法制審議会 区分所有法制部会 第10回会議 議事録 第1 日 時  令和5年8月1日(火) 自 午後1時30分                     至 午後4時36分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  参考人からの意見聴取 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○佐久間部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会区分所有法制部会の第10回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   初めに、人事異動の関係で委員等に異動が生じておりますので、御紹介いたします。今回から竹内努委員、神谷将広幹事、下村哲也幹事が新たに出席されることになりました。つきましては簡単に自己紹介をお願いいたしたく存じます。   竹内さん、お願いします。 ○竹内委員 7月24日付けで民事局長を拝命いたしました竹内と申します。委員、幹事の皆様、それから今日は参考人の皆様にもお越しいただいて、平素大変お世話になっております。この部会での区分所有法制に関する議論は社会的にもかなり注目を浴びているものと認識をしております。今、中間試案についてのパブリック・コメント中ということですが、更に良い議論ができるようにしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   続きまして、神谷さん、お願いいたします。 ○神谷幹事 ただいま御紹介いただきました、私、7月4日付けで国土交通省住宅局住宅経済・法制課長を拝命しました神谷と申します。住宅局では住宅行政、当然、マンション行政等を担わせていただいておりまして、この区分所有法制と我々が所管しています制度は非常に密接に関連しております。そういう意味で、非常に中間取りまとめ案についても真摯に勉強させていただきたいと思っておりますので、引き続き御指導のほどよろしくお願いいたします。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   では、続きまして下村さん、お願いいたします。 ○下村幹事 7月4日付けで矢吹の後任でマンション担当の参事官を拝命しました、国土交通省の下村と申します。よろしくお願い申し上げます。御案内のとおり、国土交通省住宅局でも「今後のマンション政策のあり方に関する検討会」を進めておりまして、引き続き法務省様ともしっかりと連携をさせていただきながら、マンション政策の強化充実、しっかりと取り組んでいきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。お三方におかれましては、今後どうぞよろしくお願いいたします。   なお、大谷さんが法務省大臣官房参事官から民事局民事第二課長に異動されましたけれども、引き続き幹事をお務めいただきます。よろしくお願いいたします。   本日は浅見委員、増田委員が御欠席です。   では、配布資料や本日の予定等につきまして、事務当局から説明をお願いいたします。 ○畑関係官 資料について御確認いただきたいと思います。事前に御案内いたしましたとおり、今回はヒアリングのみの回ですので、事務当局から部会資料の御用意はございません。皆様には、本日参考人としてお越しいただいております各団体の皆様方から御提供いただきました資料をお送りしております。お手元にない場合には、途中でも結構ですので事務局の方にお知らせください。   また、前回中間試案をお取りまとめいただきまして、現在、中間試案に対するパブリック・コメントの手続を実施しているところでございます。期間は7月3日から9月3日までの2か月間とされていますので、念のためお伝えいたします。   本日の予定ですけれども、本日のヒアリングについて簡単な流れを御紹介しますと、一般社団法人マンション管理業協会様、一般社団法人日本マンション管理士会連合会様、一般社団法人マンション計画修繕施工協会様、一般社団法人再開発コーディネーター協会様、東京都様、京都市様の6団体から意見を伺う予定で、各団体様、15分程度を予定しております。最初に御紹介した三つの団体様から御意見を頂戴した後に委員、幹事の皆様方からの質疑応答の時間を設けて、その後、後半、残りの3団体様から御意見を頂戴して、同様に質疑応答の時間を設ける予定としております。よろしくお願いいたします。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。   それでは、本日お越しいただきました参考人の皆様方から意見を伺うことといたします。   初めに、参考人の皆様方を御紹介いたします。一般社団法人マンション管理業協会、山川人史様。一般社団法人日本マンション管理士会連合会、瀬下義浩様、佐藤優様、萩原孝次様。一般社団法人マンション計画修繕施工協会、中野谷昌司様。一般社団法人再開発コーディネーター協会、金子光良様。 ○金子参考人 よろしくお願いいたします。 ○佐久間部会長 東京都住宅政策本部民間住宅部マンション課長、山口大助様。 ○山口参考人 お願いします。 ○佐久間部会長 京都市都市計画局住宅室住宅政策課企画担当課長、神谷宗宏様。 ○神谷参考人 どうぞよろしくお願いします。 ○佐久間部会長 よろしくお願いいたします。   皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御参加いただきお話しいただきますこと、誠にありがとうございます。何卒よろしくお願いを申し上げます。   委員、幹事の皆様におかれましては、各団体から御提供いただきました資料を御用意ください。また、質疑応答の時間につきましては、先ほど案内がありましたとおり、3団体ごとにまとめて設けたいと存じます。   それでは、初めに一般社団法人マンション管理業協会の参考人からお話を伺います。山川様、よろしくお願いいたします。 ○山川参考人 私は一般社団法人マンション管理業協会の山川と申します。本日はよろしくお願い申し上げます。   まずは、当協会の御紹介を簡単にさせていただきます。一般社団法人マンション管理業協会とは、マンション管理業者で構成する会員相互の協力によって、マンションの管理システム、管理技術等に関する調査研究を行うなど、マンションにおける良好な居住環境と快適な共同生活を確保し、もって国民生活の向上と社会福祉の増進に寄与することを目的としている団体でございます。現在の協会会員数は正会員が353社、賛助会員が8社でございます。また、私は同協会内の業務・法制委員を務めております。業務・法制委員会とは、管理システム、管理技術、管理委託契約約款及びマンション管理についての法制、金融、税制に関する事項を担当する委員会となっております。   それでは、次に本日の主な流れでございますが、まず初めに、本年6月にプレスリリースを行いました令和4年度相談等受付状況について御紹介をさせていただきます。その後、本題であります、先般公表されました区分所有法制の見直し中間試案につきまして、特に区分所有建物の管理の円滑化に焦点を当てて、マンション管理業の現状を踏まえ、お話をさせていただきたいと思います。   まずは、令和4年度相談等受付状況を御紹介させていただきます。本年も令和5年6月28日、国土交通省へ過去3年間の相談件数のプレスリリースを行いました。   (1)に年間の受付の合計を記載しております。合計件数が6,844件、新型コロナウイルスなど感染症関連の相談で大幅増となっておりました令和2年度からは、2年続けての減少となっております。(2)の受付方法は、電話受付がほとんどとなっています。次いで、相談票をファクス又はメールで頂く方法、来訪につきましては昨今、減少傾向となっております。   続きまして、(3)は相談者の内訳でございます。会員社の管理会社が56%、会員社ではない管理会社が7%、管理組合からの問合せは、役員と非役員を合わせて33%となりました。(4)は相談内容です。全体の相談件数が1.4%減少の中、その他の相談が減少し、管理組合関係、管理会社関係及び法令関係の相談比率がそれぞれ増加しております。   続いて、(5)相談項目の内訳でございます。管理規約、細則の相談が引き続き大きな割合を占めております。管理規約、細則の相談の中でも、マンション標準管理規約第47条(総会の会議及び議事)第2項における普通決議で決するべきか、それとも第3項における特別多数決議で決するべきかといった解釈の相談が多数を占めております。これは、特別多数決議の要件を満たすことが大変に困難となる投資型マンションなどで非常に多く受ける相談の一つでございます。   続きまして、本題でございます。先般公表されました区分所有法制の見直し中間試案につきまして、区分所有建物の管理の円滑化に焦点を当てて、マンション管理業の実情と相談事例、懸念事項等をお話しさせていただきたいと思います。   公表されました区分所有建物の管理の円滑化に関する5項目について、各項目ごとにお話をさせていただきたいと思います。   ページの方、1枚進めていただいてよろしいでしょうか。 ○大谷幹事 すみません、少し機器の状況が悪いようで、今うまくページが変えられていませんけれども、皆さん、席上では持っておられますので、続けていただければと思います。 ○山川参考人 承知しました。   それでは、まず、一つ目でございますが、集会の決議の円滑化についてです。当業界の実情、相談事例・懸念事項等につきましては、まず、投資目的の海外在住の区分所有者の方は、届出先へ郵送、架電をしても返信がなく、特別多数決議が困難な状況が発生しております。また、出席者の多数決とする場合には、一部の区分所有者、特に声の大きい方という印象になりますが、そういった方の意見に流されるといった懸念も考えられます。また、決議の母数から除外するためには、所在等不明区分所有者の定義について規定いただき、周知する必要があると考えております。   二つ目でございますが、区分所有建物の管理に特化した財産管理制度について、当業界の実情、相談事例・懸念事項については、まず、所在等不明区分所有者の専有部分が漏水事故の発生元などになった場合、対応に苦慮することが考えられます。また、専有部分への入室を伴う点検業務、消防設備点検や排水管洗浄作業などの未実施によりまして、設備又は機器等の故障の発見、これらが遅延することによって、その後の事故が拡大するということが懸念されます。   また、三つ目でございますが、専有部分の管理の円滑化について、当業界の実情、相談事例・懸念事項については、まず、配管の全面更新等を行う予定の長期修繕計画は、必要な修繕積立金額が高額になりますので、修繕積立金改定自体の理解を得にくくなることが考えられます。また、海外の区分所有者も増加しつつあり、国内代理人は必須であると考えております。細則に代理人の設置を定めている事例も、少なくはございますが、実際にございます。また、国内代理人については、本当に区分所有者の代理人であるかどうか確認がとれないことがありますので、代理人である旨の証明が必要になると考えております。   次に、四つ目でございますが、共用部分の変更の円滑化について、実情、相談事例・懸念事項につきましては、まず、特別多数決議の要件を満たすことが困難なマンションに共通する点として、マンション外に居住する区分所有者が多いこと、極端に戸数が少ない、例えば10戸程度とか、又は極端に戸数が多い、200戸、300戸超ということがございます。また、海外に在住の区分所有者が多いことなどが要因として考えられます。具体的には投資型マンション、リゾートマンションなどで多数散見されている状況でございます。また、特別多数決議の要件を満たすことが困難で、必要な工事等が行えないことにとどまらず、管理規約の変更ができないという事由も見受けます。   最後でございますが、五つ目、になります。その他の管理の円滑化について、実情、相談事例・懸念事項については、まず、区分所有者の責務について、年金生活者については修繕積立金の増額等による金銭負担というのは困難になることが想定されますので、一概に責務というところでまとめることは少し困難になるのかなと考えております。また、DX化を進める一方で、デジタルディバイドといったインターネットなどの恩恵を受けることのできる人、できない人、この間に生じる情報格差等の対応についても必要になってくると考えております。   マンション管理業協会からは以上でございます。ありがとうございます。 ○佐久間部会長 山川様、誠にありがとうございました。   続きまして、一般社団法人日本マンション管理士会連合会の参考人から意見を伺いたく存じます。瀬下様、佐藤様、萩原様、よろしくお願いいたします。 ○瀬下参考人 日本マンション管理士会連合会の瀬下です。よろしくお願いいたします。こちらの方は初めてなので、日本マンション管理士会連合会というのは、全国の都道府県マンション管理士会の連合体となります。全国で唯一の、実務をするマンション管理士の連合会となり、会員は全国で約1,700余名ということになります。今回、こちらの方の区分所有法改正ということで、意見の方を述べさせていただきますけれども、現場の方で実務をしているマンション管理士が多いので、ここら辺、緊密に関係していることもありまして、意見の方を述べさせていただきます。   まず、資料の方2ページ目になりますけれども、よろしいでしょうか。集会の決議を円滑化する仕組みということで、所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する仕組みということで、所在等不明区分所有者は公的機関の認定を経て、所在等不明区分所有者等を決議の母数、いわゆる頭数要件と決議要件の両方の母数から除外することができる仕組みを創設するというのがございました。先ほど管理業協会さんの方でも話がありましたけれども、投資用マンション等においては、規約の改正、変更などが非常に困難しているため、この仕組みというのは非常に有効と判断されますけれども、安易に所在等不明であると認定して区分所有者を決議の母数から除外することは、特定の区分所有者が所在等不明であるかどうかについての深刻な紛争が生じかねないという懸念がございます。所在等が不明であることについて公的機関の認定が必要不可欠と考えております。連合会の中での意見としましては、現在の所在不明者の財産管理制度を流用できないかという意見がございました。   続きまして、3ページ目になりますけれども、出席者の多数決による決議を可能とする仕組みでございます。集会における一定の議事については、出席した区分所有者及びその議決権の一定の多数決によるもの、出席者の多数決による決議を可能とする仕組みとして、不参加区分所有者を決議の母数から除外する仕組みは、案としてD及びEを決議の母数から除外し、A/(A+B+C)が法定の多数決割合を満たせば足りるということになっております。標準管理規約において普通決議は、半数以上の出席者、委任状、議決権行使書も含まれるのですけれども、この半数以上の出席者の総会において、その出席者の過半数以上の賛成による承認ということで規定されております。特別決議や建替え決議については、必ず絶対多数ということになっておりますけれども、普通決議においては今でもこのような御提案の内容となっております。集会に出席せず議決権も行使しない区分所有者は、一般に決議における意思決定を他の区分所有者の判断に委ねていると類型的に評価することができるため、決議の母数から除外するということは実務的には非常に有効に考えると我々は判断しております。   次は、4ページ目です。区分所有関係の解消・区分所有建物の再生のために、新たな仕組みとして、多数決による区分所有関係の解消・区分所有建物の再生ということがございます。区分所有関係の解消と区分所有建物の新たな再生手法としまして、建替え決議と同様に、多数決により区分所有建物を取り壊した上で敷地を売却するということを可能にする制度、以下、建物取壊し・敷地売却制度といわれておりますけれども、これは実際に私の方で管理者となって9年前、平成24年に取壊し・敷地売却を実施しましたけれども、この段階では全員の書面合意を取り付けたこともあり、非常に労力を要しました。もし多数決決議の決議が可能であるなら、手順としては容易になるとは思われるのですけれども、多数決ということは賛同しない組合員もいるということで、現実的には賛同しない、若しくは反対者との調整の方が労力が掛かる可能性が高いと想定されます。連合会内での意見としては、民法の特則になるので、要件、例えば築50年経過したものというのを付けるかどうかという判断も必要かというような意見がございました。   次のページを見ていただくと、そのとき実際に使いました現実の解体・取壊し例の内容ですけれども、都内の小さなマンションです。行政区より、近接する区道拡幅のために道路から3メートルの部位を売却するよう要請されました。これにつきましては、築17年ぐらいなのですけれども、販売の際には売買の際の重要事項説明にまだ入っていなくて、その翌年に決まったという内容でして、これを3メートルを要請されますと、小さなマンションで、エントランスと階段がなくなってしまうため、はっきり言うと、マンションの体を、完全に機能を有しなくなりますので、組合員からの要請に応じて、私の方で管理者となって交渉の末、全敷地の売渡しと解体費用の提供まで譲歩してもらったという事例でございます。この段階では、9年前ですので、組合員全員から合意書面をもらい、無事に解体、敷地売却を大体1年程度で実施できたというところで、非常に円満な解決となった事例がございます。ただ、これは飽くまでもやはり全員合意ができるという前提ということで、そうなればこれだけ速やかにできるのですけれども、そこに、例えば多数決という要件が入って、反対者が出るとか、合意できない方が出る、あるいは売渡し請求だとか買取り請求だとかというところが出ますと、そうそうそういう短い期間では成功するとは思えておりません。   次のページをお願いいたします。これから管理不全マンションのところですけれども、管理不全の専有部分の管理制度ということで、裁判所は利害関係人の請求により、当該専有部分、管理不全専有部分の管理に特化した管理人ですね、管理不全専有部分管理人による管理を命ずる処分にすることができるとする新たな財産管理制度、管理不全専有部分管理制度を創設というところです。管理不全専有部分管理人は、集会の決議において、専有部分の区分所有者に代わって議決権行使をすることができることができない、しないものとすること。これにおきましては、マンションにおいては所有者不明で一番厄介となるのは滞納問題なのです。法的措置をしようにも、相手が誰で、どこにいるか分からない場合には、滞納金を解消しようもないのです。このような管理人制度を創設してもらえれば、滞納金対応も可能になるのではないかと想定されます。議決権行使を行えないとしても、他の議論であったように、決議要件の分母から外してもらえば支障は生じないかと考えられます。意見としては、管理人の義務と権利を明確にすべきという意見がございました。   その次のページになりますけれども、今度は共用部分の管理制度になります。裁判所は、区分所有建物の共用部分の管理が不適当であることによって、他人の権利又は法律上保護されている権利が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、管理人による管理の必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該共用部分、管理不全共用部分管理人による管理を命ずる処分をすることができるとする新たな財産管理制度、管理不全共有部分管理制度を創設すると。これは、地方自治体が行っている管理不全マンションへのマンション管理士派遣等、その他のそういう措置の、その先にある問題と捉えられます。管理不適当という前提には、管理運営が不全、例えば管理組合がないなどであるため、地方自治体が管理不全解消に当たっては必要な制度と考えられます。   最後のページをお願いいたします。団地内の建物の一括建替え決議の多数決要件の在り方ですけれども、A案としましては、団地内建物の一括建替え決議を区分所有者及び議決権の各4分の3あるいは3分の2以上に単純に引き下げると。C案としては、団地内建物の区分所有者全員の合意により、各棟要件の多数決議割合を過半数まで引き下げると。これに対して、決議要件を引き下げるのに全員の合意が必要となれば、かえってハードルは高くなるとも考えられます。建替えなどは、幾ら決議要件を下げても、強硬な反対者がいる可能性があるので、根本的な、要は建替えの促進に直接つながる、推進させるというものではないのではないかと、合意には至らないケースが多数出る可能性はまだまだ残されているのではないかと考えております。   私の方から、発表は以上なのですけれども、今日、オンラインで参加しています、副会長の萩原の方が、被災マンション法について実際に東日本大震災と熊本大震災を直接関わった者として、少しお話をさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○萩原参考人 私は日管連の副会長を務めております萩原です。今日はお時間を頂きありがとうございます。東日本大震災当時に宮城県マンション管理士会の会長を務めておりました。経験の経過は、まず、2003年に仙台市の駅東土地区画整理事業で建替えマンションがございまして、それの権利変換審査委員を務めております。その後、2011年の東日本大震災では、公費解体・建物取壊しマンションが5件出まして、そのいずれにも関与しております。その後、2016年の熊本地震ですね、こちらは公費解体10件とか、その他、敷地売却とかいろいろ、計14件ございまして、その一部に関与しております。その経験から今日、お話ししたいと思っております。熊本地震のメゾンホンジョウというマンションは、国土交通省の補助事業で建物取壊しと敷地売却を実施しております。これらの経験からは、御存じの方はいらっしゃると思いますけれども、被災マンションの建物取壊しと敷地売却マニュアル、民事法研究会の書籍を出しておりますので、是非そちらを参考いただければと思っております。   まず、これらの経験から、飽くまでも経験の範囲で申し訳ないのですけれども、決議要件はさほど問題ではなかったというのが経験上の実感になります。結局、ふだんの日常的なマンション管理では、多くの合意を取るということを基本に管理組合の運営をサポートしておりますので、どうしてもそういうふうになるという。経験からすると、建物取壊し・敷地売却、この企画や提案が妥当であり公平であれば、かなり多くの賛同を得られるという経験をしています。問題となるのが、決議要件の前に、やはりマンションの市場性、事業性、これが大きくマンションの運命に関わるという、次に、マンション管理組合のこれまでの内部で引きずってきた様々な、10年、20年、30年の経過があるので、意外とそれを引きずって、決議がまとまらない、3番目に、外部からいろいろな提案というか意見が入るのですけれども、それが結構不適切な雑音になって、管理組合が振り回される。内部でも敷地売却の問題は結局、不動産売却なので、いろいろな利権が絡んでしまうという、こういうのが実務上、壁にぶち当たるときの課題になっています。   被災マンション法の問題ですけれども、まず、これは何度となく皆さんにお話ししています、事業法ですね、決議法を何とか整備できないですかというお話で、結局、敷地売却のときには持分移転が個々になされなければいけないという問題もありまして、結局、代理登記も何も今のところ、現状できないので、全件訴訟によることになるということになるので、ここが少し手続法、事業法で整備されれば、事業としては進みやすいということになります。   あと、話題になっている、一部大規模滅失の場合の期間、1年を3年、これは非常に有り難いことだと思っています。一部大規模滅失の方が、復旧か否かでかなり議論がひっ迫して、まとまりにくいという欠点があるので、こちらの方が、変な話ですけれども、時間が掛かるという実情があります。これは是非とも進めていただきたいと思っております。   結局、被災法の整備と併せて社会政策的に御検討いただきたいと思っています。それは、災害救助法とか被災者支援制度との関連です。端的に言うと、公費解体制度の期間が1年であれば、検討期間が3年であっても、これはなかなか役に立たないという問題とか、あと、みなし仮設も同様ですし、住宅応急修理制度というのもあるのですけれども、それとの整合も図られていないという問題がありますので、そこら辺の被災マンションを使うための周辺事情ですね、ここら辺が是非御検討いただきたいと思っております。   あと、現場でやっていますといろいろな声が聞こえてくるので、それぞれの事業者がそれぞれの事業者の考え方で物事を進めるということが、なかなか管理組合の合意の取りづらさになって、逆にいうと障害になっているということがありますので、そこら辺も、偏らない支援チームで、管理組合でよく議論して最適解を求めるという、そういう手法が今後必要になると思っております。   最後にもう一つ、実は東日本大震災と熊本の経験が、大都市圏での大規模災害については未知数になっているという問題があります。ここは結局、関東大震災や仙台空襲、東京空襲の後のまちづくりみたいな感じで、ここら辺は今後の検討課題として大きく残るのかなと思っております。   以上でございます。ありがとうございます。 ○佐久間部会長 瀬下様、萩原様、誠にありがとうございました。   続きまして、一般社団法人マンション計画修繕施工協会の参考人から御意見を伺います。中野谷様、よろしくお願いいたします。 ○中野谷参考人 一般社団法人マンション計画修繕施工協会で専務理事をしております中野谷と申します。よろしくお願いいたします。   私どもは全国でマンションの大規模修繕工事を手掛ける施工業者の建設業者の団体でございます。なので、実際に区分所有法に関しては、管理組合が総会決議を通したものを発注されるということで、余りこの区分所有法での意見というのは少ないのですが、ただ、実際に過半数とか特別決議、4分の3で決まった工事ということをやるときになりますと、やはり机上では決議が通っている話、承認されている話なのですが、実際に工事に携わる立場からすると、賛成されなかった方とか、そういったいろいろな諸問題が出てきておりますので、一応そういったものについて本日、幾つか意見を述べさせていただきたいと思います。私ども協会の会員社で大体、全国のマンションの大規模修繕工事の完成工事高を見ますと、約半分ぐらい、全国の50%ぐらいのシェアを持っておりますので、かなりの数はできていると思います。   まず、資料の第1の区分所有建物の管理の適正化を図る方策の、1ページ目の集会決議の円滑化ということなのですが、これについては私ども、先ほど申し上げましたように、決議がされて発注がされるということになりますので、実際のこの緩和規定については歓迎しております。ただ、今まで共用部分の変更については多額の費用を要するものというものが入っていたのが、平成14年で改正になりまして、過半数でこういった計画修繕工事ができるようになってから、それほど難しい、なかなか工事が決議されなかったという事例は比較的少なくなってきております。   この中で、2ページ目の区分所有建物の管理に特化した財産管理制度ということで、中間試案の4ページ目の(2)の管理不全専有部分の管理制度については、これはもしかして私の読み方、解釈が少し違っているのかもしれませんが、これは専有部分の中に入って、排水共用縦管などは、大体お部屋の中、専有部分の中のトイレの裏とか台所の裏にパイプシャフトが入っていたりしますので、その部分で共用縦管の工事をしなければいけないというような工事が発生しております。これに対して、中には部屋に入ってくれるなという方も少なからずいらっしゃるわけですね。そういう方々に対して、この入室拒否者に対して、今回の管理不全専有部分の管理制度というのは非常に有効になるのではないかとは考えておりますが、ただ、この専有部分の財産管理制度、専有部分の管理制度でどなたが管理者になるかというのが、実は今回の中間試案からは読み切れませんでした。報酬ということが書いてありましたので、弁護士さんとかマンション管理士さんとか、そういった方を想定しているのかなと思いますが、中では管理組合の理事長がなったりすることもできるのかなと、この辺が少し見えなかった部分でございます。この辺りは明確にしておいた方がいいのかなと考えております。   4ページの(2)のイのAのイというのがあるのですが、これは管理不全専有部分の性質を変えない範囲内においてということで、その利用又は改良を目的とする行為がこの管理制度でできるとなっているのですが、実はこの管理不全専有部分の性質を変えないというのが、どこまでが性質を変えないことなのかと、我々工事をやる者からすると、何をやったら性質を変えるのか、何をやったら性質を変えないのかというのが、少し見え切れないというところがございます。   特に、先ほど言いましたトイレの裏の壁を壊す、天井を壊す、床を壊すということをやったときに、それを作り替えたときに性質が変わるものなのかどうなのか。例えば、排水管を今までの鋳鉄管という鉄の管から硬質の塩ビ管に替えたときに、流水音がした、流水音が大きくなったなんていう苦情も結構あるのですが、これは性質を変えたことになるのかどうかとか、この辺が一つ、読み切れない部分がございますので、特に、お部屋によってはリフォームが終わって壁、床、天井、こういったものが、壁に大理石を張ってあったり、片一方は昔からあるお部屋はビニールクロスが張ってあったりというようなことで、その復旧費用に影響を及ぼすことになりますので、この性質を変えないという範囲をある程度明確にしていただけるといいかなと思います。   また、実際に工事に入りたいけれども、区分所有者、居住者が不在で中に入れない、特に工程の決まっている、マンションの排水管の縦管工事というのは非常に難しくて、縦系統を全部一日丸々、排水を使用禁止にして工事を行ったりするものですから、中間階の1軒がいらっしゃらないとか、そういった工事がなかなか難しい。今回の管理不全専有部分の管理制度で、例えば、無理やりお部屋にまで入れるような強制権まで持たせるのか、この辺りがどこまでやっていただけるのかというのも、少し明確にしていただけると有り難いと思います。   それから、もう一つ、中間試案の5ページのところに、(3)の管理不全共用部分管理制度がございます。こちらについては、管理不全の共用部分というと大体ルーフバルコニーであるとかバルコニー等になってくると思います。これは、今まで私もマンションの調査診断、2,000物件ぐらい携わってきているのですが、一番すごかったのは、ルーフバルコニーに露天風呂なんかを作っていた方がいらっしゃいまして、こういったものをどこまで、先ほどの専有部分と同じように、管理不全共用部分の性質を変えない範囲においてというのが、やはり引っ掛かってくると思います。   この辺りについては、その下の意見としてございますが、どこまでが行為の範囲を超えるものか、こちらを標準管理規約等のコメントに記載する必要があるのではないかと思っております。特に、標準管理規約の第14条ではバルコニー等の占用使用権というのがあるのですが、こちらにはバルコニー、ルーフバルコニーに何をしてはいけない、なんていうことは書いてございません。この標準管理規約のコメントの方に、工作物設置の禁止、外観変更の禁止等は使用細則で物件ごとに言及するものとする、というようなことがございます。ここは区分所有法が改正になった後の標準管理規約で、国土交通省さんの範ちゅうになってくるとは思いますが、今、共用部分の管理不全の性質を変えないという部分で、どこまでが許容される改良なのかとか、どこまでをこういった管理行為を行うときに復旧しなければいけないのか、こういったものも少し明確にしていただくために、標準管理規約及びこのコメント、それとルーフバルコニー等の使用細則ですね、こうしたものももう少し見えるようにしていただけるといいのかなと考えております。   それから、中間試案の8ページの方になります。5の専有部分の保存・管理の円滑化の部分でございます。こちらの方の(2)に専有部分の使用等を伴う共用部分の管理ということで、配管の全面更新ということが、先ほど申し上げましたような工事が書かれて、こちらの方を入れていただいたのだと考えておりますが、その中でBの部分で、@及びAの決議においては、専有部分の利用状況及び区分所有者が支払った対価その他の事情を考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるようにしなければならないという文章が一つ出てきてしまっているのですが、これ、私の読み方が間違っていたら申し訳ないのですが、この支払った対価というのは恐らく、高経年のマンションで、既に配管更新をする前に内装リフォームで取り替えられている、そういったことを想定しているのだと思いますが、この支払った対価ということだけを出しますと、その次の意見といたしましては、この支払った対価について、例えば1年前にリフォームをした対価と10年前にしたものとの査定をしなければいけなくなります。1年前のリフォーム工事の費用なのか、10年前のリフォーム工事の費用なのか、こういったものの衡平というのが少し、誰が査定するのか、誰が決めていくのかというところが、後々トラブルの元になりそうかなというのが心配で、意見を出させていただいております。   もう1点、第2の方です。こちらは中間試案の12ページの方になりますが、区分所有建物の再生の円滑化を図る方策ということで、1番の建替えを円滑化するための仕組みで、Aの客観的事由が挙げられております。これについては、アとイは建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして政省令等で定める基準に適合していないということが書いてあるのですが、ウの外壁、外装材その他これらに類する建物の部分が剥離し、落下することにより周辺に危害を生ずるおそれがあるものとして政省令等によって定める基準に該当する、のいずれかの事由ということなのですが、前に少し一回、法務省の方にお伺いしたときに、これは建築基準法の除去措置等の命令に該当するものということになっているのだというお話を聞きまして、それであれば、ここでわざわざ建築基準法という言葉を抜く必要はないのかなと思っております。これはβ−1案も同様のことがいえると思います。   それと、今回の私どもの意見で一番言わせていただきたい部分が、この次のβ−2案のところでございます。この客観的事由の中に建築完了時から50年、60年、70年が経過したいずれかの事由が認められる場合とするというものについては、これは私ども、実際にマンションの長寿命化を図ることを目的としている団体でもございますし、今それこそ60年たつマンションを見ても、100年、特に国土交通省さんの長期優良住宅の認定制度、あれでも100年ぐらいはもつマンションというのが示されているところでございます。こうしたところに50年、60年、70年という年数をここで明示するのは、逆にこの数字が独り歩きして、建替え促進と見られかねないという部分もございますし、実際にマンションの居住者も、マンション寿命というのがこのくらいと考えている方も非常に多いので、この辺りは客観的事由としては、年数ではなくて、飽くまで建てられ方ですね、管理状態、それから経済性、これは容積率の余裕等によるものであると考えておりますので、この年数の明示については再度御検討いただけないかなと思っております。   それと、最後でございますが、18ページの2の多数決による区分所有建物の再生、区分所有関係の解消のところで、(2)に全ての専有部分の形状等の変更を伴う共用部分の管理ということで、一棟リノベーション決議という、括弧書きであるのですが、これは少し私ども、いろいろなあちこちの方に聞いても、一棟リノベーションをやられている協議会さん等に聞いても、民間の分譲マンションでやったことないねというお話がございます。これは、何かこの法制審議会の中で想定されているものがあるのであれば、何々の場合の一棟リノベーション決議とした方がいいのではないかと考えております。実際には社宅等のコンバージョン、用途変更ですね、なんかであれば、分譲に変えてやるということは、一棟リノベーションというのはあり得るのですが、一般の民間分譲マンションではやはり考えられない部分なので、これは残しておいても別に、使う方がいないことを想定もできますので、残してもいいのですが、この一棟リノベーションの決議が区分所有法の改正で出てくるということ自体が、余りよろしくはないかなと考えております。   私ども協会からの意見は以上でございます。 ○佐久間部会長 中野谷様、誠にありがとうございました。   それでは、これまでの各御意見に関しまして、委員、幹事等の皆様から御質問あるいは御意見を頂きたく存じます。どなたのことについてでも結構ですので、御自由にお願いいたします。 ○齊藤委員 どうもありがとうございます。皆様の御説明、どうもありがとうございました。3団体それぞれに質問があれば、3団体それぞれにいったほうがよいか、一気に言った方がよろしいでしょうか。 ○佐久間部会長 余り多いとどうかと思いますので、基本的には一つずつ、共通しているものについては併せてお願いします。 ○齊藤委員 分かりました。   改めまして、管理業協会の山川さん、御発表ありがとうございました。私の認識では、管理業協会会員の管理会社によって日本のマンションの9割ぐらいが管理されていると理解しておりますので、全体像を見ての御発言かと思います。そして、是非教えていただきたいのですが、9ページのところで、所在等不明区分所有者の定義を規定し、ということで、所在等不明区分所有者というのは、例えば何か月、どういうふうにやっても、こうやっても所在不明なのだというようなことを明確にした方がよろしいという御趣旨の御発言でしょうか。この点を御指導いただきたいと思っておりますのが1点目でございます。   そして2点目、御発表いただきました11ページでございます。こちらの方に、配管の全面更新などを行う予定の長期修繕計画では修繕積立金が高額になるということをお書きなのですが、この趣旨が私、理解がうまくできませんでした。配管の全面更新というのは余りしないものであるという理解なのか、それとも、全面更新よりか、むしろ一部更新など部分的更新が現実的であるということからの御趣旨の御発言なのかというところ、御指導いただけたら、この意味が正確に理解できるのかなと思ったのが2点目でございます。   そして3点目、同じところの最後のところに、国内の管理人制度について御説明がございました。区分所有者の代理人かどうか確認がとれないということが新たなトラブルになるというので、この人は間違いなく代理人であるということを御本人、あるいは何らかの手続をもってそれが証明できることが重要であって、そのこと自体がトラブルにならないようにという御趣旨の御発言であるということで、何か具体的にお考えがあれば御示唆いただきたいと思いました。   まず、管理業協会さんに対しては3点でございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。では、山川様、もしよろしければ、お答えいただけますでしょうか。 ○山川参考人 まず、所在不明の部分についてでございますけれども、基本的には建物謄本であったり、あとは不在になって未収金等が発生している場合については、住民票等からの追跡等を行うと、基本的には想定される手段を講じて、それでもたどり着けないという場合を想定しております。 ○齊藤委員 ありがとうございます。そうしますと、皆様が常日頃されている、あらゆる手段を使ってももう絶対分からないのだということをきちんとやった上でと、簡単に使うなという御趣旨であるという理解でよろしいということでしょうか。 ○山川参考人 はい、結構でございます。 ○齊藤委員 ありがとうございます。配管の全面更新のところでございます。 ○山川参考人 そもそも標準管理規約に記載されております条文に、改定できているか否かというところがまず第一に来るわけなのですが、改定されている場合においては、実際に実施されているケースというのはございます。ただ、それが一般的かといいますと、今度、その後に発生してきます、既に着手されています方の費用、これについてどういう取扱いをしていくかと、これは一概に、その管理組合ごとで、築年数、経過年数等によっても大分分かれてくるところでございますので、結果的には、まず共用部分だけの着手にしましょうということで終わってしまうというケースもございます。一般的かどうかというところについては、そこまでの多数を占めているという認識は、現時点ではございません。 ○齊藤委員 今のところ、私の説明が悪くて申し訳ございませんでした。11ページの下の箱の中の一つ目のところの質問でした。私の質問の仕方が分かりにくくて、大変失礼いたしました。配管の全面更新などを行う予定の長期修繕計画では、ということで、一般的には配管の全面更新は余り想定されていないのでしょうか、全面更新ではなく部分更新とか、そういったものという理解で御発言なのでしょうかという質問でした。分かりにくくて大変失礼いたしました。 ○山川参考人 いえ、失礼しました。計画としては、されております。 ○佐久間部会長 素人の私が言うのはどうかと思うのですが、齊藤さんの御質問に関して言うと、何度か申しましたが私もマンションに住んでいるのですけれども、大規模修繕を私の住んでいるマンションは1回やり、2回目がもうすぐなのですが、2回目、築後25年から30年ぐらいのときには配管の全面更新をおおむねやりますということを説明として受けました。要するに偶数回ではそのようなことをするという話だったのですが、そうすると、奇数回の大規模修繕に比べると偶数回の大規模修繕って、やはりお金がかなり掛かるのです。そういう状況を前提にすると、当然修繕積立金も増やさなければいけないので、ということなのかなと思いながら私は伺っておりました。ただ、全くのど素人なので、私の経験からいうとそうなのですが、山川様、そういう話ではないということでしょうか。 ○齊藤委員 私が深読みしすぎているのかもしれません。失礼いたしました。そういう比較的分かりやすいお話であったのかもしれません。ありがとうございます。 ○佐久間部会長 では、山川様、3点目の代理人についての証明ですね、これについてお願いします。 ○山川参考人 すみません、こちらの方で申し上げたのは、長期修繕計画上はガイドライン上も一般的にも専有部分までは見込んでおられないというケースが多いと思います。よって、この専有部の配管更新部分までを見込んだ場合には、計画自体が当然その分膨らんでくるというところに管理組合さんなりの懸念が生じる可能性があると、そういう趣旨でございます。大丈夫でしょうか。 ○齊藤委員 分かりました、ありがとうございます。一般的には共用部分だけだけれども、専有部分も含む場合の課題についてであると、了解いたしました。大変失礼いたしました。 ○佐久間部会長 3点目が、国内代理人の証明について確認というのは、今どうやって確認していますかという御質問ですよね。 ○齊藤委員 はい、そうですね。 ○佐久間部会長 今どのように確認されているか、もしあれば、お教えいただければと思うのですが。このような代理人が設けられているということは現実にあるのでしょうか。 ○齊藤委員 ありますね、規約の中に位置づけられているところがございます。 ○佐久間部会長 その場合にどう確認をされているかということがもしお分かりでしたら、お教えいただければと思うのですが。 ○山川参考人 数は少し少なくなってしまいますが、実際には長期不在等の際の届出であったり、届出先を出していただくというようなことが、まず、ケースとしては見受けられる場合です。通常ですと、一月二月どこどこに不在になりますというような届出というのは入っているケースがあるかと思うのですが、その先の代理人までというところになりますと、なかなか見受けないところもございまして、そこを例外的に入れているという管理組合さんが、中にございますという、そういう位置づけです。 ○齊藤委員 ありがとうございます。なかなか一般的にはないけれども、それを危惧するから、しっかりとりなさいということが御指摘の趣旨かなと理解いたしました。 ○山川参考人 なかなかそれでも権限までを明記しているというケースはないと思いますので、代理人を定められた場合において、ではどこまでの権限があるかというところは必要になってくるのかなと感じております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。今、瀬下参考人からお手が挙がりましたので、御発言をお願いします。 ○瀬下参考人 日本マンション管理士会連合会、瀬下です。実情としまして、外国人所有者がすごく都市部で増えているのですね。私も佐藤副会長も新宿で顧問をやっているのですけれども、その場合、区分所有者変更届というのを最初に出してもらい、海外に居住の方で、それを出されるときがあるのです。そのときに一緒に代理人となる不動産業者さんの方から出していただくというのが一般的というか、ほとんどです。ただ、それが本当なのかどうかというと、そこを見極めることができないのです。それを多分、言いたいのだと思うのですけれども、信じていいのかどうか。自己申告をこちらは信じるしかないということになっています。 ○齊藤委員 それを厳格にするために、両者から出してもらうということもあり得るのでしょうか。 ○瀬下参考人 ほとんど不動産業者さんばかりなのですよ。向こうにいる方から何かできるかというのがないので、それも不動産業者さんが全面的に責任を負うというような内容ではないのですね。ここら辺が非常に難しいところだと思います、実務は。 ○齊藤委員 ありがとうございます。いろいろ現状を教えていただいて、ありがとうございます。   そして、次にマンション管理士会連合会、瀬下さん、佐藤さん、萩原さん、御説明どうもありがとうございました。御説明いただきました、まず、これは2ページ目になるのでしょうか、今話題になりました所在等不明の区分所有者、これを分母から除外するということ、先ほども慎重にというのがございましたが、瀬下さんの方では公的機関の認定がということなのですが、こちらは裁判所の関与という形になっておりますが、それでよろしいのでしょうかというのが1点目でございます。   そして、2点目、これが4ページ目のところに、区分所有建物の再生の円滑化などに関わる方策のところで、敷地売却、いわゆる解消制度と私は呼んでおりますものですが、こちらに関しましては民法の特則になるので、要件、例えば50年を経過したという要件が必要でしょうということなのですが、こちらは中間試案の方に年数だけではなく客観的な要件がありますが、この要件も含めて何らかの要件が必要だというお考えであって、よろしいのでしょうかということでございます。   そして、7ページ目になるのでしょうか、是非御指導いただきたいと思ったのが、管理不全共用部分管理制度のところでございまして、マンション管理士の皆さんは、管理不全マンションまで赴いていかれまして、管理不全でなくすというのでしょうか、立ち上げをかなり全国で御尽力されている実績をお持ちだと理解しております。そのマンション管理士の皆様が、この管理不全というのは、皆さんが行っている状態では、まだ管理不全のこの制度を使うレベルではなく、もっとひどい状態を想定されているというふうに少し聞こえたものですから、この制度を使う管理不全というのはどういったものを想定される、あるいはどういったマンションを対象とするのが適切だとお考えになられたのかなと思いまして、御指導いただけたらと思いました。 ○佐久間部会長 お願いいたします。 ○瀬下参考人 瀬下ですけれども、最初のところが、公的機関の認定ということで、裁判所の認定という話が出ていると思うのです。これは非常にいいと思うのですが、手続が複雑だと、それをやっている時間がなかったり、速やかにできるかどうかというのが一番問題だと思っているのです。この内容については当然、裁判所の認定でしていただくのが一番いいと思います。そうでないと、逆にクレームを付けられる可能性が高いのですね、ここは実務的には。何で勝手にそんな扱いしているのだよというところです。ただし、手続の方を速やかにしていただければと思います。   それと、すみません、もう1点が。 ○齊藤委員 解消制度のところで要件、例えば50年を経過したというときに。 ○瀬下参考人 それはもう齊藤先生のおっしゃるとおりです。そういうようなやはり要件が付けば、これはうちの内部からの意見なのですけれども、一応そういう要件が付いているという提案であれば、それは結構だと思います。   あと、最後の管理不全マンションなのですけれども、実際にこれは我々マンション管理士が創設されたときからそうなのですけれども、管理不全マンション、元の言い方でいうとスラム化なのですね。全然印象が違うと思うのですけれども、スラムなのですよ、本当に。それを解消させるのは、どこがやるのだというと、管理会社さんはお金にならないことをやらないです、それは当然に。これをできるのは我々の方なので、私どもでもこれについては、先ほど言ったように管理組合がない状態からやらなければいけないというのが非常に多いのです。管理組合がないときどうするのだというと、一番ひどいのは、そのままにされてしまうのです。というのは、例えば、ここのマンションは管理不全だよと訴えてくれる人がいないのです。その場合、強制的に行政がそういうマンションにマンション管理士を派遣して、これでは管理不全ですねというような判断をして、そのルートに乗せなければいけないのですね。そうでないと、訴える人がいないというのが最悪の管理不全ということになります。そういうマンションは必然的に、昔でいうスラム化になってしまうという、我々も幾つも経験して、それを何とかするというのがあるのですけれども、訴える人がいないと我々も行けないのです。そこら辺のレベルまでが、管理不全でも底辺のレベルというのがありますので、そこは御承知おき願いたいと思います。   以上です。これでよろしいですかね。 ○齊藤委員 ありがとうございます。そうしますと、この管理不全共用部分管理制度を利用するというときは、かなりひどい、物理的に、建物的にもひどい状態のものを想定され、そういうときに使われると有効であるという理解でよろしいでしょうか。 ○瀬下参考人 はい、共用部分の管理不全ということであれば、当然に訴える人がいなくなるということになれば、行政の方がそういうようにマンション管理士を派遣して、これは駄目ですねというところで、そこで認定して初めて共用部分の管理不全という扱いになって、管理不全共用部分管理制度というのを適用できるのではないかと想定します。 ○齊藤委員 分かりました。そうすると、その前に一応、立ち上げの努力をしてみて、それで駄目なようなものに関しては次、こういう制度を使っていけるというふうに考えられているのかなと思って、そういうストーリーでよろしいでしょうか。 ○瀬下参考人 御理解のとおりです。 ○齊藤委員 ありがとうございます。   最後になりますが、一般社団法人マンション計画修繕施工協会さんの中野谷さんに御指導いただきたいのですが、一番最後におっしゃられました、一棟リノベーションというのはなかなかできないのではないかと。私もいろいろ事例を調べたら、現実にはないということなのですが、ただ、建替えも難しい、解消では少し寂しいとなれば、こういった方法をということは非常に私たち皆が期待しているところでございますが、この一棟リノベーション、建築の御専門家である方々から見ますと、何がネックになって、なかなか現実的ではないとおっしゃられるのでしょうか。 ○中野谷参考人 実際に一棟リノベーションというのは、共有部分と専有部分に分けて考えれば、一般的な外壁の共用部分の計画修繕工事というのはそれなりにできるわけですね。あと、専有部分を一棟、管理組合がまとめてやるということ自体が非現実的で、やはり個々の趣味嗜好があって、部屋の、例えば内装仕上げ一つとっても、間取りにしても、高齢者の方、若い方、それから家族で住まわれている方、単身の方、いろいろな方がいらっしゃる中で、それを一概に全部を管理組合で決めて内装を同じでやるという話は、私は個別に専有部分のリノベーションをして、外壁の共用部分の大規模修繕工事、外壁の改修工事をきちんと行うということで、十分今の流れで済んでいるのかなと考えております。 ○齊藤委員 ありがとうございます。そうしますと、共用部分を全員でリノベーションして、かつ専有部分、一部だけやりたい人たちが集まって、全員ではなく、そういった形の部分的一棟リノベーションみたいなものだったら現実的でしょうか。 ○中野谷参考人 それは今でもやられているのですよね。大規模修繕のときにオプションで、内装リフォームやりませんかというのを投げ掛けて。 ○齊藤委員 この専有部分のリノベーションとは、例えば大きさを触るとか、専有部分の中だけではなくて、もう少し、専有部分の持分が変わることまでをイメージしているリノベーションなのです。二住戸を1戸にするとか、3戸分を2戸にするとか。全部が難しいといわれましたが、やはり難しいでしょうか。 ○中野谷参考人 難しいと思います。賃貸であれば可能でしょうけれども、分譲に限って言えば、難しいかと思います。 ○齊藤委員 御指導ありがとうございました。どうもありがとうございました。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。 ○鎌野委員 どうもありがとうございました。私の方からは、管理業協会さんに1点、それからマンション管理士会連合会さんに1点ということで、両者比較的関連しているのですけれども、まず、管理業協会さんの山川さんの頂いた資料の9ページのところの、業界の実情、懸念事項等というところの2ポツ目でございます。出席者の多数とする場合うんぬんというところですけれども、私の理解では、もし間違っていたら教えていただきたいと思うのですけれども、実際には委任状というのを、例えば議長委任というのが多分多いと思うのですけれども、そういう委任状を事前に書面によって提出して、いわゆる議決権行使を行って、それで、実際の集会の出席者はそれほど多くないというように一般的には認識しているのですけれども、ここで書かれていることは、出席者の多数とする場合、一部の区分所有者、声の大きい方の意見に流されるというのは、そういう一般的な場合ではなくて、仮に何か集会が開かれたような場合に、その集会の席上、多数決を取ると、それでかなりの部分が決まってしまうと、そういう場合を想定されているのでしょうか。その辺り、少しお聞きしたいと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。まずそこでお答えを頂こうと思います。山川さん、お願いできますでしょうか。 ○山川参考人 そうですね、おっしゃるとおりだと思います。本件については、特別多数決議を取得しやすくなる背景として、絶対数を減らすというところで少し捉えた回答になりましたので、その少ない数の中での決定となった場合には、より少し声の大きい方が際立つかなというような意味合いで記載をさせていただいております。ですので、最初にお話のあったとおり、議決権行使書と委任状がそれ相応の数が提出されていれば、一般的には大体議長のお考えで決するというところで間違いないと思います。 ○鎌野委員 どうもありがとうございました。よく分かりました。   もう1点、よろしいでしょうか。これはマンション管理士会連合会の瀬下さんの、2ページのところの、区分所有建物の管理の円滑化に関する方策の(1)の部分です。そこのところで、ここのマンション管理士会連合会の御意見というか、あるいはその辺りは議論が分かれているということなのか分かりませんけれども、ここに書いてあるように、集会に出席せず議決権も行使しない者は、一般に決議における意思決定を他の区分所有者の判断に委ねていると類型的に評価できるという、この点でございますけれども、これは特別多数決議、建替えは除くことにして、規約の変更とか義務違反者に対する措置とかというような、そういう特別多数決議についてもこのようにお考えなのかというようなことで、その辺りを少しお聞きしたいということで、質問させていただきました。 ○佐久間部会長 瀬下さん、お願いいたします。 ○瀬下参考人 確かに建替え決議というのは少し特別な意味合いになってしまうので、それは別にしておいても、管理規約の変更や、ある程度の共用部分の変更とか、一般的なというのも変なのですけれども、特別決議においても、やはり賃借人が多くなったり、先ほど言っていた外国人の方が所有者に多くなった場合、4分の3を集めるのが非常にハードルが高いのです。ですので、これは本当に決議における意思決定を他の区分所有者の判断に委ねていると判断させていただいて、標準管理規約の普通決議同様に、出席者の4分の3とか、そういうふうにしていただけると、組合運営の方もある程度前に進む。今の特別決議の絶対数でやって特別決議が決議できないというのは、何回も我々は経験していますので、それは、これをやっていただくと非常に有効であるということを我々は考えています。 ○鎌野委員 よく分かりました。どうもありがとうございました。 ○佐藤参考人 いいですか、日管連、佐藤です。今のところなのですけれども、実際の区分所有者の皆さんって、基本的に投票しない人たちというのは皆さん、ある意味で全部任せているのですよ。具体的に言うと、例えば規約を改正するのに特別決議ですよといっても、それは私たちが言っているだけで、一般の方々は関係ないのですね。つまり、もう今、理事会があって、あるいは管理会社がいて、任せておけば大丈夫だということで、はっきり言うと、意思決定を他の区分所有者に委ねているというのは類推できると考えております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○鎌野委員 どうもありがとうございました。 ○佐久間部会長 ほかに御質問、御意見、いかがでしょうか。 ○小林委員 二つありまして、一つは管理士会の方の御発言への質問ですが、もう一つは管理業協会と、それから管理士会の方の今の御発言を聞いていての感想ということで、1点ずつございます。   一つ目は御質問なのですけれども、日管連さんの5枚目のスライドで、道路用地としてマンションの敷地全体を結果として売却したケースというのが出ていましたけれども、道路用地は3メーターだけということで、マンションですから、多分残りの方がかなり大きかったのだと思うのです。ですから、いかに土地開発公社がお買いになろうとも、多分そこの最終的な使用用途というものを念頭に置いていないと、公的自治体は買えないと思うのです。そこら辺について、このケースでは、その残地についてはどのように利用を、既にされているのか、あるいはどのような利用を想定されたのかというのがもしお分かりであれば、教えていただきたいと思いました。 ○佐久間部会長 まず、その点についてお願いいたします。 ○瀬下参考人 確かにおっしゃるとおりで、これは東京都の特別行政区なのですけれども、要は3メートルだけを売れという話になっていたので、それではどうにもならない、どうするのだということで、それで管理組合の方で、そこも18戸の小さなマンションだったので、一人、理事長をやっていた人がお亡くなりになってしまって、結局私の方で管理者をやって直接交渉してくれという話になって、向こうもコンサルティング会社が入ってきたので、実情を訴えた中で、最終的には交渉の末、全部買い取らないとマンションの体をなさないのであれば、こちらはやはり法的手段も講じなければいけないというところまでお話をさせていただき、結局買い取っていただいて、いい結果になったのですけれども、正直なところ、取り壊して引き渡した後のことというのは関与していないのですが、コンサル会社から聞いた話によると、一応、残った敷地は広場みたいな形で区民に提供されるというようなことは言っておりました。 ○小林委員 どうもありがとうございました。   あと、感想なのですけれども、管理業協会の方と今の日管連の方から、特に不在の国内代理人の話でいろいろとお話を伺わせていただいて、非常に参考になりました。特に、不動産業者から出てくることが多くてというのは非常に参考になりまして、ということになると、義務付けをするかどうかというのが一つ、論点になっているのですけれども、任意のままということになると、せいぜい不動産業者の方が出してくる程度になって、結局はなかなか実効性というのが伴ってこない可能性が高いのではないかというのを今日のお話を通じて感じたところです。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見、御質問はありますでしょうか。いかがですか。 ○吉原委員 本日は大変貴重なお話をありがとうございました。もしどなたか御教示いただければと思い、質問なのですけれども、させていただきます。議決要件の緩和が今回の議論の重要な論点の一つなのですが、今のお話でも、例えば賃借人や外国人の方が増えると、特別議決が成立するのが非常に難しい、そして、そうしたケースが現実に起こっているので、要件を緩和することは必要であるというお声がありました。その一方で、要件を緩和したところで、反対者が多くなれば、決議した後の合意形成は現実問題として難しくなるということもあります。そこで、現場で御覧になっているお立場として、要件を緩和することの必要性と、それから、その後、決めたことを実現していく上では、皆で合意を図っていかないといけないという、そのバランスをどのようにお考えか、教えていただければと思いました。決めた後のコミュニケーションがうまくいかなければ、根本的な解決には至らないという御指摘もありましたので、議決要件を緩和することが合意形成にどのような意味を持ち、実際問題、マンションの長寿命化とか、そうした皆財産の価値を上げていく上でどのような意味があるか、お考えをお聞かせいただけたらと思います。 ○佐久間部会長 どなたでも結構ですけれども。 ○佐藤参考人 私から。個人的な意見になろうかとは思うのですけれども、この要件緩和については二つあると思っていて、つまり、本当に簡単に、要件を緩和したことによってよくなるだけのケースと、そうではなくて、例えば建替えだとか、先ほどから話が出ている一括リノベーションとかいう問題があると思うのです。規約改正とかそういうものに関しては、これははっきり言って大変助かりますし、よくなると思います。私が顧問をしているありマンションでは、規約改正するのに、やはりなかなか4分の3いかずに、ぎりぎり何回もできなかったというケースがあったのですけれども、1回だけ、何か安いクオカード等を配ったところ、それだけで参加が増えて議決ができたというケースがあって、そういう面では、より正しい形の規約ができていくので、いいとは思います。   問題なのは、やはり建替えだとか一括リノベーションのような、本当に物が関わってくるケースだと思います。多分、実務的には、これをやったにしても、すぐに建替えが増えるということは私はないと思っているのです。やはり同じ問題はずっと抱えていきます。ただし、法律で要件が緩和されるという、この印象というのはすごく強いのですね。そうなると、各組合さんでも、どうせできないよと言っていた人が、少しでも、だったら少し考えてみようかという、そういうようなモチベーションを上げる一つの要因になるのかなと私は考えております。そういう意味では、要件緩和というのはやはり方向的にはいい方向だと私は思います。ただし、最終的に反対者だとか決議不参加者に対しての手当ては、これは従来どおり変わらないと考えています。 ○吉原委員 ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ほかに、参考人の方から御意見をいただくことはありますか。無理にということではありませんが。 ○中野谷参考人 先ほども申し上げましたように、工事をやっていて、反対者が出た、実際に工事を始めて、最終的にどうなったかというと、結局、理事長さんや修繕委員さんが一所懸命、反対していた区分所有者さんとコミュニケーションをとって、又は現場代理人さんがコミュニケーションをその方ととって、最終的には結構、終わってみたら何のことはない、やってよかったというような話も結構多いのです。やはり最初の時点で反対された方というのは、何となく反対だけれども、やってみて喉元過ぎればというような感覚も結構あられるのです。ですから、反対する中身にも多分よると思うのですが、大体今この修繕工事で多いのは、そういうパターンで解決しているというケースが非常に多いです。 ○吉原委員 ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見、御質問、いかがでしょうか。 ○瀬下参考人 すみません、一つだけ付け加えさせていただきますと、今こういうような議論の中で一番なのは、建替えと敷地売却決議というのがあります。建替えだと実際に、それの対象となるマンションのほとんどは、特別な事情がない限り高経年マンションで、住んでいる方々も高齢の方なのですね。先ほど少しお話に出てきましたけれども、要は年金生活者だとかというのが出てくる。私、実際に言われたことあるのですけれども、建替えのときに、もういいから、ここで死なせてくれよと言われたのです。何でかというと、建替えって2回引っ越さなければいけないのですよ。これは非常に高齢者の方には苦痛でしようがないのですね。私がやったのは敷地売却なので、1回で済んで、新しいところに住んだらそこで終わりなので、まだ敷地売却の方が進めやすいところはあるのではないかなというふうには、実経験の中では、思いました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○山川参考人 まず、要件緩和につきましては、全体的にやはり賛成という姿勢でございます。そもそも法律も変わる中で、まず、管理規約の改定さえできないという管理組合さんというのがやはり複数実在するというのが実情でございますので、まずは管理組合さんが、賛成が十分な数、今の現状では得られないというような場合でも、きちんと適正に運営できる方向に持っていけるというのが重要だと考えております。また、昨今では当然、ITの重説であったり総会等、これらを行うにしましても、やはりまず管理規約改正と、そういったところに順調に進んでいける体制を作っていくという上で、全体的にこの要件緩和に賛成しているというところでございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしければ、最初の3団体につきましては質疑応答を以上で終わりにしたいと思います。誠にありがとうございました。   では、続きまして残り3団体の御意見の聴取に進むことといたします。   初めに、一般社団法人再開発コーディネーター協会の参考人から御意見を伺います。金子様、よろしくお願いいたします。 ○金子参考人 ありがとうございます。再開発コーディネーター協会の金子と申します。本日よろしくお願いいたします。当協会は、都市再開発に関する専門家が集まり、その促進に寄与することを目的として設立された団体でございます。マンション建替え等につきましては、資格の認定を通じて専門家の育成を図るとともに、専門委員会を設置して、制度の改善であるとか、あるいは実現事例に関する調査研究、また研修活動等を行っております。私自身はその中の制度改善検討部会の方で部会長を務めさせていただいておる者です。   私の本職の方は、マンション建替え円滑化法が2002年に制定されましたけれども、以降20年余り、マンション建替えの実務の方に携わってまいったものでございます。現在、国土交通省の今後のマンション政策のあり方に関する検討会の委員も務めさせていただいておりますし、また、2021年に区分所有法制研究会があったと思うのですけれども、そちらの方にもヒアリングの方に出席をさせていただいております。とはいいつつ、ほとんど毎日現場の実務に携わっているという者でございます。   本日は、御検討いただいた改正試案の中の区分所有建物の再生の円滑化というところですね、ここの方策に関わる部分の表紙に記載の4点について、専らマンション建替えの実務に携わる者としての立場から率直な意見を申し述べさせていただきたいと思っております。各界の先生方の前で大変僭越で恐縮ではございますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。   それでは、1枚めくっていただきまして、最初にマンションの再生に関する将来の状況認識について、これはもう十分御承知おきのところだとは思いますけれども、前置きとして少しだけお話をさせていただきたいと思います。御覧のグラフももうさんざん見ていただいているものだと思いますけれども、こちらのグラフに記載しているとおり、国土交通省さんの推計では、現在2021年末の時点において、マンションのストック総数は685.9万戸であるとされております。近年の新規供給水準が今のところ年間10万戸程度ということになっておりますけれども、これが仮に今後も続くとして、そうとは限らないと思いますけれども、仮に続くとすると、20年後、2041年ということになりますけれども、20年後における総戸数は単純に200万戸を足して885.9万戸と仮に算定させていただきます。   これに対して、その時点で築40年以上、2002年以前に供給された戸数というのは、これも同じく国土交通省さんの推計によると425.4万戸あると。つまり、20年後には世の中のマンションのおおむね半数近くが築40年を超えるということで、それらの老朽化に伴う様々な課題を抱えている状況にあると、こうした状況が確実に来るということがいえるかと思います。   次のページをお願いいたします。次に、先ほどからも大分話題になってございますけれども、マンション建替えの状況について少しお話しさせていただきます。過去においては、いわゆる還元率100%神話といわれておりましたけれども、無償で同じ面積の新しいマンションに住み替えられるといったような、建替えの経済的な条件に恵まれたマンションも多く存在してございました。   しかしながら、最近は1980年代に建てられたマンションからも相談が来るというような状況になってございまして、そうなると、立地がかなり郊外に移っているということであるとか、既に容積率も完全に消化し切ってしまっていて余剰がないといったことで、以前のように条件に恵まれたマンションというものはほとんど稀になってきております。そうしたマンションの方に説明会に出掛けていきますと、出席されている方のほとんどが高齢者の方というのが現状でございまして、更に最近の工事費の高騰というものが建替えに関する条件の厳しさに拍車を掛けているという状況でございます。加えて近年、これも御多分に漏れずということですけれども、私ども専門家の人手不足、成り手不足というところの問題が顕著になっております。御相談をマンションさん、団地さんから頂いても、本当に申し訳ないのですけれども、いまいま人手の問題でお受けできないとお断りせざるを得ないということが多々起こっております。巷で聞く限りは、これは当社だけの問題ではないと思われます。   そうすると、20年後、区分所有法制はそうちょくちょく変わるものではないでしょうから、20年後を見据えてということだと思いますけれども、20年後には世の中のマンションの半数近くが老朽マンションと呼ばれるものになっている可能性があって、その中で当然、全てを建て替えるわけではないですけれども、必然的に建替えを望むマンションもそれなりに増えてくるということが想定されますけれども、恐らくその多くが条件が厳しく、また、従来のような一人一人に手厚い対応をするということができる状況というのは非常に限定的であるというふうに容易に想定をされます。   こうした厳しい状況の中で、老朽マンションの一部でも再生を円滑化していくということを図るとするならば、その仕組みが区分所有者の皆様にとって可能な限り簡易で、かつ合理的なものであることが必要と考えております。区分所有法制、20年先を見越して、従来のハードルは下げることが妥当であると基本的には考えておるところでございます。   次です。具体的な試案の中身について若干、意見を申し述べさせていただきます。まず、建替え決議の多数決要件の緩和というところでございますけれども、今ほどお話しした状況認識でございますので、多数決要件は単純に緩和して、ハードルを下げるということが望ましいものと考えております。そうではなくて、客観的要件を設定して緩和をするという案もございますけれども、この場合には、できるだけ事前明示性の高い、後日に争いの起こりにくいものにしていただきたいと、これはもう切にお願いを致します。要件の適否が不安定な中で建替え決議を進めるということは、やはり区分所有者の皆様、管理組合にとって非常に負担の大きいところでございますので、この点は是非よろしくお願いしたいと思います。また、客観的要件を設定する場合には、マンション建替え円滑化法等の中で設定するなど、やはり行政が公平な立場として一定程度関与していただくという形とする方が、区分所有者の皆さんからの理解も得やすく、再生の円滑化を図るという点では望ましいかと思います。   なお、建替えの必要性の認識を区分所有者さんがどういう形でされるかということに関しますと、通常、耐震上の問題とかというよりは、漏水とか赤水が出るとか、そういう身近な水回りの不具合、あるいは、やはり相当年数が経ってきたという非常に単純な見方のところから、建替えの必要性の認識が提起されることが多いというのが実感としてございます。その点で言うと、客観的要件を付す場合に、その中にこうした水回り関係の話であるとか築年数というような要件が入るか否かによって、その後の再生に関する将来の状況というのが相当変わってくる可能性があるのではないかと考えております。   次のページでございます。次に、建替え決議がされた場合の賃借権等の消滅ということでございます。非常に難しい問題であるということは重々承知をした上でお話をさせていただきます。まず、やはりたった一人の賃借人の反対のために老朽マンションの建替えができないという事態が起こる現状というのは、やはりこれは何としても改善、改めていただくべき課題であると私ども実務者としては認識をしております。現在、私が関わっているマンションでも、やはり決議が可決するまではなかなか借家人さんとお話が進むということはなくて、決議可決後にお話を進めたところ、ある店舗借家人さんの明渡し協議が難航して、解決の見通しが立たずにずるずる遅延しているというような状況にあるマンションがございます。大変な苦境でございます。賃借人さんの方は、それなりに当然御事情があるわけですけれども、自分が拒否権を持っているというのがもう分かっておられて、妥協する必要がないという状況になってございます。このような状況は、やはり余りにも理不尽ではないかと考えざるを得ないと思っております。   次です。もちろん賃借人様の権利の保護、あるいは円満に明渡しをしてもらうという実務的な観点から、賃借人の方に対しても一定の補償がされるべきだと考えております。ただし、これもその額が賃貸人、オーナーの方の資産額を上回るようなことになったり、あるいは、その足らず前をほかの区分所有者の皆さんに共同で負担をしていただく、肩代わりをしていただくということは、やはり一般に理解を得られ難くて、現実的ではないと思います。このような前提で賃借権消滅制度が使えたとしても、ハードルが余りにも高くて、使おうにも使えない、制度の実効性を削ぐことになってしまうのではないかと懸念を致しております。公的な再開発等とは違って、やはり民民の建替えですので、そこにおける補償については、相互の利害の調整上、やはり双方にとって妥当であって、双方にとって合理的に理解し得るということが望まれると思っております。   なお、賃借権消滅制度の適用に客観的要件を設けることにつきましては、これに該当しない建物、マンション等については、冒頭の、たった一人のという辺りの問題が解決しない、解消しないということになりますので、これは適切ではないと考えております。   次のページでございます。建物・敷地の一括売却というところでございます。マンション建替え法の方ではマンション敷地売却制度というものがありますが、これを区分所有建物全般に広げるものと理解をしております。御案内のとおり、駅前であるとか中心市街地などの都市の重要な立地のところに昔、再開発事業などで建てられた区分所有の古い店舗ビルとか事務所ビルとかが建っております。建物設備が老朽化していて、機能的にも時代に後れて陳腐化が進んでいるという中で、事業の制度上、既にかなり高度利用されていて、かつ多数の区分所有者、元の地権者さんですね、多数の区分所有者さんがいるという状況でございますので、そうしたビルの建替えは通常かなり困難と考えられます。したがいまして、こうした老朽化した非住宅型の区分所有建物につきましても、売却によって区分所有関係を解消するというようなニーズが今後、より顕在化してくるものと我々としては考えております。   実際、住宅型、併設型ですね、住宅もくっついている再開発ビルについては、直近でマンション敷地売却制度を使って売却により区分所有関係を解消したという事例が既に出ておりますし、実は私どもの会社にも2件ほど相談があります。いずれも住宅が乗っておりますので、マンション敷地売却制度を使えるということで物事が進んでいる。これが区分所有建物全般に使えるようになれば、そういうニーズが恐らく出てくると思っておりますので、そこは期待をしております。   それから、そうした建物は店舗とか事務所といった用途の関係上、その多くにおいて多数の営業借家が存在することが想定されます。当然、定期借家のものもあるし、まだ普通借家のものもあるだろうと思います。したがいまして、そうした建物の再生ということで考えると、適切な借家権消滅制度というものが整備されることが必須になると考えておるところです。   この建物・敷地売却制度ですけれども、これは、先ほども少し話題にありましたけれども、一棟リノベーションの手段としての可能性を非常に感じております。一棟リノベーション工事という制度も今、試案の中で提案をされておられますけれども、建物・敷地売却制度を使ってデベロッパー等が一旦全ての専有部分も含めて建物を買い受けて、リノベーション工事をした後に区分所有者に再度譲渡をする、そして、転出される方が当然出てくる可能性がありますので、そういう転出された方の住戸に関しては、リノベ住戸として再販して新しい方々に入っていただくというような事業が十分に考えられると思っております。既存のマンション敷地売却制度は、そもそも建物の解体が前提となっているので、リノベーション工事をするという選択肢がないのですね。ですので、この制度に関しては、そうした手段としての可能性も十分にあると思っておりますので、是非その点も考慮された制度化をしていただければと願っております。   なお、建物・敷地の一括売却に関するいろいろな制度、御提案がありますけれども、売却代金の分配金の算定方法が決議事項に含まれているものと、含まれていないものとに分かれております。例えば、建物敷地売却制度には含まれているけれども、建物取壊し敷地売却制度には含まれていないといった具合ですね。これは恐らく被災区分所有法にのっとったものだと思いますけれども、私、マンション敷地売却事業も今、2件ほど携わっておりますが、やはり売却代金をどう分配するかというのは合意形成上の非常に大きな焦点、これが建物敷地売却であろうが、建物取壊し敷地売却であろうが、そこは変わらないと思っております。ですので、制度によって無用の誤解が生じないように、できれば分配金の算定方法を決議事項に全て含めていただくという方向で統一されることが望ましいのではないかと、現場としてはその方が混乱がなくて良いのではないかと思っておるところでございます。   最後、4点目です。団地の再生の円滑化を図る方策ということでございます。こちらも、多数決要件の緩和につきましては冒頭お話しした認識でございますので、まずは単純な緩和というのが一番望ましいと考えております。客観的要件を設定して、全棟で適合する場合に緩和をするという案もございますけれども、こちらにつきましては、そもそも何十棟もある大規模団地において全ての棟で、例えば耐震診断を行うということ、この一つとっても区分所有者あるいは管理組合の皆様にとって非常に大きな負担になるということ、それから、その調査の結果、1棟でも要件を満たさないと、結果的にいうと全ての調査がほぼ無駄になるということが起こり得るということ。また、仮にその後、その要件を充足したということで決議をしたとしても、後日、客観的要件の存否について棟ごとに争いを起こされるという可能性があり、そのうちまた1棟でも否定されると、全体の団地の建替え決議自体が無効になってしまう可能性があるということが懸念されます。これでは実務的にいうと、余りにもリスクが高くて、また、団地の中での合意形成を進めていくということが非常に難しいと思いますので、恐らく実務的には緩和のない合意率、緩和のない決議要件を前提にして進めていかざるを得ないと判断する可能性が高いと思っております。   次、各棟要件のところについてです。もう1点ですけれども、やはり小戸数棟が存在する団地というのが結構ございまして、例えば1棟10戸とかですね、そういう棟を抱える団地というのが結構多うございまして、当該棟にたまたま反対者が偏ることによって、団地全体の建替えが実現できないという事例が現実に発生していますので、やはり各棟要件については何らかの形で緩和いただくということが適切だと考えております。   なお、団地再生につきましては当然、決議要件のみならず、過大な規模であるとか過大な戸数、あるいは特殊な権利が設定されている、敷地が非常に不整形な形状であるとか、それから一団地認定の問題とか、数多くの問題が積み重なっているというケースが非常に見受けられます。これらは当然、決議要件の緩和で解決できる問題ではございませんので、その後の事業制度にも多くの課題があると認識しているということを最後、付け加えさせていただいております。   以上、僭越ですけれども意見を述べさせていただきました。御清聴ありがとうございました。 ○佐久間部会長 金子様、誠にありがとうございました。   続きまして、東京都の参考人から御意見を伺います。山口様、よろしくお願いいたします。 ○山口参考人 東京都住宅政策本部の山口と申します。よろしくお願いいたします。私の資料はお手元のパワーポイントの資料になっていますので、そちらを御覧いただければと思います。   2ページ目を御覧ください。私は、令和3年7月に開催されました区分所有法制研究会の東京都住宅政策本部のヒアリング資料、こちらにつきまして一部修正、抜粋を行うとともに、追補を行ったものを御説明したいと思っております。既に今回のまとめについて反映されているものが多々ありますので、簡単に説明させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。   3枚目を御覧ください。内容といたしましては、都内のマンションを取り巻く状況ですとか、建替えに必要な決議要件、既存不適格等の建替えが困難なマンションなどについて御説明いたします。   4枚目を御覧ください。都内のマンションの状況でございます。こちらは令和2年現在ですけれども、191万世帯、都内約4分の1の世帯がマンションに居住しているといった現状でございます。   次のページを御覧ください。左側は着工から40年以上のマンション戸数、右側が建築年別の世帯主の年齢が65歳以上の世帯の割合になってございます。いわゆる建物の老朽化と居住者の高齢化という二つの老いといったものが見られるといった現状でございます。   次のページを御覧ください。こちらがマンション建替え等の状況でございます。これは都内の数字なのですけれども、建替え実績については約180件、これは令和2年3月現在です。あと、敷地売却の実績としては7件でございます。あと、耐震化率につきましては94.4%にとどまっている状況でして、高経年マンションの再生といったものが喫緊の課題と考えてございます。特に、この耐震性不足のマンションについては再生を急ぎたいと考えております。   次のページをお願いいたします。ここからは建替えに必要な決議要件等についてでございます。   次のページをお願いいたします。まず、5分の4の多数決要件についてでございます。こちらは引下げの是非も含めて多様な意見があるとは考えておりますが、単純に決議要件を引き下げて建替えが進むとは思わないという意見もございます。しかし、やはり特に早期に建替えを要する耐震性不足のマンションにつきましては、5分の4という要件の緩和、こういったものが必要と考えてございます。   続きまして、下の段の方ですね、所在等不明の存在でございます。相続未登記や連絡が付かない区分所有者が存在することで、合意形成を進めていく上での権利者の特定、整理に膨大な時間や労力が掛かるといった実態がございます。特に外国籍の区分所有者が存在する場合、そもそも所在の確認ですとか意思の確認が困難などといった声もございます。耐震性不足など建替え等の必要性が高いマンションにつきましては、一定の要件手続の上、所在等不明の区分所有者等を決議の分母から除くべきと考えております。   次のページをお願いいたします。要件緩和による懸案事項についてでございます。合意形成が不十分なまま手続を進めることで、反対者による裁判等の増加ですとか、権利消滅日以降の居座りなど、そういった懸念がございます。マンション建替え法の認可部署において、反対者からの陳情ですとか開示請求の増加なども懸念されます。   次のページをお願いいたします。賃貸住戸の増加の状況でございます。高経年マンションほど賃貸住戸が多くなる傾向がございまして、賃貸化率20%を超えているものが約4割あるといった現状です。建替え時における借家人対応のウエイトがかなり高まっておりまして、借家人同意要件の緩和などを要望しております。   次のページをお願いいたします。ここからは、既存不適格等の建替えが困難なマンションについて御説明いたします。   次のページをお願いいたします。こちらは高経年マンションの容積率、敷地面積の状況でございます。旧々耐震といわれます昭和45年以前のマンション約2,200棟について、横軸に敷地面積、縦軸に容積使用率をプロットしております。容積使用率とは、法的に建築可能な床面積に対してどの程度の床面積を使っているかということでございます。図のオレンジ色の横の線ですけれども、こちらが容積使用率100%でありまして、この線より上側が100%を超えております。こうした建物につきましては、容積率や、又は日影規制などの制限によりまして、同じ規模の建物を建てられないため、非現地での建替えですとか共同建替えなどが望まれるといった状況でございます。   次のページをお願いいたします。こうしたことから、東京都におきましては非現地への建替えについて要望してきております。別の敷地に建てることで、現地での制約の中では不可能な規模の建物の建築が可能となります。小規模マンションの集約ですとか、団地型マンションなどの建替えにも有効だと考えております。しかしながら、区分所有法、マンション建替え円滑化法では、これは建替えとはならないため、多数決が使えず、今は全員協議が必要でございます。このため、全員同意が必要となる非現地の建替えを、特別多数決で可能とする仕組みの創設を要望してございました。つまり、別敷地での建替えについても、通常のマンション建替え円滑化法の建替えと同様にみなしていただきたいといったことでございます。   次のページをお願いいたします。その他で、敷地売却制度の対象拡充等でございます。敷地売却は、建替え困難又は耐震改修などによる長寿命化も困難といった、そうしたマンションにとっては有効な選択肢と考えておりまして、活用の幅を広げることが必要と考えてございます。また、この制度では既存のマンションの除却を要件としないことを要望しておりました。   では、次のページをお願いいたします。ここから、新たに追加した資料でございます。まず、東京都では条例によって管理状況届出制度を実施しております。対象のマンションは、昭和58年以前に建築されたマンションのうち専有部分が6戸以上のものでございます。この3月までの届出状況ですけれども、届出が必要なマンション1万1,459件のうち、1万440件の届出が済んでおります。このグラフにあります管理組合の有無などの七つの項目を必須の届出事項としておりますが、これらのいずれかがない場合は、管理不全の兆候のあるマンションとして判断してございます。現状では約17%が管理不全の兆候ありと判断されております。   次のページをお願いいたします。こちらは、同じくこの届出制度によって任意で届け出をいただいている内容で、空き住戸や賃貸住宅の状況でございます。空き住戸があると回答したマンションが約3割、賃貸化率が20%超のマンションが4割といった状況でございます。   次のページをお願いいたします。マンションストックに求められる性能についてでございます。これまでマンションにつきましては、耐震性ですとかバリアフリーなどが住宅の性能として主に話題に上がってきたといった現状でございましたが、昨年6月に建築物省エネ法が改正されまして、2025年には全ての新築住宅において省エネ基準の適合が義務化されます。また、その後も、更なる基準の強化ですとか、ストック平均での性能確保を目指すといったことが示されてございます。   一方、東京都におきましては、建築物環境報告書制度等に係る条例改正を昨年12月に行っております。こちらはいわゆる太陽光発電設備の設置義務化といった話なのですけれども、太陽光発電設備ですとかZEV充電器の整備義務、あと、断熱・省エネ性能設備の整備義務などを新築住宅に求めてございます。このように、新築マンションの省エネ性能、再エネ設備導入などは進展する見込みとなります。東京都としましては、良質なマンションストックの整備促進のため、既存マンションを含めた性能向上が必要だと考えてございます。   次のページをお願いいたします。ここからは目次だけ書いてございますので、中間試案をお手元に置きつつ聞いていただければなと考えております。まず、総じてですけれども、これまでお話ししたとおり、東京都のこれまでの要望事項につきましては、今回のまとめにおいて実現するものであり、方向性については賛同するものでございます。個々の内容について簡単にコメントさせていただければと思います。   まず、1ページ辺りの所在不明区分所有者を集会の決議等の要件から除外する仕組みについてでございますけれども、こちらは要望どおりであり、賛同するものでございます。   次に、8ページ辺りの部分の財産管理制度の請求権者についてでございます。特に共用部分の管理について建物周辺への影響等を考慮いたしまして、現状、利害関係人と書かれている近隣住民等ということかと思いますが、併せて自治体なども対象とできないか御検討いただきたいと考えております。続きまして、10ページぐらいになりますが、共用部分の変更決議の多数決要因の緩和についてでございます。先ほどお話ししたとおり、窓の改修ですとか屋上、外壁の断熱化、また、駐車場におけるZEV充電器の整備などですけれども、環境性能向上に当たりましては、直接的なメリットがない所有者ですとか、興味のない居住者の反対で、この性能向上工事が妨げられないよう、こうしたものの割合の緩和を求めております。   また、客観的事由のβ案について、現状、何十年という要件が書かれておりますけれども、例えば30年といった区切りにつきましては、先ほどの話ですけれども、大規模修繕工事が2回終わるかなといったタイミングかと思います。今後、ストックの性能向上を容易にする観点から、こういった区切りといったものもあるのではないかと考えております。   続きまして、15ページからですね、専有部分の保存、あとは管理の円滑化などの話でございますけれども、国内管理人の制度ですとか管理に関する事務の合理化といった話についてでございますが、先ほど来話が出ておりますけれども、区分所有者が国外にお住まいの場合ですとか、賃貸してほかの場所にいる方も多々見受けられるといったことから、こうしたものは検討を是非お願いしたいと考えております。   次の項目でございますが、22ページ目からの再生の円滑化を図る方策といたしまして、こちらは繰り返しになりますけれども、所在不明区分所有者を除外する仕組みにつきましては、改めて要望いたします。   あと、23ページ目。β−2案と書いてございますけれども、先ほど50年、60年、70年、この辺の年数が不十分ではないかといった話がありました。東京都側も同様の意見は持っておりまして、住宅政策といたしましては、住宅を長く大切に使うといった観点から設定する場合には、年数の設定に配慮が必要だと考えてございます。   その後の28ページから、建物・敷地の売却を多数決により可能にする仕組みについては、私どもの要望事項、非現地の建替えとかを進めることについて役立つものと考えてございますので、是非検討をお願いしたいと考えております。   あと、32ページ、一棟リノベーションといった話がございました。先ほどの話で、東京都におきましてはなかなか容積率を今後、うまく使えない建物といったものが出てくる中で、こうしたものについても是非検討をお願いしたいと考えております。   少し話を進めまして、34ページになります。団地の管理、再生の部分になります。先ほど再開発コーディネーター様のお話にもありましたけれども、建替えの円滑化について、やはり団地での合意形成ですね、これについては一段とハードルが高いと認識しております。私どもは先日も、以前に建替えの合意形成がうまくいかずに、その後の再生自体もうまくいかないといった団地の話も聞いてございますので、合意形成の要件緩和については是非検討していただきたいと考えております。   そんな中、β−2案といった話についてですけれども、こちらは、先ほどの単棟タイプとは考え方が少し変わるかもしれませんけれども、全ての建物において要件を事細かに決めていくと止まってしまうといった懸念もございますので、手続の簡素化ですとか建替えの促進の観点から、こうしたものは考えてもいいかなと考えております。   最後になりますけれども、45ページからの被災区分所有建物についてでございます。こちらは、東京都はまだ実際には起こっていませんけれども、今後大規模災害が起こった場合に再建が進みやすくなるように、是非とも制度の改善等を望んでおります。   東京都からは以上でございます。 ○佐久間部会長 山口様、誠にありがとうございました。   では、続きまして京都市の方からの御意見を伺うということといたします。神谷様、よろしくお願いいたします。 ○神谷参考人 改めまして、京都市住宅政策課企画担当課長の神谷と申します。どうぞよろしくお願いいたします。また、本日はこのような貴重な機会を頂きまして、ありがとうございます。   本日は、京都市のマンションの特徴と、管理不全とその予備群に対しまして管理支援の取組をしてきておるのですけれども、その事例の紹介をさせていただきまして、これらを踏まえまして京都市の課題認識について意見をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。   次のページをお願いします。まず、京都市の少し御説明をさせていただきます。京都市では、高度経済成長期からバブル景気を経まして、全国の都市の姿が変革する中で、歴史都市京都の景観を守るために厳格な景観規制を実施して、京都ならではの魅力と都市活力の好循環を生み出してきました。特に、平成19年には、50年後、100年後を見据えまして、建物の高さ規制の強化やデザイン基準の見直し、屋外広告物対策の強化など、五つの柱と支援制度で構成された新景観政策を実施いたしました。また、令和元年には、新景観政策の更なる進化ということで、継続して景観保全と経済の両立、景観と活力の調和を図っているというところでございます。   次のページをお願いいたします。今の景観政策を踏まえていただきまして、現在の京都市のマンションの特徴について御説明をしたいと思います。先ほど申しました景観規制によります高さ規制、容積率、日影規制など、厳格な景観政策の影響もございまして、右側のグラフにございますとおり、他都市に比べまして小規模なマンションが多くを占めている状況にございます。また、左側のグラフを見ていただきまして、高さ規制に既存不適格となっているマンションというものが非常に多く存在をしておりまして、これが建替えによる再生を一層困難化させているという京都市特有の課題がございます。   次のページをお願いいたします。以上を背景といたしまして、京都市では全国でも早い段階から、官民が連携協力を致しまして、マンションの管理支援というものに取り組んできたという経過がございます。平成23年度の高経年マンションの実態調査におきましては、管理組合に対するアンケート調査に加えまして、専門家が目視で外観調査を行って老朽化が確認されたマンションを要支援マンションと定義をしてございます。この要支援マンションにつきましては、管理組合が機能していないことも多くございますので、支援要請を待つ形では駄目だということで、市から積極的に専門家を派遣する、いわゆるおせっかい型の支援を展開しているところでございます。当時は、私有財産であるマンションに対しまして行政が積極的に関与する法的な枠組みというものはなかったのですけれども、思い切った一歩を踏み出したことによりまして、平成23年度には47件ございました要支援マンションが令和2年度末には24件に減少させるなど、着実に成果を上げてきているところでございます。   次のページをお願いいたします。続きまして、おせっかい型の支援を行ってもなお合意形成が困難を極め、慢性的な管理不全となっている事例を三つ御紹介したいと思います。まず、一つ目の事例でございます。こちらの事例では、管理組合が事実上存在しておらず、所在不明の区分所有者や長期滞納者が存在するなど、様々な問題がありましたので、平成23年度から支援を開始しているものでございます。管理組合の設立や滞納の訴訟など、様々な専門家が関与して一定の解決を図ってまいりましたが、その間にも老朽化が進み、建物の強度に問題が生じているため、早急な対応が必要となってございます。しかし、所在不明や投資目的といった非居住住戸の問題がなお残っておりまして、例えば、倉庫利用をしている非居住者が劣悪な状態を意に介さず、修繕にも除却にも反対している、あるいは賃貸用として購入した区分所有者が賃貸人との関係性を理由に賛成しないなど、総戸数12戸のうち、少なくとも3戸が修繕や除却に対して確実の反対票にあるという状況にございます。現在は次善の策といたしまして、一棟売却を視野に合意形成を進めているところでございますが、非居住の区分所有者が大半を占めている状況でございまして、全員合意を得るのに相当の時間を要するものと考えてございます。   次のページをお願いいたします。二つ目の事例でございます。こちらの事例は、老朽化がかなり進行しており、危険箇所が複数あったため、平成26年度から専門家を派遣して、地道に修繕を進めてきた事例ということでございます。老朽化に加えまして、耐震性能が著しく低いことが判明しておりまして、長寿命化には多額の費用が掛かるということもあって、一時金の徴収が避けられません。このため、長寿命化か解体かの岐路となっているのですが、このマンションは比較的立地に恵まれているので、不動産事業者への見積もりを始めるなど、解体して敷地売却する方向で検討を進めているところでございます。ところが、収益事業用に2戸を所有する不動産賃貸事業者が、これまで管理組合の運営には参加してこなかったにもかかわらず、不動産買取り業者としての自身の利益確保のために反対をしている状況にありまして、合意形成が中断され、時間を要している状況でございます。   次のページをお願いいたします。最後の三つ目の事例でございます。外壁やバルコニーの劣化が激しく、実際に剥落が起きていましたので、平成22年度から支援を行っておりまして、早急にバルコニーの撤去などの大規模修繕工事を行った事例でございます。ほかにも漏水や電気設備の劣化が見られますが、修繕積立金が枯渇し、建物の維持が困難になっているという状況にあります。当初、除却に向けた協議を進めていましたが、住戸を売却する区分所有者が相次ぎ、事情を知らずに購入した投資目的の区分所有者の合意が得られないと一進一退を繰り返している状況でございます。このマンションは全員合意での一棟売りも視野に売却を検討しておりまして、早急に敷地売却推進決議に合意し、いわゆる売り逃げを防止した上で合意形成を進めていくよう調整しているところでございますが、区分所有者が高齢化しておりまして、解体費用の不安や除却後の住まい探しに不安の声が上がっているところでございます。   以上、三つのマンションを御紹介しましたが、その共通点は、老朽化の進行が激しいにもかかわらず十分な積立てができておらず、長寿命化に向けた修繕改修が難しくなっているということが挙げられます。このため、やむを得ず解体や売却の方向を探るということになるのですが、賃貸化などの非居住化の進行から総会、理事会が成り立ちません。特に、投資目的や所在不明の区分所有者が合意形成を阻む大きな要因となっているという状況にございます。   次のページをお願いいたします。以上を踏まえまして、中間試案に対する京都市の意見を述べたいと思います。特に、要支援マンションに対する支援を行ってきた立場から御意見をさせていただきたいと考えております。まず、中間試案に対しましては全体として、総論として賛成の立場と考えてございます。その上で、一つずつ意見を述べさせていただきたいと思います。   まず、区分所有者の責務でございます。責務につきましては、区分所有建物の管理、再生を論じる上で、その根幹となるものであると認識をしてございます。区分所有法自体は私法でございますけれども、公法の枠組みにも大きな影響を与えるものと考えておりまして、極めて重要なものであると考えてございます。現状としましては、戸建て住宅の所有者に比べて区分所有者の責任は曖昧であると考えておりまして、これに起因する問題は少なくないと考えます。区分所有者は、管理組合の構成員としてだけでなく、区分所有建物の所有者個人としての責務を負うべきであって、これが区分所有法で明らかにされるべきだと考えます。   つきましては、その責務について2点、お願いしたいと考えております。一つ目でございます。区分所有者という個人と管理組合という団体の責務をそれぞれ明確にしていただきたいということでございます。2点目は、区分所有者の責務は努力義務ではなく、義務規定としていただきたいということでございます。なお、これまで非居住化ということで所有者の無関心というものが一つ、問題となっておったのですが、先ほどの事例でも紹介いたしましたとおり、区分所有物の資産価値の向上をよしとしない、正に収益事業目的の区分所有者という存在が新たに現れてきておりますので、この辺りも少し念頭に置いた検討をお願いしたいと考えてございます。すなわち、価値が下がるほどよいという考え方の方々です。   次のスライドをお願いします。次に、区分所有建物の管理の円滑化を図る方策についてでございます。京都市内に多い小規模なマンションは、大規模なマンションに比べまして資金面や人材面が脆弱で、また、少数の反対票が区分法上の議決要件を阻害する要因となっています。このような理由から、小規模マンションは管理不全に陥りやすく、その解消も難しいという実情がございまして、合意形成が困難化するマンションが今後も増えるものと想定しております。また、管理不全によりまして近隣にも被害が及ぶほどに老朽化が進行しましても、合意形成が進まず対応できないといったケースが危惧されますので、柔軟な対応が必要だと考えてございます。このため、所在不明区分所有者を議決の母数から除外する仕組みは、管理不全状態の防止や早期の解消に向けて有効であると考えております。   また、無関心や非協力的な区分所有者の存在が阻害要因となるケースも多いことから、出席者の多数決による決議を可能とする仕組みについても有効と考えます。その際、論点の一つになっております定足数につきましては、京都市の要支援状態にある区分所有建物には投資型のマンションも含まれまして、ほとんどの区分所有者が非居住で管理に無関心というケースもございますので、柔軟に運用できるよう検討いただきたいと思います。   次に、国内管理人の選任制度の創設も有効と考えます。試案では、できる規定が想定されてございますが、実効性が課題と考えてございます。国外居住者が連絡先を明らかにし、自ら管理費の支払い事務を行う態勢を整える場合など、そういった場合には柔軟な在り方の許容を前提とした上で、国内管理人の選任を努力義務とすることなど、実効性を高めるよう検討いただければと思います。また、国内管理人は民法の委任規定に従い、集会通知の受領や議決権行使、管理費等の債務の弁済ができる規定になってございますが、国内管理人に対して行った通知送達や費用請求の効力が区分所有者に帰属する仕組みについても御検討いただければと思います。   次のページをお願いいたします。再生に係る合意形成の円滑化につきましては、比較的大規模なマンションにおける全員合意の困難性から緩和する趣旨で検討が行われていますが、小規模マンションにおいても同様の問題があると考えております。このため、建替え決議の多数決割合の緩和に関する各案につきまして、法定の多数決割合の緩和は有効と考えています。   なお、客観的事由として、マンション建替え円滑化法の特定要除却認定、要除却認定の基準参酌や、築年による判断の議論がなされてございますけれども、これに加えまして、将来的に特定要除却認定の基準に該当するおそれが非常に高いと予見される管理不全状態に該当する場合の追加についても御検討いただきたいと考えてございます。この辺りは、私法と公法ということですみ分けはあるのかなと思いますが、マンション管理適正化法や建築基準法という行政指導、行政処分といった仕組みとの連動についても意識をしていただけると有り難いと考えてございます。   次に、区分所有関係の解消、再生のための新たな仕組みといたしまして、本市特有の課題である既存不適格に起因する建替え困難の解決策として注目しております。例えば、建物・敷地の一括売却、あるいは一棟リノベーションというのは実効性の高い手法だと考えておりますが、試案の補足説明でも指摘がされておりますとおり、現行法は建替えよりも負担が少ないにもかかわらず、これらの要件が厳しい状態というのは改善すべきと考えます。   再生の円滑化を図る方策につきまして意見をまとめますと、特に危険性が高い、あるいはその兆候があるマンションについては、できるだけ合意形成が進みやすい手続で、かつ、事業における制約が少なく、様々なプレーヤーが参加しやすい再生手法の検討をお願いしたいと考えております。   次のページをお願いいたします。最後に、被災区分所有建物の再生の円滑化について、意見を申し上げます。建替え建物・敷地売却決議等の多数決要件の緩和につきましては、大規模一部滅失をした被災区分所有建物に倒壊等の危険性が認められる場合など、客観的事由を比較衡量した結果として速やかな決議が求められる場合には、特に必要であると考えてございます。また、被災区分所有法に基づく決議可能期間の延長につきましては、全部滅失をした場合と同様の期間を、大規模一部滅失をした場合に適用するということは妥当であると考えます。ただし、大規模一部滅失をした被災区分所有建物の危険性の程度によりましては、決議、取り分け建物取壊しの決議に求められるスピード感は異なってくると考えられます。   京都市からの意見は以上でございます。 ○佐久間部会長 神谷様、誠にありがとうございました。   それではここから、後半三つの御意見に関しまして、委員、幹事の皆様方から御質問、御意見を頂きたいと思います。 ○齊藤委員 どうもありがとうございました。3名の方、御説明どうもありがとうございました。それぞれに質問があるので、順番にしていってよろしいでしょうか。ありがとうございます。   再開発コーディネーター協会の金子さん、丁寧な御説明、どうもありがとうございました。実務に即して大変勉強させていただきました。そして、建替え決議の要件のところでございます。おっしゃるように、何か条件を付けると、それが紛争のネタになるのではないかと危惧するので、明解な方がよろしいということもあるかと思いますがということで、ただし、もし客観的要件を設定して緩和する場合はということで、3ページの方にお示ししていただいているのですが、そこで実態として建替えの必要性を認識するのは、水回りの不具合とかそういったものが多いのだということですので、単なる耐震性の不足とか、火災に対する安全性とか、外壁剥離に併せて、給排水、そういったものの劣化の状態、あるいはバリアフリーなどの状態、エレベーターがないから困っているというようなことも併せて客観的な要件として考えた方がよろしいでしょうということで、この中間試案12ページのβ−1案まで含むような考え方だという理解でよろしかったでしょうか。 ○金子参考人 結構でございます。 ○齊藤委員 ありがとうございます。もう1点でございます。できるだけ簡潔な建替えの決議の要件がいいということ、おっしゃられるとおりかと思いますが、同じく3ページ目のところに、こういった条件を課す場合には行政が関与する形が望ましいのではないかということが書かれております。そういった意味では今、円滑化法を使う場合は行政が関与され、ある意味、実務をされている方は少し手数が掛かるかもしれませんが、そのことによって、この要件がおかしいのではないかというようなトラブルがないと私は理解しているのですけれども、こうした何か要件を課す場合には、やはり円滑化法で今やっているような行政が関与する形が望ましいというお考えであるということ、そういう理解でよろしいでしょうか。 ○金子参考人 はい、それで結構でございます。 ○齊藤委員 無理やり誘導しているわけではなく、本当に私の理解で大丈夫でしょうか。 ○金子参考人 当事者間で要件を確認した上で、その後、何か起こったら決議後に訴訟等で白黒決着を付けるということよりは、事前に第三者の客観的な立場の方がその認定をしていただくという、このプロセスがすごく重要だと思うのです。いずれにしても、少し補足しますけれども、要除却認定にしろ、買受計画の認定にしろ、売却決議にしろ、それらは全て合意形成のプロセスであるというように考えておりますので、そのプロセスのステップの踏み方としては、客観的第三者が一定の認定をするという手続が、やはり最終的な全員の同意に至る過程の中で重要かなということでございます。 ○齊藤委員 そのとき反対というか、賛成できなかった人も納得できるようなプロセスの見える化が重要かなと思いますので。 ○金子参考人 おっしゃるとおりですね。 ○齊藤委員 御指導どうもありがとうございました。   次、東京都さんにお伺いしてよろしいでしょうか。山口さん、丁寧な御説明どうもありがとうございました。いろいろ考えることが多いところでございますが、まず1点目、是非教えていただきたいのは9ページ目でございます。今回、建替えの決議の決議要件を下げるとなった場合、5分の4から、例えば4分の3にした場合、そうしますと、賛成できなかった方、参加できない方が今より増えていくという意味では、そちらの方、建替えに参加できない区分所有者などの居住支援をより充実する必要があると思います。そういう意味では、この要件を緩和することと、それだけでは建替えは円滑に進まない可能性もあるので、住宅政策としての体制をより強化する必要があるという御認識であるのかという確認と、そうしますと、今、東京都がお持ちのメニューに、更にどんなメニューが必要とお考えなのでしょうかということ、もし今お考えがあればご教示いただければと思います。 ○山口参考人 ありがとうございます。なかなかすぐお答えしづらい部分があるのですけれども、当然、私ども、こういった要件緩和をするのは、まずファーストステップとして、建替えを進めていくための要件として考えてございますし、その後の支援といったものについても重要だと考えてございます。それについてどういうふうな施策を打っていくかということにつきましては、国とも是非御相談させていただきながら、よりよい施策を打っていきたいなと考えてございます。今の段階ではこれ以上、なかなか申し上げられず、申し訳ございません。 ○齊藤委員 ありがとうございます。建替えを円滑に進めていくということは、決議要件に併せて居住政策、住宅政策と一緒に考えていく必要があるということを私も改めて理解させていただきました。   2点目、教えていただきたいのですが、13ページのところで、以前からやはり非現地での建替えを大変重視されていると、必要があるのだという御説明を頂いたところでございます。非現地での建替えということを今想定されている、一回解消し、再度建設するという方法でもできるのではないかと思います。しかし、それでは税の優遇措置等が受けられないとか、デメリットもいろいろあると思いますが、現実的にどのぐらいの範囲での非現地での建替えを想定されていますか。すごく遠いところに行かれると困ると思うのですが、何かイメージがあって、このぐらいの範囲でこういったところはあり得るのだ、みたいなことを、具体的に想定されているものがあるのでしょうか。 ○山口参考人 こちらにつきましては、元々この要望の基にあったものは、一つの大きな再開発の地区の中におきまして、マンションの位置を変えていくと、そういった物件についてイメージしたものでございますので、余り遠くに行くといったことは想定しておりません。先ほど来、高齢者の方の引っ越しの問題とかもありましたけれども、住民の方は、あまり生活環境が変わるところに行くだとか、引っ越しがたくさんあるだとか、そうしたものについての御要望は多いと感じてございますので、一応そのようなイメージで捉えております。よろしいでしょうか。 ○齊藤委員 分かりました。そうすると、全体的に一体に開発されたようなところなのでしょうか、そのなかの部分的移動というイメージでよいでしょうか。 ○山口参考人 そうですね、元々あった案件としては、そのようなものをイメージしておりますが、ただ、実際、都市のど真ん中から、例えば少し郊外に行くと、よりよい条件で建替えができるだとか、そうしたことも考え得るかとは思いますので、そこは幅を狭めずに、是非考えていきたいと思っております。 ○齊藤委員 ありがとうございます。そして、18ページ目のところでございます。財産の管理人制度、管理不全の共用部分の管理制度ができることを検討しているわけでございますが、こういったものは利害関係者が手を挙げて活用していくということになりますが、この利害関係者の中に、自治体が含まれる方がよろしいという理解でよろしいでしょうか。そういう必要性があるという理解でよろしいでしょうか。 ○山口参考人 今、こちらはマンションの関係でございますけれども、通常の空き家の関係などでも、やはり自治体が関与しながら進めているといった話もございますし、当然、東京におきましてはやはりマンションストックが居住のメインになってまいりますので、そうした仕組みについては、マンションにおいても同様の仕組みがあった方が有効だと考えております。 ○齊藤委員 ありがとうございます。やはりそういう必要性があるという理解でよろしいでしょうか。 ○山口参考人 はい。 ○齊藤委員 どうもいろいろ御指導ありがとうございました。   京都市の神谷さんにお伺いしたいと思います。御説明どうもありがとうございました。是非たくさん教えていただきたいことがありますが、齊藤ばかり質問していると怒られますので、よりすぐってお伺いしたいと思います。   区分所有者の責務のところに、かなり厳しい御意見を頂いた気がするのですけれども、区分所有者と管理組合と、まず、それぞれ分けて責務を明確にするということでございますが、今の書きぶりでは、いろいろ弱くて、行政が御指導されるときに困るのでしょうかという質問でございます。それと併せまして、努力義務ではなく義務というのを求められる理由や背景など、お考えがあれば、実態に即して、教えていただきたいと思います。いかがでしょうか。 ○神谷参考人 ありがとうございます。責務につきましては、今おっしゃっていただきました、行政特有の指導という、その観点ももちろんあるのですけれども、まず1点目は、今後、京都市におきましても二つの老いが、やはり直面しておりまして、高経年マンションというものが大幅に増えていく見通しとなっています。それも全国よりも早いペースで増えていく見通しとなっています。その際に、やはり要支援マンションというものの数も増えていくだろうということで、そこに対して行政が直接的に支援をしていくというのはおのずと限界があると思っております。先日もとあるシンポジウムでも話があったのですけれども、そうした場合に、やはり今後重要になっていくのは、国交省のマンション検討会でも議論されておりますが、第三者管理者方式とか、いわゆる専門家を更にうまく使っていただくということが大事になっていくのかなと考えておるのですけれども、そのときに、やはり、先ほどもどなたかからも少しお話がありましたけれども、今の区分所有者さんの正直な感想としては、管理組合、管理会社に任せているという感じだと思うのです。その認識をやはり改めていく必要があるのではないか。専門家の皆さんに活躍していただく上では、やはり区分所有者や管理組合さんに主体性を発揮していただく必要があるのではないかということが、まず1点であります。   その上でなのですけれども、今回、マンション管理適正化法という枠組みの中でマンションが社会的資産であると位置付けていただきまして、行政が関与しやすくなったというのがあるのですが、その中で助言、指導、勧告の行政指導の枠組みも頂きました。ただ、マンション管理の方の助言、指導の枠組みというのは管理者に対して行うということになっておるのですけれども、その一歩先に進みまして、管理不全がかなり進んだ後、もう行政が直接的に関与せざるを得ないという、もう少し強めないといけないとなったときには、行政処分という形になっていくわけです。命令、あるいは突き詰めていきますと代執行ということになるのですが、その段階まで行きますと、恐らく建物の状態というのが単なる保存行為では既に対応できない状態になっているかと思いますので、恐らく管理者相手に行政処分なりをするということはできなくて、区分所有者全員に処分をしていくということになるのではないかと想定をしております。   その際に恐らく使われる法律としては、今、空き家法がよく議論されておりますが、入居者がおりますと空き家にならないので、一般的には建築基準法なのかなと想定しておりますが、命令違反をした場合の処分規定、罰則規定は刑事罰でございます。これが区分所有者にいきなり刑事罰として乗っていくという形になるので、指導する側というだけではなくて区分所有者の側からしても、管理不全の状態に陥って自らどうすることもできない状態になっているにもかかわらず、命令を打たれて処分をされるという状況になるのは非常に理不尽なのかなと考えておりまして、その辺りを、私法と公法という枠組みではございますが、全体としてどういった方に、正に管理から再生という流れを作っていくのかというのを考えていく必要があるのではないかと、そのときにキーになるのがこの責務規定になるのではないかと考えている次第です。 ○齊藤委員 御丁寧にどうもありがとうございました。お一人お一人、区分所有者の基本的な意識が重要だということと、やはりこういう規定がないと行政として難しい側面があるということ、理解させていただきました。御指導ありがとうございました。   もう一つ、2点目、10ページ目になるところで、建替え決議の多数決要件の緩和、その客観的な事由として、今検討しているような項目よりもう少し、何というのでしょうか、将来のという感じですよね、管理不全というレベルも加えていただけたらどうかというような御提案、御指摘を頂きましたが、このときの管理不全、多分、皆さんは管理不全でいろいろな状態を想定しているので、耐震性が低いとか、外壁剥離するとか、そういったものはもう含まれているわけですから、もう少しこの管理不全について物理的、あるいは物理的だけにとどまらず、管理組合の運営が不全であるようなことも含めてのお考えなのでしょうかという辺りを教えていただけたらと思いますが、いかがでしょうか。 ○神谷参考人 今御議論いただいていますような、特定要除却認定の基準などを参酌する場合には、非常に分かりやすい客観的基準なのかなと思うのですが、ここに至っているということは、それなりにもう状態としては悪くなっているという状態なのかなと思います。ただ、本来管理、再生を語る上で、そこに至らないようにしたいというのが行政の本音としてございますので、その前の段階で何かしら手を打てないかなというのが本音でございます。その際、すみません、これというアイデアというのはなかなか、この法律の枠組みもございますので、難しいのですけれども、例えば、マンション管理適正化法では助言、指導、勧告という仕組みを設けていただいたわけですので、その辺りと何かしら連動するような形がとれれば非常にやりやすいのかなと考えてございます。 ○齊藤委員 ありがとうございます。現場で制度を動かしていくには、公法と私法が連携していかないといけないと思いますので、重要な御指摘、御指導ありがとうございました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○鎌野委員 どうもありがとうございました。それぞれに1点又は2点、御質問させていただきたいと思います。   まず、再開発コーディネーター協会の金子さんに対する質問ですけれども、4ページのところに賃借権が消滅した場合というところがございます。それで、中間試案では、賃借権の消滅により通常生ずる損失の補償金の支払を請求することができるというようなことで、少しこの相手方というか、肩代わりうんぬんということとも関連をするのですけれども、今回ここの4ページのところのペーパーの2ポツ目に、賃借人に対しての一定の補償があるべきものと思料するというようなことで、そうすると中間試案の賃借権の消滅により通常生ずる損失の補償金の支払ということがこれに当たるのかどうか、そして、最後のポツのところに、客観的要件を設けることは望ましくないということなのですけれども、そうするとこういうものは望ましくないということになるのかや、中間試案でその点の補償というのはこういう書きぶりでよろしいのかというようなことを少し教えていただければと思います。 ○金子参考人 ありがとうございます。借家人さんへの補償に関する、いわゆる通損補償の取扱いですけれども、これは通損補償の額の算定の基準と非常に連動するところでございまして、恐らく下敷きになっているマンション敷地売却制度の中では、いわゆる公共事業における損失補償基準に近い、ほぼ同じ考え方の借家人補償を出すということになってございます。   非常にざっくばらんに言うと、通常の住宅借家の方に対する通損補償は差額家賃補償が主ですので、実はそれほどべらぼうな金額にはならないのですね。問題は営業借家の方でございまして、マンションが古くなっていても売上げは高いなんていうことは全然あるわけです。そうすると土地も含めた専有部分の価値をはるかに上回る営業補償になるとか、あるいは店舗に関しては工作物を設置しておりますので、そちらの方に非常に大きなお金を掛けて設備投資されていて、それを建替えの中で補償するということになるとは、再開発事業のように行政が関与して補助金だとか容積率の非常に大きな緩和だとかという開発利益があれば別ですけれども、単なるマンション建替えでそれだけの補償金を区分所有者、オーナーさんに負担させるというのは非常に酷でございます。先生の御指摘の、通常生じる損失補償をして差し上げるべきであろうということは、そのとおりなのですけれども、ただし一定の限度を設けていただきたいということが私のここで言いたかった趣旨でございます。お答えになっておりますでしょうか。 ○鎌野委員 分かりました。どうもありがとうございました。   それでは、続けて東京都さんに、山口さんの方に2点、少し確認をさせていただきたいのですけれども、ページ数が分からないのですけれども、(1)建替えに必要な決議要件等についてというところで、要するに、東京都さんですから、そこの要件緩和による懸念事項、そして、その一番下のところに、建替えに参加できない区分所有者等の居住支援等をより充実させる必要がある、ある意味では、これはやはり行政の助けなしにはなかなか難しいのかなということなので、そうすると、こういうことを実際に行政の側として、参加できない区分所有者等の居住支援ということの可能性というか、どれほど可能なのか。もちろん一定の基準を設けて、できない場合もあるでしょうし、そうでない場合もあるのですけれども、この辺りということをお聞きしたいのですけれども、むしろ、これは私の意見ですけれども、先ほど来、再開発コーディネーターとか京都市さんの御発言のように、それから東京都さんもそうですけれども、今後はなかなか建替えが難しいという中で、このことはむしろ解消決議、解消の場面で起こり得るのだろうと思います。そうすると、そういうときに、分かる範囲で結構です、あるいは場合によってはなかなか難しいお答えになるかも分かりませんけれども、行政が行うべき、こういった方の居住支援というか、そういったことについて、もし何かお考えをお聞かせいただければと思います。   それから、続けて、少し時間の関係もありますので、もう1点ですけれども、先ほどの非現地建替えのことですけれども、これも私は先ほどの齊藤先生と同じような疑問を持ちまして、やはり遠隔地、それから建替えということになると費用負担、そうすると、一般的なこういった非現地建替えというのはなかなか合意形成が難しい、なかなか現実的ではないのかなという感想を持ちましたけれども、そうすると、今回の中間試案で提案しているような解消制度というのが創設されれば、むしろそちらの方にシフトするのではないかと。ただ、先ほどの御説明で、こういうことが現実に可能になるのは、一つの再開発地区の中で、敷地は重ならないけれども、少し近くにというようなこと、というような御説明を受けて、ある意味では納得しましたけれども、もしその点について何らか補足を頂ければと思います。   東京都さんについては、その2点を質問させていただきたいと思います。 ○山口参考人 ありがとうございます。居住支援のことにつきましては、マンション建替えに当たって、どこまでできるかといったことは、行政としてはまだ議論できていない部分でございますので、今日の段階では御説明できないかなと考えております。 ○鎌野委員 分かりました。 ○山口参考人 あと、非現地建替えにつきましては、先ほどの齊藤先生のときと同じなのですけれども、今考えているのは、第一は再開発で敷地が重ならない場合とかですね、こうした案件があるのではないかというところで要望しておりまして、あと実際、敷地の売却ですとか、あとは一括売却とか、こういった制度を使いながらやっていくと、よりマンション居住者の皆様が、建替えといいますか、今後の新しい住まいにうまく移行できるのではないかとは考えておりますので、そうした制度設計につきましては改めてお願いしたいと思っております。こんなお答えでよろしいでしょうか。 ○鎌野委員 分かりました。どうもありがとうございました。   最後に、京都市さんに、神谷さんの方に1点、お伺いしたいのですけれども、これは先ほどの齊藤先生の質問とも重なるのですけれども、区分所有法制の改正に係る中間試案に対する意見の最初のところです。区分所有者の責務というところですけれども、これはこういうふうに考えることはできないのかと、その下のところに、個人と団体の責務をそれぞれ明確にするということですけれども、これは私の考えですけれども、どちらかというと管理組合、そういう区分所有者の団体については公法の分野ではないかと、建替え円滑化法とか、むしろマンション管理適正化法とかという、そういう枠組みではないかと。やはり区分所有法ですから、民事の基本ということで、それは区分所有者の責務ということになろうかと、そういうふうに整理することはどうなのかということで、御意見を伺えればと思います。   その上で非常に悩ましいのは、お気持ちは分かるのですけれども、区分所有者の責務の方を努力義務でなくて義務規定とするというような場合、これは民事の区分所有者相互の権利義務関係ということになるので、具体的にその場合に他の区分所有者が、言わばここでいう義務を果たしていない者に対してどのような請求というのが想定できるのかというようなことで、もちろん管理費を滞納するとか義務違反とかというのは、言わば規約違反でもあるので、そちらの方でいけると思うのですけれども、一般的な法的な、他の区分所有者がそういう義務違反をした区分所有者に対してどんな請求ができるのかということで、何かいいお知恵というか、何かその辺り、考えていらっしゃるようなことを少し述べていただければ有り難いのですけれども。よろしくお願いします。 ○神谷参考人 まず一つ目でございますけれども、今、中間試案の方で御提案いただいていますのが、区分所有者は区分所有者の団体の構成員としてという書き方で御提案いただいているかと思っております。この書き方がというよりは、先ほども言いましたとおり、団体が維持管理なり管理というものをやっていくのだということが、今、現実としまして区分所有者の方ではそういうふうに思っているのかなと思っておりまして、そうではなくて区分所有者自身も、一般的な義務として維持保全義務なり適正に管理する義務を負うのですよというところをはっきりさせた方がいいのではないかという趣旨で、まずは申し上げさせていただいたというのが1点目でございます。   2点目の点も少し関連をするのですが、先ほども少し申しましたように、単なる無関心であるとゼロからスタートするので、いかに合意形成に巻き込んでいくかといいますか、図っていくかということでいいのですけれども、意図的に資産価値を、下げるといったらあれですけれども、損なうことがその方にとってのメリットになるという方が最近、現れてきておりまして、そういう場合には区分所有建物の財産というもの自体を損なう方向に持っていかれる方がいるということでございますので、その辺りの、区分所有建物を全員で適正に管理する、その先にある、しっかりと価値といいますか財産を守っていくのだというところの考え方といいますか、理念といいますか、そこについては義務化できないのかなというようなイメージを持っているというところでございます。すみません、直接のお答えになっているかどうか、あれなのですけれども。 ○鎌野委員 分かりました。一応そういうことで伺っておきますので、どうもありがとうございました。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。1点、私の方から伺いたいことがあるのですが。今おっしゃった、区分所有者の中には区分所有建物の価値を毀損する方が自分にとって都合がいいという方が現れていると。それはどういうことでその人の都合がいいということになるのでしょうか。それを少し教えていただけますか。 ○神谷参考人 すみません、適切な表現ではないかもしれませんが、簡単に言いますと、貧困ビジネスです。どんなに劣悪な状況でも、それなりの金額なら借りる方がいるので、安く取得したい、そのためには建物全体の価値が下がる方がいいという方が実際にいらっしゃるということです。 ○佐久間部会長 分かりました、ありがとうございます。 ○鎌野委員 一言、鎌野です。それは義務違反者に対する措置で対応ができるような気もしますけれどもね。ですけれども、それでなかなか難しいということなのでしょうか。少し余計なことを申し上げますけれども。 ○佐久間部会長 多分おっしゃっているのは、積極的に建物を毀損するということではなくて、価値向上の方に全く協力しないということなのではないでしょうか。 ○神谷参考人 そういうことでございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○大桐委員 ありがとうございます。まず、再開発コーディネーター協会様に2点質問があります。1点目は、団地の客観的要件の緩和による全棟での適合について、少し困難ではないかという御意見のようですけれども、例えば、この御意見というのは、団地の中で1棟や2棟、建替えの必要がない、あるいは必要性が低いような団地においても、団地の全体での一括建替えをすべきだというお考えなのかどうか、そこを確認させてくださいというのが一つ目と、また、その理由ですね。   それから、同じ6ページの一番下のポツにございます、ほかにも多くの問題があるのですよという御指摘を頂きましたけれども、こちらはこの法制審で取り上げるべき事項が一杯ありますよという新たな御提案なのかどうか、もしそういった御提案であれば、もっと詳しいところをお聞かせ、教えていただければなと思っておりますので、以上の2点でございます。 ○金子参考人 ありがとうございます。1点目の、客観的要件が全棟で適合した場合に多数決要件を緩和するということに関する私の意見ですけれども、決して建替えの必要性のない棟を巻き込んで団地全体の建替えをするべきだと言っているわけではございません。ただ、一方では、団地の一部建替えというのが今、現実的に非常に制度的に難しい。先ほど法制審様の方で検討する事項ではないことも含めて意見を言いましたが、一つの計画された団地の中の一部分で建替えをするというのが非常に難しいので、どうしても団地全体で建替えをしていくということの合理性といいますか、その傾向がどうしても高いという状況がございます。いずれにしても、老朽化した団地は大抵、築年数がせいぜい違っても1、2年というところですので、総じて老朽化した建物がたくさん団地の中にあるという中で、施工者が例えば2、3社さん入っていたりして、それによって若干いろいろなところの出来が違ったりするということは起こり得ますので、そういうような何十棟もある団地の中で全ての棟で適合するという要件は非常に難しいのではないかということが、ここでお話をさせていただいている趣旨でございます。   それから、2点目の、決議要件のみならずというところでございますけれども、これはどちらかというと国土交通省様と今後もいろいろと協議をさせていただきながら、できるだけ団地の建替えが円滑に進むような事業制度というものを検討させていただきたいですし、検討していきたいということをここであえて付け加えさせていただいたということでございまして、こちらの審議会様の方でいろいろと検討していただきたいということを特に意図してお話ししているものではございません。よろしいでしょうか。 ○大桐委員 ありがとうございます。   それから、東京都さんにも質問が1点ありまして、先ほど来出ております非現地での建替えについてですが、こういった現場での必要性というか、かなりこういった必要性が高いのでしょうかというところを是非お聞きしたいのですけれども、例えば年間でどれぐらいこういった、どうしてもこの制度が必要だと思われるケースがあるのかどうか、あるいはもうレアケースであって、何年かに1回ぐらいしか出ないというケースなのか、その辺りを教えていただければなと思います。 ○山口参考人 ありがとうございます。まず、先ほど来事例として挙げているような案件については、なかなか出てこないなとは考えておりますが、その一方で、古い建物でなかなか容積率の関係とかで建替えができない案件については、非常に多くあると認識しております。こうしたものをまとめて建て替える手法といたしましては、こうした非現地での建替えが有効ではないかといった御提案をさせていただいている状況でございます。こういったお答えでよろしいでしょうか。 ○大桐委員 年間にしてどれぐらい必要性をお感じになられるかというのは、いかがでしょうか。 ○山口参考人 なかなか、すみません、年間といったイメージではお答えできないのですけれども、先ほど、高経年マンションの容積率及び敷地面積の状況といったグラフでお示ししておりますけれども、このプロットしている点が今、2,200棟ございまして、オレンジ色の線が容積率を100%使い切るといったところなのですけれども、この上の部分ですね、赤い枠で囲んでいる部分は同じ容積では建替えができない案件でございます。この点を見ても、非常にたくさんのマンションが規模的に、同じ場所での建替えが難しいと考えておりますので、こうしたものを今後どうやって建替えをしていくかについての解は、一定程度必要ではないかと考えております。 ○大桐委員 ありがとうございます。   最後に、京都市さんにも1点質問がございまして、責務に関するお話を頂きまして、ありがとうございました。戸建てと比べて曖昧な部分があるという御指摘なのですけれども、むしろ戸建てにおいては民法で責務という明確な規定というのはないと認識しております。その兼ね合いで、区分所有法においては個人での責務を置かなければいけないという御認識をお聞きしたい。その点と、戸建てであれば全部自分のものなので、どうにもこうにも自分次第でできるという部分がありますけれども、区分所有者の場合には、何を決めるにしても、決議をしてからということで、必ずしも自分が頑張りたくてもできない部分も、共用部分等に関しては、あるかなと思うのですね。なので、責務について、もし義務として規定をという御希望であるのであれば、その範囲とか、どういった場面においてという特定ですよね、そういったことが何か必要なのではないかと。私はむしろ義務ではなく理念でというふうに思っているので、義務規定においては少し消極的に思ってはいるのですけれども、もし置くとすると、そういった範囲とか適用場面を明確にしておかなければいけないと考えてはいるのですけれども、その辺りの御意見はいかがでしょうか。 ○神谷参考人 ありがとうございます。まず、今御説明いただきました、戸建て住宅と比べましてというところなのですけれども、確かに法律の規定というところで行きますと、どちらも明確には定められていないということなのですけれども、戸建て住宅ですと、その所有者に最終的に責任が及ぶということは一定、一般的に明らかになっているのかなと思うのですが、区分所有建物につきましては、先ほど来申し上げていますとおり、管理組合や管理会社というようなものが間に入りますので、実態としてですけれども、区分所有者にどのような責務が及んでいるのかというのは、恐らく区分所有者本人が理解されていないという状況にあるのかなと思っています。それは行政のサイドとしても実は、先ほども指導の話をしましたが、行政処分の話をしましたが、命令を打つ相手は区分所有者全員になるのではないかという、今まだ検討といいますか、精査をしている段階でございます。   ただ、重要なのは、今おっしゃっていただきましたように、例えば、行政指導という公法の枠組みで申しますと、区分所有者全員に仮に命令を打ちますと、それが区分所有者一人一人の意思では決定できないので、総会の議決という形になるのですが、その議決されたときに、仮に否決されると、命令違反になるとなったときに、恐らく罰則も全員に等しく適用するという形になるのではないかと考えておりまして、私はそこが非常に理不尽かなと考えています。だから、ここは枠組みとして全体をどう考えていくのかというのがあろうかと思いますけれども、その根底としては、やはり今、区分所有者個々の責任というものが私は曖昧だと思っているので、その曖昧な中で、議決の中で賛成者と反対者がいた、それをどう区別していくのか、そういう議論が、スタートになるのが責務規定なのではないのかなというふうなところから、この話をまず、させていただいているというのがございます。   その上で、すみません、この努力義務、義務規定という、書き方が非常にきつくなってしまってあれなのですけれども、全てを義務というのはなかなか難しいのかなと思うのですが、区分所有者として、先ほども申しましたけれども、例えば区分所有建物、全員の資産としてしっかりとそれを守っていくのだというようなことですとか、そういう根本的なところについては、義務とできるところは極力、義務としていただきたいという趣旨でございまして、例えば、努力義務、理念にとどまるところも多少あろうかと思うのですけれども、明らかにできるところは協力明らかにしていった方がいいのではないかと。これはもちろん、行政として指導する場合にも利いてくる話ではあるのですけれども、普段から、先ほど言いました、専門家との関係性をしっかりと明確にしていく上でも、その辺りは重要なのではないかと考えているところでございます。すみません、少し曖昧なのですけれども。 ○大桐委員 ありがとうございます。   最後になりますけれども、お三方にお聞きしたいのですけれども、建物・敷地売却において反社会的勢力が絡んでしまったような経験とか、どれくらいあって、それに対してどのような対策をされているのかとか、その辺り、もし御経験あれば教えていただければ有り難く存じます。 ○佐久間部会長 いかがでしょうか。御経験がなければ、ないで結構ですが。 ○金子参考人 マンション敷地売却に限ってということですか。 ○大桐委員 特に限らなくても大丈夫です。 ○金子参考人 そうですね、再開発などと比べて、マンション建替えでは比較的そういうことは少ないかなとは思っていますが、古いマンションでそういう方々がお住まいになっていることはあります。ただ、そうですね、私が経験した中で言うと、昔からその方は住んでいらっしゃった方なので、周りの方々が小さい頃から知っているといったこともあって、少し暴れられたりはしましたけれども、それほど大きな問題になることはなかったです。比較的優しい方だったのかもしれないと思いますけれども。すみません、余り答えになっていないですけれども、御質問の趣旨がもしあれば、何かうまくほかの事例とかでもお答えできるかもしれません。 ○大桐委員 敷地売却等の創設を今、検討しているところではあるのですけれども、反社会的勢力が、特に土地の位置関係からして高価なところであればあるほど、そこの取得を狙って、いわゆる嫌がらせみたいなのをして、現在の区分所有者さんから安く買い取ったりとかするような話を少し聞いたことがありまして、そういった御経験がもしあればというふうな次第です。 ○金子参考人 そうですね、民間の事業者がマンションの買取りを意図して、個別にお話をしていきつつ、全員からの買取りが難しいときに、マンション敷地売却制度を使って買い受けるということを検討しているという事例はあります。ただ、それが違法な手段を使ってというところになると、私としてはまだ聞いたことがありません。民間事業者として老朽マンションを買い取って新しいものにするという行為そのものに関して、私は必ずしも否定できるものではないと思っていますけれども、そのことと手段が適法ではないということとは少し別の問題ではないかと考えております。これもお答えになっていないと思いますが。 ○大桐委員 ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○萩原参考人 マンション管理士会の萩原です。少しよろしいですか。反社関与は昔、福岡の事件が、今正確な資料も記憶もないですけれども、福岡で特定建物を反社が買い占めて、結局頓挫したみたいなのですけれども、事案はあります。東日本大震災と熊本でも、反社の関与を結構心配したのですけれども、被災マンションの敷地売却というのは余り金にならないみたいで、東日本と熊本の経過では反社の関与はありませんでした。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。ほかに御意見はありますでしょうか。 ○神谷参考人 すみません、御紹介だけさせていただきます。反社ということを特定できるかどうかというのはあるのですが、先ほど申しました、特に違法の行為をしなくても、管理不全の状態が続いていくと住み続けることが難しくなっていくので、必然的に売られる方、出ていかれる方というのが増えてきます。そこを一つずつ買っていくという手法をとることで、議決権としても戸数分、増えていきますので、そういう形で徐々にというのは実際にあると思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見、御質問はいかがでしょうか。   後半三つの団体のご意見について特によろしければ、全体を通して、前半の三つの団体も含めて、これを聞いておくべきだったということがあれば伺おうと思います。いかがでしょうか。特によろしいでしょうか。   それでは、これをもちまして参考人からの意見聴取を終わりたいと思います。参考人の皆様方におかれましては、お忙しいところを御協力いただきまして、誠にありがとうございました。   それでは、次回の議事日程等について事務当局から説明を差し上げます。 ○大谷幹事 事務当局でございます。今日は貴重な意見を多数頂きまして、本当にありがとうございました。本日頂いた御意見を踏まえて、また検討に生かしていきたいと思っております。   次回の日程でございますけれども、9月26日火曜日、午後1時半からということで、場所はまた追ってお知らせをいたします。テーマにつきましては、冒頭に御紹介いたしましたけれども、パブリック・コメントが9月3日までという形で募集をしているところでございます。9月3日にその期間が終わって、9月26日までの間に集計が間に合うかどうかと、微妙なところだと思っておりますけれども、少なくとも、次回のテーマといたしましては、その時点で紹介可能な御意見を踏まえて、区分所有法制の見直しに向けた更なる論点の検討をしたいと考えているところでございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   これをもちまして、法制審議会区分所有法制部会の第10回会議を閉会いたします。   本日も熱心な御議論を賜りまして誠にありがとうございました。 −了− - 1 -