法制審議会 区分所有法制部会 第7回会議 議事録 第1 日 時  令和5年4月11日(火) 自 午後1時29分                      至 午後5時33分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  区分所有建物の管理の円滑化に係る方策(4)(5) 区分所有建物の再生の円滑化に係る方策(建替え等・二読) 区分所有建物の管理の円滑化に係る方策(集会決議の円滑化、財産管  理制度等・二読) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○佐久間部会長 では、ほんの少し早いですけれども、本日御出席予定の方は全員おそろいになりましたので、ただいまから法制審議会区分所有法制部会の第7回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は寒竹委員、武部委員、衣斐幹事が御欠席となっております。   初めに、配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○畑関係官 資料について御確認いただきたいと思います。事前に部会資料10から14までと、部会資料14の参考資料として参考資料11をお送りしております。お手元にないものがある場合には、途中でも結構ですので、事務局の方にお知らせください。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   それでは、本日の審議に入ります。   本日は一読目の残りの論点であります、「共用部分に係る損害賠償請求権等の行使の円滑化」、これは部会資料10でございます、「区分所有建物が全部滅失した場合の敷地等の管理の円滑化」、部会資料11に加えまして、二読目となります「建替え等」、部会資料12、「集会決議の円滑化等」、部会資料13、そして「財産管理制度等」、部会資料14について御審議を頂く予定にしております。   本日も長時間にわたることになりますので、適宜休憩を入れながら審議を進めたいと考えております。   まず、事務当局から部会資料10について御説明いただきます。よろしくお願いします。 ○畑関係官 部会資料10について御説明いたします。部会資料10では、共用部分に係る損害賠償請求権等の行使の円滑化のための仕組みについて取り扱っています。共用部分等について損害賠償請求権等が生じた後に区分所有権の譲渡がされるケースについて、平成28年の東京地裁判決のように解すると、共用部分等について損害賠償請求が生じた後に一部の区分所有権が転売されるなどして、現在の区分所有者の一部が損害賠償請求権等を保有していないこととなった場合には、管理者は事実上、区分所有法第26条第4項に基づいて訴訟を遂行することができず、区分所有権を譲渡していない他の区分所有者まで個別に当該損害賠償請求訴訟を提起しなければならないこととなってしまい、規定の趣旨が没却されるとの指摘がされています。   そこで、本文ではまず1のとおり、共用部分等について損害賠償請求権等が発生した場合には、その後、区分所有権の譲渡があったとしても、管理者は少なくとも請求権行使時点において請求権を有する区分所有者を代理して訴訟担当者として訴訟を遂行することができるようにする規律を設けた上で、さらに2のとおり、一定の要件の下で損害賠償請求権等が生じた当時の区分所有者全体を代理して訴訟担当者として訴訟を遂行することができるものとする規律を設けることを提案しています。   本文の2について、より具体的には、平成27年の最高裁判決を踏まえて、規約又は集会の決議により、共用部分等についての損害賠償請求権等は管理者が団体的、一元的に行使することとし、各区分所有者が個別に行使することができないものとすることができることを明確化した上で、そのような規約の定め又は集会の決議がある区分所有建物において、損害賠償請求権等の発生後に区分所有権が譲渡された場合には、管理者は現区分所有者及び元区分所有者の損害賠償請求権と併せて代理行使し、訴訟遂行することができるものとすることを提案しています。   以上とは異なって、本文の(注)では、損害賠償請求権等の発生後に区分所有権が譲渡された場合には、損害賠償請求権等は当然に譲受人、新区分所有者に移転するものとする規律を設けるという考え方があることも記載しております。   部会資料10については以上です。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。   それでは、部会資料10につきまして御意見を伺いたいと存じます。いかがでしょうか。 ○中野幹事 ありがとうございます。幹事の中野です。私は研究会のときには一つ意見を申し上げていて、やはり、損害賠償請求権というのはそもそも損害の額、実損、元に戻すために必要な金額だけが請求権として認められるということになるわけですので、それは分割されてしまうと実際の原状回復、回復することができない、そういう不都合な事態になってしまうので、そこを改正するのが今回是非やっていただきたいところであるということを御説明させていただいたと思います。   今回の考え方ですと、元々東京地裁でいっていたような、全部でなければ請求できないというような規定ではなくて、一部でも請求できるというような規定を設けるというような御意見であると思いますが、先ほど申し上げたとおり、一部の損害賠償請求権の行使だと原状回復ができないというようなことになって、やはり不都合なところは変わらないと思いますので、考え方としては、元所有者もこの管理者は代理することができるという、元々A案という形であったはずだと思うのですけれども、今回この取りまとめの方策のところ、部会資料には書いてありませんが、管理者は元区分所有者についても代理して請求することができるという、そういう考え方が是非必要だと思っています。   実務担当者ですね、こういうようなトラブルとか賠償請求に対して具体的に取り組んでいる弁護士らの意見を是非酌んでいただいて、今回の改正に結び付けていただきたいと思っております。   したがって、ここにある1番だけではなくて、きちんとその全額の請求ができるような仕組みにしていただくと。それは、2にあるように、規約や集会の決議によってそういうことができますよと書いてありますけれども、それは現在困っている人たちの救済にはつながらないと思いますので、現時点で瑕疵がある、だけれども全額請求できないために原状回復には至らないというような方を救済するためにも、今回の改正については全額請求できるような形で、元所有者の代理にもなることができ、そして、もう一つこれが加わるのは、是非遡及適用していただくような、そういう扱いをした改正案にしていただきたいと思っております。   マンショントラブルに関与している弁護士らの話を聞くと、今まで是非改正していただきたいとお願いをして、いろいろと働き掛けてきたところかと思いますけれども、このような案だとすると、すごく失礼な言い方をすると、かえって改正されない方がいいのではないか、みたいな意見も出てくるぐらいの話でありましたので、是非研究会であったA案をやはりもう一度考えていただいて、かつ遡及適用するというような、そういう見解を採っていただきたいと思っております。   私の意見は以上です。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。次に青木さんにご発言いただきますけれども、その前に何点か中野さんに伺っておきたいことがございます。まず、これは恐らくおっしゃったことで、確認でいいと思うのですが、1と2というのが本文になっておりまして、2が「規約又は集会の決議により」ということから始まっていますが、この部分を取ればそれほど問題はないということでしょうか。 ○中野幹事 はい、規約、集会の決議という、住民自治というか、そこを尊重するという、そういう考え方があり、規約がきちんとできれば損害賠償請求権を管理者のみが行使するということになるということ自体は、私は別に反対ではないですけれども、これだと現時点の正に困っている人たちの救済につながらないのではないかと考えているところです。 ○佐久間部会長 救済につながらないということは、承りました。損害賠償請求権の全部が取れないと何度もおっしゃったのですけれども、感覚としては分かるのですが、損害賠償請求権は今の考え方でいうと各区分所有者に分属していて、それを各区分所有者が全部取っていくという話が理屈なのではないかと思うのです。おっしゃる救済をきちんと図るには、そこをどうクリアするかということが重要だと思うのです。その理屈は、しかし、どうやったら乗り越えられるとお考えになっていますか。 ○中野幹事 先ほど申し上げたA案を見ると、旧所有者ですね、元区分所有者を代理することができるという考え方がありますので、それに従った形で管理者が請求するということがよろしいのではないかと思います。これについては今回頂いた資料の中でも、そういうとり方もあり得るので、立法による手当ては不要ではないかという指摘もあるというようなことが書いてあるわけですが、しかし、この規定を作ることによって、かえってその元区分所有者の代理訴訟遂行が逆に妨げられてしまうようなこともあり得るので、できれば、今の資料でいうなら3ページの真ん中に書いてあるような形が可能になるように、きちんと立法的な措置を採っていただくことが適切であろうと考えています。 ○佐久間部会長 少し事務局、大谷さんからお答えを。 ○大谷幹事 研究会の報告書においてはA案と今、中野幹事がおっしゃったものも載っておりました。それは、元区分所有者に帰属している損害賠償請求権も管理者が代理して行使することができ、また原告、被告になることができるということを提案するものでございました。今回それは取り上げておりませんのは、研究会の報告書でも補足説明的なところで書いてありましたけれども、そもそも管理者というのは区分所有者の団体の執行機関であり、その団体を代表して訴訟を起こせますということなのかなと思います。区分所有者は、その専有部分の区分所有権を取得すれば法律上当然に区分所有者の団体の構成員になりますし、この区分所有権を失えば法律上当然にこの団体の構成員から外れてしまうということになるわけですけれども、外れた後もなお団体の代表者が、なぜその元区分所有者の権利を代理して行使したり訴訟を起こしたりすることができるかというところの説明が容易に付かないなと思いましたので、今回の案ではお示しをしていないというところでございます。 ○佐久間部会長 中野さんには御意見があれば、他の方に伺ってから、また伺えればと思います。 ○青木幹事 ありがとうございます。神戸大学の青木でございます。部会資料で既に説明がされているところですが、若干補足させていただきますと、民事訴訟の当事者適格、特に原告適格についてですが、自らが請求権の主体であると主張する者に原告適格が認められるのが原則ですけれども、訴訟担当と呼ばれる場合には、他人が請求権の主体だと主張して原告となることができるということで、区分所有法26条4項が定めている場合には、その管理者が、実体的には各区分所有者に帰属する、分属している権利を主張して訴えを提起することができ、これはその管理者の訴訟担当の資格を定めているものということかと思います。   訴訟担当が認められる場合には、その資格が権利主体と主張される者からの授権に基づく任意的訴訟担当と、その資格が法律の規定に基づく法定訴訟担当とがありますが、区分所有法26条4項は規約又は集会の決議に基づくもので、任意的訴訟担当の一種とされているかと思います。ただ、各区分所有者の意思に基づくものではなく、規約又は集会の決議といったような団体的な決議を基礎としているという点に特徴があるかと思います。   御提案では、本文の1において、本文2(1)の個別の権利行使を制限する規約の定め又は集会の決議がない区分所有建物において、その損害賠償請求権等の発生後に区分所有権が譲渡された場合であっても、管理者に請求権を有する現区分所有者のために原告又は被告となることができるということかと思います。恐らく、訴えを提起することに反対の区分所有者の請求権についても訴えを提起することができるということかと存じます。   そのような仕組みが必要な理由として、部会資料の4ページの37行目からに、他の区分所有者がその権利についての訴訟追行を管理者に行わせる利益を失うことは不合理であることから、と書かれているのですけれども、管理者に訴訟追行を行わせるという利益だけであれば、選定当事者のような制度を利用するとか、あるいはオプトアウト型の仕組みを設けるといったことも考えられるかと思います。   そこで、御質問ということになるのですが、本文2(1)のように個別の権利行使が制限されていないにもかかわらず、その提訴に反対する区分所有者についても管理者が一括して訴訟追行を行うという利益が恐らくあるかと思いますので、それがどの辺りにあるのかというのが示されるとよいのではないかと思いました。   それが一つ目で、もう一つ、すみません、関連しているのですけれども、部会資料の4ページの17行目になりますが、管理者が区分所有者のために損害賠償請求の訴えを提起した場合には、これとは別に各区分所有者が自ら訴えを提起することはできなくなり、民事訴訟法142条ですね、管理者が補助参加をして対応するとあるのですが、この民事訴訟法142条の重複起訴の禁止の規律は、基本的には前訴優先で、後に係属した方が不適法、却下ということになるかと思います。そうすると、この本文2(1)の個別の権利行使を制限する定めがされていない場合において、区分所有者の一人が先に訴えを提起しているときは、そちらの方が、先に係属している区分所有者の訴訟がそのまま継続し、管理者はその区分所有者の損害賠償請求権は除外して訴えを提起するということになるかと思いますが、これはそのような理解でよろしいでしょうか。   すみません、2点になりましたが、よろしくお願いいたします。 ○大谷幹事 ありがとうございます。今の御質問、一つ目にあったところですが、第1の1で挙げております仕組みは、現行法でも同じことになるのだと思うのですけれども、現行法で区分所有者の交代があったときには、全体の当事者適格を管理者が失ってしまうということが問題としてあるのであれば、現行法の趣旨をそのままいかしてあげられるようにするために、1のような規律に変えるということを提案しているところでございまして、その意味ではここの制度の趣旨というのは現行法と同じということになるのかなと思っておりました。ただ、そこはそれで説明として足りているのかということかなと思いましたけれども、取りあえず資料作成の意図としてはそういうことでございました。   それから、訴訟に関係いたしましても、確かこれは現行法で、個々の区分所有者が訴訟を起こそうとしたときにどうなるのかといったことを見て書いていたと思いますけれども、管理者が先に起こした後は重ねて訴訟はできないけれども、先に区分所有者が起こしたときには、これはその部分は除いて請求をするということになるのですかね。少しここのところはすみません、不正確なところがあるかもしれませんので、再度検討させていただきたいと思います。 ○佐久間部会長 再度検討していただいてもいいですけれども、青木さんは、区分所有者が先に訴えを提起していたら管理者はそれを除く部分しかできなくなると。それでいいのかという確認をしてくださったのですが、そこには、結論としてそれでは不十分ではないかということが含意されていると受け取ってよろしいですか。それとも、まず確認だけでよろしいでしょうか。 ○青木幹事 確認をお願いしていたところで、その上でどうかということについて申し上げさせていただくと、一方で先に訴え提起している人がいれば、そちらの方はそのままになるけれども、逆に提訴しないという選択は尊重されないというのがこの26条4項の意味で、それが現行法もそうだというのは、私もそうだと思うのですが、御提案の本文の2(1)のような、各マンションにおいて個別の権利行使を制限するかどうかの選択ができることを前提に、そのような選択をしなかったにもかかわらず、提訴に反対する区分所有者の請求権についても管理者が行使できるというところが、整合しないようにも思えたということで、だからどちらに向かうのかということについては、もう少し考えたいと思います。 ○佐久間部会長 分かりました。訴えを提起しない人まで(1)の場合で訴えてしまうのかというのは、そうですね、なお検討を致したいと思います。ありがとうございます。 ○大桐委員 私の考え方としましては、そもそも共用部分というのは誰のためにあるのかということで、団体あるいは全組合員のためにあるということから考え方をスタートさせるべきと考えておりまして、ですので、そこから起因して、要するに共用部分から起因して生ずる損害賠償請求権につきましては団体的な拘束に服すべきであると、そういう考え方を重視すべきであると。   そうすると、続いてのネックとなりますのは、損害賠償請求権が債権であるというところになってくるかと思うのですけれども、債権であったとしても、他の例としまして参考となると思いましたのは、預金債権が当然分割だったのが、実務上の弊害等があるということで、政策的に遺産分割の対象になったという最近の例がありますので、そうした政策的な観点から債権の個別行使が制約されるというふうに導くことも可能ではないかと。   また、区分所有法の上でのことで考えてみますと、共用部分というのは専有部分から分離処分が禁止されております。これというのは団体的な拘束に服すべきだからこその規定かと思いますので、であれば、この論点においても同じような考え方が採れるのではないかというのもあります。   また、区分所有法の8条においては、修繕積立金や管理費等の債務が新しい区分所有者に当然承継されるという規定もありますので、正に修繕に用いられるという用途においては、この修繕積立金というようなことと類似しているということなので、個別には回収できずに、代々承継し、全体のために使えるということで団体的拘束を掛けるということの論拠の一つになるのではないかと思います。   部会資料のゴシック体の部分に沿って意見を述べさせていただきますと、まず、ゴシックの1の原則ルールにつきましては、少し細かい話にはなってきますけれども、請求権を有する現区分所有者という修飾語が付いているところについて、この請求権自体を立証するのが誰かということになりますけれども、その立証自体、恐らくその請求権を有する現区分所有者だということを管理者が立証することになるのかと思うのですが、その管理者自体が現区分所有者が本当に請求権を持っているかどうかを調査したりするというのがなかなか難しいのではないかとは思いますので、ここでストッパーが掛かってしまってはもったいないというような印象を持っております。ですので、(注)にありますように法律上当然に請求権が移転することにすることによって、このハードルをクリアできるようにした方がいいのではないかと思っております。   では、その(注)の根拠はどうするのかというのがあるかと思うのですけれども、ここはなかなか難しいところというのは理解しているのですけれども、元区分所有者としてはもう売り抜けたときにこのマンションの関係とは断ち切っているというところがほとんどであって、例外的な場面をどこまで立法に反映するのかということかと思います。ですので、当然に移転するという根拠自体はあるのではないかと思います。   それから、2の規約又は集会の決議によって個別行使ができないものとするという規律を設けることにつきましては、中野先生がおっしゃったのと私も同じ意見で、規約や集会にとどまらず、法律でルール作りをすべきだと考えております。ですので、元のA案だったのが、この冒頭の規約又は集会の決議によるというのが入ってしまったところにおいて反対というか、法律で規定してほしいと思っております。   それから、もう1点、4ページになりますけれども、受け取った金銭を工事費用に充てて区分所有者の負担金債務と相殺できるかどうかの論点を整理していただいておりますけれども、区分所有間の個別の売買がなされたのとなされないのとで、受領した賠償金が工事費用に回らないのと回るという違いが出てくるのは、それ自体が弊害なのではないかと思っていますので、こちらについても、先ほど申し上げたようなことと関連するのですけれども、個々の事情によって左右されないような立て付けにしていただきたいと思っております。   少し長くなりますけれども、残りもう1点ありまして、4ページの(2)の3段落目になお書きがありまして、新区分所有は元区分所有者に対して、契約の内容に適合しないものであるときには、債務不履行に基づいて工事費用相当額の損害賠償の請求ができると解されるというふうな、言い切りの形にはなっているのですけれども、ここは必ずしも請求できるということではなく、不動産業界において書式が各種あるのですけれども、中古のマンションの売買におきましては、売主が売主業者である場合には、引渡しから2年以内にその通知をしないと権利行使ができなくなるといったような特約がありますが、請求自体はできるということにはなっていますが、事業者が売主で買主が消費者の場合には、その期間が1年とかに制約されてしまっていたりですとか、あとは一般の個人間売買の場合ですと、そもそも共用部分の契約不適合の責任を負わないという、いわゆる免責特約が書式としてあったりですとか、あるいは修補請求しかできないと、損害賠償請求自体が免責されているという書式を作っているところもありますので、なので、実務上必ずしも請求できるとは限らないというところもありますので、この言い切りの形ではなく、補足というか、その辺を説明していただいた方がいいのかなとは思っております。   であればこそ、個々の状況というのは管理者の側からすると分からない部分が多々ありますので、やはり団体的な拘束に服した上で確実に修補ができるような、工事ができるような方向にすべきと考えます。   長くなりましたが、以上になります。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。承りました。1点だけ、(注)について、元区分所有者の権利の制約について、もう一度お願いできますか。そこは理屈は難しいのだけれども、とおっしゃったのだと思うのですが、その後はどういう理屈で、でしたでしょうか。 ○大桐委員 売り抜けた場合、そのマンションの関係をもう断ち切っていらっしゃるというのがほとんどなのではないかと。 ○佐久間部会長 難しいところがあるというのは受け止めました。なぜこれをわざわざ伺うかというと、(注)の考え方、あるいは(注)に近い2の「規約又は集会の決議により」の部分を取るというのは、実務上というか需要の点ではその方がよろしいという考えがあることは恐らく全ての方が理解をしているものの、理屈をどう付けられるかというところが問題となるのだと思います。法律に定めてしまえばそれでいいとはいえないのでして、法律に定めるには理屈がやはり要るということです。そこが少し頭を悩ましているところでありまして、弁護士会におかれても更にその点を深めていただいて、ああ、そうですねと多くの人が言えるような理屈を見付けることに御助力いただければと思います。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○鎌野委員 結論から言いますと、私は今回の資料10の第2案というか、前の研究会でもそういう趣旨の発言をしたのですが、第2案でよろしかろうと。   お気持ちは中野幹事あるいは大桐委員のおっしゃったことがもっともで、全額請求、それから団体的拘束、そういうのをキーワードにしてということは分かるのですけれども、まず(注1)なのですけれども、これが非常に理屈が難しいのですけれども、やはり区分所有法の構造として、先ほど部会長も言われましたように、19条あるいは26条の2項とか4項、基本的には区分所有者に言わば損害賠償等の請求権が分属をしているというような大きな立て付けがあるので、やはりそれをもう180度、あるいは360度転換するというのは非常に難しいのではないかと。ですから、やはり(注)のような行き方というのは、そういった区分所有法全体の整合性ということからなかなか難しい。   それから、先ほど青木幹事からの御意見もありました、それとの関連ですけれども、仮に(注)のような立場を採ったような場合でも、元区分所有者が自らの区分所有権の譲渡前に損害賠償請求をすると、それは妨げられないと思うのです。そうしたような場合には、やはり(注)のような当然移転というのも、既に損害賠償請求しているのだからということで、なかなか難しいのではないかと。もちろん19条とか26条2項、4項の前提です。そうすると、そういった全額請求とか団体的拘束という趣旨をいかすためには、やはり1案というのはそういうことにはならないで、現在の区分所有者に帰属するということですので、これはまた東京地裁の平成28年判決に戻ってしまって、非常に具体的な妥当性を欠くということになろうかと思います。   それではどうすればいいかということで、ぎりぎりのところ、もうそれを規約又は集会の決議で、そういうことができないということを定めておくと、もちろん規約がないとそのことは達成できないのですけれども、先ほど申し上げた19条とか26条2項、4項というのは不明確なので、その辺りを明確化して、そしてこれは先ほど御説明があった最高裁の平成27年度判決、それは不当利得の問題ですけれども、それを広げてより明確化すると、この第2案のような形ですね、そういう方向なのかなと私は考えております。   それで、これは少し別のお願いですけれども、是非こういうような、もちろん第2案に沿って改正がされたらの話ですけれども、そのときに是非とも、これは国交省さんマターだと思いますけれども、マンション標準管理規約の本文のところに、コメントではなくて、やはりこういうものを標準型として入れていただくと。言わばどちらかというと政策的な問題ですけれども、そういうことをお願いして、言わば原始規約、それから規約の変更の際もそういった形で規約の変更をするということを促して、そういった規約あるいは集会の決議、基本的には規約だと思いますけれども、そういったことで実際の先ほどの中野幹事とか大桐委員の御懸念というのも少しでも解消するというような形で、私は第2案でよろしいのかなと思っております。   第1案ですと、言わば、繰り返しになりますけれども、ここでいう目的が達成できない。それから、(注)のような形だと、やはり現行の区分所有制度、19条などを始めとするそれとの整合性とか、それから、具体にもう既に譲渡前に請求権が行使された、そういうことは実際にはめったにないかもしれませんけれども、そういう懸念があるというようなことで、少し長くなりましたけれども、私の意見を述べさせていただきました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。鎌野さんの御意見よく分かりました。国交省におかれてはというか、標準管理規約にこれを入れていただくというのは、弁護士会等をはじめとして、恐らくほとんどの方が賛同される、実際上好ましい結論を導くのに役立つことですので、こういう改正が成った暁にはですね、お願いできればとは思っております。ただ、遡及適用ができるわけではないので、そこは弁護士会のおっしゃったことと少し異なるということになりますけれども、せめてこれからの話としてはということでお願いできれば、大変有り難く存じます。   鎌野さんに1点だけ、1と2は、これは1案と2案ではなくて、2があればいいのだけれども、なくても1だということです。なくても1だというのは、この1は、先ほど大谷さんからもありましたけれども、東京地裁の判決が出ているけれども、それは現行法の解釈としても適切ではないということを踏まえつつ、解釈に任せておくと東京地裁の判決が意味を持ち続けるかもしれないので、2がもちろんメインなのですが、2のような規約又は集会の決議がなかったとしても、1で東京地裁のようなことにはならないようにしましょうと、そういう提案です。 ○鎌野委員 せいぜい現在の区分所有の分までという、そういうことですね。分かりました。 ○佐久間部会長 そうです。1か2を採ろうというわけではないと。ですから、鎌野さんのおっしゃったことは、両方成り立つということであれば1を否定される趣旨ではなかろうと受け止めます。2がある方が望ましいので、そこが標準管理規約などにあればというお話になるということだと思っています。 ○鎌野委員 そういうことです。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○紺野委員 損害賠償の請求についてですけれども、今までは当然のように管理者や管理組合が全額を請求してきているわけです。それで、1のところですが、1の1(2)ですね、集会の決議があるということに限定されてしまいますと、我々現場レベルとしては、今までやってきたことが何なのかな、できなくなってしまうのではないかという懸念があります。   それで、あと一つですが、部会資料の3ページの14行目から20行目までのところなのですけれども、現場の感覚としては、合意をするということは難しいと、このような合意をしているのは通常はないのではないかなというのは、少し感じがしております。そもそも我々、管理者が権利交渉するというのは、ですけれども、管理組合や3条団体が損害賠償請求を行使できると、できないのかなというところで、実務的には管理組合が実際には行使をしているのが現実ではないかなというような感じがいたします。感じがするというか、現実そうなっております。   少し話があれですけれども、欠陥マンションの問題とか、これはもう分譲時から条件の悪いマンションも回復をせざるを得ないというような問題も最近多々出てきて、マンションの再生の円滑化という観点から見れば、損害賠償請求が限定されるような形をしないでほしいと、後からいろいろ出てくる問題ですから。つまり、規約や決議において管理者のみが損害賠償できるというような定めがない既存マンションについても、再生の円滑化の観点から、管理者が元区分所有者の損害賠償権を行使できるように何とかできないのかなというのが現場としての考え方なのです。 ○佐久間部会長 第1の(注)は少し置きまして、1、2も現在の扱いを否定しているものでは決してありませんでして、紺野さんがおっしゃった、大体管理組合がまとめてやっていますというのは、個別の委任を受けて、恐らく同意を取り付けて、やっているわけだと思います。同意していないところまで今、管理組合が一括してできるかというと、そんなことはないはずでありまして、そういうものを、例えば規約、集会の決議をあらかじめしておけば、個別の委任は受けずともできるようにしましょうというのが2の案だと理解していただければと思うのですが。つまり、現在やれていることをおよそできなくするようなことは含んでいないということでございまして、もちろんこのような書きぶりになると、今できていることができなくなるということがおよそありませんということでは。 ○紺野委員 そうなるような感じが。 ○佐久間部会長 いや、それはないはずだとは思っているのですが、こういう解釈をしたら、しかし狭まるということがあれば、もちろんそれは起こらないようにいたします。意図としては、今やっていることを狭めようということでは全くなくて、今、ある種のイレギュラーな事態が起こったときに集団的な行使ができないという状況を何とかしようと、そういう提案です。そのことは、必要でしたら今後、補足説明などで、現行できていることを否定するものではないということを、はっきりと述べていくことになろうかと思います。 ○齊藤委員 どうもありがとうございます。今、全管連の紺野さんが実態をおっしゃられましたけれども、私もこの損害賠償請求権、共用部分に関しまして、マンションの管理の現場からすると大変不思議なルールだなと思っています。どうして管理組合という団体でこの共用部分の損害賠償請求が堂々とできないのだろうかということに、非常に違和感を感じるところでございます。   と申しますのは、多分これは闘っておられている弁護士の皆様が大変お詳しいと思うのですけれども、残念なことに、マンションの入居の後に外壁のタイルが外れるとか、コンクリートの著しい不具合などが分かることがあります。これがいつ分かるかというと、大体大規模修繕の前に建物診断をして分かってくるとか、大きな台風が来て雨漏りして、これは少し問題だなと分かってくるとかというので、入居後すぐに分かる事例は意外に少なくて、私がお話を聞いているなかで、大体入居10年ぐらいたってきてから分かってくるということが多いです。そうしますと、10年間の間にかなりの所有者が入れ替わっているということを、まず共通認識を持った方がよいのではないかと思います。   耐震偽装事件のときは比較的、入居後すぐで対応されたところが多かったので、あの事例では所有者の入れ替わりがほとんどなかったということで、管理組合で全員分の共用部分の損害賠償請求ができないという問題が表面化しなかったかもしれません。しかし、現実には入居後10年ぐらいで不具合が表面化してくることが多いということです。横浜のいわゆる傾斜マンションの事件も10年近くになってから状況が表面化したと思いますので、その間に全然所有者が入れ替わらないということはないということです。では、どの程度所有者が入れ替わるのかですが、これもぜひこんなデータを取ってくださいと国土交通省にお願いすると怒られるかもしれませんが、現状について共通認識を持ったらよいと思います。大変恐縮ですが、少し昔のデータで住宅・土地統計調査を使って調べた結果がありますので、紹介させてください。1998年の調査ですが、この調査結果では大体築20年たったら37%が住み続けているということです。言い換えますと、20年で6割ぐらいが入れ替わっているということになります。10年ぐらいでどの程度所有者が入れ替わるのかといろいろな方に聞いたら、かなり戸数を多く管理している管理会社さんは、10年だったら2割は入れ替わるでしょうということでした。これもマンションの場所等によって違いますから、この数字が独り歩きしてはいけないのですが、お伝えしたかったのは、10年間での所有者の入れ替わりは決して少数の人ではないということで、一定の数があって、そこに対して適切に対応する必要があるということで、これに共通認識を持つべきではないかと思っております。ですから、少数の問題でなく、ケース・バイ・ケースでやっていけばうまくいくのではないかというのではなくて、制度としてしっかりと構築していただきたいということがございます。   その中で、本当に法律を分かっていない素人は好きなことを言えるなとおっしゃられるかもしれませんが、逆に分かっていないから好きなことを言わせていただきたいのは、やはり今回の改正を見ておりまして、私は全体的に団体性を強くしていくというイメージを持っている中で、今回のなぜこれだけが、基本に立ち返って、管理組合がしっかりと行使するのが当たり前という大原則にならないのでしょうかということが大きな疑問です。ですから、皆さんにお願いしたいのは、必要に迫られていることに応じるために理屈・論理をしっかり作っていきましょうということかと思います。   また、規約や集会の整備されている前のものがフォローできないというのであれば、非常に問題かと思います。先ほど言いましたように、一定の数が売買されてしまっている、そのときに規約や集会がない、特に、今の標準管理規約の中にはこれに該当するような文章は私はないと理解しておりますので、そうするとなかなか救われないマンションも増えていくということがあります。中古の売買のときに一定の手続をすればということですが、この点も売買をやっている方々に聞きますと、現実的ではないということです。ということを考えますと、こういった形でフォローしていけるというのは現実には難しいということかと思います。   法律のスキームをどう立てれば、管理組合や管理者が当然、共用部分の損害賠償を全員分請求できるのかということを、是非皆さんに御指導を得たいところでございます。そして、私からもお願いでございますが、少なくとも標準管理規約の中には、どういう条文を書いておけばいいのかということが分かるようにということを是非お願い申し上げたいというところでございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○中野幹事 中野です。ありがとうございます。先ほども大谷さんから、なかなかA案は厳しいのではないかということで外しましたというお話でしたが、研究会ではA案もきちんとA案として出ていましたので、その部分を今回の事務方で外してこのメモに載せるというのは、少しいかがなものかなと思いました。   それはそれとして別ですが、いずれにしても団体的に全額行使できるようなスキームを作るのが今回の部会の役割ではないかと思います。それは、今回本当のメインは円滑化ですよね、意思決定の円滑化ということを考えてこの部会というのは立ち上がっていると思いますが、この損害賠償請求権の行使についても、やはり円滑に意思統一できるような行使をしましょうというのが今回の部会で行われるべきことなのだと思います。   ですので、損害賠償請求権の行使の円滑化と書いてあるとおり、これは円滑にきちんと損害賠償請求できるような形にしましょうというのが試みであって、その理屈をやはり我々が考える役割を担っていると、責任は重大だし、答えは難しいかもしれないけれども、それを乗り越えないと、我々が法制審議会のこの部会に関わった役割を担えない、きちんと全うできないのではないかなという気を、今いたしました。それは今、実務で関わっている御発言が幾つもありましたとおりで、このような形をきちんと全額請求できるような形にしないと、実務はやはり我々のこの法律、せっかく改正したけれども、評価は多分得られないだろうと感じます。   ですので、仮に先ほど申し上げたA案でなくても、当然承継のような形で全額請求できるようなスキームを法律で作っていただきたいです。2にあるように、規約や集会の決議によりというのは、標準規約契約の中に設けていただいても、それは注意的に設けるのであって、法律上もきちんと手当てをしていますよと、我々のマンション規約にはこれもきちんと入っていますよというのであれば、それは構わないと思いますが、やはり我々はこの部会で、法律上きちんと救済できる道を用意しましたよというべきだと思っています。   債権は区分であると、2ページにもその性質上、可分債権だと書いてあるけれども、その性質というのは、このマンションの損害賠償請求権というものを考えた場合に、本当に単純に可分債権だというような性質のものかどうかは、ここはやはり考えるべきところだと思います。私はマンションの建物に関する損害賠償請求権が必ずしも可分債権だと考えなければいけない性質のものではないと思いますので、これは団体的な行使に服する、そういう不可分債権だと考えることに何ら違和感はないし、それで困る人はいないと思います。ですので、性質上可分債権だというところは突破できるのではないかなと考えておりますし、当然承継説だった場合には、元々管理費が滞納した場合には新所有者がその管理費も払わなければいけないではないですか、こういうふうに債務は引き継がれるのだから、債権だって当然承継されていくことについて何ら違和感も感じないというところからすると、全体行使をしようとするために必要な法制度を作りましょうということについて、我々はここで躊躇する必要はないのではないのかと思っております。是非、皆様の御意見等をまとめて、改正案、A案はないけれども、A案か当然承継説を是非採用していただければなと思っています。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。まず1点申し上げますけれども、研究会報告書はこの審議会と直接の関係はありません。たたき台にはなっておりますけれども、研究会報告書にあったからといって、この審議会での提案に最初にそれを尊重して出さなければいけないという、我々はそういう制約の下にはおりません。ですから、研究会報告書において書かれていたことを事務局において勝手に変えたのではなくて、それを前提に事務局において現在の法律、法制の下で検討した結果、提案しているのがこの案でありまして、この案に対する当否については幾らでも御議論を頂ければと存じますけれども、研究会案と違うではないかということについて非難を受けるいわれはないということを、はっきりと申し上げておきます。これが1点です。   もう1点は、ここは恐らくもう今日、共通認識になっていると思います。多くの場合において望ましいのは、管理組合において集団的な行使ができることであると。これは多分誰も否定されないと思います。問題となっている、あるいは今日の事務局案というか、原案が出てきているのは、それはしかし現在の法制においては難しい面がある、それを乗り越える必要があるのだということが今、明らかになっていることです。そこでポイントになるのはやはり、繰り返し大桐さんも、あるいは中野さんもおっしゃったとおり、これは債権の帰属の問題と不可分の問題というか、正にそこに問題がありますので、預金債権と同じように考えればいいではないかと本当に考えられるのだったら、それで踏み切ればよろしいですし、債務との連動で考えればいいではないかということになれば、そうなのだろうと思いますが、恐らく、そう簡単に行くのかなと思う方も少なくない、そこがポイントだと思います。やらないと言っているわけではなくて、これは恐らく法律の専門家が考えるしかないわけですけれども、鎌野さんがおっしゃったとおり、現行法の立場は分割債権であるということから始まっておるわけですから、これを乗り越える理屈を考えられるか考えられないか、そこに掛かっていると思います。   繰り返しますけれども、その理屈を乗り越えられないまま法律に定めてしまえばいいというわけには、これはいかないです。民法の全体に関わる問題になってしまいかねないので。ですから、今後検討していただくに当たってはこの点を是非とも留意していただきたいと思っております。やらないと言っているのではなくて、望ましいことは分かっているけれども、そこへ踏み切ることが本当に法律上可能なのかということが問題となっているのだということでございます。 ○沖野委員 ありがとうございます。最終的には(注)について申し上げたいことがあるのですけれども、今問題になっております点について申し上げます。理屈として、根本的には、この損害賠償請求権、その債権自体が金銭債権で、もう発生後で具体化しているというような場合に、単純に可分債権であるとして分割にならずに、少なくとも共同行使でないと行使できないというような特別な債権である、それが不可分であるのか、また少し違うタイプのものなのかということはあるかと思いますが、単純な分割債権ではないのだということをいうか、あるいは、よほどの政策的な理由があって、債権の行使を共同でやらない限りはこのマンションの管理に対して著しい負荷が掛かり、それが極めて困難になるとかですね、そのような政策的な判断ということから特別な規律にしている、それを支えるだけの十分な理由があるということが言えないと、難しいのだろうと思います。   確かに政策的な見地というのは重要ですけれども、例えば預金の共同相続ですと、一方では遺産分割における円滑化ですとか共同相続人の間の公平ということは観点としてはありましたけれども、結局、判例も個々の預金なら預金の性格、ですので普通預金と定期では違う、定額貯金も違うということで、それぞれの性質から考えていますので、単純に政策だけでこの債権の性質を決めるというのは難しかろうと思います。   私は共用部分というものについて、また現実履行の請求ですとか現物での填補ですとか、そういうことを考えたときに、それが金銭化したときに、全く単純に通常の分割債権でいいのかというのは、なお悩ましいとは思っておるのですけれども、現行法がその下で様々な考え方が構築されているときに、ここだけ変えて大丈夫かということも不安に思います。非常に政策的に必要とされるのに、そんなためらっていてどうすると言われるかもしれないのですけれども、別の問題が起こったときに不整合がありますと、その問題を解決できなくなってしまうということがありますので、債権の性質というのを根本から組み直すということであれば、全体として問題ないかということを考えていく必要がありますし、一部先行して行使するというようなことができなくなるわけですけれども、そういうこともできないし、後で長屋状の区分所有建物が出てきますけれども、そういったものも含めてどうするのかということを考えていかないと難しいだろうとは思っています。なかなかそこを踏み切れないなという印象を持っているところです。   それで、なのですけれども、(注)についてです。(注)につきましては、説明にも書かれておりますように、現在これが金銭債権として分割債権として存在するということであるときに、そして元所有者がそれを持っているときに、区分所有権を譲渡すると、なぜその金銭債権が付いていくのかという説明がなかなか困難には思います。ですから、法律上の当然移転というのは説明の困難さもありますし、7ページに書かれております、全てに妥当することでいいのかということを考えると、例外も付けていかなければいけないということになり、その例外がまた十分正当化できるかという問題があるように思います。   その一方で、もう一つ考えられないかというのは、これをデフォルトにすることは考えられないかということで、区分所有権が譲渡されるときの譲渡当事者の通常の意思ですとか、多数の場合はどうかということを考えたときに、これもここに書かれていますけれども、基本的に個別分割行使というのは余り現実的ではないということがあります。むしろ譲受人の方に移転させてしまって行使する方が一般的には合理的ではないかと考えられますし、そうすることによって、より明確にこの売買契約あるいは譲渡契約自体の権利義務関係も定められるということになるのではないかと思われまして、この点を明確にしておくことは、この譲渡あるいは売買の当事者にとってもメリットになるのではないかと。更に言えば、区分所有権の譲渡契約における具体的な条項としてモデル契約にも入れてもらうというようなことも考えられるのではないかと思っておりますけれども、基本的にはそういう、一般的に当事者としてはそう考えるだろうということは基礎付けられるのではないかと思われまして、それで、少なくともデフォルトとする、別段の合意がない限りはとか、あるいは、このときには非常に問題が多いので、ややそこを一段ハードルを上げて、別段の意思なり定めが明らかにされていないときはこういう規律にするという、その契約のデフォルトとして考えることはできないかと思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。契約のデフォルトにするというのは今までなかった発想ですので、検討させていただこうと思います。 ○加毛幹事 損害賠償請求権等の集団的行使を基礎づける論理につきまして、研究会の際にも話題になったように記憶しておりますが、いわゆる組合債権のような考え方を採用することは考えられないのでしょうか。この点に関連して、あまり実際的な事例とはいえませんが、例えば、過失により共用部分に損害を発生させた加害者が、区分所有者のうちの1人に対して債権を有していた場合に、相殺によって債権を回収することは、今回の提案では妨げられないことになるのでしょうか。今回の提案は、専ら区分所有者側の権利行使を問題としているように思われます。他方、組合債権のような発想によれば、加害者の相殺による債権回収についても制約がかかることになると思います。そこまでの効果を認めることまでは考えていないということでよいのかを確認させていただきたく思いました。 ○畑関係官 すみません、事務局からですけれども、今御指摘の点、この資料を作っているときには必ずしも意識していたものでありませんので、明確なお答えというのはできないので、今の御指摘で、もう少し検討しないといけないのかなとは思ったところです。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。組合債権は研究会でも出てきましたけれども、総有かといわれると、いやそれは総有ではないだろうと。先ほど来話が出てきたのと恐らく同じで、現在は分割債権と考えられているということで、組合債権というふうにはなかなか性質決定しづらいというところはあるのだろうと思っていますし、だからハードルがやはりあるのではないかということと、あと、例えば新築のマンションに既に瑕疵というか契約不適合があるというときに、個別の区分所有者がその契約不適合に関して権利行使をするという場合に、専有部分だけの話を本当にしているのかというと、やはり共用部分の、瑕疵といいますけれども、瑕疵も含んでの話だろうと。そこも含めて、総有はもう当然、多分駄目だと思うのですけれども、組合債権だよねという、そのような性質決定をして、権利行使できる、できないで整理できるのかというと、なかなかやはり場面ごとによって違うと言わざるを得ないのかなというふうな感じがしています。 ○加毛幹事 組合債権と性質決定できるか否かという形で問題を立てると、区分所有者間に共用部分に関する組合契約が成立しているのかという論点が出てきてしまいますので、私も、そのような趣旨でご質問を差し上げたわけではありません。他方、先ほど大桐先生が、共用部分に関する区分所有権者の団体的な拘束について言及されたかと思いますが、そのような発想を敷えんすれば、共用部分について、法律に基づき、組合債権のような性質を有する債権を発生させるという考え方も成り立ち得るのではないかと思われるところです。もっとも、その前提として、損害賠償請求権等について、いかなる拘束を及ぼすことを想定しているのかが問題となるので、御質問をした次第です。  またこの点は、今回の提案が対象とする債権の範囲にも関わります。今回の提案では、損害賠償請求権、保険金請求権、不当利得返還請求権のみが取り上げられていますが、共用部分を対象とする契約に基づいて発生する債権などは対象としなくてよいのかということが問題となり得ます。今回の提案が、マンション管理の現場で特に需要が高いと思われるところをだけを切り取って立法するのだとすると、それを正当化するためには、実務的必要性に基づく政策的な考慮を持ち出さざるを得ないように思います。他方、より広い射程を持ちうる論理的基礎に基づく改正提案は考えられないのだろうかという疑問を持ちましたので、事務局のお考えを確かめたかったという次第です。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○中野幹事 ありがとうございます。先ほど部会長からお叱りを受けました。私の勘違いがあったようで、申し訳ございません。ただ、研究会で議論が行われたということは、それなりに重きがあるのかなと思った手前、御発言させていただきました。   先ほど申し上げたとおり、二度になってしまって、二度目はいけないのかもしれませんが、やはり私はマンションの瑕疵の損害賠償請求権というのは、性質上可分債権という議論が必ずしも適合しないと思っております。現実に今はそういうふうな可分債権だといわれているけれども、それが果たして実務的にも本当に正しいのですかということを我々はここで考えるべきだと、これが我々の役割ではないかと思います。   それはそうとして、沖野先生が先ほどおっしゃっておられたような言葉は非常に私は適切だと思いました。別段の定めがない限りは当然承継というような考え方も、私は当然成り立つのかなと思っておりますので、法律で今回、改正するのであれば、別段の定めがない限りは当然承継されて、当然承継された方々について管理者が代理行使できるというふうにして、全体的な請求権を行使できるようにするということも、私はいいのではないかとは感じます。 ○佐久間部会長 分かりました。ありがとうございます。沖野さんの御発言のときに申しましたとおり、考えていなかったことですので、今後改めて検討いたします。   ほかにいかがでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。皆様から御意見があったように、現実的には管理者が区分所有者を代理して提訴する方が区分所有者側にとっても便宜であり、そうした方向での規律を設けることには賛同しておりますが、この提案の読み方がよく分からなかったもので、質問させていただきます。   第1の1のところで、共用部分等についての損害賠償請求等の発生後に区分所有権が譲渡された場合が想定されておりますが、この損害賠償請求権の発生後というのは、建物に瑕疵が発見されて、売主に対して損害賠償請求をした後を意味するように思われます。ただ、先ほど齊藤委員からもございましたけれども、建物の瑕疵が発見される前に区分所有権が転々譲渡されることはよくあることのようですが、こうした場合は今回のこの手当ての対象とならないのか質問です。区分所有建物の一部が転々譲渡された後に瑕疵が見つかって、その損害賠償請求訴訟を提起しようとする場合も今回の法的手当ての対象になるのか、もし対象とならない場合はどのようにするのか教えていただければと思います。 ○畑関係官 事務局からお答えをさせていただきますと、損害賠償請求権等が発生するというのは、正に瑕疵が生まれたらそういう請求権が発生するということになりますので、発見されているかどうかということではなくて、そういう損害を与える事象が発生したということでその債権、請求権が発生するということになりますので、ここで想定しているのは、瑕疵というか不具合の事例でいいますと、不具合が生じた、生じさせられたという後に、発見する前、発覚する前でも、その区分所有権が転々譲渡していっていると、そういう場面を想定しているものでございます。 ○村上委員 ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ほかにいかがでしょうか。   では、これはこの部会では今日が一読目ということで、御意見をいろいろ承りました。確認しておきますけれども、何らかの手当てをして集団的にというか、いわゆる管理組合において請求権をまとまって行使できることが望ましいと、全ての場合かはともかく、そういう場合が多かろう、通常であろうということは、共通認識であると受け止めさせていただきます。その上でどのような構成が考えられるかということは、これは今後、この部会では考えていくことになります。幾つか、こういうことではどうかということを承りましたので、それを踏まえて、この問題を扱う次回までに、また新たな案及び説明を用意することといたします。ありがとうございます。   それでは、部会資料10については以上といたしまして、続いて部会資料11について事務当局から説明をお願いいたします。 ○山根関係官 部会資料11について説明を申し上げます。こちらでは、区分所有建物の管理の円滑化に係る方策としまして、区分所有建物が全部滅失をした場合に敷地等の管理を円滑化するための仕組みを設けることを取り上げています。   区分所有建物が全部滅失した場合には、敷地であった土地や附属施設の共有関係が残りますが、区分所有建物が存在しなくなった以上、区分所有法の適用はなく、民法が適用されることとなります。そのため、例えば、土地等について変更行為を行うためには土地等の共有者全員の同意が必要と考えられますが、共有者の数が多数に上り、意思決定をすることが難しい事態に陥ることも想定されます。  現行法におきましては被災区分所有法において、政令で指定された災害により区分所有建物が全部滅失をした場合には、敷地共有者等集会により債権決議等を行うことができる仕組みが設けられています。しかし、今後区分所有建物が高経年化していくことを踏まえますと、政令で指定された大災害によってではなく、老朽化や局地的な災害により全部滅失する事態も生じ得るところであり、別途検討している建物取壊し制度を創設した場合には、これにより区分所有建物が取り壊されることも考えられます。しかし、区分所有法においては被災区分所有法に相当する規定がございませんので、全部滅失した後の対応が困難になるとも考えられます。   そこで、本文1では、区分所有建物が全部滅失した後も、元区分所有者が区分所有法の規律の下で敷地等の管理を行うことを可能とする仕組みを設けることを提案しています。仕組みの内容としましては、基本的には被災区分所有法と同様の規律とすることを想定しています。もっとも、被災区分所有法では敷地利用権が共有されている場合が対象とされていますが、附属施設が共有されている場合も対象とすることを提案してございます。   次に、資料の8ページ目の本文2ですけれども、こちらでは、団地内建物の全部又は一部が全部滅失した場合に、本文1と同様の仕組みを設けることを取り上げています。こちらについても、被災区分所有法において団地建物所有者等集会の仕組みが設けられていますので、基本的にこれを参考としつつ、資料の本文1と同様の仕組みとすることを提案しています。もっとも、被災区分所有法におきましては、戸建ての建物のみで構成される団地については対象外とされていますけれども、本文2の提案では、このような団地も含めてはどうかということで取り上げてございます。   簡単ではございますが、部会資料11に関する説明は以上でございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   では、部会資料11の全体につきまして御意見を伺いたく存じます。一棟の区分所有建物の全部滅失の場合と、団地内建物の一部又は全部の滅失、両方ありますけれども、どちらでも結構ですので、御意見があれば承りたく存じます。いかがでしょうか。 ○鎌野委員 この1の区分所有建物全部滅失した場合、現行では被災区分所有法には規定があるけれども、言わば一般法としての区分所有法にはこういう規定がないので、そういうのを設けるということについては、大方というか、あるいは全面的にというか、ここでの御提案に賛成で、やはりこういうことが必要だろうと考えております。   それで、2の団地のところですけれども、少し質問をさせていただきたいのですけれども、特段この2のところでは3年又は5年というような期間の制限がないのだけれども、ここでもそういうことを予定しているのか、それから、団地の場合ですとそういった、特に一部の建物が全部滅失をしたというようなときにどういう手当てがその後あるのかというようなことで、これは先般ここで検討したいわゆる敷地分割制度という制度があるので、それとの連動を考えているのかというようなことで、特に団地の場合の期間制限というのを予定しているのか、それから、敷地分割制度との連動を予定しているのかというようなことを少し、事務局のここでの資料11の策定のときのお考えというのをお聞かせいただければと思います。 ○山根関係官 まず、期間制限の点につきましては、基本的には、団地内建物の全部又は一部が全部滅失した場合の仕組みを、単棟の建物が全部滅失した場合と同様のものとすることを想定してございますので、集会を開くことができる期間や、共有物分割請求を制限する期間につきましても、単棟のものと同様に3年又は5年で制限することとしてはどうかということで考えてございます。  また、敷地分割制度の点につきましても、この制度だけ特別扱いするという趣旨ではなく、通常の団地関係における敷地分割制度と同様に対象とする趣旨で記載してございます。 ○佐久間部会長 事務局の案とは違うのですけれども、一棟の建物の場合に、建物の全部滅失ではなく、一部の専有部分が滅失した場合には、どこだったか冒頭の方で、その場合は区分所有者たる地位を失うものではないのだから、特別の手当ては要らないのだというふうなことがありますよね。団地の一棟の建物の全部滅失も、当該建物に関しては全部滅失したから区分所有権はあるとはいえないのだと思うのですけれども、敷地に関する団地関係のことでいいますと、そのロジックは今、山根さんからパラレルに考えるのだという話がありましたけれども、パラレルに考えたら、もしかしたらその場合も敷地、団地関係の中にまだあるという意味では、団地内の全部滅失した一棟の建物、この区分所有者もなお、その団地における区分所有関係からは離脱していないという話になるのではないかと。そうすると、鎌野さんがおっしゃった、敷地分割とかに当然流れるのかというと、必ずしもそうもいかなくて、というふうな話ではないのかなと私は、これは個人の発言ですけれども、そういうふうに思っていたところです。事務局にもつい先ほど伝えたのですけれども、ですから、そこのところの見方も含めて、全体として、可能な限りパラレルにしようという意図ではあります。ですから、期間制限に関しましても当然、2については1と同様のものが同様の事態では入ってくるのだけれども、全部滅失の場合は期間制限が入ってくる、当然ですねとなるかもしれませんが、建物の一部滅失の場合に、それをパラレルにして期間制限まで入るかというと、少し違う話かなとも思われるということを少し、個人的意見として申し上げておきます。 ○鎌野委員 いずれにしても、少し御検討いただければと思います。なかなか敷地分割がそのまま連動させると難しいような場面もありますけれども、他方では、その団地内のある建物は全部滅失したというのが前提ですので、そうするとそこの、幾ら敷地とか附属施設の共有関係は残るにしても、そういった方が再建をするとか、あるいはそこの分割をするとかというときに、どこにその一部滅失した建物があるかにもよりますけれども、やはり場合によっては敷地分割をした方が、そういう意向だということもあろうかと思いますので、少しその辺りを御検討いただければと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○齊藤委員 ありがとうございます。今御説明いただきました全部滅失の場合の話ですけれども、私も基本的にはこの御提案に賛成させていただきたいと思います。こういった場合について被災マンション法には規定があるけれども、ということですけれども、政令指定災害ではない場合の災害のときもありますし、災害の指定が少し遅いときもありますので、そういう意味からしたら、被災の場合でもこういった対応ができること、あと、先ほど御案内がありましたように、決して被災だけではないという意味では、こういった対応が区分所有法の中であるというのは非常に有効ではないかと思いますので、ここに御提案があるとおり、管理組合の運営上というか、管理組合というものがなくなった後の運営上で非常に求められているのではないかと考えております。   ここに3年か5年かというのがあったのですけれども、多分3年というのは、被災した場合に復興を早くするということで3年という考え方がありますが、3年でできなかったこともあるし、今回、熊本地震でもかなり復興に時間が掛かっているのもあるので、3年でできなかったときのセーフティーネット的な考え方としては、5年という考え方がよろしいのではないかと思っているところでございます。   そして、団地についての規定がございまして、今回、戸建住宅地でもこういったものを区分所有法に入れることで適用できるようになると理解しました。こちらも戸建住宅地で管理組合があるケースを想定しますと、非常に有効だと思います。今回の資料にもありましたように、戸建住宅地で管理組合がある場合、全国的にじわじわ増えてきているということもありますし、その戸建住宅地が小規模なものもありますし、少なくとも私がプロデュースしているのは約300戸あります。私が知っているもので一番大きい戸建住宅地で管理組合があるものは1,300区画あるものもございますので、そういう意味ではこういった考え方、合意形成、前に進む方向がきちんと整備されているということが重要ではないかと思います。   さらに、少し気になったのは、多分今、鎌野先生と部会長がお話しされていたことですけれども、4棟でA、B、C、Dという棟があって、例えばD棟だけが全部滅失したときに、この団地管理組合そのものが残るのか、団地管理組合はもうなくなってしまうのかということを考えると、現実的な運営を考えますと、これもまた法律のスキームを分かっていないから、お前は好きなことを言うなとおっしゃられるかもしれませんが、A、B、C、D棟の全体で決める必要があることもありますので、D棟も合意形成の中に入っていけるような基盤が残っていないと、各棟だけの管理組合だけでの対応では現実には難しいですので、そうした対応ができるような道筋が必要ではないかと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。A、B、C、DでDが滅失したときは、A、B、Cの団地関係は残るというのが当然の前提になっていて、Dの区分所有者は全部単なる敷地共有者になるということがイメージされているのですけれども、多分それは誰も幸せにならない結果ではないかということで、どうなのかなということを先ほど申し上げた次第です。ありがとうございます。それから、3年、5年どちらですかという点については、5年の方がよろしいのではないかという御意見も頂きました。ありがとうございます。5年になれば、被災区分所有法の方の3年がまずは走った上で、より便宜が図られた形で3年ということになり、そこで時間切れになってしまっても、後2年は一般の区分所有法の世界でだけれども、対応できるということが多分アピールポイントなのだろうなとは思っております。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。特に大きな御異論はないということで、この論点については承っておいてよろしいですか。ありがとうございます。   第1の話題がえらく予定より時間が掛かったから、どうしようかなと思ったら、ここで帳尻が合いすぎるほど合ってしまいまして、ここで予定されたとおり休憩を取りたいと思います。今55分だから、少し長めかもしれませんが、3時10分再開ということで、15分休憩とさせていただきます。           (休     憩) ○佐久間部会長 時間になりましたので、再開いたします。   この時間は、まず部会資料12について御審議を頂きます。部会資料12の表題を御覧いただければお分かりのとおり、「建替え等」として、二読とあります。けれども、これは実質的には中間試案のたたき台として資料を作っております。ですから、もちろん賛否を御発言いただくことは妨げないのですけれども、ゴシック部分をそのまま中間試案としてパブリック・コメントに掛けてよいかどうか、あるいはパブリック・コメントに掛けるのだったらこういうふうに改めた方がいいのではないか、ということを中心に御議論いただければ有り難く存じます。また、基本的には一読目で御議論いただいた内容を踏まえて資料を作成しているつもりですので、提案についての事務局からの説明は、時間の関係もあり、省略させていただきまして、すぐに議論に入っていただきたいと存じます。   部会資料12全体を通してでありまして、一つは建替えを円滑化するための仕組み、5ページからの専有部分を含めた区分所有建物の刷新を可能とする仕組み、どちらでも結構です。繰り返しますが、賛否について御発言いただくことでももちろん構いませんが、恐らく賛否がおありのときは、この提案は、中間試案からおよそ削除しろというのは余りないかと思うのですが、格上げした方がいいとか格下げした方がいいとか、そういったことも含めての、中間試案として提示するにはどうかという観点を特に重視して御意見を頂ければと思います。   では、いかがでしょうか。 ○鎌野委員 度々申し訳ございません。今回の資料12の今、部会長から御説明があった点を考慮して、まず賛否ですけれども、A案でよろしいのではないかということで、これは私の意見です。ですけれども、この中間試案ではA案とB案と両立というか、併存して掲げるということでよろしいのかなということです。   それで、私はA案に賛成すると申し上げましたけれども、Aの客観的な事由というのは、これは一定の基準というのがあって、そして、ここでも今回の中間試案では、政令等というようなことで、前のときには裁判所か行政機関かというようなことでしたけれども、政令等というようなことで、そういった意味では統一されていて、そういったことでよろしいのではないかと。それから、もうこれはどちらかというとマンション管理適正化法が先行したものなのですけれども、こういうことは区分所有建物、商業ビルも含む、そういうものも一般化できるので、こういう規定ぶりでよろしいのではないかということです。   それで、客観的な事由ということで、αと、それからβ−1というのが今回、β−1の方がそういった意味では付け加わっているということですけれども、これについても基本的な、αの言わば危険性などに関わるような要件と、それからβの、特にエの配管等の腐食に関しては、これはやはり居住者の安全性と生命健康に関わるものですので、そういった意味では一緒に考えてよろしいのではないかということです。オは少し性質は違いますけれども、これはどちらかというと社会的な要請というか、そういう社会的なニーズということも踏まえると、こういったことで客観的要件、私の立場ですと、これは3分の2ということで、そういった意味でハードルを一つ下げてといいますか、そういったことで、そして、こういった社会的な要請、それから、もちろん居住者の生命健康等がありますけれども、4分の3の法定の多数決割合に合意形成がもう一歩届かないというような場合もありますので、そうすると、やはりこういった社会的な要請などを踏まえると、3分の2というのが適当ではないかと。   それから、β−2とかβ−3に関しては、前にもここで発言させていただきましたけれども、やはり一律に年数要件で区切るというのはいかがなものかということで、賛成しかねるということです。(2)に関しても、これは基本的には将来問題が起こり得るというか、言わば事情変更等もあり得るので、そういった意味ではこういうのも望ましくないのではないかと思います。   意見を述べさせていただきました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。確認ですけれども、(1)@について、A案、B案はA案に賛成だけれども、B案も加えた形で諮ることでよいとおっしゃいました。客観的事由の方も一定の立場を明確にお示しいただきましたが、この形で示すこと自体には反対ではないということでよろしいですか。 ○鎌野委員 全く異論はございません。 ○佐久間部会長 分かりました。ありがとうございます。 ○大桐委員 ありがとうございます。まず、私の見解につきましては、従前申し上げているとおりB案とα案に賛成でして、(2)は反対ということです。今回は中間試案のたたき台としてということですので、その観点からの意見ということを申し上げますけれども、まず、客観的な要件を判断するということにつきましては、決議の無効訴訟が起こりやすくなってしまうという懸念が1点ありますので、その観点から、裁判所の認可のような、司法の関与という手続を検討するということが従前、議論としてはあったかとは思いますので、ゴシックの(注)の辺りにその判断機関として、裁判所なのか行政なのかといった議論もあるということも付記していただけると、パブリック・コメントなどで意見を聴きやすいのかなと思っております。   なお、私の意見というか、弁護士会の中で意見として出ておりますのは、現在においても裁判所において専門委員を組み込んでいろいろな手続が行われております。例えば借地非訟などにおいては、借地上建物の建替えなどにおいて地主の承諾に代わる許可の制度で鑑定委員の先生が鑑定をしたりですとか、あとは地代の増減額請求訴訟においても鑑定委員が鑑定をして、裁判所で地代の適正額を裁判で決めるという制度がありますし、また、民事再生においても、計画を練って、それを裁判所において認可をしてというような手続がありますので、このように必ずしも裁判所においてできないことでもないとは思いますので、今回のような客観的な事由を満たしているかどうかについての認可のような制度を取り上げていただくのがよいのではないかと。全部が全部その認可を経なければ建替えができないとなってしまうと、逆に足かせになってしまうという懸念ももちろんあるとは思うのですけれども、そういった懸念に対しては、例えば全部やらなければいけないということではなく、そういう手続も選択することができ、任意で裁判所の手続認可を取っておけば、後々無効訴訟になったときにも早期に決着ができますよとか、無効訴訟、嫌がらせ目的のような訴訟を予防できますよといったメリットもあるでしょうし、また、決議の前にもし裁判所の認可を得てということであれば、多数決を取りやすくなるというメリットもあるのかなと思います。そういったこともありますので、(注)のところに是非載せていただければ有り難いと思っております。名称としては建替え認可制度みたいなものがあるといいのかなというところです。   あとは年数要件ですけれども、中間試案的には単に羅列をされても多分、木造を連想している方と鉄筋コンクリートを連想している方で判断が違ってくるのだと思いますので、その辺の説明というか、どれぐらいの耐用年数が一般的ですよというのがどこか補足説明の中にでもあるといいのかなと思いました。   あと、(2)の合意というのが、この資料だけを読みますと、いつの時点の合意なのか、全員の合意とありますけれども、この御提案の趣旨としては、いずれの時点でも、初回の販売時の合意も含まれますし、中途での合意も含まれるという趣旨かとは思うのですけれども、読み手によっては、合意でこの4分の3とかをとれるのに、何で建替え要件を緩和しなければいけないのかという疑問を持つ方もいらっしゃるみたいなので、合意の時点についてどういう提案なのかというのも補足説明に書いていただけるといいかなと思いました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。事前の判断手続を注記するかについて、大谷さんからお願いします。 ○大谷幹事 ありがとうございます。まず、今後の進め方でございます。中間試案をお取りまとめいただくのは、基本的にはゴシックのところであり、その補足説明については事務局の責任においてお出しするということが一般でございます。今、大桐委員からもございましたけれども、こういうことを書いてある方が分かりやすいというようなことがございましたら、それも教えておいていただければ、それをまた活用させていただければと思っているところでございます。   α案あるいはβ−1案のような要件を立てたときに、どのような機関が判断機関になるのかというところについては、従前から御意見を賜っていたところでございます。基本的な考え方としては、最終的な判断は訴訟でその有効、無効が決められるのだけれども、既にマンション建替え円滑化法制の下での認定の仕組みがございますので、それを使うこともできて、事実上それが一つの証拠となり得ることを基本的なコンセプトとして御説明してまいりました。一方で、もちろん理論上は非訟のような仕組みを作るということもあるにはあると思いますので、(注)にどのように載せるかということについては、また検討させていただきたいと思います。ただ、今お伺いしていると、任意で非訟を使うこともできるし、訴訟になってもいいというような仕組みは余りほかに聞いたことがないような気もいたしまして、そういうものが成り立ち得るのかどうかというのは、もう少し慎重な検討が必要かなという気がいたしますけれども、いずれにしても(注)にどういう書き方をするかというのは再度検討させていただければと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。大桐さん、続けて何かありますか。 ○大桐委員 先ほど事前にということを申し上げたのですけれども、必ずしも事前にこだわるわけではなく、決議を取った後に、多数決要件の要件も含めて、きちんと適正にできていますよという認可というのもあり得ますし、また、任意にするかどうかも、必須にすることも考えられるかと思いまして、その辺はまだ定まってはおりませんけれども、いずれにしてもそういった制度を設けることについて広く意見を集約していただいた方がいいのかなと思いました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。年数要件に関して、積極的でいらっしゃらないのだろうというのは従前から伺っておりますが、本日、50年、60年、70年、単に並列するだけではというお話がありました。例えば耐用年数も木造と鉄筋コンクリートで違うからと、それは補足説明などで書くことが望ましいと、そういう御趣旨でよろしいですか。 ○大桐委員 それで結構です。 ○佐久間部会長 分かりました。ありがとうございます。   では、ほかにいかがでしょうか。 ○齊藤委員 ありがとうございます。御説明いただきましたように、こういった形でパブリック・コメントにお出しになるという方向で結構かと思います。私、個人的な意見としては、ずっとB案だと申し上げております。それから、そのときの客観的な要件というのは、建替えというのは生活の再建という意味でもありますので、暮らしを改善していくという視点からすると、バリアフリーなどは非常に重要だし、有効だと思いますし、もう一つ、単なる劣化ではなく社会的な陳腐化をなくしていくという意味では、β−1のような、生活に関わるような、暮らしの再生という視点の項目も入っている方が適切ではないかと思います。   そして、ここまで来てはたと考えたら、客観的要件というのが、昔の区分所有法にあった「可分性」のように、これを巡ってのトラブルにならないだろうかということが心配になってきました。皆さんも危惧されていることだと思いますので、現在御提示いただいているものが客観的な基準になっているのかを確認してみました。これは要除却認定の基準から来ているということで、要除却認定実務マニュアルを見させていただきましたところ、かなり客観的に技術的な物理的なチェックなので、基準にあっているか否かを争う余地はないのかなとは思いましたが、強いて言うなら、怒られるかもしれませんが、外壁はく離だけ、判断に幅が出るのではないかという気がいたしました。では、なぜ、いまこの基準でトラブルにならないのか、トラブルになっていないのかですが、建築の専門家が検査をし、かつそれを行政がチェックしているからです。建築士の方が責任を持ってチェックをし、行政がチェックをする、ある意味ダブルチェックで問題がないということではないでしょうか。では、こういった手続きをこれからのマンションに全部に強いるのかということを考えますと現実的ではない気がします。そこで、余りトラブルにならない手法で簡易という意味では、年数制限が使えるのではないかということで、50年、60年、70年という考え方もあり得るのではないかと改めて思っております。これがいいという意味ではまだ現段階ではなく、こういった点も踏まえて皆さんに御意見を諮るというのは非常に重要ではないかと思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○小林委員 ありがとうございます。私も基本的には、このゴシックの部分はこれでいいのかなと思います。個人的な意見を申し上げますと、A案かB案かで申しますと、やはりA案を支持いたします。4分の3でも75%ですし、5分の4でも80%ですので、いずれも大多数といえると思いますし、適切なタイミングで意思決定すべきであるのに決められないで、管理組合が漂流してしまうというのが一番防がなければいけないことだろうと考えます。決められないというのが一番不幸な事態ではないかと。建替えの声が出る以上は何らかの不具合があるわけでありまして、それを我慢しながら何年も生活しなければならないというのは賛成派にとっても反対派にとっても不幸な事態であることには変わりませんし、ケースによっては賛成派、反対派の間でいがみ合いが起きることも、これはしばしばということではないとは思いますけれども、あると思います。結論が出ない事態というのはできるだけ避けたいと思いますし、結論を出すのに掛ける時間も、余り長すぎてしまうのは避けなければならないと思います。   Aの客観的事由の方ですけれども、私はα案と、それからβ−1案くらいまでは入れていいのではないかと思います。齊藤先生がおっしゃったような、どういうふうに判定するのかというところが重要で、可分性要件のように曖昧な形になって、それが元で紛争が起きる事態は是非とも避けなければならないわけですけれども、これをどういうふうに判定していくのか、それを確定させていくのかという手続まで必要なのかなと思います。行政が関わるケースというのも結構多いのですけれども、確かに行政も無限に資源があるわけではなくて、非常に人員的にも限られていますし、今の基礎的自治体の状況を見てみると、いろいろなことをやらなければいけなくてあっぷあっぷしているような状態ではないかという気もいたしまして、本当に一定の公平性あるいは正確性を確保するために行政が最終的に確認するというのも、一方で必要かなと思う他方で、そこまで求めるのも、数がたくさん出てきたときにどうするのかなというような気もいたしております。   それから、4ページの8行目から20行目まで、どういうふうにやって理屈付けるかという、イの問題ですけれども、これは確かに課題だと思います。現行規定というのが合理的なものとして制定されて、その後の状況の変化などの中で、新たな時代に合った合理的なものとして今回改正をするのだということを説明付けようとすると、前回もその時代には合理的だったし、今回も合理的なのだということを言わなければいけないので、なかなかハードルが高いなというのは思います。   それから、もう一つ、売渡し価格の時価評価を変えること、これは前回、私も言及したのですけれども、国交省の政策的法律の中で変えるというのであればともかく、民法的世界の中で変えるのはなかなか難しいという点も理解できます。コストアップということに関してもそうだと思います。  非常に悩むところなのですけれども、非常に粗雑な意見なのですけれども、老朽化マンションが非常に増えていく中で、意思決定をよりしやすくしていくということの必要性が増したとか、あるいは時間を掛けずに意思決定をしていく必要性が出てきたとかいうようなことが言えないのかなというのは、漠然とした意見として感想として思います。   それから、もう一つ、4ページの5行目のところなのですけれども、これは前回も申し上げたのですけれども、資産価値向上の観点から不具合のないマンションの建替えを望むというケースなのですけれども、これはゴシックの部分ではないので、中間試案のところから外れることになるのだろうとは思いますけれども、そういう声というのは、しかもそれが多数を占めるケースというのは、ほぼあり得ないのではないかと思うのです。マンションというのは飽くまで住むためのものですので、もちろん財産的価値もあるわけですけれども、その人にとって住む機能よりも財産的価値が優先するというのは、よほどの余裕のある資産家だと思いますし、そのような人というのは、そのとき住んでいるマンションの資産価値の向上を目指すというよりも、さっさと売り払ってより高級のマンションを買うという行動をとるのではないかと思いまして、非常に手間暇が掛かる建替えというものを指向していくというのはほぼあり得ないのではないかと私は思います。   それから、4ページの21行目以下のところなのですけれども、客観的要件のところなのですけれども、特定要除却認定、先ほど申し上げた、β−1案くらいまでは入った方がいいのではないかと思うというところなのですけれども、給排水とかエレベーターといった内容も住民にとっては非常に深刻な問題になってまいります。大きな意味を持つインフラ要素だと思いますので、この辺までは入ってもいいかなと。4ページの最終行に生活や事業を営むための基本的条件を欠くと書かれていますけれども、正にそういうことではないかと思います。それから、それ以外のところについては、頭から否定するつもりはないのですけれども、余り必要性というのは私は感じないということでございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。少し、おっしゃっていただいたことで、将来に向けてのこともあると思うのですが、整理をこの段階でしておきたいと思います。   この形で問うということについては今のところ御異論はないので、そうであればこの形で問うていくことになるかと思うのですけれども、A案については、やはり今、小林さんもおっしゃった、引下げの正当化ですね、これをどうするかというのは、もしA案を採ろうとするのであれば、将来的には必ずはっきりさせないといけないことだということを、まず確認をしておきたいと思います。   それから、2点目は、実はA案かB案かというのは、現状の5分の4を変えるかどうかということがもちろん一番大きな問題なのですが、客観的事由がある場合の引下げの割合が3分の2か4分の3かでも今の提案では違っているのですね。つまりは、ここに挙がっていない案もあって、原則は5分の4であると、しかし客観的事由があるときは3分の2にするということだってあり得るのだけれども、それは採らないというのが今のところの案で、将来的に否定されているわけではないですが、中間試案のところでは採らないということなのです。今のところどなたも、恐らくこれまで明示的に余り議論はされていないと思うのですが、客観的事由があるときに4分の3が適当なのか、3分の2が適当なのか、被災の場合は恐らく3分の2だというようなことがほぼコンセンサスとして出来上がってきていると思うのですが、そこまで行かないときに4分の3が適当なのだという判断がA案でもB案でもあり得るのだと思うのです。A案であって、客観的事情があっても4分の3というのは、要するに客観的事由なんか要らん、4分の3だけでいいと、そういう判断になると思いますので、そういったことも問題になるのではないかということを少し申し上げておきたいと思います。   それから、4ページの5行目にあるところですけれども、大規模なマンションを考えると、おっしゃるとおりだと思うのですけれども、例えば三つの区分所有権しかないというような比較的規模が小さいもので、相当地価の高いところにあるというようなものですと、仮に3分の2まで下げますと、あるいは4軒だと4分の3まで下げますと、資産運用目的、資産価値向上目的の合意はやはりあり得るのではないかと、私は思います。そこで、最終的にはどのぐらいあるかということが恐らくポイントになるのではなくて、そのような資産価値向上目的であっても緩和しましょうということになるのか、やはり多数決要件は緩和するのだけれども、そこには多数者が決めたからいいですよねという発想とは違うものがある、生活や事業の場であるということを考慮して、いわゆる社会的な合理性も認められるような状況でこそ、この多数決決定はされるべきなのだという考え方を採るかというところで、かなりレアなケースかもしれませんけれども、無視のできない事情として、これはあるのではないかとは思っているところです。   あともう一つ、客観的事由について、β−1の位置付けなのですけれども、齊藤さんからは社会的陳腐化のようなものも入ってきていいからというコメントがあり、小林さんからはこのぐらいだったらいいのではないかとおっしゃったと思います。ただ、それはいずれも現状のことを考えたらこの辺までは、ということだと思うのですけれども、社会的陳腐化というのは、今から20年たったときにどういうものが陳腐化していると受け止められているかということが必ずしも分からないというか、何十年か前はエレベーターがなかったらあかんなんていう発想は恐らくなかったはずでありまして、私も実は子供の頃はエレベーターのない5階建ての公団の5階に住んでいたのですけれども、それが当たり前だという社会でした。それが変わってきているということを考えますと、今後も変わらないという保証はないので、β−1を挙げてはいけないということではないですが、β−1だけで十分だといえるかどうか。具体的な事由の追加なのか、あるいは、判断は難しくなるけれども、もう少し抽象的な要件にしておいて、ある意味それをおまけ的に、本当は5分の4とか4分の3の多数取らなければいけないところを、おまけ的に引き下げるのだから、客観的事由が多少争われることがあってもしようがないよねと割り切るか。そうしましょうということではなくて、そういう考え方もあり得るのではないかと。それを避けよう思うと、齊藤さんがおっしゃった、年数要件にも一定の意味はあるかもしれない、というふうなことになるのではないかと思っております。   中間試案で問うことについてのことではなくて、今後中間試案の結果が出てきた、パブコメの結果が出てきた後、また御議論いただかなければいけませんので、視点として気付いたところを申し上げさせていただきました。 ○水津幹事 本文Aのエとオ、つまり要除却認定基準に当たる事由が多数決割合を引き下げる客観的事由に当たるかどうか、その正当化根拠をどこに求めるかについて、提案の説明の仕方とも関連して、他の先生から御意見がありましたが、意見を申し上げます。   部会資料12の4ページの一番下は、本文Aのエ、オが認められるときについて、そのような場合には生活等についての基本的条件を欠くとしつつも、最終的には、管理不全につながり外部環境に悪影響を及ぼすおそれが高いことに焦点を合わせた正当化をしている一方で、本文Aのア、イ、ウ、つまり特定要除却認定基準に当たる事由が認められるときについては、広い意味での人格的利益のうち、生命・身体に危険を及ぼすことに焦点を合わせた正当化をしています。ここでの生命・身体に対する危険は、近隣住民のみならず区分所有者の生命・身体に対する危険も含むものと考えられます。そうであるとすると、本文Aのエ、オについても、人格的利益に属するとされるいわゆる生活利益に焦点を合わせて、本文Aのエ、オが認められるときは、区分所有者の生活利益が著しく侵害されているとすることが考えられます。広い意味での人格的利益のうち、生命・身体と生活利益とでは、その性質に違いがあるものの、本文Aのエ、オ、つまり要除却認定基準に当たる事由が認められるときは、不利益の程度が著しいので、生活利益の保護を一つの理由として多数決割合を引き下げることが正当化されるのではないかと思いました。   A案を採るのであれば、それ以上の引下げをしなくてよいのではないかという先ほど部会長がおっしゃった問題については、よく考えておりませんが、B案を採るのであれば、引下げをすることは、正当化されるのではないかという気がいたします。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。中間試案の補足説明を作る際に参考にさせていただきます。 ○吉政幹事 ありがとうございます。中間試案についてA案、B案でお諮りになることについては、私も賛成です。個人的な感覚としましては、B案を採用するのであれば、年数要件の方を入れなければ、改正の意義は小さくなってしまうのではないかという印象は持っております。そして、個人的にはA案でよいのではないかという感触を持っております。ここから先、β−2案、β−3案に関して、年数要件をどのように考えるかということについて、意見を申し述べさせていただきたいと思います。   本日の会議でも鎌野委員から御指摘がありましたし、第2回の会議で年数要件の問題点として指摘されたのは、建物の構造や管理状況は極めて多様であり、一律に年数要件を設けることはできないであろうという点、あるいは建物の価格が年数の経過によって下落してしまうのではないかという点でした。こういった問題点は、私が承知している限りでは2002年の区分所有法の改正に際して示されていたものと全く同じであるといってよいかと思います。皆様御承知のとおり、2002年の改正に際しては、従来の過分性要件、つまり実体的な要件、規制に代えて、建替え決議のための集会に関する手続を整備するという改正が行われました。このような改正をもって、区分所有者の言わば自律的な決定を尊重するための手続的、プロセス的な規制へと転換が図られたのだという理解も示されているところです。このように、実体的な規制に代えて当事者の自律的な決定を尊重する、そのための手続を整備するという動きの背景には、恐らく当時の時代背景が存在したのだろうと思います。   こうした2002年の改正を踏まえた上で今般の議論を眺めてみますと、第2回目の資料で示されていました、多数決割合を単純に例えば4分の3に引き下げるという案は、次に審議されます所在等不明区分所有者に関する提案なども併せて考えますと、当事者の自律的な決定を尊重する、そのための手続を整備する、こういう考え方を推し進めるものだと位置付けることができると思います。これに対して、本日示されている案ですと、α案あるいはβ−1案というのは、実体的なルール、規制もそこに組み合わせていこうとする方向を指向するものだと考えられます。   では、年数要件というのは何なのかということですけれども、先ほど来、そして第2回の会議でも示されていた理解というのは、年数要件を客観的な要件を明確化したものとして位置付けるという理解かと思います。本日の資料もそういう理解をベースに作成されているのではないかと私は理解をしました。そのような理解はもちろんあり得ると思うのですけれども、2002年の改正の際に余り意識されていなかった、少なくとも強調はされていなかった点として、今般の部会の審議においては、第1回の会議の審議でも示されていたとおり、二つの老いなるものにどのように対応するのかという点が重視されているところです。二つの老いという今の日本の社会が直面している状況を踏まえますと、やはりどうしても建替えを先送りにしたいとか、あるいは今のまま住み続けたいと、区分所有者は考える傾向があるのだろうと思いますので、そうした区分所有者の背中を叩いてやる、そっと押してやる、最近はやりの言葉ですとナッジをする、こういうようなルールとして年数要件を位置付けるということも十分可能ではないかと個人的には思っております。何十年かたったので、そろそろおたくの区分所有建物についても建替えを検討しないといけない時期ですよと背中を押してやるという意味で決議のハードルを下げるというのは規律の在り方として十分に考えられるのではないかと思います。   実体的な規制から2002年の改正で手続的な規制へと転換されたところ、更に自律だけを強調するのではなくて、少し公権的にサポートをする、そろそろ建替えを考えなさいよと区分所有者の肩を叩いてやるという観点から、区分所有法のルールが果たす役割を変化させていくとこともあり得るのではないかと個人的には考えます。そのように考えますと、建物が多様だから年数要件は望ましくないとは当然にはいえないのではないかと思います。以上のような観点から、本当に年数要件というものが採用できないのか少し検討してみていただければと感じた次第です。もちろん、実務上は年数要件には弊害が大きいという御判断もあろうかと思います。そうであれば、年数要件の導入を強く主張するものではありませんけれども、20年前の改正のときとは異なった観点を考慮に入れる必要はないかということを検討していただければと思い、一言申し述べさせていただきました。 ○佐久間部会長 今後きちんと参考にさせていただきます。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○紺野委員 すみません、貴重な時間。建替え要件の緩和については、私自身はB案でよろしいのではないかと思っております。先ほども年数の関係が出ていましたけれども、やはりそこに具体的なものを詰めていく必要があるのではないかということで、先ほどから意見が出ていますので、それはよろしいです。それで、あと一つ、何ページだったか、リノベーションの話、よろしいですか。 ○佐久間部会長 それは別のところですので。 ○紺野委員 それでは、それは後から。 ○佐久間部会長 後でお願いします。今のところはB案でよろしいと。 ○紺野委員 はい、個人的に。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。 ○武藤幹事 武藤でございます。今、吉政先生から頂いた話はごもっともだと思うのですけれども、別途、大桐委員の方から頂いた、耐用年数を参考に示すべきではないかというお話なのですけれども、若干よく考えなければとは思っておりまして、恐らくイメージされているのはRCとSRCの税法上の耐用年数が47年という、あるいは木造の22年という、そういったところなのかとも思うのですけれども、実態上、木造の区分所有建物というのはかなり珍しいと認識していまして、そういったことと、あと、我々は今、マンション長寿命化と申していまして、47年たてば除却して建て替えてくださいというようなことは政策上、申し上げていない状況です。そういった中で、そういう数字を何の注釈もなしに載せることについては、少しちゅうちょすべきではないかと思っています。   その上で、50年、60年、70年ということで事務的に示すということなのですけれども、もしかしたらその示すときに、なぜその50、60、70なのかということで示す必要があるのかと、そういうふうに思っているところではあります。一方で、逃げるわけではないのですが、大変申し訳ないのですけれども、現時点でその50、60、70という数字を政策的に意味を持たせることがにわかにはできかねるところがあって、これが先ほど来出ているような構造上の話なのか、陳腐化の話なのか、そして吉松先生がおっしゃるようなナッジの話なのか、その辺りを含めて、少し課題はあろうかというふうな認識を持っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。年数要件についてはいろいろな捉え方があるということ以上には、今のところまだ詰めた話にはなっておりません。年数要件は恐らく、この部会が始まる前の段階においては、それこそ2002年の改正のときには採られなかったものであるのだから、もう一度議論する必要はないのではないかという認識が比較的多かったのではないかと思います。現状なおその認識の方もたくさんおられるでしょうが、必ずしもそれとは違う観点から、吉政さんは正にそう明確におっしゃいましたし、陳腐化を問題にするというのも、言わばそのときとは少し違う考え方だということで考えましょうと、そういうことかと思います。耐用年数なのだという捉え方ももちろん、なおあるということかと思います。その辺は、まだここから議論、御意見を伺いますけれども、中間試案の提案として落とせということとまでなければ、この形で残しつつ、説明のところではいろいろな観点からの説明をすると。そして、御意見を公募するということになろうかと思います。ありがとうございました。 ○浅見委員 ありがとうございます。まず、この形でパブリック・コメントに出すということについては賛同いたします。その上で、私としてはAとBだとA案がいいのかなと思っているのですが、先ほどむしろ客観的事由のということで若干議論がございました。このαとかβとかいうのは、これある種、何らかの政省令ですとかに違反しているというようなことになると思いますので、こういう判断というのは、例えばなのですけれども、建築確認機関等がすることができるのかなと思うのです。政省令等に条例が含まれるかどうか、少し分からないのですけれども、条例も含めてもいいかもしれないと考えると、αとβ−1以外に記載可能かもしれないものとしては、それ以外の政省令若しくは条例に反しているもの、適合していないものというのも入れる余地はあるのかなと考えます。あと、先ほど裁判所が判断するのかというような話もあったのですが、もちろんそういうこともあり得ると思いますし、場合によっては建築確認機関というのをもう少し有効利用するという方法もあるのかなと思いました。   それから、年数要件なのですけれども、年数要件は、建物を客観的に判断するときは、どれだけ老朽化しているかということで、耐用年数というのは法律上のある種の位置付けとしてあるとは思うのですが、もう一つ、若干リファレンスとして可能かもしれないのは、定期借家等の考え方として、居住用の建物の場合は50年だとか、何かそういうのがあったと思うのですけれども、それも場合によってはリファレンスになり得るのかなと思いました。確か法律上は何十年以上という書き方をしていたので、それ以上の数字を設けるというのは、居住用建物ということを勘案したときに一つの論拠になり得るかなと思って、あえて少しコメントさせていただきました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○吉原委員 ありがとうございます。私もこの形でパブリック・コメントに諮ることに賛成いたします。一つ、ほかの委員の方に質問があるのですが、質問をしてもよろしいですか。 ○佐久間部会長 もちろんです。ただ、どの委員にというのをおっしゃっていただければ。 ○吉原委員 小林委員に質問なのですが、先ほど小林委員はB案に賛成だとおっしゃいました。 ○小林委員 A案と。 ○吉原委員 失礼しました、そうです、小林委員はA案で、紺野委員がB案とおっしゃいました。小林委員がA案だとおっしゃったのは私も大変賛同する点が多いのです。そして、一方で紺野委員がB案だとおっしゃった点について、現場の状況を熟知されているお立場から、なぜB案がよいとお考えか、少し教えていただけたらと思った次第です。 ○佐久間部会長 要するに、理屈が付くかどうかというのは取りあえず置いておいて、現場としてA案ではなくB案の方でいいのではないかという、そのことでよろしいですか。 ○吉原委員 はい。建替え決議の合意形成の難しさを一番知っていらっしゃるお立場で、しかしながら基本は現行の5分の4でいいと、そして客観的な事由がある場合には引き下げるということが妥当であるとお考えになる、その根拠を伺いたいと思いました。というのは、今回、5分の4とか4分の3とか議論していますけれども、なぜそれを引き下げるのかというところが一番大事だと思っております。なぜ引下げが必要なのか、そして、引き下げることで引下げが必要だと思われる背景にある事象にきちんと対応できるのかというところがきちんとつながっていないと、数を引き下げても現場での解決にはつながらないと思いますので、そうした問題意識から、なぜB案に今のところ賛同なさったのか、少し教えていただければと思った次第です。 ○佐久間部会長 よろしければ紺野さん、お願いいたします。 ○紺野委員 私自身として感じているのは、この建替え要件、建替えするということが本当に管理組合としていいのかどうかという選択肢がまずあるのです、実際の現場としては。これだけの建物があって、建替えができているマンションというのは数少ない。何かというと、やはり合意形成のところで引っ掛かってきているので、それを崩すというか、要件を、ただ多数決要件だけで絞られていいのかというところが確かに御指摘のようにあるのですが、片や管理組合としては一番出てきているのが建替えで、今のところ除却の問題とか、建替えするときは税金の問題とか、いろいろ出てきているのです。それで、ここのところで一番申し上げたいのはやはり、現状維持していても、それでもあとは賛成派というのはやはりあるのです。その地域、全管連の立場としては、これに反対では、現在の位置で行けよとか、そういうのもあるのですけれども、あとは、ここら辺でいっている除却の問題とかを含めて、建替え決議というのを何とかスムーズに行かせたいというようなところもあるものですから、その中間がベストというか、なのかなという、単純にそれだけです、今のところは、考え方。ここは非常に、ですから何とも言えない、中途半端な部分があるかもしれませんけれども、そういう意味でのB案ということで申し上げているだけです、今のところは。   あと、年数制限とかありますけれども、そこも先ほど武藤さんからのお話もありました技術的な問題と、あと社会的な問題、ハード、ソフトの組合せの問題があるので、本当にそこの年数をどの基準に持っていったらいいのかというところの絡みもありますので、ただばさばさと切るのではなくて、やはりマトリックスになっていると思いますので、選択肢を多くしておくというのも一つの考え方かもしれません。そういう意味でB案ということで申し上げているだけです、私は。申し訳ございません。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○能登委員 ありがとうございます。紺野委員と立場は違いますけれども、現場におります担当者として、今一度発言をさせていただきたいと思います。まず、示されている案につきましてはA案に賛成したいと思っております。前回も申し上げましたが、単純に決議のハードルを下げていただきたいという主張をしておりますが、その理由は、建替え反対者による、例えば1票買い増すといった阻害行為が、議決権割合が5分の4以上の場合には影響が大きいということです。おおよそ79%とか78%の方が建替えに賛成をされていた場合でも、そういった阻害行為により決議は成立せず、建替えが進みません。この場合は、建替えについての賛成者が多いため、大規模修繕などの方にかじを切るということもできず、再生が止まってしまうという実態になっております。今回の区分所有法の改正が、マンション再生を円滑にする趣旨で進めているというところを考えますと、皆さんの建替えや大規模修繕、再生についての意思を尊重するためには、客観的事由がない場合でも、一律の引下げをしていただくのがよろしいかと考えております。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。阻害行為の影響力を小さくするというお話だったと思うのですけれども、その阻害行為というのは、建替えを是とするという立場に立てば阻害行為だと思うのですが、そもそも建替えを是とするかどうかが問題となっているかと思います。客観的事由というのは、このような事由があれば基本的に建替えを、無条件でオーケーではないのだけれども、是としてよいように思われるだろうということで、要件を引き下げる場合に、そういう理屈が立つと思うのです。それに対して、このような客観的事由がない場合に、その阻害行為というある種の評価をされているところはなぜかということが分かれば、あるいは、それが一般的ではなくて、やはりそこで阻害行為とおっしゃるのは、ある種の状況下における建替えをするかどうかの選択のところなのだということなのか、多分、吉原さんがお聞きになろうとしたのはそういうことが入っているのではないかと思うのですが、それについては何か御示唆いただけることはありますか。つまり、もう一切の状況に関係なく単純に、前提条件なく建て替えられた方がいいのだという考え方もあり得るけれども、そうではなくて、こういう状況では建替えが選択肢の一つとして容易に上ってきていいはずだとして、ではそれはどういう状況なのかということをお示しいただけますと、客観的要件としていま挙げているもので十分なのか、もっと別のものを加える、あるいはほかの考え方を採るのかということを考えるのに役に立つと思うのですが、その点、お答えいただけたらで結構ですが、いかがですか。   1票足りないというときに、その1票足りないのがどうして問題なのかということですね、平たく言うと。1票足りない、ああ、そうですかで終わることだってできる、そういう状況だってあるのではないか。それで終わってはいけないというのはどういう場合なのかということ、恐らくこれは最後までよく考えなければいけないところだと思うのですけれども。これは能登さんだけに聞いて、能登さんに答えろと言っているわけではなくて、全員が考えなければいけないことだと思うのです。   最終的にはパブリック・コメントに掛けて、多くの方が賛同されるのだったら、そこから見えてくるものもあると思うのですけれども、パブコメに掛けるために中間試案を出す立場からすると、ある程度のことを見通してやはり出せた方がよろしいかと思うので、能登さん、あればで結構ですし、今特になければ、それで結構です。今のところよろしいですかね。 ○能登委員 そうですね、今一度少し整理はしてみたいと思いますが再生へのかじを切り切れずに止まってしまっているということが現場としては起きている。なぜ止まっているかというと、8割近くの方が賛成しているけれども1票足りなくて建替え決議が成立しないからです。 ○佐久間部会長 そこで伺いたいのが、その再生のかじを切った方がいいという御判断が恐らく先行してあって、その先行した判断はどういう状況で出てきているのかということが分かれば、すごく助かるということです。 ○能登委員 それが今回の客観事由だけで足りるのか足りないのか。 ○佐久間部会長 足りないとしたら、もっとこういう状況というのを何か御示唆いただけることがあれば。これだけで足りると断言できる人は多分いないとは思うのですけれども、あくまで最たる事由だという程度のことだと思うのです。個別に書き切ることができないものはこの外側にたくさんある、そういうのも含めると、そちらを逃さないために、必要がないかなと思われるものも含まれてくるかもしれないけれども、一般的に4分の3に下げるというのはあり得るのではないかとは、理屈の話ですけれども、思うところですが。やはりA案がいいとおっしゃるのは、今、客観的事由として挙がっている場合について3分の2に下げるかは置いておきまして、4分の3まで下げた方がいい場合については、少なくとも今客観的事由に挙がっているところだけでは足りないのではないかという認識がおありだということですか。 ○能登委員 はい。それがどういう理屈かというところは、今一度整理して、改めて発言させていただきたいと存じます。 ○佐久間部会長 理屈は置いておきまして、4分の3程度で建て替えられた方がいいのだというのがこのα案、β−1ですか、これだけでは少しというふうな御認識があるのかなと。   小林さん、先ほど何か。 ○小林委員 直接求められていることの答えになっているのかどうか分からないのですけれども、たまたま私が承知している事例、これは前にも申し上げたことがあるのですけれども、東京23区内の旧公団の分譲の団地の建替えで、十数棟あったわけなのです。全体としては80%台の後半まで賛成が得られているのですけれども、棟別要件のところで二度失敗していると。正確に言うと三度失敗しているのです。三度目は、決議がどうしても無理そうなのでといって流して、4回目で通ったと、それだけで数年余分に掛かってしまった事案なのですけれども、これはある意味、今回の別のところで分母から外すというところで救済されることにはなるのだろうと思うのですけれども、とにかく一つのコミュニティーになっていますので、賛成する立場の人と反対する立場の人が、かなり多数派工作というか、せめぎ合うわけです。そうなると、たまたまその棟別要件がクリアできなかったというのは、階段があって、その両側に住戸が並んでいるようなタイプなのですけれども、4階建てだったのだと思いますけれども、1棟の中に二つとか三つとか階段があるわけなのです。大体階段の内部でコミュニティーが濃密になりますので、その中に1人、強烈な反対の人がいると、同じ階段の周りの方を説得するわけです。コミュニティーになっているものですから、自分は本当は賛成なのだけれども、あの人があれだけ強力に説得して回っているので、なかなかそれに反するような意思表示を総会のときにしにくかったということで、白票だか棄権だかをされたということで、1票とか2票とか差で駄目だったというケースがありまして、これが阻害行為といえるかどうかというのは微妙なところだと思うのですけれども、立場によって確かに違って見えるところがあるのですけれども、非常にやはり多数派工作に励むと、特に反対の方は強く励まれるということがあるのは事実ではないかという気がいたします。 ○佐久間部会長 もし差し支えなければ、先ほど紺野さんに後でと申し上げたところなのですが、一棟リノベーションと配管の全面更新も、これで建替え要件について話を終えろということではないのですけれども、そちらもあれば。 ○大桐委員 一棟リノベに関して、賛成なのですけれども、従前も少し発言させていただいた論点になるかと思いますが、既存不適格状態の延長になる点についての懸念について、今回の資料では触れられていなかったので、その点を付記していただくことが望ましいかなと思うのとともに、既に建築基準法や行政の方で対応済みなことがあった場合には、それも書いていただくと有り難いですし、なければ、それについても別途対策が検討されるとか、何かそんなような記載があるといいのかなと思った次第です。 ○大谷幹事 大桐委員に今お伺いしたかったのは、既存不適格のことに関して前回、部会資料2では少し、一棟リノベーション工事の意義として、既存不適格であっても場合によっては更新ができるといったようなことを書いたような記憶でございますけれども、今おっしゃったのは、既存不適格との関係でどういうことを指摘すべきだというような御意見だったでしょうか。 ○大桐委員 周りの方々からすると、もうすぐそのマンションは建替えになるだろうからと期待していたところ、建替えはされずに同等の面積で、今の法律には見合わない状態のままのものが維持されてしまうというところが少し懸念として、私の中で疑問点としてあるのですけれども、その点について従前、大谷さんから御説明いただいたかと思うのですけれども、建築基準法においては問題がなく進められるみたいなお話を頂いたような記憶がありまして、そうであれば、それも書いていただけると有り難いと思った次第です。あるいは、全てがカバーされているわけではないとなりますと、別途何かそこは対策が練られた方がいいのではないかとも思いますので、そういった懸念点を触れていただければと思ったという意味です。 ○大谷幹事 一棟リノベーション工事の意義として、既存不適格であっても場合によっては更新ができる一方で、必ず更新が既存不適格の状態で維持できるかというと、そういうわけでもなくて、それは別途、建築基準法に照らして、一棟リノベーションの内容が実質的にはこれは不適当だとなってしまう場合もあって、それは民事のルールとはまた違うところで、結局のところ現在の基準に合ったものでなければ建ちませんということもあり得る、したがって、一棟リノベーションが決議されたところでその内容では工事ができないということもあり得るということかなと思っておりまして、その辺りのことをまた書き方を工夫をさせていただければと思います。ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほか、いかがでしょうか。 ○紺野委員 ありがとうございます。まず、一棟リノベーションなのですが、私どもでは分譲マンションで、今現在あるというようなデータが、手持ちがないものですから、これを今後やっていくためには、やはり何か調査とかした上での提案になってくのではないかなという部分があるのです。例えば、先ほどの不適のやつは、例えば建物の用途変更した場合には、必ず元に戻らなくてはというか、建築確認申請から全部、手続論でやっていかなければいけないわけですけれども、そのまま専用住宅から住居という形が今後出てくるのではないかというところで、コストがどのくらい掛かるのかという話が我々の仲間として出ておるので、何かデータがあればなと思っております。 ○大谷幹事 一棟リノベーション工事につきましては、これはこの法制審議会の前の段階でされていた研究会の中でも少し議論がされたところです。現行法では専有部分の全てに工事を行うようなパターンの工事は、全員同意が必要なので、できない。そのため、実態がどうあるかということは把握のしようがないところでありますけれども、しかしそういう工事も可能にしてほしいという御要望があり、それは建替え決議とそれほど変わらないはずなのに、建替え決議は多数決でできるのに、一棟リノベーションは全員同意がないとできないというアンバランスに問題があるということから、こういう議論をされてきたところでございます。   なかなか、どれぐらいの費用が掛かるかというのも、個々の区分所有建物次第のところがあって、それが何か公的にお示しできるものがあるかというと、それは申し訳ないですけれども、なかなかございません。基本的な考え方としては、一棟リノベーションを皆さんがやりたいと思っているのにかかわらず、全員同意が必要という現行法のルールのせいでできないのは困るので緩和するという観点から、新しい更新方法、メニューを増やすという意味で、可能なところでは多数決による一棟リノベーション工事もできるとしていいのではないかという提案になっています。 ○紺野委員 分かりました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○齊藤委員 ありがとうございます。一棟リノベーションについて、御説明がありましたように、これから建替えが難しい、先ほども議論がありましたように、非常に建替えは難しいというのが現実ではないかと思います。そういう意味では、敷地の売却をしていくとか、一棟リノベーションするというメニューをしっかり増やしていくというのは非常に重要なことだと思いますので、建替えと同じように多数決でできるという道を開いていくのは大変重要ではないかと思います。   先ほど御心配があった、既存不適格のマンションの場合に、一棟リノベーションするときに建築確認を出しますから、そこで行政のチェックを受けるという理解でよろしいのでしょうか。よって、とてもとんでもないものが出来上がることはない。それは建築確認という行為があるのでということを、皆さんの御懸念になるかもしれませんので、これを明確にしておいたほうが良いと思います。そして、一棟リノベーション、多分ここで想定されているのは、専有部分を全部触るということになると、かなりの費用が掛かるということでは、決議要件だけではなくて、様々な1棟リノベーションを可能とする体制が必要で、例えば事業法的なものも要るし、借家人の取り扱いをどうするのか、という点も含めてトータルで法整備するということを考えていくという前提の中で進めていくのがよろしいのではないかと考えます。状況によっては売渡し請求も生まれてくるのでしょうか、ということも一緒に考え、整備することが必要です。決議するはゴールではなく、いつも私は言いますが、決議は飽くまでスタートでございますから、そのスタートをどういう体制で迎えるのか、事業を円滑に進めるための体制の法整備を一緒にしていくのかということも補足説明のところにあった方がいいのかなと思いました。   それと、一棟リノベーションの後ろの配管のところも今発言でしょうか、後でしょうか。 ○佐久間部会長 お願いします。 ○齊藤委員 こちらの配管の全面更新の話について、私はこのテーマに関して前回の発言の際に、標準管理規約で書いていただいているので、法律の中で規定する必要はないのではないかという趣旨の発言をいたしました。法律でいろいろなこと書くよりも標準管理規約の整備で現実に問題ないのであればという趣旨で発言をいたしましたが、その後、私もいろいろ勉強して、これに関するトラブルがあるという理解をいたしましたので、法的にきちんと裏付けがあった方がよろしいのではないかと思います。私の理解が不十分なのかもしれませんが、この資料の7ページ、8ページに書いてあることは、標準管理規約で書かれている考え方で、専有部分だけれども管理組合がやっていいよということ、それから修繕積立金を使えるよと、あらかじめ配管を取り替えたような人たちにはきちんとお金を考慮しますよという趣旨であるということでよろしいでしょうか。ここの書きぶりが、よく見ていると、そういう工事をするときに専有部分に入るけれども、いいかどうかみたいなことを議論しているようにも見えたのですが、標準管理規約の内容を法的に整備するという理解でよいでしょうか。 ○大谷幹事 ここの、専有部分の使用を伴うという表現が、立入りだけしかできないのではないかと読めるというのは、恐らくそうだと思いまして、ここの書き方はもう少し考えないといけないと思っております。ありがとうございます。   基本的な考え方は今、齊藤委員がおっしゃったとおりで、配管の工事をするというときに、専有部分に入って専有部分の配管の工事も普通決議でできるというようなルールをあらかじめ規約で定めておくことによって、可能にするという趣旨で、前回、配管のことだけを取り上げて、取りあえず御議論を頂きましたけれども、配管だけが問題ではないのかもしれないと。資料では配電盤とかも書きましたけれども、様々なライフラインに関係するようなことというのはいろいろな場合がありそうです。標準管理規約を法律上明確化するというだけではなくて、更に一歩進め、専有部分の工事を伴う共用部分の変更行為について現行の標準管理規約にあるわけではないと思いますので、そういったことも含めてできるようにするという、新しい提案になってございます。 ○齊藤委員 分かりました。そうしますと、誤解があってはいけないので確認ですけれども、例えば共用部分を修繕するときに専有部分に入るのに、規約できちんと定めが要りますよという意味ではないですよね、例えば大規模修繕するときにベランダの防水工事をする際には各住戸からベランダに入らせていただきますよね、それで修繕するというのは大規模修繕ですので、過半数の決議で皆さんそうやっています。耐震補強するときもお部屋の中に入っていってベランダに行かせていただくという、これも大規模修繕時に行うケースがあります。耐震補強の仕方によっては過半数決議でも可能となりますので、規約に別段の定めがなくても実際やっていると思うのですけれども、私の理解が不十分で申し訳ないですが、そういうふうに、この書き方が今やっていることができなくなるように読めてしまうということがあったので、確認しておりますが、この部分は、標準管理規約で書かれていることを法律でバックアップするという理解でよろしいでしょうかという確認です。 ○大谷幹事 少し確認させていただきたいのですけれども、現行で専有部分の立入りが必要なことを集会の決議で決めましたというときに、それは本人の同意がなくても勝手に入っていくということは許されるのでしょうか。勝手にというか無理やり入っていくということが、現行法のルールでは多分できないのではないかと。 ○齊藤委員 なるほどです。そうしますと、大規模修繕するときに、集会で皆様に大規模修繕の御理解いただきました。この工事に関しては、例えば各住戸に入ってやることもありますよということがあらかじめ言われているからという意味で、それは規約に書いていなくても、集会できちんと皆さんに御承諾を得ているという理解であるということですね。 ○大谷幹事 だと思われます。 ○齊藤委員 勝手には入っていないですけれども、ということですね。だから、工事でそういうことがあり得ますよということで、無駄に入っていっているわけではないということですね。ただ、現状でできていることが制約されるわけではないということですね。 ○大谷幹事 はい、そうです。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○矢吹幹事 一棟リノベーションのところで少し建築法制等のお話がありましたので、少しコメントいたします。建築確認が要るかどうかは結局、行う工事の中身によってとか、その程度によって違うのだと思うので、画一的に語れないところはどうしてもあるのですけれども、仮に建築確認が入るような工事をするのであれば、その時点で既存不適格というのは明らかにされるということだと思います。   もう一つが、区分所有法制の中でこういう議論が出てきていますので、行政法のサイドでもどういうふうな検討をする必要があるかということを考え始めているということであります。具体的には、事業法のようなものを、例えば一棟リノベーションを円滑にするためにも、何らかの手続を行政法の方で定めた方がよいのではないかと今のところは思っておりますけれども、そういうことを考えていく過程で、例えば、リノベーション工事を円滑にするために何らか行政庁の認可が要ると、計画を作って行政庁の認可を得るということになれば、その中の判断要素の一つとして建築規制との関係というのを見ることもできるのかもしれないと思っています。今の段階で確たるものを持っているわけでありませんけれども、そういう手当てもパッケージとしてできるかなと考えています。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。この資料に関しまして、問い方の話としてですけれども、中間試案でパブリック・コメントに付すときにはこのような方向で基本的にはよろしいということで御異論はなかったというふうに、今日はまとめさせていただければと思います。   本当はここで休憩のはずだったのですけれども、少し時間が押しておりますので、申し訳ありませんが、休憩を挟まずに、部会資料13、集会決議の円滑化等の、これも中間試案に向けてということの審議をお願いしたいと存じます。三つほどの項目に分かれておりますけれども、どこからでも結構でございますので、御意見を頂ければと存じます。どこからでもと言われても困るというのだったら、前から言っていただいたらよろしいのですが。 ○小林委員 ありがとうございます。私は、これは1、2、3と三つに分かれて、第2の方もですか。 ○佐久間部会長 とにかく全部で結構です、どこでも。 ○小林委員 第1に関して申し上げますと、1も2も3も、ここの記述に特段異論ありませんで、このとおりでいいのではないかと思っています。   それから、第2の共用部分の変更決議につきましては、建替えの場合とのバランスもありますので、多数決割合を私は緩和するという立場ですので、多数決割合を緩和することが適当だろうと思っています。9ページの13行目から17行目ですか、もっともというところで、様々なものがあり得るため、客観的事由を適切に網羅できているかどうか確認する必要があるという御指摘があったというようなことがありますが、確かに共用部分の変更にはいろいろなパターン、あるいはいろいろなタイプのものがあり得ます。これらは、やはり実際に住み始めて生活を始めて初めて不便などの問題があるということが認識されるようなものが多く含まれているのではないかと思いますので、それゆえになおさら、客観的事由がなくても一般的に緩和するということが必要ではないかと思います。そういうことで、建築後一定年数が経過することによって、特段α案のような事由がなくても、必要性が出てくることは十分あり得ると考えます。したがいまして、A案プラスαプラスβ案、30年くらいかなと思いますけれども、これがいいのではないかと思っております。   それから、第3の区分所有者の責務のところですけれども、これについてもいろいろ議論がありましたけれども、私はプログラム規定でいいので、このような責務規定を置くことが必要だろうと思います。民事法になじみにくいという議論も当然理解できるのですけれども、しかし、この11ページの2のところで記載されていますけれども、区分所有権というのは、やはり一般の所有権とはその性質が異なる面というのは多分にありますので、規定はあった方がいいだろうと考えております。   それから、すみません、第1の方で言い忘れたのですけれども、5ページの12行目以降のところに議案の要領を示す話が出てきます。これは、(1)の最後のところで記述されていますように、実務上は通常、招集通知において議案そのものが示されることが多いのではないかと思いますし、招集する以上、事前に理事会などで議案について十分検討されているはずですので、示すということを義務化しても問題はないと考えます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○鎌野委員 少し長くなるかも分かりませんけれども、お許しいただきたいと思います。まず、集会決議の円滑化ということで、1の所在等不明区分所有者を集会の決議の母数から除外する仕組みということは、この御提案のとおりでよろしいかと思います。そして、出席者の多数決による決議を可能とする仕組みということで、定足数の要否とか割合については引き続き検討ということで、それはそれでお任せをしますけれども、少し私の意見を申し上げさせていただきたいと思います。   もう言うまでもないことですけれども、会社法の309条で、会社と管理組合とは違いますけれども、そこでは過半数の定足数を設けて出席者の過半数という立て付けをとっているということで、そうすると、これは事実の問題なので、この辺りは実務に詳しい方に、場合によってはそうではないよということを教えていただきたいのですけれども、実態としては恐らく、出席者、これは当然、区分所有法の定めにあるように、書面による議決権行使とか委任状と、多くは多分、議長委任とか理事長委任とかということで相当数、委任状を取っていて、そういった意味では普通の管理組合ですと、この定足数というのは満たすというようなことで、そうすると過半数の定足数を要するということにしてもいいのかなと。   ただ、ここでの御懸念は、こういう定足数を設けると定足数に満たない、そういった場合も生ずると、それはもっともな御懸念だと思います。ここで、これは少し突拍子もないことを言うかもしれませんけれども、前に少しお話をさせていただいたかもしれませんけれども、ドイツでは2020年の改正で定足数を撤廃したのです。やはりそれなりの理由があったということで、日本とは事情が違いますけれども、定足数を定めると定足数を満たさない場合があるというような、そういう事態、そういうのも今後は十分想定されると。そこで、基本的には定足数を設けた上で、会社法などに倣って、そして、これはやはり過半数の定足数を設けることによって一定の正当化、すなわち、それだけの過半数の定足数の下で出席者が決定をしたのだから、それに服すると。そして、欠席者に対しても、先ほどお話があったように、議案の要領まで示していて、それで出席しますかどうかというようなことで、出てこない人はそういう出席者の決定に服するというようなことで正当化できるのではないかと。   ですけれども、処分の場面では出席者の多数決ではないので、余り問題にする必要はないのです。すなわち、建替えとか、いわゆる建物敷地売却の場面です。問題は管理とか変更の場合です。そうすると、これは一つ前の、もうドイツでは改正されてしまったのですけれども、改正前のドイツ法では、一定の定足数を設けたけれども満たさないというような場合には、管理者は、今度は定足数なしで、同じ議題について一定の期間後に招集ができる。ドイツの一つ前の立法例ですけれども、そういう在り方もあるのではないかと。かなりドラスティックなことかもしれませんけれども、最初に定足数を一応は設けるけれども、仮に定足数を満たさない場合には、管理者の権限として再招集権と、そしてそれは定足数なしというようなことがあるので、そういうものももし御検討いただけるのなら検討していただければと思います。   それで、具体的な中身ですけれども、4ページのところに、どういうものが出席者及び議決権の一定の多数で決するのかということで、アからエまでありますけれども、基本的には私はどれもこれの出席者の多数ですることに賛成です。これは大きな特徴としては、もう要するに現行法では普通決議の場合だけ規約の定めをすればということなのだけれども、法定して、もう規約の定めを要せずに、とにかく出席者で決められるのだと、そしてその正当化の理由は先ほど申し上げたとおりです。当然その出席者の中には書面による議決権行使とか、いわゆる代理人、委任状ですね、そういうものを含むというようなことで、そうすると、このアからエまで、そういうことでよろしいのかなということです。   その上で、少しこれはお伺いしたいのですけれども、第2の方の共用部分の変更決議の多数決要件の緩和、17条1項関連のものですけれども、お手元の資料の8ページのところに、これは前に第3回の議論のところで、8ページの27行目のウのところで、共用部分の変更決議の円滑化は出席者の多数による決議を可能とする仕組みを創設することで足りるといったものであると、そういう意見が出されたということ、それとの関連で、先ほどの出席者の多数決でということで、多分共用部分の変更決議などは出席者の4分の3ということになるでしょうけれども、それとの関連で、そうすると、この第2のところの変更決議要件の緩和というのはそういう前提なのか、あるいはそうではなくて、もうここでは現行の4分の3を3分の2にすることなのかというようなことで、これは根本的な疑問ですので、その点をまず質問させていただきたいと思います。   それから、もう一つ、質問ばかりで申し訳ないのですけれども、客観的な要件の中でのα案、Aの7ページです。α案のところにア、イ、ウというのがありますけれども、エは別ですけれども、ア、イ、ウというのは、この場合には更に引き下げるということでしょうけれども、アとかイとかウというのは、見方によっては、これは保存行為ではないかと、したがって、決議不要なのではないかというような考えはあり得ないのかということです。もちろんここでは政省令の基準というようなことで、それと保存行為というのが一致するわけではないのですけれども、基本的にこういう要件に適合しないというのは保存行為と考えることもできるのではないかということで、その辺りも少しお教えいただければと思います。   総じて言えば、私のこの第2のところは、第1のところの出席者の多数による決議を可能とする仕組みということで、先ほどお示しをした8ページの27のウのところのあれで、それで足りるのではないかと、わざわざこういった独自の17条1項についての引下げというのは必要ではないのではないかと考えております。   責務のところについては、後でまた何かあれば発言をさせていただきたい。 ○大谷幹事 ありがとうございます。1点目は、以前の会議で8ページの27行目のウのような意見があったことに関して、多数決による決議を可能とする仕組みとの関係についての御質問がございました。出席者の多数決による決議を可能とする仕組みに関しましては4ページで取り上げているとおりですが、(1)のアからエまであるわけですけれども、前回の議論ではアだけを対象とすべきだという御意見もありました。それも一つの考え方だろうということで、パブリック・コメントに付すこととしてはどうかという形でお示しをしております。その意味では、多数決による決議を可能とする仕組みの対象として変更決議が入るかどうかというのは、これから更に検討を深める必要があるだろうと。その上で、共用部分の変更決議の多数決要件の緩和につきましては、これは論理的には出席者の多数決による決議を可能とした上で、なお割合を下げるということもあり得るのだろうと思いますけれども、それもあり得るものとしてお示しをしているつもりでございます。   2点目の、客観的事由のα案のア、イ、ウが保存行為に当たるのではないかというのは、あるいはそういうこともあるかもしれません。今回少し部会資料でもお書きしましたが、ア、イ、ウ、エで示したような事情を客観的事由として取り上げることが適当かどうかということもこの際、御審議を頂きたいと思っております。ここで書いてありますが、建替えが相当であると考えられる類型についての厳しい要件を変更決議の要件とすることで、既にミスマッチな感じになっていますけれども、今、鎌野委員がおっしゃったような、そもそもこれは変更決議が要らないようなものも含まれてしまっていないかということもあろうかと思います。ですので、パブリック・コメントに付すに際して、このα案というのをこういう形で出すのがいいのかも含めて御議論を頂ければと思います。 ○佐久間部会長 今、大谷さんがおっしゃったとおりなのですけれども、先ほど小林さんが、建替えのところでは年数要件は反対でいらしたのに、変更のところでは年数要件を入れてもいいのではないかという立場で御発言をなさったところに表れていると思うのですが、今の資料の作りはこれまでの資料と同じ作り方で、建替えとの整合性というか、建替えがこうだから、変更について同じように考えを及ぼせばこうだねと、今のところはなっています。ただ、本当にそれがいいのかどうかということが問題でありまして、鎌野さんがおっしゃって、大谷さんもそのとおりとおっしゃった、保存に当たるものについてはかえって要件が加重されることにもなりますし、また、ア、イ、ウですと、むしろ変更なんかせずに、というか、変更を容易にするのではなくて、もう建て替えた方がいいというものだってあり得るところ、変更を容易にすると、本来望ましい建替えを阻害するということもあり得る。そういうことも考えなければいけませんし、さらには、建替えについてはどんな建物でも建て替えた方がいいですね、なんていうことを言った場合に、うんとおっしゃる方は恐らくいないと思うのですけれども、変更については、全てとまではいわないけれども、それなりに多数の人が現状の変更を望んでいるのであれば、そのまま住み続けるに当たっては、その方がやはり望ましいのではないかという一般的な考え方も成り立つ可能性があると。そういうところから、今のところは旧来というか、これまでの議論を踏まえて、このような提案になっているのですけれども、このまま中間試案としてパブリック・コメントに諮ってもよろしいですけれども、いっそのこと客観的事由は絞り込んだらどうかとかというふうな御意見もあれば、伺えればと思います。   その上で、少し戻って恐縮なのですが、鎌野さんがおっしゃったことで、定足数要件について、ドイツの一つ前の立法に倣ったらどうかと承ったのですが、それがドイツでは変わったわけですよね。その変わったことを踏まえず、一つ前のものを提案するということには、それだけを聞くと、ややちゅうちょを覚えるのですけれども。どうしてドイツは変わったのか、それと、その変更された事情が我が国では必ずしもとる必要がないとお考えなのはなぜかということを、御教示いただければと思うのですが。 ○鎌野委員 私の調査したところによると、立法担当者にもドイツでヒアリングをしたのですけれども、その理由は、定足数を設けていたけれども、結局実際には集まらなかったと。ドイツの方では基本的には管理者管理というか、管理会社が管理者である。区分所有者というのはどちらかというと無関心層が多いというようなことで、そうすると、定足数を設けていたのだけれども、その定足数が満たさないと。ただ、極端な場合には1人でも2人でも出席すれば、そこで決めていいと改正されたのですね。そして、もう一つの理由は、恐らく管理会社などの都合でしょうけれども、以前のように一応集会の招集通知を出して、そして定足数に満たなかったらもう1回というのは、言わば管理者の側にとっても、2回やらなくてはいけないし、区分所有者にとっても2回、そういった意味では、定足数に満たないのだけれども、結局は流会になったのだけれども、それに出席しなくてはいけない、そして、一定の期間後にまたそれに出席しなくてはいけないというようなことはやはり効率的ではないだろうと、そうするといっそのこと、そういうドイツの状況なら、もう定足数は一切撤廃しましょうというようなことなのです。   日本では、先ほど申し上げたように、これは関係の方にお伺いしたいのですけれども、一般的な区分所有建物というかマンションでは、委任状などによって、かなりそういった意味では定足数を満たしているのではないかというようなことで、そこは少しドイツとは事情が違うのかなというようなことです。   飽くまでも、先生がおっしゃったように、一つ前のものを持ってくるのはいかがなものかということはありますけれども、日本のそういう現状を踏まえて、あるいは会社法の規定などを踏まえて、それから、更に過半数の定足数ぐらいはということで、そこで決めたのだというようなことで、それを一応残した上でという、そういう立法の在り方もあるのかなということで、先ほど少し提案させていただいた次第です。御検討いただきありがとうございます。 ○佐久間部会長 私も、ドイツの一つ前のだと単なる二度手間になるのではないかと思ったものですから。というのは、鎌野さんがおっしゃったように、多くの場合は定足数をわざわざ定めなくたって、ある程度の人数が集まって、そこで議決されるのだけれども、定足数が定められたら、それを上回らせることは困難だし、事実上不可能だと分かっているときも、一回招集通知を出して、「はい、集まりませんでした。もう一回。」というのはどうかなと素朴に思ったものですから、伺った次第です。特にいい、悪いの問題ではなくて。ありがとうございます。   どの点でも結構です、いかがでしょうか。   では、紺野さん、齊藤さん。矢吹さん、今の関係ですか。 ○矢吹幹事 今の。 ○佐久間部会長 では、すみません、矢吹さんにまずお願いいたします。 ○矢吹幹事 定足数の関係で鎌野先生がおっしゃったことで、少し我々も心配というか、定量的に分かっているわけではないのですけれども、恐らく普通のマンション、市街地に建っているようなマンションであれば、何らか委任状なのか議決権行使書なのかで大体満たしていると思うのですけれども、例えばですけれども、リゾートマンションのような、もう余り管理がなされていないようなマンションで、所有者も誰が持っているか、やや怪しいようなものも多分あるのだろうと思います。それが増えていくのではないのかということを少し心配もしていて、その中でも何とかそのマンションを再生したいと思う管理組合の方々がいらっしゃるときに、定足数の要件を満たせないがゆえに何も意思決定ができなくなるとなると、ややもったいないというか、残念だなという気がしますので、その点についても考慮する必要があるのかなということは少し思っているところではあります。それが一つです。   もう一点ですが、質問で、7ページの共用部分の変更の客観的要件のところなのですけれども、ア、イ、ウ、エとあるのですけれども、これは、書き方の問題かもしれないのですけれども、例えばアは、火災に関する安全性に係る建物ということになっていて、仮に議決権が引き下げられるとなったときに、その対象になる工事というのは、例えばアの区分所有建物であれば、この火災の安全性を回復する工事についてのみ議決権が引き下げられるという構成にするのか、例えばアの区分所有建物だとしても、全然関係ない省エネとか、そういうような改修工事までその議決権を引き下げるのかで、もたらす効果が違うと思うのですけれども、そこはどちらなのかというのが、この書いてある限りではやや分かりにくかったので、難しい問題だと思っているのですけれども、そこが少し気になりました。 ○大谷幹事 すみません、委員の方々が手を挙げておられますが、少し割り込ませていただいて、今御指摘があったところは、イメージとしては客観的事由をなくすための工事のためとは思っておりますが、それもうまく書けてはいないのだろうと思います。   少し御議論いただきたいと思っておりましたのは、補足説明の9ページの26行目以下の、こういう概括的な基準を立てる、この場合は、危ないもので、かつその危ないものを除去するための工事だという形で特定をしているわけですけれども、こういう形も一つの案として挙げるということもあり得るのではないかと事務局としては思ったわけですけれども、この辺りについても御議論いただければと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。α案でアの場合に、火災の安全性を高めるための工事もして、プラスアルファというのは、この際だからということでいいのかなと思いましたけれども、そのときに火災に対する安全性を高める工事をせずに、ほかのことだけやるというのは趣旨にはおよそ反しているし、結構ア、イ、ウ、エは難しいところがあるのは明らかだとは思うのですね。   それで、大谷さんの今の御要望で、9ページ、26行目からあるような、これはやや抽象的で、結局、後で争いはあり得ることはあり得るのだけれども、こちらは、例えば過半数まで下げるときだったらこれでいいのではないかというような御議論もあるかないか、伺えればと思います。   すみません、紺野さん、齊藤さん、そして大桐さんの順にお願いします。 ○紺野委員 ありがとうございます。ここのところで、1ページに書いてございますけれども、第1の1のところなのですが、所在等不明の母数からの排除という件、我々の団体としても議論百出でございまして、賛成とか反対とか、もう伯仲しております。反対者の主張というのはやはり基本的なもので、財産権や生存権を我々の団体の管理組合として奪っていいものかと、少数者の意見を取り入れていくということも必要ではないかと。特に、区分所有者個人が他の区分所有者の議決権を除外できることが本当にできるのだろうかと。手続上は裁判所の判定をもらうという話、これは建替えという前提でしょうけれども、これがほかの件にも影響するのではないかというような意見が出ております。他方、やはり賛成と、適正化に向かって新しくしていくということも意見は出ているのですけれども、管理の円滑化のためには必要だという意見も出ております。慎重に進める必要があるのではないかと。   それで、区分所有者が除外決定を受けるという場合も、ここでは書いていないですけれども、集会の決議を要するのではないかと、こういうところでの、ただ単に除外だからという裁判手続で、しかも管理者イコール理事長とか、いろいろな見方が出てきています。今度は結局、適正化法の改正で第三者管理とかいろいろ出てくると、いろいろな方がここにかんで、誘導型になっていく部分もあるのではないかと、それでトラブルの元になるのではないかということを危惧しております。ですから、そこのところの事業をしていくためにも、どうしていくのかというのが我々、やはり財産権を奪うということで、それで管理組合が訴えられる、管理者イコール理事長なのかと、いろいろなケースが今後ますます多様化していくのではないか。区分所有者が除外決定をするために必ず集会決議をして、こういうことがあるからということを明らかにして手続を進めてもらいたい。次の段階になるのか知りませんけれども、そういうところも検討していただきたい、考えていただきたいということを少し考え方として申し上げた次第でございます。 ○大谷幹事 今のところですけれども、区分所有法では管理者が選任されているとは限らないという問題があるのだろうと思います。そういう、管理者が選任されていないけれども、何か決議を取る必要がありますというときに、管理者だけがこの請求をできるとしていてはその意思決定がうまくいかないという趣旨で、他の区分所有者も申立権者としていいのではないかといった御提案をしております。   これは誤解のないように申し上げたいと思うのですけれども民法でも、物を共有している場合において、不明者がいるために全員同意の行為ができないときに、裁判所の決定を受けた上で、不明の共有者は同じように母数から除外して、全員同意が必要な行為もできるし、あるいは持分を失うような行為も可能だとされているところでございます。それを参考として、区分所有建物におきましても、共有状態に似たようなところがございますので、そういう仕組みを入れてはどうかと。その際に、今おっしゃったようにトラブルが起こるかもしれない、だからこそ裁判所の客観的な認定を経て、不明者であるということをきちんと認定していただいた上で、母数から除外をして意思決定を円滑化するという提案でございまして、何か不明の人から無理やり必ず所有権を奪いたいからとか、トラブルを起こすためにこういうことが悪用できるかというと、そういうことが少ないようなものとして御提案をしているというところでございます。 ○紺野委員 そこで、それを裁判所に手続を取るということも集会の決議ということ、これが我々現場レベルとしてやはり必要になってくる。ことに、ここが建替えばかりではなくて、いろいろな問題で、敷地売却とかいろいろ出てくると思うのです、今後いろいろな件で。この不明者というか、管理運営に全部出てくると思うのですが、そこら辺も含んでですね。 ○大谷幹事 例えばですけれども、区分所有者がたくさんの部屋を持っているかもしれませんし、あるいは小さな区分所有建物におきまして大きな割合を持っている方が所在不明になったと。それで、過半数を取ること自体ができない、その人が例えば過半数を持っているというときには、集会の決議が必要だとしたとしても、その集会の決議自体ができないということになります。ですので、不明区分所有者を除かないと意思決定ができない場合も含めて、管理ができるようにしようという仕組みをここで提案しているところでございます。 ○齊藤委員 ありがとうございます。資料の13の4ページのところ、出席者多数により決議を可能とする仕組みというところでございます。ということで、出席者多数で決議をしましょうということで、集会の決議の成立で、まずアの普通決議、これはもう現状でもできているところが多いので、問題ないのかなと思うのですが、その後ろですね、私、少し慎重になって考えてみました。普通決議が実際には議決権総数の半数を有する組合員が出席する総会において、出席組合員の議決権の過半数で決議(普通決議)されることから、総組合員の議決権総数の4分の1超の賛成により決議できてしまう。それに対して特別決議は今、組合員総数及び議決権総数の4分の3以上、75%で決議ということで、非常にその差が大きいことが、問題なのかなと現実的には思っております。   現在検討している出席者多数となると、管理の現場を御存じの方はご理解されていると思いますが、総会の委任状とか議決権行使書がどのくらい集まるかといったら、何もしないと多くて半分ぐらいでしょうか。多くは3、4割だと聞いております。その3、4割の状況から、何回も催促しますから、それで7割、8割まで持っていかれるのが現状だと思います。そうすると、1回のご案内でそれに反応し、委任状や議決権行使書を出した人も含めて出席者多数で物事を決めてしまうということになると、実態として非常に参加者が少ない中で物事を決めていくということにならないでしょうか。その点を危惧いたします。   決議は、いつも言いますが、ゴールではなくスタートだという意味からすると、多くの人が御納得して前に進んでいくということがいいのではないかということで、この後の共用部分の変更とも関わってきますが、大規模修繕も既にもう過半数でできていますので、出席者多数という方法をどんどん広げていく検討よりも、過半数決議でできることはどこまでなのだと、逆に4分の3以上要るものはこれなのだと、明確にめり張りをつける、言い換えますと過半数決議でできる範囲を明確にし、必要に応じて広げていく方が使いやすいのではないかと思います。これは管理組合の現場では、普通決議で行くのか、特別決議で行くのか、かなり微妙な運営になっていて、ある意味かなり慎重な判断をしていることから、ここまでは普通決議で大丈夫ですよと明確にすることで、運営がスムーズになっていくと考えます。   例えば、この後の議論ですが、イの共用部分の変更、これが少し分かりにくい概念になっています。復旧に関しては急いでいるから、これは出席者多数でもいいのかなという考え方もあります。しかし、規約の変更が本当にそれほど少ない参加者のもので決めてよいのだろうかということをいろいろ考えていきますと、先ほど申しましたように、普通に委任状と議決権行使書を集めるとそれほどたくさん回収できるわけではないということがありますので、参加者が少ないなかで決定を促進するのは民主的な運営を阻害するのではと危惧しているということです。   次の共用部分の変更との関係がありますので、7ページの方も一緒もコメントさせていただきたいと思います。マンションの現場でも分かりにくいのが、「共用部分の変更」とは何を指すのかということです。今こちらに書かれていることで、例えば、火災に関する安全性と書いてありますが、これも非常に難しいのですけれども、火災に対する安全性で建築基準法をクリアできていないから、もう1個階段を付けましょうというと、かなり大きなことになるので、これは共用部分の変更だと思いますが、2番目の外壁剥離してきて、これをきちんとしましょうと、これは普通の大規模修繕の外壁工事になるので、これは普通決議で行けるかと思います。給排水が劣化しているので取り替えましょうとなると、これも共用部分の変更ではなく、普通決議でされているのだと思います。4番目の、これに基づいて高齢者、障害者となったら、多分エレベーターを付けるとなったら、これは共用部分の変更で、特別決議なのかなと思いました。この書き方が、何の工事を指しているかによって大分違ってくるので、今みたいに既に普通決議でできていることもできなくなるという誤解を与えてはいけないと思います。   少し例に挙げましたが、マンションの工事でほかにどんなことをされているかというと、まず一番重要なのは耐震改修工事、耐震補強工事がありますので、それがここになぜ入っていないのかというのが基本的に疑問かなと思います。ほかの法律で決められているといっても、その法律がそのまま半永久的にあるかどうか分かりませんので、区分所有法の中で基本的に取り扱われた方がよいのかなと考えます。それから、最近よくあるのは、エントランスの形状を変える、例えば入り口をオートロックにする、です。この程度の工事だったら形状は変わらないのかもしれません。それから、機械式車庫がメンテナンスにすごく費用が掛かるので、これを取ってしまいましょうという工事。そのほかには、キッズルームがあってよかったね、だけれども、入居して10年たったら誰も使わないから、コロナ禍で在宅勤務が進んできたのでシェアオフィスに変えようとかの工事です。この事例は、用途の変更です。形状の変更、用途の変更とか様々ある中で、共用部分の変更は今の原案では、判断が少し難しいかなと思います。   そして、先ほど部会長もおっしゃられたのですけれども、これは除却するときの基準ですから、この除却するときの基準があったら積極的に修繕しましょうというのも何かおかしい気もしますので、客観的要件を作るのであれば、内容を見直した方がいいということかと思います。では具体的にどう書けというのは、工事の例を挙げるとかがあります。しかし、そこにも難しさがありますが、原案は現場に合っていないという印象を受けております。 ○佐久間部会長 客観的事由に難しいところがあることは、繰り返しいろいろな方からおっしゃっていただいていることとして、難しければ書けないということになり、書かなかったらもうこれはA案にする、3分の2か過半数か分かりませんが、それで一律と。過半数になったら、要するに今の形状及び効用の著しい変更の場合は別ですよというルールをやめてしまって、変更一般、全部過半数とする。そういうこともあり得るところだとは思います。どうですかね、ア、イ、ウ、エ以外のものを、ばちっとこれで、というのはなかなか、中間試案までに皆さんに納得いただけるようなものが出せるのかどうかはよく分からないので、そういうところも含めてパブコメに掛けるということもあるのかもしれないとは思っております。   この後、大桐さんに伺いますが、齊藤さんに1点だけ伺いたいのですけれども。それは、出席者の多数決による決議を可能とする仕組みで、アはいいとして、イ以下についてはいかがなものか、簡単に出席者の多数決だけでやるというので、重要な事項について、それほど簡単でいいのかというふうなことをおっしゃったと思うのですが、その考え方と、それは反対なのですというふうにおっしゃったら、それまでなのですが、10ページにあります区分所有者の責務ですね。この区分所有者の責務の考え方からすると、委任状とか議決権行使書を出してください、もちろん集会への出席をしてくださいと求められているのに返事もよこさないという者は、恐らくこの責務に反しているわけで、そういう人について余り権利保護ということを考えなくてもいいというふうに流れる方向にあるのが、この第3ではないかと思うのです。けれど、そのようにはお考えならずに、やはり重大なものについては、責務はあるけれども面倒を見てやれと、そういうお考えでしょうか。いい、悪いの問題ではなくて。 ○齊藤委員 おっしゃるとおり、規約の変更も、多くの人が納得して規約を変更しないと規約を守ってもらえませんので、そういう意味では多くの人が納得できるということが重要だと考えているということです。 ○佐久間部会長 分かりました。 ○齊藤委員 何回も言いますが、決議が目的ではなく、決議はスタートだということです。 ○佐久間部会長 では、大桐さん、お願いいたします。お待たせしました。 ○大桐委員 ありがとうございます。まず、除外する仕組みについて、賛成ということなのですけれども、効力がいつ生じるかのところについて、せっかく2ページの16行目ですか、お書きいただいているので、これは(注)に上げた方がいいのではないかと、あるいはその基準日みたいなものを設けるかどうかも含めて、効力発生時点についての論点もあるよということでお書きいただいた方がいいかなと思いました。   それから、2番目の出席者の多数による仕組みにつきましては、私の意見としては従前申し上げているとおり、イ、ウ、エに関しては慎重にというか反対ということで考えております。   それから、第2の共用部分の変更については、皆様からも御発言がありましたとおり、少し分かりにくいと、一般の方も含めて、意見を書こうと思ったときに混乱するような気がしまして、まずは、ここでいっている共用部分の変更というのが形状又は効用の著しい変更のことをいうのであって、単なる変更ではないのだということを、定義を最初の方に書いていただいた上で、最初か(注)か分かりませんけれども、書いていただいた上で、補足説明はもちろん事務局さんにお任せなのですけれども、補足説明の冒頭においても、どんなものがコアな例として著しい変更に該当するのか、齊藤先生がおっしゃっていただいたような、変更に当たるものについて例をお示しした方が分かりやすいのではないかと思います。   それから、先ほど客観的事由のαに書かれているもののうち、場合によっては保存行為あるいは管理行為に当たるものなどが含まれているという御指摘がありましたけれども、そういった保存行為まで多数決要件が引き上げられてしまうということであるならば、それよりはむしろ、9ページの30行目にあるような、これの内容がいいかどうかは別としまして、こういうような書き方で行った方がいいかなと思い始めているところです。内容としては、法令に違反するようなものとか耐震補強が必要なものだとかというようなことを挙げた上で、ここに書いていただいているようなものを盛り込んだような客観的要件を定義付けるということが一つあり得るかなと思いました。具体的な文言までは考えてはいないのですけれども、イメージとしてはそのような感じのものがあるかなと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   御意見を伺っていて、客観的要件をこれ以上ブラッシュアップするのは余り生産的ではなくて、今、大桐さんから御指示を頂いた、また大谷さんも最初におっしゃった、ここを御意見いただきたいという9ページにあるような、こういう抽象的な文言によることで要件引下げの事由とすることはどうかというのも、ゴシックで中間試案で問う方がいいかもしれないですね。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○水津幹事 第1の1における財産管理人の選任と除外決定の申立てとの関係について、部会資料13の3ページの一番下では、財産管理人が選任された後、除外決定の申立てがされたときは、除外決定の申立ては却下されるものとされています。  もっとも、所有者不明専有部分管理人については、部会資料5の提案では、建替え決議については、議決権を行使することができないとされていました。この考え方を採るのであれば、建替え決議との関係では、除外決定の申立てを却下すべきではないように思います。この場合において除外決定の申立てを却下すると、所有者不明専有部分管理人は建替え決議について議決権を行使することができないにもかかわらず、所在等不明区分所有者を決議の母数から除外することも、認められなくなってしまうからです。他方で、建替え決議以外の決議との関係では、除外決定の効力を認めるのは、適切ではなさそうです。そうであるとすると、除外決定の効力が決議の類型に応じて相対的に捉えられることとなります。実際、部会資料5の8ページでは、そのような方向での説明がされていたかと思います。これに対し、この後で検討される部会資料14の3ページでは、所有者不明専有部分管理人は、建替え決議についても議決権を行使することができるものとされています。この考え方を採るのであれば、除外決定の申立ては、所有者不明専有部分管理人が選任されている限り、却下されそうです。違った言い方をすれば、部会資料13では、部会資料14の提案を前提とした説明がされています。   しかし、財産管理の選任と除外決定の申立てとの関係については、部会資料14の提案を前提としないほうがよいように思います。財産管理人の議決権の行使権限の範囲について、このように考えたらこのようになるというように、議論の構造を整理した形で説明をした方が、分かりやすいのではないかと思いました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○森本委員 第1の除外決定の仕組みを設けるのは賛成なのですけれども、除外決定の取消しの仕組みも併せて明確に規定しないと混乱や紛争が生じると思います。除外決定の取消しを受けた場合にも、管理者又は理事に対しその旨を通知するものとするという規定を設けたり、集会の招集通知を発した後に認定の取消しがあった場合には、取消しのあった区分所有者はその集会の決議には除外されるなど、例えば会社法上の株主総会の基準日のような規定を設けるべきではないかと思います。   また、第3の区分所有者の責務についてなのですけれども、土地基本法のように、本来であれば総合的な建物所有者等に関する責務の規律を別に設けるべきではないかと考えますが、現行法では存在しません。第3回において大桐委員の、土地基本法は理念としての位置付けにある法律であるという御意見や、部会長御指摘の条文構成の問題も理解できるところではありますが、やはり少なくとも区分所有者特有の管理、利用、処分についての責務を区分所有法に設けるべきであると考えます。   そうしますと、部会資料の相互に協力しなければならない程度の記述では足りず、所有者不明化、非居住化が進行している社会経済情勢を前提として、土地基本法と同様に、区分所有建物の基本方針を盛り込み、区分所有建物に関する基本理念を規定してはいかがでしょうか。例えば、区分所有とはどういうものか、区分所有者の責務、賃借権者の責務という3点を規定すれは、建替え決議がされた場合の賃借権の取扱いの規定の相当性にもつながり、望ましいのではないかと考えます。 ○大谷幹事 基準日について、他の委員からも御意見がありました。前にも、確か森本委員からこの点の御意見がございました。我々も少し考えてみたのですけれども、基準日の仕組みを作った場合に、基準日以後に所有者が出てきたときには、その人はもう必ず除外されるのですかというと、それはそれでよくない感じがしてしまいまして、基準日というのを設けるのはなかなか難しいところがあるなということで、今のような、決定があったとき、それが確定したときが決議の前かどうかというところで決めるしかないのかなとは思っていたところです。一方で、取消し決定の規律につきましては、もちろん所有者不明建物管理命令とか、あちらの方でもあるようなことですけれども、それを参考にしながら、また異同も踏まえて、今後検討していきたいと思います。 ○佐久間部会長 責務に関しましては、今頂いた御意見を踏まえて、また中間試案に向けて検討いたします。ありがとうございます。 ○吉原委員 ありがとうございます。確認を2点させていただければと思いました。先ほどの紺野委員と大谷参事官のやり取りで、第1の1の所在等不明区分所有者を集会の決議の母数から除外する仕組みの御説明の中で、大谷さんが、改正民法において、所在等不明共有者がいる場合に、裁判所の決定を得て、その不明の共有者が共有持分を失うことになる行為もできるようになりますとおっしゃったことは、これは改正民法の252条のことを指してでしょうか。 ○大谷幹事 それは変更行為ですので、持分を失わない行為だと思うのですけれども、持分の取得とか譲渡の仕組みもありますので、その意味では、所在等不明であるときには共有持分を失うような行為も裁判所の決定を得れば、できるという趣旨でお話ししました。 ○吉原委員 なるほど、分かりました。ありがとうございます。251条のところの関連で捉えておりました。失礼しました。   あともう一つ、紺野委員が区分所有者が他の区分所有者の財産権を奪うことについて、ということを御発言された際に、特定の管理者や理事ではなくても、区分所有者が裁判所に請求をできる理由として、必ずしも管理者が選任されていない場合もあるからとのお答えがございました。特定の区分所有者が他の区分所有者を母数から除外する請求を裁判所にできることを認める場合というのが、そうした管理者が選任されていない場合に限るのか、あるいはそうではないのか。そうではないとすると、理事や管理者がいながらも、特定の区分所有者が理事や管理者が知らないうちにそうした申立てを行っていて、事後に報告があったとすると、財産権を取り上げることになる重大な決定が特定の区分所有者の請求によって行われ、それが事後に報告されると、また、もしかしたら裁判所への申立て費用なども請求されるかもしれない、なども考えますと、本当に並列することでいいのかどうかということと、もし並列を認める場合には、事後の報告ではなく事前の方がよいのではないかという点について、少し教えていただければと思います。 ○大谷幹事 管理者が選任されていても管理者が余り機能していないという区分所有建物もあるかもしれません。そのせいで意思決定ができないということが、もしかするとあるかもしれませんので、その意味では、管理者が選任されていても、区分所有者が単独でこの請求をできてもいいのではないかというのが元々の趣旨でございました。ただ、この仕組みは集会の決議の母数から除外する仕組みでありますので、最終的には必ず集会を経る、建替え決議であるにせよ、区分所有権の処分を伴うものであるにせよ、最終的には集会で決まるということになりますので、その集会の前には必ず分かるようにしておく必要があるだろうと、それが1(1)Aの仕組みになっているわけですけれども、母数から除外されるからといって、勝手に決議が成立するわけではありませんので、それは別のものとして考えておりました。 ○佐久間部会長 よろしいですか。 ○紺野委員 私が申し上げたのは、その母数から除外するよということの申請というか手続に入るということを、事前に集会決議をする必要があるのではないですかということが原則なのです。 ○大谷幹事 決議をするということ、それを排除するわけではないと思うのですけれども、先ほど申し上げたとおり、決議自体ができない、過半数を有している区分所有者がいないときには。 ○紺野委員 それは、具体的には定借でやっている場合とか、いろいろありますよね、2分の1で。普通の場合です。 ○大谷幹事 ですので、そのプラクティスとして集会の決議はあった方が望ましいといったことはあるかもしれませんけれども、それを法律上必ず求めますと、不明者がいるときに除けなくならないでしょうかということを、ここでは考えておりましたけれども。 ○佐久間部会長 定足数を設けず、出席者の過半数だけで全部決められますとしておけば、オーケーかもしれないですね。だから、ほかのところの決め方ともやはりどうしてもリンクするところがあるのが一つ。あとは、この案の前提といたしましては、民法の共有の世界では、大谷さんが繰り返しおっしゃったとおり、不明の共有者がいた場合にはその不明の共有者の所有権を奪うことも、裁判を経てですけれども、可能であると。だとすると、ここも確かに集会で決めることになっているのですけれども、他の区分所有者も一種、共有者の一人ではないかと考えると、区分所有権を直接奪うわけではないですけれども、建物全体の運命を左右するという点では類するものとして考えてもよくて、かつ、まだ一歩手前の話だと。集会決議に臨むという、そのレベルなのだから、1人の区分所有者が、場合によっては管理者を差し置いて、やったっていいのではないかと。それしか考え方がないというわけではありませんが、考え方として成り立つのではないかとは思うのです。   ただ、団体的な意思決定でもっていろいろな物事を決めるという、共有とはやや違う管理、意思決定の在り方のある区分所有建物においては、集会決議とか、あるいは多くの区分所有者の意思を反映した形でこれも運用するのが望ましいのではないか、ということが紺野さんがおっしゃり、あるいは吉原さんもおっしゃった御意見かもしれません。 ○矢吹幹事 望ましいということであれば、例えば標準管理規約とかで、こういう手続をするときは総会の決議をした上でやると書いて、規約を直してもらって、より安定的な手続でやってもらうように誘導するとかですね、大谷さんがおっしゃるのは多分、入口から狭くしてしまうと救えないものが出てくるので、制度としてそうしてしまうのは必ずしも得策ではないということだと思うのですけれども、誘導は我々の世界でできる余地があるなと少し思って、聞いていました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○紺野委員 意思決定で、そういうことが出てくるので、お互いに認識しておかなくてはいけないなというのが。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。注記なのか補足説明なのかはともかくといたしまして、今の御意見は、中間試案を諮るときには、受け止めてくださる方に分かるようにしておくということにいたします。 ○紺野委員 御検討のほど、よろしくお願いします。 ○佐久間部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○鎌野委員 先ほど、後で申し上げると言っていましたけれども、10ページのところの区分所有者の責務に関してです。最初に質問を1点させていただいて、2点、意見を述べさせていただければと思います。   まず、今回ゴシックのところで、相互に協力しなければならないというような文言が使われているけれども、民事法においてこういう相互の協力義務のような、何かそういう定めをした他の立法があるのかどうかということで、もしお分かりですと教えていただきたいと。そういうのに倣ってということなのかと思います。   それは少し単純な質問で、そうすると、意見なのですけれども、この10ページから、いわゆる区分所有法の3条を引いて、基本的には区分所有法の立て付けとしては、団体は当然にその構成員にはなるけれども、集会とか規約とか管理者の選任とかというのはある意味では任意だと、そういう前提で、それはそれで、もういじりようがないと思いますので、それを前提としても、なおかつ各区分所有者は、たとえ集会などが開かれなくても、やはりこういうように実際の管理というのは相互に必要だろうと思います。言わば実質的には管理組合がなくても、各区分所有者はその責務というか、相互にこういった責任があるというか、要するに非常に少数の区分所有者しかいないようなところでは、わざわざ集会なんか開かなくても、少しどこかに集まって持ち回りでこうしましょうというような形で実際に管理が行われるということもあろうかと思いますし、区分所有法はそういうものも想定しているのだろうと思います。   それを前提に、10ページのゴシックのところですけれども、私の一つのたたき台としての案を述べさせていただきますと、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を円滑にですけれども、やはり適正にかつ円滑にというか、適正ということも、元々訓示規定ですからどれだけ意味があるのか分かりませんけれども、それを入れていただいて、区分所有者相互にというふうにそこに持ってきてもいいのですけれども、こういう管理を適正かつ円滑に行わなければならないということで、協力というのが、先ほど森本委員もおっしゃったように、何となく少し弱いような気がするので、気持ちの問題かも分かりませんけれども、それを外して、行わなければならないというような、そういう在り方もあるのかなと、そういうことで中間試案に掛けるということを少し提案させていただきますけれども、もちろんそれは事務局の方で御検討いただければと思います。 ○大谷幹事 質問がございました、相互に協力しなければならないというのは、民事法の中でいえば、夫婦の相互協力義務(民法第752条)がありますが、それがぴったり合う例なのかについては、色々な考え方がありそうです。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。先ほどの森本さんの御意見と併せて、書き方、この案は否定されるわけではないかもしれませんが、ほかにもう少し強い案として考えさせていただきます。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○吉原委員 ありがとうございます。補足的な意見になってしまうのですけれども、この第1の1の部分につきまして、私は母数から除外する仕組みについて賛成をしているのですが、今回こういう方策を採ったらどうかということが出てきた背景には、以前の資料にも書いてありましたとおり、二つの老いというものが進行し、合意形成が難しくなっていく可能性が高いということから、決議、議決の円滑化に向けてこうした手段が出てきているのだと思います。   同時に、第2回会議でも申し上げましたが、所在等不明で実際の決議の母数から外せる区分所有者というのはごく僅かであろうと思います。探索をした結果、相続人の一人が遠方にいることが分かり、その人と交渉しなければいけないといったケースが非常に多く出てくるのではないかと思っています。   そうしますと、こうした母数から外す仕組みや多数決要件を緩和する仕組みで解決できることと、それだけでは十分な解決が行えないところもあることを十分に認識し、そして、その部分については立法が難しい部分も多々あると思いますので、行政的な措置などと連携をしながら、また専門家を活用しながら、いかに住民の人たちが円滑に合意形成できるかというところをトータルにサポートしていくということを忘れてはいけないだろうと思っています。   先ほど佐久間部会長から、1票足りないというときにどう考えるかという、1票足りないという表現がありまして、正に今起きつつあることは、その1票の性質が多様化してきているのだと思います。その1票が、明確な反対票であったり、明確な意思を持った1票であれば、まだ対応はしやすいと思うのですけれども、これから増えてくるのは、例えば、認知症であったり、相続人の一人が遠方にいて、相続放棄もしない、郵便を送っても答えてくれない、あるいは、海外に住んでいるといったケースであり、そうした様々な事案について、住民の人たちが専門知識も十分にない中で手弁当で解決に乗り出していかなければいけないという、そこの負担を少しでも軽減していく措置というのは引き続き考えなければいけないと思っております。   ですから、今回のここに挙げられているような様々な立法措置と組み合わせる形で、行政的な措置や、マンション管理士の方々のサポートを得られやすくする、あるいは相談窓口を充実するといったところをトータルで底上げしていくことが大事だということを、補足ですけれども、申し上げておきたいと思いました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。中間試案の性格に合うかどうかはともかくといたしまして、そういう施策が大事だということは、いろいろな場でやはり発信していかないといけないと思いました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○鎌野委員 度々すみません。どなたも御発言がなかったので、6ページのところの専有部分の共有者による議決権行使の指定に関してですけれども、結論を申し上げますと、私がこれを研究会のときに申し上げて、是非取り上げてくれということで、こういった形で取り上げていただきまして、まず、どうもありがとうございます。そして、もうこのとおりでよろしいと思いますので、こういった形で是非、中間試案でパブリック・コメントを求めていただければと思います。 ○佐久間部会長 ほかにいかがでしょう。よろしいでしょうか。   では、時間を若干過ぎてしまっておりまして、部会資料14が残っておりますけれども、これは次回に取り上げるということにさせていただきます。したがいまして、本日の議論、議事としてはこれで終えたいと思います。   では、次回の議事日程について事務当局から説明をしていただきます。 ○大谷幹事 本日も時間を過ぎるところまで長時間にわたって熱心な御議論を頂きまして、誠にありがとうございました。   次回の日程は、ゴールデンウイーク明けの5月12日金曜日、午後1時半から午後5時半までということで、場所は追って御連絡いたします。   テーマにつきましては、今回積み残しになりました部会資料14と、それから、二読目として検討すべきほかの論点について改めて資料をお作りして、御審議をお願いしたいと思います。ゴールデンウイークを挟むことになって、なかなか準備の方も時間がないというところがありまして、いつも1週間前に必ず資料をお送りしておりましたけれども、今回の場合、すみませんが、5月12日の週の頭にお送りをさせていただければと思います。1週間前より少し時間がないということになって、各団体の皆様には御負担をお掛けすることになろうかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   それでは、法制審議会区分所有法制部会の第7回会議を、これをもって閉会とさせていただきます。   本日も大変熱心に御議論いただきまして誠にありがとうございました。 −了−