法制審議会 担保法制部会 第39回会議 議事録 第1 日 時  令和5年10月24日(火) 自 午後1時30分                       至 午後6時06分 第2 場 所  法務省20階・第1会議室 第3 議 題  担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(7) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 御出席予定の方で、まだお見えになっていない方もいらっしゃるのですけれども、予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第39回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございます。   本日は委員の松下さん、幹事の家原さんが御欠席と伺っております。また、横山さんが途中で少し離席をされると伺っております。   そこで、まず配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 本日もよろしくお願いいたします。   事前に部会資料35「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(7)」をお送りさせていただきました。後ほど審議の中で事務当局から御説明いたします。 ○道垣内部会長 よろしゅうございますか。   それでは、審議に入りたいと思います。   部会資料35の「第1 集合債権譲渡担保の目的である債権の取立権限・弁済受領権限の所在」ということについて議論を行いたいと思います。この部分につきまして、事務当局において説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、「第1 集合債権譲渡担保の目的である債権の取立権限・弁済受領権限の所在」について御説明いたします。   まず、前提として、個別債権譲渡担保における取立権限及び弁済受領権限については、従前の部会資料において、設定者は債権譲渡担保契約の時点で目的債権の取立権限を失う一方で、担保権者は被担保債権の不履行があったときにその取立権限を取得すること、担保権者は債務者対抗要件を具備している場合に限って被担保債権の不履行前にも弁済受領権限を有するものとすることを御提案しておりました。   【案1.1】では、これらの規律をそのまま集合債権譲渡担保にも適用することとし、特別な規定を設けないことを御提案しています。もっとも、【案1.1】を採用し、設定者による目的債権の取立てについては取立委任の規律に委ねることとした場合には、担保権者は自身の有していない取立権限を設定者に授与できないのではないかとの問題が生じますが、設定者が目的債権を回収して事業を継続することが予定されている集合債権譲渡担保については、設定者に取立権限を付与する必要があるように思われます。また、第三債務者が設定者に対して目的債権を継続的に弁済している場合において、第三債務者の知らないうちに設定者の権限が失われた場合には、第三債務者の利益が害されるおそれがあるため、そのような第三債務者の保護を図る必要もあると考えられます。   そこで、【案1.2】では、一定の要件を満たす集合債権譲渡担保については、設定者に目的債権の取立権限を付与し、担保権者が被担保債権の不履行後に設定者に対して通知をしたときに設定者の取立権限を喪失するものとした上で、その取立権限の喪失は、担保権者が第三債務者に通知をしなければ第三債務者に対抗できないものとしています。その一定の要件については、平成13年判決を参考として、集合債権譲渡担保契約において、設定者が特定範囲に属する債権を取り立てることができる旨などの定めがあることを求めることとしています。   以上について御議論いただければと思います。私からの説明は以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いします。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。特定債権譲渡担保と集合債権譲渡担保とを一つの連続性のあるものとして整理をしていただいて、非常に分かりやすくなっているのではないかという印象を持ちました。その中で、特定の債権譲渡担保に関しては、取立権限を設定者は失ってしまい、そして被担保債権の不履行によって譲渡担保権者が取立権限を取得するという点を大前提とし、それを踏まえた上で、平成13年判決に倣う形で、集合債権譲渡担保で、かつ設定者に取立権限を付与するという合意があれば、その効力を言わば物権的に承認するという構成になるということかと思いました。   その中で、そもそも個別債権譲渡担保に関するこの整理で気になっておりますのは、取立権限自体は設定と同時に設定者からは失われて、不履行になって初めて譲渡担保権者に取立権が発生するということになりますと、その間は一種、空白状態のようになっていて、ただ、通知がなされれば弁済受領権限を担保権者が取得すると、そういう構成にはなっているわけですが、説明としては、弁済受領権限という概念を用いずに、取立権は設定によって、あるいは通知によって譲渡担保権者のところに移るのだけれども、不履行になるまでは取立権を行使できないという説明の仕方をする形で、取立権がどちらかにあるという構成で整理をされた方が簡明な説明となるのではないかと思いました。もちろん譲渡担保権者が取立権を取得しても、不履行時までは行使はできないので、弁済受領権限が認められているのと同じ状態になるということかとは思います。   と申しますのも、集合債権譲渡担保の場合には合意で取立権限を設定者に付与するということになりますので、付与するということは、やはり譲渡担保権者から設定者に取立権限が与えられるという意味かと思いますので、そうしますと、譲渡担保権者に取立権限がないと、それを交付するとか付与するということが観念できないのではないかと思いまして、単なる説明の問題といえばそれまでですが、取立権限がどちらにも帰属していない空白期間を設けて、それを弁済受領権限はあるという形で説明すると、説明し切れない部分があるのではないかと思いまして、その点は少し気になりましたので、まず指摘させていただきました。その点はいかがでしょうか。 ○道垣内部会長 何かありますか。 ○笹井幹事 【案1.2】につきましては今、片山委員からも御指摘がございましたように、この考え方の前提自体にいろいろ異論があるかもしれませんけれども、この資料の前提は、担保権者の方に、今、片山委員が空白期間とおっしゃった間ですね、設定から被担保債権の債務不履行時までは、担保権者も取立権限を持っていないという前提に立っているので、それを設定者に付与するという説明が難しいだろうという考え方を採っています。付与するという説明が難しいので、だからこそ(1)のような規定が要るのではないかという前提で記載がされているということです。その前提の是非については御議論があるかもしれませんけれども、この資料の趣旨としてはそういうことでございます。 ○片山委員 【案1.2】の(1)の定めというのは、これは設定者と譲渡担保権者の間の契約における定めということではあるのですが、それは決して取立権を付与する合意というわけではないという趣旨ですね、そうしますと。 ○笹井幹事 そういうことです。 ○片山委員 なるほど。そのように説明をしなければいけないのかどうかという点は問題かとは思います。逆に、期限が到来すれば取り立てることができるという意味での取立権限は必ずどちらかにあって、それが一方から他方に付与されるという合意だと整理することも十分に可能ではないかとは思いますが、恐らく、取立権限がありながら行使ができない状態というのはやはり観念しづらいということですね。 ○笹井幹事 そうですね。結論的には、今、片山委員もおっしゃいましたように、少しイレギュラーな場面とかいろいろ考えると別なのですけれども、基本的には被担保債権の債務不履行があるまでは行使することはできないということなので、担保権者が自分に支払えということは一応できないということがここでは前提になっていて、それ自体は、質権も同じではないかと思います。そうすると、あるけれども行使できないというのか、それはないというのかということなので、この資料は、行使できないのだから端的に取立権限もありませんという前提になっているのですが、あとは説明の仕方ということになってくるのかもしれません。 ○片山委員 ということになるのかもしれませんが、一応、【案1.1】、【案1.2】、いずれを採っても、原則としての個別債権譲渡担保の在り方は大前提となっているということでよろしいでしょうか。【案1.2】を採る場合も、やはり個別の債権譲渡担保プラスアルファの何か定めがあり、その上で、集合債権においては、更にプラスアルファの定めがあるという前提ということですよね。 ○笹井幹事 はい、そのとおりです。 ○片山委員 分かりました。では、説明だけの問題ということになるのかもしれませんけれども。了解いたしました。 ○道垣内部会長 先ほど笹井さんと片山さんで、取立権限は両方にないのであり、取立権限があるけれども行使が何らかの形で妨げられているというわけではないと考えるのですねということで、そうですねという話だったのですが、別にそうですねと二人で納得する必要もないような気がします。取立権限が抽象的にはどちらかに存在していても、担保合意によってその権限行使が制約されている状態というのは観念できるのではないかと思います。したがって、そこは論理的な構造について決め打ちする必要があるのかというのは若干、伺っていて疑問でした。ただ、多分内容的にそれほどおかしいというお話ではなくて、どういうふうな規定の仕方をするのが論理的にすっきりしているのかということなのかと思いますので、実質的な問題点も含めて、更に御議論いただければと思います。 ○日比野委員 日比野です。前提の話なのか内容の話なのか、私も十分理解し切れていないところがあるのですけれども、【案1.2】の考え方は、第三債務者に譲渡通知をしているというケースを前提としてもいいかと思うのですけれども、この場合ですと、集合債権譲渡担保の設定時に、担保権者としては取立委任をするか否かというのが一つの判断になり、委任しなければ担保権者の方で、受領権はあるので弁済金を受領できる。他方で、委任をすれば設定者は弁済を受領できるということになるのですけれども、被担保債権の不履行がない限りはその取立委任は撤回することができないと、こういう御提案と理解を致しました。   この理解が正しいとしますと、取立権限を撤回することができないという部分につきまして、取立委任をしなければ担保権者が担保の対象債権の弁済金を受領できるということになり、これが判例の理解としては、むしろ原則なのかなと思っているのですが、一旦委任してしまうと債務不履行がないと委任を解除できないというのは、以前にも述べましたけれども、現状の実務の理解とも少し齟齬があるのではないかと思っております。これも以前に発言したことと同じになってしまうのですけれども、取立委任をした上で、設定者の状況によっては被担保債権の延滞の有無にかかわらず、取立委任を解除し、第三債務者に対しては、以後は担保権者に支払うようにと通知するということができる仕組みは、現在でも、既に用いられているものと認識しております。   債権者の立場としては、期限の利益の喪失という債務者にとっても風景が一変してしまうような最終手段を行使することなく、できる限り事業活動の維持と債権の保全を両立させるバランスというのを個別事案に応じて苦心して探っているというのが現場の実情と思います。そういった中で、債務不履行がないと取立委任を解除できないというようなルールが入ってしまうと、それは担保権者の方として余り選択肢の幅がないので、むしろ期限の利益を喪失させるしかないという場面も生じることになってしまうような気もいたします。ただ、それは債務者、債権者、両方にとって余り望ましい帰結ではないかと思います。誰も得しないということになってしまうように思います。   さらに、【案1.2】が今のようなことになるとすると、手間は掛かるが、やむを得ないので、もう取立委任はせずに担保権者の方で最初から受領しようというふうな判断をするインセンティブが担保権者に働いてくるということにもなるように思います。そのようになると、担保権者は受領した弁済金の管理をどうするかといった負担、また設定者は即時に資金が利用できなくなるということになって、資金繰りにも悪い影響を与えるということで、この場合も誰も結局得しないのではないかとも思われます。   したがいまして、少し長くなってしまいましたけれども、不履行がないと委任を解除できないという、この部分についてはもう少し検討いただければと考えている次第です。   別の観点で、被担保債権の債務不履行があれば解除できるというこの考え方、もう1点なのですけれども、被担保債権には約定返済が付されているというケースで、例えば、金額1,000万円で毎月20万円ずつ元本と利息を返済と、融資期間、例えば4年2か月で完済というような融資を例にしますと、債務者の信用力が悪化しているような場合ですと、少しずつ延滞、少しずつ返済が遅れるというのは極めて普通にある話です。そうすると、例えば今月は月末から5日間遅滞して、それで入金になったので延滞は解消したと。翌月また期日に返済できなくて、3日ぐらいたって、それで入金できたので、債務不履行がまたなくなるというような状況を考えますと、遅れている3日間とか5日間は解除ができ、それが解消するとまた解除ができなくなる、とった事態も発生する気もいたしますが、それはやや形式的な判断なのかなとも思います。   これは結局、先ほど述べたことと同じように、そういうことが起きるのであれば、もう期限の利益を喪失するということしか適時適切に回収を図る方法はないみたいなことになってしまうと、これもやはり望ましくないことなのかなと思っておりまして、今申し上げた点からも、先ほどお話しした解除の制約というところは御再考をお願いしたいと考えておる次第です。 ○道垣内部会長 何かございますか。このゴシックの部分の話として、債務不履行がないと取立委任というのは絶対解除できないというのが前提ですか。 ○工藤関係官 今おっしゃられたとおり、ゴシック部分では、債務不履行がなければ担保権者が一方的に設定者の取立権限を失わせることはできないとしておりました。ただ、集合債権譲渡担保権設定契約の締結後に、担保権者と設定者が改めて合意をして、設定者の取立権限を失わせることは、債務不履行がなくともできるだろうと考えておりました。 ○道垣内部会長 日比野さんは二つのことをおっしゃったのですが、前者についてもう少し日比野さんのお考えをお聞かせいただきたいのです。何らかの状況が生じたが、しかし期限の利益は喪失していないとしまして、しかし譲渡担保権者は取り立てることができるとしますと、その取り立てたお金はどうなるのですか。 ○日比野委員 取り立てた資金については、担保権者の方が受領するということは、要するに弁済受領として受けると思うのですけれども、その時点では被担保債権の方の弁済期が到来していれば当然、それは弁済充当して、その余剰金を設定者に返還するということになると思いますし、弁済期が到来していない場合には、直後に到来する弁済期までその部分について保持するということを契約上で定めるというようなことは考えられるかと思っておりました。 ○道垣内部会長 保持するというのは、受け取って自分が使うという意味ですか、それとも別段預金にする義務があったり、信託をする義務があったりするという意味ですか。保持するとは、どういう意味ですか。 ○日比野委員 信託にするというところまでは考えていませんでしたけれども、保持するというか、別段預金でキープするというような意味で考えておりました。 ○道垣内部会長 それは、供託所と同じぐらいの信用力が銀行の別段預金にありますという意思表示ということですかね。私たちは手を付けないですよということを信用してくださいということなのでしょうか。 ○日比野委員 そう言われると、我々を信用してくださいとしか言えないところはあるわけですけれども、ただ、何を前提にすればよいのかというところかと思うのですけれども、担保権者に弁済受領権はあるということですので、弁済受領はできるのだろうと思ってはいるのですけれども、その給付を保持する権限が全くないから、受け取って即時に返さなければいけないというところを、当事者合意で直後に到来する弁済期まで該当部分を保持するということが契約で禁止されるかどうかという話でしょうか。 ○道垣内部会長 そういうふうに逆に債務者に対して債務を負っているという状況になるということですか。 ○日比野委員 そうですね、かなり実務的な話になってしまいますけれども、売掛金が回収される決済預金というのは、差押えがあったり、コミングルが生じたりですとか、いろいろなリスクがあり得るものですので、担保として取得した債権の代わり金を一定の、不当な力の行使ということではなく、融資の返済金に充当するという仕組みを何とか構築したいというのを債権者として考えているということになります。 ○道垣内部会長 融資の弁済に充当するというのはよく分かるのですけれども、するというのは、弁済期が到来しているからではないかと私は思ってしまうものですから、そこをどういうふうに説明されるのかなという気がいたしましたので。ペンディングな状態にするということですかね、債務を負って。 ○日比野委員 はい。 ○道垣内部会長 分かりました。すみません。   後者は何でしたっけ。 ○笹井幹事 取立委任の解除がいつできるかということ、約定弁済の。 ○道垣内部会長 分割弁済の場合か。すみません。 ○日比野委員 すみません、1個だけ発言してもよろしいでしょうか。 ○道垣内部会長 もちろん結構です。 ○日比野委員 先ほど私の発言の後、部会長から法務省さんと質疑があったところで、恐らくお話があったところは4ページの18行目辺り、担保権者が被担保債権の不履行前であっても取立権限を喪失することができるものとすることも考えられるが、の部分の記載に関することだと思うのですが、この部分を合意によって変更することができるというのがこの提案の前提であれば、そのような契約上の規律で対処するということは、当然考えられると思っております。私の発言は、この部分が強行的な規定であって、これに反する約定は無効であるというのがこの御提案の内容であるという理解を前提としておりましたので、一応その点を申し添えます。 ○道垣内部会長 分かりました。   ほかに何かございますでしょうか。 ○阪口幹事 阪口です。質問です。【案1.2】の規律自身については賛成ですけれども、この規律を導入したときに、例えば一般債権者から債権差押えが入ったときの法律関係が個別と集合で違うのか、同じなのかを伺いたいと思います。(1)のできる旨の定めがあるので、設定者が取立権限を持っていますという状態で、その設定者の一般債権者が当該対象債権について差押えをしてきましたという場合です。第三債務者から見て、個別債権の譲渡担保のときの差押えがヒットしているか、していないか問題というのがありますが、平成13年最判の感覚でいうとどちらかというとヒットしていないようなイメージに近いと思います。他方、集合債権譲渡担保について、取立権限が若干物権的なニュアンスで設定者側に少し残るとすれば、これは差押えがヒットしていることになるような気もするのです。そこに違いがあるのかどうか。個別債権譲渡担保と集合債権譲渡担保の、正確に言うと、個別債権譲渡担保と取立てできる旨の定めがある集合債権譲渡担保の二つの局面で、一般債権者の債権差押えのときの法律状態が変わるのか、変わらないのか、もしかしたら説明の仕方の問題なのかも分かりませんけれども、少し教えていただけたらと思います。 ○工藤関係官 今お尋ねの点について、率直に言って事務局として事前に検討していたわけではないのですけれども、ただ、ここで【案1.2】の規律が適用される場合について、何か大きく元々の個別債権譲渡担保の法律構成自体を変えるという意図ではありませんでしたので、一般債権者による差押えは個別債権譲渡担保でヒットしていないと考えるのであれば、ここでもヒットしていないという方向になるのではないかとは思っておりますけれども、ただ、よく検討してはいないところでしたので、また少し考えてみたいと思います。 ○阪口幹事 重ねて質問があります。阪口です。差押えが入ると大抵、失期条項によって期限の利益喪失ということが起きるので、それを利用して設定者の取立権限を喪失させるという方法で担保権者が対処するのは別にして、そういうことが特に行われない場合に、第三債務者からすると、日頃払っている相手に対する債権に関して差押え命令が発令されて、それは元の相手に支払ってはならない、差押債権者に取立権が発生するという命令が裁判所から来るわけですよね。第三債務者がそれを見ると、これは元の設定者に払えなくなって、差押え債権者に払うのかなという気がするのです。うまく表現できませんが、そのように見えてしまうと思います。ただ、法律構成を個別と集合で大きく変えるわけではないと言われたら、そうなのかもしれず、結局それは最初の個別債権譲渡担保のときに債権差押えがヒットしているか、していないか問題が未解決のような状態だから、起きているのかも分かりませんけれども、少し違いがあるような気がして、どうなのかなと思いました。 ○道垣内部会長 どうなのかなと思ったということで放っておいていいような問題ではないような気もしますが、しかし多くの場合には確かに、差押えが起こってしまいますと期限の利益の喪失が起こりますので、当該差押えだけが平常時のように手続が進んでいくというのは一般的には考えにくいのかもしれないですけれども、理論的には、集合動産譲渡担保の一部についての差押えと同じように、それによってがらっと法律関係が変わるのか否かというのは検討する必要が多分あるのだろうと思います。もう少し検討したいと思いますが、ほかにございますでしょうか。 ○横山委員 京都大学の横山です。基本的なことを一つ確認をしたいのですけれども。【案1.1】、【案1.2】では、個別の債権譲渡担保と集合債権譲渡担保とがあることが示され、しかし、集合債権譲渡担保の中にも、平成13年の判決と同様の定めがある場合が別の者として観念されているように見えます。そうすると、御提案では、集合債権譲渡担保、つまり、担保の目的が集合債権であるというだけでは、設定者は取立てをすることができるし、担保は循環する、ということにはならないというのが前提と理解してよろしいでしょうか。動産の譲渡担保のときには、集合動産譲渡担保については、基本的には、担保設定者は処分することができるのが前提となっていたと思うのですけれども、集合債権譲渡担保の場合にはそうはならないと。簡単に言うと、取立てを許諾したとか、取り立てた金銭について引渡しを要しないと合意されていたことがわからないときは、個別の債権譲渡担保と同じような仕組みになるということが前提になっているのかということをお伺いしたいです。基本的なことですけれども、確認をお願いいたします。 ○笹井幹事 【案1.2】の(1)で隅付き括弧を付しておりますのは、正しくその点をどう考えるかということを問題提起しているところです。これまでの部会でも議論がありましたように、取立権限というか、取り立てた資金の利用権限についてどのように合意されているのかをむしろ重視すべきだということだとすると、隅付き括弧の中の部分も含めて、その要件とする必要が出てくるのだろうと思います。   一方で、動産と同じように考えるといいますか、範囲によって特定するということは結局、特定の債権だけが担保になっているということではなくて、その要件を満たす将来債権が発生するということですので、そういったものも含めて全体で一定の担保価値を把握していると考えると、入れ替わっていくことによって価値が一定するということが予定されている、そういう担保権、そういう担保取引なわけですので、それを前提として考えれば、この隅付き括弧内は、あえて合意をしていなくても、その範囲によって特定したということによって、一定の取立権限を設定者に充てておくということも考え方としてはあり得るのではないかと思いました。   今日はそういう意味で、隅付き括弧の中に入れているというのは、これが必要なのかどうなのかということを問題提起する趣旨でしたので、その点も含めて御議論いただければと思っております。 ○道垣内部会長 いかがですか、横山さん。 ○横山委員 ありがとうございます。私自身は、集合債権譲渡担保を集合動産譲渡担保と異なるものと考える必要があるのかどうかは、実務的な必要性によると思います。実務的にやはり債権の場合は違うのだと考えるのであれば、違う扱いになるのかなとも思いますが、理論的には、集合債権譲渡担保について、動産譲渡担保と同じように考えてもいいのではないかと思っていました。しかし、実務的な必要等が分かりませんでしたので、これ以上、どちらにすべきかは、少しまだ分からないという状況です。 ○道垣内部会長 分かりました。 ○片山委員 片山でございます。【案1.2】を採用するという場合に、第三債務者の立場に立ってみますと、設定段階で取立権限を設定者に残すという定めがあるということであれば、取立権限は設定者のところに、ある意味、物権的に帰属しているということになるわけですが、それを第三債務者に対してどのように公示するのかという問題が残されていると思います。登記で第三者対抗要件を具備している場合には、第三債務者に通知がなされないので、消極的な意味での公示がなされており、実際にも、そのまま設定者に払い続けているということで、問題はないのかもしれませんが、467条の確定日付ある通知承諾で第三者との対抗要件を具備する場合には、同時に第三債務者に対しても譲渡担保の設定の通知がなされてしまいますので、爾後は譲渡担保権者に支払わなければいけない、少なくとも公示の上ではそういう状態になっています。ところが、他方、設定者に取立権限を付与する合意がなされ、設定者に物権的に取立権限が付与されているとしても、その通知や公示が別途想定されていないということになると、少なくとも物権的には、第三債務者としては、譲渡担保権者に支払わなければならない、そのような立場に置かれてしまっているということになるのかと思います。   そうしますと、物権的に取立権限が設定者のところにあると説明するとしても、その通知や公示の手当をしない限り、平成13年判決と同じように、何らかの債権的な協力依頼の通知を13年判決と同じようにするという手当てを行われざるを得なくなってしまうことになり、13年判決を十分にクリアし切れていないというような気がいたします。【案1.2】を採用するという場合、第三債務者に対して、設定者に取立権限が付与されていることをどう知らしめるという制度設計になっているのでしょうか、その点を確認できればと思いました。 ○笹井幹事 そこは制度上、何らかの形で手当てをしているというわけではありません。むしろここで制度上保護しないといけないのは第三債務者の利益だと考え、担保権者に弁済受領権限が与えられているということによって第三債務者の利益を確保しようとしています。第三債務者への通知については、設定行為において、誰が取立権限を有するかが合意されると思われますが、その段階では担保権者が交渉力を持っているので、そこで設定者と担保権者の間で通知の内容も含めて取立権限の所在が合意されることになるのだろうと思います。   基本的には設定者が通知をするわけですけれども、設定者としては、自分が運転資金として活用していくということが必要になってくるでしょうから、担保権者との間で取立権限が自分に帰属しているのだというような類型の担保合意がされた場合には、それに従って通知をしていくというインセンティブが与えられるのだろうと思います。仮にそれが何らかの形でされなかった場合には、第三債務者は間違えてといいますか、担保権者の方に払ってしまうということになりますけれども、それは担保権者の方に受領権限を与えておくことによって、二重弁済のリスクからは第三債務者を保護していると、そういう制度設計だと考えております。 ○片山委員 弁済受領権限は譲渡担保権者が常に持っているという前提の制度設計ということなのですね、取立権は設定者に残すけれども。 ○笹井幹事 債務者対抗要件が具備されている限りは。 ○片山委員 なるほど。 ○道垣内部会長 それは個別のときも同じですか。 ○笹井幹事 個別債権譲渡担保のときも同じではありますが、ただ、個別債権譲渡の場合には設定者に取立てをさせるということは余りないのではないかと思います。 ○道垣内部会長 そうしたときには、個別譲渡担保権者は自由に担保権者として取り立てることができるということ、それで被担保債権に充当できると。 ○笹井幹事 受領権限が与えられているということによってですか。 ○工藤関係官 弁済受領権限は被担保債権の弁済期の到来の前後を問わず担保権者にあると、ただ、取立権限は被担保債権の不履行の後にだけ担保権者は持っているという形です。 ○笹井幹事 なので、受領した金銭を被担保債権に直ちに充当できるかというと、そうではありません。ただ、先ほどの議論の続きのようですけれども、被担保債権の弁済期が到来していない以上は充当はできないので、本来的にはそれを返さないといけないのですが、返してしまうと担保が全くなくなってしまうので、そこは返さなくてよいという手当てを作る必要があるのではないかと思っています。 ○道垣内部会長 それは、まだないわけですか。 ○工藤関係官 その点は個別債権譲渡担保の実行を扱った部会資料31でお示ししておりまして、被担保債権の弁済期到来前に担保権者が弁済受領権限に基づいて弁済を受けたときには、弁済を受けたお金は設定者に対して直ちに支払う必要はないと、それは被担保債権の弁済期が到来したときにそこに充当されて、余りがあれば、そのときに設定者に返すという規律を御提案しておりました。 ○道垣内部会長 日比野さんが御説明になったような法律関係が発生するということなのですか。しかし、それがどういう関係なのか今一歩よく分からないのです。日比野さんに1点だけ伺いたいのですけれども、銀行の実務的な需要として、仮に債務不履行だといって全部の期限の利益を喪失させるということまでやってしまうと大きすぎると、しかし、差し当たっては担保の目的になっている債権については譲渡担保権者が取り立てていくというふうにしないと少し危ない状況であると、こういった場合に、今の事務局の御説明も、日比野さんの御説明になったときの前提としても、一旦預かっておくという状態になるという感じだったのですけれども、仮にその部分を約定の話であると考えたとしたならば、約定で取立権限を与えているのを一定の事由のときにはやめることができるのだ、みたいな約定の問題であると考えたときに、その部分については期限前弁済がなされるのだという合意をするというところまではお考えではないですか。 ○日比野委員 ありがとうございます。私も個々のプロダクツというか、多くの案件を理解しているわけではないのですけれども、そういう設計をするということも考えられるかなとは思います。というのは、受領すると同時にもうその資金で弁済して、一定の余剰分については速やかに設定者に交付するということの方がお互いにメリットがあるというか、要するに金利を払わなくてもいいですとか、そういったメリットがあるのであれば、そのような設計をするということは当初の契約で行うこともあり得るかとは思います。お答えになっていますか。 ○道垣内部会長 私は、銀行が預かっておくというのがよくないと言っているわけではなくて、預かっているという法律関係は何なのだろうかというのがどうも、個別の場合にせよ集合の場合にせよ、気になるものですから、それならば弁済充当がきちんとされるというふうなことにしてしまった方が安心立命の境地に達することができるような気がしまして、そういうふうなことは銀行では余りお考えになっていないのかというのを少し伺いたかったということです。 ○日比野委員 分かりました。そういった意味では、十分考えられるとは思います。ただ、話をややこしくして申し訳ないですけれども、例えば、一方で約定返済が付いているものというのが前提だったときには、直近の約定返済分に充当させて、残額については設定者に交付するといった仕組みにしないと設定者の資金繰りに影響を与えてしまいますので、そのようなことも考えられるかと思います。したがって、最終的にはケース・バイ・ケースになると思いますけれども、弁済に充ててしまって返還するということは十分あり得ると思います。 ○道垣内部会長 分かりました。ありがとうございました。   ほかに何かございませんでしょうか。 ○井上委員 井上です。少し前の横山委員と事務局とのやり取りとの関係で、一つ確認というか、質問したいのですけれども、【案1.2】の(1)の隅付き括弧部分について、事務局の先ほどの御説明と、それから、資料でいえば3ページの33行目辺りを見ますと、この隅付き括弧はなくても同じなのだと、当然に含意されているのだということであって、要件を異ならせるつもりではないという御説明と思ったのですけれども、それでよいのでしょうか。   どういうことかというと、私はむしろ、【案1.2】の(1)を普通に読みますと、隅付き括弧がなくてもあっても同じとはもともと思えなくて、というのは、担保設定者が特定範囲に属する債権を取り立てることができる旨の定めだけがあるときは、例えば第三債務者と設定者との間に通常の商取引関係があるなどの理由によって、前面に立つ人を変えたくないと、自分が基本的には支払を受け取りたいと、そういう理由で設定者が取り立てることを当事者は志向しているけれども、それと、受け取った金銭を設定者がそのまま事業の用に充てるかどうかは別の話で、累積的と表現されたりするようなファイナンスですとか、ペイスルーで弁済されるようなファイナンスであれば、受け取った金銭を担保権者に渡すというファイナンスもあり得ると思うので、ここで隅付き括弧がない場合には、そういったファイナンスについても、この【案1.2】のルールを適用することになるのではないかと読めたのです。   そうではなくて、そういうふうに担保権者に回収金を引き渡すようなファイナンスを含めずに、設定者が回収金を自らの事業に利用することを想定し、そういう集合債権譲渡担保についてここでのルールを適用するのであれば、私は隅付き括弧の中をきちんと書いた方がいいと思っています。私自身は、先ほど申し上げたような、累積的に、回収した金銭をそのまま担保権者に渡すようなファイナンスについてまで物権の内容として設定者に取立権限があるという必要はないし、適切でないような気がするので、書かなくてもいいとか書かなくても同じだという意味ではなく、書くことによって違いを持たせて一定の限定を加えた上で、それについてのみ設定者に取立権限が物権的にあるというルールにした方がよいのではないかと思います。 ○笹井幹事 実質を申し上げると、今、井上委員がおっしゃった中では、取り立てて直ちに渡すというような類型のファイナンスがあるとすれば、それはここに含めないといいますか、そうではなくて、取り立てたものを設定者が自分の運転資金なり自分の用途に使うという類型をここに書こうという趣旨でした。先ほど申し上げたのは、それを表現するのに括弧内が要るか要らないかというと、両様考え方があり得るのではないかという趣旨でした。   今、井上委員がおっしゃった、取り立てたものを全部、設定者が取り立てるか、担保権者が取り立てるのかもしれませんけれども、取り立てたものを直ちに被担保債権に充当していくということだとすると、それはもう被担保債権の弁済期が到来しているという扱いになるのでしょうか。私も具体的にイメージができなかったので、もし御教示いただければと思うのですけれども。 ○井上委員 いろいろなパターンがあるのだろうと思いますけれども、例えば、第三債務者との関係では設定者の口座で弁済を受領するけれども、支払を受けたら即日、スイープ口座サービスを利用して担保権者に送金するというパターンもあり得ると思います。ただ、そういう例よりはおそらく、例えば売掛金を担保に取って与信しているような場合は、売掛金の支払は通常はばらばらと行われていくので、その都度即日被担保債権の弁済期を回収額毎に到来させて担保権者に送金するというよりは、一月分の回収金をまとめて、翌月末日あるいは翌々月10日などの日を決めて、その日に実回収額について被担保債権の弁済期を到来させて、その実回収額を全て渡すということはあり得ると思います。しかし、そういうファイナンスは、ここの類型でいうと、「引き渡すことを要しない」という要件には当てはまらないと思っておりました。 ○笹井幹事 繰り返しになるかもしれませんけれども、いずれにしても、設定者が全部回収したものを直ちに担保権者に支払うという類型は【案1.2】の(1)で表現しようとしていたことではなく、先ほど申し上げたように、設定者が取り立てたものを自分で使うという類型を想定しておりました。そこで想定していたのは、一定の弁済期に一定の金額を支払うことが約定されていて、結局幾ら回収できるのかは回収してみないと分からないので、その余剰分といいますか、余った部分については設定者が使えるというようなことを念頭に置いていたので、書き方としてはこういうふうになっているということですけれども、今、井上委員の御指摘もありましたので、表現につきましてはもう一度考えてみたいと思います。 ○道垣内部会長 隅付きパーレンの部分がないと、取り立ててすぐにパススルーというか渡すという場合も含まれてしまって、それはここでいう話とは少し違うでしょうということなのですが、受け取った金銭をすぐに譲渡担保権者に引き渡さなければならないという法律関係のときに、それは設定者がそのような権限を与えられているというところに何か特殊な重要性があるのか、それは実は第三者であっても同じであって、誰かが取り立ててそれを譲渡担保権者に引き渡すという、それだけの話なのか。   もし仮に後者であるとするならば、サービサー法とかの特別な法律があるときはともかく、他人の債権を取り立てるというふうな権限を与えられるというのはいろいろな問題があるわけですので、井上さんが今おっしゃったときに、いや、しかしそういうふうな取り立てて引き渡すという権限が設定者に与えられているときには、やはり少しサービサーの話とは違って特別なのだというような性質決定をするのか、それとも、いや、それは本当はサービサー法とか弁護士法の何とかとか、そういうふうなことをしなければいけない話であって、受領する人が設定者であるということは、そういうふうな取引類型においては余り大した問題ではないという整理になっているのか、どちらなのでしょうか。 ○井上委員 取立権限が設定者にそもそもあるというルールを採った場合は、部会長がおっしゃるとおり、設定者は、サービサーとは違う立場で受け取っているという説明がより容易にできると思います。そうではなくて、担保権者に取立権限がある、あるいは、双方に取立権限がないという状況で、設定者が受け取って、かつそれを即日か一月後かはともかく、基本的には全額を担保権者に渡すというときには、弁護士法上の問題が生ずるというのは一応、理屈としてはあり得ると思います。   実務的には、そういう場合は通常、第三債務者との関係をそのまま維持することを想定して債務者対抗要件を備えずに行われると思いますので、その場合は、設定者は、物権的に取立権限があるからというよりは、譲渡人というか、元完全な債権者であり、かつ債務者対抗要件具備が未了の状態であることを理由として、一般的な第三者がサービシングする場合とは違うと説明することもあり得るのかなと思います。 ○道垣内部会長 債務者対抗要件を具備してしまったのだけれども、しかしやはり設定者がサービサーであるときには、元フルの債権者とおっしゃいましたけれども、元フルの債権者がサービサーであったときには、性質が異なるのだという理屈は立てられそうな気はされますか、それとも、それはやはり立てられない。 ○井上委員 民法の議論ではなくて、弁護士法の議論としてですか。 ○道垣内部会長 どちらでもいいけれども。 ○井上委員 弁護士法の、いわゆるレギュレーションの解釈としては、やはり気持ちが悪いので、できれば債務者対抗要件を備えることは避けたいと個人的には思いますけれども、設定者がそのまま回収するのがスムーズではあるけれども、でも債務者対抗要件も備えたいという理由が何か特別にあったら、それはなかなか悩ましいですね。ただ、やはり完全な第三者とは少し違うので、どういう理由でそれをするかという理由にもよるのかもしれないですけれども、理屈が立つこともあると思います。弁護士法については、どのぐらい厳しい態度をとるかは見解が大きく分かれるのですが、正当性がどの程度背景にあるかも結構大きなファクターになるのかなと思います。 ○道垣内部会長 譲渡の対抗要件が備えられていたとしても、譲渡が担保目的になっているわけだから、普通の債権譲渡が完全に行われた場合や、全くの第三者がサービサーとして出てくる場合と違って、担保目的に限定されない範囲が残っていると考えたら、ほかのものとは性格が違うのだという理屈は、債務者対抗要件を備えても、いえるかもしれませんよね。すみません、少し気になったものですから。 ○大西委員 大西です。よろしくお願いします。今の点なのですが、私が理解したのは、【案1.1】ですと、設定者から担保権者に設定契約によって債権が移り、そこから取立委任をということでの話なのですが、【案1.2】の物権的効力ということは、取立権限が物権的に設定者に移るということになります。この場合の取立権限というのは動産譲渡担保のように換価若しくは取立てし、かつその回収したものを自分の事業に使えると、そういう物権的権限と想定しました。そうすると、括弧書きの「返すことを要しない」という記載は、これはそもそも委任契約に基づいて担保権者のために取り立てるということを前提にするのであれば必要ですが、そうでないのであれば、この文言は要らないのではないかと整理したのですが、いかがでしょうか。 ○工藤関係官 元々部会資料の3ページの31行目から36行目までの部分は、正にそういう趣旨で記載をしておりました。恐らくそこのところをどう考えるかによって、隅付き括弧内の部分が必要かどうかが変わってくるのではないかと思っておりまして、そういう意味で皆さんの御意見をお伺いしたいと思って、隅付き括弧を付していたということになります。 ○大西委員 分かりました。そうすると、確か動産譲渡担保でも換価したものについて返却を要しないというような規定は多分なかったと思うので、そういう意味では、ここでも同様に取立権限だけの記載でいいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   いかがでしょうか。今までの御議論としては、実質的な一定の場面における結論としていかがなものかという話が出たのは、債務不履行があったときに、結局全部についての期限の利益を喪失させて債務不履行にして実行局面にしてしまって、それで取立てが譲渡担保権者にできるというのは、少し話として大きすぎて、譲渡担保権者が弁済期の到来している目的債権だけを取り立てて少し状況を見るというふうなことも認められてしかるべきではないかという話が出たというのと、差押えのときにはどうなるのですかという話が出たと思います。   あと、実質的にある一定の場合には譲渡担保の設定者が取り立てて自分の事業のために使えるのだけれども、ある一定のときになったらそうではなくなるというふうな、そういう全体の枠組み自体は皆さん、そうかなと思っていらっしゃるのではないかと思うのです。ただ、片山さんからも何回か御発言がありましたが、どういうメカニズムだろうというふうなことを考えていくと訳が分からなくなるところがあって、それは実は最初から、事務局の方での報告の中にもそういう話は入っていたと思います。   そうなりますと、大体のあり得べき結論というものを念頭に置きながら、更にもう少し理論的に研ぎ澄ませるということが必要な問題として残っているというふうなことになるのかなと思いますけれども、なお議論が続きますので、加藤さん、お願いいたします。 ○加藤幹事 幹事の加藤です。余り本質的なコメントではないのですけれども、資料の3ページから4ページのところで、仮に取立委任だと構成した場合には、担保権者の代理人として設定者が取立てをするので、顕名が必要であるということなのですけれども、恐らく多くの場合、こういった集合債権譲渡担保を使う当事者は商人なので、商法504条が適用されるので、余り顕名が必要だということは理由にはならないのではないかという、本当に周辺的な感想ですけれども、気になりましたのでコメントいたしました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。債務者対抗要件が備えられていないのに顕名されたら大混乱になりますね。そういう問題があるかもしれませんが。   ほかに何かございますでしょうか。   議論が全くまとまったといえる状況ではございませんけれども、問題点は大分明らかになったのかなという気がいたしますが、それを踏まえて更に事務局に御検討いただくということでもよろしゅうございますか。何かありますか。   今、事務局が最後のまとめをしていくに当たって、皆さんの意見分布を是非伺っておいてほしいという問題があります。それは日比野さんがおっしゃったところですが、4ページの18行目からで、担保権者が被担保債権の不履行前であっても設定者の取立権限を喪失させることができるということ、それは契約なのだからできるよねと考えて、できるというふうに考えるのか、それとも、やはりこれは担保の本質に関わる事柄なので、債務不履行がある前に実行に移れるというふうなのは、それはおかしいのではないのと考えるのか、その辺りのことにつきましては皆さんのお考えはいかがでしょうか。 ○井上委員 その問いに関して、前提として日比野委員に尋ねたいことがあります。先ほど、不履行前に取立権限を喪失させることができない、できるという約定が無効になるとすると大事になってしまうという御説明の中身は、期限の利益喪失になってしまうという意味だと受け取りましたけれども、ここでの事務局の提案によれば、取立権限を奪うことができるタイミングは不履行時であって失期時ではないので、やりようとして、不履行状態にはなっている状況で、失期請求はせずに取立権限を奪うことはできるわけですが、それではやはり足りないということなのでしょうか。実務的に大事にならない形で取立権限の所在を動かす方法が、本当に今の提案のままだとないのかを、確認したいと思いました。 ○日比野委員 ありがとうございます。例えば通常、約定の返済というのは毎月とか、3か月に1回といった返済期限を設定していると思いますが、【案1.2】の御提案ですと、正にその分割弁済または利息の返済日のときに延滞をしていればできるかもしれないけれども、そうでなければ、次の返済日が到来するまではアクションをとることができないという状況が、債権者、担保権者の立場とすると、難しいのかなと思っております。 ○井上委員 そういった場合に、例えば利払日が毎月到来するときに、不払が起こったらすぐに取立権限を奪うというのでは遅いと、いったん不払が起こらなくても、債権者としてはやはりこちらに払ってくださいと言える必要があり、それが言えないと、失期というアクションに債権管理上なりかねないと、そういうことでしょうか。 ○日比野委員 そうですね、失期ということを持ち出したのは、期限の利益の請求喪失の中には、返済の遅滞ということ以外にも幾つか条項が設定してあります。なので、被担保債権の弁済期が到来する前の段階で、担保の対象債権は設定者に払われるのではなく担保権者に支払われるようにしたいと考える状況が起きたときに、不履行が条件だとすると不履行を待つしかない。あるいは、信用状況としてはかなり悪化していると債権者の立場からは思っていたとしても、約定弁済は何とかできたという場合、あと1か月待たないといけない、といった状況が起きるのではないかと。そうだとすると、そこでもう1か月は待てないから、例えば銀行取引約定書の期限の利益喪失条項のどこかに該当するということで失期をさせるしかないのではないか。そういうことになってしまうと、お互いにとって望ましい結果ではないのではないかと考えていた次第です。 ○井上委員 御趣旨は分かりました。ただ、集合債権譲渡担保は、事業者にとって実行により息の根を止められるに等しい状況に追い込まれ得る担保なので、その意味では、失期させるほどではないけれども取立権限を奪いたいというバランスを、うまくとれる状況を想定するのは難しいなという感想を持ちました。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。その点なのですけれども、失期はまだしていないけれども、随意弁済を怠りがちになったとか、いわゆる期中管理の問題として、設定者にこのまま取立権を付与しているよりは、担保権者の方で回収して、もちろん逆に担保権者の方で回収したものを設定者の方に回金して、事業の回転資金として使ってもらうという方向に切り替えるというようなニーズがあってもおかしくないのかなとと思いましたけれども、そういう趣旨ではないのでしょうか。 ○日比野委員 すみません、私が発言してもよろしいですか。 ○道垣内部会長 お願いします。 ○日比野委員 今、片山先生がおっしゃったとおりのことを私としては発言したつもりでした。趣旨が伝わっていなければ、申し訳ありませんでした。 ○道垣内部会長 それで、例えば分割弁済が20回残っているといったときに、現在弁済期限が到来している目的債権の幾つかを取り立てた段階で、ここでひとまずまた様子を見ようということで、もう一度取立権限を設定者に与えるということもあり得るということなのでしょうか。そうでないとするならば、それは期限の利益を喪失させているのと基本的には同じなのではないかという気がするものですから。そうか、別の財産には手は伸ばせないという問題はありますけれども。ごめんなさい、途中で自分で要らないことを言いました。 ○日比野委員 今、私に対する御質問でよろしかったですか。 ○道垣内部会長 はい、お願いいたします。 ○日比野委員 期限の利益喪失と同じ状況かと言われると、金融機関が期限の利益を喪失させるということになるとしますと、恐らく大多数の場合は支払不能と認定されると思いますので、その状態ではないというところは違っているのかなと少なくとも思いましたが、そうではないですか。 ○道垣内部会長 結局、随時に譲渡担保権者が取り立てられる担保に性質変更するという話ですか。 ○日比野委員 随時というか、そうですね、はい。 ○道垣内部会長 ということになると、それはやはり期限の利益の喪失がうんぬんというよりは、井上さんも途中でおっしゃっていましたけれども、譲渡担保権者が随時に取り立てられるというタイプの集合債権譲渡担保というのもあり得るのであり、それに対して、もちろん設定者が随時に取り立てて自分の事業資金に用いることができるというタイプのものもあり得る。そして、一旦後者であるとしたならば、決して性質を変えることはできないというわけではなくて、性質を変える事由というのは、債務不履行なんかというのとは少し違ったトリガー事由を考えることによって、A型、B型としますと、B型からA型にするというふうな権利があった方が、カタストロフィーな状態にしか突入できないというのとは少し違った柔軟性が生まれるのではないかと、そういうことなのですか。 ○日比野委員 はい、そのように理解をしております。 ○阪口幹事 今の問題についてもう少し具体的にイメージしないと、議論が分かりにくくなっていると思うので、例えば病院の診療報酬債権を考えます。これは債務者対抗要件を備えるタイプも少なからずありますので。さて、診療報酬債権を担保に供した場合で、最初の段階では病院側が回収していいですよと合意されていた、ところが病院側の具合がおかしくなってきた、若しくは、先ほど日比野さんから御説明があったとおり、期限の利益の請求喪失事由が別の事情で発生した、例えば差押えなどがあったという場面を考えます。そのときに、直ちに、債務不履行だとか、期限の利益の請求喪失だという手段しかないとすれば少し大変なことになる、そこはよく分かるのです。ただ、ではもう債権者側で取り立てますといっても、実務的には取り立てた金額のうち幾らを設定者に回金するかの話をしないと進まないと思うのです。つまり、今までは病院側、設定者側が取立権限を持っている、しかもここでいうと利用権限もあるということを考えているわけですから、そのお金は運転資金に少なくとも一部は使うことが当然想定されていた。そうすると、単に銀行がもう取立権限をこちらに持ってきますというだけでは実は収まらなくて、そのうち幾らを返すのかということを協議して合意しない限り、結局カタストロフィーは回避できていないと思うのです。   そうすると、先ほど工藤関係官からも御説明があったとおり、実務的には結局そこは合意するのではないですかということになります。つまり、請求喪失事由があるからといって、俺もお前の首根っこをきゅっと締めたくはないと、締めたくはないからどうするのだというと、では私の方が回収します、でもそのうちの何割かは君に返しますと、結局そこを合意で処理しているのが実務ではないかと思うのです。そうすると、4ページの23行目辺りかな、いつでも一方的に取立権限を失わせることができるとする必要はなくて、合意で処理できる場合がほとんどなのではないかとは思います。ただ、合意できない相手のときにどうしても期限の利益を喪失させない状態での取立権限が欲しいのだと言われたら、その部分が議論の対象として残るのだと思うのだけれども、多分そのような権限を認める必要はなく、普通は、そこまで行かずに処理できているのではないかと思います。 ○道垣内部会長 日比野さん、何かそこについてお考えはございますか。 ○日比野委員 ありがとうございます。今、阪口先生がおっしゃったことは、そのとおりだと思っておりまして、今ここで議論されていたようなことがもし発生したときには、どのように資金をいつまで、保持というと、また部会長に怒られるかもしれませんけれども、保持した上で幾らを返すのかということは、設定契約であらかじめ定めておくと、そういう仕組みをとるということなのだろうと理解をしております。   なので、合意によって処理するということ自体は全く違和感はないのですけれども、繰り返して恐縮ですけれども、不履行前であったとしても設定者の取立権限を喪失させるというか、その取立権限を担保権者の方に移してくること自体が強行法規の制約を受けるとすると、今、阪口先生がおっしゃられたような合意ということ自体もできなくなるということになるのかなと思いましたので、それについては再考いただけないかということでお話をしているということになります。 ○阪口幹事 阪口です。私が申し上げたのは、当初の合意ではなく問題発生後の合意のことですので、そこは日比野さんの御意見と私の意見は少し違うとは思います。 ○道垣内部会長 発生時合意のときにはやはり、強行法規ということはあり得なくて、ある種、期限の利益を喪失させますよといって、ちらつかせながらというと語弊がありますが、そういうのを最終手段として持ちながら、では取立権をこれだけ授与して、逆にこれだけのものは設定者に返すというふうなことで、再建といいますか、やっていきましょうと、そういうことであるならば、別段ここにおいて、法的な意味における取立権限の剥奪というのは債務不履行がなければできませんというふうなことになっていても、別に差し支えはないともいえないわけではないのかもしれないのですが、いずれにせよおっしゃっているような話合いで調整をするというのができるような状況というのは、どうも必要なような気がいたします。それを踏まえてどういうふうな枠組みにすればいいのかを少し事務局にも検討していただければと思います。   ほかに、理論的には絶対おかしいと、そういうことは別にないですよね、やり直せばいいわけですから、その意味では。よろしゅうございますか。   それでは、問題点は大体出そろったと考えられますので、それを踏まえて更に事務局に再検討していただくというふうにしたいと思います。   時間の関係もございますので、次に「第2 実行後に生じた債権に対する担保権の効力」というのと、「第3 倒産手続の開始後に生じた債権に対する担保権の効力」についての議論をしたいと思います。事務当局におかれまして、部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、「第2 実行後に生じた債権に対する担保権の効力」について御説明いたします。   ここでは、集合債権譲渡担保について、実行後に生じた債権に対する集合債権譲渡担保権の効力を制約する規定を設けるか否かを問題としています。【案2.1】は、いかなる債権に担保権の効力が及ぶかについては、集合債権譲渡担保契約において特定範囲をどのように定めたかという合意の内容によることとし、公序良俗違反等の一般条項による制約を除き、その効力について特段の制約を設けないものとする考え方です。この考え方は、集合債権譲渡担保契約においては、将来生ずべき債権は設定者から譲渡担保権に確定的に譲渡されており、各債権がそれぞれ譲渡担保権の目的になっているという理解からは、その一部について実行がされても、その他の債権についての譲渡の効力には影響しないと考えるのが自然であることなどを根拠とするものです。   これに対し、【案2.2】は、担保権者が実行に着手した時点よりも後に特定範囲に属することとなった債権には担保の効力が及ばないとする考え方です。この考え方を採用する場合の具体的な基準時については、第1において【案1.1】を採用した場合には、担保権者が第三債務者に対して債務の履行を求めた時と、【案1.2】を採用した場合には、設定者に対する通知の到達時と担保権者が第三債務者に対して債務の履行を求めた時のいずれか早い時とすることが考えられるため、これらを隅付き括弧で示しています。   第2についての御説明は以上です。 ○淺野関係官 続きまして、7ページの「第3 倒産手続の開始後に生じた債権に対する担保権の効力」について御説明いたします。   第2では、平時において集合債権譲渡担保権の実行がされた場合におけるその効力の問題を取り扱っているのに対して、この第3では、倒産手続開始後における集合債権譲渡担保権の効力の問題を取り扱っております。   まず、1の本文では、中間試案の【案19.1.2】から【案19.1.4】までに沿って具体的な規律を御提案しております。   まず【案3.1】は、中間試案の【案19.1.2】に沿ったもので、倒産手続開始時において発生している目的債権の価額を極度額とする定めがあるものとみなすもので、【案2.1】と【案2.2】のいずれにも結び付くと考えられます。   【案3.2】は、中間試案の【案19.1.3】に沿ったもので、倒産手続開始後に実行に着手した場合には、その後に発生する債権には集合債権譲渡担保権の効力は及ばないこととするものです。他方で、倒産手続開始と実行着手の先後が逆であった場合、すなわち実行に着手した後に倒産手続が開始した場合には、倒産手続開始後に発生する債権に集合債権譲渡担保権が及ばないこととするのが相当であると考えられることから、規律としては、倒産手続開始時又は実行着手時のいずれか遅いときより後に発生した債権に集合債権譲渡担保権が及ばないという御提案としております。   もっとも、第2において【案2.2】を採る場合には、【案2.2】のほか特段の規定を設けないことによって、中間試案の【案19.1.3】に沿った規律を実現することができると考えられることから、この点を注記しております。   この【案3.2】につきましては、倒産手続開始後に倒産財団の負担により担保目的債権が増加した場合に、それが担保権者への弁済に充てられてしまうという問題があり、それに対する設定者側の対抗手段として、現行法上認められている担保権実行手続中止命令や担保権消滅許可以外の手立てを認める必要があるかが問題となります。また、実行に着手がされないまま更生手続が開始した場合には、集合債権譲渡担保権は更生担保権として手続外での権利行使が認められないことから、何らか特別な規定を設ける必要がないかも問題となります。   【案3.3】は、中間試案の【案19.1.4】に沿ったもので、倒産手続開始によって設定者は取立権限を失い、その一方で集合債権譲渡担保権はその後に発生した債権に及ばないこととするものです。この案につきましては、設定者が取立権限を失うことにより事業の継続が困難となるのではないかという問題があります。   【案3.1】から【案3.3】までのいずれの案につきましても、設定者に破産手続開始の決定、再生手続開始の決定、更生手続開始の決定又は特別清算開始の命令があった場合に適用されることとしております。これは、再建型の倒産手続においては設定者の事業の再建の観点から、清算型の倒産手続においては手続開始時における設定者の財産を適切に分配する観点から、担保権の効力を制限する趣旨です。   1のただし書では、中間試案の【案19.1.1】のように、倒産手続開始後に発生した債権についても集合債権譲渡担保権の効力を及ぼすことができる場合について、その要件を定めるのではなく、当事者の合意に委ねることとしています。これは、プロジェクトファイナンスのように、債権を発生させる事業の価値を評価することによって多額の資金の融資を可能とするファイナンス手法があるとの御指摘を踏まえたものですが、清算型の倒産手続においてはそのような効力を認める必要はないと思われることから、再生手続及び更生手続に関してのみ当事者の合意を認める案としております。   もっとも、当事者の合意の効力が無制限に認められてしまうと、設定者の事業の再建にとって支障になり得るほか、一般債権者が害される可能性も否定できません。そこで、2では従前、費用に関して検討されていた仕組みを参考に、再生債務者等又は更生手続における管財人が一定の債権を弁済した場合には、それに係る償還を被担保債権に優先して行うという案を御提示しております。   ここで対象とする一定の債権としては、再生手続又は更生手続における共益債権に加えまして、民事再生法第85条第5項又は会社更生法第47条第5項に基づき弁済許可を受けた再生債権又は更生債権を規定することを御提案しております。   以上について御議論いただければと存じます。私どもからの御説明は以上です。 ○道垣内部会長 どうもありがとうございました。   それでは、両方絡んでいますので、特にどちらの方からということではございませんので、御自由に御議論いただければと思います。 ○日比野委員 第3の2の中間試案の【案19.1.1】です。第3の2のところで、先に償還を受けることができるというのは共益債権と弁済許可決定を受けた債権ということだと思いますけれども、この記載からしますと、例えば担保権の負担のない債権との按分比例というような負担ではなくて、再生債務者あるいは更生会社全体の共益債権、弁済許可決定を受けた債権の方が優先するというようなことになると理解しておりますが、そうだとすると、少しお話が出たかもしれませんが、全資産担保を取得しているようなケースでないと、事実上、累積型というコンセプトの下で手続開始決定後も一定の担保権の効力を享受するということはできないということになるように理解を致しました。   金融機関における累積型の担保取得のケースは、特に再生型エネルギーの発電事業のものが中心かなと思いますけれども、法人が営む事業の一つとして営んでおり、これに対して累積型というコンセプトの下でファイナンスを供与しているというケースも相当数あると理解しておりますので、これらの実情を踏まえて、もう少し適切に累積型の枠組みというのを切り分ける、あるいは、いわゆる共益債権とか弁済許可決定を受けた債権というのを、全てを担保付きの負担ということではなく、ほかの債権とある程度按分するというような考え方というのができないかと思いまして、意見を述べさせていただきました。 ○道垣内部会長 そうなると、具体的な比率としてはどうなるということなのですかね、今のお話というのは。 ○日比野委員 具体的な、按分のということですか。そうですね、ここはかなり難しい規定の仕方になるのかなという気はしますけれども、一つの考え方としますと、例えば再生手続あるいは更生手続にこの枠組みを限定するということですと、再生計画とか更生計画というものが策定されて、そこではきちんと一定の利益が出るというコンセプトというのが計画の中で策定されるということかと思いますので、そこで出てくる数字を利用して按分を考えるといったことは、一つの考え方としてはできるかもしれないなとは思いました。ただ、それがうまく実現できるかどうかということについてまで深い検討はできておりません。 ○道垣内部会長 分かりました。 ○大澤委員 大澤でございます。今の2のところについて、もう少し考えたいと思いました。2のただし書によるターゲットとなるものは、いわゆるプロジェクトファイナンスといわれるような、先ほど正に日比野委員からも御指摘のあったような全資産担保あるいは全事業担保みたいなものの際にワークする定めだと思っております。   そうしますと、逆に(1)と(2)で今、共益債権とか更生債権だけが入っておりますけれども、一般優先債権とかそういったものが入ってこないのかなと。そもそもこの集合債権譲渡担保の中で全資産担保を語るのが、少し本来はおかしいのかもしれないですけれども、というのは、集合動産譲渡担保は確かにプロジェクトファイナンス等でも使われますけれども、それ以外の普通の事業会社の一つのまとまりの担保としても使うわけですから、そういった意味でやや、2でどう縛れるのかという問題はあるのですが、そもそも、もしプロジェクトファイナンスを目的とするのだとすると、先ほど発電事業というようなお話もありましたけれども、どういう入りがあってどういう出があるというのは元々全部管理されているようなもののタイプにこの2が使われるのだとお考えいただくのだとすると、経費等というものはある程度見えているものであるべき、将来に関してもずっとそうなのですけれども、というものなので、そもそも2の(1)と(2)だけで足りるのかなというふうに、実務的にも少し思ったというのはございます。   それから、プロジェクトファイナンスをうまく定義しづらいから、こういう形で形をうまく整えられたのだろうという気もしないではないのですけれども、もしこういった合意がある場合において弁済をしたときはとして、担保権者より先にその償還を受けることができると書いておられて、結局これは、担保目的債権の代価を担保権者が回収をして、それをこの共益債権等で先に払ってというようなことを担保権者さんがもしするのだとすると、それはもう実務となかなか合わないのではないかとも思っております。   というのは、やはり銀行さんあるいは金融機関さんの中で、何が共益債権で、その金額はどうだということを実務の中できちんと把握している、できるかどうかという問題と、あと、お支払をしていくという意味での、速やかなお支払というものがないとなかなか事業というのは回っていきませんけれども、担保権者さんの方で全ていきなり引き取って、支払をそこで自分たちでフローを組み直すということになるのだとすると、それは強烈な負担ですし、また、事業の遂行という意味でも難しいと思いますので、もしこういう2のような枠組みを作るのであれば、設定者の方で全部回収して、それを共益債権者なり、いろいろな段階で、別除権協定の中等でもよくやっておりますけれども、お支払をしていってというような枠組みにしないと、なかなか難しいのではないかとも思っている次第です。   そういった意味で、2の枠組みの範囲と、あとその主体、誰がこの償還に向けての作業をするのかという二つの点で、もう少し御検討いただければとも感じた次第です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。何人かからお話を伺った後に、事務局にまた御意見を伺いたいと思いますが、山本さん、お願いいたします。 ○山本委員 今の大澤委員の発言の部分ですけれども、私も第3の2のような枠組みを作るときに、やはり一般優先債権のことは気になりました。そもそも会社更生で、破産もそうなのですが、一定の範囲で手続開始前の労働債権及び租税債権については財団債権ないし共益債権にしているわけで、会社更生との関係では(1)のところに開始前の労働債権、租税債権というのは一定の範囲で入ってくるということになるのだろうと思います。   当然、民事再生を作るときもその点は考えたわけですが、民事再生は一般の優先権がある債権は全部手続の外に出すという枠組みが、これは組分けをしないで手続を簡易化するという観点だったわけですが、これが先に決まっていたので、したがって労働債権とか租税債権を共益債権にするかどうかというような議論は基本的にはせずに、もう一般優先債権、それは共益債権と基本的には手続上、同じ扱いがされるので、それで問題ないでしょうということで、こういう規律になっているのだというのが私の理解です。   そうだとすれば、もちろん民事再生と会社更生である程度凸凹ができるのは仕方がないかとは思うのですが、ここはかなり大きな凸凹で、民事再生の場合だけ手続開始前の労働債権なり租税債権が一切考慮されない、ここの2から除外されないというのは、私はやはりかなりバランスが悪いような気がします。   しかし、他方で一般優先債権全部抜くとすると、今度は逆の凸凹ができることになるわけですけれども、そこをどう考えるのかというのは少し考える必要はあるのかもしれません。一般優先債権を全部抜くのか、あるいは会社更生で129条とか130条で租税とか労働を共益債権としている範囲だけで抜くのか、それもかなり手続が複雑になるような気がしますけれども、そこは少し考えないといけないのかなという気もしますけれども、少し今の規律は、そういう民事再生における一般優先債権の性質からすると、そごがあるような規律ぶりになっているというのが私の印象です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○村上委員 今の大澤委員と山本先生と同様のお話なのですけれども、今回御提案いただいている第3の【案3.1】、【案3.2】、【案3.3】、いずれの案も別段の合意があれば例外を認めるという案になっております。資料の説明では、別段の合意はプロジェクトファイナンスのような手法を念頭に置いて提案されたという旨が示されております。しかし、単に当事者の合意に委ねますと、担保権の効力を限りなく広く設定するというようなケースも排除できないのではないかと思われます。そうした意味で、ただし書による対応は賛成し難く、ほかの選択肢を考えることはできないのかと考えているところです。   その上で、第3の2について述べますが、2は再生又は再生手続開始決定によって固定化が生じない場合において、一般債権者の保護につながるように検討された仕組みのようですが、その償還を受けることができるとされている点について、どのような手続で実現されるのかというところがよく分からなかったところでございます。   また、これは繰り返し申し上げておりますが、事業の継続のためにも労働者の協力が必要でありまして、民事再生の場合における一般優先債権についても、特に労働債権について申し上げておりますが、対象に含めていただくことが必要ではないかと考えております。 ○道垣内部会長 ほかにございませんでしょうか。ここまでの辺りで、事務局、出された問題点についてどのようにお考えになるか、何か御説明があればと思いますが。 ○笹井幹事 そうですね、第3の2の(1)、(2)について、もう少し広げるべきではないかという御意見が複数あったかと思います。第3の1については別段の合意を許容して、2で、別段の合意がされた場合にはこういった負担がありますよという仕組み自体が、今回初めてお示しするということもありましたので、(1)、(2)については、差し当たりは一番固いところといいますか、限定的にお示しをしておりましたけれども、ここは、今日の御議論を踏まえて改めて考えようと思っていたところです。   それから、大澤委員からは設定者が引き続き回収できるようにすべきであるという御指摘があったかと思います。この点については、別除権ですので、第3の2が適用される場面で、設定者が直ちに請求できるというのは、原則としてはなかなか難しいのかなとは思っていたところです。ただ、例えば実行のときに禁止命令を使うとか、そういったことが考えられないかは問題になると思います。第3の2が適用される場面では担保権者は累積的に取っていることになりますので、本当に不当な損害が生じないような形で中止命令なり禁止命令なりが発令できるのかという問題があるのかなと思ったのですけれども、例えばそういう方向が考えられないかというのは、少し事務当局の中でも検討していきたいと思っております。   あと、村上委員の方から償還の手続についてどうなるのかという御指摘があったかと思います。ここは今の大澤委員に対するお答えと共通するところがありまして、基本的には別除権という扱いですので、担保権者がまず回収をしてから、そこから回収を図るというのがこの第3の2の仕組みとしては原則的な形になっておりますけれども、今申し上げたような形で、設定者がまず取り立てていくという方向性が考えられないのかというのは、一つの検討課題かなとは思っております。 ○道垣内部会長 ほかに御発言はございませんでしょうか。 ○大澤委員 何度も申し訳ありません。今の2のところではなく、第3の1のところのお話でもよろしいでしょうか。 ○道垣内部会長 もちろん結構です。 ○大澤委員 これは少し質問させていただきたいのですが、【案3.1】、【案3.2】のところについてです。まず、【案3.1】については従前の【案19.1.2】に沿った案ということで、かつ極度額とする定めがあるものとみなすとお書きいただいたので、大分分かりやすくなってきたと感じております。ただ、極度額とみなすとなったときに、これはもしかしたら第2の方とつながるのでしょうか、極度額に満つるまで担保権者は再度実行が何度でもできるということになるのでしょうか、それとも、そういうことを考えずに、極度額の定めがそこで上限が決まり、開始決定後に実行というときには結局、【案2.2】の平場の議論と似てくるのかもしれませんけれども、1回だけの行使というような話になるのでしょうか。   今、第3の2のところで多分、累積型といったらまた怒られてしまうかもしれないですが、特殊な集合債権譲渡担保の扱いをここでうまく処理しようというお考えだったと思うので、【案3.1】から【案3.3】に関しては、いわゆる循環するタイプの集合債権を担保に取って、担保権者がその価値を評価するというようなことをやるのだと思うのですが、そういったときに金融機関さんが仮にそういった循環型の担保を取るときに、それが何度も永遠に取れるからといって担保価値を評価するのではなくて、ここまでで多分このぐらいの形で担保が取れる、それで掛け目を掛けるというようなことをやっておられるのだと思っているので、【案3.1】を採った後の極度額の定めがあるものとみなすとした後の実行というのも結局、1回だけなのかなと考えていたのですが、そこはどのようにお考えなのかを少しお伺いしたいと思いました。   すみません、長くなったので、一回ここで切らせていただきます。 ○笹井幹事 そこは正に第2のところでどう考えるかということだろうと思います。今、大澤委員がおっしゃったのは、第3の1の別段の合意がない場合というのは、ある一定の実行時点でのということだと思いますけれども、その時点での担保価値を把握して、その掛け目を掛けてということだと理解をしたのですが、恐らくそういう考え方を採るならば、第2の【案2.2】を採るということなのだろうと思います。   【案2.2】を採るとすると、一度その集合債権について実行すれば、実行着手後に発生したものにはもう及ばないということになってきて、それは平時からそうだし、倒産においても当然そうだということになりますので、それと【案3.1】を組み合わせた場合には、極度額が加わっているだけで、1回の実行に当たって極度額を下回った分しか取れなければ、それで終わりということになります。   【案2.1】については、1回しか実行できないという制限を付けないことになりますので、その場合には極度額の制約だけが掛かってくるということになりますから、ずっと永遠に取れるというわけではないのだけれども、しかし一回性ということの制約は受けずに、倒産開始時の担保価値に相当する額を回収するまでは、複数回の実行もできるということになろうかと思います。 ○道垣内部会長 どうぞ、お続けになってください。 ○大澤委員 ありがとうございました。平時と倒産時を必ず一緒にする必要はないのかとも思いますけれども、先ほど申し上げたとおり、そういった一定期間での循環型のような集合債権譲渡担保を想定できる以上、1回という【案2.2】と【案3.1】の組合せになるのかなとは思いました。   すみません、もう一つだけ質問させてください。【案3.2】の方で、【案19.1.3】に沿った案ということで、ゴシック体の方ではなくて8ページの一番下の方で、倒産手続開始後に担保目的債権が増加した場合に、それが担保権者の弁済に充てられてしまうという問題がありますよと、そこに事務局の方でも、担保実行中止命令とか消滅許可のお話を書いていただいておりますけれども、その最後の方に債務者側の固定化権限ということも書いていただいております。余り今まで議論はなかったかなと思いますけれども、こと倒産において、平時とは少し異なったものという意味で、倒産秩序の観点から固定化権限ということも考えられても、確かになと思ったのですが、ただ、ここについては、などとだけ一言書いていただいているので、固定化の要件であるとかということについては、まだ事務局の方としては御検討されているわけではないという理解でよろしいのでしょうか。 ○笹井幹事 そうですね、今特段、何らかの要件まで具体的に考えているわけではありません。ですので、もし何か御意見があれば、そこも含めて御議論いただきたいと思っておりますけれども、ただ、若干補足しますと、こういう新しい提案をしましたのは、結局【案3.1】から【案3.3】がどういうふうに対立しているかというと、時点を倒産時に決めるのか、それとも、そこでは固定化せずに、何らかの別のトリガーを待つのかという問題と、その別のトリガーを待つ場合に、誰にそれを引かせるかという問題の組合せなのだろうと思います。   【案3.2】を採った場合、それは実行時に固定化するということですので、先ほど申し上げた枠組みでいうと、最初の問題については倒産時では固定化しないという選択肢を採り、固定化のトリガーを担保権者が引くということになるわけです。このような純粋な【案3.2】では担保権者だけが固定化のタイミングを決められることになるので、武器を対等にするという発想から、設定者、管財人にも固定化の権限を与えるというように修正し、倒産時に入った以上は同じ武器にしましょうというのが修正案の発想でした。   そういう意味でいうと、設定者側の固定化権限に一定の要件を掛けてそこを絞るということは、武器対等という発想からは離れていくのかなという感じがしておりまして、そういう意味では広く設定者側が固定化のタイミングを決定する権原を持つというような、大ざっぱに言うと、そんな制度になるのかなと思っていたところです。 ○大澤委員 御説明ありがとうございました。 ○道垣内部会長 大澤さん、差し当たってよろしゅうございますか。 ○大西委員 大西です。第3の1の【案3.1】です。ここで、債権の価額を極度額の定めとするとあり、これについては基本的に賛成なのですが、会社更生の場合は開始決定時に評価額が固定されるので、極度額という概念とは少し相入れないのではないかと思いました。細かいことですが、いかがでしょうか。   それから、2点目なのですが、第3の2のところで、先ほどからいろいろ御議論がある中で、まず一つは、民事再生の場合も、共益債権の他、労働債権を含む一般優先債権をも対象にすべきだと思います。ただし、一方で、日比野さんの御指摘のように、例えば、再エネのプロジェクトファイナンスがあって、そこで特段の合意によって、その後の回収金にも担保権の効力が及ぶ一方で、会社に別途資金がそれなりにある場合も想定されます。このような場合、この規定によると、担保権者の回収金から先に共益債権及び一般優先債権の弁済原資を支弁することになりますが、しかしながら、他にも会社に相当程度の弁済資金があるような場合には、その資金規模によってではありますが、弁済原資に応じたプロラタで共益債権及び一般優先債権の弁済原資を支弁する等の方法が、穏当な感じもします。この辺の充当の考え方については、担保権者の回収金から先に充当していくということなのか、それとも、そうではないのかについて、どのようにお考えなのかをお伺いしたいと思います。 ○笹井幹事 極度額が会社更生のときには余りフィットしないのではないかという御指摘は、そのとおりかなというところもあるのですけれども、ただ、会社更生の評価に当たって、担保権がどこまでカバーしているのかによって、そこは変わってくるのだと思うのです。ここはいろいろな考え方がそもそもあったところですけれども、例えば、会社更生なので実際に実行することはできないわけですけれども、しかし、発生する債権に担保権が累積的に及んでいく、それだけのものを担保価値として把握しているということを前提として評価しましょうという立場も今まではあり得たわけです。これに対し、【案3.1】を採ることの帰結というのは、倒産開始時、会社更生の手続の開始時における財産の価値をもって評価をする、それ以降の財産について担保権は及んでいかないということを前提に評価をしてくださいということになるのだろうと思います。   そういう意味では、会社更生に関する限りでは【案3.1】と【案3.3】で変わらないのだろうと思いますけれども、ここは再生とかも含めて一般的な形で案を分けているので、このような表現になっているということです。   それから、第3の2についてですけれども、ここは財団にほかにどれだけの規模があるのかは考慮せずに、共益債権であるとか、あるいは今日の御議論の中では一般優先債権も含めるべきではないかという御意見が多かったと思いますけれども、そういったものについて、プロラタではなくて、管財人とか再生債務者の判断でそこから償還を受けることができるということを想定したものとなっております。 ○大西委員 ありがとうございます。そうすると、会社更生においては、いわゆる循環型ではない、累積的な評価額については、今まではそういうキャップの概念はなかったのだけれども、これによって新しくキャップが設定されるということになるのでしょうか。 ○笹井幹事 そうですね、【案3.1】を採るというのは、正しくそういうことだろうと思います。 ○大西委員 なるほど、分かりました。私はこの会社更生の場合は、この累積もいわゆる、IRRのように、時間概念で割り引いて何か計算して、そこで評価額が決まるという考え方もあるのかなと思っていました。お考えとしては理解しましたが、本当にその考え方で良いのか、と少し思いました。   2についてはお考えは分かりましたが、私は、会社に残っている資金量によっては、逆に担保権者に過度の負担を強いるケースもあるのではないかと思うので、その辺のバランスの考慮も必要なのかなと考えた次第です。 ○笹井幹事 バランスが必要だというのは、御指摘の趣旨は非常によく分かるのですけれども、第3の2の意図について御説明しますと、【案3.1】から【案3.3】について、全体的に類型化して類型ごとに異なる考え方を採るということを前回は考えていたのですけれども、なかなかその類型化が難しいということで、【案3.1】から【案3.3】までのいずれを採るにしても別段の合意ができると、先ほど村上委員からも御指摘いただいたように、こういう類型についてだけはこういう別段の合意ができますよということではなくて、当事者の合意によって別段の合意ができるということになっています。   ただ、これも村上委員から御指摘があったところと重なるのだと思いますけれども、そうすると、担保権側としてはたくさんもらえる方がいいので、担保権設定時の力関係とかを考えると、むしろたくさん取るという方向に流れていきかねないということだろうと思います。そういう意味では、そこもある種のバランス感覚だと思うのですけれども、累積的に取れるということになる以上は、一定の制約を課さないと、累積的なタイプのものが一方的に担保権者に有利なものになってしまうということもあるので、そういう意味もあって、【案3.2】では、財団にほかにどれだけの余力があるのかということを考えずに、こういう規律が及ぶということになっているということです。   その結果として、どういう場面でこの累積的な担保制度というのが意味を持ってくるかというと、財団全体についての共益債権などを負担しないといけないということになってくるので、それにもかかわらず担保権者が累積的な担保権を設定することによってメリットが得られる場面というのはどういうことかというと、多くのほかの財産からも優先弁済がなお受けられるというような場面に限定されてくるのではないかと思います。そうすると、それは結果的に包括的なというか、財産全体について担保権を同じ担保権者が把握しているようなケース、つまり包括担保を取得しているような、典型的にいうとプロファイとか、そういった場面で累積的に担保を取ることが意味を持ってくる。逆に言うと、そういう場面に限定して意味が出てくるような制度設計にすることによって、累積的に担保を取ることがふさわしい場面においてのみ、別段の合意を通じた累積的な担保権設定が使われるようにしようというのが第3の2の意図です。 ○大西委員 御趣旨は分かりました。 ○道垣内部会長 ここというのは読み方によっては、「ただし」で別段の合意をすれば拡大できるということにするのだったらば、全部拡大してしまうではないかと、何の制約にもならないではないかというのと、9ページの29行目から31行目までのプロジェクトファイナンスのように、こういう手法があるということについては、手法があるのはそうであっても、なぜこのような手法を採ったときにはそれが優遇されるのかというのが説明にはなっていないではないかという、二つの批判は十分に成り立ち得るのです。しかし、それは全体のプロジェクトならプロジェクトというか、事業の流れとして、生じるものを担保に取ったというときには、事業を運営していくために生じるいろいろな費用というのには後れるという形でバランスをとることによって、一定の合理性を持った場合にだけそれが認められるという方向に何とか誘導していこうということで、なかなか微妙に考えられているという感じはします。いいか悪いかは知りませんけれども。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。不勉強なので十分理解していないのかもしれませんが、私自身はこの【案3.2】というのは、いわゆる累積型の場合に実行手続には移行せずに、固定化せずに随時弁済を受け続けるという選択肢が認められると考えておりました。その場合に、いわゆるカーブアウトへの対応が、ただし書がある場合だけに限定されるということになりますと、【案3.2】でただし書を用いずに、ずっと実行しないまま随意弁済を継続していくという形になりますと、カーブアウトせずにすべての担保価値を把握できてしまうということになってしまわないのかという点が懸念されるのですが、この点は私の読み方が違っているということなのでしょうか。 ○笹井幹事 まず、先ほど御議論いただいた第1でどう考えるかということにもよってきますけれども、基本的には実行しない限り、いわゆる循環型の場合は、及んでいくのだけれども、その分、設定者が回収していきますので、担保権者が全部から優先弁済を受けられるわけではもちろんない。むしろ倒産局面においては縮小していくことの方が多いのではないかという指摘が、この部会でもあったかと思います。   ただ、そうはいっても、片山委員が御懸念になりましたように、増えていった場合に、労働者などほかの債権者の負担において増えていった担保価値が全部担保権者によって回収されてしまうということをどうするかというのがここでの問題ですので、ゴシックの中では書いていないのですけれども、先ほど大澤委員も言及された8ページの37行目以下になりますけれども、設定者側の対抗手段として、最後の40行目にありますように、債務者側に固定化の権限を与えるとか、そういう対抗手段を与えることで、更なるバランスの手段としては考えられるのではないかと思っております。 ○片山委員 分かりました。どうもありがとうございます。 ○井上委員 井上です。後ろから遡る形でコメントを差し上げたいと思うのですけれども、まず第3の2について、これは本当によく考えられた案ではないかと個人的には思います。過去、全事業を担保に取るのではなく、設定者が保有する集合動産あるいは集合債権を担保に取りつつも、その効力を倒産手続開始後に発生したり取得したりするものにも継続して及ぼしていくのは、なかなか難しいのではないか、債権についてはその債権の発生費用をカーブアウトするというアイデアもあったのですけれども、やはり債権と費用の結び付きを考えると費用の算定は難しく、間接的な費用を含めようとすると事実上ワークしないのではないかと思っておりましたところ、今回のアイデアを採用することによって、債権の発生のための費用に限定せずに、事業者自体が存続するために支出せねばならないものを全てカーブアウトすることによって、結果として現在累積的な担保を企図して行われている全資産担保型のファイナンスを事実上くくり出して、そういったファイナンスにしか実際には使いにくい要件設定がなされたのだろうと思っております。その意味では、倒産手続開始後に発生した債権に対する集合債権譲渡担保の効力が及ぶ範囲については、基本的にはスクリーンショットでといいますか、一時点の残高に限定されることをベースにしつつ、継続的に効力を及ぼそうとしてただし書の設計をしようと思えば、事実上全資産担保とせざるを得ないといいますか、全資産担保であれば利用できる設計になっているのがミソなのかなと思うのですけれども、その点で基本的なアイデアには賛成したいと思います。   ただ、先ほども議論になりましたけれども、2のところの担保目的債権の代価から担保権者より先に償還を受けるという記述については、誰が受け取ったものから誰が償還を受けるのかが少し分かりにくいと思います。先ほどの議論だと、担保権者が先に受け取って設定者に返すということかもしれませんが、ここの文章自体は「担保権者より先に償還」となっているので、執行手続のような場面を想定しているのかもしれないとも思いつつ、もともと、文章の最初は、「管財人が・・・弁済したときは」となっているので、もう少し分かりやすく書くこともできるのではないかと思いました。また、担保目的債権の「代価」は「回収金」を含むようにも思います。   基本的には、取立権限が設定者に残っている場合がなおこの時点であるとすると、例えば中止命令を取ったり、取消命令を取ったりして、事業がなお回っていて、倒産者が第三債務者から弁済を受けているという状況も相応に想定できると思うのですけれども、その場合は、回収金をそのまま自分の懐に入れるといいますか、共益債権等を先に払っていれば、回収金をその償還に充当できるし、今後の共益債権等の支払に回収金を充てることもできるというルールになるといいように思いました。もしかすると私が不正確に読んでいるのかもしれませんが、2については、アイデアは賛成ですが、書き方は工夫の余地があるのではないかと思いました。   次に、1ですけれども、これについては、現時点では【案3.1】に賛成したいと思います。ただ、【案3.1】と【案3.2】と【案3.3】の違いは相対的なものだと思っています。ただ、ここの極度額とする定めについては、先ほど大澤委員から御発言があった点について、私は違う考えを持っております。ここで、手続開始時に流動性を失わせずに極度額とするということは、その後、手続開始時点で発生していたものを、実は倒産手続開始前のリソースを使って発生させたにもかかわらず、設定者がその回収金を事業に使うことを許している状況なので、極度額までは、二度、三度と実行できたとしても、それほど不当ではないという感じがいたします。   むしろ、手続開始前のリソースを使って発生させた債権の回収金を設定者が流用するといいますか、事業に使うことを認める代わりに、その後、実行時にたまたま債権額が少なくなっていて被担保債権の回収に足りなくても、トータルで極度額までは再度の実行ができるというルールは、それほどおかしくないような感じがしました。そうだとすると、もう少し遡って、第2のところは、平場であるので、厳格に1回限りと考える必要は更にないので、ここは【案2.1】を採用するということでもいいのかなと感じた次第です。   最後に1点だけ、全然別の話なのですが、今回第3のところで、集合債権譲渡担保については、いわゆる本文型とただし書型の二つの類型を構想することになると思うのですけれども、これについて、公示において特段何も触れないことでよいのだろうかと感じました。設定者の財産状況としては、設定した集合債権譲渡担保が本文型かただし書型かの違いは割と大きいので、例えば債権譲渡登記において集合債権譲渡担保の設定が公示されているときに、それが本文型なのかただし書型なのかの公示もあり得るのかなと思います。ただ、制度設計上複雑になるということであれば、特にこだわるわけではないのですけれども、もし公示について御検討されていれば、御説明いただければと思いました。 ○道垣内部会長 後半に関して言うと、別段の合意というものの種類が、ただ単に本文の規定が適用されないというだけのものに限定されない可能性があって、こういうふうな事由があったらこうなるといったことをどこまで認めるのかということもあって、柔軟性を認めると公示には乗りにくくなりますよね。その意味では、別段の合意というのはどんなものが認められるのかということをまず詰めて、その上で、それならば類型的に公示ができるとか、そういう話になってくるのかなという気もします。別段の合意とだけ書くといろいろなことが考えられるので、少し注意した方がいいのかもしれないと思います。   山本さん、沖野さんと手を挙げていただいているのですが、井上さんが提起された問題点について、既に御発言の方に御意見を求めて、少し問題意識といいますか、問題点を共有しておきたいのです。【案3.1】に関しまして、極度額になるということについて、このときに、例えば実行してしまって全部取れば取れるのに、取らないで、そしてそのまま連続させている、そして、それは倒産手続が開始する前の原因によって発生したものであると,そうならば、そのときの評価額が例えば2億円であるということならば、2億に満つるまでは何回でも取れておかしくないのではないかというふうなことを井上さんがおっしゃったのに対して、大澤さんは、第2の【案2.2】の適用があるのではないかとおっしゃるとともに、大西さんの方からは、【案3.1】に賛成であるというふうな御意見を頂いていたように思います。そこで、井上さんがおっしゃった問題について、大澤さんと大西さんがどのようにお考えなのかということを少しお伺いできればと思うのですが、まず、大澤さん、いかがでしょうか。 ○大澤委員 ありがとうございます。井上委員のおっしゃったことも、なるほどなと思ったのですけれども、一方で担保権者は実行できる権限というのが、特に倒産手続を開始すれば、あるわけで、今少し部会長もおっしゃいましたけれども、確実に取りたいのであれば、倒産手続開始時で実行しておいてよいわけですから、それをあえて延ばしておいて、後でやはり取れなかったから、ここまでずっと取りたいという、この極度額に満つるまで何度も、おかわり自由というか、満つるまできちんと取りたいというところまで保護してあげる、すみません、何か私、笑われていますかね、というのは、そこまで担保権者の保護をしてあげる必要があるのかということを少し考えてもおります。   輪切りですから、開始決定がどこで起きるかで伸び縮みがあるのはやむなし、それはもう、どんな段階であってもしようがないのですけれども、その時点、その時点で担保権者としての判断というのはできるわけですから、ここでというのをやらなかった以上、その後、何度もというところまで考えてあげる必要があるのかなと少し感じました。 ○道垣内部会長 ただ、倒産の局面でやりますと、実行を多少留保してもらいたいと、留保しても大丈夫だよというふうにしてあげるということもありますので、両方考えられるかなと思いますが。   大西さん、【案3.1】に賛成だとおっしゃったのですが、大澤さんと井上さんとの間の意見の対立につきまして、どういうふうにお考えでしょうか。 ○大西委員 通常、多分、担保権だと、それこそ倒産の危機に瀕した段階で実行するのが普通で、開始決定したけれども実行をせずに見ておくということは、もし会社が破産したときには、多分、その担保権者のリスクというのは計り知れないものがあり、回収が滞るリスクもあるので、通常は開始決定のところに近接して担保実行がされるものと想定していました。ですので、井上先生は多分、その後、実行したら満つるまでということで、そういう場合もあるのではないかということなのですが、私は元々ここで提案したのは、極度額ではなくて、開始決定時の価額でフィックスでもいいのではないかと思っていました。だから、その後の回収というのは想定していませんでした。特に、例えば設定者側と特段の合意をした場合というのは多分、その合意による効力の話なので、また別の話と思っておりましたので、その後回収を続けるというケースは余り想定していなかったということでございます。 ○道垣内部会長 更生担保権として、譲渡担保権自体の実行ではないという形をとって、大西さんがおっしゃるように、会社更生手続の開始時における担保財産の価値に従って更生担保権の量を決めるということになると、更生担保権全額支払われるとは限らないのですけれども、比較的井上さんが言ったところに近づいていく可能性もないではないですよね。どうなのでしょうか。 ○大西委員 そうですね、私の先ほど申し上げたことであれば、単純に将来キャッシュフローを現在価値で割り引くと、割り引く係数を幾らにするかという論点はありますが、そうやって評価をするのだと思います。 ○道垣内部会長 そんな話がございましたね、失礼いたしました。   ほかの方もこれについて御意見があろうかと思いますが、山本さん、沖野さんからの話を聞いて、まだございましたら、御意見を伺うということにいたしまして、山本さん、お願いいたします。 ○山本委員 今の点とも関連するというか、今の点そのものかもしれませんけれども、仮に【案2.2】を採ったときに、【案2.2】と、【案3.1】でも【案3.1】でもいいのですが、これを組み合わせたときに、かつ民事再生で担保権実行禁止命令が出ているという場面を想定したときに、そこでの集合債権譲渡担保権が把握している価額というのはどのようになると事務局はお考えなのかということを、まず少し確認したいのですが。   問題をあれすると、実行禁止命令が出ている間は担保権は実行できないわけですよね、そうすると、その間は基本的には固定化はせずに、担保権者が把握している価値というのは分からないと、そういう整理でよろしいのでしょうかという問いです。 ○笹井幹事 今おっしゃったのは、会社更生とかの評価という局面ということでしょうか。 ○山本委員 いえ、民事再生で担保権実行禁止命令が出ている局面です。会社更生でも私は同じ問題かなと思っているのですが、会社更生についてはこの資料では、開始時になるのではないかという、特別の規定を設ける必要はないという整理のようにも見えたのですけれども、民事再生で担保権実行禁止命令が出ていても、同じような状況になるのではないかというような気もするのですが、その辺りはいかがなのですかね。 ○笹井幹事 十分に考えておりませんでしたけれども、禁止命令が出ていて、【案2.2】を採った場合には、禁止命令が発令されている以上は、その時点ではまだ評価を決めきれない、確定できないということかなと思います。 ○山本委員 私も、普通に考えればそういうことになるのかなと思っていました。この部会では従来から【案3.2】を採ったときの問題点として、結局実行までは分からないではないかと、そうすると別除権協定をどうやって締結するのかという問題設定というか、疑問が呈せられていたと思うのですけれども、恐らく【案2.2】を前提にすれば、【案3.1】を採っても同じ問題は生じるのではないかというのが私の理解です。   一つの解決策としては、会社更生で開始決定が出れば、その時点で言わばその評価は固定化されるという考え方は、基本的には実行時なのだけれども、それはもう実行できないのだから、それはしようがないではないかと、実行できなくなった時点で言わば固定化というか、その評価、そこでの価値が固定化されるのだと、そういう考え方はあり得なくはなくて、民事再生でもそれを及ぼせば、実行禁止命令が出れば、もうそこで評価は固定されるものとして考えるということはあり得るのかなという気がしていました。   そういうふうに捉えれば、今度は【案3.2】を採ったとしても、【案3.2】の問題点として、債務者からの固定化権限がないと先ほど来、論じられていますけれども、禁止命令で一種の固定化があると見るのであれば、禁止命令を申し立てるのは債務者なので、事実上債務者からの固定化権限を認めるのと同じことになるのではなかろうかという気が私はしています。   ということで、私は前々から【案3.2】の方が、担保権者側からの固定化だけを認めている平場の状況と合っているのではないかということを申し上げてきましたけれども、それについてはいろいろな御批判も多くあったと承知をしていますので、今のところ【案3.1】でも【案3.2】でもそれほど、どちらでもあれかなという感じがしているのですけれども、井上さんが言われたように、【案2.1】を採ると、【案2.1】と【案3.1】というのは、私はかなり整合性があるというか、一貫性があるような気がしているのですけれども、それはそれで一つの立場かなと思っているのですけれども、【案2.1】か【案2.2】を採るかは実体法の問題だと思いますので、実体法の先生方に御議論いただければいいと思うのですが、もし【案2.2】を採った場合には、【案3.1】と【案3.2】がどれまで違うのかという感じもしないではないのですけれども、依然として【案3.2】という選択肢はあり得るのかなという気がします。   いずれにしても、担保権実行を禁止された場合にどうなるのかということは、実際上はこれが事業の再生に不可欠なものであるとすれば、禁止命令が出る場合も多いのではないかという気がしますので、そこを考えていく必要があるかなと思っているということです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。問題点は多々指摘されましたが、沖野さん、まずお話を伺いたいと思います。 ○沖野委員 ありがとうございます。今、山本委員の御発言を聞くまで違うことを考えていたので、あるいは少し考え直さなければいけないかなとは思っているのですけれども、一応申し上げます。   一つは【案3.1】についてです。この開始時の極度額については、開始時についての選択によってこれが変わり得るという問題が以前から言われていたように思います。ただ、動産のように大口で売ってごっそりなくなっているところで開始というようなことは、債権の場合は第三債務者がありますので、余りないのかなと思うのですけれども、かなり取立てが進んだところで開始決定ということもないわけではないように思われます。   それから、極度額で、その後、実行を掛ければいいということなのですが、再度実行ができないということになりますと、かなり担保権者の方で見極めが必要になってくると思われ、かつ、その場合にどれだけ新しく債権を発生させるかも、どれだけ取り立てていくかも、もちろん元々債権の期限があり、第三債務者があるので、そんなに自由にはできないのですけれども、結局管財人側にコントロールがあるとなると、それでバランスとしてはいいのだろうかという点は、【案3.1】については少し気になっておりました。それでいいという割り切りもあるかなと思っておるのですけれども。   それから、【案3.2】については、一つは(注)のところなのですけれども、【案2.2】を採る場合には全く特段の規定を設けないと書かれているのですけれども、会社更生の場合の規定は多分必要ではないかと思っていたのですが、ただ、これについては結局、実行で固定という考え方ですので、実行がおよそできないということになれば、もう開始決定より後に実行が来るということはないので、開始で固定というので解釈でも行けるのかもしれないと思いましたけれども、それが必要ではないかということと、あと【案2.2】には更に(注)が付いていますので、この(注)との関係での規定の要否というのは、やはり出てくるような気がしました。それが【案3.2】の(注)についてです。   それから、【案3.2】の場合は実行で固定ということになると、担保権者が様子を見ながらで、今度は担保権者の方にかなり判断が移るのですけれども、何もしなければずっと延々と取れる問題がやはりある可能性があって、もちろん回収を図っていくから、そこでバランスはとれているのだともいえそうなのですが、そうすると、先ほど来問題となっております8ページの最後の債務者側の固定化権限などが必要になってくるのではないかと思っております。一つは実行を掛けるための一定の期間設定のようなことが考えられないかと思っており、全然違う話ではあるのですけれども、破産法185条など、別除権の行使に期間限定を掛けるというようなものについて、管財人側から、直ちにではないかもしれませんが、一定の期間経過後は実行をせよというような催告をして、更に所定の期間を設けて、その期間内に実行がないときには、ある特定の時点で実行がされたものとみなすというような形での、催告による固定のようなものがあり得るのではないかと思っております。その期間をどのくらいに持って行くかというのは、それぞれ、開始後すぐに催告できるのかとか、催告したときにいつが基準時になるのかという辺りは、なお幅があり得ると思いますけれども、基準時としては、それまで担保権者が様子を見られるということであれば、言われた期間が終わったときということもあるのかなとも思っていたりしたのですけれども、ただ、先ほど山本委員から、禁止命令を使えば、それで全部うまくいくのではないかという御指摘があって、全く考えていなかったのですけれども、それで、実行しなければもう開始時固定だという考え方を採って、かつ催告ではなく禁止命令で行くのだということであれば、あるいはもうそれで吸収できるのかもしれないと思いました。   それから、【案3.3】は、これも以前から問題となっている、管財人の手腕に多くが期待されるという、直ちに取立てももはやできなくなって大丈夫かということがあるのを、どう評価するかということだと思います。ですので、それぞれ何が一番いいのかというのはなお決めかねているところで、【案3.2】で限定を掛けるというのはあり得るのかなとは個人的には思っておりましたけれども、それほど強く、是非これでということではございません。   最後に、2についてなのですが、2のアイデアの内容を確認させていただきたいのですけれども、一種のカーブアウトであるという説明もありました。それでですけれども、ここに掲げられた債権相当部分が優先するということの意味としては、二つあるように思われます。一つは、言わば最優先債権がその分出てくると、したがって担保権者は、優先順位はずれるけれども、優先が掛かってくる金額範囲は変わらないという考え方です。もう一つは、カーブアウトですと、自分が持つ分から吐き出すということだとすると、優先できる範囲部分がその分縮減した上で、その縮減部分が一般に回って、一般の中で最優先のものが取っていく、一般の中での優先に従って分配がされていくということです。したがいまして、担保権者の優先範囲は縮減しないけれども、順序だけが第2ランクにずれるというのと、範囲が縮減するという両方の可能性もあるかなと思います。後の方が多分、カーブアウトという概念にはあるいは合っていたのかもしれないのですが、ただ、そうするとかなり劇的かもしれず、それで中間的にというか、優先順位だけをずらすという、言わば担保権者に優先するスーパー何とかを設けるということになるのかと思います。ただ、それを具体的にどうするかは、必ずしも実行の中でできる話でもなくて、一体償還を受けるとは誰が何をするのかとか、その中身は詰めていく必要があると思うのですけれども、この担保権者が言わば何を諦めることになるのかということについては、2通りあるように思われましたので、そこも明らかにする必要があるかなと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。何かお感じになることは。 ○笹井幹事 そうですね、【案3.1】から【案3.3】までについては、いろいろと問題を御指摘いただきましたので、その点については考えてみたいと思います。   2については、こちらでは前提として考えていたのは、優先順位だけをずらすという方法です。確かにカーブアウトは、本来的には自分が優先弁済を受けられる部分から一部を削ってその部分を一般債権者に回すということかと思いますけれども、そうではなくて、担保権者より優先するものが出てくるというものであり、担保権者が優先できる額が縮減するということではありません。 ○倉部委員 ありがとうございます。法政の倉部でございます。先ほど山本先生から御発言のありました評価の点ですけれども、担保権実行の禁止命令を発令する際にということかと思うのですが、やはり不当な損害のおそれの有無というものを勘案しつつ発令をする必要があるということだと思いますので、そうなると評価はせざるを得ないのではないかとも考えております。なので、先ほどの山本先生の御発言に私も賛成しております。   それから、債務者側の固定化権限の話です。【案3.2】のところですけれども、ずっとこだわってきているところではありますけれども、会社更生の場合は更生担保権、民事再生の場合は別除権構成ということで、やはり別除権構成を採っているところに、どれだけ債務者側に強い権限を持たせるのかというところで、この括弧を拝見して、なるほどとも思ったのですけれども、やはり換価時期の選択権といったものが別除権者に与えられているという現状を考えますと、債務者側に固定化権限まで与えるというのは少し強力な、踏み込んだ権限なのかなと感じました。そうなると、既に山本先生が御発言くださっていますけれども、やはり担保権実行禁止命令でそこはカバーができるということで、担保権実行禁止命令を機能させるということで十分、現状では行けるのではないかと感じた次第です。   それから、以前から中間試案のとき、その前からですけれども、現状、更生担保権があり、別除権構成があり、例えば中間試案の段階でしたら、それぞれ違う規定がそれぞれ別の倒産手続に当てはまるのか、それとも一つの規律でカバーをするのかというところ、最後まで少しこだわってぶつぶつと申し上げたところですけれども、今回この御提案を拝見して、一つの規律に集約されたということが、三つ、再生手続、更生手続、そして特別清算も入っていますね、全部入って一つの規律で全ての倒産手続をカバーするという立場が明らかにされたというところは、随分すっきりしたのかなと思ってはいるのですけれども、【案3.1】と【案3.2】のところで、会社更生に与えるインパクトというのがどれだけあるのかというところが、多分私の理解不足なのだと思うのですけれども、その辺りが十分に理解できないところはありまして、むしろこの規律のインパクトというのは民事再生の方に強い影響があるということなのかなと理解をしております。   特に、【案3.2】の方で、もう【案2.2】を採ってしまえば【案3.2】も登場しないということになりますと、特に会社更生には影響はないということになるのかと思いますし、その辺りがそれぞれの手続にどれだけの影響を与えるのかというところ、特に会社更生の取扱い、先ほど【案3.1】のところは、大西先生とのやり取りの中でしたでしょうか、極度額という言葉を用いることによって評価にキャップが設けられるということは、それは大きな影響なのかなと思ってはいるのですけれども、その辺りは私の理解不足もあるかと思いますので、特に【案3.2】の方の会社更生に対するインパクトですね、そもそも担保権の実行が認められていない手続ですので、その辺りは少しお教えを頂けたら有り難いと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。何かありますか。 ○笹井幹事 御質問をもう一度お願いできますでしょうか。 ○倉部委員 すみませんでした。特に【案3.2】の方で、【案2.1】を採った場合ということになるかと思うのですが、ただし書があることで、全ての手続に対して影響があるという、この意味があるというのは分かるのですけれども、本文のところが、会社更生に現状を変えるような大きな影響があるのかというところが、少し私の方で理解ができていなかったのです。   【案3.2】で行きますと、例えば会社更生の場合ですが、実行が先行していて開始が後であった場合、もう実行してしまっているのであれば、回収が全額できてしまえば、特に何もないわけですし、実行して回収ができていなかった場合、【案2.1】を採れば、担保権の効力が開始時までは及ぶということになるのですかね。 ○笹井幹事 【案2.1】が採られて、かつ【案3.2】が採られて、実行が先行していると、その場合、開始がされたとしても、【案2.1】かつ【案3.2】を前提にすると、そのことによっては直ちには固定化しないので、倒産手続の開始後についても及んでいくことになると思います。 ○倉部委員 でも、開始後はそこから及ばないですよね。 ○笹井幹事 そうか、その前に実行がされている。 ○倉部委員 会社更生手続の開始決定時に、目的物の評価額、不足額がそこで明らかになって、更生担保権と更生債権に分かれるだけの話ですよね。その後の目的物には担保権は及ばない。 ○笹井幹事 そうですね、実行が先行しているので、更生手続によって固定化するということかと思います。 ○倉部委員 なので、それほど今と変わらないわけですよね。結局、開始時の担保目的物でカバーされる更生担保権の額と、更生債権の不足額がそこで二分化されて評価されるというだけで、余り大きな影響はないのかなと思ったのです。会社更生の場合には手続中の担保権の実行が想定されていないとなると、結局、更生手続開始決定時に更生担保権と更生債権で分けて、結局やっていることは一緒で、ということは、余り現状の会社更生には影響はないということなのかと理解をしたのですが、でも、私が何か見落としているところがあれば御教示を頂きたいと思ったのです。そうなると、この【案3.2】のただし書はもちろん会社更生に影響はあるのかもしれませんけれども、本文自体は余り会社更生には影響のない話なのかなと、そうすると、専ら狙いはやはり民事再生なのかなと思ったのですけれども。 ○淺野関係官 現状の更生手続におけるこういった類いの集合債権譲渡担保権の効力に関する考え方については、実務上、考え方が定まっているのかどうかというところが私どもとしても余り認識できていないところです。更生手続開始後に発生する債権についても担保権の効力が及ぶという前提で取り扱われた事件もあるやに聞いている一方で、少なくとも、考え方としましては、手続開始後に発生する債権に担保権の効力は及ばないのだというお考えもあり、考え方としては両方あるのかなと思います。先ほど申し上げたとおり、実務がどちらの考え方に従って行われているかということをきちんと理解できているわけではなく、こういうルールを設けたときに影響があるかないかというのは、現状に関する理解による、ということになると思います。他方で、ここで【案3.2】を採用した場合にどういった担保権の効力が認められることになるのかということで言いますと、倉部先生の御認識のとおりだと思います。お答えになっていないかもしれませんが、以上です。 ○倉部委員 ありがとうございます。そういう状況であれば、もちろんこういう明確な指針が示されるということそのものに会社更生でも意味があるということになるわけですね。すみません、私が実務をしっかりと理解できていなかったゆえの質問となってしまいました。ありがとうございました。 ○大西委員 すみません、先ほどの第3の1の【案3.1】についてですが、私も賛成ですと言いながら質問するのも変なのですけれども、そのときにおいて発生している債権の価格というのは、これは額面額のことですか、それとも評価額のことですか。というのはなぜかというと、例えば債権が10億円あったとして、不良債権が1億円あったとすると、9億円がこの極度額になるのか、それとも10億円までなのかというのは、ここはどのようにお考えなのでしょうか。 ○笹井幹事 これは正しく評価額ですので、額面ではなくて債権そのものの価値ということになります。もし回収できないものがあった場合には、その回収できないということを踏まえて評価される金額になると考えております。 ○大西委員 なるほど。そうすると、仮に実行が開始決定後だったとしても、結局はそのときの評価額でフィックスとすれば、余り損得はないということですよね。 ○笹井幹事 そうですね、基本的にはここは。 ○大西委員 額面で、例えば9の価値しかないのに10額面があるから、その後でプラス1が回収できるとすれば、これはやはり一般債権者との関係で問題があると思うのですが、評価額ということであれば、結果的には回収できるかどうかは一定期間内に分かりますから、そういう意味では、先ほどの質問に対しては、民事再生の場合ですけれども、開始決定後の実行分も含めて評価額に含まれるということでいいのかなと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに何か。 ○阪口幹事 阪口です。まず、第2のところで【案2.1】か【案2.2】かというと、私自身は【案2.2】です。また、(注)の問題提起がありますけれども、(注)の考え方を採る場合は、第3の2の内容の別段の定めがある場合に限るということになるのではないかと思います。つまり、民事再生や会社更生になったら丸抱えにする覚悟がある場合にしか、効力を及ぼす合意ができないということです。言葉はともかく循環型と累積型というものの切り分けとしては、債権者にその覚悟があるかないかという、そういう切り分けをすることで、真に累積的な担保が必要な場合に限って利用されるという結果になると思います。   第3の方に関しては、私は、【案3.1】です。かつ、【案3.1】について、先ほど井上先生と大澤先生の御意見に関して、極度額の意味はどう考えるのですかという御質問が部会長の方からありましたけれども、私自身は、正に極度額で、そこに満つるまでという感覚でした。だから井上先生のお考えに近いです。それは、中止命令にしても禁止命令にしても、やはり額の目線が出ることに意味があると思っているからです。時間がたって価値が下がっていったら下がっていったままとなると、これは結局いつまでたっても評価額がよく分からなくなるので、一時点で評価額を決める、もちろん評価額自身に争いはあると思いますけれども、しかし時点がはっきりしていれば、まあ合意がしやすいので、紛争解決機能という観点から、それでいいのではないかと思います。   ただ、この【案3.1】について、山本先生から御指摘があった、禁止命令が出た場合の補充というか補正の必要性という問題があるようには思いました。というのは、禁止命令は申立て後、開始決定前に出ることが多いので、そうすると、その場合は開始時ではなく禁止命令発令時と少しだけ遡って、1週間ぐらいだと思いますけれども、早まってもいいのかなとは思いました。 ○道垣内部会長 どうもありがとうございました。   それぞれについて意見は細かく分かれているのですけれども、それぞれが持っている構造上の問題点というのは、問題点があるから駄目だという意味ではなくて、この部分を明らかにしなければいけないということかなと思います。沖野さんも1から3まで全部、御整理いただきましたけれども、山本君からもいろいろありまして、幾つかあったように思います。それを踏まえまして、もう一度事務局等で検討していただきたいと思いますけれども、その後のものについての債権、例えば倒産手続開始決定後の債権についても及ぶという場面というのは認めた方がいいだろうと、その上でどのような制約をそれに課すかということについても、ある程度の制約というのは、技術的にどういうふうにするのかという問題は更に残っておりますが、認めるべきであろうと、そういう制約もある上で、しかし後ろに広がっていく担保権も認めるべきであろうということで、大体皆さんの御意見だったのかなという気がしております。   ここら辺はやはり倒産のいわゆる禁止命令、中止命令、いろいろなものと絡めての、あるいは評価時の問題とかいろいろありまして、技術的に非常に難しい問題が多々ありますので、もう一度事務局の方で御検討いただければと思います。それとともに、技術的な問題がいろいろございますので、皆さんの方からも事務局に対していろいろ御意見をお寄せいただくとともに、御助力を頂ければと思いますので、よろしくお願いいたします。   本日のところは、これでよろしゅうございますでしょうか。   それでは、大分長くなりまして、3時間になっておりますので、少し休憩を取りたいと思います。ただ、少し遅れ気味でございますので、誠に申し訳ございませんが、12分の休憩ということで、16時40分から再開ということにさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○道垣内部会長 予定した時刻になりましたので、審議を再開したいと思います。   それでは、「第4 動産譲渡担保権の私的実行の終了時期等」について議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、「第4 動産譲渡担保権の私的実行の終了時期等」について御説明いたします。   ここでは、動産譲渡担保権の私的実行につき、設定者に対して倒産手続及び担保権実行手続中止命令の申立てをする機会等を確保するための方法について、二つの案を取り上げています。   【案4.1】は、動産譲渡担保権の実行は、帰属清算の通知等や目的物の第三者への譲渡によって終了することを前提として、目的物の引渡し又は帰属清算の通知等若しくは目的物の譲渡の通知から一月が経過するまでの間は、設定者に受戻権を認め、その受戻権を行使することができる間は、担保権実行手続中止命令を発令することができるとする考え方です。もっとも、この考え方については、設定者が受戻権を行使することができる期間において、中止命令に加えて担保権消滅許可制度の利用をも認めることができるかが問題となり、仮にできないとすると、設定者は担保権者との間で担保権消滅許可制度の存在を背景とした交渉をすることはできないこととなりますが、それが妥当かといった点が問題となると考えられます。   【案4.2】は、帰属清算方式による実行及び処分清算方式による実行のいずれについても、帰属清算の通知等又は処分清算の通知があったときは、その時から2週間を経過した時又は目的物の引渡しを受けた時のいずれか早い時に被担保債権の消滅等の効果が生ずることとして、私的実行の終了時期自体を遅らせる考え方です。この考え方による場合には、帰属清算の通知等や処分清算の通知の後に中止命令が発令されたときにも2週間の経過によって被担保債権の消滅等の効果が発生すると考えられますが、2週間の間に別除権協定を締結したり担保権消滅許可決定を得たりすることは容易ではないとの考え方もあり得るため、中止命令が発令されたときはその効力が失われたときに被担保債権が消滅するとの考え方を(4)の隅付き括弧でお示ししています。   以上について御議論いただければと思います。私からの説明は以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○阪口幹事 阪口です。従前から私は【案4.1】をベースにしたような提案の方が望ましいと申し上げておりましたけれども、正にこの12ページの1行目から書かれている問題との兼ね合いで決まることだろうと思います。私自身は、帰属清算・処分清算によって確定的所有権移転がされたといっても、元に戻るマイナス面が付いているという意味では100%の所有権ではありません。また、例えば実行後の引渡し命令という概念が別のところにありますけれども、確定的所有権といっても普通の単なる民法上の所有権だったら引渡し命令なんかは使えないのだけれども、でも、担保権の延長だよねという性格から、引渡し命令も認めましょうという話になっている。結局そこでいう確定的所有権移転といっても、まだ担保権、倒産手続との関係でいうと別除権ですけれども、受戻権が残っている間は別除権としての性格をまだ帯びているのだろうと私は思うので、【案4.1】を採りつつ、担保権消滅許可制度の利用もできるという案が一番望ましいと思っています。   ただ、確定的所有権移転という言葉から考えて、それはできないのだというのであれば、そのときは【案4.1】は非常にデメリットが大きいことになりますので、【案4.2】になるだろうと思いますし、その場合は(4)の隅付き括弧もお願いしたいと思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○大澤委員 大澤でございます。私は元々【案4.2】の、帰属清算の実行の後2週間というか、後ろ倒しにした方がバランスがとれると考えておりましたので、【案4.2】に賛成をしております。従前からここは議論があったところだと理解はしておりますし、この2週間等という規定を、更に経過をくっつけるのかというような批判があるのも十分理解はしております。ただ、先ほどの担保権消滅という民事再生手続との接続性を考えますと、担保権自体が消滅してしまっていると、その後、消滅請求できないとなってしまうと、価格の限度での消滅請求というのができないということにつながっていまいりますので、やはりこの2週間というような期間程度を設けていただく必要があろうかとは思っております。   実際、実務上も今まで、債務不履行があってから担保実行に至るまで担保権者と設定者の間でいろいろお話合いをするでしょうと、それならこんな期間は要らないではないですかという議論があったことも十分理解はしておりますが、ただ、設定者の方からいたしますと、民事再生は、これも繰り返しになりますが、最後の手段でございます。一般債権者に対しても御迷惑をお掛けすることになりますので、なるべく申立てをしないで済むような形でいろいろな方策を模索しますので、ぎりぎりになってようやく民事再生を決断するということがほとんどであろうかと思っております。   そういった意味では、債務不履行から実行までに時間がありますよねというようなお話がございますけれども、設定者においていろいろな事業再構築を目指した結果、やはりもう民事再生をやるしかないというようなことになったときには、担保権が消滅してしまっていると、先ほどの目的物の限度での消滅請求というのができなくなるという仕組みになってしまうのだとすると、やはり事業の最後の再生のチャンスを失ってしまうことになりますので、そういった意味でも、こういった限定的とはいえ2週間程度の期間を設けていただいて、消滅時期というものについて後ろ倒しにするという案の方が実務的には合うと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見等はございませんでしょうか。   阪口さんが【案4.1】の方がいいのではないかとおっしゃったポイントは、【案4.1】であっても遡った形での受戻しみたいなものができるということを前提にすると、論理というかプロセスの分析として、【案4.1】の(1)の段階で消滅するといって、それでひっくり返すのと、【案4.2】のように一定の期間が経過した後に消滅するという規律にするというときに、【案4.1】の(1)の方がいいのだということですが、そういう積極的な理由というのは結局、どこにあるということになりますでしょうか。 ○阪口幹事 阪口です。倒産手続に入らない平場の局面で考えたら、2週間という期間を設けることなく実行手続が行われていく方がこの集合譲渡担保というものの性格に合うだろうと考えているので、前に2週間なり1週間なりの期間は設けないということが積極的理由でした。ただ、そのことと、後ろ倒しにした場合には担保権消滅許可制度が使えないという考え方を前提とすれば、その二つのバーターだったら、平場の場面の債権者に申し訳ないけれども2週間の期間を設ける方になるということです。 ○道垣内部会長 いかがでしょうか。 ○井上委員 特に付け加えるところはないのですが、どちらに賛成かと言えば【案4.2】で、不履行があればすぐに実行に入れるけれども、担保権が消滅する時期を後ろにずらすということに賛成です。前回も申し上げましたけれども、設定者が、その間に弁済資金を全額用意して被担保債権全額を弁済して受け戻すことは、現実には非常に考えにくいので、事実上、この後ろずらしのルールは、その時点で倒産手続の申立てを準備して中止命令を得る機会を確保する趣旨であると考えられ、その場合にはその命令を得た上での交渉になるでしょうから、(4)についての隅付き括弧も外して、これもルール化するということに賛成します。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○山本委員 この【案4.1】と【案4.2】ということですけれども、先ほど阪口さんが言われたとおりだと思うのですけれども、【案4.1】、担保権実行が実体法上終わっているにもかかわらず倒産が始まったときに、中止命令なり担保権消滅なりができるのかということは、これは理論的にはかなりハードルが高くて、私自身は【案4.1】の(3)のような、中止命令について何とかできるのではないかということを申し上げてきたわけですけれども、かなり内心じくじたるところもあったところです。更に消滅請求となると、一旦実行が終了して消滅したものをもう一回生き返らせて、それからまた消滅させるということになるわけですね。それは本当に、やろうと思えば憲法違反にはならないと思うのですけれども、少しどうなのだろうという気はやはりします。   そういう意味では、やはり消滅請求の方が更にハードルは高いような気はするので、もし【案4.2】が受け入れられるのならば、阪口さんが言われたように、【案4.2】は平時の実行にも影響を与えるものですので、そこは今まで私の理解では問題にされていたと思うのですけれども、そこが受け入れられるのであれば、倒産法理論的には、それは【案4.2】にしていただいた方がきれいなことは明らかで、【案4.2】であれば特段の説明は要らなくなるということで、(4)も、これは【案4.2】のような考え方を採るのならば、やはり必要、つまり、中止命令が発令中であるにもかかわらず期間が経過して担保権実行が終了してしまうというのは、やや自己矛盾的なところがあると思いますので、これは必要だろうと。この効果を得るためには、私の理解では2通りあって、一つは取消し命令をここでも認めるというというのはあるのかなと、取消し命令によって通知の効果を消滅させれば、それによって実行が終了することはなくなるので、そういうものを設けるというのは一つかなと思います。もう一つが、ここにあるような期間の停止の効果を中止命令の効果として認めるということかなと思っています。   ただ、取消し命令はやはり、やや大仰というか、影響が大きい、特に処分清算方式のときには多分、取消し命令までやってしまうと、担保権実行が全て取り消されるということになれば、処分の効果も失われてしまうということにもなるような気がするので、そこまでやるのはやや大きいのかなという感じがするので、ここにあるように、中止命令の言わば付随的な効果として、期間の進行が停止すると。現行、民事訴訟法などにも手続が中止したときにはその期間も進行を停止するというような規定もありますから、そういうような一般的な考え方からいっても、この(4)というのはあり得るところかなと思います。そういう意味では、この(4)も付けて【案4.2】というのができれば、それはいいのかなとは思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見はございませんでしょうか。   阪口さんも、消滅した後にいろいろするというのが難しいようだったら【案4.2】だよねという話なのですが、山本さんの方から、やはり難しいのではないのというふうな話になりますと、阪口さんも、そう言われるなら【案4.2】だという話になってしまうのかもしれないのですが、ほかに御意見はございませんでしょうか。   【案4.2】のときには、隅付きパーレンの中に入っている(4)はやはり必須であるということで、これは御理解はそれでよろしゅうございますか。   ほかに御意見がないようでしたらば、大体そういう方向かなということで進めさせていただければと思いますけれども、よろしゅうございますか。   若干言うとすると、【案4.2】というのは2週間経過しないと処理が進まないということになったらば、まずは通知してしまおうと、弁済を促して話合いをするというふうなことをしないで、まずは通知してしまおうというふうな方向に担保権者が動くのではないかという気が若干しないではないのですが、そうはいっても2回通知をさせるというのもどうかと思うので、2週間経過したところで消滅するというふうにせざるを得ないのだろうとは思いますね。やはりその時点で、例えば清算金の提供とかが行われているわけですから。   よろしゅうございますか。それでは、今日の時点ではこういう方向で大体皆さんがお考えであるということを確認させていただいて、「第5 根譲渡担保権の処分」というところに入りたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○森下関係官 「第5 根譲渡担保権の処分」について御説明いたします。   (1)は、元本確定前の根譲渡担保権の処分として全部譲渡、分割譲渡、一部譲渡を認めることを提案しております。部会資料32では、権利関係が複雑になることを理由に、一部譲渡は認めないことを提案しておりました。しかし、複数の者が共有する形での根譲渡担保権の設定を否定する理由はないと考えられるところ、これが認められるのであれば、事後的に根譲渡担保権の共有状態を作り出す一部譲渡を否定する理由もないと考えられるため、今回は一部譲渡も含めて認めることとしております。   (2)は、全部譲渡、分割譲渡、一部譲渡のいずれについても、後順位の担保権者等を保護するために、極度額を定めることを要件としております。部会資料32では、全部譲渡については担保権者の数が変わらないことを理由に、極度額を定める必要はないことを提案しておりました。これに対しては、担保権者が変わらないとしても取引の規模や内容が変わるおそれがあり、同様に後順位の担保権者の保護を図る必要があるのではないかとの意見があったため、いずれも極度額の定めを必要的としております。   なお、部会では、後順位の担保権者等の承諾があるのであれば、必ずしも極度額を定める必要はないのではないかとの意見もありました。しかし、物的に編成されていない譲渡登記においては、後順位の担保権者等が登記記録上に必ずしも現れてくるわけではありませんので、根譲渡担保権の処分に関する登記がされたとしても、後順位の担保権者等の承諾があったかどうかが登記記録上からは判明しないといった問題があります。今回の提案は、このような登記記録外の利害関係人の承諾の有無を調査する必要があるようなケースにつきましては、一律に順位の変更の登記で処理するといった形ですみ分けを行っております。   (3)は、根抵当権と同様に、根譲渡担保権の処分に当たっては、設定者の承諾を得なければならないこととしています。   (4)は、根譲渡担保権の処分を登記できることとしています。これに関連して、今回の見直し以後の譲渡登記のイメージ図を末尾の別添1と2として示しております。このイメージ図は、以前の部会で伊見委員から御提出いただきましたイメージ図を修正して作成させていただいたものになります。伊見委員からは事前に法務省で二次利用をすることについて御了承を頂いております。この場をお借りして感謝申し上げます。   まず、別添1でございます。こちらは今回の譲渡登記の見直し後のイメージ図をお示ししたものです。「現行の登記ファイルの記録事項」は、従前の譲渡登記の内容を記録する部分で、この点に変更はございません。「譲渡担保権に関する事項」は、譲渡担保権に関する情報を新たに記録するものです。「関連登記目録」は、関連登記目録を作成し、関連する譲渡登記の登記番号等を記録するものです。   簡単に御説明しますと、「譲渡担保権に関する事項」では、新たに譲渡担保権者に関する情報を記録することとし、その情報を更新することを可能とする予定です。「関連登記目録」では、このイメージ図でいいますと、青色と白色の競合する譲渡担保権を記録する譲渡登記の登記番号を関連登記目録上で記録できるようにしています。順位の変更の合意の登記は、この関連登記目録上で行うことが想定されています。   続きまして、別添2は根譲渡担保権の分割譲渡の登記のイメージ図を示したものになります。簡単に説明しますと、根譲渡担保権が二つに分割されて譲渡されることに伴い、既存の譲渡登記と同内容を記録した譲渡登記を新たに起こして、各登記にそれぞれの根譲渡担保権者を記録することを想定しています。   以上について御審議をお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等をお願いいたします。 ○伊見委員 伊見でございます。ただいまの御提案につきまして、これまでの部会の審議での意見等を取り入れていただいた内容ということで、基本的に異論はございません。そのことを前提といたしまして、確認的な発言、意見をさせていただければと思うのですけれども、根譲渡担保権の処分のうち分割譲渡につきまして、根抵当権の規律では分割譲渡について、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅するという規定がありますけれども、この譲渡担保においても同様のことをお考えであるかどうかという点であります。もしそうであるならば、この根譲渡担保権に権利を有する者、転担保権者かと思いますが、の承諾というものも効力要件として必要になってくると思われます。その点も含めた御提案かというところの確認をさせていただければと思いました。 ○森下関係官 今、伊見委員が御指摘いただいたとおり、基本的に根抵当権と同様に、根譲渡担保権についても、転担保がされているような場合に分割譲渡を行ったようなケースにつきましては、消滅するという規律を設けることを考えております。したがって、当然、その登記申請においても転担保権者の承諾を要件とすることを想定しています。 ○伊見委員 どうもありがとうございました。 ○道垣内部会長 ほかに御意見等はございますでしょうか。   この部会の議論の当初におきましては、こういう担保権の処分の問題について、それほど広く認めるということは、かなり事態を複雑化させる可能性があるということで、結構狭い範囲で十分なのではないかということが言われていたのですが、実務的にはそれなりにニーズがあるのではないかというのと、理論的には可能なのではないかという話で、こうなってきたわけなのですけれども、今までの議論の流れとして、こういうふうになっております。特に御異論がなければこの方向で了解を頂ければと思いますが、いかがでございましょうか。   よろしゅうございますか。では、先を急ぐようで大変恐縮でございますけれども、次に第6、全体としては「動産譲渡担保権等と他の約定担保権が競合する場合の優劣」というやつなのですが、「1 占有改定劣後ルールの潜脱への対応の要否」という問題と、「2 対抗要件具備時説の修正の要否」という、全部について御議論を頂ければと思います。事務当局におきまして部会資料の説明をお願いいたします。 ○森下関係官 では、「第6 動産譲渡担保権等と他の約定動産担保権が競合する場合の優劣」について御説明いたします。   まず1は、占有改定劣後ルールの潜脱に対するルールを設けることの要否についての提案になります。部会資料33では、占有改定の方法により対抗要件を具備した動産譲渡担保権等を、占有改定以外の方法により対抗要件を具備した約定動産担保権に劣後させる占有改定劣後ルールを提案いたしました。しかし、このルールに対しては、18ページの9行目以降に記載させていただいたとおり、一旦現実の引渡しによって対抗要件を具備した後に、譲渡担保権者が目的動産の占有を設定者に戻したようなケースでは、占有改定により対抗要件を具備した場合と同様の外形が生じるにもかかわらず、占有改定劣後ルールが適用されないこととなり、不都合であるとの意見がありました。【案6.1.1】から【案6.1.3】までは、この不都合に対応する特別のルールを設けることの要否についての提案になります。   まず、【案6.1.1】は、このような不都合に対応する特別のルールを設けないとする案になります。先ほど御説明したケースのように、占有改定劣後ルールを潜脱することを意図して目的動産の占有を直ちに設定者に戻したようなケースでは、現実の引渡しではなく、占有改定により対抗要件を具備したにすぎないと評価されることがほとんどではないかと考えられ、特別のルールを設けなくても大きな支障は生じないとも考えられることによるものです。他方で、合理的な理由があって設定者に占有を戻したような場合にまで占有改定劣後ルールを適用することが当初の担保権者に酷であると考えるのであれば、あえて占有改定劣後ルールを適用させる必要はないということを前提とした案になります。   【案6.1.2】は、上記ケースの不都合に対応する特別のルールを設ける案になります。これは、占有改定劣後ルールの適用範囲を、当初の対抗要件具備時の目的動産の占有が設定者にある場合に限定せず、事後的に占有改定の場合と同様の外形が生じた場合についても、一定の範囲でこのルールを適用させる案になります。   更に、この案は隅付き括弧の中で2案を併記しております。隅付き括弧の前段は、一旦占有改定以外の方法で対抗要件を具備しても、その後に目的動産を設定者が占有することとなった場合には、競合する担保権が設定された時点での占有の態様にかかわらず、占有改定によって対抗要件を具備したものとみなす案になります。隅付き括弧の後段は、競合する他の担保権のいずれかが対抗要件を具備した時点で、設定者が直接占有していた場合に限り、占有改定によって対抗要件を具備したものとみなす案になります。両案による結論の違いは、18ページの8行目以降に記載しているところです。   【案6.1.3】は、より一般的に競合する担保権同士の優劣についての信頼保護ルールを新たに設けることによって不都合に対応する案になります。類似の制度として即時取得の制度がございますけれども、それとの相違点といたしましては、譲渡登記によっては即時取得が成立しないと一般的に解されているのに対して、この信頼保護ルールについては譲渡登記を備えた場合も対象となり得るといったところがあります。また、即時取得につきましては、譲渡担保権の存在を認識していたもののその順位について誤信していたようなケースを念頭に置いた制度ではないのに対して、新たな信頼保護ルールでは、このような担保権の順位についての誤信の場合も含めて、優先する動産譲渡担保権等がないことを過失なく信じたときに最優先の約定動産担保権を取得することになります。   続きまして、19ページの「2 対抗要件具備時説の修正の要否」について御説明いたします。   部会資料33では、同一の動産について集合動産譲渡担保権等と個別動産を目的とする約定動産担保権が競合する場合について、加入時説ではなくて対抗要件具備時説を採ることを提案いたしました。もっとも対抗要件具備時説を徹底すると、20ページの1行目以降のようなケースで不都合が生じるように思われます。具体的には、①で、Aを設定者、Bを譲渡担保権者として、甲倉庫に集合動産譲渡担保権を設定し、登記によって対抗要件を備えた、②で、その後にCを設定者、Dを譲渡担保権者として、乙機械に動産譲渡担保権を設定して、登記によって対抗要件を備えた、③で、Cが乙機械を動産譲渡担保権の負担付きでAに真正譲渡した、④で、Aは乙機械を甲倉庫に搬入した、こういった①から④までのようなケースでは、対抗要件具備説によると、Bの集合動産譲渡担保権がDの譲渡担保権に優先しますけれども、②のDの担保権設定時には、目的動産がBの集合動産譲渡担保権の目的になることを予測することは困難と考えられますので、この結論はDに不測の不利益を被らせるもので、相当でないようにも思われます。そこで、本文では、競合する約定動産担保権と集合動産譲渡担保権等が異なる設定者によって設定されたものであるときは、例外的に加入時説を採用することを提案しています。これによると、先ほどのケースでは、乙機械が甲倉庫に入る前に、Dの譲渡担保権の対抗要件が具備されていますので、Dが優先することになります。   これらの点につきまして御審議をお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、どの部分でも結構でございますので、御議論いただければと思います。 ○青木(則)幹事 2つあるのですが、よろしいでしょうか。 ○道垣内部会長 関連する内容であれば、両方一度にお願いします。 ○青木(則)幹事 1と2、1個ずつなのですが、すみません。   第6の1についてでございます。こちらは意見でございますけれども、結論から申しますと、この御提案が出てきた経緯から考えて、【案6.1.2】で前段の方、つまり、設定者が戻せば占有改定と同様に扱う処遇という方が妥当ではないかと思っております。と申しますのは、この御提案は、中間試案で示されていた登記優先ルールをとるということについてある程度コンセンサスがあるというところから出発して、ただ、そのままだと占有改定以外の占有などの対抗要件との関係がうまく処理できないので、占有改定劣後説という形をとることになった、しかし、そうしますと今度は潜脱が問題となってくる、こういう流れで出てきたものであったかと思います。そうであれば、もちろんこの潜脱を許すわけにいきませんので、【案6.1.1】で放置というわけにはいかないでしょうが、【案6.1.3】にしてしまいますと主観が入ってきますので、大前提となっている登記優先ルールの根本がかなり変わってくるということがございます。やはり登記制度はそういう主観を踏まえずに、すっきり客観的な公示の事実の先後だけで決めるという方がすっきりしますので、これをベースに考えた場合は【案6.1.2】になるだろうと思っております。   今度は【案6.1.2】の中でどちらがいいかということでございます。対抗要件の問題だという理論的な点を考えますと、後段も非常に魅力的ではあるのですが、しかし、元々この問題は、非占有型担保でありながら占有改定を認める範囲をどこまでにするのかという制度的な線引きの問題なのかと思います。すなわち、占有改定による対抗要件の具備の余地が残されたのは、かつて隣のおじさん問題という形で論じられてきたような、要するに差押えとか倒産管財人に対しては対抗できるけれども、それ以外は対抗できないというような担保権、そういう対抗力も必要なのだという趣旨であったかと思います。そういたしますと、占有改定に、それに加えて、タイミングよく目的物を持ち運べば対抗要件を具備できるというような、潜脱的な取引を引き起こしかねないような機能を与えるのはいかがなものかと思います。そういった線引きの基準という点からいうと、【案6.1.2】の前段が妥当ではないかと思います。まず第1点でございますが、第2点、よろしいでしょうか。   次は2の方ですが、この御提案の20ページの上の事案を見ますと、この事案で登記時説が適用されるかどうか自体が非常に怪しいように思っております。もちろん前回ご説明があったように、加入時説ではなく対抗要件具備時説をとるのはポリシーの問題だということで整理されてございますので、そのポリシーの範囲がどこまでかということに関わってくるのかと思いますが、対抗要件具備時説というのは、やはり対抗要件の問題であって、対抗関係にある中で対抗要件を具備した上での優先関係の調整の問題かと思っておりますので、対抗関係にない場合には適用されないのではないかと思います。   挙げられております設例は、Dの対抗要件ある担保権の目的物をCがAに売却するという問題かと思います。そうすると、Aからの処分はBに対する集合動産譲渡担保設定だけであって、Cから仕入れたものをAが処分するという事実がありませんので、これは対抗関係ではないのではないかと思います。そうしますと、この例外規定を設ける必要があるのか少し疑問に思います。もちろん処遇としては御提案されているような加入時説の限定採用と同じ処遇になるかと思いますが、むしろ対抗要件具備時説を採ったとされる集合物上の対抗要件と加入物の関係のルールが本当にここまで及ぶということになるのかどうか。もし及ばないのであれば、余り余計なことは書かない方がすっきりするかもしれないが、もちろん処遇として反対しているわけではないと、そういうふうな意見でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○阿部幹事 私は第6の1について、少し御意見を申し上げたいと思うのですけれども、まず、占有改定劣後ルールは、占有改定の公示力の弱さに鑑みて、これを特別に劣後させるというような話だったかと思います。そういったことを考えますと、他の競合する担保権が設定された時点において、占有改定と同じような状況になっているのであれば、やはり同じく扱うべきではないか、公示力の点で同じようになっているのであれば、同じく扱うべきなのではないかと思いました。   【案6.1.1】と【案6.1.2】の違いというのは、【案6.1.1】は、要は設定のときに一旦引渡しをした上で、直ちにそれを設定者に戻したようなケースでは占有改定と解釈上みなすということで、そのようなケースには【案6.1.1】でも対応できるのだと思うのですけれども、直ちに戻したのではないような場合であっても、他の競合する担保権が設定される時点で占有改定と同じような状況になっているのだったら、それを公示力で区別することはできませんので、【案6.1.1】で直ちに戻したような、そういう濫用的な場合、潜脱的な場合だけを対処するというのでは、公示力による説明が不可能なのではないかと思いました。だから、【案6.1.1】と比べると【案6.1.2】の方が、公示力の弱さという観点の説明からすると一貫してくると思うのですけれども、ただ、引渡しの後に設定者が目的である動産を直接占有することになったとき、一般に占有改定と同じとしてよいかというと、それはやはり結局、他の競合する担保権が設定された時点では担保権者の方に占有があって、設定者に占有が戻っていないというような場合でも、その後に直接占有になってしまえば占有改定と同じに扱ってしまうというのは、担保権者の持っていた対抗要件の公示力の弱さからは説明できないように思いますので、やはり他の担保権が設定されるときに公示力がどれぐらいあったかということに着目すべきではないかと思います。   そういうことでいうと、【案6.1.2】の【】内については、後者の、競合する他のいずれかの約定動産担保権の対抗要件具備のときに設定者に占有が戻っているかどうかということに着目する方が合理的だろうと思うのですが、しかし、やはりこれも、例えばB、C、Dと3人担保権者がいるような場面で、Bが一旦現実の引渡しを受けて担保権を設定されたと、その後にCが譲渡登記で設定を受けたと、その後に、更にBから設定者Aに占有が戻って、その後でDに担保権が設定されたというような関係ですと、この案からすると、Cの設定の時点では公示力があったはずなのに、後からDという人が出てきたことによって、BはDとの関係のみならずCとの関係でも劣後化されるわけです。これは複雑な状態を避けるために致し方ないという話なのだと思うのですけれども、やはり対抗要件の持っている公示力の弱さによる説明には、どうしても限界があるのかなと思いました。   そういうわけで、【案6.1.1】、【案6.1.2】のいずれに関しても、公示力の弱さということから出てきた案ではあるのですが、どうしてもその説明からすると首尾一貫しない部分が残ってくるのではないかと思いました。なので、私はむしろもう、いっそのこと全然違うルールとして【案6.1.3】にしてしまうということも大いにあり得るかなと思いました。 ○道垣内部会長 阿部さんの論理で【案6.1.3】が出てくる理由が分からないのですが。 ○阿部幹事 【案6.1.3】であれば、公示力の弱さによって占有改定を対抗要件として劣後させるという話とは違う話になるので、ということです。 ○道垣内部会長 現実に信頼した人を保護するというふうなことを【案6.1.2】の後半のような形で貫くのならば、徹底的に【案6.1.3】ということもあり得ると、そういう話ですね。 ○阿部幹事 まあそうですかね、うまく捉えられるかどうか分からないのですけれども。 ○道垣内部会長 分かりました。 ○片山委員 慶應大学の片山です。どうもありがとうございます。私は基本的には、青木幹事がおっしゃったように、【案6.1.2】の方がいいかとは思っております。と申しますのは、占有改定の公示力の弱さということはもちろんあるのですけれども、当時議論されたときに、登記優先ではなくして占有改定劣後だという、そちらの方がベターだと考えましたのは、やはり動産質も含めたいわゆる占有担保自体は保護すべきであって、それは登記と対等に取り扱っていく必要がある、すなわち、登記の公示力ということとは別に、占有継続を前提とした、動産質型の担保権者が占有しているケース、それから、指図による占有移転による第三者、倉庫業者が占有しているようなケース、それについては登記と対等に取り扱っていくべきではないかと考えたからでございます。   その意味では、占有改定劣後ルールの潜脱型に対する対応は、基本的には、少し不格好なのかもしれませんが、みなすという形での【案6.1.2】で、実質的には占有継続を要件化するという方向を目指すべきで、【案6.1.3】ということになりますと、青木先生と同じ批判になりますけれども、やはり登記制度を中心として公示を組み立てていく中で、即時取得的な救済を認めることは制度設計として矛盾を内包することになりかねませんので、余り用いない方が制度としての整合性がとれるのではなかと考えた次第です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかにありますか。 ○佐久間委員 ありがとうございます。私は【案6.1.3】が、今になってこの案を検討して、これでいいというのであれば、いいかなと思っています。今になってというのは、多分ここまで全然出てきていなかった案ですので、なかなかコンセンサスを得るのは難しいかなと思うからです。   どうして【案6.1.3】がいいと思うかと申しますと、今、青木さんと片山さんは登記優先ルールをとおっしゃったのに対し、阿部さんは占有改定劣後ルールというところから出発をされたと思うのですが、私も占有改定劣後ルールを考えることが適当だと思っておりますけれども、その上で、前回もこの話のときに申しましたけれども、占有改定だって対抗要件の一つとして認められているのだから、それ相応の意味を認めてもいいのではないかと思っていたところです。   そうだとすると、占有改定がどうして劣後しても仕方がないのかというと、やはりそれは見えない、あるいはなかなか調べても分からない対抗要件だからであって、だとするならば、一般的には見えないのだけれども、知っている人、当然知ることができた人との関係でまで劣後させる必要はないのではないかと私は考えています。そうすることによって、余りもう言われなくなりましたけれども隣のおじさん問題にだって、その一部には対応できるのではないかと思っています。   ほかの対抗要件具備の方法については、占有改定のような見えにくさというのが元々ないわけですから、登記がされた場合についてはおよそ第三者には過失があると認められるというふうに、このゴシックにも書かれておりますし、現実の引渡しが仮にあったとか、第三者の下にあるというときは、やはり権利の所在というのは占有改定に比べればはるかに見えやすいといえると思いますので、後に出てくる者が過失があるということは、かなり容易に認められるのではないかと思うことから、私は【案6.1.3】がよいのではないかと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○沖野委員 ありがとうございます。私は、青木委員や片山委員がおっしゃったように【案6.1.2】の、かつ前半がいいのではないかと思っております。それで、占有改定劣後からなのか、登記優先からなのかという問題はありますけれども、登記優先で貫徹することに対しては、やはり質権のような場合についてまで、登記優先を確保するためには全ての人が登記をすべきだとはやはりいえないのではないかと思いますし、現実の占有を持っている約定の担保との関係を考えると、むしろ占有改定が弱いという方で行くべきではないかと思っておりまして、それで占有改定劣後ルールから今回スタートしつつ、その潜脱への対応の要否ということになっているのですけれども、これは以前、井上委員がおっしゃったかもしれませんけれども、占有改定の弱さというか対抗力として、対抗要件は認めるのだけれども順位としては強いものは認められないということで割り切っていいのではないかと。これは言いすぎかもしれませんけれども、そもそも言えば178条に入っているのもどうかというふうな問題だと思っているのですけれども、ただ、対抗要件としては一般債権者に対して担保権を持っているとか、あるいは倒産になったときに担保権者としての地位が認められるというのは、認められ、したがって、対抗要件としては最低限は持っているけれども、順位となったときに、こちらの方が優先するようなものがそこにあるというものとしては、やはり弱いということで、順位の点ではやはり駄目だろうと、そういう占有改定の位置付けではないかと思っております。さらには、そもそもそういう弱いものであって、ずっと継続していなければ、それはもう効力としても維持できないということで割り切っていいのではないかと思っております。   【案6.1.2】に対しては、先ほど、場面によっては占有改定の弱さでは説明できないけれども、債権者あるいは担保権者が競合する者がいろいろ出てきたときに、これもどのくらい現実的かという問題はあるかもしれませんけれども、非常に複雑な問題を生むので、その複雑さを嫌って、その順位については明快な基準が望ましいと、あるいは、より簡易に判断できる基準が望ましいと思われます。確かにそれは占有改定の弱さだけでは説明できていないのかもしれませんけれども、複合的な考慮で、一方で優先関係を決める基準の明確さや簡明さということの重さということを考えたときには十分、【案6.1.2】というのも評価できるのではないかと思っております。   【案6.1.3】は、反面ということですけれども、複数の者が登場したときの関係の複雑さですとか、それから過失がないかどうかということは結局、その段階でのどういうような態様であったのかとかを仮に総合判断していくとなりますと、この優先関係が非常に複雑なというか、いろいろな事情を考えないと分からなくて、例えば配当なども、私的な実行でどうするかとか、いろいろあるかもしれませんけれども、そういったものが最終的に全てこの過失がないかということの判断を訴訟を待って決めないと決められないということになるのもどうかと思いまして、簡明さと占有改定の弱さと、そもそも占有改定にどういう地位を与えるべきなのかという観点から、【案6.1.2】の前半がいいのではないかと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○水津幹事 占有改定劣後ルールの潜脱への対応の要否について、気になることがありますので、意見を申し上げます。  先ほど青木則幸幹事がおっしゃったような議論の経緯があるものの、ここでの問題は、占有改定劣後ルールを採った場合において、そのルールへの潜脱にどのように対応するかというものであるとすると、現実の引渡しが形だけされることによってルールの潜脱がされるおそれがあるのは、判例・通説を前提とする限り、即時取得についても同じである気がいたします。   【案6.1.3】は、現実の引渡しが形だけされたときであっても、現実の引渡しがあったものと評価されることがあることを前提として、新たな信頼保護ルールを設けるものであるといえそうです。しかし、即時取得については、現実の引渡しが形だけされたときは、占有改定がされたにすぎないと評価することによって問題に対処するのではないかと思います。   また、即時取得については、現実の引渡しが形だけされたときについて、判例において、【案6.1.2】のような特別なルールが形成されているわけではありません。占有改定劣後ルールの潜脱を防止するための特別なルールと、即時取得における占有改定除外ルールの潜脱を防止するための特別なルールとでは、文脈が異なるため、同じようなものになるかどうかは分かりませんが、仮に【案6.1.2】の前者の形で同じものになるとすると、問題は、占有改定とそれ以外の引渡しとをどのように区別するかという引渡し一般のレベルに位置付けられるため、そのルールについては、民法183条辺りに規定を設け、ここでの局面と即時取得の局面との双方について適用があるものとすべきである気がいたします。   いずれにせよ、現実の引渡しが形だけされることによるルールの潜脱の防止という問題は、ここでの局面のみを取り出して検討するのではなく、即時取得の局面についても目配りをしたほうがよいようにも思います。そして、ここでの局面のみについて規律を設けることを正当化するのが難しく、かつ、両局面に対応する規律を設けることも難しいのであれば、【案6.1.1】を採るほかなさそうな印象を受けました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   皆さん論理構成が難しくて、どういうふうな方向に進むのかが最後まで聞かないとよく分からないという感じなのですが、阿部さん、お願いいたします。 ○阿部幹事 先ほど沖野委員から、占有改定劣後ルールで、占有改定の公示力の弱さというところから出発しつつ、法律関係の簡明さ、順位の分かりやすさというのを一つの利益として、余り公示力の弱さから説明との整合性というか、そのような説明の貫徹はしなくてもいいのではないかというお話があったと思うのですが、私は、占有改定の公示力の弱さというところから出発して、それを問題視することによってルールが複雑化するのであれば、そもそも占有改定劣後ルールを採るべきでないと元々考えていました。登記最優先ルールがよくて、占有改定劣後ルールは余りよくないという理由として、こういうような難しい問題が出てくるよねということを以前の議論では申し上げておりましたので、どうしても占有改定の公示の弱さというところに着目してしまうと、そういう難しい問題が生じてしまうので、それだったら占有改定劣後ルールは余り望ましくないのではないかと、その方向に簡明にするということもあり得るのではないかなと思います。それで、更に【案6.1.3】みたいな別の信頼保護ルールを設けるかどうかというのは、また別論なのですけれども、簡単にするのであれば、占有改定劣後ルールを採りながら簡単にするのではなくて、そもそも採らないという簡単の仕方もあるかなと思いました。 ○道垣内部会長 採らないというときには、登記をしていれば勝つということになって、その後。 ○阿部幹事 いえ、通常の、元々の、対抗要件の時的な順序で決まると、一番原則に戻るというのが一番簡明なのではないかと、そういう趣旨です。 ○道垣内部会長 なるほど、分かりました。   ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○阪口幹事 2の方でもいいですか、今、1の方が盛り上がっていますが。 ○道垣内部会長 1が盛り上がっているので、1の方で。2は後にして、1について何かほかに御意見ございませんでしょうか。   きれいにみんな分かれているのですが、なかなか元に戻して、占有改定でいいではないかと、178条で含まれるというのは確定的にそう考えられているのだから、それをいじめるなよと言われましたときに、世界的に説明できるかというと説明不可能だろうと私個人は思います。そもそもこれは何の立法だったのだろうかという、立法の中の大きな一つの柱みたいなものが揺れるような気もいたしまして、それは少し難しいのではないかと個人的には感じます。あり得ない見解ではないというのは、もちろんそうなのですけれども。【案6.1.3】に関しては、言わんとするところは分かるけれども、主観を基準にすることによる複雑さみたいなものがあるのではないかというのが青木さんや沖野さんから出た話ではないかと思います。もちろん意見は分かれておりますので、決まってはいませんが。   まだ第6の1についてこれで議論を終えるわけでございませんけれども、2についても御意見があるという話が阪口さんからも挙がっておりますので、2についての御意見についてもお願いできればと思います。 ○阪口幹事 阪口です。これが先ほどあった対抗問題なのかどうかというのはよく分からないのだけれども、このルール自身はあってもいいのかなとは思っています。その上で私が申し上げたかったのは、実務的には、ゴシック体で書かれた、競合する集合動産譲渡担保権等の設定者以外の者という概念の中に、例えば合併とか、そういう局面もあるのかなと前から思っていたのです。20ページの例に即していうと、Aを設定者、Bを譲渡担保権者として甲倉庫の集合譲渡担保権設定と登記が行われ、その後に、Cを設定者、Dを譲渡担保権者として乙機械の譲渡担保権設定と登記が行われ、その後にAとCが合併して乙機械が甲倉庫に搬入されました、という局面です。そういうものも含めて、Dはその時点では劣後することを予測できないのだから劣後するのはおかしいというルールでもいいのかなと思っていたので、こういうルール自身はあり得るのかなと思っています。 ○道垣内部会長 この問題は二つに分けて考えなければいけないと思いますが、青木さんがおっしゃったように、ここには対抗問題は存在しなくて、書かない方がすっきりしているのではないかというのは、最後の整理としてはあり得る話だと思うのです。しかし、その前に実体的なルールとして、20ページの①、②、③、④というときには、それはDが勝つよねということについては、これは皆さん御異論がないと考えてよろしゅうございますでしょうか。   よろしゅうございますか。その上でどういうふうなルールを書くのか、書かないのか。書かないというのは一つ、十分にあり得る考え方で、例えば、CとDの間が真正譲渡で、DとAが対抗関係に立ち、かつAが即時取得しない場合を考えますと、幾らAが乙機械を甲倉庫に搬入しても、それは絶対的には勝つはずなのです。そうなると、青木さんのおっしゃるような、これはそもそも対抗問題ではないというのは、非常によく分かるところなのですけれども、書くか書かないかはその後、いろいろ法務省にも考えていただくことにいたしまして、結論としてはこれでいいかなというところで御一致がいただければと思います。よろしゅうございますか。   それでは、元に戻りまして、1につきましてもう少しほかに御意見がございましたら、是非伺えればと思います。 ○阿部幹事 すみません、1ではなくて、先ほどの2についてなのですけれども、少しいいですか。勝敗の問題として、ここでいうところのDがBに勝つというのは、私もそれでいいのではないかと思ったのですけれども、優劣というのは要するに、今この目的物がAに譲渡されて、甲倉庫に搬入されて、そこで担保権が実行された場合の優劣と、そういうことになるのですかね。何かそういう問題だけではなくて、そもそもこのCがAに譲渡していること自体が、Bの担保権との関係では問題があって、DとBが優劣問題として出てくるというよりも、例えばDとしては倉庫から元に戻せというような主張をしてきたりとか、そういうような形でDとBの間の優劣が問題にならなくなるようなこともあり得るのかなと思ったのですけれども、何か誤解していますでしょうか。 ○道垣内部会長 それはそのとおりだと思いますけれども、それよりも前に、Aが即取得していないと、Dの譲渡担保権というのが存続しているということを、ここを書くのならば書かないと、例としては、CがAに、負担付きでと書いてあるから、そうなのだけれども、譲渡した段階で終わってしまっているのではないかと思われる可能性があるので、少しそこをクリアに書いた方がいいかもしれません。かつ、優劣の問題ではなくて、DがAに対して戻せと言えるのかという問題は、それは一般理論としてあり得る話ですよね。別に同じ、同じというか、そうでもないのか、他者のもの、担保権の話ではなくて、他者所有物であるならば、その問題は起きますよね。 ○笹井幹事 そこはこの部会でも御議論いただいた、設定者が真正譲渡できるかという問題の一場面で、元々無効だという見解から、対抗することができないという見解を経て、今は、基本的には有効にした上で、実行の場面だけ、元々の所有者というか元々の設定者に対して、通知ですとか清算金の提供などをすれば足りるようにしましょうという考え方に至っているのだと思います。いずれにしてもそういう意味で、無効という見解から、だんだん有効だという方向に移ってきたということもありますし、この場面は一般的に必ず競合するということではなくて、少なくとも例えばDの承諾を得た上で譲渡したような場合には、これを対抗問題と呼ぶのかどうかは別として、ある動産について複数の担保権が設定されているという状態にはなるのかと思いましたので、その場合にどちらがより優先するのかという問題は少なくとも生ずるのではないかということで、今回取り上げたということです。 ○青木(則)幹事 二つ目の点で、これまでの議論がどうだったのかということの確認なのですが、CがAに対して所有権留保をするときの処遇についてお尋ねいたします。中間試案では、狭義の所有権留保と集合動産、在庫商品とかに分けて、狭義のものについては物権法どおりに処遇するということであったかと思うのですが、その後、購入代金のための担保権について優先するといったルールを導入するというご提案が出てきたときに、所有権留保の方は現状維持というお話だったでしょうか、それとも、所有権留保もそちらに吸収してしまって、所有権留保について狭義とか集合という話は、解消してしまうという方向性なのでしょうか。もし解消してしまうとすると、少し困ったことになるのかなと思ったものですから、確認だけさせてください。 ○笹井幹事 いわゆる拡大された所有権留保については、基本的には動産の譲渡担保と同じように扱いましょうということで、部会でもそのような議論だったかと思います。集合動産所有権留保を認めるべきという議論もありましたけれども、それは結局拡大された所有権留保になると思いますので、動産譲渡担保扱いにして、そういうような集合的な所有権留保というのもあり得るのではないかという方向で今、議論が進んでいたかと思います。 ○青木(則)幹事 所有権留保は維持されたまま、取りあえず購入代金担保について別途加わるといったイメージでよろしいですか。 ○笹井幹事 ただ、拡大された所有権留保についても購入代金部分とそうでない部分があって、購入代金部分についてはその限りで優先させるという議論はまだ残っていて、それは同じように、動産の譲渡担保についても購入代金部分については優先させるという議論だったと思います。狭義の所有権留保についてどう考えるかというのは、狭義の所有権留保については、しかし、いずれにしても被担保債権は購入代金部分だけですので、順位という意味では最上位になってくるかと思います。   ほかのものと競合し得るかどうかについては、少し悩ましい問題があって、平成30年判決のように考えると、そのまま判示を形式的に読むと、物権が動いていないということなので、対抗要件も不要だということになりますし、恐らくほかの担保権と競合するということ自体が生じないということになると思います。一方で、恐らく捉え方としては物権変動の在り方としては、行って返ってくるという在り方もあり得て、ただ、行って返ってくるとしても、返ってくる部分について対抗要件を不要にしましょうということについては、おおむね意見が一致していたかと思います。 ○青木(則)幹事 一番最後のお話の確認をさせていただきたかったのです。もちろんそこの部分については、加入時説が残るということについて、既に前々回辺りのお話にあったかと思います。それでカバーできていることかと思います。ありがとうございます。 ○沖野委員 今の2についてです。先ほど1について簡明さを重視すると言っていながら、これを言うのはつらいのですけれども、設例において②が登記ではなく占有改定であったときにどうなるのかということです。占有改定で機械に譲渡担保権を設定して、それを担保付きで売却し、こういう担保が付いているということをAにも言っているので、Aが担保のない財産を即時取得するということはないというときに、対抗要件具備の時間順で決めるということに対する加入時の例外の問題と、仮に占有改定劣後、あるいは登記優先でもいいのですけれども、それを採ったときには、そちらで今度は登記優先という話が出てきそうなのですが、この事例の場合はそれもおかしいようにも思われます。そもそもがAの下で設定される担保権同士の関係でもなくて、登記自体も、Aが設定する、Aが譲渡人というか、そうなるものしか及んでいないようなものですので。そうすると、これは、対抗要件の順番でという規律と、対抗要件具備方法における優先劣後の規律についても例外ということを考える必要があるのではないかというのがし気になっております。そういう問題があるのではないかということだけ申し上げたいと思います。 ○道垣内部会長 結局②が、Cを設定者、Dを譲渡担保権者として個別動産譲渡担保権を設定しというのが、占有改定によって対抗要件を備えたというふうにこれをやりますと、これは対抗問題ではないと、Dの譲渡担保権が付いているものが倉庫に入ってきただけなのだと考えますと、②が占有改定によって対抗要件が備えられたものであってもDが勝つということになるのに対して、これはDとBとの間の対抗問題だよねと考えると、Bの方が登記でDの方が占有改定だったら登記の勝ちになるのではないかと。つまり、この事例では結論が同じであっても、対抗問題として理解するのか、そうでないものとして理解するのかによって、結論は変わってき得るので、きちんと理解を明らかにしなければ駄目だよねというのが沖野さんのお話だろうと思うのですけれども、いかがですか。 ○笹井幹事 この事例を考えたときに、これを一般的な優先劣後関係の問題として考えてよいのか、そうではないのかというのは、少し悩みました。ですので、これは対抗問題ではないのではないかとか、やはりAが取得するのは担保権を除いた部分であって、対抗問題にならないのではないかというのも非常によく分かるのですが、今までの、例えば抵当権が誰かの下で設定されて、更に抵当不動産が譲渡されて、新しい人の下で抵当権が更に設定されたみたいなケースと同じように考えると、設定者が同じでないと対抗問題というか、ここでの問題が生じないのかというと、やはりそれは設定者が誰であろうと優先劣後関係として捉えてきたような気もいたします。また、これは条文の書き方なのかもしれないですけれども、同一の動産について複数の担保権が競合した場合にはこういうルールで決めますというふうな書き方をすると、この場合も結局、誰が設定しようと、同一の動産について複数の担保権が存在することになるので、やはり優先劣後ルールの一つの場面として捉えざるを得ないのではないか、条文上はそういうふうになるのではないかと考えて、今回、問題提起をしたということです。   沖野委員がおっしゃった、②が占有改定だったらどうするのか問題については、余り考えていなかったというか、この問題を提起したことによって、問題が広がりを持ってきたということなのかと思うのですけれども、したがいまして、事務局において事前に何かしっかりそこを検討していたというわけではありませんが、直感的に言うと、そこは例外を設けずに占有改定を劣後させるということでよいのかなという気もしますが、いかがでしょうか。 ○道垣内部会長 それは青木さんが最初に分析されたのと違って、抵当不動産が譲渡されて別の所有者になった後に、抵当権が更に設定されて登記がされたという場合と結局同じだよねと考えて、そうすると、設定者が誰であれ、それは一応対抗問題であるというふうに考えると、そういう整備ということですね。 ○笹井幹事 はい。担保権の優先劣後問題が対抗問題なのかというのも、よく分かりませんで、今、現実問題として対抗要件の前後によって決めるというのが、個別に質権についても抵当権についても、177条とは別に規定が設けられているので、それに従っているということですが、あれが本来的な対抗要件の問題なのかどうかというところもよく分からないので、ここはまた別途、優先劣後関係として決めるということを念頭に置いておりました。 ○道垣内部会長 今のは大変面白い話で、抵当権に関しては、抵当権の順位は対抗要件の具備の先後によるという条文があって、それが177条の対抗問題だ、第1順位があって、抵当権があって、その後に抵当権が設定された場合には、後順位の人は第1順位の人に対抗されるのだと考えたら、177条だけで説明が付くわけであって、その条文は不要なはずなのですよね。そういうふうな条文があるということになると、それは実は対抗問題とは別個の順位問題というのを考えているのではないかというのが今、笹井さんがおっしゃったことで、そうすると、そこら辺も考えながら、この問題を何の問題だと整理するのかということを考えなければならないということで、大変難しい問題になってしまっている感じはしますが。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。今の御説明と逆になるのかもしれないのですけれども、2が占有改定であってもDの方が優先するのかなとは思っておりまして、それも最終的には対抗問題ということになるのかもしれませんが、やはりAは第三取得者的な地位にあるということですので、まずはCの下で乙機械に関して設定されている担保権が、言ってみれば第1順位みたいな形になるので、第三取得的な地位という点を含めた上での対抗関係という形で整理されるということになると、やはりCの下で先に設定されている担保権が仮に占有改定であったとしても、そちらの方が優先するという結論になるのではないかとは思いました。逆のようになりますが。 ○道垣内部会長 なかなか1も2も解釈論的に分かれますね。   ほかに御意見はございますでしょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。井上です。余りきちんと考えがまとまらないうちに発言するので、言っていることが破綻するかもしれないのですけれども、今の問題は基本的に、設定者というか対抗要件具備者が異なるときに、その後の事情によって対抗問題と評価し得るような状態になったことが問題の所在ということですかね。   同じ人が対抗要件を具備しているのであれば、今まで議論していたことを当てはめても不当な感じがしないのに対して、ここで少し違う問題ではないかという印象があるのは、対抗要件の具備者というか設定者が異なると、異なる人が異なる状況でそれぞれ対抗要件を具備したという経緯がある点がポイントになると思うので、そういう切り口で場面を区別して、その場合は占有改定劣後ルールを適用せずに規律することにしてはどうだろうと感じました。   それが先ほど阪口先生がおっしゃった合併の問題にも響いてくるような感じがして、解釈論で解決できる問題なのか、ルールを別に設けなければいけないのかはよく分からないのですが、そういった基準で適用されるべき規律を変えるというか、適用範囲の線引きをして、明確化するといいのかなと思いました。   あと、全く関係ないかもしれないのですが、今の議論を聞いていて少し思い出したのが、将来債権譲渡に関する債権法改正の議論のときに、例えば物品販売業をやっているAが将来の売掛債権を譲渡して、他方、同業者Bも将来の売掛債権を譲渡して譲受人がそれぞれ異なるときに、その後AとBが合併した場合、その後発生する売掛債権を一体どちらが取得するのかは、まだ解決されていない問題だと思うのですけれども、こういうことがいろいろ起こり得る中で、どこまで今回ここでルール化する必要があるのかも、検討する必要があるのかなとも感じました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   意外にいろいろ意見が分かれるということが分かりましたが、本日のところでほかに御意見はございますでしょうか。   理屈をかなりきちんとしないと、つつかれるところだと思いますので、事務局を中心に更にもう少し考えていただければと思いますが、阿部さん、お願いします。 ○阿部幹事 ありがとうございます。そうすると、個別対個別の場合でも、先ほどの沖野委員の指摘したのと同じような問題は起こるということですかね。目的物が譲渡されて、譲受人が担保権を設定しました、譲受人による担保権の設定は動産譲渡登記で対抗要件を備えています、最初の設定者による担保権設定は占有改定で対抗要件を備えています、という話になったら、両方とも個別譲渡担保でも同じような問題が生じそうな気がして、そうすると、これは集合対個別に固有の問題ではなくて、個別対個別でも同じような問題が生じそうな気がしたのですけれども、誤解でしょうか。 ○道垣内部会長 登記、占有改定、現実の占有移転という問題の優先劣後の関係に関連しては、個別対個別であっても、今、阿部さんがおっしゃったようなシチュエーションは起こるということなのだろうと思います。差し当たって今日出してきたのは、そういうふうな対抗要件の種類による優劣関係の話ではなかったので、その点については扱っておりませんけれども、何らかの形で書くべきなのか、それとも単に説明でとどめるべきなのか、その辺はよく分かりませんけれども、検討していただければと思います。   ほかに何かございますでしょうか。   なかなか難しい宿題が残ってしまいましたが、本日のところはこれでよろしゅうございますでしょうか。   それでは、本日のところはこのくらいにさせていただければと思います。本日もありがとうございました。   次回の議事日程等につきまして、事務当局から説明をしていただきます。 ○笹井幹事 次回の日程は、11月7日火曜日、2週間後の火曜日で、午後1時30分から午後6時までとなっております。   次回は、今回のような幾つかの個別で御議論いただくような問題を一つ考えておりますのと、要綱案のたたき台を、一部分になりますけれどもお示しして、御議論いただければと思っております。 ○道垣内部会長 どうもありがとうございました。開催場所につきましてはなかなか、流浪の民になってしまうことがしばしばありますので、お気を付けいただければと思います。   それでは、法制審議会担保法制部会の第39回会議を閉会にさせていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。また11月7日、よろしくお願いいたします。 -了- - 1 -