法制審議会 商法(船荷証券等関係)部会 第11回会議 議事録 第1 日 時  令和5年8月30日(水)自 午後1時28分                     至 午後4時35分 第2 場 所  法務省20階 第一会議室 第3 議 題  船荷証券に関する規定等の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(1) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○藤田部会長 全ての方がおそろいのようですので、まだ1、2分あるのですが、始めさせていただいてよろしいでしょうか。   それでは、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会の第11回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は竹内委員、家原幹事、松井幹事は御欠席と伺っております。北澤委員、洲崎委員、松井委員、山口委員、久保田幹事、後藤幹事、笹岡幹事、竹林幹事はウェブで参加されると伺っております。どうぞよろしくお願いいたします。   まず、前回に引き続き、本日はウェブ会議の方法を併用して議事を進めたいと思いますので、ウェブ会議に関する注意事項を事務当局に説明していただきます。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。前回までの部会と同様のお願いとなりますが、念のため改めて御案内をさせていただければと存じます。   まず、ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては、御発言される際を除き、マイク機能をオフにしていただきますよう、御協力をお願い申し上げます。御質問がある場合や審議において御発言される場合は、画面に表示されている手を挙げる機能をお使いいただければと存じます。   なお、会議室での御参加、ウェブ会議での御参加を問わず、御発言の際にはお名前をおっしゃってから発言されるようお願い申し上げます。ウェブ会議の方法で出席されている方々にはこちらの会議室の様子が伝わりにくいため、会議室にお集まりの方々におかれましては特に御留意を頂ければと存じます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   次に、本日の審議に入ります前に配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。配布資料について御説明いたします。今回配布させていただきました資料は、部会資料11「船荷証券に関する規定等の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(1)」の1点でございます。これは事務当局で作成したものでございますので、後ほどの審議の中で事務当局から説明をさせていただきたいと存じます。   配布資料の説明は以上でございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。   まず、部会資料11の第1について、事務当局から御説明をお願いいたします。 ○中村(謙)関係官 それでは、法務省の中村の方から、今回の部会資料の第1について説明をさせていただきます。   第1は、前回の部会の最後にも若干の問題提起をさせていただきました点になりまして、まず、電子船荷証券記録としての効力を有する電磁的記録をどのように特定・識別すべきか、2点目として、特定・識別された電子船荷証券記録と特定の主体、すなわち船荷証券の所持人と同様の法律関係にある者をどのようにひもづけるか、そして3点目といたしまして、それらの点を前提に、電子船荷証券記録について、どのような措置がとられたときに、船荷証券の交付又は引渡しに相当する法律上の効果を認めるかという3点について、改めて御審議をお願いするものとなります。   まず、1点目の電子船荷証券記録の特定・識別の問題でございますが、中間試案では電子船荷証券記録の要件の一つとして、「電子船荷証券記録上の権利を有することを証する唯一の記録として特定されたもの」、という技術的要件を求めることとしておりましたが、この点につきましては、このような規定のみでは、具体的にいかなる方法又は措置によってその特定が図られるのかが必ずしも明らかにならず、具体的な当てはめが困難なのではないかといった指摘もあったところでございます。   この点、MLETRでは、電磁的記録は有体物である紙とは異なり完全な複製が可能であり、そのような複製を技術的に完全に予防することはできない場合があるということを前提に、電子的移転可能記録の要件の一つとして、その電子的記録が電子的移転可能記録であることを識別することについて信頼できる手法がとられていることが求められているところでございますが、そのための具体的な手法の内容については特段定めが置かれておりません。これは、恐らくは技術的中立性の観点から、手法についてあえて具体的な定めを置かず、結果としてそのような機能を持つ信頼できる手法があれば足りるといったような考えに基づいて抽象的に定めを置いていると思われるところでございまして、今回の立法におきましても、こうした技術的中立性の要請を満たすということは必要になってくるかとは思われますが、そうはいえども、もう少し法規範としての具体性を備えた規律を検討していく必要があるのではないかといった点が現状の課題であると認識しております。   具体的には、そもそもこの電磁的記録というものについて複製をすることができないという措置がとり得るのか、想定され得るものなのかどうか、そういった措置の実施が難しいとすれば、理論的には全く同一内容の電磁的記録が複数登場し得るということが前提となりますため、その場合でも、この特定・識別のための具体的な方法は、技術的中立性の要請を満たしつつ将来の科学技術の発展等に柔軟に対応するために、法律で定めるのではなく、省令に委任することが考えられないか、仮に省令に委任する場合には、省令レベルで具体的にどういった形での特定・識別の方法があり得るのか、こういった辺りについて皆様の御意見を伺いたく存じます。   2点目といたしまして、船荷証券の占有・所持又は所持人に相当する概念でございます。こちらは中間試案ではMLETRに倣い、「支配」という概念を導入し、電子船荷証券記録を支配する者を船荷証券の所持人に相当する者と構成する考え方が示されていたところでございますが、前回の部会でも議論があったように、この支配の内容について法律上の定義を設けないといった考え方でしたり、定義を置くとしても、「当該電子船荷証券記録を排他的に利用することができる状態」といったような定義を置くような場合には、やはりそれだけでは新たな法律上の概念である「支配」の内容が不明確でございまして、具体的な当てはめが困難なのではないかといった指摘があったところでございます。   そこで、電子船荷証券記録の実際の利用実態等も踏まえつつ、占有又は所持に代わる概念として、支配について、より適切な定義が考えられないか、あるいは支配という言葉ではなくて、占有又は所持に代わる概念として、例えば「帰属」といったような既存の法概念を流用するようなことは考えられないか、そういった辺りにつきまして御審議をお願いできればと考えております。   最後に、船荷証券の交付又は引渡しに相当する概念でございます。中間試案では支配概念の導入を前提といたしまして、支配の移転を、「電子船荷証券記録の支配を他の者に移転する措置であって、当該他の者に当該電子管理証券記録の支配が移転した時点で当該電子船荷証券記録の支配を移転した者が当該電子船荷証券記録の支配を失うもの」という形で定義いたしまして、当該概念を船荷証券の交付又は引渡しに相当するものと整理してきたところでございますが、この点についてもやはり先ほど御説明させていただいた特定・識別性でしたり、支配の点と同様の問題が当てはまり得ると考えております。   この船荷証券の交付又は引渡しに相当する概念の話は、前提として、シンギュラリティーに関する規律をどうするかでしたり、船荷証券の占有・所持に相当する概念をどう構成するかによって直接影響を受けるところでございますが、それらの点と併せて、何かこの交付、引渡しに相当する概念についても法規範としての具体性をより備えたような方向性が考えられないか、そういった辺りについて皆様の御意見をお伺いしたいと考えております。   簡単ではございますが、第1についての事務当局からの説明は以上となります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   今、事務当局から部会資料11の第1について御説明がありました。この点について、どなたからでも結構ですので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いします。 ○池山委員 池山でございます。いつも最初に発言の機会を頂戴して、ありがとうございます。今御指摘があった論点は二つないし三つということでした。いずれもかなり理論的な問題、あるいは法制上の問題でもあり、実務家でもあり、かつ業界団体の推薦委員でもある私がどこまで言うのが適切かという問題はあると認識しております。その上でですが、やはり是非議論を重ねていただくために、議論の取っ掛かりとして、感想めいた話ですが、若干申し上げたいと思います。   まず、1点目の電子船荷証券の特定・識別の問題、あるいは、この電子船荷証券記録上の権利を有することを証する唯一の記録として特定するという技術的要件について、どういう形で特定すればよいのか、技術的要件が曖昧だという点でございます。   この点については確かに、どうやって技術的に当該電子船荷証券記録が唯一の原本なのかということを特定するというのは、どう申し上げたらいいのでしょうか、技術の問題として、どうやってそれがされているのかというのは我々にはよく分からないのですけれども、技術的にその特定性をきちんと説明することが難しいという問題と、法的にその技術の内容をきちんと書くべきだという内容は、違うのではないかという印象を持っております。   少し比喩で申し上げますと、昨今話題のNFTアート、あるいはデジタルアートみたいなものがありますと。それはデジタルアートで唯一の原本性というのが確保されていて、それで値段が付くと。実際は、そのデジタルアートがなぜ唯一の原本なのか、それは技術的な裏付けがあるのでしょうけれども、その中身は分からないわけですよね、素人には、少なくとも私は分かりません。でも、だからといって、NFTアートがNFTアートたるために、どういうものをNFTアートというのかという、その技術の中身を必ずしも書く必要はなくて、要は技術的に唯一の原本性が確認できる技術が使われていると、やや同義反復ですけれども、もうそれで十分なのではないかという印象を持っています。   くどくど申しますけれども、技術的な特定の方法が難しいということと、法的にどういう技術を使えばいいか書かなければいけないということは、少し違うのではないかということです。   それに関連して、さはさりながら、やはり法制的には何か書いた方がいいということで、この部会資料では一つの試案として、複製をすることができない措置がとられている場合と、とられていない場合とに分けて論じておられます。これについても実は若干抵抗があって、複製をすることができない措置がとられていない電子B/Lなんていうのはあり得ないと思います。いわゆる原本と区別されたコピーを作ることができる措置は、どれもされていると思うのですけれども、ここで問題なのは、原本性が区別できないような、紙でいえばオリジナルの原本が1通、2通、3通あるような意味での複製、それができないような措置がとられていない電子B/Lというのはないのだと思います。   問題は、そういう措置をとっているつもりでも、ハッカーなどが実際上その技術を破って、本当に原本性が区別できないもう一つの原本を作って流通させてしまうかもしれないと、その技術が破られてしまうかもしれないということはあり得るのだと思いますけれども、取りあえずシステム側としては、およそ原本が作り放題なシステムというのはあり得なくて、一応作れないような措置をとっていると。   そこで求められることは、そういう措置をしているつもりだけれども、実際はハッカーによって、あるいは悪意のある人によって、原本性が区別できないもう一つの原本ができてしまうかもしれない、そういうことがないようにしてくださいと、そういうことがないようなシステムであるべきだという議論に収束して、それは結局は、原本として唯一特定された船荷証券を見いだすことができるということについても信頼性のある措置をとりなさいということでしかないと。その信頼性のある措置の中身というのは、正に技術的な内容であって、それを実際書き込むというのはかなり無理があるのかなということを感じております。   それと、もう一つの論点である、支配という概念はやはり法制的に問題が多いということに対して、ほかに既存の法概念で代替することができないかということで、一つのアイデアとして帰属という言葉を提案しておられます。恐らく実務の側からすると、これは正に専ら法制の問題であって、こういう場で言うと、余りにもざっくばらんすぎるかもしれませんけれども、恐らく実務の人には、支配なら駄目で帰属ならいいというのは意味が分からないのです。端的に言うと、帰属なら先例があるから法制的にもぴたっとはまるというのであれば、それで結構ですという話に恐らくなるかなと思っております。   最後の3点目の移転のところも、今までは支配の移転といっていたのを、今後は帰属の移転というのですねというふうな整理で行けるのかなと。少しこの2点目、3点目については、乱暴すぎるかもしれないですけれども、印象としてはそう思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何か御返答がございましたら、お願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございます。まず、特定性のところで、それ以外のところもそうかと思うのですけれども、技術の中身と、法律としてどこまで具体的に書き込むかというところというのは、いろいろ違うところがあるのではないかと、こういう御指摘が一番大きな、根幹的なところで頂いたのかなとは思っております。   我々もそこが非常に難しいところだとは思っておりまして、もちろん技術の中身を事細かに書かなければいけない、そういう問題意識に必ずしも立っているわけではなく、ただ他方で、何か特定できることというだけではなかなか法規範としての明確性というものがないのではないかというところは、ある程度やはり真摯に考えていかなければいけないところで、かといって技術を細かく書くというところも余りそぐわないと。そんなところで、どういう形でうまく条文化できるのかというところが非常に頭を悩ませているところでございまして、そこは専ら法制上の問題というところが多分にあるのかなとは思いつつも、技術的中立性なり、そういったところも意識してやっていかなければいけないところでございますので、こういった検討をさせていただいているところでございまして、背景となる問題意識は基本的に同じものを持っているのかなと思ってございます。   それから、二つ目に御指摘いただきました、複製することができない措置の意味なのですけれども、我々の方で考えていたのは、要するにもう電磁的記録として全くコピーができない、こういう技術的な観点から書かせていただいているところでありまして、例えば、システム上これを本物とします、みたいな形で多分運用していくことが多いのかなという感じはしておりますけれども、そういったものでも記録自体はコピーされて複数作られるということはあり得るとは思いますけれども、ここで複製することができない措置といっているのは、正にそれもできずに、もう記録として唯一これしかない、現状そういった技術は使われていないとは思いますけれども、もしそういうものが使われていれば、もうそれだけでいいのではないかと。   ただ、恐らく現実的にはそういった技術というのはまだ現状は用いられていないと思いますので、そういったものについては、例えばシステム上これが本物ですというのが分かるとか、そういった形でやっていくというようなところをイメージして、一応の、試案というほどの段階では現時点ではございませんけれども、そんな形で頭の体操的な形で資料を書かせていただいているというところでございます。   最後に御指摘いただきました支配のところについても、専ら法制上の問題だという御指摘を頂きました。我々も恐らくそうなのだろうとは思うところでありますけれども、MLETRとの関係で、いろいろ国際的な見え方なりも含め、単純に我々として、法制上の問題だけですので我々にお任せくださいということを言うにははばかられるとは思っておりますので、いろいろ考えながらも、この部会で適宜相談させていただきたいと思っているところでございます。   差し当たっては以上でございます。 ○藤田部会長 池山委員、よろしいですか。 ○池山委員 よろしいのですが、今の回答に関して質問をさせていただいていいですか。   聞いていて少し混乱しそうになったのは、この部会資料にいう複製の意味が、やはり混乱してきたのですけれども、複製というのは、原本性が確保された複製のことを、やはり意味するのですよね。つまり、純然たるコピーも複製に入るのですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。まだ明確に我々の中でも整理はできていないのですけれども、原本としてこれしかないというものが、もう本当に全くコピーができないということであれば、それは複製することができないということにはなろうかと思いますけれども、ただ、実際、電磁的記録そのものを技術的にコピーできない状態というのは、多分とられていないのではないかという感じがしておりまして、そうなると結局、何が本物かということは、やはりシステムとかに入れてみないと分からないということであれば、ここでいうところの複製することができない措置には当たらなくて、部会資料3ページでいうところで申しますと、Aの方に当たるという形に整理できるのではないかと思っているところでございますが、すみません、伝わりましたでしょうか。 ○池山委員 すみません、むしろ私の問題意識を伝えた方がいいかと思うのですけれども、現にある規約型のシステムというのでしょうか、においても、例えば、ある段階での支配をする者が、あえて使いますが、ルール上、ポゼッサーとされた者が、移転して支配者でなくなった後であっても、当時自分がこの電子的船荷証券記録を持っていたという形で、そのデータを保持することは、私はできると理解しているのです。ただ、それはもう原本ではあり得ないと。その移した段階で、そのデータ自体はコピーであるということが必ず記録された形のデータしか残らないし、例えばプリントアウトしても、プリントアウトしたら必ずコピーというのが出てくると。それは、紙のB/Lでいうと、紙のB/Lをきれいにカラーコピーすることはできるのだけれども、ペンで書いてある署名欄自身は、やはりどこまでいってもコピーでしかないと、その人の署名自体を再現することはできないと。それをやってしまったら、むしろ単に原本の偽造になってしまうと。   それと同じような意味で、データとして、その支配を譲渡した後でも、自分たちの記録としては必要ですから、あるいは、例えば最後の所持人がサレンダーした後、よく考えたら、これは損害賠償請求をせんといかんと、貨物クレームをせんといかんというときには、最後の所持人でしたということを立証する必要があるわけで、かつて所持人であったという意味でのデータ的な原本は必ずあると。でも、それはコピーだということが、データ的に原本ではない、データは必ずあるけれども、必ずコピーだということが明確になると。そういうものは幾らでも作れるという、ただし本当の原本、紙でいうと2通目、3通目に当たるような本当の意味での原本が作れるものは、それはないと思うし、あってはならないだろうと。そうすると、例の通数の議論だって出てきかねないわけで、そのことと、でも、技術を悪用する人がいて、本当の原本、第二の原本ができてしまう、それを防げということは違う問題だと理解をしているのです。   少し議論がかみ合っていないかもしれないですが、私が複製の議論をする前提は、今のような区別をした上で、原本性が区別できない複製、それはみんなできないようになっているはずだと、これは逆に思い込みかもしれませんけれども、そう理解しているのです。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。池山委員の問題意識はようやく理解することができまして、まず、明らかにコピーとして分かるものというものができたとしても、それはここでいう複製ではないという理解でいいのかなと思っております。飽くまでも複製を問題にしているのは、原本としての様相を呈するようなものとしてコピーが作れるかどうかというところを考えておりますので、例えば、もうコピーとして中身を新たなものを作るというようなことだろうと思いますので、それはここでいう複製に当たらない、こういう理解でいいのかなとは思っております。   現状のシステムなりを考えたときに、池山委員の御認識では、恐らく原本性のあるものを複製することなどできないようになっているのではないかと、こういう御指摘だろうと思っておりますけれども、それが本当に、例えばシステム管理者がいまして、そこのサーバーの中に何らかのデータが入っているということが多分、一般的には想定されるのでしょうけれども、そこのデータというのは本当に複製禁止になっているのかどうかというところは、実はよく分からないところがあって、事実上誰かが入り込んでいって盗むということが難しい状態ではあるかもしれませんけれども、コピー自体は実はとろうと思えばとれると、そういうようなものであったりしますと、それは複製は一応、可能という形になってしまうのではないかと思いますので、そうすると、ここでいう複製することができない措置という形ではなくて、むしろそれ以外の方法として特定性が認められる場合のカテゴリーに当たってくるのかなという感じがしているところでございます。   ただ、ここら辺りは実際、今、池山委員の方で想定されているのは、多分、システム管理者がしっかりいて、そのシステム管理者がもうデータを一元的に管理していると、こういう場合を主に念頭に置かれているとは思いますけれども、それ以外に様々な、例えばブロックチェーンを使ったような場合でありましたり、そういったことを考えていきますと、こういうカテゴリーというのもあり得るのかなという感じはしているところでございます。   差し当たっては以上でございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。3ページに、確かに複製という言葉がやや特殊な意味合いで使われていることから起きている問題で、読む人によってイメージが違う可能性があって、それが少し分かりにくくしているのかもしれません。例えば、3ページの4行目を見ますと、全く同じ内容のものが複数作成されることがあると書かれているのですが、池山委員の元々の読み方で行くと、最終的にどちらがオリジナルか識別できるのであれば、全く同じものが複数作られているわけではないのではないかと読むことになると思います。識別できるなら、それは複製なのですかというわけですけれども、オリジナルがどちらか分からないようなものを複数作成できることだけを、ここで複製と必ずしも呼んでいるわけではないらしいということが、今の対話で明らかになったと思います。将来仮にこの概念に基づいて要綱を作ったりするとすれば、この辺りが誤解のないように、きっちり定義するなり、用語法を注意するなりしていただく必要があるかとは思いますけれども、差し当たりは、いま事務当局から御説明のあったような前提で書かれているという理解で今日は議論していただければと思います。よろしいでしょうか。 ○池山委員 はい。ある種、私の方が、どう申し上げたらいいのでしょう、性善説的な思い込みがあって、あえて言えばですよ、どのシステムもそういう、今おっしゃった意味での複製はできないようになっているはずだ、というのは勝手に思っているだけなので、そういうのでないとみんな使わないだろうと勝手に思っているだけなので、理論的にはそうとは限らないでしょうということなのだと理解をしております。   その意味で理解はしたつもりなのですが、もしも複製ができるような、やろうと思えばできるシステムだとすると、その場合に、実際に流通する電子船荷証券記録は、元々の要件であるところの唯一の電子証券記録として特定されたものになるということなのですか。その瞬間には1個しかないから特定はされると、だけれども、2個目がひょっとしたらできるシステムはあるかもしれないと、そういう整理になってくるのですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今の御指摘は、2個目ができてしまったら、もう駄目になってしまうのではないかというところが前提にある問題意識なのかなと思って聞いておりましたけれども、今、我々の整理の中では、原本としての電磁的記録というのは必ずしも一つでなければ駄目だという理解には、実は立っておりませんで、もちろん複製できない措置がとられていれば、もう一つしか絶対ないということになるのですけれども、複製がもし可能だということになると、同じ電磁的記録が実は二つ以上あるということは、現実問題としてはあり得るかなと思っております。   例えば、システム管理者がいる場合でも、メインで使っているサーバーとは別に予備のサーバーに同じものをコピーして万が一に備えるということだってあるかもしれませんので、その時点で、ではもうアウトなのかというと、それは恐らくそうではないだろうと思いますし、またここから先は少し技術論になってきて、私も必ずしも正確に把握しているところではないのですけれども、システム管理者がおられる場合でも、例えばブロックチェーン技術などを使って管理をするという場合には、同じ記録が複数存在するということが恐らく出てくるだろうと思いますので、それで直ちに駄目になるということをしてしまうと、かなり技術的には狭まってしまうのかなと思っております。   では、そのときどうするかということなのですが、例えば同じ内容の原本性のある電磁的記録が複数あるとしても、それが、きちんとこれが本物なのですということが何らかの形で識別できれば、少なくともここの問題はクリアしていいのではないか、あとはその記録が一体誰が支配しているのだという人との結び付きの問題は出てくるとは思いますけれども、ここでいう特定性の問題については、仮に複数あったとしても、どちらがしっかり本物なのですという選別ができれば、それでいいということになると思いますし、逆にそういったことも認めていかなければいけないのではないかということで、少しいろいろ書かせていただいているところではあるのですが、すみません、伝わりましたでしょうか。 ○池山委員 長くなるとあれなので、これで最後にします。まず、いろいろ丁寧な御説明をありがとうございました。こちらでも更に反芻して勉強したいと思います。その上で最後、もう1個だけ質問させてください。同じ原本が複数あった場合に、そのうちのどちらかが唯一の原本である必要はあるのですか。両方とも原本であってもいい、そういうシステムがあり得るという想定なのですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。おっしゃるとおりです。 ○池山委員 後者。 ○渡辺幹事 後者です。複数あっても構わないという理解です。複数あっても、とにかくそれが本物であるということがどこかでしっかり判別できるかどうかというのがここの論点の問題で、もちろんその次に出てくる疑問としては恐らく、二つあると支配者がばらばらいたりして分からないことになるのではないかというところが、次の疑問として出てくると思うのですけれども、それもきちんと、複数あったとしても、例えばAという記録、Bという記録、どちらも本物ですというときに、Aの支配者とBの支配者が別々にいるということは当然、それは駄目だと思いますので、そこはむしろ支配者として誰が特定されているかという問題だろうと思いますので、そこがしっかりとひもづけられているということが前提にはなりますけれども、記録自体は複数あっても構わない、本物であることがしっかりと分かる状態で複数があれば、それはそれで構わない、ただ、支配者は必ず特定の人と結び付いていてくださいと、こういう感じでございます。 ○池山委員 ありがとうございます。検討させていただきます。是非ほかの、特に学者の先生方の御意見とかを聞きたいと実務者としては思います。 ○小出幹事 小出でございます。ありがとうございます。まず、今御議論あったところなのですけれども、御議論の内容は、池山委員のおっしゃることも、渡辺幹事のおっしゃることも、よく理解できるのですけれども、その上で、この複製ができるかできないかというのを個別のカテゴリーとして設ける必要が本当にあるのかどうかというのがよく分からない部分があります。  例えば今、渡辺幹事がおっしゃったように、複数データが存在し得る場合については、どれが真正なものか特定できればいいし、あるいはそもそも複製を作れなければ、それでもいいということなのですが、だとしますと、複製を作れないということ自体が、このAの電子船荷証券記録としての効力を有する電磁的記録を特定するための措置であると読めるような感じがして、Aの特定するための措置というものについて、この(注)にあるようなものを仮に書くとしても、そもそもシステムとして複製ができないということがこの要件を満たすのではないかと私なんかは理解をしておりまして、恐らくMLETRなんかはそういう考え方を採っているので、複製ができないというようなことは特に書いていないのだと思います。   例えば台帳型における台帳の複製という話と、いわゆるトークン型におけるトークンの複製とは、少し意味が変わってくるような感じもあり、複製という概念は、非常にいろいろな使い方をするので、法制上それを書くとかえって非常に難しい問題が生まれるのではないかという気もしておりまして、そうだとすると、もう端的に、ここにあるA、あるいはAを具体化した法務省令の御提案というものだけで十分に足りているのではないかというのが私の感想です。それが1点目で、まずこの点について発言させていただきます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。@のように複製できる、できないという区別そのものが、最終的には余り意味を持っていないのではないかという御指摘ですけれども、事務当局から何かありますでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今、小出幹事がおっしゃっていただいたところは私個人としても非常に理解できるところでございまして、率直なところ、部会資料3ページで申し上げますと、(注)で書いたところで足りるのではないかと、複製できるかできないかという場合分け自体、そもそもやる必要がなくて、(注)で書いたところだけで全て、先ほど私が申し上げたことについても読み込めるのではないかという御指摘だろうと思っておりまして、それはそういう面は多分にあるのかなとは思っておりまして、最終的にどういう形で法案化できるかというところは分かりませんけれども、そういう選択肢は十分あり得るところだろうと思っておりますし、現に事務当局の頭の中でも、そういったことは実は考えてございますので、大変重要な御指摘を頂いたかと思っております。   ただ、今回一応、こういう形でいろいろ場合分けして書かせていただきましたのは、できるだけここは具体化しなければいけないというところ、技術的中立性を維持しつつ具体化しなければいけないというのが今、私どもに課せられた宿題だろうと思っておりますので、そういったところを幅広く御議論いただきまして、正に先ほど池山委員から御指摘いただいたようなところも含めて、幅広く問題意識を共有させていただいて、御議論を頂きたいというところで、やや細かめな問題提起をさせていただいたというところでございますので、皆様の御議論を拝聴させていただきながら、最終的には小出幹事のような形に収めていくということは十分考えられると思っておりますし、我々の頭の中でもかなり有力な選択肢として持っていたというところでございます。   差し当たっては以上でございます。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。   そのほかどの点でも、御意見、御質問、ございますでしょうか。専ら今までシンギュラリティーの話に集中していますけれども、それ以外の点でももしございましたらよろしくお願いします。 ○後藤幹事 ありがとうございます。今回いろいろと法制上の課題もあって、すごく御苦労されて検討されたのかなとは認識しております。  ここの資料に直接出てきてはいないことなのですけれども、中間試案前は、電子船荷証券記録のシステムを提供する業者が存在することが多いだろうという前提で、ただ、そういう業者は日本国内の業者とは必ずしも限られないので、そういったシステム提供業者に対して日本への登録のような業規制は基本的には掛けないという前提で議論をしていたかと思います。もし登録制のような形で、日本政府が業者のシステムを認証、承認をするということがあれば、先ほどまで議論されていたような措置がとられているかどうかということについて、一応、お墨付きを与えるような形でクリアするという余地もあるのでしょうけれども、登録を要求するとそういう業者が日本に入ってきてくれなくなってしまうかもしれないという恐れもある。そこで、そういう規制はしないという前提で議論していたと理解していますが、その上で、システムが要件を満たしているのかということを判断しやすくするように、少しでも具体的に書けないかということで御苦労されたのかなと認識をしております。   お伺いしたいのは、今申し上げた一つ目の前提、つまりシステム提供業者を、国外のものも国内のものも含めて、業規制の対象とはしないという理解でいいでしょうかということと、その上で何かこの要件を省令で書いていこうということで、方針としてはそれしかないだろうとも思うのですけれども、(注)に書かれている以上に、何かこれが更に詳しくなっていってしまったりという可能性は基本的にはないという理解でよろしいでしょうかという2点です。   さらにもう1点、3ページから4ページのところで、占有・所持に代わる概念がないだろうかというところで、例えば帰属という言葉はどうでしょうかという御提案があります。用例もそういうのはなくはないということが書かれているのですけれども、これは渡辺幹事が最初におっしゃられたこととも関連するかと思うのですが、やはりMLETRに準拠しますよということを対外的にアピールするということが重要なのだとすると、英語版を多分作ることになると思うのです。「帰属する」という言葉を英語に直すときにどう訳すのだろうかと、もしこれをビロング・トゥーと訳してしまうと、それはやはりどうしても、正当なというところにポイントのある説明になってしまって、例えば占有とか所持のような単なる物理状態を表しているものとはやはり違うニュアンスをどうしても含んでしまうように思われます。これは、意味を説明しても、条文をそのように訳してしまうと、避けられないのかなと思います。そうすると、違う英語を使うということになりますが、そうすると「帰属」という言葉を使った意味がなくなってしまうような気もします。個人的な好みとしては、占有又は所持とか、その支配というものをそのまま使う、用例がないのは分かるのですけれども、全てのものに最初はあるのだから、それぐらい仕方がないのではないかという気がしております。いずれにしろ、申し上げたいのは、帰属という言葉は、やはり英訳することを考えると、少し無理があるのではないですかというところでございます。   後半はコメントですので、前半の方を御回答いただければ幸いです。よろしくお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御質問、御指摘、御意見、様々ありがとうございました。   まず、一つ目ですけれども、まず、私どもといたしましてはシステム提供者に対する業規制的なものは難しいだろうと思っておりまして、それは事務当局としてそういうふうに思うというところもありますし、これまで、前回もそうですけれども、御議論いただいた結果であろうと思っておりますので、そこの辺りはこの部会においてもほぼコンセンサスがとられている部分かなという認識でおりますので、事務当局としても、法制上の問題はさて置き、事務当局から積極的に業規制ということを提案するということは考えておりません。法制上やむを得ずそれしかないということであれば、またお諮りをするということはあり得るかもしれませんけれども、それ以外の理由で業規制ということを改めて検討すべきではないかというようなことは現状、考えていないというところでございます。   それから、2点目の御質問としては、例えば部会資料3ページでいうところの(注)で掲げたようなところでもって足りると考えているか否かというところでございまして、そこは我々としては、具体化するというところが一つの宿題であるとしても、ここまで書ければいいのではないか、ある程度イメージは湧く状態になるのかなとは思っているところでございますし、逆にそれ以上いろいろ細かく書いていくと、書けば書くほど技術的中立性との問題が出てきてしまうというところがありますので、具体化を目指しつつもそれなりの抽象性は保っておかないと、法規範でありますので、難しい部分があるだろうと思っておりますので、ここら辺りが一つのバランスとしてあり得るかなとは思ってございます。ただ、ここら辺りは何分、法制上の問題でございますので、今後いろいろ検討していくに当たって、これだけでは足りず、まだ更に具体化しなければいけなくなってしまいましたので、こんなことを考えてみましたがいかがでしょうかという御相談を今後させていただくという可能性はあり得るところでございますので、現状私どもとしてはこれぐらいというイメージであり、今後のことはまた改めて相談させていただくと、こういう形でございます。   あと3点目、これは御質問ではないということだったかと思いますけれども、帰属か支配かというところ、もう本当にこれは新しい取組ですので、用例がないからといって支配という言葉を諦める必要はないのではないかと、そういう叱咤激励的な御指摘も含まれていたのかなと思っておりますが、我々もできれば支配という言葉を使いたいという思いは全く変わってございません。ただ、御指摘いただきましたとおり、この取組自体が極めて新しいことをやろうというところでございますので、法制上の課題というのはやはりどうしても非常にたくさんあると、こういう中で何とか実現させていかなければいけないという中で、支配というものが明確に定義できれば、より使いやすいということにはなるかもしれませんけれども、そこの定義がうまくできずに、支配という過去の用例のないものをそのまま定義もしないで使えるかということになると、結構これはやはりハードルが高い部分があるのかなとは思っておりますので、そうなると代替的な手段として既存のできるだけ近い概念を使うということも視野には入ってくるというところだろうと思います。   ここは本当に法制執務上の問題が多分にある部分だとは思いますけれども、できる限りMLETRに近付けたいというところは我々としても強く思ってございますので、そこのところは意識しながら検討していきたいと思います。   万が一、帰属という形で法案化されるということがあったとしても、率直なところ、英訳としてはコントロールという言葉を当ててしまってもいいのかなという感じは正直、思っております。やろうとしていることは、正にMLETRでいうところの支配、正にこれを実現するものとして、我が国の法体系上その言葉を使うとすれば帰属という言葉が使いやすかったねというだけのことだろうと思っておりますので、英訳する際にこれをコントロールとするということについては、それはそれであり得るのかなというところは正直なところ、思ってございます。   差し当たっては以上でございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。よろしいですか。 ○後藤幹事 どうもありがとうございます。最後の点ですが、帰属という言葉を仮に使ったとして、その意味の解釈として実はこういう意味であって、なので英訳としてコントロールを当てていますよとすることは、一つの解決としてあり得るかと思うのですが、今日の議事録も含めて、その根拠となるものを残しておいていただけるとよいのかなと思っております。ありがとうございました。 ○藤田部会長 ありがとうございます。事務当局の御提案の認識としては、帰属するといっているのは、MLETRでいえば支配を有するというのにほぼ対応する概念であるという前提でこういう言葉を提案している、だから、帰属をコントロールと英訳することができるどうか分かりませんが、少なくとも解説などで明示的に書けることだと、そういう御認識ですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。基本的にはそういう前提で、帰属という言葉をもし使うとするならば、そういう前提の上で使うということだろうと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○小出幹事 度々恐縮です。占有の方に話が移りましたので、この点についても一言コメントさせていただきます。   今の後藤幹事の御発言とほぼ同じなのかもしれませんけれども、やはり帰属という言葉は、これもある意味、新しい概念というか、過去に用例があるとはいいましても、いわゆる民法とか商法で過去に使われた概念ではなく、その意味では新しい概念かと思いますので、過去に別の法律で例があるからというだけでこれを使うという必要性がどこまであるのかどうか分からない部分があり、どうせ入れるのであれば、支配という概念の方が、今後の私法一般に対する影響を含めても、よろしいのかなとは思いますが、一方で今、渡辺幹事から御説明があったような法制上の問題でこれを使うというのも、その意味がはっきりしているのであれば、あり得るのかなと思います。もう一つの考え方としては、支配という言葉を残した上で、支配の定義として帰属と書くというのもあるのかもしれませんが、それもどこまで意味があるか分かりませんので、これはコメントです。   もう一つの点は、この支配という概念については、私は前回の部会においてもUCCの7編の106条というアメリカにおけるコントロール概念の条文について説明させていただきまして、UCC7編の106条は、これは英米法のポゼッションに対する概念ですが、システムによって、その電子的記録が発行された若しくは移転をされた者として特定された者が支配を有するという言い方をしています。これは、発行を受けた、移転をされたという、ある意味では実体的に平穏にその占有を取得したという要素が入っているようなこともありますので、我が国の法制上、とりにくいのかもしれませんけれども、こういった例があるということを一つ述べさせていただきます。それから、前回、私はこの支配に関して、システム概念というものを入れる可能性はあるということを発言させていただきまして、今回、特定性の方にはシステム概念が入っているのですけれども、占有に相当する概念としての支配あるいは帰属というところについても、システムによって特定するというような要素は入れることになるのでしょうか、というのが質問でございます。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。支配という言葉を使うかどうかはともかくとして、それに相当する概念の中にシステムという概念を入れるかどうかというところなのですけれども、現状なかなか案としては思い付いていないというような状況でございまして、先ほどのシンギュラリティーのところでいろいろ、システムがある場合とない場合という形で分けましたけれども、支配のところも、ある場合とない場合でしっかり場合分けができて、中身を特定できるということであれば、そういう形で定義化していくということはあり得るとは思いますけれども、システムがない場合を考えるとなかなか、どういうふうに支配という内容を考えていこうかというところが少し難しくなってくるという感じがしておりますので、仮に支配という言葉を使って何らかの定義をこれからもし考えていこうという形になったとしても、システムというものに100%は恐らく依存はできない、システムがない場合も考えなければいけないことを踏まえると、システムというところだけで支配の中身を画していくということは少し難しいのかなというところは思っておりますので、少しまた別のアプローチで考えていかなければいけないのかなというのが現時点での感触でございます。 ○小出幹事 小出でございます。ありがとうございます。今のお話の最後の方にあった、システムがない場合ということの意味なのですけれども、私の理解では、MLETRでは、シンギュラリティーに関しては10条、支配に関しては11条ですけれども、いずれも“reliable method”という言い方をしていて、信頼できる手法が使われていることを要件としていて、しかし、この言葉というのは、確か以前の部会においても、その信頼できる手法とは一体何なのだ、という話で随分と議論があったと思いますけれども、それにある意味代わる概念として、システムという言葉が使われていると理解をしていたものですから、その意味では、ある電子的な船荷証券記録を使う場合に、システムがないということは多分なくて、その仕組み全体を動かすような構造という意味だと私は理解していましたので、その意味では常にシステムというのはあるのではないかと思っております。そのシステムの中には、もちろん中央管理者がいるような仕組みもあるでしょうし、そうではなくて、技術的にはまだないかもしれないけれども、複製が不可能なトークンを使った仕組みというのも考え方としてはあり得るでしょうが、いずれにせよ、何らかの仕組みによって、どれが電磁的船荷証券記録であり、誰が支配を持っているかというものが特定できるということが「システム」のポイントかなと思っておりましたので、システムがないということはないのではないかと私は思っていたのですが、もし違うということであれば教えていただけばと思います。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。私の方で先ほど申し上げたシステムというのは、正に中央管理型のようなシステムを想定しておりますので、何らかのプログラムを使うだけでは恐らく駄目で、きちんとシステム提供者というのがいて一元的に管理をする、こういったものが想定されるシステムのことを申し上げておりまして、部会資料の3ページのところの(注)で書かせていただいたシステムも、電子船荷証券記録の作成及び管理をするためのシステムという修飾語を入れているのは、正にそういう趣旨でございまして、これはもう本当に典型的な中央管理型のシステム提供者がいる場合のシステム、これを想定しております。   それに対して、小出幹事がおっしゃるように、そこまでに至らない何らかのプログラミング的なものもシステムという言葉を使っていいということであれば、何もシステムが存在しないものはないという考え方はあり得るだろうと思っておりますので、ただ、中央管理型でいうところのシステムと、何でもいいけれども何らかのプログラミング的な意味でのシステムということだと、恐らく言葉の意味合いが全然変わってくると思いますので、後者のようなものでもって何か支配を画していくということは、場合によってはあり得るかもしれないとは思いますけれども、いずれにしても支配なのか帰属なのかというところについては引き続き考えていかなければいけないかなと思っておりますし、ただ、現時点での事務当局の感触といたしましては、支配という言葉を定義なく使うというのは恐らく法制上はかなりハードルが高いので、支配という言葉を使うのであれば、それなりに具体的なイメージが持てるような定義を考えていかなければいけないかなと思っておりますので、そういったところを考えていくに当たって、今頂きました御指摘も踏まえながら引き続き考えていきたいと思いますし、何かアイデア等があれば是非お寄せいただければ大変助かります。よろしくお願いいたします。 ○藤田部会長 ありがとうございました。システムという言葉も、実はこの部会で一貫して同じ意味で使われていたかどうか、よく分からないところがあるという御指摘だと思います。前回、システム提供業者というふうな概念を入れること、仮に業規制を入れないにしても、業者が出てくるような建て付けはよくないということが多数の意見であった反面、システムという概念を使って支配を定義するという意見を小出幹事などから頂いたと思います。その際のシステムという言葉は多分、今、小出幹事が言われた比較的広い意味でのシステムを想定していたのではないかと思うのですが、今回の御提案においてシンギュラリティーを定義することとの関係で使われているシステム、例えば3ページの(注)(a)などで修飾が付いているシステムというのは、それより狭い中央管理型のシステムを意味していて、これは具体的な定義をするという目的から、ある種のシステムを想定することからそうなっているわけです。そういう意味で今回の提案で用いられているシステムという言葉は、前回我々がシステムを使ってコントロールを定義するという議論をした際のシステムと少しずれてきており、その辺りが、余り明示的に書かれていないものですから、分かりにくいかもしれませんけれども、注意して読まなければいけないところでしょう。仮に今回の御提案にいう限定した意味でシステムという言葉を使うと、支配をシステムという概念で定義することがやや難しくなってこないかという疑問も生じるという論理関係だと思いますが。今の概念整理も含めて、どの点でも御意見を頂ければと思います。 ○雨宮委員 今の支配、帰属のところですが、支配については定義を置かない、若しくは定義を置くとしても、排他的に利用することができる状態とすることを議論しておりましたが、部会資料の3ページの下から5、6行目では、その定義では抽象的で、具体的な当てはめが容易ではないとされています。他方、今度は帰属についてはどういう概念かというと、当該電磁的記録を排他的に管理、処分する権限を有しているとしています。管理、処分する権限を有しているところまで規定すれば具体的になると理解してよろしいでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。お答えが非常に難しい質問でございまして、ここは、まずどういう内容の法案にしていくべきなのかというところで考えていきますと、できるだけ具体的なものがいいのではないかということになりますので、帰属という既存の言葉をそのまま定義なく使っただけでは、本当はその目的には多分合致していないというところは正直、あるのかなという感じがしております。   ただ、他方でもう一つ課題としてあるのは、法制的にどういう形でやっていけるのかという問題が、これは先ほどの、より具体的な内容を世に示していくという問題とはまた別に、重要な問題としてありまして、それをクリアするという観点で物事を考えますと、既存の概念として全く使われていない支配というものに関しては、やはりそれなりの具体的な定義を設けてやらないと難しいのに対し、既に使われている用例であれば、それはそれで使えるというところがございますので、なので、なかなかそこのところは、帰属という言葉を定義なく使ってしまえば、結局のところ若干分かりにくいところが残るというのは、そのとおりだと思いますし、支配の場合に殊更定義をする必要とするということにつきましては、内容を具体化するというだけではなくて、法制上の課題をクリアしなければいけないという問題があってのことだろうと思っておりますので、そこの辺りが非常に難しいところで、端的に一言で申し上げられなかったというところが、難しい質問だというふうに申し上げた次第でございますが、差し当たっては以上でございます。 ○雨宮委員 雨宮です。ありがとうございます。帰属という概念について、更に教えていただきたいのですが、これは3ページ目の下の注を見ますと、その者の所有に属するものとみなすと定めるということですので、いわゆる所有者ではなく、また確定的権利者ではなく、権利を推定されるようなイメージで捉えております。これは紙の船荷証券でいうと所持と同じように、事実上の概念であり、それをみなすと規定していると捉えているのですが、そういう理解で正しいのでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。事務当局としては、この帰属というものを使うとしたら、そういう整理をした上で使うということで考えておりますが、果たしてそれができるかどうかというところも含めて、今後の検討課題かなとは思っております。 ○雨宮委員 ありがとうございます。雨宮です。最後に、今、小出幹事からも、支配を帰属と定義できないかというような御発言がありましたが、支配を、電磁的記録を排他的に管理、処分する権限を有しているというように定義しても、帰属を使うのと、やはり法制上の問題では違いが出るということでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。正直なところ、事務当局としてはいずれもあり得るとは思っておりまして、できれば支配という言葉を何らかの形で定義付けて使っていけた方が、この部会での御議論の方向性にも合致するのかなと思っておりますので、できればそういう案を考えていきたいと思っておりますので、事務当局の頭の中の順位付け的なものを申し上げさせていただくと、できるだけ何らかの形でうまく定義して支配という言葉を使っていくという形が、部会での御議論にも合致する方向性かと思っておりますが、ただ、なかなかそこがどうしても、定義をするということに関しては、中間試案の段階では非常に難しいというところも御意見として多々頂いておりましたので、それができない場合の予備的な考え方として、既存の概念に少し依存をしてみるということも一応あり得べき選択肢として申し上げておいた上で、皆様の御感触を今日頂ければということで、やっていたところでございますので、今までのところの御指摘を伺いますと、できるだけ支配という言葉を使っていった方がいいのではないかというような雰囲気が強かったかなという感じがしておりますので、そういった方向性で再度考えられるかどうかというところも含めて、引き続き考えてまいりたいと思ってございます。 ○雨宮委員 雨宮です。ありがとうございました。 ○吉田委員 吉田です。以前、P&Iクラブが特定のシステムを承認しているというお話があったかと存じます。新たにシステムが承認されますと各P&Iグループがノーティス発表していますが、比較的最近公表されたノーティスに、承認対象のシステムは特定のシンガポール法人によって所有されていると記載されているものがありました。既に施行されているシンガポールの電子船荷証券に関する法律に基づくものかは分からないのですけれども、少なくともシンガポールでは、そのシステムを何らかの形で特定をして、それを実際に動かすことができているという事実があるようですので、稼働済みの事例を見て、特定の方法に関する手法を参照してみるというのも一つの方法と思います。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。我々の方もいろいろと、最新のものについてはまだ十分チェックできておりませんけれども、既にあるシステムについてはそれなりに事実上、いろいろと情報収集はさせていただいております。既存のこういった承認されて広く使われているシステムというものを排除をしてはいけないと思っておりますので、そういったシステムというものをある程度、研究はした上で、そういったものが排除されないように規律案を考えてきたところでございますので、その点は引き続き配慮しながらやっていきたいとは思っております。   他方で、特定のシステムを幾つか調べて、それの特徴を規律として定めていくということ、そういうアプローチだと技術的中立性の関係から多分いろいろ問題が出てきてしまうだろうとは思っておりますので、どちらかというと既存のシステムにつきましては、それらを排除しないという観点から検討していくということが重要なのかなと思っておりますので、その点は引き続き配慮しながらやっていきたいと思ってございます。 ○吉田委員 吉田です。趣旨が不明確で申し訳ございません。私が申し上げようと致しましたのは、コントロールという概念も何かの形で規律されているので法律化されており、システムを動かすことができているのではないかと推察しております。その電子船荷証券を支配しているシステムが実存し、当該システムが何らかの形で動かすことができているのは誰がコントロールをしているのかを特定することができているからだと。特定のための解釈の手法について、当然、判例法と制定法の違いはあるのかもしれませんが、参考にできないかと考えております。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。現時点での私どもの理解としては、恐らくシンガポール法、あるいは、できたばかりであるといわれているイギリス法も、比較的そこら辺は結構、余り具体的なことはそれほど書かずに、法律としてはできてしまっているのに対して、我が国は大陸法系というところもありますし、いろいろ法体系の問題があって、恐らくそっくりそのまま法案化していくというのが非常に難しい状況にあるというのが、まず一つ、大きな前提なのかなと思っておりますので、そこのところを、では具体化するときにどういう形で具体化していくのかということを考えたときには、御指摘いただいたようないろいろなシステムというものがございますので、そういったものをしっかりと見ながらやっていかなければいけないとは思っております。法案の考え方といたしましては、どうしても我が国の法体系というものを考えなければいけないというところが、シンガポールなりイギリス法なりと少し違った部分はどうしてもあるのかなと考えているところでございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。吉田委員が言及されていた、船荷証券上の記載によって特定されているのは、システム運用業者やシステムの所有者でしょうか。 ○吉田委員 そもそもシステムとは何だろうという。 ○藤田部会長 システムの特定なのでしょうか。 ○吉田委員 吉田です。当初の議論で、システムはP&Iクラブで承認をされていて、承認されていないものは流通しないのでというようなお話があった。そのP&Iクラブの承認の対象である、支配の主体であるシステムとは何かというのが、そこの先は分からないです。ただ、そこのところも詳しく調べてみて、何に対して承認しているのかを突き詰めると、そちらの切り口でも、少し分かることがあるかもしれないと考えました。 ○藤田部会長 そこで特定されているのはシステムですね。今ここで支配あるいは支配の帰属ということを議論しているときの帰属というのは、当該記録の帰属であって、システムが誰に帰属するか、誰のシステムか、どのシステムかという問題とは違います。今言われているのは、今のコントロールあるいは帰属とは少し次元が違う問題かなというふうな印象を受けたのですけれども。よろしいですか。 ○池山委員 ひょっとすると今、吉田委員がおっしゃったことと、背景にある問題意識というのは一致する面もあるかもしれません。元々中間試案前の段階では、支配という概念を使うこと自体について誰も異論がなくて、ただ、定義を置くかどうかについて甲案、乙案があったと。   実は私自身及び私の推薦母体は、そんな定義なんかは置かないでくれという意見だったのです。その理由は何かというと、実は理屈の話ではなくて、どんなシステムがあっても、そのシステムごとに、やれポゼッサーだのホルダーだの、名前は違うけれども、一番広い言い方でいうと紙の所持人に相当するものは必ずいるはずだと、だからそれで十分だと、それを支配と呼ぶのでしょうと。なまじ支配というものを定義してしまうと、実際のシステム上のホルダーだポゼッサーだという人と法制上の支配の概念に齟齬が生じるかもしれないと、だからやめてくださいという意見を出しているのです。他方では、その支配という新しい概念を定義なしで使うというのが法制上無理だということであれば、それはそれで、端的に言うとしようがないのだろうと、少なくとも個人的には思っております。   その上で更に議論は進んできて、言ってみれば、たまたま法制上の問題があって支配という言葉を使うこと自体も一筋縄にはいかないと、帰属という概念を使うと場合によっては定義なしで使えるかもしれないけれども、それがいいかどうかは考えなければいけないし、それから、支配の乙案でいわれていた排他的に利用する権限と、帰属の定義として解説してある管理、処分する権限の異同もよく分からないと、そういう問題状況になっていると理解をしているのです。   そうすると結局、実務側の要望としては、法制上定義なしで支配を使うということが無理だということであれば、もちろん受け入れざるを得ないのですが、結論的にその定義の仕方によって、やはり実際に使われているシステムの中で、この人がポゼッサーだ、この人がホルダーだといわれる人が、いや、新法の解釈としてはポゼッサーだ、ホルダーだということにはならないというような事態になっては絶対に困るわけです。そうならないような広い抽象的な定義付け、でも法制上のリクアイアメントも満たす定義付けを是非お考えいただきたいと思います、というお願いになるのだと思います。   その上で、一番最初に何でひょっとすると吉田委員の御指摘と関係するかもしれないと申し上げたかといいますと、これは私が勘違いしているかもしれませんけれども、やはり一定の業者が提供しているシステムを保険者の集まりであるインターナショナルPIグループが承認するに当たっては、正確な定義がされているかどうかは別にしろ、やはりポゼッサーなりホルダーなりの人が正に唯一、ある時点では1人だけということが特定できるようなシステムになっているということを当然、チェックしているのだと思うのです。そこのチェックの仕方をどうしているかということを見れば、ひょっとすると支配にしろ帰属にしろ、定義を考えていくに当たって参考になるかもしれないと、そういうことなのかなと思って聞いておりました。   最後のところはただの感想ですけれども、前段の部分、よろしくお願いしますという部分は、よろしくお願い申し上げますということです。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今、池山委員にまとめていただいたところは全くそのとおりでございまして、よろしくお願いしますということで宿題として承ったところではあるのですが、他方で、そういった問題意識の下、何かお知恵がございましたら、こちらの方からも是非、御指摘いただけますと大変幸いでございますので、よろしくお願いしますということで申し上げさせていただければと思ってございます。 ○池山委員 池山でございます。先ほど来、帰属、ビロングとなると、単なる事実上のものではないという、むしろ正当なというニュアンスが入ってしまうという後藤幹事の御指摘というのは、非常に私としては印象に残っておりまして、どういう定義、表現の仕方であれ、それは事実状態なのだと、紙のB/Lであれば拾った人でも所持人なのだと、正当かどうかは次の問題だと、所持人という言葉は、正にそういうニュアンスが出るわけですよね。その事実上のものであるというニュアンスが出てくる定義であればいいのかなと思っております。余り参考にはならないですけれども。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘はそのとおりだと思っております。先ほども少し申し上げましたけれども、帰属という言葉を使う場合であっても、そういった事実状態であるという整理をするということが恐らく前提にはなろうかと思います。どういう形で言葉を作っていくかという問題はいろいろ法制的なものもあるとは思いますけれども、実質としてやはり事実状態であるということは、ここは曲げてはいけないところであり、非常に大切な御指摘だろうと思っております。今、池山委員がおっしゃっていただいたように、御指摘を頂いた上で、あとは事務当局で、どんな表現が考えられるかというところは考えたいと思っておりますので、大変有り難い御指摘として拝聴したところでございます。 ○藤田部会長 よろしくお願いします。むしろ実務の側から、こんな定義をすると既存のシステムにおける利用者が読めなくなるおそれがあるというような疑念が1か所でもあれば、是非お寄せいただければと思います。今の定義は、できるだけそういうことがないように、システム上その権限を有する者みたいな書き方をしているのだと思うのですけれども、何か気になるところがあれば、是非御意見をお寄せいただければと思います。既存のシステムが読めないような定義をしてしまうことは最も避けなければいけないことは事務当局も当然認識されていると思いますので、どんな観点からでも、その点、御意見いただければと思います。 ○池山委員 長引かせてはいけないと思いますが、1個だけ。非常に素朴には、電子B/Lのシステムを作っている人は、基本的には紙のB/Lをレプリケートするのだと、レプリケートというのは日本語では何と訳すか、まねるのだというのですよね。そうすると、実務で一番すっきりするのは、紙の所持人に相当するものなのですよね。だから、電子船荷証券記録においては、それが紙であれば所持人に相当するものが特定できなければいけないと、そういう何というか、紙に戻すような、紙における定義、所持という定義、それを援用するような定義というのは不可能なのだろうかと個人的には前から思っているのですけれども、すみません、これはもうただの感想ですので、聞き流していただいて結構です。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。一つのアイデアを、私の方でお願いしますというふうにさせていただいた結果として、御提供いただいたのだろうと思っておりますので、様々な考え方があり得るかと思います。今のアイデアにつきましても、恐らく法制的にこれが我が国で通用していくのかどうかというところだろうと思っておりますけれども、いろいろな可能性があろうかと思いますので、そこは先ほども申し上げましたとおり、支配という言葉が使えるのが一番いいだろうというのが、恐らくこの部会での意見の大勢だろうと思っておりますので、それを踏まえた検討をしていく中で、様々な選択肢というものを考慮しながら、何とか工夫をして頑張っていければなと思っているところでございます。ありがとうございました。 ○藤田部会長 そのほか、どの点でも、御意見等がございますでしょうか。 ○小出幹事 順番に発言をしてきていますので、最後の交付、引渡しのところについても一言申し上げさせていただきます。ここも大変御苦労されて書かれておられるということで、お考えについては十分理解できますし、絶対駄目だということも全然ないと思うのですけれども、本当に交付、引渡しというものをここまで丁寧に定義付けなくてはいけないのだろうかと思いました。法制上の懸念があるというのは十分理解しているのですが、特に支配というものについて、帰属なのか管理・処分権限なのか分かりませんが、いずれかの方法で支配という概念に関する法制上の問題がクリアできるのであれば、その支配あるいは帰属の移転というもので十分なのではないだろうかと思います。その移転という要素についてまで、個別にシステム上の措置みたいなものまで書かなくてはいけないのかどうかというところについては、やや疑問を持っています。   特に、これはあくまで一つの御提案だと思いますが、5ページにある(注)のところに書いてあるような、システム上の利用権限を移転することとなりますと、もう支配の移転とほぼ同じことのような感じもいたします。システムの利用権限というのも非常に曖昧な概念で、そのシステム自体にログインする権限なのか、その記録自体に対する管理・処分権限なのかというところなども、実はこれだけだと十分に明確ではなくて、多分お考えになっているのはある記録に対する管理・処分権限だと思いますが、そうなると正に支配の移転ということだと思いますので、果たしてここについて、技術的なところを踏まえた上でそこまで細かく書く必要があるのかどうか、むしろ書かない方が様々な技術について技術的中立が保てるのではないだろうかと少し思ったところでございます。   以上、意見でございます。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。部会資料の5ページのところで(注)で書かせていただいたところにつきましては、支配とか帰属とかという言葉をそのまま余り定義付けずに使った場合を主として想定してございますので、もし、例えばですけれども、帰属という言葉を定義なくして使うということだとすると、この移転の部分についてはこれぐらい書いておかないといけないかなというようなイメージでおりますが、他方で、何らかの形で支配というものをしっかりと定義付けた上で使っていくという方向性をとった場合には、ここのところの書きぶりも恐らく変わってくるだろうとは思っておりますので、正に今御指摘いただいたように、支配というものを、システム上の利用権限みたいなところもきちんと関連付けて、もし定義をするのであれば、ここであえてまた同じような言葉を使う必要はないという考え方もあり得るとは思いますので、いずれにしても、ここも支配という言葉をどういう形で使っていけるかに掛かってくる部分だろうとは思っておりますので、またそこの辺が具体的なアイデアを持って御提示できるのであれば、セットで考えていきたいと思いますので、その際にはまたいろいろと御指摘等を頂ければと思ってございます。 ○藤田部会長 この辺りは、支配という言葉を使うにせよ帰属という言葉を使うにせよ、支配あるいは帰属を多少なりとも定義するか、それともそれは諦めて、支配の移転あるいは帰属の移転のところで明確化すればよいか、どちらかという御趣旨ですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。いずれにしても、どちらかは多分要るのだろうという感じがしますので、支配の定義のところである程度具体化を図っていくことができれば、この交付、引渡しのところは少し変わってくるかもしれないなというところでございます。 ○藤田部会長 いずれにせよ支配概念か帰属概念かの話とは違って、どちらであっても同じように問題となるということですね。 ○渡辺幹事 はい。 ○藤田部会長 そのほか、どの点でも御意見、御質問、ございますでしょうか。   第1の部分は、基本的に概念の整理の話ではあるものの、幾つかの前提条件の下で、日本法の法制上、実現可能なやり方というのはどういうものかという観点からの議論で、せっかく議論していただいたところを、いろいろ更に妥協していただかなければいけないようなところもあって、大変心苦しいところもあるのですが、ただ、立法のためにはどうしても必要な作業でもありますので、今後とも御意見いただければと思います。   今日のところはこの辺りでよろしいでしょうか。依然、支配概念への強い支持というのはあって、できるだけそれを殺さないような形で、言葉を変えるにしても、作っていただきたいという御趣旨と承りました。シンギュラリティーの方については、ここで書かれているようなものもあり得る方法ではあるけれども、更に概念の整理――複製うんぬんのところも含めて――を検討できるところは検討するという方向性を頂いたかと思います。差し当たりこの辺りでよろしいでしょうか。 ○山口委員 先ほどから帰属と支配の問題がございまして、聞いていまして、非常に難しい問題だと思っております。そして、帰属については、引かれている状況から行きますと、刑事法における手続における定義付けでありまして、その帰属というものがこの定義で刑事法上通っているのであれば、民事法上、同じ定義を支配にしてはどうかと思うわけなのです。一方、民事法と刑事法で違うわけで、そういう意味では、常に刑事法と民事法が同じ言葉を使わなければならないということはなさそうな気がするということと、元々支配については定義が要らないのではないかと私は思っていました。それはなぜかというと、支配というのは極めて日本語的に原始的な概念であり、民法の教科書において占有を定義付けるのに支配という言葉を使っておりますから、その占有の説明の基礎になっている支配という言葉まで定義付けするというのはいかがなものか、ということです。なぜなら、占有を基礎付けている、あるいは占有を定義付けているのが支配という概念であるので、そこは説明や定義づけは必要ないのではないかというのが当時の議論だったと思うのです。しかし、どうしても必要ならば、むしろ既に帰属という言葉で使っている、同じものを民事法においては同じ定義で支配という言葉を使って、MLETRと平仄を合わせるというのは一つ、考えられないかなと感じています。   以上でございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。事務当局からございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。正に一つの方向性として考えられるところかと思っておりますので、先ほども部会長におまとめいただきましたとおり、支配という言葉を使っていくというのがこの部会での意見の多数派を占めているだろうというところを受けまして、私どもの方で今後検討していくに当たっては、今御指摘いただいたところも含めて、引き続き検討させていただきたいと思ってございます。ありがとうございました。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。   それでは、若干中途半端な時間ですので、第2について取りあえず事務当局から御説明だけ頂いて、若干休憩して、審議に入りたいと思います。   それでは、第2、第3を一緒に事務当局から御説明いただければと思います。 ○昔宮関係官 それでは、事務当局の昔宮から御説明いたします。   まず、「第2 受取電子船荷証券記録が既に発行されている場合における船積船荷証券又は船積電子船荷証券記録の発行に係る規律」についてですが、この点につきましては、(a)荷送人又は傭船者に船積電子船荷証券記録の発行を請求する権利まで認めるか否か、(b)荷送人又は傭船者に商法第757条第1項に基づく紙の船積船荷証券の交付を請求する権利を維持するか否か、(c)商法第758条第2項に相当する規律を設け、運送人又は船長が既に発行されている受取電子船荷証券記録への追加記録をすることによって対応することを認めるか否かによって、理論的には様々なパターンが考えられるところでして、中間試案においては、甲案として、(a)を否定し(b)及び(c)を肯定する考え方、乙案として、(a)及び(c)を肯定し(b)を否定する考え方の二つが示されました。   パブリック・コメントの手続においては、甲案及び乙案に賛同する意見がそれぞれ提出されているところです。理論的にはいずれの案も採用し得るように考えられるところですけれども、これまでの部会での調査審議によりますと、実務上はそもそも受取船荷証券が発行された後にそれと引換えに船積船荷証券が発行されること自体がまれなようですし、仮にそのように2段階で船荷証券が発行されるとしても、受取船荷証券が発行されてから船積船荷証券が発行されるまでの時間的間隔は通常、短いものであると考えられるところでもありますので、そのような実務も踏まえますと、一度運送人と荷送人が合意の上で受取電子船荷証券記録を発行した場合に、その直後に荷送人に紙の船積船荷証券の発行を求める権利を認めることや、逆に、運送人に船積電子船荷証券記録の発行を拒む権利を認めることは、いずれも必要性に乏しく、受取電子船荷証券記録の発行に同意した両当事者の合理的な意思にも合致しないものであるようにも考えられるところです。   そのため、受取電子船荷証券記録が既に発行されている場合における船積船荷証券又は船積電子船荷証券記録の発行に係る規律については、中間試案にいう乙案の考え方を採用することが適当ではないかと考えられますけれども、御意見を頂ければと思います。   続いて、「第3 電子船荷証券記録と船荷証券の転換に係る規律」について御説明いたします。   まず、「1 転換を受ける主体について」ですけれども、これについては中間試案ではA案とB案の二つの考え方が示されました。A案は、「転換前の船荷証券の所持人又は電子船荷証券記録を支配する者(ただし、転換前の船荷証券又は電子船荷証券記録上の権利を適法に有する者に限る。)」とする考え方でして、B案は、「転換前の船荷証券の所持人又は電子船荷証券記録を支配する者(ただし、転換前の船荷証券が指図証券である場合又は転換前の電子船荷証券記録が指図式である場合には、裏書又は電子裏書の連続によってその権利を証明した者(ただし、裏書又は電子裏書がされる前であるときは荷送人)に限る。)」とする考え方でした。   パブリック・コメントの手続においては、B案の規律は複雑すぎる旨を指摘する意見も見られたところですが、大勢としましては、別途設ける権利推定規定、つまり、転換を受けた者が裏書あるいは電子裏書の連続によりその権利を証明したものとみなす旨の規定との理論的な整合性や、転換に応じる運送人側の判断の負担などを理由に、B案を支持する意見が多く見られたところです。そこで、転換を受ける主体についてはB案を採用することが適当ではないかと考えられるのではないか、御意見を頂ければと思います。   次に、「2 転換後の媒体の記載又は記録事項について」ですが、これも中間試案ではA案とB案の二つの考え方が示されておりまして、まずA案は、今回の部会資料の9ページに@からCとして事項を記載していますけれども、この全部又は一部とする考え方でして、一部とする場合にも、どの事項を記載又は記録事項とするかについては複数の考え方があり得るとされていたところです。他方、B案は、単純に転換前の船荷証券又は電子船荷証券記録と同一の内容とするという考え方でした。   パブリック・コメントの手続においては、積極的にB案を支持する見解までは見られませんでした。これに対し、A案に対しては、@及びCのみを記載又は記録事項とすべきとの意見、あるいは、Bは除外することが望ましい旨の意見、どのタイミングで転換されたのかが明らかになるよう、AとBは併せて考えるべきであるとの意見も見られたところです。この点につきましては、諸外国の法令で一般的に転換後の媒体への記載又は記録事項とされていない事項を記載事項とすることについて、強い反対意見も見られたところでして、MLETRや最近成立したイギリス法についても、転換後の媒体に転換の事実が記載又は記録事項とされている一方で、転換を受けた者の氏名又は名称については記載又は記録事項とされておりません。   このような状況を踏まえまして、A案とB案の折衷的な考え方として、転換後の媒体の記載又は記録事項につきましては、今後の諸外国の立法や実務の状況などを踏まえて柔軟に対応できるように、転換前の媒体と同一の内容と認められる事項として法務省令で定める事項とした上で、法務省令において具体的な記録事項を定めることもあり得るのではないかと考えているところですので、この点について御意見を頂ければと思います。   なお、法務省令で定める事項としましては、Aの転換の事実を記載事項とするのみでは転換のタイミングが分からないとの懸念もあるところでございますが、反対に転換の事実さえ認識できれば、それを契機に転換のタイミングや裏書の連続を確認する機会を持つことができるとも考えられますので、まずは@、A及びCの事項を記録事項と定めることが考えられるのではないかと思っております。   続いて、「3 電子船荷証券記録から船荷証券への転換請求権の要否について」について御説明しますと、電子船荷証券記録を支配する者に運送人に対する転換請求権を認めるかどうかについては、これまで考え方が分かれておりまして、中間試案では、当事者双方の合意がある場合に紙の船荷証券への転換を行うことができるとする甲案と、転換請求権を認める乙案の両案が示されていました。   パブリック・コメントの手続の中では、貿易関係者が洋上転売を行う際の便宜や、税関手続等において電子化された船荷証券の利用は可能かどうかなど、貿易実務が流動的であることなどを理由に、運送人に対する転換請求権を認める乙案を支持する意見も見られたところです。一方で転換請求権を認めるべきではないとの意見も多く見られたところでして、その理由としては、例えば、荷送人の意向に沿って電子船荷証券記録が発行されたにもかかわらず、荷送人側の都合によって一方的に紙の船荷証券への転換請求権が認められるのは、運送人にとって酷になる場面があるのではないかですとか、やむを得ない事情で紙の船荷証券が必要になった場合にまで運送人が不合理に転換を拒むような事態が生じた場合には、運送人に債務不履行責任等の一定の責任が認められ得ることから、転換請求権を認めるまでの必要性に乏しいなどということが挙げられました。   この点につきましては、立法政策の問題で、いずれの考え方も採用し得るところと考えておりますが、事務当局としましては、乙案を支持する意見が論拠とする懸念については実務の中で今後、解消ないし縮小されていく面もあるのではないかと考えております。具体的に言いますと、転換請求権を法定しなくても、あらかじめ規約や合意によって運送人に対する転換請求権について取決めをしておくことは可能ですし、国際的にデジタル技術の活用に向けた検討が進められているところでもありますので、税関等の手続の中で電子化された船荷証券が認められないといった事態が生じるおそれは今後縮小していくことが予想されます。   加えて、MLETRやシンガポール法、イギリス法においても、電子化された船荷証券から紙の船荷証券への転換請求権を積極的に認める考え方は採用されていないといった国際的な潮流も踏まえますと、転換請求権を法定すると、特に海外の運送会社が日本法を準拠法とすることにちゅうちょを覚える要因となる可能性も考えられます。   また、仮に乙案を採用したとして、転換請求権を認める規定のみを法律に置くとなると、原則として船荷証券を交付する義務を負う運送人が転換に係る費用を負担しなければならず、船荷証券を交付するまでのリスクも負担することになると考えられますが、このような取扱いについてはこれまでの議論の中でも反対の意見が多かったところです。   乙案を採用しつつこのような批判に応えるためには、これらの点についても何らかの規律を設ける必要が出てきますので、規律全体が複雑化するといったことが避けられなくなってしまうのではないかと考えられます。これらのことを考慮しますと、双方の合意がある場合に紙の船荷証券への転換を行うことができるとする甲案を採用することが相当ではないかと思われるところですが、御意見を頂ければと思います。   部会資料の第2、第3については以上でございます。 ○藤田部会長 第4まで、併せてお願いします。 ○生出関係官 それでは、続いて、「第4 倉荷証券に関する規律」のところについて、事務当局の生出から説明いたします。   倉荷証券の電子化については、4月に行われた部会の第9回の会議で一読目の御審議を頂いたところです。基本的には船荷証券の電子化と同様の方向性で倉荷証券の電子化に係る規定を整備するという方向性になったかと思われますが、今回は、一読目において方向性が定まっていなかった論点の三つについて御検討いただければと思います。   まずは、電子倉荷証券記録と倉荷証券の転換に係る規律のところですが、この規律については、先ほど御説明した電子船荷証券記録と船荷証券の転換に係る規律と同様にしてはどうかと考えております。倉荷証券と電子倉荷証券記録の転換について、倉荷証券の実務においてはその必要性は高くないということが一読目の審議で明らかになりましたが、将来にわたっておよそその必要性が生じないとまでは言い難いといえます。また、船荷証券と電子船荷証券記録の転換の場合と別に検討すべき事情もないことから、電子倉荷証券記録についても転換に係る規定を設けることとし、その上で、転換を受ける主体、転換後の媒体の記載又は記録事項、及び電子倉荷証券記録から倉荷証券への転換請求権の要否の各論点について、電子船荷証券記録の場合と同様とすることを考えておりますが、この点について御検討いただければと思います。   続いて、商法第603条に相当する規定についてですが、電子倉荷証券記録に係る分割請求の場面の規律については、一読目の部会資料9の第6の2(2)の乙案を採用して、電子倉荷証券記録が既に発行されている場合においては、寄託物の分割請求をするときに、その各部分に対応する電子倉荷証券記録の発行を請求する権利を認める一方で、その各部分に対応する紙の倉荷証券の交付を請求する権利は認めないこととすることを考えております。   部会資料9では、商法第603条に相当する規定を設ける必要があるということを前提に、電子倉荷証券記録が発行されている場合において寄託物の分割請求をするときに、その各部分に対応する倉荷証券と電子倉荷証券記録のいずれの交付又は発行を請求する権利を認めるべきかどうかといった観点から、倉荷証券の交付を請求する権利を認めるという甲案と、電子倉荷証券記録の発行を請求する権利を認めるという乙案が提示されていました。   一読目においては、現在の倉荷証券の実務では寄託物の分割請求をする場合は極めて少ないとの指摘がされましたことから、いずれの案を採用しても特段の問題はないものと考えられるところですが、この点については、受取電子船荷証券記録が既に発行されている場合における船積船荷証券又は船積電子船荷証券記録の発行に係る規律と同様に考え、一旦、寄託者及び倉庫営業者の双方が合意の上で電子倉荷証券記録が発行された以上は、寄託物の分割請求をするときであっても、その各部分に対応する電子倉荷証券記録の発行を請求する権利のみを認めることが相当であると考えておりますが、この点についても御検討いただければと思います。   最後に、商法第608条に相当する規定についてですが、電子倉荷証券記録については、現時点においては、部会資料9の第6の2(7)に記載の甲案を採用し、商法第608条、つまり倉荷証券の再交付に相当する規定を設けない方向で考えております。一読目の部会資料9では、電子倉荷証券記録について商法608条に相当する規定を設けるか否かについて、これを否定する甲案と、これを肯定する乙案が示されておりました。電子船荷証券記録については紙の船荷証券とは異なり、電子船荷証券記録を紛失してほかの者が支配をするに至るといった事態は通常では考え難く、運送人が異なる者から二重に当該電子船荷証券記録上の権利を行使される可能性は相当低いものと考えられることなどから、民法第520条の11及び第520条の12が規定する喪失の手続については、設けないものとする方向で検討されているところです。   現時点においては電子倉荷証券記録についても同様に考え、民法第520条の11及び第520条の12が規定する喪失の手続については、設けないものとすることが相当であると考えられますし、商法608条の再交付に相当する規定についても、設けないとする方向性を考えておりますが、この点についても御検討いただけましたら幸いです。   倉荷証券については、以上の3点について御審議いただければと考えております。事務当局からの説明は以上となります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございます。1点、事務当局から補足をお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。倉荷証券の関係で1点、補足をさせていただければと思っております。部会資料には記載していないのですけれども、実はUNCITRALの方で倉荷証券、倉庫証券のモデル法を作ろうという動きがございまして、まだ内容については詳細は十分に把握し切れていないところではございますけれども、そういったところの平仄を考えていくということが今後あり得るかなと思ってございます。今回の資料については、そのUNCITRALのモデル法との平仄ということは全く視野には入れておらず、これまでの提案と御議論の内容を前提に、一定の方向性が考えられるのではないかという形で御提案させていただいているところではございますが、今後、モデル法の内容次第では、また違った提案をさせていただくということがいいのかもしれないということがあり得ると思いますので、少しそこら辺をお含みおきいただけると大変有り難いと思ってございます。   補足は以上でございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   それでは、ここで20分弱休憩を取って、15時30分から再開したいと思いますので、よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○藤田部会長 それでは、時間ですので再開いたします。   部会資料11の第2から第4について事務当局から御説明いただきましたので、以下、議論に移りたいと思いますけれども、差し当たり第2から御意見いただけますでしょうか。   以前から両案が出ていたところですけれども、そろそろ方向性を出せないかということかと思いますけれども、どなたでも御意見いただければと思います。いわゆる乙案、すなわち電子で受取電子船荷証券記録を出した場合には電子で受け取る、その場合に追加記録という形も認める、他方紙の船荷証券を要求することはできないという方向の提案ですけれども、いかがでしょうか。 ○雨宮委員 雨宮です。従前、日弁連は、パブリック・コメントの意見において、甲案に賛成すると述べさせていただいております。その理由としては、受取と船積は違うものなので、電子の受取船荷証券記録が発行されたとしても、電子の船積船証券記録を発行する義務とは理論的には違うだろうということと、電子の受取船荷証券記録に付記する形で紙に代えて対応できるということであれば、運送人としてもそれほど不便ではないだろうということです。しかし、日弁連としては特に甲案にこだわることはありませんので、実務で乙案で差し支えがないのであれば、乙案に特に反対しないという立場です。 ○藤田部会長 ありがとうございました。実務で差し支えないなら、あるいは実務がその方がいいなら、乙案でもいいという感触の御意見だと伺いましたけれども、実務的には乙案の方が自然、あるいは望ましいのでしょうか。その辺りの感触を頂ければと思います。 ○山口委員 山口でございます。正に私どもは当初から乙案がよいだろうと思っていまして、なぜならば、受取電子船荷証券記録がとれているということは、当該運送については電子的な船荷証券記録を使いたいというのが当事者の意思であろうから、船積という新たな状況が発生したとしても、やはり電子船荷証券記録の使用を当事者は求めているのであって、元の紙の証券を求めることは、意思としてはないだろうということでございます。私としては、当初から考えているこの考え方を採用していただく方向で進めていただきたいなと。そして、実務的な運送人の立場から申し上げても、やはり荷送人の立場から申し上げても、この方法がよいのではないかと考えております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。山口委員は当部会でも一貫してこの立場を提唱されてきました。ほかの実務の方はいかがでしょうか。理論的にはどちらが間違いというものではないということは部会資料にも書かれたとおりですので、むしろ実務的にどちらが自然か、望ましいかという観点から御意見いただければと思うのですけれども。もちろん実務的といっても、学者の意見を排除するつもりは全くございませんので、研究者の方からの意見でももちろん結構ですが、どなたでも御意見いただければと思います。 ○池山委員 池山でございます。念のためですけれども、私も山口委員と同意見でございます。それ以上に付け加えるべきことは特にございません。 ○箱井委員 私も船積船荷証券の転換についてはこれで賛成です。電子で出した場合には船積船荷証券も電子でというのはもっともだと思っています。ただ、第3との関係にもなりますけれども、もしどうしてもこのタイミングで紙の証券が荷主側で必要だということになれば、第3での媒体の転換の説明のように、これは当事者間の関係でもって請求できると、これが前提になるわけですね。それだけ確認できれば、書きぶりはこれで私も賛成です。 ○藤田部会長 事務当局から御返答をお願いしますが、今の箱井委員の御質問は、第2で乙案を採っても、船積電子船荷証券記録をもらった上で、第3の規律に従って転換請求して紙に替える道は残っているだろうということですね。 ○箱井委員 箱井です。そのとおりです。荷主側が電子での証券発行を請求しておいて、船積までの時間は短いのに、ここで紙で出せというのがおかしいのは、そのとおりだと思うので、それはそれでいいのですけれども。ただ、取引的事情で、どうしてもこのタイミングで手当が別途必要な場合ですね。前回言われましたけれども、法文に転換請求できないと書き込む場合には、これは処分権としても駄目という話がございましたので、問題になると思うのですけれども、そういうことでなければ。第3では転換請求できないと書くのでしたっけ、少し今、第3と混乱していますが、そこのところで請求可能であれば行けるのかなと思いました。前提として私、第3について誤解があるかもしれません。第3は転換請求できないということを法文に書くのですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。まず、第2の今回の私どもで出させていただいた提案に従ったとしても、転換の規定の適用は受けるということになりますので、このタイミングで電子版ではなくて紙にしたいということであれば、転換ということを求めていくということになろうかと思いますが、ただ、その場合に一方的な転換請求権があるのか、ないのかというところは、また第3のところで御意見があろうかと思いますけれども、一応、今回の事務当局からの御提案としては、一方的な転換請求権までは認めなくていいのではないかという形で整理はしておりますので、確実に運送人側の賛否を全く問わずに紙に替えることができるかと言われると、この第2、第3を併せて読んでいただくと、そこまでの権利はないということにはなるだろうとは思っておりますが、そこは第3のところの固有の論点かもしれません。   あと1点、処分権うんぬんという話が前回も出ていたかとは思いますけれども、ここについての事務当局の整理といたしましては、基本的には転換に関する規定を別途設けるということをするからには、処分権の行使という形で転換請求権があるという解釈は恐らく採れないだろうと考えておりますので、そういう前提で第3のところについても御検討いただければと思っているところでございます。 ○箱井委員 箱井です。転換の規定を置くことによって、その書き振りによって処分権が制約を受けるという議論は恐らくあり得ると思うので、私の理解と違うかもしれませんけれども、説明はよく分かりました。ありがとうございました。 ○藤田部会長 第2については、乙案という提案について、今のところ賛成の意見――雨宮委員の消極的な賛成も含めてですけれども――が出ており、甲案でないと困るという意見はなかったかと思いますが、いかがでしょうか。もしよろしければ、第2については、基本的に御提案の方向でまとめさせていただくことにいたします。   第3に移りたいと思いますが、電子船荷証券記録と船荷証券の転換に係る規律です。これは今、箱井委員からも御質問があった点ですけれども、この点について御意見いただければと思います。基本的には運送人との合意によって転換するという構成でどうかという提案です。 ○箱井委員 箱井です。合意によってということは、要するに積極的に転換を認めないという規律を置かないということ、そういう理解でよろしいでしょうか。転換は駄目だということを書くわけではないと、説明読んで、そのように理解したのですけれども。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。規律の具体的な書き方についてはこれからということにはなりますけれども、基本的には転換については別途規定を設けるということになりますので、その規定を設けるに当たって、両者の合意がなければ紙への転換はできないというか、承諾を得て転換できますと、そういうような書きぶりに恐らくなるかと思いますので、それを裏から読めば、一方的に転換せよということは言えないという形になるということを想定しているところでございます。伝わりましたでしょうか。 ○箱井委員 箱井です。説明は伝わりましたが、私が説明を読んで自分で描いていたイメージとは少し違うので、多少困惑はしております。また後で、もしかしたら発言をさせていただきます。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。似たような条文は、例えばロッテルダムルールズだと10条に置かれていて、紙から電子、電子から紙、両方とも承諾を得て転換することができるという規定がありますけれども、置くとすればそういう規定になるのだと思います。諸外国でもそういうのを置いてある法制はもちろんございます。だから、この提案の場合に、何も置かないということではないのだと思います。そのほか、どの点でも御意見、御質問がございますか。 ○池山委員 池山でございます。第3は細かくいうと論点は三つに分かれていて、一つは転換を受ける主体の問題、それから二つ目が、その転換された場合の記載事項、それから三つ目として、転換請求権を認めるかどうかと、三つあります。そのうちの二つ目と三つ目というのは、論点としては別なのだけれども、若干似ている点があって、私の理解は、今回の事務当局の案というのは、やはりロッテルダムルールとか、最近成立した英国法とか、あるいはMLETRもそうですかね、そういう国際的な潮流に合わせるということなのであろうと理解をしております。   私及び私の推薦元団体というのは元々、特に最後の転換請求権については合意によると、だから請求権なしという意見を申し上げていて、今回の事務当局の案がその方向になっているということは大変有り難く思っております。   他方で、2番目の論点である記載事項については、実は私どもの方はB案だったのです。ここの整理の中で、積極的にB案を支持する見解まではなかったと書いてあるのですけれども、確かにこれは読み方の問題で、積極的かどうかは分かりませんが、B案はB案だったという事実はあります。そこは別に誤解はされていないのだと思うのです。その上で、どこがB案と今回の事務当局の案と違うかというと、転換の事実を書くかどうかということなのだと理解をしております。私は従前、どうも実務だと書いていないものもあるようだし、あえて絶対書けという要求をする必要があるのでしょうか、なしでも行けませんかという意見ではございました。   ただ、正にここに書いてあるとおり、実は先行する広い意味での立法例なのでしょうかね、ロッテルダムルール、MLETRや英国法でも皆そう書いてあるということであれば、むしろ実務の方がそうなっているのだからそれに合わせなさいと、これからはきちんと書くように努力しなさいということなのかなと思っております。それと併せて、転換請求権を認めるかどうかという点も、実務の要望もありますけれども、やはり先行する国際的な事例というのがもう合意を前提としているというものなので、日本だけあえて転換請求権という形にするのは少し先走っているのではないかと、そういう整理をされていると理解をしております。   今申し上げた中では2番目の論点のA案、B案という点については、一応、従来船主協会が申し上げていた案とは違うので、今直ちに分かりました、結構ですというふうには、まだこの1週間で、申し上げることはできないですけれども、事務当局、法務省の御指摘というのは重く受け止めて、中でも検討させていただきたいと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。事務当局に答えていただくことかもしれませんが、確認させていただきたい点は、今回の提案とB案の違いは、9ページのA案のところに書かれているB、つまり転換を受けた者の氏名、名称についての記載を要求するか否かで、転換の事実は今の法務省の案でも基本的には記載を要求するということでしたでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今回の提案というのは、細かいところは省令に委任できたらしたいなというところに加えて、もしその先に省令を作るとした場合にはB以外は入れましょうということでございますので、転換を受けた者の氏名又は名称、これ以外は省令事項として入れるというものでございます。 ○藤田部会長 転換の事実は、記載するわけですね。 ○池山委員 そうです、事務当局の案はそういうものだと理解をしていて、従来の我々の意見としてはそれも要らないという意見だったと、そこは違いがあるのだけれども、事務当局のその意見の背景には、それが国際的潮流でもあるよということだというのは認識しておりますので、重く受け止めたいということでございます。誤解はしていないつもりです。 ○藤田部会長 分かりました。ありがとうございました。   よろしいでしょうか。 ○箱井委員 こだわるようですみませんけれども、何も特段の規律しないで、処分権の範囲内で考える場合とどこが違ってくるのか、今一つよく分からないのです。例えば、後で倉荷証券の分割の話も出るかもしれませんが、倉荷証券の分割請求で603条の規定があります。船荷証券に関しては同様の規定はないですけれども、実務上、そういったものはしょっちゅうあって、必要がありますから、これは恐らく処分権の範囲内でやっているものと理解しています。ここでは、603条の類推適用ではなくて、例えば費用も恐らく荷主負担だと思いますけれども、これは580条の中で考えて、これによって費用を払いなさいということでやっているのだと思うのです。   ですから、紙の船荷証券で考えましても、紙のB/Lの発行を受けたあとで、例えば証券不発行に変更するとかいうことも、恐らく処分権の範囲内でやっていて、費用が生じれば、これは荷主負担だということだろうと。ですから、この電子から紙への転換も、何も規律がなくてもそのように考えられると思うのですけれども、それで費用の所在等もはっきりするとは思うのですけれども。また、説明を伺っていると結果的にもそれに近いように思います。要するに、運送人に過度な負担を掛けるような処分権行使は認められていないので、言ってみれば当事者の合意で行われており、さらに、運送人としてはできるだけ荷主のニーズには応える義務はあると思いますので、非常に都合のいい解決のように私には思えます。そうではなくて、新たな規定をもって、全く処分権の外にしてしまおうとするならば、若干、今のところのニュアンスが出るのかとか、費用のことを書くのかとか、気になります。そうすると、今、紙の船荷証券の書換などは法文では書いていませんので、どうなるのかとか、いろいろなところが気になるのです。別途、規定を設けるというところの積極的な意味というのはどこにあるのか、少し教えていただけたらと思います。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。処分権との関係から、こういった転換の規定を別途設ける必要があるのか否かというところからの、比較的大きな視点からの御質問かなと理解しておりますけれども、これにつきましては、まず、転換についてはMLETRとか諸外国の立法を見ても、特別に切り出して規定はしているところでございますので、やはり国際的な調和という観点からも、処分権の中に含まれるから何もしないというよりは、むしろこちらについてもしっかり書き込んでいくというのがMLETRとの親和性、国際的な潮流との調和という観点から望ましいのかなというのが基本的な考え方の出発点ということかなと思ってございます。   あと、そういう前提で私どもは考えておりましたので、処分権との関係の整理というのは正直なところ、十分詰めて検討できていないというところではありますけれども、この部会においても、それがそもそも処分権の範囲になるかどうかというところから様々な御意見があるのかなとは理解しておりますので、そこの整理というところについては、どちらの考え方に立つにしても、この転換についての規律というものを別途設ければ、基本的にはそれによるという形で整理をしていく、これを基本的な方針として進めていっていいのではないかということで、やっているところでございます。 ○箱井委員 転換の規律があったり、転換できるということが書いてある分には構わないのです。今も、船荷証券の書換えはいろいろあると思うのです、法文には書いていないけれどもできていると。ただ、それを合意によるとしたときですが、先ほど言いましたように、説明を読んでいますと、すごく処分権の考え方に親和的なことが書いてあるように思うのですけれども、規定を設けたときにそういったニュアンスが出るのだろうかといった辺りですね。転換の規律を設けることが、諸外国法との関係でも望ましいというところはよく分かるのですけれども、そうしたときに、単に当事者の合意によると書くだけでここのところは済む話なのかというところは、若干気にはなっているところです。 ○池山委員 今の箱井委員の御指摘は、中間試案の前の段階でもあった御指摘だと思うのですけれども、実は実質的に一番大きな対立点の一つで、そこは、もしも可能であれば、この部会で一つの方向性を出していただきたいと思っております。場合によっては棚上げということもあるのかもしれませんが。   具体的に何かというと、端的に運送品処分権という概念の解釈として転換請求権というのが認められるのか、認められないのかと、そこがやはり同床異夢になっていると強く感じております。事務当局の御説明は、少なくとも明文で書けば、別途、運送品処分権を根拠として転換請求権を認めるということはないだろうと、それは特則があるからだ、特則を作るからだということだと理解しております。そこは結論的には、結論だけを見れば、それに異論はありませんが、私の理解は、そもそもこの転換請求権というのは運送品処分権のおよそ範囲外の問題だと思っていて、箱井先生は、いや、そうではなくて、これは運送品処分権の元々の概念の解釈としては認められてしかるべきだという考えが非常に強いし、そこは変えておられないのだろうと思います。   私の理解では、運送品処分権の条文というのは、荷送人は、運送人に対し、運送の中止、荷受人の変更その他の処分を請求することができると、今読んでいるのは商法の580条ですが、もうここに書いてあることに尽きていて、大ざっぱに言えば、運送契約で提供する運送役務というものの特質に照らして、運送契約の内容を一方的に変更する権限というのが荷送人の側、荷主側当事者の側に認められると、一定の範囲で、その条文であることはよろしいと、でも、正にそれだけです。   転換などというものは、元々船荷証券から電子船荷証券記録への転換などというものは想定されていないのですから、この条文には入りようがないと思っているのです。箱井先生は、いや、この概念の中にやはり入るのだと。これは一つの御見解だとは思うのですけれども、そこはやはり対立としてはあるわけで、そこはやはり一つの方向性としてできるだけ出さないと、将来また問題になるのではないかと。つまり、箱井先生の御意見のままだと、一方で事務当局は先ほど、ここに条文を書けば特則として排除されるとおっしゃいましたけれども、そのような解釈が通る必然性は、立法担当官の意思なのでしょうけれども、やはり対立の火種は残る中で、できればこの580条の解釈についても、すみません、箱井先生と私だけでしゃべっていてもしようがないので、是非皆さんの御意見というのもお聞きして、一つの方向性を出していただければと思います。 ○箱井委員 請求できないという特則を置けば、それはそれで決まりだとは思います。それはこの間もお話ししました。ただ、今回、請求できないものとするとありますが、そういう特則をどう置くというのが説明に書いていなかったので、特に転換請求できるという規定を置かない方針なのかと勘違いをしておりました。合意によりとか何らか書けば、積極的には認めない規定になると、そういうことですね。船荷証券の分割をどう考えますか、分割は実務でも必要な事柄なので、その請求は処分権の中で考えていって、すごく合理的に説明が付くと私は思っております。分割請求とか書換え請求とかその他、要するに運送契約について事後的に変更が必要になることは多々あるわけですね。たとえば生動物の場合の餌やりの変更とかもあるし、そういったものは広く処分権の範囲内であり、これは正に運送の特質に基づくものだと思っています。船荷証券が流通することによって、別の第三取得者がこれでは困ると言えば、それに合わせて変えていかなければいけないわけですので、当然、これらは処分権の中に入ってくるだろうと。ただ、転換を積極的に認めないという特則を設ければ、それに逆らってまで処分権行使できるなどというような主張をするつもりは、これは全くありません。 ○藤田部会長 この第3に即した明文の規定を設けた後の法律の解釈としては、箱井委員と池山委員で何ら違いは出てこない、明文の規定を置かなかった場合の580条の解釈論は、ひょっとしたら違うことをお考えかもしれないという問題のようです。そうなると、この第3に即する明文の規定を置いて、その内容が運送人の同意を要するという内容でいいかということが実質的な論点として残っているという理解でよいでしょうか。 ○池山委員 池山でございます。そうすると、箱井委員への御質問なのですけれども、こういう合意によってのみ転換が可能で、転換請求権は置かないと、転換請求権は明文で認めないと、こういう特則を置くこと自体には反対はされないということなのですか。 ○箱井委員 それは私が今日まで考えていたことと違う前提になってしまったので。でも、別に一人で反対するつもりはありません。私は基本的には、実務がそれでよいのですかというのが一番心配な点です。あと紙との整合性ですよね。ここのところは先ほどの処分権の範囲というと譲れないところは結構あるのですけれども、実務家が実務において本当に困らない、請求権を認めないでよい、合意でもオーケーだということであれば、これは研究者の側から申し上げることは全くないというふうに思います。先ほどおっしゃられていたような、正に政策的、実務的な判断が先になってくるだろうと思いますし、紙との扱いがすごく変わってくるわけですけれども、それは正に電子船荷証券だからこそ、媒体の転換というのが非常に重要な局面になってきて、だからこそ特則が必要なのだということであれば。これは倉庫証券を考えても納得いきますよね、寄託者や証券所持人の処分権の規定というのは特にないですけれども、寄託物の分割についてはしっかり規定しているというのは、やはり倉庫の特性として、倉荷証券の場合、分割は、これはもう認められなければ困るということでしょう。それと一緒に考えましても、電子B/Lについては紙からの転換という、紙だけの世界ではない規定を別途設けて、それについて実務で合意された、納得された結論になるということであれば、私は何も申し上げることはございません。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○池山委員 御趣旨はよく分かりました。念のためなのですけれども、分割についてなのですけれども、倉荷証券についてどうこう申し上げるつもりはございません。船荷証券における分割というのも一部想定されていたかもしれないのですけれども、それは言ってみれば荷受人の一部変更、今までは全ての貨物、10の貨物全部をAに対してだったのに、一部はA、一部はB、そういう形の変更ができるかという議論なのだと思っております。それは正に580条の解釈として、ここでいう荷受人の変更には一部変更というのもあり得るのかという議論で、そこは確かにここで議論するような話ではないと。私が申し上げたかったのは、転換は処分権の範囲外だと思いますよという、それ以上でもそれ以下でもなくて、ただ、処分権の議論ではなくて、結論的にどうかという点については、実務の要望に応じてそういう特則を作るのであれば、それはそれでいいということであれば、別に、ありがとうございますということだと思います。 ○箱井委員 終わりにしようと思ったですが、今のを少し。船荷証券の分割発行というのは従前の同一荷主宛に分割することもあります。ですから、分割の場合には荷主が替わることを理由に、荷受人の変更として処分権規定の対象になるということをそこで言われますと、私も一言言わざるをえないとなってまいります。同一荷主への分割ということだって十分あり得るし、その要望に処分権の範囲内で対応する必要は、私はあると思っています。 ○藤田部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。 ○池山委員 それはもう580条の議論だということですよね。結構です。 ○藤田部会長 第3の点については、箱井委員からの御指摘は、このようなルールにする立法事実があるかということで、立法事実がある、そういうふうにする実務上のニーズがあるのであれば、第3に書かれた提案の内容で立法して、その場合には専らこの規定によって転換をすることになり、その場合は580条の運送品処分権による転換ということは考えないというルールになっても構わないという御意見ですので、多くの実務の方がそういうルールを支持されるかということを確認すればよいということになるのだと思います。 ○箱井委員 それは荷主ですよね、荷主側。 ○藤田部会長 荷主側にとって、これで回るかということが重要なのだと思います。 ○洲崎委員 洲崎でございます。第3の転換に関する規律のうち、2の記載事項、記録事項の問題について発言をさせていただきたいと思います。   1の問題、転換を受ける主体については、今回の部会資料ではB案を採ることを提案されていますけれども、私はこの事務当局の御提案に賛成でございます。その理由は、これはパブリック・コメントでB案を支持する意見の中で書かれていた理由、8ページにございますけれども、その理由と同じであります。   この1の問題についてはB案を採るということを前提とした上で、2の記載事項に関してなのですけれども、今回の部会資料では9ページの下の方でA案とB案の折衷的な考え方、これは基本的にはA案によりつつ、Bの記載事項、つまり転換を受けた者が誰かについては記載事項とはしないという方向が示唆されているのですけれども、この考え方を採る一番大きな理由は、MLETRやイギリス法ではBの事項は記載事項とはされていないということかと思います。私自身も、やはりMLETRで記載事項となっていないものを法定の記載事項とするという方向は、確か少し難しいのかなという気がいたしておりますので、Bを法定の記載事項とはしないという折衷案の方向性については基本的に賛成をしたいと思います。   その一方で、この問題について中間試案の補足説明では、Bの事項は任意に記載、記録することが望ましいとしても、法定の記載記録事項とまではしないということも考えられるという表現があったのです。具体的には中間試案の補足説明の38ページの上から4行目にこういう表現があったのですけれども、今回の資料では任意的記載事項として扱うという可能性については特に言及されておりません。しかし、書かれていないのだけれども、任意的記載事項として扱うことが可能であるということが含意されているというか、そのことが前提になっていると理解してよいのか、これが質問の第1点でございます。   次に、仮にこのBの「誰が転換を受けたのか」ということを任意的記載事項として整理するとした場合は、これを任意的記載事項としますということを明文で定めるのかどうかという問題が出てくるかと思います。つまり、Bは転換後の証券に記載することができるというような規定を置くのか、そのような規定は置かずに、解釈に委ねるのかという問題でございます。   何でこのようなことを気にするかというと、手形法では条文で幾つかの事項を任意的記載事項にすると、手形法の世界では有益的記載事項と呼んできたと思いますけれども、そういう明文の規定が置かれているということもあってだと思いますけれども、手形法の世界では、手形法で何も書いていない、任意的記載事項にするということが書いていない事項を任意的記載事項として認めることはできないのではないかと、学説上は少なくともそういう見解も存在していますので、明文の規定を設けるかどうかというのは一つ、問題になるのかと思います。   私自身はBの記載事項は、実務的観点からは証券に記載された方がよいというか、絶対にあった方がよいと思っています。手形のような厳格な要式証券と船荷証券は違いますし、特に転換を受けた者の氏名は、それが記載されたからといって証券の関係者に何らかの不利益とか不都合が生ずるとは考えられませんので、そういうことを実質的な理由として、Bの事項を任意的記載事項として記載できるということについて明文の規定を置かなくても、完全に解釈に委ねたとしても多分、認められるのではないかと個人的には思っているのですが、ただ、事務当局としてこの点について異なったお考えを持っておられるのであれば、それについて御教示いただければと思います。これが第2点でございます。   質問はこの二つなのですが、先ほど少し申しましたように、Bの事項は実務的観点から絶対あった方がよいのではないかと考えている、なぜそういうふうに考えているかについて、少し話をさせていただきたいと思います。   転換は紙から電子への転換と、電子から紙への転換の両方がありますけれども、以前に池山委員だったかと思いますが、実際起こりそうなのは電子から紙への転換だろうという御指摘があったかと思いますので、それを例にとって説明させていただきたいと思います。Aが荷送人になって電子船荷証券記録の発行を受けたとすると、Aが最初の権利者で、Aが白地式電子裏書をして、その後、支配の移転だけで証券記録が譲渡され、現在、Bが証券記録の支配を有しているとします。そういう状況で、Bとしては証券記録を譲渡したいのだけれども、譲り受けてくれそうな候補者は電子船荷証券記録のシステムを導入していないので、紙の証券に転換した上でCに裏書譲渡をするということをBは考えている。電子船荷証券記録のままであれば、Bはそのまま証券記録上に自分の名前を出すことなく、支配移転するだけで譲渡できるのですけれども、紙の証券に転換するとして、かつ指図証券の性格を残そうとすると、やはりBとしては証券上に裏書をしないといけなくなるのだろうと思います。   問題は、この転換された紙の証券について裏書の連続が認められるかどうかということなのですが、転換後の紙の証券には最初の権利者、つまり荷送人としてAの名前が記載されているはずでが、裏面の裏書で書かれているのはBの裏書署名だけなので、証券上、最初の権利者はAであるのに、いきなりBが裏書をしているわけで、それだけを見るとAからBへの裏書の連続は認められないと思います。この裏書の連続に関するルールとして、証券所持人は転換を受けた者が裏書の連続によりその権利を有したことを証明したものとみなす、こういう規定を置くこととしていますので、最初の権利者であるAから転換によって紙の証券の交付を受けた者まで、そこまでの裏書の連続はあることになりますが、しかし、転換を受けた者がBであるということが証券上明らかでないと、全体としてはやはり裏書の連続はない、裏書の連続が途絶えてしまうということになるのだろうと思います。   というのは、裏書の連続があるかどうかというのは、外形的、形式的、客観的に判断するというのが大原則なので、連続があるかどうか調査しなければ分からないというような状況は、それはもう法的評価としては、連続はないということにならざるを得ないと思うのです。調査した結果、転換を受けた者とBが同一人物であるということを確認できれば、それは言わば連続が欠けている部分の橋が掛けられる、手形法でいうと架橋理論ですけれども、その欠けている部分が架橋されて、全体としての裏書の連続が認められるということになると思いますが、架橋がなされていなければ裏書の連続はないということになると思うのです。   これまでの部会の議論では、Bの記載事項がないと権利の移転の確認に困難が生じるといった指摘がされてきたと思うのですけれども、私の理解では、より端的に表現すると、Bの記載事項がないと、裏書の連続がなくなってしまう、つまり、調査しなければ分からないようだと、それは裏書の連続があるとはいえないというべきなのではないかと思っています。   これが実務的にどういう影響を与えることになるかというと、現在の船荷証券実務では記名式裏書をするということはほとんどなくて、基本的に白地式裏書しか行われていないということのようですから、そうだとすると、現在のシステムは裏書の連続がないというような状況はほとんどない、もし違っていればどなたか御指摘を頂きたいと思うのですが、そういう実務がある中で、電子船荷証券記録が入ってきて、紙に転換すると裏書の連続がなくなってしまう、そういう事態が生ずるとなると、実務はすごく混乱されるのではないかと思うのです。   外形的に裏書の連続がない以上、そのままでは善意取得の保護が得られませんから、その証券を取得することに二の足を踏む者が出てくるだろうと思いますし、運送人もこの裏書の連続がなければ善意支払いによる免責が受けられなくなって、相当に困るのではないかと思います。つまり、一旦転換がされてしまうと、連続が途絶えている部分の調査をしないと安心して証券を取得できない、安心して運送品を引き渡せない、そういう状況が生じてしまうのではないかと思います。そういう事態が生じないようにするためには、任意的記載事項でもよいので、ともかく転換を受けた者の氏名を証券に記載できるようにして、その者と転換後の最初の裏書人が一致していれば、それで裏書の連続が保たれると、そういう制度にしておく必要があると思います。   というわけで、結論として、Bの事項というのは法定の記載事項とするまでは求めなくてよいとは思うのですけれども、任意の記載事項とすることは認められるし、実務的にはそれが強く推奨されるということを確認しておくのがいいのではないかと考えている次第です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局からお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。非常に難しいところについて詳細に御意見を頂きまして、大変助かります。ありがとうございました。   まず1点目の、転換を受けた者の氏名又は名称、これを任意的な記載事項として認めるか、認めないかというところでございますけれども、この任意的な記載事項の意味にもよるところではあるのですけれども、基本的にこれを書いていただくことについては全く問題ないと我々としては思っておりますし、実務的な運用としては、法定の記載事項ではなかったとしても、何らかの形でこれが分かるというところが広く使っていただくためには有益なのだろうとは思っておりますので、少なくともこういった記録ができないようなものにするということは全く考えておりません。   ただ、そういった任意的な記載事項をどういうふうに整理しようかというのは随分、初期的なところで検討したことがあったような記憶なのですけれども、そういったところの総則的な規定は基本的には設けないでいいのではないかというような整理が一度されているのかなと思っておりますので、何か法定の記載事項以外の事項について書ける、書けないみたいなところについては、特に規定は設けなくても、当然書いても別にいいのではないかという前提で、これまで整理はされてきたのかなという理解でございます。   ただ、この任意的記載事項の意味なのですけれども、書いたら書いたで好きにしていいよというところにとどまるのか、書いたら何らかの効果がありますよというところまで含意しているとするならば、後者の考え方であれば、それは何かしら恐らく規律としては書いていかなければいけないとは思ってございます。今の洲崎委員の御指摘の中には、ひょっとしたらそういったところも含まれているのかなと思って拝聴していたところでございまして、具体的には、白地式裏書なりがされた場合については、その転換を受けた者の氏名又は名称を書けば、そこまでの裏書の連続はあるのだよ、みたいなことを何か効果として書いた方がいいのではないかというような趣旨の御指摘ももし含まれているとするならば、そこは何らかの形で書くということも考えられるかもしれないとは思ったのですけれども、他方で少し、ここは裏書の連続をどういうふうに捉えるかというところもまた整理していかなければいけないところかなとは思っておりますので、そういったところの必要性なりにつきましては、また引き続き検討させていただければと思っております。   差し当たっては以上でございます。 ○藤田部会長 ということですが、洲崎委員、よろしいでしょうか。 ○洲崎委員 はい、結構です。どうもありがとうございました。 ○藤田部会長 これは8ページに書いてある、別途設ける権利推定規定、つまり転換を受けた者が裏書の連続によって権利を証明したものとみなすような規定とも関係するということでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今考えている、転換を受けた段階での権利推定はできますよということを規定は置こうとは思っているのですけれども、その規定だけで今の洲崎委員からの御指摘について十分対応し切れているかどうか、というところからの検討なりが必要かなと思っておりますので、それだけでもし足りないということになると、任意的な記載事項として書いた転換を受けた者の氏名又は名称、これを書いた場合には別途こういう効果がありますみたいなことを少し書き込んでいかなければいけないかもしれないというところで、そこはどういう整理ができるか次第かなと思っているところでございます。 ○洲崎委員 任意的記載事項として転換を受けた者の名前が書かれれば、その者までの裏書の連続はあったとみなされることになって、その者が紙の証券に裏書をすれば、その後も裏書の連続があれば、最終の所持人は結局、権利者として推定されることになるので、特に何か規定を置かなくても、転換を受けた者の名前が証券に記載されていれば、それで特に大きな問題はないのではないかという気がしております。   転換を受けた者が先ほどのBであるとして、Bから更に幾つか譲渡されて、裏書欄にというか、紙の証券の裏側にBではない者がもし署名していることがあるとすれば、そこは結局やはり裏書の連続がもうなくなってしまうので、紙の証券の交付を受けたBと最初に裏書をした者の間の権利の移転があったということを証明しない限りは結局、裏書の連続が認められないので、最終の所持人の権利推定も認められない、多分そういうことになるのではないかなという気はしますけれども、ただ、先ほど言われた、何か規定を置かないと差し支えが生ずるということはないような気はしております。私も、規定を置くとしてどういう規定が考えられるのかというのは考えていなかったものですから、単に転換を受けた者の名前が書いてあって、その者が最初に紙の証券に裏書をすれば、それでもう問題はなくなると考えておったということでございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。   そのほか、第3についてどの点でも、御意見がございますでしょうか。 ○池山委員 池山でございます。これは感想めいたものですけれども、洲崎委員の御指摘の内容というのは、理屈としてはごもっともだと思っております、私も少なくとも個人的には。その中で、任意的記載事項にするにしても、実務としてはそれを書かないと混乱する可能性があるから強く推奨しますという点についても、これは正に貴重な御指摘として受け止めたいと思っております。   ただ、実際のところ、元々転換の事例というのはそれほど実例が積み重なっているわけではないので、本当の意味で直ちに大混乱が生じるのかどうか、そこまでは正直言って、分からないです。だけれども、可能性としてはおっしゃっていることには何ら異存はありません、正しいと私も思います。なので、その御指摘を踏まえて実務の側でも考えていく必要がある問題だと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そのほか、どの点でも、御意見等がございますでしょうか。   よろしいでしょうか。乙案、すなわち運送人の承諾を得て転換するという方向での規定を設けるという原案は、一応実務的には支持があるという御意見があり、それで理論的にも受け入れられるという御意見が出されたかと思います。あわせて、転換された場合の記載事項などについては若干懸念も表明されて、この点については更に、問題が起きないことを確認し、何らかの措置が必要かどうか、あるいは必要だとすればどんな措置が望ましいか――それは実は記載事項として、例えば任意的記載事項について条文で言及するかどうかというところに関わるかもしれませんけれども――についても検討するということだったと思います。このようなところでよろしいでしょうか。 ○池山委員 部会長がおまとめになった後で。これは一応、補足ですけれども、先ほど手形との比較を洲崎委員がおっしゃっていましたけれども、私の理解は、手形と船荷証券の違いというのは、船荷証券の場合、元々任意的記載事項が一杯書いてありますので、その前提は、任意的記載事項はそれはそれで意味があるという前提だと理解をしております。その新たな任意的な記載事項の一つとして、理論的には洲崎委員がおっしゃったようなことも考えられるのではないかということだと理解をしております。 ○藤田部会長 元々船荷証券は任意的記載事項がいろいろあるという前提は共有されていると思いますので、事務当局もそれを踏まえて検討していただけるとも思います。特定の事項について任意的記載事項であるとはっきり書き込むことの意味というのも、また検討することになると思うのですけれども、事務当局において検討いただければと思います。   第3については、この辺りでよろしいでしょうか。   ○箱井委員 確認だけさせていただきたいのですけれども、今まで議論しているのは、電子で発行されたものを紙に替える、その逆もあるかもしれませんけれども、これは同一のB/Lということが前提になっていますね。紙から紙への書換えの事情というのは、これは同一証券ではないはずなので。例えば、様々な目的で元々のシッパーを秘匿するとか、取引上の事情などで紙から紙に書き換えてもらう場合、先ほどの分割のように小口に分けてというような、そういった場合、それまでの裏書を再現したりするわけではないので、恐らく法律上は新規の証券発行といいますか、別の船荷証券の発行になると思うのです。そういった事情の場合は、先ほどの転換規定とは関係がない、全く新規の証券発行で、これは紙と同じように考えるという理解でよろしいでしょうか。それを確認させていただきたいと思います。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今の点につきましては、御理解のとおりでいいかと思っておりまして、ここは飽くまでも同じものについて、その媒体を替えると、こういう規律だろうと思っておりますので、従前のものを全て無効化させて全く新しいものを発行するという局面につきましては、また別の、従前の考え方というものが適用されるということでいいのかなと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   それでは、「第4 倉荷証券に関する規律」について、御意見等がございましたらお願いいたします。 ○渡邉幹事 クリアリング機構の渡邉でございます。部会資料の4の1と2と3について意見を述べさせていただきます。   まず、1番の転換に係る規律のところでございますけれども、今後、先物取引の受渡しが紙から電子に移行した場合、その移行前に発行している倉荷証券というのも受渡しに使えるようにする必要があるのではないかと思っていますので、紙から電子倉荷証券記録への転換というのは規定があった方がいいのではないかと思っております。ですので、倉庫業者さんとの合意の上で電子倉荷証券記録への転換ができるようにする必要があるのではないかと思っているところでございます。その上で、転換を受ける主体ですとか転換後の記載記録事項ですとか、あとは転換請求権について、船荷証券の方がまだどうなるか分からないというのはあるかもしれないですけれども、基本的には船荷証券と同じような取扱いで問題ないのではないかと思っているところでございます。   2番の603条の分割請求のところについてですけれども、こちらについては以前の第9回でも申し上げたとおり、先物取引の受渡決済の観点からは、この分割請求というのは行われていないので、ということではあるのですけれども、任意規定としてこういう規定を置くということについては特に問題がないのではないかと思っているところでございます。   最後、3番の再交付のところでございますけれども、電子倉荷証券の記録の再交付につきましては、例えば電子倉荷証券記録のシステムを作った場合には、通常時であれば、システムの管理者を置いた場合には、その管理者が誰が持っているかというのは把握できている状態にあるかと思いますし、仮にシステムがダウンして一時的に記録が消失するというようなことがある場合でも、平時からバックアップのデータを取るなどいたしまして記録を復旧できるような措置をするのが普通ではないかと思います。そういうことを考えますと、船荷証券と同じように電子倉荷証券記録の喪失というものに相当するような場面というのはなかなか想定しづらいのかと思いますので、再交付の規定をあえて設ける必要性というのはすごく小さいのではないかと思うところでございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何かございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。基本的には事務当局の方で整理させていただいたところにつきまして御賛同いただいたのかなと理解しておりまして大変有り難く存じます。   ただ、一方で、先ほど少し補足説明で申し上げさせていただいたとおり、今、国際的な取組として少し倉荷証券のモデル法なりも検討されておりますので、そういった状況なりも見極めながら考えていきたいとは思っておりまして、倉荷証券につきましては船荷証券と違って、それほど国際的な使われ方をしているわけではないというところがあるところはありますけれども、長い将来で見たときに、本当にそういったことがおよそあり得ないかというと、そういうことまでは言い切れないとは思いますので、できる限り国際的な潮流を踏まえてやるというところはあり得るだろうとは思っておりますので、またそこにつきましては、事務当局の方でも情報を収集しながら適宜また御意見を頂戴していきたいと思っているところでございます。ありがとうございました。 ○藤田部会長 今の御意見で1点目のところで言われたことですが、紙で既に出ているものを、この法律ができて電子化ができるようになった後に電子化するということを想定されたのでしょうか。 ○渡邉幹事 そうですね。 ○藤田部会長 それは経過規定との関係を検討する必要がないでしょうか。既に紙の倉荷証券が発行されていて、その後に法律の効力が発生した場合に、そういう倉荷証券にこの改正法が適用されるかどうかは経過規定次第でよく分からないので、第4の提案によって御指摘にニーズにこたえることができるかどうかはよく分からないなと思って伺っていたのですけれども、いかがですか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。その点については、具体的には多分、経過措置をどういうふうに定めていくかということになろうかと思っております。ごく一般的な話をさせていただくと、恐らくは施行日以後に発行された倉荷証券とか電子倉荷証券記録について適用されるというのが多分一番オーソドックスなルールになろうかと思いますので、それを前提にすると、施行日以前に発行された倉荷証券については多分、転換の規定は適用されないというのが基本的な出発点になりそうな気はしますが、ただ、そこのところは、いや、そういったものについても転換の規定を及ぼすのだというような立法ということができないかと言われると、そうでもないような気はしておりますので、最終的にはそこはそういった形で書いていけるかどうか、あるいはその前提として、ニーズがどこまであるのかというところとの兼ね合いだろうと思っておりますけれども、そこのところも検討課題なのかなというところは認識させていただきました。ありがとうございます。 ○藤田部会長 ただ、渡邉幹事としては、今の点で役に立たないかもしれないからといって、提案に反対というわけではないと理解してよろしいですね。 ○渡邉幹事 そうですね、反対ということではないです。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そのほか、どの点でも、倉荷証券について御意見等がございますでしょうか。 ○猪俣委員 三菱倉庫の猪俣です。今、クリアリング機構の渡邉様が言われたことに全面的には反対はないのですけれども、実務者としましては、くどいようですが、倉庫業法上の規定との整合性と、今言われたような、既に紙で発行していたものの取扱いについてはきちんと決めていただかないと、倉庫業者の同意があればどうのこうのというような、倉庫業者に判断させるようなことのないようにお願いしたいと思います。 ○藤田部会長 御意見ありがとうございました。倉庫業法については、商法が改正されたことを前提に、どう考えるかを関係する省庁で検討していただくということですね。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘のとおりでございまして、今、倉荷証券については倉庫業法上使える人が限られているということだろうと思っておりますので、同じようなものを電子倉荷証券記録として作るということになりましたら、電子倉荷証券記録についても同じように業規制を及ぼすべきかどうかというのは当然問題になると思いますので、基本的にこの立法をする方向で固まるということでありましたら、私どもとしても関係省庁としっかり検討して、その点については一定の結論を出すということにはなりますので、そこのところはしっかりとやっていきたいと思っております。   また、2点目で言われた点につきましては、経過措置の規定の書き方で、どちらになるかはいずれにしても、はっきりするわけですので、そこら辺が宙ぶらりんになって当事者にお任せということにはならないというところはあろうかと思っております。 ○猪俣委員 もう一つよろしいですか。三菱倉庫の猪俣です。14ページの一番下に、一時的に喪失した電子倉荷証券記録が復元されるかもしれないというくだりがあるのですけれども、有価証券の性質を有する記録が一時的になくなって、復活されたものが果たして正なのかというところは、どういう整理になりますでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。もちろん程度にはよるとは思います。一般的な技術的な要件に引っ掛かるようなものであったら、はなから無効だったという考え方はあろうかと思いますけれども、そうではないというもので何らかの事情で一時的に消失するということがあったとしても、それはそれで復活したら、いいのではないかという整理はできるのかなとは思っているところでございます。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。   そのほか、どの点でも御意見、御質問がございますでしょうか。   もしないようでしたら、これで本日の議題は全て終了いたしましたので、本日の審議はこの程度にさせていただければと思いますが、よろしいですか。   どうもありがとうございました。   では、次回の議事日程等について事務当局から御説明をお願いいたします。 ○渡辺幹事 本日も長時間にわたって御議論いただきましてありがとうございました。   次回の部会につきましては、令和5年10月4日水曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省地下1階の大会議室を予定してございます。11月以降の部会の日程につきましては、大変申し訳ございませんが、現在調整中でございますので、決まり次第できるだけ速やかにアナウンスさせていただきたいと存じます。今しばらくお待ちいただければ幸いに存じます。   次回取り扱う内容につきましては、本日までの議論の状況を踏まえて事務当局において検討させていただきたいと思います。 ○藤田部会長 それでは、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会、第11回会議を閉会させていただきます。   本日は熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。 −了− - 1 -