法制審議会 家族法制部会 第27回会議 議事録 第1 日 時  令和5年6月6日(火)  自 午後1時30分                      至 午後5時25分 第2 場 所  法務省20階第1会議室 第3 議 題  家族法制の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けた検討(4) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会家族法制部会の第27回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席を頂きましてありがとうございます。   本日も前回までと同様、ウェブ会議の方法を併用した開催になりますので、よろしくお願いを申し上げます。   それでは、まず本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。本日は部会資料27が配布されていますが、この資料は前回会議で積み残しとなった部会資料26と関連するところがありますので、その資料の内容も含めて事務当局から御説明をお願いしたいと思います。 ○北村幹事 事務当局でございます。お手元の資料について御確認いただきたいと思います。本日の会議資料として部会資料27をお配りしております。部会長からも御説明がありましたけれども、本日は部会資料26の前回の積み残しの部分から御議論いただくことになるかと思います。部会資料26のゴシックの3の親権者の変更の部分と、今回の部会資料27につきましては密接に関連する事項がございますので、その内容も含めて御説明をさせていただきます。   部会資料27では、部会資料25、部会資料26に引き続いて、父母の離婚後の親権者に関する規律を取り上げております。部会のこれまでの議論では、離婚後の父母双方を親権者とすることができるものとするということで民法第819条の見直しをするにしても、この場面での親権者の定めについての父母の合意形成過程に何らかの問題があるケースも想定されるということで、この合意の適正性を確保したり、また、不適正な合意がされてしまった場合にこれを是正したりするための方策が必要ではないかといった御指摘を頂きました。   この問題については、部会資料26の親権者の変更の仕組みのところでも少し記載をしておりましたけれども、部会資料27では離婚後の親権者の変更の仕組みも含めて、考えられる方策を取り上げているところでございます。   部会資料27では、まずゴシックの1(1)で、離婚後の父母双方を親権者とするか、その一方を親権者とするかを父母の合意により定めるということを提示しており、その上で(2)@では、この合意について第三者がこれを確認するという仕組みを提示しております。これは、離婚の前の段階で中立的な第三者を関与させることで、その合意の適正性を確保するということを目指すものですが、これを必須のものとするかどうか、つまり、この第三者の確認を受けない限り協議離婚することはできないというところまで規律するかについては、慎重な御意見もあろうかと思います。また、このような手続を設けるのであれば、第三者としてどのような者を想定するかや、この第三者が何を確認するかなどを含めて検討する必要があると思いますので、この点も含めて御意見を頂きたいと思います。   次に、ゴシックの1(2)Aでは、離婚の届出後に親権者に関する定めを是正するための仕組みを提示しています。協議離婚の際の親権者の定めを是正する方策としては、親権者の変更の手続を使うことも考えられますが、部会のこれまでの議論では、ハードルが高いとの御指摘もあったように思います。そこで、今回の資料では、離婚の際の親権者に関する合意の形成過程が適正であることが客観的に担保されていないような場合には、離婚後にこれを改めて定め直すことを家庭裁判所に求めることができるようにするとともに、その合意の形成過程の適正性が客観的に担保されているような場合には、そのことを考慮して慎重に判断するという枠組みを試みに提示してみました。   さらに、ゴシックの1(3)では、離婚すること自体は合意しているものの、離婚後の親権者をどう定めるかについて争いがある場面に対応する仕組みとして、父母が家庭裁判所に対して離婚後の親権者を定めることを求める手続を提示しております。   部会資料27のゴシックの2では、裁判離婚の場合の手続を取り上げております。裁判離婚の場面では、裁判所が離婚請求を認容する判決において親権者の定めをすることが想定されますが、その際の裁判所の判断枠組みをどのように整理し、規律するかが論点となろうかと思います。例えば、裁判所が子の利益を考慮して判断すべきという考え方があろうかと思いますが、この場面での子の利益の捉え方については様々な御意見や価値観があろうかと思いまして、父母双方を親権者とすることが子の利益の観点から望ましいのはどのような場合か、逆に父母の一方のみを親権者とすることが子の利益の観点から望ましいのはどのような場合かについて、御意見を頂きたいと思います。   部会資料27の内容の説明は以上になりますけれども、部会資料26と27、先ほど申しましたように若干内容が重複するところがありますので、その関係について付け加えて御説明させていただきたいと思います。   前回会議の際にお配りした部会資料26では、ゴシックの3の親権者変更についての(注2)及び(注3)で、@父母双方を親権者とするか、その一方を親権者にするかについて父母間に争いが生じた場合に、どのような要件や基準で判断するかという論点や、Aの協議上の離婚の際の親権者の定めについて、父母の合意に瑕疵があることが事後的に判明した場面に対応するため、親権者の変更の仕組みを活用してはどうかという論点を記載しておりました。ただ、これらの論点については、先ほど申しましたように、ただいま説明させていただいた部会資料27において、若干内容を変更した上で改めて記載をしております。特に、協議離婚の際の親権者の定めについての合意形成過程の瑕疵を是正する仕組みについては、部会資料27のゴシックの1のところで取り上げております。そのため、本日の会議での御議論の中では、部会資料26のゴシックの3に付された(注2)や(注3)に関する論点については、部会資料27についての御議論の中で御発言いただけますと幸いです。   部会資料の説明は以上になります。   なお、前回会議と同様、本日もパブリック・コメントに寄せられた意見をコピーしてつづったファイルを会議室に御用意しております。個人情報等のマスキング作業ができた範囲のもののみでありますけれども、委員、幹事の皆様が会議の前後や休憩時間等に御参照いただくことができるように備え付けております。   今回もウェブ会議を併用していることから、御発言に当たっては冒頭でお名のりいただきますようお願い申し上げます。 ○大村部会長 ありがとうございました。先ほども触れましたように、前回の部会資料26の積み残し分がありますので、本日はまずこれにつきまして御意見を頂いた後、ただいま御説明のあった部会資料27についての検討に入りたいと考えております。大まかな進行についてですけれども、この資料の区切りに対応する形で、全体を四つに区切って御議論いただきたいと思っております。   まず、前回会議では部会資料26のゴシックの「2 監護者の定めの要否及び監護者が指定されている場合の親権行使」についての検討の途中、赤石委員から窪田委員への御質問を頂いたというところまでで中断し、窪田委員の御発言を先送りにさせていただきました。また、池田委員から、父母双方が親権者となる場合の親権行使の在り方に関連して、部会資料26の補足説明5に記載されている子の居所の指定変更に関する論点について御発言の御希望があると承っております。そこで、まずこれらの点につきまして御発言を頂き、部会資料26のゴシックの2、補足説明5までの論点につきまして、関連の御発言があれば承るということにしたいと思います。   ここまでを一つの区切りといたしまして、その後、二つ目の区切りといたしまして、部会資料26のうち残っている「3 離婚後の親権者の定めの変更の仕組み」という部分について御意見を頂きたいと思っております。ただ、これは、先ほど事務当局からお話がありましたけれども、部会資料27の1の方で議論すべき事柄も多いと思いますので、部会資料26の3につきましては、親権者の変更に固有の問題についてだけここで御意見を頂き、残りについては部会資料27の1の方で御意見を頂戴できればと思っております。   部会資料26を終わった辺りで少し休憩を挟みまして、その後は部会資料27の1の協議離婚の場合についてまず御議論を頂き、最後に四つ目になりますけれども、部会資料27の2の裁判離婚の場合について御意見を頂きたいと思っております。限られた時間の中で、たくさんの論点がございますので、進行への御協力を頂ければ幸いに存じます。   では、まず26の積み残し部分につきまして、窪田委員、それから池田委員の順番で御発言を頂きたいと思います。 ○窪田委員 前回の会議からの持ち越しになっておりました、赤石委員からの御質問に対して簡単にお答えをさせていただきたいと思います。赤石委員からの御質問の趣旨は、常に監護者を指定しても問題はないのではないかというものであったと理解しておりますが、それを前提として2点発言させていただきます。   第1に、赤石委員の質問は、原田委員と私とのやり取りを踏まえてのものだったと認識しておりますが、そこでの私の発言は、監護者を定めなくても実際の監護に当たる親権者に日常的な事項についての監護が認められるのであれば、監護者を定めなくても対応は可能なのではないかというものでした。したがって、監護者を定めてもやっていけるという御質問とはややずれがあるのではないかと考えております。   第2に、監護者を定めることに問題がないかは、監護者を定めることによって監護者の権限あるいは監護者とされなかった親権者の権限がどのようなものとなるかという規律を踏まえて検討されるべきものであると考えております。その点で、現時点で監護者を定めても問題がないかについては、直ちにはお答えできないと思います。   以上、簡単ですが、前回の積み残しということでお答えさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございました。窪田委員から御回答を頂きました。関連の御発言があれば、後で頂きたいと思いますので、引き続き池田委員の方からお願いを致します。 ○池田委員 弁護士の池田でございます。私からは、別居の際の子の居所指定の場面での、部会資料26のゴシック体1(3)の手続に関して意見を述べたいと思います。   部会資料26の20ページの(3)の6行目ぐらいですが、(注1)の後の辺りを読みますと、父母の一方が他方の同意を得ずに子を連れて別居した場合にも、事後的に1(3)の家裁の手続を利用することができるという想定に立っているのかなと理解されました。そこでの審理の在り方についてなのですが、仮に親権の共同行使違反といえるかどうかという要素だけによって子の引渡しを命ずるかどうかが決まるのだとすれば、それは適切ではないと考えています。   ハーグ条約のように、別居時のプロセスに問題があれば、ともあれ一度戻すと、そこからもう一度やり直すという選択肢もなくはないわけですけれども、やはり重要なのは、実質的に父母いずれがこどもと同居して現実のお世話をするのが子の利益になるのかという点でありまして、仮に別居開始時に親権共同行使違反というものが認定されたとしても、それのみでこどもだけを戻すという判断枠組みにはならないようにすべきではないかと思います。現行法では、その審理を行っているのが正に766条類推適用による監護者指定の審判なのですが、その審理の在り方というのは、仮に1(3)の手続が創設されたとしても、なお維持されるべきではないかと考えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。窪田委員と池田委員からそれぞれ御質問についての回答と御意見を頂きました。赤石委員どうぞ。 ○赤石委員 窪田委員、ありがとうございました。日常行為が単独でなし得るということを基に議論が進んでいるのですけれども、もう一度振り返りたいと思うのですけれども、今は協議離婚の真摯な合意があった場合には共同親権であることができるといって議論されて、共同の行使の対応を、緊急行為や日常行為については単独で認められるということで、次に監護の在り方について議論をされていると思います。私もこの規定の中で悩んでいるのですけれども、この間は共同親権である場合の監護というのは今の監護者指定と概念が違うというような御発言があり、さらに武田委員からは、監護する場合は双方、相手の監護の分担については口出しをしないのだということ、お任せするというか、そういう態度がいいのではないかというような議論がされました。それはそれで成り立ち得る場合はあると思うのですけれども、4点、やはり監護者指定は一律に指定しないということでは成り立ち得ないということを少しお話ししたいと思います。   まず1点目は、日常的な親権の行使の内容、確かに食事は何を食べるかとか、いつ食べるかとか、どのくらい量があるかとか、こういったことについては、そのこどもに残すか残さないかとか、嫌いなものを食べるようにどのくらい強く言うかとか、そのときにテレビを見ていいのかとか、そういったことに関しては単独で決めていいと私も思っております。しかし、日常行為の中に命や健康に関わる、これを何といったらいいのか分からないのですけれども、重要事項というと、また重要事項はもう一つあるのであれなのですが、重大なクリティカルな事項というのがその日常の行為の中に含まれていて、アレルギー対応ですとか、薬を飲む、飲まないとか、発達障害のお子さんが大変増えているわけですけれども、それの対応ですとか、医療的なケアの必要なこどもとか、いろいろなことで、その1回の行為で命に関わるようなことになるものがあるということがあり、それを指定しないままでいるということが非常に危険な行為になってしまうのではないか、そこの日常行為の中にある一貫した対応が必要なものについては、特に乳児からが多いと思いますけれども、乳児だけでなく幼児も小学校低学年も、いろいろな障害のこどももそうだと思いますし、大きくなった場合もあると思うのですが、こういったこどもたちを全く決めないというのはあり得るのかというのが思います。それが1点目です。   2番目は、外部機関とのやり取りをするときに、保育園とか幼稚園とか学校とか医療機関とか保健所等々とのやり取りのときに、一体どこにお知らせが来るのか、一体どのようになるのか、こういったことが全く決めていない状況でやるのかということがあると思います。   3点目は、これがベースかもしれないのですけれども、こどもの居所、住所を決める。各国のやり方をもう一回見たのですけれども、やはり同居親が監護者になるということが多いのだと思いますので、これに基づき、だから住所を決めるというのはやはり絶対に必要であるとすれば、交代制の監護というのはたまにはあるようですが、それでも住所地というのはどちらかに決まると思いますので、児童手当の受取うんぬん、社会保障の受取とか、そういったこともそこで決まるのだと思います。そういったときにも必要であると。   4点目は、離婚後の親権者の定めの変更なので、また後で議論すべきということなのかもしれないのですが、真摯な合意が成り立たなくなった場合、一体双方の親権から単独親権に戻すときにどちらに戻るのかというのが紛争になりますので、この合意が成り立たなくなった場合、単独親権に戻すときにどちらかに速やかに決定するためにも、監護者が指定されているべきなのではないかと思っております。   ですので、一律に決めないという態度がこどもにとっては非常に過酷になる、また、先ほどの4点を挙げて、やはりこの資料26の提案には私は反対でございます。やはりこどもたちの状況から考えれば、指定するということが必要なのではないかと思っております。   続けて、前回、小粥委員が離婚後の共同親権の規律についておっしゃっていたので、少しそこに言及したいのですけれども、大丈夫ですか。 ○大村部会長 どうぞ、続けてください。 ○赤石委員 ありがとうございます。私が前回、婚姻時の共同親権と離婚後の共同親権では在り方が異なるはずである、なぜなら民法に定まっている婚姻時の同居義務及び協力義務がない場合にどのように規律するのか、違うはずであるという話をしたときに、いろいろな御意見を頂きました。その中で小粥委員が、何らかの規律が必要である、例えば相手の人格の尊重とか、共同親権に関わる部分での双方の協力義務というのを定めたらどうかということと、それが成り立たなくなったら、それは単独親権に戻すということになるとおっしゃったように思うのですが、私の理解で合っていますでしょうか。   そのときに、すぐにはなかなか反応できなかったのですけれども、今やはり別居後のいろいろなアビューズがとても激しくなっていて、この共同親権を定めたときに、共同親権を求める側の方たちは熱心に言われている方が一部にいらして、この方たちの中にどうしてもDVの疑いがあるような方が共同親権を獲得する、紛れ込んでしまう可能性がこの法整備の中に絶対に出てきてしまう。でも、私たちはそれは望んでいないので、そこを何らかの規制をしなければいけないときに、小粥委員がおっしゃっていたようなことがうまく機能するのかなと思ったわけです。   ポスト・セパレーション・アビューズというのは、各国でもいろいろな論文があるそうなのですけれども、別居後のいろいろな虐待ですね、やはり別れた後でのそういった虐待行為とかが増えるというのは、いろいろなところで研究がありますし、逃げようとしているときにも一番その暴力があるわけですので、何らかの御提案の規律というのがあることによってそこが切り離せるのであれば、あるべきなのではないかと思いました。   私自身もネット上ではいろいろな誹謗中傷に毎日さらされておりますが、気の弱い私はやはり発言を自粛しようと思うこともある、毎日でございます。一人のこどもを抱えた孤立しているお母さんがこのようなアビューズに遭ったときに、主張し続けるというのは非常に難しいところでございますので、やはり何らかの規律というのを設けるべきなのではないかと思いました。真摯な合意がない、真摯な合意というところに更にその規律があるべきであると思った次第です。 ○大村部会長 ありがとうございました。今、赤石委員の方から大きく分けて2点について御発言がありましたけれども、少しここまでのところを整理させていただきたいと思います。窪田委員のお答えに対応する赤石委員の最初の御発言については後にさせていただいて、池田委員の御発言、子の引渡しの判断基準の問題については、御意見をいただいたということで、後でそれを議論する場面でまた御発言いただくという受け止めでよろしいでしょうか。 ○池田委員 この後、これに関する何か議論があり得ると。 ○大村部会長 今日ここでということではなくて、子の引渡しについて、親権の所在ということだけで考えるべきではないという御意見を頂いたということで、それについては、子の引渡しが問題となる場面で、そのような意見があったということを踏まえて、更に御議論いただくということでよろしいでしょうか。 ○池田委員 はい。 ○大村部会長 それから、赤石委員からの2番目の点、小粥委員に対する御質問という形になっておりましたけれども、私の理解では小粥委員の前回の御発言は、婚姻中と離婚後で父母の間の関係についてどのような理念が存在するのかということについて、後者についてその理念を定める規定がないのだとしたら、これを書き込む必要があるのではないかという趣旨の御発言だったのかと思って伺いました。赤石委員の御質問は、そのこととは別に、共同行使に伴うデメリット、弊害があるだろうから、それについてきちんとした規律が必要だということだったと理解しました。そうだとすると、小粥委員の御発言と必ずしも両立しないわけではないように思って伺ったのですが、私の理解が適切でないかもしれませんので、小粥委員の方から何か補足があれば、御発言を頂きたいと思います。 ○小粥委員 委員の小粥でございます。前回の私の発言は、部会長のおっしゃるような趣旨で申したわけで、何らかの規律を設けることを検討したらいいのではないかということでありました。仮に何らかの規定を設けたとして、サンクションとして私が例示したことはございますけれども、それは直ちに石綿幹事から、そうでないような規律も考えられるというような御発言もありました。ですので、赤石委員がおっしゃるようなことについて私の申し上げたことというのは、私がお返事できるようなことではないような気がいたします。 ○大村部会長 赤石委員が小粥委員の御発言を踏まえておっしゃったことは、もっともな御意見だと思いますので、そういう御意見を承ったということにさせていただきたいと思っております。   赤石委員の第1点、窪田委員とのやり取りについてですけれども、窪田委員からは、監護者を定めることの意味を明らかにしないと、この先、議論が進まないのではないかという御趣旨の御発言があったと思って伺いました。他方、赤石委員からは、一律指定ということがやはり必要なのではないかということで、幾つか必要だと思われる場合が挙げられていたかと思います。その中で一つは、これは2番目におっしゃっていたこととも関連するのかもしれませんが、共同行使がうまくいかなかったときに対処するためのルートとしてどういうものを考えておくのかということで、監護者を定めておくことが共同行使が解消された際の言わば受皿になるのではないかといった御指摘だったかと思います。これは、赤石委員御自身がおっしゃっていたように、変更の場合に付随する問題として考えなければいけない問題かと思って伺いました。その他、幾つか御指摘になった点は、それらの事項については誰が決定するのかということが決まっていないと困るだろうという御指摘だったかと思います。二つの御発言を併せて考えると、監護者を定めるという形で一律に何かを決める、決めるべき重要な事柄をパッケージにして一方に帰属させると考えるのか、あるいは重要な事柄についてはそれぞれに決め方の規律をはっきりさせておくと考えるのか、いろいろな考え方がありそうな感じがいたします。   もう一言申し上げますと、赤石委員からも以前にも御要望があったかと思いますけれども、現在の単独親権の場合における親権と監護ないし監護権の切り分けについても、やはり同様な問題が生じているのではないかと思いますが、そこも、窪田委員がおっしゃったように、監護の内容を具体的に定めていかないと議論ができないところがあるのかと思って伺っておりました。御意見として伺って、単独親権の場合の親権と監護の切り分けについて御議論を頂いた上で、共同親権の場合、単独親権の場合、それぞれどのような制度にするのかということを御議論いただく、そんな手順だろうかと思って伺っておりました。取りあえず以上のように引き取らせていただこうと思いますけれども、更に関連して御発言があれば、この機会に頂きたいと思いますが、何かございますでしょうか。 ○棚村委員 赤石委員のおっしゃる、細かいいろいろな点で不都合が出たり支障が出ないかという御懸念はもっともだと思うのです。ただ、窪田委員が、前回も少し触れたのですけれども、そもそも親権あるいは監護、それから親権者、監護者になると何ができるのかという話と、個別のいろいろな細かい事項でトラブルが起きたときに誰がどういうふうに決めるのかという個別対応のルールと、二つの議論があると思うのです。窪田委員がおっしゃっていたのは、要するに親権者、監護者にしたからといって、個別のいろいろな細かいことのルールとか、父母の間での意見の不一致とかというのは、なかなか解消しないので、そういうことが起こったときに誰がどう決めればいいのかというルールを決めていけば、十分対応ができ、いろいろと争ったときにいちいち細かく決めるということにも限界があるであろうから、親権者とか監護者というまとまった地位にある人がかなりの事項を決められるという制度を置いた方がいいのではないかということなので、先ほどの協力義務の有無というのもそうなのですけれども、私たちとしては、規定がないということでトラブルが起こったり、起こったときの解決が非常に予測が付かないということも起こっているので、その辺りをルール化してはどうかというのは、民法をやっている者が通常を思いつく考え方だと思うのです。   そこで、実際に制度を設けてみても不都合がないかどうかというのが、赤石委員とか、あるいは原田委員、戒能委員なんかがよくおっしゃっていることなので、その辺りの大枠として、親権者、監護者というのが一体どういうことができる地位にあるのだろうかということについてのルールがきちんとできているというのも必要です。それから、個々の細かい事項で、赤ちゃんの場合の予防接種とかいろいろなもの、健康診断をどうするかとか、何を食べさせるかという、そのレベルのことで意見の不一致やうまくいかないときに、それを誰がどう決めるのが一番望ましいかというルールみたいなものも必要です。さらに、誰が決めたらいいかということをそもそも話し合って決めたりすることも、それにも限界があると思います。その辺りは、大枠として親権者とか監護者とか、あるいは主たる監護者とか同居親というのがこういう事項については決められる立場にあるというようなことで、何らかのルールを設けていくということもあり得ると思います。   他方で窪田委員が言いたかったのは、個別事項のことで、誰が決めるのだというルールを予め決めておくことで、最終的にはルールさえ決まっていれば、それを基準にして解決ができるのではないかとも思われます。アメリカでは、当事者たちが相当細かいことを話し合って決めているのですが、意見の不一致があってどうにもならないとき、いきなり裁判所とか、裁判所に全部お願いするというのも無理なので、インパスオーソリティー(Impasse Authority)という、行き詰まった場合の権限を誰が最終的に行使できるかを決めてしまうということで乗り切っている例もあります。だから、私はやはり赤石委員とかのおっしゃっている懸念とかも重要ですし、それから窪田委員が整理してくださったように、結局パッケージとして大枠として親権者とか監護者ということを決めて、その人たちに何ができるかという大枠のところで何かを決めるということもあり得ると思うのです。   ただ、実際に起こっていることはかなり個別のことで、細かい対応で争いが起こるので、それについてやはりきちんとしたルール作りとか、誰がそういうときには決めたらいいのだということについては明確なルールが必要だと思います。また、子どものために重要な事項を日常とか重要だとか緊急とかという幾つかの指標を出してやっているわけです。その辺りのところが今、議論の焦点になっているところなので、部会長が整理していただいたように、部会資料27のところでも、正に居所指定権についての池田委員からの御発言があったものもかなり重要な問題ですので、一体そこで意見の不一致とかいろいろあったときに誰がどう決めるのがいいのか、その辺りのルールについて議論をしていくということが、親権の共同か単独かとか、監護者の定めを置くか置かないかというところでも非常に重要なところだと思います。   すみません、整理のような形でお話をさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。改めて議論の状況と、この先の進め方についてまとめていただいたものと理解を致しました。 ○原田委員 委員の原田です。今、議論の進め方をいろいろおっしゃっていただいたのですけれども、親権者や監護権者になると何ができるかということについて、従来、別居中の、あるいは離婚後でもいいのですけれども、親権者指定がされたり、親権者と監護権者、親権と監護権が分属した場合の監護権者が何ができるかということについて、従来はこうであるという一応の整理をされたときに、身上監護については監護者で、財産行為と身分行為の同意なり代理なりは親権者という形で今は整理されていて、ただ、その中でも、例えば民法で居所指定とか、それから職業選択に関する許可については、監護者が事実上やっているし、それで認められているというようなまとめ方がされていたのではないかと私は思っていたのですが、そういう分け方をもう一度ここで話し合うということですか。   それと、今回それについて、日常行為とか、緊急行為とか、重要な行為とか、財産行為とかといろいろ分けられているものの中で、やはり私たちは法律相談を受けたとき、それがどれに当たるかをどうやって答えるかというのを考えるのですが、監護をしている人が親権者であれば、本来は全部できるはずなのだけれども、共同親権の場合は他の親権者と相談しないとできないというのは何なのかを定めた方が、整理がしやすいのではないかと私は思っています。今のご提案は、進め方としては、そこの議論をもう一度するという御提案なのですか、 ○大村部会長 御質問の意味を十分に理解できていないところもあるのですけれども、まず、原田委員がおっしゃってくださった、現行法の下で単独親権になっている場合に、親権と監護権の間の切り分けがどうなるのかということについては、おそらく複数の理解があるのではないかと思います。原田委員も、こうなのだけれども、その上でこう解されているといったことをおっしゃっていたかと思いますけれども、こう解されているというところについては御異論もあるでしょうし、さらには前提とされているところについても違う考え方もあるのではないかと思っています。そこについては、従来の考え方はこうなのだということが確認できれば、それはそれでいいだろうと思いますけれども、いずれにしても単独親権の場合についても改めて検討した上で、共同親権の場合には監護者に何を認め、親権者に何を認めるのかということを最終的に考える必要があるのではないかということです。   ですから、共同親権の場合については、現行法の下での単独親権の場合の考え方を全部白紙にして考えるということではなく、単独の場合を確認し、一定の認識を共有して、共同の場合にまた戻ってくるということになるのではないかと思います。その際に注意すべき事柄として、今御発言いただいたような諸点があるのではないか。御発言いただいた諸点というのは、窪田委員や棚村委員がおっしゃってくださいましたけれども、監護者の権限の中身をどのように考えるのかということと、双方が関与するとしたときに意見が一致しないとしたら、どうやって決めるのかということと、二つある。その関係について考えながら議論しなければいけないだろうと思います。他方で、赤石委員がおっしゃった幾つかの問題、早く決まってもらわないと困る、明確に決まっていないと困るという問題がある、それらはどういうものであって、窪田委員や棚村委員の整理との関係で、それらの問題はどう位置付けられるのかといったことを最終的に明らかにする必要があるのではないかと私自身は思っていますけれども、これで原田委員に対するお答えになったでしょうか。 ○原田委員 すみません、追加して、原田です。最終的に親権と監護権の区別を明らかにしなければならないというところは分かりました。しかし、順番として、先に監護者を指定すべきかどうかを決めるのか、ここに挙がっているものを決めた上で最終的に決めるのかの問題があります。私たちが弁護士会でいろいろ議論したときも、その権限が何かというところが分かっていないのに、監護者を指定する必要があるかどうか決められないではないかという意見の方が強かったのです。なので、議論の順番としてどういう順番でされるのでしょうかという質問です。 ○大村部会長 事務当局の方からも御発言を頂いた方がいいと思いますけれども、どれかをまず完全に固めて、それから次に進むというのは実際上は困難なことだろうと思っています。ですから、順次検討して、例えば部会資料26の1、2について、あるところまで議論をして、それを前提に次の問題を議論し、そしてまた今回議論していただいているところに戻るということなのではないかと私自身は捉えています。事務当局から何かあれば、お願いします。 ○北村幹事 事務当局です。部会長の方でおまとめいただいたような形で進んでいくのだろうと思っております。親権のところは非常にいろいろな論点があって、それぞれが密接に関連しているところですので、今回の部分で御議論いただいた上で、更に部会資料27で御議論いただき、更に残りの部分というところで御議論いただいた上で、また更に全体をという形になっていくのかなとは考えてございます。この辺りの進め方も、また別途、部会長と御相談しながら御提示をしていきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。 ○原田委員 半分、はいです。 ○赤石委員 となりますと、今、いろいろな監護の内容等々については最終的に明らかにするという、その最終的というのが、三巡目の親権の議論をしている間にもう少し具体的に出るというようなイメージをおっしゃったということですか。 ○北村幹事 事務当局ですけれども、親権のところをひととおり御議論させていただいた上で、それを整理し、またほかにも残っている論点がございますので、そういったものの御議論を踏まえつつ、全体としての整理というのを改めてお示しした上で御議論いただく方がよいのかなとは思っております。 ○大村部会長 よろしいでしょうか。具体的にどの時期に皆さんにここの部分を改めて議論いただくかということは、この後の進行状況等を見ながら事務当局と相談させていただきたいと思っておりますけれども、今回の部会資料26の2について、(1)の離婚後の父母双方を親権者と定めるに当たって、父母の一方を監護をすべき者、監護者とする旨の定めをすることを一律に要求しないものとすることについてどう考えるかということにつきましては、賛成の意見を多く頂いたと思いますが、赤石委員を始めとして反対の意見も少なからずあったということで、今日のところは引き取らせていただきまして、窪田委員や棚村委員の御指摘の点、それから赤石委員の御指摘の点も勘案した形で、次の機会にここの部分について改めて御提案いただく。そんなことを考えておりますけれども、それでよろしいでしょうか。 ○原田委員 すみません、今のおまとめいただいたところに反対するつもりではないのですけれども、この前、私が監護者を定めるべきだということに対して、それは他方の非監護者になった人の監護権を排他的に考えるところまで考えるのかという御意見を頂いて、監護するということと監護権ということの関係が私の中でもよく整理できていなかったのですけれども、でも、基本的にやはり共同親権の場合でも、基本的には誰と一緒に暮らすのかということを決める必要がある、あるいは決めているところが多いということを考えると、同居親がやはり監護者ではないかと考えて、子は誰と一緒に住むのか、その人が基本的には監護者だと決めるべきだと考えるというふうに修正します。 ○大村部会長 御意見を今のように修正するということで承りました。   それでは、先ほども申し上げましたけれども、またこの先に単独親権の場合について御議論いただく機会もあると思いますが、それも踏まえて、改めてここでの問題について御議論を頂くということにさせていただこうと思います。事務当局、それでよろしいですか。     ありがとうございます。 ○原田委員 ごめんなさい、居所指定のことについてはこれで終わりですか。 ○大村部会長 居所指定も、先ほど申し上げましたけれども、例えば、親権、監護権を単独親権のときに切り分けた場合、居所指定についてはどうなるのかというところについて御確認を頂き、では共同親権についてはどうかといった形で、もう一度御議論いただくということかと思っております。 ○原田委員 はい。 ○大村部会長 それでは、引き続きまして部会資料26の3の部分、離婚後の親権者の定めの変更の仕組みということで、先ほど申し上げましたけれども、離婚後に生ずる事由によって変更するということに係る固有の問題につきまして御議論を頂き、意思決定に係る問題、真摯な合意という言葉を使われておりますけれども、それが得られなかった場合に事後的にどうするかといった問題もありますが、それは一応別にした形で、御議論をいただきたいと思います。繰り返しになりますけれども、従来いわれている親権者変更の定めは、親権の単独行使ではなく共同行使ということになったときにどうすべきなのかということにまず限定した形で、御議論を頂ければと思います。どなたからでも結構ですので、御発言があればお願いを致します。 ○小粥委員 委員の小粥です。当たり前のようなことかもしれませんけれども、このような問題を検討することは必要で、しかも、離婚後共同親権が部分的にであれ制度として設けられる可能性があるとするなら、こういうことを考えるということは基本的に必要だと思います。ただ、その変更の要件というのは現行制度における変更の要件とは違ってくる可能性があって、今日のペーパーではそこまで書かれておりませんけれども、そういうことを検討することは必要でしょうし、申立権者の範囲でありますとか、あるいは未成年後見との関係などについても境界線をはっきりさせるような形で議論することは必要ですけれども、このような問題は重要な問題になってくると思います。ひとまずここに書かれている事柄の限りでは、こういうことを検討して、次のステージに進んでいくべきだと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。小粥委員からは、部会資料26の3のような議論をすることは必要なことであろうという御意見と併せて、そうであるとすると、どんなことを併せて検討しなければいけないのかということについて御指摘を頂いたと受け止めました。   ほかに御発言はありませんか。この点につきまして、いかがでしょうか。 ○佐野幹事 幹事の佐野です。この部分に関しては、子の親族の請求によってと、現行の規律をそのまま引いた形になっているのですけれども、申立権はこどもにも認める必要があるのではないかと思います。といいますのは、親が争っていて決定できないとかいう場合によって一番不利益を被るのはこどもだからです。   それから、この場合の要件ですけれども、(注2)にあるように、「共同して親権を行うことが困難又は不適当であることにより子の利益を害すると認めるとき」という要件を設けることには賛同いたします。この要件により、双方が合意できずに適時決定ができないという場合には単独にする道を残すという点で、意味があるかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。佐野幹事から御意見いただきましたが、3のような議論する必要があるだろうということを前提になっているのだろうと思いますが、その上で、これは小粥委員も触れておられたかもしれませんが、申立権者の問題として、子を加える必要があるのではないかということ、それから要件についての御意見を頂きました。 ○青竹幹事 よろしくお願いします。親権者の定め直しについての検討の方向性に同意したいと思っております。他方で、共同親権者とする決定をする際に一方の圧力を受けて他方が共同親権に同意してしまったという場合の対応について、より綿密に検討すべきであると考えています。   これについて、主に部会資料27でということになるかと思いますけれども、部会資料26の3では、離婚後の親権者の定めの変更の仕組みを維持し、その枠内でという方向性が提示されているようにも見えるのですけれども、現行法にも規定がありますので、共同親権から単独親権に変更する際にも同様の仕組みを利用するのは合理的な面があるといえます。ただ、既に複数の委員や幹事から御指摘されているように、なかなか現実に親権者変更は認められていないという実務の状況があるということですので、今と同じ仕組みで少し変えるというだけでは、共同親権を単独親権に変更するというのは簡単ではないということを予想しております。ですから、一方の圧力を受けて他方が共同親権に同意してしまったという場合に、やはり現行法の親権者変更とは異なる仕組みを設けて、大枠でいうと、変更が容易になるようにするのがよいのではないかと考えております。   具体的に、2ページの(注3)にあるように、一方の圧力を受けて他方が共同親権に同意してしまったという場合に、瑕疵のある同意、欠陥のある、真摯な合意ではない場合として、改めて真摯な合意を形成する機会を保障するといったような異なる仕組みを設けるのが妥当ではないかと考えております。部会資料27で少し検討されているように、第三者の確認を求める場合には容易ではなくするということになるようなのですけれども、その第三者の確認についてどうするかということが問題になってくるのかと思います。また部会資料27の方で検討させていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。今、青竹幹事自身もおっしゃいましたし、先ほど事務当局も私も申し上げましたけれども、今の問題については主として資料27の方で御意見を頂きたいと思いますので、改めてそちらの方で御発言を頂ければと思います。   ほかにはいかがでしょうか。 ○水野委員 委員の水野でございます。先ほど、ここの申立権者に子自身が入るという御提案がありましたけれども、私は少し慎重に考えております。この場で決めるときに、一応、考えて頂いた方がいいかと思い、その理由を申し上げます。平成23年の親権法改正時に、親権喪失や停止の申立権者についても、この議論がございました。そして結局、子自身が申立権者に入ってしまいましたし、そこで入れておきながらここで入れないというのは難しいかもしれないと思いますので、私は最終的に断固反対というわけではないのですけれども、ただ、あのときも相当議論にはなったと記憶しております。つまり、こどもの意見表明権よりも更に上位にあるのはこどもの利益、こどもの福祉ですので、そういうことをこどもに言わせること自体が制度設計としてはこどもにとって非常に酷なのではないか、親権を喪失させるべき場合にはむしろ社会の側でイニシアチブをとるべきであるという判断です。私もそのときにはそういう立場を採っておりました。同様に、この場合もこども自身に申立てさせるまでもなく、何らかの形でこどもの福祉のために確実にかつ速やかに変更される手続が行われるのが本当は筋だろうと思っております。ただ、親権法改正の時も結局入ってしまいましたので、ここでも入れるべきだという御意見がきっと出るだろうとは思っておりますし、そして、それはこの場でまた議論をして決められることだと思いますが、そういう慎重な立場もあったということは述べさせていただきます。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。申立権者の問題については、この次の段階で具体的に検討する必要があると思いますが、佐野幹事からは子を加えるべきだという御発言があったのに対して、水野委員からはそれは慎重に考えた方がよいということで御意見がございました。しかし、ここで議論するということ自体について反対するという御趣旨ではなかったと思います。それから、水野委員の御発言の中で重要なのは、仕組みとして子に申立権を認めるか否かにかかわらず、適切な場合に適切に変更が行われることを確保するということが重要なのではないかという御指摘だったかと思います。 ○赤石委員 親権者の定めの変更なのですが、濫訴、リーガルハラスメントの可能性、これは部会資料27の方で言っても同じだと思うのですけれども、そちらでも言おうかと思っていたのですけれども、やはりいろいろな申立てが増える可能性が出てくると思います。中間取りまとめでも、乱訴にならないような仕組みが必要であるとは書かれていたのですが、もう少し具体的に、どういう制限方法があるのかをやはり検討していた方がいいのではないか、それと抱き合わせではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。今、適切なときに適切な変更ができることが望ましいという御意見ではないかと申し上げたのですけれども、不適切な申立てがなされることを避ける仕組みを考えておく必要もあるのではないかという御意見を頂戴いたしました。一旦決めてあることについて変更する場合には二つの要請が働くのだろうと思います。厳格な要件を課すと、結局は変えることができないのではないかということになり、簡易な要件を課すと、それは濫用を招くのではないかという御意見が出るということになりますので、その間でうまく調整するということが、この場面に限らず、様々な場面で必要になると思いますので、水野委員の御意見、赤石委員の御意見、双方を踏まえて制度を設計していくということかと思います。 ○赤石委員 すみません、少し言葉足らずで。青竹幹事がおっしゃったように、真摯な合意ではなくて圧力によって共同親権を決めざるを得なかった、あるいは離婚したいがために、もう共同親権をのまざるを得なかったというような状況は想定されるので、それについての何らかの仕組みというのはすごくうなずけるところではあるのですが、私のあれではどういう仕組みが必要なのかというのまでは言えないのですが、とはいえ乱訴が起こることも危惧しているということです。すみません、少し言葉足らずでした。 ○大村部会長 ありがとうございます。青竹幹事の発言との関係でいうと、合意に瑕疵がある場合の取扱いは取りあえず今ここでの問題から切り離して、部会資料27の方で御議論を頂き、最終的に従来からの親権者の変更の仕組みに乗せるということになれば、またこちらに戻ってくるということになるかと思いますので、差し当たりはその問題は次の問題として扱うということにさせてください。部会資料26の3に固有の問題につき乱訴を避けるということが、合意に問題があるという場合についての請求を妨げるということに直結はしない。二つを別々に考えるということであれば、それでいいとして、しかし、戻って一緒になるということだとすると、それは何らかの形で整理をすることが必要になる。赤石委員がおっしゃることは、そういう問題を含んでいると受け止めさせていただければと思います。 ○池田委員 合意に瑕疵があるという場合ではなくて、事情変更による親権者変更の要件について、(注2)で試案が挙げられていますけれども、それについて一言申し上げたいと思います。(注2)の下から3行目のところに試案として、父母が共同して親権を行うことが困難又は不適当であることにより子の利益を害すると認めるときということなのですが、これが親権停止の場合の要件と非常に似通っているというところがあると思います。確かに双方から単独に変更するということは、一方が親権を失うわけで、それと類似した要件とするというのは一つの考え方かなと思いますけれども、ただ、現状の運用においては親権停止というのは非常に重いものとして考えられていて、要件としてもこの字面以上の重さを持っているというところが実務感覚としてございますので、双方から一方への変更の場合もそのような要件とするのは、やや重いのかなという懸念もある。どのように適正に定めていくのかというのはこれから議論できればと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは、3に固有の問題、事情変更の場合とおっしゃいましたけれども、その場合についての要件が親権停止の場合の要件と並びで解釈運用されると、重すぎるということになるのではないか、そのことも考慮しつつ要件について議論する必要があるという御指摘を頂きました。   ほかに、部会資料26の3についてはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、部会資料26の3につきましては、こうしたことについて議論するということは必要である、申立権者や要件などについて、あるいは要件の問題と関連することになるかもしれませんが、訴訟の起こしやすさ、反対に乱訴の危険といったことを考えて、どのような要件立てにするのかということについては更に検討するという形で、今日のところはまとめさせていただきたいと思います。   予想より多少早く次のところに入れますが、部会資料27の方に移らせていただきたいと思います。1と2に分かれて資料ができております。御議論はそれぞれ分けた形で頂戴したいと思っておりますけれども、協議上の離婚の場合と裁判上の離婚の場合ということで、現在の民法には、協議離婚、裁判離婚という形で順に規定が置かれていますので、それと対比する形で資料は整理されているものと理解しております。   部会資料27の1(1)につきましては、従来御議論を頂き、おおむね皆さんの賛同を頂いていると思いますけれども、それを前提にして議論したときに(2)や(3)は適切かということについて、御議論を頂戴したいと思っております。先ほどから出ておりますけれども、部会資料26の3のところで先送りにしました問題はここの問題ですので、御意見を頂戴したいと思います。ということで、まず、部会資料27の1につきまして御意見を頂戴し、そして、ひととおり御意見を頂きましたら、部会資料27の2に移りたいと思います。適宜のところで休憩を挟ませていただきたいと思っております。   どなたからでも結構ですので、御意見を頂戴したいと思います。 ○小粥委員 小粥です、度々すみません。どなたもなければということで、発言させていただきます。1(1)につきましては、これまでの議論で多くの委員、幹事にサポートされた考え方だと思いますので、(1)についてのコメントはしないことにさせていただいて、(2)ですけれども、(2)@の方ですが、なかなかこの方向での検討というのは、いいところと悪いところとあって、例えば、家族法の授業をするようなことを考えますと、協議離婚が日本の場合は簡単にできすぎるのでよくないというようなことを言ったりします。しかし、そうすると実際は離婚のハードルが上がってしまって、それはそれで実際上はよくないのだというようなことを申します。そういう観点からすると、第三者の確認という制度を入れるということは、いいところと悪いところと両方ありそうでして、具体化しないと何とも言えないところがありますけれども、しかし、ここで何が意図されているのか少し分かりにくいところもありますので、引き続き話題にするということ自体に反対するものではございませんけれども、もう少し具体的に、どういうつもりのことなのかということを議論をして共有していければと思います。   それで、Aと(3)なのですけれども、Aと(3)を余り区別しないで申し上げることになりますけれども、特に(3)なのですが、協議離婚をする当事者に対して、言ってみればオプションを与えるものなので、基本的にはよいことなのではないかと思う次第です。それはどういうことかと申しますと、現行法の下では親権者の定めについても合意をしなければ協議離婚は成立することがないわけです。けれども、特に(3)のような方向で考えるということになると、離婚自体については協議でまとまると。それでその後、一部分についてだけ第三者、家庭裁判所に決めることを委ねるという形で、それが嫌なら別の選択をするわけだけれども、協議離婚の選択肢としてこういう形の協議離婚もあるというようなふうに受け止めれば、こういう方向もあるのかなというような気がいたしました。そういう捉え方がいいのかどうかも分からないのですけれども、差し当たりの私の意見と申しますか、感想でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。小粥委員からは、1(1)を前提として、(2)と(3)について御意見を頂きました。二つに分かれていて、(2)@につきましては第三者の確認にはメリット、デメリットがあるだろうという御指摘を頂いて、更に検討することには反対しないということでした。多少ネガティブな印象を受けましたけれども、しかし、なお検討することには反対しないということだったかと思います。残りの(2)Aと(3)については、オプションという位置付けをされましたけれども、裁判所に判断を求めた場合にはこうなる、判断を求めない場合にはこうなるということで、選択の幅が広がることは一般論としてはよいことではないかという御意見だったと承りました。 ○久保野幹事 ありがとうございます。幹事の久保野です。今の御意見のうち(3)と(2)Aに関わる点につきまして、同様の方向での意見を持っているので、引き続いて発言させていただきます。この御提案の特徴は、父母が離婚すること自体と切り離して親権者の定めを行うということを可能にするということだと理解していますけれども、ここを切り離すということ、離婚と同時、あるいは離婚自体と一緒にするということに必ずしもこだわらなくてよいと思います。こどもの利益のために必要なときに適切に、時期は柔軟に、しかししっかり決めていくという仕組みにするのが大事ではないかというふうに思っておりまして、その観点からも支持できますし、また、私の理解しているところの比較法の動向としましても、親の婚姻の有無という状態と親権をどうするかということを、離婚という時点に着目して、同時にさせるということは相対化する方向に行っている傾向ではないかと思います。   また、少し観点が変わるのですけれども、ヒアリングなどで勉強させていただいている中で、離婚時という葛藤が高まる傾向のある時期にはこだわらない方がよいのではないかと、もしかするとメリットもあるのではないかという感じも持っております。そういう意味では、1(2)Aですとか(3)のような方策というのは前向きに考えていっていいのではないかと思います。   また、先ほど議論のあった変更手続をいつどのように使うのかということについても、これと関連して、ごめんなさい、今の文脈ではずれてくるので、そこは結構です。すみません、以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。久保野幹事の御意見は、方向性としては先ほどの小粥委員の御発言に賛成ということだったと理解を致しました。その上で、小粥委員は先ほどオプションという位置付けをされたわけですが、久保野幹事からは、親権者の決定の時期を柔軟に考えるという考え方から、これを支持するという御発言があったかと思います。必ずしも離婚と同時にしなければいけないということではなかろうといった御意見であると承りました。 ○沖野委員 ありがとうございます。委員の沖野でございます。私も今御発言のあった小粥委員、久保野幹事と基本的に同じ考え方に立っているということで、そのような観点から申し上げたいと思います。   順番に申し上げますけれども、まず(1)については、父母がしっかりと合意をするのであれば、その合意を尊重することでよいという考え方だと思いますので、これで結構ではないかと思います。ただ、(3)との関係で、あるいは基本的にというようなことになるのかもしれません。   それから、(2)、(3)については、先に(2)から申し上げますけれども、合意の瑕疵がない真摯な合意、それから内容自体の一定の適正さというのをいかに確保するのかということが問題ですので、それを当事者だけではなく第三者のチェックの仕組みを用意するというのは考えられることだろうと思います。今回の@は、できるものとするということですので、しなければならないということではありませんので、しなければならないということになりますと非常に重すぎますし、そもそも一定の、例えば専門家ということであれば、その専門家にアクセスできなければおよそ離婚の道が事実上封じられるというようなことにもなりかねないということを懸念しますので、飽くまでそれができて、そして、それができれば一定の効果を持つという形で、現在の@、Aというのは一つの考えられる方向として更に検討すべきではないかと思っております。   それから、第三者の確認につきましては、一つは、第三者自身が一定のそれなりの知見を持って、かつ、適切な合意であるのかということまで含めて確認ができる者でないと十分な機能を果たせないということになりますけれども、そういった者がどのくらいあるのかと、法的な専門家であって、特にこの分野の専門家であるというようなことであればよいのかもしれないとは思いますけれども、なかなか考えにくい面もあるのではないか、例えば公正証書にすればいいかというと、それは恐らくこの分野では必ずしも適切では、十分ではないだろうと思われます。ただ、他方で第三者の確認を求めるということは、少なくともこの合意はこういう考え方に基づいてしっかり私たちは考えましたという一種の説明責任を求めるというか、そのような機能ということもあるとは思います。どういうものが果たせるかによって、その効果というのが違い得るのかとも思っているところでございます。   それから、(2)Aについては、十分な確認なり適正さが確保されているようなルートでこの合意ができているのかということが十全に保障されているということが客観的に分からないような場合には、その合意についてはやや暫定的な合意として考え直す機会を与えるということは考えられてよく、それを体現しているのがAだと思われますので、このようなやり方もまた十分あるところではないかと思います。一種の熟慮期間というか、そういうものをセットにすることによって、ここの適正さを事後的に確保するということではないかと思っております。   (3)につきましては、そもそもがこの合意の適正さということについては、やはり離婚を求めるあまり他の点は妥協するというか、もう置いておくということが少なくとも見られる場合があることを経験的に知っておりますし、教えていただいているところです。また、実際の訴訟などを見ておりましても、双方から離婚を求め、ただ親権者の指定ですとかそういうところで争いがあるというケースもございますので、離婚自体は合意によってできるとした上で、親権者の定め方というのは別の、必ず同時でなければならないということではなくて、切り離してしっかりとそこをこどもの利益のためにということで確保していくというやり方が在るべき姿ではないかと思いますので、(3)もこの線で検討をしていただければと思うところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。沖野委員からは1の(1)、(2)、(3)について、それぞれ意見を頂きました。全体としてこの方向で検討するということには賛成されるということであったかと思いますけれども、特に(2)@について、確認を求めることができるとなっているので、これならばよいのではないかという御意見を頂き、その上で第三者をどうするのかということについての問題を提起されたかと思います。第三者をいかなる者にするかによって効果が違うということもあり得るといった御指摘も頂戴したと理解を致しました。 ○戒能委員 ありがとうございます。委員の戒能です。2点申し上げたいのですが、今の沖野委員の発言とも重なる部分があるかもしれません。それで、少し今までの議論で、真摯な合意とは何かということがまだ不十分ではないかと感じております。   それと、もう1点はそのこととは別に全体的にということなのですが、これは本日あるいは前回の赤石委員の御発言に大変よく表れていたと思うのですが、何か制度設計をするときに、もちろんこのことによって社会が前向きになるとか変わっていくというプラスの面もあるのですが、同時に、こんなことは私が言うまでもないことですが、マイナスの面もあると。弊害とまではいえないかもしれないけれども、大きな影響、マイナスの影響を与える場合もある。それを個別の事例ということで切り捨ててしまわない、そこはすごく気になるところです。大事なところではないかと思うのです。ですから、そういう点に十分留意して議論していかないと影響が大きすぎるということです。そのことによって不安を覚えたり、それから、実際に生活そのものを、これはこどもの生活ということを一番に考えるわけですが、余りにも大きな影響を与えかねないという側面もあるのだという、そういう議論をしているのだと、だから十分慎重にやるべきだと、社会の基本的な秩序の問題になりますので、そこは強調したいと思っております。   それで、資料27の1の協議離婚における親権者の定め方のところで、合意の適正さを担保する方策ということで提案があるわけなのですが、その提案というのも議論の提案ということですよね。それが、不適正な合意だとしても、その例としては圧力によってゆがめられてしまったという場合もあるということなのですが、法的手段によって是正できるものとできないものとがあるのではないかと思うのです。真摯な合意ではない不適正な合意というのがどういうふうに形成されてきたか、そこを見ていかないと、長年のやはり蓄積だし、それから、そう容易には変わらない、変えられないものも含んでいるのではないか、そこが圧力の背景としてあるのではないか、構造的に見ていかないと、なかなか難しいのではないかということを感じております。   それで、これは前にも出てきましたけれども、裁判所も大変難しいというような御意見をおっしゃっていらっしゃいましたが、価値観の問題に関わってくるということが大きいポイントだと思いますので、その辺は、是正という言葉が後にも補足説明にも何回も出てきますけれども、是正に至るまでは道のりは大変長くて、その手段があるのかどうかということを少し疑問に思っております。   それから、そういう意味では第三者ということが難しいことであって、果たして司法だけでできることなのかということです。そこに、例えば医療的な側面とか、心理的な側面とか、あるいはジェンダー的な側面とか、そういう総合的な観点がないと対応が相当難しいなと、しかもそれほど長く時間は掛けられないという中で、一体どういう構想ができるのだろうかというのは、今非常に分からないでいるというか、そこら辺も時間を掛けて議論すべきだと考えております。   それから、もう一つは、少しそれるかもしれないのですが、協議離婚の在り方といいましょうか、そこに影響を与える、特に第三者が介入してくるという仕組みを考えるとすると、少し懸念するのは、離婚がしにくくなるということが危惧されるし、そのことによって、意思に反してそういう婚姻関係に縛られるということがないような制度設計を考えるべきだと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員からは何点か御指摘を頂きました。戒能委員の整理でいうと、真摯な合意というのは何か、それから、制度化に伴うマイナスの点を考える必要がある、是正できないものがあるのではないかという御指摘、そして、適切な第三者というのがどういうものなのか、また、第三者が介在することによって離婚が妨げられることがあるのではないか、このような御指摘を頂いたかと思います。   非常に興味深い御指摘として伺ったのですけれども、合意がされていて、これが真摯なものでないというときに、何を審査し、どこまで戻るのかということが多分問題になっているのだろうと思います。沖野委員からは先ほど、合意自体及び内容、あるいは合意の適正さ及び内容といった御発言がありましたけれども、内容について判断するのかどうなのかということによって、戒能委員がおっしゃった、第三者とはどういうものなのかということも影響を受けるのではないかと思います。そして、沖野委員は先ほど熟慮期間という言葉を使われたわけですけれども、熟慮期間のうちに翻意すると合意がないという状態に戻るというのが多分その含意だったのではないかと思います。合意がなかったということになるということと、合意に代わる、あるべき状態が決められるということの間には差があるようにも思いますので、その辺りをどのように考えるのかという問題が先ほどの戒能委員の御発言の中に含まれているといたと受け止めました。   そのほか、いかがでしょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。委員の井上です。(2)の@、Aに関連して発言をさせていただきます。まず、親権者の定めを確認する第三者について、これをどこにするのかというところなのですけれども、例えば公証人や認証ADRを想定した場合、そのような機関は協議離婚の当事者には必ずしも身近なものではないのではないかと思います。もし仮にそのような機関の活用が前提の制度を設けるという場合であれば、当事者に向けた周知や十分な情報発信を行っていただきたいと思います。   その上で、資料の6ページの下から8行目にも記載がありますけれども、父母の合意を覆す資料を第三者が収集することは難しいということが想定され、その場合において第三者は、父母が真摯な合意に基づいて親権者の定めをしたのか否か、結局父母の申出をそのまま追認するだけになるのではないかという懸念を持っております。第三者が確認するという手続を設けることによって父母の合意の適正性を確保しようということであれば、その確認が実効的に行われなければならず、その点に留意が必要であるということは申し上げておきたいと思います。   また、9ページの中ほどに記載がありますけれども、適正性確保のための確認手続を設けることによって協議離婚のハードルが上がり、結果として子の福祉に影響が出るようなことがあってはならないと思います。Aに記載されているように、事後的な親権者の変更についても定めておいて、事前、事後の両輪で適正性を確保し、子の福祉にかなうような柔軟性のある制度とするのが望ましいのではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。井上委員からは、(2)の@、Aについて御意見を頂きました。@について、第三者として仮に公証人や認証ADRが想定されるのならば、そのアクセスというか情報の周知ということが是非必要であろう。それから、第三者が確認するというときの、その確認が実質的なものになるような対応も必要であろうという御指摘を頂きました。御意見は、第三者が確認するということに対して多少懐疑的な、最初の小粥委員もそうだったのかもしれませんが、そうしたニュアンスを持ちますけれども、これによって離婚が困難になるということがあってはならない、その意味では(2)Aと併せて使うという制度設計がよいといった御意見を頂いたと理解を致しました。   もう少し行けそうなので、原田委員まで伺って休憩したいと思います。 ○原田委員 委員の原田です。戒能委員や井上委員がおっしゃった後で、若干言いにくいのですけれども、(2)の@とAというのは事前審査と事後審査の問題という関係になると思うのです。事前審査で合意の真摯性と、それから、その内容が相当であるかということの確認をした上で認めなければ、やはりやってしまって、これはうまくいかなかったということがたくさん出てくる、あるいは真摯な合意ではない場合が混ざってくる、あるいはDVや虐待が防げないということを考えると、この第三者の確認は私は必要ではないかと思い、かつ、それが実質的にできる、専門性や費用が掛からないという点を考えると、アクセスのしやすさは非常に難しいと思いますけれども、現時点では家庭裁判所ではないかと思います。私は協議離婚が難しくなるのは駄目だということをさんざん言ってきましたが、部会長が禁反言の原則はないと前回おっしゃっていただいたので、その言葉に甘えて、私は共同親権を入れるとすれば未成年者がいる場合は、家庭裁判所を関与させるのが必要ではないかと考えます。協議離婚のハードルが上がっても仕方がないと思います。いろいろ反論があることは承知しておりますけれども、そう思っております。   それから、家庭裁判所のリソースの問題で現実的ではないと言われる意見もあると思いますけれども、事ここに至って、これを入れるのであれば、そのくらいの覚悟は必要だと思います。もちろん公証人とか自治体とかいろいろ、あるいは支援機関とかというところのお話もあるかもしれませんけれども、結局この部会では基本法で民法の改正について議論する、提言するところであって、それ以外の社会保障とか支援制度についてここでまとめるということではないようなお話をずっとされてきたわけですから、現在できていない制度や機関は前提とすることができないので、考えられるとすれば家庭裁判所しかないと思っております。   それから、もう一つは、実はパブコメの個人意見の中で元家庭裁判所の裁判官らしき方の御意見がありました。諸外国の共同親権は家裁の注意深い監視とケアがセットになっているということが書かれてありました。それができない状態では今のままでも仕方がないのではないか、そういう整備を積極的に望むというような御意見だったのですけれども、そういうことを考えますと、私はやはり家庭裁判所でやるべきではないかと思います。そして、その場合の、今、井上委員が合意の真摯性について客観的に材料はないというふうなこともおっしゃいましたが、しかし、その内容に、きちんと御本人たちが申述するということや、あるいは監護のやり方について決められているとか、養育費が決まっているとか、そういういろいろなことをきちんと約束した上で、あるいは意見が不一致の場合にはどうするかというようなことを決めた上でこういうことを決めているということであれば、それは真摯な合意といえるのではないかという判断もできるのではないかと思いますので、そういう専門性を兼ね備えた家庭裁判所でやるということがいいのではないかと思います。   Aは、@とのセットでいうと、@でそこを厳しくすれば、Aはそう簡単にしてはいけないという御意見もあるかと思いますが、そういうふうにして一生懸命決めたけれども、やってうまくいかなかったという事情変更の場合は、Aが働くということでもいいのではないかと思います。   それから、(3)については、今でもこのような制度があると私は認識していて、申し訳ありません、実務家でありながら法的な根拠が明確に説明できないのですが、合意に代わる審判で離婚して、親権は裁判所が別に決めるということをやったことがあります。そういうことができるような、ほかの人に聞いても、やったことがあるという人がありました。なので、(3)について反対するわけではないのです。ただ、これを認めると事実上、共同親権が継続するということになるので、取下げは認めないと。つまり、ここで取り下げてしまうと共同親権がずっと続くということになって、決めていないということになるので、やはり離婚の際には決める必要があるけれども、それが少しずれてもいいというだけの話であるというふうにすれば、合意で離婚した後、親権者を決めるということについて、取下げは認めない制度で、後日というか事後的に親権者を決めるということがあってもいいという制度なら、いいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。原田委員からは(2)の@、A、(3)について御意見いただきましたが、1点確認させていただきたいのですけれども、(2)@について、第三者のところに家庭裁判所を入れるべきだという御意見なのですか。 ○原田委員 はい。ただ、いわゆる親権を争う場合の離婚と、合意している場合とは違うという意味で。 ○大村部会長 分かりました。また、第三者が確認をするときの材料についても御意見を頂きましたが、それが家庭裁判所でなければできないという前提でおっしゃったかと思いますけれども、そうなのかということも含めて、この後、御議論を頂ければと思います。それから、(3)については今でもできるのではないかといった御指摘がありましたが、今でもできるとして、幾つかの手当てをしておかないといけないのではないかという問題があるように思いますので、(3)について、これでやるということになった場合にはどのような手当てが必要なのか、それは(2)Aについても同様ですけれども、更に詰めて考えるということになるのかと思って伺っておりました。   1時間半たちましたので、ここで休憩させていただきます。今ここで手を挙げた人だけで発言を打ち切る趣旨ではありませんが、順番を定めるために、御発言を希望される方は挙手をお願いします。では、佐野幹事、石綿幹事、畑委員、青竹幹事、武田委員、赤石委員まで伺っておいて、ここで休憩し、休憩後に引き続き御意見を頂戴したいと思います。今、15時2分ですので、15時15分まで休憩を致します。   休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開したいと思います。   休憩前に原田委員まで行きましたので、次は、佐野幹事、どうぞ。 ○佐野幹事 部会資料27の1の(2)、(3)について申し上げさせていただきます。まず(2)で、合意の適正を担保する方法として、@第三者の確認というのが挙げられていますけれども、原田委員の御見解なども考慮に値するとは思うのですけれども、ただ、現実的なところを踏まえて、離婚のハードルなどを考えたときには、一律確認を要求しないというのもやむを得ないかとは思います。   ただ、少なくとも、共同親権のうち監護者を定めないことを認める場合には、この監護者を定めない共同親権を選択してきた方たちについては、一番適当なのは家庭裁判所かと思うのですけれども、そちらでの確認を求めるというのは必要なのではないかと思っております。   といいますのは、前回か前々回にも申し上げましたけれども、監護者を定めない共同親権という抽象的なレベルで合意ができていたとしても、実際の監護の在り方について本当に合意ができているのかという点について確認をしないと、こどもの監護というのは離婚翌日から問題となり、乳幼児とか障害を持った子などにとっては生命身体の安全に直結する問題になるので、そこについてきちんと両者で合意ができているのかというところについて確認する必要があるのではないかと思います。その合意の内容については、例えば海外のペアレンティングプランみたいなやり方など、非常に柔軟な在り方もあり得るのではないかと思いますけれども、その適正を確認するとなると、その実態に即したところを見るという意味で家裁が適当なのではないかと思います。   ただ、そうではない選択、例えば監護者を定めた共同親権、これから定義するということですので、ここでいう監護者というのは一応、こどもの監護について責任を持っている人というレベルで、使っておりますけれども、監護者を定めた共同親権とか、あるいは単独親権で合意しているという場合の確認については、もう少しそのハードルが低いところ、基礎自治体レベルで確認部署を置くとかいうこともあり得るのではないかと思っています。   その合意の確認なのですけれども、確かにほかのところから資料を持ってきて真摯性を確認するというのは難しいのですが、例えば合意の前に相談を経る、あるいは説明を受ける、そういったプロセスを経ることをもって、その後での合意であれば真摯なものとして確認するというようなやり方もあり得るのではないかと思っております。   次に、Aの一定の期間に限り変更することができるという案ですけれども、これも当事者の方たちは、親権のみならず、離婚のときにはいろいろ考えなくてはいけないところを一度に考えた上で決断しなくてはいけないというところもありますので、こういった制度を設けるというのは一つ、意味があるかと思います。   ただ、例えば@の確認の手続を経ているから、これに関する変更は難しいという場合でも、先ほど原田委員もおっしゃったように、前回の部会資料26で議論した、やってみたらうまくいかなかったというような親権変更の枠組みで変更することは妨げられないものとすべきではないかと思っています。   それから、(3)ですけれども、離婚後、親権者の定めだけについて争いがある場合に別途手段を設けるというのは、一番のニーズとしては社会保障の部分にあるかと思いますので、この社会保障について別居状態でも受けられるという手当てができるのであれば、今ほどニーズが高くないのかもしれませんが、それでもやはり手段として増えるのであれば、あり得るものではないかと思います。   ただ、真摯に共同親権の合意をして離婚をしたカップルと、そうではない、合意できない結果、事実上なし崩し的に共同親権になっているカップルと、きちんと峻別するためにも、こういう離婚を認める場合には、例えば親権者指定の審判の係属証明や申立書などを離婚届と同時に提出するなどの手当ては必要だと思います。この場合は戸籍の親権者欄は空欄のままにして、決定したら裁判所から通知をして、届出によってきちんと親権者を記載するとか、あるいは手続中の共同親権行使に支障がある場合は必要に応じて保全処分を取るとか、先ほど原田委員がおっしゃった取下げ制限などの手当ては必要かと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。佐野幹事からの御発言は、基本的には大きな枠組みとしては、これを前提にしたものと受け止めました。その上で、(2)@については、離婚のハードルが上がるということとの関係で、第三者の確認を求めることができるとするのがやはり妥当なのではないか、ただ、監護者指定なしの共同行使の場合については家裁関与が必要なのではないかといった留保を付されたと理解を致しました。それから、確認の内容については、手続的な配慮をすることによって合意の確保ができるのではないかといった御指摘があったかと思います。Aに関連して、確認を経ていても、やってみたらうまくいかないというケースはやはり親権変更を認める必要があるとの御指摘もあったかと思います。(3)については、ニーズの問題についても触れられましたけれども、こういうものがあってもよいが、やはり手続的な整備が必要であるという御指摘を頂いたと理解を致しました。それともう一つ、これもどなたか先ほど御発言がありましたけれども、ありがとうございます。 ○石綿幹事 幹事の石綿です。私も1について、基本的にこの方向性で議論することには賛成だという前提の下、(2)について3点、発言させていただければと思います。   まず、@についてですが、事前のチェックということについて、選択制ということであるのであれば、離婚のハードルを一律に上げるものではないですし、現状当事者だけで決めていることについて第三者にチェックを求めるということによって、第三者の目が入ることで合意の適正性というのが一定程度図られる意味はあるのだろうと思っております。   2点目は、@の第三者を誰にするのかという話とも関連しますが、@の事前のチェックをしたことの効果をどのように考えるかということです。沖野委員からも御発言があったかと思いますが、現状はAの事後の変更のときにおいて考慮をするのだとされています。その考慮の程度がどのようなものかということなのですが、部会資料の7ページから8ページなどを読むと、場合によっては家事調停などと同じように考えて、Aの手続を受けられるということを慎重に考慮するということも考えられるとも読めます。@の手続で第三者をどのような方にするのかということとも関連しますが、調停と同程度の合意の適正性が保たれるものなのかということは第三者次第であり、第三者の専門性が高ければあり得るかと思いますが、そうでない場合にそこまでの強い効果を与えていいのかということは慎重に議論した方がいいと思います。仮に強い効果を与えるのだということであれば、少し極端な意見かもしれませんが、第三者のチェックのみならず、戒能委員がおっしゃっていたように、そもそも当事者にずっとアンバランスな状況があるわけですから、当事者双方に例えば代理人が付くといったようなことまで求めるのであれば、あり得るのかもしれませんが、そこまででない場合に、Aについて強い効果を与えるということは慎重に議論した方がいいのかなとも思っております。   それから、3点目ですが、佐野幹事の御発言にあったことと重なりますが、Aの事後の変更、事後のチェックを認めるということと、親権者の変更の手続との関係性、また家裁での判断の内容や枠組みの異同ということも具体的に検討していく必要があるのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事は全体の方向性には賛成だということで、その上で(2)について3点御指摘を頂きました。一つ目は@について、選択制ならば@があることはよいのではないか、しかし@の効果を考える必要があり、強い効果を認めるのであれば、@について手続的な重さが必要になるのではないかといった御発言だったかと思います。3番目は、Aと親権者の事後的な変更との関係を整理する必要があるのではないかという御指摘を頂いたかと思います。 ○畑委員 畑でございます。まず、(2)Aについてですけれども、直前の石綿幹事の御発言にもあったと思いますが、この一定の要件をどう定めるのかとの関係で、従来からある親権者の変更との関係をどう整理するのかという辺りは、私も課題だろうと思います。場合によっては、手続的には親権者変更の手続で受けるということも十分考えられるかなと思いました。Aで言っている一定の要件ということの中身にもよると思うのですが、例えば、Aで親権者を定め直すとしても、結局はどう定め直すかについては子の福祉の観点から現時点でどういう定めが適切かということを考えざるを得ないのではないか。そうすると、従来型の親権者の変更とかなり中身は重なってくるのではないかという感じもいたします。また、二つの手続が別だとすると、現状の変更を求めたい側は、必ず両方申し立てるということになるのではないかという感じもいたしますので、場合によっては手続的には親権者変更でまとめて受けるということも考えられるかなと思いました。従来の親権者変更というのはなかなかハードルが高いという話もありましたけれども、それは従来の制度を前提とした従来の運用ですので、法律の規定を若干いじるというようなことも含めて、今後の制度、今後の運用を考えるということもできるかなとは思いました。   それから、(3)なのですが、これは何か付け加えるということではないのですが、民法の条文とか家事事件手続法の条文は、原田委員がおっしゃったように、現在でもこういう審判事件というものがあることを想定しているようにも見えると私も従来思っておりました。ただ、この部会資料にもあり、今日も話題になっているように、離婚の効力発生時との関係との整理とか、そういう手当てはいずれにしても必要ですので、そこの検討は必要になると私も思うということであります。   それから、ここで発言するのがいいかどうか分からないのですが、この資料の直接の対象になっていないこととして、調停による離婚の場合と、それから和解による離婚の場合があると思います。この資料は、そういう裁判所が絡む場合であればいわゆる真摯な合意というものが確保されるだろうということが前提になっていると思われ、私もそういう趣旨の発言をしたことがあるかと思います。ただ、今までなかった共同親権というものをどういう場合にある種、よしとして調停なり和解を成立させるかというのは、もしそういう制度を導入するのであれば、かなり重要な課題になってくるだろうと。法律に規定を置くという問題ではないようにも思いますけれども、実質的には重要な問題になるだろうとは思いました。   3点目は感想的なことですが、差し当たり以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。畑委員からは3点御指摘を頂きました。一つ目は、(2)Aについて、事後的な変更との関係を整理するに当たって、事後的な変更の中に吸収するという方向もあり得るだろうという御指摘でした。それから、(3)については、今もできるはずであるが、具体化をするための整備は必要だろう。3点目は、ここには出てこないけれども、調停、和解の場合もあるということで、それらの場合に、基準をどうするのかが問題になるだろうという御指摘があったものと承りました。 ○青竹幹事 1(2)の第三者の確認についてのみなですが、真摯な合意を担保するという面ではプラスですし、原田委員の御指摘、御提案のとおり家裁の確認まで要求するということになりますと、真摯な合意というものが現実に担保されると期待されます。しかし、第三者の確認によって、真摯な合意だけではなく、場合によっては内容の適正性まで推定されてしまうという運用がされてしまえば、結局、親権者変更しにくいという、事情変更の場合に限るという現行法の親権者変更の厳しい運用と余り変わらなくなってしまいます。仮に第三者の確認が形だけに終わってしまうということになったり、圧力を受けて共同親権に同意してしまったという重大な事態が生じてしまった場合に、これを是正しにくいというのは望ましくないと思われます。   したがいまして、佐野幹事が先ほどおっしゃったように思いますが、このような場合でも一定の期間は変更を求めることができるという御意見に同意したいと思っております。 ○大村部会長 青竹幹事、最後の結論のところをもう一度、すみません、お願いいたします。 ○青竹幹事 第三者の確認を受けた場合であっても、一定の期間であれば変更を求めることができるという御意見に同意したいと申し上げました。 ○大村部会長 それは、Aについてですか。 ○青竹幹事 そうです、Aのところと思います。 ○大村部会長 Aについて、第三者の確認があったとしても、一定の場合にAが働くということにしたいということですね。@についてはどういう御意見ですか。 ○青竹幹事 @については、すみません、余り考えがまとまっていなくて、いい面もあるのですけれども、第三者の確認があると、それで真摯な合意というのが推定されているというか、基本的には変更できませんというふうに運用されてしまうと、よくないのではないかという感想を申し上げた次第です。 ○大村部会長 分かりました。何人かの委員、幹事から、@についてやや消極的な御発言もありましたけれども、それとつながる御発言だったかと思います。余り第三者の確認ということを重く考えない方がいいという御意見として承ってよろしいでしょうか。 ○青竹幹事 はい。分かりにくくなりまして、すみません。 ○大村部会長 青竹幹事からはそのような御意見を頂きました。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。1に関してということですので、まず、1(2)について発言をさせていただきたいと思います。まず、やはりこの適正さを担保する方策は必要というところは前提として、ここを前提に考えるのが相当だろうと思います。   @そのものに関しては、現時点では留保させていただきたいというのが現時点での意見でございます。基本的にこの第三者の確認について、対応できるのかという懸念があることは承知しておりますが、私といたしましては、基本的には補足説明8ページの(7)アに記載のあるとおり、常に要求するという考え方に賛同するものでございます。離婚手続が現状より重くなるという指摘があるということも承知しておりますが、やはり今回の議論で一番重視すべきは子の利益だろうと私自身は思っておりまして、子の利益が優先されていないこと、ここが問題だということかなと思います。この離婚手続が、程度によるかと思いますが、重くなること、そこも含めて、子の利益に立ち返って、私どもは受け入れるべきではないかと思います。   同じく、補足説明8ページ目の(7)イですね、では、この第三者の関与の要否を区別する考え方、これというのはどうなのだろうかということについても考えてみました。やはり子の利益の観点で考えた場合、一方が親権者になる場合の方が子の利益に反する合意がなされるケースが多いのではないかと、そんなふうに考えております。まだまだ、離婚は親子の別れと考える層が、先だってもデータが出ましたが、養育費や親子交流の実態を見ると、明らかに多いという実態があろうかと思います。ただ、それぞれに関して有意差があるかという話になりますと、明確に申し上げることは難しかろうと、そんなふうに感じております。こういった観点から、第三者の事前の確認を常に要求するという考え方を採らざるを得ない、このように考えた次第でございます。   あと、確認の対象となる事項に関してですけれども、これも手続がどの程度重くなるのか、観念できるのかという課題はあろうかと思いますが、親権の定めにとどまらず、親権行使の方法、養育費、親子交流も含めて確認をすべきではなかろうか、まだ議論の俎上にあがっていないですが、養育計画の定め、ここまでを対象とできるようにすべきではなかろうかというのが現時点の考えでございます。   続きまして、(2)Aでございます。定め直すことができること、これについては賛同を致します。Aのような規定ができれば、現在の親権者変更、要件として事情変更という重い要件があると思っておりまして、これを外すことによって、今ハードルが高いという指摘がいろいろありますが、このハードルも一定、下がるのではなかろうかと考えております。   賛同する理由といたしまして、やはり子育てに関する意識の多様化が挙げられると思っております。現状、単独親権制度しか選択できないという実態ではございますが、離婚成立後、やはり一定の期間を経て、父母の協力の下、子の養育をするようになったという声も届いてきています。具体的に選択肢に入るようになれば、一層このような考えを持つ父母も増えて、このAのような規律を作ることの意義が更に深まるであろうと、そういうふうに考えております。   あと、法学者の先生がどなたかおっしゃいましたけれども、このAの期間に関して発言をさせていただきます。恐らくこの提案は、諸外国の熟慮期間をベースにしたところから出てきたアイデアかなと思っております。一定の期間であれば、この一定の期間に関しては、例えば韓国であれば、お子さんがいらっしゃる父母の場合は3か月と決まっていると聞き及んでおります。そういう他国の熟慮期間の定め方、期間、この辺りを参考にする方法もあろうかと思いますし、この辺りは法学者の先生方から、比較法の観点でありますとか、ほかの民法上の定めも考慮しながら検討を進めるのがよいのではなかろうかと存じます。   最後、(3)に関してでございます。これに関しましても基本的には賛同する立場でございます。(3)の主体は当然、裁判所となると明記がありますとおり、審判前に調停という話合いの場が提供されることになろうかと思います。そのことに意義があるのではないかと。調停前置の手続を置くことによって、きちんと話し合える場が作れるということに意義があるのではないかと考えています。懸念点もほかにあろうかと思いますが、皆様の指摘も踏まえて次のステップへ検討を進めていくべきと、こういう考えでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員からは1の(2)と(3)について御意見を頂きました。1(2)については最初に、現段階では留保とおっしゃったと思いますが、それは結論としては留保するということであると受け止めさせていただきました。その上で、個人的な御意見としては、どういう場合かに限らず事前の確認を求めるということが望ましいのではないかということをおっしゃったかと思います。また、併せて確認の対象を、ここでは親権者の定めを問題にしておりますけれども、広い範囲で確認の対象を捉えるべきだという御意見を頂きました。そして、Aと(3)については賛成であるという御意見を頂き、特にAについては、先ほど熟慮期間という言葉もありましたけれども、具体的な期間の長さも挙げられて、比較法的な、あるいは現行の他の制度との整合性を考えつつ期間を検討すべきであるという御意見を頂戴したかと思います。ありがとうございます。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。ありがとうございます。部会資料27、協議上の離婚の際の親権者の定めですが、非常に印象としては工夫されているなと、少し偉そうな言い方になるのですけれども、とは思いました。とはいえ、協議上の離婚の場合に親権者を定めることに関しての真摯性をどういうふうに考え得るか、ほかに選択肢は何があったのかというのは知りたいところではあるなというか、そのパターンというのがどんなものであるべきなのだろうというのは思います。   総論として、まず前提として思うのは、それはもうずっと言っているのですけれども、多分この会議の1回目のときから言いましたけれども、協議離婚が9割を占めている。もちろん調停を経過して協議離婚になる方もいらっしゃるのですけれども、多くの方は裁判所も経過せずに、いろいろな相談機関も余り経過せずに協議離婚をされていらっしゃる方が多数いらっしゃるという事実です。この方たちがどのように協議しているのかとか、そういったことについての資料が余りにも不足していて、ブラックボックスのまま議論することに関して、私は非常に、川下のひとり親を支援する立場としては、不安はどうしてもぬぐえないというのがあります。   当事者団体としても、協議離婚を経験した別居親の団体というのは余りないわけですよね。多分、親子ネットさんにも余りたくさんは協議離婚の経験者はいらっしゃらないのが実情だろう、一部いらっしゃるのだろうとは思いますけれども、なので、実態が分からないところでどのように議論するのかということがとても不安で、議論は未成熟だと私は思っております、基本的には。そのままやっていいのか、大混乱に陥るのか、そのことを誰が責任とるのかといったことは不安のままでございます。とはいえ、その中では工夫されているとは思っております。   例えば、こういったパターンがあるだろうと思うのは、先ほどから強制的に、非合意なのに手続では合意したかのように見えるような親権の在り方、共同親権の在り方というのを決めてしまう方がいる一方で、そうではなくて、淡い期待を持って共同親権を選択するような方たちもいるだろうと思うわけです。私どもの2,500人の調査で、協議離婚の方は千何百人、1,400人か1,300人ぐらいいらしたと思いますけれども、2,500人の中の35%ぐらいが夫のほうが家を出ていったという方たちだったと思います。御自身がこどもを連れて家を出たという方も結構、50%以上いらしたと思います。夫が家を出ていった理由というのは、いろいろあると思うのですけれども、典型的にはやはり借金があるとか、それから、いわゆる不倫というか、ほかに女性関係があるというようなこと、あるいは非常に住所や職業もふらふらと移ってしまうというような方たちがいて、もう俺は好きな人ができたから、お前たちはこの家を出ていってくれ、みたいに突然言われたですとか、そういったこともあるわけなので、そうなると、こどもを抱えている側としては何らかの責任を持ってほしい、こどもに会ってほしいとか、養育費やこどもの育ちに責任を持ってほしいという立場から共同親権を望んで、たまたまそういう手続では、まあそれでもいいよ、みたいなことで共同親権になっているような方というのも想像できるわけです、川下にいるところでお話を聞いているところでは。本当に両方があるのですよね、非合意で強制された場合と、期待値が多分内容と違っているのですけれども、実際の法的な効果と違うのだけれども、望んでしまったみたいな方たちといて、両方が、あれっ実際には不都合があるということになって、それで、第三者の確認もなしにやった場合には、後で定め直すということの手続を望むこともあるやに思います。なので、決して悪いとは言ってはいないのですけれども、なかなかこれが本当にうまく利くのかどうかというのが私には分からない。   そのときに第三者が、先ほどからいろいろ出てきたのと同じなのですけれども、では公証役場なのか、ADRなのか、家庭裁判所なのか、弁護士さんというのは余り出てきていないように思いますけれども、そういう方たちなのか。費用が高ければ、こういう人たちは本当に夫が借金まみれで自分の僅かな稼ぎで何とかこどもを食べさせていました、みたいな方が一体その費用を払えるのかの問題というのを、では援助システムはどうしますかということと一緒にやはり検討しないと、では家庭裁判所オンリーでやるのかというようなところがまだ分からないところではあります。   そういうことがある一方で、強制的にというところで、先ほど佐野幹事が、監護者指定がない場合には絶対に家裁を通すべきだというようなお話や、原田委員のように全て家裁を通すべきだというようなお話も一部うなずけるところがあるなと思いつつ、私の中ではまだ少し意見が固まっていないということがございます。   お願いではあるのですけれども、やはりものすごく大きな、年間20万件ぐらいのある離婚のうちの9割の18万件についての対応を決めるに当たって、余りにも資料がないということをどう考えるのか、最初から言っているのですけれども、やはり資料は欲しいと思います。また、武田委員がおっしゃったように、韓国の熟慮期間と大変似ていると、私もそのように思います。であれば、比較法学の方が、今、熟慮期間を設けたことが、例えば法的に弱い立場の人たちにどう作用するのかとか、そういったことをやはり資料が欲しいと思います。最後に、こういうのでやってみたけれども駄目だったというときに、どの程度の期間でこれをやり直しができる法律になるのかとか、本当に恐ろしくて、何とも言い難いところでありますけれども、やはり私たちの熟慮期間が必要な感じがするわけです。最初から言っていますが、ここをどうするのかについての知見がやはり不足していると思っております。私どもが出せるものは、また出してもいいですけれども、やはりもう少し違う調査がないと恐いと思っております。とはいえ、ある程度の工夫はされていると思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員からは繰り返し不安や懸念が表明されておりますけれども、最後におっしゃったように、とはいえある程度の工夫はされているだろうという評価をしていただいていたかと思います。その上で、具体的な御指摘として何点かあったかと思います。家裁の関与については今のところ意見が言いにくいというお話があり、また、資料の問題についても触れられましたが、ここで議論をするというよりも、何か資料があれば出していただくということになろうかと思います。それらを別にすると、一つは、第三者の関与との関係で、やはり費用の問題を考える必要があるだろう、過度の費用が掛かり、それについて何のサポートもないということだと、そのような制度はとりにくいのではないかという御指摘があったかと思います。   それからもう一つ、これは注意すべきことかと思いますが、合意を強制されたというもののほかに、共同行使でいいのではないかと合意したのだけれども、後になってみるとそうではなかったということが分かるというものがあるのではないか、これは他の方々からも御指摘があったところかと思います。先ほど武田委員からは逆に、単独にしてみたのだけれども、考えてみたら共同のがよいのではないかという場合もあるのではないかといったお話がありました。そうなると、いま私たちは二分法で考えていて、合意に問題があったというタイプのものと、事後に全く合意と別の事情変更があったという場合を想定していますけれども、その間に、合意について大きな問題があったわけではないけれども、一定期間のうちに考えが変わったといった場合、これをどこで受けるのかということが複数の委員、幹事から指摘されているという状況なのかと思って伺っておりました。ありがとうございます。 ○向井幹事 最高裁家庭局の向井でございます。最高裁からは(2)@の第三者の確認の点について意見を述べさせていただきます。   本日の議論をお聞きしまして、第三者の確認の対象が何であるかということがやや不明確になっているという気がいたしました。今、大村部会長にも整理していただきましたけれども、単に合意の真摯性を確認するということにとどまるのか、その合意内容の適正性といったものにまで踏み込んだ確認が必要なのかということにつきましては、それぞれ発言いただいている方の認識も必ずしも一様ではないと感じておりまして、最高裁の方では、この第三者の確認というのは飽くまでも合意の真摯性が対象になっているという認識でおりました。   裁判所としましては、当事者間の紛争の解決を本来的な役割としていますので、基本的には父母間の協議のみでは合意ができないような紛争性がある事案に対応するのが相当だと認識しております。そうしますと、父母間で合意した内容について、単に合意が真摯なものかどうかを確認することにつきましては、必ずしも裁判所でなければできないものではないのではないかと考えております。   また、この後議論されます裁判離婚の際の親権者をどうするかというようなことですとか、前回の部会資料にありましたように、離婚後の親権の行使内容に関する争いについて裁判所が調整、判断を行うことなども提案されておりますけれども、裁判所としましては、今申し上げたような紛争性がある事案に注力するのが相当であり、合意が真摯なものかどうかを確認するという基本的には紛争性のない手続を、あえて裁判所に設ける理由はないのではないかと考えております。   他方、確認の中身が合意内容の適正性のようなものにまでわたるのかということについてですけれども、父母が親権者を双方とするのか、その一方にするのかについて真摯に合意している場合に、例えば、子の利益に反する合意かどうかをチェックするとしても、何をもって子の利益に反する合意なのかということは必ずしも明らかではありませんし、そのように合意をしている当事者からその合意を覆すような資料が提出されてくるのかどうかも疑問があります。さらに、合意内容が適正かどうかを確認しようとしますと、詳細な事情聴取ですとか資料の提出を求めるというようなことが必要になってくることもあると思いますけれども、そうしますとやはり審判、調停にかなり近付くようなことになりまして、こういったことまでして確認するとなると、協議離婚についてのかなり過度な制約にならないかといったような気もいたしており、ここまで確認の対象として広げるのはどうなのかというような気もいたしております。 ○大村部会長 ありがとうございます。向井幹事からは(2)@について御意見を頂きました。二つありましたが、まず、最初の方で若干整理いたしましたが、確認の対象が何になるのか、合意の真摯性にとどまるのか、適正性まで含むのかということによって考え方というのは異なってくるのではないかという御指摘がありました。真摯性についてチェックするということであると、それは必ずしも裁判所である必要はないし、裁判所はむしろ他のもの、紛争性があるとおっしゃいましたが、そういうものに集中するという方がいいのではないかという御意見だったかと思います。また、適正性についてまで踏み込んで判断するということになると、子の利益が基準になるかと思いますけれども、ここだけの問題ではないかもしれませんが、これはなかなか難しい問題があるであろう。父母が合意しているときに、裁判所が子の利益に反するという判断をすることが実際上どのくらい可能なのか、仮にそういう判断をするとなると、手続が重くなって過度の制約ということになりはしないかといった御意見を頂いたと思います。ありがとうございます。 ○沖野委員 委員の沖野でございます。何度も申し訳ございません。(2)について、少し追加して申し上げたいことがございますので、手を挙げさせていただきました。   (2)の第三者確認と、それから、それを補完するというか、それと言わばセットになったAということについてなのですけれども、佐野幹事から、一定の場合には少なくとも、できるというよりは必須とすべきではないかというお考えが示されたように思いました。具体的には、共同親権だけれども監護者を決めないという場合は、例えば裁判所のチェックを必須とすべきだというお考えであるように伺いました。ここでは監護者の指定というものが一体何なのかということが不透明な形になっておりますので、結局は部会資料26の問題に戻ってくるかとは思うのですけれども、お話があった内容を見ますと、誰と同居するのかというようなことも決めていないというお話でした。   ただ、誰と同居するかということが果たして監護者の指定の問題なのかというのは、法的に監護者という地位を与えるということが何を意味するのかということによって決まってくるようにも思われます。そして、誰と同居するのかという話であるならば、単独親権でも同居者はどうなるか決まっているのですかといった確認をするような話はあり得るように思われますので、法的な地位として共同親権プラス監護者指定なしという場合だけは必須にすべきだということには、余り十分な理由がないのではないかと思っております。もっとも、繰り返しですが、監護者指定とは何であって、監護者とは一体何を意味して指定をいっているのかということが決まらないと、必ずしも決まらないわけではありますけれども、やや今のような特定の場面にだけ必須とすることについては懸念を覚えるところでございます。   それから、(2)Aについて、先ほど熟慮期間ということが考えられるのではないかと申し上げました。さらに、熟慮期間をセットにするというのは、少し消費者法のクーリングオフなどに引き付けすぎているかもしれませんけれども、やはり熟慮というか、しっかりとした意思決定というのができているのかということが、そこに客観的に不安な状況があると、一般的に現在の協議離婚というのはそうではないかと言われておりますので、しっかりとした意思決定がされているのだということが別途確保されているような場合でない限りは、短い期間の熟慮期間というか、そういうものを設けたらどうかという発想でおりまして、一定の要件というのはそういう意味で考えられるべきものです。変更の場合は、既に一定の合意ですとか審判ですとか、そういう形でこれが望ましい在り方だと決まったものは基本的に尊重されるべきところ、その尊重の基礎が揺らいでいるような場合に覆すという状況ですので、変更の要件がこれでいいかどうか、やや限定的にすぎると思いますし、消極的な面にばかり注目しているように思われますけれども、部会資料26で書かれているのは、現在の親権者による子の監護等が困難又は不適当であることによって子の利益を害するということになっています。もう少し違う形の方が、例えば、より、こちらの方が相当であるとか、相当であることが明らかであるとか、そういう要件立ても考えられるかと思いますけれども、いずれにせよ、本来尊重されるべき合意なり決定を覆すだけの基礎が変わってきているというところを要件化するというものです。これに対し、Aの局面は本来尊重されるべき合意というのがきちんと形成されているのかということが確保されないという場合についてのものですので、要件はやはり変わってくるのではないかと思っております。むしろ客観的な状況の方ではないかと思っておりまして、もちろん既に裁判所のチェックが掛かっているということであれば、それはもう一定の要件のところで、こちらに入り込むようなものではないと思いますし、それから、余り例はないということで、余り言及はないのはそのせいかと思いますけれども、途中で、例えば石綿幹事が、代理人によって双方が代理されているという点についての御指摘がありましたけれども、仮に双方が弁護士を立てて、その上で協議をして決めた結果であるというようなことであれば、熟慮期間などは必要がないだろうと考えておるところでございます。   もう一つ、御議論の中で出てきたものは、言わば試行期間といいますか、試し行うの意味でのものですが、やってみたけれどもうまくいかなかったというような場合は、熟慮期間に関わる要素もあり、実は予想が及んでいなかったという意味ではそういうことかもしれませんが、状況として熟慮が保障されていないというよりは、やってみたけれどもなかなかうまくいかないということが類型的に登場し得る場面であるということであるならば、一種の試行期間ということを組み合わせるということは考えられるのかもしれません。   ただ、いずれにしても短い期間とはいえ、一旦決めて走り出しているものを更に覆すという効果を持ちますので、容易に認めていいのか、あるいは期間というものはそれなりに短い期間、武田委員から3か月というのがありましたけれども、そのくらいが想定されるところなのかなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。沖野委員からは、その後の委員、幹事の発言を踏まえて、先ほどの御発言を補完する趣旨の御発言があったと理解を致しました。2点ありましたが、1点目は(2)@につきまして、第三者の確認を求めることができるということに賛成するというのが当初の沖野委員の御意見でしたが、佐野幹事から一定の場合に限っては、できるということではなくて、しなければならないということにすべきだという御意見がありました。それについて、やはり、できるとするのが妥当ではないかということで、例を挙げられてお話があったと受け止めました。2点目はAについて、沖野委員の発言を受けて熟慮期間という言葉でその後、御議論されているところでもありますが、消費者法でいうとクーリングオフという言葉がありますけれども、一旦決めたことを覆すのに足りるような要件というのは何であり、また、期間というのはどういうものなのかということを考えるべきであり、他の場面と区別してやはり考える必要があるのではないか。試行期間的なものについても、それがあるのだとすると、そういうものと組み合わせるという形で考えていく必要があるのではないか。このような御趣旨だったかと思います。ありがとうございます。 ○菅原委員 ありがとうございます。それでは手短に意見を述べさせていただきます。部会資料27の1の(1)から(3)までの大枠については、事務局案に賛同したいと思います。   その上で、@について既に議論がされてきたように、第三者の確認を求めることができるものとするという部分が離婚後の子どもの利益を考えると非常に重要なポイントであると感じます。ただ、これを必須とすると離婚のハードルが上がりすぎて協議離婚が難しくなるということも確かですので、できるものとするというのは相当だと理解しました。   また、誰が何を確認するか、というところが重要なのですが、その誰がというところで、先ほど裁判所の方もおっしゃっていましたが、家裁の確認が必須となると、事務作業量的に現実的に難しいのではないかと思います。全く素人判断ですけれども、日本は離婚後の共同養育について伝統がなく、今回、共同親権で共同養育を選べる人たちが初めて多く出現してきますので、何をどうしたらいいか分からない人はたくさんおり、まず離婚後の共同養育の計画といいましょうか、そういうものを適切に立てていくに当たっての支援が必要になると予想されます。それはやはり基礎自治体の窓口などが担うことが適切で、例えば離婚届に、マスト事項でなくても、離婚後の養育についての共同養育計画を立てましたかといったチェック欄を設けその計画はどのようなものですかと内容を尋ねるなど、もしもそういう書式を工夫していただけるなら、次第にそれが国民の習慣になっていくのではないかと思います。今後、共同養育についてどうしていいか分からない人がたくさん出現してしまう可能性がある中、主たる子どもの同居者も決めないまま共同親権を選ぶような離婚については子どもが宙に浮いてしまうかもしれず、やはり危惧を覚えます。最低限必要な主たる子どもの同居者の決定とか、離婚前に養育計画を立てることを離婚届の書式に盛り込むなど、離婚後の子どもの養育について幅広く皆がそこに参加できるようなシステムづくりを考えていく必要があると考えます。   ○大村部会長 ありがとうございます。菅原委員からは、大きな枠組みについては賛成だという御意見でした。その上で、1(2)@につきまして、様々な御意見が出ていますけれども、第三者の確認を求めることが望ましいということはあるのだけれども、全件に求めるということはやはり困難であろうから、現在の確認を求めることができるとするというのが相当ではないかという御意見だったかと思います。その確認に当たって、養育計画のようなものが広がるような方向が望ましく、例えばフォーマットのようなものを固めていくといったことが同時に試みられるべきだといった御意見を頂戴いたしました。ありがとうございます。 ○池田委員 池田でございます。(2)の@、Aについて意見を申し上げたいと思います。私が賛否をまだ決めかねているところはあって、考え方にいろいろあるということを少し申し上げたいという程度のことなのですけれども、まず、最初に小粥委員からお話がありましたように、かねてより日本の協議離婚制度というのは完全に当事者任せということで、本当に合意の真摯性、あるいは内容の適正性ということについて担保がないのではないかという批判はされてきたところです。実務を扱っておりまして、単独親権制の下でも、反対の当事者が本当は親権者になるべきところ、そうではない、意思の制圧を受けて違う選択を採られているというようなケースもあるところですので、合意の真摯性というものを担保していくべき要請というのは強いと感じています。さらに、共同親権というオプションが入ってきたときには、よりその要請も強いのかなと思っています。   そういうことを考えますと、@の事前チェックというのを非常に重く考えるということは、選択肢として、あるいは少なくとも理念としては十分に考えられるところかなと思っています。その意味で、原田委員がおっしゃったように、第三者というのを家庭裁判所というふうに設定し、かつ、できる規定ではなくて、しなければならないというふうに全件チェックをしていくという方向性にも共感を覚えるところです。   キャパシティーという問題を考えたときには、対象を絞るというのは少し違和感があります。単独親権をとる場合、共同親権をとる場合、いずれもチェックが必要だと思いますので、対象を絞るというよりも、1ページ目の(注1)にありますように、申述をするという形で内容を落として全件対象とするということも考えられるのではないかと思っています。   他方で、そういった要請に共感しつつ、なかなかそれが現実的ではないとするのであれば、Aをもっと使いやすくして、事前チェックをとらない代わりに、それに匹敵するような事後チェックという制度設計もあり得るのではないかと思います。そういう観点からしますと、一定の期間に限り、一定の要件の下でとありますけれども、要件を設定しないで期間制限だけをして、単に一定期間の間であれば撤回ができるというふうな制度設計もあり得るのではないかと思います。その場合の効果としては、もう一度定め直すとするのか、あるいはAと(3)をもう連動させて、そこでもう一度白紙に戻してBの制度につなげていくという形もあり得るのかなと考えているところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からの御発言を(2)の@に関する話とAに関する話と差し当たり分けて整理をさせていただきますけれども、@については、合意の真摯性の確保は少なくとも理念としては必要であるという御意見だったかと思います。その観点からすると全件家裁でというのが望ましい、家裁の負担を減らすことも考えられるのではないかという含みの御発言があったかと思います。ただ、それは実際上は困難であるということも分かるので、そうだとすると、Aの話になりますが、Aを使いやすいものとするという選択肢もあるだろう。その場合に、期間制限だけをして、要件について何か制限を課すということはせず、撤回ができるのと同様の扱いをする、(3)とこれを連続的な制度として構築していくということも考えられるのではないか。こういう二つの方向をお示しいただいたものと理解を致しました。 ○落合委員 京都産業大学の落合恵美子です。(1)と(3)については、私も賛成です。やはり皆さん議論されている(2)について、いろいろ考えておりました。@の第三者の確認というのが家裁に限るというのは、現実的ではないのではないかと思って伺っていました。確認ということの中身は何なのかというのを、最高裁の方からも御発言がありましたけれども、やはり内容的に妥当かどうかまで入るとすると非常に大変なことになっていくと。   私はそれよりも、第三者が必要になってくるのは、相談に乗ってくれる機関だと思います。新しい制度を作るわけですよね、これが通れば。そうすると、親権を持つというのはどういうことかというのが皆分からないで、この場に臨むと思うのです。ですから、親権を持たなかったら養育料は払わないでいいのですね、と誤解する人は当然出てきますよね。それから、監護権とは一体何なのだろうとか、分からなくなると思うのです。ですから、これはこういうことなのですよというようなことを説明しながら、相談に乗ってくれる機関みたいなものが必要だろうと思うのです。そうすると家裁のような、最初から国家権力があるところではなくて、ADRとか何か、そういう機関が発達していってくれたらいいなと思います。費用の話も赤石委員からありました。これはとても重要なことだと思います。これは法律に書き込めないと思うのですけれども、そういう離婚の相談に乗るような機関を育成する、そこに補助金を出す、それによってそこを利用する費用が低減されるようにするとか、それを、例えばこの制度が定着するまでの10年とか5年とかはそういう措置を設けるというようなこととセットでしてこそ、この第三者というのは意味があるのではないかと思います。   それから、Aの方の、@の確認手続を行っているかどうかを考慮するというところは、私はない方がいいように思っています。制度も新しく始まるとすれば、皆、試行錯誤で決めますよね。この確認をする機関というのもどうなるか分かりませんけれども、そこが決定したらなかなか変えられないというような、そういう居丈高な介入の仕方ではなくて、やはり相談に乗るというようなことを、私はどうしてもそれが必要だと思っていますので、そうすると、でも実際にやってみたらうまくいかないのですというような人たちには決定を変えるチャンスも与えるという意味で、Aは、一定の要件の下では必要だと思いますけれども、@の確認の手続を考慮するというのは不要ではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。落合委員からは、(1)と(3)については賛成であるということで、その上で(2)について御意見を頂戴いたしましたが、(2)について頂戴した御意見も、@、Aという枠組みを前提としつつ、その中をどうするかという点についての御意見であると受け止めました。@については、家裁に限るというのは現実的ではないということと併せて、制度に関する説明や相談に重点を置いた制度設計を考えるべきではないか。それとの関係で、Aについては、だから、そこで確認されたからといってAのところでそれが大きな意味を持つということは避けるべきなのではないかという御意見だったかと思います。青竹幹事が少しおっしゃったのもそういう方向だったのかもしれないと思って伺いました。 ○柿本委員 柿本でございます。よろしくお願いいたします。事前審査の前に、やはり落合委員がおっしゃったように、当事者をしっかり受け止めて、相談をして、そして合意に至るというプロセスが、私はとても重要考えます。法制審議会の場にはなじまないのかもしれないのですけれども、当事者間の紛争性が起きている場合に合意の真摯性の判断を家裁でする前にしっかりとした話合いができるような第三者というのがあるといいのではないかと考えます。   ○大村部会長 ありがとうございます。柿本委員も全体としてこの枠組みを前提にされた上で、合意の適正さの確認が重要である。直前の落合委員と共通かもしれませんが、説明と併せて考え、幅広い機関、組織を想定した方がよいのではないか。こういう御意見として承りました。ありがとうございます。 ○原田委員 (2)@のところで任意に、つまり、できるというのであればいいのではないかという御意見が幾つかあったと思うのですけれども、その場合、Aのそれを考慮するかどうかというのとの関係では、どのような御意見が主流だったのかよく分かりませんでした。つまり、変更のときに考慮しないとするならば、できるとしたときに、そのようなインセンティブが働くのかなと思うものですから、なので、私としては、するなら必須、でも、やってみてうまくいかなかった場合は変更を認めるという趣旨で申し上げたのですが、皆様の御意見の趣旨は、任意ならいいのではないかとおっしゃった方たちの主要な意見は、変更のときに考慮するという意見だったのか、そうではなかったのかということです。 ○大村部会長 私が理解しているところでは、多くの方は変更のときに考慮するという御意見だったかと思います。ただ、どのように考慮するかということについては程度に差がある。他方で、@についてそのような重いものとしないという御意見もあって、そうなると、Aのところで考慮しないという意見が出てくるということで、原田委員がおっしゃるように、インセンティブを働かすためにはAのところで強い考慮をした方がよい、そういう関係にはあるのだろうと思います。ということで、多分よろしいのではないかと思いますが。 ○窪田委員 今、部会長が整理なさったとおりなのだろうと思います。   私自身も自分の立場もきちんと決まっていなかったので発言しなかったのですが、@の部分についてはいろいろな考え方もありますし、何ができるのかという問題は当然あるわけですが、(1)についての議論を出発点のところでしたときに、やはり合意の真摯性というのについて多くの方からの御指摘があり、当然それが要件になるということを前提として組み立てられてきたということがありますので、私自身はやはり(2)@というのはそれなりの重みを持ったものだと理解しています。また、@の部分に関して、真摯性の確認ということであれば、真意であることの確認ということになるのかもしれませんが、後ろの方でも出てくるように、場合によっては、法律の専門家が関わる形での第三者ということであれば、内容まで含めてということは十分に考えられるのだろうと思います。   先ほど出ていた御意見の中では、@を要求したうえで、Aも簡単に認めるべきだということもあったと思いますが、Aの部分をどのように位置付けるかについては、私自身は、やはりかなり特殊なものだと思っています。部会資料26で出ていた、状況が変わって、あるいは新たな事情が明らかになって親権者を変更するといったような仕組みとは違って、かなりクーリングオフに近いものなのだとすると、基本的に@の要件を満たす合意があった上で離婚が成立して、でも、すぐにやはり、あれはやめねという形の申立てをする。申立てをしても、差し当たり合意は生きているということなのかもしれませんが、それがものすごく簡単にできるということについては、当然にそれほど自明なものなのかという点には、なお検討すべき余地があると感じています。   その意味では、@の要件をどのぐらいかちっと設計するかによりけりなのですが、@の要件がしっかりと満たされている、要件として確立されていて、それを満たすような場面において、Aで簡単にひっくり返すことができるよというのは、どちらかといえば違和感があります。その点では、原田委員がおっしゃったような形で、@とAをリンクする方がいいのではないかという感じは持っております。これが多数意見かどうかではなくて、私自身はそういうふうに考えるということです。 ○大村部会長 ありがとうございました。窪田委員からは@とAの関係について、@はやはりかなりの重みを持つものとして考えるべきであって、Aはその例外として、クーリングオフ的なものを一定期間に限って認めるということではないかという御意見を頂戴いたしました。   ほかに御意見がなければ裁判離婚の方に進みたいと思います。協議離婚の方は、今日これで決めるということではないわけですが、意見の分布状況を少し確認しておきたいと思います。個別の点についてはいろいろなお考えがあると思いますけれども、1の(1)、(2)、(3)という枠で、皆さん、今日は御議論くださったのではないかと理解をしております。その上で、(1)は以前に議論をして、こういうことが多数の御意見だということで差し当たり前提にされておりますが、(3)についても、細かな点について対応すべきことはあるかもしれないけれども、これについても考えるということについては大きな御異論はなかったように思います。   (2)の@とAにつきましては、直前の窪田委員の御発言がありましたけれども、両者の関係をどう考えるのかという点について様々な御意見があったと受け止めました。特に、@をどうするかによってAは影響を受けるということになりますので、@のところについてなお議論が必要であり、それを踏まえた形でAを考える、Aと(3)が連動するという御意見や、Aから派生して別の手続を考えるべきだといった御意見、あるいはAと固有の意味での親権者の変更というのを連動させて考えるべきだという御意見、様々な御意見がありましたけれども、Aについてさらに考えるということになるということで、今日の差し当たりの整理ということにさせていただきます。休憩を致しまして、その後、裁判離婚の方について御意見を伺いたいと思います。   10分休憩しまして、16時40分から再開したいと思います。休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開したいと思います。   部会資料27の2について皆さんの御意見を全て伺うことはできないかと思いますけれども、時間の許す範囲で御意見を伺い、残りは次回に持ち越したいと思っております。   ということで、部会資料27の2、裁判上の離婚の際の親権者の定めの部分について御議論を頂きたいと思います。この部分は、父母双方を親権者とするか、その一方を親権者とするかについて父母間に争いが生じた場合に、裁判所がどのような要件や基準で判断をするかということが議論の対象になるだろうと思いますけれども、これと同様の論点は、裁判離婚の場合だけでなく、親権者変更の申立てがされた場合や協議離婚の場合、先ほど議論したような場合についても問題になり得るかと思いますので、それら関連する御発言があれば、それらを含めた形で御議論を頂ければと思います。どなたからでも結構ですので、御発言を頂ければと思います。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。よろしくお願いします。びっくりしました。裁判上の離婚についてが、今までの議論の前提を覆すものだと思っております。協議上の離婚で真摯な合意がある場合に共同親権を認めることについて議論が行われてきました。確かに今、部会長がおっしゃったように、その後で家裁決定になるケースがあるから、それについて議論するというふうに立てるのであれば理解しますけれども、裁判上の離婚というのはやはり合意がないケースであるとすれば、ここで何か前提が変わった理由というのがやはりあるべきであって、そうでないのにここにそのまま入っているというのは、唐突すぎる感じがいたします。これをこのままこれで進めるというのは、やはりあり得ないというのは思っています。皆さんがどうお考えになるのでしょうか。   また、資料の中でどんどん、つまり、この範囲について議論しますという前提で議論していたのが、だんだんにずるずると拡大するのを許すような資料になっているということは、私以外の方でも思うのではないかと思います。例えば、13ページ、これは考慮要件のところなのですかね、最後から2段目の段落ですね、他方で部会のこれまでの議論やパブリック・コメントの手続においては、裁判所が父母双方を親権者とするための要件として父母の合意を要求すべきではないとの意見もあった。これらの意見は、父母双方を親権者とすることについて父母の一方が反対している場面においても、父母双方を親権者とすることが子の利益にとって最良の選択肢となる場合があることを含意するものと思われる。この次の段落もそれに近い、父母の一方が反対意見を述べているということのみによって一律に判断するのではなく、このような表現がございます。このようにパブリック・コメントをつまみ食いしてこの論旨の中に入れているのは、やはり少し論の展開として在るべき姿ではないのではないかと思います。もしこのようなものを入れるのであれば、逆に反対論があって、とても共同親権に至らないというものも考慮すべきであるかと思います。どういう事情かは分からないのですが、考慮要素のみを考えるということで議論を立て直していただきたいと思います。まずはここの前提でお伝えして、また意見を述べさせていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。資料の作り方については、事務当局の方から補足の説明をしていただきたいと思いますが、その前に、部会資料27の2の(1)、(2)、(3)について、皆さんに少し御確認を頂きたいと思いました。裁判上の離婚の際は、裁判所が離婚後の父母双方を親権者とするか、その一方を親権者とするかの判断をするとの考え方についてどのように考えるか、これは1(1)に対応する大きな問いということになるかと思いますが、その上で(2)では、上記(1)の裁判における判断の在り方に対して、離婚後の親権者の定めについて父母の間で合意がされたときには、裁判所が当該合意をされたことを踏まえて親権者を定めるものとするという考え方について、どうするかという問題が提示されています。その次の(3)では、上記(1)の裁判における裁判の在り方に関し、離婚後の親権者の定めについて父母の間で合意がされていないときの判断の枠組みについてどうするかという問題が提示されている。このような順番で(1)、(2)、(3)という資料ができているかと思います。赤石委員の御意見を私なりにパラフレーズすると(3)は認め難いということなのだろうと思いますが、(2)については、赤石委員、何か御意見はおありですか。(2)も認めないという御趣旨でしょうか。 ○赤石委員 あり得ますかということ、ないでしょうという感じです。 ○大村部会長 先ほどから議論をしているような、離婚することについては合意ができているけれども親権者について合意できていないというパターンが、あるかどうかという問題はあると思いますけれども、その逆に、離婚について合意はできていないけれども、離婚したとしたら親権者はどうなのかということについて合意ができているというようなパターンはないかというと、少ないかもしれないですけれどもそれはあるかもしれないと思いますが、それも含めて反対だという御意見なのか、(3)については反対という御意見なのかを、少し確認させていただければと思ったのですけれども、後でまた御意見があれば頂きたいと思います。   資料については、私が今申し上げたようなことでできているものと理解をしており、皆さんがこれに賛同されるのかということについてこれから御意見を伺うという趣旨だと思いますが、事務当局の方から何かあれば補足してください。 ○北村幹事 今、部会長の方で御指摘いただいたとおりかと思います。 ○大村部会長 少なくとも(3)は反対だというのが赤石委員の御意見で、(2)についてはまた後でお考えをお聞かせいただければと思いますが、他の委員、幹事の御発言があれば、お願いを致します。 ○原田委員 私も少し誤解していたのかもしれませんが、(1)は、裁判上の離婚の場合は裁判所が決めるけれども、その場合、(2)では、当事者が合意していればその合意に従うとするのか、(3)は、合意がない場合はどのようにするのかという順番になっているということですね。はい、分かりました。   裁判上の離婚の場合には、裁判所が決めざるを得ないとは思います。ただし、(2)では、一応合意を尊重するとしても、親権者を定めるものとするというのは、合意したらそのとおりしなければいけないと読むのかどうかですけれども、その合意は尊重するけれども、裁判所は後見的に判断をすべきだと思います。(3)は、合意ができていない場合は、少なくとも共同親権を導入するとした場合に、夫婦の在り方、家族の在り方についての当事者の合意を尊重するということと、真摯な合意があればうまくいくのではないかという前提で話が進んできたのだと思いますので、(3)で、少なくとも共同親権に合意ができていない場合は、単独親権のどちらを親権者とするのが適当かということを裁判所が判断するという意見です。 ○大村部会長 (2)については、合意を尊重して親権者を裁判所が判断するというのがよいということで、(3)については、共同行使について合意ができない場合には、どちらかの単独行使とすると判断すべきだという御意見ですね。 ○原田委員 先ほどおっしゃったように、離婚と親権には合意ができていても、財産分与や慰謝料でもめる場合もありますので、部会長がおっしゃったようなケースはそれなりにあると思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。(2)については(3)とは区別して考えるという御意見だったかと思います。 ○戒能委員 ありがとうございます。委員の戒能です。私も大変、驚いたわけです。問題は(1)、(2)、(3)をどう考えるかという以前の問題なのです。議論の組み立て方といいましょうか、当初の御説明はずっとそういうふうに進むのだと思っていたし、それから、その後どういうふうに進むかという御説明が十分になかったと思うのです。協議離婚において共同親権にするという真摯な合意がある場合に、どういう要件とか、どういう場面が想定されて、そこはどういうふうに対応していくかという議論がある。だけれども、そこからすぐに部会資料27の2は裁判離婚の話ですよね、裁判離婚の話でどうするかということになるということで、私も補足説明の赤石委員が御指摘になった13ページのウから14ページのところは、こういう論理の展開だと融通無碍になってしまい、論理的な展開ではないということを危惧しております。だから、そこを十分御説明いただく必要があると思っておりまして、議論の進め方に疑問を持っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。事務当局の方から御説明をお願いしたいと思いますが、これまでは、まず協議離婚について、父母の間で真摯な合意がある場合に関しては親権の共同行使を認めてもよいのではないか、共同行使の中身はなお詰める必要がある、この方向で議論するということについては、反対の方々は多少おられるけれども、おおむね皆さんの賛同が得られたと受け止めております。   更に進んで、では裁判離婚はどうするかということがこの後の問題で、これについては現段階では、特に何か決まっているということではないわけです。ここに挙がっているように、議論の手順として、今まで協議離婚について父母の合意ということを重視するというアプローチをとってきたので、裁判離婚についても合意を重視するという観点から、まず(2)が出てきて、次に、合意ができていないという場合にどうするかという形で資料ができていると私は理解しています。これでよいのかどうかということについては、この場で皆さんの御意見を頂くということで、出来上がった案が提案されているということではないと理解しておりますけれども、事務当局の方でそこを少し補足説明してください。 ○北村幹事 部会長がおまとめいただいたとおりではあるのですけれども、部会資料25では、合意のある場面、協議離婚の場合について議論をするとし、部会資料26については、双方が親権者となる場合の親権行使の在り方について御議論いただくことにしてございました。ただ、部会資料25、部会資料26におきましても、合意ができない場合に親権者をどうするのかというのは、一つの大きな論点になってまいりますので、そこの論点があるということは部会資料の中で、部会資料25においても部会資料26においても記載をさせていただいていたところで、それらが引き続いて論点になり得るということはお示ししてきたつもりではあります。   その上で、今、部会長がおまとめいただいたように、部会資料27の2のところは、まず裁判離婚の場合に裁判所が判断するのかどうかという点、そして、その上で、合意があれば合意を踏まえるという判断枠組みについてどうなのか、そうすると、残っているところは合意ができていない場合というところになるので、そこについてどのように検討いただくのかということを意識して資料の方は御用意させていただいたつもりですので、資料の作り方についていろいろな御意見はあろうかと思いますが、是非、中身について御意見を賜れればと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員や戒能委員はこの資料が出て、こういう方向になるのかとお感じになっておられるかと思いますけれども、皆さんの御意見を伺った上で、事務当局の方で更に案を練っていただくということになろうかと思います。取りあえず事務当局からお答えを頂いたということにして、先ほどの挙手の順番で御意見を伺いたいと思います。小粥委員、それから武田委員、石綿幹事でしたね。 ○小粥委員 委員の小粥でございます。私は、2回前でしたでしょうか、離婚する父母の真摯な合意がある場合には共同親権を認める余地があるのではないかという議論をした際に、多くの委員、幹事の方は子の利益ということを強調して、そういうことをおっしゃっていたと理解しております。そこで子の利益ということを強調していたということは、客観的なもので、そうすると、離婚当事者の一方が嫌だと言っても子の利益の観点から覆るということは、理屈としてはそうならざるを得ないのではないかと思っておりました。なので、このような形で場合によっては裁判所が共同親権という判断をすることがあり得るのだろうということは、その議論が出たときから、つまり子の利益を強調する形でそういう議論が行われたということから、私自身はある程度予想というか覚悟をしていたところであります。なので、裁判所が一切共同親権の判断をする可能性を認めないということは、今申し上げたような理屈の観点からは、少し難しいのではないかと思っております。   しかし、両当事者の合意というのは非常に重要だと思っていまして、少なくとも両当事者の合意があるということは、二つ機能を持っているのだと思うのです。一つはDV、虐待などの被害者の立場に立っている人に対して、離婚後の共同親権に対する拒否権のようなものを与えて、DV、虐待の被害者を守るという機能を果たすということが期待されているだろうと思います。それからもう一つは、合意があるということによって離婚後の共同親権の行使を円滑にすると、つまり、合意があれば養育計画なども立てやすくなるわけですし、そういうことを考えますと、やはり合意がある場合に共同親権を実施する環境というのは整いやすいということはいえるのだろうと思います。そういう意味で、合意がある場合を主として念頭に置くということは理由があるような気がいたします。   しかし、最初に申し上げたように、全て合意がある場合でなければ駄目かと言われると、それは裁判所が子の利益の観点等から命ずる場合はあり得るのだろうと、それを一切否定するというのは理屈としては少し難しいと。具体的に、この部会でしばしば念頭に置かれていると思うのは、離婚後の父母の一方の監護親が非監護親の親権を嫌って拒絶する場合というのが念頭に置かれてるような気がいたしますけれども、他方で、離婚後もうこどもには関わりたくないと、養育費は支払うけれども監護教育あるいは財産管理に関わりたくないという人が、言ってみれば親としての関与をもう嫌だということになると、それを自分が嫌だという場合に、一切その人を親権者とする余地がないのかと、それはそうでもあるまいと思うわけです。つまり、いろいろな局面があって、どう考えても一人が絶対嫌と言ったらどうしても一切共同親権があり得ないという形には、なかなか理屈としてはなりにくいのではないかと、理屈の話だけですけれども、そういうことを申し上げたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。小粥委員からは2点御指摘があったかと思います。一つは、子の利益の観点から親権者を決めるという前提に立つとすると、合意がないとしても、子の利益に鑑みて親権の共同行使がよいという判断がされる場合はあるということは否定しにくいのではないかということと、それから、監護教育に関与しないということを一方的に宣言すれば、それが実現するということもやはりおかしいのではないか、これが理屈のレベルのお話だと承りました。他方、実際の問題として、やはり合意がある場合にはそれを尊重し、親権の共同行使を行うということには意味があるだろうということもおっしゃっていて、二つあったかと思いますが、一つはDV、虐待の被害者の利益を守る、もう一つは、事後の共同行使の円滑化がそれによって図られるという御指摘だったかと思います。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。今回の離婚の際の親権者の定めに関してということになりますけれども、普通に考えて、まずは父母の協議、これがあって、その協議が調わない場合は裁判所が定める。私は素直に、普通そういう流れになるだろうと思っておりました。したがいまして、2(1)の部分には賛同する立場でございます。協議が調わない以上、裁判所が定める以外にどこか別の機関が定める選択肢が何かあるのかということになると、ないと思います。逆に、ほかにこういう「協議が調わなければ終わり」という他の規律があるのかどうか、私は存じ上げませんけれども、親権に限って裁判が定めることができない、そういう合理的な理由はなかろうと、そんなふうに考えております。   (2)の合意に関してなのですけれども、合意は非常に重要だと思います。私はよく会員の皆さん、当事者の皆さんにもお伝えするのですけれども、親子交流に関しては相手側に完全に拒絶されれば実現することはあり得ない、今そういう規律になっていると思ってます。したがって、極力審判は避けましょう、極力、調停で合意しようねということをよく申し上げます。要は、やはり父母の合意がベースにあって、審判で命じられるよりも、当然合意の方が納得感をもって父母双方が行使していくことになろうと思いますので、この合意というのはやはり裁判所に行ったとしても重要である、ここには変わりがないと思います。   あと、(3)の判断の枠組みに関してです。やはり部会資料にも記載がありましたが、一定の要件、これはやはり定めるべきであろうと思います。今、小粥委員も触れられましたけれども、やはり子の利益であろうと思います。これが考慮要素の一つという位置付けではなくて、やはり最大限優先すべき指標とすべき、そのように感じております。したがいまして、部会資料の後半部分に父母の合意がある場合に限ってという考え方が紹介されておりますが、ここには反対する立場でございます。   厚生労働省から、12月にひとり親調査の報告を頂きました。養育費の取決めをしていない理由のトップ、これはもうここ3回の同様の調査でも、全てトップにあがる理由は「相手と関わりたくない」です。DVとか児童虐待案件は当然除きまして、こういった行動が子の利益に資するかというのは、私としては極めて疑問に思っております。父母がその協議で合意に至れないことが必ずしも子の利益に反するとはいえないということを念頭に置いて、引き続き検討を進めていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員のお考えは、(1)で出されている方向について基本的に賛成で、(2)、(3)のいずれの場合にも子の利益をベースにすべきである、しかし、考え方として(2)の、まず合意がある場合から考えていくというのには賛成であるということだったと理解させていただきます。(1)について、少しだけ確認したいのですが、(1)は裁判上の離婚の際は、裁判所が離婚後の父母双方を親権者とするか、その一方を親権者とするかを判断するということが書かれていて、これを否定したらどうなるかというと、親権者がどうなるかについて判断しないということに必ずしもならないのではないかと思います。これに反対の方々はいらっしゃると思いますが、その方々は、裁判離婚になったら、もうそれは従前同様、一方を親権者として指定すべきだとお考えなのだろうと思います。そうした考え方もあり得るのだろうと思いますけれども、そういう考え方を採るのか、そうではなくて、父母双方を親権者とするという選択肢も含めて裁判所が判断するという方向で考えるのか、それが(1)で問われているということなのだろうと思います。 ○石綿幹事 幹事の石綿です。2について、(1)、(2)、(3)について、それぞれ手短に発言させていただければと思います。   まず、(1)については、家庭裁判所は従前、離婚後の親権者を決定しているということで、その前提となる制度が変わるのであれば、制度が変わったものについて、父母双方なのか一方かということも含めて、判断するというのが適切ではないか、それに値する十分な能力等を持っている機関であると思います。裁判離婚の特殊性、その紛争性が高いということは理解した上で、(2)、(3)について、それぞれ申し述べたいと思います。   (2)については、合意ができたのであれば、それを尊重して、しかし、原田委員がおっしゃったように後見的に判断をするということは十分あり得るのだろうと思います。親権者のことには合意していて、それ以外に争いがあったという事案が御紹介されていたと思いますが、裁判所に行った当初は紛争性が高かったけれども、様々話し合っていくうちに合意ができるという案件もあり得るのだろうと思いますので、(2)の規律は設ける方向で検討してよいのではないかと思います。   (3)も、これは小粥委員の御発言と重なりますが、子の利益から考え、後見的に判断したときに、親権を共同行使するべきだという場合というのは理論的にはあり得るのだと思いますので、これを今の段階で選択肢から外すということは適切ではなく、どういう場合が子の利益にかなうのかということをもう少し議論をしていった方がよいのではないかと思います。   次に、考慮要素ということになりますが、基本的には子の利益ということになるのだと思いますが、こどもにとっては、仮に共同親権になったときに両親の間でスムーズに意思決定がされるということが大事かと思いますので、資料にあるような、円滑だということというのは一定程度重視される必要があるのだと思います。   ここでその議論を紹介することが適切か分かりませんが、相続法改正の際に、配偶者居住権を審判によって定めることができるか、合意がないけれども定めるというときに、うまくいかないのではないかというような議論があったことを少し想起いたしました。したがって、当事者に合意がないのだということは考慮した上で、具体的な事案で、共同にするか単独にするか、どちらが子の利益になるのかを判断する、そのための判断枠組みを検討してみるということは考えられるかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事からは(1)、(2)、(3)について御意見を頂きました。(1)は、こうなるだろう、(2)は、ここでいわれているような場合はあるだろうから、設ける方向で検討すべきであろう、(3)については、どういう場合が残るのかということはあるけれども、今の段階では検討した方がいいのではないかという御意見を頂きました。   それで、基準について、決定が円滑にできるということが必要だろうということをおっしゃっていただいたのですが、その中で配偶者居住権についての言及があったかと思いますけれども、これがどういう趣旨なのかというのが皆さんに分かりにくいところがあるかと思います。少し補足説明していただけますか。 ○石綿幹事 民法第1029条の条文ということになりますが、相続開始後、配偶者が、建物を所有していなくても、建物に引き続き無償で居住できるというのが配偶者居住権です。所有者から見ると賃料を払わない人が住み続けるということになります。また、所有者と配偶者が、賃貸借でいう貸主と借主の関係なので、建物所有者と住み続ける配偶者の関係が円滑でないとなかなかうまくいかないだろう、だから遺産分割等の協議で同意ができるような場合だけに限られるのではないかという考え方が一方でありつつ、民法第1029条第2号では、審判で定めることができるとしています。限定された要件のもとで、当事者に合意がない場合でもできるということが定められておりまして、当事者に合意がなかったとしても裁判所等の判断で後見的に命じられるという意味で、少しそれに類似している点があるかなと思い、紹介させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。裁判所の外で配偶者居住権が設定されるというのは、民法第1028条の問題であるわけですけれども、審判になって裁判所が判断するというときに、裁判所はここでいわれている配偶者居住権というものを付与することができるだろうかというのが第1029条という規定の出発点です。第1号として、共同相続人間に配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているときが挙げられており、基本的には当事者の合意がなければならないというのが出発点になっている。ただ、合意がない場合は全て認められないかというと、第2号が置かれていて、配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認められるとき、という制限を掛けた上で、合意がない場合についても認めている。合意がある場合について考えて、その次に合意がない場合についてどのような要件を設定するかという方向で考える、その際にこの規定が参考になるのではないかという御趣旨の指摘だったかと思いますが、前提となっている制度が多少難しいので、補足の説明をしていただきました。   棚村委員まで伺って、ほかに御発言がある方については次回会議で御発言を頂くということにしたいと思います。 ○棚村委員 早稲田大学の棚村です。裁判上の離婚の際の親権者の定めについてということで、協議離婚のときと裁判離婚という形でこういう立て方をされて、(1)のところについても、現行法でもやはり財産分与とか養育費とか面会交流で何か争えば、附帯事項ということですけれども、裁判所が紛争解決のために必要な範囲で一定の判断をするということになるわけです。そごで、合意がもちろんあった場合にはどうするかというのでは、できる限り合意を尊重する、(3)とかでは、合意がないときにどうするかというのが問題になっているのだと思うのです。   それで、私自身は前のときも言ったのですけれども、小粥委員が言ったように、親権者をどうするかということ自体が正にこどもの利益とか、こどもの最善の利益というのが指導原理で解決原理になっていると思いますし、この点では意見の対立はないように思います。海外も見てみますと、結局、合意があったときには、強く親がそういうことを望んで責任を負いたいということであれば、正にそれが尊重されるという立て付けになっているわけです。前も言いましたように、安心・安全の確保とか、話し合って熟慮で決めて責任を負っていくということなのか、それともやはり事項によっては迅速に決めなければいけないので単独でやらざるを得ないとか、そういうところで円滑な親権の行使の可能性というのも非常に重要だと思うのです。   要するに、解決原理としてこどもの利益というのがまず第一にあって、それで話合いができて、お互いが協力できるようなものというのが最も望ましいと思われます。ただ、その後、安心・安全の問題もあったり、それから、最終的には早く決めるということの対立概念として、慎重に相談し合って責任を負っていくという、そういうような要素があって、さらにサブ要素として、DVとか暴力、虐待、連れ去りみたいなものをどう位置付けるか、安心・安全の問題ですね、それから、円滑な親権行使の可能性というときに、協力関係とか信頼関係があるか、葛藤の程度がどうだとか、コミュニケーションがどうだとかが重要ですし、熟慮とか単独で迅速にというときも、やはり事項によっていろいろと考慮しなければいけないことがあると思われます。日常とか重要とか緊急度とか、そういう中で余り細かいことを条文化すると紛争が長期化して争いが熾烈になってしまうということもあります。他方で、基本原理とか基本的な考え方というのは整理しておく必要があって、合意というのは非常に重要だと思いますが、合意がないときに裁判になったときに、裁判所への信頼度というのをどれくらい持てるかどうかというのは、やはり争いのあるところかもしれませんけれども、今の仕組みだと、裁判所に判断を委ねて、自分たちで解決ができないわけですから、こどもの最善の利益に従って一定の考慮要素を考慮した上で総合的に判断してもらわざるを得ないだろうと思います。   そういう意味で、共同親権はかなり限定的で少ないかもしれませんけれども、それがこどもにとっていいのだということであれば、親がきちんと判断できないし、裁判所として客観的に見て、共同親権や共同監護がこどもの利益につながるという可能性というのは、あっていいのではないかと思います。論理的にというだけではなくて、数の多い少ないはあっても、今言ったハードルで、こどもの利益ということを前提として、やはり合意があればなお望ましいですし、安全・安心の確保というのも重要ですし、それから、早く決めるということと、熟慮して責任をきちんと負っていくということも非常に重要なことなので、その辺りを総合的に考慮して裁判所がこどもの利益の観点から判断するというのはあり得ると思っています。   その整理では、今回御提案いただいたものについて、何か唐突であるとか違和感があるというより、海外でも今言ったような形で、安心・安全とか合意の存在とか、ポイントになっているところというのは確かですし、それがない場合に裁判所なり公正中立な第三者が最終的にどういうふうな形で、どういう考慮要素で判断するかという問題が出てくると思うのです。ただ、それがあり得ないとか、一切合意ができなければ認められないという話になると、拒否権みたいな形になり得なくはないのです。そういうことになると、一人の反対が全てを決めてしまうということになるのもどうかと思うので、やはり裁判所が客観的な観点から紛争の解決のために一定の役割を果たさざるを得ないという余地はあるので、私は(1)、(2)、(3)をどの程度今回の共同親権という問題で認めるかどうかというのは争いがあると思うのですが、今言ったような考慮要素を含めてですけれども、協議ができて合意ができた場合と、できなかった場合というのが協議離婚でも起こりますから、その場合に家裁とか第三者がどう関与するかという問題と、裁判離婚、これは調停離婚とか当然、審判離婚みたいなものが入りますけれども、そういう中で話合いができなかったケースというのをどうするかというのは、きちんとこれから議論していくべきではないかと思います。この順番で議論してよろしいのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員からは3点ぐらい指摘があったのかと思います。まず最初に、やはり子の利益という観点から考えていく、そうしたときにどういう制度になるのかというのを考えていくべきだろう。それから、2番目に条文の書き方についてお話があって、余り細かく書くことはできないので、基本的なことを書き込んでいくということだろう。3番目に、当事者が合意していなくても、共同行使を認めるべき場合というのは、理論的な面だけではなくて、実際にもあり得るのではないか。こうした御指摘を頂いたと思います。   ここまでにさせていただいて、あとを次回にしたいと思います。ただ、もう御発言がないのならば、次回これを続ける必要はないということになりますので、次回に新たに手を挙げる方を排除する趣旨では全くないのですが、御発言の希望がどれくらいあるのか伺っておきたいと思います。それとの関係で次回の資料の準備も多少影響を受けるかと思いますので、発言を御希望の方は挙手をしていただければと思います。池田委員と佐野幹事と水野委員、それから青竹幹事ですね。ほかにもまだ御発言の方があると思いますが、この4人の方についてはまず最初に御発言を頂いて、更に御意見があれば御意見を伺って、この問題について議論を続けるということにさせていただければと思います。   ということで、時間が来ておりますので、今日の審議はここまでということにさせていただきたいと思います。   次回のスケジュール等につきまして、事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。次回の会議ですが、前回お伝えいたしましたように、予備日である6月20日を利用させていただいて、6月20日火曜日の午後1時30分から午後5時30分まで開催したいと思います。場所につきましては改めて御連絡いたします。   次回会議ですけれども、今、部会長におまとめいただきましたように、本日の積み残しということで部会資料27の2のところを本日に引き続いて御議論いただくとともに、親権等に関連する論点を御議論いただきたいと思ってございますが、具体的な論点につきましては、また部会長とも御相談させていただいて、改めてお知らせしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○赤石委員 居所指定のところが余り議論できていなかったので、いつになると先ほどおっしゃったのでしょうか。 ○北村幹事 次回想定しているものとして、親権の残りの部分を想定しております。その中には親権者と監護者が分属するような場面とかも当然入ってくるかなと想定しておりまして、その中でも改めて御議論いただくことになるのかなとは思っております。 ○大村部会長 最初の議論の際に申し上げましたけれども、今、事務当局の方からお話があった枠内で御意見を頂くというのが1回と、それから、全体をまとめた後で、夏休み明け以降ということになるかと思いますが、改めて案を出していただくときに御議論を頂くということになると考えております。ですから、まずは次回に、別の角度で御意見を頂くという時間を設けるということかと思っております。 ○原田委員 次回のことではないのですけれども、今、片親疎外に関する国連の特別報告者のレポートと、この調査と報告に関して、国連の人権高等弁務官事務所が解説を出しているのですけれども、英語で出ていて、私の能力では正確には理解できないのですが、外務省や法務省がそれを訳する予定があるのか、なければ、弁護士グループで訳したものがあるので、それを提出したい。それは、先ほど裁判所の信頼性という話もありましたが、実際、DVや虐待を排除するためにどのようなことが必要か、今、何が問題があるのかというようなことが書かれているので、もし御予定がなければ提出したいし、御予定があるのだったら聞いていただければと思います。 ○大村部会長 事務当局の方で、今どういうことになっているのかを確認していただく必要もあろうかと思いますので、後で確認を頂いて、原田委員と打合せをしていただくということにさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。   それでは、次回は本日の積み残しについて御議論を頂きまして、その上で、今直前に御議論がありました親権と監護権の振り分けに係る問題などを含む親権に関する残りの問題について、御議論を頂くということにさせていただきたいと思います。   それでは、法制審議会家族法制部会の第27回をこれで閉会させていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。閉会いたします。 −了−