法制審議会 区分所有法制部会 第15回会議 議事録 第1 日 時  令和5年12月7日(木) 自 午後1時28分                      至 午後5時11分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  区分所有法制の改正に関する要綱案のたたき台(2)の検討 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○佐久間部会長 少し早いのですけれども、最初から御出席いただける方にはおそろいいただいたようですので、法制審議会区分所有法制部会の第15回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。   本日は、増田委員、青木幹事、神谷幹事、水津幹事が御欠席です。   始めに配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○山根関係官 資料について御確認いただきたいと思います。   事前にお送りした資料としては、部会資料25「区分所有法制の改正に関するたたき台(2)」及び参考資料13「共用部分と全ての専有部分の形状、面積又は位置関係の変更を行う工事について」のほか、中野幹事提供資料がございます。   部会資料25におきましては、本文について前回からの変更点をイタリック体で示しているところでございます。念のため、主な変更箇所について口頭でも説明を申し上げます。   まず、4ページ目のイにおきまして、1週間前とされているところ、この期間を「規約で伸長することができる」といった部分を新たに変更しています。   次に、17ページでございます。17ページ目の6の「共用部分等にかかる請求権の行使の円滑化」のBにつきまして、別段の意思表示を行う方法について、「書面又は電磁的方法により」といった文言を追加してございます。   次に、21ページ目の「8 区分所有建物が全部滅失した場合における敷地等の管理の円滑化」における(注4)でございます。こちらのただし書において、「5分の1を超える議決権を有する敷地共有者等が分割の請求する場合」といった記載を追加してございます。なお、こちらの記載につきまして、「5分の1を超える議決権を有する」とございますけれども、現在の事務当局からの提案におきましては、政令で指定された災害によって全部滅失した建物については、再建決議等の多数決割合を3分の2とすることを提案してございますので、こちらの5分の1という数字は、被災した建物については3分の1とすることを念頭に置いてございます。また、後半部分で、「その他再建決議、敷地売却決議をすることができないと認められる顕著な事由がある場合」と記載してございますけれども、こちらも、現行の被災区分所有法と同様の規律とすることを想定しておりますので、一括建替え等決議と新しく提案している一括敷地売却決議ができない場合についても同様に、この顕著な事由がある場合に含めることを念頭に置いているところでございます。   次が、31ページ目でございます。30ページから始まっている一括建替え決議の各棟要件、イの部分ですけれども、こちらにつきまして、現行法の規律を改めて、「各棟につき区分所有者又は議決権の各3分の1を超える反対がない限り、一括建替え決議をすることができる」とする記述に改めているところでございます。   最後に36ページ目でございます。こちらの11行目から、オということで一括敷地売却決議を新たに追加してございます。また、(注6)についても新たに追加をしているところでございます。   資料につきまして、お手元にないものがある場合には、途中でも結構ですので事務局の方にお知らせください。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   では早速、本日の審議に入ります。本日も長時間にわたることが考えられますので、その場合には、適宜休憩を入れながら御審議いただきたいと考えております。   本日はまず、部会資料25の「第1 区分所有建物の管理の円滑化を図る方策」のうち、6の「共用部分等に係る請求権の行使の円滑化」について御議論いただきたいと存じます。   この論点につきましては、これまでも十分な時間を取って御意見を伺ってきたところでありますので、本日で実質的な議論を終えたいと考えております。御協力をお願いいたします。   まず、加毛幹事から、前回会議後に事務局を通じまして、中野幹事に対して御質問されたと伺っております。そこで、加毛さんからその内容について簡単に紹介をしていただき、それを受けて中野さんからお答えを頂き、またその他の点について中野さん御自身のお考えをできるだけ簡潔にお話を頂ければと思います。   では、加毛さん、まずは中野さんに投げ掛けられた御質問を、皆様の前でお願いいたします。 ○加毛幹事 ありがとうございます。事務局にお願いをして中野先生に差し上げた御質問の内容は、基本的に、前回の会議における私の発言の要約となります。それゆえ、前回の発言を繰り返すことになりますが、簡単に申し上げたいと思います。   私は、中野先生の問題提起を重要なものであると思っておりますが、その一方で、どのような問題状況を想定しているのかということが気になりました。そして、仮に一定の場面を念頭に置いて改正を提案されているのだとすると、それを採用した場合に、想定していなかった場面で、思わぬ副作用が生じるのではないか、ということを危惧しております。   例えば、区分所有建物に原始的な瑕疵や欠陥が存在していたものの、その瑕疵や欠陥が顕在化する前に、区分所有者の一部が区分所有権を譲渡したという場面を想定してみますと、当然当該瑕疵や欠陥がないことを前提として、区分所有権の価格が決定され、売買がなされているので、旧区分所有者に、修補に代わる損害賠償請求を認める必要性は相対的に低いと言えるかもしれません。新区分所有者による契約不適合責任の追及という問題は残るかもしれませんが、免責特約などによってその問題をクリアできるのが一般的であるとすれば、旧区分所有者に損害賠償請求を認める必要性は低いように思われます。あるいは中野先生の御提案は、このような場面を典型例として念頭に置いているのではないかとも思われるわけです。   他方、区分所有建物の瑕疵や欠陥が顕在化した後に、区分所有者の一部が区分所有権を譲渡するという事例も考えられます。例えば、住環境の悪化や管理組合の雰囲気の悪化などを理由として、区分所有者の一部が、もはやその建物には住みたくないと考えることもあるように思います。そこで、修繕に関する決議などがなされる前に、区分所有者が安価で区分所有権を譲渡した上で、分譲会社に対する損害賠償請求は別途行うという行動を取ることも考えられるように思われます。   この場合、当然承継構成や不可分債権構成によると、区分所有者は、事後的に損害賠償請求ができないことを前提として、区分所有権の売却先を探すことになります。理論的に言えば、譲受人になろうとする者が、損害賠償請求権の承継・取得を前提として契約を締結し、そのことが区分所有権の売却価格に反映されるということも考えられます。しかし、現実にそのような形で契約が締結されることがあるのだろうかという疑問を覚えるところです。そして、仮に区分所有者が安価でしか区分所有権を売却できないのだとすると、そのことが区分所有者による区分所有権の譲渡を事実上制約することにつながらないだろうかという危惧を覚えるところです。   今申し上げたような問題が実務上想定されないのか、あるいは想定されるとしても無視できる程度のものなのか、あるいは無視できないとしても、大規模な瑕疵や欠陥のあるマンションに住んでいる以上は、区分所有者全員が心を一つにして修繕に向かうのが望ましいという実質的な価値判断があるのか、といった辺りが気になりまして、それら点に関する中野先生のお考えを伺いたいと思った次第です。よろしくお願いいたします。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。中野さんにお答えいただく前に、昨日皆さんに中野さんの御意見をメモ書きとしてお送りしておりますけれども、それを資料として公表することは考えていないことをあらかじめ申し上げておきます。 ○中野幹事 中野です。初めて会場で参加させていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。   今のお話で、ちょっと冒頭、この話でいいのかどうか分かりませんが、追加意見書ということで私の方で出したものは公表されないということになりますと、やはりこれ、全部私が読まないと、議事録に載らないということになってしまうのかな。 ○佐久間部会長 なぜ公表資料にできないかというと、文書において、確認がされていない議事録案を引用されているんですね。そのために、例えば、そんなこと言っていないという引用が私の発言とされている部分にもあります。そういう確認が終わっていないものが引用されているので、公表資料にしないということです。   委員・幹事の皆さんはメモをお読みになっているはずだと思われますので、逐一お読み上げになるのではなくて、要点はこれこれこういうことだということをおっしゃっていただければと思います。早く終われと言うつもりはありませんので、逐語的に読み上げるのでなく、これは必要と思われることは全部おっしゃっていただければ、それで結構でございます。 ○中野幹事 ありがとうございます。それでは、加毛先生から今御質問があったこと、前回の第14回の後にメールで頂戴して、私も考えさせていただきました。その考え方については、先ほども加毛先生からもありましたけれども、私の考えるところ、先ほど加毛先生からも出たとおりで、このような状況が、このようなというのは、実質瑕疵が発見されて、安い価格でなければ売れないなというような状況のときに、それを損害賠償も付さないでも承継させてしまって、安い価格で売却せざるを得ないということが想定されないのかということでございますが、当然私は想定されるものだと思います。   そのような状況の中で、売却をせざるを得ないということもあるんだろうなとは思いますが、私が思うに、やはりこのような瑕疵が発見されて、それについて、このマンションをきちっと管理して、修繕をして、長く利用しようというような、そういうような方向性でこの区分所有法は考えていくべきだと、それがこの区分所有法の趣旨であると考えております。そのような中では、やはりどのような方向で物を考えていくのか、一つは、損害賠償請求権を譲受人の方に承継させて、マンションをきちっと修繕の方向により向きやすくなるようにすること。一方で、抜け出ると、売却するという方について、損害賠償請求権をそのまま残して売却して、その後、その譲渡人が損害賠償請求するという道を残すということの価値判断をどちらにするかというと、私は前者であって、やはり当然承継させて、譲受人が損害賠償請求権を行使し、かつ、瑕疵修補の請求をするということがあるべき姿ではないかと思っております。   その場合に、それは譲渡人に酷ではないかというようなこともあるかもしれませんが、そもそもマンションを売却するに当たって、いろいろな事情で売却せざるを得ないと。そのときの価値が、もしかすると安くなってしまうかもしれない、もしかすると高いかもしれない、そういうような状況の中で売却するというのが、マンション特有の問題なのではないかなと思っております。その中で考えると、この時期にどうしても売らなければならないという方は、ある意味そのリスクを取って売却をしていただくということになるんだろうと思います。   ただ、私が思うに、そのような重大な瑕疵が存在している状況の中で、本当に売買って成立するんだろうかと。瑕疵が発見されていて、その瑕疵をどうするんだと、修繕するかどうかというような議論をしているときに、果たしてそれを買い取りましょうという人が一体どの程度いて、その心配ですね、その保護をせざるを得ないという状況がどの程度あるのかなということを、私は考えております。結局は、なかなか売れないんだろうと思うし、売れるためには、やはり修繕をして適正な価格にして売るという方が、よろしいんではないかなと思っております。   そのほかに、その状況で幾らにすると適正な金額になるのかということは、もうこれ分からないということは、前々回にも私の方で申し上げましたけれども、この減価する価格が幾らなのかということがはっきりしない、かつ、瑕疵修補を求めていて、結果として瑕疵修補をしてくれたという場合には、そもそも減価しないマンションになってしまいます。そのときに、安い価格で売るとかそういうような判断をしてしまった、この後の結果はどうするんだろうかと考えますと、やはりここでは、その損害賠償請求権は、当然承継して、そちらの舞台できちっと解決するということが、区分所有法上は正しい方向だと思うし、そのための規律をやはり設けるべきだと考えているところです。   一旦、加毛先生の今の御質問に対しては、そういうふうに答えたいと思っておりました。 ○佐久間部会長 では、加毛さん、今の御質問に関してはよろしいですか。 ○加毛幹事 お答えをいただき、ありがとうございました。中野先生の御発言には、幾つかの異なる内容が含まれていたように思いました。まず、最後のあたりでは、私が提起したような問題が、実務上想定しがたいという御指摘があったように思います。重大な瑕疵や欠陥のある場合には区分所有権の売買は成立しないのではないか、という御指摘です。ただ、仮に中野先生がそのようにお考えであるとすると、そのような場面をあまり念頭に置かずに、改正の御提案がされていたのではないか、ということが気になりました。   他方、最初の方で、中野先生は、私の問題としたような場面についても想定しているともおっしゃいました。その上で、仮にそのような場面を想定したとしても、中野先生は、大規模な瑕疵や欠陥のあるマンションに住んでいる以上は、区分所有者全員が、みんなで力を合わせて修繕に向かっていくのが望ましいという価値判断に基づいて議論されているものと理解しました。そのような理解でよろしいだろうか、ということを確認させていただければと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。中野さん、いかがですか。 ○中野幹事 中野です。加毛先生ありがとうございます。加毛先生がだろうかと言っていたとおりでございまして、私は、区分所有法の考え方は、マンションの居住者、区分所有者全員がやはり丁寧に扱って、管理をしっかりして、それで長く使うということがよろしい方向性だと思っておりますし、それに沿う法律を作るべきだと考えております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。中野さんにまだ引き続きほかの御意見、加毛さんの御質問に対するお答え以外の御意見を伺いますけれども、ちょっと申し訳ないのですが、その前に確認させていただきたいことがあります。瑕疵のあるマンションといっても、住めないマンションばっかりではないですよね、瑕疵が顕在化していても。住めないマンションだったら、買う人はあまりいないかと思いますが、住めないわけではないマンションはおよそ流通しないだろうという、本当にそんなことが言えるのかというのが1点です。   それから、瑕疵がある場合、安くしか売れない。これは絶対現実だと思うんですね。損害賠償請求権を本当に行使できるか、修補されるかどうか分からないときに、修補されたら元の価値に戻るからということで、修補がされた後の価格で買う人がどれだけいるかというと、それはほとんどいないのではないかと思います。そうすると、売却価格を安くするしかない。それでも、買手は少ない。他方で、売らなくても済む人ばっかりではなくて、転勤することになった人や、相続をしたけれども自分は別に家を持っていて、そこは要らない人、あるいは、そのような瑕疵のあるところに、やはりちょっとなかなか住んでいるのはつらいという人もいる。売らざるを得ない、売りたいという人はいるはずで、その人に売るなとは言えないと私は思います。   そうすると、修補してから売れという、そういう要求はまずできない。安く売るしかない。この状況になったときに、損害賠償請求権は譲受人のところにあるんだってなりますと、多分買取りビジネスをできるようになると私は思います。資力があって胆力もあるという人だったら、先を見越して、非常に安く買いたたく。それでも売らざるを得ない人が一方でいるので買い取れる。そして、まあ時間は掛かるのかもしれませんが、無事に修補がなった、あるいは、修補はされないんだけれども賠償請求権は行使できた。そうすると、瑕疵があった分の減価分、それが厳密に算定されなくたっていいわけで、瑕疵があるから買いたたける、その分について、譲受人が利益を得ることができるんですね。こういうことができることが明らかになったときに、ビジネスにする人が出てこないなんてことは、私は言えないと思います。そうだとすると、そのようなビジネスを生みかねないような立法は本当にいいんでしょうか。理想論をいえば、皆が中野さんの言うように瑕疵を修補してから売ればいいということだと思いますが、今私が申し上げたような現実はないと言えるでしょうか。私はかなり心配だと思うんですけれども。中野さん、いかがですかね。 ○中野幹事 先生、ありがとうございます。私は全く逆に考えております。   これが、損害賠償請求権を付けて安い価格で買うという人が出てきた場合は、その方が損害賠償請求権を行使するということになりますよね。ごめんなさい、譲受人か、譲渡人の方で損害賠償請求権を行使するというようなことを考えることが、そもそもなかなかないのではないかなと思いますし、その請求権を行使するための方策というのは、多分譲渡人の皆さんはないと思うんですよ。そうすると、それを誰かが購入する、そういう正に損害賠償ビジネスのようなものをすることを心配するので、そうであれば、きちっとマンションに居住している人が損害賠償請求権を行使するべきだと考えます。 ○佐久間部会長 その買った人は居住するんでしょうか。その保証はあるんでしょうか。 ○中野幹事 所有者でありますから、住む、住まないにかかわらず、自分の財産権をきちっと保全しようという方向性で動くのは、当然だと思いますが。 ○佐久間部会長 いや、所有権を安く手に入れて、元どおりになった場合に、直ちに売るか、あるいは売る算段をしておいて、その利益を得るということを狙う人が出てこないなんて、どうして言えるのかというのが私は疑問なんですけれども。皆が皆、マンションを住むため、事業に使うためだけに所有しているわけではないし、今後もそういう方向に導くことはできないのではないでしょうか。 ○中野幹事 でも、先生、ごめんなさい。これ、当然承継ですので、価値はそれほど安くはならないという前提で考えるべきだと思います。 ○佐久間部会長 そうは動かないのではないかというのが現実の話でありまして。理論的に言えば、例えば、1,000万円の補修費が掛かるマンションについて、1,000万円の賠償を取れますよとなりましても、そもそも中野さんたちが一生懸命おっしゃっているのは、損害賠償請求権はそう簡単に実現できないというところがあるのでどうか、というお話ではないですか。そうすると、事業者というか施工業者ですかね、が、そう簡単に払ってくれるかどうか分からないし、簡単に補修ができるかどうか分からないところ、あなたたち権利を得られますよ、ということになったからといって、まともな価格で買う人って出てきますかね。どのぐらい出てきますかね。他方で、売却せざるを得ないし、売却したいという人は、必ずいるはずだと思うんです。   繰り返しますが、必ずしも住めないようなマンションばかりの話ではここはなくて、大小様々な瑕疵のあるものについて問題となるわけです。小さな瑕疵でしたら、得られる差益も大したことはないのかもしれませんけれども、多分住もうと思ったら住める、だけどそれなりに大きな瑕疵はあるという場合、買いたたきやすいのではないかという気が、私はしますがね。 ○中野幹事 ただ、それ、総会決議で瑕疵修補に充てるということで採決しているわけですので、それは、譲受人も拘束されるのではないでしょうか。 ○佐久間部会長 瑕疵修補に充てるという採決を、拘束力を持ってできるかな。 ○中野幹事 総会で。 ○佐久間部会長 管理費用で取ればいいわけですよね。その管理費用の支払い方は、別に拘束されるわけではないと思うんですけれども。個人の権利を総会の決議で奪うことはできないのではないでしょうか。 ○中野幹事 瑕疵修補を、そうかな。 ○佐久間部会長 だって、管理組合で実施するのは修補であり、その費用については、修繕費用とか管理費用で取るということになっているのであって、その決定はできると思います。だけれども、例えば、修補のための費用をあなたの持っているこの定期預金から払えと言えないのと同じように、損害賠償請求権でもってそれを何とかしろということも、強制力を持っては、総会決議で決めることはできないのではないか、と思いますけれども。   いや、私はこのような認識ですけれども、もちろん私が間違っているかもしれませんので、間違っていたら、そうおっしゃっていただければよろしいです。中野さんの御提案には、理念的には大変すばらしい面もあって、また全ての区分所有者が中野さんのように考えるようになればいいなとは思いますけれども、では、それをもとに法律の規定にできますかって言われると、今申し上げたような認識から、それはできないのではないかと思っています。   私が申し上げたようにはならないと、誰も確言なんてできない、確定的なことは言えないでしょうけれども、その心配はまあなかろうと、あるいは、その心配があっても、これでよかろうというのであれば、前に進めたらいいと思うんですけれども、まずその心配がないかどうかですね。ないと思われる方にきちんと御教示いただけたら、それを基に話ができるとは思うんですけれども。また、心配がある場合であっても、こうすればいいというのがあれば、前へ進められると思います。 ○中野幹事 よろしいですか。   中野です。今、佐久間部会長がおっしゃるような、損害賠償ビジネスをまず心配をするということですけれども、そもそも先ほど先生もおっしゃるように、損害賠償請求訴訟などでどのぐらい取れるのかということもはっきりしない中で、その損害賠償ビジネスがそれほど社会問題として大きくなるような、そんなようなことが起こるとは私は想定しておりません。   その中でやはり、皆さんで勝ち取ったその損害賠償金については修補に充てると考えるのが、これ、正に一般的な考え方ではないかと思いますし、そのようなレアな、そういうビジネスをして損害賠償請求権を行使したい、損害賠償請求権でそれはきちっと自分のお金の中に、ポケットに入れたいというような、そういう方を想定して、全体としての規律を考えるのは適切ではないと思います。我々が今、区分所有法として考えるべきは、きちっとその損害賠償を請求して、瑕疵修補に充てられるような、そういう法制度を考えた方がよろしいと思います。   そのときのリスク、当然ながらそのリスクというのはあるのかもしれません。先生が考えれば、やはり頭がいい先生はそういう、いろいろと心配されることがあるかと思いますけれども、そのリスクは、どっちの方向でも同じような問題が起こると思いますので、リスクの程度を考えますと、私は先ほど来申し上げているとおり、譲受人に損害賠償請求権を行使させて、瑕疵修補に向けた総会決議を採ってやるべきだと考えています。 ○佐久間部会長 1,000万円安く買った、修補される前だから。1,000万円の賠償を得るのではなくて、管理組合が主導してきちんとした建物になった。この1,000万円の利益は譲受人のところに残る、そうなるのではないでしょうか。別に金銭的な利益を直ちに得るわけでなくても、それで立派になった建物を売却すればいい。建物というか区分所有権を。 ○中野幹事 先生、だから、1,000万円減価するという前提で議論されているから。 ○佐久間部会長 それは、数字は厳密にいうと何だっていいんですよ、こう言っちゃなんだけれども。減価するというのは明らかな話であって、その減価を、逆に言うと、算定できないから、買う方は大目に見積もるのではないでしょうか。そして売ろうという、売りたいというニーズがあると、それに応じざるを得ない状況に普通なるのではないでしょうか。むしろ、1,000万ってはっきり分かっていたら、それでみんな行動できていいのであって、500万かもしれない、1,000万かも分からないというときに、本当は500万で済むところ、1,000万と見積もるというのが売手、買手の力関係では、そちらへ流れるというのは、幾らでもあり得ることだと思いますけれども…… ○中野幹事 ですので、そういう前提をきちっと規律しておきましょう、当然、損害賠償承継されますよ、だから、価値はそれほど下がらないんですよということをここで規律することによって、何千万も幾らも減るというようなことにならないんではないかと私は考えます。かつ、先生おっしゃるように、住めないマンションではないんですよ、それは共用部分だから。共用部分の瑕疵があるところで、その専用部分のところには問題がなければ、それほど価値は下がらないで売却されるんではないかと私は考えます。   その部分を、先生方も、皆様も御承知だと思いますが、では幾らなのと、幾ら減らせば適正な価格なんですかということは、幾ら考えてもやはり分からないわけですので、そのようなところで、損害賠償請求権を前の方に残し、その分を減価するなどというのは、非常に難しい作業だと思います。ですので、損害額が確定するのは裁判の確定までで分からないわけですから、譲受人にきちっと承継させて、きちっと裁判で確定するまで頑張ってやっていただければ、いいんではないかなと思います。   先生の言う、最初からもう減価するでしょうというところが、気持ちとしては私も当然分かります。そういう、何かどうかな。それは、土壌汚染のときも私はよくやっていたんすけれども、土壌汚染があるとどうも安くなっちゃう。だけれども、実際的なその被害ってほとんどないんだけれども、やはり減価するよねという、そういうようなところをお考えなのかもしれませんが、殊この損害賠償請求権をどうするのかということについては、考慮すべき状況にはならないんだろうと思います。私はもちろん、減価される可能性はあるけれども、減価する価格も分からないんだから、当然承継して、次の人できちっと、損害賠償請求訴訟とか相手方との交渉とかをしていただいて、瑕疵を修補してもらうのか、損害賠償請求権になるのか、そういうようなことをその後確定させるべきだと思います。 ○佐久間部会長 私の発言は、一旦これでやめますけれども、施工業者はきちんとその後も健全に存続しているって保証があるんでしょうか。 ○中野幹事 もちろんそれはありませんが。 ○佐久間部会長 なかったら、損害賠償請求権がありますって言ったって、損害賠償請求権をきちんと見込んで、いわゆる適正価格ですか、瑕疵のない状態の価格、あるいはそれに相当する額でみんな買いましょうということに、行動としてなりますか。   加毛さんがお聞きになったのは、減価することにならないのか、減価することになっても問題はないのかということであったと思いますが、施工業者が存続している保証はないという関係だけに絞って言っても、私はこのように思うというか、これは別に私が最初に思ったわけではなくて、そのようなことも考えて、原案というのは成り立っているということを申し上げました。   ○大桐委員 交換価値が下落したことに関する損害賠償に関しましては、私の意見としましては、いわゆるその修繕に直結する損害賠償の問題ではないと思っていまして、裁判例において、平成18年3月9日福岡高裁においては、共用部分の外壁タイルに瑕疵があったような事案で、交換価値が低下しているということにおいて、売主の瑕疵担保責任に基づき損害賠償請求を認めているということで、このこと自体は私は否定はしておりませんで、私が団体的に集約させたいと思っておりますのは、共用部分の修繕に密接につながる部分、要するに、瑕疵修補に代わる損害賠償請求権につきましては、修繕積立金や管理費などの団体が管理する金員で賄うべきでありまして、回収した賠償金や、それに伴って鑑定費用ですとか調査費用ですとか、訴訟に掛かるような弁護士費用とか、そういった費用面も全てその団体において集約させるべきであって、それによってその各区分所有者は、その修繕積立金やその管理費以外に費用を支出するということもしなくてもよいことになりますし、譲渡の前後によって、各区分所有者間において、保護されるべき人が不利益を被るという不公平感も生じにくくなるという点において、その団体という観念の下で、瑕疵修補に代わる損害賠償をまとめていくということを、まず基本に置きつつ、今、加毛先生がおっしゃられたような交換価値の下落は、そことは違う話になりますので、そこは区分所有者の個別行使を認めてあげていいんではないかなと思っています。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ではほかに、中野さん、先ほどは御主張について差し当たりここまでとおっしゃいましたので、ほかの点でおっしゃることがおありでしたら、おっしゃってください。 ○中野幹事 ありがとうございます。先ほど申し上げたところと、それから、ちょっと繰り返しになるかもしれませんが、加毛先生から、瑕疵が判明して自分は抜け出したい区分所有者がディスカウントして売るしかないときに、後にデベロッパー等に対して損害賠償請求権を行使することは許されないのかというような御質問もいただいておりました。   私は、そのディスカウントして区画を譲渡した方は、前にも述べましたとおり、瑕疵を補修して、瑕疵なきマンション区画を販売すれば通常価格で販売できたというのに、あえて自らが瑕疵修補分を低減させて譲渡するという選択をされたんであれば、それはもう、低減分をほかから回収することはできないということで考えてよいのではないかと思っています。それは、元々マンション価格というものが、時期によってそれぞれ大きく左右されるということがあります。結果として、そこの時期に売ったことがかえってよかったということもあり得る、そういう状況の中で判断されることですので、その段階で、それではかわいそうだと、酷ではないかということにはならないと思っております。もっとすごい瑕疵が判明して、ほとんど売れないような価格になってしまったということもあるかもしれない中で、相続とか転居とか、そういう理由で売却をされたという方は、正にその事情の中で高かった、安かったということが判断されるだけでありまして、それを今回法律で、例えば当然承継だと、損害賠償請求権は前の方に、譲受人にそのまま移転しますよといって、それ自体が酷だということにはならないと思っています。   そして、先ほど来申し上げているとおり、その損害賠償請求権は具体的に幾らなのかということが分からないままに取引をさせるということが、今回問題だと思っていますので、当然承継をすることによって、損害賠償請求が幾らなのかという、およそ我々は考え及ばない、具体的には裁判の判決が確定するまで分からないような、損害賠償請求権を幾らかなどという議論をすることなく、当然承継させるということが実務的には非常に意義があることだと思っています。   それから、もう一つは、管理組合が適正に機能していないマンションなどについては、このような理屈で損害賠償請求権を行使するとかということは期待できないんで、それは、個々の損害賠償請求をさせることに、きちっとそういう道を残しておいた方がいいんではないかという、そういう御意見もいただいたかと思います。確かにマンションには、管理組合が存在していなかったり、実質的になかったりとか、適正に機能していなかったりするマンションが存在しております。私も東京都のマンション管理の相談者になっていて、そのようなマンションがあることは承知しております。しかし、管理が機能していないから、個々の損害賠償請求権を残しておきましょうというような考え方はやはり適切ではなくて、逆にそのマンションがきちっと管理組合や適正な管理者によって管理されるべき、そういう仕組みを設けるべきだということを考えますので、そのような、逆の立場からやはり考えていただければ、損害賠償請求を残して、個々の損害賠償請求権で皆さんで何とか保護されるようにしましょうよというのは、やはりこれは逆に絵に描いた餅になってしまって、具体的に損害賠償請求権を行使するなんてことはなかなかないわけですから、きちっとマンション管理者が管理できるような、そういう仕組みを設けるということが、私は望ましい方向性だと思います。   具体的には、そういうマンションに関する、国や自治体が相談や支援窓口などを用意するとか、管理者が正しく機能するマンションづくりに尽力できるような支援、協力など、そういう体制づくりをすべきだし、そこに力点を置いた仕組み、制度というものを作るべきだと思っています。   それでも、依然として瑕疵が発覚したのに管理組合、管理者が今なお、それでも適正に機能しないままで放置されてしまうようなマンションが存在し、区分所有者らが管理組合や管理者を適正に機能させようとする考えもなく、それでもいいや、こういう状況でもいいやというような対応が、マンション区分所有者のもし総意だということであれば、そのマンションについては、もうそれは、管理としてはうまく、そこまでということになってしまうわけですけれども、元々区分所有法が考える、区分所有法制で考える区分所有者の団体的な規制、今回の部会でも出ています、マンションの区分所有者に協力を求めるような、そういうのを義務付けすべきではないか、いや、努力義務でいいのではないか、そういうことをされておられましたけれども、それと軌を一にする、私は議論であると思います。ですので、このような場合でもやはり、損害賠償請求権は、具体的にはもう定まらないという前提で、皆さん考えていただかないといけないと思いますので、では、譲受人に譲って、そこできちっと管理のための行動を取っていただくような、そういう法律にすべきだと思います。   それから、前回の御議論の中では、賠償金が回収できないから、そもそも修補が困難になるという、その認識がそうなのかと、そうなんですかというようなことなんですけれども、私は正にそうだと思っております。その賠償金が回収できないから修補が困難になると、基本的な考え方、そのとおりだと思っています。そうでなければ、正にお金を持っている人、余剰のある人たちは、マンションを修繕してそこに住むことができるけれども、余剰がない人、賠償金できちっと回収して、修補しない、するだけの余力がない住民の場合は、そこはもうそのままになってしまうということでありまして、これこそ区分所有法の考えるような方向性で、きちっと適正に管理をして皆さんに住んでいただくというような、法制と違う法律になってしまうんではないかなということを危惧をしております。   それから、今回別段の意思表示をした場合には、今の総会の決議とか、管理者が代理するというものについては規制が及ばなくなるというような、別段の意思表示というものも設けたらどうだろうかというような御意見も出ておりますが、その別段の意思表示というものを明記することによって、かえって、その別段の意思表示を誘発するような、そういうことになってしまい、皆さんがそもそも損害賠償請求権は自分で行使するというようなことが多くなればなるほど、その瑕疵修補に向ける区分所有者の皆さんの修補に充てる金額が減るということになってしまうので、正に別段の意思表示などのような、そういう記載をすることについても、私は反対をしているところです。是非その点も、お考えいただきたいなと思っています。   それから、区分所有者の具体的な権利と、その保存行為との関係の御指摘もありました。保存行為はできなくなってしまうのかということですけれども、保存行為ができなくなることでは全くないと思います。ただし、保存行為は、正に区分所有建物の中の具体的な修補とか、そういうようなものでありますから、単独行使ができるとしても、ほかに不利益が及ばないということが前提とされているわけですので、勝手に何でもできるというわけではないと言われております。ほかと異なった外観不統一のような扉を作ったり、それからベランダの手すりも、質感や色合いの不均衡が生じるような保存行為ということは認められないと考えております。そのような状況の中で、今回御議論として保存行為というものを持ち出されるのは、私は適切な議論ではないんではないかなと思っているところです。   そして、いろいろと申し上げたいことは紙に書いてきたんですけれども、紙を読み上げるのは余り適切ではないということでしたので、一言紙に書いていないことを申し上げますが、今回の損害賠償請求権、平成14年のときにも議論されて、どうされるのかということが結局持ち越しになって、今、20年経っています。20年経って、具体的に損害賠償請求権の当然承継が、私が今考えているのは、先生方からも御指摘いただいておりますけれども、特段大きな問題点として指摘されているとは思いません。ですので、平成14年の議論から特別、今、具体的に何か進化したというものではないと思っております。したがって、我々が今ここで考えるべきは、どうすれば今現状、裁判の中でも議論になる、二つ前の私の意見というところにも書きましたが、朝日新聞でも、損害賠償請求訴訟をしても、半分しか結局は修繕の費用に充てることができないような、そういう状況になっているという、そういう状況が見られる中で、損害賠償請求をきちっと行使し、きちっと修補に充てられるような、そういう金額を集められるような、そういう法制度、規律を設けるべきだと考えております。これはやはり実務で、皆様が大変な御苦労されている中で考えていたところですので、是非我々が安くなるのではないかとか、そういうものではなくて、実際に損害賠償請求訴訟の中で、具体的な困難に直面する、そういうような今の住民らに、我々はきちっとした規律を設けて、損害賠償請求できるような形で、今回の法制度を考えていただくべきではないかと思っております。   私の意見は以上でございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   沖野さん、お願いします。その後、大桐さんにお願いします。 ○沖野委員 ありがとうございます、沖野でございます。加毛幹事、中野幹事におかれましては、この問題についてより具体的な点を明らかにしていただきまして、ありがとうございます。   中野幹事から御説明いただいたのですけれども、私には理解がやはり及ばないところがありまして、原案でよろしいのではないかと考えております。自分の中で混乱をしているところがありますので、中野幹事の御提案の内容を確認させていただきたいのですが、行使の問題と帰属の問題があると思われますけれども、帰属につきましては、専有部分の移転に伴い、共用部分についての瑕疵修補に代わる損害賠償債権だけは当然承継である。したがって、行使の方はそれに限らない一元行使の規律が原案も提案されていると思いますけれども、帰属の移転につきましてはそれらは対象外であるという、そういうお話で、まずはよろしいでしょうか。損害賠償とだけおっしゃるので、混乱してきたものですから、飽くまで瑕疵修補に代わる、したがって、分譲の際の売買契約や、あるいは、請負ということは余りないのかなという感じがしますけれども、その場合に、分譲会社に対して請求すると、そういう局面のところだけだということでよろしいかというのは、多分そういう前提だと思うのですけれども、確認させていただきたいということです。   それからもう一つ、いろいろな御指摘により、これも明らかになってきたのですけれども、居住に非常に影響が及ぶような、居住はできる、全然できないというわけではないけれども、というのは、非常に重要な瑕疵を念頭に置いておられるように思います。逆に言うと、立論がそういう場合にしか当てはまらないのではないかという感じがするのですけれども、瑕疵という場合、どのように軽微なものも含めて一切そうであるという御趣旨なのか。そうすると、立論の理由とされるところとずれが出るような感じもしたものですから確認させてください。立論からすると非常に重要な瑕疵について、瑕疵修補に代わる損害賠償債権については、当事者が左右することはできず、専用部分の譲渡により、共用部分ももちろん付いていくことになるのですけれども、それとともにこの損害賠償債権も当然承継になると、そういう御主張なのかとは思いました。   その際にですが、政策的な話と理論的な話があり、私はそういう限定された債権についてであっても、それだけが帰属についても当然承継になるということは、理論的に非常に難しいのではないかと思っておりますが、それは今まで繰り返し述べてきたので、繰り返さないことにいたしますけれども、政策的な観点で、今回の御議論の中で少し違和感を覚えましたところは、やはりマンションがしっかりと維持されて、長く住み続けられるということが非常に重要で、それが理想である、それを実現するためには、言わば万難を排して実現すべきだという考え方のように、伺ったのですけれども、私はそれが本当にそうだろうかという気もしております。   これは誰のためのマンションの維持なのかに関わります。もちろん社会的な効用ということもあります。そういう点もありますけれども、まずはこの権利者のためではないのかと。そして、今されている議論は、マンションの維持や管理という中で、もちろんマンションがしっかりと管理されて、補修すべきものは補修していくということが実現されるのがよいのですけれども、そのために各区分所有者がどれだけの犠牲を払わなければいけないのかという点が気になっております。各区分所有者の権利実現というのは、それが一定の制約を受けるべきだということは、それはもちろん区分所有ですからあるのですけれども、それが果たしてここまでの、各区分所有者の本来自由になるべきものの制約として正当化できるのかというのが気になっております。   損害賠償については、まず幾ら認められるかということもはっきりしない、そして、現実を言えば、通常は損害賠償というのは常に少ない額しか取れない、つまり、争うと、売買契約に基づく損害賠償訴訟をしていたら、弁護士料など様々に費用が掛かってくるわけで、完全な損害分は取れないという構造にはなっているわけですが、ともあれ、幾ら取れるかも分からない。さらには、額が決まっても、相手方の資力の問題があるので、分譲会社がしっかりと実現してくれるかも分からないというので、やはり非常に不確実だというのは、今まで御指摘になってきたとおりだと思います。そうしたときに、一般的には人間の行動としてはリスクアバースになるということがありますので、不確実さということからすると、通常はやはりその部分についての評価は低くなるというのが、むしろ一般的なのだろうと思います。ですから、価格に跳ね返ってくるということは十分あるだろうと思われます。   それに対しまして、本来は、マンションをしっかりと補修して住み続けられるようにするということが重要で、区分所有者としても最大限そのために協力する責務を負っているのであって、そのためにどれだけ、待てない、現在その必要がある、ほかの居住を探さなければいけなくて、しかし、これを売らないとそちらの手当てができないとか、いろいろな事情があるかと思いますけれども、そういったものは置いて、マンションの価値の最大化といいますか、補修もした上で万全の状態にすることに対して責務を尽くすべきだから、買いたたかれて売るなら待つべきであると、あるいは待たない、待てないということに伴うリスクは全面的に覚悟すべきで、それが区分所有者たる者だと、言えるのか。何かいささか本末転倒ではないかと感じます。それぞれの区分所有者の権利ということが、むしろ大事ではないのかなとは思っております。   この調整をどう図るかの中で、しかしそれは一律には言えないし、今、両面での当事者の行動の可能性が指摘されていると思いますけれども、どちらかに必ずなるということも、もちろん言えないので、事情によって様々ではあろうと思われます。そうしたときに、一方の局で決め打ちをしてしまうということで本当にいいのか。しかも、この非常に限定された局面の債権だけをそのように扱うというのが大変気になっております。ここはそうではない、当然承継というようなことにしない形の方が政策的にも望ましいのではないか、あるいは政策的に当然承継が適切であるとは言い切れないのではないかと思っておりまして、そうしたときにどちらからスタートするかということであれば、権利の性質等々に照らして、やはりそうではない形の方が原則になるのではないかと思っております。   他に付言しますと、共用部分について何か問題があって、そこがうまく十全には使えないような状態になっているときに、価格に反映しないということは、やはり基本的にはないのではないかなとは思っております。   すみません、整理されていなくて恐縮ですが、差し当たりは以上です。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   中野さん、そもそも御提案になっているのは、瑕疵修補に関してなのか、しかも原始的なというんですかね、建物が建てられたときの瑕疵の修補に限ってお話をされているのか、全面的に、その他不法行為においてもそうだし、保険金もですか、同じように考えておられるのかというのが、まず1点目の御質問でしたが。 ○中野幹事 特に限定した考えを持っているものではありません。原始的な瑕疵についてもそうですし、途中で発生する損害賠償瑕疵についても、同様の議論がなされるものと思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。ほかにも様々御質問いただいたんですが、今の沖野さんの御質問について、ほかの点でお答えいただけることがあれば、お願いいたします。 ○中野幹事 沖野先生から詳しく御議論いただいて、私がその全てを把握していなかったので、何とも言いようがないところがありますが、先生がおっしゃる部分で特に気になったのは、原則をどっちにしておくのか、それは、民法の原則のところをまずは原則にしておいた方がいいんではないのかということを、最後の方でおっしゃっておられましたが、どちらを我々としてスタンスとして置くべきかというのは、我々は区分所有法の改正であるといって、元々区分所有法は民法の原則を修正してできている、そういう法律ですから、今回の特に、共用部分に係る請求権の行使の円滑化というものについて議論すべきものも、やはりそれは区分所有法としてあるべき法制度を考えるということが我々の役割であるので、ここで民法の原則に戻った方がいいんではないかという、そのお考え自体も、私はそうではないのではないですかと、区分所有法制をどうすることによって、マンションの円滑な利用とか、今回で言うなら請求権の行使ということになるのかと考えていただくんであれば、私は住んでいる方にそういう損害賠償請求権を持ってもらった方が、よりよろしいんではないかと考えますということです。   そしてもう一つ、特に申し上げたかったところがあったんですけれども、ちょっとすみません、忘れちゃいました。ごめんなさい。 ○佐久間部会長 いや、言おうと思ったことを忘れるのはよくあります、それは。非常に共感するところです。 ○大桐委員 そもそも区分所有法の26条2項と4項が、平成14年の改正で導入された経緯というところから考えますと、各区分所有者が自由に受領してしまいますと、その後、修繕に充てられることなく自由に使われてしまうだとかという弊害があったために、共用部分の維持存続のためということを確実にするために、平成14年改正で26条2項、4項が入ったと理解しておりまして、要するに、この規定そのものは、マンションの存続に向かう共有というところがそもそも論としてあるということころですので、やはりその団体的な処理ですね、修繕積立金等から団体が管理する金員の中でやっていって、確実に債務者の方から回収した上できちんと修繕につなげていくというところが、やはりこの区分所有法そのものが目的としていたものでありまして、それがまた区分所有者の合理的な意思でもあるわけですので、この修繕積立金から修繕をするということについて、誰もその各区分所有者が反対するということは見受けられないわけなので、こうした合理的な意思を尊重しつつ、この論点を考えてみますと、やはりゴシックの別段の意思表示というところについては、現実にそぐわないのではないかと考えておりますので、私の意見としては、瑕疵修補に関わる損害賠償請求については、Bの規律というのは削除するスタイルを原則とし、その後で、管理者が機能しない区分所有建物においては、別の方策としまして、例えば株主代表訴訟にあるようなものを参考にして、区分所有者の方から管理者に対して請求権を行使するように書面で請求したにもかかわらず、一定期間内に管理者がこれを行使しないというような場合に限って、個別行使といいますか、その各区分所有者が管理者に代わって団体の権利を行使するみたいなことができるような立て付けにしておけば、管理者が全く怠慢であるというようなマンションにおいても、各区分所有者がやりようがあるということになりますので、加毛先生がおっしゃられている各区分所有者の保護にも、資することができるのではないかなと考えているところであります。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ここまでたくさん御意見を頂戴しておりまして、本日も原案に反対の立場から意見を頂戴したところです。もっとも、本日いただいた御意見も、これまでこの場で全く出ていなかったという御意見ではないと受け止めておりまして、それらの御意見も既に考慮いたしまして、本日17ページに御覧いただいている案を提示しているところです。   大変率直な物言いで、場合によっては失礼に当たるかと思いますけれども、新たな視点から、つまり、新たな視点というのは、これまで伺っていなかったなという観点、あるいは理論的な面も含めてですけれども、この原案について問題であるということをおっしゃっていただきましたならば、原案を変えることは可能であると思っております。しかし、それは、反対に言いますと、ここまで伺った限りでは、責任を持って規定の改正案を提示するという立場からいたしますと、原案とは別の案とすることは難しいという判断に、現時点で至っております。   様々な考え方があることは当然承知しておりますし、ある局面をとれば、この原案ではなかなか大変であるということがあることも承知しておりますけれども、沖野さんがおっしゃったことに含まれていますが、ある場面での一つの請求権だけ切り出して、しかもその外延をきちんとはっきりさせて、こうですという規律を組むことは、これはもう極めて困難というか、多分不可能に近いのではないかと思っております。そのようなことも含めて、繰り返しになりますが、これまで伺っていないようなお考え、あるいは理論をお示しいただけましたならば、なおもう一度検討するということは排除いたしません。けれども、そうでないということだといたしますと、様々考慮した結果、その考え方も成り立ち得るかもしれないけれども、飽くまで成り立ち得るかもしれないというだけで、それでいいとは見通せないということから、この原案を維持するという方向で考えてまいるしかないと、今のところ考えております。   以上のことを申し上げた上で、これでやめろということではありません。ただ、これまでと同じことをおっしゃっていただきましても、案を変えることは難しいということは、残念ながら申し上げざるを得ません。時間の制約もございますので、そのことをお受け止めいただいて、御発言があればなお続けていただければと存じます。いかがでしょうか。 ○中野幹事 ありがとうございます。今の御発言から推察するところ、その原案をほぼ採用するという方向でお考えと伺いました。   私は、今回16ページほどの書面を皆様に見ていただいて、今回私が発言しなかった部分についても、いろいろとその原案の問題点、それから今回私が提案する方向性が適切ではないかと申し上げている点もあるんですが、それに対する具体的な御意見とか御協議をされないままに、今のは、ここまでの議論は余り取るに足らないというような扱いをされることについては、やや残念に思います。   そういう前提の中で、今日出ていないという部分は、私が発言していない部分はまだ排除されていないということでよろしいんでしょうか。 ○佐久間部会長 発言するなとは申しませんけれども、同じことを繰り返された場合、それは既に考慮しております、ということを申し上げているところです。ですから、おっしゃりたいことがあればおっしゃってください。 ○中野幹事 分かりました。   沖野先生から前回に、瑕疵修補請求権は性質上不可分だけれども、それが金銭債権に変われば、それは正に性質上不可分とは言えないと、可分になるというような御判断、御判断というか御意見を頂戴しています。もちろん、一般的には金銭債権は分割債権だということで、民法の原則となるかと思いますが、最高裁は、預金債権について当然に分割債権にならないという判断しています。そのことについて、それはもっと子細に預金債権の性質を考えて、それは不可分なんだというような御判断だというのが最高裁の意見と御指摘をされておられますけれども、いずれにしろ、金銭債権は一定の理由によって分割債権ではない、不可分債権になるというような判断が最高裁でなされているということがあります。   このことを考えて、私は特に、その当該債権、瑕疵修補に代わる損害賠償請求とか、そういうものについては、具体的に検討すればするほど、それは不可分一体のものとして利用する、行使するということが適切な債権であると考えますので、そのこと自体からも、この法理、今回の規律の中で、当然承継をさせて不可分一体のものとして損害賠償請求を行使させる、そういうような法制度にすべきだと考えております。   このことに対して、具体的な御反論がやはり、反論というか、これに対する違う意見というものは、先ほど最高裁の預金債権についての判決は、もっと細かいところを考えて不可分と言っているのであると、政策上というような、そんな簡単な話ではなさそうだというような御指摘はいただいていますけれども、一定の理由によって金銭債権が不可分債権になるということ自体は、最高裁も認めているわけです。特に今回は、瑕疵修補に代わる損害賠償請求権であれば、それは正に一体的に行使しなければ、損害賠償請求、それから瑕疵修補の実現ができなくなるという意味で、より不可分であるという、その性質上の不可分であると考えるべき、そういうものであると考えますので、この点について、もしその原案の方がいいと考えるんであれば、それに対して、なぜそうなのかということをやはり議論をして、この部会で皆様の同意を、賛意を得るべきだと思っております。   それから、前回も沖野先生からですかね、既に集会の決議や規約で債権を一元化する、債権を一元行使するというような判断がなされた場合は、エストッペルで団体的な拘束を受けると考えられるという御指摘をされておられます。   それから、佐久間先生からも、一つは集会決議によって既に一元行使の決定がなされるだろうとされているという場合に、離脱によってその拘束を免れるのおかしかろうというような御発言もいただいておるところです。その考え方自体、私もそうだろうなとは思いますけれども、先生の決議や規約で債権を一元行使するとの判断がなされた場合とは、その決議等の後、譲渡人が区分所有権を譲渡した場合に想定されているのであれば、正に同感。ただし、譲渡人が拘束される根拠というのは、これは正に、共用部分の管理は管理組合が団体的、一元的に取り行うという区分所有法に根拠が置かれるものではないかと思っています。   そのほか、逆に先生の決議や規約で債権を一元化する、一元行使するとの判断がなされた場合とは、その決議等の前に譲渡人が区分所有権を譲渡した場合には、拘束されないということになるのかなあと。なるとすると、これはやはり、どうも結論としてはおかしくならないかと考えております。譲渡人が同決議に参加し反対の意向を示したものの、多数決で譲渡人の意見が否決された場合、譲渡人はその決議に拘束されることになるのに対して、譲渡人が決議の前に離脱した場合は拘束されない、こういう法律構成は、団体的な性質を有する区分所有法、それからマンションの考え方と相入れないものではないかと思います。私はその部分も特に、早く出ちゃえば、拘束されないで自分のやりたい放題なことができるよというような、そんなことを示唆するような法律であってはいけないと思います。当然、それは社会からの理解を得られないものだと考えますので、やはりこの行使の前後ということではなくて、決議の前後ということではなくて、その行使は譲受人が行えるように、そういう構成をしておくべきだと思っています。   それから、佐久間先生から、前回のところで、2点目の区分所有権の譲渡に伴って、債権の譲渡も推定することができないか、引き続き検討するという御発言を頂いていると思います。債権の譲渡も推定するという御発言は、私が申し上げている当然承継と同種のものなのか、それとも違うものなのか、是非お答えいただければと思っております。 ○佐久間部会長 沖野さんに対しても御質問がありましたけれども、実は必ずしもお答えいただくことが適当とは思っておりません。ただ、私に直接お聞きになったことだけはお答えいたします。今後はこれ以上検討できないのではないかということを申し上げているわけですが、立場上、私が検討すると申しませんと会議は進まないので、前回はその観点で検討すると申し上げました。私がその考えに与するとは全く申し上げておりません。もとから、「みなす」のは駄目だし、「推定する」のも駄目だという考え方ではおります。それがまずお答えです。   それから、一つ一つの御質問についてお答えいただくことを、沖野さんがなさろうとするのであれば、もちろん止めはしません。ただ、中野さんは先ほど、自分の疑問について逐一答えてもらえないと、とおっしゃいましたけれども、根幹的な部分で、ある問題についてある場面を想定すれば、中野さんのお考えのようにすることが望ましいのかもしれないということ、そういったことすらないとは誰もおっしゃっていないわけです。しかし、ほかの場面も考えた場合に、そのような規定、中野さんのおっしゃるような規定を設けることは、これは適当でないという判断に今のところ至っているということでありまして、今日も様々な異論が出てきたわけです。ほかの方がおっしゃったことを申し上げるのは、その方の意に沿わないかもしれませんので、私が申し上げたことで言いますと、そもそも原始的な瑕疵があった場合に、区分所有権を安くしか売れない現実があるのに、正当な価格というんでしょうか、それで売るべきだ、売らないと、結局譲受人のところに専ら利益が残る、そんなことにしていいのかというと、これはよくないというのが、私が意見として申し上げているところです。原案を作るに当たって、中野さんのような考えを考慮していないわけではないのでして、中野さんのおっしゃることも、繰り返しますが、ある場面、ある事例においては、その方が望ましいことがあるかもしれないこと、これは否定しておりませんけれども、その考えをほかの場面に及ぼすべき場合は及ぼし、あるいは及ぼすべきでない場合には及ばないようにするためにはものすごく苦労しなければいけない。そんな区別をすることができるかどうかも分からないというか、まず無理だろうと。そういう改正の提案はできない、難しいというか、責任を持っては提案できないということを申し上げているところです。   こんなことを言っては何かもしれませんが、この問題に関する中野さんの今先ほどの御発言、逐一疑問に答えてほしいと同じことを思われている方は、この場にもたくさんおられるでしょうし、実は私個人におきましても、ある種の問題については、私がこう考えるということに対して、事務局から特段の応答がないまま、私の考えとは違う結論が出ているところだってあるんですね。だからみんな我慢しようということではありませんが、その個々の疑問や問題を乗り越えることによって別の改正提案に至れるんだという筋道を示さないことには、自分の言った意見について全部答えてもらえないと先へは進ませないって言われますと、この会議は進まないです。   繰り返しますが、原案は、中野さんの御意見を、いちいち回答するという形ではありませんけれども、考慮して作られていまして、今日の補足説明をよくお読みいただければ、この点が受け入れられないんだということが書かれているはずです。特に私の申し上げたことでいうと、安くしか売れないはずなのにどうするんだということについて、私のような言い方はしておりませんけれども、きちんとこういう場合があって、ということを考慮しての説明になっていると思います。 ○中野幹事 ありがとうございます。今、私が何か駄々っ子みたいな感じで、全部答えてくれなければ前へ進めないと、そんなことを申し上げたつもりは全くなくて、今、先生のおっしゃっている中で、今後新しい論点がなければこのままいくような、そういうお話だったので、私は幾つかまだ論点としてこういう考えを私の方で示しているんですが、その点についてはどうでしょうかと申し上げたものであって、それも全て含めて駄目なんですということであれば、それを前提にまたこちらも考え直すと、私も考え直して、なるほどやはり原案の方が素晴らしいなというふうなことであれば、それに賛意を示すということになろうかと思いますが、現時点で、今、私が考えているのは極めて、一つ、二つのある一定の場面を考えたら、中野さんの意見もいいかもしれないけれども、ほかの局面を考えたらどうもそうではないと言われている、そのほかの局面ってどのことなのかが、私は分からないんです。   今申し上げているように、損害賠償請求権が発生しました、それに対して当然承継させましょうといって、どこに不都合が出てくるのかということについて、今言うその損害賠償請求権を譲渡人に残しておかないと、それは駄目なんですという、よくないですという、そういう御議論だけなんでしょうかね。そのほかに、私が申し上げている考え方を否定する理由というのは、民法の分割債権の原則とか、その辺が今までずっと言われてきたところなんですけれども、それを超えて、区分所有法の特別、団体的な拘束を一定程度ここでも掛けませんかという御提案に対して、駄目と言われるところは余り思わないのではないかなと思っているんですが…… ○佐久間部会長 当然承継が駄目な理由は、私は先ほど来大分時間を取って皆さんに申し上げたところでありますので、繰り返しません。駄目だと思います、当然承継説は。それから、分割債権うんぬんは、まずその分割債権という言葉を使うのはやめる方がいいと思います。前回も申し上げましたけれども、契約上の修補請求権も修補に代わる損害賠償請求権も、各契約当事者が持っている権利でありまして、預金の相続のように、一つであった債権が複数人に、共有という形で属するのか、分属するのかという局面とは全く異なっています。ですから、分割債権とするのはおかしいのではないか、というところから出発すること自体がおかしいと思います。結論が一緒になることもないとは申し上げませんが、預金債権の場合は、繰り返しますが、一つの債権であったものをばらしていいか、ばらばらにするのはよくないかが議論というか、問題とされているのに対し、ここでは、各契約当事者、各区分所有者が有しているそれぞれの請求権、これを一つにするか、互いに拘束するものとするかということを問題としているのでありまして、局面が全然違うはずです。   だから、繰り返しますが、結論が同じになることはおよそあり得ないということは、もちろん言いませんけれども、預金債権の方がこうだから、こっちもそうではないかと言われたところで、それは局面が違うということであり、まずはそこもお分かりいただかなければならないと思います。   それから、今まで出ていなかった観点をとおっしゃいますけれども、この預金債権との比較については、中野さんが前に出された参考資料にも書かれており、それについては、前回すでに沖野さんがコメントをなさったところです。だから、新しい意見とはなっていないはずだと思います。新しい意見ではないから駄目だということではありませんけれども、中野さんがおっしゃることについて、逐一という形ではお答えしていませんけれども、考慮していないかというと、それは決してそんなことはありません。大本のことで言いますと、当然承継は駄目だということは、今まで申し上げませんでしたけれども、今日冒頭ではっきりと申し上げたつもりです。その駄目だとした点にお答えいただけるならば、細かいところも見て先へ進めるかもしれませんが、そうでなければ、当然承継とおっしゃっているのは、多分、今のところ中野さんだけではないかと思うんですが、お一人だから無視するということありませんけれども、この段階になってお一人だけであり、当然承継がいいということを理由をもっておっしゃる方が他にいなければ、ちょっとそれは採れないとしか申し上げられないです。 ○中野幹事 前回、鎌野先生も最後のところで御発言されておられましたので、御賛意いただいているものと思っております。それから、大桐先生も同じような御意見を持っておられるんではないかなと思いますし、御発言いただいていない委員、幹事の先生方がどういう御意見を持っておられるのかは、分からないのではないでしょうか。 ○佐久間部会長 多数決で決めるわけではない部分もやはりあるというのは、御理解いただく必要がありまして、恐らく今、そういうふうになると思っておりませんが、委員、幹事の皆さんが、今の状況のままで理屈を整えてくださることなく、いや、当然承継説だという結論だけを述べられましても、それは採れないということを、既にはっきりと申し上げたつもりです。当然承継説には問題があるということを申し上げた点にお答えいただけたら、前へ進めるかもしれません。 ○中野幹事 分かりました、ちょっと議事録読み直します。 ○佐久間部会長 いや、大変申し訳ないんだけれども、冒頭で、だからこそ申し上げたんですが、これを採れますねって案が具体的に出てくればともかく、今日を含めてあと3回しか会議はございません。その段階に至っておりますので、また次、その次というのはなかなか難しいという状況ですから、もし御意見を出されるのであれば、やはり事前にお出しください。 ○中野幹事 分かりました。 ○沖野委員 申し訳ございません。もうこれで大体まとまったような形なのに、発言するのは適切ではないのかもしれないのですけれども、御議論の中で、帰属の問題と行使問題とは区別していただいた方がいいのではないかと思います。マンションが譲渡されたときに、一定の債権が付いていくのか、いかないのか。当事者が付いていくかを自由に決められるのか、当事者がどうあれ、必ず一体的に処分することしかないという当然承継なのか。いずれにしても、それは、権利が誰に帰属するかという問題であり、それは原案では何か書いているわけではないというか、当然承継というような規律は、そういう意味でも設けないということですが、その問題と、行使を一元化する、集約するかという問題は、やはり一応別の問題ですし、理屈も違ってきますので、そこは分けていただいた方がいいのではないかと思います。中野幹事のお考えでは、これは全て同じ方向に向くからいいのだと、そういうことで立論されているように思うのですけれども、区別をして理屈を示していただく方が理解が及びやすいように思われます。   それからもう一つ、債権の対象範囲の問題です。6の行使の一元化や集約という点については、保険金等ということで、保険金、それから損害賠償債権と不当利得の返還金ということになっております。それに対して、瑕疵修補が約定上できる可能性があって、それを損害賠償でという、それに代わる損害賠償というのは、特別な場面で事情が異なるのではないかと。元々が瑕疵修補だからということから、いろいろ論じられているところがあると思います。最終的には、いずれの債権も瑕疵修補を実現したいということでつながるのかもしれませんが、それは事実上そうしたいかもしれないけれども、当該債権がなぜそこに行くのか、不当利得の返還金は瑕疵修補との関係も分かりませんけれど、リンクが法的にも付けられていないものについて、事実上それに充てられるからということで、瑕疵修補だからという理屈が立つのかというのは難しいように思われます。立論が当てはまりうるとすると、瑕疵修補に代わる損害賠償債権なのかなと思うのですけれども、意見の分布はよくは分かりません。中野委員は非常に広く採られて、保険金等の債権全てについて、帰属も行使も両方の側面で立論をされていると思いますけれども、大桐委員の今日の御発言では非常に明確に言っていただいたと思いますけれども、むしろBの行使の一元化のところで、かつ、瑕疵修補に代わる損害賠償債権についてはと限定をされたように思います。ですので、意見が一致するかというようなところを見るときにも、帰属と行使や債権の範囲ということを、丁寧に考えていかないといけないのではないかと思っております。   時間を取って大変恐縮ですけれども、全般につきましては、部会長がおまとめになったところですけれども、問題意識はよく分かる、多分そこはもう共有されているのではないかと思います。けれども、そういう場面ばかりなのかとか、その場面を念頭に規律をしたときに、最初に加毛幹事が副作用という言葉を使われたと思いますけれども、副作用というものがないのかという、そういう御指摘は非常に重要で、例えば、そういう管理が万全ではないというようなところに、これの規律を前提とするのが、前提がないところにこの規律を及ぼすようなことになってもいいのかという問題ですとか、それから、個別にこの団体的な関係から抜けている人が、自分としては、そこは自分の方でやりたい、あるいは、そういう人がむしろ多数になるという場合もないわけではないのかもしれません、そういう場合に、およそそのような余地は一切認めないというようなことがいいのかといったことは、従来から問題になっており、今回の御発言は、そういうところは切り捨ててよいという、そういう御発言のように伺いまして、本来理想とするところでもないのだからやむを得ないというお考えのように伺ったのですが、それはやはり問題ではないかと感じています。   平成28年の最高裁決定の捉え方だとか、これが果たして関係するのか、これを持ってくるのは難しいとは思っております。また、決議の拘束について、もう既にこの区分所有者から抜けている人に、その後の決議でその決議の拘束を及ぼすというのは、決議に参加したけれども反対している人に及ぶという話とは、全く違う話ではなかろうか。そのことは結局、6のBについての態度決定について問うていることであって、これは従来から言われている話で、新しく何か言われたということではないのではないかと思っております。   あちこちにいって恐縮です。以上です。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。 ○吉政幹事 発言のない幹事、委員の態度は分からないという御指摘もありましたので、意見の分布を示すという意味にすぎませんが、発言させていただきます。   事務局の御提案は、非常によく御検討いただいた上で、難しい問題について、ある一つの解決策を見いだすものとして、私も賛成をしたいと考えております。   私が中野幹事の御意見を理解した限りでは、先ほどの沖野先生の整理で言いますと、帰属の問題について、ある種のデフォルトルールを設けるという御提案なのかと思います。このようなデフォルトルールをうまく切り出せるのか、果たして正当化できるのかというのが、先ほど来議論になっていることかと思います。   中野幹事の御提案が、任意規定を設けるというものなのだとしますと、中野幹事が考えていらっしゃるような目的というのは、それで本当に達成することができるのでしょうか。行使のレベルで強行的な規定を置くとか、そういった方向で考えないと、当事者が当然承継について別段の定めをしてしまえば、中野幹事の考えられている目的は達成できなくなってしまうのではないかという、素朴な疑問も抱いたところです。   私も、この場面についてだけ特別の任意規定を定めるのは立法としては難しいという御提案の趣旨は理解できるように思います。そのような意味で、事務局の御提案に賛成をしたいと考えております。蛇足にすぎませんが、意見の分布を示すという意味で発言させていただきました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。沖野さんがおっしゃった帰属と行使について、この原案は、帰属は、当初はもちろん元の区分所有者にありますが、後は譲渡の契約によってどう変わるかという立場です。行使に関しては、当該権利を持っている者は、修補の請求については1人でできるということはなかなかないのかもしれないけれども、修補に代わる損害賠償請求については、前回私は、修補請求と性質をともにするのではないかと申し上げましたけれども、沖野さんはそれとは違うのではないかという御意見を確かおっしゃったと思います。   それはどちらもあり得て、その行使について、各区分所有者は当然にはできないという例えば私が考えているような見解を基に、そちらへかじを切ることが可能かというと、やはりそれは、いろいろな場面を考えると難しかろうと。そうすると、各区分所有者について行使の自由、代理は一元的にしようと思ったらできるんだけれども、先駆けて行使をしましたというのであれば、それはもうそれで終わりですね、ということを前提としています。区分所有権の譲渡があった場合に、では、その行使の在り方はどうなのかというと、正に沖野さんと、吉政さんもおっしゃったのかもしれませんが、既に集会の拘束を受けた状態で区分所有関係から離れるという人は、それまでの拘束をチャラにすることは、自らが拘束の当事者になっているわけですから、それはできないけれども、後でされた決議等によって行使を拘束されることはないということです。代理関係につきましても、例えば自分で行使をしようと思っている場合に、一元的に代理を委ねることはしないというのは、やはりそれは認めるべきではないかという考えだと思います。この点の説明というか、考え方の説明を事務局にお願いします。 ○望月幹事 規約の拘束力が、元区分所有者まで及ぶかどうかというところは、明言はしておりません。そこは、解釈問題として今後残るかなとは思っております。 ○佐久間部会長 そこは解釈論として残るかもしれませんが、少なくとも規約の拘束を受けていない人が、後からされた規約で拘束されるということはないということから、このような考え方だということですね。   ほかにいかがでしょうか。 ○大桐委員 終局的場面ということであれば、ちょっと言っておかなければと思いまして発言いたします。   平成27年の最高裁判例を挙げていただいておりまして、これ実は、内容をよく読みますと、団体の執行機関たる管理者が共用部分の管理を行い、共用部分を使用させることができるという旨の集会決議や規約の定めがある場面における最高裁の判決でして、必ずしもその団体のみが請求権を行使できるという明文があるわけでもなければ、個別行使が禁止されますという明文があるわけでもないんですね。そういう中で、最高裁は、団体のみが請求権、これは不当利得の案件ですけれども、不当利得返還請求権という請求権を行使できる旨を含む規定であると解釈しているんですね。何で最高裁がこういう広めに解釈しているかというところを考えますと、やはり社会的に、そういった団体的に請求権を行使できる場面を広く採ることが、実態に即しているからこその判断だと思うんです。   ですので、その実態に即した規律を、規律というか法律の立て付けを作るべきだという心意気といいますか、その部分は理解していただきたいということと、あとは、規約や集会決議において、個別行為禁止というような趣旨のものを設けてある場合には、その後に離脱した者についても拘束が及ぶということについても、理解を示していただけるような、何かこう補足説明等をしていただければなと思いますし、また一歩進みまして、標準管理規約の67条3項というのがありまして、これ、昭和57年に公表(*正しくは平成16年1月23日公表)されているそうなんですけれども、こちらにありますのは、共用部分に生じた賠償金の請求や受領に関しては、区分所有者のために原告、被告になるというようなことについて、理事長が措置を講ずることができるという規定が、標準管理規約の中に入っていまして、こうした規約を取り入れている管理組合においては、この規約の存在をもって、団体的規制に服させると解せるというふうに、要するに、個別行為禁止と解することができるのではないかと思っておりまして、ですので、そうした部分についても是非御検討いただき、この資料に反映させることを検討していただければなと考えております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。補足説明は、案が変わらなかったらあんまり書かないことになっておりますので、これから出るかどうか分からないんだけれども、その後の一問一答とかも含めて、もちろん拘束はできないんですが、お願いとして、やはりこれだけの議論があったわけですから、出された主要な意見というんでしょうか、それについては尊重していただくというか、ある程度挙げていただいて、原案のというか、そのときは規定になっているかもしれませんが、規定の理由、趣旨を述べていただくことをお願いしておきたいと思います。   それから、規約に関して言うと、規約の下にいったん服したけれどもその後に区分所有関係から抜けた後のことは望月さんがペンディングにしているから書いていませんとおっしゃったところなので、ちょっとそこは置いておきまして、規約の下に現に服している区分所有者は、ある種自分で契約と同じように拘束されたわけですから、規約でこれと異なることをすることを封じているとか、封じようとするものでは、これは全くないとお答えして差し支えないですよね。 ○望月幹事 規約で個別行使を禁止するということを規定することはあり得ると思います。ただ、この最高裁判例について、請求権の性質によってどこまで及ぶかというのは、はっきり言っていないところで、そこを、請求権の性質を考えずに一律に決めるかというと、難しいところがあるかなと思っています。 ○佐久間部会長 その程度の答えでよろしいでしょうか。 ○大桐委員 取りあえずは、はい。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   この議論については、大変長い時間をお取りいたしまして申し訳ございませんでしたが、この部会では実質的に議論を終えたということにさせていただきます。とはいっても、中野さんから、先ほどおっしゃった追加の意見がもしあれば、それを封じるものではありません。けれども、その場合には早めに、原案の見直しの要否を検討できる時間を確保できるようにお出しいただくことにいたしまして、そういうことがなければ、要綱案の取りまとめに向けて進めてまいりたいと思います。   続きまして、部会資料の25の第1の残りを御議論いただきたいところではあるんですが、もう3時を過ぎておりますので、ここで一旦休憩を挟ませていただきます。10分ちょっとということで、3時20分再開でお願いをいたします。           (休     憩) ○佐久間部会長 時間になりましたので再開いたします。   この時間は、部会資料25の「第1 区分所有建物の管理の円滑化を図る方策」の残り、1から5と、7と8ですね。これらについて、どこでも結構ですので御意見を頂ければと存じます。どなたからでも結構です。 ○大桐委員 出席者の多数決に関して意見を述べたいと思います。日弁連としましては、AからFについて出席者の多数決を導入することについては反対をしているところです、仮に導入するとしましてもということで、定足数についての意見を述べたいと思います。結論から申し上げますと、議決権総数の3分の2の出席が必要と考えております。以下理由を述べます。   まず、区分所有法の39条が区分所有者及び議決権の過半数によることとして、過半数ということを要求した趣旨を考えてみますと、共同の利益の維持の観点から、集会決議に団体的な拘束力を生じさせるということを許容しつつ、望まない費用負担を強いられる区分所有者の不利益を考慮するために、過半数の賛成を必要としているものと思われます。また、共用部分の変更に関します17条ただし書におきましても、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができるとして緩和を認めつつも、過半数を下回ることはできないとしている点からも表れていると思われます。   また、ドイツ法におきまして、部会資料23の7ページには、出席者の過半数という単純多数決を導入しているということが挙げられていますけれども、単純にそのことのみを紹介するのはミスリードと考えております。といいますのは、ドイツ法について、鎌野先生が編集されております「マンション区分所有法制の国際比較」の8ページにおいては、次のような記載があります。ドイツ法においては、費用負担は原則として賛成した住居所有権者が負うものとしており、またその決議において、新たに設置されたり、変更された共用部分を使用できるのも、賛成して、かつ費用を負担した住居所有権者であるということで、費用負担者と使用権限を結び付ける立て付けになっております。さらに、全体を拘束するには、全共有持分の半分を超える賛成が必要となっておりまして、要するに、反対をする者を拘束するには、全体の半分以上の賛成が必要になっているわけです。ですので、ドイツ法を根拠に、出席者の多数決を我が国においても導入すべきだ、としても大丈夫だと言い切れるかどうかは、極めてこれは慎重に考えなければいけないと思っています。   また、立法事実の観点から見ましても、今回の部会資料、5ページの15行目にありますように、普通決議の投票率が83.4%で、築40年以上のマンションにおいても78.9%ということで、意外に高い投票率でございまして、こうした今出席している方々が多い中で、この出席者多数決を設けてしまうことによって、かえって参加しようとするモチベーションを下げてしまうのではないかと思いますし、立法事実の観点からも、慎重に考えなければいけないと思っています。   次に、法全体のバランスから考えてみますと、建替え決議等におきましては、総議決権及び総区分所有権者の何分の何ということで、出席者のということは導入されておりませんが、本論点のAからFにつきましては、それなりに重大な決議事項が並んでおります。これについて、定足数なしに出席者の多数決を導入することについては、バランスがかなり悪いと思っておりまして、法全体の立て付けとしての制度設計としてよいものとは思われません。また、現行法との連続性を維持するという観点からも、いきなり出席者の多数決ということについては、踏みとどまるべきだと思っております。   では、その定足数をどのくらいにするのかにつきまして考えてみますと、例えば2分の1を定足数として設けてしまった場合については、普通決議では2分の1掛ける2分の1で、4分の1で集会決議が成立してしまうということになりますし、また、特別決議4分の3以上の場合には、8分の3以上の賛成があれば成立してしまうということで、先ほどの区分所有法39条が、そもそも過半数を原則としていた趣旨にそぐわないということでありますので、結果的には、定足数としては3分の2ということを求めることが必要になってくるものと思われます。また、地方自治法の135条の懲罰規定におきましては、出席者数が議員数の3分の2以上ということで定足数を設けていることを、参考にできるのかなと思っております。   また(注2)において、規約で定足数を設けることができるので、出席者の多数決を導入してもいいのではないかというようなニュアンスのことが、提案として載っておりますけれども、全部の区分所有建物において、規約で定足数をきちんと設けるということをしてくれるとは限りませんし、設けない場合には、やはり少ない出席者で重大な事項を決められてしまうということで、同じ問題が生じてきてしまうと思います。また、管理不全のような状態においては、にっちもさっちもいかなくなるというような、前回お話ありましたけれども、そういった場面において、では具体的に何が必要なのかと言いますと、例えば、保存行為であれば1人でもできますし、また行き着くところまでいってしまったところにおいては、財産管理制度のような制度も用いることができますし、またその所在等不明区分所有者が多い場合には、(1)にありますような除外決定の仕組みを用いることもできます。また、大修繕も含めて修繕等が必要だということであれば、@の普通決議でできる場面が大部分であるという、ここの審議会においてもそういった御紹介がありましたので、おおよそのことは@で足りると思われます。   また、Cの規約につきましても、果たして少人数でやってしまっていいのかという問題もありますし、規約を変更した上で何をするのかというところの、具体的なその行き着く目的もないままに、規約だけその出席者数の少人数、その多数決で決めてしまってよいかというのはちゅうちょを覚えますし、また、Eについても、大多数の人の意思決定がないとという場面でもありますし、Fについても、そういった管理不全マンションにおいて、管理組合法人が区分所有権等を取得しなければいけない場面というのは余り考えにくいので、ニーズとしてAからFがどうしても必要な場面というのが、具体的にちょっと分からないというところもありますので、よって、(2)の出席者多数決を可能とする仕組みについては、飽くまで平時の状態における区分所有建物を前提として考えた場合に、いかなる制度の立て付けがよいかというところを考えていかなければいけないと思っておりまして、ですので、結論としましては、先ほど申し上げましたように、原則、基本的な主張としては、AからFは反対なんですけれども、設けるとしても、定足数として3分の2以上というのを設けるべきだと考えます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。ちょっとここはいろいろ御意見がおありのところだと分かっておりますので、先ほどどこでも結構ですと申し上げましたが、差し当たりこの出席者多数決のところについて御意見をいただきたいと思います。   大桐さんに1点だけ確認ですが、出席者多数決の対象とするものとして、AからFは反対ではあるが、仮に設けるとしたら定足数を定めるべきだということは、@については定足数を設けなくていいということですか。というのは、どっちかなと思いながら伺っていたところ、管理不全の場合について、大修繕は普通決議だから@で足りるのではないかとなると、そこに定足数を入れると動かんだろうと思ったので。 ○大桐委員 そうですね、そうなりますね。 ○佐久間部会長 お考えとしては、@も含めて定足数が必要だというお考えであって、後でやはり一応外すというのはありだとは思うんですが…… ○大桐委員 元々、@は特に反対はしてなかったので。 ○佐久間部会長 @は、定足数が場合によってはなくてもいいということですか。 ○大桐委員 はい。 ○佐久間部会長 分かりました。ありがとうございます。   ほかに御意見いかがでしょうか。   紺野さん、齊藤さんの順で、小林さんもですか。では、紺野さん、齊藤さん、小林さんの順にお願いします。 ○紺野委員 ありがとうございます。やはり出席者多数決についてなんですが、全管連の意見としては、前にもあれしているんですが、多数決ということに対しては、決定事項のあれですからよろしいかと思うんですけれども、殊にここの4ページのところの集会決議の成立のところなんですが、@からBについてはよいのではないかと。ただ、CからFについては、出席者多数で反対という意見と、逆に、@からFの全て出席者多数でよいという意見が存在することは事実なんです、全国的に我々の立場として。   しかし、私も含めて、CからFについて、出席者多数ということに反対する方、中でも特にCについてです。規約の改正、これは管理組合の運営のそれこそを守る点になりますので、これは反対しております。現在、管理業者が管理者に就任する第三者管理方式が大分急速に浸透してきていることは、皆さんも周知の事実かと思います。このような中、管理業者が第三者管理に就任した後、決議事項について、管理者に決定権限を与える規約改正が殊にされた場合に、出席者多数で決まってしまうのではないかという強い懸念が生じております。   例えば、現在でも管理業者が管理者に就任して、規約、それから大規模修繕工事、それから修繕費用の借入れ等の誘導方式って、我々、俗にあれなんですが、そういう権限を、幅広い権限を持たせてしまっているケースが出始めております。本改正により出席者多数が導入されると、マンションの管理を管理業者に任せてしまっている区分所有者がよく考えず、殊に委託方式での全面委託など、このような広い権限を規約改正に賛成してしまったり、管理業者がよく考えない管理者に声掛けをして、出席率をよくして、その賛成票を集めているというようなケースも出てきております。また、D番、E番、F番について、出席者多数にすることを求めるニーズは少ないのではないか、実際にはあるのかなと、ちょっと懸念しております。全管連の中の議論でも、そのような具体的な、今ニーズはちょっと出てきておりません。   他方、確かに全管連の中では、この全部を出席者数とする賛成の意見もあるんですが、これは逆に、私から見ると、こういう仲間が全管連の仲間に入ってきているから、管理運営をスムーズにということで意識が高く、適切な管理を進めている管理組合が、管理運営を円滑に行いたいということで、こういう効率的な話で持ってくという話もございます。利益相反行為を行う可能性のある管理業者が、第三者管理においても同じような出席多数決でもよいという考えはないと思いますけれども。   以上まとめますと、第三者管理方式を推進されている今現在、出席者多数を導入することは適切ではないのではないかと思います。仮に、出席者多数の導入を検討するんでも、どちらかというと、今御検討いただいている国交省のワーキンググループ等における在り方の方向を見定めた上で、この方式をいろいろ検討なさってもいかがなものかと思います。殊に、CからFの出席者多数を導入するのではないかというふうな考えで、以前には、ここは悩ましい問題だというような回答しか私はできませんでしたけれども、大体そういう方向で。 ○佐久間部会長 CからF反対ということで。 ○齊藤委員 発言の機会いただきまして、ありがとうございます。出席者多数で決めるということ、特にAからFに関しては、私の意見は反対でございます。同じことを何回も繰り返しては恐縮でございますので、今までとは違う視点から考えを申し上げます。   基本的に、@は現状も標準管理規約で規定されており現場の管理組合でも実践されておりますので、そういう形でよろしいかなと思いますが、委任状や議決権行使書を含めても少数の人で物事を決めていく、決めることを可能とする体制に基本的には反対ということで、もし出席者多数にするのであれば、最低定足数を決める、あるいは2回目の決議で採用するとする。1回目は今までとおり、2回目は出席者多数ということにしないと、いつまでも決まらないのではないかということになるので、そういった考え方があるということは、既に御提案申し上げました。   そして今日、新たに示された資料の中で、総会に平均で80%ぐらい御出席していただいているということで、今までしっかりと80%以上のの出席を目指して総会を成立させてきたという、日本のやり方は、非常に総会を大切にし、その総会で物事を決めることを重視して、そこに多くの人が参加するということを、大変重視してきたということが確認できました。だから、単純に出席者多数で決めるというのは問題ではないかというだけではなく、今回提案の中にあります、例えば、共用部分の変更とか規約の変更というのは、私の理解では、1983年の区分所有法改正までは全員合意であったと思います。全員合意になぜしてきたのかというのは、それほど共用部分の変更というのは非常に重要なもので、原則としては全員が合意すべきものだということではないでしょうか。しかしながら、全員合意は本当に難しいだろうということで、多数決ということが導入されたということを書いてあります。しかしながら、4分の3以上の多数ということで、これを規約で下げるということを、頭数の方は別として、議決権の方は下げていないということは、それほど所有権として大事なことではないかという考え方がとられてきたのではないでしょうか。今になってその方針を変更するというのは所有権の考え方を変えるということでしょうか。   もう一つ、規約の変更に関しましても、1983年の改正で全員合意から多数決が導入されました。こちらに関しては、4分の3以上の多数とし規約で決議要件は下げられないとなっています。これは、規約の変更は所有権に大きく関わるので非常に重視されている。この規約というのは、非常に所有に関わることなんだと、所有の内容を決める重要な事項だから、本来は全員合意だけれども、全員合意が難しいから、多数決でできる道を開かれたと私は理解しておりますので、出席者多数ということで物事を決めていく、少数の人間で決める、決めることを可能とするということは非常に問題あるのではないかなと思います。   私自身がこの区分所有権ということを、法学者でもないし、弁護士さんのように法の専門家でもございませんので正しく理解していないかもしれませんが、区分所有というのは所有権というのを重視しながらも、その一方では、何とか管理組合の運営を円滑にする、民主的にするというバランスを、ぎりぎりのところで取ってきたと理解しております。ですから、所有権を重視しながらも組合の運営上の必要性、その要求があれば、この所有権というものを考え直す必要があるかもしれませんが、今、全管連を代表しての御意見として、出席多数にする必要性は低いんではないかという御指摘があれば、そのぎりぎりのところで所有権を考え直すというところの必要性を、私としてはまだ認識できないところでございます。   よく外国のことを皆様おっしゃられる。確かに非常に重要になると思いますが、私は日本のマンション法の大きな特徴は、区分所有法の私法と、それから公法があることでして、私法だけで全て解決するのではなく、公法を上手にバランスを取って、政策として考えていく、こういうことができるのが日本のマンション法の素晴らしさではないかと思いますので、全て私法で解決しようとし、管理不全マンションがある、合意ができないから出席多数で総会で決議しましょうというのは、違うのかなと思っています。管理不全マンションであれば、公法に基づいてそこに勧告をし、その場合には別の決議の方法を考えるということもあるんではないかと思いますし、今、我々ずっとこの法制審議会の中で、管理不全マンション用の制度、あるいは所有者不明の場合の制度などを考えてきていますから、その制度をしっかり機能させていけば、出席多数で決めなくても物事がしっかり決まっていくのではないかと思います。   今、全管連の紺野さんの方から御発言ありましたように、第三者管理者方式が一つのスタイルとして定着していくという中で、理事会も作らないで進めていくということを考えますと、非常に総会がまた別の意味で重要になってくるという意味では、そこに多くの人の御参加を頂き、一つ一つ確実に前に進めていく必要があるかと思います。   それから、最近悩ましいこととして、余り嬉しいことではないですが、いわゆる5分の1総会、区分所有法の34条でしょうか。こういった形で少数の人間が発議し、総会をし、それを通していくみたいなことがあって、総会での発議が通りやすくなっていくということ、それは非常に少数の人間で物事を決めていく、非常に危険な状態にも陥りやすいという意味からも、区分所有法に基づいた区分所有権というのを、しっかりその権限を守りながら進めていくことが、改めて重要ではないかなということで発言させていただきました。 ○小林委員 ありがとうございます。私はここの原案に賛成をしたいと思います。マンションの管理組合って、実にいろいろな、様々な組合があると思うんですね。ですから、マンションのあらまほしき姿というのを考えて、それにふさわしい管理運営をしているところもあると思いますけれども、全く対極にあるようなところもたくさんあって、恐らく、数としては、理想的な運営しているところというのは比較的少数で、そうでないところの方が多いだろうし、なおかつ、今後ますます増えていくのではないかなと思います。   先ほど第三者管理の話、管理会社による第三者管理の話がありましたけれども、あれが要するに広がってきているというのは、やはり一つには、高齢化が進んでなかなか役員を務められないと、こういう人が増えてしまって、機能しがたい管理組合が増えている。一方で、若い人は若い人で余り管理ということに関心なくて、そういう面倒くさい仕事は誰かに任せたいというようなマンションも増えてきているんではないかなと思いまして、私が一番懸念しているのが、様々な理由はあるかもしれませんけれども、なかなか決めるべきときに決めるべきことを決められない事態というのが、これからマンションの数が増えてきて、なおかつ高経年のマンションが増えてく中で、そういうマンションが増えていきかねない状態にあると思っています。   外国の状況は私は詳しくは知りませんけれども、以前鎌野先生が御発言されたところによると、出席率、定足数というのも、ドイツだったでしょうか、一定の比率で規定していたけれども、何年かの改正で、逆に全く制限をなくしてしまったというのは、やはりドイツであっても、同じような状況がかなり出てきているということではないかなと想像をいたします。だから、それは決してもちろん望ましいことではないんですけれども、現にそういうところが出てきてしまっている、あるいは、今後ますます増えるのではないかという現実に対応するためには、そうするしかなかったということでないかなと思います。   今、それなりに定足数を確保できているという数字もお示しを頂いたわけですけれども、私も全てのマンションについて状況を知っているわけではもちろんありませんので、幾つかの話を、聞いたものを御紹介するだけなんですけれども、大変どこのマンションも苦労していると聞いています。特に共用部分の変更の4分の3と、現状ではその母数がマンションの区分所有者の数ということになっていますので、これを母数にして4分の3を集めるというのはもう大変なことで、役員の方が何度も何度も足を運んで、不在のこともあるわけですけれども、頭を下げてようやく提出してもらうと。分かりましたと言っても、なかなか提出してくれるものではないので、2度、3度と回らなければいけないというような話も耳にいたします。そういう管理組合の苦労というのを増やすような、今後増えていくような状況をこのまま維持するとすると、ますます第三者管理的なところに走る組合が増えていきそうな気もしますし、非常に今の状況というのはぎりぎりのところまできているというのが、私の率直な印象であります。印象ですけれども、そういう印象を持っておりますので、私はこの案に賛成をしたいと思っております。   第三者管理のことが心配だから、ここは何とかという御意見もありましたけれども、先ほど御意見の中でも御紹介ありましたけれども、国交省の方でも今、第三者管理の問題どうするかということは御検討されているわけですね。ちょっとスケジュールについては詳細には分かりませんけれども、できれば年度内には、ガイドラインみたいなものをまとめたいというお話も伺いますので、その中で、そのような問題については、しっかりと対応を採っていただくということが期待されると思っております。区分所有法の問題とはちょっと違うかもしれないなというのが、私の考えであります。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   鎌野さん、お手を挙げられましたか。では、お願いいたします。 ○鎌野委員 確か私の記憶違いでなければ、出席者多数決ということを、ここでかなり前から提案させていただきました。その立場から、今いろいろな御意見を伺った上で、私の方から、私も小林委員と同じように、こういった御提案というか制度というのを、やはりきちっと法制化すべきであると考えております。   それで、その理由ですけれども、これは齊藤委員、現場をよく調査などをなされてというようなことで、あえて申し上げるんですけれども、少数者で決めていいものかというような御意見がありましたけれども、現行の区分所有法においては、書面による議決権行使とか、それから代理人の選任とかというようなことも、いわゆる出席者というようなことで、そういった意味では、出席者だけで決める、少数だけで決めるということではないのではないかと。   それで、その前提としては、今回の改正でも、いわゆる基本的な議案というのは、そのままそれを投票してもいいような、イメージとしては、今回の改正では、そういう形で通知を出すというようなのが原則ですので、区分所有者としては、そういったことで書面による議決権行使とか、あるいは代理人の選任、実は、代理人の選任のときに、基本的に多くあるのは、いわゆる議長委任とか理事長委任とかということだろうと思いますけれども、それについては、標準管理規約のコメントなどで、できるだけそういうことではなくてというようなコメントもなされており、ですけれども、他方では、もう議長、あるいは理事長にお任せするという、そういう意思表示だろうと思います。ですから、必ずしも何か少数だけで決めてしまうということではなくて、日本の法律ではそういう手当がなされておりますので、そういった形で、一番懸念されるのは、やはり今後マンションが、必要な修繕あるいは共用部分の変更などがなされないまま、放置されるというのが一番大事ですので、そういった意味では、より円滑ないわゆる管理ということを進めるにおいて、そういう制度というのが必要なのかなと考えております。   そして、先ほどお話があった第三者管理者方式については別途、やはりそういった手当てをなさなければいけないし、それから、齊藤委員がおっしゃったような、5分の1発議というのも、結局は総会ということで、そうすると、総会を開くとなると、やはり先ほど申し上げたような形できちっと情報提供して、こういうものを話題にしますよというような通知が各区分所有者に行くわけですので、ですから、そういった意味で、出席者多数という制度を取り入れても、決して少数の者だけで決めるということにはならない。それから、何よりも今回、やはり区分所有者の責務というのが一方でありますので、そういった意味では、この制度をほぼ、私としては是非進めていきたいと。何よりも大事なことは、きちっと管理をすると、あるいは共用部分などの変更をするというようなことで、やはりそのためにはこういう制度を設けるべきかなと考えております。   定足数については、前回申し上げたように、究極のところ、やはり懸念されるのはもういかんともしがたくて、その定足数が足かせになって、結局何も手を打てないというような、大桐委員から別の方法もあるではないかということの発言がございましたけれども、とは言っても、定足数が足かせになって、結局は集会というのができないというのが、一番最終段階では問題だと思いますので、ちょっと長くなりましたけれども、発言をさせていただきました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○森本委員 ありがとうございます。まず、前回御提案させていただきました、集会の招集の通知に関する規律、法35条1項のただし書につきまして、伸長することができると御検討いただきましてありがとうございます。より多くの区分所有者が集会に参加する機会を得られるものと思います。また、集会への参加に当たり、十分に議案の要領を精査することにつながりますので、これは、私ども司法書士の実務感覚に沿うものであり、大変よかったと考えております。   さて、同様により多くの区分所有者が集会に参加することが望ましいという趣旨からすると、定足数を設ける、設けないのどちらがよいかというところは大変悩ましく、司法書士の間でも意見は分かれております。そこで、我々の落としどころとしまして、部会資料のとおり、区分所有法上は定足数を設けないという御提案には賛成し、その上で、改正後に発出されるであろうQ&Aなどの書籍や資料においては、定足数を設けない場合と定足数を設けた場合の長所と短所を比較して述べて、定足数を規約で設けることが望ましいとの解説をつけて、管理組合の機能の状態によって選択しやすいように、案内などを頂ければと考えております。また、定足数を設けないことによって、決議は成立しやすくなるとはいえ、それだけで管理不全が解決するというわけではないので、決議成立後、適切な管理につなげるためにも、補助金制度など、他の施策も両輪として推し進めていくことが必要であると、意見をさせていただきます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかに。 ○吉原委員 ありがとうございます。私もこの点について非常に迷っておりました。今、委員の皆様のお話を聞いて、賛成、反対、全て本当にもっともだと思って伺っておりました。結論から申しますと、私は最終的にはこの原案に賛成をしたいとは思っております。   @は多くの皆様と同じように賛成です。AからFについても方向性としては賛成いたしますが、先ほど大桐委員からのお話にありましたように、建替え決議等の決議要件とのバランスを欠いているように感じられ、ここをどう正当化できるのかという理由付けはまだ自分の中ではできておらず、ここがやや気になっているところではあります。   今回これを議論するに当たって、論点を二つに整理して分けた方がいいと、思っておりました。まず一つは、共有物の管理に関する意思決定の在り方について、基本的なルールをどう定めるかということ。それからもう一つは、区分所有建物という団体において、できるだけ多くの参加者を得て合意形成をしていくための方策は、どうあるべきかという具体策です。法律としての基本ルールの在り方と、それから実際の合意形成における具体策というものが、今までやや混在して議論されているがゆえに、それぞれがイメージする、あるいは知っているケースにばらつきが当然あるわけですから、イメージする事例に応じて導き出す結論、想定というものも多岐にわたり、なかなか結論が収れんしない部分がある、難しさがあると感じているところです。   まず、1点目の共有物の管理に関する意思決定の在り方ですけれども、そもそも今回の出席者多数という案が出てきた議論の出発点というのが、これまでの民法上、ほとんど想定されてこなかった賛否不明者が、時代の変化によって増えてきているという、これを意思決定の場においてどう位置付けるかという、現代的な課題が出てきているという背景があったのだろうと思います。民法ができた当時には、自分の財産について、共有物について、意思表示をしない人という者は想定されていなかったわけで、共有者の間で賛成している人はどのぐらいいるか、全員合意か、過半の合意かということで決めましょうという規律になっていたと。   それが、時代が変化して、相続人が遠くに住んでいる、あるいは海外からの投資物件としての不動産売買があるなど、そうした中で、現地にいない、あるいは関心が低下している所有者や区分所有者が、意思表示をしない場合にどうするのか、賛成の人、反対の人、そして賛否不明の人という三つ目のグループができたときに、これをどうカウントするのかと。今までの民法ですと、賛成の意思表示をしなければ、つまり賛否不明の人は、文字どおり賛成か反対か分からないのだけれども、はたから見ていると、その人たちは積極的な賛成ではないということで、反対票にカウントされるということになっております。そうしますと、積極的に賛成の意思を表明した人の1票が、賛否を表明しない人の1票によって打ち消されるという事態になってしまうと。なかなかこうしたケースで解決が進みづらいということが出てきていると思います。   そこで、今年の4月に施行しました改正民法においては、これまでの部会の議論でも御紹介があったところですけれども、共有者のうち賛否不明の人がいた場合には、裁判所の判断を経てその人を分母から外して、共有者の持分の過半で意思決定をできるようにしましょうという規律ができました。この流れに沿って、今回の区分所有法においても、区分所有者の団体において賛否を表明しない人がいた場合には、それは集会において自分の権利を行使しない人であるから、それは、分母から、意思決定の賛否のカウントから外していいとする、そういう流れがあると理解しております。   そのように考えると、今まで反対票にカウントされてきた賛否不明者をカウントしないということは、すなわち積極的な賛成を表明した人と積極的に反対を表明した人、それから書面で投票した人と委任状という、参加の意欲を示した人で合意形成をしていくということで、これはルールとしては妥当なものであると考えております。むしろ、一般国民からすると、なぜ議決に積極的に参加しない人の票が反対にカウントされるのかということは、民法を知らない人から見たら、むしろそちらの方が違和感があって、今回の出席者多数のような決め方の方が、国民の感覚には近いのではないかと思います。その意味では、出席者多数という方法を導入することに賛成をいたします。   ただ、さはさりながら、これまで何度も先生方から御意見が出ていますように、これを導入することによって、少数賛成者の暴走の危険性が生じる。それから、賛否を表明しない人に積極的に働き掛け、参加の要請をするということをしなくなる可能性があると。そこをどうするかというのは、これは法律で規律することではなく、むしろ規約で決めたり、あるいは行政法の分野で手当てをしたり、マンション管理士などの専門家のサポートを得るとか、様々な多岐にわたる方策の組合せによって補完し合っていく、実務上の運営の問題であると整理ができるのではないかと思っております。   例えば、認知症なども増えてくるわけです。ここの部分についても、以前も大桐先生から、認知症の方々をはなから母数から外すような方向性でいいのだろうかという御指摘もありました。これは非常に大きな社会全体として考える問題で、意思表示をしたくてもできないような、そういった状況の人の意思表示をどうサポートしていくのかということは、これ自体が一つの大きな問題で、きちんと制度を作っていかなければいけないと考えております。   総括いたしますと、まずルールの作り方としましては、出席者多数という規律を作ることに賛成します。むしろこれは国民の一般的な感覚に近いものであると考えます。そして、これによって想像されるマイナスの効果につきましては、様々な方策を組み合わせて補完をしていくことが必要であると考えます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   これも、これまでの意見分布とほぼ同じというか、個別の方の意見表明はあれかもしれませんが、今までの対立がそのままというか、考え方の違いが続いてきているということであろうと思います。   ちょっとまずスケジュールを申し上げておく必要があると思うのですが、先ほども少し申しましたとおり、基本的には、本日を含めてあと3回の会議を予定しているところです。12月21日と、1月16日です。そのように考えておりますので、この論点に関しましても、本日をもって実質終わりということではありませんが、次回をもって、基本的には方向性というか、案の統一を図りたいと考えております。   今日、お三方から、AからF全部なのか、CからFなのかということには違いがありましたけれども、一部の事項について出席者多数決導入反対であるという御意見が出ました。また、大桐さんからは、本来反対だけれども、もし導入するのであれば定足数をというお話も出ました。原案は、繰り返しになりますけれども、適当に作っているわけで当然ありませんで、これまでに頂戴したお考えを基に策定したものでありまして、今日伺ったことによりましても、出席者多数決をFまで含めて導入するという方向で、今のところは多分考えているということになります。けれども、更にもう一度、検討はいたします。   もう一つ、仮に@からF全部を出席者多数決の対象にするとした場合に、最後やはり残ってくるかなと、これは事務局内でも意識されているのは、定足数の問題であります。法制的にやはり定足数を導入しないことには無理ですとなったら、そこである意味決着は着くんですが、それはちょっとここでは分からないことでありますので、原案として何が望ましいかということを考えていかなければなりません。   原案として、定足数を現在設けておりませんのは、究極のところ、やはり管理不全のマンションというのは存在していることは紛れもない事実であると。そして、決定することが、現在の法制の下ではほぼ何らできない、そういうマンションがあることが事実である。このようなマンションについても、管理不全への対応を今回図るということが、一つのこの法改正作業の大きな目的になっておりますので、置き去りにすることはできないのではないかという観点から、原案は成り立っております。   ただここは、定足数を設けて、一定の多数を得てこそ、決定の正当性というのは保たれるのだというお考えも、もちろん理屈のあるところでありますので、次回ということになるんですが、最終的に皆さんに決断を頂く必要があると思っております。決議の正当性を保つことが重要だというのは、繰り返しますが紛れもない事実なので、その観点から定足数を法的に導入するということはあり得る。しかし、その場合には、別に誰かが非難されるということではもちろんありませんけれども、一定数の、現に存在する管理不全マンションにおいては、これからも決定できない事項が幾つか残るか、あるいはある程度残る。それはもうやむを得ないという判断を、ここで受け入れた上で、その決定をせざるを得ないかなと思っております。その御判断については、次回また考えを伺いますけれども、そこが紛れもなく一番重要なポイントだということを申し上げておきたいと思います。   それに対するある意味での妥協策というのか、その弊害緩和策というんでしょうか、に当たるものが、例えば、標準管理規約において定足数の定めを設けることは妨げないというか、それは考えられますねということが、今日、注記で初めて出てきたところだと理解していただければと存じます。   時間の関係もございますので、今ここまで伺ったこと以外に、最終的には次回ある程度決断をしなければいけないということを前提に、やはりこのことも考えておくべきだということがおありでしたら、伺っておきたいと思います。いかがでしょうか。今日のところはよろしいでしょうか。   では、この点については今日の議論をひとまず終えるということにさせていただきまして、第1の残りの部分について何か御意見おありでしたら承りたく存じます。いかがですか。   齊藤さん、そして小林さんの順にお願いします。 ○齊藤委員 ありがとうございます。第1のところの1番目のところでございます。所有者不明の方を分母からは除外するというところでございまして、この除外することを裁判所にということで、申し出る方が、本人の区分所有者以外の区分所有者、管理者、管理組合法人の請求によりとあるんですけれども、これ、私、以前に発言しました、この順番に条文がなるわけではないと思うんですが、管理者、そして管理組合法人、そして管理者も管理組合法人もないときに他の区分所有者かなと思いました。条文もこの順番にしていただきたいということと、そうしますと、このAのところで、他の区分所有者が、その後管理者や管理組合法人の理事に連絡するとあるんですけれども、実際管理者、管理組合法人がないときに連絡のしようがないので、その辺りも少し御検討いただけたらなと思いました。 ○佐久間部会長 最後の点は、そのときは通知はいらないんですよね。 ○齊藤委員 つまり、他の区分所有者にきちんと連絡してくださいねということですね。そういうことです。 ○佐久間部会長 はい、分かりました。承知しました。 ○小林委員 ありがとうございます。ちょっと2点ありまして、両方とも何度も申し上げていることではあるんですけれども、一つは、共用部分の変更決議の点であります。まず、お詫びしなければならないんですけれども、前回の部会で、3分の2に引き下げるケースとして、追加すべき場合として、省エネと発言すべきところを、勘違いしまして何かバリアフリーと言ってしまいまして、議事録にもそのように書いてあるんですけれども、それは是非省エネを追加していただければなと思っています。   確かにここに書いてあるように、民事基本法である区分所有法で、そういう特定の政策目的について規定するのはいかがなものかということが書いてありまして、それはそのとおりだと思うんですけれども、しかしながら、同じ4分の3を引き下げるケースとして、区分所有法にも書いてあるし、別の法令にも書いてあるということになると、一般の国民にとっては、やはり極めて分かりにくい規定の仕方ということになってしまうんではないかなと思います。理屈は理屈として理解できますけれども、一方で簡素で分かりやすい法令にするということも重要だと思っておりまして、区分所有法制の中で一括して規定していただくのがベターではないかなと思います。折しもCOP28なるものが開催されていまして、温暖化防止と二酸化炭素削減と、非常に危機的な現状にあるんだということが世界的に今議論されているわけですし、そういう中で日本の取組は不十分だということも言われていて、そういう中で総理も演説をされたということがあります。ですから、余り特定のそういう重大な問題に今なっているということなものですから、必要なことは何でもやると、できることは何でもやるというのが、必要な段階に至っているのではないかなと思っております。   それから2番目が、区分所有者が国外にいる場合の国内管理人の仕組み、これ16ページであります。前回にも申し上げましたけれども、これを取り上げていただいて、なおかつ、規約では義務付けができるというところまで書いていただいて、大変感謝しているんですけれども、もう一歩是非進めていただけないかというのが私の意見であります。   国外についてだけ義務付ける理屈がないと、メールで登録すれば連絡取れるではないかというようなことが、前回の資料含めて書かれているわけですけれども、やはり国外に出てしまうと、急に連絡を取りにくくなるということは事実ではないかと思うんですね、実態として。メール登録ということについても、そのアドレスが使い続けられているのかという問題もありますし、メールで連絡しても、それを見てもらえなければ何にもならないわけです。私が一番懸念するのが、外国に居住されているうちに、外国の中で住所が変わったようなときに、これ、変更の届出をしなければいけないと思うんですけれども、しっかり届け出てもらえるかというのが大きな懸念でありまして、これ、規約で書かれている場合と法律で義務付けられている場合とでは、やはり義務付けられているものにとっての重みがまるで違うだろうと、実効性にも実態的に大きな差があるだろうと思っております。   義務付けをすることによって何か副作用が出るというようなことになると、それはそれで考えなければならないんですが、私が考えるところ、これを義務付けたといって、特段副作用的なものは出てこないのではないかと思っておりますので、あとは理屈の問題ということなんですけれども、理屈が重要であることはもちろん私も認めるんですけれども、一方でこのことで苦労して困っている管理組合というのが非常に、現に多くあるというのはやはり重い事実だと思います。これをやはり放置することなく、現に困っている組合に手を差し伸べるというような改正が必要であろうと。   先ほどの第三者管理の話にもつながるんですけれども、やはりマンションの管理は何かと面倒で関わりたくないんだという方が増えているというのは事実だと思いまして、こういう広がりを少しでも食い止めるためにも、管理組合の負担というものを少しでも少なくするような改正というのは重要ではないかと、私としては思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。まず、変更決議に省エネを加えるということについては、現時点では、ここに書いてありますとおり、ちょっと性格が違うからということになっていますが、もう一度御意見は承ったので、次回に向けてまだ検討対象にはいたします。   それから、国内管理人の連絡先も同じなんですけれども、ちょっと2点、個人的には気になっていることがございまして、一つは、法律で義務付けても困ることはないではないかとおっしゃった、正にその点で、目に見えることとしては確かにないと思うんですよ、恐らく不利益効果が発動することが考えられないから。でも、不利益効果が発動することがないからこそ、法律で定めるのかという問題がやはりあるというのが1点です。もう一点は、これも個人的に気になっているんですけれども、そもそも住所や居所の届出義務というのがありませんよね、法律上、区分所有者について。その建物にいるかいないかは分かるけれども。そうであるときに、国内に住所又は居所を有するか否かということが、法律上必ずしも安定的に把握されることにはなっていないという前提のときに、国内に住所があるかないかで法律上区別するというのも、いかがなものかなということを思っています。効果としては、規約で定めた場合よりも、法律上このようなことが、おっしゃるような義務があるということの方が、訴求力があるというんですか、皆さん従いましょうという効果が強い、そういう意味があるのは理解しておりますけれども、例えば今申し上げた二つの点なども考慮して、規約で定めることで足りないかということを、最終的になりますけれども、もう一度検討させていただくと。 ○小林委員 ちょっと最初の点はよく理解できなかったということと、それから2番目の点については、であれば、区分所有法になるのかマンション管理法になるのか分かりませんけれども、やはり区分所有者としての所在を届け出なければいけないという規定が、逆に必要になるということになりませんでしょうかね。現に、所在が分からなくて困っているというような話というのは、いろいろあるわけですね。だからこそ、特に国外の場合が問題だということで、国内管理者の問題が出てきているんですけれども、同じ問題がないかというと、必ずしもそうでもないわけですね。もちろん相続が発生して、相続人の居場所が分かんないとかいう問題もありますので、そこまで届出をするというのはなかなか難しい、現実にはそんなことはあり得ないと思いますけれども。 ○佐久間部会長 分かりました。ありがとうございます。   ほかの点いかがでしょうか。よろしいですか。   では、第1については以上で終えさせていただきます。続きまして、本当はここで休憩を取る方がいいのかもしれませんが、時間が大分差し迫ってきておりますので、申し訳ありませんが続けさせていただくことにいたしまして、部会資料の第2に進みます。   「第2 区分所有建物再生の円滑化を図る方策」について御意見を頂くことにいたしますけれども、その前に、まず29ページのゴシックの(2)ですね。これまで一棟リノベーション工事として御議論いただいておりました建物の更新について、事務局から説明を頂きます。お願いいたします。 ○山根関係官 一棟リノベーション工事建物更新決議について御説明申し上げます。   老朽化した区分所有建物再生する工事の施工方法としまして、区分所有建物の構造によっては、既存構造躯体を維持しながら、一棟全体をスケルトン状態とするなどして、共用部分と全ての専有部分を変更することによって、実質的に建て替えと同様の効果を得る一棟リノベーション工事が可能となっているとされているところでございます。これについては、以前から御説明申し上げているところでございます。このような、いわゆる一棟リノベーション工事については、区分所有建物について、現行法の下でこれを実施するためには、共用部分の変更決議に加えて、専有部分の工事に関する区分所有者全員の同意を得なければならないとされているところです。法制審議会では、このような工事類型について、建替え決議等と同様の決議要件の下で決議できるようにしてはどうかといったところで、皆様に調査、審議いただいているところでございます。   前回の部会におきまして、一棟リノベーション決議については、どのような工事が対象となるのかについて改めて整理することとしておりました。一棟リノベーション工事の内容については、先ほど申し上げたとおりであることを前提としまして、まずは、共用部分と全ての専有部分を変更する工事とは、実務上どのようなものが想定されるのかというところを整理した上で、どのようなものが一棟リノベーション決議で解決されるのか、委員の先生方にお示したいと考えているところでございます。   この点について、国土交通省より補足資料の御説明をお願いしたいと存じます。よろしくお願いします。 ○佐久間部会長 では、下村さん、お願いいたします。 ○下村幹事 国土交通省でございます。それでは、いわゆる一棟リノベーション工事として、どういったものが想定されるかということでございますけれども、国交省におきましても業界団体等へヒアリング等をしておりまして、そういったことを踏まえまして、共有部分と全ての専有部分を変更する工事事例について整理を行っておりますので、こちらを御説明させていただきたいと思います。   お手元の参考資料13を御確認いただければと思います。   まず、@でございますけれども、こちらの共有部分の配管と全ての専有部分の配管を一体的に更新する工事でございます。近年、事例が増えてきているケースでございます。こちらにつきましては、今回の区分所有法の見直しで創設が検討されております、いわゆる配管の全面更新、専有部分の使用等を伴う共用部分の管理に関する決議に基づきまして、実施できることが明確化されると認識をしております。   続きまして、Aでございます。こちらの耐震改修を含むケースでございます。旧耐震基準のマンションがおよそ100万戸程度存在するということを踏まえますと、今後もこのような耐震改修を行っていくということは必要性が高いと考えておりますけれども、その際、耐震改修と併せまして、配管の全面更新や外装、エントランスなどの共用部分の更新を行うケースもあると考えられます。この場合でございますけれども、こちらのそれぞれの工事を切り分けて考えれば、耐震改修に関する決議、配管の全面更新等に関する決議、そのほかの共有部分の変更に関する決議を行うこととなりますので、全体として普通決議、あるいは特別決議によりまして実施することになると考えられます。   最後に、Bについてでございます。この類型が、いわゆる一棟リノベーション工事を内容とする、建物更新決議で解決が図られる領域ではないかと考えております。このBの工事類型では、建替えと実質的に同等の効果を目指すような工事が想定されておりまして、国土交通省といたしましても、こういった工事はそのマンションの長寿命化を図る上で、非常に重要であると認識をしております。建替えと実質的に同等の効果を得るためには、建物全体につきまして耐震性の確保や機能性の向上に加えまして、壁、柱、床といった構造躯体の耐久性の維持、回復を図ることが必要と考えられます。仮にその一部の住戸部分につきまして、構造躯体の耐久性の維持、回復を図る工事が行われない場合、その住戸部分における構造躯体の劣化を起因といたしまして、雨水の侵入などによりまして、建物全体の構造躯体に影響を及ぼす可能性もございます。このため、このBの工事類型では、全ての内外装等を除却いたしまして、構造躯体のみを残した状態、いわゆるスケルトン状態とした上で、構造躯体の劣化状況等を確認いたしまして、状況に応じて、構造躯体の維持回復工事を行った上で、全ての専有部分について配管の更新や、内装、床材等の更新、場合によっては間取り変更を行うということが想定されております。また、これらと併せまして、耐震改修による耐震性の確保や設備更新による機能性の向上、外装やエントランス等の共用部分の工事なども行うことも想定されます。   このBの工事類型につきましては、現行制度では、専有部分の工事に関しまして、区分所有者全員の同意を得なければ実現できませんけれども、こういったケースが、今回新たに創設される一棟リノベーション工場を内容とする建物更新決議によりまして、解決が図られていくものと考えております。   国土交通省からは以上でございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   今御説明いただいた、従来言っているところの一棟リノベーションに限らず、この第2のところで御意見がおありでしたら承りたく存じます。いかがでしょうか。   紺野さん、お願いいたします。その後、鎌野さんお願いします。 ○紺野委員 ありがとうございます。ちょっと確認でございまして、この新しい一棟リノベーション方式を検討することはよろしいんですけれども、この1棟という場合、管理規約上というか、区分所有法ではあれしていないんですけれども、例えば3棟あって、2階がペデストリアンでつながっているといった場合、A棟、B棟、C棟があった場合、それを全部一緒にという考え方でいくのか、それとも各棟単位、物理的な各棟単位でも、それぞれA、B、Cであれば、A、B、Cというような方で1棟という考え方でもよろしいのかなんですけれども、一棟リノベーションというのは、ここで言っている意図。確認でございます。 ○望月幹事 対象がどの範囲かは、正にその建物がどう捉えられているかで、つながっていることによって、二つ並んでいる建物が全体で1棟と捉えられているのであれば、これは全体で区分所有者の集会等が開かれることになりますので、その中で建替えや一棟リノベーション、これを決議していただくということになります。   その際に、一棟リノベーションを半分だけできるかというと、これは想定しておりません。全ての専有部分に手をつけることを予定しておりますので、二つの棟が建っていて、それがつながっていて、それが全体で1棟、一つの建物ということであれば、両方全部に手をつけるということを考えております。 ○紺野委員 そうしますと、例えばの話ですが、A、B、Cが2階でペデストリアンでつながっていると。しかし、完成年度が違って、最終的にペデストリアンでつながったという場合、経年変化っていいますけれども、ある程度経っていて、A、B、Cでそれぞれ、例えば5年ずつ変わっていったと、後から、築年ですね。Aだけは手を付けたいけれども、B、Cは手をつけないという場合も出てくるかと思うんですけれども、実際には、リノベーションをする場合にそういうケースも出てくるかと思うんですが、そこら辺の考え方はどのように捉えているのかです。 ○佐久間部会長 1棟かどうかでとにかく決まるという以上には、お答えは差し上げられないというか、お考えになっているのと違って、全体、全くもっての1棟であっても、例えば、なぜか西半分はやばいんだ、東半分はどうってことないんだということが、耐震性かどうかともかくとしてあり得る話でありまして、それと同じことだとしか、ちょっと言えません。 ○紺野委員 入口論で、一棟リノベーションという、建物の更新という形ですけれども、そういう場合どう取り扱っていったらいい。 ○佐久間部会長 例えば建替えは1棟単位でするわけですよね。その建替えを、紺野さんがおっしゃっている例で三つ、A、B、Cとあって、それで1棟の建物だという場合、建替えはA、B、C一括でしかできない。A棟だけを建て替えることはできないというのであれば、一棟リノベーションも同じだということです。おっしゃった例でいうと、Aだけ建て替えたいのにというのが、今のところ実現できないわけですね、A、B、Cで1棟だったら。それは今後も変わらないと。今回の改正は、建替えも含めてそこには手を付けていない。   建物の一部だけ建て替えるというのは、見た目では三つあるとしても、法律上1棟の建物なのであれば、やむを得ないということではないでしょうか。 ○鎌野委員 今の御質問については、今、佐久間先生が述べられたとおりだと思います。ですけれども、多分今後も、建替えのときにもそういう議論がいまだにありましたし、それから杭未達の事件でもあったんですが、結局は今、佐久間先生が言われたような形で解決するほかないのかなと考えております。   今、一棟リノベーションのお話を伺いましたので、今回、国土交通省さんの方からこういうペーパーを示していただきましたので、大変参考になりました。非常によく分かりました。   それで、私の方から確認というか、まずはこういうことでいいのですねということで、そうすると、建替えと同じように考えるということで、現行の御提案ですと、基本的には5分の4があるけれども、客観的な事由があるような場合には4分の3と、そして客観的な事由は、ちょうど22ページの@からDまでのような事由があれば4分の3でいけるということで、そういうことでよろしいですねという確認です。そして、その後ですけれども、今回、国土交通省さんに、ちょうどAのところで、耐震改修促進法25条によると、耐震改修については、こういう制度によって普通決議で行えると。そうすると、恐らくこの制度が、一棟リノベーションの制度ができたときに、耐震改修との関係がどうなるのかと。耐震改修だけをするというのではなくて、一棟リノベーションというのは、そのほかの事項も行うことができる。そして何よりも、建物を専有部分の更新というか、その建物自体の専有部分も大きく変えるというのが前提ですので、そうすると、耐震改修促進法の普通決議と、それから一棟リノベーションのときのどういうふうにそれが連携するのかなというようなことで、これは今後の課題でしょうけれども、恐らくこういう一棟リノベーションという制度が採用されるとしたら、やはりそちらの耐震改修促進法25条との関係も、必要であれば法的な何か調整をする必要があるし、あるいは、実際の説明において、その両者の関係というのはこういうものですよということが必要になってくるのかなと、私も何かこうすれば解決するということを直ちに発言することはできませんけれども、必要であればそういう御検討もお願いをしたいと思います。その点が第1点でございます。   それからもう一点、これも基本的な確認ですけれども、Dのような高齢者、障害者、そういう場合もこの一棟リノベーションの対象になるということですけれども、これは、飽くまでも建物についての一棟リノベーションですので、考えられるのはエレベーター増設とか何とかというようなことで、そういうことも共用部分の変更として行おうという、そういうことで、専ら敷地に関する高齢者とか障害者への配慮というのは含まれないということだろうと思いますけれども、そういう理解でよろしいんですねということで、この最後の点は確認でございます。 ○佐久間部会長 まず、Dの方から、前者の方の特定行政庁によるうんぬんかんぬんについては、どうかな。 ○望月幹事 今、三つ御質問いただいたと思いますので、答えさせていただきますと、まず、一棟リノベーションの決議要件のところについては御指摘のとおりで、建替え決議の要件と同様のものを考えております。ですので、基本的には5分の4にし、一定の事由がある場合について引下げ、4分の3にすると、一定の事由については、建替え要件と同じものを考えております。同様に、手続関係についても、建替えのときと同様の手続を考えております。   それから、耐震改修促進法との関係につきましては、耐震改修促進法の中でできるものについては、従前のとおりこちらで対応をしていただくことで問題ないと思っておりまして、それで対応できない範囲について一棟リノベーションということで、どちらを選択していただくかというのは、やる方が自由に選択していただくところかと思っていますが、今回改正をすることになって、調整等が必要になれば、当然連携させていただいて調整を図っていくということになろうかと思っております。   最後のバリアフリー基準のところについてですが、これは、建物についてそういう事由があるかどうかということで考えておりますので、敷地部分については範囲外ということになります。 ○佐久間部会長 鎌野さん、よろしいですか。 ○鎌野委員 どうもありがとうございました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがですか。 ○下村幹事 少しだけ補足をさせていただきます。   耐震改修につきまして御質問を頂きました。一般的に耐震改修を行う場合には、躯体にブレース等を設置するということがあるかと思いますけれども、全ての専有部分に手を加えるということは、余り想定はされておりませんでして、一部の専有部分に手を加えるということはあろうかと思います。ですので、そういった場合は、その専有部分に対して個々に同意を得た上で、この耐震改修促進法に基づいて、認定を受ければ普通決議でできるようになるということでございます。   一棟リノベーションについては、基本的に全ての専有部分に手を加えて、スケルトン状態にした上で改修を行っていただくということを想定しておりますので、もちろん一棟リノベーションの中で耐震改修を行っていただくということは想定されますけれども、一般的な耐震改修と一棟リノベーションとは、少し性格が異なるものではないかと認識をしております。 ○鎌野委員 分かりました。どうもありがとうございました。 ○佐久間部会長 齊藤さん、その後、能登さんにお願いいたします。 ○齊藤委員 ありがとうございます。一棟リノベーションのところでございますが、まず1点目の前に、深い意味はないんですが、一棟リノベーションという言葉はなくなっていくということですかね。確認です。一瞬、わくわくするような言葉だったんですけれども、なくなってしまったとなると、寂しい気がします。だからといって、戻せと、強く主張はいたしません。   まず1点目です。建物を丸々スケルトンにするようなものをイメージされているということで、例えば、耐震性を高めるため建物の重量を軽くするために、5階だけ取ってしまうような、実際はまだ分譲マンションではないですけれども、賃貸住宅系ではこういうこともありますので、いわゆる減築みたいなものは余り想定されていないんでしょうか。そういう要求もあるのかなと思ったので、減築みたいなものは入ってこないのでしょうかということが1点目の質問です。   2点目は、ここで詳細に議論する必要はないと思いますが、今後これを使っていくとなると、「建築の構造上、主要な部分」ってどこなんだというようなことになってくるかと思います。建築基準法上の定義とか、考え方や定義はいろいろあると思いますので、これはここで議論することではなく、そういったことも考えておく必要があるのかなと思いました。   3点目は、「維持又は回復」とありますが、何か向上するようなものが入ってこないんでしょうか。維持又は回復だけではなく、せっかくですから向上させていきたいというときに、向上が入っては駄目なんでしょうかということです。また、維持又は回復という言葉であれば、もう少し分かりやすくするために、建替え決議の62条の5項のところにある、「建物が通常有すべき効用の確保を含む」というような言葉があった方が、より運用上適切かなと思いました。これも強く主張するわけではございませんので、是非御検討ください。   4点目は、これは確認ですが、この一棟リノベーションに当たるもの、これだけの工事をしようと思うと、事業法的なものが要るのかなという気もしておりますので、これは国土交通省さんへのお願いでございますが、是非この決議をして実際動かしていくという意味では、公法の方での事業のサポートもお願いしたいと思います。   ということで、質問は、例えば減築はどうなんでしょうかとか、向上はどうでしょうかという部分に、可能であれば御回答いただけますようでしたらお願いいたします。 ○望月幹事 まず、減築の点ですけれども、その減築が当たるかどうかという問題よりは、まず前提としては、構造上主要な部分の効用の維持又は回復のための共有部分の変更、かつ、全ての専有部分の形状の変更等に当たるかどうかというところだと思います。これに当たった上で、工事の内容として一部、例えば一番上の階を取りますと、こういうこと自体はあり得る話だと思います。ただ、そうなると、一部の方はお部屋がなくなってしまうわけですので、当然そういう方が了承しているということは前提になってくると思います。 ○齊藤委員 分かりました。ありがとうございます。そうすると、この二つの要件をクリアするということが大事であって、この要件がクリアすると、減築も入ってくると。それから、中間試案のときに、ちょっとイメージとしては、二戸一とか三戸二みたいな、ちょっと間取りの変更ではなく、住戸面積の変更も入ってくるようなイメージがあったんですが、今回そういうものもイメージしてよろしいでしょうか。 ○望月幹事 はい。これも、その工事の結果、どういう面積変更が起きるかどうかというところまでは、特に問うているものではありませんので、この要件に当たる工事であれば、その工事の結果できる建物について縛りを掛けているわけではありません。ここは、建替えと同じで、建替えも同じものをそのまま建てなさいということではないと思いますので、出来上がった建物、これが違うものになると駄目とか、そういうことではないということになります。 ○齊藤委員 ありがとうございます。多分、おっしゃるように、耐震性を向上させるとか、住戸面積を広くしたいという、せっかくだから要求があるということを是非クリアして、一棟リノベーション、新しい名前のものに是非していただけたらと思って質問いたしました。ありがとうございます。 ○望月幹事 あと、齊藤先生から、向上が含まれないのかというところで御質問いただいていました。特に向上を除いているわけではなくて、この主要な構造部分の効用の維持又は回復ということで、これで躯体部分だけを残したスケルトン状態にするということを表現しようとしていたものですので、向上する場合は駄目だということを言っているわけではないです。 ○齊藤委員 ありがとうございます。 ○佐久間部会長 能登さん、お願いいたします。 ○能登委員 ありがとうございます。2の1の(1)建替え決議の多数決要件の緩和のところで意見させていただきます。   前回発言させていただいたところに関して、単純引下げではなく客観的事由を要件とすることについて、改めて部会資料でお考えを示していただきまして、ありがとうございました。客観的事由については、今回部会資料の、24ページの30行目辺りで、省令や告示、ガイドラインにおいて、具体的な基準を示す予定と記載いただいており、正にその点をお願いしたいと思います。今回は、その前提で現場において生じる可能性のある客観的事由の有無について争いを避けるための意見を申し上げたいと思います。   組合によっては、修繕積立金の不足などが理由で、十分な調査費用を用意できないケースがあると想定しております。建替え決議の可決の蓋然性が不明な検討の段階で、各種調査に積極的に費用を投じるかどうか、管理組合組合員の皆様も御判断に悩まれることが想定されます。費用を投じてでもこの調査に積極的に取り組む流れにしていくためには、円滑化法に定める「要除却認定を取得するまで」について、明文することが必要と考えます。認定取得によって調査結果の信頼度が高まり、客観的事由の有無を巡っての争いがなくなることで、建て替えるべき建物、再生すべき建物が円滑に進むのではないかと考えております。   なお、何を客観的事由とすべきかについていくつかの意見がありましたが、我々としては原案の五つの案に賛成いたします。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○寒竹委員 ありがとうございます。私、経団連様の方からの推薦で拝命しております関係がありまして、経団連の方からの御意見、連携いただきましたので、今更なんですけれども、この区分所有建物建替え決議の要件緩和については、原案は条件付きということになっておりますけれども、元々その建替えの円滑、老朽化マンションの建替えの推進ということが目的だと、今回の大勢だと思うんですけれども、その点に関しましては、やはり今現状維持で、客観的条件によって引き下げるということですと、なかなかやはり理解が進まない可能性があるのではないかというところで、経団連様の方では、この原案ですと、老朽化するマンション建替えが進まない懸念があると考え、今後も提言を続ける必要があるという御見解のようでございます。   私自身も、今回こういった審議会を設けて、長期間にわたって議論している中で、ここのところが、客観的条件があった場合にだけ引き下げるということになってしまったということに関しては、私個人としても、老朽化マンションの建替えという元々の目的からすると、若干後退になるのかなと思っておりまして、今、原案はこうなんですけれども、懸念の方を表明させていただきたいと思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   今の寒竹さんの御意見は、そのようなお考えがあることは承知しております。多分問題は、老朽化というのが極めて抽象的、あるいは主観的なものでありまして、老朽化しているマンションは建て替えた方がいいよねというときに、なかなかやはり、それだけではコンセンサスを得難い、引下げのコンセンサスを得難いということがあります。では、老朽化を全部何らかの要件でまとめられるのかどうかというと、そこは問題が残るのかもしれないけれども、社会的コンセンサスを得られるものとして、こういうマンションはつまり危険であるとか、余りに障害者にとって不便であるというか、使用に耐えないという状況になっているものについては、建替えの一層の促進が具体的に図られるべきものではないかということで、@からDが設けられております。私が申すまでもなく、寒竹さんも十分御承知のことだとは思いますけれども、そのことを確認させていただいて、老朽化と呼ばれるところの、人によっては考える全部ではないけれども、その中に含まれるであろう、特に深刻なものについては4分の3まで引き下げるということで、この部会の案として出したいなということがこの案だということをちょっと説明だけさせていただきます。 ○寒竹委員 ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。能登さん、どうぞ。 ○能登委員 ありがとうございます。建替え決議がされた場合の賃貸借の終了のところですが、「賃貸借の終了請求」Dにおいて、「補償金の提供を受けるまでは」という文言に修正いただき、ありがとうございました。この修正により、賃貸人が、賃借人に対して直接的に補償金の支払が行えなかった場合でも、適正な金額を供託するなどにより、履行に着手したとみなされる、ということが明確になったと理解しております。もちろん、その前段の交渉上での解決が望まれるべきですが、そのためにも、改めて適正な補償金額の算定ルールを定めていただきたいということを要望いたします。区分所有法の中で定めるものではないかもしれませんが、改正法の施行に合わせてルールを定めていただきたいという要望になります。補償金額については、部会資料で「通常生ずる損失の補償金」を支払わなければいけないとされておりますし、同資料の注記においても、用対連の通損補償と同水準とすることを想定しているが、公共用地の取得の場合との異同を踏まえた上で算定されることを想定している、と記載されております。私どもといたしましても、この記載のとおり、建替え事業の性質を加味したルールが必要と考えております。収用や市街地再開発の現場での借家人等への補償と、建替え事業の現場での借家人への補償は、支払元や原資が異なります。収用や再開発は、事業者が公的な補助金などを受けながら、借家人に対して用対連基準に基づいて算出された金額を支払うのに対し、建替えは、賃貸人である区分所有者自身が借家人への補償を行うという違いがあり、区分所有者の負担に留意する必要があると考えております。   また、区分所有者には、転出する方と再建建物の住戸を取得する方がいらっしゃるわけですが、いずれの場合も、区分所有者の資産評価は、一般的に再建建物の資産評価額から新築等の事業に掛かる費用を差し引いた価格を基本として算定されるため、住宅マーケットや建築費等の動向に左右されます。例えば、住宅マーケットが低調で、かつ、建築費等がかさむ場合には、区分所有者が受ける資産評価は低くならざるを得ません。このような場合でも、そういった状況に関係なく補償金額が算定されるルールになると、賃貸人が賃借人への補償費を支払えないという事態になりかねません。用対連基準そのままの準用となってしまうと、賃借人が単なる居住の用ではなく営業利用している場合に、営業補償が家賃差額補償などに比して極めて多額になることも想定されます。今申し上げた建替え事業の特質を考慮した上で、用対連基準をベースとしながらも、この記載のとおり公共用地の取得の場合との異同を踏まえたルールとすることをお願いしたいと考えております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。2点目の方は、前回小林さんからも御指摘を頂いたところで、それと同じお答えになるんですけれども、条文上、何かこれが書かれるわけではないので、今後は解釈に委ねるということになったときに、いろいろな考え方があり得る。その中で、用対連基準そのままでいいという考え、それでは適当でないという考え方があるということは、議事録にも残りますし、今後事務局から別に、例えば仮に一問一答が出されるときに明記されるかどうかはともかくとして、何らかの発信があるかもしれませんし、いろいろな方がいろいろな場でおっしゃるということになろうと思います。能登さんにおかれましても、機会を捉えてそういう発信をしていただければと思います。   1点目の供託はできるけれども、相当だと考える金額を積んだらいいということにはならないんじゃないかと思いますが。 ○望月幹事 金額については、客観的に相当である金額を供託すれば、同時履行を果たしたことになると思います。賃貸人が主観的に相当だと思う金額ということではなくて、客観的に適正な金額ということであれば、そのとおりかと思います。 ○能登委員 もちろん、その理解で発言させていただきました。ありがとうございます。 ○佐久間部会長 いかがでしょうか、ほかに。 ○村上委員 ありがとうございます。第2の1の先ほどの建替え決議の要件の緩和のところでございます。結論から申し上げますと、本案の御提案に賛同いたしております。以前から申し上げておりますけれども、少数反対者の利益保護にも配慮する観点から、現行の5分の4を維持した上で、@からDなどの安全性に問題があるといった客観的な事由がある場合に限って、4分の3に引き下げることが妥当であると考えております。   また、次回に出席が叶わないかもしれないので、先ほど議論があった第1のところでもよろしいでしょうか。   定足数の部分でございまして、大変難しい議論だと思っておりますが、やはり多くの区分所有者の参加を得ながら、管理していくことの重要性はあると思っております。そのため、定足数を定めることはやはり望ましいと思います。それを法律で義務付けることが妥当なのかどうかは、ちょっと迷うところでございますが、望ましさということを、もう少し積極的に書くことはできないかと思いました。6ページ、7ページの記載は、「規約で定めてもいいけれどもね」というぐらいの書きぶりになっていると思います。そうではなくてやはり、「規約で定めた方が望ましい」ということを、標準管理規約の改正の部分も含めてもう少し前に出していただくことが、必要ではないかと思っております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。その発信の仕方は考えることにいたします。   ほかにいかがでしょうか。第2についてはよろしいでしょうか。   では、先に進めることにさせていただきます。   続きましては、部会資料25の「第3 団地の管理・再生の円滑化を図る方策」について、これもどこでも結構です。 ○小林委員 ありがとうございます。団地の一括建替えの関係なんですけれども、各棟要件の扱いにつきまして、変更していただきましてありがとうございました。これで大分障害が取り除かれる部分が多いのではないかなと思っております。   それとは別に、ちょっと1点気になることが出てきまして、改めて気が付いたんですけれども、この70条の条文の出だしのところで、「団地内建物の全部が専有部分のある建物であり」と表現がなされておりまして、私の知る限り、団地内にいくつか棟があって、それとは別に、独立した集会所だけの機能を持つ集会所棟というのが、団地共用部分である建物として存在するようなケースがあると思うんですね。それは幾つもあると承知しているんですけれども、この団地内建物の全部が専有部分のある建物でありという表現だと、そういうケースが除かれてしまわないかなあというのがちょっと懸念として出てきまして、何かそういう扱いはしていないんだというような話もあって問題はない、現行の条文でも問題ないのかもしれないんですけれども、対象から外れてしまうように読めるようにも思いますので、何らかの手当てを、条文を多少予定直しするとか、あるいは解釈を明確にするとか、そういうことが必要なのかなという気もいたしております。   元々この70条の要件がこういうふうになっているのは、恐らく団地内の敷地を共有する建物の一部に、例えば戸建てのような単独の所有者によるものがある場合を除外する趣旨だと思いますので、集会所棟みたいなものがあるのは、排除する理由が多分ないと思いますので、そういう意味では問題ないのではないかなと思うんですけれども、ちょっとそこは御検討いただければなと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。集会所として想定されているのは、誰か個人の所有ということではなくて、共用部分たる集会所ということですね。 ○小林委員 そういうことですね、はい。 ○佐久間部会長 それは、この文言を厳密に読めば違うことになるのかもしれませんけれども、そのような建物があったからといって、この規定の適用がないということはないですね。 ○望月幹事 おっしゃるとおり70条で書かれている文言と同一でして、ここで言われている団地内建物というもののほかに、集会場とかの附属施設である建物という、別の表現が使われているところあります。団地内建物にはこれが含まれていない別の概念として捉えられていると思いますので、そういう意味では使い分けができているというところだと思われます。 ○小林委員 ありがとうございました。 ○佐久間部会長 文言の見直しの必要があるのではないかという投げ掛けは、受け止めたということにさせていただきます、ありがとうございます。 ○鎌野委員 今の点ですけれども、私の理解は、今おっしゃったことはやはり悩ましいところではありますけれども、65条のところで、数棟の建物があって、団地内の土地又は附属施設、ですから、そういう集会場などは、言わば専有部分のある建物の附属施設と考えればいいのではないかというようなことで、結論としては、もうこのままの条文の立て付けでいいのかなと、私は考えておりますけれども、参考のために。 ○佐久間部会長 ありがとうございました。   ほかに、第3の部分でいかがでしょうか。 ○大桐委員 70条の各棟要件についてなんですけれども、反対がない限りという言い回しに変えてしまわれて、この部分に関して、建物と土地が別個の不動産であり、所有者は別々であるという、我が国の法制度から考えたときに、憲法訴訟に耐えられるかどうかというところについて、ちょっと日弁連の方から懸念の声が上がっていまして、要するに、その建物1棟からしますと、3分の2以上が賛成しているわけではない状態の中で壊されてしまうという、他人の賛成によって壊されてしまうという事態になることを許容できるのかどうかという、どう説明付けるのかの関係かもしれませんけれども、今の補足説明だけで足りるのかどうかは、ちょっとちゅうちょを感じるところではありますので、何かこう必要性、許容性のところの補足があれば教えていただければと思っております。 ○望月幹事 現状の考えとしては、ここに補足説明(2)イで記載させていただいているとおり、そもそもここの対象になるものが、団地としての拘束が強い建物等に限られる場面であるというところと、全体の集会の中で5分の4以上という多数決が必要だというところで、建替えについての賛否の意思は取れているだろうと考えられます。その上で、さらに、特定の棟については反対ですというものが一定数以上あるかどうかということを評価することで、反対者の利益というものも保護できるという考えで、今回提案させていただいております。御指摘あったところで、構成的な問題ないかどうかというところは、補足説明のウのところにも書かせていただいておりますけれども、引き続き検討させていただくというところになります。 ○佐久間部会長 よろしいでしょうか。 ○大桐委員 引き続きお願いします。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。第3のところはよろしいでしょうか。   ありがとうございます。   では最後、第4、被災区分所有法関係に関しまして、これも何か御意見がありましたら、どこでも結構ですので承りたく存じます。いかがでしょうか。 ○齊藤委員 発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。被災マンションに関しましては、私、以前から、むしろ現状のままでよろしいんではないかと申し上げております。少なくとも、4分の3でよろしいのではないかという発言をしているところでございます。これは繰り返しで大変恐縮ですが、現場からそういう引下げの要求がないこと、むしろ、復旧を早くしていく、復興を早くしていくという意味では、この手法だけではなくて、公法や政策との連携が必要ではないかと思っています。   もう一点、例えば建替えをされるとか、いわゆる敷地売却解消されるというような場合は、多くは、ほとんどは公費解体を使われていると思うんですが、公費解体の制度を使われる場合は、結局全員が同意書を出すということになりますので、この全員が同意書を出すという行為と、この決議をして、復旧して、復興していくということの、このギャップが大きければ大きいほど混乱を呼ぶという側面もあるかと思います。結局は、現場であまり被災マンション法が使われていないというのは、この公費解体を使われるということと関係しているのかもしれませんが、どうせ使われないから何でもいいということではなく、むしろ確実に使っていただけるという意味では、ここまで引き下げる必要はないんではないかなと、思っているというところでございます。 ○望月幹事 従前から御指摘いただいているところだと思いますけれども、今回、飽くまで意思決定を、早期復興の場面ではスムーズにできるようにしようというところが主眼でございまして、それ以外に、例えば資金面の問題であるとかいろいろな補助制度、こちらが更に必要だいうところは、御指摘のとおりかもしれません。ただ、いざそういうのがそろったときに、やはり早期に意思決定できると、円滑に意思決定できるというところを実現するためには、今回の引下げ自体は必要と考えて、こちらの提案をさせていただいているところになります。 ○大谷幹事 齊藤委員から、行政法、事業法との連携について御指摘をいただきました。国交省さんにおいて、被災した場合のマンションの再生に関する事業についても御検討いただいていますし、また公費解体との連携につきましても、以前の部会資料にも書いていたかと思いますけれども、被災区分所有法における決議割合を引き下げた場合に、どのように公費解体の仕組みに生かしていくことができるかということについては、引き続き連携していきたいと思っているところでございます。 ○齊藤委員 ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。第4についてはよろしいでしょうか。   それでは、改めまして、部会資料25の全体について、この部分がというところがおありでしたら、御意見を承りたく存じます。いかがでしょうか。 ○鎌野委員 すみません。もう議論が尽くされていて、あえて申し上げるのもはばかられるんですけれども、やはりこのペーパーの第1の6ですかね、共用部分等に係る請求権の行使の円滑化というところで、非常に悩ましいところではありますけれども、前からもう再三、私も申し上げておりますように、立法的にやはりこの辺りというのは、いろいろと中野委員始め、現場の弁護士さんなどの声を聞くと、やはり立法的に解決すべきものなのかなと考えておりますので。ただ、もうこのところは議論を尽くしたということであればやむを得ないと思いますので、ちょっと議事録にでも、その辺りの発言というのを残していただければと思います。なお検討があれば、検討していただきたいと思いますけれども、そのことだけ、ちょっと一言だけ申し上げておきます。もう蒸し返しはしませんので、よろしくお願いいたします。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。今日は、この議論をしているときの最終盤から御参加いただいたと思います。それで、その議論は、お聞きいただいていないと思いますので、議論が尽くされたかどうかは、議事録案を御覧いただいて御判断いただければと存じます。私の方から議論を尽くしましたとか、まだ尽くせていませんとか、そういうことは申し上げられませんので。 ○鎌野委員 分かりました。ですけれども、私も、基本的にはもう既にペーパーなども拝見していますし、それから、そもそも今回の出席者多数の議論ではありませんけれども、何らの私の方の意思表示もしていませんので、そういった意味では、基本的には議論が尽くされたと現時点では考えておりますので、そういうことでお考えいただければと思います。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○吉原委員 ありがとうございます。22ページの建替え決議の円滑化につきまして、先ほど経済界からの御要望ということで、一律の引下げが望ましいのではないかという御意見ありましたけれども、私も、この点については、こちらに書いてある原案の維持が望ましいと考えております。円滑化をすることは必要ではありますけれども、マンションの状況というものが様々であることを考えますと、財産権の処分を伴う決議については、やはり慎重である必要があると考えております。よって、原案のとおりでいいと考えております。ありがとうございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○細谷委員 こちらの共有部分の変更決議、復旧決議の多数決要件の緩和ということで、小林委員の方からも、省エネのことをちょっとお話がありました。やはり環境問題、大きく動いていく、将来にわたって、映像ではちょっとショッキングな、家が流されるような、そういった映像がございますので、何かできないか。ここの区分所有法でするのかどうかは別として、何かその関連付けみたいなものが必要かと感じています。   それから、先ほどと同じになってしまいますが、この区分所有建物の再生の円滑化を図る方策ということで、やはり要件というものは必要ではないかというのは、以前に私もお話しさせていただきましたけれども、何か事が起こったときには、どうだったのか、どういう基準で行ったのかという振り返りは必ず必要かと思いますので、こちらの案で私は賛成しております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。今の、特に共用部分の変更のところでございますけれども、先ほど小林さんにもお答えを差し上げたとおり、ちょっと今のところは難しいと思っているということは申し上げたつもりではございます。ただ、環境問題に関連して、省エネルギー関係が重要であるということは、相当数の委員から御指摘を頂いているところでありますので、その問題意識は持っているということ、ただそれを酌み取るのが区分所有法の規定とは考えていないこと、しかし、重要であるので何らかの方策が講じられることが、政府全体の取組として望ましいと考えていること、というなことを、この審議会部会での一つの有力な考え方、あるいは特段の異論はない考え方として、どこかで明らかにするということは心掛けたいと思います。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   では、本日の審議はこの程度とさせていただきます。本日の御議論を踏まえまして、次回に向けて検討を進めてまいります。   次回の議事日程等につきまして、事務当局から説明を頂きます。 ○望月幹事 本日もありがとうございます。次回ですけれども、令和5年12月21日木曜日の午後1時30分から午後5時30分まででございます。場所は本日と同様、地下1階大会議室ということで予定しておりますが、場所については、通知を御確認いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○佐久間部会長 これをもちまして、法制審議会区分所有法制部会の第15回会議を閉会にいたします。   本日も熱心な御議論を賜りまして、誠にありがとうございました。 −了− 0