法制審議会 第199回会議 議事録 第1 日 時  令和6年2月15日(木)   自 午後2時00分                        至 午後3時41分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題   ア 離婚及びこれに関連する家族法制の見直しに関する諮問第113号について   イ 情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備に関する諮問第122号について   ウ 区分所有法制の見直しに関する諮問第124号について   エ 遺言制度の見直しに関する諮問第125号について   オ 成年後見制度の見直しに関する諮問第126号について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○加藤司法法制課長 ただいまから法制審議会第199回会議を開催いたします。   本日は、委員20名及び議事に関係のある臨時委員1名の合計21名のうち、17名に御出席いただいておりますので、法制審議会令第7条に定められた定足数を満たしていることを御報告申し上げます。   本日は、小泉法務大臣が公務のため本審議会に出席できませんので、大臣から託されております挨拶を川原法務事務次官が代読いたします。よろしくお願いします。 ○川原法務事務次官 法務事務次官の川原でございます。法務大臣の挨拶を代読させていただきます。   会議の開催に当たり、一言御挨拶を申し上げます。委員及び幹事の皆様方におかれましては、御多用中のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。   さて、本日は、御審議をお願いする事項が五つございます。   まず、議題の第1は、令和3年2月に諮問いたしました、「離婚及びこれに関連する家族法制の見直しに関する諮問第113号」の答申についてでございます。この諮問については、同年3月以降、調査審議が行われ、本日、その結果が報告されるものと承知しております。父母の離婚後の子の養育の在り方は、子の生活の安定や心身の成長に直結する問題であり、子の利益の観点から大変重要な課題と認識しております。子の利益を確保するために所要の法整備を早急に行う必要があると考えております。   議題の第2は、令和4年6月に諮問いたしました、「情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備に関する諮問第122号」の答申についてでございます。この諮問については、同年7月以降、調査審議が行われ、本日、その結果が報告されるものと承知しております。近年における情報通信技術の進展の状況に鑑みますと、刑事手続においてもこれを活用し、国民の負担軽減や手続の円滑化、迅速化を図る必要があります。また、情報通信技術の進展に伴って生ずる事象に的確に対応せねばなりません。そのため、所要の法整備を早急に行う必要があると考えております。   議題の第3は、令和4年9月に諮問いたしました、「区分所有法制の見直しに関する諮問第124号」の答申についてでございます。この諮問については、同年10月以降、調査審議が行われ、本日、その結果が報告されるものと承知しております。老朽化した区分所有建物が増加しており、その管理・再生の円滑化を図るため、所要の法整備を早急に行う必要があると考えております。   委員の皆様には、これらの議題について御審議の上、できる限り速やかに答申をいただけますよう、お願い申し上げます。   次に、議題の第4は、「遺言制度の見直しに関する諮問第125号」についてでございます。近年における情報通信技術の進展を踏まえ、遺言制度を見直して国民にとってより利用しやすいものとする必要があると考えられます。令和4年6月に閣議決定された「規制改革実施計画」においても、国民がデジタル技術を活用して遺言を簡便に作成することができる新たな方式を設けることについて、必要な検討を行うとされております。そこで、この課題に対処するため、御審議をお願いするものでございます。   議題の第5は、「成年後見制度の見直しに関する諮問第126号」についてでございます。高齢化の進展などにより、今後、成年後見制度に対するニーズが一層増加し、多様化することが見込まれる中で、成年後見制度を見直し、更に利用しやすいものとする必要があると考えられます。政府方針である第二期成年後見制度利用促進基本計画においても、成年後見制度の見直しに向けた検討を行うとされております。そこで、この課題に対処するため、御審議をお願いするものでございます。   それでは、以上の議題について御審議、御議論をよろしくお願い申し上げます。   以上、代読でございました。 ○加藤司法法制課長 川原法務事務次官は公務のため、ここで退席させていただきます。           (法務事務次官退室) ○加藤司法法制課長 ここで、報道関係者が退室しますので、しばらくお待ちください。           (報道関係者退室) ○加藤司法法制課長 まず、事務局から会議に当たっての留意事項を御案内いたします。本日の会議はペーパーレス化により、タブレット端末による資料配布となっております。操作方法等について御不明な点がある場合は、事務局に適宜お知らせください。   では、高田会長、お願いいたします。 ○高田会長 高田でございます。本日はよろしくお願いいたします。   まず、前回の会議以降、本日までの間における委員等の異動について御紹介いたします。詳細はお手元にお配りしております異動表のとおりでございますが、新たに就任された委員が本日出席されておられますので、御紹介いたします。   同志社大学大学院司法研究科教授の洲崎博史氏が委員に御就任されました。洲崎委員、一言御挨拶をお願いいたします。 ○洲崎委員 同志社大学の洲崎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○高田会長 次に、審議に先立ってお諮りしたいことがございます。   今回の議題の内容に鑑みて、北村参事官、大谷民事第二課長、望月参事官、齊藤参事官、波多野参事官に関係官として審議に参加していただきたいと考えておりますが、よろしゅうございましょうか。   御異議もないようでございますので、北村参事官、大谷民事第二課長、望月参事官、齊藤参事官、波多野参事官に関係官として審議に参加いただくこととします。   それでは、本日の議題に入りたいと思います。   先ほどの法務大臣挨拶にもございましたように、本日は議題が五つございます。   まず、「離婚及びこれに関連する家族法制の見直しに関する諮問第113号」について、御審議をお願いしたいと存じます。   初めに、家族法制部会における審議の経過及び結果につきまして、同部会の部会長を務めておられました大村敦志委員から御報告いただきたいと存じます。   それでは、大村部会長、報告者席まで御移動をお願いいたします。   それでは、お願いいたします。 ○大村部会長 家族法制部会の部会長の大村でございます。よろしくお願い申し上げます。   家族法制部会では、法務大臣から令和3年2月に諮問を受けた諮問第113号について、約2年10か月にわたり調査審議を重ね、本年1月30日に開催されました第37回会議において家族法制の見直しに関する要綱案及び附帯決議を決定いたしました。本日はその概要について御報告をさせていただきます。   離婚及びこれに関連する家族法制の見直しに関する諮問第113号は、父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や、子の養育の在り方の多様化等の社会情勢に鑑み、子の利益の確保等の観点から、離婚及びこれに関連する制度に関する規定等を見直す必要があると思われるので、その要綱を示されたいというものでございます。この諮問を受けまして、家族法制部会では、子の利益の観点からどのような規律を設けることが望ましいか、調査審議を行ってまいりました。   この調査審議の過程では、中間試案を取りまとめてパブリック・コメントの募集手続を行い、8,000件を超える御意見を頂戴いたしました。また、部会では非常に多くの参考人ヒアリングを実施し、親の離婚を経験した子の立場、離婚を経験した親の立場のほか、DV被害者の支援をしている立場、あるいは家庭問題に関する支援をしている立場など、様々な立場の方々からお話を伺いました。その後、パブリック・コメント及びヒアリングの結果を踏まえまして更に調査審議を行い、最終的な意見の調整を進めてまいりました。このような審議経過を経て、本年1月30日の第37回会議において、賛成多数で要綱案及び附帯決議を決定するに至ったものでございます。   それでは、家族法制の見直しに関する要綱案の概要を説明させていただきます。   まず、要綱案1ページ目の第1では、父母の責務等を明確化することとしております。その責務等の内容といたしましては、父母は、子の心身の健全な発達を図るため、子の人格を尊重するとともに、子の年齢及び発達の程度に配慮して子を養育しなければならず、かつ、子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならないとするとともに、父母は互いに人格を尊重し協力しなければならないものとしております。また、親権が子の利益のために行使されなければならないということを明確化するということにしております。部会での議論の中では、子の人格を尊重することという文言には、子の意見を適切な形で尊重をするということも含まれていると解釈すべきであるとの指摘があったところでございます。   要綱案の第2の親権及び監護等について御説明いたします。現行民法では、父母の婚姻中はその双方が親権者となり、親権を共同して行使することとされておりますが、父母の離婚後は、その一方のみを親権者と定めなければならないこととされております。このことに対しては、父母の離婚後もその双方が子の養育に責任を持ち、子に関する重要な事項を父母の双方の熟慮の上で決定するということを確保すべき場合があるとして、離婚後の父母双方を親権者とすることを可能とすべきであるとの指摘がございます。他方で、離婚後の父母双方を親権者とすることに対しては、子に関する意思決定を適時に行うことができないおそれがあるのではないかとの懸念、あるいは、DVや虐待等がある事案において、父母の一方から他方に対する支配、被支配の関係が離婚後も継続するおそれがあるのではないかといった懸念もございます。また、父母が婚姻中であるか離婚後であるかを問わず、父母双方が親権者である場合には、どのようなときに親権の共同行使が必要となるのか、どのようなときに父母の一方が単独で親権を行使することができるのかといった問題を整理する必要があるとの指摘もございました。部会においては、これら双方の意見に配慮をしながら、様々な角度から十分な時間を掛けて丁寧に議論をしてまいりました。   要綱案では、まず、第2の1において、父母双方が親権者である場合における親権の行使のルールを明確化し、また、親権行使について父母の意見が対立した場合の解決手続を整備することとしております。DV事案を念頭に置いた懸念につきましては、要綱案第2の1(1)ウのとおり、DVからの避難が必要であるなどの急迫の事情があれば親権の単独行使を認めることなどを明確化することとし、この懸念に対応することとなりました。   そして、要綱案2ページ目の第2の2では、父母が協議上の離婚をする場合には、父母の協議によって父母の双方又は一方を親権者と定めることとし、裁判上の離婚の場合には裁判所が父母の双方又は一方を親権者と定めることとしております。部会の議論の中では、家庭裁判所が親権者を定める際に、どのような場合に父母双方を親権者とし、どのような場合にその一方を親権者とすべきであるのかといった点について議論がなされました。そして、その議論の結果として、要綱案第2の2(1)キのとおり、裁判所が子の利益のため、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮して判断しなければならないこととした上で、父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、必ず父母の一方を親権者と定めなければならないこととしております。   また、部会の議論の中では、離婚後の父母双方を親権者とした場合には、監護者の定めを必須とすべきかどうかということについて議論がなされました。この論点につきましては、離婚後の子の養育の在り方がそれぞれの家庭によって多種多様であることを念頭に、要綱案3ページ目の第2の3のとおり、監護者の定めを必須とはしないこととしております。   要綱案4ページ目の第3の養育費について御説明を致します。養育費は、子の養育を経済的に支えるものであり、その取決めや支払いの確保の重要性には異論のないところでございます。そこで、要綱案第3の1では、養育費等の請求権の実効性を高めるため、まず、養育費等に一般の先取特権を付与することとしております。このような改正がなされますと、養育費の取決めを記載した文書があれば、養育費の債権者は一定額の範囲で一般の債権者に優先して弁済を受けられるほか、債務名義を取得していなくても民事執行手続の申立てをすることができるようになります。   また、要綱案第3の2では、父母が子の監護に要する費用の分担についての定めをすることなく協議上の離婚をした場合に対応するための仕組みといたしまして、父母の一方であって離婚のときから引き続き子の監護を主として行う者が、他の一方に対し、政省令で定める一定額の養育費を請求することができるという法定養育費の仕組みを設けることとしております。要綱案では、このほか裁判手続における収入等の情報の開示命令の仕組みや、民事執行手続に関し債権者の申立てに係る負担を軽減する仕組みを設けることとしております。   要綱案7ページ目の第4の親子交流について、御説明を申し上げます。子と別居する父母の一方と子との交流には、父母の離婚や別居の後も子が父母の双方から大切にされていることを実感することができる機会となるという意義がある一方で、親子交流が実施されることで子が危害を受けるおそれがある場合などにも交流を実施することは、子の不利益になると考えられているところでございます。部会の議論の中でも、子や同居親の安全・安心を確保した上で適切な形での親子交流を実現することができるような規律が議論されました。その議論の結果といたしまして、要綱案第4の1では、婚姻中の父母の別居時における親子交流についての明文の規律を設けることとしており、第4の2では、裁判手続の過程において、家庭裁判所が事実の調査として親子交流の試行的実施を促すことができる旨の規律を設けることとしております。このほか、第4の3では、子の利益のため特に必要があることなどの一定の要件の下で、家庭裁判所が祖父母等の親族と子との交流に関する定めをすることができるとしております。   要綱案9ページ目の第5の養子につきましては、まず、養子縁組がされた後にその子の親権者が誰になるのかを明確にすることとしており、また、親権者である父母の間で15歳未満の子の養子縁組の代諾に関する意見対立が生じた場合の解決方法を整理することとしております。   要綱案10ページ目の第6の財産分与につきましては、まず、財産分与において考慮されるべき要素を明確化することとしております。また、要綱案では財産分与を請求することができる期間を現行法の2年から5年に延ばすこととしており、このほか裁判手続における財産情報の開示命令の仕組みを設けることとしております。   最後に、要綱案11ページ目の第7では、夫婦間の契約の取消権に関する民法第754条の規定を削除することや、強度の精神病にかかり回復の見込みがないことを裁判上の離婚の原因とする民法第770条第1項第4号の規定を削除することとしております。   以上が、家族法制の見直しに関する要綱案の概要でございます。   部会ではこの要綱案について、部会長を除く出席委員22名のうち1名の委員が棄権を表明し、残り21名の委員による採決の結果、3名の委員が反対を表明したものの、その他の委員の賛成多数をもって取りまとめが行われました。   続いて、附帯決議について御説明を申し上げます。部会の議論の中では、父母の離婚後の子の養育に関する民事基本法制の改正を行うだけではなく、その改正法の円滑な施行のためには様々な形での環境整備が必要であるとの指摘がございました。こうした指摘を踏まえ、部会では要綱案の取りまとめと併せて、必要となると思われる環境整備等に関する附帯決議をすることとなりました。   附帯決議の第1項は、改正法の内容の適切な周知を求めるもの、第2項は、各種支援についての充実した取組を求めるもの、第3項は、家庭裁判所における適切な審理を期待するもの、第4項は、改正法の施行状況や各種支援等に関する情報発信を求めるものであり、最後の第5項は、これらの事項の実現のため、関係府省庁等が子の利益の確保を目指して協力することを要望するものでございます。   附帯決議につきましては、部会長を除く出席委員22名のうち2名の委員が反対を表明したものの、その他の意見の賛成多数をもって取りまとめがなされたところでございます。   家族法制部会の報告は以上でございます。よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。 ○高田会長 御報告ありがとうございました。   それでは、ただいまの御報告及び要綱案並びに附帯決議の全般的な点について、御質問及び御意見を賜りたいと思います。   御質問と御意見を分けてお伺いしたいと存じます。まず、御質問がございましたら承りたいと思います。 ○石原委員 ありがとうございます。離婚及びこれに関連する様々な論点について熱心に御議論を頂き、今般要綱案を取りまとめていただきました大村部会長を始め家族法制部会の皆様には敬意を表させていただきます。   今回の改正、特に親権に関わる問題点については、DVや虐待被害を受けた当事者、そして、それらの当事者を支援する方々などから強い懸念が示されたこと、それから、日弁連においても強い反対意見があります。そして、私が意見を述べる前に御質問を少しさせていただきたいと思います。   要綱案の第2の1(ウ)の急迫の事情があるときに関しての御質問でございます。部会資料35−2を読みますと、第34回の会議で急迫の事情の要件を緩和することを求める意見があったが、議論の経過を踏まえてそのような修正をしていないとして、急迫の事情の意義については、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時の親権行使をすることができず、その結果として子の利益を害するおそれがあるようなケースを想定することが考えられる旨の説明がなされております。   議論経過を読めば、修正されなかった理由は理解できますけれども、しかし急迫という言葉の持つ意味について市民がどう捉えるのかということを考えることも大切ではないかと思います。急迫という単語を辞書で調べますと、大辞林によれば、物事が差し迫った状況、敵などが急速に迫ってくることとされており、時間的に近接していることを指す言葉として説明されています。言うまでもなく、家族法は万民に適用される基本法であり、その条文は一般の人々に、より簡明で分かりやすい言葉である必要があろうかと私は思っております。DV、虐待事件を数多く取り扱ってきた多くの弁護士が急迫の事情という言葉に強い懸念を示していますが、現場を体験している者の意見は大変重いと思われます。   私も、急迫の事情があるときよりは、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時の親権行使をすることができず、その結果として子の利益を害するおそれがある場合、などに修正された方がよいのではないかと思いますが、この点を検討していただくことは可能であるかどうかというところと、それから、仮に急迫の事情があるという言葉が維持された場合に、現行の家庭裁判所の実務の運用に変更を来す可能性があるのか、その点について御教示を頂ければと思います。よろしくお願いを致します。 ○大村部会長 ありがとうございます。   お答えをさせていただきます。委員御指摘のとおり、この急迫の事情という文言をめぐりましては部会で様々な議論があったところでございます。また、これも御指摘の中に含まれておりましたけれども、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時の親権行使をすることができず、その結果として子の利益を害するおそれがあるようなケースがこの文言の中に含まれるという理解が示されていたところでございます。   これをそのまま条文に盛り込んだらどうかという意見もあったところでございますけれども、民法の他の規定で使われている文言との整合性という観点から、急迫の事情という文言を使うことが望ましいという意見が複数の委員から表明され、かつ、この文言を使ったとしても、直前に申し上げたようなケースを包摂することができるだろうという考え方が示されて、最終的にこの文言が採用されるということになったと理解をしているところでございます。   実務にどういう影響を与えるかという御懸念についてでございますが、この点につきましては、現在の実務ということで、実務のどの部分を取り上げ、どのように理解するのかということによって、お答えの仕方も変わってくるところがございますので、一義的に申し上げることは難しいのですけれども、先ほどから申し上げているように、御懸念のあるようなケースもこの文言に包摂されるということであると考えられますので、適切な運用がなされると考えているところでございます。   私からは以上でございます。 ○石原委員 ありがとうございました。今の1点、どのような場合かというところなのですけれども、多分、今家庭裁判所に持ち込まれている案件というのはやはり、どちらを選ぶのか結構争いがある事件が多いというところがある、いわゆる高葛藤の事件ではなかろうかと。そうすると、そういう高葛藤な事件があった場合に、恐らく現在と同じような運用がなされるのではなかろうかというような、私は少し推測をしておったのですけれども、その辺のところが確認させていただければと思って、少し御質問させていただきました。 ○高田会長 よろしゅうございますか。   ほかに御質問はございますでしょうか。   では、続いて御意見を賜りたいと存じます。 ○芳野委員 ありがとうございます。芳野でございます。意見を申し上げたいと思います。   まず、法定養育費の制度化に関しては、日本のひとり親家庭の貧困率が高い背景の一つに養育費を受けている割合の低さがあり、制度化はひとり親家庭の貧困解消に向けて一歩前進するものと考えます。   次に、共同親権導入に関しては、児童虐待やDVの加害者が共同親権者となり、被害の継続や拡大になるのではないかとの懸念が部会において示されたと認識をしています。そのため、本案では、父母間に対立があるとき、協議が調わないときなどにおいて家庭裁判所が関与する仕組みが設けられています。子の福祉の確保に向け、これまで以上に重要な役割を果たすことになる家庭裁判所の体制整備をしっかりと行っていただきたいと考えます。   また、附帯決議に記載がありますが、今回改正において関連する各種制度を充実するための取組が必要であると思います。加えて、今回の見直しにおいて論点となりました児童虐待、DVの事例の懸念については、裁判官のジェンダーバランスという観点も重要だと考えますので、女性裁判官の任命と育成についても取組の促進をお願いしたいと思います。 ○高田会長 ありがとうございました。   ほかに御意見はございますでしょうか。 ○石原委員 ありがとうございます。それでは、私の方から意見を述べさせていただきます。   今回の要綱案に対しては、まず、父母に対しての子の扶養に関して生活保持義務を負うこと、そして、親権の名称は残りましたけれども、親権は子の利益のために行使しなければならないことが明記されました。要綱案第2の2(1)キに定められた離婚後の親権の定めについては、素直に読めば、共同親権、単独親権のいずれも原則とすることなく、子の利益の観点から総合的に判断するものとした上で、さらに、共同親権が不適切なケースが選択されないような慎重な配慮がなされたものと評価できると思います。そして、養育費等の不払いの解消のための具体的な措置等も導入されております。このように、本要綱案は子の利益の観点から現行法より多くの点で改善がなされているということで評価できると思います。よって、私は本要綱案及び附帯決議には賛成させていただきます。   なお、少し芳野委員の言葉と重なるのですけれども、今回の改正により家庭裁判所への申立てが増加することが予想され、裁判所の負担の増大が必至と思われます。子の利益のためには、迅速かつ適切な判断が可能となるように家庭裁判所の人的、物的体制の強化を求めますとともに、実務での運用状況を定期的に検証して、必要が生じた場合には更なる改善がなされていくことを要望させていただいて、私の意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。 ○高田会長 ありがとうございます。   ほかに御意見はございますでしょうか。 ○古城委員 私も、今回の改正で、父母が子に対して負う責務、あるいは親権が子の利益のために行使しなければならないということを明確化したことに非常に大きな意義があると思います。この改正を通じて、親権が子の利益のために行使すべきものであるという点について社会の理解が深まることを期待したいと思いますので、この附帯決議の第1項に挙げられているような、この改正内容及びその解釈上参考となる事項を適切に周知する必要があるという点を、是非実現するように配慮していただきたいと思います。 ○高田会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは、原案につきまして採決に移りたいと存じますが、御異議はございますでしょうか。   特に御異議もないようでございますので、そのように取り計らわせていただきます。   諮問第113号につきまして、家族法制部会から報告されました要綱案及び附帯決議のとおり答申することに賛成の方は、挙手をお願いいたします。   それでは、事務局において票読みをお願いいたします。   手を下ろしていただいて結構でございます。   反対の方、御挙手をお願いいたします。   それでは、事務局において採決の結果をお願いいたします。 ○加藤司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は14名でございますところ、全ての委員が御賛成ということでございました。 ○高田会長 採決の結果、全員賛成でございましたので、家族法制部会から報告されました要綱案及び附帯決議は、原案のとおり議決されたものと認めます。   議決されました要綱案及び附帯決議につきましては、会議終了後、法務大臣に対して答申することといたします。   大村部会長におかれましては、多岐にわたる論点につきまして調査審議をしていただきました。ありがとうございました。   次に、「情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備に関する諮問第122号」についての御審議をお願いしたいと存じます。   初めに、刑事法(情報通信技術関係)部会における審議の経過及び結果につきまして、同部会の部会長を務められました酒巻匡委員から御報告いただきたいと存じます。   それでは、お願いいたします。 ○酒巻部会長 刑事法(情報通信技術関係)部会の部会長の酒巻です。私から、同部会における審議の経過及び結果を御報告いたします。   諮問第122号は、「近年における情報通信技術の進展及び普及の状況等に鑑み、左記の事項に関して刑事法の見直しをする必要があると思われるので、その法整備の在り方について、御意見を承りたい。      記  一 刑事手続において取り扱う書類について、電子的方法により作成・管理・利用するとともに、オンラインにより発受すること。  二 刑事手続において対面で行われる捜査・公判等の手続について、映像・音声の送受信により行うこと。  三 一及び二の実施を妨げる行為その他情報通信技術の進展等に伴って生じる事象に対処できるようにすること。」というものでした。   本諮問については、令和4年6月27日に開催された法制審議会第195回会議において、まず部会において検討させる旨の決定がなされ、この決定を受けて、刑事法(情報通信技術関係)部会が設けられました。  部会においては、令和4年7月29日から令和5年12月18日までの間に、15回にわたって調査審議を行いました。  部会においては、諮問に先立って法務省で開催された「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」における検討の結果が共有された上で、委員・幹事から、情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備の在り方について、各諮問事項に即して意見が述べられ、それらを踏まえて具体的な法整備に向けた議論のたたき台を作成するなどして、制度の内容を具体化しつつ、議論を重ねました。  また、期日外において、障害のある方にも配慮した制度設計等に関して、障害をお持ちの方々からのヒアリングを実施いたしました。  そして、こうした議論に基づき、三つの諮問事項に関し、合計11の項目からなる「要綱(骨子)案」を作成し、更に詰めの議論を行った結果、賛成多数により、本日配布資料の「刑1」としてお配りしている「要綱(骨子)」のとおり法整備を行うことが相当である、との結論に達しました。   それでは、部会における審議の結果の概要につきまして、「要綱(骨子)」に沿って御報告いたします。資料の刑1「要綱(骨子)」を御覧ください。   「要綱(骨子)」の1ページの「第1−1」は、訴訟に関する書類の電子化に関して所要の規定を設けることとするものです。  具体的には、1ページの「1」は、電磁的記録による公判調書の作成等について、「2」は、電磁的記録である訴訟に関する書類等の閲覧・謄写について、2ページの「3」は、申立て等及びその記録の電子化について、3ページの「4」は、電磁的方法による告訴・告発等について、「5」は、電磁的記録の送達について、「6」は、公判廷における電磁的記録の取調べ等について、4ページの「7」は、供述の内容を記録した電磁的記録等の作成及び取扱いについて、それぞれ、訴訟に関する書類の電子化に係る規定を整備することとしています。  これらの規定が整備されることにより、裁判所に提出することとなる証拠書類や手続書類が電子データとして作成され、書面のやり取りによってなされている手続が電子データのやり取りにより行われ、裁判所においても、訴訟に関する書類が電子データとして作成・管理・利用されることとなり、刑事手続の円滑化・迅速化に資すると考えられます。   「要綱(骨子)」の6ページの「第1−2」は、電磁的記録による令状の発付・執行等に関する規定を整備することとするものです。  具体的には、召喚状、勾引状、勾留状及び鑑定留置状といった裁判所・裁判官の発する令状は、いずれも、書面によるほか、電磁的記録によっても発付することができるものとするとともに、紙の令状と同様の内容が表示されるように同様の事項を記録することとし、電磁的記録による令状は、電子計算機の映像面等に表示して被処分者に示して執行することができることとする、などしています。   「要綱(骨子)」の11ページの「第1−3」は、電磁的記録を提供させる強制処分を創設することとするものです。  13ページの「9」のとおり、これに伴い、現行法に規定されている記録命令付差押えを廃止することを含みます。  ここで創設することとしている強制処分は、11ページの「1(1)」及び12ページの「5(1)」のとおり、裁判所が自ら、あるいは、捜査機関が裁判官の発する令状により、裁判や捜査に必要な電磁的記録を保管する者などに対して、当該電磁的記録を提供するように命ずることができることとするものです。  現行法の記録命令付差押えは、必要な電磁的記録を入手する方法として、これを記録媒体に記録させて差し押さえるものですが、電磁的記録提供命令では、記録媒体などの有体物を介在させずに電磁的記録を入手することが可能となります。  この電磁的記録命令については、11ページの「2」から12ページの「7」までにおいて、差押えの処分と同様に、命令を拒絶できる場合に関する規律や、目録の交付、原状回復、不服申立てに関する規律など、所要の規律を設けることとしています。  また、「5(4)」において、捜査機関による電磁的記録提供命令については、必要があるときは、裁判官の許可を受けて、被処分者に対して、みだりに電磁的記録提供命令を受けたこと等を漏らしてはならない旨を命ずる秘密保持命令を発することができることとしております。  そして、「8」において、電磁的記録提供命令及び秘密保持命令については、その実効性を担保する観点から、命令の違反について罰則を設けることとしています。   このような強制処分を創設することについて、部会においては、個人のプライバシーに関するデータの包括的な収集・押収が行われることとなるのではないか、被疑者・被告人に対してデータの提供を命令し、罰則で強制することは、憲法第38条第1項が保障する自己負罪拒否特権を侵害することとなるのではないか、といった指摘がなされました。  これらの指摘に対しては、裁判官が発する令状には、「提供させるべき電磁的記録」が具体的に特定されて記載される、提供を命じることができるのは、その範囲に限定されるのであって、差押え等の既に存在する他の強制処分と同様に、包括的な情報の収集・押収は行われ得ない仕組みとなっており、懸念は当たらない、電磁的記録提供命令は、「供述」を強要するものではないから、憲法第38条第1項に抵触するものではない、といった御意見が述べられ、「要綱(骨子)」の「第1−3」の内容とされたものです。   「要綱(骨子)」の14ページの「第1−4」は、電磁的記録である証拠の開示等についての規定を整備することとするものです。  現行の刑事訴訟法の証拠開示に関する規定に関して、証拠書類又は証拠物の全部又は一部が電磁的記録であるときの閲覧・謄写の機会の付与の方法等を明確化する規律を設けるとともに、電磁的記録をもって作成された証拠の一覧表の提供等についての規定を整備することとしています。   「要綱(骨子)」の17ページの「第2−1」は、刑事施設等との間における映像と音声の送受信による勾留質問・弁解録取の手続を行うための規定を創設することとするものです。  「1」及び「2」において、その要件や、その場合に被告人・被疑者に告げるべき内容などを規定しています。   「要綱(骨子)」の18ページの「第2−2」は、映像と音声の送受信による裁判所の手続への出席・出頭を可能とする制度を創設することとするものです。  具体的には、18ページの「1」において、検察官、弁護人、裁判長ではない裁判官、被告人が、ビデオリンク方式で公判前整理手続期日等に出席・出頭することについて、「2」において、被告人、弁護人、被害者参加人等が、ビデオリンク方式で公判期日に出席・出頭することについて、19ページの「3」において、裁判員候補者や被告人が、ビデオリンク方式で裁判員等選任手続期日に出席・出頭することについて、それぞれ、手続の性質に即して、一定の要件の下で行うことができることとしています。   「要綱(骨子)」の21ページの「第2−3は」、証人尋問等を映像と音声の送受信により実施する制度を拡充することとするものです。  具体的には、21ページの「1」において、証人尋問をビデオリンク方式で実施することができる場合として、新たに、専門家である証人に鑑定に属する供述を求める場合や、証人が傷病等のために出頭困難である場合、刑事施設等に収容中の証人であって出頭困難な状況にある場合、検察官及び被告人に異議がなく裁判所が相当と認める場合などを加え、「2」及び22ページの「3」において、鑑定を命ずる手続や通訳について、裁判所が相当と認める場合にビデオリンク方式によることができることとする、などしています。   「要綱(骨子)」の「第2」のグループ、すなわち、映像と音声の送受信により手続を行うことに関しては、これらのほかに、被疑者・被告人と弁護人等との接見について、これをオンラインで行うことを被疑者・被告人の権利として位置付ける規定を設けるべきとの意見が述べられ、部会においては、この点についても議論を重ねました。  もっとも、この点については、仮にこれを被疑者・被告人の権利として位置付けると、身体を拘束されている被疑者・被告人はその実施を留置されている刑事施設側に求めることができることとなるが、全国に多数ある刑事施設の全てにおいて実現可能とすることは短期的には到底困難であり、それが整わないまま権利化すれば、大部分の刑事施設等において被疑者・被告人から求められても実施できず、被疑者・被告人から見れば法律上認められた権利を行使できないというような、法の趣旨に反する状態が長期にわたって続くこととなる、といった指摘がなされ、「要綱(骨子)」に記載されるには至りませんでした。   また、被害者がオンラインにより公判を傍聴できるようにすべきであるとの意見も述べられましたが、これに対しては、刑事手続にとどまらず民事訴訟などを含めた裁判制度全体に関わる問題であり、慎重な検討を要する、といった意見が述べられ、同様に、「要綱(骨子)」に記載されるには至りませんでした。   次に、「要綱(骨子)」の23ページの「第3−1」は、電磁的記録をもって作成される文書の信頼を害する行為を処罰するための罰則を創設することとするものです。  これは、文書や図画として表示されて行使されることとなる電磁的記録を、人に対して行使する目的で偽造する行為などを、文書偽造と同様に、その社会的信頼を害する行為として処罰することとするものであり、「1」から「7」までにおいて、現行の刑法第155条から第161条までに規定する文書偽造等の罪の各罪に対応する形で罰則を創設することとしています。   「要綱(骨子)」の25ページの「第3−2」は、電子計算機損壊等による公務執行妨害の罪を創設することとするものです。  具体的には、公務員が職務を執行するに当たり、その職務に使用する電子計算機やその用に供する電磁的記録を損壊したり、その電子計算機に虚偽の情報や不正の指令を与えるなどすることにより、その電子計算機に使用目的に沿った動作をさせない行為を現行刑法の暴行・脅迫による公務執行妨害の罪と同様に処罰することとしています。   「要綱(骨子)」の26ページの「第3−3」は、新たな犯罪収益の没収の裁判の執行及び没収保全等の手続を導入することとするものです。  具体的には、暗号資産など、その移転について登記等の制度がなく、債務者やこれに準ずるものが存在せず、物体性もない財産権について、その没収の裁判の執行及び没収保全等の手続を設けることとするものであり、26ページの「1」において、そうした財産権の没収の裁判の執行は、検察官が、当該財産権を検察官に移転する方法又は当該財産権の権利者であってこれを移転することができるものに命じて、当該財産権を検察官に移転させる方法により行うこととし、「2」において、そうした財産権の没収保全命令の執行は、同様の方法により行うこととする、などしています。  「3」では、これらの移転命令の実効性を担保するため、その違反行為について罰則を設けることとしております。   「要綱(骨子)」の28ページの「第3−4」は、通信傍受の対象犯罪を追加することとするものです。  具体的には、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律別表第2に掲げる通信傍受の対象犯罪に刑法第236条第2項、第246条第2項及び第249条第2項の罪を加えることとしております。   以上の「要綱(骨子)」について、一括して採決に付したところ、部会長である私を除く出席委員10名のうち、賛成9名、反対1名の賛成多数により、「要綱(骨子)」のとおりの法整備を行うべきであるとの結論に至りました。   以上のような審議に基づき、諮問第122号については、「要綱(骨子)」のように法整備を行うことが相当である旨の決定がなされたものです。   以上で、部会における審議の経過及び結果の御報告を終わります。 ○高田会長 御報告ありがとうございました。   それでは、ただいまの御報告及び「要綱(骨子)」の全般的な点につきまして、御質問及び御意見を賜りたいと思います。   今回も御質問と御意見を分けまして、まず御質問からいただきたいと存じます。御質問がございましたら、よろしくお願いいたします。   特にございませんでしょうか。では、御意見を賜りたいと存じます。 ○芳野委員 ありがとうございます。芳野でございます。近年の情報通信技術の進展と普及を踏まえれば、刑事手続においても情報通信技術を活用し、国民の負担軽減や手続の円滑化・迅速化を図る方向性に異論はありませんが、要望を2点申し上げたいと思います。   まず、国民の負担軽減や手続の迅速化の観点からしますと、「ビデオリンク方式による捜査・公判手続」に、弁護人がアクセスポイントからオンラインで被疑者・被告人と接見するオンライン接見が盛り込まれていないのは不十分であると考えます。これについては、関係機関が参加する「非対面による外部交通に関する意見交換」が行われていると承知しており、オンライン接見の実現に向けて前向きな検討をお願いしたいと思います。   次に、今回示された制度見直しが行われますと、捜査・公判段階における多くの書類などが電磁的に記録され、保管されることになります。電磁的記録の管理については、現在も厳格に運用されていると思いますが、一層の徹底をお願いしたいと思います。特に、漏えい防止については万全の対策を講じてほしいと思います。また、違法な処分により取得され電磁化された記録など、保管する必要のない記録については削除を義務付けるなど、プライバシー権の保護についても徹底をお願いいたします。 ○高田会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○富所委員 ありがとうございます。まずは、これまでの御議論に敬意を表したいと思います。どうもありがとうございました。刑事手続のIT化は時代の要請でもありますし、司法の利便性や効率性を高めるという点において不可欠な対応だと考えております。一方で運用上の課題もあると思いますので、その点について簡単に2点ほど申し上げたいと思います。   一つは、今、芳野委員からも話がありましたが、セキュリティについてです。近年、企業や病院、それから港湾などのシステムがサイバー攻撃を受けて機能停止するといった事態が相次いでいます。データを盗んで、金を払わなければ公表すると脅すような、ランサムウエアと呼ばれる身代金要求型のコンピューターウイルスも横行しています。言うまでもなく、刑事訴訟の記録はセンシティブ情報の塊です。これがサイバー攻撃によって流出したり、あるいは逮捕状が発付できなかったりといった事態が起きることは、司法の信頼に対する致命的な影響になりかねませんので、実用化に当たっては、デジタル庁とも協議の上、安全性を最優先にしたシステム構築をお願いしたいと思います。   それから、もう1点ですが、デジタル化の目的についてです。これは言わずもがなかもしれませんし、あくまで一般論ですけれども、よくDXを進めるうちに、目的が「あらゆる手続をデジタル対応にすること」になってしまうことがあります。大切なのは、利便性や効率性を高め、働き方の改革に資することだと思います。世の中では、紙一枚書けば済む話を、デジタル化したことによって、IDとパスワードを入れ、さらに本人確認をする作業などで余計に手間や時間が掛かってしまうというようなことも起きています。今後、IT化の範囲は恐らく更に広がっていくと思いますので、その場合に、どこまでデジタル化する必要があるのかという点を、本来の趣旨に立ち返って検討していただきたいと思っております。   以上、2点でした。 ○高田会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○石原委員 刑事手続のIT化を促進しようとすること自体には全く異論はございません。  ただ、ITは何より国民の権利を実現されるために活用すべきであって、IT化に伴って生じる刑事訴訟法の制定当初に想定されなかった人権侵害が生じることを防止する策を講じる必要があります。しかしながら、今般の「要綱(骨子)」は捜査の利便性ばかりが優先され、人権保障に欠けるものと言わざるを得ず、反対せざるを得ないものと思っております。今回、オンライン接見、電磁的記録提供命令及び部会の在り方の3点について意見を述べさせていただきます。   まず、オンライン接見についてですが、オンライン接見については高いニーズがあるにもかかわらず、「要綱(骨子)」に反映されなかったことは大変遺憾です。オンライン接見は、逮捕された国民が速やかに弁護士から助言を受けることや、公判に向けて弁護人と十分な打合せをすることを可能にするものであり、弁護人の援助を受ける権利の実現に資するものです。国民の権利を十全に保障するためには、秘密の担保されたオンライン接見制度を法律に明記する必要があります。他方で、なりすましや第三者の同席、端末破壊といった懸念についてはありますが、2007年から試行的に運用されている電話等による外部交通でも問題は生じていません。本来であれば法律事務所からのオンライン接見ができることが望ましいのですが、今回、日弁連が求めているのは、警察署や検察庁からのアクセスを前提としたオンライン接見であり、現在行われている外部交通と変わるものではなく、また、数年掛けて段階的にオンライン接見の設備、環境を整備していくことで、予算がその障害になることを回避することもできます。今回、「要綱(骨子)」がオンライン接見の制度を含まなかったことについては、正当な理由はないと言わざるを得ません。   次に、電磁的記録提供命令について述べます。近時、犯罪捜査における電磁的記録の重要性が増し、捜査の必要性がある局面が増加しているとの指摘については異論がありません。しかしながら、この「要綱(骨子)」も人権保障に欠けるものであり、少なくとも相当程度の修正がなされなければ、個人はもちろん政党、組合、報道機関等、広く国民のプライバシーや企業の営業秘密等が侵害されるおそれが多分にあります。電磁的記録提供命令は、刑事罰による電磁的記録の提供を強制する点でこれまでの捜査手法とは全く異なります。憲法が保障する自己負罪拒否特権の問題を生じるだけでなく、捜査機関が収集し集積する国民に関する情報の量が飛躍的に増大します。そして、蓄積された国民の情報がデータベース化されれば、容易に他の目的に利用され得ることになります。   「要綱(骨子)」では、国民は自分の情報が収集されたことを知らされることもなく、犯罪と関連性のない情報の削除を求める制度もありません。国民の権利を保護するためには、「要綱(骨子)」は修正される必要があります。具体的には、第1に、特定の犯罪事実と関連性のない個人情報を収集しないように特に留意をしなければならない旨を明記すること、第2に、他人から預かった電磁的記録の提供を受けたときは、委託者に通知しなければならないものとするとともに、秘密保持命令の期間を限定すること、第3に、違法に収集された情報や事件と関連性のない個人情報を含む電磁的記録が消去される仕組みを考えること、第4に、電磁的記録提供命令の執行の際、処分を受ける者に対して、自己の意思に反して供述を命ずるものでないことを教示しなければならないこと、及び自己に不利益な供述を内容とする電磁的記録の提供を拒む行為は罰しない旨を明記すること、第5に、捜査機関による個人情報の取扱いが適正に行われていることを確保するために、独立した監督機関を設置すること等が必要であります。   最後になりますが、部会の在り方について申し上げます。第195回の会議において、本諮問に際し、当時の大迫委員から、情報通信技術の活用が捜査及び公判における実務に及ぼす影響を分析し、かつ、その影響が特に被疑者・被告人の権利利益にとって不利益な活用とならないことを検証するために、被疑者・被告人の立場や視点を理解する者からの意見が十分反映できるような委員構成とすることや、会議の運用においても参考人の意見聴取等の手続を活用して現場の意見を広く聴取するなどの配慮が必要との指摘があり、会長からも、大変貴重な御意見、御示唆を頂いたと思いますとの発言がありました。   しかしながら、部会における審議にも「要綱(骨子)」にも、この指摘は全く反映されておりません。この部会は、プライバシーの権利など国民の人権に関わる重大な議論が行われる場であったにもかかわらず、一般有識者が構成員に入っていませんでした。そして、最も影響を受けるのは被疑者・被告人の立場に置かれる国民であるにもかかわらず、その立場や視点を理解し意見を述べる委員は実質1名であり、一人で全ての議題に意見を述べて対応しなければならなかった議論経過を見ますと、部会構成自体が捜査の利便性を高める方向での議論を後押しする要因になっていたことは明らかと言わざるを得ません。今後の刑事法の改正等に関して諮問を受け、部会を設置する場合には、この反省をいかしてバランスのとれた委員、幹事の選任がなされる必要があるものと考えます。   以上、私の意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。 ○高田会長 ありがとうございます。   ほかに御意見はございますでしょうか。 ○松下幹事 今、部会の運営や幹事の選定等について御意見がありましたので、そのことに関して、私自身も部会における調査審議に一委員として関与した立場から、一言申し上げたいと思います。   法制審議会令の規定によりまして、部会の委員、臨時委員、幹事を含む法制審議会の委員と幹事は、学識経験のある者のうちから法務大臣が任命するものとされておりまして、部会に属すべき委員、幹事は、法制審議会の承認を得て会長が指名するものとされています。  今回の刑事法部会の委員、幹事につきましても、このような法令の規定に基づき、また、諮問の趣旨と内容に照らして、必要な学識経験を有する研究者の方々に加えて、刑事司法制度等に関する専門的知識及び経験を有する裁判官、検察官、弁護士等の法律実務家が任命、指名されたものと承知をしております。  また、実際の部会におきましては、私も酒巻部会長の議事運営の下でその調査審議に加わっておりましたけれども、先ほど述べたような観点から選定された各委員、幹事が、それぞれの専門的知識や御経験、知見に基づきまして自由闊達に御意見を述べられ、十分な議論が尽くされたものと承知しております。 ○高田会長 ほかにいかがでしょうか。   もしよろしければ、原案につきまして採決に移りたいと存じますが、御異議はございますでしょうか。   特に御異議もないようでございますので、そのように取り計らわせていただきます。   諮問第122号につきまして、刑事法(情報通信技術関係)部会から報告されました要綱案のとおり答申することに賛成の方は、挙手をお願いいたします。   それでは、事務局において票読みをお願いします。   手を下ろしていただいて結構です。   続きまして、反対の方は挙手をお願いいたします。   手を下ろしていただいて結構でございます。   それでは、事務局において採決の結果をお願いいたします。 ○加藤司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は14名でございますところ、原案に賛成の委員は12名、反対の委員は1名でございました。 ○高田会長 ありがとうございます。   採決の結果、賛成者多数でございましたので、刑事法(情報通信技術関係)部会から報告されました「要綱(骨子)」は、原案のとおり議決されたものと認めます。   議決されました「要綱(骨子)」につきましては、会議終了後、法務大臣に対して答申することといたします。   酒巻部会長におかれましては、多岐にわたる論点につきまして調査審議をしていただきました。ありがとうございました。   では、続きまして、区分所有法制の見直しに関する諮問第124号について、御審議をお願いしたいと存じます。   初めに、区分所有法制部会における審議の経過及び結果につきまして、同部会の部会長を務められました佐久間毅臨時委員から御報告いただきたいと存じます。   それでは、佐久間部会長、報告者席まで御移動をお願いいたします。   それでは、お願いいたします。 ○佐久間部会長 区分所有法制部会の部会長を務めました佐久間でございます。よろしくお願いいたします。   区分所有法制部会では、諮問第124号について約1年3か月間にわたり調査審議を重ね、先月16日に区分所有法制の見直しに関する要綱案を決定いたしました。本日はその報告をさせていただきます。   諮問第124号は、「老朽化した区分所有建物の増加等の近年の社会情勢に鑑み、区分所有建物の管理の円滑化及び建替えの実施を始めとする区分所有建物の再生の円滑化を図るとともに、今後想定される大規模な災害に備え、大規模な災害により重大な被害を受けた区分所有建物の再生の円滑化を図る等の観点から、区分所有法制の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」というものでした。   区分所有法制部会では、令和4年10月に調査審議を開始し、昨年6月には区分所有法制の改正に関する中間試案を取りまとめており、その内容は昨年9月にこの会議でも報告させていただいたところです。中間試案につきましては、昨年7月から9月までの2か月間パブリック・コメントの手続に付され、計131件の御意見が寄せられました。区分所有法制部会では、それらの御意見等を踏まえまして更に調査審議を重ね、先月16日に、全会一致で要綱案を決定するに至りました。   次に、要綱案の内容を御説明いたします。基本的には項目番号の順番に御説明しますが、時間の制約上、重要な改正項目を中心に適宜ポイントを絞って御説明いたします。   まず、お手元の要綱案の目次をおめくりいただきまして、要綱案1ページの「第1 区分所有建物の管理の円滑化を図る方策」の「1 集会の決議の円滑化」についてです。近年、高経年の区分所有建物の増加及び区分所有者の高齢化を背景に、相続を契機として区分所有建物の所有者不明化や区分所有者の非居住化が進行しており、それに伴い集会において決議を円滑に行うことが困難となる事態も生じてきています。そこで、集会の決議を円滑化するため、全ての決議を対象として、裁判所の関与の下、所在等不明の区分所有者を決議の母数から除外する制度を創設するとともに、区分所有権の処分を伴う決議以外の決議を対象として、出席者の多数決による決議を可能とする仕組みを創設することとしています。あわせて、出席者多数決の仕組みの対象となる決議のうち普通決議以外の決議については、集会の定足数を設けることとしています。   続いて、2ページの「2 区分所有建物の管理に特化した財産管理制度」では、専有部分の区分所有者が不明な場合や、専有部分又は共用部分の管理が適切にされていない場合に、裁判所の選任する管理人に管理を行わせる新たな財産管理制度として、所有者不明専有部分管理制度、管理不全専有部分管理制度及び管理不全共用部分管理制度を創設することとしています。   また、7ページに飛びまして、「3 共用部分の変更決議及び復旧決議の多数決要件の緩和」では、共用部分の変更決議について、他人の権利を侵害するおそれのある瑕疵を除去する場合やバリアフリー化の必要がある場合に、その多数決要件を現行法の4分の3以上から3分の2以上に引き下げるとともに、復旧決議の多数決要件についても現行法の4分の3以上を3分の2以上に引き下げることとしています。   同じページの「4 管理に関する区分所有者の義務(区分所有者の責務)」では、区分所有者は区分所有者の団体の構成員として、区分所有建物並びにその敷地及び附属施設の管理が適正かつ円滑に行われるよう相互に協力しなければならないとする責務規定を設けることとしています。   8ページの「5 専有部分の保存・管理の円滑化」では、配管の全面更新など専有部分の使用等を伴う共用部分の管理を集会の決議により行うことができるようにする仕組みや、一定の場合に管理組合法人が特定の専有部分や敷地に隣接する土地等を取得することができる仕組み、区分所有者が国外にいる場合における国内管理人の仕組みなどを整備することとしています。   続いて、9ページの「6 共用部分等に係る請求権の行使の円滑化」についてです。現行法上、管理者は、区分所有建物の共用部分等について生じた損害賠償請求権等の行使につき、区分所有者を代理し、また、区分所有者のために訴訟を追行することができます。しかし、損害賠償請求権等が発生した後に区分所有権が譲渡された場合には、裁判実務上、管理者は区分所有者でなくなった者を代理することができないとされ、しかも、管理者が区分所有者全員を代理することができる場合でない限り、管理者による損害賠償等の訴え自体が不適法となるとされています。このため、事後的に区分所有権の譲渡があった場合には、管理者による円滑な損害賠償請求権等の行使に支障を来しているとの指摘がされています。そこで、損害賠償請求権等を有する者が区分所有権の譲渡により区分所有者でなくなった場合であっても、その者が書面等で別段の意思表示をしていない限り、その者を含めて損害賠償請求権等を有する者全てを管理者が代理して、その請求権を行使することができるものとしています。また、損害賠償請求権等を有する者全てを代理することができない場合であっても、管理者が訴訟担当者として訴訟を追行することができることを明確化することとしています。   10ページの「7 管理に関する事務の合理化(規約の閲覧方法のデジタル化)」では、利害関係人から規約の閲覧請求があった場合に、閲覧に代えて電子メール等で規約を提供することを可能とする規定を整備することとしています。   第1の最後は、10ページの「8 区分所有建物が全部滅失した場合における敷地等の管理の円滑化」です。現行の被災区分所有法では、区分所有建物が大規模災害により全部滅失するなどした場合に、敷地共有者等集会を開くことができると定めていますが、これを大規模災害以外の場面にも一般化し、区分所有建物が全部滅失した場合には、滅失の原因を問わず、敷地共有者等集会を開いて多数決による意思決定を可能にすることとしています。   次に、要綱案11ページの「第2 区分所有建物の再生の円滑化を図る方策」です。まず、「1 建替え決議の多数決要件の緩和」では、現行法上、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成が必要とされている建替え決議について、一定の場合にその多数決要件を緩和することとしています。具体的には、耐震性の不足、火災に対する安全性の不足、外壁等の?離により周辺に危害を生ずるおそれ、給排水管等の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ、バリアフリー基準への不適合のいずれかの事由が認められる場合に、多数決要件を4分の3以上に引き下げることとしています。また、専有部分に賃借権が設定されている場合、建替え決議がされても賃借人の同意がない限り賃貸借は終了しないため、建替え工事の円滑な実施が阻害されているとの指摘がされています。そこで、建替え決議がされた場合に、補償金を支払うことで賃貸借を終了させることができる仕組み等を整備することとしています。   次に、12ページの「2 多数決による区分所有建物の再生、区分所有関係の解消」についてです。現行法上、区分所有建物の再生を図る制度として建替え決議がありますが、これ以外の再生手法についても社会的ニーズが高まっていることから、現在は区分所有者全員の同意が必要である建物と敷地の一括売却、建物を取り壊した上での敷地売却、建物の取壊しを建替え決議と同等の多数決要件ですることができることとするほか、建物の更新という名称で、いわゆる一棟リノベーション工事も同様の要件ですることができることとしています。また、区分所有建物が全部滅失した場合には、滅失の原因を問わず、敷地共有者等集会において再建決議や敷地売却決議をすることができることとしています。   次に、要綱案15ページに移りまして、「第3 団地の管理・再生の円滑化を図る方策」です。まず、「1 団地内建物の建替えの円滑化」についてです。団地内建物の一括建替え決議をするには、現行法上、全体要件として団地全体の5分の4以上の賛成が、各棟要件として各棟ごとに3分の2以上の賛成が必要とされています。これらの要件を緩和し、全体要件については、団地内の全ての建物に先ほど述べました建替え決議の要件を緩和する事由が認められる場合には、4分の3以上に引き下げることとし、各棟要件については、その枠組み自体を改め、各棟ごとに3分の1を超える反対がない限り一括建替え決議をすることができることとしています。また、団地内の特定の建物を建て替える際に必要となる建替え承認決議についても、建替えの対象となる建物に建替え決議の要件を緩和する事由が認められる場合には、多数決要件を現行法の4分の3以上から3分の2以上に引き下げることとしています。   次に、16ページの「2 団地内建物・敷地の一括売却」では、団地内建物の一括建替え決議と同等の多数決要件で、団地内建物の全部及びその敷地利用権を一括して売却することができることとしています。   同じページの「3 団地内建物の全部又は一部が全部滅失した場合における団地の管理の円滑化」では、単棟の区分所有建物が全部滅失した場合に敷地共有者等集会を開くことができるのと同じように、団地内建物のうち1棟以上が全部滅失した場合、従前どおり団地全体での集会を開き、再建承認決議や建替え承認決議、一括敷地売却決議など各種決議をすることができることとしています。   最後に、要綱案18ページ、「第4 被災区分所有建物の再生の円滑化を図る方策」です。大規模な災害が発生し、区分所有建物が大きな被害を受けた場合には、区分所有建物の内外の住民等に危害を及ぼすおそれがあり、その復旧・復興を迅速に図る必要性が高いにもかかわらず、被災した区分所有者がその区分所有建物を離れて生活するようになるなどして、迅速な合意形成が難しくなることも予想されます。そこで、「1 被災した区分所有建物の再建等に関する多数決要件の緩和」では、円滑な復興を促す観点から、政令で定める災害により大規模一部滅失するなどした区分所有建物について、建替え決議を始めとする各種の多数決要件を現行法の5分の4以上から3分の2以上に引き下げることとしています。   また、19ページの「2 被災した団地内建物の再建等に関する多数決要件の緩和」では、団地内建物が被災した場合にも各種決議の多数決要件を引き下げることとし、あわせて、21ページの「3 団地内の区分所有建物の全部又は一部が大規模一部滅失をした場合の通知の特則」として、集会の招集通知を団地内の見やすい場所に掲示してすることができるなどの規定を設けることとしています。   最後に、「4 大規模一部滅失時等の決議可能期間の延長」では、被災地における要件が緩和されたこれらの決議をすることができる期間を災害指定政令の施行日から3年間とし、場合によっては更に3年間延長することができることとしています。   区分所有法制の見直しに関する要綱案の概要は以上のとおりでございます。よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。 ○高田会長 御報告ありがとうございました。   それでは、ただいまの御報告及び要綱案の全般につきまして、御質問及び御意見を承りたいと存じます。   御質問と御意見を分けまして、まず、御質問がございましたらお願いいたします。   もしないようでしたら、続いて御意見を承りたいと存じます。 ○芳野委員 ありがとうございます。芳野でございます。この度まとめられました要綱案は、マンションをめぐる課題を踏まえて、少数反対者の立場や合意形成などにも配慮した現実的な内容になっていると受け止めております。高齢者など、いわゆる住宅弱者である所有者への支援や情報提供、公営住宅などの増設といった環境整備についても、併せて政府全体で対応をしていただきたいと思います。 ○高田会長 ありがとうございます。   ほかに御意見はございませんでしょうか。   ございませんようでしたら、引き続き、原案につき採決に移りたいと存じますが、御異議はございますでしょうか。   特に御異議もないようでございますので、そのように取り計らわせていただきます。   諮問第124号につきまして、区分所有法制部会から報告されました要綱案のとおり答申することに賛成の方は挙手をお願いいたします。   手を下ろしていただいて結構でございます。   反対の方、挙手をお願いいたします。   それでは、事務局において採決の結果をお願いいたします。   ○加藤司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は15名でございますところ、全ての委員が御賛成ということでございました。 ○高田会長 ありがとうございます。   採決の結果、全員賛成でございましたので、区分所有法制部会から報告されました要綱案は、原案のとおり議決されたものと認めます。   議決されました要綱案につきましては、会議終了後、法務大臣に対して答申することといたします。   佐久間部会長におかれましては、多岐にわたる論点につきまして調査審議していただき、誠にありがとうございました。   では、次に、遺言の見直しに関する諮問第125号について、御審議をお願いしたいと存じます。   初めに、事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ○齊藤参事官 民事局参事官の齊藤でございます。諮問事項を朗読させていただきます。   諮問第125号。情報通信技術の進展及び普及等の社会情勢に鑑み、遺言制度を国民にとってより一層利用しやすいものとする観点から、遺言者が電子的な手段を用いて作成することのできる新たな遺言の方式に関する規律を整備することを中心として、遺言制度の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。 ○高田会長 ありがとうございます。   続きまして、この諮問の内容、諮問に至る経緯及びその理由につきまして、事務当局から説明をお願いいたします。 ○竹内幹事 民事局長の竹内でございます。諮問第125号につきまして、お手元にお配りいたしました資料番号民3「遺言制度の見直しについて」という資料に沿って御説明を申し上げます。   自筆証書遺言につきましては、資料の冒頭に記載しておりますとおり、遺言者の真意に基づくものであることを確保するため、遺言者自身が、財産目録を除く遺言書の全文、日付及び氏名を自書、すなわち手書きし、押印しなければならないものとされています。もっとも近年、デジタル技術の急速な進展及び普及により、デジタル技術は日常生活において欠かせない手段となってきている一方、一般に日常生活において手書きにより文書を作成する機会は少なくなっているとも考えられます。この点に関連して、資料中ほどの左側に記載しておりますとおり、令和4年6月に閣議決定されました規制改革実施計画においては、国民がデジタル技術を活用して遺言を簡便に作成できるような新たな方式を設けることなどについて必要な検討を行うものとされております。   そこで、資料中ほどの右側に記載しておりますとおり、法務省として検討を進めてきたところでございますが、この間、自筆証書遺言と並んで広く用いられている公正証書遺言につきましては、令和5年の公証人法の改正により、その作成に係る手続のデジタル化が実現しております。このような社会情勢に鑑みますと、現行の自筆証書遺言の方式に加え、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式に関する規律を整備することを中心として、遺言制度の見直しを行う必要があると考えられます。   その検討に際しましては、資料下方に記載しておりますとおり、新たな方式の遺言において、遺言者の真意に基づくものであることをどのように担保するかという点などが課題になってくるものと考えられるところです。   そこで、遺言制度を国民にとってより一層利用しやすいものとする観点から、遺言制度の見直しを行うことについて、法制審議会の御意見を頂きたく存じます。   諮問第125号についての御説明は、以上のとおりでございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○高田会長 ありがとうございました。   それでは、ただいま説明のございました諮問第125号につきまして、まず、御質問がございましたら承りたいと存じます。   では、続いて、御意見がございましたら承りたいと存じます。   特にございませんか。   ないようでしたら、続きまして、成年後見制度の見直しに関する諮問第126号についての御審議をお願いしたいと存じます。   初めに、事務当局に質問事項の朗読をお願いいたします。 ○波多野参事官 民事局参事官の波多野でございます。諮問事項を朗読させていただきます。   諮問第126号。高齢化の進展など、成年後見制度をめぐる諸事情に鑑み、成年後見制度を利用する本人の尊厳にふさわしい生活の継続やその権利利益の擁護等をより一層図る観点から、成年後見制度の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。 ○高田会長 続きまして、この諮問の内容、諮問に至る経緯及びその理由につきまして、事務当局から説明をお願いいたします。 ○竹内幹事 民事局長の竹内でございます。諮問第126号につきまして、お手元にお配りを致しました資料番号民4「成年後見制度の見直しに向けた検討」という資料に沿って御説明を申し上げます。   資料1枚目、あるいは両面コピーでしたら表を御覧いただければと思います。まず、成年後見制度について御説明を致します。成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度に分けられるところ、法定後見制度は、本人の判断能力が不十分となった後に、本人の判断能力に応じて家庭裁判所により選任された成年後見人等が本人を保護、支援する制度でして、その判断能力に応じて後見、保佐及び補助の類型に分けられております。また、任意後見制度は、本人が十分な判断能力を有するときに、任意後見人となる者や委任する事務の内容を契約で定めておき、本人の判断能力が不十分となった後に、任意後見人が家庭裁判所により選任された任意後見監督人の監督を受けつつ事務を行う制度です。   成年後見制度は認知症、知的障害、精神障害等の理由で判断能力が不十分な者の保護、支援を目的とする制度ですが、資料中段のとおり、今後、高齢化の進展や単独世帯の高齢者の増加等に伴い、成年後見制度に対するニーズが増加し、また、そのニーズが多様化することが見込まれるところです。このような成年後見制度を取り巻く状況を踏まえ、成年後見制度を更に利用しやすいものとすることが必要であると考えられます。   そして、現行の制度に対しては、その課題として幾つかの指摘がされているところですが、その主なものとして資料中段に4点、記載をしております。まず1点目として、法定後見制度の利用を開始すると、基本的には本人の判断能力が回復しない限り制度の利用が継続するため、本人が制度を利用する動機となった法律行為、例えば遺産分割等が終了しても、制度の利用をやめることができないとの指摘、2点目として、成年後見人には包括的な取消権、代理権が付与されますが、成年後見人によるその権限の行使の仕方によっては本人の自己決定が必要以上に制限される場合があるとの指摘、3点目として、法定後見制度を利用する本人の状況が変化し、例えば、本人のニーズの重点が財産管理から身上保護に移行した場合であっても、成年後見人等の辞任や解任がされず、その交代が実現しないことにより、本人がそのニーズに合った保護を受けることができないとの指摘、そして4点目として、任意後見制度については、任意後見契約の本人の判断能力が低下した後も、適切な時期に任意後見監督人の選任申立てがされないといった指摘でございます。このような指摘は、現行の成年後見制度の利用しづらさの一因であるとも考えられます。   また、成年後見制度に関する国内外の動向としても、資料下段のとおり、令和4年3月に閣議決定された第二期成年後見制度利用促進基本計画では、令和8年度までを対象期間として、成年後見制度の見直しに向けた検討を行うとされており、また、令和4年10月に公表された障害者権利委員会の総括所見においても、民法改正に関する勧告がされています。このような成年後見制度を取り巻く状況や、制度に対する御指摘からしますと、国内外の動向も踏まえつつ、成年後見制度の見直しに向けた検討を行う必要があると考えられます。   続いて、資料2枚目、両面コピーですと裏を御覧いただければと思います。成年後見制度の見直しに関する検討テーマとしましては、先ほど御説明した制度に対する指摘に関するテーマのほかに、資料下段に記載しておりますその他のテーマとして、法定後見制度における類型の見直しや成年後見人等の報酬の在り方等があり、その検討テーマは多岐にわたるものと考えられます。   このように、高齢化の進展など成年後見制度をめぐる諸事情に鑑み、成年後見制度を利用する本人の尊厳にふさわしい生活の継続や、その権利利益の擁護等を一層図る観点から、成年後見制度の見直しを行う必要があると考えられますことから、この見直しについて法制審議会の御審議を求めるものでございます。   諮問第126号についての御説明は、以上のとおりでございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○高田会長 ありがとうございました。   それでは、ただいま説明のありました諮問第126号につきまして、まず、御質問がございましたら承りたいと存じます。   特にないようでございましたら、続いて、御意見を承りたいと存じます。   特に御意見はございませんでしょうか。   ないようでございますので、ここで、諮問第125号及び126号の審議の進め方について、御意見があれば承りたいと存じます。 ○洲崎委員 洲崎でございます。諮問第125号及び第126号のいずれにつきましても、専門的、技術的な事項が相当含まれているものと拝察いたしました。このような場合の通例に倣って、新たに部会を設置して調査審議し、その結果の報告を受けて、更に総会で審議するということにしてはいかがかと存じます。 ○高田会長 ただいま洲崎委員から部会設置等の御提案がございましたが、これにつきまして御意見はございませんでしょうか。   特に御異議もないようでございますので、諮問第125号及び126号につきましては、新たに部会を設置して、調査審議をすることといたします。   次に、新たに設置する部会に属すべき総会委員、臨時委員及び幹事に関してですが、これらにつきましては会長に御一任いただきたいと存じますが、御異議ございませんでしょうか。   それでは、この点は会長に御一任願うことといたします。   次に、部会の名称でございますが、諮問事項との関連から、諮問第125号につきましては、民法(遺言関係)部会、諮問第126号につきましては、民法(成年後見等関係)部会という名称にいたしたいと存じますが、いかがでございましょうか。   特に御異議もないようでございますので、そのように取り計らわせていただきます。   ほかに、この部会における審議の進め方も含め、御意見等はございませんでしょうか。   それでは、諮問第125号につきましては、民法(遺言関係)部会、諮問第126号につきましては、民法(成年後見等関係)部会で御審議いただくこととし、部会の御審議に基づいて、総会において更に御審議いただくことにいたしたいと存じます。   これで本日の予定は終了となりますが、この機会に何か御発言があれば、承りたいと存じます。   特に御発言もないようでございますので、本日はこれにて終了といたしたいと存じます。   本日の会議における議事録の公開方法についてお諮りします。審議の内容等に鑑みて、会長の私といたしましては、議事録の発言者名を全て明らかにして公開することにいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。   それでは、本日の会議における議事録につきましては、議事録の発言者名を全て明らかにして公開することといたします。   なお、本日の会議の内容につきましては、後日、御発言を頂いた委員等の皆様に議事録案をメール等にて送付させていただき、御発言内容を確認していただいた上で法務省のウェブサイトで公開いたしたいと存じます。   最後に、事務局から何か事務連絡がございましたら、お願いいたします。 ○加藤司法法制課長 事務局から、次回の会議の開催予定について御案内申し上げます。   法制審議会は、2月と9月に開催することが通例となっております。そこで、次回の開催につきましても、現在のところは本年9月に御審議をお願いする予定でございますが、具体的な日程につきましては後日改めて御相談させていただきたいと存じます。委員、幹事の皆様方におかれましては、御多忙とは存じますが、今後の御予定につき御配意いただきますよう、よろしくお願いいたします。 ○高田会長 ありがとうございました。   それでは、これで本日の会議を終了いたします。   本日はお忙しいところをお集まりいただき、長時間にわたり御熱心に御議論いただき、誠にありがとうございました。 −了−