法制審議会 商法(船荷証券等関係)部会 第10回会議 議事録 第1 日 時  令和5年5月31日(水)自 午後1時30分                     至 午後3時50分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  「船荷証券に関する規定等の見直しに関する中間試案」に対して寄せられた意見の概要等 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○藤田部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会の第10回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は猪俣委員、上田委員、衣斐幹事、後藤幹事、松井幹事が御欠席と伺っております。金子委員、北澤委員、洲崎委員、松井委員、久保田幹事、笹岡幹事、新谷幹事、竹林幹事はウェブで参加されると伺っております。どうぞよろしくお願いいたします。   まず、前回に引き続き、本日はウェブ会議の方法を併用して議事を進めたいと思いますので、ウェブ会議に関する注意事項を事務当局に御説明してもらいます。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。前回までの部会と同様のお願いとなりますが、念のため改めて御案内をさせていただきます。   まず、ウェブ会議を通じて参加されている皆様におかれましては、御発言される際を除き、マイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願い申し上げます。御質問がある場合や審議において御発言される場合は、画面に表示されている手を挙げる機能をお使いください。   なお、会議室での御参加、ウェブ会議での御参加を問わず、御発言の際はお名前をおっしゃってから発言されるようお願いいたします。ウェブ会議の方法で出席されている方々にはこちらの会議室の様子が伝わりにくいため、会議室にお集まりの方々には特に御留意を頂ければと存じます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   次に、本日の審議に入ります前に配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。配布資料について御説明いたします。今回配布した資料は、部会資料10「「船荷証券に関する規定等の見直しに関する中間試案」に対して寄せられた意見の概要等」の1点でございます。こちらは事務当局が作成したものでございますので、後ほどの審議の中で事務当局から御説明をさせていただきます。   配布資料の御説明は以上でございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。   まず、部会資料10「「船荷証券に関する規定等の見直しに関する中間試案」に対して寄せられた意見の概要等」の全体について、事務当局から御説明をお願いいたします。 ○中村関係官 それでは、法務省の中村の方から今回の部会資料についての説明をさせていただきます。   今回の部会資料につきましては、基本的には中間試案に対するパブリック・コメント手続において寄せられた意見の概要を紹介させていただくものとなっておりますが、最後に若干ながら、今後の主要な検討課題についても言及をさせていただいております。パブリック・コメント手続において寄せられた意見の概要につきましては、部会資料に記載させていただいているとおりでございますので、この場で個別に取り上げ、詳細を説明することは割愛させていただきますが、概要のみ簡単に説明させていただきます。   まず初めに、今回のパブリック・コメント手続に対しては、合計11通の御意見を頂戴いたしました。部会のメンバーの皆様にも多くの御協力を頂き、事務当局一同、感謝申し上げます。内容といたしまして、個別の論点に対しては異なる意見も示されているところでございますが、全体に対する総論的な評価といたしましては、今回の試みに賛同する前向きな意見が大半を占めていたところかと存じます。   具体的な内容に入っていきますと、まず、今回の部会資料の3ページの第1部の「第1 電子化された船荷証券の名称」でございますが、こちらにつきましては電子船荷証券記録という法律上の名称について、反対する旨の御意見はございませんでした。   次に、同じページの第2の「1 電子船荷証券記録を発行する場面の規律」でございますが、この点については、電子船荷証券記録の一般的な発行義務までは認めないということや、発行時に荷受人の承諾までは必要としないといった点につきましては特段の異論はありませんでしたが、受取電子船荷証券記録が一度発行された後の船積船荷証券又は船積電子船荷証券記録の発行の規律に関して、荷送人に船積電子船荷証券記録の発行を請求する権利まで認めるか否か、荷送人に紙の船積船荷証券の交付を請求する権利を維持するか否かといった点につきましては、様々な意見が出されており、紙の船積船荷証券の交付を請求する権利を維持しつつ、両者の合意があった場合に船積電子船荷証券記録の発行を認めるとする甲案を支持する意見もあった一方で、一度両者が受取電子船荷証券記録の発行に同意した以上は、紙の船積船荷証券の交付を請求する権利は認めずに、船積電子船荷証券記録の発行の請求のみを認めるとする乙案を支持する御意見もあったところでございます。また、中間試案で挙げた甲案、乙案のほかに、一度受取電子船荷証券記録が発行された場合においても、荷送人において紙の船積船荷証券の交付を請求する権利と、船積電子船荷証券記録の発行を請求する権利の双方を認めるべきであるといった御意見も見られたところでございます。   次に、6ページにいっていただきまして、「2 電子船荷証券記録の記録事項」に関しましては、基本的には試案の内容に賛成する御意見が多かったものの、作成地につきましては法定記録事項から除外すべきではないかといった御意見も見られたところでございます。   次に、7ページにいっていただきまして、「3 「支配」概念の創設及び関連概念の定義」というところでございますが、この支配という概念を創出すること自体に積極的に反対する意見までは見られなかったものの、その実質的な内容をどのように考えるかという点につきましては様々な意見が見られたところでございまして、後ほど詳細を説明いたしますが、支配について概念としての抽象性を指摘する御意見も見られたところではございます。   続いて、11ページの「第3 電子船荷証券記録の技術的要件」につきましては、イギリス法案と同様に、電子船荷証券記録についても正面から占有という概念を認める形とした上で、シンプルな規律を目指すべきではないかといった御意見もあったところでございますが、おおむねの意見といたしましては、MLETRを参考にこのような技術的要件を定めること自体には大きな異論はなかったものと受け取っております。ただし、先ほど述べましたように、支配概念との関連で、ここでも電子船荷証券記録の射程の明確性の観点から、例えばシステムの提供者といった概念を導入することを含め、表現及び規律の形式については更に検討をすべきであるといった意見も見られたところでございます。   続きまして、13ページの「2 技術的要件としての信頼性の要件」につきましては、細目に関しては様々な意見が見られたところでございますが、大筋といたしましては、MLETRとの平仄などを踏まえると、一般的な信頼性については何らかの形で法文の中に組み込むべきであろうといった御意見が多かったように見受けられます。   次に、15ページの「3 電子船荷証券記録の発行の技術的要件」、こちらにつきましても、大筋としてはこれに賛成する意見が多かったものの、部会の中でも議論がございましたように、発行時に電子署名を求めるべきか否か、また、求めるとした場合にその定義をどのようにするかといった点については、試案に対する消極的な意見も見られたところでございます。   次に、18ページにいっていただきまして、「第4 電子船荷証券記録と船荷証券の転換」につきましては、やはり電子から紙への転換請求権を認めるべきか否かという論点につきまして意見の対立が見られ、これを否定する意見も多かった一方で、貿易実務の実情を踏まえると、この転換請求権を認めるべきであるといった意見も見られたところでございます。また、転換後の媒体への記録・記載事項についても様々な意見が見られたところでございますため、この点については今後、細部を詰めていく必要があるところかと考えております。   次に、25ページに飛んでいただきまして、「第5 電子船荷証券記録の類型及び譲渡等の方式」でございます。ここも大きな枠組みとしましては賛同する意見が多かったように思われますが、電子裏書禁止型については、あえて法文に組み込む必要があるのかどうかといった指摘のほか、前述のとおり、電子裏書との関係で電子署名要件については反対する意見も見られたところでございます。   次に、28ページにいっていただきまして、「第6 電子船荷証券記録の効力等に関する規律の内容」の「1 規律の在り方の方向性」でございます。ここは法制的なテクニカルなところでもございますが、やはり乙案のように、紙の船荷証券に関する民法、商法の規定の全てを準用して個別に読み替えていくということに関しましては、見栄えの観点から、消極的な御意見が多かったように見受けられるところでございます。丙案や丁案に賛成する意見のほか、甲案に賛成しつつ、みなし規定との関係で新たに幾つかの条項を追記することを提案する御意見も頂戴しておるところでございます。   続いて、32ページにいっていただきまして、「2 具体的な規律の内容」に関しましては、おおむねは試案の内容に賛同する御意見が多かったような印象を持っておりますが、幾つか個別の条項に関して試案に反対する御意見も見られたところでございます。   例えば、34ページの(6)商法第746条に相当する規定に関しましては、いわゆる受戻証券性との関係で、引換えの対象になるのは電子船荷証券記録の支配を運送人に移転することのみで足りるのではないかといった御意見もございました。   また、36ページの(11)民法第520条の5及び第520条の15に相当する規定に関しましては、支配の移転請求権を認める第1項との関係で、いわゆる電子裏書禁止型にも認められるべきではないか、すなわちこの第1項の括弧書きの(記名式であって電子裏書を禁止する旨の記録がされているものを除く)という部分は削除してもよいのではないかといった御意見も頂戴したところでございます。   そのほか、従前の部会でも議論があったところでございますが、37ページ以下の(15)民法第520条の9に相当する規定に関しては、民法520条の9に相当する規定を設けることに賛成する意見も見られた一方で、民法520条の9は船荷証券には理論的には適用されていないのではないかという理由から、本法案においてもこれに相当する規定を設けるべきではないといった御意見も見られたところでございます。   次に、42ページ以下の「第7 電子船荷証券記録を支配する者に対する強制執行に関する規律の内容」でございます。ここは大きく意見が分かれておりまして、権利義務関係の明確化という観点から甲案に賛成する御意見もある一方で、既存の民事執行法制との平仄との観点からすると丙案が望ましいのではないかといった御意見もございました。また、そのほか、強制執行時に第三債務者である運送人において、その時点で誰が真の支配者であるのかといったことを確認するための方法が制度的に担保されていないことなどを理由に、丁案に賛成する御意見も見られたところでございます。   このように、強制執行に関する規律につきましては現時点でいかなる方向性がよいのか定まっていないように思われますし、この後述べさせていただきます支配概念の抽象性に係る課題について、どのような方向での解決を図っていくかといった点によっても影響を受ける事項かとは思われますので、今後も慎重に検討していくことが必要と考えております。   49ページ以下の第2部につきましては、反対意見は特段見受けられず、倉荷証券の電子化についても船荷証券の電子化と同様に議論を進めていくことに賛成する御意見があったところでございます。   駆け足となりましたが、以上がパブリック・コメント手続において寄せられた御意見の概要となります。   その上で、最後に51ページ以下について説明をさせていただきたいと思います。今回、パブリック・コメント手続において多くの御意見を頂きまして、今後細かく検討していく必要がある事項も少なからずあるところでございます。その中でも、電子船荷証券記録の技術的要件を含む定義の在り方や、それに関連して、支配という概念に関しては改めて検討していく必要が高いと考えている次第でございます。   すなわち、中間試案ではMLETRを参考に、電子船荷証券記録上の権利を有することを証する唯一の記録として特定されたものといった幾つかの技術的要件を満たす電磁的記録について、電子船荷証券記録とすることを前提とした上で、紙の船荷証券の占有又は所持に相当する概念として、支配という新たな概念を創出することとしており、その支配の内容については、当該電子船荷証券記録を排他的に利用することができる状態といったような定義を設ける案でしたり、定義を設けないという案を提案していたところでございます。   しかしながら、パブリック・コメント手続においても意見が寄せられたように、いずれの案によっても、この支配という概念の具体的な内容が有体物に対する所持に準じるような水準で明確になっているかというと、必ずしもそうとも言い難い面があることは否めないところでございまして、具体的にどのようにして個々の電子船荷証券記録の特定をし、どのような状態にあるときに、その電子船荷証券記録への支配があるといえるのかという点につきましては、もう少し具体的に詰めていく必要があるように思われるところでございます。   この問題に対する検討の方向性につきましては、是非皆様方の御意見をお伺いしたいところでございますが、一つの案といたしましては、中間試案の基本的な考え方は維持した上で、例えばSingularityを中心とする技術的要件の内容を更に検討し、電子船荷証券記録の特定性を一層明確にした上で、あわせて、それに対する支配という概念の具体的内容やその定義についても、より客観性を高める形で検討していくということが考えられるかと存じます。   他方、パブリック・コメント手続において寄せられた意見の中には、実際には電子船荷証券記録を利用するためのシステムというものが常にあって、そのシステムを提供する者という者も存在し、そのような者が存在しない中で電子船荷証券記録が使われるということは想定し難いという指摘もございまして、それを前提に、システムを提供する者、言わばシステムプロバイダーを法律上の主体として観念して規律を組み立てることを検討すべきである旨の意見も見られたところでございまして、このような考え方を前提に規律を組み立て直すという方向性もあり得るようには思っているところでございます。   例えば、電子船荷証券記録の作成及び管理をするためのシステムを提供する者、ここでは情報システム提供者と仮称いたしますが、情報システム提供者を法律上の主体として観念した上で、その者を言わばインフォメーションセンター的な立場で捉えまして、システム提供者が提供するシステム上で支配者として特定された者を電子船荷証券記録の支配を有する者とするといったように、支配を有する者の特定について形式的な判断を可能とするといったようなアプローチも考え得るところかと思われます。   このような考え方を採用いたしますと、支配の内容やその該当性が明確になる上に、例えば電子記録債権法上の電子債権記録機関の立場に準じるような形で、情報システム提供者を強制執行の規律に組み込むことなどを通じて、強制執行に関する規律についてもより実効性のあるものとすることができる可能性も広がるように思われるところでございますが、一方で、この情報システム提供者を法主体として観念し、そこに重要な役割を担わせるということになるため、電子記録債権法上の電子債権記録機関のように、主務大臣の認証やその他の業規制を必要とすることとなる可能性も否定できず、そのことが国際海上物品運送において利用されることとの関係で問題が生じないかといった辺りも検討していく必要が出てくるところかと存じます。   この論点については、その他の個別具体的な論点とは異なり、制度設計全般に関わる問題でございますため、個別具体の論点に先立って検討する必要があるかと考えておりますので、是非とも御意見を頂ければと存じます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   今、事務当局から部会資料10の全体について御説明がありました。部会資料の記載とは順番が前後するのですが、まずは全体の方向性に大きく影響すると思われる部分、すなわち部会資料51ページに更に検討することが必要ではないかと書かれている事項、すなわち船荷証券の占有又は所持に相当する概念について、その内容について具体的に検討することが必要ではないか、あるいはシステムを提供する者を法律上の主体として観念し、その者の私法上の権利義務に関する規律を検討する必要がないかといった論点について御議論いただければと思います。まずは、これらの点について、どなたからでも結構ですので、御意見いただきたいと思います。   なお、パブリック・コメントに寄せられた各意見については別途、後ほど御議論いただく時間を取りたいと考えておりますので、差し当たりこの最後の51ページに書かれている論点について御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。1点、補足をさせていただければと思っております。ただいま御説明させていただきました部会資料51ページ、52ページのところでございますけれども、この資料には書いていないのですけれども、仮にシステム提供者というものを法律上の主体として観念をし、そのシステムにおいて識別された者を支配する者と、そのような考え方を採用した場合に生じ得る論点としては、もう一つ考えられるかと思っております。   それは何かと申しますと、以前も部会において議論をさせていただいたかと思いますけれども、指図証券型というものを維持する必要があるのかという問題点が再び出てくるのかなと思っております。といいますのも、システムにおいて識別された者、システム上記録された者、そういった形式的なところで支配者を決めるということになりますと、裏書人とか被裏書人、これも記載なり記録された者ということになるわけですので、同じような性質のものが二つ並ぶというのが果たして必要なのかという点が再び問題になろうかと思っておりますので、このシステム提供者というものを入れることによって、以前議論させていただいた論点というものが再び登場してくるということがあり得るかと思っておりまして、その点も含めて御所見なりを頂ければと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。ただいまの補足も踏まえて、支配の概念の定義ですとか、システム情報提供者という主体を取り込むということ、これらについて御意見いただければと思います。賛否だけではなくて、仮にこういうふうな新しい方法を採ったらこんな論点が生じるよといった、その他の御指摘でも結構ですので。 ○小出幹事 小出でございます。どうもありがとうございます。なかなか難しい問題でして、現時点でどのようにという具体的な提案等はないのですけれども、今お話のあったうち、システム提供者という概念を用いて、システム提供者によって特定された者について支配があると考える、言わば電子記録債権法的な考え方を採るということについては、いわゆる技術的中立性という観点から問題があるように現時点で思っております。   UNCITRALのMLETR起草の際にもいろいろなシステムに基づくモデルが想定されたわけですけれども、現時点ではまだ実際には存在していないかもしれませんが、今後技術的な発展により、出てくる可能性があるものとして、いわゆるトークン型というモデルがありうると議論されたことがありました。これは電子的データそのものをいわばトークンと見て、それに権利がくっついて、データ自体が転々と移転をしていくというものであり、この場合、いわゆるシステム支配者というものが、どこにトークンとしてのデータが所在するか、誰が権利者であるか、ということを必ずしも特定しているとは限らないということになります。こういった、現状では実際には存在していないかもしれませんが、今後出てくる可能性があるモデルについて、我々の法の対象から除外するという考え方というのは、技術的中立の観点からはやや問題があるように思い、それはMLETRの割と根本的な考え方とずれてくるようになってしまう気がいたします。   それから、もう一つは、やはりシステム提供者というものを考えますと、先ほど事務当局から御説明がありましたように、それらへの監督とかそういった問題が出てくることになりまして、これは以前、南関係官の方から韓国の状況について御説明がありましたけれども、同様に日本特有のモデルを前提としたルールになってしまって、ルール自体が使われなくなる可能性というのも大きいように思っております。したがいまして、システム提供者という概念を入れることに関しては、現時点ではやや懸念を持っております。   ただし、一方でシステムという概念を入れるということは考え得るように思っておりまして、比較法的に見ましても、例えばアメリカのUCCがElectronic Document of Titleについての条文を置いているわけですけれども、そこでElectronic Document of Titleへの“control”の定義がされています。要はシステムによって特定されていることをcontrolの要件としているということになっておりまして、したがって、システム提供者という、何か法的な権利義務を持つ主体を定義に入れることにはやや問題があるかもしれませんが、システム全体として誰が支配を持っているかということが特定できるというような形で、支配概念を定義していくという方向性というものはあると思います。   もう少し正確な表現を致しますと、UCCの7編の106条というところにElectronic Document of Titleのcontrolという条文があるのですけれども、要するに、利用されているシステムが、ある人をそのElectronic Document of Titleが発行された相手又は移転された相手であるとして信頼できる形で特定している場合に、その人がコントロールを持っていると定義をしています。したがいまして、そういったほかの国で使われているコントロール概念を参考に支配を定義していくということはあり得るように思います。   最後にもう一つだけ申し上げますと、アメリカのUCCに限らず、今、例えばUNIDROITで進んでいるデジタル資産に関するプロジェクトでも同様なのですが、電子的な財産については、比較法的にはコントロールという概念が一般的に用いられるようになってきています。UNIDROITのプロジェクトの方もコントロールの定義を入れているようですので、それを参照することもあり得ると思うのですけれども、いずれにせよ、私といたしましては、コントロールという概念を、せっかくですので、これを機会に我が国の私法の中にもしっかりと位置付けていくということは重要なように思っております。そこを、お茶を濁すというと変ですけれども、船荷証券の電子化のみを急いで実現するために、コントロール概念を付け焼き刃的に何か言い換えて入れるというよりは、しっかりと我が国の私法において電子的なデータに対する支配という概念について検討していくということも一つ、あり得る方向性のように思われ、その場合については、少し時間が掛かるかもしれませんけれども、例えば民法の先生方の御知見なども踏まえながら検討していくということも必要なのではないかというのが総論的な意見ということになります。   まとまりがなくて申し訳ありませんが、以上でございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。3点ほど御指摘いただきました。システム提供者という主体として言及することへの懸念、すなわちこれが技術的中立性を害して、将来出てくる可能性のある特定の電子船荷証券記録を排除してしまうことになりかねないという懸念と、そういう主体について言及することによって、業規制的な要素、典型的には認可規制のようなものが入ってくると、本部会でもこれまで恐れていたような事態、誰も使わない制度になりかねないという懸念があるということが1点目です。2点目は、支配の概念との関係で、主体ではないシステムへの言及は考えられるということ、3点目は、拙速に支配概念を検討するのではなくて、きっちり私法上の位置付けも考えて検討する必要がないかという御指摘でしたが、事務当局から何かございますでしょうか。 ○渡辺幹事 特にございませんけれども、大変重要な御指摘を頂いたかと思います。システム提供者ではなくシステムという考え方というのは、我々としてもこれから、こういったことができるかどうかというのは検討していきたいと思っております。ありがとうございました。 ○藤田部会長 そのほかに御意見はございますでしょうか。 ○池山委員 池山でございます。私も、今の小出幹事の御意見には非常に重要な示唆が多々含まれておりまして、今後十分にそれを斟酌して検討が進められるべきだと思います。   念のために申し上げますと、支配概念が必要かどうかという点それ自体については、私の推薦元団体である船主協会は、あえて要らないのではないかという意見を書いております。ただ、その趣旨は、正に小出幹事がおっしゃっていた問題意識と若干似ているところがありまして、実際はシステムというのが前提にあって、そのシステム側で特定されている人が支配者なのだから、必要ないのではないかと。非常にざくっと言えば、それ以上でもそれ以下でもないです。なので、一方では法制的にやはり支配という概念をきちんと定義付ける必要があるということであれば、適切な定義をしていただければ、それはそれでよく、およそ定義をしてもらっては困りますということではないと、一応、念のために申し上げておきたいと思います。飽くまで、システムがあるから要らないのではないかという程度のものではないです。   その上で、もう一つ小出幹事の御指摘の中にあったのは、やはりシステム提供者という者を位置付ける、規律の中に入れるということと、システムというものを認知するというのは違うだろうというのは、理論的にもそうですし、実務的にも恐らくかなり重要なのだろうと思います。昔からの中央のデータ管理機関があるようなシステムであれば、正にシステム提供者が支配者が誰かというのを、少なくとも技術的には管理していて、いざとなればそれをのぞいて、ああ、この人かということが分かるようなシステムではあるのでしょうけれども、トークン型と分散型台帳方式というのが、またどう違うかという問題はありますけれども、少なくとも中央集権型以外のものであれば、実際にシステムを提供している人であっても、今の支配者が誰か技術的にも分からないのですよというシステムはやはりあるかもしれないと。そうすると、支配という概念をシステム提供者の作成管理から、あるいは認識から組み立てていくという方式にはやはり限界があるかもしれないと思います。   問題は、ではシステムとは何かということであって、結局、漠然とシステムとかプラットフォームという言葉を私自身使ってしまいますし、私の推薦元団体のパブリック・コメントにおける意見でもシステム、プラットフォームという言葉も使っていますけれども、一体それがどこまでのものを指すのかと。特に、トークン型といわれるものについては、言ってみれば、我々が今だったらワードとかのソフトウエアを買うように、あるいはPDFのためのソフトをダウンロードするように、一回それをダウンロードしてしまえばそれで終わりだというときに、それをシステムとかプラットフォームというのかという問題もあるのかもしれないのです。   現状ではやはり国際PIグループが認めたシステムプロバイダーという会社があって、そこと契約をして、契約をしたならば、そこでIDとパスワードをもらって、そこに入っていって、そこで動かしていく、そこに中央集権型と分散型台帳方式があるというのはいいのですけれども、そういうのですらないシステムというのもあるかもしれないという示唆が実は含まれているかもしれないと。そうすると、システム提供者が作成管理というのは無理がある可能性があり、プラス、システムという概念の内包というか中身というのも、よくよく御検討いただく必要があるなというのを、聞いていて感じました。   最後におっしゃった、そもそも私法上の基本概念として支配という言葉を入れてもいいのではないのという御示唆もあったと思うのですけれども、そこは正に法制的な問題なので、そうなれば我々としては困らないですけれども、それは実務の側から余り、絶対そうしてくださいとまで言うような話では、少なくとも現時点では、ないだろうと思っています。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局からございますか。 ○渡辺幹事 特に大丈夫です。 ○藤田部会長 そのほか、どの点でも御意見あるいは御質問があればお願いします。 ○新谷幹事 よろしくお願いします。新谷でございます。先ほどの小出幹事のおっしゃっておられた御指摘は非常に示唆に富むもので、私も賛成するところであります。   それに加えて1点、システム提供者あるいはシステム提供事業者といった概念が登場するということについてですが、まず、システム提供者というものが、許認可や規則において縛られるのかどうかというところが一つポイントだと思うのですが、もしそういった許認可等が必要なものになってくるとなると、これは、先ほどの御指摘もありましたけれども、問題なのではないかと思っています。   その問題というのは、一つは外国のいわゆる電子B/Lのプラットフォームが多くあって、それが現に日本で今、使われているわけですけれども、こういったところが対象にならなくなる可能性があるわけです。要は、そういったところがわざわざ日本の許認可を得る必要性を感じない可能性があるわけです。   もう1点は、例えばトレードワルツにおいてなのですけれども、将来的に電子B/Lシステムをどういうふうに作っていくかという議論は今、内々では進んではいるわけなのですが、そのときに一つの選択肢として、例えば全部自前で作らずに、外国のプラットフォームを技術的なコアに置いて、その周りに衣としてトレードワルツを付けるような方法、言い換えると下請的に外国のプラットフォームを使うという言い方がいいのかもしれませんけれども、こういう方法も一つ考えられるわけなのです。そうすると、許認可という観点からしますと、例えば、実質的な中身は外国のプラットフォームではないかということになってしまい、ややこしい問題が出てきそうな気もします。こういう、昨今の技術を見ていますと、本当に国境をまたいで技術を融通をし合うというのが極めて当たり前に行われているのがいわゆるデジタルの世界で見られるわけなので、日本国内で許認可をするということがどれだけの意味があるのか、あるいは逆に足かせになってしまうのではないかというところが少々懸念されるところであります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。システム提供事業者という概念を入れることで、それが更に許認可まで結び付くと非常に大きな問題をもたらすという御指摘でした。このことはこれまでのこの部会における議論でも指摘されてきたところですが、今御指摘のとおり、複数のプラットフォーム――下請と言われましたが、下請に限らず、プラットフォーム間で移転可能な形でプラットフォームをつなげるようなことも構想されていると聞きますので、そういうものも含め――があると、一部についてだけ認可され、残りが認可されていない状態で電子船荷証券記録の利用がされますと、面倒な問題を起こしそうな気はします。こういう点も十分考慮して考えなければいけないということは、重要な実務上の指摘とお伺いしました。その他何かございますでしょうか。 ○北澤委員 北澤でございます。ただいまの皆様の御意見を伺っておりまして、私は国際私法の立場から、支配という概念と業規制について若干の意見を申し上げたいと思います。   国際私法上、船荷証券の第三者効が問題となる場合には、従来、学説の対立があり、紙の船荷証券ですと、通則法13条の下で証券所在地が連結点とされてきたかと思います。それが電子的船荷証券記録になった場合に、紙の証券の所在地だったものをどう考えるのかということが今後、問題になるわけです。従来は占有している、所持していることと紙の証券の所在地というものが結び付いていたように思うのですが、電子的船荷証券記録の場合には、そこがもしかしたら今後は支配という概念と結び付いてくる可能性があるかと思います。紙の船荷証券の占有又は所持に相当する概念として、電子船荷証券の支配という概念、すなわち、今後は支配する地が観念され得るとなると、支配とは何であろうかということが当然問題となってくるわけでありまして、第三者対抗要件の準拠法との関係で、これを明確にしておくことは重要であると考えております。   その際に、システム提供者という形で、それを法律上の主体と観念して、そこで識別された者を支配する者と考えるのか、先ほど小出幹事がおっしゃっていたように、システムをまず考えて、システムが特定している者を支配者と考えるのか、両方選択肢があると思うのですが、システム提供者については、もし業規制まで考えるということになりますと、懸念している点があり、現時点で支配というものを考える際に、先ほどの小出幹事のようなお考えはとても示唆的であるのではないかと思っております。   国際私法上、電子船荷証券の準拠法について考える際にはハーグの間接保有証券条約でされているような議論が参考になるのではないかと言う意見もあります。ハーグの間接保有証券条約では、従来の証券所在地法ではなくて、原則として関連口座管理機関の所在地を連結点とする考え方が採られています。電子船荷証券についてシステム提供者が主体として登場してくるとなりますと、システム提供者の所在地が連結点として、重要な役割を果たすという議論につながりかねないのではないかと少し懸念しているところでございます。   それから、先ほど新谷幹事が指摘されていたように、業規制については懸念事項でございまして、と申しますのが、外国で外国のプラットフォームを使っている電子船荷証券が日本に入ってきて、その効力が問題となるときに、準拠法が何になるかということは当然出てくるわけですけれども、もし準拠法が日本法になり、日本では業規制が行われているとなりますと、日本が考えている業規制に掛かっていない外国のプラットフォームを利用した電子船荷証券の効力はどうなるのだろうかという疑問が生じてきます。これまでのBoleroなどの実務を阻害しないというスタンスで立法をするとなると、そういった不安は払拭しておく必要があるのではないかと思っております。   また、先ほど韓国の立法が紹介されておりましたけれども、韓国のような立法は割合少数派であるとこれまで認識していたところでございます。韓国では他国で電子的なプラットフォームで発行された電子船荷証券の効力を認めているのか、あるいはそうでないのかという疑問が生じます。   業規制は認めるべきでないとか、認めるべきであるということについて定見があるわけではないのですが、国際私法の観点からは、今述べたような懸念といいますか、検討すべきことがあるのではないかと感じております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。システム提供者という概念を入れて、それが業規制まで伴ってくるとなると、準拠法選択の側面でも影響が出る可能性がある上に、外国で発行され、もちろん日本で許認可を得ていないようなシステムで発行された電子的船荷証券記録の国内法上の扱いがかなり面倒な問題を起こすのではないかという御指摘でした。その中で、韓国でどうなっているのかという質問がありましたが、もし可能であれば、韓国を調べられた南関係官から、何か情報があれば、教えていただけないでしょうか。 ○南関係官 結論から申し上げますと、韓国法について調べましたが、そこまで、リサーチできていないところです。といいますのも、実際に韓国の論文等を見ましても、韓国法に基づく船荷証券が使われることもなく、また、外国の電子船荷証券に対して韓国法がどのように適用されるのかよくわからないところです。   北澤委員が仰っているように、外国で発行された電子船荷証券が韓国でどのような扱いがなされるのかということですが、本来的には中央集権的な仕組みを韓国は持っているわけですけれども、それに当たらないタイプの電子船荷証券が入ってきたような場合には、少なくとも韓国法上の電子船荷証券として効力を有しないとは考えられているようですが、それ以上についてはよく分からないというところです。 ○藤田部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。   北澤委員の御指摘も、難しい問題ですね。規約型のいわゆる電子的船荷証券が新しい法律で定義する電子船荷証券記録に当たらなくても、規約による効力は否定されないという前提で議論してきたのですが、業規制をきちんと踏まえた形でしか発行できないという国内法を作ってしまうと、規約型の規約に基づく効力すら全面的に認められるのだろうか、ひょっとすると業規制もないようなものというのは日本の公序に反するのではないかといった疑念が出てくるとしたら、その影響は甚大ですね。そこまで強く解釈されるかどうか分かりませんし、韓国もそこまでのインプリケーションがあるかどうかは分からないところですけれども、北澤委員の御指摘を一番強い形で表現すると、そういう影響まであり得ないわけではないため、非常に深刻な問題となるおそれがあるという御指摘と承りました。どうもありがとうございました。   これまでいずれの方からも、システム提供者概念の導入については少なからず慎重な意見が出されたところですけれども、そのほかに御意見はございますでしょうか。 ○池山委員 今出た点に比べれば大きな話ではないですけれども、最初の事務当局の説明の最後に渡辺幹事が補足された点について、1点コメントをさせていただきたいと思います。   システム提供者あるいはシステムの概念を入れた上で支配という概念を作っていくというアプローチだと、場合によっては指図式の証券といったものを認知するといったことも不要ではないか、不要になるという余地もあるのではないかということをおっしゃったと理解しています。今の私のまとめは、すみません、言葉が悪くて雑かもしれませんが、あえてラフに言えばそういう理解だとしたときに、その議論は切り離してもいいのかもしれないと思っております。   というのは、支配概念の定義云々とは別に、立法の方向性として紙の船荷証券における規律を電子においても基本的には維持するという方向性があるはずなので、電子だからといって譲渡の方式とか、あるいは権利義務の設定の在り方について全く独自のものを入れるというわけではないのだと思うのです。紙で指図式のものもあれば占有の移転だけで移るものもある、あるいは指図が禁止のものもある、当然の指図証券性もあると、紙の場合、そういう複雑な規定が現にあるわけですけれども、それは元々そうなっているので、そこを触るということまでは考えなくていいのではないかと思っています。   中間試案の前に実務の側が色々と申し上げたのは、4類型あるという中の1類型、記名式持参人型でしたっけ、そういうものは実務上はないので、それを明記するということに違和感がありますということは申し上げました。だけれども、最終的にはそれは理論的には今の紙の日本法上は否定はされないはずだということになり、かつ、今後ひょっとしたら正に電子でも出てくるかもしれないという前提の中で、紙における規律をそのまま維持すると。ただ、その特殊なタイプをあえて明記すると、そういう規律のやり方は避けるということでまとまっているというのが私の理解なのです。   その前提は、要は紙のものをそのまま維持するということなので、支配概念をどう整理するかということと、最初におっしゃった、譲渡の方式まで影響を及ぼすかというのは、そこは分けていいのかなと。少なくとも論理必然ではないだろうと思っていますが、いかがでしょうか。 ○藤田部会長 今の点について、事務当局から補足をお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございます。先ほど私の方で補足させていただいた趣旨としては、システム提供者あるいはシステムという概念を入れて、そこで支配というものを形式的に見るという考え方を採った場合に、裏書型、指図証券型が要らなくなるというのが論理必然だということまで申し上げるつもりではなくて、ただ、そのように支配というものを形式的に捉えると考えた場合には、従前議論をした、指図型というのは要らないのではないかという話がまた出てき得るのではないかという問題提起として、させていただいたものでありまして、当然そこは切り離して考えることはできるだろうと思っております。ただ考え方として、以前議論をした指図型は要らないという話を採用するという余地も再び出てくるのではないかと、そういった意味合いで申し上げたにすぎませんので、この点については今、池山委員がおっしゃったように、別のものと考えるべきで、指図型は維持すべきという考え方があり得るのはそのとおりかと思っておりまして、その点についての御感触も伺いたかったという趣旨で、問題提起をさせていただいたところでございます。 ○池山委員 再度、池山でございます。ありがとうございます、よく分かりました。   1点だけ補足するとすると、例えば我々が仮にかぎ括弧付きの「システム提供者」、民間のシステム提供者として規約をこれから作っていこうという立場であれば、シンプルなものでいいわけで、支配という概念だけがあって、それを法律で定義されるであろう支配という概念に合うようなものにして、その支配の移転だけというシステムを作る、それが一番、実は論理的にはシンプルではないかとは言えると思います。   私の理解では、現に提供されていたシステムの中には、そういうシンプルな方向性を指向していたシステム、システム提供者もいらっしゃったと認識はしています。従前の議論は、仮にそういうシステムが出てきたとしても、それを否定はしないということであって、4類型全部の方式をシステムがメニューとして準備しなければいけないわけではないということであって、それ以上でもそれ以下でもないということですよね。だから、逆に言うと、法律上はやはり紙のものを電子でもそのままにというのは生きてくるので、元々紙で4種類あるというのであれば、それはそのままというのが論理的なのかなと、ここは意見になりますが、改めて思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○洲崎委員 洲崎でございます。ただいま池山委員が御指摘になったことについて、私も少し発言させていただければと思います。   渡辺幹事が言われたところは、確かにそういうことにもなるのかなという気もしつつ、しかし、紙の証券の話を考えていくと、無記名証券と指図証券では権利の移転の要件が違っていて、その結果、権利推定とか善意取得、善意支払いの要件も違ってくるのですね。無記名証券であれば証券交付だけで権利推定が働いて善意取得や善意支払いが可能になるのに対して、指図証券では権利の移転のためには裏書も必要になって、権利者として推定が働くためには裏書の連続も必要になる。それがないと善意取得、善意支払いもないことになります。   つまり、指図証券の場合は、紙を失ったとしても、それに加えて裏書署名の偽造もされなければ、まだ善意取得が生じない、つまり静的安全が無記名証券よりも強く保護されているということが言えるわけで、したがって、不正取得によって権利者が損害を被るリスクが多少低いということはいえると思うのです。   もし仮に電子の世界において、支配の移転の手続というか要件というか暗号キーというのか、それと電子裏書の暗号キーが全く同じで、支配を奪われてしまったら、自動的に電子裏書もされてしまうという制度であれば、支配の移転プラス裏書をするということには多分、不正取得とか不正利用の観点からすると、意味がなくなってしまうと思うのですけれども、支配の移転の暗号キーと電子裏書の暗号キーが別だとすると、やはり指図証券型の方が権利者にとっては安全なのではないかという気がするのです。   ただ、そもそも電子の世界では、紙を盗むとか紙を紛失するとかいう話はないので、不正取得、不正利用ということは余り考えなくてよいのかもしれません。そうだとすると、無記名証券と指図証券式はほとんど違いがないことになるのかなという気もするのですが、しかし、不正所得のことも考えるのであれば、指図証券式は支配の移転プラス電子裏書が必要なので、その点で多少違いはあるのではないかという気がします。これは、システム提供者が支配を有している者を権利者として扱うということとは、やはり別の話として出てくるのかなという気がします。深く考えたわけではないですが、印象としては、無記名証券方式と指図証券方式では不正取得、不正利用に対する安全度という点でやはり違いがあるので、システム提供者概念を法律の中に入れるからといって、やはり無記名証券と指図証券方式では違いはあるのではないかと感じました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。お二人の委員から、システム提供者の概念を入れても、譲渡の仕方の類型を法律上残しておくことにはそれなりの法的意味はあり得るのではないかという方向からの御指摘でしたが、事務当局から、何か御返答はありますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。大変重要な御指摘を頂きまして、ありがとうございました。私どもの方としても、先ほどのような問題提起をさせていただいた趣旨としては、やはり支配というものを形式的に捉えた場合には裏書などというものが要らなくなるのではないかという指摘に対してどう答えるべきかという観点から、いろいろとお知恵を頂戴したかったというところが率直なところの本音でございまして、紙と同じにしたいというだけで、その理屈が果たして通じるのだろうかというところの不安感から問題提起をさせていただいたところ、ただいま洲崎委員の方から静的安全という御指摘も頂きまして、少し材料ができたかなという感じがしておりますので、大変ありがとうございました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そのほか、どの点でも、御意見がございますでしょうか。先ほどからの御意見を伺う限り、システム提供者概念が入り、業規制が入った場合の影響は甚大であるということについて、様々な確度から強い懸念が表明されたと思います。ただそうではなく、もっと軽い意味合いで、商法の中で、あくまで私法上の一主体としてシステム提供者に言及して、業規制は一切加えないような形であっても、やはり相当抵抗はあるでしょうか。最初の小出幹事の指摘の第1点、メディアニュートラリティーの観点からすると、それですらやはり問題はあり得ることになると思いますが、そのほかの指摘はむしろ業規制との関係で出された問題点でしたので、もし御感触があれば、頂ければと思います。 ○池山委員 懸念ではなくて、むしろ質問なのですけれども、逆にシステム提供者は大ざっぱにいうとどんな権利義務を負うイメージになるのでしょうか。 ○藤田部会長 事務当局から、お答えいただけますでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御質問ありがとうございます。システム提供者を入れた場合にどのようなことをさせるかというのは、正に入れるとした場合のこれからの検討ということになるかと思うのですけれども、この部会資料を作るに当たって想定していたものといたしましては、まず支配者を特定してもらうというところが一つだろうと思っております。それ以外にも、恐らく技術的要件といわれていたものの多くをシステム提供者が備えなければいけないということになりましょうし、一般的な信頼性というものをもし入れるとするならば、その義務を負うのもシステム提供者ということになるだろうと思います。どこまでを私法上の義務にとどめるという形にして、どこまでを電子船荷証券の要件にするのかといったところは、またすみ分けはいろいろあるのだろうと思いますけれども、大ざっぱにイメージしていたところを申し上げますと、以上のとおりでございます。 ○池山委員 ありがとうございます。そうすると、質問その2になるのですけれども、正に一番大きな点である、支配者を特定する主体だという点については、やはり小出委員が最初におっしゃったシステムの、曖昧にあえてかぎ括弧付きでいう「システム」のタイプによっては、システムの提供者も支配者が特定できないようなシステムだってあるのではないのということに結び付いてくるという理解なのですけれども、そこをクリアしないといけないと。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今私の方で申し上げたような仕組みにすると、システム提供者が支配者を把握できないようなシステムというものは容認されないということになろうかと思いますので、そこら辺りの是非が問題になるだろうと思っております。 ○池山委員 ありがとうございます。もう1点、先ほどの御回答への質問その2の後半ですけれども、技術的要件や信頼性の要件の主体としてのシステム提供者が出てくる可能性があるということですけれども、そうすると、元々信頼性の要件で甲、乙、丙案とあって、丙案の中では発行者や電子裏書をする者等々が信頼性のある手法を用いなければいけないとありますけれども、あの辺りの条文は結局、発行者、支配者その他の電子船荷証券記録の利用者は、信頼性ある手法を用いているシステム提供者のシステムを利用しなければいけないと、そういう格好になるイメージなのですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今の点につきましては、そのような形で残すということもあり得ましょうし、もはや利用者の方々に一般的な信頼性に係る義務は負わせる必要はないという考え方も十分あろうかと思っておりまして、システム提供者というものを必要不可欠なものとして法定をして、その者に一般的な信頼性の義務を課すのであれば、もはやその利用者には要らないという方向も十分にあり得るのかなとは思っておりますけれども、そこまで細かいところまではまだ詰めていないというのが実情でございます。 ○池山委員 ただ、くどくなっても恐縮ですけれども、システム提供者がもしもその義務を果たしていなかったときの効力は、という話がやはり問題になるわけですよね。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今の点は正におっしゃるとおりで、先ほど少し申し上げましたけれども、それが電子船荷証券の有効要件に係る部分であれば、場合によってはその効力が否定されるということもあるかもしれませんし、そうではないという方向になって、システム提供者の管理が十分でなかったから何かトラブルが生じたという場合には、そのシステム提供者に対する損害賠償請求などで決着が付けられると、こういったことになるのではないかと思っております。 ○池山委員 ありがとうございました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そのほか、どの点でも御意見、御質問はありますでしょうか。 ○雨宮委員 雨宮です。今、池山委員が質問されたことと同様の質問をさせていただこうと思っていました。その延長なのですが、システム又はシステム事業者、提供者という概念を用いるとしたら、システムそのものを定義するということも考えられるということでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。恐らくシステムというものも何らかの形で定義をするということになろうかと思いますけれども、現時点で想定していたものとしては、電子船荷証券記録の作成であるとか管理とか、そういったもののためのシステムという形で定義なり限定なりしていくということになるのかなというような、おぼろげながらのイメージを持っていたところでございます。 ○雨宮委員 ありがとうございました。続けてですが、もしシステム提供者、事業者という概念を、先ほど言われたような特定性の問題があるということで、使うのが難しいということになり、また、今、小出幹事から言及がありましたが、システムという概念により支配や技術的要件を明確化するという場合ですが、部会資料の11ページに記載されていますとおり、既に1から4の技術的要件が定められていて、1には電子船荷証券記録上の権利を有することを証する唯一の記録として特定されたものとなっており、これはシステムとは書かれていないけれど、当然にシステムに記録されるということで、ただ、システムという用語を法文に入れると、その定義が必要になるなどのいろいろな問題があるので、あえて明確に規定していないと考えています。このようなところをもう少し明確化することで、支配や技術的要件を定義化する方向性も考えられるのではないと思っております。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。正に御指摘いただいたとおりかと思っていまして、ここの今の技術的要件というのは、システムというものを当然の前提にはしていないというところもあって、かなり抽象的な書きぶりになっていて、それがゆえに分かりにくさを産んでしまっているところはあろうかと思っております。システム提供者ではなくてシステムという言葉を使って今後、規律案をブラッシュアップしていくということは、今、大変貴重な示唆として頂いたところで、正にこれから我々としてもそういった方向性があるかどうかを検討していくということになるわけですので、今の段階でどういったことになるのかというのは何とも申し上げにくいところではありますけれども、システムという言葉を使うことによって、この技術的要件というものの書きぶりを少し変えて、より具体的に分かりやすくしていく余地というのはあるのではないかという示唆を本日、頂いたものと理解しているところでございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○雨宮委員 ありがとうございました。 ○藤田部会長 そのほか、関連する一連の論点について、どの点でも御意見がございますでしょうか。 ○小出幹事 小出でございます。今、既に御議論があったところのまとめというわけでもないのですけれども、権利とか義務とかいうような考え方は採らない方がよいような気がしておりまして、やはり支配というものは事実状態ですので、結局システム全体においてそのような事実状態が実現できているかどうかということによって、支配というものが成立しているかどうかを判断するということになるのだと思います。例えば、システムが何かをするべき権利があるとか、何かをするべき義務があるとかいう発想ではなく、何を実現しているのか、その事実状態をもって支配を定義するという発想で行くべきであり、恐らく先ほど私が言及いたしましたUCCの7編の106条なんかもそういった発想で作られていると思いますので、参考になるのかなと思いました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何かありますか。 ○渡辺幹事 特にないです。ありがとうございます。 ○吉田委員 吉田でございます。私は日本とマーシャル諸島というオフショアの国の二つの資格で海運の仕事に携わっております。海外のプラットフォームも利用されることが想定されておりますところ、プラットフォームを立ち上げて運営するような海外の海運大手の方は、一つのブランドとして事業をしますが、その中では、オフショアを含む様々な国のSPCが何階層にもわたって複雑に連なっていて、どれが法的な権利義務の主体なのかが分かりにくいことがあります。システム提供者は誰かということになったときに、一つのシステムの中に複数のSPCや実体のある会社があり、担当業務が分散しているという状況が想定されるため、システム提供者に該当するのは誰かの定義付けや決定方法の検討は緻密に行った方がいいと考えております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。仮にシステム提供者という概念を入れて何か法制度を構築するなら、オフショアのようなものをうまく読めるような工夫が必要だという御指摘だと思いますが、いかがでしょうか。 ○渡辺幹事 御指摘ありがとうございました。私どもの方としては、実際問題として多分、規約か何かに同意をして進んでいくということが想定されるでしょうから、その規約の同意を交わした相手方がシステム提供者になるのかなというような比較的単純な理解でおりましたけれども、そういったところが事実上問題になり得るというような御指摘を頂いたかと思っております。いずれにしても、システム提供者というものよりも、多分今はシステムという形で何とかした方がいいのではないかという御意見を多数頂いたかなと思っているところでございますので、そういったところの可能性というのを少しまた事務当局としても考えていきたいと思っております。御指摘ありがとうございました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   そのほか、どの点でも御意見、御質問がございますでしょうか。   差し当たり、今議論していただいた点についてはこの辺りでよろしいでしょうか。   それでは、次の論点に入りたいと思います。ここからはパブリック・コメントに寄せられた様々な意見について議論に入りたいと思います。たくさんありますので、前半と後半に分けることとして、部会資料10の第1部の「第4 電子船荷証券記録と船荷証券の転換」まで、ページ数でいうと25ページぐらいまでについて議論を行いたいと思います。   ただ、本日は幾つか考え方が示されている論点についてどれを採るという、その結論を出すことを、そこまでを目標に議論することを想定しているわけではなくて、記載されている意見を踏まえて、それに対する賛否ですとか、あるいは補足すべき点ですとか、こんな意見が出るとは思わなかったとか、そんな反応ですとか、そういったことを述べていただければと思います。今日特定の方向性を出して決めてしまうということはないので、その点は安心して御議論いただければと思います。どなたからでも結構ですので、御意見を頂ければと思います。   それほど驚くような意見が出たわけではなくて、おおむねこの場でされたような議論がコメントとしても出てきているということであれば、あえて意見がないということも考えられますが、改めて寄せられた意見を見て何か思うところがあれば、是非御意見いただければと思います。 ○池山委員 池山でございます。私の推薦元団体である船主協会は一番色々な意見を出させていただいていて、今日の会の趣旨からすると、それをただ繰り返すというのは意味がないことだと思います。今日この席上で申し上げる点があるかもしれないとすれば、作成地を記録事項に入れるということについて、いわゆる紙のB/Lであれば所持人側になる銀行さんの団体と、それから荷主さんの団体から、異なる意見が出てきたというのを非常に興味深く拝見をしているという点です。   私若しくは私の推薦元団体である船主協会が法定記録事項に残すというのは、言ってみれば、電子B/Lになっても実際は作成地という概念は実務としては持ち続けているから、作成地を法定記録事項のままにしていても困りませんよという趣旨であると私は理解しています。だから、仮に法定記録事項から削られたとしても実は異論はないのだと思います。あえて言えば、それが有害的記録事項であると、書いてはならないとなると話は全然違うのですけれども、あえて法定までとはしないと、書く書かないは自由だというのであれば、多分、少なくとも今、私が認識している実務は、従来どおり書くのでしょうねと、書かれれば場合によっては御指摘があったハーグ・ヴィズビー・ルールの適用の関係等で意味を持つこともあるでしょうという以上でも以下でもないと。将来的には、ああ、そうかということで、だんだん書かないという実務になるかもしれないということなのだと思います。そこは、我々が法定記録事項にすることに賛成だということのニュアンスとして、補足して御説明をしてもよいかなと思った次第です。   それから、第4まででいうと、電子署名について反対だという意見を、これは従前からも私自身が申し上げていて、船主協会意見でも維持されていて、客観情勢としてはいささか少数派になっているというのは認識しているのですけれども、多分これも趣旨を御説明させていただくと、一方では本当に必須なのでしょうかという部分があるということと、プラス、これからいろいろな技術が出てくる中で、幾ら電子署名の要件を緩やかに解したとしても、本当に全てのシステムがそれを満たすのか、言ってみれば自信がありませんよと、本当にそれでいいのですかという問題提起的な意味もあるのだと思います。   実際は、電子署名ということを要求することで求められている内容というのは、実は信頼性の要件で求められていること、あるいは電子船荷証券記録の技術的要件、今四つありますけれども、そこで求められることとかなりかぶってくるのではないのと、本当にそれ以上の必要性があるのでしょうかという、言ってみれば問題提起的な反対であるということを、あえて言えば、申し上げてもよろしいかなと思っております。   あと、最後の補足的なことをするとすると、転換請求権に関することで、これもここまで甲案、乙案が対立するというのは、ある意味では意外であるわけですが、転換請求権を認めない考え方に立ったとしても、多くの場合は運送人側も転換に応じざるを得ないのではないのかということはあるわけで、そうすると、どこまで大きな問題なのかという冷めた見方というのは、実はあるのかもしれないと思っています。その上で、やはり転換請求権を認めるべきではないという考え方を運送人側が、中で話していて、意外と皆さんが強固にお持ちなのは、意見の中で採用していただいていますけれども、正に理念的な問題というか、考え方の問題だという整理の方が多いからだと認識しております。   あとの2点は、すみません、実際にここに既に書いてあることの補足になってしまいますけれども、以上でございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。今のような御意見のように、書かれている意見の実際のインプリケーションといいますか意味合い、ニュアンスというのを補足していただけるのも非常に助かりますので、是非頂ければと思います。 ○北澤委員 北澤でございます。作成地の概念につきましては、これが国際私法上の連結点として出てきていることに対し、日本貿易会様から7ページで厳しい御批判が出ておりましたので、その点に関して若干のコメントをさせていただければと思います。   中間試案の補足説明ではという部分の、一部反対の・の2番目になるかと思いますが、準拠法決定の連結点として作成地が意味を持つ可能性に言及しているが、正にこの点が問題であり、というところでございます。仮に法定記録事項から落としたとしても、通則法の10条の2項の規定がありますので、作成地がどこになるかは問題となります。   法定記録事項に絶対に書かれていなければいけないかというと、そこは先ほどの池山委員のようなニュアンスでして、たとえ書かなかったとしても、国際私法上、電子的な船荷証券記録の方式の準拠法が問題となり、そこでは作成地を明確にしなければならないことになります。法定記録事項としておけば、それが何らかの形で参考になるのだと思いますが、なければないで、作成地はどこになるのかという問題は避けて通れず、この・の2番目の部分は、確かに今後、解釈論として電子的船荷証券記録の方式の準拠法について作成地をどう考えるのかは問題になりますけれども、法定記録事項から落としたとしてもその論点が出てこないわけではないということは、一言ここで申し上げておきたいと思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○新谷幹事 新谷でございます。1点、先ほどのシステム提供者とかシステムという問題ともまた関係する点なのですけれども、13ページにあります技術的要件としての信頼性の要件のところについてです。これは甲、乙、丙案があって、甲は信頼性の要件というのは定めない、乙はきちんと定める、丙は訓示規定のような格好で残すというところなわけです。これに関してトレードワルツの立場で話を申し上げたいと思うのですけれども、トレードワルツというのは実はいろいろな業界から出資を受けていて、株主には、荷主もいれば運送人もいるし銀行もいるということで、トレードワルツとしての立場というのはなかなか表明しにくい部分があるのですが、一方で現実問題として考えると、乙案のようにはっきりと明示的規定を信頼性の要件として定めてしまうと、例えば新しい技術が突然出てきたとか、あるいは新しいハッキングの手法が出てきたとなった途端に有効性が否定されてしまうという可能性があるのではないかと、要するに、法律によってその制度的な安定性が逆に脅かされてしまう可能性が出てくるのではないかと思いました。そうすると、結局のところ利用者が困ってしまうのではないかということなのです。例えば、運送中の貨物があって、その途中で新しい技術が出てきたことによって有効性が否定されてしまうということがあれば、荷主も困りますし、運送人も困るということになりかねないですし、あと、例えば、別にハッキングで今の技術が破られるということではなかったとしても、新しい技術が出てきたことによって信頼性が相対的に低くなってしまうということも考えられるのではないかと思うのです。要は、新しい技術が出てくれば既存の技術が陳腐化していくということですけれども、このように考えると、信頼性という定量的に測りにくいものを有効要件として書いてしまうというのは、将来を見通すと何か問題になる可能性があるのではないかと思った次第です。トレードワルツとしては、先ほど申し上げたように、関係者に荷主も運送人もあり、特にどちらだということをはっきり申し上げるつもりではなかったのですが、ただ、今のような現実を踏まえると、恐らく甲案のように、もう定めないというのが現実的なのではないかと思っています。   丙案についてですが、MLETRだと訓示というより例示のような格好で規定が入っていて、それに近いものを丙案として挙げていただいているわけなのですけれども、一方で丙案に対する意見を拝見していますと、何々するように努めるとか、そういったものはやはり削除すべきであるというような御意見もいろいろとあって、そういった、何々するように努めるべきというようなものを削除すると、実質的には多分、訓示というよりは、もう有効要件になってきてしまうような気もするものですから、こういった皆様の御意見を拝見している中で、改めて甲案というのが現実的なのではないかと思った次第です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何かございますでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。いろいろ御指摘いただきましてありがとうございました。新谷幹事に1点確認をさせていただければと思っているのですけれども、我々の理解では、恐らく丙案に賛成する御意見というのは、信頼性の要件というものを電子船荷証券記録の有効要件とまではしないということを考えておられるのかなと思っておりまして、ただ努めるというのだけではなくて、信頼性の要件を備えなければならないという形にはなりますけれども、結局その意味するところとしては、仮にこれがなかったからといって電子船荷証券記録が無効になるというわけではなくて、何かもしトラブルが起きた場合には損害賠償責任なりのきっかけになると、そういった程度の意味合いなのだろうと思われるところもあるのですが、そういった意味でもなかなか丙案というのは難しいという御感触なのか、あるいは有効要件ということに結び付けずに、何かもし問題が起こったときの損害賠償のきっかけになるぐらいであれば、事実上、甲案と余り変わりはないので、であれば、MLETRとの平仄も踏まえて丙案というのもあり得べしという形なのか、そこら辺の御感触なりを少し補足していただけると有り難いと思っておりますが、いかがでございましょうか。 ○新谷幹事 ありがとうございます。新谷でございます。損害賠償責任のところに関しましては、恐らく法律上もさることながら、契約上においても何らかの形で決められることになると思いますので、そこに関しては、法律に書かれると困ってしまうということを申し上げるつもりではなかったわけです。むしろ、先ほど申し上げた、いわゆる有効要件のところで何々するように努めというのが入らなくなると、私はそれがなくなることによって、信頼性の要件が電子船荷証券記録の有効要件と解釈されてしまうのではないかとも理解したものですから、だとすると、私のその理解が間違っていたのだと思いますので、その点は訂正させていただきます。 ○渡辺幹事 御趣旨がよく分かりました。ありがとうございました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   そのほか、どの点でも御意見がございますでしょうか。   今日の議論で出された、システムを定義することで支配の概念を明確化するという話を進めていった場合に、この手の技術的要件に一切触れないままシステムを定義して、そのコントロールが定義できるのだろうか、支配が定義できるのだろうかという疑問が新たに生じるような気もして、今日の寄せられた回答が既にどの程度そのまま維持できるかというのも少し気にはなってきているのですけれども、今日の前半の御議論を前提にした場合の感触でも結構ですので、御意見を頂ければと思います。特に、全く技術的要件に触れないままシステムを定義して支配概念を明確化しようということというのは可能なのかといったことは問題になるかとも思いますけれども。 ○山口委員 山口でございます。先ほどの点ですが、私も小出幹事がおっしゃったように、システム提供者というよりはシステムというものを通じて、何らかの形の事実上の概念としての支配というのを定義していくというのは、何か可能なような気がしたわけなのですけれども、技術的要件、信頼性の観点からいっても、そのシステム自体に一定の信頼性を有することを規定して、なおかつそれを有効要件としないというのであれば、正にモデル法的な形での解決になるのではないかと、今御議論を聞いていて、思った次第でございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   そのほか、どの点でも御意見いただければと思いますが。 ○池山委員 意見というか、質問なのですけれども、信頼性の要件がそもそもなぜ必要なのかという部分は、MLETRにそう書いてあって、それに準拠した立法をするというのは国際公約だから必要だということは当然あると思うのですけれども、それとは別に、理論的に技術的な要件、4要件とは別にこれが必要だという、技術的若しくは本質的な理由というのは何なのかというのが、よくよく考えるとよく分からないなという気もするのですが、そこはどう整理したらいいのでしょうか。 ○藤田部会長 差し当たり、事務当局からお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。事務当局として率直なところ、明確な解を持ち合わせていないというところから、この一般的な信頼性の扱いをどうしましょうかという悩みをこれまで出させていただいて、先ほどの4要件とは違った形で、有効要件とはしないけれども、何らかの形の訓示規定なり、あるいは私法上の義務ぐらいにするということもあり得るのかなという形にさせていただいているところで、率直なところを申しますと、論理必然的にいうと一般的な信頼性というのはもはや要らないのではないかという考え方というのはあり得るのかなというのが率直な思いではある反面、先ほど池山委員がおっしゃられたとおり、MLETR準拠ということが一つの目標でもありますし、いずれにしても、4要件のほかに、一般的にやはり信頼できる電磁的記録あるいはシステムというものが要求されること自体、特段問題はないのではないかという考え方の下、こういった提案をさせていただいているところでありまして、ここら辺りは正直、整理として、なかなか事務当局として自信を持ってこうだと言える部分ではございませんので、何か御知見なりがあれば、御示唆を頂けますと大変有り難いと思っているところでございます。 ○池山委員 すみません、ただの質問だけです。ありがとうございました。 ○藤田部会長 池山委員の質問は、極論すると、どんなにでたらめなものであれ、「電子船荷証券記録」と称するシステムがあれば、この商法の規定は適用があるというところまで行ってもいいかという疑問になるかと思うのですが、そういう趣旨でしょうか。 ○池山委員 そこまで明確に考えているわけではなくて、技術的要件として4要件がなければいけないわけですよね。そこは、雨宮委員の御示唆にもあったかもしれませんけれども、実際はこれはシステムが満たさなければいけない要件だと。この4要件があれば、それ以上のものがどこまで必要なのかということになってくるのだと思います。でたらめでないものに対する歯止めというのが、これはもう私個人の意見ですけれども、信頼性の要件を外して、でたらめでないためのものを作るとすると、実は私が自信がないと申し上げている電子署名の話に行き着くのかもしれないと思っております。ただ、電子署名という形でこれを求めると、それはそれで技術の進展にどこまで応じ切れるのでしょうかという問題があるという、あちらを立てればこちらが立たずみたいな話になってくるのかなと思っています。 ○藤田部会長 分かりました。ありがとうございました。 ○雨宮委員 雨宮です。今の技術的要件と信頼性の要件のところですが、技術的要件とは、例えば電子証券記録上の権利がシステム等に記録されるとか、特定されるとか、そういう要件は満たさなければならないことであり、それ以上に、安全性とか完全性までは書き込まれていないので、今、藤田部会長がおっしゃられたように、単に特定できている、記録されているというだけではなくて、静的安全や取引安全のためにも、安全性や完全性は必要となり、それが信頼性の要件として規定されていると理解しておりました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○池山委員 その場合は、技術的要件でいえば、唯一の記録としての特定も、支配をする者の特定も実際はできていないという形で解釈上、読み込むこともできるのではないかということだと思うのですけれども。 ○雨宮委員 雨宮です。そのような解釈ももちろんあり得、解釈で補えることもありますけれども、法を作るのであれば、そのようなことも法律で規定しても別に不都合はないと思いました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。絶対に必要かどうかはともかく、一定の安定性、安全性を要求する趣旨というのを示唆するものとしての象徴的な意味での信頼性の要件というのもあり得るのかもしれないということだと思いますがいかがでしょうか。 ○池山委員 ありがとうございます。それが私の最初の質問に対する一種の答えだということですね。ありがとうございます。 ○藤田部会長 そのほか、どの点でも御意見、御質問がございますでしょうか。   皆さんが考えておられることが実質としてそう違うわけでもなさそうですが、具体的な条文の立て方になるといろいろ意見が分かれそうな部分ではあります。   前半部分についてはこのぐらいでよろしいでしょうか。もしこれ以上、特に議論がないようでしたら、後半部分、部会資料10の第1部、「第5 電子船荷証券の類型及び譲渡等の方式」以降、ページ数でいいますと25ページ以下について御意見を頂ければと思います。繰り返しになりますが、今日何か決めるという趣旨ではございませんので、記載されている意見、寄せられた意見について賛否、補足すべき点、感想などを頂ければと思いますので、自由に御意見いただければと思います。よろしくお願いします。   こちらも、極端に予想外の反応があったわけではないのかもしれませんけれども、中にはいろいろ長い意見もございますので、何かございましたらお願いいたします。 ○池山委員 何回もすみません、池山でございます。第5以下についても、恐らく実質的な少数意見でありつつも、それを強く言っているのは従前の私、それから今回のパブリック・コメント手続の中では私の推薦元団体であるかと思いますので、幾つか補足的なコメントをさせていただきたいと思います。大きく分けて二つないし三つあります。   一つは、第6の規律の在り方の内容で、甲、乙、丙、丁案とある中で、何らかの形で読み替えの条文を作るという乙、丙、丁案に対して、私の推薦元団体は甲案という基本的な包括的準用規定を作って、ただしそれを若干変容させると、ブラッシュアップというとおこがましいのですけれども、更にリバイスをするというのを提案させていただいております。   その理由としては、ここには書いているのですけれども、1個だけ補足させていただくとすると、採録していただいた理由の29ページから30ページの辺りに書いてあるとおり、この選択というのはやはり見栄えだけの問題ではないだろうと、本来的にはやはり電子船荷証券を認知するための立法において、船荷証券に関する規律というのを従来余り議論されていなかったところ、あるいは今回我々が反対だと申し上げた520条の9のようなことをどこまで明確化するかという問題だろうと思っています。従来、520条の9が紙の船荷証券に適用がある、したがって電子船荷証券にも適用があるという点について、ずっと反対だということを私自身が申し上げていて、今回のパブリック・コメントでは、個人の意見という形でそこを強く言ってくださっている方がおります。これは個人の意見なので、船主協会の意見とは違いますけれども、この意見が皆さんの御賛同して採用されるところになれば、船主協会としてももちろん歓迎ですし、反対ではございません。   念のため申し上げますと、船主協会の意見で甲案にして、甲案の修正をしているところを見ていただくと、29ページですね、6、7、8と書いてある中で8なのです。8で、結局明らかに適用がないという点については、ただし書きで除くと、そういうふうに書けばいいではないかと。本音を言えば、ここに520条の9も除くと書いていただければ実は有り難いのです。そこであえて書いていないのは、そこは皆さんの反対も強いので、そこはせめて解釈に委ねるべき問題ではないですかということなのです。乙、丙、丁案になってしまうと、結局520条の9を入れる、入れないというのを決めなければいけなくなると。今のところは入れない説は残念ながら余り多くないと、そうすると入れるということになりかねないと、そこはやはり、理論はいろいろ御示唆を頂きましたし、分かるのですけれども、意見に書いてあるとおり、やはり結論としてなかなか実務者の賛同を得るところは難しいと思っております。   二つのことを交ぜて申し上げましたけれども、もう一回整理すると、甲、乙、丙、丁案の選択というのは、見栄えだけではなくて、どこまで明らかにするかという問題がやはり出てくると。その中で一番問題なのは、やはり520条の9の問題になるのだろうと、そういう第6の1の甲案の選択の是非と、520条の9の是非というのは、一応論理的には関係をしているということは補足させていただいてもいいのかなと思っています。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○池山委員 強制執行の方は一旦、また後で。 ○藤田部会長 甲案の最大のメリットというのは、実は同一効力規定はどの案の下でも置くことを前提にするなら、完全には特定の条文について準用の有無の態度決定をせずに済むということにあると、そういう感触ですね。どうもありがとうございました。 ○池山委員 少しだけいいですか、今の点。これは念のためですけれども、仮に520条の9的なものを残すとしても、提示という概念の定義については、更にもう少し要検討であろうという趣旨で、提示の概念はこう書き換えるべきではないですかというのも少し御提案をさせていただいております。 ○藤田部会長 了解いたしました。   そのほか、どの点でも御意見いただけますでしょうか。 ○箱井委員 520条の9について、今までいろいろ池山先生と議論してきたところがあり、更にこういう意見が出たという御指摘でしたけれども、前提として、これまで議論してきていなかったとか、ほとんど議論がなかったとかいう御指摘の理解は若干注意が必要かなと思っています。これまで見解の対立があった問題が決着が付かないまま放置されているといったような状況ではありません。大方、事務当局から説明いただいたところについて、私は納得していますし、他の研究者からも異論は出ていなかったと考えています。学界の考え方としては、全然分からないまま放置してきているとか、誰も考えることすらできないとかいったような問題ではないのだろうと考えております。その点だけ申し上げます。今まで解釈の対立があり、どちらかに決着を付ける形で書き込むのを避けろという趣旨だとすると、そういうことにはならないだろうと思っています。 ○藤田部会長 それは、寄せられた意見に対する感想でもあるということですね。 ○箱井委員 そうですね。 ○藤田部会長 分かりました。   そのほか、どの点でも、御意見はございますでしょうか。 ○山口委員 山口でございます。池山先生の考え方について、少し質問なのですけれども、私はこの議論のところから、丁案がいいかなと、要するに、これは商法の規定の改正ですので、商法については書き下すべきだと思いますが、民法については、基本法になりますので、準用規定でやるべきだと考えていまして、それの方が体裁的に、体裁というのも変ですけれども、商法の改正という面からいうと、形としてもきれいであるし、全ての条文を書き下すというのは非常に大部であるというところから、それがよいと考えているのですが、池山先生がおっしゃったように、民法520条の9のところが問題だということであれば、民法の部分だけ準用にして、今おっしゃったような形での議論を残す、議論がないというのが箱井先生の御意見ですけれども、という形でも、それは問題がないのですか。それとも、やはり甲案でないといけないということなのでしょうか。 ○藤田部会長 池山委員、差し当たり、お願いします。 ○池山委員 結論から言うと、甲案であるべきだと思います。というのは、まず前提として、箱井先生の御指摘に対する実務の側の立場というのは、恐らくある意味、シンプルで、理論構成はどうあれ、結論として、提示されただけで遅滞に陥るというのはやはり納得できないと、突き詰めればそれに尽きるのだと思います。でもそうはいったって、それが法なのだよと押し切られてしまうかどうかという問題なのだと思います。   ただ、実務としては納得できないし、実務側が納得できない理由として従前思っていたのは、民法にはそう書いてあるけれども、商法の764条は特則だと思っていました、いますということです。箱井先生は、正にそこが違うとおっしゃるわけですけれども、我々側のロジックを正当化しようと思えば、最終的にはそこに行き着くと。従来は商法の中の商行為法の総則に520条の9の前の規定があって、海商法の中に764条がありましたと。今は民法の中に総則規定があって、商法の764条がありますと。そういう関係がある、それを、言ってみれば維持させてくださいということなわけです。そのときに、そこで山口先生のコメントに、あるいは御質問に戻るわけですけれども、そこで準用規定を置いてしまうと、結局は商法の船荷証券若しくは電子船荷証券の規定の中で、520条の9を準用するということをはっきり書くわけですから、結局同じではないかと私は理解するのです。だから、乙、丙、丁の差というのは実は見栄えの問題でしかないと。   甲案の船主協会意見であっても、適用しないとはっきり明文でうたっているものには、そこは520条の9は入れていないのです。うまく言えませんけれども、本来は入れてほしいのです。それが入らないとしても、それは520条の9以外について、適用がないものについては異論がないから入った、それについては結局、学界の議論はどうあれ、実務側が納得しなかったから入れなかった、だけれども理論的にはこれは本来入れるべきだ、いや、入れないのだという議論の余地は、甲案だったら一応残るし、そのことの最大の意味があるとすると、元々この議論をするためにこの立法をしているのではないよねということに対する一つの答えなのだと思うのです。だから、やはり元に戻って、商法の中で丁案のように入れてしまうと、結局それは丙案と余り変わりがないということに私はなるのだと思っています。というのが一応の山口先生のコメントに対するお答えなのです。   逆に、山口先生に問うとしたら、山口先生も実務家でいらっしゃるわけで、提示だけで遅滞に陥るというので納得できるのでしょうか。正直言うと、これが私一人の意見ならいいのですけれども、当然、船主協会意見を作るのに私も関与したわけですけれども、別に私以外の関与した弁護士も、あるいは文字どおり船会社の方も、余り今までそれがクリティカルに問題になることはなかったけれども、やはり提示証券性、受戻証券性があって、実務的にはまずは受け取って、それでDOを出す、あるいはDOに代わるものを出して荷渡しが始まるのに、提示だけで、結局、提示はしたけれども、戻されてしまうかもしれないわけですよね、もらえないかもしれない。提示しただけの段階で遅滞になるというのは、やはり納得できないと。そこの議論は、実務の方には、私一人ではない、かなり強いのです。実際に提示だけして荷主が戻してしまう、そういうのは余りない例なので、確かに観念論ではあるかもしれないのですけれども、観念論としては非常に抵抗が強いのです。   その点、同じ実務者として、逆にあえて、事ここに至ってはということで申しますけれども、ほかの海事の弁護士さんたちが何で違和感をお持ちでないのか。理論とは別に結論としての違和感です、そこが逆に不思議なのです、私は。どうですか。 ○藤田部会長 まず、山口委員からご感触がもしあればお願いします。 ○山口委員 今の池山先生のお考えですか。私はどちらかというと池山先生の考え方に近い考えを持っていますけれども、提示することによってだけで遅延に陥るかということになると、民法における提示とその遅延の議論というのは、提示があればすぐに義務が履行できるという金銭債務を前提にした条項ではないかという気がしていまして、正にだから、池山先生がおっしゃるように、船荷証券についてはそれについて特別規定があるのだと、要するに、提示しただけですぐ義務が履行できるものではないので、それだけで遅延にされては困るという思いというのは非常によく分かると考えておりまして、ですから、物自体、すなわち債権者の協力を要しない限り義務を履行できないような物の引渡しというものについて、すぐに提示だけで遅延に陥るというのが、やはり抵抗感が強いなとは思っております。 ○藤田部会長 分かりました。 ○箱井委員 繰り返してもしようがない気がするのですけれども、箱井です。要するに、これは証券所持人が証券を運送人に提示しなければ運送人の債務は遅滞にならないと、そのための規定なわけです、何度も言っていますように。提示された瞬間に遅滞になってしまって、それで遅滞の責任を負うことになるというお考えのようですけれども、本当にそうかなと。私は、そうはならないのではないかと思います。一言で申し上げるとするならば、指図債権では期限が到来しても証券を提示しない限り債務者は遅滞の責任を負わないという部分が、これが肝要なわけでありまして、そういう趣旨の立法なのだという理解をしております。これは元々指図債権または無記名債券の規定で商法に入っていたものを使ってきているので、ですから、特定の理解をここでして、それが議事録に残って、しかも520条の9について船荷証券について特別の扱いがされたとなると、ほかの証券にも影響しかねず、別な問題も出てくるのではないかという懸念をしております。 ○池山委員 私も再々、箱井先生のその御指摘は理解しているつもりですし、私なりにもいろいろ勉強はしているつもりなのですけれども、ただ、今おっしゃった中で、提示がないと遅滞に陥らないという趣旨の規定なのだということですよね、そこを敷衍すると、提示したからといっても遅滞に陥るとは限らないと聞こえるのですけれども、実際の条文は、提示して履行したときから遅滞の責任を負うとやはり書いてあるので、そこに抵抗があると言っているだけなのです。   私が思っているのは、実務が抵抗があるのは分かるけれども、実は法がそうなのだよと、変な言い方ですけれども、法がそうなのだよということを実務が受け入れるのか、やはりなかなか、正ににわかには受け入れられないと意見には書いてありますが、にわかに受け入れられない中で、元々今回ここをはっきり決着させる立法ではないはずだから、そこは何とか棚上げする方法を見付けてくれというのが私の感覚なのです。 ○藤田部会長 この論点については、既に以前の部会において事務当局から一定の答えは出されて、それに納得できないのかどうかという議論になると思うのですが、事務当局から再度御説明いただけないでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御議論いただきましてありがとうございます。事務当局としての整理としては、提示しただけで遅滞の責任、具体的に言うと、例えば損害賠償とかですね、そういったものが発生するという整理をしているわけではございませんで、飽くまでも引換えというものがなければ遅滞責任は発生しないのではないかと、そういう整理をさせていただいているところでありまして、そういった整理から見ますと、実はこの520条の9というのは、提示がなければ遅滞責任が生じないのだというところを実質的に意味するというのが、恐らく箱井委員がおっしゃられたことなのかなと理解はしているところなのですけれども、まず、そういった理論構成で皆様に御同意いただけるかというところが一つ、問題なのだろうとは思いますが、いずれにしても提示しただけで遅滞責任が生じるのだと、それでいいのだという形の整理ではございませんで、箱井委員も恐らくそういう御結論なのだろうと思いますので、そう考えると、想定している結論というのは皆様余り相違はないのではないかと思っているところです。   ただ、池山委員がおっしゃるとおり、例えば520条の9を見ますと、提示があれば遅滞責任を負うと書いてあるので、提示だけで責任を負うではないかと、そこのところが御不安だということなのだろうと思いますけれども、それとはまた別に764条という規定がありますので、こういった規定の存在によって、実際に引換えがなければ請求できないと書いてあるわけですから、引換えがなければ遅滞責任を負わないと、こういう解釈になるのではないかと、こんな整理をさせていただいているところです。   これだけ見ると、何ともすっと腑に落ちないとお感じになる方もいらっしゃるかと思いまして、例えばの例示ではあるのですけれども、皆様の中でよりなじみがあると思われる民法の規定なんかで申しますと、例えば民法412条3項を御覧いただきますと、「債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。」と書いてあります。では、例えば売買契約で履行期を定めなければ、請求さえすれば遅滞責任が生じるのですかといったら、恐らく多くの法律家はノーというのだろうと思います。そのノーという理由は、恐らく同時履行があるからだと。そういったところで遅滞責任というのは生じないと、412条3項だけで決着は付かない、ほかの制度とも合わさってそういったところが決まっていくと、こういった理解なのではないかというようなことも、どこかで資料で書かせていただいた記憶なのですけれども、それと同じように考えて、結局520条の9というものがあっても、764条というのが別途ある以上は、引換えがなければ遅滞責任が生じない、こういった整理になるのではないかということを申し上げた上で、そういう理解が成り立ち得るのであれば、提示がなければ遅滞が生じないというところの意味合いも込めて、520条の9というものを入れておく意味はあるのではないかと、こんなような考え方を提示させていただいたつもりでございますが、今申し上げたところに何か考え違いとか違った御見解とかがあれば、御指摘を頂けますと有り難いと考えてございます。 ○藤田部会長 更に御意見はございますでしょうか。運送人が運送品を用意できている状態で、船荷証券を渡さないけれども、提示はしたから、そこで履行遅滞になる、そういうことを考えている人は一人もいないのですが、民法520条の9が残されると、そういうことになるから認められないという意見が寄せられているという状況だと一応理解できるでしょう。そして、そういう理解で反対しているのだったら、それはその理解が正しくないですよというのが箱井委員や事務当局の反論だということになります。繰り返しですけれども、商法764条は残っており、民法520条の9はこれを排除する意味は全くないので、商法764条により同時履行の抗弁権が発生する以上は、その同時履行の抗弁権を消せない限り履行遅滞には陥らないのは当然のことではないかというのが事務当局からの御説明で、これを前提に事務当局や箱井委員は、実務的にはどうしても受け入れられないという理由が分からないという御意見なのだと思います。ついでに言いますと、仮に運送品を用意できない状態で船荷証券を提示されたら、やはりこれはこの規定のとおり、その時点で遅滞に陥るのでしょうね。そういう意味でも全く意味のない規定ではないのかもしれません。   いずれにしましても、意見の対立構造は、恐らく池山委員と箱井委員・事務当局とのやり取りである程度明らかになったと思いますが、この条文についての態度決定はいずれどこかでしなければいけないことになるのだとは思います。実務として受け入れられないのは、証券引き渡されない状態のままで履行遅滞になるという結論への抵抗感なのであれば、そうならないことさえ何らかの形で確認されればいいということなのか、確認されようがやはり困るということなのか、そこはいずれでしょうか。 ○池山委員 結論というか結局、文理なのですよね。文理がそう読めてしまうということへの抵抗なのだろうと私は今聞いていて、思ったのですけれども、結局今のお話からすると、提示して履行を請求したときから遅滞の責任を負うとあっさり書いてあるけれども、それは764条の存在と併せて読み込むべきなのだから、こう書いてあっても、提示して履行を請求しても遅滞の責任は負わないことは実際はあるのだと、それは引換え給付なのだからと、そういう整理が解釈上できるのだったら、結局は、言葉は悪いですが、この文章の、これは元々民法の文章から引っ張ってきているわけですから、ここを変えるような話でもないのですけれども、これが誤解を招くのだろうということで、結局やはり764条が特則として機能するから大丈夫だよという話ですよね、今の話からすると。そこが、今までだったら結局、規定の位置からしてはっきりしているところ、同じ商法の電子船荷証券の節あるいは船荷証券の節に入れる、丁案のように入れたとしても、その関係はやはり維持されるのかということなのですよね。 ○藤田部会長 商法764条は民法520条の9に対する特則ではありません。民法520条の9と併存しているだけです。それを前提に商法764条によって同時履行の抗弁権が発生するだけです。次元が違うので、維持されることに何の問題もないというのが事務当局の説明だと思います。 ○渡辺幹事 おっしゃるとおりです。 ○池山委員 いつも皆さんに言われるのですけれども、ここは別に私一人の意見ではないので、推薦元の団体の中でも、今日の御指摘を踏まえて、更に検討はしたいと思います。 ○藤田部会長 事務当局の言われたように、条文上、ここから遅滞に陥ると書いてあっても、同時履行の抗弁権が発生することで、そこまで遅滞の時期が延びるということは、この場面に限らず、様々な局面で幾らでも起きる問題ですので、一般的にこういう書き方をしていれば絶対にそれ以外の読み方はできないということではないことも併せて、更に議論を内部的にしていただければと思います。よろしくお願いします。 ○池山委員 はい。 ○藤田部会長 そのほか、特定の条文が一番ネックになって、しかもこれが極めて技術的な、端的に言えば条文の文言のニュアンスの問題なのが、審議会の議論としてはかなり異例かなという気もしないではないのですけれども、ほかにどの点でも、多分、強制執行なんかはかなり実質も伴いますので、御感触を。これは本当に意見が、感想が分かれてしまったのですね、この辺りも含めて、どの点でも御意見を頂ければと思います。 ○笹岡幹事 笹岡です。先ほどの点ですが、コメントにある、条文構造上特則になっているという点が、私は今一理解ができません。あるルールの射程が広がった結果、一般法化するというのはいろいろなところで起こることで、一般法化した結果、特則にある条文と併せて読んではいけないというルールは、解釈論としてはないのではないかと思います。コメントの元々のロジックが少し分からなかったところです。批判というよりは意見として残させていただきます。よろしくお願いします。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   そのほか、どの点でも。   後半についても、今日決めるわけではないものの、いろいろ意見が寄せられていますが、特に寄せられた意見については現在のところ、感想などないと理解してよろしいでしょうか。 ○池山委員 何回もすみません、池山でございます。めげずに発言をさせていただきます。   強制執行の点なのですけれども、ここでも、法務省の方でいろいろなアイデアを出していただいた中で、我々としては、その中では丙案が一番論理的ですっきりしているだろうと言いつつも、結局、実際に差押えがされる局面を想定すると、第三債務者から見て債務者が分からないと、したがってどう対応したらいいか分からないことが起き得る、あるいは国際的な効力の範囲という点からも、どういうふうに対応したらいいか非常に困ってしまうということから、結論的には丁案のように何も書かないというのもあるのではないかということを申し上げております。   ここはもう、今改めて申し上げるようなことでもないのですけれども、最終的な意見のニュアンスとして書かせていただいている部分は、一方で強制執行の制度設計をしなければいけないという部分は分かるのだけれども、実際にその制度設計のアイデアを与えてしまって、差押えをされる例というのが現実問題として出てきてしまうと、かなり混乱すると、それに対して非常に危惧があると。なので、結論的には何も書いていない方が、益よりは害の方が多いのではないかということ、あるいは括弧書きで、要するに、やはり、債権かもしれないけれども債権執行にはなじまないのではないかという政策判断的な意見として、申し上げさせていただいていると理解をしています。そういうのはあるにしても、やはり新しい制度を実体法の中で認知する以上は強制執行の制度が手当てが絶対に必要だというのであれば、それは丙案が一番論理的で、そこをあえて示すことの政策的な是非の問題だと、そういう整理をしております。   一方で、議論を深化させるためにということであれば、かなり混乱が生じるのではないでしょうかというのを縷々書かせていただいておりますけれども、ここに書いてある船主協会の意見の中で、単純に勘違いとか、おかしいのではないのという点があれば御指摘いただきたいと思っているのが一つと、それと、こういう混乱があるのであればということで、一つの乗り越え方として、差押えがされた場合には、先ほどのシステム提供者の話に正に戻ってきますけれども、システム提供者は差押え時点での債務者、つまり支配をする者が誰なのかというのを明らかにしなさいというような義務を実体法的に更に創設するというのが論理的には出てくるかと思うのですけれども、それは逆に、先ほど小出幹事からも御指摘があった、システム提供者といえどもその時点での支配者が誰か分からない場合もあるかもしれないという問題に突き当たるのかなと思っております。最後の部分は感想です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。船主協会の意見については、何か疑問点や反論みたいなものがあれば、指摘いただきたいということでしたけれども、もしそういうものがございましたら、お願いいたします。   海外での執行等の話もいろいろ言及されていますけれども、海外における執行は、管轄の問題を含め、電子に限らず、紙の船荷証券の場合でも同じような問題があるような気もしないではないですけれども。 ○池山委員 ありがとうございます。池山でございます。正にそこが、部会長御指摘の問題で、今だって正に規約型で電子船荷証券記録というのは動いているわけですから、今だってここに書いてあるような混乱は、理屈上は起き得るのだろうとは思っています。今は法的に電子船荷証券記録なるものが認知されていないから、特段の手当てもされていない。でも、確かに規約型であっても債権は債権なわけですから、実は債権執行できるのではないかという議論は確かにあるのだと思います。これはどうせある問題でしょうというのは一つの割り切りです。その上で、どうせある問題なのだけれども、今は実際そういう混乱が起きるということは、よく考えれば、差押え債権者側に立っても、実際、差押えをしてみようと思えば、それがどの程度奏功するかを考えてやるわけで、こういう問題は皆さん行き着くと。だから、私の知る限り、実際にされている例というのは聞いたことはないのです。私自身、プラス、私が船主協会の関係者に聞く限りにおいても、ないと。   だけれども、制度設計をしてしまうと、それはやろうという人が出てくるかもしれないと。そうすると、その混乱というのが現に生じてしまうと。それは勘弁してくださいというのが恐らく本音で、だから、どうせこの混乱は生じてしまうのだから、それが場合によっては可能なのだという法制度設計をあえてする必要はないのではないですかと、正にこれは政策判断として提案しているのです。それとは別に、いや、やはりどうしても必要だというのだったら、そこは甲案とかは乱暴すぎて、丙案の方がある種、論理的なのだろうと思っております。 ○藤田部会長 ニュアンスは非常によく分かりました。   そのほか、この点も含めてですけれども、御意見がございますでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今の池山委員の御指摘に関するところなのですけれども、確かに我々の思いといたしましては、民間のサービスプロバイダーの規約型のものというものは既に存在していますので、そういったところで運送品引渡請求権に対する差押えというのは現実的にも既に起こり得る問題、ただ、実際に余り例はないということのようですけれども、既に起こり得る問題なのだろうとは思いますので、そういったところも取り込んだ上で、何らかの法整備というのはやはりあった方がいいのかなという思いでおります。   ただ、法制化することによって、やはり若干変わってくる局面もあるかなと思っております。例えば、今、規約型のものを使っている場合で、もし差押えがあった場合には、恐らく運送人としては差押えに従うしかないのではないかと思います。第三者に対して規約型B/Lの効力を主張することができないので、恐らく差押えが勝つという結論になるのだろうというふうに思います。   ただ、他方でこの電子B/Lというものを法制化した場合には、引換えにという規定がしっかり生きますので、それは恐らく第三者に対してもいえてしまうということになってしまうかと思いますので、この電子B/Lというものを法制化した上で運送品引渡請求権というものの差押えがされた場合には、運送人は正にどうしたらいいか分からないということになってしまうのではないかと思われますので、そういったところの問題を少しでも解消するための方策というのは、何らかのものを講じておいた方がいいのかなということで、いろいろ考えているわけですけれども、ただ、いずれにしてもなかなか、これで全部解消できますという形でのいい提案ができていないというのも現実でございますので、そういった中でどうするのかといったところをまた引き続き御議論を頂ければと思っております。   一番冒頭の御議論に戻ってしまうのですけれども、システム提供者というものをもし入れることができれば、ここについては何らかのいい解決というのがあり得るとは思いますけれども、現状なかなかそうすることはどうかという方向かと思いますので、もしそうであるとするならば、今の中間試案で書いてある中で、どうしていくかということの御議論を引き続きしていただくということになろうかなと思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○池山委員 念のため申し上げますと、私も今の規約型の場合、規約における規律と差押え命令の規律とどちらが勝つかと言えば、命令に従わざるを得ないのではないかという部分については、少なくとも日本の国内法の問題としては全然異論があるわけではありません。問題は、その命令の範囲というのが分からないだろうというのは、多分前半の問題なのでしょうね。つまり、債務者として支配をする者が特定されているのだけれども、この人が支配をする者かどうか我々は知らないわけなので、かつ、それはやはり効力が生じた第三債務者への送達の段階でそうなっていなければいけないので、それが分からないということと、それから、勝つというのは飽くまでも国内だけの話であって、海外ではクレームされてしまうなと。だから、とにかく確かにある意味、政策判断という繰り返しになるのですけれども、やはり実務の本音としてはこんなことをやってほしくないわけですよね、それの一助となるような立法をやはりしてほしくないということに結局はなるのだと思います。されたときはされたときでそこで考えればいいと、そういう発想なのかなと私は思っています。   一方で、そういいながら、今、事務当局がおっしゃったのは、でも、実際、運送人は困るでしょうと、運送人が困るからこそ、それを少しでも解決する立法を考え考えてあげているのではないのというのも、それは非常にむしろ、これは前も申し上げたと思うのですけれども、一生懸命考えてくださっていることには大変感謝をしておりますが、結論的に、政策的にどちらが有り難いかというと、何もない方がかえって有り難いのかなというのが今の感覚というぐらいの問題です。だから、飽くまでそれは運送人側の要望でしかございませんから、確かに同じ実務の側としても、潜在的な所持人あるいは潜在的な差押え債権者の側の利害というのもあるでしょうし、法制的になくていいのかという議論もあるでしょうし、そこはまた別の次元の問題として御検討いただくということかなと思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。何も規定を置かないとどうしていいか分からないから、強制執行はされにくくなるでしょうけれども、それによって強制執行されにくくなるから解決できたというふうには、立法する側としてはいえないというところが、悩みの根本にあるような気はいたしますが、今の意見についてでも、あるいは別の論点についてでも、御意見がございますでしょうか。   よろしいでしょうか。もし後半部分についても特に意見がないようでしたら、本日の審議はこの辺りにさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。   それでは、次回の議事日程等について事務当局から御説明をお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。本日は様々な御議論を頂きましてありがとうございました。   次回の第11回部会は、令和5年7月12日水曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省地下1階の大会議室を予定しております。   8月以降の部会の日程につきましては、現在、法務省の内部で調整中でございます。決まり次第アナウンスしたいと存じますので、いましばらくお待ちいただければと存じます。   次回取り扱う内容につきましては、本日までの議論の状況を踏まえ、事務当局において検討をさせていただきたいと存じます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会の第10回会議を閉会させていただきます。   本日は熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。 −了−