法制審議会 区分所有法制部会 第14回会議 議事録 第1 日 時  令和5年11月21日(火) 自 午後1時33分                       至 午後4時09分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題  区分所有法制の改正に関する要綱案のたたき台(1)の検討 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○佐久間部会長 ただいまから法制審議会区分所有法制部会の第14回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は、浅見委員、武部委員、増田委員、青木幹事、神谷幹事、中野幹事が御欠席です。   それでは、最初に配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○畑関係官 資料について御確認いただきたいと思います。事前に部会資料24「区分所有法制の改正に関する要綱案のたたき台(1)」をお送りしております。お手元にないものがある場合には、途中でも結構ですので、事務局の方にお知らせください。 ○佐久間部会長 それでは、早速本日の審議に入ります。本日も長時間にわたることがあるかと思いますので、その場合には、適宜休憩を入れながら審議を進めていきたいと存じます。   前回もお伝えいたしましたとおり、部会資料24はパブリックコメント後の二読目のものですので、事務当局からの説明は省略させていただきます。   そこで、いきなり審議ということになりますけれども、最初に、前回の会議におきまして、本日は御欠席ですけれども、中野幹事から資料を御提供いただきました。そこで、まずは、部会資料24の「第1 区分所有建物の管理の円滑化を図る方策」のうちの「6 共用部分等に係る請求権の行使の円滑化」、ページ数で申しますと14ページから18ページまでについて、御意見を頂ければと存じます。   まずは、「6 共用部分等に係る請求権の行使の円滑化」に絞って御意見を頂ければと存じます。どなたからでも結構です、いかがでしょうか。 ○大桐委員 ありがとうございます。まず、修補の請求及びその修補請求に代わる損害賠償請求権という重要なピンポイントに絞って、特別に、確実に瑕疵の部分を修補できるような制度を設けるべきだと考えております。部会資料では、日弁連の考え方に対しての御説明についてもう少し丁寧な説明を頂きたかったところです。区分所有建物における共用部分という特有の性質を持っているものに関しまして、ニーズとしましては、請求権が発生した後に区分所有権が譲渡されて、誰が請求権を保有しているのかということが実務上は不明確であったりもするわけでして、それに関して、旧区分所有者が個別に行使をして修繕費に確実に回らなかったり、あるいは行使をしなかったりで、落ちてしまう部分があるということが実務上問題になっておりまして、その修補に回るべき費用が回収できずに、実態的にも修補ができないということが起きているわけでして、このようなニーズに確実に立ち向かうためには、この区分所有建物の維持のために、民法の特別法としての役割を担っている区分所有法において、政策的に瑕疵修補に代わる損害賠償請求権についてだけ、ピンポイントにおいて特別扱いの規律を入れるということが必要なのではないかと考えております。   理屈としましては、区分所有建物の共用部分というのは、そもそも分離処分ができないという性質を有していますし、また、各区分所有者一個人が個別に分割請求等もできないということになっておりますので、また、その修補が必要な部分につきましても、単独でどうこうできるという代物ではないということで、やはり団体的拘束力をより強く及ぼすべき部分だと思っております。  ゴシック体のところで申し上げますと、例えば、@からDの、Bについて適用除外にするか、あるいは、そのただし書を設けて、共用部分の瑕疵修補請求に代わる損害賠償請求に関しては、区分所有権の承継に伴って当然に承継するということの、元々(注2)にあったものについてのアレンジバージョンといいますか、それを入れていただくということで御対応いただけないかと思っているところです。   また、中野幹事から出ております資料にも紹介されている、遺産分割における預金債権が、かつて当然分割だったところが、政策的に当然分割にされないと考え方が変わったということも、これも一つ政策的な判断かとは思いますので、この共用部分における瑕疵修補に代わる損害賠償請求に関しましても、政策的な理由で対応を特別扱いするということに関しては、何ら支障となるべきものはないのかなと考えておるところであります。   また、別の観点から申し上げますと、例えば、管理組合の内部において、共用部分の修補が必要な部分が出てきたときに、まず修補しましょうとなったときには、現在の新区分所有者がその決議に拘束されるわけでありまして、旧区分所有者が債権を持っていようといまいと、新区分所有者が一時的に費用を負担せざるを得なくなってしまい、そこで新区分所有者が損する事態といいますか、不公平な事態が生じてくるのではないかということも考えますと、やはり請求権は当然承継するということを設けておけば、新所有者に集約することができ、全体的な修補の費用を回収して、確実に修補ができるとなるのではないかなと考えているところです。   お考えいただければと思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   なければ、ちょっと今の大桐さんの御発言について確認をしたいことがあるんですけれども、まず、請求権が発生した後に、請求権者が不明確になる、その結果、修繕費に回らないこともあって、回収できず修補できないとおっしゃったんですけれども、修補というか、修繕に関して言いますと、結局のところ、修繕ですと結局管理のための費用ですから、元の区分所有者が損害請求権を譲渡したといたしましても、管理のための費用を支払う債務を負っておりますし、最後の部分でおっしゃった特定承継人として新区分所有者も管理のための費用としての支払義務を負いますよね。これは、賠償を取れるかどうかにかかわらず、そのような扱いになって修補するのではないでしょうか。そこで、その賠償金が回収できないから、そもそも修補が困難になるというその御認識が、なぜそうなのかというのがちょっと、私には理解し難かったんですが、その点いかがですか。 ○大桐委員 修補の金額が高いような場合においては、新区分所有者が負担できないようなケースもあるのではないかとは思っていまして、必ずしも先に修補できるとは限らないと思っています。 ○佐久間部会長 ただ、代理できるわけですよね、今の理論だと。代理して取ることは可能だし、逆に管理費として、管理費ではなくて修繕費かも分かりませんが、それを回収した場合であっても当然に、つまり例えば旧区分所有者が支払った場合であっても、管理組合で一元的に賠償を請求するというのはなぜ必要なんですかね。何か発想として、賠償金がないと修繕できないという、それはそういう事態もあるのかもしれませんが、ほとんどの場合は違うのではないかっていうことが、元々からやや疑問に思っているところなんですが、そうではないんですかね。 ○大桐委員 ただ、かなりの多額な費用を要する修繕となりますと、現実は、費用が足りなくてやはり前に進まないというところが多いのではないかと思っています。 ○佐久間部会長 それは、代理では足りないんですかね。 ○大桐委員 ですので、代理では、全員を代理で確実にできればいいですけれども、旧区分所有者の方で別段の意思表示をしますと、そこは抜けていくわけですよね。ですので、そこの部分で確実性がないということが考えられます。 ○佐久間部会長 別段の意思表示をしても、旧区分所有者に請求できませんよね。 ○大桐委員 旧区分所有者自体に請求できるかどうかは…… ○佐久間部会長 いや。旧区分所有者に対して、その一部抜けた部分について何とかすれば、請求できるわけですよね、費用の支払は。元々費用を支払わなければいけないんだから、旧区分所有者は。   原案は、結局、修繕のための費用は区分所有者がそれぞれ負担すべきものであり、賠償金を取れるかどうかにかかわらず、修繕しようと思ったら区分所有者が費用を負担せざるを得ないと。その負担分についてどうやって各区分所有者が回収するんだというと、正に賠償金をもって充てると。その賠償金をもって充てるというときに、確かに大桐さんがおっしゃったように、多額の費用ということになることもありますけれども、それでもいちいち各個人が回収するというのでは、通常不便であろう、実効性もなかなか確保し難かろうということで、代理行使を管理者に認める。こうして一元的に集約したものについては管理者が行使することで、そのような不便もなくなるのではないですかという発想なんですけれども、それでは根本的に足りないんですかね。 ○大桐委員 新区分所有者が負担した部分について、どのように請求するのかという、そこの不公平感があるものですから、そこの部分と、やはり旧区分所有者がかなりの人数になってきますと、抜ける部分も多いのではないかという部分が懸念事項であります。 ○佐久間部会長 新区分所有者が結果的に費用を一旦負担したといたしまして、その新区分所有者が売買によって区分所有権を取得していた場合、恐らくそこには、費用として支払わなければいけない部分が価格に反映されていない、つまりは、通常価格で売買しているということが前提となっているのかと思います。というのは、既に価格分差っ引いていますということになれば、新所有者に負担はないので。そういう差っ引かない分での価格で買い受けた場合であっても、旧区分所有者と新区分所有者との間の売買において、契約不適合の責任は免じますという特約をしていたら、もうそれは特約しているんだからしようがないと。特約をしていなかったら、恐らく契約不適合については織り込まずに契約をしているところを、契約不適合が後で分かったということになるわけですから、代金減額や損害賠償といった契約不適合の責任の追及が、新区分所有者から旧区分所有者にできるのではないかと思うんですけれども。確かに、事態によっては、大桐さん、あるいは弁護士会、中野さんがおっしゃっているように管理者が全部まとめて請求したほうが便利ということはあると思うんですけれども、原案の立て付けで根本的に動きませんということにはなっていないのではないかと、私は理解しているんですけれども。   あともう一点、私が申し上げたようなことだったら不便が生じないというだけなのかということで申し上げたいことが1点ありまして、それは、各区分所有者の権利を認めておかないと困るということだってあるのではないかと思うんですね。それはどういうことかと言いますと、この場合の権利というのは、中野さんの意見書では、何か売買上の請求権が分属しているという考え方を批判され、最終的に、弁護士会がそうお考えになるかどうか分かりませんが、本質的に不可分債権であるというようなことが言われているんですけれども、この場合の契約不適合に基づく請求権というのは、売買契約が各区分所有者と分譲業者との間でされておりますから、個々人の権利なんですね。別個独立の権利なわけです。   そうだとすると、契約上は個々人の権利を行使することが、本来的には各人に任されているというしか言いようがないんだと思うんです。だけれども、修補請求を各人ができますかって言いますと、修補請求をしようとしますと、これ、必然的に共用部分の管理に関する事項に当たってしまいますので、区分所有法18条1項の制約をそこで受けることになると思うんですね。つまりは、集会決議に基づいてしか、修補請求は基本的にはできないと。ただ、18条1項にはただし書もありまして、修補が保存行為に当たるときは、各区分所有者ができるということになっているんです。そうすると、規模の大きな修補が必要であるというときには、後でもちょっと理由を申し上げますけれども、保存行為に基本的には当たらないと一般的に解釈されており、したがって、各人が権利行使をすることはできないんですけれども、保存行為に当たる場合だってあり得るんですね。例えば、各戸の玄関扉に不具合があるだけだ、あるいはベランダの手すりに接続不良があるだけだ、このような場合は、管理者が動いてくれなくても、各区分所有者が自分で修補請求もできるし、修補に代わる損害賠償請求も、何ら制約なくできるんですね。   これは各契約者の自由に任せればいいんですけれども、管理者による一元的行使なんていう考え方を採ってしまいますと、ここが動かなくなるおそれがあって、管理者が機能している組合ばっかりではないんですね。管理者がやってくれないから、まず保存行為に問題なく当たる行為については各区分所有者がするということは、これ、許されていないと駄目だと、私は思うんです。   さらにもう一歩進んで申しますと、ここからは、私はそう考えるという世界になってしまうんですけれども、保存行為について、どうして区分所有法18条1項ただし書ではあんまり広い範囲では認められていないかといいますと、それは、多数の区分所有者の利害に関わる事項については、集会決議に基づく、言わば集団的決定に服するのが適当である、そこで管理者に委ねるのが適当である、共同の管理に服させることが適当であるという判断によるものなんですね。   これって、共同の管理が動かないときには、保存行為をごく限られたものにすべきだという判断になるかどうかは、場合によっては分からないと思うんです。割ときちんと管理が動いているからこそ、共同の管理に服するのが適当だとされているのであって、共同の管理がもうほとんど機能していないというところでは、どこまでかはちょっと分かりませんけれども、比較的大きな修繕等であっても、お金が要るので個人には現実になかなかできないというのはありますけれども、たとえば数人が寄って、それでやりましょうということだって排除されていないはずだと思うんです。そういったことが一元管理ですということでは、動かなくなるのではないか。   きちんとした管理組合があり、管理者もきちんとしており、いろいろなことができますというところについては、大桐さん、弁護士会や中野さんがおっしゃるところでワークするし、その方が便利なのかもしれません。でも、他方で、私のような見方をする人間からすると、そういう組合の場合は、あんまり各区分所有者が勝手なことを言って、私は協力しませんなんていうことはなかなか起こらないだろうと思うし、起こったときには、法律上の請求権を大概、管理会社とか弁護士さんに相談して行使するということもあるので、それほど困ることはない。むしろ、管理が必ずしもうまくいっていないというところのことを考えると、きちんと法の立て付けを守ったほうがというか、守らないと困るのではないかって、私は思っています。   部会長でありながら、長々と申し上げましたのは、従来から、ここは利益衡量的に言うと、管理者による一元的行使というのを可能にしたほうがいい場合はあるのかもしれないというのは、これは恐らく共通認識だったと思うんですが、ずっと申し上げてきたのが、だけど、理屈は立たないですよねという話をしてまいりました。私は、今申し上げたような理屈なのではないかと思いますが、その理屈は、今大桐さんがおっしゃったようなことでは乗り越えられないのではないかと思うんです。私がここが困るのではないかと申し上げたところも含めて乗り越えられるのであれば、原案を改めるのは当然すべきことだと思いますけれども、むしろ私は、原案を維持しないと、実際に困ったところが出てくるのではないかと思うということで、ちょっと部会長でありながら、いつまでもこれ、中途半端な状態では置いておけませんので、見方について申し上げました。   もっとも、当たり前の話ですが、委員、幹事の皆様方、自由に発言していただいて、適切な解決を導くということが求められておりますので、御意見を承れればと思います。 ○齊藤委員 すみません、沖野先生がすばらしい理屈を作ってくださるかもしれない。私は、理屈を作れない者として、今おっしゃられることをよく理解したつもりでございます。そして、理屈を作れない者として考えましたのは、できるだけ管理者にということで、そして旧区分所有者、Bのところですね、管理者に対して、特段の意思表示をした旧区分所有者には適用しないということですので、できるだけ管理者の方にという意味では、(注)につけていただきましたBの「特段の意思の表示」というのは、書面によらなければならないという形を取ったらよいのではないかと考えております。書面で意思表示をするというのはなかなか現実には難しいかもしれないということで、できるだけ管理者の方に権限が集約できるような状態に持っていけるのではないかなというのが、私の意見でございます。   すみません、理屈は作れないものですから。でも、少しでもよいほうにと思って、発言させていただきました。ありがとうございます。 ○沖野委員 ありがとうございます。結論を申し上げますと、部会長が御指摘になったところに共感しております。大桐委員や中野委員、また弁護士会が従前から御指摘になっているニーズがある場合があるというのは分かりますけれども、そのニーズがある場合が全ての場合ではないのではないかという点は、やはり問題のように思われます。管理者がしっかりいて、その下で管理がされているというものばかりではないというときに、全てに一律に及ぼしていいのかという問題は、やはりあるように思われます。   他方で、そのニーズへの対応として、現在の原案では全く動かないのかというと、確かに別段の意思表示というのがありますけれども、そういうものがない限りは、基本的に一元的な行使ができるということを確保しようとしておりますので、かなりのところは対応できるのではないか、また最初に問題としてあった東京地裁の考え方は採られないということを明確にするという点でも、意義があることではないかと思っております。   一方で、別段の意思表示をする旧区分所有者というのが出ると、十分な原資が確保できないではないかということに対して、そもそも相当程度は対応できるのではないか、旧区分所有者の部分が僅かであれば、現在一元的な行使に反対をしていないという者だけでも十分対応できるのではないかと思われますし、逆に、多くの人が望んでいないというときに、果たして強行できるのかという問題があるように思われます。大部分はそういったことを望んでいないということであれば、むしろそれを圧するような規律としていいのかという問題はあると思われます。   現在の所有者との間で不公平が生じないかという問題ですけれども、これも部会長が言われたように、ここの不公平は、この譲渡の新旧の所有者の間で負担の分担が不公平ではないかということですけれども、逆に既に共用部分が毀損していて、その程度の価値しかないという前提で価格にも反映して譲り受けたときに、その部分も改修でき、それによる価値増加を譲受人が得られるということになるのは、かえって不当な不利益をもたらすということになりますので、新旧の区分所有者間の公平は、むしろその譲渡なり所有権の移転をもたらした原因関係における調整によって図られるべきであり、かつ、それは一律には決められないということになると思われます。したがいまして、その点の公平は、その譲渡をもたらしたのが契約であれば、その契約の関係の精算に委ねるべきだろうと、例えば担保責任が追及されるならそうですし、費用等の償還等があるならば、それによることになるものと思われます。   ですから、政策的な話として、政策を重視したとしても、中野委員の御提案が本当にベストの策であるのかということについては、やや疑問を感じます。むしろ、もしそのような考え方を採られるならば、場面を限定する、例えば管理者による管理が十分に生きているというような、幾つかの前提を要件として書き込まないといけないのではないかとも思っております。   一方、理論面ですけれども、私もよく分からないと思いますのは、事実の問題として、この一元行使をして賠償金なり損害金なりを回収して、それを修補等の費用に充てるということが十分あり得るというのは分かるのですけれども、そこで、法律関係として何をしているかというと、飽くまで帰属はこの債権の帰属であって、それを回収したら、なぜ回収金を直ちに共用部分の管理等のために充てられるのかという点です。しかも、これは、この業者では信頼できないということですから、別の業者と契約をして、そこで契約関係を生じさせ、その契約主体として債務を負う、その債務を払うという話になると思うのですが、なぜそれに当然充てられるのかという問題は、実は事実上みんなそうするでしょうということですが、法律関係としては、管理費用ですとか修繕分担金ですとか、それと相殺をするということでやっているのであって、そうだとすると、それぞれの債権関係が立たないと、法律上はできないという話になります。法律上の基礎は、事実としてみんな納得しますよねというレベル以外にはないということであれば、合意であるとか同意に基礎を置いているということになるのではないか。そうだとすると、同意しない人まで拘束できるのかという問題はあるように思われます。   ですので、帰属の話と行使の話というのは、やはり別になるのではないかと考えられます。回収金をどう使うというのは、帰属権利者が決められるべきものではないかと思うわけです。そうはいっても、行使は一元化したほうが効率的であるということがありますので、行使を極力一元化するというのは十分考えられるわけですけれども、当事者の意思に反しても一元化できるのかということについては、なお疑問に思われます。   中野委員が出してくださった分析においては、例えば、瑕疵修補の方は、これは不可分債権であるとされていまして、政策上と書かれていますが、瑕疵修補請求権は、政策上ではなく性質上不可分なのであって、債権の目的が不可分であるので分割できないということになるだけで、それが金銭債権である損害賠償債権に変わったときに、性質上不可分と言えるのかというのは、やはり言えないのではないかと思っております。   それから、意思決定につきまして、契約当事者としまして、瑕疵修補を現物で求めるのか、金銭でそれに代わる損害賠償を求めるのかというのは、契約当事者間の内部的な意思決定だと思われますけれども、厳密に言えば、それは、契約当事者における内部的な意思決定であって、一方で、しかし、瑕疵修補ということになりますと、現在の所有者の所有物に手を加える、また立ち入ったりしなければいけないということになりますので、そちらの所有者として修補等の対応をするということについては、所有者間で意思決定をしなければいけないということになりますので、実は現在の共用持分、共用部分について瑕疵修補等をするかというのは、現在持っている人が決める問題ですけれども、過去の契約に基づく瑕疵修補請求権というものを行使できるかというのは、契約当事者の問題ではないかと思われまして、実はそこは、厳密に考えていくと、契約上の瑕疵修補請求権を行使するかというのを、この集会で決定できるのかという話も逆に出てくる問題ではないかと思っております。ですので、立論としては難しいのではないかと思っておりますし、そもそも修補が不可分だからといって、損害賠償は当然に不可分ということにはならないと考えられます。   政策の強調について申し上げますと、したがいまして、瑕疵修補はマンションの場合に特有の不可分な債権というのではなくて、どういう場合であっても不可分だというものですので、これは政策上そうなっているというものではありません。   それから、預金の共同相続についての扱いが政策上そうなっていると言われましたけれども、最高裁の決定は、確かに一方で政策的に預金というものが非常に現金代替性が高いゆえに、遺産分割における調整財産として価値があるので、遺産分割に入れることが大事であるということは一般的に論じられていますけれども、具体的には、普通預金の場合と定期性のある預貯金の場合とでは全く違う理屈が採られており、そもそもの契約関係、それから債権について、言うまでもないことですが、普通預金であれば、その流動性がいきなり断ち切られるというのが、普通預金契約にもその下における債権にも合わないということですし、定期性については、定期契約を期限前で解除しないと行使できないというような制約がついておりますので、それぞれの契約、基になる債権を生む契約の性質に照らして、この場合には当然分割にはならないという判断がされているのであって、これを共同相続において政策的に不分割としたという位置付けは、最高裁決定の読み方として疑問があるのではないかと思われますし、理論的にも政策を打ち出すことでいけるという話ではないんだろうと思います。   そうした場合にですけれども、その上で、原案でも、かなりのところ、それでもニーズに沿わすことができるように配慮をし、正当性も確保できるようにしているということではないかと思っております。   少し考えられるかもしれないと気になっておりますところが、原案のBにつきまして、@及びAの規律は管理者に対して別段の意思表示をした旧区分所有者には適用しないということなんですけれども、例えば、既に集会の決議ですとか規約において、この種の債権について、あるいは具体的に集会の決議によって、これはもう一元行使をしましょうと、代理権を与えましょうと、そういう判断がされたという場合も、その後、区分所有から離脱すると、いや、それはもう拘束を受けないんだということになってしまうのかというのは疑問に思われまして、既に離脱の段階で、そのような拘束を持った債権として同意をしていますので、言わばエストッペル的なところもありますし、自分は反対したかもしれないけれども、それは団体的な拘束を受けるので、規約や集会の決議があれば、この旧区分所有者が区分所有者であった時点において規約等があれば、Bは排除できるとか、そういうようなことは一つ考えられるのかなとは思ったところです。解釈なのか、もう少し書けないかということはあるのかもしれません。   もう一つは、従前から申し上げていたところでもあるのですが、区分所有権の譲渡のときの、この債権についても譲渡を推定できないかという点です。共同行使にするのが合理的であって、通常の意思ではないかということからすると、そのようなことが考えられないかということですが、それに対しては、前回はニーズがないという御指摘でしたけれども、今回はむしろ、対抗要件の問題があると書かれております。対抗要件については、これがどのくらい問題であるのかということは、よく分からないと思っておりまして、対抗要件自体は第三者債務者から認めることは全く問題がないですので、例えば、契約の相手方ですとか、保険会社ですとか、あるいは不法行為の行為者かもしれませんけれども、そういったところから、管理組合というか管理者が出てきたときに、それで帰属については結構だということを認めてもらえるならば、それは対抗の問題としても全く問題がないわけです。   さらに、帰属は旧区分所有者で、もう離脱した人の帰属なのに、取立ては管理者が来るわけで、それは、この6の規律によっているわけですけれども、権利は向こうに行っているのに管理者が来るときには、第三者債務者は何も文句を言わず紛争にもならないけれども、実は権利帰属が新しいところに移っていったときには文句が出ますというのも、現実に考えにくい気もします。また、別段の意思表示があれば別ですということをめぐって、いろいろ不透明なことが出るというのは、これは代理権でも同じような話にならないかと思われるわけです。この点について非常に問題があるということであれば、別段の意思表示については、より明確性、確実性という点から電磁的記録を含めて書面を要求するとか、そういうものがないと駄目だということで明確性を確保することは、譲渡のときだってできるのではないかという感じがしております。ですので、ニーズがないという御指摘ですとか、対抗要件の問題があるから駄目だ、別段の意思表示をめぐる問題があるということに対しては、何か原案にも跳ね返ってくるような面もあるのではないかと感じておりまして、それほど説得的なのかなというのは、いささか気にはなっております。そこは、説明の話として、疑問にも思うのですが、ただ、そういうことをしてもあまり意味がないということであれば、あえてそうする必要もなく、元々は、通常はそういう意思だろうということからすると、意思推定でいくからには、明文がなくてもそう考えられるということはあるのかもしれません。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。最後におっしゃった3点ですね。一つは、集会決議によって既に一元行使の決定がされているという場合に、離脱によってその拘束を免れるのかというのは、それはおかしかろうと思います。ただ、それを条文に書き込むのか、解釈上当然そうなりますよねということで済ませるのかというのは、また検討させていただければと思います。   それから、2点目の区分所有権の譲渡に伴って、債権の譲渡も推定することができないかということと、3点目の書面性の要求は考えてもいいかもしれないとも思いました。御指摘のとおり、それが実際上どこまでの意味を持つかということも含めて、引き続きそこは検討するということにさせていただければと思います。ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○水津幹事 意見を申し上げます。管理者による一元的な請求を認めるのが望ましいという観点は、共有されているのではないかと思います。問題は、この観点をどのレベルで考慮するかということです。  言うまでもないかもしれませんが、ここでの提案は、次のようなものであると考えられます。すなわち、通常の共有については、共有物に係る損害賠償請求権等は、共有者に分割帰属し、その移転については特別な規律が定められていません。このことから出発して、共用部分等の共有についても、請求権の帰属や移転について特別な規律を定めるのではなく、請求権の行使について団体的な規律を置くというものです。  既に指摘されているように、共用部分等の持分は、専有部分と不可分のものとされている以上、共用部分等は、区分所有者の団体の財産ではなく、各区分所有者の財産であると考えられます。そのため、共用部分等は、総有や合有ではなく、共有に属するとされています。もっとも、通常の共有が解消に向かう共有であるのに対し、共用部分等の共有は、存続に向かう共有であり、この意味において特殊な共有であるともいわれます。  そこで、特殊な共有という観点から、請求権の帰属や移転について通常の共有とは異なる特別な規律を定めることができるかどうかが問題となります。もっとも、そのような特別な規律を定めるべきであるという主張の中には、特殊な共有というよりは、むしろ請求権の性質という観点に焦点を当てたものが見られます。先ほどの大桐委員の発言を借りますと、修補に代わる損害賠償請求権に係る賠償金は修補に充てられるべき金銭であるといった考え方が、これに当たります。このような考え方は、解消に向かう共有とされる通常の共有についても、共有が存続している以上は当てはまるものともいえそうです。他方で、共用部分等の共有については、分割請求が認められないという特殊性があります。しかし、通常の共有についても、分割禁止契約が認められ、その更新を繰り返すことも許されると解されているなどしているため、通常の共有を解消に向かう共有と単純に性格付けることに対しては、古くから批判がされています。また、共用部分等の共有については分割請求が認められないことや、その共有持分が専有部分の処分に従うことは、要するに区分所有者が共用部分等の持分権者でなければならないことを意味するのであれば、これらのルールを根拠として、請求権の帰属や移転について通常の共有とは異なる特別な規律を定めることを正当化するのは、難しいものと考えられます。  つまり、請求権の帰属や移転について通常の共有とは異なる特別な規律を定めるべきであるという主張の中には、通常の共有を含めた共有一般として検討すべきものがある一方で、特殊な共有という観点を引き合いに出すものも、その主張の内容は、特殊な共有ということに基づいて請求権の帰属や移転について特別な規律を定めることを正当化するというよりは、むしろ、立法により特殊な共有について新たな内容を盛り込むべきであるというものであるような気がいたします。  ここでの提案は、そのような方向性を採らないで、既に述べたように、請求権の帰属や移転のレベルについてではなく、請求権の行使のレベルについて団体的な規律を置くものであるといえそうです。具体的には、管理者による代理や訴訟追行を認める区分所有法26条の規定の改正が提案されています。ここで気になるのは、同条2項及び4項の規定の趣旨をどのように捉えるかです。両項の規定の趣旨については、区分所有者が請求権の行使等をする負担を免れさせるという意味において、区分所有者の便宜を図ったものであるとする理解と、管理者による一元的な請求を認めるため、区分所有者の請求権について団体的な拘束を負わせたものであるとする理解とが考えられます。   ここでの提案は、旧区分所有者について、別段の意思表示による適用の排除、つまりオプトアウトを認める規定を定めることを正当化するに当たり、前者の理解を引き合いに出しています。もっとも、この理解によれば、現区分所有者についてもオプトアウトを認めるべきであることとなりそうです。しかし、現区分所有者によるオプトアウトは、現行法でも、ここでの提案でも認められていません。このことは、後者の理解により正当化されるのではないかと思います。   ここでの提案は、2つの理解を旧区分所有者と現区分所有者とで使い分けているという意味において、バランスが取れたものであるとも言えるものの、より徹底した考え方を採ることも考えられそうです。すなわち、両項の「区分所有者」には、旧区分所有者も含まれるとする考え方は、請求権発生時の区分所有者は、その請求権については団体的な拘束を負っており、一旦負担したその拘束は、区分所有権を譲渡したとしても免れるものではないという理解、つまり後者の理解を基礎に据えるものであると捉えた上で、この理解を徹底し、この部会においても主張されてきたように、Bの規律を排除する考え方、つまり旧区分所有者についてもオプトアウトを認めないとする考え方を採ることもできそうな気がいたします。   補足説明においては、旧区分所有者は集会の決議に拘束されないとされているものの、ここで挙げた理解によれば、両項の規定が適用される請求権については、旧区分所有者であっても現区分所有者による集会の決議に拘束される、言い換えれば、両項の規定が適用される請求権は、そのような拘束を予定したものであると性格付けられるのではないかと思います。この理解によれば、代理と異なり、規約又は集会の決議が必要とされている訴訟追行についても、これを認めることについて問題は生じません。これは、沖野委員よりも徹底した考え方となります。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。同じくBについて、このBは排除する可能性があるのではないかという御意見でした。承りました、ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。 ○加毛幹事 ありがとうございます。立法論に際しては、中野先生の御提案のように、従前の議論の前提、すなわち、共用部分が民法上の共有であることや共用部分に関する損害賠償請求権が当然分割されることなど、そのような議論の前提を疑うことは、とても重要であると思います。そして、そのような問題提起に対して反論するのであれば、部会資料の17頁4行目から8行目のように、単に従前の議論の前提を繰り返すことでは不十分であり、従前の議論の前提がいかなる価値判断によって基礎づけられているのか、その実質論を明確にする必要があると考えられます。本日の佐久間先生や沖野先生の御発言も、この点に関わるものと理解しました。中野先生の御提案は、現在の法状況や事務局提案による場合の実質的な不都合を指摘するものであるといえますが、他方、中野先生の支持する法律構成を採用した場合に、不都合は生じないのかについても、検討をする必要があると思います。そのような議論を深めることが、将来に向かって意味があることであると考えます。   本日は、中野先生がいらっしゃらないので、御質問できないのがとても残念なのですが、中野先生が、いかなる紛争類型を念頭に置いて、損害賠償請求権の当然承継構成や不可分債権構成を支持されるのかが気になりました。旧区分所有者と新区分所有者が登場するのは、区分所有権が譲渡された場合であるわけですが、区分所有権の譲渡がどの時点で、どのような意図のもとになされたのかが、重要なポイントなのではないかと思われます。   例えば、区分所有建物に原始的な瑕疵・欠陥が存在した場合において、当該瑕疵・欠陥が顕在化する前に、区分所有者の一部が区分所有権を譲渡したという事例が考えられます。この場合、旧区分所有者は、当該瑕疵・欠陥が存在しないことを前提として、区分所有権を売却しているので、旧区分所有者に修補請求に代わる損害賠償請求を認める必要性は相対的に低いといえるかもしれません。ただ、新区分所有者からの契約不適合責任を追及される可能性は残ります。議論の契機となった東京地裁の平成28年判決がいかなる事実関係であったのかよく分からないのですが、あるいは、以上のような事例を念頭に置いて、当然承継構成や不可分債権構成が主張されたのかもしれません。   他方、佐久間先生や沖野先生が指摘されたところと重なりますが、不可分債権構成や当然譲渡構成を採った場合の弊害も問題となり得るように思います。例えば、区分所有建物の原始的瑕疵・欠陥が顕在化した後に、区分所有者の一部が区分所有権を譲渡するという事例を想定すると、この場合、旧区分所有者が、住環境の問題や管理組合の雰囲気の悪化などを理由として、当該区分所有建物にもはや住みたくないと考え、修繕に関する決議などがなされる前に、安価で区分所有権を譲渡した上で、分譲会社に対する損害賠償請求は別途行うという行動をとることは考えられないでしょうか。この場合、当然承継構成や不可分債権構成によれば、区分所有者は、損害賠償請求をできないことを前提として、区分所有権の売却先を探さなければならなくなります。譲受人になろうとする者が損害賠償請求権を取得することが区分所有権の売却価格に反映されるのであれば良いともいえますが、そうでなく、区分所有者が安価でしか区分所有権を売却できないことがあるのだとすると、そのことが、区分所有者による区分所有権の譲渡を事実上制限することにつながるように思われます。そのような問題は、実務上は想定されないのか、想定されるとしても、無視できる程度のものなのかが気になります。あるいは無視できないとしても、大規模な瑕疵・欠陥のあるマンションに住んでいる以上は、区分所有者全員が、力を合わせて心一つに修補に向かっていくのが望ましいという判断があるのでしょうか。仮にそうだとすると、多数の区分所有者とは異なる意向を持つ区分所有者の利益を考慮する必要はないのかが気になるところです。  この問題に関する検討は本日で終わりなのかもしれませんけれども、中野先生の御提案の妥当性の評価や提案の射程を評価する上では、想定されている問題状況を明確にすることが重要であるように思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。この問題は次回も一応取り上げる予定にはしております。今日の議論を踏まえてですけれども。中野さんに何も御意見伺わないまま決まりましたというわけには、さすがにいかないので、そこはそう考えておりますが、大桐さん、今日の時点で今の加毛さんの御質問について、お答えいただけることがありましたらお願いいたします。 ○大桐委員 中野幹事のこのペーパー自体については、私が作ったものではありませんので、何ともコメントのしようがないのですが、実務上の困っていらっしゃる方々からは幾つもお声を頂いておりまして、やはり必要な修繕ができないということが強く言われているんですね。ですので、今回のゴシックの御提案で、100%クリアできるということであれば、それはいいんですけれども、要件事実的な問題で、どこまで実務上立証が必要になるのかと、簡易なもので足りるのであれば、もしかするとワークしているのかもしれませんけれども、抜ける部分があると、やはり実務界での要望に応えていないのではないかという懸念もありますので、ここは十分に検討していただければなと思った次第です。   それから、別の話になりますけれども、Dの前項の場合においてということでお書きになっていらっしゃるところについて、旧区分所有者への通知ですね、その通知先がどこなのかというところが、なかなか難しいのではないかという問題があるかと思います。住民票を追っていっても見つからないとか、どこまで所在調査をしなければいけないのかという問題もありますので、こちらについては、例えば、通知を受けるべき場所、あるいは建物内の掲示で済ませられるような簡易な方法を採れないのかという点だけ付け加えさせていただきます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○加毛幹事 すみません、今の点について、もう一言よろしいでしょうか。   大桐先生ご自身の御見解は分かりませんが、今の御発言だけを聞くと、建物の修繕に向けて動いている区分所有者の利益だけが考慮されているような印象を受けます。私が気になりますのは、それとは異なる考え方を持つ区分所有者の利益を配慮する必要はないのだろうかという点です。あるいは、紛争の実態からして、そのような区分所有者の利益は無視できるのかもしれません。また、当然承継構成や不可分債権構成が法律において明示的に採用されることで区分所有権の取引に関する実務の在り方が変わることが想定されているのかもしれません。仮にそのような考え方が妥当であるとすれば、実質論として、当然承継構成や不可分債権構成を支持できるのかもしれません。もし次回もこの点に関する議論が継続されるのであれば、中野先生なのか、大桐先生なのかは分かりませんけれども、以上の点に関する御意見を伺えればと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   今のところはこの程度でよろしいでしょうか。飽くまで共用部分等に係る請求権の行使の円滑化に関してですけれども。先ほども申し上げましたとおり、中野幹事が今日は御欠席ですので、次回も検討したいと思います。今日の議論を踏まえて、次回までに提案を練り直すということは、もしかすると時間的に多分難しいかもしれませんが、今日の議論を前提に、中野さんにもあらかじめ今日出た意見、特に加毛さんがおっしゃったことを連絡して頂いて、それで、中野さんにもし御発言いただくことがあれば次回御発言いただいて、更に検討を続けることにいたします。   今日、根本的には中野さんの御意見の方向に同調するという御意見もありましたが、そうでないという立場からも、特にBについてはほかの考え方ができるのではないかという御意見を頂きましたので、この点も引き続き検討は続けるということにいたしたいと存じます。   この件に関しましてはよろしいでしょうか。もうこれで終わってくれということではありませんので、御発言あればなお伺いますが、今のような進め方でよろしいですか。   では、この点は一旦終えることにさせていただき、続きまして、部会資料24の「第1 区分所有建物の管理の円滑化を図る方策」の残りですね、今の部分を除いたものについて御意見を頂ければと存じます。   それに関しまして、【P】となっている部分が幾つかございます。これは、前回の会議で既に御意見を頂いたところなんですが、ご存じのとおり、会議と会議の間が非常に時間的間隔が短くなっておりますので、前回の会議での御意見の案への反映が間に合っておりません。そこで、本日は、【P】のところ、ペンディングのところですね、それらについては前回の会議で御発言いただかなかったことなど付け加えてということがあれば、最後にまとめてどこでもということで伺いますので、ここからは第1の残りの部分について、かつ、【P】を除いて、御意見、御質問があれば承りたく存じます。それでは、【P】のところを除いてどこでも結構ですが、いかがでしょうか。 ○齊藤委員 ありがとうございます。そうしましたら、10ページ、(2)の復旧決議のところで、まず一つ気になることがございます。   復旧決議、10ページのところ(2)で、「復旧決議は、出席した区分所有者及び議決権の各3分の2以上の多数で決するものとする。」というところでございます。そこは、区分所有法第61条第5項の規律を次のように改めるというところでございまして、この区分所有法61条5項というのは、多分、2分の1以上が滅失したとき、大規模な一部滅失のときの規定だと理解していますが、それで合っていますよね。 ○佐久間部会長 はい。 ○齊藤委員 よかったです。そうしますと、大規模な一部滅失ですから、2分の1以上滅失していてということですから、かなり大きなダメージを受けているというとき、そのときの復旧の費用というのはかなり掛かるということで、私も熊本地震で2か月ほど前に確認に行ってまいりましたが、そういった大規模な、2分の1以上というか大規模な滅失をしたらどのぐらい費用が掛かるのかと聞きましたところ、わかりやすく言うと、建て替えるぐらい掛かるんだとお伺いしました。例えば1,000万とか1,500万円掛かるんだよということを教えていただき、そのぐらいの費用が掛かるような復旧決議ということで、私は理解をして話をさせていただきたいと思います。   その決議を本当に出席した3分の2の人で決めてよいのでしょうかということでございます。この点は、今も全体の4分の3以上です。今度は、出席者の3分の2ですから、かなり極端に少ない人数で決議ができてしまう。こんな極端な事例はないと思いますが、100戸のマンションであって、10軒が出席して、7軒賛成すれば復旧と、本当に極端な事例で申し訳なく、「齊藤、何て下品だ」って怒られるかもしれませんが、こういうこともあり得るということです。そして93軒の方の意見を聞かずにして復旧しましょう。では、93軒の人に、「すみません、皆さん、1,000万円ずつ払ってください」となり、払えないとなると買取り請求が行われることが可能になるということが、この61条のところに書いてあると思います。   買取り請求というのは、私も余り今まで聞いたことがなかったものですから、ここに注目したことがなかったのですが、熊本でこの買取り請求が非常に大きな復旧のネックになったとお伺いしました。だって、1,000万払ってくれと、突然自分が言われると困りますし、これを数名に言われる可能性もあるということですから、賛成した少数の人が方針を決める、決議を早く行う、このことは本当に被災していますから大事なことかもしれませんが、その後の費用を誰が負担していくのか。つまり、決議をして、そのときに賛成しなかった人のことを拘束するということまで考えると、果たしてそんな少数の人で決めてよろしいんでしょうかということが気になりました。   買取り請求に関しましては、確認しましたところ、東日本大震災でも行われたということでございますので、建替えのときは離脱していけるけれども、この離脱ができないことを前提の復旧というのであれば、ちょっと言い方悪いですけれども、建替えより厳しいぐらいの皆さんの合意が要るのではないかなということを、現場から考えているところでございます。   そうすると、どうすればいいんだということでございますので、基本的には、もっと多くの人の賛成が必要で、私が現場で聞いてきた中で、この決議の4分の3がハードルになったということを聞いておりませんので、また確認しましたところ、ネックはそこではないとおっしゃられますので、基本的には4分の3でよいのではないかと考えております。   もう一つは、この買取り請求の問題、なかなかここでは議論する場がなかったんですけれども、改めてそのことも考えるということになりますと、今の61条のところで、買取り請求は、その決議をした日から2週間以内に買い取り指定者を決めないということで買取り請求ができるということですが、2週間というのが、現場ではちょっと短いんではないかということ、それと、誰にでも買取り請求をするというのは困ってしまいますので、買取りの指定人を指定できるということなんですが、この指定の人も、全員合意で買取り指定をしなさいということですが、全員合意って、また被災している中で大変なハードルだと思います。この辺り、現行法のものを使いやすくするには、むしろこの2週間を長めにするとか、あと全員合意を集会の決議にするとかということで、買取り請求というものが実質的にいい意味で使っていただき、そしてお金が払えない人が離脱できるような道を、安心して作る必要があるのではないかというところが、まず一つ目でございます。 ○望月幹事 復旧決議の場面というのが、共用部分の変更決議等のアの@の場面に類型的に該当するのではないかということで、ここ、要件をそろえさせていただいたところです。   買取り請求の負担というものについては、現在も恐らくあるところで、今回の改正をしたからといって、買取り請求がその後乱発されるような事案について、どうしても復旧決議をしてくださいということは普通は考えられず、むしろその後の計画もしっかり立てられている中で決議をしていこうというふうになっていく中で、要件緩和を考えましょうというところですので、むやみやたらに3分の2で全てを決めて、その後の計画がありませんということは、現実には余り想定できないのかなと思っております。今回のこの復旧決議の3分の2の緩和のところは、飽くまで共用部分の変更決議の緩和とそろえたものということで、提案させていただいているところでございます。 ○齊藤委員 ありがとうございます。でも、復旧決議としては、3分の2で、出席者多数では、むしろ大変なことが起こるんではないかということでございます。 ○佐久間部会長 ちょっとよろしいでしょうか。大規模一部滅失の場合に、恐らく区分所有法の基本的な考え方は、そのまま放っておいていいわけではないでしょう、ということだと思うんですよね。建替えにいくか、復旧するかということであり、そのどちらかを選ばなければいけないときに、建替えの方が要件が厳しく、復旧の方が緩くしているのは、建替えと復旧の要件を並べてしまいますと、結局どちらも決定できないということが起こり得て、それは適当ではない、ということがまず基本にあるのではないかと思います。   齊藤さんがおっしゃった出席者多数決で3分の2ということにすると、実質的には極めて少数の区分所有者の賛成のみでもって復旧ができることになるということは、それは理論的にはそうなのかもしれませんが、そこでこそ、むしろ買取り請求が待っているぞというのが抑止力になるのではないでしょうか。賛成してしまいますと、買取り請求を食らうことになりかねないわけで、あるとしたら、誰か後ろに資金提供者がいて、その人たちがということなんでしょうけれども、復旧にそれほど資金出してくれる業者とかっているのかなと思います。そういう観点で、むしろ買取り請求があって、しかも全員一致でなかったら、誰に買取り請求が飛んでくるか分からないという、そういう構造で、むしろ安易な復旧ですか、極めて少数の者でのみ復旧しましょうなんていうのはできにくく、今でもなっているということだと理解していますけれども。 ○齊藤委員 私もそう思いたいところですが、なかなかそうではない現実があるかもしれませんので、この辺りは是非、現場を御存じの方に、今回の改正が、改悪にならないように御指導いただければと思います。私としましては、ヒアリングした中で、買取り請求を含めて、復旧決議のところは出席者多数というのは危険ではないかなということでございますので、発言いたしました。皆様の御指導を得たいと思います。   そして、次のところにいかせていただきたいと思います。   次が、項目変わりまして、11ページのところでございます。この専有部分の保存・管理の円滑化というところでございます。これに関しましては、これはあ飽くまで確認でございますが、この専有部分の保存・管理の円滑化で、(1)と(2)がございます。基本的に確認したいと思いましたのは、(1)と(2)を使うシチュエーションの違いを教えていただきたいということです。   と言いますと、(1)も(2)も、私、思い込んでちょっと読んでいたものですが、改めて見ますと、(1)の方は、専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するときに必要だということで、改良のときも入ってくる。そして、(2)のときも、共用部分の管理にということで、もしかすると、この11というのは、どちらも共用部分の改良のときに、他の住戸に立ち入るときの根拠になる条文になるのかなと思いますと、私の中で思い込んでいたんですけれども、大規模修繕のときに、いい扉にしましょうね、取替えにお部屋に入りましょうねというのは、(2)を使うものだと思っていたんですけれども、見ようによっては(1)も使えるとなると、(1)のときは規約に書いていなくていい、(2)のときには規約の規定が要るというときは、(1)と(2)の使い分けの基準の考え方がはっきりしていると、イメージもより分かりやすくなってくるのかなと思いました。ここは確認でございます。 ○佐久間部会長 いかがですか。 ○望月幹事 (1)の場面は、区分所有者がその専有部分とか共用部分を保存する、若しくはその区分所有者が改良をするということで、各区分所有者が個別に何か工事を行うというところを想定していて、その中で、他の区分所有者の占有部分を使わなければいけないという場面だと思います。そこは、今回の改正で特に触るものではなくて、(2)のところで今回加えようとしているのは、例としては、配管の全面更新というのを言わせていただいていますけれども、全体の配管を取り替えましょうということを集会の決議で決めたときに、専有部分についても、使用であるとか、一定の工事等を行うことができるようにしましょうということをしたものです。どちらの規律を使うかは、その状況に応じてやっていただければ、従前どおり6条の2項で対応いただける部分もあると思いますし、新たに定める規律は、配管全面更新のような場面で適用いただくことができると思います。 ○齊藤委員 分かりました。そうすると、今の(1)は、501号室の人が502号室の部屋を使うような個々人、そして、(2)は主語がないけれども、管理組合と想定しているという考え方でよろしいでしょうか。   分かりました。それで頭を整理して、現状のことで、今できていることができなくならないかなどを確認させていただきたいと思います。ありがとうございます。   そうしますと、次に気になるところが、12ページのところの管理組合の法人の区分所有権などの取得というところでございます。ここは気になるものですから何度も確認させていただいて恐縮でございますが、管理組合法人が、不動産の購入ができるということで、これは、明確に書いていないけれども、購入した不動産を売却することも可能であると、つまり、購入したものをいつまでも持っているだけではなくて、状況によっては売却するということはセットになって起こってくると思いますので、売却するということも可能であると考えましてよろしいでしょうか。売却というのも、全員合意ではなく、4分の3でいいという理解でよろしいでしょうか。   今、私が質問している不動産の売却というのは、前から持っていたものを売却したいのではなくて、購入したものを、今度はそれを売却するということで、管理組合法人として持っていたものを、管理組合法人として売却するということも、ここに広く含まれるという理解でよろしいでしょうかということでございます。 ○望月幹事 今回、売却のことは書いていません。今回この規定を設けたのは、管理組合法人がそもそも区分所有権を取得できるのかというところが、解釈として疑義があるというところで、そこを明確にしたものですので、管理組合法人が有する財産の売却処分、ここをどういう形でやっていくかというのは、これまでの運用や解釈を変えるということは考えておりません。管理組合法人が持っている財産について売却ができないということではなくて、従前多分売却されていたかと思いますので、これは従前どおりにできるということだと思います。 ○齊藤委員 ありがとうございます。そうすると、これは売却ができるということは、4分の3で決議をして売却をしていくという考え方でよろしいでしょうか。 ○佐久間部会長 いや、それも4分の3でとはおっしゃってはいないです。 ○齊藤委員 だから、ちょっと確認しました。全員合意だとできるということでしょうか。 ○佐久間部会長 もちろん、それは、はい。 ○齊藤委員 どうでしょうか。この部分はまだ十分に議論ができていないということでしょうか。 ○佐久間部会長 議論できていないのではなくて、それはしないという。 ○齊藤委員 できないということですか。 ○佐久間部会長 そうです。 ○齊藤委員 そうすると、この場合は、購入はできる、買って持てるけれども、それを売るときは、全員になるよということになるのでしょうか。 ○佐久間部会長 ある意味で、管理組合に収益行為をさせようということを目的としているわけではありませんから。 ○齊藤委員 もちろんです。 ○佐久間部会長 それを非常に便利にしようという発想は、少なくともこれまでのところはないです。 ○齊藤委員 なるほど、分かりました。そうすると、必要があって集会所を買ったでしょうと、その集会所、もう要らなくなったということはないよということですね。 ○佐久間部会長 ないかどうかは分からないけれども。 ○齊藤委員 そのときは全員合意になるよと、そのぐらいの決心で買えと。 ○佐久間部会長 まあ、そうなんでしょうね。 ○齊藤委員 多分、これでは現場は混乱すると思います。 ○佐久間部会長 そういうようなケースって、法人でも過半数ではできないよね、多分。 ○齊藤委員 いや、ここでノーという返事をもらうより、少し御検討いただいて、前向きに御検討いただけたほうがうれしいです。 ○大谷幹事 管理組合法人が今ある財産を処分するためにどれだけの決議が必要なのかというのは、取得した専有部分等を処分する場合だけに限らずある問題だと思いますが、結局処分をするところについては、引き続き解釈に委ねるということが、以前この部会の議論としてあったと思います。その際には、どうでなければいけないということを決めるのは難しいという結論だったと思いますけれども。 ○齊藤委員 分かりました。では、これ以上の質問はやめておきます。ありがとうございます。   そして、何ページまでになりますか、これは。18ページも、今発言していいところの範囲でしょうか。 ○佐久間部会長 第1でしたら入ります。 ○齊藤委員 分かりました。18ですね、全部滅失したときの敷地などの管理の円滑化というところなのですけれども、これも、建物が全部なくなって、管理組合というものが敷地の共有者の集合体になってしまう。しかし、全部なくなるという非常に大変な状態の中で、何とか集会をしてと進めていくときに、この集会を開いて新たな規約を作るというのはなかなか難しいので、元々持っていた規約を使うということはできないのでしょうかということでございます。   実際に規約を作って、規約を認めてもらうという決議そのものも大変でございますので、建物がなくなったのだけれども、土地を持っている人同士の集合体になった組合になっても、規約というのを、前にあった管理組合の規約を使うという考え方ができないでしょうか。というのは、多分規約では例えば議決権は、共有者が1住戸に多くいた場合、1住戸分は一人にしてくださいねとなっていることが多いと思います。また、厳格に土地の持分にイコールにしていない場合も多いかと思います。   1住戸で共有者がいた場合、代表者は何々にしましょうとして、簡易に議決ができるようになっていたところが、全部リセットされて、土地の共有者の関係だけになってしまいますと、非常に煩雑になっていくかなと思いましたので、前の規約をそのまま使うという考え方は、法的には分からないのですけれども、現場はそのことを望んでいるだろうなという思いで、御検討いただけたらなということでございます。 ○望月幹事 今回、全部滅失した場合の敷地の管理の在り方として、従前の集会と同様の方法で意思決定等できるようにしましょうということで、仕組みを設けることを予定していますので、そういう意味では、従前の規約で意思決定の方法とか、議決権に関する定めがあった場合、これを引き継ぐことに差支えないものについては、従前の規約が引き継がれるということで理解をしております。 ○齊藤委員 ありがとうございます。お礼を申し上げたいと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。19ページから始まる、第三者を管理者とする場合の監事の選任についてです。20ページになりますけれども、今回、区分所有法制では対応せずに、国交省の方での検討に委ねていくというところで、(注)で御説明を書いていただいております。ワーキンググループも設置して、ガイドラインの改正案を取りまとめていくということですが、もう少しお聞かせいただければと思っております。そのスケジュール感ですとか、どのような内容になっていくのか、それをどのように運用していくのか。標準管理規約などであれば、マンションの区分所有者が管理組合の組合員になると、監事の選任といった規約を作ろうとか、マンションの管理会社の方から、こういうものが標準であると教えていただいたりするなどして、そのようなことがスタンダードになっていくわけですけれども、このガイドラインは、誰がどのように見ることになるのか、もう少し教えていただければと思います。 ○佐久間部会長 下村さん、お願いできますか。 ○下村幹事 ありがとうございます。国土交通省での現在での検討状況でございますけれども、「外部専門家等の活用のあり方に関するワーキンググループ」という検討会を開催をしております。こちら、10月26日から開催しておりまして、最終的には、来年の3月を目途にガイドラインの案をお示ししていければと考えております。   内容でございますけれども、この第三者管理者方式を導入するプロセスですとか、あるいは導入するに当たって、どういった内容を区分所有者の方々にしっかりと説明をしていく必要があるのかといったこと、あるいは管理者となる者の権限の範囲ですとか、また印鑑を誰が保管するべきかどうかということ、あるいは管理者が解任をされる、あるいは退任をする場合のプロセスについてですとか、あるいは管理者になります管理業者が利益相反行為を行うことがないように、どういった手当てをしていく必要があるのか等々、御検討いただいているという状況でございます。 ○佐久間部会長 村上さん、よろしいですか。もう少し何かお聞きになりたいことが。 ○村上委員 ありがとうございました。私が最後に質問した点が、うまく伝わっていなかったかもしれないのですけれども、そのガイドラインは結局どのように周知していくことになるかと思うのですが、管理受託される業者の方に向けたものなのか、あるいは区分所有者に対してのものなのかということについて、もう少し教えていただければと思いました。 ○下村幹事 ありがとうございます。この第三者管理者方式を採用するに当たって、関係する方々にしっかりと内容を認識していただくということで、ガイドラインを設けようと思っておりますので、もちろん管理者を受託する管理業者に対するメッセージということもございますし、また導入する区分所有者の方々に対しても、知っていただきたいメッセージということにもなるかと思います。   このガイドラインに位置付ける内容もございますし、また、標準管理規約の中で、この管理方式を採用する場合に、どういった規約の内容にしていくかというところも、当然出てくるかと思いますので、そういったものにつきましては、別途「標準管理規約の見直し及び管理計画認定制度のあり方に関するワーキンググループ」という検討会を設けておりまして、そちらで検討していく予定になっております。 ○佐久間部会長 よろしいですか。 ○村上委員 はい、分かりました。 ○佐久間部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○小林委員 ありがとうございます。目次にペンディングマークが付いているところと、よく見ると、本文の方にも付いているところもありまして、これは言うべきところかなと思って見ていたら【P】が付いていたということで、1点だけになってしまうんですけれども、12ページの区分所有者が国外にいる場合における国内管理人の仕組みというところです。   何度も同じことを言いまして恐縮なんですけれども、義務付けではなくて、できる規定となっておりますが、実効性を上げるためには、やはり法律で義務付けをすることが必要と考えておりまして、是非義務付けをする方向で再度御検討いただきたいなと思っております。文章の中には、規約で義務付ければ同じことではないかというようなことも書かれておりますけれども、やはり法律で義務付けされているか否かの違いというのは大きいのではないかなと思っておりまして、区分所有者の受け止めというのは大きく変わってくるんだろうと思います。   特に外国在住のまま転居するようなケースでは、法律で義務付けされていない場合には、変更の届出をしないで放置されやすいのではないかなと思います。こういう点で、実効性の点で大きな差が出てくると思っておりまして、最近は外国人の方が購入される場合、あるいは日本人が購入しても、海外に転勤されるというケースが大変増えていると聞いておりまして、少なからぬ数の管理組合が現に困っていると聞いております。少しでも多くの管理組合を救っていただくような検討を、是非お願いをしたいなと思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。なお検討というか、ここで終わりということにはいたしません。 ○小林委員 取り上げていただいただけでも、大変有り難いことだと思っておりまして、なおかつ規約に書けると、義務付けができるというところまで書いていただいたんで、そこも現状に比べると随分と進歩だと思っておりまして、大変感謝しているんですけれども、もうひと踏ん張りしていただけると、大変有り難いなと思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○能登委員 ありがとうございます。私の方からは、5ページの2の(1)所有者不明専有部分の管理制度について、この案については基本的に賛成しているんですけれども、ちょっと要望がございますので、そこについて意見させていただきたいと思います。   現行案においては、管理人が選定されると、この管理人さんは、建替え決議等の処分行為に当たる決議において賛成投票を行うときには、与えられている行為の範囲外となるということで、裁判所の許可が必要になると伺っております。その場合、例えば、建替え決議においては、今、区分所有法上で決議の議案書が届いてから、集会開催まで約、最短2か月の検討期間があるんですけれども、管理人でまず賛成するか反対するかというのを検討していただいた後、賛成しようというときに、そこから初めて裁判所へ許可申請をされるという形になりますので、許可取得まで、裁判所の方って多分検討いただくのは1か月程度になってくるのかなと推定しています。そういったことで、この許可取得、判断いただくための期間を短くするような制度設計をしていただきたいと考えております。   同じく、建替え決議を想定して考えたときに、反対票を投じたという場合においても、その決議が成立しますと、この管理人さんは催告に対して回答を行うという場面も想定されまして、催告も催告されてから2か月以内ということで回答を求められますので、同じように期間内で裁判所の許可を経て、管理人がしかるべき手続が行えるように、そういった、この制度を作った後の区分所有法ならではの整理を作っていただきたいとお願いをしたいということでございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   では、望月さん、お願いします。 ○望月幹事 決議のところで、管理人が賛成の投票をするときに裁判所の許可が必要かどうかというところですが、従前、部会の議論の中で、賛成の議決権行使については必要なのではないかという話が出ていたんですが、その後の議論の中で、賛成の議決権行使も含めて、議決権行使については裁判所の許可は必要ではないということで、最終的に整理させていただいておりました。 ○能登委員 分かりました。 ○望月幹事 あとは、その後の場面ですけれども、ここは、通常の区分所有者と同様の手続を採ることが想定されています。建替え等に参加しない方については、売渡し請求、場合によっては売渡し請求までいかなくて、任意に売却の交渉をするという、こういう手続になってくると思いますが、この売却の場面では、売却が処分行為に当たりますので、売却の行為については許可が必要となってくるというのはあります。 ○能登委員 なるほど。では、決議に関して、賛成か反対かは処分行為に当たらないので、事前の手続が不必要で、今挙げた売渡し請求に対して、参加しますという判断も、飽くまで処分行為ではなく、決議の範囲内、決議に回答できる業務の範囲内。本当に一般上の売却手続を踏まない限りは、裁判所の許可を得ないということの理解で、すみません、繰り返していますか。 ○望月幹事 処分については許可が必要になりますので、売渡し請求に応じて、幾らで売渡し請求に応じますと、こういうことを決めるに当たっては許可が必要になるという理解でおります。それは、この金額が妥当かどうかというところの話になってくるので、そこについて、裁判所の許可が必要になってくると思います。 ○大谷幹事 大谷です、すみません。これについては、部会資料の14で取り扱っていました。それ以前は、確かに反対票しか投じられないみたいなことを議論していたんですけれども、部会資料の14でそうではないですと整理し直したところです。   基本的には、この管理人は、建替え決議に賛成はしないだろう。賛成して建替え決議が成立すると、建替え後の専有部分を取得しなければいけなくなってしまいますが、モノ単位の管理人でもありますので、賛成は普通しない。ただ、建替え前に区分所有権を売却することは可能で、建替え決議が成立した暁にはその区分所有権を買いたいという人がいることがはっきりしているような場合にまで、一律に賛成できないとするまでの必要はないだろうということで整理をし直しました。この場合には、所有者不明専有部分管理人としては、買手がいるので建替え決議に賛成した上で区分所有権を売ることができるようになりますが、売る際には、裁判所の許可が必要ということになります。そうではなく、買手が確保できていないというときであれば、普通は反対して、それでも決議が成立したときには、売渡し請求を受けて区分所有権を売るんですけれども、この売る際にも、やはり裁判所の許可は必要になるだろうと、こういう仕組みでございます。 ○能登委員 ありがとうございます。ちょっと、部会資料の14をもう一度見直しさせていただきたいと思いますが、想定としては、決議に対しての投票行為は、やはり売手が決まっている、決まっていない、その決めるときには裁判所の許可をもって、それに応じて出していくという整理になっているということですか。 ○大谷幹事 議決権の行使自体は管理行為なので、裁判所の許可は不要です。賛成であっても反対であっても不要だという整理を、その部会資料でしています。ただ、賛成の場合には、念のため、実務上は裁判所の許可を得ることもあるでしょうといったことを書いています。 ○能登委員 はい、分かりました。すみません、もう一度確認をさせていただきますが、本日申し上げたことが、そもそもの方向とずれているということは理解しましたので、持ち帰ります。すみません、失礼しました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   では、ほかにいかがでしょうか。 ○吉政幹事 1点だけ質問をさせてください。前回確認しておくべきことだったのかもしれませんが、資料の8、18ページからの建物が全部滅失した場合における敷地等の管理の円滑化についてです。   本日の資料の8(注4)ですが、部会資料21において、法律上当然に5年間の共有物の分割請求はできないことにすると、こういう提案が示されたと理解をしております。これは被災マンション法の第6条に倣ったものということですが、被災マンション法の第6条のただし書では、5分の1を超える議決権を有する敷地共有者等が分割請求をした場合は、分割請求をすることができるという例外規定が設けられています。このたびの御提案も、(注4)には書いていないけれども、そのような例外を設けるという趣旨なのか、あるいは、そのような例外は設けないということまで含意されているのでしょうか。 ○望月幹事 今御指摘いただいたとおり、被災区分所有建物の特別措置法と同様に、例外を設けることで想定しております。こちらの方は、(注)の方で加えさせていただきたいと思います。 ○吉政幹事 承知しました。それでしたら異存はございません。ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか、第1については。   では、ちょうど予定した頃になりましたので、一旦ここで10分ほど、15時3分ですので、15時15分再開ということで休憩といたします。15時15分にお戻りください。           (休     憩) ○佐久間部会長 では、審議を再開いたします。   この時間は、部会資料24の「第2 区分所有建物の再生の円滑化を図る方策」のうち、1の「(2)建替え決議がされた場合の賃貸借の終了等」、ページ数で申しますと21ページから26ページまでにつきまして、まず御意見を伺いたいと存じます。御自由に御発言いただければと存じますが、いかがでしょうか。 ○大桐委員 Dにつきまして、ゴシックに入れていただきましてありがとうございます。この点に関して、確認的な意味であるんですけれども、まず、賃貸借が終了して、その後、補償金の支払があるまで明渡しが猶予されている状態になっているわけなんですけれども、その占有の根拠といいますか、賃料相当額を払うということは問題ないと思うんですけれども、不当利得によるということで、この法律に根拠がある占有なんだけれども、不当利得によっての占有の対価として払うということになるのかどうか、その辺りちょっと説明付けをどうなさるのかなというのが1点目で、もう一点目は、賃貸借契約書の中では、賃貸借が終了したにもかかわらず明渡しを遅滞した場合には、賃料相当額の2倍を支払わなければいけないという約定が入っているのがほとんどなんですけれども、そういった場合に、このケースにおいては、終了はしているけれども、明渡し義務がまだ生じていないので、明渡しを遅滞したわけではないので、契約書に2倍と書いてあったとしても、それは発生しないという理解でよろしかったのかどうか、また契約条項の書き方によってその辺は変わってくるのかどうか。あと、違約的な要素がないので、そこは発生しないのかどうかとか、その辺りちょっと確認できればと思っております。 ○望月幹事 ここの関係については、建物買取り請求がされて土地を明け渡さなくていいというところと同様になるのかなと思っていまして、不当利得として賃料相当額の支払義務は負うということになるのかと思っています。   ただ、損害賠償約束として賃料の2倍の支払が約束されていたときにその支払を負うかについては、同時履行の抗弁権の行使として明渡しをしていないので、2倍を払う必要はないということになろうかと思います。 ○佐久間部会長 よろしいですか。 ○大桐委員 はい、結構です。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○鎌野委員 どうもありがとうございました。今のところの22ページですかね、そこのBのところで、賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償を支払わなければならないと。それを受けて、Dのところで補償金の支払を受けるまで専有部分の明渡しを拒むことができるというようなことで、結論を申し上げますと、(注3)のようなことに最終的にはなろうかと思いますし、引き続き検討するということも、何かいい案があればそういうことで、よりその辺りを明確化していただきたいと思いますけれども、やはり民事の基本的な立て付けとしては、様々な場面が考えられるので、一律に何か補償金の上限を設けるとか何とかというのが、果たして妥当なのかどうかと、それ自体、また争いの元になると思いますので、ですから、今回の御提案のように、Bのような形で賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金というような形が妥当なのではないかというようなことで、私は考えております。   そういったことで、意見を述べさせていただきました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○齊藤委員 ありがとうございます。22ページのところでございます。多分、今回新しく付け加わったのがDかなと理解をしましたので、Dの部分について教えていただきたいのですけれども、賃借人の保護という視点からとても大事なところだと思いますが、このDで、同時履行となると、賃借人から見たら、金額が合わないと明け渡さなくていいということなんでしょうか。金額に自分が納得しないと、その場合は裁判になっていくという理解でよろしいんでしょうか。 ○望月幹事 金額に納得いかないということで、明渡しを拒んでいると、最終的には裁判をせざるを得ないことになろうかと思います。   ただ、正当な金額を支払おうと申し出ているのに、これを理由なく拒んでいて、最終的にもそれが正当な金額ですということになると、その後の占有自体は、この同時履行の抗弁の行使として正当なものではないので、それ以降は、先ほどの2倍の賃料の話とかという話になっていく可能性はあると思います。 ○齊藤委員 分かりました。多分、建替えのというか、再生の円滑化というのは、この区分所有法の改正において非常に重要なテーマだと思うのですけれども、ここがネックになったらいけないなと思いまして、確認させていただきました。   そうしますと、本当に賃借人を保護というのは大変重要なことだと思いますけれども、例えば、今おっしゃられたように、妥当な金額の補償金を供託すれば同時履行になるとか、あるいは、用対連で見積もったものを補償金に供託していると、このDの考え方が適用されないというような形で、建替え、再生の円滑化というのは可能なのでしょうか。 ○望月幹事 それは、適正な金額が供託されて、それが補償金額として適正なものであれば、供託すれば同時履行の抗弁権自体を消滅させるということはできますので、そこは、特に書き込まなくても、そういう解釈が採れると思います。 ○齊藤委員 分かりました。建替えの円滑化という意味で、決議要件を議論しておりますが、それ以外にもいろいろなところがネックになってくると思いますし、この金額の妥当性というのも非常に重要なポイントになってくるかと思います。また、そういうことで建替えを阻止することができるということに気が付かれて、それを使われたらいけないという意味では、再生を円滑化に適正にできるという方向で必要かなと思って発言させていただきました。ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○能登委員 ありがとうございます。今、齊藤先生がおっしゃったところが、まず我々も気になっていたところですので、それ以外のところで二つほどちょっと確認させていただきたいことを述べたいと思います。   この同時履行を付け加えていただいた中で、転貸借がもし存在する場合は、賃貸借の終了と同時に転貸借も終了するという理解でよろしかったのでしょうか。その場合、賃貸人は賃借人への補償費の支払の義務を負っていて、賃借人が転貸借人に補償費の支払の義務を負っているという関係にある理解で間違いないかというところを、ちょっと確認させていただきたいと思っております。   もう一つは、賃貸借の終了に関して、冒頭に建替え決議がされた場合の案と記載されているんですけれども、今回の改正によって、新たに創設されます建物敷地の一括売却制度や建物取壊し制度においても適用されると伺ったかと思うんですけれども、その認識でよいか、もう一度確認させていただきたいと思います。   もう一つ、齊藤先生と同じことをお伝えしますが、やはり供託したりして履行の着手を認めていただけることを前提とすると、9行目の支払を受けるまでという、受けるという書き方が少しどうとでも採れるなと、若しくは拒む借家人側が強く見えるなというところも見えましたので、そこのちょっと書きぶりも少し御検討いただけたらなということで、その3点をお伝えさせていただきたいと思っています。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。まず、転貸借の件ですけれども、事務局にこの後検討していただくことになりますけれども、恐らくは、ここの賃借人というところは、転借人を含むということで読むんだと思っております。つまり、Bのところの専有部分の賃借人に対しというのは、転貸借ですと、その原賃貸借の賃借人と転借人も含んでいるということではないかと、私は理解しています。   と申しますのは、これは、使用収益権を失った人に対して補償をすると、それでというか、使用収益権を失わせる代わりに補償するということですので、賃貸借関係は区分所有者と転借人との間ではありませんけれども、現実に使用収益権を失った人に対して、立ち退いてもらうためには補償金が要りますよという、そういう考え方ではないかと思っております。   したがって、転貸借の場合は、区分所有者はまず現実の使用収益をしているところの転借人に対して、Bの基準で定まる補償金を支払わなければならず、それで支払えば同時履行ではありますが、明渡しを受けることができる。しかし、もう一人、この場合は間接占有ではありますが転貸人に当たる原賃借人がおりまして、この人も使用収益をしている、例えば差益を得ている、自分で支払っている賃料と受け取っている賃料との間で差額があるとなると、これは恐らく補償されるべき損失が出ているということになりますから、この人にも支払わないことには、明渡しは最終的には受けられないとなるのではないかと。私はこう思っておりますけれども、最終的には、ちょっと今伺ったことですので、次回以降に事務局から検討の結果をお答えいただきます。   2点目は、望月さん、お願いいたします、一括売却。 ○望月幹事 建替え以外のところでも、この賃貸借の終了制度というのは同様に導入する予定で考えております。 ○佐久間部会長 それでよろしいでしょうか。 ○能登委員 ありがとうございます。 ○佐久間部会長 1点目については、先ほど申し上げたのは、私はそう理解しているというだけのことでありますので、事務当局からのお答えはまたいずれ差し上げます。   ほかにいかがでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。22ページのDの補償金の支払と明渡しの同時履行について書いていただいて、それはよろしいかと思っております。その上で、これは必ずしも区分所有法制の話ではないのですが、補償金をもらったとしても、例えば単身高齢者など、なかなか次の住まいを確保することが難しい方々がいらっしゃるかと思っております。全世代型社会保障改革の中でも、こうした方々の住宅確保について様々検討が進んでいると思いますが、この賃貸借の終了請求の仕組みでは、そういう境遇にある方がきちんとフォローされるようにしていただきたいとお願いしておきたいと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。今回の補足説明にはありませんけれども、確か以前、そういうようなものがこの部分になかったでしたっけね。それが別に消えたわけではないというか、今回は新たな提案部分についての補足説明でありまして、村上さん御指摘の点は、なおあれですね。 ○望月幹事 住宅の確保が困難な方に対するセーフティーネットのところについては、国交省さん含め、連携させて対応させていただきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 ○佐久間部会長 御指摘ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○小林委員 建替え決議がされた場合の賃貸借の終了等の関係です。22ページの(注3)の部分とか、それから23ページの部分なんですけれども、ちょっと非常に悩ましい部分なんですけれども、どうも釈然としないところがありまして、23ページの方で、賃借人は独自の居住、営業の利益を有しているから、補償の額を区分所有権の額を上限とすることを正当化することは困難という記述があるんですけれども、確かに独自の利益ということはそのとおりだと思います。それが、必ずしも区分所有権の額に収まり切らない場合もあるというのも、確かだと思うんですけれども、そこの部分だけ考えると、理屈上は確かにそうなんだろうなとは思うんですけれども、ただ、それをもって建替え自体がもう進まなくなっちゃうとかいうこともありますし、それから、元々の区分所有権の評価額との関係で、借りている間に幾ら儲けてもそれは自由だと思うんですけれども、退去するときに、その額をそのまま補償するというのが、本当に公平にかなっているのかどうかというのは、ちょっと釈然としないところがありまして、やはり区分所有権の額が上限というのは、それなりの合理性を持っているんではないかなという、非常に直観的な意見で恐縮なんですけれども、それを規定しないと、本当に大丈夫かなと、せっかくの制度が動かなくなってしまわないかなという恐れを抱いているものですから、あえて申し上げさせていただきます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。先ほど、この検討の冒頭で鎌野さんが御発言になったと思うんですが、結局、これを法律の規定にしましょうというのはBの文言でありまして、通常生ずる損失の補償金が一体どういう基準、どういう考慮によってどの金額になるのかということは、法律に定めるわけではありません。結局のところは解釈に委ねる、あるいは、いずれ裁判例が積み重なって決まってくるということだと思うんです。そのときまで明確でないという状態が続くことは、もうやむを得ないということで、小林さんがおっしゃったとおりのお考えも一方であるというか、私は個人的に小林さんと同じ考え方を持っております。他方で、そうではなく、この(注3)の「想定している。」までの部分ですかね、こう受け取っている方、考えている方もおられて、そこは多分、一本化を今しようと思ったって、法律に書き込むわけではないので、難しいんだろうと思います。   今、この原案の立場は明確にここに記されておりますし、今後も何らかの形で、いろいろな形で世の中に発信されると思うんですが、小林さんがおっしゃったような考え方も、繰り返しては申しませんけれども、私もこの場では既に、これこれこうではないかという理由とともに申し上げたことがあり、それは議事録にも残っております。そういった両方の立場からの解釈が成り立ち得るということを前提に、今後実務的に、いつかは収れんしていくという、そういうことではないかなと思います。   ですから、小林さんの今の御発言に、直ちにそうですねということで応えることはできない半面、今の御発言が無意味ということもなくて、結局、社会において、あるいは法の世界においてかもしれませんが、いずれかの考え方、あるいは第三者の考え方、どれか適当かということが今後議論されていき、最終的には確定していくということだと思っております。   以上のようなことで、一応のお答えとさせていただきます。   ほかにいかがでしょうか。 ○沖野委員 能登委員がおっしゃった3点目が、Dについて同時履行というのであれば、支払を受けるまでではなく、履行の提供とか、そういうことになるのではないかという御指摘ですが、それについて、レスポンスがなかったように思ったのですが。 ○望月幹事 最終的にどんな文言にするかというのはまた検討させていただきますけれども、意味としては、同時履行を設けるということで、この部会で御確認いただければと思っております。 ○沖野委員 分かりました。すみません、手付けのところの書き方とか、幾つか可能性がありますので、完全に民法533条にするのかは一つ検討の余地があるかと思いましたものですから、それも含めてということになるのかと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。文言についてはまだこれから様々な段階を経なければなりませんので、了解事項としては、同時履行の一般的な考え方に従うということかと思います。そのような考え方では駄目だということであれば、御意見をお出しいただければと存じます。   ほかにいかがでしょうか。   (2)建替え決議をされた場合の賃貸借の終了等は、もう一度申しますが、21ページから26ページまでを対象としておりますので、使用貸借、配偶者居住権、そして担保権、これも範囲には入っております。御意見があれば、その賃貸借以外のところでも承りたいと存じますが、よろしいでしょうか。   では、また、最後にもう一度、全体を通して御意見を伺うことはありますので、もし何かありましたら、そのときにお願いをいたします。   では、続きまして、部会資料24の「第2 区分所有建物の再生の円滑化を図る方策」の「2 多数決による区分所有建物の再生、区分所有関係の解消」について、御意見を頂ければと存じます。 ○齊藤委員 どうもありがとうございます。一棟リノベーションのところも範囲でしょうか。 ○佐久間部会長 もちろん、はい、入っています。 ○齊藤委員 分かりました、ありがとうございます。一棟リノベーションのところなのですが、前回も申しましたが、一棟リノベーションが、私がなかなかイメージが湧かないということで、大きく分けて、耐震性を高めるために、壁をみんなで厚くして、専有部分がちょっとずつ小さくなる、面積が変わるような場合とか、二戸一とか、本当に大規模なリノベーションをする場合があり、これらはかなり様相が違うと思います。   前者の場合は、復旧に近いから買取り請求のようなものが要る、お金が払えないというような場合に。後者の場合は、建替えに近いので売渡し請求みたいなものが必要になってくる。そこで、もし可能であれば、一棟リノベーションは、どういったものがあって、本当に売渡し請求だけでよいのか、買取り請求が必要ないのかを、国土交通省さんのお力も借りて一棟リノベーションのイメージを高めて、これでみんなで安心して、この条文でよろしいかの確認ができればと思っております。是非御検討いただけたらと思います。お願い事になります。 ○望月幹事 一棟リノベーションのところは、補足説明でも書かせていただいていますが、具体的にどういうものが想定されるのかというところは整理させていただいて、御提示させていただこうかとは思っております。   ただ、基本的には、建替えと同じもの、建替えだと全部潰さなければいけないんだけれども、そうではなくて同じ効用を得られるもの、これが想定されていますので、基本的な仕組みとしては建替えと同じものを導入することを考えております。 ○齊藤委員 現実的に考えると、耐震補強をみんなでしました。壁を厚くしてちょっと面積が変わるみたいなものもあります。建替えに比べて引っ越しをしなくていいとか、二度の引っ越しをしなくていいとかいう形であり得るとおもいます。多様な意味から、この一棟リノベーション、すごく皆さん期待されていると思いますので、使ってもらいやすいようにしていくというのは大事ですので、パターンを考えて、建替えに代わる大規模なリノベーションということの汎用性があったらいいかなと思います。この辺りも含めて、実際のイメージを高めて、皆さんと共有していけたらと思います。よろしくお願いいたします。 ○佐久間部会長 建替えに代わるというのは、別に要件ではなくて、30ページ2行目の括弧書きにありますとおり、全ての専有部分の形状、面積又は位置関係の変更を伴うというところが、飽くまでポイントでありまして、齊藤さんがおっしゃったような、耐震補強で壁を分厚くして、専有部分が全部ちょっとずつ小さくなりますということであれば、それに当たるということですね。 ○齊藤委員 そうですね。そうすると、多分そういう場合って、建替えに近いのではなくて。 ○佐久間部会長 ですから、建替え決議と同様の要件だというだけで、建替えに近いとか代わるとかということは、実質的には要件には。 ○齊藤委員 そうすると、やはり復旧に近くなったら、私、前から言っているけれども、買取り請求みたいな考え方も必要ではないかなって考えております。かなりの金額必要ですよね、このリノベーション工事は。 ○佐久間部会長 それは必要ですけれども、ここは売渡し請求の対象にするんですよね。 ○望月幹事 売渡し請求です。 ○佐久間部会長 復旧とどこが違うかといいますと、復旧は、本当に復旧だったら、全ての専有部分の形状等が変わるということはないはずでありまして、概念的には、そこで区別があります。 ○齊藤委員 でも、現実には、その金額を払えないということで、もちろん売渡し請求してもらえばいいけれども、売渡し請求してもらえないことがあったときに、その区分所有者から買取り請求して、その区分所有関係から離脱できるという道を本当に開かなくていいんでしょうかということです。 ○佐久間部会長 いや、反対者がいれば、売渡し請求しないと先へ進めないということになります、この場合も。 ○齊藤委員 ということは、必ず離脱ができるということですか。 ○佐久間部会長 結果的に、反対だったら。 ○大谷幹事 確か、買取り請求みたいな仕組みをどんどん作ること自体がいいかという議論も一度したような気がいたします。区分所有者がどんどんどんどん抜けていくような仕組みで、それ、誰が代金債務を負担するのかといった問題もあるわけですけれども、それ自体は余り望ましくないという方向で議論してきたと理解をしています。   今ここでおっしゃっているのは、ちょっとまた精査をさせていただこうと思いますけれども、一棟リノベーション工事の話なのか、専有部分の変更を伴う共用部分の変更、いわゆる配管の全面工事の話なのかとかいうところがあるんだと思いますが、整理をさせていただければと思います。 ○齊藤委員 そうですね、はい、ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○紺野委員 今の一棟リノベーションの件なんですが、これ、極端なことを言うと、スケルトンとか何とかということも入ってくるかと思います。そうしますと、これ、他の司法との関係、殊に建築関係とか、それから消防法、都市計画法、いろいろ絡んでくるんで、その条件といいますか、普通の建物でも、市街地においては50年、極端な、経ったものですと、その地域においては減築をしなければならないというケースがあって、なかなか再建ができないというケースが多々、市街地の場合、今度出てくると思うんです。一棟リノベーションという範ちゅうをある程度決めておかないと、これは区分所有法内で決めるということではなくて、他法との関係がありますので、そこら辺、いろいろな角度からも検討しなければいけないのではないかと思われますので、そこら辺をちょっと教えていただければと、今後の検討においてですね。   一棟リノベーションというのは、大分やはり躯体を、極端なことを言えば、残しての話になると思うんです。ところが、その地域では、そのまま再建でできていかないというケースもありますので、そこら辺、他法との関係ですね、関連法規との関連も含めて御検討いただければと思っていますけれども。 ○望月幹事 ありがとうございます。どんな工事が当たるかというところについては、また整理させて御提示させていただきたいと思います。これまで一棟リノベーションということで提示させていただきましたけれども、これをもう少しどういうふうに説明できるのかというところについては、整理して御提示させていただきたいと思います。 ○紺野委員 これは、ディベロッパーさんも含めてのお話になると思うんです。期待する部分というのが多分、居住者の関係って、管理組合の関係からも出てくると思うんですね。全部解体して再建築するのではなくて、今までのものを生かしてということをやりたいよということで、ただ建物だけ壊すというのは、土木の部分、基礎部分までやると、建物の費用ばかりではないんですよね。土木部分というのは結構、市街地に建っていると、隣の建物の関係とか何とかということで大変な工事になるんで、必要も莫大になりますんで、そこら辺も含めて、ちょっと御提示というか、検討していく必要があるのではないかと思われます。よろしくお願いいたします。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。まず、既存不適格との関係では、建替えの場合には、既存不適格だったら、元どおりのサイズでは建物は建たないというのが明らかであるところ、一棟リノベーションの場合には、そのような結果を免れ得る場合があるのではないかということが、ここまでの議論、会議でも出てきたところです。ただ、それはやはりケース・バイ・ケースだということのようですので、そのケース・バイ・ケースであることを法律に書き込むということは難しい。そこで、ケース・バイ・ケースですよ、費用はこうですよ、一棟リノベーションには一棟リノベーションなりの問題はありますよということが認識された上で、例えば建替えをするのか、一棟リノベーションをするのか、あるいはほかの変更で対応するのかということを、区分所有建物ごとにお考えくださいと。これはメニューを増やしましょうということでありますので、一棟リノベーションということについて、新たに規定を設けるということであるとしますと、例えばとして、こんなときに使い勝手がいいかもしれませんというようなことが、説明として例示はできるかもしれませんけれども、それを超えて、それこそガイドラインみたいなのを作るというのは、ちょっとなかなか難しいかなと思っております。どうも御指摘ありがとうございました。   ほかに、いかがでしょうか。   よろしいですか、第2の残りにつきましては。   ありがとうございます。それでは、第3は全部【P】のはずでありますので、ここで、第3に限らず、部会資料24の全体、、【P】となっている部分を含めて、どの部分でも結構ですので、御意見があれば伺いたいと存じます。いかがでしょうか。 ○森本委員 ありがとうございます。それでは、【P】の部分につきまして発言させていただきます。   第1の「1 集会の決議の円滑化」の(2)出席者の多数決による決議を可能とする仕組みのところでございます。イの集会の定足数につきまして、@の普通決議以外の各決議についても設けないということについて、意見を述べさせていただきます。   前回、会議において、多くの区分所有者が集会に参加することが重要との意見がございました。これを受けまして、定足数を設けない際に配慮すべき点といたしまして、十分な情報提供と不意打ちを排除した十分な招集期間が必要と考えております。招集期間につきましては、法第35条1項で、ウのところにも書いてはあるんですけれども、集会の招集の通知は、会議より少なくとも1週間前に発しなければならないとされているところですが、ただし書で、この期間は規約で伸縮することができるとされております。この伸縮の縮が適用されると、集会参加の機会を奪うことにもなりかねないかと思料いたします。   マンション標準管理規約では、基本2週間前、緊急を要する場合には、理事長は理事会の承認を得て5日間を下回らない範囲で短縮することができるとされています。定足数を設けないと規律する際には、連動して招集期間について、例えば、現行法から伸長するとか、若しくは標準管理規約に準ずる規律をすることが、多くの区分所有者が集会に参加するために望ましいのではないかと考えておりますので、意見させていただきました。 ○佐久間部会長 分かりました。それは検討させていただきます。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○齊藤委員 ありがとうございます。そうしましたら、同じく出席多数のところで申し上げたいと思います。これは4ページになりますかね。   出席多数ということは、私、何度も同じことを申し上げて本当に恐縮でございますが、更に同じことだけをではなくて、しっかりとヒアリングを続けて、出席多数について考えてきました。今後、今、国土交通省で議論をしている第三者管理者方式ということも、増えていくということも一定考えられますことから、区分所有者一人一人の意識付けが重要であるということは、改めてこの場で申し上げなくても、皆さん理解しているということかと思います。だけど、総会というのはとても大事な場で、出席者が多く参加して物事を決めていくというのが、決議がゴールではなくてスタートという意味では、非常に重要ではないかと思います。   今回、普通決議だけではなく、規約の変更なども含めて、出席者多数ということでございますが、私は、少なくとも定足数が要るのではいなかと思っています。ということは、本日、鎌野先生も御出席いただいていますが、鎌野先生の本を改めて見させていただきましても、例えば、ドイツでは今、出席者の定足数がないとおっしゃられていますが、その前はやはりしっかりと定足数があるという考え方を導入されていますし、多分日本でいう共用部分の変更に当たるものに関しては、全共有持分の2分の1以上となっていますから、やはり実質的には過半数の方が納得している。フランスでも、これも鎌野先生の本を改めて読ませていただきますと、全区分所有者の過半数で、どうしても成立しないときの2回目は、全区分所有者の3分の1以上ですから、本当に少ない人数で前に行くわけではなく、一定の数以上が必要ではないかなと考えております。他の国は違うから日本は日本で考えろとおっしゃられるとしたら、日本の今までやってきた、集会で物事をしっかり決めて、合意を取って前に進めていくということを重視していくことが重要ではないかなと思います。   そこで、簡単に出席多数で決められるということが、一方でとても魅力的にも見えますが、一方で私たちが築いてきた、しっかりと多くの人が参加して物事を決めていくということを尊重しますと、例えば1回目は今までどおり、2回目、もう一回総会を行い、決議を行い、その際には出席多数という考え方もあると思います。これが一つの考え方です。もう一つの考え方は、少なくとも定足数を設けるという考え方です。定足数は、私は少なくとも3分の2は必要で、3分の2の参加があり、そして4分の3以上の決議要件になると、これでも全体の2分の1、今よりか大きく減るわけでございます。御指摘のとおり、いろいろなマンションがございます。その中で、頑張っているマンションだけではなく、非常に決議が難しいところがあるという御案内もございましたので、そういった形で、できるだけ多くの人の御意見が反映できる場を進めていくべきではないかということでございますので、是非御検討をお願いしたいと思います。   そしてもう一点、先ほども申しましたように、被災したマンションでの復興ということで、今、3分の2でということですが、これも、私は原則4分の3で進めていくべきであると思っております。それは、先ほどと同じ繰り返しになりますが、3分の1が反対している、御理解されないままで、本当に被災マンションの復興ができるんでしょうか。これも、改めて熊本、そして東日本大震災で被害を受けたマンションの改修、そして建替えをコーディネートされた方々にヒアリングをいたしましたところ、3分の1の反対のある中では難しいとおっしゃられております。そういう意味では、現行を踏まえまして、4分の3というのが適切ではないかと考えているところでございます。是非御検討いただけたらと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。ちょっと一つ戻りまして、森本さんが御指摘になった点で、こちらから検討のために伺っておきたいことがございます。それは、35条1項ただし書の規約で伸縮するの「縮」の方について、様々な事態があり得ることを前提に、縮める方は今後は駄目ですよ、伸ばすことはできますよというような形に仮にするとして、実務上困るような事態が想定されないか、実務がそれで回るかを、今お気付きの範囲でよろしいんですけれども、何か御見識がおありの方は教えていだければと存じます。いかがですか。今日でなくてももちろんいいんですが、今日の時点で、こんなときに困るというようなことが、もしぱっと思い浮かべられることがおありでしたら、伺っておきたいと思うんですが、特に今はないですかね。   では、もし何かこういう点でということをお気付きの点がありましたら、事務局に御連絡いただければ、有り難く存じます。もちろん次回これを扱う会議でもいいんですけれども、あらかじめ伺っておければ、原案作成の段階で織り込めますので、お願いをできればと存じます。   ほかにいかがでしょうか。 ○小林委員 ありがとうございます。それでは【P】のところを3点ばかり申し上げたいと思います。   まずは、第1のところの共用部分の変更決議のところなんですけれども、前回省エネの話が出てまいりましたけれども、二酸化炭素の削減の問題が今後益々重要になっていく中で、省エネのための改修については、緩和の対象とするように御検討いただきたいなというのが1点でございます。   それから2点目が、第2のところの建替えのところなんですけれども、これも前回申し上げているわけですけれども、基本的に今の案について、積極的に反対はしないという前提で聞いていただきたいんですけれども、私個人としては、原則4分の3がいいだろうと言っておりまして、前回で理由については申し上げましたが、後から考えて、あれは言い漏らしていたかなと思う点があったものですから、付け加えたいなと思います。ここで掲げられている@からDの類型というのが、必要性の高いものだということで掲げられているわけです。それはそのとおりだと思うのですが、これ以外に必要性のあるものがないかというと、私はそうではないだろうと思っていまして、類型的に記述するのが難しいんですけれども、やはり必要性があるだろうというものがあり得るだろうと思っているんですね。それを無理に書こうとすると、以前の費用の過分性要件のてつを繰り返すことになってしまいますので、つまり、要件が抽象的で解釈の幅があって、かえって紛争を呼んでしまうというようなことになってしまいかねないと、そういうふうに思いますので、そういうケースを救うには、やはり全体を4分の3に下げるということが最も合理的ではないかなと、個人的には考えております。   では、どういうケースかといいますと、ここの@からBまでは建物の危険性を言っています。それから、Cは水回りの老朽化による衛生上の有害性ということを言っております。いずれも建物の何らかの危険性なんですね。危険性なんですけれども、それが非常に必要性が高いということはそのとおりだろうと思いますが、危険性というに至らないものでも、必要性があるというものはあり得るのではないかと思っています。建物の老朽化の問題というのは、それだけではなくて、例えば、初期の公団住宅の天井高が、梁下で170センチというのは典型例だと思いますけれども、それ以外にも、壁厚とかスラブ厚が薄くて遮音性能が低いとか、そういうような問題もあります。社会的な常識からすると陳腐化した、あるいは危険とまでは言えないけれども住みにくくなったとか、使いにくくなったというケースがないではないわけですね。こういうケースをカバーするということを考えると、やはり下手にEとかいう類型を作るよりは、全体を4分の3に引き下げるのがいいだろう、ベストな案だろうと個人的には考えておりますということを申し上げたいと思います。   それから、3つ目が第3のところの団地内建物の一括建替えの各棟要件でありまして、これも【P】でありますので、前回のものがそのまま載っているわけですけれども、私としては、やはり3分の2以上の賛成というような形でなくて、3分の1以上の反対がない限りという形に変えることについて、是非御検討いただきたいと思います。理由は、前回申し上げたとおりであります。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   今、伺っているだけで特にコメントしておりませんのは、全て伺っておいて、次回案を提示させていただくときに、考慮して案を作っていただき、提示していただくということを前提としておるからです。   水津さん、鎌野さんの順にお願いします。 ○水津幹事 10ページの【P】、共用部分の変更決議について、前にも申し上げましたが、気になりますので、お伺いいたします。   ア、@の提案は、共用部分の設置又は保存に瑕疵があることによって、他人の権利・利益が侵害され、又は侵害されるおそれがあるときに、その瑕疵の除去に関して必要となる共用部分の変更について、多数決割合を引き下げるとするものです。部会資料20では、「共用部分の設置又は保存の瑕疵」とは、区分所有建物が通常有すべき安全性を欠くことであるとされていました。これに追加して、区分所有者を含む意味での他人の権利・利益の侵害又は侵害のおそれを要件とすることによって、区分所有建物が通常有すべき安全性を欠く場合のうち、具体的にどのようなケースを除外しようとされているのでしょうか。管理不全土地管理制度や管理不全専有部分管理制度に関する規定の文言と合わせているようにも見えますが、建替えについての多数決割合の引下げでは先に述べた追加的な要件が定められていないことからも分かるように、管理不全の話と多数決割合の引下げの話とでは文脈等が異なるように思います。共用部分の設置又は保存に瑕疵があれば、それでよいのではないかという気もいたしました。 ○望月幹事 まず、文言を合わせているというのは、御指摘のとおりのところがあるんですが、具体的に多数決割合を下げる場面というのが、権利の侵害とか、侵害されるおそれという、正に危険な場面を想定していますので、それを書いているというところです。要件としては、この権利侵害であるとか、侵害のおそれ、ここが正に要件の肝であるとは思っているところです。 ○水津幹事 私の質問は、区分所有建物が通常有すべき安全性を欠く場合のうち、ここでいう他人の権利・利益の侵害又は侵害のおそれが生じないケースがあることを想定されているのか、想定されているのであれば、それはどのようなケースか、想定されていないのであれば、ここでいう他人の権利・利益の侵害又は侵害のおそれを要件とする必要はないのではないかという趣旨でした。 ○佐久間部会長 でも、そこの他人には区分所有者も含まれているので、お考えになっているようなときに、基本的な安全性とおっしゃったか分からないけれども。 ○水津幹事 部会資料の20では、民法717条1項の規定を参照して、通常有すべき安全性とされていました。 ○佐久間部会長 通常有すべき安全性を欠いているけれども、区分所有者の利益、権利すら侵害していないということは、どの程度ありますかね。 ○望月幹事 今の御質問に具体的にこういうケースというのは申し上げることができないですが、ただ、要件としては、権利侵害の恐れ等がありそのままにしておくのが好ましくない状態にあるというところを入れたいというところでございます。 ○佐久間部会長 あと、正式なお答えはまた次回以降差し上げることになると思いますけれども、基本は、20ページから21ページにある@からCに当たる事態の場合には、変更だってできるということを企図し、そこから余り大きく広げるという意図ではないということですよね。 ○望月幹事 程度等は変わってくると思いますけれども、危険性というところは書いてあるとおりです。 ○佐久間部会長 ちょっとこれ以上のお答えは、また検討の上差し上げることにさせてください。 ○水津幹事 承知いたしました。 ○鎌野委員 どうもありがとうございました。先ほどの4ページのところ、イのところの集会の定足数に関してですけれども、これについては、齊藤先生がおっしゃることはよく分かるんですけれども、基本的に、ここでの一つの了解事項というか前提というのは、いわゆる管理不全などに陥って、もういかんともし難いと、とても集会を開いても、あるいはその集会自体がなかなか難しいという、それでも集会を開かないと先には進まないんですけれども、そういう局面を考えた場合、定足数という縛りで、結局は集会が成立しないという、そういう場面が想定できると。今のところは、多分稀有な事例だと思いますけれども、今後はそういうことがあり得ると、そういう前提で、確か定足数については基本的には設けないというような議論が前提となっていると思います。   それで、齊藤委員がおっしゃるように、確かに、特に規約の変更とか共用部分の変更というのは、多くの賛成を得てということですけれども、現行法でも、この定足数の中には、いわゆる書面で議決権を行使するとか、それから代理人を選任する、実際には議長委任なんていう形の代理人の選任というのもあろうかと思いますけれども、そういうのも当然定足数に含まれるわけですよね。その前提としては、先ほど森本委員がおっしゃったように、十分な情報提供というか通知というのが前提ですけれども、そういうような前提で、特に懸念されるのは、繰返しになりますけれども、もう管理不全になってなかなか進まないというときに、定足数というのが縛りになるというようなことで、一般的には、恐らく先ほど言ったように書面による議決権行使とか代理人の選任とかということで、それを前提として定足数もその中に、そういうものも数えるということであれば、そういった意味では、あとは多分、共有部分の変更とか何とかということについては、お金の問題というようなことなので、そして、それは、やはり区分所有者がそれぞれの判断で、このことについては議決権行使、あるいは代理人の選任ではなくて、自分も実際に集会に参加して、議論に参加したい、意見を言おうというようなことですから、そういったことで、結果的にはここの御提案のように、これを設けないというような方向性でよろしいと思います。   ちょっとそういったことで、意見を申し上げさせていただきました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   では、本日の審議はこの程度とさせていただきます。本日の御議論、また御意見を踏まえまして、今後更に検討を進めていきたいと存じます。   では、次回の議事日程等について、事務当局から説明をお願いします。 ○鎌野委員 すみません、ちょっと一言だけ。もう、ある意味では議論が出尽くしたと思いますけれども、いただいたものの、もう議論が既に終わって、私はそれにちょっと参加できなかったんですけれども、第1の6の14ページからの共用部分に係る請求権の行使の円滑化という点でございますけれども、なかなか、私ももう既に意見を述べさせていただきましたので、もう一言だけ言わせていただきますと、基本的には、やはり民法などの共有議論からいうと、ここでそれを離れて議論するというのは難しいようにも思えますけれども、他方、やはり区分所有の共用部分等に関わるいわゆる瑕疵というか、そういうものは、やはり立法的に解決をしなければいけないのかなと。そうすると、やはり中野委員とか、それから大桐委員とかというような方向性というのも、十分あり得るのかなということで、もうこれは最終段階ですので、そういったことを最後に一言述べさせていただきます。   特に御説明はいただく必要はございませんので、念のために申し上げさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。ほかによろしいでしょうか。   では、改めまして、本日の審議はこの程度とさせていただきまして、次回の議事日程等について、事務当局から説明をお願いいたします。 ○望月幹事 本日もありがとうございます。   次回ですけれども、令和5年12月7日木曜日、午後1時30分から午後5時30分までということで予定させていただいております。場所については、また通知の方に記載させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。引き続き要綱案のたたき台として、御提示させていただく予定でございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   これをもちまして、法制審議会区分所有法制部会の第14回会議を閉会いたします。   本日も熱心な御審議を賜りまして誠にありがとうございました。 −了−