改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会 (第6回) 第1 日 時  令和5年4月26日(水)      自 午前10時00分                           至 午後 0時00分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  公判段階における取調べの録音・録画記録媒体による立証状況等         刑事免責制度の実施状況         通信傍受の合理化・効率化の施行状況 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○栗木参事官 ただ今から、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会の第6回会議を開催いたします。   本日は、皆様御多用中のところ御出席くださり、誠にありがとうございます。本日の会議の日程調整については、皆様に御協力いただいたところですが、全員の出席が可能な日時の確保が難しく、鈴木構成員におかれては御欠席されています。   まず、事務当局から、本日の配布資料について確認をさせていただきます。本日は、配布資料18から21までのほか、第1回会議でお配りした配布資料3を改めてお配りしています。それらのうち、配布資料18は、供述の任意性・信用性が争われた事件における裁判所の判断状況に関するもの、配布資料19は、刑事免責決定下で証人尋問が実施された事例に関するもの、配布資料20及び21は、通信傍受の実施状況等に関するもので、いずれも事務当局において作成したものです。また、配布資料3は、平成28年の刑事訴訟法等の一部を改正する法律の概要に関する資料であり、本日通信傍受の実施状況等について御説明する際に御参照いただくものとして、改めてお配りしたものです。松田構成員御提出の「通信傍受規則の制定について(依命通達)」、「犯罪捜査規範及び通信傍受規則の一部を改正する規則の制定について(通達)」、「参照条文」は、警察における通信傍受の実施状況等に関する資料であり、警察庁において作成されたものです。各配布資料の内容については、後ほど、それぞれの点について御協議いただく際に御説明することとします。   次に、本日の議事に入る前に、前回会議において、配布資料に関して河津構成員から御質問・御要望があった点についてお答えします。   まず、被告人以外の者の供述の特信性が争われた事件における裁判所の判断状況についての資料を本協議会において提供していただきたいとの御要望がありましたが、この点については、前回会議においても申し上げたとおり、被告人以外の者の供述の信用性・特信性が争われた事件における裁判所の判断状況等については、統計的な調査を実施していないため、お尋ねの資料をお示しするのは難しいところです。   被告人以外の者に係る供述調書の特信性が問題となるのは、その者が公判準備若しくは公判期日において、前の供述と相反する若しくは実質的に異なった供述をしたときであるところ、被告人以外の者がそのような供述をする理由には様々なものが考えられます。被告人以外の者に係る供述調書の特信性が争われた場合の全てにおいて、取調べの違法・不当が問題となり得るわけではなく、かつ、判決書等を精査したとしても、必ずしもその点の相反供述の理由が明らかにされているわけではないのが実情です。このようなことからすれば、被告人以外の者の供述の特信性が争われた事件における裁判所の判断状況等を調査したとしても、特信性との関係では、当該調査の評価は困難であり、ひいては、改正法の施行状況を始めとする実務の運用状況を共有しながら意見交換を行い、制度・運用における検討をすべき課題を整理するという本協議会の目的にかなうものとは言い難いことから、御指摘の点について、新たな調査を実施して資料として提供する必要は、必ずしもないものと考えています。   続きまして、合意制度に関して、協議の申出件数や協議開始件数、合意件数等についての資料を本協議会において提供していただきたいとの御要望がありましたが、協議開始の申入れ自体は特段の限定なく可能なものであり、その中には、およそ合意制度の利用になじまないものまでが幅広く含まれ得ること、協議開始の申入れがあった場合に、協議を開始するか否かや、協議を開始した場合に合意をするか否か、合意をする場合に、いかなる協力行為についていかなる処分の軽減等を行うかについては、検察官が、個別具体的な事案に応じて、様々な事情を考慮して判断しているものであることなどから、それぞれの件数を明らかにしたとしても、どのような意味で合意制度に係る検討課題の整理に資するものと言えるか、疑問があるところです。そのため、御指摘のような件数を本協議会の資料としてお示しすることは適切でないと考えています。   また、検察庁において、法律で定められた合意制度ではない事実上の合意が違法である旨を周知する通達等は発出されているのかとの御質問がありましたが、法務省及び最高検察庁が発出した合意制度に関する通達の中に、お尋ねのような内容を記載したものはないと承知しています。一般論として申し上げれば、検察当局においては、刑事訴訟法を始めとした法令に基づき、適切に対応しているものと承知しています。   次に、刑事免責制度に関して、刑事免責下で証人尋問が実施された後に、証人自身の刑事裁判において、派生使用免責の対象となるかどうかが争われた事例はあるのかとの御質問がありましたが、この点については、お尋ねのような事案についての調査を実施していないため、事務当局としてお答えすることは困難です。   事務当局からの御回答は以上です。 ○河津構成員 おはようございます。御回答ありがとうございます。   取調べの録音・録画に関しましては、配布資料18の御説明を受けた後に改めてコメントをさせていただきます。合意制度につきまして、これまで判決で明らかにされたものに限らず、協議の申出があった件数、協議を開始した件数や、合意をした件数について御教示いただきたい旨をお願いしましたが、先ほどのような御回答を頂きました。しかしながら、これらの件数は、合意制度の実施状況を示す基本的な数値ですし、そもそも協議の申出自体が少ないのか、協議は行われているが合意に至ることが少ないのか、それとも、一般に知られているよりも合意に至っている件数は多いのかは、制度があまり活用されていないように見える原因の所在と結び付くものですから、更なる法改正の要否を協議する前提として、共有すべき情報であるように思われます。   質問ですが、これらの数値は、法務省でも検察庁でも把握していないということなのでしょうか。それとも、把握しているけれども、当協議会では明らかにしない方針ということなのでしょうか。 ○栗木参事官 御指摘のような件数について、事務当局として把握しているものではありません。しかし、最高検察庁においては、各地方検察庁に対して、合意をするために必要な協議を開始する場合、弁護人又は被疑者・被告人から合意をするため必要な協議を申し入れられたものの、協議を開始しないこととした場合について報告を求めているものと承知しています。もっとも、その内容の取扱いにつきましては、捜査・公判活動に係る内部資料でもありますので、慎重を要するところであると考えております。 ○河津構成員 先ほど頂いた御説明の中で、協議の申出が、そもそも対象にならないようなものまで含まれており、その数を正確に把握することが困難な面もあることは理解できますが、協議を開始した件数と合意に至った件数は、正確に把握することが可能であり、かつ、この制度の実施状況を示す基本的な数値ですので、第2段階の議論に至る前に明らかにすることを検討いただけませんでしょうか。そのような基本的な数値すら明らかにされないようでは、法改正の要否を適切に協議することができないのではないかと懸念いたします。 ○栗木参事官 先ほど申し上げたとおり、協議開始の申入れがあった場合に協議を開始するか否か、開始した場合に合意をするか否か、いかなる協力行為についていかなる処分の軽減等を行うかについては、検察官が、個別具体的な事案に応じて、様々な事情を考慮して判断しているものですので、それぞれの件数を明らかにしても、どのような意味で、合意制度の検討課題の整理に資するものと言えるかという点について疑問がありますが、御指摘を踏まえて、検討をしたいと思います。 ○河津構成員 お願いいたします。 ○栗木参事官 それでは、議事に入りたいと思います。   本日は、まず、公判段階における取調べの録音・録画記録媒体による立証状況等について、配布資料18に基づく協議を行い、次に、刑事免責制度の実施状況について、配布資料19に基づく協議を行った後、通信傍受の合理化・効率化の実施状況について、配布資料20及び21並びに警察庁作成の資料に基づく協議を行うこととしたいと思います。それらの協議に当たっては、それぞれ、事務当局又は警察庁から関係する配布資料の御説明を行った上で、その内容についての質疑応答、意見交換を行うこととしたいと思います。そのような進め方とさせていただくことでよろしいでしょうか。                  (一同異議なし)   それでは、公判段階における取調べの録音・録画記録媒体による立証状況等についての協議を行いたいと思います。   まず、事務当局から、このテーマに関係する配布資料18の内容について御説明します。   配布資料18を御覧ください。   配布資料18は、供述の任意性・信用性が争われた事件における裁判所の判断状況を整理したものです。資料の1枚目は、表の下の「※1」に記載したとおり、法務省において実施した「任意性等の争いに関する実情調査」の結果に基づいて作成したものです。これは、平成22年6月1日から平成23年5月31日までの1年間に、全国の地方裁判所及び簡易裁判所において第一審判決があった事件のうち、公判において被告人の捜査段階における供述の任意性が争いとなった事件数等について調査したものです。   まず、表の一番左の「事件数」と記載した欄を御覧ください。平成22年6月1日から平成23年5月31日までの1年間に、全国の地方裁判所及び簡易裁判所において第一審判決があった事件のうち、公判において被告人の捜査段階における供述の任意性が争いとなった事件の事件数は、218件でした。また、供述の任意性が争いとなった218件のうち、供述の任意性が立証されていないことを理由に、供述調書の証拠調べ請求が却下された事件は9件、供述の信用性が否定された事件は9件でした。   次に、「〔参考〕起訴された事件数」と記載した欄を御覧ください。この欄は、検察統計調査に基づき、平成22年6月から平成23年5月までの間の検察庁における起訴件数を明らかにしたものであり、供述の任意性が争われた事件などの各欄に記載した件数が事件数全体に占める割合を、おおよそのボリューム感として把握するための目安として記載したものです。   次に、資料の2枚目は、平成26年10月から令和4年8月までの各年の状況を記載したものです。供述の任意性・信用性が争われた事件における裁判所の判断状況については、配布資料13において、改正刑事訴訟法が施行された令和元年6月以降のものを記載していましたが、配布資料18では、それ以前の状況についても記載しており、表の中に緑色が付してあるのは、今回新たに件数を明らかにしている部分です。   この資料において、「供述の任意性が争われた事件」とは、表の下の「※1」に記載したとおり、平成26年10月1日から令和4年8月31日までの間に第一審判決があった事件のうち、被告人の捜査段階における供述の任意性を争う旨の主張がなされた事件で、検察官が証拠調べ請求を撤回し、又は裁判所が証拠調べの必要性がないことを理由に証拠調べ請求を却下した事件を除くものであって、令和4年10月24日までに判決が確定したものを指しています。   また、「取調べの違法・不当を理由として供述の信用性が争われた事件」とは、表の下の「※2」に記載したとおり、平成26年10月1日から令和4年8月31日までの間に第一審判決があった事件のうち、取調べの違法又は不当を理由として被告人の捜査段階における供述の信用性を争う旨の主張がなされた事件で、検察官が取調べ請求を撤回し、又は裁判所が証拠調べの必要性がないことを理由に証拠調べ請求を却下した事件を除くものであって、令和4年10月24日までに確定したものを指しています。   ただし、被告人の捜査段階における供述の信用性を争う旨の主張が、「取調べの違法又は不当を理由として」なされたかどうかは、任意性とは異なり、一概に区分けできるものではなく、各検察庁からの報告があったものをそのまま計上しているため、前提となる判断にばらつきが生じている可能性があることに御留意願います。   まず、表の一番左の「事件数」と記載した欄を御覧ください。供述の任意性が争われた事件又は取調べの違法・不当を理由として供述の信用性が争われた事件の事件数は、平成26年10月から12月までが33件、平成27年が93件、平成28年が62件、平成29年が71件、平成30年が51件、令和元年が52件でした。そのうち、供述の任意性が争われた事件及び取調べの違法・不当を理由として供述の信用性が争われた事件、それぞれの件数などについては、各欄に記載しているとおりです。   なお、「供述の任意性が争われた事件」の数と「取調べの違法・不当を理由として供述の信用性が争われた事件」の数の合計が、表の一番左の事件数と一致しないのは、供述の任意性が争われると同時に、取調べの違法・不当を理由として供述の信用性が争われた事件については、それぞれの事件に計上しているためです。   次に、「〔参考〕起訴された事件数」と記載した欄を御覧ください。この欄は、資料の1枚目と同様に、検察統計調査に基づき、各年の検察庁における起訴件数を明らかにしたものであり、「供述の任意性が争われた事件」などの各欄に記載した件数が事件数全体に占める割合を、おおよそのボリューム感として把握するための目安として記載したものです。   配布資料18の御説明は以上です。   ただ今の御説明について、御質問はありますか。 ○成瀬構成員 配布資料18は、捜査段階における被疑者取調べの録音・録画の広がりが、公判段階において供述の任意性が争われる事件の数にどのような影響を与えたかを推し量る上で、参考になる資料であると思います。   そこで、試みに、起訴された事件数全体に占める供述の任意性が争われた事件の割合を各年で計算してみました。まず、配布資料18の1ページに示されている平成22年6月から平成23年5月までの1年間は、被疑者取調べの録音・録画が試行されてはいたものの、非常に限られた範囲でしか行われていなかった時期ですが、この時期における起訴された事件数全体に占める供述の任意性が争われた事件の割合は、0.044%でした。これに対して、2ページにいきますが、被疑者取調べの録音・録画が刑事訴訟法において制度化され、施行されるに至った平成27年から令和3年までの数値を計算してみますと、いずれの年も0.016%から0.025%の範囲内であり、供述の任意性が争われた事件の割合が約2分の1になっていることが分かります。   もっとも、いずれの年においても、起訴された事件数全体の中で、供述の任意性が争われた事件の数は非常に少ないので、今、申し上げた割合の変化が、統計的に有意な変化とまで言えるかは定かではありませんし、供述の任意性が争われる事件数の減少には、取調べの録音・録画以外の要素も影響しているものと思われます。   このような限界はありますが、被疑者取調べの録音・録画が広く行われるようになった時期に、供述の任意性が争われる事件の割合が減っているという、大まかな傾向を確認できただけでも有益であったと考えています。 ○小林構成員 ありがとうございます。   法改正前の数字についてお調べいただきまして、貴重なデータをどうもありがとうございました。   ただ、資料13との比較でいうと、事件の内訳の別がないので、なかなか比較しづらいとも思うのですが、この内訳を出していただくのは難しいでしょうか。 ○栗木参事官 配布資料18について、前回会議でお配りした配布資料13のような事件類型ごとの件数が示されていないという御指摘かと思いますが、資料18は、小林構成員から、取調べの録音・録画の制度施行前後における供述の任意性・信用性が争われた事件数の変化を分析するために、平成28年改正法の施行後の同事件数のみならず、施行前の同事件数についても示されたいとの御要望があったことを踏まえ、事務当局において、改正法の施行前後の比較に資する限度で、平成22年6月から平成23年5月までの1年間に実施した調査及び平成26年10月以降に実施した調査の結果に基づいて、供述の任意性・信用性が争われた事件数をお示しすることとしたものです。   これらの事件数のうち、身柄事件・在宅事件別の件数ですとか、裁判員裁判対象事件の件数等、録音・録画が実施された事件の件数等、事件類型ごとの件数については、配布資料としてお示しすることができるかどうかも含め、今後どのような対応ができるか、検討したいと思います。 ○小林構成員 ありがとうございます。よろしくお願いします。   あともう一点。先ほど、成瀬構成員がすごく詳しく、コンマ何%まで計算していただいてありがとうございました。資料18の①の件数と比較すると、②の平成26年10月以降の数字が減っていると私も感じていたのですが、理由として考えられるのは、成瀬構成員が御指摘くださったとおり、やっぱり録音・録画の試行が広がったお陰という理解でいいでしょうか。これは事務当局への質問というよりも、構成員の皆さんの御意見をお聞きしたいのですが。 ○松田構成員 録音・録画の効果というのもあるかもしれませんけれども、やはりそこは、確定的に言うのは難しいと思います。事件の内容もありますし、例えば、警察においては、取調べに過度に依存しない適正な捜査を推進するというのをどんどん進めていくということで、客観証拠重視の捜査、裏付けの捜査によって自白の信用性の十分な検討をするなど、緻密で適正な捜査の推進というのも同時に進めており、そういった効果やそういったことの総合的な影響かもしれませんので、何が理由かというのを確定的になかなか申し上げることは難しいのではないかというふうに考える次第です。 ○小林構成員 ありがとうございます。 ○成瀬構成員 私も、松田構成員と同様の認識であり、先ほども、供述の任意性が争われる事件数の減少には、取調べの録音・録画以外の要素も影響しているだろうという留保を付させていただきました。取調べの録音・録画以外の要素として、本日、鈴木構成員が出席しておられたら、恐らくおっしゃったかなと思うのは、この時期は、裁判所においても、公判段階で被告人の供述調書をどこまで採用すべきかという点について、熱心に議論されていた時期に当たるということです。つまり、公判中心主義や直接主義を重視する観点から、被告人になるべく公判廷で話をしてもらう形の裁判が行われるようになったことも、捜査段階の供述の任意性が争われる事件数の減少に影響を与えていると思われます。よって、取調べの録音・録画のみによって先に申し上げた変化が生じたとは言えないと考えています。 ○小林構成員 今の点について、横山構成員のお考えをお聞かせいただいてもよろしいですか。 ○横山構成員 今、成瀬構成員の方から御指摘があったとおりと、私としても考えています。裁判所においては、公判中心主義ですとか、直接主義といったような考え方をきちんと見直していこうということで、特に裁判員裁判の施行前辺りからは熱心に取り組んできたと認識しています。   今回お配りいただいた統計資料の中では、裁判所が証拠調べの必要性がないことを理由に証拠調べ請求を却下した事件数については母数から除かれているということもありますので、恐らく今御指摘のありましたとおり、捜査段階においても客観的な証拠を重視するような捜査が行われるようになり、公判においても、なるべく公判を中心とした形での主張、立証を当事者にもお願いしているといったような影響もあるんだろうと、私も思っています。 ○栗木参事官 統計の資料の件で、事務当局から、念のため追加で御説明しますと、資料18の1枚目では、平成22年6月から平成23年5月までの統計と、平成26年10月以降の統計の、二つに分けてお示ししています。これは、先ほど御指摘もありましたが、平成26年10月以降の統計は、検察官が証拠調べ請求を撤回し又は裁判所が証拠調べの必要性がないことを理由に証拠調べ請求を却下した事件を除いている一方、平成22年6月から平成23年5月までの統計の方はそれを除いておらず、もともと統計の取り方が違うためであり、比較するに当たって、やや限度があるとは思いますが、御参考に、今回お示ししたものです。 ○河津構成員 配布資料18で整理いただいた数値は、前回会議で申し上げた、公判において被告人の捜査段階における供述の任意性が争点となることが減少しているという、私の弁護人としての感覚とも合致するものです。   ただ、これも前回会議でも申し上げましたが、そもそも刑訴法改正のきっかけとなった事件で問題となったのは、被告人本人の供述の任意性ではなく、在宅被疑者として取り調べられた者を含む被告人以外の関係者に対して、事実と異なる供述をさせるような取調べが行われたことでした。そのため、「取調べの適正な実施」という制度目的の達成状況を評価するために、被告人以外の者の供述の信用性・特信性についての裁判所の判断状況や事例の提供を、前回会議でもお願いしましたし、検察における在宅被疑者の取調べの録音・録画の実施状況についても、明らかにすることをお願いしてまいりました。   先ほど事務当局からは、統計的な調査を実施していないという御説明を頂きましたが、法制審議会特別部会の取りまとめにおいても、「実務上の運用において、可能な限り、幅広い範囲で録音・録画がなされ、かつ、その記録媒体によって供述の任意性・信用性が明らかにされていくことを強く期待する」とされ、施行状況について検討を加えるに当たっては、「実務上の運用としての録音・録画の実施状況」も検討の対象として、「客観的なデータに基づき、幅広い観点からの分析・評価を行うことが重要である」とされていたことなどに照らすと、それらに関する統計的な調査を実施する必要性は明らかであるように思われます。   令和3年10月28日に大阪地方裁判所が無罪を言い渡した業務上横領被告事件では、いわゆる「共犯者」とされた証人の取調べの録音・録画記録媒体が取り調べられ、供述経過が認定された上で、その公判供述の信用性が否定されています。その取調べを担当し、特別公務員暴行陵虐罪で告発された検察官に対する不起訴処分に係る付審判請求について、先月、令和5年3月31日付けで大阪地方裁判所がした決定において、取調べにおける検察官の言動は特別公務員暴行陵虐罪にいう「陵辱又は加虐の行為」に該当する旨の判断が示されています。   同決定においては、取調べの録音・録画記録媒体に基づき、検察官が机に右手を振り下ろして叩き、大きな音を出し、約50分にわたりほぼ一方的に責め立て続け、このうちの約15分間は大声を上げて一方的に怒鳴り続け、証拠は十分で責任は逃れられないなどと述べ、「反省しろよ」「ふざけるな」「なめんなよ」などの威圧的な言葉を交え、被疑者の説明をうそと決めつけ、被疑者がうそをついて謝らない人間であるとか、金を掛けた者らと命を懸けている検察官とは違うとか、幼稚園児でも分かるなどと、被疑者の人間性に問題があり、あるいは、その人格をおとしめる趣旨の侮辱的な発言を行うなどした、という事実が認定されています。   このような取調べの実情が客観的な証拠により認定され、それに基づいて公判供述の信用性が判断されていることは、取調べの録音・録画制度の効用であるということができる一方で、録音・録画されているにもかかわらず、このような取調べが行われているという事実は、取調べの適正な実施を実現するために、現行制度では不十分であることを示すものと思われます。   先ほど特信性の判断事情は、取調べの違法・不当に限られないという御説明もありましたが、被告人以外の者に対する不適正な取調べにより、事実と異なる内容の供述調書が作成されたり、あるいは、信用性を欠く公判供述が行われるという事例は、そもそも刑訴法改正のきっかけとなった事件もそうでしたし、現在もみられるのですから、その実情を共有した上で、制度の在り方を協議する必要性は高いと思われます。   このような不適正取調べの事例については、以前より、最高検察庁監察指導部に集積されているはずであることから、その提供をお願いしてまいりましたが、令和5年1月30日に開催された検察運営全般に関する参与会では、当協議会に対して「監察指導部の監察結果に関する数値的なデータのみならず、個別の事案についても可能な限り具体的な情報を提供し、併せて録音録画下であっても不適正な取調べが生じている点も含めて公表し、具体的な検証を可能にするようにしてほしい。」との意見が述べられていることが、公表されている議事要旨に記載されています。   最高検監察指導部に集積されている事例、検察における在宅被疑者の取調べの録音・録画の実施状況や被告人以外の者の供述の信用性・特信性についての裁判所の判断状況や事例については、第2段階の議論の前提として提供することを、引き続き求めたいと存じます。 ○栗木参事官 最高検監察指導部の関係の資料につきましては、前回までの協議会におきまして、お示しできるものについては事務当局からお示ししたと認識しています。また、在宅被疑者の録音・録画の実施状況ですとか、先ほど御指摘のありました被告人以外の者の供述の特信性に関する裁判所の判断状況等についての事務当局としての考え方は、これまで述べてきた内容、それから本日御説明した内容のとおりですが、この点についてほかの構成員の方から御意見がありましたら、お伺いしたいと思います。     河津構成員から御意見があったということで、それを踏まえて検討したいと思います。 ○小林構成員 取調べの録音・録画については、これで1巡目の議論が終わりということだと思いますが、2巡目の議論に向けて、最後に改めてお願いしたい点がございます。   1点目は、河津構成員が今発言なさったことと少し関連するのですが、在宅の被疑者や参考人の取調べの実情について、まだ議論していない点や分からない点が多数残されていると思っています。このままでは、国会からの要請に応えられないのではないかというふうに危惧しておりますし、可能でしたら、やはり当事者のヒアリングをお願いできないかと思っています。   2点目に、第4回会議でも指摘させていただいた点ではありますが、録音・録画をすることのデメリットについて、捜査側の構成員からもう少し具体的にお話を伺いたいと思っています。これまでの議論で、録音・録画をするメリットについては理解できましたけれども、弊害がよくイメージできていないというのが正直なところです。確かに、被疑者の口が重くなるとか、関係者の名誉やプライバシーが害されるおそれがあるといった御指摘のほか、コストや事務負担の大きさといった御指摘もありました。ただ、こうした弊害があり得るということは、録音・録画が義務付けられる前から指摘されていたことでもありますし、そうした弊害を考慮して、除外事由が設けられているという御説明もあったと思います。   一次捜査機関としての警察と検察でも違いがあるでしょうし、録音・録画の導入によって捜査の御苦労が増した面もあると思うのですが、そのために検挙率が下がったとか、起訴率や有罪率が下がったとか、そういう数値がこの協議会に出されているわけではありません。特に検察では、法律で義務化された以外の事件でも、かなり幅広に録音・録画に取り組んでいらっしゃる中で、特に困難を感じている事件の類型があるのかということもお聞きしたかったです。   例えば、贈収賄や組織犯罪のような犯罪では録音・録画を嫌がる被疑者が多いんだとか、性犯罪はより難しいんだとか、逆に事件によってそんなに違いはないんだとか、そういう具体的なお話がお聞きしたかったです。また、供述が得られにくくなったために真相解明が難しくなった事例があるのであれば、数値では見えづらい部分については構成員の皆さまの実体験に基づいて具体的に伺いたかったというふうに思っています。   録音・録画を義務付ける対象事件を今後どうするかを検討する際には、「今は問題ないからこのままでいい」ということではなくて、拡大すべきかどうかを含めて検討するためにも、皆さんの経験に基づく具体的なお話を伺うことが大切だと思いますので、今日、この場でということでなくて結構ですから、2巡目に向けて是非お願いしたいと思います。 ○栗木参事官 御意見のうち、構成員以外の方からのヒアリングにつきましては、既に話題になったことがあると認識していますけれども、やはり今回の協議会の趣旨に鑑みまして、具体的にどの検討項目のいかなる点について、どういった御知見をお持ちの方から御意見いただくことが必要なのかですとか、ほかの方法によって対処することを考えられないかといったことからも、十分な検討が必要な面があるということは、重ねて申し上げたいと思います。   ほかに御意見はありますか。   それでは、次に、刑事免責制度の実施状況について協議を行いたいと思います。   まず、事務当局から、このテーマに関する配布資料19の内容について御説明します。   配布資料19を御覧ください。   配布資料19は、刑事免責決定下で証人尋問が実施された事例をまとめたものです。前回会議において、配布資料17に基づき、刑事免責決定下で証人尋問が実施された件数をお示ししましたが、事務当局において、それらのうち、確定済みの事件であって、刑事免責請求日が直近のものから遡って10件を抽出し、それらの事件の判決書の認定事実に基づいて作成したものが、この資料です。   この事例集には、起訴罪名、判決で認定された犯罪事実の要旨、判決上認められる証人の立場を記載しています。なお、番号「2」の事案と番号「5」の「①」の事案については、資料2枚目の表の下に「※2」として記載しているとおり、同一の事案であり、異なる被告人について、同一の証人の尋問が実施されたものです。   表のうち、「判決上認められる証人の立場」欄について、補足して御説明します。表には、「共犯者」又は「参考人」との記載がありますが、その具体的な立場について、判決書に記載されている認定事実の範囲で申し上げますと、まず、「共犯者」に関しては、番号「1」においては、賠償金請求の名義人となる共犯者を勧誘した者、番号「3」においては、レターパックの受領役である被告人を送迎した者、番号「4」においては、実行犯への情報提供を仲介した者、番号「7」においては、インターネット上で知り合った氏名不詳の共犯者に対して殺人の依頼をした者、番号「9」においては、被告人に対し、貨物の送り先住所の提供を依頼した者、番号「10」においては、持続化給付金の申請名義人となる共犯者を勧誘した者であることなどが認められます。また、「参考人」に関しては、番号「5」の「①」においては、被告人が密売する大麻を栽培していた者、番号「8」においては、被告人の内妻であることなどが認められます。   なお、この10件の事例については、いずれも判決書における証拠の標目欄に、各証人の公判供述が掲げられており、判決上、刑事免責決定下の証人尋問において、証人が一切の供述を拒絶したという事情はうかがわれませんでした。   配布資料19の御説明は以上です。   ただ今の御説明について、御質問はありますか。 ○成瀬構成員 御説明いただきありがとうございました。各事例における共犯者及び参考人の位置付けについて補足していただき、参考になりました。   ここで共犯者とされている者について、その者自身も起訴されているかどうかという点はお分かりになりますか。 ○栗木参事官 その点についても調査を実施していないため、今ここでお答えするのは困難ですが、配布資料19の事例集のうち、証人の立場欄に共犯者と記載されているものにつきましては、その被告人に対する判決書の「罪となるべき事実」において、当該証人が、明確に、「誰々と共謀の上」というところの、共謀をした者の中に名前が含まれるという形で、共犯者として認定されているものです。その上で、共犯者が起訴されているか否かの調査につきましては、対応を検討したいと思います。 ○成瀬構成員 では、配布資料19と事務当局の御説明に基づいて、私が注目した刑事免責制度の運用の特徴を2点申し上げたいと思います。   第1の特徴は、刑事免責制度が、薬物犯罪や詐欺罪のような協議合意制度の対象犯罪となっている事件だけでなく、殺人罪や傷害致死罪、強盗致傷罪等の事件でも用いられていることです。これは、刑事免責制度が、協議合意制度と異なり、対象犯罪を限定していないことによるものですが、多様な事件において、刑事免責制度を用いる実務上のニーズが存在することもうかがわせます。   第2の特徴は、刑事免責を付与される証人の多くが、共犯者であることです。ただし、「2」及び「5」の「①」の事件や「8」の事件のように、参考人に刑事免責が付与されている事件も存在し、刑事免責の対象者にも、実務上、複数の類型があることがうかがわれます。   次に、刑事免責制度の運用状況をよりよく理解する観点から、追加で質問をさせていただきたいと思います。   先ほどの御説明の最後に、各証人の公判供述が証拠の標目欄に掲げられていたので、公判廷で一切の供述を拒絶した者はいなかっただろうという御指摘がございました。その御趣旨は理解できるのですが、では、各証人は公判廷で十分に供述したのだろうかという点が気になりました。そもそも、平成28年刑訴法改正が刑事免責制度を導入した理由の一つとして、証人に対して派生使用免責を付与し、自己負罪事項について証言を義務付けることによって、公判廷でなるべく証言を引き出し、公判審理を充実させることが挙げられていました。このような立法趣旨を踏まえると、一切の供述を拒絶した者はいないという確認に留めるのではなく、各証人が十分に供述したのかという点にも立ち入って検討しておく必要があるように思われます。   このような問題意識からは、各事件において、証人の捜査段階の供述調書が必要とされるような事態に陥ったのか、具体的には、321条1項2号等により証人の供述調書が採用されるに至ったのかという点が気になります。この点も、刑事免責制度がどの程度機能しているかを把握する上で重要な観点であるように思われますので、もし現時点でお分かりになることがあれば、御教示いただければ幸いです。 ○栗木参事官 御指摘の、いわゆる2号書面請求をした事例についてですが、網羅的に把握しているわけではありませんが、配布資料19の事例集に記載している各事案につきましては、先ほど申し上げたとおり、刑事免責決定を受けた証人の公判供述・公判証言が掲げられておりまして、証言を拒絶したことをうかがわせる事情はありません。また、検察官が当該証人の供述調書について、いわゆる2号書面請求をしたかどうかが分かる記載もありませんでした。その上で、どのような対応が可能か検討したいと思います。   ほかに何か御質問等ありますか。 ○佐藤構成員 御紹介いただいた事例との関係で1点伺いたいのは、免責を受けた証人の証言の信用性について、裁判所がどのような判断を示しているのかということです。協議合意制度の下で得られた供述と免責制度の下で得られた供述に関し、その信用性の評価という点で何か違いがみられるかということについて、もし分かりましたら教えていただければと思います。 ○栗木参事官 配布資料19の事例集に記載している各事案の判決で明らかになる限度でということであれば、信用性に言及したところを網羅的に確認をしていないものですから、御指摘の問題意識を踏まえまして、どのような対応が可能か、事務当局の方で検討させていただきたいと思います。   ほかに御質問等はありますか。   それでは、続いて、通信傍受の合理化・効率化の施行状況について協議を行いたいと思います。   まず、事務当局から、平成28年の刑訴法改正の概要に関する配布資料3、平成28年の通信傍受法の改正内容及び同改正後の規定の実施状況に関係する配布資料20及び21の内容について御説明します。事務当局作成の配布資料についての御質問等につきましては、松田構成員から警察庁作成の配布資料について御説明いただいた後に、まとめてお伺いしたいと思います。   それでは、平成28年の改正後の通信傍受の実施状況について御説明するのに先立ち、改正の概要について御説明しますので、第1回会議で配布した配布資料3の5ページを御覧いただければと思います。   まず、「○ 対象犯罪の拡大」と書かれている部分を御覧ください。改正の概要の1点目は、通信傍受の対象犯罪の拡大です。改正前は、薬物関連犯罪、銃器関連犯罪、集団密航の罪及び組織的殺人が対象犯罪とされ、「これらの犯罪が数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況があるとき」という、いわゆる数人共謀の要件や、「他の方法によっては、犯人を特定し、又は犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難であるとき」という補充性の要件等が充足されたときに、通信傍受をすることができることとされていました。   改正により新たに対象犯罪に追加されたのは、殺傷犯関係の罪、殺人、傷害、傷害致死、現住建造物等放火、爆発物使用、それから逮捕・監禁、略取・誘拐関係の罪、窃盗・強盗、詐欺・恐喝関係の罪、児童ポルノ関係の罪であり、これらの新たに追加する対象犯罪については、改正前に対象犯罪について規定していた要件を満たすことに加えて、「当該罪に当たる行為が、あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるもの」であると疑うに足りる状況があることを要することとされました。   このように、対象犯罪が拡大された背景には、暴力団組員がその意に沿わない一般市民を標的として組織的に行ったと見られる殺傷事件や、いわゆる特殊詐欺など、一般市民の生活を脅かす組織的な犯罪が相次いでいる中、こうした組織的な犯罪においては、首謀者の関与状況等を含めた事案の解明が求められるところ、その一方で、これらの組織においては、組織防衛の一環として、末端の実行者等が警察等に検挙された場合には、徹底して供述を拒否するよう、厳しく統制がなされるなど、事案の解明に資する供述を得ることがますます困難になってきているということがありました。   通信傍受は、犯罪の謀議を内容とする通信という、客観的な証拠の収集を可能にするものであり、これらの組織的な犯罪において、背後の首謀者等の関与状況を含めた事案の解明を図る上で、極めて有効な捜査手法となり得ますが、改正前の通信傍受法においては、通信傍受の対象犯罪が、先ほど御説明した4類型に限定されており、これらに該当しない組織的な犯罪においては、通信傍受を活用することができない状況にありました。   そこで、証拠の収集方法の適正化・多様化の観点から、通常傍受の対象犯罪を拡大することとされたものです。なお、新たに追加された対象犯罪についての加重要件は、新たに対象犯罪となった罪は、いずれも組織的に行われることが現実に想定されるものではあるものの、改正前の対象犯罪と異なり、犯罪の性質や構成要件自体から、そのことがうかがわれるとは必ずしも言い難いことに鑑み、組織的犯罪に適切に対処するという通信傍受法の趣旨を全うする観点から規定されたものです。これにより、いわゆる数人共謀の要件とあいまって、新たに追加された対象犯罪について、通信傍受を行うことができるのは、犯罪の実行、準備又は事後措置に関する謀議、指示、その他の相互連絡等を内容とする通信が行われる蓋然性が類型的に高い態様の犯行である場合に限られることにもなります。   次に、「○ 傍受の手続の合理化・効率化」と書かれている部分を御覧ください。改正の概要の2点目は、傍受の手続の合理化・効率化です。改正前は、傍受の実施について、「通信手段の傍受の実施をする部分を管理する者」等を常時立ち会わせなければならないこととされ、さらに、傍受をした通信は、全て記録媒体に記録した上、立会人に封印を求めなければならないこととされていました。これらの点について、改正後は、傍受した通信や傍受経過を自動的に記録し、これを即時に暗号化する装置を用いることで、立会い・封印を不要とする、通信内容を暗号化して一旦記録し、事後的に聴取することを可能とすることとしました。   このように傍受の手続が合理化・効率化された背景には、通信傍受に常時立会人が必要とされた関係で、通信傍受は通信事業者の施設において実施する運用となっていたことから、協力義務のある通信事業者としては、通信傍受の実施の都度、立会人となるべき職員や傍受の実施の場所の確保等に努めることを余儀なくされており、このことが通信事業者にとって大きな負担となっていたことや、捜査機関にとっても、通信傍受の実施に当たっては、その数週間前から通信事業者との間で調整を図ることが必要となるため、捜査の必要に応じて臨機に通信傍受を実施する上で支障となる実情にあったことがありました。   さらに、従来の通信傍受は、通信が行われたときにリアルタイムでその内容の聴取等をすることを前提としているため、捜査機関や立会人は傍受の実施の期間中、常に待機し、通話がなされるのを長時間にわたって待ち続けなければならないという、極めて非効率的な事態が生じていました。   このようなことが、客観的な証拠の収集方法としての通信傍受の効果的・効率的な活用を妨げる結果となっていたため、暗号技術等の情報処理技術を活用することにより、通信傍受の実施の適正を十分に担保しつつ、通信事業者等の負担を軽減するとともに、通信傍受の実施の機動性を確保して、より効果的・効率的な通信傍受を可能とするため、証拠の収集方法の適正化、多様化の観点から、従来の通信傍受の実施方法に加えて、「一時的保存を命じて行う通信傍受の実施の手続」と「特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続」を導入することとされました。   まず、「一時的保存を命じて行う通信傍受の実施の手続」は、裁判官の許可を受けて、通信管理者等に命じて、傍受の実施をすることができる期間のうち捜査機関が指定する期間内に行われる通信を暗号化させた上で一時的に保存させ、その後、通信管理者等に命じてこれを複合させた上で、通信管理者等の立会いの下、復元された通信を再生してその内容の聴取等をするものです。再生した通信は、全て記録媒体に記録しなければならず、当該記録媒体は立会人により封印され、裁判官に提出されて保管されることとなります。この手続は、暗号化等の技術的措置等により、一時的保存の時点では捜査機関が通信の内容を知り得ない状態を確保しつつ、事後的に通信の内容の聴取等をすることを可能とするものであり、通信が行われたときに、リアルタイムでその内容の聴取等をするまでの必要がない事案においても、捜査機関と立会人が傍受の実施の期間中、常に待機し、通話がなされるのを長時間にわたって待ち続けなければならない事態を解消し、通信事業者等の負担の軽減と捜査の効率化を図ろうとするものです。   この手続によるためには、検察官又は司法警察員が傍受令状の請求をする際に、この手続の許可の請求を行い、傍受令状が発付されることに加えて、この手続によることについての裁判官の許可を受けることが必要となります。   次に、「特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続」は、裁判所の許可を受けて、通信管理者等に命じて傍受の実施をしている間に行われる通信を暗号化させた上で、捜査機関の施設等に設置された特定電子計算機に転送させ、これを受信すると同時に複合し、又は、これを受信すると同時に一時的に保存し、その後、特定電子計算機を用いて複合して再生し、それぞれ、その内容の聴取等をするものです。この手続による場合、その内容の聴取等がなされた通信は、全てこの特定電子計算機の機能により自動的に暗号化され、改変できない形で記録媒体に記録され、通信管理者等による立会い及び記録媒体の封印は不要となります。この手続は、通信管理者等による暗号化、特定電子計算機の利用、その他の技術的措置等により、立会人がある場合と同程度に通信傍受の実施の適正を確保するものであり、これにより捜査機関は通信事業者等の施設ではなく、捜査機関の施設等において傍受を実施することも可能となり、従来方式の下で立会人となるべき職員や傍受の実施の場所の確保等に努めることを余儀なくされる通信事業者等の負担を軽減し得るとともに、より機動的な通信傍受の実施が可能となります。   この手続によるためには、検察官又は司法警察員が傍受令状の請求をする際、この手続の許可の請求を行い、傍受令状が発付されることに加えて、この手続によることについての裁判官の許可を受けることが必要となります。   今御説明しました二つの手続において、通信を暗号化する際に用いられる変換符号等は、裁判所の職員が裁判官の命を受けて作成し、通信管理者等に提供することとされています。変換符号等は、一時的保存をされた通信の内容を検察官又は司法警察員が知り得ない状態を確保したり、傍受の原記録として裁判官により保管されることとなる記録媒体に記録される通信等の記録を改変できないようにするために用いられるものであり、二つの手続において、通信傍受の実施の適正を確保する上で重要な意味を持つことから、その作成等の適正を確保するため、公正・中立な立場にある裁判官の命により、裁判所の職員が行うこととされたものです。   通信傍受法の改正の概要の御説明は以上です。   続きまして、配布資料20について御説明いたします。   配布資料20は、法務省刑事局長名で発出された「犯罪捜査のための通信傍受に関する規程の運用について」と題する依命通達です。   犯罪捜査のための通信傍受に関する規程は、通信傍受に関する事務処理の手続等を定めるものであり、この通達に同規程の運用上の留意点が記載されていますので、その概要を御説明いたします。   この資料の1枚目の「第1 犯罪捜査のための通信傍受に関する規程の趣旨等について」に記載のとおり、当規程は、通信傍受法において定められた傍受令状の請求、傍受の実施、再生の実施及び傍受記録の作成などの制度に対応するための取扱手続と、傍受記録の保管等に関する事務の取扱手続の大綱を定めるとともに、これを取り扱う職員の職務とその責任を明確にし、もって通信傍受に関する事務の適正な運用を図ることを目的として定められたものです。   さらに、通信傍受に関する事務は、国民の通信の秘密やプライバシーに深く関わるものであり、より一層の事務の適正を図る必要があることから、これを取り扱う者は関連法令等を遵守し、通信の秘密を不当に侵害することのないように注意しなければならない旨が定められています。   資料2枚目の「第2 検事正の承認について」を御覧ください。組織としての責任の所在を明確にし、通信傍受の厳正な運用を図るため、検察官は傍受令状の請求、傍受ができる期間の延長の請求、該当性判断のための傍受、又は再生の方法等に関しては、あらかじめその属する地方検察庁の検事正の承認を得なければならない旨が定められています。   資料2枚目の「第3 通信傍受に関する手続について」には、通信傍受に関する事務処理の手続等の運用上の留意事項が項目ごとに記載されています。その詳細は、本依命通達に記載されているとおりですが、かいつまんで御説明すると、まず、資料2枚目の第3の「1 傍受令状の請求について」については、傍受令状の請求は傍受令状請求書によることとされ、その様式は、従来方式の傍受手続を実施する場合と一時的保存を命じて行う通信傍受の実施をする場合と特定電子計算機を用いる通信傍受を実施する場合とで、それぞれ異なるものを使用することなどが定められました。   資料4枚目の「3 記録媒体の封印等」について御説明しますと、記録媒体の封印は、封印票と、剥がすと「開封済」等と文字等が浮き出るシールによることとされ、検察官が立会人が記録媒体に封印をする前に、当該記録媒体の外面に書面を貼付し、これに通信の記録を終了した日時を記載して署名押印することなどが定められました。   そして、資料5枚目の「4 傍受の実施の状況を記載した書面等の提出について」について御説明しますと、検察官が裁判官に提出する傍受の実施状況を記載した書面等については、傍受実施状況報告書によることとされ、傍受すべき通信に該当するかどうかを判断するための傍受をした場合に、同報告書提出後、それが傍受令状に被疑事実として記載されている犯罪以外の一定の犯罪の実行等を内容とするものと明らかに認められ、通信傍受法第15条により傍受の対象と認めるに至ったときは、通信傍受法第15条該当通信判明報告書を作成して裁判官に提出することなどが定められました。   配布資料20の御説明は以上です。   次に、配布資料21について御説明します。   配布資料21は、通信傍受の実施状況をまとめたものです。通信傍受法第36条により、通信傍受の実施状況等の国会への報告と公表が義務付けられているところ、この資料には、これまでに国会に報告された傍受の実施状況の内容、具体的には、同法が施行された平成12年以降の年間実施事件数、事件の種別、傍受令状の請求件数及び発付件数、逮捕人員を記載しています。   先ほど御説明した平成28年の通信傍受法の改正のうち、対象犯罪の拡大が施行されたのは平成28年12月1日、傍受の合理化・効率化が施行されたのは令和元年6月1日であり、平成28年以降の実施状況を見ると、新たに対象犯罪とされた犯罪について、通信傍受が実施されていることや、令和2年以降はそれ以前と比較して通信傍受の実施事件数が増加していることが分かります。   配布資料21の御説明は以上です。   それでは、続いて、松田構成員から警察庁作成の配布資料の内容について御説明いただきたいと思います。 ○松田構成員 それでは、私から警察における通信傍受の運用上の留意事項等について御説明いたします。   資料につきましては、2点お手元にお配りしています。参考資料として規則も付けていますので、合計3点になりますが、それに基づいて御説明させていただきます。   警察では、通信傍受の適正な実施に係る各種手続につきましては、通信傍受法に定められているもののほか、国家公安委員会規則である通信傍受規則の定めるところに従って行っています。この通信傍受規則は、通信傍受法が施行された平成12年に制定していまして、平成28年に行われた改正に伴い、一部改正もしています。   そこで、通信傍受の仕組みを御説明するために、まずは、資料1に従って、平成12年の制定当初から現在まで有効な規定のうち、通信傍受の運用上の留意事項に係る主なものを御説明して、その後、資料2に従って、平成28年改正に伴い新設した留意事項等について御説明したいと思います。そして、最後に、通信傍受の実施状況について、事務当局からの御説明と重複する部分もあろうかと思いますが、簡単に御説明したいと思います。   それでは、早速ですが、資料1の警察庁次長通達、「通信傍受規則の制定について(依命通達)」を御覧ください。この通達は、平成12年に通信傍受規則を制定した際に、通信傍受規則の制定の趣旨と内容、運用上の留意事項等を記載するものですので、この通達について御説明いたします。なお、この通達に記載されている通信傍受規則の条文は制定当時のものであり、その後の改正により一部変更されている部分がありますので、それだけ御承知おきください。   まず、1ページ、「第2」の「1」です。「傍受令状請求等に当たっての警察本部長の承認」についてです。ここでは、傍受令状の請求に当たっての手続と留意事項が定められています。   通信傍受法におきましては、傍受令状の請求ができる警察官は、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警視以上の警察官とされています。これは、国家公安委員会等が指定する警部以上の警察官ができることとされている逮捕状の請求よりも、警部と警視ということで、厳格な要件になっている、法律上でもそうなっているということです。   通信傍受規則では、より慎重な判断を求めるとともに、傍受令状の請求に関する組織的な責任を明確にするために、傍受令状の請求に当たっては、事前に警察本部長の承認を得なければならないとしています。そして、傍受令状の請求の承認を求められた警察本部長は、傍受令状の発付要件を疎明する資料を入念に点検いたしまして、法令の規定と十分に照らし合わせるなどして、傍受の理由の有無や通信傍受以外の方法によっては犯人を特定することが著しく困難であるか否かにつきまして、他の令状請求の場合以上に慎重に判断を下すこととしています。このように、警察では傍受令状の請求に当たっては、他の令状以上に慎重かつ組織的に判断することとしています。   2ページを御覧ください。「2 捜査主任官等の指名」です。犯罪捜査規範では、警察本部長又は警察署長は、事件の捜査について、捜査事項や捜査員の役割分担を定めたり、捜査方針を立てるなどの職務を行う、捜査主任官を指名することとされています。しかし、通信傍受を行う事件の捜査は、その適正を期する必要性が特に高く、警察本部長の責任を明確にするということの趣旨から、通信傍受規則において、通信傍受を行う事件の捜査主任官につきましては、警察署長ではなく、警察本部長が指名することとしています。   また、通信傍受規則では、捜査主任官の職務についても定めています。「(2)」のところですけれども、捜査主任官は、傍受の実施や傍受の結果作成する通信記録物等の管理、その他の通信傍受に関する事務を統括する者とされていまして、通信傍受に関する職責を明確にしています。   続きまして、「(3)」、「(4)」に記載されておりますが、通信傍受を実施する事件では、捜査主任官のほかに、傍受実施主任官や通信記録物等管理者、こういった者を指名することとしています。傍受実施主任官ですけれども、これは、傍受を実施する場所における責任者として、傍受の実施等に従事する職員を指揮監督し、傍受すべき通信の該当性判断を行うものです。通信記録物等管理者とは、捜査主任官による通信記録物等の管理を補助する者ですが、警察本部長はこれらの任務を遂行するに足りる者を、一定以上の階級の警察官の中から選定して指名することになっています。   続きまして、3ページの「3 傍受の最小化」を御覧ください。まず「(1)」の該当性判断のための傍受の最小化と、「(2)」の報道の取材のための通信が行われた場合の措置についてです。これは、いずれも通信傍受の範囲を必要最小限とするための警察本部長の指示に関する内容です。   まず「(1) 該当性判断のための傍受の最小化」についてです。御承知のように、通信傍受法では、傍受すべき通信に該当するかどうか明らかでない通信については、傍受すべき通信に該当するかの判断をするために、必要最小限度の範囲に限り傍受することができるとされています。これを受けまして、通信傍受規則では、この傍受を、法が規定するとおり必要最小限度の範囲内のものとするために、警察本部長は通信傍受を実施する事件ごとに、傍受の最小化に関する指示をすることとしています。これは、また後でも御説明します。   次に、「(2)」の「報道の取材のための通信が行われた場合の措置」です。通信傍受法では、医師、歯科医師、助産師、看護師、弁護士、弁理士、公証人又は宗教の職にある者との間の通信であり、その者が傍受令状に被疑者として記載されている場合を除き、他人の依頼を受けて行う、その業務に関するものと認められるものについては、傍受が禁止されています。通信傍受規則及びこの警察庁次長通達では、通信傍受法で禁止された通信、これらの者に関する通信だけでなく、報道の取材の自由を尊重する観点から、警察本部長は傍受している通信が報道の取材のための通信であることが明らかとなったときは、既に傍受すべき通信が行われているような場合を除いて、直ちに傍受を終了するように指示することとしています。   1ページめくっていただいて、「(3)スポット傍受のための機器」です。ただ今御説明しましたような警察本部長の指示に従って、必要最小限度の傍受を実施するために、通信傍受を実施するに当たって、あらかじめ設定した時間が経過すると、自動的に傍受が中断される機能等を有する機器を用いることとされていまして、必要最小限度を超えて傍受することがないような仕組みを導入しています。   「(4)」の「外国語等通信についての該当性判断について」ですが、通信傍受法では、傍受すべき通信に該当するかどうかを直ちに判断することができない外国語等通信については、その全部を傍受することができるとされています。これに関しまして、通信傍受規則において、必要最小限度の範囲に限定して翻訳等をすることとしています。なお、外国語等通信を翻訳する場合においても、通信の秘密を不当に害することがないように、必要な措置を講じなければならないとしています。   このように、通信傍受規則では、通信傍受法の要件よりも厳しい要件を定めていまして、通信の秘密に配慮して通信傍受を実施することとしています。   次に、「4」の「通信事業者等に対する配慮」です。傍受の実施のためには、通信事業者等の協力を得ることが不可欠です。しかし、通信事業者等の事情についての理解を欠くと、通信事業者等に過度な協力要請をすることになりかねず、結果として無用の負担を与えることになりかねません。そこで、通信傍受規則では、通信事業者等の事情を理解し適切に対処するよう、通信事業者等に対する配慮を定めています。   次の「5」の「立会人への説明」については、傍受の実施に当たって、通信管理者等の立会いが必要な法改正前の従来型傍受及び一時的保存型傍受の際の立会人への説明に関するものですが、最近では、通信傍受を実施する事件のほとんどは、後に御説明しますが、先ほど事務当局から御説明がありました、通信管理者が立ち会わない特定電子計算機使用型傍受ですので、この部分については省略いたします。   1ページめくっていただいて、5ページです。「6 通信記録物等の適切な管理について」です。通信傍受法では、刑事手続において使用するための記録、すなわち傍受記録は、傍受すべき通信等に該当しない通信の記録を消去して作成するものとされています。通信傍受を実施するに当たっては、通信の秘密を最大限保護する観点から、傍受記録に残された通信以外に係る通信の記録等が確実に消去され、傍受に従事した者等ごく限られた者以外の者に知られないようにするとともに、捜査の目的以外の目的で使用されることのないようにする必要がありまして、通信記録物等の適切な保管管理は極めて重要です。   そこで、通信傍受規則では、裁判官に提出する原記録以外の傍受をした通信の内容を記録した通信記録物等の作成は、必要最小限度の範囲にとどめなければならないと定めています。また、通信記録物等の作成や保管の状況の把握を、容易かつ確実なものとするために、通信傍受規則では、通信記録物等を作成した場合には、通信記録物等管理者に通知しなければならず、通信記録物等管理者は簿冊に所要事項を記載して、その状況を明らかにすることとしています。   通信傍受規則は、傍受記録を作成した場合の通信記録物等の取扱いについても定めています。通信傍受法では、傍受記録を作成した場合において、裁判所に提出する原記録以外に、傍受をした通信の記録をした記録媒体又はその複製等があるときは、その記録の全部を消去しなければならないと規定されていますが、通信傍受規則では、消去すべき記録について、通信傍受法で消去しなければならないとされている記録媒体やその複製等に加えまして、傍受した通信の内容の全部又は一部を要約して記載した書面等も消去しなければならないとしていまして、消去すべき範囲をより広く定めています。   平成12年制定の資料1について御説明は以上です。   続きまして、資料2、「犯罪捜査規範及び通信傍受規則の一部を改正する規則の制定について」について御説明いたします。これは、平成28年に行われた通信傍受法の改正を受けまして、「犯罪捜査規範及び通信傍受規則の一部を改正する規則」の概要について御説明するものです。   第1につきましては、同じ時期に行った取調べに関する犯罪捜査規範の改正に関するものでして、通信傍受とは関係がありませんので、ここでの御説明は省略いたしまして、2ページにある「第2」から御説明をさせていただきたいと思います。   2ページに、「第2 通信傍受規則」とありますので、それを御覧ください。この資料2の「第2」は、平成28年の通信傍受法の改正の概要、法改正に伴って行った通信傍受規則の改正の概要について説明するものです。   「第2」の「1」でございますけれども、これは、法改正により通信傍受の方式として新たに追加された一時的保存型傍受及び特定電子計算機使用型傍受について、法律に従って説明するものです。この部分は、先ほどの事務当局からの説明と重複するため、4ページにある「第2」の「2」の「通信傍受規則の概要」から御説明したいと思います。   4ページに飛んでいただいて、「2」の「通信傍受規則」の概要ですけれども、まず「(1) 許可の請求に当たっての手続の適正」です。通信傍受法が改正されたことによりまして、一時的保存型傍受及び特定電子計算機使用型傍受といった、新たな方式による傍受を行うことができることとされました。この新たな方式による傍受を行う場合についても、通信傍受法上、裁判官の許可が必要とされています。そこで、通信傍受規則では、この新たな方式による傍受を行うための許可を請求する手続については、従来の傍受令状の請求と同様に、慎重かつ組織的な判断を求めるために、あらかじめ警察本部長の承認を得なければならないというふうにしています。   飛びまして、5ページを御覧ください。次に、「(2)」の「傍受指導官」についてです。通信傍受法の改正に伴いまして、通信傍受規則では、通信傍受の適正かつ効果的な実施を担保するために、警察本部長は、通信傍受の対象となっている犯罪捜査に従事していない職員の中から傍受指導官を指名することとしていまして、必要な指導を行わせることとしています。この指名された傍受指導官についてですが、傍受等の実施の適正性を確保するために、通信傍受に関係する職員に対して適正な傍受等の実施に必要な指導教養を行うこととしています。「イ」のところに書いてあるとおりです。   また、「ウ」に書いてある部分ですけれども、警察施設で傍受の実施を行う特定電子計算機使用型傍受を行う際には、傍受指導官は警察通信職員と連絡・協力して、傍受の実施場所における特定電子計算機の使用方法に関する助言、その他適正な傍受等の実施に必要な助言及び指導を行うこととしています。具体的には、例えば、傍受実施開始前に特定電子計算機の設定や接続に関して助言・指導したり、傍受の実施期間中には、傍受の実施、通信記録物等の保管や廃棄等に関する助言・指導、傍受の実施終了後には機器の停止や通信記録物の保管等に関する助言・指導等を行うようなことが挙げられます。   次の「(3)」の「特定電子計算機の保管等」についてです。特定電子計算機使用型傍受の適正さを担保するために、特定電子計算機が果たす役割は重要でありますから、その厳格な運用が図られるようにする必要があります。そこで、特定電子計算機は、都道府県警察ではなく、国の機関である警察庁、管区警察局、東京都警察情報通信部又は北海道警察情報通信部において保管することとしています。   次の、5ページの一番下、「(4) 再生の最小化」についてです。6ページにわたりますけれども、これは、一時的保存型傍受又は特定電子計算機使用型の一時的保存型傍受では、法律上通信の内容を聞くことは傍受ではなく再生と定義されていることから、この再生においても、従来型傍受と同様に、法の定める必要最小限度の範囲内のものとするため、最小化に関する指示を行うべきとするものでして、先ほどの資料1で御説明した内容と同様の内容を定めるものです。   6ページの、「(5) 通信の当事者に対する通知」についてですが、通信傍受法の改正により、通信の当事者への通知内容が変更されたことを受けまして、その変更に伴う書式の変更という形式的なものですので、御説明は省略させていただきます。   資料2の御説明は以上です。   ここから口頭になりますが、その他運用上の留意事項がありまして、補足として御説明させていただきます。   まず、通信の傍受は、やはり通信の秘密に制約を加えるものであるということから、警察では、通信傍受に関する事件について、特に保秘、秘密を保つことを徹底するようにしています。警察においては、通信傍受の実施が終了する前は当然ですが、実施後であっても、通信の内容、傍受実施の事実等を第三者に漏らしてはならないこととしています。また、特定電子計算機使用型傍受につきましては、警察施設で傍受を行うことになることから、警察では、先ほど御説明した傍受指導官による助言・指導のほかに、適正な傍受の実施を確保するために、実務上の様々な方策を講じることにしています。   例えば、警察施設で通信傍受を実施する場合、この場所を私たちは「傍受室」と呼んでいますが、この場所は、常に施錠するなどするほか、「傍受室」の場所を関係者以外には明らかにしない、外部から傍受を実施中であることが明らかとならないようにすることとしています。これは、通信傍受に関係ない人が「傍受室」に入ることがないようにするほか、「傍受室」の場所が分かってしまうと、捜査員の出入りなどによって通信傍受を実施中であることを第三者に知られてしまいかねず、その結果、当該事件の関係者のプライバシー等を害したり、捜査上の支障が生ずるおそれがあることから、これらを防ぐための運用となっています。また、部外者が立ち入ることがないようにするための措置として、「傍受室」への入退室について、記録を全てするようにしております。   通信傍受を実施する際には、適切な保秘及び情報管理の観点から、その対象の通信手段を担当する捜査員のみが通信内容を認識することができるように、ヘッドホンなどを使用することとしていまして、傍受室の中でのスピーカーで音声が流れるということはないようにしています。さらに、傍受の実施に従事する者には、録音・録画機能付電子機器を傍受室に持ち込ませないということもしています。傍受の入室前には、これらの電子機器を提出させて保管するなどの措置を講じることとしています。   最後に、その他もう一つとして、通信傍受の実施状況について、先ほど御説明ありましたが、補足して御説明いたします。   直近に国会報告を行った令和4年に実施した通信傍受につきましては、警察が実施した事件数は24事件でした。これは、通信傍受法が制定されてから、過去最多の実施事件数ということになっています。事務当局が提出した、配布資料21を見ていただくと分かりやすいかもしれませんけれども、令和4年中に実施した通信傍受の実施方式ですが、24事件全て特定電子計算機使用型傍受となっています。令和4年中に実施した通信傍受の事件の種別ですが、多い順に、薬物密売、拳銃所持等、窃盗がありまして、そのほかに組織的殺人未遂、現住建造物等放火、殺人、窃盗・詐欺、詐欺事件があります。このように、警察では通信傍受法の改正前から対象事件とされていた通信傍受法別表第1の罪に係る事件のみならず、法改正により追加された別表第2の罪に係る事件についても傍受を実施しているところです。   なお、参考までに、通信傍受法の改正により追加された別表第2の罪に係る事件の、施行からこれまでの実施状況について御説明しますと、傍受を実施した事件数は合計45件でありまして、その事件に関して、逮捕した人員は合計183人となります。   警察としては、引き続き通信傍受法等にのっとりまして、通信傍受の有効かつ適正な活用をしてまいりたいと考えています。 ○栗木参事官 通信傍受法の改正に関しまして、事務当局・松田構成員からの御説明について、御質問等はありますか。 ○成瀬構成員 資料2について、松田構成員に2点質問をさせていただきたいと思います。   1点目は、平成28年通信傍受法改正で新たに導入された傍受方法に関する質問です。資料2の3ページに、新たに導入された傍受方法が記載されており、令和4年の実施事件24件は、いずれも特定電子計算機使用型傍受であるという御説明がございました。   ただ、細かく申し上げますと、特定電子計算機使用型傍受の中にも、暗号化信号を受信するのと同時に復号して通信を傍受する方法と、暗号化信号を一時的に保存しておいて、後でまとめて復号して通信を傍受する方法がありますので、もし可能であれば、それぞれの内訳について教えていただけると幸いです。   2点目は、該当性判断のための通信の再生、つまり、資料2の6ページのアにおいて、「スポット再生」と定義されているものに関する質問です。ここでは、警察本部長が、事案に応じて、その都度スポット再生の時間や間隔を捜査主任官に対して指示するとされていますが、この時間や間隔は具体的にどのくらいなのでしょうか。この点は、捜査の秘密に関わることですし、先ほどの御説明の最後でも、通信傍受は特に保秘が大切とおっしゃっていたので、お答えいただくのは難しいかもしれませんが、スポット再生の実施状況について具体的なイメージを持つために、少しでも御回答いただければ有り難いと思い、あえて質問させていただきました。 ○栗木参事官 まず、1点目の通信傍受の方式の方は、事務当局の方でお答えします。   通信傍受の方法ですけれども、御指摘のとおり、特定電子計算機を用いるリアルタイム方式と、特定電子計算機を用いる一時的保存方式の二つの方式がありますが、令和2年から4年までの間、この二つの方式を併用する方法が一番頻繁に使われています。令和2年は、特定電子計算機を用いるリアルタイム方式と特定電子計算機を用いる一時的保存方式を併用する方法が37件で、特定電子計算機を用いる一時的保存方式のみによる方法が13件です。令和3年は、併用する方法が29件、特定電子計算機を用いる一時的保存方式のみによる方法が11件で、令和4年は、併用する方法が30件、特定電子計算機を用いる一時的保存方式のみによる方法が22件となっています。令和2年から4年までの間に、通信事業者の施設で行う一時的保存方式による方法で通信傍受が実施されたことは、一度もありません。   事務当局からは以上です。 ○松田構成員 御回答は御予想されているかと思いますけれども、スポット傍受の具体的な時間については、これは明らかにしますと、犯罪組織に対抗措置をとられてしまいますので、お答えは差し控えさせていただきます。   いずれにいたしましても、警察本部長が定めるスポット傍受の時間の基準につきましては、警察庁が通達によって基準を定めていまして、この基準の中で警察本部長がスポット傍受の時間を定めることとなっているということです。   以上です。 ○成瀬構成員 事務当局と松田構成員に可能な限度でお答えいただき、ありがとうございました。   今の御回答を踏まえて、更に質問ですが、リアルタイム方式と一時的保存方式を併用する方法が一番活用されていることには、何か理由があるのでしょうか。私の勝手な推測では、一時的保存方式により後で全部まとめてやった方が楽なのかなと思っていたのですが、リアルタイム方式と併用することに、警察として何かメリットを感じておられるのでしょうか。 ○松田構成員 これは、事件内容によって変わるんですけれども、リアルタイムで傍受することで、捜査の進捗をリアルタイムでやらなければいけない場合もありますし、そうでない、例えば、夜間等でそれほど被疑者側の動きがないようなときには、一時的保存で聞くということもあろうかと思います。捜査の内容や必要性によって変わってくるものと思います。 ○小林構成員 御説明ありがとうございました。まず、松田構成員への質問ですが、通信傍受については、警察庁が毎年記者発表をされていると思いますが、そこでは、この資料で明らかになっている実施事件数と傍受令状の件数だけではなく、傍受の回数や何を対象に傍受したのか、ここ数年の記事を見ると全て携帯電話だったようですが、それも公表されています。可能であれば、その点も含めて資料として出していただけないでしょうか。   それと、先ほど成瀬構成員がスポットモニタリングについて御質問されていましたが、スポットモニタリングそのものの件数は公表されているのでしょうか。 ○松田構成員 スポットモニタリング、1事件について何回行ったかとかということですか。 ○小林構成員 この資料の中には、スポットモニタリングの件数は出てこないですよね。 ○松田構成員 いずれも公表しているものではありませんけれども、全ての事件について、必要最小限度の傍受をするために行っているものでございます。 ○小林構成員 そのために、令状も請求するんですか。 ○松田構成員 特にいたしません。 ○小林構成員 そのスポットモニタリングというのが、どれぐらい実施されているのかという件数を出していただくのは難しいですか。 ○松田構成員 お尋ねの御趣旨が分からないところもありますが、通信が来れば、例えば、電話がかかってくれば、必要最小限度、それが犯罪関連通信かどうかを判断するために、全てスポット傍受というものをしておりますので、回数というと、なかなか難しいと思います。国会報告の中で、通信の手段の種類、実施期間、通話回数というのは統計をとっていますが、記者発表は基本的に法務省と並びで、同じ内容で行っておりますので、そこは、事務当局と御協力して検討したいと思います。 ○吉田構成員 横から口を挟むようですが、私の理解している限りで申し上げますと、傍受の実施中に通話がありますと、まず、その傍受を開始することになります。その時点では犯罪関連通信であるかどうかが分かりませんので、該当するものかどうかを判断するため、いわゆるスポット傍受がまず最初に始まるということになり、その時点では、通話の回数とスポット傍受の回数は一致していることになります。その後、聞いていったら犯罪関連通信であると分かったとしますと、そこから先は、犯罪関連通信の傍受として、聞くことになると思います。   他方で、スポット傍受を一定時間行ったものの、犯罪関連通信かどうかが判断できない、しかし通話は続いているということはあり得ると思います。その場合、スポット傍受を一旦打ち切って、一定時間を空けて、もう一度スポット傍受を行うということはあり得ると思います。そうしますと、1回の通話中にスポット傍受が2回行われるということにもなり得るので、通話の回数とスポット傍受の回数は必ずしもイコールではありませんし、例えば、通話が長ければ、その間にスポット傍受を何回やるかというのは、通話によって様々ということになると思いますので、このスポット傍受の数を出すというのはかなり難しいのではないか、むしろ把握していないのではないかという気もいたしますが、最後のところは私の推測です。 ○松田構成員 今の御説明のとおりで、スポット傍受の回数の定義にもよりますけれども、一回切った後、再開したものを、また1回と捉えるのであれば、それは把握はしていない状況です。 ○小林構成員 分かりました、ありがとうございます。 ○栗木参事官 傍受の対象であるとか、御指摘があった資料につきましては、事務当局の方で、松田構成員とも御相談して対応します。 ○小林構成員 あともう一点、令和4年は全てが特定電子計算機使用型だということでしたが、今はもう従来型はほぼやっていないという理解でいいですか。 ○松田構成員 令和4年についてはないということです。 ○小林構成員 その前に遡ると、だんだん少なくなっていった感じでしょうか。 ○松田構成員 法改正施行後、2件は通信事業者の施設において特定電子計算機使用型ではないものを実施したと聞いていますけれども、ほぼ特定電子計算機使用型で実施していると理解いただければいいと思います。 ○小林構成員 はい、分かりました。 ○松田構成員 失礼しました。今さっき言った2件というのが、平成31年と令和元年に2件、通信事業者の施設で行ったものがあるということであって、それ以外の72件については、特定電子計算機使用型で実施しているということで、ほぼ特定電子計算機使用型で実施しているということで御理解いただければと思います。 ○小林構成員 ありがとうございます。   続けてで申し訳ありません。通信傍受の対象犯罪が増えて、立会いも不要になるなど使い勝手がよくなったという割には、そんなに急激に数字が増えているわけではないという印象を持ちました。高齢者を狙った振り込み詐欺や特殊詐欺の摘発に結び付けたいという期待があったと思いますが、実際のところの使い勝手はどうでしょうか。松田構成員にお聞きしたいと思いますが、お願いできますか。 ○松田構成員 まず、対象事件というのがどういう形で選ばれるかというと、一般的に通信傍受の実施は、その通信傍受の対象となり得る事件がどの程度発生するのかというのが大前提としてある中で、そのうち、通信傍受の要件の疎明が可能になる程度に捜査が進む、進展する事件がどの程度あるかというふうな事情に左右されますので、なかなか一概に申し上げることは難しいかなというふうに思っています。 ○成瀬構成員 先ほどの事務当局の御説明にもありましたように、平成28年通信傍受法改正の内容は、対象犯罪の拡大と通信傍受手続の合理化・効率化の2つに分けることができますので、それぞれが通信傍受の実施状況に与えた影響を、配布資料21に照らして検討してみたいと思います。   まず、一つ目の柱である対象犯罪の拡大について、配布資料21の2ページ、3ページにある事件の種別欄を見てみますと、通信傍受法の立法当初から対象犯罪であった薬物密売や拳銃所持と並んで、新たに対象犯罪とされた窃盗、強盗、詐欺、恐喝が相当数を占めていることが分かります。これは、財産犯が組織的に行われた場合に、通信傍受により事案の真相を解明する必要性が高いことを示しているように思われます。また、数は少ないですが、殺人、傷害、現住建造物等放火、逮捕・監禁についても通信傍受を実施した例がありますので、平成28年改正で新たに対象犯罪とされたものの大部分については、程度の差はあるにせよ、通信傍受を実施する実務上のニーズがあることが裏付けられたといえると思います。   次に、二つ目の柱である通信傍受手続の合理化・効率化が通信傍受の実施状況に与えた影響を見てみます。この部分の改正は令和元年6月に施行されていますので、令和元年以前と令和2年以降を比べてみますと、令和元年以前は実施事件数が10件強でしたが、令和2年以降は毎年20件以上になっています。すなわち、通信傍受手続の合理化・効率化に関する改正法の施行前と比べると、実施事件数が約2倍になっています。   先ほど小林構成員から、急激に数字が増えているわけではないという御指摘もございましたが、今までずっと10件強であったものが一気に約2倍になったことは、それ相応の変化と言うこともできまして、これまで通信傍受を実施するに当たって事実上の障壁となっていた警察官及び通信事業者の過剰な負担が、一定程度軽減されたことによるものとも思われるところです。   以上の検討を前提に、松田構成員に質問をさせていただきます。私自身は、令和2年以降の実施事件数の増加は、通信傍受手続の合理化・効率化が実現したことによる影響が大きいと考えていますが、警察として、同様の認識をお持ちかどうか確認させていただきたいと思います。もちろん、それ以外の要因も影響していると思われますが、通信傍受手続の合理化・効率化が一つの要因になっているという点について、同様の認識をお持ちかどうか確認させて下さい。   その上で、同様の認識をお持ちの場合には、この改正法により、警察側の負担と通信事業者側の負担がどのように軽減されたのかという点について、先ほど事務当局から一般的な御説明はありましたけれども、それを補足する形で、捜査官としての御経験を踏まえて、具体的に御説明いただきたいと思います。 ○松田構成員 先ほど申し上げたとおり、警察として、法改正により数が増えたというふうに断言することは、先ほど申し上げたような犯罪の発生状況であるとか、その犯罪の捜査がどこまで進むのか等にもよりますので、ちょっと一概にお答えすることは困難なので、ここでの言明は避けさせていただきたいのですが、後者の、どの程度負担が減ったかという部分につきましては、通信事業者の施設で行うリアルタイム方式につきましては、常時立会いがかなり負担だったところ、常時立会いがなくなったというのは、かなりの負担軽減になっておるというふうに聞いておりますし、捜査員から直接聞くと、特に一時的保存型傍受について、「ずっとリアルタイムで張り付いて、待つだけだった時間がなくなった、解消されたというのは、大きく人的負担が軽減された。」というのもありますし、「通信事業者の施設まで赴かなくていい、警察署内でできるというのも、これも負担が減った。」という生の声はあります。 ○成瀬構成員 実感のこもったお話を伺い、参考になりました。 ○河津構成員 御説明ありがとうございました。法30条の通信の当事者に対する通知についてお尋ねしたいことがございます。法30条については、通知事項に傍受記録及び原記録の聴取、閲覧等ができること、及び不服申立てができることを追加する法案修正が衆議院でなされたものであり、その趣旨は、通信傍受の実施の適正を確保することであったと理解しております。その関係で、通信の当事者に対する通知の実施状況、すなわち、法30条2項本文の所定の期間内に通知が発せられた件数、同本文の「通信の当事者が特定できない場合又はその所在が明らかでない場合」に該当すると判断された件数、同項ただし書により通知を発しなければならない期間が延長された件数や、31条の傍受記録の聴取及び閲覧の実施件数、32条の原記録の聴取等の許可の請求の件数、33条の不服申立ての件数等について、お分かりでしたら御教示いただければと存じます。 ○栗木参事官 通信傍受法第30条及び第31条に関する御指摘の件数について、いずれも統計等が存在しないため、事務当局としては把握していないところです。また、通信傍受法第32条の請求及び第33条第1項・第2項の不服申立て等については、裁判所に対して行われるものと承知しています。 ○河津構成員 今の点は、通信傍受の実施の適正の確保という法案修正の目的が達成されているのかどうかということに関わりますので、調査を御検討いただけませんでしょうか。 ○栗木参事官 今回の対象犯罪の拡大の改正と、手続の合理化・効率化の改正と、直接関わるところではないのではと思いますけれども。 ○河津構成員 通知事項の追加は今回の改正の内容であり、対象犯罪の拡大と手続の合理化・効率化も通信傍受の実施の適正が確保されることを前提として図られたものですから、法案修正の目的が達成されているのかどうか、関心がありますので、御検討いただきたいと思います。 ○栗木参事官 御指摘を踏まえて、どういった対応が考えられるか検討したいと思います。   ほかに御質問等ありますか。   それでは、本日予定していた議事につきましては、これで終了いたしました。   本日までの協議によりまして、幾つか更なる調査に関することを含めて御指摘がございましたが、取調べの録音・録画制度、合意制度、刑事免責制度及び通信傍受の合理化・効率化の施行状況等について、情報共有することができたと思います。   そこで、第7回会議でございますけれども、裁量保釈の判断に当たっての考慮事項の明確化、弁護人による援助の充実化の施行状況等についての情報共有と意見交換を行い、また、可能であれば、証拠開示制度の拡充の施行状況等についても取り扱うこととしたいと思いますが、具体的な内容については、事務当局において検討し、追って御連絡します。そのような進め方とすることでよろしいでしょうか。                  (一同異議なし)   それでは、そのようにさせていただきます。   第7回会議の日程につきましては、できるだけ早期に調整の上、追ってお知らせいたします。   先ほど申し上げたとおり、第7回会議の具体的な内容については、事務当局において検討しますが、第7回会議において、構成員の皆様から資料の提出と御説明を頂く時間を設ける場合には、事前に御準備いただいて、御送付いただく必要がある関係上、早めに御連絡することとし、提出の期限についても御連絡します。その場合の資料について、事務当局において確認させていただき、必要に応じて、どのような形で御提出いただくかなどについて御相談させていただくことは、これまでと同様です。   本日の会議における御発言の中には、職務上取り扱われた事例に関するものなどもありましたので、御発言なさった方の御意向を改めて確認の上、非公開とすべき部分がある場合には、該当部分を非公開としたいと思います。それらの具体的な範囲や議事録上の記載方法等については、その方との調整もありますので、事務当局に御一任いただきたいと思います。そのような取扱いとさせていただくことでよろしいでしょうか。                  (一同異議なし)   それでは、そのようにさせていただきます。   本日はこれにて閉会といたします。ありがとうございました。 -了-