法制審議会 担保法制部会 第44回会議 議事録 第1 日 時  令和6年1月23日(火) 自 午後1時30分                      至 午後6時05分 第2 場 所  法務省地下1階・大会議室 第3 議 題  担保法制の見直しに関する要綱案のたたき台2 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第44回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は倉部委員と幹事の加藤さん、家原さんが欠席と伺っております。また、沖野さんが途中で退席の御予定、大西さんと佐久間さんが途中から参加される御予定と伺っております。   まず、配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 今年になってから初めての担保法制部会となります。残り少なくなってまいりましたけれども、本年もどうぞよろしくお願いいたします。   資料につきましてですけれども、事前に部会資料42「担保法制の見直しに関する要綱案のたたき台2」をお送りさせていただきました。後ほど審議の中で事務当局から御説明いたします。 ○道垣内部会長 それでは、審議に入りたいと思います。   まず、部会資料42の「第1 定義」及び「第2 譲渡担保契約に関する総則規定」について議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 部会資料42は、部会資料37-1の要綱案たたき台1(1)から部会資料37-3の要綱案たたき台1(3)までを統合いたしまして、その変更点について見え消しで修正したものとなります。以下、内容に関わる部分の修正点を中心に御説明させていただきます。   まず、「第1 定義」について御説明いたします。1の譲渡担保契約の定義につきまして、部会資料37-1(1)では、その適用範囲を【P】としておりましたが、前回の部会資料40の第1の内容を踏まえまして、抵当権の目的とすることができる財産を除外することとしつつ、農業用動産及び登録自動車については適用範囲に含めるという形で修正しております。また、1の譲渡担保契約の定義につきましては、16(2)の第三者所有権留保契約と重複しないように整理する必要があるという御指摘がありましたことから、16(2)に掲げるものを除く旨の文言を追記いたしました。そのほかの修正はいずれも表現上のものでありまして、部会資料37-1、37-3と実質的に同様です。   「第2 譲渡担保契約に関する総則規定」は、抵当権の目的とすることができる財産を除き、農業用動産及び登録自動車を含む譲渡担保財産一般に適用される規律でございます。   第2の「6 譲渡担保権の順位」は、従前、動産譲渡担保権及び債権譲渡担保権において、それぞれ動産譲渡担保権の順位、債権譲渡担保権の順位として規定を設けていたところですが、登記・登録を要する動産、動産債権以外の財産についての順位に関する規定を設ける必要がありましたことから、これらも含めて、より一般的な規定として設けたものとなります。   第2の「8 物上代位」につきましては、本文の規律については従前の部会資料から変更はございません。ただし、8(2)の規律につきまして、物的に編成された登記・登録をすることができる財産についても同様の取扱いとすべきかどうかが問題となり得ることから、説明欄におきましてその旨を記載しております。物的に編成された登記・登録をすることができる財産であっても、その譲渡担保権の公示内容は抵当権におけるものとは異なるものであることから、譲渡担保権の効力が設定者が受けるべき金銭その他のものに対しても及ぶことが公示されているとはいえず、他の一般の譲渡担保財産と同様の取扱いとすることとしております。   第2の10、根譲渡担保権につきましては、まず、(2)アと(3)において、根譲渡担保権の被担保債権の範囲を任意で定めた場合の手続を新たに定めております。また、(5)イでは、根譲渡担保権の元本確定期日の定めや変更について、根抵当権と同様に第三者の承諾が不要であることを明確化しております。(14)ア(ウ)につきましては、従前の御提案では、差押えがあったことを知ったときから1週間の経過によって元本が確定することとしておりましたが、追加融資の判断をするには1週間は短すぎるとの御指摘があったことを踏まえまして、根抵当権と同様に、差押えがあったことを知ったときから2週間の経過によって元本が確定することとしております。   第2の「11 適用除外」につきましては、部会資料40の第3と同様の規律を記載したものとなります。もっとも、この部分は個々の財産の性質を踏まえた精査が必要でありますことから、現時点におきましては【P】としております。   説明は以上となります。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、これらの点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。ありがとうございます。質問は第2の4のところの設定者の処分権限の話でございます。これについて特に異論があるというわけではありませんが、この趣旨を再度確認できればと思っております。   通常、抵当権などの場合には、設定者にその財産自体の処分権限が当然ありますが、他方で抵当権を第三取得者に対抗できるという点は争いがないところですが、ここで譲渡担保権設定者が、その有する権利として、いわゆる設定者留保権を譲渡するという書きぶりになっている点がどのような趣旨かを確認したいと思います。恐らくこれまでの議論を踏まえますと、譲渡担保権において所有権の帰属はどちらなのかという点を必ずしも明確にしないまま法制を行うということであったかと存じます。そうしますと、まず第1に、ここでいう有する権利というのはやはり解釈論に委ねられる、具体的には、所有権が残っているという解釈を採れば、そこは所有権ということになるし、そうではないという考え方を採れば、設定者留保権のようなものになるということでいいのかというのが第一点でございます。   それから、もう一点は、通常は財産自体を設定者が譲渡あるいは売買したという場合を想定しますと、しかし、その場合に設定者には所有権はなく設定者留保権しか有していないという構成を採用するときには、それは権限がない、無権限の処分をしているということになるのか、それとも、通常の売買契約をしたというときにも、少なくとも設定者留保権の限りでは有効ということで、その設定者留保権を取得するということになるのかという点です。   それから、もう一点は即時取得の問題なのですけれども、もちろん登記を既にしているという場合には、即時取得の可能性はないということでいいのかとは思いますが、登記をしていない占有改定等にとどまっているという場合には依然、第三取得者には即時取得の可能性があると考えておいていいのかどうか、その場合は当然、売買契約をして所有権自体の譲渡契約をしている必要はあるわけですが、たとえ設定者留保権を超える部分については無権限であっても即時取得の可能性があるのかどうかという点ですが、以上3点、御確認ができればと思っております。よろしくお願いいたします。 ○笹井幹事 まず、1点目の有する権利についてですけれども、ここは片山委員からも御指摘がございましたように、この部会の中では、担保的な構成をするという考え方が強く、所有権が設定者に残っていて、譲渡担保権者はその担保権だけを把握しているという考え方が多かったかと思いますけれども、ここは再三申し上げておりますように、判例のような、債権担保の目的を達するために必要な範囲で所有権移転の効果が生ずるという考え方も否定するわけではありませんので、正に御指摘いただいたように、解釈論に委ねられるというところだろうと思います。純粋に担保的な構成を採れば、その有する権利というのは、担保の制約が付いているとはいえ、所有権だということになると思います。他方、所有権が一定の範囲で移転していて、設定者が有する権利とはいわゆる設定者留保権であるという捉え方もあり得るので、その両方の考え方が読めるように、ここは所有権とか書かずに、有する権利としたということでございます。   二つ目ですけれども、最終的にはここも解釈に委ねられるということになろうかと思いますけれども、まず、設定者が何かを売ったときに、何を売ったのか、どういった内容で契約が成立しているのかということについては、それぞれの意思表示の解釈によって確定されることだろうと思います。したがいまして、例えば、譲渡担保権が設定されているのだけれども、設定者留保権という部分に限って売ったのだと売主が考えていて、他方で買主の方の意思表示は、そうではなくて所有権全体を買ったのだと解される場合には、これもその大小関係をどういうふうに考えるかということにもよるのかもしれませんが、それぞれが売るという意思を表示したもの、買うという意思を表示したものがそもそも一致していないということであれば、意思表示は合致していないという余地もあると思います。他方で、そこは一応合致が認められるということになった場合には、どのような範囲で合致が認められるのかということになるのだと思います。その上で、それが所有権全体についてであると解される場合には、しかし実際には移転できるのは完全な所有権ではなく、設定者留保権、担保権の負担が付いたものだということになりますので、そこで不適合責任の問題が出てくるのだろうと考えております。逆に、設定者留保権の限度において合致が認められるのだということになれば、それはそういう契約になり、その場合には、売主といいますか設定者側は、設定者留保権を有効に移転することができますので、不適合責任のようなものは生じないということになるのではないかと考えております。   3番目に、即時取得は所有権全体について意思表示の合致があったと解される場合にだけ問題になるのだと思いますけれども、その場合に、そういった制約といいますか、目的物について設定者がその全体についての処分権限を持っていないのだということについて相手方が善意無過失の場合には、全体についての即時取得が認められる余地があるのではないかと思っております。 ○片山委員 どうもありがとうございます。大変明確になりました。 ○道垣内部会長 どういう回答が今、笹井さんから出されても、片山さんが立法後に解釈論としては別の意見を展開をされる可能性は十分にあると思いますので、解釈に委ねられる部分は大きいのだろうと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○阪口幹事 阪口です。11ページの元本の確定について少し確認をしたいと思います。12ページから13ページに掛けて、確定のメカニズムというか流れについて書かれているところの確認です。(14)ア(ウ)で、1週間から2週間に延びたのですけれども、この始期は根譲渡担保権者が差押え等を知ったときですので、差押えの瞬間ではないわけです。そうすると、知ったときが遅れることがあり得ます。この後の民事執行手続の方で、登記されている担保権者に対する催告のようなものがどこまでされるのかというところは、また別にあるのでしょうけれども、少なくとも占有改定であれば連絡が来ないでしょうから、知るときが遅れることはある。そうすると、この12ページから13ページで書かれているところの、確定しなくても剰余の判断をするかしないか、いや、でもやはり確定させて、みたいな議論がある中で、知ったときが遅いため元本未確定の状態のまま売却期日がやってくるということも一定程度発生し得るのではないかと思います。多くはないかもしれませんけれども。そこについては、この12ページ、13ページの記載というのは、確定しないとやはり剰余の判断はできないのだという趣旨まで含んでいるのかどうか、もしそうだとすると、どういう流れになるのかなということを疑問に思いまして、御質問させていただきました。 ○笹井幹事 十分に理解できたかどうか分からないのですけれども、おっしゃるとおり、知った時点が遅れたので、元本が確定しないまま競り売りなどの期日が来てしまうということはあり得るのだろうと思います。ここに書いてありますように、元本が確定しないと無剰余判断自体はできませんので、無剰余の判断をする段階においては元本が確定している必要があるのではないかと思いますけれども、競り売りの時点で必ずしも元本確定がしていないと競り売りができないということではないと理解をしておりました。 ○工藤関係官 補足をさせていただきますと、今お話があったとおり、元本が確定していないと困るのは主に剰余の有無を判断する場面かと思いますけれども、剰余の有無を判断しなければいけないのは第三者異議の訴えが提起されたときか、又は配当要求がされたときだろうと思っておりまして、第三者異議については、そもそも差押えがあったことを知らないと第三者異議を起こすことはできないということになり、第三者異議の中で剰余の有無を判断する時点ではさすがに2週間程度の期間は既に経過しているだろうということになるかと思います。また、配当要求がされた場合についても、配当要求をすることによっても元本が確定するという定めにしておりますので、いずれにしても剰余の有無が問題となる場面では元本は確定しているということになるのではないかと考えております。 ○阪口幹事 ありがとうございます。第三者異議を起こすといっても、本訴だけだったら間に合わないので、執行停止を取らなければいけないですよね。そうすると、訴訟提起と同時に執行停止申立てをして、剰余がないから第三者異議が認められるのだという主張立証をしなければいけない。ところが、非常に時間がない、差押えから1週間から1か月以内の売却期日、競り売り期日が定められ、その短い時間の中で、実はまだ訴訟提起の瞬間には元本が確定していないということもあり得る、もちろんそこは受訴裁判所の判断で、今日の時点ではまだ無剰余かどうか分からないけれども、あと2週間か時間がたったら確定するから、それはその段階では今の残高のままだったら剰余はないだろうということで執行停止の判断をされるかも分かりませんけれども、何か少しその流れがこれでいいのかどうかということを確認したかったのです。そこはもう裁判所が、今は実は剰余はあるかないか分からないけれども、少なくとも口頭弁論の終結時には確定していて、今の残高と同じであれば剰余はないから執行停止を出すと、こういう流れになりますかね。 ○笹井幹事 そうですね、この13ページの方にも少し言及しておりますけれども、元本確定していなくても、明らかに被担保債権の額というのが目的物の価額を上回っているというような場合には、裁判所として判断できるということもあろうかと思いますし、そうではない微妙な場面というのもあるかもしれませんが、その場合にはそこは裁判所の判断になるのではないかと思います。 ○阪口幹事 分かりました。 ○阿部幹事 私も今の阪口幹事と同じところ、根譲渡担保権の元本確定のところなのですが、資料12ページから13ページに掛けて、他の債権者の差押えによる元本確定について御検討いただいているかと思います。そこなのですけれども、最終的にそういう差押えに対して譲渡担保権者がとり得る手段としては、13ページの6行目以下で、無剰余であることが明らかな場合には迅速に配当要求による無剰余判断を得て差押えを取り消し、元本確定を覆滅させることができるというようなことが書かれているかと思います。   確かに配当要求をして無剰余状態を作り出せば、差押えは取り消されて元本確定は覆滅させられるということになるのかもしれませんが、やはり配当要求の本来の使い方ではないかなというのは少し気になりました。これはこの場面に限らず、譲渡担保権者が一般債権者の差押えに対抗していく場合一般の問題かもしれませんが、この部会でもずっと、第三者異議を認めながら他方で配当要求を認めて、配当要求を認めると無剰余取消しということもあり得るということで、無剰余取消しと第三者異議が並列するような感じになっていたと思うのですけれども、どうも無剰余取消しには譲渡担保権者が配当要求していくという前提があり、譲渡担保権者が配当要求をするというのは差押え手続に乗っていくという立場表明にほかならないわけで、それを対抗手段として使うというのはいかにも便宜的だなという、この気持ち悪さが残るかなと思いました。それだけ一言申し上げたいと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。気持ちは分かるという感じもしますけれども。かといって併存させて、配当要求したのだけれども、それを目的としたらいけないかというと、そうでもないような気もするけれども。目的、主観的な要件として、心から配当要求しようと思ったのに結果として無剰余でしたという場合と、無剰余になって取り消されるように配当要求しようと思った場合と、譲渡担保権者の主観によって分けて効果を考えるというのも結構難しいような感じもしますけれども。 ○阿部幹事 もちろん譲渡担保権者の主観によってその効果が変わるということは、あったら大混乱だと思いますので、そんなことはあり得ないとは思うのですけれども、譲渡担保権者のとり得る手段として、配当要求して無剰余状態を作り出すというのは、言わばからめ手みたいなところがあって、本来は第三者異議で止められるようにするというのが本筋かなというような感じがどうしてもしてしまうものですから、第三者異議で止めに行ったときに問題が生じないように整備をするという方が望ましいのかなというような気はしたということです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。それをどういうふうに処理をすることができるかということについては、もう少し事務局にも考えていただきますけれども、ずっとそういう形でやってきたところですので、なかなか難しいかもしれません。 ○横山委員 少し細かいことで、質問だけなのですけれども、7ページで物上代位のところで、譲渡担保としての登録がされた場合にどうするかというところの説明の部分についてお聞きしたいことがございます。ここのところで、まず、譲渡担保の公示というのは単に所有権等の移転が公示されるにすぎないことも多いからと。これは非常に分かりやすい理由だと思うのですけれども、その次に、譲渡担保契約と記載されることがあり得るとしても、しかしその公示の内容は、その財産について効力が及ぶ旨が明確に公示されている抵当権などとは異なると書いてあります。抵当権についても、物上代位されることが公示されるわけではないので、この説明の後半の部分はどういう意味なのかということが少し分かりませんでした。   抵当権についても、被担保債権が弁済されても抵当権の登記が残ることはありますので、抵当権の登記があるからといって抵当権が必ずあるということは限らないという点では同じかと思いました。そうしますと、結局この部分の説明というのは、譲渡担保については譲渡担保の内容が譲渡担保契約という形で必ず公示されるものではないから、だから登記を基準とすることはできないのだという説明になるのかというのが第1点です。   もしそうだとすると、仮に譲渡担保契約と公示された場合に、なお抵当権との類比で、それでもやはり差押えをしないと物上代位を優先できないのだという説明になるのかどうか、その部分でも抵当権となお違うということが、この後半の説明で本当にいえるのかということがよく分からなかったので、教えていただければと存じます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。答えていただくのですけれども、少し横山さんのお話を伺いながら思ったことがあるのです。単なる所有権の移転と書いてあって、譲渡担保とは分からない。でも、単なる所有権の移転と書いてあったら、物上代位対象債権の債権者は所有者として書かれている人であると差押え債権者は思いますね。 ○横山委員 思いますね。 ○道垣内部会長 思うと、そうすると、ますます。 ○横山委員 そうすると、ますますになってしまうかもしれませんけれども。 ○道垣内部会長 後半の話はよく分かるのですが、前半は分かるとおっしゃったところが、前半はどうして分かるんだろうかと。 ○横山委員 すみません、そこまで考えると、それも分からなくなるわけですけれども、少なくとも譲渡担保だということが分からないよねというレベルの話だとすると、そうかなと思ったということです。でも、おっしゃるように、だったら債権者は所有権者なのだから、なお、だろうとおっしゃれば、そのとおりかなと思います。そうするといよいよ、どうしてという感じがします。ありがとうございます。 ○道垣内部会長 すみません、私が更に問題を複雑化して事務局に投げるというオウン・ゴールですが、もしお答えがあれば、よろしくお願いいたします。 ○笹井幹事 意図としては多分、横山委員からもあったとおりかと思うのですけれども、元々(2)の規律について、物上代位権の行使と、目的債権を直接その目的とする債権質とか債権譲渡担保権とか、そういったものの優劣関係について、抵当権に基づく物上代位と先取特権に基づく物上代位の扱いに判例上の違いがあり、それをどう説明するのかという問題について、公示性の高さによって説明するのか、追及効の有無によって説明するのかが、この部会の中でも議論されてきたところだろうと思います。   追及効の有無によるという考え方もあり、そうだとすると、譲渡担保権については抵当権と同じように扱うべきだという御意見もあったわけですけれども、今までの流れの中でこの提案がされているのは、その公示性といいますか、目的債権について担保権を取得しようとする者にとって、その後の物上代位権の行使が予測されるかどうかというところで、そのおそれといいますか、その可能性が公示されているかどうかという観点から見ると、先取特権と同じように扱うべきだという考え方だったのだろうと思います。   御指摘の部分については、事務当局がこのように書いた意図といたしましては、登記・登録制度ごとに一つ一つ違っているかもしれませんけれども、登記・登録制度上、財産権の移転原因として譲渡担保契約が挙げられていたとしても、それが現に実行されて、譲渡担保権ではなくて完全な所有権になっているのか、それとも譲渡担保権のままで、その後の物上代位権の行使があり得るのかということが、その目的債権について担保権を取得しようとする者にとって明確に分かるわけではなく、その意味ではその公示性が必ずしも高くはないということで、先取特権と同じように扱ってはどうかという問題提起をしているということです。   抵当権であっても弁済後、抵当権の登記が抹消されていないという場合もあるだろうと言われれば、確かにおっしゃるとおりで、抵当権の登記があるからといって抵当権が必ず存在しているとは限らないというのは御指摘のとおりだろうと思います。ただ、一般的に言えば、不動産登記などにおいて、抵当権の場合には、抹消しなければ設定者にとってはその後の処分などに支障が出てきますので抹消するインセンティブもあるし、抹消するための手段も確保されていいます。   それに対して譲渡担保権の場合には、これももしかすると登記・登録制度上の工夫というか、その制度自体をいじることによって克服することができない問題ではないのかもしれませんけれども、帰属清算方式による私的実行がされた場合には、譲渡担保権者がそのまま所有権にはなるものの、抵当権を抹消するような形で譲渡担保の私的実行が終了して完全な所有権になっていますということ自体を公示する手段が譲渡担保権者側に与えられているわけではありません。   そういったところからすると、やはり違いというものがあるのではないか、抵当権の場合には、抵当権を抹消して完全な所有権であるということを示す手段も確保されているし、そのインセンティブもあるのに対して、譲渡担保権についてはそういった手段が確保されていないというところで、結局不十分なといいますか、物上代位権の行使が今後想定され得るのか、それとも想定されないのかということについての公示性に欠けるところがあって、その点の違いがあるのではないかということで、このような記載にしております。 ○道垣内部会長 しかし、譲渡担保権が実行されて、もはや帰属清算で終わっていたら、設定者が売買代金債権を持ったり、滅失に基づく損害賠償請求権を持ったりすることがあり得ないではないですか。そうすると、そういうふうになっているかもしれないから物上代位権が及ぶかどうか分からないというのではなくて、設定者が取得をしたときにどうなるかというのが差押え債権者に分かるかというところがポイントなのだから、今おっしゃったところは余り説明になっていないと思うのだけれども。   ただ、若干またこれから議論していただきますけれども、二つに分けて考える必要があって、一つは、差押えを基準にする、つまり自動車なんかでも、登録する名義のときを基準にするというのではなくて、差押えを基準とするというふうな、先取特権について判例法理が示しているようなことを全てのタイプの動産についてやるというのが妥当なのかどうなのかという問題と、それが妥当だとしても、ここの説明というのが適切なのかという問題は別だと思うのです。説明については、またこれから考えなければいけないところがあると思うのですが、まず妥当性について、皆さんのお考えを少しお伺いできればと思います。つまり、やはり物的編成主義の登録簿とかがあるものについては、抵当権の物上代位に関する判例と同じような立場を採った方がいいのではないかという御見解が皆さんに強いか、それとも、いや、やはり動産なのだから全部差押え基準でいいのではないのということなのか。それはいかがでしょうか。 ○片山委員 私自身がどう考えているかということでよいということであれば。私自身は、基本は差押えなのだと思っております。登記時基準を判例が採用してきたのは極めて限られた局面であって、抵当権について、しかも抵当権一般にまでそれがいえるのかどうかよく分からないところで、賃料債権の物上代位に関する判例が登記時基準ということをいったにすぎないと私自身は分析しておりまして、それは、抵当権の効力が賃料にも及んでいるということを前提としているからこそ、そのように解釈が可能となるのではないかと分析しております。それ以外の場面で広く担保権一般の物上代位の規律として、登記・登録が可能な場合には登記・登録時基準という判例法理が確立しているとまでいうことはできず、むしろ差押え時基準が原則なのではないかと考えております。このような状況において、ここで新しい規律を作るときに、広く一般的に登記時基準という形の規律を設けるとすると、それは、かなり踏み込んだ規定になってしまうのではないかと思っております。そういう理由から、差押え基準が妥当なのではないかと私自身は思っているところです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○横山委員 すみません、先ほど片山委員がおっしゃったこととほぼ重なるなと思ったので、重ねて申し上げる必要はないかと思いました。ほぼ同じでございます。 ○阪口幹事 阪口です。ここは弁護士会でも少し議論があったところではありますが、私自身は差押え基準でいいだろうと思います。片山先生、横山先生のお話に近いのかも分かりませんけれども、不動産の賃料に対する物上代位と比較した場合、車の場合だったら、賃料の物上代位はないとはいえませんけれども、余りなくて、実務的にあるとすれば、車が損傷した、事故で壊れてしまったという場合の保険金請求権だったり損害賠償請求権だったりというケースの方がむしろ多いのかなと思います。それは、いわゆる付加的物上代位か代替的物上代位かというのですかね、その議論にも近付いてきて、車が大破して物がなくなって、実は登記・登録も本当はもうなくなっているのと同じなのに、それを理由に及ぶのだという議論をしていいのかどうかということも考えられ、従前学説で言われた、本当は付加的な物上代位と代替的な物上代位は別ではないのかという議論も若干影響するように思います。それは、先ほども出たとおり不動産の賃料物上代位だけがかなり特殊で、そちらは政策的な意味も含めて登記基準でやりましたけれども、普通は差押え基準だろうし、かつ、車のような場合でも一般的に起きるようなことを考えたら、それは差押え基準の方が妥当なのではないのかと、そういう意見です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。今、差押え基準にすべきだという方が3人いらっしゃったのですが、いや、やはり登録がある物についてはその登録で物上代位権が公示されていると考えて、それで考えるべきではないかという方はいらっしゃいますか。 ○青木(則)幹事 物上代位一般については差押えでいいように思っておりますが、ただ、売却の場合少し特殊なのではないかというような意識を持っておりまして、というのは、判例でも売却に対する物上代位を認めた例というのは、トラストレシートのような、事例判決をベースにしており、初めから換価金を充当することを前提に担保権者が取っているというような、そういう使われ方をカバーする物上代位というふうなイメージがございまして、そういう使われ方での売却代金に対する物上代位を認める必要性がある事例を考えたときには、登記・登録を基礎としてもおかしくないのではないかと思っております。 ○道垣内部会長 少し伺いたいのですが、トラストレシートでも何でもいいのですけれども、そういうふうな場面のときに、逆に今度は登記・登録がなくても、その人を重んじなければいけないという話にはならないですかね。つまり、青木さんの今の御発言というのは、登記・登録になじむというか、それが用意されている動産についてはこうなのだという御発言になっているのか、それとも売却という場合のシチュエーションを考えたときの話としてそうおっしゃっているのか、登記・登録とかは無関係に。いずれなのですか。 ○青木(則)幹事 売却一般について物上代位が認められるかどうか自体がよく分からないところがございますので、その意味では認められる場合の想定ということを前提にお話をしたということになります。 ○道垣内部会長 その想定は、登記・登録がある場合ですか。 ○青木(則)幹事 ある場合になるのかなと思っておりました。 ○道垣内部会長 分かりました。 ○水津幹事 意見を2点申し上げます。  第1点は、抵当権に基づく物上代位の理解に関してです。先ほど取り上げられた滅失等のケースと賃貸のケースとを分けるべきであるという考え方は、前者の物上代位を後者の物上代位よりも強くすべきであるというものであって、後者の物上代位を前者の物上代位よりも強くすべきであるというものではない気がいたします。なぜなら、滅失等のケースは、賃貸のケースと異なり、原目的物を対象とする担保権がなくなってしまっているからです。言い換えると、賃貸のケースについて平成10年最判に反対して差押え時基準とする考え方を採ったときに、滅失等のケースについては登記時基準とすべきであるという考え方を採ることは、十分に考えられる一方で、賃貸のケースについて平成10年最判を維持して登記時基準とする考え方を採るときに、滅失等のケースについては差押え時基準とすべきであるという考え方を採ることは、考えにくいのではないかと思います。  第2点は、動産譲渡担保権に基づく物上代位について、物的編成主義による動産の登記・登録がされているときの扱いに関してです。これについては、仮に公示力の観点を中心に据えるのであれば、道垣内部会長がおっしゃったように、この場合には抵当権設定登記よりも大きな公示がされている以上、抵当権に基づく物上代位について登記時基準とする一方で、ここでは差押え時基準とするのは、首尾一貫しないものと考えられます。 ○道垣内部会長 今の水津さんの御発言って、公示力を基準とするのならばとおっしゃったのですが、登記・登録の公示力を基準にすべきであるという御主張も含んでいると考えてよろしいですか。 ○水津幹事 私個人の意見によれば、抵当権や動産譲渡担保権に基づく物上代位について、滅失等のケースに関しては、無効な登記・登録の公示力を問題とするのはナンセンスですし、賃貸のケースに関しても、原目的物である不動産・動産とその代わりである債権とでは公示の仕組みが異なります。したがって、原目的物についてされた担保権の登記・登録の公示力が代位目的債権に及ぶかどうかという問題を設定した上で、これが認められるときは、公示による対抗のルールに基づいて代位目的債権の譲渡等がされたときについても対抗要件具備時とすることが正当化されるという考え方は、そもそも問題の設定の仕方自体が適切でない気がいたします。  私の理解によれば、担保物権に基づく物上代位というのは、原目的物から代位目的債権への変形が生じたとしても、担保権の効力が原目的物から代位目的債権へと維持されることを、原則として認めるものです。担保権の効力は、担保権ごとに異なります。抵当権と動産譲渡担保権は、どちらについても追及効が認められていますから、抵当権に基づく物上代位と動産譲渡担保権に基づく物上代位については、代位目的債権の譲渡等がされたときについても対抗要件具備時とすることが、出発点となります。その上で、払渡し又は引渡し前の差押えが求められているのは、目的財産の変容に伴う利益状況の変化に対応するものと位置づけられます。言い換えると、代位目的債権の種類によっては、例外として差押え時基準とすべきではないかを、担保権ごとに検討することとなります。この理解によれば、登記・登録の公示力を考慮するとしても、公示による対抗というリジットなものではなく、あくまでここで述べた例外の一事情となるにとどまるものと考えられます。この考え方は、笹井幹事が先ほど追及効の観点に基づく考え方と呼ばれたものです。  この考え方によっても、既に述べたとおり、追及効はあくまで原則であって例外を設ける余地があります。そのため、基本的な発想は異なるものの、立法者はこの場合については例外を定めたと理解することによって現在の提案を説明することは、可能であると考えていました。また、この考え方によれば、滅失等のケースに限定して対抗要件具備時とすることも、滅失等のケースの利益状況を考慮してそのようにすべきであるとする評価を行い、その評価に基づいて原則を維持したものとして正当化することができます。  これに対し、公示力の観点を中心に据えると、滅失等のケースに限定して差押え時基準としないことを正当化するのは、占有改定による引渡しがされているときにもそのように扱われるとするにせよ、物的編成主義による動産の登記・登録がされているときについてのみそのように扱われるとするにせよ、いずれにせよ難しいものと考えられます。  以上の次第で、先の発言は、私の理解とは異なるものの、仮に公示力の観点を中心に据えるのであれば、物的編成主義による動産の登記・登録がされているときについては抵当権に基づく物上代位にそろえるほうが首尾一貫するであろう、という趣旨のものとなります。 ○道垣内部会長 分かりました。内部的な一貫性の問題ですね。 ○阿部幹事 先ほど、自動車が破損して損害保険金のようなものに物上代位できるかという場合を念頭に置いた話がありましたけれども、私はその場合に関してはやはり、譲渡担保権者が差し押さえようとしたら、既にその保険金債権について質権や譲渡担保権が設定されていましたというときに、そうした債権担保が差押えの前に設定されて対抗要件を備えているから直ちに負けてしまうというのは、少し譲渡担保権者に酷なのではないかと思いました。どういう場面を念頭に置くかということによって議論が変わってくるのかもしれませんが、少なくとも保険金に関しては、対抗要件レベルでも、譲渡担保権本体の対抗要件を基準として勝てる余地を認めないと、少しかわいそうではないかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。それで、水津さんのご意見にも関係するのだけれども、阿部さんの今のお考えというのは、登記・登録がある財産に限らず、滅失等の場合にそれに及んでいくという場合、言葉でいえば代替的な物上代位というのでしょうか、そういう場合については譲渡担保権者が勝つというふうにした方がバランスがとれているのではないのという御主張ですか、それとも、やはり登記・登録がポイントなのかしら。 ○阿部幹事 私は、今質問されていたのは登記・登録の場面に限定した話だと思ったので、その場面のみを念頭に置いていたのですけれども、今の価値判断は、考えてみると別に登記・登録とは余り関係ないかもしれません。 ○道垣内部会長 分かりました。   ほかにお考え、御意見はございませんでしょうか。 ○藤澤幹事 今の点について、少し別の観点からコメントを申し上げたいと思いました。どの財産にどのような担保権の効力が及んでいるのかはっきりしていることが望ましいという観点からすると、債権に担保権の効力が及んでいるのだとすれば、その債権について登記等の公示があることが一番明確であるとも考えられると思います。ですから、担保権の効力は、それについて担保権を設定して登記・登録を備えない限りは及ばない、差押えするまでは及ばないみたいな考え方を採っておくというのも一つの考え方ではないかと思います。   ただ、一方で少し難しいかもしれないと感じるのが、目的物が壊されてしまった場合の損害賠償請求権等について、あらかじめ担保権を設定し、その登記を備えるという実務があり得るのかという点です。壊す人が誰かというようなことも分からない状態で、壊れたときの損害賠償債権に担保権を設定することを個別に公示できるのかどうかというようなことがポイントになるのではないかと考えました。 ○道垣内部会長 それは無理でしょうね。   ほかに御意見はございませんでしょうか。結論としての実質論も分かれているのですが、実質論の方を考えて説明を書けばいいと思いますので、どのような判断をするのかというのが重要だろうと思います。そうなったときには、およそ代替的なものについては効力が及ぶと考えた方がいいのではないかという見解ももちろんあったわけでして、そこをどういうふうに考えるのかというのと、抵当権と比較したときの登記・登録の公示力といいますか、それがやはり不十分であると、それがどういうステータスか分からないとかいうふうな意味ではなくて、やはり不十分であると考えたら、また全部差押えで行こうということもあり得るのかもしれませんが。   ほかに何かございませんでしょうか。 ○井上委員 井上です。ありがとうございます。私も余り考えがまとまっていないのですけれども、この点についてはいずれもあり得るものの、個人的には、事務局の御提案を読んで、それでよいのではないかと思っておりました。ただ、今議論を伺っていて、登録時を基準にするという考え方もなるほどという点はあったのですが、いずれにしても明確にすることが最も重要なのだろうと思います。   そして、明確化するときに、もし事務局のような立場を採ることになったとすると、お尋ねしたい点が1点あって、例えば登録自動車について、譲渡担保でなく抵当権を設定した場合に、抵当権の物上代位について、不動産抵当権に関する判例の射程は及ばず、譲渡担保と同じように整理するということが、事務局の整理ないし理由付けからは素直なような気もするのですけれども、もしそうだとすると、そこは同様に明文で定める方が見通しがよくなるのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。確かに抵当権の物上代位に関して、その判例をどう読むかというのは、片山さんが御指摘になったように、いろいろ意見もあるところですが、では自動車抵当にその判例が及ぶのかという点については議論はないといっていいのだろうと思います。あるのかもしれませんが、少なくとも活発に議論がされているわけではないと思いまして、分からないというところがまずあります。そのときに、変えてもいいと考えられるのかという考え方が1個あって、やはり判例の射程はそれには及んでいないと考えるべきなのだというのも一つあり得るのですが、そのときには一定の説明が必要であろうという感じはします。井上さんがおっしゃったように、仮に譲渡担保についてそういうふうに差押え基準にするのだったらば、自動車抵当だってそうでしょうと、そうすると、それは明文が必要かどうかというのは微妙な感じがしますけれども、自動車抵当について不動産抵当とは違うということを前提にするということでいいのでしょうかということが、まだ更に問題としては残るということかなと思いますが。   様々な御意見があって、まだ全然収束しておりませんけれども、対立軸みたいなものはかなりはっきりしてきたのではないかと思います。したがって、もちろんその軸を基に、若干もう一度事務局にも整理していただいて、最終的な結論に持っていきたいと思いますが、意外に対立が先鋭でございますので、この間に、御意見を個別的に伺って調整をしていくということはあり得るかと思います。どちらにしたいという気が別に取り分け私にあるわけではございませんが、その点はよろしくお願いいたします。この辺りでいいかな、仕方がないね。   ほかに、第1から第2のところで、ございますか。 ○日比野委員 日比野です。10ページの(11)、譲渡又は一部譲渡の対抗要件のところです。この点、前回も少し意見させていただいて、最終的に登記に一元化するということで整理をされたということで、これはこれで分かりましたということなのですが、前回申し上げましたとおり、現在の制度下において一部譲渡を実施して、その対抗要件を占有改定で具備しているというケースは現実にあると理解しております。したがって、これは確認とお願いということなのですが、今回の法律が施行されたときに、施行前に占有改定で対抗要件を具備していたものが新法施行後どのような取扱いになるのかについて、もし現状の方向性が決まっていれば教えていただきたいですし、特に現時点で確定したものがないということであれば、その点が明確になるように今後の立法において御配慮いただきたいということになります。 ○笹井幹事 今ここで申し上げるだけの方針はございませんので、ただいまの御指摘を踏まえて検討していきたいと思います。 ○伊見委員 伊見でございます。私も同じ点でありまして、10の(11)の根譲渡担保権の譲渡又は一部譲渡の対抗要件についてでありますが、提案にあります登記に一元化していくという結論について賛成であります。譲渡が複数行われるといったことも考えられる中で、占有改定による対抗要件を備えた際に、その法律関係をどう整理していくのかということが大分複雑化してしまうということが懸念されるというのが理由の一つであります。加えまして、占有改定によって対抗要件を備えて譲渡をしたいとしたときの原根譲渡担保権についても、主には占有改定によって対抗要件を取得した担保権であるということが想定される中で、現在検討されております占有改定劣後ルールの下では、占有改定は他の方法により対抗要件を備えた担保権に劣後するということになりますので、そのような地位にある担保権を譲渡により譲り受けていくというような意味合いというのは、今後は薄らいでいくのではないかと思っております。そのために、そこに照準を合わせた規定を設けていく必要性というのは、今後は余り高くなくなっていくのではないかと理由として考えました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   第1、第2の点につきまして、ほかにございますか。何分にも範囲が広うございますので、後であのことを言うのを忘れていたとか、何か気が付いたというふうなことがございましたら適宜、第1、第2のところに戻っていただいても構いませんので、議事の中心自体は第3、第4の方に移ってもよろしゅうございますか。   それでは、部会資料の42の「第3 動産譲渡担保契約の効力」、「第4 集合動産譲渡担保契約の効力」の方を議論したいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 それでは、「第3 動産譲渡担保契約の効力」及び「第4 集合動産譲渡担保契約の効力」について御説明いたします。   第3のうち「4 妨害の停止の請求等」につきましては、11月の部会における様々な御指摘を踏まえて規律を修正したものとなります。具体的には、(1)において、設定者による妨害の停止等の請求を定めることに加えまして、(2)において、譲渡担保権者が第2、1に定める譲渡担保権の優先弁済権の行使を妨害され又は妨害されるおそれがあるときに、妨害の停止や妨害予防の請求をすることができる旨を定めるものとなります。請求の相手方について、第三者という文言だと、設定者が譲渡担保権者に対し、あるいは譲渡担保権者が設定者に対し、それぞれ請求することができないことになるのではないかといった御指摘もありましたので、このような点も踏まえて文言を修正しております。   第3の9(2)は、占有改定劣後ルールの潜脱への対応について、占有改定の方法で譲渡担保動産を引き渡した後、動産譲渡担保権設定者が譲渡担保動産を現に所持して占有したときは、占有改定で引渡しを受けたものとみなすという部会資料35の【案6.1.2】を採用することとしたものです。これは、この案が譲渡担保取引の安全を図るため外形的な占有状態から優劣を判断するという占有改定劣後ルールの趣旨に最も適合すると考えられることによるものです。   また、第3の「10 牽連性のある金銭債務を担保する動産譲渡担保権の順位の特例」の時的限界について、民法第330条の規定による第1順位の先取特権の成立時を除いております。これは、短期的に発生と消滅が生ずる可能性のある先取特権を時的限界とするのは適当ではないと考えられることによるものです。   第3の11(3)では、債権譲渡担保権に関する順位の変更や、根譲渡担保権の処分の債務者対抗要件と同様に、転動産譲渡担保の債務者等への対抗要件を、譲渡人又は譲受人による登記事項証明書の交付による通知又は債務者の承諾としております。   次に、「第4 集合動産譲渡担保契約の効力」について御説明いたします。   第4の1は、部会資料37-1についての部会の御指摘などを踏まえまして、従前の部会資料から表現上の修正をしております。まず、動産特定範囲を定めるに当たり、種類の指定が必須であり、それに加えて特定のための他の要素の指定が必要であるとの規律としているほか、その特定範囲を定めるに当たっては、将来加入動産も含むものとして定める必要があるものとしております。   第4の2(2)は、部会資料35、第6の2の規律を採用し、集合動産譲渡担保権の設定者と競合する他の動産担保権の設定者とが異なる場合には、例外的に加入時説によることとしております。   第4の3(3)は、部会資料37-1における部会の議論を踏まえた修正でございます。まず、(1)ただし書の、害することを知ってした処分がされた場合の第三者保護の規定が必要ではないかとの御指摘等がされておりましたことから、このような処分がされた場合についても、その処分の相手方が善意であるときは保護する旨の規律を(3)において修正して定めております。また、その際の要件としては、即時取得の規定に合わせる形でその表現ぶりを修正しております。   第4の4の補充義務につきましても、部会資料37-1の部会における議論を踏まえて修正したものとなります。部会では、補充義務を明確に定めることについて様々な御指摘を頂いたところでありまして、その義務の内容をより幅のある規範的な規律となるよう表現ぶりを修正したものとなります。   第3、第4についての説明は以上となります。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○青木(則)幹事 2か所ございますが、よろしいですか。   まず、1か所目は質問なのですが、16ページの9の、(2)は特に異存ございませんが、(1)の方は、占有改定劣後ルールが適用される相手方が、動産譲渡担保権の設定と動産質権の設定と担保権との競合だけということなのでしょうか。売却等は含まないということでよろしいでしょうか。それはどういう理由でそうなったのかということについて、ご説明が見当たらなかったので、確認させていただければと思います。それが、まず第1点でございます。 ○笹井幹事 売却を含まないというのは、担保権について占有改定がされ、その後同じものについて設定者が真正譲渡をして占有改定以外の方法で対抗要件を具備したときに、真正譲渡が優先するのか、それとも、それは占有改定劣後ルールが適用されないので、やはり担保権の負担付きでその所有権を取得するのかということでしょうか。   その点については、占有改定が劣後する相手方は、青木幹事が御指摘になった担保権者に限定されるということを考えております。ここは、二読のときに中間試案の前に一度御議論いただいたところではなかったかと思いますけれども、担保権者に限定して占有改定劣後ルール、当時は登記優先ルールといっていたかもしれませんけれども、担保権者との間でこのルールを適用するということが部会の中では多数を占めたのではないかと認識をしております。また、確かに真正譲渡を受けようとする者についても、担保権者と同様に、占有改定については第三者から見れば認識しにくいため、占有改定を劣後させるという考え方もあり得るとは思っていたのですけれども、そこはこれまでの占有改定劣後ルールといいますか、登記優先ルールについて、どちらかというと担保の分野に限って議論がされてきたというような経緯も踏まえて、今の提案としてはそのようになっているというところでございます。 ○青木(則)幹事 ありがとうございます。これは意見なのですが、確かに登記優先ルールのときはそういうふうな御議論であったかと思うのですが、それをあえて占有改定劣後ルールにしたというのは、関係するような対抗関係の事案を割と幅広く同じ理屈で説明できるというような趣旨で、あえて登記優先ではなく占有改定劣後ルールに改めたという経緯があったかと思います。その意味では、同じような対抗関係ということで、占有改定による譲渡担保と、その目的物の売却の関係を捉えることができるのであれば、場合によっては、登記優先ルールを質権との競合についての対抗関係の規範に及ぼすべく占有改定劣後ルールにしたのと同じ形で、平仄をとっていくということもありなのではないかと思った次第です。これは、まず、意見でございます。ありがとうございます。   別のところに移ってもよろしいでしょうか。 ○道垣内部会長 少しお待ちください。今のところにつきまして、何かほかの方の御意見はございますか。   御発言は差し当たっては、ないと考えてよろしゅうございますか。   それでは、別の点をお願いいたします。 ○青木(則)幹事 ありがとうございます。今度は後の方に参りまして、第4の2(2)の点でございますけれども、まず、これも最初に前提の質問をさせていただきたいと思います。このケースでは、CDの個別動産譲渡担保と、ABの集合動産譲渡担保の競合が問題になっておりますが、時間的にはABの集合動産譲渡担保の設定および登記の方が先で、その後に供給者Cが、Dのために個別動産譲渡担保に供した後に、集合動産譲渡担保の設定者Aに販売して加入していくというふうな流れなのかと思います。この二つの譲渡担保を、リンクはしていない、それぞれの譲渡担保設定時の所有者は違うけれども、対抗関係だというふうに2(2)の方で前提とされているように思うのですけれども、だとすると、ここで規定されている、集合動産譲渡担保の対抗関係だからといって、集合動産譲渡担保の登記時説は採りません、加入時説ですということ以外のほかのルールは適用されるのでしょうか。具体的に言うと、登記優先ルールは適用されるということを前提とされているのでしょうか。そこがまず気になって、それによってこの規定の意味が変わってくるかと思いますので、この点をまず教えていただければと思います。 ○笹井幹事 御指摘の点は、この事例ではなくて設定者が同じケースについては、何度か部会においても議論がされて、そのときは、事務当局の理解として、占有改定劣後ルールが適用されると申し上げたかと思います。設定者が違う場面について明示的に検討していたわけではありませんが、今御質問を伺って、先ほどの設定者が同じケースと同じように考えれば、ここでも登記優先ルールといいますか、占有改定劣後ルールが適用されることになるのではないかと思いました。 ○青木(則)幹事 分かりました。もしそうであるとすると、この規定は念のための規定というよりは、意味がある規定になるのかなと思います。前回これは本当に対抗関係ですかと申し上げたのですが、正直なところ、抵当権の事例をお示しいただいても何となくもやもやしておりました。抵当権の例も、例えば第1順位の優先権を取り合う関係だと考えれば、恐らく所有権の譲渡の競合でも同じことが起こると思います。そうしますと、こういう譲渡の競合でも、同じルールが当てはまるのかと思います。まず、二重譲渡がある、その二重譲渡で、登記で負けたほうの買主が転得者に転売をして、その転得者から再転得者に再転売する、その再転売の部分が集合動産譲渡担保に相当するという事案です。そういう所有権の例で考えた場合に、確かに現在は当該目的物について、登記で勝ったほうの買主と再転得者の方が争っている関係にあるとは思うのですが、競合しているからといって、勝ったほうの物権変動と転得者から再転得者への物権変動の競合だと、そこに対抗要件の規範が適用されるという説明は余りしないように思います。それよりは、やはり二重譲渡のところでその対抗関係の規律が適用されて、あとは無権利のように考えていくという方が一般的ではないのかと思っておりました。   ただ、もちろんここの問題は、先ほどの例でいいますと、転得者から再転得者のところに集合動産譲渡担保を含むかどうかによって、新法で作られるであろういろいろな対抗関係のプライオリティーの例外規定が適用されるかどうかという問題なわけですから、それを今回は21ページのところの規律で、本法では対抗関係だと考えるのだということを明言されたのかと思っております。   前回のご提案を拝見したときには、元々対抗関係ではないのではないかという観点から、あえて加入時説が適用されるということを規定するまでもないのではないかと申し上げました。けれども、更にそこに加えて、対抗関係とみなすことによって登記優先ルール等を適用していくことができるというのであれば、明文規定を置く意味があるように思うようになりました。たとえば、先ほど16ページの9についてお尋ねしましたように、供給者Cについて生じているDの個別動産譲渡担保とAへの売却の対抗関係では、Dの個別動産譲渡担保の対抗要件が占有改定であった場合でも、Aは買主ですので占有改定劣後ルールの適用はないということになるはずなのですけれども、それをCDとAB間の対抗関係だとみなすことにより、占有改定劣後ルールを適用できると考えていけば、占有改定による秘匿された担保権が集合動産譲渡担保に影響を与える可能性を少し削減できるというような意味で、メリットがあるのかなと思いました。   ただ、そうしますと、対抗関係だと定義付けておきながら、なぜ集合動産譲渡担保についての登記時説は適用されないのかが改めて問題になってくるかと思います。適用するべきでない理由は説明できそうに思っております。というのは、物権変動の順序からいうと、集合動産譲渡担保の方が先で、個別動産譲渡担保の方が後だということは確かですが、個別動産譲渡担保の設定があったときに、その当事者は、後にそれが既に生じている集合動産譲渡担保に対抗することになるということを推測できないから、だから集合動産譲渡担保の遡及的な登記時説の影響を受けるのは不当であろうと、こういう説明なのではないかと思います。もっとも、そのことは、正にそれが対抗関係にないことの説明になってしまっているのではないかとも思いまして、そうすると、対抗関係だとみなすことを前提とするルールは、先ほど申しましたように魅力的なのですが、理論的にうまく説明できるのか心配な部分もあるという風に考えている次第でございます。 ○道垣内部会長 私は途中で付いていけなくなりました。ですが、笹井さんはいかがでしょうか。 ○笹井幹事 21ページの23行目以下といいますか、21行目以下といいますか、ここで記載したケースでは、ある一つの特定の動産について集合動産譲渡担保権の目的にもなっており、かつまた個別の、元々Cが設定したDのための譲渡担保権の目的にもなっております。そうすると、その物について実行がされた場合に、その換価価値をどういう順番で配当していくのかということを考えないといけないという状況にはあるのかなと思っておりまして、そういう意味で、対抗関係というか、当該動産について担保権の順位の問題が生じてくるということなのだろうと思います。   そうすると、その順位の問題をどういうふうに解決するかというルールが必要になってきて、原則どおりであるとすると、対抗要件の先後によるということになるのですが、そこは修正する必要があるのではないかということで、この(2)を維持しております。対抗関係とは何かということについても様々な考え方があり得て、私の方で十分にそこは整理できていないのかもしれませんが、少なくともここで問題にしているのは、ある動産について二つの担保権が競合している場合に、その順位については規定が必要なのではないか、なにも特則がなければ総則部分に設けた、順位に関する原則的な規定が適用されてしまうので、それを修正するルールが必要ではないかと、そういう趣旨でございます。 ○青木(則)幹事 ありがとうございます。結論は、先週から申し上げておりますように加入時説でよいかと思っておりますし、対抗関係だとすると占有改定劣後ルールを適用できる点にも魅力を感じておりますが、これが本当に対抗関係かという説明については依然として疑問が残っております。それは立法なので問題がないということであれば、問題ないのかなと思っております。 ○片山委員 前回の議論のときも申し上げたかもしれませんが、対抗問題になるということで私自身は理解をしております。ただ、まず最初の物権変動は、この事例で乙機械に関していうと、Dへの譲渡担保権の設定が先になされて、そこで対抗要件の具備がなされていて、その後、Aの倉庫に搬入されているということですので、Aは言わば第三取得者的な地位に立った上で、その後、Bの集合動産譲渡担保権と競合することなるわけですから、先に登記がなされているDと、その後に倉庫への搬入によってBの担保権との間に競合が生じる場合、乙機械に関しては先に物権変動が生じて登記がなされているDが勝つということで対抗関係が処理されていいのではないかと思います。おそらく、それは要するに、Dの担保権との関係では、AがCからの第三取得的な地位に立つので、Cの優先順位が確保されるということなのかと考えた次第です。 ○阪口幹事 すみません、今の青木先生と片山先生のお話を伺っていて、分からなくなったので、質問をさせてください。この論点は、元々集合譲渡担保と個別譲渡担保の優劣という問題があり、登記時説と加入時説という議論がありました。ここ自身は今更議論する気はありません。ただ、青木先生の問題提起された、転得者が更に何かしたときの、元の二つの優劣は対抗関係なのか、若しくはそもそも占有改定劣後ルールはどうするのかと、ここの問題でもう一遍確認をしたいのです。   ここの例でいうと、まず①は全部飛ばしまして、②でCを設定者、Dを譲渡担保権者として乙機械に個別動産譲渡担保権を設定し、占有改定によって対抗要件を備える、こういう例をまず考えます。その後、③でCが乙機械を動産譲渡担保権の負担付きでAに真正譲渡しました、このときは、本当にAは担保権負担付きの所有権を得た状態ですよね。このAさんが後から登記で担保設定したというケースです。これも登記対占有改定で、占有改定の負けという適用対象になっているのでしょうか。第三取得者という、担保権負担付きの所有権しか来ていないよと一旦フィックスした状態のAさんから登記で譲渡担保設定を受けたBさんとの関係も登記対占有改定で登記の勝ちということになるのかという、多分そういう問題提起を青木先生がされたように思うのですが、僕の理解が間違っているかも分かりませんけれども、それって占有改定劣後ルールの適用対象なのでしょうかと、そういう質問です。 ○笹井幹事 それも適用対象であるという理解でした。 ○阪口幹事 それは、一人の人を起点に、片方は占有改定による譲渡担保、片方は登記の譲渡担保という場合に限らず、一旦第三取得者にそういう負担付きのものが移転した後でも、そういうことが起きるということなのですね。何かその段階で勝ち負けが一旦決まっているようなイメージがあります。Cを起点にしてDとAだけを見れば、ここで勝ち負けは決まっているわけです。真正譲渡を受けた人は、担保権の対抗要件具備が占有改定だとしても、負けますので、D対AでいうとDの勝ち、Aの負けは確定した。ところが、そこでAが登記でBに担保設定すると、急にBが勝つということになるということですね。 ○笹井幹事 AとDは元々立場が違う人で、AはDとの関係で設定者という地位になるわけですよね。AがDに対する関係で設定者という立場になり、更に、ここには出てこないといいますか、また別の人に対して更に事後的に別の担保権をもう1回設定する、それは同じ設定者が二つの担保権を設定したのと同じように考えていたのですが、そこで特定承継が生じると、一旦そこでリセットされるということなのでしょうか。 ○道垣内部会長 青木さんも手を挙げていらっしゃるので、青木さんに説明していただいた方がいいのですけれども、古くからの議論として、二重譲渡ってどうしてできるのかという問題があるわけですよね。そうしたときに、同じAとかBとかを使うとあれですが、ここは甲、乙も使ってしまっているので、Aで我慢して、AがBに譲渡したら、Aは空っぽではないかと、何でそれでAはCに二重譲渡して、不動産ですが、Cが登記を取ると勝つのですかという話のときに、いやいや、それはABの間では所有権の移転というのが起こっていますけれども、Aはなお完全な所有権をCに移転するということができる地位というのを持ち続けているのですと、いろいろな説明の仕方があるわけですけれども、そういうふうにして二重譲渡の論理的な可能性を説明するわけですよね。しかるに、今、阪口さんが出された例、多分そのことを青木さんも問題にされているのだと思うのですが、Aというのが担保権付きで所有権を得ているだけであって、所有権マイナス担保権であると、こういう状態にあるということになると、Aははなから完全な所有権をEに譲渡するということができない地位にあるわけで、そのときに救われるのが、Eが即時取得するということであれば救われるわけですけれども、対抗関係のレベルではEというのは救われないというのがルールを順番に適用していったときの結論ではないかと、そういうことを青木さんはおっしゃっていたのですかね。 ○笹井幹事 ただ、元々Cが、またA、B、Cがぐちゃぐちゃになったのかもしれないのですが。 ○道垣内部会長 黒板が欲しいですね。 ○笹井幹事 はい。元々起点になった最初の設定者が第1の譲渡担保権を設定して占有改定で対抗要件が具備され、次に真正譲渡し、更にその真正譲渡を受けた人が第2順位といいますか、更にその目的物に譲渡担保権を設定して登記がされたと、こういう事案ですけれども、ここはなぜ譲渡担保で所有権的構成を採りながら、後順位の譲渡担保権を設定することができるのかという、結局元々悩んでいた問題に帰着するのだろうと思います。   そこについては、平成18年最判も踏まえて、設定者が後順位の担保権を設定することができるということを前提にして議論が進められてきたと認識をしておりまして、起点となる最初の設定者が第1の譲渡担保権を設定し、対抗要件が具備された後も、しかし後順位の譲渡担保権を設定するだけの物権的な何らかの権利がまだ残っているということなのだと思います。   そうだとすると、それが真正譲渡によって次の人に移転するので、譲受人も後順位の譲渡担保権を設定することができる、そういうような権利をその物に持っている、その権利が真正譲渡によって完全に移転しただけなので、結局、真正譲渡を受けた人は、その権利に基づいて、その物について後順位の譲渡担保権を設定することができることになるのではないか、そのときに最初に設定された先順位の譲渡担保権と、真正譲渡を受けた人が設定した譲渡担保権との間の優先劣後関係は、それは同じ人が設定したのと同じようなルールが適用されることになるのではないかと思っております。なぜ最初に譲渡担保権を設定した人が後順位の譲渡担保権をなお設定することができるのかというのは、特に所有権的な構成を採った場合に、理論的にどのような説明するのかというのは工夫が必要な部分があるかもしれませんけれども、そこは平成18年最判を踏まえてそれができるということを前提にこれまで議論をしてきたのかなと認識しておりまして、そうだとすると、最初の設定者から真正譲渡を受けた者が後順位を設定した場合も、同じ設定者が複数の譲渡担保権を設定した場合と同じなのではないかと思っております。   元々譲渡担保権者は担保権しか取得していないのだと考えれば、それは抵当権などと同じなので、担保権を設定することができる所有権というものが真正譲渡されているだけですから、その真正譲渡を受けた人がまた譲渡担保権を設定することができて、前主が設定した譲渡担保権と真正譲渡を受けた人が設定する譲渡担保権の優劣関係については、これは原則的には担保権の順位の規定に従うということになるのではないかと思います。 ○道垣内部会長 ここで①から④の③というのは、Cが有している権利が全てAに移ってきたのだから、Cを被相続人としてAを相続人とするような相続が起こったのと同じ状況で、CイコールAという状態になったのだから、そこで二重譲渡とか、そういうふうな両方に担保権を設定するということができるという地位にあって、それで、登記優先ならば登記が勝つということになるのではないのというのが笹井さんの御説明、③というものをある種、相続みたいな形に見るという考え方なのだろうと思いますが、すみません、青木さんからずっと手が挙がっているにもかかわらず、飛ばしてこちらで議論してしまいまして、どうぞ。 ○青木(則)幹事 すみません、いろいろお話が進んでおりまして。まず、二重譲渡のとき本当に相続みたいになるのかなというのも、私自身は疑問に思っておりますので、どちらかというと阪口先生がおっしゃったような考え方をして、無権利のような、元々CからAには完全な権利は行くわけではないと思っていたものですから、そこは違うのかなと思います。   あと、担保の場合、後順位がいるということの、そのときの対抗関係の説明なのですけれども、それは後順位になるのは先順位の担保権を取り損ねたからではないのか、つまり先順位の担保権で負けるという現象は、所有権丸ごとについて負けるという現象と同じように説明されてきたのではないのかと思ったりもして、その結果として何が残っているのか、どういう後順位がいるのかというのはまた別の議論ですけれども、担保だからということで対抗関係の理屈が違うのかどうかという点についても少し、そういう説明はあるのかもしれませんが、何か耳慣れないような感じがしております。   それで、結局はCとAを同視していいのかどうかということなのですが、これは先ほど、ついていけないとお叱りを受けた部分に関連するのかと思います。この2(2)のルールによる処理の仕方・結論については、恐らく皆さんが一致しているのかと思います。つまり、議論されているケースは、CがDに個別動産譲渡担保を提供して、その目的物をCがAという、Bに対する集合動産譲渡担保設定者に供給したという事案であるかと思います。もしこのケースで、AB間の集合動産譲渡担保設定の効果と思われる、「集合動産譲渡担保なのだから、その登記のときを基準として、最初の引渡しないしは登記があれば、後から入ってくる加入物についても加入の先後を問わず対抗要件が及ぶ」という、要するにAB間の集合動産譲渡担保の対抗要件の効力が及ぶということになるのなら、この集合動産譲渡担保との対抗関係があるからだということになるのかと思うのですけれども、このケースではその対抗関係がないから、登記時説みたいな集合動産譲渡担保の対抗関係の規範がこのケースには及ばないということで、あるべき処理の仕方・結論に意見の一致が見られたではないかというような印象を持っておりました。   そうすると、想定されているケースでは、CDの個別動産譲渡担保とABの集合動産譲渡担保が交わっていない、つまり、時間順でいうと集合動産譲渡担保の設定が先で、登記も先で、その後にCDの個別動産譲渡担保というのが出てくるわけなのですけれども、CDの個別動産譲渡担保という後発の物権変動が出たときには、まさかその後にCがAに目的物を、在庫商品でもないのに売ってしまって、結果的にCとAが同一人物のように考えられて、Aを起点とするDBの対抗関係のようなことになるということは、恐らくDは全く想定できていないという状況があるのだと思います。このような利益状況があるがゆえに、やはりABの集合動産譲渡担保の特殊な効力は、少なくともDに及ぼすべきではないということになるのではないかと思っておりました。   対抗関係ではないことが、ご提案の規定上は対抗関係だとされているAB間の集合動産譲渡担保の登記時説による効力が及ばないということの正当化理由になっているのであれば、もう対抗関係でないということにしてしまった方がすなおではないかと思っております。   ただ、それとは別に、もし対抗関係だということがきちんと説得的に説明できて、そこで占有改定劣後説の方は適用されるというふうに処理すると決めるのであれば、そのことには占有改定劣後ルールとの関係で先ほど申しましたような別の意味・機能があるのかなと思っておりますので、そこは魅力に感じております。ただ、それは本当にそう言えるかどうか、前提となっている対抗関係だという説明のところが立法でうまく説明できているといえるのかどうかには依然として疑問を持っていると、こういうふうな次第です。 ○笹井幹事 対抗関係だという説明がされているというのは、どの部分のことをおっしゃっておりますでしょうか。 ○青木(則)幹事 例えば、登記優先であるとしても、この規定で排除される登記時説にせよ、いずれも集合動産譲渡担保とほかの譲渡担保との競合であるから初めて適用されるルールですよね。ということは結局、この例でいいますと、CDの個別動産譲渡担保のための物権変動と、AからBに対する集合動産譲渡担保の設定のための物権変動の競合が生じているという事案でなければ、それらのルールはいずれも適用されないということになるのかなと思っておりました。この二つが、CとAがずれているけれども、同一人物のように考えて、対抗関係でいいのだよねとおっしゃって、それを実際に2(2)で前提とされているということですので、この明文規定によってそういうことになるのだと思いますし、だとすれば、両方ともルールが本来適用されるはずが、片一方だけ、つまり登記時説の方だけは明文規定で排除されていると、こういうことになるのかなと思いました。それが本当にそうなのかというのは疑問を持っていますけれども、そういうふうに決めるのであれば、登記優先ルールが適用できるという点には魅力を感じるというような意見になります。 ○笹井幹事 対抗関係にあるという表現がここにぴったりくるのかどうかは、少し分からないのですけれども、ただ、CDとABが重なっていないという今の青木幹事の御指摘でも、①から④のケースの場合に乙機械についてBの担保権も及ぶということでよろしいのでしょうか。 ○青木(則)幹事 Bの担保権と競合するのが占有改定による対抗要件を具備した担保権であれば、及ぶことになるのではないでしょうか。というのは、加入時説を採り、占有改定による対抗要件を具備した担保権は集合動産譲渡担保への加入時に対抗要件を具備することになる場合であっても、登記優先説は適用できるという話がかつて、集合動産譲渡担保の設定者の加入前の処分について加入時説で行こうとしていたときの議論であったかと思いますので、同じように考えることになるのではないでしょうか。 ○笹井幹事 登記優先ルールが適用されるかどうかはともかくとして、事実として乙機械が特定された範囲に入った場合に、この乙機械についてBの担保権が及ぶことになるのではないかと思っていたのですけれども、そこはそのような理解でよろしいでしょうか。 ○青木(則)幹事 はい。 ○笹井幹事 私の理解としては、ここについて対抗関係にあるということを明示したというよりは、乙機械について今、一応共通の理解があるのではないかと思いましたけれども、Bの譲渡担保権の対象にもなっていると思います。そして、Dの譲渡担保権も残っているということだとすると、乙機械についてBが有している担保権、Dが有している担保権の両方が、競合という言葉を使っていいのかどうか分かりませんが、少なくとも乙機械について両方ともが担保権を持っているという状況にはなっています。そうすると、乙機械について実行がされて換価がされた場合のお金をどういうふうにBとDの間で分けるのかという問題は結局ここでも生ずるので、その順位を決めましょうというのが(2)というつもりでして、そういう意味では、理論的に対抗関係があるのかどうかということについて、ここで何かを決めたというつもりではありませんでした。   少し話が戻るかもしれませんが、私はこのCとAの間を相続のように考えるというふうに申し上げたつもりではなく、そういうふうな理解もあり得るのかもしれませんが、私自身は相続人の類推で考えるというよりは、元々起点となる者が一旦譲渡担保権を設定したとしても、なお同じ物に後順位の譲渡担保権を設定することができるという権利をその物に対して持っているので、その後順位の担保権を設定することができるという権利そのものが真正譲渡によって移転したので、その移転を受けた者が後順位の担保権を設定することができるという説明を申し上げたつもりで、そういう意味では、必ずしも相続と同じように考えるというつもりではございませんでした。 ○青木(則)幹事 確かにDの担保にも服するし、Bの担保にも服するということは、そうなのかと思います。ただ、別に優先規定を置かなくても、Cを起点とするDとAの対抗関係で結論は決まっていて、それをBが受け取っているだけだ、その結果として第1順位の優先権は取り損なっているから、自動的にBは後順位の担保権しか取れていない、こういうふうに考えることもできるのかなと思いまして、そうしますと、別に当たり前の話といいますか、C、A、Bといった物権変動が、そういうものなのだからということで説明できてしまうということで、特則という形のものは要らないのかなと思ったというのが、私の議論の出発点でした。ですので、そこは考え方が違うのですが、結論は変わりませんので、ご提案のような条文をおくのは、それはそれで一つの道なのかなと思います。 ○道垣内部会長 阿部さんからも手が挙がっているのですが、本当に皆さんがおっしゃっているケースが同じなのかというのが、伺っていてよく分からないのです。そうなりますと、結論として、①から④というのがあって、Cが個別動産譲渡担保権を設定したものがAによって取得されて甲倉庫に入れられたという場合のときに、それはDが勝つでしょうということに異論がないのだと仮定すると、少しケースをきちんと整理して、それに異論がないのであるならば、そこを分かりやすく書くという形をした方がよいと思います。どうも私は何か微妙に違うような事例を対象にしているような気がするのと、ある人とある人が競合してある人が勝つというのを広く対抗問題と呼ぶのか、それとも、占有改定劣後ルールというのがそもそも対抗要件の具備ではあるのだけれども後で負けてしまうというふうなことで、そういうふうな狭義というか伝統的な意味での対抗問題というのとは少しずれているところがあるにもかかわらず、対抗問題という言葉に引きずられて考えるのもどうかと思います。そこで、少しケースをもう一度整理して提示をするという形にさせていただければと思いますが。   阿部さん、いずれにせよ手が挙がっていますので、お願いします。 ○阿部幹事 今そうやってまとめていただいたところ、またひっくり返すようで恐縮なのですけれども、やはりこの問題は、集合対個別の場合の特例を設けるよりも、そもそも原則としての占有改定劣後ルールの射程を、同一の設定者に設定された担保権の間の優先劣後に限定することで処理した方がよいのではないかと思いました。これは担保権の設定者から譲受けを受けた第三取得者の法的地位に関わる問題であって、笹井幹事は先ほどから、第三取得者は設定者が持っていた権利を取得したのだから、設定者にできることは第三取得者もできてしかるべきだと、設定者が後から担保権を設定して、その担保権者が占有改定劣後ルールによってオーバーライドしていくことができるのだったら、同じような担保権を第三取得者も設定できていいのではないかと、そういう御発想だったと思うのですけれども、そもそも担保目的物の譲渡については、それを有効とするか無効にするかという議論もあったぐらいのものですので、設定者ができたことが第三取得者もできてしかるべきだとは当然にはいえないのではないかと、むしろ、設定者というのは担保の負担付きという状態で目的物を取得しているわけで、その担保権を追い越していくような担保権を設定するということはできないという発想の方が本来なのではないかと思いました。だから、資料16ページの9(1)の占有改定劣後ルールの射程の問題として議論するという方がいいのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。私が申し上げたことをひっくり返すというふうな意味を持っているわけではなくて、仮に皆さんがこういうふうな結論がいいよねというところで納得ができて、それをどういうふうにルール化するかといったときに、阿部さんがおっしゃったような占有改定劣後ルールというものの射程がこうであるというふうなことの定め方をすると、すっきりと全部がうまくいくというならば、それはそれで構わないわけです。特にルール作りの方法について何か私が意見を述べたわけではございませんので、特に対立関係にあるとか、そういうわけではなかろうと思います。 ○片山委員 どうもありがとうございます。私自身は、ここに書いてある説明は非常に分かりやすい説明ですので、それほど大きく変える必要はないかとは思っております。第三取得者的な地位と言ったことが誤解を招いているかもしれませんが、例えば、CとAがそれぞれ担保権を設定するというケースで、ここでは一方は集合動産譲渡担保ですが、その場合を一旦離れて、個別の譲渡担保権をまずCがDに設定して、その機械をAに譲渡した後、AがBに個別の譲渡担保権を設定するということになると、これは恐らく多くの人が対抗関係になると考えて、その上で、登記優先とするか、占有改定劣後とするかという問題は残りますが、その際に、最初が占有改定だったら後が登記であれば、登記が優先するということであってもいいのではないかと思います。そういう意味では、あくまで担保権の競合の場面として優劣関係を決定するということであり、それが対抗問題であるというのは、そのとおりなのだと思います。ここでは最初が集合動産譲渡担保だったので、多少の修正が必要だとしても、いずれにせよ対抗問題であることには変わりはないかなとは思っています。   ここの書きぶりは、2(1)では、そもそも集合動産譲渡担保の対抗要件具備について、一種の擬制をしているようなもので、最初にあった動産について全部占有改定をしたら、その後に搬入された動産についても対抗要件が及ぶというのも一種の擬制で、それを2で一部、擬制の範囲を変えるというだけのことですから、一貫した説明はこれで十分なされていると私自身は思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに。 ○藤澤幹事 規定の在り方に関するお話ではなくて、ただのコメントになってしまって大変申し訳ないのですけれども、抵当権の場合にどうかというところに少し立ち返ってみます。抵当権における追及力、第三取得者への効力は、登記の有無によって決まるという立て付けになっていて、さらに、抵当権間の順位も登記の順番で決まるというふうになっていて、本当はその果たす役割は違うものなのだけれども、全部登記の順番で決められるという、すごくきれいな体系が抵当権の中にあります。ところが今回、占有改定劣後ルールを置くことで、対抗要件の先後と優先順位とが変わり得るとしたときに、第三取得者への対抗の問題と担保権者間の優劣問題とが切り離されることになったのだと思うのです。それにもかかわらず、譲渡されて、更に譲受人が担保権を設定するというふうな場面が出てきたときに、また抵当権の理論に頼って、それを対抗問題として処理するべきなのかということが問題になっているのではないかと思うのです。   つまり、抵当権だって、第三取得者が抵当権の存在を認容した上で売買契約を締結した場合には、登記がなくたって、第三取得者が持っている権限というのは、抵当権がへこんだ部分、抵当権を認容した権利にすぎないという考え方も採り得るのだけれども、これを採ってこなかったということの理論的な問題が今見えているのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 それは、採ってこなかったのですか。不動産の売買のときに、抵当権が設定されていると説明を受けて、買主が、私のところで登記をしますよといって売買契約しても、抵当権は対抗できないですか。 ○藤澤幹事 いえ、私はそこで対抗できていたのではないかと思うのですけれども、その後に2番抵当権を設定した場合に、2番抵当権が勝ちますと考えてきたのではないかと思うのです。 ○道垣内部会長 そうですね。 ○藤澤幹事 そんな権限を本当は持っていないはずが、2番抵当権を設定した、それが1番になってしまうわけなのですけれども、1番抵当権なんて設定する権限を持っていなかったはずの人が1番抵当権を設定できてしまうのがおかしいのではないですかと言い出すと、今、青木さんが提起された問題と一緒の問題になるのかなと思ったという次第です。 ○道垣内部会長 そこには譲渡が絡まなくても、抵当権の設定者が抵当権設定契約を締結したのだけれども、登記をしないうちに別の人と抵当権設定契約をして、それで先に登記をすれば、その人が第1順位になるわけですよね。それはそうですよね、そこに占有改定による対抗みたいな問題が入ってくるから、話がもっとやっかいになってくるというのがこの話かもしれませんが。 ○大西委員 すみません、私は学者ではないので、シンプルにこれをどう考えたかということで申し上げると、普通に対抗問題と捉えました。確かに②のDへの担保権設定から③のAへの担保権の負担付きで真正譲渡をした場合に、少し①は置いておくとして、先ほど片山先生がおっしゃったように、Aが何も言わずに普通にBに担保権設定をする場合と、Bに担保権の負担付きであることを説明した上で担保権の設定を行った場合とは、法律構成が異なると思います。後者の場合は、対抗問題ではなく、Dが優先することを前提に、Bに対して後順位の担保権設定がなされるということになります。一方で、前者のように、そういう説明をせずにBに担保権設定を行った場合は、対抗問題と考えるべきだと思います。そうだとすると、①のケースは集合物譲渡担保権の設定なので、対象物が動産特定範囲に加入した時点で、自動的に当該対象物に担保権設定がされるものと擬制されますが、ここでの担保権設定は、Aが、担保権の負担があることについて何も言わずにBに担保権設定をした場合と同様に考えるべきなので、CからAへの真正譲渡による特定承継を挟むものの、DとBは対抗関係に立つものと考えます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。ルールの方ですが、整理の仕方も、片山さんがおっしゃったように、これが非常にいい整理の仕方になっているという考え方も十分にあり得ると思います。ただ、私が悪いのかもしれませんけれども、説明というのが、今までの部会資料を全部読んで、それに更に付け足された部分だけがここにあるものですから、コンセンサスの部分が必ずしもはっきりしていないというところがあるのではないかという気もします。したがって、最終的なルールの書き方が、今の事務局のお作りになっている原案というものを変えなければならないと今ここで決める必要は全然ないと思うのですけれども、やはりどういった場合にどうなるのかというふうな話をもう少し丁寧に書いて、ケースを1個だけ書くのではなくて、どこがケース3とケース4の違いなのかと、そこではどのルールが適用されることによってこうなるのかというふうなことをきちんと説明をするということが必要かなという気がいたしております。忘れないように一言だけ言いますと、甲倉庫に集合動産譲渡担保権を設定するというのはおかしいと思いますね、甲倉庫にある動産に設定するのだと思いますが、ともかくとして、少しそこら辺の整理をもう一度して、分かりやすさを考えて、それで皆さんにもう1回見ていただくということにさせていただければいうふうに思います。その間に青木さん等々、何人かの方に御意見を伺うということもあるかもしれませんので、そのときにはよろしく御協力いただければと思います。大体の対立点とか、そういうのは分かると思うのですが、対抗問題かどうかというふうな言い方で議論をするというのもそれほど生産的ではないという気がいたしますので、少し整理をもう一度していただければと思います。よろしいですかね。   ほかに、この第3、第4のところで、ございますか。 ○片山委員 第4の3の、22ページの集合動産譲渡担保権設定者による特定範囲所属動産の処分のところですが、基本的には通常の営業の範囲に限らず全て処分権限があるということを大前提として、一つは詐害的な処分は効力を生じない、それから権限範囲外の処分は効力を生じないという立て付けにして、しかし第三者の取引の安全を図るために、第三者の主観的な要件を問題として効力が及ぶかどうかということを整理していくという方向性については、皆さんの了解が得られているところだと思いますが、その際に、どのような第三者保護の法理を前提とするか、どのような文言にするかという点から、今回は即時取得になぞらえる形で、占有要件として平穏、公然、占有の開始を要件とする点については、果たしてそれでいいのか疑問を覚えております。   いろいろな考え方があって、どちらがよいとか悪いとかということではないのかもしれませんが、基本的には大原則として、処分権限があるので有効な処分であるという点を大前提とするならば、内部的な権限範囲の制限であるとか、あるいは詐害的な処分であるとかということについて知っている、悪意の場合には、例外的に、処分の効力が生じないということを主張・対抗できるという、そういう構造ではないかとは思っております。今回は、即時取得の要件を加えて、平穏、公然とか占有の取得、ここでまた占有改定は足りるのかどうかみたいな議論が当然出てくるということなのですけれども、そこまで要求する必要性はなく、場合によっては、第三者が占有取得をしていない場合にだってその保護が与えられてしかるべきではないかとは思っている次第です。   他方、先ほども申し上げたかもしれませんが、即時取得の規定自体は、前主の権利関係はどんなものであれ、取引行為に基づいて善意無過失で占有を取得したということであれば、192条の規定自体は必ず適用になるのだと思うのです。そうしますと、それとは別にここで192条の要件をこのような形で持ち込むことになりますと、192条の言わば特則をここに設けているかのような誤解も生まれるところかと思うのです。そうしますと、ここでは単に善意か悪意かを問題とする、そのような第三者保護の規定で十分ではないか、換言すれば、一種の内部制限を第三者に主張するというような仕組みでの第三者保護、それを規律にした方が妥当な規律になるのではないかと考えた次第でございます。御検討をよろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 それに対するレスポンスが何かありますか。 ○笹井幹事 この第三者保護を即時取得から説明するのか、今御指摘のありましたように、処分権限に対する内部的な制限からの第三者保護のように考えていくのかというのは、以前から2つの方向性からの説明があるのではないかという議論はありまして、必ずしも部会でこちらが多かった、少なかったとかいうことではないかとは思いますけれども、事務当局といたしましては、今まで余り明示的には書いていなかったのですけれども、現行法上も処分権限に制約があった場合でも即時取得が適用される場合があるとされていたことなどを参考にしながら、即時取得をベースにして、ただ、主観的な面で第三者を192条よりはより厚く保護するというものとして、ここで規定をしてはどうかという提案をしてまいりました。   そういう意味では、善意無過失の部分を善意にするというだけで、それ以外の部分については192条を踏襲するというつもりでしたし、それは、例えば現行法における集合動産譲渡担保の設定者がその目的物を譲渡した場合に、第三者がどのような要件で保護されるかといいますと、恐らく現行法上は、ほかに何も規定がないからということもあろうかと思いますけれども、即時取得で保護するしかないので、主観的な事情は別ですけれども、その仕組みを基本的に踏襲していくということでどうかと思っておりました。   処分権限についての内部的な制限からの保護というふうに考えるのか、即時取得によるのかというのは、そこの構成が大事というよりは、具体的に違いが出てくるのは、今御指摘がありましたように、現実に引渡しというか、処分を受けた側が占有を始める必要があるかどうかというところになってくるのだと思います。   したがって、そこは法律構成の問題というよりは、実質的にどういう要件で第三者が保護されるべきなのかというところなのかなと思っておりますので、その点は御議論いただければとは思います。立法ですので、現行法が全てということではありませんけれども、現状、保護されるとすれば即時取得だという仕組みになるだろうと思いますし、そうだとすると、占有の取得といいますか、処分を受けた側が占有を始めないと保護されないというところは、現行法上はそういうふうになっているのだろうと思います。そうすると、その部分についてもかなり大きく変えていくのか、そこまでの必要があるかどうかということかなと思いますけれども、そういったところを踏まえて、事務当局としては即時取得を基本的にはベースにして、要件を少し緩和していくということでどうかという御提案をしているということでございます。 ○道垣内部会長 それに対して、善意だけでいいのではないかというのが片山さんのお考えだということなのですけれども、阪口さん、大西さんと手が挙がっているのですが、今のところに関係しますか、しませんか。別のところですか。 ○大西委員 大西は別のところでございます。 ○阪口幹事 阪口はここのところと、別のところです。 ○道垣内部会長 では、ここについて何かほかの方の御意見がございますか。 ○阪口幹事 阪口ですが、ここの部分に関して、いいですか。 ○道垣内部会長 お願いします。 ○阪口幹事 今の22ページのところで、元々私は片山先生と同じ意見です。同じ意見なのですが、仮にこの提案されている内容だとしたときの確認をしたくて発言しました。この性質については、何度も議論があるところですけれども、今回、平穏かつ公然で占有を始めて善意という三つの要件が課されるのですけれども、これは全て186条で推定されるということを前提にしているのかという確認をしたい。平穏、公然は多分、推定されるのだろうと思いますが、他方、ここでいっている善意は所有者の外観ではない世界なのだけれども、でも、それも含めて推定されるということなのか、事務局のお考えを確認したいと思います。 ○笹井幹事 ここは、今申し上げましたように、基本的にはこういった権限が欠けていた場合についても即時取得が適用され得るということを前提にした上で、192条の善意無過失という要件を善意であればよいというように、第三者を保護する方向に修正しようというものですので、それ以外の部分は192条と同じだと思います。そうすると、192条における善意の意味というのは、相手方の処分権があるということを信じていたというふうにいわれていますので、そこは192条と同じであるということを前提にした上で、186条で平穏、公然と併せて推定されるということになるのではないかと思っておりました。 ○阪口幹事 推定されるということで、かつ、第38回会議で、ここの善意は重過失はどう扱いますかと聞いたときに、どちらかというと重過失は含まない、重過失があっても善意ですと、悪意とはみなしませんというお答えがあって、そうだとすると今回の御提案は、僕は少し理論的にはどうかと思う点もあるけれども、ただ、一つのバランスなのかなと思っています。重過失があっても保護されます、とにかく占有を移転したら全部推定されて、かつ重過失があっても勝てるのだったら、かなりの場合に買主は勝つわけですよね、一言で言うと。そうすると、そういう線の引き方もあるのかなとも思って、少し今の推定とか無重過失とか、その辺との全体のバランスとして、一つの仕組みなのかなとも思っているというところです。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに、この点につきまして何か御意見はございますか。バランスをとれているのではないのと阪口さんがおっしゃるところは、それはそれで理解できるのですけれども、そうか、権限がないということを前提としながらですかね、片山さんのお気持ちとしてはやはり、仮にバランスをとるために占有取得が必要であるとしても、それほど192条に似せて書くなよということでしょうか。 ○片山委員 それもあるかもしれませんが、流動している在庫の処分で、原則全部処分できるというルールになっているわけですから、取引をすれば、それによって、善意であればというか、逆に悪意でない限りは、権利を取得できるというぐらいの取引の安全を徹底して保護してもいいところではないか思いますので、そもそも、無権限者からの取得だから、占有取得の効果として権利を取得できるのだというのが、192条の基本にある考え方ですから、敢えて、それを持ち出してきて保護しなければいけないケースではないように感じています。在庫の処分ですから、原則は権限があって自由に処分できるという点を出発点とすべきだと思います。 ○道垣内部会長 分かりました。   この点につきまして、ほかにございますか。最終的な案になるまでにはもう少し検討していただきたいと事務局にもお願いをしたいと思いますが、善意だけにしようという片山さんに近いというお考えの方はほかにいらっしゃいますか。原案というのが、即時取得の問題だよねというところから出発して、それを緩和するという形になっているのに対して、やはり内部的な処分権限の制約の問題だよねとして、善意で足りるのではないですかという、あるいは片山さんがおっしゃるように、在庫商品等を購入するといったときに、善意で売買契約を締結したというのだったらば、その権利は認めてあげないといろいろよくないのではないのという考え方は、それは十分あると思うのですが、ほかの方は特にございませんか、今のところは。どちらに賛成ということではないのかもしれませんが。 ○阿部幹事 私も、やはり即時取得をベースにしなくてもいいのではないかという考えは前から持っておりますので、占有を始めたという要件までは要らないのではないかという気はしています。仮に占有を要求するような規定が設けられたとしても、解釈論として占有を要求しないような、善意者保護をこの条文の外で展開するという余地はあるかなと思いましたけれども、いずれにせよ占有を要求しない方法もあるかなと思いました。 ○道垣内部会長 占有を始めたと書いているのに、占有がなくてもいいという解釈論を立てるのですか。 ○阿部幹事 この規定は即時取得に関する特則を定めたもので、それ以外に解釈によって別の原理で保護するということは否定されていないと、そういう解釈論はあるかなと思いました。 ○道垣内部会長 そうかなあ、まあいいけれども。分かりました。   では、何人かの方から御意見いただいたということで、別の論点に移りたいと思います。 ○大西委員 私は、22から23ページの4のところについてコメントします。前回から比べて、特定範囲所属動産の総体としての価値を、集合動産譲渡担保権を害しないと認められる範囲ということを書き加えられていて、これ自体の考え方はよく理解できるのですが、これが加わることによって、例えば、100の価値の集合物動産が担保対象物であったとして、被担保債権が50だった場合に、50の価値を下回った場合に害するという評価になるのか、そうではなく、集合物動産の場合100の価値時期によって変わり得るのだから、やはり100を下回った場合を害すると捉えるのか、疑問となります。もちろん、ここには個別判断だと書かれてはいるのですが、今回の記載を前提とすると、集合動産譲渡担保権を害しないと認められる範囲についての実際の評価はどういうふうに考えたらいいのかなと思いました。いかがでしょうか。 ○笹井幹事 ここでは必ずしも、被担保債権を下回らなければ幾らだって減らしてオーケーだということではなくて、例えば、その時点での被担保債権は50だったかもしれませんけれども、根担保であるとすれば、その後の融資額の変動もありますし担保目的財産の価値が100ぐらいあるということを前提として当事者としては考えていたということもあり得ると思いますので、被担保債権が取れる状況であれば、害しないと認められる範囲を超えてはいないということにはならないのではないかとは思います。   50被担保債権で100取っているというときに、どれぐらいがこれで認められた範囲なのかというのは、もちろん最終的には個別判断にはなってきますけれども、元々は通常の事業の範囲を念頭に置いていたということもありまして、当事者が担保権設定契約を締結したときに、どういう事業をどういう期待の下で担保の目的として取っているのかということが考慮されるのかなと思います。 ○大西委員 ありがとうございます。そういうお答えだとは思うのですが、私が少し懸念するのは、補充義務が設定者の義務として定められている以上、設定者がこの条文を見て、どういう行動を取ったらいいのかよく分からないような規定だと、実務上支障をきたすのではないかと思った次第です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかにございませんでしょうか。 ○松下委員 補充義務のところなのですけれども、資料では義務の方から書いてありますが、権利の方から見るとどういう権利になるのかということです。取りあえず考えられるのは、不当に減少しているときに、それを差し止めるという差止め請求権は出てくるのかなと思うのですが、さらに、具体的な券面額のある補充請求権みたいなものもここで考えているのでしょうか、というのが質問です。   今の質問は、後の方で出てくる倒産との関係で、補充義務を認めると法律関係が曖昧になるという記載があったので、それとの関係もあって、今あらかじめここで、ここでは何を考えているのかということをお聞きする次第です。 ○笹井幹事 担保の目的は動産とかそういったものであり、しかも、何か特定の物ではなくて、集合物として取っているということですので、例えばリンゴ100を買い足しなさいとか、そういった実体的な請求権があって判決を得るということは、実体的にそういったものが絶対観念できないかというと、そういうわけではないのかもしれませんけれども、現実に担保権者が設定者に対してそういう判決を取って、例えば間接強制みたいな形で強制執行していくということは、余り想定できないのではないかと思います。   ですので、実際にそういう補充義務というものが害されるような場面、その補充義務が問題になる前提として、例えば不当な処分がされるということになれば、今、松下委員から御指摘がありましたように、差止めが問題になってくるだろうと思いますし、それが実際に行われてしまい、その在庫が大きく減っている中で、この補充義務に沿った形で設定者が対応できない場合には、現実にあり得る対応策としては、やはり期限の利益を喪失させた上で実行していくということになるのではないかと思います。 ○道垣内部会長 よろしいですか。 ○阪口幹事 細かいことがたくさんあるのですけれども、全部言えばいいですか、それとも、一つ一つ分けて言った方がいいですか。 ○道垣内部会長 それは、少しやってみてください。 ○阪口幹事 やってみましょう。   先に補充義務が出たので、補充義務のところから。まず、22ページのタイトルですが、これは補充義務というタイトルでない方がいいのかなとも思います。内容がかなりふわっとした義務になったので、この補充義務という言葉がいいのかどうかというのが一つありますという、これは形式な話です。   その続きで言うと、23ページの5のところが、変更点はないという説明になっているのですけれども、中身では、4の義務を履行することができると認められる間は、という文言になっていて、4の方が変わっているので、つまり5の方の実質が変わっているのだろうと思います。いつになったらこの集合動産譲渡担保権の物上代位ができるのかという規範が、4が緩和されたことによって実質変わっているのだろうと思うのですけれども、結論としては、4とセットでこういうことを御提案されているという趣旨でいいですかという確認になります。   ここが補充義務絡みの細かいことですけれども、ほかのところへ行っていいでしょうか。 ○道垣内部会長 ここまでで、事務局の方からございましたら、お願いします。 ○笹井幹事 タイトルのところは、御指摘としては承りました。5のところは4とセットで、4も実質として余り変えるつもりはなかったのですけれども、そういう意味では5の内容というか、いつになったら物上代位権を行使することができるかを4に係らしめているという意味では、御理解のとおりだと思います。 ○道垣内部会長 では、続けてお願いします。 ○阪口幹事 戻りまして、あと4点になるのかな、すみません。まず、14ページの第3の1のところです。ゴシック体の部分の別段の定めがある場合についての確認です。これは以前、抵当権と同じような条文になっているけれども、抵当権の場合は不動産登記法88条がありますねと、今回の立法だとそれに類するものは作りませんと、だけれども、それでいいですかという質問をさせていただいて、もし支障があれば言ってくださいと第12回会議のときに笹井さんがおっしゃった。その後、中間試案の補足説明では、ここで問題となるのは結局、処分清算の競落人というか買受人で、その人は善意取得で保護されるから、まあいいよねというような説明が載っていました。   改めて考えたときに、例えば転譲渡担保権者のような人は、その人に現実に占有を移すことはないだろうから、恐らく192条の救済はないけれども、それはもうしようがないよねということでいいのかどうかの確認、今の帰結なら多分そうなるのだろうと思うのですけれども、そこの確認が1点です。ここで区切りましょうか。 ○笹井幹事 その議論を今すぐには思い出せないのですけれども、具体的にどういう事案を念頭に置かれているのでしたか。 ○道垣内部会長 ただし書があって範囲が制約されているのだけれども、転譲渡担保権者がそれを知らなかったときに、転譲渡担保権者は保護されるのかという話だろうと思うのですが、保護されないと思いますよ。というのは、被担保債権であれ何であれ、転担保権者というのは元の担保権に完全に依存するという性格を持っていますから、善意であろうが、つまり被担保債権が、例えば100万しかないのに1,000万円であると何か勘違いしたって、そこには保護されるという法理は存在しないと思います。 ○笹井幹事 そこは部会長の御指摘のとおりだと思います。 ○阪口幹事 分かりました。結論はいいのですけれども、抵当権のときは不動産登記法があるから、そこが対抗問題で処理されると、今回はもう登記も何もなくても、言わば当然対抗になるという、そこの仕組みが変わるので、動産でこんなことがどれだけ起きるのかという問題はあるとは思いますけれども、一応そこの確認がしたかったということです。   では、次のところへ行っていいですかね。次、14ページの妨害の停止の請求等のまず一つ目は、設定者の方で、(1)についてア、イ、ウとあるのです。ウの表現が、担保権設定者以外の者が占有しているときという書き方になっているのですけれども、この表現でいいのでしょうか。占有訴権の表現だったら、占有が奪われたときとなっているので、それとの対比です。ここの案だと、設定者以外の者が占有しているときはまず請求できるとなり、それも15ページの説明との関係でいうと、譲渡担保権の種類によっては、担保権者が占有することが合理的な一定の譲渡担保の場合でも、占有回収自身はできるけれども、あとは契約内容で防ぐというみたいな、何か少し構造が逆のような気もして、(1)ウの表現はこれでいいのでしょうかということです。解釈で補えるので、結論はいいのですけれども、表現が決め打ちすぎではないかという意見が弁護士会であったので、そこの点はいかがでしょうか。 ○笹井幹事 ここは民法605条の4第2号を参照にして記載をしておりまして、実質のところ余り争いがないと思うのですけれども、表現については御指摘も踏まえて、また考えたいと思います。 ○道垣内部会長 占有訴権の場合には、権限がなくても占有があるということによって、例えば返還請求が認められる要件は何なのかという形で、侵奪という要件が課されているのに対して、ここは所有権が、例えば譲渡担保権者に移っているならば、譲渡担保権設定者は占有訴権しか持たないのですか、それとも何らかの物権的な権利を持って物権的請求権を行使できるのですかという問題について、何らかの物権的な権利を持っていて物権的な請求ができますよという形で書いているのが1のア、イ、ウなのだろうと思うのです。そうなると、占有訴権との間のバランスというのは問題にならなくて、同じように、本当にできるのですかということが疑問を差し挟む余地がないではない賃貸借の場合の605条の4に倣うという形にしている。こういうことかなと思いますが。 ○阪口幹事 ありがとうございます。よく分かりました。   続けて、今度は4の(2)の担保権者の方の請求権のところです。何回か前に、抵当権に関する平成17年判例の理解との兼ね合いで少し議論があったと思うのですけれども、あそこでいわれているような場合、設定者が適切な管理をしてくれないような場合には、担保権者の方に、俺のところに持ってこいという請求権自身は、これは別に排斥しているものでも何でもなく、それはそれで解釈として残っていますねと、こういう前提でこの15ページの説明が書かれているという理解でよろしいでしょうか。 ○笹井幹事 はい、そこの余地は、解釈論として否定するものではございません。 ○阪口幹事 はい、了解しました。確認ばかりで申し訳ないです。   次に行かせていただいて、16ページから17ページの占有改定劣後ルールの潜脱への対応のところです。元々は潜脱への対応の話だったのだけれども、今回のご提案で行くと、別に潜脱対応に限らず、全てこういうルールで行きましょうということになります。例えば、指図による占有移転で対抗要件具備していましたと、ところがその保管していた人が設定者に返しましたということも、状況の変化によって、あり得るわけですけれども、それでもここでいう占有改定に戻した以上は、それはもう仕方がないよねと、16から17ページの記載はこういうルールを想定していると、そういう理解でよろしいでしょうか。 ○笹井幹事 そうですね、指図による占有移転の場合には御指摘のとおりだろうと思います。そういう意味では、元々すごく悪い意図を持って潜脱してやろうという場面だけに限定されるものではないというのは、御指摘のとおりだと思います。確かに指図による占有移転の場合には、本来的な返還時期が来て返ってきたということもあるのかもしれません。しかし、やはり(2)は、中心的には一旦占有の手を離れたものをもう1回取り戻すということですので、中心的には潜脱的な場面に対応していくというルールであり、それが主な目的になるのかなとは理解をしておりますが、確かにそれ以外の場面もあるではないかと言われれば、御指摘のとおりだとは思います。 ○阪口幹事 割り切りの世界で、今回のように、そう決めてしまうことはあると思うのです。そうだとすると、結局指図による占有移転で対抗要件を具備した担保権者は実は安心できない、結局は登記しておかないといかんというベクトルが働くのだろうなと思います。それも一つの割り切りですから、別に今回のものに反対するつもりはないのですけれども、そこの確認です。 ○道垣内部会長 ほかに何かございませんでしょうか。   かなり時間が経過しておりまして、少し休まないといけないかなと思います。3、4が確実に終わったとまで言うつもりはありませんで、再開のときに御発言いただいても結構ですけれども、今、4時5分ですので、4時20分まで一旦休憩をここで取らせていただければと思います。4時20分にはお戻りいただければと思います。           (休     憩) ○道垣内部会長 それでは、16時20分になりましたので、再開したいと思います。   先ほど申し上げましたように、第3、第4のところはぶちっと切ってしまったという面がありますので、第3、第4のところで御発言がございましたら、更に伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。それでは、議事としては第5、第6の方に移らせていただければと思います。部会資料42の「第5 債権譲渡担保契約の効力」、「第6 集合債権譲渡担保契約の効力」について議論を行います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 それでは、「第5 債権譲渡担保契約の効力」及び「第6 集合債権譲渡担保契約の効力」につきまして御説明いたします。   第5につきましては、いずれも表現の修正のみとなります。動産利用権に関する規律につきましては、前回の部会の議論を踏まえて、更なる検討が必要となるところではございますが、今回の部会資料では差し当たり、部会資料40第1の1から3までの規律をそれぞれの該当箇所において設けることとしております。第5の「6 動産利用権を目的とする債権譲渡担保権の対抗要件の特例」は、部会資料40第1の1に相当する規律となります。   第6の1は、集合債権に関する設定者の取立権限に関する規律でございまして、部会資料35の【案1.2】に沿って規律を設けることとするものでございます。   説明は以上となります。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。それでは、これらの点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。第6の1とも関わってきますし、それから、第9の方になってしまうのですけれども、実行のところにも関係はするのですが、25ページの第6の1のところですと、基本的に集合債権譲渡担保の場合には設定者に債権の取立権があるということを明記していただいたということになります。他方、実行の局面ですと、34ページの第9のところは、これは恐らく集合も個別も関係なく、まずは譲渡担保権者に取立権があると、それ以前も、2のところですけれども、前回までは、通知をなした場合については、弁済受領権限があるというような説明の仕方をされていたのと記憶しております。   そうしますと、集合動産譲渡担保も実行に至らない前に設定者のところに取立権はあるということなのですが、同時に債務者対抗要件といいますか、通知がなされているという場合については、第三債務者としては譲渡担保権者に弁済をすることも可能なのかどうかという点を確認できればと思いました。一応、第6の1では取立権限は設定者にあるということですけれども、同時に通知がなされている場合には譲渡担保権者に弁済受領権限があるということになるのかと思いましたので、それは弁済をしたら有効になるということでよろしかったのでしょうか。 ○笹井幹事 おっしゃるとおり、弁済受領権限があるということですので、第三債務者が担保権者に直接払った場合には、それは有効な弁済として目的債権が消滅すると考えております。 ○片山委員 分かりました。そうしますと、そのことを実行のところには書いているということになりますよね、恐らく。実行の第34ページの第9の1(2)は、それを書いているということですね。 ○笹井幹事 そうですね。 ○片山委員 他方、実行となりますと被担保債権の弁済期が到来した後の話を原則として想定していますが、特に集合債権の場合には、実行に至らない前に通知がなされれば受領権限が譲渡担保権者にあるのだということをどこかに書いておく必要があるのではないかと思ったのです。   2項の方の確定日付ある通知が対抗要件になるという点は、きちんと明記されていますが、第1項で弁済受領権限が発生するということをどこにも書いていないというか、むしろこの第6に入る前に、第5の債権譲渡担保契約の効力の中で、通知がなされれば弁済受領権限が発生するという、ある意味当たり前のこととして、467条の1項が適用になるということをどこかで明記しておく必要があるのかなと思った次第です。いかがでしょうか。 ○笹井幹事 今おっしゃったのは、467条1項の適用があるというか、被担保債権の債務不履行前であっても、同じように弁済受領権限が担保権者にあるということをどこかに書く必要があるのではないかということでよかったでしょうか。 ○片山委員 そういうことです。第6の1で取立権限が設定者にあるということが出てきますと設定者だけしか取り立てられないように、私も前回そのように少し勘違いをしていましたが、そう思われてしまうのではないかという点です。受領権限が通知で発生するということがどこかに書かれていれば、その迷いがなくなって明解なのかなと思いまして、それは実行の問題というよりも、むしろ集合、個別を問わず債権譲渡担保契約の効力、第5の問題の一つなのかなと思った次第です。 ○笹井幹事 分かりました、少し検討してみます。 ○道垣内部会長 これはしかし、書いていないというのは、定めがあるときは設定者が取り立てることができるという話だから、その背後には、譲渡担保権者は取り立てることができるというのがあるという、だから書かないということなの。 ○笹井幹事 そうですね、基本的には譲渡担保権の設定は担保の目的ではありますが、譲渡は譲渡ですので、そういう意味では467条とかの適用はあるということを前提にしていまして、1は、そのはみ出すところといいますか、そこで書き切れていないところを書いたということなのですが、確かに第9の1(2)で書いていることとのバランスはどうなるのだと言われると、少しそういう問題もあるのかなと思いましたので、検討しますと申し上げました。 ○道垣内部会長 よろしくお願いいたします。   ほかに。 ○井上委員 井上です。ありがとうございます。今の点について少し追加で質問したくなったのですけれども、25ページの第6の1にある、譲渡担保権設定者が債権特定範囲にある債権の取立てをすることができる旨の定めがあるときについてなのですが、その場合は設定者に取立権限がある一方で、債務者対抗要件を備えた場合、通知をした場合は、担保権者には取立権限まではなく弁済受領権限のみがあると、そういう理解をしておりましたけれども、それでよろしいのでしょうか。 ○笹井幹事 そうですね、おっしゃるとおりで、すみません、私も少し今、混乱をしましたが、第6の1の適用がある場面では、実行することができる前の段階では、担保権者が自分で積極的に取り立てるということはできませんので、受領権限だけがあると、そのように理解をしております。 ○井上委員 追加して、もう1点。弁済受領権限があるということの意味は、債務者側が通知を受けたわけだから、弁済をして債務を消滅させることができる、有効な弁済にすることができるということであって、担保権者側はまだ債務不履行になっていないので、受け取る権限はあるけれども、積極的に取り立てることができないのみならず、受け取ったお金は設定者に返す必要があるということではないでしょうか。 ○笹井幹事 そこは、まず、特定の債権譲渡担保の場合には、受け取ったものを返さないといけないということになると、元々第三債務者が払わずに債権が残っている場合ですとか、そういった場面では自分が担保を持っていることになりますけれども、自分が金銭を受け取ってしまって目的の債権がなくなってしまう、かつそれを返さないといけないということになりますと、担保権者は全くおよそ何の担保もなくなってしまうということになりますので、こういった場面では返す必要はないということになろうかと思います。 ○井上委員 私が尋ねたのは、25ページの第6の1の集合債権譲渡担保権で、設定者が債権特定範囲に属する債権の取立てをすることができる旨の定めがある場合の話なのですけれども、その場合に、しかしながら担保権者には弁済受領権限があるために、債務者が本来の予定と異なって担保権者に払ってしまうと、設定者は元々回収をして自らの事業に金銭を利用するつもりでいたところ、利用できなくなってしまいます。しかし、債務者が間違えてというか、予定と異なって担保権者に払ってしまうという行動をとってしまった場合は、債務は確かに消滅するのだけれども、担保権者は設定者に金銭を返さなければいけないのではないかと私は理解していまして、逆に、そうでなければ、設定者としては急に事業資金がなくなってしまうことになるのではないかと思いました。その意味で、弁済受領権限があるというのは、飽くまでも本当に債務を消滅させるための弁済の受領権限に限られていて、取立てもできないし、受け取ったら返さなければいけないというのが、この第6の1の場合かなと思っていたのですが、それはそういう理解でよろしいですか。 ○工藤関係官 今御指摘いただいた点については、第6の1の取立てをすることができる旨の定めがある場合であっても、デフォルトルールとしては第9の1(2)の後段、それから(3)に書いてあるルール、つまり担保権者が弁済を受領しても直ちに設定者に返さなくてもよく、弁済期が到来したら差し引いて返すというルールが一応適用されることになります。ただ、これは特に強行規定というわけではありませんで、任意規定でして、基本的に担保権者と設定者との間で、担保権者が弁済を受領してしまったらすぐに返さなければいけないというふうな約定をすれば、それは当然有効だろうと考えております。   今お話しいただいたような、設定者に取立権限がある場合ですと、恐らく担保権者と設定者の間で、担保権者が弁済を受領した場合には設定者に返すという明示の定めがある場合が多いのではないかと思いますけれども、仮に明示の定めがないとしても、契約の趣旨からして、その場合に設定者に当然返さなければいけないと解釈される場合というのも、黙示の契約の解釈としては十分あり得るのだろうと思っておりまして、いずれしても契約の解釈によって妥当な結論を導けるのではないかと考えております。 ○道垣内部会長 今のところを私は十分理解できていないのですが、第9のところに、例えばいろいろなことが書いてありますが、がゆえに、それと違うことだけが第6の1に書かれるということなのですか。 ○工藤関係官 第9の1は、個別債権譲渡担保か集合債権譲渡担保かを問わず適用されるルールとして書いておりまして、第6の1はそれに対する特則といいますか、第6の1は第9の1のルールの上に乗っかってくるという位置付けになるかと思います。 ○道垣内部会長 ですよね。ただ、人はこの要綱を頭から読んでいくわけだよね。そのときに、これは第9が原則で、ここに、はみ出ることなのだけれども、実行ではなくて効力の問題だから、効力のところに書きましたと言って、そこまで言われたら分かるかもしれないけれども、余り明確にしないままでそう言われると、これはどういう関係なのだという話にやはりなりますし、第9まで行ったところで、自分の理解はひっくり返されてしまったという話になりかねないのだと思うのです。だから、リーガルな法の作りとして何が正しいかという問題もあるのですが、やはり読んでいる人に分かりやすい順番で書くというのも大切なことではないかという気がします。かつ、これの裏返しだから書かないと、当然前提にすることだから書かないというふうなことが、最終的にはそうせざるを得ない場合というのも法制執務的にはあるのかもしれないですけれども、要綱案でみんなの理解を求めるという際には、やはり多少、書くのは書いた方がいいのではないかと思いますけれども。感想ですけれども。   私がこんなことを言うのは恥ずかしいような質問なのですが、取り立てることができるとか、あるいは取り立てることはできないというのは、取立てを請求する訴訟が起こせないというのはそうなのだけれども、取立てに行ってはいけないの。払ってくださいよと言って、向こうが払ったら受け取るというのは、これは取立権限がないのに取り立てたということになるのですかね。それはいいのですか。 ○笹井幹事 これはここだけで起こる問題ではなく、債権譲渡、譲渡制限特約がされた場合にも同じ議論をしたかと思いますけれども、事実上それを促すということ自体が、何か例えば不法行為になるとか、そういうことになるわけではない、少なくとも一般的に不法行為になるとか、そういうことにはならないのかなとは思います。 ○道垣内部会長 すみません、イメージの形成のために聞きました。   ほかに第5、第6で。第6については、皆さんのおっしゃっていることは一致しているのだと思いますので、それをどうやって分かりやすくするかというときに、整理としてこういう順番しかありませんということならば、説明のところでそれが十分に分かるようにするとか、いろいろな方法はあろうかと思います。そこら辺を踏まえて、取り分け第6の1でございますけれども、分かりやすくしていただくということが必要かなと思いますが。   ほかにございませんでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは、「第7 動産譲渡担保権の実行」、「第8 集合動産譲渡担保権の実行」について議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をよろしくお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、第7及び第8について御説明いたします。   第7の「1 動産譲渡担保権の帰属清算方式による実行」の(1)及び「2 動産譲渡担保権の処分清算方式による実行」の(1)については、従前の御提案では、民事再生法上の担保権実行手続中止命令が発令された場合にのみ2週間の期間の完成が猶予されることとしていましたが、担保権実行手続中止命令にそのような効果を持たせる趣旨を踏まえ、会社更生法、会社法及び承認援助法上の担保権実行手続中止命令並びに会社更生法上の包括的禁止命令が発令された場合についても同様の効果が生ずるものとしています。そのほかに、実行の効果が発生する要件の明確化等のために表現ぶりを改めています。   また、従前の御提案では2(7)として動産譲渡担保権設定者の留置権についての規定を設けることとしていましたが、民法第295条の適用に任せれば足りるとの御意見があったことを踏まえ、これを削除しています。もっとも、この点は資料には記載しておりませんが、その後、事務局内で検討したところ、2(7)を削除した場合には、民法第295条に基づいて留置権が成立するとしても、(6)に記載したように、譲渡担保動産の引渡請求権との間で引換給付関係に立つ債務の内容を、処分清算金の支払の債務のうち見積価額と被担保債権額の差額に相当する部分に限定することができなくなるとの問題が生ずるようにも思われます。そのため、この点については、むしろ「1 動産譲渡担保権の帰属清算方式による実行」も含めて規定を置くべきとも考えられるところであり、なお検討させていただければと考えております。   第8の「2 後順位の集合動産譲渡担保権者による実行」については、複数の集合動産譲渡担保権の動産特定範囲が一部重複する場合において、後順位の集合動産譲渡担保権者が1(1)の通知をしたときは、重複しない部分についてのみ固定化が生じ、重複する部分については固定化が生じないことを明確化する観点から、表現ぶりを修正しています。   「4 動産特定範囲に属する動産に対する差押え等」の(5)については、動産特定範囲に属する動産につき強制執行等による差押えがあり、当該動産について集合動産譲渡担保権者以外の担保権者が配当要求をした場合についても、(1)のうち動産特定範囲に属する動産について担保権の実行としての競売があった場合と実質的に異ならないことから、固定化を生じさせることとしています。   以上について御議論いただければと思います。私からの説明は以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、第7、第8につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと存じます。 ○阪口幹事 何度もすみません。第7の1の実行のところです。   ここについて、第41回会議で、著しく不合理な場合には効力はないという裏返しの方の規定がなくても本当にいいのですかという質問をさせていただいて、あのときの説明は、行為規範の方から書いたのですということでした。それはそうだと思うのですけれども、普通にこの規定を読んだら、不合理だったら効力がないという議論になりがちだと思います。そこに著しくという要件が入ってくるためには、規定が要らないのかなと思っているというのが、この(2)の部分です。   あと、(3)のところで、これは表現がこれでいいかどうかの確認なのですけれども、赤線を引かれたところで、帰属清算の通知をしたものとみなすことができるものとするというのは、これは当然にみなされるのではなくて、みなすということをするぞという通知か何かが要るとも読めるのですけれども、そんなのが要るのでしょうかという、少し表現の確認です。この2点です。 ○笹井幹事 (2)のところは、お答えとしては前回と同じだと思いますが、無効になるためには、本来必要な通知事項が、形式的には書いてあったとしても記載が欠けているといえる必要があるので、単に不合理なだけではなく要件が厳しくなるというのは解釈でも導けるのではないかと思っていまして、場合によっては解説マターかなと思っています。   みなすことができるは、ここは飽くまでも条文の書き方みたいなところもあるのですが、実質としては、おっしゃるように動産譲渡担保権者が何か通知をしたりする必要が別にあるわけではなくて、そういう主張をすることができるということなのです。ほかの用例とか条文の書き方なんかを参照しながら、また調整していきたいと思っております。 ○道垣内部会長 だんだん日本語をよくしていくという姿勢も必要だと思いますよね。  ほかに何かございますか。 ○山本委員 私も条文の書き方みたいなことで恐縮なのですが、同じ第7の1(1)ウのところで、説明にあるとおり、今回民事再生だけではなくて会社更生等についても規定されたと、これは結構かなと思うのですけれども、少し気になったのは、会社更生法、(イ)と(ウ)の中止命令、包括的禁止命令なのですが、これらの命令は私の理解では、開始決定までの間に効力が限られているのではないかと思います。というのは、結局会社更生とかは開始決定によって担保権の実行禁止等の効力が当然付きますので、そこまでのつなぎという趣旨での命令ということだと思うのですけれども、このウの書き方だと、中止命令等が効力を失ったときに実行の効果が発生してしまうということになると、形式的には開始決定のところで中止命令等がその役割を終えると、そこで効力が発生してしまうと、もちろんそういう趣旨ではないわけですけれども、少しそこが文言的に気になったというところで、もちろん開始決定につながっていくときは、それはどこの時点で効力が生じるのかというのはよく分からない部分もあるのですが、少なくとも開始決定後も帰属清算の効力は生じないということだと思いますので、解釈できるかどうかというのは分からないのですが、はっきりさせた方がいいのかなという印象を持ちました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。ごもっともかと存じますが、どうなのですかね。 ○笹井幹事 実質としては御理解のとおりだと思います。書き方については、検討してみたいと思います。 ○道垣内部会長 しつこく書けば、開始決定により効力を失った場合はこの限りでないとか、除くとか書くのでしょうけれども、書き方については少し検討をしていただくようにしたいと思います。解釈論に委ねてしまうのは余りよくないと個人的には思いますけれども。   ほかにいかがでしょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。井上です。第8の1(5)のところですけれども、これは特に新しく変わったところではないのですが、集合動産譲渡担保権の一部実行について、動産特定範囲の一部を入れ子のような形でもう一つ動産特定範囲を作って、その中の小さい方の動産特定範囲について実行でき、それについて固定化が生ずるということで、言わば流動性の単位ごとに一部実行を認めるということだと理解しております。典型的には、東京倉庫と大阪倉庫がある場合に東京倉庫だけ実行するという場合が流動性の単位としては分かりやすいのですが、果たして、前にいろいろ議論が出ていた、単一の倉庫の中におけるミカンだけみたいな一部実行ができるかどうかは、そのようなミカンだけという特定の仕方が果たしてここにいう、入れ子になっている動産特定範囲としての要件というか要素を満たすのかという解釈に委ねられるということだと理解しましたが、そういう理解でよいのでしょうかというか、その点について何か更に明文化したりということはないという理解でいいのかを確認したいというのが1点です。仮にそうだとすれば、ここの(5)の2行目の、入れ子になっている側の動産特定範囲のところの書きぶりは、20ページの書きぶりと同じにすべきではないかと思うので、この「種類及び所在場所の指定その他の方法」というのは、20ページの第4の1で修正されているのと同じように、「種類とともに、所在場所その他の事項」に合わせるべきかなと思いました。 ○笹井幹事 ありがとうございます。今、入れ子とおっしゃいましたけれども、重複して、既に実行が終わった部分について、重複した実行ができないようにうまく切り分けるという趣旨ですので、そういった観点から判断していくということになると思いますけれども、なかなかこれ以上、要件を付加していくのは難しいと思いますので、最終的にはもちろん解釈によるのだろうと思います。その場合に、基本的には同じように特定の仕方というのは考えられるので、種類については必要的だと思います。御指摘のとおり20ページと合わせるべきかと思いますので、そこは合わせて修正したいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかにございますか。   特に御意見等はございませんか。余りこれまでと変えた部分ではないのですけれども、よろしゅうございますか。   それでは、第9、第10、11というところに移りたいと思います。「第9 債権譲渡担保権の実行」、「第10 集合債権譲渡担保権の実行」及び「第11 その他の財産を目的とする譲渡担保権の実行」について議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、第9から第11までについて御説明いたします。   「第10 集合債権譲渡担保権の実行」では、部会資料35第1の【案1.2】を採用することとして、集合債権譲渡担保権者が実行をしようとする旨の通知をしたときに集合動産譲渡担保権設定者が取立権限を喪失することとし、その取立権限の喪失は第三債務者にも通知しなければ第三債務者に対抗できないこととしています。また、部会資料35第2では、債権譲渡担保権者が実行に着手した時以降に生じた債権に対する集合債権譲渡担保権の効力について、特にこれを制約する規定を設けないものとする【案2.1】と、集合債権譲渡担保権は実行着手時よりも後に集合債権譲渡担保権の特定範囲に属することとなった債権に及ばないものとする【案2.2】の両案をお示ししていましたが、倒産時と異なる平時において集合債権譲渡担保権の効力を制約する必要性が高いとまでは言い難いと考えられることなどから、【案2.1】を採用することとし、この点について特段の規定を設けないこととしています。   以上について御議論いただければと思います。私からの説明は以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと存じます。 ○村上委員 ありがとうございます。第10についてです。この間、この部会におきましては担保権者と一般債権者、設定者などのバランスをいかに図っていくのかという視点での議論が進められてきたものと承知しております。今回、第10では累積的な担保権設定を認めるという旨の提案がなされております。この点について、これまでの部会でも述べてきておりますけれども、累積的な担保権設定は過剰担保となってしまうことや、あるいは一般債権者に対する支払い原資がなくなるという懸念がございまして、労働者保護の観点からはなかなか基本的には認め難いものであると考えております。   今回、【案2.1】か【案2.2】かというところについて、平時には政策的に制約を課する必要性は高いとは言い難いといった御説明がございましたけれども、平時であっても一旦実行されて、全て担保権者に持っていかれてしまうということになると、賃金の支払いが困難になるであるとか、取引先への支払いが難しくなって事業継続を困難にするといった弊害もあるのではないかと考えております。今回改めて立法化の議論を行っているということですから、一般債権者の保護の観点から、集合債権譲渡担保権の効力について政策的に制約を課していくということで、【案2.2】を採用する方向で再検討いただきたいと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。今一つの御見解としては十分にあり得るわけで、がゆえに二つの考え方が前回は併記されていたわけなのですけれども、この点につきまして、ほかの方の御意見等がございますか。 ○阪口幹事 阪口です。今出たところについて、僕も第39回会議で、従前の【案2.2】の方の案を述べたことがあったと思うのです。その関係で、今回の説明を確認させてください。36ページの35行目ぐらいに、各債権がそれぞれ譲渡担保権の目的になっているという理解、債権の束だということですね、その一部について実行がされても、その他の債権についての効力には影響しないというのが自然であると書かれていて、ここまでは、そうだろうと思うのですけれども、第10で書かれている帰結というのは、他の債権ではなく当該債権、当該第三債務者との関係でも、更に事後に発生するものも取立てができるかどうかという問題のように思えるのです。つまり、第三者債務者Aさん、Bさん、Cさんがいます、Aさんに対する債権を実行したからといってBさんは関係ないではないですかという点は確かにそうかなと思い、説明の37行目ぐらいまでは分かるのだけれども、そこからこの帰結、【案2.1】にいきなり行くのかというのが少し分からなくて、それはまた別問題ではないのかとも思うのです。もちろんそれは、従前はそう考えてこなかったと、それを今回変えるのだから、何か政策的な説明が要るよねという議論は分かるのだけれども、でも、動産はそうなっているわけだし、結論としても、当該第三債務者の関係では、1回やったら及ばないということ自身は別におかしくもないような気もするので、今回こういう形で、とにかく平時は全部ずっと及ぶのですということを選んだ理由というか、そこのところの確認をしたいと思います。 ○笹井幹事 ここは、前回の部会での議論を踏まえてということですので、もちろん前回も意見は分かれたところではありますけれども、【案2.1】のような考え方の方が部会においても多かったのかなというのが一つと、あと理屈の点では、この37行目以下に書いたとおりです。判例法理についてもいろいろ解釈の余地があるかもしれませんが、判示を見る限りでは、それぞれの各債権の譲渡の効力は確定的に将来債権についても譲渡の時点に確定的に生じているとされています。このことからすると複数の債権、債権A、債権B、債権Cが譲渡された場合には、それぞれが譲渡されるということになって、その場合、債権Aについての事情は、債権Bなどそれ以外の債権の譲渡、将来債権かもしれませんけれども、その債権譲渡の効力には影響しないと読むのが、今の判例の理解としては素直な理解なのではないかと考えたということです。   37行以下も、どこで区切るかというのは、第三債務者が共通しているかどうかというのは個々の債権の譲渡の効力には余り関係のない話で、素直に考えれば、それぞれの債権が1個1個別々に債権譲渡の効果として発生していると、それを、債権Aについての事情を債権Bに及ぼそうとすると、それはやはり政策的に、今、村上委員からの御指摘もあったところですけれども、一般債権者の保護などを根拠とすることになるのではないかと考えて、このように記載をしております。   差し当たりは私の方からは以上です。 ○道垣内部会長 阪口さん、更に何かありますか。 ○阪口幹事 最後はもう腹決めの問題だろうとは思うので、仕方ないと思いますけれども、ただ、せっかく今回、倒産の局面では累積的な別段の合意という新たな仕組みを作って、こういう合意をしたときには倒産時にも及びます、しかしそうでないのは及びませんという、全く今までと切り口の違うものを考え出したわけです。なのであれば、それを平時にも活用していいのではないのかという気持ちは強いということです。 ○道垣内部会長 ほかに。 ○大西委員 違う点でよろしいでしょうか。 ○道垣内部会長 もし今の点がございましたら、ほかの方に。 ○大西委員 私は今の点ではないです。 ○道垣内部会長 では、今の点に後で戻っていただいても結構でございますので、大西さんの話をまず伺いたいと思います。お願いいたします。 ○大西委員 私のコメントは、34ページの第9の1(2)のところです。もしかしたらこれまで説明を受けて聞き漏らした可能性もあるのですが、ここでは、対抗要件を得た債権譲渡担保権者が、(3)のところで、弁済期到来後は給付を受けた額から被担保債権の額を控除した残額を返さなくてはいけないと規定されているのですが、その前の(2)では、受けた給付に相当する金銭を全額担保権設定者に対し支払うことを要しないと規定されています。この両者の規定間の合理性はあるのか、という点に疑問を持ちました。 ○笹井幹事 すみません、もう一度御質問お願いしてもよろしいでしょうか。 ○大西委員 (3)における弁済期の到来後において、そして、(1)のような担保権実行の場合には、債権譲渡担保権者は、第三債務者から給付を受けた額から被担保債権の額を控除した残額を設定者に支払わなければならないとなっています。一方で、(2)の後段のところでは、弁済期が到来するまでは受けた給付の価額に相当する金銭全額について設定者に支払うことを要しないとされており、本来、結果的に設定者に支払うべき被担保債権額を超えた部分の金銭も含めて返さない、という規定は、(1)や(3)の規定との関係で整合性が取れているのであろうか、という内容の質問です。 ○笹井幹事 ここは、先ほどの井上委員との議論にも出てきたところですけれども、(2)で想定されているのは、債権譲渡担保について第三債務者に対する債務者対抗要件が具備されたという場面では、その後に第三債務者は担保権者に対して直接目的債権の弁済をすることができることになります。被担保債権の弁済期到来前、したがって、まだ実行できない場面でも、第三債務者が担保権者に対して目的債権を履行すれば、それは有効な弁済として目的債権が消滅することになります。   このときに、実行できる場面であれば、被担保債権の弁済期も来ているので、被担保債権に充当して、残りの部分を返すということになるのですけれども、まだ被担保債権の弁済期が到来していないので、そこで受け取ったものを返してしまうと担保が失われるので、金銭の支払うことを要しないということにしているのですが、今の御質問は、その被担保債権を。 ○大西委員 私は、(2)では差額を返すことを規定していないのですが、そこは、差額を返すという(1)や(3)の考え方との対比で合理性があるのか、という質問をさせていただきました。要するに、弁済期前とはいえ、(2)は、被担保債権額に相当する額の金銭を受け取っているわけですから、その後は、弁済期が来れば即充当できるため、被担保債権額の遅延は生じず、遅延損害金も付かないため、(2)で、担保権者が、弁済期到来までの間、被担保債権額を超えた部分の金銭をプールしておく合理性がないのではないか、という視点です。仮に、債権譲渡担保権が根担保の場合を想定し、弁済期到来までの間、更に貸し増しをして、被担保債権が増える可能性があるのではないか、という議論もありますが、担保権設定者は、担保権者が第三債務者からの金銭の受領後に、被担保債権額との差額分の金銭の返却を受けるのであれば、新たにお金を借りなくていいわけですから、そのような可能性を想定することは不合理だと思います。 ○工藤関係官 一つ恐らくあり得るところとして、例えば集合債権譲渡担保で一部の債権についてのみ担保権者の弁済受領権限に基づいて弁済の受領がされたという場合には、例えば根譲渡担保の場合とかですと、被担保債権についてまだ元本が確定していないといった場合も恐らくあり得るのではないかとも思っておりまして、その被担保債権の金額が必ずしも確定はしていないということも場合によってはあるのではないかということは、少し考えておりました。 ○大西委員 その場合はそうなのかもしれませんが、でも、設定者に早めに差額のお金を返してあげれば、その後、設定者は追加で借りなくていいわけですから、そのような想定をしたことを理由に差額を担保権者でプールすることは疑問であると考えます。すみません、指摘だけさせていただき、御検討いただければと。 ○道垣内部会長 民法上、留置権という制度がありますけれども、留置権の目的物というのが被担保債権額の価値を超えているといった場合に、一部を返還しろとか、留置物の差替えをしろというふうな権利が認められているわけなのですが、大西さんのお考えというのは、過大にホールドしてしまっている、過大に渡さないぞと言っているのは少しおかしいのではないのと、適当な額にしてあげた方がいいのではないのという考え方だと思うので、留置権とかの考え方に近いのかなというふうな気はいたします。したがって、実体法上、根拠がある制度であるともいえるのかもしれませんが、若干御検討いただければと思います。   ほかに。先ほどの村上さんと阪口さんのお話があったところですが、阪口さんの、倒産のときの処遇というか処理を倒産でない第10のところでも持ってくるといったときに、例えば、具体的にはどんな規律になるというイメージですか。 ○阪口幹事 倒産のところでは、56ページの9(2)の別段の定めがあれば(4)のことができるということになるわけですけれども、倒産時にはそうなるという覚悟をした合意をしていれば累積的ですと、それ以外のときには当該第三債務者に関しては二度実行できませんと、こういうイメージです。すごく不正確な表現で申し訳ないですけれども。倒産の場面では、別段の定めをしているかしていないかという、大きく道が分かれるわけですよね。定めをしていたらこういう効果が発生するということなのだけれども、そこでいう別段の定めをしているかしていないかで、平時でも大きく道が分かれますということです。それは、別段の定めがあったらずっと及ぶのは、それは仕方がありませんねと、倒産でもそうなのだから、平時も及ぶ。他方、別段の定めがないということであれば、第三債務者ごとに考えると、こういうイメージです。 ○道垣内部会長 別段の定めの有無によって、実行した後に発生したものに及ぶか及ばないのかというのを変えるというのは、それはよく分かるのですが、56ページの9の破産手続開始決定後の効力のときには、別段の定めがあるというときに、共益債権とか一般優先債権とか、そういうものについて弁済を先立ってするということで調整をとろうとしているわけなのですけれども、破産手続という手続が開始していないといったときに、そういう破産すれば優先するような他の債権者との間の調整というのをどういう技術をもって行うのかということについては、何か御意見はございますか。 ○阪口幹事 私自身は、平時にその調整自身は要らないのだと思います。というのは、倒産時のところでこの規律が定められたら、使われるのはかなり絞られ、本当に全資産担保的なもののときしか債権者は使わないはずです。そうであれば、そういう覚悟を持った債権者については、別に平時について調整規定は要らないということで、とにかく使われる局面がぐっと減るというのが大前提です。 ○道垣内部会長 そうすると、9(2)のところは、予定されているのが再生手続開始決定とか更生手続開始決定があった後に発生した債権にも及ぶという別段の定めですよね。しかるに、第10のところにそれを当てはめようとすると、1回実行しても、その後も実行できますという別段の定めということになるのですね。 ○阪口幹事 すみません、私が思っていたのは、倒産時には全部面倒を見る合意、正に56ページの別段の定めのあるかないかの方で決まるということです。平時のときに及ぶかどうかの別段の定めではなく、倒産時のときに丸抱えする覚悟があるかないかで決めるということになります。その覚悟がない限りは結局及ばない、僕の考えだったらほとんどの場合は及ばないわけです。そういう全資産担保の覚悟がある場合というのはかなり少ない場合ですから、かなり少ない場合のとき以外は、平時の及ばない規律というかな、それが適用されます。 ○道垣内部会長 倒産時に及ぶという定めをしたら、更生手続開始決定とかそういうのがあったときには面倒を見ますよという気持ちを見せていると、平時というか、倒産手続開始決定がある前に起こる実行についての効力が変わってくるということですよね。なかなかアクロバティックな感じがするけれども、そうでもないですか。ただ、ここについてはそういうふうな御意見があるという、及ばないというか、何らかの形での制約というのは掛けた方がいいのではないかという御意見はなおあるということですので、最終的な成案に持って行くときに、そういうふうな技術的などういう仕組みがとれるかということも含めまして、なおもう一度検討していただくということなのかなと思います。   ほかに何かございませんでしょうか。 ○笹井幹事 第10につきまして、村上委員や阪口幹事がおっしゃった意見、つまり前の部会資料35の【案2.2】も十分あり得ると思うのですが、今日は【案2.2】を検討せよという方向の意見だけが出されましたので、【案2.1】でいいのではないかという御意見があれば、御発言いただければと思いますけれども。 ○道垣内部会長 別にサポートしてくれということではなくて、部会全体の意見の分布を確認しておきたいということでございますので、少し積極的に、どういうふうにお考えになるのかということをお聞かせ願いたいということです。 ○井上委員 井上です。私は【案2.1】でいいと思っています。阪口先生がおっしゃったような考え方もあると思うのですけれども、それは、今おっしゃったように、設定者の存続費用を設定者が倒産したときには担保権者が全て面倒を見るという覚悟で効力を累積的に及ぼすという、そういう担保と、そうではないスクリーンショットの担保という二つを、平時から二つの種類の担保として設計するという考え方です。それは一つあり得る考え方だと思うのですけれども、私自身は、どちらかというと債権譲渡担保に関しては、むしろ基本的には、一つ一つの債権が将来にわたって担保に入れられていることを前提として、ただ、倒産手続が始まった場合には一定の制約を受けざるを得ないという形で、現在の提案がなされており、そちらの方が現在の実務との整合性もあると思いますので、そちらの設計をよいと考えるものです。   そうだとすると、考え方の違いが出てくるのは、全資産担保型でない普通の集合債権譲渡担保を設定したときに、倒産していない状況であれば、たまたま実行を掛けたときに、残高が設定時の見込みとは随分違って減ってしまっているという理由で、見込みと違って被担保債権の全額を回収できなかった、しかし事業は続いていて倒産をする様子もないというときに、事業がその後も回っていて債権が発生し続けている以上、もう一度実行を掛けることを許す方が、担保権の利用価値を高める方向に行くのではないかと考えます。ですので、倒産のときに制約されることはやむを得ないとしても、その後も事業が回っている限りにおいては、ぶれはあるわけなので、被担保債権の回収が足りなかったときにも再度回収できるという設計を優先するというか、正にこの36ページに書いていただいているように、政策的な考慮については、平時ということで、そこまでのことはしなくてもいいのではないかという考え方です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○大澤委員 大澤でございます。ありがとうございます。私も井上先生にほぼ近い考え方でございます。というのは、倒産とセットで物事を考えている中での話なのですけれども、倒産手続においては、確かに今回の提案もそうですけれども、まず、一定程度の制限がきちんと課されるという仕組みになっています。一方で、平時の実行においてはというところについてなのですが、平時において実行がなされたときに、その担保実行が事業との関係で明らかに厳しすぎると思えば、多分そこで設定者の方としては倒産手続、民事再生なり会社更生なり何なりという形での選択肢を持つということになります。   一方で、先ほど正に井上先生がおっしゃったとおりなのですけれども、そこまでに至らないような実行というようなときであれば、逆にそこは担保権者の平時における実行というのはある程度尊重してもいいのかなと思っておりまして、この倒産手続とのセットで考える限りにおいては、こちらで【案2.1】になってしまってもやむなしかなとは考えております。   というのは、やはり【案2.2】と【案2.1】、おかわり自由かどうかというところに関しては、債務者の方だけで考えれば、やはりおかわり自由ではない方がいいと言いたくもなるのですけれども、そこまで担保権を制約してしまっていいのかという問題は、やはりどこかに残っていて、倒産手続との関係でかなりの制約が課されるというのが今の提案である以上、実行手続において、倒産まで至らないということであれば、重ねての実行ができるような形になってもやむなしかなというのがバランス感覚としてございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかの方はいかがでしょうか。 ○日比野委員 日比野です。今、井上先生、大澤先生がおっしゃったことと、基本的にほとんど同じ意見です。これも繰り返しになりますけれども、集合債権譲渡担保を取得するときの対象債権にはいろいろな種類のものがあると思っておりまして、売掛債権をほとんど全て取得してしまうといった、正に全資産担保的なものであれば、むしろそれを実行するかどうかは、その状況とか局面を見た上で、相当厳しい局面であるということでないと逆に実行しない、もっと言ってしまうと、その実行は恐らく、大澤先生のおっしゃったとおり、ほとんど倒産に直結するという状況と思います。   他方で、担保提供を受ける対象債権が限定的というものも当然ありまして、そのような場合についてはここに記載された現在の判例法理を前提とした評価をした上で融資をしている状況ですので、【案2.1】を維持していただくことの方が、平時の調達という局面においてもメリットはあるものと思いますので、今回の提案でよいものと考えておりました。 ○道垣内部会長 ほかの方はいかがでしょうか。 ○片山委員 ありがとうございます。私自身は、累積型と循環型をここでも分けられればいいかなとは思っておりましたので、一時は、循環型というのが取立権を設定者に付与する型で、それは集合動産と同じように固定化を考えてよいが、他方、累積型については、いわゆる集合債権ではなくて個別債権の譲渡で、取立権を譲渡担保権者に付与する形でやらなければいけないということで分けていくことも考え、そのような提案をしましたが、実務ではなかなかその二つを分けるということが難しいということであるならば、やはり一元化して捉えざるを得ない。ただ、倒産の局面では、特約の有無という形で振り分けることが可能であるということになりましたので、基本的には判例法理が積み重なっているところでもありますし、個々の債権が移転しているということを前提とした上で、実行後も担保権の効力が及ぶということにならざるを得ないのではないかと私も思っているところでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   もちろん村上さん、阪口さんのおっしゃったところにも十分な理由がございますので、その点も含めて考えなければならないというのは当たり前のことなのですけれども、別の意見もあるということで整理ができる、大体の方向性というか部会の考え方の分布というのはだんだん明らかになったかと思います。   もしほかに特に御発言がないようでしたら、まだ30分ありますので、第12、第13というのは入りたいと思います。「第12 強制執行等の特例」及び「第13 動産譲渡担保権の実行のための裁判手続」というところの議論を行いたいと思います。事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、第12及び第13について御説明いたします。   第12の「2 動産譲渡担保権者による第三者異議の訴え」については、第三者異議の訴えが認められることを積極的に規定すべきとの御意見があったことを踏まえ、動産譲渡担保権者による第三者異議の訴えの提起が認められることを明示することとしていますが、このような規定ぶりが許容されるかについては引き続き検討が必要と思われます。   第13の「2 動産譲渡担保権の実行のための保全処分」の(1)について、民事執行法第77条第1項を参考として、処分清算譲渡を受けた第三者も保全処分の申立てをすることができることとしています。(4)では、破産法第187条第5項を参考として、無剰余を理由として差押えが取り消されたときについても、動産競売の申立てをしたことを証する文書等を提出しなかったものとみなすこととしています。従前の(13)では、保全処分の費用を共益費用とする規定を設けることを御提案していましたが、その費用が類型的に共益費用としての性質を有しているとは言い難いことから、これを設けないこととしています。   「3 動産譲渡担保権の実行のための引渡命令」の(2)については、譲渡担保動産の占有者が引渡命令の相手方である場合には、清算金の有無及び額についての審理のために動産譲渡担保権設定者も手続上の当事者とするのは制度趣旨に照らして相当ではないことや、この場合には動産譲渡担保権設定者は譲渡担保動産の引渡しと引換えに清算金の支払を確保する利益を実体法上有していたものではないことから、この場合には帰属清算金又は処分清算金の担保を立てることを要しないものとしています。(4)では、2(4)と同様の修正をしています。   「8 手続の停止」では、担保権実行手続中止命令等が発令された場合に実行のための引渡命令の手続を停止するため、これらの裁判の謄本等を停止文書とする規定を設けることとしています。   以上について御議論いただければと思います。私からの説明は以上です。 ○道垣内部会長 それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等いただければと存じます。 ○青木(哲)幹事 ありがとうございます。青木哲です。2点ありますが、1点目は単純な確認をさせていただければと思います。41ページの26行目、3(2)のただしのところですけれども、譲渡担保動産の占有者とあるのは、説明から明らかかと思いますが、設定者以外の占有者という趣旨だという理解でよろしいでしょうか。   2点目は、45ページの8の手続の停止についてですけれども、担保権実行手続中止命令や包括的禁止命令の発令によって引渡命令の手続を停止するという規律を設けることには異存はないのですけれども、そのために民事執行法183条の規律を持ってくるということをされているのですが、183条の規定は、開始文書の提出を前提に手続を開始し、一定の文書の提出により手続を停止するという執行手続特有の規律ではないかと思われまして、それをここに参考にするのが適当なのかという点について疑問がございます。仮に執行手続に準ずるものとして扱うということであれば、183条に掲げられているほかの取消し文書などについても同様の規定を設けるということにならないのかなと思いました。ただ、ここでは恐らく手続を停止するという点の規律を設けるということに主眼があるのではないかと思われますので、手続を停止するという規定を設けること自体については異存はございません。   2点、以上でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。今の点、いかがでしょうか。 ○笹井幹事 1点目の41ページについては、御理解のとおりで、設定者は処分清算金、帰属清算費の債権者になりますので、担保を立てさせないといけませんので、ただし書で除いているのは、したがいまして、設定者以外の占有者に対するものということになります。 ○道垣内部会長 それはそうなのですが、設定者以外のと書かなくていいのですか。 ○笹井幹事 その点は、実質は今申し上げたとおりですけれども、確かに設定者が何も書かなければ占有者の中に入ってしまいそうな気もしますので、そこの書き方は少し検討してみたいと思います。 ○道垣内部会長 分かりやすくしていただければと思います。 ○笹井幹事 45ページの方も、今、青木幹事からありましたように、ここで書こうとしているのは、中止命令についてもこういった裁判があった場合には停止するということであり、その書き方の枠組みとして執行法183条を参考としたということですので、183条の民事執行法特有の規定をここに持ってきたというよりは、停止についての表現に当たってこの規定を参考にしたと、そういう趣旨でございました。 ○道垣内部会長 よろしゅうございますか。 ○青木(哲)幹事 ありがとうございました。 ○道垣内部会長 ほかにいかがでしょうか、12、13。 ○阪口幹事 何度も発言して申し訳ございません。2点ありまして、細かいことですけれども、まず、引渡命令のところの担保について今回、43ページで御整理いただいて、これ自身は全然異論はありません。その上で、前にも少し確認したことがあったかと思うのですけれども、これはいわゆる訴訟法上の担保なので、権利行使催告で取り戻すという手続が想定されているということでいいかどうかということの確認をしたいというのが1点です。   2点は、42ページの債務者の読み替えというか、そこのところについてですけれども、第41回会議で、最判か実務かどちらか忘れましたけれども読み替える解釈、そちらに影響しないかという話が出たと思うのです。けれども、今回、民法改正ではなくて独立の法律でやるという話の説明があったと思うので、そうだとしたら、抵当権にどう影響するかということと関係なく、単純に変えてしまった方がすっきりするのかなとも思ったのです。現実には動産担保で物上保証みたいな局面がどこまであるのか、よく分からないのですけれども、はっきり書いてしまった方が早くないかなと、書かない理由も明示的にないような気もするという、この2点です。 ○工藤関係官 まず1点目の御質問につきましては、今お話しいただいたとおり、基本的には民事訴訟法79条の準用ということで、権利行使催告等についての規律が、この清算金の担保についても適用されていくということになるのだろうと考えております。   2点目の、書いてしまった方がすっきりするというのは、確かに御指摘のとおりのところもあろうかと思いますけれども、恐らくこの判例の趣旨としましては、基本的に信義則を根拠としていますので、債務者が占有権限を持っている場合には絶対にその債務者は勝てないのだというところまでいっているのかというと、恐らくそこは個別事情による判断の余地というのを残してはいるのかなという気も少ししておりまして、であるとすると、恐らく明文にはっきり書いてしまわない方がよいのではないかというところも少し考えていたところではございます。 ○道垣内部会長 阪口さん、いかがですか。取り分け後半かな。 ○阪口幹事 後半の方ですけれども、そういう債務者が対抗できる局面というのがあり得るのですかね。絶対ないということはいえないかもしれませんけれども、実際上あるのでしょうか。特に、動産につき、今回こういう引渡命令という制度を作るのは、動産の場合、占有の確保というのは非常に大事で、それが死命を決するというか、それで決まるという世界です。被担保債権を不履行にした債務者でそういう局面が、もしかしたらあるのかも分かりませんけれども、少なくとも今までそういう局面もあるぞという御意見はなかったようには思います。もし、ないことはないということだったら、一定の権限ある場合を除きとか、何かそんなでもいいと思うのですけれども、書いてしまった方がすっきりすると思いました。 ○道垣内部会長 それは技術的なところもある、内容についての対立点ではございませんので、文言化においてもう少し考えていただくというふうにしたいと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○山本委員 これも内容に関わるような話ではないのですけれども、39ページの2(4)で後段を付け足していただいていて、これは誠にそのとおりと思うのですけれども、ただ、この取り消された場合というのは、一般的にこれと同じようなことになるのではないかという気がしたのです。実際上はほとんど取消しというのは無剰余の場合だとは思うのですけれども、論理的には何かほかの事由による取消しというのもあり得るように思えて、そうだとすれば、それも同じだとすれば、条文としては書くのかなという感じがしたのですけれども、一応そういう意見です。 ○道垣内部会長 結論から言うと、条文129条の規定により、というところまでは要らないのではないかということになるわけですか。 ○山本委員 そういうことですね、取り消された場合。 ○道垣内部会長 特に一生懸命取消しの事由を限定する必要はないということですか。 ○山本委員 そういう趣旨です。 ○工藤関係官 この点については、ある意味純粋に破産法187条第5項で書いてある文言をそのまま持ってきたというところでして、なぜ187条第5項でこういう限定が付されているかというところまで十分に確認できておりませんので、そこも調べた上で、少しどうするかを考えさせていただければと思います。 ○道垣内部会長 その点、よろしくお願いいたします。破産法の場合と区別をする必要があるのかということですよね。   ほかにいかがでしょうか。もし御意見がないようでしたら、「第14 破産手続等における譲渡担保権の取扱い」というところに入りたいと思います。ただ、6時を過ぎて大幅に延ばすということは余り考えないようにいたしまして、第14に入りたいと思います。それでは、事務当局におきまして、まず部会資料の説明からお願いいたします。 ○淺野関係官 それでは、第14について御説明いたします。   「2 担保権実行手続中止命令」については、部会での議論を踏まえ、(2)サとして、譲渡担保権の実行の手続を会社更生法25条1項の規定による包括的禁止命令の対象とすることを明記しております。   「3 担保権実行手続取消命令」については、(1)アの申立権者について、再生手続開始決定後において管財人が選任されている場合に、管財人が申し立てることも考えられることから、「民事再生法第2条第2号に規定する再生債務者等(保全管理人が選任されている場合にあっては、当該保全管理人)」と修正しております。また、(1)イ、(2)イ及び(3)イにつきましては、第10本文の通知がされた場合でも、集合債権譲渡担保権はその後に生じた債権に及ぶ一方、当該通知後に集合債権譲渡担保権設定者が債権特定範囲に属する債権の取立てを行うことができないことから、隅付き括弧を付していた部分を削除しております。   「8 破産手続開始決定等後の集合動産譲渡担保権の効力」については、中間試案の【案19.2.3】に基づく提案をしております。これは、倒産財団の負担により増加した動産が担保権者への弁済に充てられてしまうという問題がないことや、倒産手続開始後における権利義務の内容が明確であることを考慮したものです。この規定に基づいて、第8の1(1)の通知があったものとみなされる場合には、あったものとみなされる通知も担保権実行手続取消命令の対象となるため、集合動産譲渡担保権設定者について再生手続開始の決定がされる場合において、本文により、集合動産譲渡担保権設定者が動産特定範囲に属する動産を処分することができなくなると事業の継続が困難になると見込まれる場合には、担保権実行手続取消命令の発令を受けるということが考えられます。   「9 破産手続開始決定等後の集合債権譲渡担保権の効力」のうち(1)から(3)までは、部会資料35、第3の1の【案3.3】に基づく提案です。これは、先ほど御説明した8における提案と同様の理由によるものです。(4)は、部会資料35、第3の2に基づく提案です。イとして、民事再生法第122条第1項に規定する一般優先債権を規定している点が変更点です。   「10 動産特定範囲に動産を属させる行為に関する否認等」については、部会での議論を踏まえて表現ぶりを修正しております。(1)及び(2)の「専ら譲渡担保権者に弁済を受けさせる目的でした」という要件は、否認対象とすべき悪質性の高い行為を抽出しようとするものですが、主に動産や債権の加入が客観的に異常であることが立証されることによって推認されると考えられます。(1)、(2)の行為が非義務行為に当たる場合には、この要件を満たすかどうかにかかわらず否認の対象とすべきという御指摘がありますが、この要件は、先ほど申し上げたとおり、悪質性の高い行為を抽出しようとするものでして、仮に当該要件を満たさない非義務行為が存在するとすれば、そのような行為までを否認の対象とするのは適切でないと考えられます。集合動産譲渡担保や集合債権譲渡担保について、設定者の事業活動に伴い担保目的財産が減少することもあり得るところ、担保権者がそのリスクを負っているということとのバランスの観点からも、要件を規定することは正当化されると考えられるところです。   以上について御議論いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、時間の許す限り議論をしたいと思いますので、どの点からでも結構でございますので、よろしく御発言ください。 ○大澤委員 大澤でございます。ありがとうございます。幾つかございますが、まず14の8ですか、55ページ以降の破産手続開始決定後の集合動産譲渡担保権の効力というところと、9にもわたるのですけれども、今まで余り議論にはなっていなかった中間試案の【案19.2.3】に基づく提案ということではございます。ただ、9の方の別段の定めのような形で、いわゆる累積型のものについては別段の定めでうまく調整をとるというコンセプトは変わっていないと理解をしておりまして、そういった意味では【案3.3】というもの以外の、ほかにも極度額の定めであるとか、三つ案がありましたけれども、どれを採っても実務的には多分余り大きく影響はしないかなとは思っておりましたので、【案19.2.3】ということで特段の違和感等もございません。   ただ、55ページからのところで、破産手続開始決定後の集合動産譲渡担保権の効力ということで、開始決定等があった場合には、第8の1(1)の通知があったものとみなしてという形で規定を適用するとなりますので、今御説明がありましたとおり、担保実行手続取消命令の活用というものがここでは実務上、極めて重要になってくると考えております。   担保権実行手続取消命令の方を拝見しますと、49ページになりますが、こちらは3(1)アのところで、かなり債権者の一般の利益に適合して不当な損害を起こすおそれがなく、というような形で要件を絞り込んだ上で、かつ担保を立てさせてというような形で、必要的な担保という形にもなっております。こちらの取消命令の方だけ見ますと、確かに実行手続が進んでいる中で取消しをするというので、立担保も必要的というのでもありかなと思っておったのですが、55ページの8の方で、実際には実行手続が始まっていないけれども、みなして、一方で取消命令というので防ぎますというのだとすると、担保を立てさせてという、必要的な担保の場合があるのかどうかという気が正直、いたします。   中止命令の方に関しても、確か条件を付して発令することができるというような形で、ある程度裁判所の裁量というものが認められている部分があるので、この取消命令の方に関しても同じような形で、担保を立てさせてという必要的な担保だけではなくて、担保を立てさせ、又は立てさせないでとかいう形で、担保が必要な場合もあるとは思いますので、担保が要らないというつもりはございませんけれども、特に8のみなしとの関係でいうと、担保を立てさせなくてもよい場合というのが十分あり得るのではないかとも思っておりまして、そういった意味で、ここの担保実行手続取消命令の(1)アのところについては、必要的な担保かどうかというところについて、是非御検討いただければと考えました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。今の点について、何かございますか。 ○笹井幹事 そうですね、みなされるということですので、実際に直ちに担保権実行が始まるというわけではもちろんないのですけれども、ただ、ここでみなしている趣旨というのは、動産に関して言うと、いわゆる固定化が生じてしまうということになりますし、その債権についても取立権限を失わせることになりますので、やはり担保権者に対する影響としてはかなり大きいと思います。その点について御意見があったということは承知いたしましたので、御議論いただければと思いますけれども、担保権の対象についての効力が大きいことを考えると、無担保で発令してよいのかについては、慎重に考えた方がよいのかなとは思っております。 ○道垣内部会長 この点について、何か御意見はございますか。 ○阪口幹事 阪口です。担保だけに問題を限定して申し上げますけれども、担保が命じられることになると、タイムラグは必ず発生してしまうと思うのです。実務的に民事再生で、まず申立てをします、この段階で、まず中止命令とか禁止命令を取ります、1週間後なら1週間後、開始決定が出ます。でも、この開始決定によるみなし固定の取消命令は、当たり前だけれども、申立てから開始決定までの間には申し立てられません。だって取り消す対象がないから。できるのは、せいぜい開始決定が出たことを停止条件にする取消命令申立てしかできないはずです。ところが、開始決定後からしか立担保命令が出ないので、そこから立担保命令を受けて、法務局へ行って供託金を納めて、その供託書を裁判所に提出してとやっていると、実務上は半日か1日か掛かるわけです。それは、少しナンセンスです。僕の理解は、取引を止めないことが重要です。民事再生のときに今回のみなし固定みたいな概念を作ることによって商品販売が止まる、売掛金回収が止まるということはあってはいけない、そのために中止命令や禁止命令を作ろうという話をしているのに、何で今回、必要的担保を、そもそも従前の3説を採ること自身が問題だと思っているけれども、そこは置いておくとして、担保に限定して議論しても、実務的に困ると思います。 ○道垣内部会長 大西さんは別のポイントですか。 ○大西委員 別のポイントです。 ○道垣内部会長 今の阪口さんのお考えについて、ほかの方でも結構ですし、事務局でも結構ですが。 ○松下委員 松下です。ありがとうございます。確かに必要的な担保というのは重たい、タイムラグが生じて、事業の継続に穴を空けかねないという指摘はもっともだと思います。ただ、以前の部会でこの取消命令について、強制執行の取消しに関する民事再生法の26条の3項と似たように考えられないかということを申し上げたのですが、そちらの方では必要的担保になっているので、それとの平仄はやはり考えざるを得ないのかなと思います。更に言えば、26条の3項の強制執行の取消命令のところで担保が必要的だとされていることで、何か実務的に問題があるのかどうか、もし分かれば、どなたかから教えていただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。今の松下さんの問い掛けに対してでも結構ですし、ほかのことでも結構ですが、この担保問題について、いかがでしょうか。 ○阪口幹事 阪口です。民事再生法26条3項という今のお話でしたけれども、これは実際に何か始まっているものを止める話で、大澤先生もおっしゃっていましたけれども、取消命令一般について必要的担保ということ自身はそれほど反対しているわけではなく、今回出てきた、みなしのものを取り消すというときに、そこに担保が必要なのかという問題意識です。その意味で、結局それは何かというと、開始決定で固定させるということ自身の当否なのだと思っているのです。端的に言うと、固定させて取り消すという、それだったらそもそも固定させなかったらいいではないかというところの問題意識があるから、今みたいな、何で担保をかませて商売にタイムラグを生じさせるのかという問題意識です。 ○道垣内部会長 この問題、ほかにいかがでしょうか。 ○山本委員 必ずしも担保に固有の話ではないのですけれども、私自身も、こういう立て付けをすると、集合動産譲渡担保が付いている場合には、民事再生とかを申し立てる場合には基本、常にこの取消命令が必要だということになると思うのですけれども、敵対型というか、譲渡担保権者と話が付かないで再生を申し立てる場合というのはある意味、それでしようがないかなという感じも、担保もしようがないかなという気もするのですけれども、話を付けて申し立てる場合のようなときでも、なお実行がみなされて、取消命令を掛けないと要は固定化してしまうという、そこまでリジッドな制度にする必然性というのが少し私には分からない感じがします。具体的には、集合動産譲渡担保権者が同意しているような場合には、このみなしの適用を外すというようなことが、その程度の柔軟性はあってもいいのかなというような印象は持ちました。 ○道垣内部会長 それはルールとして、同意している場合にはという話になるのか、それとも、担保を立てさせるということ自体を裁量的にして、そして裁判所の運用として、話が付いているというふうなときには担保を立てさせないで即時にやってしまうというふうにするということになるのかしら。どうなのですか。 ○山本委員 そういうのでもいいと思いますし、だから、そもそも同意しているような場合に3(1)アのような要件をいちいち確認する必要があるのかどうかというところも疑問であるということです。だから、もちろんこの制度を前提にして、同意しているのだから直ちに撤回申出というか、担保権者の側に、その実行をもうやめますと、取下げだか撤回だか分かりませんが、やめますというようにしてもらえばいいのかもしれないですけれども、それもそこまで、すごくフィクショナルな制度になるなという感じがするので、そういう場合はもうみなし自体をやめるというのでどうかなと思ったということです。 ○道垣内部会長 この点はどうしますかね。ほかの方もいろいろな御意見はあろうかと思いますし、事務局の方も今いろいろな意見が出て、それではこういうふうにしましょうというふうにはなかなかいかないと思います。この第14、破産手続等における譲渡担保権の取扱いというのは次回にその一部を回さざるを得ないと思いますので、この担保の問題についても、皆さんも事務局も少し考えてきていただいて、次回に続けて議論をしたいと思います。   大西さんからずっと手が挙がっておりまして、封じ手みたいになりますけれども、大西さんから少なくとも御発言を、議論が長く掛かるような話でしたら、またここは頭出しだけをしていただくということになるかもしれませんが、せっかくですので御発言をお願いできればと思います。 ○大西委員 3点あるのですが、次週にした方がよろしいですかね、発言した方がよろしいですか。 ○道垣内部会長 いや、もう次回で構わないよということならば、もう次回に回していただいても構いませんが、それでよろしゅうございますか。ずっと手を挙げていただいていたのに、大変申し訳ないというふうに。 ○大西委員 次回で結構です。 ○道垣内部会長 6時にぴたっとやめなければいけないわけではないのですけれども、今日はこのくらいにさせていただいて、破産手続等における譲渡担保権の取扱いというところから、次回続けて議論をさせていただければと思います。   それでは、次回の議事日程等につきまして事務当局から説明をしていただきます。 ○笹井幹事 次回日程は2月13日火曜日、午後1時30分から午後6時まで、場所は今日と同じ法務省地下1階、大会議室です。 ○道垣内部会長 どうもありがとうございました。   それでは、少し中途半端になってしまいましたけれども、法制審議会担保法制部会第44回会議を閉会にさせていただきます。   熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします。 -了- - 1 -