法制審議会 家族法制部会 第37回会議 議事録 第1 日 時  令和6年1月30日(火)  自 午後1時36分                       至 午後3時43分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題  家族法制の見直しに関する要綱案(修正案)について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会家族法制部会の第37回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日も前回までと同様、ウェブ会議の方法を併用した開催になりますので、よろしくお願いを申し上げます。   それでは、本日の会議資料の確認をさせていただきます。事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。本日は事務当局から部会資料として部会資料37−1、部会資料37−2をお配りしております。このうちの部会資料37−1が、この部会における取りまとめの対象となる要綱案の修正案をゴシック体の記載でお示ししているものになります。部会資料37−2は、部会における取りまとめの対象となるものではなく、飽くまでも部会資料37−1について御議論いただくための参考としていただく趣旨で作成しているものです。また、昨年12月に部会資料35−1としてお配りした要綱案(案)からの修正点が分かる資料を参考資料37−1としてお配りしております。このほか、前回会議ではこの部会で附帯決議をすることを提案する御意見がありましたので、参考資料37−2として附帯決議の案をお配りしております。   なお、今回もウェブ会議を併用していることから、御発言に当たっては冒頭でお名のりいただきますようお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは、本日の議題についての審議に入りたいと思います。本日の進行でございますけれども、まず要綱案(修正案)と附帯決議(案)について御議論を頂きました上で、前回の最後にも申し上げましたとおり、議論の状況を見定めた上で、取りまとめをするということを念頭に置きつつ審議を進めてまいりたいと思っております。また、何人かの委員幹事からは、要綱案や附帯決議の内容とは別に、この機会に議事録に残したいことがあるので発言をしたいという申出を頂いておりますので、要綱案の取りまとめができるようでしたら、その後、時間の許す範囲内で御意見を伺いたいと考えております。   それでは、要綱案(修正案)と附帯決議(案)につきましての議論に先立ちまして、事務当局の方から部会資料37−1「要綱案(修正案)」と、参考資料37−2「附帯決議(案)」の内容についての御説明をお願いいたします。 ○北村幹事 事務当局でございます。この部会では、令和3年3月の第1回会議以降、法務大臣からの諮問の趣旨を踏まえ、父母の離婚後の子の養育に関連する民法等の規律についてどのような規律を設けることが子の利益の実現につながるかといった観点から、充実した御議論をしていただきました。部会資料37−1は、これまでの御議論を踏まえ、要綱案の修正案をお示しさせていただくものになります。昨年12月にお示しした部会資料35−1「要綱案(案)」からの修正点は、部会資料37−2や参考資料37−1においてお示ししているとおりですけれども、1点だけ補足的に説明させていただきます。   要綱案(修正案)1ページ目の第1の1では、子の養育に関する父母の責務等の規律を提示しております。この論点について、この部会のこれまでの議論の過程では、子の意見等が適切な形で考慮、尊重されるべきであるといった御意見が多くの委員、幹事から示されており、これをどのように規律するかが問題となっておりました。この論点について、事務当局としては今回お示ししている要綱案(修正案)の第1の1(1)の子の人格を尊重するという文言には、子の意見等が適切な形で尊重されるべきとの考え方を含むものとして提案させていただいております。こうした解釈も踏まえた上で、本日の会議ではこの要綱案(修正案)について御議論いただき、この部会として要綱案を取りまとめることをお願いしたいと考えております。   また、前回会議では附帯決議の御提案も頂きましたので、参考資料37−2として附帯決議の案を提示させていただきました。附帯決議については、前回会議において御説明させていただいたとおり、この部会は飽くまでも法務大臣の諮問機関である法制審議会に設置されたものですので、決議をすることができる事項には一定の限界があり、例えば他府省庁の所管に属する事項や裁判所の運用に関わる事項について決議することには慎重であるべきであると考えられます。もっとも、これまでの会議の過程では、多くの委員、幹事から、子の利益を実現するためには民事基本法制の整備に加えて様々な形での支援の充実が重要であるという趣旨の御意見を頂きました。参考資料37−2では、こうした多くの委員、幹事の御意見を踏まえ、事務当局としてはかなり踏み込んだ提案をさせていただきました。恐らくこの部会における附帯決議の取扱いは、法制審議会の運営における一般的な先例となるようなものでもないと思いますけれども、この部会における議論の経過、経緯や特殊性に鑑み、このような提案をさせていただいているところです。 ○大村部会長 ありがとうございました。   要綱案(修正案)と、それから附帯決議(案)について御説明を頂きましたけれども、この両者につきましてまとめて御意見を頂きたいと思います。特に項目によって区切りませんので、どちらでも結構ですので、御発言がある方は挙手をお願いしたいと思います。どなたからでも結構です。 ○菅原委員 ありがとうございます。最初に申し訳ありません。臨時の教授会がありますので、先に発言させていただきます。よろしくお願いいたします。委員の菅原でございます。   部会資料37−1の第1の1(1)についてでございますけれども、以前も少し発言させていただいたところではありますが、父母が養育において子の心身の健全な発達を図るために配慮すべき事項として、こどもの年齢や発達の程度に加えて、当該の一人一人のこどものパーソナリティーや、その時々の心身の健康状態、心情、意向というのが重要になってくるのですけれども、これまでの様々な委員の御意見や、先ほどの事務局からの御説明もお伺いしまして、こうした事項については、本文の1行目のその子の人格の尊重の中に包括し得るということを理解しましたので、御提案いただいた原文どおりの表現に賛同いたします。   同時に(2)の2行目において、子に関する権利の行使や義務の履行に関し、その子の利益のため父母が互いに人格を尊重し協力しなければならないという箇所、及び2の親権の性質の明確化というところにおいて、親権はその子の利益のために行使しなければならないという表現のところに、今回の要綱案がこどもファーストの観点を重視してきたということが込められていると思われますので、1(2)及び2についても、原文どおりの表現に賛同いたします。   以上、どうかよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。菅原委員からは、第1の1及び2について、その解釈を確認された上で、賛成されるという御意見を頂戴いたしました。   ほかにはいかがでございましょうか。 ○落合委員 委員の落合です。私も基本的に賛成ということなのですけれども、やはり親子関係の責務を定めるということについて、前にも少し言わせていただいたことではありますが、ここでもやはり言わせていただきたいと思います。   やはりこれは大きいことで、現状までと特に親の責務の内容を変更するものではないとはいえ、非常に明確な形で書かれますので、国民にとっては非常に大きいことだと思うのです。そのときに、親の責務は明確化したのですけれども、それであれば、どのようにして親になるのか、親になることを辞退できるのかという辺りも議論しなければいけない、詰めなければいけないことだと思います。親になるということは、人間のいろいろする行為の中で、決意してする、その結果もよく分かった上で選択する行為というよりも、もう少し曖昧なものなのかもしれません。しかし、親になるとこの責務から逃げることができない。男性は、親権ですとか、それから認知というようなところで、ある程度その選択権があるのですけれども、産む女性は本当に逃げられない状況に置かれます。そのときに、これだけ重いものを、全く自分の決定ではそれを引き受けたり逃げたりすることができないものにそれだけ重いものを負わせることが適切なのか、というようなことが考えられるべきだと思います。それで、親になることを辞退するような方法をある程度、最低限のものを保障するとしますと、避妊ですとか、それから人工妊娠中絶の道ですとか、まずそういう選択を保障すること、それから、国によっては匿名出産というようなものもあると聞いておりますし、特別養子縁組などというものもありますけれども、何か本当に事情があるときにそれを辞退する道を保障することが必要であると考えます。   それから、非常に困難のある場合があります。こどもの側にいろいろ難しい問題があるとか、例えば最近話題になっているのでは、医療ケア児という方たちが増えているというようなことが話題になっております。医療の発達によって救えるこどもたちが増えていることから結果するわけですけれども。様々なことでこどもの養育が非常に困難なケースというのがあると思います。そうした問題が起きることが怖くてこどもを産む勇気を持てないという、若い世代の意見もあります。そういう場合には、とりわけ社会的な支援の道を充実させて、親だけにその責務を負わせないという、その辺りをはっきりさせることが必要だと思います。引き続きその点をどこかで検討していただきたいと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。落合委員からは親の責務に関連して、社会的支援の必要性、これは部会で皆さんも強調されている点だろうと思いますが、それについて改めておっしゃられたほか、親子関係の成立や存続についての規律についても将来的に考えていく必要があるのではないかという御意見を頂戴いたしました。ありがとうございます。 ○大石委員 ありがとうございます。委員の大石です。3点コメントさせていただきたいと思います。   まず1点目は、こどもの意見に関してで、附帯決議の2のところにも書いていただいておりますけれども、その子の人格の尊重の中に子の意見等が適切な形で尊重されるべきという考え方を含んでいるという点を確認するとともに、是非周知に努めていただきたいと希望しております。こども大綱との関係では、現在こどもや若者に対して、あなたたちは権利の主体であるということを周知する、そういう活動が行われているわけでして、そういったものとの関連を含めて取り組んでいただければと思っております。   2点目は、急迫の事情のところです。部会資料37−2にも書いていただいておりますけれども、DV事案においては加害行為が反復、継続するおそれがあるなどの特性に着目して、加害行為が現に行われていない間も急迫の事情が認められる状態が継続していると解釈することができるであろうと、若干弱い表現で書かれているのですけれども、そういうふうに継続しているという解釈が成り立つのだと、この部会ではそのように理解しているということをしっかり打ち出したいと思います。前回御提案させていただいた附帯決議の素案の説明文では、急迫の事情という文言が実態にそぐわないという点を指摘しておりました。今回の附帯決議案の2ポツのところでは、子の安全及び安心を確保と書いておりまして、そこに重視する姿勢があると私としては理解しておりますが、DVや児童虐待の場合は特に、他者あるいは裁判所が見て安全であるかのように見えても、実際には有形無形の暴力が加えられていたりして、安心が確保されていないということは十分にあり得るわけですので、この点は国民に対して特に力を入れて周知に努めていただきたいと希望しております。   3点目は、父母の離婚後の親権者の定め及び附帯決議の3に関するところでありますけれども、家裁への申立ての増加が考えられますけれども、この要綱案はどちらか、単独親権あるいは共同親権の原則論を出したとは私としては理解しておりませんので、どちらかがデフォルトになるとか、原則どちらかとなるということはないと考えておりますし、家裁の審理の結果が、例えば圧倒的にどちらかに偏るという事態は起こらないはずだと考えております。そういう理解の下で、国民に対して適切な形で理解を促すような形の発信がなされることを希望しております。   以上です。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。大石委員からは、子の意見の尊重、それから急迫の事情、そして離婚後の親権の取扱いについて、この部会で議論された解釈の周知徹底に努めていただきたいという御要望を頂きました。ありがとうございます。   そのほか、いかがでございましょうか。 ○大山委員 ありがとうございます。これまで、子育て世代であるとともに経済界の立場から、ダイバーシティー社会の実現の観点からこの議論に参画させていただいてまいりました。子の利益の実現という普遍的な価値観は委員の皆様で共有しながら議論を深めていったわけですが、その実現に向けた具体的な議論の過程では、いろいろな議論、様々な御指摘、考え方が出され、やはり時代とともに多様な考え方に沿って多様な選択肢を広げていくことの重要性を改めて感じた次第です。そういった意味で、今回、共同親権という新しい制度も含めて、この家族法制が見直されることは、非常に重要な意義があると感じております。法制化や具体的運用に当たっては、課題や懸念などの御指摘がまだあることは重々承知しておりますが、事務当局の方で細部にも御配慮いただいた要綱案の内容に賛同させていただきたいと思います。   また、附帯決議につきましても、やはり肝は今後、こういった新しい制度を導入して、いかに円滑に運用され、それが安心して制度を使えるようになるかということが、やはり大変重要なことだと思っておりまして、そういった意味でも、この附帯決議案の中で法的支援や、省庁の壁や組織の壁を越えた形で連携を深めていくことなども触れていただいております。新しい制度の実効性の担保を是非していただいて、進めていただきたいと思っておりますので、こういった附帯決議、そういったことを作っていただいたことにも感謝申し上げるとともに賛同したいと思います。   加えて、先ほど、大石委員からも御指摘があったとおり、分かりやすい周知が大変重要だと思っております。こちらの制度ができる過程、そしてできた後、経済界の立場からも、周知も含めて是非協力させていただきたいと思いますし、こういった制度ができて5年後、10年後、20年後、あのときこういった制度ができてよかったねと言われるような社会になっていることを強く願っております。   改めまして、大村部会長を始め法務省の皆様におかれては、夜を徹して各方面と御調整いただいたものと思っておりまして、改めて感謝申し上げます。 ○大村部会長 ありがとうございます。大山委員からは、これまでの審議の経過についての所感とともに、課題、懸念があるとしても、この方向で進めるということについて賛成を頂いたものと理解を致しました。また、実効性確保という観点から、附帯決議をするということにも賛成である、また、周知についても進めていかなければならないという御意見を頂戴いたしました。ありがとうございます。   そのほかの委員、幹事、いかがでございましょうか。 ○戒能委員 ありがとうございます。委員の戒能です。私はなお懸念を持っております。それで、この段階では二つお話しし、それから、最後の方で機会があるということですので、議事録に残していただきたい少し一般的なことをお話ししたいと思っております。一つは、先ほどの御発言にもありましたが、この部会では原則、例外論を採らないのだということが合意として、あるのではないかと思うのですが、しかし、この要綱案の第2の1を見ますと、(1)なのですけれども、どうしてもここに父母が共同して親権を行うというのが先に出てきてしまうわけです。第818条第3項の規律を明確化するためにということなのですが、この第2の1は婚姻中の共同親権の話と、それからその次の第2の2に出てくる離婚後の親権者の定めというものを統一して規定したいというようなお考えで、このようにまとめられたと思うのですが、誤解を生じるのではないかという危惧がどうしても拭い切れません。ですから、第2の1については明確に、婚姻中の共同親権の規律ということで分けるべきではないかと思っております。   それから、同じ第2の1(1)ウの急迫の事情ですが、急迫の事情という文言になぜここまでこだわるのかというところも懸念を依然として抱かざるを得ません。これは文言が、例えば補足説明の方にも出ておりますように、家裁の手続などを踏んでいたならば間に合わないと表現されるならまだしも、民法の財産法上の急迫の事情とどうやって統一性がとれるのだろうかと、かなり幅広にこれは解釈されるのだということなのですが、解釈する主体は、司法解釈ですから、国民の理解があったとしても、司法解釈が果たしてそういう幅広の解釈で運用されるものかどうかというのが大変危惧をしております。   現在のところ、以上の2点であります。 ○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員からは、先ほど懸念、課題という表現がございましたけれども、いろいろ工夫をしたけれども、なお懸念が残るということで、御指摘を2点いただきました。1点目は、これは前回も御指摘になった点かと思いますけれども、表現に関わるところかと思いますが、ここでの議論を反映したような表現になるかどうかということについて心配されているということだったかと思います。それからもう一つは、急迫の事情ということで、これも議論があるところでございますけれども、運用がここで考えられているようになるかどうかというところについてなお懸念があるという御意見だったかと思います。残りはまた後でということですので、後で伺いたいと思います。   ほかにはいかがでしょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。委員の井上です。まず、要綱案において法定養育費が法律上に位置づけられ制度化されることにつきましては、この間、第5次男女共同参画基本計画にひとり親家庭の貧困解消が入っておりましたので、その意味でも重要な取組だと考えています。   また、今回の要綱案には、子の人格を尊重し子の利益を確保する観点から、父母間に対立があるとき又は協議が調わないときなどにおいて家庭裁判所が関与する仕組みを設けたということにつき、家庭裁判所がこれまで以上に重要な役割を果たすことになるということですから、体制整備をしっかりと行っていただきたいと思います。   最後に、この附帯決議において、関係府省庁等において子の利益の確保を目指した協力という記載が入ったことに関しましては、先ほど事務当局からも、かなり踏み込んだ形でこの記載に至ったという経過も頂きました。この間のこの部会での議論をしっかりとこの文章に入れ込んでいただいたということだと思いますので、是非関係府省庁との連携の強化、その思いを受け止めていただいて、お願いをしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。井上委員からは法定養育費の創設について積極的な評価を頂いた上で、家裁の体制整備あるいは関係府省庁との連携についての御要望を頂きました。ありがとうございます。   そのほかはいかがでございましょうか。御発言ありませんでしょうか。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。今日お示しいただきました要綱案(修正案)と附帯決議に関してということで、意見を申し述べたいと思います。   ここまで、一部論点によりましては、消極的な立場又は留保という意思表示をさせていただいた部分もございますし、その基本的な考え方が変わっているわけではございません。しかしながら、諮問から約3年、今日は37回目の会議体なのですかね、議論を重ねてきたということ、あと、この部会に先立つ家族法研究会から数えれば4年を超える議論を積み重ねていただいたものと理解をしています。ここまでの議論を重ねた結果が本日示された要綱案であること、今日のこの修正案が多数の委員、幹事の皆様の賛同を得られる限界であると、個人的には理解をしておりまして、この要綱案に関しましては賛同するものということで意思表示をさせていただきたいと思います。要綱案の中で皆さんが共通した課題意識というところを今回、附帯決議という形でもお取りまとめていただきましたので、同様に附帯決議に関しても賛同という意思表示をさせていただきたいと思います。   最後になりますが、ここまで、私は飽くまで一別居親当事者でございます。私が言うような意見にも耳を傾けていただきましたこと、長期間にわたる部会での討議に御参加いただきました委員、幹事の皆様方、部会長、事務当局の皆様に一当事者として御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員からは、これまでの御発言の中で提案に消極意見を述べられたり、あるいは留保されたりした点もあるけれども、しかし、これまでの審議の経緯に鑑みて、要綱案、そして附帯決議の双方に御賛同を頂けるという御意見として承りました。ありがとうございます。   そのほかはいかがでございましょうか。 ○赤石委員 ありがとうございます。赤石です。   まず、この要綱案と、それから附帯決議、両方に意見を述べるということだったのですが、まず、これは先ほど戒能委員もおっしゃったところなのですけれども、少し違う角度で言いますと、今、報道などでも原則共同親権であるというような報道が流れているかと思います。どのように記者さんに対してレクチャーしているのかなと思うのですけれども、とはいえ第2の1(1)を見ますと、若干そういう誤解を生じるようなことになっていることは、これまでも何人かの委員の方が御指摘いただいております。ただ、私どもの議事録を見ると、離婚後の原則はどちらでもないということで、それについてこの審議会で御反対されている方はいらっしゃらないと理解しておりますが、そうであれば、そこについてははっきりした、議事録に残せるような形で御意見を賜ればいいかなと思います。   それから、この要綱案が示した世界というのは、非常にがらりとこどもの養育に関して変わっていくということを提案されているかと思います。こどもは幼いときから保育園に入ったり、学童クラブに入ったり、放課後デイサービスに通ったり、塾に行ったり、医療を受けたり、歯科矯正などの治療もあります。それから小学校、中学校、高校、受験と入学と、パスポート申請みたいなこともその間にあるかもしれません。あるいは、携帯電話を幼いときに持つためには、親権者が判子を押さないと携帯電話がもらえません。しかし、向こうの別居親の、あるいは共同親権者の携帯電話の許可がもらえないので携帯電話はそのままもらえなかったみたいな、これは一例を挙げたのですけれども、産業界に大きな影響が出てくるのではないか、今言ったように、福祉分野でも医療分野でも教育分野でも影響が出てまいります。それから、10代の未成年の女のお子さんの妊娠中絶の許可というものも、今は少し曖昧になっているのですね、法律的には親権者の許可が要るのだけれども、少しなし崩しになっているところもあるやに妊娠相談を受けている方から聞きましたが、これを厳格に運営されれば22週に間に合わないということになりますので、急迫の事情で乗り切れるのかということはございます。全ての手続が変わるということを私たちは本当に確保しているのかなということは思っております。やはりもっと、37回もやってきたのですけれども、これでもスムーズに行えるということが一つ一つ検討すべきだろうなと思っております。   それからこどもの意見表明に関しては、やはり少し納得し難い思いを抱えております。やはりお子さんたちの立場の声を聴くと、何らかの形で意見を聴いてもらいたかったというのがあるので、人格の尊重というのは非常に曖昧すぎるのではないかと思っております。   それから、一方では協議離婚などを割と判を付いてしまう無関心な親というのがかなりの数、塊でいらっしゃいます。この方たちが何か合意しないときというのは、黙示的合意がなされたと、連絡しても何もなかったら黙示的な合意があったとみなすとなっていたのですが、これって機能しますよねというのはやはり、すみません、本当に心配なのです。なので、お答えいただければいいなと思っております。   養育費に関しては、やはり根本的な解決ではなく、同居親の側が忙しくて、お金もなくて弁護士費用もないお母さんが、法定養育費が決まったとしても、その後の取立てというところでは自分が動かざるを得ないということになって、こどもの利益に本当になるには、やはりもう一歩進んだものが必要だったかなと思っております。非常にここも残念なところです。   附帯決議について、後で意見を述べさせていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございました。赤石委員からは、大きく分けて二つだったかと思いますけれども、一つは、先ほど戒能委員が問題にされた点について、原則、例外ということについてこれまでの議論は議事録には残っているけれども、ここで委員や幹事の御意見を更にお伺いしたいといった御要望だったのではないかと思って受け止めました。その他は、現在の案が実施されたときに本当にうまくいくのかという御懸念と、それから、養育費についてはもう一歩踏み込むことがあったらよかったといった御感想を述べていただいたと理解を致しました。   この後の御発言の中で、もし今の赤石委員の御発言に何か応じる方がいらっしゃるようであれば、触れていただければと思います。ほかに御発言いかがでしょうか。 ○柿本委員 委員の柿本でございます。赤石委員と戒能委員と重なりますけれども、私も2点懸念事項がございます。   これまで議論を重ねてまいりましたけれども、離婚後の親権者の定めのところでございます。原則というふうに、今申し上げられてきましたけれども、原則共同親権というマスコミ発表が聞こえてまいりました。原則はどちらでもないという表現ぶりになっていなかったのではないかというところが気になっております。2点目、急迫の事情のところでございますが、定義がきちんとされておらず、解釈に幅が生まれ非常に困った状態が生まれるのではないかと思っております。環境整備として、紛争がとても深刻になりつつあり、かつ複雑な状況になっていて、家庭裁判所の働きが非常に重要になると考えます。人的・物的強化などの手当てが確実にされることの見通しが立っていないことを懸念しております。 ○大村部会長 ありがとうございます。柿本委員からは御懸念2点ということで、先ほど戒能委員が御指摘になった点についての御発言と、それから、家裁の体制が整うだろうかということについて御発言がありました。赤石委員からは何か関連で御発言があればという呼び掛けがございましたけれども、柿本委員からは、御発言の前提として原則、例外とは考えていないという理解をお示しいただいたものと受け止めました。   そのほか、いかがでございましょうか。   御発言ございませんでしょうか。   赤石委員、附帯決議については後で意見を述べるとおっしゃったのでしたか。 ○赤石委員 続いて、ありがとうございます、お時間いただきまして。引き続き、共同親権が原則であるという誤解ではなかったですよねというところは御意見を賜りたいと思います。   附帯決議について、法務省の皆さんが大変御努力を頂いて、関係府省庁ともいろいろやり取りをしてくださったとお聞きしております。ありがとうございます。有り難いのですけれども、要綱案が出てきたら、もっと手前なのか、その後なのですか、分かりませんけれども、絶対に関係府省庁とはどういう仕組みでやるのかというのは議論すべきであるとは思っております。   その上で、私が一番残念に思っているのは、やはり予算をつかさどる財務省、それから税制をつかさどる財務省とのやり取りをしていただくしかないのではないかと思っておりましたが、それについてはなかったということでございまして、やはり税の控除のところが誰に付くのかというところは、新制度を作らなければいけないのか、どういうふうに今後のこどもの扶養を考えるのかということはとても大きな問題です。もし、養育費が払われていればお父さん側に扶養控除が付くとなりましたら、今やっと頂いておる手当とか、それから、修学支援新制度という画期的な修学支援制度が、いわゆる高等教育の無償化ですね、2020年から施行されておりますが、これは非常に仕組み上、所得の制限と連動しておりますので、これがどちらに付くのか、あるいは合算なのかと。確か今の修学支援新制度は所得の高いほうで計算していると思うのですけれども、こういう枠組み全てにものすごく甚大な影響を訴えてしまい、大学の無償化とかが絵に描いた餅になってしまう方たちが大量に生じてしまうのではないかということを心配しております。   ですので、私としては、もちろん御努力いただいたことは有り難いと一応言えるとは思うのですけれども、そもそもやらねばならないことではないのかと思うのですけれども、このような形で附帯決議が付くこと自体については、良い面はあるともちろん思うのですが、大変申し訳ないのですが、この点がすごくダメージが大きいと思っているところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員からは先ほどの要綱案の方について、第2の2(1)クについてですね、これもこれまで議論してきたところですけれども、やはり皆様の御意見が更にあれば伺いたいという御要望と、そして、附帯決議につきましては評価をしていただいた上で、予算や財政の面で十分でないという御意見であったと承りました。 ○棚村委員 私の方から3点申し上げたいと思いますが、基本的には要綱案の修正されたもの、それから附帯決議について賛成をさせていただきたいと思っています。御懸念の点はこれまでもいろいろ表明されてきて、大方の合意があるものもあれば、そうでない理解もあるかもしれませんけれども、特に私の方からは3つ触れさせていただきたいと思います。   一つは、十分議論が尽くされていないのではないかとか、拙速ではないかというような御意見についてです。これまでの私が関わった法制審議会ですと、短いものですと本当に1年足らずで10回ぐらいというのがありました。しかし、今回のは国民の関心も高い大きな問題であるということも含めて、37回という回を重ねて3年弱という、家族法研究会というところでの論点整理も含めますと、かなりの時間を費やしながら、割合と慎重にパブコメなんかも取って整理していただいてやってきたという感じを持っております。それから、法務省の事務当局では関連する実態調査、海外調査を含めて、自治体とのモデル事業などの調査研究業務も進めてこられました。その中で、関係機関との連携を模索し重視するという姿勢もあって、これは2番目にも関わるわけですけれども、法務省での法整備とか民事法制の見直しというところだけではなくて、皆様の御意見にもありますように、できる限り法改正のための基盤とか条件整備ということへも大分配慮されたと評価しています。   そして、3番目では、これも皆さんの一致した意見だと思うのですけれども、法の見直し、あるいは法制度を見直すということが主たる任務ではあるのですけれども、では変わったときにどういう影響とか運用がされるかということが重要な問題だと思います。そこで、法制度が変わって、あるいは作られて、運用もある程度どう動くかというのが見通せても、支援ということがないと当事者の皆さんが利用できないとか、届かないということが起こります。ですから、そういう意味では法整備と運用と支援というのはセットで考えなければいけない。ただし、限られた時間の中でどこまでそれを見通したり、影響を考えられるかということもあります。また、支援は関係する省庁や機関がどれくらい協力していただけるかということに頼らざるを得ないということで、いろいろな課題はあると思いますけれども、その3点の部分から、今日の要綱案の修正案、それから附帯決議については是非賛成したいと思います。特に附帯決議につきましては、御意見を頂いて、法制審でここまでできるかなということで、なかなか厳しそうだなという意見も当初申し上げました。しかし、何とか事務当局には頑張っていただいて、隣に法制審の会長もいらっしゃいますので、ある意味では、そういう中でどこまでぎりぎりできるかということで調整もしていただいたという点で、大変感謝申し上げております。   私自身も、ほかの委員の皆さんの熱心な議論に啓発されたり、勉強させていただいたりということもありました。それから大村部会長を始め事務当局が非常に丁寧に配慮をしていただいて、様々な意見にも耳を傾けていただいてまとめていただき、そういう意味で、個人的にも幾つかの点では足りないかなとか、自分の意見と違うというところはありましたけれども、全体としてこういうようなことで一歩でも二歩でもこどもたちの利益のための法改正にという点では、皆さん一致して考えてこられたと感じております。その結果、今回の要綱案の取りまとめ、附帯決議案に至ったわけでして、それぞれの部分について懸念とか心配とか不安というのはあるかもしれませんけれども、これから法の改正だけではなくて運用をしっかりしていくということと、それから支援についてもできるだけ取り付けるということで、賛成させていただきたいと思います。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員からは、基本的には賛成であるという御意見を頂きました。その上で、審議のプロセス、それから事務当局の御対応、そして今、最後にも触れておられましたけれども、運用や支援については不確実な面は残るけれども、万全の努力をしてほしいという御要望を頂いて、全体として賛成であるということだと承りました。ありがとうございます。   そのほか、いかがでございましょうか。 ○落合委員 委員の落合です。赤石委員がおっしゃったことで、私も少し気になったのですけれども、赤石委員のおっしゃったことは、例えば親権者が離婚後も両親になると、何かで所得制限があるような場合に、所得の多いほうの人、同居していない人、監護していない人でも、そちらの方の所得が適用されるかもしれないとかいうことですよね。そういうことについては割と議論が少なかったように思います。それは附帯決議に本来入れられたら良かったかもしれないです。このようなことが起きないようにするには、それはどのようなロジックを考えておいたらよいでしょうか。親権が両方になって、監護親も決めないというような場合、そのまま適用するとやはり所得の多いほうを見てしまうように思うのです。そうならないような歯止めというのはどうやったら掛けることができるでしょうか。少しその方法、可能性だけでもどなたかが案を出していただけるといいかなと思います。何か非常に起きそうなことのような気がしてきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員がお示しになった御懸念について、皆さんの方で何か御意見があればという御要望と承りました。何かもしあれば、今御発言いただきたいと思いますし、あるいはまた後の方で、もし時間の余裕があれば、その際に御意見を頂戴するということでもよろしいかと思いますが、何かどなたかありますか。 ○石綿幹事 幹事の石綿です。社会保障の方の勉強が不勉強ですので、詰められた議論ではありませんが。落合委員が今、監護親は定めないとおっしゃいましたが、ここの部会での提案は、監護者指定をすることが必須ではないということなので、法的に監護者を定めなかったとしてもこどもを主に監護する者というものはいることがあると思いますので、それを一つの基準とすることはあり得るかもしれません。要は法定養育費のところで出てくるような監護を主として行うものというような考え方が一つの鍵になってくるのではないかと思います。これはまた別途、社会保障の方で詰めていく話かと思いますが、民法の視点から見たときに、一応のお答えということで、すみません。 ○大村部会長 ありがとうございます。今の御発言は、法定の権限の分配と実情の差というのがあるので、それを考慮して考えることになろう、社会保障法の領域ではそういう考え方が採られているのではないかといった御理解を示されたということでしょうか。 ○石綿幹事 社会保障法の方では自信はないですが、少なくとも今回民事法では、法定養育費でそういう概念が出ているので、それが一つのキーになり得るかと意見です。 ○大村部会長 分かりました。そうした御意見として承りました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○赤石委員 ありがとうございます。赤石です。税法は主たる監護者が税控除を受けるという規定にはなっていません。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員からは税制上の御懸念を示していただいておりますけれども、落合委員からの御質問もありましたが、この部会でどのような考え方が採られているのかということについて、先ほど石綿幹事から一つのお考えが示されたかと思います。それを越えて、税法上の規律がどうなるべきだということについて、ここで扱うということは必ずしも適切ではないと思いますので、今のようなやり取りを記録にとどめるということにさせていただきたいと思います。   ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、皆様から御意見を賜りましたので、少しここで休憩をさせていただきまして、それから改めて再開をしたいと思います。現在14時30分ですので、14時45分まで休憩いたしまして、その後、再開したいと思います。休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、おそろいになったようですので、再開をしたいと思います。   休憩の前に要綱案(修正案)と、それから附帯決議案について何人かの委員、幹事から御意見を頂戴いたしました。それを受けまして、私といたしましては、この部会としての取りまとめをするのに熟している状態に至っていると考えますので、要綱案と附帯決議についてお諮りをしたいと思います。   本日はウェブ会議を併用した議事進行をしておりますので、念のためウェブを利用して出席されている委員の皆様方と適時の意思疎通が相互に可能な状態になっているということを確認させていただきたいと思います。お手数をお掛けいたしますけれども、ウェブ会議の方法で出席しておられる委員の方々は、私の声が聞こえていらっしゃるということであれば、挙手ボタンを押すという方法によってお知らせを頂きたいと思います。事務局の方で、各委員と意思疎通が可能な状態になっているかどうか確認をしていただければと思います。   挙手された方は手を下ろしていただいて結構です。ありがとうございました。それでは、ウェブで出席の委員の方々も相互に意思疎通が可能であるということを確認させていただき、部会長の私を除く委員の方々のうち22人が本日、御出席であると今、数えていただきました。これで定足数を満たしていることが確認できたということを御報告申し上げます。   それでは、これから要綱案と附帯決議について個別に、それぞれにお諮りをさせていただきたいと思います。   まず、要綱案の方ですけれども、あらかじめ事務局の方に寄せられている御連絡によりますと、原田委員は要綱案の採決については棄権をされると伺っておりますけれども、そのような理解でよろしいでしょうか。   ありがとうございます。   そのほかに、もし要綱案の採決について棄権をする委員がいらっしゃいましたら、挙手をお願いいたします。   大丈夫ですね。ありがとうございます。   それでは、原田委員は棄権をされていると受け止めさせていただきたいと思います。それから、過去の法制審議会の取扱いを調べていただきましたけれども、議長も採決の際には棄権をするというのが慣例になっているようでございます。そのため、原田委員と議長である私を除いた出席委員の皆様に要綱案についてお諮りするということにさせていただきたいと思います。   これまでの議論を伺っていますと、赤石委員、それから戒能委員、そして柿本委員のお三方は、要綱案の取りまとめの内容に反対であるという御意見を表明していただいていると理解をしております。他方で、他の委員の皆様方は、部会資料37−1のとおり要綱案を取りまとめるということに特段の御異議はないと認識をしております。   もし今私が申し上げたお三方の中で、いや、自分は賛成なのだという方がおられれば、言っていただきたいですし、反対にほかの委員の方々の中で、自分は反対だという方がいらっしゃれば、ここでおっしゃっていただきたいと思いますけれども、今のような私の認識で合っているでしょうか。大丈夫でしょうか。   ありがとうございます。それでは、今のような意見分布であるということで、この部会としては賛成多数によって要綱案を取りまとめさせていただいたということにさせていただきたいと思います。ありがとうございます。   続きまして、附帯決議の方についてお諮りしたいと思いますけれども、本日の御議論を伺っておりますと、赤石委員は反対ということなのではないかと理解を致しました。ほかの委員の方々の中で、もし反対だという方がいらっしゃるようであれば、挙手を頂ければと思います。   戒能委員は反対ということですね。   オンラインの方々も含めて、ほかの方々は御異論はないと受け止めさせていただいてよろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでは、2名の方々が反対、賛成が多数ということで、附帯決議を取りまとめさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでは、この部会といたしましては、附帯決議につきましても賛成多数ということで取りまとめをさせていただきたいと思います。   今後、法制審議会の総会がございますけれども、その総会までの間に、本日取りまとめを頂きました要綱案、そして附帯決議につきまして、誤記やその他の形式的な字句の修正を要するという点が出てくるかもしれません。その場合には慣例に従いまして、部会長である私と事務当局の方に御一任を頂きたいと思いますけれども、この点についてもよろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでは、この点につきましてはそのような形で取り扱わせていただきたいと思います。   それでは、本日取りまとめいただいた要綱案と附帯決議について、事務当局の方から今後の予定についての御説明を頂きたいと思います。 ○北村幹事 事務当局でございます。要綱案と附帯決議につきましてお取りまとめいただきまして、ありがとうございました。部会長から御説明がございましたけれども、もし今後、要綱案や附帯決議について誤記などの形式的な字句の修正をする必要があり得る場合には、部会長と事務当局に御一任いただいたということで、しっかりとそこはさせていただきたいと思います。   その上で、今後の予定なのですけれども、2月には法制審議会総会が開催されますので、本日お取りまとめいただきました要綱案と附帯決議につきましては総会で御報告させていただき、総会委員の皆様に御審議いただくことになります。その上で総会の了承を得られましたら、法務大臣への答申がされるという流れになります。この答申の際には、要綱のほか、本日お取りまとめいただいた附帯決議についても法務大臣にお渡しすることになります。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは、本日の会議の冒頭で申し上げましたとおり、一部の委員、幹事から、この機会に御発言の希望があると承っておりますので、要綱案と附帯決議が取りまとめられたということを踏まえまして、御発言の希望がありましたら、御発言を伺いたいと思います。何かありましたら挙手を頂ければと思います。   戒能委員、佐野幹事、石綿幹事、武田委員、赤石委員、オンラインは大石委員ですね、もし今の段階で、私がお名前を呼ばれた方以外に挙手されている方がいたら、申し訳ありませんが、声を出してその旨をおっしゃっていただければと思いますが、大丈夫でしょうか。では、取りあえず、今の方々に順番に御発言を頂きたいと思います。 ○戒能委員 ありがとうございます。委員の戒能です。2点あります。   第1点目は、特別法と民法の関係ということです。2001年にDV防止法が特別法として制定されて、20年余り運用が続いております。確認したい点です。DV防止法の制度設計は、民法の第752条には、同居協力扶助義務というのが規定されておりますが、生命身体の危険の防止、安全を守るということで、保護命令制度を作り、それから一時保護制度を作っているということは、逃げるということを制度設計の大前提としております。そのことによって被害者及びこどもの安全・安心を守るという制度設計になっていて、その考え方の下に20年間運用が続けられてきたわけです。   今回の民法改正によって、急迫の事情のこともありますし、居所指定の問題が非常に大きくて、子連れ別居が違法であるという判断が行われないとは限らないということになります。ここは非常に重要な点で、なぜDV防止法を制定し、20年間運用が継続し、そのことによってようやくDV被害者の安全・安心、こどもも含めて守られてきたと、そこは今回の民法改正によっても揺るがないのだ、変わらないのだということの確認をきちんとすべきだと考えております。そうしなければ、これはDV防止法を議員立法として制定し、継続して運用してきたことの意味はどうなってしまうのかという、非常に大きな制度設計上の問題です。それが1点目です。   それから、2点目は、既に御指摘もありましたように、審議のやり方の問題かもしれません。言うまでもなく、紛争解決の基準としての法の機能についての検討が十分であったかどうかということを考えるべきだと思っております。それで、今後も、紛争は現在でもあるわけですし、その紛争が激化する、深刻化するということが予測されます。そういうことを考えてあらかじめ、例えば何かの規定によってこういう状況が想定されるということが考えられるならば、どういうふうに対応するのかということを、市民生活に多大の影響を与え、子の福祉、子の利益を左右するような法規定になっておりますので、審議の過程では十分に審議をすべきであったと、今後こういう機会がありましたら、十分その辺りは留意して審議をしていただかないと、市民への影響が大きすぎるということを申し上げたいということです。   以上、2点でございます。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員から2点の御意見を頂戴いたしました。 ○佐野幹事 幹事の佐野です。弁護士委員、幹事3名を代表して申し上げます。   今回、要綱が取りまとめられ、これが今後、条文の形にまとめられ、国会で審議されていくことになります。要綱の条文化の際、この部会の中で特に慎重に議論が重ねられた幾つかの論点、文言につきましては、ニュアンスも含め丁寧に反映していただきたいと思います。例えば、第2の2(1)キは、その前段で共同親権、単独親権いずれをも原則とすることなく総合的に判断するものとした上で、しかし、共同親権が不適切なケースにおいて、万が一にもそれが選択されないようにという趣旨で、@、Aの場合には単独親権としなければならないという強い表現で記載されているものと理解しております。そして、こうした前段と後段の関係が誤解なく伝わるように、接続詞として、この場合においてという文言が選択されたという経緯があります。この条文化に当たりましては、こういった慎重な議論の結果をしっかり反映して形にしていただき、併せて正確に御説明いただきたいというのが1点です。   次に、この要綱案に沿った立法がなされ、施行がされた場合には、法改正がもたらす社会の激変というものに仕事柄いや応なく巻き込まれる立場にある者として、この法改正を導入する国、社会の責任について述べさせていただきます。附帯決議にも表れておりますけれども、この部会で議論された理念の実現に当たっては、民法を改正すれば足りるものではなく、これを取り巻く環境整備が極めて重要であることは部会でも共通理解であったかと思います。要綱案に沿った立法が施行されれば、協議離婚時、父母は離婚後の親権、監護の在り方を様々な態様の中からこどもの利益に即して適切に選択していくことを余儀なくされることになります。それが適切でなければ、父母の高葛藤状態に長期間さらされて不利益を被るのは結局こどもです。そうさせないことが正に国、社会の責任ですので、立法までに離婚する父母に対する正確な情報提供や相談、合意形成支援などの体制整備について、各省庁の壁を越えて進められることを期待します。   特に、第1の1(1)の子の人格の尊重に、子の意見等を考慮することも含まれるとするのであれば、親に意見を尊重してもらいたいと希望するこども自身に対する法的支援の充実も必要になってくると思います。そのために総合法律支援法の改正も含めた検討が必要になるものと思われます。   また、親権の共同行使例外事由中、子の利益のため急迫の事情があるときの解釈について、部会では、DV、虐待があった後、一定の準備期間を経て子連れ別居を開始する場合も含まれ得るという理解が共有されたものの、この理解の周知が徹底されなければDV、虐待被害者の加害者からの逃避を萎縮させることにもつながりかねません。そのようなことがないよう、正確な解釈について、関係各省庁においては繰り返し周知、広報をしていただきたいと思います。さらに、改めて言うまでもなく、既に構築されている税制社会保障制度におけるひとり親支援については、離婚後共同親権・監護権の導入により、結果、こどもに不利益が生じるということは問題外ですので、この点も関係各省庁において調整いただく必要があります。   最後に、これが我々にとって最も切実なのですが、今回の要綱案では離婚後共同親権下、共同行使すべき事項について父母間で協議が調わない際の決定は、全て家庭裁判所の判断に委ねられることになっています。子に関わる判断には迅速性が決定的に重要となりますけれども、裁判官が常駐していない支部が203裁判所支部中44支部あり、また、家裁調査官の増員も僅かにとどまっているため、本当にこの制度の運用ができるのかと不安、懸念が非常に強いところです。家庭裁判所の人的、物的体制の強化を行うとともに、そのための財源が確保されることが、この要綱案に基づく法改正、運用の必要条件であることは強く指摘しておきたいと思います。   ここをゴールとするのではなくて、新しい制度に一歩踏み出すものとして、今後課題として残された点を含め、施行後の検証、見直しも視野に入れて、こどもにとってどういった社会が望ましいのか問い続けていくということが重要であり、国、社会の責任ではないかと思います。この部会に参加しておられた皆様に、この機会に感謝を申し上げます。 ○大村部会長 ありがとうございます。佐野幹事からは、弁護士委員3人の代表ということで、3点ないし4点にわたって御意見を頂戴いたしました。 ○石綿幹事 幹事の石綿です。3点申し述べさせていただければと思います。   1点目は、少し大きな話ですが、本日冒頭部分で落合委員が、親子関係の成立等々も含めて検討することが必要ではないかという御発言を受けてのものということになります。今回、第1の1(1)で、親の責務のようなことが明示されたということになります。従前の解釈、運用を明示したということではありますが、そのようなことが明示されるということに、社会の受け止めは大きいだろうという御指摘があったかと思います。この部会ではどちらかと申しますと、親であり続けたい、親権者であり続けたいという方々の間を念頭に置いた議論がなされていましたが、他方で困難な状況を抱えて、こどもを育てることが大変だといったような方もいらっしゃるので、そのような方を支援するというところはもちろんですが、法的に、例えば民法の方で、親であることをやめるという手段があるのか、あるいは、そもそも親子関係の成立の段階で親にならないという選択肢があり得るのか、あるいは、現状は親権の辞任という規定は入っておりますが、それほど運用されていないというような指摘もあるところでありますので、親権者であることをやめるというようなこともあり得るのかといったようなことも含めて、親子法あるいは親権法全体についての議論をする機会というのがあればよいと思いますし、一研究者としてその点、研究を進めていきたい、いく必要があろうと思っております。   2点目は、法定養育費に関連してということですが、少し議論の中で、養子縁組をした際に法定養育費が消滅するのかどうなのかといったような話があったかと記憶をしております。ある者が扶養義務を負う、親である限り扶養義務は負うのだということが当然の前提としてこの部会では共有されていると思いますし、また従前からの理解だと思いますが、扶養義務があるということと、その者に対して請求権があるのか、特に監護費用分担として請求権が立つのかというのは、また別の話なのだと思います。この辺りは必ずしもこの部会で解釈を詰められていないところかと思いますが、今後、親子間の問題のみならず扶養の全体像も含めて、解釈を詰めていく必要があろうと考えております。   3点目は、さすがにくどいと言われるかもしれませんが、父母が共同して親権を行使すべき場合に、しかし共同してしなかった、その際にその行為の効力がどうなるのかということ、あるいは、その行為を受けた第三者、例えば学校なり医療機関などが典型例だと思いますが、その第三者が何らかの責任を負うのかという問題についての検討というのは必要不可欠なのではないかと思います。現行第825条というものが一応は準備されておりますが、それで必ずしも全ての場面がカバーされるわけではないと思っておりますので、ここはこれも今後、検討を進めていきたいと思いますし、特に事務当局におかれては、通例であれば何らかの一問一答等の解釈指針を示すものを作られるかと思いますので、その中で御検討いただければと思います。なお、個人的には第825条で悪意というキーワードが出ておりますので、第三者の悪意というのは、これらのことを考えていく際の一つのキーワードになっていくのかなとは考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事からは、3点にわたって御意見を頂戴いたしました。 ○武田委員 親子ネット、武田でございます。長期にわたる御議論、本当にありがとうございました。1点は戒能委員へのお願いと、もう1点は、今後の施行に当たってという点に関して意見を述べさせていただければと思います。   戒能委員からDV防止法の制定当時からのお話も触れていただきました。私は2022年、恐らく1月だったと記憶しておりますが、先般のDV防止法の改正に際して内閣府に参考人として呼んでいただきました。恐らく戒能委員も当日いらっしゃったと思うのですが、そのとき私が正に、戒能委員が触れていただきました「被害者が逃げることを前提としていること、被害者がなぜ逃げ続けなければいけないのか」、「加害者を近付けない形の運用にできないのか」という御提案を差し上げました。残念ながらこのような改定には今般のDV防止法改正では至らなかったと理解をしております。今後また、何年後か分かりませんけれども、DV防止法の改正の中で恐らく同様の議論が出てくるかと思います。この部会において、長くDV防止法に取り組んでこられた戒能委員には是非、逃げることを前提とすることを止め、被害者が逃げるのではなく加害者を近づけない制度にしていくための御意見をお願いしたいというのが1点、お願いでございます。   2点目です。今後、法制審の総会を経て、国会での与党プロセス、閣議決定がなされれば、国会での審議に入っていくものと理解をしております。当然のことながら、法案の成立後という話になりますけれども、棚村委員も今日、運用支援が重要ということ、ほかの先生方もおっしゃっていただいたと思っています。私は今回の改正で裁判所の考え方が大きく変わる要素が含まれているものと理解をしております。つまり、何を申し上げたいかといいますと、是非法務省さんには今後、法案が通って施行までの間、この内容で即施行とか早々の施行というのはないだろうと個人的に思っておりますが、施行までの間、是非家庭裁判所の裁判官、書記官、調査官の皆様、調停委員の皆様含めて、今回の改正の趣旨、目的を踏まえ、大変な労力を掛ける話になるとは思いますが、きちんと改正の趣旨が正確に徹底されるように、是非引き続き御協力をお願いしたいということを最後に申し上げたいと思います。以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。武田委員からは、2点にわたって御要望ないし御意見を頂戴いたしました。 ○赤石委員 ありがとうございます。赤石です。これまで21年の3月からですかね、3年間振り返り、要綱案が、私は反対ですけれども、取りまとめられたということでございます。それを振り返って、改めて思うことを述べさせていただきます。   まず、やはり要綱案を立法する、その立法事実があったのかということは、ずっと疑念を持っておりました。そもそも父母の協力関係は単独親権下でも、できる者はできているので、そこに制度で介在するということがどういう意味を持っているのか、また、離婚後こどもと会えないと訴えている親御さんの事例が、今までもヒアリングを幾つも受けましたが、果たして共同親権制度の導入で解決する問題だったのだろうか、もしかしたら裁判所の迅速な運用とか、違うところで救われたというのはないか等々、思っているところです。   第2に、やはりこどもたちの視点というのが欠けていると思いました。いろいろなお子さんたちが声を上げてくださっていますけれども、やはりこどもの声をきちんと聴き届けるというところが、少し旧態依然というか、そういうふうになっていたかと思います。この要綱案のデメリットとメリットを考えますと、私はデメリットの方が激しく多く、そして、メリットは法定養育費やそのほかの制度等あるとは思いますけれども、それに比べて非常にデメリットの方が大きい案であると思っております。本当にそのように言わなければいけないのは残念ですけれども、そうなっているかと思います。   一つは、DVや虐待事例は離婚後の親権を決めるときには排除して、そういう場合には単独親権になるのだという第2の2(1)キですかね、その辺りで議論されたことは一歩前進であったと思いますけれども、やはり懸念はずっと募っているわけです。この人たちは本当に離婚時に、離婚前にDVがあったことを証明することが皆さんできるのだろうか、これから大量に出てくる親権変更の手続において証明する書類を持っているのだろうか、そういう危惧はもう毎日表明されておりますし、こどもの立場でもう本当に、お母さんと逃げた後も父親がストーカーのように付きまとってきて、お母さんの職場や自分の学校にやってきたというような事例があって、非常につらい思いをしたというようなことを言っておられる方もいました。   一方で、無関心や音信不通ケースというのも大きな塊でいるのですけれども、こちらについても議論がとても足りなかったと思います。例えば、共同親権者が本当に関心を持っていないようなケースで、果たして黙示的な合意とかそういうのだけで処理され得るのでしょうかということが、また、そういう方たちはあるときにはこどもに関心を持つのですよ、彼女に振られたとかですね、あるときには全然、知らん顔しているのですね、こういうすごく波のある人間関係を共同親権制度ということで縛ることが果たしていいのだろうかということを思ったりしております。それから、長い間、共同親権で成人になるまで続くだけの体制ができているのだろうかというようなことも思いました。監護者の指定を一律にしないというところも、ずっと私どもは言い続けたわけなのですけれども、それはしませんというような御対応で終わりました。とても残念に思います。このように、メリットとデメリットを考えると、デメリットの方が膨大であると思っておりますので、私は反対させていただきました。   また、議論の進め方についてもとても残念です。確かに私は法律家でありませんし、法学部も出ていないので、本当に適切な表現をするというのが大変難しくて、御迷惑を掛けたかと思います。しかし、私が質問を投げ掛けても、半分も事務局からのお答えは頂けなかったと思っております。それは例えば、DVがあった場合に急迫の事情というのを拡大解釈して、DVがあった場合にはお子さんと逃げることは認められて、居所指定権がそのときに単独で認められ得るとしても、その後に被害側が安全に監護者指定を獲得して、刑法のこどもの誘拐罪などに怯えずに暮らせる手順を教えてください、少し戒能委員がおっしゃっていることに近いことかもしれないのですけれども、そこの整合性がないですよ、ないというか、もっと教えてくださいと申し上げましたけれども、それはもうこの案に書いてありますみたいな御対応であったり、それから、パブリック・コメントの暫定版に果たして本当に共同親権制度を導入しないとデメリットが非常に多い方は事例がありましたかと4月の時点で聞いたと思います。明確な答えはありませんでした、私の記憶では。全部そうではないですかとも非公式に言われました。そんなことはありません。   それと併せて、パブリック・コメントの手続の不備として、全貌を委員が読めなかったということです。8,000通のうち団体が九十何通ですから、七千九百何通が個人の方、その中のパブリック・コメントのまとめにはごく少数の、100か200ですかね、書いてあるだけです。私はこれについては、なくていいのだというような、そこまで読む必要はないという方もいらしたのですが、やはり運用を考えれば、そこで安心・安全な制度を作らなければいけないわけですから、当然ながらそれを全部読んで、この人はこれだったら救われるのだという制度を作らなければいけなかったのではないかと思います。   私は本当に稚拙な発言が多かったかとは思いますし、御迷惑を掛けたこともあるかもしれませんが、ひとり親とこどもたちを支援する側として、会員はうちのNPOでも1万人以上、またサポート団体全体ではそれの倍ぐらいの会員さんのお声を聴いているわけです。お答えがなかったり、つまりは法律に明るい方の意見の方が取り入れられ、あるいは別居親の側の意見が取り入れられた運用ではなかったかという疑念を持っております。ここまで言ってしまって申し訳ありません。こういう法制審議会の運用と、それから、委員さんがそれを、私は知らないですよ、推進派がとても強力だから、まあ少し妥協しましょうみたいなところでまとめてしまっていたのだとしたら、とても残念なことです。なので今回、附帯決議も、意見書は出させていただいたのですが、少し不十分なところがあって、大変御努力いただいたことはありがとうございます。消えたパブコメ問題は、今後の日本の司法あるいは日本の行政において、こういう手続が容認されることを審議会として認めたのだということになるのは、私はとても恐れております。そんなことで、この要綱案の評価と、取りまとめの経緯への疑問というのをお伝えしました。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員からは、3点にわたって所感ないし御意見を頂戴したかと思います。どうもありがとうございました。 ○大石委員 委員の大石です。ありがとうございます。佐野幹事が弁護士委員の方たちのお話をまとめられたことに賛同いたします。   今回の要綱案ですが、法律以外の制度整備と運用の問題が非常に大きいというのは共有されている認識であるかと思います。先ほど落合委員から税制関係の問題点の提起がございましたけれども、私は第22回の会議に、雑誌に掲載した論考を資料として提出しております。その中で、扶養控除など税制の問題と、それに絡んで、僅かな養育費を支払うことによって、支払う側は大きな税負担の軽減になるのですが、受け取る側はむしろ生活水準が低下し得る、児童扶養手当の削減などとリンクされてしまって生活水準が下がり得る、また、就学支援制度などの利用も難しくなるといった様々な問題が玉突き的に生じかねないということについて問題提起させていただいておりました。   また、この要綱案の中に出てきている法定養育費のシステム構築、これについても、新たな制度を構築するわけですので、法律にとどまらず制度構築のところにこどもの貧困をなくす上で非常に大きな期待が掛かるところではありますが、それについては是非こども家庭庁に司令塔としての役割を果たしていただきたいと考えております。今日は審議官がいらっしゃっていますけれども、是非お願いしたいところです。様々な官庁が絡む問題ですが、これをリーダーシップをとってまとめ上げていかなければ、今回の新しい要綱案の実現にはほど遠い結果となることが見えておりますので、その点は声を大にしてお願いしたいと思っています。それから、こども家庭福祉制度が創設されるわけなのですけれども、そうしたこどものソーシャルワーカーが、虐待防止だけでなくこどもの意見聴取をしたりするというような面で家裁と連携するとか、様々な面で、役所の縦割りではなく、飛び越えたような連携が行われることを強く希望いたします。   最後は、予算の問題なのですけれども、やはりあらゆる面で家裁の役割が大きくなるということが見込まれる中で、充実した予算が配分されることを期待するのですが、そのためにほかの予算が削られるという形で行われるのでは、やはり困るわけであります。ですので、ここ描かれた新しい法制度の在り方、そしてこども真ん中社会の実現というのを実施する上には必要な経費であるという認識で、立法に当たってはそういった新たな予算措置などが行われることを強く希望しております。 ○大村部会長 ありがとうございます。大石委員からは、先ほどの佐野幹事の御意見に賛成ということのほか、3点にわたって御要望ないし御意見を頂戴いたしました。   そのほか、御発言を御希望の方はいらっしゃいませんでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、皆様から御発言を伺ったということにさせていただきまして、ここで法制審議会家族法制部会の調査審議を終了するということにさせていただきたいと思います。   部会での審議を閉じるに当たりまして、事務当局を代表して民事局長から御挨拶を頂きたいと思います。   では、竹内委員、お願いいたします。 ○竹内委員 民事局長の竹内でございます。当部会の審議の終了に当たりまして、担当部局を代表して一言、御礼の御挨拶を申し上げます。   当部会における審議でございますが、令和3年3月30日の第1回会議から本日まで、合計37回に及んでおりまして、この間、委員、幹事の皆様におかれましては多岐にわたる論点について充実した御審議をしていただきました。心より御礼を申し上げます。   父母の離婚後の子の養育の在り方は、子の生活の安定ですとか心身の成長に直結する問題でありまして、子の利益の観点から大変重要な課題であると認識をしております。こうした課題について、子の利益を確保するため精力的に御審議を頂きましたことに重ねて御礼を申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございました。 ○大村部会長 最後に、私からも一言御挨拶を申し上げます。   民事局長からも今お話がありましたけれども、この家族法制部会は2021年3月末に開催された第1回の会議から数えまして、本日まで3年近くにわたって37回の会議を重ねてまいりました。   前の例を振り返ってみますと、2011年に実現いたしました親権法改正についての10回、それから2018年の相続法改正の26回、2019年の特別養子法改正の10回、そして22年の実親子法改正の26回、これらに比べますと随分多くの時間を費やして審議を重ね、本日ようやく要綱案を取りまとめるに至りました。まずは熱心に御審議を頂きました皆様に御礼を申し上げます。   部会での取りまとめに当たりましては、審議の手続の面で特徴的な点が二つございました。一つは、最後まで若干の反対意見が残ったということ、もう一つは、要綱案のほかに附帯決議を取りまとめたということでございます。いずれも民法関係の部会では異例のことでございますけれども、それぞれ理由のあることであったと受け止めております。   部会での審議対象の中心は、離婚後の子の養育に関する問題でありましたけれども、この問題は非常に困難な問題でした。第1に、審議対象そのものの難しさというものがありました。離婚時あるいは離婚後における夫婦、父母の状況は様々であり、離婚後の子の養育につきどのような規律をすべきかは一律にはなかなか決められません。また、父母のうち子を監護する者としない者とではその置かれた状況が異なるため、どちらの観点に立って考えるかによって大きく立場が分かれます。さらに、どのような決定を行うことが子の利益の観点から望ましいか、様々な学問領域の知見に基づいて様々な見解が示されておりますけれども、それらは必ずしも一致を見ません。そのため、部会審議の初期においては委員、幹事の間での意見の隔たりが大きく、中間試案では複数の選択肢の組合せを示すということになりました。その後、本日の要綱案に至るまでの間に様々な修正、調整を重ね、できるだけ多くの委員の賛成を頂ける案を模索してまいりました。最終的に賛成を頂いた委員の中にも、個別の論点については御不満をお持ちの方もあろうかと思います。他方で反対をされた委員も、全ての提案に反対というわけではなく、今回まとまった案に対して一定の評価をしていただいた上で、なお賛成できない点が残るという御判断を示されたと理解をしております。   第2に、審議対象の外にも難しい問題がございました。離婚後の子の養育に関する問題は、離婚の当事者のみに委ねるだけでは十分な解決ができないことが少なくなく、手続面でも実体面でも様々な支援が必要とされます。このことは審議の当初の段階から繰り返し指摘されてきたところでございますけれども、これらの問題は部会の審議対象ではないので、要綱案に含めることができません。しかしながら、委員からの附帯決議の御提案を受けまして、事務当局において他の部会の先例等を調べていただき、一定の範囲での決議が可能ということが判明したため、こちらについては、内容は全員一致とはなりませんでしたけれども、決議を行うこと自体について御異論がなく、附帯決議を取りまとめるということができました。   採決による決定は異例なことではありますけれども、十分に議論をしてできるだけ意見を集約するという部会の伝統は実質において維持されたものと受け止めております。今後これを先例として採決による決定が濫用されるということはないものと思っております。附帯決議もまた、初めてのことではありますけれども、現代における家族法の在り方を考えますと、当事者の決定に対して様々な支援が必要とされるということは改めて強調されてよいことであろうと思います。部会の審議事項、審議経緯との関係で不可欠の点に関する決議であり、これも熟慮の上のことであったと受け止めております。   要綱案の内容について個別に振り返ることはいたしませんけれども、最後に家族法改正全般について、二つのことを申し述べさせていただきます。   一つは、家族法が民法の一部であることの意義についてです。民法は、個人と個人の関係として社会を捉え、家族の関係も、人格、財産、契約、責任などに係る関係とともに、この社会を構成する重要な要素として位置づけ、他の関係との調和を図りつつ規律しております。こうした基本的な規律を定めることが、これをベースに外部からの様々な支援体制を整えることにもつながります。こうした観点から見ると、養育費につき先取特権が付与されたこと、DVへの対応が具体的な形で書き込まれたこと、そして父母の相互尊重、協力への言及がなされたことなどは、市民社会における家族の在り方につき中長期的な方向性を示すものとして重要な意味を持つのだろうと受け止めております。   もう一つは、改正の在り方についてでございます。家族法改正は少しずつ進んでおります。狭い意味での家族法、民法の親族編について申し上げますと、15年ほど前に将来の立法課題について一定の整理がなされたことがございますけれども、それらについての改正は一応、一回りしたように感じております。もちろん残された問題はたくさんありますし、本日も今後の課題として幾つかの重要な指摘がなされておりました。また、これまでの改正要綱中の提案のうちでなお実現されていないもの、あるいはその後、新しく現れた問題もございます。これらについては、次のサイクルにおいて新たな検討がされていくものと思います。難しい問題もございますけれども、そうした問題を議論するための経験を私たちは積んできており、この先の改正においてもこうした経験に基づいて、良い案を探し出すことができるものと信じております。   最後に、意見集約の非常に難しい困難な課題に取り組み、案の取りまとめに向けて熱心に御議論を頂きました委員、幹事の皆様、また事務当局の皆様、それから関係官庁の皆様に改めて御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。   以上をもちまして、家族法制部会の審議を終えることにいたします。   熱心な御議論を頂きまして誠にありがとうございました。これで閉会いたします。 −了−