改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会 (第11回) 第1 日 時  令和6年3月15日(金)      自 午前 9時59分                           至 午前11時55分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  再審請求審における証拠の開示等         起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置         証人等の刑事手続外における保護に係る措置         協議の進め方等 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○中野参事官 ただ今から、「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」の第11回会議を開催します。   本日は、皆様御多用中のところ、御出席くださり誠にありがとうございます。   事務当局から、本日の配布資料について、確認をさせていただきます。   まず、事務当局において作成したものとして、配布資料40をお配りしています。こちらは、再審請求審における証拠の開示等に関する資料です。   次に、河津構成員御提出の「検察官抗告の状況」と題する資料2点は、いずれも、「再審請求審における証拠の開示等」に関する資料です。   各配布資料の内容については、後ほど御説明します。   それでは、議事に入ります。   議事については、まず、「再審請求審における証拠の開示等」について、前回及び前々回会議の配布資料に加え、本日の配布資料40及び河津構成員御提出の資料に基づく協議を行い、次に、「起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置」について、前々回会議の配布資料38に基づく協議を行い、引き続いて、「証人等の刑事手続外における保護に係る措置」について、前々回会議において松田構成員から御提出いただいた資料に基づく協議を行うこととしたいと思います。   それらの協議に当たっては、それぞれ、配布資料の説明を行った上で、その内容についての質疑応答・意見交換を行うこととしたいと思います。   次に、前回会議で構成員から「取調べの録音・録画制度」に関わるものとして御要望のあった事項について、事務当局から御説明し、これに関する協議を行うこととしたいと思います。   そして、その上で、第2段階の協議、すなわち、第1段階の協議を踏まえ、それぞれの制度における検討課題についての意見交換へと進んでいくこととしたいと思います。   そのような進め方とさせていただくことでよろしいでしょうか。             (一同異議なし)   それでは、「再審請求審における証拠の開示等」について協議を行います。まず、事務当局から、配布資料40の内容について御説明します。   配布資料40は、有罪判決を受けた本人等の再審請求に基づく再審開始決定に対する検察官の不服申立ての状況等を、法務省刑事局において保管中の行政文書に基づきまとめたものです。   資料の一番左側の欄に、有罪確定判決における罪となるべき事実の罪名のうち、再審請求に係る罪名を記載しており、そこから右側の欄に、各事案ごとに、請求審については請求日と決定日・主文を、即時抗告審・特別抗告審については申立日と申立人・決定日と主文を、それぞれ記載しています。その上で、見やすいように、再審開始決定がされた審級の主文の欄を青色、検察官の申立てによる即時抗告審・特別抗告審の申立ての欄を黄色としています。   例えば、「2」の国税徴収法違反の事件について見ると、請求審において再審請求が棄却されたのに対し、本人等から即時抗告がされた結果、即時抗告審において再審開始決定がされました。さらに、この再審開始決定に対して検察官から特別抗告がされた結果、特別抗告審において現決定が取り消されて、即時抗告が棄却され、再審不開始が確定しています。   また、「3」の殺人事件について見ると、請求審において再審開始決定がされたのに対し、検察官から即時抗告がされたものの、棄却されました。さらに、この棄却決定に対して検察官から特別抗告がされたものの、棄却された結果、再審開始が確定しています。   なお、「9」の強盗殺人の事件については、特別抗告審での審理が継続している状況です。   有罪判決を受けた本人等の再審請求に基づき、再審開始決定がされた9件のうち、検察官が即時抗告又は特別抗告をしたものは、8番の事件を除く8件であり、そのうち最終的に再審開始が確定したものは、3件となっています。   配布資料40の御説明は以上です。   それでは、引き続き、河津構成員から御提出いただいた資料について、御説明いただきたいと思います。 ○河津構成員 おはようございます。   配布資料40に関連して、日弁連が作成した検察官抗告の状況に関する資料を配布いただきました。配布資料40は、法務省刑事局において保管中の行政文書に基づき作成したものとのことで、合計9件、5番と6番は実質的に同一の事件ですから、実質的には合計5件の事例が記載されていますが、公刊されている判例集等には、より多くの事例が掲載されています。   お配りいただいた日弁連作成の資料は、日弁連が再審請求を支援した事件のうち、1979年以降に再審開始決定があった全件についてのものです。これによると、19件の再審開始決定に対し、検察官は17件で不服申立てをし、それが認められたのは4件、検察官の不服申立てが退けられ、再審開始が確定したのは12件ということが分かります。   資料についての御説明は以上です。 ○中野参事官 それでは、これまでの説明について、御質問・御意見はありますでしょうか。   ○成瀬構成員 前回の協議会における私の要望を踏まえて、事務当局は配布資料40を作成してくださり、河津構成員も日弁連の支援事件に関する資料を提供してくださり、ありがとうございました。   いずれの資料からも、再審開始決定に対する検察官の不服申立てが、上級審において受け入れられた事例と受け入れられなかった事例があり、また、再審開始決定に対して検察官が不服申立てをしなかった事例も現に存在するということが分かります。   ただ、先ほどの御説明によりますと、配布資料40は、法務省刑事局において現時点で行政文書として保管されている事件を、時系列で遡って機械的に列挙したものであるのに対し、河津構成員の御提出資料は、日弁連が支援した再審請求事件における検察官抗告の状況を記載したものとのことでした。そうすると、河津構成員の御提出資料では、日本弁護士連合会が当該再審請求事件を支援するかどうかを決定する過程を通じて、一定の事件選別がされていることになります。この点は、河津構成員の御提出資料のうち、検察官が不服申立てをした事件の割合やその結果の割合を示す棒グラフを評価する際に、留意すべき点であると考えます。 ○河津構成員 先ほども御説明しましたように、本日配布いただいた資料は、日弁連が再審請求を支援した事件のうち、1979年以降に再審開始決定があった全件についてのものです。日弁連が再審請求を支援するに当たって一定の審査をするのは事実ですが、殊更に検察官が抗告をするであろう事件を選別して支援することはあり得ませんので、これは全体の傾向を表していると言って差し支えないと理解をしております。 ○宮崎構成員 事務当局から配られた配布資料40を見ますと、平成26年3月から平成30年7月までの間に、いずれかの審級で本人等の再審請求に基づく再審開始決定があった9件のうち、検察官が不服申立てをしなかったのは1件のみとなっております。もっとも、これは、事務当局からも説明があったように、本資料が保管中の行政文書で確認できる範囲で作成されたものであるためでありまして、網羅的ではないものの、公刊物等で確認できる範囲によれば、この資料に記載されているもの以外にも、本人等の再審請求に基づく再審開始決定に対し、検察官が不服申立てをしなかった事案はあると認識しています。   私自身が公刊物等で確認したところでは、例えば、平成21年6月23日に東京高裁で再審開始決定があった殺人等事案について、検察官が特別抗告をしなかったもの、平成24年6月7日に東京高裁で再審開始決定があった強盗殺人事案について、検察官が特別抗告をしなかったもの、平成28年3月3日に札幌地裁で再審開始決定があった銃刀法違反事案について、検察官が特別抗告をしなかったもの、平成27年2月27日に大阪地裁で再審開始決定があった強姦等事案について、検察官が即時抗告をしなかったものなどを承知しております。いずれも再審公判で無罪判決となっております。   いずれにしましても、以前の会議でも申し上げたかと思いますが、検察当局においては、個別具体的な事情に応じ、法令やその趣旨に従って適切に対応しているものであり、いたずらに不服申立てを行っているのではないということを御理解いただきたいと思っております。 ○河津構成員 宮崎構成員が御紹介くださった検察官が不服申立てをしなかった事案のうち、平成27年の大阪地裁の事案は、いわゆる「被害者」が通常審の手続で虚偽の証言をしたことを認めた事案であったのではないかと思います。そうした事案において、検察官が不服申立てを控えることがあるのは承知しておりますが、そうした事案以外で検察官の不服申立てが適正に行われているかどうかについては、評価が分かれるのではないかと思います。   そして、検察官の不服申立てがどのような結果をもたらしているかということについて、配布資料40に基づいて申し上げると、検察官が不服申立てをしたことにより、再審開始が確定するまでに、1番の事件では再審請求から15年、再審開始決定から9年、3番の事件では再審請求から7年、再審開始決定から2年、7番の事件では再審請求から6年、再審開始決定から1年以上の年月を費やしており、9番の事件では再審請求から12年、再審開始決定から6年が経過しようとしていますが、再審開始が確定していないということが分かります。   罪を犯していない人を処罰するという深刻な人権侵害を伴う重大な不正義の是正が、これだけ先送りされるということ自体、大きな害悪であると言うべきですが、誤った有罪判決を受けた人にとって、残された人生の時間がどれだけ貴重であるのかということも考えると、検察官の不服申立ての弊害は顕著であり、到底容認できるものではありません。   前回会議でも申し上げたとおり、仮に再審開始決定が違法・不当なもので、無罪を言い渡すべき明らかな証拠が存在しない場合、検察官は再審公判で有罪立証することが許されています。これに対し、再審公判では、事件の発生から相当な期間が経過していることなどから、事実を改めて立証することは困難となる場合があるという御指摘もありました。しかし、事件の発生からの期間の経過は、無罪を言い渡すべき明らかな証拠の発見・収集を含む再審請求人側の防御も困難にするものです。そうであるにもかかわらず、裁判所が無罪を言い渡すべき明らかな証拠があると判断し、検察官が再審公判において有罪立証をすることもできないようなときに、有罪判決を維持する正当性があるのかは疑問であり、検察官の不服申立てを求める有益性は乏しく、先ほど申し上げた弊害と到底釣り合うものではありません。   そもそも強大な権力とばくだいな資金力を有する政府が、権力も資金力もない個人を、無罪であっても有罪とする危険に繰り返しさらすことができるというのは、フェアではありません。再審開始決定があった場面では、検察官が不服申立てをすることにより、更に事件の発生からの期間が経過し、重大な不正義の是正が先送りされるという顕著な弊害が表れているのですから、これを禁止する必要性は明らかであると考えます。 ○宮崎構成員 前回会議でも申し上げたと思いますが、手続はできる限り迅速に進められるべきことは当然であると思いますし、それに向けて訴訟関係人が不断の努力を続けるべきであると思いますけれども、再審請求審の審理期間に影響を与える要因には様々なものがあると思われる中で、検察官の不服申立てに全て帰責するというのは、必ずしも的を射ていないと思うところです。   やはり再審開始決定に対する不服申立てについて、違法・不当な決定を是正するという意味からは、必要なものであると考えております。 ○河津構成員 宮崎構成員がおっしゃった再審請求の手続の迅速化の必要性については、私も同意見ですが、そのための具体的な御提案はあるのでしょうか。例えば、再審請求の審理期間を法定するような御提案をされるのでしょうか。それとも、単に関係者の努力に委ねられるのでしょうか。 ○宮崎構成員 それは、現行法の下で関係者が法に従って努力をするということであろうと思います。 ○河津構成員 そうであるとするならば、これだけ重大な不正義の是正に時間が掛かっていることについて、具体的な解決策が示されていないと評価されざるを得ないだろうと思います。 ○中野参事官 ほかに御質問がないようですので、次に、「起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置」についての協議を行います。   事務当局から、配布資料38の内容について御説明します。   配布資料38は、平成28年の「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」附則第9条第3項における「被害者の氏名の秘匿に係る措置」に関するものとして、令和5年に成立した「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」により整備された内容をお示しするものです。   まず、改正の背景・経緯について御説明します。   資料上段を御覧ください。   令和5年改正前の刑事訴訟法においては、逮捕状による逮捕の手続において逮捕状を被疑者に示さなければならないとする同法第201条第1項の規定や、公訴の提起があったときに被告人に起訴状の謄本を送達しなければならないとする同法第271条第1項の規定について、例外は設けられていませんでした。   そのため、逮捕状における「被疑事実の要旨」や起訴状における「公訴事実」等に犯罪被害者等の氏名等の情報を記載することが原則とされている裁判実務の下においては、その情報が被疑者又は被告人に知られ得ることとなっており、それらを通じてその情報を知った被告人・被疑者が、当該情報をインターネット上に掲載したり、当該犯罪被害者等の身体に対する加害行為等を行ったりするなどのおそれがあり、さらには、捜査機関が、これらの点について不安を抱く犯罪被害者等から必要な協力を得ることができず、公訴の提起を断念せざるを得ないなどの事態が生じていました。   この点に関して、従来、犯罪被害者等から、その氏名等の情報を被疑者又は被告人に対して明らかにされたくない旨の申出があった場合や、検察官が、事案の性質等に照らし、犯罪被害者等の氏名等の情報を明らかにしないことが適当であると判断した場合などにおいては、例えば、起訴状における「公訴事実」に、その氏名に代えて旧姓、親族名とその続柄、通称名や源氏名を記載するなどの運用上の工夫がなされることもありました。   しかし、このような工夫は、先ほど申し上げた裁判実務の下においては、再被害のおそれが高い場合に限って例外的に認められるにすぎなかった上、具体的にどのような場合に認められるかについては、裁判所の解釈に基づく個別の判断に委ねられていました。   「起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置」については、平成28年の「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」附則第9条第3項において、「この法律の公布後、必要に応じ、速やかに、・・・検討を行うものとする」とされたほか、平成29年に「刑法等の一部を改正する法律」案が審議された衆議院法務委員会及び参議院法務委員会においても、同項により起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置についての検討を行うに当たっては、性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の実情や、被害者の再被害のおそれに配慮すべきであるとの指摘をも踏まえて検討を行うこととの附帯決議がされました。   そこで、法務省においては、令和3年5月、法務大臣から法制審議会に対し、刑事手続において犯罪被害者の氏名等の情報を保護するための刑事法の整備に関する諮問を発し、法制審議会に設けられた刑事法(犯罪被害者氏名等の情報保護関係)部会における調査審議を経て、同年9月の法制審議会・総会において答申が採択されました。   令和5年5月に成立した「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」は、この答申を踏まえて立案されたものです。   次に、整備された措置の概要について御説明します。資料38の中ほど、「保護の対象となる情報」とある箇所を御覧ください。   保護の対象となる情報は、性犯罪に係る事件や、個人特定事項が被疑者・被告人に知られることで、その者やその親族の身体・財産に害を加える行為がなされるなどのおそれがある事件の被害者の氏名及び住所、その他の個人を特定させることとなる事項(以下、これらを個人特定事項と言います。)です。   また、これらの事件の被害者以外の者で、個人特定事項が被疑者・被告人に知られることでその者やその親族の身体、財産に害を加える行為がなされるなどのおそれがある者の個人特定事項も保護の対象となります。   次に、手続の各段階における具体的な措置について御説明します。   まず、捜査段階ですが、司法警察員や検察官は、今申し上げた個人特定事項について、必要と認めるときは、裁判官に対し、逮捕状の請求や勾留の請求と同時に、個人特定事項の記載のない「逮捕状に代わるもの」や「勾留状に代わるもの」等の交付を請求することができ、その場合、裁判官は、原則として、「逮捕状に代わるもの」や「勾留状に代わるもの」を交付するものとされました。   そして、「逮捕状に代わるもの」や「勾留状に代わるもの」の交付があった場合には、逮捕状や勾留状を執行する際には、これらの「逮捕状に代わるもの」や「勾留状に代わるもの」等を被疑者に示すことができるなどとされました。   また、検察官は、勾留の請求と同時に、裁判官に対し、勾留質問において、被疑者に対し、個人特定事項を明らかにしない方法で「被疑事実の要旨」を告げることを請求でき、その場合、裁判官は、原則として、被疑者に対し、個人特定事項を明らかにしない方法で「被疑事実の要旨を告げ」るものとされました。   続いて、公判段階における具体的な措置について御説明します。   まず、検察官は、保護の対象となる者の個人特定事項について、必要と認めるときは、裁判所に対し、被告人に送達するものとして、起訴状の謄本ではなく、個人特定事項の記載のない「起訴状抄本等」を提出し、起訴状に記載された個人特定事項が被告人に知られないようにするための措置を求めることができ、その場合には、裁判所は、被告人に対し、起訴状の謄本ではなく、個人特定事項の記載のない「起訴状抄本等」を送達することとされました。   また、被告人に対して、「起訴状抄本等」を送達した場合、裁判所は、弁護人に対して、「起訴状抄本等」に記載がない個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付して起訴状謄本を送達するほか、訴訟に関する書類・証拠物の閲覧・謄写の場面でも、弁護人に対し、記載されている個人特定事項を弁護人に知らせてはならない旨の条件を付す等の措置をとることができることとされました。   なお、一定の場合には、弁護人に対しても、個人特定事項の記載のない「起訴状抄本等」を送達したり、訴訟に関する書類・証拠物のうち、個人特定事項が記載されている部分の閲覧・謄写を禁止する措置をとったりすることも可能となっています。   最後に、判決後の段階ですが、被告人に対して「起訴状抄本等」を送達した事件については、判決後に、被告人や弁護人から、判決書の謄本等の交付の請求がなされた場合、弁護人に対して、記載されている個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付したり、被告人に対して、個人特定事項の記載がない抄本を交付したりするなどの措置をとることができることとされました。   これらの改正後の規定は、令和6年2月15日から施行されています。   ただ今の説明について、御質問や御意見はありますか。 ○足立構成員 この制度、具体的に施行されたのはいつになるんでしょうか。 ○中野参事官 令和6年2月15日となります。 ○足立構成員 そうすると、まだ1か月ということなんですけれども、現在の施行状況について、何かデータのようなものはおありでしょうか。今後公表されるかどうかということも含めて、御回答いただければ。 ○中野参事官 お尋ねの施行状況のうち、法務省の所掌事務に関する統計等は取っておらず、今後、この点に関する統計等を取って公表する予定もありませんので、具体的な件数をお答えすることは困難です。   その上で、例えば、いわゆる性犯罪に係る事件の被害者の個人特定事項については、具体的な事情を問うことなく、一律に、今般整備された起訴状における秘匿措置の対象とされており、例えば、令和4年の起訴人員を見ると、強制性交等罪による起訴人員は481人、強制わいせつ等による起訴人員は1,251人となっていますので、こうした事件を含む一定数の事件で、このような措置がとられるものと認識しています。 ○横山構成員 最高裁においても、先ほど御説明のありました氏名秘匿に関する規定の施行状況、具体的に申し上げますと、「逮捕状に代わるもの」や「勾留状に代わるもの」の請求及び交付の件数ですとか、被告人に送達するものとしての「起訴状抄本等」の提出の事件数についての統計は取ってはおりません。そのため、それらの件数等の施行状況についてお答えすることは困難です。また、統計を取っておりませんので、今後司法統計等の形での公表ということも、現時点で予定はありません。 ○足立構成員 ありがとうございました。 ○佐藤構成員 法制審議会の刑事法(犯罪被害者氏名等の情報保護関係)部会における審議の際に、秘匿措置がとられた事件については、弁護人として受任するに当たって利益相反関係の確認に支障が出るのではないか、という懸念が示されていたと記憶しております。この点について、今般の施行に際し、実務上どのように対応されているか、また、施行から日は浅いですが、現に支障が生じていないか、という点について、お分かりでしたら御教示いただければと思います。 ○中野参事官 一般論として申し上げると、司法警察職員は、「逮捕状に代わるもの」の交付を受けた上で被疑者を逮捕した場合、「逮捕状に代わるもの」において秘匿措置がとられた個人特定事項に係る被害者に対し、その氏名を国選弁護人となろうとする者に開示することへの同意の有無を確認するように努め、その結果を検察官に伝えることとしています。その際、被害者と関係のある弁護士名等の情報が確認できた場合には、当該情報も併せて伝達することとしています。   検察官は、「勾留状に代わるもの」の交付等の請求をする場合であって、司法警察員から当該氏名等の情報の伝達を受けているときは、「勾留状に代わるもの」の交付等の請求に当たり、裁判官に対して当該情報を伝達することとしています。その際、被害者の同意がある場合には、当該氏名を国選弁護人になろうとする者に開示することが相当であるか否かについての検察官の意見も併せて伝達することとしています。   そして、裁判官は、「勾留状に代わるもの」の交付等の請求を受けた場合であって、検察官から当該氏名等の情報の伝達を受けたときは、国選弁護人候補指名通知依頼に当たり、開示相当の検察官意見が示されている場合には当該氏名等の情報を、開示不相当の検察官意見が示されている場合等であっても、氏名以外の情報の伝達を受けているときは当該情報を、それぞれ日本司法支援センター地方事務所に伝達し、日本司法支援センターにおいて、当該伝達に係る情報を、国選弁護人となろうとする者に伝達するという運用を行っているものと承知しています。   また、一般論として申し上げると、「勾留状に代わるもの」が交付された事件においても、検察当局においては、弁護人から、「勾留状に代わるもの」において秘匿措置がとられた個人特定事項を教えてほしい旨の要請があった場合には、検察官において、当該個人特定事項に係る者の意向を確認し、その同意が得られたときは、これを弁護人に教示するという運用を行っているものと承知しています。   もう一つお尋ねの、支障が生じた事案ということですが、これは事務当局としては承知していません。   その他、御意見等はいかがでしょうか。 ○河津構成員 被害者の氏名の秘匿に係る措置につきましては、本年2月15日に施行され、日本弁護士連合会にも施行状況の報告が入り始めているところです。これまで受けている報告によると、刑訴法207条の2に基づいて、検察官が個人特定事項の記載がない勾留状の抄本の交付を請求する件数は、各地の弁護士会で想定されていたよりもかなり多く、事件類型としては、刑訴法201条の第1項1号イ又はロに該当する性犯罪等が約半数で、それと同程度の件数、それ以外の事件で用いられているとの報告を受けております。   一つだけ具体例を挙げますと、何ら組織性のないタクシー会社の運転手を殴ったとされる傷害被疑事件で、タクシー会社と運転手の氏名が秘匿されたという事例も報告されており、既に濫用を懸念する意見も聞こえております。   そして、国選弁護人の選任に当たり、先ほどの事務当局の御説明では、被害者の同意が得られなかった場合ということになると理解いたしましたが、被害者との利益相反の確認ができないことなどから、選任の遅延が生じた事例の報告も受けており、弁護人の援助を受ける権利が損ねられていることについて懸念を抱いております。特に人口の少ない地域におきましては、利益相反状況はまれとは言えない頻度で生じているとのことであり、選任前に被害者を確認することができない弊害は、現実的で切実なものです。   そして、この制度の運用に関し、最も留意しなければならないのは、被疑事実・公訴事実に争いがあるような事案において、被疑者・被告人が被害者を特定することのできないことが、防御に支障をもたらし、誤った有罪判決の原因とならないようにすることであると思われます。この点については、防御に実質的な不利益を生じるおそれがあるときは、被疑者又は弁護人の請求により、個人特定事項を通知する旨の制度が適切に機能することが重要であり、今後の施行状況を注視しております。   犯罪の被害に遭った市民が、自らの個人情報を知られたくないと考えるのは自然な心情であり、可能な範囲で配慮されるべきと私も考えます。しかし、刑事手続における最も重要な命題は、罪を犯していない市民を間違って処罰しないことであることは、忘れられてはならないと思います。   先ほど足立構成員からも御要望があり、事務当局及び最高裁においては統計を取って公表する予定はないとのことでしたが、この制度の運用状況については、適切な時期に、正確な統計資料を当協議会に共有いただくことが必要なのではないかと思いますので、御検討いただければと存じます。 ○藤井構成員 今回、まだ施行されて1か月ということで、正しく運用状況は注視されなければならないとは思っていますが、犯罪被害者の不安を取り除く有用な制度として、是非運用していっていただきたいなと思います。   利益相反の点についてなんですけれども、先ほど当局からの御説明どおりの運用がなされるとすれば、それでもなお弁護人に氏名等を開示されないケースというのは、ある程度組織犯罪等限定されたものですので、実際に利益相反の問題が顕在化することはそれほど多くないんではないかなとも思われるところもあると思います。いずれにしろちょっと、先ほど運用状況についての統計の話については、我々としても是非、法務省あるいは裁判所において、そういった情報も頂きたいなと思うところです。 ○中野参事官 その他の方は、いかがでしょうか。   それでは、続いて、「証人等の刑事手続外における保護に係る措置」についての協議を行います。   まず、松田構成員から御提出のあった資料につきまして、御説明を頂きたいと思います。 ○松田構成員 第9回会議の資料として、警察庁の出している通達がございまして、資料1と右肩に書いてあるものと資料2と右肩に書いてある、保護対策実施要綱の運用要領の制定について、御説明を差し上げたいと思います。   まず資料1でございます。保護対策実施要綱の制定についてということでございまして、平成31年3月28日付警察庁次長通達でございます。資料2は、保護対策実施要綱の運用要領の制定についてと題する同日付の警察庁刑事局組織犯罪対策部長通達でございます。なお、通達のうち、公表することによりまして、暴力団等に対抗措置を講じられることで保護対策に支障が生じるおそれがある部分や、都道府県警察で使用する様式については省略をさせていただいております。   資料の説明に入る前に、組織犯罪捜査の実態、実情について御説明をいたします。   組織犯罪において、事案の全容を解明いたしまして、犯行グループのリーダーの存在とその関与を明らかにするためには、内部の関係者、末端行為者、若しくは被害者からの犯罪被害の申告等の証言が極めて重要であります。しかしながら、実際こういった関係者等が、組織からの報復を恐れて捜査や公判への協力を拒む事例というのが多く見られています。   例えば、家族に対する組織からの報復を懸念して捜査への協力を拒否した事例や、過去に上部組織の組員から暴行を受けたり、家族への被害を加えることをほのめかされたりしていたため、関係者が供述を拒否したという事例もございます。   この点、警察では、関係者等が組織からの報復を恐れることなく、被害の申告や証言をしてもらえるよう、現在においても現行法の範囲内でできる限りの措置を講じておりまして、今回御説明するのは、その現在行っている保護措置等でございまして、それに加えまして、更なる措置の必要性についても、若干述べさせていただきたいと思います。   それでは資料1、次長通達を御覧ください。   この通達は、平成23年暴力団等による保護対象者に対する危害を未然に防止するために、保護対策に関して必要な基本的事項を保護対策実施要綱として定めるものでございます。   通達のうち、主要な部分をかいつまんで御説明します。   まず2ページを御覧ください。第2の2の「保護対象者」では、保護対策を必要とする者について定めておりまして、暴力団等による犯罪の被害者その他の関係者のほか、暴力団排除活動関係者、暴力団等との取引、交際その他の関係の遮断を図る企業等の関係者、暴力団から離脱した者又はその意志を有する者に該当する者で、暴力団等から危害を受けるおそれがあると認められるとして、警察本部長等が指定した者をいうこととしております。   今回テーマの暴力団等に係る事件の証人等については、(1)の「暴力団等による犯罪の被害者その他の関係者」に該当することから、暴力団等から危害を受けるおそれがあると認められる場合には、保護対象者として指定しております。また、列挙した者以外の者であっても、暴力団等から危害を受けるおそれのある者で保護を必要とする者について、保護対象者として指定をしております。具体例については、後ほど御説明させていただきます。   続きまして、2ページ目から3ページ目に係る部分ですが、2ページの一番下、第3の「基本的配意事項」でございます。1の「警察組織の総合力を発揮した保護対策の実施」として、保護対策は組織犯罪対策部門が警備部門、地域部門その他の関係部門の協力を得て実施することを定めております。また、2の「危害の未然防止の徹底」として、保護対象者に対する危害行為を防圧するための検挙措置を適切に講じ、危害の未然防止を徹底することを定めております。   次に3の「保護対策の重要性の周知徹底」として、保護対象者の安全確保の万全を期することが暴力団対策を推進する上で極めて重要であることを職員に周知徹底することとしております。   さらに、5の「情報収集の徹底」として、平素からあらゆる警察活動を通じ、暴力団等による保護対象者に対する危害行為に関する動向等の把握に努めることとしております。   次に、少し飛びまして、4ページ目から5ページ目でございます。4ページ目の下の方、第5の「保護対策の実施」でございます。保護対策の実施としては、先ほど御説明したとおり、警察本部長等は、暴力団等による犯罪の被害者その他の関係者等が暴力団等から危害を受けるおそれがあると認めるときは、保護対象者として指定した上で、保護対策計画を策定することとしております。   また、第5の3の「暴力団等に対する視察活動等を通じた動向の把握」として、暴力団等に対する視察活動はもちろん、あらゆる機会を通じて保護対象者に対し危害を加えるおそれのある者を確実に把握し、その動向の把握と関連情報の収集に努めております。   次に、第6の「広域にわたる保護対策の実施等」では、保護対策を実施している保護対象者が、他の都道府県警察の管轄区域内にある施設等に移動する場合の保護対策について定めております。   以上が資料1の御説明でございまして、次に資料2の御説明に入らせていただきます。資料2を御覧ください。   この通達は、先ほど御説明した保護対策実施要綱の制定に伴いまして、その具体的な運用要領を定めたものでございます。   まず、1ページ目を御覧ください。1の「保護対象者」では、資料1において、「その他暴力団等から危害を受けるおそれのある者」と定めた者の具体例について定めておりまして、暴力団等に係る事件に関わった裁判員や裁判官等の司法関係者と、暴力団等に関する報道を行った報道関係者、その他管内の暴力団情勢等に鑑み、警視総監又は道府県警察本部長が特に必要と認める者が該当することとしております。   続きまして2ページ目を御覧ください。2ページ目の真ん中から下ぐらいですけれども、6の「保護対策計画の策定」について、保護対象者の活動状況等を把握し、保護対象者との連絡は昼間、夜間、祝祭日を問わず、常に確実に行えるよう配慮することや、保護対策者のみならず、その家族の保護にも十分配慮することに留意し、保護対策計画の策定を行うことを定めております。   次に3ページを御覧ください。7の「視察対象者の抽出と動向の把握」でございます。保護対象者に対し危害を加えるおそれのある視察対象者について、危害を加えるおそれの根拠となる背景や動機等を分析するとともに、性格、犯罪経歴、交友関係等を踏まえて、的確に抽出すること等について定めております。また、視察対象者については、保護対象者に対し危害行為を加えるおそれの程度に応じて、必要な行動確認を実施し、その動向を確実に把握すること等について定めております。   こういった御説明した通達に基づきまして、都道府県警察では、証人を含めた保護対象者への保護対策を実施しております。例えば、工藤會関連事件につきましても、その証人に対して、その心情に配慮しつつ、証言内容や工藤會との関係性等、個々の情勢に応じて身辺の警戒等を行っております。また、ここで御説明した保護対策以外にも、二度と組織と関わりを持たなくていいように、各都道府県警察の暴力追放運動推進センター等と連携いたしまして、元組員、場合によっては別の都道府県における元組員の就労支援等も行っておるところでございます。   都道府県警察にとって、このような取組による業務負担は大きいものの、証人等の安全の確保のため、ひいては組織犯罪の全容を解明し、組織の弱体化、壊滅を図るために、都道府県警察全体の総合力を発揮した上で実施しているというところでございます。   しかしながら、証人等の保護の観点からは、これらの取組の効果については限定的であるなどの課題があることから、これら以外の抜本的な対策も必要と考えております。組織犯罪の事案の原因を解明し、組織の弱体化、壊滅を図るためには、例えばですが、新たな身分の付与、住居地の変更、経済的支援等を内容とする証人保護の措置を導入するなどして、証人等の更なる安全を確保する措置を講じることにより、証人等が安心して証言等ができる環境をつくることが必要と考えております。   繰り返しにはなりますが、警察庁といたしましては、証人等の刑事手続外における保護に係る措置を導入することによりまして、暴力団等の犯罪組織の壊滅に向けまして、更なる効果的な捜査を行ってまいりたいと考えております。過去の法制審議会におきましても、証人の保護措置の必要性については認識が共有されていた一方、民事、行政関係にわたる、多岐にわたる課題が多いことなどに鑑みて、具体的な制度設計が行われなかったと承知しております。是非とも制度の必要について御理解いただきまして、制度創設に向けた建設的な議論を頂ければというふうに思っております。 ○中野参事官 ただ今の御説明について、御質問・御意見はありますでしょうか。 ○足立構成員 御説明ありがとうございました。   1点、先ほど組織の周辺者の家族の方が供述を拒否したり、中には暴行を受けたりするようなケースもあったというお話があったと思うんですけれども、そのように、例えば具体的に危害を加えられたケースだったり、若しくは心身に不調を来すような、不安から心身に不調を来すようなケース、そういったケースの何かデータなり過去の事例のようなものはおありでしょうか。 ○松田構成員 データという形ではありませんが、例えば、事件検挙して報道発表している例といたしましては、暴力団組長等に係る殺人等事件において、元組員である被害者が証人出廷して証言したということに関しまして、傘下組織の組長から、具体的に文言で申しますと、「あんたは総裁に恨みしかないんか、嫌われるようなことをあんたが言わんでもいい」、「また会ってゆっくり話をせんといかんな」等と、畏怖困惑させるような言動を繰り返し受けたことから、福岡県警が組織犯罪処罰法違反、証人威迫で傘下組織の組長を検挙しております。令和2年8月のことでございます。   それ以外にも、事件検挙に至っていないものとして、具体的に発表はなかなか難しいですけれども、関係者が報復を懸念して捜査への協力や公判での証言を拒否した事例については、警察庁としては承知しておりまして、例えばですけれども、組員である被害者の知人が、当初は被疑者の関与を裏付ける証言をしていましたが、家族に対する組織からの報復を懸念して、その後の捜査への協力を拒否した事例、共犯者が組員の検挙につながる重要な供述を行ったんですが、組織関係者からの連絡を受けたということで、家族に対する報復を懸念して公判での証言を拒否した事例、また組織関係者が、過去に上部組織の組員から暴行を受けたり、家族への危害を加えることをほのめかされたりしていたということで供述を拒否した事例については、警察庁としては把握しておるところでございます。 ○足立構成員 ありがとうございます。   もう一点伺いたいんですけれども、先ほど保護対象になった方は、この計画を立てたり、実際に身辺を警護されたりしていると思いますが、大体その期間というのはどれぐらい、一旦対象に選んだ場合に、その後、どれぐらいの期間保護するという運用になっているんでしょうか。 ○松田構成員 これは、期間においては個々のケースによって様々でございまして、結局保護対策を講じる必要性が生じる期間ということでしかないということでございまして、ケースによって様々ということでございます。 ○足立構成員 例えば、何か月という単位なのか、何年という単位なのか。 ○松田構成員 それはケースによって様々で、例えば、公判が続いていればずっと、何年というケースも当然ございます。 ○足立構成員 その暴力団組織であれば、恐らく工藤會なら工藤會で、その組織がなくなることはないと思うんですけれども、中には、例えばもう10年とか、長期にわたって保護するというケースもあるという認識ですか。 ○松田構成員 組織が継続している間ずっとかというと、またそこは違うかもしれませんけれども、公判が係属中であるということもあろうかと思いますし、通達の中でも御説明したとおり、いろんな状況を情報収集や視察等で把握する中で、危害が加えられるおそれの程度を判断して、保護措置の内容と期間というのが決まっていくというふうに思っております。 ○足立構成員 ありがとうございました。 ○成瀬構成員 松田構成員におかれましては、丁寧に御説明くださり、ありがとうございました。  私から2点質問させていただきたいと思います。   まず、資料1の2ページ、第2の2において、保護対象者の定義が記載されていますが、現在、何名くらいの方が保護対象者として指定されているのでしょうか。保護対策が必要となる人数の規模を大まかに把握したいので、差し支えない範囲で概数を教えていただければ幸いです。   次に、資料2の2ページにある3の(2)や(6)では、具体的な保護の方策として、危害を加えるおそれのある視察対象者の内偵活動を強化し、潜在事犯の掘り起こしを迅速に行うとともに、職務質問の強化と現行犯逮捕による未然防止を心掛けることや、保護対象者の自主警戒手段として、防犯カメラや緊急通報装置等の資機材を活用することが記載されています。ただ、先ほどの御説明によると、これらの方策だけでは効果が限定的であるとのことでしたので、そのようにお感じになられる根拠をもう少し敷衍して御説明いただければと思います。 ○松田構成員 まず、保護対象者の人員ですけれども、これは、令和5年末時点で、全国で都道府県警察が指定している保護対象者は、約2,000人ということでございます。ここ数年は同程度の数で推移しているので、約2,000人というふうに考えていただければというふうに思います。   また、不十分だと思う理由については、御説明したような通達に基づきまして、保護対象者の安全確保を図っているところでございますけれども、一つには、まず、保護の中身として身辺警戒というのがございますけれども、身辺警戒については、その実施に多大な人的コストが掛かり、これまで以上に幅広くこれを実施していくことは困難ということでございます。   また、そこで暴力団等の組織に居所を知られぬように、遠隔地における生活を支援することも一手段でございますけれども、組織力をもって居所を把握する可能性は否定できないと思っておりまして、住民基本台帳閲覧等の制限などもありますけれども、そういったものを行っていても、生活していく上では様々な場面で、例えば民間企業等に住所、氏名等の個人情報を提供する場面が想定されることから、組織的な犯罪集団や暴力団等の組織に居所を把握される可能性というのが否定できないのではないかというふうに考えております。   また、企業等の、先ほど申し上げたとおり就労支援というのも行っておりますが、必ず就労できるというわけではなく、就労できたとしても、縁のない土地で新たな生活を始めるに当たって、十分な資金をすぐに確保できるわけでもないというふうに考えております。   こういった事情を踏まえますと、やはり証人を安全面、経済面の両面で保護する上で、現行の制度は十分だとは言えないと考えておりまして、報復等の生命、身体への危険性がある証人については、その安全を確保するため、先ほど申し上げましたとおり、例えば、一時的に別の氏名の使用を認めるとか、新たな身分を付与するなど、その者を特定する事項の変更、その他の証人の所在を探知されにくくするための制度を設けることは、有益ではないかと考えております。   また、そういった身分の付与以外にも、住居地の変更とか経済的支援等いろいろ考えられ、こういったものに一定の意義があると考えておりますので、御議論いただければというふうに思っております。 ○成瀬構成員 丁寧に御教示くださり、ありがとうございました。   保護対策を必要とする者が現時点でも相当数に上っていること、また、警察として最大限の努力をしてくださっているものの、現在の方策では様々な観点で不十分であることがよく分かりました。   諸外国の中には、証人となる者に別の身分を付与するといった、より強力な証人保護措置を導入している国もありますが、我が国において同様の措置を導入するとすれば、先ほど松田構成員も御指摘くださったとおり、刑事法のみならず、民事法や行政法も視野に入れた包括的な検討が求められます。それゆえ、非常に困難な作業になると予想されますが、そのような検討を行う必要性自体は、現在も変わらず存在していることがよく分かりました。 ○宮崎構成員 証人等の刑事手続外における保護に係る措置について、意見を申し上げたいと思います。   刑事手続における証人等の保護につきましては、これまでも充実化が図られてきておりまして、刑事訴訟法上、平成12年改正により証人尋問の際の証人への付添い、遮蔽措置やいわゆるビデオリンク方式による証人尋問の制度等が導入された後、平成19年改正では、証拠開示の際の被害者特定事項の秘匿要請及び公開法廷での被害者特定事項の秘匿措置の制度が導入され、平成28年改正では、証人等の氏名・住居の開示に係る措置や公開法廷における証人等の氏名等の秘匿措置の制度が導入され、さらに、令和5年改正では、先ほど事務当局から御説明いただいたように、起訴状等における犯罪被害者等の個人特定事項の秘匿措置の制度が導入されたところであります。   しかし、例えば、今御説明がありましたように暴力団等の犯罪組織等による犯罪の場合、事案の真相を解明し、真に処罰すべき者を処罰するためには、末端の被疑者や構成員等から組織の構成や指揮命令系統等の内情を含めた事案の全容について供述を得ることが不可欠な場合が少なくないところ、通常そうした犯罪組織においては、捜査機関に協力して組織を裏切ったと判断された場合には、その者はもとより、その親族等に対しても重大な加害行為がなされるおそれが大きいことから、証人等の保護のための諸制度が整備されてきた現在においても、末端の被疑者や構成員等から捜査・公判への十分な協力を得ることは困難である場合があるという話も聞いております。   このような実情からすれば、組織的犯罪において、事案の真相を解明し、真に処罰すべき者を処罰するためには、組織における末端の被疑者や構成員等が報復を恐れずに安心して捜査・公判に協力して事案の全容を供述することができるようにするべく、先ほど来お話のありましたような捜査・公判に協力した者について、一定の場合に別の氏名の使用を認めるなどして所在等を探知されにくくすることなどの、より強力な証人等の保護措置の導入も検討に値すると思います。   もとより松田構成員、成瀬構成員から御指摘もありましたように、このような制度を設けることに関しましては、法制審議会・新時代の刑事司法制度の特別部会でも指摘されましたように、租税、年金、運転免許等の各種資格など、行政上の権利義務や法的地位の取扱いをどうするかという点や、その者に債権・債務があった場合、それをどのように取り扱うかといった点など、様々な課題があるものと承知しております。そのため、制度化を直ちに行うことは現実的に難しいかもしれませんけれども、引き続き犯罪情勢等に応じて不断の検討が必要だと考えます。 ○藤井構成員 ありがとうございます。私も、先ほど松田構成員御説明いただいたような必要性については十分理解をします。日弁連の方でも、犯罪被害者支援委員会に所属しておるんですけれども、民事介入暴力対策委員会というところでも、2020年に開催した協議会で議論の一テーマにこういった問題にしておられるというふうに承知しております。   ただ、先ほど来、成瀬構成員の御指摘のとおり、ちょっと本検討会で扱うにはなかなかに、民事行政にわたる大きな問題であろうかなというのが、率直な実感でございます。 ○中野参事官 その他の方は、いかがでしょうか。   続いて、前回会議で御要望があったことを受け、公職選挙法違反事件に関する監察調査の結果について御説明します。   この調査は、令和4年10月、被告人Aに対する公職選挙法違反の公判過程において、弁護人から捜査段階におけるAの取調べ中に検察官が不起訴を約束するなどの違法な司法取引がなされた旨主張され、その証拠として、検察官に対し、当該取調べの状況等を秘密録音したものとされるデータが開示されたことから、その報告を受けた最高検察庁監察指導部において行われたものです。   同調査は、弁護人から開示された秘密録音データを含む被告人の刑事事件記録及び関連事件の刑事事件記録を精査するとともに、弁護人から取調べ等が不適正である旨指摘された検察官の聴取のほか、関連事件の捜査に関与した検察官や一連の捜査を指揮した検察官の聴取をすることによって行われました。   弁護人から、取調べ担当検察官によるAの取調べに関し、不起訴の約束や強制捜査をほのめかすなどの利益誘導等により、不任意の虚偽自白に基づく虚偽調書が作成された旨主張された点につき、同調査においては、次のような点が認められたとの指摘がなされているところです。   まず、取調べ時の発言について、公職選挙法違反における受領した現金が買収の趣旨であることの認識を否認するかのような供述をしたAに対し、取調べ担当検察官が、可能であれば議員を続けてほしい旨や、強制捜査に言及した点について、当該取調べ担当検察官が、その後の取調べにおいて、Aに対し、不起訴の約束はできない旨を明確に伝え、A自身、それに対して異議を唱えるなどしていないことから、不起訴処分を約束するものではなく、当該取調べ担当検察官が作成したAの供述調書の内容は、真実に合致するものと評価でき、Aに虚偽供述をされたものではないとしつつも、Aに不起訴となることを期待させるものであったことは否定し難く、Aが否認した場合には強制捜査という不利益が生じることを示唆するものと評価できるものも含まれていること、取調べ全般において処分の結果は定かでない旨を十分に強調したとは言い難いことから、取調べ適正確保の見地からは不適正というべきものと指摘しています。   次に、取調べの実施方法について、Aが買収の趣旨の認識を否認するかのような供述をしていたのであるから、レビュー方式、すなわち、被疑者の供述調書作成後に当該供述調書の作成過程、供述の動機・経過、取調べ状況等について質問し、被疑者が応答する場面を録音・録画する方式の録音・録画を実施するのであれば、当該認識についても発問し、Aがそれを否認する場合には、再度、その点について問いただすなどのやり取りをして、その状況も記録すべきであったとした上で、結果として、取調べ担当検察官の取調べ時の発言の不適正やAが買収の趣旨の認識を認める内容の供述調書作成後もなおそれを否認するかのような供述をするなど、不安定な供述状況にあったことを糊塗することになっており、供述調書の任意性及び信用性の担保というレビュー方式による一部録音・録画の趣旨に反するものであって、不適正といわざるを得ないと指摘しています。   また、弁護人から、Aの起訴に先立って行われた別の被告人の公判におけるAの証人尋問に関して行われたAの証人テストに関し、証人テストを相当回数繰り返した上、不起訴を約束する利益誘導が行われたため、当該公判において、Aが体験した客観的事実や主観的認識に反した証言を強いられた旨主張された点につき、同調査において、次のような点が認められたとの指摘がなされていました。   まず、相当回数の証人テストが行われたとしても、それ自体が問題となるものではないところ、質問をよく理解せず安易に発言するなどのAの傾向を踏まえると、証人テスト担当検察官が証人テストを繰り返したことが問題とはいえず、また、不起訴を約束するなどの利益誘導を繰り返したとされる点も、秘密録音されている検察官の発言の中にそのような発言は認められず、むしろ、Aが検察官に対し、A自身の処分がいつ決まるのか尋ねるなどしており、不起訴を約束した事実は認められないと指摘しています。   その上で、証人テスト担当検察官が、客観的事実関係よりも弁護人の反対尋問にいかに対応するかを優先すべきであるかのように受け取られかねない言動をしたことを認定した上で、当該言動は、Aに事実と異なる証言をさせる意図はなかったものとしつつも、証人尋問の公正さに疑念を生じさせるものであって、より慎重な配慮が必要であったと指摘しています。   また、証人テスト担当検察官が、Aが自ら作成していた証人尋問用のメモに関し、当該メモを作ったことへの言及を控えるよう発言している点について、自分から積極的に当該メモについて証言する必要はない旨助言したものであり、不適正と評価すべきものではないとしつつも、発言の意図や趣旨を十分に説明した内容ではなく、より慎重な配慮が必要であったと指摘しています。   さらに、先ほど申し上げた、Aの取調べ担当検察官の不適正な発言に関しては、不起訴の約束等に関する組織的指示が行われたのではないかとの指摘があるとして、この点についても調査が行われています。その結果、本件捜査の主任検察官ら捜査幹部は、そのような指示等をしたことは一切ない旨述べている上、Aの取調べ担当検察官を含む受供与者の取調べ等を担当した検察官の全員が、そのような指示等はなかったと述べていること、受供与者の取調べに当たった検察官らの間でも、受供与者の処分の見通しについては判断が分かれていた状況が認められ、また、東京地方検察庁が受供与者全員を不起訴処分とした理由となる事情は、受供与者らの取調べの結果、それらの供述を得て認められるに至ったものであるから、それらの供述を得る前の段階で組織的に受供与者らを一律不起訴処分とすることを決定し、それを前提として不起訴を約束なりさせて自白を獲得するよう指示ないしアドバイスをしたなどということは考え難いこと、取調べを受けた検察官から不起訴約束があった旨主張する受供与者は、いずれも罰金以上の刑が確定することにより失職する地方議員であり、検察審査会による起訴相当議決を受けて起訴された者であるところ、その数は、受供与者100名のうちAを除き6名にとどまっている上、これらの者の判決においても、検察の組織的指示等はもとより、個々の取調べ検察官が不起訴約束をしたことすら認定されていないことなどから、組織的指示はなかったと認定しています。   その上で、最高検察庁監察指導部による今後の対応について、まず、取調べが不適正であったと指摘されたAの取調べ担当検察官及び証人テストにおいてより慎重な配慮が必要であったと指摘されたAの証人テスト担当検察官に対しては、現所属庁により指導が行われ、本人も深く反省しているとした上で、本件のような不適正な行為等を防止するには、捜査・公判の適正に対する担当者の意識を更に向上させることはもとより、捜査・公判を指揮する立場にある上位の検察官においても、適正確保のための積極的な指揮指導に努めることが必要であるとしています。   また、レビュー方式による取調べの録音・録画実施方法の不適正について、重く受け止める必要があるとし、検察に立証上都合の悪い場面を録音・録画しなかったなどという批判を招くことがないよう、レビュー方式による取調べの録音・録画を実施する場合には、自白の中核部分の供述過程や内容について十分なやり取りを録音・録画すべきであるし、事件の性質や被疑者の属性等により、必要に応じて広範囲の録音・録画を行うことも含め、適切な実施方法がとられなければならないとしました。   その上で、原庁である東京地方検察庁に対して、重ねて一層の注意喚起を図ることはもとより、最高検察庁としても、監察案件を踏まえた適正な捜査・公判活動の在り方を周知するとともに、各高等検察庁に管内地方検察庁の検察官に対する捜査・公判の適正確保に向けた指導教育を強化するのみならず、各庁の適正確保に向けた取組状況を継続的に把握し、指揮監督に努めることとしたい、としています。   ただ今の説明について、御質問・御意見はありますでしょうか。 ○足立構成員 御説明ありがとうございました。この報告書の中で、今後の検察の対応について、いろんな改善策が示されています。捜査公判の担当者の意識の向上、上司の検察官による積極的な指導、そのほか録音・録画の内容を改善すること、それから必要に応じて広範囲の録音・録画を行うこと、検察組織全体として指導、教育の在り方を深めること、最高検が適正な捜査公判活動の在り方を周知すること、様々ありますが、この報告書を受けて3か月ぐらいたつわけですけれども、検察がこれまでどのような具体的な改善策を実施したのか教えていただけますでしょうか。 ○中野参事官 東京地方検察庁に対し、監察結果を通知した際に、監察調査においてその行為の不適正が指摘された検察官にとどまらず、所属の全ての検察官に対し、取調べや証人テストを適正に行うことについて、改めて注意喚起をするように求め、また、最高検察庁として、各高等検察庁を通じ、全国の検察官に対して、監察調査の結果の内容を共有し、各種の会議等の機会を捉えて、監察案件を踏まえた適正な捜査・公判活動の在り方について、周知するなどの取組を推進する、こういったことを承知しています。 ○足立構成員 例えば、在宅事件の取調べの録音・録画が、この報告書を出した後に大幅に増えたとか、そのような状況にはなっていないんでしょうか。 ○中野参事官 事務当局としては、先ほど申し上げたとおり承知しています。 ○河津構成員 まず、資料として共有いただいたことには感謝申し上げます。   ただ、昨年12月、最高検察庁はこの調査結果を公表したと報道されていましたが、現在この資料は、市民がアクセスできるところに置かれていないように思われます。本日の会議でも、席上配布資料とされていますが、公務員である検察官の職務上の行為についての調査結果であり、その評価の当否を含めて国民の批評の対象となるべきものですから、ホームページへの掲載を含め、文字どおり公表することが適切であるように思われます。   この「監察調査の結果について」に対しては、日本弁護士連合会が2024年1月19日付けで、「一連の不正を著しく矮小化するものであり、全く有効な再発防止策を示していない」とする会長声明を公表し、ホームページにも掲載しております。私も、日弁連の会長声明と意見を同じくするものですが、本日その内容を繰り返すことを控えて、幾つかコメントさせていただきます。   まず、調査の方法についてコメントさせていただきます。   この事件では、検察官の被疑者に対する言動が問題となっているのに、一方当事者である取調官からしか事情聴取を行っていないのは、公正な調査の基本を踏み外していると申し上げざるを得ません。被疑者の弁護人からは、被疑者から事情を聴取するよう申し入れたにもかかわらず、事情聴取は行われなかったとの報告を受けております。   2010年の郵便不正事件の検証報告の際も、最高検察庁は村木厚子さんからの事情聴取を一切行わないまま、検察官からの聴取結果に基づいて事実を認定していました。今も被疑者からの事情聴取を行わず、検察官からのみ事情聴取を行ったことにより、録音データの存在しない部分については、検察官の言い分に沿って発言の趣旨や事実の存否が認定され、それを前提に評価を下したことにより、不十分なものになっていると申し上げざるを得ません。   次に、この「監察調査の結果について」から分かる取調べの実情についてコメントさせていただきます。   この「監察調査の結果について」は、取調べにおける検察官の言動のごく一部しか引用されておらず、取調べの実情を正確に把握するためには、本来録音データの反訳や事情聴取の結果を共有いただく必要があるように思われます。ただ、この「監察調査の結果について」に引用されている記述だけでも、この事件では、検察官が録音・録画のない取調べにおいて、買収の趣旨の認識を否認する供述をした被疑者に対し、「できたら議員を続けていただきたいと思っているわけで、そのレールに乗ってもらいたい」という不起訴を示唆する発言や、「強制とかになり出すとね、今と比べものにならない、要するに、朝、家にパッと来て、令状持って入ってくるわけですから、家中、ひっくり返されてっていう話」という強制捜査を示唆する発言をしたことが、録音データに記録されていたことが分かります。   個人にとっては、起訴されることも強制捜査を受けることも重大な危害にほかなりません。訴追と捜査の権限を有する検察官が求めるとおりに供述すれば、その危害は加えられず、求めるとおりに供述しなければ、その危害が加えられることを示唆することは、記憶に反する虚偽の供述を強要するのに十分なもので、先ほど松田構成員から御紹介のあった証人威迫の事案とも変わらないものです。検察官のこのような発言は、権限を濫用し、重大な害悪を告知して、記憶に反する供述を強要する行為にほかなりません。   この「監察調査の結果について」は、このような発言を不適正としつつ、そのようにして作成した自白調書の内容は真実に合致するものと評価でき、虚偽供述をさせたものではないなどと評価しています。   ここで思い出していただきたいのは、郵便不正事件においても、検察官は、真実に合致する供述をさせるつもりで虚偽供述を強要していたということです。虚偽供述の強要は、それを自覚しながら行われるものではなく、真実を供述させているつもりで行われるものです。捜査段階における取調官の心証を真実とみなし、それと沿うように供述を変更させようとすること自体が、記憶に反する虚偽の供述をさせることにほかならないことが再確認されるべきです。   さらに、「監察調査の結果について」によれば、検察官は、被疑者が直前に供述調書の内容を否認する供述をしたにもかかわらず、これを糊塗する形で一部録音・録画を実施し、あたかも記憶のとおり供述し、供述調書を作成したかのように認めさせる様子を記録したことが、録音データに記録されていることが伺われます。このように、一部録音・録画が不適正な取調べにより強要された虚偽の供述について、あたかも任意に供述したものであるかのように偽装するために使われる危険のあることは、以前から指摘されていたものです。在宅被疑者の取調べの録音・録画については、平成28年刑訴法改正の際、国会の附帯決議でもできる限り行うことが求められていましたが、検察もこれをほとんど行っておらず、そこで不適正な取調べが繰り返されていることが指摘されていました。今回の事件は、被疑者がたまたま録音に成功し、それが公になったことによって、客観的な資料によりそれが裏付けられたものです。これは、録音・録画を法律上義務付けず、運用に委ねることの限界を示しており、取調べ録音・録画制度の対象を、在宅事件を含む全事件に拡大することの必要性を明らかにしていると考えます。   最後に、この「監察調査の結果について」の評価の基準に関してコメントさせていただきます。   「監察調査の結果について」は、証人テストにおける検察官の発言について、一部につき、「より慎重な配慮が必要であった」としたほかは、「不適正な発言とはいえない」という評価を下しています。しかし、検察官の、「検察官から別に不起訴にするって言われていないって言っちゃえば」という発言や、「検事から脅されたわけではないということは言っていただきたい」という発言、証人テストにおける回答について、「NGワード」「OK」などと評価する行為は、先ほども申し上げたような検察官と被疑者であった証人との力関係を考慮すると、証言を検察官の意向に沿ってゆがめるのに十分なものであると思われます。最高検察庁がこれを「不適正な発言とはいえない」と評価していることは、このような検察官の証人テストが広く一般的に行われているのではないかという疑念を抱かせるものです。仮にそうであるとするならば、法廷における証人の証言は、しばしば検察官の意向に沿ってゆがめられ、それによって刑事裁判の事実認定が誤らされていることが懸念されます。 ○中野参事官 事務当局から、先ほどの報告書の取扱いについて若干コメントさせていただきますと、この最高検察庁の監察調査の結果については、あらかじめ、構成員の皆様に御説明したとおり、諸般の事情を考慮した上で、このような取扱いとさせていただいているところですので、御理解をいただきたいと思います。   その他、御意見等はいかがでしょうか。 ○成瀬構成員 今回の最高検察庁監察指導部の報告書は、河津構成員が調査方法の問題点として指摘されたように、両当事者の主張を踏まえて、中立的立場にある裁判所が認定したものではありません。そのため、報告書の結論に対して異論が出てくることもやむを得ないものと思います。その意味で、本報告書には一定の限界があるということを、まず指摘しておきたいと思います。  そのような限界に留意しつつ、本報告書を見てみると、東京地検特捜部による検察官独自捜査事件において、担当検察官による取調べ時の発言及び取調べの一部録音・録画の実施方法が不適正であったと判断されています。この点は、決して見過ごすことができません。   改めて申し上げるまでもなく、平成28年の刑事訴訟法改正の発端となったのは、大阪地検特捜部による検察官独自捜査事件における不祥事であり、同改正は、取調べへの過度の依存を改め、被疑者取調べの録音・録画制度などにより、取調べの適正を確保することを一つの目的としていました。それにもかかわらず、今回、東京地検特捜部による検察官独自捜査事件において再度問題が発生し、担当検察官の取調べ時の発言及び録音・録画の実施方法が不適正と評価されたことは深刻な事態であり、検察には重く受け止めていただく必要があります。   先ほど足立構成員と事務当局のやり取りの中で、再発防止に向けた取組について言及がありましたが、それらの取組を通じて、取調べの適正確保や録音・録画の適正な実施に向けて一層努力されることを強く求めたいと思います。   以上が本報告書に対する私の意見ですが、これは、検察官により不適正な取調べと不適正な録音・録画が行われた一事例であって、この事例のみに基づいて、捜査機関による被疑者取調べ全般を評価することは適切でないでしょう。ただ、被疑者取調べの録音・録画制度に関する第1段階の協議を振り返ってみると、今回の報告書で問題とされた事例以外にも、捜査機関による不適正な取調べが行われた事例は幾つも紹介されたことに気付きます。   第4回会議では、事務当局が、最高検察庁監察指導部による監察案件として、検察官による被疑者取調べに問題があった事例を説明してくださいましたし、松田構成員も、被疑者取調べ監督制度に基づき、警察官による被疑者取調べにおいて監督対象行為が認定された事例を紹介してくださいました。第5回会議では、事務当局が、詳細な判決調査に基づき、供述の任意性が否定された事例や、取調べの違法・不当を理由として供述の信用性が否定された事例を紹介してくださいました。第6回会議では、河津構成員が、取調べにおける検察官の言動が特別公務員暴行陵虐罪の陵虐行為に当たる旨の判断を示した裁判例も紹介してくださいました。   もちろん、このような不適正な取調べが行われた事案は、事件全体の中では一部にとどまるものと思いますが、被疑者取調べの適正確保の重要性に鑑みれば、軽視することはできません。被疑者取調べをめぐる実務の状況には、まだまだ改善すべき点が残されていると思われます。 ○佐藤構成員 この報告書の読み方に関連して1点お尋ねします。本協議会第4回会議の配布資料9に、「最高検察庁における監察の概況」と題するものがありまして、その4ページに、「4 監察結果別件数」という表が掲載されております。そちらに、立件された案件に対する観察結果別の内訳を赤、黄、青、白と色分けして示した項目があるのですが、今回の案件に対する評価は、そのうちの黄色、「同種事案の再発防止に向け、一層の注意喚起をしたもの」に当たるという理解でよろしいのでしょうか。今回の案件が、どの程度の深刻さを持つ事態と評価されたのか、ということを確認する趣旨の質問ですが、いかがでしょうか。 ○中野参事官 一度事務局で引き取らせていただきたいと思います。 ○佐藤構成員 分かりました。もう1点伺いたいことがあります。今般の監察調査では、被告人Aに対して行われた取調べや証人テストの際の各検事の行為について、さきほど御説明いただいた評価がなされたと理解いたしましたが、これに付された別紙では、公判で審理されることとなった、Aを含む12名の受供与者の裁判結果等として、それぞれ、公判における争点やその争点に対する一審判決の判断等が紹介されております。その中には、A以外の受供与者との関係でも、違法な司法取引を理由とする公訴権濫用という形で争点が設定されている事件が含まれているのですけれども、こちらについては、同じ検事は関わっていないと理解してよいのでしょうか。差し支えない範囲で確認をさせていただければと思います。 ○中野参事官 恐縮ですが、事務当局として把握している事実関係は、ただ今御説明した限りということになります。 ○佐藤構成員 分かりました。 ○中野参事官 先ほど、佐藤構成員から頂いた、第4回会議資料の9の赤、黄、青のどれに当たるかという御質問については、黄色であると承知しています。 ○足立構成員 最初の再審の話に戻って、1点御提案なんですけれども、今日、宮崎構成員から、なぜ長期化するのかということについて、検察だけに帰責するのはおかしいんじゃないかという御発言がありました。一方、河津構成員から御提供いただいた資料の中でも、数年、十数年、再審請求審が掛かるようなケースがある。深刻な人権侵害が行われていることも明らかであって、その長期化の原因はやはりきちんと追究する必要があるのだと思っています。   前回の会議でも、横山構成員、それから鈴木構成員も、私伺った記憶があるんですけれども、なかなか長期化の原因についてはデータがないということを御報告いただきました。そして、肌感覚でもなかなか、かなり特殊なケースなので、肌感覚でも長期化の原因は分からないというお話もありました。   なので、ここで御提案なんですけれども、かつて再審請求審に関わった有識者の方、現役の裁判官の方が難しければ、例えば、元裁判官の方でもいいと思うんですけれども、なぜこんなに時間が掛かってしまうのかということについて、ヒアリングをすべきじゃないかと考えます。御検討いただければと思っています。 ○中野参事官 御提案としてお聞きいたしました。   その他いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、第2段階の協議に入ることとしたいと思います。   第2段階の協議においては、第1回会議で整理させていただいたように、第1段階の協議における実務の運用の状況に関する情報共有を前提に、平成28年の刑事訴訟法改正により導入・改正された各制度について、制度ごとに、制度・運用における検討すべき課題について意見交換を行い、これらを整理することが予定されています。   そこで、まずは、第1段階の協議における最初の協議対象でもあり、また、最も多くの時間を掛けて御協議いただいた制度である「取調べの録音・録画制度」についての協議から始めることとしてはどうかと思いますが、そのような進め方とさせていただくことでよろしいでしょうか。             (一同異議なし)   それでは、そのようにさせていただきます。   「取調べの録音・録画制度」については、協議対象を明確にし、よりかみ合った協議を行う観点から、まず、第2段階の協議における検討事項について整理をしておくことが有益ではないかと思われます。   そこで、構成員の皆様から、第2段階の協議において検討すべき事項について、御意見を頂きたいと思います。 ○成瀬構成員 僭越ながら、取調べの録音・録画制度に関して、協議対象とすべき論点の提案をさせていただきたいと思います。   本協議会は、平成28年の「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」附則第9条に基づく検討に資するために開催されているものです。よって、同法の立案・成立に至るまでに行われた、法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会における議論や国会審議における議論の内容を十分に踏まえて、協議対象とする論点を設定すべきでしょう。このような観点から、少なくとも以下の四つの論点については、更に議論を深める必要があると思います。   第1は、取調べの録音・録画制度の対象事件をどの範囲にすべきかという点です。現行法は、裁判員制度対象事件及び検察官独自捜査事件を対象としていますが、これを拡大するかが論点となります。   第2は、今申し上げた対象事件の範囲とも関連して、録音・録画義務の除外事由をどのように設定すべきかという点です。現行法は、四つの除外事由を定めていますが、これを修正するかが論点となります。   第3は、逮捕・勾留されていない被疑者や参考人に対する取調べも、録音・録画制度の対象とすべきかという点です。現行法は、逮捕又は勾留されている被疑者に対する取調べのみを対象としていますが、河津構成員は、第1段階の協議において、在宅被疑者や参考人に対する取調べも対象とすべき旨、繰り返し問題提起をしておられました。   第4に、これら三つの点について、警察における取調べと検察における取調べとで、取扱いを異にすべきかという点も論点になると思われます。 ○河津構成員 ただいま成瀬構成員から御提案のあった検討事項について、私も基本的に賛同いたします。特に、現在、裁判員制度対象事件又は検察官独自捜査事件について逮捕、勾留されている被疑者の取調べとされている録音・録画制度の対象の見直しが、最も重要な論点であると考えます。成瀬構成員が整理くださったように、対象となる事件の拡大のほか、在宅被疑者の取調べ、さらには参考人の取調べについても対象とすることを検討すべきです。   それに加えて、第1段階の協議の結果、取調べ録音・録画制度に関連して、幾つかの課題が明らかになったように思われます。   一つは、取調べの録音・録画の下ですらも、不適正な取調べが行われているということを踏まえ、これをいかにして抑止するかということです。第2回会議で具体的な事例を御報告させていただいたほか、第6回会議では、いわゆるプレサンス事件に関する付審判請求について、検察官の言動が特別公務員暴行陵虐罪にいう陵虐の行為に該当する旨の判断が示されたことも御紹介しました。   当協議会の会議の中では、残念ながら、これまで録音・録画記録媒体を視聴していただけておりませんが、横浜地検の検察官による取調べの録音・録画記録媒体の内容が、東京地裁の民事裁判で取り調べられたほか、北海道警の警察官による取調べの録音・録画記録媒体の内容が札幌地裁の民事裁判で取り調べられ、現在いずれもインターネット上で視聴可能な状態になっています。   もう一つの課題は、黙秘権を行使している被疑者に対して、精神的苦痛を与えるなどの類型の不適正取調べが典型的なものとなっており、これをいかにして抑止するかということです。第4回会議で、日弁連が会員から報告を受けた取調べの問題事例を御紹介した際、その3分の2が黙秘権を行使した被疑者に対する言動についての事案であった旨の御報告をしました。第2回会議で御報告した東京地検の検察官の取調べの事例、第3回会議で御報告した三重県警の警察官の取調べの事例、先ほど申し上げた横浜地検の検察官の取調べの事例及び北海道警の警察官の取調べの事例は、いずれも黙秘権を行使した被疑者に対するものです。   第1回会議では、この協議会で検討すべき論点の一つとして、取調べへの弁護人の立会いに言及いたしました。その際、取調べの録音・録画制度で足りないところが確認されれば、更なる手段として、そのようなことを議論する旨の御提案も頂いたと記憶しておりますが、今申し上げたような点を踏まえ、取調べの録音・録画制度による取調べの適正確保の機能を活かす観点から、次の三つの論点について検討すべきと考えます。   1点目は、黙秘権を行使している被疑者の取調室への留め置きについての規制の在り方です。先ほど申し上げた黙秘権を行使している被疑者に精神的苦痛等を与える類型の不適正取調べは、黙秘する被疑者を取調室に長時間留め置いて行われています。監禁を手段として供述を強要することを憲法38条が許容していないことは明らかですが、これまで留め置きの限界は明確にされてきませんでした。しかし、取調べの録音・録画の一つの機能として、そのような黙秘権行使と留め置きの状況が客観的に記録されることが挙げられます。それを踏まえて、留め置きの規制の在り方について検討すべきと考えます。   2点目は、被疑者が取調べに応じ供述をする場合、弁護人を立ち会わせる権利を保障することです。録音・録画された取調べの下でも、不適正な取調べが行われていることから、更なる手段として、その必要性があることが明確になったと思われます。   3点目は、著しく不適正な取調べについてのサンクションの在り方です。現行の取調べ録音・録画制度は、担保措置として、供述調書の任意性が争われた場合の記録媒体の取調べ請求義務を課しています。第4回会議で成瀬構成員から御質問を頂いて発言したものと記憶しておりますが、不適正な取調べが行われても、必ずしも供述調書を証拠とする必要がなければ、あるいは証拠能力を争われることを避けることができれば、取調べについて司法審査を回避することができるところに、現行制度が有する機能の限界があります。しかし、第2回会議で小林構成員も述べておられたとおり、任意性が争われなければ、不適正な取調べがあってもよいというものではありません。また、憲法は拷問、すなわち自白を得ることを目的として人に重い苦痛を故意に与える行為を絶対的に禁止し、我が国は条約上もそのような行為が行われることを防止するため、立法上、司法上の効果的な措置を採るものとされています。そこで、被疑者に重い精神的苦痛を与えるような著しく不適正な取調べが行われたときに、それに対するサンクションの在り方を検討する必要があると考えます。 ○宮崎構成員 今河津構成員からお話のありました取調べへの弁護人の立会いについて、本協議会の協議対象として取り上げることが許容されないわけではないと考えていますけれども、刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第9条による検討に資するために開催されているという本協議会の趣旨に鑑みますと、まずは、平成28年の刑事訴訟法改正により導入された録音・録画制度を始めとする9項目の制度や附則第9条第3項において明示的に規定されている事項についての協議を優先するべきであり、その上で、必要に応じて取調べへの弁護人立会いについて協議すれば足りると考えております。   その他の2点につきましては、本協議会の趣旨からすると、取り上げるかどうかという問題があり、取り上げる必要性、合理性があるのかを検討した方がよいのではないかと思います。 ○玉本構成員 今の河津構成員から御提案のあった論点のうちの一つ目と三つ目に関してですが、まず、黙秘権を行使した場合の取調室での滞留の在り方については、録画制度とは必ずしも直結しておらず、身柄拘束下における取調べの在り方一般に関わることであろうと思います。   また、著しく不適正な取調べに対するサンクションの在り方も、録音・録画制度と必ずしも関連するものではなく、主に身柄拘束が想定されているんだと思いますけれども、取調べの在り方一般に係る問題だろうと思います。   そうしますと、この当協議会における検討対象となり得るのかというところは措くとしても、少なくとも取調べの録音・録画制度とは切り離して整理されるべきではないかというふうに考えます。 ○河津構成員 先ほども申し上げたとおり、弁護人の立会いに関しては、第1回会議でも、この協議会で検討する必要があると申し上げました。弁護人の立会いは、録音・録画制度とは直結していないわけですけれども、その際には、取調べ録音・録画制度の施行状況を共有し、それでは不十分であるときに、弁護人の立会いについても議論をするという御提案があったものと記憶しております。そして、先ほど申し上げたとおり、第1段階の協議の中では、取調べ録音・録画の下ですらも不適正な取調べが行われているという事実が明らかとなりました。そのことを踏まえますと、弁護人の立会いについても、当然議論する必要がありますし、現行の取調べの録音・録画制度が不適正な取調べの防止のための手段として必ずしも有効に機能していない面がある一方で、黙秘権の行使やその後の留め置きの状況が客観的に記録されるという機能があることを踏まえて、制度の本来の目的である不適正な取調べの防止を達成するために、先ほど申し上げた三つの論点についても検討する必要があるものと考えます。   もちろん内容的な賛否はおありだろうと思いますけれども、議論自体を回避することは、適切ではないと思います。この刑訴法改正は、そもそも不適正な取調べを発端として、それを防止するために行われたものであって、その施行状況を見た上で議論をすることが、この協議会の設置の本来の趣旨であるからです。 ○中野参事官 河津構成員におかれまして、まずは、「取調べの録音・録画制度」の、先ほど、成瀬構成員から御提案いただいた論点を先に議論していくというところについては、御異論はございますか。 ○河津構成員 冒頭に申し上げたとおり、それが最重要の論点と認識しております。 ○成瀬構成員 論点設定とは別の観点ですが、今後、取調べの録音・録画制度に関する議論を更に深めていくに当たって、事務当局にお願いしたいことがございます。   録音・録画制度に関する第1段階の協議において、事務当局や松田構成員、河津構成員から、各種の統計数値や運用に関する資料を多数提供していただき、かつ、詳細な御説明を頂くことを通じて、制度全体の運用状況は、相当程度把握することができました。   他方で、研究者の立場からすると、こうした統計数値を中心とする資料や口頭での御説明のみでは、録音・録画の下での取調べが、実際に、どのような場所で、どのような設備を用いて行われているのかが、若干イメージしづらかったことも事実です。  このような点は、実務家の皆様なら当然に熟知しておられる事柄だと思いますが、本協議会には研究者や一般有識者も参加していますので、今後、取調べの録音・録画制度に関する検討課題をより深く議論していく前提として、各構成員間で、可能な限り、共通認識を得ておいた方がよいと思われます。   法務省のホームページを確認したところ、平成28年の刑事訴訟法改正に先立つ法制審議会の特別部会においては、検察庁や警察署の取調室、録音・録画設備の視察が行われており、その概要も公表されていました。ただ、この視察が実施されたのは平成23年(2011年)ですので、その後の情報技術の急速な発展を踏まえて、録音・録画機器の更新等も行われ、設備状況にも変化があるのだろうと拝察しております。現在の設備状況については、本協議会の第2回会議で、事務当局から検察庁における録音・録画用記録装置等に関する御説明があり、第3回会議で、松田構成員から設置型と可搬型の録音・録画装置に関する御説明がありましたが、それらの装置を一度も見ることなく、今後の議論を進めていくことに若干の不安を感じております。   そこで、やや遅ればせながらのお願いになってしまい大変恐縮なのですが、本協議会においても、特別部会のときと同様の視察を行うことを検討していただけないでしょうか。もちろん、本協議会の議論を停滞させないことが大前提ですので、期日外の視察でも構いません。御検討いただければ幸いです。 ○中野参事官 一度事務当局で引き取らせていただければと存じます。   その他いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、本日頂いた皆様からの御意見を踏まえ、事務当局において、まずは、「取調べの録音・録画制度」に関する検討事項を整理させていたただければと思います。   また、成瀬構成員から御要望を頂いた視察の点については、改めて、構成員の皆様にお諮りしたいと思いますが、そのような進め方でよろしいでしょうか。             (一同異議なし)   第12回会議の日程については、追ってお知らせします。   また、次回第12回会議において、皆様から資料の御提出と御説明を頂く時間を設ける場合には、事前に資料等を御送付いただく必要がありますので、その期限についても併せて御連絡させていただきます。   その場合の資料については、事務当局において確認させていただき、必要に応じ、どのような形で御提出いただくかなどについて御相談させていただくということは、これまでと同様です。   なお、本日の会議の議事については、特に公開に適さない内容にわたるものはなかったと思われますが、本日の会議においては、個別の事案に関する資料も取り上げて御議論いただきましたので、事務当局において、改めて議事内容を確認し、御発言いただいた方の御意向も確認した上で、非公開とすべき部分がある場合には、該当部分を非公開とさせていただければと思います。   それらの具体的な範囲や議事録上の記載方法については、その方との調整もありますので、事務当局に御一任いただければと思いますが、そのような取扱いとさせていただくことでよろしいでしょうか。 ○河津構成員 これまでも何度か申し上げたところですが、議事録の公表まで時間が掛かっていることが気になっております。速やかに公表されるようお願いいたします。 ○中野参事官 御意見については、より一層尽力したいと存じます。   それでは、本日はこれで閉会といたします。   どうもありがとうございました。 -了-