法制審議会 家族法制部会 第35回会議 議事録 第1 日 時  令和5年12月19日(火)  自 午後1時33分                        至 午後5時24分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  家族法制の見直しに関する要綱案(案)について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会家族法制部会の第35回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中御出席を頂きまして、誠にありがとうございます。   本日も前回までと同様、ウェブ会議の方法を併用した開催になりますので、よろしくお願いを申し上げます。   前回からの変更といたしまして、東京家庭裁判所の田口治美判事が委員に任命されておりますので、簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。 ○田口委員 東京家庭裁判所家事部所長代行者になりました田口でございます。委員を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 どうぞよろしくお願い申し上げます。   それでは、まず、本日の会議資料の確認をさせていただきます。事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。お手元の資料について御確認いただきたいと思います。   本日は事務当局から、まず、部会資料35−1、部会資料35−2をお配りしております。このうちの部会資料35−1が、この部会における取りまとめの対象となる要綱案の案をゴシック体の記載でお示ししているものになります。   部会資料35−2は、部会資料35−1のゴシック体の記載内容についての説明を明朝体で記載したものですが、この資料は部会における取りまとめの対象となるものではなく、飽くまでも部会資料35−1について御議論いただくための参考としていただく趣旨で作成しているものです。   なお、今回もウェブ会議も併用していることから、御発言に当たっては冒頭でお名のりいただきますようお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは、本日の議題、今、御説明がありました「家族法制の見直しに関する要綱案(案)」につきまして御議論を頂きたいと思います。   本日の会議では、部会資料35−1について御議論を頂くことになりますが、順番といたしましては、第1から第7までございますけれども、第2から第7までの個別的な論点の方からまず御議論を頂きたいと考えております。   第1の総論的な規律につきましては、第2以降の個別的な論点について御議論を頂いた後で、御意見を頂戴したいと考えております。   おおむね会議の時間の半分ぐらいのところを目途に、休憩を入れさせていただきたいと考えております。   それでは、部会資料35−1につきまして、事務当局の方から資料の御説明をお願いいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。   部会資料35−1は、この部会におけるこれまでの議論を踏まえて、この部会として取りまとめをお願いしたい要綱案の案をお示しさせていただくものです。その内容は、これまでの会議でお示しさせていただいた要綱案のたたき台の内容を基礎として、第30回会議から第35回会議までにおける議論を踏まえた修正を加えたほか、特段の修正意見がなかった点も含め、現行法の規律の表現との整合性等の観点から、形式的な文言の修正をさせていただいたものになります。   一部の論点には、【P】としてペンディングと付しておりますけれども、この論点については直近の会議での一部の委員からの修正意見を踏まえ、本日の会議で補充的に御議論をお願いしたいと考えている点になります。これらの点について、補足的に御説明させていただきます。   なお、先ほど部会長から、第2から第7までの個別的な論点から御議論いただいて、その後で第1にということでございますけれども、資料の御説明の便宜上、第1から御説明させていただきます。   まず、第1の1の柱書きでは、「責務や権利義務等を明確化するため」という部分に【P】を付しています。これは、第35回会議において、父母による子の養育の法的性質や位置づけに関する御意見を頂いたことを踏まえ、引き続き御議論をお願いしたいと思います。   また、(1)の「その子の年齢及び発達の程度」に【P】を付している部分については、前回会議において「心身の状態」という文言を付け加えてはどうかとの修正意見を頂きましたので、引き続き御議論をお願いしたいと思います。   「第2 親権及び監護等に関する規律」については、幾つかの論点について、一部の委員から修正意見を頂いておりましたが、第35回会議における御議論を踏まえ、基本的にはたたき台(2)の内容を維持しつつ、表現ぶりなどを修正させていただいており、また、実体法の改正に対応するための手続法の整備をするものとすることを(注)に記載しております。   続きまして、「第3 養育費等に関する規律」のうち、「2 法定養育費」の論点については、たたき台(2)では抽象的な記載をしておりましたが、今回の資料では、これまでの御議論を踏まえ、具体的な規律の案を提示しております。このうちの(1)のただし書の「全部又は一部の」という部分に【P】を付していますが、部会のこれまでの議論の中では、債務者の資力が乏しい場合の法定養育費の支払拒絶について、全部拒絶の可否だけではなく、その資力の状況に応じた一部拒絶も問題となり得るとの御意見がありましたので、引き続き御議論をお願いしたいと思います。   6ページの「4 執行手続における債務者の負担軽減」については、たたき台(2)では抽象的な記載をしておりましたが、今回の資料では、これまでの御議論を踏まえ、条文に近い形での具体的な規律の案を提示しております。   7ページの(3)に【P】を付しておりますが、この部分では、財産開示手続等を実施したにもかかわらず、差し押さえるべき債権を特定することができなかった場合に、差押命令の手続を終了させる規律を設けることを提示しております。これまでの会議では、余り明示的に御議論いただいていなかった論点ですので、御意見がありましたらお伺いしたいと思います。   「第4 親子交流に関する規律」については、8ページの「3 親以外の第三者と子との交流に関する規律」について、たたき台(2)では抽象的に書いておりましたが、今回の資料では、これまでの御議論を踏まえ、具体的な規律の案を提示しております。   「第5 養子縁組に関する規律」については、9ページの「2 未成年養子縁組及びその離縁の代諾に関する規律」の(1)の部分に【P】を付しております。父母双方が親権者である場合において、その15歳未満の子について養子縁組の代諾をしようとする場合には、現行法の下ではその双方の承諾が必要とされております。今回の資料では、この場合において父母の意見が対立したときの意見調整の手続を提示するものですが、家庭裁判所が要綱案(案)第2の1(3)の規律により、父母の一方のみが単独で代諾をすることができる旨を定めるには、養子縁組をすることが子の利益のため特に必要であると認めることを要求するものとしております。   また、部会資料35−2の24ページから25ページまでに記載しておりますが、親権者である父母間の意見対立を調整するための仕組みを導入するのであれば、この機会に親権者と監護者等の間で意見対立が生じた場合に対応するための規律も必要となるのではないかとの御指摘があり得ようかと思います。この点についても、併せて御議論いただきたいと思います。   「第6 財産分与に関する規律」と「第7 その他」については、基本的にはたたき台(2)の内容をベースとしつつ、これまでの御議論を踏まえて修正した案を提示しております。   なお、部会資料35−2の4ページ、5ページには、こども基本法の規定を抜粋しておりますが、この部会の第30回会議では、小粥委員から、この規定との民法との関係や親権との関係について、こども基本法の審議の過程での議論や注意すべき点があれば教えていただきたいとの御質問を頂いておりました。この点についてこども家庭庁に確認したところ、こども基本法の国会審議の過程では、こども基本法の規定そのものについて、民法の親権制度との関係を考慮するべしというような議論はなかったと承知しており、こども基本法第3条第5号の規定に関し、民法の親権制度との関係で留意する点は特にないと考えているとの御回答を頂きましたので、この機会に御紹介させていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。それでは、部会資料の35−1について御議論をお願いしたいと思います。   ただいま事務当局の方から説明ございましたけれども、これまでの資料について修正を加えたところと、それからこれまでの資料を具体化したところがあるという御指摘がありました。また、【P】となっている部分については、特に御議論を頂きたいといった御要望もありました。それらを踏まえまして、御意見を頂戴したいと思います。   先ほど申し上げましたように、第2から第7までをまず最初に扱いたいと思いますので、第2から第7までの論点のうち、どこの部分について御発言を頂いても結構ですので、御発言を頂きたいと思います。ただ、御発言の際には、どの論点のどの部分に関する御意見であるかということを明らかにしていただけますと大変助かります。   また、ゴシックの記載に賛成する意見なのか、あるいは修正を提案する御意見なのか、あるいは解釈運用上の留意点を述べる意見であるのかといった点も明らかにしていただければと思います。   それと、かなりたくさんの項目がございますので、御意見は可能な限り簡潔に述べていただきますよう、御協力のほどをお願い申し上げます。   それでは、どなたからでも結構ですので、御発言がある方は挙手をお願いいたします。 ○池田委員 池田でございます。第2に関して、3点申し上げたいと思います。   まず、1の(1)のウ、急迫の事情に関してです。急迫の事情という点に関しまして、補足説明では、父母の協議や家裁の手続を経ていては適時の親権行使をすることができず、結果として子の利益が害されるおそれがあるようなケースを想定できると書かれています。   この点、協議や家裁の手続をとること自体によって夫婦間暴力を引き起こされる蓋然性が高いというようなケースで、そういったことで協議等ができない場合ということが含まれるのかということを考えた場合に、それも結局は適時に親権行使ができない、協議等ができないために適時に親権行使ができないということになるので、急迫の事情に含まれると解することもできるとは思われますが、そのような事例も含まれることがより明確になるためには、時的要素を必ずしも前提としない形が望ましいのではないかと思っています。   前回、原田委員が御指摘になったとおり、協議等を経ていては子の利益が害される場合というふうに、やはりすべきではないかと考えます。   以上、1点目です。   2点目、第2の2(1)のクに関してですが、これは解釈運用上についての留意点ということになるかと思いますけれども、クの後段の「この場合において」以下のうち、調停とADRと公正証書を挙げている部分です。これらは、第三者の関与の有無を考慮するという趣旨かと理解しています。ただ、同じ第三者の関与といいましても、これらには関与の対応や程度が異なるものが含まれています。   例えば、調停におきましては、調査官調査が入って、こどもの利益にフォーカスした協議というものが担保されていますけれども、それ以外のものでは必ずしもそのような構造にはなっていないと思います。そうした差異もございますので、実際の判断に際しては、ここに挙げられた要素に軽重を付けながら考慮していくべきだという指摘をしておきたいと思います。   3点目ですが、第2の2の(2)のイですが、これは監護者指定がされている場合の監護者でない親権者が行うことができる規定ですけれども、ちょっとこれは質問になりますけれども、前回の修正前の文言では、監護に関する日常の行為ができるんだけれども、それは監護者の行為を妨げない限度だということで、できることが日常の行為だということが分かりやすく書いてあったわけですけれども、今回、イの書きぶりでは、監護に関する日常の行為ができるんだということが明記されていないんですけれども、それは理解としてはそのような理解と考えてよろしいですか、監護に関する日常の行為に限られるということで理解してよいかということ、教えていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員から3点、御意見を頂戴いたしました。   最初が、1のウの急迫の事情についてで、これは、前半は解釈としての御意見をおっしゃったかと思いますけれども、そのような解釈を採りやすくするために文言も変えた方がいいのではないかという御提案を頂きました。   2番目、2の(1)のクについて、この場合においての中に出てくる第三者の関与、これは程度が異なるということを運用上考慮すべきだという、これは解釈に関する御意見ということで承りました。   3番目が、3の(2)のイで、これは前回までの資料と文言が変わっているけれども、趣旨は変わらないと理解してよいのかと、これは御質問だったかと思いますけれども、事務当局、質問についてはどうですか。 ○北村幹事 御指摘のとおり、前回の資料から、内容、その趣旨としては変えているつもりはございません。法制上の観点から整理をしたというものになります。 ○大村部会長 よろしいでしょうか。   それから、大石委員から手が挙がっているかと思います。 ○大石委員 委員の大石です。ありがとうございます。前回、欠席してしまいましたので、今回、意見を申し述べたいと思います。   2点あります。第1は、第2の1(1)ウの急迫の事情についてです。もう一つは、先ほど事務局からお示しいただいた法定養育費に関して【P】が付いていて、全部又は一部といったところに関しての意見となります。   初めに、急迫の事情について、修正若しくは考慮してほしいというつもりで意見を申し述べたいと思います。   まず、前回の議事録をいろいろ読ませていただいたのですが、急迫の事情の内容について、法律専門家の委員の御説明では賃貸借の例に言及されておりました。しかし、例えばトイレが故障して、大家さんによる修繕を待っていたのでは、即日から生活に重大な支障が生じるというようなケースと、DVや児童虐待から逃れるために、こどもの学期末や学年末まで待って、しっかり準備してから逃げるというのとではタイムホライズンがやはり異なりますし、民法の概念として、これだけタイムホライズンが違うものが同等に扱われているのかどうかということ、私は専門家ではないのでよく存じないのですが、疑問に思ったというところです。   また、今、私が例示したように、準備してから逃げるようなケースというのを、裁判所は急迫に該当すると適切に判断するかどうかという点についても、現時点では私は大きな懸念を持っております。さらに、前回、数名の委員からも懸念が示されておりまして、原田委員からは、必要性、相当性という用語を使えないということであれば、仮の提案として、父母の協議や裁判所の判断を経ていては子の利益を害するおそれがある場合というように具体的に書いてはどうかという提案がなされていました。   また、落合委員からは、DVや児童虐待や家庭内暴力などのリスクがある場合というのを条文の中に明示してはどうかという御提案がありました。さらに、武田委員からは、要綱案に対してもう少し丁寧に、今、逃げないで、きちんと準備してから避難するというのも急迫の事情に当然入る、せめて補足説明でこういったケースが急迫の事情に該当するということをもう少し丁寧に書いていくのがよかろうという御提案がありました。   以上については、私も全く同意するところでありまして、要綱案の中に具体的に盛り込むことが望ましいと考えております。また、そうできない場合に、多くの委員が補足説明にということをおっしゃっているのですが、本部会の答申というか、出す要綱案としては、このゴシック体の要綱案だけが出るという御説明があったかと思うのですが、その補足説明というものが作られる可能性があるのか、作られるとしたら、それは本部会からの答申の一部として扱われるのか、その法的な位置づけを事務局にお尋ねしたいと思います。   それからもう一つは、法定養育費、5ページの「全部又は一部」というところでございます。そちらの方は、子の最低限度の生活を維持するためにという目的で設けるものですので、それをまた全部又は一部減額というのを可能といたしますと、いってみれば、最低賃金の減額を認め、実際の最低賃金では、ちょっと特殊な場合は最低賃金以下の賃金もオーケーとなっているのですが、それは別の話としまして、最低のそのまた減額を認めるというのもやや違和感があると思いまして、やはり最低限度の額として設定されるのであれば、その一部というものを取り込むのは余りふさわしくないのではないかなというように考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。2点御意見を頂戴いたしました。   1点目は、前の池田委員も御指摘になっていた急迫の事情についてですね。文言を改めた方がいいという御意見と、それができない場合に補足説明の中で説明ということを要望したいけれども、その補足説明というものがどういうものかということについての御質問を頂いたかと思います。   それから、2点目なのですが、資料5ページ、法定養育費の【P】の部分について御意見を頂戴いたしましたけれども、これは今、「全部又は一部の」というのが入っておりますけれども、大石委員の御意見は、そもそも支払を拒むことができるという、この規律に反対であるという御意見でしょうか。 ○大石委員 証明したときは、支払を拒むことはですので、そうですね、拒むことは可能と思います、著しく窮迫している場合には。ただし、一部のということは、逆に言えば、一部支払うということになりますので、それは何といいますか、半分免除みたいなものを認める制度となりかねないので、望ましくないのではないかという、そういう意見です。 ○大村部会長 分かりました。一部というのはない方がよろしいという御意見だということですね。 ○大石委員 はい、そうです。 ○大村部会長 分かりました。ありがとうございます。   その他、いかがでございましょうか。 ○戒能委員 ありがとうございます。戒能です。   私は、第2の、皆さん言及なさった点なのですが、第2の1の(1)のウの急迫の事情についてが、第1点です。そして、修正案を示したいと思っております。   それからもう1点、2つ申し上げたいのですが、第2の2の(1)のキですね。キについて@とAありますが、その点について、これもまた御提案を申し上げたいと考えております。   急迫の事情というのは、今、大石委員も御指摘になりましたけれども、事務局からは、民法では多く、急迫の事情という文言を使っているという御説明が前にもあったとおりなのですが、賃借人の修繕が賃貸人ではなくて、急迫の事情がある場合はできるのだというような規定などを見ますと、それからまた、事務管理などにも出ておりました。そうすると、かなり建物などですと、それの修理をしないと、もう使えないというような事情というふうに読み取れますので、急迫の事情というのは切迫した状況というのが求められているのかなと思いました。   それで、これもまた既に大石委員が御指摘なさいましたけれども、そうしますと、急迫の事情という文言が本当にふさわしいかどうか考える上で、ドメスティック・バイオレンスとか児童虐待のケースを考えますと、保護命令の審尋でも同様の司法の運用が行われておりますけれども、直前の生命、身体に対する危険が明確にあることという前提で審尋が行われているわけなのですが、それと同じことが展開するのではないかということが危惧されます。   大石委員が一つ例を挙げられて、すぐには避難しない場合もあると、そういうときは対象に入るのかという点ですね。それと、こどもの利益ということを考えますと、大変大きいのが学校の学期末とか学年末とか、そういう区切りですよね、卒業とか。そういうところで避難するという場合が結構多いのですね。そういう場合も急迫の事情として解釈されるかどうかというのが大変懸念されます。   それからもう1点、これは簡単に申し上げますけれども、避難の意味を、改めてDVや児童虐待ではきちんと位置づける必要があると、単に逃げるというふうにお考えになるかもしれませんが、これはジュディス・ハーマンという著名な精神医学者の「心的外傷と回復」という名著がございますが、それを見ますと、PTSDの症状などが現れてきて、そこから被害から回復するためには、まず安全を守らなければいけないと。そのために、DVの場合は、その手段として避難というのが非常に大きな意味を持つというようなことが精神医学の立場から書かれております。こどもも同様です。ですから、民法の財産法の方も大事かもしれませんが、それと同じ次元でちょっと考えられないのではないかと思っております。   それで、第2の1の(1)のア、イ、ウと三つありますけれども、それに付け加えて、やはりエならエとしてドメスティック・バイオレンスや児童虐待があるとき又はそのおそれがあるときということで、明確に示すべきだと考えております。それが1点です。   それからもう1点が、考慮事情で、2の「父母の離婚後等の親権者の定め」の(1)のキですね。これは、以前は(注)に記されていたものを、多くの委員から御意見があって、その意見が反映されて、それで本文にきちんと位置づけられたということは評価できることだと考えております。   しかしながら、この@とAなんですね。それで、@とAも、両方とも子の利益を害すると認めるときは、父母の一方を単独親権としなければいけないと書いてあるわけなのですが、@は子への虐待というのが想定されると思うのですが、これ以下、その文言が「害悪」という文言になって、かなりインパクトの強い文言が使われていますし、害悪までいかないのではないかというような解釈の懸念があるということなのです。ですから、この辺を、@もAもDVとか児童虐待という文言を一切使わないで説明をしているのですが、これはきちんとドメスティック・バイオレンスとか児童虐待とか、きちんと明記をすべきだと考えております。そうしないと、一番危惧しているのは、支援の関係者とか行政が困惑するということ、あるいは弁護士の方もそうかもしれません。一番懸念されるのは、当事者自身なんですね。当事者自身が申告することを自己規制してしまわないかと、そこまでいかないのではないか、そういうふうに自分の被害が解釈されないのではないか、あるいは自分のこどもに対する被害が害悪とまではいえないのではないかというようなことも考えられます。   そうしますと、これは被害が続行することにもなりますし、当然、こどもにも影響を与えるということです。   それから、Aの方は、文言はDV防止法の第1条を引用しているようなんですが、これは御存じのとおり改正されました。そして、第1条そのものの文言は変わりませんが、実質的には大きく変わりました。身体に対する暴力という言葉だけが出ており、それ以外はその他というふうになっておりますが、精神的なDVとか心理的DV、それから性的なDVも保護命令の申立理由となったわけですから、ここにはきちんと暴力について、精神的暴力と性的暴力とか列挙するというふうにしないと、これまで同じような状況が生まれるおそれがあるということです。   それから、このキの項目では、父母間の問題を取り上げたAなのですが、協議が調わない理由その他の事情を考慮してと、そして共同親権を行うことが困難であると認められるときというところには、DVがあるわけではないけれども、高度の葛藤があって、その高度の葛藤の影響をこどもが受けて、こどもの心身に被害を及ぼすというようなことも含まれると解釈できるのではないかと考えております。   ですから、ここももう少し具体的に、市民が理解できるように、被害を受けた親と子がきちんと理解できるような文言を明記していただければと思っております。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員からは、先ほどから話題になっている急迫の事情という点と、それから第2の2の(1)のキの@、Aについて御意見を頂きました。いずれも、DVあるいは虐待ということがより明確に示されるような文言を用いた方がいいという御意見だったかと思います。   解釈についても言及されたかと思いますので、解釈によることができるという場合もあるけれども、しかし、明示した方が望ましいのではないかという御意見として承りました。   それで、一つ戻って、先ほど大石委員から質問がありましたけれども、これについて事務当局からお答えを頂くのを失念しておりましたが、お答えを頂ければと思います。要綱案そのものに補足説明というのが付くのかといった御趣旨の御質問だったかと思いますが。 ○北村幹事 この部会において取りまとめていただくものとしては、ゴシック体のものということになります。そのほかに補足説明があるのかということにつきましては、今、直ちにお答えすることは難しいかなと思っております。補足説明につきまして、いろいろ御質問、御意見を頂戴してございますけれども、この補足説明自体は、飽くまでもこの部会における調査審議の御参考にしていただくということを前提に、事務当局の方の責任で作成しておるものでございます。   この補足説明の記載それ自体が部会における取りまとめの対象というわけではございませんで、そのため答申の対象ではございません。そのため、ここの補足説明にあること、ないこと、それだけで何か解釈論を拘束するということを意図するというものではございません。補足説明だけでなく、むしろここの場で御議論いただいて、議事録に残っていること、今、戒能委員からもいろいろ解釈についての御発言もあったかと思いますけれども、この場において委員、幹事の方々の御発言された内容、その発言内容であるとか、補足説明に記載されて説明し、そこも含めて御議論いただいた内容が今後の解釈の指針となっていくけれども、それ自体何か強い拘束力はあるものではない。ただ、従前からお話しさせていただいているように、ここで御議論いただいたことは当然今後の運用解釈の指針となっていくものと理解しております。   今後の会議資料の内容につきましては、本日の御議論を踏まえまして、補足説明資料を作るかどうかも含めて、なお検討させていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。ただいまの回答のうち、大石委員の御質問に対する直接の回答としては、最後の要綱案については補足説明というものは付かない、答申の対象になるのはこの要綱案、今の資料でいうとゴシックの部分だけであるということかと思います。   これまで、この部会で様々な議論をしてまいりましたけれども、その記録については議事録という形で残っておりますし、その時々に提出された資料に補足説明が付いております。これらは、この先の解釈運用について参考にされることはあるだろう、しかし、何か公的な解釈を示すものではないという趣旨だと承りました。これで一応のお答えとさせていただきます。最高裁、向井幹事でしょうか、手が挙がっていますか。それから、すみません、菅原委員も挙がっていますか。向井幹事、菅原委員という順番でお願いします。 ○向井幹事 幹事の向井でございます。2点ほど意見を述べさせていただきます。   1点目は、先ほど大石委員からもお話がありました法定養育費の一部の支払拒絶についての意見でございます。   法定養育費制度は、この請求権に対する先取特権の付与とあいまって、簡易・迅速に一定額の養育費の請求を可能とするものですけれども、支払義務者側の負担がその収入等に見合わない過大なものとなることを防ぐための仕組みとして、これまでの部会資料では、法定養育費を支払う資力を欠く場合又は支払によって生活が著しく困窮する場合には、その全部の拒絶をできるものとし、さらに、家庭裁判所は義務者の支払能力を考慮して、その支払義務の免除若しくは減額又は支払の猶予その他相当な処分を命ずることができるとされておりました。   今回、【P】とされている提案内容は、家庭裁判所による減免等の処分を経ることなく、先取特権を行使する段階で義務者の資力に応じて法定養育費額の一部の減免を可能とするというものですけれども、このような規律を設けますと、今回の部会資料35−2の15ページの(注2)にも記載されていますとおり、義務者の資力に関する審理が長期化・複雑化することになり、法定養育費請求権の簡易・迅速な実現という制度趣旨に反する結果となるということが懸念されます。   また、執行手続には情報開示義務に関する記述が設けられていませんので、義務者の資力に関する情報を十分に持っていない権利者が義務者の主張に適切に反論を行うことは困難ですし、権利者側の収入や生活も大変な状況にあるといったことを適切に反映することもできないのではないかと考えます。   更に言いますと、部会資料35−2の15ページの(注2)では、法定養育費の全部の支払はできないものの一部の支払はできるような場合に、執行段階で全部の支払拒絶を認めた上で、改めて家裁の手続で養育費の額を定めるよう求めるのは迂遠ではないかといった指摘もされておりますけれども、そのような場合に、執行手続において法定養育費の一部だけの限度で支払拒絶が認められたとしても、法定養育費は飽くまで養育費が定まるまでの暫定的なものですので、養育費額の確定には別途、家裁の審判等を申し立てる必要があります。その場合に、家裁は執行手続で一部の限度で支払義務を認めた判断には拘束されず、当事者も家裁の手続では、執行手続では考慮されなかった事情も含めて、改めて主張いただくことになり、かえって当事者にとって二度手間となるおそれもあるのではないかと考えております。そのため、執行段階では、義務者の資力が法定養育費額を全額免除する程度に低額であるかという点に限定して審理を行い、具体的な資力に応じた養育費額の確定は、子の監護に関する専門的知見を有し、情報開示義務に関する規律も設けられる予定である家裁の処分によって行うのが養育費債権の適正かつ迅速な実現に資するのではないかと考えております。   次に、もう1点は、未成年の養子縁組に関するものでございます。   第5の2の未成年養子縁組及びその離縁の代諾に関する規律の【P】(1)につきまして、養子縁組をすることが子の利益のため特に必要があると認めるときに限り、家裁が親権行使者を指定する裁判をすることができるとされていますが、ここでいう子の利益のため特に必要があると認めるときとは、具体的にどのような場合を想定しているかということを明確にしていただきたいと考えております。   部会資料35−2の24ページの(4)では、最後の「なお」から始まる段落におきまして、「養子縁組が成立すると実父母が親権者としての権利義務を失うことを考慮してもなお養子縁組を成立させることが子の利益の観点から必要である事情が必要であると考えられる。」と記載されていますが、こどもに対する虐待があった場合など親権喪失事由に当たるような事情がある場合に、この要件に該当することは分かりやすいですけれども、例えば、こどもと別居する実父母が合理的理由なく養育費を支払わない場合ですとか、面会交流について取り決めたのにこどもと別居する実父母の方が面会交流に応じなくなった場合にこの要件に該当するのかといった、虐待等よりもワンランク落ちるようなものがあった場合にこの要件に該当するのかということは定かではないと思います。   離婚後に父母双方が親権者となる場合には、こどもと別居する親については、同居していないがゆえに暴力を振るうなどの分かりやすい虐待の類型よりも、今申し上げたような養育費の不払ですとか関心の低下といったことが問題になることが多いように思われますので、立法の考え方として、こうした場合を今回のこの要件に含める趣旨であるのかどうかということについては明らかにしていただく必要があると考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。向井幹事からは2点、御意見を頂きました。   いずれも【P】となっている部分ですけれども、一つ目は法定養育費についてで、先ほど大石委員が触れられた点、「全部又は一部の」という点については、全部のとすべきではないか、それがスムーズな運用を図っていく上でも必要なのではないかという御意見を頂戴したと理解を致しました。   それからもう一つ、養子の方、第5の2の【P】については、これは規律についてはこれでよいという前提での御発言だったと受け止めましたけれども、子の利益のために特に必要があるということについて、中身を明らかにする必要があるのではないかという御意見として承りました。ありがとうございます。   菅原委員、それから赤石委員という順番でいきます。 ○菅原委員 ありがとうございます。委員の菅原です。   第1の(1)の二つ目の【P】について、意見を述べさせていただきます。   先ほど御説明もありましたが、「子の年齢及び発達の程度」というのは是非入れていただきたいと思います。 ○大村部会長 菅原委員、第1は後でやりますので、第1を除いてお願いします。 ○菅原委員 すみません。大変失礼しました。 ○大村部会長 御意見は、そうすると第1についてということですね。では、後でということでよろしいですか。 ○菅原委員 そうです。大丈夫です。 ○大村部会長 分かりました。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。ありがとうございます。   第1は後だということなのですが、第2の前に、この資料の位置づけ等の部会資料35−2のところで少しだけコメントさせてください。   パブリック・コメントについての言及が部会資料35−2の冒頭にございました。パブリック・コメントの手続をしたり、追加のヒアリングをしていたということはそのとおりでございます。8月に出たパブリック・コメントのまとめは暫定版ということになっております。となりますと、パブリック・コメントのまとめの何というのでしょうか、完成版といったらいいのでしょうか、といったものがいつ出るのかといったことがやはり気になるところでございます。   その暫定版のときに、乙案に賛成と甲案に賛成、中間まとめのですね、2対1であったと、個人に関しては。団体に関しては逆であったというようなことが書かれていたということなので。では、私どもの議論は、こういったパブリック・コメントの手続でいただいた議論を正確に反映しているのかどうかということはやはり問われているのだと思いますので、審議会の要綱がまとまるときに、パブリック・コメントの完成版が出てくるというのはやはり避けた方がいいと私は思いますし、多くの常識からいうとそうであろうと思いますので。となりますと、やはりかなり時間は限られているのですが、いつ、完成版と言えるようなものが出てくるのかは、やはり言及があるべきかなというふうに思っております。ということを申し上げて、第2の方にいきたいと思います。   ちょっと第1のところにも関わってしまうのですけれども、第2の2の(1)のエのところで、「父が認知した子に対する親権は、母が行う。」というような規定があります。これについては、前回も申し上げましたけれども、婚姻によらないで生まれたこどもに関する権利義務というのは、やはり議論はしていくべきであるというふうに思います。   ここにいらっしゃる先生も、そうした議論で論文など書かれている先生も何人もいらっしゃるように見受けられます。やはり、父親が任意認知の場合には一方的に認知が行われ得るという制度になっていることに関して、ここでそれをそのまま認めてよいのか、あるいはここでは全面展開できないにせよ、やはりやや、私の目から見れば、家父長的な認知制度に関して、何らかの今後には改善が求められるということがやはり言及されるべきなのではないのかなというふうに思うということはお伝えしたいと思います。   それから、先ほどの第2の1の方に戻りまして、急迫の事情についてです。法理論的に急迫の事情がどの範囲なのかということは、本当に今いろいろな議論がされているので、私は法律については疎くはあるのですけれども、一体どこまでカバーできるのかといったことは、非常に現実に親と子が生きていくときにトラブルにならないような規定であってほしいということは強く願うところであります。   各委員の先生も、そういうおつもりでいろいろな御議論をされてきたと思います。ここに部会資料35−2の方にも幾つかの事例がありますけれども、DVや虐待における避難に関わる居所指定や医療契約、入学、高校だけではなくて、この頃は中学のときにもいろいろな選択肢が出てきておりますし、小学校でもいろいろな選択肢がございますので、それを入学の契約というのか、届出というのか、高校の場合には学校法人との契約になるのかなと思いますけれども、あと、例えばシッターさんの派遣ですとかですね。   それから、これは身分行為になるのか分かりませんが、パスポートのこともございました。こういったことが丁寧に漏れなく網羅していただけるとよいというような御意見もあったかと思いますので、ここについてはやはりきちんと1回は議論をしておきたいというふうに思います。   また、学校や病院などが、やはりこういったことで覆されたりする事件が例えば起こってしまったり、裁判が起こってしまったりすると、その後、学校法人なり病院の経営的に非常にトラブルを避けたいということになるので、あらかじめ両親の関与を求めるというようなことが行われ得るのではないかというふうにちょっと危惧しております。そうなりますと、急迫の行為として一旦医療契約をしても、覆される事例が出てきてしまったら、結局はどうなるのだろうかというところが危惧されており、こういう場合がないのだろうかというのが気になります。   あと、先ほど戒能委員から、DVの場合といったのを追加でエとして御提案があったのですが、そういうふうに直接的に書かれるのは、ドメスティック・バイオレンスがあるとき、おそれがあるときを提案されているのですが、それも一理あるなというふうに思っております。ただ、今言ったいろいろなところの契約とかは、また別にきちんと議論しなければいけないというふうに思っております。   それから、第2の2の(1)のキですね。キのところで、暴力に関して、父又は母が、@、Aが出てきまして、3ページですね、部会資料35−1の。ここが(注)にあったものがきちんとゴシックで書かれたことに関しては、一定の前進があったというふうに思っております。とはいえ、やはりDV、ここで言っている、心配が募るのはですね。この、DV防止法にかなり連動した表現のときに、DV防止法の保護命令を想定しているのか、はたまた違う手続を想定しているのかが分からないので、保護命令というのは本当に私ども御相談を受けていても少ないのですね、保護命令が出ておりましたという方は。   となると、ここで何を想定されているのかという、ちょっと1回議論していただけると有り難く、相談履歴があることをもってDVがあったというふうにして、支援措置を掛けたりとかいろいろなことを今、DVの被害者の方の救済のときに運用しております。これが何なのかというのは、やはり議論しておいた方が大変安心感がある。やはり、保護命令、大変出ていないのですね。それはいろいろな基準があるからでありますけれども、ということは、私はDVの方だけを扱ってはいないですけれども、やはりよく聞くことでございます。なので、議論していただきたいと思います。   それから、第2の2の(2)のAですね。協議離婚だと思うんですけれども、親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てがされているときは、離婚の届出をできるということになっているということですよね。ここも余り議論しないで要綱まで来てしまっているような気がしていて、もう一度考えておく必要があるかなというふうに思っております。   20万組の離婚のうち、毎年ですね、9割の協議離婚があって、この方たちがどういう行動をとることになるのかということなのですけれども、私が想像しているのでそうではなかったらいいのですが、一応親権の争いがありましたと。それで、審判を申し立てたら離婚が成立しますということでいいですか。   そうなったときに、審判の方で親権が決まる前に一応離婚手続が成立しています。ということは、ある種の何というのですかね、そこの期間を短縮化できるというか、いつも親権の争いで1年、2年過ぎてしまったというような方にとっては朗報であろうと思われている面がある一方で、その審判手続がどの程度簡便になるのかとか、そこに至る法律支援の必要性がここでもうものすごい量で増えるわけですね。9割の方ですから、今、調停に申し立てている方たちではない方たちも対象になるわけなので、ものすごく法律支援の必要性があるということと、審判手続がどのように行われ得るのかということがまずありますよねということと。   一方で、何かこう、早く離婚して、早く新しい異性関係ができていて、その異性と関係をもう一回、再婚したいというような配偶者がいたとして、弱い立場の妻子ということになるのかもしれないのですけれども、そういう人たちにとっても便利な制度になるのか、その辺りのちょっと仕組みが、果たして本当に弱者に不利にならないのかということをちょっと考えたいなと思いました。   離婚不受理届というのを一旦出しておいて、養育費ですとか財産分与とかが決まらないうちは受理されないということになっていれば、相手方が早く出そうとしても、一応ここで防波堤になるというのは存じているのですけれども、こういったところの仕組みがドラスティックに、多分ここが一番範囲として大きいので、しかもDVとかと関係なく多いので、そこのところがどうなるのであろうかみたいなところが気になるので、一応お伝えしておき、御教示いただければ大変有り難いです。   この親権が決まっていないで、監護者も決まっていない、あるいは事実上の主たる養育者はいるというような場合に、これはもう一度申し上げることになりますけれども、こどもへの支援制度とか社会保障制度とかのリンケージが不明であるので、この点についても関係省庁とのきちんとした検討が必要かなというふうに思っております。   長くなったので、監護のことも言いたいのですが、ここで一旦打ち切った方がよさげな、全然、そん度してここで一旦打ち切ります。 ○大村部会長 ありがとうございます。だんだん整理をするのが難しくなっておりましたので、大変助かります。   赤石委員からは、最初に、補足説明に付いている資料の位置づけについての御意見を頂いたと思います。パブリック・コメントについてのまとめを早く、最終まとめというのがあるのならば早く出すべきだという御意見を頂戴したかと思います。   それから、部会資料35−1の方については、第2の2の(1)のエについて、認知の問題がありますけれども、御意見は、ここでの前提になっている認知制度そのものについて見直す必要があるのではないかという御意見でしたので、ここで議論することはちょっと難しいかと思いますが、認知制度に問題があるという御意見として承りたいと思います。   それから3番目、急迫の事情について、こういう場合がどうなるのかということについて御指摘ありましたけれども、それらも含めるべきだという解釈上の御意見として承りたいと思います。あわせて、一旦なされた決定が後で変更されるという場合はどうなるのかということで、これは一般論として出てくる問題としてですが、そういうことは増えるかもしれないので、解釈論としての対応が必要になるかもしれない、そういう問題を御指摘いただいたものと受け止めました。   その次に、2の(1)のキの@、A、先ほど戒能委員が触れられたところなのですけれども、ここは保護命令並びというのでは狭いのではないかという御意見として承りました。   それから最後、第2の2の(2)のAについてですけれども、これについても、この申立て自体についての法的な支援が必要なのではないかということと、他制度との連携についてそごがないような配慮を求めたいという御意見として承りました。さらにありましたら、後でお願いをしたいと思います。   それで、今、落合委員、それから菅原委員の手が挙がっているかと思いますので、その順番で伺いたいと思います。 ○落合委員 ありがとうございます。委員の落合です。DV、虐待というようなことに最初から皆さん非常に関心を持ってきましたので、この要綱案の中に一貫してそれが取り上げられているのかということに注目しながら、見直しをしてみました。そのことについて少し意見を述べたいと思います。   この第2の1と2、それから第4という辺りに特に関係してくると思うのですけれども、第2の1の場合は、(1)のウの急迫の事情というところで皆さんお話しされているところだと思います。しかし、ここではDV、虐待というようなことを、明示されているわけではありませんね。かつ、ここでは子の利益のためというふうになっていまして、配偶者間の暴力ということは二の次に回るのではないかというような懸念を持ってしまいます。   最初に言っておくべきことだったのですけれども、DV、虐待ということとの関連を再検討するというところで、私が気になっていますことは、一つはDV法との一貫性です。これについては二通り考えがあると思いまして、一貫するのがいいのか、完全に一致しない方がいいのではないかというのと両方あると思うんですね。赤石委員がおっしゃっていたように、DV法の方はそちらで目的があるわけですから、その定義をそのまま持ってくるのがよいのか悪いのか、それはきちんとここで考えておかねばならないことだと思っています。ちょうど要綱案の全体がまとまってきましたので、この機会にその目で見直したいと思います。   もう1点、全体について見るべきことは、こどもに対する暴力なのか、それとも配偶者間の暴力ということも十分問題にしていくかというところに、揺れがあるように思うのです。配偶者間の暴力ということも非常に深刻なことですので、様々なことを実施する上で関わってくることですので、それを見落とさないようにしたいというのが、私が気になっていることです。その面で、第2の1のウ、この急迫の事情というところを見直しますと、DV等ということが明言されていないということと、子の利益のためということが全面化していまして、例えばこどもの利益のためはともかく、一緒に親権を共同して行っていると、相手への暴力を行ってしまうというようなケースがあったときに、これを排除できるのかというところに少々懸念を持ちます。   では、第2の2なのですけれども、第2の2の(1)のキは、一番DV等に対する懸念が一番はっきり文章化されたところですね。その点は私も評価するのですけれども、この@とAというのの書きぶりの一貫性がないと思うのですよね。@はこどもに対する暴力等ですね。Aは配偶者間の暴力等ですね。その場合に、文章表現などが対応する、もっと対応するべきなのではないか。@の方ですと、「心身に害悪」というような表現になっている。Aの方ですと、「身体に対する暴力」がまず特記されていて、それからその他心身ということになっておりますね。これも既に指摘のあったことなのですけれども、このAで「身体に対する暴力」というのを特筆するということはどのぐらい重要なのでしょうか。@とAの書き方の一貫性ということが気になります。   先ほどのところに戻りますと、Aが書かれている配偶者間での暴力というものが書かれているのであれば、先ほどの第2の1の急迫の事情というようなところも、「子の利益のため」というふうに明示されているために、この配偶者間というのが落ちてしまっているわけですよね。そこは何かの形でそれを、配偶者間で問題を起こすような人も、やはり親権の共同行使は難しいということで加えるべきなのではないかと考えます。   それから、第4の親子交流のところでも、DVというようなことが非常に大きな関心事なのですけれども、それがはっきり見えないような形になっているのがちょっと心配なところです。   1は父母の婚姻中の親子交流、2は試行的実施についてですよね。一般的に実施している親子交流については項目が立っていないのですけれども、それでいいのですか。一般的な項目が立つとしたら、その中で、DV的なことがある場合は、それを止めるとか実施しないというようなことが明記されるべきであろうと思うのですね。かつそれに付随して婚姻中の親子交流や試行的実施の場合にも。そのような構成になっていないところが、親子交流に関して心配しているところです。 ○大村部会長 ありがとうございました。落合委員からは、DVや虐待に対する対応を図るという観点から、全体としての規律の整合性をチェックするということが必要ではないかという総論的な御判断に基づいて、三つの点について具体的な御意見を頂いたものと受け止めました。   一つ目が、急迫というところで、先ほどからほかの委員からも出ているところですけれども、DV・虐待の問題が見えにくいのではないかという御指摘だったかと思います。   二つ目が、第2の2の(1)の@、Aとが整合性がとれていないのではないかといった御指摘だったかと思います。おっしゃったことはよく分かるのですけれども、他方、@、Aは多分、案としては現行法の他の規定と整合性をとるという形で、このようなものが置かれていると思いますので、この中での整合性をどうするのかということと、外部の他の規定との整合性をどうするのかということを併せて考える必要があるのかと思って伺いました。   それからもう一つ、最後に、第4についてですね。親子交流のところについても、DVに対する配慮がこれで大丈夫だろうかという御指摘を頂いたと受け止めさせていただきました。 ○落合委員 一つだけ付け加えさせてください。第2の1の急迫の事情についてのところで、配偶者間の暴力についての記載がないということも申したつもりです。 ○大村部会長 はい、分かりました。これでは配偶者に対するものが入らないのではないかという懸念を示されたということでよろしいでしょうか。 ○落合委員 はい。よろしくお願いします。 ○大村部会長 はい、分かりました。 ○畑委員 畑でございます。私からは、第3の2の法定養育費のところで書かれていることについて、2点だけ申し上げます。   まず、1点目は、先ほどから少し話題に出ておりますが、法定養育費の(1)のただし書というのでしょうか、全部又は一部の支払拒絶の話です。   先ほど最高裁からもお話がありましたように、私も執行手続における審理、決定手続における審理というのが余り複雑困難なことになるというのは適当ではないだろうという感じは持っております。ただ、全部の支払拒絶か一部の支払拒絶かというのは、ちょっとそういう面では程度問題というところもあるような気もいたします。それからまた、もしこのような実体法ができるのだとすれば、それについて、取り分け決定手続において余り複雑困難なことにならないような解釈適用を考えていただくということも考えられるかなと思いましたし、こういう実体法を作るのであれば、そういう解釈適用は許容されるということになるのではないかとも考えているところです。   若干付言いたしますと、このただし書というのは、もしできれば、ある種の延期的抗弁みたいなものになるのではないか。すなわち、訴訟法的には権利抗弁などと呼んだりするものになりそうでありまして、恐らくこれは債務者の側が出てきて、こういうことを主張してきたときに初めて問題になるということになるのではないかと考えております。   それから、もう1点、5ページの一番下の(注2)でありますが、債務者の審尋ということが書かれております。恐らくこれは、今まで債務者側の手続保障について何らかの手当てが必要ではないかということが議論されてきたことの一つのまとめかなと思っております。   私としては、今までも発言したことがあったと思うのですが、法律のレベルの話ではなくて、恐らく裁判所規則の問題なので、この審議会の直接の対象ではないと思いますが、債務者に対する手続的な教示について、現在、一定の規定が置かれておりますけれども、取り分け一般先取特権の実行ということになると、債務者の側から見てもかなり複雑という面もございますので、手続的な教示をもう少し充実させるということも、もしこういう立法がされるのであれば考えてしかるべきかなという感じはしております。 ○大村部会長 ありがとうございます。畑委員からは、第3の2の法定養育費について2点御意見を頂いたかと思います。   一つ目は、【P】が付いているところについて、全部又は一部ということで、全部に限るべきだという御意見もあったけれども、全部、一部はある意味では程度問題であって、立法がなされれば適切な運用で対応していただくということも可能なのではないかという御意見だったかと思います。   もう一つは、(注2)に関連する形で、手続的な教示というものを進めていくということも考えられてしかるべきではないかという御意見を頂戴したかと思います。   まだ手を挙げてられる方いらっしゃいますけれども、ちょうど頃よいところなので、休憩させていただいて、更に御意見を頂戴したいと思います。ただいま14時48分ですので、10分ほど休憩いたしまして、15時に再開したいと思います。休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開したいと思いますので、お願いいたします。   休憩前に、第2から第7までについて御意見を頂戴しておりましたけれども、引き続き第2から第7までについて御意見を頂きたいと思います。御発言ある方は挙手をお願いできればと思います。 ○柿本委員 柿本でございます。私からは、3点ございます。   先ほどの落合委員と重なるところもありますが、意見を述べさせていただきます。   まず1点、第2の1の(1)というか、1全般についてでございますが、こどもの安全、こどもの利益を守るためには実際に監護する親の安全と安心の保障も重要であると考えます。これは、法律家ではない、市民の感覚でございます。   そして、その急迫の事情について必要性とか相当性など、具体的にどのような場合を指すのかは、ブレがないように定義しておくべきと考えます。   それから、2点目でございますが、2のクのところでございます。当該協議の経過を考慮するに当たって、いろいろなことが挙げられておりますが、これの例えば裁判外紛争手続(ADR)などについて、以前、ある弁護士の方が、裁判外紛争解決手続を手段として挙げていらっしゃったのを取り下げたこともあったように記憶しております。ですから、いろいろな事情を勘案するというふうに書いていただいているのですけれども、それぞれ情報として足りるようなものが用意できるかどうかというのが私には疑問です。   3点目は、法定養育費のところでございます。著しく窮迫したことを証明したときは、全部又は一部の支払を拒むことができるというところ、私は一部が入っていてもよいのではないかと考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。柿本委員から3点御指摘いただきました。   第1点は、急迫の事情についてですね。落合委員の御発言に言及されましたけれども、親の安心・安全ということが重要だという御指摘を頂きました。   それから、3点目の法定養育費については、【P】になっている部分、一部というのが入った方がいいのではないかという御意見を頂戴しました。   間の2番目の御意見なのですけれども、第2の2のクについて御意見を頂いたと思うのですけれども、ここで不十分だといった御指摘されたのは、具体的には…… ○柿本委員 ごめんなさい。ADR手続とかそれ以外のものも、利用の促進に関する法律などはできていても、現時点では実効性のあるものなのかどうか不明であるということでございます。 ○大村部会長 ここで挙がっている第三者が関与する手続の実効性を確保する必要があるのではないかという御意見として承りました。   ほかにはいかがでございましょうか。   では、石綿幹事、それから佐野幹事ですね。 ○石綿幹事 幹事の石綿です。基本的にゴシックには賛成で、解釈のレベルの話で五つ、細かいですが、指摘させていただければと思います。   まず、今日、問題になっている第2の1の(1)のウの急迫の事情ですが、この点については前回の沖野委員の御発言の整理のように理解しておりまして、協議をしているということでは時間的に間に合わない、そのことは比較的広く解し得るのではないかというふうに前回、沖野委員の御発言もあったかと思いますし、私もその理解に立っておりますので、現状の文言でよろしいのではないかなというふうに理解をしています。   それに関連して、2点目が、先ほど赤石委員からも出た、一方が単独で行ってしまった場合の扱いについてです。繰り返し申し上げている気がしますが、現状、民法第825条がありますが、それは共同名義でした場合ということですので、それ以外の場合はどうなるのか。特に規律を設けないということがこのゴシックの方針だと思いますので、規律を設けないのであれば、解釈論的にどのような対応方法があり得るのかということは、現状の学説の議論も含めて整理をしていただければ有り難いと思います。それが2点目です。   3点目が、第2の2の(1)のエの認知についてです。これも赤石委員の御指摘にあった、現状、未成年の子の認知は父が単独でできてしまうということとの関係です。ここでは認知制度の改正には踏み込まないということかと思いますが、私自身はその御懸念の点、父が一方的に認知をしてしまったというような事情は、キの部分で父、父母と子との関係や父と母との関係というところで考慮し得るのだということ、そこでこどもや母の意に反した認知があったという事情は十分に考慮され得るのではないかというふうに解しておりますが、そのような解釈で問題ないのかということは御確認いただけると有り難いなと思います。それが3点目でございます。   4点目が、第3の2の法定養育費の(1)のエについてで、法定養育費の終期ですが、請求者が子の監護を主として行わなくなったときとは、これは誰との比較なのかということが気になっております。基本的に請求者と相手方の関係なのだと思いますが、部会資料35−2の12ページの下から2段落目ですかね、「なお」からのところにあるように、養子縁組した場合を終期とすることも考えられ得るというような考え方が出ていますが、いわゆる連れ子養子縁組をしたような場合というのが、このエに当たり得る可能性があるのか、あるいはそれは別途なのかといったようなことは、解釈論上整理をしておいた方がよいのかなと思います。それが4点目です。   最後、5で養子縁組に関する規律、第5の2の【P】というところ、2の(1)はこのような規律の形で設けていただくということが好ましいかと思います。   細かく分けると二つ指摘がありまして、一つ目は、向井幹事がおっしゃった「特に必要がある」を明確にする、関心を失った場合どうなるのかということです。このような規律が設けられる趣旨というのは、補足説明によると、従前から監護をしていた人が監護できなくなるというようなことを防ぐというのがそもそもあって、それとの関係、バランス等を考えると、養育に関心を失っているような場合というのは、特に必要があると認められる場合に入るのではないかと私は個人的には考えておりますが、その辺りも整理していただければと思います。   それに併せまして、2の(1)のような規律が入るのであれば、補足説明の方の24から25ページにかけて記述があるように、監護者が指定されている場合についても監護者が同意をしていなくても養子縁組ができるための調整の制度を設けること、つまり、同意に代わる審判をするという規律を設けるというのがバランスのとれたものになるかと思いますので、これの規律の新設も御検討いただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。石綿幹事からは、ゴシックの部分については基本的に賛成であるという御意見を頂いた上で、5点について個別の御意見、解釈に関する御意見を頂戴しました。   まず最初は、急迫の事情というので、これは広く解し得るという前回だったでしょうか、沖野委員の発言に賛成であって、そのように解し得るのではないかということですね。   それから、2番目、3番目が、先ほどの赤石委員御指摘の点と関わりますけれども、第825条との関係で調整を要する、解釈が必要なのではないかという御指摘と、認知の問題は、ここでは対象外だと申し上げましたけれども、ここでの問題との関係でいうと、キの解釈の中に反映させることができると考えられるのではないかという解釈を示されたということですね。   そして、4番目、5番目は養子関係でしたけれども、4番目は法定養育費のところの2の(1)のエに連れ子養子のような場合が含まれるのかどうなのかということを明らかにする必要があるのではないか。そして、5番目は、第5の2の【P】になっているところで、先ほど向井幹事から出ていた関心を失ったといったケースはこれに当たるのではないかという御意見を頂きました。あわせて、補足説明の方に出てくる監護者が指定されている場合についても、ここの提案と平仄を合わせる規定を置いた方がいいのではないかという御意見を頂戴しました。これで漏れていないでしょうか。 ○佐野幹事 幹事の佐野です。細かい点ですが、全体にわたって御指摘をさせていただきます。   まずは三つ、運用解釈に関するところかと思いますが、第2の1の(1)で問題となっている急迫の事情ですけれども、この部分に関する懸念としては、父母が同居中に離婚調停をすることにより、家庭内が高葛藤となり、こどもにとって酷な状況になることが多いので、そういう状態を回避するための別居というのも、この急迫の事情に含まれるという理解でよいのか、そうでないのであれば、むしろ、「適時の」を除いて、「父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては、適時の親権行使をすることができずその結果として子の利益を害するおそれがあるような場合」と明記した方がいいのではないかと、改めて思っています。   ただ、「急迫の事情」という規律になったとしても、現行法下、共同親権で行使すべきところを単独で行使してしまったという事案、例えば他方親権者の承諾なく子連れ別居したとしても、他方親権者に対する不法行為が成立するのは、行為態様とか経緯とか目的等を総合考慮して判断されているという枠組みだと思いますので、その枠組み自体の変更はないものと理解をしております。   それから、第2の1の(2)、日常行為とそうではないものの振り分けですが、ここに関しては実務の運用上、かなり混乱が生じるところかと思います。ですから、前にも御意見があったかと思うのですが、こういう場合は単独で可能、こういう場合は共同行使が必要といった何らかの具体的な例示というのは恐らく必要になるだろうと思っております。   また、2の(2)のAは、親権者指定をせずに協議離婚する場合の規律ですけれども、離婚届が出されなかった場合、離婚がまとまらなかったために、協議離婚届が提出できなかったという場合には、却下決定されるよりも、離婚調停にスライドする方が当事者にとっては便利かと思います。今、家庭裁判所の期日指定も時間が掛かり、数か月先になってしまうこともありますので、例えば、申立て時に予備的申立てとして離婚調停を選択させておくなどということが考えられないかと思います。   次に、第3の2の法定養育費の、(1)【P】の一部、全部のところですけれども、やはり少しでも支払をしてもらえるということは、債権者の方にとっては非常に重要なことですので、これは一部というのを是非入れていただければと思っております。   今回、法定養育費の終期に、(1)のアで子が成年に達したときというのが出てきておりますけれども、これは今の家裁の裁判実務に準じて二十歳とすべきではないかと考えております。審判・調停による養育費の終期が、法定養育費の終期に引きずられるというのが懸念されますし、高校3年の4月生まれの子などは、高校3年になったとたんに養育費の終期が来て、ぱっと支払を打ち切られてしまうというのはどうなのかと考えます。   第4、婚姻中の親子交流のところですけれども、こは、ゴシックの部分に関するところにはなりますが、まず質問で、婚姻中の親子交流は申立権者を明記する、すなわち、「父又は母の請求」と1の(2)には申立権者の規律を設けるけれども、現行第766条の修正となる第2の3のところには「父又は母の請求」は入れないという趣旨なのでしょうか。というのは、この申立権者につき、今回、親権変更には子も申立権者として入りましたけれども、子の監護に関わる部分も、パラレルに考え、子が申立権者として入るべきではないかと考えるからです。特に、面会交流の方法などを変更する場合、こどもの方は変更を希望しているけれども、父母が申立てをしてくれないというような場合には、こどもは手続きに参加もできませんので、一番自分にとって利害があるところである監護の部分について、子の申立権が入っても、親権変更との関係ではおかしくはないのではないかと思います。   あとは、第4の3の祖父母等の面会交流、第三者の面会交流なのですが、前回申し上げましたとおり、申立てが多数発生して、こどもの生活の安定が脅かされるのを非常に懸念しております。通常、父母が面会できるのであれば、そのときに祖父母も面会すればいいと。それができないから、祖父母の面会交流、こういう形で出てきているのかもしれませんけれども、例えば非監護親が、まず、非監護親自身の面会交流を申し立て、その後、非監護親が祖父の面会交流を申し立て、その後、非監護親が祖母の面会交流を申し立てるとなると、3回ぐらい申立てができることになる。それにその都度対応するのはかなり負担になりますので、例えば父母が申し立てる場合には、自身の面会交流に付随して祖父母の面会交流の申立てができるとか、何らかの申立て濫用防止の方法が考えられないかと思っています。   あと、父母以外の親族も、監護要件を必要的としてもよろしいのではないかと思っています。   それから、第5の養子の【P】のところなのですが、これに関して、元の親権者間の共同親権と代諾許可後の共同親権、要は養親との共同親権と、どちらがこどものその先の生活に資するかということを考える場面と捉えるべきではないかと思っております。そうだとすると、その手続の中で、両方の共同親権というのを比較して、「特に必要」という要件ではなく、養子縁組をした共同親権の方が、その後こどもにとって、より利益になるかという観点から、養子縁組を認めるべきか認めないか、を考えるような枠組みにすべきではないかと思います。 ○大村部会長 佐野幹事からは多数御指摘を頂きました。最初の方の幾つかは、解釈運用に関する御意見とおっしゃっていたのではないかと思いますが、違っていたら御指摘を頂きたいと思います。   第2の1の(1)の急迫の事情についての考え方、それから第2の1の(2)の日常の行為についてで、具体的な例はどうなるのか、あるいは2の(2)のAで、離婚届が出されなかったような場合について、運用の工夫ができるのではないかといった御指摘を第2については頂きました。   第3については、【P】になっている全部又は一部のところについて、一部を含めるのに賛成であるという御意見と、それから列挙されている終了事由のうちのアを、成年というのを二十歳に置き換えるべきだという御意見を頂いたかと思います。   それから、第4について幾つかおっしゃった中で、最初の部分がちょっと十分に理解できなかったのですが、申立権者にこどもを付け加えるべきだというのは第4との関連でとおっしゃったと思うのですけれども、第766条とおっしゃったのですか、それとも親権者の変更、どちらをおっしゃったのですか。 ○佐野幹事 第766条との関係で、第2の3の方では申立権者について何か変更するような規定ぶりにはなっていないように思うのですが。 ○大村部会長 第819条の方の話ですか。 ○佐野幹事 いえ、第2の3。 ○大村部会長 第2の3。 ○佐野幹事 はい。第2の3、これは第766条を変更するという規律だと思うのですけれども、現行の第766条は特に2項において、父又は母の請求により、とはなっていない。そこは特に修正せずに、第4の部分については父又は母の請求により、というのを入れるのだろうかという疑問が一つあります。 ○大村部会長 分かりました。 ○佐野幹事 その上で、なぜそこが問題になるかというと、いずれにも子の請求を認めた方がいいのではないかと考えるからです。 ○大村部会長 分かりました。それから、第4の3については、申立ての濫用を防止するような配慮と、それから要件を絞り込むということが必要ではないかという御意見だったかと思います。   第5の養子のペンディングになっている【P】のところについては、子の利益のために特に必要があるという要件ではない、別の要件の方がよいのではないかという御意見だったかと思いますけれども、その中身について、特に何か御意見があるというわけではないということですね。 ○佐野幹事 「特に必要がある」の「特に」は必要ないのでは、と思っております。 ○大村部会長 「特に」は必要ないということですか。 ○佐野幹事 はい。 ○大村部会長 分かりました、ありがとうございます。   ほかは、窪田委員から手が挙がっていて、あとは青竹幹事ですか、それから井上委員という順番で、取りあえず伺っていきます。 ○窪田委員 委員の窪田でございます。もう全体として具体的な案の取りまとめの段階に入ってきておりますので、その上で、それを前提として検討していただきたいということです。   私の方からは、1点だけなのですが、法定養育費の終期について、部会資料35−1の5ページ、第3の2の部分なのですが、ア、イ、ウ、エという形で四つ、終期について定まっております。   先ほど石綿幹事から、エが、請求者が子の監護を主として行わなくなったときという中に養子縁組を含むのかどうなのかという、これは御質問だったのではないかと思うのですが、そうした観点からの御発言がありました。同じ点について私も気になっておりましたので、重ねてということになるかもしれませんが、まず、エそれ自体は、請求者が子の監護を主として行わなくなったときということですから、子の監護を主として行わなくなったので、法定養育費を請求する前提は欠けるということなのだろうと思いますが、そのときの監護を主として行わなくなったかどうかというのは、実体的な判断として、実際に監護を行っているかどうかという事実関係の問題として判断されるというタイプのものなのだろうと思います。   それに対して、養子縁組をした場合に、なおそういうふうな形で法定養育費の請求主体たり得るかというのは、最終的にはこの問題の背後にある、誰が、扶養義務について優先的な義務を負うのかというような、扶養に関する優先劣後の規範的な関係に関するものなのだろうと思います。そうだとすると、エの中にそうしたものを入れても構わないのかもしれませんが、かなり性格の違う問題が本来二つあって、それがこのエで解決されるということになる。それが適切なのかどうなのかということが、私自身はちょっとよく分かりません。   本来であれば、エの部分で二つの問題を、うまく平仄が合うような形で解決できるような規律を設けることができれば一番いいのかもしれませんが、それがうまくできないのだということになると、規範的な判断の問題は明確にはされないまま、事実上、監護しなくなったら請求できないのは当たり前だよねという、これは、これ自体は多分、2の法定養育費の(1)本文のところからも説明できるのだろうなというものだろうと思いますので、ちょっとその辺が気になっております。   どういうふうにするかということで、残り時間少ない状況ですが、今のままのエがちょっと適当であるかどうかについては少し違和感も感じますので、御検討いただければというのが私からの意見です。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほど石綿幹事の御発言の中にあった、法定養育費の終了事由としてのエに養子縁組が含まれるのか、連れ子養子の場合が含まれるのかどうかということなのですけれども、それをここで読むのはなかなか難しいので、この形でない形でどうするのかということを考える必要があるのではないかという御意見として承りました。 ○青竹幹事 第2の2の(1)エについて、赤石委員と石綿幹事が御指摘された父が認知した子の場合についてもそうですけれども、ウの子の出生前に父母が離婚した場合についても、本来は時間を掛けて再検討すべき問題かとは思われます。どちらにしても、原則として母を単独親権者とする規定になっています。ウの出生前に父母が離婚した場合には、子の出生前に父母の協議で親権者を定めることが認められるという解釈もありますので、原則として母を親権者とする規律を維持する必要があるかどうか、議論が分かれる問題かと思います。   しかし、エの点もそうだったのですけれども、この問題は新たに多くの検討を必要としますので、この部会では態度決定をせず、現行法を維持し、ただ、共同の可能性を開くという点のみを修正するのみとする要綱案が望ましいのではないかと思います。ただ、現行法でも、これらの場合に、母が単独親権者であるとの原則をとっているとの説明を本来は(注)などに明記し、この要綱案を見た人が母を単独親権者とする原則を、部会で新たに設けるよう決定したという誤解がないようにするのが本来は望ましいかとは考えております。もっとも、民法を知っている人には当たり前のことですので、必要がないのかもしれません。   それから、第3の2ですけれども、(1)「全部又は一部の」では、「一部」はない方がいいという御意見も多く、その理由についてお聞きしていますと理解できるように思いました。現行民法の制度でも、全部又は一部について家庭裁判所、裁判所が判断するというタイプの規定があります。例えば、死亡した人に相続人がいるかどうか明らかではない場合の特別縁故者の財産分与の請求という制度がありますけれども、この場合には家裁が全部又は一部の分与を決定しますし、遺留分についての請求についても、裁判所が全部又は一部の支払につき、期限の延期を判断することができるようになっています。民法のほかの制度との比較からは、全部又は一部とする規定の仕方は、当事者の事情を柔軟に考慮できるという面で妥当な面もあるかと考えましたので、意見を述べさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。青竹幹事からは2点、御意見を頂きました。   第2の2の(1)のエについて、先ほど赤石委員と、それから石綿幹事から御意見を頂戴しましたけれども、ウについても検討すべき問題があるのではないかという御指摘でしたけれども、今回はそれはエの本体部分と同様、ちょっと難しかろうという御意見だったかと思います。   そして、法定養育費のところの【P】になっている部分については、現行法との関係で一部というのを含めるというのがよいのではないかという御意見を頂戴しました。ありがとうございます。   井上委員、それから大石委員ということで。 ○井上委員 ありがとうございます。委員の井上です。   ゴシックの修正というよりは、全体に関連する要望という観点で発言をさせていただきます。   今回、子の人格を尊重し、子の利益を確保する観点から、父母間に対立があるときや協議が調わないときなどにおいて、家庭裁判所が関与する仕組みが多く設けられています。こうした点を鑑みれば、家庭裁判所に期待されている役割、また、果たすべき役割は大きなものがあり、財源を始め人材の確保や、子の福祉という観点を踏まえた継続的な研修機会の確保など、裁判所における体制の構築をしっかりと行っていただきたいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。井上委員からは、全般に関連する要望ということで、今回の改正に伴って家裁の役割というのが大きくなるので、それに対応できるような様々な面での体制整備というのを要望したいという御意見を頂戴いたしました。   取りあえず、大石委員と沖野委員に発言していただいて、そのあとは、今メモしてもらいましたので、順次発言をしていただきたいと思います。 ○大石委員 ありがとうございます。委員の大石です。   初めに、今、井上委員がおっしゃったことについては全面賛成いたします。   私の意見は、2の法定養育費の(1)のエ、終期について今、皆様で議論されているところなのですけれども、それについて、私も主としての判断基準のところがやや曖昧であると考えますので、それについてもう少し議論を深める必要があるのではないかということを申し述べたいと思います。   部会資料35−2の方に、ここで言う監護というものが、監護者指定とはまた別ということが12ページに説明されてはおりますけれども、やはり監護者を決めていない場合とか監護の分掌などがある場合に、どのように判断の基準となるのかといったことについて、もう少し整理していただけるとよいかなと思います。   さらに、養子縁組との関係なのですけれども、養子縁組がなされた場合を終期とするときに、これは、そうすると、もしかすると養子縁組することが望ましいにもかかわらず、法定養育費という金銭的なインセンティブが得られなくなるということを考えて、養子縁組を避ける方向に人々を動かす要因とならないかということを少し懸念いたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。大石委員からは2点、先ほどの井上委員の御発言に賛成であるということと、それから法定養育費、これも先ほどから御指摘あるところですけれども、2の(1)のエが曖昧ではないかということと、あわせて、養子縁組についてそれを終期とするということがどのように影響を及ぼすのかということも考える必要があるのではないかという御指摘を頂きました。 ○沖野委員 ありがとうございます。沖野でございます。私も、第3の2の法定養育費について申し上げたいと思います。   一つは、全部又は一部という点なのでございますけれども、前回だったと思いますけれども、畑委員から、このただし書と、それから家庭裁判所による減免との関係について整理する必要があるという御指摘があったかと思います。それで、元々は家庭裁判所の判断によって、全部、一部の免除ということができるということだけれども、それを経ずしても、およそこのような事情があるときは全部を拒むということができるという形だったと思います。それに対して、一部を入れることになりますと、両者の関係というのが改めて検討の必要が出てくるのではないかと思っております。   もっとも、結局は減免もできる、一部を免除する、実質的にはそれを一部拒むという形でできるということを認めるのであれば、むしろ柔軟に、現在【P】となっておりますところを全部又は一部としてもよろしいのかなとは思います。そうしたときに、先取特権の問題ですとか執行の問題というのが指摘をされておりまして、ただ、それに対しては実体法がそうするのであれば、対応は可能ということであれば、一部ということを入れるということも考えられるのかと思います。ただ、そうなりましたときには、やはり全部を拒める場合の要件と一部でも拒めるという場合の要件が変わってくる可能性があり、具体的には支払能力を欠くというのがどれくらいの状況であるのかとか、生活が著しく窮迫するということがどのくらいの状況であるのかというのが、これも全部拒絶できるような状態を指しているのだというのと、一部であるというときにはそこの幅がもう少し出てくると思います。要件を変えろという趣旨ではなく、要件の解釈というものが少し変わってき得るのではないかと思うことが一つです。   もう一つは、家庭裁判所においても減免という方法が一方で用意され、最初から監護に関する費用の分担についての審判を申し立てて、その中で法定養育費についても減免ということを考えるということは十分ありますし、そのときはただし書によらず、端的に(2)だけでいくのかと思うのですが、同じく全部、一部の減免で、拒絶と減免がどう違うかという問題もありますけれども、支払わなくてよいという点は同じだとすると、その際の考慮要素などの関係ということについても考える必要があって、現在は支払能力を考慮してとだけになっておりますけれども、ただし書のような一種苛酷な状況というか、そういう状況に置かれるという事情も入れなくていいのかとか、さらには家裁になった場合には、請求者の方の事情というのも入ってき得るのかどうかといったことも気になっておりますので、全部又は一部というふうにするときには、もう少し考える必要がある事項が出てくるのではないかと思っております。   それは、全部又は一部問題についてなのですけれども、(1)のエにつきまして、請求者が子の監護を主として行わなくなったときが終期になるというのは、それはそうではあるのですが、窪田委員が御指摘になったように、そもそも子の監護を主として行う者に妥当しなくなったときには請求ができなくなるということですので、主体要件の方でも出てくる話ではないのかと思われます。そうしたときに、主として行う者なのかどうなのかということは、そもそも主体要件のところで不分明さがあるとは思うのですけれども、一旦こちらでまた同居親になるということなどが考えられますが、離婚後のこどもの監護をスタートしているという段階と、その在り方がいろいろ面会交流ですとか、事情がいろいろと出てきたときに、終期としての子の監護を主として行わなくなったときということを入れると、スタート段階では余り問題なかったものが、終期となるとこの部分がクローズアップされていって、一体主としてになっているのか、今も主としているのではないのではないかとか、共にやっているのではないかとか、何かそういう争いを生じさせるような気もしまして、これを終期として明示することが果たして適切なのだろうか、主体要件の問題として置いておけばいいのかもしれないということは思いました。どちらでないといけないというところまで判断が付かないのですけれども、少し検討する必要があるのかと思っております。   それから、養子縁組との関係は、やはり養子縁組というものがどういうものかと、養子になり、親権を得るということがしっかりとこどもの養育に、経済面も含めて責任を持つという、そういう法的な地位が、別の人がそれを担うのだということであれば、法定養育費もそこが終期だという考え方は、養子縁組自体を、あるいは養子縁組をするということ自体がどのくらいのことを要請されるというか、そういうものとして考えるのかという、そちらの方に関わってくると思うのですが、ただ、他方で法定養育費自体は、親権者であるからということではなく、父母であればということから来ているという、そちらの考え方との間で養子縁組があれば当然終了するという考え方が、果たして一貫というか、より整合的なのかということについては検討する必要があるのではないか。この期に及んで検討する必要があるというのは無責任ではないかと言われるかもしれませんが、もう少し考える必要があるのではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。沖野委員からは、第3の2の法定養育費について、2点について御意見を頂戴いたしました。   一つは、【P】になっている全部又は一部のという点で、御意見としては、一部というのを入れてもいいのではないか、あるいは入れる可能性もあるということを前提としての御意見だったかと思いますけれども、その場合に全部と一部とでは要件の解釈ないし運用が違ってくるのではないかという御指摘、それと、(2)の方の要件との平仄を合わせておく必要があるのではないかという御指摘を頂いたかと思います。   それともう一つは、これも先ほどから御意見が出ている法定養育費の(1)のエの子の監護を主として行わなくなったときという点で、スタート時と終了時ということで違うという考え方もあるけれども、終了時について、この規定を置くということによって取り組まなければいけないという問題も出てくるので、明示しないという考え方も一つの考え方だということだったかと思います。   あわせて、養子縁組については、養子縁組の意義をどう考えるかということとの関係で考える必要があり、当然終了という考え方でない考え方もあるという御指摘を頂いたと理解を致しました。   それでは、久保野幹事、棚村委員、武田委員、水野委員、原田委員、そして赤石委員、戒能委員という順番でいきたいと思います。 ○久保野幹事 ありがとうございます。幹事の久保野です。第5の養子に関する規律の2の【P】のところについて意見を申し上げたいのですけれども、その前に、井上委員から御指摘がありました要望につきまして賛同するということを、まず申し上げます。   そして、養子に関する規律の2の【P】のところ、「子の利益のため特に必要があると認められるとき」というところについてですが、まずこの【P】を設けることについて、また、この規律を設ける場合には、24ページから25ページにある(5)のような規律があることが適当であるという石綿幹事の御意見に賛成でありまして、その上で、「子の利益のため特に必要があると認められるとき」について、この表現のままでよろしいのではないかということと、あとその解釈について、気付いたことですけれども、これは第817条の7の特別養子における要件と同じ表現だと思います。そうしますと、狭すぎるのではないかという佐野幹事からの御懸念が当たるようにも思われるのですが、しかし、恐らく、特別養子の場合は、効果が大きく、同じ養子であっても実父母と子との親子関係が終了するかどうかという点で普通養子とは効果が大きく異なりますので、資料でも第817条の7が参照条文として挙げられていないのだと思いますし、おのずと具体的な適用というものも変わってくるのだと思っています。親子関係、実父母と子の関係が終了しない養子について考えていく要件になりますので、第817条の7の場合よりもより広く認められていくということになろうかと思いますし、判断枠組みの点におきましても、実父母も親子であり続け、新たに親子関係が創設され、その者が親権を持つということになりますので、先ほど佐野幹事がおっしゃったような相対的な判断ということがあり得るということになるのではないかというふうに私は理解いたします。   また、第817条の7については、実父母の監護等の不適切ということが条文に書かれていますけれども、そのような点を強調することについては、養子という仕組みとの関係で、特別養子においてでさえ必ずしも適当ではないという学説上の考えも強いかと思いますので、その点を踏まえましても、相対的な判断という枠組みで考える要件と捉えていくということが十分に考えられるのではないかと思います。   その上で、向井幹事から御指摘がありましたような例をどう考えるかというのは、養子の趣旨なども考えての解釈に委ねられて、今後の議論に任されるところが大きいとは思っておりますが、私自身の意見としましては、これも石綿幹事と同じ意見でございまして、無関心であるということをどのように捉えるかという点について、それより積極的に親権を行使できなくなる事由と認める方向で解釈していくということは十分にあり得るのではないかと思います。無関心、面会交流に応じないですとか、養育費の支払を継続して行っていないような一定期間の無関心というものを、親権の行使を否定する要件に当たるという解釈を行っていくということが十分にあり得るのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。久保野幹事からは、冒頭、井上委員の先ほどの御要望に賛成するという御発言があった後、第5の2の【P】の部分について、このような規律を設けるということに賛成である、あわせて、監護者等との意見対立がある場合についての規定の調整も必要であるという御意見を頂きました。   その上で、【P】のところの要件として、「子の利益のために特に必要があると認められる」という現在のままでよいのではないか、この文言によって、佐野幹事が懸念を示されたようなものについても対応ができると考えることができるという御意見と、それから、向井幹事が先ほどおっしゃったような問題について、石綿幹事がおっしゃった解釈が採れるのではないかという御意見を頂戴したと思います。 ○棚村委員 早稲田大学の棚村です。基本的には、ゴシックで提案をされていることに賛成です。   4点ほど、これまでの御意見や御議論を聞いて申し述べさせていただきたいと思います。   第1点は、パブリック・コメントの取扱いなのですが、これは赤石委員からも正確に反映したいという強い要望が出されている点です。もちろん正確に反映できればそれに越したことはないと思うのです。これまでの法制審でパブリック・コメントを頂いたのは、数も少なかったりいろいろあったのですけれども、ただ、これを調査審議の参考にさせていただくという趣旨で整理させていただいてきました。パブリック・コメントにつきましては特にこれを投票に掛けるような形で、正確に数を出して反映させるということは、これまでやってこなかったということについて指摘させていただきたいと思います。   それから、2番目なのですけれども、御意見の中で、要綱案に対する法制上の表現に関わるような御指摘とか、他の法令との整合性ももちろんあり得るのですけれども、民法それ自体の条文を変えるということになると、その体系性とか整合性の観点から、きちんとチェックするということが必要になりますし、ほかの法令との関係全体を考えるなら、例えば内閣法制局がチェックをされるということになります。このような法文の体裁の調整は、専門的技術的な立場からチェックが予定されてもいますので、この部会でできることには限界があります。要綱について条文化の観点からの御意見を出されるということはいいのですけれども、最終的には専門家による技術的なチェックがあるのだということで御理解を頂けるといいかなと思います。   それから、3番目なのですけれども、要綱案が条文化されたときの解釈運用の際の懸念とか、疑問点みたいな御指摘はかなり多くあります。これも、解釈運用の際の具体的な例を示すとか、あるいはQ&Aみたいなものを用意していただくとかということで、できるだけ、法律の解釈運用が統一されたり、はっきりどういうふうに使われるのかということが分かるように工夫するということで対応できるのではないかと思います。   それから、4番目は、正に井上委員からも、ほかの委員の皆様からもずうっとこれまでも指摘されてきましたように、法の整備とか見直しということだけではなくて、改正されたり新しい法がどういうふうに運用されるのかという問題ももちろんありますし、それからせっかくできた法制度がうまく使われるためには支援ということが必要です。したがいまして、井上委員からは、運用や紛争解決のため家裁の体制をきちんとしてほしいということにつきましてももちろん賛成です。ただ、こども家庭庁や、自治体が担っているひとり親支援みたいなことも非常に強化していただかないといけないと思っています。結局、法制の見直しだけを幾ら頑張ってやったとしても、実際には当事者やこどもたちに届かないというか、利用されないということにもなります。そこで、特に政府とか、あるいは責任を負っているところ、今後、国会とか行政に行くのだと思いますけれども、関係する省庁が法務省だけではなくて、きちんと支援の強化充実、それから紛争が起こった場合の家裁の体制の強化ということは是非心掛けていただきたいということは、改めて指摘させていただきます。以上、私からは4点を指摘させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員からは、ゴシックについて基本的には賛成だという御意見を頂いた上で、4点御指摘を頂きました。内容上の問題というよりも、この要綱案の案に関わる周囲の問題について御指摘ないし御確認を頂いたものと理解を致しました。   1点目はパブコメについて、これは参考資料という位置づけを従来してきたという御指摘。それから、2番目は、様々な御意見は出ていますけれども、文言に関わる問題については、これは法制局等も含めて、最後は技術的な調整をするということになるので、そちらに委ねることになるという御指摘。   そして、3番目は、解釈運用についての御懸念もいろいろ出ております。これについて、先ほど要綱案そのものには補足説明は付かないというお答えが事務当局からありましたけれども、法律ができますと一問一答とかQ&Aとかという形で解説書が書かれますので、その中で一定の考え方を示すということが行われるであろう。それは一定の考え方ということで、それは先ほど申し上げましたように、公定解釈になるわけではありませんけれども、一つの指針というのが示されるであろうということだと思います。   そして、4番目、これは先ほど井上委員の御発言があって、複数の方から賛成だという御趣旨の発言を頂いております。この後も、井上委員の御発言に賛成だという方いらっしゃると思うのですけれども、家裁の支援ということに限らず、関係官庁や自治体等の支援というのも是非考えていただきたい。これは、政府部内で対応していただけるように、法務省としても考えておいていただきたいという御要望として承りました。ありがとうございます。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。まず冒頭、井上委員がおっしゃった家裁の強化、ここは反対される方いらっしゃらないと思いますが、基本的には賛同するものでございます。   その上で1点、確認させてください。基本的には政府に対しての要望になるのかと思いますが、この部会の中でどういう取りまとめの仕方をして、どういう形で出せるのか、まずそこを知っておきたいなというふうに思います。今、分かる範囲で結構です。別途教えていただければと。   では、内容に関して発言をさせていただきます。第2と第3に関してということで、まず切らせていただきたいのですけれども、基本的に第2の1から3に関しましては、今のゴシック、部会資料35−1、この表記を基本として進めていただければなというふうに思います。   1から2の中身についてさらにと触れさせていただきますけれども、今回の補足説明、部会資料35−2、拝見させていただきました。急迫の事情に該当する事情、ケースに関しても、一定の表現がなされているというふうに私としては思っております。   今日もいろいろな意見も出ておりますが、それらを踏まえて、今後、補足説明の更新があるのであれば、そこをどう表現できるか御検討いただく形になるのかなと、私個人的には現状の事務当局の御説明どおりでよいのではないか、こういうふうに思っております。   2に関して、これは質問になります。本日の御意見の中でも、第2の2(1)のキの部分、いくつかのケースを例に御意見があったと思います。その中で、子の心身に害悪を及ぼすおそれ、有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれ、これが改正後の実務ではどのように判断されることになるのか。例えば、婚姻中に一度暴力行為がありましたと、その程度や内容にかかわらず、常にこのおそれがあるというふうに認定されるのか、個別事案によると思いますので、お答えしづらい部分とかあるとは思いますけれども、この点に関しても現在、御説明いただける範囲で御説明を頂きたいと思います。   個人的に私は、棚村先生からQ&Aという御発言もありましたが、基本的には事務当局からの部会での答弁の内容がQ&Aに入っていくのかなと思っておりますので、あまり質問ばかりで時間を使いたくはないのですけれども、申し訳ないですが、本日のところはこの2点をまず確認をさせていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員からは、先ほどの井上委員の御意見には賛成であるということで、その上で、要望の取扱いについて何か具体的な方策があるのかという御趣旨の質問でしたか。 ○武田委員 そうです。どういう形で、いわゆるこの要綱の中で追加要素として出していくのか。 ○大村部会長 それは、後で、可能な範囲で事務当局に答えていただきたいと思います。   そして、中身には賛成ということであったのですけれども、急迫の事情については、これでいいのではないかという御意見だったかと思います。   第2の2の(1)のキの@、Aについては、これは運用がどうなるのであろうかという御質問だったかと思いますが、何か御要望というか御意見があれば、むしろ言っていただいた方が議事録にも残りますので、よいのではないかと思います。質問ということであれば、可能な範囲でお答え願いますが。 ○武田委員 現時点で事務局より、お答えいただける範囲で結構です。 ○大村部会長 では、事務局の方で、今の2点について御質問という形になっていますので、何かあったらお願いします。 ○北村幹事 1点目につきましては、先ほど来、御要望等を頂いているところではございますが、この法制審議会でできることとできないこととの関係で、どのように取り扱わせていただく、あるいはどのような手段があるのかということについては、なおちょっと検討させていただきたいと思っております。   2点目につきましては、武田委員の方からも、個別の事案の問題であるというふうにおっしゃっていたとおりかなとは思っておりまして、最終的には個別の事案における裁判所の事実認定の問題に帰着するのかなとは思っており、一概にお答えするというのは難しいと思っております。ただ、特定の事実だけで機械的に判断するというのではなく、通常そのおそれを積極的に基礎づける事実だったりとか、消極的・否定的な方向に働く事実等を総合的に考慮して判断するというのが一般的な裁判所での判断なのかなと私自身は認識しております。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○水野委員 ありがとうございます。委員の水野でございます。まず最初に、井上委員の御要望にもちろん私も賛同ですし、それから棚村委員が言われたような、こども家庭庁を始めとする行政の支援についても是非お願いしたいと思います。   次は、具体的な話になりますが、先ほど佐野幹事が御発言されたことについて、私が読んだ理解と違っていた御理解でしたので、その点についてだけ、申し上げます。もし私の理解が間違っているようでしたら、事務局から御教示いただいてもいいかと思います。   具体的には、第4、親子交流に関する規律の3の親以外の第三者と子の交流に関する規律についてです。佐野幹事から、申立ての濫用について御懸念の声があったのですが、私はここの書きぶりと、それから部会資料35−2を併せて、そういうことはない書きぶりなのだと理解しておりました。   まず、3の(1)のところに、「特に必要があると認めるときは」とあり、これを非常に制限的に解するという解説が部会資料35−2の20ページから21ページにかけてあります。「特に必要があると認めるときは」とありますし、それから(2)の方で、「イに掲げる者にあっては、その者と子との交流についての定めをするため他に適当な方法がないときに限る。」という書きぶりです。先ほど佐野幹事の挙げられた具体的例は、親がやって駄目だったのに、次に祖父母が順番に出てくるという例でした。けれども、父母の一方の死亡や行方不明等の事情によって、父母間の協議や父母による申立てが期待し難い場合に限定するという書きぶりがしてありますから、その例は、あてはまらないのではないでしょうか。親がやって負けたので、今度は祖父母が順番に出てくることはないのだろうと私は理解しておりました。   それから、21ページの方でも、一旦受け付けておいて、審査の中で、実体的な要件の中で考えればいいではないかという考え方に対して、相手方となる父母の負担が増加したり、子が多くの紛争に巻き込まれたりするおそれが生じることは避けられないと思われると否定的に書かれてあります。濫用に対する危惧を相当はっきり書き込んだ内容だと理解しておりましたので、これだけ条件を制限していれば大丈夫なのだろうと私は読んでおりました。その点について発言させていただきます。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。水野委員からは二つあって、一つ目は、井上委員の御要望に賛成する、その他の機関も含めて要望することに賛成するということ。   それから、第4の3について、先ほど佐野幹事から濫用の懸念があるということで対応が必要ではないかという御指摘があったけれども、現在の規律であれば、その可能性というのは少ないのではないかという御意見をいただいたと理解を致しました。ありがとうございます。 ○原田委員 委員の原田です。ありがとうございます。   皆さんの発言があったところも踏まえて、ちょっと順不同になりますけれども、まず、養子の規律のところですけれども、私は基本的に佐野幹事がおっしゃったことに賛成ですが、久保野幹事がおっしゃった、こういう文言でも相対的な判断があり得るということで、向井幹事がおっしゃった無関心は認める方向であるし、必ずしも実父母の監護が不適切であるという解釈はしないということでしたので、そうすると、実父母の監護が不適切であるというような解釈よりも、もう少し広い相対的な判断がここでできるのだという趣旨で言ってくださっているのであれば、私もそれに賛成します。   それから、第2の2の親権者を定めないで協議離婚する場合を認めるという場合で、それでも協議離婚届が出されなかった場合は、却下よりも離婚調停の方がいいのではないかという佐野幹事の意見に賛成です。   それから、法定養育費の一部か全部かということですけれども、一部というふうにすると、その判断に時間が掛かって迅速な執行なりができないというお話がありましたが、弁護士の中で議論したときに、一部という考え方を例えば2分の1にすることができるとかというふうな、もう少し判断をしやすい決め方にしておけば、そんなに時間は掛からないのではないかという意見があって、私もそうだなと思います。   それから、終期を成年ではなく、二十歳とすべきというのにも賛成します。   それから、皆さんいろいろ意見が出ました急迫の事情のことなのですけれども、どうして急迫にこだわるのかというのが私は理解できないです。解釈において、父母の協議や裁判所の判断を経ていては、子の利益を害するおそれがある場合という点については、どなたも反対しておられないと思うし、ここに解釈の部会資料35−2に書いてあることについて異論を唱えられる方はいらっしゃらないわけですけれども、そうだとすると、この急迫だけでは不安だという意見がある程度出ている中で、なぜ父母の協議や裁判所の判断を経ていては子の利益を害するおそれがある場合という書き方に反対をされて急迫にこだわられるのか、理解ができません。   仮にどうしても急迫という文言にこだわられるのであれば、先ほど池田委員が言われたような提案も一つの考え方だと思いますし、また、解釈において、急迫という概念は時的、つまり急迫性を重視しないということを明確にすべきだと思います。   それから、子連れ別居の適法、違法性の評価は、現在行われているのでは、こどもを連れて家を出た場合と子を残して自分だけ家を出た場合とで、どちらが子の健全な生育に資するかということと、協議の実現可能性があったかどうかという100日面会交流裁判の控訴審判決などで基準とされていてここを変えないということを確認したいと思います。これを明確にしておかなければ、DV保護法が被害防止の方法として、被害者が逃げるということを基本にしているということとの整合性や、これを行政やその他の支援者が支援する場合、弁護士もこれ、いや、それはもうしようがないでしょうと言っていいのかどうかすごい悩むことになると思いますし、懲戒とか損害賠償の請求の対象になるということを考えれば、本当に支援、あるいはアドバイスにためらわれる例が多くなるのではないかと思います。支援が滞る可能性がないように、ここはきちんと解釈を確認していただきたいと思います。   それから、離婚後共同親権についてですけれども、ネット上では、今回の、この要綱案はまだ出ていませんが、部会資料30−1に関しては、原則共同親権だというふうに言われておりますし、国会議員の方でもそのように発言されている方がおられます。なので、ここでは原則共同親権に合意したわけでもないし、もちろん私は原則単独親権に合意したと言っているわけでもありません。この場合はという、前回の私の発言を取り入れていただいたということは、原則・例外という関係ではないという点を受け入れていただいたというふうに解釈しておりまして、記者レクとか国会や国会審議でもそのように説明していただきたいと思います。   それから、第2の2の(1)のクですけれども、第三者機関を使った場合、池田委員も言われましたけれども、これは様々な軽重をもって判断すべきで、調停であっても、当事者がこういう合意ができましたという成案を持っていけば、そのままになることはすごく多いです。ADRや公正証書だったらもっとそうだと思います。ですから、第三者のところに現れる前に、いろいろな力関係によってそういう合意をさせられたという場合もあるのだということを解釈においては是非理解していただきたいと思います。   それから、試行面会についてですけれども、現在行われている試行面会は、裁判所が紛争の経過や当事者の意向を十分に聞き、ある程度の年齢のお子さんには直接面会した上で、可能と思われる方法を試行していると思います。中間試案では、保全で面会をしたり、申立て時から一定期間内に面会をという案が出ましたけれども、これに対してはパブコメで裁判所からも、裁判所の中立性に対する当事者の信頼を損なうという、慎重な意見が出されました。そのような意見を受けて、保全の早期の面会という案が消え、今回の試行面会ということになったので、早期に実現するためという目的ではなく、飽くまでも事実の調査として行うものだと考えられていることを確認したいと思います。   そして、ちょっと前回、ある委員が言われた弁護士同士でも結構話し合ってやってもらっていますみたいなものを事実の調査に含めるのかというのは疑問で、事実の調査というのは飽くまでも裁判所が主体的に行うものではないかと。そうであれば、私は調査官を関与するのが妥当だ、当然ではないかと思います。今、人的・物的、裁判所の基盤がない中でも、できるだけ調査官には関与していただきたいというふうに思います。   今現在、調査官は大きい庁に集っていて、調査官がいない支部がたくさんあるのです。こういう制度にするのであれば、井上委員も言われたような裁判所の物的・人的整備が是非必要だと思いますし、それだけではなくて、例えば皆さん、法テラスという、経済的に困窮されている方が立替えを受けて、弁護士費用の立替えを受けることができるという制度を御存じだと思いますが、これは飽くまでも立替えなので、償還しなければいけないのですよ。なので、たくさんこの申立てをすると、本当に借金がたくさんたまるということになって、今回のように、いろいろな事項についてもめたときに、裁判所に一々決めてもらうというために、弁護士に頼むということはほぼ不可能になるのではないかと私は懸念しておりますし、こどもの手続代理人というので、こどもが代理人を選任する場合、こどもは独自に債務負担行為ができないので、法テラスは使えないことになっています。代理援助は使えないことになっています。ですから、弁護士会がお金を出して法律援助という制度を作って、こどもの手続代理人に代理人を付けることができるようにしているのですけれども、これが増えていって、弁護士会の負担が増えていくというのは、私たちは実は大変だというふうに思っています。   ですから、こういう整備は、裁判所の整備だけではなく、あるいは行政の支援だけではなく、国がこどもたちがこの手続に参加していくための制度にお金を出すという整備を是非していただきたいということを、意見として述べさせていただきたいと思います。 ○大村部会長 原田委員からは、8点だったと思いますが、御意見を頂いたと思います。かいつまんでですけれども、一つ目は、第5の養子について【P】になっているところについて、これまでに出てきた解釈を前提にするということであれば賛成という御意見だったかと思います。   それから、第2の(2)のAで、親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てがされていることということで、これについて、佐野幹事が先ほど指摘された運用について賛成するということだったかと思います。   三つ目が、法定養育費についてですけれども、【P】のところについては一部を入れるということで、具体的な数字を入れた方がいいのではないかという御意見だったかと思います。   それから、終期は成年ではなくて二十歳、これは佐野幹事もおっしゃったのかと思いますが、それに賛成ということだったかと思います。   4番目、急迫の事情について皆さん中身について一致しているのであれば、文言を変えることはできないのだろうかというのが第1段階で、そこからスタートして、何段階かのことをおっしゃったかと思いますが、最終的には解釈が明らかになるような対応というのが必要だということだったかと思います。   5点目、それから7点目もそうだったかと思いますけれども、制度趣旨について、今回の改正が共同親権との関係で、どのように表現されるのかということについて慎重な対応が必要だということ。それから、第4の2の手続についても、事実の調査としての位置づけが必要なのではないか、あわせて、家裁調査官の関与をできるだけ要望したいということもおっしゃっていたかと思います。   間に挟まる6点目として、2の1の7のところ、先ほど池田委員がおっしゃった第三者が関与するというものについて、軽重があるだろうということについて賛成とおっしゃり、最後8点目が、手続に加わっていくための経済的な支援も要望したいということだったかと思います。これでこぼれていないでしょうか。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。発言の機会ありがとうございます。   では、第2のところから私は述べさせていただきたいと思います。第2の監護のところから述べさせていただきたいと思います。   まず、第2の3の監護に関する事項のところですが、しつこいようで本当に申し訳ございません。私は、ほかの委員でもいらっしゃるとは思うのですけれども、監護者の指定を必須とはしないというまとめについては異論がございます。   この間、前回の議論の経過というのもあったというふうに書かれているのですけれども、すごくシンプルにまとめられていて、その経過のところですが、例えばここまでDVについて配慮をしていれば、共同親権を認められるケースというのは、かなりコミュニケーションができる関係のところが共同親権になるのであるからして、監護者の指定を必須としなくても大丈夫ではないかというような御意見がありました。それについては、第2の前半、2のところの議論でも、私としてはもちろん前進はしているというものの、どうしても相手を支配したいというような思いから共同親権を申し立てられる方、相手があまりそれに合意していなくてもですね、という方は見受けられると。今の規定だと、そういう場合を全く排除できるような規定にやはりなっていないのではないかという懸念があると私は思っております。   紛れ込んでしまうDV、申し訳ございません。共同親権を決めるときに、DV的なものを紛れ込ませないというだけの家裁の調査や、体制がそろっているとは私は感じておりません。私ども1,047人の、2,500人の調査の中で、家裁での調停経験をしてひとり親の方の聞き書きも皆さんにお届けしておりますけれども、調停や調査官調査で意見は聴いてもらえた。よく聴いてもらえたと感じている人もいるが、結論にはDVがあったというようなことが反映されていなかったというふうに言っている方は、たくさんいらしたわけでございます。何十パーセントか、ちょっと今、数字はあれですけれども。ということもあるので、こういったDVが紛れ込んでしまうというのは、やはりなかなか難しいですよということを思っております。   ヒアリングを受けた方たちの中にも、やはり激しい、こどもも吹っ飛ぶような身体的な暴力があったとしても、裁判所ではそれをDVであると認めてはいなかったという話を聞いたと思います、皆さん。というようなことを、なのでもう1個、何か裁判をしていますとおっしゃっていたのですよね、共同親権が怖いから。賠償を求めたいと言っておられたのだと思います。というようなところを、やはりきちんと考えるべきであるというふうに思っておりますので、もとい、監護者指定については、私はやはり必須としないというのに関しては異論がございます。   さらに、この中の規定で、(1)の中で民法の第766条に、「子の監護について必要な事項」の例示に「子の監護の分掌」を加えるものとするとして、(注)があって、私、この(注)が、すみません、家事事件手続法を改正して、給付命令等に関する規律を整備する。これはよく分からなかったのですけれども、すみません。「監護の分掌」を入れるということに関しては、明確に反対です。それは、直感的なものなので、大変申し訳ありません。   しかし、第766条を2011年に改正してから、家裁で何が起こったのか、皆さん御存じでしょうか。原則、面会交流であるということが非常に運用として吹き荒れました。東京家裁から出発して、全国全て、同居親の方がDVであることを明確に証明しない限りは、原則全て面会交流を実施というふうになったわけでございます、決められてしまうということになった。これが、ごめんなさい、お名前を出して、本当に恐縮ですが、細矢委員が2番目の論文を書いて、ニュートラル・フラットというのを書かざるを得ないという状況になったというぐらい、運用への影響というのは非常に大きく出るということを考えると、ここで「監護の分掌」という言葉を入れたときに、一体どんな恐ろしいことが起こるのだろうかというのを私は非常に懸念しております。ですので、これについてあまりにも議論がないところで、監護の分掌についてちょっと議論があったわけですけれども、私は非常に危機的だと思っております。   それで、では、具体的に監護の分掌はどうなるのかというので、前回、確か最高裁の向井幹事が、事項でやるのか期間でやるのか、期間の方は事前にやっていくことはできるだろうけれども、事項でやるのはかなりハードルが高いのではないかというようなお話をされていたかと思います。   それに関して少し申し上げたいのですけれども、私ども今、年末に向けて、生活と就労の調査をしております。そうすると、お子さんの状況で懸念がありますかというふうに聞いたときに、不登校、年間30日以上の学校に行っていないというのと、それから行き渋り、行ったり行かなくなって、行きたくないと言ったりするのは、非常に懸念があると答えている方が、不登校が15、6%、行き渋りは31%でした。何を言いたいかというと、こどもは生き物です。教育に関してとか、そういうふうに事項で分掌したとしても、こどもたちが思ったとおりに育つということはなくて、途中でこどもが不登校になったり、そのときには健康状態も含めて、もう一方の親とかなり綿密にコミュニケーションがとれて、何というのですか、こどもを養育していかない限りは、こどもは平和に安心には育ちません。ですので、あらかじめ何かの分担をするということは非常に危険になる。例えば、この子は頭がよさそうだから、こういうふうな学校に行って、こういうふうにというようなことを思い描いたとしても、あるいはスポーツがと思い描いたとしても、そのとおりにはならないわけでございます。もう本当にこどもというのは、日々日々の暮らしの中で少しずつ大きくなっていくのを、何か分掌したり、計画するというのは非常に違和感がありますので、調停などで監護の分掌がものすごい勢いで請求されたりすることがとても恐ろしく思いました。なので、ここに入れることも反対です。   あと、質問なのですけれども、その後のア、イのところで、居所指定、監護者指定をした場合には、単独で居所指定ができるというふうに読めるところがあるのですけれども、部会資料35−1の4ページの、これはそういう理解でいいのか、あるいはこれは裁判所で決定するということなのかをちょっと教えていただきたいと思います。   法務省さんにも質問したのですけれども、急迫の事情というのがあって、避難をすることができる。しかし、その間は、婚姻中であれば共同親権、共同の監護であるので、その後にそのこどもが居所指定ができるとしても、継続的に急迫の事情が続いていて、そこで転居できないにしても、住民票を移すのはできないにしても、学校や保育園に通うですとか、いろいろな監護の事項をやることまで急迫の事情に含まれて、その人が安定して、その親子が暮らすところまで、そしてその間に監護者指定を受けて、安心して暮らすことができる手順が、今のではまだ示されていないというふうに私には見受けられます。なので、ここが保障されないと、幾らこういうことは除外できますというふうに書かれていても、しつこいようですが、やはり心配になるということでございます。   どうしてそういうことを言うかというと、今、やはり逃げた後に実子誘拐罪だというふうに言われていて、それを訴えられているような方たちもいるわけです。これはあり得ませんよということがやはり明確に示されないと、そういうことで関係性を取り戻そうする、それは全く間違いで、そうではなくて、もっと平和なコミュニケーションをとることを努力された方がいいに決まっていると私は思いますけれども、間違った攻撃をされている方たちが見受けられますので、じゅんこさんの、まだ離婚が成立していないのは夫ということになるんでしょうか、の方たちもそういう誤った攻撃の仕方で関係性を失っている方たちがいらっしゃることを止めなければいけないわけです。それがこの規定でできるのでしょうかということを思っております。   長くて申し訳ありません。まだあります。ごめんなさい。   法定養育費のところに移ります。第3の2の法定養育費、私は一部というのはあってもいいというふうに印象的には思っておりますが、ちょっと支払のというところは分からなかったのですが、一部であっても、こどもにとっては支払がある、半額でもいいと思いますが、ということがやはり一つの意味があると思います。つまり、養育費は養育費として、経済的な支援を行うということの意味と、こどもへ別居親がサポートをしているということが伝わる、それによって、受け取る側、あるいはこどもが、サポートしてもらっているんだねという感謝を思える、そういうことを導けるものでもありますので、私は一部でも可能性があった方がいいかなと思います。   あと、第4の3の親以外の第三者との子の交流、私は何か事前の説明で、ここは非常に、そんなに濫用が起きるような規定ではないですと御説明を受けたのですが、何か読んでいると、そういうふうにちょっと読めないので、もう少し分かりやすい表現がないのでしょうかと思います。   それから、第5、養子縁組のところなのですけれども、佐野幹事がおっしゃったことはよく理解できますということです。これをどういうふうに規定すべきなのかということはちょっとあれなのですけれども、離婚後長い間、会ったときに本当にこどもに関心を失ってしまうような親もいらっしゃいますし、それから親の方は、別居親の方は再婚が自由なのですね。にもかかわらず、同居親の方は再婚したときの養子縁組にかなりの拘束が掛かるということがあるとしたら、それはちょっと何か不思議な感じがしますので、再婚してこどもがいることを何か勘案できないのだろうかと思いましたということがあります。   最後に、井上委員がおっしゃった支援、それから家裁の拡充については、私、元々意見書も出しましたし、大賛成でございます。何とかして要綱に、立法が必要なものは立法のプロセスというのを要求し、また、必要な施策についても要求するような文言が入ることを望みます。 ○大村部会長 ありがとうございました。赤石委員からは、第2の3以降について御意見を頂戴しました。第2の3の(1)の監護者指定を必須としないというのについては反対である、DVの懸念が払拭されないということだったかと思います。   それから、同じところの子の監護の分掌についても反対である。あらかじめの分担という発想に疑問を感じるということだったかと思います。   そして、3の(2)、ここはちょっとよく分からなかったのですが、質問とおっしゃったのですけれども、伺ったところでは、先ほどの第2の1の(1)のウの急迫の事情というところで、一方が行うという場面と、ここの(2)のアの最後のところ、「この場合において」以下のところですけれども、両間の関係あるいは調整がどうなるのかという点を整理してほしいという御要望だったのかと思って伺いました。そういう理解でいいですか。 ○赤石委員 安全に避難して、離婚手続まで至るところを手続をきちんと明確にしてほしいということです。 ○大村部会長 分かりました。そういう御意見として承りました。   その後が第3の2の法定養育費、【P】のところについては一部というのもあってよいのではないか。第4の3の濫用の危険というところについて、先ほどから濫用の危険があるのかないのかという御議論ありますけれども、濫用の危険がないということであれば、そのことが分かるような表現を工夫してほしいといった御要望があったかと思います。   そして、第5の【P】のところについては、先ほどの佐野幹事の御懸念について対応できるような形で処理してほしいという御意見なのかと思いましたけれども、それでよろしいでしょうか、そこは。 ○赤石委員 はい。 ○大村部会長 そして、最後ですね、井上委員の御要望に賛成ということで、要望について何か具体的な方策を考えてほしいという御意見だと理解を致しました。 ○戒能委員 ありがとうございます。委員の戒能です。3点申し上げたいと思います。   一つは、このゴシックの中身のことですが、3の(1)です。これは、もう赤石委員などからも御発言、ほかの委員からもありましたように、監護者指定の定めをすることを必須とする旨の規律は設けないということには賛成できません。監護者への定めをすべきだと考えております。   それから、これも佐野幹事から御発言があったのですが、佐野幹事と同じ意見でありまして、これは新しい制度になるわけですから、日常の行為と、それから表現が今までの審議の過程で変わってきて、最初の方は重要事項というふうに言っておりましたが、この要綱案では特定事項というか、双方の協議で決めなければならない事項の区別あるいは基準というのが明確に示されないと、混乱を来すのではないか。ひいては、その混乱によって当事者間の紛争になり、そしてその紛争が子に影響を与えていくと。その影響は、こどもと、それからこれはもう既に出ておりますが、第三者に影響を与えたり、混乱を与えるという意味でその区別をするこが重要です。   日常行為というのは、子の養育・教育という一番基本的なところですので、それを誰が責任を持ってやるのかということは、きちんと定めていくというのが本来の在り方ではないかと考えております。それが大きな1点です。   2点目は、審議の進め方についての意見です。これは、最後の取りまとめの対象にはならないということで、タイトルも議論のための補足説明資料というふうになさっていて、飽くまでも議論の資料なのだということなのですが、そこを読んでおりますと、度々、審議の経過を踏まえて修正しないとか、これこれは採用しないとかというような形で、部会の中の審議がどのように、取りまとめの方向に向かっていくのかということが、これでははっきりしないということなのですね。   経過を踏まえてうんぬんという表現は度々出てきます。これは、単に表現とかそういうことではなくて、大きな考え方の違いといいましょうか、対立までいく場合もあるし、そうでない場合もあるかもしれませんが、非常に重要なところです。ですから、どうして審議の経過を踏まえ修正しないという一言で済ませているのだろうかと、大変不思議に思っております。疑問に思っております。   やはり現状分析を踏まえた上で、こうこうこういう理由で、こういう意見はあったけれどもというのをまず出してほしいし、その上で、こういう意見はこういう理由で採用しないという進め方が本来あるべきではないか。それが非常に実効性のある結論を導き出すためには必要なのではないかと思っております。   そういう意味では、今日もそうです。様々な課題が出されました。そういう意味では、審議はまだ途上だと考えています。大事な点をきちんと議論しないで、結論を急ぐべきではないと思っております。それが第2点目です。   それから、3点目は、これは原田委員等の御発言があったのですが、第三者といいましょうか、社会ですね。社会への説明、国会議員も含めてです。   もちろん審議中ですので、詳細は、国会であろうとも説明できないというところはあるかと思いますが、しかし、きちんと説明の仕方でできるのではないかと思います。全く審議をしていないとか、例えば先ほどの赤石委員のお話に出てきた点で、大変重要だというふうに思いました。紛れ込まれたDVとか紛れ込まれた虐待とかということが重要なポイントで、実はそれがDVや虐待の大きな特徴になるわけです。そういう過程を踏んでいるにもかかわらず、共同親権を決めざるを得なかった、あるいは自分の本意を言えなかったという結果として共同親権になったときに、どういう対応が考えられるのか。何か起きたときに、一体この法律の下、法改正をするとするならば、何ができるのかということまで考えてやる必要があると思います。   そして、この審議会でまだまだ十分ではないけれども、審議をしているわけでして、例えば国会の場で、そういうのは仮定の問題だから答えられませんというような、そういう回答は大変不誠実ではないかと、大変失礼な言い方で申し訳ないのですが、やはり社会の関心がこれだけある問題については誠実に答えていただきたい。今後、国会での立法というプロセスがあるわけですから、そこの対応についてもきちんと考えて私どももいかなければならないと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員からは、3点御指摘を頂きましたが、最初の点は内容に関わる点で、あとは議論の進め方や説明の仕方等に関する御意見であると理解をしました。   1点目、二つに分かれておりましたけれども、順番でいうと、第2の1の(2)の日常の行為について、基準を明確化する必要があるのではないかという御指摘と、第2の3の(1)について、監護者を定めることを必須としないというのに反対である、赤石委員の先ほどの御意見に賛成であるということだったかと思います。   残りの2点ですが、2点のうちの最初の、審議の進め方ということについてとおっしゃったのですけれども、その中はさらに二つに分かれていたように思います。一つは、補足説明の資料の書き方として、これまでの議論の経緯ということを書いて、それをふまえてという形で書かれているのですけれども、これでは十分ではないのではないかという、資料の書き方についての御指摘というのを頂いたと思っています。 ○戒能委員 認識の問題ですよね、どういうふうに捉えるか。 ○大村部会長 認識の問題というか…… ○戒能委員 表現ではなくて。 ○大村部会長 表現ではないというか、何というのでしょうか、詳しく書くといろいろなことがあると思うのですけれども、議論の経緯についての認識というのが不十分であるということをおっしゃって…… ○戒能委員 そうです。正確ではないということです。 ○大村部会長 まとめ方が正確でない…… ○戒能委員 反映していないと。 ○大村部会長 議論を反映していないということですか。 ○戒能委員 はい。 ○大村部会長 まとめるのに、これまでの議論の経緯を詳しく書いてほしいというのではないわけですね。それはちょっと限度があるのではないかなと思いますので…… ○戒能委員 はい。もちろんそうですが。 ○大村部会長 それを前提として、何か事務局の方から、今の点についてあればお答えを頂きたいと思います。   それからもう一つは、審議の熟度という問題で、これについて、戒能委員は必ずしも十分ではないとおっしゃり、しかし、それには御異論もあるかもしれないというニュアンスのこともおっしゃっていたかと思います。ここは様々なお考えがあると思います。   この点については、どういうことで審議が尽きたかと考えるかということについては、御意見を参考にして、また考えたいと思います。   それから、最後におっしゃった点が、必ずしもよく理解できないところがあったので、補足していただきたいのですけれども、おっしゃっているのは、現在の国会答弁等についての御意見を頂いたということなのでしょうか、そこがよく分からなかったのですが。 ○戒能委員 ちょっと詳しいことは分からないですけれども、そういう状況があるということを聞いたといいましょうか。 ○大村部会長 国会で現在の審議状況についての説明が十分にされていないという御指摘だと受け止めていいですか。 ○戒能委員 はい。 ○大村部会長 分かりました。それは御意見ということで。 ○戒能委員 はい、意見で結構です。 ○大村部会長 分かりました。伺いたいと思います。   それで、資料の作り方について、これが従来の議論を適切に反映しているかどうか、これは皆さんそれぞれの観点から御意見は分かれるところかと思います。事務当局としては皆さんの御意見を聴いてまとめていますというお答えになるのではないかと思いますが、一応、事務当局の方でお答えをお願いします。 ○北村幹事 事務当局でございます。部会長の方に今ほぼ代弁していただいたところでありますけれども、我々としては議論に必要な範囲で、丁寧な形でまとめさせていただいてきているとは思っております。その内容についてここが不十分だという御意見があることは今承りましたけれども、この回の議論に必要な部分ということで準備をさせていただいているということで御理解いただければと思います。 ○大村部会長 そういう御意見があるということで、御意見として承りました。 ○武田委員 すみません。2回目の発言、失礼いたします。第3のところから発言させていただければなと思います。   順番にいきます。第3に関しては、2を除いて、現行のゴシック表記で進めていただければと思います。   2に関しては、私が前回申し上げた意見も補足説明に書かれておりますので、あえて詳細を繰り返すことはいたしません。発生要件を養育費の取決めがないことに限った場合、個々の支払が法定養育費水準にとどまる事案が多数になること、これを懸念しているということです。権利者が話合いを拒絶しているケースなど、養育費の発生があるために離婚の同意に至れない、このようなことも想定される、これによって係争が長期化して、こどもへの負担が継続すると、こういった懸念を感じているところでございます。   これは補足説明なので、もし補足説明、今後、更新する機会があれば反映いただきたいのですが、親子交流を拒絶している場合というふうに記載されておりますが、私が申し上げたのは、合理的な理由がないにもかかわらず親子交流を拒絶している場合でございます。タイミングあれば更新いただければと思います。   次に【P】の2か所に関して触れさせていただきます。一部、全部、本日、委員、幹事の先生方の御意見も聴いて、基本的には一部という選択、判断はあってもいいのかなと思います。とはいいながら、やはり一部ということは当然、当事者を交えての協議になると、協議のタイミングがあり得ると私としては解釈しておりまして、その中で本案としての養育費の決定、これを優先するのがやはり筋ではないか。その中で、この一部という判断があっても、最終的には裁判所の裁量で進められることも可能とも思っております。いろいろな意見も出ておりますので、もう一度整理いただいて、最終的な判断を改めてしたいなと思います。   4の(3)の【P】表記に関しても、いかすことでよいと思います。   次に第4、基本的にはこちらもゴシック表記どおりに進めていただければと思っております。これは、記載の方向性のままでよいという意見なのですけれども、補足説明、21ページ、(注3)というところに、ここに祖父母などの直系尊属であっても監護実績を要求するという意見、このような意見もあり得ると思っています。ただ、私個人的にはこの意見には反対でございまして、原案どおり、子の利益のために特に必要があると認められるときということでよいかと思っております。   第三者の交流に関して導入趣旨は、離婚前に形成されていた子と第三者の愛着関係の維持だと思います。したがいまして、一律に同居や監護実績を要求するというのは合理的ではない、実体法上は事務当局提案どおり、子の利益のため特に必要がある、このような形で進めるべきではないかと考えます。   次に第5、養子のところに移らせていただきます。第5、1、2に関しては、表記が変更になった2の(1)も含めて、ゴシック表記を基本として進めていただければなと思います。   【P】表記が付いている2の(1)に関しましても、補足説明を確認させていただきまして、これまでの改正の経緯ですね、今回提案の背景も理解できました。理論的には極めて正しいというふうに私は感じておりまして、事務当局提案の内容で進めていただければなと思っております。   未成年養子、やはり一部まだ、今回の部会では方向性が出されていないものも残っていると認識しています。この点に関しては、この部会ではなく、今回の改正がなった暁には、一定期間を見て、養子に着目した別途部会、このような審議をやっていただくのも必要ではないかと、このように感じております。   最後、第6、財産分与に関してでございます。   1に関しては、部会資料35−1、ゴシック記載を前提で賛同するものでございます。これまでの事務当局からの御答弁も考慮し、賛同するものでございます。   2に関しては、ここも前回申し上げましたとおり、補足説明、26ページに3年と、私が前回述べた意見も書かれておりますので、ここについては修正意見のまま、変更がないということを改めてお伝えをさせていただきます。   ほかの民法上の規定が基本的には5年であること、ここも理解しておりますが、もう少し個人的に私の方でも5年まで延長とした方がよいとする方の御意見も少し聴いてみて考えてみたいと思います。   第6の3に関しても、基本的に原案賛成でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員からは、第3以降について、第7を除いて御意見を頂きました。   第3については、基本的には2を除いて賛成という御意見で、2についての御懸念を示されておられましたけれども、2を取るということであれば、【P】の部分については一部というのがあってもよいということで、最終的な判断は保留したいということだったかと思います。   そして、第3については、4の(3)の【P】になっているところも、これでよいのではないかということだったかと思います。   第4については、補足説明についての言及がありましたけれども、最終的にはこれでよいのではないかという御意見と伺いました。   それから、第5は、2の(1)の【P】になっている点を含めて、賛成である。養子について、ほかに残る問題もあるけれども、それは別途検討するということだろうという御理解を示されたと理解しました。   第6については、2の期間について、個人的には3年がよいという意見をなお保持されているということでしたけれども、全体としてどうかという点については意見保留したいとうことでよろしかったでしょうか。 ○武田委員 はい、結構です。 ○大村部会長 そのように理解を致しました。ありがとうございます。 ○原田委員 原田です。監護者のところ、私も基本的には監護者指定すべきだという意見なのですけれども、ちょっとこの規定の書きぶりで、第2の3で離婚後の子の監護に関する事項の定め方というところなのですけれども、この中では、いわゆる実際上お世話をする人という意味での監護者と、監護の権限を持っていろいろなことを決定できる人ということで監護権者というのが区別されていると思うのですけれども、例えば、ちょっとこれは私の理解で正しいのかどうか聞いていただきたいのですけれども、共同親権下で双方合意の下で一方が同居している場合というのは、これは共同で居所を指定していたので、共同で居所を指定したと考えて、原則的に日常行為は単独でできるけれども、ほかは共同だと、ここまではいいですよね。   補足説明の9ページによれば、監護者の定めや監護の分掌の対象は、身上監護に属する事項であり、財産管理や法定代理権の行使に関する権利義務に変動を目的とするものではないとされているので、例えば高校進学でもめた場合に、監護者指定を受けていても、高校との在学契約や奨学金の申込みなどは単独ではできない。特定事項の親権行使者の指定を受けなければ単独ではできない。ただし、急迫の事情としてできる場合があるという理解でいいですか。 ○大村部会長 今の御発言は、監護者指定を必須としないということについての意見は取りあえず置いて、今おっしゃったような整理でよいかという御質問だということですね。事務当局の方で何かあれば。 ○北村幹事 基本的にはそういうことかと思います。 ○原田委員 そうすると、第2の3の(2)のアですけれども、監護者指定をされると、第820条から第823条まで指定する事項については単独でできるとなっているわけですが、これはこの中の子の監護及び教育に関する事項は、日常行為ではなくて、重要な行為ということですか。逆に言えば、監護者指定されていない監護者は、重要行為は単独ではできないと解釈していいと思うんですが、日常行為は依然としてできるということになりますか。 ○北村幹事 質問の趣旨を正確に把握できたか分かりませんが、(2)のアの部分ですけれども、監護者として指定された方については、身上監護に関する部分についてはもう一方の親権者よりも優先して行うことができるということなので、居所指定も含めてできるという規定です。監護者指定されている方が、日常的な監護もすることは当然入っていますというお答えになろうかと思います。 ○原田委員 だから、逆に言えば、監護者指定されていない人は、親権者であっても子の監護及び教育、居所の指定及び変更並びに営業の許可は、単独ではできないということですよね。 ○北村幹事 監護者として指定されていない方についても飽くまでも身上監護権が失われるわけではなく、監護者指定された方に優先権があるという規律だと、この部会の中でずっと御議論いただいてきたかと思います。 ○原田委員 そうすると、子の監護及び教育に関しても、日常行為は単独でできるということですね、監護者指定されていない人でも。 ○北村幹事 日常行為はできますけれども、その趣旨については、繰り返しこの部会で御説明、御議論いただいているとおり、実際に目の前で世話をしている人たちがお困りにならないように、日常的な事項についてはできるようにしましょうという議論をしてきたつもりです。 ○原田委員 そうなのです。私もそう思っていたのですけれども、この前の説明では、必ずしもそうと限らないというような御説明があったような気がしたので、そこはちょっと確認をさせていただいたということで。   もう一つは、急迫の行為であれば…… ○北村幹事 その点ですけれども、同居している方だけが日常の行為をできるわけではないというふうに申し上げたのかなと思います。 ○原田委員 もちろん。だから、面会交流中とか…… ○北村幹事 いろいろな場合があろうかと思いますけれども、それぞれが日常的な行為はできますけれども、通常、そこにお子さんがいらっしゃる方が日常的な行為について判断するのではないかという議論をされてきたというふうに理解をしています。 ○原田委員 この日常行為に…… ○大村部会長 原田委員、まだ質問は続きますか。 ○原田委員 いや、あと…… ○大村部会長 それが御意見とどのように結び付くかということがちょっと見えないので。 ○原田委員 この規定がきちんと理解できていないと、最終的な結論の意見がどうなるかが決まらないのです。   それで、日常行為については、基本的にこどもさんと、同居とかの意味ではなくて、面会交流中とかを含めて、目の前にこどもさんがいるようなときを想定しているという理解であることは分かりましたので、安心しました。   逆に、例えば先ほど言いました進学の問題でいうと、入学手続は急迫であってもそうでなくても、監護者が指定されていればできるということ、急迫な事情があればできるということですけれども、逆に、合格通知に対して辞退するというような場合も、監護者に指定されていない親権者でも急迫だということであればできるということになるのでしょうか。   親権者であれば、急迫の場合は単独でできるということになっているので、今まで、例えばこんな例があるということですけれども、急迫な事情があれば、監護者が指定されていない親権者もできるという解釈になるのかと。 ○大村部会長 それは、現行法もどうなっているのかも含めて、そこを更に検討すべきということであれば検討するということになる。そこはすべきではないという御意見なのか、むしろ委員としての御意見をおっしゃっていただければよろしいのではないでしょうか。 ○原田委員 私は、監護者指定をした場合の監護者の権限の範囲を、単なる身上監護だけではなくて、ここに書いてある身分行為と、それから重要な財産行為以外の行為は単独でできるというふうにすべきだという意見です。 ○大村部会長 御意見として承りますが、そこは考え方が分かれるところだろうと思います。   今の御趣旨というのは、ここで書かれている規律について、全ての問題について明らかにすることは不可能だと思うのですけれども、一定程度明らかになっているということであれば、この考え方でもいけるかもしれないという含みを持っていると理解をしましたけれども、そういうことですね。そういう御趣旨で質問をしていただいたと受け止めました。 ○棚村委員 今の議論で、すみません、誤解を受けないように確認させていただきたいと思います。例えば監護者の指定もそうなのですけれども、監護者がどういうことをできるかというのは、これまでもかなり疑問があって、明確ではなかったので、一定程度ここにあるように、監護者が指定された場合には、子の監護、居所の指定及び変更、営業の許可などと、こういうような形で重要な事項について誰が決められるか、優先的に扱われるかなどある程度明らかにする規定は置かれるということだと思います。しかし、先生がおっしゃるように、このような規律の提案がなされても、そこで意見の対立とか争いが起こったときには、例えば双方が親権を持っているときに、親権行使者を誰にするか、特定の事項について誰が決められるかということについては、自分たちで話合いで決められないときは、家裁が関与したりしないといけない事態も起こってくることが想定されます。   仮に双方が親権者となり監護者が指定された場合でも、誰が具体的にどこまでできるかという問題が完全に解決されるわけではなくて、教育とか居所の指定で、例えばさっき言ったパスポートの発行とか海外渡航と転居とか、それから一時的に移動するとかというので、グレードがあって、その辺りは争いの余地が出てくる可能性があるわけです。そうしますと、さっきからお尋ねの特定の事項の親権の行使者を誰にするか、要するに親権の中身を誰がやるかとか、ふさわしいか、子の利益になるかという判断を家裁に決めろとは言われても、これは無理であったり困難なので、特定事項の親権行使者をどうするかということの争いとみて、その紛争解決に限定せざるを得ない。海外でも基本はそういう方向で考えるところが多く見られます。   他方で、監護をめぐっても、いろいろな細かいことで、どっちへ行ったらいいかといったときに、自分たちで話合いで決められないときには、内容を決めるのではなくて、権限行使を優先して行える人を決めるのか、それとも特定事項の細かいことで、争いに対して家裁に申立てをしたときに、家裁は、紛争を解決する審判の利益があるかどうか、対象になるかどうか、必要性があるかどうかとかいう、かなりテクニカルな判断もすると思います。   それで、原田委員からの御質問や御意見で、先ほど来言われているような、要するに個別の特定の事項をめぐる紛争と包括的な地位があるかないかの争いというのは別なので、今言われたような整理をされて、立法における規律の仕方や内容の問題なのか、それとも解釈運用のレベルの問題なのかを区別して議論しないといけないように思います。したがいまして、親権と監護の関係での御指摘の点は、立法の問題なのか、解釈運用の問題なのか、仮に解釈の問題として考えるとしても、その概念とか、定義を整理し明確化しようとしても、突き詰めて、監護者になれば、親権者になれば、全部ができるという話になってしまうと、もうトートロジーみたいなことになってしまうので、注意しなければなりません。多分ここまで明確にはなったという確認は、原田先生がおっしゃるような形で、ある程度パッケージとして監護者が指定されると、ある程度の範囲ではその人の判断が一定事項について優先するのだということは言えると思います。しかしながら、では、監護者として指定されなかった親権者には何が残るのだということは、ある程度運用とか解釈に委ねざるを得なくて、紛争が起こったときには個別に解決しない限り、一点の曇りもなく条文化するのは難しいのではないかという感想を持ちました。   ですから、事務局にお答えを求めたとしても、私たち民法の学者に求められたとしても、答えられないような質問内容が含まれていたので、ある程度パッケージとして、親権者になればこの程度のことができる、このような責任を負う、そういう理解にならざるを得ないと思います。ただし、争いになった場合には、行使者をどう決めるかとか、監護者になった場合も、争いが起きてしまった場合には個別的に決めてもらうとか、あるいは話し合うとか、そういうプロセスをとらないと、全部を規律として明確には整理できないのではないかというのが、私の考えです。   要するに、今回の提案では、現行法では明確化されていないため、できれば当事者で、親権と監護について、パッケージとして包括的な地位や立場として決めることもありますし、また細かいことについても詳しく細かく決めていただければ、そこで決めたのだということになれば、その方が優先するというルールを置こうとしているわけです。繰り返し言っていますけれども、Impasse Authority(インパスオーソリティー)、行き詰った場合の権限という工夫で、父母の間でこどもの問題について意見対立や膠着状態になったときは誰が優先的に決められるか、決められる人を合意しておく条項です。こどもの問題についてかなり細かいことを海外では決めたりしていますから、そこまで決めてしまえば、多分その決めた人が権限を、ある程度責任を持って行使できるのだと思います。ところが、日本の場合は、そんなに細かく決める方が多分いらっしゃらないのではないかと思います。そうすると、当事者で話し合って決まらないときには、家裁での調停審判とかに来てしまわないかという問題が想定されます。その調停審判で多分一番恐れるのは、ここまでのことを、例えばどこの塾がいいかとか、どこのお医者さんに掛かるのがいいかというときに、内容の当否までを決められるかというと、なかなか難しいと考えざるを得ません。   ですから、その辺りの議論も当然、赤石委員からも出ているように、細かいことが実際には紛争になる可能性はあると思います。そういうことについて、ある程度こういう場合にはこういうような形になるのではないかというようなことについて、考えておくということは必要だと思います。しかし、その答えをはっきりと示さないと、また、紛争が生じたときの解決まで明確に示さないと、今の提案は通らないとか、反対だということになると、ちょっと違うのではないかという感想をもってしまいました。 ○原田委員 いや、私は、例示としてさっきの進学のことを挙げただけで、その一つ一つを決めないと駄目だと言っているわけではないのです。でも、私たちは日々、これはできるんですか、できませんかと相談を受けるのです。そのとき、どう答えるかというのはもう切実な問題なのですよ。なので、ある程度パッケージとしてきちんと決めてもらいたいということです。 ○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員のおっしゃっていること、原田委員のおっしゃっていること、双方分かりますけれども、先ほど棚村委員がおっしゃったように、この問題は現状でも生じている問題で、そして規律の内容について様々な考え方が説かれています。だからこそ、実務家の方々が御苦労されているということなのだろうと思いますけれども、それを前提に詰められるところを詰めていこうということで、基本的な考え方について議論をし、先ほど原田委員が途中まで質問されたところについて、事務当局からお答えがありましたが、おおよその流れについてここで議論ができたということなのだろうと思っています。   その先、なお残る問題があるということで、残る問題について、現段階でこうなるということが言える、皆さんが一致してそうだということであれば、ここでそういう解釈が出ましたということになるでしょうし、異論があるということであれば、将来の課題として残されるというようなことになる。こうしたことを両委員はおっしゃっているのだと思いました。ということで、今日のところは、この議論については引き取らせていただきたいと思います。 ○赤石委員 すみません。監護者のところで、赤石でございます。ちょっと言い忘れたので、DVが真摯な合意がなくても裁判所で決まるというようなことを共同親権で決めているということで、DVが共同親権を決めるときに紛れ込んでしまう危惧というのを先ほど言ったのですが、もう一つありまして、両親ともこどもに無関心であったり無責任であったりするケースにおいて、監護者が指定されていないと、こどもに大変な不利益が生じるのではないかという方の危惧の方を言うのを忘れたので、お伝えしておきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。それは赤石委員が以前にも御指摘になった点かと思いますけれども、そういう懸念もあるということを追加されたと受け止めました。   第2から第7まで、更に御発言のある方がいらっしゃったら挙手をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。   それでは、残りの時間が限られているのですけれども、資料を用意していただいております。池田委員、挙手されていますが、第1についてですね。先ほど菅原委員も手を挙げておられたのですけれども、第1について、今日、御意見を頂いて、おそらく、皆さんの御意見を全て聴くことはできないと思いますので、御発言が残るようであれば次回に持ち越しということにしたいと思います。   ということで、第1について御意見を頂きたいと思います。では、池田委員、菅原委員という順番で伺います。それから赤石委員。赤石委員までいけるかどうか分かりませんけれども。 ○池田委員 すみません。池田でございます。第1の1につきまして、前回部会では、人格の尊重とは別に、こどもの意見表明権に関して明文化すべきという意見を申し上げ、その上で、どのような文言を用いるかということについても、意見という文言以外の選択肢も幾つか上げたところでございました。そのうちのいずれかであればよいというわけではなくて、こどもの意見表明に積極的な御意見をお持ちの委員の方々から消極的な方々まで様々ある中で、議論の対象として想定される文言の選択肢を複数挙げたということでございました。紛らわしい言い方をしたということであれば申し訳ありません。   いずれにしましても、今回の補足説明におきましては、そのうちの複数のうちの「心身の状態」のみが取り上げられておりますが、他の文言を含め、改めて議論を尽くせればというふうに思っております。   前置きが長くなりましたが、私の意見を申し上げたいと思います。   まず、補足説明にピックアップしていただいた「心身の状態」ですが、これは、どちらかといいますと、心と体の健康状態といったニュアンスで用いられることが多く、ここにこどもの意見表明権の趣旨を読み取るということは到底できないという問題が指摘できると思います。   次に、「心情」についてですが、これには気持ちや思いというものが含まれているとは言えますが、こどもの心の方向というのですか、向きというものが含まれていないように思われます。そうすると、こどもに決定させるわけではないものの、これに関与する権利を保障するという意見表明権の趣旨からは、やはり距離が遠いものと言わざるを得ないと思います。ただ、心情も意向とセットにして、「意向または心情」という定め方はあるのではないかと思います。   家裁の実務では、家裁調査官がこどもの意思を把握するために行う調査を、こどもの発達段階に応じて、発達段階が進んだこどもの場合にはその意向を聞くという意向調査、幼少のこどもの場合にはその心情を聞くという心情調査というふうな形で行っていますので、それに平仄を合わせるという意味ではよいのではないかとも思います。   また、「意思」ですが、これにはこどもの気持ちの向きを感じさせるニュアンスがありながら、必ずしも態度決定を迫るというふうなものとは解されず、決められないとか、表明したくないという気持ちも含むものと解されます。そして、既にそのようなものとして、家事事件手続法第65条で用いられているという前例もあります。また、民法第858条でも成年被後見人についても用いられているところです。   そうしたことを考えますと、第1の1では、親が考慮すべき事項として、年齢や発達の程度に加えて、「意向又は心情」をセットにしたもの、あるいは「意思」を加えるべきもの等を考えます。   現在の子育てにおいては、一昔前のそれとは違いまして、こどもの意見を聴くということはかなり一般化していると思います。どこの学校に進学するかですとか、どのような習い事をするかについて、多くの親はこどもの意見を聴きながら決めているはずです。   また、もっと重要なこと、例えば養子縁組をするかどうかについてなども、こどもの意見を聴かずに決めることは適切とは思えません。ただ、既にこどもの意見を聴き、その主体性を尊重しながら子育てをしている親にとっては、わざわざこどもの意思を考慮するという規定などなくてもうまくやれるだろうと。むしろ、そういう規定を悪用する親もいるかもしれないから、そんな規定は設けるべきでないという御意見もあるかとも思います。   しかし、それは、離婚後、共同親権も同じではないでしょうか。既にうまく共同している元夫婦はいますし、悪用される懸念があるからといって、共同親権をやめておこうという議論の流れには必ずしもなっておりません。それと同じではないのかなと思います。あるべき姿を想定できるのであれば、それにしっかり法的根拠を与えるというのがこの部会の役割ではないかと考えます。   既にこども基本法や児童福祉法でこどもの意見の尊重という規定が入っている中で、民法においては、なぜ意思を考慮する、あるいは意向又は心情を考慮するという規定がそれほど回避されなければいけないのかということについて、改めて議論を尽くしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは、第1の1の(1)に関する御意見として、こどもの意見表明権に関わる規定を置きたいということで、前回までに幾つかの文言を上げていただいたところです。   今日の御発言は、その中で、資料の中では心身の状態という文言だけが取り出されているけれども、他の選択肢もあって、池田委員の御意見としては、他の選択肢の方が望ましいという御意見だと承りました。可能性は幾つかあるけれども、その中で望ましさに濃淡というのがあるという御意見であると受け止め方でよろしいでしょうか。 ○池田委員 むしろ、「子の心身の状態」ということについては望ましくないということで、選択肢から私としては外していきたいということを考えています。 ○大村部会長 分かりました。今のような御意見として承ります。   水野委員は先ほどの池田委員に対する御発言ですね。分かりました。まず、菅原委員の御意見を伺って、赤石委員、すみませんが、水野委員を挟んで赤石委員という順番にしたいと思います。 ○菅原委員 ありがとうございます。委員の菅原です。今、池田先生がおっしゃった同じ箇所なのですけれども、ここに年齢及び発達の程度に続いて、もう一つこどもの状況を加えるということに、まず賛同いたします。   年齢及び発達だけですと、今、池田先生がおっしゃったこどもの心情やいろいろな思いというのがそこには含まれていませんので、どのような言葉を使うか慎重に考える必要はありますが、心情や思いに関する用語を加える必要があるのではないかという立場です。   手続法の中でも使われてきている意向又は心情という用語を入れていただけるとベストと考えます。心情の方には、より低年齢の子の状況も入りますし、意向というところにも、意見の尊重は難しいということはよく分かるのですが、意向という文言がせめて入るといいなと思います。ただし、いろいろな状況の中でこれらの用語はやはり難しいということであれば、心身の状態、あるいは心身の状況でも仕方ないとは思いますが、ここに現在のこどもの状況に関連する言葉を入れていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。菅原委員からは、もう一つ、意見表明に関わる文言を入れるということに賛成である、文言についてはどうするかということで、心情ないし意向というのに賛成だけれども、しかし、心身の状態というものでも仕方がないといった御意見だったかと思います。 ○水野委員 申し訳ありません。池田委員がそうおっしゃると、自動的に発言することになってしまいまして、ごめんなさい、委員の水野です。   先ほど、これは理想的なあるべき姿を目指してとおっしゃったのですが、私はこれは理想的なあるべき姿ではないと思っております。こどもの意見と明記すると裁判規範として機能してしまうでしょうから、両親を競りに掛けるようなもので、両親のどちらかを選ばせるというのは非常に重すぎる、残酷な選択をこどもに迫ることだと思います。   また、このことの弊害も、実際にものすごく大きいだろうと思います。こどもは、その選択をしたことの責任を感じて、ずっと大人になるまで苦しんでしまうこともあるでしょう。こどもに聞いて、それで判断すればいいということになると、親はこどもに働き掛けて相手方の悪口を吹き込み、自分を選ばせるだろうと思います。あらゆる意味で、これは望ましくない状態で、理想的なあるべき姿ではないでしょう。こどもがどういう状況であり、何をどう思っているのか、それはもう細心の注意を払って慎重に丁寧に調査をしなければならないと思いますが、こどもにどちらの親がいいのかと聞くことは、これは非常に残酷な問いであると思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。水野委員からは、今出ている案について反対であるという御意見を頂戴いたしました。   赤石委員から先ほどからずっと手が挙がっていて、まだほかにも御発言の御希望の方がいらっしゃるかもしれません。   第1につきまして、まだ御発言の希望ということが残っておりますので、今日の段階ではここまでということにさせていただき、第2から第7についても特にまとめをせずに、次回、引き続き第1について御意見を承った上で、整理をしたいと考えております。     途中でということで申し訳ないのですけれども、こどもに対する基本的な考え方に関わる部分ですので、第1の部分の部分について年を越して、引き続き御意見を伺うということにさせていただきたいと思います。   ということで、本日の審議はここまでとして、あとは年が明けてから継続ということでお願いをしたいと思います。   次回のスケジュール等につきまして、事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。次回の会議は、令和6年1月9日火曜日、午後1時30分から午後5時30分までで開催したいと思います。場所は改めて御連絡いたします。   次回の会議では、今、部会長の方から御指示いただきましたように、今、挙手いただいている方からということで、引き続き部会資料35−1について御議論をお願いしたいと思います。 ○大村部会長 年明け、1月9日ということになりますが、どうぞよろしくお願いを申し上げます。   1年間、熱心に御審議をしていただきまして、大変感謝しておりますが、年明け以降も、どうぞよろしくお願いを申し上げます。   ということで、法制審議会家族法制部会第35回会議をこれで閉会させていただきます。よい年末年始をお迎えください。   では、閉会いたします。 −了−