法制審議会 家族法制部会 第30回会議 議事録 第1 日 時  令和5年8月29日(火)  自 午後1時32分                       至 午後5時31分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  家族法制の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けたたたき台(1)の検討 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会家族法制部会の第30回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。本日も前回までと同様、ウェブ会議の方法を併用した開催となりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。   それから、前回からの変更といたしまして、法務省民事局の竹内努局長が委員に、国分貴之参事官が関係官に、それぞれ任命されておりますので、簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。 ○竹内委員 先月、法務省民事局長を拝命いたしました、竹内努と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○国分関係官 民事局参事官の国分と申します。関係官として参加させていただくことになりましたので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 どうぞよろしくお願いを申し上げます。   それでは、本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局の方からお願いを致します。 ○北村幹事 事務当局でございます。お手元の資料について御確認いただきたいと思います。   まず、事務当局から本日の会議資料として、部会資料30−1及び30−2、そして参考資料30−1「「家族法制の見直しに関する中間試案」に対して寄せられた意見の概要【暫定版】」、参考資料30−2「DVに対応するための主な仕組みの概要」、「虐待に対応するための主な仕組みの概要」をお配りしております。   本日は部会資料30−1に基づいて御議論いただきたいと思いますが、部会資料30−1、30−2の説明については、後ほどさせていただきたいと思います。   参考資料30−1としてお配りした「「家族法制の見直しに関する中間試案」に対して寄せられた意見の概要【暫定版】」は、御議論の際の参考としていただく趣旨で、パブリック・コメントの手続で寄せられました意見を御紹介するものになります。前回の会議までの資料では、各回の会議で御議論いただきたい論点ごとに御紹介してきましたけれども、今回の会議の資料では、寄せられた御意見、今までお示ししてきたものをまとめた形で、全体の論点の部分についてお示しさせていただいています。この参考資料30−1も他の部会資料と併せてホームページの方に載せさせていただきたいと思います。   参考資料30−2につきましては、これまでの部会の御議論で御意見いただいたことを踏まえまして、事務当局において関係府省庁と御相談しつつ作成したものになります。   また、青竹幹事、石綿幹事、沖野委員、久保野幹事、小粥委員、5人の委員、幹事の方々の連名で資料の提出がございましたので、こちらも本日の会議資料としてお配りしております。この資料の趣旨につきましては、追って沖野委員から御説明を頂けるものとお聞きしております。   今回もウェブ会議を併用していることから、御発言に当たっては冒頭でお名乗りいただきますようお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。   部会資料30−1に関する御議論に先立ちまして、前回の積み残しといたしまして、赤石委員から親子交流に関する裁判手続の運営の実情についての御質問がございました。裁判所の方から後日御回答いただけるということでしたので、この点につきまして、よろしければ裁判所の方から御発言を頂きたいと思います。細矢委員から御発言を頂けると伺っておりますけれども、細矢委員、よろしいでしょうか。 ○細矢委員 東京家裁の細矢でございます。それでは、御質問を受けた件について回答させていただきます。   一つ目の御質問ですけれども、子が別居親との交流を拒否しているような場合でも、試行的な親子交流を実施する場合はどの程度あるかという御質問を頂きました。そのような事件がどの程度あるかという統計はなく、定量的な回答をすることはできないという状態でございます。   試行的な親子交流は、同居親の同意の下、その協力を得て初めて実施できるものであります。子についても、別居親との交流を拒否するという意向を示すことができる発達段階、年齢に達している場合は、その同意がないと試行的な親子交流を実施することは難しいと思われます。また、試行的な親子交流を実施するためには、別居親にもその意義を正しく理解していただく必要があります。調停委員会といたしましては、安全・安心の点を含め、子の利益に反する事情があるといえないか、子の最善の利益の観点から試行的な親子交流が必要かつ相当といえるかどうか、それらを検討した上で働き掛け、調整を行うことになります。   この場合、前提として必要となるのは、子の意思に関する事情をできるだけ正確に把握するということになります。すなわち、調停委員会としましては、同居親から子が何と言っているかを聴取するだけでは足りず、父母双方から同居当時の父母と子の関係、紛争の経緯、子の認識や巻き込まれ具合の程度、別居後の父母と子の関係、同居親から子への説明の有無、内容、別居親との交流の有無、程度、子が拒否するようになった時期、状況、背景事情などを丁寧に聴取し、状況によっては家裁調査官による双方の意向調査、子の意向心情調査等が必要となります。   これらの聴取や調査の結果、同居親、別居親及び子について試行的な親子交流を実施するための土台が備わったといえる場合は、子が別居親との交流を拒否している事案であっても試行的な親子交流を実施することができる場合があると思われ、実際に実施されているケースもあると思います。他方で、別居親と同居親の子に配慮する姿勢や子の意向心情等を慎重に考慮した結果、父母の紛争下に置かれる子の負担や、別居親と子との関係がかえって悪化する可能性等に配慮して、試行的な親子交流の実施を見送るという、そのような結果となることもあると思います。   次に、二つ目の御質問でございます。裁判所の働き掛けによって父母の葛藤が減じる事案がどの程度あるかという御質問を頂きました。これについても、どの程度という定量的な回答をすることはできません。   面会交流調停の父母の間には非常に厳しい感情的な対立があり、高い葛藤状態にあることが多いのが実情であり、この葛藤状態を減じるということはそう簡単なことではございません。しかしながら、面会交流調停において子の最善の利益を確保した親子交流の在り方を検討していく上で大きな障害となるのは、この父母の感情的な対立、葛藤状態だと思います。この葛藤状態を低減し、対立関係を子の利益の確保を目指した協力関係に転換させるためには、調停委員会はもちろん当事者である父母、それぞれの手続代理人、それらの皆が子の利益に目を向ける必要があると思います。   調停委員会としては、ニュートラル・フラットな立場で父母の気持ちを丁寧に受け止め、信頼関係を築き、手続代理人の理解と適切なサポートを得た上で働き掛け、調整を行うようにしており、その結果、父母に子の利益に目を向けてもらうことができるようになり、葛藤状態を低減させ、協力関係の構築に踏み出してもらえるようになることも少なくないと認識しております。   それから、三つ目の御質問になります。同居親が精神的にダメージを受けている事案がどの程度あるかという御質問を頂きましたが、これについても定量的な回答というのは難しいという状況でございます。   もっとも個人的には、同居親が別居に至る過程で何らかの精神的ダメージを受けているということは、やはり多いというような印象を持っております。親子交流の事案にとどまりませんが、身体的、精神的なDVに限らず、これに至らないものであっても、別居親による言動などにより同居親が心身の不調を来したり不安を感じていたりすることは多く、慎重な配慮を要する事案は相応にあると思います。このような配慮は当然ながら、試行的な親子交流の実施、その調整について検討する際にも必要となると思います。   最後になりますが、第13回の部会で私の方から説明させていただいたDVや虐待のアセスメントについて、説明どおりに行われていない事例があるのではないかという御指摘を頂きました。私どもとしましても、全ての事案で説明した内容どおりに完璧に対応できていると認識しているわけではなく、よりきめ細かな配慮が行き届いた対応をしなければならないと常に自戒しており、説明した内容を浸透させるように努めているところでございます。具体的に申し上げますと、例えば、調停委員や家裁調査官の研修等において第13回部会での説明内容と同じ内容の説明を行い、その方針に沿った対応を実践できるように求めるなどしております。第13回部会での説明内容と実情が全く異なるとは思っておりませんが、いまだ至らないケースがあるという御指摘を否定するつもりはございません。いかにして百点満点の対応に近付けていけるか、それが課題であると考えております。どうぞ御理解いただければ幸いでございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○赤石委員 細矢委員、ありがとうございました。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。非常に丁寧な御説明をありがとうございます。慎重に配慮しつつ、ただ、子の拒否的な感情の背景も調査しつつ、とはいえ、全て子の感情が拒否していたとしても試行面会をやる場合もあると受け止めました。   また、第13回の細矢委員の精神的DVも含めたDVのアセスメントについても、御説明ありがとうございます。シングルマザーサポート団体全国協議会で行った調査の中で調停、裁判を経験した1,147人の回答では、調査官からの調査でも、また、それから調停委員さんの対応でも、よく聴いていただいたという方も一部いらしたわけですけれども、かなりの方がやはり、聴いてもらったけれども、そのDVや精神的なDVの存在について、進行、調停結果などに反映してもらえなかった「面会交流ありきだった」という印象を持っているというのは事実でございます。そのデータも提出しております。ですので、ギャップがあるということを認識されているのは大変有り難く、かつ御努力されているということも伺って、大変うれしく思うのですけれども、まだまだかなり、調停経験をしている当事者から見ると不十分に見えるということを指摘させていただきます。   以上です。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは、前回の積み残し分についてはここまでということにさせていただきまして、本日の議題であるところの部会資料30−1「家族法制の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けたたたき台(1)」に関する議論に移りたいと思います。   本日の会議では、この部会資料30−1の記載の順番に従って順に御議論頂きたいと思っております。第1から第7までございますけれども、まずは第1と第2をまとめて御議論を頂き、これらの論点につきまして一通り御意見を頂きましたら、その後、第3以降についての議論に入るという進め方にさせていただきたいと思っております。本日の会議で最後まで行くということは想定しておりませんので、残る部分につきましては引き続き次回の会議で御議論を頂くということでお願いをさせていただきたいと思います。大体途中のところで1回、休憩を入れさせていただこうと思っております。   ということで、まず、部会資料30−1、それから30−2の補足説明付きのものも含めてですけれども、この第1と第2の部分につきまして、事務当局の方から資料の御説明をお願いしたいと思います。 ○北村幹事 事務当局でございます。部会資料30−1、そして30−2について、まず第1、第2の部分について御説明させていただきます。今回は、これまで個別的に御議論いただいた論点の全体像が見えるようにするという御趣旨で、要綱案の取りまとめに向けたたたき台というものをお示しさせていただきました。部会資料30−1と30−2をお送りさせていただきましたが、このうちの部会資料30−1のゴシック体の記載がこの部会での取りまとめの対象となっていくものですので、今後の会議においてはこちらの資料を中心に、その内容の当否や修正すべき内容について御議論頂きたいと考えております。   本日以降の会議でも様々な角度からの御意見を頂けるものと予想しておりますが、この部会において最も重視すべき価値観は子の利益の確保ということであろうと思います。部会資料30−2の1ページ目の2(1)のところにも書かせていただいておりますけれども、そのように子の利益の観点からの御議論をよろしくお願いいたします。   また、部会のこれまでの議論の中でDVや虐待への懸念についての御意見もたくさん頂戴してございます。それらについて、今までのところでも様々な形で御議論いただいていたという認識でおりまして、それぞれがどう関わっていくのかについても30−2の中に記載してございます。御参照いただきつつ、個別の論点のところ、30−1のゴシック体の部分のところで御議論いただければと思っております。特に、民事基本法制の枠組みにおいてどのような規律を設けるべきかという点を中心に御議論いただければと思います。   「第1 親子関係に関する基本的な規律」でございます。たたき台の第1では、子との関係での父母の責務を明確化することを取り上げております。父母の責務の内容については、これまでの議論の過程で様々な御意見を頂いたことを踏まえ、ゴシックの(注1)に考え方のたたき台を提示しております。また、(注2)では、子との関係では親権が親の権利ではなく義務としての性質を有するものであることに触れております。   続きまして、たたき台の第2では「親権及び監護等に関する規律」を取り上げております。   まず、第2の1では、婚姻中であるか離婚後であるかを問わず適用されるルールとして、父母双方が親権者となる場合における親権行使のルールを提示しております。具体的には、これまでの議論を踏まえ、急迫の事情があるときや日常の行為をするときには、父母の一方が単独で親権を行うことができることをお示しするとともに、父母双方が共同で親権を行うべき事項について父母の意見が対立する場面では、裁判所の手続で意見調整を図る仕組みを提示しております。   次に、第2の2では、父母の離婚後等の場合の親権者の定めについて取り上げており、例えば協議離婚の際には、父母の協議によりその親権者についての定めをすることや、父母の協議が調わない場合には裁判所がこれを定めることなどを提示しており、また、ゴシックの(注1)では、裁判所が判断する際の考慮要素や判断の枠組みを提示しております。協議離婚の際の親権者の定めについては、部会のこれまでの議論において父母の合意の形成過程の適正性を確保する必要性が指摘されておりました。今回の資料では、合意の形成過程が不適正である様々な事案において柔軟に対応することができるようにするため、親権者の変更の仕組みを活用することを提示するとともに、ゴシックの(注2)では、この場面における考慮要素を明確化することを提示しております。   そして、第2の3では、監護者の定めや監護の分掌、分担の定めについての規律を提示するとともに、監護者が定められた場合における監護者の権利義務と、監護者でない親権者の権利義務についての整理を試みております。   なお、ゴシックの第2の3の(注1)では、【P】を付した上で、父母以外の第三者を監護者と定める場合に関する規律について記載しております。本日の会議では、まずは父母の権利義務に関する議論が中心となろうかとは思いますが、第三者を監護者とする場合についての御意見も頂けましたら、今後それを踏まえて会議資料を作成させていただきたいと考えております。   部会資料の第2までの部分の説明は以上になります。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それから、先ほど最初の資料の紹介のところで言及がございましたけれども、青竹幹事、石綿幹事、沖野委員、久保野幹事、小粥委員の連名で事前に資料を頂いております。この資料の具体的な内容につきましては、部会資料30−1の各論点に対応する形で民法の観点からの御発言を頂けるということかと思っておりますけれども、それに先立ちまして、この資料を御提出いただいた経緯や全体としての趣旨について沖野委員から御説明を頂けると伺っておりますけれども、沖野委員、よろしいでしょうか。 ○沖野委員 沖野でございます。ありがとうございます。では、私の方から、この資料につきまして、作成の経緯と扱いについて一言申し上げたいと存じます。   この資料は、記しております、また御紹介いただきました5名、青竹幹事、石綿幹事、久保野幹事、小粥委員、沖野の5名が、要綱案の取りまとめに向けた審議が進行するこの段階において、部会での審議時間が限られていることなどを考慮しまして、取り上げました項目について、民法の研究者として共に検討し、意見を述べたというものでございます。内容につきましては、部会においてそれぞれ個別に説明させていただくということは想定しておりませんで、今、部会長が御案内くださいましたように、5名の者が各自発言をする際に、適切と考えるときは言及することがあるという、そのような扱いとしていただければと考えております。お読みいただきまして、今後の部会審議の参考にしていただけましたら幸いでございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。今、御説明がございましたけれども、この資料の内容につきましては、先ほども触れました部会資料30−1の各論点についての御議論に際して、必要に応じて5人の委員、幹事の方からそれぞれ御発言を頂くという取扱いをさせていただきたいと思います。   それでは、部会資料30−1の第1と第2は関連するところがございますので、まとめて御議論をお願いしたいと思います。どの点でも結構です、また、どなたからでも結構ですので、御発言を頂ければと思います。御発言の際には、どの部分を念頭に置いた御意見であるかということをおっしゃっていただけますと有り難く存じます。それでは、どなたからでも結構ですので、お願いを致します。 ○戒能委員 ありがとうございます。委員の戒能です。声が余りよく出ないので、小さいかもしれません。   部会資料30−2の方で、先ほど北村幹事からも、最も重要なのは子の利益の観点という御説明がございました。それと同時に、この部会資料30−2では、今まで度々議論に取り上げられてきましたが、先ほども細矢委員の御説明でも取り上げられておりましたが、2ページの(2)DV等ですね、DVや児童虐待等に適切に対応する視点ということで整理を頂いて、大変有り難く思っております。それで、私は7点、一つ一つは短く申し上げますが、対応する場合に留意すべき点を整理しておいた方がいいのではないかと考えまして、今このお時間を頂いたわけです。   それで、1番目として、これはもちろん子の利益の確保の観点ということは再確認したいところでありますが、そのときに、子の利益とは一体何かということが非常に大事になってくると考えております。それで、安全・安心ということが度々言われておりますけれども、それを一つまとめて、この部会資料30−2では子の人格の尊重というまとめ方をしておりますが、もう一つ、可能であれば子の人格だけではなくて、それと重なりますが、人権の尊重という観点をきちんと入れていただければと思います。   それから、2番目の留意点として申し上げる点は、DVというのは、DV法が制定、施行されてもう20年経っておりまして、来年の4月1日から改正法の施行になる。今回大きな改正があったことはもう皆さん御存じのとおりだと思いますが、ここで申し上げたいのは、実はその改正に20年も掛かっているのですね。身体的暴力だけではなくて、精神的暴力を核とする多様な複合的な構造を持っているのがDVであるという観点がようやく承認されたとは考えております。DVは幅広く捉える必要があるのだと。精神的暴力は広い概念で、非常に様々な暴力を含みますけれども、精神的暴力が様々な複合的な暴力の中核にあって、そして影響もかなり深刻なものであるという視点が必要だと考えております。   次に、3番目、DVと虐待との関係です。これはイギリス法の改正などで御存じと思いますが、ドメスティック・バイオレンスという単語ではなくて、ドメスティック・アビューズという単語が使われるようになっております。それと同時に、日本でも2018年、19年に痛ましい野田市事件等が起きたわけですけれども、そのときにこどもの虐待死の背景にDVがあるという視点がなかなか自治体などには浸透していなかったという点があって、事件の報告書を自治体がまとめるときに、ようやくDVと虐待が一体であるという視点を行政の方々も獲得したという反省事項が書かれております。その点から言いますと、やはり同居親の安全・安心が守られなければ、あるいは精神的ダメージがあると、それが同居親に影響を与え、更に子にも影響を与えているという視点がなければ、子の安全・安心が守られる安定的な生活環境は作られないということを今一度確認すべきだと思っております。   4番目、これも細矢委員のお話にございましたが、暴力、DVといわれるものが必ずしもないという場合ですね、高葛藤の場合、これをどういうふうに位置づけるか。不仲であるとか、もう憎しみ合っているとか、そういうことが子に対する影響も著しく大きいのではないかと思います。高葛藤事例もDV等というときにどこまで含まれるかという議論も必要だと思っております。   5番目ですけれども、これはここだけではないのですが、ゴシック体の第2の3です。(1)で急迫の事情があればということが書かれておりますけれども、急迫の事情がある場合はどうするのか。単独で行使できるということなのですけれども、こういう事柄は、今後の課題となりますが、条文にきちんと落とし込んでいく必要がある。条文に明記されていないと実効性を持たないと思っております。   それで、6番目なのですが、現在でも行政、公的な機関が支援をしていますが、十分だとはいえません。それから、今日の資料にも、制度の紹介がありますが、十分周知され機能しているわけではない。さらに、行政が支援をするときに、この親権の問題とつながっている。そして、親権の問題の判断を左右するというようなことを考えた場合に行政が、あるいは本当に当事者の方がということを強調した方がいいかと思うのですけれども、支援を受けることをためらうとか、行政が支援を行うことをためらうとか、認定の基準にされてしまって争いになったらどうしようということを考える行政が結構多いのです。ですから、そういうことも考慮をしておくべきだということを申し上げたいというのが6点目です。   7番目ですが、これは先ほど沖野委員から御紹介いただいた委員、幹事グループの御意見の中にも取り上げられておりましたが、適切な認定というのは一体どういう基準で誰がやるのか、どこがやるのかということが議論となるかもしれません。その認定というのが、これは大変難しいということを申し上げたいと思っております。   それで、制度的には、例えば住民票を移動させて、その情報開示については、御存じのとおり支援措置があるわけですけれども、この支援措置を受ける場合にどういう要件があるのかということも参考にはなると思うのですが、基本になるのは、相談をしているかどうか、どういう相談をしているかということがあると思います。それから、客観性もあるかどうかということの問題になるのですが、一時保護されているかどうかということもあるわけです。それから、3番目は保護命令、これは沖野委員等の意見にも書かれていたことです。それから、刑事事件として被害届を出すとか、刑事事件化するというようなことがあると思います。   しかしながら現状はどうかというと、相談は右肩上がりにずっと増えて、特に最近では内閣府が積極的に動いて、そして民間に委託して、DV相談プラスという新しい相談形態を、LINEも使える、それから同行支援もするというようなことで、大きく伸びたわけなのですけれども、その相談件数がDV相談センターに来る件数だけに限っても17万件から18万件、年間にあったわけです。今、少し落ち着いたと言われております。しかし、では相談をして、安全を守るために緊急避難の場所としてある一時保護につながるかというと、その割合が極めて低いということを認識していただきたい。   正確な数字は分かりませんが、一般的には1割から2割と言われており、これはある県なのですが、何万件という相談があっても、その中で一時保護に結び付いたのは何百件、だから1%にしか行かないという状況なのです。それは、いろいろな背景があるとは思うのですが、民間シェルターが充実しているとか、そういう背景もあるかもしれません。しかしながら、多くの人は、これは婦人相談員の方のお話を聞きますと、婦人相談員の方が支援をするのは在宅被害者なのだと、だから、みんなが逃げるわけではない、そして、逃げようとしても必ずしも一時保護のハードルが低くなっているわけではなくて、極めて高いということを見るべきだと思っております。   保護命令も同様に2016年、17年頃から減少の一途をたどっております。一時保護件数も、それまでは1万件ぐらいあったのですが、それ以降は現在だと半減をしているという状況です。DVの被害の方はこどもさんがたくさんいらっしゃる方も多いわけです。ですから、幼い子を中心として、一時保護にいる人というのは、女性とそのお子さんということで、お子さんの割合も大変高いという状況にあります。ですから、支援が必要なのにもかかわらず支援に届かない人がたくさんいるのだと。保護命令も一時保護も重要な制度なのですが、そういう状況があると。刑事事件に至っては、これは身体的暴力優先になりますので、そこまで行く人は少ないということになるわけです。   という具合に、私が申し上げたいことは、こういう現実をやはり、今までもいろいろな方がヒアリングでお話しなさったと思いますが、それが必ずしもこの審議にいかされているとは個人的には思っておりません。ですから、市民生活に関わる大事な判断を私たちは今、託されているわけですから、やはり現状とか実態とかをよく見ていただいて、それで、その上での判断を是非積極的に、DVや虐待の被害を受けた場合に、単に例外だと言っているだけではなくて、一つ一つ具体的に条文に落とし込んで、実効性のあるものにしていただきたいと考えております。   以上でございます。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。戒能委員からは、先ほどの事務当局からの総論的事項に関する補足説明のうち、DV等に適切に対応する視点という御説明に関わる形で、DV等に対応する際の留意点を7点に分けて整理をしていただきました。戒能委員自身がおっしゃっているように、具体的な議論の中で具体的な御指摘を戒能委員、それからほかの委員、幹事からも頂ければと思います。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。最初、質問からいいですか。冒頭の事務当局の説明をきちんと聞き取れなかったので、今日配布いただきましたパブコメの取りまとめがあるではないですか、この280ページのですね。これは今回、ホームページに公開すると発言されたと思っていいですか。 ○北村幹事 事務当局です。私の方からはそのように御説明いたしました。 ○武田委員 分かりました。すみません、きちんと聞き取れなくて。とはいいながら、まだ暫定版という表題が付いているので、今後まだ加筆修正される御予定があるのか、いかがでしょうか。 ○北村幹事 我々としては精一杯集計、整理をして、これを作らせていただきましたけれども、公開することによって、やはり違う、明らかな間違いというのが発見される可能性もありますので、念のため暫定版とさせていただいております。 ○武田委員 分かりました。ありがとうございます。   では、発言をさせていただければと思います。まず、戒能委員のDVを含めた御発言に対してです。同居親の安心・安全は重要だと思います、守らなければいけないと思います。しかしながら、こちらの部会でもDV被害者としての別居親も参加しておりますので、是非別居親の中にもこういったDV被害者がいて、守るべき対象が存在するということは、もう少し関心を持っていただければ有り難いなと、そのように思います。   では、中身に関してでございます。第1に関して簡単に述べさせていただきます。親子関係に関する基本的な規律に関してです。部会資料30−1、ゴシック記載のとおり、父母の責務を明確化すること自体、ここには賛同いたします。ただ、全体の立て付けの中で、この第1の規律は第2の親権、監護権の権利義務の上位概念として、親権を持たない父母に対しての父母固有の権利義務、これを明記しようという試みではないのかと、そんなふうに私個人的には理解をしています。従来から述べさせていただいておりますが、責務だけではなく義務に加え権利、両面をきちんと明記すべきかなと、このように考えております。今日、民法の先生方が提出資料を出していただきました。フランス法、ドイツ法、父母固有の権利義務に関する規律でも権利に関しても言及があります。ありがとうございます。   私からは、カリフォルニア州家族法典第3020条B項、ここの文言を御紹介させていただければと存じます。読み上げさせていただきます。立法府は、親が別居又は離婚を解消し、関係を終了させた後、児童が両方の親と頻繁かつ継続的な接触を持つことを確保すること、また、その政策が実施されるために、親が子の養育の権利と責任を共有するように促すことが、子の最善の利益に反する場合を除いて、当州の公共政策であると判断し、宣言する、このように書かれております。カリフォルニア州法でも養育の権利と責任と、このように表現がなされております。   この要綱案、私も素人なので、どういう書きぶりにすればいいのかというのは判断しかねるところでございますが、より具体的な記載にしていくのか、それとも総論的な書き方にしていくのかと、こういった部分に関しましては、ここには民法の先生方がいらっしゃいますので、先生方の御意見も聞いて、考えていきたいと思います。   第2に関しては、ほかの先生方の御意見を聞いてからの発言とさせていただきたいと存じます。一旦ここで切らせていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員からは質問と、戒能委員の御発言に対するコメントのほか、第1について御意見を頂きました。第1のような考え方に基本的には賛成だという前提の上で、ここには責務と書かれておりますけれども、義務だけではなくて権利の方も取り込む必要があるのではないか、ただ、最後の条文の書き方については更に検討するということだろうといった御意見を頂戴いたしました。第2については、また後で伺います。 ○落合委員 委員の落合です。私もこの第1について意見がございます。この第1というのは、もしかするとここに出席している方の多くが、第2から後の方が本丸であって、第1はその前提になるようなところで、ここは多くの人があまり問題なく賛成するのではないかと思っているのかもしれないのですけれども、私はここは非常に重要だと思うのです。日本の民法に親子関係に関する規律が入るというのは、やはり歴史的なことです。後からこの部会が何をしたか歴史的に振り返ったときに、ここは取り上げられるところになると思います。   そのように思って襟を正して見ますと、今、武田委員からも御意見がありましたように、ここでの書きぶりでは責務の方が際立っていますね。ましてやこの(注2)では、これは親権がある人についての話なのですが、親の権利ではなくというふうに書かれている。これは、民法の第820条は改正するということなのでしょうか。私は、やはり権利ということを明確に書き続けなければいけないと思います。権利がなくて、なぜ義務が果たせるのか。親が親権のあるなしにかかわらず、例えばこどもを誰かに連れていかれてしまって、それでどうやって自分の義務を果たせるのか。それから、例えば自分がものすごく窮乏していて、あるいは病気でこどもを見るような力がないとき、どうやってその義務を果たすのか。それでも果たせと国家の方が言うのでしたら、これはとんでもないことだと思うのです。日本の法律は家族主義的だと言われています。もしもこの第1をここに書かれているような方向で取り入れていくのでしたらば、この部会は日本の家族主義をいよいよ固定化したと評価されることになるでしょう。私は絶対にそれにはくみしたくないです。   今回、親に関する規律ということで、青竹幹事ほかの先生方で作られた資料の中にも外国の例も出ております。それから、私も、本当に直前になってしまって申し訳なかったのですけれども、事務局の方たちに、親権とは関係のない親についての規定の外国の例を教えてくださいとお願いしました。そうしましたら、本当に1日ぐらいでフランス法、ドイツ法、イギリス法について資料を作っていただきました。時間がなくて今日はお配りすることができないということなのですけれども、それを見ましても、フランスでも権利及び義務と書かれています。親権を行使しない親の場合でも、子の養育及び教育を監督する権利及び義務を保持するとなっています。ほかにも、やはり親権を行使しない者の権利というのがフランスで何条も挙がっております。それから、ドイツでは、子の保護及び教育は親の自然な権利であり、と書かれているようです。権利であり、両親に課されている義務である、この義務の遂行については国家共同体がこれを監視すると付いていて、家族だけではなくて国家の役割も書かれているわけなのです。対して、イギリス法では親責任のない親の責務については規定がないというふうなことを教えていただきました。   このようなことをざっと見ましても、親一般の役割について述べるときは、権利と義務がやはりセットで書かれているようです。権利を書く意味につきましては、まず、権利というのを強調しないでおこうというふうなお考えの背景には多分、家制度というか、戦前の親権から連続してくるようなこどもへの権力というか支配権というものは薄めていこうというお考えがあるのだと思います。それは賛成します。   しかし、権利というのにはもっといろいろな意味がありまして、今のはこどもに対する支配権のことなのですけれども、そうではなくて、青竹幹事たちが作ってくださった資料の3ページの真ん中辺りに書いていただいている、「民法には、義務を履行するための権限または少なくとも他者の利益のために行使されるべき権利を「権利」とする用例も存する」、その段落の最後で、「子の利益のために付託された権利であり、自己の利益を図るための権利とは異なる性質を持つ。」と書かれていまして、正にこういう権利はきちんと書かれているべきだと思うのです。ですから、こういう意味の権利だということが分かるように、どこかにそれを明記しながら書くべきだと思います。   このような権利が書かれていると、そこから何が起こるかというと、社会とか国がそれを必要に応じて支援するということに糸口が開かれるわけです。私は、例えば親の責務というところで、社会や国家の支援を受けながらこういう責務を果たす権利を有するみたいな書き方でもいいのではないかと思うのですが、もしそこで急に国家や社会を書き込むのがなじまないとしても、今のような意味で権利ということを書いておいて、この責務を果たせないような状態のときには国家が助けると、そういう糸口を開くために権利ということが書かれるべきだと思います。   親権というのは今、英語で書かれているものだと、日本の民法の翻訳だとペアレンタルオーソリティーになっているわけなのですけれども、ここを書き換えて、ペアレンタルライツ・アンド・リスポンシビリティーにするとか、その辺りも考えた方がいいと思います。親権という言葉を変えた方がいいのかもしれないとも思って、いろいろ考えたのですけれども、親責任だとかえって一方的ですよね、権利の方が消えてしまいますし。皆さんいろいろお困りになっているところだと思うのですけれども、とにかくこの英語のペアレンタルオーソリティーは変えた方がいいと思います。あと、もちろん第818条の親権に服するという表現も変えて、戦前とは違うということを明確にして、その上で権利という表現を残すべきだと思います。世界人権宣言などでも、やはり権利というのがしっかり書かれていますし、というようなところは少し長くなるので、省略します。   すみません、少し長くなっておりますけれども、今のが一番、第1について言いたいことなのですけれども、更にもう少し加えますと、親権を持たない親も含む親一般についての規定を設けるという話ですけれども、青竹幹事たちの出されたこの中では二つの案がありまして、第877条の第2項として入れるというのがありました。直系血族及び兄弟姉妹の義務の次に、親が未成年子を扶養する義務は前項の義務に先立つ、入れるとしたらここが適当だろうと私も思います。もう一つの案として、親権を持たない親の権利義務というのを列挙するという案も出されていまして、私はこれらの両方が必要なのではないかと思います。   両方が必要だというのは、親権がない親についての規定が入りますと、一般国民としては、一般の親の権利義務と親権と監護権というのがみんな出てきて多重化するので、どれが何だか分かりにくくなってしまうと思うのです。ですから、2つ目の御提案のように親権を持たない親の権利義務が明示されていないと、この違いが分からなくて混乱すると思いますので、明記することが必要なのだろうと思いました。   プラス、今のことに関しては、なぜ一般の親の権利義務と親権というのを二重化する必要があるのか、ましてや監護権というのを別に残しておくのであれば、何が一般の親の権利義務と親権の違いなのか、そこはどなたかから教えていただきたいと思います。それを分ける必要が絶対あるという理由を教えていただきたいです。   なお、今の民法第877条の方なのですけれども、その第2項に、親が未成年子を扶養する義務というのをほかの親族間の扶養義務よりも一段上のものとして書き込むという、それはいいのではないかと思うのですけれども、ただ、そこについては家族を研究している者として、やはり一言言っておかなければいけないことがあります。これは先ほどのドイツ法がいうような自然なことではないですよ。   例えば、インドのある地域の合同家族の人間関係を調査した人類学の研究によりますと、そこでは実の子をかわいがりすぎてはいけないのです。自分のこどもが転んだときに、親は一等先に駆け寄ってはいけないのです。なぜかというと、その複合家族の中には兄弟のこどもなんかもいますよね。大人たちはみんな、どの子も平等にかわいがるし、それから面倒を見るということが義務になっています。自分のこどもの面倒を見るのは、この子にとったら私がまず一番というのを見せてしまうことによって、ほかの人たちの権利を侵害するというか、面目を失わせると書いてあって、目を開かされました。ですから、一番に責任があるのは実の親なのだと言うことは、自然でも人類社会に普遍でもなくて、一つの社会的な選択です。   それは、ほかの人たちは少し引いていていいのですよということと裏腹なのです。国家は引いていていいのですよということも意味してしまうかもしれません。だから、この第2項に未成年子を扶養する親の義務というのを書くのは、そういう社会にするという選択なのだということを踏まえた上で書くのならば、あり得ると思います。ただ、自然なものだとは決して考えてはいけないと思います。かつ、それが遠慮させることになる、ほかの人たちが関われるような工夫を、例えば先ほどの権利という言葉などですね、しておく必要があると思います。   長くなっていて申し訳ありません。ほんの小さいことをあと二つだけ、今のことに関して。一つは、子の最善の利益のためというのが、何人も否定できないものとしてこの部会で語られているのですけれども、これは絶対善ではないと思うのです。次世代再生産を家族の最重要の機能としている近代家族に、きちんと機能を果たせよと言っているようにも聞こえないでもありません、それが一番大事なのだと。そういう意味ではなくて、最も弱い者、自分で主張できない者を優先するのが大事だと言っているなら、それはそれで意味が通るのですけれども。しかし、子の最善の利益のためということを繰り返すことによって、誰が遠慮するのかと考えざるを得ません。往々にして母親かもしれません、父親も遠慮することがあるかもしれません。ですから、ほかの家族員の利益とのバランスもやはり大切なのだということは否定しないでおきたいと思うのです。そういう意味で、民法第766条の「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」を、「子の最善の利益を考慮しなければならない」に変更したらどうかという案が、やはり先生方のこの資料の中に書かれているのですが、他との比較の上で子の利益を優先するという表現を避けるということで、この提案は妥当なことではないかと思います。   あともう一つだけ、すみません。生殖補助医療を用いた場合の親については全く書かれていないのですけれども、精子提供者を探したいという動きが近頃出てきていることは、いろいろ報道もされていると思います。そのときに、精子を提供した人はここに書いてある親のいろいろな責任とか権利というのを持つことになるのでしょうか。今は精子提供者のことはあまり書いておらず、法的な夫が親になるということははっきり書かれていますけれども、精子提供者はどうなるのかというのがもう一つ分かりにくい気がしまして、これから何か問題化してくるのかなというような気もしました。   すみません、長くなりました。 ○大村部会長 ありがとうございます。落合委員から御意見として、一つ前の武田委員と、少し理由は違っているようにも思いますけれども、やはり権利という言葉を付け加えた方がいいのではないかという御意見がありました。そのほか、御質問も幾つかあったのですけれども、すみませんが、井上委員が途中で退席の御予定だと伺っているので、井上委員の御発言を頂いて、それから今の落合委員の話に戻り、そして池田委員という順番で進めさせていただきたいと思います。 ○井上委員 委員の井上です。大変申し訳ありません、先に発言させていただきますことを感謝申し上げます。   私の方は、第2の2、父母の離婚後等の親権者の定めについて発言をさせていただきます。こちらの(1)において、父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者として定めるものとすると記載があります。補足資料の10ページ(2)に記載があるように、父母間に支配被支配関係が存在する場合には適正な協議がなされないおそれがあります。同じく補足資料にあるように、必ず中立的な第三者の確認を経なければならないことにすれば離婚に対するハードルが上がることは理解を致しますが、子の福祉の確保の観点から、裁判外紛争解決手続の分かりやすい利用案内や法律扶助の利用を促すことなどによって、できる限り協議離婚手続の適正性を確保していくことが望ましいと考えております。   以上です。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。井上委員からは、第2の2(1)に関連する形で、協議離婚の合意の適正さを確保するということについての御発言がありました。これはこの部会でもずっと議論になっていることですけれども、第三者の介在する形での協議離婚も可能であるということの広報に努めるということなどを含めて、適正さの確保について更に留意する必要があるという御意見を頂戴いたしました。ありがとうございます。   落合委員の御発言に戻らせていただきますが、少し御質問がありましたので、民法の方々からお答えいただきたいと思っています。一つは、このように親の権利義務というのと親権者の権利義務というのを書き分ける必要があるのだということについて、少し説明が欲しいということでしたので、これは民法の先ほどの5人の先生方のうちのどなたか、後で少しコメントしていただきたいと思います。   そのほか、あと二つあったかと思いますが、それは私の方でお答えしますけれども、一つは、扶養義務について第877条の後に規定を置くということに関わるお話がありました。これは、現状において未成年の子に対する親の扶養義務の程度は他の親族間の扶養義務よりも高いと取り扱われています。ここの点については多少異論はありますけれども、多くの法律家が共有している考え方だと思います。ところが、これを明示的に示す規定が民法にはないのではないかということが言われております。この機会にそのことを明らかに示す必要があるのではないかというのが、扶養義務のところに規定を設けようという趣旨です。ですから、何かこれによって現状を変えようということではなくて、現状をきちんと基礎づけるための規定を置こうということです。なぜ規定なしにそうなっているかということについては、歴史的な説明が必要なのですけれども、それはまた、ということにさせていただきます。   それから、もう一つ生殖補助医療について御指摘がありましたけれども、ここで問題にしている親子間の関係というのは、法的な親子関係があるということを前提にした議論です。精子提供者について法的な親子関係がないということになりますと、それはこの射程外ということになります。では精子提供者にどのような地位を認めるのかという問題は別途ございますけれども、そのことはここでの議論には含まれてないと整理しております。   今の2点について、私からの説明ということで、あと1点、先ほどの一般の親と親権者のということについて、どなたか民法の方で。 ○石綿幹事 幹事の石綿です。より正確なお答えは幹事の久保野幹事から頂けるものと信じて、差し当たり場つなぎ的なところと理解をしていただければと思います。   私の理解では、従前は親権者についての権利義務の規定があり、親についての規定はなかった中で、それでは不十分なのではないかということで、新たに規定を置こうというのが今の議論かと思います。なぜそこで、規定の内容に差を設けなくてはいけないのかというのが落合委員の御質問と理解をしました。   親権者というのはある種、こどもに対する義務を負う、そして責任を持って養育をする必要があることから、一定の広範な裁量が与えられていると民法の世界では理解がされています。   それに対して、ここで提案されているような内容の規定を置いたときに説明の難しさが出てくるのですが、親権者ではない親は、親権を持っていないわけですから、こどもに対してできることが親と同じではないかもしれないということになります。そうすると、おのずから負うべき責務や持っている権限というところに差が出てくるということはあるだろうということで、両者の間に一定の差があるということを法学、民法の世界からは考えております。繰り返しの説明かとは思いますが、ここで置かれる親の責務というときの親というのが親権のない親に限定されているわけではないので、違和感を持たれるというか、違いがあるということがおかしいのではないかということが落合委員の御意見かとは思いますが、親権者である親についての義務ということと親権の有無にかかわらず全ての親が負う義務には、一定の違いがある場面というのはあるだろうから、規定ぶりも変わるということはあり得るのではないかと、少なくとも私は理解をしております。ただ、多様な考え方があると思いますので、ほかの先生方にも、もし何かあれば、重ねて頂ければと思います。 ○久保野幹事 幹事の久保野です。石綿幹事には、ありがとうございます。   親権というのが、まず、子を保護養育していくために、人格面、財産面、両方にわたって基本的に親に与えられたものであり、日本法においては、親が権限を有し、広い裁量を有して、その実現を図っていくという立場を認められており、これが親権という権限や裁量というものとして構成されているわけですけれども、このような立場を親でない人には与えないというのが民法だと思いますけれども、親であれば必ずそういう立場に置いてよいかと考えたときに、そこは区別するというのが、まず基本発想としてあるのだと思います。少し遠回りのお答えの仕方をしていると思いますけれども、御容赦ください。   別の言い方をしますと、父母であるかどうか、ある子と父、ある子と母という関係があるかどうかということ自体は、今言ったような意味での親権を与えて、きちんと育てていく地位を与えていいかということとは差し当たり切り離して民法の世界では設定し、親子というのは親権を持つというのとは区別してそもそも見ているという発想を、当然の前提として見てしまっているところがあります。親権を持つのにふさわしいから父とか、親権を持つのにふさわしいから母といったような形で、父子関係とか母子関係というのを法というのは考えてはいないのだろうと思います。   その上で、しかし第1のような話をしますと、そこを区別する意味というのが見えにくくなるというのは、確かに御指摘のとおりだと思うのですけれども、連名の資料でいいましたときの5ページに、例えば、親子であるから持ち得る権利義務といったようなものが書いてあったりですとか、あるいは、例えば氏がどう決まるかですとか、相続関係ですとか、親子であるということに結び付けられた権利義務というのが多くありますので、まずここを区別するというのは大前提になっている発想だと思っております。   その上で、今回の第1のような形である種、親権者が負うであろう義務と類似のものを親子について重ねて規定する意味については、それ自体、正に議論に値すると思っていまして、後で発言しようと思っていたのですけれども、この中には親子の義務として書くことが適当かどうか議論しなければいけないものが入っていると個人的には思っているものですから、第1の提案に即して区別の意義を明確に説明できないことをお許しください。   その上で、また少しお答えとずれるかもしれないのですけれども、先ほど、親というものがあり、親権というものがあり、更に監護というもの、三層にわたって規律するのはどうかという御指摘もあったと思うのですけれども、そこは正に論点かと思っておりまして、実は民法の解釈としましては、親権につきましても帰属というものと行使を分けた方がよいという組み立てを主張する学説や外国の立法例もありまして、様々な場面があり、100%権利義務を持たせる者と、少し制限した方がいい者、基本的には制限したらいいけれども、およそ親子ではなくなるかのような、他人と同じようなところまでは行かせてはいけない者といったような様々な状況を想定しましたときに、何層で概念を構成するのがよいかということが、それ自体問題になるということだと思っております。   今回の部会の案は、親子と親権と監護の三層になっていますけれども、これは例えば、見方によっては親子と親権だけでよく、その親権について帰属と行使と分けてもいいのではないかといったような可能性もあると、そのような構造になっているかと思います。   すみません、分かりやすいか分かりませんが、まずは以上、お答えとさせていただきます。 ○大村部会長 民法学者が持っている暗黙の前提が多少含まれていたので、落合委員には十分に御納得できないところもあったかもしれません。   青竹幹事、どうぞ。 ○青竹幹事 落合委員から、親権と親であることから生じる義務について分ける意味ということについて御質問いただきまして、このような御質問を想定しておりませんでしたので、気付かされるようで、どのようにお答えするとよいか、難しく感じております。石綿幹事、久保野幹事がおっしゃったとおりですけれども、連名で出しております資料に基づいて説明させていただきますと、親であることから生じる権利義務の、その一つの側面を見て親権と見ています。親としての権利義務のうちで身上監護と財産管理についての権利義務について親権と呼んでいますが、その親権については、単独で親権を行使する場合があります。そうすると親権を行使しない親というのが現状でも生じており、親権を行使しない親についての権利義務は何かというところで混乱が、現在生じていると思います。   親権を行使しない、非親権者なので、扶養義務その他を負わないのではないかという誤解、養育費の不払いにつながるような誤解を解くために、やはり親権と別に親としての権利義務というのを新たに明示した方がいいのではないかということを連名の資料で説明させていただいております。   すみません、あまりうまくお答えできていないかもしれませんけれども、以上になります。 ○大村部会長 ありがとうございます。   窪田委員からも手が挙がっているので、続けてどうぞ。 ○窪田委員 すみません、もうこれまで出てきていたことかもしれませんが、少し私自身の理解でお話しさせていただければと思います。   落合委員から出ていた疑問というのはある種、もっともな疑問で、第1のところにいろいろなものが盛り込まれたら、親権については一体どうなるのだというのは、そのとおりなのだろうと思います。   ただ、第1に関わる出発点はもう少しシンプルなものだったのではないかと理解しています。なるほど親権というのは、親である者が全て親権者になるわけではない、そもそもこどもがもう成年に達していれば親権という概念はないわけですから、未成年のこどもに対してのみ成り立ち得る概念である、と。その親権というのは、なるほど義務なのか権利なのかというと、多分両方ともの側面があって、これは石綿幹事からも御指摘がありましたけれども、こどもを養育して育てていく、身上監護をする、財産を管理するという義務ではあるけれども、同時に幅広い裁量が認められており、他者からは介入されない、あるいは国家から加入されないという意味では、やはり権利としての側面を持ったもの、これが親権というふうに構成されてきたのだろうと思います。   ただ、今回も後ろの方で出てくる養育費の問題等をめぐる中で、親権者ではない親というのがこどもの養育にどのような責任を取るのかというのが、少なくとも現行法においてはあまりはっきりしていませんでした。しかし、親権者ではなかったとしても、親である以上、養育をするということは求められるのではないか、その点についてきちんと書こうというのが、恐らく第1の議論の取っ掛かりだったのではないかと理解しています。   そういうふうに考えると、落合委員から御質問がありましたけれども、第1と第2の切り分けというのは比較的簡単にできるのかなという気もします。ただ、落合委員からの御質問が出てくるような背景としては、(注1)の中で扶養義務の話だけではなくて、ほかにも非常にたくさんのことが入っております。これは気持ちとしては分かるのですが、入ってくれば入ってくるほど第2の親権の話との区別が付きにくくなっていくということなのではないかと思います。   また、様々なものがあるといっても、父母が子の心身の健全な発達を図らなければならない、その子の人格を尊重するといったものと扶養義務を負うというのは、実はかなり性格の違うものなのではないかという気もいたします。また、扶養義務を負うということに対しては、扶養義務を履行するための権利というのを観念してもいいのかもしれませんが、比較的義務として純化した形で規定することができるようにも思います。   そういう意味では、落合委員からの御質問に答えるという以上に踏み込んでしまっているかもしれませんが、第1の内容を少し整理した方がいいのかなという気はしながら、全体のお話を伺っておりました。   私からは以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。皆さんから御説明を頂いたので、もう付け加える必要はないのですが、最初に落合委員がおっしゃったこととの関連で少し補足させてください。精子提供者にはもう親子関係はないから、全く関係ありませんと、今は整理していると思います。落合委員はそれでよいのだろうかという問題意識を持たれて、先ほど発言されたと承りましたが、問題の切り分けについては御理解いただけるものと思います。   そのことを前提にして、では、法的に親となった人たちのうち、親権を持つ人の権利義務とはどのようなものであるべきかということを議論してきたわけですが、そうすると、法的な親のうち親権を持たない人はどんな地位に立つのか。この点につき、親権者には権利義務があるのだけれども、親権のない親については義務もないといった理解が生じているのではないか。そうではないのだということを明示する必要がある。   では、明文の規定を置くとして、そこに盛り込むべきことについていろいろなことが書いてある。そのように、いろいろなものを盛り込んでいくと、それじゃ親権に近付いてしまって、親権がある場合ない場合の差が見えにくくなるのではないか、これは直前に窪田委員がおっしゃったことかと思います。基本は、親権を持っている親と持っていない親と二つに分けた上で、しかし、親権を持たない親には何もないということではない、ということを第1のところで表現したいということなのだろうと思います。   皆さんがおっしゃったように、一定の経緯の下で、親権を持っている親と親権を持っていない親が区別されてきています。もちろん、概念の立て方を変えてしまえれば、様々な違った考え方があり得るのですけれども、従来の考え方から出発するとこういうことになるのではないか、皆さんの説明はそういうことなのだろうと思います。   それから、監護についても、明治民法の下で、離婚後、親権者が父だと困るでしょうということで、母を監護者にすることを可能にしたという経緯があります。そういうことがあるために、親権と監護とが切り分けられた形になっているのですけれども、これも、白紙から制度を作るということであれば、そうした区別をしないという考え方はあり得るわけなのですけれども、従来の経緯を踏まえて区別がされているというわけです。まだ御疑問があろうかと思いますけれども、もし何かあれば。 ○落合委員 では、一つだけ。いろいろありがとうございます。私はここに法学者ではない国民を代表して参加しているようなつもりでおりますので、あえて聞かせていただきました。親権という概念は、親権がない人がいてこそ意味を持つようなところがありますよね。今、親権がない人を減らしていくかもしれない改正をするかもしれないわけですよね。それと、親一般の権利というのを一方で定めようとしている。そうすると、この二つが似たものになってくるだろうなという危惧があって、質問を致しました。   仮の話ですが、思い切って整理して、親権概念はもうなくして、親一般が持っている権利と、あとは監護権だけにするなどというのは、分かりよくないですか。監護権というものの中に財産管理をどうするかとか、あると思いますけれども、でも、三つより二つの方が簡単ではないかと思ったりしました。また、監護という言葉は養育と言い換えては駄目なのですかということも、もう一つ言いたかったことです。戦前っぽさを払拭するなら、この言葉遣いも変えてもいいような気もします。不都合なのなら、また教えてください。 ○大村部会長 ありがとうございます。今御指摘があったように、三つあるものを二つにするということは概念上は可能なことなのだろうと思います。親だけにするとおっしゃったのですけれども、全部親権者なのだと整理するというのも同じことになるだろうと思います。この場の議論では、親権が共同行使されるべき場合が従来よりも増えるとしても、しかし単独で親権を行使する場合は依然として残りますので、そうなると、親権を持っていない親はどうしても残るということになる。用語をどのようにするにしても、その差を前提にして、親権を持たない親の権利義務ということをやはり書く必要があるのではないかということなのだろうと思います。   その上で、御指摘を頂いたのを踏まえて、従来の概念整理を大きく乱すことは避けつつ、同時に、落合委員が気にされている、概念がたくさんあって国民にとって混乱が生ずるのではないかという懸念を払拭する、この二つの要素を調和させる形で、最終的な規定に落とし込んでいくということなろうかと思って伺いました。   今日のところは、子との関係での父母の責務を明確化するための規律を整備するものとするということが、書かれているだけですので、具体的にどういうことになるのかという点は、(注1)、(注2)を含めた形で、今日、皆さんに更に御意見を伺って、事務当局の方でより具体的な案を出していただき、その際にまた皆さんの御意見を頂くということになろうかと思っております。そんなところでよろしいですか。ありがとうございます。 ○池田委員 池田でございます。第1については今、存在そのものについて疑義も出されたようなところでしたり、あるいは、少なくともいろいろなものが盛り込まれすぎで、整理すべきでないかという意見もあったところですので、更に付け加えるような話をするのは、しにくいところなのですけれども、そういう指摘をまず、したいと思います。第1について2点と第2について2点、申し上げたいと思います。   まず、第1ですけれども、部会資料24では、幾つかの事項の解釈の根拠となるべき基本的規律を設けるということが提案されていまして、そのうちの一つにこどもの意見の考慮という点がありましたが、今回それがゴシック体の記載、注書の記載からも補足説明からも落ちているということが問題だと考えています。   今回の資料の冒頭で、要綱案の取りまとめに当たっての視座の第1に子の利益というのが挙げられているわけですけれども、以前私の方で、子どもの権利条約におけるこどもの意見表明権と子の最善の利益との関係についてお話ししたところでしたけれども、子の意見、意向、心情などを聴くことの先にしかこどもの利益は存在しないというのが権利条約の考え方といってよいと思います。つまり、抽象的なこどもの利益というのがどこかにあって、それを持ってくればいいという話ではなくて、子の意見を聴いてこどもと一緒に考えないと、そのこどもにとっての利益というのは決して浮かび上がってこないわけです。   この考え方の重要性を改めて踏まえますと、今回のゴシック体の(注1)では、こどもの人格の尊重という事項が挙げられておりまして、その点は積極的に評価できる反面で、人格の尊重の具体的な在り方の一つとして、やはり子の意見の考慮ということも挙げられるべきだと考えています。   なお、この点に関しましては第24回会議で水野委員の方から、一度子の意向や意思の尊重ということが法律に書き込まれると、非常に硬直化した家裁実務を招くという御懸念から、消極的意見があったということは承知しています。ただ、今回のゴシック体の第1の議論というのは親子関係全般、つまり、親が子に対するときにどんなことを旨とすべきかという議論だと理解していますので、直ちに家裁での実務への悪影響を心配するというのではないのかと考えているところです。むしろ、親子の間では何か課題があったときに、親は子としっかりと対話をして子の成長を促していく責任があるということを規範として示すという積極的側面を重視すべきではないかと考えています。子の意見をめぐっては、なぜか水野委員と私ばかりが意見を言っているようなところがありますけれども、他の先生の御意見も是非伺えればと思っているところです。   第1の2点目ですが、今回5人の民法学者の先生方から頂いた意見書を拝見しまして、なるほどと思ったところを引用させていただく形で意見を申し上げたいと思います。親権関係についても一定の文言の修正が必要ではないかという中の一つに、現行の第818条第1項で、成年に達しない子は父母の親権に服するという文言があって、修正の御意見があるところなのですが、これは私は賛成です。やはりこの規定が設けられた時代の色を色濃く残しているような表現ぶりですので、そこは少なくとも修正が必要ではないかと考えています。   以上が第1で、第2については、第2の1、双方が親権者の場合の単独行使ができる場面として、子の利益のために急迫の事情があるときというのがございます。これの具体的場面を考えますと、この判断を一時的にするのは当該行為を行おうとする親権者の一方ということになりますけれども、必ずしも自信を持ってやる場合ばかりではなくて、これで大丈夫なのかなと思いながらも、やらざるを得ないということでやるという場合もあると思います。その場合、当事者としても有り難いのは、当該行為をした後に、その適否の確認を得るために家裁の判断を後から得るというふうなことができればいいなと思いますので、そのようなことが可能な規定ぶりにしていただければ有り難いと思っています。   それから、第2の2ですが、このうち(2)、(6)の辺りで、裁判所が親権者を決める場合に、双方を親権者とするか一方を親権者とするかという判断要素として、幾つかの事情が挙げられています。ただ、この書きぶりを見ますと、こどもにとって特段の害悪がなければ双方が親権者となるかのように読めますけれども、どちらかを原則とする趣旨ではないとも考えられますけれども、規定をする際においては、やはり双方を親権者として選択するのか、単独親権を選択するのか、いずれにしても、それがこどもの利益に積極的にかなうからだという判断であるべきだと思います。   それから、裁判所が判断するに当たっては、前回の議論では、父母間に合意がある場合とない場合と分けて議論しておりましたけれども、合意がないにもかかわらず双方を親権者と指定するという場面を想定する場合には、やはり特殊の考慮が必要かと思いますので、合意がある場合とない場合というものは一定程度、分けて規律するということも考え得るのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは、第1と第2についてそれぞれ2点の御指摘を頂いたということだったかと思います。第1の1点目は、子の意見の考慮というのを(注1)に加えるべきだという御意見だったかと思います。それから、第2は、ここには直接出ておりませんが、先ほど落合委員の御発言にもありましたけれども、現行の親権の規定の書きぶりについて見直す必要があるのではないかという御意見を頂きました。   それから、第2につきましては、1(1)イで急迫の事情というのが出てまいりますけれども、これについて後始末というか、正当な判断であったということを確認するような手続があった方がいいのではないかと御意見を頂きました。最後が、2(2)、(6)とおっしゃったかと思いますけれども、むしろそこに関わる具体的な判断要素、(注)に関わるようなことをおっしゃったのかと思います。2点あったかと思いますが、こどもの利益との関係で判断するということと、それから、合意ありなしというのはやはり分けて考える必要があるのではないかということ、そうした御指摘だったかと思います。ありがとうございます。 ○水野委員 委員の水野でございます。すみません、またワンパターンの反論を一言だけです。この問題は、危惧しておりますので、また同じことを発言させていただきます。   こどもの意見を考慮するということにつきまして、たしかにこどもがどのような精神状況であり、親に対してどのような感情を抱いているかは、手厚く調査しなければいけないと思いますが、父母のどちらを選ぶかという質問は禁忌だと思います。池田委員が根拠にされる児童の権利条約は一般に日本では肯定的に引用されますが、この条約は、私はフランスのことしかよく読んでおりませんけれども、厳しい批判も浴びております。そしてこの条約に限らず、最近の例で言いますと、障害者の権利条約につきましても、条約の委員会が、成年後見制度はやめてしまって意思決定支援制度にすべきだと言うのに対して、現実を見ていない無謀な観念論だと、フランスの判事さんたちが批判声明を出したりするぐらいで、権利条約への批判力も必要だと思います。児童の権利条約の意見表明権の部分についてもフランスでは厳しい批判がされており、とりわけ両親を選ばせることについては、もう常軌を逸した逸脱だとか、非常に残酷な両親のせりを強制するものだという批判を浴びております。   こどもの意見表明権をこのような場面で適用するときには、非常に慎重にやらなければならないと思います。こどもの主体性を尊重するという精神のレベルではいいのですけれども、特にこういう、正に一番危険なところに書き込むことが、本来選べないものを選ばせて、「君がそう言ったから、こちらの親にした」という結果を一生の重荷にする、非常に残酷な加害行為を引き起こしてしまうのではないかと危惧しております。もちろんこどもの精神的、肉体的状況は非常に丁寧に見なければならない、こどもの人格を尊重しなくてはならないということは、もう異論のないところなのですし、実際にも訓練を積んだプロがこどもの希望を慎重に聞き取ることは必要だと思うのですけれども、意見表明権をここで書き込むことは、硬直的に、どちらの親を選ぶかを端的に聴く実務につながってしまうのではないかと、危惧しております。毎度おなじみの反論を、そのたびにさせていただいて恐縮なのですが、委員の中にも危惧する声があったということを確認させていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。水野委員からは、池田委員の最初の御意見についての危惧を示される御意見がございました。   池田委員から、ほかの委員、幹事の御意見も伺いたいというお話もありましたけれども、今ちょうど3時を回りましたので、ここで一旦休憩をさせていただいて、その後、第1、それから第2の方につきましても更に御意見を頂戴したいと思います。15時8分ですので、15時20分まで休憩しまして、20分に再開いたします。   休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、すみません、技術的な理由で再開が10分ほど遅れてしまいましたけれども、再開して、第1と第2につきまして、引き続き御意見を頂ければと思います。どなたからでも結構ですので、お願いを致します。 ○小粥委員 委員の小粥です。休憩前に落合委員がおっしゃったことに関わることですけれども、第1のことについて、この部会で子の養育について非常に大きな判断をすることになるのではないかということをおっしゃいましたけれども、去年できたこども基本法の第3条の第5号という条文に、子の養育について一次的な責任はどこそこにあるというような規定ができているようです。少し時間を頂いて恐縮ですが、一応読みますと、「こどもの養育については、家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任を有するとの認識の下、これらの者に対してこどもの養育に関し十分な支援を行うとともに、家庭での養育が困難なこどもにはできる限り家庭と同様の養育環境を確保することにより、こどもが心身ともに健やかに」うんぬんという規定がございます。   ここで「認識の下」と書かれているので、恐らくそのような大きな政策決定がここでもなされているようにも思われます。しかし、私がここで何か申し上げるより、せっかくこども家庭庁の方にも御出席いただいているので、今すぐということではなくていいと思うのですけれども、この法律の審議の過程で、民法との関係あるいは親権との関係について、もし議論があったら、あるいは注意すべきところがあったら教えていただきたいので、そのような趣旨で少し御発言をさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。小粥委員からは今、御質問がありましたけれども、委員御自身がおっしゃっていたように、急にということもなかなか大変かと思いますので、事務当局の方で調整をしていただき、もしお答えを頂けるようでしたら、次の機会に頂きたいと思います。 ○久保野幹事 ありがとうございます。幹事の久保野でございます。第1について意見を申し述べさせていただきたいと思いますが、その前に、こどもの意見表明については、私自身は重要な価値として今後、民法に記入していくことを検討すべきだと基本的には思っているのですけれども、現時点では時期尚早と申しますか、控えた方がいいと個人的には思っております。それは、何歳ぐらいのどのような状況のこどもについて、どのようにどのような場面で意見を聴取していくか、あるいは意向を考慮していくかということについては、慎重な検討が必要なのだと思っております。特に、ドイツなどの例を伺っていますときに、現場における専門家の質、量といったことが非常に重要になるという印象を持っていまして、それらの実務的なこどもの意見に関わる専門家の養成、育成も含めて検討していく方が適当だと思っております。   それで、これは父母や親権者との関係で問題になるため、専門家という話をするのとは少し離れているのですけれども、父母との関係では、民法第821条の子の人格の尊重や年齢発達の程度の配慮というものが親権については明文化されていまして、まずはその中で、どのような場面でどのようにこどもの意見を法的に位置づけていくか、取り扱っていくかということについて、先ほど言ったような観点も併せて具体化、明確化してから、民法にどう書くのがよいかということを検討するのが適切ではないか、少し消極的な意見かもしれませんけれども、現時点でそのように思っております。   その上で、第1についてなのですけれども、先ほど発言の機会を頂きましたときに、少し中途半端に意見の方向性を申し述べましたが、まず、そのような基本的な権利義務ということについて、理念的な側面が強いとしても、定めることには価値があると思っております。ただ、こどもの利益の確保が指針となるとともに、子育ての自律性や子育てへの国家介入の在り方、あるいは先ほどの御指摘の家族主義の問題などとの関係という観点も重要なものだと思っております。その点で落合委員の指摘には共感しております。その上で、少し書き込みすぎではないかといったような御指摘が幾つか出ていますけれども、私も出発点としましては、扶養義務さえないかのような誤解を防ぐという意味で、扶養義務を明確化するということを中心に考えるべきだと思っております。   その上で具体的に幾つか申し上げたいのですけれども、順番でいうと後ろの方に書いてあるものから先になりますが、(注2)に書いてありますのは、これは実は親権者についての話だと思うのですけれども、義務としての性質うんぬんというところは私も落合委員と同様、慎重に考えるべきだと思っておりますが、子の利益のためにということにつきましては、2011年の改正で第820条にこの趣旨が定められましたが、財産管理を含んで親権一般に妥当するものとしては条文が入っていませんので、そのような親権一般に妥当するものとして定められるとよいのではないかと思います。   次に、(注1)の方ですが、「また」以下に書かれておりますことは、今回、婚姻関係にない父母に共同行使を拡大する可能性を開こうということですので、つまり、第752条のような夫婦間の相互協力義務が課されていないような父母が、共同で親権を行使するということを認めていこうとしていることからしますと、このような父母相互の人格尊重を定める意義は大きいのではないかと思います。ただ、父母一般ではなく、共同親権行使の文脈でだけ定めるということもあり得るかと思います。   最後に、「また」より前の最初の3行に書いてあることのうち、特に1行目の、たたき台として示されているというふうに補足説明にございます、子の心身の健全な発達を図らなければならないという表現、あるいはこのような義務の定め方というのは適切ではないのではないかと思っております。   この点、2022年の改正で設けられた第821条を参考にした表現ではないかと思っているのですけれども、その条文は、先ほども話題になりました、親権という広い裁量を伴う権限を持った者について、完全に自由に何でもできるわけではないということを明らかにするためのものではないかと思われまして、必ずしも同列には考えられないのではないかと思いますことと、この点と関連しますが、特に、図らなければならないといったような義務として書き込んでいくとしますと、その義務を果たすためには権限が必要になるのではないかとも思われまして、親権の有無にかかわらず父母についての権利義務関係を定めようという趣旨からしますと、そぐわないのではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。こどもの意見表明の件と、それから第1についてと、二つ御意見を頂きました。こどもの意見表明については結論としては、2022年の改正によって置かれた新しい第821条の運用の中で、まず考えていくべきではないか、その先に更なる法改正を考えるべきではないか、こういう御意見だったかと思います。それから、第1については、基本的には扶養義務を中心に書くべきであり、そして、ここで書かれていることについて、それぞれ適切でない部分があるので、それを書くとしたら、縮小した形で書く必要があるのではないかといった御意見だったと理解を致しました。 ○大石委員 ありがとうございます。委員の大石です。最初に、5人の幹事や委員の方から出された資料について、大変私も賛同するところが多くありましたということを先に申し上げたいと思います。   第1に関してですが、5人の方々から出された資料の第2のところに、親であることから生じる義務についての提案として甲案、乙案が出されています。私は甲案のようなものを新設するということと、それを親権の章の最初の辺りに、まずは親であることに由来するという話を持ってきた方が収まりがいいのではないかと思っておりまして、そういった方向の整理が行われることを希望いたします。   それから、こどもの意見表明に関しましては、様々な懸念を各委員が表明されました。同意する部分もあるのですが、やはり、こども、あるいは若者の意見表明がなかなか現在、保障されていないという現状があります。どちらと住みたいというようなことだけではなく、例えば進学に関してですとか、いろいろな面でこども自身の希望や意見が反映されにくい現在の社会構造があると考えております。自治体によってはこどもの意見表明を支援するような制度を整えていっているところもありますし、そういったものを参考に、意見表明を支援していくような方向が望ましいのではないかと考えております。   こうしたことを条文に書き込むまでには、いろいろな制度整備なども必要だという御意見ももちろんあろうかと思うのですけれども、いま十分には対応できないから書かないということになりますと、ではその間の人々はどうなるのか、その間にいろいろな経験をするこどもはどうなるのかというようなこともあるように思いまして、多少強めにこどもの意見表明というものを支持していくような方向であってもいいのではないかと考えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。大石委員からも、第1とこどもの意見表明について御意見を頂きました。第1については基本的に規定を置いていくということに賛成されるということで、具体的に5人の先生方の作成された文書の中の案のような方向がよいのではないかということをおっしゃっていただきました。それから、意見表明については、これをサポート、強化していく方向で考えた方がいいのではないかという御意見だったかと思います。 ○原田委員 ありがとうございます。委員の原田です。第1のところに関連して、こどもの利益の観点からの議論が重要だということは、私も異論はないのですけれども、父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響で現在最も問題なのは、やはりこどもの貧困ではないかということを考えると、その意味では、ひとり親に対する国の支援と養育費の問題ですから、親権者であろうとなかろうと扶養義務があるということが最も重要で、そこを切り出すという、そこまで私は今日、考えてなかったのですけれども、皆さんの御意見を聞いて、やはりそこを明確にするという形の規定の仕方がいいのではないかというのは賛成です。   ただ、今の視点で提案のところで立ち戻ってこどもの利益の観点ということを考えたとき、それと別にDVに適切に対応する視点というのが全く別項となっていて、DVと虐待が別物であるかのように記載されているところが非常に気になります。戒能委員の御指摘もありましたけれども、児童虐待防止法によれば、子の面前で行われるDVは子に対する虐待であると規定されているにもかかわらず、これまでの実務では、面前DVがあっても、子に対して直接暴力を振るっていなければ、親権者としての問題がないかのような扱いがされる例が多く見られました。また、こどもの養育の基盤は監護者の安心・安全ということが重要であって、ここが安定していなければ子の最善の利益を実現する養育が困難になるという点からも、ここでのDVへの適切な対応という扱い方が虐待と全く別物のように書かれていることについては、非常に問題があるのではないかと思います。この虐待の中にはそのことが含まれていますという意味かもしれませんけれども、条文上それを明確に入れるのが難しいとしても、最終的な報告書にはこの点を明確に記載を入れていただきたいと思います。   それから、DVというのはやはり立証が非常に難しいということがあって、共同養育制度を取り入れているイギリスやオーストラリアで、このDVの事例が排除されないということが指摘されています。その意味では、当事者の主張の当否が適正な手続の下で適切に認定されなければならないという表現には十分注意を払う必要があるということと、今回、民法の先生方から御意見が出ていて、フランス法やドイツ法の紹介がされているのですけれども、一方、委員からはイギリスやオーストラリアでの問題点の指摘が紹介されています。そこで御紹介いただいているドイツやフランスは共同養育かうまくいっているのかということと、そうであるとすれば、イギリスやオーストラリアとどう違うからうまくいっているのかという辺りも御教示いただければ有り難いと思いますし、そういうところを取り入れていく必要があるのではないかと思います。   また、権利義務の関係では、義務を果たすために必要な権利というふうに考えるべきではないかと思いますし、別居親にもDV被害者がいることは私も承知しておりまして、加害者が親権者にならないようにするためにはどういう規定が必要なのかという観点が必要なのではないかと思います。   第2の親権、監護権のところですけれども、第2の1(1)で、単独行使ができる場合について、急迫の事情とされているところがどの程度のことを考えておられるのかということが、非常に不安になっています。ここではこどもを連れて別居する場合が一番深刻であるとは思いますが、そのほかにもいろいろな場面が想定されます。そのときに緊急性というのをどんなふうに考えるのか、例えば大学入学契約など、協議を重ねてもまとまらず、申込みの期限が迫っているという場合も、これは急迫でいいのかというような問題です。   ここでは虐待とかDVの場合が想定されていると思われるのですけれども、例えば保護命令の場合でも、暴力があってから一定の期間がたつと生命身体に対する危険があるかの判断が否定的にとられることがあります。しかし、被害者の方は安心した生活ができておらず、限界に達したという場合もあって、その場合、急迫といえるのか。DVや虐待がなくても、高葛藤が続いていて両親がいつもけんかしている状態の下でこどもを育てるのが急迫といえるのかなど、急迫の判断に懸念が生じる場合が多いのが別居に伴ういろいろな実態だと思います。   このときに、急迫という事情があるか否かで子連れ別居の正当性を問われるということになると、一番問題なのは、支援がしにくくなるということではないかと思います。現在でも別居の支援をした行政や弁護士が訴えられる事態が生じております。これではDV支援に支障が生じると思います。これを先回りして言うと、事前説明の中で、急迫の事情があるか、つまり違法性があるかどうかということと子の引渡しは別問題で、急迫の要件に該当しないとしても、子を引き渡すべきか否かは子の福祉、利益を考慮してどちらが養育すべきかという観点から判断されるという説明がありましたけれども、別居開始の事情が考慮されないということはいえないですし、何より支援が消極的になる可能性が最も深刻だと思います。   これらの観点から、急迫の事情ではなく、必要かつ相当な事情とするのでは駄目でしょうか。必要性の判断の中には急迫性も求められますし、別居した方が子の養育環境が整うのかという判断もできます。また、相当性を入れることによって、例えば別居の手段、無理に連れていったとか、暴力があったとか、あるいは全く音信不通にして、残された側が監護者指定等の申立てができないなどの状況になっているのかも判断理由にできるのではないか、そういう意味では、適否の判断もこの中で求められるようになるのではないかと思います。   その点について、(3)があると言われるかもしれませんけれども、高葛藤の事案で同居中に裁判所に申し立てて、更に家庭内での葛藤が続くというのは、子の利益に合致するとはいえないと思います。適否の判断を事後的に求める制度が必要だと思いますけれども、その制度の中で必要性、相当性について判断をするというふうな流れになればいいのではないかと思います。   すみません、長くなりますが、第2の1(2)でこの間、どういう場合に困る場合が出てくるのかという点でいろいろ言って、いや、それはああだこうだというのがありました。けれども、債務負担行為ではなくても、例えば大学入学契約などで辞退というのはどうなるのか、これは単独でできるのか、あるいは医療行為の範囲をどうするのか、緊急手術の場合は急迫の事情でカバーできるかもしれませんけれども、ワクチンの接種とか、少し笑われるかもしれませんが、わきがの手術などですね、例えば皆さん、わきが手術なんかは緊急ではないと思われるかもしれませんけれども、中学生や高校生の女の子にとっては非常に深刻な問題で、不登校の原因にもなりかねないような問題です。このような問題を解決するに当たって、日常行為と重大な行為の例示が難しいのであれば、共同親権の場合に監護者を必須とする方法によって解決すべきではないかと考えています。この点は、(3)のところで、監護者ではない親権者も監護者の監護を害さない範囲で日常行為ができるという定めを入れておけば、問題がかなり解決できるのではないかと思います。   さらに、第2の2なのですけれども、第2の2(1)は、親権者の定めをしなくても協議上の離婚ができるとしても、やはり申立てをしていないといけないわけで、DV被害者にとってはとても負担であることは変わりないということがあると思うのですけれども、その間は問題を起こさないようにしていれば共同親権ができているのではないかという実績が作れるようなことがないように、迅速な手続、保全のような仕組みが必要だと思います。また、取下げをさせられるということがないように、取下げができないような規定も必要ではないかと思います。この場合、また、社会保障などの問題については、是非こども家庭庁からも御意見を伺いたいと思います。   それから、(注1)ですけれども、何となくこの書きぶりは共同親権が原則であるような印象を受けます。子の利益を害さなければいいと規定しているように読めますが、子の利益というのは、害がなければいいというのは少し、何というか、ひどいと言ったら言葉が法律的ではありませんけれども、適当でないのではないかと。本来は共同親権が子の最善の利益に合致する場合であるべきで、害悪を及ぼす危険がなくて子の最善の利益が確保できるか否か、あるいは監護者がですね、これは何と書いてあったか、何とかの言動を受けるおそれがなく、双方が互いの人格を尊重して平穏な養育ができるか否かとかいうような、もう少し積極的な文言を判断要素の中には入れる、あるいは説明に入れるなどするべきではないかと思いまして、第29回に議論された親子交流のときの規定と同じような印象を持ちました。   第2の3(2)かな、(1)かな、この表現だと監護者を決めるべきだと読めるのではないかという指摘が、読んだ人からありました。私は決めるべきではないかと思っているのですけれども、ここでは決めるべきだという意味ではないと説明がありますので、少し表現の仕方を工夫すべきではないかと思います。   ここは、先ほど言ったように、日常行為と重大な行為の例示が難しいのであれば、基本的に監護者を決めると、そうでなければ多くの事案を家裁に持ち込むことになって、家裁がパンクするということではないかと思いますし、リーガルハラスメントの温床にもなりかねないという問題意識があります。分掌の合意もあり得るとは思いますけれども、先ほど言いましたけれども、(3)を残すことによって、監護者でない親権者が全く何もできないのかという問題もある程度解決するのではないかと思いますし、社会保障の問題も多くは関係するのではないかと思います。   以上です。すみません、長くなりました。 ○大村部会長 ありがとうございます。原田委員からは、いろいろな御指摘を頂きましたが、幾つかを取り上げてまとめさせていただきたいと思います。まず、第1については、扶養義務を中心に考えていくべきだというのが主要な御意見だったかと理解を致しました。それから、第2については、幾つかありましたが、一つ目は急迫の事情や日常の行為というのをどのように判断するのかということについて御意見を頂き、もしそれらの判断が難しいということであれば、監護者必置という方向で考えると問題が解決するのではないかという御意見だったかと思います。それから、2(1)に関して、保全や審判、調停の申立てをするということで、これとの関係で、保全や取下げについての対応をきちんとしておく必要があるという御意見、そして、これは先ほど池田委員からも出ましたけれども、(注1)の判断要素について更に考える必要があるのではないか、こうしたところが主要な御意見だったと思いましたけれども、そんなところでよかったでしょうか、原田委員。 ○原田委員 はい。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○石綿幹事 幹事の石綿です。まず、第1について2点、池田委員から御指摘のあった子の意見表明ですが、家事事件手続法第65条もあるところですので、それとの関係を考えつつ、こどもの意思の尊重ということを検討するということはあり得るのだと思います。ただ、家事事件手続法で規定されているものから範囲を広げるのかどうか、範囲を広げるとなると親のこどもに対する子育ての形にも大きく影響を与えると思います。久保野幹事から御指摘があったように、民法第821条についての改正後の解釈等も含めて検討をしていく必要があるということなのかなと思いますので、今回入れるということであれば、もう少し慎重にこの場で議論する機会を設けていただければと思います。それが1点目です。   2点目ですが、もうこれも多くの委員、幹事の先生方から出ていますが、親の責務について、扶養義務については是非入れていただきたいと思いますが、それを超えてどの程度書くのかというところは議論があるのかと思います。これも民法第821条と比較をしながら、後段の方に書いてある子の利益の尊重等を記載するということは考えられるかと思いますが、前段のところにある健全な発達を図るというところまで書き込むかどうか、ある種、このような子育てをしなさいという形まで書き込むかというところは議論があるかと思います。ある種、親あるいは親権者の裁量を制限するものにもなりかねないと思いますので、民法第821条との関係も踏まえて、もう少しここは慎重になった方がいいのかなと思います。なお、父母間について何か置くという点については、賛成です。   それから、第2について、すみません、手短に話しますが、5点、意見を述べさせていただければと思います。   まず、第2の1(1)アで、要は、これはどういう場合に単独行使になるかということで、現行法の民法第818条第3項ただし書を念頭に置いていらっしゃるかと思います。現行法をベースに考えるということは基本的には問題ないと思いますが、現行法は飽くまで婚姻中に親権を共同行使する場合であって、今後は離婚後も共同行使する場合もあるということなので、一方が親権を行うことができないときというのが具体的にどういう場面なのかというのを条文に書き込むか、あるいはもう少し補足説明等で書き込むかということは検討した方がよいかと思います。赤石委員が御紹介いただいたかと思いますが、連絡は取れるけれども返答をしてくれないというようなときがこれに該当するのか、といったようなことは明確にしていく必要があるのではないかと思いますので、もう少しアの点についても具体化して議論ができるとよいのかなと思います。   それから、2点目はもう多くの方々から御指摘があることですが、日常の行為というのが何なのかということは、全てを列挙できないにしても、典型例はある程度示すということ、あるいは問題になりそうな事案についてある程度、可能であれば合意なり方針が示せる方がよいのではないかと思います。   3点目は、第2の2の(注1)に関連してということですが、どのような場合に父母双方を親権者とするか、単独親権にするかということですが、これももう池田委員、原田委員から御指摘があったことかとは思いますが、現状の記載ぶりであると、どちらかというとこどもに害悪がないような場合というような書き方で、よほどひどいことがある場合でなければ共同だということであって、それはそうなのかもしれませんが、そのような考え方が子の利益にかなうのかということは、いろいろな意見があると思いますので、もう少し議論した方がよいかと思います。そして、この(注1)が問題になるのは、前提として父母が同意できていない場合だということを考えると、父母に葛藤があるということに配慮する必要があるかと思いますので、以前の部会でも申し述べたかもしれませんが、民法で類似する規定としては、例えば配偶者居住権の規定等があるかと思いますが、それらのものも参考にしながら規定ぶりを考えていくことも考えられるかと思います。   また、この(注1)のところでどこまでいろいろなことを書き込んでいくかということで、先ほど原田委員から、親権者として適切でない人が親権者にならないようにという御発言があったかと思います。青竹幹事を始め委員、幹事で出した資料でも書きましたが、考え方の一つとして、例えば、刑事事件に相当するような配偶者間暴力等がある、あるいはこどもへの虐待があるような場合というのは除外するというようなことを規定として織り込む、あるいは考慮要素として資料等に書き込むということはあり得るのだと思います。最終的にそういう決断をするのかということは議論が分かれるかと思いますが、考え方としてはあるのだと思います。なお、この点は原田委員から、フランスは共同養育がうまくいっているのかという御質問とも関連します。フランスでも近年は配偶者間の暴力の問題が注目され、2019年と20年だと思いますが、配偶者暴力があった場合には親権が共同行使できないような規定を入れるというような改正が行われています。すみません、長くなってしまいましたが、以上が3点目に関してということです。   4点目は、第2の3に関して、監護者の定めがあるときということですが、この資料は監護者は身上監護に関することが単独でできるという前提ですが、この身上監護に関することがどのようなことなのかということもある程度、明確にした方がよいのかと思います。原田委員が御説明になったことと関連するかと思いますが、例えば、監護教育ができるからといって学習塾の契約ができるのか、恐らく資料の現状の理解としては、身上監護に関することは監護者が単独でできて、財産管理等のというところに法定代理も含まれるというのが現行法の通説的な理解だと考えられて、資料を作られているのかと思います。そうすると、お金も関わってくるような契約行為というのは監護者が単独でできるのかというようなことがこの資料からでは必ずしも明確ではないのかと思います。しかし、そこは実際上、問題になってくるのではないかと思いますし、身上監護と財産管理等を、どう切り分けるかというのは学説でも議論があるところかと思いますので、この点はもう少し明らかにしていただいた方がよいのかと思います。   最後、5点目ですが、主に第2の1と第2の3に関連することですが、共同してしなくてはいけないことを単独でしてしまった場合の事後処理と申しますか、効果等について、何らか定める必要がないのか、現行法では民法第825条があるわけですが、それに加えて身上監護等のことについて何らかの手当てを置く必要がないのか、父母間の扱いもそうですし、第三者との関係もそうだと思いますし、従前に比べて共同行使する場面が増える、そして、その共同行使する場面というのに場合によっては父母の紛争性が高いということも考えると、何らかの紛争が生じる場合に備えた規定あるいは対応というのを考える必要があるかと思いますので、この辺りも検討の必要があるかと思います。   長くなりましたが、以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事からもたくさんの御指摘を頂きましたが、大きく分けて三つかと思います。一つ目は、先ほどから御意見を頂いているこどもの意見表明についてですけれども、その規定を置くならば、既存の規定、家事事件手続法との関係など、精査すべき問題があるのではないかという御指摘だったかと思います。そして、第1については、これまでの委員、幹事の中からも御発言がありますけれども、扶養義務を中心としてプラスアルファということで、(注1)の中の、父母が子の心身の健全な発達を図らなければならない、という部分について疑念を示されていたかと思います。ほかは基本的に賛成ということだったと承りました。そして、3点目ですけれども、3点目は第2について5点、指摘を頂きましたが、前の4点はそれぞれ概念や要素を明らかにする必要があるという御指摘だったかと思います。最後の1点が、共同行使ということになった事項について、単独でしてしまった場合の後始末を考えておく必要があるのではないかという御指摘だったかと思います。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。よろしくお願いします。   まず、第1についてなのですが、一旦、第25回でしょうか、養育の責務が扶養とするという意見になった後に、多分、5委員、幹事の意見もあって、また皆さんにお諮りするというような書きぶりになっているのだろうと理解しております。この青竹幹事始め5委員、幹事の御意見についてなのですけれども、拝見して、印象としては前向きに受け止めたのですけれども、例えば、親権に服するといった表現はやはりもう変えるべきであるというのは、本当にそう思います。とはいえ、心身の健全な発達を図るというところについて、私は違和感はなかったのですが、少し入り込みすぎているといった御意見について、私もう少し慎重に考えたいと思います。   それから、父母の互いの人格を尊重するといった表現がどのように実務上、効果を及ぼすのかといったことに関して、いろいろ考えたのですけれども、子の最善の利益とともに、やはり諸刃の刃なのだろうなというのが今のところの私の意見でございます。これによって、例えばDVや虐待的な関係というのが防止できるようになるのか、今、非常に別居した妻に対して誹謗中傷的な行為をされている方たちもいらっしゃるわけですけれども、そういう方たちが急に、父母の互いの人格を尊重するという規定が入ることで親としての義務を果たしているとは思えないというふうになるのかどうかとか、そういったことについて希望しつつ少し留保したいと思います。やはりこどもの最善の利益というのをどう定義するかにも係ってきてしまうと思いました。例えば、父母は互いに子及び相手の平穏な生活を尊重するといった方がいいと思います。扶養の義務については、先ほど原田委員もおっしゃったように、私もここが最重要だと思います。   あと、DVについて先ほどおまとめがあったので、一言お伝えしたいと思います。これまでDVに関しての対策、あるいはこどもの虐待に対しての対策が十分に議論されたかのように、補足の資料の方でもありましたが、私はまだ不十分であるというふうに、付随的に議論がされたと認識しておりますので、これについてはもっと議論がされるべきだと思っております。   DVの対策が不十分であれば何が起こるかということなのですけれども、今、婚姻中でこどもが虐待を受け、DVを受けている、妻のことが多いですけれども、配偶者の方たちは、息を潜めてこの状況を見守っているわけです。もしこれが離婚しても希望がない、あるいはいろいろな手続上、とても離婚できないとなれば、今の婚姻中のままDVを甘受していた方がいいということを考えると思います。今、息を潜めて考えている方たち、DVを受け続けている方たちに影響するような規定である。受けて出てきた方たちだけでなくて、今本当に必死に、私たちも御相談を受けるわけですけれども、どうしようと思っている方たち、あるいは一回出たけれども戻ろうとする方たち、いろいろな方たちに影響するのだと思っていて、そのことがまだ十分に議論されていないと思っております。精神的なDVの認定というのは、やはり非常に不十分であると思っております。   次に、第2の1、急迫の事情のところは、いろいろな方がおっしゃっておりました。(1)イですね。その前に、ここの第2の1のところは、確認ですが、婚姻時と離婚後と両方に関わる規定であるということでよろしいですよね。   その上で、急迫の事情のところなのですが、これが一番関わるのは、原田委員がおっしゃったように、子連れでDVから逃げるというようなときが一番あるわけなのですけれども、この急迫という定義が曖昧であれば、結局は相手方からこれは急迫の事情ではないと言われたら、もう一度裁判でやり直すというようなことになるのかと思いますので、ここに関して安心できる、避難できる条項というわけにはいかないのかなと思っておりまして、避難した後に、やはり監護者指定を簡便にしていく方向性というのがどこかに規定されてほしいと思いました。   続いて、第2の2(1)です。私は少し驚いてしまったのですけれども、協議上の離婚をするときに親権者の定めをしなくても、審判又は調停の申立てをしていればよいとする案というのが提起されています。これは初めて提案されている案だと思います。部会資料27でしたでしょうか、では、一旦親権を定めた後にやり直しをすることができるというようなことが議論されていたかと思います。これがどうして引っ込められて、こちらになったのかというのが、少し御説明が、そういうこともあり得るみたいなことが補足説明であるのですが、やはり手続的に保障されていた方が私は有り難いと。   それから、親権が決まっていないということは共同親権が続いているということだということで、更に監護者指定もできていないということになるわけですから、今、離婚手続をする方がどういうふうに行動しているかというと、戸籍課に行って離婚の手続をします、そうすると市役所なり区役所なりが、あなたはこどもさんがいらっしゃるのだから、その次にひとり親支援課の方に、そういう担当課に行っていろいろな社会福祉の手続をしたらどうですかというフローがだんだん確立していると思います。こども家庭庁の方がもっときちんとその辺りを推進していらっしゃると思うのですけれども。しかし、親権もどちらになるか分からない、こどもはこちらにいるのだけれども、一体社会保障の仕組みとどういうふうにリンケージするのかが分からない状態のまま審判を待つ、あるいは調停を待つという状態がどの程度続くのか、非常に不安定であるかなと思います。前の御提案では、一旦は親権は決まるということですので、そこで社会保障の手続とかができると解釈していたので、ここは私は非常に新案は珍案だと思っておりまして、びっくりしました。なぜこれが出てきたのかなと思っております。   あと、補足説明付きの資料の方に行かせていただきたいと思います。11ページの(注1)でございます。ここでパブリック・コメントの手続についての言及がございました。パブリック・コメントの手続においてはいろいろな多数の意見があったということですね、それから、団体から寄せられた意見については甲案に賛成する意見が多数であり、それは参考資料にあると、個人から寄せられた意見においては乙案に賛成する意見が多数で、甲案賛成と乙案賛成の割合はおおむね1対2程度であったというのが初めて明らかになりました。正直、非常に驚きました。今までこのことについて全く言及がなく、たたき台が出てきたときにこの話を出してくるのは、その一人一人、何千人が意見を送ったことに対する扱いとしては非常に不当であると思います。   さらに、今日資料になりました参考資料30−1には、個人の意見というのは少なく抜粋されております。個人の意見は大体85ぐらい載っていたかと思います。検索したので、しっかり分からないのですけれども、(個人)で検索すると85でした。この方たちの意見が、せめてこの割合に沿って抜粋されているのかと思って拝見したところ、非常に甲案に関する個人の意見の方が多く抜粋されていました。100ページまで見たところなので。そうしますと、今のこの暫定的なパブリック・コメントのおまとめにかなり偏りがあると言われかねないようなおまとめではないのかと思います。   私はいろいろな、甲案賛成、乙案賛成の御意見を頂いて、それを見てきているのですけれども、本当に切々とした訴えが乙案の方にもありましたし、甲案の方は私どもが受けるのは少なかったわけですけれども、ありました。それはほとんど上っていないです。私どもはいろいろな御相談を受けるので、当然ある程度知っていますが、委員の先生方がやはり個人の意見を聞いて判断すべきであると私は思っておりますので、このようなパブリック・コメントの扱いというのは必ずや問題になると思います。これについては少し、対処の方針については御回答を頂きたいと思います。   続きまして、第2の(注2)のところですかね、こちらも補足資料の方で拝見したところのP11の(注2)でございます。少し戻って、第2の2の方の考慮要素などのところでございます。ここについて印象として思うのが、4月以来、双方が親権を持つのは父母の合意によるものであるというふうなところから出発して、その後に、どうしても紛争になったときには、こどもの最善の利益を重視して裁判所でも決めることができるというような話として流れがあったのですけれども、いつの間にか父母の合意という文言がどこにもない規定になっているのですね。   私の印象から言いますと、少し、子の利益によって、合意がなくても認めるべきであるという御意見がこれまでもあったと思うのですけれども、その小さな穴を空けたら、何回か後の議論では大きな道になっていて、そこにいろいろなものが通ってしまう。その結果、通さない方がいいと思っている事例も入ってしまうような規定になっているというのが私の印象でございます。   それをもう少し概念的に言うと、先ほど池田委員もおっしゃっていたのに近いのかもしれないのですけれども、父母の合意がない場合というのをどういうふうに議論したらいいのかというときに、やはり別の規定が必要だということでもあると思いますし、ごめんなさい、今日持ってこようか持ってこまいか迷ったのですけれども、人間関係のこういう尺度があるとします、こちらに敵対的あるいは暴力的な関係、右端は協力ができる関係で、今、暴力的な関係については除くというような議論がされているのですけれども、暴力的な関係だけを排除すれば、それで共同での親権、双方の親権がうまくいくかというのは、人間関係を考えたら、あり得ないわけです。もっと、合意によって協力的にやり得るという状況を何とかして規定の中に盛り込まないと、結果的にはやれないというふうになると思っておりまして、先ほど原田委員なども、それ以外のものは全てオーケー、父母の一方が他方の身体に対する暴力やその他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがなければオーケーということではないのである、ということだと思うのです。ここの書きぶりが非常に何か、考慮要素が、方針として私には納得のいかない、これまでの半年の進め方が、やや欺まんに満ちていると思いました。   続いて、最後、資料の方に戻りまして、(7)のところの親権者の変更の手続について述べさせていただきます。親権者の定めについて、その合意形成過程が適正でない場合には親権者の変更の手続をすればよいといったこと、これをしっかりやるということが書かれております。親権者の変更というのがどの程度の負担感でできるのか、私はこれに携わったことがないので、いろいろお聞きしたところ、やはり弁護士さんを立てなければいけないし、調停等で相手方とこちら側、両方の調査が必要で、今、年間で、ここの件数等、この間法務省さんにお聞きしたとき、出てこなかったので、お調べになっていれば、後でお答えいただきたいのですけれども、それほど大きな件数ではないのは私も見て、思います。しかも費用が掛かる。合意形成過程が適正でないから親権者変更の手続をしようということをできるような経済力や時間を、父母双方のどちらでもいいのですけれども、持っているのでしょうかと、そうしますと、子の利益が本当に実現しないということになってしまうわけです。   私ども、夏休みの生活調査もさせていただきました。こどもを、これはどういう状態で今、ひとり親が暮らしているかということなのですけれども、夏休み、どこにも遊びに行けない方が半分、前日にお子さんが何食食べましたかと聞いたところ、2食ですと答えている方が40%、お母さんも食事を抜いているというような方が、私どもが御支援している方たちの中に圧倒的に多くいらっしゃると。こういう中で、30万から50万円のこの親権者変更の手続をどうやってやるのか。であれば、親権者の変更の手続が簡便にできる方策を考えるか、あるいは何らかの形でほかの、前回御提案いただいたように、見直しの定めをするか、どちらかになるのではないかと思いました。   取りあえずは以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。幾つか事務当局や、あるいは裁判所等にお答えいただく必要がある御質問なども含まれておりましたけれども、それは後でまとめさせていただくことにしまして、まず、DVについて更に踏み込んだ議論が必要だという御意見を頂きました。それから、第1については(注1)について、扶養義務中心というのは先ほどの原田委員に賛成ということでしたが、その他挙げられている要素については更に慎重に考えたいという御意見だったかと思います。第2については、一つ、急迫の事情ということについて既に何人かの方から御意見を頂いていますけれども、これとの関係で、別居後の監護者指定を簡便にすることも考える必要があるのではないかという御指摘があったかと思います。   それから、補足説明の方の11ページの(注1)、(注2)についての御発言がありましたが、(注1)は後で事務当局に答えていただくことにしたいと思いますが、(注2)の中に書かれていることとの関係で、父母の合意の取扱いがゴシックの方の資料では希薄になっているのではないかという御指摘がありましたが、それは、ゴシックの方の資料に戻ると、2ページの(注1)ですね、先ほどからここの部分の考慮要素はこれでよいのかということについて複数の意見が出ておりますけれども、ここをやはり考え直す必要があるのではないかという御意見として承りました。   御質問を含むと私が理解したいくつかの点についても申し上げますが、まず、2(1)が突然出てきたような印象だといった御指摘があったかと思います。これは、後で事務当局の方で経緯についての御説明を頂きたいと思います。それから、補足説明11ページ、(注2)については先ほど触れましたけれども、(注1)について、パブリック・コメントの扱いについての御質問があったかと思いますので、これも事務当局の方でお答えを頂きたいと思います。そして、最後に2(7)、親権者変更の手続について御意見ないし御質問があったかと思います。簡便にできるような方策をといったこともおっしゃっていたかと思いますけれども、これについて、現状について、何か裁判所の方であれば、お答えを頂ければと思っております。   裁判所は先ほどから手を挙げていただいていますが、御発言はまた別途伺いたいと思います。そこで、まず事務当局の方からお答えを頂き、そして、裁判所の方でお答えを頂き、改めて、裁判所の方の御意見を別途頂くという形で進めさせていただきたいと思います。では、事務当局の方でお願いいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。まず、部会資料30−1の第2の2(1)の、協議上の離婚をする際に、下記(4)の審判又は調停の申立てをしていれば親権者の定めをしなくても協議上の離婚をすることができるものとするということにつきましては、第27回会議の部会資料27の1(3)で、協議上の離婚をすることについての父母の合意があるものの、離婚後の親権者の定めについて争いがある場合には、協議上の離婚しようとする父母が、家庭裁判所に対して、離婚後の親権者を定める旨の審判を求めることができるものとする考え方についてどのように考えるか、というところで御議論いただいたという認識で、おおむねこの部会の中では、そういう手続を設けることでよいのではないかということになったことを踏まえて、記載させていただいたものということになります。   その際にも、申立ての取下げの制限などについての御意見もあり、また本日の会議でも、離婚は成立するものの親権者について争いがある場合についてどのような手続をするのかについては御意見を頂戴しておりますので、それらも踏まえて今後、検討したいと思っております。 ○赤石委員 メインの御提案が引っ込んだ理由というかですね。 ○北村幹事 引っ込んでいなくて、基本的には同じ提案を表現を変えたという理解です。 ○赤石委員 いや、私にすると全然違います。だって共同親権が続くのではない。前回の提案は、一旦離婚が成立し、そこで親権者も決めているわけですよね。 ○北村幹事 いや、ここは親権者の指定に争いがあるので、親権者の指定については裁判所で決める。 ○赤石委員 定め直しの場合。 ○北村幹事 親権者の定め直しのことも議論をしていた、それが部会資料27の1(2)のところで議論をしていた話で、公平な第三者あるいは裁判所とかで確認したもの以外のものについては簡便に親権者の変更をできるようにしませんかという提案もさせていただくとともに、部会資料27の1(3)でそれ以外の手段として、協議上の離婚を先行させる、そして親権者についての争いは裁判所で話し合ってもらうという手続も同時に提案をさせていただいて、部会で御議論いただいているということになるかと思います。 ○赤石委員 でも、順番が入れ替わったわけですよね、推奨版が。 ○北村幹事 いや、推奨版は入れ替わっていなくて、提案するときに条文のような形に並び替えると、こういう形かなと。 ○赤石委員 北村幹事と少し印象が違うのですけれども、そうなのですか。 ○北村幹事 私としてはそういう認識です。むしろ、その簡便な親権者変更については、いろいろ御意見を頂戴しているということもありますので、その親権者変更の具体的な規律についてはどうするのかということについて、(注2)のところでいろいろ細かく記載をさせていただいた、協議の経過等をも考慮してというところに、部会資料27での提案を入れ込んでいるというつもりです。 ○赤石委員 一応、御回答を承りました。 ○北村幹事 11ページの(注1)については、確かにこれまで明らかにしてきてございません。そもそもこの部会でのパブコメについては、第17回会議で、あるいは繰り返し御説明させていただいていたところですけれども、それぞれの意見対立が大きなところでありますので、きちんと懸念事項を聞きたいということで、多数決ではないという形でさせていただいていると。あわせて、法定の義務的なパブコメではなく、任意の手続として、ここでしっかり委員、幹事の方々に議論していただくために、させていただいたというものです。たくさん頂戴したということは本当に有り難いことということで、我々も一生懸命見させていただきました。また、この会場にも御準備させていただいたり、別の日にも委員、幹事の方々、多くの方が本来の時間とは別に時間を取ってきていただいて、見ていただいて、本当に感謝申し上げるところでございます。   そういう中で、我々としては丁寧に整理をさせていただいた。ただ、個人の方についてはどうしても御自身の体験というものをお書きになっているものもあり、あるいはどちらかに賛成とだけお書きのものもあって、そのまま載せるというのはなかなか難しいということもあった、そういう中で、同趣旨のものについては団体の御意見の中に含めさせていただいているということになって、少しずれる御意見については個人として書かせていただいている、それがその比率と合わないではないかという御意見はあるかもしれませんけれども、そういう形で我々としては丁寧に整理をさせていただいたということで、御理解を賜りたいと思ってございます。 ○赤石委員 先ほど言ったように、乙案に賛成の方たちの御意見が丁寧に扱われていない印象があるということをお伝えしておきます。それについては資料を再考していただけたらと思います。つまり、こういう経過でDV被害を受けて、今、非常にコミュニケーションもとれない、とろうとすればいろいろな被害を受ける、そういうことで乙案がよいとする。甲案というのはとても、もうこどもとの暮らしの中で考えられないといった、非常に状況を説明しているような御意見は、掲載されていない、いろいろ口出しされるのが嫌だ、みたいな意見が出されている、のは偏りがあるということをお伝えしておきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。2点、事務当局の方からお答えを頂いたかと思います。1点目ですけれども、赤石委員は少し変わったのではないかとおっしゃっていたかと思いますが、ほかの委員、幹事とも認識を共有しておいた方がいいかと思うのですけれども、今回の資料は、家族法制の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けたたたき台ということで、条文化に向けてどのように整理するのかという観点を事務当局はとっておられると思っております。第2の2というのは、現在の規定でいいますと第819条に規定がございますけれども、この規定をベースにしてこれまでの議論を書き込んでいくとどうなるかということで、お書きになっていると理解しております。そういうことであるために、ここで議論されていたものがこの場所に移っている、ここで議論されたものがここの場所に移っている、といった具合に順序が変わっていると理解をしていただくとよいかと思って伺っておりました。これは民法の先生方には言わずもがなのことですけれども、少し御説明をしておいた方がよいかと思って、付け足しをさせていただきました。   それでは、裁判所の方でお願いを致します。 ○向井幹事 親権者変更の手続がどれぐらい利用されているのかという点について、お答えいたします。概数になりますので、ざっくりした数字ということでお聞きいただければと思いますが、令和4年の親権者の指定又は変更の調停事件の新受件数、新たな申立ての件数は約4,400件、審判事件の申立て件数は約1,300件になっております。今度は終わった方の件数、既済件数については、令和4年の調停事件の既済件数は約4,500件、審判事件の既済件数は約1,400件になっております。   調停事件の既済件数の4,500件の内訳ですけれども、調停成立で終えたものが約2,600件ということになっておりまして、半数以上は調停が成立しているという状態でございます。審判事件の既済件数につきましては、1,400件のうち請求が認容された件数は約600件になっておりまして、却下された件数が約300件、あとは、取下げが約200件、取下げでもないその他の事由が約300件になっておりまして、この約300件については、恐らくですけれども、審判で先に申立てがあったものを調停に付して、調停で手続が終わったために、審判としては認容も却下もせずに終了しているというものが多いのではないかと考えております。   件数としては、以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。今、現行法の下での親権者変更の現状について御説明を頂きました。赤石委員が問題にされている点は、今後、新しい制度を作る、具体的には、親権者変更という形をとって協議による親権者の定め方が適切でなかった場合について対応する、言い換えると、親権者変更が行われるべき場合を新たに設けようと考えているわけなのですが、その場合の数がどうなるのかということは、現在の数からは分からないとしか、多分、言いようがないのだろうと思います。その数字が多くなるということも考えられる。それは、適正な決定が行われなくて、この手続を使って争うという方が多いということになると、数は増えることが考えられます。しかし、そうではなくて、この手続を使うまでもないということであれば、数は増えないということになるのだろうと思います。一番御心配になっているのは、この手続を使う必要がある人たちが使えないかもしれないということかと思っていますが、そういうことができるだけないようなものを考えていくということが必要だろうと思って、伺っておりました。しかし、現状の数値自体は、将来の数値を評価するベースとなる貴重なデータとして、有り難く思います。   ということで、裁判所の方からお答えいただきましたが、御発言もあるということで、先ほどから挙手があると認識しておりますので、続けてお願いを致します。 ○向井幹事 引き続いて、幹事の向井でございます。裁判所からは2点ほど、意見を述べさせていただきます。   一つ目は、まず、第2の2(6)についての意見です。この本文には、裁判所が親権者を父母双方とするか、その一方とするかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係や父母相互間の関係を考慮するものとすると記載されていますけれども、これだけでは、どのような事情があれば親権者を父母双方とするのか、またその一方とするのかということの指針とはならず、審理判断に支障を生じることが懸念されます。   現行法下で親権者を父母の一方に定めるという場合には、必然的に父母間で比較をするというような分かりやすい審理構造になるのに対しまして、親権者を父母双方とするか、その一方とするかを定める場合には、親権者を父母双方とすること、又はその一方とすることと子の利益との関係については、やはり社会の多様な受け止めがあるのではないかと考えております。したがいまして、明確な要件、指針が示されないと、裁判実務が混乱する事態が危惧されるということになります。   この点に関しまして、(注1)にはもう少し具体的な観点が示されておりまして、その内容それ自体については今日、何人かの方から御発言がありましたが、裁判所としては特に中身そのものの賛否について述べることは控えたいと思うのですけれども、やはりこのような形で具体化、明確化を図る方向で検討する必要があると考えております。また、具体化、明確化を図る上では、本文の記載のような抽象的な考慮要素を単に羅列して記載するということですと、どのような事情があればどちらに判断するというような基本的な指針が分からない形になってしまいますので、やはり一定の指針が分かるような形で具体的に記載していただきたいと考えております。   続きまして、2点目は、第2の3の監護者の定めについての意見です。現行法下では離婚後は単独親権となるために、離婚後に親権者とは別に監護者を定めるケースは少なく、実際の事件で多く見られるのは、婚姻中の別居から離婚までの比較的限られた期間において、父母のどちらが子と一緒に暮らすのかという紛争を解決する上で監護者が指定されるというケースでございます。   仮に、離婚後共同親権下において父母のいずれが子と一緒に暮らすのかということが争われる場合に、今回の部会資料を前提にしますと、これを解決する方法としては、従前からある監護者指定のほかに、共同で親権を行う父母間の意見対立がある場合に特定の事項について親権を行う者を定めるという手続、さらには監護の分掌などが考えられますけれども、これらのいずれによるべきかについて、当事者の選択に委ねるのか、また、それぞれの規律に優先関係はあるのかといった点は、当事者の手続選択や裁判所の審理の在り方にも関わるところでありますので、裁判実務が混乱しないように、この辺りは是非整理を図っていただくようにお願いしたいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。最高裁、向井幹事からは2点、御意見を頂きました。1点目は、第2の2(6)及び(注1)についてということで、(6)は基本的な考え方を示し、(注1)で具体的な考慮要素が出ているということだろうと思いますけれども、本文だけでは指針にならないので、(注1)のようなもの、内容がどうなるかというのはともかくとして、このようなものを定める方向で考えていただきたいという御意見でした。それから、3の監護者指定については、現在の監護者指定の使われ方について御指摘があった上で、この監護者指定と他の方策というものの使い分けというのでしょうか、優劣の関係等について整理をしてほしい、混乱のないようにしてほしいという御要望を頂きました。ありがとうございます。 ○柿本委員 柿本でございます。3点ございます。   まず、こどもの安心・安全というのは、監護者の安心・安全があってこそだと思いますので、ここは非常に重要な観点ではないかと思います。そこをしっかりと押さえておいた上で、第1の親子関係に関する基本的な規律でございますが、扶養義務中心、貧困を生まない対策として、中心に据えて考えるべきだと考えます。そこで、青竹幹事以下5名の方から提出いただいた資料中の第2.親であることから生じる義務について、甲案に賛成でございます。   2点目ですが、私もパブリック・コメントとして提出された個人の意見、少数の方の意見などもできる限り尊重して議論を進めていると考えておりますので、パブコメの公開も必要と考えます。   3点目といたしまして、急迫の事情というところ、やはり必要かつ重要な判断のところの具体例というか概念というか、そこは非常に多岐にわたるし、それから個別の事情が及ぶと思いますので、丁寧にしていくべきだと考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。3点御意見いただきました。1点目は第1について、扶養義務中心ということで、大石委員が支持された案のようなものがよいのではないか。それから、2番目はパブコメの公開についての御要望ということで、そして最後、急迫の事情について、やはり検討すべき点があるのではないかという御意見だったかと思います。ありがとうございます。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。では、冒頭は第1に関して意見を申し上げましたので、次に、第2に関して発言をさせていただきます。もう多くの先生方の御指摘と重複する部分もございます。   第2のまず1、親権行使に関する規律に関してということでございます。基本的な方向性は、三巡目の議論、これが形になったと理解しております。多くの先生から、この急迫の事情とは何だと、この辺りを明確にという御指摘が多数あったと思っております。ここに関しては同じ印象を持っておりまして、ここは今回、補足説明付きの資料見ていると、丁寧に補足説明を書いてくれている箇所とそうでない箇所があり、この第2の1に関しては非常に簡易に書かれていて、この辺りを補足説明でもう少しきちんと書いていただきまして、それを基に、要綱案にどう載せていくのかという形で議論を進めるのがよいのではないかと思います。今回、特にパブコメが8,000通も出たということで、この要綱案の取りまとめの資料もかなり国民の関心が高いところかと思っております。そういった観点も踏まえて丁寧に、場所は事務当局にお任せいたしますけれども、御検討いただければというのが1に関してでございます。   続きまして、2の親権者の定めに関してでございます。2点述べさせていただければと思います。   1点目は、裁判所が親権者を定める場合の考慮要素に関してです。ちょうど先ほど裁判所から、私が考えているとのと同じ見解が出たのですけれども、まず、この裁判所が決定する要素として、双方を親権者にできないケース、ここを整理することが先かなと思います。部会資料30では、考慮要素として(6)、具体的に父母と子の関係とか父母相互間の関係などと書いてありますが、これでは判断できないと思います。部会資料30の(注1)に例として子の心身に害悪を及ぼす危険性がある場合等々、要件を書いていただいておりますが、この辺りの要件をきちんと固める、それを固めた上で、要綱案ゴシックでどういう表現で落としていくのか検討を進めれば議論も早まるのではないかと思います。このように考えたのは、最終的には要綱案にする場合、ただし書のような形で書かれるのかなと勝手に想像しておりまして、どこでどのようにゴシック本文で表現していくのかということは検討が必要かと思いますが、要件の明確化という観点で事務当局側で再度御検討いただければというのが、2の親権者に関しての定めのところでございます。   ごめんなさい、あともう1点ありました。(5)に関して意見がありまして、今回、親権者変更の申立権者に、従来の親族に加えて子が追加されたものと理解をしております。これも三巡目の議論、このような要望もありましたので、それが入ってきたものだと思っておりますが、これもゴシックにしか記載がないので、読んだ人から見ると唐突感があるかなと思います。子を追加することによってどういう効果を目指しているのか、この辺りも補足説明で触れていただいた方が分かりよいかなと、こんなふうに感じました。   最後、3、監護者の定めがある場合の親権の行使方法についてということで、1点コメントをさせていただきます。原田委員がおっしゃったのですかね、監護者の定めを一律に要求しないということが、補足説明を見るときちんと書いてあるのですけれども、そもそも監護者を定めなくても良いとの記載が、これもゴシックにありません。最終的にどこで表現するのかというのは事務当局で御検討いただく話になろうかと思いますが、分かりやすさという趣旨で言いますと、例えば注記の中で、監護者の定めを一律に要求しないという前提で、資料30−1を見ただけで分かるようにという方が分かりよいかなと思いました。   私の方からは以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員は第2については、資料の説明の追加ないし整理についての御意見であると承りました。4点ありましたけれども、第2の1でしたか、急迫の事情という点と、それから(注1)の要素の点について、書き方も含めて御意見を頂きました。それから、2(5)の申立権者のところの説明がないのではないかということ、それから、第2の(3)の監護者の定めについても、どういう考え方をとっているかが分かりにくい、こういうような御指摘だったかと思います。ありがとうございます。 ○棚村委員 早稲田大学の棚村です。皆さんの御意見をいろいろと聞かせていただきましたので、私の意見を述べさせていただきたいと思います。   まず、第1の親子関係に関する基本的な規律のところなのですけれども、これについては結論的に言うと、総論的な部分で、非常に重要な部分ではあるのですけれども、各論についての議論を進めながら、決めるのは一番最後でいいのかなということを感じております。   今御提案されているところでは、元々父母の養育の責任とか義務みたいなことを中心として、要するに扶養義務というような形で、具体的な義務の中身を列挙するのか、それとも一般的、抽象的に挙げて、親として様々な形でこどもに対して責任があるということを明確にするという趣旨なのかで大分、規定の立て付けが変わってくると思うのです。しかも、民事基本法としての暮らしの基本法というものに何を落とし込んでいくのがいいだろうかということなので、その辺り、これはスポーツ基本法の部分でも、児童虐待防止法とかの部分でも、正に国が負っている責務、それから地方公共団体とか関係する機関、それから、当事者である親、これが負うのが責務と義務というような形で表現が法文上も使われている場合があるのですが、その辺り、かなり抽象度の高い責務というものと、それから、個別具体的に誰が誰に対してどういう法的な義務を負うのかというレベルとでは、規定ぶりについても大分ニュアンスが変わってくると思うのです。   その辺りのところは整理しながら、一番最後のところでその議論はまとめていくというのが望ましいと考えます。言い換えると、総論的な規定が最終的に各個別規定をどういかすか、関連付けるか、あるいはどういう理念的な意味を持つかということで検討すればいいと思うので、私自身は結論的には、事務当局がまとめておられるように、ある意味では親として、親である以上どういう責任を負うのかということをやはり念頭に置きながら、まずは個別の規定の議論を優先して、親権とか監護とか養育費、親子交流について考えていくというのですか、その際の指針になるものですから、正に落合委員が言うように、法的に親になるかというルールというものと、それから親になった以上どういう責任をどういう形で負っていくのかということを意識しながら議論を進めていく必要があると思います。私たちは法律をやっていると当然、当たり前のこととして一定の法的概念や法的制度を前提にしていたのですけれども、一般の方からすると極めて分かりにくいというのですか、親であるけれども親権を持たない人とか、監護権を持っている人とそうでない親というのが、具体的にどういうような内容の権限を有し責任を負っていくのかということについて難解であると思われます。やはり分かりやすくするためにも、この総論的な、基本的な規律というのは、一般的、抽象的なレベルでいいのか、それとも個別具体的に列挙してかなり明らかにするのかということについては多くの議論が必要だし、この点については最後でいいのではないかと思っております。   それから、こどもの意思についても、池田委員からも再三指摘があるように、理念とか原則というところではやはり非常に重要なことだと思うのです。私自身は総論的なところに規定は一定程度は設けていいと思うのですが、水野委員も再三指摘しているように、ほかの親の責務とか責任ということと同じように、具体的に誰がこどもの意思をきちんと把握して、どういうような形でそれを実現するためにどんな責務、義務、責任を負っていくのかという話になってくると、結構複雑なことを検討しなければいけないという問題があるので、この点についても是非一番最後に、特に親権とか監護をどうするのか、離婚した後の親子関係の在り方をどうするのかという議論を具体的に今させていただいて、関心の高い重要なテーマですので、この規定、第1のところについては一番最後に是非議論を取りまとめてほしいというようなことを思っています。   それから、第2の親権、監護のところで、第2の1の親権行使の方法についてなのですが、これも同じように、現行法の規定ぶりとある意味で大きく変わるところもあるのですが、その連続性ということを考えると、やはり婚姻時の共同行使のときに、婚姻時でも単独でやれることの判断基準とか判断要素を明確化するという意味では、非常に重要なことだと思うのです。ただし、現行民法との連続性ということを考えると、具体的に個別のいろいろな場面を想定して、詳細に列挙した方がルールとして分かりやすいという点はあるのですが、ほかの国を見ていても、非常に個別具体的なルールをめぐって紛争が生じて長期化したり、それから、非常にこどもにとっては決定に時間が掛かってしまうという問題もあって、やはり一般的、抽象的な規定を置きながら、運用で指針や実施要領などで、ガイドライン的に明らかにしていくというやり方があります。この辺りは非常に難しい問題だと思います。原田委員もおっしゃっているように、具体的にこういうような場合には急迫な事情があるとかと言われても、とり方や評価の仕方がいろいろありますし、前にも指摘させていただいたのですけれども、こどもにとって重要ということなのか、それとも父母双方が重要と考えるのかという話で、主観的なレベルと客観的なレベルもあって、なかなかどれがこどもにとって重要ということとか、緊急性とか日常性も境界線の引き方がかなり難しいところがあります。   私は、外国法を見させていただくと、一定程度基準やルールは示すのだけれども、それもかなり一般的、抽象的なもので、あとは個別具体的な事案ごとに、問題ごとに解釈や運用で対応せざるを得ない。時代も社会も変わってくれば、こどもにとって何が重要かということも随分事情が変わってくるので、そういうものを参考にして、補足説明とか、あるいは今後の運用の指針みたいなものを、最高裁が求めているように具体的に示していくというほかないように思います。そのときに、やはり実際に多くのトラブルになって、どういうような解決が望ましいのかという観点から、ある程度絞っていくというのですか、ですから、緊急性とか日常性とか重要性などの指標は示しつつ、必要なことについてはというようなことで、双方が関与するのか、それとも単独でできるのかということについては、一義的で明確な判断要素を示すということはなかなか難しいのではと考えております。前も言いましたけれども、重要なことに共同に関与してほしいとは思うのだけれども、早く決めないといけないという要請の方が非常に強い場合には、重要なことでもやはり片方が決めるべき人を決めておいてやらせる、インパスオーソリティー(Impasse Authority)というのをアメリカはよく使っています。それは、意見の不一致や対立が生じたときに決められないということでこどもに不利益が及んではいけないというようなことで決めさせているわけです。   そういう工夫とかノウハウみたいなものを、既に経験している先進諸国から学びながら、それを示していくというのですか、それを参考にしていくということでやらざるを得ないのではないかと思います。つまり、運用とか条文を変えたらどういう効果が出るかという御質問がよく出るのですけれども、それは、今まで家族法関係の改正に私も相当関わってきたのですけれども、いつも出るのですけれども、なかなか答えが難しい問題です。ですから、その辺りは一般的、抽象的にある程度の拠り所となる判断基準を示しながら、今までのようにそのほか一切の事情みたいなことでやるよりは、ある程度明確な基準を例示的に示して、あとは条文の解釈や運用に任せるということにせざるを得ないのかなと思っています。   それから、第2の2のところで、先ほど赤石委員からも御発言があったと思うのですけれども、離婚の問題と親権、監護の問題を同時に解決できれば一番いいというのがこれまでの立て付けでした。しかしながら、事務当局の御提案にあるように、離婚については合意ができているし、話合いもできるのだけれども、お子さんの親権とか監護で争いが生じてしまって、それがネックになってしまっているという場合に、離婚は認めつつも、前倒しで家庭裁判所が関わってそういうことの判断をしていくとか、そういうような可能性は認めるという案には賛成したいと思います。要するに、離婚と親権・監護の同時一括処理というのが望ましいかもしれませんけれども、切り離して処理する可能性についての今回の御提案というのは私たちも支持してきたところですし、そういう工夫はあってよいのではないかと思っています。   ただ、裁判所からもありましたけれども、結局、紛争解決の際の判断基準や考慮要素をどうするのだとか、こどもの利益のために必要があるときとか、親権者の変更でもそうですけれども、これもある程度、基準なり、原則なり、こういうようなものが指針としてあり得るということを明確に示す必要あると思うのです。もっとも、それを全部個別的、具体的に列挙するということになると、かえってそれをめぐって、オーストラリアの例や経験なんかがそうなのですけれども、細かい規定やルールを置けば置くほどルールがたくさんあればあるほど、それ自身がまた争いの種になって紛争が長期化して、こどものためにならなかったりというような、そういう反省もあると思うのです。   ですから、その辺りのところは諸刃の剣というか、そういうところがあって、ある程度一般的、抽象的に示しつつも個別列挙というのをどこまでできるかというのも、事務当局が御苦労されているところだと思います。特に原田委員のところで、積極的要素をどれくらい入れられるかというのも非常に重要だと思いますし、こどものためにプラスになるという要素を入れることにも賛成するのですが、他方で、武田委員がおっしゃったように、どちらかというと海外は、マイナス要素になるものについてはできるだけ排除して、それはなくしたいという発想でやる場合が結構見られます。たとえば、こどもの心身に有害な言動とか、こういうのが出てくるのは、これはハーグ条約のケースですが、返還の事由というのは示しておいて、返還拒否事由というものも提示して、マイナスになるものの主張立証の責任を誰が負うかということですけれども、そちらを判断する方が、どちらかというと比較的、こどもの福祉のためにプラスになる、ためになるというのはなかなか難しくて、明らかにマイナスになってくるとか問題が出てくるということを挙げてチェックする例が結構あるのではないかと思います。この辺りも今後の、立法技術的な側面からの具体的な規律については御検討いただく必要があると思われます。   それから、3番目の監護者の定めについてなのですけれども、これについても私自身は、監護者を定めるというのはパッケージで一応定める、これは落合委員が親権者、そして監護者というのは何で定める必要があるかというと、結局、親であるからどういう地位にあるか、何ができるかという話について、ある程度、親権という概念やパッケージとか、今までは監護という概念やパッケージを使って、権限の分担とか責任の所在みたいなものを明らかにしてきたというのを法律はやってきたのです。ところが、それを全部シャッフルしてもう一回個別的に見直すとか定めるということも悪くはないのですけれども、そうなると、この問題についてはこの親がこういう形でこういう関与ができるとかということが分かりにくくなってしまいます。また、それを守らなかったときにはこうなる、ならないという、先ほどの議論もありましたけれども、その辺りがケースバイケースで非常に複雑になってくるわけです。その辺りをシンプルにして、シンプル・イズ・ベストではないですけれども、分かりやすくするための一つの知恵が、親権とか監護とかというパッケージの概念や地位だと思っているのです。そうなると、これまではあまり明らかでなかったものを明文化するという役割にはなるのですけれども、この監護者の定めを置いた場合に、親としてどういう責任を持っているのかということを明確化する意味では、かなりこれは意味があるのではないかと考えています。   特に、私は(注1)のところで、そういう監護というものについて、親が果たす場合にはこういうことを果たすのだけれども、親が果たせない場合の第三者の監護とか面会交流の議論というのは、ここでする必要はないと思うのですけれども、今後やはりその議論は引き続きやってもらった方がいいのではないかと考えています。なぜかというと、親が全部できるという場合もありますけれども、親がそういう大事なこどものことの責任を負ったり、適切にその権限を行使できない場合に、誰がやるのかということを決めておかないと、いきなり国がやったり、いきなり社会が分担するとかという話にはならないので、近い人でそれに代わり得る人についても、ほかの国は議論して明確に規定を設けていますから、日本もやはりそれの議論はすべきだと思うのです。ただ、第三者の監護者指定の問題には難しい問題がいろいろあります。親でない人が負う場合の基準とか内容とかいろいろなもので、親と異なる部分が出てくるのかどうかとか、そういうことを考えると、これも一番最後で結構ですけれども、第1の規律と同じように、第三者の監護とか面会交流、親子交流の在り方についても、こどもの意思についてもそうなのですけれども、ここで議論を閉じてしまわず、拙速に要らないという結論を出さないで、引き続き一番最後の最後まで、こどものために何をやるべきかということを今議論しているわけですから、こどものために必要なことについては是非取り上げていただきたいと思います。   少し長くなりましたが、以上、私は、民法を研究する者として、基本的に事務局が御提案している方向性については賛成です。 ○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員から最後に、基本的にこの提案の方向に賛成だという御意見を頂きましたが、個別にはいろいろな御指摘を頂きました。大きく分けると二つだったのか思いますが、一つは議論の順序に関わることで、第1の問題は重要な問題であるけれども、最後に議論する、後で議論するというのがいいのではないかということ。後で議論するときには、併せて第三者の監護の問題もやっていただきたいというお話がありました。それからもう一つは、判断基準というものをどのくらい明確化するかということについて、明確化のメリット、デメリットということについての御指摘があったと受け止めました。先ほどから問題になっている急迫の事情というのは、確かに明確化は一定程度まで必要なのだけれども、やりすぎるとかえって弊害が生ずるという御指摘が一方でありました。他方、3の監護者のところについては、ある程度こういったことを書き込んでおいた方がいいのではないかということで、どの辺りでバランスをとるのかということを考えるべきだという御指摘として承りました。ありがとうございます。 ○久保野幹事 幹事の久保野です。第2について3点、意見を申し述べさせていただきます。   第2の1、2について、方向性は賛成でございまして、そして、2(1)につき、審判又は調停の申立てを求めることについて、実際上の課題について赤石委員から御指摘もございましたけれども、(1)は維持する方がよいと考えております。その意見の背景には、親権の性質の理解がございまして、5名での連名文書の3ページに、親権の権利性について、独立した主体である子の利益のために付託された権利であるという箇所を先ほどどなたかに引用いただきましたけれども、そのような性質だということを考えますと、本来、(2)のように、親権者が定めればそれに従うですとか、あるいは合意できていれば共同親権としてよいといったようなことは、理論的には別の設計もあり得るようなものだと思っております。現行法を踏まえての延長上という改正ということで(2)や合意の話は出ているとは理解しておりますけれども、先ほど申したような親権の性質からしますと、(1)のような設計で、協議が難しいようなときに、むしろ積極的に調停、審判につながっていくような設計というのが望ましいという見方もあり得ると思います。   2点目が、議論になっております補足資料の(注1)の基準についてですけれども、池田委員から御指摘があったことと関わりまして、親権喪失の事由がどうなっているかということと関連づけての検討も必要だと思っております。これも連名文書の21ページにその趣旨の指摘があるかと思いますけれども、親権喪失と同じように考えるということもあり得るでしょうが、それとは段階の違う判断だということで、それより緩くということもあり得る、そのような観点からの検討が有益なのではないかと思います。   最後に、3点目ですけれども、3の方の監護者の定め等に係る部分ですが、監護の分掌、分担につきましては、第三者との関係での効果も含めて検討を進めて明確にしていけるかですとか、裁判所の御指摘も踏まえますと、裁判所の実務としても必ずしもこれまで積み重ねのないこの分掌というのをどう考えていくかということについては、なお課題が大きいのだと思っておりますけれども、仮にその方向で進めていく場合には、今度、この論点といいますのは、先ほどの概念区分とも関係しまして、親権の行使態様についてのルールという、フランスでは存在しているような、そのようなルールと重なる面がより明瞭に見えてくるようにも思いまして、そうだとしますと、財産管理面の分掌があり得ないかという問題も出てくるのかなという印象を持っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。久保野幹事からは3点、御意見を頂きました。2(1)については、調停、審判に積極的に委ねるという考え方もあり得るのではないかということで、これを維持した方がいいのではないかということ、それから(注1)について、要素を挙げるに当たっては親権喪失事由との対比ということを考える必要があるのではないかということ、3番目の分掌については、少し慎重に考える必要があるのではないかという御意見だったかと思いますが、これを導入するにあたっては、考えなければいけないことというのは幾つかあるのではないかという御指摘を頂いたと理解を致しました。 ○水野委員 委員の水野でございます。少し前の赤石委員の御発言で、パブコメの扱いについて御不満を示されましたので、おそらく一番古くからこの法制審に携わっている者の一人として、法制審におけるパブコメの扱い方についてだけ、少しだけ過去の経験と意見を申し上げようと思います。   パブコメは多数決で、つまり選挙のような形で募集するものではありません。過去の法制審でも、パブコメで示された賛否の件数を、具体的に示して参考にしたことはなかったと思います。飽くまでも部会における議論の参考とする上で内容を吟味するものですので、事務当局が非常に分厚くまとめてくださったので、これで十分ではないかと思います。一応、我々各委員も生の資料を全部拝見できるようになっておりまして、私も少し見てみたのですけれども、中には、個人の意見は特に、趣旨や文章もよく分からないようなものもたくさんありました。それらを全部丁寧に読み込んで、これだけの資料にまとめていただいた事務局の御尽力は大変なものだと敬服しております。   多数決という形になるとむしろとても危険なことが起こると思います。経済力がある人がパブコメ依頼を組織的に行ってしまうことすら起こりかねません。飽くまでも我々は中身を我々は議論の参考にするのがパブコメの利用方法だと思います。件数にこだわられるのは、将来的にはむしろ赤石委員が危惧される方向に行ってしまいかねないのではないでしょうか。貧しい母子家庭が財力に物を言わせてパブコメをたくさん投稿させることは難しいでしょう。飽くまでも我々はパブコメの中身について審議するという対応で、これまでの法制審もやっていまいりましたし、今後もその方がよいと思います。それが些細な付け足しでございます。   もう1点、今議論になっている(注1)のところです。先ほどの裁判所からの御意見でこの(注1)を挙げられて、明確な基準が欲しいという御発言を伺うにつけても、こどもの意見表明権を書くと危ないという思いを強くいたしました。我々の国が抱えている一番の問題は、育児支援が圧倒的に足りないということなのだと思います。落合委員と御一緒にフランスのパリで調査をしましたけれども、児童精神科医が幼稚園を定期的に回って、こどもに問題が生じているかもしれないということになりますと、親の育て方を詳細にパリ市が調査をして、そして、これは少し問題があるということになると、ケースワーカーを派遣して、育て方を矯正します。親が派遣を承知してくれると契約ベースでやるのですが、俺の育て方のどこが悪いと拒絶すると、直ちに検事局へ連絡が行って、検事が親権制限を提訴します。少年事件担当判事が親や関係者を呼んで丁寧に調べて、これはやはり親権制限が必要だ、強制的にケースワーカーを付けなければいけないということになると親権制限判決を下すのですが、それが年間約10万件近く下りています。そして、先ほど久保野幹事が触れられました日本の親権喪失ですが、親権喪失件数は、年間2桁で、親権停止件数がやっと3桁です。そして、日本の人口はフランスの倍ですからフランスと同じ水準なら年間20万件近くの判決が出ているはずです。児童精神科医が町なかの幼稚園をそうやって回れるという育児支援をやっている国と比べますと、日本では相当の問題家庭が暗数になっているはずです。家裁に表れるケースは、ごくごく一部でしょう。児童相談所もパンクしています。一時保護に家裁の許可がかかることになりましたが、それも家裁が対応しきれるのか、心配です。児童精神科医の数も足りないでしょう。家裁の審査で、まんべんなく児童精神科医がついてこどもの意見を的確に聴取することすらなかなか難しいというのが現状です。こどもが何を考えて何を欲しているかは、丁寧に聴取しないといけませんが、それを尋ねることの危険性も大きく、こどもにはその答え故に決まったという認識を持たせてはなりません。   そういう現状の中で、この問題をどうやって解決するかというのは、非常に頭の痛いところです。先ほど原田委員がDVは児童虐待だと言われましたけれども、本当にそれはもうコンセンサスになっていることだと思います。きちんとDV被害者を救済できるかなど、そういうことが確保できるように実務を設計する必要があります。その手掛かりになりそうなことを(注1)の内容で書き込む工夫は考えるべきだろうと思いますけれども、我々の社会の構造的な問題が背景にありますので、この場面だけで画期的に全てが解決するものではないのだという難問を共有しつつ、お考えいただければと思います。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。水野委員から、パブコメについての御意見と、それから、ずっと話題になっております(注1)の位置づけ等について御意見を頂きました。   このあと佐野幹事ですね。今の点についてでしょうか、池田委員、手短にお願いします。 ○池田委員 今、水野委員が(注1)で、こどもの意見表明をここで入れることが危険だという御指摘があったのですが、それはお聞きしていると、今の家裁実務に児童精神科医が関わっておらず、家裁調査官が専らその任を担っているということの日本の家裁システムに対する御批判ということになるのでしょうか。 ○水野委員 児童精神科医が入れば解決と考えているわけでもありませんし、現在の実務の状況について、私はよく存じ上げません。家裁の調査官の調査がどのように行われているかということについても、あまり実務を存じ上げないのですが、条文に書き込むと、こどもの意見で決まることになってしまうことを危惧します。ともかく欧米の文献を見ますと、こどもの意見を聴くことは非常に慎重にしなくてはならないと書いてあります。児童精神科医のようなプロフェッショナルが、そのこどもの様々な事情を調べつつ、その聴取のときにはお父さんとお母さんのどちらを選ぶかという端的な質問は非常に残酷な質問になり得るので気を付けなくてはならない。でも、こどもがどちらを慕っているか、何を考えているかというのは十分に聴かなくてはならない、でもそれで決まったと認識させてはならないということを文献で読んでおります。そして、家裁の調査官が今、現場でどのようなことをしていらっしゃるかは、申し訳ありません、私は実務に疎いので、よく存じ上げないのですが、児童精神科医のようなプロフェッショナルが非常に注意深くやらなくてはならない作業だという認識を持っておりまして、その作業水準は現在の家裁の体制では、恐らく難しいだろうと思っております。 ○池田委員 恐らく家庭裁判所の方からは異論があるのではないかと思いますけれども、家裁のこどもの意向の聴き取り、あるいは心情調査等について、家庭裁判所の方からもし補足があれば、次回にでも伺えればと思いますが。 ○大村部会長 ありがとうございます。今の点は、もし何か裁判所の方でありましたら、次回に補足を頂きたいと思います。   終了時間が近付いているのですが、佐野幹事のほかにあとどのくらい、御発言がありましょうか。それによって、この先どうするかを考えたいと思うのですけれども、佐野幹事と、赤石委員と、原田委員と、落合委員、それから青竹幹事ですか。   それでは、時間の関係があるので、今日どうしても意見を述べたいという方に御発言を頂いて、あとは次回に継続して伺うということにさせていただきたいと思いますが、そういうことで、今日発言したいという方は。 ○原田委員 私、いろいろ言いたいのですけれども、その一つとして、次回の議論に影響すると思うのですけれども、濫用の申立ての関係で、今、調停に付さないとか、書類を相手に送付しないとかいう条文があるということが書いてあるのですけれども、実際そのような取扱いがどのくらいされているのかということを次回お聞きしたいと思って、そこだけは少し、今日言っておきたいと思いました。 ○大村部会長 分かりました。それは事務当局の方で裁判所と調整して、お答えができるかどうかを検討したいと思います。 ○落合委員 ごく短くなのですけれども、水野委員がおっしゃっていた、一緒に調査したフランスの例の少し補足です。私は児童判事の方と直接にお話ししたのですけれども、そのときに私は、よくこどもの声を聴くというのがむしろ非常に印象的でした。判事であるその方が直接にこどもから聴くという話が非常に印象的で、何歳ぐらいからのこどもに聴くのですかと言ったら、どんなに小さくても、本当に赤ちゃんでも、考えていることはよく見ていれば伝わりますよというようなことをおっしゃっていて、そういえばそういうものかと思わされました。ですから、こどもの意見を聴かないということではなかったのです。判事その人が非常によく聴くというのがむしろ印象的でしたということを、ただ、付け加えたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○赤石委員 手短に。 ○大村部会長 赤石委員。それから、佐野幹事はずっと手を挙げておられたけれども、次回回しでよろしいですか。 ○佐野幹事 次回で、はい。 ○大村部会長 すみません。では、赤石委員。 ○赤石委員 すみません、私も少し次回にお願いしたいので、こども家庭庁さんも参加されていらっしゃると思いますので、この法制審議会で議論されているこどもの支援のところで横串を刺していただくのがこども家庭庁さんのお仕事だと思いますので、そこについて、どういう支援がここで関わっているのかというのは一度、御意見を聞きたいと思います。先ほど池田委員もおっしゃっていたかと思うのですけれども、お願いしたいと思います。 ○大村部会長 それも事務当局の方で擦り合わせをしていただいて、ここでの審議との関係でどんな形で御意見を伺うのがよいかということを調整していただくということで、お願いをしたいと思います。   ほかは、今日は、よろしいでしょうか。   それでは、まだ御発言があるということなので、第1、第2については次回に持ち越して、御意見を伺いたいと思っております。   ということで、もう時間になりましたので、本日はここまでということにさせていただきたいと思います。   次回のスケジュール等について、事務当局の方から御説明を頂きます。 ○北村幹事 事務当局です。次回の会議ですけれども、令和5年10月3日火曜日、午後1時30分から午後5時30分までで開催したいと思います。場所は改めて御連絡いたします。   次回会議は今、部会長の方で御発言いただきましたとおり、部会資料30−1のうち本日の積み残し及び残りの部分について御議論いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 すみません、私の進行不手際で中途半端なところで終わりましたけれども、大事なところですので、次回も引き続き皆さんの御意見を伺って、先に進みたいと思います。   それでは、本日の法制審議会家族法制部会第30回会議はこれで閉会ということにさせていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。閉会を致します。 −了−