法制審議会 民法(遺言関係)部会 第2回会議 議事録 第1 日 時  令和6年5月14日(火) 自 午後1時30分                      至 午後4時46分 第2 場 所  東京地方検察庁教養課会議室1502号室 第3 議 題  遺言制度の見直しにおける論点の検討⑴ 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会民法(遺言関係)部会の第2回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。前回に引き続きまして、本日もウェブ会議の方法を併用して議事を進めたいと思いますので、まず、ウェブ会議に関する注意事項を事務局の方から御説明いただきます。 ○戸取関係官 前回の部会と同様のお願いとなりますけれども、念のため改めて御説明させていただきます。   ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては、ハウリングや雑音の混入を防ぐため、御発言される際を除き、マイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願い申し上げます。御質問がある場合や、審議において御発言される場合は、画面の下側に表示されている挙手ボタンを押してください。そして、御発言の際はマイク機能をオンにした上で、お名前をおっしゃってから発言されるようお願いいたします。なお、御発言が終わりましたらマイクをオフにし、画面の挙手ボタンを再度押して挙手を下げていただきますようお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。   次に、本日の審議に入ります前に配布資料の御説明を頂きます。これも事務当局の方からお願いを致します。 ○戸取関係官 まず、部会資料2「遺言制度の見直しにおける論点の検討(1)」でございます。こちらにつきましては、後ほど審議の中で事務当局から御説明いたします。次に、参考資料2「遺言制度のデジタル化に関する調査研究報告書」でございます。これは、法務省が委託しておりました遺言制度のデジタル化に関する調査研究業務の報告書であり、諸外国における遺言制度やデジタル技術、アンケート調査の結果等をまとめた内容となっております。また、席上のタブレットには委員等名簿及び議事次第を格納しております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。本日は、遺言制度の見直しにおける論点の検討ということで、部会資料2、(1)という番号が付いておりますけれども、この資料につきまして一読の検討をお願いしたいと思います。(2)がまた次回に出てくると理解をしております。   それでは、事務当局から、まずこの部会資料2の第1の部分について御説明をお願いいたします。 ○戸取関係官 御説明いたします。部会資料2は、大きく分けると二つの内容で構成されており、「第1 遺言制度を取り巻く情勢等」では、個別の論点について御議論いただく前提として、近時の法改正やアンケート調査の結果等を御紹介しております。また、「第2 デジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方」では、真意性・真正性の担保及び熟慮を促すことについて、その意味するところを改めて検討し、それらが現行の自筆証書遺言及び秘密証書遺言においてどのように担保されているかを整理するとともに、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式の位置付けや、本文に相当する部分の在り方、真正性を担保するための方式の在り方等について検討しています。   まず、「第1 遺言制度を取り巻く情勢等」について御説明いたします。   1ページの「1 遺言制度を取り巻く近時の法改正」では、遺言の方式に関する近時の法改正として、聴覚・言語機能障害者が手話等の通訳や筆談により公正証書遺言等を作成する途を開いた平成11年の民法改正、自筆証書遺言の方式要件が緩和されるとともに自筆証書遺言書保管制度が創設された平成30年の民法改正等、領事方式遺言について押印要件が廃止された令和3年の民法改正、ウェブ会議方式で公正証書遺言の作成が可能となった令和5年の公証人法の改正について、各改正の概要等を御紹介しております。   このうち(1)の平成11年民法改正につきましては、当時の改正前の規定では、聴覚・言語機能障害者は公正証書遺言等ができないと解釈されていたことから、手話等の通訳や筆談を用いることができることとしたものでございます。今回の新たな遺言の方式の検討におきましても、検討が具体化していくに伴い、障害を有する方への対応の要否を検討することも考えられますので、その参考になるものと考えられ、19ページの(注)にその点を記載しております。   また、(2)の平成30年民法改正及び遺言書保管法の制定につきましては、次回御議論いただくことを予定しております、新たな遺言の方式についての保管制度の要否等について、また、自筆証書遺言の方式要件の在り方についての参考になるものと考えられ、ここに記載しております。   さらに、(3)の令和3年のデジタル一括化法による民法改正につきましては、特別の方式のうちの特に領事方式遺言についてのみ押印要件を削除しており、やはり次回御議論いただくことを予定しております現行の自筆証書遺言の方式要件の在り方についての参考になるものと考えられ、ここに記載しております。   そして、(4)の令和5年の公証人法改正につきましては、新たな遺言の方式の検討及び自筆証書遺言の方式要件の在り方についての参考になるものと考えられ、ここに記載しております。   4ページの「2 遺言制度を取り巻く社会情勢」及び5ページの「3 現行の遺言制度の利用状況等」では、公表された統計資料等に基づき、我が国の人口における高齢者の割合や年間死亡者数、公正証書遺言等の作成件数や自筆証書遺言書の保管申請件数等について御紹介しております。一覧表の記載につき若干補足しますと、主に用いられている二つの方式のうちの公正証書遺言につきましては、その作成件数を把握することができ、左から2番目の縦列のとおり、近時は年間10万件から11万件程度となっております。   これに対し、自筆証書遺言につきましては、その作成件数を正確に把握することができる統計はございません。ただし、右から3番目の縦列の遺言書の検認件数は、その大部分が自筆証書遺言と考えられ、また、最も右の縦列の自筆証書遺言書の保管申請件数につきましては、保管がされた場合には遺言書の検認を行う必要がないとされていることから、これら二つを合計した4万件弱という数字が裁判所及び法務局の手続に表れた自筆証書遺言の数として、一応の参考になるのではないかと考えられます。   6ページの「4 遺言制度に関する調査の実施及び結果の概要等」では、法務省が外部委託調査の方法により令和5年11月に実施した、遺言制度の潜在的利用者を対象とした制度利用意向に関するアンケート調査とインタビュー調査の結果の概要を記載しています。結果の詳細については、参考資料2の第9章及び第10章に記載がございますが、部会資料2では、その概略を御紹介するものでございます。   まず、6ページ(1)ア及び(注1)に記載しましたとおり、このアンケートは回答者をスクリーニングするための質問により、遺言について一定の関心を有すると考えられる1,050人を対象としており、また、その手法はオンライン形式ですので、パソコン等を使わない者はそもそも対象外となっております。   その上で、8ページから9ページには、「デジタルな手段を使うことができるようになれば遺言を作成したいと思いますか。以下の方法のそれぞれについてお答えください」との質問に対する回答割合を表にまとめております。(B)のパソコン上でワープロソフト等を利用する方法と、(C)のウェブサイトにアクセスして入力する方法とが、作りたいと思うとの回答が比較的多いものといえます。また、遺言制度に関する意見や要望についての自由記述形式の質問に対する回答の一部を9ページの(注6)で記載しております。10ページには、インタビュー調査においてデジタル技術を利用した遺言作成について、簡便であり気軽に遺言を作成することができるようになることに対しては好意的な評価が示されたものの、機械操作がうまくできないという不安、他人が書き換えることができてしまうのではないかという懸念、パソコン等に保存した場合に、自分の死後発見されないのではないかという懸念が示されたことを記載しております。   部会資料2の第1についての説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございます。ただいまの部会資料2の第1につきましての事務当局の説明につきまして、何か御質問等があればお願いをしたいと思います。   なお、御意見にわたる点につきましては、後ほど第2の具体的な論点等のところでまとめて頂戴できればと思っておりますので、今のところは、御質問があればということで伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○齊木委員 事前の説明のときも御質問申し上げたのですけれども、このアンケート対象に70代までしか入っていないという理解でよろしいでしょうか。と申しますのは、一番の遺言の件数を占めている公正証書遺言を例にとりますと、実は一番人数の多い世代というのは79歳から88歳、これが一番のマス層なのですけれども、今回のアンケートはそのマス層がアンケート対象から外れているという理解でよろしいのかどうかを少し確認させていただきたいと思うのですけれども。 ○齊藤幹事 法務省でございます。今の御質問については、また正確なところは後日お答え差し上げたいかと考えておりますが、基本的には70代までの方ということで、記載のあるとおりかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。齊木委員からは、80代というのが非常に重要なのだと前回もお話しいただきましたので、また折に触れて話題にしていただきたいと思います。   ほかに御質問はいかがでしょうか。 ○相原委員 今の齊木委員の質問に少し関連するかもしれないのですけれども、7ページのアンケート調査結果の概要というところで、遺言書を作成した経験があると回答した者の割合は13.0%ということで書かれております。先ほどの齊木委員の話ですけれども、読んだ瞬間に一体どのぐらいの年代層なのだろうと思ったのですけれども、これに対する分析については、詳細はこちらの報告書にあるかと思うのですけれども、その内容についての見解等については、後の意見のところで申し述べた方がいいということでしょうか。今ここでそこの少し分析に入るようなことは、今の御質問の対象ではないということで進めた方がよろしいですか。 ○大村部会長 内容については後の方がよろしいですね。 ○相原委員 では、後にいたします。 ○隂山委員 令和5年11月に実施されたアンケートにつきましては、インターネットを利用した方法によるものですので、一定程度、デジタルに関するリテラシーなどがおありの方が回答しているのではないかとも推察されるところではございますが、この令和5年11月アンケートを読む際、デジタルに関するリテラシーなどをどの程度考慮すればよろしいかという点を御質問させていただけたらと思います。 ○齊藤幹事 リテラシーにつきましても、基本的には今御指摘いただいたとおりのところかなと思っております。それ以上に、どういった端末を使い慣れているとか、日常生活でどの程度使うとか、そこまでのところを問う形にはしておりませんので、記載された内容を前提にお考えいただければと思います。 ○大村部会長 そのほか、御質問いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、御意見にわたる点につきましては、先ほど申し上げましたように、後の部会資料2の第2のところで、またおっしゃっていただければと思います。   続きまして、今申し上げました部会資料の第2のうち1から3までの部分についての検討に入りたいと思います。まず、事務当局の方からこの部分についての御説明をお願いいたします。 ○戸取関係官 御説明いたします。11ページ以降の第2では、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方について記載しております。   1(1)では、検討の前提となる事項として、真意性・真正性の担保及び熟慮を促すことの内容がどういうものかを明らかにすることを試みた整理をしております。遺言が様式行為とされているのは、真意性・真正性の担保等のためであると考えられておりますが、真正性の担保ということの意味内容が比較的明らかであることと比較すると、真意性の担保、熟慮の促しということの意味内容は直ちには明らかではないと考えられます。そこで、これらの言葉の下に求められているものをより具体的に把握するため、明治民法制定時の立案等に関与した学者の主要な文献の記載を基に、順不同かつ内容に重複もありますが、①から⑪までを把握した上で、これをCからGまで一定のグループ化を試みております。   その上で、12ページのウでは、現行の遺言の方式においては、例えば公正証書遺言ではAからGまでを実現する程度はほかの方式よりも高いと考えられるなど、真意性の担保や熟慮を促すことの程度は各方式において一律ではないとも考えられる旨を記載しております。その上で、新たな遺言の方式においてこれらをどの程度実現することが必要かなどにつきまして、御意見があればいただきたいと考えております。   12ページ以下の(2)及び(3)では、現行の自筆証書遺言や秘密証書遺言において、真意性・真正性の担保及び熟慮の促しについて、どのような方式の在り方によってどの程度担保が図られているか検討するのが有益と考えられることから、その整理を試みております。まず、自筆証書遺言においては全文の自書という手間があり、他人の影響が及びにくいことから、この点では真意を確保等されると考えられる一方、専門家等の関与なく作成され得ることから、遺言の内容が明白でない場合も多く、そのために遺言の内容が実現されない場合があるなど、真意を確保する機能等はそれほど大きくないのではないかとの指摘もあるところであり、様々な見方があり得ると整理しております。   14ページ以下の(3)では、秘密証書遺言において、第三者が筆記した場合には、筆者として氏名及び住所が申述され、封書に記載される必要があり、筆者を通じて遺言の作成過程が明らかにされること、その上で公証人に対して封書が提出されることなどにより、真意性の担保等が図られているとも考えられますが、第三者が遺言書を作成することが可能である点で、自筆証書遺言ほど真意性の担保等の程度は高いものではないと考えることも可能と思われると整理しております。   15ページ以下の2では、1における検討も踏まえた上で、新たな遺言の方式について、制度の全体像を意識しながら議論する必要があるとの考え方や、公正証書遺言や秘密証書遺言とのすみ分けが問題となるとの考え方等を踏まえ、遺言制度全体の中での位置付け、他の方式との役割分担、新たな方式において目指すべき真意性・真正性の担保等の程度、作成に際しての負担の程度等の観点から、どのような在り方が望ましいと考えられるかについて御意見を頂ければと考えております。   16ページ以下の本文3では、遺言の本文に相当する部分の在り方について、(1)として文字情報の電磁的記録を、(2)として録音・録画の電磁的記録を挙げ、このうち(1)の文字情報の電磁的記録については、例示として様々な具体的な在り方を記載しております。また、(1)ウの(注)として、デジタル技術を活用した方式の一つとして、ワープロソフトを使用して全文等を作成し、プリントアウトした書面を原本と位置付けることも考えられると記載しています。   まず、補足説明の1では、具体的な議論の素材としては現在の技術水準を前提とせざるを得ないとして、本文に挙げた具体例を記載しているものの、今後、規律の在り方について議論される際には、将来の技術水準にも対応し得るような規律の在り方を検討することが考えられると記載しており、このような考え方でよいか、御意見を頂ければと考えております。   次に、2では、遺言の原本について、書面と電磁的記録のいずれを原本と位置付けるのが相当かとの問題について、今後の執行手続等を考えると、電磁的記録を原本とすることが相当ではないかと考えられる一方、書面を原本とする考え方も否定されないとも考えられるところであり、この点について御意見を頂ければと考えております。   3では、文字情報とした電磁的記録であるアからオまでについて、それぞれの具体的な方式について考えられるメリット、デメリットを記載しております。ここに記載したような点などを踏まえ、どのような在り方が相当と考えられるかについて御意見を頂ければと考えております。   なお、19ページの24行目以下では、新たな遺言の方式の規律として、仮に「遺言に係る内容を文字により記録した電磁的記録」などと法律の文言上一般化して規定した場合には、ウからオまでの方式、すなわちワープロソフト等を利用して作成する方式、音声入力し文字情報に変換して作成する方式、インターネットを通じてフォーマットに入力して作成する方式では、いずれもデジタル機器を用いて作成され、遺言に係る内容が文字により記録された電磁的記録となるため、一つの遺言の方式に収斂することとなると考えられます。そのため、そのような法制化を行う場合には、ウからオまでの個別具体的な在り方は、民法上の遺言の方式とは別次元の実務の運用の問題と位置付けられるとも考えられると記載しております。   20ページ以下の3では、遺言者が口頭で遺言内容を発言する際の音声及び様子を録音・録画した電磁的記録をもって遺言とすることについて、真意性の担保等が図られるとも考えられる一方、偽造・変造のリスク、執行手付の困難性、録音・録画の精度といった問題点を挙げ、また、参考として中国及び韓国の制度について紹介をしております。この方式の在り方が相当と考えられるかについても御意見を頂ければと考えております。   第2の本文1から3までの御説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございます。   第2、資料で申しますと11ページから後になりますが、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方、その1、2、3ということで、1は検討の前提、2はその位置付け、3は遺言の本文に相当する部分の在り方ということでしたが、この部分について御意見をお伺いしたいと思います。それに先立ちまして、まず、御質問があれば御質問にお答えいただき、それから御意見ということにさせていただきたいと思います。   まず質問の方を、どなたでも結構ですので、何かありましたら、お願いを致します。 ○小池委員 九州大学の小池です。最後の方でも少し説明があったのですけれども、19ページの24行目以下のところで、一番最後、31行目に民法上の遺言の方式とは別次元の問題と位置付けられると、今の御説明だと、実務の運用の問題だという御説明だったのですけれども、その意味がよく分からないというのがありまして、例えば自筆証書遺言だと、書面に全部自分で書けというところまでが方式なのですよね。電磁的記録の作成について遺言者本人がどこまで関与するのかというのは、正に方式の問題ではないかと思ったのですけれども、その点についての事務局の御見解というか、こう書いた前提をもう1回、少し御説明いただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。それでは、お願いいたします。 ○齊藤幹事 法務省でございます。考え方につきましては、いろいろあり得るところであり、おっしゃったように、細かい、遺言者本人が電磁的記録に係る遺言についての入力もしなければならないというような方式の建て付けの在り方も一方で考えられるということかと存じます。他方で、19ページの24行目からにおきましては、その逆の考え方として、抽象的なあり得る規定の仕方次第では、逆にその点は方式から漏れ出るという考え方もあり得るという、逆の考え方を記載しております。   ちなみに、前者の遺言者本人が電磁的記録に入力すること、本人自らが入力することまでも方式とするならば、それを担保する手段、事後的にも確認できる手段とセットで併せて規定しなければいけないのかなという気もしておりまして、そうするとなかなかハードルが上がるのかなとも思っております。ただ、その点も含みまして、相当な方式ということでどんなものがよろしいか、広く御意見を頂ければと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。小池委員、今の御説明でよろしいですか。更に御質問があればどうぞ。 ○小池委員 分かりました。どうもありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか、いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、まだ質問が出てくるかもしれませんけれども、御意見の方と織り交ぜて御発言を頂ければと思います。   では、意見の方に移りたいと思います。どなたでも御自由に御発言を頂ければと思います。どうぞ。 ○戸田委員 戸田でございます。若干質問を交えてということになろうかと思うのですけれども、どの程度まで真意性とか真正性を確保するかというのは、その程度問題を議論するのは大変難しいことだと思うのですけれども、現状の自筆証書遺言保管制度とか、それから公正証書遺言での担保の仕方が確立されたものであるとすれば、それと同等なことが実現できるのであれば、これでよしとするというのも一つの解ではないかと思うのです。   例えば、自筆証書遺言保管制度ですと、インターネットと隔絶した器の中で50年間保存できるというようなやり方が、真正性担保の仕方、仕組みとしてもう出来上がっているわけですから、例えばそれと同じような仕組みを使って、デジタルで持ち込まれた遺言をプリントアウトして、それを書面として同じ仕組みで保管するということにすれば、同じレベルの真正性が担保できるのかなと。それから、真意性につきましても、公正証書遺言で公証人の先生が読み聞かせて、それをその本人で確認しているのであれば、それと同じことを、例えば自筆証書遺言保管制度の仕組みの中でも、法務局に来られた方にデジタルデータを見せる、あるいは音声化して聞かせるというようなことで、相違ないかということを確認することもできると思うのです。現状確立された方式があるのであれば、そういったものを使ってやると、割とスムーズに行くのかなというような気がいたします。   原本につきましても、例えば今申し上げたやり方で行くと、自筆証書遺言保管制度に準じて、デジタルデータを紙にして、それを正本として保管するということにすれば、そこからデジタルに戻すことは技術的な非常に簡単な話でございますので、この文章ではデジタルを原本とすべきというような話もあったのですけれども、実現する方式によっては、紙の方が妥当ということもあり得るのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。御意見としては、現行制度との並びで真実性、真意性を図るということであるとするならば、例えば現在行われている保管制度というものをデジタルとの関係で使っていくといった方向で考えると比較的よいのではないか、こういった御意見だったかと思いますけれども、質問も含んでいるところがあったと思いますが。 ○戸田委員 質問は、今私が申し上げたような判断でいいのかどうかという、要は真意性の担保ということが、例えば公正証書遺言で公証人の先生がお話しになったものを聞いたことで、これでよしとしているのかどうかというのは、私もはっきりと、法に照らした上でそれが妥当な話なのかどうか分からなかったので、疑問を交えて少しお話し申し上げたという次第でございます。 ○齊木委員 公正証書遺言においてどのように真意性を確保しているかについて、御説明申し上げたいと思います。   公正証書遺言では、民法で、まず、本人が口授するということが要件となっています。そのために、いきなり文案を公証人が読み上げて、それではいと言っても駄目だという裁判例があって、それは口授がないということで無効とされます。ですので、私どもは文案を本人に渡さず、まず、本人の頭にどういうふうに遺言のあらましが入っているのかを確認します。例えば、自宅のマンションは誰それに上げるとか、預金は何分の1を誰それに上げるというようなあらましを、まず口頭で言っていただきます。もちろん細部の、例えば遺言執行の権限とか、ああいうところは確認はしないのですけれども、そういう遺言のあらましの大きなところをまず口述で確認します。それが確かに事前に伺っているものと同じであれば、今度は文案をお渡しします。文案を見ながら私どもが読み上げます。読み上げた後で、これで間違いないですかということで、間違いないと言えば御署名いただくと、こういう段取りになっております。   実務をやっておりますと、口授を求めると、言えない方が意外と多いのです。遺言を士業者の方、あるいは自分の財産をあげようと思っている子供に任せてあって、いざ聴くと、いや、それは長女に聴いてくれとかという人などがいたりするので、ここの口授をきちんとやるということが、私ども公正証書遺言では一番大事な真意確認の方法と考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。公正証書遺言について、齊木委員の方から御説明を頂きました。戸田委員の最初の御発言に戻って言うと、幾つかの方式が現行法で定められているわけなのですけれども、それらのどれかと並びで考えればよいという発想で考えたときに、では、それぞれの遺言の方式につき、どのような形で真意性ないし真正性を確保しているのかということが問題になるので、そこを明らかにしていく必要があるといったことだったと思いますけれども、そうした発想で考えるということも含めて、事務当局の方で何かありますか。 ○齊藤幹事 特段ございませんが、公正証書はやはり、そういった齊木委員の御説明のとおりに、しっかりと真意性の担保が図られている、その代わりに手続としては重たい、そして費用も要する、そういう類型の方式なのかなという理解でおります。他方で自筆証書遺言といいますと、これは、専門家は関与せず、その上で、本人の手書きであることが非常に中心的な要件になっていますので、担保の在り方が少し違うと同時に、公正証書と比べるといろいろなケースがあり得るので、しっかりした真意性の担保までには至っていないと考えることもあり得るということかと思います。 ○大村部会長 先ほどの事務当局からの説明にもありましたけれども、方式によって、真意性あるいは真正性と呼ばれているものについての担保の度合いというものが違っているのだとすると、どれかと合わせるという場合に、どれを想定するのかということも問題になるのかと思って伺っておりました。その点も含めて、皆さんの御意見を更に伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○齊木委員 自筆証書遺言の場合に真意性を確保するのは自筆で全文書くからで、全文書くということは、頭に入っていないことは書けないという理解が前提にあると思います。ところが今度、ワープロなどで打ってもいいとすると、しかも本人でなくても入力する方法でもいいとすると、本人の頭に入っていないものが遺言の文面として表れるという事態が想定されるわけで、今までの自筆証書遺言の真意性確保の方法では、デジタル遺言では危ないという感じがします。つまり、本人が入力したかどうかを担保する方法というのは、齊藤幹事がおっしゃったように、難しいような気がするのです、私は。だから、別な方法でその真意性をやはり確保する必要があるのではないかと思っています。   諸外国の立法例を今回資料で頂いて、見ていると、立法例の中にはデジタルの記載自体は第三者に本人が任せると、そういうことも認めている立法例もあって、ただ、やはりそれが本人の意思に基づくかどうかは、きちんと2名以上の証人で確認すると、証人がやはりやり取りして、先ほどの口授と同じようにやり取りをして、きちんと確認するということが前提となっているのだろうと思われます。デジタル遺言の立法例で証人が不要となっているものはないようにも拝見いたしました。 ○大村部会長 ありがとうございます。齊木委員の御発言は、口授やあるいは自筆というものが持っている機能についての御説明を踏まえて、デジタル、ワープロ入力というようなことになった場合に、それが確保できなくなるだろう、そうすると、別の形で真意性というものを確保する必要があるということで、証人等が必要になる、こういった御意見だったと思います。ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○小池委員 先ほどの話ですが、齊木先生のお話ともつながるのですけれども、資料の12ページの21行目のウのところで、現行の遺言の方式で真意性等がどの程度担保されているかというのを考慮しつつ、新たな方式についてどの程度それを実現していくかを考えていくべきだという基本的な方針が示されていると。   その際に、事前レクでの説明でも、木村先生辺りからそういう意見が出ていたと思うのですけれども、現行の真意性とか真正性が確保されている程度というのは、もう絶対守らなければいけない最低ラインなのかとかそういう、要は参照軸とするとして、そこはもうミニマムだと考えるのか、それとも、改めてきちんとゼロから考えましょうという話にするのかというのは、どちらもありなのだろうと私は思いますけれども、事務局的にはどう考えているのかというのが一つと、例えばということで言うと、秘密証書遺言で、これが私の遺言です、ぐらいの話になっているので、それでもいいのかと、先ほど私の発言に対して事務局の方から、デジタルだったら自分で入力させるというのは余り意味がなくて、入力した記録について、更に真意性を担保する措置を講ずるというのを考えた方がいいのではないか、みたいな話もありましたけれども、だから、今でいうと自筆証書遺言レベルよりも更に低い秘密証書遺言レベルというのもあって、それは少し例外的なのかもしれないけれども、新たな方式については秘密証書遺言レベルだってありなのではないかというのは、個人的な感触としては持っています。   前半の方の、比較参照するとして、現行法の充足の程度というのはミニマムとすべきなのかという点の感触だけ、少しお教えいただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。現行法に幾つかある制度と並びでという方向で、今、話が進んできているのですけれども、並びで考えるというのは一つの選択肢で、必ずしもそうでないという選択肢もあり得るし、並びで考えるときに一番低い線で考えるということもあり得るのではないかという御発言ないし御質問だったと思いますが、最後が質問という形になっておりましたので、何かあればどうぞ。 ○齊藤幹事 法務省でございます。今の御質問に関しましては、全体的な方向は委員、幹事の皆様の御議論に従って決まっていくのかなと考えており、そういう留保の上でですが、個人的に、資料を準備した者の中の一人としては、真正性の担保というのは、やはり偽造・変造はあってはならないという意味ですので、これはしっかりした担保が必要なのかなと思っております。それに加えて真意性の担保ということについて、どういう意味かということを今回少し調べてはみたのですが、いろいろな意味が含まれているということですので、そのどの辺りを狙っていくのがよろしいのかは、正に御意見を伺いながら整理していきたいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。お答えの中で、どこに合わせるかということを考える際に、真正性と真意性を分けて考えるということも必要ではないかという御指摘があったかと思います。   相原委員、今のこととの関連でですか。 ○相原委員 はい。真意性の担保のハードルをどの辺にするかという点で、私どもも少し議論したときに、真意性というのを本当に探っていくのは非常に難しいのではないかというのはありました。私の実務家の観点から言いますと、本人が自分の意思をきちんと表すという意味で担保されるというのは非常に重要です。ただ、実務家の観点からは遺言書があることによって自分の権利が受け取れないという法定相続人が、自筆証書遺言であれば自筆で、全部本人が字で一応書いているから、それを読んで、本人は違うことを言っていたけれども、これを残していたら、まあしようがないなという得心といいますか、了解できることが重要かと思います。条件を緩和していくことによっては、遺言書に対する疑問というか不信感というか、それが残ると思います。そういう意味で、法的安定性を考えると、遺言書に対する信頼が確保できるかどうかという視点が重要なのではないかとは、今の御議論を聞いていて、思いました。つまり、遺言者がこういうことを書くわけないと思っても、ただ、自筆証書だったら本人が、確かにおやじの字だとか、そういうので了承できる、それから、公正証書遺言であれば、公証人がこういう立場で、最初に何もないところで、誰に何をあげますかと、公証人は先にそれを何もないところから聞かれた上で、後で確認のための口授の文言を確認されていますので、それをやっていくのが、通常のパターンですので、それを経験していくと、自分は受け取れないという人も大体の場合が遺言を信用できる、納得できる、そこのところが非常に重要なのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。相原委員のおっしゃっているのは、方式が持つ機能というので、遺言者ではなくて、遺言に関わる人たちがどれくらいそれで納得するかということが、一つの要素、あるいは重要な要素としてあるのではないか、そういう御指摘ですね。ありがとうございました。   今の点につきましては、ほかにも御意見があると思いますけれども、冨田委員、お待ちいただいていますので、御発言いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○冨田委員 ありがとうございます。今回の論点に対する連合の基本的な考え方を申し上げたいと思います。   前回も申し上げたのですが、この部会の議論の目標は、デジタル技術の活用によって遺言を利用しやすくすることだと思いますので、デジタル技術による効果をどこに求めるのかということについても常に意識して議論することが大事ではないかと考えています。この点で申し上げると、現行の方式で負担が大きいとされる全文自筆をデジタル技術でカバーすること、これも考えられますし、また、現行のいずれの方式でも遺言を残すことが難しい方が、デジタル技術を活用することで遺言が残せるようになるといった観点もあるかと思います。   今申し上げた2点の観点で今回の事務局の資料を拝見いたしますと、16ページの本文作成をサポートするデジタル技術の選択肢、これについては大変よく整理されていると思いますが、今も御議論があったかと思いますが、その真意性・真正性を担保するためには、この後御提起されると思いますが、例えば26ページに記載をされている署名や保管の方式との組合せが必要になろうかと思います。そうなってしまいますと、いずれの方式も少なからぬ手間や負担が掛かると思われて、デジタル技術の活用で、遺言者の負担を軽減し利用しやすくするという目標に合致する具体策になるのかどうかという点については、懸念があるということを申し上げておきたいと思います。   本文作成の負担を軽減しつつ真意性・真正性の担保をし、簡便性を維持する方式としては、16ページのウの(注)にある、ワープロなどで作成した本文を印刷した書面に署名する方式が、私としては最もシンプルに対応するものではないかと考えておりまして、この点についての議論を深めるべきだと思っておりますし、有力な選択肢となり得るのではないかと考えております。   また、誰もが遺言を残せるという観点では、19ページにあるバリアフリーの観点が大変重要でありまして、ハンディキャップがある方の負担を減らし、より利用しやすくなる方策についても検討を尽くしていく必要があるのではないかと考えております。   現時点での考え方は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。御意見は、遺言の利用をしやすくするということで、デジタル化の効用はどこにあるのかというところから始まって、余り複雑な方式を定めると、そのメリットを殺すということになるのではないかということだったかと思います。具体的には、16ページのウのような、ワープロソフトを利用してというのが簡明なのではないか、これは先ほどから出ていますけれども、遺言が難しいと、特にハンディキャップを持つ人に対する配慮が必要ではないか、こういう二つの御指摘を頂いたかと思います。ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○隂山委員 隂山でございます。第2の2と第2の3につきまして、意見を述べさせていただきたいと思います。   16ページの4行目に、簡便に作成することができるという自筆証書遺言という表現がございます。ただ、令和5年11月のアンケートなどを見ましても、手書きに対する抵抗感や負担感というものは一定程度存在するように見受けられます。証人の立会いや保管などを要しないという点において簡便であるという御説明につきましては理解をしておりますけれども、読み手の側において、手書きの負担を含めても簡便である、そのような理解となった場合に、若干違和感が残るのではないかと感じました。表現上の問題とはなりますけれども、部会資料2の25ページ28行目からの補足説明との関係などからも、本人のみでいつでもどこでも手軽に作成できるという自筆証書遺言とした方が、より違和感がなく議論を行うことができるのではないかと感じました。   その上で、自書要件がなくなる、手書きの負担がなくなるということになりましたら、それに代わる真正性・真意性の担保の方策は必要であると考えております。何か決め打ちをしているというわけではございませんけれども、一案といたしましては、マイナポータルのように利用者証明用電子証明書で当人認証を行い、当人認証が行われた領域の中で遺言書を作成、遺言が完成した際には署名用電子証明書を活用して遺言書の作成の意思を担保するという方策もあり得るのではないかと感じております。   第2の3の遺言の本文に相当する部分でございますけれども、こちらも内部で検討いたしましたところ、デジタル上のテキストデータが本文になるという考え方がシンプルで良いのではないかという意見がございました。このテキストデータにしていく過程につきまして、これが適切であろうという意見がまとまっているわけではございませんけれども、執行などの局面までも見据えますと、読みやすい形式ということで、テキスト化されたデータが望ましいのではないかと考えています。   また、信頼性を高める方策の一つといたしまして、例えばエの方式の音声データ、これから文字情報に変換をしていくというような点につきまして、その音声データ自体も保存をしていくという方法も考えられるのではないかという意見もございました。この音声データをテキスト化するという手法につきましては、参考資料2の14ページの4行目で、音声ファイルのテキスト変換プログラムにより作成された電子文書が電子遺言になるという記述があり、海外法制でも見受けられるところではございますので、参考にはなるのではないかと考えております。   第1回部会で沖野委員からも御指摘がございましたが、いつの時点の技術を標準とするのかという点、これも非常に重要な視点であると考えています。テキストデータであったり、録音や録画されたデータが30年後、50年後、問題なく読み込むことができる形式であるか否かという点は非常に悩ましい問題であると考えております。今般のデジタル技術を活用した遺言を検討するに当たりましては、データの形式についても検討していく必要性があるのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。資料の表現の点は別にさせていただくとして、最後の技術の進展への対応は一般的な問題ということで御指摘を頂いたかと思いますが、具体的な問題としては、自書要件に代えて電子署名の活用ということを一つおっしゃっていらした、それから、原本をどうするかということについて、執行との関係で、電磁的なものがよいということだったでしょうか。それと、音声データの取扱いについての御意見も承ったと受け止めました。ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○戸田委員 先ほど、デジタル化ならではのメリットという話がございましたけれども、一番のメリットは、やはりデータの活用だと思うのです。先ほど齊木先生のお話にもございましたけれども、高齢者の方というのは自分自身の財産を正確に把握して記述するというのは大変難しい状況がございまして、そういったものを、例えば不動産登記のデータとリンクする、あるいは預金保険機構の口座情報とリンクする、そこから選べるようにすると、非常に簡単に指定できるわけで、そういった技術を使うと、遺言能力を上げることができるわけですね。認知能力が低下しても、そういった技術で補うことができるので、かえって真意性を上げるという効果もあるのではないかと思います。   それについては、齊木先生は別な手段での何らかの担保の仕組みが必要だというのは御発言があったのですけれども、口授の効果を分解して、それをデジタル化することも一つの案だと思うのですが、現状の技術で申し上げますと、操作されている方が、本人がずっと継続して、一連の手続が終わるまで本人が確実にやっているということを証明するような認証の技術というのはございまして、音声とか画像とか、本人のいろいろな振る舞いを検知しながら本人であることを担保していくと、そういった技術もございます。技術的な解決策というのはいろいろなやり方があるのではないかと思いますので、口授のやり方、それからもう一つは、今、自筆証書遺言保管制度で、保管に行きますと大体1時間ぐらい待たされて、大体トータルで行くと10分から30分ぐらいは遺言書保管官の方と面談しておりますので、公証人の先生ほどのレベルには至らないとは思うのですけれども、ある程度の真意性の確認というのはできるのではないかとも思います。そういった形で、いろいろな技術と人と補完し合いながら、今のレベルを担保していくということも可能ではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。大きく二つおっしゃっていただいたと思うのですけれども、一つはメリットということで、他のデータの活用というか連結が可能になるということで、財産目録については、今は、自筆証書の場合、手書きでなくてもよいということにはなっていますけれども、わざわざプリントアウトしたものを貼り付けてといったことをせずとも、データをつなげることができるというのがメリットではないかと御指摘がありました。それから、真意性を確保するということについて、本人が操作していることを担保する、確保するというような技術もあるというお話と、最後におっしゃったのは、先ほどの保管制度の利用との関係で、現在行われている保管と同等のことをすれば、ある程度のことは確保できるのではないかということだったでしょうか。 ○戸田委員 それと技術の組合せで、できるのではないかと。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○石綿幹事 幹事の石綿です。2点コメントさせていただければと思います。   1点目は、今後真意性・真正性のレベルを考えていく際に、小池先生から既に御指摘があった点と重なりますが、秘密証書遺言の位置付けをどうするのかという課題が生じ得るのだろうということです。秘密証書遺言で現状行われている方法もあり得るとするのか、あるいは、これは極めて例外的なので、やはりもう少し厳しく考えるべきだという、考えられる二つの方向性をどう見ていくかというところで、具体的な制度設計というのが変わってくるのだろうと思います。   2点目は、12ページから13ページに掛けて、自筆証書遺言の真正性の担保ということで、自書がどのような役割を果たしているかということを整理していただいています。これ自体、参考になったのですが、他方で筆跡鑑定等が科学的には確立されている手法ではないので、真正性は完全なものではないという整理がなされているかと思います。そのため、真正性については自筆証書遺言でも完全に担保されているわけではないので、今後、他の方法についても緩やかに考えるという方法も一つあるのかとは思います。他方で、先ほど相原委員が御発言なさった内容とある意味では重なるのかと思いますが、一般の人から考えて、自書が要求されているものを他人が真似て書くことというのは心理的ハードルが高いのではないか、要するに現状、自筆ということが要求されていることによって、間接的にという言葉が適切なのかわかりませんが、偽造しようというメンタリティが働きにくくなっている可能性もあるのではないかということを、このデジタル化の技術についての議論を伺っている中で感じております。   何が言いたいかというと、デジタルで本文も作成して、そして電子署名等で真正性を担保するという方法は、先ほど戸田委員から、全部本人がやっているということを確認するすべもあるのだというお話しもあったので、そのような技術まで含めるというのであれば、それはそれで成り立ち得るのだと思います。しかし、例えば電子署名を付すということだけで真正性を担保するというときに、世の中にはよくないことを考える方もいるわけで、特に高齢者などは、マイナンバー等の管理を家族がしているということになると、結果として偽造の可能性というのを誘発してしまう制度を作ることになるおそれがないかということが若干気になっております。少しまどろっこしくて申し訳ないですが、今、自筆証書遺言の各要件が間接的に果たしている役割といったようなことも考えながら議論をしていくことも、一面では必要ではないのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございました。石綿幹事からは2点ありましたが、1点目は秘密証書遺言についての位置付けということを考える必要があるのではないか。先ほど小池委員から、秘密証書遺言並びでもいいのではないかという選択肢もあるというお話があったのですけれども、秘密証書遺言の性質などを考えると、これとの並びで考えるということは少し問題かもしれない、いずれにしても検討が必要ではないかということだったかと感じました。2点目は、自書が持っている意味について、相原委員の御発言がありましたけれども、間接的に偽造を抑止するような働きをしているのではないか、そうしたものまで考慮に入れる必要があるのではないか。こういう御意見だったと理解を致しました。   ほかはいかがでしょうか。今、どれくらいのレベルで真正性ないし真意性を確保するのかということについて、幾つかの御意見が出ているかと思います。あるいは、ここに挙がっている複数の選択肢のうちどれを考えてみたらいいのかということについても、何人かの委員、幹事から具体的なものが挙げられていたかと思いますが、そうした点、更にそれ以外の観点ということについても、御指摘があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○中原幹事 真意性についていろいろと問題になっていますが、まず、11ページから12ページに掛けてのところで、真意性が様々な意味があるということをお調べいただいて整理してくださったこと、まずもってこれが、とても参考になる、大変有益なことなのではないかと思いました。その点についてお礼申し上げたいと思います。   その上で、その真意性に関してC、D、E、F、Gの整理というのはおおむね適切なのではないかと思いますが、1点気になるのは、Dとして④と⑨がまとめられているのですけれども、④は意思の固さを示すように思われる。それに対して⑨は、遺言として残すのかどうかということで、④とは区別されるような事柄のように思います。デジタルの手段となった場合に、現行の全文自書要件との関係で、⑨の面では差がないけれども④の面では差があるというようなことがあり得るのではないかと思います。ほかのものも含めて言うと、デジタルの手段となった場合に、全文自書との差が、E、Fでは余り出てこない、それに対して、C、Dの④、Gでは多少なりとも出てきそうである。そのことをどう考えるのか、有意な差なのかそうでないのか、そもそも差がないのか、そこが重要であると認識しております。   その観点から、特にCの他人の影響の排除について、部会資料の随所に指摘があります。具体的には、自筆証書遺言に関して13ページの22行目で、秘密証書遺言に関して15ページの11行目で、遺言の本文を電磁的記録とする方式に関して18ページの3行目、30行目、それからフォーマット方式に関して20ページの18行目に、それぞれの方式において他人の関与を防止し得るかに関する記述が見られます。全体として、全文自書やそれに準ずるものであれば他人の関与を排除し得る度合いが高い、しかし他の方式ではそれに劣るという位置付けをしているような印象を受けました。   ただ、これはどのレベルでの関与を問題にするのかによるのだと思います。確かに、書くという作業そのものには他人は関わってこないけれども、何を書くかというレベルでは、あるいは書いている過程のサポートというレベルでは、どの方式でも変わらないという見方もできるのではないかと思います。  Dの④の確定性の要素であるとかGの熟慮性の要素についても、やはり分水嶺は同じであって、13ページ24行目に挙げられている考え方のように、本人自身が作成するという方式とそうでない方式に質的な相違を見いだすのかどうかということが問題なのではないかと思います。   このように整理してみると、18ページから19ページに掛けて、パソコン入力方式に即して問題とされている点、つまり、本人入力のみを許容するのか、他人による入力を許容するのかというのは、むしろ一般的な射程を持つ本質的な問題であると思われますし、本人入力であることに何らかの一定の価値を見いだすとしても、問題となっていたような秘密証書遺言の方式を参考として、19ページの冒頭でも挙げているわけですけれども、他人による入力でも、何らかの形で意思の確定性、熟慮性をカバーすることができないかが論じられるべきなのだと思います。よいアイディアがあるわけではなくて、漠然と、他人入力の方式でも真意性、熟慮性というのをカバーするという方向で考えていくべきだと思っていますけれども、整理していただいたことを踏まえると、やはり本人が入力した、あるいは本人が作成したということをどれだけ本質的だと見るかという点にあるのではないかと感じた次第です。 ○大村部会長 ありがとうございます。中原幹事からは、まず、11ページから12ページにかけて、真意性ということで何が問題にされていたのかということが整理されていますけれども、この整理について、デジタル化によって差が生ずるものと生じないものというのがあるだろう、それを仕分けていくということが必要なのではないかという一般的な御指摘を頂きました。その上で、具体的にはパソコン入力をするような場合を念頭に置かれて、本人が入力するというのと他人が入力するというのを対比した場合に、他人入力であってもよいという場合はどのような場合なのかを考えていくということがあり得るのではないか、こういう方向を示されたと理解をしました。ありがとうございます。 ○沖野委員 委員の沖野でございます。何点か申し上げたいと思います。   3についてなのですけれども、まず、技術の展開との関係では、現在分かっている内容を前提に検討せざるを得ないというのは、もうそれしかないわけなのですけれども、ある程度の予測もしながらということになりますが、最終的にはそれが、今の技術がそのまま今後の技術ではないということを想定した規律の在り方ですとか、先ほども御指摘がありましたけれども、何十年もたったときにそれが実現になるというときに、技術の展開によって困難になったりというような可能性については十分注意が必要だということだと考えておりまして、16ページから17ページに提示されているようなことを念頭に置きながら、今後検討するということでよろしいのではないかと思っております。   それから、3の方式についてなのですけれども、16ページの3(1)、(2)というのは、いずれも電磁的記録の形での態様ですが、それがテキストデータであるのか、録音・録画の電磁的記録であるのかということで分けられており、これが分けられているのは、方式の違いもありますけれども、(2)であれば、その人の音声、音声も恐らく、その人の音声であるのかの同定のために声紋の分析などを結局はすることになるのかもしれませんが、それで同定できる。録画の方も、音声と、それから更に映像が付くことによって、本人が入力に当たる行為をしているということが分かる。それに対して、(1)は結果として電磁的記録として残るものから本人が本当に入力したものかどうか、作成したものかが分からないようなタイプになってくるという違いがある。そのために、(1)については、更に2通りの、本人自身が入力するとか作成するということを確保する、(1)オになりますと、フォーマットだと多分、クリックして選択肢から選ぶという、いきなり打ち込むのとは違う形になるのかなと思っておりますので、作成の度合いが少し弱くなってくるのかもしれませんが、本人自身が入力、作成しているというタイプと、他人が作成したものについて、これで私の遺言として十分表していますということを付加するという2パターンが(1)には出てくるので、それで(1)と(2)の違いがあり、両者を違うものとして区別する意味があるということではないかと理解しております。   (1)についてはいずれもあり得る。本人による作成だということになりますと、本人による作成である、入力であるということをいかに検証できるようにするのかという、4の問題になってくるかと思いますが、その観点が重要になりますし、他者が作成したものでも構わないということであれば、これが私が望んだ内容ですというところの表明なり、確実さを別の方法によって明らかにする。秘密証書遺言型になるかと思いますけれども、その手法を考えていくことになるということで、それぞれ4との組合せ、あるいは4との組合せのときの観点というものが大分違ってくるのではないかと思っております。   それから、(2)タイプの録音・録画の電磁的記録につきましては、20ページで様々な問題を指摘していただいております。ここで指摘されている問題は、確かにいずれももっともであると考えられるのですが、27行目以下ですけれども、本人による作成であるということだけれども、本当に十分かと、偽造変造のリスクであるとか、判別できる程度であるとか、いずれももっともなのですけれども、例えば、本人であるか否かを判別できる程度というのは、現在の自筆証書で本当に本人の筆跡なのかを判別できるのかという、その程度と比べたときに、どうかというような問題もあります。むしろ、全く本人か判別できないならば、本人によるものと特定できずで、遺言としては無効とせざるを得ないというような、そういうこともあると思いますし、そうでないようにするための方策があるのかということも検討していく必要があるのかと思いますけれども、20ページに書かれている事項は、問題点として書かれているのはそのとおりなのだけれども、それゆえに、この録音・録画というのはなかなか危なくて、今後採れないということをこの時点では決定できなくて、むしろそれを踏まえて、現行の在り方と比較してどうかとか、あるいはそれを克服する別の組合せがあるのかとか、そういうことを考えていく必要があるのではないかと思っております。   そして、なのですけれども、(1)のエの音声入力して変換ソフトで文字データにした上で、テキストデータを電磁的記録として原本とするというやり方と、音声などの、あるいは録画の入力にしておいて、文字データも補助資料として付けるとか、補助資料として保管するとか、そういうことも考えられるわけで、意外にといいますか(1)のエと3というのは結構類似している面があるのではないかとも思っております。そうすると、それぞれどちらが原本となるデータであるのかというところの違いと、(1)のエについて、どうすれば本人の真意あるいは真正性を確保できるかということが、3にも参考になる面もあるのかなと思ったというところです。   さらに、3(1)の文字データタイプと録音・録画の電磁データなのですけれども、このどちらが大変かという問題は、実は組合せによってもあるのですけれども、文章にして文字データに残すよりも、ぱっと録音するとか録画する方が簡単にできるということであったときには、基本的には文字データだけれども、緊急の場合とかそういうときには、録画や録音の活用で、今事故に遭っていてスマートフォンで録音だけするとか、そういうことがどのくらいあるのか分かりませんけれども、そういう場面ごとの使い分けなり役割というものを考える余地もあるのではないかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。沖野委員からは幾つか御指摘を頂きましたが、最初に技術の展開に対してどのように対応するかということについて、考え方の確認をしていただいたのかと思います。そのほか二つあったのかと思います。一つは、方式として挙がっている16ページの(1)、(2)のものを見るときに、テキストベースのものと録音・録画のもので何が違うのか、テキストベースのものの中で違うタイプのものが含まれているのではないかと、その辺を仕分けていって、本人性を確保するのならば、その方向で考える必要があるし、他人がやってもいいということであるのならば、別途本人の意思であるということを確保するという必要があるという形で、より分節化した検討が必要なのではないかという御指摘を頂いたのではないかと思っております。それとの関係で、録音・録画について問題点が指摘されているけれども、これについて今の段階で選択肢として捨ててしまうのではなくて、組合せの中でこれを使っていくとか、あるいは場面を限ってこれを使っていくとかといった可能性をなお残して考えていった方がいいのではないかという御指摘を頂いたのかと思って伺いました。ありがとうございます。 ○木村幹事 京都大学の木村です。既に先生方の御議論を聞いた上で、単なる整理にとどまるような指摘になるかもしれませんが、意見等を述べさせていただきます。まず1点目ですけれども、真意性・真正性の確保について、現行法における遺言制度の方式との比較をするかたちで、どのような方式を水準に合わせるのかという点について、個人的には強い関心を持っているところです。うまく整理できているか分かりませんけれども、先生方の御議論を踏まえると、現在の自筆証書遺言で、正に本人自身が自筆をするという意味がどこにあるかについて、負担がある手続を課すということで真意性・真正性が確保される点があると考えられます。この点については、先ほど齊木先生の御発言において非常に興味深いと思ったことがあります。つまり、正に自分の頭の中で考えている事柄を手を通してアウトプットするということが、自筆証書遺言あるいは公正証書の口授の中で実現されている事柄だということです。その点は、例えば熟慮を促すとか、遺言としての意思表示の内容を確定させるという意味においては、非常に重要なものであると思うわけです。   他方で、デジタル化となってしまうと、今般先生方がずっと御議論されているように、パソコンで入力をするということになると、そういった一定のプロセスを経て取得されていたような熟慮性であったり、意思の明確性とか意思の固さというものに対する担保がなくなるという理解があり得ると思います。ただ、この点は明確にいえるところとそうとはいえないところがあるように思っておりまして、パソコンで打つときも何らか頭で考えているともいえますし、他方で、フォーマットとか、自分でクリックしていく方式だと、自分の頭で考えていなかったようなものでも外的に促される形でどんどんと遺言内容に含まれていく可能性もあるかもしれません。とすると、部会資料16ページオは、熟慮性や意思の固さという点では、ほかのアイウエとは少し異質なものではないかと思った次第です。   そういった点を踏まえると、次の二つの考え方があるように思います。第一のアプローチは、仮にパソコンという形とか、あるいはデジタル化されたツールを使うということで、熟慮性というものがある程度担保されなくなったとしても、少なくとも本人自らが作成するということを求める。つまり、自筆ではなかったとしても、本人自身が作成する点に真意性・真正性の確保を見い出す形で、自筆遺言証書に準ずる手段を設計することがあり得るのではないかと思います。   そうなると、本人自らという意味で、自筆性は譲れない、本人自身が作成するというプロセス自体は譲れないという手段をとることになるでしょう。個人的には、これまでのところ、自筆証書遺言の在り方を維持するべきだと漠然と考えておりました。また、先ほど石綿先生が、自筆である、あるいは本人自身が作成に関与しなければいけないという事柄がプロセスの中で示されていることで、偽造などの防止の意味合いがあるのだと指摘されていた点を踏まえると、本人自身が作成をしなければいけないという事柄を要件として設けておく、あるいはそれを維持しておくというのが一つの方向性としてはあり得るのではないかと思う次第です。   他方で、第二のアプローチとしては、法務省の方々がおっしゃったように、結局のところ本人が作成をしたのかどうかということが実質的に証明できないのであれば、本人による作成か否かにかかわらず、実際アウトプットされたものが本人の意思であるということが事後的に証明されれば足りるということも考えられます。これによれば、他人の入力を認めることとなり、これまでの先生方がおっしゃったように、秘密証書遺言と大して変わらないのではないかとも思うわけです。   この点について、先ほどの石綿先生の御意見とも同じかもしれないのですが、少なくとも現行の日本法において、秘密証書遺言の利用はそれほど活発ではなく、かつ秘密証書遺言の元々の由来であるフランス法においても非常に利用数が少ないという指摘が研究会の報告書などでも上がっていたと思います。これまでの注釈書などを見ても、フランス法を研究されている先生方によって、日本において、あるいはフランスの利用状況なども踏まえて、秘密証書遺言自体の活発的な利用を促進することについては比較的消極的な意見の方が多かったというイメージを持っております。そのためそういった点も踏まえて、他人による入力、作成という形をどこまで許容するのかについては、少なくとも秘密証書遺言の関係性や整合性を踏まえて、慎重に検討していく必要もあるのではないかと思います。   その上で、先ほど質問のところで聞けばよかったのですけれども、日本において秘密証書遺言が余り利用されていないということはデータがあるところ、法務省の方ではその理由などについてどのようにお考えなのかということを、もし分かれば参考にさせていただければと思います。すみません、よろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。木村幹事がおっしゃっていたのは、先ほど齊木委員がおっしゃった、口授にせよ自筆にせよ、自分の頭の中を一旦通すことが大事だというところから出発して、その制約を少しずつ緩めていくとすると、本人自らが作成というところが次の問題として出てくる、その場合に本人作成は譲らないで考えるのか、あるいは本人作成でなくても、後で本人の意思に基づくのだということがいえればいいのかというのが分かれることになるけれども、第2の選択肢は秘密証書遺言並びということになりそうで、秘密証書遺言の意義について検討して、その上で慎重に考える必要があるのではないかということだったのかと思いますけれども、それとの関係で、秘密証書遺言が現在日本であまり使われていないということまでは分かるけれども、それはなぜかということについて事務当局の方で何か、データは難しいとしても、お考えはあるのかという御質問があったかと思いますが、何かありますか。 ○齊藤幹事 法務省でございます。残念ながら余り、何か考えというお答えはございません。 ○齊木委員 秘密証書遺言を作る場合、公証役場にも御相談があることがありますが、私は基本的にはやめた方がいいですよと言っています。その理由は、遺言を作るというのは相続財産についての紛争を予防するためお作りになるのですけれども、秘密証書遺言というのは、中身を財産をもらう人以外に隠したいという目的で秘密証書遺言にするわけで、隠さなければいけないようなものだというのがそこに明らかになるわけで、事後的な紛争を招く可能性が高いのです。訴訟に持ち込まれるケースが高くなるのです。だから、実務的には紛争を予防するために遺言を作りたいという方は採用しないのだろうと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。公証人としての御経験に基づいて、秘密証書遺言を勧めていないということをお話しいただきました。 ○柿本委員 主婦連の柿本でございます。市民の立場での発言でございます。   今、齊木先生がおっしゃいましたけれども、遺言者の考えの及ばない争いを防ぐためにも遺言を残すのだと考えております。万一、自らが遺言を残せないのであれば、公正証書遺言を書いたらどうでしょうということで、私などは理解しております。3の遺言の本文に相当する部分の在り方のところで、ウですとかエですとかというところで、デジタル上のテキストデータの使用が可能になりますと、非常に身近に感じられるようになるかと思います。先ほどから議論されています偽造の抑止という点では、現時点では、非常に難しいのではないかと思っています。まず取り掛かりとしては、書いてみようという気になれるのが、デジタル上のテキストデータで書いてみるということになるかと思います。その先の口座情報ですとか登記情報が全部デジタルで済んでしまうとなると、そこは非常に市民としては情報漏洩の問題など、不安を感じます。 ○大村部会長 ありがとうございます。利用者の観点になったときに、何がやりやすいかということと、他方で様々なデータが連動して上がってくるというのには不安を感じる、こういった御意見、御指摘を頂いたかと思います。   ほかにはいかがでしょうか。 ○内海幹事 内海でございます。専ら理論的なことなので、余り申し上げない方がいいかなとも思っていたのですけれども、御議論を聞いていますと、一定の重要性があり得るかなと思いまして、御指摘だけさせていただきます。アウトプットとしての文書ないし電磁的記録が真正だ、あるいは真正性があるということについて、真意性に比べると、真正性とは何かについては余り争いがないというような認識があるようにも思いましたが、本当にそうなのかという辺りが少し分からないというか、どうなのかと思うところもあります。といいますのは、もちろん全ての遺言が訴訟を通るわけではないのですけれども、訴訟になったときには、当該遺言書が訴訟の場に出てくることになります。民訴の文脈でそれが真正かというのは、いわゆる書証としての成立の真正という問題になりまして、ここでは、その文書が作成名義人の意思を反映していることを真正と呼んでおり、そのような意味で真正であることは、作成者の思想的意思を反映していて、したがってそれを心証形成の参考にすることが可能であるという意味で重要性を持つわけですが、このような意味での訴訟法上の真正な成立については、民事訴訟法の228条や、あるいは電子署名の場合には特別法(電子署名及び認証業務に関する法律3条)によって、真正な成立の推定が働くというルールが存在をしています。   したがって、遺言書について署名、押印、あるいは遺言に当たる電磁的記録について電子署名があり、それが有効だということになれば、その意味での真正な成立が訴訟の場では推定をされるということになるのですけれども、プロセスとしての作成過程に関する方式規定というようなものがある場合には、自書によらなければならないというルールが例えばそれに当たることになりますけれども、方式が遵守されているか、自書によってそれが作られているかというようなことについては推定が働くわけではないので、先ほどの意味での真正な成立が推定されたとしても、自書しているかどうかとか、決められたプロセスを守っているかどうかというのは、これは別問題だということになるかと思います。このことの関連で、本日の資料の例えば19ページのところで、アウトプットだけが遺言だと整理をする可能性があるということになると、そのアウトプットの真正というものは、そのような訴訟法上の意味での真正とかなり近いものになるというか、もし訴訟上そのような真正の推定が働いたときには、これは基本的にはその推定を覆さないと、偽造されたとか後から改竄されているとかはいえず、民法上有効であるかどうかに関わるような意味でも真正ではないということはいえない、ということにもなり得るのではないかという気もします。その辺りを考えると、プロセス的に要件を書くというのと、アウトプットの形が定まっていればいいということの間には少し距離があるような気もしてまいります。ただ、訴訟上の真正の成立の推定というものの意義自体がかなり議論の余地があるというか、はっきりしないところもあって、中でも、これはいわゆる法定証拠法則というもので、法律上の推定とは異なり、証明責任の転換等々を意味するものではないというような理解が通説的とされるものですから、そういう意味では、推定は働いても働かなくても大して変わりはないと、そういう突っ張った見方もできなくはないわけです。しかしそうはいっても、プラクティカルには、やはり文書の真正な成立の推定が働くか働かないか、いわゆる2段の推定が働くか働かないかというのは結構、文書の訴訟における証拠としての評価にとって重要であるということは否定しにくいところがあるようにも思います。遺言書あるいは遺言書に代わる電磁的記録というものが訴訟の場に出されて、これが真正なものかどうか、本人が作成したものかどうかということをこれから争いますというときに、そういう一般の書証、私文書に関する争い方というようなものと共通のものにこれから乗っていくことになるのだ、それはなってもいいのだとお考えになるのか、やはり遺言書の真正の証明というのは、それとはまた別のものであって、やはり独自にその方式要件について逐一チェックしていくということが求められるものなのだと飽くまで考えていくべきなのかといったようなところについて、共通了解があるのかということにやや自信がなくなってまいりまして、私に定見があるわけではなく、こうしたらどうかというアイデアがあるわけでもないのですけれども、訴訟になったときの真正には一定の文脈があり、それは必ずしも平場の主張立証ではなく、推定規定によってカバーされている側面がないではない。そのことを一応念頭に置いて、新たな方式、あるいは新たな方式によって作成された遺言の真正性が争われた場面の適切な処理というものをどう想像、構想していくかということを一応頭に入れる必要があるのではないかということを感じまして、問題点の指摘だけさせていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。真意性と真正性といわれているもののうち、真正性の方は相対的に問題が少ないのではないかという整理がされておりましたけれども、訴訟になった場面を考えたときには、必ずしもそう単純な話ではないのではないかという御指摘だったかと思います。現在の民訴法のルールに機械的にというか、単純に乗っていくということで考えればいいのか、そうではない考え方を採るのかといったことを含めて、立ち入って考えておく必要があるのではないかという御指摘として承るということでよろしいでしょうか。 ○内海幹事 そうです。特に、プロセスとして書くかどうかというのが分水嶺になってくる可能性が若干あるのではないかという気がしております。 ○大村部会長 ありがとうございます。最初に小池委員から御指摘があった点とも関わると思いますけれども、方式として、アウトプットを捉えるのと、プロセスも含めて捉えるということになったときとで、訴訟法上の取扱いというのが違ってき得るかもしれないということですね。ありがとうございます。 ○水口委員 三菱UFJ銀行の水口でございます。執行を受ける側の金融機関として、3点コメントさせていただきます。   まず一つ目ですが、16ページの3の遺言本文の具体的方式に関してでございますが、(2)にあります録音・録画のみという方式につきましては、やはり20ページの32行目以下で御指摘いただいておりますとおり、日々本当に多くの件数の遺言の執行を受ける金融機関としましては、迅速かつ円滑な対応を確保するという観点からは、やはり録音・録画データの全部を、一部分を切り取ってそこだけ確認すればいいということには恐らくならないと思いますので、その全部を確認する必要が生じるということを考えますと、少し実務としては採用は厳しいのではというのが正直なところでございます。例えば、裁判所等の関与で何か文字起こしを追加で行うような対応というのもあるかもしれないですけれども、口述というふうなことになりますと、やはり誤りが発生しやすいのではということも危惧をしております。そういたしますと、やはり実務的な観点からは、原則的な対応としては、やはり文字として読むことができる方式でお願いしたいと金融機関としては思っております。一方で、先ほど議論にありましたとおり、ごく限定的な場面で利用するであるだとか、あと真正性を担保するために録音・録画を追加的な手段として用いることに、これは特に異存があるものではございません。   次に、3(1)のアからオにつきましては、デジタル化のメリットの一つとして、内容の統一性が図りやすくなるという点はあるかなと思いますので、これも執行時の円滑な対応を確保するという観点からは、ここに挙げていただきましたいろいろな方式のデジタル遺言というのが、金融機関に本当に多種多様なものが持ち込まれるという事態よりは、例えば、必ずしもオがいいというふうなことまで申し上げるつもりはないのですけれども、やはりある程度フォーマットが定まっている方が実務的には助かるかなとは考えております。特に、この後保管制度みたいなことを議論するのではないかと思いますが、仮に保管制度が義務付けられない際には、今申し上げたような実務上の要請はより顕著かなと思います。   あと、17ページの2の遺言の原本のところについてですが、この原本について、電磁的記録を原本とするということで、これは基本的にはよいと思うのですが、この提出の受け方というのがやはり問題になるのではないかとは思っております。真正性の確保の観点からいたしますと、電子ファイルでの提出を受けるというのは、少し実務上これも厳しいのではと思っていまして、本当の意味で完全に電子化するということなのであれば、何かやはり保管制度みたいなものを設けた上で、そこに金融機関が確認をしに行くような世界観であるだとか、そこまですぐには行かないということであっても、例えば今の自筆証書遺言の保管制度の遺言書情報証明書の交付を受けるような、そのような実務であれば、今行われているような実務とフィットするのではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。3点ということで、16ページの(2)については、内容の確認の負担が大きいので、全面的にこれによるというのは難しいのではないか、限定的な利用は考えられるだろうということ。それから2点目としては、(1)のアからオについては、内容の統一性ということにメリットを感じるので、多種多様なものが出てくるということは避けたい、そういう観点からすると、オがいいかもしれないという御意見だったかと思います。3番目は、原本は電磁的記録でよいけれども、ファイル提出というのは少し厳しいので、例えば保管制度のようなものとの結び付きなどを考えたい。こういった御意見だったと伺いました。ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○谷口委員 三井住友信託の谷口でございます。今、水口委員がおっしゃったところは銀行の立場としては同じでございます。その他の点としては、16ページの3番の遺言の本文に関するところの、特にオの「フォーマット」についてどういったことを皆さんがイメージされているかというのは、いろいろと差があるのではないかと思います。例えば何条に何を書くとか、そこまで細かく決まっている「フォーマット」ということなのか、若しくは、今ウェブ上に存在するチャットボットのように向こうが聞いてきて、それに対して答えを、こうしたいですと、この不動産は誰にあげたいですと答えると、そういうものが勝手に作られていくというものを「フォーマット」といっているのか、ここら辺のところは、それによっても全然、他人が作っていると判断されるかということとの関係が出てくると思いますので、議論が必要であろうと。   極論するとウも、オで作った、例えばチャットボットで作った案文を自分でもう1回打つとなったら、それはウですかというようなことになったりするわけでして、それをわざわざさせますか、させませんかというようなことにもなると思いますが、させてもいいし、させないならさせないで何か別の手段をとるということも研究する必要があると思っています。そういった意味で、中原委員がおっしゃったように、他人が作ったものなのか、自分が作ったものなのかということについて検討すべきというのは、おっしゃるとおり両方の可能性がやはりあるのではないかと考えます。   あとは録音・録画については、特例的に包摂面など、例えば目が見えない方への対応などで、どういう技術がデジタルで使えるかということを考えるということはあり得るだろうと考えます。以上、2点でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。二つおっしゃっていただいたかと思いますけれども、16ページの3(1)ウとオ、オから話を始められて、オについてどういうイメージを持つのかということによって判断は違ってくるのではないか、それがウにも反映するのではないかという御意見が一つ、それから、録音・録画はハンディを持った方との関係でいうと、必要な場合、あった方がいいという場合もあるかもしれないという御指摘だったかと思います。ありがとうございます。 ○相原委員 相原でございます。17ページの上のところの、先ほどから議論が出ていました、いろいろな技術水準の進展によるという前提だとすると、現時点を前提に抽象化して、長期間にわたり適用可能な規律の在り方という方向に行くということはある意味、これしかないというのも理解できるところではあります。   ただ、内部の意見を聞いたときに出たことですが、そうするとかなり抽象化してしまうと、それで法務省令とか何か、そういう形になると思うのです。そうすると、結局また回って、ここの問題、この後の真正性の後ろのところの組合せもそうですけれども、問題が残る。結局全体を通じてこの抽象化がなされなければ、きっと条文としての完結したものというのは取りあえず出てこないのだろうけれども、その場合に、やはり先ほどから何度も出ております真正性・真意性、これも条項に書き込む話ではないのかもしれないですが、要式との観点でどのように規定できるのだろうかと疑問が呈されました。それとあと、私の個人的な意見ですけれども、先ほど組合せのところで、録音・録画に関しての電磁的記録、これに関して、これがそのまま遺言の本文に相当するという形になるのは、今のお話を伺うと厳しいのかなと思いつつ、後の真正性の担保とかという場面でこれを用いるというのは十分あり得ると思います。ただ、そうなると、またこれも書き方が難しいのかなという、少し印象も持ちました。   したがいまして、総じてですが、ずっとこれまでの議論もそうですが、組合せ、それから技術の進展、これらをどういうふうに網羅するのか、何か案があるかといったら、みんな頭を抱えてしまうのではないかというところがあります。  どのような条文になるのか危惧するという意見が出たことを御紹介と、それから私の意見として、録音・録画も全くなしというよりは、一つのツールとして組合せはあるのではないかと思ったので、申し上げました。 ○大村部会長 ありがとうございます。おっしゃっていただいたことの順番は逆になりますけれども、録音・録画を補助的な手段として使うというのはあり得るのではないかという御意見と、あともう一つは御指摘で、技術の進展にどう対応するのかということはこれまで、前回も含めて、複数の委員、幹事から御発言があるところなのですけれども、ルール化するということになって抽象的な文言で民法に規定を置くということになったときに、今求められている幾つかの要請をどのように組み合わせて書くのかということが難しくはないかという御指摘かと思って伺いました。 ○相原委員 法務省が御提案されるのをお待ちした上で、御意見を申し上げる段階になるのかなと個人的に思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今の第2の1から3までについて、ほかに御意見があれば更に承りたいと思いますけれども、いかがでしょうか。おおむね御発言いただいたということでしょうか。 ○宮本幹事 宮本です。2点申し上げます。   まず、先ほどフォーマットの話がございましたけれども、今回の資料の7ページ、10ページ辺りにアンケート結果が示されているのですが、7ページの10行目から12行目、遺言を作成した経験があると回答した人136人のうち17人もが、その他の方式で遺言したと言っていて、これは私たちから見ると不自然かなと思います。また、10ページ、インタビュー調査の中には、15、6行目ですけれども、遺言の書き方が分からないという発言がありまして、これは方式要件が分からないというより文面案が分からないということではないのかなというような印象を受けます。それを踏まえてフォーマットについて考えますと、フォーマットというのは方式要件に入れるのではなくて、例えば法務省のホームページに、この不動産を誰々にあげたいというときにはこういう文面で書けばいいですよということが案としてあれば、割と国民としては書きやすくなるのではないかという印象を受けました。それがフォーマットに関してです。   二つ目は、録音・録画に関してです。沖野委員から発言がありましたけれども、場面を区切って使うということは考えられるのかなと思います。じっくりと考えて遺言をするような場面では、文字情報がないというのは執行もしづらく、不適切かもしれませんけれども、例えば災害時とか、緊急に遺言をしたいというような場面、丁寧に遺言を作成することができないのだというような場面での利用というのは考えられて、特別方式遺言として考えるということはあり得るのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。2点御意見を頂きましたけれども、一つ目はフォーマットの取扱いということで、16ページの3(1)のオのような形ではなくて、書き方を示すものとして、どこかにこういうものが上がっているということでよいのではないかと。もう1点、録音・録画については、先ほどから出ておりますけれども、場面を区切って考えるというのがよいのではないかという御意見を頂戴したかと思います。   そのほか、いかがでしょうか。   おおむね皆さんに御意見いただいたのかと思いますけれども、途中で申し上げましたように、真意性あるいは真正性といわれているものについてどの程度のものを考えるのかということについての御意見、それから選択肢について、具体的にどれがよいかという御意見もありましたし、選択肢を整理する際の観点についての御意見も頂戴したと思います。あとは、どういう場面を考えるのかということで、訴訟の場面とか執行の場面とか、あるいは社会一般に対して生ずる間接的な効果とか、そうしたものをどのように考慮すべきかという御意見を頂戴いたしました。それから、様々な選択肢を補充的なものとして使うとか、あるいは場面を限定して使うといった御意見も頂戴したと受け止めております。   法務省の方でこの際、この部分について更に御意見を聞いておきたいというところがあれば、伺いたいと思いますけれども、特になければこのぐらいにしたいと思いますが、どうですか。 ○齊藤幹事 現時点では特段ございません。御発言を踏まえながら検討を進めたいと思います。 ○大村部会長 分かりました。それでは、この部分につきましては今日のところはこれぐらいにさせていただきまして、15分ほど休憩いたしまして、15時35分から資料の残りの部分についての御意見を頂戴したいと思います。   休憩を致します。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開したいと思います。   資料の残りの部分に入ると先ほど申し上げたのですけれども、インタビューについて、法務省の方から補足したい点が一つあるということと、相原委員の御質問の際の方の御発言を先送りにしたのですが、それを伺っていなかったので、それを伺った上で先に進みたいと思います。 ○齊藤幹事 法務省でございます。会議冒頭、齊木委員から、80代についてはアンケートではどう扱われているのかという御質問を頂きました。おめくりいただく必要はないですが、参考資料2の220ページの末尾の(注)に、80代以上はサンプル数が少ないため除外しているという記載がございます。これは、80代以上も対象には入っているということですが、サンプル数が少ないので、パーセントというようなことで分布を示す記載の中では、70代というような記載の在り方の場合には、その余のところに80代が入っているということになるかと存じます。 ○大村部会長 ということで御理解を頂ければと思います。 ○相原委員 今の御解説と少し関連するのですけれども、資料の7ページのアンケート調査結果の概要のところで、「遺言書を作成した経験があると回答した者の割合は13.0%(136人)であり」ということで、年代が書かれていなかったので、年代によって違いがあるのかどうかということに関心を持ちました。それで、参考資料の該当部分を拝見したのですが、219ページの下のところに書いてありまして、何らかの方式で作成経験があったのは13.0%、136人と、これの性別による差はほとんどなく、作成経験があった人の割合は男性13.9%、女性12.1%、年齢差による差も明確には表れていないとのことでした。30代が15.6%等々という形で、70代が13.7%という形になっていました。要は、このアンケートによってはほとんど差がないという御報告だったかと思います。   一方、同じ報告書の、ドイツのところのドイツバンクの回答を見ると、65歳以上の者は58%の人が遺言書を既に作成していたとか、遺言書を作成した年齢の平均は55.6歳であったとか、2018年とか、幾つかの年代によって違うアンケートかもしれません。少なくとも2022年の段階で、ドイツでは25.8%のドイツ人が遺言を作成したというような御報告を拝見しました。   何が質問したいかというと、結局このアンケート自体が、デジタルを使える人で、かなり関心を持っている人が回答しており、さらには30代とかの意欲とかいうことがかなり明確に出ていると。ただ、高齢者については、このアンケートのところからは、作りたいとか、そういうところに関しては、表れていないのだなと理解したのですが、それでよろしいですかということでございます。 ○齊藤幹事 おおむね読み解いていただいたとおりかと思います。私の方から何か付け加えることは、現時点ではございません。 ○大村部会長 ありがとうございます。年齢の問題、あるいはデジタルへのアクセスの可能性のような問題を考慮する必要があるのではないかという御意見と結び付いているのですね。 ○相原委員 若い人で、デジタルとか、必要があるだろうとか、意欲があるということは、それはアンケート調査の意味はあると思うのです。ただ、一方で、かなり必要に迫られている高齢者に関してはここには表れていないと私としては理解しましたので、それを申し上げたかったということでございます。 ○大村部会長 分かりました、ありがとうございます。また後の段階で議論のテーマになるかもしれない点として承っておきます。   それでは、残りの時間を使いまして、部会資料2の第2の4と5について御意見を頂きたいと思いますが、まず、事務当局の方から部会資料の該当部分の説明をお願いいたします。 ○戸取関係官 部会資料2の第2の4と5について説明させていただきます。   部会資料2の21ページ以下の本文4では、真正性を担保するための方式の在り方について記載しております。(1)では、アとしてデジタル技術のみを用いる方式、イとして、証人等の関与を必要とする方式と整理した上で、それぞれについて考えられる案を例示として複数記載していますが、ほかに考えられる方式を含めどのように考えるか、御意見を頂ければと考えております。   補足説明として、22ページの1では、本文の記載の在り方は、まずはデジタル技術の活用のみによって本人の意思に基づいて作成されたことの担保が可能か否かを検討し、これが困難な場合には、デジタル技術と併せて証人等の関与を必要とする方式を検討すべきとの考え方に基づいたものであることを記載しています。また、海外の遺言法制の状況についても若干記載をしております。   2(1)では、具体的な在り方として、電子署名を講ずる方式、特にマイナンバーカードに格納された署名用電子証明書による電子署名を講ずる方式を記載していますが、その場合であっても、偽造等のリスクや、電子証明書の有効期間が5年であるとの問題があり得ることを踏まえ、23ページの(2)では、電子署名と併せて録音・録画を遺言に係る電磁的記録に添付する方式や、生体認証技術を利用する方式について記載しております。   25ページの3では、デジタル技術のみでは本人の意思に基づいて作成されたことを担保することが困難な場合に、証人等の関与を必要とする方式について記載していますが、自筆証書遺言の簡便な作成という特性が損なわれることから、仮に証人等の関与を必要とする方式を用いる場合でも、ウェブ会議の方式を用いて行うことを検討する必要があると考えられると記載しております。   26ページの本文の(2)では、本人が遺言を作成した後の第三者による改変の防止の手段として、電子署名を講ずる方法、保管制度を用いる方法、ブロックチェーン技術を用いる方法を例示で記載していますが、ほかに考えられる方式を含めどのように考えるか、御意見を頂ければと考えております。   補足説明として、1では、デジタル技術を具体的に活用できるか否かについては利便性、コスト等を検討する必要があると考えられると記載しております。具体的な方法として、2では、電子署名を講ずる方法について有効期間の問題があること、3では、ブロックチェーン技術を用いる方法については、管理主体を公的機関と考える場合にはメリットは必ずしも多くはないとも考えられる、などと記載しております。   27ページから28ページに掛けての本文5では、まとめとして、これまでに挙げた具体的な方式や、その他の方式を組み合わせることによって、真意性・真正性の担保等を図ることができる新たな遺言の方式を検討する必要があると考えられるところ、具体的な組合せの内容や検討に当たっての必要な視点などについて御意見を頂ければと考えております。   部会資料2の御説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございます。部会資料2の後半部分、4、真正性を担保するための方式の在り方、それから5、具体的な組合せの内容等という部分について御説明を頂きました。   まず、何か質問があればそれを伺って、それから御意見を頂戴したいと思いますが、資料に関する御質問があれば頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○齊木委員 検討に当たって、電子証明書とか電子署名ということが出ております。これは、日本の電子署名及び認証業務に関する法律とか、そういった他の法令と同じ概念と理解してよろしいかというのが一つ目です。と申しますのも、参考文献として配られたアメリカの統一電子遺言書法では別の定義がなされているように見受けられます。つまり、もっと具体的に言うと、日本の電子署名は、いわゆる電子署名法の2条で、偽造が行われたときには、それを確認することができることが要件に上がっているのですね。具体的に言うと、恐らくハッシュ関数によってハッシュ値を記録して、そのハッシュ値の記録によって防ぐことを求めている、それが電子署名の定義になっていると思います。改正公証人法における電子署名も同じ定義を用いております。でも、アメリカの法律は、御覧いただいたと思うのですが、非常に漠としたもので、必ずしもそういう定義になっていないと思うのです。だから、ここら辺の定義をどう考えるかによって、この議論とか、いろいろ分かれてくるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○齊藤幹事 法務省でございます。今の御質問に関しては、この資料で記載している電子署名とは、日本の法令における電子署名の定義を踏襲したものという理解で作成をしております。十分にはそのことをお伝えできていないところがあるかとは存じますが、22ページの31行目で電子署名法の定義を引用しているところも、その表れということで御理解いただければと存じます。 ○大村部会長 ありがとうございます。いずれにしても、何を指しているのかということを確認しながら議論をする必要があるということかと思います。   ほかに御質問があれば伺いますけれども、よろしいでしょうか。   それでは、御質問も含めて、御意見を頂戴したいと思います。先ほど前半で意見交換をしました第2の1から3の部分も関連するところはあるかと思いますので、それらと関連付けて御発言いただくということも妨げません。それも含めて御意見を頂戴できればと思います。どなたからでも結構ですので、どうぞお願いを致します。 ○齊木委員 まず、電子署名としては、隂山先生が再三御発言になっているように、マイナンバーカードを利用するというのが一番現実的な選択肢だと思いますが、実はマイナンバーカードには二つ電子証明書が入っておりまして、署名用電子証明書と利用者確認電子証明書というのが入っているのですね。署名用電子証明書というのは、8桁で電子署名をする証明書を埋め込むために必要なもので、利用者確認電子証明書というのは、コンビニでマイナンバーカードで住民票とか印鑑証明を取るときに4桁を入力する、あれなのですね。恐らく隂山先生がおっしゃっている電子署名というのは、正に署名用電子証明書を埋め込むというものだろうと理解しております。   その問題は、これを使う場合に、本人がそれを使ったという推定を働かすためには、本人が管理しているのが通例であるという経験則がないと駄目なのですけれども、実は我が国のマイナンバーカードの市町村の通達を見ていると、75歳以上の高齢者については代理人が受領できると、家族が受け取れると書いてあるものが多いのです。そういった実務を前提とすると、高齢者の遺言について電子署名でオーケーですと言って大丈夫かという疑問が当然出てくると思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。電子署名ということであればマイナンバーカードというのが現実的であろう、これはそういう御意見の方が多いのではないかと思いますけれども、それに伴う問題として、これまでにも出ておりますが、誰が管理しているのかという点が問題になる。そして、自治体の運用を見ると、本人が管理しているといえない場合が相当程度あり得るのではないか、こういう御指摘だったかと思いますけれども、何かその点について。 ○隂山委員 隂山でございます。齊木委員からも御指摘いただいたとおり、私が先ほど申し上げましたマイナンバーカードの活用につきましては、いわゆる当人認証の部分を活用するのであれば、利用者証明用電子証明書の活用ということになろうかと思いますし、本人の意思の担保という点からは、署名用電子証明書の活用ということになるのだと考えております。ただし、御指摘のとおり、また、部会資料2の23ページ13行目からの段落でも記載されておりますが、家族等が遺言を偽造するリスクを十分に回避することができないといった指摘につきましては、部会資料にもあるような、複合的な仕組みについての検討も必要になろうかと思っております。   部会資料にて、生体認証技術の活用についても言及を頂いておりますが、生体情報を直接突合することになると、生体情報をどこかの機関に預けることが必要になろうかと思います。そうしますと、国民感情からも抵抗感が強くなると認識をしています。   それに代わる措置としては、認証に必要な生体情報をデバイスのみに保存させる、いわゆるパスキーを活用することも考えられます。生体情報を一定の機関に預けることなく、生体認証技術を活用して署名用電子証明書を発動させるというような手法が今後採り得るのかどうかといった点なども含めて検討していく必要性があると考えています。そうすると、より高い確度で本人が関与しているデジタルデータであると捉えることができると思われますが、対応する端末を保有する方しか利用することができないといった隘路もあろうかと思いますので、引き続き検討が必要と考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。御指摘を受けて、隂山委員の方からは、そういう問題があるので、やはり複合的な仕組みで対応するということで、そのためには生体認証技術を利用するという方式が考えられる、これにも問題があるけれども、技術的に克服できるのかということを引き続き検討していく必要があるという御意見をいただきました。ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○戸田委員 戸田でございます。御指摘があったとおり、電子署名については推定効ベースで存在し得ているものなので、本当に大丈夫かというと、マイナンバーカードの高齢者に対する普及が急速に広まったときには、ほとんどの自治体で家族同伴で来て、若い方が打ち込むという運用を容認している状況がございましたので、大量のマイナンバーカードにおいて、暗証番号については家族が管理しているというケースはかなりあると思います。ですから、これをもって本人といえる推定効が働くかどうかというのは、何らかの統計等に基づいて判断してゆく必要があるのではないかとは思います。   それから、いろいろな技術の中に、生体認証もあるのですけれども、これの技術開発を私の所属している会社でも、かなりやってはいるのですけれども、必ずそれを打ち破る技術というのはまた出てきます。こうしたいたちごっこの側面もあるものですから、どういう技術であれば大丈夫かというようなことをある時点で規定するというのはなかなか難しいと思います。   ですので、これとは別の担保する仕組みというのは、やはり組合せで必要かなとは思います。それの一番有力なやり方は、今の登録制度、自筆証書遺言保管制度であるとか公正証書遺言であるとか、ある程度の権威のある形で本人が登録、チェックインを行うと、そういった仕組みが必要なのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。今指摘されている問題について、技術的に対応することはもちろん考えられるけれども、その技術というのは常に完全ではないので、別の制度との併用ということを考える必要がある、そのときに出てくるのは、やはり保管のような制度なのではないかという御指摘として承りました。   そのほかはいかがでしょうか。 ○倉持幹事 2点ほど申し上げます。   一つは、部会資料2の第2の4と5の関係ですが、4の見出しが「真正性を担保するため」とあるので、その文中に真意性という言葉も出てきますが、4では飽くまで真意性と分けた真正性のみを担保するための方式としてどういうものが妥当かを検討し、5では、真意性も含めてどういう形で担保されるのかを検討するという建て付けと解釈をしているのですが、その点に関して申し上げたいのは、真正性と比べて真意性というのは概念として曖昧だということで、先ほど齊藤幹事からも、真正性と真意性はある程度分けて考えるといった御発言もあったかと思いますが、私もそのように考えていて、真意性の概念が曖昧だということのほかに、法的効果も違うということも考慮した方が良いと思います。つまり、例えば真正性を欠く遺言、一見本人が作ったように見えても、実は偽造されていましたというものについては、事後的にそれは遺言無効だということで、理屈としては方式違反だとか、いろいろあるとは思うのですが、いずれしても無効だということで争えるのに対して、真意性がないとして、「これは本当にお父さんの意思ですか」、「お母さんの意思ですか」ということを争ったとしても、それを理由に遺言が無効だということには必ずしもならないという意味でも、真正性がないということの意味と真意性がないということの意味は、事後的に争えるかどうかということでも違いますので、そういうことも踏まえて検討をした方がよいというのが一つです。   もう1点については、方式の組合せの問題ですが、先ほど相原委員から、相続人としても納得できるような形、要するに本人が作った、本人が書いたものなのだなという相続人の納得感ということも考慮すべきという御発言がありましたが、実務家として見ると、相続人の納得感というものは紛争解決では重要なファクターになっています。そういう意味では、自筆、つまり、本人が書いたかどうかということとは違う視点で考えるとするならば、今の遺言書保管制度は本人が出頭することが義務付けられているので、相続人が後から見たときに、お父さんがわざわざ法務局まで行って持ち込んだものなのだから、お父さんが書いたものに間違いないとの納得感を持つであろうという意味では、真正性が確保できている上に、相続人としても、そうであれば仕方がないと納得できる一つの要素になるのではないかと思います。   それに関連して、本人入力が必要かどうかという議論もありましたが、裁判実務家からすると、仮に裁判になるような事例では、本人入力の確認はかなり困難が伴うので、先ほど確認の方法はあるという御指摘もありましたけれども、少なくとも事後的な確認が困難であることは間違いないと思いますので、本人入力ということにこだわるのはどうなのかなと思っております。   最後に保管制度に関連することとして、仮に保管を義務付けた場合の電子署名との関係なのですが、保管制度を利用するときにマイナンバーカードが必要ですとなったときに、それは保管制度の一部という位置付けなのか、保管制度の外に電子署名という要件まで付するのか、この辺はどのように考えたらいいのか、その辺が少し頭の整理が付かなかったので質問をさせていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。最初に、まず4と5の関係ということについて御質問ないし御意見があって、4は真正性の担保だと一応整理した上で、真意性と組み合わせるということだろう、それぞれについて効果が違うので、それを意識して議論する必要があるという御指摘を頂いたかと思います。では、組み合わせるということでどうなるかということで、先ほどの国民の期待といったことも考えると、保管制度というのがよいのではないか。本人入力の話もありましたけれども、保管制度について言うと、電子署名を保管制度の中に位置付けるのか、外に位置付けるのか、こういうところが問題になるのではないかという御指摘だったかと思います。今までにも保管制度について積極的な方向の御発言が複数出ているかと思いますけれども、ではどういう保管制度を作るのかということについて、更に立ち入った議論というのが必要なのではないかと思いますが、その際には、保管の際の本人確認をどうするのかという問題が出てくるということで、今のような問いが出てくるということかと思いますけれども、現時点で何か法務省の方でお答えがあれば、伺います。 ○齊藤幹事 電子署名と保管制度との関係で申しますと、両方を要するという考え方もあれば、保管の手続をするのであれば電子署名は過重な、少し重たすぎる要件なのではないかという考え方もあり得、これも組合せの問題なのかなと思っております。保管のための手続に持ち込むまでに、一旦署名をして、改変がされていない措置をしてあると、そしてそれが有効期限内であるということをきちんと保管の手続の窓口で確認するというのであれば、両方を要するということになるし、いや、保管官が本人確認をし、あなたの遺言ですかというやり取りをすれば足りるということであれば、両方は要らないという考え方もあり得るかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。幾つか組合せというのがあり得るのではないかというお答えだったかと思います。また保管について議論するときに改めて、保管制度をどうするのかという観点からも御意見を頂くということになろうかと思います。 ○戸田委員 今の齊藤様の御説明の中で少し、実際、今の保管制度ではマイナンバーカードを持ってくると、本人の確認をしていることになるのですけれども、現状ではそれを遺言書保管官の方がコピーを取って、それを申請書と一緒に保管しているというような状況なので、これは利用者証明用電子証明書を打ってチェックインするというやり方の方がスムーズではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。御意見を頂きました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○小粥委員 委員の小粥です。茫漠としたことですが、一つだけ。現在の普通方式の遺言、3種類あって、それで一応その遺言として成り立ったとすると、その価値は等しいものとされているのだと理解しています。そうしますと、例えば自筆証書遺言にせよ公正証書遺言にせよ、あるいは別のカテゴリーを作るにせよ、多分、立法で、新しい方式で同じ価値の遺言を作り出すということなのだと思っています。こう考えた場合に、冒頭の小池委員の発言に御示唆というか、小池委員はそうおっしゃっていたような気がしますけれども、秘密証書遺言というのは少し価値が低いというようなことが示唆されていたと思うのです。これを仮に前提にしますと、これから設けられるかもしれない新しい方式の遺言について、齊木先生などが示唆されるような方向でいわばがっちりしたものを設ける、というようなことにしますと、そうすると、新しく作成される遺言は、簡単な方式の方に流れ込むような心配もあるわけです。   つまり、全体像を考えるということに関係するのですけれども、その全体像を考えるときには、秘密証書遺言とか、あるいはより一般的に、簡単な、あるいは濫用され得るような方式の方に流れていかないような方向性も考えたほうがよいのではないか、それを考え出すと秘密証書遺言、価値が仮に低いという言い方がいいかどうか分かりませんけれども、本来は同じ価値のはずですが、そこまで見直すということにもなりかねませんが、それは大変だと思います。そういうところも含めて議論をした方がいいのではないかと。   それとの関係で一言だけ、非常に細かいことを言いますと、撤回のルールについてもあらかじめ考えておいた方がいいと、それは原本を何するかということとも、破棄の問題ですけれども、関わりがあるので、早めにその辺りとも連関させながら検討する必要が、望ましいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。個々の問題についてというよりも、全体として議論をするに当たって、類型間の関係をどう考えるのか、ある制度を作ることが全体としての遺言の利用状況にどのような影響を及ぼすのかということも考える必要があるのではないかという御指摘と、それからもう一つ、撤回のルール、これは現行の遺言には撤回のルールがあるわけですけれども、新しく作るものについての撤回のルールも考える必要があるだろうということで、撤回の問題や時刻の問題というのは、また後で話題になるかと思いますが、そうしたことは早めに議論した方がいいという御指摘を頂戴いたしました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○木村幹事 4の中で、私の先ほどの個人的な整理からすると、本人の作成というプロセスを重視するための要件と、アウトプットされたものについて本人の真意性とか真正性をどのように保証するかということに力点を置いた要件から、次のように見ることができると思いました。例えば、単に電子署名を講ずる方式というのは、作られたものについて、本人が電子署名だけを付ければいいという形になりますので、プロセスは置いておいて、本人が事後的に自分のものだと言えばいいという意味において、アウトプットされたものの真意性・真正性確保を重視するアプローチと親和的であると思います。これに対して、例えば録音・録画において、本人が作成しているという過程の保証が要るとされている点、証人の立会いや、公設ブースでカメラ専用のブースで作成を必要とするという方式というのは、飽くまで本人が作成のプロセスに関わっていなければいけないというための要件であると思います。   以上の整理を踏まえて、お伺いしたいのですけれども、例えば25ページでは、証人の関与を必要とする方式が示されているところです。具体的には、15行目以下で、例えば証人を関与させるものとする場合であったとしても、遺言の作成の開始から終了まで立会いを必要とするのか、それとも、遺言の完成時、つまり署名時に立ち会うことで足りるとするか、二つの提案が示されております。例えば前者の場合は、作成プロセスに関して正に本人が作成したことを証人が証明する形になりますけれども、他方で後者の場合は、遺言完成時に証人が本人に確認するだけになりますので、どちらかというとアウトプットされたものにおいて、本人の真意性と真正性が担保されている点を重視している、との整理ができるのではないかと思います。   この点において、例えば、本人による作成を担保するためには遺言の作成の開始から終了まで証人の立会いが必要であるとの前提をとりつつ、その点については遺言完成時に証人による確認とそれを示した署名要件で足りるとしてしまうと、本人作成にかかるチェック機能が十分に働かないのではないかとの疑問が生じ得るということです。   2点目ですけれども、部会資料23ページなどでは、作成プロセスに本人が関わったということを録画とか録音をするということの提案がされているのですが、この点について、法務省の方のイメージを具体化して教えていただきたいということです。例えば今、私が遺言を作成しているということが、ウェブ会議システムを通じて、本人確認ができれば足りるとされているのか、ということです。私の顔がウェブ会議システム上の画面に映っていたとしても、そのときに作成されたとされる書面自体を私が本当に作成したのかということまでの確認はできないようにも思われるわけです。これは本人が映っていれば良いという意味の本人確認だけで良いのか、本人による作成だという作成プロセス全体における本人確認を必要とするのか。後者の必要があるとすれば、録音・録画という形をどのように具体的に設計するかについては、かなり詰めなければいけないのかなと思いました。   例えば、今、4時00分として、2024年5月14日の4時に書かれたデータと、2024年5月14日の4時の時点で私が書いているという動画があれば、実際それを整合することになるのか。この点について、例えば作成プロセスと保管システムと紐づけられていたら、私が作成・保管システムにログインして、私が作っているという動画があり、保管システムの中でその動画と保管のために送信されたデータが関連づけられ得て、わざわざ照合する必要もないように思われます。以上は私の拙い発想によるものですが、法務省の方において、録音・録画ということについて具体的にどのようなイメージを持っておられるのかということを、もう少し詳しくお伺いしたいと思いました。   これとの関係で、公証人の場合だとウェブ会議が使われているという話が出ていたと思うのですけれども、実際、口授において本人が話している姿をウェブで見るという場合と、遺言に関わる事柄をパソコンなどで作っているということをウェブで確認するということは、かなり違うようにも思われるわけです。その点も併せて、法務省の方から、こういった見方とか、こういった具体的なイメージがありますという点を教えていただければと思います。  ○大村部会長 ありがとうございます。木村幹事の今の御発言は、議論されていることの中に、本人作成のプロセスを確認するというものとアウトプットを確認するというものが混在しているのではないか、証人が関与するという場合、あるいは録音・録画をするという場合に、何を確保するということを目指しているのかということをはっきりさせて議論する必要があるのではないかというご指摘だったかと思います。証人関与について言うと、証人が電子署名をしただけで、そのプロセスまで担保しているといえるのだろうかといった御疑問を出されていたのだろうと思います。録画・録音については、今のような観点との関係で、どういうイメージを持って考えているのかということをもう少し伺いたいということだったのかと思って伺いました。法務省にお答えいただいて、公証人の話も出ましたので、齊木委員から、何かあれば少し補足をしていただければと思います。まず、法務省の方からお願いします。 ○齊藤幹事 法務省でございます。お答えできる範囲でお答えすると同時に、例えば録音・録画の活用と抽象的には言うけれども、これではまだ十分には具体化できていないというのは、そういう認識はございますので、こんなことが考えられるのではないかという、もし御意見があれば、更に承りながら具体化を進めたいと思っております。   それで、少し戻って御質問に答えますと、まず、証人の関与の在り方と、その署名等との関係という御質問と理解しました。関与というのは広い概念で、それを作成に立ち会うというきちんとした関与か、それとも完成時に確認をして署名だけをするというやり方、両様あり得るのかなと思っておりますが、方式としては、立ち会った上で、例えば署名なり電子署名をするという要件にして、その上で残ったものとしては電子署名という電磁的記録しかないということも、方式とそのアウトプットとの関係としては、あり得る選択肢ではあるかなと思いますし、それは今の公正証書遺言でも、立ち会うことも要件になっておりますし、実際出来上がったアウトプットとしては、署名がある公正証書が残っていて、必要があれば訴訟手続で証人申請をするかどうかという場面につながってくるのだと思っております。ただ、今回の新たな方式においてどういう在り方がいいのかを十分よく考える必要があるということかと存じます。その上で、更に付け加えると、証人について更に電子署名を求めるだとか、そういう手続を要件としていくと、更にどんどん重たくなってしまい、使いづらい仕組みが出来上がってしまわないかという御懸念も聞いたことがございますので、これも考慮要素かなと思っております。   それが前者のお答えで、後半の録音・録画について、どういう具体的な活用があり得るのかという点については、やはり抽象的には、当該作成されたテキスト、文章の文字記録である電磁的記録と録音・録画とがきちんと結び付き、その場で作られたものがこの遺言であるということが形としてできるものが理想なのだろうと思っています。ただ、そこに限られるわけではないと。また、技術的に可能かどうかについても更なる検討の余地があるということで、更なる具体的イメージというのは、これ以上なかなか現時点でお答えするのは難しいというところです。 ○大村部会長 ありがとうございました。齊木委員、何かあればお願いします。 ○齊木委員 公正証書遺言においても、弁護士さんが実は別途録音・録画をして、それを記録に残すということがたまにあります。これは、将来紛争を生ずるのは間違いないという場合で、その紛争が生ずる原因は、判断能力が争われる、あるいは周辺の家族から不適切な影響、アメリカ法でいうアンデュー・インフルエンスみたいなものが争われるのに備えるためのものです。ですが、アメリカではアンデュー・インフルエンスが推定されると、本人の署名であっても、これは遺言無効になるわけです。だから、そういったことを防ぐために録音・録画を弁護士さんが作ったのを知っているのですけれども、それは同じ部屋の中にカメラをまわして、家族はいないよと、さらに、弁護士さんが質問して、いろいろやり取りし、例えば、この財産を誰に上げるのと、その人にあげるのは何でなのというような質問をして、そういった記録を残していきます。このように遺言者の判断能力があること及び不適切な影響がなかったことについて訴訟の段階で出すことを予定するために、そういった画像を用意するわけです。   木村先生の御質問は、署名だけの確認と、そういった映像とはどういう関係なのというのは、正に今のとおりなのです。署名が認められたところで、アメリカ法だってそうなのですけれども、アンデュー・インフルエンスが認められると無効になるわけです。だから、署名を確認するだけのために証人がいるわけではないのです。アメリカの証人はアフデービッドというものを出すらしいですけれども、おおよそ3項目で、署名したのは間違いないというのと、内容をやり取りして、その内容が本人の意思であり、不適切な影響はなかったことを確認した、それから、本人には判断能力があると判断したと、こういう3項目が大体入っているらしいです。その確認する様子を映像に残すかどうかと、こういう話です。出来合いのアウトプットのものは、特に後2者の方は、記録として残らないのです。だから、将来の争いに備えて、それを残そうかという動きがあるのです。だから、そのために併用しようかというお考えも出てくると、こういうことだろうと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。木村幹事、それでよろしいですか。続けてあれば、どうぞ。 ○木村幹事 ありがとうございます。1点だけですけれども、先ほど齊藤幹事がおっしゃったところで、証人に関して、例えば、更に公証人の電子署名などが必要とすると、手続の負担が重くなってしまうという懸念があるというお話だったと思います。この点について、現行法の秘密証書遺言では、証人のほかに公証人の関与が必要とされている点などを踏まえると、確かに証人には欠格事由として推定相続人などが含まれないと定められております。このことを踏まえ、本当に証人の関与のみで十分なのか、そして、証人の立会いというものをどういった空間で行うのかということなどについても、手続的な整理というのが必要なのではないかと思います。齊木先生もご教示いただきありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   そのほか御意見はいかがでしょうか。 ○相原委員 意見ではないのですが、この点について事前の説明のときに、海外でデジタルというか電子署名を使っているときに、大体証人2名が求められているが、具体的にどの程度関与しているのか、その実態についてどうなのですかと申し上げたら、ヒアリングでそれぞれ確認してほしいと御回答いただきましたので、私もどの程度、具体的にリアルに何をしたら要件を充足するのか、その後、訴訟になったときの問題と、2段階あるかと思うのですが、そもそもがどこまでを要求しているのか、証人2人というだけでは少し分かりにくいなと思ったので、もう少し海外の実態も知りたいなと思ったところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。録音・録画ということで何をどのようにするのか、あるいは証人が関与するということで、証人は何をして何を残すのかというようなことについて、もう少し立ち入った検討が必要で、そのために外国法のデータも欲しいということで、この後ヒアリングも予定されているのではないかと思いますけれども、またそのときの質問項目に入れていただくとよいのかと思って伺いました。ありがとうございます。   そのほか、いかがでしょうか。 ○石綿幹事 幹事の石綿です。21ページの4について、2点申し述べたいと思います。   1点目は、もう既に出ているところですが、デジタル技術のみを使う方式で真正性を担保するというのは、やはり現状の技術では不安があると思います。マイナンバー制度等では不安があるかと思いますし、戸田委員がおっしゃってくださったように、その技術はいたちごっこのところがあるかと思いますので、沖野委員の問題関心に通じるかとも思いますが、息の長い制度にするためには、最終的にはアナログを信じるというか、アナログと併存するということが必要なのではないかと、少し古臭い考えかもしれませんが、そのように感じているというところです。   2点目で、ではどのようなアナログの対応をするのかということで、私も保管制度というのが一番有力な制度かなと考えております。新たに作られる遺言というのが自筆証書遺言に代わるものであるというような位置付けを仮に与えるのであるとすれば、現状の自筆証書遺言というのは基本的には一人で作成することができる遺言なのだということを考えると、保管といったような形、あるいは(イ)の公設カメラのブースという形で、遺言をできるだけ一人で作る、内容は自分の死後まで知られないということが担保される制度というのを準備するということは、ある意味で望ましいのではないかと思います。   他方、新たに作る制度というのが自筆証書遺言の代替制度ではないのだ、もっと幅広く考えるのだということであれば、アの証人の立会いを必要とするということも十分選択肢に入ってくるだろうと思います。その中で証人が何を見ていくかという、先ほど木村幹事から議論があった点ですが、秘密証書遺言と並びに考えていくのであれば、最終的に出来上がったものについて、あなたの遺言ですかということをチェックするということで十分なのだと思いますし、あるいはもっと、作成の段階から関与するということも考えられると思いますが、いずれの選択肢を採っても、では秘密証書遺言や公正証書遺言との違いは何なのですか、公証人が立ち会わないということだけになってくるのでしょうかという問題もありそうに思いまして、その辺り、最終的に出来上がる遺言の遺言制度の中の位置付け等も含めて、検討していく必要があろうかと思っています。   差し当たりの感触は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。4の選択肢についての考え方というか、流れみたいなものを御説明いただいたのではないかと思います。デジタルだけでというのはやはり不安が残るということであるとすると、自筆証書との関連性を考えるのならば保管制度、それを断ち切って考えるのならば証人ということで考えることもできるということで、再々出ている秘密証書というものをどのように捉えるのかということが、そこでも関係してくるかもしれないという御指摘を頂いたと思います。   ほかにはいかがですか。 ○中原幹事 2点ございまして、1点目は倉持幹事、それから木村幹事が既に指摘されたことに重なるところがありますけれども、証人等の関与を必要とする方式、21ページの32行目に書かれているものですけれども、これがやはり4の真正性を担保するための方式の在り方というところに挙げられているというのが若干引っ掛かるところでありまして、25ページの14行目とか25行目とか、そこで言及されているように、真正性だけではなくて真意性にも関わる問題ではないかと。   これらの方式は、やはり真意性を一定程度確保するための手段としても機能し得る、例えば、証人の立会いの下での作成あるいは公的施設のブースでの作成というのは、作成時の他人の影響の排除を実現するものだと思いますし、保管申請の際の審査は、その内容の組み方によっては意思の確定性を確認するものとして位置付けられ得ると。もちろん木村幹事がいろいろと御質問されていたように、実効性のあるやり方というのは考えなければいけないのだと思いますし、それらで十分なのかということは問題になるのだと思いますけれども、いずれにせよ、これらを第一次的には真正性の担保のためのものとして位置付けてしまうと、真意性の担保の機能の分析が不十分になってしまうのではないかということが危惧されるように思いました。   この観点からついでに申し上げておくと、プリントアウト方式についても、例えば証人の立会い、あるいは公的施設のブースでの作成によって弱点を補うということは考えられそうでありまして、イギリス、中国の仕組みでは、証人の立会いが組み合わされていますし、入力とかプリントアウトを決められた場所で行わせるという方法も、利便性は別として、有り得ない方法ではないのかなと思います。   いずれにしても、証人の立会い等のアナログな方法の意義、石綿幹事からは保管がいいのではないかというような話がありましたけれども、強みがそれぞれの方式で違うような感じがしますので、真意性の確保の機能も含めて、もっと検討を深めてよいのではないかと思いました。   2点目は、組合せについて、具体的にどの方式ということはまだ全然判断できませんけれども、視点の一つとしては、全てデジタルでやる、その意味でのデジタル完結にどの程度の価値とか必要性を見いだすかという問題があるのかと思います。関連する記述が22ページの12行目から15行目に掛けて書かれている。そこで書かれている考え方は確かに重要であって、つまり、全てデジタルできるということになれば、確かに簡便である。ただ、例えばワープロソフトは使えるけれども、電子署名となるとハードルが心理的なものも含めて高いという人も結構いそうでありまして、全てデジタルだったら個々人レベルで簡便だとは必ずしもいえないような印象がありますし、今回配布された調査研究報告書でインタビュー調査などを担当しましたけれども、そこでは、デジタルの簡便さは享受したいのだけれども、しかし全てデジタルだと不安だというような人も結構いるような印象も受けたところであります。   それから、もう一つには、複数の方式を考えてよい。17ページの31行目で、文字情報とした電磁的記録とする方式について、複数の方式ということが指摘されていますけれども、複数あり得てよいという考え方は、もっと射程が広い話なのかなと思います。全てデジタルで完結するもののほか、デジタルと証人立会いなどのアナログな確認方法を組み合わせるというものがあってもよいし、また、どの段階をデジタルとするかという観点を入れた場合には、プリントアウト方式で、これは作成過程のみデジタル、出力結果はアナログというものでありますけれども、そういうものを証人立会い等の手段で補いつつ構想するということもあってもよいように思います。最終的にこれらを全て認めるべきだということではなくて、選択肢として、何をどこまでデジタルかということに応じて、特に利用者層を念頭に置きつつ、複数のものを構想・検討してもよいのではないかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。中原幹事は2点、証人等の関与の位置付けということで、真正性を確保するだけではないのだと、先ほど倉持幹事だったでしょうか、御指摘がありましたけれども、そうした御指摘と、それから組合せの際に、デジタル完結ということにそれほどこだわらないで、複数のルートを考えてもいいのではないかという御指摘がありました。その背後のというか、念頭に置かれている具体例としては、プリントアウトしたものを扱うという観点から見たときに、それも何らかの形で取り込めるようなものを考えた方がいいのではないかというニュアンスだったのかと思って伺いました。ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○小池委員 21ページの真正性を担保するための方式の在り方というのが、真意性も入っているのではないかというのは、そういうことなのかもしれないと思うのですが、多分作りとしては、デジタルでやった場合には、本人がその遺言の意思表示を自分で作ったと、電磁的記録で作ったということが電磁的記録からははっきりしない可能性があって、3番のやり方次第ではそれはできるのですけれども、できないケースも多いだろうと。そうすると、正に真正性を担保するために、こういうやり方をやらないと駄目だよねというのが、この4番なのかなと思って理解をしていました。それは別に真意性のチェックをここでしなくていいという話をしたいのではなく、単なるコメントです。   他方で、真意性を何でそれほど強調するのか、要らないよという気は全くないのですけれども、本人がきちんと意思表示していたのであれば、更に重ねて、それは確実ですかと聞く必要がそもそもあるのかという問題があって、贈与の場合には、それは無償行為だから確実な意思が要るよねという話になっていると思うのですが、別に遺言の場合には、必ずしもそういうケースだけではないので、遺言の場合に、例えば自筆証書だったら、自分できちんと書いて意思表示をやっていますと、書いた形で記録を残していますというときに、重ねてそれが本当に真意性に基づくものかという疑いを差し挟むのはなぜなのか、あるいは公正証書遺言でも、口授ということは口頭で意思表示を本人がしているわけですよね、それについて更に、それは真意に基づくものなのですかとあえてまた聞くというのはなぜなのかというのは、真意性の要請をどこまで実現すべきかということを考えるときには、考慮しておいた方がいいのかなと、すみません、印象ですけれども、思いましたということです。   あと、先ほど小粥先生が私の発言を引用して、秘密証書遺言は駄目だ、みたいなことを私が言ったかのようなことを言ったと私は受け取ったのですけれども、私はむしろ逆で、秘密証書遺言レベルでいいのではないかという、積極的にいいのではないかということではなくて、自分で遺言の意思表示をしたということを記録に残しても、デジタルの場合には本当に自分でやったかというのは多分残らないだろうと、そうすると結局秘密証書遺言レベルのチェックにしかならないのではないかという趣旨で、秘密証書遺言レベルでいいのではないかということを言ったということです。 ○大村部会長 ありがとうございます。資料の作りについて、こういう発想で作ったのだろうということをおっしゃっていただいた上で、真意性ということが今日話題になっていますし、資料でも分析していただいたのですけれども、指摘されていることを踏まえた上で、どこまでこれを重視するのかということも検討対象になるのではないかという御指摘を頂きました。それから、秘密証書に関しては、小粥委員は多分、小池委員がおっしゃったことは理解しつつ、しかし、程度があって、そのどこかに合わせるというときに、小池委員のように、仮に秘密証書の線まで下げるという選択肢があるとすると、反対に、秘密証書の線とするというのはよくないという考え方もあり得るということをおっしゃったのではないかと受け止めておりますけれども、そういう趣旨でしたでしょうか、小粥委員。ありがとうございます。 ○水口委員 三菱UFJ銀行の水口でございます。執行を受ける側の金融機関からの立場としてコメントさせていただきます。   遺言がデジタル化された結果、真正性をめぐる紛議が増えるような、そういう事態は避けるべきというのは、これは金融機関側でももちろん同じ思いでございますので、この4に記載された措置をいろいろと、組合せも含めて、要件とすることを議論することについては、これはもちろん異存はございません。   ただ一方で、現在の自筆証書遺言が、これが置き換わるということであれば、自筆証書遺言の要件チェックにつきましては、日付も含めて自書されているかであるだとか、あと13ページの真ん中辺りにあったかと思うのですけれども、三文判でいいので押印があるかといったような、比較的チェックの内容というのがシンプルである一方で、デジタル化された遺言の要件チェックについては、例えば、ここで議論されているような電子署名を施すということになれば、その遺言に施されている電子署名が、仮にこの電子署名法上の電子署名を念頭にしているということなのであれば、その要件を満たすような、公開鍵暗号方式によるものなのかといったことであるだとか、あとは、アナログな様式を追加の要件とするのであれば、先ほど議論にありましたとおり、当該遺言が提出を受けた録音・録画記録だとか生体技術認証の記録と本当に紐づいているのかとか、証人の関与というものとの結び付きみたいなものを金融機関側で都度確認するというのは、これはやはり実務的には極めて困難ではないかと思っております。   そういたしますと、やはり法的に安定的にこの執行をするという観点からは、やはり何か公的な保管制度を必須として、保管の入口で、今議論されているような追加的な方式を担保いただくような制度が、やはり金融実務からは望ましいのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。4のような検討は必要だということは前提としつつ、ここに書かれているようなこと、先ほど更に立ち入った形でこれをブレークダウンして議論する必要があるのではないかと御指摘もあったところなのですけれども、それを事後的に銀行の方でというか、遺言を使う側で確認するのは非常に難易度が高いので、事前にというか入口で確認するような保管制度というのがやはりよいのではないか、こういう御意見として承りました。ありがとうございます。   ほかにはいかがでございましょうか。   御発言ございませんでしょうか。法務省の側から、この点について意見を伺いたいという話があれば、お願いします。 ○齊藤幹事 法務省でございます。少しお時間もあるようですので、御質問とかではないのですが、資料をグループで検討していた際の発想を少し補足させていただこうかと考えました。   先ほど小池委員から、真意性という担保はそれほど重要なもの、重ねて要求すべきものなのかどうか自体も検討対象ではないかという御趣旨の御指摘を頂きました。この点に関しましては、正に少し今回、真意性という言葉の内容が何か、十分ではないですけれども整理を試みたところで、本日いろいろな御意見を伺えて、大変有り難く存じます。その上で、既存の現行の方式と、今これから検討すべき新たな方式とを比較して考えますと、やはり公正証書遺言であれば口授と一連の手続によって真意性が担保されていると。これは倉持幹事の御発言をお借りすれば、真意性の有無というのを何か客観的に測れるものではないので、これは方式を満たしているかどうかという点で、満たしていなければ無効になるし、満たしていれば有効という面で、実体としては捉え難い真意性というものを、方式要件というものがそういう役割を持って担ってあげているものなのかなという発想で、個人としてはおりました。   そうすると、少し発言が前後して恐縮ですが、公正証書においては、それが正に公正証書の作成手続の方式要件において十分真意性が担保されていると、口授がされているということなので、これ以上真意性が必要かどうかといえば、もう問いようがないぐらいしっかりできていると。それに次いで、自筆証書遺言は手書きで全部書いてねということになっていて、ここで真意性の担保が図れていると。その真意性の担保が図れていること自体を直接には測りようがないので、方式要件として判断すると。方式要件の場合は、もうゼロか100ということになると。   では、これから検討すべき新たな方式においてどうするかというと、その兼ね合いをどう実現しなければならないかということで、かつ、デジタルにすると、再三御指摘を頂いているように、残ったものには痕跡が残りづらいと、本人が作成したものかどうかが分かりづらいということなので、そのための方式要件をどう考えるかということでは、やはり真意性の担保を現行の方式よりもよりフォーカスして、問題としなければならないのかなということを思って、資料は作成しておりました。ただ、真正性と真意性の扱いに少し混乱が見られるかもしれないので、整理等は引き続き考えていきたいと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。資料を作る際の考え方について御説明を頂いたと思います。小池委員の、真意性というものをどのくらい重視するのかという御発言への言及もありました。小池委員の御発言の中で、贈与の場合はというお話があったのですけれども、贈与の場合には、なぜ贈与するのか、どういう事情でどういう意図で贈与するのかということを確かめるのが困難なので、日本は諾成ですけれども、諸外国においては方式が用いられています。方式というものが贈与の原因に代わるという考え方が多分採られてきているのではないかと思います。齊藤幹事がおっしゃったのは、言わばそうした考え方で、方式というものを定めることによって、それで様々な要素を含む意思の確認に代替させる。代替させるのにふさわしい方式として、私たちはどのぐらいのものを作ろうと考えるかということではないか。こういうことになりましょうか。 ○齊藤幹事 はい。間違っているところがあるかもしれないので、そこはいろいろ先生方に御指摘いただければと思います。 ○大村部会長 今のような点について御意見を徴したいということですか。 ○齊藤幹事 お答えのつもりでしたので、特に御意見がなければ。 ○大村部会長 もし何か今の点について御発言があれば伺いたいと思います。また後で必要に応じて御議論を頂くということでも結構かと思いますけれども、何か特にあればということで、どうでしょうか。 ○内海幹事 方式というものにどれぐらいの役割を持たせるかということ自体も、恐らく議論の余地があるのではないかと思います。アンデュー・インフルエンスという御議論もありましたけれども、方式が守られていたとしても、何か実質的な疑義が呈されて、その疑義がどの程度裁判所や、あるいはその他の遺言を読む人に受け入れられやすいものになっているかという状況によっては、方式は方式として満たすことは簡単にできるけれども、争われたら簡単に無効になるという世界になることも全く考えられないではなく、そういう遺言は作りやすい・残しやすいけれども無効になりやすい。そのことを前提にして、家族の仲がいい人だけ使ってくださいと、そういう道を用意するということもおよそあり得ないわけではないような気がします。一方で、方式なのだから、方式を遵守すればそう簡単には揺れ動かないようなものになっているのが望ましいというのも、恐らく伝統的にはそういう見方の方が強いし、それはそれとして十分あり得る考え方かと思います。そうなりますと、方式を守った上で、更にどういう攻撃、効力を争う余地が残されることになるかということも考えた上でないと、その方式が必要十分になっているかという評価を本当にすることは難しいところがあるのではないか、ということを感想として持ちました。 ○大村部会長 ありがとうございます。方式一本で行って、他のものによらないということでは必ずしもないだろうということで、他の法理によって遺言の効力がどのくらい覆るかということの関係で、方式に何を担わせるかということも決まってくるであろう、こうした御指摘だったかと思いました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、多少早いのですけれども、本日はこのぐらいにしようと思います。4と5について、4では真正性の担保という位置付けで幾つかのことが書かれておりますけれども、デジタルのみで処理するということではなくてもよいのではないかという意見も出ておりました。そのときに、証人というものをどう考えるのか、あるいは録画・録音をどう考えるのか、保管という制度をどう考えるのかということで、更に深めるべき問題があるのではないかといった御指摘を頂いたと受け止めております。さらに、相原委員もおっしゃっていましたけれども、この後ヒアリング等もありますので、それも踏まえまして、また次の段階で今のような点について御議論を頂く、そのために今日の御議論を事務当局の方で整理していただくということなのかと思っております。   特に何か今日の時点で御発言があれば伺いますが、なければこの程度にしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、本日の審議はここまでということにさせていただきます。   次回の議事日程等につきまして、事務局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○齊藤幹事 本日はお忙しい中、ありがとうございました。   次回の日程は6月25日火曜日、午後1時30分から午後5時30分までとなっております。場所は法務省7階の共用会議室の6、7番を使用いたします。次回は、新たな遺言の方式におけるその他の論点や、自筆証書遺言の方式要件の在り方等について、更に言えば、本日言及があったところで申しますと、撤回の部分ですとか、あるいは保管制度の有無、あるいは義務化するかどうかによって、大分今日の議論との関連性も出てくるかと存じますので、その辺りを御議論いただくべく資料を整理し、また事前にお送りしたいと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。ヒアリング等については、また別途ということですね。 ○齊藤幹事 ヒアリング等につきましては、今日頂いた御意見も少しいかすところがあるかなと思いますので、引き続き調整中でございますが、可能な限り、既に御予定いただいている部会のなるだけ近いところで日程を組んでいければと思っております。よろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。ヒアリングの予定も含めまして、今のようなことで進めさせていただきたいと思います。   それでは、法制審議会民法(遺言関係)部会第2回の会議をこれで閉会させていただきます。   本日は熱心な御議論を賜りまして、ありがとうございます。閉会いたします。 -了-