法制審議会 区分所有法制部会 第17回会議 議事録 第1 日 時  令和6年1月16日(火) 自 午後1時33分                      至 午後2時07分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  区分所有法制の改正に関する要綱案(案) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○佐久間部会長 法制審議会区分所有法制部会の第17回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は沖野委員、神谷幹事が御欠席です。   初めに配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○畑関係官 資料について御確認いただきたいと思います。部会資料として27−1「区分所有法制の改正に関する要綱案(案)」、27−2「区分所有法制の改正に関する要綱案(案)についての補足説明」を事前にお送りしております。お手元にないものがある場合には、途中でも結構ですので事務局にお知らせください。   また、本文、ゴシック部分の主な修正点を御紹介させていただきますと、まず、4ページの(2)イ、集会の定足数の関係、次に、14ページ(2)、建替え決議がされた場合の賃貸借の終了の規律に関する記載で、B、Dの賃借人に転借人を含む旨を明確にしたこと、さらには、17ページの(2)建物の更新について、建物の構造上主要な部分の効用の維持又は回復に、通常有すべき効用の確保を含む旨を明確にしたことがございます。その他は従前からの誤記等の修正等でございます。   1点、内容面について補充をさせていただきますと、11ページの6の共用部分等に係る請求権の行使の円滑化についてでございます。ここでは、管理者に関する第26条第2項、第4項、第5項について新たな規律を設けることを提案しておりますけれども、管理組合法人に関する47条においても、ここでいう管理者を管理組合法人として同様の規律を設けることを想定して、これまで御議論いただいてきたところと思います。要綱案にはその旨も注記させていただく予定でございます。   なお、今回の配布資料の関係ではございませんけれども、前回の会議では下村幹事から、国土交通省において検討されている外部専門家の活用ガイドラインの改定案の概要に関するパブリック・コメントの内容について御紹介いただけるという御発言を頂いたところでしたが、前回会議後に皆様に事務局の方から国道交通省から頂いた関係資料を御送付させていただいております。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   早速、本日の審議に入ります。   本日は、前回会議で頂戴した御意見も踏まえまして、事務当局において精査を行い、区分所有法制の改正に関する要綱案(案)をお示しさせていただいております。令和4年10月から調査審議を開始し、今回で17回目の開催となる本部会ですけれども、本日の会議におきましては、いよいよ要綱案の取りまとめに向けた最終的な御審議を頂きたいと思います。何とぞよろしくお願い申し上げます。   その審議に当たり、あらかじめ2点、確認的に申し上げます。まず、最終的にこの部会で取りまとめるのはゴシック部分のみとなります。そのため、基本的には部会資料27−1を中心に御審議を頂きたく存じます。次に、ゴシック部分について御意見を頂く場合には、規律の実質的な内容の修正を求めるものか、形式的な表現ぶりの再考を求めるものかを明らかにすることをお願いいたします。また、可能な限り具体的な修正案を示していただきますようお願いいたします。   初めに、部会資料27−1の「第1 区分所有建物の管理の円滑化を図る方策」、資料でいいますと3ページから13ページまでについて御審議いただきます。御意見があれば承りたく存じます。いかがでしょうか。 ○増田委員 どうもありがとうございます。部分を区切ってこれから御審議をされると思うのですが、私はこの要綱案全体に賛成でございますし、せっかくの機会でございますので、少し後の方も含めて、全体のことでお話を申し上げたいと思います。   今回のこの審議が始まる冒頭の際に、今回議論する問題は、いわゆる都会における所有者不明土地問題というようなことではないかということを申し上げました。以前、区分所有建物の所有者不明、それから管理不全化の問題、所有者不明土地問題は議論しておりましたけれども、その成果も踏まえて進めていく必要があるのではないかと考えて、申し上げたものでございます。今回、佐久間部会長の大変な御尽力の下、まとめられた要綱案でございますが、そうした所有者不明土地対策の成果をしっかりと踏まえていると同時に、区分所有建物が抱えております現代的な課題にも対応しているわけでございますので、そういう意味で総合的に非常に画期的な内容になっていると、このように理解をいたしております。   特に3点あるかと思っておりますが、管理の円滑化のための多くの手段を設けて、まだまだ有用な、そういった建物ストックを長寿命化させることを可能とすると、こういう点が一つあると思いますし、それから二つ目として、寿命が来た建物を再生させるメニューも大幅に増やしているということ、それから3点目としては、元日、大変不幸にして能登半島で大きな地震、それから津波災害が起きましたが、こうした自然災害の恐ろしさを改めて見ていく中で、被災した建物の再生、いかに早くスピード感をもって再生していくかという、その再生の円滑化を大きく推進すると、こういう三つの点がこの中に入っておりますので、極めて重要な意義があると、このように考えております。   したがいまして、冒頭のセクションも含め、全体のような話になりますけれども、この要綱案に基づいて、私は速やかに区分所有法の改正法案の手続を法務省におかれてお執りになって、多数の有用な新制度を広く国民が活用できるように是非していただければと、こんなふうに思います。   それから、法務省で区分所有法の改正という形で今回いろいろ審議をしてきたわけでございますが、区分所有建物、非常に多く出来上がってきている、これを取り巻いている問題も非常に複雑であり、多岐にわたっておりますので、こうした問題を解決していく上では、区分所有法で設けられる今回の新しい制度を基にマンション政策全体を総動員して対応していく必要があると思いますので、一番深く関係しているのは国土交通省でございますが、国交省においても今回の改正の見直しの内容を踏まえて、マンション法制の見直し、それから予算、税制、そういった実務面での措置についても、今後更にしっかりと検討していただく必要があるのではないかと、こんなふうに思っております。   いずれにしても、ちょうど冒頭の発言の機会を頂きましたので申し上げましたが、佐久間部会長をはじめ各委員の先生方の御見識と御尽力の下にこういう要綱案がまとめられたことは大変時宜を得ていると思いますので、改めて感謝申し上げたい、そして賛意を表したいと、このように思います。 ○佐久間部会長 今後のことを含め、大変有り難いお言葉を頂きまして、誠にありがとうございます。   では、なお続きまして第1の部分について御意見があれば承ります。いかがでしょうか。 ○齊藤委員 ありがとうございます。意見ということではなく、確認ということでもよろしいでしょうか。 ○佐久間部会長 結構です。 ○齊藤委員 中間試案からまた時が経ってきて、状況もいろいろ議論の中、変わってきているかと思いますので、少し確認だけさせていただきたいと思います。   27−1の資料で、4ページ目のところの右側になります。定足数というところでございます。この法律上、原則的な集会の定足数を過半数とした上で、とあるのですが、この定足数というのは通常いうような議決権でしょうか。頭数でしょうか。両方でしょうか。すみません、この辺りもとても重要なところだと思います。特に等価交換型のマンションなどでは頭数と議決権の割合がかなり違うという意味では、この辺りが非常に管理組合の運営上大きな影響を与えるかなということで、確認をさせていただきました。1点目でございます。   続けて言った方がいいですかね、幾つか確認事項があれば。 ○佐久間部会長 一つ一つお願いします。 ○齊藤委員 はい、分かりました。 ○望月幹事 4ページの(2)イの定足数ですけれども、これはアの集会決議のところで、出席した区分所有者及びその議決権の多数で決するというのがあります。定足数で指しているのは、この区分所有者と、あと議決権、それぞれということになります。 ○齊藤委員 ありがとうございます。両方ということですね。両方が望ましいと思っておりましたので。よく分かりました。ありがとうございます。   そうしまして、次の項目です。この法律が皆さんに使っていただけるということで、もう一度見させていただいてシミュレーションした中で、少し分かりにくかったところがございます。8ページ目のところになります。27行目、Bのところで、管理不全共用部分管理命令の対象とされた、「共用部分の処分」というところ、この共用部分の処分とは具体的にどんなことをイメージされているのでしょうか。それは、Aの許可をするには全区分所有者の同意ということがありましたので、共用部分の処分ということについて具体的にどんなことをイメージされているのか、教えていただけたらと思います。 ○望月幹事 例えば共用部分について、階段とかそういうところだけ処分するというのは考えにくいと思うのですけれども、別途処分が可能な対象が共用部分となっている場合に、それを処分するというようなときには、そこの区分所有者の同意を要するということになります。これは、管理不全専有部分の処分の場合にその区分所有者の同意が必要ということと同様に、共用部分についても、管理人は処分を勝手にできる権限はなくて、そこについての処分権限を持っている人の同意を要しますと、こういうことを言っていることになります。 ○齊藤委員 分かりました。このまま条文になるわけではないかもしれませんけれども、少し私にとっては、分かりにくかったものですから、質問させていただきました。ありがとうございます。   それから、新しい制度ができるということで興味深く、非常に期待されており、私自身も期待しているところでございますが、11ページ目のところの国内管理人制度について質問させてください。   これも確認でございますが、途中いろいろな議論をしてまいりましたので、この国内管理人制度というのは法律で義務化をするわけではなく、マンションごとに必要ならしっかりと規約で位置づけてそこで義務化していくものと理解しております。今までも規約で位置づけているところもありましたが、今回は法律が後ろに控えてくれてバックアップしてくれる体制が整ったと理解しております。そこで、各マンションでは皆さんしっかり国内管理人を選んでくださいねということだと思っているのですけれども、この国内管理人というものは、選定されると、どのマンションでも同じくアからオの権限を持つ、あるいはマンションごとによって権限を変えていくようなことができるのか、あるいはマンションによっては、うちの国内管理人は人によって権限を変えるということもできるのかを教えてください。現実の管理組合運営を見ますと、実は区分所有者の方とその国内管理人に当たる方が個別に御契約されているので、一つのマンションだけれどもケース・バイ・ケースという事例もあるのですが、そういった場合、この国内管理人という制度、今の想定されているものは、皆さん同じ権限になるのでしょうか。確認になって恐縮なのですが、教えていただくことはできますでしょうか。 ○望月幹事 この国内管理人の規定を置いたのは、単なる私人間の委任契約による管理人というだけですと、その受任者がどこまでの権限を有しているか分からないというところから、国内管理人として選任された場合の権限を明確にしたもので、国内管理人として選任した場合には、このアからオまでの権限、これは全て持たせることにしましょうということにしてございます。ですので、国内管理人というふうに選任した場合には、このアからオまでの権限は全て持つ者としてその管理人は存在していると、こういうことで整理しています。 ○齊藤委員 分かりました。多分私もその方が運用しやすいと理解しております。人によって違うとかいうのは非常に新たな混乱を生むのかなという意味で、国内管理人という方が選定されれば、同じ権利でしっかりとやっていただくということかと思います。   そして、手続上は今後、所有者の方からこの人を国内管理人ですよと届け出てもらったら、この人を国内管理人として認めていくというような流れになっていくということですね。分かりました。御丁寧にどうもありがとうございます。 ○望月幹事 個々のマンションとの関係でということですよね。自分が区分所有者となっているマンションに対して、この人を国内管理人として選任しましたと言えば、そのマンションとの関係ではその人が国内管理人になっているということになると思います。 ○齊藤委員 分かりました。どうもありがとうございます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○大桐委員 ありがとうございます。11ページの6(共用部分等に係る請求権の行使の円滑化)について、実際に運用する者の立場からの質問でございまして、費用負担と相殺に関する質問です。   ずっと区分所有者であるAさんがいたとしますと、例えば、管理者が賠償金を回収して、その賠償金を引渡すときに、工事費用については持分に応じた負担をさせることができるので、相殺できるという記載が部会資料にあったかと思うのですけれども、そういった、ずっと所有者である区分所有者のAさんの場合はそうだと思うのですけれども、区分所有権の譲渡がなされ、元区分所有者B1と新区分所有者B2という場合において、管理者が元区分所有者B1のためにAのところで訴訟の原告の立場になったとき、元区分所有者B 1は賠償金の引渡し請求権はあるけれども、逆にその工事費用の負担については区分所有法の19条が及ばない関係で、工事費用については負担させられず相殺の扱いが管理者としてはできないということになるのに対して、工事費用は新区分所有者B2さんに対しては工事費用を決議に基づいて請求できるということになるかと思うのです。さらに、工事費用のみならず訴訟のための諸費用が掛かる場合がございます。例えば、瑕疵の調査費用ですとか、損害額を算定するに当たって利用した鑑定費用ですとか、また弁護士に依頼した場合の弁護士費用等があると思いますけれども、そうした訴訟のための諸費用については、その委任者である元区分所有者B1に対して負担させることができるのか、賠償金引渡し請求権との相殺ができるのかどうかという点について確認させていただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○望月幹事 旧区分所有者であったとしても、その方の権利を管理者が代理している場合ですと、委任に関する規定が適用されることになります。ですので、管理者がその委任事務を処理するのに必要な費用として支出したものについては、委任の規定に従って旧区分所有者に対しても請求をすることができるということになると思います。個々の鑑定費用がどうかとか、弁護士費用がどうかというところは、一個一個細かく整理しているわけではありませんが、その委任事務の処理に必要な費用というふうに当たるものであれば請求できるという関係に立つと思います。 ○大桐委員 ありがとうございます。そうしますと、費用について2類型に分けることができて、訴訟のための諸費用ということであれば、元区分所有者であるB1さん及びずっと区分所有者であるAさんとの関係では相殺の扱いができて、工事費用に関しては、ずっと所有者であるAさんと、区分所有権の譲渡があった新区分所有者のB2さんに請求というか、負担させることができるという、そういう理解、整理の仕方で合っていますでしょうか。 ○望月幹事 委任事務の処理に関する費用は、誰が委任者で誰が受任者かを見ていけば多分分かると思いますが、工事代金のところについては、例えば、いつその修理のための決議をしたかというタイミングと、譲渡の時期によって、場合によっては、現在では元区分所有者になっているのだけれども、例えば、修繕決議をして幾ら幾らの費用が発生したという時点で区分所有者であったとすれば、その方については工事費用の負担というか、修繕費ですかね、集会決議に従った費用負担というのはもう発生していることになるので、それとの相殺処理とかというのはありうるかと思います。ただ、抜けた後に何らかの費用負担を発生させる決議をしたときには、もはや元区分所有者に対してはその決議の効力は及ばないので、工事代金とか、そのとき発生した費用との相殺はできないということになるかと思います。 ○大桐委員 ありがとうございます。   また別の観点からの質問があるのですけれども、訴訟提起に当たっての主張立証の立て方といいますか、大抵のことは登記記録に載っていますので、瑕疵が発生したときの時期とその登記記録で、所有権が移転した時期との兼ね合いで立証はできるかと思うのですけれども、その場合、瑕疵事象が発生した後に区分所有権の譲渡があって、管理者が原告となる場合において、請求権を有する者が新区分所有者である場合は、債権譲渡があるということを主張立証しなければいけないということになるのかという点と、もう一つは、請求権を有する者が旧区分所有者の場合には、特段難しいような主張立証をしなくとも、登記記録及び瑕疵事象の発生のみにおいて主張立証していけば、それは請求としては立ち、あとは抗弁として、旧区分所有者が別段の意思表示をしたかどうかという点や、債権譲渡をしていて、その旧区分所有者は請求権を持っていないですよということが抗弁になるというような、そういう理解でしょうか。 ○望月幹事 管理者が原告適格を有するかどうかの問題なのか、請求権の中身、請求原因の問題ですか。 ○大桐委員 中身です。請求権を有するものについての。 ○望月幹事 主張立証の関係でいうと、何を訴訟物として請求するか、請求原因として何を主張すれば足りるか、その請求原因を裏付けるためにどんな資料を出せばいいかというのは、正に裁判の問題になってくるので、今回の法律で何かそこまで定めようとしているわけではなくて、そこは通常の訴訟と同じように、訴訟担当者がどんな請求原因を立ててどんな請求をしていくのかということの個別の事案次第かと思っています。 ○大桐委員 分かりました。 ○佐久間部会長 ほかにいかがでしょうか。   第1については差し当たり、よろしいでしょうか。   続きまして、部会資料27−1の「第2 区分所有建物再生の円滑化を図る方策」、資料でいいますと13ページから17ページまでについて御意見を伺いたく存じます。いかがでしょうか。   第2についてはよろしいでしょうか。ありがとうございます。   続きまして、部会資料27−1の「第3 団地の管理・再生の円滑化を図る方策」、17ページの最終行から20ページまでについて御意見を伺いたく存じます。いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。ありがとうございます。   最後に、部会資料27−1の「第4 被災区分所有建物の再生の円滑化を図る方策」、部会資料では20ページから23ページまでについて、御意見があれば伺いたく存じます。いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。ありがとうございます。   それでは、ただいまから「区分所有法制の改正に関する要綱案(案)」についてお諮りします。   本部会といたしまして、基本的に部会資料27−1のとおりとして区分所有法制の改正に関する要綱案を取りまとめることとしたいと思います。よろしいでしょうか。   特段の反対意見はないようですので、出席委員全員の一致により賛成いただいたものとして、当部会として要綱案を取りまとめることといたします。   要綱案につきましては、これまでも字句、表現の修正がされてまいりましたけれども、今後、総会での答申に至るまでの間にも法制的な観点から形式的な表現等の修正があり得ると存じます。このような形式的な修正につきましては、部会長である私と事務当局に御一任いただきたく存じます。よろしいでしょうか。   ありがとうございます。ただいま御了承いただきました要綱案の今後の取扱いにつきまして、事務当局から説明をお願いいたします。 ○望月幹事 要綱案の取りまとめの方、どうもありがとうございました。今後についてですけれども、来月の2月15日に法制審の総会の方が開かれる予定でございまして、本日お取りまとめいただきましたこの要綱案について御審議いただくことを予定しております。総会においてこの要綱の方が取りまとめられますと、その後、法務大臣に答申されるということになっていきます。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかに、全体を通じて何か御発言はございますでしょうか。 ○能登委員 ありがとうございます。まず、これまでの議論に参加させていただいたことを有り難く存じております。様々な御意見がありましたが、こうして取りまとめていただいた方向に、しっかり進んでいければと思っております。取りまとめていただいたこの要綱案が改正法として施行されるとともに、同改正に伴う関連法が速やかに見直されて、区分所有建物の再生の円滑化等が順調に進むことを期待しております。   ここで少し、建替えについてのお話をさせていただければと思います。建替えについては、先ほど増田委員からもお話がありましたが、建築計画の策定に当たっての各種制約や建築工事費の高騰など、まだまだほかにも様々なハードルがあるという状況ですが、今回の区分所有法改正を機に具体的な検討に入る組合も多くなるかと思いますので、私どもとしては、権利者が望む建替えの実現に向けて、引き続き惜しまず努力していきたいと考えております。   具体的に申し上げますと、建替え決議の要件緩和につきましては、今回客観的事由が要件となりましたが、要件緩和に向けた活動というのは組合にとって初めての取組になるかと思います。混乱がなく要件緩和の実現が図られるように我々も尽力したいと思っております。   また、区分所有者等の請求による賃貸借の終了という新しい制度につきましても、貸主、借主双方の理解を得ながら活用を図りたいと思っております。これまでの建替えの現場においては、賃貸借解約に係る金銭面での協議の難航が、円滑な事業の推進に影響を及ぼす課題となってまいりましたが、この課題の解決のためには、この制度創設に加え、賃借人に支払うべき適正な補償金額の算出根拠や、転借人等に対する補償金の支払ルールの明確化を図ることが必要だと認識しており、本部会とは別で検討が進むものと理解をしております。   なお、今回の法改正の内容について、実際の活用の場面では、残念ながら必ずしも円滑に機能しないというケースも生じる可能性はあります。不動産協会としましては、現場の状況を今後も注視しながら、法改正による思うような効果が上がらない場合には、再度、改正や運用の見直しなどを検討する必要が生じる可能性があるのではないかと感じているところでございます。   耐震性向上に資する高経年マンションの建替え、再生は住生活基本計画にも定められた目標であり、私どもも速やかに対応すべき課題であることを再認識したうえで、改正法を活用して建替えが円滑に進むよう努める所存でございますが、必要に応じた見直しの検討も引き続きお願いしたいと思っております。   全体についての意見ということで、発言させていただきました。ありがとうございました。 ○佐久間部会長 ありがとうございます。   ほかに何か御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、ここで私から皆様に一言お礼を申し上げます。   区分所有建物におけるいわゆる「二つの老い」の問題が深刻になりつつある中、私たちは、この問題に対応するための区分所有法制の改正に関する要綱案の作成を託されました。  一昨年10月以来、17回の会議を開き、本日その案を得るに至りました。  「二つの老い」の問題に対応するためには、区分所有建物の管理と再生の円滑化が不可欠です。本日得られました案は、区分所有建物の管理に特化した財産管理制度を設けるほか、集会決議についての所在等不明区分所有者の母数からの除外、出席者多数決を可能とする仕組みの導入などにより、区分所有建物の管理の円滑化を図るものとなっています。また、区分所有建物の再生の方法を多様化すること、再生のための決議の要件を建物の状況に応じて引き下げることなどにより、被災したものを含む区分所有建物の再生を円滑にするための方策を用意することもできました。個々の事柄については、それぞれのお立場から様々な考え方があることと存じます。そうであっても、全体として、私たちに与えられた課題に対してバランスのとれた適切な回答を用意することができたと確信しています。   本日取りまとめた要綱案は、この後、法制審議会総会に御審議をお願いすることになります。そして、総会で承認を得られましたら、この案に基づいて法律の改正が検討されることになります。そういった今後の審議、検討を、自信を持ってお願いすることができる要綱案を得ることができました。これはひとえに委員、幹事、関係官の皆様方の御尽力によるものです。会議の進行役を務めさせていただいた者として心よりお礼を申し上げます。   私たちはこれをもって区分所有法等の改正に向けた取組での役割を終えることになります。もっとも、法律の改正は、それ自体が目的となるものではなく、より良い社会とするための手段にすぎません。そして、区分所有建物に生じている様々な問題は、この部会においても御発言が度々ありましたとおり、法律の改正のみをもって改善、解消することができるものではありません。法律改正が適切に行われた後、その改正が意味のあるものとなるためには、国、自治体において関連する諸施策が適切に講じられること、区分所有建物の管理、再生の現場で改正法を活かす営みが現に実行されることが不可欠です。ここにおられる皆様方は、そういった場面においても大きな役割を果たす立場におられることと存じます。今後、そのお立場で、区分所有建物をめぐる諸問題の改善、解消に御貢献いただきますようお願い申し上げます。   最後に、改めまして要綱案の取りまとめに至るまでの御尽力、誠にありがとうございました。   続きまして、委員の松井さんから法務省のお立場で御挨拶があります。お願いいたします。 ○松井委員 大臣官房審議官の松井でございます。本日は皆様、要綱案をお取りまとめいただきまして誠にありがとうございました。民事局長の竹内がつい先ほどまでこの場におったのですが、公務のためちょうど席を外しておりますので、私の方から局長の挨拶を預かっておりますので、代読させていただきます。   当部会の審議の終了に当たりまして、担当部局を代表して一言、御礼の御挨拶を申し上げます。   当部会における審議は、令和4年10月の第1回会議から本日まで合計17回に及び、この間、委員、幹事の皆様方におかれましては多岐にわたる論点について、パブリック・コメントの結果や地方公共団体、関係団体の皆様からのヒアリングの結果等も踏まえ、大変密度の濃い御審議を賜りました。本日要綱案をお取りまとめいただいたことは、佐久間部会長をはじめとする委員、幹事の皆様の多大な御協力、御尽力があったからこそと深く感謝をいたしております。   今回の区分所有法制の見直しは、喫緊の課題となっております区分所有建物の管理・再生の円滑化、被災区分所有建物の再生の円滑化のために必要かつ合理的な規律を整備することを内容とするもので、関係各方面から正に待ち望まれた見直しであり、社会のニーズに的確に応えるものとして、その意義は非常に大きいものと考えております。   来月15日に開催されます法制審議会の総会で要綱が採択され、答申がされました後は、担当部局といたしまして、所要の法案を可能な限り速やかに国会に提出するとともに、早期に法律として成立するよう全力を尽くしてまいりたいと考えております。委員、幹事の皆様方には今後とも様々な形での御支援、御協力を賜りますようお願い申し上げます。   これまでの熱心な御審議に重ねて御礼を申し上げまして、挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございました。   以上、代読でございました。 ○佐久間部会長 これをもちまして、法制審議会区分所有法制部会における全ての審議を終了いたします。   改めまして、本日まで熱心な御審議を賜りまして、誠にありがとうございました。 −了− - 1 -