法制審議会 商法(船荷証券等関係)部会 第12回会議 議事録 第1 日 時  令和5年10月4日(水)自 午後1時29分                     至 午後3時47分 第2 場 所  法務省地下1階 大会議室 第3 議 題  船荷証券に関する規定等の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(2) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○藤田部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会の第12回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は上田委員、山口委員、家原幹事、松井幹事は御欠席と伺っております。北澤委員、洲崎委員、竹内委員、松井委員、久保田幹事、笹岡幹事、新谷幹事、竹林幹事はウェブで参加されると伺っております。   また、委員の交替等がありましたので、御報告させていただきます。   金子委員が退任され、新たに竹内委員が就任されましたので、竹内委員には簡単な自己紹介をお願いいたします。その場で、お名前と御所属の御紹介をお願いいたします。 (委員の自己紹介につき省略) ○藤田部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   まず、前回に引き続き、本日はウェブ会議の方法を併用して議事を進めたいと思いますので、ウェブ会議に関する注意事項を事務当局に説明してもらいます。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。前回までの部会と同様のお願いとなりますが、念のため改めて御案内をさせていただければと存じます。   まず、ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては、御発言される際を除き、マイク機能をオフにしていただきますよう、御協力お願い申し上げます。御質問がある場合や審議において御発言される場合には、画面に表示されている手を挙げる機能をお使いください。   なお、会議室での御参加、ウェブ会議での御参加を問わず、御発言の際にはお名前をおっしゃっていただいてから御発言いただきますようお願い申し上げます。ウェブ会議の方法で出席されている方々にはこちらの会議室の様子が伝わりにくいため、会議室の皆様におかれましては、特に御留意を頂ければと存じます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   次に、本日の審議に入ります前に配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。配布資料について御説明いたします。   今回配布した資料は、部会資料12「船荷証券に関する規定等の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(2)」の1点でございます。これは事務当局で作成したものでございますので、後ほどの審議の中で事務当局の方から説明をさせていただきます。   配布資料の説明は以上でございます。 ○藤田部会長 それでは、本日の審議に入りたいと思います。   まず、部会資料12について、事務当局から御説明をお願いいたします。 ○中村関係官 それでは、法務省の中村の方から、今回の部会資料について説明をさせていただきます。   今回は、電子船荷証券記録の支配を有する者に対する強制執行の規律の内容に絞って、御審議をお願いするものとなります。非常に難しい問題でございますので、少し時間を取って説明をさせていただきたいと思います。   まず、今回の部会資料の1ページ目の上段のとおり、大枠といたしまして、今回の部会資料において、事務当局からは中間試案の第7の丙案の考え方を採り、強制執行に関する規律の内容として、運送品の引渡しに係る債権に対する強制執行がされた場合には、債権者は当該電子船荷証券記録の支配を有する者に対し、その支配の移転を自己に対してすることを求めることができるといった規定を置くことを提案させていただいております。   その背景でしたり関連する論点について、以下補足説明をさせていただきます。   まず、部会資料の1ページ目の後半から3ページ目にかけて、この論点に関する今までの議論を改めて振り返っております。時間も限られておりますので詳細は割愛いたしますが、中間試案では、甲案、乙案、丙案、丁案という、大きく四つの考え方を示しておりましたが、いずれの案に対しても難点の指摘がございまして、パブリック・コメント手続においても特定の案に支持が集約することなく、意見が分かれていたところでございます。   今回、再度提案させていただく丙案の考え方につきましても、紙の船荷証券に適用される民事執行法148条と平仄をそろえるという点では理論的な構成であり、一定の解決を図ろうとするものではあるという評価もあったものの、その一方で、債務者が協力しなければ実効性に乏しく、結局は運送品の引渡しに係る債権に対する強制執行がされても、債務者が電子船荷証券記録の支配を有したままの状態が続くこととなりかねず、そうすると、運送品の引渡しに関する法律関係の不明確さを解消することには至らないのではないかといった指摘もあったところでございます。   次に、今回の部会資料の3ページ目から4ページ目にかけまして、改めて電子船荷証券記録が作成された場合における強制執行手続との関係についての基本的な考え方の整理を試みております。   まず、前提といたしまして、電子船荷証券記録の法制化に伴い、強制執行に関して特段の手当てをしない場合、運送品の引渡しに係る債権は債権執行の対象となると考えられますが、一方で、電子船荷証券記録自体は民事執行法148条1項でいうところの「証書」には当たらないものと考えられるため、特段の規律を設けない限り、債務者に電子船荷証券記録の支配の移転を行う義務はないこととなるため、運送品の引渡しに係る債権に対する強制執行がされた後も、債務者の元に電子船荷証券記録の支配が残ることとなり、債務者が第三者に電子船荷証券記録の支配を移転するという可能性もあると言えます。この場合に、差押債権者と差押え後に電子船荷証券記録の支配を取得した者との優先関係が問題となるわけでございますが、一般的には債権譲渡の第三者対抗要件の具備と差押命令の送達の前後によって、優先劣後が決まると解されているかと存じますので、それとパラレルに考えれば、電子船荷証券記録が作成されている場合における運送品の引渡しに係る債権の譲渡と、それに対する差押えの優先関係につきましては、支配の移転と差押命令の送達の前後によって決せられることになるものと考えております。   したがって、運送品の引渡しに係る債権に対する差押命令が運送人に送達された時点で、債務者が電子船荷証券記録の支配を有している場合には、当該差押命令が奏効し、その後に債務者から支配の移転を受けた第三者がいたとしても、差押命令の効力が優先するということになりまして、他方で、運送品の引渡しに係る債権に対する差押命令が運送人に送達された時点において、既に債務者が電子船荷証券記録の支配を第三者に移転していた場合には、差押命令が奏効せず、第三者に対する債権譲渡の効力が優先することになるものと考えられるところでございます。その意味で、強制執行がされた場合の法律関係につきましても、理論上は必ずしも不明瞭になるわけではないという整理もできるところかと思われます。   このような整理を前提といたしまして、改めて丙案の考え方をベースとした今回の規律案及びそれに関連する論点について説明をさせていただきます。   まず、先ほどの説明のとおり、運送品の引渡しに係る債権の譲渡とそれに対する差押えの優先関係につきましては、支配の移転と差押命令の送達の前後によって決せられることなり、その限りにおいては法律関係が不明確になるということはないと言えますが、その場合に、電子船荷証券記録の支配を有していない差押債権者は、商法764条に相当する規定、すなわち、受戻証券性の効果により運送品の引渡しを受けることができない可能性が残る、この点が次の議論の出発点になると考えております。   このような問題状況の解消方法としては、そもそも強制執行がされた場合には、中間試案の甲案のように電子船荷証券記録の効力を失わせることでしたり、そこまでせずとも、受戻証券性の効果のみを否定してしまうという選択肢もあるところかと存じます。しかしながら、いずれもやはり運送人の側からいたしますと、電子船荷証券記録の支配の有無という客観的な指標のみで判断する余地が奪われてしまうことになりますため、酷な面があることは否めないところかと存じます。   そこで、運送人の防御の機会を維持しつつ、可能な範囲で差押債権者の保護、そして差押えの実効性を保つために、差押債権者に対して支配の移転請求権を認めようと考えるものが、従前の丙案であり、今回の規律案となります。   中間試案の丙案においては、支配の移転を求める相手方を、その時点で電子船荷証券記録の支配を有する差押債務者に限っておりましたが、先ほど述べましたとおり、差押えが奏効し、その後に債務者から電子船荷証券記録の支配の移転を受けた第三者がいましても、当該差押命令の効力が優先することになるという考え方からすると、債務者に限らず、電子船荷証券記録の支配を有する者とすることが相当であると考えられましたので、その点のリバイズのみしております。   このような考え方に対しましては、先ほど述べましたとおり、そもそも実効性の点に難点があるのではないかといった指摘があったところでございます。しかしながら、改めて考えますと、必ずしも実効性がないとまでも言い切れず、このような規律を設けることの意味というのは、十分にあるのではないかと考えております。   5ページの(2)に記載させていただきましたとおり、まず、たとえ差押えの元となる原債権の任意の履行を差押債務者が拒んでいたとしても、運送品の引渡しに係る債権が実際に差し押さえられ、処分禁止効といった法効果も受けた段階になっては、電子船荷証券記録の支配の移転に任意に応じるといった可能性もあるように思いますし、このような実体法上の支配の移転請求権を認めれば、それに対する間接強制も可能となるところであり、間接強制の効果が必ずしも薄いということもないように思われます。また、先ほど述べたとおり、差押えが奏効した後に支配の移転を受けた者がいる場合を想定すると、そのような者は当該差押命令に劣後するということが確認できるのであれば、任意に支配の移転に応じるといったことも十分にあり得るものかと考えております。   さらに、実際にこの電子船荷証券記録を利用する場面においては、その利用のためのシステムといったものが想定されるところでございますが、この電子船荷証券記録の支配を有する者が、システム提供者に対して、自己の指図に従って支配を移転するための作為を求める権利といったものが契約上認められるような場合には、この規律案による支配の移転請求権を被保全債権としたうえで、その契約上の権利を代位行使するといった余地もあり得るように考えております。このように考えますと、丙案につきましても一定の実効性があるものと評価することはできるように考えられるところでございます。   次に、このような規律案を採った場合の関連する論点についても、若干補足説明をさせていただきます。   まず、部会資料の6ページの(3)でございます。運送品の引渡しに係る債権に対する仮差押えがされた場合はどうするかという論点でございます。   理論的には、仮差押えがされた場合についても、仮差押債権者に支配の移転請求権を認めるという方向性も考えられなくはないところでございますが、紙の船荷証券に関しましても、仮差押えがされただけでは、原則として執行官が船荷証券を保管するにとどまり、仮差押債権者が運送人に対して船荷証券と引換えに運送品の引渡しを受けることができるわけではございません。また、仮差押え後に本執行に移行するとも限らないということを踏まえますと、電子船荷証券記録が作成されている場合においても、運送品の引渡しに係る債権に対する仮差押えがされただけでは、支配の移転を求めることができるものとする必要はないと考え、今回の規律の対象からは仮差押えがされた場合は外すこととしております。   次に、同じページの(4)、差押命令の効力が優先する場合における電子船荷証券記録に関する規定の適否、すなわち、差押えが奏効した場合において、電子船荷証券記録に関する各種規定の適用をそのまま認めることとしても問題がないかという点も、一応の論点になり得ると考えておりますが、結論としては、あえて特定の規定について変更を加えたり、適用を除外したりするような必要性というのもないのかなと考えているところでございます。   続きまして、7ページ、(5)の強制執行の対象となる権利の特定の仕方という論点でございます。これまでの御審議の中では、この運送品の引渡しに係る債権ではなくて、「電子船荷証券記録上の権利」とすることも考えられるのではないかといった意見もあったところでございますが、「電子船荷証券記録上の権利」といたしますと、運送品の引渡しに係る債権以外の附随的な権利も含まれ得ることになるところ、そのような附随的な権利に対する強制執行の場面で支配の移転請求権まで認めるということは、必ずしも相当ではございませんため、飽くまで本規律案は強制執行の対象を運送品の引渡しに係る債権と記載することとしております。   なお、船荷証券が作成されている場合には、運送品の引渡しに係る債権のみならず、運送品の滅失等による運送人に対する損害賠償請求権を行使するためにも、船荷証券が必要であるという考え方もあるところかと存じます。仮にこのような解釈が採られるのであれば、電子船荷証券記録が作成された場合にも、同様に解釈されるということになるかと考えられますし、そもそもこの規律案が、先ほど申したとおり商法764条に相当する受戻証券性に関する規定が適用されることによる不都合を解消するためのものであることに鑑みれば、この規律案においても同様の解釈がされるということが自然かと考えております。つまり、運送品が滅失して、運送品の引渡しに係る債権が転嫁したものである損害賠償請求権に対する強制執行がされた場合にも、本規律案が適用されることになると考えております。   次に、7ページ目の4番の強制執行と善意取得制度の関係についての整理でございます。ここは、今回電子船荷証券記録という法制を新たに作ることに伴って、新しく生じる論点でございまして、紙の船荷証券の世界でなかなか同様の場面を観念することができないため、我々としても非常に悩ましく思っているところでございます。   前提といたしまして、中間試案の第6の2の(11)のとおり、現状、電子船荷証券記録の法制化に伴い、民法520条の5に相当する、いわゆる善意取得に関する制度も導入することを考えているところでございますが、運送品の引渡しに係る請求権に対する強制執行と、その後の善意取得の関係をどう整理してどう構成していくのか、言い換えると、例えば、差押えの奏効後に差押債務者から電子船荷証券記録の支配の移転を受けた第三者が善意無重過失である場合でしたり、その第三者自体は悪意であったとしても、さらに支配の移転を受けた者が善意無重過失であるような場合に、善意取得による保護を認めるのか、それとも、差押命令の効力を優先させるのかといった点を考えていく必要があるかと存じます。   この点につきましては様々な考え方があり得るところかとは思われますが、一度強制執行が奏効した以上、それを容易に覆せるというのは、強制執行手続の安定性を害することとなりますため、民法520条の5に相当する規定が適用されることによって、差押命令の効力が優先するという帰結が変更されることはないと解するのが相当ではないかという考え方もあり得るように思っておりますため、この点につきまして、皆様の御意見をお伺いしたいと考えております。   最後に8ページ以下の5番のその他でございます。パブリック・コメント手続においては、運送品の引渡しに係る債権に対して強制執行がされた場合には、運送人の利益の観点から、商法582条でしたり583条の適用又は類推適用によって、運送品の競売をすることができると解すべきではないか旨の御意見もあったところでございます。   この点について、今回の改正の中で、そのような場面での供託権でしたり競売権の有無を明らかにするという選択肢もあり得るところかとは思われますが、商法582条や583条の適用の適否につきましては、個別具体的な事案において判断されることになると考えられますし、運送人としましては、先ほど来申してきましたとおり、商法764条に相当する規定によって、電子船荷証券記録の支配を有しない者への引渡しを拒絶することができることでしたり、債権の準占有者への弁済規定や商法上の留置権などによって、一定の保護が与えられていることに鑑みれば、あえてこれ以上の立法上の手当てをする必要まではないのではないかとも考えているところでございます。   長くなりましたが、以上、事務当局からの説明となります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   ただいま事務当局から部会資料12について説明がありました。この点について、どなたからでも結構ですので、御意見等いただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。 ○池山委員 池山でございます。発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。   今回、法務省がこの強制執行の問題という極めて難しい問題について、更にいろいろ掘り下げて検討してくださったことについて、改めて感謝申し上げます。   それから、私ないし私の推薦母体のパブリック・コメント段階における意見としては、できれば何の立法もしないほうがいいのではないかという主位的な意見でありつつも、もしもどうしても立法が必要だということであれば、その方向性としては丙案であろうと考えておりまして、その丙案を前提に、更にその問題点、論点を掘り下げて検討してくださったというのは感謝しておりますし、大きな方向性としては、この丙案の方向性によるのか、やはりそれを断念するのかという方向になるのかなと思っております。   その上で、今回いろいろ御検討いただきましたけれども、私どもとしてはまだ、これなら丙案でやむなしかなというところには、正直至っていないというのが実情でございます。   具体的に入っていきますと、やはり一番肝心な点は、4ページの中段のところにある運送品の引渡しに係る債権の譲渡とそれに対する差押えがされた場合に、その優先関係については、支配移転の日時と送達日時の先後によって決せられると、そのような整理、それ自体なのかなと思っております。確かに一般論としては、これは、それはそうであろうということで法務省案、丙案の前提はそのことを前提に、ただこういう一般的な考え方で終わらせてしまうと、他方で差押債権者は電子船荷証券記録の支配者にはならないので、差押えをしたにもかかわらず引渡しを受けることができないと。そこで、言ってみれば不明確というよりは、にっちもさっちもいかない状態になってしまう、だから移転請求権を付与するんだと。その限りで言うと、極めて論理的にはできているとは思います。   ですが、この先後関係で優劣が決するということ自体が、実は運送人側からすると非常に困った問題なんです。これは、実体法的あるいは抽象的には全くそのとおりなんですけれども、第三者債務者である運送人の立場からすると、その先後関係というのは必ずしも確認はできないわけなんです。念のために言うと、これは単に未確認情報として知るというのではなくて、運送人として、どちらが先かということが確認できないと、判断に窮するということになります。なので、もし丙案前提で立法することがやむを得ないのであれば、そういう判断に窮するということに運送人がならないような立法を、もう一段考えていただく必要があるのかなと思っております。   ここまで抽象的に申しましたけれども、もう少しこれを具体例で申し上げますと、仮に、運送人がある日裁判所から債務者、命令上想定される支配者をAという差押命令をぽっと受けましたと。他方で、それとは別に、現に支配を有するBから引渡し請求を受けたとすると、結局は場合分けが必要でして、仮に元々はA、命令上の債務者、支配者とされる者が、本当に元々は支配者で、それからBに移転をしたんだと、そういう前提に立てば、AからBへの支配の移転と、それから差押命令の送達のどちらかの先後によると、そのことはそうなんですけれども、我々からすれば、AからBへの移転と裁判所からの送達のどっちが先後かと、先かというのは、必ずしも分からないんですね。それに対して、いや、電子船荷証券記録のシステムを入れる以上は、先後が分かるシステムがあったほうが望ましいというのが一つの答えではあるんですけれども、やはり立法として、そういうシステムを作れ、そうでないと望ましくないとまで言うのは、少し踏み込み過ぎなんだと思っております。   プラス、仮に事実として、運送人として、送達と移転の先後が分からないというときに、一体どうなるんでしょうかということもお考えいただく必要があると。それは、債権譲渡と債権の差押えの送達に関する最高裁判例の判例法理によれば、先後不明のときはどちらも請求できると、金銭債権の場合が前提ですけれども、全額を請求できると。そうすると、運送人としては、先後不明ですという理由でどちらに渡してもいいんですかという話になってくるわけです。どちらに渡すといったって、差押債権者は支配を持っていないですから、764条と併せて考えれば、やはり現に支配者としてB/Lを提示してきたBに対して渡せば、本当に免責なんですかという議論は出てきますし、同じく最高裁の金銭債権に関する判例法理から言えば、問題はその後、差押債権者と支配者との間の最終的な清算はどうするんだという話になると。確か金銭債権だと、信義則か何かで案分なんだというような話がありましたけれども、運送品に関してはそんなことはできないと。   後段はちょっと脱線しますけれども、前半の先後不明のときに、本当に免責という解釈でいいのかというのは非常に気になるところでして、逆に、別の言い方をすれば、実際に差押えがされれば、それは常に問題になってくると。それから、そもそも今の例で言うと、元々支配者が債務者とされたAで、そこからBに移って、先後関係が問題になるかどうかすら分からないこともあり得ると。とにかく命令には、支配者、債務者Aと書いてある、そういう命令が送達された。他方で、Bから電子B/Lに基づいて請求があるというときに、元々の移転が本当にAからBにされていたのか、実はAはおよそ支配者になったことがなくて、A′からBに支配の移転があっただけなのではないかと、端的に言うと、差押命令は実は空振りだったのではないかということすら、我々には分からないと。そうすると、実務的にはやはりBの請求、現に支配をしていて請求をしてくるBの請求を、優先して考えざるを得ないのではないかという問題が生じてきて、ただ、それで果たしていいのかなというのは、非常に不安があります。   こういう不安をつらつら言っていてもしようがないんですけれども、ちょっとまとめ的に、この大きな問題について申し上げるとすると、まず、参考までに申し上げれば、同じような問題、つまり、通常の債権譲渡だったらば、確定日付は要るんだけれども、確定日付の先後とかではなくて、到達時、第三債務者への送達の先後によって決まると。第三債務者が情報センターになるという法制に対して、動産債権譲渡特例法とかで、対抗要件の具備が登記によって行われている場合だったら、最初の段階では、その先後関係は分からないんですけれども、最終的に債務者に来るときには、登記事項証明書も併せて来ますから、結局登記された日、つまり送達があったとみなされる日と実際の差押えの日の先後というのは、やはり制度上は分かると。今回の場合は、制度上分からない立て付けのままであるというのが、一つの問題なんだと思います。   それと、別角度からの根本的な問題として、不動産の差押えとかであれば、少なくとも実務的には債務者名義の不動産登記があるというのが原則ですし、動産の場合であれば、少なくとも占有をしているのが実務的には原則で、その上で、第三者異議の訴えだ何だという形で処理されていくわけですけれども、債権差押えの場合は、差押えの申立てに当たって、債権者の債務者に対する債権については、仮差押えであれば疎明、本差押えであれば債務名義が必要なわけですけれども、債務者が本当に第三債務者に対して債権を持っているかどうかというのは、私の理解では、事実上は立証の対象になっていないと。むしろそういう、持っているはずだ、銀行預金の差押えを念頭に置けば、銀行預金があるはずだという前提で対処されていると。あえて言えば、銀行預金の差押えをしようと思えば、債務者名義の銀行預金ではないと、恐らく許されないだろうと、登記と同じでね。そういう限りでの制約はありますけれども、本当に債務者が第三債務者に対して債権があるか、銀行預金を持っているかというのは分からないと。   そういう形でも不自由が生じないというのは、第三債務者側からすれば、現に差押命令を送達できれば、自分がその債務者に対して債務を負っているか、端的に言うと、その人名義の銀行預金があるかどうかというのは、認識としては分かるわけですよね。その上で、それが本当に正しいかどうかというのは、陳述催告に対する陳述、あるいは、最終的には取立訴訟の中で決せられると。それほど差押命令発令の段階で、債務者から第三債務者に対する権利が事実上立証の対象になっていないといっても、銀行としては困らないわけです、粛々と対応すれば本当にいいので。   でも、我々の場合は、やはり本当に、およそ債権がないということはないわけですよね、電子B/Lが出ているということは認識しているわけだから。問題は、その帰属が分からない状態になっていると。その限りで、突然Aに帰属しています、帰属という言葉を使ってしまいますけれども、Aが支配者ですという差押命令をもらっても、本当にそうなのかというのは分からないと。そうだとすると、仮に丙案方向で立法的なものをどうしても推し進めざるを得ないんであれば、差押命令の段階で、債権者の債務者に対する権利について債務名義的なものが要るというのと併せて、債務者の、つまり支配者とされる者が運送人に対して権利を持っていると、その時点における支配者だということについても、何らかの形で証明的なものというんでしょうかね、がある立法ではないと、非常に困るのではないかなという危惧を持っております。   最後の点は、債権差押えの法制そのものに対するかなり例外的な措置になってくるのではないかと思いますし、私の推薦元団体で詰めた意見ではなくて、現時点での私の個人的な感想であります。しかしながら、現状の丙案前提で進むという場合には、やはり非常に運送人としては対処に困ると。その結果として、実際には支配者として言ってくる、今の例で言えば、Bを前提に動かなければいけないという、それで本当に免責されるんですかという部分は危惧を持っております。   関連して、すみません、あと2点だけ申し上げます。   もう一個は、これは逆に、丙案前提でのある種テクニカルなものなんですけれども、恐らく支配、もし丙案前提でいくんであれば、支配移転請求権を与えるだけでは駄目で、もしもそれが裏書譲渡によって移転するタイプの債権であれば、差押債務者から債権者に対する裏書譲渡に相当する措置を、誰かが公権的にできる措置というのも、立法上入れるべきなんだろうと思っています。これは、紙の船荷証券の場合に、執行官が裏書若しくはそれに代わる措置を採ることができるといった条文が、どこかにありましたけれども、それと同じ話です。ただ、これはそれほど大きな問題ではないかなと思っています。   最後もう一点は、でも、池山が今、るる言ったけれども、それってこの立法の問題ではないよねという反論が多分あるんだと思っております。というのは、移転と差押えの先後で優先関係が決まるというのは、今の立法の、法制の基本的な考え方だから、ただ今起きたら同じことなのではないのと。別にこの立法を、丙案を提出するからこの問題が生じるわけではないでしょうというのが、一つの反論なんだと思うんです。だからこそ、実はこれは立法政策の問題に戻ってくる面があって、確かにそれはそうなんだけれども、丙案のようなものを入れることで、差押えの可能性があるということを正面から認めて、その道を大きく開くというのは、運送人としてはやはり非常に困るなと。今、私がるる申し上げたような問題というのは、論理的には現状もあり得る問題だけれども、現状というか、このままどっちにしたってあり得る問題だけれども、そこは、あえて触らないほうが結局いいのではないかという思いはあります。   だから、運送人からすると、およそ電子B/Lが発行されている場合は強制執行はできないって書いてあれば一番いいわけですよね。さすがにそれは乱暴だろうと、私も思います。なんだけれども、執行方法を明示することによって、今申し上げた、実は運送人としては非常に困るという問題を、余り顕在化させてほしくないということなのかなと思うんです。   すみません、長くなりましたけれども、一旦ここで終わります。ここが一番大きな点だと思っています。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   事務当局から御返答お願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御意見いただきまして、ありがとうございます。   池山委員の方から、基本的には、運送人サイドからすると、先後関係が分からないというところは非常に困るのではないかという、根本的な御指摘を頂いたのかなと思っております。   それが生ずる原因といたしましては、池山委員の方で最後に御指摘いただいたとおりだろうと思っておりまして、丙案を採用するから起きる問題ではなく、そもそも発生している問題、あるいはもう電子船荷証券記録というものを導入するからには、不可避的に出てくる問題だろうと思っておりまして、正にそういった池山委員の御指摘いただいたような不都合があるからこそ、少なくともこの丙案みたいなものを作っておかなければいけないのかなという思いで、我々考えておりますし、そうはいっても、なかなか丙案のみでは全て解決するわけではないと、不十分な点が残るというところも考慮をした上で、そういったところのもろもろの不都合性につきましては、最終的には、運送人サイドからすると、商法764条に相当する規定というのは恐らく残すということになるでしょうし、いろいろ手を尽くしても分からなければ、準占有者弁済によって保護されるというようなところでもって、最終的にはまとめていくというところをしないと、かえってよくないことになるのではないかなという思いでやっているところでございまして、そこのところは、ちょっとどこまでいっても平行線にはなってしまうかもしれませんけれども、事務当局としては、何も議論をしないで放っておくというよりかは、今言ったような整理をした方が、運送人にとってもいい話、いい方向に行くのではないかなと思っているところでございます。   2点目に御指摘いただきました、少しテクニカルな論点だったかもしれません。支配の移転を求めるときに、裏書相当行為みたいなものを誰かにさせたほうがいいのではないかという御指摘も、併せていただいたかと思います。それは、そういう面はあるかなとは思いつつも、証券を執行官が直接差し押さえる場合と違って、なかなか執行官が間に入ってくるということが、電子の場合難しい面があるのかなというところがありますので、そういったものが入れられるのかどうかというところは、慎重に考えなければいけないなと思っておりますし、差押債権者、執行手続の中で権利行使するときに、裏書の連続というもので権利推定というものを使う必要がどこまであるのかというところにもなろうかと思いますので、あえてそういったものを設けなくても、それほど手続上不都合はないのではないかなという感じが、個人的にはしております。   差し当たって以上でございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   何かございますか。 ○池山委員 ありがとうございます。私ども自身も、非常にこれは難しい問題だとは思っておりますし、正に事務当局の方で、運送人のことも考えて、合理的な制度を作ってくださっているということは、大変感謝をしている次第ですが、今のお話を踏まえて、更に検討はしたいと思っています。   ただ、せっかくの機会なのですが、先ほど申し上げた中での解釈論的な部分、つまり、権利の移転と、それから債権譲渡の先後によって決するというときに、その先後関係が不明なときには、両方が権利を有するんだと、金銭債権の差押えを前提に、そういう判例法理があるわけですけれども、そこは、運送人側としては、もしも現実にそういう問題が起きたら、理論的にはそうなる、両方が請求できる。別の言い方をすると、どちらに弁済をしてもいいと、弁済、つまり引渡しをしてもいいということになると。更に言えば、実際に電子B/Lを持っているのは、譲渡を受けて現に支配者になっている人間だから、結局その人に引き渡されることになると。先後が不明な限りはそうなっちゃうと、そこの解釈論について、それは解釈論だから、ここで言うことではないよということかもしれませんけれども、少なくともそういう解釈論を私どもはしているのですけれども、違和感がございますでしょうかという質問ですかね。   明らかに間違っていたら、教えてください。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。先後不明というところの意味なんだろうと思うんですけれども、恐らく今回の電子船荷証券の世界でいいますと、差押命令が送達された時点と支配の移転があった時点というのは、今すぐ運送人が分からなかったとしても、客観的な事実としてはあるわけですので、基本的にそれで決まるということになるんだろうと思います。ですので、同時到達みたいな話というのは、基本的にはなかなか、絶対ないとは言い切れませんけれども、恐らくないんだろうなと思います。   問題なのは、運送人がそれを、事実を正確に把握をして対応できるかどうかという問題なんだろうと思います。対応できれば、それが一番望ましいわけですけれども、なかなかそこが、通常の債権譲渡と違って、第三債務者に全ての情報が集まってくるわけではない、この電子船荷証券記録の制度においては、おのずと運送人が分かる範囲にも限界が生じるということがあるわけですので、そういったところも踏まえて、最終的には準占有者弁済の規定が適用されて救済されるということがあるのだろうという一般論は、それはそのとおりなのかなという感じがしておりまして、むしろそういった一般論につきまして、このような整理でいいのかどうかというところも、事務当局としては、皆様の御感触を伺いたいと思っているところでございまして、そういったところで処理されていくだろうということが、この部会においてある程度確認されるのであれば、それはそれで運送人にとっても、解釈論に委ねられる部分ではございますけれども、クリアになる方法の一つかなと思っているところでございます。 ○池山委員 ありがとうございます。運送人が勝手に先後不明だと言っているだけでは駄目なわけで、本当に先後不明でなければいけないわけですよね。本当に先後不明だと言わざるを得ないときには、先ほど準占有者への弁済に言及をされましたけれども、必ずしも今の判例法理上、それを直接言っている、したがって、過失がうんぬんというのではなくて、先後不明である限りは、単純に実体法の問題としてどちらも請求できるんだと、そういう判例法理だというのが私の理解なんですけれども、そこは違うんでしょうかというのが1点。   あともう一つは、結局運送人が勝手に言ってはいけないとしても、勝手に言うだけでは足りないとしても、先後不明だという、結局立証責任は運送人側に事実上あるということなんですかね。立証責任というか事実上、そこをきちんと言わない限りはということなんですかね。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。立証責任うんぬんというお話が出ましたけれども、立証責任うんぬんというのは、結局誰がどのような請求を立ててくるかによって全然変わってくるわけですので、恐らく運送人側として想定される事態としては、どちらかから請求をされるという多分お立場になるんだろうと思いますので、結局、請求してくる側が自分の権利を恐らく主張立証するという形になってくるんだろうと思います。   最終的に、準占有者うんぬんという話になるときは、運送人が間違った方に引き渡してしまっていた場合に、正しい権利者から引渡請求を受けたときに、これで免責されるんだということを言わなければいけなくなったときなんだろうと思いますので、そのときには、こうこうこういう調査をして、こういう判断をして、違った人に引き渡してしまったんですということを、主張立証していくということになるのかなと思ってございます。 ○箱井委員 箱井です。強制執行の局面がよく分からないですが、お話を伺っていると、要するに、2人からの請求があって、運送人には真の権利者が分からない場合で、どちらに払ってもよいのかどうかという議論ですと、船荷証券の数通発行の場合も、別々の証券所持人に請求されるケースというのは考えられまして、その場合の解釈というか解決方法は決まっています。それとの関係、その話では進まない話なのでしょうか、ここの強制執行の局面では。   要するに、数通発行されますと、両方オリジナルですから、AさんとBさんが別々に船荷証券を所持する場合というのは、前から想定した議論をしています。運送人には債権者は分からないですが、最終的には、これは元々船荷証券を別に分けた人がどちらに先に渡したかというところで決まると。このように決め方ははっきりしていますが、運送人には分からない。そこで実際にどうするかといいますと、先に来たほうに渡せば問題ないし、同時に来た場合には、運送人が決めるのは困難なので運送人は供託できるということになっています。それで、この局面で同じ話にはならないのかどうか、ちょっと横からの話で申し訳ありませんけれども。 ○藤田部会長 形式的資格を有する者が複数いる場合の弁済の話と整理すれば、少なくとも民法478条の定める債権の準占有者への弁済ではなくて、基本的にはどちらに払っても免責されると整理できるのではないかということですね。 ○箱井委員 いずれにしても、そういう局面で運送人側が二重弁済の危険に陥るというようなことがないように、我々はずっと考えていますので、恐らくここでもさほど心配ないという御当局のお考えと共通するのかなと思い、一言言わせていただきました。 ○藤田部会長 現在の御提案では債権執行のアナロジーで考えているけれども、そこのところだけ、やや有価証券的な扱い、つまり形式的資格者が複数現われるという規律を実体法的に入れることができないかという御質問と理解すればいいのでしょうか。事務当局、いかがでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。大変貴重な御指摘を頂いたとは思っておりまして、ちょっと整理はしなければいけないかなとは思っておりますけれども、今ちょっと直観的に思ったところを申し上げさせていただきますと、なかなか形式的な資格を二人とも備えたと、この場合、本当に言っていいのかというところがあろうかと思います。複数通発行の場合は当然、どちらも見た目上は正当な権利者なんだと思いますけれども、この執行の局面でいいますと、例えば、明らかに支配の移転がされてしまった後に送達されてきた差押命令、これは運送人も実は容易に分かるようなケースだったりする場合は、これ、差押命令って完全に空振りですので、そういった場合の差押債権者が、権利者として、見た目上も権利者ですと言っていいのかというと、ちょっとそれは正直難しいのではないかなという気がしておりますので、結局これ、どこまでいっても最終的には保護されるケース、されないケースというのは、ある程度個別具体的に見ていかないといけない、形式的にこうだとなかなか言えない領域なのかなという気がしております。そうなると、結局最終的には民法の478条のような形で処理をしていくという形にしないと、合理的な処理ができない、むしろ一律にこうだということを定めるのが非常に難しい世界なのかなという感じが、今のところしております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○池山委員 池山でございます。今、冒頭から私が申し上げた意見は、ある種解釈論の問題で、どこまで丙案、丁案の選択に直結するのかという点はあるかと思います。プラス、箱井委員の御指摘も大変貴重な御指摘だと、私も思っております。   余りこの解釈論的な議論を続けるというのは適切かどうかということもありますので、そろそろやめにしたいと思いますが、多分、私の立場で申し上げなければいけないのは、やはり実際、運送人の立場としては、現にこの法制ができて、現に差し押さえたら、運送人はどうするんだろうというシナリオをいろいろ考えて、ああなってしまうな、こうなってしまうなということを考えざるを得ないと。そうすると、いろいろな疑問が噴出するという限りでは、変な言い方ですけれども、私の発言の意のあるところをお酌み取りいただいて、更に御検討をお願いできればと思います。   それに関連して言うと、例えば、先ほど思い付きですと申し上げた、そもそもこの発令の段階で、空振りもありという前提での発令が本当にいいのかと、債権者が債務名義を持っている限りは、債務者がAと、債務者、支配者がAと思えば、この人が持っているはずだからといって、とっとと命令を出すことができると、銀行預金と同じようにね。そういう法制が本当にいいのかという部分も、何かできないのかなどというのは思っています。   かといって、銀行預金差押えのときに、銀行預金がこれだけあるということを立証しろというのはむちゃだというのも同じように、債務者が第三債務者、運送人に対して、実際今、支配を持っているから、引渡請求権を持っているというのを立証しろと、債権者に立証しろというのは、それはそれでむちゃだというのは分かるんですけれども、何かいいアイデアをお考えいただければなとは思っております。これは要望ですけれども。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そのほか、どの点でも御意見等ございますか。   非常に難しい問題ですね。御議論を聞いていて、どういう難しさか分かってきたような気もします。規定を設けないという選択肢があるかという、池山委員が繰り返し言われている話については、ただ、そうしてしまうと、強制執行ができない、あるいは強制執行の仕方が分からない財産を作り出してしまうことが、表面に出てしまう。そうなると、そもそも電子船荷証券記録に関する立法が認められなくなるのではないかということにつながっていきかねないことが最大の懸念だと思います。不完全であっても、何らかの強制執行の方法を無理してでも示したいということは、それを反映しているのでしょうが、そうはいいながらも、少しでもいい方法を考えなければいけないところで苦労しているのでしょう。 ○池山委員 今、部会長の御指摘があった点は、それに対してはごもっともだと個人的には思うんですけれども、では、仮にこれを業界の人に言って、ああ、なるほどと言うかというと、恐らくそうはならなくて、考えてみると、諸外国の立法で、ここはどこまでスタックしているんだろうかというのも、一つの問題なのかなと思っているんですよね。   業界の人に言わせれば、だんだんMLETRに基づいた立法はされていると。だけども、強制執行について、こういう形の立法例というのは果たしてあるんでしょうかと、それがどこまで必須なんでしょうかという、肌感覚的な議論がやはり出てきて、それに対する説得材料を私は持っていないなというのは、正直ございます。部会長のおっしゃることは非常に、理論的かつ個人的にはよく分かるんですけれども。 ○藤田部会長 次に、池山委員がいろいろ言われた御議論もかなりの部分というのは、今回の提案というのが、債権執行のアナロジーで作られていることに由来することが原因でしょう。運送人からすると、システムの運営者ではない運送人は情報を持っているわけではないから、債権譲渡の第三債務者のように誰が債務者か、いつ譲渡されたのかということを知る立場にないので、そのような運送人が債権譲渡の第三債務者に対応する形で制度を作ると、どうしても無理なところが出てくるというのが、恐らく池山委員のいろいろな疑問の根源にある共通の原因なんだと思います。そこを多少なりとも緩和する方法として、何が適切かということを考えて御提案されているとは思います、それがうまくいっているかどうかというのは全く別で、たとえば箱井委員から御指摘のあったような方法が可能かどうかといったことが、検討の対象になるのかもしれません。   最後に、池山委員が言われた、公権力が支配の移転をする可能性があれば、債権執行のアナロジーというよりは、動産執行のアナロジーで制度を作ることが可能になりそうですが、事務当局から御指摘のあったように、公権力がどうやって支配の移転を強制することができるかという問題があり、難しいかもしれない。占有という物理的な状態については直接占有を奪うということが可能ですが、秘密鍵をどうやって入手できるのかということになってくると、なかなかうまく作れない。これが動産執行に寄せて公権力が支配の移転をするという規律が作れない最大の要因なんだと思います。   ただ、現在の案で単純に支配の移転を自己に対してするように求めることができると書いてある中身をもう少し具体的に、例えば、秘密鍵の提出を要求できるとかいったことまで書くことはあり得るのかもしれません。その場合も間接強制にしかならないんですけれども、具体的にどうやって支配を移すかということの中身に即して、自発的に移転しない場合何を求めることができるか規定することはあるのかもしれません。この辺りも含めて、問題の構造はだんだん分かってきたと思うんですけれども、方向性についてさらにいろいろ御意見いただければと思います。   仮に強制執行に関するルールを作るとして、丙案的な方向でやるという方向性と、その場合に基本的に債権執行の特則のような形でやることが適切か、仮にその方向でいくとすれば、種々指摘された問題点を、どんな方向で少しでも緩和できるかという辺りが、恐らく論点なんだと思います。   どの点でも、御感触をいただけないでしょうか。この問題もいつまでも放置することもできない時期に来ているかと思いますので、どのようなアイデアであっても結構ですので、感触をいただければと思います。 ○小出幹事 小出でございます、ありがとうございます。私は、どちらのアナロジーでという、そこについては意見がないのですけれども、初め、池山委員が、これ、運送人は困るのではないかということをおっしゃって、その御意見自体は非常によく分かるんですけれども、一方で、その対処として、なので余りルールなどを作らないで、そっとしておくのがいいのではないかという考え方をおっしゃって、まあそれも分かるんですが、その反面、きちっとここで法的なルールをはっきりしておいたほうが、このときにどういう情報が誰に必要なのかということが、実務やシステム提供者に対して分かるようになると思うんですね。   ですので、一定のルールを作ることによって、そのルールに合致した形でのシステムが導入されることにむしろつながるのではないかと、私なんかは考えておりまして、例えば、この部会のテーマと全く違う話ですが、いわゆるセキュリティートークンと呼ばれる電子記録移転権利についても、その強制執行は、システムでどうやって対応するのかと、つまり、トークンを投資者の承諾なく自動的に移転する、強制的に移転するためのシステムを導入する必要があるみたいなことが、やはり業者のガイドラインなどの中で検討されているわけですね。したがって、我々としては、法的な立ち位置をしっかりはっきりさせておいた上で、その後に、それを踏まえてきちっとワークするようなシステムを作るように、実務に促すという方向性もあるのではないかと、私は思いました。   すみません、全然本質ではない意見で申し訳ありませんが、以上です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   事務当局からお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。小出幹事の今の御指摘は、正に事務当局としても同じ思いで、今回検討させていただいたというところでございます。   端的に申し上げますと、池山委員の御指摘に正面から答えるためには、先後関係を運送人が分かるようなシステムでないと駄目だと言ってしまうということも一つ考えられるかと思いますが、ただ、なかなかそれは、国際的な平仄も合わないですし、そういったものを備えていなければ無効になるんですかという話になってしまうわけで、これはこれで、やはり要件にしてしまうということは、非常にハードルが高いことなんだろうと思いますので、なかなかそこを、技術的要件のようなところでやっていくというのは、すごく難しい面があるのかなと。   ただ、他方で、部会資料にも少し書かせていただきましたけれども、最終的に、運送人は電子船荷証券記録を使わないという選択肢も、極端な話できるわけですので、いろいろな利害関係者が安心して使えるようなシステムでないと、誰かが拒否すると使えないということにはなっているわけですので、そういった面からも、執行とか様々なところまで考えると、ここまでシステムが備えていたほうがいいんですよと、こういうメッセージは、むしろ我々は発していったほうがいいのではないかという気がしております。これを要件にできないけれども、やはりこういったものが望ましいと、そういったものもきちんと管理して、安心して使えるようになると。ただ、そこはなかなか法律では強制できないので、システムでしっかりやってくださいと、そういったメッセージも込めつつ、なおかつ解釈論でこういった保護がされるということを、しっかりとここで議論をさせていただいて、確認をして、立法につなげていくというのが、一番いい対処方法なのかなと思っているところでございます。   なお、諸外国の話に少し言及ございましたけれども、我々が少なくとも確認できている限り、執行のところまでしっかり議論をしているという状況はないのかなというところでありまして、恐らく今後こういった問題が出てくると、解釈論として問題になってくるんではないかという気はしておりますので、我々といたしましては、そういった様々な問題をここでしっかりと議論をした上で、立法につなげていくというのが望ましい姿かなと思っているところでございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○雨宮委員 雨宮です。確認ですが、もし甲案、乙案又は丙案のいずれも採らずに、丁を採り、何らの手当てもしないとすると、部会資料の3ページ中程に説明がありますが、電子船荷証券記録は、現行法上債権執行の対象にはなり得ます。債権執行されると、債務者は電子船荷証券記録の処分ができず、また運送人に対して請求できなくなります。さらに支配の移転もないから、債務者の手元に電子船荷証券記録があり、何人も運送人に対して請求できない状態になり得ると考えられます。その場合、運送人としては、運送品を引き渡せなくなるので、供託するか、競売することになりそうです。運送人としても、執行について何かを決めた方が得策であり、そうであれば丙案を採用して、少なくとも一定の場合に誰かに電子船荷証券記録の支配が移転し、運送人に対して請求があれば、運送品を引き渡せる機会を得られるように、何かしらの手当てをした方が、運送人にとってもいいのではないかとは思います。   日弁連としては、中間試案に対するコメントでは丙案に賛成していますが、それはそのような趣旨もありまして、運送人としても何か手当てをした方が良いと理解しています。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   丙案を採ったときの細かな運送人の不安定さに対する対処の仕方というのは、今提案されているようなところでほぼいいのか、それとももう少し踏み込んだ何らかの措置を規定したほうがいいのかという辺りはいかがでしょうか。 ○雨宮委員 雨宮です。今、議論を聞かせていただき、また部会資料も読ませていただきましたが、丙案を採った場合の措置としては、御提案いただきましたように、例えば陳述催告をされた場合、運送人としてはできるだけの調査をして、債務者が電子船荷証券記録の支配を有しているか分からなければ、真実を書かなければいけないのですから、真実のとおり、分からないと回答することになり、それであれば責任を負わないと考えております。また、債権者が権利を有するか分からず、運送品を引き渡したときに保護されるのは、やはり債権の準占有者の規定と理解しておりました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○雨宮委員 あと、今議論になっていた、支配の移転と送達の先後が不明なときの、両方から請求可能であるかの議論ですが、渡辺幹事もおっしゃられましたように、支配が移転するときと、それから送達されたときは、事実として分かるとなると、必ずどちらかが先後となるので、両方ともが形式資格を有することはないと思っております。それはそのとおりだと思っていますが、電子船荷証券記録になりますと、支配の移転のときは、何時何分まで記録で残ることもあるところ、送達時の記録は幅があるのではないかと思います。そこで、先後がどうしても分からないということ、また、同時ということもあるかもしれません。実際に、そのようなことが生じることは考えにくいですが、理論的には、仮に同時であれば、両方とも請求できる、これは準占有者の問題ではなくて、両方とも形式的資格を有することもあり得ると考えております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。最後のやや細かな点については、事務局としてはいかがでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。恐らく、事実としては分かるんでしょうけれども、本当にそれがはっきりしないというケース、通常、恐らく第三債務者に対しては、日本の裁判実務だと、多分送達がきちんとされているので分かるんだろうと思いますけれども、何らかの事情で分からないというようなケースがあれば、それは解釈によって両方請求できたりとか、あるいは、その場合どうなるのかというのはちょっと分からないところではありますけれども、債権譲渡における解釈論というものが使われる可能性というのはあるのかもしれないなと思って、拝聴していたところでございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○池山委員 池山でございます。雨宮委員は、日弁連の推薦委員であられると同時に、一方で海運実務に極めて精通された弁護士でもいらっしゃいます。彼がこういう意見を開陳されたというのは、これはこれで非常に重く受け止めなければいけないと思っています。ただ、正に部会長がおっしゃるとおり、問題状況は分かってきていると思っております。   何が言いたいかというと、特に前段で理論的に整理されている部分は、そのこと自体には、私どもは最初から異論はないのです。なので、もし入れるなら丙案だという部分は、実は最初からある。最後は、確かに立法政策的な部分というか、やはり丙案を入れることによって、差押えはこういう形でやればできるということを明示するというのは、かえって実務上は、ではやってみようという話になって、混乱が続発するんではないかという危惧を、実感として私の推薦母体では持っていらっしゃる方が多くて、丙案は理論的にはすっきりしている。理論的には正しいんだけれども、非常に抵抗感が今のところは強いと。そのことと、先ほど、では論理的にはもう強制執行の可能性がないと書くか、強制執行のやり方が分からない財産権的なものを創出するというのはいいかという、その法制的な要求とのせめぎ合いなのかなと思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。まず、恐らく法制的には、強制執行ができない財産を作り出すということは、基本的には難しいと思っております。差押禁止財産みたいなものというのは相当限定されたものになっておりますので、それを、少なくても法制度上はっきりするような形で作り出すということに関しては、相当な理由付けが必要になるだろうと思っておりますし、差押禁止債権として、これまで認められているものと同じような要請があるかというと、恐らくそこは難しいのだろうとは思っておりますので、そういった面からしても、何らかの手当てというものは、法制上避け難いのではないかと、事務当局としては考えております。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。 ○池山委員 差し当たり、御見解は了解いたしました。理解いたしました。 ○藤田部会長 抽象的に債権の準占有者に当たるから保護されるというよりは、どの程度の行動を取ると、原則として過失がないと思ってもらえるかといった辺りまで多少踏み込んで提案する、もちろん最終的に裁判所を拘束するような形で示すことはできないけれども、どのぐらいの相場観を想定しているかがある程度明確になる形で提案していただければ、もう少し抵抗なく受け入れられることになるということでしょうか。例えば、システムの運営者に聞いても返答が返ってこない場合は、もう先後関係は分からなくて過失がない、分からなくても仕方がないと評価されるような状況と考えていいかといった感触が示されれば、少しは抵抗感なくなると考えてよろしいでしょうか。それとも、やはりそういうことではまったく足りないということでしょうか。 ○池山委員 いや、すみません。そこは私限りでは何とも言えませんけれども、そこは、そこまでやっていただけると、それは有り難いし、プラス、先後関係プラス実際単純な空振りというのもあるのかなという気がするんです。   とにかく、Aという人を支配者、債務者という命令が来たって、本当にAが支配者かどうかというのは分からないかもしれないと。他方でいるのは、Bという人が俺が支配者だと請求を受ける、どうしたらいいんだということなので、今の部会長の例で言えば、そのときにシステム提供者に照会をして、実際それが判明するかどうか。それでも分からないときには、Bが支配者なんだからBに渡すしかないんだからという、そういう解釈論でいいのかということなんでしょうね。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。そこの辺りも、いろいろな場合が考えられるとは思いますので、そういったところを少し深掘りして議論をしていくということは、あり得るかと思っております。システムというものが恐らく使われることになると思われますので、そういったシステム提供者に対して一定の照会をして調査を尽くすと、それでも分からなければ仕方がないというのは、一つの結論だろうと思いますし、もうちょっと、例えば発展したところを思い付きで申し上げますと、なかなかシステム提供者が対応してくれないような場合も、ひょっとしたらあるかもしれないわけですけれども、そういったシステムをそもそも使うことに了解をして電子船荷証券記録を発行したというところまでもって、主観的な要件が判断されることになるだろうか、そこまではさすがに酷なので、それは考慮しなくていいのではないかみたいな、そういったような整理ということは検討していくということはできると思いますし、ここでの皆様のお考えというのもお諮りしていくというような検討をしっかりした上で、丙案の採否というものを御検討いただくということは、今後の検討の方法としてはあり得ることかなと思っているところでございます。 ○藤田部会長 いかがでしょうか。もう少し具体例を踏まえながら、例えば、第三債務者である運送人の立場からして、どういう形で問題が起きて、どういう形で不明確性が生じ、その場合にどういうことをすることで一応の対処が考えられ、その場合、最終的な結論を保証できないにしても、どういう形で過失などが判断されることになるかといったことを、少し具体例を踏まえつつ示すことで、議論が先に進められるとすれば、そのような方向で今後事務当局に対応を考えていただきたいと思いますけれども、今回はそういうところでよろしいでしょうか。確かに、債権の準占有者に対する弁済として保護されると抽象的に言われても、どうも安心できないというのはよく理解できる気もしますので、運送人側の行為規範的なものが具体的に示される形での提案を更に詰めるというような形でいかがでしょうか。また、その際に、特にどういうシナリオを想定して、具体的に示してもらいたいかということが、もしあれば、リクエストしていただければ対応しやすいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。 ○雨宮委員 AとBの例で言うと、Aが債務者として、Bから請求が来ました。そのときに、運送人としては、支配の移転と送達の先後が分からないので、形式的資格のあるBに運送品を渡さざるを得ないのかという判断において、後々準占有者として保護されるかどうかは分からない、損害賠償請求を受ける可能性もあるといったときには、供託、さらに、供託は、後々競売して回収できるかもしれませんが、まず運送人は保管料を負担しなければならない可能性があることから、余り実務で使われていないので、直ちに競売手続が行うことが可能なように、商法582条や583条の解釈ではなくて、規定を設けることも考えられるのかもしれないと思っております。運送品を引渡すだけではなくて、運送人が運送品を処分できる規定、582条には、荷送人に指図をお願いして、それで荷送人が何もしなかった場合には競売できると規定されており、現行法の条文に依拠して競売は可能かもしれませんが、明文の規定も手当てとしてはあり得るかもしれません。   ただ、実際実務で、供託や競売が、それほど行われていないことは、もちろん存じ上げていますが、そういう措置もあるとは思いました。 ○藤田部会長 具体的な提案、ありがとうございました。 ○池山委員 池山でございます。今の雨宮委員の御発言、若干補足的に述べさせていただくと、競売はそれほど行われていないでいいと思うんですけれども、供託は全く行われていないのではないかというのが私の理解ですし、物によっては、例えば、原油タンカーに積載された原油でも、あるいは何万トンもするバルカーに載っている穀物でもいいですけれども、供託というのは事実上不可能だという例もやはりあるんだと思っております。   元々この582条、3条辺りの適用も考えるべきではないかという部分は、私どもが一つのアイデアとしてパブコメの段階で申し上げたところで、法務省の御見解としては、それはケース・バイ・ケースに判断するということであってとおっしゃっていて、一律にそれがあり得ないとまでおっしゃってはいなくて、ただ、あえて明文の立法するような話ではないのではないかということでありました。実は今日、この会議に臨む段階では、ある種そうだろうなと実は思っていたのです、解釈論の問題であろうと。およそ絶対駄目と言われたら、ちょっと言い過ぎではないですかというつもりだったんですけれども。   ただ、やはり今、逆に雨宮委員の御指摘を頂いて、場合によっては582条、3条による競売、あるいはそれ以外の条文でもいいんですけれども、競売ができる例というのを、立法的に一つの類型として検討していただくというのは、それは検討していただけるならば、もちろんその方が有り難いということは言うまでもございません。なので、そこは逆に、雨宮委員から御示唆があったことに、非常に私としても感謝をいたします。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そのほか、どの点でも御意見あるいは御感想を頂ければと思いますが。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。現時点での感触でいいので、ちょっとお伺いできればと思っているんですけれども、今、運送人の方でなかなか先後関係が分からないことをどうするんだというところを、どのように解決していくのかというところに御議論いただいているかと思いますけれども、いろいろな方向性がある中で、準占有者弁済というものをある程度具体化していくという方向もあるのではないかというところもありつつ、他方で、供託とか競売とかというところも、今御示唆を頂いたところではありますけれども、実際問題、運送人の側からすると、どういうものが一番望ましいとかっていうのはおありになるのかというところで、率直なところ、供託とか競売というのも結構手続的にはいろいろ重いところがあるのかなと。それがあるからといって、本当にそれで終わりなんですかというと、ちょっと我々も余りその辺の実務に明るくないものですから、何となく見た目上は何か制度があるかのようには見えつつも、実際なかなかそういったものが使われないということになると、かえって余りよろしくなくて、むしろ準占有者弁済の方がよかったりするという面もあるんではないかという気もしているところではあるんですが、そこら辺の実情といたしまして、どのような御感触なのかというのを、もし今日の時点で何かいただけるようであれば、次回までの検討の参考にさせていただければと思っておりますが、いかがでございましょうか。 ○雨宮委員 雨宮です。私も、実際に貨物を留置権等に基づいて競売したことはありますが、今御指摘にありましたように、運送人としては、裁判手続のため弁護士を選任しなければならず、費用が掛かる、裁判手続には時間も掛かるので、できればそのような手続を行いたくないというのは承知しております。そこで、この制度を設けたからといって、必ず運送人が頻繁に利用するかと言われると、そういうことにはならないだろうと思います。ただ、運送人としては、運送品を引き渡す場合、既存の制度の要件を検討しても、いずれにも該当せず、保管を継続していかなければならないというリスクがある場合に、そのリスクを回避できる制度があれば、利用する場合もないわけではないという程度です。その程度のことで、あえて立法が必要かと言われると、私も強く必要とは言えないところです。 ○池山委員 池山でございます。問題提起をしている私なので、答えるのは義務かとは思うんですけれども、準占有者への弁済の考え方をより精緻化するということと、供託ないし競売の法制の在り方をもう少し考えるということと、よりどちらが重く考えてほしいかという問いなのであろうとは思っていますが、すみません、私には答えはないです。   その上で、ただ、雨宮弁護士の答えと類似するところがあるとすれば、やはり現実に事態に直面した運送人としては、やはりもう引き渡してしまうと、ある程度の調査をして引き渡してしまうということが多いんだと思います。特に、やはりコンテナ船でコンテナターミナルなるものが別途あって、そこに一応置いておける貨物であれば、正に置いておけるわけですけれども、不定期船とかタンカーの場合は、本船に載っていて、それを保管する場所というのはないわけですから、やはり、結局渡してしまうわけですよね。競売にしろ供託にしろ、一旦陸上に揚げて、それから手続を始めてというのは、やはり選択肢にならない場合が圧倒的に多いのかなという気はしております。   それと、もう一つ言うならば、これはもっとリスクのあることですけれども、これは言っても詮ないことかもしれませんが、実情として申し上げるとすると、そういう困ったときに、場合によっては、最終的にはどちらも、誰も正当な権利者とは認め難いということで、リスクを承知で任意に処分をして、その代金を代わりに、供託ではないですね、保管しておくと、そういうことも運送人の実情として考えるんだと思います。ただ、それは、そういうこともありますよというだけのことであって、当然、法制上本来は制度化されているものではなくて、B/L約款上、受取がなければ任意処分できるという約款があって、それに基づいてやっていると。その有効性というのは、潜在的には問題になり得るということなので、それはそういうこともありますよというサイドインフォメーションでしかないのかなと思っております。法制上のものとしては、どっちかというと渡すという前提で、どういう場合であれば保護されるかという話かなと思っております。   すみません、余り答えになっていないです。 ○藤田部会長 ありがとうございました。供託、競売があんまりされないとすると、その理由次第では、ここで検討して答えに言及するということにはあまり意味がないのではないかという関心からの御質問だったと思います。例えば、582条の「確知することができない」という要件に当たるかどうか分からないという理由で使われないとすれば、当たる可能性が高いということを示すことでこの制度を使ってくださいというメッセージになりうるのけれども、そもそも供託に適さないような運送品が多いとか、あるいは供託のために陸揚げすることそれ自体がコストが掛かるから利用しないというのであれば、幾ら頑張ってもこのルートでの解決にはフィジビリティがないから、あんまり掘り下げても意味がないことになりそうです。どちらの意見なのか感触を伺うことはできないでしょうか。 ○池山委員 はい。最低限、逆に、今の582条とかの適用がおよそあり得ないと言われてしまうと、困るなとは言えると思うんですけれどもね。 ○箱井委員 感想だけになりますけれども、やはり立法が一番難しい部分なのではないかなと思っております。売買契約の買主の受取拒絶などでも、民法の規定では、まず供託ですよね。競売すら例外で、商法の規定ではでやっと競売もできることになっていますけれども、実際は動産売買契約書で任意処分を約定していて、実務はそれで動いているという世界であろうと思います。実務とは異なりますが、あくまで立法、任意規定は仕方がないという思いでおりまして、今正にお話を聞いていますと、業界の求めるものと、法律が原則・前提としているところとの相違については、難しいところだなと感じた次第です。感想だけです。 ○藤田部会長 ありがとうございます。   そのほか、どの点でも御意見等ございますでしょうか。 ○池山委員 若干違う点について、よろしいでしょうか。 ○藤田部会長 ええ、よろしくお願いします。 ○池山委員 これは、資料ですと5ページ辺りに書いてあることなんですけれども、今回、かつ、実は丙案前提の議論になってしまうんですけれども、丙案前提の中で、中間試案の段階から、文言を一部変更されているところがございます。従前は、債権者は支配する「債務者」に対しと書いてあったのが、「者」になるんではないかという修正を加えておられて、その理由というのも書いておられます。ここは、本当にここだけのロジックの一貫性の問題なのかもしれませんけれども、この変更する前提は、運送品の引渡しに係る債権に対する強制執行された場合との文言の解釈が前提になっていて、これは、正に債務者として指定された者が現に支配者であって、奏効している場合を前提とするんだと、空振りになっている場合は、そもそもされた場合とは言えないんだと、そういう前提に立てば、確かにされた場合、つまり奏効した場合には、債務者という限定を置かないで、支配する者は移転請求権があるとなるのは、非常に論理的だと思います。   ただ、その前提の部分、つまり、引渡しに係る債権に対する強制執行がされた場合というのは、奏効した場合なんだという、ここの解釈自身も、運送人側からすると、先ほどと結局同じ問題になってしまうんですけれども、実は分からないんですよね。運送人が素直に読めば、強制執行がされた場合というのは、現に差押命令が来たら、それはされた場合であって、それが奏効しているかどうかが分からないから問題だと。そうすると、運送人からすると、命令が来たけれども、されたかどうか分からないということになってしまうと。そうすると、この文言は、運送人側の現場の人が受ける印象と、この前提となる文言の解釈が、ちょっとそごがあるなという気はします。ただ、これはここだけにとどまる単なる指摘で、仮にそういう奏効した場合をされた場合と解釈するんだと、運送人が分かる、分からないは横に置いておいて、奏効した場合なんだと言えば、それは論理的にはおっしゃるとおりだと思うんですけれども、読んでいて、そこは違和感を覚えましたという、論理的な点だけの指摘です。   それから、同じくもう少し先にいって、次のページぐらいですかね、仮差押えの前ですかね、正に6ページの上のウのところですね。実際には、電子船荷証券を作成、管理するシステムが利用されることが多いと想定されるが、支配を有する者がシステム提供者に対して支配を移転するための作為を求める権利を契約上有する場合には、丙案における権利を被保全債権としてその契約上の権利を代位行使するという余地もあり得るものと考えられると。ここは、一つの御見解ではあって、そうかもしれないんですけれども、現実問題としては、恐らく作為を求める権利というのは多分あるんだろうと思うんですよね。つまり、電子B/Lの支配者とその後主、後の人の間で、では移転しますということになれば、システム提供者はそれを実現するようなシステムを提供する義務を負うわけだから、それを別言すると、やはり支配を移転するための作為を求める権利はあると、常に言えてしまうのかもしれないと。そうすると、システム提供者に対する債権者代位というのが常に考えられるんだということになると。   ここは、名宛人が運送人ではなくて、運送人と区別されたところのシステム提供者なので、今日、それを代表する委員は御欠席されておられますけれども、恐らくシステム提供者の側からすると、こういう解釈を余り強く言われると、違和感があるのかなという気はします。この点は、どう申し上げたらいいんでしょうかね。丙案、丁案の選択とは論理的には関係しない話で、単純にここの記載がちょっと踏み込み過ぎのように、システム提供者側からすれば感じられますという以上でも以下でもないというのが私の整理ですけれども、一応に読んでいて感じましたので、指摘をさせていただく次第です。 ○藤田部会長 よろしいですか。 ○池山委員 あと、全く別の話がもう一個あるんですけれども、一旦ここで。 ○藤田部会長 事務当局から何かございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます、御指摘ありがとうございました。   まず、5ページのところの強制執行がされた場合というのは、正に池山委員おっしゃられたとおり、私どもとしては奏効した場合というものを想定しておりますので、あとは、法制的にそれをどう書くかというお話なんだろうと思います。差押命令が発令された段階でということは考えておりませんので、そこは、奏効したということを意味として、我々考えておりますから、そこはこの表現でいけるんではないかとは思っておりますけれども、そうでなければ違った書きぶりがあるだろうと思います。いずれにしても、中身が変わるというところではないと思っております。   2点目の部会資料の6ページでいうところのウの部分でありますけれども、これは、システム提供をする側からそういった御指摘がもしあれば、本当にこういったことを書いていっていいのかというところについては、またちょっと検討したいとは思いますけれども、逆に、運送人サイドからすると、こういう実務的な運用というのが確立していくことによって、いろいろな疑問なり不安が解消されるという面はあるのかなと思っておりまして、先ほどの小出幹事の御指摘に通ずるところがあるかなとは思っておりますけれども、私どもといたしましては、こういった強制執行の問題というのはなかなか国際的にも余り議論されていなくて、恐らくこれから出てくる問題なんだろうとは思っておりますけれども、そういったところにもいろいろ目くばせをしたシステムというのがきっちりとできていって、みんなが安心して使えるというようなものを、きっちりと実務の側で工夫してやっていただくというものが、望ましい姿なのかなという感じがしておりますので、そういったところの一助になるようなコメントにならないかなという思いで書いたところではありますが、やや勇み足ということであれば、またそこは引き続き検討していきたいなと思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。代位行使は、仮にこの記述を削除しても、できなくなるわけではもちろんありませんし、強制執行のところの制度の組み方とも関係ない話ですので、書くか書かないかというだけの問題ですね。強制執行の実効性との関係で、このような言及することがいいかどうかという判断だと思いますけれども、むしろシステム提供者側の御意向を後で確認して決めていただければと思います。   そのほか、どの点でもご意見等お願いいたします。 ○池山委員 せっかくなので。ありがとうございます。正にこれが、例えば、要綱そのものに書くとかいうのであれば、分かりません、仮定ですよ。それはもっと考えなければいけないわけですけれども、要綱の話ではなくて、飽くまでこの要綱案を策定する過程で、当局としてそういうことをお考えになったという以上でも以下でもないというのは、私としても理解はしているつもりで、ただ、勇み足とまでは申しませんけれども、違和感が感じられたというだけのことでございます。   ほかにもあると申し上げましたけれども、同じようなことは、御参考までにという意味で申し上げるとすると、全然別次元ではございますが、ありまして、ちょっとお待ちください……8ページの、例えば下の方なんですけれども、差押命令の、これは善意取得との整理の関係で述べられていますけれども、現に強制執行がされた場合には、債務者又は運送人等によりその旨が電子船荷証券記録等に記録されることが望ましいということはありました。これも、正に一つの考え方という意味で、逆に、実務に対する事務当局というか、法制の立案サイドからの提案としては重く受け止めなければいけないんでしょうが、他方で、やはり先ほどと同じ話になってくるんですかね。された場合にはと書いているけれども、された場合かどうかは分からないということと、やはり紙の船荷証券について、後から運送人が追加で勝手に書く権利というのは、元々普通は想定しないわけですよね。なのに、運送人側が勝手に、これがされましたと書くシステムが本当にあったほうがいいのかどうかというのは、ちょっとよく分からないなと思っているので、これは丙案、丁案の選択うんぬんとは別に、理論的にはこうではないかという御提案が法務省サイドから幾つかあったわけですけれども、それはそれで受け止めつつも、本当にそれに応えましょうと、そうしましょうと業界側で言うべきかどうかというのは、一個一個考えていくべき問題かなと思っております。   それからもう一つ、すみません、たくさんあって申し訳ないんですけれども、申し上げるとすると、これ、一番最初の問題意識に戻ってくるわけですけれども、私どもの推薦団体の中で、やはり立法すると、そして強制執行の可能性を明示するということに関する抵抗感が非常に強いという理由のもう一つ大きな柱として、パブコメで申し上げていたのは、国際的に流通するものであって、日本国内で命令が出たとしても、諸外国での効力がどこまで及ぶか分からないと。外国でクレームを受けたときに、日本の裁判所で命令が出たからといって、どうしたらいいか分かんないよと、どこまで効力が及ぶか分かんないと、そこをるる書かせていただきました。   その点については、今回の部会資料ではある種、意図的だと思うんですけれども、悪い意味ではなくてスルーされているところがあって、多分当局としては、国際的な効力の点は言ってもしようがないだろうと、一方で国際的に流通することはあるにしても、その問題というのは、元々国際的に流通する債権的なものの場合に、一国の命令の効力が外国でどこまで及ぶ、あるいは外国でどこまで援用できるかですね、効力そのものが及ぶわけではないですから、という問題であって、そのことを言っても始まらないということなのかなと、一応私個人としての理解はしているつもりです。さはさりながら、実務側ではやはりそこについても、国際的な問題点についても、どうしてもやはり一種のガイドライン的なものが欲しいなという印象はあります。それは、別に何でもかんでも法務省にお願いするべきことではなくて、実務の側で考えていけという問題かもしれません。ですが、この点も非常に実務の皆さんが危惧をしているということは、一応コメントとしては申し上げておきたいなと思います。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。実務側の懸念というのは、非常によく理解はしたつもりでございます。今回、国際的に、例えば外国で執行された場合、あるいは外国に荷物とか電子船荷証券の支配者とかがいるような段階で、日本の裁判所が執行命令を発令するといった事態がどれほどあるか分かりませんが、仮にそういう事態があった場合など、そういう渉外的な要素を含む場合に、この執行に関する議論がどうなるかというところは、実務の中において非常に御関心があるというのは、よく理解はできたつもりですけれども、今回資料にそこを特に触れていないというのは、正に御指摘のとおりでありまして、今検討しているのは、日本法制としてどうあるべきかというお話ですので、そのこと自体が直接関係するものでは必ずしもないのかなとは思っております。   ただ、実際にこういう丙案みたいなものができたときに、渉外的な要素を含む事案において、どういうふうに判断されるのかというところは、いずれは考えていかなければいけないところかもしれません。そこの辺につきましては、多分どういったところで単位法律関係が設定されていくのかなど、様々な切り口から多分考えなければいけないことなのかなとは思っておりまして、これは今後の課題なのかなと思っているところでございます。   差し当たっては、以上です。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○池山委員 ありがとうございます。 ○藤田部会長 そのほか、どの点でも御意見等ございますでしょうか。   今回初めて提案されているものの中に、善意取得の論点などもありますが。 ○洲崎委員 洲崎でございます。今ちょうど部会長が言われた善意取得に関連することについて伺いたいのですが、その前提として、この差押命令が出たときの差押債権者と債務者と、さらに債務者から任意の譲渡があった場合の譲受人の法律関係というか法的状態というか、どういう状況にあるのかというのがよく分からなくて質問をさせていただきたいと思います。一つ考えられるのは、差押命令があっても、債務者から運送品の引渡請求権は差押債権者に一応行くけれども、まだ権利は債務者のところに残っているという理解です。その場合債務者が譲渡すれば、差押債権者と譲受人は二重譲渡の場合の対抗関係、対抗問題のような状況にあると考えることも可能なのかなと思います。   その場合の解決の方法として、差押命令の送達日時と証券記録の支配の移転の日時の先後で考えるとやり方があって、これは民法467条的で、どちらにも権利がある。この方法では一種の対抗問題のように処理しているかのように思えます。しかし、差押えがあれば、権利、すなわち運送品引渡請求権は差押債権者の方に行ってしまって、債務者にはもうその権利はなくなる、しかし、証券記録の支配はまだ債務者のところにあるので、権利者であるような外観だけが債務者のところにあるという理解もありえます。その外観を利用して譲渡したときに、差押債権者と譲受人のどちらが勝つかというと、これは、権利がない者が譲渡しているわけですから、いわゆる善意取得の問題になるのかなとも思うのです。逆にいうと、最初のように対抗問題として考えるのであれば、善意取得が生ずる余地はないのではないか。つまり、善意取得というのは、あくまでも無権利者から権利者であるかのような外観を信じて取得した場合の処理方法なので、どちらにも権利があって、対抗問題として整理するのであれば、善意取得の法理が出てくる余地はないような気もしたのです。その辺りの法的状態ですね、この3者間の。これがどういうふうに整理されたのかが、よく分からなくて、教えていただければ有り難く存じます。 ○藤田部会長 ありがとうございます。ここでの問題状況を善意取得の話と整理していいかという根本的な御指摘ですけれども、事務当局からいかがでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。実はこの善意取得の問題というのは、今回の隠れた大テーマだと思っておりまして、ここについての御意見が出るのを待っていたところでございますけれども、まず、最初に御指摘いただきました基本的な権利関係をどう見るかというところは、実は今回の提案については、余り明言しないで書いているというのが正直なところでございます。これは、結局のところ、差押えの効力をどう見るかというところなのかなとは思っておりまして、一般的には相対的無効とかと言われているところかなとは思いますけれども、これをどのように整理するのかというのは、ちょっとなかなか正面切って書くというのが難しかったなというところでございます。   洲崎委員おっしゃるとおり、基本的な考え方としては、対抗関係のように考えるという考え方もあり得るでしょうし、本当に無権利者だと考えるということもあるんだろうとは思ったところでありますけれども、ただ、結論的にはどちらを採っても余り変わらないのかなというところもあり、ちょっと明言は避けたというところも、正直なところございます。   といいますのも、どっちにしろ対抗関係に立ったとしても、差押命令の送達と支配の移転の先後関係で結局決まるわけですし、無権利者だと見ても、それはなぜ無権利者かというと、結局差押命令が先に送達したから無権利者というわけでして、差押命令の方がもし後であれば、そもそも差押命令は奏効しないということになりますので、差押命令自体が効力なしということになるんだろうと思いますので、結論はどちらもあり得るのかなと思っております。   ただ、御指摘いただきましたとおり、対抗関係的に考えると、善意取得という言葉に非常になじみにくいというのは、多分おっしゃるとおりかなと思っておりますので、このネーミングとして善意取得という言い方がいいのかどうかというところは、いろいろな御意見があるんだろうと思っておりますし、この点について、部会資料の7ページのところで書かせていただいております中間試案の文言を見ても、電子船荷証券記録の支配を返さなくていいということが書いてあるだけで、今回我々がやろうとしていることが、電子船荷証券記録そのものの譲渡ではなくて、債権譲渡の特則として位置付けようとしているわけですので、結局この部会資料で書かせていただいたような規律案を定めたところで、債権はどうなるんですかというのは、実は何も書いていないという状況になっておりまして、それはそれで解釈でいけるという考え方もあるでしょうし、あえて書くとするならば、例えば、今回部会資料の8ページのところで、上記@及びAに加えて、Bというようなところもちょっと例示として書かせていただいておりまして、これは、支配を失った者と支配を有した者との間の債権譲渡を擬制するみたいな形のものを、橋渡し的なものを入れるということも一つあり得るのかなというようなところをやっているわけですが、この書き方というのは、厳密に言うと善意取得ではなくて、承継取得を書いたにすぎないという見方もできるのかもしれなくて、そういった整理そのものが、そもそもこういう形でいいのか、あと差押命令との優先関係も含めて、そこのところというのは、実はこれまで余り議論してこなかったなという反省も含めて、今回改めて整理をさせていただいて書かせていただいているところでありまして、今回のような整理でいいのかどうかというところも含めて、御意見を賜れると有り難いなと思ってございます。   差し当たっては、以上でございます。 ○藤田部会長 洲崎委員、更にございますでしょうか。 ○洲崎委員 もう少し発言させてください。   対抗問題と考えても、あるいは無権利になって善意取得の問題が生ずると考えても、結論はそう変わりはないのではないかとことでしたが、確かに差押命令の方が先であれば、対抗問題として考える限り、差押債権者が勝つことになると思うのです。ところが、無権利になって善意取得の問題が生じてきたときに、差押債権者が勝つというためには、この8ページの(2)の二つ目の段落ですかね、「この点については」で始まる段落の中で、差押命令の効力が優先されるという帰結が変更されることはないと解するのが相当であると考えられるとありますが、この解釈論を採らないと、差押債権者が勝てなくなるのではないかと思われるわけですが、果たしてこの解釈論を採って本当に大丈夫なのかというのが気になりました。   譲受人からすると、証券記録を見れば、債務者のところに支配があるので、それを見て取得したのですから、正に善意無重過失で取得したことになる。もし、証券記録上に差押えの記録があれば、悪意又は重過失になると思いますけれども、差押えの記録がされない状況で取得したのであれば、やはり善意取得の要件は満たしてしまうと思うのです。それにもかかわらず、差押債権者が勝つというのは、やはりかなりウルトラC的で、それこそ国家権力を背景に差押えしているのだから、善意取得よりもこっちの方が優先するのだという解釈論を採らないといけなくなって、ここは、結構しんどいのではないかなと思いました。   ただ、対抗問題として考えるのであれば、そのような解釈論の乗り越えというのは必要なくなるのかなと思えた次第で、やはり両者間での違いは、どうしても出てくるのではないかなという気がいたしております。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘いただきましてありがとうございました。   先ほど私の方で、対抗問題なのか無権利者として扱うのかというところについては、ちょっと余り態度をはっきりさせていないと。重要なのは、今洲崎委員から御指摘いただいたような部分の結論を採ることで、いいのかどうかというところなのかなと思っているところでございますので、まず、その結論的な部分について、本当にこれでいいのかというところを、皆様の御意見を伺いたいなと思っております。   今、洲崎委員の御発言を拝聴しておりまして、私どもの方としては、恐らく対抗問題的に整理していたというところが、正直なところかなとは思っております。そもそも善意取得というものを、この債権の場合ですので、これをどう扱うべきなのかというところについては、やや議論を避けていたところが正直ございまして、今回、先ほども御紹介いたしましたけれども、部会資料8ページのところでBのようなことも考えられるのではないかということを書かせていただいておりますけれども、このBのようなものというのは、余り債権の原始取得というものは考えておらず、どちらかというと承継取得という形を擬制するという形にしておりますので、こういった形にすることによって、承継取得パターンということで、対抗問題的に扱っていると評価することができるのかなとは思っているところでありますけれども、いずれにしても、先ほど申し上げましたとおり、強制執行が一度奏効したら、そっちが勝つという形に整理してしまっていいのかどうか、あるいは反対の考え方もあるのではないかと思っておりまして、強制執行が奏効したとしても、後に善意取得の対象になるような者が現れれば、そちらが勝つという考え方もあり得るだろうと思います。   ただ、その場合は、結局お考えいただかなければいけないこととしては、なかなか差押債権者側としては、支配を強制的に持ってくるという意味における実効性というのは、余りないかもしれないというところを考慮した上で、後に善意取得者というものが現われて、強制執行が破れてしまうということを認めていいのかどうかというところも踏まえて、是非皆様の御見解を頂ければと思っているところでございます。 ○藤田部会長 洲崎委員、いかがでしょうか。 ○洲崎委員 もう一つよろしいでしょうか。   先ほどからの議論を聞いていますと、システム運営者がどこまで強制執行の事実や、あるいは債権譲渡の日時とか、そういう情報が分かるような形で設計してくれるかということが重要だというお話だったと思うのですが、その関係でいうと、差押債権者が原則勝つという仕組みにしておくほうが、システム運営者が差押えの事実があったということを、証券記録に書き加えられるようなシステムを作ってくれるのではないか。   つまり、そのような記録がないにもかかわらず差押債権者が勝つとなると、譲受人が安心して取得できなくなりますから、譲受人が、もう差押えされたのだから、これを取得したら負けちゃうよということが分かるような形で、安心して取引できるようにするためには、やはり差押えの事実が証券記録上で明らかになるとほうがいいと思うのです。そうだとすると、差押債権者が勝つという原則にしておくほうが、差押えの事実を書いてくれやすくなるのではないか。つまり、不意打ち的に譲受人が負けてしまうようなことがないようにするためには、差押えの事実を書いてくれるということになるのかなという気がしております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。なかなか逆に皮肉な議論にはなるんですけれども、善意者を保護するほうが、かえって善意者の地位が不安定で外観がはっきりしないようなシステムを温存することにつながりかねないという、そういう御意見ですよね。貴重な御示唆、ありがとうございました。   この善意者をとにかく保護するか、つまり、差押命令が送達された後に行われた譲渡を、一定の場合保護する必要があるかどうかという基本的なところは、どのように考えたらよろしいでしょうか。それを法律的にどう構成し、あるいは条文の手当てが必要かどうかは追って考えるとして、基本的な方向性として、今洲崎委員は、もう差押えの方が勝つと割り切ったほうが、長期的にはいいのではいなかという政策論も含めた御意見くださったわけですけれども、この辺りはどうでしょう。システム上の記録を信じた善意者を保護したほうがよいという意見がありますでしょうか。そうすると、恐らく善意取得なんかのルートに乗せていくような形の法制度を、解釈なのか立法なのかはともかく、工夫することになりますけれども。 ○池山委員 池山でございます。私は、運送人の立場なので、本来的には、実は、今の問いに対する答えを申し上げる立場ではないのかもしれませんけれども、なかなか意見が出されにくい状況なので、運送人の立場として申し上げるとすると、余りこれ以上、話をややこしくしてほしくないというのが、本音的な感覚としてはあるのかなと思っております。   ここはもちろん、我々も見て検討はして、でも、何も意見を申し上げなかったのも、理由がないわけではないのでして、正に奏効したかどうかが分からないと申し上げましたけれども、奏効したということがはっきりするときははっきりするわけです。そのときには、逆にそれが勝つというほうが、確かにすっきりするので、さらに、ひょっとしたら善意取得があるかもしれないと言われたら、もうややこしくて頭がパンクするというか、実務としては非常に問題がややこしくなるなというのは、肌感覚としてはあるのかなと思います。   ただ、これは、ある種、だからという話ではなくて、流通を保護するという話なので、元に戻って言うと、本来的には所持人になり得る、支配者になり得る方々の静的安全、動的安全の話なのかなと。実務の側から、その実務、つまり貿易当事者の側からはっきりした意見がないということであれば、もし出ないのであれば、理論的に決めていただくしかないのかなと思っております。 ○藤田部会長 了解いたしました。 ○雨宮委員 個人的にですが、一度強制執行が奏効した以上は、善意取得を認めるということは、部会資料に書いてありますように安定性を害するので、個人的には善意取得を認めなくても良いのではないかと思います。   除権決定などでも、除権決定が出されれば官報に掲載されますが、その後は善意取得が認められないと一般的に考えられていると思います。やはり法的手続を採られた以上は、取引安全よりもそちらの方を重視するということが考えられると思っています。 ○藤田部会長 ありがとうございました。甲案などを採れば正にそういう世界になるのですけれども、丙案採っても、基本的には同じ政策判断を維持してよいという御意見だと承りました。方向性がそういうことであれば、あとは今の整理でいいかという話と、あるいは明文の規定があったほうがより明確になり望ましいかという辺りを検討することになりますが、方向性としては、現在の提案にあるような方向性でよろしいでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。方向性につきましては、おおむねいただいたかなとは思っておりますけれども、若干まだ懸念としてありますのは、なかなかこういう善意取得というものを対強制執行との関係でいくと、劣後するものと見るというのが理論的な帰結の一つとは思いつつも、若干紙ともう一つ平仄が合わないというところもありますので、MLETRとの関係なり、国際的な調和との関係なり、気になるところもないわけではないというところでございますので、そういったところの観点も含め、何か御知見等があればいただけると有り難いなと思っているところでございます。 ○藤田部会長 ありがとうございます。ここで強制執行、命令送達後は善意取得できなくなるとすることが、機能的等価性に反するかという問題ですね。紙の場合は証券が効力を失わない限り善意取得の可能性は残るので、確かにその限りでは、紙の場合とパラレルではなくなるのですけれども、そもそも強制執行の問題を債権執行のアナロジーで組み立てているところから、既に差異が生じていますので、その延長にすぎないのかもしれません。この辺りについても、もし御感触があれば御意見いただければと思いますけれどもいかがでしょうか。国際調和の観点からの理論的な整理の話ですけれども。 ○笹岡幹事 笹岡です。ありがとうございます。関連いたしまして、今御提案されているのは、現在の過渡的な状況でできる最善のことであって、これから、例えばデジタルアセットに対する強制執行に関するもっと大きな枠組みができた場合、今は間接強制しかできないので実効性がないという前提なのですけれども、これがもし何か変わってきたとしたら、そちらのルートに乗るほうがやはり望ましいという判断になるのかと思います。そうしますと、動産執行と同じような枠組みでできるので、今の問題は全て解消するのかと。現状でできることの中で最善のことをやっているという、過渡的な法制であるということを明示しておくのが、もしかしたらいいのかもしれないなと思いました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。善意取得の話というよりは、より一般的な御感想と承りました。   事務当局からありますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘いただきましてありがとうございました。   おっしゃるとおり、もうちょっと長い目で見てみますと、デジタル資産というものの何か大きな流れというものが、今後出てくる可能性というのは当然否定できないんだろうと思います。そういった中で、さらに、国際的にも国内的にも議論がどんどん進んでいって、新しい制度ができるということになったときには、それはそれで、この法制も併せていくということはあり得るんだろうと思います。   ただ、なかなか現状、いろいろ我々もそういったところも含めて、議論の状況というのをいろいろと情報収集はしているつもりではありますけれども、今すぐ直ちに、今我々がやっているようなものとは全く違うようなものがすぐ出来上がるかというと、必ずしもそうではないなという感じはしているところでございますので、長い目で見れば、今回の取組も過渡的なものという評価が、歴史的にされるということはあり得るとは思いますけれども、いずれにしても、御指摘はそのとおりかなと思っているところでございます。ありがとうございました。 ○藤田部会長 そのほか、どの点でも御意見等お願いいたします。 ○後藤幹事 先ほどの善意取得の話についてですが、事務局から、この電子の場合だけ善意取得はなしということにすると、やはり紙とのずれというのが目立ってしまって、MLETRとの関係が問題となるのではという御指摘がありました。そのとおりかなと思いつつも、できるだけMLETRと同じにするという要請が、どこまでの射程を持った話なのかというのは、ほかの国がどう対応しているかも含めて、検討する必要があるように思います。やはり強制執行関係は、国によって違いが非常に大きな分野だと思いますので、目をつぶって進んでいる国もあるかもしれませんが、余り縛られ過ぎずにということもあり得てよいのかなと思いました。   他方で、ここだけ善意取得なしとすると、日本国内だけで見た場合でも、何かすごく特殊なことをやることになるようにも思われます。今、笹岡幹事がおっしゃられたような、デジタルアセット一般に対する強制執行といった包括的なことをやる中で、そういう調整をしていくことはあり得るんでしょうけれども、今回そこまで一気に行ってしまっていいものかというためらいもないわけではなくて、そこは事務局の方の御懸念も何となく理解するところではあります。   ただ、善意取得の可能性があると実務としては困るというのも、それはそれで分かるところがありますので、どういう対処が考えられるかということなのですが、先ほど小出幹事が別の文脈でおっしゃっておられましたけれども、善意取得の可能性はあるんだけれども、システム上うまく対応すれば、事実上その可能性は排除できるということがもしあるんだとすれば、例えば、送達が第三債務者に行ったときに、それがすぐシステム上反映されるような仕組みが作られるのであれば、システム上の支配の存在がずれるということがなくなるので、事実上の問題として解決はできるのかなという気もしないでもありません。 この点については、それではやはり不安定ではないかという池山委員の御指摘もあったかと思います。それもそのとおりかなと思いますが、もしあるところでシステムに大きく委ねるのであれば、そのやり方はほかのところにも応用できるのではないかなとも思いました。   というわけで、全く方向感が定まらないコメントで申し訳ないのですけれども、そういったアプローチもあろうかと思った次第です。ありがとうございました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   事務当局から何かございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。大きなところからの御指摘もいただいたかなと思っておりまして、大変有り難いと思っております。   先ほど小出幹事からの御指摘もあったかと思いますけれども、国際的な議論を見ても、執行とかまで意識した議論ってなかなかなかったりしておりますし、現状、英米法系で中心に進んでいるというところもあり、細かいところが本当にどうなっているのかというところが、よく分からないまま立法が進んでいるのではないかと思うところも、正直なところございまして、ただ、他方で、我が国はなかなか大陸法系ということもあって、結構精緻な議論等が求められているという状況の中で、いろいろ議論してみると、本当に解決しなければいけない論点というのは多々あるなということを、改めて認識しているところなんですけれども、では、そういったものも全て精緻に法制度化していくというのが、本当に今後の国際的な流れなのかというところも、若干どうなっていくのか不透明なところがあるかなとは思っておりまして、ある程度そういったところも取り込んだ上で、システムで任せていくというのも、一つの流れになりつつあるのかなという雰囲気は、正直感じているところでもございますので、そういったところもあって、今回部会資料においても、いろいろな問題点が残るけれども、そういったところはシステムで対応すべきだというような記載も、ちょっとさせていただいているところであります。   こういった流れが本当に正しいかどうかというのは、本当に分からないところではあるんですが、一つの解決の在り方なのかなとは思っておりますので、そういった方向でいいのかどうかも含めて、また皆様の御意見を伺えればなと思っているところでございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。後藤幹事も言われたシステムによる対処がなされるようなことで事実上の解決が図られる方向が望ましいとすれば、最初に洲崎委員が御指摘されたように、そのようなインセンティブを当事者に与えるルールというのは何かという観点から評価するということになると思います。善意取得なんかも否定してしまったほうがいいかどうかも、そういった角度から検討する必要があるということになるのだと思います。   よろしいでしょうか。 ○小出幹事 小出でございます。今の後藤幹事の御発言と基本的に同じだと思うんですけれども、そもそも、当然電子船荷証券記録は有体物ではありませんし、有価証券そのものでもないということだと思いますので、いわゆる伝統的な意味での善意取得では多分ないはずだと思います。そうだとしますと、その善意取得と同じようなルールを作るということだと思うんですけれども、そのときに、そもそもなぜ善意取得みたいなものを認める必要があるのかというそもそも論が多分あって、外観に対する信頼という話にいくのか、それとも一種の紙の占有に伴う効果と考えるのか、いろいろな考え方があると思うんですが、外観に対する信頼という考え方でいくんだとすると、やはり強制執行があったからといって、それをおろそかにしていいとは当然にはならないだろうとは思います。   なので、ここは結構、実は難しい問題なような気がして、ちょっと今日の時点で私も結論が出ているわけではないんですが、一方で後藤幹事や藤田部会長のおっしゃったとおりだと思いますが、どちらのルールであれ、ルールをきちんと定めておいて、適切な対応を促すという方向がいいのは、私もそのとおりと思っております。その意味では、初め洲崎委員のおっしゃった御懸念というのは非常に大事な御懸念だと思うんですけれども、例えば、強制執行があると善意取得を認められないとすることによって、それが回避されるだろうというような考え方というのもあり得るようには思います。   ただ、そうすると、それは多分伝統的な善意取得とちょっと違うような考え方になってくるような感じがいたしますので、その辺をどのように検討していくのかということだと思います。一方で、善意取得を認めると、強制執行する側としては、もう対応策が採れなくなるんですかね。今、現時点では全く答えがないんですけれども、その辺りを含めて、もう少し検討すべき問題かなと思いました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○後藤幹事 すみません、追加で一つだけ。当事者にどういうインセンティブを与えるのがいいかということについてですけれども、当事者がシステムを選んでいくというときに、誰がリードを取るんだろうかというところのイメージがまだよくできていないかもしれません。運送人側が、うちで使わせてあげるのはこのプラットフォームだけですよと限定することができるのであれば、運送人から見ていて変なリスクが生じるようなシステムは排除することができると思いますが、銀行なども含めた荷主側がリードしていくということもあるのかもしれません。その場合でも運送人が拒めば使えないはずですので、そこはそれで担保されているような気もするんですが、ともかくここのイメージがずれていると、そこで何かいろいろ混乱してしまうおそれもあるかもしれませんので、もし実務の方で何か今の段階でイメージがあるようでしたら教えていただければと思います。現段階ではいろいろ流動的なのかもしれませんが、今後制度設計を考えていくに当たっては、そこの点も留意したほうがいいのかなという気がいたしました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。   我々の方として、今、システムをどのように組んでいくかという点に対して、どちら側がリードしていくかということについては全く定見はございません。ただ、大事なのは、我が国の法制において、どういったものが要件として求められて、どういったものが付加的なサービスであってもいいのかというところを、しっかりと論点整理をしていきながら、要綱の取りまとめに向けて議論していくということだろうと思います。   そこでいろいろ挙げられた課題なりを踏まえて、どういった形で実務が動いていくのかというところが決まっていく面もあるのかなと思いますので、今の時点でどちらがリードをしていくということが、確定的に決まっているとか決められるという話でもないような気がしますが、いずれにしても、我々の方でしっかり議論をして、それを実務につなげていくということが大切かなと思ってございます。ありがとうございました。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。ほかに御意見ございますでしょうか。   猪俣委員、よろしくお願いします。 ○猪俣委員 三菱倉庫の猪俣でございます。供託について一つだけ、実務レベルのところで申し上げておくと、今の時点で、物品供託ってほとんど使われておりませんで、法務大臣が指定する業者が指定倉庫として供託を受けている状態なんですけれども、弊社も指定倉庫ですが、ここ何十年も受けておらないのが実務になっております。なので、新しい法律の中で、供託という言葉を使って供託できるというようなことにすることが、果たして実務上大丈夫なのかということが一つあるのと、もう一つは、船会社がもしもめた貨物を任意処分することに、取りあえず一旦日本に引き取って任意処分することもあろうかという話が先ほどちょっと出たと思うんですけれども、船会社の任意処分にも通関手続というものは必ず必要で、そういった貨物の通関手続ってとても煩雑で、関税法上、税関長のすごく細かい規定がありまして、それは簡単に国内に引き取って、関税を支払った上で処分をしなければいけないので、なかなか難しいのかなと思うのが、実務上のことです。通関を切らないのであれば、外貨のまま廃棄処分もできますけれども、外貨のまま処分することは更に関税法上ハードルが高いので、関税法上の手続論がちょっと実務、この論点の中からちょっと抜けているのかなということを感じました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   事務当局からありますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。大変貴重な御指摘ありがとうございました。我々の方は、どうしてもやはり法制度ばかりに目がいってしまうものですから、例えば、供託というものが使えるということになれば、それで一見落着と考えがちなところでありますので、ただ、先ほどから皆様から御意見いただいておりますとおり、なかなか供託とかそういった手続というものが、それほど使い勝手のいいものではないということの御指摘を頂いたかと思いますので、そういった方向からの解決というのは、理論上はすっきりするかもしれませんが、実際上の解決にはなかなか結び付かないであろうと、こういう御指摘を頂いたものだと思っておりますので、そういったところを参考に、引き続き検討していきたいと思います。ありがとうございました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   そのほか、どの点でも御意見ございますでしょうか。   もしないようでしたら、本日の審議はこの程度にさせていただきます。よろしいでしょうか。   それでは、次回の議事日程等について、事務当局から御説明お願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。本日は非常に難しい論点について、様々御議論いただきましてありがとうございました。   次回の第13回部会は、令和5年11月15日水曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省地下1階大会議室を予定してございます。第14回の部会は、令和5年12月20日水曜日の午後1時30分から午後5時30分までを予定しております。令和6年1月以降の部会の日程につきましては、現在内部で調整中でございます。決まり次第アナウンスしたいと存じますので、今しばらくお持ちいただければ幸いに存じます。   次回取り扱う内容につきましては、本日までの議論の状況等を踏まえて、事務当局において検討させていただきたいと思います。   事務当局からの説明は以上でございます。 ○藤田部会長 それでは、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会の第12回会合を閉会にさせていただきます。   本日は熱心な御審議を賜りまして、どうもありがとうございました。 −了−