法制審議会 民法(遺言関係)部会 第1回会議 議事録 第1 日 時  令和6年4月16日(火) 自 午後1時33分                      至 午後3時08分 第2 場 所  法務省地下1階・大会議室 第3 議 題  1 部会長の選出等について         2 遺言制度の見直しにおける主な検討事項について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○齊藤幹事 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会民法(遺言関係)部会の第1回会議を開会いたします。   私は、法務省民事局参事官をしております齊藤と申します。本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。この部会の第1回会議が本日ということですので、後ほど部会長の選出をしていただきますが、それまでの間、当方で議事の進行役を務めさせていただきます。   最初に、何点か事務的な御連絡を差し上げます。   まず、ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては、御発言されている際を除き、マイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願いいたします。御質問がある場合や、審議において御発言される場合は、画面に表示されている挙手ボタンを押していただければと思います。指名がされましたら、マイクをオンにして御発言ください。御発言が終わりましたらマイクをオフにし、また、画面の挙手ボタンを再度押して、挙手を下げていただきますようお願いいたします。   続きまして、本日の資料について御確認いただきたいと思います。まず、部会資料1「遺言制度の見直しにおける主な検討事項」です。これにつきましては、後ほど本日の審議の中で事務当局から簡単に説明させていただきます。   次に、参考資料1「デジタル技術を活用した遺言制度の在り方に関する研究会報告書」です。これは、公益社団法人商事法務研究会主催のデジタル技術を活用した遺言制度の在り方に関する研究会が取りまとめた報告書になります。   また、委員等の名簿、諮問事項及び今後の会議の日程案につきましても、タブレット内にて御覧いただけるようになっております。   次に、この部会で審議される諮問事項と、この部会の設置決定につきまして簡単に御報告を差し上げます。   本年2月15日に開催されました法制審議会第199回会議におきまして、法務大臣から遺言制度の見直しに関する諮問がされました。お手元の資料のうち、右肩に諮問第125号と記載された縦書きのものを御覧いただければと思います。諮問事項は、こちらに記載されておりますとおり、「情報通信技術の進展及び普及等の社会情勢に鑑み、遺言制度を国民にとってより一層利用しやすいものとする観点から、遺言者が電子的な手段を用いて作成することのできる新たな遺言の方式に関する規律を整備することを中心として、遺言制度の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」というものです。   この諮問を受けまして、法制審議会総会ではその日の会議におきまして、専門の部会を設置して調査審議を行うのが適当であるとして、この民法(遺言関係)部会を設置することを決定したということでございます。   以上を御報告いたします。   続きまして、審議に先立ちまして、事務当局を代表して民事局長である竹内努より挨拶を申し上げる予定でございましたけれども、本日は国会関係の公務のために欠席でございます。そこで、大臣官房審議官である松井委員から挨拶を差し上げます。 ○松井委員 民事局担当の審議官をしております松井と申します。本来であれば竹内民事局長から御挨拶すべきところでございますが、公務で不在にしておりますので、私の方で代読をさせていただきます。   皆様にはそれぞれ御多忙の中、法制審議会民法(遺言関係)部会の委員、幹事に御就任いただきまして誠にありがとうございます。  自筆証書遺言につきましては、遺言者自身が財産目録を除く遺言書の全文、日付及び氏名を自書、すなわち手書きし、押印しなければならないものとされております。もっとも近年、デジタル技術はその急速な進展及び普及により、日常生活において欠かせない手段となっております。この点に関連して、令和4年6月に閣議決定された規制改革実施計画においては、国民がデジタル技術を活用して遺言を簡便に作成できるような新たな方式を設けることなどについて、必要な検討を行うものとされております。   そこで、法務省におきましては、デジタル技術を活用した遺言制度の在り方について検討を進めてきたところですが、この間、自筆証書遺言と並んで広く用いられている公正証書遺言につきましては、令和5年の公証人法の改正により、公正証書に係る一連の手続のデジタル化が実現し、令和7年12月までに施行されることとなっております。   このような社会情勢に鑑みますと、現行の自筆証書遺言の方式に加え、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式に関する規律を整備することを中心として、遺言制度の見直しを行う必要があると考えられます。そこで、法制審議会において遺言制度の見直しについての御検討をお願いしたく、今回の諮問と部会の設置がされたものでございます。   私ども事務当局といたしましても、本部会における調査審議が充実したものとなるよう努めてまいりますので、委員、幹事の皆様方におかれましては、国民にとってより一層利用しやすい遺言制度の構築のために御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。   以上、代読でございました。 ○齊藤幹事 続きまして、委員、幹事及び関係官の方々に自己紹介をお願いしたいと思います。後ほどフリーディスカッションの時間を設けておりますので、まずはお名前と御所属とを御紹介ください。  (委員等の自己紹介につき省略) ○齊藤幹事 この機会に関係官につきまして、その位置付けを補足して説明いたします。法制審議会議事規則によりますと、審議会がその調査審議に関係があると認めた者は、会議に出席し、意見等を述べることができるとされております。この部会でも従前どおり、関係省庁等に審議への御参加を頂くことになると考えております。そのため、本日は今自己紹介を頂きました関係官に御参加を頂いております。   続きまして、部会長の選出を行っていただきたいと思います。   法制審議会令によりますと、部会長は当該部会に属する委員及び臨時委員の互選に基づき会長が指名することとされております。この部会は本日が第1回ですので、まず最初の手続として、部会長の互選をしていただく必要がございます。   それでは、ただいまから部会長の互選に移りたいと存じます。自薦又は他薦含め、御意見はございますでしょうか。 ○沖野委員 ありがとうございます。大村敦志委員を御推薦申し上げます。大村委員が広く、また豊かな学識をお持ちであるということは、もう皆さんの共通の理解と思います。民事立法におきましても、平成30年の相続法関係の改正におきましては、法制審議会民法(相続関係)部会の部会長をお務めになりました。それと前後して、多くの家族法立法におきまして、特別養子制度ですとか、あるいは直近の家族法制などの部会において部会長を務められ、非常に難しい、また意見が対立する立法課題について取りまとめをしてこられました。その御経験と御実績に鑑みまして、大村委員こそふさわしいと考え、御推薦申し上げる次第でございます。 ○齊藤幹事 ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○相原委員 私も大村敦志委員を推薦いたします。大村委員は、今回提出されております参考資料1の報告書を取りまとめました、デジタル技術を活用した遺言制度の在り方に関する研究会の座長として、この研究会の中心となって鋭意取りまとめを担当されておられました。今、沖野委員もおっしゃいましたが、学会における数多くの、あまたの業績や御経歴に照らして、大村委員が適任であると存じますので、是非お願いしたいと存じます。 ○齊藤幹事 ただいま沖野委員、相原委員から、部会長として大村委員を推薦するとの御発言を頂きました。ほかにはいかがでしょうか。   ほかに御意見がないようでしたら、部会長には大村委員が互選されたということになろうかと存じます。よろしいでしょうか。   ありがとうございます。そうしましたら、部会長には大村委員が互選されたものと認めます。   その上で、部会長は法制審議会会長が指名することとされておりますが、本日は高田法制審議会会長におかれましてはこの場にはいらっしゃっておりませんので、事務当局において電話の連絡をさせていただきます。大変恐縮でございますが、短時間このままお待ちいただき、休憩とさせていただければと思います。一旦お待ちください。           (休     憩) ○齊藤幹事 では、会議を再開いたします。   ただいまの休憩時間中に、高田会長から大村委員を部会長に指名する旨の御連絡を頂きました。   そうしましたら、以降の進行を大村部会長にお願いしたいと存じます。大村部会長におかれては、部会長席への御移動をお願いできますでしょうか。   それでは、大村部会長、以降の進行をよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ただいま部会長に御指名を頂きました大村でございます。一言御挨拶を申し上げます。非力ではございますけれども、皆様の御協力を得て進行させていただきたいと思っております。   遺言の方式に関する規定につきましては、民法典の制定以来130年近くの間、大規模な改正を経ておりませんけれども、高齢化社会の到来、家族の在り方の変化、又は多様化など、近時における社会経済情勢の変化等を踏まえますと、今日、現行規定の妥当性を改めて問うということは時宜にかなったことだと思われます。皆様におかれましては、社会の様々な要請に適切に応えられる、よりよい遺言制度を求めるという観点から、現行の方式によって何が妨げられているのか、方式により守られるべき利益は何なのかという点などを含め、様々な要素を考慮に入れながら、是非自由闊達な御議論を頂きたいと思います。   私といたしましても、この部会における調査審議が円滑に進みますよう部会の運営をしてまいりたいと思いますので、委員、幹事、関係官の皆様の御助力のほどをよろしくお願い申し上げます。   なお、今後、部会長である私が会議に出席することができないという場合に備えまして、部会長の代理を指名させていただきたいと思います。   この件につきましては、沖野委員に代理をお願いしたいと思いますが、沖野委員、お引受けを頂けますでしょうか。 ○沖野委員 務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。   次に、審議に入ります前に、当部会における議事録の発言者名の取扱いについてお諮りをしたいと存じます。   まず、現在の法制審議会での議事録の作成方法等について、事務当局より御説明を頂きたいと思います。 ○齊藤幹事 御説明をいたします。法制審議会の議事録における発言者名の取扱いについてです。   法制審議会での部会の議事録につきましては、これまでの法制審議会総会において、その取扱いについて定められております。具体的には、発言者名を記載した議事録を作成すること、これを前提として、その議事録をインターネット上に公開するに当たっては、原則として発言者名等を明らかにして公開することとされています。ただし、それぞれの諮問に係る審議事項ごとに、部会長において部会委員の意見を聴き、審議事項の内容等のほか、発言者等の権利利益を保護するため、当該氏名を公にしないことの必要性、率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれの有無を考慮し、発言者名等を公開するのが相当でないと認める場合には、議事録の公開に当たって発言者名等を明らかにしないこととすることができます。   したがいまして、部会の議事録につきましても、発言者名を明らかにした議事録、これを一旦作成することになりますが、その先につきましては、部会長におきまして皆様から御意見をお聴きし、ただいま申し上げたような諸要素を考慮して、発言者名等を公表するのが相当でないと認められる場合には、これを明らかにしないことができることとなります。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ただいまの齊藤幹事からの御説明につきまして、御質問あるいは御意見がありましたら頂戴したいと思いますが、いかがでございましょうか。   特にございませんでしょうか。   特に御意見がないようですので、部会長の私といたしましては、当部会では審議事項の内容等に鑑みて、発言者名を明らかにした議事録を作成して公開するということにしてはいかがかと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。   ありがとうございます。それでは、当部会におきましては発言者名を明らかにした議事録を作成して公開するということにさせていただきたいと思います。   この先、ここから本日の議事に入らせていただきたいと思います。   まずは事務当局の方から、今回の諮問の発出の経緯、検討の範囲、審議のスケジュール等について御説明を頂きたいと思います。それでは、お願いします。 ○齊藤幹事 事務当局から御説明を差し上げます。   まず、諮問の発出の経緯でございますが、冒頭申し上げたところ、また、松井委員からも言及があったところもございますので、一旦この程度とさせていただきたいと思います。その上で、加えて3点ほど御説明を差し上げたいと存じます。   まず、検討の範囲です。この部会で取り扱うことが想定されている審議事項について御説明をいたします。先ほど御説明した諮問にありますとおり、基本的には遺言者が電子的な手段を用いて作成することのできる新たな遺言の方式に関する規律を整備することが、中心をなす検討課題として念頭に置かれております。ただし、遺言制度の見直しについての要綱を示すということですので、必ずしもその点のみに限られているものではないと考えております。   まず、現行の自筆証書遺言の方式につきましては、押印要件や自書を要する範囲をどうするかといったデジタル技術には関連しない方式要件につきましても、先ほど松井委員から言及のあった、政府方針である規制改革実施計画においても言及がされているところであり、検討対象に含まれるものと考えております。また、現行の自筆証書遺言以外の遺言の方式につきましては、デジタル技術を活用した新たな方式について検討することとの関係等から、他の方式についても整理等が必要になれば、やはり検討対象になり得るものと考えております。そのほか、遺言の方式は、遺言者の真意の確保等を趣旨としているものと考えられますので、そのような趣旨に関連する範囲で更に検討が必要な課題があるとすれば、審議の中でそれを取り上げることも排除はされないと考えております。遺言の方式等と関連性があり、求められるスピード感を損なわず成案を得ることができるであろうテーマであれば、皆様に取り上げていただくことも可能であろうと考えているところです。   続きまして2番目に、お手元の参考資料1の研究会報告書と本部会における検討との関係について補足をいたします。遺言制度に関する見直しにつきましては、法務省の担当者も参加した研究会において検討がされ、お手元の参考資料1の研究会報告書は、この研究会における議論の成果でございます。この報告書については、本部会において議論していただく際にも少なからず御活用いただけるものとは考えておりますが、本部会は法務大臣の諮問を受けて新たに設置されたものですので、研究会の続きではございません。本部会の委員や幹事の皆様の中には研究会のメンバーであられた方もいらっしゃいますが、その中で述べられた御意見に拘束されるわけでもございませんし、論点につきましても、研究会で検討された論点のみが本部会で検討されるといったものではございません。   最後に、今後の審議スケジュールについて可能な範囲で御説明を差し上げます。本部会は当面、月1回程度のペースで開催する予定でございます。遺言制度が全ての国民に関係する民事上の重要な制度であることに鑑みまして、通例に従って、中間試案を取りまとめてパブリック・コメントの手続をとった上で、答申に向けた検討を行うという流れを想定しております。いつまでに何をするということについては現時点では未定でございますけれども、議論が一巡した頃を目安として、中間試案の取りまとめ時期等に関する提案をさせていただければと考えております。曖昧な御説明となり恐縮ではございますが、他方で今回の問題は喫緊の課題でもございますので、可能な限り早期に検討が進むよう事務当局としても努めてまいりたいと考えております。   事務局からの御説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ただいまの齊藤幹事からの説明につきまして御質問がございましたら、御発言を頂きたいと思います。どなたか御質問等はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、続きまして事務当局の方から部会資料1につきまして御説明を頂きたいと思います。 ○戸取関係官 部会資料1について御説明いたします。部会資料1は、個別の論点に限らず全体にわたり自由に御意見を頂く観点から、今後この部会で調査審議を頂くことが想定される主な検討課題について、その全体像を記載したものでございます。   まず、1ページの「第1 基本的な視点」の「1 遺言制度及びその利用状況」では、御意見を頂く前提として、遺言とは何か、遺言について厳格な方式が定められている理由、遺言の方式の類型、遺言に関する近時の法改正及び現在主に用いられている公正証書遺言、自筆証書遺言の利用状況について簡潔に御紹介しています。   次に、「2 検討の経緯及び意義」において、今回の諮問に至る経緯として、自筆証書遺言制度のデジタル化が盛り込まれた令和4年の規制改革実施計画について御紹介するとともに、自筆証書遺言と並んで主に用いられている公正証書遺言については、既に公証人法の改正がされ、デジタル化を図る規定が令和7年12月までに施行予定であることを記載しております。   その上で、2ページの6行目以下では、現在の社会経済情勢等を踏まえて、今回遺言制度の見直しを検討することの意義について考えられることを簡単に記載しております。この部分につきましては、社会経済情勢等の理解や検討の意義などについて御意見があれば頂きたいと考えております。   2ページ下方の「3 検討の視点」では、今後、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式等を検討するに当たっての一定の視点について記載しています。すなわち、現行の自筆証書遺言につきましては、全文等の自書によって遺言を作成することに相当の負担感があるとの指摘があるところ、その負担感の中身としては、物理的に自書をすることが困難な場合と、心理的な負担を感じることによる場合とがあるものと考えられます。他方で、遺言の方式には、遺言者の真意を確保し、遺言書の偽造、変造を防止するために厳格さが求められていることに加えて、軽率に作成して後に争いを残さないよう、ある程度慎重な考慮を促す趣旨も指摘されております。そのため、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式等を検討するに当たっては、利便性、簡便性の要請と真意性、真正性等の担保とのバランスを考えていくことが重要ではないかと考えられる旨を記載しております。この点につきまして、そもそもこのような視点は的確、適切なものなのか、また、そのほかにも今後の検討に当たって意識すべき視点はないかなどにつきまして、この機会に御意見を頂ければと考えております。   3ページ中ほど以降の「第2 主な検討事項」では、遺言制度の見直しの検討において想定される具体的な検討事項を記載しております。基本的には次回以降の会議において取り上げるものであり、本日の会議におきまして、その一つ一つについて詳細に御議論いただくことまでは想定しておりませんが、本日は全体にわたって自由に御意見を頂きたいと考えております。   まず、「1 デジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方」であり、そのうちの(1)では、新たな方式の位置付け等について記載しております。遺言をしようとする者は、複数の遺言の方式のうちで自分に合ったものを選ぶと想定されますので、自筆証書遺言、公正証書遺言等の遺言制度全体の中での新たな遺言の方式の位置付けや、ほかの方式との役割分担、新たな方式において目指すべき真意性、真正性の担保の程度等をどのように考えるかについて、御意見を頂ければと考えております。   (2)では、遺言の本文に相当する部分の在り方について記載しております。本文としては、主に文字情報による電磁的記録とする方式が考えられますところ、録音・録画した電磁的記録とする方式もあり得るところであり、様々な考慮要素を踏まえ、どのように考えるか、御意見を頂ければと考えております。   なお、部会資料1には記載しておりませんが、デジタル技術の活用という言葉を広く理解した場合には、ワープロソフト等を利用して全文等を入力しプリントアウトした書面、つまり、紙を原本とする方式も、デジタル技術を活用した方式の一つとして考えられるのではないかとの御意見もあるところでございます。   (3)では、真正性を担保するための方式の在り方について記載しております。本人のみで手軽に作成できることを重視して、デジタル技術の活用のみによる方式とするのか、それとも、デジタル技術の活用のみでは本人の意思に基づいて作成されたことの担保、すなわち、事後に本人が作成したものか否かを判断することが困難と考える場合には、デジタル技術と併せて証人等の関与を必要とする方式を検討するのかが問題になると考えられます。また、後の(7)に記載のある保管制度につきましては、基本的には遺言の紛失や改ざん等を防止するための仕組みとして位置付けられますが、保管の手続に際して遺言者の本人確認を行うことにより真正性担保のための仕組みとするとの考え方もあり得るところですので、併せてここにも記載しており、この点も含めて御意見を頂ければと考えております。   (4)では、他人による改変の防止の在り方について記載しております。具体的には、電子署名等のデジタル技術を活用することなど、その方法についてどのように考えるか、御意見を頂ければと考えております。   (5)では日付について、(6)では加除変更、撤回について、それぞれ記載しております。デジタル技術を活用した遺言を作成する場合、複数の日が生じ得るところ、それらのいずれを遺言が成立した日と位置付けるか、加除変更や撤回については、自筆証書遺言とは異なる考慮が必要になるとも考えられるところ、どのように考えるかなどについて、御意見を頂ければと考えております。   (7)では、保管制度の要否等について記載しております。自筆証書遺言書につきましては、法務局において保管する仕組みが創設されたことを踏まえますと、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式についても保管制度を設けることが考えられます。保管の主体の問題や、保管を義務付けるのか任意とするのか、保管制度を設ける場合には、通知及び検索の仕組みを設けることや、家庭裁判所における検認を不要とすることについて、どのように考えるかなどの点につき、御意見を頂ければと考えております。   次に、2では、現行の自筆証書遺言の方式要件の在り方について記載しています。そのうち(1)では、社会のデジタル化が急速に進展したことなどを踏まえ、押印要件についてどのように考えるか、(2)では、平成30年改正により財産目録については自書を要しないものとされたことを踏まえつつ、自書を要しない範囲について更なる緩和があり得るかなどについて、御意見を頂ければと考えております。   3では、秘密証書遺言の方式要件の在り方について記載しています。秘密証書遺言は、遺言の内容については秘密にしたまま、その存在自体については明らかにすることができる点に特質がありますが、作成件数は年間70件前後と少数にとどまっております。秘密証書遺言に相当する新たな遺言の方式を設けるか否かについて、御意見を頂ければと考えております。   4では、特別の方式の遺言の方式要件の在り方について記載しています。特別の方式の遺言である死亡危急時遺言等について、利用件数が少ないことなどを踏まえると、規律を見直す必要性が高いとはいえないとの考え方もあり得る一方で、例えば大災害時などを想定し、特別の方式こそデジタル技術の活用になじむのではないかとの指摘もあるところでございます。そこで、デジタル技術を活用した新たな方式を検討するか否かについて御意見を頂ければと考えております。   最後に、以上の4までに記載したもののほかに検討すべき事項があるかについて御意見を頂きたく、「5 その他」の項目を記載しております。この部会における検討範囲は、諮問事項にありますとおり、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式に関する規律を整備することを中心としつつも、遺言制度の見直しとされております。そうしますと、新たな方式を含む遺言の方式の問題が検討の中心になると考えておりますが、方式の意義が遺言者の真意を確保することにあることを踏まえますと、例えば、真意の確保ないし最終意思の実現を妨げる可能性のある場面として、ここに記載した遺言能力等の問題が考えられるところでございます。ここに記載されたものも含め、ほかに検討すべき事項があるか否かについて御意見を頂ければと考えております。   部会資料の説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ただいま部会資料の1について御説明を頂きましたけれども、御説明について御質問がありましたら、まず御発言を頂きたいと思います。御意見は後のフリーディスカッションの方で頂ければと思います。何か御質問はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、もし何かありましたら、また御意見の中に交えていただいてということでも結構ですので、フリーディスカッションの方に移らせていただきたいと思います。   本日残りの時間は、本日第1回ということでもございますので、次回以降の本格的な調査審議に先立ちまして、フリーディスカッションに充てたいと考えております。どなたからでも結構でございます。それから、フリーディスカッションということで、議事の整理等は特に致しませんので、御自由に御発言を頂ければと思います。御意見のある方は挙手をお願いいたします。   どなたか口火を切っていただけますか。 ○隂山委員 隂山でございます。全体的な検討に当たりまして、発言をさせていただきたいと思います。   既に御案内のとおりでございますが、本年4月1日より相続登記の申請が義務化されました。これは、既に発生している所有者不明土地問題や空き家問題を解消するための方策でございまして、また、新たに所有者不明土地問題等を発生させないための抑止策であると考えられます。実務上、相続登記の申請を行う際に、重要なツールの一つとして遺言が位置付けられるのではないかと考えております。といいますのも、遺言は相続登記の申請の際の登記原因証明情報となるところ、司法書士として業務を遂行する際、遺言があれば迅速な登記手続を行うことができたというような事案も少なくありません。   現在、世代を問わずパソコンやスマートフォン、タブレット端末などを保有されているというのが情報通信白書などからも明らかになっております。デジタル機器は非常に身近になっておりますし、デジタル機器を利用した遺言の作成が認められるということになりますと、利便性は大幅に向上するのではないかとも考えております。そのため、大相続時代といわれる中、デジタル技術を活用した新たな遺言制度、これが創設されることは大きな意義を持つものであると考えております。   当然、新たな遺言制度が創設されたとしましても、これを活用するかしないかにつきましては利用者の選択に委ねられるべきであるとは考えておりますが、選択肢として利便性の高い遺言制度が加わることにつきましては積極的に検討していく必要性があろうかと考えております。 ○大村部会長 陰山委員、ありがとうございました。   そのほか、いかがでございましょうか。 ○相原委員 相原でございます。自筆証書遺言といいますか、遺言におけるデジタル技術の活用という点に関して、まず、そもそもが選択肢が増えるという点に関しましては検討されるべきであろうと、これは私は一貫して思うところであります。自分で書くことができない方が、デジタルを利用することによって遺言書を作成できる。特に、高齢になって手が震えて書けない方、そもそも障害をお持ちの方が公正証書遺言しか方法がないということから考えても、デジタルが利用できる選択肢を増やすということは肯定的に受け止めたいと思っております。   一方で、先ほども資料の御説明のときにありましたように、真意性、真正性とのバランスから検討すべき課題が多いというのも、おっしゃるとおりかと思っております。まず、言わずもがなで申し訳ないですけれども、私の考えの整理のために申し上げますと、通常の法律行為と遺言では、遺言に関しては単独行為であり、それから行為能力としても、通常の契約等よりも厳密な意味で高い能力が要求されているわけではない、15歳からも遺言はできるし、成年被後見人でも遺言はできるということになっております。それは、御自分に対しては直接的な被害はない、死後の問題であるということです。結局、死後の問題であるということは、その方が亡くなってしまっているので、その方の結局、本意だったかどうかということが見えないという、そういうアンバランスな問題があろうかと思います。死後の問題で、取引の安全というのは直接に関係ないのですが、法定相続人、推定相続人からすると、もらえると思っていたものがもらえないとか、ほかの人に、あなたにあげるわとか言われていたのが違うとか、私は実務家ですので、そういうケースを非常に多く経験しております。それから、遺言能力、特に認知症の高齢者が遺言書を作成して有効、無効が争われるという事件は非常に増えている、これが私の日々の体験です。   そうした場合に、非常に悩ましい、先ほど申し上げた、広く選択肢を広げるというのと、真意性、真正性との関係でデジタル化がどういう意味を持ってくるのか、少し遡って考えると、この間いろいろ考えさせていただいたのですが、遺言能力の点の問題が有効、無効で非常に大きく問題になるのですが、先ほど隂山委員もおっしゃったけれども、デジタル技術を使う、デジタル技術を使える、本当にもう今、多く使おうとしている人たちからすると、それをどんどん使っていきたいというのはあるでしょうが、高齢者になった方がデジタル技術を使いこなすことができるのかどうか、結局、遺言能力と同じような、デジタル技術を使える能力があるのか、パスワードを覚えていたりとか、ほかの方にそれを見せないとか、そういうきちんとしたことがいえるのか、結局遺言能力と同じところに帰着するのかなと。   したがって、非常に雑駁な意見で、進めようとしているのか、ブレーキを掛けようとしているのか、自分でも発言しながら分からなくなっているところがあるのですけれども、できるだけ範囲を広くしていて、結局、遺言能力と同じように後で全体を見て考えていくべき問題なのかどうか、これから皆様の御意見を伺いながら私も考えていきたいなと今の時点で思っております。 ○大村部会長 相原委員、どうもありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○柿本委員 主婦連合会の柿本でございます。私はファイナンシャルプランナーの資格をいかして、長年家計相談をしております。その中で、エンディングノートの書き方を勉強しようという会も持っております。なぜエンディングノートかというと、遺言を書くのは少し難しいけれど、自分に何かあったときには家族に何かを残しておきたいという要求が非常に高うございます。まずはエンディングノートから始めてみようということです。勉強会への参加を決めた理由についてですが、実際に相続を経験したときに遺言書がなくて、非常に厳しいもめごとを経験したために、何かを残しておかなければならないと感じたという回答が非常に多くありました。   コロナ禍前の話ですが、公正証書遺言を残す人たちが多くなっているというのを肌で感じておりますが、公証役場は身近でないので、なかなか敷居が高くて、非常に決心の要るものだったとも聞いております。   私も相原さんと同じでございまして、遺言を作成することは、市民には壁が高いのが現状です。市民にとってできるだけ手段をたくさん用意しておくことは重要だと考えます。真摯に検討を重ねて、よい結果が出るように努力したいと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか、いかがでしょうか。 ○戸田委員 ありがとうございます。私は規制改革推進会議の方で、この遺言電子化について検討の参画をさせていただいたのですけれども、そのときは、相続手続全体を円滑化して、相続手続の始まりから終わりまで、始まりというのは生前からの手続ということになるわけですけれども、そういったことを電子化していく上で遺言の電子化も欠かせない一つであろうということで、テーマとして取り上げてきたと認識しております。   先ほど隂山様から御発言がありましたように、遺言があるとかなりいろいろな手続がスムーズになりますし、それから相続登記、4月から義務化されておりますけれども、これについても制度の実効性が上がるのではないかと思います。デジタル化によって遺言の作成がしやすくなったり、あるいは改版が手軽にできるようになれば、若いうちから作成しようということにもなりますし、相原先生が御指摘されたような、いろいろと認知機能に支障があるというか、低下されているような方においても、簡単にデジタル技術を使って画面からいろいろなデータを選択して作成できるようなことになれば、認知能力の低下している方でも作成でき、普及促進にもつながるだろうということで一つ、テーマとして挙げられた次第です。   それに加えて、デジタル化の効用ということで考えますと、いろいろなデータと連携できるというのが一つ大きな効果としてあると思うのです。例えば、不動産登記であるとか住民記録であるとか、あるいは商業登記であるとか、あるいは税の情報、固定資産税の情報とかそういったものと連携できれば、遺言作成そのものもしやすくなりますし、正確な記載ができるということで、無効になりにくいということもございますし、先ほどの認知機能の低下した方においても作成しやすくなるというようなこともありますので、そういったデジタルならではの効用をいかせるような、そういった形の電子化ができれば、なおいいのではないかと考えております。   それから、遺言を作成した場合に、なかなか遺言の記載どおりの遺言執行が行われるケースというのが少ないというようなことを実務家の先生方からはよくお聞きするところでございまして、遺言作成者自身が相続制度であるとか税制、あるいは資産、不動産に関する知識が十分ではない場合に、相続人にとってベストな形になっておらず、遺産分割協議が公正証書遺言があっても行われて、別な形で遺言執行が行われるというようなケースが多く、そういった作成者の知識不足を補うというところでも、デジタル技術というのは活用できるのではないかと考えております。   最後に、真意性のことですけれども、これは不正を行う技術とのいたちごっこということもあると思うのですけれども、技術の発展はかなり今後も継続的に起こり得る話ですので、そういったことにも広く対応可能な制度ができるといいのかなと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか、いかがでございましょうか。 ○齊木委員 私の方は、公正証書のデジタル化の過程で、遺言公正証書のデジタル化についてもいろいろ内部で議論し、有識者の方の意見を承って制度構築を考えてまいりました。私は、その電子公正証書の責任者を務めております。電子公正証書あるいはデジタルのものを考える場合に、一つ大事なことは、偽造を防止する必要があるということです。デジタルは非常に偽造も容易でして、一旦作ったものが後からどんどん変わっていって、変わったかどうかも分からないようになってしまっては、遺言というのはいろいろな方の権利義務を規定するものですから、まずいということです。そこで、公正証書の場合には、当事者に電磁的記録の正本をお渡しするのですけれども、それについては二重の偽造防止措置をする予定にしております。   一つは、電子署名によるハッシュ値の記録というもので、今はSHA-2というバージョンで行っていますけれども、それと、国際規格であるMDP署名というものを二つくっつけて、偽造がまずはできないようにしてお出しするということを考えております。そのほかに、やはりこういう技術は日進月歩で破る方も進んでいくのですね。ですから、市中に遺言がそのまま残っている限り、5年、10年たつと、それを破る技術も出てくることが予想されます。それで、私どもは遺言公正証書の原本をセキュリティが厳重なところに保管して、やはり期間がたった遺言について、金融機関さんへの払戻請求とか登記請求をするときには、新しく公証人がその原本と突き合わせた正謄本を発行することによって、間違いのないものを提供できるような体制を作ろうと考えております。どういうデジタル化をなさるかは今後、皆さんの御意見で決めていけばいいとは思っておりますけれども、偽造が簡単にできるようでは、これは大変だということだけは間違いないと思います。   2番目に、真意性と熟慮性の確保も必要だと思っています。日本の遺言というのは実は公証役場に一番件数が多いと資料に出ていますけれども、実はこれはほとんどは80代以上、80代が主流です。正直言って若干、判断能力とか知的能力が落ちてきている状態で皆さん、終活としてお作りになるというのが現状でございます。外国人の方も私の役場に一杯来るのですが、外国人の方は60代まで、しっかりしているときにお作りになるのが主流です。ですので、外国人の方に真意性というようなことは余り争いになるということは想定できないのですが、日本人の遺言の場合には、やはりこれを気にしなければ大変なことになると思っております。   電子公正証書についても、法務省に設置された公証実務のデジタル化に関する実務者との協議会というのが、弁護士会、司法書士会、行政書士会から委員をお出しいただいて、その御意見を承ったのですが、リモート公正証書というテレビ会議でやる遺言については、公証人がじかに本人を確認できないし、その周りに利害関係者がいて画面に見えないペーパーか何かで指示を出しているかもしれないから、リモートは原則としてやってはいけないのではないかという意見が実務家では主流でした。そういう真意性を確保するという必要性は、デジタル公正証書だけに向けられた要求ではなくて、同じ効力を持つ全ての遺言に向けられた要請だと私は思っています。ですので、同じように真意性を確保するにはどうしたらいいかを考える必要があって、アメリカの電子遺言書法では2人の証人の立会いを要求していますけれども、同じようなことを考えなければ危ないのではないかと考えています。   具体例を申しますと、お年寄りが役場に連れられて来るときに、実は大体財産をもらう方のお子さんに依頼された士業者の方が連れてくるのです。公証人は、文案をいきなり見せずに、あなたはどういう遺言をしたいのですかと口頭で聴くのですけれども、これを言えない人がかなりいるのです。今一緒に来た長女の言うとおりに作ってやってくださいとか言う方も結構いるのです。だから、そういう現状を前提に、本人の真意に基づく遺言書をどうやって作るか、それをどうやって担保するかということを考えなければ、遺言制度はおかしくなってしまうと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   その他、いかがでございましょうか。   冒頭、事務当局の方から資料の第1、第2について御説明を頂きました。第2は各論的な問題で、この後、次回以降に立ち入った形で議論するということになりますが、第1の基本的な視点との関係で、現状認識について何か御意見があればお願いしたいということと、それから検討の視点についてどう考えるかといったことについて、特に御意見をいただきたいという御発言もありました。既に御発言いただいた委員、幹事の皆様の御発言にはそういうものが含まれていたかと思いますけれども、まだ御発言のない委員、幹事におかれましても、いま申し上げたような観点も含めて御発言を頂ければと思います。 ○冨田委員 ありがとうございます。今回の部会に臨むに当たりまして、連合としての現時点の考え方を申し上げたいと思います。   これまでもありましたが、遺言は遺言者本人の意思であるものの、効力発生時に改めて意思確認ができないことから、今後検討するいかなる方式であっても、真意性、真正性を求めることは、必須であると考えております。一方で現下の社会情勢を踏まえれば、遺言制度においてデジタル技術を活用した新たな方式を検討していくこと、これは妥当であると考えております。   その上で、今後の検討の視点について2点申し上げたいと思います。まず、遺言の真意性、真正性、これはデジタル化であっても担保しつつ、大事なのは、デジタル技術を活用したことによる効果をどこに求めていくのかということだと思います。デジタル技術の活用による効果は、遺言作成の効率性や利便性向上に加えて、例えば、病気などの理由で筆記ができない方や視聴覚障害を持つ方でも遺言が作成しやすくなるなどが考えられると思います。   一方で、遺言をデジタル化することで、偽造、変造の可能性だけではなく、仮に保管を義務付けた場合、データの喪失や遺言者の意思に反する漏えいなどのリスクも考えられると思います。しかしながら、何よりも避けなければならないことについては、今回の検討のデジタル化が目的となってしまって、結果として、検討する新たな方式がこれまでの方式よりも手続が煩雑で、時間も費用も掛かり、使えなくなってしまうようなものが出来上がってしまうことだと思ってございます。   それから、2点目の視点でありますが、今後、現行の各方式を参照しながら議論が進んでいくと思いますけれども、その中で、現行方式の問題点、こうしたものが浮かび上がった場合には、その点についても課題を整理し、議論をしていく必要もあるかと思います。   いずれにしましても、議論全般を通じて一般国民に分かりやすく、使いやすいものにすること、これを常に意識していくことが大切だと考えてございます。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。冨田委員から御意見いただきました。   ほかにはいかがでございましょうか。 ○小粥委員 委員の小粥でございます。雑駁でございますけれども、3点ほど申し上げたいと思います。   一つは、検討の進め方のようなことでございますけれども、本日頂いた部会資料1では、3ページの13行目くらいに、そのバランスが大事だということが書いてございまして、そして、資料として頂戴した研究会報告書にも、9ページの17行目でしょうか、第1の5(1)アですけれども、ここでトレードオフというような言葉遣いがされているところでございます。非常に大まかに受け止めますと、デジタル技術の活用と、それから遺言者の真意の確保、あるいは真正性の担保ということとの間のバランスが大事だとか、あるいは両者がトレードオフの関係になるというような認識がうかがわれるところでございます。   皆さんがそういう認識かどうかということはともかくとして、できれば検討の過程では、このように、例えば民法学者が常に遺言の真正性とか、あるいは真意の担保ということが大事で、物を動かせないというような形での議論をするのではなくて、新しい技術を上手に取り込みながら、真正性とか真意性ということについても十分に検討していくというようなことで、バランスということかもしれませんけれども、トレードオフということで考えるのではなくて、言ってみれば力を合わせて前に進むような形で議論をするようなことになればよいと願っていると、それが1点目でございます。   2点目は、まだうまく言葉がまとまっていないのですけれども、ここで既に委員、幹事の皆様から伺う限りでも、デジタルという言葉で何が意味されているのかよく分からないところがございまして、私自身もデジタル技術、どこまで自分が分かっているのかすら怪しいところがございます。そこで、事務当局にお願いなのでございますけれども、これから活用されるべきデジタル技術とか、あるいは齊木委員に教えていただくことが多いのかもしれませんけれども、公正証書に関する遺言で使われている、あるいは使われそうなデジタル技術というようなものについて、あるいは活用すべきアイデアについてお教えを頂くような機会を設けていただくことはかなわないだろうかと、これが事務当局へのお伺い、それが第2点目でございます。   続けてで恐縮でございますが、3点目は、この部会の立ち上げの経緯、諮問発出の経緯についてお話を伺っておりますと、この部会審議の言ってみれば動力はデジタル化ということだと承りましたけれども、ほかにも既に現在の制度においてもその真意性の確保に不安があるというような御発言が既にあったところですが、そのほかに、この部会の審議に際してのモーターになるというか、立法事実というと、また少し違うような気がいたしますけれども、何かこういうニーズがほかにも改正に向けてあるのではないかというようなことを、もし事務当局において承知していらっしゃるのであれば教えていただきたいと、以上が3点目でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。小粥委員の御発言3点のうち、2点目と3点目は事務当局に対する質問を含んでおりました。どうしますか、今ここでお答えいただきますか。お願いします。 ○齊藤幹事 齊藤でございます。今の御要望に頑張ってお応えしていき、議論を充実させていくのがお役目と考えております。一つ目の方は、デジタル技術という言葉の下に何が表されているのか、活用され得る技術としてどのようなものがあるのかについて、教えてもらう機会があるとよいということでございました。まず、研究会報告書の末尾に、簡単ではございますが、少し情報提供として添付資料としてのデジタル技術に関する簡単な整理はございます。さらに、これだけでは不十分なところで、まずは先ほど齊木委員から公正証書の実務についても御紹介される簡単な御発言がありましたが、これをしっかり伺うと、恐らくこの部会での議論にかなり有益なのではないかという気もいたします。更に加えれば、一般的なデジタル技術の情報に関しては、技術の専門の立場の方から、例えば民事法でこういうことをやりたいのだけれども、どういうことが可能かという問いをお預けして、それに対して何か御説明を頂くような、一般にはヒアリングというようなことはあり得ますけれども、そういった機会を設けることも含めて、検討していきたいと考えております。   それから、2点目、動力というお言葉、又は立法事実、ニーズというお言葉がキーワードかと思いますが、この点に関しましては、法務省の方で委託調査を行った結果として、どんなニーズがあるのかに関するある程度の御紹介できる情報がございますので、こちらは第2回に向けて御紹介する準備をしたいと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。二つの御質問について、事務当局から現段階でのお答えを頂いたと理解をいたしました。技術の面、それから需要ないし要望の面について、事務当局の方から資料あるいはヒアリング等の機会を設けることをお考えいただくということかと思いますが、具体的なスケジュール等につきましては、また改めて御相談をさせていただくということで、差し当たり今のようなお答えということだったかと思います。ありがとうございます。   そのほか、御発言はいかがでしょうか。 ○谷口委員 谷口でございます。我々信託銀行は、100年近く前から遺言の執行を業として行ってきたという経緯がございます。その中で今回、デジタル遺言検討という中では、国民の皆様により多く使っていただくこととともに、もう1点、その遺言が実現されることをしっかりと議論をしてまいりたいと思っております。先ほどからの御意見にもありますように、実際に遺言がなされるときは御本人はもうおられないという中で、いかに遺言をそのとおり、御本人の思いどおりに実現するかというところが議論として、もう一つ大事なところだと思っております。その中では、関係するファクターとして、その保管制度、それから、自筆証書遺言では一部実現できておりますけれども、通知制度というものについて、この遺言制度でどういうものが在るべき姿かを考えるということがあるのではないかと考えております。これからよろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございました。   そのほかはいかがでございましょうか。 ○水口委員 今の谷口委員の御発言とも重なる部分がありますが、金融機関としましては、やはり執行を受ける立場として検討を深めたいと思っております。金融機関では、相続発生時の対応というのはかなりのリソースを投じて対応しておりまして、私どもの銀行単体でも年間で約15万件、営業日ベースでも毎日600件ほどの相続預金の払戻しに対応しており、およそ人員でいうと数百名の人員を割いて対応しております。金融機関全体では、複数の金融機関に跨って口座を保有するというようなケースを考えますと、延べ件数としては恐らく先ほど私が申し上げた件数の1桁多い件数があると思っております。   遺言の執行を受ける金融機関としましては、今申し上げたような件数に対して引き続き迅速かつスムーズに対応していくことを確保する観点からは、遺言のデジタル化というのは実務上非常に影響が大きいと思っておりまして、取り分け、どうやってデジタル化された遺言の提出を受けるのかであるだとか、またその形式要件面や内容の確認を行うのか、といったような観点から、今後議論と検討を深めていきたいと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。今、お二人の方から執行に関わる御発言がありました。最初の方で、今回、方式の問題が中心であるということでしたけれども、御発言の中にも出てまいりました保管所の問題などは今日の論点の中にも出てまいりますので、方式に関連する問題として、今のような御発言を頂いたものと理解を致しました。   ほかはいかがでございましょうか。 ○石綿幹事 幹事の石綿でございます。まず全体として、民法ができた当時にはなかった技術の発展があるということで、そのような技術をどう取り込んでいくのかという検討は必要かと思います。他方で、既に出ているところですが、デジタル技術を活用するとなったときに、特に真正性が担保されるということは重要かと思いますし、先ほど齊藤幹事から御紹介があったニーズ調査などを中原幹事と共にした際に、真正性が担保されないと不安であるといったような意見も聞かれまして、利便性だけ追求して、結果として使われない制度になってしまうということも避けるべきであると思いますので、特に真正性の点は慎重に考えていければと思います。   この点に関連して、以下2点、申し述べさせていただきたいと思います。真正性の担保をどうしていくかということで、例えば電子署名といったような技術の活用が可能かといったことを検討していくということもあるかと思います。それとの関係で、少し角度のついた見方かもしれませんが、現状、秘密証書遺言では、パソコン入力による遺言の作成も認められており、場合によっては筆者を明らかにした上で、本人ではない人が書くこともできているということもできるかもしれません。そうであるならば、秘密証書遺言においてはどうやって真正性を担保していると理解されているのかといったような視点、つまり、現状ある民法の制度との比較等も踏まえながら検討していくということが、他の制度との関係性という点も含めて、一定程度有用なのではないかと考えるというのが1点目です。   2点目は、先ほど谷口委員、水口委員からも出たこととの関係ですが、保管というのがやはり重要になってくるのではないかと思っております。様々なレベルでということなのだと思いますが、そもそもデジタル技術を使ったものであると見付かりにくいというようなところもあるかと思いますし、あるいは更にもっと役割として、真正性を担保する、さらには、例えば本人がきちんと保管の申請に行くということであれば、真意性まで担保するというようなことで、保管というのが従前以上に様々な意味を持つ重要な制度になる可能性もあると思いますので、この点をしっかり議論していければと思っております。 ○大村部会長 石綿幹事、ありがとうございました。 ○中原幹事 今、石綿幹事から真正性の方についてお話がありましたけれども、私は真意性の方についても同様の視点を持つのが重要なのではないかと思っています。部会資料1では、3ページから4ページに掛けてのところで真意性という言葉が何回か出てきます。デジタル技術を活用した新たな遺言の方式というのをそもそも認めてよいか、具体的にどのような方式であれば認めてよいかということを考える際に、この真意性、それから真正性という、この遺言法の基本的な要請に照らして考える必要がある、そのこと自体は疑いないものと思います。   ただ、真正性の方は技術的な事柄が主として問題となるのではないかと思いますが、真意性の方はより価値的、あるいは理論的な検討を要するように思われます。真意性といった場合にそれが何を意味するのかということは、実は必ずしも明らかではない、これまでさほど考えられてこなかったのではないかと思います。詐欺、強迫等の意思表示の瑕疵がない、他人の影響を受けていないということだけでよいのか、それとも、遺言者が戯れではなくて本気で作成したというようなことまで担保しなければいけないのか、はたまた遺言者がその意味内容を自分できちんと理解して、その意味で熟慮して作成したということを意味するのか、さらには遺言者の意思の確定度がある程度高いということまで意味するのかなど、真意性といったときに、場面に応じて様々な意味が込められているような気がしております。これまでの自筆証書遺言であれば、自書の要件がそれを担ってきたというのでありますけれども、そこで何がどこまで実現されてきて、何が諦められてきたのかというようなことを検討する必要があるのだと思いますし、その際に公正証書遺言であるとか秘密証書遺言等の他の方式との比較、あるいは区別の正当化というのも重要な作業なのではないかと思います。   それから、石綿幹事は保管が重要だということを指摘されており、私も全く同感です。具体的な制度設計においては最も大きなポイントの一つになるのではないかと思います。部会資料の6ページの4行目から10行目に掛けての段落で、示唆されている三つの考え方というところに、保管にいかなる価値を見いだすかということの様々な考え方のパターンというのが表れているのではないかと思います。この段落で「考え方」という言葉が三つ登場するのですけれども、そのうち一つ目の「考え方」というのは、保管を方式要件として捉える、それは紛争防止という言わば手続的な要請に基づくものであるとするのに対して、三つ目に挙げられている「考え方」というのは、同じく保管を方式要件と捉える、しかしそれは真意性、真正性の担保という実体的な要請に基づくものであるとするもののように思います。対して、二つ目の「考え方」は、保管は方式要件ではなくて、飽くまで付随的な任意のサービスと捉えるものなのかと思います。いろいろほかの考え方もあり得るのだと思いますし、保管制度はあった方がよいのでしょうけれども、しかしそれを方式要件とするという場合には、保管されていない場合には遺言が無効になる、すなわち遺言者の意思が一応、遺言に示されているにもかかわらず、その遺言を無効とするという重大な効果を生じさせますので、やはり遺言の方式要件とする場合には、それなりの理屈が必要なのではないかと思います。   それから、(5)で日付であるとか、(6)加除変更、撤回という細部の論点についても、保管ということが入ってくると、例えば日付については、その保管申請が受理された日であるとか、そういう選択肢が出てくると思いますし、加除変更のやり方、あるいは破棄の意味を左右してくるのではないかと思いますので、保管は重要な論点であると思った次第です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかはいかがでしょうか。 ○宮本幹事 ありがとうございます。私から3点申し上げます。   1点目は、ほかの委員の先生方、幹事の先生方からも御発言があったことですけれども、新たな遺言の方式を検討する際の視点についてでございます。国民にとってより一層利用しやすい方式をということなのですけれども、ただその際に、遺言では方式によって真意が示されるものと考えられており、方式というのは遺言者にとって自分の真意を確保できる手段だといえますので、当然ですけれども、ただ簡便に作成できるということだけではなくて、遺言制度自体の信頼性にも目を配る、方式が余りに簡便になると偽造のおそれが高まるので、国民から遺言制度自体への不安感が出てくる可能性があるということにも留意しなければならないと思っています。   次に2点目です。本部会では新たな方式を検討することになるのですけれども、その際には、新たな方式と遺言の他の方式との関係やその位置付けを考える作業と、現行法における既存の方式自体についても見直す作業とが、両輪で進んでいくことになるのかなと理解しております。そして、後者の既存の方式の見直しにつきましては、デジタル技術の活用という観点からの見直しが当然必要だと思いますし、また、既存の方式の使いづらさに着目した見直しというのもあり得るのかなと考えます。特に、利用件数の少ない方式というのが幾つか挙げられておりましたけれども、利用件数の少ない方式については、利用件数が少ないから問題が生じづらく、見直さなくていいと考えるのか、あるいは、利用件数が少ないというのは遺言者として使いづらいからであって、国民の利便性を考えたときには見直しの必要があると考えるのかで、検討の在り方は変わってくるのかなと思っております。   最後に3点目です。新たな方式要件を検討する際には、遺言を作成する場面を中心に想定していくことになるのですけれども、遺言は遺言の方式に従って撤回できると民法では定められており、遺言の撤回の場面、特に方式の異なる遺言による撤回の場面も想定する必要があることも、確認のために申し上げておきたいと思います。例えば、電磁的記録を原本とする遺言の方式を認めたとしますと、電磁的記録による遺言が現行の自筆証書遺言などによって撤回されることもあれば、反対に現行の自筆証書遺言や公正証書遺言が電磁的記録による遺言によって撤回されることもある、特に後者というのは、新たな方式の存在が現行の方式による遺言に影響を与える一例かなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか、御発言いかがでございましょうか。 ○内海幹事 内海でございます。私は訴訟法の研究者でございまして、遺言制度そのものの在り方については知見を持ち合わせてはいないのですけれども、2点だけコメントしたく存じます。  一つは、研究会においても申し上げたことの繰り返しになってしまうかもしれませんけれども、特に自筆証書遺言というものは、例えば、遺言無効確認の訴えなどが提起されたりすると、最も重要な証拠方法の一つとして弁論の場に現れることになります。それは一次的には、遺言能力の有無などを含めた真意性や真正性を判断する上での証拠としての意味を持ち、それはそれとして重要なのですが、他方で、それに尽きるものではないソフトパワーのようなものも、手書きの遺言書の中には見いだされてきたのではないかという気もしております。行間とか筆致とかそういったところから、偽造か偽造でないかとか、真意かそうでないかというような二者択一のどちらかということではない情報が関係者に共有されるというようなことが従来はあったのではないかというのが、私は実務に通じているわけではありませんので、そんなものではないと言われてしまうかもしれませんけれども、そのようなイメージも持っております。デジタル化されて手書きでないものが出てくるということは、必要があることだと私も認識しておりますけれども、そうなっていくと、出てくる遺言書というものは、誰がどういう状態で作っても、ビジュアルはかなり似たようなものになり、文体ぐらいには特徴が出るかもしれませんけれども、余り代わり映えのしないものが出てくることになるのではないか。そういったときに、それを見た関係者がどのように受け止めるかということは、真意性が争われたり、能力が争われたりするときの証拠としてどうかというようなことに加えて、ソフトな意味で関係者に与える説得力であるとか、そういったことに影響し得るのではないかと。もしそういうものが従来よりも弱くなるとすると、そのときに、遺言を開けた後の実務をどのように想定して信頼に足りるものを維持あるいは構築していけるかということを少し考えていかなくてはいけないのではないか、というのが1点です。   もう1点は、今日のお話の中で、遺言があると、その後の手続がスムーズに行くというようなお話が幾つかあったように見受けられまして、これは事実としてはそうかなと思うのですけれども、相続というプロセスを一つの手続として見たときに、遺言があってくれないとうまくいかないということ自体がどうなのかというような気もいたします。遺言の有無にかかわらず、法定相続でももっとスムーズに事が進むようにする努力というのは、必要ですしやりようもあるのではないかとも思います。遺言があった方が後が楽だから遺言を作らせなくてはいけない、遺言を作らせるためには遺言を作るのが簡単でなくてはいけないと、そういうふうにばかり話が進んでいくのもややどうなのか、という気もいたしました。ということで、遺言があろうがなかろうが、相続というプロセスをスムーズにするという要請はあるように思いますし、そのための工夫というのは、遺言制度、あるいは遺言の方式をどうするかということには限られないのだろうという認識をお伝えしたかったというのが2点目になります。 ○大村部会長 ありがとうございました。   そのほか、御発言はいかがでしょうか。 ○倉持幹事 先ほど来、新しい方式として選択肢を増やすべきということについて、私としてもそのとおりだと思いますし、そういう意見が多かったところである反面、法律実務家を始めとして、真意性でかなり問題があるということで、公証役場に来る方は80歳を超えた方が多いというご指摘があり、弁護士としても、確かに家族の介入という例を見る機会が多いものですから、やはりそういう危惧はあると思います。この問題は、どういった人を遺言者と見るか、遺言者像をどう捉えるかによって考え方が大きく変わってくると思っています。とかく裁判実務家は、高齢の方が家族の影響を受けやすい環境下で遺言を作る場合にかなり問題があるということにどうしてもフォーカスしがちだとは思うのですけれども、そうではない、年齢的にも若いし判断能力も問題ない、デジタルにも十分対応できるという方にとっては、利便性と真意性というのは別にトレードオフの関係にはならないと思います。そういう意味では、そういう方にとっても利用しやすい遺言制度になるようにということを考えていきたいと思っております。 ○大村部会長 倉持幹事、ありがとうございました。   そのほかはいかがでございましょうか。 ○隂山委員 隂山でございます。既に御指摘も頂いているところではございますが、他人による改変の防止につきまして、齊木委員からも電子証明書の有効期限などから、暗号が突破される可能性があるのではないかといった御指摘がございました。一般的に遺言につきまして、作成から効力発生まで長期間が経過するということになろうかと思います。電子証明書に関しましては、技術的な観点から、現行法上は有効期間が5年を超えないものといった求めがある中で、更に革新的な技術が出てまいりますと、これを破る技術というものが出てくる可能性も否めないと考えております。   そうしますと、部会資料1の5ページの(4)には、改変防止の策として、電子署名やブロックチェーンその他のデジタル技術の活用とございますけれども、デジタル技術を活用した遺言に関する改変防止措置として、電子署名方式が適切であるか、あるいは一定の機関にて保管する等、別の措置によって改変防止策を講じる必要性があるのかという点につきましても、引き続きの検討が必要なのではないかと考えております。   資料にも御記載いただいておりますけれども、保管ということになりましたら、場合によってはブロックチェーン技術の活用についても検討する必要性があると感じております。この点につきましては耐改ざん性、こちらに重きを置くとするならば、パブリックチェーンが相当か、それともプライベートチェーンなどが相当かというチェーンの基本的な性質の検討も必要になるのではないかと考えられます。また、セキュリティ面からは、ブロックチェーン上に遺言データそのものを記録していくのか、あるいは遺言データにひもづいた何らかの情報を記録していくのかというような点も検討する必要性があるのかなとも感じた次第でございます。   一方で、国民一般にブロックチェーンというものが広く浸透しているとは言い難い状況です。そのため、研究会資料の別添では、デジタル技術であったり電子署名の活用であったりという紹介がございますけれども、それとは別に、NFTを含むブロックチェーン技術を活用して作成・保管された遺言となると、実際どのように見ることができるのか、視覚的に容易に把握できるものを、こちらは小粥委員からも既に御要望があったとおりかとは思いますけれども、有識者の方から見やすい形でお出しを頂くことができれば、部会全体として共有することで今後の検討に資するのではないかと思い、発言をさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほど小粥委員から事務当局に対して御要望がありましたけれども、隂山委員からも併せて御要望を頂いたと受け止めさせていただきます。   そのほかにはいかがでございましょうか。 ○沖野委員 ありがとうございます。種々御指摘いただいた点に加える点というのは余りないのですけれども、1点だけ少し気になっておりますのが、このデジタル技術ということについてです。これはいつの時点のデジタル技術を標準としていいのかということがずっと気になっております。明治民法ができた当時にはなかった手法で、仮に今、遺言制度を作るなら現行法の形だろうかといえば、やはりそうではないと思われます。また、今次の技術を踏まえたそういう手法ができることによって、実は今では遺言を使えない、あるいは利用できない人にとって利用できるようになるということは、とても重要だと思います。他方でデジタル技術というのはもう日々、あるいは秒ごとに進化しているという中で、しかも現在作って明日使うというものではないわけです。80代の方が仮に100歳で亡くなられたら20年先、2040年、2050年の頃に効力を生じて実現するというとき、その時のあるいはその間の技術が同じなのだろうかということが気になっております。しかしながら私たちは正確にそれを見通せないということもございますので、今の技術だけを前提にする、あるいは非常に近い段階での技術だけを前提にすると、遺言の制度があるいは非常に短期間のものになるかもしれず、より頻繁な改正が必要だということにもなりかねませんので、そういう技術の進展との兼ね合いで、どういうところを基準に議論したらいいのかというのは非常に難しい問題だと感じております。小粥委員から、デジタル技術としてどういうことを想定するのかについて理解を深める機会が望まれるという御指摘があったと思うのですけれども、それにも関連することかと思います。立法の在り方というか、技法にも関係するかと思いますけれども、今までの点で必ずしも御指摘のなかった点かと思っておりますので、申し上げました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   更に御発言があれば承りたいと思いますが、いかがでございましょうか。   よろしいでしょうか。   それでは、大体御発言の御希望の方の御発言は伺ったと思います。いろいろな御意見を御披露いただいたと思っております。途中で申し上げましたけれども、現状の認識、これは技術の点についてもそうですし、あるいは遺言がなされている実情ということについても様々なお立場から御意見を御披露頂いたと思います。デジタル化ということについて、どういうことを考慮し、それをプラスに評価するのか、マイナスに評価するのか、あるいはトレードオフというけれども、そうでないという解法はないのかといったような御指摘も頂いたところでございます。   現状認識とは別に、検討の視点ということになるかもしれませんけれども、皆さんの御発言の中には、現行法の前提を見直すといったことも必要になるのではないか、あるいは公正証書や他の証書等との比較なども必要であろうといった御指摘も頂きましたし、直近では沖野委員から、立法の仕方、技術が変わっていくだろうというときに将来を見通して立法する、そのやり方はどうしたらいいのかという問題の提起も頂いたかと思います。   様々な御発言を頂きましたけれども、事務当局の方で控えていただいていると思いますので、この後の審議の参考にさせていただきたいと思っております。皆さんも相互に意見を交換したということで、それぞれにお持ちの問題意識を共有ができたのではないかと思います。   ということで、予定していた時間に比べるとかなり早いのですけれども、本日の審議はこれぐらいにさせていただきたいと思います。   そこで、最後になりますけれども、次回の議事日程等について事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○齊藤幹事 では、簡単に説明を致します。次回は令和6年5月14日火曜日、今日と同様に午後1時30分から5時30分までを予定しております。場所については東京地検教養課会議室、建物の15階となっております。   次回の議題につきましては、本日少し話題にも上りましたけれども、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方について各論に入っていくということになり、部会資料1の中で申しますと第2の1、新たな方式に関する部分を順に御議論いただくための資料を準備してまいりたいと思っております。事前にまた資料をお送りする予定でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。次回、5月14日ということで、今日の資料との関係でいいますと第2の各論の事項について順次、御意見を伺っていきたいということでございますので、よろしくお願いを申し上げます。   それでは、法制審議会の民法(遺言関係)部会第1回は、これで閉会をさせていただきたいと思います。   本日は熱心な御審議を賜りましてありがとうございます。これで閉会をさせていただきます。 -了-