法制審議会 家族法制部会 第36回会議 議事録 第1 日 時  令和6年1月9日(火)  自 午後1時30分                      至 午後4時47分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  家族法制の見直しに関する要綱案(案)について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会家族法制部会の第36回会議を開会いたします。   今年は年頭から災害や事故が相次いでおりまして、おめでとうございますと少し言いにくい雰囲気ではありますけれども、この後良いことが続くということを期待しております。本日、年明け早々から御多忙のところ御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   本日も前回までと同様、ウェブ会議の方法を併用した開催となりますので、よろしくお願いを申し上げます。   それでは、本日の会議資料の確認をさせていただきたいと思いますので、事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。本日は事務当局から新たな資料の送付はございませんので、前回会議の際にお配りしました部会資料35−1及び35−2に基づき御議論いただきたいと存じます。   また、委員提出資料として赤石委員、大石委員、戒能委員、柿本委員の4人の委員の連名で意見書を頂いております。この意見書の趣旨につきましては、部会資料35−1についての議論が一段落したところで大石委員から説明していただく予定でございます。   なお、今回もウェブ会議を併用していることから、御発言に当たっては冒頭でお名のりいただきますようお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。   それでは、本日の議題である「家族法制の見直しに関する要綱案(案)」について審議に入りたいと思います。   本日の会議では、部会資料35−1の第1につきまして、前回挙手をされたまま御発言いただけないという状態で残っている方々がいらっしゃいましたので、それらの方々から御発言を頂くということにしたいと思っております。   部会資料35−1の第2以降につきましては前回会議で御議論を頂きましたので、本日の会議の前半では、まず第1に限って御意見をお伺いしたいと考えております。その上で、第1について議論が終わった後、なお時間があるようでしたら、本日の会議の後半で第2以降、第7まで含めて、特段の御発言があるという方がいらっしゃれば、御意見をお伺いするということにさせていただきたいと思います。おおむね会議の時間の半分ぐらいのところで休憩を入れさせていただきたいと思っております。   そこで早速、前回の続きということになりますが、手元のメモでは御発言の御希望が、赤石委員、落合委員、佐野幹事、原田委員、戒能委員、小粥委員、石綿幹事、大石委員となっておりますので、この順で御発言を頂ければと思います。 ○赤石委員 ありがとうございます。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。第1のところで、前回の池田委員の御意見、こどもの意思表明の辺りでございます。   こどもの意思表明については、やはり盛り込むべきであろうと思っております。その表現については、いろいろ御議論があることは分かるのですけれども、やはり意思とか意向といった言葉が盛り込まれるべきであると思っております。私がこれまでこどもの意見については幾つかの御紹介をさせていただきました。また、例えば間接交流に関してのこどもの意思が認められずに非常に困惑している事例ですとか、試行面会において強制されたために、こどもの体にまで及ぶ影響が生じたですとか、いろいろな事例をお伝えさせていただいたかと思います。やはり年齢に応じてこどもの意思、意向というのを確認して進めるべきであるということをもう一度申し上げたいと思いますし、ほかの委員からもこどもの意見というのは出てきております。   一方でこの反対意見については、これまでのところではなかなか具体的に分からないところもありますし、親の意向をそのままこどもが反映して意見を述べるわけではなく、こども自身が意見を述べている場合も、親の意向のようなところで受け止められるというのは少し残念に思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員から、前回も問題に出ましたこどもの意思表明につき、これを盛り込むことに賛成である、表現については意思ないし意向というのが良いという御意見を頂戴いたしました。 ○落合委員 落合です。私は2点あります。   一つは今のこどもの意向のことですけれども、私もやはりこどもの意向というのは入るべきだろうと思っております。水野委員から繰り返し懸念が出ているわけなのですけれども、別にこどもの意向を求めるからといって、親のどちらを選ぶというようなことを意味する場合だけではないと思うのです。例えば、学校はどこに行きたいとかいうようなことを当然聴くべきだと思いますので、意向ということが入っていていいのではないでしょうか。親をこどもに選ばせるようなことはよくないというのは、運用上で徹底していただけたらいいのではないかと思います。   それが1点ですけれども、もう一つの方がメインで言いたいことなのです。この第1の親子関係に関する基本的な規律で、親の責任を明確にするということなのですけれども、それについて懸念を持たざるを得ないようなことが二つありました。一つは、障害児を持つお母さんから意見を頂く機会がありまして、障害児が生まれてから、父親は逃げようとしていると。養育料は払っているのだけれども、見舞いにも来ないし、関わりを避けようとしていると。これは婚姻していないで認知しているケースなのですけれども、結局全ての責任が母親に掛かってしまっているというような話があります。そうしますと、この規定は逃げてしまった親というのをどのように追い掛けることができるのか、残された親が、むしろ親の責務ということをより重く受け止めて、押し潰されるようなことにならないのかというようなことを危惧します。   障害があるこどもの、ですから、責務が重いようなケースですね、かつ相手が逃げたようなときというのが一つ目の例でした。もう一つ考えさせられましたのが、最近、子殺しというようなことで報道されたようなケースがあります。子殺しというか、こどもが生まれてからすぐネグレクトして、亡くなってしまったというようなことなのですけれども、このケースは、亡くなったこどもを伴って警察に行ったにもかかわらず罪を問われているのです。児童虐待によりこどもが亡くなるケースが一番多いのは生まれたその日、1日目です。このような場合、罪に問われるのは母親であるわけなのですけれども、しかし、こういうのは望まない妊娠とか産めない事情ができてしまった場合なのだろうと思うのです。その場合の父親の責任というのは、この規定によって問うことができるのかというようなことも考えさせられました。妊娠したくない人を妊娠させたとか、それから中絶に反対したとか、あるいは消えたとかで、母親一人に責任を押し付けたから、1日目あるいは数日以内の子殺しに至るというようなことが多いと思うのです。そういう場合に、この規定があると、実際にこどもを殺してしまった母親の責任が非常に重く判定されるのですけれども、では逃げた人はどうなるのかというようなことを非常に危惧しました。   ではどうしたらいいかということなのですけれども、親の一方が逃げているケースにどう対処するかというようなことを、実施に当たってはしっかり考えていただきたい。認知して社会的な親子関係ができないと責任が生じないのでしたら、今のような子殺しに至るような難しい妊娠をさせて消えてしまった男性の責任はどうなるのでしょう。ますます認知をしたくないということになるかもしれません。逃げる親のケースにどう対処するかということを、実施に当たってはきちんと議論してほしいと思います。   それと、責任をかぶってしまった親が非常に大変になるということ。障害のあるお子さんの場合などですと、ひとり親にならなくても二人でも大変なわけですよね。そのようなときに、この規定は重いなと思うのです。どんなに難しいこどもであろうとも、それを育てるのは親の責務ですよと理解され、今まで以上に親に重圧を与えることになるのではないかを危惧します。   それで、どういうふうに対処するかなのですけれども、後で検討するという附帯決議の案を頂いておりまして、その附帯決議の中にこれを盛り込めるのではないかと私は考えております。附帯決議の社会保障制度とかについてあるところで、原案では親が離婚したケースのみについての項目になっているのですけれども、それを、こどもの養育に困難がある場合とかいう形で、離婚した場合ではなくても適用できるような附帯決議に修正していただけたら、これに対処できるのではないかと思っております。附帯決議の原案は離婚後のことを想定して作られたものだと思うのですけれども、私はこの第1についても、親の責任を重くする一方で、その親の責任は社会的なサポートによって実現されるのだと、親はこどもを養育する責任もあるし権利もあるのだから、それは社会的に十分サポートされなければいけないというようなことを、附帯決議というような形で目に見える形にして、それとセットでこの第1も成立させたらいいのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。落合委員から2点、御意見を頂きました。1点目は、赤石委員も触れられたこどもの意思ないし意向の表明という点について、これを入れるのに賛成であるということで、懸念として示されている、両親のどちらかを選択することになるというのとは違う場面も想定する必要があるのではないかという御意見を頂きました。それから2点目は、親の責務に関する御懸念ということで、具体例を挙げてお話しになりましたけれども、父母の間のアンバランスが問題になるような事例をどう考えるのかといったことをおっしゃっていたかと思います。対処の方策として附帯決議のことに触れておられましたけれども、附帯決議については冒頭、事務当局の方から御発言がありましたように、後で御趣旨を伺いたいと思っておりますので、また何かありましたら、そちらの方で御発言を頂きたいと思います。ありがとうございます。 ○佐野幹事 幹事の佐野です。第1の1(1)の【P】の部分ですけれども、私も池田委員と同じように、子の意向、心情に配慮し、というのを入れた方がいい、具体的には、その子の年齢、発達の程度に応じて、その子の意向、心情に配慮し、とすべきではないかと考えております。理由として2点述べさせていただきます。   一つは、補足意見の2ページにある、子の人格を尊重するというところに意向尊重が含まれるのではないかという点についてですけれども、児童の権利条約第12条の趣旨が当然に「人格尊重」に含まれるとはいえないのではないかという実質的な意味内容の観点と、2番目として、いろいろな弊害が指摘されているわけなのですけれども、むしろその点については真正面から入れて、それに対する説明を尽くすことによって、そういう誤解というのを払拭していくべきではないかという二つの観点から、理由を述べさせていただきます。   まず一つ、子の意向、心情を挿入しないことに対する疑問につき、子の意見表明権の趣旨が人格尊重に含まれるのかということなのですけれども、私としては、人格尊重というのは、例えば大人対大人、大人対こども、両方に適用されるものと理解しています。今までこどもが親との関係で人格を尊重される段階にすら至っていなかったという点を踏まえると、第1の親子関係の中で子の人格尊重というのを入れるということには一定の意義はあるものとは思っております。   ただ、こどもの意見表明権というのはそれにとどまらず、こどもがこどもであるがゆえに、大人の配慮を踏まえて認められるべきこども独自の権利であると理解しています。つまり、権利条約第12条で規律されているこどもの意見表明権というのは、自己決定権とか判断権ではなく、条約第5条で規定されている大人の指導、指示の下で保護されつつも、一定の法的な効果や方向性を必ずしも持たないものも含む意向とか心情をきちんと聴かれて、説明されるという対応のプロセスを経ることによって、自分に関する決定に参加していく機会を保障されるというものであると考えています。すなわち、発達しつつある存在であるこどもであるがゆえに、その自己決定能力を獲得していくプロセスとしてこども独自に保障される権利であると理解しています。この権利条約第12条に関しては、児童の権利委員会の方からも第4回、第5回の総括所見の方で、きちんと家庭においても含め、全てのこどもが意味ある形で、かつエンパワーメントされながら参加することを積極的に促進するよう勧告されております。そういった意味で、きちんとここで、子の意向、心情の考慮は明記していくべきではないかと思っております。   それから、この挿入することに対する効果の面について、2番目に述べさせていただきます。家裁の実務においては、子の意思の考慮というのが家事事件手続法第65条で明記されたことによって、父母の係争の中にあってもこどもに選択を迫らないような聴取の方法など、こどもを保護しつつも意向に配慮するという方向性が、そういった手法が一定程度進んでおります。しかし、離婚だけを取り上げても、裁判所に来るような事案というのは数からすると少数であって、多くの場合は当事者の協議に委ねられております。実際、協議離婚の際の相談の中には、親の離婚を感じ取って精神的に不安になっているこどもへの対応をどうしたらいいか、親もどう扱っていいか分からないという相談も実際に見受けられます。こういった点に関して、親ガイダンスを提供するというのも一つの方法ですけれども、やはり子自身が親の離婚を乗り越えていくためには、やはりこどもの意見表明権の理解に即した対応というのが必要になるのではないかと思います。   この点、第1の(1)というのは離婚の場合のみに係るものではありませんけれども、子の意向、心情の配慮という文言を真正面から挿入して、きちんと説明を尽くすことによって、補足意見等で指摘されているような誤解、つまり、こどもの自己決定権ではないために、こどもに決定判断の責任を負わせるものではないし、また、こどもの権利であるからこどもが言うことを強いられてはならないと、そういった誤解を払拭する契機にもなり得るのではないかと思っています。当然、親がこどもの意向を配慮するに当たり困難があるようであれば、国はそれを支援する体制を整える責務を負うものと考えられますし、また、その配慮は究極的にはこども自身の権利に対応するものですので、親がこどもの権利を保障できないような状態にある場合には、こどもがその権利を行使するための必要な支援が親以外から提供される根拠ともなると思います。   先ほど御指摘があったかと思いますけれども、この部会の中で、離婚の場面だけではなくて、例えば15歳未満の連れ子養子縁組のこどもへの意向の配慮とか、こどもの信教の自由、信教に対するこどもの決定権と親の決定権との関係なども議論されていたかと思います。それらのケースは必ずしも裁判所に来るわけではありませんので、そういった裁判所に来ない事案であっても、きちんとこどもの意向が配慮されて、必要に応じて支援が提供されるようにするためには、やはり法に明記して、その正確な理解を促進するように説明を尽くしていくということが必要ではないかと思います。こういった理由から、きちんと挿入すべきと考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。佐野幹事からも、こどもの意見表明ということについて規定に盛り込むことに賛成であるという御意見を、二つの理由を添えて述べていただきました。併せて、意向、心情という表現がよいのではないかという具体的な提案も頂きました。 ○原田委員 原田です。遅れまして申し訳ありません。私も池田委員や佐野幹事の意見に賛成で、佐野幹事がかなり丁寧に詳しくおっしゃいましたので、ほとんど同じことにはなりますが、ここでいう年齢及び発達の程度というのは、この表現は飽くまでも大人からの視点であって、こどもの主体性が感じられないと思います。こどもの意見表明権というのは、全てこどもの言うとおりにするものではないということや、こどもが決めるわけでもないということですし、したがって子に責任を負わせるものでもないということは共通した理解だと思いますし、意見を表明しない権利も含むというのも意見表明権の基本ではないかと思います。こどもが自分のことが決められるに当たって十分に意見を聴いてもらって、そのとおりにならない場合でも、その理由をきちんと説明してもらうことによって納得感を得られると、これはいろいろなアンケートの結果を見ても、やはりこどもが自分の意見を聴いてもらえなかったとか、何が起こっているのか分からなかったというようなところに対しても考える必要がある問題ではないかと思います。ヒアリングでもそのようなことをおっしゃっておられましたし、やはりこどもがその結果をきちんと受け止められるようにする上でも、こどもの意向を尊重し、かつそれに十分な説明をするということが必要なのではないかと思います。   それから、第1の1(2)の、互いに人格を尊重し協力するという点ですけれども、まず人格の尊重としては、DVや虐待をしないことはもちろんなのですけれども、濫訴的な申立てをしないとか、父母の同意なしに勝手にこどもの写真とかをネットに上げたりとか、元配偶者の批判をするとかいうような行為が、父母間の対立をあおるような行為、人格を尊重しない行為で、このようなことは親権の変更とか、そういう問題にも通じる問題だということを申し上げておきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。原田委員からは2点、御意見を頂戴しました。1点目は、これまでずっと御発言が続いている意見表明について、基本的には賛成という御意見でしたが、表現ぶりについて多少これまでの発言とニュアンスの差のあるようなこともおっしゃっておられたかと思います。それから2点目は、人格の尊重、協力ということの中身についての理解をおっしゃっていただいたと受け止めました。ありがとうございます。 ○戒能委員 ありがとうございます。委員の戒能です。2点申し上げたいと思います。   1点目は、もう既に多くの方がおっしゃったとおりなのですが、子の意見表明権はやはり独立して明記すべきだと考えております。それで、今までこどもの意見というのが、特に司法過程においては、十分に尊重されてこなかったということから出発したいと思っております。それで、確かに難しさはあります。困難であると思います。ただ、こどもの意見を尊重することと、この補足説明の3ページなのですけれども、子に意見表明を強いることというのは、必ずしも一致しないと認識すべきだと考えております。それで、我々が考えるべきは、どういう方法でどうやったらこどもの意見が尊重されるのか、あるいはその前提として、こどもが自由に意見を率直に表明できるような環境の整備だと思っております。一つは、司法と他の専門領域との連携、協働という話になっていきますし、多分弁護士会などでもそういう通知をしていらっしゃると思うのですけれども、専門的知見に基づく専門的な協働関係ということですね、そういうサポートがあって初めて、それから時間をじっくりと掛けて、ということがあります。心を開くというのは時間が掛かることですので、そういう体制を是非整備をしていく方向で検討すべきだと思っております。   それから、2点目なのですが、それは、親子関係に関する基本的な規律の1(2)なのですが、その点では2点申し上げたいのですが、確かに互いに人格尊重し協力ということは必要なことかもしれませんが、ただ、これは婚姻関係の有無にかかわらずとなっております。そこで、離婚ということを考えてみると、違和感を持つわけです。それは、互いに人格を尊重しない、それから協力をしないというふうに、人間関係の問題になってくると。そうすると、その人間関係が問題だから離婚に至るというような関係ももしここに含むのだとすれば、では協力しない場合はどうなるのかという議論になりかねないということを危惧しております。   例えば、オーストラリアではもう2011年にその条項が廃止されたと聞いておりますが、フレンドリーペアレントルールとか、片親引き離しとかそういう議論が出てくるという懸念を大変強く持っておりますので、人間関係の問題と法規範の関係をきちんと考えておくべきだと。そして、こういう状況が生じるかもしれないと、そういうときにどうするのかということも、これは考えるべきだと思っております。   それで、先ほどの落合委員の問題提起は大変重要だと考えております。これを見ますと、親子関係に関する基本的な規律ですから、全ての親子関係に適用されるわけですよね。この部会は離婚ということを前提にして議論しておりましたから、そういう発想があるということはよく理解できます。しかし、実際に法となって規範となったときには、社会的にもっと幅広い問題を実はカバーしなければならない、そこまで考えて法の規律というのは考えるべきだということだと思うのです。   それで、附帯決議のことは後で大石委員から御説明があると思っておりますが、そういう社会の中での親子関係は、もちろん一つではないし、そこに今、多様化が進んで、先ほど落合委員が御説明いただいたケースは多分、熊本の外国人の方のケースだと思っております。それから、日本の若い人のケースでも孤立出産の事件は多く生じております。そこで母親のみに重い責任を負わされると、父親は一体どうしているのかという議論がいつもあるけれども、そういう問題も意識して、これは附帯決議にするかどうかは後で議論するとしても、きちんとカバーをする、視野に入れて議論をすべきだと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員からも2点、御意見を頂きました。1点目は意見表明について、これまでに出ている意見に基本的には賛成であるということだったかと思います。難しい点があるということは理解するけれども、それを克服していく環境整備を考えるべきだという御意見だったかと思います。2点目、その直前の原田委員の御意見でも出てまいりました人格の尊重、協力という点について、その影響に関する御懸念をお示しになったと理解を致しました。附帯決議という話も出ましたけれども、先ほど申しましたように、またそれは後で取り上げさせていただきたいと思います。 ○小粥委員 委員の小粥でございます。前々回だったか前々々回だったか、落合委員と窪田委員とのやり取りの中で、子の養育について親権者にあたかも全てを委ねるというようなことではなくて、国や地方公共団体の支援というようなことを民法に書き込むべきではないかというような御意見が出て、そのこと自体には深く共感するのですけれども、その意見が今度も出るのではないかと思って手を挙げておりました。けれども、民法の中でそれをという御提案は今日はなかったので、それについて御意見を申し上げようと思っておりましたけれども、恐らく補足説明の第1の1の2で尽きているということではないかと理解いたしましたので、その点については申し上げないことといたします。   しかし、この問題意識には共感するところがありまして、それは縦割りの各省の役所の所管の中で立法論議をするということへの問題提起であるとも思いましたし、それから、法制審の部会で発言するようなことではないのですけれども、民法学者が家族法の授業をするときに、民法という法律に書かれた家族に関するルールだけを説明して事足れりとするような傾向がなかったかと言われると、反省しなければならないところがあるようにも思いました。   ほんの少しだけ、立法に関わるようなことで、まだ十分な考えに至っていないわけですけれども、付け加えさせていただきます。それは、父や母であるから当然に親権を持って重たい責任を負うということは、事柄の性質上当然だというわけではなくて、法政策の問題なのだということを少し法律に書き込めないかということを実は考えておりました。結論は出ていないのですけれども、もし今後、若い世代で考えていただけるときのために、少しだけ議事録に残したいという趣旨での発言でございます。   それは、今後、要綱案の第1の1のところで、恐らく補足的に、こどもに応じて、未成年の子については父母が親権者になるとか、養子については養親が親権者になるというような規定が提案されることになると思うのですけれども、その際に、親だから、父、母だから当然にというような書き方ではなくて、例えば後見に関する、現行法でいうと民法の第8条ですけれども、後見だと後見に付するという書き方をしますし、更に飛躍して言うと、こどもの養育が親権者に信託されるというような書き方もあり得ようかと思います。現在この時点で問題提起をして議論することは難しいと承知しつつも、父、母だから当然に親権者になるということではないのだと、法政策の問題なのだということを考える手掛かりになるような規定の仕方に調整していただく余地はないかなと思って申し上げました。 ○大村部会長 ありがとうございます。小粥委員からは御発言は、今後の検討課題ということでお挙げいただいたと受け止めました。これまで様々な方から出ている社会的な支援の必要性ということについては、これを今の時点で民法に書き込むということを支持する意見が出ているわけではないので、それについては発言されないということでしたが、ただ、民法の中でも親の果たす役割についての書き方について再検討をして、その表現を変えていくということも将来的には考えられるのではないかという御指摘を頂いたものと受け止めました。ありがとうございます。 ○石綿幹事 幹事の石綿です。第1の1(1)について2点、発言させていただければと思います。   まず、多くの方々から意見があります子の意思についてです。子の意思をここの部分に入れることについては慎重な意見を申したいと思います。理由は4点ございます。   まず一つ目は、第821条との関係ということになります。現状の文言は第821条と平仄を合わせるような形で御提案があるかと理解をしておりますが、ここにもし子の意思の尊重を追加すると、第821条とそごが生じてくることになる。親は子の意思を尊重するのである、親と親権者で親の方が広い概念なので、親権のときも当然にそうなのだということもあり得るのかもしれませんが、少なくとも新たな条文と第821条の関係をどう説明するのか、どうしてこちらには入っていて、入っていないのかという問題、同じなのか違うのかといったようなことの整理の必要が生じてくるということになります。そのことによってかえって解釈論、実務に悪影響というか混乱が生じるおそれもあるのかもしれないということですので、ここはできる限り第821条との平仄を合わせるということが法体系の形から望ましいのではないかと思われます。   2点目としては、部会資料にもございますが、子の人格の尊重という部分に一定程度、こどもの意思の尊重ということは含まれるだろうと思います。人格を尊重する際にその人の意見を全く考慮しないということはあり得ないので、子の人格の尊重にこどもの意思の尊重は一定程度入っているのではないかと理解をしておりますし、そのような解釈というのも十分に成り立ち得るのだろうと思います。   3点目が、佐野幹事などからこどもの意思表明というのが独立した権利であるということの御説明があり、そのこと自体はそうだとは思いますが、この形で入れるのが本当に望ましいのかという問題もあるのだと思います。ここに入れると、親子の関係でということに少なくとも限定されてしまうと思います。これを契機にして、将来的にこどもの意思表明権の導入を考えていく、あるいはこどもにとって一番大事なのは親との関係なのだからまずここに入れるということなのかもしれませんが、こどもの意思という重要なものをここの場面で入れることが望ましいのか、独立して別途入れていく方法をまた考えていく方が望ましいのかというのも検討すべきことなのではないかと思います。   4点目は、以前の部会で水野委員がおっしゃっていたようなことかと思いますが、ここで子の意思の尊重を追加したときに、しかもこの文脈の中で入れたときに、こどもの意思ということが過度に重視される、あるいはこどもの意思の表明を求めるということがこどもにとって結果として負担になることというのもあり得るのではないかということがあります。以上の4点がこどもの意思を入れることに対して慎重な理由ということでございます。   それから、2点目は小さいことではありますが、先ほど第1の1について落合委員が、従前よりも親の責任を重くする規定を設けるといったような御趣旨の御発言をなさっていたように理解をしております。部会資料の方にも、そのようなものではない、従前、実務・学説で考えられていたことを明文化するのだというふうな整理がされているかと思いますし、私自身もそのような理解をしております。これは、議事録を中心に御覧になる方に誤解が生じないようにということで、補足的に発言させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事からは、大きく分けて2点について御意見を頂きました。一つ目はこどもの意思の問題で、慎重に考える方が良いのではないかということを四つの理由とともにおっしゃったかと思います。そのうちの最初の三つは、主として体系的な整合性という観点からの御指摘だったかと思います。二つ目は、この第1の、親の責任、責務ということについて、従来の責任を加重するという性質のものではないということを確認しておきたいという御趣旨だったかと思います。ありがとうございます。 ○大石委員 委員の大石です。ありがとうございます。この項目について三つ意見を申し述べたいと思います。   まず、第1の(1)の子の意思に関してなのですけれども、正直なところ私自身は迷っている部分もありまして、こどもに意見を求めてその結果を押し付けるのは非常に酷であるという御意見もあるのですが、多少パターナリスティックすぎるといいますか、佐野幹事がおっしゃったように、そういった懸念なしに意見を表明できる体制を求めるということが重要なのではないかという意見は、非常に納得できるところがあると考えております。その一方で、この中になじみがいいのかという御意見にもある面、賛同する部分もありまして、ですので、私たち自身は後ほどの附帯決議のところにその項目について入れそびれていたのですが、何かそういった形で扱うことができないかと考えているところです。   2点目は、人格の尊重という言葉です。これは(1)だけではなく(2)にも出てきておりまして、先ほど原田委員がおっしゃいましたように、そういう規律を設けるのであれば、例えばDVの事案などというのは、子の安全・安心という利益を損なう行為であり、互いの人格尊重という規律に反する行為であると解釈できると私も考えております。と同時に、戒能委員の出されたような懸念や問題が生じるような運用にならないようにと希望しております。   それから、3点目は(1)の、その子が自己と同程度の生活を維持することができるようにというところですけれども、これは養育費の水準設定ですとか支払義務についての根拠になる規律であると私は理解しております。と同時に、落合委員が先ほど指摘されていましたけれども、自己と同程度の生活というのが、例えば貧困水準を割り込んでいるといったようにこどもが育つのに不十分な水準である場合に、社会あるいは国がそれをサポートすることを排除するものではないということも、強調しすぎることはないと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。大石委員からは3点御指摘を頂きました。1点目は子の意思について賛否両論、双方からの見方を示していただいた上で、最後に、附帯決議での対応もあり得るのかもしれないといった御意見だったと受け止めてよろしいでしょうか。 ○大石委員 はい、そうです。 ○大村部会長 ありがとうございます。それから、2点目は人格の尊重ということについて、先ほど原田委員が述べられたような解釈を採った上で、出てくる懸念については適用で対応していく必要があるということだったかと思います。3点目は、余りこれまで発言が出ておりませんけれども、自己と同一の生活ということについての御理解を示されたと受け止めさせていただきました。   以上で一応、前回の最後に残っておられた方々の御発言を伺ったと思いますが、もし指名漏れがあれば。棚村委員、ごめんなさい、前回手を挙げておられましたか。それとは別にということですか。 ○棚村委員 はい。 ○大村部会長 分かりました。棚村委員も含めて、第1について、もし更に少し発言したいという方がおられたら、前回からの持ち越しの方々の発言に限定するという趣旨ではありませんので、御発言を頂きたいと思います。 ○棚村委員 民法の研究者ということで、子の意見について見解を述べさせていただきます。   池田委員がずっと主張されてきているように、児童の権利条約の第12条とか、2023年4月から施行されたこども基本法というところにも年齢とか成長発達の程度に応じたこどもの意見表明権を尊重するということが規定をされていますので、私自身も、当初は、暮らしの基本法である民法の中に何らかの形で入れた方がいいと考えてきました。   基本的には、子の意見に関する規定を入れるかどうかという議論をするときに、どこにどういうふうに入れるかということも含めてですけれども、大きく分けると二つの考え方があると思います。離婚後の親子法制の問題でも、例えば離婚時の情報提供とか親講座、それからこどもの養育に関する合意の義務化とか、これを協議離婚制度の中で実現すべきだという意見がかなりあって、私も当初そういう考え方だったのです。つまり、こどもの意思とか意向とか意見というのを尊重すべきだという理念を尊重し、規定をとにかく作っておいて、その支援とか運用とかそういうことについては、ある意味ではこれをスタートとして方向を定めていくという考え方が一つあったわけです。いわゆる、理念・規定先行型という考え方です。   これに対して、もう一つは、正に離婚時の情報提供とか合意の義務化のときに、協議離婚という制度が余りにも重くなるのではないかという懸念と、その内容とか、誰がどういうレベルで実施するかという具体的な環境とか基盤を整備しないと、結局その規定だけを設けたとしても、紛争の本当に解決とかプラスになっていかない問題点があるということで、ある意味では環境整備とか条件や基盤を充実させてから規定をきちんと置こうという考え方があります。基盤整備先行型といいますか。   今はどちらかといいますと、子の意見については、水野先生も多分そうだと思うのですけれども、一般的な理念的な面で規定を置くということ自体の意義を否定するという人はいないのではないかと思うのです。ただし、その環境整備とか具体的な支援策みたいなものまで整えないと、法の規定だけを先に置いても、どの場面で誰がどういうふうに聴いて、どういうふうにそれを生かしていくかということも含めて考えると、今の段階では少し難しいかなという御意見ではないかと思うのです。私は、今回はこれに賛成をします。   なぜかといいますと、海外でこどもの意見表明権とか意向とか心情を配慮するというときに、非常に細かく場合を分けています。つまり、問題が起こる前の基本原理としてそれを入れていくということについては、ほぼ問題がありません。ところが、紛争が起こったときの解決基準とか考慮事項ということになると、親も含めて、子の意見をどのように扱うべきかについては少し慎重な対応が必要ではないかと考えます。繰り返しになりますが、こどもの権利を誰がどういうふうに守っていくシステムにしていくかというときに、まず、どの場面で誰がどのようにこどもの意見を考えなければならないかという名宛人の問題です。先ほど石綿幹事からも言われたように、お父さん、お母さんに向けた話なのか、それとも司法の関係者とか社会全体に向けられた、こどもの意思の尊重の責務みたいなものを規定する場面で、果たしてお父さん、お母さんだけでいいのか、誰がすべきかという問題が出てくると思うのです。   海外で参考になるのは、私もオーストラリアとかアメリカとかいろいろな国の実情や取組みを見たときに、こどもが意見を言いやすい環境や仕組みがどう守られるかということと、それから裏表一体になるのですけれども、それによってこどもが不利益を受けたり板挟みにならないための工夫や仕組みをどうするかということがポイントになります。そして、こども自身が手続に直接参加する場合に、どんな方法で参加を認めていったらいいのだろうかという、これは年齢とか発達の程度にも応じて異なるわけですけれども、そういう一つ一つの細かい場面や状況での配慮する仕組みや担い手などを具体的に考えてやって、30年とか40年の経験を持ったところですら、ある意味ではそれでもなお非常に悩ましいことが起こっています。   私自身は30年近く家裁の調停委員をさせていただいて、両親が争いにお子さんたちを巻き込んでしまって、例えばお子さんのお手紙とか陳述書とかを用意されて、お父さんとは絶対会いたくありませんとか、お母さんのことは顔も見たくありませんとか、そういう手紙を見せられたときに、調停委員としても、それから担当する裁判官もそうです、調査官もとても心が痛いのです。なぜかというと、こどもの意見というのはすごく大事にして、こども自身の思いというのを誰かが届けなければいけないはずですけれども、争っているお母さんやお父さんにその役割ができるのか、もっと安心して言える誰か、届けてくれる人とか、きちんとそれを確認してくれる人に安心してこどもが言えるような環境とかそういうものがないと、かえってこどもにとっては本当につらい状況が生まれてしまうのではないかというのが、私は水野先生が一番言いたい趣旨なのではないかと思うのです。   そこを考えると、とても悩ましいのですが、理念・総論としては規定を入れることに反対はしません。ところが運用として、では具体的に紛争が起こったり何かしたときに、どういうふうに誰がどんなふうにこどもの意見の確認をしてやるのかとか、支援をどうするのかというと、もし規定を先に入れることのメリットと、デメリットを考えに入れるとすると、どうすべきかでは迷ってしまいました。先ほどから附帯決議とかというところでもいろいろ出てくるのですけれども、この問題については、誰に向けられたルールなのかということをはっきりさせないといけないのではないか、逆に言うと、お父さんやお母さんがそれを受け止めて実現することがなかなか難しいのがこどもの意見なのではないかと考えるに至りました。つまり、適切な第三者がきちんとした形で、社会的養護の計画とか一時保護とか、そういうところもそうですけれども、こどもの意思について、こどもの権利擁護についての支援員みたいなものを用意し、具体的な要件や考慮の方法も含めて実施要領とかいろいろなものを厳格に定めた上で、中立公正にそれを何か確認できるような人たちをきちんと確保するような努力をし、海外のように何十年か経験と蓄積を積み重ねながら、ルールとかガイドラインとかを形成しなければうまく法律の規定は機能しないのではないかと危惧しています。それから、オーストラリアの裁判所で裁判官がチェインバーという私室に呼んでお子さんの意見を聴くという場面も見させてもらったのですけれども、その裁判官が言っていたのは、普通の裁判官とかそういう人にはできませんよということを言っていました。30年とか、ワンファミリー・ワンジャッジみたいな、そういうところでなくて、転勤をしていっていろいろな裁判所も回るローテーションシステムのところでそれを実現するのがなかなか難しそうだなと感じました。まずお子さんの目線に立って、しゃがんで、怖がらせないようにこどもの目線に立って、経験豊富な裁判官が研修やワークショップに参加してスキルを磨き行っていました。   私自身は、たくさん言うことがあるのですけれども、そういうことを踏まえても、理念としては置くべきだという考え方については非常に共感を覚えます。ここから仕組みをいっぱい作って、きちんと強化してくのだ、予算を付けてというようなことが実現しそうであれば、子の意見の規定化に賛成しようと思ったのですが、今回の盛りだくさんな改正のなかで、いろいろなことに多くの支援や手当が必要だと思っているので、今回については、離婚後の講座とか情報提供と同じように、運用とか支援についてしっかりとした環境整備とかそういうものをした上で導入をしていくということに現段階では賛成をさせていただきたいと思います。   池田委員とは研究会とかいろいろなところで議論をしていて、ほぼ考え方としては同じ考えを持ち、佐野幹事とも皆そうなのですけれども、私自身は、子の意見の問題については、離婚後講座とか情報提供のときもそうだったのですけれども、最初は入れるべきだということで積極的発言をしていました。途中でころっと変わったというのは、逆に言うと、むしろ情報提供の内容をどのレベルで誰がどんな形でするかというのを今、法務省も含めていろいろ作業をさせていただいている中で、法律の中に条文を入れる前にやらなければいけないことがこどもの意見についてもかなりありそうだと考えている次第です。特に、お子さんを巻き込んでしまうとか、巻き込まれないような保障みたいな、不利益を受けないような保障、安心できるような保障みたいなものを確実に確保しておかないといけないという思いを強く持っております。そこで、安心してこどもが発言できる環境を整え、こどもが自分の言ったことで責任を問われない、不利益を受けないという条件整備もしないと、なかなか規定だけを入れたら、父母の争いの道具とされたり、板挟みにされかねないというデメリットの払拭までは自信がないので、やはりお子さんにとっていい方向に行かない可能性があるのではないか、次のステップにきちんと力を入れていくという前提で、現段階では入れない方がよろしいのではないかという意見を述べます。 ○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員からは、先ほどから話題になっている子の意見について、現段階ではということでしたが、見送った方がいいのではないかという御意見を頂きました。それについて二つおっしゃったのだろうと思うのですけれども、一つは環境整備というか支援の問題ということで、これは何人かの方々が触れられていたことかと思います。それからもう一つは、どこにどのように入れるのかということで、これは石綿幹事がおっしゃっていたのと共通のところがあると思うのですけれども、法制度の作り方として、なお検討を要するところがあるのではないかということだったと受け止めました。 ○久保野幹事 久保野でございます。私も子の意向、心情に配慮しという文言を挿入する点についての意見でございまして、今回は挿入することには慎重である方が良いという意見であります。   理由は今までの先生方と重なりますが、環境整備とともに、親子の関係に限られない、より広い適用範囲をもって法改正を行っていくことを今後目指していく方が適切なのではないかという気がしております。理念、権利として、先に法規定として入れた場合にどの程度弊害が起こり得るかということについて、実務界にいない私が具体的に明確に分かるというわけではありませんけれども、御議論を伺っていまして、自分のことを自分に知らされずに決められることなく、参加するプロセスを具体的に整えながら、セットで法制度にしていく方が、かえってしっかりした子の意向の配慮ということを実現していけるのではないかという印象を持っております。   法規定を入れない場合の現行法の解釈ですけれども、第821条の子の人格の尊重ということについて、佐野幹事、石綿幹事から指摘がありましたけれども、確かに第821条の子の人格の尊重というのは、私も佐野幹事がおっしゃるとおり、主には、支配被支配の関係ではなく、対等な個人と個人の関係であるという意味合いを実現していくということに意味がある規定であると捉えてはおります。けれども、この条文の中に、未成年のこどもとしての特性を踏まえたこどもとの関係での権利義務関係や、その意向の尊重といった趣旨を盛り込めないかといいますと、私自身はそのようなものも盛り込む意味を持つものとして第821条を捉えておりました。今後、より明確に区別して規定していった方が良いということがあり得ることについては、佐野幹事の御発言から教えていただいたような気がしておりますけれども、他方で子の人格の尊重という文言の中に現行法としては解釈で入れていくということは十分にあり得るのではないかと、繰り返しになりましたけれども、そのように思う次第です。 ○大村部会長 ありがとうございます。久保野幹事は、子の意向あるいは心情という問題について、やはり慎重論ということでした。前の何人かの方々と共通の点があるということもおっしゃっていただいたのですが、特に、人格の尊重という文言で差し当たり運用できるのではないかという理解ないし解釈をお示しいただいたと受け止めました。ありがとうございます。   ほかに、第1について何かありますか。   それでは、池田委員、赤石委員という順番でお願いいたします。 ○池田委員 池田でございます。子の意見、意思、心情等の取扱いについて、一度、発言の機会を頂いたのですが、慎重な御意見も出ていましたところで、再度意見を申し上げたいと思います。   まず、幾つか御指摘のあった慎重論の理由として、現行第821条との関係ということの御指摘がございました。ただ、第821条の改正に当たりましては、特に子の意見の取扱いということについては議論がされていなかったようにお見受けしていますので、明示的にこどもの意思を含むということでこの規定ができたわけではなかったのではないかと思います。そう考えますと、改めてこの親子関係の基本的な規律の中で議論をし、それに従って第821条をもう一度検討し直すということもあっていいのではないかと思います。確かいつかの部会で小粥委員から、第821条はもう触らないということなのかという御質問に対して、事務当局の方から、この親子関係の規律を踏まえて第821条について検討するということもあり得るというふうな回答もあったところかと思います。ですので、そういったことも可能ではないかと考えています。   それから、こどもの意見表明というのは独立した権利であるので、改めてしっかりとした規定をその文脈の中で考えていくということの御指摘がございましたが、飽くまでここでは親子の間の、親に対するこどもの在り方ということで親子の関係を論じている、検討しているところかと思いますし、それを超えてこどもの権利というのを民法の中に設けるというのは具体的なイメージが湧かないようなところもありまして、正にこここそがこどもの意見表明について定める場所なのではないかと私は考えています。   それから、幾つかの弊害ということの御指摘もございました。具体的には、こどもの意見に従って決定をすることで決定の責任を子に負わせるということが酷ではないかと、そういった御指摘ですとか、あるいは父母が自己に都合のいいようにこどもに意見を言わせようとするような弊害、そんな指摘があったかなと思います。   まず、一つ目の弊害とされているものについてですが、こどもの意見表明権の理念は、飽くまでこどもの意向や心情の表明を経て、親子の対話によってそのこどもの最善の利益が形作られていくというプロセスを保障しようとするものでございます。こどもに何でもかんでも決めさせるという親の無責任を許容するような概念ではありません。もちろんこどもの示した意向や心情によって物事が決められるということもあり、自ら選んだことにこども自身も責任を引き受けるべき場面もございます。しかし、それも含めてのこどもの権利主体性です。こどもは保護の対象としてのみ存在するのではありません。大石委員から御指摘がありましたように、ややパターナリスティックな考え方ではないかと、こどもを保護の対象として見るからこその弊害の御指摘ではないのかなということを感じます。こうしたことは、既にこどもの権利条約の解釈としてもこれまで示されてきたところかと思います。   次に、父母が自己の都合のいいようにこどもに意見を言わせるという弊害については、まず第1の規律というのは、親たる者のあらゆる場面での行為規範を示しているものでして、父母が離婚などで対立している状況を主要な場面として想定しているものではないことを指摘したいと思います。仮に父母が対立する場面に限ってみましても、自己の都合のいいようにこどもに意見を言わせるというような行為は不適切な行為であって、それこそ子の人格の尊重にもとる行為であります。子の人格の尊重とともにこどもの意見の表明ということをセットで規定すればいいのではないかと思います。   逆に、法務省の調査研究として行われました、未成年期に父母の離婚を経験した子の養育に関する実態についての調査分析業務報告書で、「あなたは父母が別居するときに父母に自分の考え、気持ち(本心)を伝えましたか」という問いに、「特に伝えたいことはなかった」の33.5%に次いで、「伝えたいことはあったが伝えられなかった」は21.5%と、多い結果となっています。意向や心情を伝えたいというこども側のニーズにもこたえる必要があるのではないかと思います。   もとより、これら指摘いただいています弊害という事情が全く生じないということではないと思います。無責任な親もいれば、こどもの意向や心情を盾に取るという親もいるかもしれません。しかし、そうした一部の例外的な事象を基に制度設計するということはいかがなものかと思います。例えば、離婚後共同親権についてDV事案が紛れ込む懸念があるからといって共同親権自体をやめようという議論にはならずに、共同養育の理念をうたいつつ、例外事象を除外するための一定の手当てをしていこうという議論をしてきたのではないかと思います。それがことこどもの意見に関しては、どうして弊害ばかりが指摘されて、それを基に制度設計がなされるのかというところは疑問に感じざるを得ません。私としましては、父母がこどもの養育において、こどもに関係する事柄の決定に当たってこどもの意向や心情を聴き、しっかりと受け止め、その最善の利益を実現していくという養育の在り方を、やはり第1の1のところで具体的法規範として規定していくべきだと考えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは、今までに出ている慎重論の論拠の幾つかを挙げられて、それについての御意見を頂いたと理解をしております。第821条との関係、あるいは規定を置く場所としてふさわしいのかどうかという問題、そして3番目に、弊害に対する考え方をおっしゃっていただいたかと思います。改めて、規定を置くべきだという御意見をお示しいただいたと受け止めました。 ○赤石委員 ありがとうございます。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。今までの議論をお聞きしたのですけれども、2点お伝えしたいと思います。   先ほど少し言い忘れてしまいました。第1の1(2)、婚姻関係の有無にかかわらず、父母は互いに人格を尊重し協力しなければならない、その子の利益のため、子に関する権利の行使又は責務の履行に関しという、少し条件はあるのですけれども、ここについて、最初に私も拝見したときには、今非常に別れたときに攻撃的な行動をされる方たちの抑止になるやに思いました。しかし、逆に言えばこの協力義務というのが逆に作用することもあるというのは戒能委員から御指摘があったかと思います。やはり協力し合わなければいけないが、していないではないかといったことになる危険性がある。フレンドリーペアレントルールについての御指摘もありました。私もそういう懸念もございますので、ここではっきりとこれについては伝えておくべきかと思いました。   2点目は、池田委員のもう1回御指摘された子の意思あるいは心情、心情というと余り私は何かぴたっと来ないので、意思か意向ではないかと思っております。これは民法の中できちんと位置づけられるべきという意見については、私も賛成です。先ほど棚村委員が、環境整備がまず必要であるという御意見がありました。この共同親権を選択あるいは決めるに当たり、環境整備があるとは私は全く思っておりません。オーストラリアでは、棚村先生も御報告されておりますように、数は忘れてしまいましたが、何百のファミリーサポートセンターがあってもなお、親子交流時に殺人事件が起こってしまっているわけでございます。こういったことを考えて、では環境整備というのが一体日本であるのかということを考えると、ではやめましょうという議論を今までしてきていないわけですよね。池田委員はもう少し柔らかにおっしゃいましたけれども、非常にびっくりしましたということでございますので、今その方向でこの部会が走っているのであれば、やはり子の意思あるいは意向についても、同じように位置づけるべきではないのですか、と思いましたので、付記させていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員から2点の御意見を頂きました。1点目は、人格の尊重、協力ということについてプラスとマイナス双方あり得るということについて、注意すべきだという御指摘かと思います。2点目は、直前の池田委員の御発言に賛成ということでしたけれども、これまでのここでの議論の方向からすると、まず理念の面に着目し、環境整備は後で行っていくという考え方に立つということになるのではないかという御指摘だったかと思います。   ほかにこの第1について御発言があれば、頂きたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。   それでは、第1についてはおおむね御意見を伺ったということにさせていただきたいと思います。第1の1(1)のペンディングになっている部分につきましては、前回それから今回併せて、賛否両論御意見があったと理解を致しました。子の意向や心情について配慮すべき場合があるということについて、あるいは配慮する必要があるということについては、皆さん一致されているのではないかと思いますけれども、これをどのような形で規定にするのかということについて、なお意見の不一致があるということだろうと承りました。それから、他の点については、親の責務あるいは尊重、協力ということについての御懸念が表明されている、それについては、先ほど複数の御発言がありましたが、附帯決議等での対応も可能かもしれない。こうした御意見を頂戴しているとまとめさせていただきたいと思います。   それで、今最後に話題にしました附帯決議の問題がございますけれども、多少早いのですが、ちょうど切りがいいので、ここで少し休憩させていただいて、休憩明けからその問題に移らせていただきたいと思います。現在14時42分ですので、55分まで休憩して、14時55分から再開ということにさせていただきたいと思います。   休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開させていただきたいと思います。   先ほどまでで第1についておおむね御意見を頂きましたので、この後は大石委員の方から、冒頭に御説明があった委員提出の資料についての趣旨を御説明いただきたいと思います。大石委員、お願いいたします。 ○大石委員 ありがとうございます。委員の大石です。この意見書は赤石委員、戒能委員、柿本委員との連名で提出させていただいております。私から御説明させていただきますけれども、その後に赤石委員に補足をお願いしたいと思っております。まず、内容を読み上げさせていただきます。   附帯決議(事項)の提案について。   意見の趣旨。当部会において議論されている要綱案(案)の附帯決議として以下の事項を提案する。   一つ目。家庭裁判所の機能向上のため、研修・人員体制の強化を行うとともに、そのための財源が確保されること。   二つ目。家庭裁判所は、親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立ての件数及びその結果について報告を行うこと。また、今回の民法改正が家事事件の動向にどのような影響を与えたか、改正法施行後しかるべき時期に報告を行うこと。   三つ目。父母の離婚前後の子の養育への父母の関与、および親権者・監護者の取決めに関し、ドメスティック・バイオレンス(DV)および児童虐待を防ぎ、子の安全と安心を確保するため、法的支援をはじめとする充実した取り組みが行われること。また、そのために必要な財源が確保されること。   四つ目、子の養育に関連する税制、社会保障制度、および教育支援にかかわる制度について、父母の離婚により子に不利益が生じないよう、関係省庁の連携協力による真摯な検討および必要な措置が講じられること。となっております。   理由については次のとおりです。まず、当部会で議論されている要綱案(案)では、家庭裁判所に一層大きな役割が求められております。当部会においても、案件の増加や複雑化に十分対応し得る機能の拡充を求める意見が多数出ております。そうしたことを背景に、1点目を御提案いたしております。   2点目については、民法の見直しは国民生活に大きな影響を及ぼすものであるだけに、裁判所の判断がどのようになされているかを国民に周知することが望ましいと考えます。実証分析に関わる者としましても、やはりどのような実態があるのか、エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキングの時代でもありますので、そういった状況について把握ができることは今後の法政策を考えていく上でも非常に重要なことではないかと考えております。   三つ目について、DV事案への対応に関しましては、急迫の事情の解釈について当部会でも繰り返し、実態にそぐわないなどの懸念と支援の必要性が述べられております。   また、四つ目、税制、社会保障制度や教育支援に関しましては、省庁横断的な対応を求めたいということで、第20回の会議で私ども4人で意見を提出させていただきました。また、部会においてもほかの委員や幹事からの御発言でも、そういったほかの制度との連携というものが非常に重要だという御発言があったと理解しております。   当部会への諮問というのは、要綱案を示してくださいというものでありました。しかしながら、当部会のこれまでの議論の内容は非常に多岐にわたっておりまして、ここで要綱案となっている規律に対して賛成、反対の御意見はあろうと思いますけれども、いずれの立場においても、単なる条文にとどまらず、運用が非常に重要であるという認識は共有されていると考えております。私たちは法律案の製造物責任を担うことになりますので、それに当たっては、言わば取扱説明書として、どのように運用されるべきか、私たちが何を考えて議論していたかということを附帯決議という形でメッセージの形で出すことが望ましいと考えております。   付け加えさせていただきますと、この意見書の作成に当たりましては、素人ながら、私が少年法改正を初めとした過去の法制審の様々な部会の附帯決議や議事録などを読んでみました。そうした中で、こういったメッセージといいますか附帯決議というものを出すことは恐らく可能なのではないかと考えましたもので、今回このような提案をさせていただく次第です。この附帯決議につきましては要綱案とは別に、附帯決議という形で別に決議されるということを私どもとしては希望しております。そういった扱いにつきましては、法制審議会の会社法制部会というものがありましたが、そこにおいても別々に決議がなされておりますので、可能ではないかと考えたという次第です。   それでは、もし可能でしたら赤石委員に補足していただければと思います。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員、何か補足があれば。 ○赤石委員 赤石でございます。ありがとうございます。もう大石委員が御説明をかなりしてくださったので、私の方からの補足は3点ですかね、ございます。   この意見の趣旨に関しては、例えば○の2点目、報告のところでございますが、単にその件数の報告にとどまらず、どういう影響を家族の、あるいはこどもたちに及ぼしたかなど、そういう影響についての分析や調査の報告がしかるべきときに行われるべきであろうと思っておりまして、それが非常に重要ではないかと思っております。   また、○の1のところなのですけれども、是非裁判所の方でどのくらいの件数増の見込みというのがあるのかというところが出されて、そして予算、人員の拡充。人員の拡充というのはすぐにできるものではないと思うのです。やはり教育とか研修とか採用とかのプロセスというのは非常に大変だと思いますので、やはり法律が施行されるまでに御準備いただくとすると、そういった見込みを作っていただくということが必要なのではないかと思っております。   それから、○の三つ目で、これは少し補足として、この中には、例えば法的支援にはもちろん法律相談、それから弁護士への依頼等の費用の支援といったものがございますけれども、それに加え、面会交流支援団体というのが全国にあって、このドメスティック・バイオレンスや児童虐待があって面会交流がなかなかできないといった場合にも支援が継続的に行われることが必要になってくる、もちろんそれができない場合には、しなくてよろしいわけですけれども、こういったところの支援が必要になるということも想定しております。   あと、○の四つ目のところでございますけれども、今までも税制、社会保障制度については、なかなか今答えられないということで答えが出てこなかったわけです。とはいえ、やはり、例えば就学支援の新制度、大学、いわゆる高等教育の無償化などは非常に大きなインパクトのある支援になっておりますので、こういったところがどういうふうに運営されるのかも含めて、もちろんこどもに関する手当ても含めて、もう本当に大きな影響があるところでございますので、大変気になるところです。関係省庁については、もしかしたら等が入っていた方がよろしいのかなと思いながら、直し切れませんでした。   あと、最後でございます。附帯決議に関しましては、是非別のお取扱いがされることを望んでおります。 ○大村部会長 ありがとうございます。大石委員からこの提案の趣旨について御説明を頂き、赤石委員から、個別の提案についての補足と、それから取扱いについての補足を頂いたかと思います。   ここで、附帯決議というものが出てきているわけです。大石委員の説明の中で多少触れられておりましたけれども、この附帯決議というものがどういうものであるのかということにつきまして、事務当局の方から少し御説明をお願いできればと思います。 ○北村幹事 事務当局でございます。従前から御説明しておりますとおり、この部会におきましては、法務大臣から、離婚及びこれに関連する制度に関する規定等を見直す必要があると思われるので、その要綱を示されたいという諮問があったことを受けて、家族法制の見直しに関する要綱案について御議論いただいているということになろうかと思います。   もっとも過去の法制審議会の例を見ますと、部会において諮問に対応する要綱案を取りまとめる際に、要綱案とは別に附帯決議や附帯事項というものをおまとめいただいた場合がございます。附帯決議をするかどうかや、どのような事項を盛り込むかは、部会において御議論いただいてお決めいただくことになりますけれども、部会において附帯決議がされた際には通常、要綱案とともに法制審議会の総会において御審議いただいて、その了承が得られましたら、要綱の答申とともに法務大臣にお渡しするという流れになろうかと思います。   なお、附帯決議について御議論いただく際にも、この部会が法務大臣の諮問機関である法制審議会に設置されたものであることとの関係で、決議をすることができる事項に一定の限界があることにも御留意いただけますと幸いです。すなわち法令の定めによれば、法制審議会がつかさどる事務というものは、法務大臣の諮問に応じて民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項を調査審議することと定められております。そのため、本日御意見いただく際にも、その御意見や御要望の内容の当否とは別に、最終的にこれが法制審議会として決議することができる法務に関する基本的な事項の枠内の事項であるかを意識していただけますと幸いでございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。附帯決議というものは今のようなものだということについて御説明を頂きました。この附帯決議につきましては、本日提出されました4委員の意見書を参考にして、事務当局の方で決議案を作成していただくということになろうかと思いますけれども、今日の時点でこの意見書について特段の御意見があれば伺っておきたいと思います。それから、この機会に併せて要綱案の第2から第7までの点につきましても、やはり何か特段の御発言があれば、おっしゃっていただければと思います。   ということで、附帯決議及び第2から第7について御意見を伺いたいと思います。 ○水野委員 委員の水野でございます。附帯決議について発言をさせていただきます。   拝読いたしまして、一研究者としては、DVや児童虐待を防ぐためにという内容は、もう本当にそのとおりだと思います。私もこの会議の中で何回も、育児支援が著しく足りない日本の状況について、何回も発言いたしました。ここにはこども家庭庁の方もおられますし、と行政的な支援への希望も述べました。ですから内容については本当に賛成したいと思うのですが、ただ、これを附帯決議という形で出して良いのかという点には、不安があります。法制審議会の部会歴は、私は恐らく最も長い一人だと思います。法制審議会は、あくまでも法務大臣の諮問機関という位置づけで、そのことの権限の限界というのを持っております。端的な話、立法の権限はありません。私の30代の5年間を費やして作った婚姻法改正要綱は、ついに立法されませんでした。それから、一研究者として発言するときには好きなことを言えるのですけれども、この部会の意見としては好きなことを言えるというものではないことを、やはりそれらの経験から痛感しております。権限の限界というものがございまして、逆にそれを守ることによってある意味、法制審議会の権威が守られてきた側面があります。そして、法制審議会が何を言おうと自分たちはこれでさっさと立法してしまうのだと国会が考えれば、そうできてしまうわけなのですけれども、でも慣例として、法制審議会で民法改正の議論をするという慣行が維持されてきたのは、私はとても意味のあることだと思っております。そして、それにはやはり法制審議会の方でも慣例としての権威を維持できるための自制が必要になってくるのだろうと思うのです。   そこで、内容的には賛成なのですけれども、ただ、これが我々の権限の限界を越えているかどうか、つまり、内容的にかなり行政機関や裁判所に対する注文になっているのですが、そういうものについて我々が附帯決議という形で文書を出して良いのかというのが、私の不安な点でございます。この点について改めて事務当局で整理をしていただいて、そして、この範囲ならば法制審議会としての権限の範囲内であるという形で再度まとめていただけましたら、私も安心して賛成ができるのですが、そのような作業をお願いしたいというのが私の意見でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。水野委員からは、内容については賛成であるという前提の下で、法制審の部会として答申をする際に付すことができるものには、限度があるのではないか、限度があるというと消極的なようにも聞こえるけれども、それによって守られてきたものがあるのではないかという御発言をいただいたかと思います。先ほど私も少し申しましたけれども、これについては、今日の御意見を伺った上で事務当局の方で整理をしていただいて、改めて案を出していただくことにさせていただこうと思っておりますけれども、そのようにしていただきたいという御要望だと承りました。   棚村委員、それから落合委員、原田委員という順番で手が挙がっていますので、その順番で伺います。 ○棚村委員 これまでの附帯決議については、事務当局から御説明があったとおりだと思います。それで、今回の離婚後のこどもの養育の在り方に対する民事法制の見直しについては度々、支援とか運用する家裁での体制、これを強化すべきだという御意見がありましたので、私自身も内容については賛成いたします。ただ、法制審の部会でこれを附帯決議という形でどこまでできるかというのは、水野委員がおっしゃったような、少し疑問があり慎重に対応する必要があると思います。   むしろこれまでは、どちらかというと衆議院とか参議院という国会の場で法律案みたいなものを審議したときに、それにはかなり自由な形で御意見あるいは検討事項が示されるということがあります。例えば、2011年の親権及び未成年後見なんかの民法の一部改正のとき、特に親権停止制度とかが提案されて改正されたときですけれども、このところでは、親権停止制度についてもそうですけれども、離婚後の共同親権とか親子交流とか、そういうことについてきちんと見直しをするとともに支援の体制を強化するというようなことが定められています。割合と国会の議論とか審議ですと、非常にいろいろな注文を付けて、人的な、物的な体制の強化、いろいろな手当てについても責任を最終的に負っているところですので、割合とそういう意味では出しやすいのだろうと思います。   法制審の部会での附帯決議ですけれども、例えば直近で、先ほど出てきた会社法の一部改正、特にコーポレートガバナンスというか企業統治に関する改正が行われたときに附帯決議が確かに出されていますけれども、この附帯決議は、要綱案でかなり具体的な規律で足りなかったところですね、例えば株主総会の資料の電子提供に関する規律なのですけれども、これに伴って金融商品取引所の規則で上場企業に対してできるだけ株主が提案をしやすいように3週間程度の期間を持つべきであるとの附帯決議が第1個目です。それから、第2個目の附帯決議の内容は、正に株式会社の代表者の住所の登記情報について、戒能先生なんかも詳しいかもしれませんけれども、DV法に伴うような情報の公開に対する危険がある場合には、非公開措置をとれるようにすべきだとか、それから電子通信回線法に基づく登記情報についても非開示にするとか要綱案の決議に伴って少し漏れていたり、対応をしなければいけないような具体的な詳細なことについて附帯決議をしているわけです。   つまり、この要綱案を本部会で、今回のものもそうですけれども、取りまとめるに当たって、実際にそれが成立をしたときに整備しなければいけない細かい具体的な内容についての附帯決議が法制審の親委員会でされているというのを考えますと、今回の意見書で盛り込まれて、私たちが考えているものは、どちらかというと具体的な要綱案が成立をしたりした場合に、人的、物的な様々な体制をきちんとしてもらうことによって目的を達成できるようにお願いをしたいという内容かと思っています。そうすると、法制審の部会でもう少し、ある意味で絞り込んだようなものが漏れているとか、これがないと実際に要綱案を提出したとしても不都合が生ずるみたいな話について盛り込まれるということが割合と多いのだと思うのです。ですから、これも含めてですけれども、事務当局に精査をしていただいて、これまでの附帯決議の内容とか、やってきたことも参照して、どこまで部会として、附帯決議としてこういうような関係する機関へのお願いとかそういうようなことについて可能なのか、できるのかどうかということを精査していただいて、取りまとめをしていただけると有り難いなと思います。   ですから、この部会で別立てにこれを提案するために議決をするということが本当にできるのか、今の段階でできるのかどうかということや、どこまでを盛り込めて、どこから先はむしろ国会とかそういうところで責任を負って実現のための先ほど言いました環境整備とか支援の強化ということでやっていただけるかということを検討した上で、出来る限り前向きに御検討するようお願いしたいと考えています。つまり、基本的な意見書の内容そのものについては賛同したいと思うのですが、これを附帯決議にするかどうかということと、どんな内容を盛り込むべきかということについては、事務当局に検討していただいて御提案を頂きたいということです。 ○大村部会長 ありがとうございました。棚村委員の御発言も基本的には前の水野委員の御発言と同趣旨であると理解を致しました。その上で、附帯決議ということで国会の衆参両院で行われているようなものを一方で視野に入れ、他方でこれまで法制審で行われている先例を考慮に入れて、その幅の中で何が可能かということを事務当局の方で精査してほしいという御要望として承りました。   次に落合委員、それから原田委員という順番で伺いたいと思います。 ○落合委員 委員の落合です。今、水野委員、棚村委員の御発言を聞きながら、附帯決議というものの位置というのは結構難しいのかなと思って伺っていたのですけれども、この部会の中での議論では、法律の中で閉じない、行政と関係があるし、省庁横断的な取組がなければ、この法改正をして実現したいことは実現できないというような意見が繰り返し出てきたわけですね。それを表明する場所がどこにもないというのも、また非常に不都合なことのように思います。法学者の方というのはどうしてもやはり前例を踏襲する形で論を進められる、そういう性質の学問だと思いますし、そうあってほしいと思うのですけれども、それがもしかすると日本の制度を変わりにくくしていることと関係があるのかなと少し考えたりもいたしました。   附帯決議を出すことに、私はこの内容にも賛成なのですけれども、もしも付けられない場合は、この部会資料の2というのが付いているほうにあります補足説明は、これは公開されないのですよね。附帯決議ができないのであれば、補足説明を付けて公開するとか、何かそういうことができるのだろうかと。附帯決議を付けるのは難しいという、こちらの経験の厚い先生方には、ではどのような形で私たちの懸念を表明できるかという代案を御提案いただきたいと思います。   形式面はそれでして、次に内容面なのですけれども、私もこの4点、賛成しますけれども、ただ、四つ目の○のところに、先ほど少し述べました第1についての懸念を払拭するようなことを入れていただきたいと思っています。もう一つ項目を設けるのではなく、この四つ目に入れるというのは、少し無理があるかもしれませんけれども。文案として考えましたのが、「に関わる制度について」の後「父母の離婚により」の前に挿入していただきたいということです。「父母が子に関する権利の行使又は義務の履行が可能であるように、またとりわけ父母の離婚により子に不利益が生じないように」というような構成にしていただきたいと思っております。挿入する部分はもっと短くてもいいので、「父母が子の扶養等の責務を履行できるように」というようなことでもいいかなと思います。この第1のところはやはり大きな追加であると思うのです。ですから、それに関することもこの附帯決議の中に入れていただきたいと思います。   また、先ほど石綿幹事から、私が言ったことについての修正がありました。それには感謝申し上げたいと思います。この第1を入れることで父母の責務を重くしようとしているわけではないという修正でした。私の先ほどの発言が誤解を招くといけないと思いますので、御注意いただいて非常に有り難かったと思っております。ただ、法律の専門家の方たちは、今まで実質的にこういう責務があるということで運用されてきたと御存じだと思うのですけれども、一般の人にとっては、この条文がぱっと目に見える形で出てくるというのは、やはりかなりの衝撃だと思います。それは責務を重くすることではなくて、明確にするということかもしれませんけれども、インパクトはあると思います。ですから、これを盾に取って、それを行っていないと思われる人を責める人も出てくると思います。ですから、それは親個人の責任ではなくて、社会的にサポートをして初めて親はこどもを育てられるのだということをどこかで言っておかないと、やはりこの第1は過剰な効果をもってしまうのではないかと、私は非常に危惧するのです。先ほども例も挙げましたけれども。   それで、先ほど意見を言いましたときは、附帯決議が提案されたならば通るのかなと思って、それであれば、ここにそれを入れていただくことで何とかこの不安を解消したいと思ったのですけれども、今お話を伺ってみますと、附帯決議も付けられない可能性もあるということですから、それなら多くの人を多分驚かすことになるこの第1も、このままぽんと出してしまうのでしょうか。補足説明なり何なりで、委員の私たちすら懸念しているようなことがあるということを表明することなく、これを出すのでしょうか。非常に割り切れない思いを今持っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。落合委員からは大きく分けて2点、御発言があったと受け止めました。一つ目は、前のお二人の委員の御発言がありましたけれども、附帯決議を付けられるのか付けられないのかという形での御発言がありました。前の方々も、付けるべきではないということではなくて、付けるとしてどの範囲のことが可能なのかという、程度の問題を議論されているのではないか、必ずしも付けることに反対だという御趣旨ではないと思って伺っておりました。それにしても、付けられないとした場合にどういう対処が可能なのかということにつき、併せて落合委員の方から御発言がありましたけれども、資料の取扱いについて、北村幹事から少し御説明をお願いします。 ○北村幹事 繰り返しになるのですけれども、この部会におきましては、資料、補足説明として出しているもの、今回であれば部会資料35−1、35−2のうちの35−2の方になりますけれども、そのような形で従前から補足説明の部分についても公開し、また、委員から出された資料についても基本的には全て公開する、それに基づいて議論がされたことについては議事録で残っているということになりますので、将来的にも、ここでどういう議論がされたかということは、それぞれの委員のお名前が入った形で残っていくということになろうかと思います。それを踏まえて、後々裁判で判断されるとき、あるいは法解釈として積み重なっていくものだと理解しております。 ○大村部会長 ありがとうございます。それから、もう1点、落合委員は実質的なことについても御意見をおっしゃっていて、それは○の1、2、3、4と赤石委員はおっしゃったのですけれども、4番目の○で書かれているところに、先ほど話題になった第1についての懸念に対応するような文言を書き込んだ方が良いのではないかと、こういうふう御提案も頂いたところであります。それも含めて、どういうものが書けるかというのを検討していただくということになろうかと思います。一応、今のような二つの方向で受け止めさせていただきたいと思います。   原田委員、それから大石委員から手が挙がっているようなので、もう一度大石委員ということで、原田委員、大石委員の順番でお願いします。 ○原田委員 委員の原田です。まず、附帯決議に関する意見書については全面的に賛成です。委員の側からこういう附帯決議については限界があるということが次々に出てきたので、何となく意外というか、やはりそこは法務省に考えていただいて、是非工夫していただきたいと思います。   そういう意味で、是非こういうことを考えていただきたいというふうに皆さんに共有していただきたいという意味で、現在の家庭裁判所の実情を述べます。本庁が50で支部が203、出張所が77なのですけれども、裁判官がいない非常駐支部というのが44あります。出張所も一つ以外は裁判官がいません。こういう状況で月に2、3日しか裁判官が来ないとか、ひどいところは3か月に2日しかない。この2日というのは、2回ではなくて2日なのですよ。だから、3か月に1回、1泊2日で来られるという意味です。調査官がいないところはもっと多いです。調査官を本庁や大きな支部に集めて、いないところに派遣するという形をとっています。このような人員配置というのは、確かに限られた予算の中で管轄地域の人口とか事件数で配置されていると思うのですけれども、こどものことについて意見が分かれたときに裁判所で決めるとすれば、迅速性が求められるわけで、過疎地のこどもについてはなかなか決まらないということは許されないと思うのです。裁判所のパブコメに対する意見でも、親権行使の定めには時間を要するとなっています。その上に事件を受理されてから審理が始まるまでにも今の現状では時間を要するということでは、迅速な決定はなかなか難しいのではないかと思います。   こういう人的、物的整備という言い方が、法務省と裁判所という関係で緊張関係があるとすれば、このような制度を現実的に実行していくために支障がないような体制というようなものを何らかの形で表現していただけないかなと思いますし、もちろん予算も必要です。正しくこれをやらないと、棚村委員が言われたような不都合が生じると思います。   もう一つ、法的支援について先日、こどもが法テラスを利用できない話をしましたけれども、離婚関連事件では今でも離婚の調停、訴訟、婚姻費用分担請求、子の監護者指定、これは本案と保全、面会交流の調停審判というように、1組の当事者間で幾つもの事件が係属することが多く見られて、関連事件減額というふうにどんどん減額されて、私たちとしてはすごく苦労なのですけれども、それでも代理援助の立替金が何十万円にもなることがあります。しかも、これを3年で返すのが原則とされていて、これに加えて監護の分掌とか特定分野の親権行使者の指定とかいう事件が入ってくれば到底、貧困なひとり親は負担できません。法務省の中での担当部会が違うとは伺っていますが、これは法務省の担当でもありますし、このような支援がなければ、幾らDVや虐待を除くと法文に書いても、それが実現できないのではないかと懸念しております。是非この点も考慮いただきたいと思います。   それから、協議離婚についても真摯に合意ができるような支援が必要で、この附帯決議の中にも統計調査みたいな話がありましたけれども、例えば共同親権と単独親権の割合とか、親権の変更の事件、共同親権下での養子縁組の状況、先取特権、一回的申立て、これは私たち弁護士でも多分、うまくいくかなと思うところがすごくあって、これが本当にこの制度でやれているのかというようなことについて十分な調査をした上で、協議離婚についてやこどもの意見表明についても、何年後かには改正を検討するというような附帯決議が入ったらいいのではないかと希望します。 ○大村部会長 ありがとうございます。原田委員から、ほかの方々も皆さんそうだったわけなのですけれども、内容については賛成だということを前提に御意見を頂きました。原田委員の主要な意見は、できるだけここに書かれていることが取り込めるように事務当局として工夫をしてほしいという御要望だったと思います。その際に、法務省の管轄に属する事項とそうではない事項があるだろうという御指摘もありましたので、そうしたことも含めて、どういうことが書けるのかということについて工夫をしていただきたいという御指摘として承りました。 ○原田委員 すみません、もう一つ、数年後の改正の検討の点も是非附帯に入れていただきたいと。 ○大村部会長 それは附帯決議の内容についてということで承ります。ありがとうございます。   大石委員から手が挙がっていて、そのほかに今津幹事と青竹幹事かな、手が挙がっていますので、大石委員、それから今津幹事、青竹幹事という順番で伺います。 ○大石委員 委員の大石です。度々申し訳ありません。様々な御意見ありがとうございます。追加で情報提供をさせていただければと思います。   先ほど棚村委員から、会社法などに関しての附帯決議について、かなり規律を補完するような役割のものが多いというふうな御指摘がありまして、それはそのとおりで、その最後に、こうした規律の円滑かつ迅速な実現のため関係各界において真摯な協力がされることを要望するというふうにして閉じているというのがほとんどの場合かと思います。   一方、私がこれを作成するに当たりまして特に参考にしたのは、少年法における少年の年齢を18歳未満にすることに関しての部会、諮問第103号に対する答申というものでありまして、それは非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための法整備の在り方について調査審議を行うためというものでしたので、答申自体は規律というか要綱案を出したわけではないのですけれども、その中に附帯事項というのが設けてあります。つまり、答申と別の附帯決議ではなくて、答申の中に附帯事項というのがあるのですが、その中の一つに、18歳及び19歳の者については罪を犯した場合に、別添1というのがあるのですが、そのとおりの扱いをするほか、ここからが私が参考にした点で、犯罪の防止に重要な機能を果たしていると考えられる行政や福祉の分野における各種支援についても充実した取組が行われること、と入っております。ですので、今回の家族法制の見直しに関連しましても、やはりこどもが絡むことで福祉分野との関係というのは非常にあるのではないかと考えますので、こちらを参考に作成したという次第であります。 ○大村部会長 ありがとうございます。大石委員の方からは、これまでの附帯決議あるいは附帯事項の例、御参考にされた例を補っていただいたということかと思います。先ほどから、この答申と別に取りまとめるのかどうかといったお話もありましたけれども、今の大石委員のお話を伺っていると、諮問のされ方との関係ということもあるようなので、その点も含めて、他の例も調べていただいて、少し御検討いただきたいと思って伺っておりました。   今津幹事、それから青竹幹事の順番でどうぞ。 ○今津幹事 幹事の今津でございます。私も今までの御意見と同じで、今回提出された参考資料の内容面については全く異存のないところで、家裁の人員強化ですとかDVへの対応等をやっていただきたいということは全く異存ございません。これを附帯決議の形でまとめるということについては、私自身、附帯決議というものが法制審の部会でできるということも正直、初めて知ったところで、どこまでが法制審の部会としてできることなのかという辺りはよく承知をしておりませんで、事務当局に原案を作成いただくということでお願いをしたいと考えております。その際に内容面で少し検討いただきたいところを申し上げておきたいと思います。   今回、赤石委員以下から御提出の資料の中でいいますと、例えば、家庭裁判所から審判とか調停の申立件数等の報告を行うという辺りについては、現状でも恐らく事件ごとの事件数の公表等はされていると思いますので、それとの重複がないような形で、もしそれ以外に情報を出していただきたいという趣旨であれば、そのような形で書いていただくとよろしいのかなと思います。それから、報告を行うことという記載ぶりについても、これも事務当局に御検討いただきたいところですけれども、これが、例えば国会の出す附帯決議等であれば、国会に報告を行うという趣旨に解されるのですけれども、我々の部会はこの法改正が実際に行われた後はもう存在しない団体になっていると思われますので、どこに向けて何を報告するのかという辺りですね、情報を公開するというような記載ぶり等も検討の余地があるのかなと思います。   それから、DV等への対応については、もうこの部会でも繰り返し話題に上っているところでして、議事録にもその点はきちんと残っているところかと思います。これを重ねて附帯決議の形でどこまで書くのかということについては、法改正に伴って当然にやっていただくべきというか、やらないといけないことをあえて附帯決議で書くということについて、どう評価するかという辺りが少し気になっております。これまでの法制審の部会でも、例えば民事系のものですと、最近だとIT化について複数の部会で要綱案の取りまとめがあったと思うのですけれども、その際にIT化に向けて予算を獲得してくださいという附帯決議はなかったと承知をしております。そのような、法改正に伴って当然にやるべきことを、あえて附帯決議でお願いしなければいけないものなのかが、今後の部会の運用との関係で気になっておりまして、常に附帯決議を求められることになるということだと先例としてどうなのかという懸念がないわけではないので、その辺りも事務当局に御検討をお願いできればと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。形式面と内容面にわたる御指摘ないし御意見を頂戴したかと思います。形式面については、事務当局の方で検討していただきたいということでしたけれども、最後に触れられた点のうち、先例として機能することになるのではないかということがありましたので、そうしたことも含めて、検討していただきたいと思います。それから、内容については、例えば家裁から出してもらうものの中身がどういうものなのか、出し方がどういうものなのかといったことについて検討が必要なのではないかという御指摘を頂きました。 ○青竹幹事 意見書の趣旨に、ほかの委員、幹事の皆様と同じように、賛同したいと思います。4点とも全て重要と思いますので、賛同いたします。   特に、原田委員からも重要な情報を御指摘いただきましたけれども、家庭裁判所の役割というのは今回の法改正により一層大きくなりますので、人員の増加と人材の育成については、これまで以上に力を入れる必要があると強調すべきであると思います。その中でも家庭裁判所調査官というのは、こどもに接して意思、意向とか心情を確認したり、子の福祉の観点から養育環境を調査したりする重要な役割を担いますので、調査官の育成を、これまで以上に重視すべきだと思います。法改正に伴って家裁の役割がより重要だということを、どのように扱うべきかについて私は全く具体的に知識がないですけれども、やはり何らかの形で表明できる形にするのが望ましいかと存じます。   先ほど北村幹事の方から補足説明の位置づけについても少し御発言いただいたのですけれども、私個人の意見としては、補足説明は非常に重要だと考えております。新法については特に、これまでの先例とか学説もないわけですから、法解釈の基準として非常に重要ですので、こちらを基準に弁護士さんも裁判官も解釈運用しますし、補足説明というのも重要で、明確に書いておく必要があるかと思っております。   それから、落合委員から第1の点について以前から重要な御意見を表明されていて、私自身も、これによって父母の責任をより重くするという意図は全くないですし、幹事、委員の中でそうすべきと考えている方はいらっしゃらないように思いますが、これが出たときにそのような誤解というのが生じるのは避けなければならないと考えております。それで、安易ですけれども、やはり補足説明で丁寧に説明するということは重要になってくるのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。青竹幹事からは、今までの御発言の中で出ているものを幾つか取り上げて、御意見を言っていただきました。特に、補足説明が重要ではないかという御指摘を頂いたところであります。補足説明についてですが、これまでの資料に関する補足説明は、これは資料として公開されております。それが、青竹幹事がおっしゃったような意味を一定の範囲で持つことはあり得ることだろうと思います。他方で、この先、例えば次回に何か資料が出るというときに、その資料に補足説明が付くということはありますけれども、要綱案自体に補足説明が付くということはないという点は、確認をしておく必要があろうと思っておりますが、北村幹事、そういう理解でよろしいですね。 ○北村幹事 そうですね、通常この部会でおまとめいただくことになるのは、先ほど申し上げましたように、要綱案ということになろうかと思います。そのまとめていただいた要綱案を法制審議会総会で御議論いただくということになります。 ○大村部会長 以上のような整理をさせていただいて、理解を擦り合わせておきたいと思っております。   そのほか、御発言はいかがですか。 ○赤石委員 第2から第7のところでも大丈夫でしょうか。 ○大村部会長 少し待ってください。それでは、まず附帯決議についてさらに何かあれば伺って、そして、次に赤石委員に伺いたいと思いますけれども、いかがでしょうか。 ○小粥委員 委員の小粥です。附帯決議の御提案に関する赤石委員ほかの提出資料について、本当に少しだけ。これを附帯決議という形で決議と申しますか、採決の対象にしたいという御提案だと受け止めておりますけれども、そうすると、細部についてまである程度議論をしなければいけないような気もいたします。例えばですけれども、もう少し抽象的な、先ほど大石委員から御紹介いただいたような少年法のときのような文言であれば、恐らくどなたもなかなか異論は出ないだろうと思いますので、そのような形で決議する、そういうことも考えられるような気がしました。いろいろなことにつきまして決議の対象にすると、それだけ議論も出るような気もいたしまして、なので、落合委員から御示唆がありましたが、そういう形以外の方法で、大方の異論のないところとしてこのような意向を持つ委員、幹事が非常に多かったというようなことを、例えばですけれども、部会長を介して総会にお伝えいただくとか、そういうような形での部会、委員、幹事の意見表明というようなことも含めて御検討いただけないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほどから事務当局への御要望を頂いております。それで、私自身が今までの御議論を伺って事務当局の方にお願いをしたいと思ったのは、これを基にして、今、小粥委員がおっしゃったような法制審の部会として可能なものがまとめられるか、原田委員からは工夫をせよという御要望がありましたけれども、そういうものをまとめていただくという方向で、まず第一次的には御検討いただきたいということです。それがなかなか難しくて、皆さんの御要望から非常に大きく離れることになりそうな場合には、今、小粥委員がおっしゃったような別の形の対応が考えられないかということも付随的に検討することもあり得るのではないかということで、二段構えで少し考えていただければと思っております。   もしほかに御意見がなければ、この4委員御提出に係る附帯決議の問題につきましては、このようなことで今日のところ引き取らせていただきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。 ○武田委員 親子ネット、武田です。この附帯決議、内容そのものは良いと思います。1点だけ、今後の附帯決議の取りまとめ方に関して述べさせてください。附帯決議を部会でとりまとめる場合に、事務当局で本日以降検討いただくというのは、良いと思います。ただ、部会1週間前とかに出てくるのかなということと、私たちが確認する時間に関して懸念をもっています。少しその辺りの時間軸について、そこがすごく気になるなと個人的に思っていますので、今お答えいただけないと思いますけれども、極力早く見せていただきたいと要望します。可能であれば、次回部会で事務当局検討案で全員一致で通せた方が良いかなというのが個人的な思いでございますので、今回答は求めませんが、極力早く見せていただけると非常に助かるということ触れさせていただきます。 ○大村部会長 この後の作業についての御意見として承りました。それで、仮に附帯決議案を取りまとめるとして、今回出ている資料でいいますと4項目丸印がついておりますが、附帯決議をするときの対象は、こういう形で列挙された、あるいは小粥委員の御発言に即して言うと、これを抽象化、一般化したようなものであり、この後ろについている理由等まで含めてということではないと捉えておりますので、皆さんに見ていただくときに非常に大きな負担が掛かるといったことにはならないと思います。しかし、私が確約することはできないですけれども、事務当局には頑張っていただいて早めにお願いしたいとは思っております。   ということで、よろしいでしょうか。   それでは、赤石委員、すみません、お待たせしました、どうぞ。 ○赤石委員 赤石でございます。度々発言させていただきありがとうございます。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。第2のところから幾つか、主に監護者指定と監護の分掌のところ、それから養子縁組のところをお伝えしたいと思います。   監護者指定は、一律には指定しないということで要綱案が出ております。これに対しては幾つかの異論があっても、要綱案は指定しないということで出ているということを認識しております。私の意見は違うのですけれども、しかし、指定しないというところでどのようにした方がいいかということも述べておいた方がいいと思いますので、お伝えしたいと思います。第2の3のところでございます。大分補足資料のところでいろいろなことが書き込まれていて、私もなかなか理解があれだったのですけれども、幾つかのまだ討議されていないところがあるのかなと思います。   まず、裁判所経由で双方の親権、共同の親権が決定したケースで、監護者の指定を行うかどうかについての議論、あるいは場合としては、協議離婚で共同の親権を決めたと、それでそのように届け出たと、そして、やってみてやはり監護者の指定というのが必要だということで、調停なりを申し立てたというようなケースは結構考えられると思っております。こういったときに、裁判所経由で共同の親権を決めていないケースには、双方で決めているのですけれども、やはり無理やりの決定というようなこともあるので、DVケースというのが入ってくる可能性がどうしてもあると、こどもに不利益があることを最小限にとどめなければならないというようなことがあるだろうと、こういった場合には、やはり親権の定めのところにある第2の2(1)キの条項は、監護者指定のところでも適用されるという理解でいいですかという質問、あるいは適用された方がいいですよねという議論でございます。   同じように、共同親権になった後に、それは裁判所で決めたのだけれども、監護者指定を必要として申し立てる、あるいは、まだ離婚が成立していなくて、DV被害者であるけれども家を追い出されてしまった、あるいはこどもを被害者の方が連れ去られてしまったというようなケースでも、監護者指定の申立てをしたり、引渡し請求をしたりするときにも、この第2の2のキですかね、これが考慮要素として適用されるという理解で良いのかというようなところでございます。   もちろん親権を決めるときに、キがあったとしても、DVケースというのが紛れ込む危険もありますので、そのときにも監護者の指定が必要であると思って後から申し立てるときにも、この同じ考慮要素が適用されるべきではないかというような意見です。伝わりましたか、すみません、何かごちゃごちゃ。   次が監護の分掌についてなのですけれども、いろいろもめるときに、監護の分掌にして、例えば高校進学に関する件とか、あるいはお子さんの教育に関する事項とか、こういったことは分掌をするというようなことを、監護者指定全般をするのではなくて、その中の一部だけ分掌するような例が幾つか補足資料で挙げられていると認識しております。前回も言ったのですが、監護の分掌を第766条に書き込むということになりますと、やはりそこが何か非常に、今後進められてくるのかなと思っておりますが、それについてはやはり、例えばどこまでが教育に関する事項なのか、特定事項として考え得るのか、あるいは高校進学といっても、では中学1年、中学2年のときの塾に行くのは一体どちらになるのかとか、こういったことがあるので非常に技術的にやりにくいと思いますので、私は監護の分掌が第766条に書き込まれることについては相変わらず慎重です、ということでございます。また、裁判所の方の御意見の中でも、やはり事項で区切ると非常に難しいですねという議論が前々回、前々々回ぐらいにおありだったかと思います。   期間の分掌については、ある程度あり得ますねというような御意見もあったかに思います。ここについても懸念を一応表明しておきたいと思います。これについては、アメリカの離婚家庭におけるこどもの心理学的な追跡調査をしたウォーラースタインの名著がございます。私が最初に21年にそれの抜粋の資料を提出させていただいておりますけれども、それでも僕らは生きていくという本で翻訳されております。今は絶版になっておりますけれども、先日聞いたら、法務省の方も余りお読みになっていらっしゃらないということだったので、少し残念に思っております。この書は、面会交流あるいは共同親権を進めた心理学者が、25年後にこどもたちの更なる追跡調査をしたときに、やはり弊害が出ているということをまとめたものでございます。一定期間の親子交流を裁判所で決められたこどもたちは、成人した後、例外なく別居親を憎んでいた。そして、友達のいない、育つ環境がないところで、夏休みとか一定期間、長期間過ごさなければならないことについて、本当に泣いて過ごしていたというようなことがありました。ですので、期間の分掌というところでやるのがいいのか、それの弊害も見据えて、やはり親子交流の規定というところでやっていくべきなのではないかと私は考えております。   それとの関連で、これは少し挟み込んでいるのですけれども、12月の後半に共同通信が、2017年に伊丹での面会交流時に起こった、そのときは面会交流といっていたのですが、無理心中事件のお母さんを取材した記事を出しておりました。4歳の侑莉ちゃんですかね、離婚後に自由にお父さんと会っていたのだけれども、しかし要求がすごく激しくなってきて困ったところで、一旦停止していたと。それで、別居親の方から裁判所に調停が申し立てられて、もう一回調停をして、月に1回ということで面会交流が決まった第1回のときに、お子さんが戻ってこなくて、殺されていることが発見されたという事件でございます。なぜこんなにかわいがっていたこどもを父親が殺したのかということは、お母さんにとっても非常に納得がいかない、何でだろうとずっとこの、2017年からですから6年間、考え続けてきたということです。お子さんもお父さんに会うことを楽しみにしていた。お母さんとしては、楽しみにしているこどもをお父さんに会わせたいと思って面会交流はやっていた、しかし事件が起こってしまったわけです。   一体私たちは今回の法改正で、そういう事件を防ぐことができる立て付けを作っているのかどうかということが問われていると思います。私たち全体がこういった事件を防ぐだけの仕組みを作れているのでしょうか。記事によりますと、法務省さんに、こういった事件については法制審議会で検討されているのかという、どうも質問をしたかのような記事、文章があったのですが、これは例外的な事例であるから検討の対象ではないというような文章が載っておりました。例外なのでしょうか。アメリカではこれまでに親子交流で400から500件、正確な数字は忘れましたけれども、有名な事件はカリフォルニア州のピキちゃんは、やはり親子交流で親から絞殺されております。こういった事件を防げる立て付けになっているのか。   お母さんはずっと悩み続けているわけです。今生きていれば10歳になっているお子さんがどうして命を奪われたのか、やはり自分に対する攻撃だったのだと思いますとお母さんは言っているのです。愛する一番大事なものを破壊することによって元配偶者に対する攻撃をする、こういう心情がいろいろなところで起こっている、このことを私たちは防げるのでしょうかということです。保護命令は出ていないのです。だから、先ほどの第2の2のキのところで防ぐというのはなかなか難しいのかもしれない。そのときにどういう手立てで防げるのですかということが、やはり議論がもう少しされるべきではないですか。少なくともこどもの命が懸かっていることになる。母親を攻撃するためにこどもを殺すという、間違った行いですけれども、起こっていることをどう防ぐのかということが、この監護のところと併せて検討されるべきであると思っております。私は責任として、これを言わざるを得ないと思っております。   次に、養子縁組のところです。これは簡単に申し上げます。子連れの再婚の養子縁組に関しては、家裁で調停審判をするときに、子の利益に特に必要と認めるときとありますが、特に必要と書かなくてもよろしいのではないかという意見です。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員からは、大きく分けると2点ということだったかと思いますが、監護者の指定と監護の分掌についての御意見、その中で、裁判所が共同親権を決めた場合と協議で決めた場合を経路として分けて考えた方がいいのではないか、特に後者の方について問題が現れる可能性が大きいという御指摘をいただきました。そのときに、部会資料の35−1の2ページから3ページに掛けて出てくるキの基準を、これは親権者指定ということであればそれを適用するということになりますし、監護者を指定するということであると、この考え方でやるというようなことになる。そういう方向で考えるべきだという御意見だと受け止めでいいですか。 ○赤石委員 というか、法律上準用されると考えていいですかということも、少し質問に含まれております。 ○大村部会長 御意見としては、そうなるべきだということですね。 ○赤石委員 はい。 ○大村部会長 それから、それとの関係で、キのようなものがあったとしても出てくるであろう問題についての御懸念を示されたと受け止めました。そして、もう一つの問題として、養子縁組については、特に必要なという部分の、特には要らないのではないかという御意見だと受け止めました。   戒能委員、池田委員、石綿幹事、それから、原田委員も手が挙がっていますか、それではその次に原田委員という順番で伺います。ほかにも、佐野幹事ですね。 ○戒能委員 ありがとうございます。委員の戒能です。要綱案の構成について、少し御質問をしたいと思うのです。それで、最後まで、要綱案というのは余り市民の目には触れないのかもしれませんが、しかし報道などをされます。そのときに誤解を生じないように、あるいは正確さというのがとても大事だと思います。それと、論理的な一貫性がないと、これは読むほうはかなり理解に苦労するということだと思いまして、具体的に申し上げますと、部会資料35−1の1ページの第2、親権及び監護等に関する規律第2の1と、それから2との関係ということです。これは、前に法務省の方には簡単に質問をしたことがあって、そうすると、これは現行の民法の規定の順に書いているのだというような御説明だったのですが、それでは少し論理的につじつまが合わない、先に書かれてあることが後で定められているという矛盾があるのではないかということなのです。ただ、要綱案がそのまま法律の条文になるわけではないということも理解しておりまして、法律の条文になるときにはしかるべく検討をきちんとされると思ってはいるのですが、もう現に誤解が生じているやに聞いております。   それは何かというと、第2の1が親権行使に関する規律の整備なのですよね。そこには(1)で、親権は父母が共同して行うと、ただし書が付いていてア、イ、ウとなっている。これは確かに第818条第3項ですか、その明確化をしていくという意図で作られていて、しかも分かりにくいのが、これは補足説明で6ページの一番最初の行から始まるのですが、要綱案では、双方が親権者である場合と一方が親権者である場合の双方を一つの規律でまとめて規定するということができるようにする観点から、こういう構成にしたという説明があるのですが、非常に分かりにくくなっている。まず(1)に父母が共同して行うというところだけを取り出して見てしまう人がいるわけです。そうすると、これはこの部会の考え方として原則、例外はとらないと私は理解をしております。けれども、こういう書き方だと、原則共同なのねというような理解にどうもつながっているらしい、そういう意見も流布されていると聞くこともあります。   それで、例えば、ただし書のところですが、ア、イ、ウとなっていて、第818条第3項ではイは既に規定がされているものだと、ところがアとウは新たに規定したものだと。一方のみが親権者であるとき、それから急迫の事情のところなのですけれども、これはどういうふうにしてどこで決められたものなのかということが、実は2を読まないと分からないということになるわけです。だから、順序が逆になっていて、アは飽くまでも第818条の第3項なので、婚姻中の話ですよね、婚姻中は共同親権であると。そこに多分両方を含み込んでまとめて規定しようという意図でまとめられたので、分かりにくくなっているけれども、飽くまでもこれは共同親権と定められたときの規定であって、そういうときは父母が共同して行使をすると、ただしア、イ、ウの場合は、ということになるわけです。   要綱案としてはこういう書き方をするのかもしれません。そこは事務当局から御説明いただきたいところなのですが、むしろ2を先に定めるべきではないか。協議離婚から始まるわけですよね、そこから始めて1に行くべきであると。あるいは、1にきちんとこれは婚姻中のケースなのだということを書いて、それから2に行って、そしてそのときの例外としてア、イ、ウがあるとか、そういう構成というのが考えられないか。もちろん先ほどから言っているように、条文化するときはまたきちんと考慮をされて、きちんと筋道が通るような条文になるのだろうとは思うのですけれども、要綱案として公表されるわけですから、その辺りをどういうふうに考えればいいのかという、一つは質問ですし、それから、私の考えというか提案を一つしました。   それから、もう1点、これはもう今、赤石委員からお話があったこととつながりまして、監護者指定を必須とするかどうかというところで、これは先ほどの附帯決議のところでも、家裁の役割、これは家裁の裁判官のみならず調査官の役割がますます大きくなって重要になる。ですから、そこへの人的配置、あるいはその専門性、研修ということが非常に重要になるということは、皆さん口をそろえておっしゃっているとおりなのですが、パブコメのときの裁判所の懸念事項があります。これは今、裁判所はどういうふうにお考えなのかということもお聞きしたいところではありますが、時間がなければ結構ですが、最終的には司法判断、家裁が紛争解決の最後のよりどころになるわけですよね、そこで何とか適切な解決をしようという裁判官、司法官としての良心みたいなものが表れているとパブコメからは感じられるのですけれども、これは先ほど赤石委員から具体的な提案があったところですね、一体どういう場合に監護者指定の申立てができるのかという基準ですね、その基準がなければ大変で、その後の審理とか判断が難しくなってしまう。さらに、監護者指定が必要かどうかの判断を行った後に、ではどちらを監護者として指定するのかという判断、その基準をどうすればいいのかというようなこととか、いまだにその辺りは、赤石委員が御指摘になったように、解決されていないというところなのですよね。   それから、もう1点は、そういう紛争がなるべく長期化しない、激化しないように家裁の裁判官は、努めていきたいというお気持ちの表れだと思うのですけれども、監護者についての公示制度はどう考えたらいいのだろうかということも、これもはっきりしなければ、離婚時の話合いのときに定めがあったのかどうかなども含めて、確認する手段がないというような御懸念も表明していらっしゃるわけです。だから、そういう意味では、まだ議論は尽くされているわけでも何でもないということは、パブコメの裁判官の御意見からも、うかがえるのではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員からは、形式的な要綱案の書き方ということと、それから内容にわたる点と、大きく分けて2点の御指摘を頂いたと受け止めました。書き方についてなのですけれども、これまでの議論で分けて書かれたものをあるところでまとめるという形でここに至っているということかと思いますが、これはこの先、条文化するということも視野に入れて、このように整理されていると理解しております。戒能委員からは、分かりにくい点があるのではないかという御指摘がありましたので、それを踏まえて、これを最後にはどうなるのかという点を精査していただくということになろうかなと思っております。それから、2番目の中身については、赤石委員の御指摘に基本的に賛成だという御趣旨であろうと承りました。また、公示のことをおっしゃいましたが、公示の問題は確かにあるのですけれども、現在、監護権の所在について公示されるということにはなっていないので、それをした方がいいのではないかという御意見だとして受け止めさせていただきたいと思います。事務当局から資料について、何かありますか。 ○北村幹事 資料の立て付けについては今、部会長の方におまとめいただいたとおりですけれども、このような形とする際、従前から繰り返し御説明していまいりましたけれども、第2の1については親権行使に関する規律の整備、2については離婚後等の親権者の定めについて議論していただくという形でまとめているものになります。第2の1については、婚姻中だけではなく、離婚の場合も当然入り得ると、様々なものが入り得るという形で、親権行使ということで一つにまとめさせていただいているというのは従前、部会で御説明させていただいているとおりです。   なお、監護者指定の部分について御質問というか、御意見等がありましたけれども、例示された事例については、むしろ親権者の変更あるいは親権者の定めのところで本来は対応すべきものなのではないか、さらに、要綱案(案)では、監護者の指定を必須としていないということになりますので、裁判所の手続を経て双方が親権者になった後で単独親権にする以外の方法として監護者指定が申し立てられた場合、あるいは、離婚が成立する前に監護者指定が申し立てられた場合の考慮要素はやはり変わってくるかなとは思っています。まずはこの部会の中の議論としては、DVなどがある、そして話合いができないような場合には単独親権にする、そういうものは除くということでここでは御議論されてきたと、そういう前提で議論されてこの要綱案(案)にまとまってきたと私は認識をしております。その上で、監護者指定が必須でないということになりますと、現行法と同じように、特に公示は必要ではないというふうに整理をさせていただいたと。 ○大村部会長 まだ御発言はあるのですが、赤石委員、今のことについてですね。短く、お願いします。 ○赤石委員 私どもの2,500人の調査でも、共同親権を強要というか、意見を言われたときに、自分は単独親権を望んでいるのに抵抗し続けられますかという質問に対して、確か16%ぐらいの方が、やはり言い続けられないと答えておりました。ですので、本人同士の協議離婚のときに紛れ込む可能性があるのは非常に考え得ることでございます。このときに、確かに親権者の変更を申し立てればいいわけでございます。手続的にはそう思われると思います。しかし、親権まで失うというときに、非常に相手のリアクションというのが恐ろしくて、監護者の指定のみを訴える方というのはかなりいらっしゃると私は思っているので、申し上げたということです。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほどの御発言の補足として承っておきたいと思います。 ○池田委員 池田でございます。法定養育費について1点、確認させていただければと思います。   法定養育費の終期について、この要綱案では子が成年に達したときというのが一つ挙げられています。これは、通常の養育費は成年年齢の18歳ではなく、実務上、20歳までという決め方をされていることが一般的だと思いますが、その実務に影響があるのではないかと懸念する声が相当数あるところです。そのため、1点確認させていただきたいのですが、これは、法定養育費については飽くまで法定債権なので、始期あるいは終期をはっきりと決めなければいけないという趣旨で成年というところで線を引いたけれども、必ずしも通常の養育費について何か影響を与えることを意図して定められたものでないという理解でよろしいでしょうか。 ○北村幹事 事務当局でございます。今の御指摘はそのとおりでして、飽くまでも法定養育費というのは法定債権なので、どこかで終期を決めなくてはいけない、他方、従前、成年年齢の引下げの際に議論がありましたように、養育費をいつまで払うのか、従前取り決めたもの、あるいは未成熟子の間、それはお互いに合意して支払う義務があるのだといったような解釈に特に影響を与えるという議論はしていなかったと思いますし、この部会でも従前の養育費の定めであるとか、そこの解釈には影響を与えないという前提で御議論いただいていたものと理解しております。 ○池田委員 ありがとうございました。 ○石綿幹事 幹事の石綿です。すみません、手短に4点ございます。   まず1点目が、第2の1(1)ウの急迫の事情についてです。DV、虐待からの避難について議論があったところでございますが、この点について前回、幾つかの例が示されて、それはどうなるのかという御意見があったかと思います。個人的な解釈、意見といたしましては、DVや虐待というのは殴られた瞬間が急迫だということではなく、被害も反復、継続して生じておりますし、被害者の心理的、恐怖的な負担というのも継続しているということを考えますと、一旦DVの被害が生じたのであれば、その後も急迫の事情が継続していると解するというのが解釈として妥当なのではないかと思いますので、前回幾つか示されたような事案というのは、この要件でも親権の単独行使が認められ得る場合に該当する場合があるのではないかというのが1点目です。   それから2点目、監護者指定の変更について、先ほど赤石委員と北村幹事の間で議論があった点ですが、監護者指定をしなかったけれども、後々したいと思った場合というのが、赤石委員は第2の(1)キに当たるかという御提案だったと思います。これは私も分からないのですが、監護者を指定していなかったことを指定することに変更するというのは、親権者の変更に似ているのではないかということで、2(1)クとの類似性を考えるという可能性もあるのかなと思いました。いずれにいたしましても問題として生じる得る話だと思いますので、監護者指定をしていなかったことからするというのが、どういう性質になるかというのを御整理いただけるといいのかなと思いました。   それから3点目、法定養育費の終期の点で、第3の2(1)エ、監護者を主として行わなくなったときという点は、これは前回、沖野委員の御発言が非常に説得的だったと感じておりまして、あえて記載する必要は必ずしもないのではないかと考えております。   最後、4点目、第5の養子縁組について、仮に現状の御提案の2(1)の【P】とされているものが明文で規定をされていくということになるのであれば、部会資料35−2の第5の2の補足説明1(5)にあるように、監護者指定がされている場合についてもやはり平仄をとる必要があるかと思いますので、補足説明で御提案されているような内容、同意に代わる審判という手続を新たに設けていただくのがよろしいかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事からは、4点につきまして解釈ないし整理の御要望を頂いたと承りました。先ほど赤石委員が問題にされた点をどこで処理するのかということについて、明らかにしておく必要があるのではないかといった御指摘もあったかと思います。ありがとうございます。 ○原田委員 委員の原田です。私はしつこく急迫のことについて、なぜ急迫にこだわるのかということについて、前回どなたも発言がなかったので、今日もう一度言おうと思ったのですけれども、今、石綿幹事がおっしゃっていただきました。もう少し突っ込んでいくと、民法の条文の中で急迫という言葉が使われているものが七つあって、そことの整合性でも、これは先ほどおっしゃったように考えられるのだといえるのかどうかということを民法の先生方に伺いたいと思います。   例えば、塀を越えて伸びてきた枝を切るときに急迫という場合は、例えば台風が近付いてくるということがあるという場合に、切っていいとなるのですけれども、台風の予報が出ていないときでも、いつでも大風が吹けば壊れるかもしれないとか、いつ何が起こるか分からないという状態は続いているではないかといえば、これも急迫になるのか。これは、言われていた、一度暴力があれば、その後いつ起こるか分からないという状態が続いているではないかということと違うと考えられるのか、整合性という意味で、この急迫から先ほど石綿幹事が言われたようなことが一般的にいえるのかどうかという点についての解釈を伺いたいと思います。 ○大村部会長 急迫について、原田委員は、急迫には反対だという御意見で、今、質問されているという理解でよろしいでしょうか。 ○原田委員 そうですね、今までも、協議や裁判所の決定を待っていては子に害悪を及ぼすおそれがあるという、ここの解釈でいっているのだったら、そう書けばいいではないかということを言っていましたけれども、皆さんが急迫にこだわっていらっしゃるので、何で急迫にこだわるのかということを前回言わせていただいたのですけれども、前回はそれについてのお話がなかったので、今回もう一度お伺いしたいということで。 ○大村部会長 石綿幹事の先ほどの御発言は、現行法の下で使われている急迫という文言の中でも解釈できるのではないかという御趣旨だったと思って伺いました。他の場面での急迫というものについて個別に、この場合の急迫の範囲はどこまでかということをここで議論するということは必須なわけではないと思いますけれども、整合性について何か石綿幹事の方から補足の発言があれば、もしあれば伺いたいと思います。特になければ、今のような整理にうなろうかと思います。 ○石綿幹事 私の方は、数回前に沖野委員が多分、急迫性のところを整合的に御説明してくださっているところに全面的に賛成していると、その解釈によっているというところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。そこについては御意見が分かれていると認識しておりますので、原田委員の御意見は御意見として、改めて伺っておきたいと思います。 ○佐野幹事 幹事の佐野です。別に新しい意見というわけではなくて、前回申し上げた点、余り整理せずに発言してしまったために、再度申し上げるという趣旨でございます。   前回、第2の2(1)のところの親権者変更については子の申立権が認められているにもかかわらず、第2の1(3)の特定事項に係る親権行使とか第2の3との関連で第766条の修正の部分は子の申立権が認められていないという点について、整合性がどうなのかという点を申し上げました。   改めて、前段で議論がありましたように、子の自己に関する決定への主体的参加という点から、ここの部分についても、親権者変更のみならず子の申立権というのをきちんと入れるべきではないかという意見を申し上げます。また、加えて第4の親子交流に関しても、親子交流するかしないかというところだけではなくて、方法の変更についてこどもが意見を述べたい、申立てをしたいという場合もありますので、ここについても改めて整理すべきではないかという意見です。 ○大村部会長 ありがとうございます。子の申立権について、前にされた発言を補うという趣旨の御発言として承りました。 ○久保野幹事 幹事の久保野です。先ほどの急迫の事情の解釈について、DVの特性を考えたときにどうかということについてなのですが、原田委員に球をお返しするような性格の発言になってしまうのですけれども、DVの特性というものをどう捉えるのかということを、最終的には個別の事案の具体的な事情によるという補足説明に書いてあることは大前提ですけれども、その上で、先ほどの例でいったときに、DVの事案というのは、台風が来たときと、予報は出ていないけれども台風は抽象的にはいつでも来るかもしれないというのと対応するものとして捉えることができるような状況なのかということが問われているのではないかと受け止めております。   どういうことかといいますと、以前に同趣旨のことを不十分ながらも発言したつもりではおるのですけれども、DVの事案というのは、支配関係に基づいて日常生活に規制が加えられていたり、威圧関係が継続しているという状態と捉えるということなのかなと思って、原田委員などの御発言を伺っておりました。別の言葉でいいますと、殴るとか何かの具体的な行為があったときだけがDVがあったということではないという、そのような特性があるのだということが議論されていたのかなと思うわけです。そうしますと日々、日常生活で続いている危機的な状況を踏まえると、いわば台風の予報が継続して出ている状態に似ているともいえ、殴られたといったような具体的な行動の直後、それに近接したときのみ急迫の事情があると評価されるわけではないという可能性が十分にあり得るということかなと思っております。沖野委員の御発言とのつながりというのが私の中できちんと整理できておりませんでして、今それと重なっていることを申し上げているかもしれませんけれども、改めてDVの特性として私が理解しているところと先ほどの御質問を踏まえて、思ったところを述べさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事の先ほどの発言、それから原田委員の発言と関わる補足的な発言として承りました。   ほかにはいかがでしょうか。   原田委員、もう一回手を挙げていらっしゃる。どうぞ。 ○原田委員 また返してしまって申し訳ないのですけれども、台風に限らず、災害はいつやってくるか分からないわけで、そういう意味で、民法の中で使われている急迫ということとの整合性の問題を私は取り上げたつもりでした。そこまでで結構です。お二人の発言で、DVの性格についてそこまで言っていただいて、それが記録に残るということになれば、いいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。御意見として承りました。整合性というときには、どのレベルで考えるのかということが、議論されている方の間で必ずしも共有されていないのかなと思いましたけれども、実質的な問題として今、原田委員がおっしゃったように、急迫でDVの問題などについてカバーできるのではないかという御意見を二人の方からいただいたという形で受け止めさせていただきます。   そのほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。 ○赤石委員 赤石でございます。皆さんの御意見がなかったので、それほど圧迫しない、ほかの発言の時間を取らないのかなと思って、もう一度発言させていただきます。   先ほど伊丹の事件のことを申し上げたのですけれども、これを法務省さんは特殊な事例であるという御回答をされたということでよろしいのでしょうか。その認識を伺いたいと思いました。 ○北村幹事 一般論として申し上げれば、取材には適切にお答えしているとは思いますが、この取材を受けたかどうかも含めて、個別のお話はお答えできません。ただ、この部会の中で、お子さんの安心・安全が親子交流にとっても大事なことだということは各委員、幹事の皆様が共有されて議論されてきたものと理解してございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか、いかがでしょうか。 ○赤石委員 ありがとうございます。少し追加で申し上げてもよろしいでしょうか。こういった場合にどうやって防げたのかということは、私どもに課せられている課題であると思います。御努力いただいて、DVについては共同親権にならないような規定もある程度盛り込まれたとは思っているのですが、しかし、親子交流等の場合にこの事例をどう防げるのかというのは、私はまだ不十分であると思っておりますし、特殊な事例ではなく、昨年も有名な棋士が、将棋の方ですかね、くわでしたか、を持って、元妻と元妻の御家族がいる家に乗り込んでしまったというような事件、ほかにも報道されないけれども命の危険があるような事件というのが起こっていることを踏まえた法整備というのが必要であるということを申し上げたいと思いますし、DVから逃れてきた方たちのケアとともに、お子さんと別れて暮らさざるを得ないことになった方たちへのケアというのも、それは妻がやるべきではないと思いますけれども、公的には必要であるというふうなことになるかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。改めての御懸念と、最後の点は先ほど御議論を頂いた附帯決議とも関わってくることとして伺いました。   ほかはよろしいでしょうか。 ○原田委員 これは最終的には条文の形で提案されるのでしょうか。それとも、この部会の中ではこの案の程度なのでしょうか。というのが、先ほどの、親権は共同で行うというところを、この形だと離婚後も婚姻中も共同で行うと読めてしまって、離婚後も共同が原則であるように読めてしまうのですけれども、今のように第818条第3項は婚姻中にして、第2の離婚後の親権者の定めと親権者の行使で、共同になったときは1の例による、みたいな書き方をすれば誤解を生じるおそれがないのではないかと考えまして、最終的に総会に提案されるときはどのような形で提案されるのかということを伺いたいと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほどの戒能委員の御発言と共通の御発言なのだろうと思います。これは、要綱案の取りまとめがどうなるかということと、それから法案の作成がどうなるのかということについて、事務当局の方から、これまでにも説明されているかと思いますけれども、改めて確認をしていただけますか。 ○北村幹事 先ほど来申し上げていますように、この部会においては要綱案というものをおまとめいただく、実質的な改正の内容というものを要綱案としておまとめいただいて、法制審議会の総会で御議論いただく、そして、法務大臣に答申いただいた後は、それを踏まえて今度、条文案の中に落としていく作業になりますけれども、その場合には各条文の整合性であるとか民法全体の整合性、他の法令との関係等も踏まえながら、法制的な観点も考慮に入れて条文化作業を行っていくということになろうかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。ということで、基本的には具体的な条文化の作業というのは法制審の部会の作業の外にあると理解をしております。今の話の繰り返しなのですけれども、ここで要綱案として取りまとめたものが要綱として答申される、それを踏まえて法技術的な条文化が図られる、こういうことだろうと思います。そういうことですね。   ありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。   それでは、本日は第1につきまして御意見を頂き、その後、附帯決議についての御提案について御意見を頂きました。そして最後に、第2から第7に戻って追加的な御発言を頂きました。今日も出ましたけれども、第2から第7までについて、いろいろな御意見を頂いておりますが、一つは急迫の事情という部分ですね、第2の1(1)ウについて、表現について賛否両論があると理解しております。実質について皆さんの間にそれほど大きな差があるとは思っていないのですが、この表現ぶりがいいかどうかということについて御意見が分かれている。それから、監護者必置とするかどうかというところについても御意見の分かれがある。その他、幾つかの点について個別の問題については御意見が分かれているところがあると理解をしております。残る問題については、細部については様々な御意見がありますけれども、皆さんの方向性は、個別の点についてはおおむね収束しつつあるのではないかと思っております。そんなふうに今日のところは取りまとめさせていただきたいと思います。   そこで、今日はここまでということにさせていただいて、前回の会議と本日の会議で頂いた御意見を踏まえて、事務当局には資料の再整理をしていただき、あわせて、先ほどの附帯決議についても事務当局の方で改めて精査をして、資料として整理をしていただきたいと考えております。それでよろしいでしょうか。   では、そういう作業をお願いするということで、次回のスケジュール等について事務当局の方から御説明をお願いしたいと思います。 ○北村幹事 次回の会議ですけれども、1月30日火曜日、午後1時30分から午後5時30分まで開催したいと思います。場所は改めて御連絡いたします。   次回の会議には今、部会長におまとめいただいたような形で準備の方をさせていただきたいと思っておりますが、部会資料35−1について御議論いただいたことを踏まえて、この部会としての一定の結論を取りまとめるところまでお願いしたいと考えているところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。次回、今御案内があったように、1月30日火曜日の午後1時30分からということでお願いを申し上げます。直前の御発言にありましたけれども、議論の状況を見定めた上で取りまとめをするということを念頭に置きつつ審議を進めていまいりたいと思っております。   それでは、これで法制審議会家族法制部会の第36回会議を閉会させていただきたいと思います。   本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。これで閉会を致します。 −了−