法制審議会 担保法制部会 第43回会議 議事録 第1 日 時  令和5年12月18日(月) 自 午後1時30分                       至 午後6時17分 第2 場 所  法務省20階・第一会議室 第3 議 題  担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(11)         事業成長担保権に関する論点の検討(2) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第43回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は家原幹事が欠席と伺っております。また、今日はふだん火曜日でありますところ月曜日でございますので、大学の関係でなかなか予定が合わなかった方がたくさんいらっしゃいまして、横山さん、加藤さん、水津さん、藤澤さんが遅れて御出席と伺っております。また、沖野さんと松下さんが途中で退席予定と伺っております。   本日はまた、参考人といたしまして、公益社団法人リース事業協会から山田周一さん、加藤建治さん、一般社団法人日本自動車リース協会連合会から久保田憲さん及び末松英治さんの御出席を頂いております。また、明治大学法学部の山川隆一教授に引き続いて御出席を頂いております。   日本自動車リース協会連合会の久保田さん、末松さん、両参考人は、本日初めて参考人として出席いただいておりますので、それぞれ所属とお名前など、簡単な自己紹介をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。 (参考人の自己紹介につき省略) ○道垣内部会長 お忙しいところありがとうございます。よろしくお願いいたします。   まず、配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 本日もよろしくお願いいたします。事前に部会資料40「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(10)」及び部会資料41「事業成長担保権に関する論点の検討(2)」をお送りいたしました。後ほど審議の中で事務当局から御説明いたします。また、公益社団法人リース事業協会及び日本自動車リース協会連合会から資料の提出を頂きましたので、これを委員等提出資料43-1としております。後ほど提出者の方々から御説明を頂く予定です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは審議に入りたいと思いますが、前回、実は部会資料39の第2の3、事業成長担保権の実行手続で配当を受ける債権者以降が積み残しとなっておりました。そこで、そこから始めるというのも一つの考え方なのですが、事業成長担保権関係は本日の部会資料41と併せて本日の後半の審議でまとめて扱いたいと思います。そこで、本日の前半は部会資料40に基づいた議論をお願いしたいと思います。   そこで、まず部会資料40「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(10)」の「第1 動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約についての特則」について議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 それでは、第1について御説明させていただきます。   動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約につきましては、部会資料33において規律案を提案し、9月の部会において御議論いただいたところでございます。部会資料33においては、動産利用権について一定の要素を満たす契約については、動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約が設定されたものと推定する旨の推定規定を提案しておりました。しかし、今回の部会資料の説明欄の1で記載しているとおり、債務不履行があった場合に利用権の目的である動産の価格の増加をもって未払いの対価の支払に充てることが合意されている場合には、担保取引であることが明確であるとも考えられ、また、実務に影響が生じないよう留意すべきであるといった部会での御指摘も踏まえ、このような推定規定の必要性を慎重に検討した結果、債権譲渡担保権設定の有無については個別の事案ごとの認定の問題として整理し、このような推定規定は設けないものとしております。   本文1から3までにつきましては、そのような意味で、動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約と認定された場合に適用される規律を挙げております。債権譲渡担保契約と認定された場合、原則として第三者対抗要件として確定日付のある証書による通知又は承諾が必要となりますところ、本文1は、動産利用権設定の対価に係る債務を被担保債権とするものについては、被担保債権と担保の目的である動産利用権との牽連性が高いといえることから、対抗要件を不要とする規律を設けるものです。   また、これまでの部会資料において提案してきたとおり、債権譲渡担保権の実行については動産の引渡しを観念することができず、帰属清算時等から2週間を経過したときに実行が終了し、被担保債権がその価額の限度で消滅するということとなりますが、動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約につきましては、目的である動産の引渡しがされれば実行の実質的な目的が達成され、当事者も実行が終了したと認識するのが通常であると考えられることから、動産の引渡しを受けたときにも終了することとしております。   また、これに関連しまして、9月の部会における指摘等も踏まえまして、動産の利用権の目的である動産について、動産譲渡担保権における実行のための保全処分や引渡命令等の手続を利用することができるものとしております。   その他の規律につきましては、部会資料33の規律と実質的な変更はございません。   説明は以上となります。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   この論点につきましては、リース事業協会及び日本自動車リース協会連合会から委員等提出資料43-1が提出されておりますので、御提出されました参考人の皆様におかれましては、その内容を簡潔に説明していただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○山田参考人 先ほど御紹介いただきましたリース事業協会の山田でございます。去る2月の会議において、中間試案に対する意見等について業界団体として発言の場を頂戴しました。本日改めて同じような機会を設けていただいたことに感謝申し上げたいと思います。本日は、同意する一般社団法人日本自動車リース協会連合会と連名で意見書を提出させていただいているところであります。   さて、前回の会議、更にパブリック・コメントを通じまして、ファイナンス・リースに関する御提案に対する意見を述べさせていただいておりますが、我々の視点からの議論が行われているかどうかということについて不安を感じているところでございます。また、中間試案以降、9月の第3回会議で新たな提案がなされて、更に本日、これを修正する御提案がなされている状況で、正直、御説明の中にはファイナンス・リースという言葉は出てくるのですが、もはやどのような領域の議論をされているのかというのが曖昧になっているのではないかとの、懸念を抱いているところでございます。   意見書でございますが、前回同様というと大変失礼になるかとは思いますが、今回の新たな提案によるリース取引の法制化についても、我々としてはこれに対する反対意見を述べさせていただいております。今回の意見書につきましては、大きく整理して二つにまとめており、まずⅠのところで、今回提案の「第1 動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約についての特則」に関する意見、次にⅡのところで、先の会議で示された譲渡担保契約に関する定義・総則に対する意見を記載しております。   まず、Ⅰにつきましては、前回御意見させていただいたところと重なるところが多いのですが、項目だけ挙げさせていただきます。最初に、リース取引への適用というのが取引当事者の意思に反しているということ、これが非常に大きな問題だと捉えているということです。この点、部会資料の中で、明文規定がなくとも、個別具体的な事案において動産を目的とするファイナンス・リース契約について、その約定の性質に照らして動産利用権を目的とする債権譲渡担保権であると性質決定される場合があることは否定できないという御指摘、正にそういう見解があるという御指摘がある一方で、ファイナンス・リースを特定することなく、場合によってはあらゆる賃貸借取引においてこの適用があるかどうかを検討しなければいけないといった問題が見過ごされています。これは、2点目の適用範囲が不明瞭であるという指摘につながるところです。   我々も自分たちでいろいろ調べたところ、例えば、当協会とは別の業界団体の企業等が取り扱う長期のレンタル取引、実は、これとは逆に我々リース会社がレンタル取引と称して契約をする場合もあるのですが、リースとは全く違う業界で長期のレンタル取引を行っている事例があって、正に彼らが使っている契約書を見ると、我々リース会社が使っているファイナンス・リースの契約書と全く変わるところはないということも判明しており、どの範囲でこの規律が適用されるのかよく分からないというところが問題であると考えております。   3点目及び4点目は、前回の意見書でいろいろ述べさせていただいたところです。リース取引の会計制度、税制度に波及する懸念があり、これによって中小企業におけるリース利用について著しくメリットが消滅してしまうのではなかろうかということです。それと、他の法制度への影響ということです。当然ながら会計税制度以外にもいろいろな法令との兼ね合い、従来、物の貸与・貸借若しくは賃貸借という切り口で様々な法令の適用を受け、また規制されているリース契約において、この規律が入った場合にどのように変わってくるのか、変わらないのか、この辺りが全く分からないということでございます。   5点目については、以下の論点について議論が尽くされていないということで、①から④まで4点示させていただいておりますが、この中で少し重要かなと考えておりますのは、①と②のリース物件の残価の低下リスク、さらにリース物件の所有権侵害のリスクです。今回の御提案の中に、動産を目的とする債権譲渡担保権の私的実行は帰属清算方式又は処分清算方式によるものとし、これは通知の日又は処分清算譲渡の通知の日から2週間が経過したときでないと効力を発しないという趣旨の規律があるのですが、このルールによって、我々が非常時において物件の回収を速やかに図ることができないことの弊害が多々あろうかということをここで御指摘をさせていただいております。   最後の6点目のところ、これについては特に中小企業のリース利用についてマイナスの影響があろうかということで、前回の意見陳述時に述べさせていただいておりますので、ここで細かくは申し上げませんが、今回、特に自動車リースに関してはメンテナンスリースという形態を多く取り扱っているのですが、これが今回のこの利用権担保に関する規律との関係でどう整理されるのか見当が付かないなということで困っていることを付け加えさせていただきます。   Ⅱは、総則のところでございますが、こちらにつきましては、我々のリース実務にどのような影響が及んでくるのか、正直なところ想像が付かないところがあります。それは当事者間の合意によって整理できるのか、それとも当事者の合意によっても整理できない部分があるのか。例えば、第1定義の4のところで意見を述べさせていただいておりますが、最後のポツの「リース会社によるリース料債権の流動化に支障が生じるのではなかろうか」という懸念とか、実はリース取引というのは単純にお客様とリース会社及び物件の納入先の三者間だけの取引ではなくて、物件の転貸がされる場合の転リース、更にその先に転々リース、その転貸が必ずしもリースという形態をとっていない場合等があるのですが、「様々な取引形態に対してどの局面でどの規律が適用される可能性があるのか、これが非常に不安定になるのではなかろうか」ということでございます。   その他、第2の4のところですが、賃貸借の規律である民法612条が本件に適用されるのかどうなのか、今申し上げましたように、転リースとか転々リースなるものが存在する中で、この規定と賃貸借の規定との関係性、これもよく分からないということでございます。  以上、非常に駆け足で意見書の中身を説明させていただいたのですけれども、少し追加をして、今までの流れの整理を事務局の加藤の方からさせていただきたいと思います。簡単に済ませますので、お聞きいただければと思います。 ○加藤参考人 リース事業協会の加藤でございます。本日はお時間をいただきまして誠にありがとうございます。簡潔にという部会長の御指示もございますが、この後の質疑応答に関わるということで発言させていただきます。2分ほどお時間をいただければと思います。   中間試案に対するパブリック・コメントにおいて、リース取引の法制化に関する賛否両論が示されているのにもかかわらず、そのレビューがされていないことを大変残念に感じるというところでございます。その中で、法制化に賛成する御意見であっても、日本弁護士会連合会様からは、現在のリース実務に与える影響には十分に配慮されるべきであると、あと日本司法書士会連合会様からは、利用権とする立法に疑問を呈されているという意見が出されているということでございます。この部会においても、最初の頃でございますが、井上先生、あと大西先生からリース取引への影響を懸念する旨の発言があったと承知をしております。   この担保法制整備の原点に立ち返りますと、中小企業の資金調達の円滑化、多様化にあると理解しておりますが、これまで当協会が意見表明させていただいているとおり、正常な取引を阻害する法制化であると考えております。この点、9月19日の部会において、日本商工会議所を代表している山崎社長より中小企業への影響を強く懸念する意見が示されているということで、今回の御提案においてもその懸念が払拭されるものではないと思われます。本日、山崎委員から重ねての御発言がなければ、その御懸念は変わるところではないと理解しております。部会として中小企業者の皆様方のお考えを再確認したいということでありましたら、再確認していただければと存じます。また、経産省、中小企業庁の御担当官からも慎重な議論を求める旨の意見が出されていると承知しているところでございます。そして、当協会の会員会社は地方金融機関系のリース会社が多数おりますが、リース取引に負の影響が及ぶ、こういった懸念の声が多数寄せられていまして、中小企業ユーザーの設備投資が阻害される、それに加えて地域経済、雇用に悪影響を及ぼすと、そういった心配の声が寄せられているということでございます。   リース取引の法制化は平時において負の影響を及ぼすことが懸念されます。利用権という考え方が出されておりますが、東京地裁の判例の中でも技巧的だという評価を自らしているということと、あと阪口先生も昨年の9月6日の部会で、利用権担保は消去法だといったような御指摘もあったと承知をしております。この点、中間試案が示される前の昨年の9月6日の部会で道垣内先生より、リースの規定を置かなくても、担保制度が整備されることにより判例法理が進展する可能性があると先読みをされたような御意見が出されているところでございますが、そもそも今回御提案されている動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約の特則を設ける必要があるのかといった視点、また、意見書に記載することがはばかられたため記載はしておりませんが、動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約、これが法制化されることによりまして、それが独り歩きをしていくということによって、貸金業法を潜脱する取引に悪用されるのではないかという視点でも御検討、御関係の委員、幹事の御意見を伺っていただきたいと存じます。 ○道垣内部会長 どうもありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと存じます。よろしくお願いいたします。 ○亀山幹事 経済産業省産業資金課長の亀山です。御発言の機会を頂きましてありがとうございます。ファイナンス・リース契約が担保取引に該当するか否かについては、今回の提案によってその扱いが変わるものではないと理解をしておりますけれども、ここは従来からリース業界と法律の専門家との間で認識に乖離があるということも承知をしております。その上で、先ほどのリース事業協会、自動車リース協会連合会の説明としては、両協会にとって今回の部会資料で特に憂慮される点、背景等を示しつつ、リース契約の実務、実態を踏まえて、両協会としての懸念事項を改めて説明していただいたものと認識をしてございます。   経産省としましては、実務への影響を懸念する業界の声も踏まえて、資金力の乏しい中小企業への影響が生じることがないように、この法改正をきっかけにこれまでの実務と異なるプラクティスが進まないように御配慮いただきたいと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○鮫島幹事 端的に、中小企業庁も中小企業の実務に影響が生じないような形での検討をお願いできればということでございます。 ○道垣内部会長 もしその後、また補足がございましたら、よろしくお願いいたします。   ほかにございませんでしょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。井上です。意見はまた後で申し上げるかもしれないのですが、一つ質問というか確認なのですが、今回の2ページの第1の2にある帰属清算の通知又は処分清算譲渡の通知、取り分け帰属清算の通知との関係で、リース契約の解除はこれとは別のものと構成されるのでしょうかということです。すなわち、リース契約があって、不払いがあったときに解除しますよという通知は、2ページの下の方のイ、ウにあるような見積価額とか被担保債権の額とかの表示はしないはずなので、帰属清算の通知としての要件は恐らく満たさず、単に不払いだから解除するよという通知がなされると思われるのですが、それは、担保権と性格付けされるリース取引に関していうと、破産手続との関係では倒産解除特約として効力が否定される場合はあると思うのですが、ただ、一般的な実行方法としては、解除は認められるという理解でよいでしょうか。つまり、帰属清算の通知の要件を満たしていない、それとは別のルートで解除が今後もなされ得るということであれば、2週間待つ必要がなくなるのかなとも思ったのですけれども、いかがでしょうか。 ○笹井幹事 ファイナンス・リースとの関係でずっと議論がされていますし、そういったものも事務当局の頭の片隅にはあるわけですけれども、今回、資料としてはそこを一旦切り離して、抽象的に動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約についての特則という形で規定をしております。したがって、状況としては、まず動産の利用権を設定する契約というものがされて、一定の期間、利用を容認する代わりに、その対価を支払うという契約があり、かつ、その利用料の支払請求権を被担保債権とするようなケースをここで念頭に置いておりますけれども、今申し上げましたように、前提として利用権の設定契約というものがあり、それは双務契約ですので、その双務契約について解除をおよそ否定するということはできないだろうと思っています。   したがいまして、部会の中では異なる意見もあったところではありますけれども、事務当局としては、所有権留保について解除と実行の両方があり得ると考えており、これと同じように、ここについても解除と実行の両方が、少なくとも平時についてはあり得るだろうと思います。倒産した場合に、その解除の意思表示がどのような効力を有するのかというのは、これはその解除を破産管財人であるとか、そういった方々に対して対抗することができるかという、より一般的な問題の一場面なのかなと思っております。 ○井上委員 ありがとうございます。その点を確認したいと思って発言申し上げました。   そうすると、先ほどリース事業協会から御説明を頂いた資料の4ページにある所有権侵害リスクあるいは残価の低下リスクというところで提示されている、2週間が経過しなければという問題点は、この実行通知ルートを選べば生ずるということであって、解除という方法をとる場合は、現在の実務を変えるものではないため、杞憂であると理解しました。 ○阪口幹事 阪口です。今の解除と実行の関係で、私も更に確認をさせてください。部会資料では、少しファイナンス・リースは置いておきまして、譲渡担保債権の目的物が動産利用権である場合において、とあるのですけれども、これは三者型を含むイメージなのでしょうか。普通は、ここに書いてあるとおり、利用料債務というものを被担保債権にするのだから、利用させている人が債権者かつ担保権者であり、結局二者しかいないと思うのです。   次に、二者しかいない局面だとすると、ここの利用契約、利用許諾の部分と担保権設定部分は一体的なものをイメージするのではないかと思うのですが、そこが完全に切り離されたものがあるのでしょうか。第三者型だったらもちろん切り離されることはあると思うのだけれども、部会資料で考えているのは二者型だとすると、利用権設定契約と、その利用権に対して担保権設定しているというこの二つが一体不可分となっているような契約をイメージすることになり、そうすると、その利用権の解除というのが本当に実行とは別にあるのかなと思ったのですが、そこはいかがでしょうか。 ○笹井幹事 三者型というのは余り考えておりませんで、確かに今御指摘がありましたように、基本的には二者型だろうと思っています。ただ、動産利用権が設定された場合に、その対価を被担保債権とする担保権を設定するか設定しないかは別の問題ですので、二者間でされ、かつ、例えば契約書も一つになっていれば、両者が密接に関連しているとはいえるのかもしれませんが、観念的には、動産利用権の設定契約と譲渡担保権設定契約は別のものに分けられるのだろうと思います。そうすると、利用権の設定契約自体は双務契約ですので、その債務不履行があった場合の解除を否定することができるかというと、それを否定することは難しいのではないかということで、先ほど申し上げました。 ○阪口幹事 阪口です。ファイナンス・リースの議論をしている過程で、利用と対価支払が対価関係にないという要件を設けるべきかという議論もあったと思うのです。だから、今おっしゃったように純粋な利用契約、端的にいうと動産のレンタル契約を考えればそうかもしれませんが、レンタル債務を被担保債権とするようなものではなく、利用をしなくなっても対価の発生は止まらないという類型の契約をイメージすると、今提案されているものが、利用契約があって、その動産利用権について担保設定した場合の一般論を規定したものですと言われると、何か少し違うような気がします。レンタル契約のようなものだったら、確かにおっしゃるとおり利用権設定契約の解除というのはあり得ると思うのだけれども、私がここで考えていたのは、利用が止まっても対価の支払が止まらない形になっているような類型のものなので、一体不可分になっているのではないのかと思ったのですけれども、事務局当局が考えているのは、利用と対価の支払が相関関係にないものも含んでいるのですか。 ○笹井幹事 今の提案それ自体は、かなり一般的に抽象的にといいますか、ファイナンス・リースを念頭に置いていないわけではないですけれども、様々な経緯からいろいろな御指摘を踏まえて提案内容が変わってきていて、今、対価関係にないものだけを出しているかというと、今のゴシック部分というのはそのようにはなっていないと思います。   ただ、では1か月ごとに、その月の利用とその月の利用料の支払というものが対価関係にないものが排除されているかというと、そういうものが排除されているわけではなく、各期の利用と各期の利用料の支払とが対価関係にないもの、そういったものを主には念頭に置いております。   ただ、だからといってそれは双務契約でないことにはなるわけではなく、全体として一定の利用を許諾してもらう、容認してもらうということと、それに対して全期間に対して幾らを支払うというのは双務契約ですので、したがって、今、阪口幹事が御指摘になったどちらの類型を念頭に置こうと、解除自体をおよそ否定するというのは難しいのではないかと思っているところです。 ○道垣内部会長 必ずしも阪口さんは納得していらっしゃるふうではございませんけれども、ほかの方も御意見がいろいろあろうかと思いますので、御自由に御発言いただければと思います。 ○山田参考人 今の議論を聞いて、私も混乱してきたのですが、正に今のやり取りが、私どもが懸念した適用範囲に関わる議論であり、これが不明確だということですね。そもそも我々は反対している立場なので何とも言えませんが、だからこそ、ここは本当に深掘りをしていただかないと困るなという思いを強くしました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。拙速にならないようにしたいと思います。拙速だと1ページ目に言われておりますので。 ○井上委員 ありがとうございます。私は、少なくとも、今回の御提案のような立法はすべきだと思っております。それは、適用範囲の不明確さという点から見ても、何も立法しない現状が極めて不明確なものですから、それに比べれば、解釈の指針が与えられるという程度において明確化に資するのではないかと考えるからです。   ただ、やはり私自身も今回の提案がすごく明確だとは思っておりませんで、その観点からは、前回提案されていたように、推定規定があった方がよかったと思っております。いろいろな意見がございますので、推定規定がなければ賛成しないというわけではなく、現在の提案であっても立法化する方がもちろんいいと思いますし、推定規定については、今回、本文3ページの32行目以降で、「現実の契約において、上記の推定規定のように、ある債権について不履行があった場合に、『当該動産の価格の増加をもって未払いの対価の弁済に充てる』ことが合意されるケースは必ずしも多くはないという指摘もある」とされており、私もこのとおりだと思っています。ただ、前回私はむしろ、だからこそ、この部分を外して推定規定を置くべきではないかと発言しました。   つまり、推定規定というのは、通常なされることが多い事実といいますか合意を前提とすると、通常こういった法律効果が生ずるような合意を認定できる場合が多いと経験則上いえるのであれば、推定規定を設ける意味があるのではないかと思ったからでして、その意味では、現実の契約において、ここに書かれているような、「動産の価格の増加をもって未払の対価の弁済に充てる」ところまでの合意が契約上読み取れることは非常に少ないように思ったので、そこをむしろ除いた形で、正確な文言は忘れましたが、金銭債務を支払わないと目的動産の利用ができないことと、その反面、目的動産が使えようが使えまいが支払債務は負い続けること、という二つの合意のみで、利用権担保の設定を推定することが十分にできると思っておりました。仮にそういう推定規定を置けば、対象範囲の明確化が図れるのではないか、すなわちオペレーティング・リース、賃貸借に該当するような契約については推定されないことになるために、今回の御提案のような規律が賃貸者契約、典型的なオペレーティング・リースに適用される懸念は低下すると感じがしておりましたので、そういう意味では、前回の提案よりはやや明確化の度合いが少なくなったのかなとは思いますが、現状よりはよくなるという意味で、立法化には意味があると思っております。 ○道垣内部会長 ほかにございますか。 ○加藤参考人 リース事業協会の加藤でございます。笹井参事官の御説明を伺いましたが、その規定が一体何を目的としているのか、これは本来、先ほど補足で説明しました中小企業の資金調達の円滑化、多様化といった観点で、一体どういった規定なのかが全く分からないという感じを受けました。それが1点です。井上先生の御意見でございますが、推定規定があることによって、我々が意見を申し上げている中小企業さんへの影響について、推定規定で明確化することによって、かえって問題が大きくなると考えるところでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○山本委員 先回も意見を申し上げたので、今回は余りと思っていたのですが、どなたも発言されないようなので、今回提出された43-1との関係での御質問なのですけれども、この御意見の趣旨というのは、現在のファイナンス・リース取引で担保として構成されるような取引は一切行われていないという理解なのかという御質問です。   もしそうだとすると、今回のこの提案は一切ファイナンス・リースには及ばないということになるとも思えるので、問題はないようにも思うのですけれども、ただ、そういうふうに考えてしまうと、御承知の最高裁の平成7年の判決は、いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約において、リース物件の引渡しを受けたユーザーにつき会社更生手続開始決定があったときは、未払いのリース料債権はその全額が更生債権となると判断しています。この判断を前提としますと、担保取引でないのだとすると、リース料債権というのは無担保の更生債権になるという帰結にならざるを得ないと私には思えます。   同様のことは再生手続についてもいえるのだろうと思いますので、民事再生でも無担保の再生債権になるということになるのだと思いますけれども、そういうふうに考えてしまうのは余りに現在の実務に大きな影響を与えてしまうことになりはしまいかと私自身は思うところで、そうであるとすれば、やはり一定のファイナンス・リース契約、もちろんファイナンス・リースの全てというつもりはありませんけれども、一定のファイナンス・リース契約が担保契約であるということは前提になってくるのではないかと思い、その限りにおいて、しかし、もちろん担保取引にならないものもあるとすれば、それは今回の規律の対象外ということになりますので、それであってこそ初めて現在の実務には影響を与えないといえるのではないかと私には思えるのですが、少しこの意見書の趣旨が私には十分理解できなかったものですから、今の点について御質問させていただきました。 ○道垣内部会長 これは意見書に対する質問でございますので、リース事業協会又は自動車リース協会連合会の方からお願いいたします。 ○山田参考人 正に今、先生がおっしゃられたこと、当然、確かこれは前回の会議のときもそのような御趣旨の質問を伺ったような気がしておるのですけれども、当然、最高裁判例を我々は否定しているわけではありませんし、少なくともフルペイアウト方式のファイナンス・リースの取引について、これが何らかの形で担保権という形での評価がなされていると、これは尊重しなければいけないことではあると理解しておりますけれども、ただ、それがなぜ担保の目的が利用権ということに決まってしまうのかという辺り、これは正直、なぜなのかという部分は全く我々は理解できていないし、先ほど申し上げましたように、実際、判例でも明確に判示されていないところだと理解をしております。   今回のこの法制化というか、法律にこういうものを置くことが、我々は中小企業への、特に税務ですとか会計に与える影響、これが決定的にこの取引の彼らのメリットを失わせることになる、ここをすごく懸念をしているのだけれども、ここについては全く議論がない中で、あった方がいいのではなかろうかという、これは純粋に法律的にはそういう理解というのはあるのかなという気もしないではないですけれども、そこにすごく違和感というか危機感を覚えると、こういうことでございます。 ○山本委員 担保取引があるということは今、認められたと思うのですが、利用権でなければ、それでは何が担保なのでしょうか、所有権が対象ですか。所有権は、しかしリース契約においては、所有権は移転していないことになるだろうと私は理解しているのですが。 ○山田参考人 申し訳ございません、本件について、決して我々が提案している話ではないので、今の先生からの御指摘については全くお答えのしようがないというのが正直なところです。 ○道垣内部会長 そうなると、山本さんのお話からは、担保として構成するに当たって何らかの目的物というか目的財産というものを措定せざるを得なくなって、それを何らか措定すると、それは最高裁が言っていないということになると、それはもう措定できないということになりますので、法制審の側で考えることだと言われたときに、最高裁が言っていないことは書けないということになると、そこら辺はまた齟齬といいますか、議論がかみ合わないところが出てくるかなという気もいたしますが。 ○片山委員 慶應義塾大学の片山でございます。どうもありがとうございます。私自身も動産利用権を担保目的にするという構成自体にはやはり違和感を覚えるところではありますが、他方、少なくともフルペイアウトのファイナンス・リースに関しては担保としての実態があり、それに対する一定の規制が必要であるということもそのとおりかと思っています。   実質的には所有権とか利用権とかということの切り方ではなかなか、担保の目的の把握が技巧的にならざるを得ないのかとは思いますが、やはりこの物が担保目的であるという点はそのとおりかとは思いますので、何かその物を対象とした担保であるという、それは専ら担保として利用権を付与する、その実質を目的とした契約としてファイナンス・リースが定義できるならば、定義自体の問題というよりも、具体的にどのような規定をおいて規律を行うかが明確にできれば十分ではないかと思っております。   もちろん今回御指摘いただいた点からしますと、例えば、実行の段階で2週間ルールが設けられていることには不合理性があるということでしたが、そういった点は恐らくリース以外の担保でも共通な点であり、リースだけが特にそういう問題があるというわけでありませんので、そのような不合理性があるからといって、そもそも担保として規律すべきではないということにはならないように思われます。何らかの形でやはりファイナンス・リースという実態を定義して規律できるのであるならば、やはり何らかの規定を設ける方向を検討すべきかと思いますし、場合によってはファイナンス・リースだという書き方をしてもいいのかとも思うぐらいでございます。   以上、いずれにしても何らかの形で物を対象とした、専ら物を担保を目的とした上で、かつ、その利用権が付与されるというような規律の仕方は検討してしかるべきかと思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○沖野委員 ありがとうございます。私も3点を申し上げたいと思います。最高裁があって、一定の範囲での取引が担保であると認められるということは共通の理解になっているわけなのですけれども、ただ、担保だということになりますと、例えば対抗要件が要るのかとか、いろいろな問題が出てくるところをむしろ明確化している、今回であれば対抗要件なくして対抗できるというような規律があることは、むしろ明確化につながるのではないかと思っておりまして、およそ担保としての取引がないということであれば別ですけれども、最高裁が言う限りにおいては担保取引となる部分は確かにありますということであれば、そうなる場合にどのような規律になるのかということを埋めていくというのは、やはり意味のあることではないかと、むしろ明確さを確保するための規律になるのではないかと思います。   2点目としましては今、片山委員が御指摘になった点で、そうはいっても規律を置かれることによってかえって支障が出るものがあるという点で、具体的には2週間は待ちすぎではないかということですが、他方で担保取引ということになりますと、様々な関係者の利害を調整した上で合理的あるいは適正な規律というのを設ける必要があるわけで、それがどういうものかというのを今まで検討してきた中で、一般的にこうだということであれば、担保取引について、特定の担保取引だけそれを免れるということであるならば、その理由がむしろ必要になってくるのではないかと思われるところです。   3点目は、いただいた参考資料について、今のやり取りの中でよく分からないところがありまして、お伺いできればと思います。担保だということになりますと、ユーザーが持っている何らかの財産ないし財産権を担保に取るということになるのだと思いますけれども、それが物の所有権であるのか利用権であるのか、一体どういう権利なのかというのはずっと議論があるわけなのですけれども、本日の御発言の中で、それを利用権というふうに決めてしまうことが非常に問題なのだという御指摘がありました。   その一方で、本日頂いた資料の3ページの一番下に他の法制度への影響ということがありまして、リース取引は賃貸借、賃貸、賃貸業というような性質決定をしているものがあると、また、4ページに行きましても、賃貸ということが書かれているということです。こういう賃貸なのだというのは結局、利用権を設定しているということになって、ユーザーが持つのは利用権であると書く方が、むしろこの御主張には沿うように思うのですけれども、飽くまで動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約というのは、担保取引であるリース取引については利用権というのがその目的財産ですと、そういう性質として考えていくというのは、むしろここでおっしゃるような話とは整合して、これが、例えば所有権であるとかいうふうにされた方が、むしろリース取引に合わないということになりそうな気がするのですけれども、なぜこれを利用権というふうに規定してしまうことが非常に問題だということになるのか。なお、私は個人的にはむしろそうではない方がいいとは思っておりますけれども、これは余計だったかもしれません、ただ、御指摘の問題点のところと3ページの記載のところは、どういうことなのか分からないなと思ったものですから、私の誤解だけかもしれないのですけれども、もしよろしければ少し説明をいただければ有り難く思います。 ○道垣内部会長 どうもありがとうございました。先ほどおっしゃっていただいたことと回答は同じになるのかもしれませんが、もしよろしければ、お願いいたします。 ○山田参考人 先ほどの他の法制度への影響というところでお話ししたことでしょうか。正直なところ、担保権うんぬんの中でなされる、その対象が物の利用権なのか所有権なのかという二者択一の議論すら、どちらが正しいとか、そのような二者択一自体に問題はないのかといったことが私には分からないのですが、他の法制度の中で、我々リース会社は明らかにリース物件の所有権を保有し、保持し続けていることを前提に色々なルールがあるところ、これがその利用権をお客様に付与するとされることによって、所有者としてのリース会社の立ち位置がどうなるのか分からないということを述べております。   例えば、固定資産税一つ取ってみても、我々は物件を所有、取得して、その取得価格をベースに償却資産として申告納税をしているわけですけれども、それがもうスタートと同時に強力な利用権という権利がお客様に付与され、これをお客様が保有することになります。仮に不動産に例えるなら、我々は借地権が設定された底地を保有しているだけでしかない状態になるので、固定資産税負担の按分の仕方はどうなるかといった、正にリース会計・税制の議論になってしまうということで、何度も繰り返しになりますけれども、中小企業等への影響を大きく心配しているというところに戻るということでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかにございますか。   利用権の担保という形の捉え方自体については、必ずしも法制審の委員、幹事の皆さんも一致しているわけではないと思いますし、また、参考人の方々も、そのように決め付けてしまうというのには違和感があって、ほかの法制度との間で不整合が生じる、ないしは大幅な調整の必要が生じるという問題があるのではないかというふうな御指摘を頂いたということが第1点と、第2点目としては、井上さん、阪口さんの方から話が出ましたような、解除と担保権の実行との関係ということについて、なお整理が必要なのではないかという話が幾つか出たということがあろうかと思います。大きなテーマはその二つで、また、それにもちろん付随する問題点は多々あるのですけれども、検討をすべき事柄は明らかになってきたかなという気がいたします。何かほかに御発言はございませんでしょうか。   では、手短にお願いします。 ○加藤参考人 今、道垣内先生がまとめられたと思うのですが、1点目が非常に大切かと思うのです。利用権という形で皆さんの御意見がまとまっていらっしゃらないような状況下、動産利用権で進めていくということはいかがなものかということを一言申し上げたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかにございませんでしょうか。   それでは、いろいろな御意見を頂きまして、更に詰めなければならないところがあろうかと思いますので、この点については本日はこのくらいにさせていただければと思います。   山田さん、加藤さん、久保田さん、末松さん、どうもお忙しい中、本当にありがとうございました。   それでは、この動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約についての議論はここで終了させていただきまして、部会資料40の方に移りたいと思います。それでは、どうもありがとうございました。   それでは、先ほど申しましたように事業成長担保権は後にまとめることといたしまして、部会資料40の「第2 労働債権を有する者その他の一般債権者を保護するための規律」についての議論に移りたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○森下関係官 では、「第2 労働債権を有する者その他の一般債権者を保護するための規律」について御説明いたします。   1(1)は、一般債権者保護のための組入義務についての規律になります。部会資料36からの変更点について御説明いたしますと、まず22行目では、集合債権譲渡担保権についての規律が適用される範囲を、現に発生していない債権が目的に含まれるものに限ることとしています。これは、構成部分の変動が予定されている動産譲渡担保権等とのバランスを踏まえたものです。また、26行目から27行目の括弧書では、被担保債権の消滅前に破産手続等の開始があった場合にも本規律が適用されることを明確にする修正を行っています。   【案2.1】のイについて、部会資料36では、利息や遅延損害金のうち、実行時から遡って1年分を超えるものを組入義務の対象としていました。これに対しては、利息を元本に組み入れるなどして利息の支払を繰り延べて弁済することが予定されているような場合を想定すると、発生時期を組入額の基準とするのは相当でないなどの意見がありました。そこで、この資料では組入義務の対象となる基準を、各金銭債権の弁済期が到来した日から1年が経過しているかに求めることとしています。   【案2.1】と【案2.2】は、組み入れるべき超過分の金銭の額の基準についての提案です。【案2.1】は、担保目的財産の価額の一定割合額を基準としない案で、部会資料36の本文の立場を踏襲したものです。この案によると、担保目的財産に余剰価値があることを奇貨として、実行時期を引き延ばして多額の利息や遅延損害金を回収するといったような行動を抑制する効果があるものと考えられます。   これに対し【案2.2】は、担保目的財産の価額の一定割合額を基準とする案になります。説明の2の31行目以降に記載しておりますが、担保目的財産の一定割合額を基準とする場合にも、個々の担保権の被担保債権の消滅額との差額を組入額とするのか、複数の担保権の被担保債権の消滅額の合計額との差額を組入額とするのかといったバリエーションがあります。【案2.2】は、このうち前者の立場を採用して、複数の担保権が存在する場合に組入額の算定が困難となるような事態を防止することとしています。担保目的財産の価額の一定割合額を基準とする案の採否は、この規律を設けることによる担保掛目の減少を許容できるかという問題とも密接に関連しています。また、仮にこの案を採用した場合には、一定割合額をどのように定めるべきかも問題になります。   本文2は、組入義務の履行を確保するための規律についての提案になります。部会の審議では、銀行等の履行能力に問題のない者にまで過度の負担を負わせるのは適当でないとの意見もありました。そこで、本文では組入義務の履行を確保するため必要があるときという要件を新たに設けることとして、銀行等の履行能力に問題のない者を規律の対象から除外しつつ、組入義務の実効性を確保するために設定者又はその債権者による担保請求権を認めることとして、バランスをとることとしています。   以上について御審議をお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○村上委員 ありがとうございます。本文1と本文2、それぞれについて申し上げたいと思います。   まず、本文1についてです。今回、資料の本文で担保目的財産の一定割合額を基準とする案を記載いただきました。集合動産及び集合債権譲渡担保権に限定されているとはいえ、労働債権を始め一般債権者の保護を図るためには、【案2.2】を採用いただきたいということは繰り返し申し上げておきたいと思います。   【案2.1】については、7ページの説明にございますように、メザニンローンなど利息を担保に組入れ、満期時に一括支払がなされるような資金調達手段を勘案した修正となっておりますけれども、この点は、修正前の内容に戻していただきたいと考えております。といいますのは、ただでさえ組入れ義務の範囲が極めて限られている中で、更に範囲を狭めることになれば、実質的に労働債権が確保できず、制度化の意義が失われかねないからです。そもそも今回検討いただいているのは労働債権者などを政策的に保護するための規律でございまして、その実効性を確保するために担保権者にも一定の負担を負っていただくことはやむを得ないことであると考えております。   また、7ページから8ページの説明に、担保権が複数ある場合の対応について記載がございますが、被担保債権の弁済に充てられた合計額が当該財産の一定割合額を超える場合には、最も劣後する担保権の被担保債権の弁済に充てられた部分から組み入れさせるという案を採用すべきと考えております。まずはそうした方向性を明確にした上で、説明でも様々提起されております技術的な問題について、その解決方法については部会で検討していく必要があるのではないかと考えております。   次に、本文2についてです。組入れ義務の履行確保について、仮に本文の規律の2を採用した場合、飽くまでも設定者又は債権者が担保を請求できるという規律にとどまる上、今回、更に「組入れ義務の履行を確保するため必要があるとき」との限定を掛ける提案までなされております。そうなると、実際に担保請求が行われる場面は非常に限定的になると思われます。銀行などであっても履行能力に問題があるケースが全くないとは断定できないことや、必ず担保請求がなされるわけではなく、担保権者に過度な負担が掛かるとまではいえないことから、少なくとも「組入れ義務の履行を確保するため必要があるとき」という部分を削除し、より広く活用できる制度としていくことが必要ではないかと思います。また、そうした課題を踏まえますと、繰り返しになりますけれども、新たな供託制度の仕組みなど、労働者にとっても分かりやすく実効性のある制度を検討いただけないかと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかにございませんか。 ○山川参考人 ありがとうございます。今回の【案2.1】と【案2.2】で、それから事業成長担保の方の資料も拝見していまして、こちらの【案2.1】も【案2.2】も前提としては事業成長担保におけるカーブアウト制度と共通の発想があるのではないか、つまり、担保権の性質上、広く網を掛けるような場合には一定程度、一般債権者の保護も考慮する必要があると、そういう言わば哲学に基づいているものとして、これは導入する価値があると考えております。   前回もお話ししたところですけれども、やはり担保実務の実態をよく知らないのですけれども、もし担保割れといいますか、被担保債権が目的財産の価額よりも多いのがほとんどであるというようなことだとすると、以上お話ししたような政策目的の実現も難しくなってしまうということで、これは考慮する必要があろうかと思います。   他方で、これも前回御指摘がありましたように、【案2.2】のように担保目的の財産の一定割合を取り分ける制度は融資額を縮小させるおそれがあるという御指摘がありまして、これは、状況によっても変わってきますが、労使双方にデメリットになる場合がある、つまり、お金が入ってくるということは、その事業が運営されていく上で労使ともに重要である場合がある、これはどういうシチュエーションによって変わるのですけれども、そのことも考慮する必要があるかと思います。ただ、こちらも同様に実証するのは難しいかもしれません。   したがって、なかなか難しいのですけれども、前回、折衷的なというようなお話も少しいたしまして、【案2.2】もある種、折衷的な提案なのかなとも思うところですけれども、【案2.2】でアとイを並列させるという、どちらかが低い額ということのほかに、テクニカルに考えられるかどうか分からないのですけれども、【案2.1】に少し引き付けるような形の折衷案としては、担保割れにならない場合は【案2.1】で行って、担保割れになる場合には【案2.2】によるというようなことも考えられるのかなと思ったところであります。要は【案2.1】の方はどちらかというと被担保債権の側から考えていく発想で、【案2.2】の方は目的物から考えていく発想で、これまで議論になっていた牽連性の問題との関係で、先ほどのカーブアウト制と同様だとしたら、【案2.1】の方がもしかしたら近いのか、少し誤解があるかもしれませんが、思ったところであります。   ただ、いずれにしても最終的には、ペンディングとされております具体的割合をどのぐらいにするかによって、その影響も非常に変わってくるところで、そこを政策的にどうするかがもしかしたらすごく重要になるのかもしれないと思ったところです。余りコンクルーシブなお話でなくて申し訳ありません。 ○道垣内部会長 いえ、どうもありがとうございました。   お二人に意見いただきましたが、ほかに何かございますか。 ○大西委員 大西です。確かこの点について、私は、前回そういう労働者保護と金融実務のバランスの確保という見地から、【案2.2】に近い意見を申し上げたと思います。それはそれで変わらないのですが、この割合をどうするかということは非常に難しい部分があろうかと思います。具体的なスキームは分からないのですが、確か事業成長担保権のカーブアウトのところで、裁判所の許可とか、裁判所がその事案に応じて決めるというような案があったと思うのですが、この集合物譲渡担保も、担保実行を行う場面は破産手続等に入った場合が多いと思われるため、そういうアレンジメントを設けるということは可能でしょうか。 ○道垣内部会長 そういうアレンジメント、というのがよく分からなかったけれども。 ○大西委員 【案2.2】のアところが、割合なのか額なのか分からないですが、裁判所が、担保権の対象外の財産に基づく配当原資及び未払労働債権がどのぐらいあるか等を勘案し、労働者保護の観点を考慮した上で、具体的なカーブアウト額を各案件ごとに決めるような手続を検討することは可能か、という趣旨です。事業成長担保権の議論において、そういう案があったことを記憶しており、これに近いようなスキームがあり得るのかどうかという質問です。 ○道垣内部会長 すみません、分かりました。何か御意見はございますか。これまでの村上さんからも含めまして、事務局から何かございましたら、お願いいたします。 ○笹井幹事 そうですね、【案2.2】について、説明にはいろいろと書きましたけれども、技術的に絶対に解決が不可能かと言われれば、神様の目から見たらどうなるというルールを書くこと自体は可能であろうと思いますので、そういう意味では【案2.1】と【案2.2】のいずれを採用するかについて、政策的な観点から御議論いただければと思います。やはり【案2.2】については、ここにもありますように、どれだけ融資額に対する影響が出てくるかということだと思いますが、それは具体的な割合をどのように設定するかによるということは、御指摘のとおりだと思います。   裁判所に決めてもらうというのは考えておりませんでしたので、御議論いただければと思いますけれども、全くのフリーハンドで裁判所が決めるということになると、裁判所として何をどういうふうに決めていけばよいのかという点でいろいろ問題があろうかと思います。最終的には倒産手続が開始された場面でこれが問題になってきますので、そこで裁判所に何らかの御助力をお願いするということはあるかもしれませんけれども、例えば融資額をどういうふうにするのかとか、融資の条件をどういうふうにするのかという段階では、倒産について抽象的な可能性として考慮はしているでしょうけれども、実際に倒産手続が始まる前の段階で融資の可否や条件を決めていかないといけないということになりますので、その契約締結段階における期待可能性、予見可能性という観点から、どのように考えていくのかということかなと思います。 ○道垣内部会長 ほかには。 ○大澤委員 大澤でございます。今、大西委員から御指摘がありましたとおり、この労働債権労働あるいは一般債権者とローン債権者とのバランス、担保権者とのバランスをどうとるかという極めて政策的な規律であるというのがまず、ございます。   管財人をやっている方の人間から申し上げますと、まず財団債権となるものとして、労働債権と公租公課という形で同列になる部分というのがございまして、実際には公租公課が圧倒的に多いということがございまして、按分弁済となりますと、労働債権に対しての弁済というのが額で絶対値で見たときに極めて下がってくるという状態はございます。そういった意味で、【案2.2】としての具体的割合がどうなるかは別として、何らか原資をというふうに考えたくもなるというところは本当によく分かるのですけれども、一方で今申し上げたような形での、必ずしも労働債権にひもづく形での政策的な規律ではございませんので、もしそういった労働債権の額の絶対値の支払を多くしたいと考えると、この具体的割合となっている【P】のところがかなり大きくならないと、なかなか実効性がないなとも思う次第です。   そういった意味で、だから【案2.2】が悪いと申し上げるつもりはないのですが、【案2.2】を採ったとしても、具体的割合というものがそれほど大きくならないで、逆に大きくなってしまえば、先ほどどなたかもお話しになられましたとおり、貸手の方の問題にもなってくると思うので、本末転倒で資金が入ってこないと会社は動かないというのもございますから、そこのバランスをとるかという極めて難しい問題になってくると考えております。   そういった意味でも、【案2.2】が労働債権そのものに即効性があるかというと、なかなか微妙でございまして、この第2の中で規律するということに当たって、【案2.1】と【案2.2】と二つ書いてございますけれども、それで一般債権者への比率が上がるかどうかというところは、どちらを採ってもかなり微妙な問題かなと正直、思っている次第です。   だから、ではお前はどちらなのだと言われると非常に困るのですけれども、実務から見ると、この【案2.2】の具体的割合というものがかなり金額が大きくならない限りにおいては、余り大きな政策的な配慮としても働きづらいかなと正直、思う次第です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。どうもありがとうございます。前回も申し上げたのかもしれませんが、やはりこの問題は、例の類型論がかなり大きく影響するのかと思っております。いわゆる固定化を前提とする担保、集合動産担保はそれが中心となっているのかと思います。他方、債権に関しては両方あるのかもしれませんが、固定化を前提とする担保に関しては、確かに将来の財産を担保に取るという意味では個別の担保と異なりますが、そもそも実行時に固定した財産の範囲で担保目的とすれば足りるわけですから、その場合については、やはり【案2.1】が大前提になるのだと思います。   恐らく、いわゆるカーブアウトで労働債権と一般債権の保護が必要であるというのは、主として倒産を前提として、倒産後も基本的に担保権の効力が及び得るというような前提での担保、いわゆる累積型の担保において、はじめてカーブアウトの問題が必要となってくのであって、部会資料でいうと38のところで再生手続の中での三つの型を議論した際に、ただし書という形で将来の手続開始後の債権についても担保の効力が及ぶという、そういうただし書を導入できるような場合に初めて【案2.2】の形での一般債権者の保護が必要になるのではないかと思っております。今回の担保法制が飽くまでも固定化を前提として実行を考えていくということを前提とするのであるならば、基本的には、【案2.1】とすべきであって、そうではなくて、累積型を一定の範囲で許容するということであるならば、その場合に初めて【案2.2】の考え方が出てくるのかなと考えております。   それから、仮に【案2.2】の場合を考えるときに、政策的な意味での労働債権の保護という話が先ほどから出ておりましたが、その話と今回の規律が、労働債権だけではなく、取引債権も含めた一般債権という形になっていますので、そこが同じような政策的な配慮で考えていいのかどうかという点は若干疑問に思っているところではございます。   以上2点、指摘させていただきました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。少し最後の点がよく分からなかったのだけれども、何の場合は政策的とは。 ○片山委員 今回の第2の御提案は、基本的に労働債権だけではなくして商取引債権も含めた一般債権者の保護という立て付けになっているということなのですけれども、この部会の中でも議論されている政策的な意味での債権者の保護という点では、主として労働債権の方が論じられてきたわけですけれども、労働債権とそのほかの商取引債権も同じに取り扱うという今回の御提案との間に若干そごがあるかと感じましたので、政策的な見地で労働債権を保護するということであれば、それはむしろ労働債権の保護を徹底する必要があるのではないかと思った次第です。 ○道垣内部会長 労働債権の方には一般先取特権があるのですよね。つまり、責任財産として戻ってきたものに対する権利行使の優劣関係は、一般取引債権者と労働債権者で違いが出るのではないですか。 ○片山委員 その限りで、それでもなお労働債権の方が必要だという話を、先取特権を超えて必要だということが議論されているかと考えておりました。 ○道垣内部会長 分かりました、どうもすみません、ありがとうございました。   ほかにございませんでしょうか。 ○沖野委員 ありがとうございます。【案2.1】か【案2.2】かについて、特に【案2.2】で目的財産の価額の方の一定割合ということを入れることがどういう影響を持つのかという、その評価自体が重要だと思いますけれども、そちらについては評価能力がないので、申し訳ないのですが、1点だけ少し気になっているところを申し上げます。   それが【案2.2】となった場合、【案2.1】に比べると、【案2.1】では確保できたはずの元本と一定範囲の利息と、特に元本の方が気になっておりますけれども、それも吐き出すというか、そういうことを可能とするのが【案2.2】のポイントというか、違いということになってくるのかなと思っております。もちろん割合によって、その利息額で済むということもあると思うのですが。そうしたときに、現在対象が集合動産譲渡担保、集合動産留保所有権、それから集合債権譲渡担保になっておりますけれども、留保所有権と譲渡担保をその点で同じに扱っていいのかどうかというのも少し気になっておりまして、元金額というのは、いわゆる代金額ということになるかと思いますけれども、それに食い込んでも吐き出すというところを留保所有権も同じように認めていいのかどうかというのは、【案2.2】を採る場合には、考えた方がいいのではないかと思っておりますので、その点だけ申し上げます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。動産売買先取特権を行使したらどうなるかという問題もあるかもしれませんしね。 ○阪口幹事 阪口です。実務家というか管財人なり等の立場になったときに、【案2.2】の目的物の価額というのがかなり難しいように思います。特に、債権、集合債権が担保になっている場合に、1番から10番の第三債務者が綺麗な第三債務者ばかりかというと、そんなことはなくて、9番目、10番目の人はきちんと払ってくれない人も含まれていることが多いというのが実態です。そのときに券面額で考えるのか、それとも実質回収価格で考えるのかとか、分割弁済してくる第三債務者はどうするかとか、そういう実務的な問題点が一杯あって、かつここの【案2.2】は、その目的物の価額が少し変わると、アとイのどちらが大きいか、小さいかとか、いろいろな議論が出てきてしまう。資力に問題のない第三債務者ばかりであれば簡単だけれども、なかなか難しいなというのが正直なところです。   また、この7ページから8ページに掛けて、競合する債権者が複数いて、その範囲が一致していない場合にどうかという問題が提起されています。動産が対象で倉庫が複数あって、ある債権者はA、B倉庫内の動産を担保に取って、ある債権者はA、C倉庫内の動産を取っているケースだったら多分、割付はやってやれないことはないと思うのですけれども、先ほど申し上げた債権が入ってくると割り付けられるのかなという疑問が生じます。正にここの例も、集合動産ではなくて集合債権を例に書かれているのも、そういうことも含めての御趣旨かなとも思っていますけれども、実務的に、倒産した際の、裁判所なり、また弁護士なりの立場からみると、どうやってやるのだろうというのが正直な実感です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。実際に運用するときの単純性、明確性というのは要求されますので、おっしゃることは非常に重要な点かと思います。   ほかに何かございますか。 ○日比野委員 日比野です。ありがとうございます。前回も発言をしましたので、と思ったのですけれども、特に動産担保の取得の局面という観点から少しお話しできればと思います。ただ、この点は山川先生の方から御指摘がありました、実証研究が本当に可能なのかといった点ですとか、本当にケースによるのではないかという話になってしまうというところはあるので、その点は留保を置いてということになります。   特に、集合動産の担保取得のケースは、実務的には、債務者の状況が良好なときというだけではなく、むしろ業況が悪化していった中で、何とかして経営改善のための資金だとか、資金繰りに充てるというようなための融資を求められたときに、何とか担保として取得できるものはないかということを、債務者の方と協議しながら提供していただいて、それで何とか希望する金額を融資できるかどうかと、そういう議論になるということがそれなりにあるのかなと思っております。   そういった中で、特に【案2.2】のような一定割合財産を組み入れる、あるいはこの【P】というのがどのぐらいの金額になるかということにもよるのかもしれませんけれども、特に業況の悪化時においては、その元本額を回収できそうかどうかというところの与信判断が善管注意義務の観点からも重要になります。集合動産担保について、回収見込額の不確実性を高めるような形で法律ができてしまいますと、そもそも担保として評価しづらいがゆえに融資が難しくなり、結果として、債務者にとって資金が確保できれば通常の事業活動の中で回復を図れたにもかかわらず、かえって私的整理あるいは法的整理といったハードランディングの道に近付くというようなケースが出てくることもあるのではないかとも思いまして、少しその辺りが気になっておりました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかにございませんか。 ○山川参考人 先ほど片山先生と道垣内先生の間のお話の制度の趣旨的なことについて、抽象的なことですが、私の理解では、少しカーブアウト制度とは違う面があるかもしれませんが、ここでの規律自体は、一般債権者も含めた、担保の特性に即した保護を考えているのに対して、クリティカルな場面である倒産の場面では、労働債権の倒産手続における優先性が反映されて、結果的には労働者が保護される、つまり、配当に行けば優先破産債権等になりますし、恐らく重要なのは、財団債権になって随時弁済ができるということが大きいのかなというふうな感じがします。少し専門家の皆さんの議論に入っていくのは勇気が要って、間違ったことを述べているかもしれませんけれども、要は、取り分けの面では一般債権者の保護ですが、具体的な局面では労働債権の優先性が現れるという位置付けで説明できるのかなと思ったところです。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに何かございませんでしょうか。   【案2.2】で(1)アの割合が分からないと議論できないと、それはそのとおりなのですけれども、メカニズムというかテクニックとして、そういう動産債権の価額の割合という考え方を採るか、抵当権のときのように、元本額と利息の一定額というふうな被担保債権の方から制限を考えるのかという違いにつきまして、いろいろ御意見も出たところです。なお必ずしも収束している感じはいたしませんけれども。   難しいところですが、大澤さんが、割合というものをよほど大きくしないと具体的な実際に労働者がもらえる額に響いてこないと、影響は及ぼさないというふうになりかねないという話があったのですが、私は、けれども、ある種こういうカーブアウトとか、そういう強大な担保権であるがゆえに一定の範囲に制約するというふうな考え方が、今回の立法で具体的な労働者保護なら労働者保護というものにつながらないとしても、結構重要な話だろうと思っておりまして、それは今後の様々な立法の基礎となるような何か重要性を持っていると思いますので、効果がなくてもというのは言いすぎですけれども、重要は重要ではないかと思っておりますので、また、置くということ自体にはそれほどは御反対の見解はなかったと思っておりますので、若干技術的な面についてもう少し御検討いただければと思います。 ○大西委員 テクニカルな話をして恐縮なのですが、【案2.1】であれば、先ほどの日比野さんのお話のとおり、アだけを残すという方法もあるのかなと感じます。元本というものとそれ以外というのは少し性質が違うので、アだけをここに掲げる金額にするという案も、【案2.1】であればあるように思います。   それからもう一つは、今回、その他の一般債権者との関係でみると、労働債権者の債権は一般先取特権があることから、優先的な債権ということで保護されるにもかかわらず、先ほど大澤委員もおっしゃったように、税金のような財団債権との関係では劣後してしまう点が問題となります。カーブアウトはあくまで労働者の保護をイメージして議論をするものの、そこで捻出した原資が、実際上は担保権者からの税金債権者への弁済原資に移管されることは、当該カーブアウトの趣旨と異なります。よって、何かカーブアウト額が労働債権者にダイレクトに配当できるような法的スキームがあるのであれば良いように思います。担保対象となっている集合物動産を管理し、担保価値の維持に貢献してきた者は労働者であることから、労働者に対して直接支払ができるような法的スキーム案があれば、良いと思った次第です。誠に恐縮ですが、私はそこまで具体的な提案はできなくて申し訳ありません。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。議論の過程においては、スーパー先取特権といいますか、一般先取特権をかなり労働債権について強化するという形の先取特権を認めて、それとこういう集合動産とかそういうふうな集合財産担保の関係について、スーパー先取特権はスーパーであるというふうな処理をすることによって、という話は出ていたわけですけれども、労働債権について法定担保権的なものを認めるという技術ではなくて、今現在ここでやっている担保権の効力の問題として考えていくというふうなことを今は採っているわけですが、なおスーパーという考え方もあり得るというのかもしれません。   ほかに何かございますか。まだここはどちらかに議論がまとまったという雰囲気は漂っておりませんが、いろいろな御指摘を頂いたということで、もう少し次回に向けて事務局にも考えていただきたいと思いますし、また皆さんの方でいろいろ御意見がありましたら、お寄せいただければと思います。何人かから出ました、【案2.2】の方法を採ったときには評価が極めて困難であるという問題とか、そういうのは重要だろうと思うのです。実際にその制度を作っても、それが動かないということになりますと、単純に動かないと、やはりこういうのはうまくいかないと思いますので、そんな点の実務も含めまして、事務局にいろいろ御教示いただければと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。本日のところはこれでよろしゅうございましょうか。   それでは、部会資料40の「第3 新法の適用対象となる財産の範囲等について」の議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 それでは、第3について御説明いたします。第3は、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する新法の規定が適用される財産の範囲等についての規律を提案するものでございます。   まず、本文1(1)は、譲渡担保契約に関する規定が適用される財産の範囲については、従来より譲渡可能な財産は譲渡担保の目的とすることができるとされてきたことも踏まえ、動産、債権その他の財産を原則的な適用範囲としております。もっとも不動産や登録航空機、登記された船舶、登記された建設機械など、抵当権の目的とすることができる財産につきましては、基本的に物的に編成された登記登録制度の下で非占有担保である抵当権を利用することができ、譲渡担保の規定を設ける必要性は必ずしも高いとはいえないと考えられることから、本文1(2)におきまして、抵当権の目的とすることができる財産を新法が適用される財産の範囲から除外しております。ただし、登録自動車及び農業用動産につきましては、実態として抵当権ではなく非典型担保が利用されていると指摘されていることなども踏まえ、これらは適用対象としております。また、(3)では、所有権留保契約の規定の適用範囲を定めておりますが、その範囲は動産としており、譲渡担保契約と同様に登録自動車及び農業用動産を除き、抵当権の目的とすることができる動産を除外することとしております。   本文2は、今申し上げた登録自動車と農業用動産についての譲渡担保権と抵当権が競合した場合の規律を設けるものです。まず、登録自動車は、譲渡担保権と抵当権が競合した場合の順位は登録の前後によることとしております。農業用動産は、抵当権の対抗要件は登記とされている一方で、譲渡の対抗要件は一般の動産と同様に引渡しでありますことから、競合した場合の順位は抵当権の登記と引渡しの前後によることとしておりますが、動産一般における占有改定劣後ルールの趣旨をここでも妥当させることとしております。   なお、留保所有権と抵当権の競合につきましては、前回の部会の議論を踏まえて検討中でありまして、【P】としております。   本文3は、新法の適用対象となる財産について、個別に規定を除外すべきものを挙げております。まず、(1)は、新法における担保権の処分及び順位の変更に関する規定については、譲渡登記が対抗要件又は効力要件としていることなどを踏まえ、これらの規定の適用を除外するものでございます。(2)は、登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない動産についての適用除外規定を設けるものでございます。具体的には、登録自動車及び登録された小型船舶がここで想定される動産となります。まず、牽連性ある金銭債務を担保する動産譲渡担保権について、対抗力や順位の特例に関する規律については、物的に編成された登記登録制度のある動産に適用するのは公示制度の趣旨に照らして適当ではないと考えられることから、これを除外することとしております。また、集合動産に関する規定につきましても同様に、公示制度の趣旨に照らしてこれを除外するということとしております。   説明は以上となります。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと存じます。 ○阪口幹事 阪口です。9ページの3(2)の適用の結果どうなるかということを確認させてください。所有権留保について前回の部会資料37-3で色々な議論がありましたが、ただ、三者型も牽連性ある金銭債務ということに含むということ自体に余り反対はなかったように思います。そうだとすると、そのときの議論だと三者型の所有権留保でも対抗要件なくして担保権者は対抗できることになりそうだったのだけれども、今回の3(2)の結果、一番問題となる登録自動車の所有権留保の三者型は、信販会社に名義を移しておかないと対抗できないということになるのかどうかを確認させていただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○笹井幹事 三者型も牽連性のある部分については対抗要件不要だということはについて、所有権留保全体の考え方と関連して前回の様々な御議論がありましたけれども、三者型についても狭義の所有権留保については対抗要件不要だというのは、前回申し上げたとおりです。確かに今回の第3の3(2)のとおりのルールが設けられれば、登録自動車に関していえば対抗要件が必要になってくるということだろうと思います。ただ、平成29年判決の場合は、あれは狭義の所有権留保でしたけれども、保証債務を履行したことによる弁済による代位だという構成が取られており、弁済による代位については一般的には担保権の移転についての対抗要件は不要だということが言われていまして、そのことをこの3(2)が修正するわけではありませんので、平成29年判決の結論は維持されるということになるのかなと思っています。 ○阪口幹事 阪口です。別に結論が不当と言っているわけではなくて、確認です。というのは、平成22年最判で登録が対抗要件がないから駄目だと言ったのが対抗要件の問題なのか、権利保護資格要件の問題なのかもはっきりしない中で、ただ、今回の3(2)になると対抗要件の問題として決着が付くということになるように思うので、そこの確認がしたかったのです。ありがとうございます。 ○道垣内部会長 いかがでしょうか。最後の点は善し悪しもあるかもしれませんが。 ○沖野委員 ありがとうございます。この御提案の意味について教えていただきたいのですけれども、3のところで、知的財産などで登記があるような場合については、3(1)で譲渡担保の処分や順位の変更に関する規定はおよそ適用がない、そういう規律はおよそ妥当しないということになるのでしょうか。それぞれの登記登録の方の整備で対応するという余地もあるようには思ったものですから、確認をさせていただきたいと思いました。 ○笹井幹事 今、沖野委員から御指摘があったとおりで、この新法において担保権の処分であるとか順位の変更に関する規定は適用されないということになるのだというのが3(1)の御提案です。ただ、もちろんそれぞれの登記登録制度がそれぞれの法律において設けられておりますけれども、およそそういうところで対応しているのにこの新法によってそれが否定されるということではありませんので、それぞれの法律の下でそれぞれの登記制度でありますとか、登録制度でありますとかで対応するということは可能なのかなと思っています。 ○沖野委員 すみません、私の方で気になっておりますのは、一般的なルールとしてそれが可能であるということは譲渡担保契約一般について規定されていて、それを公示というか登記というか、のところのどこで受けるかを債権譲渡登記ですとか動産譲渡登記で受けるとともに、個別の登記で受けるということもできるとすると、一般則の部分は適用されるのだけれども、その公示の部分の方については特定の財産についてはそちらの特則になるか手当てになるというような形になるのかなと思われまして、個別法の方でそもそもの一般則の方を置くというのはなかなか難しいのかなと思ったものですから、伺ったということです。質問の趣旨だけ説明させていただきたいと思います。 ○道垣内部会長 ほかにございますか。   結構この辺りは個々具体的な登記登録に関する制度等と関係しておりますので、こういったタイプの財産のこういった場面においては不適切な結果になるというふうな結構細かい議論が必要な領域だろうと思います。したがって、いろいろな方の御知見で何かございましたら、御指摘いただければと思います。   パズル的な要素もありますので、今日ここでこんなシチュエーションではうまくいかないというふうなことを御発言されなくても、家に帰って紙に書いていたら分かったというふうなことがございましたら、是非とも事務局に、あるいは私でも結構でございますけれども、お伝えいただければと思います。結構細かい点、ここは類推とかそういうのが利かないようなタイプの条文のところでございますので、きちんと考えておくことが必要な領域だろうと思いますので、是非ともよろしくお願いいたします。   ほかにございませんか。よろしゅうございますか。   それでは、もちろん何か休憩中に思い付かれることがあるかもしれませんけれども、ここで、一旦休憩を取らせていただければと思います。現在が15時20分でございますので、15時35分、15分後まで休憩にさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○道垣内部会長 すみません、申し上げました3時35分になりましたので、再開したいと思います。   それでは、前回の積み残し分から議論をしていきたいと思いますが、部会資料39の第2の3、事業成長担保権の実行手続で配当を受ける債権者というところから始めたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○髙倉関係官 第2の3は、「事業成長担保権の実行手続で配当を受ける債権者」についての規律でございます。   本文(1)は、配当債権の範囲について御提案したものであり、その内容について御説明いたします。   第1に、事業成長担保権の被担保債権のうち特定被担保債権は、実行手続の配当の対象とする必要があるため、配当債権の範囲に含めています。   第2は、劣後担保権の被担保債権でございます。事業成長担保権の実行手続では、原則として総財産を一体として事業譲渡による換価が行われるところ、総財産に含まれる個々の財産に設定された担保権が譲渡後も存続するとすれば、買受人の探索に支障を来す可能性が高いことから、換価に伴い可能な範囲で担保権を消滅すべきと考えられます。事業成長担保権に劣後する担保権を有する者は、事業成長担保権の実行手続開始後は、担保権の行使時期の選択権を剥奪されてもやむを得ない地位にあると考えられることから、劣後担保権は換価に伴い消除することとし、その被担保債権については実行手続における配当の対象としております。ただし、事業成長担保権に劣後する担保権のうち一般先取特権、企業担保権及び留置権については配当の対象とはしないものとしております。   第3は、租税等の請求権でございます。共助対象外国租税の請求権以外の租税等の請求権については、事業成長担保権や劣後担保権との優劣関係について法定納期限等とその対抗要件具備の前後によって決することとなり、一般先取特権に対しては常に優先することから、実行手続において配当の対象としております。   以上を踏まえ、本文(1)では、実行手続における配当債権の範囲を、事業成長担保権の特定被担保債権、劣後担保権の被担保債権及び租税等の請求権としております。   本文(2)について、事業成長担保権の実行手続は包括執行手続であることから、利害の対立する債権者相互間で直接かつ簡易迅速に債権及び担保権の存否、内容を確定することが効率的と考えられます。また、必ずしも公示が十分でない譲渡担保権などの被担保債権についても配当の対象となることから、劣後担保権の被担保債権者からの届出なく配当を実施することが困難であると考えられます。そこで、債権者相互間で簡易迅速な債権等の確定を図ることができる倒産手続類似の調査確定手続を設けることとするものでございます。   その上で、劣後担保権の被担保債権者は、担保権により把握している特定の財産の価値の範囲内で優先弁済権を有すると考えることができることから、更生手続において更生担保権が、担保権の被担保債権のうち、担保権によって担保された範囲のものとされるのと同様に、事業成長担保権の実行手続においても、担保権の目的財産の価額の範囲でのみ配当を受けることができるとすべきと考えられます。この場合、配当債権の調査手続では配当債権の有無及びその額だけではなく、担保目的財産の価額を調査して確定させる必要があるため、更生手続を参考に目的物の価額決定手続を設けることとしています。そして、実行手続における担保目的財産の価額決定手続については、更生手続と異なり、価額決定の申立てにおいて債権査定申立てを前提とすることなく、価額決定手続と債権査定手続が独立して進行することを可能とし、更に担保目的財産の価額について合一確定を図る制度を設けることを御提案してございます。   その理由としては、部会資料に例を挙げさせていただいておりますが、劣後担保権者が主張する劣後担保権の設定された個々の財産の価額が異なる場合には、配当額を一義的に決することができず、劣後担保権の被担保債権の内容に争いがあるか否かにかかわらず、配当額を決するために、劣後担保権の設定された個々の財産の価額を債権者間で確定する必要があるためでございます。   以上について御審議をお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと存じます。よろしくお願いいたします。 ○山本委員 3(2)のところですけれども、この枠組み、基本的にしようがないのかなと思いつつも申し上げたいと思いますけれども、この規律だと基本的にはこの債権確定手続に参加できるのは管財人と配当債権者ということになっているわけですけれども、配当外債権者、つまり一般債権者は基本的にはこの手続には参加できないということになります。ただ、私の理解では、ここでの債権確定の結果によって配当外債権者の配当額、その後の破産手続等におけるということになりますが、配当額に影響を及ぼすということは考えられるのではないかという気がするわけです。当然のことながら、例えば会社更生の手続においては、更生担保権者の更生担保権額について一般の更生債権者等は異議を述べるということはできますし、民事執行の手続においても担保権者の配当額に対して配当要求債権者、一般債権者も異議が述べられるということになっているということで、少しその辺りが通常の債権確定の手続から見て、いかがかなという気はいたします。   もちろん管財人は善管注意義務を負っていますので、一般債権者の立場も念頭に置いてこの認否を行うべきという規範になるのだと思いますし、それで十分だという見方もできるのかもしれません。ただ、それだとかなり管財人の善管注意義務が重くなる可能性は高くて、その後に、何であれで認めたのだということを一般債権者から言われて、損害賠償請求を受けるというような事態も想定されるような気がして、その管財人に全て集めてもいいのかなという懸念は持っています。   ただ、他方で配当外債権者も配当異議等が言えるということになると、それはこの手続の参加者ではないので、そういう人にまで異議を認めていくということになると、どこまで認めるのかということになって、かなり手続が煩雑になるというところもあるという気がいたしますので、これでやむを得ないかなとも思いつつ、しかし、少なくとも通常の手続からすると、やや違和感があるという点は指摘させていただければと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。事務局から何かこの点、ございますか。   では、更にその点を踏まえて検討させていただきたいと思います。 ○松下委員 ありがとうございます。松下です。私も3(2)で、倒産手続類似の債権の調査確定手続を設けるものとするというところについてです。21ページの説明を読むと、査定、そして査定異議の訴えという記載がありますが、倒産手続における債権の調査・確定では、有名義債権の場合には手続の仕方が違ってきて、債務者のすることができる手続、例えば再審とか請求異議とかで争うことになりますが、そういうこともお考えなのかどうかということが一つです。それから、例えば無名義債権で異議等があったときに、査定異議の訴えを提起する以外に、係属中の訴訟で事業成長担保権の実行開始によって中断した訴訟の受継というルートも債権確定のために使うということもお考えなのか、その2点について原案の趣旨をお尋ねできればと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。何かございますか。 ○髙倉関係官 この資料の中では原則的な形態についてのみ記載をさせていただいておりますが、有名義債務の確定方法や実行手続の開始によって中断していた訴訟のうちの受継についても、倒産手続と同様に特別の規律を設ける方向で検討を進めてございます。 ○道垣内部会長 その検討というのは、ここに出てくるわけではなくて、別の法律になるのですか、手続法的に。 ○笹井幹事 いえ、法律として一つの法律ですけれども、それぞれの条文のような形ではお示ししておりませんので、今、髙倉から申し上げましたのは、細かい部分として法律の中で規定を設ける方向で考えているということでございます。 ○道垣内部会長 分かりました。それでは、松下さんのおっしゃったことも山本さんがおっしゃったこともよく踏まえて、細かな点を詰めていただければと思います。   ほかに何かございますか。 ○阿部幹事 これも細かなことの中に入ってしまうのかもしれませんが、事業成長担保権者の債権以外で配当を受ける債権は、劣後担保権の被担保債権に限るということになっていて、優先担保権はそもそも実行も止まらないし、実行したければ勝手にやってくれと、そういう制度だというのが原則だという形になっていますが、事業成長担保権の実行としての事業譲渡に乗っかるような形で、そこから自分の目的財産の価額について優先的に配当を受けられればいいやというような優先担保権者でも、やはり事業成長担保権の実行手続で配当を受けることはできないということになるのでしょうか。事業が継続していくという観点からは、ばら売りされるよりは事業譲渡で一括的に譲渡された方が望ましいというのが、今回のこの制度の全体的な態度ではないかと思ったのですけれども、いかがでしょうか。 ○笹井幹事 阿部幹事の御指摘のとおり、この事業成長担保権の実行手続の中では優先担保権者は配当を受けることができないという制度設計で考えております。 ○道垣内部会長 だけれども、それが存続するというだけにするのではなくて、何らかの形で整備をして売却するようにしないと、一体的な売却の実が達成できないのではないかというのが阿部さんの御指摘でよろしいでしょうか。違うのですか。 ○阿部幹事 基本的にはそうなのですけれども、新しい部会資料41の方でもいろいろ検討はされると思うので、それも踏まえて考えることだと思うのですが、優先担保権者の中には事業成長担保権の実行手続に乗っていきたいと思う人もいるような気もして、そういう人は乗せることも考えられてもよいのではないかと思ったという次第です。   差し当たりは以上です。 ○道垣内部会長 分かりました。乗ることも可能という制度がどういうふうに仕組めるかというのは分かりませんけれども、実行手続の詳細についてはまた検討していただければと思います。   ほかにございませんでしょうか。特に、3はこんなものかなという感じですか。3は具体的には今、阿部さんからも出ましたように、優先する担保権とかいうふうなものをどういうふうに扱うのかということとも密接に結び付いておりますので、次に進んでも、3に戻って、更に(1)とか、検討すべきところがあろうかと思います。そのときは御遠慮なく御発言いただければと思いますけれども、議事としては少し先に進ませていただきまして、第2の4の事業成長担保権の実行手続における換価についての議論に移りたいと思います。それでは、部会資料の説明からお願いいたします。 ○髙倉関係官 第2の4は、「事業成長担保権の実行手続における換価」についての規律でございます。   本文(1)前段では、事業成長担保権の実行手続においては、原則として、特定承継である会社法上の事業譲渡によって換価を実施するものとし、その上で、実行手続における事業譲渡についても倒産手続と同様に裁判所の許可を得なければならないものとして、中間試案と同様の提案をしております。また、各倒産手続と同様に、裁判所が事業譲渡の許可をする際には労働組合からの意見聴取を義務付けることとしております。また、事業譲渡に当たって株主総会の決議による承認を要するかどうかについて、実行手続の管財人がその管理処分権の一環として事業譲渡を行う権限を専有すると考えられること、そして、実行手続においては事業価値が劣化する前に迅速に事業譲渡をする必要があることなどから、本文(1)後段では、中間試案と同様に、事業成長担保権の実行における事業譲渡について、会社法上の株主総会の決議による承認を要しないものとする提案をしてございます。   本文(2)について、実行手続においては、管財人が事業譲渡により全ての財産を一括して換価することを原則的な換価方法としております。他方で、個別資産の換価を一切認めないものとした場合には、事業の買受人の探索に支障が生じたり、不利な条件での譲渡を余儀なくされたりするなど、円滑かつ効率的な事業譲渡の実現に支障が生ずる可能性があり、また、事業の維持や処分に不要な財産が担保目的財産に含まれている場合等に一部の財産を分離して譲渡した方が全体として高値で換価できるという場合があり得ると考えられます。そこで、事業譲渡によって一括して換価する以外に、裁判所の許可を得て個別資産の換価を可能とするものとしております。もっとも、あらゆる処分について裁判所の個別許可を要することは過度の制約となり、管財人が事業を継続するに当たっての円滑性や迅速性が阻害されるおそれがあることから、本文(2)ただし書では、設定者の【常務に属する「又は」事業の継続に必要な】範囲内の任意売却及び裁判所が許可を不要としたものについては、裁判所の許可を得ることなく個別に処分することができることとしております。   本文(3)について、事業譲渡による換価をする場合には、事業成長担保権の目的財産は代金の支払があったときに買受人に移転するものとしております。もっとも、これによって個々の財産については、当然に対抗要件が具備されるわけではないことから、対抗要件を具備するために必要な行為をする権限を管財人に認めるなどの措置を講ずる必要があることをお示ししております。   本文(4)は、中間試案において示された議論を踏まえ、会社更生法を参考に、許認可等の承継に関する規律を御提案するものでございます。更生手続においては、更生計画に基づき新会社を設立する場合に、ほかの法令の規定にかかわらず、新会社が更生会社の許認可等を承継することができることとされております。事業成長担保権の実行手続においても同旨の制度を設ける余地があると考えられることから、本文(4)では、許認可等の承継に係る裁判所の許可を得て許認可等を承継させることとし、その前提として、管財人が裁判所に対して許認可等の承継を許可するよう求める申立てをし、申立てを受けた裁判所が処分行政庁に対して意見を聴取する手続を設け、処分行政庁の意見を踏まえて裁判所が承継の許否を判断する規定を設けることを御提案しております。   本文(5)は、換価に伴う担保権の消除に関する規律でございます。事業成長担保権の実行手続においては、買受人の探索に支障を来すことなく事業譲渡により全ての財産を一括して換価することが可能になるよう、換価に伴い、総財産に属する個々の財産に設定された劣後担保権を消除することとしております。他方で優先担保権については、実行手続によらず行使することができ、その被担保債権については配当の対象としないことから、換価に伴い消除させることとはせず、買受人に引受けさせることが相当であると考えられます。また、留置権についても、実行手続における配当の対象としないことから、買受人に引受けさせることとしております。   以上について御審議をお願いいたします。 ○道垣内部会長 どうもありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと存じます。 ○村上委員 ありがとうございます。前回の部会の終盤におきまして、1の議論をしていたところだったのですが、4に関係しましても質疑がありまして、その点について少し確認をさせていただければと思います。   主に1の実行手続の概要の部分の議論でございましたが、実行手続における換価に関して笹井幹事から、一括換価であれば複数事業を別々の譲渡先に売却した場合については原則、例外性を議論しても余り意味がないといった御説明がございました。ただ、事業成長担保権は企業の総財産を目的として設定される担保権でもあることから、部会資料39の15ページ、第2の1に記載のとおり、実行時にも総財産を一体として換価することが原則であり、これは金融審のワーキンググループの報告でも同様に理解されてきたと考えております。まず、このような理解でよいのか、改めてお伺いしたいと思います。 ○笹井幹事 事業成長担保権の実行手続における換価の考え方について、今の御指摘を踏まえまして改めて整理して申し上げますと、髙倉からの御説明にもありましたように、事業成長担保権の換価方法としては、その担保目的である総財産を全部一括で換価するというのが最も目指すべき原則的な換価方法であると考えています。   例えば、前回出た例ですけれども、総財産がA事業とB事業の二つから成っているというときに両方、AもBもまとめて同じ譲渡先に譲渡するというのが今申し上げた原則的な換価方法であるということになります。その原則との関係では例外だということになりますけれども、裁判所の許可を得て、今説明の中でもありましたように、設定者が営む複数の事業を幾つかに分割して譲渡するということ、換価するということも可能です。   ただ、例外という位置付けなのかもしれませんが、事業ごとに換価する場合に、全部の事業の譲渡先があると、単にA事業とB事業の物的な設備だけではなくて、その人的な労働契約も移転していくということで、別々の譲渡先に行くのだけれども、全てが譲渡されて何も残らないというケースでは、前回、井上委員からも御質問がありましたけれども、こういったケースでは裁判所による許可がされやすいのではないかと思います。   これに対して、一部の事業だけが譲渡されるとか、A事業だけが譲渡されるとか、あるいはAもBも譲渡先は見付かったのだけれども、どちらかに明確に分けられない間接部門の人が残ってしまったとか、そういうケースになりますと、裁判所としてもそれを許可するのかどうなのか、そういったことを検討するに当たっては、例えば労働保護とか様々な事情を考慮して、より慎重な合理性とか必要性とか、そういったところについての検討が必要になってくるのではないかと思っております。 ○村上委員 ありがとうございました。今の御説明を頂きまして、よく理解ができました。事業成長担保権は、伴走型支援によってその事業の継続や成長を促すような融資制度でありまして、実行に至ることは余り想定されていないと何度か御説明を伺ってきたところでございます。そのような制度であったとしても、万一実行に至る場合は考えられますので、一体としての換価ということが原則であることは是非堅持いただきたいと考えております。   そのほかの点でも発言してよろしいでしょうか。ありがとうございます。これまでは設定時の話のときにも少し申し上げたのですけれども、実行の場面において労働者の雇用に与える影響が大きいということを踏まえれば、裁判所からの通知や管財人からの情報提供だけでなく、労働組合との事前協議も手続的な要件として大変重要だと考えております。また、先ほど裁判所による労働組合からの意見聴取についても御説明いただきましたけれども、事業譲渡を許可する場合だけでなく、会社更生法を参考に、実行手続開始決定前や債権者集会のような場での意見聴取も是非義務付けていただけないかと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。具体的な手続につきましては、更に細かな点を決定する際に今の御発言を考慮に入れて御検討いただければと思います。   ほかに何かございませんでしょうか。 ○大澤委員 私からは質問というよりもコメントですけれども、この4の(1)から(5)までについて、特段の違和感を持たずに拝見をしております。特に(4)については、倒産手続等において許認可の承継というのがかなり大きな問題としていつも残っておりまして、倒産手続に入る前に上手く譲渡をしないと、そもそも事業が空中分解してしまうようなこともございました。そういった意味で、4(4)のような形で許認可等の承継手続というものを設けていただけるというのは非常に合理的だと思いますし、また、事業の一体評価ということでスポンサー等も入りやすくなる手続であると思っておりますので、こういった形での許認可承継というものをしていただければと考えております。   簡単ですが、以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○井上委員 ありがとうございます。井上です。今御指摘のあった(4)については、私も全く同意見でして、今回、前回までの提案に関する御議論を反映していただいて、一定の手当てを御提案いただいているのは非常によかったと思います。今、倒産実務側からの大澤委員のコメントであったと思いますけれども、M&A実務の観点からしても、許認可の継続は非常に重要な交渉ポイントであり確認ポイントであって、法律事務所が当事者の依頼で作成するデューディリジェンスレポートの重要な項目の一つでもありますから、その点で、一定のコンフォートに繋がるルールとして非常に有り難いと思います。   あともう一つ、(2)について先ほど村上委員からの御質問に対する御回答の中で、一体的な譲渡が原則であることや、A事業、B事業がある場合にそれぞれ別に譲渡する場合の考え方などについても御説明いただいて、私も納得できたところです。ただ、この(2)に書いてあるのは、それとは別の個別資産の換価についてのルールですが、私が気になっているのは、個別資産だけを換価する場合のこのルールの裏側の問題なのかもしれませんが、事業成長担保権は担保の目的物が総財産、総資産ということになっているので、特定の個別資産だけを残して事業を売却することは想定されないと思っていますが、その点の確認です。   つまり、事業を欲しいという人に対して事業を売却するときに、一括して一人に売却することもあれば、2人にA事業、B事業を裁判所の許可を得て売却することもあるかも分からないのですが、買受人からこれは要らないよと言われた個別資産が債務者に残ることを許すかどうかという問題なのですけれども、飽くまでも担保目的物の一部である以上、それを処分しないと、言わば最終的には債務者を空っぽにしないと、実行が完了しないと理解しておりまして、その点を確認したいということです。   具体的には、個別資産のうち買受人から要らないと言われる資産の中にはマイナス価値の資産もあり得ると思うのですけれども、極端な例で言えば土壌汚染が見つかった不動産を、それだけ残して譲渡しても実行手続は終わらないということです。逆に言えば、そういう引き取り手がなかなかない資産についても何らかの見通しを立てなければいけないのであって、本当に全資産を処分するためには、そういった問題を処理しなければいけないとすれば、その費用をきちんと払って対処した上で、残った全ての財産を事業として売るという形で、何も置き去りにされないことが想定されているという点についての確認をお願いできればと思います。 ○道垣内部会長 いかがですか。 ○笹井幹事 繰り返しになりますけれども、飽くまで想定されているのは基本的には全て一括でということを探してくるというのが原則になりますので、そういったマイナスのものも含めて全体として評価をして買い受けてくれるという人が現れれば、前回申し上げたとおり、必ずしも換価価値の多寡だけではないということだろうと思いますので、そういったところも含めて全部引き取ってくれるところを探していくということになるだろうと思います。   その例外として、これだけは絶対に引き取ることができないという物が生じたときに、何をもって終了とするのかというのは難しい問題かもしれませんけれども、ここでいう管財人の位置付けは、これも前回申し上げたとおり、必ずしも担保権者のためだけの利益を代表しているというわけではなくて、公正中立な立場でもあるということですので、井上委員から御指摘があったように、必ずマイナス価値のものも含めて一括して譲渡するのが原則ですけれども、そうではなくて、何らかの見通しが付くということになった場合には、別々に処分するということも特定の個別の事情の下で許されないわけではないと思っております。しかし、そこではそのマイナスのものが放置されないようにすることを管財人としては公正中立義務の一環として負っているのではないかと思っております。 ○道垣内部会長 大西さんからも手が挙がっているのですが、マイナスのものがあったときに、当該事業成長担保権というのは、プラス100あってマイナス10あるときに、90を取っていると考えるのか、それとも100を取っているのだ、マイナス10はマイナス10なので放っておいてもよくて、一部だけ実行してしまってもちろん構わないというのが基本だとするならば、そうなるというふうなことにもなりそうなのだけれども、今回はやはり90取っているという発想なのだろうと思うのです。したがって、共同抵当して片方が汚染された土地だからといって片方だけ実行すれば済むという話ではないので、合理性とかそういうふうにいったときも、先ほど必ずしも担保権者の利益だけを考える主体ではないのだとおっしゃいましたけれども、その辺りのところの整理というのは結構重要かもしれないというふうな気がいたしました。   すみません、大西さんをお待たせして私がしゃべってしまいまして、申し訳ございません。大西さん、お願いいたします。 ○大西委員 4の(1)から(4)につきましては、基本的に賛成です。特に(4)の許認可については更生法の新会社と同じであり、非常にいい手法だと思います。   私が少しコメントしたいのは(2)の個別資産の換価というところですが、これ自体を管財人が裁判所の許可を受けてやれること自体は賛成です。しかしながら、実際これをやる場合として、先ほど話があった事業をA事業、B事業で分割してそれぞれ譲渡するといった局面ではなく、管財人が引き継いだときに資金繰りのために早期に売らなくてはいけないというケースもあると思います。倒産のような危機状態において一番大事なのは資金繰りなので、そういう中で、個別資産の換価は十分にあり得ます。また、事業成長担保権者が企業全体を対象に担保価値を把握している際に、当面の資金繰りが維持できないと事業自体がもたないような場合に、当該企業の一部の資産に新たに担保設定を行って、事業担保権者以外の債権者から新規に資金調達を行う場面も想定できます。この場合には、先順位にある事業成長担保権者の同意を得て、同担保権との関係で優先的な地位に立つ個別資産の担保権設定がない限り、新たなローンは出ないと思われます。この場合、事業全体の存続に必要であれば、自ら新規融資を出せない事業成長担保権者がそれに同意することも十分にあり得ることから、個別資産の換価だけでなく、当該資産に対する担保設定を行う局面もあると思いますが、そこまで想定されていますでしょうか。もし、想定されていないのであれば、そこも含めて考えるべきと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。質問が含まれておりますので、一応お願いします。 ○髙倉関係官 御指摘の場面については、現時点で想定が十分ではないかもしれませんが、頂いた観点も踏まえて引き続き検討させていただきたいと考えております。 ○道垣内部会長 事業継続のために売れるのだったら、事業継続のために担保化だってできるだろうというのが大西さんの発想で、それは大変素直なところがあると思うのですが、少し御検討いただければと思います。   ほかにございますか。 ○加藤幹事 幹事の加藤です。先ほどの井上委員と道垣内部会長のやり取りを伺っておりまして、事業成長担保権が何を担保しているかというところとの関連なのですけれども、総財産が担保財産であるとした場合に、結局100の総財産の価値が、例えば企業価値として捉えるならば、それが100であった場合に、実は総財産の一部は120だけれども、残りがマイナス20であると、こういった場合も十分あり得ると思います。そういった場合に、その120だけ譲渡してマイナス20は譲渡しないということは、恐らく本来、事業成長担保権が担保に取っているもの以上のものを結局、換価の際に優先的に弁済を受けているということになるのかどうかという話なのかなと思いました。   実際にその企業価値を、将来キャッシュフローの割引現在価値なので、その場合には当然マイナスの、言わばマイナスのキャッシュフローという言い方は少し適切ではありませんけれども、プラスを生み出す資産とマイナスの資産は、両方合わせて恐らく企業価値は算定されると思います。その場合に、換価のときにプラスのキャッシュフローを生み出す資産だけ売るということになると、恐らく最終的には本来その事業成長担保権者が取っていたものを超えるものを換価のときに優先弁済を受けるという話となるのかどうかというところは、私も若干こういう考え方でいいか分からないところはありますけれども、一つこういう考え方が採れるのかなということで、少しコメントだけさせていただきました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。理屈上はきちんとそこを押さえてやらなければならないだろうと思います。 ○大西委員 今の点ですが、120と100ということで、プラスだけが120で、マイナスを入れると100になるケースがあったときに、本来の担保価値は100だと思うのですが、現実に事業譲渡をする場合に、そのマイナス資産も含めて取ってくださいという選択肢一択だと、スポンサーが嫌がる場合も少なくありません。その場合は、プラス部分の譲渡で120の代金をもらった上で、そのマイナス分の20は見合いで置いておき、担保権者に渡さずに、管財人が資産管理の中でその費用をかけて資産の処分等を行うような取引もあり得ると思います。実質が同じになるような規制が可能であれば、マイナス資産を残す場合を否定すべきではないと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。ごもっともだとは思うのですが、手続を組むのは結構大変ですよね。マイナスの財産だけあって、しかし、少しお金をもらっているから、それをどこかに引き取ってもらうときにそのお金を使うというふうな手続を組むと、計算上はそれはもちろん済むのですが。しかし、大西さんのおっしゃることももっともだろうと思いますので、少し手続的な細かい点については更に詰めていただければと存じます。   ほかにございますか。 ○村上委員 ありがとうございます。本日の資料には記載はないのですけれども、金融審のワーキンググループ報告書では、31から32ページに掛けて、実行時の労働契約の承継の在り方についてかなり詳細に書き込んでいただいております。是非制度化する際にこういった点が後退しないよう対応をお願いいたします。 ○道垣内部会長 よろしくお願いいたします。   ほかにございますか。   差し当たっては(4)のところはいろいろ問題はありますが、多くの大体のところは賛成の方が多かったように思いますけれども、細かな点について更に手続上の問題等を詰めなければならないということは明らかになったと思います。   それでは、先を急ぐようで恐縮でございますけれども、次に第2の5、事業成長担保権の特定被担保債権以外の債権の取扱いについて議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○髙倉関係官 第2の5は、「事業成長担保権の特定被担保債権以外の債権の取扱い」についての規律でございます。   本文(1)では、実行手続開始後の原因に基づいて生じた債権のうち、事業成長担保権の実行を円滑に進めるために必要な費用などについては、共益債権として事業成長担保権の被担保債権に先立って随時弁済を受けられるものとし、共益債権の内容を列挙しております。本文(1)①から⑥までは、破産法第148条や民事再生法第119条などを参考にしたものであり、本文(1)⑦は、会社更生法第130条を参考に、実行手続開始前一定期間の労働債権を共益債権とするものでございます。本文(1)⑦においては、使用人の債権の代表的なものとして手続開始前一定期間の給料を挙げておりますが、退職手当の請求権等についても会社更生法第130条と同様の規定を設けることが考えられます。加えて、会社更生法第129条が定めるのと同様の範囲の租税債権についても、公益性等を考慮して共益債権とする考え方をお示ししております。   本文(2)について、実行手続開始前の原因に基づいて生じた債権のうち共益債権以外の債権については、実行手続開始後は弁済等が禁じられるものの、それを随時弁済することが事業価値の維持・向上に資するものがあると考えられます。例えば、設定者が事業を行っていくために取引関係を継続していくことが必要な取引先の商取引債権等が挙げられ、こうした債権は共益性を有するものとして、事業成長担保権の被担保債権に優先して弁済されるべきと考えられる一方で、ほかの債権者との公平の観点も問題になることから、裁判所の許可を優先弁済の要件とすることが考えられます。   現行制度においては、例えば会社更生法第47条第5項において、「少額の更生債権等を早期に弁済しなければ更生会社の事業の継続に著しい支障を来すとき」に、裁判所の許可により優先・随時弁済をすることができるものと定められています。実行手続においても同様の規定を設けることが考えられるものの、可能な限り高い事業価値を保ちつつ譲渡を目指すという事業成長担保権の性格に鑑み、事業を継続するために必要な債権は、事業価値の維持に資する共益の費用として比較的広く事業成長担保権に優先されるべきと考えられることから、会社更生法における「少額の」債権や「著しい」支障の要件を不要とするなど、上記の事業成長担保権の性格を反映した、より広い要件を設けることを御提案しております。   本文(3)は、第1の1の一般債権者への取り分を確保する仕組みとして、事業成長担保権の実行手続において、受益者である不特定被担保債権者のために配当金の一定割合に相当する額を取り置く手続を法定することを御提案するものです。取り置く金銭は、受託者である事業成長担保権者に対して交付することとし、事業成長担保権者は、受領した金銭を管理し、設定者の清算手続又は破産手続が開始した場合には、清算人又は破産管財人に交付する義務を負い、これにより、一般債権者等は、公平性の確保された現行の清算手続又は破産手続において配当等を得られることとなります。この場合の実行手続において取り置いた金銭の処理としては、例えば破産手続においては、財団債権に優先的に弁済された後、破産債権の順位に応じて配当されることとなると考えられます。以上の事業成長担保権の特定被担保債権以外の債権の取扱いのイメージを別紙として添付させていただいております。   なお、実際には、事業成長担保権の実行手続の係属中に破産手続が開始することや、先に破産手続が開始され、その後、別除権である事業成長担保権の実行手続が開始するという場合も多いのではないかと考えておりますが、別紙では、事業成長担保権の実行手続が先行し、手続終了後に破産手続等が開始した場合の流れをお示ししております。   以上について御審議をお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと存じます。 ○大西委員 よろしくお願いします。5(3)ですが、ここでまた一定割合をどう決めるかという論点があります、これは質問なのかもしれませんが、要は、事業成長担保権を行使して実際に事業を譲渡すると、その後、残った法人は通常破産手続に移行し、当該手続[H1]の中で一般債権者に配当するというところまで見越すことができます。そうした場合、この事業成長担保権行使の手続との関係では共益債権ではないのですが、例えば破産の申立て費用、それから破産管財人の費用といった、破産手続[H2]に関する共益的な費用についてもどこかできっちり確保する手段を検討しないと、非常に無責任な状態になると思います。これを、5(1)の中に当該趣旨の項目を入れるのか、それとも、(3)でこの費用を勘案するのかによって、この決め方が変わると思います、共益的な費用は、カーブアウトの割合を決めただけでは確保できるとは限らないので、金額の議論も必要かと思いますので、(3)で勘案するのであれば、裁判所の許可を係らしめるべきだと思います。きちんとしたその後の破産手続等も履行できる状況を可能とするカーブアウトを裁判所で判断いただく必要があると思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。大変重要な御指摘だろうと思いますが、それをどういうふうにするのかというのは、また事務局のお考えも伺うことにいたしますが、ほかに、まず御意見を伺っておきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。2点申し上げます。まず、(3)のところなのですけれども、こちらは5の(1)や(2)の後、共益債権等の弁済の残金が対象となるとはいえ、いわゆるカーブアウト部分が有名無実化しないよう、一定割合については労働債権者を始め一般債権者の実質的な保護につながる割合を、慎重かつ丁寧に検討した上で設定していただきたいと考えております。   また、2点目ですが、(1)の共益債権に位置付けられた⑦については、会社更生法第130条を参考にしたとの説明がございます。会社更生法で使用人の給料等を保護している趣旨は、労働者のモチベーションを高めることで事業の再生に資することとされており、これは事業成長担保制度にも当てはまるのではないかと思います。したがいまして、会社更生法と同様に退職手当も当然に対象としていただき、給料の対象範囲についても手続開始前6か月としていただきたいと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。検討対象となっていたところでございますので、今の御意見を参考に御検討いただければと思います。   ほかにございませんか。 ○大澤委員 ありがとうございます。大澤です。まず、5(3)につきましては、大西さんがおっしゃられましたとおり、この実行手続が終わった後の倒産手続の手続費用等の仕組みという意味でも必須のものだとは思っておりますので、考え方についてはなお御検討いただければと思っております。   (2)についてなのですが、文言としては設定者の取引先の保護その他の実行手続の公正な実施に必要があるものについては、申立てによりその弁済を許可することという形で書かれておりますけれども、先ほど御説明にもありましたとおり、いわゆる会社更生等の少額債権等とはまた違った、大分幅広な弁済ということをお考えだというふうに、金融審のワーキングの方ではそのような考え方をお示しいただきました。なので、この公正な実施に必要があるものというのは余り見慣れない文言ではあるのですけれども、幅広いそういった弁済を許容するものだという理解でおりますけれども、まず、そのような理解でいいかということを確認させていただければと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。質問としては既に二つ頂いておりまして、大澤さんからも出たわけですが、その後、破産手続が起こったりするときの費用みたいなものを取り分けておくというのをどういうふうなシステムというかメカニズムで行うかという問題と、あとは、先ほど出ましたのは(2)の公正な実施に必要があるというところの考え方というのでしょうか、範囲といいますか、何かその辺り、事務局でございますか、今のところで。 ○笹井幹事 まず、破産の申立費用、予納金も含めてですけれども、考え方としては、それも共益債権になるので、優先的にそちらを支弁していくということになると理解をしております。ただ、それはカーブアウト分から控除するというか、その部分から支弁することになると理解をしております。   それから、(2)の「公正な」というのは、確かに何が適切な文言なのかというところはなかなか表現が難しいところもあり、今は出発点として会社更生法47条5項を一つの参考としながら作ったということもありまして、今は公正というのを文言として使っておりますけれども、ただ、意味内容としては、金融審において説明をしておりましたように、事業の価値を維持して、その価値を持ったものとして移転をしていくというのがこの実行手続における達成すべき目標だということですので、そのために必要な債権を支払っていくという意味では、今、大澤委員からも御指摘がありましたように、幅広なものという御理解を頂いて差し支えないかと思います。考え方として、金融審の考え方の中から変更をしたということではないと理解しています。   それから、村上委員の方から(1)⑦について、退職手当や6か月という御指摘もございました。数値についてここで議論するということではないのかなということもありまして、資料では一定期間と書いておりますけれども、内容的には会社更生法を参考にしたものだと書いてありますように、退職手当その他、会社更生法130条で記載されているものを含むものと考えておりますし、期間についても会社更生法の6か月というものを軸に今、検討が進められていると承知しています。 ○道垣内部会長 よろしいですか。   少し補足があるそうなのでお願いします。 ○髙倉関係官 先ほど御質問いただいた費用に関して補足させていただきます。基本的には笹井参事官から御説明があったとおりではあるのですけれども、実行手続の方で換価の部分はしてしまうということになりますので、破産手続に掛かる費用というのも、破産管財人の報酬も含めてですけれども、限定的になってくるのではないかと考えております。その上で、基本的には破産手続に掛かる費用も含めた上での一定割合の取り置きになると考えており、実行手続の管財人が破産手続開始の申立てをした場合は、一旦実行手続の共益費用として拠出するけれども、それを後からカーブアウト分から拠出されるように調整するのがよいのではないかと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。私が発言していたのも、大西さんの真意を伺うのに当たって、カーブアウト分から支出されればそれでよいというお話だったのか、それとも、その換価に先立って、どうせこれはその後、破産になるではないかという話になったときに、それはこれとは別のメカニズムというか、別枠でその後の費用というものを取っておかないと、それは無責任でしょうという話なのかと思って、後者なのかなと思いまして、御真意を伺いたいと思ったのですが、大西さん、お願いいたします。 ○大西委員 御質問にお答えさせていただきます。私はカーブアウト分の中で、これが一定割合というルールですと、例えば、先ほど申し上げた費用というのがこの割合を超えるのかどうかが分からない場合があります。そういう意味で、もし(3)の中で入れるのであれば、先ほどの話ではないですけれども、額と割合との両方のうちの大きい額とする等のメカニズムを設ける必要があります。割合で計算したのだけれども破産手続[H3]の費用が出ませんというようなゆゆしき事態を避けたいという思いがあります。そういう意味では、別枠でそれは取っておいて、その代わり、カーブアウト分は考慮しないで決めるという考え方もあるので、ここは両方の考え方があると思っております。いずれにせよ最低限の費用の額の確保がないと破産手続が履行できませんので、ここは非常に大事であると思います。   それから、先ほど少しどなたかコメントのあった、換価が終わったので管財人の業務は余りないのではないかというお話もあったのですが、原則はおっしゃるとおりだと思います。ただ、一方で、例えば一般の民事訴訟が係属している場合とか、若しくは一般破産債権についての債権確定訴訟が行われている場合には資産換価だけではない管財人業務というのもあり得るので、これも考えると、やはり管財人の費用というのはどのぐらい掛かるかというのは、実際に破産手続[H4]の経験の豊富な破産裁判所でないと分からないと思います。担保権の実行手続[H5]を遂行する裁判所も大体破産手続を想定することはできますので、繰り返しですが、カーブアウトは担保権の換価額の一定割合だけで語れるものではないのかなと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。その点も踏まえまして、具体的な手続については、まあ余りないでしょうというだけではなくて、ある場合も含めて、どういうふうな処理をするのかということを御検討いただければと思います。   井上さん、すみません、お待たせいたしました。お願いいたします。 ○井上委員 ありがとうございます。井上です。幾つかあるのですが、一つ目は(2)のところの「実行手続の公正な実施に必要があるもの」という文言が、基準としてうまく機能するのかを少し疑問に思っていたのですが、先ほどの御説明で、従来の議論の範囲を変えるものではないということですので、そうであれば異論はないです。ただ、27ページの本文では、「少額の」とか「著しい」という限定は要らないだろうという御説明だったので、そうであれば、単純に、元の更生法の条文に即していえば、「債権等を早期に弁済しなければ債務者の事業の継続に支障を来すとき」という言い方でよいのかな、「支障を来す」というのが狭すぎるというのであれば、「必要なとき」という書き方もあるのかなと思いましたので、それについては御検討いただければと思います。   次に、「イメージについて」という図で御質問させていただく方が分かりやすいと思うのですけれども、この図の実行開始のところのAに、随時弁済がなされるものが挙げられていて、この(ⅱ)に「源泉徴収所得税等」と書かれています。その一方で、租税については、先ほどの資料20ページ辺りの御説明で、配当債権の中に「租税等の請求権」があり、法定納期限等と対抗要件具備の前後によって担保権との優劣を決するということだったので、そういった滞納法人税など租税一般については、この図でいうとCに入り、法定納期限等の先後により事業成長担保権より優先するものは、このCの1の更に上に行き、後順位担保にも劣後するものについてはCの3の下に行くというイメージで理解していたのですけれども、そうすると、Aの(ⅱ)に入る「源泉徴収所得税等」というのは、租税といっても源泉徴収所得税と預かり消費税ぐらいではないかと思ったのですが、そういう理解でよいかを確認させてください。   そうだとすると、この図でいうとAに入っている、裁判所の許可により共益の費用とみなされる一般債権、典型的には商取引債権等が随時弁済されますので、先ほどの私の理解が正しいとすれば、Cに行くべき一般的な租税滞納分よりも先立って商取引債権等が支払われる結果になると理解しましたけれども、それは、説明としては、そういった支払[H6]は共益的な要素、すなわち事業成長担保の代わり金を最大化するといいますか、労働者の給料等とともに、事業の価値を維持するために必要なので、そういう意味でAのところで払われる性格を持つのだと説明されるのかと思いましたが、そういった理解をすればいいのかを確認したいというのが2点目です。   3点目は、「一定割合」というところなのですけれども、今のように理解するとすれば、1点目の「公正な実施に必要があるもの」という文言にも関わるのですが、かなりの範囲で比較的広く事業に必要な支出がこの図のAのところでなされるので、それを前提としますと、ここでいう「一定割合」はごく限定的なものでよいと考えます。ここの「一定割合」によって一体誰が救われるかというと、結局のところ最後の最後まで、この図でいえば手続が終結した時点で残っていて、多くの場合は破産手続を通じて支払われるすべての債権者ということになります。そういった債権者に「一定割合」が按分で弁済されるという仕組みになるのだと思いますが、そうすると、そこでいう債権者の中には、労働債権者のみならず様々な債権者、例えば担保権では貸金を回収し切れなかった金融債権者等も広く含まれることになるので、ここの「一定割合」の支払[H7]を増やすことによって、特定の属性を持った、例えば労働債権その他の無担保債権者を十分に救済するのは非常に難しいと思いますし、それでもなお十分な救済を達成しようと思うと、担保権としての機能が大きく損なわれるような割合を指定せざるを得ない感じもしまして、そういう意味では、保護すべき一般債権者の保護は何らか別のところで図る方が望ましく、ここの「一定割合」を増やすことによって何らかの政策目的を達成するのは非常に難しいという印象を持っております。   それと、もう一つ申し上げるとすると、現行法上は、集合動産・集合債権譲渡担保も含めて、一般的に担保の実行代わり金について、こういったカーブアウト的なものはないわけです。先ほどの部会長の御発言にもありましたが、今後こういう比較的対象範囲が広い担保の設計をするときに、どの程度実行後に残される財産を確保するのかというのは大きな政策課題だと思うのですけれども、そこを大きくすることによって得られるメリットとデメリットという観点も併せて考える必要があるように思いました。   その観点で、事業成長担保のカーブアウトだけを議論するというのも、これまた恐らくバランスがよくなくて、仮にですけれども、そこで十分な割合を確保すると、むしろ事業成長担保が「使われない担保」になることを招くだけに終わってしまうので、一定の割合を確保するというのが仮に本当に必要な政策判断だとすれば、動産債権担保の方も併せてバランスよく設計する必要があると思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。質問が含まれるような、御意見と微妙なところがありましたけれども、事務局の方で今の御発言について何かございましたら、お願いいたします。 ○笹井幹事 法制審では、総財産を目的とし、実行においては一定の一般債権を共益債権として随時弁済することができ、換価価値の一部分を一般債権者の取り分として取り置いておくという、大きな枠でいいますとそういう担保権ですけれども、そういう制度設計の可否について議論していただくのが主眼であり、割合については、ここで何パーセントにするかを議論していただくことを目的にしていたわけではありませんけれども、ただ、今御指摘がありましたように、元々共益債権として随時弁済していくということは、一定の支払をしていかないと事業自体が継続できなくなってしまうので、そういう意味で、事業の価値を維持していくという目的のためにこのような随時弁済の仕組みが設けられているという面はあるのですけれども、それだけではなくて、いわゆるカーブアウトとあいまって、一般債権者に対する弁済の可能性というのを大きく残しておくというところもあろうかと思います。それは、従来から全体について総財産を担保の目的とするということに伴う弊害をどのように緩和していくかについての一つの解決策として、このAの共益随時弁済とカーブアウトがあいまって解決に資するものであるということからすると、これは先ほど大澤委員に対してお答えしましたけれども、臨時弁済をかなり幅広く認めているということとの相関関係の中で、カーブアウトの割合が決まってくるという面はあるのかなとは思っております。 ○髙倉関係官 御質問いただいたうちの別紙記載のAの(2)に含まれる源泉所得税とCとの関係なのですけれども、会社更生法でも預かり金の性質を持つような租税については別途の取扱いがされていて、そこは元々会社の資産ではないようなものも含まれるので、そのような性質の租税については共益債権として、このAの(2)の方で優先的に弁済するというところで、法定納期限等との先後で決する一般の租税債権とは異なる規律をさせていただいているところでございます。   もう一つ、裁判所の許可による優先弁済について、先ほど御意見を賜りましたとおり、事業を継続して換価価値を最大化することにより債権者を含む全体に対して共益性を有すると考えられますので、会社更生法の中の少額債権の許可弁済等と同様に、その部分については優先的に弁済するということが合理化できるのではないかと考えています。 ○道垣内部会長 よろしゅうございますか。   ほかに5のところで御意見はございますか。   仕組みとしてはこういう仕組みなのだろうということなのですが、細かく見ていきますといろいろ考えるべき点があるというのと、労働債権等を優先するというときの仕組みとして、一部カーブアウトするというだけで実質的に実現できるのかという問題は、大澤さんからも御指摘がありましたし、先ほど井上さんからも御指摘がありましたので、更に御検討いただければと存じます。   ほかにないようでしたら、今までは前回の資料だったのですが、本日の資料に入れればと存じます。部会資料41でございます。第1の「1 優先担保権(事業成長担保権に優先する担保権)の取扱い」というところから議論を始めたいと思います。事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○髙倉関係官 第1の1は、「優先担保権の取扱い」についての規律でございます。   本文(1)は、優先担保権の消滅許可制度の導入について問題提起するものでございます。事業の継続に不可欠な財産に優先担保権が設定されている場合に、当該担保権が実行されると、当該財産を一体として事業譲渡をすることができず、事業を解体せざるを得なくなって社会経済的な損失が生ずる上、換価価値も継続企業価値から大きく減少し、総債権者の利益を害するおそれがあると考えられます。他方で、担保割れが生じているにもかかわらず、優先担保権者が事業の継続に不可欠な財産に対する担保権実行を交渉材料として被担保債権全額の弁済を要求することを認めると、債権者間での実質的公平の観点からも問題が生じると考えられます。   そこで、本文(1)では、民事再生法第148条、会社更生法第104条を参照し、担保目的財産につき優先担保権が存する場合において、当該財産が設定者の事業の継続に欠くことができないものであるときは、裁判所の許可を得て、当該担保目的物の価額を管財人が納付することを条件に優先担保権を消滅させるという制度の導入について問題提起をしております。   このような制度は、担保権の不可分性の例外であり、民事再生法及び会社更生法の規定は、倒産手続が開始され債権者平等が強く要求される場面で問題になることから、その時点で担保権者が把握している担保価値を超える部分についての優先弁済権を制約することは正当化しやすいと考えられるのに対し、事業成長担保権の実行手続や倒産手続開始要件の存在を前提としないため、本文(1)の要件の下、優先担保権者の意に反してその優先担保権を消滅させることは許容されないとも考え得るところです。以上を踏まえ、事業成長担保権の実行手続において、事業継続のために不可欠な財産を維持し、事業継続を可能にするという政策目的によって優先担保権を制約することについて、どのように考えるか、御審議をお願いできればと存じます。   本文(2)について、設定者の財産に優先担保権が設定されている場合で、当該担保権の目的財産に余剰価値がある場合には、その余剰価値分は、包括執行手続である事業成長担保権の実行手続において配当原資とすべきものですが、優先担保権者が担保権実行により被担保債権全額の満足を受けられるにもかかわらず当該担保権を実行しない場合には、余剰価値分を配当金に加えることができないと考えられます。そこで、優先担保権の実行により剰余が生じる場合には、管財人が優先担保権者に代わって優先担保権を実行し、財産を強制換価することを可能とするため、本文(2)では、優先担保権者が優先担保権によって担保される債権全額の満足を受けられることが明らかである場合に限り、管財人が当該優先担保権者に代わって優先担保権を実行し、財産を換価できるものとすることを御提案しております。   本文(3)について、流質契約など当事者間の契約により優先担保権の目的財産の処分方法を定めることが可能な担保権が存在しますが、このような優先担保権についても、本文(2)の場合と同様に、優先担保権者が担保権実行により被担保債権全額の満足を受けられるにもかかわらず当該担保権を実行しない場合には、余剰価値分を配当金に加えることができないという問題が生じます。そこで、破産法第185条を参照し、本文(3)では、優先担保権者が法律に定められた方法によらないで優先担保権の目的である財産の処分をする権利を有する場合において、その処分により当該優先担保権の被担保債権の全部の弁済を受けることが明らかである場合に限り、裁判所は、管財人の申立てにより、優先担保権者がその処分をすべき期間を定めることができるものとすることを御提案しております。   以上について御審議をお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと存じます。 ○阿部幹事 第1の1(1)の優先担保権の消滅許可制度について御意見を申し上げたいと思いました。この資料で指摘されておりますように、優先担保権の実行によってその事業の継続が困難になるという事態は望ましくないと思われますので、優先担保権者に実行権を認めつつ、その実行による事業の解体を防ぐような措置を何か講ずるということについては、望ましいことなのではないかと思いました。担保権の不可分性の例外となるということも書かれていましたけれども、立法によって例外を認めること自体はよく行われていることであって、そのこと自体はさほど問題とするほどのことではないかなと思いました。   ただ、資料の2ページの26行目以下に、「担保割れが生じているにもかかわらず、優先担保権者が事業の継続に不可欠な財産に対する担保権実行を交渉材料として、被担保債権全額の弁済を要求することを認めると、債権者間での実質的公平の観点からも問題が生じる」と書かれておりまして、倒産局面に入っていれば、この債権者間の実質的公平というのは言いやすいような気がするのですが、一応倒産手続に類似しているとはいえ、事業担保権の実行の局面ではまだ、被担保債権全額の弁済を要求することがそこまで不当かと言われると、そうともいえないような気もしました。ですので、倒産のときの民事再生の担保権消滅許可制度などと比較したような場合に、同じような条件で担保権を消滅させてよいのかということは、やや考えておく必要があることかなと思いました。   ほかに何か、優先担保権者の利益を守りながら事業継続を維持するというような方法はないかと少し考えたのですけれども、簡単に考えた中では、例えば、優先担保権者が担保権実行して、第三者に売却されてということが起こると、多分事業の継続が困難になりますので、優先担保権者が担保権者を実行したときに、例えば管財人が適正価格で買い受けることができるというような先買権のような制度も考えられるのではないかと思いました。   この優先担保権の消滅許可制度というのは、要するに別除権協定類似の合意に優先担保権者をいざなうような実質を有すると思うのですけれども、そういう意味では、今言ったようなものであっても、実行したらこうなるというのがある程度見えると、それを基準として多少色を付けることによって優先担保権者を合意にいざなうということはできるような気がします。ただ、今申し上げた考え方も少し問題がないではなくて、例えば優先担保権者が実行しなければ、この資料によれば、優先担保権は事業の譲受人、買受人の引受けということになりますので、そうすると、優先担保権者が担保権を実行しなければ、言わば時限爆弾化してしまって、それで事業の譲受人を探すのに困難を生ずるとか、そういった問題が生じないかといった問題はあり得るかなと思いました。ですので、優先担保権者の利益の保護と事業の継続の見合いで考えていく必要があるかなと思いました。   今のが第1点なのですけれども、もう1点は、これは事業成長担保権が実行局面に入って管財人が選ばれた後で、この優先担保権の消滅許可制度ということになっていますけれども、事業担保権設定後、その事業担保権の実行前だと、優先担保権の実行はもう阻止できないということになるのだろうか、それによって事業の継続が困難ということになってしまうのかというのが少し気になりました。考え方としては、そういう場合には債務者が実行を阻止すべきであって、債務者に手元資金がないなどでそれができない場合には、事業成長担保権者は設定者の下での事業継続を諦めて、事業成長担保権を実行して、管財人を選任して、管財人に止めさせると、そういう整理もあり得ないではないかなとは思ったのですが、なおそういう状況でも設定者の下で事業を継続させるべき場合があるのだとすると、何か事業担保権の実行前の優先担保権の実行阻止制度みたいなものもあってもいいかなと少し思ったという次第です。こちらに関しては具体的にどう制度設計すればいいのかというところまで考えは至っていないのですけれども、問題提起として申し上げたいと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。そうですね。アイデアみたいなところもございますので、大西さんからまずお話を伺った後に、また併せて検討したいと思います。 ○大西委員 私もこの優先担保権の消滅をさせる制度というのは賛成です。実際、管財人がこの対象事業を譲渡する場合に、優先担保権の合意による消除が見込めないと、譲渡自体もなかなか難しい場面も多いと思われますので、これはむしろ必須の制度であると思います。   一方で、いろいろ阿部先生からの御指摘もあるように、優先担保権者からすれば、一番先に担保権の設定をうけており、その後に事業成長担保権が設定されているわけですから、自ら関わり知らぬところでこういうふうに強制的に消除されるのはどうかというような議論もあろうかと思います。しかしながら、今回、事業成長担保権の実行局面というのは、基本的には全部の事業が対象なので、ほぼ破産手続類似の状況にあることが想定されていますので、実際そういう状況になれば、優先担保権者も担保実行するしかないわけですから、その担保実行する価額の範囲でしか弁済を受けられないという点は、優先担保権者にとって特段の不利益はないと思います。   ポイントとなるのは、その場合の価格です。事業譲渡の場合、必ずしも個々の不動産の価格を明示して譲渡するというよりは、全体のキャッシュフローとかで事業価値全体を評価して行う場合もあります。その場合、個々の財産をビットによって譲渡した場合の価格と、事業成長担保権の行使によってまるっと事業譲渡した中の個別資産の価値、この場合、鑑定評価等で算定することになるかと思いますが、との対比において、優先担保権者と事業成長担保権者とのせめぎ合いがあると思います。これは所定の価格査定の手続の中で解決するしかないのですが、いずれにせよこの手続の必要性と合理性はあると思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○山本委員 私は今の阿部幹事、それから大西委員の意見とは少し違います。確かに事業価値の一体性を保って譲渡する必要があると、この換価、実行の局面を捉えると、それはそういうことだと思いますし、そこに一定の合理性があるということは、私もそうだと思います。   ただ、問題は私は設定のところなのではないかと思うのですけれども、つまり、優先する担保権があるということは当然、事業成長担保権者は設定するときに分かるわけで、そして、恐らくそれが事業の継続に必要不可欠な財産だということも認識して設定しているのだろうと思うのです。普通に考えれば、恐らくはそこで被担保債権を全額弁済をして、言わば乗り換えて、債務者側から見れば債務を借り換えて、事業成長担保権を設定するという行動をとるのが普通なのではないかと思うのです。それにもかかわらず、そういう行動をとらなくて、優先担保権をそのまま、しかも事業に不可欠な財産の上に残して担保権を設定しているという前提だとすれば、私はその担保権者をそれほど保護する必要があるのかなということが疑問です。   もちろん被担保債権全額を弁済すれば担保は消せるわけなので、目的物だけ弁済すれば消せるというのは、阿部さんが言われたように、確かに担保権の不可分性とか実行時期の選択権というのが金科玉条ではなくて、それは政策的要請によって限定されるものであるということは私も同意しますけれども、この局面において、それほど事業成長担保権者を保護しないと困るのだろうかというのが私の率直な疑問で、この言わば例外的な、(2)のところでは、むしろ実行時期選択権を尊重するという形になって、無剰余の規律をそのまま妥当させるという破産法のようなものは置かないということになっていて、少し私は、ここでそこまでやる必要はあるのだろうかという疑問を持っていますけれども、それほど強く絶対駄目だというつもりまではないので、疑問を呈しておきたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○大西委員 すみません、山本先生に反論するのも僣越なのですが、要するに、通常の事業成長担保権の設定の場合は、おっしゃるとおり優先担保権の被担保債権もリファイすべきだと思います。ただ、この事業成長担保権というのはいろいろな局面で設定が想定されます。例えば、私的整理局面でプレDIPファイナンスを実施するときにABLで集合物動産譲渡担保権の設定を行う場合、優先担保権というのは余りないのかもしれないけれども、仮に優先担保権があった場合には、ほかの債権も肩代わりした上でプレDIPファイナンスを行うことはあまり想定できません。事業成長担保権も、そういう再生局面においても使われる可能性も想定され、そのような場合には、プレDIPファイナンスを実施する金融機関が、この元からあった優先担保権の被担保債権を肩代わりして全部弁済するというのは、与信判断上恐らく困難と思われる場面も少なくないと考えています。私が想定しているのは、こういうケースです。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。非常に面白い意見の対立なのですが、御意見はほかにございませんでしょうか。   危ないときの事業譲渡とかで話を整理して行うといったときの使い方というか、それも十分にあるというのはそのとおりなのですが、山本さんに言わせれば、そういうふうに整理したいのだったら払えよという感じも、すぐに反論としては出てきそうな感じもしますけれども、払わないで、これを使えば価格の弁済だけできれいに整理できるという制度がなぜ正当化されるのかというと、どうなのかという反論はもちろんできると思いますが、いかがでしょうか。ほかに御意見はございませんか。 ○大澤委員 大澤でございます。ありがとうございます。この優先する担保権をリファイしないで入った事業成長担保権を保護する必要があるかと言われると、確かに御指摘のとおりとは思います。ただ、一方でこの事業成長担保権の実行という場面に立ったときには、事業成長担保権の保護というよりは、その事業そのものが解体せずに一体として譲渡されるということが大事だろうと考えておりまして、何でリファイしなかったのだという話はさて置いたとして、実行されるときに当たって、その事業をきちんと一体として利害関係人がなるべく毀損されない形で譲渡を受けるスポンサーを探してくるといったときに、そのスポンサーが、優先担保権が付いたままでというような形で入ってくる場面というのはなかなか厳しいかなとも少し思っておりまして、そういった意味で、必ず優先担保権を消滅させる申立てができるわけではなくて、事業の継続に欠くことができない事業継続という観点で、なお消滅できる場面を限定的に置くということであれば、事業成長担保権の保護という観点よりも事業の継続という観点で、なお必要な制度かなと感じました。少し考え方が違うのかもしれませんが、実務的にはあってもよい制度かなと感じた次第です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。事業の継続に欠くことのできない重要な財産だから、高く売れる財産として先に個別担保取得したのですよね。それを、事業の継続に必要な財産なのだから我慢しろよと言われたら、そんなの最初から知っていたよと、だから取ったのだと言いたくなりますよね。利害関係人のみんなの利益をというのだけれども、それは優先担保権者も利害関係人だろうという感じがしますから、幾らでも反論はできるのですが、そんなことは分かった上で大澤さんも発言されているのでしょうから、余り言うのもあれですけれども。両方あり得るということで、それを検討しながら、何かもう1個要件を付け加えるかどうかという話は、担保権者の利益を害さないとかというのはあるのかもしれませんけれども、御検討いただければと思いますが、ほかに。   対立軸ははっきりしておりますが、結論が出るような問題ではないと思います。よろしゅうございますか。更に御検討いただくということにさせていただければと思います。それでは、更に第1の「2 事業成長担保権の実行手続の停止・取消し及び取下げ」というところに入りたいと思います。ここについて事務当局から説明をお願いいたします。 ○髙倉関係官 第1の2は、「事業成長担保権の実行手続の停止・取消し及び取下げ」についての規律でございます。   本文(1)について、民事執行法に基づく不動産担保権実行手続は、所定の文書の提出によって開始し、これに対し執行障害事由が存在することを証する書面等が提出された場合には、手続を停止・取消しすることとしております。これを踏まえ、事業成長担保権の実行手続も、事業成長担保権に係る登記事項証明書の提出によって開始することとし、本文(1)では、執行障害事由が存在することを証する書面が提出された場合には、手続を停止・取消しすることを御提案しております。具体的な規定内容としては、執行停止文書については民事執行法第183条第1項第6号及び第7号を参照して、執行取消文書については同項第1号から第5号まで及び第2項を参照した内容を御提案しております。   その一方で、実行手続が相当進行した後に執行取消文書が提出された場合に手続が取り消されると、利害関係人に著しい損害を及ぼす場合もあり得るため、一律に取り消すのではなく、例外的に取り消すことを要しない場合がある旨の規定を設けるべきとの考え方がございますため、注記にてお示ししております。   本文(2)は、執行停止文書の提出により実行手続が停止された場合の効果についての規律でございます。事業成長担保権の実行手続において執行停止文書が提出された場合の一般的効果は民事執行手続の場合と異ならないものと考えられ、原則として、実行手続の一環をなす管財人の管理処分権による処分も制約を受けると考えられます。もっとも、管財人が管理処分権を一切行使できないとすれば、誰も実際に財産の管理をすることができないという事態が生じることになり、これは不当であることから、実行手続が停止された場合であっても担保目的財産の管理処分権の行使を一定範囲で可能とする必要がございます。   これを実現する方法としては、執行停止文書の提出に伴う管財人の管理処分権の帰すうについて、①管財人は管理処分権を喪失せず、一定範囲で財産の管理処分権の行使を認めるという設計と、②管財人は管理処分権を喪失し、管理処分権が設定者に復帰するという設計が考えられますが、事業成長担保権の実行手続と同様に一定期間の継続性が前提となる担保不動産収益執行においても、処分の効果を取り消さず手続を凍結するにとどまる停止の性質を踏まえて、前者の考え方が採られていることからすれば、管財人が権限を失わないと考えるのは一定の合理性を有することや、仮に停止文書の提出に伴い管財人から設定者への管理処分権の移転を生じるとすると、一時的な手続凍結に伴い、当該移転に関する通知・公告や登記、訴訟の受継等が必要となり、短期間にこれらが繰り返されることによって、手続が複雑になり手続費用の増加や法律関係の混乱を招きかねないことからすれば、事業成長担保権の実行手続が停止された場合については、前者の考え方によるのが適切であると考えられます。   そこで、本文(2)では、執行停止文書の提出により事業成長担保権の実行手続が停止された場合であっても、管財人は、担保目的財産の管理及び処分をする権利を喪失しないものの、管財人は、設定者の常務に属する行為及び裁判所の許可を得た行為に限りすることができるものとしております。   本文(3)は、実行手続開始の申立ての取下げの制限についての規律でございます。事業成長担保権の実行手続は担保権の実行手続であることから、取下げ可能であることを出発点とすべきと考えられますが、事業成長担保権の実行手続の開始によって、倒産手続と同様に設定者が管理処分権を喪失し、債権の個別行使が禁止され、債権者による強制執行等の手続が失効する等の効力が生じるため、必要な範囲で制度の濫用的利用を防止する仕組みを設ける必要があると考えられます。   その具体的な方法としては、取下げを禁じることのほか、裁判所の許可を取下げの要件とすることが考えられますが、事業成長担保権の実行手続は事業成長担保権者の処分権を基礎とする手続であることから、実行手続開始の決定後の取下げを一律に禁止するのは行きすぎであり、裁判所の許可を取下げの要件とすることが適当と考えられます。そこで、本文(3)では、実行手続開始の申立てをした者が実行手続開始の決定後に当該申立てを取り下げるには、裁判所の許可を得なければならないこととしております。   以上について御審議をお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等をお願いいたします。   こんなものではないかという感じですか。執行停止文書が提出されて、まあそうか。よろしゅうございますか、本当に。本当にというのは変ですけれども。   それでは、この点につきましてはさほど御異論がないということで、倒産法上の扱いの方に移りたいと思います。第2でございますが、7ページですが、「事業成長担保権の倒産法上の取扱い」というのがあります。1で全体像というのがあって、2で破産手続との調整、3で再生手続との調整とあるのですが、全部をまとめて扱いたいと思います。そこで、事務当局から資料の説明をお願いいたします。 ○髙倉関係官 第2の1では、事業成長担保権と倒産手続との関係について、全体像をお示ししております。   本文(1)では、各倒産手続における約定担保権の取扱いとの整合性の観点から、事業成長担保権を破産手続及び再生手続との関係では別除権として、更生手続では事業成長担保権の特定被担保債権を更生担保権として取り扱うことを御提案しております。   本文(2)について、事業成長担保権の実行手続が開始したとしても、その実行手続の終了後に破産手続による設定者の清算を予定する以上は、可能な限り、破産法秩序を妥当させることが適切と考えられることから、本文(2)①では、事業成長担保権の実行手続の開始により破産手続を全体として中止や失効させることはせず、破産手続と事業成長担保権の実行手続を並走させるものとしております。   続いて、再生手続との関係について、総財産の強制換価、配当を行う事業成長担保権の実行手続と、再生計画案の可決・認可による再生手続のいずれもが完遂される事態は想定し難いと考えられ、仮に両手続が並行して進行するとすれば、事業の方針や財産の管理処分の方針を巡って実行手続の管財人と再生債務者又は監督委員の間に争いが生じ、設定者の事業の継続が困難になったり、事業価値が毀損されたりするおそれも否定することができないと考えられます。この点については、基本的には、別除権である事業成長担保権の実行手続を優先すべきと考えられますが、他方で、再生債務者が策定する再生計画案が、事業成長担保権の実行による場合と比較して、事業の再建に資し、総債権者の利益にもかなう見通しがある場合も考え得ることから、本文(2)②では、事業成長担保権の実行手続の開始後は、再生手続は原則として中止し、手続を続行できないものとし、その上で事業成長担保権の実行手続に対する対抗のために必要な手続や、再生手続の終了のために必要な行為等については、この例外として行うことができるものとしております。本文(2)③では、更生手続が開始された場合は、事業成長担保権の特定被担保債権は、ほかの担保権と同様に更生担保権として更生手続の中に取り込まれ、更生計画による権利変更、弁済等に服するという規律を御提案しております。この場合、事業成長担保権の実行手続と更生手続が並走する事態は生じないことになります。   第2の2は、「事業成長担保権の実行手続と破産手続の調整」に関する規律を御提案するものでございます。本文(1)について、事業成長担保権の実行手続が開始した場合には、担保目的財産の管理処分権は実行手続の管財人に専属する一方で、破産法第78条第1項は、破産手続開始の決定により、破産財団に属する財産の管理処分権は裁判所が選任した破産管財人に専属すると規定しています。そのため、両手続について開始決定がなされた場合には、実行手続の管財人の管理処分権と破産管財の管理処分権が競合し、その調整が必要と考えられます。事業成長担保権は別除権であり、その実行手続は破産手続に優先すると考えられることから、本文(1)では、実行手続の管財人の管理処分権が破産管財人の管理処分権に優先するものとしております。  本文(2)は、本文(1)を前提として、破産手続又は事業成長担保権の実行手続のいずれかが係属中にもう一方の手続が開始した場合の訴訟手続の取扱いに関して御提案するものでございます。すなわち、破産手続において破産管財人が当事者となっている訴訟手続が係属している段階で実行手続開始の決定がされた場合、これらの訴訟は一旦全て中断し、実行手続の管財人が受継することができるものとしております。他方、実行手続において管財人が当事者となっている訴訟手続が係属している段階で破産手続が開始した場合の訴訟の取扱いについて、破産法第44条第1項の規定にかかわらず、同項に規定する破産財団に関する訴訟手続は中断せず、実行手続の管財人において引き続き訴訟を継続するものとしております。   本文(3)は、否認権の取扱いについての規律でございます。実行手続の管財人において否認権を認めるかという問題につきまして、否認権は、倒産法が特別に認めた形成権であるところ、事業成長担保権の実行手続は飽くまでも担保権の実行手続であり、倒産手続ではなく、必ずしも設定者の支払能力が不足していることを前提とするものでもないことから、本文(3)前段では、事業成長担保権の実行手続の管財人には否認権を認めないものとしております。   続いて、破産管財人の否認権の行使について、事業成長担保権の実行手続と破産手続が同時に係属する場合においては、破産管財人が早期に否認権の行使に着手し、責任財産を回復することができるようにする必要性がある一方で、破産管財人による否認権の行使は、事業成長担保権の目的である総財産の価値にも影響するものであり、その実行手続の管財人も利害関係を有すると考えられます。そこで、本文(3)後段では、破産管財人が否認権を行使するためには、実行手続の管財人の同意を要するものとすることを御提案しております。   本文(4)は、双務契約の解除権に関する規律でございます。双方未履行の双務契約の解除権は、倒産状態にあることを前提として、破産管財人に与えられた特別な権能であることから、否認権と同様に、本文(4)前段では、事業成長担保権の実行手続の管財人には双方未履行の双務契約の解除権を認めないものとしております。続いて、事業成長担保権の実行手続と破産手続が同時に係属する場合において、破産管財人がその権限に基づき双方未履行の双務契約を解除することが、実行手続の管財人による事業譲渡の便宜になる場合もあると考えられる一方で、事業の継続に必要な契約を解除してしまうと、設定者の事業価値が毀損され、事業成長担保権の実行手続が阻害されるおそれがあることも否定できないと考えられます。そこで、否認権と同様に、破産管財人による双方未履行の双務契約の解除を実行手続における管財人の管理処分権の行使と抵触しない範囲に制限するため、破産管財人が双方未履行の双務契約につき解除権を行使するためには、実行手続の管財人の同意を要するものとすることを御提案しております。   本文(5)は、実行手続の管財人に、設定者について破産手続開始の申立てをする権限を与えるものでございます。破産手続開始の要件がある場合には、事業成長担保権の実行手続と破産手続とを連結する仕組みを設けることが合理的であると考えられます。実行手続の管財人は、設定者の事業を継続し、総財産を管理していることから、支払不能等の破産手続開始の原因があるか否かを適切に判断できると考えられることから、実行手続の管財人は、設定者につき破産手続開始の原因となる事実があるときは、当該設定者について破産手続開始の申立てをすることができるものとしております。   第2の3は、「事業成長担保権の実行手続と再生手続の調整」に関する規律を御提案するものでございます。本文(1)について、事業成長担保権が実行される可能性がある状況や、既に事業成長担保権が実行され、その手続が進行している状況においても、再生手続が開始することはあり得ると考えられます。この場合、事業成長担保権の実行手続と再生手続が同時に係属することになり、このような事態を一律に禁止すべきではないと考えられるものの、事業成長担保権の実行手続と再生手続は相容れないと考えられることから、両手続を並行して進行させるべきではないと考えられます。そこで、本文(1)では、事業成長担保権の実行手続の開始後は、再生手続は原則として中止し、手続を続行できないものとすることをお示ししております。   本文(2)は、本文(1)の例外として、事業成長担保権の実行手続開始の決定後も、再生手続において一定の手続を行うことを認めることを御提案するものでございます。事業成長担保権の実行手続の係属中に再生手続開始の決定をすることが可能であるとしても、実際に設定者が再生手続を通じて自主的な再建をするためには、事業成長担保権の実行手続の取消しを求める必要がございます。また、再生債務者としては、事業成長担保権者と別除権協定を締結した上で、それを前提とした再生計画案を作成することも考えられますが、別除権協定の締結に至るまでには相当程度の時間を要することも想定され、実行手続における換価が相当程度進行してしまった段階では、債務者による自主的な再建は困難となるおそれがあることから、事業成長担保権の実行手続の進行を停止する手段を認める必要もあると考えられます。   そこで、再生手続における担保権消滅許可に係る手続や、担保権実行手続中止命令に係る手続については、事業成長担保権の実行手続開始の決定に伴う再生手続の中止の例外とするものとしております。また、再生手続における再生計画案の作成や認可の見込みがなくなった場合には、速やかに再生手続を終了させることを可能とすべきと考えられることから、再生手続の終了のために必要な手続についても、再生手続の中止の例外とし、事業成長担保権の実行手続の進行中もその続行を許容するものとしております。   以上について御審議をお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、これらの点につきまして、どなたからでも御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いします。 ○山本委員 ありがとうございます。全体的には、今のというか我々の常識からすると、ややラジカルな規律がされている、先ほど部会長が少し、停止文書、取消し文書のところなどもそうなのではないかと思うのですが、ややラジカルな規律のところはあると思うのですが、ただ、規律の実質内容を考えてみると、それは合理性がある、そういう規律は不可能ではないというところが多いのかなという印象を全体としては持っております。   ただ、少し2点、申し上げたいところがありまして、一つは、この資料でいうと1のところで、太字の部分に直接は出ていないのですけれども、資料の8ページの一番最後の段落のところ、不特定被担保債権の会社更生手続における取扱いの部分であります。これまで出ているとおり、不特定被担保債権というのは実質的にはいわゆるカーブアウトで一般債権者に対する配当がされるべき部分ということなわけでありますが、これが会社更生が開始すると更生担保権としての資格を失って、言わば通常の一般更生債権、無担保更生債権に戻ってしまうということなのかなというふうにこの叙述を理解しました。   そうすると、担保権実行をする場合には、無担保の部分も一定程度、この不特定の被担保債権ということで担保扱いをされる一方、会社更生の中ではそれは一般更生債権としてしか扱われないという優先順位の変動が手続の選択によって生じることになるのではないかと思ったところです。それが果たして相当なのだろうかということ、結局、会社更生でも事業譲渡で更生するとすれば、事業成長担保権の実行と会社更生というのは同じ方向を向いた同じような結論になるにもかかわらず、その優先順位が違ってくるというのが実質的に合理的なのか、あるいはそれが、例えば劣後担保権者にとっては会社更生の方がメリットがあるということであるとすれば、その戦略的行動を誘発しないのかといったような疑問を持ったところです。   ただ、先ほども出てきたように、この不特定被担保債権というのがそれほど比率としては大きくないものであるということだとすると、それほど実質的には問題にする必要はないことなのかもしれません。ただ、理論的にそこで順位の逆転現象みたいなものが生じるというのはどうなのかなということを、やや違和感として持った次第です。   それから、もう1点が2(3)の否認権のところなのですけれども、基本的な規律内容はこれで相当かなと思うのですが、1点思ったのは、破産手続の管財人がこの事業成長担保権の設定そのものに対する否認権を行使したいと考えた場合に、どうなのだろうかということです。その場合にもなお事業成長担保権の実行手続の管財人、実行管財人の同意が必要であるということになると、実行管財人から見れば、言わば自分の権限を崩す、足元を崩すような行為に対して同意するかどうかということを求められるということになって、やや利益相反的な点もあるような感じがして、実行管財人がそれを拒否する場合には、偏頗行為であると破産管財人は考えるにもかかわらず、否認権の行使が認められないというのは実質的な規律として少しどうかなと、そういう場合には必ずしも実行管財人の同意がなくてもよいのではないかという気もするということです。   以上、コメントは2点です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。それぞれ大変鋭い指摘を含んでいると思いますが、何かこの時点で事務局からございますか。 ○笹井幹事 まず、9ページの2(3)の事業成長担保権それ自体についての否認権の行使に関しては、ここでは書いておりませんでしたけれども、実行手続の管財人の同意は不要とするという方向で考えられているものと理解しております。   それから、1点目の更生手続における順位の逆転が生ずるのではないかという御指摘については、少し考えてみたいと思いますけれども、いずれにしても更生担保権の評価に当たって、劣後する担保権者というのがいたときに、普通に実行すればそれは不特定被担保債権者の方に回ってしまって劣後担保権者の方に回らないという場合には、実質的には配当がゼロであるということを踏まえて更生担保権が評価されるのかなとも思っておりまして、その辺も含めてもう少し御指摘を踏まえて検討してみたいと思っております。 ○髙倉関係官 今の2点目につきまして、事務局としては、劣後担保権者が実質、実体上把握している範囲というのをどういうものかと考えたときに、不特定被担保債権について更生担保権に当たらないとしても、実体上、その部分について劣後担保権者が価値把握をしているわけではないのではないかと考えており、そうだとすれば、劣後担保権者の更生担保権の評価にあたっても、それを踏まえた評価ができるのではないかと考えておりました。ただ、それは理論的一貫性を欠くのかもしれないと思いますし、本日頂いた御指摘を踏まえて改めて考えさせていただきたいと思います。 ○道垣内部会長 山本さん、よろしゅうございますか。 ○山本委員 はい。 ○道垣内部会長 では、御検討いただければと思います。   ほかにございますか。 ○阪口幹事 阪口です。破産手続の併走にせよ、民事再生手続の部分的利用にせよ、裁判所が同じでないと厄介ではないかと思うので、管轄をどうするのでしょうか。特に、破産なり民事再生が先行していた場合には、そちらの管轄に持って行くのかとか、具体的な管轄に関してのイメージをお教えいただけたらと思います。よろしくお願いします。 ○髙倉関係官 今御指摘いただいたところは対応の必要があると考えておりまして、破産事件や再生事件を、実行手続が係属している裁判所の方に移送することができるというような規定を設けることができないかというようなところで検討を進めております。実務上の運用での対応に委ねるべき部分もあるのではないかと思われますので、引き続き規定内容を検討してまいりたいと考えております。 ○阪口幹事 阪口です。御存じのとおり、管財人というのは弁護士がなることがほとんどで、当然地元の弁護士がなっている。ただ、通常の破産管財人であれば問題ありませんけれども、事業成長担保権管財人となってくると、いろいろ難しい問題もあるだろうし、また裁判所の方の処理能力と言ったら失礼ですけれども、問題もあるので、そこら辺が実務上うまく回るように御検討いただけたらなと思います。   その関係でもう1点、質問させてください。この9ページでは、事業成長担保権管財人と破産管財人は同一人であることを一律に禁止する必要まではないと書かれていますけれども、私は、どちらかというと原則同一人になるイメージでした。これは法律の問題ではなくて実務上の運用の問題ですが、原則は同一人を想定しておられるのではないのかとも思うので、そこを少しお考えをお聞かせ願えたらと思います。 ○笹井幹事 もちろん最終的には成立後に裁判所において個別に御判断になるのだと思いますけれども、確かに結局目指しているところといいますか、総財産の管理処分権を得て、それを処分していくという点では方向性としては一致しておりますので、両者が一致しているのが望ましいケースが多いだろうと思います。そういう意味では、原則とまでいっていいのか分かりませんけれども、同じ方々、同じ人を両方の管財人に選任するということが実際上は多くなってくるのではないかとは思っております。   ただ、もしかすると事案によっては、担保権者との利害関係が必ずしも一致しないとか、そういった事案もあるかもしれませんので、そういったところは事案ごとかなと考えております。 ○道垣内部会長 あるかもというか、結構まずいのではないかと私個人的には思いますけれども。 ○大西委員 9ページの第2の2(2)の訴訟手続の受継のところについてですが、事業成長担保権では、いわゆる担保権者と、それから共益債権で払う取引先とかいろいろあるのですが、そうではない例えば不法行為の債権者との関係で訴訟が係属している場合に、事業成長担保権の管財人が受継すると考えることは妥当なのか、という議論があります。一般破産債権者に対する配当を行う破産管財人が当然対応するのが妥当とされるような訴訟も含めて、事業成長担保権の管財人がこの受継することができると記載されていますが、実際は、事業成長担保権の管財人が全て受継することを想定しているのでしょうか。この箇所に、全て訴訟手続は中断しと書かれているので、この点をお伺いします。 ○笹井幹事 こちらは、総財産の管理処分権が実行手続の管財人に帰属するということの帰結としての受継ですので、基本的に今御指摘のあった不法行為債権等も含めて、全てこの実行手続の管財人が受継するということになると考えております。受継することができるというのは、今でも破産法の44条2項が、受け継ぐことができるという文言になっておりますので、それを踏まえたものと理解をしております。 ○大西委員 要は、破産管財人が配当すべき破産債権者に関する訴訟も、事業成長譲渡担保権の管財人がやるということなのでしょうか。 ○笹井幹事 そうですね、配当外債権についての御指摘だと思いますけれども、配当外債権を訴訟物とする訴訟についても同じであるということです。 ○大西委員 なるほど。何となく2(1)でアとイで、破産手続とこれを併走するということから考えると、ここは、その管財人の職務の性質によって、受継する訴訟が分かれるのかなと単純に思っていました。事業成長担保権の管財人がやるということですか、全ての訴訟を。 ○笹井幹事 そうですね、そういう意味では、「競合するときは」とありますけれども、全ての財産についての債務も含めて管理処分権が実行管財人の方に専属するということになりますので、(3)とか(4)の否認権の行使ですとか、双務契約の解除権の行使ですとか、そういったところだけ例外的に破産管財人に帰属することになります。そういう意味では、併走するといいましても、実質的には破産管財人のできる行為というのはかなり限定されてくるということかと思います。 ○大西委員 いや、私は、そのような議論が本当に合理的なのかどうかよく分かりません。2(1)のアというものとイというものの二つが併走する以上、イの職務に当たるものについてはイの管財人がやるという考えもあるのではないかと思いました。ごめんなさい、単なるコメントでございます。 ○道垣内部会長 何かやはり、訴訟を遂行するときの目標というか行為基準が、所詮事業担保権者に行く財産であると見るのか、それの外で破産財団を増殖させる意味があるというふうになるのか、大分は立場が違うような気がするのだけれども。よく分からないですが。 ○倉部委員 ありがとうございます。まだ少し考えているところではあるのですけれども、否認権のところなのですが、先ほど山本先生からも否認権のところで、実行手続上の管財人と破産手続上の管財人と利益相反的なシチュエーションがあるのではないかというお話がありましたけれども、そもそもそういう限定的な場面に限らず、実行手続の管財人に倒産法固有の否認権を与えることは正当化できないので、否認権は認められないというところでスタートしていながら、実際に破産管財人が否認権を行使するときに、否認権行使の権限を付与することが適切でない者の同意を得て破産管財人が否認権行使をできるかどうかという、実行手続上の管財人に判断を仰ぐということが、何だか少し違和感がありまして、それは財産管理処分権を部分的に破産管財人分に付与するための前提として必要という趣旨なのかなと理解しているのですけれども、そのときに、民事再生法の56条2項を参考にされていると書かれているわけですが、民事再生法の場合、監督委員には財産管理処分権はないわけですけれども、否認権の行使が必要であるということになれば、裁判所から権限の付与を受けていて、というのが前提であると思いますので、否認権行使の権限がない者に同意を仰ぐというのと、少し参照するにはレベルの違う話をしているような気がしてしまって、果たして、もろもろ考慮しなくてはいけないことがあるということは分かるのですけれども、というのは、破産管財人が否認権行使をすると実行手続に影響があるので、実行手続上の管財人にも様々考慮するところがあれば、その判断を仰ぎたいという前提は分かるのですけれども、この否認権限という強力な権限の行使を、そもそも権限の付与が前提として認められにくい執行手続上の管財人に同意を仰ぐというこの構成が、何となく違和感があります。   かといって、ではどうしたらいいのか、誰に何を求めたら適切なのかというところまで少し今、考えが及んでいないので、少し発言をしようか迷ったところではあるのですけれども、そういう違和感を持っているのは私だけなのかもしれませんが、一応感じたところですので、意見を申し上げました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。今の点、事務局から何かお考えはございますか。 ○笹井幹事 再生法56条2項を参照しましたけれども、理論的に全く同じケースというわけではありませんので、この規定が参照に値するのかどうかについては、評価が分かれるところかもしれません。ただ、御指摘は、否認権の行使をするのに値しない者の同意を得る、判断を仰ぐというのはおかしいのではないかということなのですけれども、破産管財人は本来的には否認権を行使するか、行使しないかの判断に適した人ですので、まずは破産管財人においてその判断が行われる。ただ、その否認権を行使するという判断が、総財産の在り方でありますとか、今後の実行手続を誰にどういうふうに進めていくのか、その際に事業全体をどういうふうに進めていくのかということにも影響するので、そういう意味での同意権を実行手続の管財人に与えたということです。本来否認権を行使するか行使しないかを判断するのに適しない人が、行使するか行使しないかを判断しているというわけではないのかなとは理解をしております。 ○道垣内部会長 本当にそうなのかなという感じで倉部さんが笑っていますけれども、倉部さん、何かありますか。 ○倉部委員 確かにおっしゃるとおり、破産法上の管財人はそもそも否認権限があるという前提でお話が進んでいますので、そういう意味では民事再生法上の監督委員とは前提がそもそも違うというところは、確かに理解ができましたけれども、そうすると、例えば同意をしないということも場合としてはあり得るわけですよね。そのときに、仮の話になってしまいますけれども、否認権限を行使しておくべきだったではないかということになった場合、善管注意義務違反だ、みたいなシチュエーションになった場合には、実行手続上の管財人の善管注意義務違反が問われるということになるわけですよね。 ○笹井幹事 管財人としてはなすべきことをしたといいますか、否認権を行使すべきであると判断して同意を求めたけれども、結果的に同意が得られない以上、法律上行使することができないので、それを行使できませんでしたということですから、少なくとも破産管財人おいて善管注意義務違反を問われるということはないのだろうと思います。 ○倉部委員 分かりました。ありがとうございます。 ○道垣内部会長 何か会話がかみ合っていないな、という感じがします。倉部さんは破産管財人が責任を問われるかというのではなくて、事業成長担保権の実行の管財人が責任を問われるのかというところが質問のポイントだったのだけれども、破産管財人はおりませんよねと言われても、話がかみ合っていないような気がするのだけれども。 ○笹井幹事 事業成長担保権の実行手続の管財人は、同意をするかしないかの判断に当たって善管注意義務を負っているわけですので、その同意をしなかったということが善管注意義務違反になる可能性というのはもちろんあり得ると思います。 ○阪口幹事 破産管財人も、事業成長担保権管財人も裁判所の監督下にあると思います。先ほど申し上げたとおり、同じ裁判所だったら結局そこで裁判所の判断を仰ぐということになるだけではないのですか。そこでもし二つの裁判所だったら、意見が分かれてややこしくなるとは思いますけれども、同じ裁判所でやるのだったら、それがもしかして部が違うとかになると、ややこしいかもしれませんけれども、僕の理解だと、基本的に同じ部で担当され、同じ裁判官が、同じかどうか分かりませんけれども、合議体か何かで判断いただいて、そこで決着が付くから、実務的にはそんな問題は起きないのかなとは思ってはいるのですけれども。 ○道垣内部会長 なお具体的なそのプロセスも含めて、御検討いただければと思いますが、ほかに何かございませんでしょうか。 ○井上委員 井上です。ありがとうございます。三つほどあるのですけれども、一つ目は、先ほど山本委員の御発言を受けて改めて少し思い付いたといいますか、どう考えるのだろうと気になったのですけれども、8ページの資料には、確かに不特定被担保債権は「次のとおり、更生担保権として取り扱うこととはしない」と書かれています。ただ、それが果たして更生債権と取り扱うことになるのかということなのですけれども、部会資料39の2ページに不特定被担保債権者とは何かが書かれていますが、一般債権者等ということですけれども、飽くまでも清算開始事由に該当し又は破産手続開始の決定を受けた設定者に対する財産上の請求権を有する者ということなので、清算開始あるいは破産手続開始時に具体的に立ち現れる債権者のことと思うのですけれども、そうだとすると、私がきちんと理解できていないだけかもしれませんが、セキュリティートラストを設定するときに、不特定被担保債権者も受益者として設定されるわけですが、その時点では将来の受益者ということで、存在していないことになります。潜在的には、例えば今急に破産手続が開始されれば、そのときに一般債権者であるという意味では潜在的には存在するわけですけれども、破産手続が開始されるまでは具体的には立ち現れていないとすると、今回の資料に戻って、8ページの「不特定被担保債権については」という記述は、更生担保権として取り扱わないけれども、更生債権としても存在しているということではなくて、そのどちらでもないということもあり得るのかなと思ったのですけれども、その辺り、どこでこの不特定被担保債権が、倒産債権として現れるのかについての確認をしたいというのが1点目です。   2点目が、先ほどから議論になっている破産管財人による否認権の行使なのですけれども、これは否認権の行使が、事業成長担保権の実行が完了して、なお破産手続における配当手続がまだ残っている状況で、仮に、否認権を行使すると、それによって復活する財産は破産財団に戻るものの、もはや事業成長担保権の実行手続には乗っからないので、戻ったものが100%一般債権者等といいますか、不特定被担保債権者だった人に行くことになる一方で、実行手続が並行しているときに否認権を行使すると、部会資料39の末尾の図でいうと、配当手続に乗っかるので、主として事業成長担保権の特定被担保債権者に多くが分配され、それ以外の一般債権者等には、一定割合ということでしたけれども、一部が行くことになるとすると、破産管財人は否認をするタイミングをどうするかによって大きな違いが生じてしまう可能性があるのですが、管財人は特定の人ではなく、利害関係人全体に対して善管注意義務を負っているわけですから、大きく異なる結果になるような判断を求められるのはよくないのではないかという感じを持っています。   結論としては、これは元々事業成長担保権者に多くの割合が充てられるべきものでしょうから、仮に、事業成長担保権の実行が完了した後に否認権が行使されたとしても、それによって復活した財産の多くは、元のルールに事実上従って配当のやり直しをするみたいな結論としてはいいように思うのですが、そういう何らかの手当てをしないと、管財人が大きく二つの選択肢を与えられすぎて、善管注意義務の下で悩ましい立場に置かれてしまうのではないかが気になっています。これが二つ目です。   三つ目は、別の話になりますけれども、12ページの3(2)のところで、担保権の消滅許可請求もできるということです。それ自体は異存ないのですけれども、一般論としては、担保権消滅許可請求における財産の価額は、清算価値をベースに評価されると思っているのですが、ここでの消滅のために必要な支払額については、事業成長担保権は企業価値全体をつかまえていて、かつ実行も全体で事業譲渡ができる仕組みがビルトインされている担保ですので、ここでいきなり急に総財産の清算価値を渡されて消滅させられるのは余りに酷ではないかという感じがするので、制度の適用自体はよいと思うのですが、事業成長担保を消滅させるために必要な価額は、基本的にはやはり継続企業価値であるべきではないかと思いますので、そういう御趣旨なのかどうかを含めて確認したいということです。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。それでは、何かございましたらお願いします。 ○笹井幹事 解釈に委ねられるところもあり、私が十分に事前に検討できていなかったところもありますので、不十分かもしれませんけれども、まず否認権につきましては、考え方としては、元々総財産についてこの担保権者が把握していて、もし否認の対象となる行為、例えば偏頗弁済などが行われなければ、それは担保権者の方に行ったものでしょうから、本来的には、それぞれが合理的に活動すれば、否認権を行使するという破産管財人の判断がされ、それに対して実行手続の管財人の同意がされ、それが取り戻されて、この随時弁済とかカーブアウトとかの仕組みによって、事業成長担保権の実行手続の中で配当されていくということになるのではないかと思います。   そういう意味では、おっしゃるように、破産管財人が敢えて事業成長担保権の実行手続が終わるのを待って、破産手続だけになったという段階で否認権を行使するということがあり得るとすると、配当先が大きく変わってくるというのは御指摘のとおりだと思います。ただ、御指摘のようなケースは病理現象みたいなところがあるのかなという気もしておりまして、そのために配当のやり直しまで全てやるかというと、手続的に重くなってしまうのではないかという感じもいたしますので、そこは破産管財人の善管注意義務に委ねるということもあり得るのではないかと思っています。   それから、三つ目の担保権消滅許可請求の評価額についてですけれども、御指摘のように、継続企業価値として担保権を設定しておりますので、そういう意味では、妥当な解決としては、その継続企業価値として評価されるべきではないかと思いますけれども、ここは解釈に委ねられる部分もあるのではないかと思いまして、もう少し考えてみたいと思います。   担保権者が実行手続として、全体として今提案されているような実行手続の中で、継続企業価値を実際にその担保価値として把握し、継続企業価値として実現する権能を持っていますので、そういう意味では担保権実行によって得られる価値が基準になるのではないかと思います。   最初の、会社更生手続において不特定被担保債権者がどのように扱われるかという問題なのですが、少し私の質問の理解が十分ではないかもしれませんが、更生債権に当たるかどうかというのは、会社更生法2条8項の定義の問題であり、この段階でまだ不特定被担保債権という名前が与えられるべきかどうかというのは、この部会資料39の2ページの(2)②に書いてありますように、事業成長担保権の実行手続終結以後になお存在している者を不特定被担保債権者と呼んでおりますので、実行手続がまだ完了していない段階では、誰が不特定被担保債権者なのかということが確定していない状況であると思います。   ただ、更生手続が開始した場合には、更生債権とは何かは会社更生法の2条8項によって決まりますので、そうすると、やはり更生債権は更生債権として扱われることになるのではないかと思っております。私が御質問の趣旨を十分に把握していないかもしれませんけれども、以上です。 ○井上委員 ありがとうございます。今の御説明で分かりました。私が申し上げたことがその意味で間違っていたのかもしれないのですけれども、この事業成長担保の被担保債権者のうち当初は、不特定なものとして表現されている不特定被担保債権者に最終的に当たることとなる人が更生手続の開始時において持っている債権は更生債権だと理解しました。実行手続の完了までは、まだ不特定被担保債権という資格を有するに至っておらず、また、その帰属主自体も特定されていないから、現時点の一般債権者がそうなるかどうかもまだ分からない点で、不特定被担保債権者はまだ立ち現れていないのではないかと申し上げたのですが、最終的に不特定被担保債権者となるかどうかはともかく、更生手続の開始によって更生債権者が特定することは理解できました。ありがとうございます。 ○髙倉関係官 2点目について補足をさせていただきたいと思います。実行手続の終了前か後のどちらで否認権が行使されたかによって担保目的財産に入ってくるかという帰結が変わってしまうという点について、調整が必要だというのは一つの考え方ではあろうかと考えているのですが、ただ、実行手続の終了により事業成長担保権は消滅しますので、事業成長担保権の消滅後に取得した財産についてその担保権の効力が及ぶものと考えるのも、理論的に少し難しいところがあるのではないかと考えています。   また、善管注意義務の点につきましては、実行手続の管財人は利害関係人全員に対して善管注意義務を負うということになっており、破産管財人の善管注意義務を負う対象について議論があるとは認識しているのですが、担保権者に対しても負うという見解があり、そのような判断を示す裁判例もあると承知しております。そうすると、両者が負う善管注意義務というのは大きく異ならないのではないかとも考えられ、担保権者が有している価値を踏まえた上での適正な利害調整をするという義務の下、このカーブアウトという制度自体が法定組入れに近いものとも考えられますので、組入額を増加させるという観点で否認権を行使していくという考え方も、善管注意義務の観点からは正当化されるのではないか、そのため、大きな問題は生じないのではないかと現時点では考えております。 ○道垣内部会長 では、阪口さん、お願いいたします。 ○阪口幹事 阪口です。否認権のところですけれども、事業成長担保権には否認権はありません、破産が併走する保証も何にもありませんということであれば、破産管財人がたまたまいて、破産管財人の職務からしたら当然かもしれませんけれども、たまたま否認権を行使した結果は、純粋に破産財団だけに属するということの方がすっきりするのではないかと思うのですけれども、それはいかがでしょうか。つまり、破産管財人が回収した金銭を保管して、最後の不特定被担保債権者への破産手続における配当に充てるという方がすっきりしているのではないかと思うのです。   もちろん本来は事業成長担保権の方が価値を把握していたのかも分かりませんけれども、でも、何もしないまま財産が出てしまって、かつ、その取戻し手段は事業成長担保権にはないわけだから、それはもう流出した財産と同じということだけではないかと思うのです。事業成長担保権については設定者にどんな権限があるかという議論があって、一定範囲は出ていく、それは事業成長担保権というのはそういうものだと、一定範囲は出入りがあるという前提があって、そこまでは把握、追い掛けられないというものだと理解していました。したがって、否認した分は、言わば出ていったものがたまたま破産財団との関係では戻ってきただけで、事業成長担保権者から見たら何もないということではないかと思っていました。例えば11ページの、破産管財人は否認権の行使に関し必要な範囲内で金銭の収支等の管理及び処分をすることができるというのは、正にそういう意味なのかなと思っていて、私の読み方が間違っていたようですけれども、そういうふうに純粋に破産財団にだけ属する財産になるという理解はおかしいのかどうかについて、少し御意見を聞かせていただきたいと思います。 ○笹井幹事 また少し考えてみたいと思いますけれども、確かに実行手続の中で行使することはできないのだろうと思います。ここは十分に事務当局内でもしっかり検討しているわけではありませんので、個人的に現時点で考えたことを申し上げますと、実行手続の中では実行手続の管財人が否認権のような形で取り戻すことはできないということにはなると思います。   ただ、例えば特定被担保債権者が詐害行為で取り消すことは可能だと思いますので、出ていったものは優先弁済に充てられてしまったりするのかもしれませんけれども、そういった登記登録みたいなものがあって、取り戻すことができれば、結局それは事業成長担保権者というか、被担保債権者というか、が担保価値として把握しているものだということになりますので、およそ破産手続が始まった後に、それが全て破産管財人というか破産財団にだけ帰属するということでよいのかは、もう少し考えてみる必要があるのかなとは思いました。 ○道垣内部会長 しかし、否認の問題に限らず、平時も含めて、事業成長担保権というのはどういうものであると捉えるかということと密接に結び付いているので、結構話はでかいですよね。 ○髙倉関係官 この点に関しては、事業成長担保権の効力が倒産手続開始後も及ぶということからすれば、形成権である否認権の行使によって設定者に戻ってきた財産というのも、担保権の効力が及ぶとするのが理論的に一貫するのではないかと考えておりました。その上で、御指摘の破産財団だけに属するという考え方もあり得る一方で、否認権の行使のために必要な費用というのを誰が負担するかというところを考えますと、手続費用の分だけ配当額が減少する特定被担保債権者が費用は負担しつつ、ただ、その便益は一切受けられないというのも、バランスを欠くことになってしまうようにも思われまして、少し難しいところがあるのではないかと考えている次第でございます。 ○道垣内部会長 いろいろな評価の仕方があると思いますが、ほかにございますか。 ○大澤委員 大澤です。ありがとうございます。今のところと少し離れまして、事業成長担保権の実行手続と再生手続の調整の方についてお伺いできればと思います。これは質問になりますが、今正に破産手続との関係で否認権のお話がございましたが、民事再生の方では否認権の付与の手続がありますけれども、再生手続においては原則として手続は中止ということになると、否認権付与の手続もなされずに、事業成長担保そのものの否認ということも含めて、否認権の行使は一切できないという制度設計になるということでしょうか。 ○髙倉関係官 御指摘のとおり、少なくとも事業成長担保権の設定自体を否認するということについては、対抗的措置として認める必要があるようにも思われますので、本日頂いた御指摘も踏まえて更に検討させていただきたいと思います。 ○大澤委員 ありがとうございます。 ○道垣内部会長 ほかにございますか。   倒産手続との関係は、いろいろな事例を考えると結構まだ難しい問題が多々残っているような気はいたしますので、更に事務局で御検討いただければというふうに思いますけれども、本日の部会としては、このくらいでよろしゅうございますか。   それと、幹事の加藤さんから退席の前に、会社法21条以下の事業譲渡をした場合の競業の禁止等に関する規定というのは適用されないように思うのだけれども、適用されないなら適用されないと書いた方がいいということをチャットで頂きました。一応それは御報告申し上げておきます。あと、本当は、先ほど申し上げましたように、大西さんが手を挙げていらっしゃったのですが、御発言をいただく前に、6時が過ぎまして、失礼、ということでございますので、そろそろお開きにさせていただければと思いますが、よろしゅうございますか。   それでは、本日はこの程度にさせていただければと思います。   次回の議事日程等につきまして、事務当局から御説明をお願いいたします。 ○笹井幹事 次回は令和6年1月23日火曜日の開催となります。午後1時30分から午後6時まで、場所は法務省地下1階、大会議室でございます。 ○道垣内部会長 どうもありがとうございました。   それでは、法制審議会担保法制部会の第43回会議というのを閉会にさせていただきたいと思います。   本日も熱心な御審議を賜りまして、ありがとうございました。また来年よろしくお願いいたします。 -了- [H1]「き」は削除でよいと思います。 [H2]同上です。 [H3]「き」は削除でよいと思います。 [H4]同上です。 [H5]同上です。 [H6]「い」は削除でよいと思います。 [H7]同上です。