法制審議会 家族法制部会 第28回会議 議事録 第1 日 時  令和5年6月20日(火)  自 午後1時30分                       至 午後4時57分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  家族法制の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けた検討(5) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会家族法制部会の第28回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中を御出席いただきまして、誠にありがとうございます。本日も前回までと同様、ウェブ会議の方法を併用した開催になりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。   それでは、本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局の方から、資料の内容も含めまして御説明をお願いいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。お手元の資料について御確認いただきたいと思います。本日の会議資料として、部会資料28、「家族法制の見直しに関する中間試案」に対して寄せられた意見の概要【令和5年6月時点の暫定版】をお配りしております。また、昨日、赤石委員から資料の提出がございましたので、こちらも配布しております。   本日は、前回の積み残しはございますけれども、まず便宜上、先に資料28の説明をさせていただきます。部会資料28を御覧ください。   部会資料28の第1では、部会資料25から27までに引き続いて、父母の離婚後の親権者に関する規律を取り上げております。5月16日の第26回会議と6月6日の前回の会議では、離婚後の父母双方を親権者とした場合の親権行使に関する規律のうち、その一方を監護者と定めた場合にどうなるのかといったことも御議論いただきました。その際に、この論点については、離婚後の父母双方を親権者とした場面だけではなく、父母の一方を親権者として、他方を監護者と定めた場合の規律と併せて議論することが有益であるとの御意見も頂戴しております。   そこで、部会資料28の第1の1では、父母の一方を親権者として、他方を監護者と定めた場合の規律について取り上げておりまして、ゴシックの1(1)では、現行民法において生じる一方を親権者、他方を監護者とする場合の解釈などを参考にした考え方を試みに提示しております。   ゴシックの1(2)では、監護者が定められた場面における親権者の身上監護について取り上げております。部会のこれまでの議論の中では、監護者が定められた場合であっても、親権者が一定の範囲で身上監護に関する権利義務を有するものと整理することを示唆する御意見も頂きました。そこで、親権者による身上監護と監護者による身上監護との関係をどのように整理すべきかという点について、先ほどの現行法の解釈も含めて御議論いただきたいと思います。   補足説明の4ページ以降では、子の居所指定に関する論点を記載しております。そして、補足説明の6ページ以降では、これまでの議論、考え方を踏まえて、離婚後の父母双方を親権者と定めた場合における親権行使の在り方についても触れております。本日の御議論では、これらの論点も含めて御議論いただきたいと思います。   ゴシックの第1の2と補足説明の7ページ以降では、認知の場合の親権に関する規律について記載しております。このほか、親権に関する論点について、これまでの部会資料に掲げました各論点以外に、この機会に御議論すべきことがありましたら、御意見を頂きたいと思います。   次に、部会資料の9ページ目からは、養子の論点を取り上げております。離婚後の父母双方が親権者となることができるようにした場合には、その後にいわゆる連れ子養子がされた場合などで、養親と実親のうち誰が親権を行うのかが問題となってまいります。部会資料28のゴシックの第2の1ではこの点も含めて、現行法の解釈を参考にした考え方を提示しております。その内容は、基本的に中間試案と同内容です。   また、ゴシックの2では、未成年者の利益を損なうような未成年養子縁組に対応するための規律の在り方について取り上げております。補足説明の16ページで、現行民法の規律の概要を紹介しておりまして、17ページ以降で、この場面での対応策としてあり得る考え方を試みに提示させていただいております。   一つ目は、未成年養子縁組の成立要件として家庭裁判所の許可を要求する考え方、二つ目は、いわゆる連れ子養子をする際に、親権を有する父母の双方が関与することで適切な判断を確保しようとする考え方、三つ目は、養子縁組後の対応策として、親権者を養親から実父母に変更することができるような仕組みを導入するという考え方です。いずれの考え方に対しても様々な御意見があろうかと思いますので、本日の会議で御議論いただきたいと思います。   なお、資料としては以上でございますけれども、いつものとおり、中間試案に対して寄せられた意見の概要についてもお配りしております。こちらは従前のとおり、御議論の際の参考としていただく趣旨で、頂いた御意見について現時点までに集計することができたものを暫定的に御紹介してございます。なお、前回会議と同様、本日もパブリックコメントに寄せられた意見をコピーしてつづったファイルを会議室に御用意しております。個人情報等のマスキング作業ができた範囲のもののみではございますが、委員、幹事の皆様が会議の前後や休憩時間等に御参照いただくように備え付けております。   今回もウェブ会議を併用していることから、御発言に当たっては冒頭でお名のりいただきますようお願いいたします。   事務当局からの説明は以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それで、本日の議題に入りたいと思いますが、大まかな進行について、まず申し上げます。全体を三つに区切って御議論を頂きたいと思っております。まず一つ目の区切りといたしまして、前回の積み残しになっておりますところの部会資料27のゴシックの2の裁判離婚の際の親権者の定めについて、引き続き御議論を頂きたいと思います。次に、直前に御説明がありましたけれども、二つ目の区切りといたしまして、部会資料28の第1の親権に関する残りの論点、親権と監護権の分属が生ずる場合の規律ですとか、認知の場合の規律などですが、これにつきまして御議論を頂く。そして、最後に三つ目に、部会資料28の第2の未成年養子縁組に関する論点について御議論を頂く。このような順序で進めさせていただきたいと思っております。本日も限られた会議時間の中で様々な論点について御議論を頂きたいと思いますので、進行に御協力を頂きますようお願いを申し上げます。   それでは、今申し上げましたように、部会資料27の積み残し部分について、更に御意見を頂戴したいと思います。前回会議の最後に池田委員、佐野幹事、青竹幹事、赤石委員、水野委員から手が挙がっていたと認識をしております。まず、これらの方々に御発言を頂きまして、更にほかの方々の御意見があれば頂戴するということにさせていただきたいと思います。 ○池田委員 弁護士の池田でございます。裁判離婚における判断枠組みの点に関して意見を申し上げます。   裁判離婚において、父母の合意がなくても双方を親権者に指定できるかという点については、日弁連では両論あるところです。具体的ケースを少し考えてみますと、例えば、双方が親権を激しく争っているところ、同居親が主たる監護者で、こどもも同居親と暮らしたいと強固に望んでいるというような場合には現行法では同居親を単独親権者にすることが多いと思われます。しかし、実はその同居親とこどもとの関係性が必ずしも良好でないとか、あるいは同居親の養育にやや不安があるために、別居親の関与もあった方が子の福祉にかなうと予想されるようなケースもないではないと思います。そのような場合、現行法では同居親を単独親権者として、別居親の面会交流をできるだけ充実させるというような方策が考えられますが、仮にそこに共同親権という選択肢が入ってきますと、こどもの福祉という観点から、より充実した検討が可能となるように思います。   そして、仮に裁判所が共同親権が望ましいと考えたとしますと、通常は裁判所は父母に合意を促して、合意を調書に取って、そのような判断をするというような運用になるようにも思われますので、合意がないと父母双方を親権者にできないという制度にしたとしても一定程度はカバーできるのかとは思います。ただ、裁判所の決定には従うけれども合意はどうしてもしたくないというようなケースも想定されるところですので、合意ありきとした場合には、そのようなケースにどう対応するかという問題がどうしても生じそうな懸念もあります。他方で、父母の最低限の信頼関係ともいえる共同親権の合意というものもないのに、それを選択しても、実際上ワークしないというだけでなく、こどもが引き続き父母間の葛藤に巻き込まれ続けるという不利益を受けることも懸念されるところです。   そういった両方の側面を考えますと、仮に共同親権者にする上で合意を必須としない場合には、こどもの利益の観点から共同親権とする必要性が高い場合に限るなどの積極的要件を設定することが適当ではないかと考えています。 ○大村部会長 ありがとうございました。池田委員からは、両様の考え方があるだろうということで、合意が必要であるということであれば、一定程度の問題は解決されるとしても、裁判所の決定があることによって、これに従おうという父母も一方でいるであろう、他方で、合意なしでは制度はうまく動かないということもあるので、二つの面を考慮しつつ、御意見としては、合意を必要としないということであれば、一定の要件を掛けていくことが望ましいというお考えだと承りました。ありがとうございます。 ○佐野幹事 幹事の佐野です。裁判上の離婚のところについて意見を述べさせていただきます。   まず、(1)については、裁判離婚の場合は裁判所が判断するということは、そうなるのだろうと思います。   また、(2)のところ、親権者の間で合意がある場合ですけれども、確かに双方の合意というのは判断のかなり大きなウエートを占めるということはいえるのだと思いますけれども、やはりそれに加えて子の福祉とかこどもの意向への配慮は当然必要になってくるので、その合意のままに決定するという趣旨であれば、それには賛同できないと思っております。   特に、こどもの福祉の現場に上がってくる事案では、DVや虐待がある案件で、なかなか監護している親の方が依存体質というところから抜け切れず、本来であればこどもの保護の観点からは必要である非監護親との完全な分離というのがなかなか決断できないという案件もあり、結果、そのこどもの方がむしろ思い切って児童相談所やシェルターに逃げてくるような事案もあるわけなのです。そのようなこどもにとって分離が望ましい事情、例えば支援機関からの情報で家裁が把握したような場合には、場合によっては双方が合意していると言ったとしても、単独の方がいいのという判断をせざるを得ないという事案もあるのではないかと思います。ですので、合意があるからといって、それがそのまま判断に反映されるということであれば、賛同できないという意見になります。   また、(3)について、これは池田先生と同じ考えになりますけれども、合意がない場合で共同親権という判断をした場合には葛藤が継続されることが予想されるので、基本的には消極ということになるかと思いますけれども、他方で、共同親権にしておかないとこどもの生命身体の安全に懸念が出てくるような場合、例えば、精神的な疾患を持っている親が監護親で、他方の親が定期的に通っているから一応こどもの生存が図られているというような事案では、やはり共同親権にしておいた方がいいという判断もあり得るのかと思います。そういった点では、一律排除するということではなくて、合意がなくても認められる場合はあるとすべきであろうと思います。   ただ、合意がない場合で共同親権を判断する場合には、その監護の方法を当事者間で合意できない場合もあり得るのではないかと思います。その場合は職権で監護者を指定できるというような規定が別途必要になってくるのかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。佐野幹事からは、裁判所が判断するに当たって、子の福祉ということを重視する必要があるという観点から、一方で合意があるとしても、それだけで決められない場合があるだろう、他方合意がないとしても、子の福祉の観点から望ましいという場合もあるだろうという御指摘を頂きました。また、合意がないときについて、監護の方法などについて裁判所が一定の仕方で決められるという対応策を講じておく必要があるという御指摘も頂きました。ありがとうございます。 ○青竹幹事 既に複数の委員、幹事の皆様に御指摘いただいているように、裁判所がこどもの福祉の観点から、当事者の合意がなかった場合であっても、単独親権又は共同親権を決定することができるとする仕組みが親権者の決定に関するこれまでの原則から見て、妥当ではないかと考えております。   父母間で単独親権とする合意がないとき、特に、一方が単独親権に反対している場合にも、家庭裁判所が単独親権の決定をしたり、逆に、父母間で共同親権とすることに合意がないとき、特に、一方が共同親権に反対しているという場合にも、家庭裁判所が共同親権の決定をしたりということも妨げられないというのが在るべき仕組みではないかと考えております。   現在の制度でも、例えば親権者変更というのは、当事者の合意がないとしても、家庭裁判所は子の利益のために必要と認めるときは、子や子の親族等の請求によって親権者を変更できるようになっています。また、親権喪失や停止ももちろん、当事者の合意がないとしても、子の福祉のために家庭裁判所が判断するようになっています。親権者に関する家庭裁判所の判断については、やはり子の福祉が絶対に重要とされていて、その限りでは親の合意がないところでの判断もやむを得ないということが前提とされているように思います。ですので、この度の法改正において、単独親権か共同親権かの判断についてだけ、親の合意がないところで家裁の判断は絶対に許されないという仕組みを採用するとすれば、これまでとられてきた親権者の定めについての原則に合わないように思っております。   これに対して、父母の合意がある場合には、裁判所は父母の合意を下に判断をするのが原則になると思いますので、この部会資料27の案、2(2)に賛成します。 ○大村部会長 ありがとうございます。青竹幹事からは、部会資料2(2)の方向に賛成という御意見を頂きましたけれども、御指摘の中にあったこととして、子の福祉の観点から判断するというのがこれまでの考え方であろうから、それに従って考えると、合意がないから裁判所が決定はできないということにはならないであろうという御指摘と、しかしながら、合意がある場合には合意に従うというのが原則になるだろうという御指摘を頂きました。 ○大村部会長 赤石委員、どうぞ。 ○赤石委員 赤石です。少し後での発言にさせてください。 ○大村部会長 そうですか、分かりました。 ○水野委員 委員の水野でございます。この法制審議会という場であれば、離婚後共同親権を導入するときに必要なことも同時に提案できると考えて、私は導入に賛成いたしました。その必要なことというのは、例えば父母の合意のみを要件とするかどうかというような、離婚後共同親権の採用の条件闘争ではないと思います。要するに、DV被害者やこどもを守るという実質的な、かつ根本的なことです。   現状の単独親権制度の下でも、その必要な保護の条件は満たされていません。当事者のヒアリングでもありましたように、DV加害者にこどもを奪われて、なすすべがない被害者というのもおられます。もちろん本当に緊急の場面では、警察や児童相談所の介入によって安全が確保されなくてはなりませんし、共同親権であっても緊急の場合には片方の親の判断だけで逃げることができなくてはなりません。   でも、そこまで緊急ではなくても、支援にたやすくアクセスできる必要があります。前回の会議で落合委員が、法廷闘争になったときに相談できる支援が必要だと言われました。私も、こどものいる家族の紛争については、例えば、法テラスに国費を投入して、更に使いやすくする支援も必要だろうと思います。要するに、こういう支援はお金と人手が掛かります。それが日本では非常に不足しています。この会議には内閣府やこども家庭庁の方なども加わっておられます。それこそオールジャパンで異次元の支援を構築しないといけないと思います。民事法制を議論する場という限界があるかもしれませんが、法制審議会であっても、その実質的な保護の構築を議論して提案することは可能だと思います。その支援がないところでは、親権の帰属について幾ら議論しても、いずれにせよ現実の悲惨を救う答えは出せないだろうと思います。離婚後共同親権に踏み切ることで、これだけ関心と危惧が集まっているのですから、離婚後はもちろん婚姻中も含めて、必要な保護の構築に大きく踏み出せるのではないでしょうか。それを期待しております。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。御趣旨は、括弧付きの共同親権に踏み出した上で、今おっしゃったようなDV被害者やこどもの保護のためのサポート制度を充実させていく必要があるということだと承ってよろしいでしょうか。 ○水野委員 はい、そうです。 ○大村部会長 ありがとうございます。   戻って、赤石委員、よろしいですか、もっと後がいいですか。 ○赤石委員 一応発言させてください。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。今、池田委員や佐野幹事の御発言を聞きながら、私としては、この裁判上の離婚で、例えば、13ページの下の段から2段目で、父母の一方が反対している場面で父母双方を親権者とすることが子の利益にとって最良の選択肢となる場合があるといった場合が、私には少し想定できなかったので、ここを御質問しようと思っておりました。佐野幹事から一つの例が示されたかと思います。   とはいえ、これを親権のありどころで解決するべきものなのか、あるいは児童福祉分野で介入する、サポートをすることによって解決すべきものなのかというのは、やはり議論があるのだろうと思っておりまして、私どもは今、親権の在り方について議論しているから、そういう場合があり得るということを想定すべきだという議論が出てくるのも分からなくはないのですが、そもそも親がなかなかいろいろな形でサポートが必要な方たちがいる場合に、それを親権のありどころだけで議論するというのが、どうも議論としては、私が今、支援の現場にいるところでは、少し何か違和感は感じております。ということを申し上げた上で、ほかにもこういう実態があるのだということがあれば、是非提案側でお聞きしたいと思ったところです。   あと、やはり私どもが支援の現場にいて思うこととしましては、この間も言ったので、あれなのですけれども、やはり合意がない場合に裁判所の判断で決めていくということが、非合意の、ある程度、御本人にとっては納得のいかない決定が出た場合には強制的になることもある、このときに、やはりDVや虐待事案を裁判所がきちんと見抜いて判断できるだけのものを持っていらっしゃるのか、あるいはこれからそれを強化するのか、そういったところで、よりDVや虐待事案を見る目が厳しくなければならなくなるということなのかなと思っております。   この間、この三巡目の議論について、DVや虐待事案をどの局面でどう配慮するという議論が全くなされていないように思っておりまして、個々に発言があったということでございます。それが、どこかでやはりきちんと表にするですとか、どなたか先生がおっしゃっていたかと思いますけれども、こういう場合にはこういう配慮が必要であるということがきちんと位置付けられないと、私ども支援者側としては、今でも見逃されている、特に精神的虐待ですとかそういった場合には見逃されがちであり、私どもが出した1,142人の方のアンケート調査でも非常に、調査官調査でも、よい調査もあったが、全くDVについては聞き届けられなかった、結論に反映されなかったというようなことがあった場合に、同じことがここで起こる可能性を否定できないと思うと、やはり支援者側としてはここをシャットダウンしておきたいというふうになってしまうわけで、ここについての担保がないと、この先に議論がなかなかできないと思っているところなので、是非どこかでこういったことがきちんと担保されるのだという保証をしていただいた上で議論しないと、議論が進められないと思っております。   激しい身体的な暴力にさらされ続けたお子さんの立場からのヒアリングもありましたけれども、やはり父母の葛藤の場に置かれ続けることが子にとっての負担になり、子の不利益になるということははっきり、そういう実例であったかと思います。離婚後も父親の声がずっと聞こえ続ける幻聴ですよね、そういった中で学校を遅刻せざるを得なかったということを言っておられたかとも思います。そういう状況が続いたけれども、生活が安定した後に、やはりこどもがレジリエンス力を発揮し、元気になっていったときに、お父さんとの交流も自分の意思で選択することができたというようなことが語られていたかと思います。葛藤が高い場合に、やはり子の利益にはならないということを念頭に置きたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員から幾つか御意見を頂きましたけれども、一つ目は、佐野幹事が挙げられた事例についてのコメントということだったかと思います。親権のところで受けるということも考えられるだろうけれども、他の方策で対応するということも考えるべきではないかという御意見だったかと思います。それからもう一つ、DV、虐待事案への危惧をお示しになって、これに対する対応策が講じられないと、この問題を考えることはできないという御意見。3番目は、趣旨が十分に酌み取れなかったのですけれども、赤石委員が以前からおっしゃっておられる、葛藤が高いときに判断をするというのではなくて、後で一定程度まで落ち着いた段階になってから再度検討するといったことも考えた方がいいのではないか。そういう趣旨の御発言だったでしょうか。 ○赤石委員 それはこどもの意思に任せるべきであり、法的な効果を何か予定した発言ではありません。 ○大村部会長 分かりました、そういう御発言として伺ったということにさせていただきます。   赤石委員までのところで、前回挙手を頂いていた方については御発言いただいたかと思いますけれども、そのほか御発言があれば頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○原田委員 委員の原田です。前回、私は裁判離婚のことについて発言しましたが、簡単だったので、もう1回発言させていただきたいと思います。特に(3)ですね、確かに今、親権の在り方について裁判所が単独親権の場合、どちらを親権者にするかということを裁判所が決めているという制度にはなっていますが、単独親権でどちらが親権者かという争いについての判断と、それから、共同でする場合の合意がない場合というのは、少し場面が違うのではないかと思います。離婚後の親権について共同親権を導入するという議論のときに言われたことは、家族の在り方に関する当事者の意思を尊重するということがあっていいのではないかと、ここはかなりの先生方が強調されたと思います。それからもう一つは、子の福祉ということでした。   そういう意味では、家族の在り方に関する当事者の合意について、共同親権という合意がないというときに、これを入れる必要があるのかという問題と、それから子の福祉の観点では、確かにほかの弁護士委員が言われたように、メリットがある場合が全くないとはいえないけれども、挙げられた事例では、どちらも単独の場合の、どちらを単独親権者とした方がいいのかという判断で解決することや、親子交流を強調するというような形での解決もあり得るわけで、紛争の長期化が予想されるし、そこに子が巻き込まれる可能性があるということを十分に配慮しなければいけないので、子の福祉の観点から考えて、当事者の合意がないのに共同親権を導入した方がいいと判断できるのかという点では、非常に疑問に思います。さらに、赤石さんの発言の続きかもしれませんが、紛争が沈静化した後に、それこそ親権者変更という制度が考えられるわけですから、そこでまた考えてもいいと思います。   また、これまで親権者について、当事者の合意がなくても裁判所が決める、あるいは親権者変更もできるというような御発言もありましたけれども、親権者変更の場合、確かに合意がなくても裁判所が決めるわけですけれども、これは一方が親権者を変更して自分が親権者になりたいという、受皿がきちんとあるわけです。ところが、この共同親権の合意がない場合の受皿というのは共同の基礎がない、こどもが紛争に巻き込まれる危険が非常に高くなるという点では、全く場面が違うのではないかと思います。   そういう意味で、3の場合、ただ、条文の在り方として、親権について協議が調わない場合に裁判所が決めるという現在のやり方をすると、共同親権の場合は入れないという入れ方にはならないように思うので、そこは条文上どうなるのかというのはありますけれども、共同親権について合意がない場合に裁判所がそれを認めるというのは、認めない方がいいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。原田委員からは、合意がない場合については認めない方がいいという御意見を頂きました。これまでに出ている御意見との関係で頂いた指摘で2点、興味深い点があったかと思います。一つは、単独親権でどちらを親権者にするのかということと、共同親権を選択するということでは、前提に異なるところがあるのではないかという御指摘が、変更の場合も含めてなされていたかと思います。それからもう一つ、池田委員や佐野幹事が挙げられたような事例について、共同にして対応するというのではなくて、単独にして対応するという選択肢もあるのではないかといった御指摘を頂いたと思っております。条文の書き方に関する問題がありましたが、それは別途、どこかで必要に応じて、と思います。 ○大山委員 大山でございます。裁判離婚上の親権者の定めにつきまして、今回、新たに共同親権を制度として導入するということになるのであれば、裁判離婚においても、理論上は裁判所が共同親権が望ましいと判断する可能性があることについて否定はしていないのですけれども、一方で、実際に現実の場面を考えますと、ただでさえ協議が調わず、調停に行き、そして裁判に持ち込まれるケースになるので、父母間の関係は、より複雑に、いろいろな葛藤も含めて、おありになるのだと思います。そういった中で、やはり父母間での合意というものは非常に重要な要素になると思います。その上で、合意がない場合について、先ほど来、御指摘いただいておりますけれども、DVや虐待、ネグレクトといったケースも含めて、裁判所がきちんと慎重に判断していく必要があると感じております。   それに関連して、裁判所の判断基準に関連して申し上げると、今回、民法の大改正を行う中で、協議離婚も含めて、単独親権と共同親権の選択について、実際にはどちらを原則とするのか、それとも並列にするのかなど、どう法律上位置付けていくのかによっても、裁判所が判断する上で大きく関わってくると感じております。要は、原則を単独にしたまま共同親権を入れるのか、それとも並列で入れるのか、共同親権を原則にするのかといったところの濃淡というところが、やはり裁判所の判断に関わってくるかなと思っているという問題意識をお伝えさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。大山委員からは大きく2点、頂いたかと思います。理論上、裁判所が決めるというところはそうなのだろうけれども、実際上の問題として考えたときに、合意があればそれを重視する、そうでないときには慎重な判断が必要になるだろうということだったかと思います。そして、その判断について、判断基準をどうするのかという点が重要であるけれども、それについては基本的な考え方として何をベースにしているのかということと連動して考えることになるだろうという御指摘だったかと思います。 ○大石委員 委員の大石です。ありがとうございます。前回は体調を崩してお休みさせていただいたので、この場で申し上げたいと思います。3点あります。   まず一つ目は、赤石委員がおっしゃっていたことですが、DVや虐待対応を全体としてどう考えるのかということについて、考える場を設けていただけると有り難いということです。それぞれの検討事項について判断するにしても、現状を踏まえて、どの程度今後、裁判所でDVや虐待事案に対応できるのかといったところが見通せませんと、やはりはっきりした意見を表明しにくいです。何らかの判断をしたことによって、例えば失われる命があったりすると非常に問題なわけでありまして、そういう責任も考えると、是非DVと虐待対応について考える場を設けていただきたいというのが一つです。   それから、二つ目としましては、今の裁判離婚に関してなのですけれども、裁判所が判断をするときに、非対称性があるのではないかということです。例えば単独親権の決定をする場合、親権者とならない方の親について、その人の親権を否定するに足るだけの材料を裁判所が集められるのかといったところが問題になるかと思います。一方、共同親権という判断を裁判所がする場合には、それが望ましいという必要性を主張できる材料を集めればよいということになります。裁判所にとっては、片方の親権を否定する材料を集め尽くす方が難しいのではないかという気がしていて、そうしますと、裁判所はデフォルトで共同親権の判断をしがちになるということも考えられます。それの是非はまた別の話ですが、ひとまずここでは、そういったことも考える必要があるのではないかと思います。   それから、3点目は、先ほど佐野幹事がおっしゃっていたことで、監護についても合意できないかもしれないというところで、職権で監護者を決めることができるようなシステムを作った方がよいのではないかということですが、私もそれに賛同いたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。大石委員から3点御指摘を頂きました。1点目はDV、虐待対応ということで、これまでにも出ているところですけれども、どこかでまとめて議論をする機会が欲しいという御要望でした。2点目、先ほどの原田委員と少し重なるようで、違うところもあったかもしれませんけれども、単独という判断をするのと共同という判断をするのと、判断の構造あるいは前提が同じではないと思われるが、そのことをどのように考えるのかという御指摘を頂いたかと思います。3点目は、佐野幹事もおっしゃっていたことですけれども、監護について裁判所の方で決めていくということができる方がよいのではないかという御指摘を頂きました。 ○戒能委員 ありがとうございます。委員の戒能です。一つは、真摯な合意について実はまだ十分に議論されていないという感触を持っております。それで、その中身というよりも、これはもう既に御発言があったところですが、単に合意があるというだけではもちろん駄目であって、真摯な合意があるかという判断基準が、裁判所が判断するにせよ、きちんと明確に示されているべきだというのが一つ目の意見です。   それで、これは適格性とかコミュニケーション能力とか、それから、これが一番難しいところでありますが、共通の子育てに関する価値観とか、そういうことがいわれておりますが、その中に、単に脅迫や欺罔があったかどうか、それは事務局の補足説明にある文言でありますが、それだけではなくて、暴力、DV、児童虐待の問題、それだけにとどまらないわけです。暴力がなくても、こどもに無関心であるとか、家庭破壊とか、それから浪費とか、いろいろな点があると思います。そういうことがこどもに悪影響を与えるということで、そういう親が共同親権をやりたいと言っても、それは適格性がないだろうとか、そういう判断の基準を明確に示す、検討するということも、この部会としては非常に重要なのではないかと思っております。   それで、2番目なのですが、子の利益あるいは子の福祉というのが判断の、どういう場面でも、事前でも、それから途中の変更の場合でも、出てくると思うわけですが、その基準についても実は考え方がここでは必ずしも十分に審議されているわけではない。そこで出てくるのが、チャイルドアビューズやDVからこどもを守るということが重要であるという考え方をこの部会が明確に示すことができるかどうかということが、これは赤石委員とか大石委員の発言にもつながることだと思っています。   ですから、そこが現状では、今後の期待としてはこども家庭庁とか、期待はしたいとは思うのですが、例えば、今国会でDV法の改正が行われましたが、そこで、必ずしも被害者支援の体制が世界的に見ても極めて脆弱であるという状況は前進できなかったわけです。そういう現状で共同親権を制度化していいものかどうかというのは、私は大変、逆に危惧をしております。もちろんそういう方向に進むということは大事なことなのですけれども、まずそういう現状からきちんと見ていく必要があると思います。   それから、子の福祉の問題も、これはもう既に前に養育費との関連で、家族法という基本法の議論だから、限定されているのは承知の上ですけれども、やはり社会保障、社会福祉の分野との協働というのでしょうか、そういう議論が同時にないと、多くの人が持っている危惧を解消するということにはならないのではないか、そういうふうに考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員からは、非常に幅の広い御意見を頂きましたけれども、今、裁判上の離婚の際の親権者の定めということについて御意見を伺っていますが、御指摘があった合意の存在をどのように考えるのか、あるいは子の利益というものの中身をどう考えるのかということは、裁判上の離婚の際の親権者の定めについても問題になりますので、そこについて問題提起を頂いている、そして、それについて議論すると、派生してほかのところにも及ぶことがあるだろうという形で受け止めさせていただきたいと思います。合意や子の利益について、もっと立ち入った形で考えていく必要があるのではないかという御指摘を頂き、先ほどから出ている支援の問題についても、ここだけでない部分も含めて考える必要があるのではないかという御指摘を頂きました。   それで、ほかには御発言はいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、裁判離婚について一通り御意見を頂いたと思います。父母双方を親権者とするか、一方を親権者とするかということについて父母の間で合意がされたという場合、この場合について裁判所はそのことを踏まえて判断するという考え方については、多くの委員、幹事からおおむね賛成の方向の御意見を頂戴したように思います。もちろん合意があるとしても子の利益の観点から見て望ましくない場合もあるという御指摘もありましたけれども、その御指摘も前提としては、合意がある場合にはそれを尊重するということを踏まえておられたのだろうと思いますので、以上のように受け止めさせていただきたいと思います。   合意がなされていない場合については、様々な御意見を頂戴いたしました。子の利益というものを前提にして、これに照らして判断をするという点については、おおむね御異論はなかったのだろうと思いますけれども、直前の戒能委員の御発言にもありましたが、子の利益というものについてどう捉えるのかということにつきましては、様々な御意見を頂いたと理解をしております。   差し当たり以上のように受け止めさせていただいて、先に進ませていただきたいと思います。   それで、次が部会資料28ということになります。先ほど申し上げましたように、「第1 父母の離婚後等の親権者に関する規律の見直し」と、「第2 未成年者を養子とする普通養子縁組に関する規律の見直し」、この二つは分けて御意見を頂戴したいと思っております。   まず、ゴシックの第1の方について御意見を頂戴したいと思いますけれども、監護者が定められる場面といたしまして、今回の資料のゴシックの第1の1にありますように、父母の一方を親権者とし、他方を監護者とするという場合があるわけですが、他方、父母の双方を親権者とし、その一方を監護者とするという場合、これは以前に議論したところですが、そういう場合もあります。皆さんの中には、このどちらか、あるいは双方について御発言されたいという方がいらっしゃると思いますけれども、どちらについての御発言であるかということを可能な限りで明示していただけますと、議論が整理されるのではないかと思います。ということで、ゴシックの第1の部分につきまして、御意見があれば頂きたいと思います。どなたからでも結構ですので、お願いをいたします。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。部会資料28、第1に関してということで、発言をさせていただきます。私がイメージしているのは今、部会長がおっしゃった、親権と監護者の分属のケースを想定しております。改めて考えてみたのですが、親権者と監護者が分属するケース、大きくは、父母の一方が身上監護は他方親に任せる、こういうケースであるとか、あともう1点、他方親が財産管理が非常に苦手だ、多分こういうところが中心になってくるかなという想定の下、発言をさせていただきたいと思います。   部会資料28の4ページに注が2点あります。(注5)と(注6)、(注5)が我妻先生、(注6)は常岡先生、個人的には(注5)側ではなくて(注6)の常岡先生の学説に賛同するものでございます。具体的には、部会資料3ページに記載があります、例えば親子交流の場面などを念頭に置けば、監護者でない親権者が子の身の回りの世話をすることも想定され得る、少なくともこのような場面に対応するため、親権者が日常的な行為や緊急の行為など一定の範囲での身上監護に関する権利義務を有するものと解すべき、3ページの後段に書いてあります、監護者でない親権者は監護者による身上監護を妨げない限度で子の身上監護を行うという考え方を基本として、まとめていただくことがよいと思っております。   続きまして、部会資料4ページ、2の居所指定に関してです。これも、5ページ記載の(注2)の考え方ですかね、本文の(3)にございます、他方の考え方の方に記載がされております。他方の考え方、監護者の指定がされた場合であっても、居所指定権が親権者に留保されるべきであるとの考え方、こちらに賛同するものでございます。   先ほどの裁判離婚のケースでも出ておりましたが、当然、DVや児童虐待は例外とする、そもそもDVや虐待案件での親権の共同行使や、今回テーマになっております親権、監護権分属を指向しているわけではないということをお伝えさせていただきたいと思います。   あと、この考え方といたしましては、先ほど、父母の一方を親権者と定めた場合の親権行使の在り方でも述べさせていただきましたが、監護者でない親権者は監護者による身上監護を妨げない、これと同様に、監護者である親権者は監護者でない親権者の親権行使を妨げない、このように定義付けることが合理的なのではなかろうかと、こんなふうに考えております。   このような考え方を採用することにより、親権行使のところでも述べました、親権者相互の、我々は相互不可侵という呼び方をしておりますが、こういう考え方を規律化することと同様に、親権、監護権分属の場合も、無用な葛藤を生まない効果が期待できるのではなかろうかと、こんなふうに考えております。   認知もこのタイミングで続けた方がいいですか。 ○大村部会長 そうですね、どうぞ。 ○武田委員 認知も簡単にお話をさせていただきます。認知の場合です。認知後の父母双方が親権者となること、これを要望する声、これが多いか少ないかは別にしまして、一定数存在することは明らかかと思います。パブコメでも示されているところかと思います。   あと、事実婚で国賠を提起している当事者も実態としております。このような前提に立てば、離婚後の父母双方が親権を持つことと同様、一律に父母の一方のみを親権者と定めなければならない現行法、これに関しては硬直的だと感じざるを得ません。民法819条、認知の場合も見直すことが相当ではないかと、このように考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員の御発言の順序と少し違うかもしれませんけれども、まず一つ、親権者の身上監護については一定の限度で関与が認められるべきであると、その一定の限度でというのは、監護者の監護を妨げないという限度でだという御意見がありました。それとの関係で、双方の親は、親権者にせよ監護者にせよ、他方の権限の行使を妨げないということを明らかにした方がよいのではないかということをおっしゃっていたかと思いますので、これはセットとしてまとめさせていただきます。それ以外には、居所指定権について、親権者に帰属させるべきだという御意見と、認知については、一律にその一方を親権者であるとする現行の規律は硬直的なので改める方がよいという御意見だったかと思います。 ○武田委員 おっしゃるとおりです。 ○大村部会長 ほかにはいかがでございましょうか。 ○石綿幹事 幹事の石綿でございますと、まず、第1の1についてなのですが、離婚後の親権者と監護者が分属する場合について、現状では学説等で1(1)のように考えられているというところもあるかと思いますが、資料で(注6)の常岡先生の文献等も紹介していただいておりますが、(2)のような考え方もあるかと思います。その考え方が児童福祉法の考え方とも共通する点があり、一定の検討の余地があるのではないかと思いますので、少し意見を述べさせていただきたいと思います。   1(2)の方向で考えていく際に、児童福祉法の33条の2や47条という条文の構造が参考になるのではないかと思います。一時保護中、あるいは施設入所をしている際に、保護される子に親権者がいたとしても、実際に子を保護し監護をしている方たち、施設の長、児童相談所長といった方たちがこどもの監護を実質的に担うわけですから、その方々に何らかの権限が必要だということで、条文上、児童相談所長等が監護、教育に関し必要な措置をとることができるとされています。したがいまして、ここでの児童相談所長の立場というのは、今回の資料でいいますと、親権はないけれども監護権を有している者と一定程度類似するものなのだと整理することができるかと思います。他方、本親権者の方は依然、親権は残っているという状況であり、その際の親権者が何ができるかということについて、児童福祉法の33条の2の第3項や47条の4項では、親権者は相手の措置を不当に妨げてはならないという規定が設けられております。したがいまして、正に第1の1(2)の場合であるように、監護権はないけれども親権を有している親というのは、監護者の親権行使を不当に妨げてはならないというような規定になっているということになります。   児童福祉法のコンメンタール等を見ますと、このような規定が定められている背景には、親権者や、監護をする人が何をできるのかという権限を具体的に明らかにするということを制度化するということも考えられたけれども、具体的な事項を列挙して明示するということは難しいというようなこともあったので、包括的にまず一定の権限を与えて、その後、監護をする人と親権者側の権利行使の優劣のような形を決めるということでルールを作ったといったような説明がされています。   そういたしますと、正に、まずはこの第1の1で問題になっているような、離婚後の親権者と監護者が分属するような場合というのも、それぞれがどのような権限を持っているかという権限の範囲を決めていくという形ではなく、権限の行使の在り方の優劣というか、どちらがまずメインなのかというようなことを決めるという形で議論をするということというのは、一定の考える方向性として意義はあるのだろうと思います。そのような考え方は、親権者と監護者の分属のみならず、双方を親権者とした上で監護者を定めた場合の議論にも参考にし得るということになるのかなと思います。   このように考えることの理論的な意味といたしましては、第1の1(1)のように考えていく場合、親権を有している親が面会交流をしている際に、一体どういう権限で、例えばこどもに食事を与えているかということが、自分の身上監護が残っているのか、あるいは相手方の監護権が委託されているのかというところを考えていくということが必要になっていくかと思いますし、あるいは、親権を持っている人が、なぜ監護者指定があっただけで監護権を行使できないのかというところも論理的に説明していかなくてはいけないということを考えると、第1の1(2)だけではなく、(2)で資料の(注6)を付けた形で、常岡先生の文献を紹介されながら紹介されている考え方というのは、理論面でも検討に値すると思いますし、繰り返しになりますが、現行ある他の法令との関係でも十分に説得的な見解なのではないかと思う次第です。   長くなってしまいましたが、第1の1については以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事から、結論としては先ほどの武田委員と共通の方向に向かう御意見を頂いたかと思いますけれども、親権と監護の関係については、その議論の仕方として、児童福祉法に採用されている考え方が参照に値するのではないかということで、条文上の仕組みについて御紹介を頂くとともに、そのような規律がなぜされているのかという点についての御指摘もあったかと思います。項目ごとに切り分けるというのではない形での整理がむしろ望ましいのではないかという御意見として伺いました。どうもありがとうございました。 ○原田委員 委員の原田です。この問題は、今までの整理の仕方をいろいろ考えて、実は考えれば考えるほど私の中でも混乱しているというのが正直なところです。ただ、私は3ページの(注2)に書いてある東京高裁の考え方は、この中では御異論があるということではありましたが、実務上ではかなり定着しているのではないかと思いますし、これを基本に考えるべきではないかと思います。   というのは、実務上、親権と監護権の分属があるのだけれども、実際、裁判所では親権と監護権の分属は推奨してこなかったし、私どもも問題の解決に当たって、これが分属されると非常にこどもの監護に支障が出ることがあるということで、どちらかを親権者に定めるということを勧めてきたと思います。仮に分属した場合も、この東京高裁のように監護権の範囲を広く捉えて、実際の監護に支障がないように考えてきたと思います。また、今日、後で議論があります養子縁組の場合も、養親の配偶者に親権が法律上ないとしても、共同で監護しているということを重視して、共同して親権を行使するというのが解釈上行われてきたと説明をされています。   こういう考え方を採ってきたのは、実際に養育している人が親権を行使することによって監護養育の責任を果たすのに支障のないようにすべきという判断が働いていると思いますし、それが大枠として子の福祉に合致しているという判断に基づいているものではないかと考えます。これを変える必要はないのではないかと思っています。そういう意味では、親権と監護権が分属した場合は、この東京高裁のような考え方を採るし、共同親権の場合で監護者を定めた場合にも、これと同じような、特に、共同親権で監護者を定めた場合の監護者というのは親権者でもあるわけですから、こういう考え方でいいのではないかと思います。   このとき問題になるのは、身上監護と財産管理の中で、日常行為と重要な行為について、共同親権の場合どうかというふうに整理するかだと思います。分属された場合に、財産管理について日常的な行為は監護者が行えるとした方が支障がないのではないかと思いますが、これについては日常的な財産管理には何があるのかということについて御異論があるということは伺っておりますので、確定的な意見ではないのですけれども、このくらいまで認めるべきではないかと考えています。   親権者に身上監護の日常的な行為を残す、それは、例えば面会交流中の監護ということが例に挙げられていますが、では面会交流中でない場合の日常監護はどうなのかということまで、そこまで広がっていくのかということを考えますと、面会交流中の監護というのは、面会交流が認められることによって当然に、そこで監護の責任を果たさなければいけないということで認められているものと考えれば、それ以外のところでの日常監護について親権者が行うというところまで広げる必要はないのではないか、少しこれはまだ留保付きですけれども、考えております。   そういう意味では、この分属した場合の分け方が共同親権の場合の分け方に連動してくるので、その整理が非常に難しいと思うことと、では共同親権で監護者指定がない場合にどう考えるかということが、もう一つ残る問題ではないかと思います。それで、共同親権の場合でも監護者を決める、あるいは同居して主に監護する人を決めるということが必要になるのではないかと思います。今のような監護者と親権者の分属を考えた場合、共同親権の場合に監護者を指定しなくてもいいのではないかという御意見もありましたけれども、このような整理の仕方を考えると、少なくとも同居する人あるいは主に監護する人というのは決めなければ、なかなか整理が付かないのではないかと思いました。 ○大村部会長 原田委員からいろいろ御指摘いただきました。まず、養子についての親権の行使の話を引き合いに出されましたが、それは議論の論拠として出されたのは分かりましたけれども、それ自体については後でまた御議論を頂くということにして、おっしゃったことの本体は、東京高裁が今とっている考え方を基本的には変える必要がないのではないかという御意見だったかと思います。ただ、財産管理については、それと違うお考えをおっしゃったように思いますけれども、そこは変えるべきだという御主張をされているように伺いました。その上で、他の委員や幹事がおっしゃっているような親権者による身上監護の必要性が、面会交流の場面に限られるのであれば、その場面で処理すればいいということをおっしゃっていたかと思います。それから、監護について原田委員のように考えていくとすると、共同親権の場合についても監護者を定めて、その権限を明確にしておくということが望ましいという方向の議論になるのではないか。そういうことだったでしょうか。 ○原田委員 はい。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○窪田委員 委員の窪田でございます。まだ十分に考えがまとまっていないのですが、幾つか確認をしたい点もありますし、発言させていただきたいと思います。   私自身は、第1の1(2)のような考え方というのは十分にあり得ると思っております。これは原田先生に対する質問ということにもなるのかもしれませんが、(注2)の東京高裁の決定のようなものでよろしいのではないか、分属でということだったのですが、この東京高裁の判断というのは、監護に関しては身上監護権を監護者が分掌し、そして財産管理権については親権者に留保されて、監護者にはこれらの権限を帰属しないという判断ですけれども、親権者には身上監護に関する権限は帰属しないということまで含んでいるのかどうかについては、必ずしも明確ではないように思います。   1ページの第1の1というのも、(1)の中で@、A、それぞれ基本的に監護者が行う、あるいは親権者が行うということはありますが、監護に関しては親権者にはもう残らないのだということは、我妻先生もお書きになっていることですし、また、一般にそういうふうなイメージで理解されてきたこともあるのかもしれませんが、必ずしもそれが現状の理解として自明のものだというわけではないようにも思います。   その上で、やはり私自身は(2)のような考え方については、積極的な側面もあるのではないかと思っております。なるほどほとんどの場面では、面会交流の場面とかそういう場面でこれが具体化するということになるかもしれません。また、それ以外の場面では、身上監護に関しても親権者に権限は残るのだとした場合にも、石綿幹事から御説明があったように、恐らく両方ともに身上監護についての権限を持つやはり優先関係というのを決めることになりますので、監護者の監護権を妨げるような形での身上監護の権利を行使することはできないというような制約は出てくるのだろうと思います。   ただし、身上監護そのものは、監護者が行う場合であったとしても、子の利益のために行うということが当然の前提になるわけですから、それが不適切な身上監護がなされているような場合に、他方の親権者がそれに対して一定の修正を求めるといったようなことを、自らが持っている身上監護権を踏まえて主張する、あるいは求めるということは十分にあり得るのではないかという気もします。   そうした観点から、十分には整理できていないのですが、(2)のような考え方があり得るということと、現状というのは必ずしも親権者に身上監護権がないということを確定しているものではないのではないかということで発言させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。窪田委員からは、1(2)のような考え方はあり得るのではないかという御意見を頂きました。不適切な監護がなされていた場合に、親権者に何らかの権限が残っているという方が適切なのではないかという御意見だったかと思います。もう一つ、これは現行法についてどのように理解するのかということで、先ほどの東京高裁の考え方は一つの考え方ですが、この問題にはなかなか難しいところがあって、例えば、資料に我妻先生の見解と、それから最近の見解と挙がっておりますけれども、いつの時点で何を前提にして書かれたものかということによって、これらを直ちに同列に並べて理解できないところがあるのだろうと思います。例えば、我妻先生は確かにこう書いているのですが、前提として、当時の実定法の理解としてはそうではないだろうけれどもこう解したい、というのがこの部分の趣旨なのではないかと思います。現行法の理解については少し多面的に考えた上で、ではそれを前提にして、今の時点で考えるとしたら何がよいのかということをこの場で議論していくということではないかと思いますが、そうしたことを含めた御指摘として承りました。原田委員、もし何かあれば、どうぞ。 ○原田委員 今の窪田先生の御指摘は、そのとおりだと思いますが、私は先ほど言い忘れましたが、この東京高裁の決定と(注6)は矛盾するのでしょうか、ということを逆にお聞きしたいと思っておりました。失礼いたしました。 ○大村部会長 補足の発言として伺いました。 ○原田委員 私が言いたかったのは、特に親権者の権限とされている居所指定や職業許可権などについて、特に言いたかったところでした。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○池田委員 池田でございます。離婚する父母間で親権と監護権の分属がなされるというケースは、通常、あまり多くはないと思いますが、仮に祖父母などの第三者を監護者に指定することができるという規律を設ける場合には、正に親権と監護権を分属するということになりますので、そのようなことも念頭に置きますと、ここでしっかり議論しておく必要があるかなと思います。   そういった前置きをしつつ、中身に関してですけれども、私は石綿先生がおっしゃったような考え方におおむね賛成です。ただ、現状トラブルとして多いのは、監護者でない親権者が単独でこどもと過ごしているとき、例えば親子交流中などに、監護者でない親権者がこどもに関して身上監護について何もできなくて困るというトラブルよりも、監護者でない親権者がこどもの引取りを監護者に対して執拗に求めてくるとか、あるいは自分が面会交流しているときに監護に関する一貫性のないような行為をしてしまうという問題の方が多いような気がします。そういう意味では、(2)のような規律を設けるとしても、監護者でない親権者が一定の監護権を持つという積極的側面を書き込むというよりも、監護者でない親権者が一定の監護権を持つことを前提にするのかもしれませんけれども、監護者による監護を妨げないという点をむしろ明記するというような規律の方がいいのではないかと思います。   ちなみに、少し前置きで申し上げましたが、第三者の監護者指定という話については今後、是非論点として取り上げていただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。2点お話があったかと思います。最初と最後におっしゃった、第三者を監護者として指定するという話は、父母の間での監護者の指定の問題と密接に関わりますけれども、多少性質の違う問題も含まれているかと思いますので、どこかで更に議論をしていただきたいという御要望として伺いました。それから、今議論されていることとの関係でいうと、石綿幹事のような考え方におおむね賛成だということで、その上で、親権者の関与がプラスに働く場合とマイナスになる場合とがあるので、マイナスを除去するような形で規律するのが望ましいのではないかという御意見だったかと思います。石綿幹事からは先ほど児童福祉法について御発言を頂きましたが、児童福祉法自体もそうした発想に立って規律が設けられていると理解することができるので、その考え方を参酌するというのは、今おっしゃった池田委員のような発想とむしろ適合的ではないかと思って伺っておりました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○佐野幹事 幹事の佐野です。そうしましたら、まず親権、監護権の分属、これは共同親権でない場合を想定して発言させていただきます。   現状この分属が選択されているのは、共同親権という制度をとれない場合に便宜上とっているというのが実情ではないかと思いますので、これは意見になるのですけれども、共同親権という選択が仮にできるようになったときに、この分属を選択する場合、どういう趣旨で選択しているのかというのを、第三者のチェックの必要性というのがないのかと思っています。   その上で、少し私が分からないと思っていて、是非教えていただきたいと思っているのは、今の御提案の分け方では、財産管理の部分については親権者が行使することになるわけです。他方、平成23年の民法改正の未成年後見制度改正では、複数の後見人を認めるに当たり、身上監護のみを行使する未成年後見人は認めないという規定になっている。その理由を解説書などで参照すると、身上監護に関する権利義務を有する未成年後見人が、身上監護に関して必要な財産に関する権限を一切行うことができないこととすると、例えば日常的に使用する未成年被後見人の洋服や文房具などの身の回りのものの管理、処分等に支障を生じるおそれがあるため、身上監護のみを有する未成年後見人は認めないとしたとあるのです。   それとの関係で考えると、この場合は、身上監護をするということについては監護者が行うという当事者の合意があるわけなのですが、にもかかわらず、実務上支障が生じると整理されているような監護しかできないような権限の配分でいいのか、そことの関係がどのようになるのかというのが、疑問に思っているところです。ただ、当事者の間で合意ができるということを前提とするのだとすると、監護者には身の回りのものの処分をする権限がないということさえきちんと理解をしていれば、その部分については、監護者ができることにしましょうというプラスの合意を、当事者間で行うということはできるかもしれないとも思ったところです。その辺、もし平成23年の民法改正とかの議論を御存じの方がいらっしゃったら、教えていただきたいと思いました。   もう一つ、ここの議論は先ほど池田委員がおっしゃったように、第三者の監護者指定のところにも深く関わってくるところですので、第三者の監護者指定がどこで議論されるのかというのは気になっているところです。   それから、親権者に一定の範囲で身上監護の権利義務は残るという部分ですけれども、理屈ではそうなるのかもしれないと思うところではありますが、ただ、親子交流の場面が例として挙げられてくると、単独親権が面会交流をしている場合と具体的には余り変わりがないようにも思うものですから、そことの違いがどのようになるのかというところは気になるところです。   それからもう一つ、居所指定のところですけれども、身上監護権を監護者にと定める以上、居所指定権は監護者ということになるのかと思います。その上で親子交流などに問題が生じるとかいう場合は、転居するという場合でも、遠くの場合も近くの場合もありますので、そういったところも踏まえて、監護に関する処分の中で、子の利益を踏まえて、具体的に細かく調整するということになるのではないかと思っております。 ○大村部会長 佐野幹事からもいろいろ御指摘を頂きました。第三者を監護者と指定するという点については、先ほどの池田委員と同様の御意見だったかと思います。居所指定権はベースとしては監護に含まれるけれども、調整をする場合が残るのではないかという御意見でした。残る部分が親権と監護権の切り分けに関する話でしたが、おっしゃっていることは、制度の整合性に関して詰めて考える必要があるという御指摘になるのかと思いました。一方で、未成年後見のときに身上監護のみになるということが具合が悪いとすると、それとの関係で、親権の方を切り分けるときにどう考える必要があるのか、合意によって調整するということをおっしゃいましたが、合意による調整があり得るのか、一方でこうしたことが問題になる。他方で、監護権が分属しない場合、単独親権の下で面会交流がなされるというときに、面会交流の場面で身上監護について何か行う必要があるという場合と、分属の場合との違いをどう考えるのかといった御指摘もあったかと思います。 ○窪田委員 よろしいでしょうか。今の御発言に続けて、私も気になっておりました点について発言させて頂きます。どこかの段階で、身上監護に関する事項と財産管理に関する事項については、それが具体的に何を対象とするかについて、もう少し詰めておいた方がいいような気がいたします。   一つは今、佐野幹事からも御指摘があったように、身上監護に関する事項といいながらも、実際には一定の財産管理権がないと、あるいは財産に関する行為として行わないと、できないことがあるのではないかという問題があるだろうと思います。また、私自身はそれとは別に気になっていたのが、繰り返しになって、東京高裁の平成18年に関連してですが、例えば職業許可権というのは身上監護権の中に入れられており、確かに形式的に見るとそうかもしれませんが、こどもが携帯電話の契約をするというときに親が同意を与えるといったものとの対比で、本当に身上監護の問題なのかというと、より重要な、財産管理にも関わるような決定をしているということにもなるのではないかと思います。現在の身上監護と財産管理という切り分けを前提として、財産管理権に関する規定の前までに置かれた条文は、すべて身上監護の内容だという形で単純に扱うのではなく、もちろん切り分け自体も難しいところはあると思うのですが、もう少し整理できないかと思っています。   なお難しいところがあるのではないかとは申し上げたのですが、身上監護と財産管理を完全に切り分けて分属するのだというような形で、他方には残らないのだということをいうと、切り分けは非常に難しくなるのですが、ある程度外側のところを広げていって、ここまでは身上監護としてできる、あるいは財産管理としてここまではできるという形のものであれば、もう少し明確な形でルールを設けることもできるのではないかと感じましたので、発言させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございました。今の御議論は、身上監護と財産管理という切り分けが現在はなされていて、身上監護について親権者は何ができないかとか、あるいは身上監護に伴う財産管理行為を監護者はできないかといったことが議論されているけれども、そもそもそれぞれのカテゴリーに属するものが何であるかということも検討を要する点があるのではないかという御指摘だったかと思います。最後のところで、こうすればより明確になるのではないかとおっしゃったところが少し分からなかったのですが。 ○窪田委員 先ほどの分属の話に戻ってしまうのですけれども、監護者と親権者を別に定めた場合に、そして親権者の方には身上監護権は残らない形での財産管理権のみだというような形の構成をとると、財産管理権が何であるのか、身上監護権が何であるのかというのは、集合でいいますとその集合の境目をどうするのかという話になりますので、すごく神経質に決める必要があるのだろうと思います。他方で、身上監護権としてできることには一定の幅であって、そして財産管理権できることについても一定の幅があってという形になったときには、場合によってはその二つの集合の間で重複が生じても構わないのだろうと思います。その点では、身上監護と財産管理をベン図でいうと全く二つに分けてというのではなくて、身上監護権としてこれだけのことができる、財産管理権としてこれだけのことができるというような形の定め方であれば、ある程度実現可能なのではないかという気もしております。無責任かもしれませんが、そういうふうに感じたものですから、発言させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。排他的な権限として設定すると、どちらに帰属するかということが重要になるけれども、権限が重複することがあるとすると、先関係を決めなければいけないという点は別にして、言わば中間に一方だけでなく他方も一定の権限は持つというゾーンができるので、二分法に比べて、より妥当な運用ができるのではないかという御意見でしょうか。 ○窪田委員 そういうイメージです。 ○大村部会長 分かりました。ありがとうございます。 ○棚村委員 今の流れで行くと、窪田委員とか石綿幹事がおっしゃってくださったこととほぼ同じようなことで、意見を述べさせていただきます。第1の(1)、(2)についてもお話をしますけれども、前提として結局、離婚後共同親権を認めるか認めないかと、こういう一番大きな議論の立て方でも、親権者に双方がなった場合も単独でなった場合も、親として、父母として何の権利義務も残らないのかどうかというのがいつも気になっているところです。   つまり、オール・オア・ナッシングで、親権者になると全部できるとか、監護者になると一定の範囲では全部できるという話ではなくて、先ほど窪田委員とか石綿幹事から出たように、例えば民法の766条の第4項の規定を見ると、監護者とか、面会交流もそうですし、養育費とか監護について定めたりできるという形になっていて、第4項のところで、第3項の規定によっては監護の範囲外では父母の権利義務に変更を生じないと書いてあるわけです。つまり、ここのところは正に解釈でも争いがあるわけですけれども、監護について細かいことを定めた場合、それが優先するのだけれども、それ以外のところではお父さん、お母さんの権利義務というのはやはりあるのですよということを確認しているのではないでしょうか。   ただ、具体的にどのような権利義務が残っているのか、何があるのかという議論が、ずっとこれまでも議論されて、正に親権と監護が分属したときに東京高裁が判断をしているように、争いが起こったときに、身上監護というものについては監護者がやるけれども、そのほかの財産管理とか身分行為に関する法定代理とかそういうものは誰に帰属することになるのかが問われ、ここで争いになったのは、こどもの氏の変更の権限が誰にあるかということでした。それで、東京高裁では、親権者にあるという判断をされたのです。しかし、争っている方は、監護者としては、氏の変更の権限も、こどもの生活について主として責任を担っているので、自分がやりたかったということだったのですが、親権者に重要な身分上の行為の法定代理権が何も残らないというのはおかしいということで、身上監護について、監護者に定められたもの以外はやはり親権者にあるという判断が出てしまったケースなのです。これについても批判があるところで、先ほど原田委員も言っていましたけれども、日常主として監護を行っている者は、財産管理についても、それから身分行為についての法定代理権でも、そちらがやった方がふさわしいとか、その範囲ではやってもいいということはあるのではないかという批判がある、学説でも議論されているところです。   何を言いたいかというと、つまり共同の親権を認めるか、単独の親権になったからといって、場合によってはその受皿として親権の変更とかということもあり得るわけですから、そういうときに、他方が例えば単独でやっていても、きちんとやってくれているかどうかというのを監視したり、改善を求める親としての地位というのはどこかにあるのではないかと思うのです。その辺りのことを含めると、親権者が一方になって監護者が定められた場合でも、監護者でない親権者に一定の範囲で、身上監護を含めて、何らかの関与の可能性というのはある場合もあっていいのではないかと思うわけです。これは理論的な面でも実際的な面でも、検討する必要があるのではないかということを考えています。   それで、監護者の定めというのがどういう意味を持つかというので、かなり議論されていますけれども、これも何か機械的に監護教育とか、職業許可とか、居所指定権とかということでセットにして考えるというよりは、少し分けて、親権者というものを定めたり、あるいは監護者を定めるということで、そのパッケージとして、親権者というのはどういう権限や、そういうものを持ち得るのか、監護者というのはどういう権限や責任を持ち得るのか、正にパッケージとして、どういう権限やどういうことに主として責任を負っていくかという議論も私は必要だと思うのです。   そういう意味では監護者を定めておくということについても、親権の所在というのも必要だと思うのですが、3番目に、最終的には個別の細かいこと、例えば、予防接種を誰が決めるとか、食事はどういうふうに決めていくとか、何かこどもにとってのいろいろな事項について争いが起こるときに、個別にこういう問題や事項については誰が決めるというのですか、決まらないときにはどういうふうなルールを置いておくか、前も言いましたけれども、インパスオーソリティーというので、意見の不一致があったときに裁判所に判断してもらうというよりは、やはり迅速な決定を確保できるように、父親なり母親なりの意見、あるいは一緒に住んでいる親が決めるということを決めておいてもいいと思うのです。   その辺りのところを議論していくと、(1)について、これまでの親権と監護との分属ということを前提として、こういうようなことはおおむねこういう立場の人がやるとか、それ以外の点についてはこちらが分担するとか、そういう大枠のルールとして、こういうものがあってもいいと思うのです。ただし、(2)のところになりますけれども、そう定めたからといって、全くその関与ができなくなったり、オール・オア・ナッシングにある権限や事項は全部その人が決めるというのではなくて、親である以上そういう問題について一定の関心を持って関わりたいという場合も出てきますし、それが妨害になったり、権限の行使を濫用するようなケースは論外ですけれども、そういうようなことについても、きちんと事項ごとに検討しておく必要があると思います。   つまり、離婚後、親としてどう関わったらいいかという話と、それからパッケージとしてこういうような形で主として責任を負う人を決めるというので、たまたま親権者が誰だとか、監護者を別に定めるとか、これも一緒にやるというケースもいいですし、それから分担をするという定め方もあって、選択肢は幾つかあっていいのだと思うのです。そして、最後に個別の具体的な問題ごとに、本来だったら話し合って細かく決めるということも必要だと思うのですが、決められない場合には、やはりそういう意味では最終的には誰が決めておくというルールみたいなものを決めておくことによって、少し整理すると、(1)についても(2)についても、そういう前提として議論をしていった方がいいのではないかと考えています。   認知の場合は少し、結婚外の関係であるため、子育てや監護の実態との関係でもいろいろありますけれども、ただ、認知の場合も、場合によっては事実婚という形で安定した環境の中で子育てをしているという場合もありますから、共同の選択肢というのを、監護者にしても親権者にしても、細かくルールを作っていくというやり方もあるし、逆にいうと、親権についてやはり共同でやれるという可能性も残してもいいのではないかと思います。   以上たくさんお話しましたけれども、御提案に賛成の方向で議論すべきと思いますので、どうぞよろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。たくさん御指摘いただきましたが、ここでのゴシックの部分との関係でいうと、御意見としては第1の1(1)、(2)は、基本的にはこういう方向でよいという御意見だと承りました。その際に、権限を完全に分けてしまうというのではなくて、権限がないとされた人にも親としての権限が残るということを考える必要があるのではないかという御指摘が一つと、それからもう一つ、意見が対立したときに裁判所に持ち込むということもあるのだけれども、最終的な決定者を決めておくという受皿を用意しておくということも重要ではないかという御指摘を頂いたと思います。認知については、先ほどの武田委員と同様に、現状についてはやはり再検討を要するのではないかという御意見だと承りました。   赤石委員まで伺って、もしまだその後、御発言があるようでしたら、一旦休憩をして、更に伺いたいと思います。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。よろしくお願いします。監護者と親権者の分属ということを、双方の親権が認められ得る規律の中でどう考えるのかというのは、私も想像ができず、とはいえ、今までお会いした当事者の中で分属されていた方もいらしたとは思います。基本的に非常に、共同での養育をかなり平和には行っておられたり、話合いもされていたかとは思いますが、それと今のが、離婚時にどうしても双方が主張をしていたので、分属にされたと聞いております。なので、少し想像がつきかねるところはあるとはいえ、幾つか指摘しておきたいと思います。   面会交流のときに身上監護に関する権利義務があるというのは想像できるところで、そのほかについて何か権限があるのかどうか、あるいは窪田委員がおっしゃるように、何かベン図式みたいに、ある程度重複するものがあるのではないかというのもある種、分かるところではあるのですが、一方で少し気になるのは、例えば4ページの(注4)で、監護者による身上監護権の行使の結果として、正当な理由なく、(監護者でない)親権者による親権行使や親子交流の実施を事実上困難とさせる事態を招き、それが子の利益に反する場合もあり得るとの指摘がある、というようなことが書かれております。これはパブコメから拾われたのでしょうか。いろいろな論文でも、監護者の方が妨げているのではないかというのを書かれているような論文を見たことがあります。   しかし、ここでひとり親の現状からいうと、一方ではDVや虐待、あるいは双方が葛藤が高い場合に、事実上、親子交流が困難であって子の利益にならない、あるいは、その親子交流は少し難しいと判断して言ったことが妨げになっているかのように見えてしまうというような、それで妨げていると主張されてしまうというようなことで、要するに、親子交流が困難で子の不利益になっている場合も、監護者の権利行使に問題があって妨げをしているとは限らない場合があるということをここできちんと押さえておかないと、何かこの主張だけが書かれているのは少し一方的な感じがいたしました。   やはり様々な面会交流での事象の中で、慣れておられないがためにいろいろな問題がある事象が起こっているというのが今の状況だと思います。やはり子育てや遊びについてのスキルが双方が、あるいは交流の中でもっとスキルがアップしていくようなことがあればいいのでしょうが、普通やっている監護者が危険であると判断したこともやられてしまうと、その次にはかなり限定した条件を付けたりするのを、妨げだと主張されてしまうようなケースもあるかと思いますので、これは別にDVや虐待だけでなくて、いろいろなケースがあるところを、このように書き込まれてしまうのが非常に、監護者が自分の権限を拡張して主張して相手側の権利を侵害している、というのは当たらないということがあります。やはり先ほどと同じことを言ってしまうのですが、DVや虐待や、そういった対応についてどのようにするのかが分からないところで、ここでの意見を述べるというのはとても難しく思います。   とはいえ、次の居所指定のところなのですが、ここに関しては私はやはり居所の指定は監護者のみで行うべきであると思っております。子の居所指定に関して、やはり監護者でない親権者の方も権限を有するというようなことは非常に、命の危険の可能性もあるところではないのかと思います。別居親と子との交流というのはもちろん重要ですし、でき得ればやっていくものだと思いますが、こどもの利益の中で一番大事なのは、やはり命の安全や安心・安全ということでございます。そういったところが少し、配慮があるのかないのか分からないような書きぶりになっているので、どうしても留保せざるを得ないと思います。   また、DVや虐待が最も危険度が高くなるのは、避難の計画をしたり避難直後です。居所指定が関わるのはこの場面です。一番危険度が高くなり、いろいろな事件も起こっております。ですので、ここの論点というのは注目度も高いのだと思いますけれども、やはり監護者指定をして、その方が居所指定ができるという方が子の安全に資すると思います。   認知に関しては少し、うまくさらっとここで触れるのがとても私にははばかられるので、別にお伝えしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員から幾つか御指摘いただきましたが、居所指定権については、これは監護権の中に含めておくべきだという御意見を頂きました。認知については、また後でということだったかと思います。それから、親権と監護の切り分けについては、まず一つ、分属が新しい制度の下でどういう場合に起きるか、これは先ほど佐野幹事からも御指摘があったところかと思いますけれども、どんな場合で使われるのだろうかということが多少気になると。適切な使用の場面が残るのか残らないのか。先ほど武田委員は、そうした場面はあるのではないかということをおっしゃっていましたけれども、その点について御意見を頂きました。それから、資料の(注)の表現について、監護者が親権の行使や親子交流を妨げるというような書き方になっているけれども、全ての場合が妨げるに当たるというわけではなくて、適切な判断に基づいている場合もあるのだということを御指摘になったかと思います。これは池田委員の御指摘の点でもあって、監護者が親権者の権限を妨げることもあるし、親権者が監護者の権限を妨げることがあると、武田委員のような御意見はそこから出てくることになるのかと思って伺っておりました。   まだ御発言があるかもしれませんが、大分時間が経ちましたので、取りあえずここで一旦休憩しまして、休憩の後に、更に28の第1につきまして御意見があれば頂き、そして、第2の方に進みたいと思います。   現在15時16分ですので、25分まで休憩させていただきます。休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開したいと思います。   休憩前、資料28の第1について御意見を頂いておりました。一通り御発言がありましたけれども、更に御発言があればお願いします。では、小粥委員、戒能委員という順番で御発言いただきたいと思います。 ○小粥委員 委員の小粥でございます。先ほどの石綿幹事の発言に関連して、少し周縁的なことかもしれませんけれども、一言だけ申し上げさせてください。それは、児童福祉法が念頭に置いているケースというのが、恐らく正攻法で行けば、正攻法という言葉の意味も問題ではありますけれども、親権停止とか親権喪失でカバーすべき問題も含んでいるのだろうと思っておりまして、そのこととの関係では、離婚後共同親権の場合に父母の一方について監護者指定がなされた場合の、その監護者の権限について排他的なものであるという、つまり我妻説的な理解で主張が行われる場合に、その背景にはDVとか虐待の問題が想定されているように思われまして、ということは、監護者の権限、特に共同親権を前提にした場合の監護者の権限についての議論というのは、親権停止や親権喪失等の法技術によって対応すべき問題と重なり合っているので、少しその辺りを整理しないと、監護者の権限の問題というのもきれいに議論できないのではないかという印象を持っております。少し自分の中でも整理が行き届いていないのですけれども、以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。御趣旨は、児童福祉法では括弧付きの分属というような状態が行われているけれども、その先には親権喪失、停止が置かれているので、二段階の構造になっていることを念頭に置きながら問題を考えていく必要があるのではないか。そういう御趣旨ですか。 ○小粥委員 ごめんなさい、長くなってしまって恐縮なのですが、まずはそのとおりなのです。DV、虐待のケースなどを中心に念頭に置くと、今のようなことになると思います。けれども、離婚後共同親権を、部分的にでも認めるとすると、それぞれ考え方は違う、複数の考え方を持つ親権者に接しながらこどもが育つというような局面を言わば理想的なものとして見て、議論をすることも必要なのだと思うのです。そういう局面については、先ほど石綿幹事がおっしゃったような、監護者は指定がある場合に、一方がまずは権限を持つけれども、他方が補足的に権限を持つ、あるいは他方が妨げないというような規律が正に妥当するような局面があると思うのです。他方で、DV、虐待ケースなどについては、一方が優先、劣後というような局面ではなくて、むしろ最初からその人を親権者とすることを回避するとか、それから、停止とか喪失とかという場面があるような気がします。議論の中で二つの種類、つまり平常時と、それからDV、虐待の問題と、両方があるけれども、どちらかというと、ここではDV、虐待のケースがクローズアップされていますけれども、でも、制度設計のときにはそれではない場面も念頭に置いて議論していく必要があるのではないかと思います。 ○大村部会長 分かりました。問題になるものの中に大きく分けると二つのパターンがあって、それぞれの行き先が同じではないことを念頭に置いて議論する必要があるという御意見として承りました。 ○池田委員 今の点に関連して、多分一つの御指摘の趣旨としては、児童福祉法が想定している場面というのは親権停止とか制限を用いることで対処すべきような問題で、離婚時の親権と監護権の分属と少し場面が違うのではないかという点を含まれていたのかと思いますけれども、ただ、親権、監護権の分属というのが用いられる場面の一つに、仮に第三者の監護者指定ということを入れた場合には、やはり親権者の養育にやや不安があったりとか、あるいは監護体制がうまく調っていないために、第三者が監護者に指定されるという場面があり得ることになりますので、児童福祉法が想定している場面と当たらずとも遠からずというところもあるのかなと思います。他方で、ただ、双方が親権者であって、更に監護者が指定されるというような場合には、確かに御指摘のとおり場面が違うのかなとは思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほど二つのパターンがあるという形で小粥委員の御発言を整理しましたけれども、ある意味では、もう一つあるかもしれないということにもなるでしょうか。極端な虐待ケースのようなものではないけれども、複数の人が関与することが望ましいという場合が一つあるのではないか、そういう御指摘として承りました。 ○戒能委員 ありがとうございます。委員の戒能です。今の議論のところ、一言だけ。児童福祉法とパラレルに考えられるのではないかという、確かにそういう面もあるのかもしれませんけれども、父母間という私的な関係と、児相長という公的な行政の権限ですよね、そこをどう考えるかというのは、もう少し考えてみたいとお話を聞いていて思いました。   それで、発言の趣旨は、4ページの子の居所指定権について、一言だけ発言したいと思います。822条の子の居所指定権は親権の内容に含まれており、そして共同での行使というのが求められている規定です。しかし、これも既に御発言があったように、DVや児童虐待がある場合はもちろんですし、それから、これも先ほど私が申し上げたように、そういう場でなくても、こどもへの影響が著しく大きいと考えて、こどもを連れて別居するということはあるわけです。そうしないとこどもの安全が守れないという場合です。そういう場合には共同行使はそもそも無理なことです。それで、よくこういう子連れ別居を、こどもの連れ去りという表現も行われますけれども、飽くまでもこれは緊急避難だということを申し上げたいということです。こどもの安全と、それから命を守るというためです。   それで、2001年にDV法が施行されたときに、これは実は立法時から総務省などは考えていたという発言も後からあったのですけれども、夫などから追跡されると、その追跡から守るために住民基本台帳閲覧制限等の支援措置、略して支援措置と一般にはいわれておりますけれども、相当数が年間申請をされているということを伺っています。正確な数は公表されているのかどうかも分かりません。だけれども、手続もそれほど簡単ではなくて、1年ごとに更新しなければならないとか、そういう不便な面もあるのですが、支援措置で、多くの人は住民票を移さないという選択をするのですけれども、移さざるを得ない場合も、例えば子の進学とかそういうことで必要な場合もある。そのときに大きな助けになっていて、総務省も、これは自治体の職員の方の御尽力で、制度上の問題点を、例えば弁護士が出していたら、依頼者である加害者と同一視して閲覧させないなど、総務省も通知を出して、変えてきたりしています。   でも、これは子の居所指定が監護者にないと、親権者にもあるのだということになると、DV法の制定によって安全を守るという努力がずっと行われてきたものが、極端に言えば無力化してしまうという危惧も本当にあるのではないか。だから、子の居所指定というのは、きちんと監護者が指定されて、監護者が決めるのだという原則は曲げるべきではないというのが私の考えです。   面会交流が居所を知らなくてできるかという議論もあるようですけれども、パブコメを拝見しますと、そういうことも必ずしもいえないし、面会交流はできるし、逆に、別居親が居所を知らないことによる不利益とは何かというのを明らかにされていないのではないかというパブコメの意見も拝見いたしました。こどもの利益にとってどういう不都合があるのかということも、理解が非常に難しいと感じております。ですから、これは共同親権の弊害の一つとして捉えるべきだと個人的には考えておりますので、子の居所指定は監護者が指定すべきだと、そういう考えを申し上げたいと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員からは最初に、その前の池田委員あるいは小粥委員から御発言があった児童福祉法関連の御指摘があったかと思います。公的な関係者が登場する場合と私人間とで事情が違うのではないかという御指摘だったかと思います。最初に石綿幹事からの御提案があったわけですが、状況の類似性に着目して、法技術的にそこに利用可能なもの、参照可能なものがあるのではないかという御指摘だったので、私たちが今、念頭に置いている状況でこの法技術が有益なのかどうなのかという形で検討していくということになろうかと思って伺っておりました。戒能委員の主たる御発言は居所指定権についてでしたが、基本的な御意見は、今ここで議論をしている親権者と監護権者の間での分属の場合については、居所指定権は監護の側に含まれるという考え方を採るべきである、その上で、共同親権の場合についてもそれを踏まえた形で考える必要があるということをおっしゃったと受け止めました。   ほかに御発言はいかがでしょうか。 ○原田委員 認知の場合について発言しようと思ったのですが、共同親権の場合の居所指定権については、また別に話す機会があるのですか。 ○大村部会長 前に共同親権の場合について、監護者を決めたらどういうことになるのかということが議論されて、それは親権と監護の切り分けということとも関わるので、そこでまた意見を頂戴したいと申し上げておりましたので、今日は、ここでの固有の問題であるところの親権者と監護者の間での切り分けの問題と、それから共同親権の場合にどうなるかという問題、そのどちらについての御発言であっても、どちらを念頭に置いているのかということを明示していただければ、御発言いただいても結構です。 ○原田委員 私は、分属した場合は監護者になるというのを先ほど申しましたけれども、共同親権の場合で監護者を指定していない場合にどうなるのかという問題が残っているのだろうと思います。   それで、現在、離婚ができていない場合の共同親権下でどちらかの親がこどもを連れて出た場合、もう一方の親がそれに不服があれば監護者指定の申立てをして引渡しを求めるという手続になっていると思います。その場合に、片方の親が協議なく出ていった場合について、先ほど戒能委員から緊急避難というお言葉がありまして、前に親権者のできる行為の中で日常行為と緊急行為という言葉があって、緊急行為の中に含めるのかどうかという話が少しあったと思いますが、私はDVや虐待といわれないようなものでも、父母間の紛争が非常に激しくなって、お父さんとお母さんがいつもけんかしているような状況の中でこどもが生活せざるを得ないというときに、主たる監護者であったどちらかの親がこどもを連れて出る、こどもを置いて出れば、それはもうネグレクトに近い状態になりますし、そういう状態で、どちらがこどもを連れていくかということについて協議が調わなければ、それは連れて出るしか仕方がない、それを緊急避難という範囲に含めるのであれば、それでいいのではないかと思っていて、それに不服がある場合は、現行のように監護者指定を求めて引渡しを求めるという手続に入ればいいのではないかと思います。しかし、緊急避難と言えるのかどうかの問題もあり、規定として、例えば速やかにそれをするとか、申立権者をどちらにするかという問題があるかと思いますけれども、不服がある方がすればいいのではないかと思います。   でも、私の曖昧な耳学問で、窪田先生からは御注意があるかもしれませんが、ドイツ法でも単独の監護者指定権を得た後に引渡しを求めるというような手続になっているというふうにある研修会で聞いたことがあります。共同親権下でもそういう手続をとっているという国もあると伺っておりますので、現行法のやり方でいいのではないかと思っております。   あと、言おうと思っていた認知の件ですけれども、弁護士会では、認知した場合に共同親権を認めるかどうかについては賛否両論分かれていて、まとまりませんでした。でも、現行法では、母親の単独親権から協議で父親に変更することはできるとなっていて、当事者の協議によって定めるということになっておりますが、もしここで共同親権を入れるというのであれば、離婚の際の親権の定めのときのように、第三者の関与、私の意見では家庭裁判所で決めるという手続ですべきだと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。原田委員からは2点あって、一つは、居所指定については、監護者が定まっているときには、それは監護者が行うと、これは親権行使が単独であれ双方であれ、そう考えるべきである。定まっていないときについては、基本的には現在のやり方をベースにして考えるということでよいのではないかという御意見だったかと思います。それからもう一つ、認知については、もし共同行使を認めるのであれば、それに御提案のような規律を掛けていく必要があるということだったかと思います。 ○柿本委員 柿本でございます。第1の1(1)のところの、父母の一方が親権者、そして他方が監護者のときの身上監護に関する事項は、基本的に監護者が行うというところでございますが、そこから派生して、子の居所の指定が親権の内容に含まれることを定めているということでございますが、これが離婚後の父母の一方を親権者と定め、他方を監護者としたときの居所指定についても、監護者が子の日常的な身の回りの世話をする場所であることから、監護者が単独でこれを決定すべきであると考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。柿本委員の御意見は、居所指定権について、監護者が単独で決めるというのがよろしいのではないかという御意見だということですね。 ○佐野幹事 1点だけ、先ほど言うのを忘れました。認知の件です。認知に関しては、いろいろなケースがあるとは思うものの、やはりこどもの出生によって共同親権下で養育されるすべが全くないというのに合理性があるのかという点がありますので、認知の場合も一応、共同で親権というのを選択できる道を残すというのは必要ではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。認知の場合に、共同を全く認めないというのは適切ではないという御意見を頂戴いたしました。   そのほか、いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。   赤石委員、認知について、後で御発言があるとおっしゃっていたかと思いますが。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。今日、去年皆さんに御提出した2,500人の調査のうちに未婚・非婚のお母さんの調査がありましたので、それを皆さんにお配りしました。特別集計なので、未婚・非婚のお母さんだけを特化して聞いているわけではないので、若干不十分なところもあると思うのですけれども、この議論をするときに、全く結婚しないでこどもを産んだ後の状況についてデータがないところで議論するのも非常に不十分な議論になるかなと思って、お伝えしたところです。   やはり結論的には、選択制であれば共同の親権というのはあり得るかなと思います。認知手続というのは胎児認知を除けば一方的にできるということになりますので、それをもって共同ということにはならないわけであります。だけれども、なぜ未婚・非婚で産んだのかというところでは、本当にいろいろなケースがあるのですけれども、私が予想していたよりもDVや暴力によって別れたとか、あったという方は多かったと思いますし、単独親権を望む方は半分以上で、分からない方が大変多かったとは思います、去年の段階ですので。やはりこの方たちのニーズをきちんと把握した上での議論がいいとは思います。   その上で、事実婚の方が望んでいるからここで認めるべきだという議論は、少し私は賛成しかねると思います。事実婚の方にも多種多様な方がいらっしゃると思います。そもそも婚姻制度にのっとらないで子育てをしたいというような方たちもかなりおられると思いますし、一方では婚姻障害というのですかね、夫婦別姓選択制で別氏を望んでいるけれども、それで婚姻届を出せないですとか、同性婚が現行法では認められていないとか、いろいろな形で事実婚にならざるを得ないというような方もいらっしゃいました。この方たちが、5人ぐらいの方に聞いたのですけれども、若干笑えるような不便はあるけれども、共同親権制度を望むことはないという方が結構いらして、一方で、非嫡出子を産んで非常に不安定な状況であること、あるいは差別をされていることから共同親権を望むという方もいらっしゃいました。とはいえ、よく聞くと、共同親権で解決できるのか、非嫡出子の差別ですとかそういったこと、心ない言葉ですとかそういったものがまず解消される方が望んでおられるのかなという感じもしたので、ここで、事実婚の方が望んでいるから、認知の後に、どんな手続になるかも分からないのですけれども、弥縫策として共同親権制度をやるのは、少し納得がいかないというのが私の思いです。   やはり、これは別に法務省のせいでもなく、法制審議会のせいでもありませんけれども、1995年に法制審議会が答申した後、夫婦別姓選択制は28年、国会で実現していないわけですので、私も望んで活動したこともありますので、非常に残念だと思っておりますけれども、それが優先されるべきであって、共同親権にしたら何か認められるのではないか、みたいに思っておられる方がいることはいらっしゃるとは思うのですけれども、少し趣旨が違うとは思っておりますし、未婚・非婚の方の議論というのはほとんどできていない状況の中で、その中には性暴力やDVで妊娠されて、お父さんとの関係を望まない方もおられる一方、お父さんとの関係を望む方もいる。また、お父さんに御家族がいる方もいる、それから出産に全く否定的だったお父さんもいる、こういう状況の中で本当にどういう議論をしていくのがいいのかというのは、もっと丁寧な議論はすべきだと思っております。パッケージとしてフランスとかパックス法など、民事連帯契約などあるかに聞いていますけれども、そういう議論とともにやるべきであって、今この離婚後のこどもの養育のところでやるべき議論ではないのかなとは思ったところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員からは認知の問題について、事実婚の人々が望んでいるからという議論の仕方については疑問がある、議論するのであれば、現在やっている問題とは別の問題として議論すべきではないかという御意見を頂きました。   ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでは、部会資料28の第1についてですけれども、1の(1)と(2)とがありますが、(1)の現在の身上監護あるいは財産管理については細かいところで様々な解釈はありますけれども、一応こういうことだとして、これをベースに考えるということ自体については大きな反対はなかったのかと理解しております。その上で(2)は、ではこれをベースにしてどのように動かすのかということについてですけれども、この点につきましてはいろいろな御意見あるいはアイディアを頂きました。そうしたものを踏まえて、更に(2)の問題を考えていくとことになろうかと思って伺いました。個別の問題について、特に居所指定につきましては賛否両論がありましたので、なお考えなければいけないと理解をしております。   それから、2につきましては、認知の場合につき御意見を頂きました。離婚後についてやるのであれば、認知の方についてもやる必要がある、それが整合的であるという御意見を頂く一方で、認知の場合には事情が異なるところがあるのではないかという御意見も頂いておりまして、これも更に検討する必要があると理解しております。   以上のようなことで、この第1につきましては一応御意見を伺ったということで、第2に進ませていただきたいと思いますけれども、よろしいですか。   ありがとうございます。それでは、残りの時間で、「第2 未成年者を養子とする普通養子縁組に関する規律の見直し」、ゴシックの「1 親権者に関する規律」と「2 未成年者の利益を損なうような未成年養子縁組に対する対応をするための規律」と二つありますけれども、区別をせずに、双方併せて御意見を頂戴できればと思います。どなたからでも結構ですので、お願いをいたします。 ○井上委員 委員の井上です。2の未成年者の利益を損なうような未成年養子縁組に対応するための規律について、発言させていただきます。   過去の部会における議論で、全ての未成年養子縁組について裁判所の関与を要する制度の必要性を指摘する意見もあったかと思いますが、必ずしも養育が主の目的でない、家名の継承や節税などが目的の養子縁組なども現に存在する中で、全件の是非を裁判所が判断するのは、やはり現実性に欠けるのではないかと思っております。一律に若しくは限定的に裁判所が関与するにしても、件数の多さに起因して形式的な確認しか行われなかったり、確認の過程で子に心理的な負担を負わせたりするような事態を招かないよう、子の福祉や人格の尊重という観点から、必要な人材の確保を含めた家庭裁判所の体制構築の必要について留意すべきではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。第2の2について御意見を頂きました。未成年養子縁組については家裁の関与を必要とするという意見がこれまでにも出ておりますけれども、様々な目的で養子が利用されるということに鑑みると、一律関与というのは必ずしも適切ではないし現実的でもない、もしそういうことを考えるのであれば、適切な関与がなされるような体制整備を講じていく必要があるという御意見として承りました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○武田委員 親子ネット、武田です。では、第2に関してということで発言をさせていただきます。まず、第2の1で示されております親権者に関する規律、こちらについて述べさせていただきます。   ゴシック記載の(1)、(2)、これが既に実務上解釈として定着している養親とその配偶者を親権者とすること、これを否定するものではありません。DV、児童虐待、今日いろいろと意見が出ましたけれども、これらを始めとして、子に愛情与えられない親に代わって、養子縁組により新しい養親が親権者となり子の利益に資するケース、こういうケースは当然あり得ると、そんなふうに思います。一方、親権者としての適格性の判断もなく、親権者としての不適格性を理由に離婚したわけでもなく、さらに、今議論をされております、離婚後も双方を親権者として合意して共同で親権を行使してきた父母の一方が、他方父母の再婚、その後の養子縁組により強制的にまた親権を失うということの合理性も考えなければいけないのではないかと、そんなふうに感じています。   三巡目の議論で、多様な選択肢、国民の声に応えていこうという意見が多くなったかなと、そんなふうには感じているのですけれども、そういう観点でも、養子縁組後もその配偶者、具体的には実父母の一方の二者が親権者になる規律に加え、実父母が親権者であり続ける選択肢を準備することも検討できないかと、こんなことを考えております。   部会資料には、実父母の双方及び養親の三者が親権者になるという考え方も示されていますが、この点に関しましては、そもそも今の養子縁組、連れ子養子の実態で、養親に必ずしも親権が必要かということに関して個人的に問題意識を持っています。養親は基本的には実父母の一方、併せてそのこどもと暮らしていることを前提とすれば、実父母の一方に親権があるということになると思いますので、養親の意思は実父母の一方に親権行使を任せて、養親は監護補助者的に位置付けることもあり得るのではなかろうかと、こんなふうに思っています。   次に、部会資料28、14ページに記載の父母の関与の在り方に関してです。ここで示されました代諾権を有する親権者の一方が縁組に同意しない場合は、裁判所がこれを定めるという基本的な枠組みには合理性があり、この方向で検討すべきかなと考えています。   ただ、こうした場合に個人的に懸念を感じているところが2点ありまして、この2点に関して触れさせていただければと思います。1点目は、この一方親の養子縁組の同意、つまり親権者でなくなると、この決断をこどもが知り得たとき、一方親に見捨てられたと感じることはなかろうかということを懸念いたします。2点目、これは具体的なデータがないので、どの程度の割合かというのは言えませんけれども、再婚後、再婚して養子縁組が成立して、その後また離婚に至る場合、当然あり得ると思います。そうした局面に直面するこどもの養育環境、これが再度不安定にならないかということに関して懸念を感じております。   具体的に申し上げると、一番分かりやすいのは養育費の話かなと思います。代諾により養親が親権者となりますというふうになった場合に、養育費は養親及びその配偶者が一義的な負担をすることになるだろうと理解をしております。この時点で、縁組前は親権者であった他方の実父母は養育費の分担がなくなることもあり得ると。その後、養親及びその配偶者が離婚して縁組解消になったといった場合、養親は親権者でもなく、そもそも父母という地位でもなくなる、つまり養育責任の全てがなくなることになるのかなと、そんなふうに理解をしております。その際に、実父母の一方が改めて養育費の分担を実父母の他方に求めるということになるのでしょうか、そこが非常に難解な状態になると思っておりまして、他方の実父母からすれば、共同親権状態であったものが親権を失い、仮に関与もなくなっているとすると、なぜ養親と元配偶者の婚姻関係により振り回されるのかという思いを抱くことも容易に想像できますし、同様にこどもの立場からも、実父母に振り回されている、このような印象が否めないのではなかろうかと、こんなふうに思います。このような不安定な養育環境にこどもを置くことがこどもの利益となるのか、非常に疑問を持っているところでございます。   このような懸念点も含めて、冒頭述べました、養子縁組後の親権者の選択肢に実父母を入れる理由となり得ると、こんなふうにも思っており、引き続き検討すべき事項として入れていただきたいと、そんなふうに思っております。   最後、2の方ですね、未成年者の利益を損なうような養子縁組に対応する規律に関してです。ここは、部会資料17ページ(3)の検討課題に沿って発言をさせていただきます。   局面として二つの局面、1点目は縁組時です。縁組時は子の利益の視点から、父母双方の代諾を必要とすべき。家裁の関与に関しては、養親に対しての自覚を促すとともに、実親に対しても、養子縁組や代諾の意味合い、先ほどのこどもが捨てられたと感じるというところですね、こんなところの理解を深めることを目的としてし、全件家裁関与することが望ましいと考えています。具体的には、親教育的な啓もうを目的とする関与になる、そんなイメージですので、これが家庭裁判所の関与かと言われると、そうではないかもしれません。実施主体も必ずしも家裁である必要がないかもしれない。しかしながら、このような啓もう的な関与があった方がこどもの利益に資するものとイメージをしております。   縁組後に関しましては、部会資料28に示されておりますとおり、濫用的な申立てを防ぐ方法も検討しつつ、現行法の親権喪失、親権停止に加え、親権者変更の手続を未成年養子縁組に加える方向で検討を進めること、これが合理的かと思います。   長くなりましたが、以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員からは1と2の双方について御意見を頂きましたが、1については大きく2点あったのかと思って伺いました。1点目は、養子縁組後、実親の親権が失われず、養親に親権が移らないという選択肢も認めるべきではないかという御意見だったかと思いますが、少し確認したいのですが、それはいわゆる連れ子養子の場合に限っての御発言ということですね。 ○武田委員 連れ子養子に限ってです。 ○大村部会長 分かりました。それから、養子縁組に伴ってこどもの地位が不安定になるのではないかという御発言があったかと思います。養子縁組が行われた場合にも問題はあり得るかと思いますが、特に離縁について御発言があったかと思います。親権を持っている養親及び養親と結婚して婚姻関係にある実親、この二人の親権行使によって離縁がされてしまうとすると、こどもの地位が不安定になるという御指摘だったと理解をしました。それから、2については教育的な配慮から全件関与が望ましくて、手続に当たっては親の双方が少なくとも関与するようなものを考えるべきだといった御意見だと理解をいたしました。ありがとうございます。 ○棚村委員 早稲田大学の棚村です。第2の未成年養子についての親権者に関する規律について、(1)のときは、複数回行われた場合の優先順位というかルールを決めるということで、最後の縁組の養親というのが妥当かなと思います。   それから、(2)のところも、結局、実親とその配偶者というのですか、養親という形になったときの親権の帰属についても、これもやはり原則を示しておいた方がいいのだろうと思います。それから、離婚をした場合の親権者の定めについても、こういうケースで、同じように規律を設けていくということについても賛成です。   今もそうなのですけれども、結局、実親と養親を含めて、養子縁組がされた場合に、連れ子養子縁組でも、どういうふうになっているかというのは、ルールが非常に、相互排他的であったり、オール・オア・ナッシングであったり、あるいは二重にあるとか、併存するのだということで、ルールが明確になっていないということで、こどもの利益に反するような状態が起こっているのではないかと思います。そういう点で、規律を設けていくということなのですが、規律を明確化して、シンプルにある程度、原則を示しておくということは非常に必要だと思います。1については(1)(2)(3)について、賛成したいと思います。   それから、2の未成年の子の利益を損なうような養子縁組の場合の対応ということなのですけれども、これについても、大きく分けるとこれまで議論されてきたのが、入口と、それから養子縁組をされたりした場合、中で、あるいは出口でどう対応するかという話になると思います。   入口は家裁の関与というのは確かに望ましいと私も思っているのですが、今、養子縁組というのは2021年度で約6万件ほど、届出が出ています。成年養子が3分の2ぐらいですので、連れ子養子とか、実数がなかなか分からないとこもあるのですが、2万件ぐらいが未成年養子で、連れ子養子とか親族養子になっているのかなと思います。   先ほど御意見があったかと思うのですが、家裁で全件関与させるということになると、今、未成年の許可養子の数が、どういう影響なのか、少子化とかコロナの影響もあるのかもしれませんけれども、900件から1,000件あったのが700件という形で減っています、許可養子自体の申立て件数ですが。こういう中で、もちろんそういう事情もあるのですが、全部連れ子養子も含めて家裁が関与するとなると、私も家裁、約30年くらい調停委員とかをさせていただいているのですが、調査官が付いていろいろ調査をしたり、かなり時間や労力を掛けないといけない、こどもたちの問題ですから、やらないといけないと思うのです。このことが本当に現実的かどうかというと多少疑問を感じます。そこで、何らかの形で問題がありそうなケースについて家裁に関与していただいて、調査官調査も入れて、慎重にやっていただくという辺りのところで線引きができないかと考えています。つまり、全部をやるということになると過重な負担で、問題のあるケースとか集中してやらなければいけないところに時間が割けないという問題も出てきてしまうので、入口でのチェックについてはある程度絞った上で、家裁に関与してもらう余地というのは議論していいのではないかと思います。   もう一方で、入ってからと出口は正に、親権の変更というようなことになると思うのですが、これは、今正に共同親権を導入した場合でも、これまでのような親権者の変更というものでは、少しハードルが高いのでいいのだろうかということも含めて、親権の帰属について明確なルールなり選択肢を設けた場合に、それを変更する余地についてもきちんとルール化して、どういう場合にどういうケースでは変更が認められるかということを議論して、ルールや基準をきちんと明確にしていった方がいいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員からは、第2の1と2についてそれぞれ御意見いただきましたが、1については(1)から(3)までを含めて、基本的にはルールの明確化という観点から賛成という御意見だったかと思います。2については、縁組以前の家裁の関与については全件関与は難しいので、関与すべき場合を絞って考える必要があるのではないかということでしたが、縁組がなされた後の親権の変更についてはそれを認めるということですか。そうすると養親側が親権を持たないということが生じることになりますが、そうした方向の御意見でしょうか。 ○棚村委員 はい、先ほどのことと矛盾しないように、少し説明をします。実の親もそうですし養親もそうですけれども、本来だったら個別ケースですと、個別にどういう権限があってどういうことができるということを決められればいいのですが、ただ、対第三者との関係とか、対内的にもなかなか話合いが十分に行かないということもありますし、そういうときには、先ほど言ったようなパッケージとして親権・監護は優先して養親が持つ。しかし、二次的にとか、養親の親権・監護権のほかに、実親にも親としてその親権・監護権行使を監視したり、改善を求める地位や権限をある程度残しておいてもいいとも思っています。親権があるかないかというのと、親としてどう関わっていくかということについて、これまでのように排他的にとらえるのではなく、優劣とか優先順位のルールは必要だと思います。ですから、私は親権が変更されて親権のない養親が出てきたとしても、親権変更により親権がない養親が出てきても、オール・オア・ナッシングで考えているのではなくて、事情が変わってきたり、監護養育がふさわしいなどの事実を備えれば、親権者としての地位を回復したり、復活する余地がある地位にはあると考えています。これは、単独親権者死亡の場合の後見開始か、親権者変更かとの議論と同じように考えているからです。本来は養親も実親もいろいろな形で協力できればいいのですが、複雑な法律関係になったり、話合いができないという場合には、やはり何らかの判断や基準を示さないといけないと思うのです。   ですから、その辺りのところで、話合いで何かが決められるのであれば、いろいろなパターンはあっていいのだと思うのです。ただ、親権がどこにあるか、監護者がどういう権限を持つかということについては一定のルールやパッケージとしての法的地位・権限を作らなければいけないので、それについて、例えば何にも持たない親権者が出たり、監護者が出たりというようなことは、なかなか良くないのではないかとも思うのです。   養親は親権を持たなくていいということでも、何らかの責任なり、一緒に暮らしたりして関わるという地位なり権限なりというのはあってはいいと思うのですが、少し分かりにくいかもしれませんけれども、養親になれば親権を持つという規律になったとしたら、何らかの権限は持つことになると思うのです。ただ、その中身については、いろいろな関わり方があっていいのではないかというのが現段階では私の考えです。   ですから、養親になった以上、親権者であるということについてルール化していくのであれば、何も持たない親権者としての養親というのは、身上監護権、財産管理権など具体的な権限や責任を全く負うことのない養親は想定しづらく、一定の権限や責任が第二次的に劣後する養親、実親という考え方をした方がよいのではないかと思うのです。少し分かりにくいですかね。つまり、親権を持つか持たないかという話と、それからどういう関わり方を実際にして責任を負っていくかという、例えば相続権とか扶養の権利義務というのはあるわけですよね、親権を持たなくてもですね。今の議論でいうと、居所指定権とか監護教育権とか、そういう条文があるわけですから、一応、親権者になっているわけです。親権を持つという規定をしている以上は、持たざるを得ないのではないでしょうか、今の規定で行く限りでは。   ただ、先ほどから議論しているのは、親である以上何らかの、何の権利義務も持たない地位にあるのかというと、先ほど言いましたけれども、私自身はずっと思っているのは、情報アクセス権とか、元気であるとか、健康についてのアクセスができるとか、最低限度持っているものというのはあるのだと思うのです、濫用することは許しませんけれども。その上で、親権を持つということによって、監護教育権とか職業許可権とか居所指定権とか、それにどういうふうに関わっていくかというのは、私自身は正直言うと、関係する親の間で本来は話し合えばいいと思うのですが、話合いができない場合には、一定のどこかに集中して、何かができるということをパッケージとして認める必要はあると思います。つまり、監護者というのを指定するのもそういう意味合いがあると思うのです。   要するに、争いがない人たちの間では正直言って事実上、話ができるのだと思うのですが、やはり争いが起こったときにどういうふうにするかというので、余り複雑な規定とか、当事者に丸投げするようなわけにはいかないので、多分今の御質問の趣旨だと、親権を持たない養親というのがあっていいのかというのは、正にパッケージとして用意されているものを全く持たない人が、事実上関わらないという人が出てきても、それはしようがないと思います。しかし、他方で、法律上は何らかの形で一定の権限や責任を負っている以上、何も親権を持たない、親権者になる可能性もない養親というのは認めるべきではないのではないかと思っています。 ○大村部会長 そうすると、結論としては、養子縁組がなされた後に実親からなされる親権変更の申立てによって養親の親権が失われるということは認めないというお考えになりますか。 ○棚村委員 いや、それも少し、その親権の停止とか喪失の要件もそうですけれども、変更が必要だというときに、どういう地位にあるかは簡単には言えませんけれども、要するに、親権というパッケージを持っている人がふさわしくないとか、変更の必要が出ているときに、親権の変更はあるのではないかと思うのです。 ○大村部会長 変更はあるという御意見ということですか。 ○棚村委員 結果的にはあり得ると思っております。 ○大村部会長 御意見として分かりました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○石綿幹事 幹事の石綿です。第2の1と2について、それぞれ意見を述べさせていただければと思います。   まず、第2の1については、資料にあるような形で検討を進めることに賛成いたします。特に(1)、(2)は、従前このように解釈されていたものの条文の根拠が必ずしも明らかになかった点について明確にするということで、大きな意義があるのかと思います。   (2)に関して、1点、指摘させていただきたいと思います。武田委員が、(2)のような規律を設けることで、離婚後に親権を共同して有していた者が養子縁組で親権を失うということに御懸念を示され、養親が親権を持たないという選択肢もあるのではないかということを御提案なさっていたかと思います。   どのような選択肢を採るかということは別にして、養子縁組によって親権を失うということに懸念があるということは、理解できます。その上で、考える方向性として、親権についてはこの資料のとおりとしていくけれども、親権を失った実親がどのような形で子に関与していくことができるかという形の議論を進めていくということもあるのかと思います。武田委員の案に対しては、なぜ連れ子養子の場合だけ養親が親権を持たないのかということを十分に説明できるのか、そういう制度が作れるのかという問題もあるかと思いますので、親権については資料の形とし、その上で、では養子縁組の結果、親権を失った親がどう関与していくのか、その者は離婚後親権者でなかった親よりも少し違う地位にあるのではないかといった視点で、何か整理をするということもあり得るのかなと思いました。これが第2の1についてです。   それから、第2の2についてですが、未成年の養子縁組について家裁が関与するということは、本来であればそれが望ましいのではないかと私は個人的には思っております。子の氏の変更については家庭裁判所の許可が必要であるのに対して、連れ子養子縁組などについては類型的に子の利益に反しないということで不要だというところが、本当に説明できているかというところには疑問があります。しかし多くの委員の方々が御指摘のように、全件関与が必要だという形で制度設計ができるのかという問題もあるということは理解をしておりますので、仮に全件関与ではないという形になったとしても、何らかの形で養子縁組というのは非常に重要な効果を持つものなのだということを周知をする、例えば、養子縁組届出を出す際に、これによってこどもの親権ということがあなたには発生するのですよと、ただ紙切れ一枚で婚姻、特に連れ子養子の場合、再婚とセットにしているものではないのですよという形で周知をしていただくということで、養親に自覚を持っていただいて、それが子の利益にひいてはつながると思いますので、そのような対応をしていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事から2点御意見いただきましたが、1については基本的には賛成であるということでした。(1)(2)は、従来のルールの根拠を明らかにすることになるということで、それとの関係で、(2)について、実親の親権が失われるというところを動かすのではなくて、実親の関与を考えるべきだということをおっしゃったかと思うのですけれども、その関与の中身として、何か具体的なことを想定されているのだったら、少し伺えればと思ったのですけれども。 ○石綿幹事 例えばフランス法などで、親権を有していない親についても一定程度、こどもの情報について知るような権利が保障されているというようなものがありますので、一定の範囲で、こどものことを知ることができるというようなことを考えてみるということも可能性としてはあるのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございました。分かりました。それから、2については、全件関与は望ましいとしても難しいので、そこで何らかの形で別の対応を考えるべきである。その別の対応の中身については、先ほど武田委員は、裁判所の全件関与は教育的な観点から望ましいとおっしゃいましたが、石綿幹事は、そこのところを実質的に取り出すというような発想だったかと思います。 ○小粥委員 委員の小粥でございます。たった今、石綿幹事がおっしゃったことにほぼ全面的に同じ、よいと思っておりまして、なので、付け加えるべきことがほとんどございません。第2の1、第2の2について、基本的には石綿幹事と同じ意見でございます。   一つだけ付け加えさせていただきたいことは、連れ子養子縁組について裁判所が全件関与すべきだという意見が、伝統的にそれなりにあったと理解しておりますが、この部会では、今日は裁判所の資源の乏しさに対して非常に理解があるような発言が相次いでいて、私としては、そこまで物分かりがよくてよいのかという気がしております。つまり、全件養子縁組の成立の段階で関与することは確かに難しいかもしれないけれども、だからといって裁判所が、例えば調査官の増員や予算措置についての努力をしないで行くことを我々は見過ごしてはいけない。事後的に親権者変更などの場面でも裁判所が活躍することは非常に期待されているわけですので、余りこの部会で裁判所に対して物分かりのよいことばかりを言うというのはどうなのでしょう。これはさらに、先ほどの水野委員の御発言にも通じるところがありますけれども、やはり裁判所に対して物分かりがよいことを皆で言うのはよくないと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。委員、幹事からは、全件関与は望ましいが、実際には難しかろうという御発言が続いたので、望ましいとすれば、もう少しそれを追求する必要があるのではないかという御発言として承りました。   そのほか、いかがでしょうか。 ○原田委員 私も全件関与について強く申し上げたいと思っておりました。私が言うと何となく角が立つけれども、小粥委員がおっしゃるととてもまろやかで、皆さんに賛成していただけるので、とても有り難く思いました。前回、裁判所の方から争いのある事件に集中したいというふうな御発言がありましたけれども、元々地方裁判所と家庭裁判所の役割から考えると、やはり家庭裁判所の後見的な役割というのはしっかり果たしていただきたいと思いますし、成年後見の分野では、もう本当に家裁がパンクしそうなほどたくさんの高齢者に対して関与しているのに対して、こどもに対してもっと、少年事件を起こしたこどもだけではなくて、いろいろな家庭の中で困っているこどもに対して家庭裁判所が手を差し伸べるというところにもっと注力をしていただきたいと思います。共同親権を導入するのであれば、本当に家庭裁判所の役割が重要になっていくと思いますので、是非その点については家庭裁判所にも、あるいはこども家庭庁の皆さんにも努力をしていただきたいと思っております。   弁護士会は未成年養子縁組に対して全件家裁の関与ということを言っておりますが、それは、一つは家庭裁判所が関与することによってこどもの意向を確認することができるということで、こどもの意思をやはりこの手続の中に入れていくという一つと、それから、もう1人の親の関与ということも、これは共同親権下ではなくても、単独親権の下でも、親権を持たない親の意見を聴くという手続としても考えることができると思われますので、そういう意味で家裁関与ということを強調しております。   それから、共同親権下で代諾の同意の話が出ましたけれども、今、親権のある親が同意しないと養子縁組ができないというのに対して、共同親権下で単独で養子縁組の申立てをして、そこで附帯的な申立てとして代諾もするというような形で、共同親権があるもう1人の親も手続に関与させることによって、その養子縁組が子の福祉にかなうかどうかの判断を家庭裁判所がするということが可能なのではないかと思います。   それから、昔は養子縁組をした場合、実の親との親子交流については、新しい家庭を形成する上でプラスになるかどうか、どちらかというとマイナスになるような評価がされて、積極的には認められなかったような傾向があったと思われますが、現在は実の親との面会交流は養子縁組をしてもやはり必要ではないかと、家庭裁判所の考えも変わってきているのではないかと私は感じております。ですから、代諾をしたとしても、こどもが見捨てられ感を持つのかどうかという点については、やはり親子交流を続けるというような方法ででも、こどもと実の親との交流というのは可能ではないかと思っておりまして、そういう辺りも含めて家庭裁判所が関与するということがとても重要なのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。原田委員から幾つか御指摘を頂きました。養子縁組についての家裁の関与については、全件関与がやはり必要ではないかということで、その理由の一つとして、こどもの意見を聴く機会を設ける必要があるという御指摘があったかと思います。併せて、もう1人の親に関わる話もされたと思うのですが、それとの関係で、その後でおっしゃった、現行法の下で共同親権下にあるこどもを実親が養子に出す場合ですが、このときに一方の親の代諾だけでよいというお考えに立っているのですか。 ○原田委員 いえ、別の話で、現行でも単独親権の下でも、家裁介入することによって非親権者の意見を聴くことができるということと、共同親権下の場合には、両方の親が同意しないと家裁に申立てできないのかというと、そうではなくて、共同親権を持っているどちらかの親が家裁に申立てをすることによって、共同親権のもう1人の親を手続に加入させ、附帯申出か何かで代諾をするのか、あるいはその手続の中でどういう関与をさせるのか分かりませんが、関与させることができるのではないかという。だから、違う話です。 ○大村部会長 違う話ということだったのですが、今の後の方の場合は、現行法の下では、共同親権であるとすると双方の親の同意が必要だと考えているのではないでしょうか。 ○原田委員 はい。なので、そこを単独で1人の親でも申立てができるようにして、そこに共同親権を持っている他方の親を関与させる、関与する方法として、附帯請求として代諾の、だから、代諾の申立てのことが書いてありますよね、代諾だけの申立てではなくて、そもそも未成年養子縁組を認めるかどうかに家裁を関与させるという前提で立っているので、そこの申立てと代諾の申立てを一緒にするという趣旨で言いました。 ○大村部会長 そうすると、代諾について双方の親が同意しなければいけないというルールは修正するという前提ですか、それとも、手続の中で双方の代諾を調達するということをおっしゃっているのですか、どちらですか。 ○原田委員 双方の親の代諾ではなくて、申立てをする方は同意するわけですよね、もう1人の親が反対しているときに、代諾の申立てを一緒にして、その代諾が適当かどうかということと、それを含めて養子縁組することが適当かどうかというのを裁判所が判断すると。おかしいですかね。 ○池田委員 日弁連で議論したときの観点から少し、補足をしますと、代諾に限らず、共同親権下で決められないことがあったときには家裁が行使者を決めるという仕組みを設けるとすれば、この代諾の場面で父母の意見が合わないときには、それを使いましょうということになります。そうだとしても、未成年養子の許可は全件必要だとすれば、二つの事件を一緒に申し立てるということができるのではないかという議論はしていましたけれども、そのこと。 ○原田委員 そうです、代諾に代わる審判の申立てという趣旨です。 ○大村部会長 それを挟むということですね。今回、親権の共同行使を認めるとしたら、意見が一致しない場合についてそういうことも必要になるので、今、池田委員がおっしゃったようなものを挟んで、そして、その縁組自体の当否を家裁で併せて判断するという御趣旨ですね。 ○原田委員 すみません、代諾、代諾と言っていましたけれども。 ○大村部会長 分かりました。それと、あともう一つ、縁組後の実親と養子の面会交流ということがあり得るので、代諾によってこどもが捨てられるということには必ずしもならないと、それは武田委員が先ほどおっしゃったことと関わっていると思いますが、そうした御意見を頂戴いたしました。   そのほか、今手が挙がっているのは裁判所ですね。 ○向井幹事 最高裁家庭局の向井でございます。未成年養子縁組の全てについて家裁の許可を要するという考え方につきましては、まず、そもそも連れ子養子や孫養子について家裁の許可が不要とされているために、現に子に不利益となる養子縁組が多く成立しているというような具体的な実態ですとか、弊害の内容ですとか、あとは、これを許可を要するものとすることによってその弊害を解消できるというような立法事実が明らかにはされていないと考えております。裁判所内部でパブコメに際して意見募集をした際にも、立法事実が明らかでない上、いかなる考慮要素、判断資料、審理の方法によって許可、不許可を判断すべきこととなるかが明らかにされていないにもかかわらず、裁判所が適切に審理、判断を行うことは困難だといったような意見が寄せられております。   今回の部会資料では、養親として不適格な場合として、養子縁組後に子を虐待するというような例が示されております。これは、裁判所が事前に審査することによって、こういったことが防止できるのではないかということも念頭に置いているのではないかと思いますけれども、実際問題として、縁組時点で既に虐待しているという事案はまれであると思われますし、数少ないとはいえ、縁組時点でその後の虐待のリスクがあるという事案が仮にあるとしても、縁組時点で当事者が自ら消極方向の資料を提出するということはなかなか想定し難いように思われます。むしろ、虐待につきましては養子縁組の機会にとらわれず迅速に対応すべきであって、裁判所としましても、児童福祉法の事件、一時保護の事件ですとか、施設入所の事件ですとか、あと親権制限事件ですとか、こういったことで現に関与しておりますし、関与の度合は法改正によって順次拡大しているところですので、こういった機会を捉えて虐待には取り組みたいと考えております。   他方、そのほかの提案の代諾権の行使について、共同親権下で父母の意見が異なる場合に裁判所が関与するというようなものですとか、親権者変更については、裁判所の方で関与するということについては理解できるところではありますので、これについては特に反対をするものではございません。 ○大村部会長 ありがとうございます。最高裁の向井幹事から御意見を頂きました。一律の全件関与というのは、それを支える立法事実があるのかどうか不明確である、問題ケースが仮にあるとして、それを事前にチェックするというやり方は実際上は余り機能しないのではないか、むしろ事後的に、虐待等が問題であるとすれば、それに対応するということが望ましくて、そのような対応がだんだんとなされるようになっている。こうした御意見を頂きました。他方で、代諾権の行使や親権者の変更については、そうした場面について家裁が関与するということについては理解ができるという御意見を頂いたかと思います。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。ありがとうございます。私は、ここに関しては余りきちんとした議論ができないので、発言をどうしようかと思ってはおりました。おおむね今の御提案でよいとは思っておりますが、虐待の防止観点から実親の関与があることが望ましいという意見があるのですけれども、それは少し目的と手段がやはり異なるのかなとは思っておりまして、内縁関係の母の交際相手からの虐待ケースというのが若年の親の場合に生じていることに関しては、やはり別の支援というのがもっと充実すべきであるし、児童福祉の分野なのかなと思っております。   とはいえ、少しやはり言っておきたいと思ったのは、子の意思の確認というのはすごく大事な論点だと思っていて、この間、ある民間組織の、あれは再婚ですかね、こどもの年齢とかを書かせてマッチングするサイトみたいなのが出てきたときに、私もその後に意見を言いましたけれども、やはり再婚のときに、こどもが一番意見を言うことができない立場の人間であるわけですよね。なので、あえてやはりこどもの意見をきちんと聴くということを親がしっかりするということが大事だと思っていて、それをどういうふうに定着させるのかということは課題としてあるし、また、再婚のときに、こどもの意思もですし、再婚するひとり親の方、実親の方が、離婚したことによって非常にこどもに申し訳ないと思っていたりしていて、それを解消するために、再婚したらいいことがあるのではないかみたいに思って、焦って再婚されるような方も見受けられるので、やはりこどもの幸せというか、そういったところをきちんと考え、自分自身がしっかり考えられ得る、私は七つのチェックリストというのを今、作っているのですけれども、それは少しこの法的なこととは違うので、コミュニケーションの問題として書いているのですけれども、何らかの子の意思の確認が文化として定着するために、何かの方策が必要だと思いましたということです。それはとても大事なことで、それが家裁の関与で実現するのか、あるいはもう少し違うことなのかというのは、まだ分からないということです。   以上です。ふわっとした意見で申し訳ありません。 ○大村部会長 ありがとうございます。2点おっしゃったかと思いますけれども、一つ目の実親の関与ということについておっしゃったのは、縁組の際の親権を持たない実親の関与ということですね。分かりました。それから、子の意思の確認というのは文化としては望ましいとおっしゃいましたけれども、これをどうやって確保するかということについては、家裁関与がいいかどうかということも含めて更に考える必要があるという御意見として承りました。   そのほか、いかがでしょうか。 ○池田委員 池田でございます。家裁の全件関与という点に関してですが、最高裁判所の方から、そういう立法事実がないのではないかという御指摘がありましたけれども、この点は元々、恐らく家裁の許可というのは親子関係を成立させる宣言のような意味があって、理念的にやはり家裁がきちんと全件関与すべきではないかと言われていたのではないかと思います。立法事実というよりも理念的なもので必要だと言われてきたのではなかったかなと思います。それが1点です。   あと、養子縁組がされた後、親権者の変更の申立てができないと、解されていることについて、それをできるようにすべきだと私は思います。その理由の一つとして、養親が不適切な養育をしている場合に、親権制限で対処すればいいのではないかと言われることがあるのですけれども、親権制限をしても、他方の実親は未成年後見人にはなれても親権者にはなれないというところがあると思います。そこを、自分に親権を戻してくれというふうなことを言うためには、やはり親権者変更を認める必要があるのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。家裁全件関与については、立法事実というよりも理念の問題なのではないかということと、養子縁組後の親権者変更の申立ては認めていく必要があるのではないかという御意見として伺いました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○原田委員 今、池田委員がおっしゃってくださった、養親と実親がいるときに、他方の実親から親権者変更が申し立てられるようにしてほしいという点は本当に、濫用のおそれがあるという意見もありましたが、実際、養親と実親の間で苦しんでいるこどもが実親のところに逃げてきても、なかなか実親のところで暮らし続けることが難しいというようなところがあります。私が経験したケースでも、中学生のときに、これは実親からの体罰に対して養親も何の防ぎもしないというところで、実の親のところに逃げてきて、でも、まだ15歳になっていなかったので、監護者指定で実親に監護権を与えてもらった上で、15歳になるのを待ってこども本人が離縁の申立てをして、離縁が認められてから親権者変更をして、もう親権者変更が認められたときは17歳になっていましたので、もう少しで親権も終わるのですけれども、そういうケースが実際、養親と実親の間で苦労しているこどもたちをどう守るかという点では、非常に必要な申立権ではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。親権者変更の申立てというのは必要ではないかという御意見だったかと思います。再婚後に養親と実親が共同で親権を行使しているのに対して親権を持たない実親が親権者変更の申立てをして、その変更の申立てが認められることによって、再婚夫婦の親権はいずれも失われるということになりますか。 ○原田委員 多分。そうしないと母親同士の親権者になったりするのではないかと思いますけれども。要するに、元々の実親だけの親権を変更するということになると、母親同士の親権に。例えば、父親と母親がいて、父親が親権者になって新しい女性と再婚して、その人と養子縁組して、ここに父母がいると、そこで親権者変更の申立てをして、父親と母親の親権者変更の申立てをすると、こちら側の養親の母親の親権が残ってしまうので、両方なくさないといけなくなるのかと思います。もちろん、母親同士の親権を認めてもいいというなら、それはそれであるかもしれませんが。 ○大村部会長 両方なくなるという前提ですね。 ○池田委員 私はその想定をしていました。ですから、共同親権から単独親権という意味合いも出てくる親権者の変更なのかなと思います。 ○大村部会長 分かりました。   ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。 ○久保野幹事 すみません、終わり掛けのところに。幹事の久保野です。2の裁判所の関与の関係で、やはり伺っていて、連れ子養子の場合にこどもの利益をその時点で損なっている可能性や、その後のあり得る不利益について十分に検討する必要や、こどもの意思や意向をしっかり捉える必要について、幾つも指摘があることを考えますと、少し突飛な案かもしれませんけれども、全件は無理でも、15歳未満で一定年齢に達したこども、あるいは意思能力が認められるこどもに裁判所の審査を求める申立てという機会を与えるといったことも、案としては考えてみてもよいのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございました。家裁関与について全件は無理だとしても、一定の場合に家裁に申立てができるとすべきである。その一定の場合として、一定の年齢で線を引いて、一定の年齢に達している子は申立てをすることができるということを考えてみたらどうかという御提案だったかと思います。   そのほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。 ○佐野幹事 今の久保野幹事のお話に少し勇気を頂いて、恥ずかしながら申し上げると、この養子縁組が福祉の現場で困るのは、不受理届が届出人とその法定代理人しか出せないということにあります。養子候補になっているこども自身は15歳未満だと自身で届出できませんし、その周りの人たち、親族や児童相談所など福祉機関が、子の利益に反する縁組だと思っても不受理届をも出すことができないというところに悩ましさがあります。私は未成年養子縁組につき全件家裁関与が望ましいとは思っていますけれども、不適切な養子縁組のスクリーニングの方法として、例えば児童相談所も届出を出せるとか、例えば、親がこどもを見ていなくて監護者が見ているとかいう場合に、監護者だということが証明できたら出せるとか、そういった方法によっていったん縁組を停止しておいて縁組の可否を家庭裁判所で判断するような仕組みというのも一つあり得るかもしれないと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。佐野幹事からも、先ほどの久保野幹事とは少し違う案ですけれども、全件ということではなくて、一定のものを絞り出すような仕組みを考えることはできないだろうかという御提案を頂きました。   ほかにはいかがでしょうか。   それでは、一応のまとめということになりますけれども、部会資料28の第2のうち、1の(1)から(3)については、おおむね皆さんこれに賛同されるという方向の御意見だったかと思って伺っておりました。ゴシックに出ていないところについては様々な御意見等を頂きましたけれども、ここに書かれている限りでは、おおむねこの方向ということだったかと思います。   2の未成年者の利益を損なうような養子縁組に対応するための規律という点については、事前の問題と事後の問題がありますけれども、事前の家裁全件関与ということについては実際上かなり難しいのではないという認識は広く行き渡っているように思いますが、ではどうするかという点については、それでも家裁に何とかしてもらう必要があるのではないかという御意見、事件を絞り込むような何らかの仕組みを考えるべきではないかという御意見、それから、やはり家裁の全件関与は難しいので、他の何らかの形でその情報を提供する等々の対応をすべきではないかという御意見など、様々な御意見が出されていたところかと思います。   事後については、親権者の変更を認めるべきではないかという御意見が複数出されるとともに、実親の関与を別の仕方で考えていくということも考えられるのではないかという御意見も頂戴したかと思います。   以上のようなことで、また更に検討をしていただきたいと思います。  それでは、この部会資料28の第1と第2につきまして、本日は意見を頂戴したということにさせていただきたいと思います。   そこで、本日の審議はここまでということで、次回のスケジュール等について事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○北村幹事 事務当局でございます。次回の会議は、令和5年7月18日火曜日、午後1時30分から午後5時30分までで開催したいと思います。場所は改めて御連絡いたします。   次回の会議では、残っている論点として、養育費に関する残りの論点であるとか、親子交流に関する論点について御議論をお願いしたいと考えておりますけれども、具体的な論点につきましては、事務当局において検討した上で部会長とも改めて御相談させていただいて、皆様にお知らせさせていただきたいと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。次回、7月18日ということで御予定を頂ければと思います。   それでは、法制審議会家族法制部会第28回会議をここで閉会させていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。閉会いたします。 −了−