法制審議会 家族法制部会 第25回会議 議事録 第1 日 時  令和5年4月18日(火)  自 午後1時30分                       至 午後5時00分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  家族法制の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けた検討(2) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会家族法制部会の第25回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   本日も前回までと同様、ウェブ会議の方法を併用した開催となりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。   前回からの変更といたしまして、法務省民事局の太田健介局付と岡本和香局付が関係官に任命されておりますので、簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。太田関係官、岡本関係官の順番でお願いをいたします。 ○太田関係官 4月から法務省民事局付として関係官をしております、太田と申します。これからどうぞよろしくお願いいたします。 ○岡本関係官 同じく4月から関係官をしております岡本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 どうぞよろしくお願い申し上げます。   次に、本日の会議の配布資料の確認をさせていただきたいと思います。事務当局の方からお願いをいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。お手元の資料について御確認いただきたいと思います。本日の会議資料といたしまして、事前に部会資料25をお送りさせていただいております。あわせて、前回と同様、家族法制の見直しに関する中間試案に対して寄せられた意見の概要、令和5年4月時点の暫定版をお送りしております。   本日は、要綱案の取りまとめに向けた三巡目の議論として、まずは前回会議の積み残しとなっている財産分与制度に関する規律について御議論いただきたいと思っております。その後ですけれども、本日お送りした部会資料25に基づきまして御議論いただければと思います。   参考資料としてお配りしております意見の概要につきましては、前回と同様でございますけれども、パブリック・コメントの手続で寄せられました父母の離婚後の親権者に関する規律、今回の部会資料25で扱う議題に関連する部分につきまして、現時点までに集計できたものを暫定的に御紹介するものになります。今回の資料には、e−Govの意見提出フォームを経由して意見提出があった団体につきましても顕名で記載しておるところです。この資料につきましては前回会議と同様に、パブリック・コメントの手続における全ての意見を御紹介するものではないことや、今後の集計作業における修正の可能性があることに御留意いただきたいと思います。   また、前回会議と同様、本日もパブリック・コメントに寄せられた意見をコピーしてつづったファイルを会議室に御用意しております。個人情報等のマスキング作業ができた範囲のもののみではありますけれども、委員、幹事の皆様が会議の前後や御休憩時間に御参照いただくように備え付けております。   今回もウェブ会議を併用しておりますので、御発言に当たっては冒頭でお名のりいただきますようお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。資料を御確認いただければと思います。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。ただいまの事務当局からの説明にもございましたけれども、本日はまず、前回会議の積み残し分といたしまして、財産分与に関する規律について御議論を頂き、その後、部会資料25に基づいて御意見を頂くということを考えております。   そこで、まず、部会資料24の第5、ページで申しますと32ページから後ということになりますけれども、財産分与の部分について御議論を頂きたいと思います。前回の会議の際に、大石委員、最高裁、武田委員、落合委員、佐野幹事、原田委員、戒能委員から御発言の希望があると伺っておりました。そこで、まず今申し上げた順で御発言を頂きたいと考えております。その上で、更に御意見がある方がいらしたら、挙手をお願いしたいと思っております。この先の、次の議題もございますので、既に出ている意見と重複する意見ではなくて、別の観点からの御意見があるという場合に、追加での挙手をお願いできればと思っております。 ○大石委員 申し訳ございません、大石です。後の方に回していただいてもよろしいでしょうか。 ○大村部会長 そうですか。では、後の方に回させていただきます。それでは、最高裁、お願いします。 ○向井幹事 最高裁の向井でございます。裁判所からは、意見というよりは問題意識を共有させていただきたいという趣旨の発言になります。   財産に関する情報開示義務の点でございまして、この開示義務については、実際の調停なり審判で求められる場面というのは大きく分けて二つあるように考えております。まず一つは、手続の初期段階で当事者が有する財産の見当が付かない、どんな財産がどの程度あるかというのが分からないというような場面を念頭に置いて、幅広くその人の持っている財産の情報の開示を義務付けるといったような場合です。もう一つの場合が、ある程度特定の財産が存在する可能性が具体的に指摘されながらも、その情報の開示に応じないといった場面を念頭に置いて、その財産についての情報の開示を義務付けるというような場合です。   この二つ、両方ともあると思うのですけれども、それぞれどちらの場合であるかによって求められる規律も変わってくる可能性があると考えておりまして、さらには、開示命令に応じない場合の制裁ですとか効果についても、場合によっては変わってくる可能性もあるかと思いますので、裁判所としましては、その両方の場面に対応した規律が必要であると考えており、それぞれの場面に応じた複数の規律を組み合わせるということなども含めて、実際の審理の進行を想定した規律の在り方を皆様にも御検討いただきたいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。最高裁の向井幹事からは、開示義務が機能する場面は二つに分けられるのではないか、それぞれに対応して規律を設ける必要があるのではないかという整理と御意見を頂きました。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。本日もよろしくお願いいたします。   まず、第5、財産分与の2番の方ですね、財産分与の期間制限に関して意見を述べさせていただければと思います。弊会の意見といたしましては、現行の2年と3年に延長という、大きく二つに割れまして、最終的には現行の2年を維持すべきという意見に収束をしております。挙げられた理由としては、今日の、まだ三巡目での議論になっておりませんが、養育計画の促進、これが離婚要件化されない場合であっても、大きな方向性としては、父母の離婚時の決定事項に関して早期に決着させるということを目指しているのではないかと、そこと矛盾が生じているということが主でございました。具体的には、早期に離婚による紛争を収めて、父母の葛藤を低下させることにより父母の離婚に伴うこどもの影響を軽減すること、これが目的であるはずであろうという意見が多くございました。そのような方向性に対して、財産分与のために請求権を延長することは、繰り返しになりますが、指向することと逆行することになるのではないかということを懸念して、現行2年の維持に落ち着いたものでございます。   その上で、可能な範囲で事務当局に確認させていただくことを2点お願いさせていただきたいと思います。今回の部会資料24では5年という表記があったわけですけれども、中間取りまとめ前の議論では3年を推す委員、幹事の先生が多かったのではないかと、そんなふうに感じておりまして、そこの確認が1点です。   2点目は、この期間制限を延ばす理由として、ほかの消滅時効期間と合わせると、これはこれとして理解できるのですけれども、財産分与がやはりこの期間を超えて請求できず、経済的困窮に陥る離婚当事者がいるという記載がございますけれども、こういう困窮に陥る方、いるかいないかというと、当然いらっしゃると思います。しかしながら、こういう客観的なデータに基づく意見というのを私は個人的に余り聞いたことがないので、何かそういった客観的なデータがあるのかということを御質問させていただければと思います。 ○大村部会長 武田委員、今、期間のことをおっしゃっていますけれども、ほかの点については取りあえず、よろしいということですね。 ○武田委員 結構です。 ○大村部会長 分かりました。2点、質問ないし御確認ということで、事務当局の方に寄せられていますけれども。 ○北村幹事 武田委員の御発言は、部会の議論としては3年が大勢だったのではないかという御指摘かとは思いましたけれども、この部会の中では様々な御意見が出ているのかなと思っておりまして、それを踏まえてこの部会資料で示したつもりです。あわせて、2点目の点ですけれども、財産分与に関しても併せて調査等もされており、その中に出ていることであるとか、この部会も含め、なかなか現行の期間内で請求できていないということや、さらに財産分与に関して元々伸張してほしいという御意見等も届いており、その理由の中にも挙げられているということもあって、ここに記載をしているものでございます。 ○大村部会長 よろしいですか。 ○武田委員 結構です、ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○落合委員 財産分与に関する規律の見直しのところなのですけれども、一方の配偶者が主婦になるとか、職業を失った場合ですね、婚姻生活のために仕事を失った場合、あるいは非正規になった場合についてなのですが、その場合の補償のようなことを考慮すべきであろうと。今ある財産の折半ということでそれは満たされているという考えもあるのかもしれないのですけれども、それは婚姻中に果たしたアンペイドワークの価値の評価なのだろうと思うのです。それと、職業を失ったことにより離婚した後も稼得能力が落ちているということは、別のことだと思うので、稼得能力が落ちた側の人に対して、その補償になるような分与を考慮すべきだというようなことを含めていただきたいということです。職業及び収入その他一切の事情を考慮し、とまとめてありますので、入っているといえば入っているのですけれども、そういうふうに解釈していただきたいというのを付け加えたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。前回も御発言があったところですけれども、補償的という言葉を使われましたが、そういうような要素がここに含まれ得るというような解釈をしていただきたいという御要望を頂きました。ありがとうございます。 ○佐野幹事 幹事の佐野です。2点ございます。1点目は、事務当局の方に確認ということになるかと思います。今、落合先生の方からお話がありました規律の見直しのところ、同じような趣旨になるかもしれませんけれども、日弁連の方としては、意見書の方で、今の実務として、清算的なところのみが考慮されて、扶養や補償についてはあまり考慮されていないという認識を踏まえて意見を出させていただいているものですから、その観点からの確認ということになります。   今回出されている見直しの案ですけれども、これは平成8年の要綱と同じ内容で、先回の水野先生の御説明があり、なおかつ中間試案の補足説明の方で、こちらの要綱案というのは目的のところで、補償の本来の意味するところを明文化する規律を設ける方向として、離婚後の当事者間の財産上の公平を図るという形でまとめられたということと、また、考慮要素として、婚姻の期間から職業及び収入までの部分というのは扶養的要素ないしは補償的要素の考慮事情であるという御説明があったかと思います。これを踏まえると、今回の平成8年の要綱案を引いた財産分与に関する規律においては、法改正後、これらの事項、扶養とか補償的要素が実務において適切に考慮されることが期待されているというものとして理解してもいいのかというのが、まず、1点の事務当局の方に確認したい点となります。   2点目は財産分与の期間制限のところで、これに関しては、年金分割のところも同じように財産分与の期間制限に準じて期間を延ばす必要があるのではないかと、これは意見ということになります。以上、よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。佐野幹事、2点御指摘がありましたけれども、2点目は御意見ということでいいですか。では、1点目について、事務当局の方に確認ないし御質問ということがありましたので。 ○北村幹事 今後の具体的なこの解釈の在り方につきましては、この部会で取りまとめいただいた要綱を踏まえ、法制化した後、裁判所での実務に委ねられるということにはなろうかと思います。ただ、その一つの指針として、ここで御議論いただいて、御意見いただいているものが今後の解釈の指針の一つとなっていくということは、そのとおりなのかなとは思っております。 ○大村部会長 よろしいでしょうか。 ○佐野幹事 はい、ありがとうございます。 ○原田委員 委員の原田です。私も佐野幹事と同じことの御質問だったのですけれども、前の法制審のときの議論でそういう議論があったにもかかわらず、現在の実務は清算的要素が中心で、2分の1は取り入れられたとしても、扶養的要素や補償的要素を明文の中に入れなければ解釈の指針になり得ないのではないかという懸念がありまして、そういう意味では、ここで議論したことが解釈の指針になるのだということでよければ、それでよろしいのかなとは思います。ただ、パブコメの中で裁判所から出ている意見で見ると、やはり清算的要素を中心に考えるということで、ほかにいろいろすると判断が難しくなるとか、長引くとかいう御意見もありましたので、そういう意味で非常に懸念を持っているということをお伝えしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。今まで出ている幾つかの意見と共通だと思いますけれども、補償的要素が反映されるというのが解釈で可能なのか、そうでないのかということとの兼ね合いで議論していく必要があるという御指摘を頂いたものと理解をいたしました。 ○戒能委員 戒能です。今までおっしゃった皆さんの意見と同じ方向性だと思うのですが、考慮要素における補償的要素の評価というところです。それで、稼得能力の問題と、もう一つは相手方の、夫なら夫のキャリア形成とか能力開発への非金銭的な寄与という側面もあるということです。キャリアの格差というのは所得の格差につながっていき、それが養育しているこどもの貧困につながる可能性もあるということですので、子の福祉という観点からも、これはきちんと、2分の1ルールでは不十分な場合があると思いますので、明記してほしいというのが第一なのですが、それが難しいというようなことであれば、解釈の指針として掲げていただきたいということです。 ○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員からも、第一次的には要素を書き込みたいが、そうでなければ解釈の指針についてここである程度の考えを出しておく必要があるという御意見を頂戴いたしました。 ○大石委員 大石です。すみません、先ほど少しマイクが不調でございました。   ほとんどの委員の先生方がおっしゃったことと同じではあるのですが、扶養的要素の扱いについては、基本的には婚姻期間中のそういった役割分担というのは所与の条件の下で合理的な判断として行っていたと経済学的には考えることができます。ただ、それはその所与の条件の中に、労働市場における男女間格差ですとか雇用格差などの面が含まれているわけで、そうしたものがなくならない現状においては、ある程度、扶養的要素ないし補償的要素といったものをどこかで考慮する必要がまだあるのかなと私自身は考えているということを申し添えさせていただきたいと思います。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。大石委員からも、現状においては扶養的ないし補償的な要素をなお考慮する必要があるのではないかという御意見を頂戴いたしました。   これで一応、前回御発言の希望があった方からは御意見を頂戴したかと思いますけれども、その他にもし追加的な御発言を特に御希望の方があれば承りますが、いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。実は久保野幹事からも御発言の希望があったのですが、今日は遅れていらっしゃるということですので、後の方で御意見を頂戴する機会を別途設けさせていただきたいと思います。その点を留保した上で、取りあえず今までのところの御意見をまとめさせていただいて、先に進みたいと思います。   前回及び今回、部会資料24の第5に関しまして、1につきましては、財産分与の目的あるいは考慮要素を法定するということ自体、あるいはいわゆる2分の1ルールを定めるという大きな方向性については、特に強い御異論はなかったと認識をしております。ただ、前回及び今回も御議論いただきましたけれども、どのような考慮要素を掲げるのがよいのかという点については、なお御意見があるということで、更に検討の必要があると思いますので、事務当局においては今後、その部分についての頂いた御意見を御考慮いただいて、更に要綱案のたたき台を準備していただきたいと考えております。   それから、第5の2の期間制限の点につきまして、武田委員から現状維持が早期解決との関係でよいのではないかという御意見を頂きましたけれども、他の委員、幹事からは特にこれについての反対の意見というのは出ていないと理解をいたしました。武田委員の御指摘も踏まえまして、この点につきましても更に事務当局の方で検討を頂くということにさせていただきたいと思います。   第5の3の財産に関する情報開示義務の点につきましては、第4で取り上げた情報開示義務と同様に、手続法上の開示義務の規定を新たに設けるという方向で検討をするということでおおむね賛成を頂いたけれども、その際の検討の在り方について御注意を頂いたと理解をしております。 ○赤石委員 よろしいですか、今のところの追加の発言。 ○大村部会長 はい。 ○赤石委員 ありがとうございます。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。まず、扶養の要素について。 ○大村部会長 ごめんなさい。今、追加をお願いしますと申し上げたのですけれども、後で久保野幹事からも発言いただきますので、そのときに併せて御発言いただいて、二つの発言を更に加えた形でまとめさせていただいて、先に進むということにしていいですか。 ○赤石委員 分かりました。 ○大村部会長 では、そこはそのようにさせていただきたいと思います。申し訳ありません。   それでは、今のところは久保野幹事と赤石委員、更に御発言があるということを留保した上で、直前に私が申し上げたようなところで引き取らせていただきたいと思います。   それでは、続けて部会資料25の方に入らせていただきたいと思います。部会資料25は父母の離婚後の親権者に関する規律の見直しについてということになりますが、この点について御議論を頂きます。   まず、事務当局の方からこの部会資料25について御説明を頂きたいと思います。 ○北村幹事 事務当局でございます。部会資料25では、父母の離婚後の親権者に関する規律を取り上げております。この部分につきましては、パブリック・コメントの手続でも本当に多くの方から様々な御意見が寄せられたところでございます。   そこで、今回の資料ですけれども、従来の部会での検討状況や、これらパブリック・コメントの手続において寄せられた意見も踏まえつつ、少なくとも離婚後はどちらか一方しか親権者となることができない現行民法第819条を見直す必要があるのではないか、そして、離婚する夫婦も多様であることから、まず、今回は父母が協議離婚の際に双方を親権者とすることについて合意ができる場合に、双方を親権者とすることができることを検討すべきではないかという観点で資料を御提示しております。   この点を議論するには様々な前提の議論があって、御主張もあろうかと思いますが、今申し上げましたように、今回御議論いただきたいのは、協議離婚の際に双方を親権者とすることにお互い合意ができる場合について御検討いただきたいと思います。誰を親権者とすべきかについて互いに争いのある場合や、従前からのこの部会の中で御指摘いただいておりますけれども、夫婦間の力関係によって真の合意ができない場合があることについての検討や、具体的な親権行使の方法の在り方等、具体的なところは次回以降で更に御議論いただきたいと思っておりまして、今後検討すべき点についても御示唆いただきつつ、今回は、先ほど御説明した場面において、大きな観点での御議論を頂ければと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。親権に関する問題としては、様々な問題が絡まっておりまして、それらについて全体を議論する必要がございますけれども、差し当たりの取っ掛かりとして、今お話があったように、離婚後の親権者について当事者間で合意ができる場合の規律というところから考えてはどうかというようなことで資料が作られていると理解をしております。これにつきまして、様々な御意見があろうと思いますので、御自由に御発言を頂ければと思います。どなたからでも結構ですので、お願いを申し上げます。 ○窪田委員 御説明を頂いた部会資料25で提案されている方向性についてですが、賛成の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。離婚後の親権、子の養育の在り方については様々に意見があって、この部会においても見解が対立しているということは十分に認識しております。ただ、父母が離婚に際して十分な協議をした上で、双方を子の親権者とするという真摯な合意がなされた場合には、それを認める法制度を作るということ自体は十分に合理的な選択だと考えております。重複するかもしれませんが、幾つか理由があります。   一つは、家族の在り方が多様化していて、そうした中で、離婚後も元夫婦の双方が親権者として共同して子の養育に当たるという形態があり得ること自体は否定されるべきではないと考えております。また、それが真摯な合意に基づくものである以上、それを尊重するというのが出発点にあります。   次に、資料とともに、これに関連するパブコメにおける消極的な意見も、今回、丁寧に拝見いたしましたが、そこに示されているものの多くは、合意による共同の親権についてではなく、合意の有無にかかわらず共同親権が認められることに対する懸念ではないかと思います。必ずしも今回提案されているような、離婚に際しての合意が成立した場合にまでのものではないように思われました。もちろんそれに限定せず、そうしたことに対する否定的な意見も含まれているとは認識しておりますが、しかし、離婚に際して元夫婦が真摯に合意した場合にまで、それを無理だ、あるいはうまくいかないといった批判は、私自身は過剰なパターナリズムであるように思います。ここで扱われているのは、仮に自分の立場や選択は違っているとしても、真摯な合意によって離婚後も共同で子の養育をしようとする他の元夫婦の選択を許容するのかどうかということが問われているのではないかと考えております。   最後に、これは部会資料の中でも触れられている点ですが、現行第819条を前提とする場合、仮に離婚に際して子の養育には共同で当たるといった合意を夫婦間でしたとしても、その場合、親権者とされない者の法的立場、これには権限と義務の両方が考えられると思いますが、その点が明確ではありません。その意味でも、夫婦が離婚に際して双方を子の親権者にして子の養育に当たるという合意がなされた場合には、その合意を尊重して、適切な法的規律を整備するというのが法の役割であるように思われます。   すみません、少し長くなっておりますが、もう少し発言させてください。今後の課題ということになりますが、こうした合意を含めて、元夫婦の両方が親権者となった場合に、様々な規律を整備する必要があるということは、先ほど御説明もあったとおり、当然だろうと思います。消極的意見の中では、様々な具体例を挙げて問題を指摘するものもありましたが、合意によって元夫婦の双方が親権者となるということを認めた場合には、正しくそうした規律を整備するのがこの部会の役割なのではないかと考えております。   なお、考えられる問題の中には、現在でも婚姻中の共同親権に関して存在しており、にもかかわらず十分に対応されてこなかったという問題と、離婚後の元夫婦の双方が親権者となる場合に新たに生じる問題の両方が含まれるということだろうと思いますが、この前者の問題も含めて規律を整備する必要があるのではないかというのが私の認識です。   長くなってしまいましたが、以上が私の意見です。 ○大村部会長 ありがとうございます。窪田委員からはたくさんの御指摘を頂きましたが、三つぐらいにまとめさせていただきたいと思います。基本的には部会資料25のゴシックのような方向で考えるということでよいのではないかという御意見だったかと理解をいたしましたが、一つは、そのときの基本的な考え方をおっしゃったように思います。それは、一方で家族が多様化しているということに対応していく必要があるだろうということ、他方で様々な要望についての法的な対応、バックアップしておくということが必要だということを原則というか、基本のレベルでおっしゃっていたかと思います。それから、もう一つ、合意があれば認めるということについて、夫婦間で真摯な合意がある場合にこれを尊重するという点については、そうすべきではないか、そして、反対意見の中には、合意の有無にかかわらずということを前提にしている議論もあるだろうから、合意があるという場合については合意のない場合とは区別して考えるべきではないかという御指摘を頂いていると理解しました。最後に、今後これを前提としたときに検討すべき課題ということで、現在もある問題も含めて考えていく必要があるという御指摘だったかと思います。ありがとうございます。   たくさん手が挙がっているのですけれども、沖野委員が途中で退出と伺っていますので、まず沖野委員に御意見を頂いて、そのあと、手元の挙手のメモを整理させていただいて、順番を決めたいと思います。 ○沖野委員 ありがとうございます。東京大学の沖野でございます。今御紹介がありましたように、私は退出をしなければいけないものですから、早めに発言をさせていただきたいということで、この時点で考えるところを申し上げたいと思います。今、窪田委員が御説明になった、あるいはお話しになった意見と全く重複はするのですけれども、それを恐れず申し上げたいと思います。   9ページに書かれております基本的な方向性、あるいは1ページのゴシックの1に書かれております、見直すという点について、賛成だということでございます。また、そのときに、子の利益から、正に問題がなく当事者で真摯に合意をしているという場合には、その合意を尊重するという方向がよろしいと考えております。理由でございますけれども、これも窪田委員が御指摘になったことですけれども、やはり多様性ということが出発点にあると考えられます。例えば、9ページでは、離婚後の父母の在り方として、双方を親権者とした方が子の利益の点から望ましい家庭もあるということ、そういうものがふさわしいという場合もあることは、やはり確かであり、この点は、ヒアリングですとかパブリック・コメントから、あるいは消極説、乙案を賛成する立場からも、通常はとか、当然にはと書かれておりまして、およそいかなる場合もそういうことがあり得ないという考え方は、もはや採られていないと考えられます。そうしたときに、そのような事実認識の下、どう考えるかということです。   現行法ですけれども、現行法の趣旨は必ずしも明らかではないところがありますけれども、部会資料で説明されておりますような、4ページですけれども、共同生活を営まない父母が親権を共同して行使することは事実上不可能であると考えられたためということだといたしますと、それはその時点においても果たして正確な認識であったのかということが疑われると思いますけれども、現在においては一層妥当しないものになっていると考えられます。したがいまして、第819条を支える考え方というのが現在は維持できないのではないかということでございます。   そうしたときに、子の利益からどれほど望ましくても、また、当事者がそれをどれだけ望もうとも、法的には一方のみに親権者としての法的な地位を与え、それとともに権限や責任を負わせ、他方には親権者としての法的な地位は一切与えないしそれがもたらす権限も責任も持たせないという法制度というのが、果たして適切な法制度の設計であるのかということは、大いに疑問です。協議が調うような場合は事実上対応できるという指摘も部会資料の中では示されていますけれども、果たしてそうかということも書かれているわけでして、具体的に個別に意見が異なるような場合の調整措置というのが必要になることはある、信頼関係があって協力関係があっても、いろいろ意見が分かれるということはあり得るわけで、そういった調整措置もなく、また、一方にのみ権限を与え、一方にのみ更に義務と責任も負わせるというのが、事実上であとはやるのだということで本当に対応できるかというと、実は対応できないと思われます。   確かに一方の当事者に親権を与えるという現行法を維持すべき場合があることも、もちろん確かだろうと思われますし、また、虐待ですとかドメスティック・バイオレンスに対する懸念というのは非常に重要ですし、それがむしろ事実としては多数である、むしろ原則であるという考え方自体も決して否定されるというわけではありませんけれども、だからといってそれへの対応を、およそ法的な親権者としての地位を一方にしか与えない、他方には一切与えられないということで臨むというのが、これはDVや虐待への対応という目的に対しては余りにも過剰で不相当な方法だと考えられますし、本来最も重要であるはずの子の利益の保障という、その目的達成をむしろ損ねるものだと考えられます。したがいまして、第819条の見直しは必至であると考えられるわけです。   そうしたときに、当事者が合意をすれば、その合意を認めるという点ですけれども、それに対しましては、本当に真摯な合意ができているのか、子の利益の点から適切であるのかということを十分勘案できるような仕組み、それをどの段階でチェックするのかというのは具体的な設計になりますけれども、それは加えた上で、合意を尊重していくということは合理的な在り方ではないかと考えるところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。沖野委員からも様々な御指摘、それから御意見を頂きましたけれども、基本的にはここで提案されている方向で考えるということに賛成を頂いたと理解をいたしました。その理由として、多様性の観点とか合意尊重の観点ということは、先ほどの窪田委員の御発言と同じでしたけれども、もう一つ、子の利益という観点も付け加えておっしゃったかと思います。   その他の問題としては、現行法の扱いとの関係でどうするのかということで、現在の民法第819条の扱いが果たしてよいのか、立法当時は仮によかったとしても、現在では状況が変わっているのではないか、そもそも、立法当時もおかしかったかもしれないといった御指摘と、それから、事実ベースで対応できるのではないかという御意見もありますが、それでは対応できないところがあるだろう、これは窪田委員もおっしゃっていたのではないかと思いますが、そのような御発言がありました。同時に、現行法と同様の扱いを維持すべきケースも確かにあるだろうし、事実としてはそれが多いかもしれないという御指摘や、合意によるという場合に、その合意を確保する手段を十分に考える必要があるといった御指摘もあったと受け止めました。ありがとうございます。   たくさん御発言希望がありますけれども、手元のメモの順でいうと、石綿幹事、青竹幹事、大山委員、赤石委員、戒能委員、菅原委員ということかと思いますが、ほかにもいらっしゃいますか。落合委員、井上委員、池田委員。後で、他にまだありますかと伺いますので、取りあえず今のところはこれでよろしいでしょうか。武田委員もあるかもしれませんが、また後で手を挙げてください。私のメモで整理できている範囲でまず伺いたいと思いますが、石綿幹事からお願いをいたします。 ○石綿幹事 幹事の石綿です。私も窪田委員、沖野委員と同様に、第819条を見直すという部会資料の方向性につきまして賛成いたします。重複する部分もございますが、大きく2点、理由を述べさせていただきたいと思います。   まず1点目の理由ですが、現状では離婚後も父母の双方が子に関与したいと思っており、可能である方たちに、法が十分な制度が提供できておらず、この点について立法的な対応をするべきだというものです。部会資料5ページ以下では、現状でも共同養育が可能であるといった見解、また、研究者の方によっても、民法第766条を用いれば可能だという見解もあることは存じていますが、部会資料6ページにあるように、父母間で紛争が生じたときの紛争解決についての仕組みが不明確であること、また、親権を有していないが事実上共同行使している親が、子に対してどのような義務を有しているか不明確だといった問題があるかと思います。   民法は、そもそも婚姻中については親子の養育の在り方を当事者の合意に委ねず、子を十分に保護できるように親権制度というものを準備しているわけで、親がどのような形で子に対して責任を負うかということをそこで定めています。離婚後事実上の養育をしている親に対しても、本来はこどもの利益のために、ある種後見的に民法が介入するということが必要なのではないかと考えられますし、そのような事案に対応できるように民法第819条の見直しを検討するという必要があろうかと思います。また、学説においては離婚後の子の監護に関する規定について、現状のように第766条で父母の同意に委ねているということを批判して、親権の部分で何らかの対応をするべきだという見解が長らく指摘されているということも付け加えさせていただければと思います。   2点目は、比較法的見地からです。部会資料の8ページで国際的な動向の指摘もあるところですし、例えば私が研究しているフランス法においても、DVや児童虐待などがある場面は、離婚後に限らず、面会交流や親権行使を一定の期間、権利行使を停止するという動きがございます。類似の動向は部会でもいろいろと御指摘があったところかと思います。他方で、フランスも含めて多くの国では、いかなる場合でも父母が離婚後に共同して親権を行使することは認めないという方向までの見直しは行っていないのではないかというのが私の比較法についての理解です。ここには、父母双方が子の養育に関与するということが子の利益にかなう場面がある、そして、双方が関与する場合の在り方について法が規定することに一定の意義があるのだという考え方が依然として存在していると考えられ、そして、その視点というのは学ぶべきところがあるのではないかと思います。   以上の理由から、どの範囲で共同での親権行使を認めるのかという点については、日本法の現状及び比較法的見地も参考にしながら、こどもの利益を害することのないように十分に配慮しつつ、しかし、子の利益のために民法第819条を見直すということが、まず第一歩、必要なことなのではないかと考えております。   長くなりましたが、以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事からも民法第819条を見直すということについて賛成の意見を頂いております。その理由として2点おっしゃっていて、一つは、共同で親権を行使する、あるいは監護をするという場合の法的な対応が現行法では十分ではないので、この点を補う必要があるということ。もう一つは、比較法的な動向、国際的な動向として、単独親権と呼ばれる形態を採ろうというような動きは認められないのではないかということをおっしゃっていたかと思います。ありがとうございます。 ○青竹幹事 幹事の青竹です。窪田委員と沖野委員、石綿幹事が丁寧に主張されていることですので、余り付け加えることがないですけれども、第819条を改正した方がよいと考えておりますので、意見を表明させていただきました。   ただし、暴力的な親が離婚後に共同親権者として子の監護や財産管理に介入するということには強く反対いたします。しかし、どのような場合であっても離婚後には共同親権者となれないという現行法には、やはり問題があると考えております。先生方のおっしゃっているように、家族は多様ですので、共同親権を絶対に認めるべきではないという場合もありますが、父母が真摯に合意していて、共同親権とした方が子の利益に合致するという場合もたくさんあります。その場合に、後者の場合にも単独親権を強制するということになるのは、子の利益にかえって反する状況を作ることになりますので、望ましくありません。第819条を改正すべきとしながら、少し表現がよくないかもしれませんが、暴力的な親が共同親権者になることを防ぐ方策というのは、必ず立てるべきですので、そちらはできなかったということでは済まないと考えております。   それで、離婚時に、もちろん単独親権か共同親権かを父母が決断するときに、暴力的な親が他方の親の単独親権とすることに合意すればいいのですけれども、自分が単独親権者になるとか、共同親権者となるということを飽くまで主張する場合に、今までの制度を大胆に改正して、親権者の定めをペンディングしたまま離婚を認める制度だとか、暴力的な親の威圧により共同親権に合意し離婚届をしてしまったという場合には、離婚の効力をそのままに共同親権の定めを取り消せる制度とか、現行の親権停止とか親権喪失の制度、あるいは親権者変更の制度を、暴力的な親が共同親権を強硬に主張してきた場合に備えて、もっと利用しやすく、大胆に制度を修正すべきではないかと考えております。詳しくは今日決めることではないかもしれませんけれども、第819条を改正するためには、同時に、ふさわしくない親が共同親権になることを防ぐ方策というのは必ず検討すべきであると考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。青竹幹事も基本的にはここで提案されている方向でこの後、検討すべきだという御意見だと受け止めました。その上でその理由として、現行法制の下では親権の共同行使ができないということになるので、その状態を全ての人々に強要するというのは問題であろうということをおっしゃっていたかと思います。他方で、暴力的という言葉を使われましたけれども、一定の場合について親権の共同行使が望ましくない場合もある。一旦決めてしまった場合に、そこから離脱するための方策については、大胆な発想も含めて制度を考えていく必要があるという点も強くおっしゃっていたかと思います。ありがとうございます。 ○大山委員 経団連の大山でございます。ありがとうございます。結論から申し上げますと、私も御提案の方向性に賛成でございます。理由につきましては、窪田委員、沖野委員等からも御指摘いただいておりますので、簡潔に申し上げますと、時代とともに価値観が多様化しており、家族の在り方に対する考え方も多様化してきている中で、やはりその時代に合わせて、運用で対応するのではなく、きちんと法律上明文化して、単独親権だけではなく、父母の合意がある場合については共同で親権を持てることを明文化することによって、きちんと法的な担保をしていくことは大変重要なポイントだと思いますので、是非明記していただきたいと思っております。   ただ、そのときに、正に先ほど皆様から御指摘いただいているとおり、父母の合意といったところをどのように担保していくのかというところは、やはり具体的な規律のところで、これからまた議論を深める必要があると思います。また、事後的な変更についてもきちんと担保しなければいけませんし、そういったところは引き続き検討が必要と思いますが、あくまで父母による真摯な合意の下では、こういった選択肢を法律上広げる、そういった方向性で是非やっていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。大山委員からも積極的な御意見を頂戴したかと思います。多様化への対応、あるいは明文化の必要性ということにつきましては、これまでの委員、幹事もおっしゃっていたところかと思います。その上で、合意の担保について事後的な対応措置も含めて考える必要があるという御指摘を頂戴いたしました。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。ありがとうございます。私はこの方向性に留保を付けたいと思って発言させていただきます。   まず、頂いたパブリック・コメントに沿ってきちんと検討がなされるべきではないかと思います。根本的に、ページ5、2段落目ですね、質問なのですが、離婚後の父母双方を親権者とすることを父母の双方とも望んでいる事例があると書かれております。このパブリック・コメントを資料の中に発見することはできなかったのです。つまり、父母双方が望んでいる事例として書かれているものが根拠としてあるのでございましょうか。今、議論すべきことは、イメージとしてどういう方向に進めるべきかということを、多様性とかいろいろなことは大変響きのいい言葉ですけれども、頂いたパブリック・コメントに沿って少なくとも議論したときに、私からは見ると、そのようには見えてこないというふうなことがございます。   また、離婚後の親権の共同の行使ということは、今も、委員の皆さんがおっしゃっているように、信頼関係、協力関係というものがあって初めて成り立つのですが、その法的な枠組みというのは、結婚のときには同居義務があり、協力義務があるのですけれども、果たして離婚後に今の実態で協力できてやっていける夫婦がどの程度いらっしゃるのかというようなことも疑問になります。   私に与えられた時間がどの程度あるのかが不分明なのですけれども、まとめて申しますと、5ページの3段落目に、同居親側の立場にある者からも、離婚後の父母双方を親権者と定めることを希望したかったとの意見があったと引用されております。どのような方が同居親でこのようなことを望んでいらっしゃるのかということで、パブリック・コメントの資料7ページに幾つかそういう方の事例というのは挙げられているわけでございます。今日も私、閲覧させていただきました。同居親の方が本当に真摯に望んでいらっしゃるか、どのような背景でおっしゃっているのか。残念ながら、その方たちは離婚後全く養育を拒否されていたり、連絡が取れず全くこどもに会ってもらえない、あるいは養育費を払ってもらえない、あるいは、払ってもらえないから払ってほしい、だから共同の親権を望む、こういった方たちでした。   だから、今日急遽こういう図を持たせていただいたのですけれども、同居親の方で共同親権を望んでおられる方について、これは4象限になっております。軸が一つが、父母の信頼・協力関係があるなしの縦軸です。横軸が別居親の子の養育意欲があるなしの軸でございます。皆さんが今おっしゃってくださっていたように、協力・信頼関係があり別居親の子の養育意欲がある、この第1象限のみが共同教育の可能性があるというのは、皆さんもおっしゃっているかと思います。   でも、パブリック・コメントで出てきた御意見は、同居親に関しては第3象限の方たちでした。私も400件、代理送付を法務省にさせていただいたので、私どもが頂いている御意見をもう一度見直し、インタビューもさせていただきました。本当に切ないような意見がたくさんありましたが、二十過ぎてもお子さんが自立できず、養育費を続けて払ってほしいというような方、有責配偶者で全く連絡が取れないような方、こういう方が共同親権を望むとパブリック・コメントで書いておられるのです。こういう方たち、この第3象限の方たちは、制度ができても合意にはなれないし、もし離婚時に合意しても利益にならない方たちではないでしょうか。ということで、再度お伝えしたいのは、質問ですが、離婚後、父母双方を親権者とすることを父母の双方とも望んでいる、そういう事例がおありだったでしょうか、ということが一つ。   それから、安易な、今は双方が合意して、本当に真摯に合意したのみに協議離婚で認めましょうという方向性なのですが、協議離婚の多くは連絡が取れなくなっていたり、合意ができないようなケースが日本社会では非常に、30%とか40%いらっしゃるのです。これは私どもの調査でもそうですし、未成年期に父母の離婚を経験した子の養育に関する実態についての調査分析でも、別居後交流なしは41.3%です。この方たちを変えるような法改正をするおつもりがあるのかどうか。この方たちが決めてしまったときにどんな不利益が生じるのか、皆さんが御検討なさっておられるのかということです。   なので、大きな方向性としてはそういうことなのですけれども、資料の中で加えていただきたいのは、この連絡が取れなくなったケースというのが全く書き込まれていないのです。それは非常に問題だと思って、協議離婚の多くは連絡が取れなくなっているのです。あるいは合意など取れないケースがあります。こういうケースでも、制度を適用されるときに、平和に、しかもうまく機能するのかということが、まだ真摯に検討されていないのではないかというのが私の意見です。   イメージは大切です。イメージはもちろんよいと思います。私も、こんなに言うと共同養育に反対している、単独親権ごりごりのように見えるかもしれませんが、別に私は面会交流もいいよねというし、正直、私のこどもも面会交流は本当に自由にやっておりました。いいと思うのです。ただ、制度というものはあらゆる場合に落とさないようにやれなければいけないのです。   少し細かいことですけれども、3ページ、2の2段落目、婚姻中及び離婚時に父母間に存在していた紛争や父母の一方から他方に対する支配、被支配の関係が離婚後も継続し、子がその紛争等にさらされ続けるおそれがあるという事例が反証事例としていわれているのですが、もう一つここに加えていただきたいものがあります。離婚後、別居親が子への関心を失い、あるいは連絡が取れないなどの理由で共同で親権を行使する関係性が失われているため、共同の行使が子の利益とならない、こういった事例をここに書いておくべきであると思います。これはもう20万の離婚件数のうち3、40%はそこです。それを検討しないで法制審議会が議論を進めるのは非常にまずいと。でも、その声は届かないですね。武田さんのように協力、別居親の子の養育の意欲がある方がここにいらっしゃるのです。意欲のない方はここにいらっしゃらないのです。なので、分からないのです。でも数字的には表れていますので、それをきちんと、駄目だと言っているのではないですよ、そういう方以外の方に説得力があるものを作らない限りは機能しませんということを言っております。   なので、同居親で本当に信頼関係があって望む例というのを、もしあったなら、出してください。それから、離婚後の父母双方を親権者とすることを父母の双方が望んでいるケースをパブリック・コメントから出していただきたい。こういったものもなしにイメージで議論をするのは非常に危険なことになるのではないかと思っております。   後で補足するかもしれませんが、以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員からもたくさんの御指摘を頂きましたけれども、基本的にはこの方向で議論をするということについて慎重なお考えを示されたかと思います。その上で、いただいた資料をお配りしております。整理の仕方にはいろいろなご意見があろうかと思いますが、赤石委員の整理によると、@のところは共同養育が可能かもしれない、しかし、できないところがたくさんあるだろうということで、御意見の中の御指摘の一つは、@に入るものがどのくらいあるのだろうか、@に入っているように見えるものの中に、そうでないものも含まれているのではないかという点を検討する必要があるというこだったのではないかと思います。それから、もう一つは、@に入らないものがあることはほかの委員、幹事の皆さんも御指摘、前提にされているところかと思いますけれども、それを仕分けて機能させるための制度的な対応を十分に考える必要があるのではないか、それをしないと、これの提案に安易に賛成するわけにはいかないといった御指摘だったかと思います。また後で、何かあれば出していただきたいと思います。 ○戒能委員 ありがとうございます。戒能です。3点申し上げたいと思います。結論から言えば、私もこの段階で、今回の御提案、部会資料25の御提案については慎重に考えたいと思っております。   パブコメ、団体からも非常に多く寄せられていて、その本当にごく一部をちらっと見ただけにすぎませんけれども、実際に支援に当たっている団体からの意見を拝見しました。そうしますと、必ずしも団体が一つの意見にまとまっているわけではなくて、多数意見、少数意見、反対意見というのも掲載されておりました。しかし、それを通しても、時期尚早とか、もう少し検討すべきだということをうかがい知ることができました。これは全てではないということは、もちろんでありますが、支援に当たっている、あるいは実務の機関からそういう意見が出ているということは重視すべきだと考えております。それが前提の1です。   それから、前提の2として、おまとめいただいて大変整理されて、最後に、合意がある場合に新たな仕組みの検討をすべきだというところでまとめたいという御意向かなと思ったのですが、その際に、できればデータにきちんと依拠した説得力のあるまとめ方をしていただきたいと思っております。例示をいたしますと、部会資料25の4ページで、(2)の直前なのですけれども、子の利益のところです。そこで、同様の切り口からの意見があったということで、(注4)というのはどこにあるかというと、8ページにあるわけです。それで、これは以前の議論でも出ていたことですけれども、ひとり親世帯において、同居親又は交際相手等による児童虐待死のリスクが高いとして、別居親が離婚後も引き続き親権を有し、子との交流を継続することがあれば、その虐待死のリスクを低下させることができるとの意見もあったとありますけれども、これはパブコメの引用ですけれども、これをもし書くとするならば、児童虐待死が余りにも増えているということで、2005年以来、厚生労働省の中の社会保障審議会に児童虐待死亡事件の検証をする委員会を設置して、毎年報告書を出しております。その中で、2019か18年ぐらい、最近のことだと思いますが、DV事例の検証をしているのです。そういうものを是非御覧いただいて、そこにどこに児童虐待死をもたらした要因があるのかという分析も行われております。残念ながら、そこに別居親が介入しているかどうかというデータはなかったとは思います。そういう視点はなかったと思うのですけれども、私が申し上げたいのは、その問題だけではなくて、実は貧困とか社会的孤立の問題というのが大変大きい。それで、社会的な要因が非常に大きくて、単純な問題ではないのだということです。若年のシングルマザーが多く、だから、赤ちゃんが殺される例も多いのですけれども、その背景に何があるのかということをきちんと押さえた上で、こういう残る文書、資料ですから、慎重な態度が私どもには求められているということを前提として申し上げたいと思っております。   それで、以下の3点です。合意があればということで議論が進められておりましたけれども、その合意の形成自体が問題であるということです。そこのところは皆さん御理解の上で御発言なさっているとは思うのですけれども、合意の強要、強制がないかどうか、それから、諦めの結果としての合意があるのではないかというようなことです。合意の要素というのも、水野委員が翻訳されているようなのですが、アメリカの研究者がもう少しシビアな合意の条件というのを出している。だから、そこまでやはり考えてやらないと、合意というのは大変難しいことだということを認識すべきだというのが第1点です。   それとともに、まず合意があるところから議論を出発していきましょうと、そういう思考方法だと思うのですけれども、やはり制度化が目的ですから、どこを目指して制度化をしているのか、それから、その制度化の必要性はどこから出てきているのかということを考えなければいけなくて、逆に合意のない場合もこういう制度化の土俵に乗らざるを得なくなるのではないかというところまで見据えて、非同意ということですよね、非合意の場合も土俵に乗っていくということまで、これは先ほどの赤石委員の御発言のとおりだと思っております。制度化することの意味ということを考えなければいけないというのが1点目です。   それから2点目は、中間まとめのときも(前注2)として取り上げてくださって、DVとか虐待については十分留意するのだということが入ったというのが大変重要なことだと思います。しかし、議論を伺っておりますと、DVとかチャイルド・アビューズ、虐待がやはり例外的な存在だという認識がまだ非常に強いのではないかと、抜け切れていないのではないかと思います。全体にどのくらいなのかとか、実態はデータとしては出ないわけなのですが、紛争事例としては大変多いのではないか。だから、きちんと実態を反映するような議論が必要なのではないかということが2点目です。   それから、3点目は、これは御発言もありましたけれども、国際的な動向の見方ということで、変化しているという視点が非常に大事だと思っております。それで、私自身まだ勉強不足ではありますけれども、先進国と呼ばれている国々、ヨーロッパ諸国、オーストラリアも含めて、もう一度見直すという段階に来ている国もあって、例えばオーストラリアの2006年の家族法の改正も、2019年に報告書が出て、平等な共有の親責任の推定という原則を廃止するという報告を出した。それを受けて、そういう提案があっても法律として実現していないのだという御意見もパブコメのまとめとしてありましたけれども、オーストラリアの場合は、これも単なる情報にしかすぎませんけれども、2013年ビルとしてもう出されている。もちろん単純な議論ではなくて、様々な議論が錯綜しているとは思われますが、そういう動向にも留意しながら、日本が一周遅れているのだとしたら、きちんとそういう諸国がどういう状況にあって、どういうまとめをして、反省をして、あるいは教訓を得て、そして法改正に臨んでいる国もあるのだということを十分認識し、そしてそこから学んで、制度化をすべきだというのが3点目の私の意見です。   以上でございます。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員からは、全体として慎重に検討する必要があるという御指摘があったと思いますけれども、御意見としては、DV事例の重みを十分に考慮する必要があるということ、国際的な動向、先ほどの石綿幹事も戒能委員の御指摘のものも踏まえて国際的な動向についておっしゃっていたかと思いますが、それについても十分に立ち入った形で参酌する必要があるだろうということ、これが一つだったかと思います。それから合意がある場合については、これもこれまでの委員、幹事から出ているところですけれども、強制のない合意というものをどのように確保するのかという点が非常に大きな問題ではないかという御指摘を頂いたと理解をいたしました。 それと併せて、合意のない場合にどうするのかということですが、合意のない場合については今ここで議論してはいなくて、合意のある場合をまずどうするか、合意がある場合について一定の対応をする、今のところはこの方向でいいのではないかという御意見をたくさん頂いておりますけれども、ではその先の段階をどうするかということは、また別途議論が必要だということで、取りあえず今日のところは問題を分けてお諮りをしているものと考えております。   先ほどの赤石委員の御発言と今の戒能委員の御発言の中で、パブコメの取扱いを慎重にといった御発言もありました。今日も多数の委員、幹事から御発言いただいておりますが、私たちはこの場での議論を通じてこれから案を固めていくことになります。その意味で、皆さまの御意見の重みは大きいわけですけれども、参考資料となるパブコメの扱いもしっかりする必要があるという御指摘はもっともかと思います。それについて、何か法務省の方で、今の時点で、お二人からの御意見ないし御質問についてお答えをしておくべきことがあれば、お答えいただいて、それで次の方の御意見を伺おうと思いますけれども、北村幹事、何か特にあれば伺いたいと思いますが。 ○赤石委員 質問のお答えはどこかで頂けるという認識でよろしいでしょうか。 ○北村幹事 今回、御参考の資料の冒頭にも少し書かせていただいているのですけれども、個人の御意見というものも、団体の御意見に包含されるものは、そちらの方にまとめさせていただいていまして、また、その中で先ほど御指摘いただいた関心がなく出ていった場合ということも触れさせていただいているつもりです。ほかにも、部会資料の中で引用した御意見について、我々としては丁寧に今回、パブコメの御意見を整理したつもりですけれども、まだ留意すべき点があるということであれば、そこはなお留意しながら整理したいと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。委員、幹事の中には、この会議の前あるいは後にパブコメの原資料を御覧いただいている方も少なくないかと思います。そのまとめについて様々な御意見があろうかと思いますけれども、まとめ方については可能な範囲で的確な方向でまとめていただくということで、委員、幹事、お気付きの点がありましたら、事務当局の方に御意見を寄せていただきたいと思います。また、パブコメの内容を資料の理由付けの一部に使っているという場合について、それが適切であるかどうかという点につきましても、個別に御意見を頂きまして、それぞれの点の説明をする際に適切さを確保するように御留意を頂きたいと思います。   その上で、赤石委員から何かもし御発言があれば、どうぞ。 ○赤石委員 赤石です。この資料のレバレッジポイントというか、論理展開で非常に重要なポイントが御意見としてしっかり示されていないのは、やはり残念に思います。ですので質問させていただきました。離婚後の父母双方を親権者とすることを父母の双方とも望んでいる事例をお示しいただきたいというのが1点でございます。また、ひとり親で双方の合意が取れる信頼・協力関係があって共同親権を望んでいる事例があるのか、この2点でございます。宿題にしていただいて結構でございますので、よろしくお願いします。 ○北村幹事 個々のパブコメの御意見を参考にしつつこの部会資料を示しているというもので、一つ一つのパブコメの意見を検証するのではなく、大きな方向性について皆様方からここで御意見を賜りたいということで資料も作らせていただいているところです。そういったことを前提に御議論いただければと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員がおっしゃったような事例というのが世の中にあるのかないのかということになると、それはあると例えば武田委員はおっしゃるのではないかと思いますが、資料の中にそういうものがあったのかという御質問と承りました。先ほどお答えいただきましたけれども、資料を参考にしながらここで議論をしているわけですが、資料の理解としてどんな捉え方が適切なのかということにつきましては、御指摘を頂いて、事務当局の方で可能な範囲で御検討を頂きたいと思っております。差し当たりそのように受け止めさせていただきます。   菅原委員、お待たせしてすみません。 ○菅原委員 ありがとうございます。それでは、手短に意見を述べさせていただきたいと思います。   本日のテーマである、協議離婚の場合で真摯な合意がなされる場合を考慮して第819条を見直していくという方向に賛成でございます。窪田委員、沖野委員、青竹幹事ほかの委員の先生方のご意見に賛同させていただきたいと思います。家族が多様化している現在、様々な親、様々な家庭があり、離婚後も養育に対する意欲があり、かつ両親の間で打合せができるような人たちに対する法的な権利の保証がないというのは、一般の国民からしても、制度上の不備ではないかという感想は生まれるのではないかと思いますし、また、こどもたちにとっても、離婚後も対等な形で親が関わることが可能なケースに関しては、今回法的な整備がなされることには大きな利益があると考えます。   その上で、今たくさん御意見が出ておりますけれども、当然ながら、親であってはいけないような虐待をする方とか、DVがあって家庭を維持することが困難な方々をどのように規律していくかということは重要で、本部会でも決してそれを例外的とは考えてこなかったので、私たちも中間試案のところに(前注)として置かせていただいたと思っておりますので、今後の制度設計の中でしっかりその辺りを規律していくということで、今回進めていけばいいのではないかと考えます。   以上です。よろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。菅原委員からも、この議論の方向について基本的には賛成であるという御意見を頂きました。離婚後の共同での養育について法的な受皿があるということにメリットがあるのではないかという御発言を頂いております。他方で、これも多数の委員、幹事から御指摘を頂いておりますけれども、虐待やDV事案というものに対する十分な対応措置がなされるということが前提である、中間試案もその趣旨であっただろうという御指摘を頂きました。   今、落合委員、井上委員、池田委員、最高裁、そして武田委員と手が挙がりました。ほかにもいらっしゃるかもしれません。さらに、原田委員ですね。ここで打ち切るという趣旨ではありませんが、どのくらい御発言が残っているかを確認させていただいて、休憩しようと思います。棚村委員、小粥委員、水野委員、佐野幹事。まだたくさん御発言があるようなので、休憩を挟んで引き続き御議論を頂きたいと思います。今、14時54分ですので、10分ほど休憩いたしまして、15時5分に再開したいと思います。   休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開させていただきたいと思います。   休憩前に、数は正確でないのですけれども、7、8人の方から御意見を頂きました。あと12人ほど、手が挙がっておりますので、順次御意見を伺いたいと思います。   私の手元のメモの順で、まず落合委員からお願いをしたいと思います。 ○落合委員 落合です。先ほど所属について言い忘れましたの。京都産業大学に異動しました。よろしくお願いします。   私が申したいことは、まずはこの御提案に基本的に賛成だということです。全ケースに単独親権を強制しなければいけないという理由はないのではないかということで、共同親権への道を開くということに賛成します。その理由は、最初の頃に法学関係の方がおっしゃったことに基本的に重なります。   ただ、多様化という言葉を使っていた方が多いわけなのですけれども、私はそれは少し不正確なように思います、家族社会学者としては。離婚が増えた時期、1970年代から後ぐらいに、この離婚後も親が関わるというのがヨーロッパとかアメリカでかなり目立つようになってきましたけれども、それは多様化というよりは近代家族の論理の一貫というか、その完成のように思うのです。私はむしろ論理の一貫性のためにこの改正は必要だと思います。   と申しますのは、親の責務というようなことを前回、議論しました。私はそれを余りあからさまに書くのは余り賛成ではないというようなことを申しましたけれども、基本の発想として親の責任とか責務ということを考えているのであれば、しかも、婚姻中は共同親権で両方が責任を持つというのであれば、離婚したからといってそれが片方だけになるというのは一貫しないと思うのです。ですから、そこを一貫させるべきだというのが主張です。   もし多様化というようなことをいうのであれば、同性カップルなどが両方とも親権を持つべきだ、みたいなことなら、多様化という話だと思うのですけれども、ここではそういう話ではないのではないかと思うのです。もっと古典的な論理ではないかと思います。多様化しているからというふうに論理構成しますと、家族が多様化していること自体がいけないのだと考えている方は付いてきません。そういうことではないと私は思うのです。   離婚後も近代家族の論理を一貫させることだと言いましたけれども、では、今なぜ違うかというと、やはり家の残存なのではないでしょうか。夫婦同姓と単独親権というのは両方とも家の残滓だと考えられないでしょうか。家の中にいる人と外にいる人を峻別して、ネットワーク的な家族関係というものを否定していく、そういう家的な家族観というようなものが単独親権制度の背景にはあると思われます。これは夫婦同姓と同じなのですけれども。それをもっと、親が両方とも関わるような論理に転換していくということなのではないかと私は考えています。そういう、少し理論的な話なのですけれども。   もう一つ、理論的なことで気になりますのが、赤石委員、戒能委員がおっしゃった例です。危惧を持たれていることはよく分かります。それから、実態として無関心な別居親が多いことであるとか、それから社会的孤立による虐待死というようなことが起きていてという辺りは賛同するのですけれども、それはむしろ今の制度下での実践の話ですよね。制度を変えたら違う実践になるのではないでしょうか、なる可能性があるのではないでしょうか。共同親権になれば無関心ではいられなくなるかもしれない、あるいは無関心な人が減るかもしれない、養育料も払うかもしれない。それから、社会的孤立によって虐待死が起きているのであれば、孤立しないように共同親権にして、無理やりにでも支え合うという、それはむしろプラスなのではないだろうかと。ですから、挙げられている例が、なぜこの提案に反対する理由になるのかが私がよく分からなかったということです。   そこから、甲案と乙案の話を今までは議論していると思うのですけれども、甲の@とAというのが2ページ目にあります。そこについてはまだ余り話が出ていないように思いますが、この辺りの話になってくるのかなと思うのです。赤石委員、戒能委員は甲の@に反対ということなのでしょうか、Aにも反対ということでしょうか。Aは、自分たちが協議して合意して、要件を満たしていて、共同親権にしたいというような人たちはそうしたらどうだというふうな話ですよね。甲@の方は、原則として共同親権ということですね、甲Aというのは、条件を満たす人だけ共同親権、双方の親権があるというようなことにするということなのですが、そういう合意できたようなケースを認めるということにも反対されるのかどうかというのを伺いたいと思います。合意の形成自体が問題だという議論がありましたけれども、でも、それを言うと、あらゆる合意というものを全部疑うことになります。ですから、その議論は少し行きすぎなのではないかと思うのです。その辺りについて、甲の@とAという辺りをどう考えられるかを聞きたいと思いました。   それで、甲@の方は原則共同親権とか双方親権ですかね、甲Aの方は、そうすると何なのかということですけれども、どうなのでしょうか、選択的共同親権とかいう感じでしょうか。選択的夫婦別姓と同じくらいの感じで選択的共同親権というものを認めるというようなことであれば、それでいいならいいのかなと。   私は理論的一貫性ということでは甲@の方がよいように思いますけれども、でも、いろいろなことで危惧することがあるというのであれば、選択的共同親権、甲A型みたいな、本人たちが希望して、かつそれが条件を満たす場合だけを認めるというようなこともあり得るのだろうかと。ですから、この第819条を見直す場合に、最低限でも甲A案にするべきなのではないかと考えます。   最後に付け加えたいことは、親権の定義ということがないままこの話をしていることが、やはり欠けている点だと思うのです。親権の定義については、今までもいろいろ言ってきましたけれども、第2の何とかというところの前の方とか、そこに親権とは何を意味しているのだということがないと、やはり国民の社会的な合意ができたことにはならないであろうと思います。ですから、養育とか責任とか、いろいろな言葉が出ていましたけれども、定義するのは非常に難しいですけれども、やはり簡単にでも、せざるを得ないのではないかと考えます。   それから、もう一つ少し引っ掛かっていますのが、3ページの一番上の方の、父母が婚姻関係にない場合の離婚と認知の場合というのが挙がっているわけです。今、離婚について話をしていますが、認知の場合にこういう議論はどういうふうに拡張していくのかという辺りも、これは全体が収まってからでいいと思いますけれども、話しておくべきことであろうと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。落合委員からは、基本的にこの方向に賛成だということをおっしゃっていただいた上で、幾つかの御意見ないし御指摘を頂きました。そのうちの一つ、説明の問題というか、多様化という言葉についての御指摘があったかと思います。それが必ずしも用語法として適切ではないのではないかということだったかと思います。御指摘は御指摘として承りたいと思いますが、婚姻家族の外と中とを対比したときの多様化という問題と、中で考えたときの多様化という問題があるのではないかと思うのです。民法の先生方がおっしゃったのは、比較法的に見ると大きな流れとして共同親権という方向に動いてきているけれども、その流れの中でもそれぞれの夫婦にはそれぞれの事情があるだろうから、それを勘案した制度を作る必要があるということで、落合委員がおっしゃった、近代の家族の動向についての基本的な認識を踏まえて皆さんおっしゃっているのではないかと私は思っています。ただ、その表現が誤解を招かないかどうかという点については少し注意をする必要がある、そういう御指摘として受け止めました。もう一つ、現在の状況だけを前提にして考える必要はなくて、新しい制度ができたらどうなるのかということも含めて考えるべきだという御指摘を頂いたかと思います。   それから、少し立ち入った御指摘も頂いておりますけれども、甲@、甲Aというのは現在、資料の1ページ目から2ページ目に掛けて、枠の中に入っております。これは中間試案の案です。それに対して、今回出ているのはこの枠の外の1ページ目の1、2ということになります。甲@案か甲A案かということですと、原則、例外が違いますので、皆さんの間でなかなか意見がまとまらない可能性が高い、そこで、合意があるときを取り出して、まずこれについて意見を取りまとめることができないだろうか、次に合意がないときにどうするのかについて御意見を頂く、そうした形で議論を進めてはどうかということで、今日、御意見を頂いております。ですから、今日取り上げている合意がある場合について議論をした後で、そうではない場合、先ほどから御懸念が出ている、合意できない場合についてどうするのかを次に議論する、このように順次実質的な規律について皆さんの御意見を頂いた上で、それを全体として制度化していく、条文化していく、そんな段取りになるものと受け止めております。親権の定義などもそうした中で考えていく必要があるかと思います。もう一つ、認知の問題についての御指摘がありましたけれども、これは現行法の下では、離婚後の場合と認知の場合とを対比した形で規定が置かれておりますので、離婚後について一定の規律をしたら、認知について同じように考えるかどうかということで話を進めていくということになるのだろうと思います。   それから、落合委員からは、合意があっても駄目かということについて、そのようにお考えなのかどうなのかと赤石委員や戒能委員について御質問がありましたけれども、もし後で御発言があれば、12人の方の御発言が終わった後で、また伺いたいと思っております。現段階では、こうした御指摘・御質問があったということで受け止めさせていただきたいと思います。 ○井上委員 ありがとうございます。連合の井上です。私ども連合といたしましては、基本的には離婚後も父母が共に子の監護に関与できることが望ましいとしつつ、現行法の下でも日常の監護も含めて父母が自律的に共同、協力している事例もあり、慎重な検討が必要だと考えています。   第22回会議の参考人ヒアリングでは、離婚を経験した同居親の立場の参考人から、現行の単独親権制度でも問題は感じず、各家庭での子に対する関わり方は様々であり、養育の在り方を制度的に定めるのは困難ではないか、離婚しても子育てがしやすい環境整備が優先されるべきではないかという指摘がありました。   また、本日の部会資料25の9ページの3、今後の議論の大きな方向についてには、離婚後の父母双方を親権者とした方が子の利益の観点から望ましい家庭もあれば、その一方のみを親権者とした方が子の利益の観点から望ましい家庭もあるということができるともあります。DVや虐待などがある場合に、その加害者も親権を持ち続ける、あるいは何らかの形で子の養育に関与し続けることが子の利益の観点から望ましくないことは明らかです。仮に婚姻期間中にDVや虐待のない家庭であったとしても、離婚後の共同での親権行使や子の養育への関与が子の利益にかなうものであるのか、子の利益を最優先に検討すべきと考えています。   以上のことから、第819条を見直すか否かに関し、現状ではDV及び虐待がある事案への対応や養育費支払いの実効性の確保、子の福祉の観点からの子の人権、人格、意思の尊重という点が十分ではないと考えており、見直しに際しては今申し上げたような複合的な観点から検討する必要があると考えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。井上委員からは、離婚後も両親が子の養育に関与できるということは一般論としては望ましいけれども、しかし慎重な検討が必要ではないか、子の利益の観点から検討するということが必要であり、特に他の制度の整備と併せて考えていく必要があるのではないかという意見を頂戴いたしました。ありがとうございます。 ○池田委員 弁護士の池田でございます。1ページの1につきまして、現行の離婚後単独親権制度を見直すべきかどうかということですが、その下の2の事項ですとか(注)の事項等を含めて、見直し後の具体的制度の在り方とともに議論しなければならないと思いますので、現時点では賛否いずれとも言い難いというところです。つまり、どう見直すかが重要で、見直しの是非だけを問われても、なかなか答えが難しいというところになるかと思います。   とはいいましても、婚姻中は父母双方が親権を有して、共同でこれを行使するとされていますのは、一方の親の単独の判断に委ねるよりも、子に関心を有する父母の協議に基づく判断に委ねる方が子の利益を増進するという価値判断に基づいているとも考えられますところ、その価値判断は離婚の一事をもって否定されるべきものではないようにも思われます。そして、その制度的裏付けとして、婚姻中と同様に離婚後も父母双方を親権者とするということは、一つの選択肢として十分考え得るところかなと思っています。したがいまして、是非とも離婚後単独親権制度を堅持しなければいけないとも言い切れないところでして、それをどのように見直すのかという議論自体を否定する意見ではございません。   次に、その見直し後の一つの場面である協議離婚の場面において、2のところですけれども、父母の合意のみで双方親権を選択できるという提案がされています。ただ、この点、事案によっては父母の合意による選択に一定の修正をする必要がある場合もあるのではないかと思っています。例えば、父母間にDVなどによる支配、被支配関係があって、支配の手段として双方親権の制度が用いられているような場合ですとか、父母が双方を親権者とすることに合意はしていますが、親権者として協力し合う関係性を欠いているような場合などです。   前者の場合は、恐らく合意の存在自体が疑わしいといえますので、事前の修正、双方親権にするかどうかの時点での修正が必要ではないかと思われます。その方法としては、合意の存在を確認するための第三者の関与が有益ではないかと考えています。   他方、後者の協力し合う関係性を欠いている場合は、そういう関係を事前に認知するということはなかなか難しいと思いますので、やってみたけれども対立ばかりでうまくいかないというような事態に立ち至ったときに、事後的に修正するということでもよいように思います。その方法としては、例えば単独親権への移行ということもあるかもしれませんが、単独親権への移行ということを考えますと、現在の実務では親権者変更のハードルというのは相当高いと思います。その運用が維持されるのであれば、双方親権者間の対立で何か決めなければいけないのに決められないというのが続いてしまうという問題があるかなと思います。他方で、ではそのハードルを下げればそれでいいかというと、単独親権への移行によって親権を失う側が出てくるわけですので、余りそのハードルが下がりすぎても問題があるのかなと考えたりもしているところです。   今後、こうした点についても引き続き議論をしていければと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは、具体的な制度をどう組むかということとの関係で最終的に判断をするということにならざるを得ないのではないか、しかし、括弧付きの共同親権が望ましいという価値判断はあり得る価値判断だろうということで、見直し自体を否定するものではないというのがまず最初の御意見だったかと思います。その上で、今回の具体的な案としては合意ができた場合というのが挙がっているけれども、この合意については事前、事後のコントロールというのが必要であろうということで、それについての幾つかのお考えをお聞かせいただいたということだったと思います。ありがとうございます。 ○馬渡委員 最高裁家庭局の馬渡でございます。私からは、裁判所の立場からということで意見を申し上げたいと思います。この共同親権の関係では、パブリック・コメントの意見の取りまとめの中で、裁判所の中でも肯定的な意見、否定的な意見、様々議論はあったところではございます。最高裁の家庭局という立場といたしましては、裁判実務において運用可能な制度となるかどうかという視点から意見を申し上げることにしたいと思います。   離婚後に父母の双方を親権者と定めることを可能とすることという今回の御提案については、このこと自体で裁判実務の運用に多大な支障が生ずるといったことは考えておりません。その運用可能性の観点から申し上げて、これに反対するというものではございません。むしろ、我々としては、次の議論になっていくのかもしれませんけれども、具体的な制度設計に強い関心を持っているところでございまして、むしろそこでのしっかりとした議論を期待するというところでございます。   その上で、今回この資料の1ページの2のところの提案、離婚後に父母の双方を親権者と定めることを可能とする場合における協議離婚の規律として、この2のとおりのような仕組みを設けることについてどうかということにつきましては、当事者の合意のみで離婚ができる現行の協議離婚制度との連続性、若しくは整合性があるというふうな捉え方をしているところでございますが、部会資料の12ページの補足説明の(4)で、父母が親権について合意しても、一定の場合には裁判所等の第三者がその合意を審査すべきといった意見についても述べられておりまして、何人かの委員の方からもこういったことについて触れられた発言が先ほどありましたけれども、これ自体に賛成、反対というよりは、こういった仕組みを導入することの当否や実現可能性を検討していただく上で、裁判所あるいは離婚届を受け付ける自治体等なのかもしれませんけれども、具体的に何をどのように審査するのか、当事者が合意している状況で、これを覆す資料が当事者から適切に提示されるのかとか、また、単に審査といっても、重い事前審査手続を設けるということになりますと、現在の協議離婚との比較において多大な制約となるといった弊害が生じないか、また、反対に軽い、言わば形式的な審査で足りることとすると、今度はそもそもそういった手続を設ける意味が本当にあるのかどうかといったことを検討する必要があると思いますし、また、いずれの機関に審査機能を持たせるにせよ、審査ないし調査に要する期間とか費用の負担、こういったものが生じるといった点も含めて、様々な留意点を念頭に置いて議論を進めていただく必要があるのではないかと思っています。   少し先走った話もあるかもしれませんけれども、以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。最高裁の馬渡委員からは、制度運用の実際的な可能性ということについて関心を持っているということをおっしゃっていただきました。大きく見ると、運用の可能性あるいは現行制度との整合性といったことについて、可能性や整合性は一定程度あるのではないかという御認識を示していただいたかと思いますが、細部においてどういう制度を作るのかということについては様々な点で考えなければいけない問題が残されているであろうという御指摘を頂きました。この後、この方向で議論していく、民法第819条の見直しをしていくということについて、反対ではないと受け止めてよろしいでしょうか。 ○馬渡委員 そういうふうに理解していただければと思います。特に共同親権を入れることがおよそあり得ないのだというようなスタンスはとっていないと理解していただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。また具体的な制度設計のところで御指摘を頂ければと思います。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。冒頭、赤石委員からお示しいただいた資料、共同養育と父母の信頼関係図 (案)ですね、たまたま私の名前が出ましたので、私は@の共同養育可能な状態に至るまで8年掛かりました。なので、現行法制下では高葛藤の場合、すぐ共同養育ができるようになるとは思っていません。また、参考人で昨年12月の部会に来ていただきましたMKさん、男性の別居親の当事者の方ですね、MKさんも共同して養育できるようになるまで、多分3年ぐらい掛かったと思います。昔から私は彼を含めた会員さんと話をするのですけれども、やはり考え方として、今日の議論とは外れますが、一つは有責主義、もう一つはやはりこの単独親権の問題、あとは面会交流の権利性だと思います。そういうものが改善されれば、私は、落合先生からもお話があったように、法改正後ですよね、法律が変わったら、私みたいな8年とかそんな期間をかけることもなく、その間、こどもが不登校など苦しむこともなく、早くこの@番の共同養育可能な状態に至れる方も増えるだろうというのが私の個人的な意見でございます。   続きまして、全般に関する意見、当然、私は第819条見直し賛同の立場でございます。その中で、改めて部会資料25を拝見して、かつパブコメも見てということで、やはり赤石委員も御指摘になった部会資料25の5ページ、ウの2段目のところですね、子の養育の在り方の多様化等の社会的情勢、その中で同居親の立場にある者が共同養育を求めてくるようになったという実態が具体的に出てきたなと感じました。正にここが注目すべき点かなと思っています。   では、具体的に何を書いてあったかということですが、今回配布されたパブコメの取りまとめ、意見の概要の方の6ページに意見がいろいろと記載されています。5番の1個目の番号でいうと32番、これはオンラインサロンCoそだてさんというところです。69番、これは実は法制審が始まった当初にお越しになっていただきました、りむすびさんです。赤石委員から御指摘があった7ページ、いろいろなシングルマザーの個人の方と、私はこの表記以外見ていないので、そこに関するコメントはできかねますけれども、少なからず、このりむすびさんとCoそだてさん、これは双方、同居親の立場で支援をされている方、元々同居親で、自らは親権者でございます、そういう方が具体的に32番の意見で「父母双方を親権者とすることを選択できるのであれば、それを選んだ」でありますとか、69番の意見で「父母双方を親権者とすることを望んでいる相談者も存在する」などの意見が出されている、これが事実かと思います。私はこのCoそだてさんも存じ上げております。   実は、今日の議論ではまだ甲@、甲A、いわゆる要件のところは話はしないのですけれども、やはり我々離れて暮らす親の立場としては、円滑に親権を共同行使するためにどういうふうに考えないといかんのだろうということを、同様の意見を持っているりむすびさんに先月、弊会に来ていただいてお話を頂いたりもしています。やはりその中でも、りむすびさんも、別に代表のしばはしさんだけの団体ではないので、理事の方もいらっしゃいますし、会員の方もいらっしゃいますし、当事者ですよね、こういう声、つまりこどもと同居する母親でも共同親権を求める声はやはりあると。今日は割愛しますが、そのために、よりうまくやるためにどうすればいいのだろうと、そんな議論をした次第でございます。ここで申し上げたいことは、現在、シングルマザーの中にも共同親権を求める方が間違いなくいらっしゃる、そのように私としては感じております。   同様に、パブコメの6ページの項番70番、これが弊会の意見でございます。記載のとおりでございますが、1個目のところを要約すれば、私どもの基本的な考え方は、今の現役のお父さん、私より10歳以上下ぐらい世代が多いですかね、会員さんは40代前後がやはり中心でございます、皆さんはこういう意識です。婚姻中は父母双方が共同で育児を分担することが求められてきたし、私もそのように頑張ってきたつもりであると、相手方の評価は分かりませんけれども。一方、離婚後になったら育児は100%一方の親が担うという考え方、これがつまり離婚後の親権者を父母の一方のみに一律に求める民法第819条であると言います。これは多様化が進む現代社会に望ましいものではなく、私どもとしては共同親権を選択肢に加えないことはあり得ないという意見でございます。当然、DVなどの制限要件は付くと思っておりますし、そこは次回以降の議論かと思います。   本日御参加されている委員、幹事の先生方には申し上げるまでもなく、現行の民法第819条は一方の親を、親権者としての適格性の判断がなされるわけでもなく、多くは親権者からの適格性を理由として離婚するわけでもないにもかかわらず、こどもから一方の親を排除することにつながっている、このように感じております。いろいろ述べましたが、結論としては、多くの先生方がおっしゃっていただいた内容と同じになりますが、第819条を見直すものとすることに関して賛同するということでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員も、この後、具体的にどういう制度を作るかというところについてはいろいろ御意見があろうかと思いますけれども、入口として民法第819条を見直す、そして、合意ができる場合には合意による親権の共同での行使を認めるという方向で検討するということについて、賛成であるという御意見を頂戴したと思います。あわせて、先ほどから多少話題になっております、現行法の下で共同での養育が容易なのかそうではないのか、あるいは改正があればそれについてどういう影響が生ずるのかという点についての御認識を示していただき、また、パブコメについての見方についても御意見を頂いたと思っております。ありがとうございます。 ○原田委員 少し長くなるかもしれませんが、委員の原田です。私も第819条の見直しには消極的な立場で発言します。   積極的な立場の御意見で、家族の多様性というかどうかは別にして、当事者の意思を尊重した家族の在り方を決めるというような趣旨で言われていたのかなと思いますけれども、そして、それは合意があれば共同で行使することがスムーズにできるということにもつながっているのかなと思います。それともう一つは、関心や意欲のある父母双方が関わることが子の利益に資するという価値判断があるのかと思います。両方言われた方もあれば、どちらかだけしか言われなかった方もありますけれども、私はそれをどう考えるかによって制度設計にも大きく影響するし、本当にそれでいいのかという結論にも影響していくのではないかと思います。   まず、子の利益の観点から考えたときに、親権の行使を父母の一方のみの判断に委ねるよりも、父母双方がその責任を負い、双方の関与の下で意思決定がなされる方がよいと、子の利益の観点から望ましいというテーゼとすると、結局、決めるときに双方が協議して関与するという問題と、ではそれを誰が行使するのかという問題を別に考えることも可能ではないかと思います。   ヒアリングの中でいろいろ御意見を頂いた先生方の中では、菅原先生は違うと言われるかもしれませんけれども、同居する親が充実した人生を取り戻して良質な親子関係が継続することと、元配偶者との穏やかで建設的な関係性が築かれて、適切な養育の共同性が保たれること、ということが大事だとおっしゃって、そのためにこどもや親を支援するということが大事だということをおっしゃいました。   小田切先生も、そもそもそのテーマが共同養育であって共同親権ではなかったのですけれども、お話の中では共同親権ということを言われていました。でも、中心は親子の関わりを維持していくための面会交流支援を強調されていて、今、家庭裁判所で面会交流を決めた後、裁判所は当事者に投げてしまうので、うまくいかないということで、全国的に面会交流支援機関の設置や資金助成や支援者の育成が必要だということで、親の葛藤を引き下げてお互いに話合いで解決できるような公的支援が必要だということをおっしゃいました。   りむすびのしばはしさんも共同養育の必要性ということをおっしゃって、そのためには交流の頻度や親子関係や親同士の尊重ということが必要で、共同親権という権限を与える必要があるとは言われなかったです。親同士の葛藤を下げることの重要性を強調されました。   パブコメの意見の中でも、単独親権の下でも共同でできると言われているのは、両親の関係性の問題であって、会えないのが非監護親が悪いというつもりは全くありません、両方に問題があると思うのですけれども、その関係性の改善のための支援が全くないことが問題だというようなことを書かれていますし、面会交流支援とか養育費確保の意見が非常に多くありました。これは単独親権下でも、双方の親が協力し合える関係があればできるし、共同親権でも協力し合える関係がなければ、更に紛争が激化するということは目に見えていると思います。これは、赤石さんのこの図でもそうですし、パブコメの中でも、今問題がないと思って合意しても、こどものことを話し合う中で意見の対立があって紛争が激化するということがあるのではないかという懸念が述べられていました。   これまで親子関係の規律として、親権というのではなくて親の責任を明確にすることを議論してきましたし、諸外国でも親責任や配慮義務という言葉を使っています。前回も親子関係の規律に関して、扶養義務あるいは養育義務と子の意思の尊重ということを整理する意見を述べました。こういう議論をした中で、親の権限として議論することに非常に違和感があります。共同親権か単独親権かではなくて、親がその責任を適切に果たすための支援体制をどのように作るかが問題ではないかと思います。   どちらでもいいのだったら、変えてもいいではないかという意見があるかもしれません。しかし、家族の多様性や当事者の意思の尊重をするとすれば、共同親権でなければできないのかという問題と、それをした場合のデメリットの比較衡量の問題ではないかと思います。   DVや虐待は全体の中で例外的なものではありません。仮に少なくても、命に関わる問題です。そういう意味では、日本では双方関与を円滑に行うための支援体制が全くといっていいほどありません。共同養育を取り入れている諸外国では、共同親権という場合もあるかもしれませんが、しかし、もちろん一定の権限が与えられて、重要事項の決定について双方の同意が表明される必要があることは事実です。しかし、どこの国でもこの関係を維持するために莫大な予算をつぎ込んで支援体制を作っています。   これは小川先生の御報告でもありましたし、よく言われているオーストラリアでも、家族関係支援センターかな、全国で100か所ぐらい作っているとか、イギリスでもカフカスなどで非常に濃厚な支援が行われています。それでも問題が起こっているので、見直しが行われているのです。もちろん見直しの内容が共同養育をやめるということではないということは理解していますが、しかし、問題が起こっているので見直しを行われているという状況の中で、私たちはその見直しの元になるものだけ入れて、その見直しの経過を学ばないでいいのかということが問題ではないかと思います。   今回のパブコメでオーストラリア大使館の意見として、共同親権案を含む家族法改正の取組を歓迎するとありますが、2023年の改正の案が説明されていて、子の最善の利益を決定するに当たって裁判所が検討すべき要因の提案としては、やはり安全が第一だということが書かれています。そして、最近の報道では、こどもの利益として掲げられていた、両親との有意義な関係を維持する利益を削除して、より子と監護親の安全を重視する規定にするということが報じられています。細かく目的が10ぐらい挙げてある中で、両親との有意義な関係を維持するということがあったのですけれども、そこを全部やめて、子の利益を尊重するということと、監護親と子の安全を重視するということに変えるというような案が提案されていると、これはネットでも出ております。それから、駐日英国大使館でも制度設計の変遷がずっと書かれていますけれども、その対策をとっている国でさえも問題が起きているという実態を見逃してはならないと思います。   つまり、DVや虐待からこどもや監護親の安全を確保することができている国がないということなのです。皆さん、それをする必要があるということは同意されているけれども、それができている国がない状況で、危険が生じている共同親権だけを導入すると、だけということはありませんね、皆さんその制度が必要だということをおっしゃっているので、だけということではないと思いますが、それが確保できる方策が世界的にも確立されていないし、それを確保するためにいろいろな改正、努力を行っているという状況で、ここで改正をするのかということは、私は非常に疑問だし、これは命に関わる問題なので、慎重に考えるべきだと思っています。   10年少し前に、離婚事件の監護親側の代理人をしている弁護士が非監護親から殺されるという事件がありましたけれども、その事例も同居中には物理的な暴力は全くなかったのです。だから、本当に離婚を検討する段階でそういう問題が起こるということが予想できるのか。かつ、今いろいろな制度を見ると、保護命令は今のところは物理的な暴力があるだけだし、今回のパブコメでも、そういう人を排除するためには保護命令がある人を排除すればいいではないかというような意見が出されていて、本当にDVに対する見方が軽いのではないかと私は思っています。   協議離婚に関する実態調査の中では、離婚時に話合いをしない理由として、関わりたくないとか話すのが嫌だとかいうのが3割から4割ありますが、監護親でも4割、非監護親でも3割あるということは、赤石委員が作られたこの表の中の下の方の二つバツがありますけれども、半分とはいわないですけれども、4割ぐらいがここに該当してしまっているのではないかと思われます。面会交流が、決めなくてもできるという方が監護親で30%、非監護親で28.6%、これは複数回答なのですけれども、そういうふうに回答した人が3割ぐらいいらっしゃる、その右上の共同養育可能かというところが3割ぐらいいらっしゃるのかと思いますが、その方たちが皆さん共同親権を望んでいるのかと。いや、なくてもできますよとおっしゃる方もかなりいらっしゃるということではないかと思います。   なので、これはパブコメの意見の20ページのところに東京弁護士会から出されている意見だったのですけれども、不適切事案において離婚後の父母双方を親権者と定めてしまう弊害と、離婚後も父母の関係が良好で、その双方を親権者とすることが子の利益に合致する事案において父母双方を親権者と選択できない弊害を比較衡量すると、前者、つまり父母双方を親権者と定めてしまう危険性の弊害が無視できないのではないかとまとめられていましたが、私もこの意見が、そうだなと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。原田委員からは、慎重に考えるべきだという御意見を頂戴いたしました。今回提案されている、合意ができたときには親権の共同行使を認めるということについて御意見を頂いたと思いますが、おっしゃっていることの中心は、環境整備、支援が重要であり、安全の確保が望まれるということだったのではないかと思います。そういうことが十分にできないという状況の下で合意によることを認めるというのに対して危惧を覚えるといった御意見だったと理解をいたしました。 ○棚村委員 早稲田大学の棚村です。いろいろな御意見を聞きながら、どのタイミングでお話ししたらいいかと思って聞いていたのですけれども、基本的に私はやはり第819条1項の単独親権というものについては一定程度、見直しが必要ではないかと思います。しかも合意がどのように得られるか、どういう合意のプロセスがとられるかという問題があるのですけれども、合意がなされたときには、やはり共同親権というものの選択の可能性というのは認めていいのではないかと考えています。   その理由について簡単にお話をしたいと思うのですけれども、現状の認識とか実態がどうかということの評価というのはそれぞれにあり、同じ世論調査とか、あるいは実態調査があっても、見方が少し変わってきたりすると思います。ただ、私自身は、先ほど落合委員や原田委員も少し触れられたかと思いますが、親責任とか親の配慮とかという、親の権利とか親権という言葉から変わった歴史的な経緯は、明治時代から続いている用語を踏襲しているわけです。それで、戦後も単独親権というか、父親が絶対的な親権を持っていた時代から、戦後、婚姻中は共同親権にする、父母の平等というのも婚姻平等と併せて認めるという流れだったわけです。   しかし、離婚した後はなかなか、親権の共同行使というのは困難であって、一緒に話し合って決めるというのは難しいだろうから単独ということになりました。離婚後の単独親権の規定自体はその当時、海外もそうでしたし、性別役割分業とかいわれる社会では、特に日本が立ち後れている状況ではなかったと思います。ただし、その後、家族の在り方とか夫婦の在り方、子育ての在り方というのは大分変わってきていて、ある意味で事実状態として、やれる人はやればいいのではないかという御意見はあるのですけれども、それぞれの子育ての在り方とか、離婚した後の親子の関係の在り方も本当にいろいろな形があるので、その選択肢が全く用意されていないというのがいいのだろうか、やりたい人が選べないというのが本当にいいのかというのが第1点として考えているところです。   それから、第2点は、先ほどの用語の問題もあるのですけれども、権利義務の関係で、親が一体どういう法的地位に置かれたり、離婚した後、こどもに対してどう関わっていくべきかということについて、改正に向けた動きが全くなかったわけではないのですけれども、非常に不明確な法律状態、ルールが曖昧で、どちらがどういうところまで関われるのかとか、どういう権限や責任を負っているのかというのがはっきりしていないわけです。やはり民法自体の基本的構造が大人や親中心の構成になっていますから、これをこどもの側から見てはっきりさせていかなければいけないという、ルールの明確化ということが非常に問われてきたと思います。   当然この点と関連して、多くの激しい父母間のこどもをめぐる紛争が起こっています。皆さんお分かりだと思いますけれども、ここ10年間だけ見てこどもの監護に関する処分事件というのは1.3倍から1.5倍ということで、その前20年、30年を見ますと、もっとすごい勢いで争われており、家庭裁判所で5、6万件の事件が起きているのです。家庭裁判所を責める意見もあるのですが、こういうような中でルールがはっきりしていない、それから、こどもの利益というよりは大人の争いという色彩がかなり強い中で、その紛争を適切かつ迅速に処理しろと言われても、基準がなかなか明確でないところに悪戦苦闘されているという現状があります。   少なくともこのような現状を考えると、一定程度、100年とか80年たって、社会やいろいろなものが変わって、いろいろな形でルールが社会や時代の変化に適合しなくなっているような場合、そのルールを見直すというようなことは、やはり当然のことなのではないかと思います。もちろん、どう見直すか、具体的にどういうふうなルールにしていくかというのは、これからまた議論しなければいけないと思うのですが、そのときに、井上委員も先ほどおっしゃっていましたけれども、ほかの国からも学ぶは言うまでもありませんが、やはりこどもの権利とかこどもの最善の利益を前面に押し出しましょうということをルール化もしていますし、そういう意味ではその基本原則にはなっていると思うのです。   それから、先ほど赤石委員からも、戒能委員や原田委員からもあったように、安全・安心の確保、暴力がないとか危険がないとかというものを確保するというのも、海外でもそこに力を入れており、具体的に心理的な虐待とか、ある意味では暴力みたいなもの、ハラスメントみたいなものを含めて、どう対応するかという定義を設けたり、対応の仕方についても苦心していると思います。もちろん答えはないのですけれども、こどもの利益を守ろうとか、安全・安心の確保をしましょうとか、それから、支援が必要だというのは当然のことです。私も前から言っているのは、法制度をただ作ったり変えたりしただけでは、それがどういうふうに利用されて、本当にそれが当事者や子に届くのかどうかということは重要なことだと思うのです。   もっとも、ここの場面でできることは限られているので、それは要望もし、是非そういう働き掛けもしていきましょうという中で、法の改正ということを考えると、先ほどから出てきているように、私は用語とかそういうものも見直すことでメッセージとして、落合委員がおっしゃったように、例えば虐待、懲戒権というところもなくしましょうというのには十何年掛かってしまったわけです。しかし、今回はそれをなくして、むしろこどもの人格の尊重とか、あるいは発達とかそういうことと、それから、体罰とか子の健全な成長に有害な言動を禁止することまで民法に盛り込もうとしたのは、ある意味ではメッセージとして、こういうふうに在るべきだということを宣言する意味は大いにあると思うのです。そのほかに、法改正は、教育とか啓発とか、様々な支援みたいなものを充実させていくためにも必要だと思うのです。   今回も、大きな流れとか議論という中でいうと、出発点としての理念とか目標とか理想的な在り方というのはどこにあるのかということを念頭に置いて、DVとか、本当に支援が足りないとか、結局この制度を変えてもいい方に行くのだろうかという懸念とかを、それを現実と呼ぶとすれば、現実というものを踏まえながら、理念とか理想を掲げて、どういう修正をするかというので、一切修正する必要がないとか、選択肢がないとか、事実状態に任せておいたらやれる人はやれるのだということで本当にいいのかというのが、民法の研究者として率直なところです。   もっとも、具体的に改正した場合のいろいろな懸念とか支障とか、メリット、デメリットという話もありましたけれども、そういうようなものを慎重に考えながら、更に詰めていく作業というものが求められています。その際に、合意にどう適正なものを担保するかとか、それに第三者がどういうふうな形で関わるとか、これは法制度の組み方と支援の在り方と、非常に複雑な議論も必要になってくるかもしれませんけれども、私は国際的な流れとか、日本の家族の在り方とか変化というものを踏まえた上でも、やはり選べる人が選べないとか、それから、これは選択的夫婦別姓と全く同じで、少ないから、2割ぐらいしか名のる人はいないではないからというので、8割が名のっていないからというので、変えないということを平然と国会議員の方でもおっしゃる方がいらっしゃいます。けれども、それは多数の暴力ということになりかねないし、かといって懸念があったり、いろいろ不安があることを全く払拭しないで制度を作っていく、進めていくということは、やはり危険だと思うのです。   ですから、今日の、窪田委員が最初に言ってくださったように、一定程度見直しをしていくという方向で議論を進めましょうということでは賛成をいたします。ただ、見直しをしていくにしても、大きな見直しもあれば小さな見直しもあるし、見直しの仕方についてもいろいろな提案や御意見がありますから、それを擦り合わせながら、やはり一歩でも二歩でもこどもたちにとって、当事者にとっていい制度を作る、そこの中ではやはりこどもの利益とか安心・安全の確保とか、それから支援の必要性みたいなことは、この会議でも声が出されていますし、私もそれに賛同しますので、できる限りそういうようなことを考えながら、理想とか理念というものを無視して語るということも問題ですし、現実を余りにも度外視して制度論だけを議論するというのもどうかと思います。当然、皆さんそれも考えておるところだと思いますので、一歩でも二歩でも前に進められるのであれば進めるということで、基本的には今日、単独親権というものをそのまま維持すべきか、それを見直すべきかでは、見直す方向が妥当と考えております。   一定の合意があって、その合意ができる人がどれくらいの割合いるかどうかということの評価は、あるいはお考えとか感覚も相当違うところはあると思いますけれども、少なくとも話し合ってできるような人たちについて、そういうようなものを作ることによって、それから親権とか監護という言葉も含めて、もう少し責任とか権限とかということも含めてルールを明確にしていって、紛争をある程度下げられるような仕組みや、それから、予防的なことも含めれば、離婚時の情報提供とかいろいろなことについても、今後は支援をかなり充実させて、最終的には制度化されていくことによって、予算も付けられることによって、こどもたちや当事者の安心というのは出てくると思うのです。   井上委員がおっしゃったのは、正にそこをしっかりやりましょうという中で法制度の議論をしようということで、今回は留保されたと思うのですが、私たちは一歩ルールを変えることによって、むしろ支援とかそういうことの予算を付けてもらったり、いろいろな流れというのが出てくるということもありますので、是非見直す方向で議論を進めさせていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員からは、基本的にはこの提案の方向でという御意見を頂戴したかと思います。1947年の改正時における、婚姻中は共同行使、離婚後は単独行使という考え方は、その後の状況に合わなくなっている面が出てきている、これは既に御指摘があったところかと思います。その上で現在の問題としては、選択肢を提供するということと、親の権限、責任を明確化するということが必要だということをおっしゃったかと思います。考慮すべき事情としては、一方で子の利益とか暴力といったものをどう考えるのかということもあるけれども、他方で将来に向けてのメッセージ性というのも考慮すべきだという御意見を頂きました。 ○小粥委員 委員の小粥でございます。3点、大まかにございます。一つ目は、アジェンダセッティングと申しますか、そこに関わりますけれども、ここで我々に今問われていることは、第819条を改正すべきかどうかということであると理解しました。なので、離婚後も共同親権の可能性を一切否定するのかと、いや、そうではなくて、少なくとも第819条を見直して、離婚後に共同親権が認められる可能性を作り出すことを検討すべきかどうかが問われているのだと思いました。そういう観点からいたしますと、離婚後の子の養育のやり方について、単独親権しか今のところ選択肢がないわけですけれども、そうではない選択肢を設けるということを検討するということだとしますと、これ自体を否定することはなかなか難しいのではないかと思います。   もちろん今まで委員、幹事の皆様から多々御意見が出たように、これからどうするのかというようなことはもちろんありますし、私自身もDVや虐待の問題は非常に重要だと思っておりますけれども、そういうことを含めても、第819条自体を見直すことを否定するということはなかなか難しいのではないかと、それが一つ目であります。   二つ目ですけれども、離婚後に離婚した元夫婦が共同親権を行使する可能性を認める場面を作り、これを民法に書くということ、つまり、そういう離婚後の子の養育のやり方について民法典に書き込むということの意味があるのだろうと思っております。それは、民法というのはあまたある法律の中の一つではありますけれども、講学上あるいは社会的には、市民社会の基本的な事項を定める重要な法律であります。それは法学部法科大学院の専門的な法学教育においても重要、基幹的な位置を占めるだけではなくて、初等教育、中等教育で展開されている法教育の場面においても、憲法や司法制度と並んで重要な地位を占めているものです。そこで行われる、そういう経路を通じて社会に浸透していく民法の中で、離婚後の子育ての在り方についての規定が厚くなると、あるいは幾つかのやり方があるのだということが書き込まれることによって、社会的に見てそのような離婚後の子育てをしている人々がいるということがより強く伝わり、その当事者にとっても、その隣人の理解あるいは社会の理解というものを一層確認することができると、つまり、これを社会的包摂というと、今は包摂されていないかのように思われると、それは心外なのですけれども、民法典に書くということによって社会統合が確保されるという意義は重要で、そういう意味でも、複数の様々な離婚後の子育ての在り方について民法典に書き込む可能性を検討するということは非常に重要なことだと思うと、それが2点目であります。   3点目は、ごく簡単にいたしますけれども、これまで委員、幹事の皆様の御意見を伺っておりますと、合意があれば、あるいは真摯な合意があれば、あるいは様々な条件の下で合意があればというような、それであれば結構、やっていいのだというような御意見が私の記憶には残ったのですけれども、何を合意で決めてよいかということについては、法制度の側で決めるという視点も重要だと思います。つまり、何を合意に委ねるのか、どういうことを合意で決めてよいことにするのかということについては制度設計の問題だと、そういう観点も踏まえて今後の検討を進めていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。小粥委員から3点頂きましたけれども、それは全体として議論の進め方に関わるお話だったかと思います。1点目は、民法第819条の見直しそのものは不可避ではないかという御意見だったかと思います。2点目は、民法典に規定を書き込むということの将来に向けての意味ということをおっしゃったかと思います。それから、3点目、合意があれば認めてよいのではないかということなのですけれども、その合意によって認められるものの対象というのが何かということについては十分に考えていく必要がある、その点は今日のところではオープンになっているわけですが、そこを詰めていくことがこの先の課題になるという御指摘であったかと思います。 ○水野委員 委員の水野でございます。歳を取りますとだんだん過去が近くなりまして、明治維新から1945年の敗戦までで77年で、敗戦から今年までで78年で、ちょうど中間ぐらいにあるわけですが、その明治維新から30年かかって、権利義務という言葉を創るところから明治民法を立法して、そして、江戸時代の家業を営む家中心の社会から近代化へ向かって我々の社会は走ってきたわけです。そして現行の第819条が立法されてから76年になります。落合委員は先ほど家の残存だと言われましたけれども、確かに家業を営む実家が養うという前提の発想の立法だったのかもしれません。もっとも家制度のない西洋法でも単独親権だったので、この辺は微妙ですけれども。ともあれ、敗戦直後では農業人口がまだ多数派でしたけれども、今はもう1割を大きく割り込んでおります。つまり、育児に当たって大家族とか地域とかいう社会の安全弁が急速に失われてしまいました。戒能委員が言われました社会的孤立が問題になって久しいわけです。落合委員が御著書で圧縮された近代化と書いておられるのですけれども、西欧のようにゆっくりした近代化ならば、孤立した家族への支援が同時に構築されていくのでしょうが、日本は圧縮された近代化なものですから、支援が圧倒的に足りません。体制が追い付いておりません。   共同親権賛成のパブコメで、問題があるような親は親権停止や喪失を利用して解決すればいいという意見があったのですけれども、もしフランス並みならば、人口比で年間約20万件の親権制限判決が行われているはずです。でも、日本は親権喪失審判は2桁ですし、親権停止審判がやっと3桁に乗るぐらいです。要するに使い物にならない制度ですので、そういう制度を前提にした議論をすることはできないだろうと思います。というわけで、現状維持派の危惧を、私は十分に共有しているつもりでおります。   しかし、結論なのですけれども、やはりこどもの福祉を最重要の前提とした上で、真の合意があるときの共同親権を認めないというのは、これは筋が通らないことであるように思います。また、家族の孤立を放置した現状維持では駄目なことは、これはどなたも反対なさらないのではないかと思います。ともかく圧縮された近代化の欠陥を補って我々の社会を前進させなければならないわけで、結論的に、前進するためにはここで共同親権に踏み切るべきであると考えます。もちろん民法を変えるだけではなくて、同時に社会保障制度をはじめとした大きな変革が必要になるだろうと思います。先ほど裁判所の御意見を伺いましたけれども、それはどうも現状の家裁の審査を前提とした発想だったように伺いました。家裁の審査も大きく変わらないといけないでしょうし、もっと大規模な育児支援、婚姻中からの支援ないし介入が必要になるだろうと思います。   小粥委員が言われたように、民法は基本法です。基本法である民法の改正というのは大きな力を持つだろうと思います。前進する方向に転換することができるのは、ここでの改正なのではないでしょうか。こどもの福祉を最大限に守れるように配慮しつつ、かつ前進の方向に踏み切るべきだと思います。もちろん、それがもたらす問題点についても、民法のレベルでも、親権の共同行使が難しい場合などについて様々にこれから議論を詰めていく必要があると思いますけれども、やはり現状維持のままでは前進することはできないように思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。水野委員からは、結論としては民法第819条を変えるという方向で検討すべきだという御意見を頂いたものと理解をいたしました。幾つかの御指摘を頂きましたけれども、一つは、将来に向けて制度を作っていくということが必要だろうということで、これはこれまでにも何人かの方々から御発言があったところかと思います。もう一つは、真の合意がある場合にこれを認めないということは、それは説明できない、正当化できないだろうということで、これはこれまでの委員、幹事の中の御発言にも含まれていたかと思いますが、このことをはっきりとおっしゃっていただいたと理解をいたしました。 ○佐野幹事 幹事の佐野です。簡単に申し上げます。私は1番の第819条を見直すというところについて、今の段階でそちらの方向でと明確に言い切ることはなかなかできないと思ってはいるのですが、ただ、それを見直すとしたらどうするかという議論は必要だとは思っています。といいますのは、やはりどんな制度設計ができるのか、それが実現できるのかというところで、見直すという方向に行けるのかというところが掛かってくるのかと思っているので、それに向けて議論をしていくということは必要かと思っています。   その上で、2番の合意をすることが可能な場合にということなのですが、小粥委員がおっしゃっていたのと同じ話になるのかもしれませんし、次回の議論になるのかもしれませんけれども、やはりここで、親権者についての合意というのは具体的にどういったことを意味するのか、その内容というのはきちんと議論する必要があるのだろうと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。佐野幹事から2点ありましたけれども、最終的に結論はまだ判断できないが議論はすべきだという御意見を頂いたかと思います。その上で、合意についてこの先で議論すべきことが多い、直接には小粥委員の御発言を引いて、その指摘に賛同されるということをおっしゃったかと思います。   畑委員、柿本委員、久保野幹事、大石委員という順番で伺っていきたいと思います。 ○畑委員 畑でございます。基本的に実体法の問題だと思いますし、発言すべきかどうか少し迷っていたのですが、感想程度ということになります。   共同親権ということが適切な場合というのがどの程度あるのかというのは、私には何とも分からないところですが、その可能性を探ってみるということ自体はあり得るかなという印象を持っております。他方で、資料にも上がっており、今日も御指摘があったような弊害とか危険性の問題というのも十分理解できるところですので、そういったことに十分対処できるような仕組みを考えることができるかどうかということに掛かっているかなという印象を持ちました。   手続的なことを言えば、12ページに第三者の関与の話が出てきており、これも検討の対象だろうと思いますが、今日の資料の対象からは離れているのだと思いますが、調停ですとか訴訟ですと元々裁判所が関わる仕組みですので、弊害などを防ぐという意味では、相対的にはやりやすい面はあるかなという気はいたしました。ただ、先ほども最高裁から御発言がありましたけれども、裁判所としてもなかなか難しいという面もあるようには思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。畑委員からは、制度化の可能性を探るということ自体はよいのではないか、しかし、皆さんがおっしゃるように、弊害への対処というのは必要だろう、その場合に第三者の関与ということで、裁判所がどのくらい関与できるのかというようなことを検討していく必要があるといった御意見を頂いたと理解をいたしました。 ○柿本委員 柿本でございます。まず、親権概念の確立が必要であると考えております。また、離婚後の父母双方の共同養育は親の責務であるとも考えております。が、こどもの生育環境の充実ですとか安全確保などの制度が非常に未整備である現状を考えますと、現時点での第819条の見直しについては慎重な立場でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。こどもの養育は親の責務だということをはっきりさせる必要があるけれども、安全確保という観点からは民法第819条の見直しについて慎重に考えたいという御意見を頂戴いたしました。 ○久保野幹事 幹事の久保野です。原田委員の御発言の辺りから遅れて参加いたしまして、議論を全て伺わないままの発言となりますけれども、恐れ入ります。ちょうどパブコメの20ページの一番下の弊害を比較衡量するような原田先生の御発言を伺いつつ、私もこれまでも、弊害や危険性といったことを考えますと、理念ですとか海外法制の動向といったことがありつつも、非常に難しいと悩んでおりましたが、結論から申しますと、1のところで第819条を見直すという方向性で検討するということについては、民法が民事基本法制であるという先ほど何回か出ている御指摘と同じ観点から、考え方を示すということでいいますと、見直すものとする方向に賛成いたします。どんな場合であっても共同親権であってはならないというメッセージを送る条文に今なってしまっているわけでして、今日、共同親権にしたいという当事者がいるということもあり、そして海外法制と比べたときに、認めていない日本法というのが例外となっているという状況下におきまして、この度、検討した上で第819条を見直さないとの立場を採るというのは、改めて、共同親権が子の利益となり得る場合はおよそあり得ないと考えるのだということを示すような意味合いを持ってしまうのではないかと思います。小粥先生がおっしゃったことと恐らく重なるのだと思いますけれども、そのような考え方を民事基本法制として示すという観点から見ますと、もはやそれは合理的ではないのではないかと思うからであります。   ただ、では具体的にどのような場合かということにつきましては、正に2の点で合意というのがどういう手続による何を指すのかといったことについて、次回以降、議論していくということなのではないかと理解しておりまして、私自身は現時点では比較的狭い範囲を想像して発言しておりますけれども、しかし、先ほど申し上げたような考え方を踏まえつつ、具体的なところを探っていくということなのではないかと思っております。   それで、最後に、以前も申し上げましたけれども、婚姻中も含めて、複数の親権者がいるゆえの問題ということに対処する手当てを併せて考えるということがとても重要だと思っておりまして、その点を併せて指摘だけさせていただきます。   以上です。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。久保野幹事も、弊害や危険というのを踏まえつつ、基本的には民法第819条は見直さざるを得ないのではないか、これをそのまま存置するというのはもはや合理性がないのではないかということと、それから、合意ということを中心に据えて議論をしていくということになるだろうということ、そして、3番目に、これも既に御指摘がありますけれども、現行法の下で婚姻中は共同行使になっていますが、これに伴う問題というのもあるわけなので、それも併せて考えていく必要があるだろうということを御指摘いただいたかと思います。1点、よく分からなかったのですけれども、合意について狭い範囲でとおっしゃったように思いますが、それはどういう意味ですか。 ○久保野幹事 それは今日の議論ではないと思いますけれども、今後の議論の中で、合意をしている場合というものの精査が必要だと考えているという指摘にとどまります。 ○大村部会長 ありがとうございます。今日の話ではないという前提での指摘だったということは了解しましたが、合意があると認められる場合について厳格に考えたいということをおっしゃったと理解してよろしいですか。 ○久保野幹事 個人の立場としては、そのような方向性を念頭に置いて、必ずしも広く認めるというイメージで話しているわけではありませんということを申し上げました。 ○大村部会長 分かりました。その中身については、また次回以降に御議論いただくことにして、御趣旨は今のようなことだというのは了解いたしました。   最後になるかどうか分かりませんが、今の挙手の状況では、大石委員がまだなので、大石委員、お願いいたします。 ○大石委員 ありがとうございます。委員の大石です。私は数回前に資料を提出しまして、現行制度のもとでも、共同養育をするようなケースを念頭に置いた税制や社会保障の取組ができておらず、省庁横断的な取組が必要であるということを主張させていただいたわけなのですけれども、今回のこういう議論の組立てに関して思いますのは、法改正をすると決めないと、各省庁も取り組みを開始できないというような事情があるのかなということです。そうであれば、法改正と取組と、どちらが先かという問題になりますが、しかし、現状ではまだ親権概念についての議論などが尽くされていないと思うところもありまして、なかなかはっきりした意見を私自身、まとめるのが難しいと感じている次第です。   特に、法改正をするか、見直すかどうかといったところに関しては、共同親権がオプションなのか、それともデフォルトになるのかというところを、セットで私自身は考えたいという部分があります。オプションとしてならば、まああり得るのかなとも思いますけれども、デフォルトになった場合には、現在様々な制度的な支援が非常に不足しており、かつ、先ほどの最高裁の方のお話などを伺っていても、なかなか対応が難しいということになりますと、当事者の方々に甚大な影響が及ぶのではないかと、そういう懸念もどうしても持つというところがございます。そういった少し感想めいたところで、はっきりしない意見を申し上げて申し訳ないですが、現状こういった感想を持っているということでございます。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。大石委員からは、他省庁が所管する立法や政策との関係、前から御指摘いただいているところですけれども、その点についてと、それから、これも委員、幹事から御指摘がありますけれども、親権概念の整理が必要ではないかという御指摘がありましたが、その上で、親権の共同行使について、これをオプションとするということならば考えられる、しかしデフォルトとするということであれば、それは問題が多いのではないかという御意見だったかと思います。今日のところは、先ほどから申し上げておりますけれども、合意がある場合について、それがどういう合意かという点については更に御議論を頂く必要がありますが、合意があるとしたら共同行使を認めるかどうかという点について御議論を頂いており、共同行使をデフォルトにすることが提案されているわけではないと理解をしております。そういう前提で今の御意見を承らせていただきたいと思います。   これでおおよそ皆さん一通りは御発言を伺ったかと思います。更に御発言もあるかと思いますが、その前に二つのことを申し上げたいと思います。一つは、先ほどの部会資料24の方について、まだ御発言を頂く必要がありまして、久保野幹事と赤石委員から意見を頂戴するということになっております。この後、休憩を入れさせていただいて、再開後にお二人の意見を頂戴して、それで、部会資料24に関する先ほどの一応のまとめでよかったかどうかということを確認したいと思います。その上で、時間がどうなるのか分からないですけれども、部会資料25に戻って、更に、皆さんの御意見を頂く、今日はとても終わらないと思いますので、今日のところでのまとめをさせていただいて、それで次回へと進ませていただきたいと思っております。   そういうことで、現在16時34分ですので、10分休憩させていただいて、16時45分に再開したいと思います。休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開したいと思います。   休憩前に申し上げたように、まず、部会資料24に戻って御発言をいただきます。赤石委員からは先ほど追加の御発言があるということでした。また、久保野幹事が後でいらしたということなので、赤石委員、久保野幹事の順番で、部会資料24の財産分与の部分についての御意見を伺います。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。そうですね、やはりこの財産分与について、離婚後扶養の要素、補償の要素というのをどう位置付けるかということなのですけれども、確かに女性の社会進出は進んではいるのですけれども、十数年前の第一子出生時のお仕事を辞める方、仕事を継続しない方というのは確か6割前後であったかと思います。それがだんだん減ってきて5割から、そのくらいになってはいるのですけれども、そうはいっても第一子出生のときにはフルタイム、正社員からパートタイムに変わったりとか、そういうふうに御自身が結婚生活の中で仕事と子育てをやり繰りすることを考えて仕事を変えてきています。離婚というのは、第一子出生時から5年とか10年とか15年とかたった後に起こることなので、その前にどうだったかというと、かなりタイムラグがあるので、今、女性が社会進出してきましたよねといっても、やはりそこの影響はもう少し前のところであるということを考えると、やはり扶養の要素、補償の要素というのはあると思っているということをお伝えした上で、今の文言については余り複雑化することについては、分かりましたというところで、この文言でよいかなと思います。   あと、年限なのですけれども、期間制限についてなのですけれども、一応、2年という御意見もあったので、やはりDVがあったりとか、DVがなくても、離婚後のいろいろな衝撃から、お母さんたちからの御意見を頂くと、本当にわらをもつかむ思いで私どもの団体に来て、やっと少し元気になってきたというような御意見も頂いている中で、御自身が財産分与についての行動を起こすまでには少し時間が掛かることを考えれば、3年あるいは5年というのも納得ができますということをお伝えしておきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員から2点御発言がありましたが、一つは、ずっと御発言があった括弧付きの補償的要素について、女性の就労のタイムラグということを考慮に入れて考える必要があるという御指摘があり、しかし文言については、一定の範囲で複雑化を避ける必要があることは分かるという御発言だったかと思います。期間については、2年という御意見も出たけれども、置かれている状況を考えると時間が掛かるということもあるので、より長いものを支持するという御発言だったかと思います。 ○久保野幹事 私も財産分与につきまして、原案のような形で進めるということに賛成というのを前回、最後に一言申し上げたいということでした。それで、簡単に理由といいますか、実務との関係で、実務は清算中心であるといわれているということですけれども、しかし清算にも評価的な要素を含んだ基準による判断作用というものも含まれているかと思いますし、また、別途補償的要素ということも入ってよいとは思っておりますけれども、いずれにしましても衡平の文言の入った原案のようなルールを明示していくということは適切なのではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。久保野幹事からは原案賛成ということで、現在の実務の状況についての理解と、それから、提案されているものについての理解について御意見を頂きました。ありがとうございます。   赤石委員、久保野幹事に御意見を頂きましたが、先ほど途中でまとめさせていただいたものから大きく離れるような内容ではなかったと思いますので、御指摘を頂いた点を踏まえつつ、部会資料24の線で更に検討を進めていくという形で改めて引き取らせていただきたいと思います。部会資料24についてはそのようにさせていただきたいと思いますが、よろしいですか。   部会資料25についてですけれども、先ほどから一通り皆様の御意見を頂きました。二巡目に入りますと、また同等以上の時間が掛かるかと思いますが、ここまで御意見いただいたところで、大きな意見分布のようなものは了解いたしました。正確に数えようとすると、この方の発言はどちらに分類できるのかといったことにもなりますが、多少ゆとりを持って概数で申し上げると、全体の半分を少し超える方が積極的に賛成という御意見だったかと思います。他方で、慎重論を強く主張された委員、幹事が4名程おられたのではないかと思います。その間に4、5名の方が、この方向で議論するということについて積極的には反対しない、議論すること自体については許容するという立場を表明されたと理解をしております。   様々な御意見を頂きましたけれども、いくつかのことを申し上げておきたいと思います。一つ目は、この先の議論をしてみないと最終的には判断が付かないという御意見が少なからずあったということです、合意ができている場合はよいということで、部会資料25はできておりますけれども、ではその合意はどういうものなのかということについては、積極的に賛成の方々の中にも様々な御意見があるのではないかと思います。   二つ目は、慎重論を説かれた方々は4名ということで、数としては少数派だったと思いますけれども、その中の御懸念については多くの委員、幹事が共有されていたのではないかと思います。合意が適切に得られるかどうかということが分からないのではないか、このような規律によって合意を強要されることになるのではないか、特に虐待やDVのケースというのでそういう事態が生ずるということに対する懸念、これは賛成を表明された委員も共有されていたのではないかと認識をしております。   部会資料25について、今のような御意見を頂いたということを踏まえつつ、具体的な問題について次の回には御議論を頂くということが適切なのではないかと思っております。今日ここでこれを決めて、民法第819条は見直す、それ以外の選択肢はない、どこかを必ず変えるのだということを合意しようということではありません。ですから、さしあたり先に進むということを、私からは提案させていただきますけれども、それに対して皆さんが積極的あるいは消極的に同意していただいたということで、次回以降、禁反言の原則が働くということではないと考えております。議論を先に進めましょうということですので、この方向を前提に次回以降、事務当局から具体的な制度設計に係る案を出していただくことになるかと思いますけれども、今申し上げたような形で議論を進めていきたいと思っております。このような進め方について、それでよろしいでしょうか。 ○原田委員 質問ですけれども、具体的な設計というのは、合意の真性をどう担保するかというような話が多分一つあるのと、共同親権になった場合の、例えば親権の行使の仕方とか、監護権を決めるか決めないかとか、そういう話にするということですか。 ○大村部会長 はい。 ○原田委員 はい、分かりました。 ○赤石委員 認知のところをどのように議論するのかということと、未婚のひとり親に対しての調査データがあるのかどうかということを一つお聞きしたいのと、もう一つは、団体の意見書、1時間とかで拝見しているのですが、いろいろな実務に当たっている団体がいろいろな留保条件を付けておられたり、時期尚早だというところで、こういうことをもっとやるべきだとか書かれているところがあったり、もう少し見たいところなのですが、ここの細目について委員と共有するということがおできになるのかというのも少しお聞きしたいところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。今の点について、まず私の方でお答えして、それから事務当局の方でお答えを頂きたいと思います。赤石委員の御質問は、認知あるいはパブコメの取扱いについてということで、先ほどの部会資料25についての私の取りまとめそのものに関するものではないと受け止めさせていただきました。   その上で認知の話は、先ほど落合委員がおっしゃいましたけれども、どこかで検討しなければいけないと私自身は思っておりますが、それがどの段階になるかということについては現段階では私自身は腹案を持っておりません。事務当局の方でどういうタイムスケジュールを考えるかということを併せて、どこかの段階でそれを取り上げるということになるのかと思っております。   北村幹事、私の認識が誤っていたら後で訂正していただきたいのですが、あわせてパブコメについての赤石委員の御質問についてお答えすることがあれば、お願いをいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。認知については今、部会長が御指摘いただいたとおりです。どこかのタイミングで御議論いただくことになろうかとは思っておりますが、その取り扱い方については少し今、検討中でございます。具体的な調査については、今お示ししている以外のものは私どもが把握しているものはありませんが、そこは、あるのかないのかも含めて確認します。   パブコメについて御要望は承りましたが、どういう形でどうできるのかも含めて、少しまた検討させていただければと思います。本日も早い時間に来ていただいて御覧いただいていたり、別の日に来ていただいたりしてはいるところでありますので、また御要望等も承りながら、こちらで検討させていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。皆さんにパブコメの結果を熱心に見ていただいているかと思います。事務当局の方で整理をしていただいておりますけれども、繰り返しのことになりますけれども、たくさんの量がありますので、全体を詳しく整理するというのに時間が掛かるということもあろうかと思いますが、御要望には、事務当局のマンパワーとの関係で可能な範囲で、できるだけお答えいただけるようにお願いをしておきたいと思います。   ということで、部会資料25につきましては御意見を伺ったということで、次回に進ませていただきたいと思います。よろしいですか。   ありがとうございます。それでは、本日の審議をここまでとさせていただきます。   次回のスケジュール等につきまして、事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○北村幹事 次回ですけれども、5月16日火曜日午後1時30分から予定してございます。場所につきましては改めて御連絡いたしたいと思います。 ○大村部会長 それでは、5月16日ということで御予定を頂きたいと思います。   それでは、法制審議会家族法制部会第25回会議、これで閉会をさせていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。閉会いたします。 −了−