登委員 1年以内と単体で規定するのがよいと思っています。なぜ最低6か月なのかというところの議論だとか、決まってから6か月だと短いというような御意見も頂いていたかと思いますけれども、逆に最低6か月という規定だと、議論によっては2年、3年というようなことも起きてしまうというところもございますし、設定する期限の理屈として、借家法に規定されているような保護規定をうまく利用するということで、1年という形で整理するのがよいのかなと考えている次第です。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。ただ、賃貸借の終了までの期間が、これは飽くまで例えばですが、6か月を下ってはならないということは、2年、3年になることはもちろんあり得るのですけれども、それは、明渡しを求める側が2年、3年を選んでわざわざ定めるということが一応、原案になっています。そこを実情に照らして2年与えますとするのは、賃借人の方が強く要求することがあり得るので、期間が延びるおそれがある、というようなことをお考えになっているということですか。 ○能登委員 発言としてはその意図も込めましたけれども、1年以内と規定する目的としては、賃借人の方の負担軽減を考えた上でのA案というところですので、1年以前とした場合の今おっしゃっていただいたようなことも考えますと、皆さんの御意見を賜りたいなというところではございます。 ○佐久間部会長 ひとまず承りました。もう1点なのですが、B案について、B案を採ると一律に補償金の支払が必要であるかのように受け止められて不適当であるとおっしゃったと思います。それはそうですよね。 ○能登委員 はい。 ○佐久間部会長 その上で、しかしB案の要素もというのは、どういうことをお考えですか。区分所有権価格の何割というのが望ましいということは承ったのですけれども、結局のところB案を採るのか採らないのかというと、最終的には採ることもあり得べし、ということでよろしいですか。 ○能登委員 そうですね、一番の希望としましては、A案をやはり基本として、補償金のルールに無償となる場合も含めた規定を設けていただくというのが一番の案なのですけれども、この議論の進む中で、B案プラスC案ということも考え方としてはあるとは思っております。 ○佐久間部会長 分かりました。B案の中で補償金を定めるところで、何度かおっしゃった、現状無償で立ち退いている人も少なからずいると。そういう場合は補償金がそもそも発生していないはずなのだから、そのような場合も当然あるような基準であるべきだと。そういうお考えだと理解してよろしいでしょうか。 ○能登委員 はい。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   では、ほかにいかがでしょうか。 ○寒竹委員 たまたまなのですが、今、能登様がおっしゃった意見と非常に似ておりまして、やはりA案が基本ではないかと思っております。その理由といいますのは、やはり区分所有者とのバランスといいますか、賃貸に出していたということで補償金の支払義務が発生するというのが非常に違和感があるというところで、やはりB案よりA案がいいのかなとは思っております。ただ、今もお話にありましたように、現状、人によって、例えば営業している方とかは営業補償を請求したり、中には営業していない方でも補償を請求する方もケース・バイ・ケースでいらっしゃるし、もちろん無償で出て行く方もいらっしゃるということだと思うのですけれども、やはり何らかの基準を設けておく必要があると思っておりまして、だからA案とB案の中間みたいなイメージなのですけれども、あと、ごね得というのも、言った者だけがもらえるというのもおかしいという気はしつつも、ただ、そこにこだわらず出て行かれる方もいらっしゃるわけですし、建替えの円滑化を目的とするという今回の改正の主題からすると、一律にB案でどの方にも補償権を取得させるというのがすごく、権利の取得と裏腹に義務が発生するので、違和感を感じたというところでした。ですので、今の能登様の御意見には非常に賛同するものであります。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。 ○鎌野委員 先ほど、最初にB案ということ申し上げましたけれども、佐久間先生が先ほど2ページのところで御説明いただいたことは全く同感で、ただ、他の区分所有者というのは直接は無関係だということで、ですから飽くまでも、このペーパーの全体の基調もそういうことなのでしょうけれども、基本的には賃貸人たる区分所有者がB案でいう補償金は負担するということで、これを他の区分所有者が負担するということはないということだろうと思います。   まずその点を確認した上で、そうすると、先ほど私が最初に申し上げたこととも関連するのですけれども、もちろんA案あるいはC案というのもあり得るのだけれども、これは別にそういうふうに考えて割り切ればいい話で、特段問題は生じないということになろうかと思うのですけれども、逆からいうと、A案とかC案を採った場合に、区分所有法ですから区分所有建物全体を対象とするということで、そうすると、そこには当然マンションも含まれると、そうすると、既に先行しているマンション建替え等円滑化法による補償金との関係が問題になると。   多分、立法技術的にはこのような場合には、区分所有建物全般について、借家人は基本的にはこの法が施行された後は、補償なしにA案とかC案では借家権が消滅をすると。消滅すること自体は私は賛成しますので、その上で補償の問題ですけれども、恐らくマンション建替え等円滑化法があるので、ですから、この法律が仮にそういうふうに改正したら、A案とかC案で、施行前のマンションの借家権者は多分、従前の例によるということで、その当時借家人だったので、その者には施行後のこの区分所有法の改正法の適用はないということになろうかと思いますけれども、細かなことで申し訳ないのです。そして、今度は施行後はどうなるかというと、これはマンションを含む区分所有建物全体の借家人は補償なしに、B案ではないですから、借家権が消滅をするということで。先ほど来議論になっているように、区分所有権というのは非賛成者の区分所有権も多数決によって消滅をするので、借家権が消滅すること自体は理解できるとして、ですけれども、当該区分所有者による補償がないことについて果たして正当化できるのかどうかという非常に厄介な問題があるということです。非賛成の区分所有者は、言わば区分所有権等について賛成しないのですから、丸々時価によってその区分所有権等の言わば補償というか賠償を受けるという中にあって、ある意味ではその人が、当該借家人に対して補償せずに、丸得というか、そういうことでいいのかどうかというような問題が起こりはしないかと。   そして、被災借地借家法など特例法では、災害ですので、それはやむを得ないとしても、ほかの法制の都市再開発法などによると、やはり借家人保護ということで借家人もそれなりの補償というか、与えられていると、そういうような法体系全体の均衡ということから、果たしてA案とかC案というので行けるのかどうかという、これは少し心配というか、そうではなくて、飽くまでもその辺りのことは関係ないと言われればそれまでなのですけれども、都市再開発法でも、そういった意味では多数決によって、言わば再開発ビルというか、そこで、そしてその間の借家人も一定の保護が与えられていると、そういう中にあって、この区分所有法でA案とかC案というようなことで法全体の整合性というのが成り立つのかと、先ほど水津幹事の方から担保権との整合性というお話がありましたけれども、ここでも我が国の法制全体の中でA案とかC案というのが何か正当化できるのかという懸念が少し私はありますので、申し上げておきました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。1点、まだどなたも御発言いただいていないので、鎌野さんのおっしゃったことから、これはどうですかと伺いたいことがあるのですけれども、まず、借家権自体の消滅は、これは区分所有権自体が消滅するのであるから、やむを得ないと。 ○鎌野委員 はい。 ○佐久間部会長 しかし、賃貸人との関係で賃借人は賃借権という権利を持っていて、この権利を言わば外在的事情によって消滅させられるので、補償が必要であろうと、これは賃貸人に対する補償請求権ということですよね。 ○鎌野委員 はい。 ○佐久間部会長 その場合に、賃貸人との間で有している補償請求権が履行されていないときに、賃借権の消滅はしているので、明渡しは先行して、他の区分所有者はですかね、あるいは元区分所有者の団体はですかね、請求できるとお考えですか。 ○鎌野委員 そのとおり、そう考えます。 ○佐久間部会長 では、資料にある立場と同じということですね。 ○鎌野委員 そうです。 ○佐久間部会長 分かりました。ありがとうございます。 ○鎌野委員 そして、もう1点いいですか。少し細かいことで、ここの(注3)なのですけれども、請求権者を、これは多分、売渡し請求の場合の買受け指定者を念頭に置いていると思うのですけれども、もう一つの考え方としては集会の招集権者、こういうのが、要するに64条の合意が調ったので、もうそれが、ですから、わざわざ全員の合意ではなくて、賃借人に関してそういうことの消滅請求というかそういうものを、もちろん賃貸人本人が請求すればいいのですけれども、賃借人と、そうではないような場合には、一つの考え方としては集会を招集した者、ちょうど63条の1項ですか、もあるのかなと、そこではいわゆる建替えに参加するかどうかの催告なのですけれども、そういう方法もあるのかなということで、少しこれは御検討というか、私もどちらがいいのか分かりませんけれども、その点だけ気が付きましたので、申し上げておきたいと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。いろいろあり得ると思いますので、考えさせていただきます。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○森本委員 ありがとうございます。建替え決議がされた場合には、その実効性を伴わせるために、賃借権を消滅させる制度を設ける必要があると考えます。結論から申し上げますと、B案とC案の併用がよいのではないかと考えております。   B案につきましては、賃借人の保護を考えると、単に一定期間経過で消滅するとの考え方ではなく、6か月を下回らないなど一定期間は明渡しを猶予できる仕組みを取り入れる必要があるのではないかと思います。そして、請求権者については、賃借権消滅請求権者を賃貸人に限ってしまうと、賃貸人が消滅請求したか否かを知らせない場合には賃借権消滅請求権を代位行使すべきか否かの判断ができないおそれがあるため、確実に賃借人に対して賃借権消滅請求権を行使するために、賛成者の合意によって指定された者が請求できるようにした方がよいと考えます。   村上委員が言及されていた点も含めまして、賃借権の消滅時期につきましては、消滅請求後一定期間経過すれば賃借権が消滅するものとし、必ずしも補償金の払渡しと同時履行である必要はないと考えます。ただし、補償金の支払時期に関しては、いわゆる通損補償の考え方を採用した上で、動産移転料や移転雑費など賃借人が専有部分を明け渡す前に必要となる費用に相当する金額については先に支払い、残額については明渡し完了後に支払う等の制度にすれば、賃貸人と賃借人の双方の利益に資するのではないかと考えます。   補償金額については、さきに述べましたが、通損補償を採用することが望ましいと考えております。ただし、通損補償を採用する場合には、建替え決議の動きの情報を知った区分所有者が補償金目当てに賃借権を付けるという状況が生じるおそれがあり、例えば、決議の招集通知を発した後の賃貸借には補償を適用しないなど、補償を適用する賃借権の設定時期については考慮を要すると思います。   ところで、A案につきましては、齊藤委員も述べられていましたけれども、賃貸借契約における賃貸人と賃借人の関係は個々に事情が異なります。そのため、一律に終了させるということに抵抗を感じます。住居は生活上特に重要な事柄であり、賃借人の保護を考えると、やはり何らかの補償が必要であると考えますので、A案には賛成しかねるところです。なお、A案で論じられている建替え決議後に締結された賃貸借については、B案におきましても、建物を取り壊す時期に賃貸借が終了する旨の定めがあるものとみなされる規定を設けた方がよいと考えております。   B案とC案の併用につきましては、例えば2年程度の短期の賃借権については、C案の正当事由を排除し更新を拒絶することで対応し、長期の賃貸借などC案で対応できない場合には、B案の補償をもって対応するということがよいのではないかとも考えております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。B案とC案であるけれども、B案における消滅の請求権者は賃貸人ではなく、例えば指定された者ということにすべきだということですね。それはB案なのかな、何となくA案プラス補償というふうな感じも。 ○森本委員 賃貸人に限ってしまうというわけではないということです。 ○佐久間部会長 なるほど、それにも与えるということですね。分かりました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○沖野委員 ありがとうございます。A案についてなのですけれども、制度としていろいろなメリットがあるとは思うのですけれど、ただ一方で、なぜ本来であれば消滅しない権利を全くの補償なく、ただ明渡しのために、準備のための一定期間の猶予だけで奪うことができるのかというのを説明するのは非常に難しいのではないかと思っております。   一つは、建替えの円滑化という政策目的ですけれども、もう一つは、取り壊されてしまえば本来はもうそこで賃借権自体は終わってしまう、その取壊しの原因如何によっては賃貸借契約の債務不履行の問題ですとか、そちらの損害賠償は契約の話として、それはもう完全に契約当事者間でやってもらうということにはなるのですけれども、出て行っていただかないと取壊しができないというところだとすると、もう決議がされた段階で既に取壊しに向かっているので、その取壊しで建物も賃借権もなくなるところを若干前倒しにするという発想で、かつ若干の補償金というような、何もなければというか、本来想定されたならばここで終わってしまう、それを少し前倒しをして、その分の手当てを若干付けるというような発想で、さらに、賃貸借契約上何かあるなら、それはそれで契約当事者間の問題としてやってもらうとすると、A案プラス小さな補償といいますか、そういうことがあり得るのではないか。   それから、時期なのですけれども、時期も、例えば工事の着手時期が3年後であるのに、明渡しはもう6か月で明け渡してもらうというのが、それで賃借権を失わせてしまう、何もなくても少なくとも更にあと2年半ぐらいは使えたのに、消してしまうということが果たして正当化できるのだろうかと考えると、やはり工事の着手時期に照らして、これまでには必ず出てもらわなくてはいけなくて、その出たりするためにはある程度の期間が掛かるとすると、そこから前倒しになるここまでの間で、ただ、そうはいっても少なくとも6か月は取るというような、期間の設定についてももう一段の考慮が必要ではないかと思うところです。   仮にA案プラス小さな補償金というような形で考えたときに、補償金を誰が負担するのかという問題はやはり出てくるのですけれども、第一次的には賃貸借契約において処理すべきだとすると、第一次的には賃貸人で、しかし賃貸人が責任を履行しないときには第二次として区分所有者全員が責任を負うということで、その代わり、それほどフルに大きな額にはならないというような形で考えられないだろうかと思っております。それ以外にも、C案と組み合わせるとか、そういうことはあろうかと思っておりますけれども。   B案は、もうこれは様々な対案が出ておりますけれども、請求しなかったらどうなるかという、そこの手当ても考えなければいけないということと、補償の考え方がいろいろになってくるので、かなりそこがバリエーションがあるのがどうだろうかと、解決できないわけではないのだと思いますけれども、そうするとA案プラスということも十分考えられるのではないかと思ったところです。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。何点か申し上げようと思うのですが、まず、A案について沖野さんがおっしゃったとおり、どうしてこれで明渡しの請求ができるようになるのか、根拠は何かということについては、資料5ページの32行目にある、恐らくこれが基本なのだと思います。沖野さんもそのようなことをおっしゃったと思うのですが、結局、建替え決議というのは建物を取り壊すことになるものだと。建物を取り壊すということになると当然、客体の滅失によって区分所有権もなくなるし、その賃借権もなくなると。したがって若干前倒しにして、建替え決議があったことが賃貸借の履行不能もたらすというような発想で終了させよう、ということだと私も理解しております。   それで、本当にそのとおりだなと思いましたのは、そうであるとして、その履行不能になる時期はいつかというと、やはりこれは工事に本来着手したときということになるはずであるので、6か月の最低猶予期間に加えてというか、それだけでいいというのではなくて、工事の着手時期の目安を示したのであれば、それにかなり近接した時期がその履行不能時というか、その終了時とされるべきだと。正にそのとおりだと思いました。小さな補償制度というのは、私はこの案を見ていて、A案とB案とで、B案のような補償がどうしても必要なのかなと思っていたので、この資料にも書いてありますが、A案を採った場合には、補償はなかなか理屈が付かないのではないかというのがありましたけれども、賃借権そのものに対する補償ではなくて、外在的事情による履行不能をもっての終了ということになったことに対する、迷惑料というと少しおかしな言い方かもしれませんけれども、当座要る費用はありますよね、そこだけは見ますね、という理屈だと。A案と補償は必ずしも相容れないということにはならないのかもしれない、物理的滅失とはやはり違うので、と思いました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○吉原委員 ありがとうございます。私もA案とB案で非常に迷いました。結論から申しますと、今、沖野委員、それから佐久間部会長がおっしゃいました、A案を主軸として、もし小さな補償というものが何らかの形で実現できたらいいのではないかと思っております。事業を行う施工者の側から見ますと、A案がベストというのは全くおっしゃるとおりだろうと思います。ただ、住んでいる側から見ますと、建物の老朽化など自身の責任ではない外的な事情によって立ち退かなければならない、そして、その後の事業や住居の安心について考え直さなければいけないということを考えますと、一律の義務ではなくて補償金の支払請求権のような権利を認める、あるいは何らかの補償をする仕組みが必要であろうと考えます。   それから、補償金について確認をさせていただきたいのですが、もし賃貸人が建替え決議に不参加だった場合は、その不参加区分所有者の権利というものは売渡し請求でほかの方に移るということで、賃借人に対する補償金はほかの人たちが払うことになる、その理解でよろしいでしょうか。 ○佐久間部会長 今の制度では、売渡し請求があって買い取った人が賃貸人になりますので、その人が支払うということになります。 ○吉原委員 ありがとうございます。そう考えますと、賃貸人と賃借人の契約関係というものと団体の意思決定に基づく権利関係の調整というものをどう法的に整理するのだろうということを少し疑問に思いました。一軒家でしたら、賃貸人、賃借人の甲、乙の関係で進んでいくわけですが、もし賃貸人が建替え不参加で、自分は売渡し請求で出て行き、賃借権だけ残っているというとき、そこへの補償をほかの人たちが負担するということについては、先ほど齊藤委員が、マンションというのは単なる所有権の集合体という以上に、その公共性といいますか共通の利益を有する団体だという趣旨のことをおっしゃったかと思うのですが、補償の在り方というものも、誰が誰に対して補償するのか、単に賃貸人と賃借人の間だけのことでは済まない問題のように思います。   そのように考えると、どの基準を適用して補償金額を算定するのかということについてはいろいろな考え方がありますが、現在の賃料をベースに算定するというのは少し優先度は下がるのではないかと思っています。建物賃借権には一般に市場性がないという指摘があるという記述がございまして、そういう市場性の低いものをベースに補償金を算定するということは、複数の賃借権者がいるときに、あの部屋の人は幾らもらっているけれども、この人は幾らなのだという差が出てくるということが、果たしてマンションという集合体における補償の在り方として妥当なのかどうかという論点は一つあるかと思います。   そう考えますと、先ほど能登委員もおっしゃいましたが、例えば、12ページの③の区分所有権等の時価の一部とするなど、市場性のある価格を基準として、そしてその算定に当たっても、管理組合の負担は増やせませんけれども、施工者の方で一律で算定するなりの効率的なやり方の方がいいのではないかと考えます。賃貸人と賃借人の間で鑑定をして金額まで決めるとなりますと、更に手続負担が重くなり、時間も掛かることが懸念されます。また、金額にばらつきが生じたり、あるいは不参加区分所有者が自分は立ち退いて、そして残っている賃借権者が多く補償金をもらえるように現在の賃料を意図的に操作する余地も出てきてしまうかもしれません。そこで、団体の意思決定というものと個々の契約関係というものの整理も、この補償金の算定方法を考える上では一つ、論点ではないかと思っております。ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。補償金の算定は確かに難しくて、小さな補償といったところで、それをどうするかというのもすごく難しい問題です。けれども、肝腎な問題であることは間違いありませんので、これからまた皆さんのお知恵を、B案あるいはA案プラス補償になったらということですけれども、考えを詰めていきたいと思います。 ○中野幹事 幹事の中野です。皆さんの今のお話を伺っていても、やはり私の方ではどうしても疑問が残るのは、現行の規定による正当事由とか、そういうものを使って解決することが本当にこれはできないのでしょうかと、そういう観点です。   一つ気になるのは、この改正法は今後建つマンションに規定されるものなのか、既存の建物もこの規定で賃借人というのは権利制限を受けるような、そういう状況になるのかという点が、まずは少し気になりました。もし今後の、これから建つ建物、マンションについて適用されるのであれば、そういうルールの中でマンションを買うのだから、それはそれでいいでしょうということになりますが、既存のマンションの賃借人に対してこの規定を使うというのは、少しどうかなと思っています。   いずれにしても、建物の建替えは我々、性善説というか、当然ながら考えれば、それは必要だから建て替えるのですよということがあるかもしれない、それは耐震性が満たしていないからとかいうことはあるかもしれませんけれども、それ以外の理由でも、もっと大きなマンションにしたいとか、特別な何か安全上の問題以外のところでも建て替えたいという人たちがやはりいるわけで、私なんかは裁判で1件扱ったのは、この人を追い出したいがための建替え決議みたいなことをやって、とにかく退けというようなこともありました。ですので、そういうことも考えると、どうしても建て替えなければいけない正当な理由があれば、それは正当事由で判断されるのだから、その立場で何がいけないのかなと、そういう気がしておるので、特別にこの規定を何かいじらなければならないということについては、少し幹事としては否定的というようなことです。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。今後建つ建物のみか、既存の建物にも適用するのかについては、既存の建物にも適用することが、議論の大前提にはなっております。ただ、今はそれを前提といるということであって、今後のものに限りましょうとすることも排除されているわけではありません。中野さんの御指摘も今後きちんと踏まえていくことになろうかと思います。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○大桐委員 補足的に若干。先ほど、対象物件が完全に消滅した場合には賃借権は当然に消滅するので、本件の建替えにおいてもその考え方が正当化の一つになるみたいなコメントがどこかにあったと思いますけれども、それは少し話が違うかなと思っております。といいますのは、賃貸借の当然消滅ということの根拠は、正に対象物件がなくなって賃貸のしようがないから当然消滅するのであって、まだ消滅してもいないものについて賃借権を消滅させることの根拠にはならないと考えます。   また、同じく14ページの5行目辺りにありますように、借地借家法の39条の取壊し予定の賃貸借において終了する旨を定めることができるとされており、これに準じて賃借人の保護を後退させることが正当化され得るとも考えられると、こういったコメントが書かれておりますけれども、こちらも少し話が違うと思っております。39条の適用場面というのは極めて限られておりまして、取壊しが決まった後においてこういった定めをするということの規定ですので、取壊しがまだされていない、まだ決まってもいない段階で既に賃貸借がなされている場面においては、全く論点が違うのかなと思っています。   正に建替え決議がなされた後にわざわざ賃貸借を設定したような濫用的な場面においては、そういったものについては権利変換計画の認可の申請の時点での同意が必要ないというような規定、57条2項のただし書ですかね、その辺りに入れるというのはあり得るのかもしれませんけれども、その話と、賃借権を元々持っていた方についての検討を一緒に議論するのは少し違うのかなと思いましたので、コメントを致しました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。1点目におっしゃった点ですけれども、物理的滅失とは違うと。それはそのとおりなのですけれども、建替え決議が成立いたしますと、区分所有者は明渡しの義務を負うことになり、どの時点か明確に線引きはできないのですけれども、区分所有権の喪失がある段階では起こるのですね。物理的な滅失まで本当に区分所有権が喪失していないのかというと、そういう整理も可能なのでしょうけれども、ある時点でもって、区分所有権というものは、権利としてはあるのかもしれないけれども、使用収益、処分の権能は、もうそこからは行使することができません、という整理はあり得るのではないかと思うのです。仮に、区分所有権そのものが、建替え決議が成立したために、ある時点から、これが結局、目安を示すということになるのだと思うのですけれども、ある時点から使用収益、処分の権能を制限されるのだということになりますと、収益権能も制限されるということを含んでおりますから、賃貸借について、一区分所有者は、自らそれを継続する法的権能を他の区分所有者との関係で制限されるというような整理をするのだ、というのが先ほどの説明です。ただ、これはどちらが正しいということではなくて、そういういろいろな考え方が成り立ち得るところ、今後どのように整理していくかということの問題だということです。 ○吉政幹事 ありがとうございます。1点だけ申し述べます。何度か出ていますB案とC案の併用という話です。部会資料の(注1)でも書かれていますように、A案又はB案とC案は両立し得ると、論理的にはそのとおりであろうかと思います。   ただ、私が理解したところですと、B案というのは、これは借家人に一定の利益が帰属していて、賃貸借の終了時にそれを区分所有者、すなわち賃貸人に買い取ってもらえる、その利益を賃借人である借家人に渡す、こういう発想なのだろうと思います。これ自体は理解できるのですが、C案の正当事由制度を適用しないというのは、ある意味ではそれとは異なった発想に出たものではないかと思います。賃貸人と賃借人の種々の利害を調整し、賃貸借を修了させるかを判断するというのが正当事由制度ですから、それについて特別なルールを定めるというC案はB案とはかなり異なった発想を背景に持っていて、なぜB案とC案を併用するという考え方が出てくるのかが十分に理解できなかったというのが素朴な感想です。もちろん実務上、B案だけでは不十分で、C案も併存させることが有益なのだというのであれば反対するものではありませんけれども、B案を採用するのであれば、賃借人に補償金を与える形で、C案をなしにしてB案を一本化するという方が、制度の作りとしてはきれいではないかという感想を持ちました。的外れなことを申し上げているのではないかと恐れておりますが、以上です。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。いや、おっしゃったとおりB案一本でも全然問題ないのですが、多分発想としてはB案とC案というのは、C案を採りつつ、しかしそれでは長期の賃貸借の場合にC案だけで対応できないので、それを消すためにはB案ですかねと。そういうのがB案、C案の併用の基本です。それしかないわけでもなく、それが望ましいかどうかももちろん御議論いただかなければならないのですけれども、そのようなことだと思います。 ○吉政幹事 ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○鎌野委員 度々すみません。先ほど、B案の中で一つの在り方として、沖野委員あるいは佐久間先生の方からも出ていましたように、この補償というのは比較的小さな補償という基本的な考え方は、私も賛成をします。   それで、一つの案として、先ほど来、マンション建替円滑化法を挙げておりますけれども、お手元の資料集の62条のところに区分所有等の価格の算定基準ということで、多分こういうのが一つの参考になって、そして、いわゆる借地権価格というのは市場が成立しないので、なかなかそれは算定しにくいというのもごもっともだろうと思います。   それから、先ほど佐久間先生の方からも言われたように、基本的に履行不能による損害というような、基本的な核というのはそういうものだろうと、私もなるほどということで、そうすると、例えば62条の基準を、これは法務省さんの方で更に詰めていただいて、きちんと条文化ということですけれども、このB案のように、補償というだけでは非常に曖昧ですし紛争の元になるというようなことで、多少具体的にこれを定めておくことができるのかなと。売渡し請求の場合の時価の場合は、時価ということである程度もう範囲が明確になると、そして、あとは少し、実際にこのペーパーでも書いてあるような形で説明を加えると、例えば法務省さんの方で解説本で説明を加えるということで、大体それが実務に反映されるかと思うのですけれども、ここでは単なる補償というままでは非常に紛争の元になるというようなことで、例えば、履行不能による損害その他というようなことで、もう一方では円滑化法の62条の近傍類似の土地又は同種の建物に関する同種の権利、ここでは前半の部分は関係なくて、借家権ですけれども取引価格等ということで、ですけれども、実際には市場が成立しないということであれば、それは非常に低額に収まるというような形で、少し先走った話かも分かりませんけれども、そういった補償金をどういうふうに定めるかということで、今気付いたところでございますけれども、少し意見を申し上げておきました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。B案とか、補償と引き換えに消滅、あるいは消滅に加えて補償を与えるということの場合は、その補償金をどうしますかというのは絶対に避けて通れないというか、一番大事になりますので、早い段階から、大変言葉は失礼ですけれども、思い付きに近いようなものであってもどんどん出していただければと思っています。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○武藤幹事 国交省の武藤の方から、鎌野先生から冒頭御質問いただいて、正しく理解できているかというのはあるのですけれども、区分所有の中のマンションでないものについては、我々としては営業用の区分所有権については特段のニーズというか、建替えのニーズを把握していないので、少し議論が難しいところが正直、ございます。   一方で、今回出てきているような借家権については、我々の方で示した事例Jのところにも営業借家の話が出ていますけれども、実はマンションの建替円滑化に関する法律ですと、居住に関する配慮、これが国土交通大臣の基本方針にも入っていまして、あと借家の方もその居住の安定ということが言われているわけなのですけれども、この営業借家に関する課題というのは、有り体に申し上げると、国土交通政策としては少し理解が困難な状況でございまして、それが更に現場で高額な立退料を支払うという実態につながっているというのが、マンション建替えあるいは再開発の方で現在課題となっていると認識しています。国土交通政策としてどうするかということは非常に課題なわけですけれども、我々として今、その理解が難しいという現状にございます。   そういう中で今、いろいろな補償の話が出ていまして、どういった形、そもそもA案なのか、B案なのか、C案なのか、皆さん議論いただいていて、我々もそれを見守っている状況なのですけれども、補償については我々としても是非、非常に注意深く設計をお願いできればと思っています。鎌野先生からマンション建替えのスキームとの並びの話を頂いたのですけれども、我々も区分所有法制で今回この補償のところが変わっていけば、当然マンション関連法令でも、それが我々の法令に照らしてどうなのかということを考えなければいけないので、そこはここで非常に注意深く議論していただければと思っています。   1点ありますのは、先ほど一部の委員からもありましたけれども、これが悪用されるおそれもあるというか、例えばですけれども、マンションの建替えがうわさされただけで入ってくる人も仮にあり得るとすると、そこは非常に注意深く制度設計しなければいけないと思っていますので、皆様の議論を見守っていきたいと思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○鎌野委員 今の点、よろしいでしょうか、これはむしろ武藤さんには釈迦に説法かも分かりませんけれども、現行の確か建替え等円滑化法で、それは基本的にはマンションに適用されるというときに、それが居住の用に供するものが5戸というような制限で、そうすると、この事例Jのような複合用途というのもマンションということで円滑化法に乗ってくるというようなことなので、先ほどそういうことで申し上げたということでございますので、そうすると、そういう場合に果たしてマンションと完全な営業用の、住居は全くないというものと区別できるのかと、それで、やはり国土交通省さんのマンション政策室だけの所管ではなくて全体の所管だと思いますけれども、そういった区分所有建物全般についての事業法というのはやはり必要なのではないかということで少し申し上げたので、検討していただければと思います。 ○武藤幹事 はい。 ○鎌野委員 どうもありがとうございました。 ○佐久間部会長 ほかにいかがでしょうか。   よろしいですか。随分いろいろな意見を頂戴いたしまして、今後に向けて大変貴重な検討材料を頂いたと思っております。そろそろ随分な時間、もう2時間近くになっておりますので、ここで一旦切らせていただき、休憩とさせていただきます。少し短いのですけれども、15時30分まで休憩とさせていただきます。           (休     憩) ○佐久間部会長 時間になりましたので審議を再開いたします。   この時間は、「第1 建替え決議がされた場合の賃借権等の消滅」のうち、「2 建替え決議がされた場合の配偶者居住権の取扱い」をまず扱いたいと思います。資料でいいますと18ページまでです。また自由に御意見を賜れればと存じます。いかがでしょうか。   先ほどの賃借権のところとどうしても連動する部分はありまして、もうその連動する部分は言わなくてもいいやということになりますと、余りあれなので、配偶者居住権固有の問題として何か考えることがあればということだと思いますけれども、いかがですか。賃借権の方が決まってこないとなかなか、というところはあると思いますが。 ○大桐委員 ありがとうございます。賃借権と、特に違いという点につきまして申し上げますと、配偶者居住権の場合には区分所有者自体が親族であるので、配偶者居住している方のことを思って行動するであろうという行動が予測されますので、恐らくは建替え決議に賛成をして、引き継ぐ感じになるのではないかと。仮にそうではないようなケースを想定しますと、引受人の方が配偶者居住権を負担したもので建替え後の建物に住まわせるというようなことになるのではないかというイメージではおりまして、特段配慮すべき点としましては、居住されている方が御高齢者であることが多いことが想定されますので、賃借人の場合よりは高めの保護が必要なのではないかといったことが考えられるかと思います。結論的には、ここで採るとすればB案になるのかなということではありますが、果たしてそのニーズがあるのかどうかというところは議論が出たところでございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。引受人とおっしゃったのは誰のことですか。 ○大桐委員 引受人というのは、区分所有者自体が反対していて建替えに参加しないという場合に、売渡し請求をされて、その引受け手といいますか、その方が今度、建替え後の区分所有権を取得して、そこに配偶者居住権が付くといったことになるのではないかということを想定されますので、要するに、配偶者居住権を主張された場合は権利変換計画で、その計画の中に配偶者居住権を乗せて、そこで引き継いでいただくというようなイメージを想定しています。もし少し違う認識であれば、御指摘いただければ有り難いです。 ○佐久間部会長 違うかはどうかはともかく、配偶者居住権の場合は、区分所有者が建替えに反対して売渡し請求になったら、買受人は配偶者居住権を承継し、新建物についても新たな専有部分についても承継して、そのまま継続させなければならないということをお考えだということですね。 ○大桐委員 はい、そうですね。 ○佐久間部会長 分かりました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   配偶者居住権に関しては特に現状、それは賛成でも反対でもなく、今の資料の線で考えて、どれと決まっているわけではないですが、こういう考え方で取りあえず、まずしばらくは進めていってよかろうということだと受け止めさせていただいてよろしいですか。何も御発言がないというのは、これは駄目だということでもなく、これでよいということでもないということでよろしいですね。 ○鎌野委員 どなたもないようで、念のためにということで。基本的には今、部会長がおっしゃったように、賃借権とある意味ではパラレルに考えるべきかなということで、それ次第ということになるのでしょうけれども、先ほど私が1のところの賃借権についてはB案がいいということで、ですからこの配偶者居住権についても基本的にはB案というか、やはり何らかの補償という、だけれども、その補償の在り方が全く賃借権の場合と同じなのかどうかというのは別途検討しなくてはいけないだろうと思いますけれども、そして、先ほど来申し上げているように、マンション建替え等円滑化法においても配偶者居住権も賃借権と同じように扱っているので、だから、それと別に一緒にしなくてはいけないというのは全然ないのですけれども、そういった賃借権の在り方と基本的には同じように考えるべきかなと、そうするとB案の方向でというふうに私は意見を申し上げておきます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   では、よろしければ、配偶者居住権については特に強い意見はなかったということで、次回以降もこの案を基本に、賃借権の方が変わっていくとこちらも変わっていくかもしれないということで、進めさせていただくことにいたします。   では、続きまして、もう一つ、「第1 建替え決議がされた場合の賃借権等の消滅」のうち、残っております「3 建替え決議がされた場合の担保権の取扱い」について御意見を伺います。   先ほど水津さんからここに関係することを御意見頂きましたけれども、水津さんとしては、積極的にこうすればいいのではないかという御意見はありますか。なければ、今のところ特にないでも結構なのですけれども、規定はやはり積極的に設けるべきだという方向での御発言だと受け止めてよいのか、純粋にバランスということを考えると、賃借権の消滅と担保権の消滅については、どちらが先かは置いておいて、バランスをとにかくとる必要があるということでよいのか、その点はいかがですか。 ○水津幹事 私の意見は、後者として申し上げました。担保権には不可分性があることを考えると、部会資料に挙げられた理由によっては、担保権についてのみ規律を設けないことを正当化するのは、難しいように思いました。今のところは、賃借権について権利を制限する規律を設けるのであれば、抵当権についても権利を制限する規律を設けるという考え方から出発したうえで、具体的な取扱いについて、賃借権と抵当権との違いを踏まえて規律を整備していくのがよいのではないかと考えております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかに、担保権の処遇について、いかがでしょうか。理屈でいえば、担保権の方は放っておいていいということにはならないと。 ○能登委員 まず、マンション建替円滑化法の実務上のお話をさせていただきますと、円滑化法では権利変換の認可申請のために抵当権者の同意書が必要と規定されております。抵当権者は銀行となるケースが多く、その場合同意書に頭取印が必要で、以前は手続きに非常に時間を要しておりました。しかし昨今では、抵当権者の御理解も進み、時間も要さない形に改善されてきていると感じています。   ただ、実務上、銀行に限らず根抵当権者を含む抵当権者への同意を求める事前打診は可能ではあるものの、実際は権利変換の従前、従後の具体的条件が判明してから抵当権者の判断が行われるため、より権利変換に近いタイミングでの判断となります。区分所有者間の膨大な合意形成の過程を経て具体的な条件が判明した時点で、抵当権者の同意が得られず事業が中断するということは、賃借権についてと同様に避けたい事案と考えております。   その意味では、区分所有者が建替えに参加する場合には、建替え後のマンションに担保が移ることについて「抵当権者の同意」ではなく、「抵当権者への通知」のみで可とする、また建替えに参加しない場合は、退去に伴って得られる補償金から弁済又は供託を行うことで抵当権が抹消される、といった制度の検討があってもよいのではないかと考えております。いずれにしましても、抵当権者は必ずしも銀行とは限りませんので、建替えの円滑な推進に資する明確なルールは作る必要があると考えている次第です。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。水津さんと同じで、抵当権についても処遇を明確にすることが必要だという御意見と承りました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○齊藤委員 ありがとうございます。今御説明がありましたように、多分この担保権に関しては、円滑化法を使うと担保権者の建替え後の建物に担保権が移行できるという制度がありますが、必ずしも建替え全部が円滑化法を使うわけではないということを考えますと、実務上は、例えば小規模なマンションは手続が大変だから使わないとか、先ほどから話題になっている、区分所有の建物でもマンションでないものは使えないということを考えますと、こういったことができるように、建替え後の建物に担保権が移行できるような制度を作るということは必要ではないかと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。先ほど賃借権のところでも、どなたでしたか、同じことおっしゃいましたね。権利の処遇が使う法制度によって違うというのはいかがなものかと。それはおっしゃるとおりかもしれない。区分所有法で手当てをすれば、そこは解決をするということだろうと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○鎌野委員 今、齊藤委員がおっしゃったことと基本的に同じなのですけれども、ここでは基本的には担保権を消滅させるという、現行の純粋な民事法からいえば、こういうのが論点だろうと思います。そして、現行ではここに書いてあるような474条で行けるのだという整理になろうかと思いますけれども、先ほども少し出てきましたけれども、実務上も言わば担保権を新しく建てられた区分所有建物の当該専有部分に付け替えるというような制度が円滑化法の方で先行しておりますので、果たしてこの区分所有法の改正でそういう制度まで創設するのかどうかというのが多分論点だろうと思いますので、私は基本的にはやはり何とかそういう制度が設けられた方がいいのかなという気がしますけれども、あとは多分選択の問題だと思うので、現行の474条を使うか、それとも付け替えということなのかというようなことで、そういうのも次回以降、検討していただければと思います。もちろん検討した結果、ひょっとするとそういう制度はここでは使えないということになるかもしれませんけれども、その点、先ほど齊藤委員が言ったことについて同意見だと、そういうことも検討してくれということを少し申し上げておきたいと思います。 ○佐久間部会長 分かりました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○森本委員 こちらは特段の規律を設ける必要はないと考えております。担保権は賃借権と異なりまして、一定の補償は伴いますが、消滅させることはそもそも可能ですので、単に消滅の規定を設けることについては担保権者の権利を不当に害することにもなりかねませんので、設けるべきではないと考えるところです。皆さんが必要だという意見だけでしたので、あえて一言、意見を述べさせていただきます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。確かにそのとおりでありまして、建替えを円滑に進めるには担保権消滅している方がいいけれども、およそ消滅させられないのかというと、債権者の同意を得なくたって、お金を払ってしまえば消滅するというのは確かに違うので、おっしゃるとおりの面はあると思います。   ほかにいかがでしょうか。   よろしいですか。今日のところは、両論あるけれども、消滅のための仕組みを設ける方がよいという意見が複数ありましたので、消滅させるとするとどういうことが考えられるかということを、次に案が示せるかどうかは置いておいて、検討する必要があるかもしれません。検討した結果、これはなかなか難しいということになるのかもしれませんけれども、次回以降は、どうしますかということではなくて、もし消滅させるのであればこういうことはあり得るか、あるいは難しいか、ということに話としては進めていくのかなと思っております。よろしいでしょうか。   では、この第1については、以上で本日の審議は終えるということにさせていただきます。   予定ではここで休憩なのですけれども、さすがに先ほど休憩したばかりなので、このまま続けさせていただきます。   次は、事務当局から部会資料4の「第2 区分所有関係の解消・区分所有建物再生のための新たな仕組み(多数決による区分所有関係の解消・区分所有建物の再生)」について説明を頂きます。お願いいたします。 ○畑関係官 部会資料4の第2について御説明いたします。まず、1では区分所有関係の解消と区分所有建物の新たな再生手法ということで、(1)から(5)までの新たな制度を設けることを提案しております。(1)は建物、敷地を一括して売却する制度、(2)は建物を取り壊した上で敷地を売却する制度、(3)は建物の取壊し、(4)と(5)は建物が滅失した場合の話ですけれども、建物の再建及び敷地の売却ということです。現行法の下でこれらの手段をとろうとする場合には、いずれも全員同意が必要になることになりますけれども、被災区分所有法においては大規模災害による建物全部滅失又は一部滅失の場合に、団体的な意思決定、多数決の方法でこれらの手段をとることができるという制度があるわけで、区分所有法においても建替え以外にも多数決の方法で区分所有関係の解消、区分所有建物の再生のためのこれらの手段をとることができるよう、新たな制度を設けることを提案するものです。   本文では、いずれの制度についても建替え決議と同様の決議要件とすることを提案していますけれども、(1)から(3)までの制度は建替えとは異なって、区分所有権の喪失を伴って、再入居の機会が与えられないものでありますので、建替え決議よりも要件を厳格にすべきであるという考え方もあり得るということで、(注1)ではこの点を注記しています。また、(注2)と(注3)では、(3)から(5)までの制度を設ける場合には、敷地共有者等の団体としての集会の仕組みを検討する必要があることを指摘していまして、(3)は建物を取り壊そうというものですし、(4)と(5)は建物が滅失した場合を想定したものですので、いずれも区分所有関係が消滅してしまっているということで、区分所有者の集会とは別の集会の仕組みが必要になるということです。さらに、(注4)ですけれども、(4)の再建制度や(5)の敷地売却制度の適用場面では、建物が滅失しておりますので、敷地のみが共有関係となっていて、そうすると民法上の敷地の共有物分割請求が可能となりますけれども、被災区分所有法では債権決議や敷地売却決議を行うことができる期間に制限を設けるとともに、敷地の共有物分割請求を一定期間制限するという制度がありますので、区分所有法でもこれと同様の規律を設けることも考えられるということで、この点を(注4)で注記しています。   次に、28ページの2ですけれども、区分所有建物の敷地の一部を多数決により売却すると、そういうことを可能とする制度について取り上げています。区分所有建物の敷地の一部を売却しようとする場合には、現行法では区画決定、分筆のための集会決議がまずあって、分離処分を可能とする別段の定めを設けるとか、敷地廃止のための特別決議を経た上で、最終的に売却に関する全員同意が必要となりますけれども、区分所有者が極めて多数に上ることも少なくないので、売却に関する区分所有者全員の同意の調達は必ずしも容易でないと考えられます。そこで、多数決により分筆された敷地の一部を売却することを可能とする制度を設けることについて検討することが考えられます。要件、手続などについては、これまでの建替え決議であるとか、先ほど申し上げた敷地売却制度に関する議論を参考として、同様の規律を設けることが考えられますので、本文の(注)ではそのことを注記しております。   部会資料4の第2についての御説明は以上です。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ただいま説明のありました部分のうち、まずは「1 区分所有関係の解消と区分所有建物の新たな再生手法」、部会資料でいいますと28ページの1行目までにつきまして、御意見を賜れればと存じます。いかがでしょうか。 ○紺野委員 ありがとうございます。この区分所有関係の解消についてなのですけれども、管理組合としては非常に労力を要することであり、いろいろ心配事が発生いたします。敷地売却などの制度は必要だということは大前提ですが、ただし、今まで経験してきた、地上げやコンサルティングの名において一部区分所有者が敷地売却などを進めるなど、そういう件でトラブルが多く発生し、そういう面での危惧を心配しております。ただ、この場合に経済的利益追求のみの売却が進められないよう、ある程度期限を限定する築年数要件とも絡んでくるかと思います。というのは、片や再生といいますか、今いろいろと適正化法の改正も伴い、仕様を検討している、そして、今回の区分所有法においても、いろいろなデータで築40年というのが一つの目安になっているのですが、そういう有期限的な以降の売却というのも必要になってくるのではないかと。そうしませんと、ことに小規模マンションで、あれの場合ですと、売却を目的に一部の所有者だけ排除して進めていくというような不手際が出てきて、トラブルの元になっているケースもありますので、そこら辺を御配慮いただきたいと、こういう意見で、ただもうかるからこの区分所有部関係を解消するというようなことには、これはもう当然、賛成はできません。しかし、こういうことに、これを安易に適用しますと、進めるということで、バブル時における地上げとか、そういう件もまた再燃して、トラブルの元になるのではないかということ。そういうことに対しても、部会資料には売却などを実現する仕組みは何も書かれておりませんけれども、円滑化法でやっているような事業を実現する仕組みを区分所有法の中にも何かの形で取り入れていただきたいというのも出てくるのではないかと。当然このような売却をしますと除却という問題も出てきますので、行政による除却というのも、我々は普通除却といっているのですけれども、そういう方法もとらないといけないのではないかと、この区分所有法とは少し違いますけれども、そういう観点からも検討していかなければいけないのではないかというのを、少し御提案といいますか、要望として申し上げておきます。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。第2の1の諸制度については、導入すること自体は妨げないけれども、建替えとは異なる要件を設定すべきだということですか。 ○紺野委員 はい。 ○佐久間部会長 特に年数要件を、例えば必須とするなど、一つの考え方としてでしょうけれども。 ○紺野委員 はい。経済的要求をしますと、築浅マンションでもこういう仕掛けをするような条件が出てくるケースも今までに多々ありますので、そこら辺の排除というのも必要になってくるのではないかと。 ○佐久間部会長 分かりました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○齊藤委員 どうもありがとうございます。敷地売却などの制度は、まずは必要であると考えています。従来から議論してきましたように、建替えというのはなかなか難しいということを考えますと、最終的には老朽化などに対応するメニューの多様性があって選択できる方がよいかと思います。そして、そのときにどのような条件であればこの敷地売却など、いわゆる我々が解消と呼んでいることができるのかということですが、一つは建替えと同じでよいのかということだと思うのですけれども、従来、建替えは5分の4、敷地売却は5分の5ということが大原則でしたが、正にその違いは何かということを十分考慮しなければいけないと考えております。   そこで、一つには今の多数決でできる敷地売却はマンション建替え円滑化法に基づいていますから、全部に行政のチェックが入るということです。では、今後のいわゆる敷地売却全てを行政がチェックをするのかとなったら、かなりの御負担が増えるのではないでしょうか。では、どういうふうに行政の関与を少なくし適正に進めていくのかということで、例えば裁判所が関与する方法もあり得るのではないかと考えています。裁判所が解消の手続に関わるということもあり得るのかなということです。これがよいというわけではなく、少し前向きに考えていく余地があるのではないかと思います。   二つ目に、全管連さんの方がおっしゃられて、地上げなどに対する不安があるとおっしゃられました。これが敷地売却制度と建替えと違うところかもしれません。では、これから地上げされるような、いわゆるいい話があるのだろうかと御心配されるかもしれませんが、確かに現状で、中古住宅、中古のマンションで売買されているより、建物を解体して更地にしてしまった方が戸当たりの資産価値が上がるという敷地もございます。そこで、そういうところに目を付けてくる業者もいるかもしれない。これを横浜市でシミュレーションしましたところ、この数字が独り歩きしてはいけませんが、私が仮にシミュレーションしますとマンションがある土地と建物の一体の資産価値よりも土地だけにしたほうが資産価値が上がるというマンションが2割ぐらいありました。よって、立地によってはその数はさらに大きくなるでしょう。建物を解体して更地にしてしまった方が戸当たりの資産価値が上がるマンションが世の中に一定存在することから考慮しますと、いわゆる地上げみたいなものが存在しうることになります。そこで、それをある程度予防する、あるいは、マンションというのは数十年使えるものだと期待しているところに突然違う環境になっていくということをある程度抑制するという意味では、一つは多数決プラス築年数の要件を入れるというのもあり得るのではないかと考えています。では何年なのだと、これも非常に難しいのですけれども、私はまず、ローンを組まれるときに住宅金融支援機構のローンが35年で組まれていますので、35年以上としたら、一つは30年から40年ということで、40年ぐらいが妥当ではないか、もちろんそれ以上もあり得ると考えているところでございます。   三つ目、いわゆる敷地売却などの解消制度についてですが、これは初回にも申しましたように、決議を取った後の事業をどう進めていくのかということに関して、区分所有法の中に入れるべきかどうかも検討が必要ですが、事業を進めるための適切な方法が必要です。   それから、これと関連しまして、非現地での建替えについてのコメントがございました。これに関して私は非現地での建替えを可能とする方法が必要ではないかと考えます。マンション建替えの際の二度の引っ越しというのはなかなか厳しいので、できれば一度の引っ越しですむ、マンションの建替え手法の1つの制度として位置付ければいいなと思っております。これは敷地売却制度ができれば特に必要ないのではないかということでございます。これも区分所有法の中で手当てをすることではないかもしれませんが、1回売却しました、そして別のところで建てましたとなったら、いわゆる住み手からすると、区分所有者から見ると、買い替え特例などが使えないということになってはいけませんので、そういった税への対応も、区分所有法の中だけではなく、適正な円滑化という意味で総合的に御配慮いただき、政策として御検討いただけたらということでございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。齊藤さんからも、多数決でやるのならば、例えば年数要件をかませるという。 ○齊藤委員 ほかにももっと具体例があればよいのですが、1つの要件としてあります。 ○佐久間部会長 それを少し今、確認させていただこうと思ったのですけれども、建替えに関しまして案としてA案、B案、C案というのがありまして、A案は一律引下げ、B案は一定の客観的事由があるときの引下げ、C案は合意があるときですけれども、そのうちのB案に当たる場合に限ってこれらの再生手法を、別の再生手法をとれるというのとは、また別であるということでしょうか。現行、建物敷地売却などは全員一致でないと区分所有法上はできないと。できるようにしましょうというときに、紺野さんも齊藤さんもおっしゃったのは、3、40年ぐらいかなというふうに別の要件をおっしゃったのですけれども、40年経過しているけれども今のところ建物に全く問題はないのですというときに、多数決にしてもいいということなのか。それとも、建替えを正当化し得るような事由があるときにのみということであれば、建替えのときにその客観的事由がある場合には4分の3以上であるときには、同じ割合でほかの手法もとれるようにするということなのか。どちらをお考えかということだけ少し伺えますでしょうか。紺野さん、齊藤さんともに。まず、紺野さんはどちらですか。年数要件を例えばでおっしゃったのは分かっております。 ○紺野委員 例えば、その場合の敷地売却の、今ですと全員合意でないと駄目なわけですね、ですから、それを例えば4分の3とか、そういうふうに設定できればよろしいかなと思って。 ○佐久間部会長 客観的事由があるときは、よろしいと。 ○紺野委員 はい。一つの例ですけれども。 ○佐久間部会長 分かりました。齊藤さんは。 ○齊藤委員 ありがとうございます。まず、私は建替えは基本的に5分の4のままでいいという主張をしておりまして。 ○佐久間部会長 そうでしたね、失礼しました。客観的事由があっても5分の4のまま。 ○齊藤委員 はい、そうです。そして、耐震性等が問題の場合に4分の3という意見をいわせていただきました。それとのバランスで5分の4ですが、多数決でできるようになるというのは、何でもできるのではなくて、少し客観的な要件があった方がいいのではないかという主張です。これは現状では少し慎重派かもしれません。ただ、私も工学系の人間ですから、単純に築年数で、40年たって元気なものもあるし、元気でないものもあるから、築年数で判断するのが本当に適切かどうかというのはすごく悩みましたが、ほかの基準はわかりにくく多分トラブルの元になるだろうということで、40年ぐらいであればということです。ですから、これが絶対的にいいという意味ではなく、先生方の御指導を得て、もっといい考えに変えていけると思いますが、今、仮にこういった考えを持っているということでございます。 ○佐久間部会長 40年以上たてば5分の4での建物敷地売却等も可能であると。 ○齊藤委員 はい。 ○佐久間部会長 仮にですけれども、建替えの方で客観的事由がある。耐震性不足の場合は4分の3でいいですよということになれば、その場合は40年以上たっており耐震性不足があれば、建物敷地売却なども4分の3以上でいいということなのか。単純に40年以上の場合は5分の4の多数による建替え、それ以外の再生手法をとれるけれども、ほかの場合は駄目ですというのですか。別に、今はお考えを明らかにするためだけですので。 ○齊藤委員 建物敷地売却について、40年以上になったら5分の4ということで、建替えの決議とは独立させて考えておりました。どう2つを関連付けるかはさらに考えてまいります。 ○佐久間部会長 では、またいずれで結構です。ありがとうございます。   ほかに御意見はいかがでしょうか。 ○鎌野委員 私は基本的に建替えとパラレルに考えると、一方の選択肢としては建替え、ですけれども、齊藤委員が言われたように、基本的には建替えというのは容積の余裕がなければかなり難しいと、そうすると他方、もうそういう建替えは難しいと、ですけれども、ここで問題になるような建物敷地売却その他について、もう基本的にはこれ以上管理しても費用だけ掛かってなかなか難しいという場合が多分、私のイメージしているここでの解消の場面と、新たな仕組みということと考えると。   そうすると、そういった意味では私のイメージとしては、建替えか解消かの選択が衝突するという場面というのは余り想定できないのではないかと、要するに、容積に余裕があって、かなりの人が、5分の4にしろ4分の3の人が建て替えていこうということで合意形成ができれば、そちらの方で行くけれども、実際にはそれがなかなか難しいと、だけれどもこれ以上維持するというのは、特にコストとの関連で難しいということで断念して、もうここでいう解消というか建物敷地売却などをしようということなので、ですから、二つを並べると、両方に分散してという事態がもちろん全くないわけではないのですけれども、基本的にはそういう場面というのは少ないだろうと。先ほど言ったように、基本的にはいわゆる解消の場面というのは最終的な場面だと。   そうすると、それも建替えと同じような要件で、そして、私は齊藤委員とは違って、やはりここでも、建替えのときに申し上げましたけれども、年数要件というのは定めない方がいいと、それはある意味では、そういった事態になった区分所有者の相当多数の人の多数決によって決めればいいというようなことで、ですから、そういった意味で年数要件などを設けるのは反対だと。ただ、ここのペーパーにもありますように、耐震性不足とか、基本的には建替えの場合の一定の要件があれば更に多数決要件を引き下げるということと共通するのですけれども、そういう場合には多数決要件を更に引き下げてもよろしいだろうと考えております。   それから、ここでも、先ほど来申し上げているように、飽くまでも区分所有法は、ここでいうと建物敷地売却決議までは区分所有法でやって、そして、その後の事業法というのは現行法でいえばマンション建替円滑化法、先ほど申し上げたように、それを区分所有建物一般に広げていいのではないかということを当面考えておりますけれども、それは事業法として別途、これは国交省さんの方で検討いただければと考えています。取りあえずはそういう意見を申し上げました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。建替えを真剣に検討しようという状況になった場合に、建替えが困難ということもあるからほかの再生手法を用意しなければいけないというところは、恐らく紺野さんも齊藤さんも前提とされていることだろうと思うのですけれども、必ずしもそうでない場面で建物敷地売却が、要するに経済的利益追求の目的のために使われることもないとはいえない。どのぐらい多いかはともかくとして、その場合について手当てを考える必要があるかないか。年数要件を入れるかどうかは置いておきまして、というところが今、明らかになっている論点かと思います。   私は別にどちらがいいというふうな定見はないのですけれども、被災区分所有法にはこれらの制度があるのですけれども、これはやはり被災している建物についての制度だから、ある意味では客観的事由がある。それも相当の事由があるという場合に認められている制度であり、それを参考に区分所有法にも持ってくるということになると、何らの制限もなくこれらの制度を建替えの要件と同じようにして認めること、何ら客観的な要件もなく多数決で、5分の4であれ4分の3であれ、認めることはいかがなものかというのが紺野さん、齊藤さんがおっしゃったことだと思うのですけれども、鎌野さんにおかれてはその点は、建替えとパラレルに考えるなら、ほとんどの場合はそれでよろしかろうと思うのですけれども、お二人が問題とされているような状況に関しては、どうお考えになりますか。一つの割り切り方としては、それはそうなのだけれども、大して多く起こる事例でもないし、区別も難しいのだから、ということはあり得ると思うのですけれども、今のところどうお考えですか。 ○鎌野委員 おっしゃることは悩ましいところであって、基本的にはそういう場面というのは稀有であろうと、ただし実際にそういうことが全くないかというと、それはあり得ると、だけれども、それは言わば区分所有者が合意によってそういう選択をすれば、もちろんそこに地上げとか何とかというような非常に悪質な要素が絡めれば、それはそれでその決議が無効ということはあり得るけれども、そうでない限りは基本的にはそういうことで、仮に経済的な合理性ということを追求して、まだ日はそれほど浅くないけれども、かなりの区分所有者がそういう選択をして、例えばそういった買主に一括して買ってもらおうと、そういう選択肢があっても排除すべきではないと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。それは十分あり得る立場だと思いますし、対立点が明確になるのはよろしいと思います。   ほかに御意見は、今の点でも結構ですし、他の点でも結構ですが、いかがでしょうか。 ○森本委員 ありがとうございます。では、ほかのところの意見ということで述べさせていただきます。いずれの制度につきましても、基本的には導入する必要は認められると考えております。違う点につきまして、2点申し上げます。   4の再建制度及び5の敷地売却制度につきましては、大規模災害として政令で指定されなくても、区分建物が竜巻やがけ崩れなどで倒壊し全部滅失した場合に利用されることが考えられます。そこで、全部滅失してしまっても敷地共有者等の団体として集会を開くことができる仕組みを設けた方がよいと思います。ただし、再建決議や敷地売却決議を行うことができる期間を制限すること及び敷地の共有物分割請求を一定期間制限する必要があり、その期間は、被災区分所有法でカバーできない場合の利用を念頭に置くと、被災区分所有法と同様、3年とするのが望ましいと考えます。   そして、2点目なのですけれども、2の建物取壊し敷地売却制度及び5の敷地売却制度につきましては、所在等不明共有者の不動産の持分の取得及び譲渡の制度を参考とする新たな手続、特に所有権の移転登記を行う際の実務の困難さを容易にする仕組みを検討していただきたいと思います。団地やタワーマンションなど共有者が非常に多い場合には、原則的に区分所有者全員を手続当事者とする必要がございます。準備期間中に相続が発生するなどして新たな手続を行う必要が生じるなど、手続が事実上困難となる場合があります。一定の公的機関の関与によって敷地売却決議の認定等を行うことで、敷地売却計画に基づく所有権移転の意思を擬制するような制度を設けるなど、確実かつ安全に敷地売却手続を行える仕組みを考えることも重要ではないかと思われます。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。両方とも御意見として承りました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。1の(1)から(3)についてです。皆様方と重なりますが、建替えが現実的に難しいときの多様な手段として、こういった措置は有効かとは思っております。ただ、どなたからもご発言がなかったので、残しておくという意味で申し上げると、(注1)にある多数決要件を重くすることも一考に値するのではないかと思っております。建替えとは違って、売却してしまうと所有権を喪失しますので、被災マンションのように建物や敷地の処分の必要性が高い場合に限られないことからすると、多数決要件を重くすることも考えておく必要があるのではないかと思いました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。(注1)も十分考慮するようにということで承りました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○大桐委員 ありがとうございます。基本的には賛成をしておりまして、ただ、他と毛色が違うところにつきましてが(3)の建物取壊し制度になるかと思います。取壊しをしただけということになりますと、実入りがないということで費用負担が掛かるということなので、安全性があるにもかかわらず、問題がないにもかかわらず、建物を壊すということについては、少しちゅうちょを感じるというところで、少し考慮すべき部分が他と違うのかなとは思っております。とはいえ、私の見解としましては、元々建替え決議の要件について、客観的な事由がある場合に限って4分の3、それ以外については5分の4という意見でございますので、結果的に申し上げますと、いずれも安全性に問題がある場合についてということになりますので、それを考えますと結果的には、建替え決議と同じ多数決によってこの制度を設けることについては賛成ということになります。なお、(3)については、その危険性の定義付けというのが23ページの6行目に書いていただいていますので、正にこういった要件を定義付けをしていただければなと思います。   なお、(注2)から(注4)につきましても賛成でありまして、なるべく速やかに再建あるいは敷地売却をすることによって、更地状態での団体的拘束を解消する手立てというのを設ける必要があるのかなと思います。では何年なのかというところについては、検討要素がいろいろあろうかとは思いますので難しいところでありますが、3年や5年という意見が出ておりましたので、その辺りで設定していただくのがいいのかなと思います。その期限を渡過しても何も、再建もしないし敷地売却もしないという場合に、ではどうなるのかというところは、また悩ましいところではあるのですけれども、所有者が多数にわたったような場合には、民法の通常共有に戻ってしまって、かえって解決が難しくなるというおそれもないわけではないので、その辺りは引き続き考えたいと思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。御指摘いただいたように、建替え決議をどうするかによって、こちらは随分考え方が変わってくると思いますので、それとの関係に留意しながら検討を進めたいと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○鎌野委員 度々すみません。ここでも賃借権の取扱いというのがやはり少し気になるところで、そして、1の(2)から(5)までは、建物を取り壊すと、(4)、(5)については滅失をしたというようなことで、先ほどと同じような議論ができるのですけれども、(1)の場合には建物と敷地を一括して誰かに売却をすると、建物は残っているではないかというようなことで、そこのところは非常に悩ましいのですけれども、私としては基本的にこのような場合にも、もういわゆる区分所有関係が解消されていると、そして、もうその建物の処遇については買主に委ねられているというようなことで、それで、やはり買主としてはその辺りの選択を自由にできるものでなければ、実際に買手も現れないというようなことで、だから取り壊すというのも、ある意味ではそういう可能性が十分あるというようなことで、基本的にはここの(1)から(5)までの制度においても賃借権は終了させてよろしいのではないかと。先ほどのことから言えば、やはりここでは賃貸人たる区分所有者が借家人に対して、先ほどの言葉を使えば、多少なりとも補償する必要はあるのかなということで、当面そういうふうに考えております。どなたも賃借権の取扱いについては御意見がなかったようですので、少し私の意見を述べさせていただきました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。おっしゃるとおりで、(4)、(5)は既に建物は全部滅していますので、賃借権は問題になりませんけれども、(2)、(3)に関していうと、建物を壊すので、先ほどの議論がほぼそのまま成り立ちます。それらに対して、(1)は特に違うというのはおっしゃるとおりです。もっとも、建物を壊すことになるのだということについてどのぐらい賃借権の処遇について重きを置くかに関しては、考え方の対立がありましたので、それとの関係では留意すべきところはあるかと思います。また、説明の仕方は、やはり(1)の建物敷地売却制度の場合は、賃借権の扱いに関してはほかの場合と変わってくるのでしょうね。選択肢として、建物敷地売却制度を建替え制度との相互互換的なというか、どちらかから選べますという制度にするためには、賃借権の扱いについては並びにしておかないといけないのかなと思います。おっしゃるとおりだと思います。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   今日のところはよろしいでしょうか。次回に向けて、制度の導入をおよそあってはならないとおっしゃる方はいませんでしたけれども、どの範囲でどのような状況の下で建替えに代わる選択肢を用意するかという点については考え方に違いがあったということで、その点に留意しながらということになろうかと思います。(注)についても、1もなお考慮すべきであるという御意見もありましたし、2から4については賛成だという御意見もあったということで、次回以降はそれを踏まえて進めてまいりたいと思います。この論点については、よろしいでしょうか。   それでは、最後の論点に進みたいと思います。「2 区分所有建物の敷地の一部を売却することを可能とする制度」について、御意見を承れればと存じます。いかがでしょうか。 ○森本委員 ありがとうございます。制度を設けることに賛成いたします。具体的な手続といたしましては、敷地売却手続と同様でよいと考えております。使用環境の変化で駐車場用地などの敷地の一部を売却し、必要な修繕費用に充てる場合や、緊急車両等が通行できるように道路拡幅のために敷地の一部を売却や寄附等を行うことは、司法書士として携わっておりますと、よくありまして、多くのニーズがあると考えております。住居となっている専有部分を失うものではなく、現状の使用を維持しながらも道路を拡幅するなど公共的な需要にもかなうものでもありますので、多数決要件については建替え決議と比べて引き下げてもよいのではないかと考えております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   居住に直接の影響はないというのはそのとおりだと思うのですけれども、何かに誘導しようというわけではありませんが、将来的には何らかの不利益な影響がおよそないとはいえないとは思うのですけれども。先ほどの建物敷地売却等について出たような危惧は、ここでは、ないというとおかしいですけれども、余り心配する必要はないということでしょうか。御意見があれば伺いたいということですけれども。 ○大桐委員 具体的な事例などはまだ思い付かないですけれども、事案によっては特別の影響を受けるような方が、例えばその一部の敷地を売却するところの、すぐその側面に位置していた方だとかという、少し考えにくいのかもしれませんけれども、もしかすると、そういう特別の影響を受ける方がいた場合には、17条の2項で準用されているので、21条で17条準用ということで、そこの点で配慮されるという理解でよろしかったのかどうかについて、もし御教示いただければ有り難く存じます。 ○佐久間部会長 特別の影響について考慮しているか、大谷さん、お願いします。 ○大谷幹事 今の御質問は、28ページの19行目の①の区画決定、分筆に関する決議の際に特別影響ということがあり得るのかという御質問だと承りましたけれども、ここで決議をしていることは区画決定、分筆に関することだけでありまして、特に外形上何かが変わるということではないところですので、その区画決定をする行為について、専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときというのが実際にあり得るのかというのは、私も余り思い付かないなというところでございます。 ○佐久間部会長 大桐さん、よろしいですか。 ○大桐委員 分筆されて、その敷地の一部を売却するというところまで含まれますよね。ですので、売却されて別の方が、もちろん好きなように使うわけですけれども、その利用の仕方によっては環境も変わりますし、影響を受ける人というのが全くいないわけではないようにも思えまして、少し引き続き考えてみたいとは思いますけれども。 ○大谷幹事 多分この①から③まで、現行法を前提とすると、それぞれ別々の行為がされることになって、それを別々に分けてしまって考えれば、先ほど申し上げたように、分筆についてだけで考えるとなかなか、特別の影響というのはなさそうな気はするけれども、今、大桐先生がおっしゃったのは、①から③までを全部一体として見たときには特別の影響ということを考え得るのではないかということかなとは思いました。少しここもまた意見交換させていただきながら考えていきたいと思います。 ○佐久間部会長 大桐さんがおっしゃったのは、①、②までは単純多数決でもいいけれども、③は多数決プラス特別の影響を受ける者の同意が必要だということであったのか、①の段階から特別の影響を考慮すべきではないかということだったのか、そこだけ少し明確にしていただけますでしょうか。 ○大桐委員 ①についてだけでは影響は受けないような気もするのですけれども、規約の変更などが絡む場面においては31条1項の問題にもなり得るというような指摘も、少し意見が出たのですけれども、なので、今の時点で①ならばいいですよとは言い切れない部分があります。 ○佐久間部会長 分かりました。ありがとうございます。   では、ほかに御意見はいかがでしょうか。 ○村上委員 質問なのですけれども、こういった制度の創設を検討することは賛成なのですが、一部売却によってその区分所有建物の建ぺい率や容積率を満たさなくなることはなく、それを満たした上で一部を売却するという前提でよろしいのでしょうか。 ○大谷幹事 ここでは、まずは多数決でやるということになっていて、民民の問題として決議を行っていますので、建蔽率というのは直ちに関係してくるわけではないとは思いますけれども、ただ、違法建築になってしまってもいいのかという問題はもちろんあります。敷地利用への影響の有無、程度を示してというのが29ページの5行目のところにありますけれども、この影響の有無、程度を示す際にそういったことも考慮しながら、違法建築になってしまうと後で問題になってしまうということも影響の程度としては大きなものがあると思いますので、その辺りのことも書くのかなとは思っておりました。この辺りはまた国土交通省とも御相談しながら、どういうふうにしていくかということを考えていきたいと思います。 ○村上委員 ありがとうございます。違法建築にならないような、そういうことは決議されないような、何か歯止めというか、チェックする場面があった方がいいと思いました。 ○佐久間部会長 それが先ほど、いろいろな場合があり得るけれども、建物敷地売却と違って、こちらは先ほどの、何か客観的事由があるときにはというような意見をおっしゃった方からすると、ここもそれが必要になるというふうには考えないでいいですかということを申し上げた趣旨だったのですが、違法建築になる場合だけに限らないですよね。なかなか難しい問題だと思います。   ほかにいかがでしょうか。   今のところ、敷地分割についてはこの方向で差し当たり検討を進めていくことではよろしいということですかね。細かい話はまだこれから出てくることはあるかもしれませんけれども、特に御異論がなければ、この方向で次の回に向かいたいと存じます。   全体を通して何か発言を漏らしたということがあれば、今伺いたいと存じます。どこでも結構ですけれども。    ○加毛幹事 次のラウンドに向けた資料作成の観点から発言します。   第1の建替え決議がされた場合の賃借権等の消滅について、本日の議論を通じて明らかになったところですが、議論のベースラインを確定した上で改正に向けた議論をする必要があるだろうと考えます。そして、議論のベースラインになるのは、区分所有建物でない通常の建物をめぐる法律関係なのだろうと思います。通常の建物の建替えが賃借権や抵当権にいかなる影響を与えるのか、その場合の法的帰結を確定する必要があると思います。   以下、私の誤解が含まれているかもしれませんが、若干のことを申し上げますと、建物の所有者は、自らの意思に基づいて賃借目的物や担保目的物である建物を建替えによって消滅させることができるのではないかと思います。これに対して、賃借人や抵当権者が、賃借権や抵当権に基づく妨害排除請求権を行使して、建替えを妨げることができるのかが問題となります。そして、賃借権や抵当権に基づく妨害排除請求権が、目的物の所有権を基礎として認められる権利だとすると、妨害排除請求が認められないと解する余地もあるのではないかと思います。このような議論が成り立つのかが、まず問題となります。   そして、このように考える場合には、建物の建替えによる賃借権や抵当権の消滅は、建物の所有者の債務不履行に該当し、建物所収者が損害賠償義務などの債務不履行責任を負うのだろうと思います。   他方、建替え決議に基づく区分所有建物の建替えによって賃借権や抵当権が消滅することは、区分所有者が建替え決議に賛成していたか否かにかかわらず、区分所有者の債務不履行には該当しないと考えられるのではないかと思います。建替え決議自体は個々の区分所有者の意思とは異なる、集団としての意思決定であるといえますし、建替え決議に賛成をしたことによって区分所有者が債務不履行責任を負うことになるのはおかしいように思います。そうすると、区分所有者が債務不履行責任を負わないことを前提として、賃借人や抵当権者に金銭的補償などの保護を与える必要があるのか否かという問題が生じることになるのではないでしょうか。   そして、金銭的補償の要否を検討する上では、新たな区分所有権を対象とする賃借権や抵当権の設定がなされるか否かも考慮要素になるのだろうと思います。さらに、賃借人と抵当権者という権利者の属性によって当然、保護の要請は異なることになります。区分所有者との力関係という点で、金融機関であることが多い抵当権者と賃借人とは当然異なるのであり、賃借人の方が類型的に保護の要請が高いといえるのだろうと思います。また、そのような権利者の属性によって、権利消滅のリスクを事前に織り込むことができるか否か、この辺りも保護の要請を考える上では重要なポイントになると考えられます。   以上は、本日の資料では、主としてA案やB案に関する話ですが、これに対し、C案はこれと異なる場面についての提案なのだと思われます。借家権の更新拒絶や解約申入れに関する正当事由は、賃貸目的物の消滅とは異なる賃借権の終了原因に関する問題であるからです。建替え決議があった時点で、残りの賃貸借期間がどの程度残っているのかは偶然の事情に左右されるものといえます。残り期間の短い賃借権については、更新拒絶に関する正当事由の要否の問題とし、残りの期間の長い賃借権については、賃貸目的物の滅失による賃借権の消滅の問題とするという処理は、あり得ないではないと思いますけれども、やはりそこには不均衡が生じるのではないかと思いました。   総じてA案、B案、C案について、議論のベースラインを確定した上で、この区分所有建物に関する特別の考慮を検討するという形で検討をすることが、今後の議論にとって有益ではないかと考えた次第です。   長くなりまして申し訳ありません。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。おおむねおっしゃることは理解したつもりなのですけれども、最初のところで、賃貸人は賃貸物件を取り壊すことができて、それに対して賃借人や抵当権者は妨害排除請求では対抗できないとおっしゃったと思うのですが、そこはそうなのですかね。加毛さんがおっしゃるので自信がなくなってきたのですけれども、対抗できるということが前提となっていて、そうすると、戸建てなんかですと、それはもう契約当事者間の関係であって妨害排除請求が無条件で勝つことでいいのだということを、それこそベースラインにして、では区分所有建物も同じでいいのかということを、他の区分所有者の利益、権利を考慮して論じ始めているのが、今日の資料だったと思うのです。けれども、そこは妨害排除で対抗できないのですかね。そこは確定しないと確かに話が進まないというのはそうですけれども。区分所有建物の建替えが、場合によっては賃借権の存在のために困難だというのは、妨害排除請求などによって建替えそのものを差し止められるということを前提にしてきていると思うのですけれども。 ○加毛幹事 妨害排除請求権については、第三者との関係で議論されてきたように思うのですが、賃貸借契約の当事者ないしは抵当権設定契約の当事者との関係でも同様に妥当するのかを確認する必要があるように思います。他方、区分所有建物については、所有者個人ではなく、区分所有者全体の建替え決議が問題となるので、そこに第三者性が見出されるのかもしれません。この点について、基礎となる考え方を確定しておく必要があるのではないでしょうか。 ○佐久間部会長 確定しておくべきだというのは、おっしゃるとおりだと思います。違っていたら大谷さんに訂正していただければと思いますが、私が先ほど加毛さんに対して申し上げたことを基本的には出発点に据えて今日の資料は作っております。その出発点が正しくない、あるいは疑う余地があるということであるとすると、また論じ方は違ってきますので、次回までにもう一度整理をして、どの形になるか分かりませんが、加毛さんがおっしゃる言葉でいうと、ベースラインをはっきりと示して、新たに資料を作るということにさせていただこうと思います。あるいはベースラインについて見解の分かれがあり得るかもしれませんけれども、そのときは恐らく建替えを阻害する要素として、別にいい、悪いの問題でなくて、否定できないというところをベースラインとすることはあるかもしれませんけれども、そのような方向で整理を試みたいと思います。ありがとうございます。それでよろしいですか。 ○加毛幹事 もう一つ気になるのは、建替え決議への賛否が、区分所有者の債務不履行責任の成否には影響しないのかという点です。立替え決議に賛成したとしても、区分所有者は、賃借人や抵当権者との関係で債務不履行責任を負うことはないと理解して良いでしょうか。 ○佐久間部会長 今のところはそれを前提としております。今日の段階で、いや、そうは思っていなかったというのだったら、今から御意見を伺わなければいけないのですけれども、建替えの賛成票は契約関係上の責任を覚悟しないと入れられない、投じられないなんていうことにはしていないのが原案です。そこも、確かに御指摘いただいて、そうだなと思いましたけれども、特に明示はしていないので、疑義があってはいけませんから、どういう形でかは分かりませんが、補足説明の中だろうと思いますけれども、今、加毛さんがおっしゃったような、賛成票を投じるについて債務不履行の責任を問われることは前提としていないというようなことを入れるようにいたします。それでよろしいですか。 ○加毛幹事 はい、ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。今の加毛さんの御意見も踏まえて、何か更にあれば伺っておきたいと思いますが、いかがですか。よろしいですか。   それでは、本日の審議はこの程度にさせていただきます。   本日、本当に様々な御意見を頂戴しまして誠にありがとうございました。今後、御意見を踏まえて更に検討を進めていきたいと存じます。   では、次回の議事日程につきまして事務当局から説明をお願いいたします。 ○大谷幹事 本日も長時間にわたって大変熱心な御議論を頂きまして、ありがとうございました。   次回の日程は、来月2月13日月曜日、同じく午後1時半からを予定しております。場所はここ、地下1階大会議室になります。   テーマにつきましては、今度はまた管理の円滑化の方に移りたいと思いますけれども、その中でも区分所有建物の管理に特化した財産管理制度であるとか、事務の合理化といったところを取り上げたいと思っております。また、もし準備ができれば被災建物の再生の円滑化などにも入れればと思っておりますが、取りあえずは管理のところを中心にしていきたいと思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   これをもちまして法制審議会区分所有法制部会の第4回会議を閉会とさせていただきます。   本日も熱心な御議論を賜りまして誠にありがとうございました。 -了- - 41 -