法制審議会 担保法制部会 第45回会議 議事録 第1 日 時  令和6年2月13日(火) 自 午後1時30分                      至 午後4時58分 第2 場 所  法務省地下1階・大会議室 第3 議 題  担保法制の見直しに関する要綱案のたたき台2         担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討⑾ 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第45回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は家原幹事が欠席と伺っております。また、大西さん、松下さんが途中参加、加藤さんが途中退室予定、倉部さんと福田さんが一時退出予定と伺っています。お忙しい中いろいろやり繰りをしていただきましてありがとうございます。   まず、配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 本日もよろしくお願いいたします。事前に部会資料43「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(11)」をお送りさせていただきました。後ほど審議の中で事務当局から御説明いたします。資料は以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   前回の積み残しもあるのですけれども、審議に入るに当たりまして、まず部会資料43「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(11)」の「労働債権を有する者その他の一般債権者を保護するための規律」について議論を行いたいと思います。事務当局におかれましては部会資料の説明をお願いいたします。 ○森下関係官 それでは、説明いたします。   本文1は、労働債権を有する者その他の一般債権者を保護するための組入義務の内容についての規律になります。集合動産譲渡担保権等と集合債権譲渡担保権とで規律を分けております。   (1)は、集合動産譲渡担保権等についての規律になります。本文部分は表現ぶりの修正を行わせていただきましたけれども、実質的な内容につきまして以前の部会資料から変更点はございません。   【案1.1.1】と【案1.1.2】は、組入額の算定基準についての提案になります。【案1.1.1】は、担保目的財産の価額の一定割合額を基準としない案になります。部会資料40の【案2.1】からの変更点といたしましては、組入れの必要のない利息遅延損害金等の範囲を実行時から遡って1年以内に生じたものとしておりましたところを、被担保債権の元本の弁済期後、根譲渡担保権にあっては元本の確定後、1年以内に生ずべきものと改めております。これは、一部実行の場合のように実行が複数回行われた場合に、組入額を適切に算定できるようにするための修正になります。   【案1.1.2】は、担保目的財産の価額の一定割合額を基準とする案になります。基本的な考え方といたしましては、集合動産譲渡担保権等の実行により消滅した被担保債権の額から、目的である集合動産全体の価額の一定割合、本文では【P】を付した上で95%としておりますけれども、これを乗じた額を控除した額を組入額とするというものになります。   アからウまででは、競合する集合動産譲渡担保権等の有無で規律を分けております。アは、競合する集合動産譲渡担保権等がない場合の規律になります。この場合には、(イ)により、被担保債権の消滅額が元本の額を割り込む場合には組入義務は生じないこととしております。これは、最優先の担保権の被担保債権に限っては、少なくとも元本までの回収を認めようとする政策的な考慮によるものです。   イは、優先する集合動産譲渡担保権等はないものの、同順位の集合動産譲渡担保権等がある場合の規律になります。この場合は、組入額の合計額をそれぞれの被担保債権の額に応じて按分することとしております。また、アと同様に、被担保債権の元本を割り込んだ場合には組入義務は生じないということといたしております。   これに対しまして、ウは優先する他の集合動産譲渡担保権等がある場合の基準になります。この場合は、優先する他の集合動産譲渡担保権等の実行により消滅した被担保債権の額と、自身の集合動産譲渡担保権等の実行により消滅した被担保債権の額の合計額から、目的である集合動産全体の価額の95%を控除した残額を、最も劣後する担保権者から順次組み入れさせるということといたしております。この場合には、元本を割り込む場合であっても組入義務を負わせるということといたしております。   (2)は、集合債権譲渡担保権についての規律になります。基本的な考え方は集合動産譲渡担保権等と同様になりますけれども、担保目的財産の価額の一定割合額を基準とする案を採った場合、集合債権譲渡担保権については、その都度発生する個別債権を順次取り立てていく方法により実行がされ、また数次にわたる実行が可能であるため、集合債権の価額を算定するに当たって、評価の対象となる債権の範囲をどのように確定するかが問題となります。   そこで、【案1.2.2】のア(ア)やウ(ア)では、破産手続の開始があったときまでに破産手続等の開始の申立ての日、1年前の日より後に終了した集合債権譲渡担保権の実行によって消滅した被担保債権の額と、当該破産手続等の開始があったときまでに発生した譲渡担保債権の評価額の合計額に、これも【P】を付しておりますけれども、95%を乗じた額を集合債権の全体の価額といたしております。   今回、特に御議論いただきたいのは、担保目的財産の価額の一定割合額を基準とする案の採否についてでございまして、その検討のポイントにつきましては、説明5ページの(3)に詳細に記載をさせていただいているところでございます。   本文1の(2)から(4)までの内容については、部会資料40から変更はございません。   本文2は、これにつきましても部会資料40と同様に、組入義務の履行を確保するための手段として、設定者等又はその債権者の譲渡担保権者等に対する担保請求権を認めるということといたしております。以前の部会では供託義務を求める意見もありましたけれども、6ページの2の項に記載した理由から、担保請求権を認める案が適切と考えられるため、従前の提案を維持させていただいております。   以上の点につきまして御議論をお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと存じます。 ○村上委員 ありがとうございます。まず、資料について少し御質問したいのですが、6ページの20行目ぐらいから、目的財産の価額の一定割合額を基準とする案の成否についての論点の説明を書かれております。そこで、一定割合を低く設定した場合には、企業に対する融資額が大幅に減少することで事業継続が困難になり、一般債権者にも不利益が及ぶといったことについての記載がございますので、その点について確認させていただければと思います。   この点は以前も御発言があったと思いますし、資料にも記載をされておりますけれども、【案1.1.2】や【案1.2.2】がルール化された場合、不十分な融資や過剰担保を取るというような行動をされることが、金融機関全体で見れば、大半を占めるというようなことなのでしょうか。金融機関から参加されている日比野委員などに御見解を教えていただければと思います。また、銀行には重要な公共的な使命があると考えておりますが、金融庁からも、監督官庁である立場での御見解も併せてお伺いできればと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。増田さん、お願いいたします。 ○増田幹事 ありがとうございます。幹事の厚生労働省の増田でございます。本日お示しいただきました部会資料43の御提案につきましては、第40回の部会における労働債権を含む一般債権者保護の目的を実現する、そのような観点の議論を経まして、担保目的財産の一定割合額を基準とする案、これも含めまして部会資料40で御提案され、更に第43回の部会での議論を踏まえまして、実務的な問題等も含め、事務局で更なる整理、検討を進めていただいたものと受け止めております。   これまでも申し上げているところでございますけれども、労働債権は労働者、家族の生活の糧であり、その保護が大変重要な課題であること、また、今回新たに規律されます集合動産譲渡担保等や集合債権譲渡担保につきましては、資料36での説明にもございましたように、一定の範囲に属する財産を一括して担保の目的とし、対抗要件が容易なもので足りる、目的となる集合動産等の特定の仕方によりましては、一般債権者のための引き当てとなる財産が著しく減少するおそれがあり、一般債権者の保護を図る必要が高いとされているところでございます。   担保目的財産の価額の一定割合額を基準とする案につきましては、先ほど村上委員の方からお話もございましたように、担保掛け目の減少といった融資への影響でございますとか、また、評価等について様々な御意見があることは十分承知をしておりますけれども、これまでに御議論があったように、実際に労働債権が弁済を受けることができるか、労働債権を含む一般債権者保護という目的を実現する、そのような観点は重要であり、融資等の実態も踏まえつつ、労働債権、一般債権の保護について実効を確保する方向で議論を深めていただければと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   まず、6ページの20行目以下の、事実としてこういうおそれがあるということについての認識の問題が問われているわけなのですけれども、これはどこからお答えいただくのがよいでしょうか。お答えでなくても、御意見でも結構なのですけれども、どなたかございますか。 ○日比野委員 日比野でございます。村上委員の御指名ですので、まず私の方からお話をさせていただければと思います。   まず、この【案1.1.2】、あるいは【案1.2.2】という案を採った場合に、過剰な担保の取得が通例になるのかといったようなお話があったかと思いますが、私の方で認識しておりますのは、そもそもこのような、特に集合動産の譲渡担保については、その評価が非常に難しい類型のものであると認識しております。これに加えて、一定の割合を控除するというような形になりますと、その担保の評価、担保による回収がどれだけ見込めるかがかなり不確実になるため、そもそも融資自体に取り組むということが難しくなる局面が出てくることになるのではないかということを危惧しております。   特に、債務者の業況が不振となり、その資金繰り支援という形で融資を求められるといった局面においては、その危機時期の状況において、ある程度確実なものとしてどのくらいの担保評価が見込めそうかということについては、融資者の善管注意義務の観点からも、慎重な取扱いが必要になると考えております。そのような考慮において差異が出てきてしまうと、その結果として、有事の資金繰りを何とか維持することによって再生を図ることがそもそもできなくなってしまうということが起きてしまうのではないかということが懸念される点だと申し上げたということです。   私の方からは以上にさせていただきます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに、認識の問題につきまして御意見等はございませんでしょうか。   これは、どういうことを金融機関の行動としてとるのかという問題ですので、議論をする対象ではないのかもしれませんけれども、認識の問題として、必ずしもこうはならないのではないかという話と、なってしまうのではないかという話があるようですね。ここは仮に2の案を採った場合のパーセンテージの問題のところでございますので、それ以外のいろいろな構造等につきましても、村上さんから御意見があろうかと思います。今の認識の問題をもはや扱わないというわけではないのですけれども、村上さんからほかに御発言がございましたら、最初の段階で頂ければと思いますが、いかがでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。金融機関の認識として、平時の場合の資金融資だとか、事業者にとっては事業資金の調達が難しくなるということを理由として、一定割合を基準とする案を採りづらいというような御説明は、やや脅かしに近いのではないかと感じるところがありまして、その点について確認したかったというところでございました。   意見といたしましては、担保目的財産の価額の一定割合額を基準とする案につきまして、私どもも要望を出しまして、そのことに対して精緻な検討を進めていただいているとは受け止めております。その中では、少なくともスキームとしては【案1.1.2】や【案1.2.2】の方が適切と考えております。   部会全体でも、労働債権者を始め一般債権者の保護を強化するという方向性は共有されてきているのではないかと認識をしております。ただ、その認識に立つのであれば、ペンディングとはいえ95%という割合は、政策的な対応を積極的に進める御提案とは受け止め難いところがございます。現行法制から僅かでも前進というだけではなくて、この提案が実体として一般債権者保護の強化に資する案というふうなものとして提案されたものなのだろうかというところは、少し疑問を抱くところでございます。また、こういった案については、私ども労働組合や労働組合側で仕事をする弁護士などからは、これでは解決にならないのではないかとの声もございます。一方、これがこれまでにはない制度なのだという声もございます。形だけでなく、本当に労働債権の確保に役立つ制度であるという確信が必要ではないかと考えております。   皆様方から御意見を頂いた後で、また述べさせていただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。今の御発言には、一定割合というふうな形の規律にするかという問題と、95%というのがペンディングで出ているというところがあって、それが適切かという問題があります。私の理解しているところでは、20行から29行目というのは、【P】が付されている割合を低くするといろいろな問題が生じるのではないかということだろうと思います。しかし、それに対して、やはりかなりのパーセンテージにしないと、価値の一定割合ということに制約するとしても、全く目的は達成できないという考えも十分にあり得るわけであります。しかし、その話と、割合でやるのかという問題は多分別問題で、①、②、③というふうないろいろな理由が書いてあるのは、割合でやるというのはなかなか難しいところがありますよという話で、20行以下は少しその意味では性質が違うのではないかと思います。若干脅しだという感じを受ける方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうふうなことでパーセンテージというものを低めなければいけないのではないかという意見もあろうかと思います。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。この問題とも関連する点としまして、この新しい立法後に幾つかの形態の担保が提案されるわけですけれども、その役割分担を考えていく必要があるのではないかと思っています。特にここでは収益全体を担保に取ってしまう、そういう形の担保が新しく提案されるということになると、その中で労働債権そのほかの商取引債権をどう保護していくかという問題かと思います。   その点からしますと、特に事業成長担保権が実際にどの程度機能するのかという点が大きく関係してくるのではないかと考えています。といいますのは、事業収益を担保に取っていく主要な形態が事業成長担保になるということであるならば、その中でしっかり労働債権等の保護を考えていけばいいということになるのでしょうが、逆に、そこがやはり手続等が厳重なために余り機能しないということになりますと、収益を担保に取る担保のメインが債権譲渡担保ということになりますので、そうなると、その中で労働債権等の保護をどう図っていくのかというのは、きちんと制度設計をしておかないと大きな問題を生じてしまうということになるかと思いますので、考慮事由の一つとしてその点も加えておいていただいてもいいかなと思った次第でございます。特に何か具体的な提案があるわけではありません。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見、御質問等はございませんでしょうか。   ここで大きく二つに、被担保債権のというか、優先弁済を受ける額を制限するという方式と、担保目的財産の価値を評価して一定の割合に優先弁済権の範囲を限定するという方法が提示されていて、後者については、先ほどから問題になっておりますように具体的な割合をどうするのかという問題があるわけですけれども、技術的な問題として、技術的とは限りません、政策的かもしれませんが、被担保債権額を限定していくという方法と、担保目的財産の価値の何%という形で規律をしていくという形と、仮に一般債権者の保護を図ると考えたときに、どちらが適切な制度設計なのかということについては、いかがでございましょうか。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。どちらが適切かという問題に対してお答えするのは非常に難しいのですが、私自身が思いますのは、動産担保ということになりますと、例えば抵当権のような制限、すなわち、担保に取っている目的は全ての財産ではないということが大前提ということになっていて、いわゆるアセットの一部について担保権を設定するという場合については、基本的に担保権者が全額を回収できるということを大前提とすべきであり、一部制約を掛けるということであるとしても、被担保債権の元本、あるいは1年分の利息という抵当権的な制約の仕方というのが基本にあるのかとは思います。また倒産は別かもしれませんけれども、倒産前の実行段階のものとして。   それと違って、今回問題となるのは、特に債権譲渡担保については、いろいろ資産があるのかもしれないが、それはそれほどの価値があるわけではなくて、結局は将来の事業収益、事業債権、それが資産のほとんどであるというようなケースについて、それを全部丸取りしてしまうというところに問題があるのであって、そのような局面で労働債権等の保護を図っていくということになると、被担保債権の問題というよりも、その担保目的として、資産全体を取ったという場合であっても、それの一定割合をやはり労働債権そのほかの一般債権者に残すというような方向性が適切でないかと私自身は思っております。   その点で、動産と債権は違うかと思いますし、債権の担保を取るというときにも、どういう担保なのか、いろいろな形態があるとは思いますが、少なくとも全部の収益を確保してしまうという側面がある集合債権譲渡担保に関しては、割合的な残し方が必要なのではないかと考えている次第でございます。   適切に説明ができなかったかもしれませんけれども、以上でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかにございませんでしょうか。 ○阪口幹事 阪口です。1案か2案かという問題に関する問い掛けだと思いますが、この制度を設けるに当たっては、本来的には2案の方が望ましいのだろうと思います。ただ、実務家として、弁護士会の中でも議論しても、2案はやはり難しいのではないかという意見が多く出ました。逆に管財人のやりがいが出るのではないかという少数意見もありましたけれども、大勢は、2案は実務的にしんどいというのが正直な意見でありました。そうすると1案でよいかという検討になります。   1案の最大の問題点は、実際に発動することがほとんどない規定になってしまうという点です。もちろんこの規定があることによって1年以内に回収するという枠がはまるというか、そういう実務にはなるのですけれども、更にこれをもう少し進められないかという意見がありました。今現在の実務だと、利率は非常に低いけれども、遅延損害金は14%なり14.6%だったり、場合によれば18.25%だったり、非常に高いことになっています。集合的な担保を取って枠があるからと言って18.25%を1年間取り続けるとなると、これはかなりひどいではないかという気がします。仮に実務的に2案が難しいから1案だというのだったら、1案の遅延損害金に関しては、利率の限度で回収が許されるという枠をはめることによって、1年間遅延損害金をまるっと取ることは防げる。そうすると、1案の実効性が少しでも出るかもしれない。そういうことは考えられるのかなと思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○松下委員 松下です。昔の話をするのですけれども、当時の倒産法部会で破産法の担保権消滅制度を検討するときに、組入額あるいは割合を法律で割合で決められないかという議論をしたことがありました。そのときの議論で、担保目的財産の価額が高ければ、組入れ割合は小さくても額としてはそれなりの額になるはず、逆に担保目的財産の価額が低い場合には、組入れ割合を大きくしないとある程度意味のある額が出てこないと、つまり、担保目的財産の額によって率は逆累進的になるというのが適切なのではないかというような議論をして、それで、割合を法律で決めるのは難しいのではないかという議論になったような記憶があります。もし似たような話が当てはまるのだとすると、割合で決めるというのは、つまり一般債権者に残す分というのは、ただ割合ではなくて、絶対的な額である程度画した方がいいのだということになれば、割合というのはなかなか難しいのかなという気がいたしました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかにございませんでしょうか。 ○阪口幹事 今の1と2の比較以外のところは、後々の方がいいですか。 ○道垣内部会長 少し伺ってみないと分からないので、お願いします。 ○阪口幹事 言葉の確認とかも含めてなのですけれども、いいですか。 ○道垣内部会長 お願いします。 ○阪口幹事 阪口です。まず、ゴシック体1ページの8行目のところに集合動産留保所有権という概念が出てきていて、これは今まで説明や定義がなく、急に出てきたように思います。これは本来、部会資料42の方の議論かも分かりませんけれども、集合動産を留保しているというのがどんな局面なのかを確認したいというのが一つ目です。   次に、1ページの23行目の方の元本という言葉の意味です。元本には利息が組み入れられた分を除くと20行目には書いてあるのだけれども、23行目の「被担保債権の元本の弁済期後(根譲渡担保権にあっては、元本の確定後)」の、ここでいう元本は、利息の組み入れられた部分を除くとか除かないというのは、どちらの意味で使っているのかの確認をしたいというのが2点目です。   それから、3点目で、3ページの23行目の話になってしまって、申し訳ないのですけれども、組入義務の履行を確保するため必要があるときは、設定者等又はその債権者は、とあって、ここでいう設定者等には破産管財人は入らない意味だったのかどうかの確認をしたいと思います。元々は確か、将来発生する組入義務の履行を確保するため、破産開始前に設定者等が請求するということだったと思うのですけれども、破産開始後に、いかにも担保権者がひっくり返りそうな事態になったときに、当然、組入れの額は争われて審理に時間がかかるわけですよね、争われているときに、管財人は、まず担保を入れろよという請求ができないのかどうか、その確認がしたいというのが3点目です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。事務局から何か、今のお話に対して、ございませんでしょうか。 ○笹井幹事 1点目の集合動産所有権留保ですけれども、ここは所有権留保に関する提案が、いろいろな部会の御意見等を踏まえて若干揺れているところではありますけれども、元々所有権留保について譲渡担保権の規定をどれだけ準用するのかというのが中間試案後の議論でもございまして、最初は一部分を除外するという提案をしていたのですが、部会での議論を踏まえ、動産譲渡担保と所有権留保を包括的に同じように扱いましょうということで、全面的に準用するという提案を差し上げていたところです。法律構成に関しては、所有権が移転していないからというような提案が前回ありましたけれども、ただ、ほかの部分を基本的に準用するという立場は変えたつもりはなく、そこは維持されております。その結果として、所有権留保についても、集合動産についてその所有権を留保するということが可能性としてはあり得るということが提案としては維持されていたということになります。   具体的にどういう場面なのかといいますと、これは部会でも何度か議論が出たと思いますけれども、例えば、一定期間内に譲渡したもの、あるいは将来的に譲渡して、どこかの倉庫に入るみたいな形で約定し、その部分について、内容が変動するものとして所有権留保の対象にしておくというようなことが考えられるかと思います。   ここは、したがいまして、必然的にいわゆる拡大された所有権留保になるということになるので、その意味でも動産の譲渡担保と同じような扱いをしていくということが部会の中でも想定されていたのではないかと思います。言葉としては急に出てきたのかもしれませんけれども、そういった今までの所有権留保に関して動産譲渡担保を基本的には準用するという場面があることを踏まえて、こちらではこういう言葉遣いをしたということになります。   次に、1ページの23行目、被担保債権の元本の弁済期後というところです。ここは計算のところでは、そこまで詰めて考えていたわけではありませんが、要するに、説明の中にも少し書きましたが、組入額を一義的に算出するためには、一部実行が段階的にされるという場面を考えますと、抵当権と同じように、最後の2年分とか最後の1年分とかという計算では余りうまくいかないので、最初の時点を捉えようということで、今回修正しております。   そういう意味ですので、ここでの元本というのは、利息は毎月払っていくけれども、元本は弁済期に一括して払うというような融資を念頭に置いて、利息ではなくて、元本債務の弁済期をここでの最初の時点として捉えようということを想定していたものです。   そう考えますと、例えば利息が利息債権として月々弁済されていくということではなくて、元本に組み入れられた場合には、恐らく元々の元本と同じ時期に弁済することになるのが普通だろうと思いますので、ここは、組み入れる部分とか、組み入れない部分というのを余り区別する意味はないのかなとは思っておりましたけれども、利息分を元本に組み入れるとともに、元々の元本の弁済期と異なる弁済期が定められたというようなケースが、あるのかどうか分かりませんけれども、もしあるとすれば、それはやはりここでいうところの元本の弁済期に当たると考えるのかなと思いました。今、御質問を受けて考えましたので、十分な検討をしたわけではありませんけれども、直感的にはそのように考えております。   3ページの設定者等については、ここは元々資料を作成したときには、基本的には管財人が選任されたとき、つまり破産手続というか倒産手続が既に開始されている場面では、担保請求ではなくて、そもそも組入額を支払えという請求をすればいいと思っておりましたので、管財人が担保を立てるように請求するという場面は基本的には余りないのかなと思っておりましたが、今御指摘がありましたように、額について争いがあるので取りあえずは担保を請求するという場面は、確かに御指摘を受けて考えますと、あり得るかもしれませんので、少しそこは検討してみたいと思います。 ○道垣内部会長 よろしゅうございますか。 ○阪口幹事 阪口ですけれども、2番目のところの問題意識は、メザニンファイナンスのように組入れがされていく元本のときの、その計算額の仕方として、利息、遅延損害金はどちらの元本に対するものを考えているのかという質問だったのですけれども、少し質問の仕方が悪かったですかね。やはり井上先生の方からご質問していただく方がいいですかね、すみません。 ○井上委員 井上です。ありがとうございます。ここは、メザニンファイナンスの事例を一度取り上げさせていただいたことに対応して、何度か変遷してこの文言になっていると理解しているのですけれども、今の笹井さんの御説明で説明自体はよく分かったのですが、そうだとすると、イのところの被担保債権の弁済期というのは1個だけ、組み入れられた利息も含めて元本になって、その元本の弁済期を意味するわけですかね。そうすると、この文言によると、その弁済期後1年以内に生ずべきものという表現になっているので、このイがいう利息は、元本の弁済期の後1年間に生ずべきものと読めなくもないのですけれども、そうすると、組み入れられた利息が生じているのはもっと大分前からなので、それが含まれなくなってしまわないかという読み方の問題です。   具体的に見ると、アからは、組み入れられた利息は外されています。なので、例えば元々の元本が100で、一定年数たって、組入れによって150になったという例を挙げてみますと、アによってカウントされるのは飽くまでも100にとどまって、50は除かれます。その一方で、イには、これは含まれることになるわけですけれども、利息としてイに含まれているもののうち、元本の弁済期後1年間に生じたものだけがここに含まれるとすると、元本の弁済期までに生じていて組み入れられた利息がアにもイにも含まれないことになってしまわないかという懸念といいますか、元々の趣旨からして、それは当然含むという趣旨で書いてあると理解しているのですが、このままの文言だと、そこが少し不明確になるのかなと感じました。 ○道垣内部会長 それはおっしゃるとおりかと思いますので、少しその辺は修文をしていただくようにしたいと思います。利息が組み入れられた額、それが元本だと言い出すと、なかなかまた元本の定義からして難しくなるのですけれども、その辺はよろしくお願いいたします。   ほかにございますか。 ○井上委員 井上です。続けて申し訳ありません。最初の大きな問題に少し戻りますけれども、私は以前から【案1.1.1】あるいは【案1.2.1】でよいのではないかと考えています。というのも、狙いとしては、それによって実際に組入れを果たそうというよりは、前も申し上げましたけれども、担保余剰がある場合に担保権者がだらだらと実行を先延ばしして、清算金が本来あるべきところを減らしてしまうような行動を抑制するという効果の限度、担保権者が余分に取れないようにする、あるいは一般債権者に残すようにする限度に、ここはとどめるべきではないかと考えております。それでは確かに物足りないということはあるかもしれないのですが、労働債権あるいはその他の救われるべき一般債権を救う方法としては、やはり民法上の先取特権の規定とか、倒産法上の規定とかを見直すことによって議論すべきことで、担保権の実行のところで、こういった【案1.1.2】あるいは【案1.2.2】のような方式によって実現しようとしても、制度が複雑になりますし、それに加えて、それによってうまく目的を達成できるかという点でも難しい問題が残るように感じます。  私の理解では、ここでいう一般債権の中には、無担保の金融債権も入るのですよね。ですので、担保権者が弁済を受けられなくなった分を組み入れた金銭から、担保を取っていない金融債権者への弁済に回ることにもなるわけで、一般債権者といっても様々な無担保一般債権者がいることを考えると、今我々がここで想定して救いたいと思っている労働債権者その他の一般債権者を救う方法として、【案1.1.2】や【案1.2.2】が実効的に機能することはなさそうに思えるというのが私の現時点での考えです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに。   村上さん、いろいろな方の意見が出た後にもう一度御発言という話でしたので、よろしくお願いいたします。 ○村上委員 ありがとうございます。様々御意見を伺っておりまして、やはり労働債権は保護すべきものでありますので、集合動産や集合債権の譲渡担保権に限らず、広く担保権全体に対する優先権を認めていく、労働債権のスーパー先取特権といった制度の創設が必要ではないかということは以前から申し上げておりますし、今もその主張は変わっているわけではございません。ただ、今回の法制化を行うに当たりまして、それを同時にやっていただけるのであれば、大いに歓迎ですけれども、そういうことではないということであれば、今回御提案いただいている内容についても、まだ検討いただくことは必要ではないかというところもございます。   1か2かというところで言うと、2はなかなか難しいという御意見はありましたけれども、2をまだ検討していただけるということであれば、やはり、1でもそうなのですけれども、実体として労働債権の保護の強化に資するかどうかということを出発点としていただきたいと考えております。   ペンディングになっている95%という点につきましては、私どもは何度か7割といった数字を出しておりますので、そういったことも念頭に置いて検討いただきたいと考えております。やはりあくまでも政策的な対応ということで、労働債権の保護に資するのかどうかというところ、本当にその意義と実効性があるものとなるように検討することが必要だと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   片山さんがおっしゃったのは結局、全部の財産を集合動産譲渡担保権者や集合債権譲渡担保権者が取ってしまうといったときには、一定の制約を、七三という話が出ましたけれども、かなりの制約を掛けるということに十分な理由はあるだろうということなのだと思うのです。ただ、井上さんの中にそれが含まれていたかどうか分かりませんが、集合債権譲渡担保、集合動産譲渡担保というのが全部を取るとは限らなくて、小さい場合だって十分にあり得るというふうなことを考えると、そのときにも大幅に制約をすべきなのかという問題が恐らく残ってくるのだと思います。そして、その両方について、その二つの区分というのがうまくいかないとするならば、全体としては1にしておいた方がスムーズだろうというのが一つの考え方としてあるのだろうと思います。ただ、片山さんがおっしゃったように、例えば事業担保権の場合には十分に2の方で働くということがあり得るのではないか、そして、もし仮にそれが全部を取るときの中心になるのだったらば、そこの制約に委ねるべきではないかという意見もあったのですが、これはなかなか難しい話で、それからまた逃げ道として来るということがあるかもしれませんので、更に考える必要があろうかと思いますが、そういうふうな今現在、意見分布だろうと思います。   ほかに御発言はございませんでしょうか。   事務局から何かございますか。 ○笹井幹事 部会資料では幾つかの考慮要素として書いておりますが、大きく言えば、今、阪口幹事からも若干ありましたけれども、やはり技術的にうまくいくのかというところが気になっております。資料においては、物の価値をどのように算出するのか、被担保債権額をどのように算出するのかということを、制度として破綻しないように考えてみたつもりではありますけれども、実際に、例えば特に管財業務とかを担当されるに当たって、それでうまくいくのかどうかという問題です。   もう一つは、政策的な問題として、冒頭村上委員から御発言がありましたが、20行目のような問題があるのではないかと、大きくいって二つの問題があるのかと思います。   後者の二つ目の問題は、こういう懸念といいますか、そういう融資についての一定の縮小というものが懸念されるのではないかと書きましたけれども、それを甘受するという立場ももちろんあり得ると思いますので、そうなってしまうけれども、しかし、それでも労働債権なり、労働債権だけではなくて一般債権を維持するのだという考え方もあると思いますので、部会資料43の6ページ、21行目から30行目に書いたことは正に、こういった一つの副作用は考えられるけれども、しかしそれでもなお、ほかの価値との関係でこちらの案を採るということはあり得ると思いますので、それは正しくバランスの問題といいますか、担保権の効力と一般債権の保護とのバランスをどのようにとっていくのかという問題ではないかと思っています。   後者のところは、いろいろその価値判断なりの問題になってくるかと思いますが、特に前者の問題、技術的な問題については、もし、特に管財業務等の観点から、阪口幹事からはなかなか難しいのではないかという御指摘はありましたけれども、可能でしたら、もう少し具体的にどのような問題点があり得るのかというところについても、阪口幹事だけではなくて、今日御議論いただければ、是非御発言いただけないかと思っております。 ○道垣内部会長 どなたか今の問い掛けに答えてくださる方はいらっしゃいませんか。   大澤さん、責任を感じていただいてありがとうございます。 ○大澤委員 すみません、管財人の立場が多い者から申し上げますと、まず、管財業務において、きちんとした情報を全てうまく集められるかというのが常に大きな問題としてございます。確か6ページに書いてありましたけれども、どことどこが競合して、それが幾ら弁済されていて、というのを全てきれいに集め切らないといけないというのがまず、ございますが、そこ自体がそもそもかなり難しいという、特に、中堅から大きな企業に関してはきちんとした経理、財務系の整理が残っていますけれども、中小企業においては必ずしもそうではないというところは正直ございます。なので、【案1.1.1】、【案1.1.2】と、まず分かれていますけれども、基準としない案であっても結構大変だなと思いながら私どもは正直、見ているところもございます。【案1.1.2】となると、充当関係も含めてどうなっているのかというところを銀行側からきちんとお話をしていただいて、かつ、その帳票も下さいというようなこともずっとやっていきますと、本当にそれができますかと、あるいは管財人として善管注意義務を負う立場として、どこまできちんとした調査等ができるのかというのは、かなり難しい問題だとは正直、感じるところではございます。   ただ、一方でそもそも論としてのこういった、先ほど正に片山先生なりがおっしゃられましたけれども、収益を取っていくというような担保について、何らか労働債権と、無担保債権も入りますけれども、何らかこういった形で配分をという政策目的そのものには賛同はしておりますので、あと手段として考えたときに、割合までやるかと言われると、かなり厳しいなと正直思ったところでもございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに御発言はございませんか。今日で決まるとは私も思っておりませんので、更に今日の議論を踏まえて事務局に再検討していただいて、また皆さんの御意見を伺いながらということになろうかと思いますけれども、本日のところはいかがでしょうか。   では、対立点といいますか問題点は大分明らかになったということで、更なる検討をさせていただきたいと思います。ここは本当に微妙なところで、難しいところでございますので、いろいろな御意見を個別的にお伺いすることもあるかもしれませんけれども、よろしく御協力いただければと存じます。   それでは、前回の積み残しの部分に戻りたいと思います。部会資料42の第14、破産手続等における譲渡担保権の取扱いについて議論を行いたいと思います。ただ、前回既に議論を開始しておりまして、幾つかの御意見を頂いておりますので、それに対しまして事務当局から御回答いただくということから始めたいと思います。適宜どういうふうな議論ないしは質問があったのかということをまとめながら、御回答いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○淺野関係官 前回の部会において、部会資料42の「第14 破産手続等における譲渡担保権の取扱い」のうち、「8 破産手続開始決定等後の集合動産譲渡担保権の効力」及び「9 破産手続開始決定等後の集合債権譲渡担保権の効力」について幾つか御意見を頂きました。そのうち事務当局からお答えできる点について、お答えを差し上げたいと存じます。   まず、倒産手続が開始したときに第8の1(1)の通知や第10本文の通知があったものとみなしていわゆる固定化の効力を発生させた上で、それを取消命令によって取り消すという仕組みを採るのは迂遠ではないか、そもそも固定化させなければ良いのではないかという御意見がありました。これは、ほぼ例外なく取消命令の申立てがされ、発令がされるということを前提とした御意見だと理解いたしましたが、事務当局としては、必ずしもそうではないものと理解しております。   すなわち、譲渡担保財産がどのようなものであるかなどの個別具体的な事情によっては、取消命令の発令を受ける必要性に乏しい場合もあり得るのではないかと考えております。例えば、譲渡担保財産がある事業に用いる在庫の一部分であり、別除権協定締結までの一定期間であれば、それ以外の在庫を用いることによって事業の継続が可能であるという場合もあり得るのではないかと思いますし、また、譲渡担保財産である在庫を用いていた事業は不採算であるため、その他の事業に経営資源を集中する形での事業再生が見込まれ、当該在庫を用いていた事業を継続することは現実的でないという場合もあり得ると思います。   部会資料42の第14の8及び9は、このようなケースをも想定して御提案をしているものであり、事務当局として、必ずしもほとんど全ての場合に取消命令の申立てがされ、発令がされると考えていたわけではありません。以上のような理解を前提としつつ、部会資料にも記載しましたとおり、倒産財団の負担により動産や債権が増加した場合に担保権者への弁済に充てられてしまうという問題がないこと、また、倒産手続開始後における権利義務の内容が明確であること、こういったメリットを踏まえ、この御提案を差し上げているところです。   次に、譲渡担保権設定者及び譲渡担保権者の間で話が付いている場合、これは、例えば倒産手続開始後においても譲渡担保権設定者が引き続き動産特定範囲に含まれる動産について処分をするとともに適切な補充を行い、他方で譲渡担保権者においては一定期間担保権を実行しないといった合意が倒産手続開始前において既にまとまっている場合などを指すものと理解いたしましたが、このような場合においても、部会資料第14の8や9における提案のように、第8の1(1)や第10本文の通知がされたものとみなされ、これを取り消すために取消命令の要件を満たさなければならないとする必要はないのではないか、という御意見がありました。   この点については、第14の8の規定によってあったものとみなされた第8の1(1)の通知は、第8の3の規定に従い撤回をすることが可能であると考えられますし、また、第14の9の規定により第10本文の通知があったものとみなされた場合には、譲渡担保権設定者及び譲渡担保権者の合意により、再度譲渡担保権設定者に取立権限を付与することが可能だと考えております。御指摘のような場合については、このような通知の撤回や取立権限の再度の付与を行うことによって対応は可能であると考えているところです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   もちろん今の回答に関しまして何か更に御不明な点があったら、御発言いただくことも結構でございますし、第14全体について御意見、御質問等を頂ければと存じます。よろしくお願いいたします。 ○村上委員 ありがとうございます。第10の9についてです。こちらでは(1)で破産時に政策的な制約を課しておりますけれども、(2)では、再生手続や更生手続の場合はただし書にある別段の定めを設けることで実質的には制約をなくすことも可能であるということがあって、(4)が提案されていると理解をしております。   そこで、(4)についてなのですけれども、一般債権者などの保護を目的に設ける仕組みということであれば、被担保債権が消滅した場面に限定するのはどうなのかと考えております。消滅時に限定すると、結局多くのケースでは(4)の仕組みが機能せず、実効性に欠けるのではないかということです。将来債権まで担保権の効力を広く及ぼすことを認める別段の定めについて、一定の制約を課すという趣旨を尊重した制度とするということが必要ではないかと考えます。また、(4)の仕組みを実効性あるものにするためには、既に回収された担保目的財産の対価の中から再生債務者や管財人が確実に償還できるようにするための具体的な方法や、その手続の制度的な裏付けも検討が必要ではないかと考えます。   また、資料の中では、先ほどもありましたけれども、設定者が資金ショートなどを避けるための対策として担保権実行手続禁止命令なども記載されておりますが、裁判所の判断で発令されるものでありまして、設定者にとって確固たる対策と言い切れるのかどうかというところもございます。こうした課題をクリアすることが必要であると考えまして、(4)の共益債権等を優先的に償還させる仕組みというのが実務的にも実効性ある形で設計していただきたいということと、そうでないのであれば、(2)のただし書は削除いただきたいと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   お答えいただく前に、あと2人手が挙がっていますから、まず御発言をお伺いしたいと思います。 ○大澤委員 ありがとうございます。ただ、私は先ほどの事務局説明に少し関連したお話ですので、今の村上委員のお話と少し違いますので、どうしましょうか。 ○道垣内部会長 それでは、すみませんが、9のところを先にやりたいと思います。佐久間さんはいかがですか。 ○佐久間委員 すみません、私も11で。 ○道垣内部会長 分かりました。9(4)の実効性、それと(2)のただし書との関係というのが御意見として村上さんから出たわけですが、事務局の方で何かお考えがございますか。 ○笹井幹事 この点については、私が十分に問題意識を理解していないかもしれませんが、まず冒頭に、被担保債権が消滅したときに限定する必要ないのではないかという御指摘だったのですけれども、ただ、消滅しないということは、その財産それ自体がまだ倒産財団から出ていっていないということなのだろうと思います。この規律は、出ていったものを被担保債務に対する弁済として取得した担保権者が、しかしそこから一部分を返しなさいということなので、消滅するという要件を消したときにどういうふうになるのかということのイメージが十分できませんでした。   ただ、いずれにしても、要するにそこに残ると、担保権者が(4)でいうところのア、イ、ウを含んだ形で回収してしまって、しかし結果的にア、イ、ウに充てられるべきものが逸失してしまうということを御懸念なのだろうと理解をしました。そのことについては、先ほど村上委員からも御指摘があったところではありますけれども、恐らく、既に以前の部会においても指摘がされましたように、結果的に一回、担保権者側が回収した上で償還をすると、管財業務なり、あるいは再生実務なりも余りうまくいかないのではないかという指摘もございまして、そういったところを踏まえて、部会資料42の58ページでは、中止命令や禁止命令を活用するという方法が実務的な工夫としてあり得るのではないかと記載をしております。   実際に出ていってしまった場合に、そこから更に償還を受けることをどのように実効的に確保するかという方法は、確かに今御指摘がありましたように、考えてみないといけないのかもしれませんが、その点については一応、担保権者でもあり、基本的には金融機関等が想定されるのかなということを考えると、ある程度の資力はある者が担保権者として想定されているのではないかとは思っておりましたけれども、いずれにしても、こういう仕組みを考えた場合には、恐らく実務的には、部会資料42の58ページに書きましたような中止命令や禁止命令等が活用される場面というのが多くなってくるのではないかと思っております。   それについて、裁判所の判断ではないかという御指摘もありましたが、確かにそういう面はありまして、裁判所に適切に発令していただくということは必要にはなってきますけれども、ここはもし私の認識が誤っていれば、倒産法あるいは倒産実務の先生方に御指摘いただければと思いますけれども、今までのところ、現状の譲渡担保権等に関する倒産実務なんかを見ておりますと、現状は中止命令がおおむね適切に活用されているのかなと、時間的に直ちに発令されるかというような問題点の指摘を受けたことはありますけれども、おおむね適切に発令されているのかなと思っておりまして、そういう意味では一つの解決策にはなり得るのではないかと思います。   もし、さらに、そうはいっても中止命令等が活用されずに一旦実行されてしまって、債権者が回収をしてしまったという場合に、なお償還の実効性というものを確保する方法を考えるべきではないかという御指摘や、あるいは現状の倒産実務における問題点等につきまして御指摘がありましたら、承りたいと思います。 ○道垣内部会長 少し村上さんがおっしゃったことと笹井さんがおっしゃったことがずれているのではないかという気がして、大体私がこういう解説をし出すと失敗することが多いのですが、少し言いますと、村上さんは、例えば現在100、集合債権譲渡担保権者が被担保債権額を持っていると、その集合債権に属する債権のもので10というのがあったとすると、その10を取り立てたときにどうなるかというと、被担保債権は100なのに、まだ10しか取っていないのだから、それは被担保債権が消滅したことにならない、そうすると(4)のいろいろなことというのはまだ発動しないのだけれども、そうなったら完全に取り終わるまでは発動しないということで、全然保護にならないのではないのというのが村上さんがおっしゃったことだと思うのです。それに対して、最初に笹井さんが少し御疑問でおっしゃったのは、10取り立てたら、その目的債権は倒産財団から逸失しているので、これに当たるのだというのは、まだ100の被担保債権を持っているときに10取り立てた段階でも、10の部分は消滅しているのだからこの制度が働くという御理解なのではないかという気がしたのです。そこで少し前提が違うのではないかという気がしたのですが、それはどうなのですか。村上さん、私の解説は合っていますか。 ○村上委員 合っています。 ○道垣内部会長 うれしいです。 ○淺野関係官 御質問は部会資料42の第14、9⑷の「被担保債権が消滅したときは」という表現に関するものかと思いますが、先ほど部会長から出していただいた例でいうと、被担保債権が100あり、一方で担保目的債権が10あって、そこから譲渡担保権者が10を取り立てて回収したというときにも、10の分だけ被担保債権が消滅しているため、この要件に当たり、規定が適用されるということを前提とした御提案です。 ○道垣内部会長 そうすると、私も最初、全部なくなったときなのかなという気がして、これはいつ働くのだろうと思いましたものですから、少しそこら辺を分かりやすく書くということが必要かなと思います。   ほかに、この事柄の仕組みとかメカニズムについて、何かございますか。 ○日比野委員 日比野です。今お話があったところは、私も最初見たときは村上委員と同じように、どういう扱いになるのかと思ったのですが、今は、淺野関係官がおっしゃったような理解をしております。   あとはもう、どこまで条文化してどこまで実務を形成するのかという問題なのかなと理解していたところなのですけれども、特に集合債権譲渡担保の場合は、例えば1か月の間に複数の担保対象債権の弁済を受けることもあろうかと思いますので、今、部会長がおっしゃったように、10を弁済したときに、そこまでの共益債権等の金額を確定して請求するみたいな運用は、実務的には多分ワークしないと思います。イメージとすると、例えば1か月間に発生した共益債権等に相当する額を計算し、それを担保権者に通知されると、担保権者はその1か月間に、担保権の実行によって回収した額を上限として管財人に引き渡すといったような実務になるのかなと勝手に考えておりました。ただ、それを条文で書くと書き切れないので、そこはうまくやってくださいという法務省の御提案なのかなと理解しておりました。 ○道垣内部会長 おっしゃるとおりで、10取り立ててもこれがフルに働くと、取り立てても取り立てても全部取られそうな気もして、実際にはどこら辺りで調整を付けるのだろうかというのが少し分かりにくいなと私も思ったのですけれども、何かそこら辺りについて、ほかにございますか。   何か事務局からありますか。いいですか。   それでは、ここの理解は、賛否ではありません、理解はそれでということで、大澤さんと佐久間さんから別のところについて御発言がございますので、大澤さんからお願いいたします。 ○大澤委員 ありがとうございます。この8と9のところ、先ほども御説明がありましたけれども、考え方としては非常にシンプルで分かりやすいものになったとは理解をしております。ただ、前回申し上げましたとおり、では担保取消命令における立担保はどうなのという話をさせていただきました。基本的に極めて実務的に考えているのですが、取消命令の申立てをすることが多いことは多いのではないかと正直思っておりまして、ただ、一方で取消命令の対象となるのは担保実行が一回的に止まるというか、取消しされるだけよと、本来究極的に止めるなら禁止命令も併せてということの整理だと思っております。   そうすると、取消命令における担保というのを考えたときには、実際にはやろうと思えば、担保権者はまたすぐに通知を打つことができるということになるとすると、いわゆる担保権者の不当な損害という要件のところとの関係で考えたときに、取消命令における担保というのは、これはもう裁判所が考えることだと思うので、余りここで決まることではないとは思っていますが、理論上それほど高額にならないのではないかとも少し思っている次第です。   一方で禁止命令の方は、条件を付してというような形でアレンジが可能なものだと思っているので、二つの合わせわざで、ある程度実務的にもワークするようなものが、設定者と担保権者のバランスをとって、かつ事業再生がうまく見込めるというような形で進められるかなと少し感じ始めているのですけれども、ここは、別に立担保の額をどう思いますかという質問は何か変な感じがするのですけれども、正直、考え方としてはそういう考え方もあり得るかなと思っているのですが、その点はいかがでしょうか。以上です。 ○淺野関係官 御質問いただいた取消命令における立担保の考え方については、事務当局としてもおおむね同様に考えております。すなわち、取消命令は飽くまで第8、1⑴の通知や第10本文の通知を1回取り消すという効果を持つものに過ぎず、改めて担保権者が実行通知を打つということを妨げるものではありませんので、そういった効果に鑑みて必要な担保が命じられるということになると考えております。 ○道垣内部会長 よろしゅうございますか。 ○大澤委員 ありがとうございます。基本的に取消命令の問題はある程度対応できたとすると、あとは禁止命令での条件を付してというようなところでの、裁判所の裁量でうまく担保権者と設定者の間のバランスをとっていただく形が望まれるなと考えておりました。 ○道垣内部会長 よろしくお願いいたします。 ○佐久間委員 ありがとうございます。少し最初におわびをしておかなければいけないのですが、私はここのところ欠席続きでして、今から11に関連して申し上げるのですけれども、もう前回その話は終わっていますということになっているかもしれないので、そのときはごめんなさいと申し上げておきます。言いたいことは、この11にある、ほかにも第5の6とか第9の2にある、動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約に係る規律を是非とも設けるべきだということなのですが、そんな話でもいいでしょうか。もうその辺は終わっているということはないですか。 ○道垣内部会長 いや、別に御発言は差し支えありません。 ○佐久間委員 いいですか。ありがとうございます。   私はこのことに関して、直近でしっかり出席することができたのが昨年12月末の会議でして、その会議はリース事業者の団体の方が来られて、このような規律を設けることに対して強い反対意見をおっしゃったという回でした。そういうことがあったのですけれども、前に部会資料40をお配りいただいたときに、その4ページの4行目以下に説明として述べられていたことなのですが、ファイナンスリース契約と呼ばれているもののうち、少なくともあるもの、フルペイアウト方式の典型的なものにつきましては、担保取引としての性質を有するとする判例が既に確立していると言って差し支えないはずだと思うのです。また、リース協会におかれても、そのような担保取引としての性質のものがあるということまで否定されているわけではないと思いますし、そのような担保取引としての性質を有するとされる場合には、リース業界ではそういう担保としての意識はないのですとおっしゃっていましたけれども、契約当事者に担保という認識がなかったとしても、あるいはそれどころか当事者が担保でないとする合意をしたとしても、担保として扱われるということは否定のしようがないと思います。部会資料において、今回はばらしてされている提案は、正にそのことを前提とするもので、その点で何ら問題はないと考えています。   仮に提案されているような規律が設けられなかったといたしましても、担保としての性質が認められる場合には、法的には、当たり前ですが、担保として扱われるということになるわけですから、そうであるとすると、今の第14の11ですとか、ほかに対抗要件や実行に関する具体的な問題について適切な内容を法律に規定することが、それほど多くの取引ではないのかもしれないけれども、ある種の取引に限っては法律関係を明確にして法的安定に資することから、適当であると思っています。もちろん判例上、譲渡担保取引としての性質を有するとされてきましたファイナンスリース契約について、例えば、利用権を目的とする譲渡担保と構成することについては異なる見方があろうとは思いますけれども、差し当たりそのような構成で捉えるものとして、個々の問題について適切な内容の規律を設けていくというのは、立法の方法としては十分あり得ると思っています。   その点で内容、実質を見ますと、余り詳しくは申しませんけれども、今発言をさせていただいくきっかけとした第14の11については、例えばリース事業者の方がヒアリングにおいても特に異論を述べることはなかったところでありますし、対抗要件のところも実は同じであります。それらについては異論をそもそもおっしゃらなかったのは、規律として穏当だからだろうと思っています。また、他の所有権留保とか動産譲渡担保の場合と同種の問題について整合性のある規律を設けようとするものだという点でも、ここでの提案において一貫性のある提案がされているとも評することができるので、適当なのではないかと思っています。   実行についても、2週間ルールについていろいろおっしゃいましたけれども、それは2週間ルール全体の問題であって、ここ固有の問題ではないはずだと思っております上に、さらに、実行時の評価ですね、物件の評価というか利用権の評価のところもいろいろおっしゃったと思うのですが、あれは多分メンテナンスリースとかオペレーティングリースとかについて、もし適用されたらうんぬんとおっしゃったはずであり、判例上扱われたようなファイナンスリースに関しては構成が違うというか、構成がここでは動産利用権を担保とするということになっているために、やや規定ぶりは違いますけれども、実質はそれほど判例と変わらないということが採られており、問題ないのではないかと思います。   個別の規定内容については様々な考え方が恐らくあり得て、更に適切な考え方を探るということは重要だと思いますけれども、最初に申し上げたことに戻りますが、この動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約という形での規定を設けていくということが必要だと思うということが意見です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。特に異論があったり異議があったりするわけではないと思いますので、お伺いしたということで、山本和彦さん、お願いいたします。 ○山本委員 ありがとうございます。私からは2点ですけれども、1点は今の佐久間委員の御発言についてでありますけれども、私自身は欠席していたわけではなかったので、本来はもう少し前に言うべきだったのかもしれませんけれども、私自身もこれらの規定、この11を含む動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約についての規律、明文規定を置くということに賛成するということを申し上げたいと思います。   理由についても佐久間委員の御発言と基本的には重なるところで、一定のリース契約というもの、ファイナンスリース契約というものが担保として取り扱われるということは、これは判例上も倒産実務上も明らかなのではないかと思われるわけですが、仮にこれらの特則を全てなくすとどうなるのかということを考えてみると、何を目的とした担保を取られるのかということについては様々な議論があるところですが、少なくとも現在のこの試案の定義によると、これを一種の所有権留保と捉えるという学説があることは承知しているわけですけれども、この試案の所有権留保の定義にはリース契約というのが当たらないことは明らかだろうと思います。今の所有権留保というのは、基本的には目的物を売買して、その所有権の移転を内容とする契約が存在することを前提とするわけですが、ファイナンスリースは明らかに所有権の移転は内容とされていない契約だと理解しますので、そうすると、やはり所有権留保ではないということになり、他方では債権譲渡担保の定義には、普通に読む限りは、当たるように思われます。債権を目的とした担保というふうに仮にこれが捉えられるとすると、結局この特則がないということになると、実行のときの2週間ルールというのは適用になるわけですけれども、他方で対抗要件は必要だということになるのだろうと思います。   今までは、ファイナンスリースというのは対抗要件がなくても倒産手続で担保として扱われてきたと承知をしていますけれども、それは明文規定がなかったからそうだったのだとも考えられるわけで、こういうはっきりとした規定が設けられる中で、しかも債権譲渡担保は対抗要件が必要だということになるとすれば、果たしてそのような実務の取扱いというのが今後も維持されるかということは疑問もあるところなのではないかと思います。   そういう意味では、やはり明文規定を置く方がリース取引の安定性という観点からも望ましいのではなかろうかと思われるところでありまして、佐久間委員が言われたように、具体的な規定の中身については更に検討すべきところはあるのだろうと思いますけれども、やはり明文規定を置くという方向で考えていくというのが私自身も妥当な方向なのではないかと考えていると。これまでも申し上げたことがあるかもしれませんけれども、私は忘れてしまいましたが、そういうふうに思っているということを確認的に申し上げたいと、これが第1点です。   第2点は、思い切りマニアックなというか、テクニカルな話で恐縮なのですけれども、資料の3の担保権実行手続取消命令のところの(3)の承認援助手続における取消命令の規律内容についてということなのですけれども、アにその規律内容が記載されているのですが、私の疑問は2点で、この規律というのは、恐らく承認援助法の強制執行の取消命令の規律を持ってきているものだと理解をしているわけですが、まず第1に、この申立権者の問題として、「債務者(外国管財人がない場合に限る)」という、外国管財人がない場合の債務者に申立権が認められているという点でありますけれども、普通に考えると承認管財人がいる場合の債務者というのも申立権が認められないのが妥当なような気がするのですけれども、この規律だと、外国管財人がないけれども承認管財人はいるという場合の債務者には申立権が認められそうな規律になっているわけですが、それで果たしていいのかというのが一つ目の疑問です。強制執行の取消命令もそういうふうになっているので、同じようなことは強制執行取消命令も妥当しそうな気がして、これは少し天に向かってつばを吐いているような感じもしなくはないところなのですけれども、何かこの規律だけを考えると、そういう疑問が生じるということです。   第2点は、このアの規律は、外国倒産処理手続の承認決定が出た後の規律内容に限られていて、つまり承認決定前には取消命令ができない構造になっていて、これも強制執行等の取消命令と同じなのですけれども、ただ、強制執行の取消命令というのは、中止をしておけば基本的には取消しまでしなくてもいいという場合が大半なのではないかという気がして、それでそういう規律になっているのではないかという気がするのですが、この場合は取り消さないと目的が固定化してしまいますので、事業を継続することは著しく困難になってくるのではないかと。今までの議論からも明らかなように、この場合の取消命令というのは中止命令ないし禁止命令と言わば裏腹というか、ワンセットになっているものでありますので、承認決定前の申立て後の段階で取消命令ができないというのは、かなり事業の再生に支障を来すような感じがするわけであります。そういう観点からすれば、再生や更生に合わせて、開始決定前であっても、承認決定前であっても、取消命令というのを認めてもいいのではないかと、その意味で強制執行の取消しとは少し違うのではないかという気がするということです。   いずれにしても非常にマイナーな、少しマニアックな話で恐縮ですけれども、一応私の意見を述べさせていただきました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。前半の動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約についての11の話ですが、佐久間さんと山本さんの、11自体はそれでいいのだけれども、対抗要件等のことについてきちんと考えて、きちんとした規律をどこかに置くべきだという話かなと思うのですが、その辺りについては事務局の方で何か方向性みたいなものはございますか。 ○笹井幹事 いえ、11につきましては、より合理的なものがないのか検討してみる必要があるという御指摘を受けましたので、細かい部分について、なおもう少し精査をしてみたいと思っておりますけれども、これも幾つかの変遷を経て、部会での議論を経て今の形になっておりまして、ここを大きく変えるような、これ以上の知恵というのはなかなか出てこないのかなと思っております。そういう意味では、これを置くのか置かないのかという選択の問題なのかなと思いまして、今日その点について御意見を頂いたと受け止めました。 ○道垣内部会長 それはそうかなと思いますし、内容につきましては第5のところの精査の問題かなと思いますので、またそれは最終的な要綱案の段階で考えるようにしたいと思いますけれども、それ以外には、今、山本さんがおっしゃった51ページの辺りの問題につきましては、議論をするというよりは検討をしていただくということかと思いますので、山本さんの御発言を踏まえまして少し御検討いただければと思います。先ほど山本さん自身もおっしゃったように、民事執行法といいますか、差押えのところの規律をいじらないままに可能かという問題等々いろいろあろうかと、バランスの問題もあろうかと思いますので、その辺りも考えて少し御検討いただければと思います。   ほかにございますか。   大西さん、御発言いただければと思います。 ○大西委員 私は部会資料42、第14の8についてのコメントを申し上げます。   まず1番目としまして、集合動産譲渡担保権担保設定者について、会社更生があった場合に、8(1)の実行通知に関して、担保権実行通知とみなす規定があるのですが、会社更生の開始決定があると、そもそも担保権自体の効力が制限されるということから、このみなし規定は会社更生の場合に適切な規定なのか、という点に疑問がございます。   それから、2点目は、集合物動産譲渡担保権の実行通知があったものとみなすことにより、その効果を援用している内容が、一つは開始決定後の新規の加入動産に担保権の効力が及ばないことと、それから、8の1(3)における集合動産譲渡担保権設定者の処分権限の喪失ということですが、特に後者の喪失については会社更生の場合、担保権実行が制約されているということから、事業を継続する過程で、設定者と管財人が別だということはさて置き、この事業継続のためにそもそも管財人は自らの権限で処分できることとの関係性がどうなのかということが疑問がございます。   それから、担保権の効力についてですが、会社更生手続は、私の理解では、その後に更生計画が認可決定まで至らない場合は途中から破産に移行する可能性があり、そういう場合もある以上、会社更生手続中も担保権自体の効力は続いていると考えられます。また、会社更生開始決定後であっても、事業を継続している中での動産(在庫商品等)は常に古いものから新しいものに入れ替わっていくことになりますので、集合物譲渡担保権の効力は開始決定後も及ぶと考えるべきであるため、その点からすると、先ほどの実行通知のみなし規定により、開始決定後の新規の加入動産に担保権の効力が及ばないとすることは矛盾するのではないか、と考えます。   また、56ページに集合物動産担保権設定者が目的物の処分権限を失うと事業継続が困難であるということから、対比として担保権実行手続の取消命令を活用するということも書かれておりますが、開始決定により実行通知があったものとみなされた手続自体を取り消すということは、先ほどの会社更生手続自体が担保権実行が制約されているということとの矛盾があるように思います。   続いて、部会資料42の第14の9ですが、これも動産の場合と同様の指摘がございます。会社更生手続との関係での指摘でございます。   それから、最後、部会資料42の第14の10において、59ページの23行目以降なのですが、危機否認においての非義務行為については、専ら集合物譲渡担保権者に弁済を受けさせる目的の要件を外すべきではないかとの意見を、私が事務局に対して申し上げたのですが、それについて事務局のコメントが、集合物譲渡担保権者のリスク負担との見合いによるバランスとして、この非義務行為による担保加入についても否認の対象から外すべきではないかというようなコメントがされております。   これはこの否認の事例に当たるかどうか分からないのですが、例えば、担保権設定者が危機時において、担保対象となっているA倉庫の在庫動産に誤ってB倉庫に入れるべき在庫動産を加入させてしまったという場合に、これは非義務行為であり、一般債権者等からすると、その部分も担保権者の担保の対象になるというのは明らかにおかしいのではないかと考えられます。こういうときに、否認権行使ができるとすることは、一般債権者の権利保護との関係で重要ではないかと考えます。また、担保権者は、担保設定時において、そもそも担保価値義務としての補充義務の範囲内での加入を想定して担保設定しているのであり、それを超える非義務的行為に基づく動産加入はそもそも期待していないということもあるので、このような非義務行為についても否認権行使の対象にできるよう、規定を見直す必要があるような気がしております。   以上、コメントを申し上げました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。前者の14の8、14の9のところにつきましては、会社更生においてはある種、そのまま継続しているのだから、少し分けて考えないとおかしいのではないかという話だろうと思いますけれども、この点につきまして事務局の方から何かお考えはございますか。 ○笹井幹事 会社更生ですので、確かに担保権の実行が制約されているということではあるのですけれども、ここは集合動産担保権を実際に実行して、実行手続の中で担保権者に満足を得させるために、そのスタートとして、実行通知があったものをみなしているということではありません。2点目以降の指摘にも関わるかもしれませんけれども、要するにここでは、再生なんかでは取消命令にうまく接合できるように、固定化するという効果を導くための一つの技術的な方法として、実行通知があったものとみなしているということです。   更生手続の開始時点において固定化をさせることがよいのかどうなのかというのは、正しく議論のあるところかと思いますので、そこは御議論いただければと思っておりますけれども、こちらで会社更生においてもその開始時点において固定化するのだという考え方を採りましたのは、ここは再生や倒産手続、破産とか再生とかと基本的には全部そろえていくということを念頭に置いておりました。その上で不都合があった場合には取消命令なんかを活用していくというのが再生なんかにおける考え方ですので、基本的に最初の時点で固定化するというところについて、倒産手続のそれぞれの手続でそろえたということになります。   もちろん更生だけは別にするという考え方も制度としてあり得ないわけではないと思っておりますけれども、しかし、そうすると正に今、大西委員が御指摘になりましたような、牽連破産みたいなことになったときにどうなるのかというと、その後の流動性が維持されているということになりますので、牽連破産までの間にその目的物の価値というか集合動産の価値、集合債権の価値というのが変動していくということがあり得るかと思います。   牽連破産にならずに、あとは更生手続開始時点の評価だけが問題になるということであれば、その後の流動性というのは余り意味を持たないのかもしれませんが、特に牽連破綻したときに、そこが増加しているということになると、今まで議論してきたような、倒産財団のコストにおいて増加した部分を担保権者が取ってしまっていいのかという問題が生ずることになりますし、それを再生において回避したというのであれば、ここでも価値判断としては、更生財団のコストにおいて担保権者が利得を得るということがないようにする方向で統一した方がよいのではないかと考えたというのが背景にございます。   逆に、牽連破産までに減っていたということになると、担保権者にとっては更生手続の開始によって適時に実行もできないという状況の下で、把握している担保価値だけが減ってしまったということになるので、不合理な結論になってしまいます。そうすると、再生とか破産において倒産手続開始時に固定化させるという考え方を採るのであれば、更生においても同様に考えるというのが一貫もしていますし、実際上の結論としてもそちらの方が合理的なのではないかと考えたというのが第14の8、9についての事務当局における考えの背景でございます。この点について、もしほかの先生方からも御意見がございましたら、承りたいと思います。   それから、否認のところについても御指摘を頂きました。担保価値維持義務あるいは補充義務がカバーしていないような増加行為は、設定者に害意がなくても否認の対象にすべきではないかという御指摘ではないかと思います。   この点について以前の御指摘を受けて考えてみたのですが、補充義務という法律上の義務に基づく場合と、コベナンツとして当事者間の合意によって義務が課されているという場合と、両方あるかと思いますけれども、いずれにしても、そこで定められているものというのは、比喩的にいうと、普通に経営していれば変動している幅の最低限といいますか、一番低いところで義務を定めることになるのではないかと思います。しかしこれまでの議論は、最低を少しでも超えたら全部否認の対象にするというものではなかったと理解をしておりまして、むしろ通常の一般的な経営判断というのを尊重していき、余りにそれを逸脱するようなものについては否認の対象にしていこうというのが、これまでの議論のすう勢だったのかなと理解をしております。   そうすると、非義務行為を害意がなくても全て否認の対象にするとすれば、必ずこれだけは担保価値を維持しなければならないと義務付けられていない部分に関して、どんなに通常の、通常のといいましても危機時期における通常のということになりますけれども、経営判断として合理的なものであっても、義務付けられない以上は全て否認の対象になってしまうということになってしまいますけれども、それはそれでよいのかどうかという問題があるかと思います。この点についても、ほかの先生方からの御意見があれば承りたいと思っておりますけれども、非義務行為かどうかということだけで決めるよりは、一定の主観的な要件を課しておいた方が、今この部会で議論してきた否認の対象をより的確に捕捉できるのではないかと考えて、こちらの提案を維持したということでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。まず、前半の会社更生のときの話から聞きたいのですが、まず。 ○大西委員 今の笹井様について、1点、前半の方でコメントよろしいですか。   固定化をするかどうかという考え方はあります。私が申し上げたいのは、固定化をさせるにせよ、実行通知があったとみなすということで、会社更生で実行ができない手続にもかかわらず、それを取り消すとかそういうことが観念し得るのかという、この辺の指摘でございました。ですので、固定化とセットで考えているわけではないということです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。おっしゃるとおりに二つの問題がございまして、実質論としては会社更生で固定化というものをもたらすべきかという問題と、その技術としてどういうふうなものを用いるべきなのかということがあると思うのですけれども、いずれからでも結構でございますので、ほかの方で御意見ございましたら、お願いいたします。 ○沖野委員 ありがとうございます。実質的にはこの内容でよく、ただ、技術的な書き方というか取扱いがこういう形でいいのか、また、この通知みなしにしたとしても、通知みなしというのは、その後の第8の1(2)以下を持ってくるためのものですので、取り分け(3)は引かなくてもいいとなると、構成においては、2と4と6の2とか、そういう切り分けをしていくことになるのかと思いますし、もしそれが余り適切ではないということであれば、通知みなしではなくて、望む効果を書いていくというか、とにかくこのものには及ばない、そういうものとして更生担保権の評価もされると、そういうことを書くということになるのではないかと思いました。ですから、実質はよくて、それを表現する法技術というか、書き方の問題なのではないかと思いました。一方、ただ、それで残ることがあるとすると、御指摘のあった牽連破産等になったときには、担保が言わば復活するので、それをどう考えるかという点ですが、それは多分再生でも同じ問題ではないでしょうか。具体的に実行される前の段階で牽連破産になったというときと同じだとすると、それは更生特有ではないのかなと思いまして、それはそれでプロパーの問題として考えられる話ではないだろうかと思いました。私はそこを誤解しているかもしれません。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○山本委員 今の沖野さんの言われたことと基本的には同じなのですが、確かに大西さんの御疑問はごもっともと思いました。通知というのが担保権実行の一つの方法というか、その一部をなしているというのは、これまで前提になってきたと思われるので、開始決定の後にこの通知があったものとみなすということにすると、その通知はそもそも効力はないのではないかという疑問が生じるのは、誠にそのとおりなわけです。ですから、これは結局開始、同時というか、あるいは0.01秒前というか、そこに通知があったと恐らく考える、考えざるを得ないということなのかなと思います。   ただ、それがこの規定で書かれているのかどうかということは確かに疑問があるところのような気がするので、沖野さんが言われるように、やりたいことを書くのだと、これは実質やりたいことは、開始時に固定化させて、しかし取消命令という手段を用いて、これは再流動化命令などとも呼ばれているようですが、実質はそういうことで固定化を外す命令なのだろうと思うのですけれども、それは全く新たな類型の倒産手続上の保全処分ということになりますので、そこで既存の保全処分をいかす形で、このみなし通知プラス取消命令という法技術を用いているのだろうというのが私の理解です。それは法制的にその方がより容易だということもあるのかもしれませんけれども。   ただ、それが会社更生の場合にうまくワークしているかということは確かに疑問で、ですから、方法としてはこれを維持しながら、開始決定後ということにしないで、少し前というようなことにうまくできるのかどうかという話にするのか、それとも、会社更生についてはやはり何か実質的に書くのか、その場合には何か新しい保全命令の形態を作らざるを得ないということになるのかもしれないですが、どちらが難しいのかというのはよく分かりませんけれども、私も大西さんの問題提起を受けて、確かに何か考えないといけないことなのかなという気はしました。 ○笹井幹事 基本的に今、山本委員から御指摘いただいたとおりかなと思っていまして、先ほどそこまで申し上げませんでしたけれども、確かに更生手続があった後にこの通知があったものとみなされるという規定であれば、それはやはり変でしょうというのは御指摘のとおりだと思います。ですので、ここは後というよりは同時というか、正しく今おっしゃったように一瞬早く通知の効果が生じているということを表現したかったということになります。   なぜこうしているのかというのは、再生のところをどういうふうに規定していくのかということと関連しております。再生においては、再生手続が開始されることによって固定化が発生しますが、そのことによる様々な弊害が事案によってはあり得ることを踏まえて、取消命令というものを再流動化させるために活用することでバランスをとろうとしているわけです。そのための手段として、一つのやり方として、固定化のための通知の取消命令というものを作ったので、通知によってではなく法的な効果として固定化が生じた場合についてもこの取消命令を活用できるようにすることによって、言わば条文の書き方を効率化できるということを考えていたと。   更生手続における担保権実行手続取消命令は、更生手続が開始された後はもうできないということになっていますので、ここは再生とは違っているわけではあるのですけれども、ただ、再生について実行通知の取消命令という制度を言わば借用するような書き方をしながら、更生については別々に書き下ろすという方法は、条文の書き方として余り平仄が取れていないということで、統一的な書き方を考えたということでございます。大西委員の御指摘につきましては、みなされるのが更生手続開始の一瞬前であるということによって、実質面ではなくて書き方の面については、一応は説明が成り立つのではないかと考えていたということでございます。 ○道垣内部会長 実質的な枠組みについて、それほど意見の分かれがあるような気はしないのですけれども、技術の問題としてどういうふうに書くべきなのか、再流動化命令とか、今回のものに特殊な処分を作るというのもいろいろな面で難しいということになりますと、少し無理があっても、ほかのものに乗らなければいけないのかもしれないですけれども、ほかに、もちろん大西さんがおっしゃること、山本さんがおっしゃることにはおっしゃるとおりの面があると私も思いますので、沖野さんもおっしゃるように、再検討はしていただきます。ほかに何かここについて御意見はございますか。 ○阪口幹事 ここというのは、会社更生に関してですか。 ○道垣内部会長 はい。会社更生のところの法技術について、何か御意見はございませんか。   では、すみませんが、もう一度そこら辺の技術は、致し方がないというところがひょっとしてあるのかもしれないですけれども、余り、破綻すると言ったら失礼ですけれども、違和感のないようにまとめるという方向にさせていただければと思います。   もう一つ大西さんからの御発言が出ました、前のクールのときもおっしゃっていたのかもしれませんが、否認の範囲につきまして、非義務行為での否認というものをもう少し拡大するという話ですが、そこの点についてほかの方の御意見というのはございますか。 ○沖野委員 確かにうっかり誤って倉庫に入れてしまったというのをどうするかと言われると、それが入ってくるのは確かにおかしいと思うのですけれども、しかし非義務行為というと、どこまでの義務が及んでいるのかという、それを特定していかないと担保が及んでいる範囲というのが安定させられないというのは、これは多分、以前から客観基準で行くか主観基準で行くかという、通常の事業の範囲を超えるかとか、想定される範囲を超えるかという中で検討してきたところ、手掛かりになる規定もあり、主観的な形の方が明確性にも資するということで、最終的にここになったということを考えると、具体的な場面としてそういう場面の問題があるというのは分かるのですけれども、非義務行為ができるというのは、再び問題を抱え込むことになるのではないかと思っております。ですので、原案のままの方がよろしいのではないかと思います。 ○道垣内部会長 ほかの方の御意見はいかがでしょうか。ずっとそういう御見解を大西さんは。 ○山本委員 今何か言おうとされたとすれば、余り発言はあれだったのかもしれませんが、これは結局、私自身はこの規律の意義というのは、元々やはり担保の設定行為というのが否認の対象行為であるところ、こういう集合動産譲渡担保などについては、明確な担保の設定行為というものがなくて、ただ、具体的には倉庫等に商品を搬入するという事実行為が行われるということがあり、そういう事実行為を全て否認の対象外にしていいのかという問題の中で、やはりそれは担保の設定行為と認められるようなものであれば、そのような事実行為に属するようなものであってもなお、担保の供与があったものとみなすのだと、否認の対象にするのだという規律なのかなと思っています。   そうだとすれば、担保の供与行為に匹敵するというか、それをどこに見るのかということなので、やはり単に何のあれもなく倉庫に入れたというだけではそこまでは言えないのではないかと、ここにあるような、専ら弁済を受けさせる目的でしたと、そういうものが認められれば、それはやはりもう担保の供与でしょうと、そういうことだと私は思っています。ですから、非義務行為というか、補充義務がないような場面において、なお倉庫に入れてしまったと、恐らく危機時期にそういう行為がされた場合に、多くはほかの客観的な事実から、弁済を受けさせる目的でしたというのが事実認定としてはされる場合が多いのだろうと思いますけれども、それが仮にそうではないということが認められる、弁済を受けさせる目的とまではいえないということがもしあるのだとすれば、やはりそれは担保供与行為とまではいえないという評価になるのはやむを得ないかなと思っていまして、私自身はこの原案に賛成してきたところです。 ○道垣内部会長 ほかに御意見はございませんか。   沖野さんからは、誤って持ち込んだ場合にはと言われると、何となくそれは及ぶのもおかしいような気もするよねというふうな御意見はございましたけれども、否認という制度、法技術といいますか、手段を使って否定するというのがどの範囲なのかということとの関係もあろうかと思うのですが、ほかの方も何かありましたら、お願いいたします。   それでは、大西さんのずっとの御発言でございますので、最終的な検討に当たりまして、再度事務局の方で検討をしていただくということにさせていただければと思います。 ○大西委員 大西ですが、1点だけ補足を。もちろん最終的には皆様の御判断だと思いますが、私がこの点を取り上げたのは、結局、集合物譲渡担保設定の場合は組入れという事実行為を担保設定とみなすということなので、実際の生の事実行為自体について、そこに担保としての設定として評価できるかどうかという概念は入らないのではないか、即ち、外形的な事実だけで捉えて担保設定かどうかを判断すると思ってきました。そうではない考え方に立つと、なかなか一般法理の錯誤無効とかで争うのも現実的には難しく、一般債権者保護という利益が重視される倒産手続においては、このような過誤加入の場面においても否認制度の適用が必要なのではないかと思って発言した次第です。ただ、最終的には皆様の御判断に従うことだと思いますが、以上でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。搬入行為というものを担保権の設定行為と捉えるならば、そこにおいてどういう目的で担保権設定したかということを、そこで更にこれを組み入れるというのは変な話で、事実として間違えて入れた場合も否認の対象ではないかというのもよく分かる分析のところでありますが、山本さんがおっしゃったように、やっぱそれは例外なのだと、搬入行為というのを設定行為であるというまでに一般的に捉えるというのではなくて、否認との関係で、どういった場合はそう捉えていいのか、ということなのだと考えると、また別の方向性というのもあるのかもしれませんが、再度、今の大西さんの最後の御発言も踏まえまして御検討いただければと思います。   ほかの点で、ございますか。 ○阪口幹事 阪口です。この8と9、55ページ、56ページの当然固定の点について、少し意見を申し上げたいと思います。   今回の御提案というのは、例えば動産に関していうと、取消命令で再流動化するからそれで何とかなるではないかということもおっしゃっていただいているのですけれども、積極的に当然固定にする理由が少しはっきりしないように思うのです。もちろん法律関係として明確になるということはよく分かりますけれども、そうする必要性がどこにあるのか。例えば、従前でいうと極度額案もありましたけれども、その案との比較で、当然固定をさせる必要性がどこにあるのかが明確には書かれていないようにも思いますし、よく分からないというのが一つの意見です。   また、この案だと、破産の営業継続型に関しては破産開始決定が出せないことになります。破産には取消命令という制度は特に提案されていないので、保全期間でずっと引っ張らなければいけないということになります。保全期間でずっと引っ張って事業譲渡をして、その後に破産開始決定をして、要するに、資産は何も残っておらず、事業譲渡代金だけがある状態で破産手続開始をするという運用にならざるを得ない。それで本当にいいのかなと思います。   次に、民事再生の方ですけれども、規定ぶりが動産と債権で違うということになっています。動産は取消命令で再流動化すると、他方、債権は取立権がなくなるというところは再流動化するのだけれども、56ページの9(1)のその後に発生した債権に及ばないという部分は、取消命令で取り消せるわけではないということになると、入りがなくて出だけがあるという御説明なのだと思うのですけれども、そうさせる必要性がどこにあるのかがますます分かりにくい。   元々債権でいうと4案、動産でいうと3案あって、どちらかというと部会では異なる意見の方が有力だったのではないでしょうか。いろいろな議論がありましたけれども、債権で言うと、元々の1案というのは、9(4)の別段の定めの方に行っているので、1案はもうない。あと2、3、4の3つの案の中の選択で、今回、4案が出てきたということなのですけれども、今回の御提案の趣旨、4案を採る積極的理由についてお教えいただきたいと思います。   先ほど申し上げたとおり、この提案では、一定の弊害、副作用があります。営業継続型の破産であったり、若しくは、前回申し上げたとおり、取消命令を必ず使わなければいけないことによって立担保で必ずタイムロスが発生し、その間、物を売ってはいけないという事態になること、また、債権に関しては入り、出の関係があって、少し難しくなるということの関係で、当然固定を提案された理由を教えていただけたらなと思います。 ○笹井幹事 今、阪口幹事が御指摘になりましたように、元々債権については4案、それから動産については3案あったというところで、そのうち、債権について示されていた、倒産手続開始後の債権にも担保権が及ぶというのはほかの考え方とは大分異質な制度で、少し別の形で9の方に取り入れていますから、それ以外の、価値枠で固定化するのか、それとも実行時なのか、それとも倒産時に確定するのかという、この考え方の中から何を選ぶのかということがこれまでの議論だったかと思います。   そのうち、価値枠でやるのか、あるいは倒産手続の開始時に決めるのかという考え方と、それから実行時に固定化するという考え方は、実質が大分変わっています。これまでの議論を踏まえて、いずれの考え方も少しずつ修正を加え、これらの考え方は大分近接するようになってきていたとは思いますけれども、しかし、元々指摘されていた問題点を重視をした結果として、倒産時あるいは価値枠説のどちらかで行こうと決めたということになります。   あとはもう、かなり技術的な問題なのかなと思っています。流動するかどうかという問題はありますけれども、価値枠説によっても、一定の価値で決めるということになりますので、担保権者が取れる部分は、もうそこで固定化するわけですね。ですので、あとは流動が維持されるとした上で、どこかで固定化すると考えるか、固定化をさせた上で流動化の余地を残しておくかという、物事をどちらから見るかというところであり、余り実質的な違いというのは大きくないのではないかとは思いました。   その中で倒産開始時固定化説を採りましたのは、一つは技術的に、価値枠説を採るとすれば、流動性は確保されますので、目的財産の状況というのは刻一刻と変化していく中で、過去の一時点における価値を評価しないといけないということになります。それは会社更生であれば結局やらないといけないことなのだから可能ではないかと言われれば、確かに可能かもしれませんけれども、しかし、それを全ての倒産事件についてやらないといけないというのが実務的な負担になるのではないかというのが理由の一つです。もう一つは、これは繰り返しになるかもしれませんけれども、やはり倒産財団のコストによって生まれた価値が担保権者側に取得されてしまうという問題について、最も端的に対応しようとすると、開始時において固定化させるという方が端的な方法であろうと考えたというのが、もう一つの理由です。また、いずれにしても解釈論として出てくるのかもしれませんけれども、流動化させるということになりますと、どこまでの補充義務を負うのかとか、元々当事者間で合意された補充義務がどこまで管財人に対して影響していくのか、そういった解釈論として難しい問題がまた大きく広がってしまうということ、これらについて考えた結果として、開始時固定説を選びました。   繰り返しになるかもしれませんけれども、価値枠で固定化するか開始時に固定化するのかというのは、元々発想としては似た考え方であり、あとは技術的にどちらの方が実務的にやりやすいのか、解釈論としてもその後の難しい解釈論を惹起しないで済むのかといったところから考えていったということになります。   取消命令の発令に当たって立てなければならない担保についてですが、倒産手続のどれぐらいの割合で取消命令の申立てがされるのかは、我々よりはむしろ先生方の方が感覚的なところはあろうかと思いますけれども、仮に倒産手続の申立てがされる場合には基本的に取消命令の申立てもされるということになると、ここは少し前の大澤委員の御指摘のとおり、取消命令それ自体についての担保はそれほど高額にならないのではないかとは考えておりますけれども、確かに一定のタイムラグが生ずることは否定できないかもしれません。ただ、そこはタイムラグといいましても1週間も2週間もあるとは思っておりませんし、裁判所や、あるいは申立代理人との間で調整がされるなど、実務的な運用によって解消できない問題ではないと我々としては考えたということでございます。   少し長くなりますけれども、2点目、動産と債権で違うではないかというのは御指摘のとおりです。しかし、ここもこの論点だけの問題というよりは、集合債権譲渡担保においてどのような実行ができるのかというところと深く関わっていまして、倒産手続開始後に発生した債権に担保権の効力が及んでいかないということを法定の効果として設計した以上は、そこは少し異なる部分が生じてしまうと思います。通知の効果ではなくて法定の効果である以上は、通知の取消しが及ばないことになってしまうというのは、そこは論理的な帰結としてそうなっているということでございます。   質問へのお答えとしては、少し長くなりましたが、以上です。 ○阪口幹事 実行時固定でないとすると、残りは価値枠と当然固定の比較となって、立法技術的には当然固定の方がシンプルではあると思うのです。ある意味、価値枠というのは確かにいろいろなことを考えなければいけない新たな概念でもありますから。ただ、特に民事再生と営業継続型破産手続に関しては正直、当然固定は苦労するというか、大変というのが私の感覚です。もちろん遊休資産の譲渡担保であれば、それはもう別にどちらでもいいやという世界ですが、普通の在庫を担保にしている場合、一番端的なのは、小売店の店頭在庫が集合担保に入っているときに、いや、実はお客さん、今売れないのですよと言わなければいけないという、そんなことはあり得ないわけです。それが1週間、2週間どころか1日止まっても正直、いろいろ苦労するというのが私の感覚です。特に小売業の民事再生の場合は、お客さんには一切知らせないわけではないけれども、不自然さを全く感じさせないような手続が必要になるというのが一つです。   先ほどの補充義務が管財人若しくは再生債務者等にどこまで及ぶのかというのは、これは議論はある、もちろん考えなければいけない問題だと思うけれども、価値枠説を採れば、少なくともその限度ではもうその開始前で決まっているというか、そうなるような気もするのです。もちろんそこも解釈だと思うのですけれども、そこは大分やはり難しいのですかね、というのがあります。   あと、これは、実務家の一部かどうかは別にして、第35回会議でも申し上げたとおり、自信のある大物の先生方は4案、当然固定でいいとおっしゃっている点に関してですけれども、その背景には、実は少し考えている倒産、民事再生事件が違うのではないかというのもあるように思います。つまり、DIPファイナンスが得られるようなサイズの民事再生の場合は、当然固定をすれば、その後の財産を担保に入れてお金を借りることができる、DIPファイナンスがより借りやすくなると思うのです。他方、大阪若しくは地方でやっている民事再生の大部分は、DIPファイナンスなんか到底得られません。サイズが違うのですね。なので、当然固定することによって、事後財産を新規の融資を得る財源にするというメリットもあまりない。そういうところも少し実感として違うのかなというところも意見として申し上げたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかの方は何かございますか。 ○日比野委員 この点ではないところでも大丈夫ですか。 ○道垣内部会長 いえ、少しお待ちください。 ○大澤委員 ありがとうございます。私は特段大御所でも何でもありませんけれども、大小取り混ぜて民事再生を見ている方としますと、固定化説の特質というのは、もちろん今、阪口先生もおっしゃられましたとおり、元から議論のあるところだというのは十分理解をしております。ただ、債権譲渡担保に関してこういった、その後に発生した債権は及ばないとはっきり書いていただくことで、事前のネゴ、あるいは別除権協定に至るところのネゴという意味では、極めてやりやすくなってくるのではないかと実務的には思っております。   動産の方に関しては元々こういう、実行後も含めて、そもそも価値が余りというようなのもあって、ある程度低い額での価値決定というのがなされて、別除権協定を結ぶということもできたと思うのですけれども、債権の方は、そもそも開始決定も及ぶのではないの、及ばないのではないのというようなところからまず始まるという形もあって、別除権者との協定というのもかなり難しいというところもございました。なので、固定化説の一つのメリットとしては、そういった担保権者との利害調整がやりやすくなり、かつそれがスピード感を伴ってできるということで、先ほどの阪口先生が正に御指摘されたようないろいろな弊害の部分を払拭できる部分もあるのではないかとも思っているところではございます。   そもそも開始決定時固定説というそのものに関しては、元々そういった流動性についての議論というのはあったわけで、そこについてどうやって実務が解決するかというと、やはり今申し上げたような、担保権者との同意という形をうまくどこでどんなふうに早く取っていくかというところに尽きてくるのだと思っておりました。その意味で、先ほど申し上げたような債権の担保の効力がここまでよというのがはっきりすることで、またこれはこれで一つ、開始決定時の固定化というのも前に比べてもやりやすくなるかなと感じた次第でもございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかの方の御意見はいかがでしょうか。 ○片山委員 慶應義塾大学の片山でございます。今の大澤委員の御発言なのですけれども、私は今まで先生方の御発言から逆のことをイメージしておりまして、実は開始後の財産にも担保権の効力が及ぶという前提があるから別除権交渉がやりやすいのだというような議論があったと記憶しておりまして、そういうものかと思っていたのですけれども、逆に及ばないことで協議がしやすいということになるのが意外に感じました。 ○大澤委員 部会長、私の方でお話してもよろしいですか。大澤でございます。   そこは両説あるかもしれませんけれども、そもそも担保とはどこまでなのかという考え方の中で、片山先生が今おっしゃったのは流動性の観点で、後にも及ぶから今大丈夫だと、多分そういうお考えだと思います。それはそれで合理的だとは思うのですけれども、一方で担保権者との別除権協定の交渉の中では、担保権者から、いや、将来までずっと及ぶのだから、別除権協定のトータルの額は大きくなるのだという主張にもつながります。こういった点がはっきりしない中で、では担保価値というのは幾らなのかという中で結構な議論がなされることがままあったと私は理解をしておりました。この、範囲がはっきりするということで、お互いにここが価値の起算点よということが分かって、そこでお話合いの時間そのものがものすごく短くなるのではないかということを期待はしているというところでございます。片山先生の御疑問に対する回答になりましたでしょうか。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。どうもありがとうございます。私は今までの話は、及ばないということになると全く議論の余地がなくなってしまうので、及ぼしておいた方がいいという形で理解していたものですけれども、そうではないことがよく分かりました。どうもありがとうございました。 ○道垣内部会長 この点につきまして、ほかに何かございますか。価値の固定という形を採りましても、その後破産に移ったりするとか、あるいは現実問題として優先弁済を受けさせようとすると、そこに財産がないとどうしようもないわけですから、幾らでも使っていいということにはもちろんならないだろうと思います。そうすると、立担保の問題とかいろいろなことがそちらでも生じてくる。片方の固定化を採りましても、いろいろな取消命令とかそういうふうなものを使って、ある程度動かすということはできるかもしれないということになりますと、これも入口としてどういうふうな方式を採っていくのかということなのかなという気もいたします。それだけではないと思いますが。それに対して、売れないというところから始まるのは少し困るというのが阪口さんがおっしゃったところだろうと思うのですけれども、ほかに何か、感覚といったら変ですけれども、御意見はございますか。   それでは、対立するといいますか、その意見というのは出ていると思いますので、また、笹井さんが途中で、事前に裁判所と話し合うとか、あるいは裁判所が適切にすぐに行動するとかという話がありまして、そこは実務とか裁判所ないしは弁護士さんの知恵にすがりすぎな面があるかもしれないとおっしゃったのですけれども、その辺りの方法につきましては、やはり要綱案とかを出していくに当たって、こういうことで何とかなりますといったことを、どちらの立場を採ったときでも丁寧に書いていくことが、誤解を生ぜしめないで、より一層深い議論を導くことができると思いますので、その辺りの説明は丁寧にしていただくというふうにしていただければと思います。   それでは、それを踏まえまして、更にもう少し考えていただきたいと思いますが、沖野さん、よろしければどうぞ。 ○沖野委員 申し訳ございません、今回の提案が今までとどこが違うのかというのを今改めて考えていたところです。価値説と倒産時固定との違いというのはそれなりに分かったのですけれども、倒産時固定で、かつ実行手続取消命令を使ったという場合には、結局価値による限定もなくて延々と行くということで、ただ、それで実行してもらうと問題だというときには、今度は実行手続禁止命令も併せて掛けるということで対応するのだけれども、担保の範囲自体はもうずっと及んでいき、あとは具体的な実行があればそこまでという話は、そこで実行時説を採ったような形にもなるのだけれども、実行のときには実行の特定範囲というのができるので、その限定というか、それが掛けられると、結局ずっとできるということにもなるので、実行時説が想定したというか、それでできたような限定も掛からない。ただ、そういう状態にするかどうかは全て当事者に任せる。つまり、合意をして対応していく、例えば取消命令の活用とかそういう部分について、その更に背後にある別除権者との協定とか、そういうものに全部委ねていきますというのが今回の御提案ということになるのかなと思っておりまして、これがどう正当化されるのかというのが阪口幹事の御指摘ですけれども、それとともに、今までの案と結局どこがどう違ってきて、当事者としては何を期待されるのかということが、当事者に任せるといったときに、どれによればどの部分になってくるのかということも少し考えていく必要があるのかなと、あるいは整理する必要があるのかなと思いました。資料の中で整理するのか、自分たちで各自整理するのかというのは別途あるのかと思いましたけれども。 ○道垣内部会長 沖野さんの御発言につきまして、何かございますか。 ○笹井幹事 確かに取消命令が発令された場合に、価値枠の制約が直ちに掛かってくるわけではないと思います。ただ、そこで更に倒産した再生債務者なりが、なお流動性を維持したいということだと思いますので、そこで禁止命令を掛けたりということはあろうかと思いますけれども、ただ、結局その禁止命令についても一定の相当期間があると思いますので、無限にずっと続いていくわけではなく、ここは事案によっても変わってくるのかもしれませんけれども、目的財産の価値が減少していくことの方が多いのだとすると、担保権者としては早めに実行するということになるだろうと思います。相当期間が経過すればですね、実行するということになると思いますし、それまでに減少していくものがあれば、禁止命令なりにおける条件を付すことによって、把握されている担保価値の減少を防いでいくということになるのだろうと思います。実行されれば、その実行の効果としての固定化が動産についても生じますので、確かに一部実行で一部分だけ残していくということもあり得るとは思うのですけれども、そうすると小分けされていくといいますか、流動性が維持される部分はどんどん小さくなっていくことになりますので、その結果として、担保権者が実行時固定化説以上にたくさんのものを取ってしまうということにはならないのではないかとは考えておりました。 ○沖野委員 差し当たり、結構です。 ○道垣内部会長 そうですね、だから、取消命令等が出た後に、価値枠的な制約もないということになると、価値枠で考えた方がスムーズな全体的な取扱いができるのではないかというのはよく分かる話ではありますが、価値枠という考え方も結構難しいのは難しいと思います。その辺は考える必要があろうかと思います。   ほかにございますか。   それでは、その辺りのことにつきましては更に検討していただくということにいたしまして、日比野さん、ずっとお待たせいたしました。お願いいたします。 ○日比野委員 ありがとうございます。正にこの9のところに関して、9(4)のただし書の話との関係で、少し戻るのですけれども、部会資料38で補論ということで、一部の事業についての担保設定をしているときには、別除権協定の考え方あるいは更生担保権評価の考え方で妥当な解決が導けるのではないかという議論をしていただいたかと思います。これは念のための確認なのですけれども、今回、部会資料35の【案3.3】の考え方を採ったときに、部会資料38の補論の考え方は引き続き妥当していると理解して大丈夫かということの確認です。この点は、そうだと理解しておるのですけれども、念のため確認させてくださいというのがここでの御質問です。 ○笹井幹事 そこは基本的には、若干一般優先債権を拡大するとか、そういうところはございましたけれども、基本的な枠組みは変わっておりませんので、部会資料38からの考え方は事務当局としては変えておりません。 ○日比野委員 ありがとうございました。 ○道垣内部会長 ほかに、第14のところはいかがでしょうか。   それでは、今日はなるべくならば最後まで行きたいと思うのですけれども、しかし、ずっと続けているわけにもいきませんので、普通ならば15分休憩なのですが、11分休憩ということで、16時20分まで、少し休憩を取らせていただければと思います。それで15に入っていきたいと思います。           (休     憩) ○道垣内部会長 それでは、16時20分になりましたので、審議を再開したいと思います。   第14のところまで一応終えたと考えまして、次に第15、所有権留保契約について議論を行いたいと思います。事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 第15につきまして御説明いたします。   第15の1以下につきましては、所有権留保契約に関する規律でございます。部会資料37-3におきまして、狭義の所有権留保について、所有権の変動が生じず、したがって競合も生じないという【案15.1】を提案していたところでございますが、部会におきましては、競合を前提とする【案15.2】を基礎とする意見で占められたところと認識しております。【案15.2】とする場合の規律方法につきましては、更なる検討が必要であるところでもございまして、いずれの案とするかにつきましては、現時点におきましては両論併記としているところでございます。   説明としては以上となります。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   まず、基本的な考え方として【案15.1】か【案15.2】かという問題があるのですが、それ以外にも具体的な内容についての御意見もあろうかと思いますけれども、【案15.2】に立った場合の中身につきましては、事務局としても更に検討する必要があるという前提でございますので、その点を踏まえまして、よろしくお願いいたします。 ○青木(則)幹事 【案15.2】で行った場合にどこまでお考えいただけるのかという点についての確認になるかと思います。現在、資料の15ページの5の1で、譲渡担保であるとしても、牽連性がある担保については引渡しがなくても第三者に対抗できるという自動的な対抗要件の付与みたいな規定がございますし、あと、特例法で登記可能かどうかという問題もあるかと思いますし、あるいは登記できるとして、登記優先ルールの適用、占有改定劣後という場合は、専有改定だけではなくて、引渡しの第三者に対する対抗要件に対する、それが登記が劣後するということなのかもしれませんけれども、そういうふうな形で実質の登記優先ルールに相当するようなルール、こういうものについても見直しをするということになるのでしょうか。   これまでの中間試案までの議論を振り返りますと、これらについては基本的には必要ない、つまり、公示なくして対抗要件を具備できて、そういう登記優先ルールに相当するものも適用しないという方向性で、これまで議論されてきたように思うのですけれども、ここの部分についてももう一度検討し直すということになるのでしょうか、というのが確認といいますか、質問事項でございます。   なぜこんな御質問をするのかと申しますと、もし、ここのところはもう決まっているのだからいじらないと、つまり対抗関係の話についてはもうこのままなのだということで、それ以外の部分について、つまり60ページ、61ページに書かれているような部分についてだけ具体化していくということであるならば、本当に競合を観念してしまっていいのだろうかということについて少し疑問を感じております。現在、所有権留保については競合がないということであるならば、対抗要件も不要であるとか、公示が不要であるとか、あるいは登記優先ルールは必要ない、こういうふうなことにもつながるのかなと思っておりましたが、もし競合を観念するのであれば、公示を前提としたルール作りが必要になるのではないでしょうか。確かに、集合動産譲渡担保が先行して、後発が所有権留保のような状況を想定しますと、どの道、所有権留保に相当するような譲渡担保化したものが優先するのだから、優先劣後の基準としての公示を必要としないということになるのかもしれませんが、しかし、所有権留保が先行していて、その後に譲渡担保が出てくる競合の場合であると、やはり公示がないと危ないという状況は全く同じように思います。ですので、競合を観念するのであれば、所有権留保に相当する譲渡担保だから公示は要らないというのは当てはまらないような気がいたします。ですので、その辺りの優先関係、あるいは対抗要件の基本的な部分についても見直すということになるのか、そうでないのかというのは、この【案15.1】を採るのか【案15.2】を採るのかに関係する話のように思いますので、質問させていただきます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。事務局からお答えいただいてもいいのですが、【案15.2】を仮に採ったときにも、当該留保所有権という他の担保権と競合し得る権利というものは、オートマチックな形で対抗要件が具備されて、他の担保権が後発的に生じた場合にも先行する留保所有権の方が優先するという定めが論理的には可能ではないですか。そこを対抗要件が要らないというからあれなので、それは当然に何の行為もなく具備されると考えるということで考えてもいいですし、対抗要件は要らないと観念したって、対抗要件の要る、具備された担保権には必ず負けるということは必然的には出てこないように思うのですが、それはどうなのですか。 ○青木(則)幹事 所有権留保に相当しない通常の譲渡担保の場合の公示の意味を考えますと、所有権留保が先行していて後発が譲渡担保である場合の意味と余り変わらないように思います。つまり、競合があることを前提すると、先行する担保権について公示がなければ後発の担保権者にとっては危険であるという意味で、同じように思います。ですので、やはり公示が必要だということで見直すべきではないかと思った次第です。 ○道垣内部会長 見直すべきだという御主張はよく分かりまして、それはずっと一貫された御主張なので、それは結構なのですが、【案15.2】を採ったら必ずそこの部分が変わってくるかというと、必ずしもそうではないように思うのだけれども。 ○青木(則)幹事 今のような点について、それは既に検討されているからということであれば、論理的に無理かどうかは、確かにそういうふうなものにすることができるかもしれませんが、少なくとも、譲渡担保として構成するとしても、他の譲渡担保とは異なる変わった譲渡担保として位置付けることになる。 ○道垣内部会長 いや、留保所有権を他の担保権と競合が生じるということを前提にした場合、譲渡担保として構成するというふうな意味には必ずしもならないのではないですか。 ○青木(則)幹事 そうであれば、そこのところは。 ○道垣内部会長 いや、それは一つの考え方であって、それをどうするのかというのは検討しなければいけないのですが、【案15.2】を採ったときに、まだ内容を更に検討しなければいけないというふうに伊賀さんの方から御説明があったわけですが、それにおいてどのような方向性というものを現在事務局としてはお考えなのかということについて一言、もしお考えがあれば、お聞かせ願えればと思います。 ○笹井幹事 ここは前回の所有権留保について御提案したことについて、部会においてはむしろ、競合が生ずると、その競合が生ずるということの意味といいますか、それは基本的には所有権留保と動産譲渡担保権を同じように扱っていくという、前回の更に前の提案ですね、その方がよいのではないかという方向性での御意見だったのだろうと理解をしております。したがって、【案15.2】というのは、もちろん今日ここでの御議論があれば、それを踏まえてまた検討はしますけれども、今【案15.2】としてお示ししているのは、基本的には動産譲渡担保権と同じように扱っていくという方向で考えておりました。   そこでは、狭義の所有権留保と拡大された所有権留保に対応するものとして、牽連性のある動産譲渡担保権と、牽連性の必ずしもない動産譲渡担保権とが既に動産譲渡担保権に関する規律として設けられていて、牽連性のある動産譲渡担保権については、動産譲渡担保権だけれども、他の牽連性のある被担保債権を担保する限りにおいては、対抗要件を不要としたり、他の担保権から優先するというようなルールを提案しておりましたので、その点を含めて所有権留保についても適用するというのが、この【案15.2】について事務当局として考えていた立場でございます。 ○道垣内部会長 青木さん、更に何かございましたら、お願いします。 ○青木(則)幹事 先ほどの話になるわけですが、公示については基本的にはどうお考えなのでしょうか。既に書かれている第3の5は、これはもうそのままという方向なのでしょうか。 ○笹井幹事 そうですね、そこは変えないというつもりでおりまして、そこは、御承知のとおり平成30年判決が所有権留保について示されて、むしろその所有権留保に関するルールを動産譲渡担保権にも及ぼした方がいいのではないかということで、この15ページの第3の5というルールが設けられていますので、所有権留保について動産譲渡担保権と扱うということにした場合でも、ここは基本的にはそれを維持するつもりでした。部会においても、平成30年判決と同様のルールを維持することを支持する方向の意見が多かったのかなと理解をしていたのですけれども。 ○青木(則)幹事 個人的には、そのルールで納得できるのは、やはり競合が生じていないからなのだというふうな理解があったものですから、競合を前提とする規定を置くときに本当にそのままでいいのかどうかということについては、疑問を持っておりますけれども、おっしゃられたように論理必然かと言われると、そうではないかもしれませんので、異なる類型の対抗関係のルールの制度的なバランスとして今申し上げたように思っているという意見でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○片山委員 慶應義塾大学の片山でございます。笹井さんのおっしゃることと同じなのですけれども、基本的には、恐らく部会資料でいうと30ですかね、担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(2)を前提にほぼ議論していたことに戻るということかと思います。それまで全部なくなってしまって、またゼロベースから議論を始めるということではないと理解はしているのですけれども、そのような理解でよろしいですよね。 ○笹井幹事 はい、事務当局の考えは、おっしゃるとおりです。 ○道垣内部会長 ほかに。   青木さんに言わせると、【案15.2】を採った挙げ句に、公示がなくても随分強いというのが一番中途半端だというのが多分、青木さんのおっしゃりたいところで、それなら所有権が残っているのだから競合しないというならまだ分かるけれども、競合すると言っておいて、それはおかしいのではないかというのが青木さんのお立場だろうと思います。私は必ずしもそうは思いませんけれども、その辺りのことも含めまして、前回、競合が生じないと言ってしまって、それで終わりにするというのは、それはいかんだろうというのが皆さんの多くの御見解だったと思うのですけれども、そうしたときに内容的に、購入代金債権担保権というのはほかの譲渡担保との競合においても優先するということにするのか、それとももっと普通のレベルに戻してはどうかというのと、その辺はいかがでしょうか。 ○沖野委員 ありがとうございます。何も新しい点ではないのですけれども、私は【案15.2】の線で、かつ、部会資料30なのかは私も分からないですけれども、それ以前に検討されていた留保所有権の内容を盛り込む形での規律を設けるのが適切だと思っておりますし、強い効力を認めるということは十分あり得るのではないかと思っています。その価値判断だとか政策的判断が本当に十分に根拠付けられているのかというのは、しばしば指摘もされていましたし、それを支える技術が、やはり競合しないということによって支えられていたのではないかというのは、確かにそうだとは思うのですけれども、ですから、それを採らないと一段ハードルを上げているのかもしれないということにはなるのですけれども、そのときに、その技術を採らないと政策的に大きな価値判断の転換が必要になるのかというと、それはむしろそうではないのではないかと思っておりまして、むしろその政策判断を支えるような特則を置いていくという方が適切ではないかと思っておりますし、それから、留保所有権も一定の場合に、結局それは担保と同様に扱われるというのは、既に現行法で一部そうなっているのではないかと思いますので、およそ競合も生じなくて、債務者のというか、借主の財産というか、にはおよそなっていないのだ、では説明の付かないものが既に出ていて、これを正面から、留保されている所有権というのがなぜ留保されているのかというと、担保目的でやはり留保されているというところとして捉えて、競合が生じた上で規律を置いていくという方向の方が望ましいし、可能ではないかと思っておりますので、【案15.2】で、かつ、特別な優先的な規律というか、もう言わない方がいいですね、そういうことも含めて特則を置いていくという形で検討していただくのがいいのではないかと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見はございませんでしょうか。   それでは、【案15.1】というのは、前回も含めましてさほど御支持がないということで、【案15.2】をやって、それで具体的にどういう内容にするのかというのは、今までの議論の経緯というのもありますが、青木さんの御発言もあるところでありまして、具体的な中身はこれからもう一度書き起こさなければならないということになります。その点につきまして、事務局にまた御苦労いただくということになりますし、またその途中経過におきまして皆さんの御意見とか御助力を頂くこともあるかもしれませんので、その点はよろしくお願いいたします。   では、一応【案15.2】ということで、また、前回でしたっけ、12月の部会では、所有権留保に係る、留保所有権の剰余価値、弁済されていきますと剰余価値ができるわけですけれども、それについての担保化というものの必要性というのも本当はあるのではないかという話が日比野さんからも出ていたところなのですが、それもまた技術的にどこまで可能なのかということも含めて検討をさせていただいて、提示させていただければと思います。その点は踏まえているということでございます。   ほかに。差し当たってはそういうことで内容をまとめさせていただいてよろしいでしょうか。   それでは、16、17、18、19、21というのが、見直しをまとめてと言おうかと思ったら、22も見直しだったというので、失敗なのですが、16から21までをまとめて議論の対象にしたいと思います。それでは、資料の説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 第16以下につきましては、関連法の整備に関する規律でございます。   このうち第16、民法の見直しにつきましては、2の抵当権の効力の及ぶ範囲につきまして、以前の部会資料37-2には記載していなかった部分となります。16の2につきましては、民法371条につきまして、債務不履行前に生じた果実についても抵当権の効力が及ぶことを明確にするため、動産譲渡担保権における果実の収取の規律の表現に倣いまして、民法371条についても改めようとするものでございます。以上が第16についての御説明となります。   第17につきましては、前回部会資料37-2から特段の変更はございません。   第18から21について御説明いたします。第19、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律の見直しの1、担保権実行手続中止命令及び第21、会社法の見直しの1、担保権の実行の手続等の中止命令について、部会での議論を踏まえ、表現ぶりを修正したものとなっております。   第16から第21までにつきましての説明としては、以上となります。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、どこからということもございませんので、どこからでも結構でございますので、御意見を頂ければと思います。懸案の民法371条という改正がやっとここでなされるわけですけれども。 ○片山委員 片山でございます。抵当権の効力の及ぶ範囲で、371条の規律を変えるということに特に異論があるわけではないのですが、そのほか抵当権についての改正もこのタイミングでということになりますと、例えば、担保価値維持義務の議論に基づいて妨害排除請求ができるとか、判例法理としてかなり定着している部分もあるということになりますと、その余のところもこの機会に立法化するということもできるのではないか思ったわけですけれども、この点についてだけと限定されているのは何か理由があるのか、ほかには広げないのかという点を確認できればと思いました。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 正に同じ不履行があったときの果実の問題について、動産債権譲渡担保について規定をするので、抵当権についてもその大本の規定として直すというわけでありまして、今回を機に、例えば担保価値維持義務をするとか、妨害排除するというのは、そもそも諮問された範囲との関係でも難しいかと思います。371条を準用するという形の技術的な問題、大本がここにあるという感じなのですよね、だからここは直せるのですが、それ以外は少し難しいかなと思いますが、そういう認識でよろしゅうございますか。 ○笹井幹事 はい、今、部会長が御発言になったとおりで、これを機に抵当権について大幅に見直すのはなかなか難しいと思います。そこで不動産については基本的には対象外としてきたわけですが、ただ、動産について同様の規定を設けるに当たって、抵当権に関する民法371条と余りに文言が変わっていますと、371条の解釈自体に影響を与えるということもあるかと思いますので、371条に限ってはそのような解釈の混乱を避けるために、改正してはどうかと考えております。 ○片山委員 了解いたしました。どうもありがとうございました。 ○道垣内部会長 ほかに。   沖野さんが悩み多き顔をしていますが。 ○沖野委員 沖野です、すみません。今の抵当権の話で、確認をさせていただきたいところなのですけれども、これは天然果実に限るという前提で書かれているのでしょうか。抵当権の方ですけれども。 ○笹井幹事 いえ、371条は元々、平成15年に改正をしたところで、そのときに果実を収益執行の対象にするということもあって、今このような形になっていたかと思います。ですので、371条の果実については、天然果実に限らないというのが平成15年改正時における説明だったと思います。 ○沖野委員 分かりました、結構です。371条自体の位置付けについては多分、むしろ水津先生の方がおっしゃるかもしれませんが、理解が分かれているところで、ただ、平成15年の問題は、その後に生じたという文言を入れてしまったことがいろいろな問題を生んでいるので、ここをなくしてしまえばということがありまして、収取したということになると、収取というのが非常に天然果実的なイメージを持ったものですから、そうすると今度は371条の議論について、一つ終止符を打つような話にもなってくるのかと思いまして、確認をさせていただいて、そこはなお、平成15年以来の解釈の余地が残っているものとして提案されているということですね。 ○道垣内部会長 それはそうなのですが、89条2項は法定果実について収取するという言葉を使っているのですね。したがって、収取するという言葉から、これが天然果実であるということにはならないと存じます。 ○沖野委員 分かりました。大本が誤解していました。ありがとうございます。 ○道垣内部会長 ほかに何かございませんでしょうか。   よろしゅうございますか。先ほど外国倒産処理の承認援助のところで山本和彦さんからいろいろ出て、なるほどと思いながら伺っていたのですけれども、そういうふうなところで十分に私の方も付いていけていないところがあろうかと思いますので、いろいろ御指摘を頂ければと思いますが。   大丈夫そうでしょうか。もちろんこれは技術的な話ですので、大丈夫ではなかったということになりましたら御連絡いただければ、対応は法務省の方でさせていただけると思いますけれども、根本論としてはよろしゅうございますか。   それでは、若干実質的な議論をしなければいけないと思われるところが第22でございまして、第22の動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の見直しということでございます。このところにつきまして、事務当局から部会資料の説明をまず、お願いいたします。 ○森下関係官 関係官の森下でございます。第22は、譲渡登記制度の見直しについて今回新たに記載させていただいたものでございます。基本的な内容といたしましては、これまでの部会の提案ですとか議論を踏襲して作成したものです。   まず、1は、譲渡登記一般に関する規律の見直しについての提案になります。(1)では、法人の会社法人等番号を譲渡登記の必要的記録事項とすること、(2)では、部会資料33の提案と同様に、動産譲渡登記の特定方法を動産の種類と当事者の任意の方法による2要素とすること、(3)では、譲渡登記の原則の存続期間を10年から20年に延長することを提案しております。   続きまして、70ページの2は、譲渡担保権に関する登記制度の見直しの概要についての提案でございます。基本的に、部会資料35の記載内容と、その別添1及び2のイメージ図の内容を踏襲して作成したものです。(1)は、登記原因を譲渡担保とする譲渡登記において、譲渡担保権者の氏名及び住所等を必要的記録事項とした上で、その記録事項の変更の手続を新たに設けることを提案しております。(2)、(4)及び(5)は、実体法の規律として、転譲渡担保、譲渡担保権の順位の変更、根譲渡担保権の分割譲渡の規律に対応する登記制度をそれぞれ設けるものです。基本的には抵当権の登記の手続を参考として、これまでの部会資料の内容に沿った提案内容となっております。(3)は、競合する譲渡担保権を記録するための目録制度を新設するものでございまして、従前の提案内容から実質的な変更点はございません。   72ページ目の3でございますけれども、留保所有権に関する登記を新たに設けることについての提案になります。新たな登記の効果を所有権留保に係る動産について引渡しがあったものとみなすこと、所有権留保登記については動産譲渡登記に関する規定を準用することを提案させていただいております。   以上について御議論をお願いいたします。 ○道垣内部会長 それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂きたいと思いますが、伊見さん、何かございますか。お願いします。 ○伊見委員 ありがとうございます。伊見でございます。まず、第22の御提案につきましては、これまでの検討経過を踏まえたものでありまして、特段異論や違和感はございません。ただ、72ページの3の留保所有権に関するところにつきましては、ただいまの議論にありましたとおり、実体上どのような権利を定めていくのかによって登記の内容も定まってくるというところがありまして、例えば、登記原因がどうなるのかとか、順位変更等の登記を認めるかなど、譲渡担保に比べまして、いまだ具体的なイメージが持てていないというのが正直な感想でございます。   この登記制度の見直しにつきましては、一読において担保ファイリングといった簡易迅速、廉価な登録制度導入との比較検討から始まった議論であったかと思います。最終的に譲渡担保権者の変更とか転担保、担保権の処分の登記を認めていくという登記制度を充実させる方向になり、占有改定劣後ルールの導入と併せて、より多く使われやすい制度となっていくことについて積極的に評価するものでございます。一方で、登記事項が充実するといいましても、物的編成ではなく人的編成である動産債権譲渡登記には公示機能の限界がおのずとあり、実体と公示との間にずれが生じる可能性があることについての周知や、証明書における注意喚起文言の配置など、現在以上に手当てが必要になると思われます。この点、要綱案の内容自体に関わるものではありませんけれども、一言付言をさせていただきます。   また、これも要綱案の内容に関わるものではないかもしれませんが、複数の担保権を同順位とする譲渡登記の申請が認められることになるかということは気になっております。現状このようなニーズがあり、同順位設定の実現手段として準共有の譲渡担保登記が利用されているということも実務上承知をしております。同順位申請の可否によって、今後の契約や登記実務が変わっていくということが想定されると思います。   以上、いずれにつきましても、今後の具体的な立法作業の中で、利用者にとって分かりやすく、また使いたくなる制度となるよう、実務の立場から適宜、今後も意見や提案をしてまいりたいと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。   ほかに何かございますか。   よろしいですか。それでは、この見直しのところにつきましては、特に異論がないということで進ませていただきたいと思います。もちろん、先ほど申しましたように、いろいろかなり細かい点でございますので、事務局側にもミスがあるかもしれませんし、更にお気付きの点が出てくるかと思います。その点につきましては是非とも事務局にお伝えいただければと思います。よろしくお願いいたします。また、登記制度の具体的な設計につきまして、今、伊見さんからも、規則等でいろいろ定めなければならないところがあるという話だろうと思います。その点につきましても、ユーザーの立場ないしはそうではない立場からでも、どのような規則を定めてどのような設計をすべきかについて、積極的に御発言、御議論を頂ければと思います。それもメール等で幾らでも頂いても結構でございますので、よろしくお願いいたします。   それでは、よろしければ本日の審議はこの程度にさせていただきます。   次回の議事日程等につきまして、事務当局から説明をしていただきます。 ○笹井幹事 本日もありがとうございました。また、この部会が始まって以来、長期間にわたりまして御審議をくださいまして、ありがとうございました。まだたたき台2が終わったところですけれども、今日43でお示ししたような一般債権者保護をどうするかといった問題ですとか、そういったものを初めといたしまして大きな問題が幾つか残っており、小さな問題を含めると議論が完全に収束したというわけではないだろうということは認識をしております。ただ、ここまで3年弱御議論いただきまして、様々な問題についての議論の対立点等は明らかになったかと思いますし、また、大きな方向性としては見えてきている部分が多くあると思っております。したがいまして、これまで御議論いただいたところを踏まえ、事務当局において技術的な、今日も幾つか御指摘がありましたような条文の書き方とか、そういったところについて内部的な検討を進めていきたいと思っております。   その間、部会については少しお休みを頂きまして、改めて、また次回の日程を御報告したいと思っております。幾つか予備日等も頂いておりますけれども、その開催をするかどうかということも含めて、追って御連絡を差し上げたいと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、法制審議会担保法制部会の第45回会議を閉会にさせていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りまして、どうもありがとうございました。また、少し間が空くようですが、また次回、よろしくお願いいたします。どうも失礼いたします。 -了- - 1 -